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51回国会衆議院1966/05/10

社会労働委員会 第32号

発言数
151
登壇者
17
会派数
2
開催日
1966/05/10

会議録

田中正巳自由民主党

○田中委員長 これより会議を開きます。  内閣提出の雇用対策法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。澁谷直藏君。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 私は、与党のトップバッターとして、雇用対策法案について総論的な質問を行ないたいと思います。  いまさら雇用問題の重要性については多くを語る必要がないわけでございますが、第二次世界大戦後の世界の趨勢といたしまして、いずれの国においても完全雇用の達成ということが国の政策の一つの基本的な目標として掲げられておることは御承知のとおりであります。そしてもう一つの特徴としては、いわゆる福祉国家の実現、福祉社会の実現ということが全般的な政策目標として非常に強調されておるということでございますが、私はこういった福祉国家あるいは福祉社会というものがどうしても備えておらなければならない三つの条件があるというふうにかねてから考えておるのであります。その一つの最も重要な柱をなすものは、ただいま申し上げました完全雇用の実現ということであろうかと私は考えております。第二番目は、国民の生活水準が相当に高いということであろうかと思います。第三番目といたしましては、社会保障制度というものが充実をしておるということ。つまり完全雇用、高い生活水準それから社会保障の充実と、この三つの柱が、いわゆる近代福祉国家というものが絶対的に備えておらなければならない三つの条件ではないかと私は考えておるのであります。そういう意味におきまして、現在わが国もいわゆる先進国の水準に近づきつつあり、その目標とするところは、いま申し上げたような意味における福祉国家の実現、福祉社会の実現ということを言われておるわけであります。かように考えてまいりますと、いわゆる福祉国家の中核として、完全雇用の達成ないし完全雇用の実現というものが政府の政策の中心に位置づけられていなければならないと私は考えるわけであります。しかしながら、従来わが国においては雇用問題の重要性というものがそれほど高く認識されておらなかったうらみがあります。大臣、私は十年前に労働省の失業対策部長をやっておりましたときに、時の松浦労働大臣をいただいて、ただいま提案されましたような雇用を中心とした一つの政策法案を何とかして実現をしたいということで努力をした記憶があるのでございますが、政府の各省に袋だたきにあいまして、結局これはつぶされてしまったわけであります。それが約十年後の今日、政府提案という形において雇用対策法案が登場してきた、そこに私は大きな歴史と申しまするか、時代の潮の流れの変化というものを非常に感じさせられるのでございます。そこで、十年前にあれだけの奮闘をしてもてんで問題にされなかったこういった雇用対策法案というようなものが今日とにかく堂々と日の目を見て国会に提案されるに至ったその背後には、当然大きな雇用、失業情勢の変化、わが国の社会、経済情勢の変化というものがあるわけでございますが、そういった背景を正確に認識することによって、この雇用対策法がどういう点をねらっておるか、またどういう点に焦点を当ててこの法律を運用していかなければならないかということが私は浮き彫りになってくるのではないかと思うのであります。そういう意味において、この雇用対策法案の提案されるに至りました背景というものを大臣との質疑を通じてひとつ明らかにしてみたい、かように考えます。  そこで最初にお伺いしたい点は、御承知のように最近わが国の雇用情勢が大きく変わってきておるということは言うまでもないのでございますが、労働省におきましては、この雇用の長期的な展望に立ってどのような見通しを持っておられるか、またどのような点に問題点があるとお考えになっておられるか、これは詳細にいたしますとたいへん時間を食いますから、ごく主要なる特色あるいは特徴だけを取り上げて、簡潔にひとつお述べいただきたいと思います。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 先生が冒頭にお話しのとおり、近代国家としては、福祉国家をその目標として施策が行なわれなければならないということ、さらにまたこの福祉国家を形成いたします条件として三つの条件をおあげになられましたが、私どもといたしましても全くそのとおりと深く敬意を表する次第でございます。  そこで、今回雇用対策法案を御提案申し上げましたその背景あるいはそのねらい、こういう点についてのお尋ねでございますが、今回の雇用対策法案もこれまた福祉国家の形成、またそれの一つの条件である完全雇用への寄与、こういうことを大きなねらいといたしておる次第でございますが、これが背景といたしましては、すでに先生御承知のとおり、わが国の最近の雇用、失業の情勢等を見ます場合に、一昨年以来経済界の不況を背景としまして雇用の伸びは鈍化の傾向にあるわけでございます。しかし、もちろん就業全体としてはこの間相当の伸びをいたしておりますが、この全体としての伸びの中にありましても、第一次産業の関係におきましてはむしろ減少の傾向にあり、第二次あるいは第三次産業への就労というものが逐次増加をいたしておりまして、こういう傾向からいたしますならば、西欧諸国に見られますような進み方を大体いたしておる、かように認識をいたしております。また失業の面から申しますと、そうはなはだしい失業の増加は傾向としては認められません。こういった現状でございますが、将来どうなるであろうかということを考えますときに、ようやく景気のほうも回復のきざしを見せてまいりましたから、雇用関係等におきましても漸次情勢が緩和すると申しますか、改善の方向に向かうであろう、かように現時点においては想像ができるのであります。しかしながら一面、これまた先生万事御承知のとおり、わが国の人口の構成というものが非常に変化をいたしておりまして、中高年齢の者が生産年齢中に占める比率というようなものが数年を出ずしてむしろ過半に達する、こういったようなことがすでに見通されるわけでございます。特に新しい労働力でありますところの学校卒業者、若年労働者というものが、本年の春の学校卒業者をピークといたしまして漸次減少をいたす、しかも進学の傾向等からいたしまして、中学を出て現場の労働者になる、生産労働に参加する、こういうものが逐次というよりも、むしろ相当急激に今後減少をいたしていく、それに引きかえて高校さらには大学卒というものが、これは逆に相当増加していく、こういったような現象も見落とせないのでありまして、このままでまいりますと国民経済の発展という点から考えましても、相当これは重視しなければならぬ問題ではなかろうかと考えております。さらにまた、言うまでもなく、技術革新等を通じて産業構造の変化というようなことも今後もさらに続くでありましょうし、その間企業の合併等の事態も相当起こってくるのではなかろうか。したがって、すでに相当の年齢に達しております者が、こういった経済界の動きに従って従来の職を変えなければならぬというような者も相当出てくるのではなかろうか。また先ほど来申しますように、中高年齢層というようものが相当多数を占める。これらの人が、したがってまた職を求める、転換するということがなかなか容易でない、こういった事態も起こる可能性が非常に多い。すなわち、一方においては若年層の不足、一方においては中高年齢層の就職の困難、職業転換の困難、こういったようなことが予想されます。さらにその間にあって、特に技能を身につけた労働者、新しい産業界の要望にこたえ得る技能を身につけた労働者が現に非常に不足いたしておる、今後も不足を続けるであろうというようなこと。さらにこれを地域的に見ましても、一方におきましては非常に労働力不足があるかと思いますと、一方においては相当まだ雇用の機会に恵まれない、こういう地域もある。こういったようなぐあいで、あるいは年齢的にあるいは技能の面であるいは地域的に各般にわたって、質あるいは量の関係において労働力の不均衡というものが予想される。こういう中にあって、労働者にできる限り自分の能力に応じた職場を与え得るような、また選択することがより一そう可能になるような、そういった環境をつくることによって質と量と両面からこの需給のアンバランスというものの調整をはかっていく、そういうことがより一そう可能なような環境をつくり出し、またそのことによって完全雇用にも資しまするし、福祉国家の建設にも資していく、こういうことを政府が全体としてこの際努力をいたすべきである、こういう背景なりねらいなりによって今回の法案を御提案申し上げたような次第でございます。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 ただいま大臣から御指摘がございましたようなのがこの法案提案の背景をなしておると思うのでございますが、さらに、大臣、私端的に言いますと、わが国の雇用問題というものは、いま一つの大きな転換期に立っておるということを申し上げていいと思うのです。大正から昭和の長い時代を通じて日本が一番苦しんできた、悩んできた問題の一つは、過剰人口の問題、労働力が過剰であるために失業者があふれてくる、これを一体どう解決していくかということが日本の大きな悩みの種であったと思うのです。それがこの数年来の著しい高度経済成長によって、労働力過剰で困っておった日本が、労働力が不足であるという逆な悩みを持つようになってきた。これは、別なことばで言えば、まさに革命的な一つの転換期といっていいと思うのです。これが現在日本の雇用政策の立っておる時点なんですね。  そこでこれを要約して申し上げますと、一つは、いま申し上げた労働力過剰の情勢から労働力不足の状態に移行していくという長期的な展望、これが何といっても根本に一つあると思うのです。それからそういった長期的展望の中で特にはっきりと出てきておる具体的な特徴の一つは、従来日本の産業界が非常に強く依存をしておりました若年労働力、新規学卒が非常に減少していくということ、これは日本の産業界に非常に大きな影響を与えておる重大なる事実でございます。それからもう一つ大きな特徴点は、技能労働者というものが非常に要求されておるにもかかわらず、その需要に応ずることができない。調査によりますと、百八十万人に達するといわれておる技能労働力が不足しておるという事実、これが一つの大きな特色であろうかと考えております。それからもう一つは、ただいま大臣が御指摘されましたように、一方において新規労働力が不足であるといいながら、その反面において中高年齢の労働力は、むしろ余っておる。一たん就職した中高年齢の方が何らかの事情によって退職をする、離職をする、そうすると、もはや再就職は非常に困難であるということ、この中高年齢層の再就職難、失業問題、これが一つの大きな課題になっておると思うのであります。それからもう一つは、最後に大臣もお触れになりましたが、大学の進学率が非常に高まってきておる。しかしながら大学は卒業したけれども就職口が非常にむずかしくなってきておる。ことしあたりは近年まれに見る大学卒業者の就職難を現に私どもは経験をしておるわけでございますが、この傾向は、おそらく将来にわたって持続するのではないかと見ておるわけです。  以上申し上げたような点が、現在わが国が立っておりまする雇用問題の長期的な展望であり、その中における大きな問題点であろうと私は考えておるのであります。こういった問題に一体どうして政府は対処していくか、この大きな雇用問題の大転換点に立って、これに対処する政府の態勢というものもまた従来と同様の態勢であってはならぬことは、これは当然であります。したがって、この新しい大勢、将来長期にわたって続くと予想されるこの情勢に対処して、政府は一体いかなる態勢をもってこれに対処しようとするのか。ここが一番の私は問題のポイントだと思うのであります。そういったねらいを持って政府は今回の雇用対策法案を提案されておる、かように私は理解をして間違いないのではないかと思うのでございます。  そこで、政府が、ただいま申し上げたような雇用をめぐるいろいろな問題に対処して、この雇用対策法を拠点として総合的な施策を実施していこうということを打ち出されてきておるわけでございまして、私はそういった意味において、今回提案されました雇用対策法案は、一つの画期的な前進である、かように考えております。ただ、言うまでもなく雇用問題というものは、これはもうその国の産業経済全般に密着した問題でございますから、雇用の面だけでこれを解決しようといっても、これは実際問題としてできないわけであります。そこで非常に困難な問題を包蔵しておりますけれども、しかし、ただいま日本が置かれておるようなこの現在の時点に立って、やはり一つの長期的な目標を立てて、総合的にこの問題の解決に前進をしていくという姿勢は、絶対に必要であります。そういった意味で、長い間なかなか提案できなかったこの雇用対策法が、小平労働大臣の手によってここにとにかく日の目を見てきたということについて、私は労働大臣に心から敬意を表するものでございます。ひとつ大いに労働大臣がんばってやっていただきたい。まあ激励を兼ねてお願いを申し上げる次第でございます。  そこで、大臣にその次にお願いしたい点は、この雇用対策法案がここまで固まって提案をされる過程において、労働大臣が最も耳を傾けた意見は、言うまでもなく雇用審議会の答申であったと思うのでございます。この雇用審議会の意見を労働大臣は全面的に尊重されたと思うのでございますが、その審議会の答申とこの法律案との関運について、これはかなり具体的なこまかい問題にも触れますので、ひとつ職業安定局長から御答弁を願いたいと思います。雇用審議会が出された答申と、その答申を受けてこの法案を作成されたその両者の関連について、特に問題となったような点がございまするならば、ひとつ説明をしていただきたい。

有馬元治労働事務官(職業安定局長)

○有馬政府委員 去る三十九年の二月に、総理府に設置されておりまする雇用審議会に、今後の雇用対策の基本的な方向についての諮問をいたしました。二年近くにわたって審議会では検討をいたしました結果、昨年の暮れ、いわゆる雇用答申というものを政府に出されました。これを全面的に尊重いたしまして今後の雇用政策を展開をしていこう、もちろん法律によるものもございますし、予算措置その他の行政措置によって解決すべき問題もございますが、立法措置を要すると思われる点につきましては、極力今回の雇用対策法案の中へ織り込みまして、今後の雇用政策を積極的に展開する法的な基礎といたした次第でございます。  そこで、今回提出いたしました法案と審議会の答申との関係でございますが、基本的には、いま申し上げましたような全面的に尊重する、十二分に織り込むということを基本的な態度といたしましてこの法案を作成いたしたわけでございますが、さらに慎重を期する意味におきまして、私どもは、十二月答申を受けてわれわれの政府部内の構想を固めまして、雇用対策大綱といたしまして政府内の意向を固めたのでございますが、これをさらに雇用審議会におはかりをいたしまして、そして具体的な構想についての御批判をいただき、相当積極的な御意見もいただきましたので、これをもさらに十二分に尊重いたしまして、最初の政府原案を相当手直しをいたしまして、今回の法案が最終的にでき上がった次第でございます。  かようにいたしまして、二度にわたって審議会の御意見を十分に尊重して法案を作成したという点におきましては、雇用対策の重要性もさることながら、手続においても十分慎重を期したというふうに考えておる次第でございます。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 再度にわたって雇用審議会の意見を聞いて、その意見によって政府原案を手直しをしてきた。当然、雇用審議会にあらわれておる意見というものは、労働者代表あるいは使用者代表がその中心的な役割りを果たしておるわけでございますから、つまり日本の労働者の意見あるいは雇用者の意見が雇用審議会の場を通じて集約されてあらわれてきておる。その意見を十分尊重して政府原案の手直しもやった、こういう御説明でございますが、細部の点はいいとして、特に審議会の第二次の審議の機会において、政府原案のこういう点はちょっといかぬのではないかというような審議会の意見によって具体的に修正された条項があるはずでございますが、どういう点でございますか、ひとつ端的にお示しをいただきたいと思います。

有馬元治労働事務官(職業安定局長)

○有馬政府委員 政府が再度諮問をいたしました雇用対策の大綱について、雇用審議会において最も問題になりました点は、労務の調達あるいは統制的なにおいがする、あるいはそういう誤解が生じやすいというふうな議論が一番中心的な重要な議論であったと思います。こういう点につきましては、私どもの考え方が決して労務の統制あるいは単なる需給の調整といった面に力点があるのではなくて、やはり労働者の職業の安定と経済的な地位の向上ということが主たるねらいであるということを強調いたしまして、この点の誤解は審議会の審議を通じて解決いたしたのでございますが、これを法文上も明確に表現すべしというふうな意見が第一に出ました。これを受けて、現在の法案の第一条の目的が明記されておるのでございます。  それからもう一つの点は、この雇用対策を展開する場合には、やはり国の究極の政策目標でございまする完全雇用の達成という問題をもっと正面から取り上げろ、こういうふうな積極的な御意見もございました。私どもは、国政全般の終局目標であります完全雇用の達成と、先ほど先生が福祉国家の政策目標の第一の柱に指摘いたしました完全雇用達成の目標をこの法律の第一条の目的にも明記しろというふうな御意見がございましたので、これもあわせてこの第一条に明記をいたしたわけでございます。  それから、さらにこの雇用主の社会的な責任という点について、どうも最初の原案は明確を欠くではないかというふうな御意見もございましたので、この点も第一条の目的条項の中に、第二項といたしまして明記をいたしました。そういう点で非常に大きな修正をいたしたのでございます。  そのほか、われわれがこの雇用対策法に基づいて展開すべき国の施策の重要項目として六つほど列記しておったのでございますが、最初の原案では不十分であるというようなことで一項目挿入をいたしました。この挿入をいたしました重要な点は第五号にございますが、不安定な雇用状態の是正をはかる、そして雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実する、これがいわゆる雇用政策上の最も大きな問題であります不完全就業状態の改善という問題でございます。これを正面から施策の重要な事項としてこの法律の中に明記すべし、こういう意見が出まして、私どももこれはぜひそうしたいということで最初の原案を修正をいたしまして、最終的な政府原案を作成いたしたわけでございます。そういった点で非常に大きな御意見、示唆を受けまして、私どもとしましては、この雇用対策法の策定に慎重を期した次第でございます。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 ただいまの御説明によって、雇用審議会を通じての労働者あるいは使用者側の意見を十分取り入れて原案を改善したというお話でございますが、私は率直にいってただいまの説明のとおりだと考えておるものであります。確かに、私が当初拝見をした原案では、政策目標もどうもはっきりしない。それから、これは誤解すればというふうに私は見たのでありますが労務統制ととろうとすればとれる、そういう表現のあいまいな点も私はあったと思う。それから、ただいま局長が指摘された日本の従来の雇用問題の八割ないし九割は不完全就業の問題なんですね。この大きな不完全就業の問題が、政府が行なう施策の対象からはずされておった。これはもちろんはずしたという意味ではないのでありますが、はっきりと明文で打ち出されておらなかった。そういう点も今度は明文ではっきりしてきたということは、私は大きな前進だと思うのです。  そこで私はこの法律の第一条がこの雇用対策法の骨格をなしておるものでございますから、この第一条について私の理解するところを率直に披瀝して、そういった理解でいいかどうか、政府の御見解はどうであるか、これを確認しておきたい、そういう意味で私の理解するところを申し上げてみたいと思います。  第一条の第一項はこの法律の目的を書いておるわけでございますが、その中で「この法律は、国が、雇用に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働力の需給が質量両面にわたり均衡することを促進して、」これは手段であるわけですね。「労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、」この条文を見ると、私は、労働者の職業の安定と経済的、社会的地位の向上をはかるのだということがこの法律の直接目ざす目的である、かように理解していいのではないかと思うのでございます。労働者の職業の安定と社会的地位の向上をはかるという直接の目的を達成するとともに、それはやがて、国民経済全体の均衡ある発展と完全雇用の達成とに資するのだ、こういうことだろうと思うのでございます。  先ほど、冒頭に申し上げましたように、近代福祉国家の施策の中心であるところの完全雇用の達成ということばがはっきりと日本の法律で打ち出されたのはこれが初めてだろうと思います。そういう意味でもこの法律の持つ大きな先駆的な意義があると私は高く評価するのでございますが、以上のような私の理解を申し上げたのは、大臣、従来日本の雇用問題というものを考えた場合に、どうしても産業政策なり金融政策あるいは財政政策というものが優先をしていっておるわけです。そしてそこに働く労働者の雇用という問題は産業政策なり財政金融政策に従属するといったような取り扱いを受けてきたのが現在までの実態であります。しかし、これは決して喜ぶべき状態ではないのであって、雇用の問題、そこに働く労働者の問題というものは、産業政策あるいは財政金融政策と並んで当然その占めるべき正当な位置づけというものを持たなくてはならぬ。そういう点において、従来雇用の場というものに与えられておった処遇は非常に低いものであった。この状態から脱却して雇用問題が経済政策あるいは財政金融の政策と同じ地位に並んで正当な発言をする場所を持たなくてはならぬ。それを今回の法律の第一条は、従来の経済政策あるいは財政金融政策に従属的な立場に置かれておった雇用というものが、その従属的地位から脱却して正当な地位に立ってその発言を求めていくのだ。そういう方向を目ざすものとして第一条を私は理解しておるわけでございますが、この点についての大臣の御所見はいかがでございますか。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 今回本法律案を御提案申し上げました政治的な一つの大きなねらいは、まさに先生がただいま御理解くださったとおりでございまして、先生の御指摘のとおり、従来雇用政策というものは産業政策なり経済政策なりその他のもろもろの政策のいわば従属的と申しますか、あるいはあと始末的な色彩というものを払拭し得なかった、私は率直に申しそういうきらいがあったのではないかと思うのであります。しかし今日国民の就業の情勢なりあるいは雇用の情勢、そういうものが非常に変わってきたことはもちろんでございますが、さらに政治の基本的姿勢と申しますか、そういう点から考えましても、私は人間それ自体が対象でありますところの雇用政策というものが他の政策の少なくとも従属的な立場に置かれるということは間違っておるのじゃないか、そういう基本的な考え方から、考えようによりますとむしろ雇用政策というようなことが中心になってその他の政策が行なわれる、理想的にいえば、私はそこまで積極性を帯びてよろしいのじゃないか、こうも思うのでございますが、しかし、なかなか一挙にそこまでというわけにも実はまいらぬ点もあろうと思います。そういう点で、今回の法案におきましては、先生が御指摘のとおり、少なくとも他の諸施策と同等の立場において、それらとまたお互いに相調和しながら、政府全体が雇用対策というものを真剣に取り上げて、総合的にこの施策をやっていこう、こういう姿勢を示そう、かような心組みでこの案をつくったわけでございます。具体的には、この雇用対策基本計画をつくる際におきましても、第四条の第三項において明文を掲げておりますように、この基本計画は、政府の策定する経済全般に関する計画と調和するものでなければならないということを明文をもって規定いたしておるのでありまして、これらの点からして、今後は雇用対策というものが他の施策の従属的な立場というその立場を脱却して、他の施策とお互いに両々相まって施策が行なわれる、そのことを通じて労働者の地位の向上ということが期せられる、それをぜひやりたい、こういう心組みでございます。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 大臣の非常に積極的な発言をお聞きいたしまして、私は非常に喜んでおるものでございます。従来、日本の雇用問題というものは、非常に従属的な処遇を受けてまいったわけでございますから、この法案が今国会において成立をした暁は、ひとつ大臣、ただいま発言されたような意気込みをもって大いにがんばっていただきたいと思います。  そこで、第一条の第二項は、ただいまのような目的を持ったこの法律が、いかなる原則の上に立って運用されるかという原則の問題をここに宣明しておるわけでございますが、私はこの第二項は非常に大きな意味を持っておると思います。つまり、この法律の運用にあたっては、一方においては労働者が憲法で保障されておりますところの職業選択の自由という原則、それから他面におきましては、事業主の雇用の管理についての自主性、労働者の自由と事業主の雇用の管理についての自主性という、これは自由主義の二大原則でございますが、この自由主義の二大原則の上に立って雇用対策法を運用するのだということが、この第二条において明らかにされておるわけであります。この第二項によって、最初の原案において、ややもすると労務統制的なにおいがあるのではないかと誤解されがちでございました点は、これで完全に解消したのではないかと私は思うのであります。そういう点でこの第二項の持つ意味は非常に大きい。それと同時に、ここで結論的に出てまいりますことは、ただいま申し上げたように、労働者の職業選択の自由、使用者の雇用の管理についての自主性というものを尊重して、しかも第一項に掲げたような目的を追求していかなければならないのでございますから、その政府の施策をどうやっていくか、非常に私は困難があると思うのでございます。これが、政府が権力を持って一方的に政府が目ざす方向に労働者も使用者も引っぱっていく、強権を持って引っぱっていけるというなら、これはまた相当やりやすい面もあると思うのでございますが、幸いなことに、この法律はそういうものではなくして、あくまでも自由主義の原則というものの上に立って、そういう方向に逐次進んでいくのだ、こういうことでございますから、その間にあって、政府がどのように施策を運営していくかということは、非常に困難な問題を包蔵しておると私は考えておるのであります。  そこで私は、もう一つこの問題と関連して御指摘をしておきたいと思う点は、ただいま申し上げたように、政府が強権を持ってその目ざす方向に引っぱっていくということは不可能なのでございますから、その他のいろいろな施策を総合的に講ずることによって、逐次完全雇用の状態に接近をしていく、こういうことでございます。私は、その中心の役割りをなす問題は、労働市場の近代化という問題がその中心的な課題の一つであろうかと考えておるのであります。御承知のように、従来のわが国の労働市場というものの特色は、一言でいえば、閉鎖的な労働市場であったわけであります。近代的な労働市場とは正反対な閉鎖的な、鎖国時代のように閉鎖された労働市場であったということが、従来のわが国の労働市場の一つの特色であったと考えます。その閉鎖的な労働市場をささえておる支柱をなすものは、企業における終身雇用の原則、さらにこれとうらはらをなすところの年功序列型の賃金制度、こういうものでわが国の閉鎖的な労働市場というものはささえられてきておる。ところが最近の相次ぐ経済の成長によって、先ほども触れましたように、あり余っておった労働力自体が足らなくなってきておる。しかも産業構造もどんどんと近代的に変わっている。そういう過程において、ここにはっきりと打ち出されておる問題は、従来のような終身雇用制、年功序列型賃金制度、そういったものにささえられてきた閉鎖的な労働市場というものでは、この時代の要請にもうついていけない。つまり、従来の閉鎖的な労働市場から脱却して、近代的な労働市場というものに脱皮をしなければならぬ。これが、ここに中心的な課題として登場してきておると私は思うのでございます。  そういった課題を意識しながら、国は全般的な、総合的な施策をこれからやっていかなければならぬ。どういった点をやるかということが第三条の国の施策において、ここに一号から六号まで明らかにされております。これを見て直ちに気がつく点は、非常に広範な問題にこれはわたっておるということでございます。第一号は、私がただいま申し上げましたような職業安定機関を中心とした労働市場の近代化の方向を目ざしておる号であろうかと思います。第二号は技能労働者の養成の問題、第三号は、四号における労働力の流動化の問題と関連して、それの裏づけとしての住宅対策、第四号は、中心的なテーマの一つでございます労働力の流動化の問題、第五番目に、わが国の雇用の非常な大きな特徴であります不完全就業の問題、こういった非常に広範な各般の項目にわたって政府は総合的な施策を進めていかなければならない、このように第三条は規定しておるわけであります。  そこで第一号についてお伺いしたいと思うことは、ただいま申し上げましたように、従来の閉鎖的な労働市場を近代化していくということが、この法律運用にあたって最も大きな、中心的な課題でございますが、私は、現在の労働省の職業安定機関が非常に精力的に、限られた人員と機構をもってこの問題と取り組んで、非常な悪戦苦闘をやっておる、その実情をよく承知しておりますけれども、にもかかわらずなおかつ、ただいま最初から私がいろいろ申し上げたような日本の雇用の大転換、非常に困難な問題を包蔵しておるこれらの雇用政策全般と取り組んでいくには、現在の職業安定機関の機構、機能では、大臣、私はまだまだ不十分だと思うのです。これは、その次の技能労働者の養成の問題についても同じことを私これから御質問をいたしますが、まずその第一号において、この職業安定機関の機能の拡充強化について私は相当思い切った刷新強化策を実行する必要があると考えておるのでございますが、これについて大臣の御所見を伺いたいと思います。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 この法案の目ざすもろもろの施策を実施する上において、現在の職業安定機構なり、またその機能なりを一そう拡充する必要があるではないか、こういう御趣旨と思いますが、この点も全く御同感でございまして、本法案の目ざすところを実施に移すということはなかなか容易なことではない、私どももさように考えておるのでありまして、何と申しましても、またこの施策を行なういわば最も重要な機関、あるいは前提ともなるべき機関というものがその一つはこの職業安定機関でございますから、この職業安定機関の充実ということにつきましてはもちろん今後一そう努力をいたしたい、かように考えます。しこうして、従来、先生の御指摘のような労働市場の状況でございましたが、今後は労働者の職種あるいは能力ということを中心にした職業紹介ということに紹介の機能それ自体も逐次転換をいたしていく必要が当然起きてくる、それに即応した、また紹介に従事する職員の指導、訓練というようなこと自体もこれまた当然必要になってくるであろう、かように私どもも考えております。その方向において最善の努力をいたす所存でございます。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 この問題もいろいろと論議をすれば非常に多くの問題、項目を持っておるわけでございますが、時間がございませんから、ひとつ大臣、今後大いにがんばっていただきたい。御希望申し上げて次に移ることにいたします。  技能労働者の問題はあとで一項目特に質問をいたしたいと思いますが、私は次に第二章の雇用対策基本計画についてお尋ねをいたしたいと思います。  この第四条の雇用対策基本計画の策定というこの項目が、この法律の一つの大きな柱であることはもう言うまでもございません。国の総合的な全般の政策と十分調和しながら、しかもそこに固有な雇用の場というものを確保した、そういった基本計画を打ち立てるということがこの法律のねらいであるわけであります。でありますから、この雇用対策基本計画の策定というものがりっぱにできるかどうかということにこの法律の成果が大きくかかっておる、私はかように考えるものでございます。  そこで、これは局長からひとつお伺いしたいのでございますが、この雇用対策基本計画は具体的にどういう内容の計画を策定されようとするのか、構想がおありだと思いますから、それをひとつ御説明をいただきたいと思います。

有馬元治労働事務官(職業安定局長)

○有馬政府委員 この対策法案の一番大きな眼目になりますのは、御指摘のような第四条の雇用対策基本計画の策定ということでございます。こういう仕組みを通じて、先ほど大臣が申し上げました雇用政策の地位の向上といいますか、雇用問題を国政の中において重視するという仕組みはこの中に仕組まれておるわけでございますが、この計画の策定にあたりましては、四条に主要なことが書いてございますように、私どもの基本的な考えといたしましては、経済政策に関する諸計画との調和をまず第一に考えております。それから第二には、特別の配慮事項といたしまして、中小企業の問題、それから特定の職種の問題、こういったことを特に配慮するように考えております。それから関係各省の意見を十分聞くという点はもちろんでございますが、特にこの法案の策定にあたりまして、地方の都道府県知事の意見を聞くというたてまえにいたしております。もちろん府県の側におきましては、需要県と供給県とその立場を異にするわけでございますが、これらをそれぞれの立場の知事の意見を聞いて、なおかつ全国的な総合的な立場において調整をして計画を策定する、こういうことに相なっておるのでございますが、その中身としましては、もちろんこの二項に書いてありますように、雇用の将来の動向を十分見きわめた上に立って、雇用対策の基本となるべき事項をこの計画の中に盛り込んでいこう、こういうことでございます。この政策の基本となるべき事項は、先ほど御指摘のありました三条の「国の施策」というところに具体的な事項が列記をしてございます。  こういったことが政策の基本となるべき事項の主たる内容でございますが、この三条でもおわかりのように、ここの五号に列記された事項のみならず、六号によって、「労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な施策」というものは包括的に取り上げ得るというたてまえにいたしておりますので、今後の動向いかんによっては具体的な施策の内容が広範囲に広がってくる仕組みにいたしておるのでございます。ただ、最初の原案等で誤解されました点は、この計画があたかも雇用の数量的な需給計画であるというふうな誤解が生じたのでございますが、私どもはあくまで数量的な需給計画ではなくて、雇用の将来の動向に基づいて必要な施策を総合的に計画の中に盛り込んでくる、政策の基本になる計画である、こういう考え方で、動向について非常に大ざっぱな数量的な見通しは樹立いたしたいと思いますが、数量的な需給計画それ自体が目的ではない、かように考えてこの基本計画の策定をいたしてまいりたいと思っております。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 経済企画庁、来ておりますか。――ここで私は企画庁がやっておられる長期経済計画との関連について、少し注文を申し上げたいと思っておったのでございますが、来ておられませんから、これは労働大臣に申し上げておきたいと思いますが、従来企画庁でやっておりました長期経済計画、私もかつてその立案に関係をしておったこともございますが、先ほど来申し上げておるように、雇用の問題というものはあらかじめ一つの経済計画を積み上げて、その数字に合うように、全く数量的につじつまを合わせるというようなやり方でやってきておるのが従来の長期経済計画でございます。いままでは、何といっても労働力が過剰であった時代は、ある程度どうしてもやはりそうなるような態勢であったわけでございますから、これは遺憾ではございますけれども、ある程度やむを得なかったと私は思うのです。ところが今回はその情勢が全く変わってきておる。労働力の問題を抜きにして長期の経済計画をかりに立てたといたしましても、それは労働力の面からくずれていくわけであります。でありますから、従来のような雇用なり労働問題に対する安易な考え方に立って長期経済計画を立てることは、これはもうできない、許されない、そういう時代に入ってきておる、かように私は考えるのでございます。そういう点で企画庁が中心になって立てられる政府全般の長期経済計画と、この法律によって立てられる雇用対策基本計画というものは、この三号に書いてございまするように、これはもう完全に調和したものでなければならない。調和したものでなければならないということは当然でありますが、特に、私、大臣に御希望申し上げておきたい点は、経済政策に従属するものであってはならぬということであります。いままでは従属するような処遇であっても何とかごまかしてこれたのでございますが、ただいま申し上げたように、そういう時代ではなくなってきておる。場合によっては、労働力の面から、雇用の問題の立場から、長期経済計画というものを、むしろその面を中心にして立てなくてはならぬ、そういう時期も私はそう遠くはないのじゃないかと思うのであります。そういった意味で、この雇用対策基本計画の樹立という問題は、今後の日本の経済全体の運営の一つの大きな柱になっていくわけであります。でありますから、ひとつそういったような配慮を持ってこの基本計画の策定に当たってもらいたい。繰り返し執拗にお願いを申し上げて恐縮でございますが、経済企画庁の長期経済計画との関連は、ひとつ労働大臣が中心になって、従来のような従属した、場合によっては隷属したような状態の長期経済計画であっては断じてならぬということを大臣に強く私、要望申し上げておきたいと思います。  それからいろいろと質問したい点、これは山ほどあるわけでございますが、滝井さんのように十時間くらい必要なわけでございますが、とうてい時間がございませんから、次に第四章の技能労働者の確保の問題についてお伺いしたいと思います。  私は冒頭に指摘をいたしましたように、現在、これから将来にわたって、日本の雇用問題の一つの中心的な問題は技能労働力の不足の問題である。これに一体どう対処するかということが非常に大きな問題でございます。労働省も一生懸命努力はしておりますけれども、私の見るところでは、まだまだてともその程度の努力では間に合わないというふうに私は見ておる。  そこで職業訓練局長にお伺いいたしますが、あなたのほうの調査では、現在、技能労働力は一体どの程度不足しておるのか、それをまずお伺いしましょう。

和田勝美労働事務官(職業訓練局長)

○和田(勝)政府委員 私どものほうにおきましては、毎年二月に技能労働者の不足状況調査をいたしますが、四十一年二月のものはまだ結果が出ておりませんので、たいへん恐縮でありますが、四十年二月について引用させていただきますと、百七十九万九千、約百八十万人技能労働者が不足しておる、不足率は約二二%、こういうことでございます。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 百八十万人現に、大臣、不足しておるわけですね。  そこで、一体今後の、たとえば五年なり十年という将来を考えた場合に、局長、百八十万人不足しておるという状態はどういう推移をたどっていきますか、その見通し等がおありになれば教えていただきたいと思います。

和田勝美労働事務官(職業訓練局長)

○和田(勝)政府委員 三十六年からただいま申し上げました調査を継続いたしておりまして、三十六年から今日まで常に百万人以上、四十年は百八十万人という数字でございます。この推移は今後におきましても経済の成長と技術革新の伸展ということから考えますと、ふえることはあっても減ることがないというような状況であろう、見通しとしてはそういうように考えられるわけであります。しかも題頭のございますのは、従来は技能労働者は主として中学卒業者、一部高校卒業者によって新規には充足をされてきたのでありますが、今後におきましては、先生が先ほどから御質問の中にお触れになっておられますとおりに、進学率の向上と人口の若年の減少というようなことがございまして、非常に憂うべき状態が今後続くのではないか、かように考えるわけでございます。そういうのに対処いたしましては、私どもといたしましては職業訓練によって充足すべきもの、学校教育によって補うべきもの、その他いろいろなものを総合的にいたしまして、この不足に対する対応策を講じなければならないと思っておるわけでございますが、私どものほうにおきましても、中央職業訓練審議会においてただいまこれらの問題について総括的な御審議をいただいておりますし、また、文部省の中央教育審議会におきましても、後期中等教育という問題としてこの職業教育の問題についても御検討をいただいておるようなことでございますので、これらの結論を拝見しながら十分いま申し上げましたような事態に対処するような措置を今後講じてまいりたいと考えております。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 現在においてすでに百八十万人程度の技能労働者が不足しておる、しかも今後の産業界がいわゆる近代化、高度化の方向に進むにつれて、技能労働者の不足は、ふえることがあっても減ることはないだろうという見通しだ、こういうお話でございます。これは大臣、ゆゆしき問題だと思うのです。何といっても、経済が、産業がとか、いろいろいってもこれを現実に動かしていくのは人間なんです。しかもその中心になるのは技能労働者です。その産業運営の最も中心になって働く技能労働者が百八十万人も足りない。しかも毎年毎年この不足しておる数字はふえていくだろう、こういう見通しをはっきり認めておるわけですよ。そういう見通しの上に立って、一体政府はこれにどう対処しようとされておるのか。私は与党の立場ではございますけれども、この問題に対処する労働省をはじめ政府全般の姿勢というものは、私はどうも真剣味が足りないと指摘せざるを得ません。私は近い将来にこの技能労働力の問題が日本経済発展の大きなネックになる時代が必ず来る。これはただいまから私、はっきりと指摘をしておきたいと思います。したがって、この問題は、大臣、ひとつほんとうに真剣に、長期的な展望に立って、この技能労働者の不足をどう解消していくかという問題と、ひとつ真剣に取り組んでいただきたい。しかも、人間の養成でございますから、これはもう短期栽培はできないわけですよ。できません。これはやっぱり人間であり、その技能というものを身につけていくわけでございますから、一人の技能労働者を育てるだけでも、最低やっぱり三年とか五年とかという長期の期間がかかるわけでございます。しかも百八十万、二百万人の技能労働者というものを訓練し、育成していくというようなことは、これはまさに国家的な大事業でなければならぬ。したがって、私はまず第一に、政府全般がひとつこの問題と、従来のような――どうしても私は、従来の政府の態度というものは少しのんびりし過ぎておる、そういったようなことではなしに、これはほんとうに真剣に取り組んでいただきたいということが第一点。  それから、特にこれは技能労働者の養成ということになりますと、文部省と並んで労働省が何といってもその中心的な責任を持っておる。そこで、職業訓練局でも、従来から相当一生懸命施設の拡充なり充実に努力しておられます。しかし、ただいま私が指摘しておるように、とうていこの程度では足りません。私は来年度以降、労働省としてはこのような不足の状態というもの、これははっきり出ておるわけですから、それに対応して、こういったような対策でこれを逐次解消していくのだという準備がなければならぬと思うのでありますが、これは大臣いかがでございますか。労働省として技能労働力を今後こういうふうに育成していくのだ、その内容はこのように充実をし、拡大をしていくのだという一つの計画というものがおありだろうと思いますが、ひとつそれをお聞かせいただきたいと思います。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 技能労働者の養成ということが非常な問題であり、わが国の産業の発展という点から考えましても、これはもう不可欠の重要事項であるということは、これまた先生御指摘のとおりでございます。実は私も就任直後からこの間の事情を承知いたしましたので、とうていこの問題は捨ておけない、また、最も重点を置いてやらなければならぬ問題である、かように考えまして、及ばずながら努力をいたしてまいったのでございます。  そこで、まず基本的な事項として、私は従来の工場等の現場で働かれる生産技能者というものは、大体中学卒という方を対象にして考えてまいったと思うのですが、学歴の構成が非常に変わってきたわけですから、私は今後は単に中学出だけを考えていくということは間違いではないか、高校卒の者も当然これは現場で生産に従事するのだ、こういう職業意識と申しますか、そういう考え方というものを、もう学校教育のうちからしてもらわなければ困りますし、労働省で担当しておる訓練という点から考えましても、範囲も対象者も当然そこに拡充してやっていくことが至当であろう、かように私は考えております。さらに、そういたしますためには、世の中一般がやはり技能というものの重要性あるいは必要性というものをもっともっと認識をいたし、それに対する経済的なあるいは社会的な評価というものも、従来のようなことであってはいけないのであって、これを十分高めていく、世の中全般がそういう空気に今後なっていくということを労働省としては当然助長をいたしていく。ひとりこれは労働省ばかりでなく、政府のあらゆる施策の面においても、あるいは民間のもろもろの団体、その他の指導的立場にある人も、今後そういう考えで進んでもらう、こういうことをぜひ助成、助長していく、こういう心がまえで今後臨みたいものだ、かように決意をいたしておるのでございます。  さらに具体的な養成の機関、施設等につきましても、もちろん現状をもって十分なわけではないのでありまして、さしあたり四十一年度について、一般訓練所がたしか十カ所だと思いますが、総合訓練所が五カ所ですか、これは幸い労働省の要求どおり予算をお認めいただいたわけでありますが、もちろんこれはこれだけで足りるわけでございません。そういうことで、今後この施設あるいは訓練のしかた等についても十分再検討をいたし、最も効率的にやらなければならない、かように考えております。たとえば訓練の一つの方法として、通信教育等による訓練ということもとり入れてまいる、あるいは現に職場に働いている者についても、これを必ずしも三年五年といった、そういった長期のものでなくても、もっと短期のいわゆる講座式と申しますか、そういうことによってでもある程度の必要性を満たすことができるであろう、そういう方面への訓練のやり方の拡充、こういうことも当然考えなければならぬと思います。いずれにいたしましても、従来のこの訓練のやり方自体についてもこの際真剣に再検討を加え、施設の拡充と相まって、この技能労働者の不足というものを漸次、解消まではむずかしいかもわかりませんが、ともかく最大限の努力を払う、その方向で少なくとも努力をする、こういうことが当面われわれに課せられた任務であろう、かように考えておるわけでございます。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 局長から、この労働者不足に対処して今後どういう育成計画でやっていくかということを答弁を求めたわけでありますけれども、どうせもう答弁をしていただいても満足するようなものがあるはずはないのでありますから、答弁はもうけっこうです。  それで私は大臣に、特にこの席上でお願いしておきたい点は、繰り返して恐縮でございますが、この技能労働者の育成の問題は、これはほんとうに日本の産業、経済全般の一つの中心的な課題であるというひとつ強い認識を持っていただきたいと思う。それと、したがって、これだけの大きな課題にこたえるためには、とうてい一労働省の手では負えないということですね。もちろんその中心的な推進の役割りは果たしてもらわなければなりませんけれども、これはもう全政府的な体制でこの問題と取り組まなくてはならぬと私は考えるのでございます。そういう点で学校教育を一体どういうふうにこの問題と調整をしていくかという大きな問題がございます。しかしこの問題も、これは触れ出しますと、限りなく問題は展開するわけでございますから、本日は、この問題にはこれ以上触れません。  ただ、一つお願いしておきたい点は、これは訓練局長も聞いてもらいたいんだが、文部省でやる学校教育、労働省でやる職業訓練機関による育成、これも大いに拡充していかなければなりませんけれども、これには、大臣、御承知のように限度があるわけです。これは非常に金を食う仕事でございますから、限られた国家予算でそんなに学校とか、あるいは訓練所というものがべらぼうに拡大するということは実際問題として不可能なんです。そこで私は、ここで特に取り上げていただきたい点は、民間の企業による技能者の養成という問題をもっともっと大きく政府が取り上げるべきだと思います。一般の住宅政策も同様なことがいわれると思われるのでございますが、国が財政資金をもって建てる住宅の建設というものは限られておるわけですよ。結局、国民全体の力によって住宅というものを建設していかなくてはならぬ。それと同様なことが、私はこの技能労働者の訓練、育成という問題にもいえるのではないか。一番必要とするものは民間の企業なんでございますから、一番必要とする民間の企業が自分の企業で必要とする技能者を育成し、養成をしていく、これが一番自然なわけでございます。それを一体どう国が助成をし、援助をしていくかというところが、実は行政なり政治の問題だと思うのです。その点の努力がどうも私の見るところでは足らぬ。大企業は、もう御承知のように、いろいろ自分の立場でやっておりますけれども、一番困るのは中小企業です。これはまあ労働力全般の問題で、中小企業はもうほんとうにこれは困り扱いておる。でありますから、あとで時間があれば中小企業に対する労働力の充足という問題は、一体どう取り扱っていくのか、これはひとつお聞きしたい点でございますけれども、特に困るのは技能労働者です。訓練所とかあるいは学校で技能者を育成し育てていく、一人前になって出たときはみんな大企業に行ってしまう。中小企業は幾らほしくても来てくれない、この問題を一体どうするかということですね。私は、だいぶ前から機会ある。ことにこの点を私は強調しておるわけです。でありますから、労働省にも、毎年予算の編成のときに繰り返し繰り返し、私はばかの一つ覚えみたいにこのことを強く言っておるのですが、中小企業が共同でやる技能者養成施設というものに対して、もっともっと国は大幅な援助をしなければいけませんよ。税制の面において、あるいは国庫の補助金の面において思い切ったことを労働省は出すべきだと私は思う。それが、毎年予算要求を見ると、どうもへっぴり腰で、私の目から見ると、とうていその問題の重要性を認識した予算要求だと私には思われぬ。大蔵省が認めるか認めないかは別として、労働省の立場においてはこれだけの助成が必要だ、こういう要請を、その予算要求を出すべきだと私は思う。これは毎年やっているからこれ以上申しませんが、ひとつ和田局長、冗談じゃない、本気になって来年度の予算要求は、大蔵省が認めるとか認めないかは別として、労働省としてはどうしてもこれだけ必要です、こういう予算要求を出してください、これは強く要望しておきたいと思います。この問題も触れると――だいぶ時間がたってきましたので、次にこれまた非常に大きな今後のわが国の雇用問題中最も困難であり、しかも最も中心的な課題の一つでございまする中高年齢層の雇用の促進について質問をいたしたいと思います。  日本の従来の終身雇用というような原則でささえられた閉鎖的な労働市場においては、終身その会社で働くつもりでつとめたところが、途中で会社がぐあいが悪くなってやめざるを得ない、あるいは途中で病気のためにその会社をやめざるを得ない、いろいろな事情によって離職する場合が多いわけであります。ところが一たん中年、あるいは高年になればなおさらでありますが、中年になってその会社をやめてしまうともうなかなか雇ってくれない、これが日本の非常に大きな問題だと思うのです。しかも、先ほど申し上げたように、新規学卒の供給源というものはだんだん減ってくる。そうなりますと、どうしても自然の勢いとして今後日本の産業界というものは中高年齢層と女子の労働力をいかに活用していくかということを真剣に考えなくてはならぬ、もうそういう時代に入ってきているわけです。これについて労働省、真剣にひとつ知恵をしぼってもらいたいと考えるわけでありますが、今回の法律によりまして、この中高年齢者の雇用の促進という問題についても明文をもって大きく前進していくわけでございますから、その点、私はまことにけっこうだと思いますが、雇用率等を定めております第十九条で、事業主に雇用されている労働者のうちに中高年齢者、身体障害者も含めているが、特に私のお聞きしたい点は、中高年齢者が占める割合が一定率以上になるように必要な施策を講ずる、こうなっておりますね。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 これはどうなのですか、雇用率を設定して、その定められた雇用率までは中高年齢者を雇う義務を課するのでございますか、これはどういう構造です。

有馬元治労働事務官(職業安定局長)

○有馬政府委員 中高年の雇用促進のために雇用率設定の制度をこの対策法で設けておるわけでございますが、これは雇用率を設定いたしましても、あくまで努力目標ということで、強制的な義務を課するつもりは現在のところないのでございます。しかも身体障害者の雇用促進法で定められております場合と違いまして、適職について雇用率を設定する、こういうことで、その点も身体障害者の場合と相当違っておるのでございますが、この程度の雇用率制度を設けて中高年の雇用の促進に役立てていきたい、かようなねらいでございます。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 この法律案の第一条の第二項において、職業選択の自由と使用者の雇用管理の自主性を尊重していくのだ、こういうたてまえでございますから、この中高年齢者について雇用率を強制していくということはできないわけであります。努力目標だという説明、これはやむを得ないと思うのでございますが、そこで私はこれが努力目標であればあるほど労働省として今後ぜひひとつやっていただきたいと思う点は、問題はやっぱり民間の受け入れ態勢ですよ。民間が一体この中高年齢者をどういうふうに受け入れていくかということにこの問題の解決がかかっておると思うのです。先ほども申し上げたように、従来の日本の産業界というものは、とにかく若い学校を出たての若年労働力というものにあまりにも依存し過ぎておる。いままではそれで何とかやってこられたからそれでもよかった。ところが、数字の示すところによりますと、そういったようなやり方ではもうやっていけなくなってきているわけですね。これははっきりしている。これはどうしても勢い中高年齢層の労働力というところにずっと比重がかかってこざるを得ない。これははっきりしておるわけですね。でありますから、私は労働省がそういうような事態をひとつ十分に産業界に解明をして、産業界の心がまえ、雇用体制というものを切りかえてもらわなくてはならない。そういう大運動をひとつ労働省が音頭をとって展開すべきだと思うのです。そういう時期に来ておると思うのでございますが、労働大臣の御所見はいかがでございますか。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 中高年齢者の雇用の問題、これはまことにこれまた重大な問題でございまして、今日における、あるいは将来における労働者の年齢構成等から推定いたしましても、先生御指摘のとおり今後は中高年齢者をいかに有効に活用していくかという問題が、婦人の労働力と並んできわめて重要な問題であると思います。したがって、民間におかれましても従来のような考えで若年労働者が足らぬということだけかこっておられても、これは問題の解決にはならぬわけでありますから、政府としてももちろん民間が中高年齢者を受け入れやすいように、各般にわたっての助成措置というものを当然考えなければなりませんが、まずもって民間自体のやはり心がまえ、考え方というものを改めてもらわなければならぬと思います。先生も御承知のとおり、すでに民間団体からなっております中央雇用対策協議会等においてもこの問題を真剣に御討議いただいて、その場でも一応雇用率というようなもののあるいは職種の選定というようなものの必要性は認めておられるように私も承知をいたしておりますので、これらの団体を中心にわが国の雇用情勢というものはかくかくであるという雇用情報等も、これは今後この法案においても、事業主のほうにも、あるいは職を求められる方面にも十分活用してもらう、そうするのだということが明記してあるわけでございますから、これらと相並んで民間の啓蒙とでも申しますか、そういう点にも今後十分力をいたしてまいりたい、かように考える次第でございます。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 ぜひひとつこれは大臣の御発言のような方向で大々的に推進をしていただきたいと思います。  時間がなくなりましたので、もう二つばかり質問をして私の質問を終わりたいと思いますが職業転換給付制度というものが今回の雇用対策法の大きな柱として打ち立てられたわけでございまして、私はこれは大きな前進だと思うのです。先ほど来繰り返して申し上げておるように従来の非近代的な労働市場を今後近代的な労働市場に脱皮させていかなくてはならぬ。それの中心をなすものは言うまでもなく労働力の流動化の問題でありますが、この労働力の流動化を裏づける最も大きな柱がこの職業転換給付制度だと思うのです。そういう意味でこの第五章の職業転換給付金制度の確立というものは、これはきわめて大きな意義を持っておる一大前進だと私は思うのであります。もちろんこの給付金の制度の内容の細部にわたっては、これはようやくこれから発足するわけでございますから、まだまだ不十分な点の多いことも十分承知しております。しかしとにかくここまで総合的に一本にまとめて職業転換給付金制度というものができ上がって、労働力流動化の大きな支柱がここにでき上がるということは、これは一大前進でございますから、ひとつ今後毎年時間をかけてこの給付制度がますます充実をし、育っていくように努力をしていただきたい。希望を申し上げておきたいと思います。  最後に、私はこの離農の問題、出かせぎの問題についてひとつ御質問をいたしたいと思います。  御承知のように、現在日本の農業というものは大きな革命的な転換期に入っていることは大臣御承知のとおり、したがって農業の就業状態というものもこれはほんとうに激変しつつあるわけです。そういったような激変しつつある革命的な転換期に入っておる日本の農業の就業問題、離農問題について、私どもは政府は従来どうも思い切った対策を講じておらない。これは私は政府は怠慢だと思っております。でありますから、これはひとつ農林省と労働省が緊密に連絡をとられて、どうしてもこれは産業経済の発展に応じて日本の農業就業省というものは減っていくことは、これは自然の方向でございますから、これをとめるわけにはまいりません。そういった方向で農業の近代化というものが逐次実現されていくわけでありますから、ただこれは自然の方向だから農業就業者が減っていくのはあたりまえなんだ、だから国は手をこまねいて見ていればいいのだということには私はならぬと思うのであります。自然の方向はそうでございますから、それから農業から離れていく離農者に対して、やはり政府はあたたかい対策の手を伸べなくてはならぬ。その点、私は従来の政府の対策は不十分だと考えております。たとえば炭鉱がああいう状態になって炭鉱から大量の離職者が出てこざるを得ない。それに対して国は御承知のように特別の措置法をつくって非常に手厚い離職者対策をやってきておるというのは御承知のとおりであります。そういった一方において炭鉱離職者についてそれだけの手厚い措置をやっておられる政府が、革命的な大転換期に入って苦しみ悩んでおる農業から離れていく人々に対して、ほとんどどうも目につくような対策というものを講じておられないことは、私は怠慢だと思います。こまかいことをお伺いする時間がございませんから、私は大臣にひとつ炭鉱離職者に対する政府がやっておられる措置、対策、そういうものとの対比、関連において離農者に対する就業対策というものをひとつ真剣に取り上げてやっていただきたい。そしてひとつ来年度の予算要求の際には農林省と連絡をとられた上で、何とかひとつまとまった対策を私どもの前に展開をしていただきたい。強く御要望を申し上げて私の質問を終わりますが、ただいまの点について大臣の御所見を伺いたいと思います。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 この点も先生御指摘のとおり私も全く同感でございます。従来農業離職者に対する政府の施策というものが、必ずしもこれは十分でなかった、かように私も考えております。農業離職者については大体一般の中高年齢者の離職者対策と、そういうことで扱ってまいったわけでありまして、このような歴史的な転換期に対しましては、もっとこの問題を真剣にまた広範にひとつ取り上げる必要があろうと私も考えるのであります。そこで今後、先ほどお話のございました職業転換給付金等も、各般の施策とにらみ合わせながら今後新たにどういう種類の給付金をつくるかというようなことも今度は政令で設け得る、こういう道も開けるわけでございますから、その点十分ひとつ検討をさせてもらいまして、もちろん農林省とも十分連絡をとりながら、先生の御指摘の方向において今後最大の努力をいたしてまいりたい、かように考える次第であります。

澁谷直藏自由民主党

○澁谷委員 以上をもって終わります。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長代理 午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩     ―――――――――――――    午後一時十六分開議

田中正巳自由民主党

○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 冒頭に委員長にお願いいたしたいと思うのでございますが、きょうは午前中から雇用対策法をめぐりまする審議が展開されましたし、なおまたそれらに関連をして雇用問題について若干の質問をいたすわけでございますが、この質問につきましては、非常に状況が各般にわたっておりますので、それぞれ関係の局長について全員の出席を求めておるわけでございます。そこで、特に所管省でございまする労働省の全局長に出席願っておりますかどうか、御点検を願いたいと思います。

田中正巳自由民主党

○田中委員長 高橋婦人少年局長が出席をいたしておりません。本件に関しましては、委員長は午前中に初めて知ったことでございますが、外国へ所用のため出ているそうでございますが、当委員会委員長にも実はこの旨通告がございませんので、午前中に労働省当局に対し厳重に注意をしておきましたが、はなはだ遺憾に存じております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 御案内のように、政府当局は雇用対策法については、すみやかに議了してほしいという強い要請がございます。ところがこの雇用対策の問題は、それぞれ各局に関連する重大な問題だと思うのです。そこで、実はきょう私も、小野田セメントの問題をめぐりましては有夫女子職員の問題、さらには三十歳以上の女子職員については解雇をするという基準の問題等がございますから、特にこの女子労働者の問題については当委員会においても力点を注いで御質問を申し上げたい、こういう念願でおったわけでございます。しかも局長は広い意味での国会の承認人事でございます。一人とは申し上げません。そういう政府委員たる局長が、国会審議を放棄して海外に出てまいるということは、政府が口には雇用対策法の重要性を強調しながら、実質的にはそれらの問題について熱意を持っておられるかどうか、私は非常に疑わしい、こういうように感ずるわけでございます。これについては委員長からも御注意がございましたけれども、もちろんこれは委員会の問題でございますと同時に政府の問題でございます。そこで、このような国会審議、しかも大詰めのきわめて重要な段階において、政府委員が国会を無視して海外に出ていくということが妥当な行動であるのかどうか。この点はひとつ大臣から率直な意見を聞かしていただきたい。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 婦人少年局長を欧州で開かれております婦人労働問題に関する会議に派遣したわけでございますが、これは先方から招待をちょうだいいたしましたので、私もせっかくの機会でもございますから出席するようにということでこれを認めたわけでございます。その間、委員会のほうにも御了解を得べきであったわけでございますが、その点、手抜かりがございまして、はなはだ申しわけないと存じております。今後、十分注意をいたしたいと思います。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 この十三日に帰ってくる予定に相なっておりますので、どうぞひとつ今回のことはお許しをいただきたいと存じます。これは決して雇用対策法に対する熱意が不十分である、その証左だというわけではないと思いまして、私どもとしては、雇用対策法はぜひ審議をお進めいただきたい、かように存じておるわけでございまして、これについては、私どもの手抜かりが結果的には、先生御指摘のようなふうにも解釈されるかもしれませんが、決してそういう関係ではないのでありまして、この点をあわせて御了承願いたいと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 自民党から、実は、きょうから雇用対策法の審議に入ってもらいたいと非常に強い要請があったわけでございます。私は、一方においてはそういう強い要請をしながら、一方においては関係の重要な地位にある人が海外へ旅行中である、こういうことは道義的に許されぬと思うのです。しかもいま大臣から招待を受けておるからという話がございましたけれども、国会議員の中にも、たくさん招待を受けておるけれども、国会審議ということで旅行をはばかっておる向きも非常に多いわけです。わが党においても、毎年海外旅行の希望があっても、その重要性等十分勘案しながら許可をしておる。ところがこの政府委員のほうは、審議の中ではなくてはならぬ人なのです。これは議員とはおのずから趣が違うと思うのです。そういう意味で、私はいまの政府の態度についてはまことに遺憾でございますけれども、了承するわけにまいりません。私はそういう事実を知っておるなら、きょうから雇用対策法の審議に入る必要はなかったと思うのです。その意味で、私はことばは悪いけれども、自民党からペテンにかけられたような気持ちがいたします。これはもう過ぎたことでございますけれども、そういう気持ちを私どもは強く持つものでございます。そういう意味で、私は一方においては重要法案だと称し、国会ですみやかに議了することを要請しながら、一方においては重要な政府の役職員が日本の土地を離れておる、こういうふうな相矛盾した政府の態度については残念でございますけれども了承するわけにまいりません。しかしさればといって、こういう論議を繰り返しておっても始まりませんから、この点は特に委員長代理に強く要請をいたします。自今、こういう事態がないようにということは、これは当然の理でございますけれども、もしそのような事態が起こった場合には、厳重に処置する、こういう方針というものが必要であろう。これは国会審議を尊重していくというたてまえからも当然そのような処置が行なわれることが適切だと考えます。ひとつこの際、委員長代理の明確な御所見を承りたい。

竹内黎一自由民主党

○竹内委員長代理 お答え申し上げますが、河野委員の御指摘の点、私どもまことに同感のことであります。きわめて遺憾な事態と存じますので、当該の局長が旅行から帰りましたら厳重注意あるものと、さように承知いたします。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 午前中、澁谷委員から雇用対策法に対しまする政府の所見なり、また澁谷委員の貴重な見解なりが申し述べられたわけでございますが、雇用対策法なるものにつきましても、各方面でいろいろ意見が出てまいっておりますことは御承知のとおりでございます。私はやはり雇用という問題の条件としては雇用が安定をするということである、あるいはまた職業の安定が行なわれるということであるということが、その目的の主たるべきものでなければならぬと考えておるわけでございます。そういう意味で実はきょうは具体的な問題について若干触れてまいりたいと思います。  すでに御承知のように、今日まで衆議院、参議院両院でも問題の提起が行なわれました例の小野田セメントの指名解雇と申しますか、あるいは不当解雇と申しますか、この問題について若干触れてまいりたいと考えております。この問題は、いま私が指摘いたしましたような雇用対策法の中では雇用の安定あるいは職業の安定ということが主張されておるわけでございますが、そういうような政府の一つの見解を背景として、この小野田セメントのような事態が起こってまいりましたことは私はまことに遺憾な事態である、要するに政府が意欲を持って雇用を安定させよう、あるいはまた職業の安定をはかっていこう、そういうような情勢の中に八百名に及ぶ解雇が行なわれておるということは、私はやはり政府の見解からいたしてまいりましても、これは非常に重大な問題であろうということは何びとも否定することのできない事実であるというふうに考えるわけでございます。  そこで、具体的な問題につきまして逐次お尋ねをいたしますけれども、たまたまきょうは雇用対策法の審議第一日目でもありますところの意義深い日でございますから、そういう意味でそういう政府の見解を背景にして今日の小野田セメントの解雇問題をどういうふうにお考えになりますか、ひとつ率直に御意見をお聞かせいただきたい、かように思います。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 小野田セメントにおいて希望退職を募り、なおかつ予定の人員に達しなかったという関係から一部指名解雇を行なった、こういう事実のありますことは私どもも承知をいたしております。そこでこういった事態を、政府がせっかく雇用の安定ということを目ざして雇用対策法案を提案申し上げている際にどう思うかということでありますが、率直に申しまして雇用の安定ということは、当然事業主のほうでも十分考えなければならない問題でございますから、小野田セメントが今回このような事態になったということにつきましては、一般的に申しますならばこれまた非常に残念なことである、こう申し上げざるを得ないと思うのであります。ただ申し上げるまでもなく、今回の雇用対策法案におきましても、一方におきましては職業選択の自由を原則とし、同時にまた使用者側の労務管理の自主性というものも、これまた重んじていく、こういう原則を貫いていこう、こういうたてまえに相なっておるわけでございまして、解雇といったような労使の間の問題でありますから、具体的にこの解雇が適当であったのかどうか、こういうことについて、私どもがいま善悪と申しますかよしあしを申し上げるわけにはいかぬと思うのでございまして、いずれにいたしましても、たとえこういう事態にいかざるを得なかったにいたしましても、もう使用者としては、言うまでもなくこれを避ける最善の努力をいたすべきは当然のことでありまするし、万やむを得ないという場合においても、労使間で十分納得のいくまで話し合いをして、両者が話し合い、納得づくの上で、こういったことが行なわれることが一番望ましい姿であった、かように存じておるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いま大臣の御見解を承っておりますると、どうもきょうの雇用対策法を提案されました政府の方針としては、いささか取り組み方が弱いのではないかというふうな感じがいたします。  御承知のように、このセメント業界は、かっては三日景気といわれた高度成長経済の花形であったのでございます。しかし、最近、ここ数年来は頭打ちとなりまして、特に小野田セメントの場合は、会社自体の放漫経営、こういう経営のずさんさも手伝って、だんだんと苦境を招いたというふうにも言われてまいっておるのでございます。しかるにこの会社の首脳部というものは、いま申し上げましたような、みずからの放漫経営あるいは経営の無策ぶり、こういった点に反省するどころか、逆にいまも大臣から若干触れられたのでございまするけれども、昨年の二月十四日に人員削減を含む合理化計画を明らかにしたということは、これは御承知のとおりでございます。こういったような、景気のよいときは若年労働力を大量に採用する、そして今度は景気が悪くなってまいりますと、かってに解雇する、首を切る、こういった無計画な雇用管理、私はこういう無計画な雇用管理がこの業界を支配いたしておる現況の中で、はたしてきょう問題になったような雇用対策法の実というものがあげられるのかどうか、私どもはその点に非常に不安を持つわけでございます。  そこで、そういう解雇が適当であったかどうか、なるほど労働者側においては職業選択の自由があるけれども、使用者側のほうには労務管理の自主性があるのだ、そういう意味でこの解雇が適当であったかどうかということは、なかなか言いにくいというようなお説でもあるわけでございますけれども、それらの点について適切な指導を行なうということがなければ、私は何ぼ雇用対策で、大量の首切りをやった、報告を出しなさいと言っても、その実をあげるということは、これはなかなか至難なわざである。やはりきょうの澁谷委員のことばではございませんけれども、この雇用対策というものは画期的な、きわめて進歩的な法案である、こういうふうな自画自賛の御発言もあったようでございますけれども、それを文字どおり受け取るといたしますならば、私はやはりこういう大量解雇というような問題については、もう少し積極的に政府は取り組むべきではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、この点、大臣いかがでございますか、ひとつ率直にお聞かせ願いたいと思います。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 小野田セメントが、いまお話しのとおり、景気のいいときには無謀なほどの人員の増加をして、景気が悪くなったからといってすぐそれを解雇するというような放漫なあるいは無計画な経営をいたしておったといたしますならば、経営者としての心がまえというのははなはだ妥当を欠くものである、かように私も思います。そういう傾向が一般的に申しましても全然ないとは申しかねるのが遺憾ながら私は現状だと思います。しかしまた一面から考えますならば、最近は特に人手不足というような事情もございますので、経営者側もそのような責任をあまり重んじない。特に労働者の地位というものが賃金を中心として生計を維持する、こういう立場なんですから、それを安易に解雇するというような考えのもとに無計画に人員を採用するというようなことは、少なくもいまの時代における経営者の心がまえとしては排除されなければならないところであると、私も先生と全く同じ考えでございます。  そこで、雇用対策法案との関連のお話もございましたが、御承知のとおり、雇用対策法案におきましても、大量の増員あるいは解雇というようなことにつきましては、今後届け出制をいたさせまして、一時に雇用のアンバランスが起きないように当局としても十分注意もし、また努力もいたしていく、こういう規定も今回の法案の中には盛ったわけでございます。のみならず、今後雇用の計画等は、職業紹介の申し出があります際に、これが計画を提出いたさせまして、職業紹介の機関といたしましても、はたしてそれが妥当な求人の計画であるかどうかというようなことも十分今後注意もし、チェックもしていきたい、さように考えておるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 私は、やはり雇用のねらいというものは、再雇用ではなくて雇用の安定になければならぬというふうに考えます。ところが、いま私が御指摘をいたしてまいりましたように、これは小野田セメントもそうでございますけれども、今日の大企業の実態を見てまいりますると、これは自分の都合のよいときは優先的にどんどん採用する。ところが景気が悪くなる、都合が悪くなりますると、かってに解雇をする、首を切る。そうしてそのあとは国の離職対策に依存をする。自分たちはかってのいいときは雇用をし、かっての悪いときは首を切り、あとは国が何とかせよ、こういうふうな風潮というものは現在残念ながら底流としてあると思うのです。今度の小野田の事件というものがそういう一つの現象だったというように私どもは理解をいたします。そこで、この雇用の安定を実践しようといたしましても、いま私が申し上げましたような、都合のいいときは雇用するけれども、景気が悪い、かってが悪くなりますと、今度は首を切る、こういうふうな一つの風潮がある現況の中では、雇用対策法というものがいかにりっぱな明文であっても、これはなかなかその実をあげるということは困難ではなかろうかというふうに私は考えます。やはり現在大企業がとってまいっておりますようなかってしほうだいな労務管理と申しますか、労務政策、こういったものに対して政府が適切な指導をやっていく、あるいは適切な規制をやっていくという心がまえがなければ、私は雇用安定法の実をあげるということは困難だと思う。いま政府が出してまいりました雇用対策法については、今日各方面からいろいろな意見がございます。いろいろな意見がございますが、その底流となるものは、やはりそういう雇用対策法が出てまいっても、いまの大企業が考えておるようなかってほうだいな労務管理――先ほどから何べんも申し上げますように、かってのいいときには採用するけれども、都合が悪くなると首を切る、こういう風潮がある間は、政府が幾ら笛を吹いて鼓を鳴らしましても、その政府の雇用安定法については信用することができない、そういう疑惑感というものが、私はいろいろ反対の理由はあるけれども、それらが一つの大きな反対の理由になっておるというふうに私どもは理解をいたしてまいっております。ですから、やはり雇用政策法の実をあげていくためには、いまのかってほうだいの労務管理なり、かってほうだいの労務政策というものに対して適切な指導を積極的にやっていく、あるいは規制をやっていくということが――それはもちろん先ほど大臣がおっしゃっておるように労務管理の自主性という問題は、それは侵すことはできぬでしょう。できぬでしょうけれども、そういった労務管理の自主性という問題がありますと同時に、この社会においては職業選択の自由があるわけですから、その間の調整というものを適切に行なっていく、そういう一つの背景がなければ、私はやはり政府の雇用対策法について全面的な支持を行なうことはできない、あるいは全面的な信任を行なうことはできないというふうになっていくかと思うのです。ですから、この小野田セメントの例はそういう意味では、せっかくのいい例ですから、ここでひとつ大臣が適切な解決方法を行政指導の中で見出していく、そうすることによって、雇用対策法に対しますいろいろな異論があるわけですから、そういういろいろな問題というものはそこで払拭していく、こういう方針というものが必要ではなかろうか、そういうことを強く感ずるわけでございますので、そういう点についての大臣の御見解を伺ってまいりたい、かように考えます。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 基本的に申しまして、先ほど申しましたとおり、使用者側の企業がかってなと申しますか、景気のいいときあるいは悪いとき、それぞれ無計画に採用したり解雇したり、それによってだけ企業を維持していこうというような安易な考え方というものはどこまでもこれは許されるべきものではない。企業者の社会的な責任というものをもっともっと各人自覚をいたしてもらわなければ困る、かように考えておるわけでございます。言うところの雇用の管理の自主性と申しましても、これは決して企業がかってにやってよろしいという意味ではなかろうと私は思います。当然、企業者に課せられておる社会的責任というものを十分自覚した上での自主的な管理でなければならないのでありまして、それが無計画に、ただそのとき次第で企業にプラスになればいいというだけの、そんな簡単なことだけで少なくとも今日の企業者の社会的責任というものを果たせるものとは私は考えておりません。また先ほど申しましたが、一部にそういった古い考えがまだ現存することも私は否定ができないと思います。であるからこそ、今回の雇用対策法におきましても、さっき申しましたが、そういう無責任な雇用政策をやるような雇用対策、雇用管理ですか、これをやるような企業者に対しましては、これは当然今後行政指導の上においても十分考慮していかなければなりませんし、また一般的にそういう考え方は今日では許されないのだという、いわば啓蒙と申しますかそういうことも今後あらゆる機会をとらえて十分やってまいりたい、私はかように考えておるのであります。ただ、これも先生御承知のとおり、こういった問題に行政府がどの程度関係を持つかということにつきましては、場合によりましてはどうも不当な介入だということにもなりかねませんし、その辺は私どもとしては先ほど来申しますような心組みでもちろん臨みますが、現実の問題に際して直接政府当局がこれにタッチするということにつきましては、あらゆる事情をよく調査した上で、世人も納得する、また法律的にもやはり妥当な一線というものが私はあるだろうと思う。そういう点を見出しながら善処をいたしてまいりたい、かように考えておるわけであります。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いま私は小野田の解雇問題について平面的に申し述べたのでございますけれども、しかし実際には単にかってが悪くなった、景気が悪くなったから首を切ったということにはとどまっておらぬわけですね。それが非常に政治的に行なわれたというところに私は問題があると思うのです。それには労働法上の問題もございます。人権上の問題もございますが、そういうような立体的な条件の中で行なわれたというところに、私は小野田の問題の非常に大きな重要性があると思うのです。  そこで、通産省が御出席でございますから、ここで一言お尋ねをいたしておきたいと思いますが、要はこの企業の運用の中でこれらの問題が起こってまいっておるわけです。ところが、一つの経済の流れとして行なわれる合理化もあろうと思います。また一つには、なるほど合理化であるけれども、先ほど私が御指摘を申し上げましたように、経営陣、会社の首脳陣が放漫経営をやって全く無為無策のために起こってきた会社の状態、そういう状態のために行なわれる企業整理というものもあろうと思います。ところが小野田の場合は、巷間では経営陣の放漫経営、あるいはもちろん三日時代が過ぎて非常な斜陽時代に入ったわけですから、セメント工業自身が非常に苦しい状況にだんだんおちいってきたということは、私は否定するものではございません。ですけれども、そういう一つの流れとして起こってくる場合もございますし、もう一つには、経営陣が無能であり、無策であるということのために、急速に企業整備をしなければならぬ、こういうふうに思うわけでございますが、これは私どもの意見を申し上げておきますが、もし経営陣の無能無策によってやらなければならぬということになりますと、私どもはそれこそかってほうだいの首切りの上にしんにゅうがつくと思うのです。ですからそういう意味で、せっかく通産省に御出席願っておりますから、そういう経営上から見たこの問題に対しまする御所見というものを、ひとつこの際承っておきたいと思います。

吉光久通商産業事務官(化学工業局長)

○吉光政府委員 いまの小野田セメントの経営上の問題でございますが、実はセメントにつきましては、私が申し上げるまでもないことでございますけれども、一番大きなお得意さまは、何と申しましても設備投資であり、あるいは公共投資である、こういう状況に相なっておりまして、先生先ほど三日時代と申されました三十四年から三十八年にかけましては、生産それ自身が需要の伸びに即応いたしておるわけでございますけれども、生産の伸びが年率二二%というふうな非常に大きな伸びを示しておったわけでございます。その大きな伸びを示しておった時代、これがいわゆる三日時代ということに相なろうかと思うわけでございます。その後三十九年の下期から設備投資が沈滞をし始め、同時に公共投資の面でもそれほど大きな刺激というものが出てまいりませんで、セメント全体が操業率が落ちるというふうな状況に相なったわけでございます。小野田セメントの問題につきましては、まさに経営陣それ自身がさらに反省してしかるべきじゃないかというような点も考えられるわけでございますが、今日の苦況の時代に立ち至りました最大の原因と申しますか、これは結局、小野田セメント自身が三十四年から三十六年にかけまして採用し、三十六年から操業に踏み切りました例の改良焼成法でございます。これは設備それ自身を近代化し、合理化するということで、この採用に踏み切ったわけでございますけれども、それに要しましたところの金はほとんど借入金でまかなっておる。この借入金に対する金利負担が非常に大きくなりました。それからそれに対するところの償却自身が相当大きなウエートを占めてまいりました。この新しい改良焼成法そのものがフル活動しないうちに、実は今回の不況に見舞われた、こういう状況であったわけでございます。したがいまして、経営上の損益計算等から見ましても、その時期からだんだんと苦しくなってまいっております。経理上の関係から御説明申し上げますと、三十九年下期に約十四億の損益計算上の赤字になっております。それから四十年の上期で三十四億の赤字でございます。さらに四十年の下期、この三月で締め切りました決算におきましては、同じく三十四億程度の赤字ということになっておりまして、この三月末の累積赤字が約八十三億というふうな非常に大きな額にのぼっております。もちろん三十九年の下期からは無配になっております。三十九年の下期から無配になりましたのは、小野田セメントは無配でございますけれども、その他のセメント会社につきましても――秩父、住友という何と申しますか、特殊の立地条件にある、需要地を至近に控えたそういうセメント工場を除きまして、ほとんどすべて減配ないし無配、セメント会社全体がそういう形の経理状況に相なっております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 赤字が出てまいる場合も、さっきも私御指摘いたしましたが、出るべくして出る赤字もございますね。それから経営上の無為無策によって、放漫経営と申しますか、そういう形によって赤字がだんだん上積みされるという状況もあると思います。要は出るべくして出てきた赤字であった。時と場合によっては赤字が出ることが、住民の福祉のために出る場合もあり得ると思うのです。問題は、その経営のやり方がずさんであり、無策であって出てきた場合の赤字というもの、これが非常に大きな問題であると私どもは思うわけです。  そこで、いまいろいろ局長から赤字の累積した状況の御報告があったわけですけれども、しかしその赤字の一端において、経営の無為無策によって起こってくる赤字があるとするならば、私は、その責めというものは経営陣が背負わなければならぬ責めであって、その責めを労働者にしわ寄せするということは、これは適当な処置ではなかろうと思うのです。ですから、単にそこに出てきた現象だけでものごとを判断できないと思うのです。そういう意味では、若干あなたからも会社の経営陣の、何と申しますか、無為無策とまでおっしゃらなかったけれども、当然責任があるというようなことはおっしゃておるわけですから、私はそれはさもありなんと思うのです。それがなければ、私、今日これだけの社会問題が起こってこなかったと思うのです。出てくるべくして起こってきた赤字でございますならば、何もこれは小野田セメントだけに限ったことではないと思う。そういう場合、いままで自民党政府の施策によって救済されたケースというものは非常に多いわけですから、当然与党の皆さん方もいろいろそういう経営の改善については御努力を願えたと思うのです。この小野田の問題が今日これだけ社会問題化し、政治問題化しているゆえんのものは、いま申したように、なるほど赤字は出てきたけれども、その赤字の責任というものは経営者のほうにある。しかもその責任というものを労働者側に負わして指名解雇をする、こういうことをやるから今日この問題が社会問題化し、政治問題化しておるわけですから、その辺についてはなるほどそういうことだろうというふうに御判断になりますか。この点いかがですか。

吉光久通商産業事務官(化学工業局長)

○吉光政府委員 先ほど労働大臣からもお答えがございましたように、まさに企業の持つ社会的責任というものは非常に重大であろうかと思います。そういう意味では、特に今回の小野田セメントの場合も、他のセメント会社以上に赤字が累積して、しかも最近の大きな赤字累積の原因が、関連会社への出資と申しますか、そういう面からまいってきている面、何と申しますか関連会社の成績不振と申しますか、そういうところからまいってきて親会社自身が受けておる赤字と申しますか、そういうものも多分にあるわけでございます。そういう点から考えました場合に、経営者自身の判断がはたしてどこまでの見通しのもとに行なわれておったかという点につきまして、今日になってみますと、あとを振り返ってみました場合に、そういう反省は当然されておるのじゃないだろうかというふうに考えます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 大臣、いま通産省のその方面における見解が述べられたわけです。そこで、いま局長の発言にもありましたように、なるほど赤字が出てきたけれども、その赤字の原因というものは関連会社に出資をした、そういうしわ寄せ、ないしは会社の経営方針についていろいろ問題があった、これらについては反省しなければならぬ、そういうことになりますと、私はやはり、そういう責任を一方的に労働者側にしわ寄せをする、そのために起こってくる大量解雇ということが適切なる問題であるのかどうかということについては、これはもうおのずから明らかだと思うのです。こういう経営上の背景をながめながら、今度の小野田の解雇という問題が適当な処置であると、まさか良識ある大臣でございますからそのようなことはおっしゃらぬと思うけれども、この問題はいま非常に深刻な事態に立ち至っておりますので、この問題の早期解決をはかっていくためにも、労働問題の最高責任者でございます大臣の口から、この問題に対する処理のしかたがどういうことであるのかという点についての御見解を聞かしていただきたい。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 小野田セメントの経営内容について、ただいま通産省当局から説明があったわけでございまして、子会社等を相当設立して、そういうことに関する見通しが必ずしも妥当でなかったように思われるという趣旨の答弁だったかと思いますが、そういう点で、経営者の経営上の方針が必ずしも妥当ではなかったのであろうという感じは抱くのでございます。しかし、そうかと申して、基本的に経済界の変動ということのあったことも、これも全然無視するわけにはもちろんいかぬと思います。いろいろそういうことを一般的にと申しますか、この小野田の場合でも考えられるのでございますが、一体こういった解雇までせぬで、ほかにどうしても策がなかったのかどうかというような点は、よほど詳細に実情を承知いたしませんと、ここで私の口から、今回の解雇が適当であったとか、不適当であったとか軽々しく申し上げるのはいかがか、率直に私はそういう感じをいま抱いておるわけでございます。いずれにしても、一般的に申せば先ほど来申しますとおりの考えを私は持っていますが、具体的にこの場合にどうだ、こう言われた場合に、私もそれほど詳しく事情を遺憾ながら存じませんから、そこで具体的にこの問題が適当やむを得なかったのか、あるいはそうでなく、もう少しほかに方法があったので、どうも適当とは言いかねる、あるいは不適当だ、こうまで私が断言することは、ひとつこの際控えさせていただきたい、私はそう思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 私は、いまのような大臣の答弁では、何のために雇用対策法をお出しになったか、その意義が喪失すると思うのです。なぜなら、いままでの企業の実態を見てまいりますと、都合のいいときには雇用するけれども、都合が悪くなると解雇する。そうしてあとは国の離職対策に依存する。こういう風潮は強く流れておるわけですね。ですから、やはり雇用対策が実をあげていくというためには、一つには、当然出てくる離職者もおります。   〔竹内委員長代理退席、藏内委員長代理着席〕 ですけれども、一方においては、いまのように経営上の放漫性あるいは経営の無為無策によって、出てこぬでもよろしい失業者が出てくるという場合もある。ですから、出てきた失業者は何が何でも労働省が離職対策の中で吸収するという考え方では、雇用対策の実は完全にあげることはできぬと思うのです。やはり出てきた離職者に対しても、政府があたたかい処置をされることは望ましいけれども、同時に出てくるほうの雇用面についても、労働省が適切な行政指導をなさらなければならぬという一つの責任はあると私は思うのです。このできるだけ失業者を出さぬという行政指導、やむを得ず出てきた者については、国があたたかい処置を行なう、この両面が一体となって初めて国の雇用対策というものが全うされる、これが私は常識だと思うのです。そういう意味で、今度の小野田セメントの場合にも、その出てくる離職対策は別として、出てくべくして出てくる失業者であるのか、こういう意味で私は問題があると言うのです。そういうことを指摘しておるのです。そういう意味では通産省のほうからも、――これはいま大臣が御指摘になったように、企業の中で一つの経済の流れとして出てくる赤字もございます。しかしながら、関連会社に対して出資をした、焦げついた、うまくいかぬ、そういう赤字を親会社である小野田セメントがかぶっておるということですね。あるいは合理化をやったけれども合理化がその実をあげる前に会社の経営そのものが不振におちいってしもうた。こういう一つの経営上の見通しの甘さというものがあったと思う。そういう一切の責任を労働者がなぜ背負わなければならぬのか。平面的に申し上げておりますけれども、もちろんそれについては不当労働行為とかあるいは政治的に首切りをやるというような背景もございます。それらはさておくにいたしましても、平面的に見てもいまのような措置が行なわれておるわけですから、そういうような解雇というものが適切な処置であろうというふうには私はよもや大臣はお考えになっておらぬと思うけれども、しかし私どもはこういう事態が長く続くことは必ずしも好ましいことではございませんから、やはり早期に解決しなければならぬ、そういうふうな意味で大臣の率直な御意見を承っておるわけでございますから、御所見がございますならば率直にお聞かせをいただきたい、かように考えるわけです。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 特に労働省の立場から申しますならば、先生も御指摘のとおり職業の安定、就業の安定ということは最も尊重しなければならぬし、また最も希望するところでございますから、大体整理などということが行なわれないように企業が運営されることが一番望ましいわけであります。そこでこの小野田セメントの場合においても、こういう事態に立ち至るまでの間において解雇までもしなくても済むような経営自体の努力、またむしろこれは産業政策、通産省の所管でございますが、そういう面で何とか策はなかったものであろうか、率直に申して私もこういう感じを持ちます。持ちますが、先ほど申しますとおり、解雇という手段に出る以外にはたして方法がなかったのかどうかという点は、私もこれは不勉強とおしかりを受けるかもしれませんけれども、そこまでの勉強はできておりませんので、こういった結果になりましたことについて、これはどうもやむを得なかったのだ、あるいはこういうことをするのははなはだけしからぬことで、ほかにこういう方法があったはずだとか、そこまで私がいまここで申し上げるだけの確信が実はありませんので、私は先ほど来申しておるような一般的のことを申し上げておるわけでございまして、しかしあくまでも先生のおっしゃるとおり、われわれとしては、もう人員整理などということは最後の最後の手段であって、企業者として軽々しくこういうことに踏み切るべきではない、こういう考えは私は十分堅持していきたい、当然ながらさように考えておるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 実はこの問題の提起は私が最初ではないのです。参議院でも予算の分科会その他でそれぞれ論議がされておりますし、それから衆議院におきましても、法務委員会等において論議をされてまいりました経緯があるわけです。そこで私はきょう重ねて取り上げてまいっておるわけですけれども、その間たびたび論議された経緯があるわけですから、できれば大臣にもっと勉強していただいて、そうしてこの問題の解決のための示唆なり糸口をつくっていただくことを私どもは期待しておったわけです。しかし不勉強と言われればもう返すことばもないわけですけれども、私どもはあらためて提起をしておるわけですから、ひとつこの際新たな気持ちでこの問題に取り組んでもらうように、この点は特に要望いたしておきます。この首切りという問題は、大臣が今度内閣改造で留任されるかどうか知りませんけれども、大臣をおやめになってもやはり代議士なんですね。ところが小野田セメントを首切られた者はもう職員じゃないわけです。だから佐藤総理じゃないけれども、サルは木から落ちてもサルだけれども、代議士は落選するともう代議士じゃないと同じことのように、労働者は首を切られますともう労働者じゃないわけです。失業者です。しかもその間においてはいろいろな政治的な圧力なりあるいはまた労働法をゆがめるような方法によってやられてまいる首切りでございますから、そういう意味でこの問題は私どもはきわめて重大な問題だというふうに関心を持ってまいっておるわけです。そういう意味で、もう過去はいたし方ございませんけれども、ひとつきょうを契機としてこの問題については十二分に取り組んでもらうように要望いたしておきます。  そこで、いま申し上げますように一般論につきましてはなかなか黒白が出てまいりませんから、私は具体的な問題についてお伺い申し上げてこの全貌を明らかにいたしてまいりたい、かように考えます。まず第一にお尋ねを申し上げたいと思いまする点は、今度小野田セメントの問題の中で起こってまいりました懲戒解雇の問題について御指摘を申し上げて、御見解をお伺いしてまいりたい、かように考えます。  御案内のように小野田セメント企業内の津久見において三役、特別執行委員二名、計五名が昨年の八月十六日懲戒解雇になったわけでございます。しかもその懲戒解雇の理由を見てまいりますと、大体二つの点に要約することができます。その一つは、昨年の参議院選挙で文書違反を起こした。その中には、文書違反を起こしたということでございますけれども、容疑が不十分のために不起訴になったものも含んでおります。そういうような全く理由にもならぬような理由をつけて懲戒解雇を行なっておる事実がございます。それからいま一つは、ストライキを行なったわけでございますけれども、その際に出荷阻止闘争を行なったわけでございます。ところがその出荷阻止闘争というものが行き過ぎだというふうな理由をあげて懲戒解雇を行なっておるわけでございます。御承知のように最初の文書違反の問題にいたしましても、これは理由としては全く非常識の範囲でございますし、それからまた出荷阻止闘争を行なったということが行き過ぎだというのでございますけれども、これは明らかに民間産業でございますから、労働法の中に認められた行為でございますることは御承知のとおりでございます。こういうことで懲戒解雇を行なわれるということでございますならば、もう何をか言わんや、労働法というものは労働者の権利を守るための法律でございますけれども、そういう労働法が何のためにあるかわからない、労働法の存在意義が全くなくなるということにも通じてくると思います。こういう二つの理由で懲戒解雇を行なっておるわけでありますけれども、こういう懲戒解雇というものがはたして適切な処置であるとお考えになりますのかどうか、それらの点についてひとつお答えを願いたい。

三治重信労働事務官(労政局長)

○三治政府委員 いまお尋ねのいわゆる選挙違反の問題あるいは出荷阻止闘争ということを理由にして懲戒解雇が行なわれたということにつきましては先生御指摘のとおりでございます。これにつきましては昨年の九月十三日に大分地裁に対しまして組合側のほうで地位保全等の仮処分が申請されておりまして、目下これが裁判所において審理中でございますので、ここで労働省がいま直ちにこの懲戒解雇が当不当というふうに見解を述べるのは、従来の慣例からいっても差し控えたいと思うのであります。ただこういう懲戒解雇、ことに組合幹部に対する解雇というものについては、やるほうも慎重でなければならぬし、また組合幹部としても、こういう問題の起きる前に、やはり会社側当局ともよく意思の疎通が常々はかられておることが必要で、そういうことがなかったのではないかというふうにも考えられます。いずれにいたしましても、こういう問題が起きるということは残念なことでございますが、目下これが裁判所に地位保全の仮処分の申請ということで審理中でございますので、その当不当につきましては意見を差し控えさしていただきたいと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 労働省はいつも、裁判中の場合は裁判中である、地労委に提訴中のものは地労委に提訴中であるので見解を差し控えたいということで、こういう案件について労働省の見解を承ったことはほとんどないわけであります。私はやはり労働法の適用が適切に行なわれておるかどうかということについて、当然労働省として見解を述べられる責任があると思うのです。労働省としては、労働法というものが適切に運用されるかされぬかということについて監督する義務があるわけですから、そういう意味で、この法律が適切に運用されているかどうかについての御見解を述べられる余地があると思うのです。ですけれども、どうせお答えにならぬでしょうから、私もあえて申し上げません。  そこで、こういう極端なケースが他にもあるのかどうか、その点についてひとつ御見解を承りたい。

三治重信労働事務官(労政局長)

○三治政府委員 こういうケースとどんぴしゃり合う過去の事例があったかどうかということについて、いまちょっと思い出せませんが、最近私たちが見ているところだと、組合役員の解雇あるいは懲戒解雇という事例が、どうも最近の傾向として多くなってきているのじゃないかというふうに感じております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 その多くなったという現象について、労働省はどういうふうな御見解を持っておられるか。

三治重信労働事務官(労政局長)

○三治政府委員 いわゆる組合幹部に対する責任追及ということで、会社側、経営者側がこういう懲戒解雇あるいは減給、停職というふうな処分をしていくわけですが、こういうことについて処分でもって解雇をするということでは必ずしも労使関係がうまくいく道ではない。もちろんこれは公務員とか、法律上きちんと身分の問題として制限されているような場合には別だと思いますけれども、こういう問題は解雇とかそういう組合幹部の責任追及が、そういう個人の追及ということで行なわれることは必ずしも適切ではないのではないか。これがこういう形で行なわれて、しかもそれが非常に労使の争いになるというのは、一面、日本の組合の組織形態が企業別組合、いわゆる企業内組合であるために、その会社の雇用関係と結びつくためにこういう問題が出てくる。これは日本の非常に特殊な事例、諸外国においては現場の第一線のいわゆるショップスチュアードというような方は、結局現場で働く雇用人であって組合の幹部という問題はございますけれども、ほかのところでは大体組合の幹部というのは企業を離れた組織になっているというところで、こういう問題が経営者との関係で起きることは私もあまり聞いておらないわけです。そういう意味において、こういう問題は日本的に非常に特殊なケースというふうに思っております。それでこういう問題について、われわれのほうとしては、それじゃ労働省はどうするつもりかということになりますと、結局一般的な労働教育という形で、労使関係のいわゆる相互信頼のための具体的な考え方、対処のしかたというものをやる。労使関係の安定というための教育をやる。これは御承知のように、現在主として中央においては労働協会、地方においては労働部局が使用者に対する講習会、労働組合の幹部に対する講習会という形で一般的に処理している。それで具体的な事件になりますと、まず一般的には労働委員会へ申請されるものが多いわけであります。いま申しましたように、裁判所に対しても直接できる。こういう形で、具体的な事件の問題につきましては、やはり労働委員会なり裁判所で処理される、こういうかっこうになりますので、実際には処理されることになるとやはりそこでの解決を待つ以外に従来の慣例からいけばいたし方ないのではないか、こういうふうに考えております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 諸外国の例をあげての御説明でございますけれども、しかし日本には、特殊事情であろうとも、そういう特殊事情に基づく法律があるわけですから、労働者の権益を守るための法律があるわけですから、したがって政府としては、労働法なり労働関係法というものが適切に運用されておるかどうか、こういう点について重大な関心を持つ義務というものがあると思うんです。それを、諸外国はそうであるけれども日本は特殊事情であるのではなかなかむずかしいということでは、私は、三治さん、答弁になっておらぬと思う。三治さんが経営者に遠慮されておっしゃっておるのかどうかわからぬけれども、それは三治さんの答弁としては非常にお粗末だと思うんです。やはり三治さんは三治さんだけの適切な答弁というものを私どもは期待をいたします。  そこで、私どもが特に御指摘を申し上げたいと思います点は、労働法や労働関係法というものは労働者の権益を守る法律ですから、そういう権益を守る法律というものが適切に運営されておるかどうか、この点が非常に問題だと思うんです。そういう意味では、たとえば出荷阻止闘争をやった、行き過ぎだ、そうすると労働者の争議に対する権益というものが抹殺されるわけですから、これは当然労働者の権益というものが守られるということにはなってまいらぬと思うんです。要はそういう法律を適正に守らせるという努力が行なわなければならぬ。その際あなたはけんか両成敗の形で使用者側に対しても教育する、労働者側に対しても教育するというようなことをおっしゃっているけれども、それは経営者が労働関係法を無視するような運営をやっておるわけですから、当然経営者に対して忠告するなり勧告するなりあるいはまた適切な指導をするなりということが行なわれなければならぬと思う。それがないと、なるほど裁判で争う方法もございます。あるいは地労委に提訴する方法もございますけれども、これはいままでのケースを見ましても、なかなか結論が出てこぬ。ですから、実質的には身分の保全というものは行なわれない。これが今日までの経緯なんです。ですから私は、そういう裁判に提訴するとかあるいは地労委に提訴するというその以前に解決するということが最も適切な解決方法だと思います。そういうことになりますと、地労委なり裁判所に、法が適正に行なわれたかどうかということを判断させるのではなくて、むしろ経営者がこの法律を適正に運用しておるかどうかという反省を求める必要があると思う。それに対する指導の責任というものはやはり労働省にあると思う。そういう意味で、いま三治さんがおっしゃったようなけんか両成敗の形での答弁では、まことに残念でございますけれども、われわれは納得するわけにはまいりません。結論的に申しますと、やはりその法律を犯したか犯さぬかという問題でありますから、そうすれば、その法律を誤った運用をする経営者に対する行政指導というものがもっと積極的に行なわれるべきであるというふうに私は考えるわけでございますが、その点はひとつ大臣から御見解をお聞かせいただきたい。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 先生のお話承っておりまして、私も大体納得がいくのであります。ただ、先ほどもちょっと申しましたが、具体的にそこに、しからばどういう形で、どの程度の労働省が関係を持つかとなると、私はいろいろ法制的にも微妙な一線があるのではないかと思います。そういう点で実際問題としてなかなかむずかしいのだと思いますが、いずれにしても、先ほど局長が申しますように、こういった事態が起きないようにあらかじめ――これはまた一般論ということで、あるいは御不満かもしれませんが、労使双方に対して、こういった事態が起きないように、日ごろにおいてもっと労働省も努力をしなければならないし、関係の方面に対しても、特に労働法の問題なども理解してもらう、こういうことにそう一そう努力する責任は確かに役所にある、かように私は考えております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 どうも三治さんも大臣もそうですけれども、けんか両成敗の形で、それが中道であるかどうか知らぬけれども、必ず、お答えのときには労使とおっしゃる。ところが、労働関係法というのは労働者を保護するための法律ですから、それを破るのは経営者以外にないわけです。ですから私は、そういう労働関係法を適切に運用するかどうかということについては、労使ということじゃなくて、むしろ使用者側、経営者側について特に教育される責務があるのではなかろうかということを取り上げたわけです。そうすると、すぐ労使とおっしゃって、どっちというふうな印象を与えるので、どうも私どもと歯車がかまぬ。私どもは経営者側が労組法の運用を誤っておるという取り上げ方をしておるわけです。ですから、その際さらに労働のほうもとおっしゃると、これはいつまでたっても歯車がかみません。そこで、やはりこれらの問題については、労働省としては、経営者がもっと労組法を適正に運用していく、そういう方向でひとつ御指導を願いたい、こういうことでございます。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 実は私も、小野田セメントの場合に、解雇の理由でございますが、選挙違反、それも文書配布であるということ、これは私は決して選挙違反を軽んずるわけじゃございませんが、一体文書配布というものはどういう状況のもとに、どんなふうに行なわれたのだろか。ただ単に文書配布だけで解雇した、こう聞けば、私は率直に申しますが、これだけで解雇の理由になるのだろうかと、実は私は、先ほども事務当局にほんとうにそういう質問をしてみた。しかし、だんだん考えれば、一体どういう条件のもとに、どうやり方で文書配布を実際やったのか……。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 大臣、考えるからいけないのです。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 考えるからといっても、それは私はあると思う。たとえば、作業時間中に全然作業をほうって、かりに文書配布に熱中していたとか、そういうことであるならば、何か就業規則違反にでもなって、これは解雇の理由にもあるいはなったかもわからぬ。そういう事態が、ただこのおもてに出ているだけでは、実際私どもはよくわからないのです。選挙違反が理由になった、こう言うのでしょう。だから、実際解雇しなければならぬほどのことであったのかどうか。   〔藏内委員長代理退席、委員長着席〕 あるいは出荷阻止の違法、こう言っていますが、ストライキの手段として出荷阻止をやること自体は、私は違法じゃないのだろうと思うのです。しかし、また、出荷阻止も一体どういう方法でやったのか、そこらのところは実は私はよくわからないのです。だから、そういう点で、現に行なわれた方法なり、具体的にもう少しよく承知をしないと、一方的に、使用者側だけがけしからぬ、労組法を無視したようなことをやったということになるのか、そこらのところがわかりませんから、私、先ほど来申しているようなことを言っているのでありまして、現にこの問題は裁判にもかかっているのですから、そういったあらゆる事情を、裁判所は、言うまでもなく、詳細に取り調べた上で、公正な判断を出されることでございましょう。ただ、われわれとしては、いずれにしても、こういった問題を起こさぬように、あらかじめもっと、労働省の第一の責任は教育というか、指導というか、そういうことがますもって第一の責任であろうと、私は先ほど来そう申しておるわけであります。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 そこで、要は、私どもがお尋ねを申し上げますゆえんのものは、はたしてストライキの中で行なわれた出荷阻止闘争というものが、労組法の範疇を越えておるのかどうかというその問題であろうと思うのです。私どもは越えておらぬというし、大臣は、越えておるか越えておらぬか、なかなかその辺の事情がよくわからぬということで、御見解を差し控えられたことと思うのです。そこで、私がお尋ねするのは、そういう労組法が守られるか守られぬかということは、労働省としては当然関心を持っていただかなければならぬ問題でございますから、そこで、この点については、さらに十分調査をして、そうして御見解をお聞かせいただきたい、こういうふうに思うわけです。ここで私が何ぼ重ねてお尋ねをいたしましても、大臣としては、その答えというものは、その範囲を出ぬだろうと思います。そこで、さらに十分調査をするということにお願いをしたいと思いますが、その点いかがでございますか。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 十分調査をしてみたいと思います。

田中正巳自由民主党

○田中委員長 本会議散会まで休憩いたします。    午後二時三十四分休憩     ―――――――――――――    午後三時四十四分開議

田中正巳自由民主党

○田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。河野正君。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 先刻来小野田セメントの解雇問題について若干触れてまいったのでございますけれども、それと関連をしてなお若干の質疑を行ないたいと思うわけでございます。  それは、この不当な首切りを行ないましたのが昨年の八月十六日であります。ところが、それと相呼応するかのごとく八月二十日には課長あるいは係長といった職制を使って第二組合の結成を行なったという、こういう事実があるわけでございます。そこで、このような事実を背景として考えてまいります場合に、私どもはやはり先ほども申し上げました不当処分と第二組合の結成には一連の関連があるのではないかという感じを持つのでございます。そういうことになりますと、これは明らかに不当労働行為でありますことは私どもがあえて申し上げる必要はなかろうと思います。不当解雇と職制を使った第二組合との関連があるかないかということではございますけれども、先ほどから申し上げてまいりました事実を背景といたしますならば、その間に何らかの関連があるのではないか、こういう感じを持つのは自然の成り行きではないか、私はこういうことを考えます。そこで、このような事実をお聞きになってどういうふうにお考えになりますか。また、こういった問題はきょうあらためて提起をしたわけではないわけでございますので、したがって、現地の基準監督署等を通じて御調査になっておる向きもあろうかと思います。御調査願っておりますならばその間の事情等もあわせて御報告を願いたい、かように思います。

三治重信労働事務官(労政局長)

○三治政府委員 第二組合は八月二十日にできておる事実は承知しております。それからいま一番問題になっております津久見工場の第二組合につきましては、現在約五百五十名の第二組合ができておるというふうに調査ではなっておるわけであります。ただこれが、第二組合をつくったのが職制の圧迫でできたのか、あるいは本来のそういうような組合の内部的な分裂傾向があったのかどうかという問題についてまで、この問題を私のほうではこまかく調査しておりません。私は、今回の小野田セメントの問題につきましてはおもに解雇問題につきまして調査をしておりまして、この第二組合の成立過程のことにつきましての詳しい調査は、まだ実際われわれのほうはそれほど詳しく調査をしませんで、現在のところいま私が申し上げた以上のことはちょっと手元に資料の持ち合わせがございません。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 労働基準関係につきましては、解雇等の経過については現地からの連絡によって承知いたしております。ただ、問題が仮処分事件として裁判所に事案が係属しあるいは労働委員会に提訴するといったような状態でございますので、その分については格別の報告を受けておりませんが、別に一月二十八日、有害ガスによる中毒問題が発生いたしまして、そういった関係については詳細な報告を受けておるというような状況でございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 この小野田の問題は、私がきょう初めて提起する問題じゃないわけなんです。これはすでに参議院の予算委員会の論議の中でもいろいろ言われてまいっておりますし、それから衆議院の法務委員会の中でも論議をされてまいっておる経緯があるわけであります。そこでいろいろ指摘をいたしますと、調査をしておらない。大体、調査するお気持ちがあるのかないのか。やはりこの問題がこれほど政治問題化し、社会問題化されておるわけでありますから、この事件に対する判断は別としても、その他の事情というものをもう少し詳しく突っ込んで御調査になる必要があるのではないか。われわればかりハッスルしちゃって、あなたのほうは全然取り合わぬということなら、私は何をか言わんやです。そういうことなら逆に今度は雇用対策法なんか私らハッスルしませんよ。この重大な国会の大詰めの段階で局長が外遊するくらいですから、そういうふうな労働省の態度でございますならば、私どもは法案審議についても協力するわけにはまいりません。ですから、事の善悪は別として、これだけ国会でたびたび提起された問題でございますから、それに対する判断は別としても、一応労働省としてもこの間の経緯については克明に調査される必要があると私は思うのです。あなたのほうがおやりにならないならおやりにならないでけっこうです。要は、これだけ国会で問題になった問題でございますから、あなた方がこの問題について取り組んで、そしてこれらの問題に対処するお心がまえがあるのかないのか、この点については、一言大臣の御見解をお聞かせいただきたい。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 この問題の経緯等についてさらに調査をいたしますということは、先ほどお約束いたしたとおりでございますから、引き続きできるだけ詳細に調査をいたしたいと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 最終的な判断は別としても、やはりこれだけ国会でしばしば問題になっておるわけでありますから、それに対する取り組みというものはやはり労働省でおやりになる必要があると思うのです。これはおやりにならなければおやりにならないでけっこうです。そのかわり私どももそれらに対する態度はまた別にきめます。いま大臣から調査をしてという御見解でございますから、ひとつ前向きに建設的に御調査をお願い申し上げておきたいと考えます。  そこで、今度小野田で行なわれました指名解雇、これには一つの基準が示されて、そして社会的常識を逸脱するきびしい解雇基準が定められたわけでございます。そこで一月二日号のサンデー毎日もこのきびしい指名解雇の条件というものをセンセーショナルに取り上げておることは御承知のとおりだと思うのであります。いろいろその基準についてはこのサンデー毎日にも報道されておりますから一々申し上げません。たとえて申し上げますると、定年の近い者はやめてもらう、あるいはまた過去三カ年に二日以上の無断欠勤がある者はやめてもらう、こういう非常にきびしいものでございます。このサンデー毎日の記事を拝見いたしましても、労働省のある幹部が「人を雇うこと、雇われることは当事者の自由で、役人がいい悪いを決めるのは問題なので、ぼくの名前を出されては困るが、こんなひとをくったことでクビを切られてはたまらないね。「定年に近い男子」というのは五十三才からか五十才からか。「あんたは五十二才で1に該当するから」とだけで納得できるだろうか。また「有夫の女子、三十才以上の女子」というだけで解雇の対象になる点など婦人がきいたらおこるだろうな。年齢は自然にふえるし、結婚もする。何でいかんのでしょうか。出欠勤の問題も、ふだんから労務管理がきびしかったのに、こういうことがあったのなら、そういう人は管理者から何回も指摘されているから解雇の対象になっても納得する。しかし、平素だまっていて、こんど過去をあばくようなことでは納得しない。それはおこりますよ。」こういうふうに今度の小野田の首切りの基準については、名前を出してもらっては困るけれどもということで労働省の幹部の方、どなたか知りませんけれども、おそらくその辺にすわっておられる方だと思いますけれども、そういうことをおっしゃっておられるわけでございます。  そこで、これは公式の見解でございませんから、私どもやはり公式の見解として、こういうきびしい指名解雇の条件というものが、この労使慣行の中で適切なものということができるかどうか。また一説には、こういう基準でやられたのではひっかからぬ者はいないよというふうなことも言われておるのでございます。私はそういった気違いざたの弾圧攻勢、八百名の解雇問題あるいはまた七十一名の指名解雇の問題、こういう点について労働省がどういうふうな御見解をお持ちであるか、この点は見解のいかんを問わず、こういう労使慣行については、やはり労働省としては適切な御指導をなさる立場にあるわけですから、私はそういう点についての見解をお述べになることが必要であろうというふうに考えますので、この際率直な御意見を承っておきたい、かように考えるのでございます。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 ただいまの週刊誌のことは私ども全然存じておりませんけれども、小野田セメントの指名解雇の基準として十二の事項があげられておるようであります。私ども労働基準法その他労働法規に違反するものについては、これを是正せしめるという責任と権限を持っておりますが、法律に触れないものにつきまして、いわば是非の論評を加えるということは必ずしも適当ではありませんので、公の場においては私ども見解を差し控えさせていただいておるわけであります。ただこういった解雇の基準につきましても、労働協約の中において定められる場合、それから平常的な状態において解雇基準として就業規則等で定められる場合、それから一種の異常事態に対処してこういった臨時の処置がとられる場合、いろいろ内容があろうと思います。それぞれの場合に応じまして解雇基準というものが考えられるだろうと思うのであります。したがいまして、大量人員整理といういわば異常な事態に対処しての解雇基準でありますので、この解雇基準そのものも一号から十二号まで全体として判断すべきものであろうかと思います。したがいまして個々の事項を抜き出しまして、これが行き過ぎであるとかないとかいう見方が、いわば一つの見解を述べるにしても、必ずしも当を得ないという場合があろうかと思うわけであります。いずれにしましても、十二も基準があるわけでありますから、選択の幅の非常に多い基準でもありますし、一がいに是非を論ずるということは必ずしも当を得ませんので、私はこれ以上のお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 お尋ねをするとことごとく答えを留保されるというような傾向が非常に強いわけです。しかし、一号から十二号までの解雇基準について総じて判断することはむずかしいかもわかりません。しかし一つ一つ見た場合に、たとえば三カ年間に二日の無断欠勤をした場合は首だ。あるいはまた結婚すれば首になる。それが協約の中でうたってある場合は別でしょう。小野田の場合、それがないわけですね。そこに問題があると思う。協約にうたってあるなら、それは結婚したら首になるということを承知して入っておるわけですから、その場合と、協約の中になくて突如として過去をあばくようにやられることとでは、法律的に相当相違があると私は思う。そういう意味でこの問題を取り上げているわけです。だから、三カ年間に二日無断欠勤したらだめですよという協約なり就業規則があるなら別ですよ。そういうことは一切ほおかぶりしておいて、そして今日突如としてそういうことをやられる。三カ年間に二日の無断欠勤というものがどういう事情であるか、これは非常にきびしいものだということは常識でわかるでしょう。三カ年間にあなた方だって、事後にお届けになるかもしれぬけれども、あるいは届けなくて休む場合もあるかもわからない。こういうことが非常にきびしいということは常識だと私は思うのです。そういうことについてもあなた方は見解を述べられぬのかどうか。それなら私は質問をする必要がないと思うのです。私はもう質問の必要性を認めません。もう少しあなた方は誠意をもってお答えになってしかるべきだと思うのです。あなた方がそういうことならそういうことで、私どもも考えを改めますよ。私は、一切がっさい質問しても時間も長くかかりますし、あまりおそくなってもということではしょっておるけれども、この質問が長引くのは全部労働省の責任ですよ。どれを尋ねても、見解を述べるわけにいかぬとおっしゃるから、われわれは重ねて追及しなければならぬ。そういうことだったら私はえんえんと続けますよ。さっきの話じゃないけれども、十時間だって二十時間だってやりますよ。そういうことでは皆さん方に御迷惑をかけるから、できるだけ常識的にはしょって質疑を展開していこうとするのが私どもの願いですから、私どもの願いを率直に受け入れて誠実に答えるところは答えてくださいよ。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 先ほど申し上げましたとおりなんでございまして、平常状態の就業規則あるいは労働協約の中に解雇基準として先生御指摘のような条項を入れたとしたらきびしいかどうかという判断、それからそうではなくてやむを得ず大量整理をしなくちゃいかぬという場合に、何とか整理をする場合の手がかりとしての基準をつくらなければいかぬという場合と条件が違う、基盤が違いますので、こういった基準を一がいに論ずるわけにはいかないのじゃないかということを私は申し上げました。これは労働基準局長としての職責を越えた発言だと私は思いますので、はなはだ恐縮に存じますけれども、一般的に内容を評価する場合……。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 あなたはそういうことをおっしゃるけれども、第二組合には全然そういうことを適用しないで、第一組合だけに適用しているじゃないですか。私どもは、そういう背景があるからこそ言っておるわけだ。それにもかかわらず、あえてあなた方が言を左右にして的確な誠意ある答弁をなさらないならば、私は審議を続行するわけにまいりません。委員長、やめます。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 いまの後半を継続させていただきたいと思うのでありますが、そのようないろいろな条件のもとにこういう労働条件――基準と申しますか、解雇なら解雇の基準を判断せざるを得ないと思うのです。その場合に、いま先生御指摘の第一組合と第二組合に対する適用の問題は、これはまたおのずから不当労働行為その他の問題に関連しますので、性質は別だろうと思うのであります。ただ一般的にこの不時の異常と申しますか、不時のこういった大量整理の場合の基準としてきびしいかどうかという場合に、本質的にはこれは使用者のいわゆる解雇権の有無と関連することでありますけれども、一応の基準をここに示したものであるというふうに考えられるわけであります。したがって、そのきびしいかどうかという常識的な判断と関連したことでありますが、裏を返して申しますと、いわゆる解雇権の乱用にならぬかどうかといったような法律的評価がもう一つあるわけであります。したがいまして、私が御答弁申し上げたい気持ちは、一般的にきびしいかどうかという判断と法律的な評価ということでありますれば、いわゆる解雇権の乱用になるかどうかという問題とも関連するわけであります。私どもが申し上げます趣旨は、解雇権の乱用といったような角度からの判断をどうするかということにまで思いを及ぼしてお答えするとしましたならば、この小野田セメントの解雇基準について私が軽々に申し上げることはかなりむずかしい面があるということを率直に申し上げておるわけでありまして、先ほど来申し上げましたが、私どもは現地の監督署なり労働基準局から報告を受けております。受けておりますが、先ほど申し上げましたように、裁判所で係属あるいは労働委員会で審理中の事案でありますから、それについて行政的に深く立ち入るということはいかがであろうという気持ちを述べたわけでありまして、事柄は承知いたしております。しかし、いずれもこの常識的な判断の奥にあります法律的な判断の問題がありますので、かかる具体的な案件につきましてこのような場所におきまして公の評価をすることは遠慮さしていただきたいということを申し上げた次第でありまして、御了承いただきたいと存じます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 結論的に申し上げますが、了承できません。一つは労働省が非常にずるいのは、部分的現象だけとらえてお答えになろうとする、こういうところに一つのずるさがございます。だから、その基準なら基準について私が御指摘申し上げますれば、いまのようなお答えがございます。それから解雇になりますと、第一組合、第二組合の関係になりますと、それは不当労働行為の問題になりますということで、不当労働行為の問題として回避される。そうすると、不当労働行為について一体どうですかと言うと、裁判で係争中ですから答えることができない。しかもあなたが一番最後におっしゃったことばの中には、こういう席上では申し上げられないという――これは議事録を見てもらってもけっこうです。それではどういう席上でおっしゃるのですか。私どもはこの席上であなたがお答えになることがきわめて適切だと思う。あなたがこういう席上では言うことができないという意味はどういう意味ですか。それこそ国会軽視もはなはだしいと思う。そういう事情でありますれば、私は自余の質問は一切留保いたします。答えは要りません。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 私が申し上げておりますのは、法律的判断を求められまして、ここでいろいろ申し上げるという場合もございます。ただ、法律的判断というよりもきびしいかどうかといった角度からの一つの感じを申し上げるということでございまして、ここで――ここでと申しますか、そういうこと自体が私ども申し上げるのが適当であるかどうかという点について、いわば遠慮さしていただくのが妥当ではなかろうか、かように考えまして申し上げたような次第でございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 留保します。

田中正巳自由民主党

○田中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕

田中正巳自由民主党

○田中委員長 速記を始めて。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 先ほど来いろいろな点について御質疑がございまして、先生の御満足いくような答弁もできませんではなはだ恐縮に存じておりますが、この点はいろいろ現在の法制のたてまえなどもありまして、具体的な問題について事のよしあしをはっきり申しげるというわけにもいかない、こういう点も、私は率直に申して、あるのだろうと思います。この点は先生万事御承知と思いますから、ある程度は御了承いただけると思いますが、いまの解雇の基準の問題ですが、私は別段法律にも詳しくありませんからしろうと流の感じを率直に申し上げたいと思うのですが、私は先生がお示しのこと、十二かある基準のうち二つ三つ先生がおあげになりましたが、これは常識的に考えれば確かにずいぶんシビアーなものだと思います。ただ、問題は、これは私の推測でございますが、こういうものをきめる場合に、おそらく会社側としては、大体何人くらいひとつ解雇しようとか、実際問題としてはあらかじめ数のほうを先に予定しているのじゃないかと私は思うのです。それらのものを解雇するのには一体どんな条件を出したならば大体そこらの数に達するとか、先に条件を出しておいて帰納的に数がきまるというのじゃなくて、おそらく数をまず予定して、それに該当する者はこんな条件、あんな条件、いろんな検討をした結果、こんな基準になったのじゃないか。たとえば、三カ年間に二回の無断欠勤というのは、常識的に考えればずいぶんシビアーだと思います。しかしまた、しからばそれを五回とするとか十回とするとかとなりますとなかなか予定の人員に達せぬとかいうことから  これは私の推定ですから間違っておるかもしれませんが、実際問題としてはそういうことで、結果的には常識的に見れば非常にシビアーな条件がそこに出てきた、こういうことじゃないかと思うのであります。そうなりますと結局問題は、よしあしは別として、とにかく何人なり何十人なりあるいは何百人なり、それを解雇しようとしたこと自体がはたして適当なのかどうか。これは経営の状態からおそらくぎりぎり予定したのでしょうが、結局いま申したとおり、結論的にむしろ数をまず予定して、その該当者を選び出すためには、こういう条件がどうしても必要だ、こんなことになった結果が、常識的に見て非常にシビアーになったんじゃないか、こういうふうに私は一応推測をいたすようなわけでございます。

田中正巳自由民主党

○田中委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕

田中正巳自由民主党

○田中委員長 速記を始めて。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 ただいま大臣から御見解の表明があったわけですが、私はやはり解雇する問題と、基準が常識の範囲の問題であるのかどうか、これは別問題だと思うのですよ。ですから、それを区別していま大臣がお答えになったわけですけれども、そういうことなら私は了承することにやぶさかでない。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕 会社側が首切ることと、こういう解雇の条件というものが常識的に客観的に見てきびしいかどうかという問題は別問題です。これはいみじくもサンデー毎日が取り上げておるわけです。こういう気違いじみた、めちゃくち事なきびしい解雇条件というものはないというふうな取り上げ方をしているわけですね。さっき読み上げたように、記事の一節には、労働省の幹部、そこにすわっておる方かあるいはうしろのほうの方か知らぬけれども、これは特に常識を逸脱している、こういう覆面の談話まで出しているわけです。ですから、いま大臣からお答え願ったように、その基準というのはひど過ぎるという解雇基準についての御見解については、私どもも了承いたします。そこで、やはりそういう見解を述べられるについては、謙虚に述べていただかぬと、何のためにここで委員会で論議したかわからぬ、意味がなくなってしまうと私は思うのです。そういう点は謙虚に述べる。しかし、大臣がさっきからおっしゃっているように事実の把握というものは十分でないからそう考えるけれども、実態はどうだったかということについての判断はなかなかむずかしいという見解は、これはまたそれで一つの理屈だと思うのです。そういうような謙虚な取り上げ方をやっていただかぬことには委員会審議というものは私は意味がないと思うのです。そういう意味で自後大臣に対してお尋ねを申し上げてまいりたい、かように思います。  今度の小野田セメントの解雇問題には三つの問題点があるというふうに私どもは理解をいたしております。そこでその一つ一つについて若干お尋ねを申し上げてまいりたいと思います。  その一つは解雇の合理性についてであります。私どもの聞くところによりますと、今度の小野田セメントにおきまする解雇は経営採算上の観点からの解雇である、こういうふうに、これはそれぞれわが党の現地調査団も言っておるわけですが、その現地調査団に対しても、現地の施設長からそういう見解が述べられておるわけです。八百名の解雇というものに対して、その八割方が希望退職を申し出ておるのです。そうしますと、これはなかなか百点満点というわけにはまいりません。まあ普通の一般の試験でも八十点取ればいいほうです。大体この小野田の場合は八割以上希望退職が出ておるわけですから、一応の目的はまあまあ達したというような理解を持つのが私は至当だと思うのです。それにもかかわらず津久見で六十八名、八幡で三名、計七十一名の指名解雇を行なっておるわけです。そうしますと、経営採算上の理由から解雇したのだということは、もうすでに八割以上希望退職の願い出をしておるというような状況から見てまいりますと、あえてこの指名解雇をする必要があったのかどうか、八十点以上取っているわけですから、それにさらに追い打ちをかけるように指名解雇しなければならぬ状況だったのかどうか、そういうことを考えてまいりますと、私は、やはり今度の指名解雇というものは政治的な解雇であるというふうな判断も当然出てくる、こういうふうに思うわけです。これらの点について大臣いかがお考えになりますか。ひとつ御見解をお聞かせいただきたい。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 希望退職を募集いたしました結果、御指摘のように約八割程度は目的を達することになった、そういう状況であったことは私の手元にある資料でもはっきりいたしております。そこで問題は、あと二割程度なのであるから、あえて指名解雇までしなくてもよかったのじゃなかろうか、こう思われることも、これはまず一つの常識的な判断だと私は思います。ただ、私のところにきております資料から申しますと、御指摘のありました津久見工場ですか、この関係では希望退職者が下回った、こういうことのようでございます。この点を見ますと、これは私の推測なのではなはだ恐縮なんですが、経営者の立場からいえば、各工場などのバランスとでも申しますか、そういう点でもお考えになられて、あえて指名解雇という手段をとったのでもあろうか。これは私の推測でございます。こういう推測をするのもある程度常識的なことじゃないかと私は思うのですが、いずれにしても役所のほうで直接そういう点まで調査が行き届いておらぬようでありますから、これは先ほども申すとおりのことで、こういう点もまたあわせてよく調査してみたいと思います。   〔藏内委員長代理退席、委員長着席〕

河野正日本社会党

○河野(正)委員 そこでいま私は政治的な解雇ではないかというふうな点を申し上げたわけでございますが、それに対して大臣は大臣なりの御見解をおっしゃったわけです。  そこで、私どもどうも納得がいかぬと思います点は、この経営採算上、大臣はいま津久見は希望退職が予定を下回ったということで、均衡じゃなかろうかという想像についての御見解があった。ところが、もし経営採算上の観点から解雇するということになるならば、いまの均衡はちょっと差しおいて、経営採算上の観点からの解雇でございますならば、やはり賃金の高い者、高年者と申しますか、そういう者にやめてもらったほうが経営採算上からは都合がいいわけですね。ところがこの津久見の六十八名、八幡の三名の解雇者の中身を検討してみますと、若い、活動家ともいわれる従業員が非常に多いわけです。そうしますと、経営採算上からいうと、そういう若い人は賃金が低いわけですね。経営採算上から解雇をしたのだと会社は言っておるわけですけれども、どうもロジックが合わぬわけです。採算上からいえば当然賃金の高い者をやめさせたほうがいい。ところが若い者をやめさせた。その若い者の中には活動家が多いということですから、私ども解雇理由というものが、経営採算上からと言っておるけれども、どうも納得するわけにいかぬ。しかもいまのような状況ですから、どうもこれは政治解雇だという感じを強く持たざるを得ぬわけです。それからいま大臣は想像でおっしゃったわけですけれども、いま申しましたように若い、賃金の低い人だけを切った。私に言わせるとそういう人々は活動家ですから、会社側は困るから切ったのだろうと思いますけれども、そういうことから言いますと、経営採算上という理由がくずれるわけですね。そういう点からも私どもは、今度の解雇というのは政治解雇ではないか、こういう指摘を申し上げておるわけです。ですから大臣、やはりそういうふうにお感じになるわけじゃないですか。ひとつ大臣の感じをお聞かせいただきたい。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 どうも実態をあまりよく知らずに感じを申し上げることはどうかと思うのですが、私のところにある資料なり、あるいは先生のお話なりを基礎としての私の感じでございますから、そこはひとつ御了解いただきたいと思うのです。  先生が御指摘のように、高年の賃金の高い者を解雇せずに、若い、比較的賃金の安い人、しかも組合活動家を解雇したのだ、こういうことになれば採算だけからともとれない。確かに先生のお話からいえば私はそういう感じを受けます。ただ、その採算の問題は、これも全体としてどういう計画であったのか、つまり賃金総額でどのくらい節約をしたいとか、こういう一つの計画はもちろんあったのだろうと思いますので、そういう点との関連がどうであったのか、そういう点もよく聞いてみるというか調べてみなければわかりませんが、先生のお話だけからすれば採算に徹しての解雇というふうにも解しがたい点があると思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 整理をして質問を続けてまいりたいと思います。  そこで第二の問題点は、労組法のたてまえの問題でございます。御承知のように、十二月の二十三日、中労委は、希望退職者がだんだん出てきております現況から、希望退職の期限を延長して、そして指名解雇は行なわないようにしたらどうだ、こういうふうなあっせん案を提示いたしておるわけです。ところが、組合側は了承したけれども、会社側が拒否をいたしておるわけです。御承知のように中労委は労働大臣の所轄の委員会でございます。しかも、労働大臣が任命なさった良識のある委員の方々がそれぞれ中労委に参加をされておるわけです。そこから出たあっせん案を簡単に、にべもなくけっておる経営者の態度というものを、私は労働大臣もまさか好ましいものだというふうにはお考えにならぬと思う。ですが、一応この中労委のたてまえから労働大臣の御見解を承っておきたいと思います。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 中労委のあっせん案が組合側には受け入れられたが、使用者側ではこれを受け入れなかった、こういうことでございますが、ただしその間募集期間の延長は受け入れる、こういうことであったようであります。で、先生のお話のございますとおり、中労委のあっせん案というものは、やはり労使ともにこれはできるだけ尊重する、こういう立場に立たなければ、せっかくの公平な第三者機関の権威というものはどうしても失われがちですから、多少の不満というか満足せぬところがあっても、両者が満足する案というものはおそらくなかなか出てこないのですから、これはいろいろ事情は確かにあったのでございましょうが、私の気持ちとしてはやはり受け入れてほしかった、率直に申して私はそういう気持ちです。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 大臣が非常に良心的な答弁をされるから質問がとんとん拍子に進むわけです。だから大臣にお答え願ったほうがよほど委員会の審議はスムーズですね。そこで、非常に良心的な御答弁がございましたから、次に進みます。  次は、第三の問題点でございますが、それは人権上の問題でございます。具体的に申し上げますと、今度、小野田セメントの解雇問題をめぐって、経営者の気違いじみた締めつけと職場での陰険な攻撃のために、遂にみずからのとうとい命を断った自殺者が三名も出るという事態が起こったわけでございます。これらについて実は若干お尋ねを申し上げたいと思うわけです。どうして私はこの問題を取り上げたかと申しますと、この問題は法務委員会でもやられたわけなのです。ところが、法務委員会でやられましたけれども、私は私なりの見解を持っておりますので、そういう意味でお尋ねをいたしますので、法務省のほうもひとつそういう意味でお聞き取りを願いたいと思います。と申し上げますのは、人命というものがいかにとうといかということは、これはもう何人も否定することはできない点でございます。ところが今日まで自殺の問題というものは、私は比較的軽々に取り扱われているという印象を持っておるわけです。自殺の問題は、一つには自殺というものは一種の病気だ、たとえば精神障害なら精神障害に基づく病気だという定説がございます。ですが、たとえば躁病だとかノイローゼだとか、そういう病気で自殺する場合は別として、病気以外で自殺するという場合は、これはよほどの強い要因というものがなければ簡単に自殺というものが行なわれるものじゃないという私は信念を持っております。そこで、やはり自殺という問題はもう少し掘り下げて検討する必要があろう、そういう意味できょうは取り上げておるわけです。  そこで、法務省のほうにお尋ねをいたしたいわけでございますが、詳しいことは要りません、おおよそのあら筋でけっこうでございますけれども、西村市太郎さん、磯村筆雄さん、三縄豊子さん、この三名について、ひとつ概況の御報告を願いたい、かように思います。

堀内恒雄法務事務官(人権擁護局長)

○堀内政府委員 ただいまお尋ねの三名の方が自殺した件につきましてお答えをいたします。  私ども現在まで関係者十八名の者につきまして調査をいたしましたが、なお若干今後も補充調査をいたす予定でおりますが、現在までわかりました結果によりますと次のとおりでございます。  まず西村市太郎さんのことでありますが、この方は三十一歳であります。昭和二十九年の一月に小野田セメントの臨時雇いになりまして藤原工場につとめたのでありますが、その後昭和三十四年の五月に正社員に採用になりまして同工場に勤務いたしておったのでありますが、昭和四十年の十二月十四日に会社からの希望退職の募集に応じまして退職願いを提出いたしました。しかし家族あるいは親戚などからのすすめに従いまして一たん提出しました右の退職願いを翌日の十五日に取り下げをいたしました。そして引き続き勤務をいたしておりましたが、十二月の二十一日に至りまして再び退職願いを提出いたしました。そして同日の午後十時に自宅の小屋で縊首自殺をいたしたものでございます。この方の自殺の原因につきましては、この方は遺書を残しておりませんで、また遺言らしいものもございませんので断言はできないのでありますが、現在まで調査しました関係者の供述などによりまして判断いたしますと、この方の性格が弱い方であった、そして厭世感がつのって、その結果自殺されたのではないか、こう思われるものでございます。すなわち、この方は昭和三十七年の春に他家の養子となりましたが、同年の七月に睡眠薬自殺を企てまして、それは未遂に終わったのでありますが、そういう事実があります。その後精神病院で憂うつ症だという診断を受けまして、二カ月ほど通院加療をいたしました。快方に向かいましたが、その年の十月に養子縁組みを解消いたしております。また、この方は小心で、はなはだ気弱であって、たびたび家出をいたしました。そして山林などに潜伏しているところを探し出されて連れ戻されたというような事実があった由でございます。同人の親戚知人などは、この方の自殺というものは会社の退職とは直接の因果関係は認められないのではないかと申しておるようであります。  次は磯村筆雄氏に関する件でございますが、磯村氏は五十三歳でありまして、昭和五年の四月に小野田セメント株式会社に入社をいたしまして藤原工場に勤務をいたしました。勤続三十五年という経歴を持っております。退社をいたしましたときには同工場の保全係長の職にあったものでございます。この方は昭和四十年の十二月十日に会社の呼びかけに応じまして希望退職をいたしましたが、本年の一月二十九日午後四時ごろに、妻の外出中に自宅の小屋で縊首自殺いたしたものであります。この人の自殺の原因につきまして、ただいままでのところでは、この方も遺書も遺言もございませんで詳細は不明でありますが、関係者の言うところなどを総合いたしますと、生来孤独であって、また感傷的な性格で、退職という還境の変化から厭世的になって、そしてその結果自殺をされたものではないかと思われるものでございます。退職の経過について、磯村氏は当初会社の希望退職の呼びかけを拒み続けておるようでありましたが、退職金の金額を示されたときにそれを納得いたしまして、妻とも相談をした上でむしろ積極的に退職の申し入れに応じたということが認められるようであります。この磯村氏はそのほか相当の資産がありまして、今回の退職にあたりましては、相当高額の退職金を得ておりますので、退職に伴う経済的な不安というものが原因とは考えられないようでございます。この方の性格もやはり小心であまり人と口をきかない。そして、日ごろ、三人の子供がそれぞれよそに出ておりまして、農地を持っておりまして、農業の後継者がなくなるということをさびしがりまして、また同居中の病身の妹さんのことも非常に気に病んでおったということであります。  次は、三縄豊子さんの件に関することでありますが、この方は二十七歳でありまして、昨年五月下旬から小野田セメント株式会社東京本部に電話交換手として勤務をいたしまして、昨年の十二月三日に希望退職をいたしました。この方は、その後郷里にも帰りませんで、都内のアパート住まいをいたしておりましたが、本年の一月十一日にアパートの自室におきまして、縊首自殺をいたしたものでございます。自殺の原因につきましては、この方はアパートの管理人あてに遺書を残しておりますが、それは、済みませんという一言を残されただけでございますので、この遺書からは自殺の原因というものを知ることはできないように思われます。そこで、関係者などの言うところによりますと、この方は入社のあとで、三カ月くらい経過したところで、昨年の八月ごろ、所属の上司にやめたいという申し入れをいたしました。そして、昨年の十一月初旬に会社の希望退職の募集の発表がありました直後に、全く自発的に希望退職の申し入れをいたしました。会社側は電話交換手の退職は予定していなかったので慰留したのでありますが、この方は十二月三日に希望退職の願書を提出いたしましたので、会社側ではやむなく同日付で退職を認めたというわけであります。この身内の人の供述するところによりますと、かねてからこの方は蓄膿症を病んでおりまして、そして症状の重いときは陰気になって他人と話もしない、仕事も手につかない模様であったということであります。そのことをこの方自身も苦にしておりまして、交換手のような神経を使う仕事はやめたいということを漏らしておったといわれております。自殺と退職との関係でありますが、やはり同様に直接の因果関係というものは認めがたいのではないかと思われるのであります。  以上であります。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いまの御報告を承りましても、なぜ因果関係がないとおっしゃるのか、ちょっと私はふに落ちない。と申し上げますのは、私は少し科学的に申し上げますが、多少私の持っている資料と違いますけれども、それぞれなくなられた方々は、西村さんの場合は退職後六日目ですね。それから磯村さんは一カ月と十七日目、三縄さんが一カ月と八日目なんです。そこで、多少時日が一日二日違っておったようですが、大体退職後一カ月内外でなくなられているわけです。だから、性格的には孤独であるとか、あるいは憂うつ型であるとか、いろいろ性格に対しまする御見解がございましたけれども、それならばこの厭世観がどうして起こったのか。厭世観に基づいて自殺したのだろうというふうなお話であります。それならば厭世観というものが何に起因するのかということになれば、いま私が御指摘申し上げましたように、それぞれなくなられた方々は希望退職させられて、そして大体一カ月内外でそれぞれ首をつってなくなられている。こういうことになりますと、勢いその因果関係というものは、やはり、やめなさいと希望退職をしいられたということがその厭世観に通じていくし、したがって、因果関係がないということは私は断定できぬと思うのです。これがむしろ、たとえば三縄さんのような、蓄膿症があってかねがね厭世観を持っておられたということになるならば、激務のさなかに――ただいま交換手は非常に激務とおっしゃったが、激務のさなかに自殺するとかということが起こらなければならぬ。ところがこれは退職後一カ月内外で首をつった。それから磯村さんの場合もそうでございますし、西村さんの場合も大体そうだということになりますと、これは因果関係がないとおっしゃるけれども、やはりそういう希望退職をしいられたということが厭世観につながり、厭世観が結局自殺に追い込んだというふうに判断するのが妥当でなかろうか、こういうふうに私は考えます。それは結局、激務のさなかに自殺したという場合と、やめて直後に自殺した場合というのは、おのずから本質を異にいたします。それからまた、やめてある一定の年月が過ぎて、そこで、思うように職がないとか環境がおもしろくないとか、そういうような事情が生まれてきて、そこでなくなられたというなら、これは別です。ですけれども、希望退職をしいられて、やめられて一カ月内外で三人ともなくなられたというところに、私はきわめてこの問題の重要なかぎがあると思うのです。ですから、どういうところからこの因果関係がないと判断なさったかわかりませんけれども、これは実は法務委員会で坂本先生が質疑をやられておる状況を私は傍聴しておるわけです。そうしましたら、少なくとも衆議院の法務委員会における法務省の答弁は、全く会社側の見解だけを述べられておったような印象を持っております。ですけれども、私は法務省が公正な判断をなさる場合にはいろいろな立場の人の意見を聞く、ことに私は申し上げますならば、医者の立場の話も聞く、特に医者の中でも専門家でなければだめですよ。専門の医者の話を聞くというくらいの慎重さに基づいて判断なさることがしかるべきだろうと思うのです。私は今度の事件に関せず、概して日本の場合は自殺に対する分析のしかたが足らぬと思うのです。これはとうとい人命です。たとえば殺人事件が起こりますと、警察は徹底的に捜査いたしますね。私はそれくらいの慎重さときめのこまかい取り扱いというものが必要ではなかろうか、こういうことをかねがね感じておりまして、特にきょうはこういう具体的な問題がございますので、お尋ねをいたしておるわけです。ですから、いまのお話では私どもは、特に私は専門家なんですが、どうも因果関係がないという御判断に多少私は疑問があるような気がするのです。私はいろいろ意見を申し上げましたが、そういう意見に基づいてどういうふうにお考えになりますか、ひとつ御見解をお聞かせいただきたい。

堀内恒雄法務事務官(人権擁護局長)

○堀内政府委員 確かに仰せのとおり、退職と死亡の時期の関係につきまして、いわゆる条件になっておることは申すまでもないところでありまして、私どもが因果関係がないと申しましたのは、全く因果関係がないと申したのではないのでありまして、いわゆる相当因果関係というような立場に立つかと思いますが、あるいはまた私どもの人権の侵害という立場からいきまして、強制あるいは圧迫というようなものが自殺の原因になっておるかどうかという点で見たわけでございますが、先ほど申しましたように調査の途中でありますので、最終的な結論はなお調査した上で申し上げたいと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 そこで御参考のために申し上げておきますが、西村さんの場合は、私、専門的に見て多少既往症等がございます。ですけれども、最終的に命を断たれた時点の状況をいろいろ想像いたしてまいりますると、やはり希望退職をしいられたことが要因になって、基礎的には性格的に非常に弱い面があったということもあるでしょうけれども、私はやはり希望退職をしいられたということが厭世観につながり、気が小さいとか、孤独感とか、そういう性格の持ち主であったので自殺に追い込まれたというふうに判断をいたします。これもいろいろ既往症等の問題もございますけれども、しかし実際に自殺に追い込んだのは、希望退職と自殺をいたしました期間が六日ですから、非常に短いわけですね、そういうことを考えますと、私はかなり強い要因になっておるというふうに判断せざるを得ぬと思うのです。それから磯村さんの場合は三十五年も勤続をされておりますし、しかも資産もあるし、退職金も非常に多いということでございます。私は、おそらく三十五年も勤続する方は非常にりちぎな方であろうとも判断いたしますし、そういう点から判断いたしますと、これもかなり希望退職という問題が厭世観につながり、それが自殺に追い込んでまいったというふうに判断せざるを得ぬだろうと思うのです。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕 特に三縄豊子さんの場合は蓄膿症であったという話もございますけれども、蓄膿症が即自殺に結びつくというような例はあまりございません。過去にそういう要因はあったろうと思いますけれども、しかし希望退職に追い込まれて自殺されるまでの期間というものが非常に短いわけですから、したがってこれもやはり私は希望退職というものがかなり強い要因だったというふうに判断しなければならぬだろうと考えます。  そこでもう一つ、私は労働基準法第四十三条の立場からこの問題を検討いたしてまいりたいと思うのです。この労基法四十三条には、使用者は労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならないというように明記してあるわけです。そうしますと、使用者が労働者の健康について必要な処置を行なっておったということになりますと、私はこのように退職して六日のうちに自殺するということはちょっとおかしいと思うのです。これはやはり四十三条の法規をサボっておったか、あるいは適切な処置をしなかったということか、さもなければやはりこの希望退職という非常に強い刺激を受けることによって自殺という現象を起こした、こういうふうに判断しなければならぬと思うのです。ですから私は、この希望退職をしいられたということと、自殺までの期間が非常に短いということは、非常に大きな意義を持っておると思うのです。そういうことになりますと、私はいま申し上げますように、労働基準法の第四十三条からもこれは非常に問題があるのじゃないか、こういうふうに考えます。ですから、この労働基準法第四十三条についての処置が適切に行なわれておったかどうかということについても実は労働省に聞いてみたいと思うのですけれども、これは大臣に聞いてもちょっと無理でございますし、局長は先ほどから不信任でございますので、聞くわけにまいりません。そこでひとつこの点は単に法務委員会で言われておったようなことじゃなくて、労働基準法四十三条の面からも非常に問題があるということを私はここに指摘をいたしておきたい、かように考えております。この点、法務省、何か御意見解ありますか。

堀内恒雄法務事務官(人権擁護局長)

○堀内政府委員 労働基準法の関係については、特に意見ありません。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 先生のおことばですが、基準法上の問題ですから、ひとつ私から命じて局長に答弁させますから、どうぞお聞き取り願います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 どうせ聞けばまだ調査しておらぬと言われるのが落ちだというふうに私は判断しておりますので、時間もございませんからあえてお尋ねをいたしません。  いままでも衆議院の法務委員会でもいろいろこの自殺問題が人権上の問題として取り上げられてまいりましたけれども、きょう私が取り上げたこととちょっと角度が違うと思うのです。ですから、そういう角度から、この問題はかなり人権上の問題として考慮しなければならぬというふうな判断になったと思うのです。そういう意味で、今後さらに補充調査等がございますならばひとつ御配慮を願いたいというふうに思います。  それから、この解雇理由がいろいろあるわけでございますが、私は今度の解雇がいかにむちゃくちゃだったかという例として、一、二ここに披露をいたしておきたいと思います。たとえば、上司に反抗的であったという点、あるいは単に勤務ぶりがよくないという点は、常識的な問題でございますから、そうわれわれがいろいろ申し上げることはないと思います。ところが笑止千万な例の中には、職場でラーメンを食べたことがあるというのが解雇理由になっているのです。それからどうも私生活の中に借金があるらしい、そういうことが解雇理由に述べられておるわけです。会社じゃなくて、どうも個人で借金を持っておるらしいというようなことがこの解雇理由になっておる。それから職場の懇談会等でよく眠っている。これは居眠りするとさっそく首なんです。もうあげますとそれは枚挙にいとまがないわけですが、そういうふうな極端な理由が述べられて首になる。びろうな話でございますけれども、立ち小便をしたために首になったという例もあるそうです。これは畑先生が現地に行って直接事情に触れられたわけですから、そのとおりだと思います。こういう全く笑止千万な理由で首を切られておる。それが解雇理由に述べられておるわけです。これらの解雇理由に基づいて行なわれた解雇ですが、これは大臣もお聞きになって、これはたいへんなものだというふうにお感じになったろうと思うのです。そこで、これまた大臣のお感じをひとつ……。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 先ほどは解雇の条件のお話があったのですが、今度は解雇の理由という御表現でしたが、その間はどういう関係があるのか、私にも実はよくわからないのですが、この十二かの解雇の条件という中のどれかの具体的な事項にあるいは該当するのじゃないかと思うのですが、いずれにしても、いまお話しのようなことが解雇の理由になるということは、私もちょっと不可解に思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いま大臣もおっしゃったように十二項の条件がございますね。条件についての中身が、いまのような説明で首を切られておるわけです。特に私が重大と思いまするのは、津久見市の工場設置奨励条例というものがありまして、企業を誘致いたしますとそれぞれ地方自治体で便宜をはかるわけです。これは大臣御承知のとおりです。これは津久見に限らずよそでもそうです。ところが、この津久見というところはセメントとミカンの町です。ですから小野田セメントの膨大な施設がこの条例に基づいて非常に優遇を受けておるわけです。さらに施設を拡充しようというふうな問題もあるわけです。ここで六十八名の指名解雇が行なわれておりますが、そのうちの十二名はこの津久見市の工場設置奨励条例に反対をしたということで首になっておる。これは解雇の理由の中に書いてあるのです。こういうことになりますと、憲法の十九条には思想及び良心の自由というものが認められておるわけですね。これは全く憲法違反にも値する重大問題だというふうに私どもは指摘せざるを得ぬと思うのです。こういうような全くでたらめなかっこうでいわゆる指名解雇が行なわれている。それも第二組合には適用しない。第一組合でも第二組合にいけば一切帳消しになるわけですね、ここに問題があるわけです。それを労働省ははぐらかして、私が局長を忌避したのもそれを部分的にお答えになるから、われわれはそういう答弁では承知できぬ、こう言っておる。そういう背景があるわけですね。たとえば立ち小便してもラーメン食っても居眠りしても、第二組合にいけば許してやる、こういうことなんです。ここに非常に大きな問題がある。労務課長も、おまえはこういう理由で解雇のリストにあがっておる、しかし第二組合にいくならば全部許してやる、首切りはやらぬというようなことを言って、次々に組織分断をはかっておる。これは明らかに不当労働行為であるし、いま申し上げまするように、市の条例――会社じゃない、こういう市の条例に反対しても、いま言うように解雇の対象にするということですから、これは全く憲法以前の問題ですね、こういう点はどういうようにお考えになりますか。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 ただいまお話しの点も先生お話しのとおりなんでしょうが、そのとおりとすれば私も非常に不可解なことだ、かように感じます。ただ労働法上の問題は労政局長から……。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いいです。  そこで私は、さらに突っ込んでも、感じとしてはそうですけれども、しかし事実の把握というものが十分でないということでどうも逃げられる可能性がございますので、そこで私は、今後いまのような事実があったならば労働省としてはどういう処置を行なうか、もしそういうことが事実であったならば――職場でラーメン食ったら首だ、立ち小便や居眠りしても首だということです。だから私は、やはりもしそういう事実があったならばどうするんだという方針をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。そこで、非常に良心的な御答弁がございますれば、私どもはもういろいろ申し上げません。議事に協力いたします。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 本件自体はただいま労働委員会に持ち込まれておるそうですから、労働委員会が調べて公正な判断をなさると思います。しかし本件とは別に、将来かりにいまお話しのようなことを解雇の理由とするというようなことが事前にもしわかった場合においては、これはあまりにどうも不可解というか常識外と申しますか、これは労働省の立場でも、使用者にそういうことで解雇するというようなことはおかしいじゃないかというくらいの注意というか勧告というか、それくらいな口をきいても、あえて労使の問題に介入したというふうには、これは法律的にもあるいは世間の常識からいっても言われぬで済むのではないか、それくらいなことは当然やってよいのではないか、私はさように感じます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 大臣は非常に前向きの御見解を述べられておるので、一応それは了といたします。私は、澁谷委員ではないけれども、十時間以上の質問は用意しておるわけです。けれども、議事に協力いたします。  そこで最後に一点委員長にお願いをいたしたいと思うのでございます。それは私が先ほどからるる申し述べましたように、労働法の関係についても、それからまた労務管理についても、経営者は全く常軌を逸しておる。しかも憲法違反の疑いもあるというふうな、きわめて重大な要素を持っておるのです。これは文教委員会等においても国士館の問題で参考人を呼んでいろいろ事情を聴取したという経緯もございます。そこで当委員会においても、いま申し上げますような、法治国でありながら全く、労組法を無視し、憲法をじゅうりんするような経営者については、私どもこの委員会においていろいろ事情を聴取したいというように考えます。参考人として労使双方を当委員会に招致するということをひとつおはかり願いたい、かように思います。

藏内修治自由民主党

○藏内委員長代理 参考人の招致については理事会で協議したいと思います。

滝井義高日本社会党

○滝井委員 関連。さいぜん河野さんから解雇の理由について、ラーメンを食ったり、借金があるとか、いろいろ言いましたが、いままでそういうことをわれわれは耳にした前例がないわけです。ところが、セメント会社でも第一流の小野田でそういうことが行なわれておるわけです。しかも、御存じのとおりセメントというのは開発銀行その他国の機関からも相当に金を借りてやっておるわけですね。最近社長は放漫な投資のためにやむなく引退せざるを得ない形になりましたけれども、そこで労使双方を呼んでもらうことは当然ですが、その前にひとつ二、三日のうちに資料を――一体どういう理由で解雇しておるのか。津久見の六十八名と、八幡の三名について解雇理由をお調べになって出してもらいたいと思うのです。かつて組合側は、中央労働委員会のあっせんを受諾したけれども、河野さんも指摘をしておりましたが、会社が拒否しておる。中央労働委員会に持っていけば、今度は、いつか私が労働組合法のときに御質問申し上げたように、これはもう弁護士を入れて引っ張ればいつまでも引っ張れるわけです。そうしますと、そのうちしびれを組合側は切らす。生活権の問題が出てくるということで、いつの間にか泣き寝入りになるわけです。そのうち自殺者も出てくる。これは去年の十一月に起こっておるのですからもうやがて半年になる。夏来たりなば冬が来るのですよ。冬が来れば春が来る。そのうちには忘れちゃって次の新らしい問題が起こるということになるのですから、こういう問題はやはり早急に解決しなければいかぬと思うのです。そこで労政局長のほうで具体的に解雇の理由を、津久見の六十八名と八幡の三名についてひとつ詳細に調べて出してもらいたいと思うのです。このくらいのことは幾ら労働省といったってできるはずです。民間の労働組合のことだから知らぬというわけにいかぬと思うのですよ。だからぜひひとつ出してもらいたい。出せるでしょう。

三治重信労働事務官(労政局長)

○三治政府委員 これは会社の解雇理由だと思いますから、会社に当たってできるだけ出してもらうように努力してみます。

藏内修治自由民主党

○藏内委員長代理 吉村君

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 実はたいへんめずらしい問題を聞きましたので、これは雇用問題、あるいは日本の企業の海外進出、そういう問題に関連している問題でございますので、該当する人の数はきわめて少ないのですけれども、その背景となる問題は非常に大きいように考えますので、若干これから労働省、あるいは通産省、運輸省、こういった関係省の見解をただしたいと思っています。  その質問に入る前に、この際確認をしておきたいと思いますけれども、それはいま河野委員のほうから質問の過程で基準局長には答弁をしないという状況が起こったのでありますが、その原因というものを考えて見ますと、私は労働省という行政官庁は一体何を主体にして仕事をしようとしているのか。その任務をはき違えているのではないかというふうに考えられる節がありますので、この点確認をして入りたいと思うのです。  そこで、労働省設置法によりますと、明らかに任務が与えられております。その中には幾つかありますけれども、労働者の福祉と職業の確保とをはかるということを前提にして労働条件の向上、及び労働者の保護、こういうことも一項うたわれておるのでありますが、どうもいままで労使問題を取り上げてまいりますと、たとえば不当労働行為の問題については地労委なりあるいは労働委員会なりにかかっている、かかりつつありそうだというような問題については、われわれは関与をするわけにまいりません。あるいは労働問題から派生したところの刑事問題については、特にこの点はやむを得ない面もあると思いますけれども、事が刑事問題になっているので、われわれは意見を申し上げるわけにいきません。こういうふうな態度をとることが多いようです。今日の日本の情勢の中で労使の問題というのはいずれにしましても、力関係の中できめられていく、相手がいるという問題ですから。そうしますると、私は労働省の考え方というものは労働行政に携るものとしてはどちらたれというわけではございませんけれども、労働省設置法の趣旨から考えまするならば、当然労働者保護の立場に立ったところの見解、意見というものが出てこなければならないだろうと思うのです。ところが、そうでなくて、傍観的な態度はおろか、場合によっては労働者を抑圧するかのごとき態度をすらとることがある。具体的に例を申しますと、たとえば公労法に対する解釈等につきましては、労働省で見解を発表することがあります。これはやっちゃいけません、あれはやっちゃいけません、全部やっちゃいけません。こういう場合には、きわめて積極的に労働省は発言をする。かと思うと、いまのような問題については、われわれは関与するわけにはいきませんという傍観的な態度ないし消極的な態度をとる。これでは私は労働省が設置された目的、これに沿わないのではないか。確かに行政官庁ですから、非常に重要な問題になってきた場合に、影響のあるような問題について、とやかく言えない反面もあるでしょう。しかし、どちらかと言いますならば、経営者を弁護するような立場に立つのではなくして、これはやはり労働者保護という基本的な考え方を基礎にして意見を述べてもらわなければいけないのじゃないかというふうに思うのです。そうでないと、先ほど河野委員の質問の過程でも起こったような事態が起こりかねない、こう思いますので、これから私が質問をしようとする内容も、そういうふうに発展をする可能性なきにしもあらず。ですらか、まず質問の冒頭にあたって、労働大臣は一体労働省設置法の考え方に基づいて、それを一体どういうように理解し、どういう立場に立って労使の問題をながめていこうとするのか、あるいは基準局長も労政局長も、労働省の行政官としてどのように考えておるのか、この点を確認をして、それから私は質問に入りたいと思います。

三治重信労働事務官(労政局長)

○三治政府委員 労使関係の問題につきまして申し上げますが、労組法、労調法、それから公労法、地公労法につきましての法律の解釈、それから疑義についての解釈は、行政当局として、所管の局長として行政解釈はいたします。その解釈は、やはり判例があれば判例を基準にして行政解釈をするし、またそれに類推してやります。しかし、実際の労使関係の具体的な争いの問題につきましては、法律で労働委員会がこれを独立した権限でやるという権限の問題があって、事実具体的な争いになると、労使それぞれ労働委員会に争いを持ち込んでおるわけです。また現在の司法権の独立からいって、あらゆる問題がまた別に裁判所にも持ち込めるようになっておるわけです。したがって、労政当局といたしましては、具体的な争いの問題につきましては、これがやはり裁判所なり労働委員会に持ち込まれれば、それにやってもらう。しかもこれは労働委員会関係につきましては、労働省の外局また地方の労働委員会は知事の権限でございますけれども、そういう具体的な行政機能というものは労働委員会でやる、こういうことになっておりますので、労働省は決して労使関係につきましては、それぞれ所管と申しますか、労働委員会と労政局と機能が分かれておるわけですから、その点はぜひ御了承願いたいと思います。もちろんこういうことが実際の運営上おもしろくないじゃないか、やはり事件の解決に対してよく機能してないじゃないか、こういうふうな社会情勢がくれば、当然これは立法政策の問題として変えていく。この任務は私たちが立法政策としてやはり政府の機関として、こういう現実が機能していないからこういうふうに変えてみたらどうかというような調査研究は十分やってみたいと思います。したがって、いま問題になっております労働委員会の機能の問題につきましては、先日も労働組合法の審査のときにお答えしましたように、現在の労働委員会の機能、ことに不当労働行為の問題の処理について改善すべき点が多々あるのじゃないか、こういう御質問が、これは衆議院、参議院両方とも労組法の改正のときに問題が提起されました。われわれもかねてそういう問題で、ここ五年来労使関係法研究会というのを労働法関係の専門学者をもって組織して現在研究していただいておりまして、これが本年中には、現行の法律の運用の状況と問題点というものでリポートが出ることと思います。そういう問題も十分勘案して、私たちは、現実にそういう労働委員会の処理ではまずいじゃないか、また行政官が直接どの程度タッチしたらいいかというような問題については十分検討し、至急に結論を得たいと思っております。そういう気持ちでおりますので、消極的と確かにいわれますけれども、そういう法のたてまえと、具体的な争いの問題については相当労働委員会にまかされるぐらいやはり慎重審議して結論を出すという現行体制からいくと、私たちは消極的にならざるを得ない。しかしこう問題が出てきますと、先ほど大臣から御答弁いただきましたように、現実の問題が起こったときには、行政当局としてその問題の本質、傾向というものを具体的に十分調査する。この点についてわれわれがあまり他人まかせと申しますか、労働委員会、裁判所まかせにしていた点は反省したいと思います。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 法律的にいえばそういうことになるだろうと思うのです。労働委員会に係争中のものについては労働省としてとやかくいえないという、そういうたてまえになっていますから。そのたてまえ自体についてはいろいろ問題がある。これらの今後の改変の問題についてはおたくのほうでも検討されているのでありましょうし、また国会自体の問題だと思うのです。ただ、私が特に労働省の大臣以下関係の局長あるいはその関係者に要望しておきたいと思いますのは、そういうような機構であるために、たとえば労働委員会に係争になってしまう、そうすればわれわれは関与できない、言いかえれば関与しなくてもいい、こういうことになるわけです。したがって、どうしても労使の問題というものが第三者機関に移行する以前に労働行政上の労使の調整をはかる任務というものについての積極性が欠けるきらいがある、こういうふうに私は思うのです。ですから、いまの小野田セメントの問題等につきましても、もっと労働省が行政官庁として労使の調整というものについて積極的な姿勢で臨んでいったならば、たとえばいまの馘首の理由、聞いてみると非常にばかばかしいような理由、あるいは馘首の条件、あるいは組合活動家と目される者をねらい撃ちしたのじゃないか、常識的に一般的にそう見える節々がある、こういった問題について国会の中であとから議論をしなくてもいいような私は気がする。そういう労使の紛争が起こったあるいは起こりそうだというようなときにこそ、それぞれの出先機関においてこの労使の調整、平和的に解決するための努力というものをもっと真剣に取り上げていくという、そういう政治的な姿勢、そういうかまえというものがあってしかるべきではないか、こういうふうに思うのです。それが欠けているためにすべて第三者機関であるところの労働委員会に事案が非常によけい持ち込まれてしまって、そして労働委員の定数をふやさなければならない、こういう労働組合法の改正案などというものを出さざるを得なくなっている。しかし問題はもっと根本、前のほうにある。その中で、労働省が労働者保護の立場に立って積極的に労使の調整という役割りを果たしていく、こういう姿勢をとってもらうことが法改正以前の問題としては必要だ、こう思うのですが、この点は大臣はどのように考えますか。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 先生の御指摘になられようとするお気持ち、私もそれはよくわかります。ですから、先ほども申したのですが、たとえば小野田セメントの今度の解雇の理由となったような、ああいうことが基本的には起こらぬように、常時もっと積極的に労使のあり方について指導といいますか啓蒙といいますかそういう努力をすることが必要であろうし、あるいはまた事前にそういうことがわかった場合においては、常識的に考えてもきわめておかしいじゃないかというような理由で解雇しようというようなことがかりにあってそれが事前にわかった場合においては、これは私は使用者側にこれまた注意なり勧告なりしてもよろしいのじゃないか、それが、労使に対する現行法制のもとにおいても、労働委員会の機能を侵して労使の問題に労働省自体が介入したとは世間もおそらくとられないであろう。そういった意味においてもっと積極的にやってしかるべきであろう、こう先ほど来申しておるわけであります。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 だいぶ時間もおそいので、これは私がこれから質問をしていこうとする問題と直接関係をしておる問題ではありませんからこの程度にせざるを得ないと思います。ただ、私が申し上げている趣旨は、労働省は、その設立された当時の状況等を振り返ってみますならば、日本のこの経済発展のために労働問題というものの果たすべき役割りはきわめて重要である、労働者を保護し労使関係を安定化していかなければならない、こういうために、ねらいとしては労働者保護ということを重点的なねらいとしてこの省が設置せられたはずだと思うのです。ですから、その後労使の力関係の紛争等があって今日に至っておるわけですけれども、労働省がもっと紛争が起きないように事前に労使の調整、平和的な事態の処理、あるいは先ほどのようなばかげた問題の起こらないように、そういう行政指導をはかってもらわなければならない。これは一面非常に危険さを伴う問題です。というのは、労使の直接交渉で解決すべきところに国家権力が介入するという意味で非常に危険な要素を持っておることを私は承知しながらいま言わざるを得ない。なぜならば、労働省の任務は労働者保護を主体にしたものである、そういう立場に立ってこの権力を行使するという必要が今日の事態の中ではある、こう思うから私はこの点を強調しておるわけですから、ここは権力介入をしろということを吉村が盛んに強調したなんというふうに誤解はしないでもらいたい。労働省が設置された任務に従って今日の事態の中で紛争を事前に解決するという努力を特に要望するという趣旨ですから、誤解のないようにしてもらいたいと思うのです。  本論に入りますが、時間もおそいので、こちらもはしょってやや問題の中核的なものだけをお尋ねしていきたいと思いますから、御答弁のほうもできるだけそれに沿ってひとつ答弁してもらいたいと思います。  実は、広島県竹原市竹原町四千九百六番地というところに、竹原造船所という造船事業をやっておる企業があるそうでございます。この企業は、造船企業でございますから、規模の状態等も関係はすると思いますけれども、事業場の監督官庁は運輸省だろうと思いますので、したがって、この竹原造船所の現在の事業の実態、経営の内容等について運輸省が掌握をされている実情をお聞きしたい。労働省のほうからは、これまただいぶ長いこと労使の間で紛糾しているそうでございますから、現地のほうからいろいろ実情等をお聞き取りになっていると思いますので、この事業場の労使関係は一体どうなっておるかということについて、労働省のほうから答弁をいただきたい、こう思うのです。

芥川輝孝運輸技官(船舶局長)

○芥川政府委員 竹原造船所について簡単に申し上げますが、まず、竹原造船所が造船業全体におきまして占める地位と申しますか、それを初めに御説明申し上げます。  御承知のとおり、鋼船造船所、これは非常に大きなものをつくっておる。十万トンあるいはそれ以上のものをつくっておるところもたくさんあるわけでございますが、そこらを含みまして、ただいま造船法によりまする許可の事業場、これが百二十二ございます。このうちのずっと下のほうに位するものでございます。そしてこの造船所の造船能力は、これは船台の大きさで能力がわかるわけでございます。最大能力として千二百トンでございます。それでこれに対しまする運輸省としての――運輸省は造船業の監督行政をしておるわけでございます。これに対しまする監督行政のやり方といたしましては、行政の事務能率の向上、あるいは簡素化という面から二千トン未満の建造造船所につきましては、これを地方海運局長に大体監督をゆだねておるという現状でございます。ただ問題の種類によりましては、本省が直接扱うこともございます。通常の場合は、地方海運局長におまかせしておるのが実情でございまして、ただいま御指摘の竹原造船所は、したがいまして中国海運局の管轄下に入っておるわけでございます。  それからこの造船所といたしましては、昭和三十八年十二月に、ブルネイに企業進出することにつきまして政府の許可を得まして、昭和三十八年の十二月からそちらのほうへ向かって事業を進出しておるというのが現状でございます。  なお、私のところで、つかんでおりますものは、御承知のとおりこの手のいわゆる内航船舶につきましては、最近非常に景気が落ちてまいりました。そこでこれを労務者数で申し上げますと、たとえば昭和三十四年に約三百名おりましたのが、ただいまでは三十九名になっておりまして、したがいまして、造船所の活動としてはそれほど活発でないというふうに了承いたしております。

三治重信労働事務官(労政局長)

○三治政府委員 組合の状況は、第一組合と第二組合でございまして、第二組合は、組合員数が二十五名、全造船機械に属しております。第二組合は、ブルネイのほうにだいぶ主力が行っておりまして、こちらのほうにおられるのは三、四名、まあこういうような状態で、問題は団交の再開ということと、賃金の遅欠配の解消、それからいわゆる海外進出会社である竹原・ブルネイ合弁会社の実態について説明を求めておる、こういう三つの問題を労使関係として持っておるようでございますが、はなはだ恐縮なのですが、実は昨日私たち具体的な連絡を政府委員室から受けておりまして、広島県に連絡しましたところ、きのうの段階では、その労使双方の責任者が、県が調査に出かけたところ不在ということで、こまかい正確な情報――県のごく最近の状況がわからぬところを御了承願いたいと思います。  それで組合のほうの御説明でありますと、いろいろ会社側にそういう問題について団体交渉を申し入れて、この四月までに四回の団交を行なったけれども、会社側は一つの譲歩もなく、現在一部賃金遅欠配の状況だ、こういうことで、組合側が結局会社の気持ちがどう解決しようとしているのかよくわからないということで、会社側の現在の態度について非常な不信感を持っている。ところで団交が再開されないために、また経営者が自分の主張を言わないためにい組合側としては、この会社ははたして存続するものなのか、あるいは仕事があるのかどうかということについて非常に不安を持っておる。事実現在の就労状態は、本来の仕事がなくて草取りをやったり、若干雑件を整理するという程度で、したがってどうも造船所としてはたして成立していくのかどうかという問題について非常な不安が持たれる、こういうことのようです。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 この造船所の従業員が三月七日にアセチレンガス爆発によって三名ばかりけがをしたということを聞いておるのですけれども、この事実については当然労働省のほうで掌握をされておると思いますけれども、施設の管理関係は海運局で行なうことになっていると思うので、このガス爆発事故の原因は施設の不備によって起こったものなのか、言いかえると運輸省の監督範囲の中で起こったものなのかどうかということについて運輸省のほうからお聞きをしたい。  それから労働省のほうからは、このような重傷事故が起こったのでありますけれども、これは当然労災法の適用事業所ということになるだろうと思いますので、労災法適用の関係はどういうふうになっておるか、この二つをそれぞれお尋ねをしておきます。

芥川輝孝運輸技官(船舶局長)

○芥川政府委員 私のほうでは、ただいま先生のおっしゃいました施設の不備であるか不備でないかという点につきましては、それは完全であるという前提のもとに監督行政を行なっておるというのが実情でございます。それで、たとえて申しますと、とのクレーンの安全限度あるいはアセチレンガスのほうを私知らないので恐縮なんでございますが、こういうものにつきましては別の官庁から、労働基準局のほうからだと思いますが、そこらは安全限度については御指定をいただきまして、その安全限度の範囲内で能率よく造船業を営めるよう監督するというのが私どもの立場でございます。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 私の質問しておるのは、施設の関係に一ついては運輸省がこれは認可を与えた事業所ということになるだろうと思いまするので、したがって、事故の原因がどこにあるかということを私のほうで掌握をしていないわけですから、施設に基因をしてこの傷害事故が起こったのであるかどうかということについて、そうでないならそうでないでいいのですよ。それから、施設は全く無関係なら無関係ということになれば、あとは労働安全上の問題になると思いますから、その点を明確にしたいというつもりで聞いているわけですから、その点を明らかにしてもらえばいいのですよ。

芥川輝孝運輸技官(船舶局長)

○芥川政府委員 その点につきましては私どものほうでは現状をつかんでおりません。したがいまして、施設に欠陥があったのか、あるいは取り扱いの不備であったのか、ただいままでの調査ではわからないのでございます。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 御指摘の竹原造船所における事故でございますが、三百五十トンの第十一福栄丸という船においた発生した事故でございます。この船の最前部の船倉内でフーレムの切断作業に従事しておりましたのですが、昼の休憩時間にガスのせんを締めて昼食に出かけた。ところが、戻りましてから作業を再開するときに点火いたしましたところが、アセチレンガスが漏洩しておりまして引火爆発を起こしたというケースでございます。三名の労働者が火傷を負いまして、休業一週間程度の負傷を受けたということでございます。  それから、造船所における労災保険の加入手続は、加入いたしておりまして、すでに四月十五日に休業補償の支払いを行なったということでございます。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 いまの基準局長の答弁は事実とは相違はしていないでしょうね。私のほうで知っているのは、一週間くらいの休業という、そういうなまやさしいけがじゃないわけです。大体約三週間くらいそれぞれ入院をしている人が二人、一人の人はそう重くないようです。ですから、現地の報告があなたのところにそういうふうに来ているとするならば、これは私のほうの調査とだいぶ違っていますので、もし、私のほうの調査が間違っていれば別です。あなたのほうでもっとこの事実を確かめてもらう必要があると思うのです。  それから、いまの話によりますと、これは労災の適用はしているということになりますね。これは間違いありませんか。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 たいへん失礼しました。ただいまの火傷の程度でございますが、最初の報告では一週間程度という報告のようでありましたが、四月十五日に支払いました金額から申しますと、休業の日数はそれよりだいぶ多いようでございます。いま数字が手元にございませんので、金額から推定いたしますと一週間程度ではないということは確実のようでございます。  それから労災保険の加入状況は、加入いたしております。  そこで問題は、保険料を納入しておるかどうかという問題になってまいります。昨年の労災保険法改正以前でございますと、労災保険料の滞納の場合には給付制限を行なうという問題が生じてまいりますけれども、昨年の労災保険法の改正後におきましては、この給付制限の規定が緩和されまして、休業補償費等については支給制限をしないというたてまえになりましたので、労働者に対する補償そのものについては支障はないということでございます。保険料の滞納はございますけれども、ただいま申したようなことで給付には差しつかえないということでございます。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 そうしますと、これは労災法のたてまえから見て、労働者に対する保険給付は行なわれている。事業所自体の保険料の納入の実情についてはまだ調査を完全にしていないということですね。そこを知りたいのです。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 昨年の四十年度の第一期分と第三期分は保険料を納入しております。第二期分が約束手形が不渡りとなったという経済的な事情もございまして、滞納しておるということでございます。ちょっといま滞納金額は私承知いたしておりませんが、いま申しましたように、三期に分割して納入するものについて、まん中の二期について滞納がある。八万九千円くらいの金額だそうでございます。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 大体わかりました。  それから通産省にお尋ねをしますが、先ほどの船舶局長の答弁によりますと、この会社はブルネイという国に進出をして造船所を向こうにつくっている、こういうお話でございますが、ブルネイという国は、人口は十万弱で、たいへん小さい国だそうでございますが、非常に資源その他が豊富で、野心のある者はねらっているという国らしいのです。それで通産省の方にお尋ねしたいのは――通産省来ておりますか。

藏内修治自由民主党

○藏内委員長代理 吉村君に申し上げますが、今村貿易振興局長が来ております。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 私は日本の企業あるいは資本が海外に進出をしていくことそれ自体はたいへん望ましいことだというふうに思います。しかし、そのことはやはり日本の産業なりあるいは日本の技術なりというものが国際信用を害されないようなそういう配慮というものが行なわれないと、やがては国際信用を失墜するという危険なしとしない、こういうふうに思います。したがって、海外に進出をしていく日本の企業、これを政府が認める場合には、それぞれの関係行政官庁がその企業の信用性だとかあるいは将来性とか、あるいは技術水準とか、こういったものを調査、検討の上で認可をするものというふうに思います。これは輸出入銀行ベースということになるならば、大蔵省が最終的な主管になるだろうと思うのですけれども、聞くところによりますと、この各省の協議の窓口は通産省が行なっているというお話でございますので、このブルネイ国といまの竹原産業とが合弁会社をつくって向こうに造船所を設置をする、この認可の経緯、これはどうしてお尋ねをするかというと、海外にこういった小資本が、いかに小さい国とはいいながらその国と合弁会社を組織をする、設置をするというのは、私は異例なものではないかというふうに思うのです。そこで造船全業として海外に進出している企業というものは、これは通産省でわからなければ運輸省でけっこうですけれども、どのくらいあるのか、あわせてお尋ねをしたいのですが、このブルネイの合弁会社というものを日本政府が認可をするに至った経緯、認可をするのには何らかの基準というものが必要じゃないか、こういうふうに思いまするので、その経緯と、それから認可の基準等があるならばそれを示してもらいたい。  それから、海外への資本進出なり企業の進出については、一般に輸銀ベースというものがとられるだろうと思うのですが、その便宜は、この企業の場合には与えられているのかいないのか。あるいは向こうに造船所をつくるというのでありますから、相当資材その他の輸出というものが当然にして行なわれる。あるいは向こうに施設もつくらなければならない、こういうことになると思いますから、このプラントといいますか、向こうの施設等については、一体延べ払いのような方法でこれをやるというのかどうか。この点等について、この合弁会社の認可条件、当時の模様、それから現在の向こうの状況はどうなっているのか、これも知りておりましたら、あわせてお尋ねしたい。

今村曻通商産業事務官(貿易振興局長)

○今村(曻)政府委員 竹原造船所に対します海外投資の許可の経過並びにその内容につきまして、かいつまんで申し上げます。  竹原造船所が海外に進出をする計画を立てましたのは、昭和三十八年当時でございます。その相手先の国は、先ほど来名前が出ておりますブルネイ国でございます。竹原造船所といたしましては、このブルネイ国の現地の有力社とそれぞれ五〇%ずつの持ち株の比率で資本金六十五万四千ドルの現地法人を合併で設立をする。したがいまして、この場合の竹原側の持ち株は、その五〇%の三十二万七千ドルでございます。  そして、この合弁会社の事業内容は、船舶の建造、修理、それから陸上の建設工事、それから輸送及びこれらに関連する業務を行なう、こういう事業目的でございます。  この海外投資を許可いたします際に、一般的に申しまして、先ほど御指摘がございましたとおり、海外に日本の企業が進出するということは望ましいことでございますので、特に通産省の立場としては、不適格性のない限りこれをなるべく自由に認めていく、こういう立場でございますが、一面、お話しのように、海外においてせっかく進出いたしましても事業がうまくいかない、ひいては日本の信用を失墜する、こういうようなことがございませんように慎重にこれを審査して許可をする、こういう方針でやってまいっておるわけでございます。昭和二十七年以来、事務次官会議の了解によりまして、海外投資連絡会という関係官庁の連絡協議会ができておりまして、海外投資の場合、それが生産事業に投資をする場合であって、しかも投資額が二十万ドルをこえるもの、これはこの海外投資連絡会にかけてきめる、こういう仕組みになっておるわけでございます。  具体的なやり方でございますが、通産省がいわば窓口と申しますか、提出の書類でございますとか説明の材料、その他いろいろ初めての方にはわかりにくいことがありますので、便宜通産省で指導して書類をつくらせまして、そうしてそれを、業種によりまして通産省所管の場合は通産省の所管の局、それから他省、すなわち農林省とか建設省、厚生省等場合はその関係の省に書類を送りまして、そこで審査をしていく。そして、その審査が終わりました段階におきまして、その連絡協議会において全般的な説明を当該の申請者から聞きまして、そこでこれでよろしいということになりますると、最終的には、この海外における証券取得の許可は大蔵大臣の所管でございますので、大蔵省に書類が回りまして大蔵大臣がこれを許可する、こういうやり方でございます。  この竹原の件は、三十八年の十二月十八日に、大蔵大臣の証券取得の許可をおろしておるわけでございます。それに伴いまして、この場合の出資は現物出資、一千トンの新造貨物船一隻を現物でもって現地に持っていく、これをもって出資に充てる、こういうことでございますので、それに必要な船の輸出の承認ですね、これはこの場合は無為替輸出になるわけですが、その承認は三十九年の七月三十日付で、これは通産大臣からおりております。したがって、現在この船は現地にあるわけでございます。  それからなお、この造船所を建設いたしますに必要な機械設備、建設の資材等につきましては、約十九万五千ドルに相当する延べ払いの輸出の申請がございます。この延べ払いの輸出の申請は、現在のところまだ承認がおりておりません。この承認がおりておりません理由は、この延べ払い分に対する支払いの保証の条件に不備がございまして、したがいまして、輸銀の融資がなかなかむずかしい、こういう状態で、なおペンディングになっておるわけでございます。  以上が竹原造船所の海外投資の経過並びに内容でございますが、ただいま現地でどういう状況になっておるかということにつきましては、詳しい最近の事情は不明でございますが、昨年の暮れ、現地のジェッセルトンというところにございます日本の総領事館からの報告によりますと、現在十九名の日本人の従業員が駐在しております。現在というのは昨年の暮れでございます。しかしながら、その当時、昨年の暮れ現在で開店休業の状態、そういうような報告が昨年の十二月に現地の総領事館から到着をいたしております。  以上がかいつまんだ報告でございます。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 なお運輸省のほうへお尋ねをしておきますが、造船企業で海外に進出をしているという例は一体どのくらいあるのか、知っておったらお尋ねしたい。  それから、通産省のほうにいま一つお尋ねをしたいのは、私の聞いたところによりますと、この合弁会社をつくるにあたって、竹原造船所のほうの出資金は五〇%、この五〇%のうち二〇%は伊藤忠商事が出資をする、こういう状況にあったという話を聞いておるのですけれども、その事実はあったのか、それから現在はそれはどうなっておるのか。

芥川輝孝運輸技官(船舶局長)

○芥川政府委員 造船業の進出の状況を簡単に申し上げます。  石川島播磨重工の関係では、ブラジル造船所というのがございます。これは昭和三十二年からブラジル政府と折衝いたしまして、操業開始が昭和三十六年十月でございます。現在二万トン程度の船を建造中でございます。それから、同じく石川島播磨重工の系統でジュロン造船所というのがございます。これはシンガポールでございます。これは昭和三十七年からシンガポール政府と折衝いたしまして、それから三十八年四月新会社を設立、三十九年二月から造船所の建設に着手しております。それから次にギリシア、同じく石川島播磨の系統で、ギリシアの造船所がございます。これは三十八年の末から折衝しておりまして、現在まだ折衝中でございます。それから、若干違うのでございますが、技術援助という形で、三菱重工がインド、韓国の二カ国、それから石川島播磨重工が台湾に技術援助の契約を締結しておるのでございます。  以上が造船業の海外進出の概況でございます。

今村曻通商産業事務官(貿易振興局長)

○今村(曻)政府委員 竹原の海外投資に際して伊藤忠商事が参加しておったかどうかというお尋ねでございますが、三十八年の十二月に最初に証券取得の許可がおりました当時の状況は、竹原造船所が八割、それから伊藤忠商事が二割、こういうことで資金を出す計画でございます。その後三十九年の六月に至りまして伊藤忠商事が辞退をいたしまして、その辞退の理由は、竹原側と業務運営上意見が相違した、それでこの際辞退をした、こういうことで大蔵大臣あてにそういう承認を願い出まして、伊藤忠はそこでドロップしたわけでございます。そしてそのあとを北川美子さんという、これは個人の方でございますが、肩がわりをされまして引き受けられた、こういうふうに聞いております。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 社会労働委員会ですから、実は労使問題を中心に議論をしていくつもりでおったのですけれども、いまの問題を調べていきますと、どうもいろいろ背景となっている問題のほうを解明していかないと、根本的に労使の問題の解決にならない、こういうふうに思いましたので、それぞれ関係各省から概要を聞いたわけです。しかし、もう少し聞いてみないと、これはますますわからなくなってまいりましたので、もう少しお尋ねしますけれども、先ほど通産省のほうからのお話によりましても、日本の企業あるいは資本の海外進出については、国際信用を傷つけないように十分慎重な配慮の上で認可をする、これは当然なことでございますというお話がありました。この中で最も重要なファクターとなるものは、やはりその企業の資本あるいはその信用性、こういうものだろうと思うのです。そこで、伊藤忠商事が申請当時に資本も出すということでこれに参画をしておった。この伊藤忠商事が参画をしておったということが、三十九年の認可の際にあたって相当大きな役割りを果たした、こういうふうに常識的にしろうととしては考えざるを得ないのであります。あるいはいま一つの理由としましては、先ほど通産省の説明によりますと、造船企業で海外進出をしておるというのは石川島播磨重工業だけ、あと技術提携については三菱重工業がある、こういう状況です。石川島播磨重工業の資本力なり信用力なりというものと竹原造船の資本力というようなものは、比較にも何にもならないだろうと思うのですよ。全く小資本が海外進出をしたという意味では、異例に属するのじゃないかと私は思うのです。それを政府が認可した背景というものの中で、最も重要な役割りを果たしたものは、やはり伊藤忠商事が参画をしておるということがあったのではないかというふうに、私はしろうと流に考えるのです。これは、一体私の考えておるようなこと、すなわち伊藤忠商事の参加というものが、認可にあたって、あなた方の判断、政府の判断に対して大きく作用したものかどうかを、ひとつお聞かせを願いたいと思います。

今村曻通商産業事務官(貿易振興局長)

○今村(曻)政府委員 伊藤忠商事が参画をしておりましたという事実は、確かに、この種の海外事業を計画いたします際に、海外に明るい総合商社が一枚加わっておるというのは非常に有利な条件だということは、間違いがないと思います。ただ、その場合におきまして、伊藤忠の比率と申しますか、全体を一〇といたしましてそのうちの二でございますが、やはりこの海外企業進出の最も大きなメリットと申しますか、そういうものは、巨大な造船所を大会社が海外で経営をする、そういうもののほかに、中小企業的な造船所が、現地の実情に合うような沿岸航行の小型船舶をつくってやるということがまた独特の行き方でございまして、そういう意味では、やはり竹原造船所の持っておりますところの技術なり経験なり、そういうものが基本になって、この許可は行なわれたものだというふうに考えるわけであります。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 大体通産省の考え方、あるいは運輸省の考え方はわかりました。  それで、労働大臣にお尋ねをしたいのですけれども、この竹原造船所というのは、昭和三十四年当時は、説明によりますと約三百名からの労働者をかかえた、造船中小企業としては相当優秀な企業であった。その後現在に至って、ブルネイに相当の人を派遣をしているとはいいながら、現在は三十九名の小規模の事業場になってしまった、こういう状態です。しかもこの間、労働組合は第一組合、第二組合に分かれて、第二組合に所属をしておる方々は、ブルネイのほうに、全部と言ってもいいくらい転出をして行っておる、こういう状況になっておる。残された竹原造船所の現在の就労の状況は、先ほど労政局長の説明のとおり、実際に仕事らしい仕事はしないで、草取りなどをやっておる。賃金の不払いは、相当な額に達している、こういう状態です。こういう状態で、日本の国内の企業が海外に進出をしていくことは、通産省それ自体としては望ましいことであって、竹原造船所の技術水準あるいは経験、あるいは資本力、信用度、こういうものから見て海外進出はなし得るものということで認可をした、伊藤忠商事のことは、そう重要な役割りを果たさなかったというお話でございます。それはそれでいいかもしれません。ところが、残されたこちらのほうの造船所の状態というものは、これは何もやっていないということになる。造船事業の許可を得ながら、その仕事に携わっていない労働者は放置されたままになって賃金不払い、あるいはその他団体交渉をしようといっても、会社のほうでは責任者がいないというようなことで、団体交渉も満足に行なわれない、こういう状態なんですけれども、これは私はあまり数のない問題だとは思うのです。数少ない問題だとは思うのですけれども、日本のこの産業が、日本の資本というものが海外に向けて、東南アジアに向けて進出をしていかなければならないということは、国の方針として、技術協力とかあるいは技術援助とか、そういうことでむしろ政府が積極的に進める、そういう一環としてこの事例が生まれてきている。それはそれでいいかもしれぬけれども、残されたほうは一体どうなるのか、こういうことを労働者の立場に立って考えてみまするならば、将来は全く何の保障もないままで、そして賃金は不払いになる、いつどうなるのかわからない、こういう状態に放置されたままだ。この実情について労働大臣は一体どう考えられますか。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 たいへんむずかしい問題で、いま竹原造船所の竹原にある工場の状況なり、あるいはブルネイ国に進出した造船所の現状なり、大体私もいま初めて知ったようなわけでございますので、結果的には先生が御指摘のように、ブルネイに進出をしたその結果、竹原にある造船所のほうが置いてきぼりを食ったといったようなふにもとられると思いますが、しかし、また、これも私の推測でどうもはなはだ恐縮ですが、こちらの竹原のほうは、要するに国内にあるものはどうなってもいいという考えで、ブルネイに進出したとは、どうも常識的には私には考えられないのです。いやしくも企業家という立場ならば、私は、おそらく国内、竹原にある造船所もあるいはブルネイに進出した造船所も、どちらも成功させようという気持ちでやったんではなかろうかと、推測でございますが、そう思われるのであります。ただ、先ほど運輸省の方からも御説明がありましたように、この種の小型の鋼船の製造というものが国内において相当衰微してきたというか、そういう関係で、あるいはその苦境を脱するために海外進出をはかったのかとも考えられますが、どうもその辺の事情が私にもよくわかりませんから、これがこういうことをしてはなはだけしからぬじゃないか、本来の工場をこういう状態にして海外に出ていったのはけしからぬじゃないか、それをどう思うか、こうお尋ねを受けましても、実際私どもも、率直に申し上げまして申し上げようがございません。私は、とてもその間の事情等もよく存じませんから……。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 大臣、私は冒頭に申し上げましたように、議事を促進するつもりで実は非常にはしょって言っているのです。大臣も事情を知らないと思うから関係の当局のほうに私が質問をして、そうして事態を明らかにして、大臣に認識をしてもらった上で大臣の見解を聞いたはずです。だから、その事情を知らないと言われましても、いまそれぞれ運輸省なりあるいは通産省なり、あなたのところの労政局長なり基準局長なりからの答弁は、ずっとあなたも聞いておったはずだ。だとするならば、現在の状態がどうなっているかということを知らないという話はないでしょう。そういう無責任な答弁では私は納得できない。だから、議事を促進するつもりで、私はそういうような順序に運んだつもりです。たとえば労政局長が明らかにしたことは、賃金の未払いの問題がある、団体交渉については、団体交渉は完全に行なわれていない、あるいはまた、ブルネイの経営状態とこちらをどうするのかという労働者としての当然の疑問に対して答弁もしない、こういう労使関係だということはもう明瞭になっているわけですよ。明瞭になっているものに対して、労働大臣あなたはどう考えるのかというのに、実情を知らないというふうに言われたのでは、何のために質問することになりますか。

前田榮之助日本社会党

○前田(榮)委員 委員長、関連してちょっと。実は竹原というのは、なくなられた池田総理の出生地なんです。それで私も近いところで、大体事情は知っておるわけです。しかもいま吉村委員が言われたような事情に加えて、伊藤忠というものが竹原造船を利用したのか、竹原造船が伊藤忠という看板を一部――全部じゃない一部利用して売り込んだのか、そういう点はいろいろ想像ができると思うのですね。しかも通産省がしっかり考えてもらわなければならぬのは、三十八年ごろには、すでに竹原造船は脱税において相当な金額にのぼっておった。今日でも国税の脱税というか、税金の滞っておるものが一億四千万円、それから県税が大体五千万円、市税が八百万円、こういうものがある。これらはちっとも調査をせずにおいて、この会社の海外進出に軽率な認可を与えたところに、結局は労働者に現にしわ寄せされておる実情があるわけなんです。税金がどうなっておるか、そういうことははっきりわかっておりますか。しかも吉村委員が言われたように、それからすでに運輸省船舶局長が言われたように、海外進出なんというものは、二億や三億円の金をようやくつくるなんというような資本家にまかせるべきものじゃないことは、わかり切った話なんです。そういうことは、いままで日本にはないじゃないですか。そういうことをやすやすやったその裏に何があるか。だれがひそんでおるか、こういうことさえ、竹原地方ではずいぶんうがったうわさがされておりますよ。中には、これはうそだと思いますから名前は言いませんが、かつて国会にも議席を置き、大臣にも名前を連ねたような、これは池田さんとは違うのですよ、そういうような人が、伊藤忠との関係がどうしたというようなうわささえ立っておる。これは、私は事実は知りませんが、そういうようなことはちっとも調査をせずに、ようやくブルネイ丸というものの、つまり金の問題ではなしに、これに現物出資等を加えての出資などというようなことで、ようやく企業をやっておるような形なんです。ところが、向こうへ行ってみますと、なかなかそう簡単にいかないのです。いかないから、結局は地元の竹原造船というものを全部犠牲にして、目ぼしいやつは向こうへ引っぱっていくというようなことでやっておるのが、今日の実情なんです。したがって、現在、竹原造船の姉妹会社ともいうべき会社もございます。ございますが、そこでは造船をどんどんやっておるのです。ただ、竹原造船という現在の竹原工場だけは、仕事をとろうなんということはちっともしていない。したがって、賃金が払われぬようになると、工場の中にあるスクラップを売るようにこれを整理してくれと言うて、賃金ほしさに――労働者は、自分の仕事、自分の造船事業なら技術的にもかなりなものがあるけれども、スクラップの整理なんというものは、これは人足がするものだからやりたくないのだけれども、しかたなしにやっておる。さてやって、大体賃金に見合う額に達したと思いますると、裁判所から来て差し押えを一部して、そうしてたとえば三万円もらわなければならぬ者は、一万円はごっそり持っていかれるという実情、現実に行なわれているのですよ。そういうことについて、通産省は認可のときに――通産省だけじゃないと思う、これは大蔵省にも運輸省にも責任があると思うのですが、ほんとうにだれを信用して、こういうことを間違いないという計算まで立ててやったのかどうか、そういうことをはっきりしてもらいたいと思う。そうして労働大臣は、こういうようなだらしのない実情が大体おわかりになったろうと思うのですが、これをどうお考えになるかということを吉村君が聞いておるのですから、その点を明確に御答弁を願いたいと思う。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 先ほど来の質疑応答を通じまして、どういう手続を経てこのブルネイの造船所ができたのか、あるいはその状況がいまどうなのか、あるいは竹原にある造船所がどういう状況になっているのかというようなことは、もちろん私は大体承知をいたしたのです。いたしたのですが、こういう事態になったことは、結局こちらを置いてきぼりにして海外進出というものをあえてはかった、こういったことはけしからぬじゃないかといったような御趣旨に先生の御質問を承りましたから、これはなるほど形式的な経過というものは承知しました、現状も承知しました、しましたが、一体どういう考えに立ってこういう計画をしたのか、その辺のところは、別段私は説明は詳しくなかったと思うのです。ですから、そこらをわからずに、どうもこういう事態になったのはけしからぬ、現状はまさにけしからぬでありましょうし、労働者にとっては非常に困ることであることは言うまでもございませんし、特に労使間の話し合いをしようと言っても話し合いにも応ぜぬということであるならば、これが不当であることは申し上げるまでもない。そういう意味での現状で、労使の話し合いにも応ぜぬとか、あるいはときどき遅配なり欠配なりがあるという事態がどうかという御趣旨ならば、これはもう会社側と申しますか、使用者がもっと誠意を持って、労働者側と善後処置について当然団交等を通じて話し合って処置をすべきものだ、かように思います。  ただ、念のために申し上げますが、先ほど労政局長から遅配の関係の話がちょっとありましたが、基準局の系統での調べですと、若干の遅配はありました。過去三回ほど遅配あるいは欠配というのがあったようです。四十年十月分、四十一年三月分、四十一年四月分、それぞれあったようでございますが、これらは申告がございまして、その後監督署のほうで監督いたしました結果、それぞれその支払いが済んでおる。たとえば本年の四月分につきましては、三十六名につきまして総額七十八万四千八百四十二円のうち三十八万六千七十円を四月末に支払ったが、あとの残額の三十九万八千七百七十二円は、今月の二日、すなわち五月二日に支払いを完了した、こういうことになっておりまして、このとおり間違いないだろうと思います。なるほどおくれてはおりますが、賃金の支払いは一応済んでおる。それをどこから捻出したかは、いま別途お話がございましたから、どこから資金をつくったか存じませんが、これからすれば、今日現在においては、おそらく賃金の不払いという問題は一応解決している、そうであろうと私は信じておるわけでございます。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 大臣、私は、いまのような答弁ならば、何も先ほど大きな声を出す必要はなかったのです。大体のところ全部説明をしていただいて、現在ブルネイに相当仲間が行ってしまっておる、だからこちらのほうの設備は向こうに持ち出されていく、草取りを毎日させられる、そして今後の経営は一体どうなるのかという心配を当然労働者としては持っておる、それについての説明を求めてもさっぱり要領を得ない、いわば逃げ回って団体交渉にも応じない、こういう状態なんだから、したがって、この状態について大臣はどう考えるかという質問をしたわけです。ところが、あなたのほうではそういうことはわかりませんと言うから、そんなわからないのでは質問しても始まらぬと思って、しかも便宜を計らってわかるように質問をしたつもりなのにわからないと言うから、それではどうにもならぬということになる。それで、それはいいです。  いまの賃金不払いの問題については、私が調査をしたものといま大臣が答弁した内容とは、だいぶ違っております。だいぶ違っておるというのは、これもどのくらい信憑度があるのかわかりませんが、実はこれは運輸省のほうで調べてもらったものによりますと、一月分は半額未払い、二月分半額未払い、三月分半額未払い、四月分半額未払い、こういうことになっておりまして、なお、賃金については毎月遅配、欠配ということで、四月分についてはスクラップを処分して残額の一部に充当をしている、こういうことでございますが、もとよりこのことを、私が絶対にこれが正しいというふうに申し上げるのではありません。その監督官庁は労働省のほうでございますから、いまの答弁は、大臣の答弁でございますから責任の持てるものというふうに私は了解をいたします。したがって、賃金の不払いは、今日までのところ五月二日に全部解消した、こういうことに確認をしてよろしいと思いますけれども、もしこれが事実でなかったら私は将来追及しますよ。現在のところ大臣の答弁というものを、これからも実情を調べてみなければならないと思いますけれども、そうすると、賃金不払いは今日ではないということですね、責任を持って言ってください。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 大臣が申し上げましたのは、四月分の例をとりまして、三十六名については総額七十八万四千八百四十二円、これを支払い日のその月の末に支払ったのが三十八万六千七十円……。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 めんどうくさいものは要らないから、いままで遅配があったかどうか言ってくださいよ、時間がかかってしようがない。

村上茂利労働基準監督官(労働基準局長)

○村上(茂)政府委員 それで、過去にわたっての賃金不払いの金額は、トータルは出しておりません。そこで、いまちょっと全体について全然ないが、これは手元に資料がございません。少なくとも大臣が申し上げたように、十月分、三月分、四月分といったような申告を受けまして、遅払い額というものは全部支払いました、こういうことです。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 大臣の答弁は、私の調べたものと少しく違うようだから、最終的に確認をしておかないと、また議論の種になると思って言っているわけですよ。大臣が先ほど答弁したのは、少なくとも今日の段階において、五月二日に遅払いは全部解決しました、こういう答弁をしましたから、それに間違いがないかどうかという質問をすれば、今度は、基準局長がまたそれと違った内容の答弁をする。それなら、もっとはっきりしてくださいよ。政府の考え方、実情をはっきりしてください。

小平久雄自由民主党労働大臣

○小平国務大臣 私が先ほどこの手元にある報告書に基づいて、四十年十月分とか四十一年三月分とか四十一年の四月分とか、これらについて、支払い日は毎月末になっておりますから、それまでにときに欠配もありましたが、その報告によりますとそれぞれ支払いが済んでおる、最終の四月分も、今月の二日ではございますが、支払いを完了した、こういうことになっておりますから、この報告書どおりであるものと私は今日では信じております。もしこの調査が間違っておるならば、これは私の労働省の系統で調べたことですから、その節はまたおわびをしなくちゃなりませんが、この報告書は私は一応信頼せざるを得ないです。

前田榮之助日本社会党

○前田(榮)委員 関連。それは、私は五月一日に竹原へ行って事情を聞いて、その一日のときには、まだ四月に全部納まっておりません。けれども、これは中央の問題になるおそれがあるということでいろいろ向こうで議題になりまして、急にあわてて、その報告は何日の報告か知りませんけれどく、おそらくそれよりも後に払ったのだと思います。だから、中央でしっかりしないと払わぬようになるということなんですよ。よろしゅうございますか。それだけよく考えてください。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 大体もっと出先の労働省の、これは監督署ですか基準局ですか、基準局があるのかどうか知りませんけれども、そこのほうで、もう少しこういう実情を掌握されて積極的に解決に当たる、こういう姿勢、そういう本省からの指導というものをしないと、国会で問題になりますよというようなことで初めて納めるような形はいいものではないのですから、この点は、いまの状態のままで大臣の答弁を信用していく以外に私としても方法がないわけです。こういった問題は、国会等で取り上げる以前に実は解決をしてもらわなければいけない、こういうふうに思いますので、これはひとつ現地のほうを、ここばかりじゃないと思いますから、よく指導してもらいたいと思うのです。  それで、なお先ほど前田委員のほうからもお話がありましたけれども、きょうは、私は大体労使関係の問題を重点にしたい、こう思っていますけれども、非常に不明朗な問題があるやに考えられるのです。もとよりこれは真実はわかりません。わかりませんけれども、中小の造船企業で、しかも昭和三十四年当時は三百名くらいの従業員をかかえた企業であったそうですが、だんだんとそれがうまくなくなってきて、それで三十八年ころにはたいした企業成績でもなかった。そういう企業が合弁会社を組織し、設置をすることに対して、通産省、運輸省、大蔵省、ずいぶん慎重にやったそうですけれども、これは認可を与えて、先ほどの話によると、開店休業の状態でございます、こういうことになります。これは、それ自体は労働省の問題ではないと思うのです。しかし、国務大臣としては、この点をこの機会に実情を知ったわけですから、これは今後十分監視をしてもらわなければいけない、今後のあり方等についても十分配慮をしてもらわなければいけないだろうと思います。特に労働問題として申し上げますならば、このブルネイという国にこの事業場から十何名かの労働者が行っている、こういうことでございます。この労働者が、もし不幸にして労働災害等あった場合にはどうなるのかということになれば、これは現在の国際労働機構のあり方等からすれば、向こうの国の法律、規定に従わざるを得ないということになるだろうと思うのです。ブルネイという国は、まさに珍しい人口十万という国だそうでございますから、どういう社会保障の制度があるかわかりません。わかりませんけれども、おそらく完備されたものを持っているというふうには考えられない。特に日本の対外進出をしていこうとするところの東南アジア諸国は、いわば未開発国ですから、そうしますと、ここにも企業の進出と同時に、技能労働者もこれから相当多く行くという事態が予測をされるわけです。こういう場合に、日本の国民が海外に行って、そして不測の事態が起こったことに対する補償というものは、その国の法律の適用を受けるということになるわけですから、それらの国々は、社会保険あるいは社会保障のそういう制度というものが確立されているということは、とうてい予測するわけにはいかないのです。ですから、国としてそういう政策を進めるのにあたっては、国民の生命、財産、健康、こういうものを保持するという、そういう政府の責任上から見ましても、民間の企業といえどもこの安全と健康というものを十分考えながらやっていくような具体的な方策は、これは労働省ばかりではないのですけれども、政府全体としてもっと総合的な見地から確立をする必要があるだろう、こういうふうに私は考えておるわけです。したがってこの点については、これはきょう出席の通産あるいは運輸、労働というだけの問題ではありません。外務省その他全部あると思いますけれども、政府全体として、東南アジア貿易とか東南アジアの技術協力とか資本進出とか、こういうことをやろうとするのですから、当然予測される問題については、ひとつ万遺憾なきを期するような対策を確立する必要がある、こういうふうに思いますので、この点も強く要請をしておきたいと思うのです。  それから、この機会ですから申し上げますと、私は、海外の日本の信用を失墜しないために配慮をしておかなければならないと思いますことは、たとえば造船事業というような場合には、その船の安全な航行ということが一番問題になる。そうしますと、当然にそこに働く労働者の技能水準というものが問題にならざるを得ないと思うのです。単にだれでもいいというような、そういう仕事ではないはずなんです。溶接もあるでしょうし、あるいはその他の特殊な技能を要する、そういう仕事であると思います。造船の場合について言えば、そういうことが予測をされます。その他の事業の場合にも、それぞれ必要な技能水準、相当高度な経験というものが要請をされる、こういうふうになるだろうと思いますから、単に何かで行っているからいいというふうな、そういうことだけで海外進出をしていくということになれば、いままでないからいいようなものの、もし日本の企業でつくった船が何かの事故を起こしたということになれば、これはそれこそ海外信用を失墜するということにもなりかねない。ですから、そういう点についても、やはり労働省としても技能労働者の派遣等については十分重要視して、目を光らしていくということが国家的な見地から必要ではないか、こう思います。  最後にお尋ねをしておきたいことは、そういうことで、実は日本にあるところの竹原造船所というものは、まさに造船事業を放棄したような形のままになっている。この事業の認可を与えたのは、これは運輸省だということになります。造船事業として認可を与えていたものが、造船事業をやらないという状態が何日か続いて、これからも続く可能性が強い、こういうふうになった場合に、監督官庁としてはこの点は一体どうなされようとするのか、これをひとつ運輸省のほうから明らかにしてもらいたいと思う。

芥川輝孝運輸技官(船舶局長)

○芥川政府委員 ただいまおっしゃいました事業認可ということは、運輸省ではやっておりません。造船法によりまして、施設の許可をやっておるわけでございます。したがいまして、それで施設の許可を受けますと事業者は適宜事業を開始できる、こういう状況でございます。  それから、造船事業をやらない場合につきまして申し上げますと、竹原造船所におきましては、要するに注文がとれないから造船事業がやれないかと思う次第でございまして、御承知のように、ただいまのような内航船の注文が特に減っております場合には、その会社に若干何か欠点がございますと、なかなか受注ができないのが実情ではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。  それから、事業をやめました場合には、二カ月以内に造船法による届け出をすれば足りる、そういうことになっておりますので、あくまでも事業者の自由意思にまかせて事業の廃止を認めておるというふうになっております。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 それは造船事業の認可を与えているのではないけれども、施設についての、これでいいという認可は与えているわけでしょう。そうなれば、当然この竹原造船所は、先ほどの例から見ますと、施設の監督権というものはあなたのほうにあって、そして造船事業をやる施設としてこれが妥当だということで認められた企業、こういうふうになってくると思いますから、実質的には、私はこの場合について言うならば、認可を与えているものは運輸省のほうだ、こういうふうに見ていいのではないかと思うのです。  そこで、私がこのことを申し上げますのは、竹原造船所という国内におけるところの企業を通じて、いろいろな資材や何かを購入していると思うのですよ。しかし、おそらく、こちらでやらないとすれば、その購入された資材は、トンネル式で全部ブルネイのほうに行っているというふうに見て見れない節はない、こういうことになるだろうと思うのです。しかも、そこには従業員が放置されたままで、一体将来どうなるのかわからないという状態になっている。運輸省としては、造船事業の健全な経営の維持発展、こういうものを願ってそれをやっていかなければならない監督官庁のはずだと思うのです。いまの状態は、そのあなた方のほうの任務からするならば、はずれた状態にあるといわなければならない。海外にあるところのブルネイのその合弁会社については、これは海外ですから運輸省の監督権は及ばないということになるかもしれませんけれども、国内にある造船所については、あなたのほうの監督権が及ばないとは言えないはずだ。ですから、そこでどういう方法をとっているのか私はわかりませんけれども、こちらに造船所が残っている以上は、資材や何かが購入されて、そのまま向こうに行っているというふうなことだってないことはないと思うのです。そうしてこちらで全然造船企業としてやっていかないというようなことを、放置しておくという話は私はないと思うのです。ですから、このことについても、十分監督官庁として行政指導なりあるいは監督というものを強化していただかなければならぬ、こう思うのです。  それから労働省としましても、先ほど申し上げたような事情でございますから、数は少ないですけれども国策全般に関係する問題だというふうに私は冒頭に言っておきましたが、いま当面の該当している労働者の数は少ない。少ないけれども、草むしりをさせられたり、スクラップを集めさせられたり、給料が払えないからスクラップを売って賃金を払ったり、こういう状態のままで一体あすどうなるのか、将来どうなるのかわからない、団体交渉も満足にできない、こういう状態のままに放置されている。これを労働省としてそのまま見のがしてはならぬだろうと思います。ですから、事はここまで明らかになったわけですから、運輸省のほうと労働省のほうで十分に実態を掌握された上で、労働者がほんとうに不安なく毎日の仕事に携わることができるような、具体的な措置を早急にとってもらわなければいけないと思うのです。それを早急にやっていただきたいと思いますけれども、やっていただけますか。

三治重信労働事務官(労政局長)

○三治政府委員 先ほど冒頭にちょっとお断わりしましたように、大体きょうの運輸省その他関係官庁のほうからの御説明で十分私のほうも事情がわかりましたので、県当局に申しつけまして、会社としてその不安な従業員に対してどういう見通しかということぐらいは早くきめて、会社従業員に対する安心感と申しますか、あるいはその従業員に対する処置というものを、はっきり態度をとらせるように県当局に指示してみたいと思います。

吉村吉雄日本社会党

○吉村委員 これはぜひ早急にその作業を進めていただいて、その結果あるいは経緯等については報告をしてもらいたいと思います。  それからこの合弁会社の認可の経緯、今日の状況、こういうことについては非常に問題がふくそうしていると私は思うのです。私の調査も不十分なので、しかもきょうは社会労働委員会ですから、そちらのほうにはあまり重点を置かないようにしたのですけれども、どうも聞けば聞くほどに背景が複雑なように考えられます。ですから、いずれ機会を改めてこの竹原の造船所の問題等については質問をしていきたいと思っていますので、その点についての質問は留保して、一応きょうの私の質問を終わることにします。

前田榮之助日本社会党

○前田(榮)委員 関連。もう時間が押し迫ったので、質問は私も保留いたします。そこで通産省に頼んでおきますが、認可後にブルネイの造船所のほうへ、機械、それから資材等について日本から言うと輸出するわけなんだが、輸出許可をしたものの月日と量、今日までどうなっておるか、これをひとつお知らせを願いたいと思います。いろいろ私のほうでも現地の調査をしつつありますから、あらためて御質問することにいたします。

藏内修治自由民主党

○藏内委員長代理 次会は明十一日午前十一時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四十九分散会

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