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52回国会衆議院1966/07/27

科学技術振興対策特別委員会 第3号

発言数
44
登壇者
10
会派数
2
開催日
1966/07/27

会議録

原茂日本社会党

○原委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  まず最初に、参考人出頭要件に関する件についておはかりいたします。  素粒子大型加速器設置に関する問題調査のため、本日、東京教育大学教授朝永振一郎君、東京大学原子核研究所教授熊谷寛夫君、同じく諏訪繁樹君、同じく三浦功君を参考人として意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原茂日本社会党

○原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。      ————◇—————

原茂日本社会党

○原委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用のところ、本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。どうかそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。     —————————————

原茂日本社会党

○原委員長 御意見の聴取に入る前に、朝永振一郎博士のノーベル物理学賞受賞を祝しまして、一言お祝いのことばを申し述べたいと存じます。  朝永博士は、昨年十二月十日、量子電磁力学の分野における基礎的研究の功績を認められまして、一九六五年度ノーベル物理学賞を授与されたのでありますが、このことは湯川博士に続く二人目の受賞であり、同じ素粒子部門という点において、日本の素粒子物理学の水準の高さを世界に知らしめたものであり、日本人すべてが心から誇りとするところであります。  本日参考人として当科学技術振興対策特別委員会に御出席願ったことを機会に、委員会を代表いたしまして、その功績をたたえ、心からお祝いを申し下げます。  科学技術の振興発展のために、今後一そうの御精進をお願いいたし、簡単でありますが、お祝いのことばといたします。     —————————————

原茂日本社会党

○原委員長 それでは、これより参考人の御意見の聴取に入りますが、最初に朝永参考人よりお願いいたします。朝永参考人。

朝永振一郎東京教育大学教授

○朝永参考人 ただいまたいへん御懇切なお祝いのことばをいただきまして、まことにありがとうございました。  本日は、素粒子研究所あるいは大きな加速器のことについて、いろいろ聞きたいということで出てまいりましたが、おそらく皆さんは、物理学は、どちらかというと、苦手の方が多いのではないか、たいへん失礼でございますけれども、われわれが法律を苦手とするごとく、政治を苦手とするごとく、皆さん方もこういう話をお聞きになる機会もあまりないかと思うのですが、暑いときに恐縮でございますが、しばらくお聞きをいただきたいと思います。  ここにこういうパンフレットをお配りしてございますので、これをおひまなときにお読みいただけたらと思うのですが、大体これに書いてあるようなことをかいつまんで申し上げたいと思います。  物理学は最近物質の構造と申しますか、物質の非常に小さい構成要素の研究に進んできたわけでございます。実際原子からできているということは御承知かと思うのですが、その原子にまた構造がありまして、中央に原子核という非常に小さな粒子があり、そのまわりを電子が回っているということ、これはこのごろは常識のようになっております。  ところが、原子核がまた構造を持っておりまして、これが陽子という粒子と中性子という粒子と二種類の粒子から構成されている。そういうことがわかってまいりましたのは、今世紀の一九三〇年ごろであります。そこで、原子核の構造をよく調べるというために、いろいろな装置、器械が用いられるわけですけれども、一つ例をあげますと、サイクロトロンといわれる器械がございます。これはいま申し上げました陽子という粒子、これは水素の原子核なんですが、これを非常に早く走らせまして、いろいろな物質にぶっつけてみますと、これが原子核を破壊する。そのこわれたものをよく調べまして、そういう構造がわかってくるわけでございます。  一九三〇年ごろは陽子と中性子、それから先ほど申しました電子、これで結局物質は構成されているというふうに考えられていたわけでございますが、その後、例の湯川さんが予言されました中間子という粒子がそのほかに存在するというようなことがわかってまいりました。  この中間子という粒子はなぜほかの粒子ほど早く見つからなかったかと申しますと、中間子を発生させるのには、非常に大きなエネルギーが必要であり、先ほど申しましたサイクロトロンで陽子を走らせまして、そうしてほかの物質にぶつけますと、その原子核の中に入っていた陽子とか中性子とか、あるいはその幾つかの集まったかたまりのようなものが出てくるわけでございますけれども、その程度のエネルギーでは中間子はできない。中間子をつくりますのには、そういう原子核をこわすのに必要な最低限のエネルギーの約百倍近いエネルギーが必要である。  そこで、サイクロトロンよりももっと大きな器械が必要になってまいります。こういう器械がアメリカあたりでつくられまして、これで中間子をたくさん実験室の中でつくることができるようになりました。ところがその後、中間子に二種類あるというようなことがわかった。その後、中間子に似たようなものでいろいろな種類のものがあるということがだんだんわかってまいりました。この最後のところに表がございます。中間子群、重粒子群、軽粒子群というようにたくさんの粒子を大体三つに分類できるわけですが、こういうふうにいろいろなものが見つかってまいりました。  こういう粒子はどこで見つかるかと申しますと、先ほど申しましたように、これをつくるためには非常に大きなエネルギーを持った粒子を——主として陽子ですが、これをいろいろな物質にぶつけるとできるわけでありますけれども、それには非常に大きな装置が、要るわけですが、幸いにして宇宙線という地球の外から——主としてやはり陽子でありますけれども、これが非常に大きなエネルギーで地球に降り注いでくる。それが空気中に入りまして空気の原子と衝突しまして、そこで、これは非常に大きなエネルギーを持っておるものですから、いろいろな粒子をつくるということが宇宙線の実験で判明したわけです。しかし、何ぶん字画線というのは、非常に大きなエネルギーを持った粒子が地球の中に飛び込んでくるわけでありますけれども、その量が非常に少ない。そこで何とかしてこれを実験室の中で器械を使って製造する、そういうことが必要になってまいりました。  こういう粒子をつくるのにどれくらいのエネルギーが必要かと申しますと、大体エネルギーの単位を電子ボルトに換算いたしまして、その単位を使うのが非常に便利なものですから何電子ボルトという言い方をいたします。この木の三五ページにエネルギーのことが書いてございます。初めに原子核をサイクロトロンでこわすと申しましたが、サイクロトロンで陽子を走らせる、あるいは加速する。そのエネルギーが大体十万、千万あるいは百万電子ボルト程度、こういたしますと、原子核がこわれて、例の原子核をつくっている粒子、つまり中性子とか陽子とかあるいはそれの幾つか、三つか四つかたまったようなものが出てまいります。それから中間子をつくろうといたしますと、この三五ページの一番下のコラム(4)というところに「数億電子ボルト。」数億電子ボルトのエネルギーにまで走らせてやらないといけない。これは陽子を走らせる必要があります。それから数十億から数百億電子ボルトまで陽子を加速して物質にぶつけますと、最後のページにあります表の上のほうにある中間子群あるいは重粒子群というものの上のほうにあるものが出てまいります。それで、いま動いております器械で一番エネルギーを高くできますのは、三百三十億電子ボルトという器械が一番伺い限度になっております。こういう三百億電子ボルト程度の器械が動き出しました結果、この重粒子群の粒子がたくさんに見つかりまして、これについての研究がいま素粒子物理学の中心になっておるわけでございます。ところが、こういう器械はいろいろな国、たとえばアメリカ、ソ連、それからヨーロッパにございます。この三百億というような大きなものでない、もう少し中間の大きさの装置等を入れますと、大体いま文明国といわれる国には何がしかの器械があって、そうしてそういう研究をしております。この四七ページにいろいろな国の装置が表示してございます。この左側のところに百億とか千億とか十億とか書いてありますが、これは電子ボルトでございます。下のほうは十万から百万、これは先ほど申しましたように小さなサイクロトロン。それがだんだんエネルギーが大きくなっておりまして、一等大きいのは右の上のほうに二重の点線で書いてあります、アメリカのブルックヘブン、それからヨーロッパのセルン。日本ではどれくらいのものがあるかと申しますと、下のほうに京都、大阪とか理研とか、それから核研、これはサイクロトロンでございます。ですから大体数千万電子ボルト程度。それから電子シンクロトロンというのが十億電子ボルト、右の上のほうに緑色の二重の点線で書いてある核研というのがございます。これは、エネルギーは十億台でございますが、陽子を加速する装置ではなくて、電子を加速する装置でございますので、いろいろな粒子、中間子をつくることはできますけれども、これではあまり能率がよくない。  そこで、われわれとしましても何とかして百億台の器械をつくりたいというわけで、何年か前からいろいろ検討いたしました。それで日本学術会議も政府に勧告いたしまして、何とかして日本にもこういう一流の装置をつくってほしいということを数年前に勧告したわけでございます。その後、多少予算がつきまして、いままで三年ぐらい原子核研究所を中心にいたしまして、将来つくるということを国で認められましたら、いつでも発足できるようにいろいろ予備的なモデル実験をしております。いままで三年間で、今年度を入れて約六億五千万円の予算をいただきまして、準備と申しますか、多少モデルのようなものをつくって、いろいろ部品の性能その他を研究しております。大体私どもが計画しておりますのは四百億電子ボルトの器械をつくりたい、そういうふうに思っているわけであります。これはつくりますのに大体五、六年はかかる。その間に必要とする予算は、積み上げまして、もちろんこれは未定の要素がたくさんありまして、あまりちゃんとした数字ではないのでございますけれども、ざっと当たりますと、約二百九十億程度。これは二百九十億一度に必要なわけでなくて、年度的に平均四十億か五十億程度ということになりますが、その程度必要である。それから人員ですが、この研究所が完成しましたときには約八百名のスタッフが必要である、そういうことになっております。  もう少し技術的な器械のことはほかの方に補足していただきたいと思うのですが、大体の物理的な意義、規模、世界の様子というものを申し上げたのでございます。世界の様子も最近またいろいろ外国でも動きがあるのでございますけれども、それはまたどなたかに補足していただきたい、そういうふうに思っております。  要するに、物質をつくっているいろいろな粒子が、物質の非常に奥深いところにこういうたくさんの粒子群がどういう役をしているか、そういう粒子群がどういう性質を持っているか、それからこれがどういう物理法則に従っているのか、これからそういうことを突き詰めていく、そういう世界の大勢に日本も伍していきたい、そういうのがわれわれの希望なのでございます。

原茂日本社会党

○原委員長 どうもありがとうございました。  次に、熊谷参考人にお願いいたします。

熊谷寛夫東京大学教授

○熊谷参考人 熊谷でございます。  いま朝永先生からお話しありました物理学全体のことのほかに実験装置のこと、加速器のことについて補足いたします。私は主としていままでのことについて朝永先生のお話を補足いたしまして、いまの計画、それから将来のことについてはあと諏訪教授、三浦教授からお話しを願いたいと思っております。  原子核のほうの研究は、物理学の中で非常に大切である、われわれの身のまわりのものを突き詰めたときに、最後にどういう構造になっているかということで大切であるということは、もうわれわれわかっておりまして、私ども戦前から研究していたのでございますが、みんな熱心にやっておりました。ことに各大学にサイクロトロンなどありましたのですが、理化学研究所に大きなサイクロトロンがあったということは皆さま御存じのとおりでございまして、いま朝永先生からお話しいただきました本の四七ページの表の中で、左のほうの一九四三年くらいの上のほうに「理研(サイクロトロン)(戦前)」というのがございますが、歴史的に見ましても非常に早く大きなものを仁科先生がおつくりになったということがありまして、これは有名なことでございます。  戦後になりまして、原子核の研究は、禁じられなかったのですが、あまり自由にはできませんでした。ですが、昭和二十三年ころに、先ほどの朝永先生のお話しの加速器を使って素粒子の研究をやるようになり、パイ中間子をつくったというようなころ、昭和二十三年でございまして、これはアメリカでございますが、そういうことがあって、これはもうわれわれもぼやぼやしておれない、そういうことを承知しておったのでございます。  それでそのころの感想といたしましては、湯川先比がその翌年ノーベル賞をおもらいになりますし、朝永先生の業績もすでにそのときから世界に有名であるし、理論のほうの業績は日本人が誇っていい状態でありますけれども、実験のほうは残念ながらどうもそこまでいかない、私ども思うのには、もう私どもでなくていい、あとに続く人たちがちゃんと実験できるところがほしい、こういうつもりもありましたし、それから朝永先生方の御指導もありまして、東京大学原子核研究所というのを昭和二十九年から計画しまして三十年に発足しております。それは東京大学付置でございますけれども、全国の研究者が使えるようにということで、そういう特別な精神と組織を持った研究所でございます。そのほうのことに関しては、学術会議のほうのいろいろな御指示、御指導もあったわけでございますが、私ども器械をつくるほうから申しますと、若い人が実験できる場所をつくりたい、そういう念願があったのでございまして、幸いにここへは核研サイクロトロン、二千万から四千万くらいの電子ボルトですが、可変エネルギーサイクロトロンというのをつくりまして、これはおかげで世界的に有名でもあり、成果をあげております。  それからその次に、先ほど朝永先生のお話の中にありましたように、最近十三億電子ボルトにエネルギーを上げましたが、電子シンクロトロンをつくりました。これは世界的にはたいへん小さいものなんでございますけれども、それでも素粒子の実験をすることができるものでございまして、各大学の若くて優秀な人が来て実験しております。それで、若い人が経験を積むのに非常に役に立っている。要するに、われわれ訓練の道場だと言っているわけでございます。  そのほか、原子核研究所では、宇宙線による素粒子研究もやっておりまして、これも加速器ではありませんけれども、非常にいろいろな業績をあげておられます。この加速器、サイクロトロンとか電子シンクロトロンは、われわれ自分で国産技術で完成したのでありまして、私ども会社の方と協力いたしまして、性能といたしましては、われわれの頭脳と会社の技術によりまして、世界第一級のものを二つつくりまして、世界に負けない実績で動いております。全国の研究者がかわりばんこに研究に来ております。  これを技術的な問題から言いますと、もともと原子核研究所のときには、パイ中間子をつくるような加速器がアメリカにもありましたので、そういうようなものを早くからほしい。いま考えております四百億電子ボルトと二百何十億円もかかるもの、それほどでなくて、そのようなものをほしいという話が強かったんでありますが、まだわれわれ腕をみがかねばならないから地道にいこうということで、小さな加速器からつくることを習って勉強を始めたんであります。そのときに、われわれから見ますと、われわれが技術的問題を自分で考える、これは外国の人と話すと、みんなどこでもそうするんだということでございます。研究所の者が技術的問題を会社の人と一緒になって考える。会社にまかしておいてのほほんと腕組みして見ている、こういうわけではない。そういうことをやりまして、われわれは必要に迫られて、みずからの判断でやり、原子核研究所はそういう習慣を持っております。見ますと、それは世界的にどこでもそういうことをやっている、成功しているところはみんなそういう方法であるということをあとで知りまして喜んでおります。しかしそれはわれわれだけのものでなくて、日本は造船技術も世界にすぐれているそうでございますし、新幹線などもつくって世界にいばっているわけでございまして、その奥にはやはり技術的なあるやり方、態度というものが日本の伝統にはあるであろう。それをわれわれももう必要に迫られ、知らずに偶然同じことをやったにすぎない、こう思っております。ですから、この差し上げましたパンフレットの何ページかに書いてございますけれども、原子核研究所の経験を生かす、その実績の上に立って、仕事のスケールは違いますけれども、その精神でいけばだいじょうぶ、こういうように思っております。  そういうことを言いますと、この前実は放射能のことで私ここへ出席いたしまして伺いましたときに、科学技術の研究費の大幅な増額その他のことを含む科学技術行政に関する決議をこの委員会でなさっているのを拝聴いたしましたのですが、そのときに政府のほうに予算を出すようにということをわれわれ要請するほかに、非常に私個人の意見ですけれども、学者のほうもしっかりしなければならない、学者のほうもしっかりしたいろいろないい計画を持っていなければならない。組織をつくり人を養成いたしまして、それからちゃんとした計画を立てていなければならぬということをいつも思っているのでありまして、それに相当することをサイクロトロン、シンクロトロンのときも考え、これからほしいと考えております陽子シンクロトロンにつきましても同じことを考えて、そのつもりでがんばってきたし、またがんばりたいものだと思っております。  なお、いまの計画につきましては、われわれは電子シンクロトロンをつくっているときから、その次に何をつくるべきかということはもう討論を始めておりまして、六年前からわれわれは討倫を始めておりました。四年前に学術会議がほかの原子核研究の将来計画の一環として、こういう大きな陽子シンクロトロンをつくったほうがいいということを政府に勧告したのでございます。そのころ外国の情勢なども流動しておりましたし、学問の発達のことを考えて設計をフレキシブルにしておいたのですが、これから諏訪教授からお話があると思いますが、去年になって四百億電子ボルトの設計を確定いたしまして、それからいろんなパンフレットをつくり、政府へのお願いを本格的に始めたのでございます。その前に、いま朝永先生のお話しのように、三年間にわたりまして六億五千万円の予算をいただいて基礎研究ということをしております。それで準備、調査ということばを正式に使ってはいけない、というのは、この大きな加速器をつくると政府のほうではきめたわけではない、そういうことを政府のほうから言われました。ですけれども、私どもはどうしても学問の動向を思い、それから若い優秀な研究者がこういう方向へ向いてくるのを見ていますと、どうしてもつくらねばならぬということで、つくるということをすっかりきめまして、ここにおられる諏訪教授を、アメリカからそのために帰ってくださったのですが、加速器の総合責任者として、その下に各パートを含む責任者をもうきめております。それから三浦教授は測定器のほうの総合責任者——測定器につきましては加速器ができたときにすぐ実験ができるように、加速器だけでは実験になりませんので、いろんな測定装置をすっかりいい状態に用意しておかなければならないというので、測定器のほうの総合責任者は三浦教授がなっておりまして、政府からはまだつくるということをオーケーいただいておりませんけれども、私どもはしゃにむにつくるつもりで準備をしている、こういう状態でございます。  この計画は朝永先先からいまちょっとお話しがありましたように、世界の物理学者に有名でありましてフランスの計画、イタリアの計画などに刺激を与えたのではないか、そういわれている点がございます。簡単でございますが、以上……。

原茂日本社会党

○原委員長 どうもありがとうございました。  次に、諏訪参考人にお願いいたします。

諏訪繁樹東京大学教授

○諏訪参考人 ごく簡単に私どもの計画しております加速器の概要とそれにつけ加えまして、いま世界でどのような計画が行なわれているかということを申し上げます。  加速器の規格といいますか、性能をきめるものは、結局どういう粒子を加速するかということで、その加速された粒子のエネルギーがどのくらいか、それから一秒間にどのくらいの数が加速されるかという強度であります。私どもの計画しておりますような高いエネルギーになりますと、どのような粒子といいましても、結局先ほど朝永先生のお話にもありましたように、電子か陽子かということになります。もっとも最近物理学者の中には重陽子も加速できないかという要求などもありまして、そういう検討もなされて、重陽子の加速も可能だということもありますが、大体陽子か電子であります。われわれの加速器は陽子で、そのエネルギーは先ほど朝永先生がおっしゃいましたけれど、四百億電子ボルト。もう一つ、強度はどのくらいかと申しますと、〇・一マイクロアンペア、これは一回加速されるごとに大体一兆個の陽子を加速することになります。  それで皆さまのお手元にあるパンフレットで大体どんな構想かというのは、二四ページと二五ページにわたった鳥瞰図のようなものがありますけれども、これで大体の概念を見ていただけると思いますが、大体中央の辺に円形のところがありますが、この直径が大体四百メートルで、この円周上に電磁石が並べられてここを粒子が加速されるわけであります。それで、その円周上に大体二百六十四個の電磁石が並ぶ。もう少し丁寧な記述は同じパンフレットの二八ページ、九ページにございます。左側の二九ページの図で大体の概念を理解していただきますと、先ほどのスケッチと同じような概念図が左側にありますが、この円周の直径が四百メートル、ここにはマグネットの数はたくさんありませんが、実際はこれが二百六十四個並びます。  そこで、ちょっと簡単に説明申し上げますと、その円周の左側のほうに予備加速器というところがありますが、そこで大体水素ガスを放電でイオンにしましてそのイオンがすなわち陽子になるわけですが、その陽子をそこでつくりまして、初めに線型加速器——これは入射器といっておりますが、その入射器に線型加速器を使いますが、それによって大体一億電子ボルトぐらいまで加速いたします。そして、それを電磁石の中に打ち込みますと、その磁場の強さを適当にしておきますと、ちょうどその陽子は四百メートルの直径の円周を回るようになります。よく御存じのように、要するに荷電粒子がある速度で走っておりますと、磁石によって方向が曲げられて、適当な磁場の強さにしておきますとそういう円を描くわけです。そこで、そういうふうに回しておきまして、その円の下のところに電波加速器とあります、ここに高周波のギャップがありまして、これが実はこの絵では一つですが、実はわれわれの設計では円周上十六個並べることになりますが、ここでは概念的に一つだけ書いてありますが、とにかくそういう加速ギャップで一回ごとに加速されていきます。それで、初め一億電子ボルトから最後には四百億電子ボルトまで加速されるわけですが、 エネルギーがだんだん上がってきますと粒子は曲がりにくくなる。それを同じ円周上に回すためには磁場をだんだん強くしていかなければならないわけです。それで初めはこの磁場が大体百五十ガウスぐらいのところから最終には一万三千ガウスぐらいまで上げていきます。そうしていきますうちに、陽子は大体四百億電子ボルトになったところでそれが最終的なエネルギーになります。それぐらいになるまでに大体一秒間かかります。そのところで、ちょっと右下のほうに二次粒子と書いてありますが、その辺にたとえはベリリウムとかあるいは銅とかあるいはタングステンというようなターゲット、物質を入れてやりますと、それに衝突して反陽子とかパイ中間子とかK中間子とか、そういういろいろの素粒子が出てまいります。その二次粒子をさらに、そこに書いてあるようなぐあいに外に引っぱり出しまして、そこでいろいろ物理の実験をやるわけです。その辺のところについては、三浦さんのはうからあるいは御説明があるかとも思いますが、とにかくそういうふうにして実験するか、あるいは円周の右側に陽子というものが外に飛び出している絵がありますが、こういうふうに回っている陽子を一たん外に取り出して、そこで何かにぶっつけまして二次粒子をつくる、そういうふうなことをやります。とにかくそういうふうにして、一秒間ぐらいで加速されたあとで物理実験に使われたところで先ほどの電磁石の磁場は、また一秒間ぐらいかかって下げてやります。そして次に、次のサイクルを待っていて、また予備加速器——入射器のほうから陽子を入れてやる、こういうことを繰り返す。それが大体二秒に一回の繰り返しになります。  大体われわれの計画しているものはどんなものかということを申し上げました。  それで、われわれがこれをどういうふうに設計し、どういうふうにやっていくかという一つのプリンシプルは、先ほど熊谷先生がお話しになったような方針をとっております。そしてこの機種も、昨年決定しましたのは、いわゆるここで申し上げましたような強収斂型の陽子シンクロトロンでありまして、これは先ほど朝永先生もおっしゃったのですが、いま世界で一番エネルギーの高い加速器はアメリカのブルックヘブンという国立研究所にありますもので、三百一三十億電子ボルトです。それからヨーロッパのスイッツランドにあるセルンのシンクロトロンが二百八十億電子ボルト、それが非常によく動く器械で、この強収斂というプリンシプルを使ったものであります。  そこで、われわれもその機種を選びまして、なるべく確実に、間違いなくできる、でき上がったものは非常に安定で、物理の実験に使いやすいものだということです。しかも、われわれはあとから出発しておりますから、こういう加速器は日進月歩、つくり上げましてからも常に改善されております。それでいろいろのくふうがなされておりますが、そういうくふうをいろいろ取り入れて、現在、またはでき上がるときにおいては可能な——エネルギーというものはそう変えられませんが、その同じエネルギーの中で最高の性能を持つもの、そういうものをつくるということを目標にしております。それにはもちろんいろいろの基礎的な実験テスト、研究というものを建設のスタートに、それからまた建設中にも並行していつもわれわれスタッフは考えていかなくちゃならないと思います。  それからこの四百億電子ボルトという陽子の加速器は、一体世界の傾向でどういうような立場になっているかということをちょっと簡単に申し上げますと、先ほど申しましたように、現在あるのはアメリカの三百三十億電子ボルト、セルンの二百八十億電子ボルトというのが最高でありますが、最近新聞でも御存じのように、ソ連ではいま七百億電子ボルトというのを一九六〇年ごろからつくり始めまして、予定では来年の暮れまでに完成するということであります。したがって、もしわれわれの計画が認められまして、来年度からスタートということが実現するとしますと、それができ上がるころには、エネルギーでいきますと、それに次ぐものになるわけです。ただ、われわれはスタートがあとだということもありまして、最新のいろいろの研究結果を取り入れて、器械としてはより一そう物理実験に適したものをつくるということは可能だと考えます。したがって、でき上がったときには、ソ連のものと力を合わせて世界で第一線に立って、われわれはそれを使って実験ができるということが期待されるわけです。  ところが、一方、アメリカでは、これも皆さん御存じだと思いますが、もう一けた高い二千億電子ボルトですか、そういう陽子の加速器をつくろうという計画が、これはだいぶん進んでおります。これはいま土地問題なんかがからみ合いまして、ちょっと決定がおくれているようです。したがって、まだアメリカの政府がこれを承認していないようでありますが、向こうの学者たちの希望としましては、これが来年度ぐらいからスタートしまして、一九七三年ごろまでには器械をつくり上げる、いまから十年後ぐらいにはそれによって実験が行なわれるということを期待しているようです。  それからヨーロッパでは、やはりそれに並行いたしまして、それより少しエネルギーの商い三千億電子ボルトというエネルギーの陽子シンクロトロンを、これもやはり一九七六年ごろには完成する。昭和五十一年ということになりますか、それまでには完成するということです。これもまだ承認はされておりませんけれども、基本設計などはいろいろ進められております。  それから先ほど熊谷先生がちょっとおっしゃいましたが、最近の情報では、フランスで四百五十億電子ボルトぐらいの陽子シンクロトロンをつくろうという計画があるとのことです。これは先ほどのヨーロッパの三千億電子ボルトができるかできないか、もしできればフランスが重ねて同じようなものをつくるというようなことはないだろう、もしそれがなかなかつくらないようだったらフランスは独力でつくるだろうということがいわれております。  いずれにいたしましても、私たちの計画がもし早い機会にスタートいたしますならば、いまから五、六年後にはこの素粒子の実験で世界の第一線に立って、この分野で世界の人たちと協力して学問を進めていくことができるということを期待しております。

原茂日本社会党

○原委員長 どうもありがとうございました。  次に、三浦参考人にお願いいたします。

三浦功東京大学教授

○三浦参考人 三浦でございます。  ただいままでいろいろな物理の問題、それから加速器のお話が三人の先生方からありましたので、私は主として、素粒子の実験をやる場合に、加速器と同町にどうしても欠くことができない測定器という面から、この計画を少しお話ししたいと思います。  大体加速器をつくる目的は素粒子の研究をやることでございますから、どうしてもいい加速器を持つということが一番大事でございますけれども、それをいかに有効に使うか、使いこなせるかということがたいへん重大な問題になってまいります。過去の外国の例をこの表で見てみますと、たとえば有名な加速器として一九五〇年代のところのコスモトロンという加速器がございます。その次に、これはアメリカの加速器でございますけれども、ベバトロンという加速器もあります。そういった加速器が生まれたときには非常に強力な測定器がそばにあって初めてすばらしい進歩を遂げた。たとえばいまのコスモトロンの場合には、ちょうど四四ページと四五ページに「これが素粒子のすがた」という、素粒子が通ったあとをとらえる装置の簡単な解説がございますけれども、ウィルソン霧箱、非常に特別な拡散霧箱というのですけれども、要するにガスの中を粒子が通ったときに、そこに霧ができるという装置を使って大成功をおさめております。それからベバトロンをつくったときにはあわ箱といいまして、四五ページの左上にありますけれども、やはり粒子が通ったときにイオンができますけれども、そのイオンのまわりにあわができる。そのあわ粒をわれわれはつかまえて測定をするという、そういうたいへんすばらしい装置が活躍したわけです。その後、先ほどからたびたびお話が出ております世界最大のボルックヘブンの研究所あるいはスイスの欧州連合の加速器ができたときには何が活躍したかといいますと、やはりあわ箱が非常に巨大化された。特に液体水素のあわ箱がたいへんな活躍をいたしました。さらに四五ページの下にありますけれども、非常にたくさんの筋目のところにぴかぴかと光った、これは放射線が通ったあと放電が起こるような、放電箱と私ども呼んでおりますけれども、これがたいへんな活躍をしているわけです。実はこの放電箱といいますのは、これは日本の福井、宮本という非常に若い、当時大阪大学の助手の方と大学院の方だったのですけれども、いまから十年ほど前にこれを発見したわけなんで、そういう歴史を持って——その当時私ともの仲間でございまして、日本にはこういう加速器がないので、結局こういうふうな技術というものは外国でたいへん発達して、また世界を風靡しているというふうなこともありまして、この方面の仕事というのは、別に洋の東西を問わず非常にすぐれた人たちが方々におって、どこかでいい研究ができますと、それが急激に発展して素粒子の研究に役立つ、そういうふうな分野でございます。日本人は、もちろんこのほかにいろいろ素粒子をつかまえる回路にいたしましても、御存じのようにエサキダイオードなどという非常に短い時間をはかることができるようなダイオードができております。あれなんかも結局こういった加速器のあるような分野でたいへんな活躍をいたしまして、もうなくてはならない測定器の一つになっているわけです。  それで最近の測定器はだんだんたいへん大型化と精密化の方向に向かっております。それはどうしてかといいますと、先ほどの諏訪教授が話されたこの加速器を動かしますと、大体私の推定いたしましたところによりますと、二十四時間運転いたしますと、実験の成果が出ようが出まいが大体三百五十万円ほど電力代を食います。ですから百日動かすと電力代だけでも三億五千万円、一年動かすと約十億くらいの電力代を食うような巨大な装置でございますから、それに見合うだけの研究をやるためには、いかに能率よく、有効に加速器を使いこなすかということがたいへん問題になってくるわけでございます。それで特に日本の場合には、限られたワク内で研究をやる場合には、必要欠くべからざる測定器を備えることと、それからやはり新しい測定器の芽を育てていくということが非常に大事じゃないか。私は主として前者の、どうしてもなければならないような測定器群を加速器と見合ったような形でつくるということをやっておるわけでございます。  簡単に御説明いたしますと、二九ページ、先ほど諏訪教授がまるいところをお話しになったわけですけれども、私はまるいところのまん中の陽子シンクロトロンから外に出た偏向電磁石とか四極電磁石とかセパレーターとかあわ箱とか、外に出たような側のところを一式やるわけです。  大体実験のときにどういうことをやるかといいますと、加速されたほとんど光の速度の粒子を外に引っぱり出しまして、そのままでもいいのですけれども、あるいは的になる原子核にぶっつけますといろいろな粒子が出ます。その中である特定な粒子を選び出して、さっきお話ししたあわ箱とかあるいは放電箱のところまで導くようなビームを引っぱり出すような、私どもビーム輸送といっておりますけれども、そういうような分野が非常に大事な分野でございます。ちょうど光のプリズムとレンズを使ってある特定の波長の光をあるところに集めると同じように、磁石のレンズ、磁石のプリズムを使ってそういうことをやります。それからそれを今度測定する場合には、いろいろあるわけですけれども、先ほど申し上げました水素のあわ箱とかあるいはいろいろな形の放電箱なんかをたくさん、りっぱなものをつくらなければならぬ。  ところで、世界のこの分野の加速器というのはたいへん実に有効に使われておりまして、ほとんど休むひまもなく実験が行なわれます。したがって、その出てくる実験データの量といいますのはたいへん膨大な資料でございまして、とうてい人間の力では、人海戦術的に何百人かかってもやりおおせるものじゃない。すべてのそういったデータを解析して物理の結果まで導くための道程といいますのは、結局最近大発展しました電子計算機の一番いい使い方をしておる。この電子計算機といいますのは、皆さん御存じだと思いますけれども、いろいろな分野で活躍しておりますけれども、大型のもので最も有効に使われておるのはおそらく原子核分野だろうと思います。日本ではまだないような、日本にあるような計算機の大体十倍のけたぐらいの大規模の計算機が、ほとんどこういう加速器による実験の解析なんかに使われておるというのが現状でございます。ですから、そういった方面におきましても、私どもがやらなければならない仕事がたくさんございます。幸いにも日本は、あわ箱あるいは電子計算機関係その他にいたしましても、私ども現在準備をやっておりますけれども、いろいろやってみますと、やはり日本の国力といいますか、工業水準というものは非常な勢いで現在進歩しておりますから、先ほど熊谷先生が原則的な建設態度をおっしゃられましたけれども、大体その方針に従って日本でそういったものを実現することが必ずしも困難ではないというふうに私ども確信を持っております。  それで現在世界の大勢を少し申し上げますと、結局先ほど諏訪教授がソ連の七百億電子ボルトの加速器についてちょっと触れられましたけれども、大体どういうふうな方向へいっているかといいますと、大体水素のあわ箱にいたしましても、現在まで働いておりますのは有効長が二メートルほどあります。大体一万リットルから二万リットルぐらいの液体水素の箱を、その中を放射線が通って、それを実験に使っておるわけですけれども、それが大体五メートルぐらいのスケールになっておる。液体水素にいたしましてもたいへんな膨大なる装置であります。四四ページにセルンのあわ箱装置という写真がございますけれども、これが先ほど申し上げました二メートルのあわ箱です。人間に比べてどれくらい規模が大きいかということがおわかりだと思います。ですから五メートルになりますと大体これの数倍大きい規模になります。たとえば予算を申し上げますとたいへんなことになりますけれども、現在フランスあるいはアメリカ方面で計画されておりますその方面の大きなあわ箱の値段は、もしつくるとするならば約六十億円かかります。まあ測定装置といいましても、そのくらいの規模になってきますとたいへんな高度の技術とそれから長い時間がかかるわけでございますから、私どもとしましては、汎用の測定器といいましても加速器と同じようなテンポによって、国産技術の向上によって建設を行なうというふうに現在考えております。まあ今後私どもこういう分野の仕事をやっていくにつきましては、物理だけじゃございませんで、電気工学、電子工学、それから低温工学、数学関係、それから情報理論、いろんな分野の知識の総合的な組み合わせが必要でございまして、そういった面でも、私どもはこういう仕事をやるからにはその最先端の役割りをやはり果たさなければいけないんじゃないかというふうに考えております。  たいへん簡単でございますが、測定器関係の御報告といたします。

原茂日本社会党

○原委員長 どうもありがとうございました。

原茂日本社会党

○原委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。三木喜夫君。

三木喜夫日本社会党

○三木(喜)委員 大体四点にわたってお聞きしたいと思うのですが、ただいま学者の方から、非常に熱望されるという意味合いにおいて大型加速器の実現を望んでおられるという話を承りました。私たち、学問の内容にわたってはつまびらかにいたしませんけれども、また、ちょっとお聞きしましてもわかりにくい点がたくさんございますが、しかしながら、大型加速器の必要性というものは非常によくわかったわけでございます。そうして先生方がその不利な条件を克服しながら極微の世界に挑戦をしていただいておる、この姿も非常にとうとい感じが私たちはしておるわけであります。しかし、何といたしましても、新しい素粒子といいますか、粒子の発見が次々になされておる。しかしながら、そういう施設と場を持たないという弱点を持っておる国でありますから、先生方が、目ざましい加速器の発達による実験成果を、土俵の外でながめておらなければならぬ、こういうことはたまらぬ気持ちだろうと思うのです。そこで、朝永先生がおいでになっておりますので、私、そうしたたまらない気持ちを、これは政治的に解決つけなければならぬ面がたくさんありますが、どういう方法によって解決をつけていったらいいかというお考えを率直にひとつ聞かせていただきたい。そしてあとで、文部省関係からは中野次官も見えておりますし、科学技術庁からは大臣がおいでになっておりますので、ひとつ隔意のない率直な、この計画実現に対する決意を聞きたいと思いますので、最初に朝永先生からその点についてお聞きいたしたいと思います。

朝永振一郎東京教育大学教授

○朝永参考人 ただいまの御質問にお答えになるかわかりませんですけれども、とにかく私ども、先ほど熊谷教授からもお話がございましたが、戦前、すでに一九四三、四年ころ——四七ページの表でごらんになりますと、すでに世界で一流のサイクロトロン、一九三八年ごろアメリカでできた同じ程度のエネルギーのサイクロトロンがございますが、それからわずか五、六年あとで、日本にそういう一流の器械がすでにできていた。そういうことを思いますと、何といってもそのころは、日本はたいへん貧しい国だったわけでございますのにかかわらず、アメリカとのおくれがわずか数年であった。ところが、現在ではたいへんなおくれになっているわけでございます。たとえば核研にあります電子シンクロトロン、一九六二、三年ころですか、これと同じ大きさのが、エネルギーの点で申しますとアメリカのコスモトロンというのが一九五一、二年ごろ、これは十年のおくれでございます。しかも、これはエネルギーがコスモトロンと同じでありますけれども、片っ方は陽子シンクロトロン。コスモトロンのほうは陽子を加速いたしますが、核研のほうは電子を加速するというので、その能率においてはかなり不利な器械である。そういうわけで、私どもも何とかして戦前の、仁科先生がずいぶん骨を折られてサイクロトロンをおつくりになったあの状態を、私は仁科先生の弟子でございますので、何とかして仁科先生の遺志を継ぐ、これは少し浪花節的な表現になりますけれども、そういうことで骨を折っているわけでございます。しかし、何ぶんにも非常に金のかかることでございますし、たいへん大きな規模の研究所になりますので、いろいろな困難がございます。それで、いままでこんなに金のかかる研究所は、原子力研究所その他二、三ございますけれども、基礎科学のほうではおそらくこれが初めてだろうと思います。しかし、考えてみますと、原子力研究所、それから宇宙関係もだんだん大きくなってまいりまして、これと比べますと、必ずしもこちらだけが突拍子もなく大きなものでもなさそうに私どもは思っておるわけであります。この点、いままでに例のないような大きなものであるという点で、いろいろな方々に説明いたしましても、突拍子もない計画だというふうなお考えを持っておられる方がまだかなり多い。この点、われわれもPRが足りない点もございますが、しかし、幸いだんだんに、何とか日本でもこれくらいのことはやれないものであろうかというようなお考えの方が次第に出つつあるようにも見えてきました。本日ここで説明してくれという御希望が出ましたのもそういうあらわれであろうかと思って、たいへん感謝しているわけでございます。  それで、どういう点に困っているかというような御質問だったと思うのでございますが、まず第一に予算の点、それからおそらく次に問題になりますのは八百人というスタッフ。これは人はいると私は思うのでございますけれども、いまはお役所の関係でも、定員をふやすということは非常に困難であるということを私ども伺うわけでございます。こういう大ぜいの定員をはたしてお認めいただけるものであろうかというような点、こういう点が私ども多少心配しているところでございます。お答えになるかどうか……。

三木喜夫日本社会党

○三木(喜)委員 学者の先生にそういうことをお聞きするのはどうかと思うのですが、二番目に四百億電子ボルトの素粒子加速器をつくり、八百人のスタッフが必要だということになりますと、ここにお配りいただいておりますところの「素粒子物理学研究費(人件費を含む)」で一九六六年調査で日本が、これは単位は五億円になると思うのですが、すでにアメリカは六百十億、こういう比較を見てまいりますと、一基に二百七十億要るところの大型陽子加速器というものの建設が、これはなかなか学者の先生方にもがんばってもらなければなりませんし、それから政府、政界ともにあげてそのことに協力しなければならぬと思うのです。したがって、こういう状況をどういうふうに引き上げていったらいいか、東大から熊谷先生がおいでになっておりますので、お聞きする問題ではないかと思いますが、しかしちょっと要旨をお聞きしておきたいと思います。

熊谷寛夫東京大学教授

○熊谷参考人 熊谷でございます。  いま御説明いただきました表でお読みくださったように、ことし日本で約五億円この方面に使っているのでございます。アメリカでは六百億円、イギリスでは百五十億円近く、そのうちの数分の一をセルンに供出しているのでございまして、二巨七十億円というのは、この器械全般のことでございまして、つくったり、あと研究を続けたりしますのに、一年に平均四、五十億円ということでございまして、いまこの方面で支出していただいておる金の十倍ちょっと以上にしていただくことを願っているわけでございます。  どのようにしたら予算がふえるかということにつきましては、先ほど申しましたように学者もちゃんとした計画を立てて、政府からお金が出た場合にはすぐ計画が実施できるように、そういうことについては、われわれもほとんど万全といってはたいへんになんですが、一生懸命努力しているわけでございます。しかし、こういうことをやりますのには、この前この科学技術振興対策特別委員会の御決議がありましたように、国民総所得の二・何%を研究費にさくということで、そういうようなことを目標として研究費が増し、それから政府の研究費に対して出す割り合いも相当に増すということがないとなかなか困難かと思うのでございます。政府の予算の中のことについては、私など、どうもよく考えているわけでございませんで、学者としての体制を固め、技術的な体制をしっかりするということに一生懸命になっているわけでございまして、その反応として政府から十分な予算を出していただくことを期待しているわけでございます。

三木喜夫日本社会党

○三木(喜)委員 三つ目の質問に移りたいと思うのですが、アメリカ、ソ連、ヨーロッパなどで相次いで陽子シンクロトロンを建設し、次々に成果をあげていっているわけでございます。そこで、われわれの側にはそうしたものがなくて、非常に貧弱である。したがって、育っていくところの物理学者というものが、施設がないために海外にどんどん出ていく。そういうことを私たちは非常に心配するわけなんです。そこで私は見聞きしたことなんですけれども、昨年、岡先生とインドへ参りまして、なくなりましたバーバさんの下で若い原子物理学者がほんとうに安んじて、しかも生き生きとして研究にいそしんでおる姿を見て、私は非常にうらやましく思ったのです。日本の学者も、当然乏しき中にも熱意を持って生き生きとしてやっていただいているわけなんですけれども、何といいましても、施設がなければ研究ができないというハンディは免れないと思うのです。それから続いてソ連に行ったわけですけれども、ソ連においても、これは若くはございませんが、相当年輩の方が、これまた自信を持って新しい研究にいそしんでおる。続いてスイスに参りまして、セルンに行ったときにがく然としたわけですけれども、日本の東大を出ましたところの学生が三名セルンの研究所に研究生として行っているわけなんですが、これが日本のお金で私は来ておりませんよ、アメリカのお金で、研究を支援するところの財団からお金をもらって来ておるのだという話を聞いて、何か日本という国をうとましくさえ私は感じた。しかしながら、そういう意味合いで彼は言ったのじゃないでしょうが、政治家としてそういう話を聞きますと、非常に胸が痛いわけです。こういうところから海外に頭脳が流出をするという心配を私は持ったのですが、先生方はどういうようにお考えになっているか、それをひとつお聞きしておきたいと思うのです。順番に聞いて失礼なんですけれども、東大の諏訪先生にひとつお聞きしたいと思います。

諏訪繁樹東京大学教授

○諏訪参考人 実は、私はこの三月に、ここにいらっしゃる先生方、それから日本の研究者の方々からぜひ帰ってこいと言われまして、帰ってまいりました。その前は五年ほどアメリカに行っておりまして、家族も大体向こうになれましたし、私としても、あるいは向こうにずっといるという覚悟を一時はしたわけでございますが、この計画があるからぜひ帰ってこいということで、もしこの計画がスタートするなら、それでは帰りますというようなことで実は帰ってまいりましたが、私が向こうにおりまして感じましたことは、とにかく日本も、もちろん理論なんかでは、すでに湯川先生、朝永先生のような、そのほかにもすぐれた業績があって、よく御承知のように、日本人が優秀であるということはわかっているわけなんですが、実験の面におきましても、日本人が外国人に比べてもっとすぐれているということはないと思いますが、といってまた劣ってもいない。要するに欧米の諸国民と肩を並べてこの学問を推進していく能力を十分持っているということを感じております。実際われわれが年とってから向こうに参りますと、ことばの不自由があるにもかかわらず、何人かのかなりの人々があちらで活躍しておられるわけです。ですから、もし日本において、こういうふうな設備があるようになりますと、実験の面でもわれわれは大いに世界に貢献できるのではないかと信じております。  ただ、実はきょうの新聞にもありましたけれども、たとえば科学者や学者に対する待遇というようなものは、こちらと比べまして、向こうのほうが一けた近く大体いい、これはまことに残念なことで、ある程度避けられないことかもしれませんけれども、そういう意味ではわれわれは非常に不利な立場にありますけれども、これはもちろん政治に携わる方々の問題だと思いますけれども、非常に長期の計画のことを考えれば、単に精神主義だけではなかなかいかない。やっぱり待遇も改善しなければ、頭脳の流出ということは避けられないのじゃないかと思います。現に、ヨーロッパの、ことにイギリスの科学者などがアメリカにだいぶ流れて、それを防ぐのにいろいろ手を打っているというようなことを聞いております。それにしましても、とにかくわれわれの物理をやる者としましては、一番大切なことは、やはり日本において世界一流の仕事ができるということ。また、このくらいものができますと、逆に外国の人も日本にやってきて、われわれの器械を使って実験をやる——現にもうやりたいという人が相当いるくらいでありまして、非常に国際的協力ということが飛躍的に推進できる。将来はさらに、先ほど申し上げましたように、一けた大きいような装置がまた遠からず実現すると思いますが、そういう段階において、われわれが国際的なレベルでそういうものに協力して参加していくことができる、それが一番大きなことじゃないかと思います。

三木喜夫日本社会党

○三木(喜)委員 ソ連に七百億電子ボルトの加速器ができる。米国では一千億を計画しておる。フランスも四百五十億の装置を計画中である。こういうことになってまいりますと、私たちもぜひ四百億電子ボルトの大型加速器をつくりたい、こういう強い熱望を持つわけなのですけれども、いまのお話にもありましたように、人的なスタッフ、すでに外国からそういう用意で諏訪先生もお帰りになったという話を聞いたわけですけれども、八百人のスタッフが要るということになると、学界あげてこの問題と取り組まねばならぬと思います。そういう人的な要素がはたして可能なのか。これは可能だから実現ということになっておるのだろうと思いますけれども、その見通しを三浦先生からひとつお聞きいたしたい。

三浦功東京大学教授

○三浦参考人 たいへんむずかしい御質問だと思うのですけれども、実はその八百名といいますのは、全部含めた場合の数でございまして、メインなスタッフは全体でおそらく大体百五十人か二百人くらい、要するにハイレベルのスタッフが。それも、こういうものを建設する場合に何も物理学者だけが建設するのじゃございませんで、おそらく半数程度、あるいはそれ以上、工学関係の方、つまり応用物理あるいは工学関係の方たちが参画されると思います。それで、私どもこの計画をやる場合に、まず人的資源ということがたいへん重要な問題でございまして、推定をいたしております。もちろんいますぐ八百人を集めるわけじゃございませんで、数年わたってだんだん漸増していくわけでございますけれども、現在おる研究者及び工学関係の方たちの数及びこれから出てくる方たちの数を全部推定いたしまして、スタッフについては十分やっていける数であろうと思います。  次は、中級の技術関係の技術者の問題になるのでございますけれども、これも私どもは数百名の技術を持った方たちを集めなければいかぬ。これはむしろ上級のそうしたスタッフを集めるよりも、あるいはむずかしいかもわからないと思うのですけれども、現在私どもは原子核研究所あるいはいろんなそういった研究所を運営し、あるいはそれの人間を補充する様子なんかを見たり、あるいは今後の動きを推定いたしますと、手放しでは無理だ、と思いますが、われわれの努力によって集められるだろう。そのときに非常に問題になりますのは、ただ頭数だけを集めてもしようがないので、やはり若くても将来非常に有望であって、やはりこういう仕事というものは一年や二年やってもどうにもしようがありませんので、技術関係でも一生そこで骨を埋めてしまうような気持ちで来られる方が非常に望ましいわけです。そのことは戦前の理研の仁科研究室あるいは現在の東大の原子核研究所なんかでもそういう方が非常に有力なわれわれの片腕として仕事の能率をあげておるわけです。ですから、そういう若い人たちが頭数だけでなくて、いい人がそこにたくさん集まれるような環境をつくってやるということが非常に大事な問題ではないか。それは環境ということは、待遇その他も、非常に低いランクしかどうしてもできないようなシステムではなくて、やはり、技術に応じて報酬なんかもらえるような、しかもその職場が楽しい職場であるというふうになれば、いい人が集まるだろう、私どもはそういうふうにつくるならばぜひつくっていただきたいというふうに念願しております。簡単でございますが……。

三木喜夫日本社会党

○三木(喜)委員 そこで最後の質問は、行政の責任者にお聞きしたいのですが、まず、文部省関係の中野政務次官にお聞きしたいのですが、東大の宇宙航空研究所の特にロケットの研究は、かなり進んでまいりまして、近く人工衛星打ち上げ可能なところまできておるということで、私たちも非常に意を強くしております。しかしながら、これは軍事と結合していくと、問題があると思うのですが、しかし、いまの研究条件については、かなり進んでおって、いいのじゃないかと思うのですが、こうした方面、これは文部省の責任分野ではないかしらと私は思うのです。  そこで、先がたお聞きいたしましたような現在積み上げられておる予算なり財政的な支出では、二百七十億というこうした計画が可能かどうか、どういう熱意を持ってやられる覚悟か、ひとつお聞きしたいと思うのです。この問題が出たのは、本年や昨年にこの問題が出たのではなく、もう三年前から私どもこういう冊子をいただいて、非常にわからぬなりにでもその必要性を痛感しておったわけです。おそきに失しておるのじゃないかと思うのですが、文部省の立場で、ひとつ責任を持った見通しと御答弁をいただきたいと思います。

中野文門自由民主党文部政務次官

○中野政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、実はこの一連の問題につきましては、先般朝永先生がノーベル賞を受賞なされましたのを機会にいたしまして、何か先生にお報いするためには、朝永先生のやられておる仕事をすみやかに国の力でなし遂げるように努力することが、先生に対する、何と申しますか、報い方であるというようなことを中心にいたしまして、文部省内におきましても前向きで何とかすみやかな機会に、相当の予算も必要でございましょうし、さらに素粒子の研究所を設置するとなれば、いまお話のありましたように、聞きますところ平常時においても約八百人前後の常在人員を要し、相当の費用をこれに加えて、やる限りりっぱなものをこさえなければならない、用意しなければならないということで、前向きで検討をいたしてまいりつつあるのでございますが、昭和四十二年度の文部省関係の予算の立て方を目下慎重に、この仕事も含めまして検討しておる段階でございますので、その点で御了承願いたいと思います。

三木喜夫日本社会党

○三木(喜)委員 同じ質問になるのですが、科学技術庁の長官もお見えになっております。そこで、長官にお聞きしたいのですが、私は、科学技術振興というものは、大臣がいつもかわられては困ると思うのです。幸い、この一カ年、上原科学技術庁長官御熱心にやっていただいて、いろんな科学技術の振興に対しての御熱意がだんだん高揚してきたように私は思うので、ちょうちん持ちをするのじゃないですけれども、この際、科学技術庁長官としてとどまってでもこのことの実現のために努力する、しかし閣外に去ってもこういう方法で努力したい、こういうような決意を持ってこの実現に科学技術庁としても努力していただきたい、こう思うのです。その辺の決意なり、計画性のある御答弁を期待したいと思います。

上原正吉自由民主党科学技術庁長官

○上原国務大臣 私もかねがね科学技術の振興というものが国運を隆昌ならしめるために、何より必要なことだと考えてはおりましたけれども、科学技術庁長官に就任してみまして、いろいろ実際に当たってみて、その重要性をあらためて感じたわけでございまして、お説のように、閣僚の在任期間というものは短い習慣になっておりますけれども、たとえ閣僚の地位を退くようなことがございましても、今後ますます日本の科学技術振興のために努力を重ねてまいりたい。いずれにいたしましても、自分の経験から申し上げますが、大臣一人が幾ら力んでもどうなるものでもございません。結局は、国会、それから学界と国民の皆さまの熱烈な願望とがここに重なりまして、そうして政治を動かしてまいるというのが実情のようでございますので、私も国会議員の一人といたしまして、また科学技術庁長官の経験者の一人といたしまして、退官いたしました後といえども、在任中に痛感しましたことが実現できますような努力を重ねてまいりたい、かように覚悟を新たにいたしておるような次第でございます。

三木喜夫日本社会党

○三木(喜)委員 非常な御熱意のある御答弁を承ったわけですが、具体的には、もう二百七十億が、七月で予算編成にかからなければならぬわけです。それがとれるのかどうかという一つの見通しを持って言っていただかなかったら、いまいろいろ学者の御熱意のある参考御意見を承って、われわれも三年前からこのことは必要だということを、この国会でもるる言っておるわけです。したがって、上原長官がおっしゃるように、国民の熱意、国会の熱意、学界の熱意はいま結集しておると思うのですが、ここで二百七十億はぜひ取ってみせるのだというくらいの決意を見せてもらわなければ、精神的な熱意、ことばの上での熱意だけではこれは問題になりません。  そこで、文部大臣にきょうは来ておっていただきたかったのですが、次官でもの足らぬという言い方は悪いのですけれども、しかし文部省を代表してこられておるのですから、その辺の見通しをはっきりしていただきたいと思います。

中野文門自由民主党文部政務次官

○中野政府委員 文部大臣もこの委員会にぜひ出席をいたしたかったのでございますが、ちょうど同じ時刻に衆議院の文教委員会で、また別の重要問題をただいま御審議中でございましてそのほうに出ております。私がただいまの御質問にお答えすることになるのでございますが、先ほど申し上げましたように、四十二年度の文部省としての予算を各局別にただいま整理、整とん、検討中でございまして、それができ上がりますと、御案内のように省議という形の段階で、さらにそれが一歩二歩前進をして具体化することになるのでございまして、ただいまは各省内の部局が中心となって、担当案件の来年度予算編成作業に入っておる段階でございまして、いまここで二百七十億を必要とするその予算を、来年度の予算要求の中でまず文部省がこれを打ち立て、さらに大蔵省と折衝してこれを具体化するという、具体的な問題につきましては、いまこの席で私からこれ以上のお答えはできないのでございますので、御了承賜りたいと思います。

三木喜夫日本社会党

○三木(喜)委員 以上で質問を終わります。

原茂日本社会党

○原委員長 岡良一君。

岡良一日本社会党

○岡委員 朝永先生、ノーベル賞を受賞されましてほんとうにおめでとうございます。湯川先生に次いで朝永先生がはえあるノーベル賞を受けられたということ、それに対しては国民は手を打って喜んだでございましょう。国会もまた先生をお迎えして敬意を、また謝意を表しました。しかし私どもとして考えなければならないことは、こういう両先生がノーベル賞を受けられたという事実を、もっと科学政策を推進するという立場から反省をしなければならない問題がたくさんあるのではないか。こういうような気持ちで実は先生をはじめ参考人の方々の御出席をいただいたわけでございます。おそらく両先生のお仕事については共同に協力をして研究された方もございましょうし、また先生の指導のもとにますます新しい研究にいそしむ若い世代の方もたくさんおありになると存じますが、こういう方々に対して、こうしたわが国の非常にとうといいわば科学的なポテンシャル・エネルギーというものをどのように育てていくか、そしてどのように実を結んでいくか、これが先生方がノーベル賞を受けられたことに対してのわれわれ国会の大きな仕事である、こう信じておる。ところが、わが国においてはどうも科学技術行政の実態というものは、いわば技術水準は高いが研究の水準が低い、無理に低からしめられておるともいえるかと思いますが、その落差が不幸にして非常に大きいというところにわが国の科学政策、また科学技術政策の一つの大きな不幸な矛盾があると私は思う。私がきょう上原長官なり文部大臣にも御出席を願いましたのは、大臣としてと同時に、また科学技術会議の議員として御出席を願ったのでございますが、この技術水準と研究水準の格差という問題について、篠原議員としては現実をどのように把握しておられましょうか、まずその点をお伺いいたしたいと存じます。

篠原登科学技術会議議員

○篠原説明員 篠原でございます。  先ほどお話がありましたけれども、日本の技術水準はかなり高いといわれております。すなわち、造船におきましても、新幹線におきましてもあるいはまたエレクトロニクスの分野におきましても、また製鉄の技術におきましても、かなり日本の技術水準が高くて、世界の一流あるいは一流に近い成績をあげておりまして、これによって日本の経済なり産業なりが戦後非常に進歩をいたしましたことは申し上げるまでもございません。  しかしながら、その内容を反省いたしますと、特殊の分野は別といたしまして、大部分が外国の技術をそしゃくして、そしてそれを消化して日本の技術レベルを上げてまいったということがいえると思います。したがいまして、ただいま岡先生の御指摘のとおり、技術水準と研究水準とは別でございまして、残念ながら、日本には非常に優秀な頭脳が存在するにもかかわりませずそれが活用されない、あるいは予算あるいは人員あるいは待遇その他の悪条件のもとでせっかくの頭脳が十分に使われていないために、研究水準がいまだに低いということが私はいえると思うのでございます。いたずらに外国の技術にたよるということは、もはや戦後二十年を経ました現在では相当困難になっております。すなわち、経営参加あるいは資本参加を、要求されたり、またマーケットの制限を受けたり、だんだん日本が警戒されてまいりましたので、今後安易な技術導入は許されない現状であります。また一方、わが国の立場といたしましても、いつまでもそういった外国技術の消化にのみ力を尽くすのでなくて、みずからの体質を改善いたしまして、底力のあるみずからの研究水準の向上によって、それをもととして技術水準を上げていくことが現在必要であろうかと存じます。最近科学技術庁で日本の学会、協会等にアンケートを出しまして調査をいたしました結果によりますと、現在のまま推移いたしますと、研究水準の差が欧米よりむしろだんだん遠ざかっていくのではないか、あるいは現状は満足すべきであっても、将来必ず何かそこに破綻がくるのではなかろうかという率直な声をこのアンケートからわれわれは聞いております。でございますので、いまほんとうに私どもが研究水準ということを真剣に考えまして、そこにあらゆる手を加えまして、わが国の体質改善に力を注がなければならない時期にきておるかと、かように感ずるのでございます。  科学技術会議におきましても、この点をいろいろ検討いたしまして、ごく近い機会に科学技術振興の総合的基本方策に関する意見を内閣総理大臣に提出する運びになっております。もちろんその中に、ただいま朝永先生はじめ各先生からお話しの大型加速器につきましても、中に一項を設けてちゃんと入っているのでございまして、近くこの意見を答申いたしました暁には、何とぞ政府におかれましても、この意見を尊重してくださいまして、その実現にできるだけ早く御協力を賜わりますように科学技術会議の議員といたしましてお願いをする次第でございます。

岡良一日本社会党

○岡委員 私はしばしば朝永先生に純粋研究、基礎研究の重要性ということをお示しをいただいたことがございます。先年ちょうどゲッチンゲンへ私マックスプランクのプロフェッサーをたずねてまいりました。ちょうどそのときには西ドイツの核武装の問題、またゲッチンゲンのオットー・ハーン教授が軍事利用の禁止のアクチブをしておられるというような事情もございまして、そういうさなかでございましたので、当時のドイツの原子力相であるバルケさんがわざわざマックスプランクの教授にドイツにおける原子力の平和利用についての協力を求められたが、事情があるので一応興味がないといってわれわれはお断わりをした。しかし、われわれはオットー・ハーン教授を中心として基礎研究における蓄積というものは非常なものを持っておる自信がある。したがって、もしわれわれが平和利用に積極的に参加するということになれば、おそらく数年ならずしていわゆる先進国を追い越し得る自信があると胸を張って彼らは申しておりました。  ところが、最近ドイツにおける原子力の平和利用の分野の発展を見ますると、たとえば日本と違って実用動力炉の三号炉からは国産化でやっておる。カールスルーエの原子力センターというものはほとんどユーラトムの実質的なセンターになっておる。しかも日本と違って六つの新型転換炉をやり、一九六八年には高速増殖炉の詳細設計に入るというような計画も立てておる。  私はこういう事実を見るとき、朝永先生の教えられた基礎研究の重要性というものがまさしく立証されておるということをしみじみ感ずるわけでございます。しかし同時に私が考えることは、これが原子力発電、そういういわゆる実用の問題と結びついておるところに政府なりあるいは民間産業なりの大きな協力が期待し得る。  ところが、素粒子論、理論物理学のそういう分野においては、実用とはいわばほど遠い感覚をともすれば国なり国会が持とうとする。そういうことが予算化をはばんでおる現実上の大きな原因ではないかと私は思うわけでございます。いま篠原さんが言われました、私はそれを聞きたかったので、実はきょう科学技術会議の方々をお呼びしたわけなんです。この大型加速器の御計画については、科学技術会議はこれと真剣に取り組み、意見としてこれを具申しようということでございます。私ども科学技術会議を特に設けた、そしてまた、さらに積極的に意見の具申ができるように改正を要請されたときに、われわれがそれに快く承認をいたしましたのも、いわば日本の戦力が禁止されておるのであるから、非常に大きな国家予算というものがそこに余裕が出てくるわけです。であるから、国防会議をつくって、事務局をつくってというような同じ体制でもって、私は日本の科学技術振興のために科学技術会議をつくる。総理を議長とし、そして有力なスタッフをそろえる、同時にまた、充実した実務局を持って、そうして日本の科学技術政策の振興のために大いに努力をしてもらいたいというのが、われわれが科学技術会議法案を承認をした理由でもあるのです。さらにまた、積極的な意見をぜひ具申をして、そして誤りなからしめるようにしていただきたいという、この積極的な意見の具申をもさらにこの法改正に加えたのも、ここに趣旨があったわけです。ところが、第三次防で二兆七千億円という膨大ないわゆる国防計画というもの——二百七十億といえばその百分の一です。その百分の一の金が前向きの姿勢で検討はしておるが、文部省のほうではまだ最後の詰めに至っておらないというようなことは、私どもとしてはきわめて遺憾千万です。同時にまた、科学技術会議はこういう事実に着眼をせられて、どうか篠原さんも、政府の善処を促したいと頭を下げられますが、そうではなく、科学技術会議の権威にかけても、このような計画されておる四百億電子ボルトの大型加速器の建設というものについて、ぜひひとつ予算化のために積極的に努力をしていただくことが私は科学技術会議の使命だと思うのです。特に学術会議としても、一回は百七十億ボルトですか、今度は新しく四百億ボルト、こういうような計画を練られるについては、おそらくたくさんのまじめな研究者がほんとうに心魂を打ち込んで立てられた計画だと私は思う。それが、第一回がそのまま無視され、第二回もまたこれが実現を見ないというようなことが日本の今後の若き世代の研究者に与える非常に大きな影響、科学技術政策上大きな水をかけるようなやり方というものは私どもはまことに心配にたえない。したがって、私は多くを言いませんが、ぜひひとつ科学技術会議として、上原長官も篠原議員も、文部大臣がおられませんが、次官からもぜひひとつ文部大臣にはっきり言っていただきたい。そうして、あくまでも予算化しなければならないのだから、できるだけすみやかに科学技術会議を開かれて、その総会の結論として、この大型の加速器の建設を含めたりっぱな答申を予算に間に合うようにぜひ出していただきたい。このことをぜひお約束をしていただきたいと思うのです。篠原さんなり上原長官の御意見を伺いたい。

篠原登科学技術会議議員

○篠原説明員 ただいまたいへんに御激励をいただきまして、まことにありがとうございます。私ども科学技術会議におきましては、ただいまお話しのように、一見むだになるような目的のない研究こそが、ほんとうに先ほど申し上げました研究レベルを上げる方法である、かように考えておりますので、その点に科学技術会議といたしましても相当力を入れておるのでございます。そういうような目的のない研究が長い間に大きな成果を国にもたらすことは、いままで天文学のような非常に抽象的といいますか、実体的に見て実用に関係のない学問が、いまや人工衛星という宇宙開発に大きな関係を持ってきたことは申し上げるまでもございません。そのように目的のない研究、自由な研究がやがて大きな花が咲き、実がなる時代が来ることを私どもは念願しておる次第でございます。岡先生の御激励にこたえまして、私も科学技術会議の一員といたしまして、大臣の方々、あるいはその他の私どもと一緒に審議をしております方々と力をあわせまして最大限の努力を払うことをお誓いいたしたいと思います。

岡良一日本社会党

○岡委員 その点重ねて私は要望いたしておきたいと思う。特に先ほど来諸先生のお話もありましたように、やはり大型の加速器がなくては、またそれを通じての実験というものが理論を確立する大きな武器であるということをるる御説明になりました。それがないばかりに、湯川さんの中間子理論も、あるいは坂田先生の二中間子論とかニュートリノとかいうような二種類の存在についての実験は外国でないとできない、こういうことでは日本の科学政策というものがまことに貧弱きわまると言われてもしかたがないと思います。どうか日本の研究者の方々がすぐれた指導者である諸先生方を中心に、ほんとうに皆さん方科学技術会議の方がよく言われる自由で豊かな環境、これをうたい文句にさせないで、ぜひ自由で豊かな研究ができるような環境をつくるように、具体的には大型加速器の建設という方向においてまず第一歩の解決をされるように私は強く要望いたします。  しかも、このことは決して一岡良一の意見ではないのです。この問題はあるいは当委員会としての決議にしようかという考え方もあったわけでございますが、臨時国会の会期末でもあり、手続上の問題もあり、予算も伴うことであるから、委員会において科学技術会議の方々なり、また所管の大臣にとくと強くお願いをしようではないかという、これは与野党一致の希望として御解釈お受け取りを願いたいと思う。  重ねて善処方を強く、特に予算に関しては勇断をもって処置せられるように強く要望いたしまして、私の質問を終えます。

原茂日本社会党

○原委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。      ————◇—————

原茂日本社会党

○原委員長 これより請願の審査に入ります。  第四回アジア・エレクトロニクス会議の東京開催等に関する請願を議題といたします。  本請願の趣旨につきましては、すでに配付されております文書表によって御承知のことと存じますので、紹介議員の趣旨説明を省略し、直ちに採否の決定をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原茂日本社会党

○原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。おはかりいたします。  本請願は、採択の上内閣に送付すべきものと決定するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原茂日本社会党

○原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、ただいま議決いたしました本請願の報告書の作成につきましては、先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原茂日本社会党

○原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————

原茂日本社会党

○原委員長 次に、閉会中審査申し出に関する件についておはかりいたします。  本特別委員会は、閉会中もなお科学技術振興対策に関する件について、議長に閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原茂日本社会党

○原委員長 御異議なしと慰めます。よって、さよう決定いたしました。  次に、委員派遣承認申請の件についておはかりいたします。  閉会中審査案件が付託になり、実地調査の必要がある場合には委員派遣を行なうこととし、派遣委員の選定、期間及び派遣地並びに議長に対する承認申請の手続等は、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原茂日本社会党

○原委員長 御異議なしと慰めます。よって、さよう決定いたしました。  次に、閉会中審査のため、委員会において参考人より意見を聴取する場へ川の人選その他所要の手続等につきましては、あらかじめ委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原茂日本社会党

○原委員長 御異議なしと慰めます。よって、さよう決定いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時三十一分散会

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