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50回国会衆議院1965/10/30

日本国と大韓民国との間の条約及び協定等に関する特別委員会 第7号

発言数
175
登壇者
17
会派数
1
開催日
1965/10/30

会議録

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 これより会議を開きます。  日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約等の締結について認承を求めるの件、日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定の実施に伴う同協定第一条1の漁業に関する水域の設定に関する法律案、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第二条の実施に伴う大韓民国等の財産権に対する措置に関する法律案、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法案、右各件を一括して議題といたします。  質疑を行ないます。鯨岡兵輔君。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 私は、主として韓国民の永住許可になった者の法的地位並びにその待遇に関する協定について、総理大臣、外務大臣、法務大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、質問に先立って、外交の基本になるものは何かという問題について総理にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  わが国は、憲法において、国際紛争を解決する手段として戦争をしないと、中外にこれを明白にしておるのであります。すなわち、武力を背景とした外交は日本はしないのであります。できないのであります。そこで、わが国の外交はどうあるべきか、それをつくづく考えてみますと、国連を中心として、国際信義をかたく守って、信頼と尊敬を基調とした外交を打ち立てなければならないというわが自由民主党歴代政府の考え方は間違っていないと私は確信をいたすのであります。ただ、そういう外交をするための力はどこから出てくるか。私は、それを、国民的な世論、国民的背景であると思うであります。いま条約を審議する場合も、私どもがまっ先に心がけなければならないことは、国民の理解と協力であると思います。そてれをどこでどうして得るか。それは、この国会の審議の場、すなわちここであると私は思うのであります。ところが、私は、自分もそのうちに加わっていながら、それが今日まで完全に行なわれているとは思えません。まことに遺憾なことであります。議会側にもその責任があるかもしれませんが、政府の側にも重大な責任があると私は思ののであります。戦争にわが国が負けた。朝鮮出島出身の人々はその当時日本人であったのに、わが国が戦争に負けた結果、突如として好むと好まざるとにかかわらずこれが外国人になってしまった。それからわが国は占領下の門主性を奪われた政治情勢のもとに置かれた。朝鮮半島が一つにまとまっていれば比較的簡単であったろうに、それは残念ながら二つに分かれて血を流してまで争った。敗戦に苦しむわが国には当時二百万の朝鮮出身の方がいて、その国籍さえも、法律的にも常識的にもさだかなものでなかった。そしてそれは日本のどうすることもできないことであったのであります。いまになって、あのときは全く残念だった、しかしああするよりはほかに方法がなかったと思うこともございましょう。しかしながら、あのときああしたのは間違っていた、こういう方法があったのに残念なことであったと思うことだってあるに違いないと私は思うのであります。非常識な、それは暗黒の時代だったのですから、そんなに割り切ったりっぱな行動ばかりあったとは思えません。なかったのがあたりまえであります。たとえば、先日来の国籍論争もそうです。私は、この重大な意義を持つ論議が国民の理解を得るために必ずしも十分でないことの責任の一半は政府にあると言うのは、そのことであります。もっと大胆率直に、矛盾は矛盾として国民の前に披瀝したらいいと、私はそう思うのです。それで国民はちゃんと理解します。矛盾を矛盾として大胆に言えば、それで国民は納得もします。世間に審議をいたずらに引き延ばしているのではないかとの印象を与えているとしたら、それは議会の責任であります。それを私どもは痛感しなければなりません。テレビやラジオや新聞を通じて国民がこの論議を聞いて、そして見て、もしも周到に用意された革命のための忍びやかな匍匐前進を感じて恐怖したり、あるいはまた、実のない幻惑的な政治遊戯と感じて政治に不信を抱いたとしたならば、その責任はわれわれ議会側にあるものと痛感いたします。しかしながら、全く過去に少しの悔いもなかったかのようにことば巧みに言いのがれようとする無意味・有害な努力が政府の側にないか。心ない攻撃的言辞も十分にはしたないことでございまするけれども、もしそれがあるとしたら、条約の意義を十二分に国民に理解させなければならない立場にある者として、日本における政治の最高の責任者として、総理はどのようにこのことをお考えになられるか、まず冒頭に承りたいと思うのであります。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  ただいま、基本的なわが国の外交路線はどこにあるか、同時にまた、わが国の基本的な政治姿勢はどこにあるかというお尋ねでございますが、これは、私がしばしば申し上げますごとく、わが国の外交路線は、申すまでもなく、いずれの国とも仲よくする、そうして平和外交を推進する、これが善隣友好の関係を打ち立てていく、これが私どもの考え方でございます。それには、もちろん、その基礎になりますようにお互いに独立を尊重し、そしてお互いに内政に干渉しないということ、これがその基礎条件であることも、しばしば申し述べたとおりでございます。  こういうような考え方が生まれてきたそのもとは一体何なのか。それは、ただいま言われるごとく、敗戦後日本が新しい憲法をつくった、そうして、国際紛争は一切武力によらないのだ、これは、政府だけではなく、議会だけではなく、日本国民全体がその決意、その考え方で統一されて立ち上がったのでございます。そのもとにおいて、わが国のあり方、国際社会に処していく道、これもおのずから冒頭に申すような方向できまったのでございます。  われわれが選んだこの方向は、国内の政治形態としては、とりもなおさず民主主義、議会中心の政治形態であります。その意味におきまして、国政の最高機関である議会の責任というものも、仰せのごとくたいへん重大だと思います。私が、この審議を通じ、これは内政といわず外政といわず、すべてこの国会を通じて国民の理解を得、そうして国民の協力を得て政治を行なうのだ、どこまでも国会中心だ、院外の活動はその意味において限度があるのだ、かようなことをしばしば申しますのも、この点でございます。私どもは、どこまでもこの議会中心において国政を審議し、同時に外政、外交も進めてまいるわけでございます。その基本は主権在民のその姿から当然のことでございますが、国民の理解ある協力なくしてはこれが行なえないのでございます。そういう意味におきまして、今回の日韓の条約にいたしましても、諸協定の批准を求めるにいたしましても、国民の絶大なる、強力なる支持、支援、これはもう絶対に必要なことであります。国民の皆さま方も、この国会を通じ、また、最近のテレビ、ラジオ等を通じて、この審議の経過もよく承知していらっしゃることだと思います。私は、今日まで各党とも、この審議につきまして積極的に協力され、そうして真剣にこの問題と取り組んでおられると、かように思います。ただいま鯨岡君はいろいろ心配されて、あるいはこの国会が他の方向に使われてはいないかというようなことも御指摘でございましたが、それらの点は、もちろん議会自身におきまして皆さん方の責任で処理されることだと思います。お説のとおり、また私どもは、政府として、行政府として、最善を尽くして国民の理解を得るように進んでまいりたいと、かように思います。  ただいま、日韓間の問題について、ことに在日朝鮮人の法的地位等につきましてお尋ねがございますが、だんだんそちらの方向へ行くだろうと思いますけれども、これは、ただいま言われるように、いままで日本人としてわれわれと一緒に住んでいた、それが終戦の結果本人の意思にかかわりなく日本国籍を失った、そういうところに特殊な事情があるのでございまして、その特殊な事情を十分にお互いが理解し合わないと、今日取りきめておる法的地位の問題は理解がいきかねるのじゃないだろうか、かように私は思いますので、これは審議を通じましてさらにその点を明らかにしたいと思いますが、基本的態度は、ただいま鯨岡君の御指摘になりましたとおり、私どもは、どこまでも議会中心で、そうしてこの議会の審議を通じて国民の理解、協力を得、そうして内政、外政ともに平和な、また繁栄への道をたどる、こういうことでありたい、かように思うのでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 総理大臣は、議会中心でこの論議を国民の前に明らかにしていきたい、こういうふうに言われたわけであります。しかしながら、私が特に心配をいたしますことは、今日までの論議を通じて、テレビでそれを見ていて、国民がこれは周到に用意せられた革命のための忍びやかな匍匐前進を感じて恐怖したり、あるいはまた、実のない幻惑的な政治遊戯と感じて政治に不信を抱いたりしたらたいへんだ、こういうふうに申し上げたわけであります。それに対しては同感であるようなお話がございましたので、これは了といたしますが、この点についてはお答えがありませんでしたので、もう一つお尋ねをいたしたいのは、いま総理も言われたように、きわめて非常識な事態であった、特別な事態であった。そういう持別な事態の中にあったんだから、私に言わせれば、いまになって考えてみれば、あのときああすればよかったと思うこともあるでしょうし、ああしたことはまずかったけれども、生時ああするよりほかになかったんだといまでも思うこともありましょう。それを、国会の論議が、攻撃するほうもまことにはしたないけれども……   〔「はしたないとは何だ」と呼び、その他発言する者多し〕

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 お静かに願います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 そうかといって、何か言いくるめるような言い方をする傾向はないか。それが十分に私はあるんじゃないかと思いまして、そういうことでは国民にはよくわからない、もっと大胆率直に言えば国民が納得するし理解もする、こういうようなことを申し上げたのでありますが、それに対するお答えがまだありません。   〔発言する者多し〕

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 お静かに願います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。   過去のいろいろのできごと、その中には不幸なできごともあるし、また、たいへんしあわせなこともあっただろう、かように思いますし、両国の関係は、これはたいへん歴史的な、また地理的にも近接しておりますし、経済的にも絶えず交流が行なわれておる、こういうことで、いろいろの問題があったと思います。しかし、これらについていま一々これをせんさくいたしますことも、将来の親交を樹立する上において、また一そう深める上において役立つことだと思います。このことこそ、いわゆる反省、こういうことにおいて意味があると思います。しかし、これが過ぎますと、反省でなくて、あるいは触れなくてもいい古傷にさわるという問題もありますので、これはまあほどほどにしていただいて、いわゆる前向きで、将来一体どうするのだ、将来の問題はどうするのか、こういう時点に立って真剣に審議をしていただきたい、かように私は思うのでございます。あるいは過去の問題についてこれを率直に表明して、そうしてこれを将来の親善樹立への方向とするのだ、そのかてにするのだ、まことに議論はそのとおりでございますが、これも行き過ぎますと、お互いに感情の動物でございますから、必ずしもその善意が理解されない、こういうことはたいへんな問題だ、かように思いますので、そのせんさくはほどほどにしていただきたい、かように私は思います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 総理はいま私の質問に対して、前のことを思い出してそれを率直に言うのは、意味のないことではないとは思うけれども、俗にいう古傷をつつくということもあって、そういうことは、これから前向きで善隣友好を重ねていこうという態度から見れば、どうもほどほどにしなければならないことではないか、こういうふうに仰せられます。私は全くそのとおりだと思います。そこで、この問題はこの程度にしまして、次の問題に移りたいと思います。  外務大臣にお答えを願いたいと思います。  大韓民国はわが国と一衣帯水の間にある最も近い隣国であります。したがって、あらゆる意味で、国と国とはもちろん、国民生活の上でも密接な関係にあります。特に、太平洋戦争が終わるまでは、その国民は私どもの同胞であったのであります。あるいは強制的に、あるいは自発的にわが国に移り住んで、戦後二十年、日本語しか話せないような人も決して少なくはありません。さらに、忘れてならないことは、大韓民国の政治の様式が私どもの国と同じ自由民主主義によっているということであります。いわゆる自由陣営に属する非常に多くの国が大韓民国を承認し、これと正常な国交を結んでいるのでございます。以上の事柄を考えますと、当然に、大韓民国成立の当初より他国に先んじてこの国を承認し、互いに理解と信頼を深め、親しい国の交わりをするのが、わが国の当然とるべき道であったと思うのであります。なぜそれができなかったか。南北問題もさることながら、それはあまりに近く、あまりに関係が深く、利害関係もために錯綜することが多過ぎたからだと私は思うのであります。親しみも深いけれども恨みも深い、そういう複雑な関係が正常な国交をはばんでいたのだと思います。このことは両国民にとってきわめて不幸なことだったと申さなければなりません。十四年の、長い歳月、互いに忍耐強い交渉を続けて、今日条約並びに協定が、両国の署名を終えて批准にまでこぎつけたことを、日本と大韓民国の両国及び両国民の間の友好関係の増血、さらにはそれらを通じて達せられるのであろうアジアの平和のために喜ぶものであります。しかしながら、申すまでもなく、条約といい、協定といい、長く将来にわたって両国の国民にある種の責務を負わせるものでありますので、批准にあたって、その内容について政府に質問をいたしたい、これが私の考えであります。  大韓民国が独立宣言を行なったのは一九四八年すなわち昭和二十三年の八月十五日であります。GHQの中に、GHQに対する代表部として大韓民国の政府機関が設けられたのは、翌一九四九年すなわち昭和二十四年の一月でございます。前にも申し述べましたように、日韓の交渉が今日の段階までこぎつけますまでには、十四年の歳月と努力が重ねられておるのでありますが、その一番最初は二十六年の十月に実施せられた日韓交渉の予備会談であると承知をいたしております。私の調べましたところによりますと、この予備会談で討議せられたことの最も重要な点は、在日韓国人の法的地位とその待遇であったということであります。しこうして、本年の六月二十二日、この条約並びに協定が両国代表によって署名せられた直前まで討議の対象となったのもまた、在日韓国人の法的地位とその待遇についてであったと聞き及んでおります。  そこで、お尋ねしたいことは、予備会談においてこの問題が初めて話題にのぼったときは、韓国の要求はどんなものであったか。一番最初の予備会談でこの問題が話題にのぼったときは、大韓民国の要求はどんなものであったか。それに対してわがほうはどう考えておられたか。  それから、第二番目は、交渉の全期間を通じてこの問題で一番むずかしく、話し合いが難航したのはどういう点であったか。  それから、第三番目は、署名の瞬間まで条約、全協定を通じて、この法的地位と待遇の問題が決着しなかったやに聞きますけれども、もしそうだったとするならば、それはどういう点であったか。  もう一回申し上げます。予備会談で一番最初にこの問題が話題になったとき、先方の国の要求はどういうものであったか。二番日は、全期間を通じて、この法的地位並びに待遇に関する問題で一番むずかしく感ぜられたのはどういう点であったか。三番目は、署名の瞬間までこの問題がなかなか決着しなかったやに聞き及んでおりますけれども、もしもそうであったとするならば、それはどういう点であったか。この三点について外務大臣からお答えを願います。

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 お答えいたします。  予備会談において向こうの主張のおもなる点は、まず在日韓国人は終戦後選挙権及び外国人登録を除いては内国民と同様の待遇を受けたい。これは、従来そういうことになっておるので、既成の法律関係をそのまま維持することにしてもらいたい、こういう点が一つ。それから、在日韓国人は何らの手続も経ずに日本に永住する、そういう権利を認めてほしい。この権利は子孫にも継続して認めらるべきである、こういう京が第二点。第三点は、退去の強制は絶対にしてもらいたくない、この三点でございます。  日本側のこれに対する主張は、外国人に対して日本国民と同様の地位を与えることは、これはできない。それから、出入国の管理法令の適用を排除することはできないけれども、永住許可の条件あるいは手続等について特例を設ける用意がある。それから、退去強制の除外例を認める意図は日本にはない。この点が両者の間において著しい特徴であったと考えます。  それから、今回の法的地位並びに処遇の問題について終始問題になりましたのは、いわゆる永住許可の範囲でありました。すなわち、向こうの主張するところは、子々孫々まで永住許可を付与する、こういう制度上のものにしてほしいということであったのであります。これは、結局、御案内のとおり、この発効後五年までに生まれた者のその子供ということにして、そのあとの直系卑属については、効力発効後二十五年までの間に両国において適宜協議する、それによってその処遇をきめる、こういうことにして今回の落着を見た次第でございます。  それから第三点、最後までいろいろ問題の決着がつかなかったようであるが、こういうお話でありましたが、この永住許可及び退去強制等につきましては、まあ最も重大な問題でありましたから、その点はまず話がついたのでありますが、その他の教育の問題あるいは社会保険あるいは持ち帰り財産の限度、そういったようなものにつきましてまだ未解決の点がありましたので、イニシアルのごく数日前までなかなか問題が落着しなかった、こういう事情にございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 そうすると、始まりから会談の中途に至るまで大韓民国のほうの要求は、いままでずっといたんだから、選挙権みたいな基本のものを除いては全部権利を与えてくれろ、さらには、強制退去というのは困る、これはやめてもらいたい、それから、子々孫々までずっと永住できるように認めてもらいたい、こういう要求であったのに対して、選挙権を除いてといっても、そんなに一ぱいの権利を与えるわけにはいかない、強制退去も全部やらないというようなわけにもいかない、子々孫々は、これからだんだん質問を続けるに従って明らかにしてまいりますけれども、子々孫々というわけにはいかない、こういう点は途中でまとまったんだが、最後までまとまらなかったのは、教育の問題、社会保険の問題等であった、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 さようでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 だんだんと内部に入る都合上話を前に進めたいと思います。  次の質問は総理大臣にお答えをいただきたいと思います。  すなわち、在日韓国人の法的地位とその待遇の協定を結ぶにあたっての基本の考え方であります。大韓民国の国民は、二十年前まではわれわれの同胞であったのでございます。しかし、現在彼らはりっぱに独立した国の国民であって、われわれにとっては外国人であります。在日韓国人の生活はほとんど日本に定着をいたしております。あの方々が外国人になったのは、必ずしもあの方々の好んだことによる結果ではございません。好むと好まざるとにかかわらず、日本の敗戦によって自動的に外国人になったのであります。日本は独立国として当然に、おのずからなる外国人に対する在留にも待遇にも制限と規制があるはずであります。これを乱すことは断じてよくないことであるといわなければなりません。しかし、在日韓国人の以上申し述べた経過、歴史の中でもめったにない特殊な経過、特殊の事情を考えると、外国人といっても一般のアメリカ人とかドイツ人とか、それと同一視することはいいとは思えません。今日この協定に定められたくらいのことはしかたがないのではないかとも思います。思いますけれども、こまかくはあとで外務大臣にお尋ねいたしますが、この協定によりますると、いまから百五十年もの間、かなりの数に及ぶ異なる民族の集団がこの日本の中に、しかも特別な普通の外国人にない地位を得て生活することになるのでございます。これを審議する私どもは、幾ら長生きをしても、一番若い人でまあ五十年ぐらい、だんだんと、年をとってくる人になると十年か五年ぐらいで死んでしまうかもしれません。そういうわれわれが、今後百五十年もの長い間外国人に特別の地位を与える権利が一体あるであろうか、おのずから省みてみないではおられない問題であります。この点については協定を結ばれた当事者もきっと十分に悩まれたことであろうことを私は信じるのでございますけれども、この協定の精神、基本の考え方でもありますので、これはぜひ総理大臣からお答えをいただきたいと思います。  なお、あわせて、これは総理でも外務大臣でもけっこうでございますが、この協定の交渉にあたってのわが国の基本的交渉態度は、在日韓国人の特別な事情を経過よりして、きわめて人道的にというところに重点を置いてやったのか、あるいはまた、それにしても外国人なんだ、外国人には外国人としての当然のワクがあるべきはずである、ワクはあるけれども、これは例外である、一律に考えられない例外であると考えられたのか、例外はあくまで例外であっておのずとそこには制限、限度があるべきであります。そうなると、その限度は基本的にどこに求められたのか、交渉にあたってその限度は守られたかどうかという問題があります。人道に力点を置いたのか、あるいは外国人ではあるが特殊の例外だと考えられたのか、交渉にあたっての基本の態度についてお答えをいただきたいと思います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 お答えいたします。  ただいま鯨岡君が御指摘になりましたように、また御意見を述べられましたように、韓国人は特殊な地位にある、私どもと特別な関係にある、この点を考慮しなければならない。自分たちの意思にかかわりなく一様に外国人になった、こういう経緯もございますが、同時に、長い間一緒に住んでいた、そうして、ただいまお話のありました定着性というか、そういうものがはっきり、根強く根を張っておる、こういう実情にあるのでございます。生活自体が、中にはもう日本語以外には知らないとか、こういうようなこともあるので、したがいまして、本人の意思にかかわりなく国籍を失った、別になった、こういう意味で、外国人には違いないんだが、私どもが人道上あるいは人情から申しましても、これを一般の外国人と同様に扱うわけにはいかない、その特殊性を十分考慮する必要がある。これが長く日本に住んでいた韓国人に対するわれわれの当然のしかた、あり方だと、かようにも私は思うのであります。そういう意味で、いろいろ韓国人から要望も出ております。あるいは、永久に永住権、居住権を認めろ、こういうような話もあったやに伺っておりますが、しかし、お互いに、お互いが外国人であるということ、これはひとつ考えなければならぬだろう、そして、また同時に、それが外国人として特殊な生活様式を持つことも将来に禍根を残すだろう、もちろんそういう場合には帰化という国籍取得の方法もございますから、そういう点についても十分考慮すべきであろう、かような特殊な状況を長く長く続けていくということは好ましいことではない、そういう意味の折衝が繰り返されて、ただいま申し上げるような最終的な結論になったと思います。ただいま仰せになるごとく、お互いが長生きをするとしても、最後まで見きわめはなかなかつかないではないか、私どもも実はさように思う。そこでまず、この際考えられることは、大体二十五年度ではないか、それから先はそのときにまた考える、こういうような仕組みが普通ではなかろうかというのが、この法的地位をきめる際の基本的な問題になったように私は聞いております。ただいま言われますが、どこまでも、在日韓国人の特殊的ないままでのあり方、つき合い、そういうところに考慮が払われて、いわゆる一般外国人とは特別に区別している、かように御了承いただきたいと思います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 いま、私は総理大臣に対する質問として、二つの問題を提起いたしたのでありますが、最初の問題については、非常に長くなる、しかし、それも向こうとの交渉でそこまで来たんだが、それにしても、二十五年目にもう一回ひとつ考え直すというところで、その辺でいいのではないかと思うというのが前段のお答えのように承りました。この点については、あとでまた詳しく条文に従って御質問を申し上げたいと思いますので、了承をいたしておきます。  次に、外国人として見るのか、あるいは人道的立場で見るのかという問題に対しては、総理のお答えは両方のようにも受け取れましたが、どちらにニュアンスが強かったといえば、やはり例外的にというところに強かったように聞き及びましたが、それで間違いありませんか。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 そのとおりです。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 次の問題に移ります。外務大臣にお答えを願いますが、これからずうっとこの問題について討議をしていく基本の、最もきめておかなければならない問題でございます。いままで毎日の論議を聞いておりましても、この点についてあまりさだかでなかったようにも思いますので、これを承りたいと思うのですが、条約にしても協定にしても、あるいは議事録、交換公文、いずれでも同じことですが、それが締結されて署名し合うまでには、相当の日時をかけて、真剣な討議の末、合議できた文章をつくるのだと思います。日時をかけて真剣に討議をして、一語といえどもおろそかにしないで、そして合議できた文章をつくる。すでにして文章ができ上がった以上は、その間の交渉の経過から、どう希望しようがそれはお互いの自由だけれども、問題は、そのでき上がっている文章が客観的にどういう意味があり、どういう効果があるかということであって、その文章が客観的に意味しない解釈は、どんなに意にかなったものであっても、それは何の政治的拘束力もないものと解してよろしいかどうか。これは基本のことでございますので、明らかにひとつお答えを願いたいと思います。

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 御指摘のとおりでございます。たとえその協定、条約の締結に当たったものでありましても、両国の当事者の間において審議を重ねて合意したものがあくまで、正文であります。それの解釈につきましては、これはすでにそういう当事者の主観から離れて客観性を持ったものでございまして、その条文の書きおろされておるとおりこれを解釈すべきものである、かように考えております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 すでにでき上がった文章は、どういうふうに自分で考えてもそれは自由だが、客観的にどういうふうな意味があるかということが重大であって、その他の解釈は政治的拘束力がないという明らかなお返事でございますので、これからそういうつもりで審議を続けていきたいと思います。  今回提案されております基本条約並びに諸協定の一環として、この在日韓国人の法的地位並びに待遇に関する協定を、私はその内容についてかなりこまかく質問して疑義をただしたいと思いますけれども、全体としてこの程度はしかたがないのではないか、こう思うのであります。ただ私だけではないと思いますが、この協定が実施せられた暁、最も心配になる点は何かといえば、特別な地位を与えられ特別な待遇を与えられる者と、しからざる者とに分かれるということであります。さらに言うならば、在日する韓国民はいわゆる朝鮮人を含めて五十八万人を数えるといわれております。これらの人々が正式に大韓民国の国籍を取り、申請し、許可をされて、日本に永住の権利を獲得し、それに応ずる待遇を与えられる者、それから大韓民国の国籍は取ったけれども、条件が合わないために永住権も取れず、待遇も与えられない者、依然としていわゆる朝鮮というふうな登録証を持っておる通称北鮮系といわれる者、こういうふうに大別されるわけであります。私が私見を申し上げますならば、結論的にそれははなはだ残念であり、その結果起こるかもしれないトラブルがありとするならば、わが国にとっては迷惑しごくなことでありますけれども、これはわが国にとっては手の及ばない、いたし方のないことだと私は思うのであります。わざわざ対立抗争をさせようとしておるのだなどと言う人もおりますけれども、これは思わざるもはなはだしいことであって、何かためにするための議論だと申さなければなりません。在日する朝鮮半島出身の諸君は、よくわが国の立場も理解して、この協定を曲解することなく正しく認識し、無理解にあるいはある種の目的を持って対立抗争などをしないようにしてもらいたいと、切にそれを私は願うものであります。  そこで、私が外務大臣にお尋ねしたいと思いますことは、予想せられるこの種の事態に対して、それを幾らかでも少なくするためにどんな処置がとられておるか。すなわち永住する地位と待遇を与えられない者に対して、主として待遇の面でどのような処置を考えておられるか。その差をできるだけ縮めて、対立を未然に防ぐことをどうやって実施せられるか。この点をお尋ねしたいのであります。  さらに、あわせてお答えを願いたいことは、ある種の目的を持って、差別の待遇に藉口し、誇大にこれを宣伝して、政治的対立抗争を激化させ、わが国に多大の迷惑を与えるような計画を立てる者、及びその実施をなす者などずいぶん予想できることでありますけれども、このような者に対してどのような処置をお考えになっておられるか、お尋ね申し上げたいのであります。幾たびか申し上げました過去の事情、経過よりして、できるだけの理解を持って韓国の方々を含めて朝鮮半島出身の方々、特に在日のこれらの方々に接しなければならないのは、わが国政府及びわが国民としてむしろ当然のこととも申せましょうけれども、今日までのところ、あまりにだらしのない面がなかったか。俗に言うところの、泣く子と地頭には勝てないというような面がなかったか。私は十分にそれがあったと思います。かくのごときことでは、わが国と韓国との間に、念願の理解も協力も生まれないであろうと私は心配をいたします。これから先どんな国と国交を結ぶにしても、今日において、譲るべからざるところは断固として譲らない厳然としたところがなく、過去の経過におぼれて規律も限度もない態度を続けるならば、そこに育つべき、育てたい理解も協力も育ちはすまいと私は思います。かくしてそれはお互いの不幸であります。待遇の差別に籍口して、政治的対立抗争を激化させるような計画や行動に対して、どう政府は対処せられるか。明確な御所信を承りたいと思います。(拍手)

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 今回の条約発効によって、明らかに、韓国人としからざる朝鮮人民との間に、法律上の区別がつくわけであります。その結果どういう処遇、実際上の生活においてどういう違いが出てくるかということにつきましては、一がいに申し上げにくいのであります。何となれば、韓国国籍をとらない人でも、従前から、戦前から日本に居住して、そして日本国民として生活しておったという人もあるだろうと思う。まあそういったような人は、自分の意思に反して国籍を喪失して、そして朝鮮ということになっておる。その人がなぜそれでは韓国籍をとらなかったのか、それから韓国籍をとろうと思ってもとれないいろいろな事情があったのか、そういったようなことはともかくもといたしまして、そういう人があるのであります。それから、同じそういう朝鮮という区画に入る人々でも、戦前から居住していなかった、その後においていろんな経過を経て日本に来ておるというような人もあると思うのであります。これら韓国国籍以外の人についても、そういういろいろな事情がありますから、その具体的な事情に応じて、処遇というものは、おのずから手心と申しますか、これは変わっていかなければならぬものだと思うのであります。まあいずれにしましても、今回のこの条約の締結はあくまで韓国人というものを対象にして、今後われわれは考えていく。しからざる人は、その事情事情に応じてこれは対処すべきものと思うのでありますが、これは教育、社会保険その他のいろんな面においてどういうふうになってくるか、それぞれの所管の閣僚もここにおられますので、その閣僚からお話があると思うのでありますが、いずれにいたしましても、韓国と条約を結んで、在日韓国人の処遇というものは明確になりました。なった結果、しからざる朝鮮人民との間に、幾らかそこに区別ができてくることは、これは明瞭であります。その結果、国内において、同じ朝鮮人民であった人々の間に、妙な政治的な対立が起こるというようなことは、日本としてはまことに好ましからざることであります。われわれの希望としては、日本の法律に従い、日本の社会秩序に順応して、そして平和な生活を続けてもらいたいと思うのでありますが、そういうわれわれの希望に反してそういう事態が起こった場合はどうするか、これはまたそのときの事情によって対処しなければならぬ。しかし、そういう区別に乗じて、その対立を激化する、相克対立を激化するというような策謀がもし行なわれていることがあれば、これはまことに遺憾なことでありまして、かようなことは絶対に慎んでもらいたい、かように考えております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 今度結ばれるのは大韓民国との間に結ばれるのであって、そして永住を許可し、それに伴う待遇を与えるということになれば、そういう条項に従って、忠実にそれはやっていかなければならぬ、その他のものに対してはなるべく差をなくしたいとは思うが、同じであるというようには断じて考えられない、その他のものについては事情に即してやっていきたい、こういうふうに聞き及んだのですが、それで間違いありませんか。

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 それで間違いございません。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 それでは、一つ一つ具体的にお答えをいただきたいと思います。  これは政府委員の方でもけっこうでございますが、現在韓国籍の者の数、きょうの時点においてどのくらいおられますか。それをお答え願います。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 昭和四十年の一月末の現在でございますが、朝鮮と記載しておる者が三十四が九千四百七名、韓国と記載しておる者が二十三万七十二名でございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 この協定が発効後五年たったときに、これは申請の終わる期間でありますが、そのときに正式に韓国籍を持つ者の数はどのくらいであると法務省は御推定でございますか。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 このごろずっと朝鮮の国籍欄から見ますると、朝鮮の名前のところから韓国というふうに変わった数がだんだんとふえておるのでございます。ということは、朝鮮の数がだんだん減りまして、韓国の数が自然にふえておるという状態でございます。これからだんだんふえていくことは確かだろうと思いまするが、どのくらいになりまするか、これはやってみないとちょっと見当つきませんでございます。相当ふえるだろうと思っております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 これに伴う待遇があるのですから、いまから推定ができないということはまことに遺憾です。遺憾ですが、これはやってみなければわからぬことは事実でありますので、これはこの程度にいたしておこうと思います。  そこで次の質問ですが、協定の二条には、先ほども総理が、お話しになりましたように、二十五年たったらばもう一回考え直すということが、協定の二条にあるわけであります。すなわち「日本国政府は、第一条の規定に従い日本国で永住することを許可されている者の直系卑属として日本国で出生した大韓民国国民の日本国における居住については、大韓民国政府の要請があれば、この協定の効力発生の日から二十五年を経過するまでは協議を行なうことに同意する。」と、こういうのですが、この「要請があれば」ということにちょっとひっかかる。要請がなかったらどうするかという問題が一つ。それから、第一条で、これを(a)(b)に分けまして、(a)というのは戦前からずっと今日まで引き続いている者、これは昭和二十年の戦争に負ける直前に生まれた人も当然含まれますから、その人はいま二十ぐらい、まだお嫁さんももらっていない年でありますが、今後それは七十ぐらいまで生きるとすれば、昭和九十年ぐらいまで生きます。それから、その「直系卑属」ということです。子も孫も含まれますが、これはいまから五年後までに生まれる人ですから、まだ生まれておらない人もいます。それが七十ぐらいまで生きるとすれば、百十五年ぐらいまで生きます。昭和百十五年、すなわち、二〇四〇年ぐらいですか。それから(b)項で、その子供というのがあります。それは直系卑属の子供でございますから、直系卑属はまだ生まれていないのですから、これが生殖能力が終わるのは四十年か五十年ぐらいとかりに考えると、そのころ生まれますから、それが七十年ぐらい生きるとすれば、いまから百二十年ぐらい先でございます。そうしますると、問題になるのは、二十五年先というのは、第一項の人でも一番若い人でいまが二十ぐらいですから、二十五年で四十五ぐらい、第二項の直系卑属でも生まれて、五年のときに生まれたとして、これが二十ぐらい、それからその子というとまだ生まれていない、そういう時期にどういう要請があったらどういう協議をしようというのか、その内容がよくわかりません。ひとつつまびらかにしていただきたいと思います。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 お答えいたします。  最初の御質問の、二十五年までに協議という点でございますが、ただいまお話がありましたように、協定の永住の対象になる韓国人は大体三つのグループに分かれるわけであります。第一のグループが終戦当時から引き続いている者、それから第二のグループはそれの直系卑属で終戦直後から協定発効後五年までに生まれる者、そして三番目のグループというのはこの一と二のグループの子供ということになっております。そうしますと、そこの先はどうかということになるのでありますが、その先の人たちというのは、一番初めに生まれてくる場合であっても、それは協定発効後五年過ぎて直後に生まれますから、ちょうどいまから二十五年後になりますと、その規定してないグループの最初の者が生まれてくる時期というわけでございます。そこで、その二十五年までの間にその待遇について要請があれば、協議に応ずるということでございます。韓国側から要請がなければもちろん協議はございません。要請のない場合どうなるかということになりますと、結論がありませんので、その第四番目のグループは普通の外国人ということになります。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 入管局長、二十五年たったときにはまだ三項の人は生まれてない、そういう生まれてない時期に、どういう要請が予想されますか。要請があれば協議に応ずるというのですが、どういう要請が予想されますか。それで、その要請がどういう要請かということを想定して、もしこういう要請であったらばどうだというようなことまで、お差しつかえなかったらばお話し願いたいと思います。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 その場合の要請の対象、内容はどういうことかという御質問でございますが、第一、第二、第三という三つのグループにつきましては、その法的地位及び待遇について、この協定で日本政府が約束をいたしておりますので、四番目のグループと申しますか、世代が生まれてくるときになりますと、その人たちに対しては永住は保障されていないことになります。そこで、それに対する不安は当然その関係者が持つと思いますので、われわれとしては協議の要請があるものと予想せざるを得ないと思います。その場合につきましては、協定の中にもございますように、この前文に書いてございますような精神で協議を行なう。言いかえますと、これらの人たちが日本の社会と特別な関係にふったという点を頭に入れて、日本の社会秩序のもとで安定した生活ができるようなふうにはかろうという精神で、その協議に応じるということでございます。それが具体的にどういう形になるかということは、そのときの日本の情勢、それから日本における韓国の人たちの状況、そういうようなものを考慮いたしまして、たとえば相発多くの人たちが日本に帰化をしておるかもしれませんし、そういうようなことも考慮に入れまして、どの程度の待遇を与えることが適当であるかということを、その段階において検討するほかはないと存じます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 入管局長に重ねてお尋ねをいたしますが、先ほど外務大臣は、交渉の始まりでも過程においても、終盤においては解決したけれども、大韓民国のほうの要請は、子々孫々に至るまで日本に永住を許可してほしいという要請であった。子々孫々というのは困るというので、第一条の(a)、(b)に分かれて、いまから百三十年ぐらいまでのところで打ち切ったわけでありますが、それでも大韓民国のほうではやはり子々孫々という希望を捨てないで、いまから二十五年くらいたてば状況も変わるだろうから、そのころに至って日本に住んでいる人は、おじいさんも永住が許可されている、それからおとうさんも許可されている、せがれ毛許可されている。その子供だけは許可されないというようなことがあってはならないから、そのときになってもう一回話し合ってくれろ、すなわち、子々孫々という希望を完全に捨て切らないで、そこヘネックとして残しておいたのだと考えて間違いありませんか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 韓国の方たちが子々孫々日本に永住を保障してもらいたいということは、交渉の初期から一貫した非常に強い希望でございましたので、ただいまのお話のように、二十五年後の協議の段階において、やはり相当そういう永住の保障という点で、先方は強い希望を持って言ってくることは予想されているところでございます。ただしかしながら、われわれとしましては、かつてこうした人たちが日本に来た背後の事情であるとか、その後の日本社会との定着の度合いであるとかいうことを考えまして、いつまでも特殊の集団として日本に未来永劫残るという形になることはあまり好ましくないということもございますので、そのころの段階になってみませんと、どのような条件で話がまとまるか、二十五年先のことでございますけれども、まあ、希望する限りにおいては日本にいられるようなことを念頭に置いて、われわれとしては交渉に応じていくということになるかと存じます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 交渉の相手側は子々孫々までいたいと言うし、こちら側は子々孫々ということは譲ることができない、こういうことで二十五年ができた、しかし、二十五年たてば、お互いの国が基本条約から始まってすべての条約を誠実に守っていく過程において相当の信頼感も親密感もできるであろうから、別な空気でまた交渉ができる、だから完全に譲ったわけではない、そのときにはそのときの親密の関係の中から新しい考え方を打ち立てていきたい、こんなふうに考えてよろしゅうございますか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 そのとおりでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 質問を続けます。第四条の(b)項、持ち帰り財産についてお尋ねをいたしますから、関係の方はお答えをいただきたいと思います。  永住者の持ち帰りの金を一万ドルといたしましたのはどういう基準でございますか。——大蔵省の方、だれかいませんか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 お答えいたします。  これは、永住を認められた人たちが日本に永住する意思を放棄して韓国に引き揚げるという場合の本人が携帯していくことが許されている金額の限度を、米貨一万ドルまでに認めてくれ、これも非常に強い要求でございまして、結局最後に応じたわけでありますが、一般外国人の場合は、この金額の制限は一世帯当たり五千ドルとなっております。これを韓国人の場合一万ドルということになったわけでありますが、実際は、これは個々の——そういうケースはまずあまり予想されない、ほとんど想像されないのでありますけれども、個々の場合に応じて、日本銀行から大蔵省の許可さえ取りつければ、現在の五千ドルのラインでも、それを上回ることはケース・バイ・ケースで考えられるそうでありますので、実際問題としては可能だそうでございます。その点で、しかし、一応反対に言いますれば、この協定によって明瞭に数字の上であらわれた差の一つであるということは申せると存じます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 そんなに実際上違わないことを、なぜ、あなたのいまのことばをかりれば、相当強い要求で一万ドルと言ったというのですが、そんなに違わないことをどうしてそんなに強く要求しますか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 これは、私は交渉の古い記録を全部読んでおりませんのでわかりませんけれども、やはり、十四年前と現在とでは貨幣の価値が違ったために、当時は一万ドルということが非常に大金であったのじゃないかと存ずるわけでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 一般の外国人は五千ドルというのですが、その五千ドルには上下があるのであります。何も五千ドルきっかりということではない。下のほうは別として、上もあるわけです。そういうことになれば、特に一万ドルということにしないでも、それで交渉の段階でそんなにむずかしい問題になるとは予想せられないのですが、どうしてそういうふうになりましたか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 それはやはり、一般外国人の場合に五千ドルというのが、大蔵省のほうの省令かなんかに限度があったらしいものでありますから、それに対する特例のような形になりますので、形式の面で、そういった面で日本側としてなかなか承服ができなかったということでございます。しかし、いろいろ研究した結果、個々のケースで日本銀行が大蔵省の許可を取りつければ可能であるということになりましたので、大体一万ドルになったと存じております。  それから、もう一つつけ加えておきますが、これも大蔵省の方が見えていませんので正確なところはあれでありますが、私の聞いておりますところでは、今後、大蔵省では外国人の携帯金の許可限度を近く一万ドルに全部一斉に直すそうでございますので、その金額の問題はなくなるわけでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 五千ドルというのは、いわゆる登録に朝鮮と記入されている人が北鮮に帰る場合でも、いまは五千ドル持って帰れますか、一般外国人ですから。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 さようでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 それならば、ちょっと承りますが、新潟から北鮮帰還をしたときの人は、どうして四万五千円しか持っていかれなかったのですか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 北鮮帰還の場合には、世帯でなくて、一人当たり四万五千円ということになっております。そして、これは、北鮮帰還協定、昭和三十四年にできたわけでございますが、その当時、北朝鮮の赤十字社と日本の赤十字社との間で、スイスの赤十字国際委員会が仲介をしまして、帰還協定というのをつくったわけでございます。これは、御承知のとおり、北鮮と日本とは国交がございませんので、直接国同士の帰還協定ができなかったためでございます。その両赤十字の間で結んだ帰還協定で、一人当たり四万五千円ということが書かれたわけでございます。ただ、非常に金額が違うように感じますけれども、北鮮帰還の場合は、帰還を希望する人は、現在地から引き揚げ港、これは新潟でございますが、そこまでの全家族の運賃、汽車賃とか引っ越し荷物の運搬料であるとか、そういうものは全部赤十字から支払われる。それから、新潟に着きまして、船待ちの間の居住とか食料であるとか、あるいは病気になった場合の医療費であるとか、そういうものは全部政府によって支弁されます。そこで、そういう条件と、普通の外国人が日本から引き揚げていく場合、引っ越し荷物から何から全部自分で自弁するわけでございますので、性質が全然違いますから、ただ金額が、片方は一世帯五千ドル、こっちは一人四万五千円という、若干差があるわけでありますけれども、ほかの条件が違いますので、これはちょっと比較するわけにはいかないかと存じます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 そうすると、入管局長にさらに重ねてお尋ねをいたしますが、北鮮からの人が新潟から帰るときには四万五千円しか持たしてやらなかった、普通一般外国人は五千ドルまで持ち帰り財産としてはそのとき身につけて持って帰れるのに、四万五千円しか持たしてやらなかった、えらい差別をしたように言う人がいますが、あのときでも正式の手続をとれば五千ドルは持って帰れたものと解釈してよろしゅうございますか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 ただいま四万五千円と申しましたのは携帯金でございますから、当然、外国人である以上は、一世帯五千ドルまで持っていくことは許されるはずでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 特別の待遇を与えてくれろという強い要求が、一般の外国人は五千ドルであるにかかわらず大韓民国の国民だけは一万ドル持って帰れるようにしたのだと思いますけれども、問題は、あとからでも、その金は、どんどん自分の財産を持っていけるわけであります。日本で商売をやっていてたいへんなお金持ちになった人、そういう人は、行くときには身につけていくのは一万ドルですが、あとからどんどんその金を送ることはできるのであります。そうなりますと、もしかりに、そういうことはないかもしれませんが、理論上からいえば、大ぜいの大韓民国の人が今度は永住できるのですから、なかなかあの方々商売のじょうずな方もおられますから、お金持ちになった人がたくさん一ぺんにわっと帰っていく、そしてどんどんお金を持っていくのだとすると、日本に非常に経済的な影響があるのじゃないかということを心配する向きがありますが、これに対してはどうお考えになりますか。もし大蔵省がいまおられなければ、あとでひとつお答えをいただくように委員長からお取り計らいいただいてもけっこうです。

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 鯨岡君に申し上げます。大蔵省から、半田日本専売公社監理官、佐竹銀行局長、吉岡国税庁長官、服部日本専売公社販売部長、これだけの方が出ておられます。   〔「大蔵大臣はどうした」と呼ぶ者あり〕

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 いや、大臣については私は特に要求してなかった。してなかったですからそれでいいですが、大蔵省の関係の方でこのことにお答えのできる方はいませんか。

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 鯨岡君に重ねて申し上げます。いま村井国際金融局長事務代理を呼んでおりますから、後刻到着いたしましたら御通知いたします。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 それでは、その問題はあと回しにいたしまして、待遇の問題で別なことをお尋ねをいたしたいと思います。  「出入国管理とその実態」という本が出ておりますが、これの一二一ページにこういうことが書いてある。「外国人の在留管理は軌道に乗っていないと言わざるを得ない。また、これらの人の処遇が定まれば、戦前から在留する台湾人にも同様の処遇を与えることになろう。」ということが、この「出入国管理とその実態」という本の一二二ページにあります。そうしますと、在日朝鮮人の問題が解決すれば、台湾人にも同様の待遇が与えられると解釈してよろしゅうございますか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 台湾の人の問題につきましては、何にもまだきまっておりません。したがいまして、同じ百二十六号該当者でありましても、この協定によって永住許可をとった韓国人と台湾人との間の待遇は差ができるわけでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 そうしますと、この本に書いてあることは違っておることが書いてあるように思われるのですが、その点どうですか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 従来、台湾すなわち中華民国のほうから、日本におる、かつて日本人であった台湾籍の中華民国人の法的地位に関する話し合いをしようという申し入ればまだ受けておりません。ただいまお読みになりましたその入管で発行したしおりでございますが、それは、当時、一応そういう申し入れがあるかもしらぬというようなことを頭に置いて執筆者が書いたものであろうと想像いたします。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 それでは、その問題はその程度にしておいて、台湾人はいまどのくらい——台湾人と言っては失礼ですが、終戦前日本人であった台湾出身の方々、そういうふうに言い直しますが、その方々はいま日本にどのくらいおられますか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 大体五万人くらいでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 この人たちが外国人になったのはいつかという問題です。この人たちが外国人になったのはいつか、いわゆる中華民国の人になった、そういう国籍をとったのはいつかという問題と、あわせて、この人たちの待遇は、現在の時点において、いわゆる朝鮮出身の方々、これらと同じであるか、具体的に言えば、強制退去の問題でも、社会福祉の問題でも、いま朝鮮の方々に与えられているのと同じものが与えられているかどうか、この点についてお答え願います。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 前段の御質問、いつ日本人でなくなったかというのは、われわれとしましては、いつ中国人になったかというのは、平和条約の発効、昭和二十七年の四月二十八日でございますが、それからだというふうに感じております。  それから、法的地位及び待遇に関する限りは、協定による永住をとらない他の韓国人あるいはその他の朝鮮人、それと同等でございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 幾つかの異なった問題を一度に質問をいたしますから、関係の方はお答えを願いたいと思います。  永住を許可されて、それに伴う待遇を与えられることになる大韓民国の方々には、日本の公営の住宅に住む権利が与えられますか。公営の住宅、たとえば都営住宅であるとか、あるいは公団住宅であるとか、そういうのに入る権利が与えられますか。  次に、公の金融機関から、たとえば中小企業金融公庫とか、そういうところからお金を借りる権利は与えられますか。  あるいはまた、酒屋とか、たばこ屋とかいうような、大蔵省の許可の要る仕事について権利が与えられますか。  そういう問題について一括してお答えを願います。

佐竹浩大蔵事務官(銀行局長)

○佐竹政府委員 ただいまの御質問の第二点の、政府関係金融機関からの融資を受け得るかという問題でございますが、銀行局からお答え申し上げます。  これにつきましては、いわゆる日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定に従いまして日本国で永住することを許されました大韓民国国民のことでございますが、政府関係金融機関からこの方々が融資を受けられるかいなかということにつきましては、この協定におきまして特別の規定が設けられておらないのでございますので、したがいまして、日本に居住する外国人一般に対する取り扱いと同様である、かように考えるわけでございます。ただ、政府関係金融機関は日本に居住する外国人に対しまして融資することができるかどうかということになるわけでございますが、国民金融公庫及び住宅金融公庫につきましては、各公庫法の第一条におきまして、国民に融資するという規定が設けられております。その趣旨から申しまして、これらの公庫は外国人に融資をすることはできない、かように解せられるところでございます。一方、法律上このような特段の規定のない公庫等におきましては、日本におりますところの外国人に融資をいたしますことは、法律上不可能ではございません。ただし、融資と申しますものは、当事者双方の合意によりまして行なわれるものでございます。ことに、政府関係金融機関の場合におきましては、その融資自体、その根拠法令に規定いたしますところの政策の目的に沿ったことが必要でございますので、融資することが法律上不可能でないということが、直ちに融資が受け得るということにはなりません。可能性があるということでございます。

吉岡英一国税庁長官

○吉岡政府委員 お答え申し上げます。  御質問の第三点の、酒類の製造、販売の免許に関してでございますが、酒類の製造免許につきましては、国籍のいかんを問わず、一定の欠格条件に該当せず、一定の基準に達した方には免許をするたてまえになっております。したがいまして、現に外国の方で製造、販売の免許をとって業を営んでおられる方があるわけであります。

半田剛大蔵事務官(大臣官房日本専売公社監理官)

○半田政府委員 たばこの小売りの指定の関係についてお答えいたします。  たばこの小売りの指定につきましても、ただいま吉岡長官が答弁いたしましたとおり、全く同じような取り扱いをしている現状でございます。

瀬戸山三男自由民主党建設大臣・近畿圏整備長官・首都圏整備委員会委員長

○瀬戸山国務大臣 お答えいたします。  住宅の問題でありますが、公営住宅、それから、その他の公団あるいは金融公庫貸し付け住宅、これは憲法二十五条の規定に基づきまして国民に住宅を与えるという趣旨で立法されておるという解釈をいたしております。そこで、今度のいわゆる法的地位に関する協定の中にもこの問題は特別に触れておりません。したがって、私どもは、住宅問題については他の一般外国人と同じ取り扱いをする、公営住宅、金融公庫、公団住宅の問題では韓国人に対して適用しない、かように考えております。ただ、災害の場合の災害住宅、あるいは都市計画上改良地区の改良をすることがあります。そういう改良地区に住んでおられる韓国人等の場合には、そういう取り扱い上これを使用させる、かような取り扱いをするつもりであります。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 酒屋とか、たばこ屋とかいうようなものは従来も許可しておった、今後も引き続いてこれには変わりはない、その他の問題についてはやはり一般の外国人として取り扱うのである、それらの限度を乱すことはできない、原則的にはそういうようなお話であったように承りましたので、次に強制退去の問題について質問を続けたいと思います。  永住を許可された者としからざる者との間に強制退去について条件に大きな相違点がありますか。その点について、これは法務大臣からお答えを願います。今度は永住を許可される者とされない者とができます。その永住を許可されない者の中には大韓民国の国民も入ります。それから、いわゆる朝鮮の方も入ります。そういう永住を許可されない者とされた者との間に強制退去について大きな差がありますかと、こういうことです。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 永住を許可された者とそうでない者との間に、あります。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 時間の都合で話を進めたいと思いますが、出入国管理令の二十四条の退去強制の四項のヨというところに、「イからカまでに掲げる者を除く外、法務大臣が日本国の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する者」に対しては退去させるという条項があります。これは永住を許可された者には適用されないのかどうかということが承りたい。永住のできない韓国人及びいわゆる朝鮮の方には適用されているものと解しているのですが、今日までずいぶんとそういう人があったはずですが、そういう事例はいままでありましたかどうか、それを承りたいと思います。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 御質問は二点だと思います。  第一の点は、二十四条退去強制事由のヨの法務大臣が特に認定した者という条項でございますが、これは、もちろん、今度の協定ができまして永住を許可された者は、退去強制事由はそこに掲げられた第三条の四つの点だけでございます。したがいまして、このヨは協定永住権者には適用はないわけでございますが、それ以外の、いわゆる百二十六号に該当する朝鮮の人、これは普通の外国人でありますから、強制退去事由全部該当いたします。  それから、第二の点で、従来それによって退去になった者はあるかという御質問でございますが、従来のことを申しますと、実は、昭和二十七年四月に平和条約が発効しまして、その直後の五月に、日本が平和条約によって独立した後最初の強制退去者の送還をやったわけでございます。それまでは占領軍が占領しておりました出時でございますから、朝鮮人の退去強制は全部軍政部でやっておったわけでありますが、二十七年の五月から日本政府が自分でやったわけです。その最初の送還船が退去強制者を乗せて釜山へ参りましたときに、韓国当局は、これらの者は終戦前から日本におる韓国人であって、したがって、当然日韓法的地位協定の対象になる人間である、その協定によってその者の法的地位が決定するまではこれを引き取るわけにはいかないと言って、引き取りを拒絶いたしました。拒絶されて、またそれを連れて帰ってきたわけでございます。それから、その後二年たちまして、昭和二十九年になりましてから、さらに韓国側は、こういう者は引き取らないことはもちろん、戦後の不法入国者といえども絶対に引き取らないということを申しまして、さらに、李ライン侵犯でつかまった日本の漁師を釜山の収容所に収容して帰さないという事態が起こったわけでございます。その後これに関連していろいろ交渉が行なわれた結果、昭和三十二年の大みそかの日に調印されました覚え書きによりまして、今後日本では、終戦当時から引き続いている韓国人、この場合は朝鮮人ですが、これに対して大村収容所への収容を行なわないということを条件にしまして、韓国に抑留されておった漁師を引き取り、釈放させ、同時に、それまでに戦後日本へ入ってきた不法入国者を引き取らせたという経緯がございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 時間の都合もありますから、お答えは簡単に願いたいと思うのですが、「法務大臣が日本の利益又は公安を害する行為を行ったと認定する者」は退去させるということは、刑を受けるということとは関係はないと解釈してよろしゅうございますか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 認定でございますから、そのとおりでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 そうすると、いままでそういうものに該当する者は特段と目立たなかったということは、今日までいわゆる朝鮮出身者の方でまじめな人もずいぶん多いけれども、日本の利益または公安を害する行為を行なったと法務大臣が認定したものはきわめて少なかったというふうに解釈できるのですが、そのように解釈して門違いありませんか。法務大臣、お願いします。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 そのとおりだと思います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 私は、いまの法務大臣の、そのとおりでありますというお答えは、先ほど申し上げました、いわゆる泣く子と地頭には勝てない、こういう考え方に立脚するものだと思いまして、はなはだしく不満であります。そういうようなことは私は断じてないと思う。  次に、出入国管理令の二十四条の四項のチ、すなわち麻薬取締法違反で有罪になった者、これは、永住者は今度は三回まではいいということになっておる。麻薬みたいなことをやって三回まではいいということになっておる。ところが、いままでの出入国管理令によりますと、一回やればこれで帰されてしまうことになっておる。今度はまた、別な観点で言うと、いままでは一年以上の懲役を受けた者は強制退去の対象になった。今度は  一年じゃひどいから七年にしてくれろと、どういう交渉でなったか知りませんが、これが七年になった。これはいいでしょう。これを私は問おうとしておるのではないのです。ただ、永住を許可された者とそうでない者と二人ここへ置いておいて、この人が七年以上の罪をやはりやったとする。それでもって日本の監獄に服役して七年目に出てくれば、永住を許可された人は帰らなければならぬ。  ついでに、その前に伺っておきますが、この一瞬おしまいの覚え書きみたいなところに、退去に際しては韓国政府は協力するとあるのですが、これは義務と解釈してよろしいですか。どなたか答えてください。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 そのとおりでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 法務大臣にお尋ねいたします。義務と解釈いたしますと、これはその人は帰らなければならぬ。ところが、いわゆる朝鮮と記載してある一これは符号だそうですか、その人は帰ろうたって向こうで引き取らない。そうすると、日本におれるということを待遇と考えるならば、大韓民国の国民になって永住許可をされる者のほうが待遇が悪いという矛盾した結果になると思うのですが、この点いかがでございますか。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 日本におるというよりは、そういう刑に処せられる人は、退去を命ぜられる人は、大村の収容所に入ってもらうことになると思 います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 法務大臣のお答え、よくわかりましたが、そうすると、退去させたいと思っても、大韓民国のほうは義務だから退去を引き受けて連れていってくれます。それはいいが、退去といったって引き取るところがない場合は大村収容所へ入れますという法務大臣のお答えであります。そうすると、その人は死ぬまで大村収容所の中へ入れておくのですか。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 自分で金のある人はしかるべきところに、必ずしも北のほうの朝鮮に帰らぬでもいいのでありますから、どこか香港なりほかのところに自由に行かれるというような道もあるだろうと思うのでありますが、そういう資力のないような方にはしばらくそこにおっていただかなくちゃならない。これが長くなった場合には、またどういう措置をするかということは、そのあとで考慮しなければならぬ問題が起こってくるだろうと思っております。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 いまの大臣の説明を補足いたしますと、韓国でない、いわゆる北鮮系であるという人たちは、われわれとして引き取りを交渉する相手がないものですから、自由出国という方法で、日本は退去になったのだから、とにかく日本から去ってもらいたい、自分で方法を見つけて帰りなさいと言っております。現、実には、そういう人でそういう状況になった人は、ほとんど新潟から毎月出ている帰還船で数千名の人がすでに帰っております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 私は、そういう矛盾があるからこの協定がおかしいと言っておるのではないのです。これはしかたがない矛盾だと思います。しかしながら、私は、帰るところがないからといって、この前のように、大村収容所へ入れておったけれども、しかたがないからこれはまた出しちゃったというような、そういうゆるふんでは、これからはだめだと思う。あらゆる手段を講じて——大村収容所の中へ終世末代死ぬまで入れておいたって、それはしかたがない。また、そういうことがいけないとするならば、あらゆる手段を講じてこの国から退去してもらうような断固とした処置をとる政府に決意がないならば、これは矛盾として残るのですが、その決意の有無についてお答えを願いたいと思います。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 そのとおりいたすつもりでおります。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 麻薬の問題ですが、麻薬なんというものは、もう実にけしからぬもので、日本の内地で日本人でやるやつは、これは日本人だから憎んでもしかたがない。われわれの同胞だからあきらめるとしても、外国のやつが日本へやってきて日本人に麻薬を流行させるみたいなことをやるのは断じて許せないのですが、これを三回まで許すなどといったことは、私はうまくないと思うのです。そこで、それはそれでいいが、麻薬をやっているというような問題について、外国はどうたっているか。

八木正男法務事務官(入国管理局長)

○八木政府委員 私、最近の各国の立法例というものはよく存じませんけれども、一般的な傾向として、文明国の間では麻薬は非常に悪質な犯罪であるというふうに見る傾向になっております。そこで、大体どこの国でも麻薬犯は強制退去の筆頭にあげられております。ただ、今度の場合、御指摘のように、三回というのは甘過ぎるとおっしゃるのは、もっともでございますけれども、過去十四年の日韓交渉の間に、麻薬が強制退去の対象になるということを向こうが認めたのはつい一年前でございまして、過去十三年間は、向こうは絶対に麻薬は引き取らないと言っておりましたので、三回までを引き取るということは非常な成功であったと思っております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 これまた私は不満であります。何か三回になったのがたいへんな成功であったみたいに考えることは、これは間違いです。間違いですが、これまた、総理大臣が先ほど言われたように、いままでの経過というようなことを考えてのお考えでしょうから、それはいいとして、外国の例についてはあまりよく知っておらないというようなことは、これは困ります。こういうようなことをやるときには、諸外国はどうやっているだろうかということをつまびらかに検討して、こういうことは外国の例にもないとかあるとか言わなかったら、これは交渉にならぬ。そういうようなことを知らないというようなことは、私はまことに不満でありますけれども、時間がだんだんたってきたし、これはもうこの辺でやめておきます。  そこで、話を前に進めて、国籍論に移ります。この間から国籍論がたいへんやかましいのでございますが、まず、国籍というものの定義から明らかにしていただきたいと思います。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 国籍ということの定義でございますが、たいへんむずかしいことでございますが、講学的に申し上げるならば、国家とその構成員でありますところの国民との間の法律的な結合要素あるいは結合紐帯というふうにいわれております。もっと平たいことばで申し上げますならば、国家を構成する人の資格、こういうふうに御理解いただけばよろしいと思います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 何かえらいむずかしいことを言われましたけれども、国籍をきめるものは何ですか、国籍をきめる、要素は。一九四八年の十二月の十日に第三回の国連総会で採択した世界人権宣言から、国籍選択の自由というようなことを、わかったようなことを、言う人がいますけれども、全くよくわからないのですが、国籍をきめるものは何ですか、その要素は。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 国籍を決定いたしますのは、それぞれの国家の専権事項でございます。各国の政治的事情あるいは人口政策、社会経済事情等を勘案いたしまして、各国家ごとにそれぞれ国内法としての国籍法というものを持っております。その国籍法に従いまして、国民の資格でありますところの国籍というものが窮まってくるわけでございます。ただ、先ほど御質問にございました世界人権宣言のたしか十五条であったと思い、ますが、そこに、人はほしいままにその国籍を剥奪されあるいは国籍を変更する権利を否定されるようなことはないという規定がございます。これは、いま仰せのように、国籍選択の自由とか国籍選択権とかいうことと結びつけて理解されておるようでございます。ただ、世界人権宣言のその規定は、国家がみだりに専断的に国籍を剥奪するとかあるいは自由自在に国籍の変更を命ずるというようなことをしないように、そういう措置をとらないようにという趣旨でございます。各国の国籍法をざっとながめてみましても、国によって非常に相違はございます。非常に厳重に国籍の得喪・変更を規定しているところもございますし、比較的おおらかに規定しているところもございます。いずれにいたしましても、各国の国内法の定めるところに従いまして、それぞれの国家が自国民はだれであるかということを決定するということになっておるわけでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 だんだんと明らかになってまいりましたが、そうすると、個人の意思、つまり私なら私が何国人になりたい、私はアメリカ人になりたい、こういうふうな個人の希望、あるいは、ドイツ人になりたい、ただそういうふうに希望しただけでは国籍を左右できるという考え方にはならない、それだけでは、そういう自分の考えだけで国籍を変えるということはできない、そういう意味で国籍の選択の自由というものがあるとしたらばそれは間遠いである、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 国籍が変動いたします原因といたしましては、その国民の意思にかかわる場合と、そうでない場合がございます。たとえば、出生という事実によって、意思にかかわりなく変動することかございますが、いま御質問の場合は、おそらく帰化とか国籍離脱というふうなことによって国籍を変動する場合だと理解いたすわけでございます。そのような場合には、むろんその個人の国民の意思の発動がまずございまして、国家に対して、国籍を変更してもらいたいとか、新しい国籍を取得したいとか、あるいは国籍を離れたいという申し出があるわけでございます。その意味においては、個人の意思ということは、これは自由であろうと思います。しかし、その意思が表明されたからと申しまして、国家がそれを許すかどうかということは、国家の国内的な専権事項でございます。それぞれの国内法の定めるところに従いまして、許すか許さないかということをきめるわけでございます。したがいまして、ただ自分の意思のみによって自由自在に国籍がきまるとか、あるいは一方的な権利の行使によって国籍がそのままきまってしまうというふうな意味でございましたら、国籍の選択の自由とか国籍選択権というものはないと申し上げざるを得ないと思います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 だんだんとこの問題が明らかになってきたことを私は喜ぶものであります。  そこで、大臣に承りますが、これは法務大臣、外国人の国籍について日本政府はどのような取り扱い方をしておられますか。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 国籍はその人が属している国によってきめるという、いまお話のあったとおりでございます。日本におきましては、外国の人の国籍は、外国人であるかどうかということは、その人の提示いたしまする旅券その他、その国の国籍を証明するに足るような書類によって取り扱いをきめておるわけでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 重ねて大臣にお尋ねをいたしますが、日本政府が外国人に対して特定の国の国籍を押しつけるというようなことは、いま承った国籍の定義から考えても無意味であり、かつ、あり得べからざることと判断をいたしますが、そのとおり判断をして間違いありませんか。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 全くそのとおりだと思います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 このことは在日韓国人あるいはいわゆる特殊の事情にあるところのこの朝鮮出身の方方に対しても同様であると考えて間違いありませんか。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 全然同じようでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 これは局長さんにお尋ねいたしますが、外国人登録の事務で国籍欄に記載することが、当該外国人の国籍を決定することではない、また、どう書き方を変えてみても、それはそれだけで国籍を変更したことにはならないと考えて間違いないか。もう一回承りますが、外国人登録の事務で国籍欄に記載することが当該外国人の国籍を決定することではない、また、どう書き方を変えてみても、それはそれで国籍を変更したことにはならない、そう考えて間違いないか。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 結論的には御意見のとおりでございます。国籍の決定は、先ほど申し上げましたように、各国家が国内法に基づいて決定するわけでございまして、ただいまの外国人登録上国籍欄に記載するというのは、一たん外国できめました国籍をこちらの帳簿書の上に書きとめるというだけでございます。したがいまして、これをいかように変更いたしましても、国籍そのものは全く関係ございません。従来の国籍そのまま残っておる、こういうことになるわけでございます。  誤解があるとまずいと思いますので、重ねて申し上げますが、記載を変更するというのは、ただ書いてあることを変えるというだけでございます。これは本来国籍の変更に伴って記載を変えるわけでございます。ただ記載だけを変えましても、国籍そのものには何らの影響はございません。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 そうすると、いまのお答えは、わかりやすくしろうと流に言うと、登録証か何かに書くことによって国籍が決定するのではない、国籍が決定したと思われる客観的な事実があるから記載したのだ、こういうように解釈してよろしゅうございますか。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 全くそのとおりでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 きわめて明快にお答えをいただいたことを喜びます。  それから大臣にお尋ねをいたしますが、外国人登録上、朝鮮半島出身者に対して、その国籍欄に、あるいは朝鮮、あるいは事情によって韓国と記載し、そのいずれも符号もしくは単なる用語であると考えていた政府が、今回、韓国のみは国籍であると、その考え方を明白にした、改めた、このことによって現実に不利益をこうむるなど影響はなかったですか、あったですか、そのことについてお答えを願います。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 この間、韓国という記載をする問題でいろいろ行き違いがあったようなことで、公式見解というようなものが出たのでございますが、その内容は一つもいままでと扱いが変わらないことをはっきりとしただけでございます。したがいまして、影響するところは一つも変わりはないと思っております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 この問題は、この間横山委員から質問があったときに、総理大臣も、それはたいした問題ではない、前からそう言っておけばよかったかもしれないけれども、今度変えたことによって損害は与えておらない、こういうように答えたと思います。これは速記録を見なければはっきりしたことはわかりませんが、いま法務大臣は明白に、そういうふうに見解を変えたことによって朝鮮出身者の方々に迷惑は与えておらない、こういうふうに言われたのでありますが、それは違うじゃありませんか。この間横山委員は、例をあげて、明白に損害を与えられた人がいる、こういうふうに言っております。横山委員の速記がありますから、ちょっと読んでみますと、「日本政府はうそをついてきた、こういう結果になるということについて御答弁がありません。」、横山委員のここに言われておることを要約すると、ある裁判があって、韓国というふうに登録証に書いてある朝鮮出身者の方が何か国家賠償を要求した。そこで、裁判を要求せられた裁判所は、この人は韓国と書いてあるけれども、一体この人は何国人なのであろうかということに疑問を抱いて、法務省に照会をしてきた。そうしたら、その当時の民事局長は、これは国籍をあらわすものではない、そういうふうに言うたから、その人は裁判に負けてしまったんだというようなお話であります。違うじゃありませんか。これはどういうわけですか。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 そのとおりの質問がありまして、それに簡単なお答えをしたはずでございましたが、なおそれは民事局長から御説明いたします。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 過日横山委員からその御質問がございましたときに、突然のことでございますし、十年前のことでございまして、私、具体的にその内容を存じませんでした。私の理解いたしますところに従ってそれを申し上げたわけであります。非常に自分の推測を交えたような答弁をいたしまして、自信がございませんでしたので、さっそく帰りまして調査いたしました。調査いたしました結果は、まさに私が申し上げたとおりの内容でございました。私が調査しましたところによりますと、せんだって横山委員にお答えしましたとおりの内容でございます。これは、昭和三十一年の十月九日に、東京地方裁判所の民事第十二部から民事局長に照会がございまして、それに対して民事局長が回答いたしたわけであります。回答いたしました趣旨は、平和条約の発効によって日本の国籍を失った朝鮮人の国籍、これはその朝鮮人の出身地とかあるいは本籍地、そういったことを基準として決定せられるべきものではないということを答えておるわけでございます。ただ、せんだっても申し上げましたように、ここから先は推測で申し上げたわけでございますが、回答にも書いてございますことは、私のほうで国籍事務を扱っております。その関係で、国籍事務の取り扱い上はどうなっているかということをお答えしておるのではあるまいかと思ってそう答えたわけでありますが、回答の内容を見ましても、なお書きとしまして、一律に朝鮮として扱っておる、こういう回答が出ておるわけであります。  そこで裁判のほうはどうなったかということでございますが、これも念のために調べてみましたら、昭和三十二年の五月に判決の言い渡しがございます。これはまさに、忠清南道の出身の朝鮮人が公務執行妨害罪で逮捕されまして、調べを受ける過程において警察官から二回にわたって暴行を受けた、これを理由にいたしまして、国家賠償法に基づきまして、東京都を相手にして十五万円の損得賠償の請求を起こしたわけであります。その際に、国家賠償法の規定には相互保証の規定が入っておりますので、もしもその請求を入れるとすれば、その国籍の属する国がどこであるか、その朝鮮人が何国籍を持っておるかということを確認しなければなりません。ところが、判決を読んでみますと、その確認の資料がなかったようでございます。そこが裁判所も、法務省の取り扱いはどうなっているかということを一般的に聞いてきたものでございます。そこで、裁判所のほうの判断としても、結論的には同じく朝鮮とこれを理解して扱うべきだというふうな理論構成をやりまして——その過程は違います。私とものほうは、帰化事務のためにそういうふうに扱っておるのでございますが、裁判所のほうはほかの理由から、一応朝鮮として扱うべきだ、こういうふうに認定いたしまして、さらに、朝鮮として認定するのだけれども、大韓民国の国家賠償法が先方には適用されるべきだ、こういうことを申しまして、大韓民国の国家賠償法にも相互保証の規定があるから、わが国としてもそれを受けて、こちらの国家賠償法の規定によって賠償を認めるべきだという結論を……しました。そこで、十五万円の請求に対しまして、慰謝料としては三万円が相当であるというので、三万円の支払いを命じた判決になっております。したがいまして、その際に、朝鮮人である、朝鮮というふうに一応見て、国家賠償法の規定を適用して、被害者である原告の諸求を一部認めたということになるのでありまして、ちょっとあのときの御質問の趣旨と違うような感じも私受けるわけでございます。法務省の民事局長が回答したそれによって裁判所の判断が誤ったとか、あるいはまた、その本人に損害を生じさせたという問題ではないと私は解釈いたしております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 そういうことをいまさら言われては困る。横山さんは、間違った回答を地方裁判所に送った、間違った回答を送ったから、間違った解釈によって判決をし、間違った解釈によってその人は被害を受けたことになる。それは一体どうなる。うそを言っておるじゃないか。一つも被害はない、何も差がないのだと大臣は答えておるけれども、差があるじゃないか。そういうことは何だ。  さらに横山さんは、国家賠償法の適用がされなくて、却下されたんだ、この本人はこれによって損害を受けた、裁判は却下されたんだ、この判決について政府はどういう責任を持つか、法務大臣に尋ねたい、こう言っておる。却下されたのじゃないですか。却下されたと言わない。あなたは裁判に勝ったとは何ですか。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 いろいろ実はこれには問題がございまして、いまの国籍認定の問題は、あの横山委員の……。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 国籍の点はいいですよ。裁判は却下されたのか、されないのかということだ。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 却下されておりません。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 却下されておらないということになると、どうなりますか委員長。これはこういうことでもって却下されたんだ、そういう損害を与えているじゃないか、総理大臣も、何も違いませんと言っておったけれども、違わなくはないじゃないか。こういう事実があるじゃないか、却下されているじゃないか——速記録を見てごらんなさい、ちゃんとそういうふうに書いてあるから。そうすると、それは質問が間違えておるか。もう一ぺん民事局長に聞きます。これは重要な問題です。却下されたと横山さんは言うのですが、あなたは、却下されていない、何か十五万円くらいの要求だが、それまではいかなかったが、三万かもらったという。そうすると、その人は裁判には一応勝ったことになる。間違いないかどうか、もう一ぺん書ってください。あなたの職を賭してひとつあなたは言明してもらわなければ困る。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 正確に申し上げます。十五万円の請求に対しまして、慰謝料として三万円が相当であると認定いたしまして、三万円支払えという判決をしたわけでございます。したがいまして、十五万円の請求を全部認容したわけではございませんので、一部勝訴ということになります。ですから、その余の分は棄却でございます。訴えそのものを却下された事実はございません。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 これははなはだ迷惑、私はそんなことでは承知できません。そうなってくると、横山さんの質問というのは、うその証拠を出している。証拠といって、これはうそなんだ。こういうような質問をすることは許せませんよ。これはインチキですよ。これはインチキだ。こんなインチキは許せません。(「インチキとは何だ」と呼びその他発言する者あり)委員長、ちょっと待って——いいからちょっと待って——委員長、委員長  。

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 御発言をお続けください。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 この論議が始まる一番冒頭に、松本七郎さんは、この条約、協定はインチキ条約である、あるいはまた、ごまかし条約であるということを言った。私はまことに暴論であると考えましたけれども、まだ審議を何もやっていないんだから。そのときに、インチキだ……

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 鯨岡君に御注意申し上げます。どうぞ委員長のほうを向いて……。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 いや、社会党の中でそういう質問をした人がいたから、私は社会党のほうを向いて言っている。インチキだ、あるいはごまかし条約だと言ったが、私は、暴論だな、ああいうことを言っちゃいかぬなと思ったけれども、そのことばをそっくり借りれば、この社会党の質問はインチキ質問だ、それからごまかし質問だ、   〔発言する者、離席する者あり〕

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 お静かに願います。——お静かに願います。   〔発言する者、離席する者あり〕

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 委員長より発言いたします。  ただいまの鯨岡君の発言中、速記録を調査の上、穏当を欠く部分がありましたら、委員長において適当な処置をいたします。——鯨岡君。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 そこで、国籍論を続けますが、韓国、大韓民国というふうに書いたものは国籍であるということになれば、協定発効の後にあらためて申請をして、もう一回韓国とかなんとかということは必要のないことではないかと思うのですが、この点いかがですか。

新谷正夫検事(民事局長)

○新谷政府委員 せんだっての外国人登録の問題につきまして、たいへん肝心なところでございますが、このたびの統一見解でいわれておりますのは、私の理解するところによりますと、要するに、過去において用語として外国人登録の国籍欄の記載をしておりました当時におきましても、すでに韓国というものがあり、また、その構成員である韓国人というものがあったわけでございます。したがって、韓国籍というものも現にあったということになるわけでございまして、それが入管行政上の取り扱いとしましては、登録上はただ朝鮮とか韓国という表現になっております。これを用語だ用語だ、こういうふうに言ってきたわけでございますが、その当時の気持ちとしては、国籍をあらわすものという意味で韓国ということばを使ったものではないわけでございます。したがって、これは韓国と書こうと、朝鮮と書こうと、その持つ意義は、ただ用語としての意味しかないわけでございまして、国籍をそのまま反映するという趣旨で書いたものではないわけでございます。ところが、いま申し上げましたように、すでに国籍というものが厳としてある。しかも、韓国側の国民登録の手続によって登録を受けた人たちが韓国への書きかえをしてきておるという実態がございますので、こちら側で従来用語として扱ってきた韓国ということばも、客観的にながめますならば、現に存在しておる国籍をあらわしておるということになるわけでございます。そこで、この時期におきましては、過去のそういう理解に立って、今後は、韓国というふうに外国人登録に記載されておりますものにつきましては、客観的に存在する韓国籍をあらわすもの、こういうふうに取り扱いをしていこうという趣旨でございます。したがって、従来の取り扱いはそのままでございまして、これからの理解のしかたを、いままで韓国と書いた外国人登録の取り扱いは、現に存在する韓国の国籍をあらわすものというふうに理解して事務を取り扱っていこうというだけのことでございます。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 国籍の問題についてはきわめて明快なお答えをいただきましたので、この程度にしまして、次に厚生省にお尋ねをいたしたいと思います。  韓国人のうちで永住を許可された者には、待遇として生活保護が適用されることになっております。小坂委員の質問にもありましたが、次の問いに簡単にしかも明快にお答えをいただきたいのであります。  生活保護法は、憲法二十五条「すべて国民は、健康」云々の条項を受けて、国が生活に困窮するすべての国民に対し生活を保障することを目的としております。ここにいう国民とは、外国人も含まれると解釈できますか。

鈴木善幸自由民主党厚生大臣

○鈴木国務大臣 ここにいいます国民とは、日本国民でございます。ただ、外国人でございましても、現実に生活の困窮しております者につきましては、行政措置として生活の保護を実施いたしております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 小坂委員の質問にもお答えをいただいたのですが、重ねて同じことをお尋ねするようで恐縮ですが、現在、いまの時点において、対象人員はどのくらいおられますか。それに要する費用はどれくらいでございますか。

鈴木善幸自由民主党厚生大臣

○鈴木国務大臣 約五万二千人でございまして、三十六億程度の経費を要しております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 これからこの条約が発効することによって増加するとどの程度になるか、これは予想できますか、先ほど人員が予想できないと言ったのですから、これは予想できないと解釈してよろしゅうございますか。

鈴木善幸自由民主党厚生大臣

○鈴木国務大臣 先ほど法務大臣がお答えしたとおりでございまして、まだはっきりしためどがついておりません。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 その段階になりましても法の改正は必要はないとお考えでございますか。

鈴木善幸自由民主党厚生大臣

○鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたように、人道上の見地から行政措置として行ないますので、法の改正を要しないと考えております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 重ねて厚生大臣にお尋ねをいたしますが、現在でもやっている、しかもこの議事録の中には、当分の間そのままとするように書いてありますが、特に、永住許可とか、国籍を韓国にするとか、あるいはいわゆる朝鮮であるとか、すべての方々に特段の差別はこの問題はないと解釈してよろしゅうございますか。

鈴木善幸自由民主党厚生大臣

○鈴木国務大臣 特別な差異はございません。したがいまして、永住許可を与えられました韓国人以外の朝鮮人につきましても、従前どおりの生活保護は実施してまいる方針であります。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 国民健康保険法の第二章の五条に「市町村又は特別区の区域内に住所を有する者は、当該市町村が行う国民健康保険の被保険者とする。」と規定してあります。特に外国人とかなんとか書いてありませんが、除外規定はないのですけれども、加入されている団体と加入されていない団体とがありますが、どちらが正しいと解釈したらよろしいのでございますか。

鈴木善幸自由民主党厚生大臣

○鈴木国務大臣 国民健康保険におきましては、外国人は、市町村団体におきまして特に条例をもちまして加入を認められました場合に被保険者になるわけでございます。しからざる場合は外国人は被保険者になれない、こういうのでございますが、今回の協定の成立によりまして永住許可を認められましたところの韓国人は、その市町村の特別な条例を要しないで、政府の措置によりまして、具体的には省令の改正によりまして自動的に被保険者になる、こういうことになるわけであります。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 厚生大臣にお尋ねをしたいことはまだこまかくたくさんありますが、時間もだいぶ経過いたしておりますので、私は次に文教問題について三点ほどお尋ねをして、私の質問を終わりたいと思います。  終戦後またはサンフランシスコ平和条約の発効後、すなわち、朝鮮出身の方々が外国人になった後現在まで、その子弟の教育というものはどうなっておりますか、文部大臣に概略お答えをいただきたいと思います。

中村梅吉自由民主党文部大臣

○中村(梅)国務大臣 サンフランシスコ条約発効後今日まで、朝鮮人につきましては、従来同様、義務教育諸学校には希望に応じて受け入れております。それから義務教育諸学校を卒業した者の進学の資格も、日本人同様に認めております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 今度は、永住許可が与えられますと、待遇として、日本は義務的にそれらを小中学校に入れ、それを卒業した者に対しては、日本人と差別なく扱うようにすると解釈してよろしゅうございますか。

中村梅吉自由民主党文部大臣

○中村(梅)国務大臣 従来と違ってまいりましたのは、今度の協定及び合意議事録によりまして、日本は義務的にそういう取り扱いをしなければならないということに変化したと思います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 俗に民族教育ということをよくいわれますが、民族教育とは何ですか、そのことをお答えをいただきたいと思います。

中村梅吉自由民主党文部大臣

○中村(梅)国務大臣 お答えいたします。  格別これは学説的にも定義のないことかと思いますが、俗に民族教育といいますのは、その国の国語によって国語及び歴史等を教育して、自国の国民の資質を養成する、こういう教育のしかたが民族教育、とういわれておると思います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 東京の小平に朝鮮大学というものがあります。これはいわゆる民族教育といいますか、朝鮮出身の方に自国の名誉を教え、そうして日本の中においても恥ずかしくない人材を教育するためにやっておられるようでありますが、一体どこが許可してつくっておる学校か、これの概要をお答え願いたいと思います。

中村梅吉自由民主党文部大臣

○中村(梅)国務大臣 俗にいわれております。小平にございます朝鮮大学といいますのは、各種学校としても全く許可のない無認可のものでございます。したがいまして、内容等についてつまびらかにいたしておりませんが、前に十条のほうにありました朝鮮関係の学校の中に二年制の大学として設立されて、昭和三十三、四年のころに現在の小平にこれが移転したようであります。学生の数は、これもつまびらかでありませんが、七、八百名のようで、どうも聞いておるところによりますと、いま鯨岡委員の言われたような民族教育をやっておるように承知いたしております。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 思い出しますのは……(「要らぬことを言うな」と呼ぶ者あり)要らぬことじゃないですよ、これは。思い出しますのは、バンコクだったと思いますが、日本人が相当大ぜい向こうにおります。商社のようなものにつとめておる人が何千人かおるわけです。これは総理によくお聞きを願いたいのですが、その人たちが子弟の教育に非常にお困りになって、二年か三年で転勤になって内地へ帰ってくる、そうすると、何にもわからない、こちらの学校へ上がれない、上がってもどうにもわからないというようなことでは困るから、日本の先生を呼んでそうして日本の教育をしようということになりましたときに、なかなかこれの許可がとれないでたいへんお苦しみになったことは、われわれの記憶に新しいところであります。それから、アメリカにいる日本人が、アメリカの学校へ入っている、英語は達者になるけれども、日本語があまりできないのは困るからというので、その中で日本語を教えようとしたことが排日運動の端緒になったことも、これも明らかなことであります。由来、そこの国におる外国人のいい意味での民族教育というものは、非常にむずかしい制限があるのが普通であるように聞いております。いま文部大臣のお話によると、何にも許可されてない、東京都知事の各種学校としても許可になってない、どこからも許可されていないような学校があって、お話しのようにそこで民族教育が行なわれているというようなことは、先ほど私はどうもあまりいいことばではありませんで恐縮でしたが、ゆるふんのようだ。何にも制限がない。いままでは非常に動乱のときであったからしかたがないが、これからはだんだんと、こういう条約、協定などを締結していくに際しては、少しずつ正していかなければならない、こういうふうに考えることの対象のようにお聞きしたのですが、総理大臣いかがでございますか。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 お説のとおり、今回の日韓条約が締結され、また諸協定が結ばれる、これで法的地位もはっきりしてくる、また、私どもが考慮すべきものは考慮した、そこで一般外国人扱いはしないけれども、考慮すべきものは考慮した、これがはっきりいたしますと、それ以外の事柄について、国の考え方、また秩序を守るその考え方から、当然とるべきものもはっきりしてくる、かように私は思います。一番いけないことは、いままで同居していた、あるいは日本人であった、そういうところでずるずるべったりにものごとが運ばれる、こういうことがあってはならない、かように思います。このことを折り日折り目を正していくことが、必ず両国の将来の親善友好関係を樹立していく上において非常に信頼が置けるということにもなるんだ、かように思いますので、私は、いわゆる取り締まりを厳重にするとか、こういうような意味でなく、両国の将来の親善関係を樹立する、その上には、折り日折り日を正しくしていく、そういうことが最も望ましいのではないか、そこに一つは信頼感が起こるわけであります。国際的信頼も、日本はこういう基準によってものごとを考えておる、またその基準が最も常識的であるというならば、また、それが自分たちの国にも考えられる、理解できるということなら、それは守られる、かように私は思いますので、こういう点をなおざりにしないということは、お説のとおり大事なことだと思います。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 私の最後の質問をいたします。  いま総理大臣のお話を聞いていると、取り締まりを厳重にするというような意味では断じてなく、規律は規律としてきちんと折り目を正していくことが両国の信頼を増すゆえんである、そうでなければ、むしろ信頼は増さない、こういうお話がありましたので、全く同感であります。民族教育について私が質問したことについてそういう御返答をいただいたんですが、私は、遠く母国を離れて他国に生活している者が、その子弟に対し、まず母国のことばを教え、母国の歴史を教え、母国の名誉を傷つけないで、現に生活している国の国民と仲よく、その尊敬を受けるに価するりっぱな人間になるよう、そのために母国教育をしたいという気持ちは十分に理解しますし、また、そういう努力に対しては十分に尊敬もできるのでございます。しかし、もしかりにそれが、現に生活している国の成り立ちをいたずらに批判し、さらに誹謗し、比較対照してその母国の成り立ちを教育するがごときことが民族教育であるとするならば、独立国として十分に考えなければならない問題であると思いますが、恐縮ですが、もう一回ひとつ御答弁を願います。

佐藤榮作自由民主党内閣総理大臣

○佐藤内閣総理大臣 これはたいへん大事な問題でございます。私はしばしば内政に干渉しないということを申しました。もちろん、そういう民族が、自分のところの民族的な意識、あるいはことば等についていろいろ教育をするということは、これはあり得ることでありますし、また、先ほどは日本の商社についてのお話がございましたが、わが国のように、多数の移民を送り出している、米国籍あるいは南米諸国にも出かけている、こういうようなところを考えまして、これらの方々が、一年に一回の母国訪問、これはたいへんななつかしさを覚えながら日本に出てきている。そういうことを考えますと、この民族的なものがどうしても残っておる。かように思いますが、しかし、それはどこまでもその永住しておるその国の内政に干渉しないといいますか、そういう立場でほんとうに母国を慕う、そのたてまえだけといいますか、そういう関係において行なわれるものだ。もしもそれが出先の国の内政を批判したり、反政府運動を起こしたり、そういうようなことであってはならないのであります。私どもは多数の移民を送っておりますだけに、これらの事柄につきましても十分注意するわけであります。まあ、たとえば今回なぞ、私どもが外国に在住する移民あるいは第二世の方々等にも、親善に役立った、こういう意味で、秋の叙勲に多数の方を出しておりますけれど、この多数の叙勲をする場合に、政府がいたしましても、このことが相手の国に非常な不快な感じを与えるというようなことがあってはならない。また、いつまでも母国のほうから、これらの出先みたような感じでこれを扱うということでないように、ほんとうにこん然一体となった形において喜んでいただくということでないと、ただいまの叙勲なぞも扱えないのです。そういう点を私どもも考えますが、また、出ていって、そうしてその国で生活しておる方々も、その国の政治なり、その他に迷惑を及ぼさないように、これは十分注意していただかなければならない。これはわが国の国民に対し、また、わが民族に対しましても私は要望いたしますが、日本に居住される外国人の方も、この点はよく御理解をいただいて、そうして居住されるその土地の、その国の迷惑にならないような行動だけはしていただきたい、かように私は思うのであります。

鯨岡兵輔自由民主党

○鯨岡委員 いまの総理大臣のお答えは、日本から外国に行っていろいろお世話になっている国民も十分に考えて、その国に迷惑を与えるようなことのないように、日本人として尊敬を受けるようにしなければならない。同時に、日本における外国人も、ことばを教えたり、その国のいい歴史を教えたりして、民族の誇りを持たせることは十分に必要なことであるが、その国の政治を誹謗したり、内政に干渉したりすることはいけないという表現であったんですが、いけないということよりは、これからは断じてそういうことは許さない、これからは折り目を正していくというように、明らかに解釈をいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 宇野宗佑君。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 私は、請求権並びに経済協力に重点を置きまして、政府の見解をただしたいと思うのであります。ただし、本日は時間の制約もあるらしゅうございまするから、一応主として請求権問題をお尋ねいたしまして、あとの質問は保留いたしておきたいと思います。  まずその前に、私は、過般の質問におきまして、政府の見解がまだただされておらなかった問題がございますので、そのことについて一点お尋ねをいたしたいと思うのでございます。それは、韓国の国籍を持った人には徴兵令がかかるというようなやや意見に近いお話がございまして、それに対する政府の答弁がなかったわけであります。私の聞き及ぶところでは、日米領事条約があるがために、この日韓条約が成立すれば、日韓領事協定に基づいて、条約に基づいて、日本の国土内において韓国人の徴兵検査が施行し得るのではないかというようなデマが飛んでおることも知っておりますが、しかし、韓国の国内法におきましても、国外にいる国民に対しては徴兵令を適用しないということが明らかになっておると思いまするから、その点、韓国の状況をも含めまして、たとえばお互いに国交が正常化されましても、日米間にあるがごとき領事条約を結ぶ御意図があるのかないのか、この点だけをはっきりお伺いいたしておきたいと思うのであります。   〔発言する者多し〕

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 静粛に願います。

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 韓国との間に領事条約を締結するという考え方は、まだやるともやらぬともきまっておりません。これだけ申し上げまして、なお徴兵検査の問題について詳細な御答弁を事務当局から申し上げます。

後宮虎郎外務事務官(アジア局長)

○後宮政府委員 韓国の兵役法の四十七条には、韓国民は、外国にある場合には徴兵を延期または免除される、こういうことになっておりまして、先般来誤って徴兵令状が来たこと等について問題が起こりました関係もございまして、韓国政府は、特に本年五月に李外務部長官と金国防部長官の共同声明を発しまして、この在日韓国人の徴兵は考慮していない、海外居住者は法律によって兵役義務を免除されておる、こういう趣旨の共同声明を発しておる状況でございます。   〔委員長退席、長谷川(四)委員長代理着席〕

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 請求権並びに経済協力に関する協定の第一条と第二条の関連についてお尋ねをいたしたいと思います。  これはもう過般来から、野党の質問者からも相当強く疑義を持たれて質問されたわけですが、つまり経済協力は請求権の対価ではないかという説であります。私は、すでにこのことに関しましては、政府当局の御答弁によりまして、そうではないということを明らかにいたしておるものでございまするが、しかし、過般来の質問を通じて私が考えることは、対日請求八項目の内容、それを知らせよという強い御要望がございました。その項目に関しましては、すでに外務委員会におきましても、外務省当局より資料が出されておりまするが、内容は明らかではありません。内容は明らかではないけれども、しかし、そうした韓国の対日請求権は、経済協力と並行して、最終的に、かつ完全に、かつ同時に解消するということが明らかになっておるのであります。したがいまして、私は、そうした問題に対しては、当局も、もっと自信を持って、より具体的に、そのそうではないという意味合いのことを明らかにいたしてほしいと思うのであります。と申し上げますことは、今回の日本と韓国との間の条約の締結という問題に関して、私はこれを勝負であるというふうな考え方で見てはいけないと思うのであります。ついこの間も小坂先生が申されましたとおり、どちらかの国が一〇〇%をとれば、どちらかが不平、不満が残るのであるというような状況であってはならないから、日本の今回の交渉も、いわゆる百点満点ではない、韓国も百点満点ではない、そういった意味合いのものが残ったほうがいいんだというようなことを言われましたが、私も全く同意見でございます。  ちなみに戦後のわが国の外交というものを大別いたしますと、たとえば米ソのごとき大国に対しましては、日本の外交は要求する外交でございます。ところが、賠償等の外交に関する新興国家に対しましては要求される外交であります。しかしながら、今日われわれがなさんとするところの外交というものは、同じく兄貴という立場に立てば要求される外交であるかもしれぬけれども、しかし、わが国と韓国は交戦国ではない。もとは一つの国家であり国民であったという立場において、非常に特異な性格を有しておる条約であると私は考えるのであります。したがいまして、それを勝った、負けたというような感情でなすことは許されないと私は思う。だから対日請求八項目の内容に関しましても、たとえばその請求権が肩がわりされて経済協力になるというたてまえからものを考えられると、勢いその金額は幾らであったのかというような数字をあげつらうようなことになってしまいます。数字をあげつらうということは、要はどちらかが負けたか負けなかったかというようなことになりまして、今後永久に友好を続けようという日韓間における重大な問題を残すだろうと思いますので、私の考え方といたしましては、いまさら対日請求八項目の内容にこうした場において触れるべきでないと思うのであります。触れるべきではないが、しかし政府は、なお一そう具体的にこの一条と二条の関連性が、つまり肩がわりではない、対価でないということを示していただきたいと思うのであります。  私が調査いたしましたところによりましても、たとえば協定第一条の末尾に、韓国の経済の発展に役立つものであるという、その経済協力の使命がうたわれておりますが、こうした規定というものは、政府としては年度実施計画の合意であるとか、あるいは契約認証の際には基準に合致するよう供与、貸与を審査するというふうなことを意味しておると思うのでありますが、そうしたことであるのならば、これは明らかに賠償でもなければ、まして請求権の肩がわりでもなければ、明らかなる経済協力であるという立場が鮮明にされるのではないかと思うのでございます。以上に関する御所見を承っておきたいと思います。

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 請求権のいきさつ、経済協力と請求権の関係は、この審議のいきさつから申しますと関連はございます。そして同じく経済問題でありますから、同じ場所において取り扱っておるのでありますけれども、御指摘のとおり、この請求権の問題と経済協力の問題は、何らそこに法律上の因果関係はない。あくまでこれは有償、無償、総計五億の経済協力は、韓国の経済建設に役立つために日本がこれを供与するものであるという趣旨でございます。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 この協定第一条(a)及び第一議定詳の規定は、従来とられてまいりました賠償協定の例によっているのが非常に多いのですが、そうしたところから何か賠償的な性格ではないかというようなことが憶測されるような面があるわけであります。したがいまして、なぜこのような方式をおとりになったのかということを明らかにしていただいて、いま私が申し上げました第一問の問いをさらに明らかにしていただいておきたいと思うのであります。   〔長谷川(四)委員長代理退席、委員長着席〕

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 日本は、御承知のとおり数カ国に対して賠償を支払う、現にそれを実行しておるのであります。この支払いの手段、方法が、今回の無償供与に、ただ方法論として、そのほうが便利である、いわゆる手段として便利であるという意味においてこれを採用しておるのでありまして、その本旨はあくまで経済協力である、かように申し上げます。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 この協定の第二条1にいう財産、権利及び利益並びに請求権の問題は、平和条約第四条(a)の対象となる財産及び請求権と同一の範囲のものであるかどうか、簡単でけっこうでございますからお答え願いたいと思います。

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 政府委員から申し上げます。

藤崎萬里外務事務官(条約局長)

○藤崎政府委員 平和条約第四条のものと若干時間的なズレもあります関係もありまして相違がございます。おもなものといたしましては、例の管轄区域が変動いたしまして、東のほうで大韓民国の領域が上に広がっていっておるわけでございます。この地域は平和条約当時は、第四条の地域に入っておらなかったわけでございます。それから今度の請求権の処理にあたりましては、合意議事録にも明らかにいたしておりますように、拿捕漁船の請求権関係を含めましたので、したがいまして、そういう点でも第四条とは範囲が異なっておるわけでございます。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 では、いまの御答弁によりましても明らかなとおり、いわゆる三十八度線の以北、また休戦ラインの以南において、日本海沿岸にも三角地帯がございますし、それと反対に黄海側にも三角地帯があるわけであります。したがいまして、その日本海沿岸のほうは、もとはいわゆる北鮮のほうであったから、韓国の管轄権ではなかったから、当然軍令三十三号は及んでおらなかったわけであります。軍令三十三号が及んでおる点に関しては、過般来の討論のあったがごとくに、平和条約四条(b)項において、わが国は一切の請求権を放棄したことになるわけでありますが、では、その範囲が違うという意味において、三十八度線以北、休戦ライン以南の三角地帯は、一体全体今回の協定においてはどういうふうになっておるのか、またその後どういうような経緯においてこの問題が処理されてまいったか、その点を伺っておきたいと思います。

藤崎萬里外務事務官(条約局長)

○藤崎政府委員 まず西のほうの部分、へこんでおるほうは、これは軍令三十三号は適用があり得たわけでございます。その後大韓民国の管轄区域内にはございませんので、今度の協定では関係なくなったわけでございます。束のほうは、事実関係をまず申し上げますと、北鮮の側の当局が一九四六年ごろから没収したりなど処理いたしまして、終局的には北鮮にある政権が憲法の規定で没収するということにいたしております。それが休戦協定でまた大韓民国の管轄下に入ったわけでございますが、大韓民国のほうは、これは敵の財産である、反逆者の財産でございますか、そういうことで没収措置をとったということでございます。したがいまして、この協定の第二条第一項にございます実体的な財産、権利、利益としては何も残っておらないという況状でございます。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 いわゆる日本海沿岸の三偶地帯に対する韓国の措置並びにそれを今回の協定においても明らかにしたということに関する御答弁に対しましては、私は納得がいきましたが、しかし韓国は、今回の対日請求八項目というものが出されまして、それが今回解消されたわけですが、その八項目においては、南北の区別なく、一切の請求をなしてきたわけであります。だから、それに対する私は今後の仮説を立ててみたいと思うのでありますが、一応条約を結ぶ際にいろんな仮説が必要だろうと思います。したがいまして、この間からもいろいろな私見が出ておりましたが、私はそこで心しておかなくちゃならないことは、いやしくも韓国とわが国が将来にわたって友好関係を保つというのであるのならば、韓国に対して不利なような仮説をここで論ずべきではないと思うのであります。そのことはちょうど、離婚を予見して結婚するようなことでございますから、そういうばかげたことはあり得ない。したがって、それ以外の仮説ならば、当然われわれといたしましても一つの見識として立てて、なおかつそれに対する政府の所見を明らかにしておく必要があるだろうと思うのであります。  そういうことになりますと、勢い管轄権の範囲の変動という問題になりますが、そのことに関しまして、私はまず最初第一点をお尋ねいたしておきたいと思いますが、昨日の質問におきまして、外務大臣は、国連決議の百九十五号、これが意味を失ったときには、仮説中の仮説であるけれども、調整しなくてはならないだろうというような答弁をなさいました。しかし私は、私の見解から立つならば、たとえそのような状況がありましても、調整するとはどういうことをするのであるか。いやしくも条約のことでございますから、相手がノーと言えばそれまでであります。また、そのような事態を想像すること自体が、今日の段階において正しいことであるかないかということを考えますと、私はまず不謹慎な話だと思うのであります。これに対しまする昨日の質問に対する外相の答弁、昨日どおりでいいのかどうかということに関しまして、第一点をお伺いいたしておきたいと思います。  続きまして、休戦協定の附則によりますと、諸条項の修正ないしは補足が合思によって行なわれてもよろしいということが定められておりますが、おそらくこのことは、直接には休戦ラインそのものをさすものではないとは思います。さすものではないとは思いますが、しかし、合意というものがあれば、そういうふうな変更もなし得るであろうという可能性も皆無ではないと私は考えるわけであります。したがいまして、たとえばそういうふうな可能性があって、それが実現したというた場合に、合意によって修正された場合には、はたしてわが国が今回締結をいたしました基本関係の条約に影響を来たすか来たさないかということもあわせてお考え賜わりたいと思うのであります。並びに、そうした場合におきましては、財産請求権の問題については、今後いかになるのかという問題も残ってまいります。  以上に対しまして、外務大臣の御所見を承っておきたいと思います。

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 昨日私が申し上げましたことは、全く仮秘中の仮説、あり得べからざることでございますが、しかし、これに対して十分な説明が足りませんので補足して申し上げておきたいと思います。  休戦協定は、その附則で、協定の諸条項の修正ないし補足が合意によって行なわれるべきことを定めておりますが、休戦ラインそのものの修正の可能性は考えていないと解すべきものと考えます。そうは申しましても、双方の合意があれば、修正できることはもちろん当然であります。実際上可能性のないことではあるけれども、もしそういうことがあったと仮定すれば、大体次のようなことになると考えます。合意による修正の場合は、どうせ軽微な修正であろうと思われます。基本関係条約の基礎となっておる客観的事態に重大な変更がある場合にはこれは該当しない。したがって、第三条を含めて別に条約を修正するという必要は私はないものと考えるのであります。  財産請求権の問題については、新たに大韓民国政府の管轄のもとに入ったものについて日韓間に取りきめを結ぶ必要を生ずるかもしれません。  以上申し上げておきます。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 では、昨日の質問に対しまして、仮説中の仮説ではあるけれども、調整し得ると言われました大臣の答弁は、今日取り消されたわけでございますか。そこをはっきりしていただきたいと思います。

椎名悦三郎自由民主党外務大臣

○椎名国務大臣 是正をいたしました。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 では意味を変えて御質問をいたしたいと思います。  すなわち、私たちは韓国と今回友好条約を持つわけ、ですから、相手の国が消えてしまうなんというようなことは考えたくはない。だから、そういうことを前提として、では、他にどのような状態があの複雑な半島において起こり得るかということを考えますと、二つの場面が考えられるのではないかと思うのであります。  その一つは、すでに小坂先生からも御質問がありましたが、もう一度御質問するとするならば、韓国の管轄権が北に及んだ場合、もう一つは、韓国の管轄権が現在のままであって、なおかつ現在北に存する政府が、国連の構成分子の変更に基づいて国連に加盟された場合、したがいまして、韓半島に二つの政権ができ上がった場合という、この二つが仮説として考えられるのではないかと思うのであります。ところが、先ほども申し上げましたとおりに、韓国はすでに南北合わせまして一切の請求をなしておりますから、たとえ韓国の管轄権が北に及びましても、北に存するわが国の請求権というものは存在しておる、韓国の請求権は  一切解消になっておる。北には軍令三十三号が及んでおりませんから、わが国の請求権は存在しておる。このことは過般来も答弁されたとおりであります。しかしながら、それに対して、北に対して残っておる請求権に対して、そこに国連加盟をした新しい政権が樹立された場合には、はたしてその請求権はいかなる形になるかという問題であります。つまり分裂国家の場合には、一国を承認すれば他の国を承認することができないというのが、この間からの政府当局の御答弁でございました。したがいまして、たとえ国連に加盟されましても、あの半島に二つの政権というものができ上がった場合、わが国の現在存在しているという請求権は、その国家に対していかなる処置がとり得れるのであるかどうか、この点をひとつ御答弁賜わっておきたいと思います。

藤崎萬里外務事務官(条約局長)

○藤崎政府委員 朝鮮を統一すべしということが国連の現在の政策でございます。いま現在の段階で、朝鮮が二つの国に分裂されてしまうというような仮定に立っての議論は、こういう場所で、政府の立場では慎むべきことかと存じます。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 非常に慎重な御答弁でございますが、私から申し上げるのならば、ついこの間分裂国家の一方を確認した場合においては、他方とは今後正常な国交が持ち得ないということになれば、私は、いま非常に慎重な答弁をされたようなことにしかならないとは思いますが、しかし、もう一つ突っ込んで言うのならば、わが国は三十八度線以南に置いておいた財産に対しては、すでに軍令三十三号で一応没収措置となり、そのことを平和条約において認めたわけであって、今回は一切がっさいそれが消滅してしまったわけですが、しかし、北鮮には残っておるわけです。また、北鮮は平和会議に参加しておらないのでありますから、残っておるということは理論的に、青い得るわけであります。しかしながら、その財産も今日は、北鮮といたしましては、みずからの憲法によって没収しているというふうに聞いております。しからば、今後北鮮とはわが国は、たとえば中国と同じように政経分離をもって進むんだというのであれば、その憲法によって没収された財産に対して、日本の民間人が請求権を提起した場合にどういうふうな形になるであろうかということをお教え願いたいと思います。

藤崎萬里外務事務官(条約局長)

○藤崎政府委員 北鮮との関係、交流のことは、従来どおり何ら変更を考えていないということがいままで述べられております方針でございます。したがいまして、これを、いま方針としておられないことを前提としていろいろ論議するのはいかがかと思いますが、かりに全くの仮定の問題としまして、日本人の個人が北鮮の裁判所に訴え出たといたしましても、北鮮で行なわれておる法制上は、憲法がそういう規定になっております以上は、請求は認められないだろうということは申し上げられるかと思います。全くこれは理論上の問題として申し上げるわけでございます。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 仮定の仮定でございましても、これはやはり国内補償という問題として残ってくるんではないかと思うのであります。すなわち、第二条3で、日本国民の財産等に対する措置及び日本国民のすべての請求権に関しては、いかなる主張もすることができないようになってしまったわけでございまするけれども、理屈といたしましては、それは平和会議があったからやむを得ないというふうに、南はあきらめましても、北にはあきらめ得ない問題が残ると思います。そこに南の国内補償の問題といたしまして、憲法二十九条三項との関連性もございましょうし、あるいは外交保護権との関連性もございましょうが、まずそ辺のは政府としての補償の責任があるのかないのか、憲法と外交保護権の関係において御説明をちょうだいいたしたいと思います。

高辻正巳内閣法制局長官

○高辻政府委員 お答え申し上げます。御指摘のように、憲法二十九条三項によりますと、「私有財産は、正常な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と規定してございます。で、私ども、この問題については、在外財産問題の、いままでの古くからございます審議の過程でずっと論ぜられてきたことでございますが、この憲法の規定から申しますと、とにかく日本の憲法でございますから、日本の国ないしそのほかの公権力の行使によりまして、私有財産を収用したという場合を念頭に置いている規定であることは間違いございません。そこで今回の場合に、それがそのままに該当することになるかといいますと、純粋に法律的な見地から申しますと、それは直ちにそのままには適用ならぬのじゃないかというのが、私どもの旧来からの考え方でございます。  と申しますのは、いまも御指摘がありましたように、この問題につきましては、向こうの措置等につきまして、当方が異議を申し述べない、いわば外交的な保護をすることについての範囲の問題でございますので、それなるがゆえに、憲法上の保障がかぶってくるというふうには、法律上の純粋な理論としては言いかねるのではないかというふうに、率直に申せば、そういうことでございます。ただ、むろん政策問題でございますから、私が申し上げるまでもございませんが、御承知のとおりに、在外財産問題審議会等がございまして、その辺の配慮は、別途政策上の問題でどうすべきかということは、むろん別の話でございます。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 ただいまのお答えで、一応南朝鮮に対する考え方に関しましては明らかにされたと思うのでありますが、しかし、先ほどから申しておりまするとおり、休戦ライン以北に関しましては、あるあると言うておきながら、条約局長の御答弁のとおりに、仮説としても、今日はそうした請求をなし得ないであろうということになってしまえば、この問題に関するいわゆる日本財産の存在は、理論的には存在しておるが、その補償に関しましても、南とはおよそその性格が違うものであるが、ここにおいてわが国としては、国内措置として南と同様に扱うのかどうか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。

高辻正巳内閣法制局長官

○高辻政府委員 在外財産は、一般に申しまして、その財産の処理がきまったものと、それからまだ当時その財産の置かれている施政当局との話し合いというものができていないものと、実はいろいろさまざまございます。何といいますか、そういう何らの措置というようなものが、法律的な関係においていまだ片づいておらないところは、これは実はどうするかということをいまから申し上げるわけにもまいらないのでございますが、いずれにしましても、今回の処理の対象になりました韓国所在のものというようなものになりますと、ともかくも向こうの措置、あるいは向こうの国民のものについてはこちらの措置になりますが、そういうものにつきましては、ともかくも一応法律的な観点をそこに向ける基礎ができておりますから、それについてはいま申し上げたようなことでございますが、そのほかの部分につきましては、そういう説明をする基盤もまた、いまだ十分に整っておりません。これは北朝鮮に限らず、満州のものもございましょうし、各地にまだそういうものが残されております。そういう問題は、やはり在外財産問題一般の問題として政策的に考えていくということになるものだと思います。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 次に、質問を進めまして、合意議事録の第2項(f)において、これはこの協定の第二条第3項で、日本におらない韓国人の財産がすべてその管轄下に入ってしまうという規定に該当するわけですが、その中においても、時に不動産については、日本側は慎重に検討する旨を、李外務部長官の要望に対しまして答えております。そうなると、これは請求権は一切がっさい解消し、消滅したのではあるけれども、慎重に検討するということが答えられておるということは、請求権を存続せしめておるのではないかというような疑義が生ずるわけであります。しかし、不動産でございますので、いろいろと登記上の手続もございましょうし、繁雑な仕組みもあろうと思われまするが、なぜこのような、慎重に検討するということをお答えになったのか、また慎重に検討するとはどういうことであるのか。あるいはまた、その不動産が日本人に預けられておる場合と、韓国人に預けられておる場合と、いうふうに解説せられると思いますけれども、それに対する明らかなる答弁をしていただきたいと思います。

藤崎萬里外務事務官(条約局長)

○藤崎政府委員 不動産について慎重に考慮するということにいたしましたのは、不動産の場合には第三者の権利が設定されていることもございますし、またこれを現に使用しているものの利益も考えてやらなければならない、そういうことでございまして、結局そういうようなものの権利利益を尊前するために今度の国内法では、日本人が現に保管している不動産だけをその保管しておる日本人に帰属せしめることにいたしました。したがいまして、その反面におきましては、結局日本人以外の第三国人あるいは韓国人等が住んでおる不動産、そういうものには手がつけられない、そういうところが慎重な考慮のあらわれであると、かように御了承いただきたいと思います。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 ここで法務大臣にお尋ねいたしておきたいと思います。ということは、今回の請求権の解消等におきまして明らかにされたように、韓国人であるがために得をする場合もありますし、また損をされる場合もあるわけであります。そのことに関しまして、私は条文上明らかになっておりますから、いろいろ御質問しようとは思いません。御質問しようとは思いませんが、しかし、一応先ほどの鯨岡君の質問にもありました、とおり、五年の期限を経て、韓国人であって、なおかつ永住権を持たれる方々の身分というものがはっきりするわけであります。そうなりますと、今日までは韓国に関しましては、国籍もすでに政府の御答弁どおりはっきりいたしましたが、平和条約が発効いたしました瞬間において、きのうまでは日本人であった方が外国人になられたとはいうものの、きのうまでは同じ国民だったから、ひとつ内国人的に取り扱ってあげなくてはならないというので、御承知の法律第百二十六号が今日も存続しておるわけでございます。私は当然そういうような法律が適切な法律であったと考えております。しかしながら韓国という国籍ということも明らかになり、なおかつ五年たてば、そのうちの何人の人が永住権をとるかということも明らかになるということになってしまいますと、ではその他のいわゆる朝鮮人の人たちはどうなるんだ、外国人なのか、あるいは依然として百二十六号法律のもとにおける準内国人であるのかと、いろいろな疑義が生じてこようと思うのでございます。非常にむずかしい問題ではございまするが、私はそういう点に関しましては、一応法律第百二十六号に対しましても、時期が来るまではというふうなことになっておりますので、そうしたことを検討さるべきときが来つつあるのではないかというような考え方もするわけでございます。現にこの間韓国のある人に出会いますと、私たちは、昔は国民でございましたから、日本の旗を見ましても、怒りも感ずるし、愛着も感ずる。しかし、戦後生まれた私たちの子供は、日本の国旗をながめましても、怒りも感じないし、愛着も感じない。こういうふうに言っておりまするが、もうすでに戦後二十年になれば、そういうふうな外国人が生まれておるのであります。したがいまして、百二十六号は、きのうまでは日本人であったという意味合いにおいて制定された法律でございまするが、いま同じ朝鮮人とは申しましても、いろいろな形の人たちがこの日本に存在しておられる以上、私は、この法律というものもあらゆる角度から検討せられる必要はあろうと思うのでございます。もちろんこの中には台湾人も含まれておりまするが、それに対しまする法務大臣の御所見を承っておきたいと思います。

石井光次郎自由民主党法務大臣

○石井国務大臣 御説のごとく、この法律は台湾一人並びに朝鮮人が、戦前から甘木に引き続いておった者に対して、ほかの外国人と区別して取り扱うというために設けたものでございます。御承知のとおり。今度の条約によりまして、大体の韓国の人はその必要がなくなるわけでございまするが、またそれに移らない人もあるでありましょうし、また台湾の人が移らないのでございます。いまのところは、この法律を変えるということは考えていないのでございます。しかし、ただいまおっしゃったように、これは研究しなければならぬ問題の一つであるということはわかります。

宇野宗佑自由民主党

○宇野委員 もう時間がだいぶ切迫いたしておりまするから、あとは後日に保留いたしまして、以上をもって本日の私の質問を終わっておきます。(拍手)

安藤覺自由民主党

○安藤委員長 この際委員長から申し上げます。  去る二十八日、横路委員から要求のありました資料が政府から提出されました。その取り扱い等につきましては、理事会において協議いたします。  本日は、この程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後一時二十五分散会

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