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55回国会参議院1967/05/17

予算委員会公聴会 第2号

発言数
38
登壇者
13
会派数
4
開催日
1967/05/17

会議録

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会公聴会を開会いたします。  昨日に引き続きまして、昭和四十二年度総予算について公述人の方から御意見を拝聴いたします。午前はお二人の公述人の方から御意見を伺うことになっております。  ただいまから順次伺いたいと存じますが、公述人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中にもかかわりませず、本委員会のために御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。昨日に引き続き、本日の公聴会におきましても、忌憚のない御意見を拝聴することができますならば、今後の審査に資するところがきわめて多いと存ずるのでございます。  それでは、名簿の順序に従いまして、お一人三十分程度で御意見をお述べ願いたいと存じます。委員の方の質疑は、お一人の公述人の御意見の開陳が終わりましたところでお願いをいたしたいと思います。  それでは、田実公述人にお願いいたします。田実公述人。(拍手)

田実渉三菱銀行頭取

○公述人(田実渉君) ただいま御指名をいただきました田実でございます。本日は経済、金融の問題につきまして意見を申し述べよということでございますので、金融界の一員といたしまして、日ごろ考えておりますことを申し上げて、御参考に供したいと存じます。  一口に経済、金融と申しましても、きわめて範囲が広うございますので、問題を次の三点にまとめさせていただきます。第一番目は、景気の見通しについて、第二番目は、今後の金融情勢の見通しと財政との関連について、そして第三には、国債発行下における金融、財政政策につきまして、私見を述べさしていただきます。  そこで、まず景気の見通しでございますが、御承知のとおり、わが国経済は昨年来順調な回復の道をたどりまして、本年に入ってはっきりと上昇への第一歩を踏み出したのでございます。あの戦後最大とも、構造的ともいわれ、暗いムードに包まれていました経済が、かくもすみやかに、しかも順調に回復から上昇へ移行することができましたのは、本格的な国債発行の導入による積極的な景気振興策の実施に負うところが大きく、また民間産業界も不況克服に真剣な企業努力を重ねた結果であることは、御同慶にたえない次第でございます。しかしながら、その回復、上昇が予想をこえた勢いにありましたため、この二、三月ごろには早くも景気過熱論議が盛んになりました。それは先刻御承知のとおりでございますが、経済の上昇が始まったばかりにもかかわらず、過熱論が戦わされましたことはこれまでになかったことだと覚えておりますが、その論議の適否は別といたしましても、これは国をあげて今後の経済の発展を健全な息の長いものにしようと考えておるあらわれであり、まことにけっこうなことであると思う次第でございます。  わが国経済は幸いにして上昇過程に入りましたものの、経済を取り巻く環境はこれまでになくきびしさを増しておるのでございます。たとえば欧米諸国の景気情勢も昨年に比べまするとあまり芳しくなく、総じて経済の成長率は鈍化の方向にあるようでございます。これはいまさら申すまでもなく、わが国の輸出伸長にとりましてマイナスの要因でございます。一方、国内を見ましても、資本取引の自由化を目前に控えております上、人手もさらに不足してまいりますなど、経済の環境はこれまで以上にむずかしくなってきております。しかも、以前と異なりますことは、わが国も国債を抱いた経済になっておりまして、政策の適切な運営をはかる上にこれまでになかった要因が加わってきておるのでございます。それだけに景気の行き過ぎを懸念いたします声が早目に出るのも当然でございますし、またそうあってしかるべきだと思います。しかしながら、巷間の過熱論もその後の生産、物価などの動きが落ちつきを取り戻しましたため、最近ではやや下火になっておるようであります。  そこで、経済の前途でございますが、景気の先行きを判断するにあたっての最大の問題は、やはり設備投資の動向でございます。皆さまも御承知のとおり、ここ一カ月ばかりの間に各方面から設備投資の計画調査が発表されております。それによりますと、たとえば日本開発銀行の調査では、四十二年度の設備投資は二七%伸びることになっており、一方、通産省の調査では三九%となっておりますように、全般的に三〇%前後の伸びが予想されておるのであります。しかし、これらはいずれも企業側の希望数字でありまして、これがどれだけ実現するかは別問題であると存じます。私の感じといたしましては、各方面から投資調整には力が入れられておりまするし、企業家の方々も過去の苦い経験を経ておられますので、昔のように過当なシェア競争に走ることはないのではないかと思っております。たとえば、現在は鉄鋼設備新設が問題になっておりまするが、あれほど業界首脳の方々が真剣に話し合いをされていることを見ましても、その態度は過去とはかなり違っておる感じがするのでございます。したがいまして、投資をあまりに強く押えることによって必要な投資の芽までつまないようにすることが肝心なのではないかと思うのでございます。と申しますのは、ここ両三年間設備投資は沈滞しておったのでございます。このままでは、わが国の生命線ともいうべき輸出力が衰えることは当然でありまするから、この際明日の国際競争力の涵養が大事と考えるのでございます。今後の資本取引の自由化の進展に対処するという見地からも、また労働力の節約という要請からも、設備の近代化、合理化の必要性は切実なものがあると思うのでございます。  次に、国際収支の問題でございますが、先ほども申し述べましたとおり、海外の景気動向から見まして、わが国の輸出環境はきびしさを増しており、昨年までのような輸出の順調な拡大は望めないようでございます。これに対しまして輸入は国内における生産の増加に応じてその増勢を今後一そう強めるものと予想されますので、貿易収支の黒字幅は次第に狭まり、これに貿易外収支の赤字などを勘案いたしますと、国際収支の先行きは必ずしも楽観を許さないと思われるのでございます。しかしながら、国際収支面から引き締めのやむなきに至るかどうかは、国際収支の悪化の度合いいかんにかかっております。それはまた国内の設備投資を中心とする経済の盛り上がりの程度いかんにもよるわけでございます。先ほども申し述べましたとおり、企業が投資競争に走るとは思われないのでありまするが、国際収支の天井の高さから見て、投資の行き過ぎがなくとも、経済過熱のおそれがないとは言い切れませんので、経済の運営はやはり慎重に弾力的にやっていただかねばならないと思うのでございます。  それに関連いたしまして申し上げたいのは、今年度の予算についてでございます。本日は予算の内容について申し上げるのは私の任ではないと思いますので、ここでは簡単に触れさせていただきます。一般会計の規模は、前年度比一四・八%の増加にとどめられたことは、その性格が今後の経済見通しに立脚しつつ、景気に対して中立的な立場を貫かれたものとして好感を持つものでございまするが、それよりも私が強調いたしたいのは、国債の発行額を当初予定より減額された弾力的な姿勢であります。今後の政策運営にあたられましても、かかる弾力的な態度を常時とられますようお願いいたしたいのでございます。  以上が私の景気観でございますが、これを要しまするに、景気の先行きは必ずしも楽観は許さず、過熱に対する警戒を怠ることはできませんが、過度の警戒観はどんなものであろうか。特に設備投資意欲を阻害するような抑制策をとられますことは、長期的観点に立った今後のわが国経済の発展にとって、むしろマイナスになることもあるのではないかと考える次第でございます。  次に、金融情勢について申し述べさしていただきます。  本年に入りましてから、金融市場は引き締まりの傾向を強めておりますことは御承知のとおりでございます。特に、去る一——三月期には財政が大幅な引き揚げ超過となり、また日銀券の増発テンポが高まりましたため、金融市場はかなりの引き締まりを見せたのでございます。このためコールレートも一月から二月にかけまして一厘引き上げられたのでございます。例年一——三月期は金融は季節的に引き締まる時期ではありまするが、本年の逼迫の様子を見ますと、季節的なものだけではなくて、一般的な経済の動きを反映したものであると考えられます。財政収支は予想以上の引き揚げ超過となり、その結果国債の発行額を減らしていただいたわけでありますが、これも民間の景気がよくなり、収入がふえて税収が増加し、郵便貯金などの伸びもよくなったためでございますし、一方、日銀券の増発も民間の経済活動が活発化したからにほかならないのでございます。  では、今後の金融情勢はどうなるかと申しますと、景気の上昇が本格化してまいりますのに伴いまして、自律的に引き締まりの度合いを強めることは当然のことと申せましょう。先ほど申し上げました一月から二月にかけて引き上げられましたコールレートは、本年度の四月に入りまして金融市場が緩和しましたため、引き下げられてもとの水準に戻ったのでありまするが、これは新年度に入りまして四月に財政資金が大幅に支出されて金融市場がゆるんだためでございまして、むしろ一時的であり、基調といたしましては、コール市場も漸次逼迫の方向にあると思われます。したがいまして、金融市場は法人税の納入期であるこの六月を境に、引き締まりの度合いを強めるのではないかと考えられるのでございます。  ただ、従来の金融情勢とやや様子を異にしておりますのは、金融市場、つまり私ども銀行の資金情勢の動きと、企業金融、つまり企業の金繰りとは動きが違ってきているということでございます。従来でございますと、景気がよくなり、生産、売り上げが上昇してまいりますと、企業の資金繰りも次第に苦しくなっまいりまして、銀行に対する借り入れ需要がふえてまいるのが通例ではございましたが、今回は、これだけ生産が上がり、また設備投資に動意が出ておりますのに、銀行の窓口ではいまのところ設備借り入れの申し出はあまり顕著とは申せないのでございます。  つまり、企業はそれだけ資金に余裕があるわけでございますが、企業金融が金融市場とは別になぜ余裕があるかと申しますと、これはまことに釈迦に説法で恐縮でございますが、国債発行によってお金の流れが変わったことが第一の原因でございます。そして第二には、高度成長期に設備投資がかなり行なわれました結果として、減価償却の額が非常に大きくなっていることでございます。そして昨年までは生産したものをかなりの割合で輸出に向けておりましたので、外貨という形で現金が入ってきたことも、これも一つの理由と申せますでございましょう。中でも国債発行によりまして政府から出る資金が企業に入るということは大きな影響を持っていると思うのでございます。このことは、私ども銀行の立場から申しますと、いままで企業にお貸ししていたかわりに政府にお貸しする。つまり国債を引き受けるという形で政府にお金を用立てているわけでありますが、政府はそれを企業に支払うということになるのでございます。つまり、銀行から企業へ貸し出すというルートに加えまして、銀行から政府へ、そして政府から企業へという新しいルートができたわけでございます。したがいまして、銀行の資金繰りは従来とあまり変わりませんでも、企業のほうにはやはりゆとりができるわけでございます。しかし、これにも限度がございますから、経済がさらに拡大し、設備投資も本格化してまいりますれば、企業の借り入れ需要も次第に高まってくるのではないかと考えております。事実、企業の金繰りのゆとりが次第になくなってきておりますので、早晩銀行借り入れに依存せざるを得なくなるものと思われるのでございます。  こうなってまいりますと、一方におきまして財政の引き揚げ傾向が強まり、日銀券の増発が著しくなるというぐあいで、金融市場全体が引き締まってまいりますところへ、企業の資金需要が出てくる、さらに国債、政保債、事業債などの債券引き受けもふえてくるということで、銀行の資金繰りは次第に苦しくなってくるものと予想いたしております。もちろん、銀行も預金の吸収に尽力いたし、不急の貸し出しを抑制し、資金不足の激化に対処してはおりまするが、遺憾ながら外部負債の増加は避けられないのではないかと存ずる次第でございます。実は昨四十一年度も、銀行の資金繰りは悪化の方向にあったのでございまするが、その原因の一つは、財政収支じりが揚げ超になったことでございます。幸いにして、日本銀行の買いオペレーションが総じて円滑に行なわれましたので、また市中に対しましても銀行が手持ちしておりました債券を売却することができましたので、銀行の外部負債の増加はある程度防げたと申すことができましょう。しかしながら、本年度は市場の締まりぐあいから見まして、債券の売却が昨年度のようにまいりますかどうか、疑問に感じておる次第でございます。  そこでこの際お願いしておきたいことは、金融市場を平穏に保つために、財政収支面からの市場への圧迫はできるだけ小さくしていただきたいということでございます。本来、国際の発行を必要といたします財政では、その収支が原則としてとんとんになってしかるべきだと存じます。したがいまして、経済の上昇に伴いまして、将来税収等が予想以上にふえました場合には、国債発行額の減額を考慮していただきたくお願い申し上げる次第でございます。  では、話が国債の減額問題に及んでまいりましたので、最後に、国際発行下の財政のあり方につきまして私見を申し述べさせていただきたいと存じます。  冒頭に申し上げましたとおり、わが国経済が深刻な不況から脱し得ましたのは、国債を発行してまで財政面から需要をつけましたことが大きな力となっておりましたが、このように財政政策がひのき舞台におどり出ますのは不況期が多いようでございます。これは外国の例を見ましても、たとえばアメリカのニューディール政策の登場もそのように覚えております。わが国におきましても、一昨年来の財政政策はまさにそのところを得たと申せるのではないかと思っております。しかしながら、財政政策がその真価を問われますのは、やはり景気の行き過ぎが懸念されるような場合に、それが弾力的に運営されて経済を安定成長の軌道の上に乗せることができるかどうかであるかと存じます。そういう点から申しまして、本年度はあるいは試金石になるかもしれないのでございます。その場合、最大の問題はやはり国際発行が弾力的に行なわれるかどうかということであると存じます。  本年度の政府予算につきましては、私は中立的な予算で好感を持つと申し上げましたが、それが真に中立的かどうかはその後の運営次第にもよるものと考えるのでございます。特に、予算に占めます国債の割合、つまり国債依存度がかなりの率に達しておりますだけに、国債発行が経済の動きに伴いましてどれだけ減額されるかが一つの焦点だと考えるのでございます。幸いにいたしまして政府御自身が国債発行額を極力押えようと努力されておることは心強い限りでございます。現に昨年度も、自然増収の増加に伴って国債を減額されました。本年度も現在のところでは八千億円の国債発行を予定されておられますが、つい先ごろも、本予算委員会で大蔵大臣が、「財政の運営としましては国債依存度を前年度より下げるという方向に運営をしたい」と御答弁になっておられます。  このように国債発行の態度について節度ある政治姿勢を示されることは、国民心理に与える好影響も大きく、私といたしましてはその実現を切に期待いたす次第でございます。たとえば、先ほどもちょっと申し上げたのでございまするが、景気の上昇によって税収が当初見通しを上回って増加いたしました場合には、その増加部分の全部を補正予算などにお使いになって、財政規模を拡大することはできるだけなさらずに、これを国債の減額、それも市中消化分の減額に充てるようにしていただきたい。もちろん、補正予算が組まれるにはやむを得ない事情によるものもありますが、これはできるだけ必要不可欠なものにとめていただきたいのでございます。  前に申し述べましたとおり、最近お金の流れが変わってまいりましたことから見ましても、金融政策は、従来にも増して総合的かつ多角的な運営が必要とされるのではないかと考えられますが、何と申しましても国債発行下の経済では、金融政策の弾力的運営に財政政策が密接に協調することが重要になってくるものと考えます。先進諸国の例を見ましても、財政政策と金融政策の協調関係、いわゆるポリシーミックスのあり方いかんが国の経済発展のきめ手になっているようでございます。つまり、財政と金融とが密接な連係を保ち、金融政策がきめこまかく運営されますとともに、財政面での適宜適切な弾力的措置がますます重要になってくるわけでございます。拝見いたしておりますと、当局におかれましてもこの点については常に前向きの姿勢をとっておられますので、心強く感じておる次第ではございますが、今後私どもも節度ある経営に徹し、また、政策当局並びに産業界と話し合いの機会をふやしまして、経済の安定的発展に協力を惜しまぬ覚悟でおりますので、ぜひ当局におかれましても、財政の弾力的運営に徹していただきたいと存ずる次第でございます。  最後に、一言お願いを申し上げたいのでございまするが、先ほども申し述べましたとおり、今後は国際競争力の強化のため、設備の近代化、合理化はますます必要でございまするし、公共資本の充実という点から政府の資金需要も高まる一方だと存じます。これらに安定した資金を供給いたしますには、国民が安心して貯蓄できる貯蓄環境の整備が必要かと存じます。貯蓄をすすめますには税制その他から援助を与えることも重要ではございまするが、ここで特にお願いいたしたいのは、本年は通貨価値の安定をぜひともはかっていただきたいということでございます。これなくしては経済の安定的発展も、国民生活の向上もあり得ないと思います。本年は官民一体となって物価の安定、通貨価値の安定の実現に邁進すべき年だと考えるのでございます。  以上をもちまして私の公述を終わらせていただきます。御清聴まことにありがとうございました。(拍手)

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) ありがとうございました。  田実公述人に御質問のおありの方は順次御発言を願います。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 簡単に二、三お伺いしたいと思います。  一つは、この四十二年度の設備投資等に対する政府の見通しと開銀その他の、幾つも民間銀行あるいは団体等の予想がありますが、たいへんな違いがありますけれども、そのことから一応設備投資が一服状態といわれておる。私どもは私どもなりの理解をしておりますが、それは計画に対して実現のテンポがおそくなっておるのか、その辺はどういうことから一服状態になっておると判断されるのか、その理由ですね、これが一点。  もう一つは、先ほど国債を減額される場合、市中消化に頼らないようにというお話がありましたが、政府は、市中消化を原則とすると言っておるわけです。その辺は、市中消化でないとすればどういうことをお考えになっておるのか、その二点をお伺いしたい。

田実渉三菱銀行頭取

○公述人(田実渉君) 最初の設備投資の御質問でございまするが、先ほども申し上げましたとおり、実は開銀の二〇数%、企画庁の三〇数%というように、非常に、われわれもその数字を見ましてびっくりするくらいの数字でございます。これはしかし、前に神武景気とか何とか非常に過熱のときには、そういう三〇%以上ということはございましたが、いまの時代にこういうことになりましてはたいへんなことだというふうにわれわれも一応考えるわけでございます。しかし、これは先ほど申し上げましたとおり、ああいう統計を各企業からとりますと、みんなそれの中に予想していたものは全部入れてしまうわけでございます。自分のほうはこれだけあるのだという、実際にやるかやらないかわからないものまでも、まあ一口入れておけ、そうしてやることになったときにいいじゃないかというような意味で、そういうふうに、みんながあるものを全部ひっくるめて集計いたしますとああいうふうになるわけでございます。実際の数字はそれほどにはならならのじゃないかということが一つでございます。  それから実際にさっき申しましたように、まだ銀行の窓口にはそう大きな申し出がないわけでございます。それがまたさっき顕著でないと申しましたけれども、ぼちぼちあるわけでございます。それも、いままではお客様が銀行へ見えまして一番申されたことは金利の話でございます。金利はどうなるか、もう少し安くならぬかというお話でございます。ところが、金利の話はもうこのごろは少し減りまして、これからは景気の見通しはどうなるか、どうだろうかというその裏の意味には、お前さんの答えによってはおれもそろそろ設備を始めるぞということだろうと思います。したがいまして、だんだん設備の意欲が出てきた、それからまた、現にいろいろ大きな大企業でもそろそろ計画をして、これをわれわれの耳に入れてくれるのもあるようでございまするが、いずれにいたしましても、前の神武、岩戸景気のときと比べまして実際に企業家が慎重であることは事実でございます。なぜかと申しますと、いままで非常に過剰設備で非常にオーバープロダクションになりまして、みんなこりておりますので、やはりやるやると言っていながらあたりを見回し、だれかが始めたらまあ考えようという、現に御承知の鉄鋼、大騒ぎしております鉄鋼でございまするが、あれでもまあいろいろ言っておりますけれども、今日まで延びております。延びているということは、それだけ設備をおくらせているということでございますから、ある意味ではけっこうでございます。そういう意味で、先ほどお尋ねがございましたが、どの程度かと申しますと、ここで何%ということは私もはっきり申せませんけれども、ただ、いろいろ数字で発表されているよりははるかに少ないということと、そしてそれが実行される時期が次第にずれているのではないかということだけがお答えできることでございます。  それから第二番目の国債の消化でございまするが、端的に申しまして五〇%、発行高の五〇%ぐらいは市中銀行が引き受けることになっております。これは非常に容易なことではないわけであります。そのためにいろいろほかのほうの引き受けをセーブしましても国債を引き受けなければならないというふうに考えておりまするが、これを市中が引き受けませんと、市中消化ができませんと、これはインフレーションというようなことにもなりますので、このほかに資金運用部の消化もあるわけでございます。これがこの前、前年度は大体三百億、市中が三百五十億減額して六百五十億減額したわけでございますが、ことしは市中の分をもっともっとうんと減らしていただきたい、非常に困難しておりますので減らしていただきたいというふうに市中では考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、先程も申しましたとおり、貸し出しのほうがふえてくる、そこへ公債がくる、そうして預金がふえないということになりますると、どうしても日銀借り入れをふやすということで、これは御承知のようにインフレーションの始まりでございますので、できるだけ、先ほど申し上げましたように、預金をふやしまして、それによって資金運用部も使っていただく、それから市中もそれだけ努力すると同時に、結局最後の、先ほどのお話になりまするが、自然増収——自然増による税収の増は、できるだけ発行を減らしていただきたい、これは健全財政という意味からも国債の発行は少ないほどいいわけでございますから、どうかひとつ増額にならないように、できるだけ減らしたものを市中と財政資金で、資金運用部資金等で引き受けるというような形にしていただきたい、これが先ほど皆さんにお願いしたわけでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 いまのことでもう一つだけ、簡単ですが。それはわかりましたが、先ほどの御発言の中で通貨価値の安定というお話がございましたが、これは全く同感ですが、けさの新聞を見ると、一部ではデノミネーションを考えておるようですが、田実さんとしてはどういうお考えでしょうか。

田実渉三菱銀行頭取

○公述人(田実渉君) そのデノミネーションということは、これはずいぶん古くから考えられておることでございますし、フランスなどでずっとやっておりますことでございます。原則といたしましては私別に反対ではないわけでございます。これについてはいろいろむずかしい——技術的なむずかしいことが非常にございますわけでございます。ただ私、銀行の実務や何かから申しますと、どうもいま非常に不便なことが多いわけでございます。ですから何かいずれ将来——長い目で見た将来においては、これは行なわれるのがいいんじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。これは技術的なことはございますけれども、理論としては私、将来当然そうなるんじゃないかと考えております。

西田信一自由民主党

○西田信一君 公債の問題に触れまして御意見を伺ったわけでありますが、公債発行を行ないました当初の主要な目的は、大体達成できたというふうに考えておりますけれども、現在この民間設備、産業設備と社会資本の投入との間におきまして相当の開きがあるといいますか、立ちおくれがあるということで、現在発行されておる公債というものは、公共事業に充当するものに限っておる、それに限定しておるという形で発行されておるわけでございます。それで、いまお話の中に、大体私は了解できるのでありますけれども、公債発行をできるだけ抑制するようにというお話がございましたが、それは自然増収等の余裕が出た場合というお話でございますから理解はできるのでございます。しかし、現在、日本の社会資本の投入が非常に民間設備に立ちおくれておるというふうに私どもは認識しておるわけで、これは政府当局も、公債発行についてはいわゆるある時期までは続けなければなるまい、またそれにはおのずから限度があるけれども、要するに立ちおくれをある程度回復するというようなことをめどにしておるのだというふうにも受け取れるわけでありますけれども、産業界におきましても公債発行についてはいろいろな御意見があって、産業界、経済界でもまず公債発行についてはなるべく少なくといいますか、額を少なくするようにというような御意見もあるようでございますが、現在の私ども認識しておる、非常に立ちおくれておるところの社会資本の充実ということにここ当面重点を置いて考えられていくべきじゃないかという考え方を持っておるのでありますが、こういう点についてはどういうような観測をされておりますか、こういうことをお伺いしたいと思います。

田実渉三菱銀行頭取

○公述人(田実渉君) まことにごもっともな御質問であると思います。社会資本の立ちおくれというお話でございましたが、そのとおりであると私も思います。戦後俗に一番貧乏なのは産業界、一番お金持ちなのは政府であるということばが申されましたが、これは実は政府は公債をそのとき発行しておりません。一番金に余裕があったわけですけれども、どうも市中銀行などはしょっちゅうオーバーローン、それから日銀の借り越しで、もうあっぷあっぷしている。これはしょっちゅういわれたのであります。したがいまして、公共投資に、その当時は住宅とか道路とかいうような面については、確かに政府がお金を持っておっただけに、余裕があっただけに、そのほうに投資をしておりませんから、おくれておったわけでございます。いま先生のおっしゃいましたように、そういう意味におきましては、社会資本ということは、これからもう少し課題の一つになるかと思います。しかし、社会資本の充実といいましても、その効率からいいまして、当面商いものはやってもらいたい。低いものはなるべく延ばしてほしい、繰り延べてほしいということを、さきに申し述べませんでしたけれども、実はそういう意味で公債の発行は、もうもちろんやむを得ない必要緊急度の高いものはぜひやっていただきたい。それでもおのずから緩急軽重があるはずであり、軽いほうのものはなるべく避けて、万やむを得ないほうのものでやってもらいたい。そうしてできるだけ公債を少なくしていく、この公債をどのくらい発行して、社会保障をどういうふうにというようなことは、ちょっと私ここでわかりませんのでお答えできませんですけれども、先ほども何べんも申し上げましたように緊急度によってということでございます。たいへん粗末な答弁で申しわけないと思います。

鈴木一弘公明党

○鈴木一弘君 二つだけお伺いしたいのですが、最初に、先ほどコール市場が漸次逼迫の状況にならざるを得ないだろう、こういうお話があったわけですが、その大きな理由としてあげられているのが国債発行、そういうものによる金融の逼迫ということだったと思いますが、シンジケート団がことしですが、三月にはだいぶ不満を述べられておるようです。もっともっと銀行引き受けのほうを、市中消化の国債のほうを減らしてほしいという不満が出てきたわけですが、今回の予算を見ても、財政投融資関係が非常に、一般会計でなく、いわばそれだけ資金運用部資金を食っていくわけです。そうなると田実さんのお考えでは、財政投融資のほうに、政府が公約したことを次から次へと予算でなく、一般会計でなく回していく、そういうものを詰めない限りは非常に困難な事態が起きるんじゃないかと考えられるわけです。その点について、そういう行き方をどうお考えになっていらっしゃるのか。  いま一つは、ことしは買いオペも非常に困難であろうというようなお話があったわけですが、期限つきの買いオペということでなくして、いわゆるひとしきりいわれました買い切りオペレーションのような、そういう傾向でやればどうお考えか。この二点について御意見がございましたらお伺いしたい。

田実渉三菱銀行頭取

○公述人(田実渉君) お答えいたします。  財政投融資と国債発行の関係、先ほど第三番目に弾力的に財政投融資というものをやってほしいということでございますが、この弾力的と申します意味は、これがまたお答えにもなるかと思いますが、やはりタイミングをよくしてほしい。季節的に非常にゆるい時期と締まる時期、それから上げの時期と払いの時期とございますので、そういうときにコールは非常に高くならざるを得ない、締まるから。そういうときに財政で、たとえば非常に締まっているときには国債の発行を伸ばせれば伸ばすような方法とか、それからオペレーションにしますれば、それによって緩急をゆるやかにする。こういうふうに弾力的というのはそのタイミングの問題があるわけでございます。と同時に先ほど申し上げましたなるべく緊急度の薄いものは避けてほしいという、これも一つの弾力的の運営、こういう意味でコールレートは先ほどこれから締まるのじゃないかと申しましたけれども、これはだんだんに実際に銀行が苦しくなりますから、レートのほうは締まっていくのじゃないか。特にこのごろ郵便貯金がなかなか伸びております。郵便貯金も、これは政府のあれでありまするが、非常に商売気を出しましていろいろやっておりますから、まあ郵便貯金のほうは非常に伸びている。市銀のほうは預金が伸びないというようなことがございます。そういう意味から非常に金繰りがむずかしいということで、どうしてもやはり市中の金繰りをよくするには預金をふやさなければならないと先ほど申したのであります。  それから鈴木さん、たいへん失礼でございますが、二番目の御質問は、ちょっと簡単に一言、どういう点の御質問か……。

鈴木一弘公明党

○鈴木一弘君 買いオペが非常に苦しくなる見込みだというお話ですが、ことしは昨年のように買いオペが同じようにはできないだろう、つらくなるだろうというお話で、そういう場合に、これは普通の場合は戻すわけですけれども、買い切りのような状態ならばどうなるでしょうかということです。

田実渉三菱銀行頭取

○公述人(田実渉君) そうでございますか。日本銀行の買いオペの問題でございますね。これはまあ去年、買いオペ、売る、買う、売る、買うということでオペレーションをやっていたわけでありますが、だんだん市中のわれわれの手元も非常に苦しくなりまして、われわれ自身、金繰りのために非常に債券を売るわけでございます。そうすると、買いオペの対象がだんだんなくなって限度にきてしまう。オペレーションをしようにも、もう市中にものがないではないかという状態がくるわけであります。そういう意味で鈴木先生のおっしゃった意味の、非常にオペレーションがむずかしくなる、できなくなるということを日銀も考えますし、われわれも非常に心配しておるわけであります。それだけに金融の操作がむずかしくなるのではないかというふうに考えております。おっしゃるとおりでございます。

岡田宗司日本社会党

○岡田宗司君 国際収支の見通しについて伺います。  本年度になりましてから輸出のほうが鈍化している、それから輸入のほうは激増している。こういう状態で、政府で予定をしております本年度百十億ドルの輸出があやぶまれるような状態になっております。輸入も予想より大きい。その結果、国際収支が悪化するのではないかというふうに考えられるのですが、この点についての見通しはどうでございましょうか。それからこれは私はもうすでに警戒信号が出たものと思っておるんですけれども、その点に対するあなたのお考え。そしてまた、前に所得倍増政策を打ち出されましたときのように、これを修正するため、つまり直すための政策が早晩とられなければならぬのじゃないかと思うのですけれども、その点についての御見解を承りたい。

田実渉三菱銀行頭取

○公述人(田実渉君) ただいまのお尋ね、残念ながら同感でございます。国際収支はおっしゃいますとおりに、いままでは貿易収支が黒で貿易外その他資本収支が赤で、同じ貿易収支の形にいたしましても、いままでになくよい形に日本の国際収支がなってきたわけでございます。と申しますのは、御承知のように、数年前までは貿易収支の赤を資本収支で補っておったのは御承知のとおりでございます。これは商売で申しますと、商売ではもうからないけれども、借り入れ金で生計を立てていたというふうなことも言えるわけでございます。それが、最近になりまして貿易収支が黒字になりまして、それで資本収支が減っていったということは、もうけてだんだん財産ができてきたということと同じだと思いますので、非常に喜んでおったわけでございますが、ただいまおっしゃいますように、ことしに入りましてから景気が非常に立ち直ってまいりますと同時に、輸入が非常にふえてまいりました。輸入のふえた内容もあまり芳しくないふえ方ではないかと思っております。輸出のほうはそれほど伸びないという——おっしゃるとおりでございまして、それで景気の動向を見ますについて、過熱ということばに二色あるといわれておりますが、一つは、設備の非常な増強、オーバープロダクション——設備過剰でございますが、一つは国際収支の悪化でございます。設備のほうはまだまだと思いまするけれども、仰せのとおり、国際収支につきましては、もうすでに警戒信号が出ているんではないか、非常に残念でございますけれども、そういうふうに私も見ております。したがいまして、これから五、六と六月ぐらいまでにかけましても、貿易収支の動向ということはこれからの金融政策にとって非常に重大な指標になるのではないかと考えております。

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) ほかに御発言もございませんか。——御発言もなければ、田実公述人に対する質疑はこの程度にとどためいと存じます。  田実公述人におかれましては、お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございました。お礼を申し上げます。     —————————————

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) 次に、鎌倉公述人にお願いいたします。鎌倉公述人。

鎌倉孝夫埼玉大学助教授

○公述人(鎌倉孝夫君) 埼玉大学の鎌倉でございます。私は経済学を研究しておるものですが、経済学を研究しているものの立場から、現在計画されております第三次防衛計画と、それからそれに関連いたします防衛産業の動向及びその方向について若干私の意見を発表いたしたいと思います。  まず、現在計画されております第三次防衛計画でありますが、それによってかなりの日本の軍事力が増強されることは明らかであります。ところで、従来までの日本の防衛関係費の推移を簡単に見てみますと、昭和二十五年においては、防衛関係費の一般会計歳出総額に対する比率は一九・五%であり、また国民所得に対する比率は三・九%であったわけですが、三十年以降の高度成長の過程が経過するにつれて、防衛関係費の絶対的な額としては相当にふえておるわけでありますが、一般会計に対する比率及び国民所得に対する比率は若干低下してきております。昭和三十五年で見ますと、防衛関係費の一般会計歳出に対する比率は九・一%であり、国民所得に対する比率は一・三%になっておりますし、四十年度で見ましても一般会計に対する比率は八・二%。国民所得に対する比率は一・四%になっております。ところで第三次防衛計画の初年度である四十二年度の予算を見ますと、そこでの防衛関係費の総額は三千八百九億円でありますが、一般会計歳出に対する比率は七・七%であり、また対国民所得比——これは国民所得を実質九%、名目一三・四%というGNPの政府見通しの増加を基礎として計算しますと一・二%程度になるわけであります。これで見ますように、防衛関係費の国民所得あるいは一般会計歳出に対する比率というのは、日本の現在の場合に程度としてはまだ非常に少ないように思えるわけであります。ちなみに戦前においてはそれがどの程度であったかということを見てみますと、昭和九年から十一年の平均で、いわゆる軍事費の一般会計歳出中に占める率は四四・七%を占めていたわけです。ところが戦争が始まりました昭和十六年になりますと、軍事費の一般会計歳出中の比率は七五・七%にも増加し、戦争末期の昭和十九年にはその比率は八五・五%にもなったわけであります。そういうことから比べますと、現在のわが国の防衛関係費の比率はなお相対的に低いということは確認できると思います。また外国と比較してみましても、アメリカの場合には、これはよく御存じのように、大体一般会計の歳出中の五〇%ないし六〇%前後に達しておりますし、また西ドイツやイギリス、フランス等々発達した資本主義の諸国においても大体二〇%をこえる防衛関係費が支出されているという状況であります。ところで、こういうふうにわが国の防衛関係費の比率というものが相対的に低いといって、そこから現在、防衛関係費がそう財政上に重く負担となっていないのではないか、あるいは非常に取るに足りない、そういうふうに言っていいかといいますと、ここにはやはり重要な問題点というものがたくさん存在しているのではないかと考えざるを得ないのであります。  そこで、防衛関係費の問題点というものをいまから二、三私なりに指摘していきたいと思うのでありますが、まず太平洋戦争が終わってから現在に至るまで防衛関係費というものの比率が相対的に少なかった理由として私は二つ考えられると思うのです。それを考えますと、今後の動向というものが、その要因というものがどういうふうになるかということを考えることによって明らかになるのではないかと思うのですが、まず第一の要因といたしましては、終戦後から行なわれましたアメリカの無償あるいは有償の軍事援助というものがかなり巨額に達しております。統計によりますと、昭和四十年の三月に至るまで、有償及び無償のアメリカからの軍事援助は五千三百二十八億円に達しております。で、こういうアメリカからの軍事援助があったということが、日本の財政支出の中で防衛支出の相対的な比率を少なくしてきた一つの大きな原因であったのではないかと考えられます。  第二番目には、経済の、特に昭和三十年以降、経済の高度な成長というものがあったわけでありすが、そのときに、この経済の成長の過程において、特に民間の設備投資を中心とする国内市場の拡大ということが、その経済成長の根本的な導因になっていたと考えられます。そういう民間の設備投資を中心とする国内市場の拡大、これを基盤とした経済成長が続く間は、防衛関係費の支出を増大することによって、つまり財政需要を通して経済を拡大していくということの必要性が、経済の上からいうと、相対的に少なかったということが考えられます。しかし、問題は防衛関係費の支出の問題ではなく、経済の高度成長に伴う産業基盤の不備、この産業基盤の不備を、公共投資の増大ということを通じて解決していかなければならないという問題が出てきたわけでありまして、防衛関係費は少なかったけれども、むしろ産業基盤を拡充するための公共事業の充実ということが重点に置かれてきたわけであります。ところが、この公共事業の拡大ということは、次第に生産力の過剰あるいは設備能力の過剰、それによる生産過剰という問題が経済の過程の中で現出してくるに伴いまして、むしろ産業界の中で財政需要依存型の体質というものがつくられてくるという、そういう傾向を招くことになるのではないかと考えられます。しかしながら、一応現在に至るまでは、共公投資という形での財政需要を通して、すなわち防衛関係費の増大を通さなくても、ある程度の経済の拡大ができたと、こういう条件にあったのではないかということができると思うんです。  ところで、こういうふうな二つの要因から考えられます防衛関係費の相対的な比率の低さということが、現在の時点で考えますと、かなりいま言いました二つの要因というものが少なくなってきているということを考えなければならないのではないかと思うんです。で、むしろ防衛関係費というものが、今後かなりの速度で膨張していかざるを得ないような、そういう性格を持っているのではないかと考えざるを得ません。といいますのは、まず防衛関係費の性格からいたしまして、現在第三次防衛計画として五年間で二兆三千四百億円、プラス・マイナス二百五十億円の幅がありますが、そういう巨額の防衛関係支出を計画しているわけでありますか、そういうふうに計画的に支出をきめておきますと、長期にわたって経費が先取りされるという形になります。すなわち、長期にわたって財政支出を固定化させるということになります。それは、それだけ財政の弾力的な運用、つまり景気変動に応じたいわゆるフィスカル・ポリシーというものをとりにくくさせる要因になるのではないかと考えざるを得ないわけです。それは振り返って考えますと、結局長期にわたって国民の税金というものを、防衛関係費に対して振り向けるという形になってしまうのではないかというふうに考えざるを得ないわけです。特に、長期の防衛計画に伴う国庫債務負担行為というものが、近年かなり累積いたしております。この国庫債務負担行為といいますものは、やはり長期にわたって財政の支出を硬直的に固定化させることになるわけでありまして、それが続く限り、やはり財政の弾力性というものは非常に阻害されてくるのではないかと考えざるを得ないわけです。  それからまた、防衛関係費というものが五カ年にわたる長期計画の形で行なわれておるということは、財政の民主主義的な原則であるところのいわゆる単年度主義に対する一つの緩和あるいはそういうものに対する否定、まあはっきり言えば、そういうことになると思うのでありますが、財政の単年度主義といいますものは、結局国の財政というものは、国民からの税金によって行なわれているわけでありますから、その税金というものをむだ使いしないように明確に予算、決算をきめながら、国民に公表しながら、政府の政治的な責任というものも明確化していかなければならい。そのために、各年度ごとに財政の予算を決定し、決算を決定するということが必要であるわけです。で、つまりこういう財政民主主義に不可欠な単年度主義という原則が、長期計画あるいは国庫債務負担行為の累積という形でだんだんと無視されていくということは、やはり財政民主主義に対する一つの大きな問題点として考えなければならないのではないだろうか、こういうふうに考えます。  同時に、防衛関係費というのは、あとでお話しいたしますように、現在産業側からの非常に大きな要求というものもあって、まあ巨額な支出が要求されてきておるわけでありますが、それがただいま言いました財政民主主義に対する大きな制約ということと相まって、財政運営上、非常に産業界あるいはその他の団体からの、つまり圧力によって財政運営が行なわれるような危険性がないとは言えないのでありまして、その点からも、防衛関係費の長期固定化という問題点ということは、非常に問題ではないかと考えざるを得ないわけであります。  さらに、現在の防衛計画に伴う防衛関係費の支出は、公債発行との関連におきまして、やはりかなり硬直的に膨張していくような傾向があるのではないかと考えざるを得ません。といいますのは、第三次防衛計画によりますと、毎年約四百億円以上の防衛関係費が増額されるということになっております。この毎年必ず増額されていきます防衛関係費というものの財源の問題でありますが、現在一般会計から公債が発行されております。一般会計から公債が発行されておりますと、この公債が、たとえ公共事業を行なうために必要であるというふうに一応歯どめが行なわれているということがあったといたしましても、税金で取り立てた財源と公債で確保した財源とが、いわば一緒になって各財政支出に使われるのでありますから、必ずしも公共事業費に限定するということにはなかなかなり得ないということが言えるのではないか。しかも、一般会計からの公債発行ということになりますと、たとえば政府関係事業からの公債発行と違いまして、公債発行に伴う事業の拡大及びそれによる事業収入によって公債の償却ができるという性格のものではないわけです。すなわち、公債の自償性といいますか、それがないわけであります。したがって、生産的ではない、不生産的な支出というものに公債発行による財源というものが使われやすい傾向があると考えなければならないわけであります。そういうことから言いましても、公債発行が行なわれている状況下における長期の防衛計画の実施ということは、非常に防衛関係費の硬直的な膨張傾向というものを加速することにならざるを得ないのじゃないかと言わざるを得ません。また、公債発行が行なわれますと、結局は、民間金融機関にその公債が消化されている間はよろしいのでありますが、しかし景気が過熱して、民間からの資金需要が逼迫してくるということになりますと、実質的には日銀が引き受けざるを得ない。あるいは日銀が買いオペをするということにならざるを得ないわけでありまして、公債発行は次第にインフレを招く傾向を引き起こしていきます。そうなりますと、現在二兆三千億円というふうに考えております、その第三次防衛計画におきましても、公債発行、インフレ、物価上昇ということを通じて、特に人件費の増大という問題もありますし、またいろいろな物資の価格の上昇ということを通じて、この計画以上に防衛関係費が増額してしまうという危険性がかなり大きいのではないか、こういうふうに考えられるわけです。したがって、現在は防衛関係費の予算の中での比率がそんなに高くはないということをもって、日本経済がなお平和的に安定した経済であるというふうに結論づけるのはきわめて早急でありまして、防衛関係費が長期固定的な形でだんだんと膨張していくという、非常に、一つの問題とすべき点があるのではないかと考えざるを得ないわけであります。  以上が、防衛関係費についての私の考えでありますが、次に、そういう防衛関係費の支出に伴う防衛産業の実態及び防衛産業の方向についての私の考えを述べたいと思います。  御存じのように、経団連の防衛生産委員会というのが、昭和二十七年以降設けられておりますし、また昭和三十六年からは防衛装備国産化懇談会というものが設けられております。その中で、特に防衛庁に対して、いろいろな要求が行なわれてきております。その要求を簡単に要約しますと、一つは、長期防衛計画を設定せよ、五年計画くらいのものではなく、さらにたとえば十年にわたるような長期防衛計画をきめろということ、あるいは防衛庁の発注を、民間産業に対する契約を長期に、しかも一括して行なうようにせよという要求、さらには企業側の利潤を配慮した原価の算定制度をつくれとか、あるいは特別償却制度、報償金制度というものをつくれという要求、さらに近代装備の国産化、国内自給体制の整備という要求、あるいは防衛機器の輸出振興という要求等々が行なわれております。ところで、こういう要求が現在行なわれているわけですが、簡単に、現在の防衛産業の実態について、どういう状況にあるかということについて簡単に説明いたしておきたいのでありますが、まず、防衛庁の調達額と、それに特需をプラスいたしまして、それが鉱工業生産にどれだけの比率を占めているかといいますと、非常に現在においてはなお少ないのであります。昭和三十五年におきましては、その比率が〇・七%であります。昭和三十九年でもそれが〇・六%であります。すなわち、全部の鉱工業生産に対して防衛生産の比率は、なお一%以下という状況であります。しかしながら、これを防衛生産に直接関連する生産物で見ますと、たとえば船舶、航空機、武器、弾薬等々におきましては、やはりかなりの比率に達しております。たとえば車両全体について見ますと、機械工業の全生産額に対しては〇・五%という低い比率ではありますが、自動車の生産に限って、防衛用の車両がどの程度の比率かということになりますと、約五%になります。さらにトラックに限って考えてみますと七・四%に上昇いたすわけであります。また造船について見ますと、外航五百トン以上、まあ非常に規模の大きい——そうでもありませんが、五百トン以上の鋼船について考えますと、船舶の全生産に対し防衛庁用の艦艇の生産が四・二%になります。そういうふうに、特定の生産物あるいは生産部内に限りますと、やはり防衛庁向けの防衛生産というものが、かなりのウェートを占めてきているということが言えます。  ところで、これでもまだたいしたことはないと思われるようでありますけれども、問題を防衛生産を行なっております企業の側から見てみますと、特定の企業におきましては、やはり相当の比率に達しているということが言えます。特に重化学工業、特に鉄鋼あるいは電子機器産業におきましては、一〇%内外の比率をそれが占めているわけであります。すなわち防衛庁の需要先というものは、中小の企業に直接渡るというよりも、その現在の軍需品の生産が非常に高い技術を要求しているということ、また軍需技術の発展に伴ってその技術適応力が当然必要であるというようなこと、あるいはそれを生産するのに巨額な設備資金が必要であるというようなこと、そういうことから言いまして、結局、防衛庁調達先というものが、独占的な大企業に集中されるという傾向が強まっているわけであります。そういう点から言いましても、特に大きな重化学工業や電子機器産業における大企業というものが、防衛庁需要を基礎にいたしまして、防衛生産を拡大しているという傾向が、ここで一応確認できるのではないか、こう考えられるわけであります。  そうなりますと、ここから、現在においてはまだいろいろな企業について一〇%内外、特定の企業では二〇%あるいはそれ以上に達しているところもございますが、飛行機なんかはそうでありますけれども、しかしなお一割内外であるということで、そんなに、つまり日本経済全体を軍事化させるような動きというものがまだ乏しいのではないか、こう思われるわけでありますけれども、しかし問題は、そういうふうに大企業というものが防衛庁の財政支出を基礎にして防衛生産を漸次、しかも長期固定的に行なっていくという、そのことが、結局は日本における防衛生産の将来の展望といたしまして、全体としては、非常にむずかしい危険な方向に日本経済を引っぱっていくということが考えられなければならないのじゃないか、こう思うわけであります。といいますのは、大きな独占企業は、現在におきましては、特に昭和三十六年後半、ことに昭和三十九年末から四十年にかけてのかなり大規模な不況において、現在では非常に大規模な生産過剰、生産設備能力の過剰というものが存在していると考えなければならないわけでありますが、去年の昭和四十一年度に見られました景気の上昇というものも、実はベトナム戦争による直接、間接の特需というものによる輸出の拡大というのが一つの動因になったわけでありますし、またもう一つは、国内における財政支出の増大、公共投資を中心といたします財政支出の増大というものが一つの大きな刺激になっているわけでありますが、いずれにいたしましても、現在存在しております重化学工業あるいは電子機器産業における非常に膨大な生産能力というものの過剰を、いうならばそのまま温存する形で生産拡大が行なわれつつあるということでありまして、しかもその上に長期の防衛計画に伴って防衛支出が増大するということになりますと、ますます現在存在している生産能力の過剰というものが温存され、あるいは拡大されざるを得ないということにもなりますし、それはそれとして、次第に財政需要依存型、特に防衛生産依存型、防衛需要依存型の独占企業の体質というものを拡大していくという傾向が出てくるのではないかと考えられるわけであります。それに伴いまして、結局国家の財政支出の通常に対しての、特に軍需産業を行なっております、防衛生産を行なっております産業の側からの圧力というものがきわめて大きくなる危険性があります。先ほど言いました防衛関係費の支出に伴う問題点と同じものがここではさらに産業側の要求として非常に大きく取り上げられなければならないのではないかと考えられるわけです。それが単に財政支出についての動向を産業側がいろいろ左右するようになるというだけではなく、さらには防衛生産に対する国民の感情、考え方というものをいわば納得させるようないろいろな政策を打たせるということにもなりかねないということであります。すなわち、防衛計画に伴いまして、軍事力を拡大していくわけでありますが、その軍事力拡大ということが非常に、たとえば中国や、あるいは北朝鮮等々社会主義国に対する仮想敵視というものを国民全体にプロパガンダしていくという方向で、つまり平和的な善隣関係というものに対する一つの大きな逆行という方向で国民大衆の考え方を導いていくことにもなりかねませんし、そういうつまり対社会主義に対する危険性といいますか、危機感といいますか、そういうものを宣伝することによって、結局は全国民が祖国を防衛しなければならぬというような感情を植えつけることにもなるし、それに伴って教育制度の面におけるいろいろな要求というものも出てくるわけでありますし、そういうことからいいまして、憲法に規定されております平和及び民主主義というものをうたったそのわれわれの理想といいますか、原則といいますか、そういうものが次第にないがしろにされていく危険性がきわめて大きいのではないかと、こう考えざるを得ないのであります。また、現在防衛庁の受注、防衛庁調達に対する産業側の受注をめぐりましてかなりの競争があるというふうに聞いております。特に高速のジェット戦闘機の導入に対する各大きな大企業間の競争あるいはまた戦闘機の導入をめぐる各大企業間の競争、つまり防衛庁の主要な受注をめぐる主契約者となる相互の競争というものが激しく争われているわけであります。その中から結局前に問題になりましたロッキードとグラマンの導入をめぐる争いと同じような非常に醜い争いというものが起こりかねない。それが非常に政界に対するいろいろな、何といいますか、まあまずい影響を与えることになりかねない、こういうふうに考えられます。しかもまた、こういう防衛調達をめぐる、主契約の争いをめぐるその競争から、長期の防衛計画を策定する必要上、計画的な防衛力を増強しなければならないという国家の、政府の力というものが強大になっていく傾向があるわけでありますが、これが先年来問題になっております産業におけるいわば安定的な寡占体制の強化、つまり独占の強化ということを導きかねないということも考えなければならないのではないかと思います。そういうことからいきましても、防衛生産をめぐる現在における大企業間の競争は、やがて結局は非常に大きな寡占体による防衛生産の拡大という方向を向いているということは考えなければならないわけです。それはそれだけに日本経済全体の軍事化といいますか、結局は第二次世界大戦を引き起こす以前における日本経済の非常に危険な方向と同じような方向が現在、まあたとえ萠芽だとはいえ見られるというふうに考えなければならないと思います。  大体軍事支出、防衛生産といいますものは、これはそこで飛行機ができ、軍艦ができ、ミサイルができ、そういうことになったといたしましても、そのこと自体は何ら生産的な支出ではありません。防衛生産がふえたといって、それによって日本経済全体が発展する、あるいは国民の生活が向上するということになるものでもない。結局それは人間が人間をいわば殺戮してしまうようなそういう殺人の機械をつくるものでしかないものです。そういうことからいいましても、防衛関係費の増大あるいはそれに伴います防衛生産の増大ということは、それ自身としてきわめて危険な方向であるということを考えなければならないと思います。直接にそういう兵器というものを使わないといたしましても、しかし、そういう防衛生産というものが拡大していくということだけで、実は日本経済全体に対して、あるいは国民全体の生活に対して、結局は企業自身に対してかなり危険な方向をたどらせることになるんじゃないかと考えざるを得ないわけです。といいますのは、結局、大企業の側での防衛庁需要が定着化し、これが固定的に増大していきますと、このことが結局、財政支出の増大を招くことになる。それが結局は現在行なわれております公債発行と結びついて、公債による財源調達を基礎にしながら、財政膨張を加速することになるのではないか、ということになりますと、公債発行が累積していくことになります。それはインフレ、物価上昇を引き起こさざるを得ないということになります。そうなりますと、さらに物価が上昇して、企業のコストが上昇してくることになりますので、さらに一そう財政需要を増大するということが産業側から要求されてくるということにならざるを得ないわけであります。これが、戦前の一九三〇年代に日本経済がたどった、経済のインフレと軍事化という方向であります。それは結局、つまりインフレになりますと、国民の実質的な賃金というものは下がってしまいます。国内市場は狭くなるわけでありますが、それに伴いまして、どうしても企業の拡大は外への進出に向かわざるを得ないという方向をたどるわけです。しかしそれは、現在におきましては、非常に危険な進出の、まあ侵略への方向ということにならざるを得ないわけでありますが、それ自身、日本が過去にたどってきた道をたどるということになってしまうのではないかというふうに深く憂慮しているわけであります。そういうような方向を現在たどるその萌芽が見られるということでありまして、問題は、防衛需要の増大及びそれによって防衛生産が定着化していくということを、萌芽のうちに、早いうちにやはり何とかつみ取っておかないと、たいへん危険な傾向になるのだと、そういうふうにみんなで考えなければならないのじゃないかと思うのです。防衛需要の増大に対しては、たとえば防衛庁の研究開発費を通して技術革新が遂行されるという意見が見られますけれども、問題は、人間を殺してしまうような殺人的な武器をつくる、兵器をつくることを通じてしか技術革新ができないということを固定的にとらえてはいけないということであります。技術の発達、研究の発達ということは、直接に、軍需生産を通じてではなくですね、直接に研究投資を通して、あるいは人間の福祉の向上を通して人間性を発展させることから、初めてほんとうの意味での技術の発展、技術の革新ということがもたらされるのではないかと、こう私は考えるのであります。  結局、現在の第三次防衛計画及びそれに伴う防衛生産の拡大ということか非常に危険な方向を向いていると考えざるを得ないわけでありますが、私は、それをチェックする、危険な方向をチェックする方向というものはこれは不可能ではないと考えております。それは何かと言えば、結局は平和的な産業を基礎にする国内市場の拡大ということが実現できますと、国内市場つまり民需を中心とした経済の安定的な拡大というものが果たし得られるのではないかと思います。そのためには社会保障を充実するということも必要でありますし、また非常に低い賃金を得ている所得の人たちに対しては、その賃金を拡大するということを通じて、国内市場を充実していくということが必要ではないかと考えます。それからまた、ことに現在は非常に危機的な状況にあります中小企業やあるいは農業に対する助成策というものをもっと根本的に行なうことによりまして、それらを通じて平和的な民生需要に対する平和的な生産物の供給力を増大していくということ、これがやはり欠くことのできない問題ではないかと思います。物価の、特に消費者物価の上昇というものが中小企業や農業化滝における供給力の低下ということから引き起こされているということを思いますと、ことに中小企業や農業の生産拡大を助長するような施策というものが絶対に必要ではないかと、こう考えるのであります。  日本は第一次世界大戦にも参加いたしましたし、また第二次世界大戦をも引き起こしております。われわれは憲法にうたっておりますように、やはりそういう戦争を二度と引き起こさないために平和的な社会を築かなければならないというふうに思うわけであります。これは政党のいかんにかかわらず、あるいは資本家であっても、労働者であっても、みんなが共通に考えていることではないかと思います。  そういうことから考えまして、そういうわれわれの平和を希求する願いというものが、現在第三次防衛計画及びそれを通じます防衛生産の拡大というものによって、そういう平和の方向から逆に危険な戦争へつながるような方向に一歩一歩たどりつつある、こういうことを直視しつつ、そういう方向へたどることをチェックしながら、どうしたらチェックできるか、これをやはり真剣に考えなければならない段階にきているのではないかと、私は思うわけであります。  以上で私の公述を終わります。(拍手)

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) ありがとうございました。  鎌倉公述人に御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。

船田譲自由民主党

○船田譲君 鎌倉先生にお伺いしたいのですが、三点ほどございまして、第一点は、昨年度で大体先生は、ベトナム特需間接直接含めまして、どの程度の規模と推算されていらっしゃるかということが一つでございます。  それから第二点は、防衛生産が必ずしも狭義の武器だけにとどまっておりませんで、広義の装備もあると思います。たとえば電子機器であるとか航空機であるとか艦船とか、そういった面の、つまり先生の結論は、大体ネガティブな線で立論されておられましたけれども、わが国の技術開発に対するそういった狭義の武器でないもののポジティブの貢献については、どういうふうにお考えになっているか、それが第二点でございます。  第三点、非常にざっぱくなお尋ねで恐縮なんでありますけれども、たとえば集団安全保障体制に入っておりませんいわゆる永世中立国であるスイスでも、たしか防衛関係の予算というものは、国民所得の三ないし四%になっていると思いますけれども、先生の立論の基礎になりますことは、結局日本の安全をどのように守っていくかということから出発されると思うのでありますけれども、その場合先生は、やはり突き詰めていくと、非武装中立論といいますか、その立場をおとりになるかどうかと、この三点でございます。

鎌倉孝夫埼玉大学助教授

○公述人(鎌倉孝夫君) 第一点のベトナム特需に関してですけれども、これは通産省その他のあれによりますと、直接で一億六千ドル程度、あるいはそれ以上ということでありますが、明確にはわかりませんが、間接を含めますと、間接といいますものは、アメリカヘの……アメリカがベトナム用の軍需生産に力を注いでいるために、かなり生産、つまり民需用の生産が伸びない、それを通じて日本からそういうものを調達していくというものがあります。それから全体としてアメリカの経済がかなり過熱しております。インフレの傾向にありますものですから、非常に物価が高くなっております。そういうことで日本からの輸出が拡大していく、これも一つの間接的な方向です。もう一つの間接的なベトナム戦争による特需というのは、アメリカがベトナム戦に使ういろいろな兵器を東南アジアに対して注文する。ところが、たとえば台湾であるとか韓国であるとか、そういうところでの生産が直接増大しきれない、つまり生産力が低いためになかなか調達しきれない、それを日本の輸出によってカバーする、こういうのがありまして、そういうものを合わせますと、大体その輸出総額の一割程度、つまり百億ドル輸出としますと、大体十億ドル程度が間接輸出になるのじゃないか。しかし一説によりますと、その間接というのは非常にとらえにくいわけでありますから、もっと多いのじゃないか、三十億ドルにもなるのじゃないかという説もありますが、その辺は私自身正確に分析しておりませんのでよくわかりません。ただ、やはり輸出の拡大にとって非常に無視できないような程度の規模になっているということは言えるんじゃないかと思うんです。非常にざっぱくでありますが、そういうことです。  それから第二点でありますが、これは確かに、言われますように、防衛庁の支出を通じて直接に武器に関するものではなくて、いろいろな、まあ民生的なものにも使い得る技術の発展、電子機器等々はそうであると思うんです。そういうものはたくさんあると思うんです。しかし問題は、現在そういうものに対する、つまり、電子機器等々、民生的なものにも使い得る技術の発展というものが、個々の民間企業の自分自身の力ということで開発されるんじゃなくて、どうも防衛庁という形を通して、結局は、武器の生産というものに伴いながら行なわれているということが、やはり大きな問題として考えなきゃならないんではないか。つまり、たとえば原子力にいたしましても、これは平和的に利用することは可能でありますが、しかしながら、すぐにそれが戦力にも使われるということになりやすいわけでありまして、そういうことから考えても、軍需生産あるいは防衛庁の支出ということにかかわりながら技術が発展していくということ、そのことが大体問題だと、こう考えなければならないんじゃないかと思うんです。技街の発展というのは、そういうふうに軍需生産に伴うものとして発達させたら、非常に危険な方向に向かっちゃうんであって、むしろ、そういうものを、そういうものじゃなくして、純粋に、まあ何といいますか、人間の生活を向上させるという、そういう目的のために使っていくのが本来の方向じゃないだろうかなと、こういうふうに考えております。非常にこれもあまり明快なあれじゃないんですが……。  それから第三ですが、結局、私はこういうふうに思うんです。まあ結論といたしましては、非武装で中立という立場を守ることができると考えておりますが、なぜできるかという問題があるわけですね。そこで私は、社会主義諸国に対しては、社会主義諸国というものは、現在資本主義に対して侵略をしかけるという性格を持っていないというふうに、明確に考えることができると思います。で、問題は、したがって、日本の場合に、アメリカとの関連があって安保条約がありますし、アメリカの大きな戦略のもとで、日本の場合も非常にそれに制約されております。自主的に協力しなければならぬという体制にあるわけでありますそういう点から、現在の防衛庁の支出の増大ということも必要になっているわけですが、しかし、これが、たとえばアメリカの引き起こす戦争というものに、日本が、いわばアメリカからの要求によって、日本全体がそういうことを望んでいないのに、協力しなければならない、つまり、戦争に介入させられるという危険性がある。そういうことから、いまの軍需、防衛庁需要の増大、つまり、軍事力の保持ということがどうも必要になっているように思うんです。そういう関係を断ちまして、それで社会主義国が日本に侵入してくるかというと、ぼくはそうは思わないんですから、社会主義としての性格からして、そういう性格を持っていないと私は考えますので、アメリカとのこういう安保条約というものも破棄したとしても、日本の中立ということを十分に、つまり、日本経済の安定なり日本の社会体制の安定なりというものが十分に確保できるんじゃないかと私は考えております。  以上です。

林田正治自由民主党

○林田正治君 先生が、防衛産業が大きくなっていく立論の基礎に、公共事業費というものはある得度限度がある、そうすると、しようがないから、需要を喚起するために、防衛産業のほうでやっていかざるを得ないようになる、そういう話があったのですがね。公共事業、道路の問題にしても、港湾、それから農業の基盤整備、ずいぶん需要が多いわけですね。それが充足されていないという、社会資本がおくれているというのがいまの現状なんです。だから、それが立論の基礎になるかどうか、ちょっともう一回御意見を伺いたい。

鎌倉孝夫埼玉大学助教授

○公述人(鎌倉孝夫君) 現在は確かに、いわゆる社会的間接資本といわれるものが相当不足しておりますので、公共投資の必要性というものは非常にたくさんあると思うのです。公共投資というのは、やはりその投資を通じて、特に企業の流通諸経費が節約されるということばかりでなく、さらに需要の面においても、鉄鋼あるいはセメント、あるいはその他等々の需要を喚起するということで、非常に大きな影響を持っていると思うのです。しかし、公共投資そのものというのは、現在はかなりやはり必要であるといいましても、最近だんだんとその効率が落ちてくる傾向を一つ指摘できると思うのです。それは何かといいますと、まあ昭和三十年以来から非常に地価の値上がり等がはなはだしく引き起こされておりますし、地価の値上がりで、公共投資に必要な金というものがかなり、土地を持っている者に与えられることになると、つまり、産業に対する需要促進効果というものも非常に限界——限定を受けざるを得ないということにもなります。  それからまた、公共投資そのものが、たとえば現在においては、産業の基盤を拡充するという明確な方向から、非常に、たとえば観光道路をつくってみたり、あるいは直接には産業と直結しないようないろいろな諸施設というものを拡充するというような方向に向かっていく。つまり問題は、根本的には、公共投資というものが、企業、つまり、社会的間接資本を節約することによって流通諸経費を節約し、結局、対外的な競争力を充実するための合理化の政策であると考えるわけでありますが、ところが、なかなか合理化ということがすんなりといかなくなる。それに対するいろいろな制約が出てきてしまうという状況になってきているのじゃないか。逆に公共投資のもう一方の側面であるところの需要促進、需要喚起策というそっちの方面だけがかなり強調されてきてしまって、結局、その面で公共投資が需要促進という役割りを果たすものという、その面でだけだんだんと意義がふえてくるわけですが、それは結局、公共投資の拡大というものが不生産的な支出の拡大ということに向かわせる一つの方向じゃないかということになりますと、軍事支出というものもそこから、つまり、公共投資の拡大による財政需要依存型の企業の体質というものが拡大していくならば、結局は、不生産的支出の典型的なものである軍事支出の拡大という方向に向かうのが経済の必然性じゃないのかなというふうに考えるわけです。  これは実は世界全体を通して考えますと、一九三〇年代におけるアメリカのニューディール政策というのが、公共投資の拡大によって不況を克服していく政策であったわけでありますが、ところが、ニューディール政策がたとえばTVAとかいう運河を開発したり、その他、道路をよくしたり、公共投資を拡大する、そういう方向がやはり限界に突き当たって、日本や、あるいはナチスのドイツと同じように、結局は、軍需生産の拡大ということによってしか、経済の発展が保ち得なかった。そういう歴史的な事実というものが、一つのやはり現在におきましても、公共投資から軍事支出の増大へという、そういう方向を示唆するものじゃないかと私は考えるわけです。

西田信一自由民主党

○西田信一君 ただいま先生のお話を伺っておりますと、防衛産業、現在の防衛産業というものは、一九三〇年代の危険の萌芽がすでに出ておる、こういうふうであって、しかも、こういう御意見のように伺ったのでありますが、日本はそういう外部からの侵略の危険におびえる必要はない、ことに社会主義国という表現でおっしゃいましたけれども、これは社会主義国という御意見の中にはどこまで包含されておるのかわかりませんけれども、これは全く日本に対して侵略の危険を感じない、その性格上、社会主義の性格上あれがない、そういう危険はない、一面、アメリカは何か侵略的なものであって、日本がそのお手伝いをするというような意味の御発言のように伺ったわけでございます。これをどういうふうな根拠に立ってそういう御見解をお持ちなのか、たいへん端的な質問でおそれ入るのでありますが、もう少しひとつ解明していただきたい。  それから、一つの例として申し上げますけれども、たとえば朝鮮戦争、ああいうようなものに対して、どういう考え方を持っておられるか。一例でありますけれども、それをつけ加えてひとつ御解明願いたい。

鎌倉孝夫埼玉大学助教授

○公述人(鎌倉孝夫君) いまの問題非常に重要な問題でありますが、お話をしていくためには、社会主義の本質というものについて、かなり長時間を要するわけでありますが、ごくかいつまんで、いま言われました朝鮮戦争の問題、あるいはベトナムにおける戦争の問題を例として考えながらお話ししていきたいと思うのです。  朝鮮の場合においても、朝鮮の民族というものは一つであります。一つでありますから、これは本来は統一すべきものであるし、その朝鮮における内乱といいますか、政情不安というようなものは朝鮮民族それ自身によって解決しなければならないものだと私は考えるわけなんです。ところが、それに対して、一方では、自由世界という名で自由世界を防衛しなければならないということでそれに介入していくということが行なわれてきたわけでありますが、介入してきますと、つまり、アメリカを中心とした勢力が介入してきますと、これはやはりそれに対抗して民族独立をかちとるということが当然の方向でありますから、結局は、戦争を引き起こすということになったのじゃないかと思うのです。その次に、社会主義のといいますか、中国あるいはソ連の問題がありますが、それは結局、朝鮮を、何といいますか、自分たちと同じ制度にしてしまうという、その制度を押しつけるというような方向ではなくて、むしろ、朝鮮の自主独立にまかせる、それを応援するということになっているのじゃないかと考えます。  ベトナムの問題ですが、ベトナムの問題においても、問題は、ベトナムというのは一つの民族であります。一つの統一した民族であるはずです。したがって、北も南も本来はないはずのものなんです。ですから、ベトナムをどうするかということは、本来は北も南もない民族全体の問題として、内政上の問題として考えるべきじゃないか、こう考えるのです。アメリカの場合には、北からの侵略に対抗してわれわれがそれを防衛するんだ、こういう口実を設けているわけでありますけれども、北からの侵略というものが一体どういうものであるかということをこの際考える必要があるんじゃないかと思うのです。北からの侵略というのは、同じ民族であります。つまり、アメリカはベトナム人じゃありませんから、ベトナムに介入する権利は本来持っていません。北ベトナム人は南ベトナム人と同じようにベトナムの人間でありますから、ベトナム全体に対して、やはり全体としてどうなるかを、よく社会を統一していかなきゃならぬという権利は当然に持っているはずです。そういうことからいいましても、北ベトナムが南ベトナムに対するいろいろな、まあ南ベトナムのベトナム民族統一戦線に対して応援をするという形を通じて、アメリカと直接戦争をしなきゃならぬということになるのは、民族全体の独立性あるいは国家の主権という点からいって当然のことじゃないかと考えるのです。そういうことからいいますと、直接には、自分自身の民族の独立、あるいは国家の存立にとって、何ら直接的な影響を受けていないはずのアメリカがそこに介入しているという理由は、ちょっとぼくはによくわからないのでありまして、そういうことからいきますと、社会主義が侵略しているというのは、やはりちょっと当たらないのであって、逆に社会主義の侵略ということを口実にしてそれを防衛しているんだというふうに言っているアメリカのほうが、どうもぼくは民族の独立という当然の権利というものを侵害しているのじゃないかと、私はそういうふうに考えているわけです。

小林武日本社会党

○小林武君 鎌倉先生にお聞きいたしたいと思いますのは、この防衛産業というものに対して、われわれの見解は、いまはとにかく、日本の財政の中における比率というのはきわめて小さい、しかし、これは一応出だしていけば非常に膨張していく性格のもので、まあ先生が引例なさった戦前のわが国における軍事費というようなものをとってみても、それから、あるいは、いまのアメリカの防衛費というものをとってみても、これはよく理解できる。これについては、政府の見解を総理はじめ皆さんおっしゃるのですが、これはもう決して日本は自衛の意味の軍事費であるから、軍需産業であるから、そういうふうにならないと、こう言うのですね。ところが、私はかりにそれを肯定しても、かりにそれを百歩譲って肯定したとしても、一体いまのような状況の中で、兵器というものはどこまで発展していくかわからない。その発展した兵器に対して、われわれがどういう守り方をするかということになると、さらにまた発展していくわけですから、私は、それはもう、たとえ自衛であろうが何であろうが、際限のないものだと思うのですね、いまのような状況のもとでは。だから、そういうことでは、とにかく膨張をするのは当然のことであるし、また、そういう研究をすれば、先ほどは何かお話がございましたが、私はもう、そういう研究の中から、一般の産業その他に及ぼす科学的な技術的な進歩というものを認めろという議論には、とうていついていけない考え方なんです。これは経験の深い人から聞いた話でありますが、何かどこか外国の飛行機が連続事故を起こした、これはやはり命をかけて試験飛行とかなんとか、試験段階を経なかったためである、それをやれるのは、軍隊ならやれるのだけれども、一般産業の中ではとてもそんなことはできないという議論を聞いたことがある。そういうことのために軍備というものが必要かどうかということも、ずいぶんこっけいな話だとぼくは聞いておったのでありますが、私はそういう意見にも賛成できない。われわれが平和の中における学問の研究、科学技術の研究ということは不可能じゃないのでありますから、軍事というものを通して一回ろ過してこなければ、ほんとうの技術の進歩はないなんという考え方は、まずわれわれが認めないようにならなければ話にならぬ、こういう考え方を持っているのでありますから、そういう点で、私はきわめて、第三次防そのものについて、外交上のとかなんとかいうことは抜きにいたしまして、その出発によって、そして、それが非常にいまのような拡大の方向をたどる、それからまた、これにとりついていくところの産業の場合のことを考えましても、開発費の問題を考えても、これはちょっとほかの製品と違うわけです。それから防衛の性格からいって、これはどのくらい在庫をしておいたらいいのかという問題もあるわけです。景気、不景気にかかわらず、これはもう継続的にやっていかなければならぬということになると、先ほどの兵器の進歩とからんで、私は、量的にも膨大なものをかかえ込んでいかなければならぬ、さらには、そこに研究員だとか、さまざまな技術陣を常時用意しておかなければならないということのために、産業そのものが今度は軍事化の形をたどっていくということになると、これは、何ぼ日本は憲法のもとにおいて自衛のためのことしか考えないというような議論をしてもそうはいかない、私はこういう考え方を持っているのでありますが、大体先生の御趣旨はそういうことだと、私の考えに似ていると思うのであります。もう一度ひとつ先生から御意見をお聞かせいただきたいと思うわけです。

鎌倉孝夫埼玉大学助教授

○公述人(鎌倉孝夫君) いま先生おっしゃったこと、私全く同感でありまして、結局もう一度先ほどのことを繰り返すということになると思うのですが、特にどの点についてお話ししたらいいのかその点……。

小林武日本社会党

○小林武君 それはそうですね。先ほどの話のうちで、経済学の立場から見て、防衛産業というものがやはり企業との関係でどうしたって——幾らその国の財政のうちのきわめて少ない、たとえば国民の総生産の二%だとか何だとか、いろいろなことを言いますけれども、限度というものは、ぼくは立てられないと思う。その仕組みは、やはり兵器の進歩ということにもあるし、もう一つは、やはり産業というものがそういう体制の中につくられていくわけですから、その面からどうしても私は不可避的だと、こう見ているのです。そういうことについての簡単な御意見でけっこうです。

鎌倉孝夫埼玉大学助教授

○公述人(鎌倉孝夫君) 産業が防衛生産をやり出しますと、これは結局、先ほども言いましたように、一つは、産業そのものに財政需要依存型の性格がどうしても出てきてしまうのだということが非常に大きな問題だと思うのです。これが防衛生産ですと、おっしゃられておりますように、確かに兵器の技術がどんどん発達しております関係上、どんどん新しいものをつくっていかなければならない。新しいものをどんどん追っかけていく必要性が出てくるし、しかも、どこまで兵器をつくっていけばそれで安心なのかということも決して言えないわけですから、兵器生産の技術はどんどん拡大していかなければならないということと、それからまた、生産を一たん定着し始めますと、どこまでもその生産を増大していくという方向をたどらざるを得ないということになります。先ほど言いましたように、そういう軍事需要を中心とした生産というものが定着化していきますと、経済的な関係から言いますと、そういう軍需生産を幾ら増大しても何ら生活に必要な物資が増大するわけじゃないのに対して、他方では財政資金が支出されていくわけでありますから、必然的にこれはインフレ、つまり物価上昇を引き起こす傾向にいかざるを得ないわけなんで、そういう点から、占いましても、インフレーションが激化してくるということは、結局は、まさに、インフレが激化するそのことを通じてさらに財政需要の支出を増大していかなければ、利潤があがるような軍需生産というものができない、そういうことになっちゃいます。どこまでも軍需生産が累積していくという軍需生産の技術あるいは量からいった問題と、それからまた、経済の体質あるいは企業の体質そのものというものがインフレ化していく、及びそのインフレ化を通じてさらに軍需生産が拡大し、それがまたインフレを加速する、どこまでも累積していってしまうということになります。  それが結局どういうことになるのかということが、経済の動きから見ると、一番問題だと思うのです。どういうことになるかというと、やはりそれをやっていきますと、先ほども私言いましたが、国内市場が非常に狭くなってくるという方向をどうしてもとらざるを得ない。あるいは、それだけだとインフレを招きますから、国際収支の面からいっても当然大きな影響が出てくるのは必然であります。国際収支を維持するためにインフレを抑制していかなければならぬ。一方、企業の体質そのものは財政需要依存の体質ができてしまう。つまり、インフレ的な体質ができてしまうのに、しかし、物価上昇を抑制していくという政策をとらなければ、対外的な国際収支からいって非常な困難にぶつかる。それを抑制していく方向というのは何かということになりますと、直接の個人需要の抑制であるとか、あるいは結局は賃金の抑制であるとか、あるいは生産を行なっております労働者に対する合理化というような問題が、当面登場する問題じゃないかと考えられるんです。そうなればなるほど、これだけでも国内市場というものがますます狭隘化する方向になるわけでありますから、そのたどる方向というものは、やはり戦前と非常に似通った危険な方向をたどることになるんじゃないか、こういうふうに考えるわけですが、その程度でよろしいでしょうか。

春日正一日本共産党

○春日正一君 いまの、つまり防衛生産が新しい技術をほかの産業にも提供するという論点についての御意見はよくわかったんですけれども、私、もう一つ逆に、防衛力といいますか、軍事力といいますか、そういうものを拡大していくという中で、やはり事柄の性質上、産業のあらゆる分野の中での新しい開発というようなものが防衛産業に吸収されていく、そうしてまた、そういう目的から開発が進められていく、産業全体を軍事化していくような傾向、これが成長していくんじゃないか。そこのほうが、むしろ産業の軍事化という面では軍視すべき問題じゃないかというふうに考えるんです。その点のあなたの御意見を聞かしてもらいたい。

鎌倉孝夫埼玉大学助教授

○公述人(鎌倉孝夫君) 私も先ほどその点強調いたしませんでしたが、やはりそういう傾向は考えられると思います。非常に重大な問題だと思うのです。つまり、直接には、民間の民生的なものに使われる技術、それが軍事的な技術に使われていく傾向になるという点だけじゃなくて、たとえば、先ほどからちょっと問題にしております公共投資、あるいは政府事業という形で行なわれております道路の拡張であるとか、あるいは電電公社の自動通話領域の拡大であるとか、そういうようなものさえも、防衛力といいますか、軍事力増強というほうにも使われる危険性がないとは言えないのであって、その点からも、やはり公共投資というものと、これが、何といいますか、防衛的なものに用いられる、軍事的なものに用いられるということとの結びつきというものが非常にあるんじゃないかと思います。民間産業について言いますと、特に電子機器部門においては、いまバッジ・システム等々で自動警戒管制組織が設けられておりますが、そういうところに、民間の技術によって開発したものがどんどん軍事的なものに使われる、非常に大きな傾向として、それが指摘できると思うのです。そういう点から見まして、ただいまの先生のお話、私非常に共感しております。

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) 他に御発言もなければ、鎌倉公述人に対する質疑はこの程度にとどめたいと思います。  鎌倉公述人におかれましては、お忙しいところをまことにありがとうございました。お礼を申し上げます。  午後一時再開することといたしまして、これにて休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      —————・—————    午後一時十八分開会

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) ただいまから予算委員会公聴会を再開いたします。  午後もお二人の公述人の方に御出席願っております。これから順次御意見を伺いたいと存じますが、その前に、公述人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわりませず、本委員会のために御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員一同にかわりまして、厚くお礼を申し上げます。  それでは、これより公述人の方に順次御意見をお述べ願うのでありますが、議事の進行上、公述される時間は、お一人三十分程度にお願いをしたいと存じます。また、委員の方よりの質疑は、お一人の公述が終わりましたところでお願いすることにいたしたいと思います。  それでは加藤公述人にお願いいたします。加藤公述人。(拍手)

加藤誠一立教大学教授

○公述人(加藤誠一君) 立教大学の加藤でございます。  私は、最近、中小企業の国際比較をまとめましたので、きょうは、その結果を基礎にいたしまして、わが国の中小企業政策が今後どういう方向に進んでいくのが望ましいか、中小企業政策の取り組み方、その内容という点について、私自身の意見を若干申し上げたいと思います。予算を審議される際に御参考になれば幸いでございます。  第一は、中小企業政策に取り組む姿勢についてでございます。この点については、経済政策として進むのがよいか、あるいは社会政策として取り上げたらいいのかという問題がございます。わが国の中小企業政策におきましては、中小企業基業法の制定以来、経済政策と社会政策の混合方式から経済政策一本にしぼられてきております。諸外国におきましても、中小企業政策は経済政策として取り上げておりますが、ただ、諸外国の場合には、中小企業が大企業と公正に競争できる経済環境がすでに整備されております。したがって、中小企業政策におきましても経済政策という取り組み方ができるわけです。もっとも、諸外国におきましても、零細企業に対しては、これに限って保護助成政策がとられております。しかし、全体としては、自由競争をたてまえとしており、公正な競争ができる環境を整備するという政策がとられております。  これに対して、わが国では、経済政策として中小企業政策を取り上げておりますが、中小企業が自由に競争する環境が整っておりません。わが国の場合、中小企業の置かれている状態を見ますと、中小企業は大企業との関係において不公正な競争を要請されていますし、大企業による不当な圧迫を受けております。こうした不公正競争や不当な圧迫を排除する法律はございます。独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法、去年の六月から発足いたしました官公需確保法などがこれでございます。これらの法律がかなりの成果をあげていることは事実です。しかし、これで十分だとは言えません。一例を申し上げますと、下請代金支払遅延等防止法があって、一方ではこれが厳格に適用されるようになっておりますが、他方では、下請単価は依然として不当に低く切り下げられておりますし、製品を納めてから、代金を受け取る期間が非常に長期化している上に、受け取り代金に占める手形の割合が非常に大きく、現金比率がだんだん低くなっております。しかも、もらった手形は、お産手形だとか台風手形というふうに、非常に長期化しております。最近では、手形をもらえるのはいいほうで、もらえない業者すら出ているということを聞いております。こういうことは諸外国の先進諸国には見られないことです。一例をあげますと、オランダでは、単価の決定は入札だとか見積もり合わせという方法をとりますが、単価が決定されたあとの一方的な引き下げはありません。製品を納入してから四週間日にはきちんとギロで支払ってくれます。ギロといいますのは郵便為替のようなものでございますから、事実上は現金支払いと同じです。支払いが四週間をこえて遅延する場合もありますが、これは電話を一本入れればすぐ支払ってくれます。ですから、わが国のように支払いを引き延ばしているのではなく、支払いを忘れていたということなのです。そして、製品を納入してから代金をもらうまでの四週間というのはオランダでは紳士協定できちんと守られております。これはオランダの例ですが、オランダ以外の西欧のどの国をとりましても、商道徳は紳士協定で守られております。ところが、日本の場合には、いま申し上げたように、不公正な取引が公然と行なわれております。したがって、経済政策として中小企業政策を取り上げるなら、その前提となる中小企業を取り巻く素地とか環境とかが十分に整備されていなければなりません。  そこで、私は、中小企業政策の姿勢については、それが経済政策か社会政策かと論議がされる前に、いま申し上げたような、公然と行なわれている不公正取引や不当な圧迫を排除して、乱れた商道徳を建て直すことが先決だと思います。そうでなければ、わが国が先進国だというのは形だけのことで、実際にはわが国はまだ原始的蓄積の時代にあると言われてもしかたがないと思います。中小企業政策として税金とか金融の問題も重要ですが、その前に、いま申し上げたような環境整備をきちんとすることが基本です。それをしないで、税金政策とか金融対策を講じても、それは本末転倒と思います。  第二の点は、中小企業政策の内容についてでございます。現在わが国の中小企業政策の主要な柱は、いわゆる中小企業近代化政策です。具体的には、個別企業における設備の近代化、それから共同化あるいは集団化といった施策が講じられております。最近取り上げられるようになっている協業組合制度もその一つです。私は、中小企業が新らしい機械を入れて近代化したり、あるいは共同化や集団化によって中小企業者が結集することは、中小企業者にとって有益であることは言うまでもありません。私は、そういうことに反対しているわけではありませんが、ただ、現在の中小企業近代化政策は、その考え方が、規模利益の追求という一点にしぼられているように思います。つまり、中小企業は、生産性が非常に低いのだから、国民経済の発展にとっては阻害要因になる。したがって、中小企業の中で近代化や集団化によって規模を拡大できるものについてだけ政府は援助してやろうという政策になっております。そういうことになると、そう政策に乗っていけない多くの中小企業は施策からはずされてしまうということになります。もちろん、中小企業近代化政策は、中小企業、特に小零細企業の切り捨てを目的にしているのではないと思いますが、政策の柱を規模利益の追求という点にしぼってしまうと、結果的には小零細企業は切り捨てられてしまうということになります。しかし、これでは中小企業政策といっていいのかどうかわからなくなります。ところで、私がここで申し上げたいのは、そうした中小企業近代化政策の理論的前提についてでございます。確かに、経営規模の適正化ということは、中小企業経営の一つの方向ではありますが、これを現実に適用するときには、次のような疑問が生じます。中小企業近代化政策の理論的前提は、イギリスのE・A・Gロビンソンの規模論ですが、イギリスにおいても最近では最適経営規模論に対するきびしい批判が強く出ております。つまり、経営単位としては規模の適正化が考えられても、経済単位としては適用できないというのが多くの意見です。  次に、近代化促進法では、基本計画で「適正規模」、「適正生産方式」を策定することになっておりますが、実際にこれを運用する場合に、次のような問題か出ております。もともと、適正規模というのは、少種大量生産の業種にのみ適用されるわけですが、実際にはそういう業種だけではありません。中小企業の中には、原料が季節的に変動する業種もあります。たとえば桃だとか、ミカンのかん詰めなどはそうです。それから印刷のように注文生産が多いという業種もあります。そういう場合には、規模を適正にするといっても、実際にはなかなか的確な基準というものがつくれないわけです。ですから、そうした理論的根拠を持つ近代化政策を実際に適用した場合、はたして効果があるのかどうかという疑問も生じます。また、最近のように物価が上昇してまいりますと、規模を拡大して、生産性を向上させ、コストダウンをしても、その効果が他に奪われてしまうことも考えられます。これでは物的生産性は向上しても、価値実現性は保障されないことになります。  それからもう一つの問題は、近代化政策が一部の中堅企業育成になっているという点です。これでは、施策に漏れた多くの中小企業者は、むしろ近代化政策に対して批判的な立場をとらざるを得ません。そして近代化政策は、現状ではそういう中小企業の階層分解をひき起こしていることは事実です。だが、これには問題があります。たとえば、零細企業の取り扱い方についてですが、現在の近代化政策からいえば、小零細企業は非常に低生産性で、国民経済の足を引っぱっているのだから、こういうものは高度成長政策の中では切り捨てたほうがいいんだということになります。もしそういうことだとすると、これはたいへんな問題です。と申しますのは、零細企業の置かれている状態を見ますと、それは非常なミゼラブルな状態にあります。たとえば、新聞などでお読みになった方もいらっしゃると思いますが、不渡り手形をふところに入れて鉄道自殺をした中小企業者もいますし、親会社が倒産して、その親会社が会社更生法を適用して下請債権をたな上げしたために、電車賃もなくて親会社に交渉にも行けないという、非常に悲惨な零細企業者もおります。これは社会問題というよりは、むしろ人権問題です。そういうミゼラブルな零細企業者を低生産性だからといって切り捨てるというやり方はどうでしょうか。むしろ、なぜ低生産性なのかを考えて対策を立ててやる必要があるのではないでしょうか。最近では、小規模対策にも力を入れるようになっておりますが、近代化政策の精神からいって、それは消極的でしかありません。これではいつまでたっても零細企業の生活は改善されません。  要するに、私がここで問題にしておりますのは、中小企業政策の基本は環境整備だということです。そして環境整備という点で、諸外国に比べて気がつくのは、わが国では最低賃金制や社会保障という点で諸外国に著しく立ちおくれていることです。これは中小企業の経営者にとっても無関係ではありません。一例をあげますと、社会保障で老後の生活保障があれば、かりに中小企業の賃金が若干安くても、その中小企業に魅力さえあれば、労働者は中小企業にもつとめるし、定着もするからです。社会保障が完全に実施されていれば、そういう面での労働力の確保や定着が可能です。最低賃金制についても、西欧の中小企業者は労使間の団体交渉による最低賃金制をむしろ歓迎しております。最低賃金制が労使の上部団体の団体交渉によってきめられれば、個々の中小企業では争議は起きないというのです。西欧でもほんとうの意味での最低賃金制の確立には歴史的な経緯もあったわけですが、西欧の中小企業者も現在では最賃制を支持しております。  このようにして、わが国の中小企業に対しては、近代化政策を実施する以前に当然に行なわれなければならない環境整備が十分に行なわれていないのである。不当な取引とか圧迫を排除すると同時に、本来の意味での最低賃金制の確立と社会保障の完全実施ということが必要なのでございます。こうした施策は通産省や中小企業庁の管轄ではないと言われるかもしれませんが、もしそうならば、中小企業の基本政策は、通産省や中小企業庁の手の届かなところにあるのだと言うことができるかもしれません。したがって、中小企業政策は、通産省だけに押しつけるのではなく、労働省、厚生省その他の各省を通じた全体の政策中で考えていっていただきたいと思います。  最後に、四十二年度の中小企業予算案について、二、三気のついたことを申し上げたいと思います。まず、いつものことですが、中小企業対策費が非常に少ないということです。四十二年度の中小企業対策の一般会計予算要求は三百五十億円で、これは前年比一八・五%の増加ですが、しかし一般会計五兆円の一%にも足りません。これでは満足な中小企業対策などは立てられないと思います。  次に、中小企業対策費三百五十億円の内容を見ますと、中小企業振興事業団にその三分の一の百十七億円が充てられており、四十二年度の重点施策がはっきりと示されております。中小企業振興事業団というのは、中小企業指導センターと高度化資金特別会計を一本にしたもので、協業組合を対象にして、税金とか金融の面でめんどうを見てやろうという制度です。振興事業団の創設そのものについても問題がないわけではありませんが、振興事業団の対象とする協業組合についてはもう少し研究する必要があるかと思います。協業組合は確かに新しい一つの組織化の方向だと思いますが、調査の結果を見ましても、現在まだ中小企業者の事業者意識がそこまでいっていないような気がいたします。ですから、中小企業者にも納得のいくような具体的な内容を示していただきたい。また、協業組合についても、組合の民主性と自主性が協同組合の原則ですから、協業組合をつくる場合にもそうした原則をはずさないでもらいたい。  要するに、今度の予算では、中小企業振興事業団に重点が置かれております。しかし、ほかの対策については非常に弱い感じがいたします。たとえば小零細企業に対しては、機械類貸与補助四億八千八百万円が計上されております。それはいわゆる機械のリース制度です。この予算要求は前年比二億円の増加ですが、対象となる従業員二十人以下の小工場四十七万に対しては、どう見ても多いとは言えません。名ばかりでしかありません。ですから、ほんとうに小零細企業のめんどうを見るというのなら、小零細企業に対しても相当の予算措置をとっていただきたいと思います。また、下請企業対策費二千四百万円のうち、下請企業振興協会補助は千九百万円ですが、これで東京、名古屋、大阪の下請業者の下請あっせんをするとなると、その成果を期待するほうが無理です。  要するに、私がここで申し上げたいことは、中小企業近代化政策は規模利益の追求だけにしぼるのではなく、つまり、規模の大小だけを問題にするのではなく、むしろ経営の安定策を考えていただきたいということ、そのためには中小企業の環境整備を十分にしてほしいということです。  それから、中小企業の施策は、次々に新しいものが出てきておりますが、従来の施策の成果がどうであったかということを踏まえた上で、新しい施策を出してもらいたいと思います。そうでないと、第三者から見て、施策をただ屋上屋に重ねているとしか見えません。四十一年度の中小企業白書を拝見いたしましても、そういう面がないわけではありません。今後新しい施策を講じられる場合には、この点に留意していただきたいと思います。  以上で私の公述を終わります。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) ありがとうございました。加藤公述人に対し、御質疑のおありの方は順次御発言願いたいと思います。——別に御発言もなければ、加藤公述人に対する質疑はこれをもって終わることにいたします。  加藤公述人におかれましては、お忙しいところまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。     —————————————

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) 次に、山田公述人にお願いいたします。

山田雄三社会保障研究所長

○公述人(山田雄三君) 社会保障研究所長の山田でございます。私がお引き受けいたしました問題は、社会保障関係費でございますが、ごく一般的なお話をいたしまして、あまりこまかい点には触れる余裕もございません、一般的なお話をいたしたいと思うのでございます。お配りいたしましたメモによりまして大体お話を進めてまいりますが、前半は、この四十二年度の予算の中に盛られております社会保障関係費について私の感想を申し上げ、それから後半のほうで、一般に社会保障なる問題にどのように取り組んだらいいかという私見のようなものを申し上げて、御参考に供したいと思うのでございます。  第一のほうの問題、この四十二年度の予算の中における社会保障関係費でございますけれども、結論を先に申しますと、まあ大体この程度ぐらいでよいのではないだろうか、こまかい点はもちろんいろいろ問題がございますし、審議しなければなりませんが、大体はこんな程度ではないだろうかというふうに思います。  そこで、気がつきました問題となる点だけをここで一、二拾い上げてまいりますが、第一に、社会保障関係費の、これは主計局のパンフレット一三ページ以下にございますとおり、最初に生活保護基準の問題がございます。生活保護基準を一三・五%ですか、引き上げるということでございます。これも大体この程度でいまのところよいのではないだろうかと思いますが、この場合に考えなければならない点は、一般勤労世帯との格差でございます。おそらくいまのところ、一般勤労世帯に対しまして、生活保護基準というものは、大体五〇%ぐらいじゃないかと思いますが、いままでそれが若干格差が縮まってまいったわけでございます。そういう縮まる方向でこの基準を考えるという問題があろうと思うのですが、おそらく若干は縮まっていると思います。東京都の標準世帯の例がそこにあがっておりますが、二万何がしから二万三千円ぐらいに上げると、こういうわけでございます。これが大体一般勤労世帯の五〇何%ということになっていると思います。そういう点もいろいろ御審議の問題になろうかと思いますが、大体この辺で落ちつくのではないだろうかと思っております。  それから第二番目の社会福祉費でございますが、その中で注目してよろしいのは、心身障害者の対策費でございまして、これはかなり、ここに数字がございますが、八億何千万から二十一億ぐらいに、かなり力を入れているようでございます。これだってまだ少ないという御要求もあろうとは思うのでございますが、大体この辺ではないだろうか。ことに社会開発懇談会でいろいろ問題になりましたコロニーを建設するというようなことが、多少とも盛られておるというふうに見受けられます。  それから、その次に社会保険費でございます。社会保険費の中でいろいろまあ厚生年金とか、国民年金とか、いろいろな問題がありますし、健康保険の問題があるわけでございますが、去年ですか、一昨年ですか、厚生年金のベースアップがございましたので、今度の四十二年で注目すべき点は、老齢福祉年金を引き上げる。引き上げると申しましても百円でございます。いま千五百円ですが、千五百円のやつを百円引き上げるというのですから、微々たるものでございます。これは御承知のとおり保険料を納めない無拠出の老齢年金でございます。これは人数で申しますと、かなりあるのです。これを引き上げるということが今度の予算に盛られております。それから健康保険の国庫の補助金の増額、これはこのパンフレットに数字がございますが、百五十億から二百二十五億ですから、大体五割増しぐらいでございますね。それは例の健康保険の赤字問題ということにからんで論議をいたしますと、なかなかやっかいな問題でございます。まあその赤字対策の一つの方法といたしまして、その国庫補助金増額というようなことが盛られているというふうに見受けられます。まあこの問題は、これはおそらくまた別の機会にどなたかが詳しく医療保険の問題で論議されなければならない。  それからあとは、保健衛生対策費が四番目にございます。その中でガン対策に力を入れておるようでございし出す。  それから社会保障関係費の中の第五番目は、失業対策費を含むわけですが、これも今度いろいろ改正案の問題がございますので、それとからんでいろいろの問題を含んでるわけでございますが、予算といたしましては、大体この程度ではないだろうかと思われます。そのようなことでございますが、別にもう一つずっと終わりのほうでございますが、財政投融資の問題がございます。七六ページ辺になりますが、このパンフレットの七六ページに財政投融資の問題がございます。御承知のとおり、まあ年金、特に国民年金とか、あるいは厚生年金とか、あるいは共済組合とか、いろいろございますが、それが保険料を払いましてそれを給付する、まあ給付の、受給者の数がいまのところまだ少ないのです。で、保険料を納めておるほうが多いものですから、そのいわゆる積み立て金の問題があるわけでございまして、もう七六ページでごらんになってわかりますように、財政投融資の原資といたしまして、そういう積み立て金がその中に入り込みまして、それをいろいろに使っているわけでございます。で、これもばかにならない金額でございますが、この問題につきましては、ちょっとやっかいな、つまりこういう年金の積み立て金を運用する運用方法をどうしたらいいかという問題が、まあいままでもいろいろ論議されているわけでございますが、根本は、できるだけ拠出者が、保険料の拠出者がいるわけですから、拠出者の利益になるような運用をしなければならない。せっかく積み立てたものが物価の値上がりで減価するというようなことがあるわけでございますから、それをできるだけ対処するように、たとえば特別勘定というようなものを設けながら考えるとかなんとかというような問題かそこにあろうと思うのでございますが、そういう点がまだ十分に行なわれていないように思われます。  まあそういう点をつけ加えまして、以上大体この四十二年度予算案に盛られております社会保障関係費についての私の感想を申し上げたわけでございますが、合計額といたしましては、この社会保障関係費の全体の合計額といたしましては、ごらんのとおり、まあ六千二百億円から七千二百億円程度ぐらいに伸びているわけで、伸び率は何か一五・七%ということでございます。一五・七%が伸びる。いままで社会保障関係費は、この三、四年、あるいは五、六年といいますか、かなり伸びて、伸び率が大体二〇%あるいは一九・何%ぐらいと伸びていたわけですが、ことしはちょっと伸び率はダウンしております。が、しかし、これは全体の予算との関係でございます。全体の予算に対する割合といたしましては多少増加しているというようなかっこうになっております。  さて、大体社会保障関係費についてはそんなように思うのでございますが、ここでなお後半の問題でございますが、一般に社会保障という問題にまあどのように取り組んだらいいかと、これはまあ多少、常に考えておりますので、御参考のために私の意見を申し上げておきたいと思うわけであります。社会保障、まあ問題は社会保障の大きさがこれでいいのか、あるいはもっと大きくするのかというような問題をどのように受けとめたらいいかということでございます。そこで、まあ社会保障というのがいろいろな範囲で理解されておりまして、これはもう御承知のとおりだと思うのでございますが、この大蔵省で使っております社会保障関係費というのはいま七千億円ぐらいの規模でございますね。それはまあ一番狭い解釈でございます。で、社会保障の給付費というのが別にございまして、国際比較なんかするときには社会保障の給付費を考えるわけですが、これはおそらく日本の場合には一億四千万ぐらいになります。これは社会保障給付費として入れる項目や何かが違いますから、たとえば社会保険をやります社会保険費というのが先ほどございましたが、その社会保険費の給付の額というのは大蔵省のこれには計上されていないわけなのでございます。保険料を取ってそれを給付するわけなんですが、それは入れてないで、補助金だとかあるいは事務費だとかというようなものを社会保険費として入れているわけでございまして、したがって、そういうようなことから金額が違ってまいります。大体社会保険、社会保障の給付費となりますと、まあ一兆四千億円、つまり半分が大蔵省の社会保険、社会保障関係費でございます。まあそれにちょっとやっかいなことは、別に国民所得の計算の中で振替所得というのがございまして、これが若干また食い違っております。これは大体給付費の、先ほどの一兆四千億と申しましたその給付費の大体八割ぐらいに当たるわけですが、これも計算のしかたでもってそういう違いが出てくるわけですが、大体三通りぐらい数字がございます。まあそのときどきによって断わりながらその数字を使うほかございませんが、振替所得はまあ大体一兆三千くらいになりますかな、そんなことだと思います。もう少し低いかもしれませんね。一兆ちょっとだと思いますが、まあそういうようなことでございますが、これはちょっと蛇足でございます。  さて、この社会保障の大きさが、規模が大きいとか小さいとか、こういう議論をわれわれに真剣に考なえきゃならないわけでございますが、それから、特に将来どうするのだと、将来日本をどういう方向へ持っていくのかというようなことを十分検討しなければならないわけでございますが、私ここでメモといたしまして三つぐらいの点を申し上げておきたいと思うのでございます。  第一の点は、こういう社会保障の問題ということになりますと、きわめてばらばらにあちこちから要求が出てまいりまして、それでまあそういう要求に押されながら社会保障というようなものを考えるわけでございます。これはまあ当然要求があって初めて問題が起こるわけでございますから、あながち悪いことではございませんけれども、それがあまりばらばらになっておりますのは好ましくないことでございます。ほかのことばで申しますと、できるだけ計画的にそれを整理していく、計画的に考えていくということがきわめて大切ではないだろうか。で、先般経済審議会で社会経済発展計画というのがございまして、あの場合に、経済社会ですか、経済社会ということばを使ったわけでございまして、社会ということばを特に出したのは、要するに、今日の国民全体の発展といたしまして、そういう社会面を無視することができないということでやったわけでございますが、どうも考えてみますと、あの中の社会計画の部分というのは何かまだ十分に練られていないように思います。あの場合に、あの社会保障について申しますと、これは振替所得で計算いたしまして、出発点で五・五%、国民所得の五・五%ぐらいの規模のを七・五%に持っていこうということでございます。まあこれは二%ぐらいアップでありますけれども、その中身やなんかは、実はもっと社会保障を五年間なら五年間にどういうふうに充実していくんだという考え方があってしかるべきでありますし、もちろんある程度はそういうことを実際にはやってああいう結果になったわけでございますが、ああいう社会計画、これは経済計画のほうはかなりいままでも経験を積んでいろいろやられておりますが、社会計画というような問題につきましては、あまりまだ練られていないように思われます。まあその中の重要な問題は社会保障の計画でございますが、こういう、つまり三年なりあるいは五年なり見通しをつけてやっていくということが大切だと思うのでございます。たとえば年金なら年金につきましては、自然にどうしても増加しなければならない部分、つまりもらう人の数がふえるとかあるいは給付水準がその後五年なら五年の間に上がるというような、そういう自然にどうしても増加しなければならない部分と、それからさらにいろいろ社会保障の体系についてもっと改善を要する問題というのがあるわけでございます。まあ医療保険なら医療保険についてもう少し抜本対策もしくは抜本対策に近いようなものをやっていくと、一体どうなるかというような計画を入れ込むということが非常に大切だと思うのでございます。ここではきわめてただ一般的にしか申し上げられませんが、そういう点をひとつ御考慮願いたいと思うわけでございます。  それから第二の点といたしまして、この社会保障というような問題はとかく利害関係というものからの発言が多いわけでございます。これも何もあながちいけないわけではございません。当然だと思うんです。保険料を納める人と、それからたとえば医療なら医療の側とか、いろいろ利害関係がございます。したがって、利害関係の発言が多いのは当然でございますけれども、議論をいたします場合に、できるだけ客観的な資料を土台にしながら議論をするということが必要でございますが、その点がまだ十分に行なわれていないというふうに思われます。ここでちょっと書いておきましたが、たとえば国際比較をするというようなことでございますが、これはまあわれわれ学会もしくは学者側に責任があるかもしれませんが、もう少しああいう国際比較なんかを真剣にやって、そういう資料を提供すべきだと思うんでございます。まあ国際比較をやって、日本の社会保障の水準が低いと、これは先ほど振替所得のあれで五・五%と、こう申しましたね。ところが、ヨーロッパあたりでは一〇%もしくは一〇%以上、ドイツ、フランスなんかは二〇%に近いという数字があがっているわけでございまして、そういう点から確かに低いわけでございます。しかし、とかく国際比較なんかをやりますと、国おのおのの特殊性があるのだからそうほかの国のことを考慮する必要はないというような御意見もあるようでございます。それからまた、スウェーデンとかイギリスなんかが、ああいう社会保障がむしろ行き過ぎて、かえって経済成長をにぶらせるような欠点があるんじゃないかというような御意見もあるわけでございます。そういうことをもちろん考慮しなければなりませんが、しかし、われわれの客観的資料としては、いろいろ条件を吟味いたしますれば、非常に国際比較というのは役に立つと私には思われます。たとえば国際比較をしながら人口の年齢で、だんだんと老齢化が進みますが、日本よりははるかに西ヨーロッパは老齢化が進んでいるわけです。日本で六十五歳以上が六%ぐらいですか、それがヨーロッパでは一〇%というように言われておりますが、そういう条件がございますから、老齢化が進めばやはりそういう年金の給付額というようなものは大きくなるわけでございます。ですからそういうことを十分に考慮する。それから所得の水準が増大いたしますと、これは日本も経済成長のおかげで所得水準は上がっているんですけれども、ヨーロッパとは一段下でございますね、それでやはり所得水準が進みますと、社会保障というようなものに回す余裕が出てまいります。ですからそれももちろん条件になりますし、また、所得の分布がどうなっているかというようなことも十分吟味しながら国際比較をやる必要があろうと思うのでございます。また、賃金なら賃金の形態につきましても、日本の場合とそれからヨーロッパの場合とかなり違う点がございまして、違えばそれに応じて社会保障というような問題もまた違ってまいります。ですから国によって違うことは違うんですが、どういう条件のもとに違うかということをよく吟味することによって十分に国際比較の資料を活用していくということが大切だと思うのです。単に利害関係でこれが少ない、これが多いということではむしろらちがあかないわけでございます。で、概して言えますことは、ことにイタリアと日本なんというのは、大体所得水準は同じなんでございますが、イタリアのほうがはるかに全体の社会保障の給付費というのは多いんです。で、その場合に問題になりますのは、たとえば年金の制度が、日本では戦後スタートしたばかりでございますから、三十五、六年にスタートしたばかりでございますから、その点は非常に未熟でございます。そういうことももちろんございます。それから児童手当というのが、これが日本ではないわけでございますが、これは賃金の中にいろいろそれに近いようなものがすでに含まれているような日本の態勢から発展がおそいわけでございますが、日本の賃金形態もいろいろな意味で変化してまいります。変化したならばやはりそれを補うような意味の家族手当とか児童手当という問題も十分に審議してしかるべきだというふうに考えられます。まあ医療の高さといいますか、それは日本が一応高いんですが、しかし、これも比較してみますると、イタリアよりはちょっと落ちているようでございます。  まあそういうようなことで、いろいろ国際比較なんかをしながら日本のまだ未熟な点あるいは足りない点あるいはさらにどういう方向へ進めるか、これにつきましてはいろいろ複雑した問題がございます。結局やり方が国によって違う面もあるんです。つまり保険型でいくのか、あるいは何といいますか、アシスタンス型でいくかというんですね、公約扶助というようなものに力を入れながらやるイギリス型と、それから大陸の保険型というのがございまして、それを日本の場合にはどうするか。しかし、これもよくいろいろ条件を吟味してみますると、かなり最近ミックスしているんです。ですからどっちがいいというようなことでなくて、それはどうミックスするかというような問題になろうかと思います。そういうような意味で国際比較というような資料を十分に吟味されながらこういう問題に取り組むということが大切ではないだろうかと思います。  最後に、第三番目でございますが、これはきわめて一般論をここにつけ加えたわけでございますが、先ほどの加藤さんのお話の中にもございましたように、中小企業の問題、さらには農業の問題、地域開発の問題、広い意味で社会開発というような問題がございます。ございますといっても、これは先刻御承知のとおりでございますが、私は、三十年代の高度成長のあとに続きまして、四十年代は、そういう経済の開発と、それから社会の開発というようなものをいかに調整するかという問題にぶつかってるというふうに思います。先ほどお話しいたしました経済審議会の計画も、もちろんそういうところを一応ねらったんだと思うんですが、何かまだ力の入れ方が不十分のように見受けられます。それで、これはむずかしいといえばむずかしい問題だと思うんですが、一言で申しますと、何か日本の国民全体の進むようなある構想、たとえばヨーロッパでは福祉国家というようなことがいわれているわけでございますが、福祉国家という考え方の内容にはいろいろ長所もあるし欠点もございます。何もそれをそのまままねするということは不必要だと思いますが、要するに、その福祉国家、あるいはもっとそれよりしっかりしたある構想を描くべき——この四十年代の課題は、描くべきではないだろうか。要するに、それは経済開発とそれから社会開発とを調整をとらせるということでございますが、その点が何か利害の争い、あるいは要求の争いというようなことでやっておりますので、そういう世論がまだどうもうまく熟しておりません。そういう点でひとつ、こういうような委員会でこの構想の問題、もちろんこまかい点につきましては意見の分かれることは当然でございますけれども、何か全体としての構想をお考えになるように、ここで一番最後に、「福祉国家のようなもしくはそれ以上の」と書いてございましたが、ちょっと表現が悪いんで、福祉国家のようなもしくはそれ以上しっかりした、あるいは現実に地についた構想を打ち出すように心がけていただきたいと、こういうふうに思います。で、この(1)、(2)、(3)は、私が日ごろ考えている——きわめて抽象的でございますが、考えているところを申し上げたわけでございまして、どうかこういう点を御考慮になりながら、具体問題に進んでいっていただきたいと思います。どうも失礼いたしました。(拍手)

新谷寅三郎自由民主党

○委員長(新谷寅三郎君) ありがとうございました。  山田公述人に御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。——別に発言もないようでありますから、山田公述人に対する質疑は終わったことにいたします。  山田公述人におかれましては、お忙しいところをまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  以上をもちまして昭和四十二年度総予算についての公聴会は終了いたしました。  明日は、午前十時から委員会を開会することといたしまして、本日はこれをもって散会いたします。    午後二時二十四分散会

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