科学技術振興対策特別委員会科学技術行政に関する小委員会 第2号
- 発言数
- 57 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1966/04/06
会議録
○岡小委員長 これより科学技術行政に関する小委員会を開会いたします。 科学技術行政に関する件について調査を進めます。 本日は、民間研究機関の現況及び科学技術行政に対する御要望等について御意見を聴取するため、ソニー株式会社社長井深大君、株式会社日立製作所会長倉田主税君、東洋レーヨン株式会社会長田代茂樹君及び東亜燃料工業株式会社社長南部政二君、以上四名の方々に御出席を願っております。 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をくださいまして、まことにありがとうございます。どうかそれぞれの立場からわが国の現在の科学技術行政に対し忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いを申し上げます。 それでは井深参考人よりお願いをいたします。井深大君。
○井深参考人 御趣旨が私よくのみ込めておりませんので御期待に沿える意見を申し上げることができるかどうか非常にあやぶむものでございます。実は私、アメリカに四十日ほどおりまして、先週の土曜日にアメリカから帰ってまいりました。そのおりましたおもな目的は、主としてIBMその他の研究所と工場を見せてもらう、特に研究所で何の研究をやっておるかということを見せてもらうんじゃなしに、どういうポリシーで研究が行なわれているか、またどういうほうに向かっていくのが一番効率的であるかということをいろいろ議論するというのが私の目的でございまして、いままで何べんもアメリカへ参りましたけれども、そういうような意味で時間を使ったことはいままであまりございませんので、私としましては非常におもしろい経験をしてまいりました。そこで、これから私の感じましたことを若干申し上げてみたいと思うのでございます。 アメリカの研究を見まして私が今度一番感じましたことは、これは非常に大切であるという研究に対しましては、人のかけ方、時間のかけ方、金のかけ方に非常に層の厚いものがあるということであります。そのかわり、それだけにまた非常に抜けている点もたくさんある。アメリカというようなところは、何でもかんでもまんべんなく研究しておるかと思うと、とんでもない間違いで、非常に抜けたところがたくさんあるということを私は今度は非常におもしろく見てまいったわけであります。ところが、その目的、これはやらなければならない、これは自分のところの企業が生きるためにどうしてもやらなければならないということに関しましては、非常に激しくそれに多くのものを集中してやっている。今日日本の各企業内で使われている研究費というものは、私は、額としては決してそんなに少ないものではないと思うのであります。たとえば英国の企業が使っている研究費なんかと比べましても、相当近い数字にいっております。もちろんアメリカの企業が使っております研究費とは格段の違いがございます。そのうちで一番違うところは何かと申しますと、アメリカの企業で使っている研究費のうちの七〇%以上が、たしか政府から出たお金である。日本の場合はちょうどこの比率が逆になっていて、企業自体が研究費というものをまかなっている。ここに非常に大きな違いがあるのであります。今日企業が研究をしていかなければならないことは、これは当然のことであって、一つの材料を仕込むのと同じだけの意味があるので、企業としては研究をするのが当然であるという心がまえでいかなければならぬと思うのでありますけれども、それに対する税制的な考え方というものは、これはちょっと違っているような気がいたします。当然企業がなすべきことであるという考えじゃなしに、余分なこと、と言っては悪いかもしれませんけれども、余分なことをしていて、それに対してめんどうを見てやっているんだという考え方が、いろいろな面に非常にあらわれてきているのでありますけれども、これは、企業というものは自動的に研究というものができるようなふうに、税制をはじめとしてお考えを願いたいと思うわけでございます。 それから補助金という問題。先ほどもほかの参考人の方といろいろお話していたのでありますけれども、補助金というものは、私はよし悪しだと思うのであります。非常になまいきな言い方になりますけれども、今日アメリカの研究体制が非常に甘やかされている、スポイルされているということは、アメリカが非常に大きな国防費とか研究費とがいうものをふんだんにつぎ込んでいる。したがって、研究のあり方あるいは研究の方向づけというものに対しまして、とにかく金は出てくるんだというような考え方から、非常に甘やかされて、一生懸命その企業家というものは焦点を結ぼうとしているにもかかわらず、それがなかなか結ばない。激しいことばで言いますと、今日のアメリカの国防というものは研究体制をスポイルしている、ある面からはこう言い得るのではないかと思うのであります。研究者の待遇問題とか、いろいろな問題もありますけれども、私は、日本で、企業であれ国家であれ、一体何をほんとに研究することが日本の繁栄に一番つながるかということで、おのおのの企業によってこれは全部違うと思うのでありますけれども、今日の日本の研究体制というものを見てみますと、A社がやったからB社もこれは当然やらなければならぬ、あるいはアメリカでこういうことをやっているから日本もどうしてもこれに追いついていかなければならない、あるいはヨーロッパでこんなものができたからといってあわててそっちへ向けるということで、研究そのものの選択と申しますか、方向性に対して非常に弱いものがあります。反面、研究者自体というものは、世界じゅうどこへ出しても一向ひけをとらない力を持ち、才能を持った優秀な研究者というものが非常にたくさん、うじょうじょしているのであります。それに対して、企業の指導方針あるいは国家の指導方針というようなものが非常に薄弱であって、何をすべきかということが与えられてないということが一番大きい問題だと思うのです。したがって、私は、研究の予算あるいは研究資金が出るというようなことに関しましては、そんなに心配しなくてもいいんじゃないか。もちろん、企業に対しまして研究のしやすいような、先ほど申し上げたような税制的な考え方は十分考慮していただきたいのでありますけれども、直接すぐに、日本は研究費が足りないから日本の研究がおくれているんだという考えは、私はひとつ是正していただきたい。それよりももっと、何をするのがほんとうに得なんだというようなことに集中していただいて、各社がそれをぶつからないようにやっていく。結局どうやったら得だということを考えていきますと、過当競争なんかはそこに起こってこないと思うのであります。また、先ほども申し上げましたように、アメリカのすき間というものは非常にたくさんあるので、そのすき間をどんどんねらっていけば、日本の研究あるいは技術面を輸出するというようなことも相当容易にできるんだと思うのであります。私は、主として研究の方針とか方策とか、そういうところにもうちょっとしっかりしたものをつちかっていただきたい。これは国も、それから企業も、みな一括して言えることだと思うのであります。 それからもう一つは、きょうは科学技術庁のあれだと思うのでありますけれども、研究という問題をやはり総合した面から考えていただきたいというようなことも——産業のことも科学教育のことも全部総合したことに対して、私は日本は非常に弱いと思うのであります。これもやはり日本の谷間だと思うのであります。こういう各社にまたがるような研究題目というものをどう取り扱っていくというようなことにも、もっと御配慮願えれば幸いだと思うのであります。 私、御趣旨がわからないために何も勉強してまいりませんので、ちょっと気づいたことだけ申し上げておきまして、私のお話を終わります。
○岡小委員長 次に、倉田参考人にお願いをいたします。
○倉田参考人 ただいま井深さんからお話がありましたが、私も同感なんでありまして、今日私どものやっております研究体制というようなものを反省しまして、いろいろ考えておるのでありますが、幾ら金があっても研究が必ずできるとも限りませんし、また必ずしも金がなければできないとも限らないのでありますが、しかし、環境と人と金がなければ研究ができないということは、もう申し上げるまでもないことでございまして、そういう意味で、ほんとうにいい環境のもとにいい研究ができますことを私どもは念願いたしております。ただ、さっきもございましたように、税制の問題が、やはり幾ら金があるといいましても、景気、不景気によりましては、こういう研究資金を捻出することもなかなか困難でありまして、ややもすると研究資金を削るといったような傾向がありがちでございますが、私どもは今日といえども研究資金は削らぬというような方針のもとに研究をいたさせておりますが、ただ、いろいろとさっきも補助金の問題、委託研究の問題に触れられましたが、こういう問題が国としていろいろ助成されております。この助成につきましては、これもやはり過当競争の一つでありますが、ほかがやればうちもやらなければいかぬとか、ほかがやっている研究をうちがやらないでいるとおくれるといったようなこともありましたりして、こういうものの調整と申しますか、国全体としての調整というようなところもなかなかむずかしい問題でありますが、こういう問題がぜひあったらいい、何かできないかなというようなことをしょっちゅう考えておるものであります。ことに、国のほんとうに基礎研究といいますか、わが国として将来どうあるべきか、これから先、原子力なりあるいは電子工業なりあるいは人工衛星、宇宙開発とかいったようなものについてはどうあるべきか、また、ほんとうにこれからの未知の開発をするためにはどういう研究をすべきかというような、最高といいますか、あるいは基礎研究といいますか、こういう大きなしっかりした研究機関があって、この機関においては金も人もとにかく思うようにいく、と言っては語弊がありますが、必ずなるようになっていくというような研究機関がありまして、これが国のほんとうの最高研究をするというようなものができないものかなあということを、常に私どもはいま研究を指導する上において考えておるものでございます。その上に立って、各企業が調整をしながら研究を進める、過当競争を避けながらやっていく。たとえば原子力の研究所のようなものができて、みんなこれにこぞって参加いたしましたが、これが所期の目的を達しておるかどうか。やはりこの下には過当競争の研究所がたくさんできるというようなことでは、どうも国費の乱費になりはしないかというような気がいたします。そういうような点が調整されながら研究というものが進められますならば、もっともっと効果的な研究ができるんじゃないかというふうに実は考えております。 なお、税制の面におきましては、私は常々何かもう少し税制の面で研究が優遇されるような方法はないか、最近どうしても私は、ほしいと思いましたものは、やはり不況のときに研究のできる体制をつくりたい。不況のときでも研究費には手をつけないでやっていけるような体制をつくりたい。そうでなければ研究というものがほんとうに永続しながら研究していけないというようなうらみも持ちますので、何とかして適当な方法によって研究準備積み立て金とでもいいますか、あるいは研究準備積み立て金がまずければ、何かほかの名前でもよろしいが、何かここに免税を受けるような形において準備ができる、しかもそれが二年ないし三年くらいの基金をもって研究が潤沢にやっていけるというようなことがひとつ大きな希望でございます。 それからなお、人の問題でございますが、環境といい、あるいはまた設備といい、これができたにしましても、人がなければ研究できません。人は相当ありますが、しかし、何としても日本の科学技術の振興とか研究体制の強化というような意味におきまして、すそ野の広い、ずっと日本国じゅうが科学技術の常識の発達した国になるというようなことが、国をあげての工業国になるゆえんじゃないかと思いますので、もっと小学あるいは大学等における科学技術教育というようなものにもう少し幅の広い取り入れ方をして、あるいはまた、家庭の主婦等にまでそういう科学常識が普及するような行政がやはり必要じゃないか、こういうふうにも考えております。 一応ざっと考えました点だけを申し上げまして、また何か質問でもございましたら、そのときに答えさしていただきたいと思います。
○岡小委員長 次に、田代参考人にお願いをいたします。
○田代参考人 実は、私、きょうのお呼び出しで、どういうことを御質問になるかと伺ったところが、国の民間に対する研究開発の助成について何か要望があるか、こういうことでありましたので、いろいろ考えてみましたが、率直に申し上げて、先ほど井深さんからもお話がありましたが、少なくとも大企業と称するものは、国家の助成を得てやるというような考え方ではいけない。中小企業はどうしても国家の助成を必要とするとかいうことがありましょうが、ともかく企業自体は、なかなか手続もめんどうだし、それかといって非 常に大きな助成をいただけるならいいけれども、そういうことはだめでありますし、また、そういうことにたよることはおもしろくないと思っております。それよりも、私はやはり大学とかあるいは国立研究所といったようなところの研究施設並びに環境と申しますか、これはまあ人材の養成も入りましょうが、そういったところに国家としてひとつ大きな投資をしていただきたい。そうしないことには、私ども企業人がいかに研究所に金を使うといってみたところが、なかなか基礎研究まで入るわけにはまいりません。ですからやはり大学とか国立の研究所に、そういったような民間の研究所ではできないような基礎的な仕事をしていただく。基礎研究ということをやらないことには、いつまでたっても日本の国は技術導入にたよってイミテーションをやるということであります。ある学者の講演を聞いたときに、イミテーションというものをやっていればいつまでも発展はだめだ。デベロプメントというものはイミテーションではだめだ、やはりクリエーティブなものを持っていなければいけないということで、ギリシャの哲学者の話などを出したのを聞いたことがありますが、やはり日本で基礎的な研究からやって積み上げていかないことには、新技術というものは日本に生まれてこない。相変らず何年たっても技術導入をやらなければならぬというわけでありますが、その技術導入は現在、もう数年前からでありますが、いかに外国のいい技術があって、これを導入しようと思っても、外国では売ってくれない。つまり金を払っては売ってくれない。何かこれと交換するクロスライセンスをやるようなものを持っておれば、たとえそれが一つの完全体のものでなくとも、一部分のものでも、そういう意味ではインベンションと申しますか、そういう研究成果を持っておれば技術の交換ができるのでありますけれども、従来のように、外国から技術を導入して、それを自分のものにして製品をつくっていくというようなことは、なかなかできなくなりました。またこれはどうしても一年や二年でできることじゃございませんけれども、日本としては科学技術にたよらざるを得ないということになれば、やはり日本でクリエートしていく、創造していくということになりますから、それには、先ほどの倉田さんのお話のように、全体の小学、中学からずっと科学技術教育をすることももちろん絶対必要でありますが、ただいまのところで申し上げれば、大学その他の国立研究所の設備並びに環境を整備していくことに思い切った金を使っていただきたい、こういうふうに思います。 それから、中小企業に対しましては、いままでいろいろ助成がやられておりまするが、私はこれは非常にいいことだと思っております。ただ、先ほども参考人からお話がありましたが、とかく官庁から出る金というものは、何と申しますか集中的に出ないで、重点的に出ないで総花的に資金の配分が行なわれるものですから、したがっていずれも力が弱くなる。ある点ではこれは非常な助成になっておりましょうが、しかも重点的でないと有効でないということが言えるのであります。しかしこれはなかなか技術上と申しますか、実施上には問題がたくさんあるだろうと思います。 それから大型の研究開発というものは国で取り上げられております。たとえば原子力にしろその他取り上げられておりますが、これにやはり民間を含めた共同研究体制をつくることが必要である。原子力などはそういうふうになっておりますが、しかしそれがやはりうまくいっていない。原子力開発事業ではやはり各グループと申しますか、そういうものが出て、そうして注文の取り合いの競争をやっておるというような姿でありますが、これはもう少し強力にそういった共同研究体制というものをつくってやることが必要だと思います。 これは話が少し小さくなるかもしれませんが、技術の輸出に対しましては、その所得に対しては税制の優遇措置が講ぜられております。私は国内の企業間におけるところの技術についても同様なことをやっていただけば非常にいいのじゃないかと思っております。 それから特許の審査が非常におくれておる。いま国会に特許法の改正が出ておるようでありますが、これはぜひ実現していただかないことには、現状では特許の審査が三年も四年もおくれておる。特許の審査がおくれずに出ておれば、われわれのところでこういうことを研究しようと思っても、これはこういう特許があるから、それじゃそこからひとつ技術をもらうことにしてということで、研究の重複の原因がなくなるということもあります。これは早急に特許の審査がおくれないような措置を講じていただくことが必要だと思います。 それから、さっき井深さんからも、アメリカその他における、ヨーロッパでもそうでありますが、特にアメリカにおいては、国家が研究開発に出しておる金はその七割か七割以上で、民間が二割何分とか三割とかいうのですが、日本はそれが逆になっているというお話がありましたが、そのとおりであります。しかし、アメリカのごときは、これは軍備費のほうから出るのが大きなものでありますので、日本は軍備にそれほど大きな金を使っていないからそこに意味が違うわけでありますけれども、私は、先ほどの民間への助成につきましては、申し落としましたが、これは大企業にしろ民間企業への助成というのを委託研究でもっておやりくださったらいい、そういう形をとられたほうがいいのじゃないかと思っております。 なおアメリカの研究のお話が先ほどありましたけれども、確かにアメリカというところにはいろんな谷がたくさんありますが、しかし日本は谷ばかりということはありませんが、谷が少し多過ぎるというような形であります。 日本の産業の将来というものが科学技術の研究開発にかかっておるということは申し上げるまでもないことでありますが、ひとつそういうふうなロングレンジ、長期の見通しからして教育その他も一そうやっていただきたい。これは科学技術関係と申しますか、科学技術庁あるいは通産省だけの問題でなくして、これは文部省も一緒になって、そしてそういうことに特別の力を入れていただきたいと思います。
○岡小委員長 次に、南部参考人にお願いします。
○南部参考人 いままでに諸先輩から意見の開陳がございまして、私の申し上げる点もほぼ尽きておると思うのであります。 私どもの石油、石油化学というような業種につきまして一、二御参考に申し上げますと、昭和二十五年ごろまでは、日本に再び石油精製業は認められないのではなかろうかとすら考えていたのでありますが、昭和二十五年から日本で輸入原油の精製が認められまして、今日に至りますまでの十五、六年の間は、全く外国技術の導入により、また、これを消化して自分のものにすることに石油の場合も石油化学の場合も努力をしてまいりまして、今日ようやくまあまあという技術水準に達しまして、これからがほんとうに研究が必要であり、またそれに努力しなければならないというふうに考えておるわけでございます。 たとえば二、三の例を申し上げますと、おそらく自動車も、ガソリンエンジンのいまのタイプのエンジンではなしに、あるいはロータリーエンジンでありますとか、ガスタービンによるものとかいうようなものに進歩するのではなかろうか、それに伴う燃料あるいは潤滑油をどうしなければならないか、あるいは飛行機の潤滑油でございますが、ようやくプロペラエンジンの潤滑油の国産化はてまえどもの研究所で開発いたしました。なおジェットの航空機の潤滑油も自分の技術でほぼ開発いたしまして、現在F104の戦闘機の潤滑油を、日本に試験設備がございませんので、アメリカの空軍の援助をかりまして、アメリカでいま実用試験を願っておるわけでございます。こういうようなことをやりましたり、あるいはラジオアイソトープを用いまして、流れております石油類の硫黄分の測定を自動的に行なうというようなことも現にてまえどもの工場で実施をいたしておるわけでありますが、さてこれからの研究題目といたしまして、先ほど申しましたエンジンでありますが、たとえば日本の自動車は、ガソリンエンジンだけ見ましても、自動車の種類がたいへん多いのでございます。おそらく五十種類以上あるわけであります。そのそれぞれがエンジンの圧縮比なり、あるいは重さなりというものが違いますので、それに適応した潤滑油を要求する。あるいはプリンス自動車で現にやっておりますように、最初加えておきますグリースを二万キロメートルまでは入れかえる必要がないというようなことにして、将来工場から出します自動車に一度潤滑油をやれば、大体廃車になるまで潤滑油の取りかえをしないでもいいような潤滑油というものの要求も当然起こってくるであろうと考えられます。 なお、最近特にやかましくなっております公害問題等がございまして、いわゆる水質の汚濁の防止、あるいは私ども燃料でございますので、ばい煙に含まれる亜硫酸ガスの防止というようなこと、これは技術的には確かに可能であるわけでありますが、それがいかに経済的に行なわれるか、日本の経済状態にマッチした状態で、たとえば重油の中の硫黄分を抜くことができればというような研究を急いで行なわなければならないと思うのであります。先ほど申しましたように、石油類の研究は相当立ちおくれておると思うのであります。 しかし、いずれにいたしましても、科学技術の進歩が経済に大きな影響を及ぼしておりますし、私どもも技術の研究に一段と努力をしなければならないと思っておるのでありますが、先ほど倉田さんからお話しのように、企業でやります研究でございますので、やはりあまり大きなリスクを踏むということにはよほどの決心を必要とするわけであります。研究したから必ずそれがリターンがあるかどうかということが、企業の経営である限りはどうしても頭にこびりついておるわけであります。アメリカなりソビエトなり、あるいはイギリスなりと比べて、先ほど井深さんのおっしゃるように、日本では総研究費の中の六〇%以上が民間の研究費、国の研究費は三〇数%というような逆の現象でございまするが、これはひとつぜひ国のほうでも考えていただかなければなりません。経済状態が過去数年のように異常な成長を示しておる限りにおいては、企業の研究費に対する支出も比較的容易に行なわれますし、企業といたしましても何か新しいことをやらなければならないという必要に迫られるわけでありますから、順調に民間の研究費は増加しますが、今日に至りますと、なかなかその調子で進みますか、どうでしょうか。最近国民所得に対する研究費の支出がやや停滞ぎみというようなことを承るわけでありますが、これなどは特に科学技術の振興の見地から注意をしなければならない事項ではなかろうかと存ずるわけであります。なお研究に必要な経費としまして、私ども必ずしもその支出を惜しむわけではありませんが、先ほど税制のお話がございました。民間からの要望に沿って特別償却制度でございますとか、技術の譲渡所得に対する輸出の場合の免税でありますとかいうようなことがございまするが、倉田さんの言われましたように、試験研究の準備金制度というようなものはぜひ実現されるようにお願いを申し上げたいと存じます。 なお、政府に認められた工場の合理化の建設に関しましては、たとえば三カ年間固定資産税を半分免除するというようなことは、これは研究関係のものにもぜひ固定資産税等の特段の措置をお願いしたいと存ずるわけであります。 なお、石油にいたしましても、石油化学にいたしましてもこれからほんとうに技術の研究が必要でありますが、基礎研究となりますと、なかなか企業の手に負えないものが非常に多うございます。長期にわたって、有能なる人員と多額の金とをかけまして、リスクの高い基礎研究を行なうということはなかなか困難でございますので、これらは、先ほど田代さんのおっしゃいますように、大学なり国立の研究機関を思い切って拡充していただければ非常にいいことだと考えられます。 なお補助金でありますとかあるいは委託研究費等の場合に、きわめて繁雑なる会計の検査——大体研究者というものは、あまりめんどうな事務は不得意だと私は思いますので、たとえば多少補助金をいただきますと、その補助金にかかる研究のために購入いたしました薬品は一体幾ら残っているか、あるいはそれに必要なる設備はどうなって、あとはどうなるのだというようなことで、こまかい会計検査のようなことをなさいますと、研究者はそういうことはたいへんわずらわしいと思うので、やはりまかせきりで出していただけるような措置をひとつお考えいただきたいというふうに考えます。 以上でございます。
○岡小委員長 以上で参考人各位からの御意見の聴取は終わりました。 —————————————
○岡小委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。石野君。
○石野小委員 参考人の皆さんにいまお聞きしましたことの中で、二、三の点をお伺いしたいと思います。 四人の参考人の皆さんにそれぞれお尋ねいたしますが、先ほど田代参考人からもお話がありましたように、技術導入が、幾ら金を払ってもなかなか売ってくれないような事情になってきているというのが現実の日本の事情でもあるし、世界の事情でもあるかと思います。そうであるだけに各参考人からもお話があったように、国内における技術をどのようにして開発するかという問題は非常に重要だと思うのです。問題は、その技術を国でどういうふうに開発するか、各企業がどういうふうに開発するか、こういう問題を私たちとしては具体的に政策として取り上げていかなくてはならない段階にあると思います。皆さんのお話によりますと、とにかく基礎研究というものは国でがっちりやってくれ、こういうお話ですし、また私たちもそのように思っているのですが、倉田参考人からもお話があり、あるいはまた田代さんやその他の方々からもお話がありましたように、国がせっかく基礎研究のためにつくったそういう研究機関が必ずしも民間との間にしっくりいかない面がある、こういうお話でございました。私どももそういう点は感づいているわけでございます。しかしこれらの問題について特に民間の企業の側からして、なぜしっくりいかないのか、こういう点についてもし御意見がありましたら、お気づきのところをひとつ率直にお聞かせいただければ非常に幸いだと思うのでございます。そういう点をひとつ倉田参考人からまずお願いいたしたいと思います。 それから第二番目には共同研究という問題についてでございますが、国の機関においても共同研究の問題が非常に重要でありますけれども、同時に、各企業間における研究機関でもまた、共同研究という問題が日本の今日の技術開発の問題として非常に重要なのではなかろうか、こういうふうに思うのでございますけれども、こういう問題について皆さんのほうでお気づきの点がございますれば、ひとつそれらの点についてもお聞かせいただければ幸いだと思います。 それから第三の点では人の育成、いわゆる人を育成するという問題について、これはもう皆さんからお話があるように、私どもも技術者をいかにして育成するかという点は非常に重要だと思っております。そういう点で田代参考人からお話がありましたように、この問題はただ科学技術庁だとかあるいは通産省だけの問題じゃなしに、今日では文部省の問題としても取り上げろ、こういうお話はもっともだと思っているのですけれども、この際倉田参考人にお聞きいたしたいと思っておりますことは、参考人のほうでは科学技術についての人の育成の面から12チャンネルの経営という問題に当たってこられたわけであります。ところが、なかなかうまくいかなかったというような事情も聞き及んでおるわけでございます。具体的に科学技術の教育という問題をそういう側面からとらえてまいりました倉田参考人のこういう問題についてお感じになられたことや、また国に対して要請すべき問題等について御意見等ございましたら、ひとつこの際積極的に御所見を承らしていただきたい、こういうふうに思っております。 あと、まだいろいろございますけれども、それらのことを各参考人からひとつお話しいただきたいと思います。
○岡小委員長 各参考人からですか。
○石野小委員 倉田参考人、井深参考人、田代さん、それぞれ関係があると思いますので、ひとつ……。
○岡小委員長 それでは御発言の順序に従って、井深参考人からお願いいたします。
○井深参考人 たいへんいろいろな問題が出たのであれなんですけれども、いま国内のマーケットが自由化されたということで、海外の技術を昔のように容易に輸入させてくれなくなっているということは事実でございます。たとえばただいまもテキサスインストルメンツという会社が一〇〇%の会社を日本にこさえさせてくれ、それでなければ、ちょっとむずかしくなりますけれども、インテグレーテッドサーキットという、トランジスターの次にくるような大きな題目の技術の特許を許すわけにいかぬというようなことで、だんだんとこの傾向は、いろいろな産業とも日本が成長していけばいくほど強くなってくると思うのであります。私は、それに対処するには、やはり先ほど申し上げました敵の谷間をねらえ、もし自分のはうがある特徴のあるものを持ってさえいれば、それが先ほども参考人のお話にありましたけれども、十分なものでなくても何かしっかりしたものさえ持っていれば、相手と交換条件とか、あるいは楽に相手の技術を入れることができる。いままではどうも何でもかんでも日本の国の中だけでやっていかなければならないといった関係をもう少し広い目で見ていきたい、こう思うわけでございます。 それから共同研究という問題を石野さんはお出しになったのでございますが、これは先ほど南部さんがおっしゃったような公害問題とか、そういう非常に大きな問題もありますけれども、現在置かれておる一番大きな問題は何かと申しますと、時間の問題だと思います。どんなにいい技術が開発されようとも、どんなにいい研究が生まれてこようとも、時間がたってしまってはもう何にも価値がなくなるということを考えます。この時間かせぎをやるということは、やはりコミュニケーションが非常に緊密でなければならない。私どもの小さい企業でございますけれども、一つ仙台に離れて東京でこれをコントロールしているということだけでも、すでにもうある程度の支障が出ているような気がするのでございます。技術開発、研究開発ということと時間の問題は非常に大きな問題なんでございます。国の研究機関が十分しっくりいかないということにも一つは時間の問題があると思うのでございます。国では予算というものがあって、予算が通らなければそういう研究に手をつけることができないというような、年単位でもってものを考えていたのでは現在の研究からはどんどん残されていく。こういう形の研究体制ということではやはりいまの技術革新の速度というものは非常に速いということを考えなければならないと思います。 それから基礎研究の問題がありましたけれども、一がいに基礎研究、基礎研究と非常に簡単にいわれているのであります。基礎研究ということをやっていったら、これは幾らやってもすることがありまして、日本じゅうが研究所をやっていてもとても間に合うどころではない。やはりそこに私は基礎研究ということに対しては——いままで企業内なんかでも基礎研究というものは何をやってもいいんだとか、あるいは時間がかかってもしかたがない問題だとか、そういうふうに解釈されてきたのでありますけれども、やはり基礎研究もはっきりした目標とプログラムを持って、そのとおりに行く行かないは別として、一応スケジュールを持ってやっていかなければならないと思いますので、そこの基礎研究の問題あるいは時間の問題、共同研究の問題、あわせてそういうところに非常に大きな問題点が存在すると思います。 それから育成の問題は、どうしても学校でやっていただかなければならないと思う問題であります。昔は大学というところが第一線の、一番基礎になる、一番進んだ研究というものを維持しているのだという観念をわれわれも持っておりまして、事実そうでありましたし、今日でもヨーロッパのある国へ行きますと、大学が研究をしてそれを企業へ持ってきて企業化していくのだという考えがあるのでございますけれども、先ほどの時間の問題も関連いたしまして、これからの研究というものはやはり企業が一番率先したり、まつ先の技術開発というものを持ち得るんじゃないか。それを中心にして基礎研究も考えていかなければならない。昔とは逆の関係になってきたということを考えていかなければならない。そうなりますと、大学その他でやっていただくことは教育の問題だと思うのであります。いい研究者を育成していただく、大学がいい研究をするのじゃなしに、いい人をどんどん育成して世の中に出していただくということにもうちょっと重点を置いていただかなければならないのじゃないかと思うのであります。いまの大学のあり方というものは、研究のうんのうをきわめるということが第一であって、人をこしらえるということは第二の問題になっているような気がしてしかたがないので、より一そうこの育成の問題はお願いしたいと思う点でございます。 石野さんからのお尋ねに関して私の意見を申し上げました。
○岡小委員長 次に田代参考人にお願いいたします。
○田代参考人 技術導入の問題は私からもちょっと触れましたが、井深さんのおっしゃるようになかなかむずかしいけれども一部分でもいいからそういう発明なり研究を持っていて、それをいままであるものに加えるというと、品質もよくなるとか、そのほかのことがあれば交換の種になる、先ほど井深さんはそういう意味のことをおっしゃったと思いますが、これはそのとおりであります。ですから、やはり私どもとしてはユニークなものをとにかくつくり出す、そういう卵を持っている、そうすれば外国とのクロスライセンスができるということを申し上げた次第であります。 それから基礎研究というものは大学なり国立研究所でやっていただくということを私もちょっと触れましたが、その基礎研究はやはり民間ではどうしてもできないような基礎研究——民間ではプロジェクトに入ったものがあって限定されて研究をするわけであります。時間も限られておりますが、しかしそれよりももう少し深いところの研究、基礎的の研究というものはどうしても大学とか、そういうことになりますが、アメリカの例で見ましても、大学における基礎研究と申しますか、ファンダメンタルなものと、それからそれをデベロプしていく民間会社との結びつきが非常にいいように私は思うのです。たとえばコロンビアならコロンビア大学でもって一つの基礎的な研究をやって、それで今度はベルのベルテレフォンの研究所と結びついて、そうしてそこに新しい製品ができてくるということは現実に実例があるのでありますが、これが日本では、さっき申し上げたように、大学そのものの研究が進んでいないとは申しませんが、そういうふうな環境にないというのが一つと、それから大学にはいい研究がありますが、今度はそれと民間との結びつきが日本ではなかなかうまくいっていないという面があります。これは両方に欠点ということではありませんが、両方の努力が足りない。一緒にやろうというような結びつきをつくろうという努力が足りないのでありまして、これは民間にも罪があるわけで、民間の企業はやはり大学に近づいて、そして大学でできたいい研究をデベロプしていくということを、われわれが進んでそういうふうに仕向けることが必要だと思っております。 それから共同研究のことにつきましては、私が共同研究のことでちょっと申し上げたのは、これはやはり民間でできないような大型のものとか、あるいは直接に関係がないというようなもののことを主として申し上げたのでありますが、しかし民間における共同研究は、それぞれの企業というものが競争の立場にあるからなかなかむずかしいのでありますけれども、現在の状況を申し上げますと、それが二重にならないように関係の企業がやはり共同研究という体制をだんだんつくりつつあります。そういう趨勢にあるので、私どもの企業におきましても、他の企業と共同出資をして共同研究をやっている問題がたくさんあるのであります。そうしてそれがりっぱに工業化されつつあるというものがありますので、そういう方向には向かっておるということを申し上げていいんじゃないかと思います。 人材の問題につきましては、これは教育が一番大事でありまして、大学もさることながら、さっきも申し上げましたように、やはり青少年のときから科学技術に関するところの関心を大いに持っていくということが必要だと思っております。 結局、科学技術の発展を期するためには、私は二通りあるんじゃないかと思う。一つはたとえばソビエトがやっているように集中的にそこへ持っていく、くさび戦術と申しますか、ほかのことは犠牲にしてもこれは必ずやり遂げるんだといういき方と、もう一つは、長い年月はかかりましょうけれども、やはり教育というものを普及させて、そして科学技術の教育というものを青少年の時代からたたき込んでいって、それがだんだん積み重ねられて科学技術に関するあるいは研究に対する発明と申しますか、そういう新しいものが生まれてくるということになるのだろうと思います。こういうふうな二通りの道がありますが、これは政府の施策によって、あるものはそういうふうなやり方をするのもけっこうでありましょうが、また一方において、年月はかかるけれどもこれはどうもいたし方ないので、いままで素地がないものをつくりだすのですから、急にきょうあすのうちにでき上がるということは困難だと思いますが、しかしいろいろそういうことを長期的に考えることは、政府として、また民間でもそうだと思いますけれども、私は必要だと思っております。
○岡小委員長 次に南部参考人にお願いします。
○南部参考人 国の研究機関と民間の研究機関との協力でございますが、これまで確かにいま田代さんのおっしゃるように両方の努力が足りなかったのではないかと思います。このたび科学技術庁でございますか通産省でございますか、大型プロジェクトの予算というようなものが計上せられたやに承っておるわけでありますが、こういうような財政措置が講ぜられますと、国の研究機関と民間の研究機関との共同の作業というようなことが行ないやすくなるのではないか、今後相互で連絡を緊密にしなければならない、かように考えるわけであります。かねて産学協同というようなことばが出ておりましたわけでありますが、やはり大学の研究室とも私ども民間のほうからも積極的に十分連絡をしていきたい、かように考えております。 それから共同研究と申しますと、やはり企業内の機密でございますとか、企業の利害に複雑に結びついたようなものは、なかなか共同研究というのが困難な事情もあると思います。先ほど申し上げました公害の問題等については、現に消費者であります電力業界と石油業界と共同でひとつ考えようじゃないかというようなことで、寄り寄り協議をいたしておるというようなことでございます。共同研究をして、むだな重複を避けていくということには十分に注意をしなければならない、かように考えます。 なお試験的に研究室で学問的には成功をしていましても、これを工業化するといいますか、さらにパイロットプラントまで持っていくというようなことが私はどうも日本では不得意なんじゃないかというような気がいたしております。これらの点につきましては、大学における技術教育のあり方というものについてもひとつとくと考えなければならないということがありはしないか。もっとやはり学問的に掘り下げた、学問的な追求をする態度を学生に教え込んでいただくというようなことが必要ではなかろうかと日ごろ感じております。 以上であります。
○倉田参考人 最近技術導入が非常にむずかしくなったいうことはもうお話しのとおりでございます。私どもは国産技術を標榜しまして、技術導入ということは非常にきらいなのでございますが、なかなかそうばかり言っても時の問題が解決しないような問題がありますので、ずいぶん技術導入もいたしております。しかし何といっても、技術導入をすればこれに対する対価、国の金がなくなるのでありますから、それを無制限に出すわけにまいりませんから、できるだけ国産技術といいますか、自分で開発するということに力をいたしておるわけでございます。特にそういう意味から、日本にも独自の技術開発がほしいのでありますが、しかし何もかも自分でやり通すというわけにはいきませんので、先ほど基礎研究機関といったようなことを実は申し上げたのでありますが、基礎研究機関というのはわれわれがやるいわゆる仕事の上の研究あるいは近い将来の開発のための研究というようなものをいう基礎研究ではなくて、国として非常に将来を見通したような大きな研究、たとえば原子力の最初の研究は、これは国としての研究でありましたが、今日いまのままああいう研究が国として必要であるかということを振り返ってみますと、これはもう民間でもいいのじゃないかという気がするくらいでありまして、もし国がいまやるなら核融合の先のものを研究する、あるいはMHDをやるとか、あるいは宇宙開発の研究に取り組むというようなことは、どうしても国が基礎研究としてやっていただきたい。これには思い切って金もかけていただかなければならないし、また人材も養成しなければならぬと思います。 それから次は共同研究といいますかあるいは研究組合といいますか、こういったような問題につきましては、これはなかなか競合が激しいのでありますが、ここで私非常に反省するのは国民性の問題ではないか、この国民性がほんとうに直らなければ、この問題を幾ら私どもが議論しましても、そう簡単にはいかない。しかし、みな有識者はそういうところに目ざめまして今日では総合共同組合研究といったようなものをやっておりまして、私どもも実際の実例を知っておりますが、そういう形がだんだんできてくるという形にいくのじゃないかと思います。 最後に人の育成の問題でございますが、石野さんから御指摘がございましたように、私、12チャンネルというようなものを引き受けて実はやりました。この人の育成ということに大いに力をいたすつもりでございましたが、事志と違って、私の不徳のいたすところ御期待に沿うような形にはいっておりません。しかしごく平易なことから考えますならば、たとえば科学技術の振興というものがいかに重要であるかということを官民みんながこれを認識するならば、私はかつて科学技術庁でも申し上げましたが、たとえば記念切手を発行するとか、あるいはまた白い羽根運動をやって国民から浄財を集めてこういう方面に利用するとかいうようなことも考えられるのじゃないかというような、きわめて幼稚なことでございますが、そういうことからでも国民に科学常識を普及させるというようなことはいかがかと実は考えております。
○石野小委員 研究の問題で、特に共同研究の問題で井深参考人から、時間の問題について非常に強く強調されたわけであります。この時間の問題は、もちろん特許の問題なんかとも関連して他の参考人からもお話がありましたように、非常に重要だと思うのでありますが、一つの研究の成果が特許とかいろいろな形で出てくる場合のその時間の問題と、研究自体の、相互の研究者の具体的なプロジェクトに取り組んだ研究での時間の問題、いわゆる作業場所の問題等もあるのだろうと思うのであります。おそらく井深参考人のお話しになりましたことはその両方を兼ねておるとは思いますけれども、たとえば井深さんのほうでやられた仙台とそれから中央との連携が必ずしもうまくいかないということからいいますと、作業現場といいますか研究所の職場の問題なんかの距離的な関係や何かを言われたのじゃないかと思います。もしそうだとしますならば、研究についての地域の問題とか、そういう問題である一つの制限というものがどうしても出てくるのかどうかということです。ここらのところが私どもはわかりませんが、何か共同研究とかあるいは一つの問題に取り組んでいく場合のそういう機関の所在地の問題とかいうようなことが非常に不便を来たすようなものがあるのか、そしてまた、どういう形で出るのかということで、私ども全然未熟なものでありますから、もしそういうような点で問題があるとしますならば、ひとつ御意見を聞かせていただきたいと思います。
○井深参考人 ちょっと仙台の問題を少し大げさに申し上げたのでございますけれども、要するに、私どものような小さい会社内におきましても、田代参考人も先ほどちょっと触れられたのですけれども、セクショナリズムということが共同研究その他研究自体を行なっていく上に一番大きな障害になっている。そのセクショナリズムの一つとして時間の問題も入ってくると思うのであります。新しい技術の開発と申しますと、昔エジソンの時代には、エジソンという非常な偉い人が一人おりますと、その人の力だけでいろいろな問題が解決されてきたと思うのであります。今日ではあらゆる分野の人が共同して一つのテーマというものについて振り回されていくというか、それに頭を突っ込んでやってみて初めてそのものができ上がってくる。トランジスターの発明の経緯を見ましても、あるいはアメリカにおける原子力の経緯を見ましても、決してその一業というようなものでなしに、とんでもない他業のほうにわたって、総合された力が加わって、そこで初めて大きな力が出てくると思うのであります。そういう場合に、今日の大学のあり方とか、あるいは国の研究機関のあり方というものは、そういう総合性が非常にないのでありまして、私、時間の問題はちょっと大げさに申し上げましたけれども、そう研究というものものんびりしたものじゃないのだということを強調のあまり、少し言い過ぎたかと思いますけれども、もちろんどんどん商品といいますか技術革新というものは激しく動いている。どんな基礎問題に関しましても、先ほど倉田参考人が言われましたように、原子力の問題においてももう十年前に始まったときの情勢と、いま日本が原子力に対して何をするかということは全然変わっているにもかかわらず、昔から同じような一貫した進め方をされているんじゃないだろうか。刻々と変わるということに対してもう少し認識をみんなで持っていただきたい。じっとしていてはどんどん置いてきぼりになるということを申し上げたつもりだったのですが……。
○石野小委員 質問は私だけではありませんので、一つだけ最後に、国が研究する場合に、国の研究というものは主として大学などが中心になってやっていくことだと思いますけれども、全国的に幾つかの大学がありますし、またそれぞれ大学には重複した研究科目を持っているのもたくさんあるだろうと思います。国の研究がほんとうにわが国の科学技術を開発する上において有効に活用されるためには、それぞれの各大学間におけるところの連携というものが非常に密でなければならぬことは言うまでもないと思うのであります。こういう問題について、現在の日本の大学とか国の研究機関というものは、皆さんのほうでこうあったらというような御希望の点などがあったり、御意見があったら、そういう問題についてひとつ御所見を承らしていただきたいと思います。
○倉田参考人 私申し上げておりました基礎研究というのは、大学をさしているのではございません。そういう意味で、新しい一つの機関をつくっていただいたら、こういうのであります。
○岡小委員長 三木喜夫君。
○三木(喜)小委員 きょうおいでいただいております参考人の方々は、それぞれ業界の代表の方でございますし、またそれぞれの企業の中にりっぱな研究所を持っておられる。私も日立、東レ、東燃と昨年おじゃまいたしまして、いろいろ見せていただいて感銘した点がたくさんありました。ほんとうにありがたかったと思うのですが、ソニーさんのほうは私行かしていただいておりませんけれども、社長の井深さんが二月号でしたか三月号でしたか、大学の教育のあり方ということで大学局長と座談会をやられておるのを中央公論で読みました。その中で教育のあり方というものはどうあるべきかということも、企業の先端をいっておられる方の御意見としては承ったわけであります。そこで、昨年からずっと研究所を見せていただいて、そのつど皆さんから御意見を承っておる ことを総合していま考えてみますと、結局企業だけで研究を進めておっては限界がある、したがっ てこれについては国は何とかしなければならぬじゃないか、してくれ、私はこのことに尽きたと思うのです。りっぱな研究もやっておられます。私たちは感謝しなければならぬと、これだけ涙ぐましい研究をやっておられるということにつきましては感じたのですけれども、そういう問題にぶち当たったわけです。 そこで、きょうは私は私なりに考えがあるのですが、谷敷振興局長が見えておりますが、いまこういうような参考人の御意見なり私が要約して申し上げたことについて、科学技術庁の一つの使命としては、そういう要望にもこたえなければならぬ、それから国の予算のあり方というものも考えなければならぬ。その中でどのようにして予算をとって、どのようにしてこれを振興するかという、やはり科学技術庁なりのプログラムを持たなければならぬ。それなしに私たち科学技術振興対策特別委員会でむだに論議をすることはいけないと思いますので、きょうはそういうプログラムを一ぺん出してもらいたい。あなたのお考えならあなたのお考えでけっこうですし、それから技術庁としてこうやるのだという考えがあればひとつ言ってください。その上で私の質問を展開していきたいと思います。
○谷敷政府委員 振興局という名前がついておりますと、科学技術振興全部所管をしておるのではないかというふうにお考えになったのではないかと思いますが、実は役所の機構といたしまして、振興局が分担しておりますのはごく限られたことでございまして、ただいま先生が御質問になりました点は、科学技術庁全体の予算なり施策のあり方に関係いたしますので、むしろ私よりも官房長がお答えしたほうが適当ではないかと思います。
○小林(貞)政府委員 先ほど御指摘のように、これから日本が発展していくためには技術を開発していかなければならないということにつきましては、私どもつとに痛感しておるわけでございます。しかも、その技術開発を多元的にといいますか、いろいろな方面から総合的にやっていかなければならないということ、これまた一つの大きな使命として私どもの科学技術庁に課せられた問題であろう、かように考えておる次第でございます。その場合に残る問題は、大学との関係が残るのでございますが、これは科学技術会議という場もございまして、田代先生がその議員になっていらっしゃいますが、そういう場も通していろいろ検討できる、こういう形になっておるわけでございます。ともかく総合的にこれを考えていかなければならないということも、私ども大きな使命として痛感しておるわけでございます。 そこで、そういう総合的にこの問題と取り組む取り組み方といたしまして、われわれとしてはでき得べくんばこれらを総合的かつ計画的に進めるための一つの大きな国の見取り図とでもいいましょうか、計画とでもいいましょうか、そんなようなものを考えていかなければならないというふうにかねがね考えておるわけでございまして、この辺の問題は現在大きな問題になっておりますいわゆる科学技術の長期計画なしはいわゆる基本法という問題等々に関連してくるわけでございます。国会の場におきましても科技特の場でひとつそういうような考え方で進んでいけ、こういうことになっておるわけでございますので、私どもとしては現在そういう方向で鋭意努力をしておる、つまり総合的に長期的に見ていくという一つの寄り場としての長期計画ないしは科学技術基本法とでもいうようなもの、これを考えていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。 たいへん大きく申し上げますと以上のようなことになるわけでございますが、民間の研究機関との関係で申し上げますと、これは先般来御指摘のありましたように、金の問題につきまして日本の場合には必ずしもよく出ていないということでございますが、この辺は当庁としてはもちろん当庁なりの努力はしておるわけでございますが、さっきちょっとお話が出ましたように、やはり一つの大きな世論とでもいいましょうか、口先だけの科学技術振興ということでなくて、国民の中から盛り上がるような科学技術振興、こういうような空気が出てこないことには、どうも私ども声を大にしましても、一人二人の声というようなことになりかねない小さな声であってはどうもいかぬ、こんなような感じをいたしております。 いろいろ一般的な心がまえといたしまして申し上げた次第でございますが、個々の問題について申し上げますと、科学技術庁の施策全般になるようなことになろうかと思いますが、心がまえとしまして、以上のような心がまえで私どもとしては問題に取り組んでおる、かように御了解願いたいと思います。
○三木(喜)小委員 いま御答弁をいただきましたように、私が尋ねました核心に触れた答えとしては、国全体がそういう意欲にかられるような世論を起こさなければならぬ、これは私あなたから聞いた答えとしては心に触れたものがあると思います。しかしそれも時間の問題があると思うのです。要するに科学技術白書が出ておりますし、いま科学技術基本法が出されようとしておるわけなんです。そうしていま言われたようなことは、答弁としてはそれでいいかもしれませんけれども、前におられる参考人の方が言っておられる考え方とはぴっちり合わない。私はもう少しそれを要約して具体的に申し上げますと、いま振興局長は私が言うべきではない、こういう話だったですし、官房長が何かくつの上からかゆいところをかいておるような答弁をしておられましたけれども、そういうことで皆さんが席を変われば、そのままそのことが役所の関係においては済んでしまう、こういうことが一つ私は問題だと思う。このことを皆さんに身を挺してやっていただかなかったらできないと思うのです。役所のセクショナリズムといいますか、マンネリズムといいますか、そういうことが一つの壁になっておると思います。 それから、きょう参考人に来ていただいて、ほんとうにあなたがおっしゃられるように世論を巻き起こすというなら、きょうは参議院等の関係があるためかもしれませんけれども、大臣に来てもらったらいいんですよ。次官ばかりよこして、この次官もまたかわってしまうんですよね。少なくとも大臣が——これは私が口をすくして言っておりますし、倉田さんがいつかそういうことを言われた。十年間に十人も科学の大臣がかわるようなことでは、日本の科学振興いずこにありや、こういうことを話しておられましたので、私はそのことを覚えておるわけですが、こういうことでは科学振興というのは声だけに終わってしまいます。私は悪口を言うために言うておるのではなくて、ほんとうにこの科学振興をどうしたらいいかという立場から申し上げますならば、こういうあり方はひとつ考えてもらわなければならないことであろうと思います。 そこで核心に触れて申し上げますと、いま参考人の方の言われたのは、民間の研究と国が責任を持ってやる研究というものを十分つないでくれ、こういう言い方なんです。これをどうつなぐかということもやはり私は振興局長の仕事だと思う。 それから官房長に申し上げたいと思うのですが、世論を巻き起こしてから金を出すのではおそいのであって、少なくとも科学技術庁がほんとうに独立したところの役所として、どの省庁にも権威を持って言える、そしていろいろな問題についてでも確信を持ってやれるというようなぐあいになるためには——私たちは科学技術庁を育てたいと思うのですよ。これを中間役所みたいな概念でおいてしまうのは惜しいと思いますので、これくらい科学技術のことがやかましく言われておるときに科学技術庁というものは省にでもしていかなければならぬと思うのですが、それになるためにはやはりあなた方に努力願わなければならぬ。その前に少なくとも予算を取るに際しても、こういう方法で取って、来年はこれだけにしていくというところの見通しを私は持たなければいかぬと思う。それには現実に金が要るんですよ。井深さんには後ほどお聞きしたいと思うのですが、大学の施設なんか、あるいは大学の教官なんかでもアルバイトしながらやっておるんですよ。こんな中で科学技術を振興せい、振興せいと言っても、これはとても問題の解決にならぬと思います。問題点はたくさんありますけれども、当面予算をどうしていくか。いまの大臣のようなかっこうやら、いまの科学技術庁のあり方ではとても、何といいますかこの総花的な予算の中でこれは取れっこない。私たちは倉田さんの研究所におじゃましても、東洋レーヨンさんのところの研究所に行かしてもらっても、ソニーさんの研究所に行かしてもらっても、そのことを言われるたびに寒いものが背中を走るような気がします。何を国がやってくれておるかということです。要するに、その点の見取り図を聞いておるわけなんです。
○谷敷政府委員 民間の研究と国の研究をつなぐ問題につきましては、これは私の科学技術庁で持っております研究所がございますけれども、こういうものにつきましては、それぞれ関係の民間の方、大学の先生、それから研究所の責任者というものが集まりまして、いわば委員会組織の運営をやっておりまして、そこで業界、学界、国の研究所の要望を調整をして研究を進めるという体制をとっております。これは科学技術庁だけではなくて、それぞれ各省もいろんな研究所を持っておりますが、それぞれの研究所別にそういうような組織でまいっております。ただ全般的な問題全般的な研究課題等につきましての国の研究所のあり方と民間の研究所のあり方というものにつきましては、これもまた責任を回避するとおしかりがあるかもしれませんけれども、計画局のほうでそういう問題を所管をいたしまして、先ほど官房長も触れましたように、長期研究計画というようなものができるようになりますれば、それでカバーすると申しますか、調整するということになっております。 それから予算の面につきましては、これは先生から御指摘がございましたように、科学技術庁の予算は多ければ多いほどいいわけでございますが、実際問題としましてはなかなかそうもまいりませんので、私どもといたしましては、せめて前年度予算に対する新年度予算の伸び率というものがございますが、科学技術庁の予算の伸び率は平均的な伸び率を下回らない、これを相当上回る程度の予算を確保したいということで、四十一年度につきましてもできるだけの努力をしてまいってきておるわけでございます。現実にそれじゃ四十一年度平均を下回らない予算を取れたかとおっしゃいますと、これは非常に遺憾でございましたけれども、実は平均まで達しませんでしたので、この点われわれとしましてもどこがまずかったのか反省をいたしますとともに、まただいぶ先のほうのことになりますけれども、四十二年度の予算におきましてはぜひ、ただいま申し上げましたような最低線は確保したいという覚悟でおる次第でございます。
○岡小委員長 三木君に申し上げますが、上原国務大臣の御出席を求めましたが、いまアジア閣僚会議に御出席中でございますので、御了承願います。 なお、大蔵省の主税局から研究投資等に関する税制について、中橋税制第一課長が御出席でございます。
○三木(喜)小委員 前の参考人の方々、政府の取り組み方としてはああいうような取り組み方でございます。また一局長の立場からしますと、私はやはりあの答弁以外に抜け出られないだろうと思うのです。要するに、いまの政府の予算の中では、総花的で各省庁ぶんどり合戦の中で、科学技術庁の予算、特に振興に対するところの予算というものはどうして取るかということが私は問題点だと思いますので、これはお考えがあったら聞かしていただきたいと思うのですが、前の四人の方は、これは官房長が言いましたように、世論を巻き起こせという意見がありましたけれども、やはり総理をこの考え方の中に引っぱり込まなければいかぬ。それには皆さんがまなじりを決して、これではいかぬのだということをよく知らしてもらわなかったら、日本は技術的に立ちおくれますし、どんどんと国費を湯水のように使って科学技術振興に力を尽くしておる国と比べると、ほんとうに寒気がする思いがするのです。しかしそれの中には、まあ制度的に言えば、国防的なものがあったりして、私たちは問題にしなければならぬ点がありますけれども、そうでなくて平和利用の問題においてやらなければならぬ点が多いと思いますので、皆さん方がまなじりを決して、こうした政界、官界をゆり動かしてもらうことが一つだと思うのです。その一つの例が、倉田さんを前に置いて私は悪いと思うのですけれども、12チャンネルの問題や科学館の問題です。これは私はこの前、科学館や12チャンネルの問題でおじゃまいたしましたところが、国はかなり、この科学館に対しては援助をしておるのだと思っておった。ところが、何のことはない、大衆の教育をし、青少年の教育をするところの科学館に対しては、ほんとうに十分の一も出していなかったように思う。もっと出しておるのですか。これは見当はつきませんけれども、ほとんど寄付でやっておる。そうしておいて12チャンネルがうまくいかなんだ、へったくれだと言って国会ではそれを追及することに明け暮れておる。初めのうち科学者がやったり、しろうとがやったら失敗するのはあたりまえなのです。それに対して国はがっちりとかまえてやる必要が私はあると思うのです。そうでなくてはいいものは育たない。それはチャンバラ映画や、いやピストルを撃ったやはつったや殺したやという、こういうものをやっておるテレビというものは、それははやるかもしれませんけれども、そうしたものでは国民のほんとうに大切な教養に関するような問題は育たないのですから、それに関する心がまえを持っていただかなければならぬ。それから私は、反対党と言うたらおかしいですけれども、野党でありますけれども、ここに与党の人がおられますけれども、大臣にするなら、ここにおられる前田さんや菅野さんのような人に大臣になってもらうことも政党として必要だと思います。私はそう思う。そういうように、政財界、民間、大学、全部思いを新たにしなかったら、このことは成り立たぬと思います。容易ならぬ問題に私たちは当面しておって、本日おいでいただいておる皆さん方はほんとうに喫緊の問題について、問題点に体当たりしていただきたい。私もいろいろなことをお聞きしたいのですけれども、私一人がしゃべっておってもいかぬと思いますので、前田先生や菅野先生にもバトンをお渡ししたいと思います。岡先生も必ずこのことについては強い識見を持って皆さんを本日お招きされたと思いますので、譲りたいと思います。個々の問題につきましては、いずれお伺いして聞きたいことがたくさんありますから、あるいはまた政府のほうに対しまして私たち言いたいことがたくさんありますし、相談して一緒にやりたいと思いますことはたくさんありますから、これはまた後日に譲ります。
○岡小委員長 原小委員。
○原(茂)小委員 本日は貴重な御意見を伺いましたので、二、三お伺いをしたいと思います。井深さん、それから田代さんの御意見を先にお伺いしてみたいと思うのですが、先ほど冒頭の井深さんの御意見の中に、やはり同じ民間の企業研究にしても、それがダブって、むだが非常に多くなっている危険がある。やはり相当そういうものを国家的な立場でセレクトをした後に、研究というものを思い切って重点的に進めていったほうがいいのじゃないかというような御意見もあったようであります。ある面から言いますと、そのことも一理あると思うのですが、現実にはやはり大胆不敵に、むだを思い切って重ねながら、至るところで同じような研究がされているかもしれませんが、そのことのほうがかえって一つの新しい芽をふかせるには必要じゃないかというような面もあるので、むだというものにあまり拘泥をすると、かえって科学技術の推進という点ではおくれる心配がありはしないかという感じを、お聞きして持ったわけなのですが、その点が一点と、それからもう一つ、逆にそうは言いながらも、大きなテーマに対しては、国家的な統制とは言いませんが、できる限り調整を行なって、相当ウエートを予算的にも、その他国の力といいますか、そういうものを一つのテーマに注ぎ込んで、ダブって民間で同じような研究などをさせないようにするということも、ものによって必要になるかと思います。そういうときに、民間の企業というものが思い切って自分の持っておりますテーマなり一つのアイデアなりを、おれのところはこれを持っている、こんなものを考えているということを一つの場に出し合えるものかどうか。思い切って公開と言っては語弊がありますが、それをむだなく調整をするという一つの場所ができたときにそこに出し得るものかどうか、そういう点もちょっと疑問を持つのですが、その二点、先にお二人からお聞かせいただきたいと思います。
○井深参考人 私は、研究の重複がいけない、ダブっているからもったいないということを申し上げたのではなしに、企業というものはもう少し現実的なもので、自分たちが一番じょうずに生きていくためを考えれば、そんな重複することなんかやっていられなくなるだろう。非常に大きな問題に関して、幾つでもたくさんのところが一生懸命やるということは非常にけっこうでありますし、特に日本では競争ということが非常に大きな要素になっておりますから、ある程度の競争はやらなければいけないと思うのでありますが、一つのところがやった、あるいはアメリカがやったからおれのところもやらなければいけないのだという風潮があまりにも多いものですから、これは企業としてつまらない行き方じゃないか。もっと企業として賢明に生きていかなければならないということを申し上げたつもりであります。したがって、そういうような面に関しましては、統制であるとか、企業方針を政府が差し示すとか、研究方針の重点的なものはこれであるということを示すことは、企業自体が生きていくためにはやはり死にもの狂いなのでありますから、その企業の人の判断にまかせて、統制的なことはやるべきじゃない。その会社がつぶれるかつぶれないかということは、その会社自体がやはり一番真剣になっていると思うのであります。先ほどだいぶ科学技術庁への御批判があったと思うのですけれども、企業が真剣であって政府が真剣でないということは、科学技術庁は破産をしないという保証があるから、それが企業とは一番違う面であるのであります。企業というものはあすにも破産するかもしれないということをしょって立っております。それだけに強いことができる。そのための研究助成というものは、思い切って政府がやってくだすってもいいのじゃないか。その場合に、先ほど来皆さまのお話にありましたとおり、一律の補助とか、そういうことじゃなしに、これは国の繁栄につながるのだということがはっきりしたものに対しては思い切ってやるし、そうでないものは、これはつぶれていってもしかたがないのだという考え方に徹していただきたいと思うのであります。
○田代参考人 御指名がありましたから……。 私が先ほど研究の重複というようなことを申し上げたのは、パテントについてだけです。いま特許が非常におくれたために、もしそういうものの特許が出ておれば、自分のところで初めからやるのも重複になるからやめようという場合が多いのです。ところがそれが三年も四年もおくれているものだから、知らずにとにかくこれはいいからやろうとやってみて、研究が一応片づいたからパテントも出してみるというと、もう先に出ているものがある、こういうことを申し上げたのでありまして、井深さんもいまおっしゃったように、企業というものは食うか食われるか、少し大げさに言えばそういうふうな気持ちでやっているものですから、たとえばむだがあるとか、よそがやっているからこっちはやらぬということでなくて、やはり何でも同じことですが、これはめちゃな過度の競争ということは困るけれども、フェアな競争ということは必ず進歩をもたらすもので、絶対に必要なものだと思っております。 それからさっきの、民間の研究やなんかが重複しないために、アイデアを示し合うということはとてもできないことです。それぞれ自分のところで、いま井深さんが言われたように、企業自体が判断をして、これは駒を進めようか、あるいはこれはどうしようかということは自分できめるものですから、これはむずかしいのですが、私がさっき触れました問題は、たとえば私どもの業態で原料問題が起きてまいります。そうすると、原料問題についてはどこか会社にやってもらうということになりましょうが、そういう場合に技術提携というものが生まれてくるわけであります。もう一つは、同じような業態のものでもそこに何と申しますか、企業の分業と申しますか、英語を言ってはなはだなんですが、デマーケーションというか、一つの線を引いて、これまではおれのほうでやるから、君のところはこれにぶつからないようにこれをやれというようなことをやることは私は必要だと思っております。そういうことでありまして、民間が手を携えていくといいながら、お互いに利害を異にしている競争者でありますから、なかなかその調整はむずかしいけれども、しかし場合によっては、必要に応じては調整を行ない共同でやっていこう、こういうことを申し上げたつもりでありますから、御了承願いたいと思います。
○原(茂)小委員 わかりました。 これは田代さんにもう一つお尋ねしておきたいのですが、その場合基礎研究がどうしても必要だというところまでさかのぼって問題を突き詰めて一つの企業で研究していきますね、この分野に関してはもう一つ掘り下げた基礎研究が必要だといったときに、そういう問題に関して、同じ業界であるときには、その基礎研究に関してできているところがあるかないか、あるならお互いに交流しようじゃないかというやり方が一つと、もう一つはそういう部分に対しては学校の研究所その他に思い切って依頼をするというようなことが行なわれていくのだろうと思いますが、いまの前段の、どうももう一歩突っ込んだ基礎研究が必要だといったときに、同じ業界の中にある各企業の持つ研究所にこの種の研究ができているかどうかという問い合わせぐらいはやれるものでしょうか、やれないものでしょうか。
○田代参考人 それは、そこまでいきますと、やはり学界の問題も入ってまいりますし、それからなかなか同業者のうちでやるということは、私は自分の経験からは困難と思います。けれども、学界のほうの問題については、大体においてこういうことまでいっておるとかいうことは、公表されるペーパーを見るとかいろいろなことでわかりますししますから……。 それから大学の問題をいまお話しになりましたが、これは私ども非常に必要なことだと思って、とてもわれわれのところではこれ以上の研究はできないというときに、大学にもう少し手間がかからずに委託研究をしていただくとか、そういうことを手軽にやれるようにならないと、いまいろいろな手続や何かで非常にむずかしいらしいですね。さっき産学協同ということを参考人は言われましたけれども、そういうふうなことがやはりスムーズにいくような体制がほしいと私は思っております。
○原(茂)小委員 お話よくわかりますが、そこでいま私がお聞きした問題が、実は確かに、企業防衛といっては極端ですが、企業は企業独自のアイデアを持って研究を進められていくことはけっこうだと思います。それがあるところまでいきましたら、もう一歩突っ込んだ基礎研究が必要だが、これは大学に頼むか、あるいはとにかく自分のところでは採算ベースからいってもなかなかできないといったような問題に関しては、思い切って同種企業が、技術交流ではありませんが、そこら辺のところではひとつお互いに腹をぶちあけまして、問い合わせをやったり交流を行なうということがもしできますと、その雰囲気から、いま言った大学に対する研究が思い切って必要になるとかならないとか、もっと簡単に研究の依頼ができるようにしなければいかぬとかいいとか、井深さんは時間がないようですから簡単にものを申し上げておるのですが、何といってもいま日本の現実の、政治そのものもそうですが、やはり産業というものがある程度の主体的な役割りを果たしているわけですが、その産業の中心的な大きな役割りを果たしている企業が、そういった考え方でまずスタートを切って動いてもらいませんと、先ほど三木委員からも質問があったように、現在の日本の行政機構の中で、科学技術庁が中心になってああしろこうしろと言いましても、なかなか一朝一夕にそういう理想的な仕組みになっていないわけですね、ですから私は、国の立場で、科学技術庁を中心にあるべき姿に変えていこうとすることも努力をいたしますけれども、同時に民間の企業も、大手の皆さんのところあたりでそういった一つの雰囲気が逆に先につくられていって、それとマッチさしていただきますと、そこからいろいろな必要な、国の機構がこうなっている、民間の要求はここにある、それが最も短い期間に要求が達成できるようなあり方はこうあってほしいという雰囲気といいますか、だれが見てもおのずからわかるようなレールが敷かれてくるのじゃないかという意味で、いまの基礎研究というのは一例なんですが、そこまで突っ込んだときに、思い切ってオープンにお互いに技術交流といいますか、どうだろう、この面で研究しているかどうかといったようなことをし始めていただくと、だいぶ上の国の機構というものもそれになぞらえていかざるを得なくなるような、それがいまの日本の国の体制そのもののここに至るまでの歴史だったように私は思うものですから、そういう意味であえて御質問したわけなんです。もしできましたら、できる限りそういった分野でも業界としてお考えをいただくと、日本の科学技術行政というものを本来あるべき姿に持っていこうとする、あるいは皆さんの理想とお考えになっているものをあとで聞きますが、そういったほうに近づけるのに便利じゃないかというふうな、これは私の思いつきでございますが、参考までにひとつお聞きを願っておくだけでけっこうです。 次に、先ほどお話のありました、これはあと南部さんからもお話のありました各参考人の皆さんの一緒の御意向なんですが、やはり税制の面で思い切って国家的な見地で考えていく必要がある。かといって、井深さんのおっしゃったような、あまり補助金などで甘えさせ過ぎたアメリカの例などもお話がございました。しかし税制に関する限りは、やはりこの面から思い切って国の立場で考慮をしなければいけないということは一致したお考えのようで、私もそう思いますが、私たちの立場から考えますと、この税制というものを、あるいはその他の国の立場でやるべきことをやったということが結果するところ、でき上がりました製品を通じて、その分かあるいはそれ以上か知りませんが、大衆にいわゆる使いやすいといいますか、単価が下がるといいますか、買いやすいといいますか、そういう意味の奉仕がそのことを通じてなされるという前提がほしいわけなんです。今日まで日本で企業の皆さんのそういった意向に沿った形でいろいろと国が何かをやったときに、そのやったことそのことが直ちに大衆のいわゆるプラスになってあらわれてきていないという傾向が非常に強いのです。端的に言いますと、助成が行なわれた、税制の面で研究費の大部分に対しては免税にしたというようなことが、製品の単価に対しては何%か引き下げが可能なはずなんです。これは一つの例ですが、しかし端的に大衆の手に渡るときの単価の引き下げという形であらわれてきていないというふうに、私たちは多くの事例を知っているわけです。やはりこの種の問題が、確かに研究というものの大事なことはわかりますが、これに対する税制の面での国家的な配慮をする、同時にそのことを通じ、あるいはその他のことも通じて、その結果としては大衆がそれだけ利益をしたというような結果にならないと困ると思うのですが、いままで私どもの知っている事例ではあまりそういうものが具体的に出てこないというような事例を多く知っているものですから、そういう点では私たちのやるべきこととして、当然税制面における特段の配慮が国の立場でなされるべきだと思うので、今後その面に対して努力はいたします。当然すべきことですから、科学技術庁にもお願いをしたり相談をしながら推進をしていきたいと思いますが、そういった点、私の考え方が間違いかどうか、いやそうじゃない、大衆に結局利益が還元するように企業としては考えている、かくかくの例があるというようなことがありましたらお聞かせをいただきたいというのが一つ。 最後に、井深さんの時間がおありにならぬそうですから、これは四人の参考人皆さん全部にお伺いしたいことなんですが、先に井深さんからお答えをいただきたいことは、先ほどからも貴重な御意見があったわけですが、そうした毎日の企業の経営を通じ、あるいは技術研究というものに力を入れてこられた企業の経営を通じまして、または外国等へ行かれて外国の事例等もあわ、せて考えまして、日本の今日の特にこの面における科学技術行政機構といいますか、これに対してこうあるべきだと思うという端的な御意見がありましたら、そのことをずばり伺わしていただきますと非常に参考になりますし、きょうおいでいただきました一番おもなねらいも私はそこに実は持っていたわけですが、部分的には非常に貴重な御意見を拝聴したわけで、参考になりましたが、できましたら最後に、どうも外国のこの例から見て、いま日本の科学技術行政というものは科学技術庁が中心なのか、あるいはどこが中心で何をやっているかわからないし、こういう点はこうするべきだ、こうあってほしいのだということを、ずばり国の行政機構という立場に対する批判なり希望なりをおっしゃっていただけましたら、非常に参考になりますので、この点最後に伺わせていただきたい。
○井深参考人 いま二つの問題が出てまいったと思います。共同研究をしていけば企業にとって得であるということがはっきりしてまいりますと、企業はばかではございませんので、当然そういう方向へいくと思います。ただいま電子計算機を四社が共同研究の題目としまして——倉田さんを差しおいてはなはだ失礼ですけれども、四社でもって非常にりっぱに成果を出しております。思想的にただこれを共同研究せいというのじゃなしに、やはりやっていけば、企業の得になるのだ、日本の得になるのだということが次第にわかってくれば、当然企業として、賢明な企業者がたくさんおられるのですから、そういう方向にいくと思います。あまりこれをわあわあ言わずとも、自然にそういうことになると思います。基礎研究に関しましても同じだと思います。それから研究費を補助したのにすぐものを安くしてないじゃないかという御質問があったのでございますが、一つ例をあげてみますと、田代さんのところと同業者でありますが、アメリカのデュポンという会社は、五カ年後の商品の売り上げの六〇%は現在ないもので占めるであろうということをはっきり言明しております。そうすると、たった五年の間に商品が六〇%変わってくるのだ、六〇%変わって新しいものが生まれるということは、その企業というものがどれだけの力を持ち、それがまたひいてはアメリカがドルをかせぐ非常に大きな力になっているということを考えなければならないと思います。私は、研究費というものが余裕が出てくれば出てきただけ、企業が研究のスケールなりあるいは基礎研究なりあるいは非常に進んだ研究なりへ手を伸ばしていくべきでありまして、直ちにものを安くするということでは、私は、大きい意味では輸出ということが可能になりまして日本のためになると思うのでありますけれども、技術の積み重ね、狭くてもいいから深く、高く積み重ねたものがものを言うという時代になってまいりますものですから、そういうような面でどんどん内容というものが変わっていくぼど力が強いのだという意味で、税制その他もお考え願いたいというのが私のお願いでございます。
○原(茂)小委員 何か国の行政機構に対する御意見ないですか。
○井深参考人 これは先ほど来申し上げたように、何が一番国全体としてやらなければならぬことであるかということ、これはもう非常に広い範囲で有識者の方が皆さん御相談になって、これでいこうといったらそれにうんと力を注ぐ。その場合に、私はあくまで輸出ということに一番重点を置いていただきたい。日本がこれから安いもので輸出をしていくということはなかなかむずかしくなってまいります。その場合に知能産業と申しますか、頭を使ったものを輸出していかなければならない、それに対して日本はいま何に投資をしておくべきか、国家として何を投資しておくのが一番得であるか損であるかということだけで判断していただいていい。ただし、その得であるか損であるかということは、三年先の問題と五年先の問題と十年先というふうにはっきり期限を切って、十年後の日本での姿はどういうふうになっておるだろうか。そのときに日本は何をなすべきかという見地からやっていけば、日本という国は非常に伸びていく可能性を十分持っておる、問題を集約していただくことだと私は信じております。
○倉田参考人 ただいまお話のございました、お互いが共同研究するというようなことにつきまして、私さっきも申し上げましたが、日本の国民性といいますか、過当競争といったようなものが始終いわれているこの際に、そういうことができるだろうかという非常に疑いも持つのでありますが、しかしこれはさっきも井深参考人からお話がありましたように、ものによってはそういう共同の目的に沿うていくことができる、これは実例がございますからそう申し上げられると思うのであります。しかし、また一面、原先生のお話のように、いろいろと競争し合ってこそ進歩がある、そういう意味からはある程度の競争もなければいかぬ、こういうふうに私は思っております。 それで、たとえばきわめて内輪の話でありますが、私ども二十数工場の中で同じような仕事でありながら違った方向から研究しながら試作を始めるといったようなことをやりまして、この競争によってどっちが有効であるか、どっちがいいかというようなことを社内においても、そういう重複とはいきませんが、違った方向から研究するようなこともやっておる場合があります。こういうことは適当に指導しますればある程度の効果を上げると考えております。 それから最後にお話のございました科学技術庁の問題、先ほど三木先生からも言われたように、科学技術庁長官がこうひんぱんにおかわりになったのでは、ほんとうに私どもが何をお願いしていいか、そのときそのときにまた変わったことを申し上げてもいかぬのでありますが、終始一貫して同じようなことを申し上げるのも、十年に十回も申し上げるということは、私どもとしては非常に骨が折れる、つまらぬことだと思います。 なお科学技術庁の振興予算といいますか、それらを見ましても、ほんとうに科学技術庁の振興費というものはきわめてわずかなもので、全体の科学技術庁の費用は非常に膨大なものをお示しを願うのですが、さてわれわれが恩恵に浴するものはどれかといってさがすくらいのものでありますから、やはりこれは強力な指導力のありますような形において、科学技術基本法もひとつ設定していただきまして、強力に推進していただくというようなことを私はお願い申し上げたいのであります。
○南部参考人 私どもの研究でございますが、現実の状態を申し上げますと、私のほうでやっております研究所の経費のほぼ五〇%は、現在扱っております製品の改良、そういう方面に使われております。二〇%くらいが導入をいたしました技術の改善研究というところへ使っております。残りの二、三〇%がわずかに今後できるであろう要求に対する研究、先ほど申し上げましたように、たとえば超音速の飛行機ができました場合の燃料はどうかというようなこと、あるいは自動車のエンジンがガスタービンになった場合の燃料なり潤滑油はどういうものであるかというような、研究したいことはたくさんあるわけでございますが、なかなかそこへ手が伸びないわけであります。既存の製品と申しましても、あるいはそういうふうな現実に扱っております品物に直結した研究につきましては、先ほど来各先輩のおっしゃいますように、企業でありますものですからなかなか共同がむずかしい。しかし先ほど私が申し上げましたように、たとえば大気汚染というような問題につきましての共同研究は大いにやらなければならない、私どもその考えでおるわけでございます。 科学技術行政といいますか科学技術庁につきましては、先ほど局長が言われましたように、実はうんと予算をつけていただくように努力をしていただく。井深さんがおっしゃいましたように一番必要なのは、私どもの業界にいたしましても、ブランクを埋めまして大体国際水準の技術になっておる、さてこれから何に力を入れるかということが問題でございます。これは各企業企業の責任において直結した製品については考えをいたすわけでありますが、国全体として、先ほど井深さんがおっしゃいましたように、五年後の日本で最も必要な科学技術は何であろうか、十年後にはどうであろうかという長期の、大きい意味における、大所高所からのビジョンがどうしても必要ではなかろうかというふうに考えております。
○岡小委員長 それでは私から、せっかく大蔵省から来ておられますから、中橋課長にお尋ねいたしますが、現在研究投資に対する税法上の優遇措置はどういう種類のものがございますか。
○中橋説明員 現在とっております試験研究に対します税制上の措置というものは、これは私どもの考えます税制として取り得るものは、相当大幅に取り入れておるという感じを持っております。あらゆる角度からの御要望も勘案しつつとっておる制度であるというふうに思っておりますけれども、それを概略まず御説明さしていただきます。 まず、企業におきまして新製品を製造します、あるいは新技術を発明しますということに関係いたします試験研究費でございますが、これは通常は繰り延べ資産とされまして、ある一定期間でもって損金に落としていくわけでございます。しかしこの試験研究費につきましては、研究費を出しましたときに一時の損とすることができるわけでございます。したがいまして、試験研究費を支出すれば、それはその年度の損金となり得るということでございます。 それから開発研究の用に供します特別の機械設備を取得いたしまして、これを開発研究の用に供するという場合には、その機械設備の取得価格の九五%を一時に償却することができるわけでございます。あるいはまた開発研究用の建物、構築物、機械等につきましての減価償却資産については、これは通常の減価償却の耐用年数というのを定めておりますけれども、こういう開発研究用のものにつきましては、特別に耐用年数を設けております。一般のものに比較いたしますれば、これは建物につきましては約十分の一、機械については約二分の一というふうに、非常に短い耐用年数で償却できることになっております。これも相当のスピードで落とせるということになっております。 そういう試験研究をおやりになりまして、その成果が出てまいりまして、新しい技術を企業化するという場合には、これは主務大臣の承認ということが条件でございますけれども、その新技術を企業化いたしますための機械設備につきまして、これもその企業の用に供しました年度に、普通償却の別ワクとしまして、三分の一償却をできることになっております。 それから、特に国産技術によります機械設備というものの償却という観点から、私ども、国産一号機の特別償却と呼んでおりますが、相当大型で高度な生産技術と多額の費用を要するという機械設備、その第一号、初めてでき上がったものを取得しましたときには、やはりこれも取得しまして事業の用に供しました年度に、取得価格の三分の一を一挙に落とせるということにしております。 それから先ほど来共同研究というお話が出ましたが、そういう目的を持ちました鉱工業技術研究組合という制度がございます。それに対しまして、個々の企業が支出する金がございますが、その支出金は、支出しました年度で全額損金に落とせるということになっております。これはもともとその出しました資金というものは、効果が数年度に及ぶものですから、やはり繰り延べ資産としてある一定の年限の間に損金とすべきものでございますけれども、一時に支出しました年度に全額を損金とするという体制をとっております。 それから、それを受け取りましたほうの鉱工業技術研究組合というものが、試験研究用に直接供します固定資産を取得しました場合には、圧縮記帳という方法でございますけれども、一円まで落とせるわけでございます。ほとんどそのものについて、組合においては課税が起こらないというシステムになっております。 それから、先ほどちょっとお話が出ましたように、そういうことで各企業で新しい研究をなさって新しい技術を開発する、それを輸出します。輸出しましたときには、その技術輸出の収入金額の七〇%というもの、これは所得から損金として落とせるわけであります。したがいまして、新技術の輸出につきましては、ほとんど課税が起こらないというふうな制度をとっております。 以上のように、税金の制度として乗り得るようなものというのは、いろいろな数多くの制度をとっておりますが、最後に問題になりますのが、先ほど来参考人の方からもお話のございました試験研究準備金の制度であろうと思います。それにつきましてはいろいろ御要望もございますが、いま申しましたように、支出した研究費あるいは取得した試験研究用の機械設備というようなものにつきましては、ほとんど一時に、あるいは通常の場合よりもはるかに短い期間で損金に落とせるというようなシステムでございますけれども、それにさらにつけ加えまして、将来の試験研究費に充てるために、その準備といたしまして、いまのこの利益の中から一部をとって置いておく。損金として準備金に計上することによりまして課税をしないでおくというシステムは、私どもとしてはなかなか乗りにくい。かねてよりいろいろ特別措置について御批判がございます。先ほども、一体そういう税制上の恩典があったときに値段を下げるのかというような御批判、これもまさに特別措置 一般につきまして常にございます批判の一つであろうと思いますけれども、こういう準備金制度というものを私どもが特別措置の一つとして採用するかしないかということは、非常に問題であると思います。 御要望の線といたしましては、確かに企業の利益がアップ・アンド・ダウンがありますことによって試験研究費が景気の悪いときには圧縮される、それを景気のいいときに一部用意しておくというような御要望、これはまさにわかります。しかし、同じような御要望というのは、各企業にあらゆる観点についてございます。それはすなわち企業の利益をできるだけ平準化しておきたいという、これは当然の御要望でございますけれども、そういう企業平準化のための準備金というのは、いろいろな目的を果たすために各方面から非常に強い要望がございますけれども、私どもとしては、税制の特別措置という観点、将来の支出される試験研究のためにいまの利益を留保しておくという制度については、やはり直ちに乗りにくいという問題があるのではないかということで、これまでもいろいろ私どもの考えを申し述べてきたわけであります。 それと、一方、相当多額の研究費を支出している代表的な企業について業種別に調べてみたこともございますけれども、そこで私どもが見ました状況というのは、必ずしも利益が減っておるときに試験研究費の支出が減っておるということにはなっておりません。先ほど参考人の方々から申されましたように企業としてはどうしても新しい製品の開拓ということで試験研究費が必須なことでございますから、それに経営者の方としては、十分な配慮をなさっておる結果と思いますけれども、利益が減ったときよりも、むしろ試験研究費の支出額というものは多くなっておるという事情が看取できます。 それからまたもう一つは、先ほど申しましたように、一時の損として落とせる試験研究費を、やはりこれは企業利益の観点からと申しますか、一時に償却はしておりませんで、繰り延べ資産として順次落とす、資産に計上しつつ順次落とすというような態度をとっておられる企業もございます。それもやはり一つは、企業利益の平準化という観点から一時に落とせるという道をあえておとりになっていないということもあろうかと思いますけれども、そういう実態もかみ合わせますと、あるいは先ほど申しましたような理論的な税制上の問題というような観点から申し上げますと、この試験研究準備金制度というものは税制としては非常にむずかしい問題をはらんでおるということを申し上げたいと思います。
○岡小委員長 ただいまの中橋課長の説明に対してごく簡潔に御意見を承りたいと思います。倉田さん。
○倉田参考人 ただいま中橋課長さんのお話を伺いまして、私ども始終この問題には取っ組みまして耳にたこのできるほど実は伺っておるのでありますが、試作研究ができたりあるいは新製品を開発するというようなことができるということは、企業にそれだけの余裕がなければできないのであります。それができないときにできる方法はないか。これがいわゆる準備金制度だと私は考えてお願いしておる、それ以外に何も申し上げることはありません。結局できるときはそんなものはなくともよろしいのでありますが、できないときにはどうするかということを考えまして、われわれとしては寝ても起きてもおられないという気持ちで、いま収益の悪いときの試験研究費はむしろふえているというようなことは、それでなければ企業の継続ができないから、そういうことを考えて無理をしてやっております。それのために、あるいは株主なり従業員なりに対するいろいろな報酬やあるいは賞与が減ってくるというような結果になるのでありますから、やはりどうしてもこういう準備金制度というようなものがあって、そういうような心配がないような経営ができることが私どもとしては望ましい。ことに配当準備金制度というような話も出ましたが、これは国家に余裕があるならば配当準備金制度があってもいいのじゃないかとまで実はお願い申し上げたいくらいであります。そうして企業が安定し、企業が栄えていくというようなことをお願い申し上げたいわけであります。
○岡小委員長 田代参考人、御意見がありましたらどうぞ。
○田代参考人 別にございません。
○岡小委員長 税法上、特別措置法がございますが、その種目はどういうものでございますか。中橋課長。
○中橋説明員 御質問の御趣旨は……。
○岡小委員長 特別措置法による貸し倒れ準備金とか価格変動準備金等、種目をおっしゃってください。
○中橋説明員 法人が非常に例が多いと思いますので、租税特別措置法におきます法人税について認められておる準備金を申し上げます。 まず一つは価格変動準備金であります。第二は海外市場開拓準備金、それから第三は海外投資損失準備金、四は証券取引責任準備金、五は渇水準備金、六は違約損失補償準備金、それから七は異常危険準備金、大体以上がいまある準備金でございます。
○岡小委員長 ただいま御説明の準備金制度というものは、企業のいわば直接的な利益に関する準備金とも言えると考えられます。ところが私どもが常に要求しておる研究費に関する準備金制度の設定ということは、申し上げるまでもなく、すでに外資法が施行されてから約三千億くらい外貨を使って技術を導入しておる。日本の輸出技術の受け取った対価は百五十億にすぎない。非常な外貨の流失である。しかも今日外国との技術提携が非常に困難な状況ではますます開放経済のもとに国際的な経済競争の中に立ち向かうとすれば、やはり企業の研究の意欲と充実というものが重要な経済的な目標になってくると思う。こういう事情を考えた場合に、研究投資というものに対する準備制度は、貸し倒れや物価変動というものは別にして、今日非常に重要な役割りを帯びてくると思うので、この際大蔵省としても十分ひとつ考慮せられたい、また次の機会にあなたなり主税局長なりその他の方々にも委員会に御出頭願って、この問題について十分ひとつ委員会としての検討をしたいと思います。 なおきょう御出席を願った参考人の方々は、いわば日本の基幹的な産業の、しかも代表的な会社の方々でございますが、今日大企業と中小企業との格差というものは日本の経済的な断層としてしばしば指摘されておる。通産省的見解によれば、あるいは従業員数とか資本規模によって中小企業、そしてまた大企業というものを概念づけておる。しかし技術革新の時代における企業の格差というものは、技術の格差が基本的ではないかと思いますが、中小企業の技術革新ということについて、皆さま方はどういうふうな御方針なり御見解を持っておられますか、この点をこの機会に承りたいと思います。 まず倉田参考人から……。
○倉田参考人 私どもとしては中小企業の育成という問題はわれわれの企業の育成と全く同じものでございまして、中小企業がもし技術的に進歩しないとかあるいは経営的にまずいということになりますれば、われわれの製品にはひびが入るのでございまして、どうしてもこれを育成しなければならぬ。そこで育成するということは、単に仕事を頼んで、注文して、その製品を買っておればいいというのじゃありませんで、技術的にどうしてもわれわれの信頼のできる程度の、また特有の技術を持った中小企業であるということが絶対に必要だと私ども考えております。そのためにはあらゆる方法をもちまして技術の指導をする、あるいはまた、単に技術の指導だけでもまいりません。原材料の支給というようなことも考えなければなりません。ただ市場から買ってきたような原材料を使って、そして部品をつくったりあるいは製品つくって納められたのでは、われわれの信頼できるものにならないので、そういう原材料の面からあるいはまた、そのバリューアナリシスのようなことから、あるいはまた検査、生産管理の問題等まで十分指導しながらこれを育成していくということで、私ども中小企業を育成し、またこれを指導していくというのが根本の方針でやっております。
○岡小委員長 なお共同研究組合について、いま中橋課長から、その年次における研究のための支出は損金として落とす、こういうお話がございました。私どもしばしば海外に出張する機会がありまして、そういう機会にアメリカ、ヨーロッパ諸国、またソビエトの研究事情を見学する機会がありますが、アメリカでは、先ほど井深参考人のおっしゃったように、大企業がその総売り上げ高の六%をこえるような研究投資をやって、企業自身の力でもって非常な研究を進めておる。ソ連へ行けばこれはもう国家の権力で資金とマンパワー、設備を集中して、そして研究開発を進めている。ヨーロッパの諸国へ行きますと、たとえば英国ならば四十八ばかり、フランスでも五十ばかり、西ドイツ、イタリア、OECD諸国はおおむね大企業もまた中小企業も、いわば製鉄屋さんもやすり屋さんも含めたような研究共同組合を持って、研究の成果の公開をやっておるというような実情を聞いております。私どもも、またこういう共同の研究が部分的に進められているというお話も先ほど聞きましたけれども、中小企業等にも研究の成果というもの、あるいは技術の進歩に寄与し得るような意味における研究共同組合というようなものが、日本の国においてもまじめに取り上げられてもいい段階ではないかと思います。中小企業の鉱工業研究組合も、約七年前に法制上設置されることになりましたが、十二あったのが一つ減って十一しか残ってないというような状態で、一向に進展していないというのも、やはり研究への意欲以外のものによってそれが阻害されているような感じがいたしますので、こういう点はやはり日本の今後の科学技術行政上、特に民間における科学技術の進歩のためにいろいろと重要な参考問題を提起すると思いますので、参考人各位におかれても御検討を願いたいと思います。 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。 本日は長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、たいへん参考になりました。ここに小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会をいたします。 午後三時三十五分散会