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48回国会参議院1965/05/25

法務委員会 第23号

発言数
192
登壇者
4
会派数
2
開催日
1965/05/25

会議録

石井桂自由民主党

○委員長(石井桂君) これより法務委員会を開会いたします。  刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 刑法六条との関連で併合罪の今度の改正は問題になるということをちょっと言われておるのですが、刑法六条というのはどういうふうなものですか、ちょっとそこら辺からたいへん失礼ですが説明を願いたいと思います。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 「犯罪後ノ法律ニ因リ刑ノ変更アリタルトキハ其軽キモノヲ適用ス」というこれは刑法の不遡及の原則でありまして、憲法の三十九条の趣旨からも出てまいるわけであります。その趣旨は刑法全体あるいは刑事罰全体を通じて考えられる問題としての重要な問題であるというふうに考えておりますが、本法案につきましてはまた附則の問題としてこの問題が一応取り上げられることになるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 附則との関連で刑法六条が問題になってくるというのは、具体的にはどういうふうな場合のことを言っているわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 附則の第二項におきまして「この法律による改正後の刑法第四十五条の規定は、数罪中のある罪につき罰金以下の刑に処し、又は刑を免除する裁判がこの法律の施行前に確定した場合における当該数罪についても、適用する。ただし、当該数罪のすべてがこの法律の施行前に犯されたものであり、かつ、改正後の同条の規定を適用することが改正前の同条の規定を適用するよりも犯人に不利益となるときは、当該数罪については、改正前の同条の規定を適用する。」と、こういう点であります。原則としてはここに規定してあるようなことでいいわけでありますが、稀有な場合に犯人に不利益となるということがありますので、その場合には改正前の四十五条の規定を適用する、こういうことであります。そのことは、やはり刑法第六条の趣旨を考えましてさような附則を設けることにいたした次第であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 「法制審議会刑事法部会第二十七回会議議事録」の十六ページによると、「刑法六条との関係はどうなるか。」という問に対して、「犯人に不利益になる稀有な場合もあると思うが、刑法六条の趣旨にしたがって扱うべきものと考える。」と、これはそのとおりだと思うのですが、「犯人に不利益になる稀有な場合」というのは、具体的にはどういう場合なんですか、例でひとつ……。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) まず、普通は不利益になることはないわけでございます。例で申し上げますと、窃盗というのがありまして、間に確定中間判決がある、こういたしますと、前者については併合罪になりませんと法定刑が十年、あとの窃盗についても十年、二十年以下で処断されるわけでございます。ところが、併合罪になりますと、長期の半分を加えたもの以下で処断されますから、十五年以下ということになりまして、一般的には併合罪関係を遮断しないほうが被告人の利益になるわけでございます。ところが、稀有な例と申しますのは、たとえば、前者につきましては法定刑の長期が十五年である、それから一方あとの罪が二年である、こういうことに相なりますると、併合罪関係を遮断いたしますと、合計しまして十七年以下ということになります。併合罪関係を遮断しないことになりますと、すなわち併合罪でやりますと、長期に半数を加えたということになり、二十二年六月ということになるわけでございます。そういう稀有な場合がありますと、被告人に実質的に不利益になる場合があるのでございます。  なお、もう一つ例を申し上げてみますと、これが一番的確な例かと思いますが、たとえば、確定裁判の前にAとBがある、それから確定裁判をかりにCといたしまして、確定裁判後にDがある、いずれも法定刑が懲役である、そうして、上限が、Aについてはたとえば脅迫の場合のように二年以下である、それからBが三年以下である、それからDが十年以下である、こういうふうに仮定いたしますと、新法でまいりますと、A、B、Dとこの三つが併合罪になりますので、処断刑は、最後の一番重い十年以下のDを基準としましてその長期に半数を加えて処断する、すなわち十五年以下の懲役ということになるわけでございます。ところが、旧法によりますと、A、Bをまず併合罪といたしまして、その処断刑はBの長期に半数を加えたもの、四年六月以下ということになるわけでございます。そうして別途Dについて十年以下の刑を科するということになりますので、これを合計いたしますと十四年六月以下ということになります。実際には図式などをつくってみますとわりあいわかりやすいかと思いますが、そのように、一番典型的な場合は、確定裁判の前に軽い罪が二罪ある、それから確定裁判後に重い罪が一罪ある、こういう場合に、新法を適用しますと、旧法の場合よりやや法定刑の面と申しますか処断刑の面で不利益を生ずることがある。かような稀有の場合について、刑法六条の趣旨をくんで、すべて被告人に不利益にならないように処置しようというのがただいま局長から御説明申し上げました附則の趣旨でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 いま二つの例をあげられたわけですが、前のほうの例で、抽象的でなくて、たとえば前のほうが法定刑が十五年以下で、あとのほうは二年以下——あとのほうは二年でも三年でもどちらでもいいと思いますが、そういう具体的なのは、どういうふうな場合の犯罪に当てはまるわけですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 先ほど御説明いたしますに事件によって選択を許す、こういう考え方で九十五条はできておると思うのであります。これは騒擾なんかにつきましてもそうでありますし、また、水利妨害、礼拝所不敬、説教妨害というようなものにつきましても、非破廉恥的な——政治的ということはこういう場合に言えないかもしれませんが、非破廉恥的な意味、ほんとうの信教というような面からこういうことをしたというようなことも考えられるので、そういう意味で禁錮を選択刑にしておると、こういうようなことが考えられます。  それから公務員の職権濫用等について禁錮刑の選択をしておりますが、これは公務員の職権濫用の動機が自己の利己的な利益というものではなくて、やはり国家的あるいは公務的な利益ということのみを考えてやったという場合に禁錮を選択される、そういうような考え方からおよそ刑法ができておるというふうに現在解釈されておりますし、私どももそういう意味で解釈して今日に至っておるわけであります。  しかしながら、それじゃここに選択刑に掲げていないものについてもさような政治的あるいは非破廉恥的な動機のものがないわけではない。それにもかかわらず、そういうものについて禁錮刑を選択していないのはどういう意味かということになりますと、これはなかなかそこを理論的に説明することは私は現在としては困難であると思うのであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 禁錮刑を選択してなくて懲役刑だけになっているものの理論的根拠がどうかということではなくて、禁錮刑を選択しているものは、一応いま説明があったけれども、必ずしも明瞭ではないと思いますが、禁錮刑だけをとっているものがあるとすれば、それは一体どういうふうな根拠というか理論的なものによってそういう形がとられておるのかと、こういうわけですが、禁錮刑だけをとっているものは何と何ですか、刑法では。それはないんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 先ほど申し上げました内乱ニ関スル罪、それから国交ニ関スル罪の一部、それから過失罪、こういうようなものであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 内乱ニ関スル罪でも、首魁の場合は死刑なんでしょう。これは死刑だから別かもしれませんが、内乱ニ関スル罪はずっと禁錮であって、騒擾はどうなっているんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 騒擾は、先ほど申し上げましたように選択になっております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 内乱のほうがずっと禁錮であって、騒擾は選択になっているという具体的な理由はどういうところにあるんですかな、ちょっと納得できかねるんですけれども。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 内乱は七十七条にありますように、「政府ヲ顛覆シ又ハ邦土ヲ僣窃シ其他朝憲ヲ紊乱スルコトヲ目的トシテ暴動ヲ」するということであります。したがいまして、これは政治的目的があることは間違いないわけであります。ところが、騒擾の場合は、「多衆聚合シテ暴行又ハ脅迫ヲ為シタ」という意味で一地方の静ひつを害したということが騒擾の要件でありますが、その目的自体は、政治的なものであるかもしれないし、あるいは場合によっては暴力団等の利己的な場合もあり得るわけであります。したがって、政治的目的である場合は禁錮を選択し、利己的な目的である場合には懲役を選択するという標準を考えて立法されておるというふうに解しておるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 特別法ではどういうふうになっているんですか、その点は。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 特別法のたとえば爆発物取締罰則というようなものについては、やはり爆発物等の使用目的等から見て懲役と禁錮を選択にしておると思うのであります。それから公職選挙法の場合におきましても、利己的なものについては懲役を選択するというような考え方から、やはり選択刑になっております。まあその他大体そういう標準をもって行なわれておるというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そういう標準をもって行なわれているというんですが、それじゃ具体的に特別法の中で禁錮が規定されておるものは何と何とあるわけですか。それからまた、禁錮と懲役と両方あるものは何と何であるのですか。一覧表みたいのものはないんですか。そこまでは研究していないわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 刑法の改正等に用いましたときに調査したものは一応あります。ありますが、若干今より年数の前のものであります。しかし、選択的なものは相当数にのぼっておるように記憶しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 いまじゃなくていいから、あとでその資料いただきたいと思います。  そこで、過失犯で禁錮を規定してあるもの、これはどんなものがあるんですか、刑法並びに特別法で。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 刑法で過失犯について禁錮を規定しておりますのは、たとえば現在問題になっております業務上過失傷害、重過失傷害致死、この関係を別といたしますと、たとえば業務上失火、同じく重失火、それから業務上過失往来危険、これだけのものが過失犯として禁錮刑で処罰することに規定がなっております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 過失犯で懲役刑を規定しておるものは、刑法ではないんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 現行刑法中にはございません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、特別法で過失犯について懲役を規定しているものは、何と何とあるんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 御承知のように、行政罰則の中には、明文なくして過失犯を処罰できるかどうかという問題が一つあるわけで、それを考慮に入れますと、非常に問題が広くなってしまいますので、明文をもって過失に対して懲役刑を定めておりますのは、児童福祉法と、それから預金等に係る不当契約の取締に関する法律、性病予防法、この三つのように私どもは現在調査の結果把握しておるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 それはどういう理由からですか。性病予防法二十七条二項、児童福祉法六十条三項、預金等に係る不当契約の取締に関する法律五条三項——預金等に係る不当契約の取締に関する法律に過失というのはあるんですか、ちょっと疑問に思うのですが、いずれにしても、この三つの法律で過失犯に懲役刑を加えておる理論的な根拠はどこにあるのか、一つ一つ説明をしてくれませんか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 児童福祉法におきましては、児童を使用する者が、ある年齢以下の者をある種の業務に従事させてはならないことになっているのですが、その「年齢を知らないことを理由として、」「処罰を免かれることができない。」ということであります。「但し、過失のないときは、この限りでない。」ということで、無過失のときにはこの限りでないということは、有過失のときはやはり年齢を知らないことを理由としても処罰を免れないということになっております。その処罰法規として「一年以下の懲役又は一万円以下の罰金」というものが科せられておりますが、それによって過失について一年以下の懲役に処せられるということであります。  それから性病予防法につきましては、売淫のあっせん、勧誘、あるいはその場所の提供をした者が、その売淫する者が伝染のおそれがある性病にかかっているということを過失によって知らなかったとしても処罰をする、これは「三年以下の懲役又は二万円以下の罰金」に処せられる、こういうことであります。  それから預金等に係る不当契約の取締に関する法律につきましては、金融機関の役職員が導入預金に関しましてその相手方が一定の制限のある目的を有するということを知らなかったという理由では処罰を免れないということでありまして、過失のない証明があったときは処罰を免れる。したがって、過失のある場合にはこの法律によって「三年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金」に処せられる、こういう規定であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 いまの法案について、提案理由の国会に対する説明の中で、なぜ過失犯に懲役刑を加えているか、こういうことの具体的な説明があったと、こう思うんですがね。それはいまあなたの言われたとおりかもしれませんが、資料に基づいて提案理由の説明なりあるいは逐条説明の中でなぜ過失犯であっても、そこに懲役刑を入れなければならないかという説明があったと、こう思うんで、それをひとつ明らかに資料として出してほしい。それが私は本件の審議に非常に大きな問題というか関連が出てくると、こう思うんですが、なぜこの三つの法律の中で過失犯に懲役刑を科したか、その具体的な理由が提案説明でどのようになされているか、これをはっきりしたいと思う。これは資料があるわけでしょう。ここにはいまありませんか。なくとも、まとめればまとめられるのではないでしょうか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) この法律につきましては、調査をいたしましたが、提案理由の説明にも、国会審議におきましても、過失犯の問題については何ら出ておりません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 提案説明の中で過失犯に対して懲役刑を科すということに触れていなくても、なぜ懲役刑を加えたかということの説明があるでしょう。それもないんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) これは「所要の罰則を定めた」という一語の説明であったというふうに記憶いたしますが、いずれにいたしましても、過失犯が直接目的ではなくて、実体を知って、つまり故意犯が主たる目的として定められた罰則規定であります。したがいまして、過失犯の点については触れていなかったものというふうに思うのであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 過失犯の点に触れていなくても、過失の場合に懲役刑を科すということが条文の中からはっきり出ているわけでしょう。書き方としては反面解釈ような書き方をしていると思いますが、その理論的な根拠は一体どこにあるんですか。それは提案説明の中にも国会の審議の中でも問題になっていないと。国会の審議の中でも問題になっていないのは、これは議員が悪いんだからしようがありませんけれども、提案説明の中で、過失も処罰する、しかも懲役刑を科すということについて、何ら説明がないんですか、ある程度あるのですか。提案説明書はそこにありますか。全部三つの法案がいまここになければあとでもいいんですが、あとで見せてもらいたい。ちょっと理解できないですね、これほど重要な問題について。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 提案理由説明は手元にございませんが、この法律は、御承知のとおり、主として罰則が問題になるわけではなくて、児童福祉あるいは預金等の不当契約あるいは性病予防という行政目的から来ている法案でありまして、もちろん法務委員会で御審議になったわけではないと思うのであります。したがいまして、罰則の問題点につきましては、御審議がないのが従来の——御審議があるわけですけれども、取り立てて御審議がないというのが従来の例かと思います。そういう意味におきまして論議はなかったものと思うのでありますが、かような罰則を必要とした理由ということは、やはり導入預金に関するものにつきましても、「過失のないことの証明があったときは、この限りでない。」と問題を証明問題に帰着させている。ですから、過失がなかったとしても、裁判所を納得させる証明がなければ、やはり故意犯としてと申しますか、故意犯と同じに処罰をされるというふうな規定の立て方になっておりますし、性病予防法と児童福祉法の関係につきましては、年齢を知らない、あるいは伝染のおそれのある性病にかかっていることを知らないという犯人の弁解というのは通常行なわれるわけでありまして、それはむしろやはり犯人の側においてその過失がなかったということの立証責任があるというふうにするためにかような規定を設けたというふうに考えられるわけであります。したがいまして、そういう意味に考えますと、やはり児童福祉法なり性病予防法の目的を達するためには必要やむを得ないという観点から、過失犯についても懲役刑を採択するという結論になったものというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 これは刑事訴訟法の中の大きな問題なんじゃないかとぼくは思うんですがね。まあそれが別の委員会へかかったものだから、あまり論議されなかったのかもわかりませんが、平たく言うと、立証責任の転換ですか、一種の推定規定を置いたということになるのですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 規定の立て方、表現は、三者それぞれ違っておりまするけれども、もとの趣旨は、やはり立証責任を転換したということになると思います。過失のないことの立証ということは非常に困難かもしれませんが、過失のないことの立証があれば少なくとも刑責からは免れるという最後の一つの道はあるということにしておるというふうに言えると思うのであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、厳密にいうと、推定を置いたということにとっていいんですか。そこまでは言えないわけですか。推定規定という意味にもよるかもわかりませんがね。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 結果的には推定規定が置かれたと同じように働くと思うのでありますが、立て方はあくまでもそうではない。まあ推定規定という意味も反証を許すということだけならそうでありまするけれども、反証を許すという推定規定よりはもう少し私は弱いのではないかというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 これは私も非常に大きな問題だと思うので、もう少し研究さしてもらいたいのですが、性病予防法とか預金等に係る不当契約の取締に関する法律というのは、これはもうあまり問題にならないですけれども、児童福祉法は行政法規だといっても現実に裁判上いろいろ問題となってきている場合が多いわけですから、こういうような形の法律の立て方というのは、いまの実際問題として非常に大きな問題ではないかと、こういうふうに思うんです。まあしかしそれは別として、そうすると、特別法の中で過失犯という明確な規定がなくても過失犯を処罰できるんだというような見方もありますが、これはまあちょっと問題がおかしいと思いますが、そうすると、はっきり規定しておるのは三つだけだと、こういうふうに承ってよろしいわけですか、いまのところは。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 大体私どもで十分調査をいたしました結果は、この三つであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 道路交通法の中で懲役刑を科しているものはあるんですが、何と何が懲役刑を科しているわけですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 道路交通法で懲役を科しておりますのは百十五条から百十九条までにそれぞれ列挙されました違反行為でございます。  百十五条は信号機のみだり操作とか、そういう交通の危険を生ぜさせた罪でございます。それから百十六条は——失礼しました百十六条は禁錮でございまして、百十七条はいわゆる世上言われますひき逃げに対する場合、それから百十七条の二が酔っぱらい運転と交通事故の場合の不申告、それから不正手段による免許証の交付を受けたものであります。それから百十八条は、たとえば無免許運転でありますとかスピード違反、こういうものがございます。それから百十九条の関係では、信号無視とか、追い越し禁止違反、あるいは整備不良車両の運転、あるいは安全運転義務違反、こういうものが懲役で処罰されることになっています。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 これらのものは、過失による事件なんですか、故意による事件なんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) ただいまあげました各条は、故意犯を処罰するのが原則でございます。このうち過失でも犯罪を構成するということにいたしておりますものは、各条の二項なら二項という形で、たとえば百十八条を例にあげますと、その中でスピード違反につきましては同条の第二項で特別に処罰する旨の規定を置いております。これは、法文にございますように、「三月以下の禁錮又は五万円以下の罰金」というような立て方になっておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 百十六条の「車両等の運転者が業務上必要な注意を怠り、又は重大な過失により他人の建造物を損壊したときは、六月以下の禁錮又は五万円以下の罰金に処する。」と、これは明らかに過失だけですが、これはあれですか、普通の建造物損壊であって、刑法との関係はどうなんですか、百十六条は。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) これはいわゆる過失建造物損壊罪というやつでございまして、刑法のほうは、御承知のように、二百六十条に建造物損壊罪がございまいますが、これは故意犯でございますので、これの過失犯を道路交通法で規定したと、こういう関係にならうかと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 どうして片っ方が刑法に行って、片っ方が道交法に行っているんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) この刑法の建造物損壊罪というのは、手段には何ら制限がないわけであります。でありまするから、たとえば車両運転をしておる者が故意に人の建物をこわそうと思って自動車を飛び込ましたというようなことは、もちろん刑法二百六十条のほうにいくわけでございます。しかしながら、車両運転者が業務上必要な注意を怠ってあやまって他人の建造物をこわしたという場合だけを道路交通法で取り締まると、こういう考え方でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 だから、どうしてそれが道交法になるんですか。刑法にかかっちやいけないわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) これは道路交通法は車両による場合のみを指しているわけですから、しかも車両のみによる業務上の注意を怠って損壊した、あるいは重過失によって損壊したという場合を処罰しようということであります。したがいまして、これがなければ過失による建造物の損壊は犯罪にならない、こういうことになるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 ちょっとはっきりしないのですが、そうすると、道交法に規定したのは、それを設けることによってはじめて犯罪になるんだということなんですか。!それはわかりましたが、そのことは、直ちに刑法が規定しちゃいけないということと別個じゃないんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) これは車両による場合のみを取り締まる考え方であります。刑法全体の面におきまして過失による建造物損壊罪を取り上げるかどうかということは、これはまあ別の問題だと思いますが、刑法全般の問題として過失による建造物損壊罪というものを刑事罰で臨む必要はないというのが現在の立場であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 車両というのは何なんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 車両につきましては、道路交通法の第二条に定義がございまして、その八号によりますと、自動車、原動機付自転車、それから軽車両、トロリーバス、これを言うことになっております。なお、軽車両と申しますのは、平たく申しますと、自転車、荷車、こういったようなものでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 今度のこの法案の提案理由の中には、自動車によるいろいろ酔っぱらい運転だとか無免許だとか無謀操縦だとか、そういうようなことで致死傷をする場合が多いから処罰を設けるんだとなっているわけですから、そうならば、そこでしぼりがかけられるのだから、むずかしい問題になってきますが、道交法の中に規定するということではいけないわけですか。そこら辺の理論は、これはゆっくりやりますが、それは一言で言うと、道交法の中に規定しちゃいけないという理屈があるんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) いま申し上げました過失の建造物損壊というのは、刑法で全然取り上げていないわけであります。したがって、車両による建造物損壊を道路交通法で取り上げていくということは、刑法の補充として適当であると思うのであります。ところが、人身事故の場合、業務上過失致死傷あるいは重過失致死傷の場合は、すでに刑法で取り上げているわけであります。そのうちの一部の車両によるものだけを道路交通法の中に取り出すということは、その面では刑法から道路交通法に移すということになるわけです。ところが、業務上過失あるいは重過失というような概念は、明治四十年以来刑法の根本的な問題として取り上げられ、刑法の犯罪として今日までに及んでおる。ところが、車両による同種の犯罪のみを道路交通法に取り上げるということは、刑法の体系に対する一つの大きな変革になる。したがって、車両のみについて道路交通法でしかも業務上過失あるいは重過失致死傷を取り上げるということは相当でないと、こういう結論であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 ちょっとまだ納得できませんが、これはむずかしいところですからゆっくりいろいろなものをまたよく研究してやりますが、問題をもとに戻しますが、そうすると、不利益変更禁止との関係——これはちょっとよけいなことになるかもわかりませんが、不利益変更禁止というのは、これはあれですか、英米法にはないのでしょう。そこはどうなっていますか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 英米的な考え方でありますと検事控訴がありませんから、不利益変更という考え方はないわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 ここに「刑事法部会第二十八回会議議事録」の三ページのところで、その答として、「原案のような改正をしたが故に、その点に対する解釈が変るとは考えない。」と、これはどういう意味ですか。前に説明があって、わかったのもあるんですが、何だか禁錮と懲役との関係がここを読んでみるとよくわからないんですよ。そのあとになってくると、答のほうで「判例の趣旨ははっきりしない。」なんて答えているんでしょう。だれが答えたか、これは法務省当局が答えたんじゃないですか。ここら辺のところはどういうあれか、どうもよくわからないですね。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) これは不利益変更禁止という問題につきまして判例の考え方が動揺しておるのではないかという疑いがあるということを言っているわけであります。これは、先ほども出ましたように、有期禁錮の長期が有期懲役の長期の二倍をこえるときは禁錮をもって重しとすると、こういうことになるわけです。そうしますと、懲役と禁錮との選択刑があります場合に、かりに懲役三年に処せられた人について禁錮五年を言い渡しても二倍をこえないじゃないか、したがってそれは被告人の利益じゃないかという論が出るわけです。禁錮六年と懲役三年とは同じだ、したがって懲役三年の人の上訴審において禁錮五年を言い渡してもそれは利益に変更したんじゃないか、こういう理論が刑法上はでき得るということになるわけです。しかし、これははなはだ問題でありまして、裁判所もそこまでは踏み切らない。要するに、実質を見て重いか軽いかをきめるというのが最高裁の判例で、その実質を見てということが一体どういうことであるかという問題になる。懲役三年を禁錮三年に変えることは、これはまあ当然軽くなっていると思う。禁錮三年を懲役三年に変えることはどうであるかというと、これはどうも重くなるというふうに言えるだろうと思う。それじゃ禁錮三年を懲役二年十一カ月に変えればどうかというようなことになると、はなはだそこは最高裁判所の考え方がどういうふうな考え方に立っているかということは非常に疑問であるということがここで法制審議会で問題になって、そのことを申したわけであります。したがいまして、刑法十条の規定は、刑の軽重を比較するという問題としては当然適用があるけれども、不利益変更禁止の問題については実質的に見たい、実際どちらの判決が被告人にとって重いか軽いかということを見たいという趣旨がまあ判例からくみ取れるということでありますが、具体的に、実質的にどれが重いかということを何できめるかということについては、必ずしもはっきりしていない。私どもが考えれば、それはやはり刑法できめるよりほかあるまいというふうに考えておるのでありますけれども、いまのようなまあ実際拘禁される期間的に見れば、先ほど申しましたように非常に不合理になるわけであります。拘禁される期間が長いにもかかわらず刑としては軽いというまあ不合理があるので、そういうことにも徹しきれなかったという意味で、判例は具体的な事案事案で考えるというふうな結論を出したのもあるいはやむを得ないものかというふうに考えておるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 判例というのは、いつといつの判例があるんですか。趣旨が反するというような判例もあるということですか。最高裁の小法廷ですか、大法廷ですか。最高裁まで行っているんですか、もとの大審院の判例ですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 判決の年月日をいま記憶しておりませんが、最高裁判所になりましてからの判決でございます。これはここの例に出ております禁錮三年を懲役二年に変えるのが不利益変更禁止の原則に反しないという趣旨の判例であったと記憶しております。その理由は、刑の軽重を比較いたします場合には、刑法十条の関係でいくんだけれども、上訴によって被告人に不利益に刑を変更するかどうかというときには、言い渡される刑の刑期とかその内容を実質的に検討してきめるべきだ、こういうことを理由として不利益変更にならないというふうな判示をした最高裁の判決でございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 それはあとで調べていただきたいんですが、大法廷でしょうね。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) さだかでございません。現在はっきりした記憶がございませんから、この際お答えするのは控えさせていただきたいと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 大法廷でそういう点の判例が出るというのはちょっと考えられないんですが、これはあとで調べていただきたいと思うんですが、「禁錮三年を懲役二年に変えるのは、不利益変更になると思うが、」という質問だけれども、ならないという判例だと、こういうんですか。これは何ですか、事件は。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) いま私のばく然たる記憶では、業務上過失の関係じゃなかったかと思いますけれども、はっきりいたしません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 業務上過失で懲役があるんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 業務上過失と道交法との併合罪の関係の事件じゃなかったかというばく然たる記憶を持っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 それはあとでその判例とその判例の要旨を重要な部分を抜粋して出してもらいたいと、こう思うんですが、そうすると、業務上過失に懲役刑を加えるということになると、当然不利益変更の禁止の関係での問題が次から次へと起きてきて争いが非常に大きくなってくる可能性があるんじゃないですか。これを実質的に解釈するといっても、どれが実質なのかよくわかりませんが、その点は何らかの形ではっきりできないですか。たとえば、刑法の改正というよりも、むしろ刑事訴訟法の改正かもしれませんがね。ちょっと私もはっきりしませんが、それは判例にまかせるということで、立法の中でこういうふうな場合をどうするかということをはっきりきめておくというようなことはできないですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 改正刑法準備草案のように長期が同じものは同じというふうな行き方をすればそれはよろしいですけれども、それは刑法十条の現在のたてまえを大きく変更することでありますので、これは刑法全面改正の問題として当然検討すべき問題であると思うのであります。しかしながら、禁錮と懲役の選択刑をきめておる罪は、先ほど申し上げましたようにかなりの数にのぼっておりまして、それについては常時そういうものも起こり得るし、かりに禁錮のみであっても道路交通法と併合罪であるというような場合についてはそういうことも起こり得るわけであります。したがって、そういう意味におきましては、選択刑を設けたからといって混乱を起こすということはないものと考えております。従来の判例の態度、つまり実質的にこれを見ていくという態度で臨んでいけるものというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 実質的といっても、実質的ということの解釈は各人によってみんな違うんだから、それは争いに絶えずなってくるんじゃないですか。争いになってきたときに、具体的な事案に即して判例は裁判所がきめるという以外にないといえば、これはそうかもしれませんがね。判例の積み重ねの中で一つのものができ上がっていくということになるのかもしれませんが。  禁錮というものを廃止して懲役一本なら懲役一本にするというような意見も非常に強くなっているのではないのですか。現在相当進んでいるんじゃないですか。この刑の一本化ということは、どの程度進んでいるんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 刑の一本化の問題は、これは刑そのものの根本問題でありますので、現在法制審議会において論議はされておりますけれども、まだまとまった考え方と申しますか、結論が出ているわけではありません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 どの程度の方向へ進んでいるんですか。大体刑の一本化の方向へ進んでおるというのではないですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 必ずしもそうではありません。やはり一本化に対する相当な反対意見もありますし、もちろん一本化賛成の人もいますけれども、かなり有力な反対意見もありますので、いまのところどういう結論になるかということは、少なくとも法制審議会の段階におきましてはまだはっきりいたしません。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 その禁錮を廃して懲役に一本化をしなければならないというよう議論の出てくる理由は、どういう理由であったわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 御承知のように禁錮は請願によって作業ができるわけであります。で、禁錮囚の大部分は請願による作業を行なっているわけでありまして、作業の軽易というようなことはありまするけれども、しかしながら、その面では禁錮と懲役というものとそれほどの違いがない。しかも、同じく刑務所の中に拘禁されているわけであります。今日の監獄法によりますと、もちろんそれを分界を設けて別の処遇をしなければならぬわけでありますが、そういうような点から考えますと、懲役と禁錮は一本化でいいではないか。ことに、禁錮囚というのは非常に少ないわけです。したがって、数万の懲役囚の中にわずかの禁錮囚がいるということにつきましては、行刑面における取り扱いについてもいろいろの問題点なり不便もあるというような点がある。そういう意味において、禁錮と懲役の区別を廃して一本化するのがよろしいという意見がある。また、逆に、禁錮と懲役につきましては、先ほど来申し上げましような区別があるわけであるから、これはやはり存置すべきものであるという考え方の方もあります。そういう意味におきまして一致していないというのが現状でございます。

石井桂自由民主党

○委員長(石井桂君) 速記とめて。   〔速記中止〕

石井桂自由民主党

○委員長(石井桂君) それじゃ速記をつけて。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 傷害の罪の場合に、普通の傷害と傷害致死とが、条文も違って、もちろん法定刑も違うわけですが、これは二つに分けたのはどういうわけなんですか。傷害致死の中に傷害のものも法定刑を広くして含めてもよかったんではないですか。二百四条と二百五条の関係のところですが。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) これはまあ通常言われておりますが、傷害と傷害致死を分けた理由は、結果の発生の重大なものについてはおもにそれだけのみを重くしようという考え方であると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 これは、行為としては暴行の認識だけがあれば両方ともいいわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) そのとおりであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、二百四条の第一項と第二項にしてもいいんじゃないですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) まあそれは条文の整理のしかたはそれでもいいと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、二百十一条の場合は、これは両方とも含めているわけですね。死傷で、傷害と致死とこれを一緒にしているのはどういうわけなんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 二百十一条については、この過失犯につきましては、過失の種類、態様、それから結果ということが過失犯を考える場合の要素であります。ところが、傷害致死の場合のような結果というものに対する要素の大きさというものが二百十一条の場合は違っておるというふうに判断している結果であるというふうに思うわけであります。もちろん結果の軽重ということを相当程度重視しないわけにはいかぬのでありますけれども、しかしながら、傷害致死のように顕著に結果加重犯としての刑を重くするというまでには至っていないという考え方、要するに、業務上過失によりまして人を死傷をいたした結果というものは、その結果の発生というものはかなり偶然である場合が多いわけで、そういう意味におきまして、これを本質的に分けることが相当でないという判断から一つの条文になっておるものというふうに考えておるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、結果の発生がかなり偶然だというのは、致死の場合と傷害の場合とで行為者の責任ということは関係のないいろいろな事情というものが相当大きく発生してくるんだと、こういう意味になるんですか。ちょっといま言った意味がはっきりしないのですが、偶然だというのはどういう意味なんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 過失犯につきましてはもちろんその過失の大小ということが非常に重要になります。ところが、結果の発生というものは過失の大小と必ずしも一致しないわけであります。まあ例を申せば、人体に自動車の触れた場所によって結果が非常に違うということがあり得るわけです。したがいまして、その触れる場所がどうかという問題についてまでの状況においては、過失の程度は同じであるということもあり得るわけです。ただ結果が違うということになるわけであります。そういう点から考えますると、致死の結果があったものについてだけは必ず重いということにはならないという考え方であると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 しかし、普通の傷害致死の場合でも、認識としては暴行の認識だけで、それだけの行為で結果が致死になってしまう場合が相当あるんじゃないですか。そういう場合は重く処罰されるわけですね。それとの間で均衡は失しないのですか。たてまえが違うんだから違うといえば、違うかわかりませんがね。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 暴行自体についてはもちろん責任がありますが、暴行の場合は故意犯でありまして、その結果の大小についての責任というものは当然伴ってくる、過失犯の問題は、要するに過失の大小ということが中心になるわけであります。したがって、過失の大小をもって責任の評価の主要基準とするということをとってくるわけでありますから、そういう意味において違ってくるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、この提案理由の中にも、悪質な交通事故がふえたと盛んに書いてありますね。悪質というのはどういう意味なんですか。過失の大きいものが悪質だとこういう考え方ですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 過失が大きいという意味は、要するにわずかな注意をすれば結果を発生しないで済んだであろうということ、これは過失が大きいわけであります。そういう場合が責任が重いという考え方であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、悪質というのはどういうことなんですか。悪質な犯罪、悪質な犯罪と言うが、何が悪質なんですか、交通事故の場合に。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 交通事故の場合につきまして、もちろん故意なものが悪質であることは当然でありますが、未必の故意、それから認識ある過失と、こういう順序になると思うのでありますが、未必の故意を故意として判断する場合は、これは故意犯でありますから、業務上過失の問題ではありません。つまり、先ほど申し上げましたわずかの注意を払えば結果の発生を防止できたというのにあえて行なったというものについては、その責任が大きいことは、これは事理上当然なことであると思うのであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 いまのその過失と故意の問題、これは本法案の中で一番大きな問題だと思うのですが、これはいずれにしてもあとで特に認識ある過失の問題で、それと未必の故意との関連、これは認識ある過失のものは未必の故意と紙一重なんだ、そういうものを重く処罰しなければならないということを立法の理由にあげておりますから、その問題については、非常にむずかしいといいますか、非常に大きな問題ですから、これはゆっくりやりますが、そこで問題になってくるのは、累犯加重の規定がありますね、これはなぜ累犯加重というようなものが法律的に制度としてあるわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 累犯者に対しまして加重をするという考え方は、前の刑罰によっては矯正の効果がなかったということ、すなわち常習犯に対しましては——常習犯と申しますか、常習的に犯罪を行なうという者については重く処罰をして矯正の効果をあげようという目的からできておるものというふうに考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 これは「懲役ニ処セラレタルモノ」ですね。禁錮に処せられたるものはどうして累犯加重の問題にはならないんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 先ほど申し上げましたように、禁錮につきましては、政治犯あるいは非破廉恥罪ということであります。かようなものにつきましては、つまり矯正の目的ということが本来達せられないという考え方で、定役に服せしめないということも、定役に服することによって矯正の目的を達しようという対象にならないという考え方であります。したがいまして、禁錮刑について累犯加重をいたすということについては、前の矯正効果という意味がないわけでありますので、したがいまして禁錮刑について累犯加重をしてみても意味がないという考え方から、禁錮については累犯加重をしていないというわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 いま言われる非破廉恥罪というのは、どういうように定義をしたらいいわけですか。ものによっては非破廉恥罪にも含まれ破廉恥罪にも含まれるというようなものがあるんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) まあたとえば公務執行妨害につきましては、自己の利己的な目的を達するために公務執行妨害をするという場合もあります。しかしながら、そうではなくて、政治的な信条からやったとか、あるいは自分を犠牲にして何かの目的のためにやるというような場合もあり得るわけであります。そういう意味で禁錮刑の選択を認めておるわけでありますから、そういう意味におきまして、そういう人が再びそういう場合に立ち至ったときに、これを前の禁錮の効果がなかったということによって累犯そのものの再び犯した罪について、同種の非について累犯加里をするというのは相当ではないというな考え方であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 私の言うのは、破廉恥罪というものの定義は一体どういうところにあるのか、それから非破廉恥罪の定義はどういうふうなところにあるのかと、こういうふうなことを聞いているわけです。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 破廉恥罪、非破廉恥罪というのは、そのこと自体が説明であると思うのです。つまり、利己的な一的でやったものか、やったものでないかという点をそういう説明のしかたにしておるというふうに私は考えております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、自然犯はイコール破廉恥罪と言えるんですか、とも言えないですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 必ずしもそうでないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、自然犯の中で破廉恥罪になるものとならないものとはどういうふうに分けられるのですか。これは概念の範囲が違うといえば違うかもわかりませんがね。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) それは犯罪そのものの内容、たとえば内乱のように、犯罪そのものの構成要件に政治的な政治犯あるいは非破廉恥罪としての内容が含まれているものもありますし、公務執行妨害のように、その動機、目的いかんによってはそういう場合とそうでない場合とあるというようなことも出てくるのであります。したがいまして、そういう目的によって判断する場合と、構成要件自体によって判断する場合ということが出てくるわけであります。構成要件自体がそうであるとすれば、これは初めから禁錮刑をもって当てているということになってくると思うのであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 私の聞きたいところは、自然犯というものと法定犯と分けたとすれば、過失犯というのは一体どっちに入るのかということなんですよ。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 過失犯の中にも自然犯と法定犯があり、先ほど申し上げました導入預金の関係、これは明らかにもう法定犯だと思うのであります。しかしながら、刑法に規定されているものにつきましては、これは自然犯というふうに理解しております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、刑法に規定されているから自然犯で、そうでないものは法定犯だと、こう言うんですか。それはちょっと理論的ではないんじゃないですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 自然犯というものの意味自体が、そのときどきによって変わりますから、一般論として申し上げるほかはないと思うのであります。しかしながら、刑法をしさいに個別に検討すれば、自然犯的ではないというものもあるかもしれませんし、また、特別法の中にも自然犯というものはこれはあります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 それは時代によって変遷するということもありますから、一がいに言えないし、そういうふうなものの分け方自身が非常にラフなことはこれはもう事実ですよね。どっちにどれが入るかといったところで、そのときによって違うわけですから、一がいには言えないんですが、そうすると、過失犯というのは一体破廉恥罪と見るのか見ないのか、その点はどうなんですか。見るものもあるし見られないものもあると、こう言うんですか。とすれば、見られるものはどういうふうなもので、それから破廉恥罪にならないものは一体どういうものなのか、そこはどういうふうになるんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 本法案の例で申しますると、無謀運転に起因するもの、たとえば人通りの多いところを極度の高速度で運転するというようなものにつきましては、もうすでに人命あるいは人体というものを無視しているような態度に出ておるという例が見られるわけであります。そういうものにつきましては、これは過失犯でありますけれども、もはやそれは破廉恥な行為、とにかく人としては許しておけないというような行為だ。そういう意味におきまして、それは破廉恥罪としての範疇に属するものとして懲役を選択するということが相当である。これに反しまして、過失犯、業務上過失あるいは重過失におきましても、さようなことでなくて起こったようなもの、これは通常のスピードを持ち、通常の運転方法でやっておっても、ごく一瞬の不注意によりまして死傷させることもあり得るわけであります。そういうものにつきましては、破廉恥的な行為ではないというふうに判断するのが相当であります。そういうものにつきましては、自由刑によるとしましても、禁錮刑を採用するのが相当である、こういう観点から少なくとも改正・案につきましては考えておるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、この累犯加重のところに返るんですが、一たん刑に服したけれどもその刑に服した効果があがらなかった、矯正の目的を達しなかったということで、あれですか、累犯加重という制度があるんですか。ちょっとはっきりしなかったのですが、過失犯の場合にも累犯加重の規定というものを適用して理論的にはおかしくないのですか。筋から言ってはどうなんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 先ほど来申し上げましたように、いまの改正案によりまして懲役刑を選択すべきような対象の犯罪については、少なくともそれは矯正可能であるということであります。そういう意味におきまして、その者が再び同種の犯罪を犯した場合には、同種の犯罪あるいは異種の破廉恥罪等を犯した場合には、累犯加重をしても、これはもちろん前に矯正することが可能であったにもかかわらず矯正されなかったという意味において、重く処罰するということは、少しも累犯加重の意味に反しないと思うのであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 いまあなたの言われたように、矯正の効果があがらなかったとかあがったとかいうふうなことを考慮に入れて累犯加重の規定があるのだとすれば、それは破廉恥的な交通事故を犯して懲役になかった、同じようなことをまたやったということなら、累犯加重の問題が当然そこに起きてくるのは、これは私はあたりまえだと思うんですがね。ちょっとあなたは同種の犯罪というようなことを言われて、あとで異種の犯罪を付け加えられましたが、違った種類の犯罪が行なわれた、前が過失で今度は過失でない、あるいは、前は全然別なものであって今度は過失によるものだということになってくると、それを再犯とするということの意味がそこで切れてくるのではないかというふうな感じを持つんですがね。いまのあなたの論理からいうと、そういうふうな感じを持つのですが、そこはどうですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) それは再犯の意味は少しも切れないわけであります。つまり言うと、前のは破廉恥罪でもって、今度はまた同じ有期懲役ににすべきところであります。今度もまた交通違反でもって先ほど申しましたような要件に当てはまるようなことをすれば、当然累犯加重の対象にしてよろしいし、また、今度は窃盗であったというふうな場合にも、それは当然累犯加重してもよろしいということであります。これは、従来ともに、窃盗を犯した者が殺人をやった者が窃盗をやったという場合には、当然累犯をやっているわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 それはわかるんですが、それは窃盗とか殺人とかいうものの二つのものならわかりますが、過失犯の場合でも累犯加重の規定が適用になる。それは、前のものが破廉恥的なものである。破廉恥的なものであるから矯正可能というふうなことの問題が起こってくると、こういうんですか。非確廉恥的なものでは矯正可能の問題は起きてこないというんですか。そうでもないのですか、そこは。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) それは、元来、禁錮にいたしましても、処罰をいたします以上、しかも、禁錮で拘禁をする以上、何らかの心理的な矯正という意味はそれはあるかもしれません。しかしながら、心理内容までに立ち入って刑務所において矯正の効果をあげようということは考えていないということであります。少なくとも法律上は考えられていないわけであります。でありまするが、業務上過失事件につきまして、先ほど申しましたような無謀運転をやった、また同じような無謀運転をやったということについては、当然それは前の矯正効果がなかったということに帰着するわけであります。しかしながら、そうでなくて、先ほどの例であげました、たまたま安全運転をしておったが、一瞬の気のゆるみで事故が起こったというようなものにつきましては、その者が再びまた一瞬の気のゆるみから事故が起こったという場合に、前の矯正効果が影響するということは、少なくともそれは考えられない。そういう意味において、これについては累犯加重をしないということであるのが、少なくとも現在懲役に処された者について累犯加重をするということから見れば、当然のことであるということになると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、禁錮というのは、何の目的のために刑務所に入れるのですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) これは禁錮刑の本質に触れる問題であると思います。しかしながら、少なくともそのこと自体の社会的非難は拘禁をすることであるということを示すということでありまして、そのことによって、先ほど申し上げましたように、心理的に矯正される効果はあるかもしれないが、直接その犯人の心理内容に立ち入って外的に矯正的な手段を施すことはしない、こういう刑である、こういうふうに私は考えます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 これは矯正局長の所管かもわかりませんが、あなたのお話を聞いていると、何か禁錮は応報刑の考え方でいっているというような考え方になるんですね。教育刑の考え方からいくと禁錮というものは別のジャンルのように聞こえるんですが、教育刑と禁錮との関係はどういうふうになっておるんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 御承知のように、これはいろいろ議論があるわけでありまして、教育刑でいけば、究極は刑の一本化ということにならざるを得ないということであり、刑法改正の段階におきましても、その議論を立てる方があります。その一本化の議論は、主として教育刑からきておることは御承知のとおりであります。でありまするが、いまの立場は、禁錮についてはっきり応報刑をとっておるということを私が言うことはいかがかと思いますけれども、しかし、禁錮そのものの法律的な本質並びに禁錮の執行面における取り扱いを考えれば、少なくともやはりその者に対してさような社会的非難に当たるということを明らかにするということである。で、内容的に申せば、それは拘禁されているうちのいろいろな改善効果というものはあるかもしれませんが、少なくとも外的にその改善に立ち入ることはしないということでありますから、そのこと自体はやはり教育ではないと言えるのではないかと思うのであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 これはむずかしい議論になると思いますし、私もちょっとよくわからないのですが、禁錮自身もやはり一つの矯正の目的が——条文では「拘置ス」ということばを使っておりますね。拘置してそこにいろいろな心理的強制を加える中で、今度は別の矯正効果をあげるということになると、それがあがらなかったということでまた別の犯罪を犯すということになれば、当然累犯加重の問題も起きてきていいんじゃないですか。そこのところはどうなんですか。前に禁錮であっても、累犯加重の問題が起きてもいいんじゃないですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) よくいわれることでありますが、確信犯について、あるいは政治犯については、そういう意味から考えますると、その政治的な信条を捨てない限りは、少なくともその者は再犯することはあり得るわけであります。しかしながら、再犯することによって今度はその再犯として累犯加重をしていくということになれば、結局それはその者については排外的な淘汰をするということと同じになるわけであります。そういうことは刑法の立場からは考えるべきではないことであろうと私は思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 まあその点はその程度にしておきますが、どうも禁錮というものの本質というか、そういうようなものがよくわからないので、これはこの次に矯正局長に来てもらって、特に交通事故の違反者で禁錮になった者を特殊な刑務所の中でやっているわけですね、例の習志野の場合とか、いろいろあるわけですが、そういうようなことについてこれは矯正局長に聞いていきたい、こういうふうに考えるわけです。  道交法の問題についていろいろ改正が数度にわたって行なわれたわけですが、法制審議会というものは、あれですか、法務省所管に属する事項についてのものだけであって、道交法関係はこれは関係がないというか、法制審議会にはかからないんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 法制審議会は法務大臣の諮問にこたえるわけで、法務省所管の法律に関して諮問にこたえる、あるいは答申をするということになるわけであります。ところが、国家行政組織法の関係から申しますると、道路交通法関係は警察庁、総理府の所管である。したがって、法務大臣が諮問する権限はないわけであります。そういう意味で法制審議会とは関係がないということになっておるわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 しかし、道交法の改正については、法務省としては相談は受けないんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) これは警察庁が全面的に相談を受けております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 どこが相談を受けるんですか、警察庁ですか、検察庁ですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 警察庁であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 いや、警察庁は所管庁なんでしょう。ですから、法務省はその改正のときには相談を受けないんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 警察庁が所管であり、警察庁から、改正に際しましては、罰則及び構成要件の内容について十分協議を受けます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 この前もちょっと聞いたんですが、道交法は具体的にどういうふうに変わってきたんですか。いつどういうふうに変わって刑が重くなったということ、これは何かありますか、資料が。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 先般の御要求で、お手元に「道路交通法等主要罰則一覧」というのが差し上げてあると思います。罰則の改正は二回でございます。と申しますのは、道路交通取締法時代のがもともとありまして、現行道路交通法が制定されましたときにこれが改まって、それから昨年昭和三十九年の法律第九十一号によります一部改正によって罰則の引き上げが行なわれております。これがおもなものでございます。内容は、ごらんいただきますように、おおむね罰則の引き上げを中心とした改正でございまして、たとえばひき逃げ等を見ますと、取締法時代のが「三月以下」が、道路交通法で「一年以下」、昨年の改正で「三年以下」、あるいは、俗に言います無免許運転、これが「三月以下」から「六月以下」、それから信号無視は「三千円以下の罰金又は科料」から「三月以下の懲役又は三万円以下の罰金」と引き上げになっています。こういう状況であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 ちょっとよくわからないんですが、「同上」というのは、たとえば無資格運転はどういうふうに変わったわけですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 無資格運転は、道路交通取締法の時代は「三月以下の懲役又は五千円以下の罰金若しくは科料」、道路交通法ができましたときに「六月以下の懲役又は五万円以下の罰金」になり、昨年の改正におきましてもこれはそのまま維持された、こういう趣旨であります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、ひき逃げや何か、ことにひき逃げは刑が重くなっているんですが、このときどうして一緒に刑法の一部改正ということをやらないんですか、ばらばらにやるんですか。これは法律が違うといえば違うのですが、同じ交通事故の取り締まりということになれば、同じものじゃないですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) ひき逃げの非常に悪質のもの——ひき逃げは元来悪質でありますけれども、非常に悪質のものも出てまいりましたので、昨年の十月一日施行でこの道路交通法の改正が行なわれたわけであります。その改正の立案の過程におきまして、この業務上過失傷害致死、重過失傷害致死についての刑を引き上げるという問題が起こってきて、しかも車両についてはそれを道路交通法において行なうこともできるではないかという議論もあったわけであります。ところが、これは刑法本来の問題であるということで、刑法の改正をもって臨むべきだということで、このときにすでに刑法の改正ということについての議が出ておったわけであります。ただし、準備時期の関係からこれと同時に提案することができませんでしたので、本通常国会に提案をするということになったわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 改正草案では、過失致死の刑は上げているんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 準備草案によりますると、「過失によって人を死亡させた者は、一年以下の禁錮又は二十万円以下の罰金」ということになっております。現在は「五万円以下ノ罰金」ということであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 同じ致死で、まあ過失ですが、これはどうしてあれですか、今度の法案の中で取り扱わないんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) お手元にお配りしてございます「刑法第二百十一条関係統計資料」によりますと、業務上過失致死がずっとふえてきておるということはもうすでに御説明申し上げたとおりでありますが、一般の過失致死傷事件は昭和二十四年が三千五十八人、これを一〇〇といたしますると、現在は、昭和三十八年は千三百八十四というふうに、四五、つまり半分以下に減っておるわけであります。そういう意味におきまして、過失致死傷事件についての法定刑の改正を現在やらなければならぬという緊急性はないという判断をしたわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 それも一つの理由でしょうけれども、事実上は業務上過失致死にならないものを、業務上というのを非常に広く解釈して、業務上過失致死の中に入れちゃっているんじゃないですか。それなもんだからそっちのほうがふえて、過失致死がそれほどふえていないのじゃないですか。本来ならば過失致死でいくべきものを業務上過失致死というような形になって拡大解釈が相当強く行なわれているんじゃないですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 過失致死傷事件が半分以下に減っておるというわけでありますが、この中には交通事件関係は全然ないわけであります。したがって、幅が変わるということはありません。ただ、交通事件以外の業務上過失を業務上と見られないか見られるかという問題で業務にしたということがあり得るかどうかにつきましては、必ずしも明確でありませんけれども、しかしながら、現在の業務上過失致死傷の大部分は交通事件であります。さようなことはないものと思っております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 業務上過失致死の「業務上」という解釈ですね、これが刑法の上でも、それから民法の関係、民法というのは業務執行ですが、七百十五条の関係、それが非常に解釈が広がってきているんじゃないですか。それが特に民事のほうで広がってきていると思いますがね。刑法でも広がってきているんじゃないかと思いますが、最初のころより業務上という解釈がだんだん広がってきている経過ということは、これは明らかにできるのではないでしょうか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) その点は、大正年間の判例と今日の判例とは、範囲においては、少なくとも刑事の関係においては広がっているということは私はないと思っております。民事の関係においては必ずしもはっきり申せませんが、これは被害者救済の見地から、業務といいますか、事業者の責任というものを認めているということはあると思います。刑事の方面においては大正以来これは変わっておりません。

石井桂自由民主党

○委員長(石井桂君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕

石井桂自由民主党

○委員長(石井桂君) 速記をつけてください。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 今度の法定刑の引き上げの問題でそれが刑事訴訟法との関係で具体的にどこに影響が出てくるんですか。たとえば、必要弁護になるとか、いろいろありますね。どういうふうになっておりますか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 御指摘のように必要弁護の事件になりますことが第一点、それから被告人の出頭がなければ法廷が開けないという点が第二点、この二点の違いでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 必要弁護になってくると、それは業務上過失傷害と致死と分けてないものですから、業務上過失傷害で公判請求すれば、全部必要的弁護になっちゃうわけですね。これはたいへんな手数になるんじゃないですか、現実問題として。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 仰せのように、業務上過失傷害でございましても必要弁護事件になるわけでございますが、どの程度たいへんなことになるか、一応調べてみたわけでございますが、現在、東京、横浜、大阪、京都、神戸、名古屋、この非常に事件の多い庁につきまして弁護人がついております状況を見ますと、九一・五%が弁護人がついておるわけでございます。したがって、必要的弁護になりますと、残りの八・五%というものが国選弁護人なり何なりをつけなきゃいけないということでございまして、この程度の数量——数量というような言い方は適当でないかもしれませんが、各地の弁護士会の実情等に徴しましても、たいした問題ではないように思うわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、略式命令で業務上過失傷害の正式裁判を申し立てたときにも、当然必要的弁護になるわけですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) そのとおりでございます。ただいまあげました数字の中には、ごくわずかでございますが、正式裁判の申し立てにかかるものも入っておるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、業務上過失傷害、過失致死は、これは裁判所側はどうなんですか、簡裁でできるんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 言い渡します刑によりまして地方裁判所か簡易裁判所かと、こういうことになるわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、起訴するときにはどっちへ起訴してもいいわけですか、そういうことになるんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 実際問題といたしましては、罰金を選択いたします場合にはおおむね略式手続でいたしておるのが現状でございますから、現実の問題としては公判請求いたしますのは、ほとんどが地方裁判所のほうへ起訴いたしております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 ほとんど地裁でやっておるようですが、簡裁へやってもいいんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 検察官が罰金刑を求刑するのが相当と認める事件で、裁判官もおそらくそう思うであろうというような事件につきましては、簡易裁判所に起訴しても差しつかえないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、必要弁護になってくると、被告人が出廷をしなければ公判廷が開かれないと、こういうことになるわけですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) そのとおりでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、現実には、交通事故の場合ですから、移送事件なんかも多いし、所在不明の事件なんか相当多いのじゃないですか。もっとも所在不明の場合には検察官のところであれするのでしょうけれども、あっちこっち引っ越したり、遠くで事件が起きたりする場合も多いので、出廷することがなかなかできないというか、しない場合も起きてくるのじゃないですかな。そこはどういうふうに考えているんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 業務上過失致死傷の事件につきましては、現実の問題としてほとんど被告人が出頭した上で公判を現在も開いております。したがいまして、現状とは改正法の施行後ももちろん裁判所の負担その他あるいは被告人の負担等は実質的に変わらないものというふうに思いますばかりでなく、刑の上限がやはり懲役五年というところまで上がりますれば、被告人の出頭を求めて慎重な手続で審判を行なうということが相当だろうと思うわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 審理のときには出てきても、言い渡しのときに出てこないと、今度は判決を言い渡せなくなっちゃうでしょう。そういうところで相当不合理というか、あれが出てくるのではないですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) ただいま私が御説明申し上げましたのは、言い渡し期日をも含めて申し上げたわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 必要的弁護の規定は、いまは何年以上のあれになっていましたっけ。何条でしたっけ。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 刑事訴訟法の二百八十九条に、長期三年をこえる懲役もしくは禁錮にあたる罪の事件については必要的弁護であると、こういうことになっております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 現在でもこれは簡易公判手続はできないわけですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) ちょっと仰せになりました意味がよく理解できないように思いますが、簡易公判手続と必要的弁護に……

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 必要的弁護とは関係なしに、簡易公判手続は現在の刑のときでもできないんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) 簡易公判手続は、法定刑の長短にかかわらずできるわけでございます、一般的には。したがいまして、この五年と三年で差ができるということはないと思うのであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 二百九十一条の二のただし書きはどういう意味ですか、これは。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) いま御指摘のありましたように、いわゆる法定合議事件でございますが、これにつきましては簡易公判手続ができないことになっております。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 わかりました。そうすると、あれだな、公文書偽造なんかの場合、短期一年以上だからできないと、こういうことになるわけですね。  そこで、公訴の時効の点はどういうふうになるわけですか。変化があるわけですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) これは、刑訴の二百五十条にございますように、長期五年未満というところで変わってまいりますので、今度改正になりますと、二百五十条の四号で時効期間が五年ということに相なります。従前は長期五年未満の禁錮ということで公訴時効が三年であったわけでございます。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、いまの段階では、必要的弁護のところと、被告人の公判出廷と、公訴の時効と、その程度ですか。ほかは刑訴法で刑の引き上げによって違いが出てくるということはないんですか。

伊藤栄樹法務省刑事局刑事課長

○説明員(伊藤栄樹君) ないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 時間があと五分ぐらいありますから、ちょっとお聞きしたいのは、過失ですね、過失をどういうふうに観念上分けて考えるんですか。どういう立場に立っているんですか。過失だからいろんな過失があると。どういうふうな分け方をしたら——こういう分け方、こういう分け方がある、こういう観点から見ればこういう分け方がある、そこはどういうふうに分けたら一番正しいことになるんでしょうね。これは変な質問ですけれども、ちょっとわかりにくい質問ですけれども、重過失と軽過失という分け方も一つあるでしょうね、ちょっと学問的な分け方かどうかは別として。どういうふうに過失を分類したらいいことになるんでしょうか。これはなぜ聞くかというと、今度の法案の提案理由の中にありますわね、未必の故意と認識ある過失の関連が一番大きく問題になってくるわけでしょう、今度の法案では。ですから、その一つのあれとして、過失というのは一体どういうものなんで、どういう種類というか、何といいますかね、そういうようなものがあるか、そういうことですね。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) これは、いまお尋ねの認識ある過失と通常の過失、それから重過失と軽過失ということ、大体それを過失と言っているわけですが、重過失、軽過失ということの範囲の問題ということになると、これは非常にどこに線を引くかという問題はあります。まあ重過失につきましては、すでに条文化されておるわけですが、それに一応の考え方はあるということになります。認識ある過失につきましては、これは条文にはもちろんありませんけれども、これは学説の一致したところであります。大体、刑法上考えられる過失についてはそういう分類があると思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 それは重過失と普通の過失でいいんですか、重過失と軽過失という意味ですか。どっちでもいいようなものですけれども、それはどういうようになっているわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 重過失としからざる重過失でない過失ということになると思います。それを軽過失と呼ぶかどうかということであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、業務上過失と業務上でない過失という分け力は、これは一体どういう分け方なんですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) それはその人の身分による違いということでありまして、本来過失そのものの分け方ではないわけであります。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 そうすると、重過失と重過失でない過失という一つの分け方、それから普通の過失と認識ある過失という分け方、これがあって、その他に身分上のものとして業務上の過失とそうでない過失という分け方がある。これはもうジャンルが違う論理だと、こう思うんですが、そのほかに、過失の種類というか、そういうものは何かあるんですか。そのほかにありませんか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) そのほかには、過失の種類というものは、とにかく一つのカテゴリーとしていく場合には考えられないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 それでは、故意はどういうように分けるわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) それは未必の故意と通常の故意といいますか、ということです。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 通常の故意と未必の故意と、その分け方だけですか。そういう一つの分け方しかないわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 結果に対する予見認識ということが故意であります。それに対するその予見認識の中のまた一つの態様として未必の故意があると思うのであります。それ以外の考え方はないと思います。

稲葉誠一日本社会党

○稲葉誠一君 たとえば確定犯意だとか不確定犯意だとか、あるいは、概括だとか概括でないという分け方もあるわけでしょう。そういうような場合、人によっていろいろな分け方があるようですけれども、あなたのほうでは普通の故意と未必の故意とこの分け方以外には考えないんだ、こういうたてまえでいっているわけですか。これはもう学問上のつまらない——つまらないと言っちや語弊があると思うのだけれども、ゼミナールでもないですから変な議論でしょうけれども人はいろいろなことを言っているでしょう、わかったようなわからないような。あれにどれだけの意味があるか別ですけれども、故意については普通の故意と未必の故意と、もうこれはこれだけの分け方と、こういうわけですか。

津田實法務省刑事局長

○政府委員(津田實君) 学説には概括的だとかいろいろ考え方はありますけれども、少なくとも現在の刑法の条文、ことに過失犯との関連において議論する問題としては、未必の故意と通常の故意というものを考えております。

石井桂自由民主党

○委員長(石井桂君) ほかに御発言もなければ、本案に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。  次回の委員会は五月二十七日に開会いたします。  本日はこれをもって散会いたします。    午後四時一分散会

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