法務委員会 第2号
- 発言数
- 98 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1965/12/23
会議録
○委員長(和泉覚君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 検察及び裁判の運営等に関する調査を行ないます。稲葉君。
○稲葉誠一君 沖繩で殺人を犯して日本に逃げて来たというそれに基づいて大阪府の警察が逮捕状を大阪地裁に請求して、逮捕状が出て逮捕した、こういうことが今月の二十一日ですか、大阪にあったわけですが、それに関連をしていろいろ聞くわけですが、その前に、これは総理府の方にお聞きしたほうがいいと思うんですが、沖繩の法的地位といいますか、ちょっとばく然としておりますけれども、それはどういうふうになっているのでしょうか、ひとつ概括的に御説明願っておいたほうが便宜じゃ、ないかと思いますので、御説明願いたいと、こう思うわけです。ーーちょっと質問の意味がはっきりしないと思いますけれども……。
○政府委員(山野幸吉君) 御案内のように、沖繩は、平和条約三条によりまして、行政、司法、立法の施政権全体がアメリカ政府にあるわけでございまして、したがいまして、わが国の憲法をはじめとする諸法令は、まあ観念的には施行されておるという解釈をとっておるのでありますが、具体的な適用はないというぐあいに考えておるのであります。ただ、純粋に属人的と申しますか、特に終戦直後の法令でたとえば恩給法とかあるいは遺家族援護法とか、そういう身分関係の法令は一部適用になっておる。これも米国民政府のアプルーバルを経て適用になっておるわけでございます。
○稲葉誠一君 これは法務省なり警察庁なりにお伺いするのですが、沖繩県人ですか、これも日本人なわけですから、その人たちが日本へ来て——沖繩も潜在的には日本の本土であるわけですから、そこで起きた犯罪が非常に証拠の上ではっきりしているということになれば、日本の警察で逮捕し、日本の裁判所で裁判できるというのは、これはむしろ当然なことではないかと、こういうふうに考えられるのですが、その点はどうなんでしょうか。
○政府委員(津田實君) 御承知のとおり、刑法では、一般国外犯、それから日本国民の犯した国外犯、それから公務員の国外犯という三種の国外犯に分かれておるわけであります。そこで、沖繩をその場合の国外という意味に解釈するかどうかという問題になると思うのであります。で、ただいま特連局のほうから御説明がありましたように、平和条約の関係で、立法、行政、司法の権限を沖繩に行使することができない、いわゆる潜在的主権というものあるいは領土権というものは存在しているが、ということになっておるわけであります。そこで、刑法あるいは刑罰法令の面におきましては、一体それをいわゆる国外と解釈するかどうかという問題になると思うのですが、刑法の面におきましては、やはり違法地域、つまり法が違った地域に沖繩はなるわけであります。現在、現実に立法権なり司法権がないわけであります。違法地域に属するわけでございますので、刑法をそのまま適用するということについてはいろいろ不都合が出てまいる。そういう意味におきまして、やはり刑法においては国外と解するのが相当であるというふうに解釈してまいってきておるわけであります。 ただ、しかし、一般のそのほかの法令におきまして沖繩に日本国の法令の適用があるかどうか。ただいま特連局のほうのお話がありましたわけでありますか、これは、個々の法令の趣旨に従いまして、あるいは法の明文に従いまして決めるほかはないと思います。たとえば、外国為替貿易管理法というようなものにつきましては、当然沖繩は本邦外でありますし、また、出入国管理令においても本邦外になる。そういう種類の法令では当然であります。また、法令の内容いかんによりましては、沖繩にも適用があると解するのが相当だというものもあると思いますから、したがいまして、それは各法令別にそういう問題が決まるものというふうに考えております。
○稲葉誠一君 外国で犯罪を犯してそして日本へ逃げて来た、日本に現実におる、それで外国で犯罪を犯したことが証拠の上から明瞭だと、こういう場合には、日本で逮捕なり裁判できるわけですか。
○政府委員(津田實君) それは、ただいま申し上げました刑法におきましていわゆる純粋の国外犯と見られるもの、刑法二条に規定されておるもの、これにつきましてはもちろんそうでありますし、また、日本国民が国外で犯しました刑法三条に掲げる罪、あるいは日本の公務員が国外で犯しました四条に掲げる罪につきましては、もちろんいま仰せのとおりであります。
○稲葉誠一君 そうすると、あれですか、外国人の場合は、外国で犯罪を犯してそれが日本へ逃げて来たと。外国で犯罪を犯したことが非常に明瞭だと。それは外国人同士のかりに殺人なら殺人であったという場合と、それから加害者が外国人であるけれども、被害者が日本人で、日本人が殺害されたと、こういう場合、犯人が日本へ逃げて来て現実におる、証拠がはっきりしておると、こういう場合に、両方の場合でも、あれですか、日本としては全然手が出ないわけですか。手が出ないというのはちょっと俗語ですけれども。
○政府委員(津田實君) 外国におきまして殺人というような重い罪を犯したと。被害者が日本人である場合、あるいはない場合、いずれにいたしましても、それの犯人が日本へ逃げて来たという場合に、外国から引き渡しの請求がありました場合には、引渡条約のある場合はもちろん、条約がなくても、同種犯罪について外国が同じことをするという保証を与えた場合には、引き渡しをすることができるわけであります。これは逃亡犯罪人引渡法に規定してあるところでございます。したがいまして、その場合には、そういう重い罪につきましては、被害者が日本人であろうとなかろうと、それは影響はないのであります。それは外国から引き渡し請求をしてくる場合であります。ところが、日本から、被害者が日本人であるからけしからぬから引き渡せということについては、現在の刑法の三条におきましては、殺人罪につきましては、日本国民が外国で犯した場合に限っておるわけでありますから、その犯人が日本人である場合はもちろん日本でやりますが、犯人が外国人である場合においては、これはできないということになるわけであります。これは、刑法の地域的な効力の問題といたしまして、御存知のように、属地主義、属人主義、保証主義あるいは世界主義というものがありますが、日本につきましては、かつては保護主義をとっておったところもあるわけでありますが、現在は属地主義あるいは属人主義というもの、あるいはものによっては世界主義というものをとっておるということであって、保護主義というものをとっておる場合はほとんどない。そういう意味におきまして、被害者が日本人である場合におきましては、いまのお話の例では適用がないことになると思います。
○稲葉誠一君 十二月二十一日に、大阪府の警察が、何か二人を殺人と殺人未遂容疑で逮捕したということですね。そして、これを警察が大阪の裁判所に令状請求したんですか。その間の経過をちょっと明らかにしていただきたいと、こう患うわけです。
○政府委員(日原正雄君) 事件の経過をお話ししたいと思いますが、一応被疑事実は、沖繩のコザの市内で活動する暴力団のY派幹部であるS、Mの両名が、外三名と共謀して、ここでかねてから対立していた暴力団のA派の幹部らを殺害しようと計画いたしまして、ことしの八月二十八日の午後九時ごろ、日本刀、やりを所持いたしましてA派幹部H方を襲撃をいたしまして、居合わせたHを日本刀で突き刺して一ヵ月の傷害を負わせた。さらに、その日の午後九時半ごろ、同じ場所の路上でA派組員が乗っている自動車を発見いたしまして、これを取り囲んでそれぞれ日本刀、やりで切りつけて、Oを死亡させ、外三名に一週間ないし二十日間の傷害を負わした、こういう事件でございます。 で、捜査の経過を申し上げますと、琉球警察で九月九日から九月十一日までの間に共犯者三名を逮捕したのでございますが、S、Mの両名は日本本土に逃走をして、大阪市内に居住している旨の情報を入手したわけでございます。で、十月二十日に琉球警察から警察庁に対しまして、S、M両名の所在捜査の依頼とともに、本土に在住している場合は事件処理を願いたいという旨の依頼があったわけであります。 この依頼に基づきまして、大阪府警が所在捜査を行なったところ、Mが大阪市内に立ち回っていた事実が判明したのでございますが、所在は確認ができませんでした。で、警察庁では、十一月の九口に琉球警察に対しまして事件の捜査記録の送付方を依頼し、その結果、十一月二十七日に琉球警察からこれの送付がありましたので、これを大阪府警に送りまして、大阪府警では十二月の十五日に大阪地裁に被疑者両名について殺人、同未遂非の逮捕状を請求いたしまして、同日その発行を得て、翌日全国に指名手配を行ないました。それから十二月の二十一日、お話にありましたとおり、大阪府警で、大阪市にSの内妻が居住していることが判明したので、被疑者の所在捜査を行なったところ、被疑者両名が居合わせたので、警察署に任意同行を求めて、指紋によって確認の上逮捕したと、こういう状況でございます。
○稲葉誠一君 いまの琉球警察から事件処理を願いたいということで、これは大阪府警にあったのか警察庁にあったのか、まああれですけれども、それではじめて逮捕できるようになったのですか。そういうふうな事件処理を願いたいという向こうからの申し出がないとできないのですか。
○政府委員(日原正雄君) これはいろいろ問題があると思いますが、事件の処理を依頼するということそれ自体は、やはりいろいろな証拠その他の関係があるわけでございますので、これらを全部もらいませんと立件不可能だし、また、逮捕したにいたしましても不可能でございますので、そういう関係から、依頼された場合にはじめていろいろな資料もこちらに送付され、そうして立件できるということになろうかと思います。
○稲葉誠一君 それは証拠資料の問題であって、これが加害者と被害者が傷害事件で両方逃げて来た、それで加害者も被害者も調べて証拠がはっきりしているというのならば、別に事件処理の依頼ですか、そういうようなものがなくてもできるんですか。
○政府委員(日原正雄君) お話のとおり、理論的にはできるわけでございます。ただ、手続上に証拠の関係が得にくいということだけでございます。
○稲葉誠一君 証拠の関係が得にくいか得にくくないか、これは事実問題であって、証拠の関係が得られた場合には、沖繩——琉球警察ですか、琉球警察というのはどういう警察なのかぼくはよくわかりませんけれども、沖繩全体の警察からそういう依頼がなくても、日本の警察としては逮捕なり何なりができるのかできないのかということですね。何か沖繩の警察との間に共助規定というか、一種の連絡規定というようなそういうものはできているんですか。それはどうなっているのですか。ぼくの言うのは、実際上の証拠の収集とかなんとかということは別の問題だと思うんですがね。それ以前の問題として、沖繩の警察からそういう依頼がなくても、沖繩にいる日本人が日本へ逃げて来て、そこで犯罪が明瞭である、こういう場合には、日本で逮捕なり何なりができるのか、令状請求ができるのか、こういうことなんですけれどもね。
○政府委員(日原正雄君) できると考えております。
○稲葉誠一君 そうすると、この十二月二十一日一のできごとは、なにも日本としては異例なことでもなんでもないわけでしょう。従前からできることをただやっただけだ、こういうことになるんですか。
○政府委員(日原正雄君) できることをやったということになります。ただ、従来は事例が私の知っている限りではなかったということはあります。
○稲葉誠一君 いままでに沖繩から本土へ逃げて来た容疑者というものは相当あるのじゃないですか、日本から沖繩に逃げた者もいるらしいけれども。こういうものは具体的にどういうことになっているんですか。
○政府委員(日原正雄君) これは昭和三十六年からことしの五月までの統計でございますが、本土で罪を犯して沖繩に逃亡した者で、日本人が——いずれもこれは検挙その他でつかまらなかった者はこの数字に入ってまいりませんですけれども、一応いろいろな関係で判明しました者は、日本人が五名、沖繩人が十三名、それから沖繩で罪を犯して本土へ逃亡して来た者で日本人が四名、沖繩人が四名ございますが、これらはいずれも再入国、まあ日本の本土で申し上げますれば再入国のときに逮捕した、あるいは刑罪で逮捕した、そうして他の場合の犯罪が発覚したというような場合でございます。
○稲葉誠一君 日本で犯罪を犯して沖繩へ行ったということがわかった場合に、そうすると、日本の警察としては、沖繩に対してそれを逮捕してくれという請求なり依頼はできないのですか。そして、こっちへ引き渡してくれということはできないわけですか。
○政府委員(日原正雄君) これは、先ほどお話がありました逃亡犯罪人引渡法の手続というものがどういうふうにからんでくるかということが一つの問題になるわけでございます。お互いに情報の連絡交換ということは十分やっておるわけでございますが、まずその前に、一体沖繩に逃亡したのかどうかがはっきりしない場合が大部分の場合であるわけでございます。そんなような事情もございまして、従来ですとそういうような実例はなかったわけでございます。
○稲葉誠一君 沖繩へ逃亡したかどうかというのは、わかる場合が多いんじゃないですか。どういう形で逃亡するのか。ちゃんと旅券を持って行くのですか、ただ密航して行っちゃうのですか。沖繩に対しては旅券を出すんですか。旅券というのは外国に出すものだと思うが、そこのところはどうなんですか。
○政府委員(日原正雄君) 先ほどの事件の場合には、これは密航して日本本土へ入って来た場合でございます、これは沖繩側から申しまして。それから、その情報は、たまたま向こうへ大阪のほうから手紙が行ったということから、こっちへ逃亡しているらしいということがわかったという事例でございます。まあそんなような場合にはわかってくるわけでございますが、正規の手続をとっております場合には、まだ偽名を使っておらない限りわかりやすいのでございますが、密航の場合には非常にわかりにくい状況にございます。
○稲葉誠一君 日本で犯罪を犯して沖繩へ行った場合に、これはいわゆる犯罪人引渡条約の問題では非常にむずかしい問題が生じてくるわけですね。これをはっきり認めれば、沖繩は外国だということを日本が認めたことになっちゃうし、これを適用するわけにはいかぬ。これはそのとおりなんですが、それは別として、沖繩へ逃げたということがはっきりしているときに、日本の警察としては、率直な話、手の打ちようがないわけですか。いままではそこはどうなんですか。
○政府委員(日原正雄君) 従来でも、情報の交換をいたしまして、向こうへ逃亡した者があるという情報を得ました場合には、こちらの犯罪の状況、あるいはそちらに逃亡しておる情報等をお互いに交換をして、従来の事例で申しますと、それが向こうの出入国管理令式なものに違反してこちらに送り返されてくるという場合は事例があったわけでございます。
○稲葉誠一君 そうじゃなくて、日本で犯罪を犯した、その犯罪そのもので沖繩へ逃げてしまったというときに、その犯罪で逮捕をしてくれということを、沖繩に対して、要求というか、何なりはできないのですか。そこはどうなっておるのですか。引渡条約がないからできないというのですか。引渡条約は関係ないんじゃないですか。そうすると、沖繩にいる間は、あれですか、全然つかまえられないのですか。
○政府委員(津田實君) 理論的な問題といたしましては、日米犯罪人引渡条約が沖繩にも適用があるんです。したがいまして、沖繩はアメリカの施政権の範囲内にあるのですから、日本政府として正式にアメリカ政府に対して引渡請求を引渡条約に該当する者についてするということは、これは法律的に可能であります。また、逆の場合も、そういうことはアメリカ政府からやることも可能であります。しかしながら、先ほどもちょっとおっしゃいましたように、これはまあ潜在主権があり、領土であるということになっておる場合に、しかも同じ日本国民の場合に、はたしてそういうことを公式にすることが適当かどうかということが残るわけで、それをやった事例はいままで全然ないわけです。もちろん、日米間の正式の引渡条約というものに基づく引き渡しの事例もいままで一件もございません。そういうことになっておりますので、そういたしますと、今度はそのほかの方法ということになるわけであります。そのほかの方法といたしましては、ただいま警察庁の刑事局長が申し上げましたように、向こうでたとえば滞在ができないような方法をとってそして国外に送還する、その際日本が引き取ってこれを日本に連れて帰って処分をする、これはもう可能であります。これは、沖繩ばかりじゃなしに、別にスイスあたりともそういう例でやったことがありますが、まあそれが一つの方法であると思います。 しかしながら、今度は、沖繩の警察が、日本の犯罪としてつかまえて、それを日本へ引き渡すことができるかどうかということは、まあ沖繩の法律解釈の問題になると思うのですけれども、これはやはりそういうことになるとすると、これは相互主義で行かなければならぬわけです。沖繩の犯罪人が日本へ逃げて来た場合に、沖繩独自の犯罪であるとした場合に、日本がまたつかまえて引き渡さなければならぬということになると、これは現在の日本の法制上はできない。ですから、相互主義のたてまえから、それは日本で同じようなことを保証することばできないという難点が出てくるわけであります。 もう一つは、現在沖繩に施行されておる法令は、主として日本の刑法が施行されておるわけです。もちろん日本の刑法そのものではありませんけれども、同じ内容のものが大体において施行されているわけです。そういたしますと、その場合、沖繩のほうの考え方としましては、本土は沖繩から見れば国外だと見る。それから日本本土籍のある、日本に本籍のある日本人は外国人と見ておるという見方になっております。その意味におきまして、日本刑法の国外犯に当たるものというふうに沖繩で解釈すれば、沖繩自身で処罰をするということはできるわけです。日本における犯罪、つまり日本の刑法第二条に当たる犯罪を沖繩の裁判所で処罰することはできるかっこうになっておりまして、日本に引き渡すという方法については、いま申し上げましたようなこと以外にはないということになります。
○稲葉誠一君 いままで沖繩から日本本土へ逃げて来たという者が十年間に百十二人あると伝えられている。もりとあるかもしれませんですけれども、これははっきり数字で警察でわかっているわけですか。わかっていてそれを日本で逮捕なり何なり全然しなかったわけですね。これはどうしたわけなんですか。証拠の関係がはっきりしないというわけですか。そんなことはないのじゃないですか。
○政府委員(日原正雄君) その数字は、私どものほうから出ておる数字ではございません。私どものほうではそういうふうな確認はしておりません。
○稲葉誠一君 そうすると、あなたのほうでは、犯罪を犯して沖繩から本土へ容疑者がどの程度逃げて来たかとか、あるいは、日本からどの程度沖繩へ逃げたとか、このことは全然わからないわけですか。日本から沖繩へ逃げたのは何人ぐらいだということはわかるのじゃないですか、向こうから日本へ来たというのはわからないとしても。日本から犯罪を犯して沖繩へ逃げちゃったと考えられるのはどの程度ぐらいということはわかるのじゃないですか。
○政府委員(日原正雄君) その点で数字のわかっておりますのが、先ほど三十六年からことしの五月までで申し上げた数字でございます。
○稲葉誠一君 それはつかまった数字なんでしょう。日本に帰って来たときにつかまったのじゃなくて、日本から出ていった数字というのは相当あるのじゃないですか。現実にまだつかまらないで沖繩にいるとか、あるいは、沖繩からほかへ行ってしまったとか、そう考えられるのは相当あるわけなんでしょう。
○政府委員(日原正雄君) 私どものほうで、琉球からの手配で所在を突きとめたがその後所在不明になってしまったというのが一名ありますだけで、それ以外の、検挙者以外の逃亡者については、私ども数字がとれておりません。
○稲葉誠一君 そうすると、いまの大阪の事件で、沖繩の人同士の殺人なり殺人未遂で日本の裁判所で裁判すると、相互主義で行くというと、日本で殺人なり殺人未遂を犯した人が沖繩へ逃げて行ったときには、当然沖繩で裁判すると、こういうことになるのですか。
○政府委員(日原正雄君) 先ほど法務省の刑事局長がお答えになりましたように、日本人と沖繩人と申しますか、沖繩人も日本人でございますけれども、これは区別して一応考えないといけないのじゃないかと考えるのでございます。日本人の場合、沖繩人に入らない日本人の場合と、それから沖繩人に入る日本人の場合。先ほどの沖繩のほうで国外犯として処理し得る場合というのは、これは沖繩人でない日本人ではちょっと適用はむずかしいのじゃないか、沖繩人である日本人の場合に限られるのじゃないか、こう私考えておりますものですから……。
○政府委員(津田實君) ただいま日原局長のおっしゃったのを若干補充いたしますと、日本の本土の関係から申しますと、沖繩にいる沖繩人も日本国民である。したがいまして、沖繩は日本国外であっても、刑法三条の国外犯の規定が適用されます。したがいまして、今回の事件のように沖繩で殺人なり殺人未遂を犯した事件は、その者が日本へ来た場合に日本の裁判所で処罰できることは、この刑法の三条におきまして当然出てくるわけです。ところが、その逆の場合はどうなるかと申しますると、つまり日本人は沖繩の裁判所におきましては外国人なんです。日本人というのは、日本本土籍のある者は、したがいまして、沖繩で国外犯として日本籍にある者を処罰しようとすれば、この二条に当たる内乱罪というようなもの以外は処罰ができないことになります。第二条の内乱罪あるいは通貨偽造罪というようなもの以外に、殺人罪は二条に入っておりませんから。もしも沖繩の通貨を日本で偽造した日本人が沖繩に行った場合にもちろんやれるということはあるわけですけれども、殺人のようなものは、沖繩では、外国人の外国における犯罪と、こういうふうに読まれるわけですから、沖繩の裁判所で処分することができなくなる。その意味におきまして、日本の場合と沖繩の場合とは違うわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、刑法の総則の法例がこれは沖繩に適用があるのですか。これと同じものが沖繩でも出ているのですか。
○政府委員(津田實君) 現在は、刑法といたしましては、終戦後の改正前の刑法そのものが適用されております、同一のものが。そのほかに、補充する規定はもちろんございますが。
○稲葉誠一君 終戦前の刑法というと、あれですか、たとえば不敬罪なんかみんなあるのですか、変な話だけれども。日本には不敬罪はないけれども、沖繩には不敬罪はあるのですか。
○政府委員(津田實君) 規定の上では残っております、事実どういうふうに適用されておるか知りませんが。
○稲葉誠一君 そこで、いま言った大阪の事件で、三名は琉球へつかまっているわけですね。そうすると、二名は今度大阪でやると、大阪で裁判をやることができるということははっきりしているんですか、どうなんですか。逮捕令状を大阪地裁が出した、これははっきりしていますね。大阪で裁判するということまで、これは起訴するのは検察庁だけれども、そこまで決まっているんですか。どうするんですか、これは。
○政府委員(津田實君) 逮捕されたわけでありますが、いずれ送致がある、あるいはあったかもしれませんが、いま私承知しておりませんが、でもちろん処分いたしますが、日本で起訴するに足る証拠があれば、当然日本の裁判所へ起訴されるものというふうに考えております。
○稲葉誠一君 日本の裁判所へ起訴するのが普通だと思いますね、逮捕状が出ているのだから。だけど、琉球のほうから、この場合でも、身柄を引き渡してくれと。裁判も二人と三人とが別々になってしまう。しかも、日本へ来た二人のほうが事実上主犯みたいな者らしいですね、よくわかりませんけれども。ばらばらになってしまうと困るというので、併合してやってくれ、こういうような要求が、これはどこからどういうふうにあるのかはっきりしませんけれども、あるというと、日本にいるこの人も沖繩へ引き渡すのですか。条約がどうだとか、条文はどうだとかいうことでなくて、事実上そういうこともあり得るのですか。移送の規定かなんかでも適用になるのですか。
○政府委員(津田實君) 現在のところ、それを沖繩へ引き渡すという方法はないと思います。
○稲葉誠一君 そうすると、沖繩で裁判している三名を日本へ引っぱって来てそうして併合するということもできないわけですね。
○政府委員(津田實君) そのことは、沖繩に現在まあある共犯者があるといたしまして、その共犯者を沖繩側が日本へ引き渡す何か手段が沖繩側にあれば、引き渡しさせるということは可能だと思うのですけれども、まず手段といたしましては国外退去ということなんですけれども、これは沖繩住民でありますから、おそらく国外——国外というか沖繩外に退去させることはできないと思います。したがって、まず方法はないのではないか。ですから、方法としては、正式に日米両国犯罪人引渡条約によって日本が要求するということがあり得るかということ以外にはちょっとないのじゃないかと思います。
○稲葉誠一君 そうすると、沖繩では日本の刑法が適用されておる。まあ適用されておるということばが正しいかどうか別として。だけれども、刑事訴訟法は適用されていないんですか。
○政府委員(津田實君) 日本の刑法がいまの国外犯という意味で適用されておりますが、沖繩に出ている法令は、日本の従来の終戦前の刑法を使っておるということにすぎないのでありまして、日本の刑法ではもちろんございません。訴訟法も、たしか日本の旧刑訴に非常に似ている、あるいは、旧刑訴そのもので若干モディファイしておりますと思いますが、しかし、それは、日本の旧刑訴が適用されておるということではございません。
○稲葉誠一君 そうすると、日本の刑法なりそれから刑訴なり、それが戦争前のものだと。それと同じようなものをあらためて法律としてというか、あるいは布令としてですか、沖繩で出しているんですか。そこがはっきりしないわけですが。
○政府委員(津田實君) ちょっとこまかいことはいまわかっておりませんが、従来の法律、つまり刑法なら刑法を使うという意味のつまり一般規定を設けておるということだと思います。
○稲葉誠一君 その点は、総理府のほうであるいはある程度おわかりですか。
○説明員(林忠雄君) いま問題になっております刑法、刑訴法かどういう形式になっているか、これはまだちょっと調べてございませんが、全般的に最初にニミッツ布告というものが——ニミッツというのは提督でございますが、ニミニッツ布告というものが米軍が占領したときに出されまして、それで当時施行されていた法律がそのまま生きるということになりました。その後、新しい布告布令ができたり、あるいは立法院で民立法が次々とされておりますが、それらで拾われていないものでニミッツ布告で生きておるというものが相当あると思います。いまの刑法なり刑訴法なりは、新たに立法院で立法され、旧日本の刑法、刑訴法を議決したものかどうかは、いまここではちょっと確認いたしかねますが、調べてみたいと思います。
○稲葉誠一君 それは、総理府のほうで一番よくおわかりになれば、総理府のほうで調べて、あとで資料として出していただければいいと思います。いまここでやっても時間がかかりますから。 そうすると、大阪で逮捕状が出たわけですから、ある程度の証拠があったわけで、それが直ちに起訴できる証拠があるかどうか、それは証拠の問題ですけれども、沖繩で被害者なり何なりの供述調書が出ているわけですね。警察官の供述調書か検察官の供述調書かよくわかりませんが、これは日本の裁判所でどういう証拠能力を持ってくることになるんですか。
○政府委員(日原正雄君) この逮捕状の疎明資料に、警察官の供述調書なり、共犯者の供述調書なり、参考人の供述調書なり、実況見分調書なりをつけております。これらにさらに証拠を取り寄せてやっていくわけでございますが、その証拠能力の判断はやはり裁判所にゆだねられることになろうと思います。
○稲葉誠一君 それはそのとおりなんですけれども、ぼくの言うのは、たとえば検察官の調書なんかもついているのですか。
○政府委員(日原正雄君) さしあたりの分にはついておりません。警察官のはついておりますが、検察官のはついておりません。
○稲葉誠一君 そうすると、起訴された場合に、被告のほうで全面的に不同意であった場合は、どうするんですか、立証なんかは。
○政府委員(日原正雄君) 沖繩のほうも、ほかの共犯者の裁判がございますから、その証拠の関係がございます。それが終わればこちらへすぐ送ってくるということでございますが、それまでの間はその他の証拠資料をできるだけ集めて、あるいはその証拠資料の写しその他でもって、それをどの程度、証拠能力を認めてもらえるかどうかという問題にかかってこようかと思います。
○稲葉誠一君 だから、現在の段階で、法務省のほうで、じゃこの事件を起訴して公判を維持するためには、具体的にどういう証拠が必要になってくるわけですか。この証拠の内容的な価値の判断ではない。もちろんそれを言っているわけじゃありませんが、しかし、検察官の被害者の調室なり何なりがなければ全然起訴できないんじゃないですか、現実問題として。そこのところはどういうふうになるんですか、法務省のほうは。
○政府委員(津田實君) これは、一般にいまの国外犯につきまして外国において犯罪を犯したという場合が出てくるわけですね。そういう場合と同じことになるわけであります。これは非常にいまの現行刑訴法では難問題になるということになるわけでありまして、極端に言えば、本人の供述調書にしても、同意がなければということになってくれば、今度はその証人に呼ばなければならぬ、こういう問題になるわけであります。現に、アメリカにおきまして同じようなケースで日本から証をアメリカへ呼んだという事実があります。かつて麻薬の事件でなかったかと思いますが、日本人を本人の同意に基づいて、旅費を出してアメリカに呼んで証言をさせたというようなことがあります。同じようなことを日本の場合でも行なわなければならないことになる場合が出てくると思うんですが、現在はそういうふうなことをやった例はないように考えております。
○稲葉誠一君 現実に、この事件は、もうきょうかあしたか大阪の地検に送られると思いますが、大阪地検で補充捜査をしなければなりませんわね。証拠能力を補充しなければならないんでしょう。これは具体的にはどういうふうにやるわけですか。
○政府委員(日原正雄君) これは直接のお答えになるかどうかわかりませんけれども、従来の事例で申しますと、日本の警察で琉球に出張して調査を行なって、そうして殺人未遂をくっつけて——これは刑罪で逮捕したものですから、向こうの事件を向こうで調査をして、そうして立件したような事例もございます。
○稲葉誠一君 別罪で逮捕したというのは、あれですか、直接の事件で逮捕したんじゃないんですか。別のことで逮捕したのですか。
○政府委員(日原正雄君) その事件はその事件で逮捕したわけですが、別な事例を申し上げたわけであります。沖繩で罪を犯して本土に逃亡して来た者で、こちらで別罪で逮捕して、そうして沖繩の事件をくっつけて立件する場合に、日本の警察官が沖繩へ行きまして犯罪の調査を直接捜査をいたしまして、そうしてつけて立件をした事例があると、こう申し上げておるわけであります。
○稲葉誠一君 ぼくの言うのは、警察の供述調書は別として、じゃ検察の調書ですね、これは具体的にどうするんですか、法務省としては。
○政府委員(津田實君) これはかつての例でありますが、日本の検察官が外国へ行きまして調べたことがありますが、その場合の調書というものは、要するに当該外国の官憲の調書をつくる際に立ち会ったということになる、そういう形でつくられておるもので、その調書をつまり国内に提出するということになるわけですね。だから、そういう形のものをどう解釈するかという問題になると思います。いま警察庁でおっしゃったように、日本の沖繩にいる者が、沖繩の警察の調書をつくる際に立ち会って、そうしてこちらの必要な質問をして供述をさせるというようなことはあり得るわけですね。その調書を日本へ持って来た場合にどう使えるかということは非常に問題になるわけでありますが、最終的にはやはり本人を証人として呼ばなければならぬということになるかもしれないわけであります。
○稲葉誠一君 日本の検事が沖繩へ行って、直接被害者なり何なりを調べることはできないわけですか。
○政府委員(津田實君) これは、沖繩の問題ということではなくて、外国の場合のことを考えますと、向こうにおいてそれを承認すればできること、だと思います。しかしながら、その場合は、必ず日本でもそういうことをするための承認を求められるわけです。外国の検出が日本に来て取り調べる、はたしてそういうことがいいかどうかという問題がありますから、直ちに直接外国へ行って外国人なり外国におる日本人を取り調べるということはいまのところはやっておりません。先ほど申し上げました、便宜外国人の取り調べに立ち会うというようなことはやっておりますけれども、それ以上のことはいまいたしておりません。
○稲葉誠一君 警察が直接逮捕状を請求したのかもわかりませんけれども、おそらく大阪の地検にも連絡をして逮捕状を請求したんでしょう。だから、逮捕状をまあ警察官がどういう形で請求したのかですけれども、大阪地検も了解をして逮捕状を請求している、おそらく。そのことについては、異例な措置だとなれば、法務省のほうにも、何といいますか、連絡なりあるいは承認を求めてきたというか、そんなあれがあったんじゃないですか、本件について逮捕状を請求する際に。
○政府委員(津田實君) そのことはございませんです。これはもう実際の検察事務そのものでありますし、問題はその事実関係でそれだけの逮捕状をとるだけの資料があるかどうかという問題に帰着するわけであります。あとそれについて公訴を提起することのできる証拠があるかどうかということは、その後の取り調べの状況によるわけです。あるいは意外な証人が日本に来ているかもしれませんし、そこは将来の見通しはわからないわけであります。理屈の上では、その場その場で逮捕状をとるだけの資料があるかどうかをおそらく判断したものと解しておりますが、本省のほうには何も連絡はございません。
○稲葉誠一君 これはどういうふうな逮捕状の請求のしかたをしたんですか、警察のほうは。
○政府委員(日原正雄君) 御質問の趣旨に合うかどうかわかりませんが、一応、先ほど申しましたように、警察庁と大阪府警察と連絡をずっと本件についてはやってきたわけでございまして、逮捕状請求のときにはもちろん警察庁に連絡をしてきますし、また、地検とどのような連絡をしたか、しかと報告は受けておりませんが、事実上の連絡はやっておることと思います。私どものほうも了解をして、ある程度の連絡をしてやってまいっておるわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、検事が行って直接の被害者なり何なりの供述調書がとれないと、こういうことになってくると、結局は、公判の中では被害者やなんかを全部証人として呼ばなきゃならぬということになるわけですね。証人として呼ぶことはできるわけでしょう、日本の裁判所として、外国にいる人であっても。
○政府委員(津田實君) これは証人を呼ぶことはできます。もちろん本人が来なければ勾引するあれはないんですけれども、来てもらうことはできます。 なお、ちょっと先ほど申し上げたのを訂正いたしますが、刑訴につきましては、一九五五年十二月三十一日立法八十五号というので新刑訴に非常に近くなって、ほとんど新刑訴のように変わっております。先ほどその前のことで申し上げましたので、ちょっと訂正しておきます。
○稲葉誠一君 さっき思ったのは、沖繩では日本の旧刑訴みたいなもので、日本に来ますと新刑訴となってくると、新刑訴と旧刑訴と全く違うわけですから、ある意味における不公平が生まれてくるんじゃないかと思ったんですが、それはそれであれですが……。 そうすると、いまの場合に、沖繩へ対して、あれですか、日本の裁判所が、一種の共助みたいな形で、証人尋問の嘱託といいますか、これはできるわけですか。
○政府委員(津田實君) 琉球政府の裁判所というものの性格の問題があるわけですが、御承知のように、外国裁判所の嘱託による共助ということは、共助法というのがございましてお互いにやればできることになっておりますが、それは外交機関を通ずることになります。いまの個別的な嘱託という意味において向こうで応諾義務を生ずるというようなものは、いまのところはないわけでございます。事実上の問題としてやるということは、これはあり得る、こう思うわけでございます。その程度にとどまるかというふうに思っております。
○稲葉誠一君 佐藤総理が沖繩を訪問した。それを機会に、司法、捜査上の共助体制ということで、総理府、法務省、警察庁で共助協定の検討を始めている。一方、琉球政府のほうでもその準備を進めていると、こういうことが伝えられているわけですね。この点はどうなんですか、具体的に。これは総理府のほうが主管ですか、どこが血管なのかわからぬのですが、どの程度進んでいるわけてすか。どちらでもけっこうです。
○説明員(林忠雄君) 検討事項としてあげておりまして、その取りまとめは私のほうでやっております。ただ、この件につきましては、その後あまり進行がはかばかしくないので、具体的な検討はさらに今後に持ち越しております。
○稲葉誠一君 この共助協定ということで法務省としては何を一体内容的に織り込もうということになっているわけですか。
○政府委員(津田實君) 内容の問題は、私どもとしては、できるかぎり日本内地と同じような方法をとりたいという希望は非常にあるわけです。ただ、問題点といたしましては、これは事司法権に関する問題でありますので、まず一番問題としては、一体どの程度に理解するか。要するに、日米両国犯罪人引渡条約というようないわゆる公式の合衆国の主権と日本の主権という意味で解釈していけば、これは完全な外国と同じになってしまう。そうじゃなくて、特殊地域という意味におきまして日本の政府の当該官憲と沖繩の当該官憲とが便利な形における共助ができる、正式の外交ルートでなくして便利な形における交渉ができるということにしないと意味がないというふうに考えるわけであります。そこで、そういうものをつくるということになりますと、これは司法権の内容に関する問題になりますので、アメリカ政府そのものの考え方が非常に問題になるわけです。同町に、非常に共助的にいたしますと、日本と法域が違わないようなかっこうにできるだけしようといたしますと、琉球の裁判所の組織とか、裁判官の構成とか、裁判官の資格とかいうことに問題が出てくるわけです。そういう問題と両方問題があるわけでありまして、かなりむずかしい問題になってくるわけであります。しかしながら、一挙に全部解決するということは困難でありますので、できる範囲のものにつきまして、いまの正式の外交ルートによるものでなく共助ができないかということをいませっかく検討しているという段階でございます。
○稲葉誠一君 せっかく検索中のことで、あまり聞くと、かえって問題が逆にこじれてくる危険性もあると思いますから、これ以上聞かないわけですけれども、結論的に言えば、アメリカは日米犯罪人引渡条約の適用を求めているわけでしょう。そうして、何か布令第五十号というものを出しているんですか。それとの関連において、共助規定ということができることは、それと食い違ってくるというか、相反してくるからということで、望まないんじゃないですか。そこに一つの問題点が出てきているんじゃないですか。これはまあぼくはそういうふうにちょっと考えるのですが、それに対してそうだとかそうでないと答えることは、あなた方としてはいまちょっと困るということなら、別にぼくはそれ以上のことはいまの段階では求めませんけれども……。 布令五十号というのは、これは何なんですか。布令五十号というのがあるでしょう。
○政府委員(津田實君) これは、一九六三年十二月二十六日布令五十号というものでありまして、「逃亡犯罪人引渡について」というのですが、犯罪人引渡条約の受け入れができるという、まあ日本の逃亡犯罪人引渡法に該当するものと考えられるわけでございます。したがいまして、逃亡犯罪人引渡法によって要求を受けても応ずる体制ができておるという意味にはもちろん言えるわけであります。しかしながら、逃亡犯罪人引き渡しというものは、広い意味の共助ではありますけれども、相手力の裁判に協力するという意味は、身柄を引き渡すということだけが共助ではないわけですね。それはあくまでも別の司法共助の問題。むしろ、身柄引き渡しの問題と同時に、別の共助のほうを問題にしないと、先ほど仰せになりましたような、実際事件をやる場合に非常に難点が出てくるということになるわけであります。でありまするから、身柄引き渡しの問題よりも、むしろ難点のほうがいまの実際の司法事務の共助関係だろうと思いますので、その辺を十分検討しておる、こういうことになるわけであります。
○稲葉誠一君 戦前ですか、司法共助の規定ですか、何か日本でもあったわけでしょう。あれはどことどことの間のものですか。日本と旧植民地との間ですか、ちょっと忘れてしまったわけですが。
○政府委員(津田實君) 最も戦前で問題になりましたのは、日満司法事務、満洲国との司法事務共助法でございます。
○稲葉誠一君 そこで、この沖繩の問題は非常に複雑であって、施政権の返還の問題にもからんできて、いま沖繩に日本の憲法を適用すべきだというような考え方で訴訟も起きていることですが、それはひとまずおいて、たとえばほかの国から日本へ犯罪を犯して逃げて来た、それが明瞭だという場合には、具体的に日本としてはどういう措置をとるわけですか。たとえば韓国で——韓国を例にあげちゃ悪いかもしれませんけれども、ほかの例でもいいですが、たとえば韓国として、日韓条約が批准できた、韓国で犯罪を犯して日本へ逃げて来た、こういう場合に、日本としてはどういうふうにするのですか。
○政府委員(津田實君) それが、その犯罪の内容が刑法の二条の国外犯であれば、当然日本でできるわけであります。しかしながら、そうでない犯罪につきましては、まあ日本としては何ら犯罪と見ていないわけですから、見ていないというよりか、見ることはできないわけですから、何らの処置はできないということになります。 ただ、問題は、国際礼譲に基づいてその逃亡犯罪人を引き渡してもらいたいという要求があった場合にどうするかという問題になるわけであります。これは、現在の逃亡犯罪人引渡法によりましては、相手方が同種の保証をした場合で、その犯罪人が犯罪の要件に当たる場合にはできるということになっております。これは改正によってなったわけです。ですから、それに当てはまる場合なら逃亡犯罪人引渡法を発動するということになるだろうと思います。
○稲葉誠一君 逃亡犯界人の引き渡しというのは、個別でしょう。日本とアメリカとの間の条約であるとか、日本とある国との間の条約という形であって、万国共通の条約という形をとっているのではないのじゃないですか。そうなってくると、日本と韓国との間の場合には、それは類推できたとしても、そのものとしては適用にならないのじゃないですか。
○政府委員(津田實君) 逃亡犯罪人引渡法第三条の二号によりますと、「請求が引渡条約に基づかないで行なわれたものである場合において、請求国から日本国が行なう同種の請求に応ずべき旨の保証がなされないとき。」、そういうときには引き渡してはならない、こういうようなことになるわけですから、そういう意味で、請求をしてくれば、向こうが同種の保証をすればできることになっておりますから、それは条約がなくてもできる。条約があれば、条約上の義務として当然やらなければいけない。現在条約があるのは日米間だけでありますけれども、この前のスイスとの関係等もありまして、脱衣ではこういう杉になっておるわけであります。
○稲葉誠一君 それならば、日米犯罪人引渡条約というのは、前の前の国会でしたか、ここで論議されたわけで、私もここでいろいろ質問したのを覚えておりますけれども、日米の間だけであって、特にこういうものをつくらなくてもいいわけですね。どうしてこういうものをつくったのか。これはまた蒸し返しになりますけれども、日本としてはほかの国との間でこういうものをつくる必要はいまのところない。逃亡犯罪人引渡法という法律があれば十分カバーできる、こういうものは。それなら、日米犯罪人引渡条約をつくる必要はないの、じゃないですか。
○政府委員(津田實君) これは、はっきり記憶いたしませんので、多少間違いがあるかもしれませんけれども、日米犯罪人引渡条約というのは明治十九年にできたものであります。戦争によって中断しておったわけですが、その後復活の要求がありまして、同じものを復活した。同じものといいますか、前の条約の効力を引き続き認めた。しかしながら、当時は、日米間と、それから日本と旧帝政ロシアとの」間にも引渡条約がありました。旧帝政ロシアとの関係の分は消滅してしまったわけですが、残っているのは日米側ということだけなんですが、それはアメリカとだけやったということではなくて、その従来のいきさつからやっただけのことであります。現在におきましては、そういう条約がなくても引き渡しをするという慣行が国際的に相当出てきておりますので、正式に条約を必ずしも結ぶ必要はないということになるわけですが、ただ、どうしても権利として要求するということになれば、条約を結んでおかなければならないということになるだろうと思うのであります。
○稲葉誠一君 いままで、警察では、沖繩から来た殺人容疑者なんかがあった場合に、はっきりしていたけれども逮捕できないということで、沖繩にお帰りなさいというふうに説得をして帰した例が相当ある、こういうふうに伝えられているわけですね。たとえば宮崎の県警で殺人容疑者を説得して帰した例があるということなどをあれされて、説得以外には手がなかったんだ、こういうようなことも伝えられているんですが、そうすると、あれですか、従来は、証拠がはっきりしていたけれども、事件処理を願いたいという依頼がなかったために向こうに帰したのか、あるいは、証拠かはっきりしていなかったので帰したのか、そこのところはどうなんですか。今後は、警察では、沖繩で起きた犯罪であっても、それが日本に逃げて来た、証拠が非常にはっきりしているということになれば、日本で逮捕し、令状を請求するんだ、こういうふうに承ってよろしいわけですか。
○政府委員(日原正雄君) 警察の現在の考え方としては、身柄引き渡しの問題は非常にむずかしい問題がからんでまいりますので、これができれば捜査上は非常にすっきりした形になるわけでございますが、いろいろな問題がからんできてこれが早急な解決はむずかしい。ただ、さしあたりのところは、日本人の国外犯として処理し得るものについて、従来は、そういうものにつきましても、本人の所在を発見しても十分な疎明資料が整わないでみすみす行方不明にしてしまったという事例があるわけでございます。そういう、つまり沖繩で非を犯して本上に逃亡して来た、こういう日本人について、これをみすみす逃がしてしまうのもどうか、せめてこれだけを現行法のワク内でやれるだけやってみようということが今度のこの立件になってきたわけであります。従来ですと、説得もありましょうけれども、たまたま入って来た、再入国して来た、あるいは説得に応じて帰って来た、これを逮捕しておるような状態であります。それ以外は、みすみす本人の所在を突きとめながら、資料が交換できなかったために逃がしてしまったわけであります。そこで、本人の所在発見までの岡でも、向こうから資料を送ってもらって逮捕状をとっておくというやり方に切りかえたわけでございます。ただ、身柄引き渡しということになりますと、これはまだ根本的な解決になりません、今後の課題になるわけでございます。
○稲葉誠一君 法務省刑事局の話として、「毎日新聞」十二月二十一日ですが、「大阪地裁が令状を出したということは、沖繩での犯罪に対して日本に裁判権があることを認めたものだ。」と、前段でこういう談話になっておるのですが、これはこのとおり承ってよろしいのですか。
○政府委員(津田實君) この記事が出まして、私も実は驚いたのでありますが、担当者に新聞のほうから聞いてきたということでありますので、担当者について調査をしたのですが、こういうことは絶対申しておらないのでありまして、先ほど来私が申し上げましたように、国外犯ならできるということで、別になにも法律問題としては新しい問題ではないというふうに説明したのを、いろいろなことをたくさん聞いたり説明をしたりしたので、取り違えたものであるというように思われますので、この程度にいたしておいたわけですが、あと別に新聞からもまた私に問い合わせがありましたので、ただいまここで御説明申し上げたようなふうに答えておいたわけであります。
○稲葉誠一君 私も、法律的に見れば決して新しいことでもなんでもないと思っていたのですが、いかにも新しいことのように伝えられてきたから、これは変だなあと思って、変だなと言っては悪いですが、警察関係としては将来非常に問題に——警察ばかりじゃないと思いますか、非常に大きな問題になってくると、こういうふうに考えられるので、一応事実関係を確かめる意味で質問をしたのですが、いずれにしても、沖繩の問題は、これは一つの問題ですけれども、その他たくさんの複雑な問題で私どもの沖繩対策特別委員会もありますから、そういうような問題の中で、ほかの委員会なり何なりで十分問題を展開していって、そうして沖繩の日本復帰が一日も早くかなうような形で、私どもこれは超党派で行くべきだと思いますが、そういう形で論議を進めていきたいと考えます。 きょうはこれで終わります。
○委員長(和泉覚君) 本はこれにて散会いたします。 午前十一時三十四分散会