建設委員会 第30号
- 発言数
- 42 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1966/06/07
会議録
○田村委員長 これより会議を開きます。 土地収用法の一部を改正する法律案及び土地収用法の一部を改正する法律施行法案の両案を一括議題とし、審査を進めます。 本日は、両案審査のため、参考人として東京大学教授であります雄川一郎君及び加藤一郎君の両君が御出席になっております。 この際、参考人に一言あいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとう存じました。さきに御通知申し上げましたとおり、ただいま本委員会において審査中の土地収用法の一部を改正する法律案及び同施行法案につきまして御意見を拝聴し、審査の参考にいたしたいと存じます。つきましては忌憚のない御意見の開陳をお願いいたします。 議事の順序は、まず参考人に三十分程度の意見の開陳をお願いして、その後委員各位から質疑を行なうことにいたしたいと存じます。 なお、発言の順序は、雄川参考人が都合により十二時ごろに御退席になりますので、雄川参考人からお願いいたします。 それでは雄川参考人。
○雄川参考人 私、ただいま御紹介いただきました雄川でございます。 今度の土地収用法の一部を改正する法律案について何か意見を述べるようにということでございますが、実はこの改正法案を拝見いたしましたのがそう前のことではございませんので、したがいまして細部にわたっては実はまだ検討をいたしておりません。それで本日はあるいは多少大まかなことになるかと思いますが、この改正法案に盛られておりますいろいろな制度につきまして、ごく一通りの感想を述べて責任を果たさせていただきたいと思っております。 この改正法案に対する私の総括的な所感を最初に簡単に申しますと、この改正が収用手続のいわば技術的な手直しをしようという意味では、ここに盛られた諸点については大体賛成でもありますし、またそれらの中には今後の収用制度の方向としても注目すべき意味を持った改正がなされております。そういう意味では、今度の改正が別にたいした問題を含んでいる、あるいは大きな難点があるというわけではないように思われます。 ただ問題を少し根本的に考えまして、収用制度のあり方というのが現在のような形でいいだろうかということになりますと、今度の改正はやはり従来の収用制度ないし収用法の体系のワクの中でなされているわけでありまして、むしろ私どもの考えでは、現在の収用法の体系そのものにやはりいろいろな問題があるので、そういう点に本来であれば全面的に検討を加えるべきであろうと思っているわけであります。そういう意味からいたしますと、今度の改正はやや断片的、技術的な手直しにとどまるものでありまして、将来の残されたいろいろな問題があるのではないかというように考えられるわけでございます。 そこで、今度の改正の眼目といいますか、今度の改正の中心点、そのやり方の要点を見てみますと、私の見るところでは、大きく分けますと三つの点があるようであります。 一つは、いわゆる土地の評価基準を固定したことでありまして、事業認定時を基準といたしまして、そのときに土地の価格の基準時を固定して、以下土地に対する補償はそのときの値段を基礎としてやっていこうというのが、その一つの点であります。 第二の点は、その半面といたしまして被収用者の利益を保護するためにいろいろな制度を考えたということであります。それは、一つは事業認定の告示後一年以内に裁決の出講をしないといけない、あるいは被収用者の側から裁決の申請を求めるという手続を開いていること、あるいは収用委員会の裁決によって補償金がきまる前に被収用者のほうから補償金の支払い、いわば仮払いでありましょうが、仮払いを請求するという道を開く、あるいは先ほど申しましたように、地価を事業認定時に固定をするといたしまして、その後のいわゆる一般物価の値上がりあるいは一般的な貨幣価値の下落というものを勘定に入れるというような点であります。これが第二のいわば被収用者の利益保護ということでございます。 それから三番目のグループが、以上の二つを実現するためのいわば技術的な手当てでありまして、これはたとえば従来一本の裁決手続でなされておりましたものを権利取得裁決と明け渡し裁決に分ける、あるいは事業認定はするけれどもそこですぐに以後の手続を進めないで、一たん手続をやめて、またあらためて手続を始めるといういわゆる手続の保留と、手続の開始決定というような制度を導入したこと、あるいは土地細目の公告手続を廃止したこと、それからまた、裁決の申請のための法定要件としての被収用者と起業者との間の協議を廃止したというようなこと、それから、裁決手続が開始されますとそこでそれを登記いたしまして処分の制限を明らかにしたというような点でありましょう。 今度の改正法の内容を大まかに分けますと、そういう三つのグループに分けられるようであります。 そこで、それらについてごく簡単に意見を述べてみたいと思いますが、まず今度の改正の基本は、言うまでもなく評価基準時を繰り上げて、そうして固定をしたということであります。これはおそらくこういう立法の直接の理由というのは、いわゆるごて得を除くとか、あるいは当該事業が施行されることによって生じた利益、いわゆる起業利益でありますが、起業利益を土地所有者のみに帰属させるのはおかしいので、それを吸い上げるという、その動機に基づいているのではないかと思われます。それもむろん意味のあることでありますが、私の考えからいたしますと、こういうように評価基準時を一定の時期に定めて固定をするということは、補償の、何といいますか画一化あるいは統一的な補償という意味では、将来の合理的な土地取得制度へ向けて一歩を進めたという意味もここには認められるのではないかというように考えております。つまり大きな、たとえば東海道新幹線というような鉄道事業にいたしましても、あるいは名神道路、東名道路というような長い道路事業にいたしましても、あるいは広範囲にわたって地域を開発するというような場合にいたしましても、そういう場合に大きな土地を取得するというのは、これは私、人間のいわば偶発的な売買、たまたま甲という人がたまたま乙という人と取引をするという場合とは全然性質が違うものであります。ですから、そういう大規模な公共事業のために必要な土地を一定の時間の中に取得をしていくという場合には、やはりそこでの対価といいますかあるいは補償というものに統一的な基準が本来なければならないものでありまして、またそうすることによって起業者としても計画的な事業の遂行が可能になりますし、それからまた土地を提供する側でもその間に不公平がなくなるということになるであろうと思われるわけですが、現行法のように裁決時を基準とするということでございますと、具体的な裁決がされることによってそれがまちまちになるわけでありまして、これは合理的な制度ではなかったのではないかというように、まあ私は考えているわけです。 そういう意味からいたしますと、今度の改正はこの点ではそういう土地取得制度の合理化へ向けて一歩を進めたと称することができるのではないかと思われます。ただ、こうすることによって、ほかの効能でありますが、たとえば地価の上昇あるいは騰貴というものをどれだけ押えることができるだろうかということになりますと、これはかなり問題で、私はそういう方面を専門にしておりませんので、よくわかりませんが、事業認定時に繰り上げれば、なるほど現行の裁決時を基準とするよりも多少の効果が補償費としては出てくるだろう、そうするとそれだけ安く土地が買えるわけですから、したがって起業者なりあるいは国なり公共団体なりが同じ額の金を持っておればそれだけたくさんの土地が買えるということになるはずでありまして、したがって大量に土地を供給することができるだろう、そうなれば地価についてもその騰貴をある程度押えることができるだろうということはあり得ないことではないと思いますが、どの程度の効果があるのか、これは正直に申しまして私にはよくわかりません。それからまた、事業認定を基礎とするわけですから、事業認定の時期をおくれると結局何もならなくなるわけでありまして、これは言うまでもないことでございますが、そういう大規模な事業の計画がある程度早くわかるということでありますと、そのときから土地がどんどん値上がりをしていくわけでございます。それにもかかわらず事業認定をいつまでもぐずぐずしてやらないということでありますと、今度の改正法をやってみてもたいした効果がないということになりますので、この点はこういう公共事業については事業認定をなるべく早く受けるというようにやっていくことが必要ではないかと思われます。これはそういう技術的な便宜論ばかしでなくて、先ほど申し上げましたように、大規模に土地を統一的に取得をするという見地からいいましても、できるだけ起業者としては早く事業認定を受け、収用法の手続に従って土地を取得していくということが必要なのではないかというように思われるわけでございます。 それが第一の点でございますが、二番目の被収用者の利益保護のためのいろいろな制度でございます。これについてはそう大きな問題はないと思います。ただ実際問題として一年以内にやれということに無理があるかないかということがあろうかと思います。法律上の観点からいたしますと、これらの制度というのは、もしそういうことができれば別にやって悪いことは一つもない、むしろ好ましいことでありまして、別段の問題はないように思われます。ただここまで被収用者の利益の保護の手続をとりましても、なお起業地とそれから起業地の中で土地を収用された者と、それからその周辺の者とのアンバランスは残るように思われるので、こういう点はアンバランスがあってもいいという考え方もありましょうし、それからまた、ある程度のアンバランスがあるのもやむを得ないという考え方もありましょうし、あるいは別にこのアンバランスを是正していかなければならないという考え方もありましょうが、いずれにしても今度の改正ではアンバランスの問題はまだ全面的には改正されていないようであります。 それから第三番目のいろいろな技術的な手直しの点でありますが、この点は問題がこまかくなりますので、一々お話しすることは省かしていただきたいと思います。ただ、この中で収用制度の体系的あるいは理論的な見地からちょっと注意されますのは、協議を廃止したということであります。従来の土地収用法が、まず当事者で協議をして、協議がととのわないと裁決に持ち込むということを基本の筋としていたわけでございますが、その考え方は何と申しますか、当事者の自治あるいは当事者の自律という考え方をかなりの程度において法律自身が取り入れていたわけでございます。つまり土地の値段が幾らであるか、幾らで売るか買うかということを当事者の話し合いに法律上も一応はまかせまして、そこで話し合いがつけばそれでよろしいという考え方をはっきりとっていたわけでありますが、しかし、そういう当事者の自律あるいは当事者の自治にまかせる主義というのが収用制度全般の立て方からいって好ましいかと言いますと、私は従来からそれは適当でないというように考えていたわけでございます。 その理由は、先ほど申しましたように、計画的に公共事業を遂行していく。そのために広範に大量の土地を一定期間に手に入れなければいけないという場合には、そういう個別的な売買とは違いまして、当事者の話し合いで事をやるというのは、とかくその間にブローカーの暗躍その他の弊害を伴いがちでありまして、むしろ客観的な手続に乗って統一的な基準で事を処理していくのがいいというように考えていたわけでございますが、そういう意味からいたしますと、今度の法律が少なくとも法定協議の制度をやめたということは、まずその方向に向かって第一歩を進めたのではないかということが言えるわけであります。ただそうは言ってみましても、事業の認定を受けてから事実上、当事者、すなわち起業者と被収用者との間で話し合いをするということは、これは今度の法律のもとでもむろんあり得るわけであります。現に協議の確認の制度はこの法律は残しております。そしてまた、その当事者の話し合いできまっている限りにおいては補償金額の基準を事業認定時に固定をしたといいましても、それは別段拘束されないことになるわけでありますから、考えようによっては幾ら高い金がそこできまってもしかたがないし、またそういうことはあり得るということになるわけであります。したがって、この点も、先ほど申しましたように、こういう制度をとる以上は、起業者としては原則的に収用手続の上に乗せて、そうしてこの法律によって出てくる基準に従って事を処理するということをもう一度強調しておく必要があるのではないだろうかというように思われるわけでございます。 それからまた、この点に関連いたしまして、いま申しましたような意味で買収価格について当事者の自治の原則を捨てるといたしますと、これにかわるものが何かなければならないということになるのではないかと思われます。つまり値段が幾らであるかということは、あるいは客観的にある土地の値段が幾らであるかということはそう簡単にはわからない場合が少なくないと思われますが、そういう場合に当事者が、たとえば坪十万円なら十万円でいいと合意をすればそれでいい。これがさっき申しました当事者自治の考え方でございますが、それを原則的に捨てるということになりますと、これにかわるものとして、そういう地価の客観性を担保する何らかの手続なり、あるいは組織なりがなければならないのじゃないだろうかという感じがあるわけでございます。それがありませんと、たとえばこの法律の中で、先ほど申しましたように、事業認定後に裁決手続に入りますと、被収用者としては補償金額を一時かりに払えという請求ができるわけであります。その補償金の支払いについては起業者の見積もりによる金額を支払うということになっておりますが、起業者が一体何に基づいて見積もりをするのかという問題が法律的には出てくるわけであります。これについては、この法律では一応手当てはされていないようでありますが、この点は立法的にはかなり問題があるところでありまして、たとえばかつて問題になりました地価公示制度のようなことを考慮するか、あるいは単なる起業者の見積もりだけでなくて、何らかのそういう評価の客観性を担保する組織なり、あるいは手続なりが必要なのではないだろうかという感じがするわけであります。要するに、この協議を廃止したということについては、理論的あるいは原理的には合理的な方向であろうというふうに思われますが、それだけでは問題は片がつかないわけでありまして、ほかにも考えなければならない点が残っているのではないかと思われます。 以上が今度の改正法の中に盛られたいろいろな制度についてのごく簡単な感想でございますが、最後に一言全般的な感想を申しますと、最初に申しましたように、問題は、やはり基本的には収用制度そのもの、あるいは公共事業のための用地取得の制度そのものも検討すべきではないか、またそういう時期になっているのではないかという感想を私は持っているわけでありまして、現在の土地収用法の体系なり考え方なりは、私に言わせますと、要するに点と線の土地を個別的に収用するということを基本とする制度であろうと思われます。たとえば具体的に学校用地を取得するとか、公園を建設するとか、あるいはある鉄道、ある道路を建設するというために、そこの土地だけをねらって個別的に収用していくというのが現在の収用法の立て方であります。したがってそういう狭い意味での起業地以外のことは現在の収用法は考えていないわけでございます。ですから、そこで、土地を提供した者は、補償金をもらって別の土地を買うなり何なりする。それからその土地の上に乗っている建物は移転をするという主義でできているわけでありますが、そういう制度が合理的に動いていく前提としては、私は二つなければならないと思うのです。一つは、土地が、少し大げさに言えば無限にあるということであります。つまり、どこかの土地を提供すれば、それにかわる土地は幾らでも求められるという点が一つと、それから、いわゆる土地の市場といいますかマーケットがオープンになっているという点がその前提になるのじゃないか。だから、そういう公共用地を取得いたします際に、当事者の協議できめればそれでよろしいし、それが何らかの理由できまらないという場合であれば、それにかわるものを収用委員会の裁決によってきめるということに動いていくわけであります。ところが現在の日本にはそういう二つの前提がないわけであります。したがって、今後の収用法の方向としては、そういういわば点と線の個別的な収用制度から、もっと広い範囲で事柄を考える、また計画的に用地を取得するという制度へ持っていかなければいけないのじゃないか。いわゆるアンバランスの是正とか、あるいは起業利益の帰属を合理化するというようなことも、そういう問題として考えていかなければならないのであろうというように思われます。こういう点から言いますと、今度の収用法の改正というのは、やはり依然として従来の収用法の伝統的な理論と体系のワクの中で事を考えていくという感じがいたします。また事実そうであろうと思われますが、問題はむしろそこにあるわけでありまして、こういう点を将来の問題として十分に検討していくべきではないかというような感想を持っているわけであります。 以上をもちまして、ごく簡単でございましたけれども、私の話を終えさしていただきたいと思います。(拍手)
○田村委員長 次に加藤参考人にお願いいたします。
○加藤参考人 加藤でございます。 私は専門が民法でございます。雄川教授は行政法ですが、私は民法の立場といいますか、私権、私の所有権の制限という立場から考えてみて、今度のこの改正案はどうかということを申し上げてみたいと思います。 結論としましては、雄川教授と同じように、この法案に賛成ということになりますけれども、私権という立場から見てどういうように考えられるかということを申し上げてみたいと思います。 問題になりますのは、従来の土地収用法が、裁決時の価格で収用していたのに対して、今度の改正案では計画時といいますか、結局、事業認定時ということになりますけれども、そのときの価格で収用するという点が中心になると思います。この点は従来よりも補償額が安くなることが期待されているわけでありますけれども、それが憲法二十九条にいう「正当な補償」ということから見てどうかということが一つの問題だと思われます。 正当な補償といいますのは——これについて、完全な補償を払うべきだという完全補償説といいますのと、それから相当な補償でいいという相当補償説と両方あるわけでありますが、私は、一応完全な補償を払うべきだという立場に立っております。完全な補償というのは、そのときの時価、売買価格というものを補償しろということになるわけであります。しかし相当補償説といいましても、何が相当かということは、内容を見なければほんとうのことはわからないわけで、やはり相当補償説でも普通の場合はそのときの時価を補償する。何も公共のためであるからといって、安く買っていいという理屈はないはずだと思われますが、ことばの上ほどの違いはおそらくないだろうと思われます。 そこで、時価を補償するということの実質的な意味でありますけれども、それは結局、時価でその対価をもらいますと、それでもって別の同じような土地なり財産なりが買える。つまり今日の社会では価格が同じものは同じだけの価値が当人にとってはあるという前提でできておりますから、もらった金で別な土地なり建物、その他の財産を買って、前と同じような生活が確保できるということであれば、それは正当な補償と言っていいのではないかというように思っているわけであります。ただそういう場合の正当な補償といいましても、これは幾らでなければいけないという固定した金額ではないと思うので、ある程度の幅がある。つまりいままでの裁決時の補償であっても、これは正当な補償であり得たし、今度の改正案における計画時といいますか、事業認定時の補償でも、これはやはり正当な補償であり得るというように私は考えるわけであります。 この事業認定時の価格を基礎にして定めたものが、なぜ正当な補償になるかと申しますと、そこでその土地を売ってよそに買いかえたい、よそで生活を立てたいという者は、すぐにそれを売って、そして補償金をもらうことができる。そしてそれをもらえば、よそで同じような土地なり財産なりを買うことができる。そういう意味で私は、この事業認定時の価格で買収をしましても、結局前と同じ生活の保障ができるだろうというように考えるわけであります。かりにこれが事業認定時の価格を基礎にするといいましても、その金の支払いがずっとおくれる。半年とか一年先になるということになると、その間に地価が上がりまして、結局そのときに前の価格でもらったのでは新しい同じ土地が買えないという問題が出てくるのでありますが、この現在の案によりますと、その点はかなりくふうがされておるように思われます。つまりその買収区域内に入っておる土地所有者が、早く金をもらって出たいということになると、補償金の支払いの請求をいたします。そして二カ月以内に起業者のほうで見積もり価格を支払うということでありまして、それによって別の土地を買うことができる。ただその移るのがおくれたような場合には問題があるわけですが、しかし、それは本人が選択して早く金をもらって出るよりも、少しおそいほうがいいと思って選択をするわけですから、その点について差しつかえないのではないだろうか。そして補償の支払いがおくれたような場合でも、今度の案では、その間の一般物価の値上がり分を、これは計算がなかなかむずかしいと思うのですが、政令で定めましてそれをかけたものを払うということになっておりますから、それでもそう不都合は起こらないように思われます。そういう意味で、つまり早くよそへ移って前と同じ生活をしたいと思う者には、そういう道が開かれておるという意味から申しまして、私は前と同程度の生活を確保することができると考えます。そういう意味でこれは正当な補償と言って問題はないと考えるわけであります。 ただ、もう一つ考えるべきことは、まわりの土地、周辺地とのバランスの問題でありまして、これは雄川教授も言われたことでありますが、取られた土地は、事業認定時を基礎とする比較的安い価格で買収される。しかし取られなかったまわりの土地については、それによる開発利益と申しますか、その利益が土地所有者にとられてしまうということでありますと、そのバランスがくずれるわけであります。この点はあるいは学説によりましては、そういうアンバランスが生ずるから、事業認定時の価格で買うことは問題だという意見もあるかもしれませんが、私はそうは考えないので、その取られた土地を取られた土地として正当な補償が払われればいい。そのアンバランスのほうは別に補正する道を考えればいいというように思っております。その補正する方法としては、たとえば受益者負担金というような制度も考えられますし、また今度の法案と一緒に出ております譲渡所得のほうの調整という道もあると思いますが、何かそういうような形でアンバランスを是正することは必要だ。しかし、是正しなければこの制度が不当であるというわけのものではないと考えるわけであります。いまのアンバランスの是正は、理論的な問題であると同時に、実際的な問題でもあるので、まわりの土地が値上がりするのに、自分の土地だけがもとの価格で買収されるというのではなかなか抵抗が多くて、実際には土地が取得できないということが予想されますので、そういう実際的な意味から申しましても、アンバランスの是正ということは考えなければならないと思うわけであります。 これが正当な補償から考えた点でありますが、今度は逆に、こういう新しい制度をつくって何か抜け道のようなものはないかということが心配になるわけですが、それが一つは、手続保留地という問題になるわけであります。これは非常に広い面積を取得しようとする場合には、一時に資金が必ずしも供給されない。そこで、一応網はかけておくけれども、実際の取得は少しずつやるということがあり得るわけであります。その場合に、すぐに取らない土地まで地価を一応固定させるということは問題だというので、手続保留地については地価の固定がない。実際に使おうとするときから固定が始まるという制度を設けて、権利者の保護をはかっているわけであります。このこと自体は、私権の保護という点からいってけっこうなことだと思うのですが、問題はその運用でありまして、実際に土地を取得しようとする場合に少しずつぼつぼつやっていたのでは、逆に開発利益を予想した地価の値上がりというものがほかの保留地には顕著にあらわれるわけでありまして、実際にはいままでより逆にやりにくくなる面が出てくるのではないか。そこで、制度としてはこれはやむを得ないと思うのですが、運用面からしますと、できるだけ広大な土地を一挙に買収するというような予算的な方法なりを考えまして、たとえば事業をするのに五年なら五年かかるという場合でありますと、まず最初の一年で全部の土地を取得してしまう。それから二年目から事業を始めてそれを開発していくというような、先行取得といいますか、そういうような道を十分活用して、できるだけ有効に予算を使うということを考えていただきたいと思うわけであります。 以上が個別的な点でございますが、全体としてどうかと申しますと、この法案の提案理由としましても、地価対策の一部であるということがうたってあります。地価対策ということはなかなか効果的な手が打てないむずかしい問題でありまして、いまの土地収用法の改正でも、どれだけそれが地価対策として有効に働くかという点には疑問がないわけではありません。つまり、これは収用する土地はいままでより比較的安い値段で取得できるかもしれない。しかし、それは収用される土地だけの問題でありまして、一般の物価には必ずしも直接には響かないわけであります。ただ、いままで何か相場のような、あるいは呼び値というものがございまして、ある土地で非常に高く、一反が何万円で取引されたという例がありますと、ほかにそれが全部波及して、地価が一般にムードとして上がっていくというようなことがあるわけですから、収用される土地でも、少しでも安く取れるということになるならば、それは精神的なといいますか、ムードとしては、ほかの土地にも影響を及ぼすだろう。しかし、それは実際にはそれほど大きな効果はないかもしれない。むしろ、これが地価対策としては役立つとすれば、それは先ほど雄川教授も言われた点でありますけれども、たとえば宅地の大量供給にこれを役立てる。地価対策のきめ手といっては私は、やはり供給を飛躍的大量的に増加するという以外にはあまり適切な方法はないのじゃないかという気がするわけでありますけれども、これを使いまして宅地の大量供給をはかる。その点ではこのほうがいままでのやり方よりはやりやすいということになると思いますが、それで宅地を比較的やすく大量に供給できるということになれば、それは地価対策にある程度直接的な影響を及ぼし得るだろうというように思います。 ただ、その場合に、今度の法案では、事業認定時で押えているわけでありますけれども、実際には、計画を立てまして、前の筑波の学園都市の場合でもそうですか、計画ができたのはかなり前だ、実際にこれを取得しょうというのはかなりたってからになるということになりますと、認定時で押えてみても、それまでの計画による値上がり、開発利益見込みの値上がりというものは相当大きいわけであります。しかしこれは初めのばく然たる計画のときで地価を固定させるというわけにもいきませんから、地価を固定させるとすれば、事業認定時ということにならざるを得ないと思うのですが、問題は、やはり計画を立てましてから土地を取得するまでの間になるべく間隔を置かずに、計画を迅速にやるということが必要である。それからさらに、現在では計画ができましてもなかなかその事業認定ということを受けない例があるわけです。これは地元からかなり強権発動反対というような形で突き上げられまして、事業認定すらなかなか受けられない。そうするうちに、地価がどんどん上がっていくという現象すらあるわけであります。話に聞きますと、建設省直轄工事などでは、事業をやるときに必ず事業認定を早く受けろというということで指導しているようでありますけれども、そのあとで問題が起こるか起らないかにかかわらず、できるだけ早い時期に認定を受けて、事業の円滑な促進をはかるということが必要である。つまり、この制度を生かすかどうかということは、その運用の面にかかっているというように思うのであります。 以上で私の意見を終わります。
○田村委員長 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。 —————————————
○田村委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。岡本隆一君。
○岡本委員 両先生、にはお忙しい中をありがとうございました。 この法律の改正案がまず第一に、地価対策として出てまいったのでございますけれども、私は、地価対策を講じるのには、土地利用区分の確立が一番必要であると思います。それで、社会党でも地価対策案を立てまして、全国の市町村に一応、都市開発地域と申しますか市街化地域と申しますか、この部分はもう将来住宅やあるいは工場を建設していくべきである。また、この部分はもう農林業地域として確保すべき地域であるというふうに、その全国の市町村に一応法律的な規制でもって、全国を大体大まかに市街化地域と農林業地域とに分けさせる。その上に立って、その市街化地域には、土地の区画整理やあるいはまたいろいろな公共施設をどんどん進めていく。農林業地域には農林業に使う建物以外は建築を許さない。そういうふうなことによりまして、土地利用を規制していく。そういたしますと、今日のように、たとえば東海道の沿線にはすでにもう一万以下の土地はない——たとえば静岡県であるとか愛知県、私たちが鉄道で走っておりますと、もう至るところ、続いておる青田の中に点々と工場が建っていきます。一つ工場が建ちますと、その工場がもう一万、二万でその土地を買収いたしますと、その地域の農地は全部もう、いまのおっしゃる呼び値でもって一万、二万になっておる。そういたしますと、農業が今度は経営規模を拡大するために農地を買い足そうといたしましても、もう坪一万、二万というような土地を買ったのでは農業が成り立ちません。同時に、土地を持っておる人も、もうそういうふうな呼び値が一たん出ますと、その値でなければ手放さない。だから、農業が成り立たなくても、もうかあちゃん農業、じいちゃん、ばあちゃん農業でもって土地だけはじっと持っておる。だから農地が全然動かないから農業そのものが経営規模の拡大ができないから、いわゆる園芸農業に進む以外に日本の農業の進む道はない。ビニール栽培をやったり、そういうふうなことによってかろうじて活路を見出しておるのであって、ほんとうの農業のこれからの経営基盤の強化であるところの機械化農業には全然進むことができないというのが、日本農業の現在の非常に大きな隣路なのです。そういうふうな意味においては、農地の価格をぴしっと押える必要がある。また宅地の価格もびしつと押える必要がある。それには、ここは宅地化すべき地域ですよ、ここは農林業地域として保全すべき地域ですよ、また、今日の農地法というものがそういうものなんです。国民の食糧を確保するために必要な農地を保全する、そういうふうな意味において農地法というものができ、転用の許可もなかなか簡単にはできないはずのものが、しかしながら現実は農地法はあってなきがごとき状態になっておる。そういうふうな言い方からいいますと、いまにして土地利用区分の確立をやらなければならぬ、まず第一にこういうことを私どもは主張しておるわけです。 その次には、宅地化すべき地域とされた土地に対しては、これはやはり固定資産税を適正にとっていく。いまのようにべらぼうに低いところの評価額によってはとらない。ある程度固定資産税は適正にとっていく。また、その中に空閑地と日されるような——これらの土地が空閑地という認定は、それはその地域の住民に参加さして査定機関、審査機関というようなものを設ければ、空閑地というものの認定は決して困難ではないと思うのです。だから、空閑地税というような制度を設けて土地利用を促進させる、そういうふうな制度を設けなければだめだということを、かねてから社会党の私どもは主張しておるわけなんです。ところが、先日も本会議でもって、私がこの法律改正に伴って土地制度の問題について質問いたしましたら、総理が答弁いたしますのに、土地利用区分の確立の必要なことはわかっております。しかしながら、その利用の目的というものを規制するということによって憲法上の私権の問題が出てきはしないか、ある目的をきちんと、たとえばここは農林業地域ですよ、かってに売ることもできませんよ、かってに建物も建てられませんよというふうに強い規制をしてしまうということは憲法上いかがかと思う、さらにまたもう一つの問題としては、そういうふうな規制をするのには補償が必要ではないかと思う、だからそういう問題について十分な検討が尽くされるまでは土地利用区分の確立ということはできないのですと、そこまではっきりは言わなかったのですが、そういうふうな意味の答弁を総理大臣はいたしております。しかし、私はやはり土地利用区分の確立はどうしても必要である、また合理的に利用するというふうな意味からいえば、そのような規制をするということも憲法違反ではない、こういうふうな見解に立っておるのでございますが、加藤先生、いまの民法の見地から、土地利用区分の確立ということについてはどういうふうな御見解をお持ちになりますか、お教え願いたいと思うのです。
○加藤参考人 私は、結論としては土地利用区分を定めるということは非常に必要であるし、またそのやり方にもよりますけれども、憲法違反ということにはならずにやれるんじゃないかと思っているわけであります。私の基本的な考え方は、先ほど申しましたように従来と同様、少なくとも同様の生活を維持することができるということが正当な補償であるというように考えますので、そこで農地——これはちょっといまの御質問の趣旨からはずれるかもしれませんが、農地を公共目的のために買収するような場合には、農地価格としての買収でいいのではないか、一般に取引されている宅地見込みの価格で買収しなくても、農地は農地として利用しているのだから、それで買収しても憲法違反にはならないんじゃないかというような考えを持っておるわけであります。もっとも農地の場合には、そこを離れる農民にとっては、おそらく農地の農地としての価格補償だけでは前と同様な生活は営めないでしょうから、それと土地価格とは切り離して、農業という営業からくる損失の補償あるいは将来の転業のための資金、そういうような別の形で、つまり地価としてではなくして別の形で補償することが適当ではないか。合わせればいまの価格と同じようなものになるかもしれませんが、地価としては農地価格としての補償でいいのではないかというように考えておるわけであります。 いまのお話は、そういう買収の場合だけではなくて、一般的な土地利用区分の設定、それに伴う私権の制限ということのお話だったと思うのですが、いまのような基本的な考え方からいたしますと、そこで農業をやって、農業としてそこでいままでの生活を維持できるということであれば、ここでは農地として他に転用を許さないというような制限をそこに加えてもこれはやはり憲法違反にならないのではないか。それを離農したいときには農地としての価格で売って出る、そのほかに自作料その他営業補償のようなものももらうでしょうが、そういうことでかまわないのではないか。 それから、それを農地として転用を許さないということになると、今度は正当な補償ということで何か補償が出てきはしないかというお話でございましたけれども、これは憲法二十九条三項の正当な補償の問題にいく前に、二十九条二項の公共の福祉による所有権の制限ということで考えていいのではないか。ただ、その所有権の制限の実質が収用に準ずるようなことになれば三項の補償が要るという考え方もありますので、そこで問題はその程度、やり方によると思います。そのやり方によっては補償の問題をなしに考えていいのではないかというように思っております。
○岡本委員 その場合にこういうことを言う人があるかもしれないと思うのでございますが、土地を持っておる、その土地はどのように使おうと所有者の自由だ、だから自分はいま土地を持って百姓をしておるが、百姓をやめてそこへ工場を建てて、たとえば農村方面では安い労働力を利用した軽工業が行なわれますが、そういうことをやりたいのだ、自分は憲法によってなにを許されておるのだ、私権の保障があるのだ、だからそれは憲法違反だ、こういうことを言う人があるのではないかと思う。 〔委員長退席、服部委員長代理着席〕 しかしそれを乗り越えてそういうような規制をやらなければ、いまの日本の土地問題は解決しない。またたとえば農地改革だって、いまの憲法のできる前だったかあとだったか忘れましたが、地主が持っておるものを取り上げて全部耕作農民に渡したというような大改革すらすでに過去において行なわれておる。しかも農地として保全するのだから耕作農民に耕地は渡すべきだ、こういう考え方に立っていまの農地改革というものが行なわれた。だから農地として使わないのなら、もはやその人はその農地を自分として持つ権利はないのだということも、過去において自分に渡された経緯から見て私は言えると思う。だからいまのような説は十分否定できるとは思うのですが、念のために、そういうような意見にどう対抗すべきかお教え願いたいと思う。
○加藤参考人 いまのお話は、農地でそこを宅地にしたい、あるいは工場をつくりだいとかいうことは財産権の自由である、あるいはまた憲法二十二条の職業選択の自由というのも関係してくるかもしれませんが、そういうものからして異論がありはしないかというお話だったと思います。この点は実際的な話から申しますと、現在でも農地法で形の上では相当強力な規制が行なわれておるわけです。農地を転用する場合には知事の許可が要る。許可がなければ転用したくてもできないということが行なわれておりまして、これについては憲法違反でないというのが通説だと思いますし、裁判所でもそういうことを言ったのがあったと思いますけれども、現在の程度のものはかまわない。ただ実際にはその運用がかなりゆるやかになってしまっているという点でありますけれども、制度としてはいまの農地法は憲法違反でないというように思われているわけです。ただその目的は公共の福祉のためということで、農地法のできたときにはむしろあれは農民のために農地を確保する、国内で自給体制をとるために農業生産を確保するということだったと思うのですが、今日ではむしろあの農地法の規制を通じて一種の土地利用区分が行なわれている。都市計画が、農林省によって一応スプロールが避けられているというような非常に奇妙な現象になっているわけです。一面、農業の側から言いましても、自立農家の育成とかいうようなことで、農業基本法の立場から農業地域というものの確保の必要はあるわけですけれども、今日の農地法は、そのほかにむしろ一種の都市計画の不当な膨張を防ぐという性格も持たされてきているように思います。今日ではむしろそれを都市計画の問題として正面から取り上げて、農林省も協力してもらって、そうしていまおっしゃったような土地利用区分というものをはっきり確立して、相互の間に自由な移動が行なわれないように押えていくことが、まさに公共の福祉ということになるのではないかというように思うのです。これは結局、基本的人権同士のぶつかり合いになるように思うのです。つまり農民のほうから言えば、それを自由に利用することが自分たちの基本的人権であるということになりますし、都市生活者からすれば、むしろそれを都市の膨張に対して安く大量に供給してもらうということのほうが必要だ。いまの農地というのは非常に広すぎるので、むしろそれをほんとうに必要な部分に限って、それ以外のところは都市に明け渡してもらいたいという気持ちがあるわけです。ですから、それは都市生活者のための一種の基本的人権といえば、一種の生活権的な基本的人権というものが他方に考えられて、そのバランスをどこでとるかという調整の問題だと思うのです。ですから、片方の農民の権利が絶対的で、それを制限することはできないという性質のものではなくて、相互の利害の調整をどこでするのが合理的であり、妥当であるかという問題になるかと思うのです。ですから、土地利用区分を定める場合にも、その合理性を確保するという点にはやはり十分な配慮が必要だと思うので、内容的な合理性も必要ですが、内容はどれが合理的かということはなかなか実質判断はむずかしいわけです。そこで手続の上で、相当多くの人が参加して、みんなが協力してそういう計画をつくるとか、何か手続の面でも合理性を確保するような措置を講じなければならない。私は、手続及び内容において合理的なものであれば、それはその基本的人権の調整の問題として憲法上許されるものであるというように考えるわけでございます。
○岡本委員 そういたしますと、いま市街化地域と農林業地域とに分けていきます場合に、現在でもあるのですが、緑地帯というのがございます。緑地帯になっておりますと、建蔽率が一〇%程度であります。ですから地価が非常に安いのです。だから緑地帯地域の、ことに都市周辺の農民は、何とか緑地帯を解除してもらいたいという要求が非常に強いのです。それをいま、ぐんと緑地確保のために押えているわけでありますが、土地利用区分を確立する場合に、ある市町村単位で土地利用区分の分類をやっていきます。そうすると、そのときに一方では市街化地域にしてくれ。市街化地域に指定されることは地価が相当上がることになり、農林業地域に指定されるということは、ぴしゃっと地価が低く押えられることになりますね。だからその点非常な紛争といいますか、市街化地域に指定しろ、こういう要求が非常に強く出てくると思うのです。しかしその場合に、市街化地域になればこうなりますよ。つまり固定資産税が高くなりますよ、土地の維持費というものが相当かかるようになりますよ。いま市街化地域の中にありましても、農地でありますと、そのまま農地の価格でもってなにされてきます。しかしながら市街化地域というものは、これは適当に緑を公園とかその他公共施設として残すとか、一応一連の市街化をさせる。だからそれを促進するのには、もはや市街化地域の中にあるところの農地というものは、これは税法上の農地扱いをいたしません、こういうことにすればある程度分類のときでも楽でありますし、従来どおり農業をやっていきたい人は、いやもう市街化地域にしていただきたくございません。そんな税金の高いところで百姓はできませんから、こんなことになってくると思います。いやそれよりも市街化地域にしてもらいたいという要望があれば、市街化地域に入れてもらう、こういうようなことでもって調整が楽になると私は思うのです。しかしながら一面そのことは、同時にただいま先生のおっしゃった職業の選択の自由というものをそれによって相当規制していくことになりますね。しかしそういうふうな制度を行なっていくことが、一面公共の福祉に沿うゆえんであると思うのです。いまのような日本の土地制度のあり方では、農民も困っておれば勤労者も困っておる。どっちも土地のなにでもってべらぼうに困らされておる。そういうふうなことから見て、ぴしっとそういう区分をすることのほうが、はるかに国民全体の福祉に沿うゆえんであると思うのです。しかしながらやはり私権との関係というものがございますが、その点についてそういうふうな私の考え方に対する先生の御見解をひとつお教え願いたいと思うのです。
○加藤参考人 ただいまグリーンベルトの例をおあげになりましたが、グリーンベルト自体は、私はちょっと問題があるように思うのです。と申しますのは、あれは終戦後間もなくグリーンベルトを東京のまわりにはめて、そしてそこからのスプロールを防止しょうというためにつくったわけですが、それがいまでは全然役に立たなくなっている。むしろグリーンベルト自体が蚕食されているし、それからその先へはみ出してどんどん拡大しておりますから、今日ではグリーンベルトを置いておく意味がなくなっている。そういうことで実質的な合理性が乏しい。そういう意味で、合理性がないのに制限をしていることは憲法違反でないかというような問題が出てくる可能性があるのですね。 それからもう一つは、グリーンベルトであるということの性格からして、それはだれのためにグリーンベルトをつくるかというと、グリーンベルトの所有者ではなくて、ほかの都市民のために緑を確保しょう、あるいは膨張を防止しようというために、他人の利益のために制限を課しているわけです。そうするとそのためには補償を払わなければならないのではないかとか、あるいは緑の地域がほしければ国なり都なりが買収して、そこに大森林公園でもパリのようにつくればいいというような議論が出てくる。そういう意味でグリーンベルトはちょっと問題があるように思うのです。しかしいま申しました農地とかそれから宅地とかいうのは、それぞれその人々が利用するためのものですから、そのこと自体は、グリーンベルトとは問題が違うように思います。 そしていまのお話は、そういう場合に、市街化地域と農村地域と区別する場合に、固定資産税というのを使って、それを誘導していくことが一つの手段になるのではないかというような御意見だったと思いますが、私もそれは一つの手段になり得るのではないかと思っております。ただ税金をそういう手段に使っていいかどうかとか、にそこで農業をして、それほど利益が上がっていないのに、固定資産税なりを高く課していいかとか、そういう技術的な問題がいろいろ残ると思いますが、考え方としては、それが唯一の方法ではないにしても、一つの方法として検討に値するものではないかというように思っております。
○岡本委員 もう一つお尋ねをいたしておきたいと思うのですが、手続保留の問題でございます。いま先生も手続保留の制度というものは、この法律の中でも一つの盲点のようなものだというふうにおっしゃったと思うのです。私もそう思います。手続保留がありますと、結局また手続開始のときが認定時価格になるのですから、認定時価格が幾段階にもなってまいります。しかもその期間というものは、大体全期間を通じて四年という制約がある。とにかく認定時から一年以内に裁決を申請しなければならぬ。手続保留が許されているのも三年間だ。最後の手続保留が終わってから裁決の申請までの間は一年でありますから、したがって、そういう意味ではそう長期間ではないのでありますから、もう四年にわたってやるくらいなら一ぺんにさっと事業認定をやってしまって、それでこなせるだけこなしていく。予算上の措置の問題があれば、いま先生がおっしゃったように、その事業年度は、この土地はことしはこれだけ買収して、これだけのことをやりますということで、予算の上で全部用地買収費に回すとか、あるいはその中の、特にいまの先買いの要求、買い取り要求がある部分は、どんどん先に買っていくとか、あるいはまたその場合に特に必要があれば、特にその事業に対して公債の発行を許すとか、そういうふうな何らかの財政的の措置を講ずることによって、認定時価格というものが一つの事業に段階的にできる、しかもその間にはだんだん起業利益が織り込まれていく、こういうような矛盾のある制度は廃止すべきではないか。むしろこの手続保留の制度はやめて、もう一本化したほうがかえって賢いのではないか、こういうふうに思うのですが、この点については、両先生の御意見と、そのあとで政府側の見解をひとつ承りたいと思います。
○加藤参考人 いまおっしゃいましたように、私も手続保留地には問題があると思うのですが、ただ、それではどうしたらいいかと申しますと、最初の一年で問題が片づいてしまえば、これはもう手続保留地を設ける必要もないわけで、問題はないわけです。 ただ、問題は、実際には取得に四年くらいかかる。その場合に、最初のときの事業認定時の価格で全部それを固定さしてかまわないかという問題があると思うのです。 そこで問題は、一年にして保留地をなくしてしまうか、それとも今度は四年にして、地価を全部固定するとしますと、いまの物価の値上がりからすると、ちょっとその点は問題があるのではないか。やはり私権の保護という点からすると、最初で固定しても憲法違反になると必ずしも言えないかもしれませんけれども、妥当性からいうと、やはり四年間もとの価格を基準にしてきめるのはひどいという感覚になるのではないかと思うのです。 そうなりますと、四年にするとすればどうしても一年ごとくらいに刻んでいかなくてはならないという問題が出てくると思うのです。もし全部一年で片づける自信があるということであれば、なくしてもいいのですが、そうでもない、場合によっては少し延びるかもしらぬということでありますと、四年にしておいて、一応手続保留地という制度を置くということにどうもせざるを得ないのではないか。そういう意味の一種の妥協案だと思うのです。 ただ、そうなりますと、いまおっしゃったように、価格がみんな段階ごとになって、今度はお互い同士で、あすこがあれだけならこっちのほうをもっと高くしろとか、内部的ないろいろなトラブルがますますふえてくるような気がする。 そこで、私が初めに申しましたように、やはりできるだけ短期間に勝負をするように運用としては考えていただきたいということでございます。
○雄川参考人 いまの手続保留の問題は、これも今度の収用法の改正の中では、手続保留というのはちょっと異質のものでありまして、理屈からいうと、こういう制度を設けるのは一貫しないというように考えているわけであります。 要するに今度の改正の思想は、評価の基準時を事業認定時に固定をして、それでやっていこうというのが基本ですから、この手続保留というのは一種の抜け穴のようなものでありまして、こういう制度はなければないに越したことはないというように私も考えているわけです。 ただ、こういう制度が今度の改正法の中に入ってきたのは、いま加藤教授のおっしゃられたような実際の実行上の問題があるのではないかと思われます。要するに、事業が一年あるいは二年ぐらいで済まないという場合に、それは三年、四年ということになりますと、その間に時間のずれがある。そうすると、価格を押えるということにかなりの無理があるということによるのではないかと思われます。しかし、この問題は、基本的に解決をするというためには、今度のような手続保留という形のほかにもいろいろくふうしようはあるわけで、根本的には、さっき申しましたように、土地の取得制度そのものを基本から考え直して、もっとくふうする余地はなければならないし、またそうしなければいけないのではないか。要するにこれは利益の調整の問題ですから、総合的な見地から、特定の土地、つまり特定の被収用地だけをねらうというのではなくて、もっと総合的な見地から問題を考えていけば、ほかにも解決の方法はある、そういう問題を検討すべきではないかというように思っているわけです。 その前提としては、先ほどからお話の出ておりますように、私も、土地利用計画がきちんと立っていなければならないので、これはやはりすべての前提になるのではないかというように考えております。それがあれば、地価の不合理なはね上がりということもある程度押えられるはずでありますし、そうすると手続の進め方としても、手続の保留、さらにそれをまた始めるということを繰り返す必要もそんなになくなるのではないかと思われるわけでございます。 ことに、今度の改正の中では、たとえば都市計画法の二十条の改正がございます。あれなども、要するに一年ごとに評価基準時を次々と切り下げるというような結果になっているわけです。これも形からすると非常におかしいわけですが、そういうことをやらざるを得ないのは、私の立場からいたしますと、今度の手直しが、現在の収用法の体系の中での手直しというわけですから、その間に妥協せざるを得なかったのじゃないか、そういうように見ているわけです。
○谷垣政府委員 政府のほうといたしましてこの制度を設けましたのは、事業が、非常に大規模な事業が多くなっておりますので、事業認定自体はとにかく早くする必要がある。それと同時に、先ほどお話がございましたように、予算の措置であるとかあるいはそれに必要な人的な整備であるとかという問題、さらに具体的な折衝の状況というような問題が事実問題として控えております。したがいまして、実際の運用をいたします場合に、こういう制度が全然なくやっていきますと、かえって事業認定自体がおくれるというような状況が従来のあれから見ましても考えられる。そういたしますと、本来の土地収用法を改正しようとする基本的な線がくずれる可能性もございます。 そういうような点をにらみ合わせまして事業の保留の制度をとったわけで、これは、現実の運用の上で御指摘のございますような弊害のできないようにやっていくということで運用してまいりたい、こういうふうに考えております。 計画局長からも補足させていただきます。
○志村政府委員 ただいま政務次官からお話のありましたとおりでございまして、事業認定は、やはり一応事業としまとまった相当の規模のものを認めるわけでございますが、この事業の施行自体につきましては、その規模あるいは性格、さらには用地職員なり予算的な準備なりといったものが総合して考えられねばならぬ問題になるわけでございます。先生方のおっしゃるとおり、用地の取得はできるだけ早い機会に完了するのが望ましいわけでございますが、それらにつきましても実態的に限度があるわけでございます。また事業認定は諸先生のおっしゃるとおりできるだけ早く受けまして、執行体制なりその他の措置を整わせるということがぜひとも必要かと思っておるわけであります。これらをかね合わせまして、制度としてはかような、多少御批判のあるような問題があろうかと存じますが、このような制度を設けることによりまして、事業認定等がおくれず、大規模の事業もルールに乗るという方法を確保する、同町に、それらにつきましても、各事業の実態に合わせまして、適宜適切な措置をとり、運用上の問題としていろいろ問題の起こらないようなかっこうで進めるというふうに考えたいと存じておる次第でございます。
○服部委員長代理 川村継義君。
○川村委員 両参考人どうも御苦労さまでございます。時間もございませんから二、三御意見を伺っておきたいと思います。 第一は、いま岡本委員から質問になっております手続保留の問題でございますが、今度政府がこういう制度を織り込んできた考え方は、政府側の答弁、先生方の御見解等も一応承りました。ところが私、もう一つちょっと疑問が残っておるのであります。 先生方の御意見をお伺いする前に局長にちょっとお尋ねいたしますが、手続保留の告示を受けたら、これは三年で開始の申し立てをしなければ失効する。そこで、この保留の告示を受けた土地の所有者というものの権利はどういうふうになるか。たとえば、何条かに規定してあるとは思いますが、認定を受けた場合にはやはりかってに処分をしてならぬ、いろんな工作をしてならぬ、そういうような規定があると思います。ただし、この手続保留の告示を受けた場合の所有者のそういう権利というものはどう規制をされるのか、あるいは全然規制をされないのか、それをちょっと教えていただきたい。
○志村政府委員 改正法案の第二十八条の三にございますように、手続保留の問題については、「起業地について明らかに事業に支障を及ぼすような形質の変更をしてはならない。」という定めになっております。
○川村委員 そこで加藤先生にお尋ねいたしますが、この手続保留の問題についてはやはりいろいろ疑問が実は介在いたします。ところがいまお話しのように、手続保留の告示を受けたその土地所有者は、やはり相当私の権利というものが制限を受けることになる。全く野放しではないわけです。そういたしますと、これは仮定の問題でありますけれども、この手続の保留の告示を受けておいて、ついには手続開始の申し立てが三年たってもなかった、失効した、こういう場合に、このいわゆる保留の告示を受けた土地所有者の私権というものはそれでよろしいかどうか。私は問題があるのではないかと思うのでありますが、先生の御見解をちょっとお聞かせいただきたい。
○加藤参考人 ただいまの点、確かにおっしゃるような問題はあるわけでございます。これはほかの場合にもあり得ることで、ある計画を立てて初めはやろうと思って始めていたところが、実はそこは不要になったという場合が考えられるわけであります。これは、初めの事業認定を受けたこと自体が間違っていた、初めから間違っていたという場合はちょっと別でありまして、その場合には、そこにやるほうに故意あるいは過失ということがあれば国、家賠償というような問題も起こり得ると思うのですが、そういうことは普通はないと思いますので、初めはほんとうにやるつもりだった、ところがあとで何らかの計画の変更によって不要になったという場合が問題だと思われます。これは損失補償の問題を考えるときには、その程度問題がやはりかなり問題で、それが非常に重要かつ非常に実質的なものでありますと、これは場合によって補償せざるを得ない。しかしそれがほとんど量的に見て大きなものではない、それからまたそういう損失をかけたことが全体から見てそう不当とは言えないというような場合には、かりに損失補償をしなくても憲法上の問題にはならないのではないか。ここでは、ほんとうに初めはそこを計画に入れるつもりだった、そしてあとで要らなくなったのでいわば解除をしたような形になるわけですが、それも期間は三年間ということで、三年といえば長いということにもなりましょうが、三年で一時的にそれを制限していることであり、制限の程度も、「明らかに事業に支障を及ぼすような形質の変更」ということである程度しぼってあるというような事情から申しまして、私はこの場合は損失補償しなくても別に差しつかえないのではないかという意見でございます。
○川村委員 余分な杞憂かもしれませんけれども、今度この法案が出された趣旨等から考えてまいりますと、この後はやはり公共事業を進めていく場合には、いままでのような、先ほど先生も点、線ということばでお話でありましたけれども、点、線というものを、その線の幅あるいは点の面積というものを拡大して事業認定をするという傾向が強まってくるのではないか。それをまた考えなければ、特定の収用地域の賠償の問題あるいは周辺部の土地の値上がり等のアンバランスの問題等々、やはり従来どおり起こり得るわけでございますから、余分な杞憂かもしれませんけれども、従来に比べて相当幅広く認定をするということが私は起こり得ると思う。建設省当局の事業においてはあるいはないかもしれませんけれども、そのほかの事業においてはこれはあり得るケースではないか。そうなりますと、この手続保留というものがだいぶ考えられる。そうして保留しておいたけれども、三年してついにそのまま失効させるというような場合も起こり得るという懸念を実は持つわけです。そういう場合に、これは相当やはり私権に制約を与えるわけですから、補償のあるなしは別にして、問題ではないか、私はこういうような一つの心配を持っておるのですけれども、先生、すみません、もう一回ひとつお聞かせいただきたい。
○加藤参考人 そういう御心配はごもっともだと思います。やたらについでだから少し広く土地を取得しようということは、これは私権を不当に圧迫することでございますから避けるようにしなければならない。ただ、これも場合によるわけでございまして、たとえば道路をつくる場合に、初めは二車線でいいけれども、すぐ近い将来に四車線をつくらなければならないというような場合には、そこまで最初に取得しておくということも考えられるわけでありますが、そういう場合を別にしまして、ほんとうに必要でもないのに初めに大きく網をかけるというような弊害は、これは避けなければならない。それをチェックする方法といたしましては、事業認定のところでやはり考えていただかなければならない問題でありまして、これは建設省直轄工事でなくても、ほかの起業者から出てきた事業認定の申請についてもその点は十分検討して、余分な不当な迷惑をかけないように配慮していただく、そこで押えていくほかはないと考えております。 〔服部委員長代理退席、委員長着席〕
○川村委員 それでは次にもう一つお尋ねをいたしますが、私がこの法律の目的などをここで繰り返し申し上げることは必要ないと思いますが、ただ私疑問に思いますことは、この法律の目的に「公共の利益の増進と私有財産との調整」というようなことがうたってありますが、ここには先ほどお話がありましたように、やはり正当な補償というものが前提とならねばならない。正当な補償の考え方については先生のお話を了解いたしておるわけでございますが、ただ、いままでの考え方の中にごて得ということばがよく使われます。提案理由の中にもそういうことばを使っております。この協議に応じて円満に土地を提供しないということは、公共事業に協力しない、私権の乱用だ、権利の乱用だ、あるいは買収価格をつり上げることがごて得だというような非難をよく浴びるわけであります。もちろんそこには特殊の意図を持ったいわゆる土地ブローカー的なものが存在をしてそういうことをやったことはあると思いますけれども、公共事業の推進にあたって土地を収用される一般の国民というものは、そうざらにみんながみんなそういうケースをとっておるとは思いません。そこで私は、そういう非難というものをあまり高飛車に見て、それだけを理由づけにするということはどうだろうという実は一つ考え方が、この法案の提案理由を見て浮かんでおるわけです。で、やはり私権という立場から申し上げますと、土地を所有しておる者、収用される者には、原則として、売買の、幾らで売るという権利があるのではないか、自分はこれくらいの値段で売りたいというその価格を要求するところの権利というものがやはり存在をしておると私は思います。今日までよく、事業認定をしてもずいぶん長く日にちがかかって、いわゆるごて得といわれるような状況になったということは、やはり問題はそれだけでございませんで、私の狭い考え方からいうと、裁決の時期が非常に延びてしまうとかあるいは何かの別途の要素が入り込んできて、そういう不当な価格要求をするとか、こういうものが介在しておるのがおもなる原因ではないか、こう考えられるわけです。そこでやはり収用される者にとっては、その売買の権利と申しましょうか、あるいはこれだけの値段で売りたい、そういう権利が存在すると思うのですけれども、そのごて得というようなものに対するものの考え方、あるいは私の権利というものと、今日までそういういわれるような状況を生み出してきた原因というものははたしてそういうものであるかどうか、公共事業の非常な遅延あるいはたいへんうまくいかない状況というものは、そのごて得という、一体そこに起因をしておるのかどうか。その辺のところ、加藤先生の御意見を、ひとつこの際お聞かせいただきたいと思います。
○加藤参考人 いまのごて得のお話でございますが、私はごて得というものも、これは多くの人ではないかもしれませんがあったことは確かだろうと思います。ただ、それが唯一の原因ではないし、また最大の原因でもないというように思うわけでありますが、つまり現在では時期が後になればなるほど価格は上がるというたてまえでできている、最後まで争えば結局収用裁決時の価格できまるということですから、待っていれば上がる。上がるというのは、一般の地価の値上がりよりも、やはりそこで公共事業が行なわれますと、それによって開発利益が増大しますから、つまり増大した開発利益も含めた価格で買収されるということになりがちであります。そういう意味で粘っていたほうが得だということは確かにあるわけです。それと同時に、場合によっては、粘っていると、どうしても一軒だけ最後に残るということになりますと、少し値段は高くても早く出ていってもらったほうがいいということで、これは起業者のほうにもやはりまずい点があると思うのですが、起業者のほうでむしろ高い価格を出して出ていってもらうというようなこともあったと思われます。そういう意味でごて得というものは確かにあったわけでありますが、ただそういうものが出てくるということは、事業の進め方自体にやはり一つ問題があったので、起業者側もその点には十分の責任があるというように思われます。と申しますのは、事業を始めましても、やはり住民の反対があったりいたしますと、なかなかそれを強く進めることができない。ことに地方自治体あたりがそれに参加をしておりますと、なかなか役人の立場としてあまり強いことが言えないというようなことでずるずるとおくれるという例もあるわけであります。それから先ほど申しましたように、事業認定自体を受けることがなかなかおくれるというようなことがありまして、自然にずるずるとおくれていくという現象があったわけであります。この点は、いままでの制度からしますとその間がんばっている権利も当然あるわけでありまして、そういう意味ではある意味での正当な権利の行使ということで、ごて得ではないという場合も少なくないわけであります。そういう意味で今度の制度は、がんばっていればそれだけ地価は、開発利益がだんだん上がていく、そこを一応打ち切ろうということで、つまり制度的に残っていてもしかたがないということにしようというのがその大きな改善だと思われますし、またそれと同時に、いままでも運用さえよければもう少しうまくいっていたという点があると思うのですが、その点は、制度がこうなった以上はそれを生かすように運用のほうで考えていかなければならないというように思います。
○川村委員 時間がございませんから、最後に雄川先生にひとつお尋ねしておきたいと思います。 実は軍事基地と土地使用の問題について、せっかくの機会でございますからいろいろお尋ねしておきたいと思いましたけれども、時間がございませんからごく簡単にお尋ねしておきますが、今度収用法の一部改正に伴う施行法が出ておりまして、その中に日本とアメリカの——ことはを略しますけれども、特別措置法の改正というものが出ております。 そこで、まず先生にお尋ねする前に建設省にお尋ねしますが、第十条を削除してある。この第十条を削除された理由、これが一つ。現在アメリカの駐留軍が土地収用法を適用してとった軍事基地がどのくらいあるか。これは防衛庁でなくてもおわかりと思います。現在の軍事基地は大体賃貸借の契約でやっておるということを私は聞いておりますが、その辺のところをまず建設省の局長のほうからでもひとつお聞かせいただきたい。
○志村政府委員 駐留軍の特別措置法第十条を削除いたしました理由でございますが、事業認定時を補償額算定の基準としておりますのは、その町点で起業地の使用を運命づけるという考え方に立っておるわけでございます。したがいまして、使用の場合におきましても、運命づけは一番初めに予定された使用の方法とか期間全体について考えられるものでございますから、使用の初めの時期である一年分だけを運命づけるというのはおかしいじゃないかということで十条を削除いたしまして、年ごとに支払うというのでなく総体で支払うという方法に改めたわけでございます。 次に、駐留軍の特別措置法関係の処理状況でございますが、現在賃貸契約により米軍に提供している件数は五千五百件くらいございますが、そのうち駐留軍のための用地として収用、使用というようなものはほとんど所有者との話し合いでケリがついております。従来の実績でございますが、事業認定の件数は昭和二十七年以来百二十一件でございますが、最近におきましてはい三十四年に一件ありましただけで、その後はほとんど申請はございません。裁決に至りました件数も百二十一件、事業認定いたしましたうちで四十七件ほどございますが、これも昭和二十七年から三十年くらいまでにかたまっておりまして、最近においては昭和三十四年に一件あった程度でございます。
○川村委員 土地収用が動いて、それによって基地がつくられる、こういうことになると、いまの第十条を削除した意味、これはわからぬでもありません。しかし、いまお話しのように、米軍の基地は、大体ほとんどが——私こまかな数字は知りませんけれども、いま五千五百件にのぼると言われますけれども、賃貸借契約で今日までずっとやってきておる。そうするとやはり米軍基地のようなものは、いろいろ困難はありましょうけれども、賃貸借契約、一年更新契約になっておりますから、そういう形で進めていって、一年ずつその補償を支払っていく。ここは別かもしれませんけれども……。そういう考え方で進んだほうがよいのではないか。いま第十条を削除して土地収用法による補償を、いわゆるもう永久に運命づけるということになると、これは非常に私、譲歩したものの言い方でございますが、かりに米軍基地をそこにつくらねばならぬ、必要だとして拡張もせねばならぬというような場合に、砂川、板付や各地の基地の実例を考えるまでもなく、ものすごい抵抗と混乱を生じて、かえってまずい結果になるのではないか、こういうことなどを実は考えておるわけです。 そこでこの米軍基地の問題について雄川先生のお考えをひとつ承りたいと思うのであります。
○田村委員長 川村委員に申し上げます。志村局長から、その前に少し補足説明をさしてもらいたいということですが、よろしゅうございますか。
○川村委員 はい。
○志村政府委員 使用でございますから、永久ではございませんで、一定期限がございます。たとえば五年とか十年とかいう期間を使用では限るわけです。その間において一年ごとに支払っていくということにいたしますと、裁決のあった時期の価格でもって一年ごとに支払うということになりますと、かえって使用者側にたいへん迷惑がかかるのではないか。よその土地を借りて、そこに家を建てていくというようなことをやります場合にも、全部をまとめて当時の価格でもってもらう。そして新しい土地を借りられるということにいたしたほうが、むしろ土地使用者側に有利であろうという趣旨でございまして、一定期限のある使用であるということだけ、つけ加えさしていただきます。
○川村委員 それはアメリカが何年使うかわかりませんが、一年ずつに契約を更新するときに、物価の変動等で上げると、かえって土地所有者には、初めからくぎづけされるよりは私はいいのではないか、そう思いますが、いまの局長のお話はちょっとわかりません。私はそういうふうに思います。戦後アメリカがずっと占領軍から駐留軍になって、行政協定の改定を経て今日まできておっても、やはりそういう形で二十年も使っておる。ところが実は大蔵省あたりは、そういう説明はしていないですね。一年一年更新しなければならぬのを、のべつまくなしに自然更新みたいにやってきておるけれども、これはただ会計法上の問題だとか、こういうふうな言い方でこれをやってきておるわけです。そうなりますと、いまのせっかく局長のお話でございますけれども、ちょっと納得しがたいものがある。土地所有者にとってこうしたやり方のほうが、やはりよいのではないか。しかもあなたが言っているように、何十年と使わぬ、あるいは四年目に入るかもしれないし、三年使ったら返すかもしれません。そういうことであれば、なおさらそういうほうがいいのではないか、こういうことですが、雄川先生のいまのことについてのお考えをいただきたいと思います。
○雄川参考人 ただいまの御質問でございますが、公共用地の取得に関する特別措置法の規定を基地関係に当てはめた場合に、どういう抵抗が生ずるかという問題、これは私は実態を詳しく存じておりませんので、どういう結果が出ますか、正直のところわかりません。 それから基地については、賃貸借契約でやっていくのがいいのではないかというお話でございますが、これは、もしそういう方法で話がつけば、それでやるということはもちろん妨げがないことでありますし、あるいは適当な方法であろうといよううに思われるわけであります。ただ駐留軍の駐留を認めるという現在の体制を前提とする限りは、収用法の規定を当てはめれば現行法のようになるわけでありますし、それからまた今度の改正で収用の方法が変わるということであれば、ここに提案されております特別措置法の改正案というものは、それをいわば技術的に当てはめたにすぎないわけでありまして、そうすることが妥当であるかどうか、あるいは妥当な結果がもるかどうかというのは、どうも私の見るところではその前提問題、つまり駐留軍の駐留を現在認めておることがいいか悪いかという問題に帰着するのではないかというように考えております。
○川村委員 それでは急ぎましてもう一つお尋ねしておきますが、東富士演習場等でいろいろごたごたが起こったのは先生も御存じでございましょうが、アメリカが使用しておった演習場をいつごろでございましたか使わなくなった。そこで自衛隊が入り込んで使った。ところが土地の人がそれは違反だといって抵抗した事件が実はございました。先生のお考えを聞いておきたいと思いますのは、米軍がいわゆる基地として使用しておる演習場等を自衛隊が使う。共同使用するといいましょうか、そういうのは一体この日米安保条約あるいは協定等から見て妥当であるかどうか。これは国会でも実は問題になったのでありますが、政府側はこれについて、これは基地の管理権を米軍から了解をとっておるのだから差しつかえない、こう言っております。しかし協定の三条一項等の趣旨からすると、それは許されないのではないかという解釈をするわけです。現在使っておりますけれども……。こういう問題について何か先生お考えがございましたらこの際お聞かせいただきたいと思う。実はそういう問題についていろいろお聞きしたいのでございますけれども、時間もたくさんいただけませんしその点をひとつお願いをいたします。
○雄川参考人 ただいまの御質問の趣旨は、安保協定に基づいて駐留軍が土地を使用しておる場合に、なお使用中に、自衛隊なら自衛隊、あるいは防衛庁の施設に米軍がその土地を提供する、そういうことでございますか。それとも基地に使わなくなったという場合に、それじゃそのかわりに自衛隊がそれを使うかという問題でございましょうか。あとのほうの問題でありますと、これは実際にどうやるかは別といたしまして、法律上の性格としては、一応駐留軍が使わなくなったわけでありますから、それはもとの土地に返るということになります。それを防衛庁なりあるいは自衛隊が使うということになれば、それ相応の手続をとって使うということになる。そういうことになるのじゃないかと思います。前の場合でありますと、これは確かにおっしゃるような問題はないわけではございません。要するに土地を駐留軍に使わしておるということは、その目的の範囲内で土地を使用するということが当然の前提になっておりますから、その土地に及ぶ米軍の管理権というものは、その範囲内のものだということになりますから、それをはなはだしく逸脱するということは、あるいはこれはできないかもしれませんが、その管理権の範囲内のことであれば、あとは日本国とアメリカ国とのいわば話し合いの問題になってくるのじゃないかというふうに考えられますが、ただいまおっしゃられました東富士の演習場の問題については、具体的にどういう経緯をとったか、ここでいま正確に記憶しておりませんので、ちょっと責任のあるお答えはできかねると思います。
○川村委員 自衛隊はいま国有地を使っておる。自分で演習場みたいに使用しておる。あるいは、民有地を買収したり賃借をやったりして使っておると思います。これは土地収用等で自衛隊が使うやつをやるという、これはない。これはたいへんな問題でありましょうが、これはない。 そこで、先ほど申し上げましたように、後者の例でありますが、東富士なら東富士のアメリカ軍が使わなくなった。そこに二年なり三年あいている。そういうときに、自衛隊が入り込んで使う。ところが、それはおかしいではないか、それは協定にもそういうことはないではないか、協定三条一項から見ても、それはおかしいではないかという議論に対して、政府側は、それは管理権をアメリカ軍の了解を得てやっておるのだから差しつかえない、こういうことで実はやらせておるわけです。ところが、これはいろいろ検討していくと、これは協定三条一項から見てもどうも疑問が残る。たいへんな問題ではないか。言うならば、法のたてまえからして、あるいはそのような解釈ができるならばそれが不備ではないか、こういうことも言えるわけですが、これはまたいずれ先生においでいただきまして、こういう問題についてぜひお教えをいただきたいとお願いしておきたいと思います。
○田村委員長 岡本隆一君。
○岡本委員 最後に、雄川先生に二点だけお尋ねさせていただきたいと思います。 第一は、先ほど先生のお話の中で、今度のこの収用法の改正は、従来の収用法のワク内措置であって、もっと基本的な抜本的な改正が必要なのではないかという御意見を述べておられましたが、先生は、根本的改正の方法としてどういうふうな構想をお持ちかどうかということが一点でございます。 その次には、土地の利用区分の問題について、私どもの考え方に対して加藤先生も、大体同様な考え方をお持ちのようにお教えいただいたのでございますが、雄川先生は、こういうふうな土地利用区分の確立の問題についてはどういう見解をお持ちか、この二点についてお教え願いたいと思います。
○雄川参考人 ただいまの二つの御質問は、お互いに相関連しておると思いますので、一括して私の考えを簡単に述べさせていただきますと、先ほど私は、現在の収用法の体系なり理論自身に問題があるので、そのワクにとどまっておる限りはたいしたことはできない。もっと根本的に検討すべき問題があると申しましたのは、たとえば今度の改正の中にも出ておりますが、計画的にいろいろな事業をやっていこうということは、現行の土地収用法並びに今度の改正の中では、そう正面から考慮されていないわけでありまして、先ほどの手続の保留などの問題も、そういうところから出てきているわけでございます。 それから、計画的に事業をやっていく場合の一つの典型的な例としては、都市計画事業のような場合が考えられますが、それとの関係で申しますと、今度は都市計画法の二十条を改正するということになっておりますが、あれも結局、一定の計画に従って事業を執行していく。その事業の執行が短い年の間で済まないというような場合に、収用法の考え方をそのまま当てはめていきますと困るものですから、次々と事業認定の告示の時期を繰り下げて何とかしょうというようになっているわけでございます。たとえて申しますと、そういうところは現行の制度の欠陥でございまして、これをどういうふうに直していくかという問題の具体的な成案は、これは申しわけございませんけれども、これをまだ十分確信なり意見を持っているわけではございません。ただ、方向としては先ほど申しましたように、特定の土地をとる、あるいは特定の道路に使う土地だけを必要とするという考え方で事を処理すべきではないのでありまして、その周辺との問題も考えなければなりませんし、それからまた、事業全体を計画的に執行していくということを用地取得制度の上にも十分のみ込んで生かし得るような制度を考えなければいけないのではないかというように考えているわけでございます。 たとえば、宅地審議会が先年、去年でございますか、新市街地開発制度の答申をいたしました。あの答申の内容については、技術的にはいろいろな問題があるわけでございますが、あの考え方などは、かなりの広い面積にわたって土地を総合的に処理しようという発想が根本にあるわけで、ああいうような方向などは、これから検討していかなければならない問題ではないかというように考えているわけでございます。そうしてまた、そういう方向で問題を考えていく場合の前提が私は、やはり土地利用計画の確立ということにあるのではないか。これについては先ほどお話に出ておりましたように、技術的にも、またもう大きくいえば憲法上にも、全く問題がないということでないと思います。いろいろ研究しなければならないと思いますが、根本的にいえば、日本の国土といいますか、あるいは土地の合理的な使用の計画を立てまして、それに従ってどこにどういう事業を行ない、そのために土地をどういう形で手に入れていくかというようなことを考えていくということになるのじゃないか。また、それがないと、先ほどもお話に出た点ですか、たとえばここは農林地域だということで押えられる、あるいは緑地帯だということで押えられると、そこに建物が建てにくい。したがって、土地が高く売れないというので、それを市街化地域に直してくれという突き上げの運動などが起こる。それに対してなかなかうまく答えができないという結果になるわけですが、そういう場合に、もし土地の利用計画がはっきりつくられておれば、いや、そこは将来も農林地域として残るし、また、それには十分の合理的な理由があるし、かつ、合理的な手続で措置されているんだからという答えが出るわけでございます。将来の問題としてはむしろそこが急務でありまして、そこを考えていかないことには、何事も合理的なことはできないのではないかというのが、私の総括的な感想でございます。
○岡本委員 終わります。
○田村委員長 参考人の方々には、御多用のところ、長時間にわたり貴重なる御意見の開陳をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して私から厚くお礼を申し上げます。 次会は明八日水曜日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後零時五十八分散会