法務委員会 第22号
- 発言数
- 141 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1965/05/19
会議録
○委員長(石井桂君) これより法務委員会を開会いたします。 まず、請願の審査を行ないます。 請願第二七号戦争犯罪裁判関係者に対する補償に関する請願外百十四件を一括議題といたします。 便宜、速記を中止して御協議を願います。速記を中止願います。 〔速記中止〕
○委員長(石井桂君) 速記を始めてください。 ただいま速記を中止して御協議をいただきましたとおり、更生保護会に対する委託費等増額に関する請願第一二六号外一件、改正刑法準備草案第三百六十七条反対に関する請願第二一九号外七十九件、仙台法務局丸森出張所存置に関する請願第三九三号、仙台法務局松山出張所存置に関する請願第七五七号、宇都宮地方・家庭裁判所大田原支部庁舎新築等に関する請願第八九九号外一件、千葉地方裁判所・家庭裁判所支部及び地方検察庁市川支部設置に関する請願第一一九九号、仙台高等裁判所秋田支部存置に関する請願第一三二七号、広島高等裁判所松江支部存置に関する請願第一七〇四号外一件、水戸地方裁判所・家庭裁判所麻生支部、麻生簡易裁判所庁舎新築に関する請願第二五三九号、茨城県麻生検察庁庁舎新築に関する請願第二五四〇号、千葉刑務所習志野作業農場の転用中止並びに同作業場移転要請に関する請願第二六八三号外一件、以上九十四件の請願は、これを議院の会議に付し、内閣に送付することを要するものと決定して御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(石井桂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、報告書の作成等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(石井桂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(石井桂君) 次に、継続調査要求についておはかりいたします。 検察並びに裁判の運営等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本院規則第五十三条により、本件の継続調査要求書を議長に提出したいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(石井桂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(石井桂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。 —————————————
○委員長(石井桂君) 次に、刑法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。 速記をとめてください。 〔午後四時九分速記中止〕 〔午後四時二十六分速記開始〕
○委員長(石井桂君) それでは速記を始めてください。
○稲葉誠一君 総理府関係の方が来られませんから、別のことといいますか、今度の刑法の一部改正のうちの一つの問題であります併合罪の場合のことについて少しくお聞きをしておきます。 いまの刑法改正の中でこれを競合犯ということで扱っておるようですが、これはどういう意味なんですか。これは準備草案と仮案では競合犯と言っているんですが、その点はどうなんですか。
○政府委員(津田實君) 改正刑法準備草案の理由書によりますと、競合犯は現行刑法総則九章の併合罪と同じ意味のものであるということになっております。ただ名前を変えただけでございます。
○稲葉誠一君 その併合罪というのを名前を変えて競合犯という名前を使う理由はどういう理由なんですか。どうも競合犯というのも何かはっきりしないような感じも受けるのですが、いわゆる併合罪の場合、実在的競合の場合を併合罪と言っておるわけですが、観念的競合の場合をも含めて今度の場合は競合犯という形で呼ぶのですか。そうではないのですか。
○政府委員(津田實君) 改正準備草案の第八章の競合犯の項に、七十条といたしまして、「一個の行為が数個の罪名に触れるときは、本章の規定を適用する。」ということになっております。その範疇の中に入っておるわけであります。
○稲葉誠一君 いまの場合の併合罪というのはどういうのですか。そうすると、昔のいう併合罪は、いわゆる数罪倶発というんですか、これを併合罪ということで言ったわけですか。これはなぜ質問するかといいますと、併合罪が認められている根拠とか、今度のように確定判決が禁錮以上の刑でなければ併合罪が切断されないということになってきますから、それに関連しますから聞きますが、そうすると、数罪倶発というのは、これは併合罪と同じことなんですか。
○政府委員(津田實君) 旧刑法からの数罪倶発を改めまして併合罪といたしましたのは、確定裁判を経ない数罪は必ずしもともに発覚するというわけではないので、そこで数罪倶発ということばが適当でないということから併合罪という名称になってきたというふうに考えております。
○稲葉誠一君 そうすると、併合罪の規定を適用しないというような形でできている法律もあるんですか。今はないのですか。
○政府委員(津田實君) 全体としては、はっきりいたしませんが、かつて税法にはそれを行なったことがあるわけでありますが、現在は残っていないと思います。現在あるのは、印紙税法一つだけ残っておると思います。
○稲葉誠一君 「現在では、第四十八条第二項だけの適用を排除するものが多い」というのは、どういう意味ですか。古物商取締法では、いま廃止されたが、その二十一条には併合罪の例を用いずというふうに規定してあるんだ、現在では、古物商取締法でなくて一般的な意味ですか、四十八条第二項の適用だけを排除するものが多い、というのはどういう意味ですか。「文献調」の四十八ページのところなんです。これは団藤さんが言っていることらしいんですがね。
○政府委員(津田實君) 現在この項の適用を除外されておるものは、たばこ専売法、塩専売法、アルコール専売法でありまして、つまり合算額ということではないわけであります。それは個別にその刑をきめるという考え方で、まあ財政犯としての考え方ということから適用除外になっていて、これはずっと歴史的にそういうふうになってきたわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、たばこ専売法の七十八条、塩専売法の五十四条、アルコール専売法の三十八条、これはまあ財政犯という特殊性から一個の犯罪で一つの罰金ということになってきて、それは「合算額以下ニ於テ処断ス」ということだから併科主義をとるわけですか。
○政府委員(津田實君) 併科主義をとるわけであります。併科主義をとるほうが、一つの罪について一つの責任を問うということになりまして、結果的には犯人に不利益になる場合が多いと思われるわけであります。
○稲葉誠一君 併合罪を確定判決の前後によって分けるという意味が、意味というかその理由はどこにあるんですかね。これはいろいろ説もあると思うのですが、統一した形ではどういうふうに考えられるわけですか。
○政府委員(津田實君) 数個の罪につきまして訴追をされました被告人に対しまして有罪の裁判をいたします場合に、一罪につきまして一つの刑を科するという併科主義の原則をとってまいりますと、場合によりましては、いまの財政犯の例と同じように、過酷になる、あるいは不当な結果を生ずるということが考えられますので、現行刑法におきましては、確定裁判を経ない数罪の罪を同時に審判して有罪の裁判をする場合には、これを四十五条の前段の併合罪として科すべき主刑に。いて過酷または不当な結果を生じないようにするために、一定の場合にはいわゆる吸収あるいは制限のある加重主義をとり、数個の罪の全体を評価して一刑を科するものとして併科主義を緩和するということにしたわけであります。ところが、審判の対象になっておる数個の罪の間にすでに確定裁判が存在いたします場合には、その確定裁判があるにもかかわらずさらに犯した罪とその裁判確定前に犯した罪とを併合して全体として評価する、いわゆる吸収または制限のある加重主義のもとに一個の刑を科するものとしますときには、不当に犯人の利益になる場合がある。そういう考え方から、わが国現行刑法の四十五条の後段におきましては、右の併合罪の範囲を制限いたしまして、確定裁判にかかる罪とその裁判確定前に犯した罪のみを併合罪とすることとし、その裁判の確定後に犯した罪につきましてはこれを別個に評価して刑を科するということにしておるわけであります。これは、いわゆる確定裁判の感銘力ということがいわれておりますが、確定裁判があったということが犯人の人格に影響をすべきである、その影響しておるにかかわらずなおかつ犯したというようなものについては別個に評価するのが相当であるというような考え方が基本的になっておるということが大体の一般論だというふうに思います。
○稲葉誠一君 そうすると、刑法理論としては、主観主義の刑法理論と関係があるというふうにとれるわけですが、必ずしも刑法理論とは関係はないのですか、それは。
○政府委員(津田實君) 直接には刑法理論とは関係はないと思います。
○稲葉誠一君 そうすると、切断されるというのは、切断をしないでやると被告人の有利になってしまうからと、こういうことなんですか、結局。
○政府委員(津田實君) 不当に犯人に利益になる場合が出てくる。先ほど申し上げましたように、財政犯につきまして別個にやるというのは、結果的には被告人に不利益だ。それは財政的な侵害があったことをカバーするという意味も含めておると思うのであります。したがいまして、中間に確定裁判があったことによって両者を遮断すれば、結果的にはやはり犯人に不利益になる場合が多い。つまり、あとの犯罪については別個に評価されるということであり、しかもそれは確定裁判があった後に犯したものであるという評価を受けるということになって、少なくとも全体を一個として評価する場合よりも犯人に厳重になるという考え方であると思います。
○稲葉誠一君 それならば、本来その確定判決が軽微な犯罪であった場合には、それを犯したからといって、本人の感化力というのか何というのですか、そういうふうなものに影響があってなおかつその後の犯罪を犯したんだということにはならないんじゃないですか。軽微な犯罪と言うと語弊があるかもわかりませんが、行政法規のような違反の場合ですね。その程度のことだったらば、そこで本人の悪性が出たとか出ないとかいうことは別個になってくるんじゃないですか。ですから、本質的に確定判決が行政法規の違反というなら、そういうのは取り除かれるのが妥当だという考え方にはならないでしょうかね。
○政府委員(津田實君) これは、従来、考え方が、現行刑法のような考え方、すべて刑に対してはそういう考え方をとる、刑の言い渡しの確定についてはそういう考え方をとるという考え方と、それから改正刑法準備草案のように禁錮以上の刑の場合だけそういう考え方をとると、こういう二つの考え方が現在あるわけであります。で、刑そのものを非常に重要に考えますと、現行刑法の立場ということももちろん考えられるわけでありますが、罰金でありますとか拘留でありますとか科料でありますとか、そういうものの裁判の確定ということによって犯人の人格にどれだけ影響をする、あるいはどれだけの感銘力があるかということになりますと、これは禁錮以上の刑の場合に比してかなりの差があると思われます。したがいまして、将来の問題としては、改正刑法準備草案のような考え方をとるほうが合理的ではないかということが考えられる。で、今回のこの四十五条の改正につきましては、その後者の考え方をとったということになるわけであります。
○稲葉誠一君 そういう考え方ならば、刑法ができたときとか、あるいはその後何回も改正が小部分にしろあったわけですから、そのときに今回のような改正が当然行なわれてよかったんじゃないですか。いままでは論議の対象にはならなかったわけですか。
○政府委員(津田實君) この点は、いままで一応この四十五条についての学説の説明では行なわれておりまして、いろいろ考え方をとっている人はあるわけでありますけれども、直接これをそういうふうに改正すべきだという論議は改正準備草案の場合以外には出ておらないようであります。で、それは、結局におきまして、やはり刑は刑だという考え方のほうがやはり強かったということになるんではないか、罰金あるいは科料にしても刑であるという考え方が強かったのではないかというふうに思います。
○稲葉誠一君 英米法では、犯罪の数だけの刑罰という形で、これは併合罪というふうなものはないんですか。これはどういうふうになっているんですか。
○政府委員(津田實君) 併合罪の処断につきましては、有期の自由刑の場合併科主義をとると、そういうところももちろんございますし、それから法定刑に加重主義をとるというようなのもございます。したがいまして、これは一がいには言い切れないと思うのでありますが、たとえばアメリカの州の刑法なんというもののうちには併科主義をとるものが相当あり、あるいはイタリーあたりでも併科主義をとっておるというようなことでありますから、これはそれぞれの理由によるわけですから、一がいにそれがよろしいということも言えないと思います。同時に、アメリカ法系におきましては、執行する場合に、順次に執行する、あるいは同時に執行するというようなことがありまして、併合罪で非常に長い、合計して長い自由刑というようなものもあるわけですが、それは同時執行というようなことでまかなうとか、いろいろなことで緩和しているわけであります。全体の体系を見ないと、必ずしもどれがいいかということは言えないのではないかというふうに考えます。
○稲葉誠一君 これはもう大学のゼミナールじゃないのだから、あまりそういう点をあげるのもどうかと思うのですが、同時執行というのは、そうすると、具体的にはどういうことなんですか。
○政府委員(津田實君) 同時に両方の刑が執行されておるということでございます。ですから、日数は、つまり、かりに二刑あれば、一日は二日に実質的には計算をされておるということになるわけであります。
○稲葉誠一君 日本の刑法でも、その点は、あわせて執行すべしという形になっているでしょう。あわせて執行というのはどういう意味なんですか。
○政府委員(津田實君) あわせて執行するというのは、併科でありまするから、どちらか執行順序をきめるということに刑事訴訟法でなるわけであります。執行順序をきめて執行していくわけでありますから、結局、両刑がプラスされた日数ということになるわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、いまのあわせて執行する場合に、非常に重い罪と、それから中に確定判決が罰金か何かあって、あとでちょっと小さな罪がある場合ですね。たとえば、前の罪が十五年なら十五年確定判決があって、罰金が千円なら千円あって、あとの罪が六カ月ぐらいだということになってくると、前の十五年を先に執行するのですか。これはさまっているわけですか。
○政府委員(津田實君) 刑事訴訟法の四百七十四条によりますと、「二以上の主刑の執行は、罰金及び科料を除いては、その重いものを先にする。但し、検察官は、重い刑の執行を停止して、他の刑の執行をさせることができる。」と、こういうことになっておりますので、原則は重い刑を先に執行するわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、まん中に確定判決が入って、あとから軽い刑があった場合に、前の刑は全部つとめなければならないわけです、現実には。そうすると、確定判決があったために、なければ、たとえば、十五年六カ月ならば、その三分の一以上過ぎれば仮釈の問題が起きてくるというのに、前の十五年全部過ぎなければ仮釈の問題が起きてこないという形になって、これは刑務所の中でいわゆる行刑上といいますか非常に不満があって、うまくいかなくて困っているんじゃないですか。その場合のいわゆる刑の順序変更の執行指揮がありますね、これはもうほとんど具体的にはやっていないんじゃないですか。そとはどうなっているんですか。確定判決がちょっとあったために非常な予想外の不利益を受刑者がこうむってきて、そのために刑務所は中の行刑がうまくいかなくて困っているわけですね。刑の順序変更をやってくれといっても、やらないわけですね。これは現実にはどういうふうにやっているのですか。
○説明員(伊藤栄樹君) 先生御指摘のように、二刑ある場合、一刑の場合に比して仮釈放上適当でない結果が生ずるおそれがあるわけでございます。たとえば三年という一本の刑を言い渡されますと、一年を経過いたしますと仮釈放の条件が法律上整います。ところが、二年と一年というふうに二つの刑を言い渡されますと、刑訴の四百七十四条の本文の原則によりますと、先生御指摘のように、二年を経過してはじめて一年の刑の執行に移る。そうすると、二年と四カ月経過したところではじめて仮釈放の条件が整うということになりまして、明らかに不適当な、相当でない結果を生じますので、現在、各検察庁におきましては、矯正当局と緊密に連絡をとりまして、四百七十四条のただし書きによりまして執行順序を変更指揮をして、いまの例で申しますと、二年のものが二分の一なら二分の一経過したところで二刑の執行に移る。前の刑の執行を停止して、二刑の執行に移る。そうして二刑の三分の一を経過したところで三年全体を見通して仮釈放の条件が整ったかどうかということを検討するようにしておるわけでございます。ただ、そのような運用をいたします場合に、やはり若干の問題が残りますのは、二年と一年という二つの刑があります場合に、合計して三年の一本の刑であれば、一年たったところで仮釈放の条件が整ったかどうかを見ればいいわけですが、二年と一年ということになりますと、わずか八カ月を経過したところで、すなわち二年の三分の一を経過したところで仮釈放の条件が一応一刑については成就いたします。その段階で、すなわちプラスしますと三年つとめる確定者の将来の行状あるいは更生の可能性につきましてわずか一刑の三分の一経過したところで判断するということがなかなか困難な場合がございます。さりとて、一刑の三分の一終わったところで二刑の執行に移って、その三分の一を終わったところでまだ仮釈放がむずかしいということでまた一刑に移るというようなことも、非常に小刻み執行になりまして、適当ではございません。そこで、矯正当局と緊密な連絡をとって、二分の一なり何なり経過したところで先を見通して執行順序変更の指揮をしておるというのが実情でございます。ただ、そのような場合でございましても、事務連絡の問題とか、いろいろ隘路はあるわけでございます。そういう意味におきまして、特に二刑に分かれた理由が交通違反というような軽いものでありますときには、当該受刑者にとって不満が生ずるという場合もあり得るわけでございます。事実、先生の御指摘のような不満というものがまあないわけではない、かように承知しております。
○稲葉誠一君 いまのは、刑務所に行って刑務所の職員と話をしてみますと、非常に不満があるわけですね。で、順序変更の指揮権は地検では次席検事が持っているわけでしょうが——検事正が持っているわけですけれども、実際には次席検事がやるわけですね。各地検によって非常にまちまちで困ったということをよく刑務所では言うんですよね。これはまあここの話ですから、よく心にとどめておいていただきたいと思うんです。 そこで、どうも疑問なのは、確定判決があったからといって前の刑とあとの刑に分けなければ、理論上というか実務上というか、二つに理論と実務とに分けて何か弊害があるのですか。どうしても確定判決があれば前とあとに二刑に分けなければならない理由があるのでしょうか。実際には、確定判決があっても、前とあとに適当に分けて求刑したりなんかしたりしているわけですね。ですから求刑の中で、あるいは裁判の中の量刑の問題として扱っていけばいいんで、何も複雑な形にして、確定判決があったら、それとその前のものと併合罪なんだ、あとのものは別罪なんだということをそれほど重要視して固執というか何というかしなければいけないのですかね。そこは各国の立法なんかはどういうふうになっているんですか。これはどうも疑問なんですがね。
○政府委員(津田實君) ただいま仰せのとおり、必然的に併合罪関係を遮断しなければいかぬかどうかという点は、私も非常に問題だと思います。現行刑法のように刑の法定刑の範囲が広いものにつきましては、必ずしもそうしなければ刑の量刑上不便である、すなわち、かりに確定裁判後に犯した犯罪については評価を変えるとしましても、法定刑の幅に関しては少なくとも不便だというようなことは、現行刑法のもとにおいては考えられないと思うのです。しかしながら、刑法制定当時の考え方のたてまえからいえば、やはり別個評価ということを考えていくべきだという根本的な考え方のもとにこういう規定になっておると思うのであります。しかしながら、実務上の点につきましては、すでにお手元に差し出してあります資料によりましても、実際は、裁判官の考え方からいけば、全体を評価して、便宜それを遮断したものについては分けるというようなことが行なわれているふうに推測される事例が非常に多いわけであります。したがいまして、実際上はほとんど影響がないと見られると私どもは考えておるわけであります。 なお、併合罪関係を罰金以下の刑に処する確定裁判によって遮断しないものとしている外国の例といたしましてはスイスがあります。また、ドイツの六二年案につきましては、すべての刑についてそういうふうにしているというような例はございます。
○稲葉誠一君 いまの点は私はどうも前々から疑問に思っているところなんですが、そうすると、旧刑法と今の刑法とはその点について違ったのですか。
○政府委員(津田實君) 旧刑法においては遮断関係はなかったわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、遮断関係が今の刑法に採用されたのは、これはどこの刑法の影響なんですか。フランス刑法と旧刑法は遮断関係はなかったですな。英米法にもない。ドイツ刑法の考え方ですか。
○政府委員(津田實君) 外国の立法例によりますと、判決の言い渡しの場合もあります。または確定を基準といたしまして併合罪の範囲をそれ以前のものにきめているわけであります。判決言い渡しというのですと、なおさら非常に範囲は狭くなるというふうになっていくわけですが、そういう例が多いので、それの影響下にあったものではないかというふうに考えております。
○稲葉誠一君 ところが、改正仮案では、仮案がいま効力があるかないかは別として、仮案では、またあれですか、現行刑法と変えて吸収主義を原則としたのですか、これはどういうふうになっているんですか。
○政府委員(津田實君) 仮案につきましては、第七十八条に、「確定裁判前ニ於ケル数個ノ罪ヲ競合犯トス」ということになっておりますので、一応確定裁判前におけるものは一グループになるわけでございます。そのあとのものとはやはり別だという考え方になると思います。
○稲葉誠一君 それは七十八条ですが、七十九条以下でどうなっているんですか。「第七十九条以下におけるその科刑方法は現行法と著しく異るものがある。」と、こう言っているわけですよね、三十三ページのところで。これはどういうわけなんですか。だから、何かこの点がぐるぐるぐるぐる変わっているような感じがするんですがね。
○政府委員(津田實君) 七十九条は、「競合犯ニ付同時ニ裁判ヲ為ストキハ其ノ最モ重キ罪ニ付定メタル刑ヲ以テ処断ス」ということですから、これは現在の併合罪の関係の四十七条とは変わった規定になっておると思います。しかしながら、八十条という規定がございますので、八十条で、情状によってはできる、この場合においては半数を加えたものを長期とするということになっておりますので、結果的にはそう変わっていないと思うわけであります。
○稲葉誠一君 だから、そういう場合でも、あれですか、法定刑の加重ですね、これをよく実際の裁判のときに間違って落としたりなんかして、何といいますか、控訴理由になったり上告理由になったりすることがありますから、そういうふうな技術的な問題を省くというためにこういうふうに変えたわけですか。
○政府委員(津田實君) その点ははっきりいたしませんが、おそらくそういう配慮もあったのではないかと思います。
○稲葉誠一君 そこで、刑法ができたときに、併合罪の規定を設けて確定判決で遮断したその確定判決のときには罰金などの場合は含むとか含まないとか、そういう議論は全然出なかったのですか。
○政府委員(津田實君) これは、四十五条制定当時は、もう当然確定裁判にすべてを含むという考え方であったと思います。
○稲葉誠一君 思うのは、それはそういうふうにずっとその後も運用されてきたわけですからわかるのですが、その当時は、あれですか、罰金というふうなものにいろいろに付されるということがあまり多いものとは考えられていなかったんだと思いますがね。しかし、違警罪即決やなんかで科料は相当あったわけじゃないのですか。だから、当然科料などで——変なことでよく科料に引っかかるわけですよね、昔は。そういうことがあって一時確定判決で遮断されるということで、それがわからなかったからといって裁判が破れたのでは非常に複雑になってかなわないわけですが、そういう点の配慮というものは、現実にはあまりなかったのですか、その当時は。問題にならなかったのですかね。
○政府委員(津田實君) 明治四十年当時、そういうことを予想したかどうかわかりませんが、少なくとも違警罪即決例によりまして科料あるいは拘留に処せられて確定した者については、これは前科調書に載せておるわけであります。往々にして前科調書から漏れているということもありましたけれども、載せているので、その場合には、現実にはやはりその間にそれがある場合には遮断しているという扱いを当然裁判所はとってきておったのは御承知のとおりであります。したがいまして、そういうことによる不便ということをあるいはそれほど痛感していなかったのかもしれない、あるいは制定当時はそういうことはあまり予想しなかったというのであるかもしれないと思いますが、一たん制定された以上は、やはりできる限りそれに従って運用されてきたことは私どもも承知いたしております。
○稲葉誠一君 その確定判決というのは、執行猶予の期間が経過した場合でも確定判決として併合罪関係が遮断されるわけですか。
○政府委員(津田實君) そのとおりでございます。
○稲葉誠一君 だけれども、執行猶予の言い渡しのときには、この期間を経過すれば刑の言い渡しがなかったものとなるんだということをよく裁判官が説示しておりますね。刑の言い渡しがなかったということになるのだから、確定判決と言えないのじゃないですか。あれは間違いですか。どういう意味なんですか。
○政府委員(津田實君) これは確定裁判のあった事実というものを要件にしているという解釈になっているわけで、判例もそういう解釈になっているわけで、したがいまして、この場合はもちろんでありますけれども、恩赦によって刑が消滅した場合でも、やはり確定裁判があったという事実を考えて四十五条の遮断の適用があるというふうに考えられております。
○稲葉誠一君 そうすると、執行猶予の期間を過ぎた場合にはどうなるのですか。刑の言い渡しがなかったものというのは、あるんですか。その意味はどういう意味なんですか。
○政府委員(津田實君) 将来に向かってはもちろん刑の言い渡しがなかったということになるんですが、かつてある罪で確定裁判があったという事実は将来に向かってはもちろんなくならない、こういう考え方であると思います。
○稲葉誠一君 その被告人なら被告人に対する感銘力というような問題から物事を判断していくなら、執行猶予付の判決があって確定してしまったその後に犯したということになれば、これは感銘力の問題はどうですかね、非常にニュアンスが前の場合と違ってくるのではないですか。そこのところはどういうふうに判断するのですか。
○政府委員(津田實君) 感銘力の点から申しますれば、執行猶予付の判決であっても、確定裁判があった、それによって被告、犯人の人格に影響があったというふうに言わざるを得ないわけであります。それは執行猶予のついてない裁判であっても同じでありますから、そういう観点に立てば、やはり後の執行猶予期間を経過したとしても、それはそういう確定裁判があったということに注目をしてこの考え方をとるということになるのであろうと思うわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、確定判決ですから、確定力が破れなければ遮断されているわけですね。だから、再審の場合などは、再審の申し立てがあって再審で前の判決を破棄するというんですか、どういう判決になりますか、そういう形のものが出てこなければ、確定力というものはもちろん破れないんだから、再審の決定そのものではいけないわけですな。これはまあ当然ですね。
○政府委員(津田實君) 上訴権回復、再審による原裁判取り消しですね、非常上告による原裁判取り消し、こういうものがあればこれはもちろん確定裁判になるわけであります。
○稲葉誠一君 それは、もちろん、だから、非常上告の場合でも、非常上告だけではいけないわけで、その結果として確定裁判がこわれなければいけないわけですね。これは言うまでもないことですからあれですが、そうすると、問題となってくるのは、継続犯と併合罪の場合といいますか、そういうふうな場合には、中に確定判決があったという場合にどういうふうになるんですか。たとえばこの判例がありますね。もらった資料の「判例」というのがあるんですが、ここの三十七ページから三十八ページのところですね。これはどういうことを言っているわけですか。
○政府委員(津田實君) そこにあがっておりますたとえば刀剣の不法所持は継続犯でありますが、その継続犯の途中に他の犯罪で確定裁判を受けたと、まあこういうようなことだろうと思います。その場合、一体犯罪の終了時というのはいつに見るかということの問題だろうと思うのですが、これは犯罪の終了時は少なくとも不法所持が終わったときということにまあなるわけであります。間に確定裁判があったがゆえにその継続犯として一罪とすべきものについてそれを遮断するというまで考えることは、これはできないだろう、犯罪の態様そのものでありますから。そこで、終了時とすれば、終了時前に確定裁判があったということになると思うのでありまして、その継続犯が二個に分断されるということはないという考え方であります。
○稲葉誠一君 だけれども、継続犯というのは、あれですか、いまのような不法所持の場合には、所持はずっと継続犯でしょうけれども、所持していてそれをたとえば運搬した——携帯というか、運搬したという場合には、あれですか、その継続犯は切れちゃうわけですか。その中に道路交通かなんかのやつがあった場合はどうなんですか、所持と携帯とは別個の罪になるんですか。
○政府委員(津田實君) これはいろいろそういう不法所持罪につきましての一般の問題になると思うのでありますが、たとえば密造酒の不法所持とかいうようなものにつきましても、所持と運搬というようなものを考えた場合に一体どれをとっていくかということなんでありますが、これはいろいろ考えることはあると思いますけれども、所持については少なくとも運搬は吸収されるというふうに考えられているというふうに私は思っております。
○稲葉誠一君 継続犯というのは、いまの場合どういうふうなものが考えられるわけですか。
○政府委員(津田實君) ただいま申し上げました法禁物の不法所持ですね、これはもう大体継続犯になります。それから外国人登録証明書の不携帯とかいうようなもの、これは継続犯になります。そのほか例はかなりあると思いますが、大体まあ禁止された物の所持というような場合が非常に多いと思います。
○稲葉誠一君 この例としてあげられておる外国人登録の例がありますね。大阪高等裁判所の昭和三十三年七月七日ですか、ここに点線を引っぱってあるのは、いろいろ書いてあって、前のほうはこれでわかりますが、四十一ページあたりのことは、これはどういうことなんですか。何か旧法と新法との関係でどういうふうなこととかという議論が書いてあるんですが、ちょっとよくわからないんですが。
○政府委員(津田實君) 四十一ページの傍点のところの最後のほうにあります「四十五条後段の適用の問題が生ずる余地がない」ということは、つまり継続犯の途中で遮断することがないという意味を言っているので、結局同じことだろうと思うのであります。
○稲葉誠一君 そこはわかるんですが、旧法のときはどうとか新法のときはどうとかいうのは、これはどういう意味ですか。いままでのところは継続犯の一般的な説明と同じですよね。それ以上のことはつけ加えてないわけですが、ここにはわざわざ新法がどうだ旧法がどうだということが書いてある。この理由はどういうことなんですか。
○政府委員(津田實君) 外国人登録法が途中で改正になりまして、その間に違反が継続しておったという場合であろうと思うのであります。その場合には新法を適用するか旧法を適用するかということで、結局、新法を適用すべきだという考え方を示しておるということであろうと思います。
○稲葉誠一君 そうすると、これは継続犯なんですから、この場合旧法を適用するとか新法を適用するとかいうことは特に論議をする必要はないと、こういうふうになるんですか。そうではないんですか。
○政府委員(津田實君) 結果的には論議をする必要はないということなんですけれども、一応論旨としてはそれを主張しておるのだろうと思います。
○稲葉誠一君 営業犯の場合は、他の罪についての確定判決があった場合にはどういうふうになるという解釈なんですか、四十七ページの名古屋高裁金澤支部の判決は。
○説明員(伊藤栄樹君) 営業犯の場合には、その営業に関する行為が違法であるということで確定裁判を受けますと、その確定裁判によって営業犯が二つに分かれるということは常識でございますが、この判例等で言っておりますのは、営業犯がたとえばことしの一月一日目から十二月一日まで継続しておる、その中間にたとえば七月一日にほかの罪で確定裁判があったというときにどうなるかということでございます。これにつきましては、ここに判例が二つ載っておりますように、二罪になるのだという判例と一罪だという判例と二つあって、まだ統一がされておりません。
○稲葉誠一君 そうすると、営業犯というのと継続犯というのとはどういうふうに違うのですか。継続犯の場合は、確定判決があっても遮断されないと、こういうのでしょう。営業犯のような場合には、金澤のような場合には遮断されると、こういうのでしょう。これはどういうことなんですか。営業犯と継続犯とどういうふうに分けるのですか。営業犯というのも継続犯の一つの態様とは違うのですか。
○説明員(伊藤栄樹君) いろいろまあこの点につきましては議論がございまして、所持といいますのは、ある時点からある時点まで持っておるという事実上の状態が所持で、営業犯の場合は、一定の業を営むという意思をもって毎日々々反復継続しておるという状態を言うわけでございます。そこで、金澤支部の御指摘の判例の場合には、確定裁判があったというその感銘力によってあしたから繰り返すことをやめることができたのではないかというようなことを考えておるのではないかと私は思うのでありますが、私個人といたしましては、あとに出てまいります東京高裁の言っておりますように、継続犯と同じような考え方をしたほうが筋が通るんじゃないかというふうに思っております。
○稲葉誠一君 感銘力というのは、何かフィクションのような感じを受けるんですがね。まん中に判決があったから感銘力がこう変化したとかなんとかいうのは何か遊戯のような感じを私は受けるのですが、それはどういうふうな法律論になるのか別として、そうすると、いまのような営業犯が反復遂行する意思があるということならば、所持の場合だって、その所持そのものに客観点な所持だけでなくて、主観的な意思が加わってはじめて所持になるんだという考え方をとれば、結局同じことじゃないですか。所持の場合には主観的な意思は要らないという考え方をとるのですか。
○政府委員(津田實君) その考え方は、所持の場合は、ずっと一瞬も継続していない場合がないわけで、営業犯の場合は、たとえば営業を営んでおる時期というものは毎日継続して営んでおるのですけれども、しかしながら、その間に一日一日それが区切れておるという考え方もあるわけであります。区切れておるが、それじゃ夜中は営業していないかと、こういう議論になるわけですけれども、そうなると、全く継続犯と同じということになるわけですね。ですから、その考え方はどちらをとるかということになるのですけれども、やはり継続犯とは同じという考え方をとるほうが相当ではないかというふうに考えております。とにかく夜中営業していないという考え方はとれないだろうというふうに思うわけであります。
○稲葉誠一君 あとの東京高裁の「売春防止法第一二条の罪の中間に別種の罪について確定裁判が存する場合と」云々と、この場合は、あれですか、これは併合罪にならないというわけですね。これは金澤の判決と何か矛盾するように私はきのう考えたんですが、その点はどうなんです、必ずしも矛盾するとは言えないんですか。
○説明員(伊藤栄樹君) 先ほど私が御説明申し上げましたように、矛盾しております。で、私は、この東京高裁の考え方のほうがいいんじゃないかというふうに御説明申し上げたわけであります。
○稲葉誠一君 私もこれは二つの判決が何か矛盾しておるというふうに考えておったのですが、そうすると、この場合に、「同罪とは全く種類を異にする罪について確定裁判を受けた場合に」云々と、こうあるので、「種類を異にする」という意味はどういう意味なんですかね。罪質という意味なんですか。この「種類を異にする」というのはどういう意味なんですか。
○説明員(伊藤栄樹君) この判決のケースは道交法違反というのが間に入っているように思いますが、この道交法違反というのは売春防止法違反の管理売春と全く別種の罪だということを言っておるわけでありますが、なぜことさら「全く種類を異にする」というようなことばを使ったかという点はよくわかりません。将来それでは管理売春の間にたとえばポン引き的な売春防止法違反行為があった場合にどうなるか、そこまでは判断したつもりはないぞというようなことでも、何といいますか、留保をとどめるといいますか、そういう意味ででもこういう用語を使ったのかというふうに思うのでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、道交法違反がずっとある中で、たとえば無免許運転なら無免許運転を何回もやっているその中でスピード違反で確定判決があった、こういう場合は、どうなんですか、やはり分かれるんですか。
○説明員(伊藤栄樹君) 一応罪は二つに分かれます。無免許運転につきまして懲役刑を選択いたしますと、主文が二つに分かれる、ただ、罰金刑を選択いたしますと、合算額で一括処断する、こういうことになると思います。
○稲葉誠一君 無免許運転をずっと続けて、たとえば一週間なら一週間やっている間に、まん中にスピード違反があったというか、無免許運転しながらスピード違反だったという場合でも、あれですか、分かれるんですか、二つに。
○説明員(伊藤栄樹君) 無免許運転と申しますのは、免許を持っていないということを処罰するのではございませんで、免許がなくて運転をするという行為を罰するわけでございます。運転行為は二個あるわけでございますので、先ほど来御指摘の継続犯、たとえば外国人不登録というような行為とはやや趣を異にすると思います。
○稲葉誠一君 いや、たとえば一週間ずっと無免許運転をやっておったわけですよ。その無免許運転をやっている中でスピード違反があった、そういう場合で、スピード違反だけで処分されるということもちょっとないかもわかりませんが、そういうことになった場合でも、やはり分かれるんですか。ちょっと例が悪いですけどね。
○説明員(伊藤栄樹君) きょう、あした、あさってと三日間にわたって無免許運転をいたしまして、そのうちのあしたの分、まん中の分がスピード違反でもあるということになりますと、それでスピード違反の部分について処罰をされた、こういたしますと、おそらくその処罰はスピード違反と無免許運転との一所為数法という関係で処罰されたと思いますが、きょうの第一回目の無免許運転とそれから二回目の無免許スピード違反運転とこれが併合罪になって、あさっての分は別個のもの、併合罪とならないものということになって、したがいまして、懲役刑が科せられます場合には、きょうの分とあさっての分と二つの主文で二つの刑が言い渡される、こういうことになります。
○稲葉誠一君 それはあなたの言うとおりですね。 それから包括一罪の場合に、まん中に確定判決を受け、しかも道交法違反で罰金か何かあった、こういう場合にはどういうふうになるんですか。
○説明員(伊藤栄樹君) 判例は、お手元に差し上げております「刑法第四十五条後段に関する判例」の五十三ページの東京高裁の判例がございますように、包括一罪と認められる犯罪の場合でも、その中間に確定判決がありますと、その判決のあったときを境として、その前とあとが二つに分かれるという判例になっております。
○稲葉誠一君 この包括一罪というのは、具体的にはどんな場合を言っているわけですか。
○説明員(伊藤栄樹君) 本件の場合の罪名についてしかと記憶しておりませんが、おそらく横領か何かじゃないかというふうに思います。
○稲葉誠一君 横領なら、きょう横領したのと、あした横領したのと、いろいろあるでしょうが、そのときに犯罪が成立するなら、本来は数罪じゃないですか。なぜ包括一罪という形でやるんですか。
○説明員(伊藤栄樹君) 最近の判例で包括一罪という考え方が相当広がっておるということは御承知のとおりだと思いますが、一つの犯意と申しますか、一つの意思で同種の手口で反復継続して横領なら横領の行為を継続します場合、それを包括しまして、始期から終期までを包括いたしまして一つの行為というふうに見る裁判例が相当最近出ておるわけであります。そういう包括一罪のまん中に確定判決があった、こういう場合にどうなるかということをこの判例は言っておるのではないかと思います。
○稲葉誠一君 なぜ包括一罪という観念を認めなければならないのですか。一つ一つが犯罪なら、横領なら横領の犯罪ですから、それが一つの訴因になるんじゃないですか。
○政府委員(津田實君) 窃盗の場合、一軒の家に入りまして一つの機会に多数のものを順次盗むというような場合が包括一罪と考えます。そうしますと、例でいきますと、午後の十一時半ごろから窃盗を始めて午前に及んだ、ところがその夜中の十二時に裁判が確定したという場合には明らかにそういう問題になるということだろうと思います。
○稲葉誠一君 そうじゃなくて、横領の場合なんか、きょう横領して、それからしばらくたって横領するとか、前に横領するとか、いろいろあるでしょう。何のために包括一罪という考え方を刑法の中に持ってこなければならないのでしょうか。
○政府委員(津田實君) いま窃盗の例を申し上げましたが、衣類一枚一枚を一罪の窃盗として処断するということになれば、非常に罪数が多くなります。罪数が多くなるということは、連続犯という観念がありませんから、併合罪として非常に重く考えられるということになるわけであります。そういう意味からと、あるいは処理の問題の便宜から、やはり包括一罪という概念は認めざるを得ないことになる。たまたま一つの機会において同じ場所で数個のものを取るという場合は、少なくともそれを一つと見るのが相当である、個々の物に対する所持の侵害ということではありませんで、やはりそれは一つとして社会的に見るのが妥当だというような考え方であると思います。
○稲葉誠一君 社会的に妥当だというのは、いまの窃盗のような場合には確かにそうですけれども、毎日毎日横領しておるのじゃなくて、一週間ごととか一カ月ごとに横領しておるのを包括一罪と言うのも、何か裁判の便宜上というか、一つ一つの訴因をやると立証するのも非常にめんどうくさいというか、あれですし、ことに一つが無罪になった場合に、それが主文に無罪になってあらわれてくるから、それを避けたいという裁判技術上の問題があるのじゃないかと思うんですが、これは私の考え方ですから、それでいいですが、そうすると、常習犯の場合は今度どういうふうになるんですか。常習犯の中間に一罪の確定裁判があったという場合、常習犯の中にたとえばいま交通違反が確定した、こういうふうな場合はどうなんですか。
○説明員(伊藤栄樹君) これは、「判例」の五十五ページにございますように、遮断をしないということになっております。
○稲葉誠一君 遮断しないという理由はどういうわけですか。
○説明員(伊藤栄樹君) 常習犯罪といいますのは、一つ一つの行為もさることながら、その犯人の有する犯罪習癖と申しますか、それに着眼して刑を加重したりするわけでございますが、そういう常習的な犯罪を犯す習癖というものに着眼いたしますと、個々の犯罪というものはすべて習癖の発露ということになるわけでございまして、数個の実際の犯行がありましても、それらが包括して常習犯罪すなわち常習的性癖の発露としての具体的行為という評価を受けるわけでございますが、そういう場合に、たとえば五回なら五回常習的な性癖の発露として窃盗を犯しておる、その二回目と三回目の間に確定裁判があったとしましても、常習的な性癖そのものを変えると申しますか、というような訴因にその確定裁判がなるわけではないというような見方ではないかと思っております。
○稲葉誠一君 盗犯等ノ防止の場合にいろいろの条件があるわけですが、習癖の発露だというので盗犯等ノ防止で起訴すれば、その場合には、まん中に交通違反があっても、それは確定判決によって遮断されない。しかし、盗犯等ノ防止でやるのはなかなかめんどうだし、起訴状を書くのもめんどうだというので窃盗だけで起訴すると、実際の量刑は変わらないわけですね。そこで、確定判決で遮断されて、前の刑とあとの刑と、こういうふうになるわけですね。それは非常に便宜的じゃないですか。
○説明員(伊藤栄樹君) いまの先生の御設例は、どちらかというと、検察官の処理のほうが便宜的なんでありまして、ここにありますように、常習特殊の窃盗あるいは常習累犯の窃盗ということで起訴いたします以上、その法律が設けられました趣旨に徴しますと、この判例のような結論になるのじゃないかと思うわけでございます。ただ、御指摘のように、往々にして、私どもも検察官を現場でやっておりました当時、先生御指摘のような理由も手伝わないわけではなくて、何回かの窃盗を単純窃盗罪で公訴を提起するということをやったことがあるわけでございますが、そういうような必ずしも法の趣旨に完全に沿っておるとは言えないような処理をいたしますと、御指摘のような矛盾が生ずる場合があるというふうに思います。
○稲葉誠一君 いまのは特殊な例ですけれども、私のいま言ったようなことは、確定判決というのがあるからといって、確定判決とその前のものと併合罪にして、あとのものを別個のものにしなければならないという理論的なものはどうもはっきりしないし、何かただそういうふうに刑法になっておるからそういうふうにやっているんだというふうにもとれないことはないようにもとれるんですが、そうすると、現在実務をとっている中で、あれですか、前科を調べるのは、特に道交法違反の前科のような場合には、どういうふうにして前科調書に載ってくるわけですか。
○説明員(伊藤栄樹君) たとえば墨田なら墨田の簡易裁判所で道路交通法違反の罰金刑が確定いたしますと、墨田区検察庁の検察官は、その裁判確定の事実を東京地方検察庁に通知いたします。そういたしますと、東京地方検察庁におきましては、これの本籍地がどこにあるかによりまして、その本籍地を管轄しております地方検察庁の検察官に通知をいたす。そうして、本籍地を管轄します地方検察庁におきましては、当該地検管内に本籍を有するすべての者の前科というものを犯罪人名カードというものに登載して保存しております。こういう方法で道交法違反等の前歴が把握されるわけでございます。
○稲葉誠一君 それは、墨田の場合などは、全部東京地検へ持っていくのですか。墨田から直接本人の本籍の地検へということはやらないわけですか。
○説明員(伊藤栄樹君) これは地方検察庁ごとによって必ずしも取り扱いは一致していないと思いますが、墨田の場合は、いまの例が悪うございましたが、たしか直接本籍地を管轄する検察官に送付しておるのではないかと思います。
○稲葉誠一君 道交法違反が確定して、それがその本籍の地検の前科調書といいますか、いまカードになっておるのですか、あれは普通検務二課がやっているのですね、そこへ行くのに、どれくらいかかるんですか。いろいろな例があるでしょうけれども、ずいぶんおくれるということも聞いておるんですが。
○説明員(伊藤栄樹君) 裁判の確定しました検察庁の対応裁判所の事件量にもよるわけでございますが、一時相当渋滞しておったことがありますが、現在裁判所から記録の送付を受けましてから大体一、二週間で通知を出しておるはずでございます。ただ、記録が裁判所から戻ってまいりますのに非常に長短がございます。これにつきましては、会同等でも、各検察庁に対して、なるべく早く記録を返してもらって既決犯罪通知をするようにというふうに申しておりまして、漸次改善されておるのでございます。
○稲葉誠一君 実際には被告人に裁判をやっておる中で道交法違反で処罰を受けたことがないかと聞くわけですね。聞くわけというか、大体最終の結審のときによく聞いていますが、そこでこういう事実があると言っても、それは前科調書に載っていないから裁判できなくておくれる、そういうことで実際に判決を延ばしたり判決をしないというふうな例が相当あるんですか、どうなんですか。
○説明員(伊藤栄樹君) 私自身の経験に徴しましても、かれこれ七、八年前にはそういう事態がある程度あったように思います。ただ、その後、法務省刑事局におきまして諸規程を整備いたしておりますのと、それから司法警察職員に対しましても検察官のほうから指示がしてございますので、ほとんどのものが警察から検察庁に事件を送致する前に本籍地に前科照会をする、それから検察官も事件を受理しますとすぐに本籍地の検察庁の照会をして前科調書を取り寄せるというふうにいたしておりますので、裁判言い渡しには現在ほとんど前科調書は間に合っておる。ただ、たまたまごく最近起訴後に確定裁判を受けたものにつきましては、ときとしてもれるものがある。そういうものが控訴審に行ってそれを理由に破棄される。たとえばそれが発見しておれば二個の主文を言い渡すべきであって、一個の主文を言い渡してしまったということで破棄されたという例も、お手元に差し上げてございます資料にございますように、相当あるのでございます。
○稲葉誠一君 その前科調書が、ことに起訴後に道交法違反か何か犯して処分を受けた場合にはおくれるわけですが、裁判所としては地検へ照会するというか、あるいは裁判所でなくて検察庁がほかの地検へ照会するということもあるでしょうけれども、むしろ市町村役場のほうに照会する場合があるわけですね、身上として。これはどういうわけなんですか。検察庁のほうの前科調書が完備しておれば、検察庁から検察庁の連絡で前科調書で裁判の材料としていいわけですね。それを何か前科調書では心もとないというんですか、身上調書をとってやる場合が多いのじゃないですか。それで市町村の役場と検察庁の関係はどうなっておりますか。
○説明員(伊藤栄樹君) 先生御指摘のことは、いまから四、五年以上前のことであると思うのでございます。と申しますのは、昭和三十六年だったと記憶いたしますが、司法警察職員捜査書類基本書式例というのを最高検の検事総長の一般的指示により制定しておるわけであります。それを制定する際にも、本籍地の市区町村長の作成保存しております犯罪人名簿、これには捜査上あるいは裁判上の前科の発見で頼らないことにしておりまして、現在警察も検察庁も市町村に対して前科照会をするということは原則としていたしておりません。すべて本籍地の検察庁に照会をするというシステムになっておるわけでございます。ただ、現在、御承知のように、市区町村長におきましては、各種の資格証明、あるいは選挙権・被選挙権の関係上、一定の前科を把握する必要はいまなお現存しておりますので、検察官からそれぞれ市町村長に対しまして裁判確定の事実を御通知申し上げておるわけでございます。ただ、事務量が非常にふえておりますので、道路交通法違反の罰金刑以下につきましては一々御通知を申し上げない、市町村の照会によってお答え申し上げると、こういうことにしておるわけであります。
○稲葉誠一君 前科調書はもちろん地検にあるそれで証明するでしょうが、このほかに身上調書というものをとるわけでしょう。それは何か統一して一本にできないですか。もっとも前科のない人もあるから、身上でないと同一人の認定はできないから、必要かもしれませんが、前科のあるような人の場合でも、なお身上調書をほしいほしいといって、そのためにおくれるのではないでしょうか。
○説明員(伊藤栄樹君) 検察、警察で被疑者を検挙いたしますと、市町村に対して身上照会を必ずやっております。このやります趣旨は、本籍地、現住所、その他住民登録票に記載されます事項、これを把握するということが主たるねらいでございまして、その身上照会によりまして本籍地がはっきりいたしますと、さてそれでは今度はその犯罪人名カードはどこの検察庁が持っておるかということがはっきりわかるわけでございます。そういう関係もございまして、現在、市町村長に対しましてはそういう意味の身上照会をいたしております。
○稲葉誠一君 もうさっき話が出た道交法違反の確定判決があったことがわからなくて、そして裁判で控訴へ来て破棄されたと、こういうふうなのは、ここに資料がありますけれども、どの程度あるんですか。
○政府委員(津田實君) 表は別個に資料として差し上げてありますが、検察庁からの報告によりますと、昭和三十五年から三十八年までの四年間平均で、全国地裁の有罪言い渡し被告人総数は五万三千四百四十六人ですが、そのうち刑法四十五条後段が適用された結果、主刑が二個以上に科せられたのは千九十六件あるわけでありまして、その千九十六件のうち、いわゆる中間確定判決が禁錮以上の刑を言い渡したものであるものが四百四十九件、それが罰金以下のものが六百四十七件で、六百四十七件のうち四百九件が道路交通法違反にかかるものであります。
○稲葉誠一君 この破棄の理由を見ると、職権で破棄したものが非常に多いですね。これはどういう理由からなんですか。これは高裁で職権で破棄したということですか。
○政府委員(津田實君) そうであります。
○稲葉誠一君 これはどうしてなんでしょうかね。これはもちろん原審で気がつかなかったからなんでしょうがね。どういうわけなんですか。どこに原因があるんですか。
○政府委員(津田實君) まあこれは推測になるかもしれませんが、それまでには調査が済んでいなかったから、ないものとして看過した、ところがその後判明したというようなことではないかと思いますが、原因はどうもはっきりいたしません。
○稲葉誠一君 そうすると、それは、近ごろ、職権の破棄ばかりでないとしても、年々減ってきているんですか、全体としてこの関係での破棄が。
○政府委員(津田實君) お手元に差し上げてあります表によりますと、昭和三十五年におきましてこの関係の適用の有無に関するものが破棄理由になったものは四十九件、三十六年が四十一件、それから三十七年が三十三件、三十八年が二十四件、それから三十九年は十七件——これは九月まででありますが、と大体減ってきております。
○稲葉誠一君 そうすると、それは原審のときに前科調書に載っていなかったんですか。そういうことでしょうかね、まあ大体。
○説明員(伊藤栄樹君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、起訴後に道路交通法違反で罰金を納めたというようなケースのように、載っていなかったものもありましょうし、あるいは、載っておったのに裁判所が看過した場合もあるでしょうが、そのどちらがどのぐらいの割合かということはちょっと判明いたしておりません。
○稲葉誠一君 だから、検察官が求刑のときに新しい前科調書をとって出すということにすれば、相当こういうふうな弊害というか、というのは減ってくるのじゃないですか。そういうふうなやり方はしていないわけですか。初め第一回のころに前科調書を出しちゃうわけでしょう。裁判が一年、二年続いても、前科調書は検事としては出さないわけでしょう、実際は。
○説明員(伊藤栄樹君) これは求刑の段階でまた前科調書をとればよろしうございますけれども、御承知のように、最近審理が非常に促進されておりまして、あまり第一回公判から求刑までが間がないということになりますと、それができかねますので、現在、被告人の控訴であれ検察官控訴であれ、控訴がありました場合には、もう一回前科調書をつくってこれを検察官の手持ち記録とともに高等検察庁に送付をするということによって次善の策を講じているわけでございます。
○稲葉誠一君 ですけれども、こういうふうな形で今度は禁錮刑以上ということになればまた違ってくるとは思いますが、罰金刑で確定判決が遮断されるということであると、求刑のときにはわかったけれども、求刑から判決までの間に起きて、確定判決があったというときにはもう裁判所にもなかなかわからないし、また、裁判があってから確定するまでの間にまたこれがあったということになってくると、全部裁判が法令違反というか、というふうなことで破れてしまうということになるわけですね。現在の場合はそういう危険性が、技術的なことでつまらないといえばつまらないのですけれども、そういう変な危険性があるわけですな、現実的には。
○説明員(伊藤栄樹君) 理論上はあり得るわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、現在、罰金の確定判決で遮断しておったものを、禁錮以上の刑に処するものに限ると、こういうふうになってきた一番大きな原因はどこにあるわけですか。
○政府委員(津田實君) ただいま、原判決破棄という理由になったという事件も少なからぬ数あるわけであります。これは明らかに手続について複雑さを加え、手数を加えるということに、関係者ことに被告人にとりましても不利益であるということになると思います。それは結果的にそういうのが防げるということ。それからもう一つは、現実面におきまして、いまの前科調書を、もっと厳格にすれば、求刑の際あるいは場合によっては判決直前にまでとって出すというようなことをしなければこれは防ぐことはできないということになるわけでありますが、そういう手数を一体かけてまで遮断しなければならないかということになると、それはそういうことではないということになりますと、むしろ遮断しないとするほうが審理の促進その他関係者の手数を省くという上において非常に便利であるということになるわけであります。それからもう一つは、先ほど申し上げました二刑言い渡した結果、執行順序の変更の問題、先ほど御指摘がありましたが、そういう問題につきましても遮断しないことにするほうが便利であるというような利点がある。そういうような諸般の点を考えまして、改正刑法準備草案にあるごとくにしたほうがよろしいという結論になったわけであります。ことに、現在年間数百万という罰金あるいは科料刑が交通事件について起こっております場合にはなおさらであるというわけであります。
○委員長(石井桂君) 速記をとめてください。 〔速記中止〕
○委員長(石井桂君) 速記をつけて。 それじゃ、暫時休憩いたします。 午後六時二分休憩 〔休憩後開会に至らなかった〕