外務委員会 第17号
- 発言数
- 64 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1967/07/11
会議録
○委員長(赤間文三君) ただいまから外務委員会を開会いたします。 同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約第百号の締結について承認を求めるの件 及び関税及び貿易に関する一般協定の譲許表の訂正及び修正に関する千九百六十七年五月五日の締約国団の第三確認書の締結について承認を求めるの件 以上二案件を便宜一括して議題といたします。 まず、政府から提案理由の説明を聴取いたします。田中政務次官。
○政府委員(田中榮一君) ただいま議題となりました同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約(第百号)の締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。 この条約は、一九五一年六月二十九日に国際労働機関の第三十四回総会で採択されたものであります。その内容は、男女労働者に対して性別による差別なしに報酬を定めるという原則に関して規定したものであり、その趣旨とするところは、国内法においてもすでに規定されているところであります。 この条約は、基本的に女子労働者の地位の向上に資するものでありますが、特に最近におけるわが国の女子の雇用の実情にかんがみ、この際、この条約を締結しますことは、女子労働者の職業に対する意欲を高め、その雇用の近代化の機運を醸成して、その地位の向上をはかります上に有意義なものと考えます。 なお、一九六八年は、国際連合の定める「国際人権年」の年に当たるので、この条約を締結することは、この観点からも時宜に適したものと考えます。 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。 次に、関税及び貿易に関する一般協定の譲許表の訂正及び修正に関する千九百六十七年五月五日の締約国団の第三確認書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。 わが国の国定税率を定める関税定率法の別表は、昨年四月一日全面的に改正され、新しい関税品目分類法に基づくものとなりました。これに伴って、この改正前に締結したガット文書に収録されているわが国の関税譲許表をも新しい品目分類法に基づいたものにするよう訂正することが関税事務の運用上必要となり、政府は、各譲許をそのように訂正することにつき、当該譲許に関係を有する各国の了解を求めるための交渉を進めてまいりました。 かかる交渉は本年春に終了いたし、五月五日、この訂正を実施するために必要なガット上の手続を了しました。本件確認書は、右の訂正を加えたわが国の新譲許表を他国の譲許表とともに収録するものでありまして、わが国の新譲許表は、政府が国会の御承認を得た後ガットの事務局長に対して行なう通告によって効力を生ずることとなっております。 よって、ここにこの確認書の締結について御承認を求める次第であります。 以上二件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
○委員長(赤間文三君) 次に、補足説明を聴取いたします。高島参事官。
○説明員(高島益郎君) 二条約につきまして簡単に補足説明を申し上げます。初めにILO第百号条約でございます。ただいま提案理由の説明にございましたとおり、ILO百号条約を今回批准いたすことになりました理由は、二つございます。一つは男女同一賃金の原則を定めましたこの基本条約に今回参加することによりまして、国際的にも、国内におきます男女同一賃金の原則をはっきり確保したいというのが一つでございます。もう一つは、一九六五年の第二十回国連総会で、実は来年——一九六八年を国際人権年と定めて、これに伴って各国の基本的な人権に関する保障の運動を進めていきたいという決議がございます。ちょうど一九四八年に国際人権規約が国際連合で採択されまして、この二十周年に当たるのでございます。ILOといたしましても、特に基本的人権に関係いたしますILO条約の批准促進をはかっていきたいという観点から、今回の百号条約を含めまして、特に各国の批准促進をはかっている次第でございます。そういう観点から今回この条約を批准する決心をした次第でございます。 この条約の内容は、御承知のとおり、まず政府がコントロールし得る賃金、つまり、国家公務員あるいは地方公務員の給与につきましては、これを男女同一賃金の原則を確保するというのが第一の原則であります。それから第二番目に、民間労働者の賃金のように、政府としましてコントロールし得ない賃金につきましては、なるべく男女同一賃金の原則を促進していくようにしなければならないというのが第二の原則であります。そういう基本的な定めになっておりまして、現在日本の法令上は、労働基準法第四条のほか、国家公務員法あるいは地方公務員法等によりまして、十分にこのILO百号条約の規定の内容に沿うような規定がございます次第でございます。もちろん、この実効的な実施等につきましては、法律のほかに、いろいろ労働省その他でこれを推進していく必要があるわけでございますが、法令上は、現在の労働基準法、国家公務員法、地方公務員法等によって定められているという次第でございます。 次に、ガットの譲許表の訂正に関します確認書につきまして簡単に御説明いたします。ガットの譲許表と申しますのは、ガット上非常に基本的な定めでございまして、ガット締約国が締約国に対しまして譲許します関税率を定めた基本的文書であります。この改正につきまして三通りございます。一つはいわゆる修正と申すものでございまして、これはガットの譲許表で定めました税率を引き上げるもの、あるいは、すでに与えた譲許を撤回するもの、そういうものを総称いたしまして修正と申しております。それから二番目に譲許表の追加と称するものがございます。追加と申しますのは、新しく譲許表を追加する、それから、すでに与えているガット税率をさらに引き下げる。つまり、より有利な待遇を締約国に対して与えるというのが第二の追加でございます。第三番目の訂正というカテゴリーでございますが、これは非常に技術的な文書でありますために、ときどきつづりの誤りあるいは誤植等がございますので、こういったものを訂正する。これを訂正と申しております。今回お手元に御承認のため提出してございます文書は、この最後のカテゴリーであるところの訂正でございます。訂正は、ただいま申しましたとおり、誤植とかつづりの誤りを正すものでございますけれども、今回の訂正はこれとは少し種類が違います。先ほど提案理由にもございましたとおり、日本が新しい関税品目分類法を採用いたしましたために、これに伴って、いままで譲許いたしましたガットの税率を、そういう新しい関税品目分類法に従って総組みかえしたという文書でございます。その組みかえによりまして、技術的にある品目から他の品目へ移るというふうなことも若干ございまして、そのために多少の税率の相違ということが技術的に生じ、そのために関係当事国と交渉した結果合意を見て、今回確認文書の中に掲げられたものでございます。そういう次第でございまして、これは修正とかあるいは追加と違いまして、形式的な性質の訂正でございまして、しかし、わが国といたしましては、租税法定主義の原則から、こういう訂正につきましても当然国会の御承認が必要であるという観点から今回提出した次第でございます。
○委員長(赤間文三君) 以上をもって二案件に対する説明は終了いたしました。 これから質疑に入ります。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。加藤委員。
○加藤シヅエ君 私は、この同一価値の労働に対して男女の労働者に同一の報酬を支払うべきであるというILO百号条約につきまして質問いたすわけでございますが、きょうは労働大臣が他の委員会のほうにおいでになっておいでくださらないかわりに、労働政務次官がおいでくだすったそうでございます。大臣がおいでにならなかったことはたいへん私残念に思っておりますけれども、どうぞ政務次官、しっかりと答弁してください。私は、この質問は、もっぱら婦人労働者、働く婦人の地位向上、それからそれに付随して一般婦人の地位向上、それから、婦人が働くということが、これはただ個々の経済的な必要というそういう立場からさらに拡大して、働くことが婦人の権利であって、その権利は当然正しく主張され、また、それが受け入れられなければならない、こういう立場から質問するわけでございます。で、せんだって衆議院のILO百号の審議にあたりまして、同僚の戸叶委員から大胆に対していろいろと現状についての詳しい御説明があり、それに対して労働大臣からの御答弁もございました。また、穂積委員からも、一般のいまの婦人の労働市場についての御所見その他の御質問もございまして、私は非常に同感いたすものでございます。ただ、その中でもまだ非常に御答弁が十分でなかった点もあるように思いますので、同じことを重複して伺うことを避けまして、そのほかの点でいろいろ伺ってまいりたいと思っております。 最初に伺いたいのは、これはILO百号条約の批准ということに対しましてだれでも一番先に気がつくことは、これが一九五一年六月に採択された条約である。今日は一九六七年の七月である。十六年経過している。これはずいぶん長いことでございまして、その間、労働基準法第四条というようなものがあるから、まあそれで間に合ってきたのだというような、その国内法があるからかまわなかったというような御答弁が随所に見られております。そしていまになってこれを持ち出して批准なさろうという理由を、来年は国際人権の年に当たるということでILOからも強い要請もあったからこれを取り上げたというような、そういうような名目を使っていらっしゃるわけでございますけれど、それは確かに、国際人権年に際してこういうおくれている条約を批准なさるということはもとよりけっこうでございますけれど、こんなに長い間放置しておいたということは、これは簡単な答弁では片づかないと私は思います。 それでまず最初に順序として伺いますのは、この人権に関する条約というのはどれとどれをさしているのでございますか、それをまず最初に伺いたいと思います。
○政府委員(辻英雄君) 人権に関します条約というのは、いろいろな解釈もあろうかと思いますが、先生御承知のように、来年の国際人権年に際しまして、ILOの事務総長から、以下に掲げるような人権に関する条約をできるだけ批准してほしいということで、七つの条約をあげております。その条約について申し上げますると、第十一号条約、これは農業労働者の結社に関する条約でございます。二十九号条約、これは強制労働の禁止に関する条約でございます。その次が八十七号条約、これは結社の自由・団結権の保護に関する条約でございます。それから九十八号条約、これは団結権・団体交渉権の保護に関する条約でございます。それから百号条約、これはただいま御審議いただいております同一価値労働男女同一賃金に関する条約でございます。それから百五号条約、これは強制労働の廃止に関する条約でございます。その次に百十一号条約、これは雇用における機会均等の確保に関する条約。 以上七つでございます。
○加藤シヅエ君 以上七つ、いずれも大事な条約だと思います。そのうちで日本ですでに批准されましたものは、二十九号、それから八十七号、いまの百号、それから九十八号が批准された。百十一号は取り残されているわけでございますね。この百十一号条約というのは、いま批准しようとしている百号条約とは、ほとんど切っても切り離せないような関連性の高い条約であると私どもは理解しておりまずけれど、これは今度は顔を出さないで、百号条約だけお出しになる。それはどういうわけでございましょう。
○政府委員(辻英雄君) 御指摘のように、百十一号条約は百号条約と密接な関係があると私ども存じております。御承知のように百十一号条約は、職業訓練を受けること、雇用されること、個々の職業につくこと、及び雇用条件について人権、皮膚の色、性、宗教、政治的見解、国民的出身または社会的出身を理由とする差別待遇を廃止しよう、こういう趣旨の条約でございます。御承知のように、わが国の現在の法律制度におきましても、一般的に憲法の十四条で「すべて国民は、法の下に平等であって」云々というのが書かれておりますほかに、労働関係におきましても、労働基準法の三条、あるいは職業安定法の三条というようなところでも具体的な規定がございまして、おおむねこの百十一号条約の趣旨とするところは、わが国においてもそういう法律制度が一応整備をいたしておるわけでございます。ただ厳密に検討をいたしてみますと、たとえばその百十一号条約のできます一番大きな一つの動機であったようにも伺っておりますが、皮膚の色というようなのが具体的に百十一号条約では強調されておるわけでございます。わが国でももとよりそういう差別をやってよろしいという積極的な意味があるわけではございませんけれども、現在の法律制度の中でそういうことが具体的にまだ書かれておらないというような問題が技術的にあるわけでございます。また、御承知の労働組合のユニオン・ショップあるいはクローズド・ショップというような制度の場合の特別扱いのことがわが国の法制ではその趣旨ができるように書いてございますけれども、この条約でそういう点がどのように解釈されるべきかというような点がまだ明らかでない点がございます。したがいまして、私どもといたしましては、今国会には百号条約をお願いいたしまして、百十一号条約につきましては、以上申し上げましたような点を含めまして今後引き続き検討してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
○加藤シヅエ君 いまのお説明の中で、皮膚の色云々ということばがあって、日本にはそれが何も関係のないというようなことが、いますぐ一緒に批准しなかった理由の一つとして御説明がございましたけれども、幸い日本には皮膚の色の差別、いわゆる人種の差別というものは現存しておりませんけれども、それが日本においてはすなわち男であるか女であるかということ、それが黒人であるか白人であるかということとほとんど同じぐらいに差別をされているわけなのでございます。ですから、その皮膚の色というようなことばにこだわらないで、ほんとうにそこに何らかの差別があるかということを考えてみましたら、その条文のことばの上だけで、いますぐ一緒にやらないでもいいというような理由にはならない。これは絶対に一緒にやるべきであったと私どもは考えております。 次の質問に移りますけれど、今度百号を批准なさるということで、労働大臣なんか、非常に何か手柄ででもあるようなつもりでいらっしゃるようにちょっと思えるのでございます。それは確かによろしいです。百号を批准なさることはよろしいですけれども、十何年——十六年もたってからなさるなんということは、あまり手柄にもならないと私、思います。そうして、そんなに長いこと経過したその背後には、たくさんの日本の婦人労働者が非常な差別をされ、低賃金のもとに苦しんでまいった十六年の歴史というものを、これをほんとうに無視してはならないと思います。そして、その低い差別待遇の中で、著しい経済生活の中で、これだけの運動を一生懸命盛り上げようとしてきたその努力、それは、決して非常に大きかったとは言えないかもしれませんけれども、そうした努力が積み重ねられて、まあ労働省のほうでも、今度は、それにも少しはこたえるような顔をしなければなるまいかというようなわけでなさったというふうに、私は、あまり労働省のお手柄のようには考えられないということを申し上げたいのでございます。それよりも、労働省がほんとうに考えていらっしゃる、これをひとつ批准しようと考えられたもっと直接の動機、根本的な動機というのは、今日、産業のたいへんな発展によりまして、労働力が非常に必要となってきた。しかも、労働力はいま必ずしも十分に充足されるような状態になっていない。人口の構造などにもいろいろの変化があって、大いにもっと労働力の供給について考えなければならない。そこで、婦人労働者の占める地位とか役割りというものに対して、おそまきながら非常にこれを重要視し始めた。これが百号条約の批准の大きな動機になっている。私どもは、そういうふうに見ております。まあどういうふうに見られても、そういうところまで来たことは、これは婦人のために非常な前進であって、私たちはこれを喜んでおります。けれども、こういうような百号を批准したということで、婦人の格差が、すぐ現実に解消するわけではないわけなんです。そこに大きな格差が残っている。そういうことをどんなふうにして今後その格差を縮めていき、ほんとうの同一価値の労働に対して同一の報酬を払うというところまでこぎつけるか。これは官公の婦人労働者の場合にもいわれておるわけですし、まして民間のほうでは非常な格差がございますから、それをどうやって縮めていくか。これに対しては、よほど労働省としてはサービスをなさらなくちゃならないと思います。繰り返し申し上げますけれども、労働省という役所の成立の趣旨は、取り締まりの役所ではなくて、サービスなんでございますから、もっともっとサービスのために努力をなさるべきではないかと、私はこういうふうに考えます。 それで、そういうような面から、現在、大きくまだ民間産業においては格差がある。地域の格差がある。それから、そのほかの面でも、まだ職種の選定とか、いままで古くからある賃金体系との関係とか、いろいろな問題で婦人労働者の地位も賃金も低い。それをどうやって縮めるような努力を具体的になさるのか、それを説明していただきたいと思います。
○政府委員(辻英雄君) 先生の御指摘ございましたように、もっと早くこの条約を批准すべきであったという御意見は、私どもとしましても、十分承りまして、その御趣旨が生きるように、今後進めてまいりたいと思います。 それから、具体的にこの条約を批准します基本的な考え方につきましては、先ほど外務省のほうから御説明がございましたが、根幹といたしますところは、女子雇用というものにつきまして、これを近代的なものにする。その具体的な現状につきましては、先生御指摘ございましたような、現在の雇用労働者の三分の一が女子によって占められておるというような現状におきまして、女子労働者が男子と同様な権利を持って取り扱われ、あるいはいろいろ女子なるがゆえに不当な取り扱いを受けるようなことがないということを基本的に確保する必要性が非常に大きくなってきておりますることは、先生の御指摘のとおりだと存じます。ただ、先生おっしゃいますように、条約だけを批准すれば事足れりということではございませんで、条約を批准するということそのことが女子の雇用の近代化ということの意義を一そう世間に周知徹底させるということの基本になっておるわけでございまして、その趣旨が徹底されるように各般の行政を進めてまいるということが基本であろうかと存じます。 具体的に一、二の例をあげて申しまするならば、労働基準法の四条にございます男女同一賃金につきましては、従来ともこれを周知徹底し、違反に対しましては是正せしめるような措置をとってまいりましたけれども、この条約の批准を契機として一そうそういうことを取り上げて徹底させるようにやっていく。あるいは御指摘のございました賃金体系につきましても、これは従来の日本の年功序列賃金体系というものが、年齢なり勤続年数によって賃金がきめられてまいりますると、比較的勤続年数の短い者の多い女子の場合には、その意味からも賃金が不利な結果に相なっておるというような事実がございます。最近の雇用労働事情の変化、あるいは技術革新等に基づきまして、非常にそういう賃金体系に対する世間の考え方も変わってきております。労働省としましても、基本的な方向としましては、同じ労働に対しては同じ賃金が払われるということで、男女の賃金の差を基本的にはそういう方向に持っていくことによってこの条約の趣旨が実現されるであろう。そういう努力もいたしてまいりたい。あるいは基本的に職業紹介あるいは職業訓練等につきまして、決して現実に差別扱いをしておるということは毛頭ございませんけれどもざらにむしろ、女子にも専門的な能力をつけ、それによって、よりよき職業につき得るというような方向に持ってまいりまするために、職業訓練なり職業紹介等につきましても、今後一そうそういう方向で努力をしてまいりたい。総括的に申し上げますと、そういう気持ちでこの条約の批准を契機といたしまして、積極的に進めてまいりたい。かように考えておる次第でございます。
○加藤シヅエ君 いま労働基準法を適用して云々という御答弁がございましたのですが、この前、衆議院の質疑応答の中に、労働基準法に抵触して、それが司法問題になり、送検され、あるいは処罰されたその具体的な件数、その実例等についての資料の提供が要求されていたと思います。これはたいへん必要だと思いますので、こちらにもその資料は出していただきたいと思います。 それからもう一つは、労働基準法というものはそういう役割りを果たすためにあるわけでございますけれども、婦人の場合には労働基準監督局だけではまだ十分ではなくて、労働省には婦人少年局という役所があって、そうして全国に婦人少年室というものがあるわけでございます。婦人少年室は具体的にはその基準違反を指摘する役所ではないのでございましょうけれども、やはり、婦人に接触して親しくそういうものの相談にあずかりながらそういうものを発見するというようなことが、特に零細企業の場合には必要であろうと思いますので、高橋婦人少年局長から、そういう活動について婦人少年局がどういう役割りを果たしていらっしゃるか、また、もし十分に果たしていらっしゃらなかったら、どういうわけで果たせないか、そういうようなことについて御答弁願いたいと思います。
○政府委員(高橋展子君) 御指摘のとおり、婦人少年局では全国に婦人少年室を持っておりまして、それを通しまして一般婦人の地位向上、またその中でも婦人労働者の保護に力を注いでそういう仕事を進めているところでございます。お尋ねの、事業場等における労働条件についての役割りという点につきましては、婦人少年室におきましては定期的に事業場訪問調査というものを行ないまして、個別に事業場を訪問いたして、そこの実態を把握するようにつとめております。その際、労働条件の上でいやしくも法違反というような懸念のあるものがあります場合には、即刻監督機関に御連絡して遺漏なきを期しております。 なお、この事業場訪問調査ということにつきましては、御存じのことと思いますが、基準法に明示されておりまして、事業場に対しての調査は、基準法の女子・年少者規則につきましての調査権というのがございます。それに基づいてかなり綿密な調査が行なわれているわけでございます。また、その事後措置等につきましては、先ほども御説明したとおり、監督機関とも密接に連絡をとっております。また、そのような法違反というような問題でございませんでも、個々のいろいろな問題につきましての相談におきまして、これまた婦人少年室あるいは婦人少年室に配置してあります婦人少年室協助員、こういった民間の非常勤の有識者の方でございますが、その方たちのサービスを通じまして個々の御婦人の相談にも応ずる。このような体制をとっておるのであります。
○加藤シヅエ君 婦人少年室のお働きは、非常に今後婦人の労働者の地位向上、その福祉のために必要でございますけれども、最近の事情は私ちょっとつまびらかにしておりませんが、かつては少年室の予算などがはなはだ貧弱でございまして、少年室に働く方が自分で自転車を買ったり、自分で往復の切符を買ったりして事業所を回らなければならない。手もない上に、機動力が全然欠けている。そういうことに対して予算が取ってもらえないというようなことが実情であるやに伺っておりましたが、最近はそういうことはもう少しよくなったのでございましょうか、どうなんでございましょうか。
○政府委員(高橋展子君) いろいろと御心配をいただきましてありがたいことでございますが、近年は特に省内におきましても、あるいは先生方のバック等もございまして、おかげさまで次第に、たとえば室の定員等もやや増加をいたしております。また、予算の点などにつきましても御配慮はいただいてまいっているわけでございます。
○加藤シヅエ君 前年よりだんだん上がっているのでございますか。具体的に予算が前年よりいつもそれに加算されて上がっているのでございましょうか。どのくらいの割合で上げてもらっているのでございますか。
○政府委員(高橋展子君) 予算の面で申しますれば、大体毎年、近年では一五%程度の増加を見てまいっております。
○加藤シヅエ君 非常に控え目に局長は言っていらっしゃると思うのでございますね。そういうことがやっぱり男女間の平等でないということになるように思うんです。早川労働大臣は婦人・少年に対して理解のあるような答弁を衆議院でこの間やっていらっしゃいますから、きょうはここへ出てきて大いにやっていただかなければならなかったわけでございますけれども、あいにくでたいへん残念でございますけれども、今度はどんなふうに予算を要永なさるか、私よく見張っておりまして、ここで答弁なさったことをほんとうに実行しょうとしておるかどうか、これは見詰めなければなりませんけれども、婦人少年局や少年室の働きというものは、労働基準法によるいろいろの働き以上にこまかく入り込んでいて、ほんとうにこの百号条約を批准しょうという気持ちが政府におありかどうか、その誠意のほどを、私はこれは当然やらなければならないということを強く要望しておきたいと思います。 それからさっき、最初の御質問の中に大きく伺っておきましたが、これは政務次官に伺おうと思います。いま婦人全体の労働力が非常にまあ人手不足という声が叫ばれている。 それから社会開発、社会福祉というような面で、やはりこれも非常に人手を必要としている。そういうところに中高年齢の婦人、つまり一たん家庭に入っている婦人の労働力というものをもう一度社会の表面に引き出して、これを一つの労働力として、あるいはサービス業として、職業として社会的に活動させることが日本の場合には非常に必要だと思うわけでございます。これに対して、いろいろの制度あるいは設備等は、現在こういうことを婦人に可能ならしむるような便宜をはかっていないのが実情でございますから、そのために、幾ら出てきてほしいと思っても出てこられないわけです。たとえば厚生省なんかでも病院をたくさんつくりたい。つくらなければならない。現にできた。だけれども、肝心の看護婦さんがいないからベッドはあいている。こういうようなのが始終訴えられているわけでございます。 それから託児所やなんかも、どうしても婦人のためにはたくさん必要でございます。ところが、その保育に当たる保母さんは非常に過重な労働をしなければならない。しかも、低賃金であるというようなことで、保母さんになる希望が、こちらが考えるように、十分にないというようなことも、大きな壁の一つでございますけれども、そういうようなことに対しても少しも改善されようとしておらないと思います。こんなようなことで、婦人の潜在労働力というものを引き出すことは、これは不可能なことだと思います。 私、政務次官に伺いたいのは、いま婦人の潜在労働力というものをどのぐらいあるように把握していらっしゃるのか、それをまず伺いたいと思います。
○政府委員(海部俊樹君) 潜在労働力の数字は、申しわけありませんがただいま把握しておりませんが、パーセンテージは大体わかっております。パーセンテージを婦人局長から申し上げます。
○政府委員(高橋展子君) ちょっと手持ちの資料がございませんので大ざっぱになりますが、私どもで世論調査をいたしましたところによりますと、現在就業しておりません婦人で就業の意思のあるものにつきまして、これは年齢別にかなりの隔たりがあるようでございますが、大体若い年代層の方は就業の意欲を持つものが高いわけでございます。数字的に申しますと、二十歳代で現在働いていない方は、その過半数が就業意欲を持っておられるようでございますが、これが三十歳代になると、かなり下がります。また四十歳以上になりますと、たしか二五%くらいの方が就業の意思を持っていらっしゃる。このような数字であるように記憶しておりますが、後ほど届けさしていただきたいと思います。
○羽生三七君 関連して。 これは副総理格の外務大臣にちょっとお伺いしたいのですが、(笑声)これは、いま加藤さんの指摘された問題はいろいろの意味を含んでおると思います。 その一つは、この百号条約が十数年もおくれて批准されなければならなかった理由は、何といっても、これは、ならなかったという理由よりも、いまになって批准しようというのは、日本の産業構造の変化によって労働の需給関係が起こってきた結果、つまり積極的な意味でなしに、そういう客観点な条件の変化に対応して、ようやくこの批准に取りかかろうとした、こういうことであうろと思うのです。 そこで、余談になるのですが、三月の中央公論に「停滞的英国と革新的日本」という論文が出ておるのです。これはイギリスもようやく気がついてロンドンの「エコノミスト」が「驚くべき日本」という特集を出し、また第二巻を出しましたけれども、日本経済の高度成長に驚きの目をみはった。それはイギリスの側からです。ところが実際には「停滞的英国と革新的日本」というのは、日本をほめたわけじゃない。あまりにも革新的で、片方は加藤さんがいま指摘されたような男女関係のみならず、賃金の一般水準等について日本があまりにもたちおくれておる。で、いわゆる高度成長だけに取り組み過ぎた結果がこの日本とイギリスとを対比した論文になっておるわけですね。そこで、やはりいま加藤さんが触れたような問題を本質的に解決していく場合には、単に労働省の一部局の問題ではなしに、本質的に今日の政府の姿勢として、もう日本の経済も、高度成長もけっこうですが、一本やりでなしに、問題になっておるような、いまの社会開発といいますか、産業構造の変化に対応する積極的な新しい姿勢を確立することが何よりもまず必要なのではないか。それがないと、単に労働省のあるいは一部局で一つの問題を取り上げるということに終わってしまうので、基本的な姿勢についてひとつ大臣の見解を承っておきたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) まあ羽生さんの言われるように、戦後復興ということでやはり高度成長経済をとるということは、一つのそういう形をとらざるを得ない、これのある程度日本経済の一つのスケールというものが大きくなったわけですから。ここらあたりでいろいろ振り返ってみると、高度経済成長の陰にいろいろなひずみがあるわけです。そういう点で、いま御審議を願っておる第百号条約などに対する、その中に含まれておる男女間のいろいろな待遇問題をめぐって、新たなる今日はやはり考えてみる時期に来ておると思います。それは欧米の社会——アメリカをごらんになてっも、オフィスなんかに行ったらほとんど婦人の人ですわね。日本の場合は、労働不足の時代でなかったですから、婦人の職場というものは欧米諸国に比べたら非常に少なかったです。これからはやはり欧米型になっていくのでしょうから、そうなってくると、これもやはり高度経済成長のひずみの一つだと思うから、単に賃金の問題ばかりでない問題を含んでおると思いますから、男女間のこういう一つの格差、これはやはりお説のように、一労働省の問題としてでなく、全般の政治の問題として取り上げるべきだという御指摘は私もそのように考えまして、これは単にこの条約の批准というだけでなしに、全般的にそういう問題を施策の上に検討してまいりたいと考えております。
○加藤シヅエ君 いま外務大臣の御答弁がございましたから、ちょっとそれに付随いたしまして外務大臣に伺います。 それは、この条約を批准している国は今日まで五十三カ国あるとここに出ております。この五十三カ国という国を見ますと、ソビエト連邦、ユーゴスラビア、ハンガリー、その他社会主義国は概して批准しているわけでございます。社会主義国における婦人労働者に対する考え方というのは、これは資本主義の国とはたてまえが違っておりまして、もう婦人労働者の権利というものを最初から認めて、その権利として平等であるというたてまえ、ことにソビエトなんかでは、科学、それから医者、そうした面にもどんどん女性の力を用いる、また非常によく用いられているというようなのが現実だと聞いております。ところが、いわゆる西欧先進国といわれている国の中でも、スウェーデン、デンマーク、ベルギーその他入っておりますけれども、アメリカも英国もフランスも西ドイツもオランダもたしか入っていないんじゃございませんか。こういうような先進国といわれる国が入っていない。どちらかといえば、開発途上にある国々がここに入っておる。開発途上にある国々がこれを批准して、日本でもまだいろいろ実際には男女平等にはなっていないというところで、いま非常にここに問題が提起されておりますのに、開発途上にある国でこれを批准しているということと、そしていわゆる婦人の地位が非常に高いといわれている欧米先進国といわれる国で批准していないという、これは一体どういう意味があるのだろうか、それを外務大臣から伺いたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) この先進国の中でもフランスと西独とはこれは批准したのです。ただカナダとかイギリス、アメリカはまだ批准していない、国内のいろいろ事情あるのでしょうが。ILOの文書によってこれを見ましても、どうして批准していないのかということは明らかになってないのです、まあ各国の事情によるということで。そういう国々がどういう理由で批准がおくれているという理由はILOの文書等からは何にも指摘をされておらないのでございますが、何かそういう理由が、もし事務当局のほうでそういう理由についてわかっておればお答えをいたすことにいたします。
○政府委員(辻英雄君) ただいま外務大臣からお話しのございましたように、詳細な点につきましてはわかりにくい点がございますが、一例として一、二申し上げますならば、アメリカの場合には、御承知のように、あそこの議会の制度が連邦制度になっておりまして、州議会の承認を一つ一つ取るということがあって、アメリカはこの条約のみならずILOには協力はいたしまするけれども、条約の批准は非常に少ない国でございます。そういう点であろうかと私どもは推察をいたしております。イギリスについて申し上げまするならば、イギリスはやや昔から男女の賃金差というのが比較的おそくまで残った国であります。現在でもあるようでございます。これはむしろ団体交渉で労使がきめるという基本原則が非常に強いために、政府がこれに介入することをずっと避けてきたようでございます。最近になりまして、公務員につきましての男女の賃金差はこの二、三年前に完全にイギリスでも解消をいたしました。まだ民間については多少考え方が違いがある点が残っておるというような事情で批准されておらない、このように理解をいたしております。
○加藤シヅエ君 いまの問題は、これはまだその説明だけではこれはよくわからないと思います。これは非常に複雑な問題があるらしいので、なお今後さらに研究すべき問題であると私は考えております。 で、話はもう少し前に戻りますけれども、日本でこの批准をいたしまして、そしてほんとうにその批准の趣旨に少しでも早く近づく、完全に近づこうとする努力をするためには、この同一価値の労働に対して男女労働者に同一の報酬に関する勧告(第九十号)、この九十号勧告というのが採択されているということを聞いております。で、百号の批准と同時に、この勧告に対しては政府では具体的にどういうようなふうにこれに対処していこうと考えていらっしゃるか、それを伺いたいのでございますが、一つ一つ伺っていきたいのです。 その最初は、この2の(a)で最低賃金のことが書いてございます。最低賃金の問題をはっきりとこれをきめてかからないことには幾らでも抜け道があって、民間企業における男女の賃金格差というものをきめていく、あるいは賃金の水準を高めるということは非常に困難だと思います。この最低賃金の問題については労働当局ではどういうふうに考えていらっしゃるか伺いたいと思います。
○説明員(渡辺健二君) 最低賃金につきましては、わが国に現在最低賃金法があるわけでございますが、もちろん基準法第四条が別個ございますわけでございますから、わが国におきまして最低賃金をきめます場合に、そのきめ方につきまして男女の性別によって差別をするというようなことは従来もいたしておりませんし、当然、今回の条約を批准いたします以上、今後につきましても、この原則に従って最低賃金をきめていく、こういうことで進んでまいりたいと思います。
○加藤シヅエ君 現在の最低賃金法というものは不備をものでございまして、われわれは、産業別の最低賃金法でなければならない、それでなければほんとうに最低賃金法というものの働きがないものであると思っておりますけれども、この百号の批准を契機として、産業別の最低賃金法に是正をしていく、そういうようなお考えはないのでございましょうか。
○説明員(渡辺健二君) この勧告におきましても、別に最低賃金のきめ方を産業別にすべきであるとか、あるいは職業別にすべきであるとか、そういうようなことまで触れておらないわけであります。ただ、現行の最低賃金法におきましていろいろ問題がございまして、ただいま加藤先生おっしゃいましたとおりでございます。政府も、数年前から現行最低賃金法の根本的な検討を中央最低賃金審議会にお願いをしてまいっているわけでございますが、先般同審議会から御答申がございまして、その御答申の趣旨に沿いまして、ただいま最低賃金法の一部を改正する法律案といたしまして、今国会に政府提案として上程をいたし、御審議をお願いしているところでございます。
○加藤シヅエ君 最低賃金法の問題は、社労においてまたさらに取り扱っていただくこととしまして、それ以上私は伺いません。 先ほどの勧告の問題に戻りまして、今度は勧告の第6の中に、「女子労働者の生産能率を高めるため適当な措置を執るべきである。」と、こういう勧告があるわけでございます。その中に「男女労働者が職業指導、雇用相談、職業訓練及び職業紹介」云々ということ。それから、そういうことを奨励すること。それから三番(c)に、特に女子労働者の扶養家族を持っているものの必要を満たすための福祉社会施設を設ける、こういうような問題について勧告がいろいろ書かれておるのでございます。この勧告文をもとにしてどういうような具体的にさらに処置をとろうとなさっていらっしゃるか、それを聞かしていただきたいと思います。
○政府委員(高橋展子君) それでは、勧告の条項に沿いましてお答え申し上げます。第6条の(a)項は、職業指導、雇用相談等につきまして、男女が同一のあるいは同等の便宜供与ということを言っているわけでございますが、この点につきましては、先ほど官房長からも申し上げたように、従来から労働省で行なっております職業指導、職業訓練等におきましては、男女を差別することなく平等に機会を与えているところでございます。今後ももちろんその線で参るわけでございます。特に第6条の(b)項では、さらに女子につきましてその便宜の利用を奨励するというような積極的な線がうたわれているようでございますが、この点につきましても、すでに従来から、たとえば職業安定所におきましても、特に婦人のための相談の係官を配置する等の措置を行なっておりますが、今後は一そうそれを強化してまいりたいと思っております。また女子の職業訓練につきましては、従来から一般の職業訓練計画以外に、女子のための特別な訓練といたしまして、家事サービス訓練等を行なってまいっておりますが、今後はさらに、先ほど先生の御指摘のありましたような、中高年の婦人の再就職ということのために、より、適当な訓練計画を進めてまいりたいと、ただいま立案中でございます。それから(c)項の福祉施設でございますが、これは特にここで意味しておりますことは、幼児を持つ婦人労働者ということが想定されているようでございますが、その点につきましては、いわゆる育児施設といったものが非常に重要であるということになるかと思います。この点につきましても、従来から保育施設の増設につきまして、厚生省と連絡をとりまして推進してまいったところでございますが、今後ますますそれを行なってまいりたいと思います。 さらにまた、働く婦人の福祉を総合的に満たすような施設といたしまして、従来から、「働く婦人の家」といったものを都道府県に国庫補助で設置してまいっております。これを今後さらに増設してまいりまして、特に中小企業等に働く婦人たちが、その職業上の能力を高めるとともに、その生活の面における環境が整備されて、安心して働ける、そのような措置を進めてまいりたい、このようなことで、ただいまやはり立案いたしております。
○加藤シヅエ君 この質問で最後にいたします。 いまの高橋局長さんの、婦人少年局としていろいろ努力をしていらっしゃること、さらに今後一そうそれを高めていただきたいことを要望いたします。 いまの御答弁の(c)の中で、「特に扶養家族を持つものの必要を満たす福祉社会施設を設け、」云々と書いてあって、そうして、それは「一般公共基金又は、」——それから飛ばしまして、「社会保障若しくは産業福祉基金によって前記の便宜の費用が負担されること。」と、こういうことが書いてあるわけでございますね。この「社会保障若しくは産業福祉基金によって前記の便宜をはかる」ということは、これは拡大解釈すれば、国家の、公の費用でこういうことのめんどうを見る、こういうふうに解釈を私はしたいと思うのでございます。また、されるべきだと思います。それで、そういうことと見合いまして、特に扶養家族を持つ婦人労働者の問題は、いま一番大きく全面的にクローズアップされておる問題でございます。そこで、社会党といたしましては、ここに女子教育職員育児休暇法案というものを文教委員会に提出しているわけでございます。これは現在の事情に対して非常に適切な法案だと私どもは考えてこれを提出しているわけでございますが、この全体の雇用者数の中で有配偶者の占める率が三五%、そうして勤続年数も長くなっているということを考え、ことに教育界におきましては、これは一つの熟練を要することであって、どんどんかえていくというような、ほかの製造業とはまた質の変わった面がございます。この熟練した婦人女子教員というものを大切にして、長く職場で働いてもらわなければならないということは、これはいま日本の国家的な要請だと思います。それに対しまして、十分に現在はこたえていないために、女子教員が、既婚者は妊娠、出産、育児というような問題に遭遇いたしますと、やむを得ず職場を去らなくてはならない。あるいは産前産後の休暇がございますけれども、その間も非常に心配しながら遠慮しながら休暇をとる。しかも、産前産後の六週間というものは、ほんとうに十分に休暇ができないわけでございます。それで、現在女子教員の出産状態がどうなっているかということがここに調べられております。公立小学校、中学校、高校の女子教員二十三万人の中の約二万人が昭和四十年に出産している。出産率は八・六%、こういうふうに、出産をするために女子教員たちはどういうことをしているか。いま法律で許された産前産後の休暇というだけでは十分でないために、子供がまだ小さいけれども、家庭でこれを見てくれるような適当な人がもしいない場合には、たいへん高いお金を払って育児、託児所その他に預けなければならない。あるいはそういう適当な場所がないから、あまり適当でないような場所に預けて何か事故が起こったというようなこともたびたび報道されている。そういう不安の中に女子教員が置かれているわけでございます。これはもう緊急にこういうような状態は直さなくちゃならないので、この百号の批准の精神からいっても、これを具体的に取り上げる必要があると私は考えます。 この法案の特徴といたしますところは、保育休暇という制度を新しくきめてほしいということでございます。ただ、いままでの産前産後の六週間というのではなくて、保育休暇というのを一年間ほしい、こういうことでございます。電電公社でも、当局と組合との協約で、この保育休暇というのを向こう三カ年間テストケースとして実施をしているそうでございますけれども、その電電公社でやっている保育休暇は、休んでいる間は無給でございます。したがいまして、三年間もお給料をもらわないで子供を育てているということは、今度は経済の面から許されなくなって、せっかくのこういうテストをやっているけれどもうまくいかない。ほんとうに熟練した婦人労働者というものを大切にしょうと思うならば、この保育休暇を、ここにある案は、一年間で、その間給料の八〇%を払ってほしい、それから、もとの職場に復帰するときには無条件で復帰できるようにしてほしい、それから、一年間保育休暇をとっている間、気がねなしに安心できるように自分にかわるべき教員をちゃんと正規に補充してほしい、こういうような要求を掲げておりまして、これは非常に大切なことである。ただ教育界で大切なだけではなくて、いまの日本が直面している婦人労働事情においてこういうことが非常に大切である。そのまず手初めに女子教育職員育児休暇という法律を社会党で出しているわけでございますが、これはほんとうは労働大臣から答弁願いたいのでございますが、政務次官、ひとつ大臣のかわりに責任ある答弁を、こういうことはほんとうに妥当であるとお思いにならないかどうか。もしお思いにならなかったら、これは非常に不思議なことだと思うのでございますが、お思いになるならお思いになるとはっきりここで答弁していただきたいと思います。
○政府委員(海部俊樹君) 御指摘のように、婦人労働者の方々のいろいろな問題が起こっていることは事実でありますし、私も、・一度おっとめになっておやめになった中高年の御婦人の人が、いまパートタイムという形でいろいろな職場にさらに進出をしていらっしゃる事態もよく承知をいたしております。特に具体的には、先生御指摘の、産前産後の休暇が六週間では短過ぎるではないかということでございますが、私もそれに対して責任ある明確な答弁はできないのでありますけれども、ただ前後六週間というのは短いといえば短いじゃないか、こんな気持ちがいたします。大臣にこの状況を私は正確に伝えまして御判断を仰ぎたいと思います。
○岡田宗司君 せっかく政務次官が大臣のかわりにおいでになっているのでひとつお伺いしたいと思います。 それは、この条約の第二条の2に、「この原則は、次のいずれによっても適用することができる。」、(a)が、「国内法令」、(b)が、「法令によって設けられ又は認められた賃金決定制度」、それから(c)が、「使用者と労働者との間の労働協約」、(d)が、「これらの各種の手段の組合せ」、こうなっておりますね。本来なら、私は、この条約が批准をされて日本でもこの条約に従うということになれば、同時に国内法がつくられなければならぬと思います。ところが、その点については、この説明書によりますというと、労働基準法があるから国内法は要らないということになっておりますね。それじゃ私不備だと思うのですよ。いままで労働基準法が行なわれてきて、その格差というものは依然としてずっとあるのでしょう。だから、その基準法を直していくかあるいは別な国内法をつくるかしなければ、この条約を施行することはできないと思うのですが、一体どういうふうにしておやりになるつもりですか。
○政府委員(海部俊樹君) この条約を批准いたしまして直ちに抵触する国内法は、御承知のように、ないわけでございまして、労働基準法も、地方公務員法も、すべてこの法律に規定しますところは、女性なるがゆえに差別をしては絶対にいけないという大前提できまっておるわけでございまして、新たに立法措置を国内的にとらなければならないとは考えておりません。さらに、昭和三十五年当時には、男女の賃金格差は、中学卒業の初任給を見ますと、約五%の差があったのでございますが、その後だんだんこの格差が、今日ではほとんどゼロに近づくまで狭まってきております。ただ問題は、高年齢になればなるほど、たとえば勤続年限の問題であるとか、職業上の性質の問題であるとか、いろいろな相違がございまして差ができておりますので、これは、この条約を批准する以前にもそういった格差の是正というものは現実に今日の国内法の体制の中で行なわれてきておりますので、法律改正ということではなくて、その条約の精神を生かして指導その他の施策の面で前向きに全力をあげていきたい、こういう見解でおる次第でございます。
○岡田宗司君 いまの日本の国内法が男女の賃金の格差を認めてないという前提に立っておる、だから法律の改正は要らないのだと言うけれども、いまの法律は、現実にある賃金格差をなくすというためには何の役にも立っていないのでしょう。それはどうですか。その点は労働次官お認めになりませんか。
○政府委員(海部俊樹君) ただいまの男女賃金格差の比較というのは、たとえば、女子はその危険を除くために就業してはならないという職種もございまするし、男女そのものの平均値を出しますと、確かに非常に格差も出てまいりますけれども、法律によってその格差を是正するような努力は、行政指導その他で行なっておるわけでありますし、これからもやっていけると考えております。
○岡田宗司君 いや、私が聞いているのは、いままでの法律で男女の賃金の格差を認めてないという前提に立っているならば、この法律が施行されれば、施行されておれば、格差のないというのが現実でしょう。ところが、現在の法律ではこの格差をなくすことはできないから、格差があるのでしょう。そういたしますと、今後この条約が施行されて、たとえば、中小企業等でそのまま初任給から違いがある。その違いを直さすために、単に行政指導だけで済みますか。もし、これが格差があった場合に、そういう格差をなくすために罰則を設けるとかなんとかいうことをしないで、どうしてこの条約の精神が生かされていますか。そこをお伺いしているのです。だから私は、国内法というものを改正しなければならぬ、こう思うのですが、国内法を改正しないで、いままでのとおりでもって行政指導でやってまいりますというのならば、私は例をあげますよ。労働基準法というのがあって、いろいろとむずかしい規定がある。あんなもの行なわれてないじゃないですか。ずいぶん違反が多いということは、これは労働省でもお認めになっているでしょう。だから、この賃金の問題だって単に行政指導でやってまいりますというならば、それは私に言わせれば、労働基準法が守られていないと同じだと、こう思うのですよ。だから、労働省としては、当然これによって国内法をやはり直さなければならぬ、こう考えるのですが、その点どうお考えですか。これは政務次官ひとつ大臣のかわりなんだから、答えてください。
○政府委員(辻英雄君) 初めに私から事務的に御説明させていただきます。 先生御指摘の、この条約二条にもございますように、この条約の趣旨は、御承知のように、同じ価値の労働について男女の区別をしてはならぬということでございまして、この条約を批准いたしました場合に、これを実現する方法は非常に幅広く認められておりまして、国内の法令の場合、あるいは法令によって認められた賃金制度でやっていく場合、あるいは労働協約でやっていく場合、その他の手段、どの手段でもよろしいというのが条約の本旨でございます。ところが、わが国の場合には、むしろこの中の一番強い手段でございますところの、直接の法律によって男女同一賃金を規定するという手段がすでにとられておる、こういうことでございまして、条約との関係におきましては、決して法律の改正が必要であるということはないということでございます。ただし、先生おっしゃいますように、格差という問題は、男女同じ労働者が同じ仕事をしておっての格差があってはならないというのが事実でございますけれども、現実には、いろいろございます差は、これは御承知のように、職業の種類による差、あるいは熟練度による差という本来的な諸外国にありますような差もございます。そのほかに、日本独特の賃金体系でございます年齢とか動続年数とかということから機械的につくられる差もございます。そういう部分はこの条約は直接には触れておらないわけでございまするけれども、この勤続とか年齢とかの差というのは、この条約では否定はいたしておらない。しかし、いまの男女同一賃金の本来の理想とするところに従えば、先ほど申し上げましたように、女子の職業訓練をする、その他女子の実質的な労働の内容を高めることによって、結果的にも同じようなものになるように持っていくことがこの条約の本来の理想とする方向である。そういう趣旨から申し上げまして、この条約批准を契機といたしまして、先ほど申し上げましたようなことを一そう進めてまいりたい、こういうことでございまして、決して現在の法律を改正しなければ批准ができないということはないというふうに私どもとしては考えております。
○岡田宗司君 そんな御答弁じゃどうも納得できませんがね。それじゃお伺いいたしますが、現在この条約が批准されて、そうして国内においてもこれに基づいて、この精神に基づいて男女の同一価値の労働に対する、同一質の労働に対する同じ賃金が実行されるということになったとするのですね。ところが、現実に差があるという場合に、たとえば、その低いほうの女の人から、これじゃ困る、これは条約の精神にも反するじゃないか、こういうことで訴えがあったならば、どこで受け付けてどういう救済措置をとるんですか。
○政府委員(辻英雄君) 先生、訴訟のことをおっしゃったかと存じますが、民事訴訟で争われました場合に、同一の価値の労働に対して女子なるがゆえに差別をつけたかどうかということの具体的判断によっていまの具体的ケースがはたして法律違反であるのかどうかということが決定されるかと存じます。
○岡田宗司君 そういたしますと、男女の同一労働ということの判定が非常にむずかしい、そうしてまた、微妙な差があってもそれが賃金の差になってあらわれてくる、こういうことになると、現実にはもう男女の同一賃金ということは事実上はないのだ、こういうことになって、この条約というものはただおていさいのために批准をする、こういうことになるんじゃないですか。それが実際には、国内におきましては、依然としていまのままの状況が進んでいくということになる。もし実際に男女の同一賃金をかちとろうとするならば、これは労働組合等の力によってその実際を実現していく以外にはないということになって、行政官庁としての労働省の実際上の措置によって何らそれが実現されることはない、こう考えていいのですか。それだけの力がありますか、労働省に。
○政府委員(辻英雄君) 先ほどから申し上げておりまするように、具体的ケースによって判別すべきことが最終的には起こってまいろうかと思います。その場合に、もちろん先生おっしゃいますように、基準法あるいはこの条約の趣旨のように、同じ仕事に対して差をつけておるということがあれば、当然これは基準法違反として罰則も科せられるわけであります。ところが、そういう同じ労働が、たとえばはたして同じ労働であるのかどうかという具体的ケースの比較の問題になってまいりますと、率直に言いまして、むずかしい場合も出てくるかと思います。そこで、条約では三条の中に、職務の客観的な評価を進めることが必要であり、この条約の趣旨を達成するような場合にはそういうことをやりなさい、こういうことを申しております。これはこの条約のみならず、今後の労働の近代化という意味で、客観的な職務分析、職務評価というものは、民間の労使の間でもいろいろ論議になっておりまするけれども、労働省としても、そういうことはそれ自体として逐次やってまいるべきことだと考えておるわけでございます。
○岡田宗司君 そこで今度第三条に移りまして、いまあなたの言われた問題なんですけれども、そういう客観的な評価というものがきめられなければならないと、それを一体労働省でどれぐらい準備しているんですか。これがなければ困るというのならば、これの準備がなければ、この条約は精神だけ行なわれても実際に行なわれないことになるでしょう。それは進んでいるんですか。
○説明員(渡辺健二君) この条約は、第一条の二で、定義といたしまして「「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬」とは性別による差別なしに定められる報酬率をいう。」ということで、男女の性別による無差別ということを規定いたしております。ただ日本の場合には、賃金体系が、御承知のように、従来は年齢であるとか、学歴であるとか、勤続であるとか、主として仕事によらないで、そういう属人的な要素によって賃金がきめられるのが一般的な賃金慣行として行なわれておったわけでございます。そのために、別に性別による差別でなしに、勤続が違うとか、学歴が違うとか、もちろん仕事が違うとか、これは男の中でも勤続が違えば違ってくる、こういう問題があるわけでございまして、女子が一般に勤続が短いとか、あるいは男子に比べて年齢が低い人が多いとか、そういうことで全体的にああいう現在見られるような差別ができておるわけでございます。そういう性別による差別以外のことはこの条約の直接規定するところではないわけでございますが、ただ、日本におきましても、最近はいろいろ労働力の需給関係の変化あるいは技術革新等によりまして、従来の年齢や動続、学歴等によるいわゆる年功序列賃金というものだけではいろいろ実情にそぐわない状況が出てまいりまして、実際の労使間におきましても、そういう要素以外に、仕事によって賃金をきめるというような、仕事の性質、労働者の能力によって賃金をきめるという傾向が出てまいっております。そうなりますと、今度はそういう年齢や勤続によらない、仕事による賃金でございますから、今度は、仕事につきまして、その仕事がはたして同一価値であるのかそうであるのかそうでないのか、そういうことが問題になって、しかも仕事が同じなのに賃金に差があるということになりますと、それは性別による差別でないか、こういう問題が出てまいるわけでございます。したがいまして、日本でもようやくそういう仕事や能力によって賃金というものが最近数年徐々に出てまいっておりまして、それに応じまして、民間でも職務評価とか職務分析、こういうことが出てまいっておるわけでございます。労働省におきましても、そういう職務や能力に応じた賃金というのは、わが国の経済の趨勢からいたしまして好ましい方向であると考えまして、たとえば労働省の中にも学識経験者からなる賃金研究会といったようなものをつくりまして、そういう仕事に応じた賃金、能力に応じた賃金、それについてはどういう要素によって職務の評価をしたらいいかといったような研究をし、逐次そのレポートなども出しまして、民間にそういう賃金制度の方向へ向かっての勧奨等もいたしておるわけでございまして、今後民間においてもそういう傾向は強まると思いますので、この条約の精神からいたしても、私ども一そうそういう措置を促進してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
○岡田宗司君 まだお聞きしたいことがあるので、この次にさしていただきますが、ひとつ資料を要求したい。それは男女の賃金の比較なんですが、これは中卒、高校卒、短大卒、大学卒ですね、それの初任給です。それから三年たったらどれくらいの差があるか、五年たったらどれくらいの差があるか、十年たったらどのくらいの差があるか、それをひとつ表にして出していただきたいと思います。で、またそれに基づいてこの次に質問いたします。
○羽生三七君 質問じゃないですが、不規則発言になるけれども、これは国際人権年慶祝行事ということになるんですね、実際にそういうことですね、いや、これは質問じゃないから。
○委員長(赤間文三君) それでは、他に御発言もなければ、二案に対する質疑はこの程度といたします。 —————————————
○委員長(赤間文三君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(赤間文三君) 速記を始めて。 御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
○岡田宗司君 三木外務大臣がバンコクでのASPACの会議においでになりましてお帰りになったわけでございますが、私どもは新聞で、三木外務大臣がASPACを反共的な組織にしたくないということでたいへん苦心をされたということに対しましては大いに敬意を表するわけでありますけれども、まあ、共同コミュニケを読みますというと、そういう大臣の苦心のあとがあらわれております。私どもとしては、なおどうもあのASPAC自体についてそう疑念を払うわけにはいかぬ問題が残っておると思うんです。で、まず第一に、ASPACにおいて外務大臣がなされました演説は、これは公表されておりませんので、したがって、その御趣旨がまだ私どもに十分にわかっておりません。その演説の内容についてと、それから、その演説に対する各国の反響はどうであったかということ、それと、特にそのうちにおいて反共の色の強い韓国とか国府とかフィリピンとか南ベトナム、そういう国々の反響がどうであったかということについてお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(三木武夫君) 御承知のように、非公開でされた演説ですけれども、私の言った趣旨は、このASPACというものは、特別な政治的な立場、これで統一するような会議であったならば、何かASPACの将来の基盤を狭くするのではないか。だから、おのおのの政治的立場の違いはあっても、みなが自由に率直に話せる場にするほうがやはりASPACの将来の行き方としては堅実なのではないか、まあ、こういうので、このASPACというものをお互いの理解を深める一つの場にしようではないか、外務大臣がせっかく集まるんだからと、これが一つの問題。もう一つは、アジアの民族主義の問題に触れて、これは各民族の大きな資産ではあるけれども、これがあまり偏狭な民族主義ということであってはアジアの発展の阻害になるのだから、この民族主義は、やはり地域協力もできあるいは国際的な協力もできるような啓発された民族主義というものに発展していくナショナリズム、民族主義でなければならぬのではないか。また、共産主義に対しては、日本はどこの国とも平和で行きたいということを願っておる。したがって、外交の基調は平和共存なんだ、しかし、平和共存といっても相手のあることですから、やはりその平和共存というものについては現実の政策としてはいろいろな段階があることはやむを得ない。しかし、共産圏諸国との間にも、できる限り平和に暮らしていきたいと思っておる。中共に対しても、日本側からは、やはり平和に共存していきたいんだ、しかし、中共はいま、自分の友好国だけとは平和共存するけれども普遍的には平和共存という政策をとってないが、まあこれが、長い年月をかければ中共のいまの考え方にも変化が来るであろう、したがって、日本とすれば、こちらからは平和に共存していきたいという政策をとるが、相手のあることであるから、現在においては現実に即した政策をとるよりほかにはない、まあこういう趣旨のことを申したのでございます。
○岡田宗司君 これに対して、おそらく他の国の外務大臣の受け取り方といいますか、それは非常にまちまちだったろうと思うのです。で、特に反共色の強いベトナムに軍隊を送ったりあるいはいろいろな点で協力をしておる、そういう国々の三木外務大臣の演説に対する反響はどういうものであったかということをまずお伺いしたい。
○国務大臣(三木武夫君) やはり集まってきた国々、これは共産勢力と直接対峙しておる国が多いですし、したがって、アジア情勢全般も不安定でありますし、また、そういう国々が建国以来日も浅いし近代化も進んでいませんから、したがって、国の安全を確保するということについては非常にきびしい考えを持っておることは当然で、共産主義に対しても、そういう直接対峙しておる国はきわめてきびしい考えを持っておることもこれは当然だと思うのです。しかし、われわれも、私も言ったんですが、日本も共産主義とイデオロギーとしてはわれわれも妥協できるとは思わぬし協賛もできるとは思わないが、しかし、共産国に対しての態度というものは、その国の条件下、環境によってみな違う。現に東南アジア、東欧との間には正式の外交関係をわれわれ結んでおる。中共に対してでも、やはり中共がどこの国とでも平和に暮らしていこうと、国際的に協調しようという中国になれば、これは平和に共存していくことに対して何らわれわれは異存はないんだ、賛成なんだと、こういうふうなわれわれの考えで、その間には開きがあるんですね。開きがある。したがって、考え方というものに対して開きはあるけれども、その開きというものが一つのこういう問題に対して、これを思想を統一しようという会ではないですから、みな立場を言い合ってそこで理解をするということの場であって、その考え方を、たとえば共産主義あるいは共産国に対しての態度をASPACの場でこれを統一するということは、私はできもしないし、よくないことだと思う。だから、お互いに立場を述べ合ったということで、みなお互いに賛成はできぬという考えも持ったでしょう。しかし、みなそういう考えなのかという理解は深めたけれども、意思統一をする会ではないですから、みなそれぞれよその国の態度に対して理解を深めるという程度でありましたが、しかし、一方のほうのアジアの貧困の問題、アジアの経済開発、社会開発という問題については、これは共通の課題ですから、こういう安全の確保から、問題の重点が、むしろ貧困の克服という問題に移っていった。共通の問題としてみなが一番重点を置かれた点は、そういう点にあったわけでございます。
○岡田宗司君 外務大臣が中国との平和共存という線を打ち出されたわけでございますが、おおむね他の諸国は現在いわゆるアジアの共産主義、特にその中心に立っている中国と深い対立関係にある。したがって、外務大臣の言う意見は多数の支持を得るに至らなかったろうと想像されるわけですが、この会議においておそらく韓国その他の国々は南ベトナムを支援し、そして南ベトナムが北ベトナム並びにベトコン、その背後にある中国なりソ連に対して優位に立つということを考えておったろうと思うのです。そういう発言が非常に多かったろうと思うのです。つまり、ベトナム戦争の解決については、やはりその反共国家が団結をして、打ち勝っていくという立場を強く押し出してきただろうと思う。しかし、おそらく外務大臣はそういう考え方には賛成なさらなかったろうし、また、ベトナム戦争が今日アジアの不安定を招いておる以上、ベトナム戦争についての平和的解決ということで、日本側からその方針なりあるいは多少具体的な案を示されたのではないかと思うのですが、その点はどうされたのか、そうしてまた、それに対する他の国の反応はどうであったか。
○国務大臣(三木武夫君) この問題は、ああいうベトナム戦争が行なわれておるさなかの会議ですから、非常な関心を呼びましたが、私のほうからベトナム戦争に対して平和的解決というものの具体案というものは示しませんでした。ただ、平和的な解決をして一日も早くこの戦争に使われておる膨大な精力が平和建設のために使われるような日が来ることを願っているのだという、日本国民の平和実現への強い希望を伝えばいたしましたけれども、こうやったならばベトナム戦争は片づくであろうという具体的なそういう案は申しませんでした。
○岡田宗司君 ASPACの問題と直接関係ないのですが、いまのベトナム戦争の解決の問題との関係ですが、実は外務大臣がバンコクへお出かけになっている留守に、青木大使がジュネーブから帰って、そうして新聞記者会見で、この秋にジュネーブにおいて何らかの話し合いの行なわれるようなことがあろうという意味の発言をしておられるのです。そのことについて外務大臣は何か報告を受けられましたか。
○国務大臣(三木武夫君) 私も帰ってきてちょっと新聞を拾い読んだらそういうふうな記事がありました。しかし、青木君とはまだ会ってないのです。きのう外務省の記念日であったので顔を合わしたが、青木君と近いうちに話そうということで、本人から直接話を聞いておりませんから、そういう記事については、特にこういう問題については私は直接本人から聞く必要があるので、いまのところは何も確かめておらないということを申し上げることが適当だと思います。
○岡田宗司君 とにかく非常に微妙な段階にあるときに、ジュネーブに駐在しておられる青木大使が帰ってきて、新聞記者会見であれだけのことを言われたというのには根拠がないことではない、私はこう考えておるのです。何らかの動きをかぎつけられたか、あるいはまた、それにタッチされておるというふうに考えられるので、これは私やはり重要な示唆であろうと思います。で、この点について報告を受けました後にまたお伺いしたいと思うのです。 それから次にお伺いしたいのは、総理が韓国を訪問された、また別に台湾を訪問され、それから南ベトナム訪問が行なわれるということで、この一連の反共国家に対する訪問が、何か日本の国民に、いよいよ反共国家の仲間入りをするのではないかという印象を与えておると思うのでございます。そうしてまた一方において、三木外相が中国との平和共存をASPACで唱えられたということは、二元外交というような印象を与えておるように思のであります。もちろん、いや、決して二元外交でない、こう言われるだろうと私は思うのでありますけれども、方針がおのおの別々であって、一つの内閣の外交方針が首相と外務大臣と違うということはおかしな話で、私どもとしても、そういうことはないのだと思う。そういたしますと、今度はもとでもってちゃんと話し合って、お互いの向ける顔が違うという、二元外交でなければ今度は両建て外交、こういう印象も受けるのでありますけれども、両建て外交でしょうか、どうでしょうか。
○国務大臣(三木武夫君) そういう批判は非常に心外に思うのです。それは総理でも私でも、おそらく皆さんもそうだと思うのですが、中国との関係でも、長い長期的な視野に立ったらば、これと何とか平和に生きていこうという考え方が国民のやはり考え方でないでしょうか、長期的に見れば。これは一緒に平和的には生きていけない相手である、これは戦争でもしなければならぬというふうに、そういうものの考え方に、健全な国民の良識というものはだれも賛成する人はないと思いますよ。しかし、平和共存と言ったところで、これは長期的な視野に立てば、これは国民の願いである。しかし、また中共はどこの国とも平和に共存していこうという政策をとっていないですから、現在の段階としては、現実政策としては従来とっているような政経分離の方針で中国と接触していくんだ、私は、この考え方というものは、総理、外務大臣の間に違いがあるわけはないと思いますよ。自民党の、あるいは社会党の皆さんでも、同じようなこの考え方でないかと思います。そういう点で、こういう国民の良識の上に立った一つの考え方を私も発言し、総理も、どこの国ともやはり敵視しないで仲よくしていきたいのだ、そういうことをしばしば発言を国会においてもしておるのですから、どこの国とも仲よくしていきたいという考え方は、その考え方の根底には、どこの国とも平和に共存したいということですから、違いがあろうはずはないのですよ。こういう考え方に違った政治というものはできるでしょうか、私はできないと思いますよ。長期的に見たら、いまはなかなかそういうふうな考え方になってこなくても、早くなってもらいたいと、そしてみながよその国の立場を尊重して、よその国に対して内政干渉をするようなことをしないで、みながお互いに共存しようではないか。もし共石できるものであったらば、ほかのことでみなが競争していったらいいではないか。人類を幸福にするための競争をやるなら、これは害はないですからね。こういう国民の願いというものが今日の政治をやる者の基本でなきゃならぬ、そういうことを私はASPACにおいても言ったのです。そういうことで、総理と外務大臣との問に考えが違やせぬかということは、そういう声が出るのすら心外に私は思っています。これ以外に日本の生きる道はない。日本は力でこれからやっていこうという国じゃないのですよ。日本の憲法から見たところで、そういう力で世界の政治の中に乗り出そうと言っている国ではないのですから、こういう考え方でいくよりほかないと、私はASPACで、特にあすこだけでそういう発言をしたのでないのです。私はどこにおいてもこういう発言をいままで何年もの間繰り返しておるので、これは特にASPACの場をかりて言ったのではない私は日本の国民の考え方もおそらくそうであろうと考えますから、率直な意見として述べたものでございます。 またもう一つは、総理がそういう韓国とか台湾その他東南アジアの旅行を、岡田さんいろいろおっしゃいますけれども、良識をお持ちになる岡田さんの発言としては私は受け取れない。もし総理が韓国と台湾その他南ベトナムだけを訪問するというならば、これは政治的な意味がある。しかし、総理が行こうとするのはアジアの全部の国を訪問しようとするわけです。したがって、日程の都合で前になったりあとになったりすることはこれはあり得ることですから、だから、今度訪問するというのは、カンボジアのような国もありますし、ラオスもあるし、インドネシアもあるし、シンガポールもある。かなり反共国家というのにしてははだ合いの違った国がありますからね。そういう国はみな日本と国交を回復している国なんです。大使を交換しているのですから、大使を交換しているということは、その国の立場を尊重しているということですからね。おれは気に入らぬとか気に入るとかいうわけじゃないんですから、大使が行っているのですから、その国の主権者の意思を尊重してその国とおつき合いをしましようということで外交関係を開いているのですから、その中でより食いしていくなら、岡田さんの言われるとおりですが、より食いでないのです。だから、やがて総理はまたソ連へ行かれることもあるでしょう。そうしたら、共産国へ行っておまえはけしからぬ、少し外交関係が左回りになったのじゃないかと、そういう批判も当たらないと同様に、やはり国交を回復しているものは、その国の立場というものを尊重して合って、総理が首脳部といろいろ話し合いをするということは、私は特別な意味を持たさないで、野党の方々も、これに何か特別な意味を持たすと、その旅行というものが、せっかくあれだけの月日をかけてせっかく回ろうというのですから、その総理のアジア旅行というものが国のためになれと、しっかりやってこいという立場が良識を持つ岡田さんの立場でなけりゃならぬじゃないでしょうか。(笑声)
○岡田宗司君 まあ共産圏を除いたアジアのすべての国を回るのだから、これは特別の旅行でないのだと、こういうことですけれども、とにかくいままで日本の総理大臣として全然行ったことのない国に、まあ三国に行かれることになるのです。ほかの国も回ると言われるけれども、やっぱりカムフラージュという手もありますし、水で薄めてその色をぼかしていくという手もあるでございましょう。だから、私どもはどうもそういう手じゃないかという印象を受けるのです。それに、全部の国を回るのだからいいじゃないかといっても、受けるほうの感じというものがこれはまた大きく違ってくると思います。私どもはどうも良識のないほうですから、偏見を持ってあるいは見ておるかもしれませんけれども、国民のうちにも、いや自民党の中においてさえ、どうも今度の総理の訪問というものは何か特別な関係をつくり出していくんじゃないかというような印象を受けておる人がいるんです。これはもう単に宇都宮徳馬君だけじゃなくて、もっとあなた方に近い立場の人のうちにおいてさえあるわけなんですから、したがって、どうも良識のないのは私一人じゃなさそうなので、それはそれとして、私どもの受ける印象は二元外交という面、で、三木外務大臣のプッシュされているような面がさらにこう発展させられていくならばたいへんこれはおもしろいことだと思うのですけれども、しかし、今度は総理の韓国訪問から始まるそういう動きによりまして、あるいはバランスをとるというのか、あるいは足を引っぱるというのか、そういうことになって、今度は三木さんのそのにこにこしているお面が落とされて、下から鬼のお面が出てくるようなことになると、これはまた国民の受ける印象、また諸外国の受ける印象、そうしてそれが日本の外交に及ぼすいろいろな影響というものを考えますときに、私どもは、もうおきめになったから、私どもが言ったからといっておやめになるとは思いませんけれども、反対ということを言わざるを得ないわけなんですがね。
○国務大臣(三木武夫君) これは私は、岡田さん、率直にこう思うのですよ。日本の総理大臣になった人の心境、一番にやっぱり国民に責任を負うのは、何とかしてやっぱり日本の国は平和を維持したい。これはもう総理大臣の最高の責任。その方法論についていろいろと野党の諸君との違いもあるでしょうが、平和を維持したい。この九千万の国民に対して負うておる責任の最大のものだと思いますよ。その気持ちは佐藤さんの場合でも、平和に徹する、平和に徹すると、私からでも、これはもう何十ぺんと言いたいですね、それを聞きましたよ。それはもうほんとうにやっぱり総理大臣というものが何とかしてこの平和を維持したいということで一ぱいだと思うのですよ。だから、いろいろと少し野党の皆さん疑い深いのじゃないでしょうか。日本の総理大臣が戦争の道を歩むような総理大臣は絶対に許されない、今日の日本で。やはり平和の道を探求する以外に総理大臣というものは国民に対して果たす責任はないのですから、あまりそう疑い深くならないで、こういう外国旅行などを、総理がわざわざ広く回ろうというのですから、しっかりその効果をあげるようにやっていらっしゃいというように、これはやはり送るような雰囲気が与野党の間にできることを私は心から願うものであります。それで結果としていろいろないわぬことができたら、それは指弾していいですよ。しかし、行くときには、どうかやはりしっかり総理がアジア諸国との友好親善関係を増進するためにその旅行が成功することを祈るという雅量がやっぱり要るのじゃないでしょうか。これは行く者にしても、行く前においていろいろ言われると、何か与野党の間に、その結果として批判が起こってくるのはいいのですよ。その前は、やっぱりどうでしょうかね。国交を回復しておる国ですから、回復しない国に別に特により好みで行くのでないですから、どうか良識のある岡田さん、どうかそういうふうな政党政治というものができますことを、私は心から願っておるものであることを申し上げておきます。
○岡田宗司君 一言でおしまいにしますが、この間の総理の韓国訪問は、あれは儀礼的訪問だと言うが、そうして四カ国の首脳部の会談が行なわれ、そうしてこれの批判があると、すぐに夫人同伴だからといって、あわ食ってごまかす。ああいう態度が私どもよけいに疑惑を増させるのですよ。だから、これはもうすっきりしたものだというふうなことを私どもに信じさせるようなことをやっていただいておればいいのだけれども、そうじゃなくて、私どもに疑惑を持たせるようなことばかりをおやりになって、そうして、いや、そうじゃないと言われても、私どもは納得できない。そのことだけは申し上げておきます。
○委員長(赤間文三君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑はこの程度といたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時四十分散会 —————・—————