法務委員会 第4号
- 発言数
- 125 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1965/08/12
会議録
○濱田委員長 これより会議を開きます。 法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松勇君。
○赤松委員 かねて神近委員、それから志賀委員が請求しておりました下山事件の鑑定書でございますけれども、最近、週刊朝日などにも桑島鑑定人の報告の結論が出ておるようでございます。さきにその概要が当法務委員会に報告されたわけでありますけれども、詳細な鑑定書の報告が出ておりますので、ぜひこの際、当委員会に対しましても資料の提出をしていただきたい、これを要求いたします。
○津田説明員 下山事件の鑑定書の問題でございますが、これはすでに国会でも、かつての国会において御調査があった際に、前刑事局長から申し上げておると思うのですが、その当時はもちろん下山事件捜査中であるわけです。でありますが、もちろん現在は時効を完成したということになっておりますけれども、御承知のように、時効制度につきましては停止その他の関係もありますので、いついかなる事態において時効完成が妨げられていたということがないとも限らないということが考えられます。でありますので、検察庁の記録としてございます鑑定書と申しますか、検案書と申しますか、それにつきましては、刑事訴訟法の規定に従いまして、やはり現在は公開をしないというたてまえでまいらなければならぬというふうに考えておるわけでございます。
○赤松委員 私は、法務当局に要求したわけじゃないので、委員長のほうから桑島鑑定人に対しまして、すでに週刊朝日に発表されておりますから、至急本委員会に対してもその資料を取り寄せるように御努力をお願いしたいということを申し上げておきます。 次に、津田刑事局長にお尋ねしたいのは、本委員会におきましても、あるいは、参議院選挙中、私、最高検にも申し入れをいたしましたが、山梨県の県知事の選挙違反の件については、いまどのようになっておりますか。
○津田説明員 ただいまの件につきましては、ちょっと日時は忘れましたが、すでに私のほうから最高検察庁を通じて捜査を促進するように連絡してございます。その後いかように捜査が進展を遂げておるかということにつきましては、いまちょっと手元に資料がございませんので、わかりませんが、これまで聞きましたところによりますと、関係者につきましては、すでに調査をいたしておるということを聞いておりましたわけでありますが、それはかなり前のことでございますので、その後の状況につきましては、いまちょっとつまびらかにいたしておりませんが、いずれにいたしましても、できるだけ早く捜査を促進するようにということは最高検を通じて申してございます。
○赤松委員 それでは次の機会に本委員会で報告をしていただきたいと思います。 次に、姫路市会の議長選挙の汚職の問題についてお尋ねをします。 この事件は、姫路市会の中に公友会というものがあって、この公友会の九人の議員が地検に対しまして告発をいたしました。その内容は、九人の一人である米田専一という市会議員に、昨年六月の議長選挙の際、井上前議長を議長にするため買収費として、岸本光二市会議員が三十万円、瀬川武雄市会議員が二十万円を米田市会議員に届けてきたが、これを突き返したというものです。それに、公友会の中の市会議員二、三人にも、それぞれ一人当たり二、三十万円もしくは五十万円の金が流れておる、こういううわさが盛んになりました。そして単にうわさでなくて、現にこの買収を受けようとした市会議員は、姫路の神戸地検姫路支部に対しまして告発をしたわけであります。 そこで、姫路支部のほうでは、中村勉主任検事を中心に津村節蔵検事が捜査に着手をしました。そうして、ことしの六月開会の市議会議長選が大詰めになった十二日に、岸本市会議員に任意出頭を求めて追及すると、岸本議員はあっさり自供しました。翌十三日には瀬川、十五日には井上前議長と矢つぎばやに逮捕いたしました。捜査は非常に順調に進んだわけであります。 ところが、この捜査の過程におきまして、追及のほこ先がにわかに鈍ってきた。現に、神戸地検から卜部節夫次席検事が同支部を訪れて、そうして三人の市会議員の供述書を検討した。ところが、調査の内容は三人を起訴するには不十分なものであったので、中村、津村両検事が督励される一幕もあった。そして二十三日、汚職事件捜査のベテラン、神戸地検の正木良信検事が来援したが、余罪追及どころか、三市議の供述調書のつくり直しをせねばならぬ始末であった。結局、姫路市議会の浄化を市民が期待しておったにもかかわらず、しかも歴然と買収を受けようとした人たちが告発したにもかかわらず、事件は三人だけにとどまってしまって、結局、これが他の捜査が十分行なわれていない、こういうことが新聞に報道された。さらに、七月三十一日、湯川という神戸地検の姫路支部長の発表では、捜査は事実上終末を告げたということを記者会見においてやっておるわけであります。新聞は一斉にこれを取り上げまして、これは東京都議会のように特捜部を設けてやるべきだ、しかるに、経験未熟の検事をたった二人でもってやらしたというところに問題が明らかにならなかった理由がある、こういうことを盛んに書いておるのでありますが、この間の事情について明らかにしていただきたいと思います。
○津田説明員 ただいまのお尋ねの件につきましては、本年八月四日、姫路市議会議員井上由信、岸本光二、瀬川武雄の三名を贈賄すなわちわいろの申し込み罪によりまして、神戸地方裁判所姫路支部に起訴をいたしております。 簡単に起訴の要旨を申し上げますと、井上、岸本に対しましては、両名共謀の上、昭和三十九年六月十一日に行なわれた姫路市議会議長選挙に際し、同市議会議員として議長を選挙する職務を有していた米田専一に対し、同年五月末ごろに、姫路市役所内の市議会議長室において、右議長選挙の際井上に投票してもらいたい旨の請託をした上、その報酬として現金二十万円を提供したが返戻されたというものです。 また、瀬川に対するものは、同人は単独で、この議長選挙に際し、井上由信に対しまして、六月上旬姫路市内の旅館において、同選挙の際には井上に投票してもらいたい旨を請託した上、その報酬として現金二十万円を提供したが、返戻されたという事実でございます。 この事件につきましては、もちろんこれは米田専一議員の関係から、神戸地検の姫路支部が認知するところとなりまして、検事認知で捜査をいたした事件でございます。 この関連する事件、あるいはこの全員の出所等の問題につきましては、もちろん当時検討調査いたしておるわけでございますが、その後の捜査状況なり、その後の問題点につきましては、実は私は何もいま報告を受けておりませんので、ただいまお尋ねのような地方の新聞の報道等は私は承知いたしておりません。したがいまして、この内容自体はわかりませんが、さような問題点につきましてはなお調査いたしました上、お答えを申し上げたいと思うのであります。
○赤松委員 調べていない、報告がきていないからわからないとおっしゃるので、それ以上追及しても、いまの段階では無理だと思うのでありますが、これは至急調べていただいて、どこに一体捜査の上に難点があったかということを明らかにしていただきたいと思うのであります。これは検察庁の威信にかけても明らかにしてもらわないと——これは八月一日の産経新聞です。ごらんなさい。新聞はこれだけ報道しておるのですよ。現地じゃ大問題です。私も市民大会に行きましたけれども、たいへんな騒ぎでした。その中で湯川支部長——湯川支部長というのは神戸地検の姫路支部長です。 湯川支部長は三十一日の記者会見で「なぜ捜査を人員の多い姫路署にさせなかったのか」「東京都議会なみに特捜部を設けるべきではなかったのか」などの質問に対し、ただ「想像にまかせる」というだけ。しかし、その表情には捜査の伸びなやみに対する苦渋の色があった。捜査担当の中村、津村の両検事は汚職事件を白紙の状態から手がけたのははじめてといわれ、部内でも“荷が重すぎた”との評もある。正木検事が調べに着手したころには三市議とも逮捕の心理的動揺もおさまり、俗にいう“留置場なれ”していた。正木検事も「調べるチャンスを失した」というように、すでに余罪追及の時期はすぎていたといえよう。」こういう批判を新聞はしております。 それから議会議員のほうはどういう受け取り方をしているかといえば、「“議長選汚職の事実上の捜査打ち切り”の報に、市会議員たちはホッとした表情。市会事務局には中島忠一副議長ら五、六人の議員が姿をみせ「大騒ぎされたが、結局事実はなかったんだ」と、強がりをいう議員もあったが、なかには「私も参考人として出頭したが取り調べ官に徹底的に調べてほしいと要望した。告訴事実しか事件にできなかった検察陣の手ぬるさにあきれてものがいえない」と、手ぬるい捜査に不満をぶちまける青年議員もあった。」こういうように新聞は報道しております。 これが三人だけのいわゆる汚職事件であって、他に全然関係がないとすれば、十数人任意出頭もしくは逮捕という形で検察庁に拘禁をされたそのこと自身、私は重大な人権問題だと思う。ところがそうではなくて、事実容疑はあったけれども、検察陣の捜査能力がそこまで至らなかったのだ、わずか二人の検事でもってとうていこれを担当するだけの能力がなかったのだということになりまするならば、私は、検察当局の威信にかけて人員を増強して、真相の究明に当たっていただきたい、こういうように思うわけであります。姫路市民の検察当局に対するそれは、まさか検察当局が他の政治勢力の圧力で腰砕けになった、そういうことはだれも考えておりません。この新聞を見ても、そういう非難なり疑惑というものは、どこにもないわけです。ないわけですが、市民としては、あれくらい告発状に明らかになっておる——同僚議員が告発したのですが、その同僚議員が告発した告発状の中で明らかになっている犯罪事実の中で、なぜ検察庁はそれに手がつけられないのか、こういう点については非常に大きな不信の念を抱いておるわけです。たとえばこの見出しなどは、「峠越した姫路市会議長選汚職」「議員連ホッと一息」「逮捕者三人どまり」「任期いっぱいやれる」みん大喜びです。ですから市民に与えた影響というものは私は大きいものがあると思う。事実そういう容疑がなくて、これを逮捕もしくは拘禁したということになりますと人権のじゅうりん、そうでなしに、容疑があったにもかかわらず捜査能力が不十分で、その真相を究明できなかったということになりますならば、これは私は捜査当局の大きなミスだと思います。検察当局の威信にかけてこういうような批判の起きないようにしていただきたい。 本日、社会党は地方政治局長をやっております中央執行委員の阪上安太郎君を団長として、調査団を現地に派遣させました。おそらく現地において検察当局ともいろいろ話し合うと思うのでありますけれども、きょうは、報告が来てない、十分調べてないからということでありますから、これ以上私は刑事局長には申し上げませんけれども、ぜひ調べていただいて、単に委員会に報告するだけでなしに、かくのごとき汚職事件の一掃のために、全能力を傾注して当たっていただきたいというように考えるわけであります。 東京都議会におきましては、あのような結果になりました。当然、姫路市会におきましても、市会の解散要求がただいま起きまして、そして市民会議が持たれ、あるいは市民大会が持たれまして、市政浄化のために市民は立ち上がりております。その立ち上がっておる市民の運動に水をかけるようなこういう結果になったということは、はなはだ遺憾でございまして、ぜひこの点について十分調査をしていただくと同時に、検察陣を督励して、検察陣の威信にかけて徹底的な真相究明をやっていただきたい、こう思いますが、いかがでございましょう。
○津田説明員 さような疑惑を受けておるといたしますれば非常に重大でありますので、その事態を、真相を調査いたしました上で善処いたしたいと思うのでございます。
○赤松委員 私の質問はこれで終わりますが、この際特に発言しておきたいのはいわゆる帝銀事件であります。これは前の法務大臣当時、すなわち偽証事件が発生した後に、弁護士の職権の問題につきまして若干の質問をいたしました。私、その後、当時の被疑者であるところの森川その他の被告の検事取り調べの事実につきましていろいろ調べました。公判廷におきましては共同謀議でないということは明白になっておりますが、この件につきましては、私自身いずれかの機会を得ましてぜひ問題の真相を明らかにしていただきたいというふうに考えておりますので、これをふえんいたしまして私の質問を終わります。
○濱田委員長 鍛冶良作君。
○鍛冶委員 私は、これからアリゾナ号と明興丸衝突事件について関係当局にお聞きしたいと思うのでありますが、海上保安庁からは概略の書類が出まして、これを読んでみたのでありまするが、いま少し書類じゃなくて——これに基づいてでもよろしゅうございまするが、明細にこの全般をまず聞かしていただきたいと思います。
○岡田説明員 アリゾナ号と明興丸の衝突事件の概要を申し上げたいと思います。お手元に簡単な資料を差し上げてございます。大体それを中心にいたしまして、記録をもとにしながらこの件について御説明申し上げたいと思います。 この衝突事件の発生いたしましたのは、昭和四十年八月二日の午前二時九分に起こったというふうに考えられるのであります。と申しますのは、後に御説明申し上げますが、アリゾナ号から緊急通信を午前三時三十八分に発しております。その船の通知によりますと、二日の午前二時九分ごろに衝突したということを聞いておるのでございます。その位置は、ア号の言い分によりますと、下田東北東約十三海里付近ということになっているわけでございます。これは公海上になるわけでございます。 それから衝突しました当事船の名前と性能について申しますと、アリゾナ号は、アメリカのステーツスティームシップカンパニーが船主でございまして、その総トン数は一万二千七百十一トン、また明興丸は明和海運株式会社に所属しておりまして九百九十五トンでございます。 被害の状況といたしましては、アリゾナ号は、船首部の両側に擦過傷を受けております。明興丸のほうは船尾部約四分の一が切断、そして船首部のほうは、転覆して漂流していたのでございます。この明興丸の乗組員は全部で十九人でございましたが、一名が救助され、九名が死亡、九名が現在いまだに行方不明になっているわけでございます。 次に、衝突事故の発生時の状況について申し上げます。まず、事故を当庁が知りました経緯について申し上げますと、第三管区海上保安本部は、八月二日の午前三時三十八分にアリゾナ号の船長から、二日の午前二時九分北緯三十四度四十三・五分、東経百三十九度十三・八分これは下田の東北東約十三海里付近ということになっているわけでございます。その地点において漁船らしいものと衝突した。いま捜索中であるという旨の緊急通信を受けたわけでございます。この緊急通信を受信しました当庁の第三管区海上保安本部は、直ちに巡視船「げんかい」を現場に急派いたしました。またアリゾナ号に対しましてはその旨を連絡するとともに、アリゾナ号は現場において引き続き捜索に当たってくれということの協力を要請いたしております。 次に、事故現場での処置でございますが、巡視船「げんかい」は、午前十一時四十五分ごろに現場付近でアリゾナ号と会合いたしております。そうして同船とともに明興丸の捜索をずっと続行いたしたのでございますが、当時は濃霧のために視界が全く不良でございます。そのために発見できない状態でございました。その後アリゾナ号は、午後一時ごろになって一たん現場を離脱したのでございます。 一方におきまして、濃霧が一時過ぎに晴れまして、明興丸の船首部のほうが発見されたのであります。それで、そういうこともありましたので、アリゾナ号に対しまして、二日の午後三時ごろに、まずアリゾナ号の代理店を通じまして、事情をアリゾナ号から聴取したいので、本邦のもよりの港に入港するように連絡してほしいということを要請したのであります。当日の夜九時四十五分ごろでございますが、代理店のほうから連絡がございまして、アリゾナ号が翌三日午前十時ごろには横浜に入港するという旨の回報がありました。事実同船は三日の十時四十五分ごろに横浜に入港いたしました。 それで、三日の日にアリゾナ号の到着を待ちまして、船長ほか三人につきまして当時の事情を取り調べと申しますか、参考人としての事情聴取をいたしました。これは八月三日の午後零時半から夕方まで、それから翌四日の午前九時からお昼近くまでの二度にわたりまして、参考人としていろいろ事情を聴取しております。また船につきまして、そのペイントと、明興丸についておりますペイントとの照合をいたしまして、このアリゾナ号が明興丸にぶつかったんだということの確証をそういう点から得ておるわけであります。 次に、アリゾナ号は八月四日の午後二時四十分にマニラに向けて出港いたしております。その経緯につきましては、アリゾナ号の船長のほうからは、公海上の衝突事件であるからアリゾナ号に対しては日本側には刑事裁判管轄権はないが、また一方では事実問題として日本側の直接当面必要な捜査に対しては、一応の協力をしていきたい。それからまた約一カ月後には本邦に寄港する予定であるから、そのときにまたもし日本側で必要であればできるだけの協力はしたい、こういうふうな言明をしております。そういうような船長側の言い分でございます。当方といたしましても次のことを考慮しまして、船長の要請を入れて、同船の出港を認めたわけであります。それは、一応当面必要としますところの物的証拠が得られたこと、それからアリゾナ号の実地検分を終えて、先ほど申し上げましたような、この衝突についての確証を得るためのペイントの資料を収集ができたというふうなこと等もありまして、当面の捜査につきまして協力が得られた状態になっている。それからまた、将来の協力についても船長が先ほど申し上げましたような協力を約しておるというふうなこともございますので、一応船長側の申し出を認めたわけでございます。 以上がこの衝突事件の概要でございます。
○鍛冶委員 いろいろ聞きたいことはありますが、まず一番先に聞きたいのは、この衝突の現場でございますが、下田の東北東約十三海里、小さい図面ですが、これで言うとどの辺に当たるのですか。——ちょうど下田と大島との中間に当たりますね。
○岡田説明員 中間でございますが、少し大島寄りでございます。
○鍛冶委員 新聞の記事によりますと、大島から九キロとなっておりますが、それはどうですか。それから下田からは十三海里……。
○岡田説明員 先ほど申し上げました下田からのは、位置が比較的一般の人にわかりやすいという意味で下田からの位置をとっております。これは東北東約十三海里でございますが、今度は距岸と申しますか、日本の陸地からの最短距離ということで申し上げますと、一番近いのは大島からでございまして、大島西岸、野増海岸でございますが、そこまで約六・二六カイリという位置になるわけでございます。
○鍛冶委員 毎日新聞では約九キロと書いてありますね。九キロとはもっとそれでは距離があるわけですね。
○岡田説明員 九キロよりはもう少し多いわけでございます。六・二六海里……。
○鍛冶委員 そこでお聞きしたいのは、公海ということはどういうことなんですか。どこからどれだけ離れたところから公海になるのか、それをまず聞きたい。
○岡田説明員 それはわが国では領海三海里説をとっておりますものですから、わが国の沿岸の各地からの最短の距離でもって三海里という線をとっております。
○鍛冶委員 その距離はわが国領土のいずれの地からも三海里以内は領海、こう解釈しているのか、それともあるいは本州からとかどこからとか、そういう限界があるのですか。
○岡田説明員 わが国の領土のいずれの地点からも、その最近の三海里となっております。
○鍛冶委員 それはいずれの国も三海里ということを守っておりますか。それとも守る国も守らぬ国もあるのならば、守っておるのはどの国であって、守らぬ国はどういう国であるか、それをお聞かせ願いたい。
○岡田説明員 この領海のことにつきましては、外務省の条約局が一番責任と申しますか、権威でございます。ですが、私のほうで条約局のほうからの調べについて承知しておりますことで申し上げますと、国によりまして領海三海里説をとっているところと、それから六海里ないし十二海里等の説をとっているところがございます。わが国におきましては三海里説になっておるわけでございます。
○鍛冶委員 アメリカは何海里説をとっておりますか。
○岡田説明員 アメリカも領海ということでは三海里ということと承知しております。
○鍛冶委員 この間から日韓交渉で、われわれ新聞で見たのだが、十二海里、十二海里ということばを繰り返し聞いておりますが、韓国との関係においては十二海里説を日本はとっておるのじゃありませんか。
○岡田説明員 これは、たとえば漁業についての専管十二海里というふうなことでやっている国もあるわけでありまして、韓国との問題につきましては、そういう漁業についての専管水域ということでの十二海里でございます。
○鍛冶委員 どうもこの問題は公海であるかどうかということがたいへんな関係のある事件でございます。しかるにどうも、あやふやなものであるにもかかわらず、日本だけが最も近い距離をもって公海と認め、しこうして管轄権をみずから狭めるようなことがあっては大問題だと思うのですが、いまここであなたと議論したってしょうがないけれども、三海里説は正当なものであるのかどうか、正当なものと言ってみても、日本のためにならないけれども三海里説が一番多いからそれに従うという意味なのか、それに従わなければいかぬという御見解なのか、この点をひとつ明瞭にしてもらいたい。いまあなたのほうで弁解ができれば弁解してもらいたいし、もし弁解できないならばあらためて調べた上で確実な返答を願いたいと思う。
○津田説明員 領海の関係は、法的問題でもございますので、法務省としての考え方を申し上げたいと思います。 わが国が領海三海里の説をとっておるということは、ただいま海上保安庁から御説明申し上げたとおりでございますが、この根拠は、わが国の国内法に領海を三海里とするということはもちろんございません。しかしながら、これは古くは明治三年、一八七〇年に、普仏戦争の際におきまして局外中立の宣言をいたしておりますが、そのときは三海里ということで局外中立の宣言をいたしております。その後ずっとわが国のとってまいりましたいろいろな条約あるいは、たとえば日露戦争のときの捕獲審検所の検定というようなところから、いずれも三海里説をとっております。今日におきまして、この三海里説についてさらに一九六〇年つまり昭和三十五年には国際連合で第二次海洋会議が開かれまして、あるいは六海里説あるいは漁業水域に関しては十二海里説とか、いろいろな主張ができたわけですけれども、結局そこでまとまってはおらぬわけであります。そこで、各国ではいろいろな主張をいたしておりますが、わが国として承知いたしておるところによりますと、各種の会議、あるいは条約、たとえば日ソ漁業条約、あるいは今度の日韓の条約等につきましても、わが国の立場としては、領海三海里を主張しておるわけでございます。この領海三海里を主張いたしますことは、一面わが国の領域を小さくするということもありますが、他面他国に対する主張といたしましては、公海における漁業の自由等の関係から申しますれば、他国に対しましては、少なくとも他国の領域を制限する意味において、公海、あるいは漁業を自由に行なえる場所が広いという意味にもなり得る、そういう相互関係がございますので、領海は広いほうが得であるというわけにもまいらないという点があろうと思います。したがいましてわが国としては、従来ずっと三海里説をとってまいって、国際会議等においてもその主張をしておるということになっておりますので、現在の解釈としては、わが国の領海は三海里という解釈をいたしておるわけであります。
○鍛冶委員 いま刑事局長の説明を聞きまして、いかにもわが国の利益のために三海里説をとっておるように言われますが、私の最も心配するのは、あべこべでないかということです。韓国はかってに李ラインというものを設けて、十二海里説を日本が言うても聞かないで、もっととんでもないところを韓国の領海だといっておる事実がある。これもいまだに確定というわけにいっておりません。これは漁業と航路との違いはあるかもしれませんが、われわれから見ると、どうもたいへんなハンディキャップがあるように考えます。 もう一つ、いま六海里説というのがありましたが、日本は、日本の近海へ来ておるとき、三海里説をとって、三海里以上は公海だ、こういうが、六海里説をとっておる国の沿岸で日本の船が事故を起こしたときに、向こうが六海里まではわが領土だ、こういったときに、それに手向かうことができるのですか。三海里説でどこまでも貫かれるのですか。日本に来たら三海里よりいわぬが、外国に行ったら六海里までその国の領土にされるという事実なきにしもあらずという心組みで私は言うのですが、その点はどうですか。
○津田説明員 それは現実に起こったことがあるかどうか、私は存じませんが、一応仮定の問題として申し上げますると、なるほど六海里説をとっておる国がありといたしまして、その国の主張する領海内において今回のような事故があったという場合に、その沿岸国に刑事裁判権ありやというような問題が起こる、この問題につきましては、わが国は三海里説をとっておりますが、国際的に統一された基準というものはいまだできていない、つまり確立された国際法規はないという主張になるわけです。そういたしますと、六海里説をとっている国に対してどう対抗するかという問題があります。これは要するにやはりその刑事裁判権を、わが国としては三海里が相当だという主張をし、これをもって外交折衝、あるいは場合によったら国際司法裁判所に提訴するというようなことになるのではないかというふうに考えておりますが、これは仮定の問題なので、具体的にどういうふうになるかわかりませんが、私どもとしては、この問題はあくまでも相手国に対しても主張すべき問題であるというふうに考えております。
○鍛冶委員 主張せられても通らぬのならばこっちは負けることになる。あなた方はこのほうが得だと言われれば、どこへ行っても三海里説は通るんだ、こう言うてもらわぬでは、われわれ安心できないのですが、それはどうか知りませんでははなはだ心もとないのですが、外務省ともよく打ち合わせの上、責任ある御返答をいずれお願いしたいと思います。 それからいま申しましたように、八月三日の毎日新聞の夕刊では大島灯台東約九キロの海上にあった、こういっておるのですが、これは九キロとなると三海里以内だと思うがどうですか。一マイルは四キロで、一海里はたしかその倍でしょう。三海里どころか一海里ちょっとになりはしませんか、どうです。
○岡田説明員 一海里は千八百五十二メートル、約一・八キロでございますから三海里はその三倍、五・五キロかと思います。大体それくらいになるわけでございます。したがって九キロでございましても三海里よりは外になっておるわけでございます。
○鍛冶委員 この点は新聞のことをわれわれは全部うのみにするわけにはいきませんが、あなた方の報告と違いますからね、大事なことでありますから、もう少しこの点も確実に調べて御返答願いたいと思います。 次にお聞きしたいのは、このときのアリゾナ号のスピードですが、新聞の報ずるところでは十七ノットであったとどの新聞も書いております。この点はあなた方のほうでどうお調べになっておりますか。
○岡田説明員 アリゾナ号が当時十七ノットで走っていたということは、船長に聞きましたときにも大体そういったことは認めておるわけでございます。この船の全速は、この資料にございますように二〇・五ノットで、通常十九ノットくらいで走るわけでございますから、それよりは多少おそいわけでございますが、相当のスピードであったということは間違いないところでございます。
○鍛冶委員 当日はたいへんな濃霧であった、濃霧の場合にはさようなスピードを出すべからざるものであると報じておりますが、それには何かそういう規則があるのですか。そしてまたありとすれば、アリゾナ号はその点にまさしく違反しておったと思われるが、その点はいかがですか。
○岡田説明員 海上衝突予防法という法律がございますが、これによりますと「船舶又は水上において移動をしている水上航空機は、霧、もや、降雪、暴雨その他これらと同様に視界が制限される状態にある場合は、その時の状況に十分注意し、適度の速力で進行しなければならない。」ということになるわけでございます。
○鍛冶委員 われわれにはその適度というのがわからないのだが、たいへんな濃霧だったんでしょう、そういう濃霧の場合は大体適度とはどれくらいなのが適度なんですか。
○岡田説明員 通常の航海速力の半分以下くらいが大体適度と考えられるということに一般的になっております。
○鍛冶委員 そうすると、この場合はどういうことですか。
○岡田説明員 したがいまして、この場合は、速度の点では適度の速力にしていなかったということになると思います。
○鍛冶委員 いや、私の言うのは、そういう濃霧の場合に、アリゾナ号が適度というのは何ノットくらいのスピードを適度というのかということをお聞きしたい。
○岡田説明員 まあ、九ノットないし十ノットくらいのところ以下であるというふうに思います。
○鍛冶委員 そうすると、たいへんな速力違反をやっておったということがわかるわけですね。 その次に問題になりますのは、八月二日の二時九分とアリゾナ号みずからが言うておるようですが、しかるに午前三時三十八分になってようやく第三管区海上保安本部へ電報をよこした。こういうような場合に、これだけの時間というものはよほど大きな時間であるが、この点もはなはだ解しかねるといずれの新聞も報道している。この点はどう思っているのですか。
○岡田説明員 この点につきましては、最初の緊急通信にもありますように、アリゾナ号としましては漁船らしいものと衝突したのではないかというふうに感じたということであります。そのショックのぐあいから漁船または船と衝突したのかどうかも含めまして、何かショックを感じたので、おそらく漁船と衝突したのではないかというふうに考えて、まず自分でその付近を船が見つからないかということで捜索して回った。そうしているうちに、どうも一向にそれらしいものはわからないが、とにかくこれは早く通信して知らせなければいけないということから、三時三十八分になって緊急通信を発したということでございます。
○鍛冶委員 それは向こうの心理状態をわれわれははかり知るわけにはいきませんけれども、漁船であろうと何であろうと、とにかく自分の船にぶつかって、ぶつかった相手はたいへんなことになっておるに違いないのだが、それをこうやって一時間三十分以上も通報せぬというのは、何というか、公海上の人命尊重等の点から考えて航海原則に反するものだ、こういう説があるのですが、その点はどうだ、こう聞くのです。
○岡田説明員 この点は詳しく調べなければほんとうの真相というものは必ずしもわからないと思いますが、ただ実際問題として、何かそのショックを感じた度合いから見て、初めにはそれほど——漁船らしきものと言っておりますが、最初には船そのものと衝突したのかどうかも必ずしもわからない、何かしらショックを感じたということで、大急ぎでまずさがすというほうを最初にやったということでないかと思うわけでございます。もりとはっきり船と衝突したということが初めからわかっております場合には、当然その旨を通信すべきであった。そこらの点がわからないままに、まず自分で捜索したということのようであります。
○鍛冶委員 どうもあなたは、アリゾナ号から頼まれておるような答弁で合点がいかないが、あなた方お調べになったとおり、アリゾナ号というのはたいへん大きな船ですね。その船の両舷に大きな穴があいておる。ただの衝突じゃない、たいへんな衝撃のあったものだ。しかるに、漁船であるとか何とか言うておることはけしからぬ。そうして相当のものに当たったとしたら、至急知らせるのが当然であるにもかかわらず、一時間半以上も知らせなかったということはけしからぬ、こう言っているのです。それをあなたは、けしからぬことはないのだと言われるのだが、そうなると私はもっと言いたいのだが、確かにけしからぬことじゃないのですか。
○岡田説明員 はっきり衝突したということでありますれば、直ちに遭難通信すなわちSOS通信を発すべきものでなかったかと思うのでございます。おそらくその事態がはっきりしないままに、まず捜索を自分でやったことではないかというふうにいま考えているわけであります。
○鍛冶委員 何べん言うてもしょうがないが、船にたいへん大きな穴があいているのでしょう。船のまわりにみんな傷がついておる。そんな、船か何かに当たったのじゃなかろうかというようなものではないはずなんです。だから必ず船と衝突しておるとわかっておるにもかかわらず、一時間以上も通報しなかったということは、航海法則から考えて、人命尊重という意味からしてもけしからぬことだ、こう言っておるのですよ。けしからぬと私も思うから、あなたに問うたのだが、あなたは、けしからぬのじゃない、それは当然だとおっしゃるのですか。その点もう一ぺんはっきりしてください。
○岡田説明員 はっきり衝突しているということであれば、直ちに遭難通信を発すべきものであるというふうに思うわけでございます。
○鍛冶委員 まあその程度にしておきましょう。 次に、翌日「げんかい」と一諸に午後一時くらいまでその捜索をしたようでありますが、一時ごろ現場を離脱したとなっております。これはまだ船の行くえもわからぬのだし、また海上における人命の安全保障のための国際条約というものがあって、衝突した船は相手方の船の人命救助のために極力捜索し、手段を講じなければならないことになっておるはずでありますが、午後一時に船もわからぬのに離脱したということは、この規定に照らして違反しておるものと思うが、いかがですか。
○岡田説明員 アリゾナ号といたしましては、先ほど御説明いたしましたように、ショックを感じて以来午後一時までの間はずっと捜索していたわけでございます。全然ほったらかしにしてすぐに離脱したというものではないわけでございます。しかし実際にまだ発見できない段階で、その途中で出ていったのはどうか、こういう御指摘であろうかと思いますが、この点は当時まだ濃霧の状態がずっと続いておりまして、極力捜索したけれども見つからないので、ある時間でもって打ち切ったということではないかと思うのでございます。
○鍛冶委員 海上における人命の安全保障のための国際条約というものをアメリカは結んでおる。したがって、アリゾナ号もこの条約に従うべきものだと心得ます。その条約に従えば、自分が衝突した相手の船はどうしたかわからぬがとにかく破損しておるに違いない。何かやっておるに違いないということはわかっておる。そうすると、この条約の上からいうと濃霧があろうが何があろうがとにかくできるだけのことをして、これ以上やることができなかったというところまでやるのが当然の義務だと心得ます。濃霧でわからぬからおれは引き返しますではこの条約の義務に従ったとは思われないが、この点はあなたはどう思っておられますか。
○岡田説明員 濃霧の中でございましたのですが、朝、午前二時過ぎから午後一時に至るまでは捜索をずっとやっていたわけでございます。したがって、濃霧だから、初めからあきらめてさっさと行ってしまったというものではないわけであります。それでは限界と申しますか、いつまで捜索すればいいかというふうな点が問題になるところでございます。この点は、事実関係とか、当時の状況その他とのかね合いでもって考えていくべきではないかと思っております。
○鍛冶委員 アリゾナ号は、わからぬからと帰っていったが、「げんかい」は帰らなかった。一生懸命さがしておったでしょう。「げんかい」がさがしておるのに、アリゾナ号がわからぬからといって帰っていいものですか。そこなのですよ。アリゾナ号に義務がないのならそういうことを言ってもいいが、「げんかい」よりも義務があるのです。その義務のある船が、わからぬからといって帰っていく。義務のない「げんかい」が、一生懸命さがす。それで条理が通りますか。あなた方は、アリゾナ号の行為を遺憾だと思われないのですか。それとも誤りだと思っているのですか。どうですか、その辺は。
○岡田説明員 この条約の精神にのっとってやった場合に、個々の具体的なケースの場合に、どこまでやってはじめてほんとうに、条約に全くいわば百点満点まで忠実であったか、あるいはどの程度であったか、こういうふうな限界の問題になろうかと思うのでございます。
○鍛冶委員 その限界をあなたに聞いておる。日本の「げんかい」は一生懸命さがしているでしょう。日本の「げんかい」がさがしておるのに、衝突したアリゾナ号が帰っていいかというのです。それば条約違反となると思うが、あなたはどう思いますか、私はこう聞いておるのですよ。
○岡田説明員 この点につきましては、程度問題でございますので、私のほうで確実に違反する状況にまできているというふうなことまで言えるかどうか、まだいまそういったところまでの詰めはいたしておらないわけでございます。
○鍛冶委員 将来こちらからいろいろ要求するときにおいて、それは重大なるきめ手になる一つなのですから。われわれはそれを聞いて、これを読んでさえ頭に来ているが、あなた方のほうでそこまでの調べがついてないということは遺憾だ。確実に調べてもちいたい、私はそう思いますよ。「げんかい」でさえ一生懸命やっているのに、みずから当てたやつは、幾日かかろうが、霧が晴れるまで待ってやるのがあたりまえだ。それが、濃霧があるから帰ります。おまえのほうでさがしておれ、そんなことで済むものではないと思うが、わからぬならしかたがない、もう一ぺんよく調べた上いずれ返事をいただきます。 ところが、次の日に伊勢湾の沖におるのに呼び返したようですね。それはどういう意味で呼び返したのですか。
○岡田説明員 呼び返しました点につきましては、まず明興丸の破損した船首部が発見されまして——これは他船との衡突によってやられたものである。それで、アリゾナ号にまず間違いないと想像されるので、その事実関係を調べる、並びにこの事件について、衝突の模様についていわゆる参考人ということで、できるだけの事情を聞かしてほしいということで帰ってもらうことを要請したわけでございます。
○鍛冶委員 まあ、だれが電報を打って——これは横浜海上保安部のようですが、海上保安部がどういう権限でそれを呼び戻したのですか。捜査のためなのか、それとも何か別なのか。何かよりどころがあるから——ただ単に、おまえが当てたようだからというので呼んだのか、どういうことをしようと思ったのか。それにはこの規定によって、いやと言っても来なければならぬというのでやったのか、その根拠を聞かしていただきたい。
○岡田説明員 この衝突事件の広い意味での捜査も兼ねてでございます。それで、わが国のほうから直接には代理店に連絡をいたしまして、代理店からその会社の本社のほうへ、そうして、本社から船へ通ずるというようなルートをもってこちらの要請が届いたわけでございます。
○鍛冶委員 捜査というと、刑事事件の捜査ですね。「索」じゃないですね。ここに「索」と書いてあるが、そうではないですね。
○岡田説明員 この衝突事件の捜査と申しますのは、明興丸側を含めました事件全体の捜査、そういう意味で申し上げたのでございます。船につきましては、参考人としての事実調査ということになるわけでございます。
○鍛冶委員 その点法律的にはっきりしたいので私は聞いておるのです。捜査のために呼び戻されたのかどうか。そういう呼び戻しの権限があるのかどうか。権限があれば、これに応じなかったら応ずるように何かやるのか、それとも任意出頭と同じように、ちょっと聞きたいが来てもらわれぬか、こういう意味でやられたのか、それを言っておるのです。捜査のためだというならば、そういう捜査のために、公海でやった事件について外国船を呼び戻す法律上の根拠があれば何であるか、それを聞きたい。
○岡田説明員 それは事情の調査のための参考人というふうな考えでございます。したがいまして、裁判管轄権に関連いたしまして、先方が拒否すれば強制捜査はできないことになろうかと思います。まずその前の段階として事実を究明したい、そのような意味で帰ってもらったわけでございます。
○鍛冶委員 どうも何とも言えぬ情ない話ですね。おまえは権限はないといわれたら、指をくわえてながめておらなければならなかったのですね。幸いにしてアリゾナ号が言うことを聞いてくれたからよかったが、アリゾナ号から恩典を受けたわけですね、あなた方の話を聞いていると。そういうものですか。海上保安庁法の第十八条に、「海上保安官は、その職務を行うため四囲の情況から真にやむを得ないときは、その職務の執行につき他の法令に定のあるものの外、左に掲げる処分をすることができる。」一として、「船舶の進行を停止させ、又はその出発を差し止めること」ができる。こういう条文があるようですが、あなたは本職だからよく御承知でしょう。これはそういう大きな事件がなくても、あなた方のほうで職務を行なうのに必要であるとすればやれるわけだ。いわんや、人の船と衝突して、転覆さして、十何人も殺しておるのを、それをとめる権限はないのですか、ひとつ考えてみてください。もしそうだとすれば、これは実に情けないことですよ、どうです。
○岡田説明員 海上保安庁法に書いてございます海上保安庁の権限は、これはもちろん日本国で通用いたしますところの法律の範囲内ということになるわけでございます。ただいまのこの事件につきましては国際的な問題がありまして、国際裁判管轄権との問題がございますために、先ほどお答えしたようなふうに相なるわけでございます。
○鍛冶委員 そうしてみると、アリゾナ号は来てくれたからいいが、しからざる限りにおいては、刑事捜査はもちろん、海上保安庁法上においてとるべき手段としてもとれなかったんだ、向こうが好意で来てくれたから、どうやら人間の取り調べができた、こう解釈するよりほかないのですね。どうです。
○岡田説明員 公海であることが明らかであります限り、そういうことになろうかと思うのです。ただ、かりにこれは一つのたとえでございますが、公海か領海かも、相当そのボーダーラインのところではっきりしないというふうな場合には、まず領海内のものの疑いが多いものとして、すなわち日本に管轄権があるものという仮定のもとに、まずその取り調べを進めなければならないのではないかというふうに考えるわけであります。
○鍛冶委員 どうもゆゆしき問題だと思うが、私はかりの例を言いますよ。あなた方の巡視船の目の前で、アメリカの船が公海で衝突して、日本の船を沈没させた、破損させた、そして、日本の船には人命が失なわれた、そのときでも、これは公海でございますから、どうかひとつおれの言うことを聞いてくれますか、くれなかったらやむを得ませんといって、みすみす向こうへやってもいいのですか、どうです。さような事件があっても、公海だというので、日本の何者も手をつけられないのが原則なんですか。人命尊重というところから少し考えてごらんなさい。先ほど言うた人命尊重に関する航海条約があるのですよ。その精神からいっても、私はさようなことはないと思うが、どうもあなたの答弁から聞くと、そういうことになる。そうすると、みすみす、どうもこれは公海上でございますから、いやとおっしゃればしようがないといって離してやるのか。どうだ、その点は。
○岡田説明員 純粋の法律論といたしましては、やむを得ないことだと思います。ただ、条約の精神から申しましても、そういう場合でございますから、その船の側に当然緊急に救わなければならない救助の義務もございます。また道義的に申しましても、そういう場合には海上保安庁のほうとしましても、完全な強制はできませんが、そのすぐ一歩手前まで、すなわち道義的なそういう点からの要請は、当方としても強くそういう場合には要請するということになるわけでございます。
○鍛冶委員 どうも何ですね、先ほどから言った、海上における人命の救助について、一九四八年ジュネーブで条約ができておるのです。海上における人命の安全保護のための国際条約、こういうものがあって、それによれば、公海における救助について、衝突に関する規則の統一のための条約があって、必ずこれの救済に当たらなければならぬとなっておる。これは国際法上、こういうことがあったらやらなければならぬという義務を負わせてあるんでしょう。しかるにかかわらず、あなたのお話を聞くと、いやだといえばしかたがないが、やってもらう、これはたいへんな話だと思います。これはどうもゆゆしき問題で、いまあなたがそういう答えをせられるというならば、こんなことではこの委員会はいけません、もう少しやらなければ……。
○岡田説明員 当該船舶が、国際法上の義務を持っておりますことは明らかでございます。ただ、国際上の裁判管轄権の問題からしますと、それを守らせるといいますか、例の守らなかった場合の違反についての責任を追及するのは、当該船舶の旗国でございます。この条約の執行、法権力の行使としては、当該旗国が行なう。当該のその船そのものが条約に違反しておって、そのまままかり通るものであるということでは決してないわけでございます。
○鍛冶委員 どうも驚きましたね。海上保安庁の船が、外国の船が日本の船に衝突して日本の船を沈めた、そうして日本の船の中には人命を失っている、もしくは救助してやらなければならぬ者があるにもかかわらず、これは公海上の問題であるからおれに義務がないのだと言ったら、黙って指をくわえておらなければならぬとあなたはおっしゃるのですか。さようなことでよろしいですか。かような条約で国に義務があると同時に、船自身も義務があるのです。これは、人道上からもやらなければならぬ、けしからぬと言っていいわけだ。いわんや、この条約がある以上は、それをやらなくてどうするといってしかりつけて、やらせる権限がなくてどうするのですか。どうです。
○岡田説明員 ただいまのような場合に、私、先ほど来お答え申し上げておりますのは、法律の解釈といいますか、法律の限界を申し上げたわけでございます。ただ、実際問題として、ただいまのような場合は、もちろん海上保安庁のそこにおります船は、当該船舶に対して非常に強く、ここにおることを、そして救助に当たることを要求するわけでございます。常識的には、その船が当然そういうことをやると思いますけれども、万一そういった人道上の問題を完全に無視して、すぐに逃げて帰るということがかりにあったといたしました場合には、これは事実上の問題といたしましては、その道義に反することを強く難詰もいたします。また、そういうことで強く要請するわけでございます。そういう態度をわれわれが放棄して、向こうさん自体の考え、向こうの考え自体にまかすのだ、こういうことでは決してございません。その点は、ちょっと誤解があるようでありますから、申し上げます。
○鍛冶委員 いまそう言い直されたが、さっきあなたは、来てくれなければしかたがないわけですよ、言い返されればしかたがないのですよ、と言ったのですよ。そこで、いまの問題も、濃霧でわからなかったけれども、濃霧が引いたら明興丸が切断せられておる、しこうして、十九人の人命が失われておった、かようなことがある以上は、おまえはここへ来てやるべきことをやらなければならぬじゃないか、至急帰れ、かようなことを言うて当然と思うのだが、あなたの言い方では、言うて、来てくれたからいいが、来なければやむを得ませんです。——そんなことでいいですか。もう一ぺんあらためてお聞きをしたい。
○岡田説明員 先ほど、私、純粋の法律論のほうに少し御説明の中心を向けましたために、非常に誤解をお招きいたしましたことは申しわけないと思います。われわれといたしましても、これは当然アメリカ船にぜひ帰ってもらわなければならないというふうに強く考えられる。また、この点につきましては、運輸大臣も非常に心配いたしまして、すぐに帰ってもらおうじゃないかということも言ったようなわけであります。われわれはすぐにそういう強い意思を相手に伝え、したがって相手のほうもそういう事情というものを了として帰ってきたものというふうに思うわけであります。単なる相手の考え次第ということではございませんで、われわれの強い要請というものが向こうの船を動かしたというふうにわれわれは確信を持っているわけでございます。
○横山委員 関連して。私はうちでテレビをひねったらすぐ津田さんの顔が映って、津田さんがこれは公海だからしょうがないと言われた。それで、そのときに、私は非常に不愉快な感じを持ったのであります。これは国民がすべてそうじゃないか。鍛冶さんもおっしゃるように、一方では十数人の死傷者がある。一方ではちょっと調査を受けて、おれは帰るぞといって帰ってしまった。そして日本政府を代表して津田さんが国民に、あれは公海だからしょうがないんですということにはどうしても納得できないものがある。 私が調べたところ、一九二六年のローチュス号事件というものが目に入ったのですが、これは御存じだと思うのです。純然たる公海で、トルコ船に、フランスの船が衝突して、トルコの人が八人死んだ。トルコはおこってフランス人をつかまえて、刑事裁判にかけようとしたら、フランスは反対した。それで国際司法裁判所に提訴した。一九二六年に国際司法裁判所は、トルコ船の中で起きた事件と了解するという判決で、トルコが勝っちゃった。この判決には多少問題はあるけれども、とにかく事実行為として、トルコが、けしからぬといってフランスの船員をつかまえて、自分のところでやろうとし、あえて言うならばというわけで、国際司法裁判所へ提訴してトルコは勝つちゃった。公海か領海かということをおっしゃるけれども、この公海に関する条約をたしか日本はまだ批准してないでしょう。批准してないのです。しかも鍛冶さんの言うように、船舶の衝突に関する規則の統一の条約、海難救助の条約、海上における人命の保護に関する国際条約、これらはかりに抽象的であっても国際条約なんです。だから日本政府がこのあとのほうの条約をたてにすれば、トルコの判例を見ても、このような常識的にけしからぬと思われる問題について、もっとき然たる態度をとっていいんじゃないか。なぜ、き然たる態度をとらないのだろうか。国民感情としては、どうしてもこれは納得できない。 それで私が聞きたいのは、そのアリゾナ号は、今度の事件調査について、必要にして十分な協力をあなた方にしましたか。私の感ずるところでは、必要にして十分な調査もまだ終わってないから、もう一ぺん一ヵ月たったら帰ってくると、こういうんでしょう。つまりその間に、証拠の保存をするとアリゾナ号は言っておるらしい、これを見ると。言っておるけれども、一カ月の間にその個所がどういうふうに変わってくるかわからぬでしょう。そうすると、海上保安庁は必要にして十分な調査を済まさないうちに帰してしまった。かりに公海であっても、このあとのほうの国際条約を援用すれば、必要にして十分な調査を済まさないうちは出ていってもらっては困ると言うて何がいかぬだろうか。それをやらさずに、単なる公海だということで、ぱあっと放してしまった。こっちは十九人の葬式だ、病院へかけ込む、こういうことは国民感情が許さぬですよ。公海か領海かと言っていることに私は不愉快を感ずる。公海か領海か、まだ問題のあるうちに釈放するということは、これは了解に苦しむ。あとで後悔する。こんなばかなことはないですよ。あなた方がここでいろいろなことを言ったって、国民感情としては、海上保安庁は何だ、法務省は一体何だ、一体日本人か。失礼な話ですが、こんな感情まで持っているんですよ。その点はどうなんですか。
○津田説明員 私がテレビに出たということを中心にしてお尋ねでございますので、まず私が申し上げますが、私はこの事件につきましてテレビで放送いたしたことはございません。あるいは私のいつかの写真をもって私の述べたことを引用したのだろうと思います。 そこで、私は当時新聞記者から質問を受けました際に、この事件につきましては、もちろんこれは公海であるかどうかという事実上の問題はまだわかっていない。もし公海であればどうであるかという質問に対しまして、公海におきましては刑事裁判権はその船舶の旗国あるいは当該責任のある船舶乗り組み員の本国において刑事裁判権がある、こういう法律上の見解を述べた、それがおそらくテレビに結合され放送されたものと私は考えます。 そこでその理由を申し上げますと、いま横山委員の仰せられましたローチュス号事件の問題は、私もよく承知いたしております。ローチュス号事件は一九二六年に起こった事件でありますが、ただいまお話しの中では国際司法裁判所の判決によりまして、当時の被害船の国であるトルコにも、それから加害船のローチュス号の所属国であるフランスにも裁判権があるというふうな結論であった。これが当時の国際法のルールとしては一つの判例となっておったことは事実です。しかしながらこの判例に対しましては、ただいま仰せられましたように多くの批判がありまして、この判決のそもそも成立の過程におきまして、裁判官六人、六人の意見相半ばし、裁判長がこの結論を決したというような経緯もあります。その後、この判決に対する批判といたしましては、もしそういう形になると、船舶の乗り組み員、あるいはその船舶そのものは、外国の裁判管轄権に服する場合が多くなってくる、あるいは外国及び本国の両者の裁判管轄権に服するようになって、非常に乗り組み員の保護、あるいは船舶の保護に欠けるところがある、そういう批判が非常に強いわけであります。そこで一九五二年にブラッセルで締結されました船舶の衝突に関する刑事裁判管轄権の条約におきましては、船舶の旗国または責任ある、乗り組み員の本国の刑事裁判権に服するという条約ができた。と同時に、国際連合の国際法委員会におきましても、海洋法草案審議の際におきまして、やはり同様の結論が正しいという意見が多数を占めておる。その後一九五八年に、すなわち昭和三十三年でありますが、ただいま問題にされました多数国間の公海に関する条約の採択会議がジュネーブで開かれましたが、その際におきましては、その条約の採択に賛成多数でございまして、わが国もこの採択に賛成をいたしました。そこでその条約は一九六二年に発効いたしたわけでありまして、これが多数国間の公海に関する条約であります。わが国は、現在これに加入いたしておりませんけれども、昭和三十八年に国会におきまして、政府委員はこれに加入する予定をもって作業をしておることを申し述べております。もちろん採択会議で賛成しましたことは、先ほど申し上げたとおりであります。現在この公海に関する条約には三十二カ国が加盟をいたしております。アメリカももちろん加盟をいたしております。そこでこの条約は国際連合の海洋法に関する会議の経過並びにブラッセル条約の経過から見ますと、これはもはや国際慣習法にまで発展している、国際慣習法になっているというふうに考えざるを得ないわけであります。そこで国際慣習法、つまり確立された国際法規というものは憲法によって当然順守しなければならぬわけでありますから、日本はこの条約に形式的に加入しておるといなとを問わず、国際慣習法を順守しなければならない。したがいまして、現在におきましてはこの国際慣習法によりまして、衝突船舶の刑事裁判権はその船舶の旗国、またはその責任ある乗り組み員の本国にあるというふうに法律上は解釈せざるを得ないと思います。 そこでアリゾナ号の事件が公海上で起こったかどうかという点については、あるいは現在まだ完全に確定したということは申せないかもしれませんが、これは海上保安庁において諸般の調査を行なっておるというふうに私どもは考えております。 そこでアリゾナ号を、それじゃ日本で差し押える、出港を阻止する、ということができるかという問題であります。この問題は、法律的に申しますると、この公海に関する条約の同じ条文に、刑事手続においても、拿捕または抑留することができないということになっております。したがいまして、この船舶を拿捕したり抑留したりする、つまり実力をもって出港を阻止するということは、これは条約上できないことになる。したがいまして、そういう国際法が確立しておりますから、それはできないということになる。そういたしますと、法律的のギリギリの線として、わが国の行ない得ることはどういうことであるかと申しますと、現在当該明興丸とアリゾナ号との関係におきましては、少なくとも明興丸につきましては、業務上過失致死、あるいは業務上過失艦船覆没という犯罪の容疑があるわけであります。 そこで明興丸について、一体だれが責任があるかという問題がもちろんあります。したがいまして、そういう刑事事件は、当然日本に裁判権があるわけであります。そこでその刑事事件の取り調べの対象として、アリゾナ号あるいはアリゾナ号の乗り組み員を対象とすることはもちろんできます。したがって、そういう意味におきまして、アリゾナ号をこの八月の三日、四日の両日にわたって海上保安庁が調べられたわけですが、その内容が正式の刑事訴訟法の捜査によっておるか、あるいは訴訟の端緒を得るための捜査であるか、それは私は承知いたしておりませんが、少なくともそういう関係において、日本の刑事裁判権、つまり捜査権の発動はできるわけです。ただそのアリゾナ号に対しましては、いま申しました公海に関する条約の趣旨がありますので、強制抑留はできない。そういうことになりますと、任意捜査しかできない、こういうことになる。任意捜査についてはやったか、おそらく捜査までいっていないかもしれませんが、あるいは捜査前の事情聴取をやっておるということは、ただいま海上保安庁から御説明申し上げたとおりであります。したがいまして、その点で、刑事裁判権上何もやっていないということではないのでありますが、今回の刑事裁判権そのものは、もしこれが公海の衝突であれば、その本国側にある、こういうことになると思うのです。でありまするが、たとえば先ほど鍛冶委員の仰せられましたように、衝突の現場において、いろいろの指示を事実上海上保安庁がするという問題であります。これは法律上できるのは、その対象が日本の主権に服するものでなければならぬと思いますが、公海におきましては、アリゾナ号は日本の主権に服することはないわけであります。でありまするが、国際条約の見地から、その事実行為としてそれに強く要請をするということは、これは当然なすべきことだと思います。それはなすのがあたりまえですが、法律のぎりぎりの線とすれば、そういうことは、自分は本国しか受けないのであって、そちらの勧告、あるいは要請は受けないといわれてもしかたがない。しかしそれは非常に非常識である。それは国際人としては非常識であるというそしりは受けるかもしれないけれども、ぎりぎりの法律論としてはそういうことになるのではないかというふうに私どもは考えております。そういう意味のことを頭に置きながら、私は新聞記者の質問に答えた次第でございますが、この事件が具体的に公海上であるか領海上であるかというようなことについては私は何も触れておらないというのがその状況でございます。
○鍛冶委員 私は、いままで裁判管轄権のことを言うておるのじゃないのですよ。国際法上に、人命救助に関する条約も結ばれておる、また人道上からいっても、そういう場合に、一体きさまけしからぬじゃないか、何事だといっても差しつかえないものだということを先ほどから言うておる。裁判管轄権は、あとでもう少しこまかく分けて聞きます。 そこで聞きたいのは、四日に戻ってきましたね。戻ってきたのだが、わずかの時間で帰っていったようですが、これはあなた方、戻した目的を全部達したから帰してやったのか、それともおれは帰らなければならぬということで、法律をたてにして帰っていったのかどちらですか。
○岡田説明員 二日間にわたりましていろいろ当庁のほうで調べておりますが、当面必要最小限のところだけはほぼ達成されたと思います。
○鍛冶委員 いや御苦労さまでした、これで十分調べましたからお帰りなさいと言ったのか。そうじゃないのだろう。それを聞いておる。
○岡田説明員 当面最小限必要というような程度でございまして、われわれのほうだけから見ますれば、もっといてもらってもっと調べたほうがよかったわけでございます。その点につきますと、先ほどから裁判管轄権の問題もあり、当面船長が、これ以上は長くおれないというふうな強い要請がございまして、一方先ほど申し上げましたように、当庁で最小限の当面の調査は済みましたので、向こうの強い要請を認めた、こういうことでございます。
○鍛冶委員 そこにどうもわれわれ遺憾だと思うことがあるのです。管轄権ではそうかも知らぬが、国際法上、また人道上からいっても、こういうものをほうっておいていけるものじゃないではないか。これくらいのことはやらなければならぬというぐらいは当然要求できると思うが、どうも国際法上の管轄権にばかりとらわれて、そうしてどうも人の言うことよりも、こっちのほうで頭を下げているように見えるのだが、この点ははなはだ遺憾だと思うのです。これは済んだことはやむを得ません。 そこで、管轄権の問題だが、先ほど来聞きましたが、裁判権、捜査権の管轄権については、一九五八年のジュネーブでやった公海に関する条約をたてにして言われるものだと思うがいかがです。これは津田さんからでも、どっちからでもいいです。
○津田説明員 ただいまのジュネーブにおける、多数国間の公海に関する条約が討議せられました。これが確立された国際法規を形式的にあらわしている一つの根拠だと思います。
○鍛冶委員 ところがこれを見ますと、三十二カ国批准しておるようですね。今日独立国はどれだけありますか。三十二カ国だけが批准しておる。しかも日本は批准しておらぬ。にもかかわらず、それに従わなければならぬという、あなた方のそういう頭の出てくる根拠が私にはわからぬ。それをひとつ承りたい。
○津田説明員 現在国連に加盟しておる国はどれだけあるか、正確には存じませんが、少なくとも百カ国はございます。それは御承知のとおりですが、しかしながら、およそ国際法というものはどういうものであるか。すべての国が加入しなければ国際法にならないかというと、これは従来そうではなくて、多数の国が加入している条約、あるいはそういう慣行が多年行なわれてきているとすれば、それは国際法として確立されたものということの解釈は、もう従来国際法の通説であります。したがいまして、何が国際法であるかということは成文がありません。あるいは全国家が加入した条約もあれば——それは一応国際法だと言えるでしょうけれども、成文はございませんので、そういう意味におきまして、どういうことが国際法かということは、最終的には、あげて裁判所が判断することだと思います。しかしながら、その前には、行政管轄権としては何が国際法であるかということを考えなければ、憲法九十八条二項を順守することはできない。少なくとも行政運営上憲法九十八条二項を順守することはできない。したがいまして、政府といたしましては、何が国際法であるかということは当然常に解釈をしていなければいけない。政府といたしましては、この公海に関する条約の内容が確立した国際法規であるというふうに現在解釈しているわけであります。
○鍛冶委員 私らは毎日国際法を調べるわけでもありませんから、あなた方調べておられるからそういう考えをお持ちであったかわからぬが、われわれはそういうことはありませんから、何も、どうも批准もしておらぬのに日本みずから不利益な解釈をしてそれに従わなければならぬ、なぜそういうことを言うかという疑問を持っておりますよ。のみならず、これはひとつ新聞の記事を読みましょう。これは八月三日の日本経済新聞にこう書いてある。「国際法(海洋国会議で採択された公海に関する条約)上からは海難審判権や捜査権は沿岸国である日本にはないことになっているが、この国際法はまだ加盟国も少なく、国際的な効力に現在はまだ問題はある。日本はこれに加盟していないばかりか「沿岸国に捜査権も裁判権もあるのだ」という見解をとっている。」はずである、こういうのです。これはどうですか。私は新聞を読むとどうもそのとおりのように思うが、これは間違いなのですか。またわれわれの素朴な考えは間違った考えでございますか、いかがですか。
○津田説明員 それは国際間のもちろん相互的な問題で、日本の船舶がアメリカの領海三海里外で、たとえばサンフランシスコを目前にしたところでアメリカ船を沈めたという場合はどうなるかということを考えると、当然これは日本側に刑事裁判管轄権がある。お互いにそれは相互的な問題でございます。 そこで国際法に関しましては、先ほど申し上げましたように何が国際法であるかということは、全国家が加入したような明確な条約があれば別でございますが、そうでないものについては、確立された国際法というものはたくさんある。そういたしますと、何が国際法規であるかということにつきましてはただいまお読みあげになりました見解は、それはそういう見解も見解としてあるといえばそれまでです。ですけれども、政府といたしましては少なくともそういう見解をとっていないということになるわけであります。これは必ずしもそういう見解をとったことが常に有利であるかということにはなりません。日本の船舶も世界各国に行っておるわけでありますから、日本の船舶の場合を考えたときに、日本の船長なり責任のある乗り組み員がその沿岸国の裁判権に服さなければならないということが、はたしてそれで有利であるかどうかという問題もある、これはお互いさまの問題だと私どもは思っております。
○鍛冶委員 こういう場合の国民感情というものは、こんなことをして、おれのところに管轄権がないといって、ずうずうしく出て行って、それでいいのかという考えを持っていますよ。その際に、なるべく日本に有利なように解釈できぬかと思って私は言っておるのです。おまえは間違いだとおっしゃるならばそれまでだが、そういうような考えをもとにして、もう少し表現のしかたもあると思うし、交渉のしかたもあるものだろうと考えられるので、その点を私は強く申し上げておくわけであります。 もう一つ、先ほどちょっとあなたは言われたが、捜査権はないと言っておりますが、この条約に従うとしても——私は従わぬでもいいと思っているが、従うとしても緊急の場合の証拠保全はどうですか、それまでいけないのですか。いま放したら証拠は消えていってしまうのです。待ってくれ、これを押えておかなければならぬ、いかぬということは言えそうに思うが、これはどうですか。
○津田説明員 これはたとえば衝突の現場に海上保安庁の、つまり司法警察職員がいたというような場合に、その証拠保全が必要であるというような場合にどうするかという問題であります。これも全く先ほど申し上げました原理と同じ原理でございまして、海上保安庁自体は、日本の領海外においてももちろん権限を行使できるわけでございます。したがいましてその場合に外国のその船の船長を招致したりあるいはその船を撮影するとかというようなことは、当然やり得るわけであります。しかしながら悪意を持ってそれを外国船が妨害をするというようなことがありますれば、その問題は主権相互の問題に帰着するわけであります。そこでそういうような行動を当該船長がとることが、国際的に非常にもの笑いになるということはもちろんありますけれども、ぎりぎりの法律論をすれば、それでは海上保安庁の職員が外国船に乗り込んでいって実力を行使して何かできるかというと、それはできないということになるというふうに考える次第であります。
○鍛冶委員 先ほど来言うように人命救助に関する国際条約、また人道上の問題、それから司法的に考えてみましても、いまやらなければ証拠が失われるという問題、それらの場合に、もしこれを拒否する者がおったら、このやろう、けしからぬやろうだ、さようなことにわれわれは服しておると思うか、こんなことをやるのは当然だといって私はやれると思うのですが、そこにあなた方とちょっと考え方が違う。そういうことを言う者もなかろうと思う。けれども言うたから、けしからぬ、もし私が法律違反だというならしかるべくやれ、おれはやるだけのことをやるぞと言って私ならやります。それはいかぬのですか、どうですか。
○津田説明員 これは非常にむずかしい問題だと私は思います。これは必ずしも海上における問題でありません。国内においてもそういう事態に警察官がぶつかることはあると思うのです。しかしそういう場合に法律で認められた権限、令状等なくしてやれるという要件がない場合にも、緊急だからやったということではたして許されるかどうかという問題がございます。それは結果が妥当であるということと権限があるということとは別問題だと思う。結果は、あるいはそういうことをやっても妥当であったかもしれませんが、しかしながら、権限の問題として、ぎりぎりに議論をするときにはそれはできない。ただし、できない上において事実行為としてやるかどうかということは、当該行政を行なう者のそのときの判断なりによることだと思います。あくまでもこれは法律によらなければならぬが、理外の理と申しますか、そういうものがあって、当該行政機関の判断においてやったということは、あとから批判を受けてもしかたがありませんが、あとから批判を受けるにおいてそれはまさに適切であったということになるか、あるいはまた全くそれは違法であったということになるかということについては、当該機関が責任を負うべきものだと思うのであります。
○鍛冶委員 議論はそこで分かれるでしょうが、人道に関する条約もあるのですから、その条約というものはそれこそ国際法上認められておる。それに従ってやれ、従ってやらぬならおれのほうでそれに合うようにやるということを言って、私はその人に責任があるとは心得ませんが、これはあなたは純粋なる法律家だから、ここらの点で私はこの問題についてもはなはだどうも疑問とするところがあるのですが、それは言ってもしようがありませんが、今後もあり得ることですから、よほど注意深く研究しておいていただきたいと思います。 そこで問題は、アメリカに裁判権があるのですが、その裁判権に対する要求その他証拠の提出等はこれはできるのですかどうですか。
○津田説明員 この証拠の提出等の問題は、これはアメリカの裁判所自体が日本に教示を求めるということ、これはあくまで裁判所あるいは捜査官、これは当然あり得ると思います。その場合はできるだけ協力すべきだと思います。積極的に裁判を開始すべきだ、あるいは捜査を開始すべきだという要望をするかどうかという問題は、これはもう外交上の問題でありますので、私どもとしてはそれはいついかなる時期においてなすべきか、またはなさざるべきかということについては、私どもはいま判断をすることはできないわけであります。
○鍛冶委員 向こうは裁判を起こしてその上でどうする——第一番に聞きたいのは、いつまでも起訴をしないのです。そうするとこちらからはなはだ遺憾だ、かようなことをほっておいていいものじゃない、なぜやらないんだということを言っていいと思うが、これはどうです。
○津田説明員 私は条理上、それは当然言っていいことだと思います。
○鍛冶委員 そうなると、こちらのほうでりっぱな証拠を持っておるにもかかわらず、その証拠を向こうが援用しないで、いかにも自国民に査利なことを言って、日本国民に不利なことを言っておるとすれば、これはどうもけしからぬ、こういう証拠があるんだがこの点は調べられたか、これくらいのことは言ってもよかろうと思うのですがどうですか。
○津田説明員 具体的の折衝自体の問題については私どもは所管外のことですから何も申し上げられませんが、それは理論的にはむしろこの調査によりまして明らかにアリゾナ号に責任ありとすれば、その辺までは当然やるべきことだと思います。
○鍛冶委員 私は法務省自身がそういうことをやれというのじゃありませんよ。そういうことがやり得るものだということになれば、外交上に手続を経てやられてしかるべしだと思うので、これは国民の非常な大関心事でございますから、その場合に国民の感情に沿うようにやれるだけのことをやってもらいたいと思うからこれだけのことを申し上げるんだが、その点はあなたに、直接アメリカへ行って証拠を出しなさいというのじゃありません、外交上の手続を経て遺憾なきを期していただきたい、かように申し上げて私の質問を終わります。
○濱田委員長 坂本泰良君。
○坂本委員 まず最初に、刑事局長に、これはお願いになると思いますが、先般大阪地検の田辺検事正についての投書と申しますか、こういうのが法務委員会の各法務委員に郵送されてきたわけなんです。これに対しまして、この処置に対して一昨日の当法務委員会の理事会におきまして、専門室のほうで調査をして、そうして本日の理事会に報告を願う、こういうことに決定をいたしまして、本日、もちろん昨日一日をおいた二日目でございますから、期日の点等もありましたが、ごく概略的な御報告を受けたわけであります。それによりますと、その調査については法務省のほうにも御協力を願うし、専門室のほうでも今後お調べを願う、こういうことになったのでありますが、その報告の中に、明治不動産事件、明治開発株式会社事件ですか、これをあわせて大阪地検で大問題になっておりまする明治不動産事件というのかもわかりませんですが、この明治不動産株式会社並びに明治開発株式会社に対する昭和四十年二月から同社の北海道、和歌山県、青森県など五地区における土地売買の詐欺横領事件ですね、これは新聞でも当時私たちも読みました記憶がございますが、それに関連して田辺検事正が関係しておられる、こういうことなものですから、その内容についての御調査は今後法務省のほうにもお願いすると思いますが、法務省のほうにこの明治不動産事件捜査についての御報告は来ておると思いますが、その点いかがですか。この事件についてはもちろん広範にわたる事件でありますから、まだ捜査中であるとも思いますが、その一部は起訴があったのじゃないかと思うのです。その一部の起訴の点については御承知であるかどうか、その点をちょっと承っておきたいと思います。
○津田説明員 昨日当委員会の高橋専門員からその御連絡を受けまして、ただいまお尋ねの内容の概略については承知いたしたわけでありますが、まだ法務省としてはこれの調査ができておりません。 なお、明治不動産関係の事件につきましては、あるいは報告があったかもしれぬと思うのですが、ちょっとただいま私は記憶がございませんので、内容等についても申し上げかねますが、いずれにいたしましても明治不動産関係については捜査の現況を調査いたしたいと思っております。
○坂本委員 そこでぜひそれをお願いいたしますと同時に、現在報告が来ておりますればその報告と、一部起訴になっておりますれば、その起訴状は明らかと思いますから、その点ひとつ資料として御提出を委員長にも刑事局長にもお願いしておきたいと思います。 そこで私は、前回法務大臣の御出席を願いまして、今回行なわれました参議院選挙に際しましての選挙違反の関係でございますが、これに対しては警察、検察庁等々の非常な御努力によりまして、不正はあくまでもこれを究明してその真相をただし、再び選挙違反が起こらないように非常な御努力を願っておることに対して敬意を表しているわけであります。特に新聞上問題になりました小林章派の事件と、岡村文四郎派の選挙違反事件については、新聞にも連日のように出てまいりまして、それを見ますると、専売公社のほうは、いわゆる買収については公金の流用がある。新聞ではその公金のやり方等についても、いわゆる巧妙な買収の方法等についてもいろいろ出ておるのであります。岡村派の事件についてもそのとおりでありますが、これは私はいわゆる公職選挙法の罰則に違反する選挙違反の事件と同時に、公金横領といいますか、公金流用の点については刑法上の関係がある。岡村派の違反については、これは農協関係でございますが、これはやはり刑法上の背任横領に関係するものである。ですから結局選挙違反の捜査は、刑法違反の捜査にも関連をしておるのであるし、その結果においては、従来の例を見ますと、選挙法違反についての起訴、裁判等が行なわれまして、刑法上の違法、責任の問題については起訴、裁判が——もちろん両方起訴されて裁判になった事件もありますけれども、選挙違反事件として公職選挙法の罰則ということに非常に重点を置かれますから、刑法上の責任、違反の問題については起訴をされないという点が非常に多いのじゃないか。したがって捜査の点についても、公職選挙法違反ということで捜査が進められる傾向がある。ぜひこれは双方にわたるところの捜査によって、その責任者は追及せらるべきであろうという考え方に基づいて、法務大臣の所見を前回お伺いしたわけであります。その点について前回刑事局長の御答弁も伺いましたが、本日恐縮ですが、あらためて御見解を承っておきたいと思います。
○津田説明員 およそ選挙違反におきまして、あるいは選挙資金、あるいは買収等が行なわれました際の資金等の出所につきましては、やはり当然これは明らかにしなければならぬことでありますので、これはいずれの選挙違反につきましても鋭意やっておるわけでありますが、何さま買収というような事実そのものについての証拠といいますか、追及すら非常に困難なような場合が多いわけであります。さらにそれを進んで、資金源の追及というまでになかなか手が及ばないのみならず、やってみてもなかなか証拠をつかみにくいというような事態のあることは従来御承知のとおりでありますが、今回の問題になりました小林派あるいは岡村派の違反につきましては、その点が世の非常な疑惑になっておる問題でありますので、選挙資金ないしは買収の疑いが持たれる金員の額、及びその出所につきましては、目下検察当局において鋭意捜査中でありますが、また現段階におきましては判明をいたしていない状況であります。なお、もしもさような資金が日本専売公社、あるいは全国共済農業協同組合連合会等から出ておるというようなことがありました場合には、さらにその支出行為に横領、背任等の刑法犯が伴っているのではないかということは当然予想されるわけでありますので、その点につきましても鋭意捜査をいたしておる次第でございます。
○坂本委員 それからもう一つお聞きしておきたいのは、公務員が選挙違反をやりました場合に、地位も月給等も少ない下部の公務員が違反をしますと、戸別訪問なんかの場合でも、その戸別訪問の選挙違反とそれから公務員法違反、この二つで起訴されて、両方の裁判を受けたという事例もあるわけです。今回の専売公社の点を見ますると、やはり相当地位の上の方が違反をして逮捕され、調べを受けておられるようですが、この場合も公務員法違反という点もあわせて、選挙法違反、公職選挙法については地位利用、買収等がありまするが、この点についてもやはり今回この捜査は進められておる、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
○津田説明員 御承知のとおり専売公社の職員は、直接国家公務員法の適用はございませんですが、ただいまのところは専売公社職員につきましては、地位利用のみで起訴いたしておるような現状でございます。なお、末端の職員等の処分につきましては、違反に追い込まれた事情等につきましても十分検討いたしまして、過酷なことがないようにつとめる必要もあるというふうに考えておる次第でございます。
○坂本委員 いまの私の質問がちょっと悪かった点もあります。やはり今回の選挙においても高級公務員の方の多数の立候補があるし、多数の高級公務員の方が実際その選挙の応援をやり、違反もあると思います。たとえば一例をあげますと、熊本県におきましては厚生事務次官の高田浩運氏が立候補されておる。これは地方区であります。そういたしますと、やはりこの方の同僚は、次官であり局長の方がたくさんあるのです。新聞等では、あるいは選挙中のうわさでは、労働省の何々局長、何々課長というのが大挙して応援にきた、こういうふうに新聞、あるいは選挙中のいろいろな世論と申しますか、話が出ておるわけなんです。これが非常な地位利用の問題にもなるし、そのことだけでやはり高級公務員の選挙が非常に有利になる、そういうような点もありますが、こういうように中央から局長あるいは課長、こういう高級公務員が地方に応援に行くのには、これは何かの出張の名義で行く、調査の名義で行く、そういうところで、選挙中において中央の各官庁の高級公務員が、やはり同僚とか、そういうような関係で応援に出た。そういうことになりますると、やはりその事実を捜査するところに私は高級公務員の地位利用が具体的にどう進められておるかという点もわかると思うのでありますが、なかなかそういう点については捜査の手が進められていないようでございます。幸いきのうは、自治大臣から高級公務員の立候補の制限についても考える、そういう意味の発言があって、参議院におけるところの小林氏の辞職勧告決議案に対する問題は継続審議になって国会を終わったわけなんですけれども、これは国会が終わりましても、こういう点についてはなおこの捜査を進めてやらぬことには、次の三年後に起こるところの参議院議員の選挙、あるいは来たるべき総選挙等においても、やはり同じようなことが繰り返される、こういうように考えられますが、そういう点にかんがみますると、もっと捜査を——そういう捜査の端緒はありますから、これを進めるべきじゃないか、こういうふうに考えますが、警察、検察庁の御見解を承っておきたいと思います。
○関根説明員 警察といたしましては、選挙違反の取り締まりのために、多くの全国の府県におきまして特別な態勢をとって取り締まり、検挙に当たってまいったのでございますが、大体一カ月を経過した前後に相次いで特別な取り締まり態勢は一応解除しておるようであります。しかしながら、いまいろいろお話のございました小林派、あるいは岡村派、その他重要な事件につきましては、現在なお捜査をそれぞれの所管——従来選挙違反を所管しておりますのは各県の捜査二課でございますが、その取り締まり主管の課が中心になりまして継続捜査をしておる段階でございます。したがいまして、今後におきましても国会の閉会等に関係なく、厳正公平な立場で事案の真相を糾明するという立場で捜査をしてまいる所存であります。
○津田説明員 もちろん現在参議院選挙の取り締まり捜査というものは進行中であります。まだ終わったわけではございません。しかしながら、いろいろ事件もたくさんその間に出ておる。そこで、ただいま高級公務員の地位利用等の選挙運動というようなものにつきましては、もちろんこれを厳重に取り締まるべきものと思っております。したがいまして、捜査の端緒を得たものにつきましては、当然捜査を行なうべきものだと思うのであります。しかしながら、公務員は公務員としての本来の活動があるわけでありますので、その活動自体について一々制肘するというわけにはもちろんまいりません。さような点におきまして、その公務員が選挙法違反の活動をしたという端緒が得られますれば、当然これは捜査を開始し、適正な措置をとるべきものだと思います。
○坂本委員 佐藤総理大臣、自民党総裁が沖繩に行かれるということについても、やはり近く立法院の選挙が行なわれるので、その選挙運動ではないか、こういうことも言われるので、われわれとしても時期の問題等と合わせてまことに遺憾な点があります。こういうことなら行かないほうが、選挙後でも行かれたほうが、沖繩の日本復帰ということを中心としての総理大臣の出張ということになれば非常に幸いだと思いますけれども、そういうことがいろいろ官房長官等によって——今度の国会では議運等でいろいろ問題になったようでありますけれども、いま刑事局長のおっしゃったように、労働省のある局長が熊本県に選挙中にいく。それが一人ならいいけれども、二人、三人いくのだ。だから私は冗談に、何か用をこじつけておるかわからぬけれども、それは一つのこじつけであって、行くこと自体が選挙違反になるし、公務員法違反になるのじゃないか、こういうふうにも考えておるわけでありますが、これはぜひひとつ、先ほどのように投書が出まして、非常に疑問でありますから調査を願って、そしてやはりそういう事実があるならば、これを糾明しなければならぬ、こういうふうに田辺検事正の問題でも考えるわけです。選挙なんかの際には各派がありまして、ことに投書なんか来てもこれはまた非常に信憑力の問題もあります。しかしながら、現在の新聞の記事は、やはり顕著な捜査の端緒になると思うのです。ほんとうの捜査を進められて徹底的に選挙違反の究明をやり、公務員法違反の究明をやり、さらには買収の究明をやる、こういう点について非常な努力を願っておりますけれども、なお一そうの努力をお願いしたいと思うわけであります。 そこで、時間がありませんから一、二だけお聞きしておきたいのは、やはり「販売費から流用か」というような見出しで出ております。これを見ますと、結局九十万円のメモと、七百万円のメモ、これは小林派の関係なんです。七百万円は、いずれも参議院議員選挙にからむ買収名目であると見て帳簿からの解明を急いでおられて——これは捜査のほうで急いでおられると思うわけですが、さらにこれは、結局買収資金というのは、予算上販売費というのがあるから、この販売費からこういうふうに流用されておるということになれば、これは多少販売費の目的を達していましても、しかし、その大部分は販売費という名目で買収のほうに用いられている、こういうふうに考えられますから、この販売費の支出については、ごく一部は販売の目的を達しているけれども、その他は選挙違反の関係になり、さらにはこれは公金流用になる、こういうふうに考えますが、この点についての御見解を、これは警察庁並びに検察庁、自治省選挙課長のほうにも意見を承っておきたいと思います。
○関根説明員 小林派の違反事件に関する新聞記事にいま申されましたようなことが出ておりましたことは、私も読みまして承知しておるところでございますが、現在警察庁が捜査しております東京地方関係の事件の公社職員の地位利用のほかに、買収の容疑で取り調べをしておるということは事実でございますけれども、そこの調査の中に七百万円のメモがあるかどうか、あるいは九十万円の金が出ておったかどうかということにつきましては、現在捜査中のことになりますので、その点につきましてどうであるかということについては、答弁を差し控えさしていただきたいと思うのでございます。かりに予算の一部が明らかに選挙の費用に使われておるということになりますれば、御承知の選挙法違反、あるいは他の刑法犯の容疑も出てまいるのでございます。これも仮定の問題でございまして、警察庁といたしましては、現在いろいろな容疑で調べておりますということで御了承願いたいと思うわけであります。
○坂本委員 私お聞きしましたのは七百万円メモとか九十万円メモの例をあげたわけで、それはそういうことから発覚したから、結局販売費という予算が販売の目的のためにというので多数を集めてやるが、その一部は販売の目的を達しているだろうけれども、大部分を小林氏推薦の選挙運動に使えば選挙違反になるではないか、こういうことを聞いたわけであります。
○津田説明員 もちろん、その金を交付したりするという義務あるいは受ける権利というものがありましても、その金の中に違った、たとえば買収支出というふうなものを含んでおれば、それは買収になるということは当然であります。したがいまして、そういう点はもちろん捜査の対象になって取り調べる必要があると思いますが、しかしながら、具体的にこの事件についてそれがどうなっているかというようなことについては、いま捜査中でありますということを申し上げざるを得ないわけでございます。
○中村説明員 ただいま先生から御指摘のございました資金の性格につきましては、法務省、警察庁からお話のあったと同様に、事実の認定に属する問題であると思います。
○坂本委員 そこで、時間がもうございません。特に前法務大臣の葬儀との関係もありますから、私のこれから質問し、事件を承りたいと思ったのは、こういうふうに販売費、いわゆる販売奨励金の名目でやっておるから、これは多少販売奨励の目的であっても、その金をやったのは買収になる、こういうふうに考えられますから、この公金の流用については、ひとつ徹底的に捜査を進め、糾明してもらいたいというのが最後の希望であるわけであります。 そこで、もう一つお伺いしておきたいのは、岡村派の選挙違反の関係ですが、先般総理大臣に御出席を願いましたときの質問に入れておきましたが、全共連黒川泰一常務理事、これは新聞によりますと、総括主宰者となると思うのですが、この人が入院中である。さらに出納責任者農政研究会職員の細江芳久それから国村議員の秘書、全共連秘書室の能勢敬藏、調査役ですか、いずれも逃走中、こういうことになっておりますが、これはその後捜査はどういうふうに進められておりますか。いわゆる捜査の内容じゃないです。さらに逮捕して進められておるか。 それから一番中心の総括主宰者といわれておる黒川常務理事の入院ですが、この点についてはどういう捜査を進められておるか、その点を承っておきたい。
○関根説明員 岡村文四郎派の事件中、重要人物が逃走しているということにつきまして、出納責任者細江芳久というのが、現在逮捕状が出て所在を追及中でございますが、七月二十四日に指名手配をして捜査中でございます。それから秘書の全共連職員の能勢敬藏。この人につきましても七月十五日に指名手配をして捜査中でございます。 それからもう一人総括主宰者と見られるということでございますが、これは総括主宰者であるかどうかということについては、立証の問題でむずかしい問題でございますが、病気入院中の者につきましては、通常調べ、いわゆる任意調べをしているという状況を聞いておりますが、それ以上詳しいことは承知いたしておりません。
○坂本委員 公安事件なんかに関しまして、病院なんかに入院していると、警察のほうは非常に厳格でありまして、直ちに病院から逮捕するというような非情な措置をとっておられるわけです。相当社会的地位のある人等については非常に寛大にやるということで、その事件の内容そのものは別といたしまして、捜査としては厳格にやっていただきたいと思います。 最後に、岡村派の選挙違反についての逃走というものは、あるいは入院というものは、いまあげられた者だけですか。そのほかにもあるか。それから小林派のほうにもそういう関係者があるかどうか。人数だけでけっこうですから、承っておきたい。
○関根説明員 逃走中で指名手配をしております者は、ただいま申し上げました岡村派は二人あるだけでございます。小林派の違反事件につきましては、現在逃走中というのは報告を受けておりません。ただ病気入院のために、警察で取り調べを必要とする人物につきまして取り調べができないという関係者は若干あるように報告を受けております。
○坂本委員 なおこれは検察当局において捜査が進められておりますから、私質問いたしましたような趣旨に基づいて、ぜひ厳格な捜査を進められんことを要望いたしまして、なお次会においては、この捜査の範囲に属しない——相当捜査が進められれば起訴ということになっておりますから、そういう点についての選挙違反の糾明はさらに進めたいと思いますから、留保いたしまして、本日はこれで打ち切ります。
○濱田委員長 本日はこれにて散会いたします。 午後零時五十七分散会