内閣委員会 第27号
- 発言数
- 62 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1966/04/20
会議録
○木村委員長 これより会議を開きます。 労働省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。 質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、これを許します。大出俊君。
○大出委員 家内労働に関する審議会をつくるという設置法が出ているわけでありますが、実はこれにもずいぶん意見があるわけであります。ただ、時期的にいま春闘の山場と言ったらいい時期にきているわけでありますので、この春闘の中で、特に中小企業労働者の問題をどうするかという、ことしは不況下の春闘と言われるだけにたくさんの問題が実はあるわけでありまして、特に、その中には手のつかない家内労働の問題などもあるわけでありますが、そういう意味で、大筋の春闘をめぐる問題を一つ承って、あわせて設置法そのものの、審議会をつくるというわけなんですけれども、私の異論のあるところをひとつ申し上げて御意見をいただこうと、こう思っているわけであります。 そこで、大臣にまずもってお伺いしたいのは、日経連の前田さんはじめ皆さんが、盛んに企業防衛、さらに責任賃金論、こういう言い方をされているわけでありますけれども、これを労働省の行政長官という意味でどういうふうにお考えになっているか、これをまず冒頭に承っておきたいと思います。
○小平国務大臣 本年の春闘は、日経連を中心とする使用者側におきましては、いま先生のお話しのように、企業防衛の立場から対処しなければならぬと、こういう態度をとっておりますし、また、組合側におきましては、生活防衛という立場から臨まなければならぬと、こういうきわめて対照的な態度でお互いに臨んでおるわけであります。そこで、日経連の言う企業防衛あるいは責任賃金、こういうことについてどう考えるかということでございますが、もともと賃金問題は言うまでもなく労使間の問題でありますから、労働省の立場、あるいは政府の立場から申しますならば、その両者間の意図するところがどうであれ、労使間で十分話し合いをしてきめていただく。もしその両者間だけの話し合いでできない場合は、申し上げるまでもなく法のきめておるように、労働委員会あるいは公労委等にそれぞれ持ち込まれて、その場で平和裏に解決をしてもらいたい、こういうことをわれわれとしては考えているわけでございまして、その間賃金について、個々の企業等の賃金がどうあるべきかというようなことまでは、われわれはタッチはいたしません。ただ、一般的に申しますならば、申し上げるまでもなく賃金というものは、やはり国民経済の実態に即して、あるいはまたその間もちろん企業の実態というものも無視するわけには実際問題としていきませんでしょうが、それらのことについて両者間がよく理解し合って話し合いをしてほしい、こういうことでございまして、日経連等のいう企業防衛なり責任賃金なりというものについて、それがいいとか悪いとか、そのことは同時に組合側の主張に対しても同様でございますが、個々の企業、個々の団体等について、私どもはそれがいいのだとか悪いのだとか、そういうことを申すことは、むしろわれわれの立場からいえば、遠慮すべきことだろうと思います。
○大出委員 そこで問題は、非常に物価が上がってきたという事実は、これはお認めになると思うのでありますが、そうなると、それだけ生活が苦しくなるということも理の当然でございますから、組合側に生活防衛という、いま大臣が口にされたものの考え方があるということも、当然だということになるわけであります。 そこで、前段で二つばかり聞いておきたいのですけれども、労働省が統計をとっておられますけれども、昨年の春の各組合の賃金引き上げ、これは集約としては大体どのくらいのところにいっておったかという点をひとつ承りたい。
○三治政府委員 昨年の春闘の賃上げの状況は、定昇を含めまして大体三千円、一〇・二%程度というのが、大体当時いわれている春闘の賃金の引き上げ状況というふうに判断しております。
○大出委員 さらに承りたいのですけれども、昨年でも本年でもかまいませんけれども、日本の労働分配率、大企業、中小ございますけれども、これを大づかみに見て、どのくらいのところにあるとお考えになっておりますか。
○三治政府委員 工業の場合の分配率は、三十七年で三七・一%というふうになっております。
○大出委員 三十七年を基準におとりになるとすれば三七%ちょっとくらい、お説のとおりです。このときの欧州、アメリカなどの労働分配率をながめてみますと、多少西ドイツ、イタリア等の例がありますけれども、五〇%から六〇%くらいになっているわけであります。 ところで、もう一つ承っておきたいのですけれども、この大きな開きがある上に、日本の場合に特徴的にあらわれているのは、大企業、それから中小企業の間における労働分配率のあらわれ方の相違だと思うのでありますが、そこらを数字的にどうおとりになっておられますか。
○三治政府委員 ただいまちょっと規模別のこまかい資料を持っておりませんが、大企業において分配率が悪くて、中小企業にいくほど分配率は高いというのが、日本の労働分配率の特徴というふうに考えております。 〔委員長退席、伊能委員長代理着席〕
○大出委員 重ねて承りたいのですが、いま数字がお手元にないとおっしゃったから、それはそれでいいのですが、大体千人くらいを基準にいたしまして上下とってみますと、大企業の場合には大体三〇%前後、ちょっと低いところもありますし、上がっているところもある。ところが中小の場合になってまいりますと、まさに欧州並みの、あるいはアメリカ並みの五〇ないし六〇、六〇をこえるところまである、こういうふうな実情であります。しからば、このことは何を意味するのか、今次春闘における非常に大きな問題点でありまして、各労使の間で大きな論争点にもなっているところでありますから、労働行政を担当される労働省ですから、労働省はあるのだが労働行政はないというのじゃ話になりません。そういう意味で承りたいのですけれども、なぜ一体こういう大企業と中小企業との間における極端な分配率の開きが出ているかという点について、御答弁いただきたい。
○三治政府委員 日本の労働分配率が大企業、中小企業で非常な格差があるのは、こういう理由じゃないかと思います。大企業のほうは資本装備率が非常に高い。しかもそれが自己資本でなくて、他人資本で利子を払っての操業であるというふうになりますと、どうしても労働分配率は低くなる。ところが、その下請や、あるいはことに労働集約的な中小企業になりますと、資本装備率が非常に低いわけでありますから、どうしても労働分配率は非常に高くなる、こういう関係ではないかと思います。
○大出委員 この問題は、大企業が優先して新規学卒者等を採っていく、そういう側面が一つありまして、したがって高度成長の過程における労働市場における逼迫した状態がある。中小企業というのは、企業の信頼性等の関係もありますから、若年労働者、つまり学卒者が来たがらない。大企業が優先的に若い人を採ってしまう。特に花形産業であった電機産業などをごらんになればわかるように、平均年齢二十六歳だなんというところはざらにある。ソニーなんか、ことに若いわけであります。こういう問題が一つありますし、男女別の格差ということも、大企業の場合には非常にはっきりしている。そこで、いまお説のようにたいへんな設備投資を続けてきたわけでありますけれども、国の財政投融資あるいは財政金融政策という面で、大企業に集中的に資本がいっていることは事実で、いまお話しになったとおりであります。これを総資本総額から見ますと、総資本総額がおおむね三十九年から四十年、このあたりで四十八兆円ある。それを平均してみますと、自己資本が二〇%ということになり、つまりここ五年ばかりの日銀の通貨発行残高をながめてみましても、三十五年から急激に倍にふくれ上がってきている。四千億台がいきなり九千億になる。それからついに一兆をこえてしまう。こういう形の日銀通貨の発行残高を見ましても、そういう極端な上がり方をしておって、集中的に大企業にいっている。ここにいまお話しのような形が出てきている。こう見なければならぬと思うわけであります。そうなりますと、ある面からすると、大企業、中小、いろいろ比較をいたしまして、かつまた欧州の労働分配率と比べてみまして、日本の場合には、特に大企業は生産性が非常にあがっているにもかかわらず、労働分配率が低い、こういうことになっていると思うのであります。お認めになりますか。
○三治政府委員 大企業のほうの生産性の上がり方がやはり中小企業に比較して高くなるのは、先ほど申しましたように、非常に近代設備を入れて、一人当たりの生産量が飛躍的に増大をしている、これはもう事実であります。
○大出委員 間接的にお認めになっている。まあ当然認めざるを得ないことだと思うのであります。 そこで問題になりますのは、もう一つ大きな論点は、賃金が上がると生産コストが上がるのだという主張を間々されるわけであります。そこで承りたいのですが、生産コストに占める賃金、人件費の割合が、ここ数年来どういうふうに動いているとお考えになっておりますか。
○三治政府委員 労務比率につきましては、大体全体としては一一、二%を占めておって、そんなに上がり下がりはない。これも統計がわりあいに古くて、三十七年までしかわれわれの手元に渡る資料としてはございません。この場合におきましても、この労務比率においても、規模の小さいところが労務比率も高く、企業の規模の大きいところがやはり低い、こういう傾向があるようでございます。
○大出委員 三十七年までしかないとおっしゃるが、それでは困るので、一ぺん取っておいていただきたいのですが、日銀の調査局に資料がございます。この日銀の調査局の資料は「主要企業(製造業)コスト諸要素の変化について」という調査がございます。これが一番、いまある資料を私もいろいろ当たってみましたが、間違いのない正確な資料だと判断いたしておりますが、したがってこれは三十九年まで出ておりますから、おそらく四十年も近く出るだろうと思いますけれども、お取りおきを願いたい、こう思うのであります。しかし、いま三治さんがおっしゃっている傾向はそう間違いないのでありますけれども、ただ、私がここでちょっと申し上げておきたいのは、私がいま述べました日銀の資料によりますと、昭和三十年の人件費比率は一五・三なのだ。三十五年における人件費比率は二・四なんです。極端な下がり方をいたしております。三十九年になりますと、さらに下がって一一・二、こういうふうに下がってきているわけであります。あわせて申し上げますが、原材料のほうも、三十年の八九・七、三十五年の七四・〇、三十九年の七〇・六、原材料の側も極端に下がってきております。これは個々の企業をお取り上げ願えばわかるわけであります。そうなりますと、原材料と人件費は、昭和三十年から比較いたしまして三十五年、七年、八年、九年、こうとってまいりますと、年々下がってきている。こういう傾向があらわれて、かつ、いま労政局長の御答弁がありましたように、大企業と中小と比べてみた場合に、大企業のほうが特に大きく下がってきている。こういう内容になっているわけであります。これは日銀の資料でございますから間違いないところでございまして、一ぺんお調べおきいただきたいと思うわけであります。 この面からいま私が五、六点中心的なポイントについて御質問申し上げたのでありますけれども、そこから出てくる結論はしからば何かといえば、国の財政投融資あるいは財政金融措置の面からいたしまして、大企業に非常に資金が集中をいたしております。四十八兆円の資本総額のうちの約二割が自己資本、電機産業なんかは東芝、日立、日電等々は三二、三八というふうなぐあいに——松下等は特に自己資本が高いわけてありますが、そういう例外も出ておりますけれども、そういう状態が見られる。ところで、若い方々は集中的に大企業に吸収してしまった。その面からも人件費は当然下がってきたという結果が、いま最後に申し上げた資料、数字にあらわれているわけであります。そうなりますと、しきりに旗を振っている方々はあるけれども、本年は不況だからといって賃金を押えようというものの考え方は、この面から私は誤りであるというふうに考えておるわけであります。逆な面から申しますと、ことしの春闘全体をながめてみまして、民間産業の今日まで獲得をしている、また使用者側が出している賃金についての回答、これを現時点でながめてみて、どの程度どういうふうに動いてきたか、これを労政局の皆さんとしてはどういうふうにおつかみになっておりますか。
○三治政府委員 ことしの民間企業の賃金の回答状況を見ますと、一般に支払い能力があって、わりあいに企業の経営状態がいいという産業は、企業の回答が早目に出ておる。現在まで出ましたところの大体のところは、昨年並み、あるいは絶対額で二、三百円多いというのが、大体の傾向ではないかというふうに見ております。これも、一般的な動向としてつかむには、まだ時期が非常に早過ぎるのじゃないかと思います。
○大出委員 それを業種別にながめてみると、どういうことになりますか。
○三治政府委員 業種別といいましても、まだ鉄のほうで五社の回答、それから化学関係の部面が、産業としては大体大どころがおくれているようなものがあると思いますが、ほかの電機とかその他の産業、またメタルマイニングの鉱業は大体昨年並みというふうに出ておりまして、鉄鋼とそれから全鉱、金属鉱山は、大手のところでは昨年並みの回答を出しております。化学はまだ全部出そろっておるわけではございませんが、一応昨年並み、あるいは若干上回っている。現在のところ、こういうような状況ではないかというふうに見ております。
○大出委員 合成化学関係、合化労連傘下が比較的早く数字が全部そろって出ておりますが、これは日経連が調べてもおりますが、住友化学が、これはベースは三万八千七百六十八円というベースなんですけれども、定昇込みで四千二百六十円出ているわけであります。これは昨年三千九百六十二円でございますから、相当高い比率になっておる。これよりまだ高い日本板硝子は、四千三百八十円出ている。これはしかもいずれも闘争終結をいたしておりません。それから日東化学が三千七百三十五円、これも日東としてはずいぶん出しているわけであります。企業の内容も詳しく調べてみましたが、よく出している。しかし、妥結をしていない。そのあと日本水素、東北肥料、製鉄化学、富士フィルム——富士フィルムなんかも三千六百九十四円、私が幾つかあげましたのは、いずれも三千七百円台、それから藤沢薬品、山之内製薬、宇部曹達、日本油脂、特に宇部曹達なんかは四千百四十二円、こういう金額がずらっと並んでいるわけであります。日本油脂でも三千八百三円、こういうわけです。化学関係等はおくれているとおっしゃるけれども、そうではなくて、これだけぞろぞろ並んでしまっている。あとこれにどうならっていくか、どういうふうに各出てないところが取り組んでいくかという問題になっている。それから合化ではない化学同盟関係のところにいたしましても、パイロットが四千七百五十円、大日本塗料が四千二百八十円というところから、日本安全硝子が三千七百六十円、セーラー万年筆にしても、あるいは味の世界におきましても、片っ端から三千円をこえて四千円台に近い、こういう状態が至るところに出ております。いまいろいろ不況ムードでうわさをされているゴム関係、ここにいたしまして本、もちろん定昇込みで説明しているわけでありますけれども、三千円の半ばを過ぎて四千円に近いところがずらりと並んでいる。横濱護漠が云々されておりましたが、ここも三千六百三十七円がすでに出てしまっている。それから日東タイヤなんかもいろいろいわれておりましたけれども、ここでさえ三千三百円も出ている。こういう関係で、多少中小に類するところも、いずれも三千二百円から三千四、五百円台にのぼっている、こういう実情にあるわけであります。食品をながめてみましても、森永にしろ、明治にしろ、いずれも四千円をこえてしまっている。不二家にしても、いま三千円くらいでありますけれども、上がっていく傾向が出てきている、こういう状態にございます。金属、機械関係が、中小を含めて比較的不況だといわれておるけれども、そこでも三千円台、四千円台の回答が、たとえばリコー時計であるとか、シチズンであるとか、浜田精機であるとか、くろがね工作所であるとか、次々に出てきているわけであります。出版労協なんか見ると、これはよ過ぎるくらいみごとに、日本評論にしても、リーダーズダイジェストにしても——リーダースダイジェストなんというのは、一万二千円も出てしまっておる。実はそういう状態が、ことしの傾向と言っていい状態ですね。新聞関係でも、読売、毎日あるいは報知などというふうなところの方々は、いずれも四千円台を抜けていっているという状態が出てきております。それから印刷関係の大日本印刷をはじめ各印刷業種で、同様に三千円台にほとんど並んできている、こういう状態。民放労連でとやかくいわれるところがありますけれども、ここでも民放関係は四千円台がたくさん並んでいるわけであります。こういうふうに進行をしてきているわけでございまして、全海連みたいなところは申すに及ばず、これは十三団体でございますけれども、八千五百円ばかりの要求で七千円をこえているところが幾つも出てきているわけであります。まだたくさんございますけれども、時間の関係もございますから省いて申し上げますれば、石油関係なんかでも、三千円台に大どころが乗り始めている。こういうことしの状態となりますと、先ほど去年は一体幾らだったんだろうかという質問を私がいたしましたら、一〇・二%で、おおむね定昇込み三千円だ、こういうお話がございました。そういたしますと、いま私がここに持っているのに五、六百ございますけれども、それをずっと平均をいたしてまいりますと、おおむね一割五分近く昨年より高い、こういう形が出てきているわけであります。鉄鋼なんかにいたしましても、おそらく労働省の皆さんですから御承知だろうと思うのだけれども、二千五百円という、昨年並みの回答は出ておりますけれども、しかし、各企業別に昨年も三百円からの金を積み上げているとなりますと、高いところは三千円をこえている、こういうことになる。こういう実情に実はあるわけであります。そうなりますと、ことしの春闘というのは、春の賃上げというのは、その底にある物価が極端に値上がりしているというのが一つ非常に大きな要素になって、昨年の額をだいぶ上回っていく、こういうことになると判断をするんですけれども、いまの時点でながめてみて云々することは妥当ではない、こういうお話しなんだが、そこのところをもう一ぺんひとつ答弁をし直していただきたい。
○三治政府委員 先生もいまいろいろ会社の回答状況をお述べになりました。われわれの得ている情報とそう違わないことは事実です。ただ、先ほど私が申し上げましたように、本年の春闘におきましても、それは一部早い会社は回答しておりますけれども、全般的に、いわゆるこの不況の中でもわりあいにいい会社あるいは業種というものが、それぞれ先回答のところに出てきているということは、これはいなめない事実でございます。今後さらにどういうふうにいきますかということになりますと、これは先ほど申し上げましたように、ことしはこういうふうになるだろうとか、この程度いくだろうというふうに言うには、まだ早いというふうに感じざるを得ないのです。
○大出委員 私がとっております、これは今月の十五日現在の数字でございますけれども、申し上げてない中に、電機産業関係なんかもございましてソニー、あるいは早川電機、あるいは松下電器などというところが、昨年を上回ってきています。いま労政局長のお話の中に、いいところが先に出る、こういうお話がありますけれども、いいところで手控えているところもあります。ありますが、傾向としてはそういうことでしょう。それは例年そうなんであって、ことしに始まったことではない。また、組合の側としても、いいところを先に出していったほうが全体的にやりやすい、こういうものの考え方を持っている。特に申し上げておかなければならぬのは、過当競争という形も、業種別に見ますといろいろありますから、物価も上がっているということもありますので、激しいストライキなどが長引いて続いていくということは、業種別の経営者の陣営の諸君が喜ぶところではない。前田専務理事がしきりに旗を振っても、各業種別の企業の経営者の方々が、なかなかそれについていけない。ついていったんでは、労働者の生産意欲を失わせて、過当競争に逆に勝てない、こういうことになるというところに、出てくる原因があると見なければならぬと思うわけであります。実は、なぜ私がこういうことを並べておるかと申しますと、労働行政を担当される労働大臣ではありますが、しかし、あわせて国務大臣という形で政府の一員であるわけですから、公労協労働者に対するある意味の責任をお負いになっておる、こういうふうに私は長年の経験上判断をいたしております。そうなりますと、昨晩四時過ぎから三公社五現業をかかえている関係担当の大臣、さらに安井総務長官なり労働大臣なり大蔵大臣なりというふうな方々の御相談があったようでありますけれども、一体公労協に対する皆さん方の考え方というものは、那辺にあるのかという点を、特に本年ということでお示しをいただきたい、こう思うわけであります。世の中は、いま私が申し上げたような民間の賃金上昇の実情にある。私と変わらない資料を労政局長はお持ちになっている、こういう中で、ドライヤー報告にも載っておりますように、使用者としての政府というものと、一般的な意味の政府というものとを明確にすべきである、こういうふうに言っておりますが、使用者としての政府、こういう立場からいたしますと、どういうふうにお考えになっているかという点を大臣にずばり承りたいわけでございます。
○小平国務大臣 公労協関係の各組合からは、すでに、御承知のとおり、それぞれ要求が出ておりまして、その全部がすでに公労委に持ち込まれて目下調停の段階にある、こういうことであります。そこで、従来から団交もやったわけでありますが、さらに公労委に持ち込まれてからの調停の段階においての事情聴取等も、それぞれ行なわれておるわけですが、この間にあって三公社五現業の当局からは、いわゆる有額回答がいまだ出ておらなかった。こういうことで、関係の組合等からも、早く有額回答をすべきだ、こういう要求が再三行なわれてまいったわけであります。しかしながら、三公社五現業の当局としましては、それぞれの賃金のきめ方については、御承知のとおり、公務員の給与、あるいは民間の給与、それから物価等の事情、これらを総合的にしんしゃくしてきめなければならない、こういう法的な規制もある。ところが、問題の民間のいわゆる春闘相場等についても、今年はややおくれぎみで、この大勢というものもなかなか把握しにくい、こういうような事情からして、今日まで有額回答をせずにきてしまったわけであります。これは私は、労働大臣という立場からいたしましても、三公社五現業の賃金決定に課せられておる法的な条件から申しても、やむを得なかったであろうと、さように理解しておるわけです。しかし、一面また今日の時点におきましては、先ほど来質疑応答がありましたように、民間の回答というものもだいぶ進んでまいった、今後これがどうなるか、それはもちろん不明確な点もありますが、相当部分が出てまいった。のみならず、一方におきましては、一の二カ月の期間というものが近日のうちにすでに切れることが予想される組合もある、こういう条件のもとでございますから、私としてはこれら諸般の事情を考慮いたしまして、今日の時点となれば、使用者としての政府側と申しますか、三公社五現業、これはやはり労使関係の円満を期する、正常化をはかる、こういう見地からいたしましても、この際、誠意のある回答を示すことが望ましい、こういう立場から関係方面とも打合わせをいたしまして、昨日の会議になったわけであります。昨日の会議のことにつきましては、すでに新聞その他の報道もございますので、大体御承知と思いますが、その結果、この二十二日までに、それぞれの三公社五現業というものは、従来に引き続いて団交もやるべきであるし、またそれぞれ有、額の回答をすべきである。こういうことに結論がなったわけであります。もちろん三公社五現業の当局は、それぞれいわゆる当事者能力というものがあるわけでありまして、それが御承知のとおり法制的に若干の制約もございますから、実際的に申していわゆる完全な姿での当事者能力というわけにはまいらぬと思いますが、しかし、そうだからといっていつまでも、本来労使間できめらるべき賃金について有額の回答もしないということは、どういうものであろうか。たとえ若干の制限があるにしても、極力その当事者能力を発揮してもらって、回答をすべきである。ですから、政府としてそれに具体的に金額をどうせよこうせよという立場ではございませんが、しかし、少なくとも政府の考え方というものをやはりこの際示さないことには、三公社五現業も実際問題として動きにくい。実際問題としてそういう事情にあるわけでございますから、そういった政府の考え方を示す、こういう意味で昨日の会議を持ち、先ほど申しましたような結論を得たわけでございます。
○大出委員 たいへんいま親切な御答弁をいただいたわけでありますが、二十六日に私鉄、交運共闘といわれる方々、それから公労協の諸君が、実力に訴えてひとつ賃金をと、こういう態勢をとっておることは、もう隠れもない事実でございますが、私鉄、公労協が同じ日になどということはいまだかつてなかったことでありまして、昨年は私鉄が二日早かったわけであります。それだけに事はきわめて大きなことになりかねない。で、私はこの際、大臣がおっしゃっている中で形式的な点はひとつ抜きにしていただいて、実際にどういうふうに考えておられるかという点を聞きたいのであります。という意味は、いま政府がこれこれの金額などと言うわけにいかない、こういうおことばがあるのだけれども、私も過去六年間、歴代の官房長官はじめ各労働大臣と話を続けてまいりまして、この公労協の問題が起こるたびに、ずいぶん微に入り細にわたってお話し合いをしてきておりますから、政府の皆さんの手のうち、手続がどうなっているかぐらいのことは、百も二百も承知なわけであります。したがって、形式的にものをおっしゃらぬで、政府がきめなければ、三公五現はいまの不完全な当事者能力では何事もなし得ない、こういうわけでありますから、そこで私はずばり承りたいのですけれども、昨年は、最初五百円皆さんがお出しになったはずであります。これは団体交渉の席上で出しておられるのであります。額は多かれ少なかれ、ともかく正常な労使というもののあり方を考える上からするならば、その姿が私は当然だと思うのでありますが、なぜ一体ことしは団交の席上でお出しにならなかったのかとい耳を、まず承りたいわけです。
○三治政府委員 昨年も一昨年もそうですが、調停に組合側が持ち込まない前に当局が回答した。若年労働者の不足から、非常に初任給賃金が上がった。これは最近ではやはり人が足りなくなってきたものですから、今度は、来年の四月の採用条件としてこれだけで採るというような求人条件が初めに出るわけです。それを前の年と比較すると、一〇何%も上がったような状況が出てくる。そういうふうな状況になりますと、やはり公社、現業も、そういう若年労働者の採用条件を民間とそう格差をつけるわけにもいかないということになれば、そういうふうに民間の初任給賃金が非常な変動があって、それを手直ししてみていま一般にいわれる年功序列型の賃金構造になっているとすれば、それを平均に直していくというふうになると、昨年は五百円、その前は二百五十円程度というふうになるわけであります。したがって、当局としては、民間の賃金の動向を見て最小限の自分たちの態度もきめる、こういう態度をとってきておられるようであります。今年は、それを見ますと、昨年の不況で、過去二年に見られたように初任給賃金の上昇というのが非常に少ない。五ないし七%程度のところ——これは東京都の状況を調べたところでありますが、五ないし七彩ぐらいの初任給賃金の上昇だ。そういうふうになると、それを年功序列型に直してみても、それはあまりにも形式的になるというのが一つと、それから過去二年間、組合側が非常に当事者能力ということで当局に回答を迫りましたけれども、今年はそういう客観的な情勢もあったのでしょう、組合側のほうもわりあいに当事者能力の問題として有額回答を何が何でもほしいというふうな団交にならなくて、むしろ賃金の状況、それから労使のそれぞれの主張をよく討議して、資料の検討をやった団交だったと思っております。したがって、ことしにおきまして有額回答をなぜしなかったかという理由は、そういうふうに過去においては、大体調停段階の前の段階は、初任給調整ということで有額回答をした、こういう事情で、ことしはそういうことを考えてやっても、それは有額回答にならぬような数字だから、それはお互いに了承してそういうことをやらなかった、こういうふうな状況であります。
○大出委員 昨年、一昨年の例をおあげになりましたが、かつて有額回答を出したことがまだあるのであります。このときには、初任給云々のことを言っていない、ほかの理由がついている。まことに理由はつけようでございまして、いま言われる初任給が上がったからというところに理由をつけることが、一番調停委員会その他の段階で、つまり基準内賃金の上昇云々について討議をする際に逃げやすい。だから逃げやすい名目をつけて出した、こういうわけでありまして、これは両者の団交の席上で、明らかに三公社五現業の管理者の方々でその趣旨の答え方をやむを得ずしている方々もあるわけであります。その実例からいたしまして、明らかにこれは逃げやすい出し方をしたということで五百円の有額回答をお出しになったことに間違いはない。ところが、ことしはそれを団体交渉の席上でやらなかったということは、不況下の春闘という形で、民間産業を含めて企業防衛、企業責任賃金、こういう表題でしきりに日経連の方々はものを言ってみたり、政府に対しても、日経連の諸君は非常に干渉めいたものの言い方を旧来しているわけだ。人事院勧告ではやれ高過ぎるの、賃上げは何%に押えろの、ことしの春闘は公労を何%以下に押えろなんということを言っているわけですから、そういう状態の中だからこそ、政府は政府みずからがそのどろはかぶりたくない、だから、なるべく一つの相場を出さないほうがいい、こういうまとまり方になっていたと私は判断をしているわけであります。そもそもそこが私は問題点だと思うわけであります。だから、先ほど私はドライヤーの例をあげたのでありますが、使用者としての政府の立場というものといわゆる一般の政府の立場というものとを混同してものをお考えになると、とかく問題が混線をし、複雑になる。したがいまして、使用者としての政府の立場からいたしまと、当然に団体交渉の席上で、制約がありましても、双方の当事者能力を生かしながら問題の処理に当たるという姿が正常なのですね。その正常な姿を欠いたという形における調停持ち込みなら、これは兼子一さんになられてから、何回か公労委で労使間で団体交渉が行なわれて、それがゼロで出てくるなどという不見識きわまる話はないということを再三言われている。その辺をわれわれの側からも追及をされるという中から、昨年、一昨年のような出し方をされているわけであります。公労委でものを言われれば、いろいろ苦心惨たんをして、これこれ出しました、つまりゼロ回答ではございませんと言えるようにした、こういうわけであります。ところで、昨年はもう一つ、調停段階で定昇込みの六%が出ているわけであります。今回はぼつぼつ終わりに近づいているのでありますけれども、そこで承りたいのだが、この調停の期間中に、調停委員会において昨年六%、これは私全く不納得でありますけれども、あとから申し上げますが、いずれにせよ、有額の回答をするという、つまり調停委員会の席上においてはっきり幾ら幾らと言う、こういうお考えであるかどうか、この点を大臣にひとつ承っておきたい。
○小平国務大臣 先ほど申しましたように、昨日の政府側の協議で二十二日までには有額回答をすべきである、こういう結論に達し、これを受けて、各官公業当局は回答をするかということについて検討を進めるということになったわけでございますから、これが各企業体によってどういう額になるかは別問題として、いま先生のお話のように、少なくとも調停の期間中には有額の回答が出るもの一これは調停委員会の場で出すとか、あるいは団交という形で出すとか、そういう形のことまで別段きのうきめるというようなことはいたしておりませんから、どういう形で出るかは別問題として、調停期間中には出る、こういうことを申し上げて差しつかえないと思います。
○大出委員 いまのお話なんですが、いろいろな持ち込み方、つまり調停委員会に持ち込む持ち込み方があったわけでありますけれども、いま、いずれにしても調停委員会が調停中なんでありまして、その時期に調停機関を通じないでお出しになるとすれば、人に調停を頼んでおいて何だということになる。だから、調停期間中となると調停委員会の席上でものを言うしか方法がない。大臣はそこのところを気にされるけれども、調停にかけておいて別個に出しますなんと言った日には、おこってしまいますよ。そんなことになるなら、自今調停は一切引き受けないということになりますから、調停の席上で言うよりしようがないと思っておるのでそう言ったのであります。そこらあたり、何か別なお考えがあってそう言うなら、もう一ぺんお答え願いたい。
○小平国務大臣 私は、別段そういう方法論までは協議してないという意味で申し上げたので、これは常識で考えても、大体調停の場でということになるだろうと思います。
○大出委員 そこで、昨年の調停段階における六%定昇込みというのは、組合によって多少の差がありますけれども、五百円回答を九十円とか百円とか引き伸ばしたにすぎない。したがって、五、六百円の回答だったということになるわけであります。私は、本年はそれでは済まされない実情にある、こういうふうに判断をいたしますから、そこで承っておきたいのですけれども、三公社五現業の予備費は今日どのくらいあるのですか。
○三治政府委員 そういう資料をきょう持ってきておりません。恐縮ですが……。
○大出委員 先般、多少そこのところを私当たってみましたところが、これは大臣に一ぺん承りたいのですが、前回一ぺん大蔵大臣がおいでになってこの相談をされたことがございましたね。私は、私の出身のほうが全逓、郵政省でございますから、そちらのほうから聞いておるのでありますけれども、そのときのお話では、予備費をいろいろ総ざらいをいたしますと、七百円を欠ける、七百円ぐらいのことになる。ところで大蔵大臣の側では、その件については、予算担当官庁という立場からいま云々できないという言い方をされた、そういうさわりが一つあるのでありますが、それでいま念のため聞いたわけで、深い意味はございません。 おわかりにならぬとおっしゃるのでこれはやむを得ませんが、この有額回答——例年の例からいきましてまさかゼロ回答がされるわけではありませんが、昨年もそんなふうなもめ方をいたしましたが、結果的には六・二五%の裁定が出ておるわけであります。そうなりますと、さんざんいろいろなことがあって、かつ結果的にはそれだけ出しておるわけでありますから、そうだとすると、田中角榮氏が大蔵大臣のとき、五大臣がお見えになって、私は皆さんとお話をしたことがあるんですけれども、このときに、珍しく調停を尊重するという言い方をされた。これは過去から現在まで一ぺんだけです。その時点では、調停で実のある形になれば調停で片づけてもいいということで、そういう意思表示が大蔵大臣から、あといろいろな制約は出てまいりましたけれども、ありました。だから、せっかく調停機能があるのでありますから、いつもぎりぎりまでいかなければならぬということでなくて、調停段階でものごとがきまってそれで片づいてもいいわけであります。特に民間の場合にはそういう例が非常に多いし、あっせんで片がついておるところもたくさんあります。そうなると、ことしの場合に、先ほど申しましたように、ここまで明らかになっていて、残るところは私鉄関係で、ここの目星はついていないが、私鉄といえども昨年三千円、一昨年は三千三百円という額で、本年は料金の値上げまでやっておるわけでありますから、私鉄経営の内容は、有価証券報告書を見ましても黒字にできる値上げをしておるわけでありますから、そうなると、これはそうそう低いものが出るはずがない。ことしは名鉄まで中央交渉に参加しておる。そういう実情をいろいろ調べてみますと、かつまた、私鉄経営者の御相談内容を聞いてみますと、もうおおむねのところ見当はついておる。そうなると、使用者としての政府の立場からするならば、とにかくこの調停段階で解決をはかり得る提示のしかた、これが正常なことであり、また、紛争を避ける方法だ、こういうふうに考えておりますけれども、そこらあたりは、大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。
○小平国務大臣 まず、お話の中で、何か大蔵大臣を交えて若干具体的な予備費等の関係について話し合いをしたことがあるやのお話がございましたが、私の関知しておる限りではそういうことはございませんで、昨日が初めてでございます。 それから、調停の段階でこの解決ができるならばそれが望ましいのではないかという趣旨のお話と思いますが、実はそのことは、私自身も社労の委員会等でもすでに申しておるところでございまして、さらに仲裁の段階があるからといって、どうしてもそこへ持ち込まなければならぬのだ、何もそう考える必要はなかろう、元来が労使間の自主的な団交の段階で解決ができればこれが一番望ましいが、しかし、遺憾ながらそれはできなかったわけでありますから、第二の次善の策として調停の段階で話し合いができるならば、これはそれにこしたことはなかろう、そういうことを率直に申しておるわけです。 しこうして、この調停の段階でかりにこの話がきまったといたしますれば、それについては、もう御承知のとおり、別段これを政府は尊重しろという規定はございませんが、しかし、その際においても、予算上質金上不可能な場合には国会の承認を得るという規定もあるわけです。でございますから、ただ、予算の運営上調停の段階におきましては、この給与総額の制限があるということ、仲裁にまで持ち込まれて決定がされるならば、予算の移用流用ということも認められる、そこにこの予算のやりくりの範囲が相当違う、こういうことはございますが、いずれにしても、労使関係という点から考えますならば、調停の段階でもしお互いの納得が得られればそれにこしたことはない、そういう前提に立って、このいわゆる有額回答についても、私はいま額を幾らと言う立場にございませんから申しませんが、しかし、先ほど来申しますように、民間の賃金の動向等もしんしゃくした上で、もちろんこれは予算に縛られる点もございましょうが、しかし、まず大体において常識的と申しますか、そういうおのずからある程度の額というものが出てくるのじゃないか。そのことによって世間一般も、これはいまの経済の状況のもとにおいて、あるいはいまのそれぞれの企業体の状況のもとにおいて、相当の誠意を示したものだ、こう世間もとるであろうし、あるいはまた、組合側も、要求は要求として、使用者としての三公社五現業ないしは政府の態度というものについて、やはり理解を持ち得るという程度のものは、これは私は有額回答として出すことが望ましい、こういう労働大臣としての立場からの見解を、私はもう何回も、実はそういう私の見解を率直に申し述べておるわけでございまして、先生の調停段階で解決できればということについては、大体私は同じ考えを持っておるわけであります。
○大出委員 お話非常によくわかるのですが、いまのお話の中の常識的な、つまり春闘全体の、先ほどのやりとりにありましたような状態というものも頭に入れて話をされておりますから、その意味で常識的なというお話まことにけっこうなわけであります。それから世間が見ても誠意ある回答だ、こう思われるようなものを出したいという気持ち、これも私よくわかるわけであります。 そこで、心配な点が二つ出てくるわけであります。一つは、いま大臣みずからがお認めになっておられまする、旧来せっかく調停の段階で話をつけようと努力をいたしましても、私もさんざん努力をした一人でありますが、かつ要路の方々に直接会ってお話をして、調停段階で争いを未然に防いでいこう、こういうことでお話をいたしましても、結果的にぶつかるところは、先ほどのお話にありました予算との関連なんですね。結局政府が、調停委員会で、使用者としての政府の立場で、このくらいならよかろうといった場合に、それが予算とのからみ合いで、予算をこえるものであったということになると、それを使用者としての政府であっても認めるわけにはいかない。この考え方が優先をいたしますと、せっかく大臣がお話しになっている常識的な、誠意ありと認められるものというふうなものが出てこない。そこで私は、さっき予備費は幾らあるのかと聞いたのでありますけれども、つまり予備費に組まれている程度のものならば予算をこえたことにはならぬから、その限度いっぱいのことはものが言えても、それを上回るという形のものについてはものが言えないということになりますと、相当大きな問題がある。そこのところの障害を取り除くようにしていただく方法、方策を明らかにしていただきませんと、いまの御答弁は安心して聞いていられないということになる。ここのところをどうお考えになりますか。
○小平国務大臣 私は、その点は大体三公社五現業というのは、その行なう事業の公共性の点から、その予算というものは国会の審議を経てきまっているものです。ですから結局はせんじ詰めて考えれば、国会の審議権との調整の問題だろうと思います。ですから、少なくともいまの制度のもとにおいて、予算を全然考慮せず、当事者能力というか、それを無視した態度、あるいはそれを政府が頭から国会の審議を経て御決定を願った予算を無視してもいいんだ、こういうことはとうていわれわれ政府としても、いまの制度のもとにおいては言い得ないものだ。この予算制度そのものが改正されて、この賃金問題等については、極端に言えば、予算にかかわらず政府が処置できるのだということにでもかりになりますならば、もうどういうふうな話し合いができても、それを実行しますと、こういうことができるかもしれませんが、少なくともこのいまの予算制度のもとにおいては、政府といえどもそういうことは言えないと私は考えております。ですから、これをどう調整するかは、これは将来国会において十分御審議を願わなければならぬ問題だろう、かように考えます。
○大出委員 そこにだから問題があるわけでありまして、常識的なかつ誠意のほどが世間一般に納得をされるようなというお話が先ほどあったので、私もなるほどそのとおりでなければならぬと思うのでありますが、片やいまのお話のあったような制約が当然あるわけであります。そうなると、先ほどの御答弁は、かみ砕いて言ってしまえば、予算のワク内において世間一般が常識的だと思い、かつ政府の誠意のほどがわかったという、そういう回答をするのだということになると思うのですが、どうなんですか。
○小平国務大臣 私はその点両面あると思うのです。ということは、一方においては、政府は、私が申しましたように、予算というものは尊重しなければならない。政府といえども国会の議決を経た予算は尊重しなければならぬ。それと同時に、また一方には、これも先ほど申しましたが、調停の段階できまった場合に、それが予算上資金上支出が不可能だという場合には、あらためて国会の承認を経なさい、こういう規定もあるわけですから、その点から考えますならば、調停の段階において、予算上資金上不可能な取りきめも、これは私は不可能じゃないと思うのです。ただし、それは直ちに政府をそれによって拘束するものでもない、また政府が拘束されるものでもない。その際は、いま言った国会の承認という手続を政府はする、こういうことに運ぶわけでして、この両者を結局はあわせ考えて、当局はもちろんのこと、政府もやらなければならぬ。それをどう判断するかということは、まず第一次的には三公社五現業の当局が判断するのであって、政府が自分でどういう立場で、どちらかの立場に立って判断しなさい、こういう筋じゃないと思うのです。それこそまた、いわゆる当事者能力というものをできるだけ尊重していく、こういう立場でありますから、まずもってどういう方針をとるかということは、それぞれの当局者が考えることだ、かように思います。
○大出委員 いまの御回答でだいぶよくわかってまいりましたが、つまり予算というものがあり、その制約を受けるという面が一面ある。あるが、それはそれとして、また一方で予算のワクをこえたところに、政府が使用者としての立場から、調停の段階でそれをこえるものの言い方をした、そして調停委員会がまとまった。その場合に国会の審議権がございます。したがって、予算上資金上不可能なものでありますから国会にかかる、国会がそれを認めなければ、その限りにおいて政府に責任はない、こういう取り扱い方だ、したがって予算云々に一面これは制約される面もあるけれども、それをこえて世間一般の常識、あるいは誠意ありと認められるもの、こういう立場で政府がものを言った場合に、それで調停がまとまった、こうなった場合に、それで国会にかけて、審議権無視云々てなしに片づけていただけば、これもまた正常なあり方なんだ、こういうことになると思うのですね。 そうなりますと、結論は政府の腹のきめ方いかんになるという筋合いだと思うのです。調停段階で実はいま三公社五現業の方々の中では、ある公社の場合には、私鉄なりあるいは鉄鋼なり、こういうところが賃金を上げればわが方も賃金を上げます、こうはっきり言い切っている公社理事者がある。かと思いますと、物価の上昇率その他を換算してまいりますと、あるいは〇・二五%なんていう言い方は当たらぬと思うのですけれども、そういうふうなことになるとすれば、一般公務員との開き、その他いろいろ勘案をして、千四百円くらいのことになるのじゃないかということからあわせて見て、六%から六・五%くらいのことにはなるのじゃないか、こういうものの言い方を、それが妥当かどうかは別として、調停の段階でしている三公社の理事者の方もあるわけです。だとすると、政府が腹をきめれば、先ほどおっしゃった、世間的に常識、だれが考えても、ことしの全体の流れから見てこのくらい、さらに、政府の誠意のほどもわかる、こういう形のものが出せるということになると思うのであります。 そこで、私は念のためにもう一つ伺っておきたいのですけれども、昨年の五百円なんというのは、さらにその定昇込み六百円ということを調停段階で言われて、これはさっき申しましたように、定昇込みとなっております関係で五百円がおおむね六百円程度に上がったにすぎない、こういう内容を持っているわけです。そこで、世の中は、最終的な定昇を抜いた六・二五%という裁定がされておるわけですから、ずいぶんと非常識な回答をしたものだ、政府の誠意のほどが疑わしい、こういうことになっていたわけです。したがって、先ほどの御答弁と、それから背景としてある制約を政府の意のあるところを承ったわけでありますが、そこまでいくとするならば、昨年のような、五百円だの、やれ定昇込みの六%、すなわち六百円だのというのは、非常識きわまる、かつ誠意がない、こういうことになっているわけであります。まさかそういうことではないだろうと思うのでありますが、そこらとの関連を、もう一ぺん、ひとついまのやり取りの上に立って御答弁をいただきたい。
○小平国務大臣 昨年五百円なり六百円なりという回答をした事情については、先ほど局長から御説明申し上げたとおりでございますが、これはむしろ非常識と思われたので、これを相当上回る額が出るのじゃないかというお尋ねと思いますが、額をどうするか、あるいは率をどうするかといった考え方は、率でいく場合、額でいく場合、いろいろあると思いますが、いずれにいたしましても、そういう具体的なことについては、先ほどから申しておりますように、私がかれこれ言う立場にはないわけでありまして、これは、三公社五現業の理事者が、諸般の情勢を勘案して、自主的に、ひとつこの程度のものはまず出してもらおう、こういうことで、先ほどの会議にもなっておるわけですから、私が、去年と比べてどうだこうだと言うことだけはごかんべんいただきたいと思います。
○大出委員 だめずくめになることは言いたくはないわけでありますが、念のために、念を押して実は踏み込んでみたというわけです。先ほどの御答弁の念を押したつもりであります。つまり、昨年出されたものは非常識に過ぎた、調停でまとまるようなものではない、だから、その意味で、先ほどおっしゃった非常識でないもの、政府の誠意のほど、これが明らかになるもの、こういうふうに受け取りますから、さっきそうおっしゃっておりましたから、ひとつぜひそういう点で御努力を願いたい。もう一つ、調停の段階で、いままで調停あってなきがごときようになっておりましたから、せっかくの機能を殺さないように、そのほうが労使関係のあり方としては正常なんですから、ひとつそういう形でまとまっていくような御努力のほどをお願いをいたしておきたい、こういうふうに思うわけであります。 ところで、あと、賃金引き上げ云々をめぐる問題で二つほど承っておきたいのでありますが、ことしは不況の年といわれるだけに、たいへんな中小企業の倒産もあり、かつまた、親企業の在庫整理その他の関係等からいたしまして非常に苦しい事情にある中小企業が山のようにある。片や、相当に物価が上がってしまっている。こういう谷間に中小企業の経営者は追い込まれている。今年度の予算措置の中で昨年と多少違ったものも出てきておりますけれども、全体から見るとそれほど大きなものでもない。したがって、中小の企業に働く方々が、かつまた、苦しい経営者の方々が、これから相当長い期間にわたって好まざる争いを続けていかなければならぬという労使関係が至るところに出てくると私は思いますし、現に出ているわけです。私横浜におりますからですが、私の足元にも山のように中小企業があるわけです。あとの家内労働関係ともからみますけれども、こういう方々から見ると、いまのてっぺんの労働者がやっていることは高ねの花に見える。こういうところに対しても、これもまたある意味では政府の財政あるいは金融政策の面ともからむのですから、何とかことしは、それこそいつまでも長期にわたって非常に悲惨な争いが続けられる姿というのはどこかでひとつけじめをつけたい、こういうふうに考えているのですが、その方法として、地方議会等を使って、そこにはその地域の事情に明るい方々が多いわけですから、そういう面で現実に起こっているたくさんの中小のそういうようなものについて、金融と仕事という面でできるだけ努力をし、さばいていかなければならぬと私は思っているわけです。これはある面では県の労働担当の方もおったり市の方もおります。ある意味では労働省が行政措置の中で、指導の中でいろいろ手が回せる筋合いだろうと私は思う。したがって、私どものほうも、そういうつもりで進めていこうと考えておりますが、ここらあたりを野放しで腕を組んでおられるということでは、労働行政という面からいきますとやはりちょっとまずいと思う。そこらあたりをどのようにお考えになっているかという点、これを承っておきたい。
○小平国務大臣 中小企業の実情というものは、大体先生のいまお示しのような事情になっておると私どもも承知しております。でありますから、中小企業のいわゆる体質改善と申しますか、そういう面での施策というものが強力に行なわるべきものである、こういう考えはもちろん私どもも抱いておるわけでありまして、一般的な問題としてこれは通産当局等に私どもからも日ごろ訴えておるところでございます。ただ、労働問題あるいは賃金問題ということに限定をいたしますならば、いま先生のお示しのような方法によって中小企業の援助をしていただく、これは非常にけっこうなことだと私も思います。しかしながら、中小企業の問題そのものに関して考えますならば、申し上げるまでもなく、これまた労使間の話し合いによってどうしても解決しなければ、労働委員会等において、つまり法の定めておるルールに従って問題の解決をはかっていただきたい、こういう考えを持っておるわけであります。
○大出委員 ことしの場合は、地方の労働委員会その他に相当いろんなことが出ているケースが多いと思うのです。というのは、先ほど申しましたように、労働分配率がきわめて高くなっている中小企業、設備投資の面できわめて手が回りかねている中小企業ですから、どうしてもやはり一種の作業工程を変えるとか人を減らすとかいうふうなこととからんで、賃金の問題がもめてくる形になる。大企業でもそういう傾向がことしは強いわけですが、そうなりますと、それらの問題をめぐって地方の労働委員会その他に問題が持ち込まれる。こういう形が非常に多いと思う。地方の労働委員会はおのおの自主性がありますから、行政官庁といえどもなかなかものが言いにくい点はあろうと思うのです。思うのですけれども、ことしの倒産相次いでいる事情等から見て、なるべく早く手を打つようにしなければ、これは忙しい方々が労働委員になったりしておられますから、なかなかそういかない面がありますけれども、手っ取り早い——と言うと少し走り過ぎますけれども、次々に結論を出してあげていくというそういう形をとりませんと、労使双方が行くところまで行ってしまうということになりますと、せっかく話をまとめても、結果的に企業そのものが存立が怪しいなんということになるかもしれません。そういう面等も考えに入れて、広い視野に立って御指導のほどをいただきたい。そうしないと、やはり地方労働委員会も自主性があり過ぎるままに、どうも問題が遷延してしまう、こういう点がございますから、そこらのところを、ひとつ事務局がございますので、十分に御指導よろしきを得ていただきたいと思うのでありますが、そこいらあたりはどういうふうにお考えになりますか。
○三治政府委員 従来、先生おっしゃったように、地方の労働委員会はそれぞれ独立意識が非常に強くて、労働省がとやかく言うと逆にしかられるというふうな状況であったわけですが、最近中労委を中心といたしまして、やはり労働委員会の縦、横の連絡を自主的にやっておられる、そういうところで相当意思統一ができていると思います。したがって、われわれのほうとしてこういう心配があるからといって、いま直ちに何か文書とか指導とかいうことで正面切って地方の労働委員会にとやかく言うということは、まだ必ずしも適策じゃなくて、やはり労働委員会、中労委がいろいろ具体的に、地方から処理の問題については常時連絡があるようでございますから、そういうお互いの事務局の連絡なり状況の把握という面においてそういうふうな努力をしていただくようにお願いをする、まあこういうふうな処置でいきたいと思います。
○大出委員 そこで、大臣に承りたいのですが、この設置法でございますけれども、本省の付属機関として家内労働審議会を置くこととし、「家内労働に関する重要事項を調査審議すること。」、こういう目的を持っておるようであります。そこで承りたいのですけれども、私の党から、先般最低賃金並びに家内労働の関係の法案を議員立法で提案をいたしております。これはもと労働省におられました澁谷直藏さんが、与党の立場で質問をされております。この質問にあたって、本来最低賃金法並びに家内労働法の質問をすべきである、しかし時間の関係で重点を最低賃金法に置く、こういう前置きでお話がございました。その内容は多少家内労働法の分骨に入るものも出ておりました。したがって、審議をしているのでありますから、そうなりますと、私は、ここに御提案をいただいておるこの取り扱いについて、まずもって疑義があるのであります。というのは、一方の社労その他におきましてそういうものが扱われている。その審議が一体どっちに向いていくかという問題が、まずあるわけであります。そうなりますと、これはこれから審議会をつくって相談をするのだ、こういうわけであります。あるいは家内労働基本法くらいをつくろうというお考えかもしれませんが、片方は法案が提案されておるわけであります。あるいはこれは片方が通れば要らなくなる、そういう相関関係を持つわけでありますが、まずもってそこのところをどういうふうにお考えになってお出しになっておられるか、これを承りたい。
○小平国務大臣 社会党から家内労働法の御提案があって、先般本会議で質問がありましたことは、そのとおりでございます。それとこれとの取り扱いの関係でございますが、取り扱いの関係となりますと、これは政府というよりも、むしろ国会の問題ではなかろうかという気がするのであります。政府の提案に対して議運がこれの取り扱いを御決定になられて、片方は社会労働に御付託になられ、片方は内閣委員会で御審議を願う、こういうふうに議運のほうで御決定なされてやっておられることでございまして、これを私の立場からとやかく言うということはいかがかと思いますので、御了解いただきたいと思います。
○大出委員 釣りに向こう合わせというのがございまして、かってに魚がかかってくれるのでそう言うのだけれども、どうも向こう合わせ方式を出されると、こちらもまことに迷惑です。これは私のほうの党の提案であるだけに、どうもいささか無視された、こういう感じがするわけです。政府といえども、どういうことになっていくだろうかくらいのことは御判断の上でお出しになっているはずで、確かに議運あるいは理事会があるわけでありますから、そこで相談するのはいいのですけれども、どうも非常におそく出てまいっております。つまり出てきたのが非常におそいわけです。前から何か労働省から設置法が一本入ってきそうだわいという話は聞いておりましたけれども、なかなかどうも時間がかかって出てきておりますので、したがって、われわれ本会議で論議しておるわけでありますから、そこで私は議事運営取り扱いについてまで御答弁をいただこうというのではないのですけれども、そこらあたりの関連——国会の議事の取り扱いじゃなくて、どういうふうにお考えになっておったか、つまりあの法案を皆さんお読みになっているはずだから、あれとどういうことを審議してくれという、つまり審議会ができるとすれば、諮問をされるのでしょうから、それとからむわけですね。だから、そこらあたりを皆さんのほうでお考えになっていないはずはない。こう思うので、そこを聞いているわけです。
○小平国務大臣 今回政府がこの審議会を設置したいという法案を提出いたしましたのは、これまた先生よく御承知のとおり、従来ありました家内労働調査会の見解として示されたものを尊重し、あるいはまた予算審議の過程などにおきましても、これは社会党の議員さんからも、一体家内労働審議会はいつ出すのだというような御質問も再三ちょうだいいたして、私どもとしては、政府部内の調整がつき次第なるべく早く出したいのだ、こういう意味の御答弁を従来からずっと続けてまいったわけであります。そこで、いよいよ政府部内の考え方もまとまりましたので、今回こうして御審議をわずらわすということになったわけでございまして、率直に申しますならば、社会党で御提案なされておる家内労働法というものが、その意図されるところはある程度私どもにもそれはわかりますが、実際問題としてほんとうに実効のある家内労働法と申しますか、そういう面からいうと、はたしてどういうものであろうか、多くの疑問を持たざるを得ないわけです。なお、この問題は御承知のとおり非常に複雑な問題でありまして、ほんとうに実効ある法制をやるということになりますと、なかなかこれはむずかしい問題だと私は思います。社会党さんも大いに研究なされて御提案なさったことだと思いますが、その実態というものは、われわれが聞く範囲でも、これを法制的にやっても、たとえば工賃の問題にせよ、就業時間の問題にせよ、あるいは安全衛生の問題等にせよ、実際どういう仕組みでやったならばほんとうに実効あることになるか。いたずらに法律だけつくってもあまり実効があがらないというのでは、私はどうかと思いますので、そういう面でやはりさらにそれぞれの専門的な知識のある方々に慎重に検討してもらうことが、この際としては適当であろう、こういう考えから、この審議会設置の法案をお願いしたようなわけでありまして、その間の事情は御了承いただきたいと思います。
○大出委員 どうも社会党が出したやつは実行不可能な内容なんだ、私どもは実行可能と考えて出したので、責めるわけじゃございませんが、そういうことになりそうでありまして、まことにこれは片腹痛い感じがするわけであります。私も実は、御存じのように皆さんと立場が違いますが、労働畑を歩いてまいりましたし、外国も歩き、ずいぶん家内労働関係の問題は調べた経験がある。最近しばらく離れておりますから、非現行になっておるものもあると思いますけれども、本来これは家内労働保護が一つの中心にならなければならぬ筋合いのものだというふうに私は理解するのでありますが、それだけに多岐にわたり、非常にむずかしいことも、私も承知をいたしております。まあしかし、先ほど大臣がおっしゃったのは、とかくわれわれの側からすると、諸外国の例もございますけれども、ずばりこれがいいのだというように、そのことを出さなければならぬ立場でもあります。また、そうでなければひん曲ってしまう、こういう心配が、複雑なだけにあるわけであります。たとえば家内労働法をかりにつくるとした場合に、それと労働基準法との関係、最低賃金法との関係などということを一つつかまえましても、早い話が、ある一つの零細企業がミシンで布を縫っておった。その場合に、基準法その他の関係からいきまして、あるいは最低賃金法との関係からいきまして、十台のミシンを奥さんに一軒、一軒預けちゃう。そうすると、その奥さんがうちの中でミシンを踏んでいる。これは早い話か基準法の適用除外になってしまう。そういうことになりかねない性格のものなんです。 それからもう一つ、私は後ほど具体的に御質問いたしますが、大きな心配をいたしておりますのは、今日までの間に基準法の改正という意見が組合の側からも出ておりますが、使用者の側からも相当強く出てきていた経過がございます。これはなぜかというと、零細企業まで含めたいということからなんですね。一つ間違うと、家内労働に類するものまで含めたいということなんです。これは取り扱いいかんによって、基準法の法制それ自体の大きな後退を意味する場面もあるわけですね。そのことは、逆に、今度はソシアルダンピング的なものに相通ずるということになり、その主張の一つは、輸出競争力をつけるのだなどというようなことを言う。私は本末転倒で、それで輸出競争力がつくものではないと思っているのですが、日本に対する信用の度合いも疑われることになりはせぬか、そういう意見も一面にはある。だから、ある意味では複雑で手をつけにくい問題だし、逆行する要素を持っているので、そういうところまでこまかく気を配って考えなければならぬと思うわけです。もちろんまだ審議会をどういうふうにおつくりになって、どういう人を選ぶかということは聞いておりませんから、ここで言い切ってはいまは不見識ですから、手前まで申し上げておきます。したがって、そこらあたりをひとつ逐条的に御説明いただきたい。 まず伺いたいのは、今日お考えになっておるものは、つまり家内労働というものの定義、これをどういうふうに皆さんが今日お考えになっておるかを承りたいわけであります。
○村上(茂)政府委員 社会的実態としての家内労働者とはどういうものであるかという点については、臨時家内労働調査会の報告書にもありますように、専業的な家内労働、内職的家内労働、副業的家内労働といったように分けていろいろ判断できるわけでありますが、現在法制上の用語といたしまして家内労働をどう定義しておるかという点につきましては、最低賃金法第二条第四項の規定で家内労働者の定義を置いてございます。すなわち「「家内労働者」とは、委託者の委託により、物品の製造又は加工等に従事する者であって、その業務について同居の親族以外の者を常時使用していないものをいう。」というふうに定義づけられております。先生御承知のように、家内労働者の定義については、外国の立法例では多少違った向きもございますけれども、ILOなどで用いております家内労働者の定義に大体近いものではなかろうかというふうに考えております。
○大出委員 先ほど私、非現行になっているかもしれぬと申し上げて前置きして質問しているのですけれども、いまの条文はここに私は持っておりますからわかっておりますけれども、労働省の基準監督局の規定というのがいまございますか。つまり家内工業とは云々なんというのが、現行生きておりますか、ちょっと承っておきたいのですが、読みますと、労働省の基準監督局の規定によると、家内工業とはもっぱら自家労働だけにより云々という、幾つか分かれておりますけれども、現在監督局のそういうものはございませんか。基準法だけでいっておりますか。
○村上(茂)政府委員 先生の御指摘の点は、業態としての把握のしかたという点から御指摘かと思いますが、労働基準法の適用関係から申しますと、家内工業云々というような把握のしかたではなくして、御承知のように、労働基準法第八条の本文ただし書きに適用を除外するものとして「但し、同居の親族のみを使用する事業」、これが適用除外になっております。したがいまして、業態として自分の家と申しますか、住居中心にやる事業でありましても、問題は使用する者が親族のみであるか、親族以外の者であるかということによって、適用の区分がなされるわけでございます。いろいろな文書には、家内工業とかいろいろ使っておりますけれども、適用関係につきましては、以上申し上げましたところによって措置しておる次第でございます。
○大出委員 ちょっと私のほうが先に内容に入りましたが、労働省ではいろいろ規定がございますけれども、家内工業の形態について三つくらいにたしか分けておられると思うのです。一つは専業的家内工業、これは世帯主自身が家内工業労働者になって、そして主たる正業として家内工業に従事する形態、それからもう一つは副業的な家内工業、一定の本業を有しているのだけれども、家計の補助的収入と申しますか、そういうふうなものを得るために、本業に関連して営まれる家内工業、その実施主は世帯主であるという形態、さらに内職的家内工業、原則として世帯主以外の家族が家計の補助的収入を得るために家事の片手間に行なう家内工業というもの、一般的にこれはきわめて低収入な方々ということになっておりますが、そういうふうな分け方をしておられたように思っておりますので、そこを、ちょっと立ち入ったようでありますけれども、承っておこうと思ったわけであります。
○村上(茂)政府委員 私のお答えの冒頭に、調査会の報告書の中に指摘してありますようにと申し上げたのが、この家内労働と一口に言いますけれども、専業的家内労働者、内職的家内労働者、副業的家内労働者の三種類に類型化することができるということを指摘いたしておりまして、それぞれにつきまして定義を掲げてございます。 〔伊能委員長代理退席、委員長着席〕 それで、調査会の報告書自体総合的なものとして非常に価値があるというふうに評価されておりますが、特に社会経済的な実態をとらえまして三つに類型化し、それぞれの定義を定めたということが、非常に大きな意味があるというふうに私ども承知いたしておりまして、いま先生の御指摘の点も、まさにこれに符合するところではなかろうかと考えておるわけでございます。
○大出委員 そこで、大体の考え方がわかりましたから承っておきたいことが出てくるわけでありますが、これは昭和二十九年の五月でしたか、小坂さんが労働大臣のときだったと思いますけれども、第一回の中央賃金審議会か何かで答申が出て、そのたしか四項か五項かに家内労働の問題がありまして、以後ずっと協議をされてきている経過があると思うのですが、先ほど私ちょっと非現行になっていると言ったのは、しばらく離れておりますからということを申し上げたのですが、そこでいまの答申云々という点は、私の気がついてない点でございますから御容赦をいただきたいと思いますが、その経過を実は振り返って、どういう経過で今日こういう形で提案をするようになったかという点を、簡単にお触れいただきたいと思います。
○村上(茂)政府委員 先生御指摘のように小坂労働大臣の時代におきまして、最低賃金制度確立の問題が取り上げられまして、それとあわせて、家内労働をいかにするかということが論議されましたことは、事実でございます。最低賃金制度の問題につきましては、先生御承知のような考え方をとっております。家内労働につきましては、当時座繰り玉糸、撚糸といったような、いわゆる斜陽産業といわれる四業種について実態調査を試みたわけでありますが、しかし、そのようなアプローチのしかたがいいのかどうかという点につきまして、いろいろ御議論がございました。一方、最低賃金については、最低賃金法が制定されたわけでありますが、時を同じくいたしまして、昭和三十四年に臨時家内労働調査会を発足いたしまして、家内労働につきましての実態調査をする、こういうことに相なったわけであります。昭和三十四年に家内労働調査会が設置されたわけでありますが、実態調査を部分的に行ないますと同時に、当面行政指導としてなすべきことを中間報告として答申されました。たとえば、家内労働手帳の交付であるとか、標準工賃制度の設定であるとか、そういった行政的に措置し得べき事項を選びまして、行政指導として展開すべきことを中間報告として出されました。それによりまして行政指導を加えてまいりました。しかしながら、一方におきまして、家内労働の実態調査をやればやるほど幾つかの類型があり、委託系統につきましてもさまざまな方式がある。これを全体的にとらえてみたい、こういう角度から総合的な検討をされたわけであります。これは非常に困難な調査でございましたが、先ほど申し上げましたように、家内労働と一口に言うけれども、類型化すれば三つに分かれる。それぞれにつきまして、社会経済的な実態とか、その後の変遷とか、いろいろな点を総合的にまとめまして、昨年十二月に至りまして答申を出された、こういうことでございます。それを受けまして、調査会としては鋭意調査をしてみた。しかるところ、対策として考えるべき事項はかなり広範にわたるけれども、調査会としては一応調査を終了し、まとめた報告書を出したので、一応調査会としての任務はおおむね達したものではなかろうかというような判断を持たれたわけであります。そして、その報告書を提出すると同時に対策についての見解を示されたのでありますが、その見解の第一の事項に、総合的かつ恒久的な検討を進めるために、審議機関の必要性を強調されたのであります。その調査会の見解を受けまして、先ほど大臣が申し上げましたように、審議会の設置ということで、調査会にあらずして、審議会としてこれを確立していくということから、今回の法案の提出に至ったわけであります。概略、以上のとおりでございます。
○大出委員 ありがとうございました。ところで、この審議会の期間は、どのくらいを想定しておられますか。それから審議会の構成、それから諮問事項は、大体いまのお話でわかりますが、その辺のところをもうちょっとつけ加えていただきたいと思います。
○村上(茂)政府委員 この法案で明らかでありますように、三年間の時限ということにいたしております。その期間に鋭意調査審議を進めるわけでございますが、委員の構成等は、別途政令を持ちまして定めますが、大体十五人程度が適当ではなかろうか。しこうして、一方におきましては、労働者及び家内労働者の代表、一方におきましては委託者または使用者の代表を同数として委員として選ぶ。別に公益的立場からの委員を選び、労働省のいわゆる三者構成の審議会に準じまして構成を決定したい、こういうふうに考えております。
○大出委員 これは実は外国の立法例などもずいぶんたくさんありまして、意見を言ってだめ押しをしながらいくのが、私たちの立場からすればほんとうは筋だろうと思うのですが、審議会の中身が、私どもが考えていることと逆になった場合には困るからという立場で、ほんとうならばこういうものでなければならぬということを申し上げていかなければいけないと思うのですけれども、大臣の時間の関係等もいま御連絡をいただきましたので、一八九四年の例のニュージランド法などというものから始まってたくさんありますけれども、そういうこまかいものには触れないことにいたします。ただ、私が心配するのは、実例をあげて申しますから、将来あるべき姿とからんでまいりますので、二、三お願いをしておきたいと思うのでありますが、私が住んでいる横浜に大岡川という川がありまして、この周辺は、手内職や家内労働の非常に多い場所なんです。ここで、一例をあげますと、スカーフなんてものをつくっているのですが、これがパリのシャンゼリゼの目抜き通りにりっぱな形で、三千円だなんて値段で飾られているわけです。ニューヨークでもそうです。ところが、これは実際には三百円だ。ところで、これは私自身でも調べたのですけれども、一体どのくらい内職でもらっているのかと思って調べてみると、一枚縫って五円ぐらいが工賃なんですね。ところで、一時間に何枚できるか、一日にどれくらい働くかというと、一日八時間ぶつ続けに奥さんが働いて、経験の少ない人が百二十円、少し経験のある人でも百六十円しか働けない、こういうわけなんです。経験者で十年もやっているなんていう人がいますけれども、そういう人で一日二百円から二百四十円ぐらいしかもらっていない。そうなりますと、これは枚数から計算しますと、一枚五円の工賃でいきますと、中間搾取がはなはだし過ぎる。これは一例ですが、かさの甘を削っておったり、いろいろのものがありますけれども、かさの骨なんて全く安い。えらく高く売っておりますが、全くばかげたくらい安いものです。実は、それがすべて今日の法律的な不備とからむわけですね。家内労働法、あるいはその意味における最低賃金などというものが、きわめて不明確になっている。これは多岐な業者にわたりますから、一々例をあげかねますけれども、いま申し上げた二つからいたしましても、相当な問題である。大体、資本金が三十万とか五十万なんていう業者ですね。それはまた仲買いみたいな人がいて、横浜から雑貨をたくさん扱うせいがありますけれども、中小の輸出メーカーがおって、それが輸出をしている。こういうかっこうですね。だから、これを端からただしていきまして、労働基準法なりあるいは家内労働法それ自体なり、あるいは保護なり、あるいは家内労働に関する最低賃金なり、こういうふうに当っていきますと、それこそたいへんなことだということに気がつくわけですね。したがって、そういう実態からすると、いま村上さんがお話しになりましたような、つまり使用者の代表的なものを入れるということになりますと、入れ方によってはそう簡単にこれは一つまり家内労働の保護の面からものを考える人間からすれば、一つ間違うと逆の方向に行きかねない実情にあるわけですね。そこらあたりを審議会か審議をする段階において——港湾労働三・三答申みたいなものにしても、あそこまでの答申をお出しになったのだから、人の選び方によっては、あるいは前向きにという気も私はするのですけれども、実は非常な心配がありますので、そこらあたりを、皆さんのほうで家内労働自体をどういうふうに見ておられるかという点を聞かしていただきたいと思います。それからまた選択の範囲ですね。同じ雇い主であっても、どういう者を対象にお選びになるかというような点について……。
○村上(茂)政府委員 輸出の実態をとらえましてのお話からいろいろございましたが、臨時家内労働調査会で調査報告を出しておりますが、その中身も、先生御指摘の地区のものにつきまして、手巻きの場合とその他に分けまして、工賃収入の例をあげております。しかし、本論とは別でございますから省略させていただきますが、いずれにしても非常に問題が多いわけでございます。審議会の構成について、使用者代表に相当するものについてどういう配慮をするかという点につきましては、御承知のように、家内労働の委託の経路が、大企業から中企業、中企業から委託者に、委託者から仲買い人に行くというような筋道とか、直接中小企業が家内労働者に委託するとか、その筋道が非常に分かれております。したがいまして、かりに委託者の問題をとらえるにいたしましても、委託者としては、その元請的な立場にある中小企業との関連がございましょうし、中小企業はさらに大企業との関連がございましょう、そういう点から考えますと、いわゆる使用者と委託者を選ぶという場合につきまして、これは一般の使用者代表とは違った意味でそれに相当するものを選びますけれども、それにしても純然たる使用者代表と委託者代表は、これまた社会的、経済的な地位が違うという複雑な要素がございます。しかし、いずれにいたしましても、家内労働者に対応するものとしての使用者的な社会的地位にあるものについて適任者を厳選いたしたい、かように考えておる次第でございます。
○大出委員 大臣の時間の関係がおありのようですから、これで終わりますが、大臣にお願いがありますのは、冒頭に申し上げた趣旨と変わらないのですけれども、かさの骨つくりなんてさっき申しましたけれども、実は私は大岡川のすぐそばに住んでおりまして、私の足元なのです。年じゅうそういう方々とつき合うからずいぶんよく知っているのですが、とにかく骨は骨なのです。これは四十円なのです。軸は二十円で、これはまた業者が別なんですよ。そこへ持ってきて柄があって、柄が二十円から三十円、それから布が百円、つまり二百円ぐらいででき上がる。原価からいきますと、こういうふうなものなのです。それを奥さん方に内職に出すわけですから、まさに家内労働賃金なんてものは、一日二百円もとれるというのがあれば何とかお世話してくれというようなことになる筋合いなのです。これは、いま村上局長のほうから御答弁がありましたが、よほどそこのところをお考えをいただいて、どういう形の構成にするかということを大臣気を使っていただきませんと、私の心配が単なる杞憂では済まなくなる気がするので、どうかそこらあたりは慎重にひとつ御検討いただきたいと思っておるわけです。 それから、議運その他でおやりいただきたいということなのだけれども、実は片方にもう一つ出ておりますから、そこらとの関係などについても、私どものほうも相談をいたしますけれども、御相談を賜わりたい、こう思っておるところです。ひとつ慎重にお願いをしたいと思います。
○小平国務大臣 審議会の委員の選任につきましては、先生の御注意等も十分参考にしまして、慎重に公平に選ぶつもりでおります。
○木村委員長 次会は、明二十一日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後零時四十四分散会