予算委員会防衛図上研究問題等に関する予算小委員会 第11号
- 発言数
- 22 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 1
- 開催日
- 1965/05/13
会議録
○松野小委員長 これより小委員会を開会いたします。 防衛図上研究問題に関する件につき調査を進めます。 前会に引き続き質疑を行ないます。川崎秀二君。
○川崎(秀)小委員 防衛図上研究問題の小委員会が設けられましたのは、いわゆる三矢研究という問題に端を発していることは御案内のとおりであります。すでにこの問題が起こりましてから三ヵ月近くたちまして、その間におきましてこの問題に対する世論というものも、防衛の必要ということは十分認め、同時に議会主議というものはあくまでも守られなければならぬということに貫かれておると思うのです。当初岡田委員が提起した当時は、防衛当局のこの問題に対する答弁の不用意、あるいは総理大臣自身の御発言などもありまして、意外な波紋もあったわけでありますが、もはやだんだん問題も究明され、実態がわかったように私どもも感じております。ことにわが党からは筆頭に江崎委員が御質問をなさいまして、それを今日あらためて速記録で読みますと、わが党の主張は江崎質問で大体出尽くしているように感ずるのであります。しかし、私は幼少のころから軍の拡張あるいは軍部の政治関与というものに対しまして非常に特別の関心を持ってながめてきておるわけであります。戦時中に、体格がいいものですから当然召集されたわけでありまして、北支の戦線に四年十ヵ月おったことがあります。その当時、不幸にも大東亜戦争が昭和十六年十二月八日に勃発をしまして、私は済南の十二軍の隷下におったわけでありますけれども、アメリカ、イギリスのごとき大国、ことに資源の多い、生産力の旺盛な国家を向こうに回して戦争するということについてはわれわれ民間から召集された者としては当時非常な疑いを持って、当日将校集会所におきまして、この戦争の見通しは非常に困難だということを同僚の主計中尉などと話をしましたところ、参謀の忌諱に触れまして、自来約七、八ヵ月ほど相当異端的将校として取り扱いを受けておりました。幸い経理部将校の中でよくものごとのわかる、かつて外国などにも行った人が部長でおりましたので、君はなるべく早く東京に帰ったほうがいいというので、逆にうまく召集解除になりました。松前重義氏のように東条大将の忌諱に触れて前線に出される者もあれば、あるいはわれわれのように、当時小輩ではありましたが、おやじの教育などの影響もありまして、父子ともに自由主義者の異端者である、こういうことで幸いに帰ってこられたのも、命があったのもそういう反軍的言辞がもとでありまして、今日あるのは全くそのことのゆえであります。したがって軍部の横暴の歴史というものにつきましては、政治のあり方とともにひそかに前々からかなり研究もいたしております。もはや自衛隊にはさようなことは二度と起こらぬというふうに思っておりますけれども、夢物語りにしてもああいうものが一応出ました以上は、自民党の党是というものはむしろ自由主義の見地であり、議会主義の見地である。軍の政治関与は絶対排撃。自衛隊が将来シビリアンコントロールのワクを出るようなことがあるならば、われわれはこれを防がなければならぬ。この小委員会に加えていただきますときに、三木幹事長と二時間ほどいろいろ御懇談申し上げたわけでありまして、いつかはそのことは委員会の席上で明らかにしなければならないということの意味を含めまして本日質問をさしていただきたいと思うのであります。しかし、もうずいぶん材料は出ておりますので、むしろきょうの話は、軍の政治関与という問題では私の所見を申し上げますが、あとは、自衛の必要は十分江崎君の意見と同様でありますので、あらためて申しませんが、常識的な問題としていろいろ伺ってみたいと思うのであります。 この想定によると、北鮮方面で事態が急迫し、南鮮に戦禍が及ぶということを予想しての想定であったようですが、いまは防衛庁では、あらゆる方面からする直接侵略というものも研究されておると思うのです。一番研究をされておるその中心は、方向というよりは海中、海上方面からする侵入、あるいは空から来る侵入というものに対して当然向けられておると思うのですが、そういういろいろな角度での研究を進められておるのかどうか。何か北鮮、中共というものにのみ限定をして、その可能性が何万分の一かはあるのかもしれませんが、そういう重点的観測ではなくして、あらゆる方向からする侵略というものに対して常に研究を進めておられるのかどうか、そういう具体的研究があればお示しをいただきたい、こういうことであります。
○小泉国務大臣 劈頭川崎委員から述べられました三矢図上研究に関連をして、シビリアンコントロールの問題、軍の政治関与というようなことが絶対あってはならない、またあらしめてはならないという川崎委員、何と申しますか、親譲りの年来の強い御主張、考え方に対しましては私もよく前々から了解申し上げ、またそのお考え方によって議会活動をしておられる点については平素敬意を表しておるところでございまして、今回の御意見のあるところも十分了解いたしまして、さような御心配がないよう私ども万全の努力を続けていかなければならないと存じております。 最後に御指摘のありました自衛隊のあらゆる面についての一朝有事の際に即応する研究の問題でございますが、これは当然自衛隊本来の任務を遂行する上におきまして、陸海空それぞれあらゆる面について研究や、また作戦の勉強等をいたしておるのでございますが、この三矢図上研究にあらわれましたような北鮮に重点を置くとか、あるいは中共に重点を置くとかというようなことはないのでございまして、たまたま三十八年度の図上研究の想定の設問にこういうことがあらわれてなされたということでございまして、現在の情勢下において特にどちらに重点を置いて研究をしておるというようなことは格別ございません。 なお年度ごとに陸海空でそれぞれ研究をいたしておりますので、その点については防衛局長から詳細にわたって答弁いたさせます。
○海原政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたとおりでございまして、年度の自衛隊の防衛計画、警備の計画を立案作成します場合には、その年度においてもし万一の事態が発生した場合にはどのように対処するかということについて研究をしております。したがいまして、その場合にはいろいろな事態が想定されるわけでございます。先日この委員会におきまして社会党のほうからも、今般の三矢研究のように、朝鮮で問題が起こって、それが逐次日本に波及してくるというようなことでなしに、むしろある日突然に攻撃を受けるというようなことも想定すべきじゃないかというようなことも御意見を承っております。そういうことも含めまして、いろいろな事態を想定して研究をしておる、こういうことでございます。
○川崎(秀)小委員 いろいろな事態を想像して研究を行なっておるそうでありますから、まあこれは当然のことであり、われわれもこれを主張しておるわけですが、ここにお話しのこととだんだん焦点を合わしつつ私は議論をしていきたいと思うのです。 そうすると、現在の自衛隊というものはあくまでも自衛ということだけを考えているわけですから、外部からする圧迫、侵略というものがなければそれに対する対抗手段はとらないということの研究であると思うのです。したがって、同時に考えられることは、世界の軍事情勢に対する分析というか、国際情勢のうち政治情勢というものは、いろいろ研究をしておるものは他にもあるわけですね、外務省にしても、あるいは政治家自身にしても。しかし軍事情勢ということになりますと、やはりいささか特殊なものでもありますし、そういう世界の軍事情勢に対する分析というものは、防衛庁自身がやるとともに、軍事評論家であるとか、あるいは諸外国の情勢に相当たよらなければならぬ面があるのではないかというふうに思うのですけれども、こういう点で防衛庁ではどういう作業をしておられるのか。われわれはそのことをかいまのぞく機会もないわけです。やはり自然友邦的関係にあるアメリカの国防省の情報というようなものが主であるのか、その点、ひとつこの機会にお教えを願いたいと思う。
○海原政府委員 世界の軍事情勢全般につきましては、外務省のほうでそれぞれ出先の公館等から軍事情勢をとっております。これにつきまして分析検討しておられますので、私どものほうとしましては外務省のほうからその結果をいただいております。それが一つでございます。 第二には、この日本の周辺の自衛隊の任務達成上必要と思われます国際情勢等につきましては、自衛隊みずからもそれぞれ内部部局あるいは各幕僚監部におきましての調査、情報ということもございますので、そこで寄り寄り研究している。この結果につきましては外務省とも時々おりおり情報の交換等をいたしております。 さらに少し高いレベルになりますと、国防会議事務局におきましても、関係参事官会議、あるいは幹事会議ないしは議員懇談会等におきまして、世界の軍事情勢あるいは極東の軍事情勢等の検討を行なう、こういうことでございます。 さらに先生おっしゃいましたアメリカとの関係でございます。これは、在日米軍司令部のほうから必要な情報につきましては供与を受けております。さらには太平洋軍司令部におきまして、年一回程度陸海空の情報幕僚が連絡に参りまして、そこで意見の交換をしております。 これが現状であります。
○川崎(秀)小委員 それらの情報等については、当然防衛庁長官に種々情報が提供されると思うのです。しかし、今回の三矢事件のことにつきましても、ああいう質問が岡田委員から発せられるまではあまり御存じなかったように思う。それで私は、そういう点非常に遺憾なことが多いので、だんだん——日本自身はもう攻撃的軍隊は持っておらぬ、自衛だけである。しかし軍事情勢については、ベトナムを初めとしてアジア情勢が非常に緊迫をしているし、中南米のことですから波及するおそれはないけれども、ドミニカにおいてはああいう軍事行動が行なわれておる。これらは当然国防会議の議長である総理大臣の耳にも目にも相当情勢が的確に反映されるようにする仕組みができておるかどうか、どうもその点不安をわれわれは感ずる。佐藤首相は、議会主義擁護の立場から、あのときにさような不届きなということも言われて、とっさに議会主義者としての本領を示されたと私は好意的に解釈しておるけれども、とにかく事情を御承知なかったということでありますので、実はこれから展開しようとする質問にも触れてくるわけですが、たとえばベトナムにおけるアメリカ軍の北爆の効果というようなことについても、的確に報告がされておるものかどうかということを不安に感ずるのです。その点で、国防会議議長の周辺に軍政両面にわたってのスタッフというものはつけておられるのかどうか、これをひとつ承っておきたい。
○北村政府委員 お答え申し上げます。 ベトナムの問題につきましては、去る四月七日の国防会議の国際情勢懇談会で、外務、防衛両当局から、その政治上あるいは軍事上の見通しについて御説明があり、それを基礎にして御答弁がありました。御報告をいたしておきます。
○川崎(秀)小委員 現在のベトナムの問題について本日の席上でお話をするのは、外務関係のこともありまして、政治的な話はあまり申し上げたくないと思う。ただ私の所見としては、アジアの一角に戦乱が長く続いて、ことに二十年も戦禍に悩まされておるベトナムが一日も早く平和安定の日を迎えてほしいという意味で、日本もアメリカに対して言うべきことは言うべきじゃないかという考えをいたしております。これはもうわれわれの政治的な姿勢であるということはおわかりであろうと思うのです。しかしそういうこととは別に、実は日本の新聞にもベトナム情勢の分析としてベトコンの非常な民衆の心に食い入った戦術、それからベトナム戦争は共産主義の戦術のみでなくして民族主義運動であるというようなことが、過去三週間あたり大きく報道されてきました。そういう要素もあったのですが、実は今日あたり毎日新聞などの一角に出ておる記事によると、北爆の効果、あるいは南ベトナムの政府軍がやや立ち直って、ベトコンに対してかなり締めつけを行なっておる。したがって情勢は必ずしもいままで報道されておった筋とは違う面も出てきておるのではないか。私は中曽根康弘君が帰ってきてからまだ十分意見を聞いておりませんが、これも聞くところによると、北爆の効果というものは想像以上であるということでありまして——そのことによって戦争は終結をしない、ほんとうの戦争ならば、歩兵が行かなければ最後の勝利とかいうものはないわけであります。ことに民心が離れておるものを、いかにアメリカが軍力が強大であり、ソ連が出ないからといって戦争は終結しない、やはり和平の交渉が最後には行なわれる、こう見ておるわけです。これは私の見解ですけれども、北爆の効果というものにつき、あるいは北爆の戦果というようなことについて防衛当局はどんな情報を持っておられるのか。やはり時々得られた情報については、日本国民を惑わせないように、そのことが悪いようにしてもいいにしても指導すべきではないかというふうに私は思うのです。いままでアメリカ軍がいわゆるエスカレーション作戦開始以来投じた爆弾の量、橋梁の破壊、道路の途絶というようなものにどういう程度のものが行なわれておるのか、どうもわれわれにはよくわからぬ。しかし、ニューヨークタイムズその他を見ると、これは自国のことですからかなり詳細に書いてあるけれども、その点がいまのベトナム問題に対するわれわれ政治家の目をも間違わせて判断させるということの結果になりはしないかというふうにも思いますので、防衛当局としては、米軍の北爆を開始して以来の戦略的効果というものはどの程度あがっておるのか、的確にひとつ伺いたい。けさ私は与党質問ですから、何も鋭いことは言わぬけれども、そのことだけ一ぺん聞いておきたいというて事前予告をしておいたのですが、どんなことですか。
○小泉国務大臣 ベトナム情勢の情報につきましては、先ほど防衛局長からも申しましたように、外務省を通じて連絡があり、また国防会議の懇談会等において情報を持ち寄って懇談をいたしておるのでありますが、防衛庁としては、正式と申しますか、公式にはアメリカ側から情報はないのでありまして、やはり外務省を通じて行なっておるというのが公式のものであります。しかしながら、実際においては日本の陸海空の自衛隊の各幕僚監部が在日米軍と常時事務的な連絡をいたしておるのでありますので、非公式ではありますが、そういう事務的打ち合わせの席においては、そのときの情勢によっては進んでアメリカ側から非公式にいろいろな情勢についてのお話があることもありますし、また場合によってはわが方からアメリカ側に対して、こういうような報道があるが実際はどうかとか、あるいはいろいろなことについて内輪で隔意ない質疑応答と申しますか、懇談の席で情報を得ていることもこれまた事実であります。そういう面について、重要なものは統幕議長あるいは各幕僚長から私どもにも報告がありますし、またときによっては少数の幹部会議の席上等にいわゆる内輪のいろいろな情報を持ち寄って検討はいたしておることは事実であります。さりながら、これを防衛庁の正式見解としていま川崎委員が言われるように国民に明らかするために特に進んで公表をするとか、あるいはPRするとかいうことは、いままでもいたしたことはありませんし、また防衛庁当局としてそういうことをなすべきではない、やはり正式ルートは外務省で、外務大臣からおりに触れてそういうことはなすべきであるということで、防衛庁としてはただ情報を取って内輪で検討しておるというのがありのままの実情であります。
○川崎(秀)小委員 内輪の話ということで聞きましたが、それではまだもの足りないので、こういうふうにされたらどうかと思うのです。別に防衛庁がアメリカのとっておるものと協調するとかいうようなことではなしに、事実を国民に知らせる意味で、政治を離れての軍事だけの部面における動きというものは、やはりベトナムにおける最近の事情をキャッチするならば、知らしたほうがいいと私は思うのです。それについてはやはり外務省しかないというならば外務省でもいいですけれども、とにかく近来において、第二次大戦が終了して以来の、悲しむべきことであるけれども、大きな作戦が展開されておる。ここのところはやや小休止の状態でしょうけれども、新聞の紙面を見ても、ベトコンがどこの村を襲って全滅させたという記事のほうが非常に多く載っておる。まあ民族解放戦線という意味でそういう記事が多く載ることもけっこうです。両方正確に報道するのがわが国の言論機関の任務でもあるし、いま正しい姿が出ておると思うのですが、しかし、北爆をやったということだけは載っておるけれども、効果はあまり出ておらぬ。しかし現地における状況はかなり変化しておるという。というのは、私どもも正確に言うと約一ヵ月くらい前からそんな気がしておった。たまたま日本テレビの放送できょうあたり問題になっているからこれもひとつ伺っておきたいと思うのですが、あのテレビの三人の連中が行っての話は、いままで聞いてきたことと少し違う。それはなるほどベトナム戦争というものは爆弾で解決はできない、空爆で解決はしない、けれども、サイゴンがあすにも包囲されて落ちるとか、あるいは南ベトナムの政府が持っておるのは点と線だけだという、それとは幾らか様相が違ってきつつありやしないか、従来も違っておったんじゃないかというようなことを三人のテレビ班員が直接言っておりました。それが最近における北爆の効果ということについての新しい情報に変わりつつある最初のきっかけであったように私は思うのですけれども、そういう意味で、防衛庁では大いに勉強していただきたいと思う。 それからいまの日本テレビの放送、私も、何日でありましたか、四、五日前に一番しまいのほうを見ておったら、これは実に残酷な戦争の様相を描いておる。十時半ですか、時間が時間だけにまだ子供も見ておる可能性があるというので、日本テレビでは一部やめたようなことですけれども、ああいう問題については防衛庁長官どう思いますか。やはり戦争の実態を、まあ子供は別だけれども、日本国民の一般には知らして、戦争の終結が一日も早いことがいいか、あなたの御所見をこの際承っておきたい。
○小泉国務大臣 NTVのいま川崎小委員が御指摘になりましたベトナムの戦闘の模様と申しますか、そういうことについての放送が大きな刺激を与えて問題になっておることは私も聞き及んでおります。実際の画面は見る機会がございませんでしたが、非常な大きな問題になっておる。またどういう場面がテレビの上で展開されたということも詳細に承っておりますが、私の聞きますところによると、税関では、あまりにも残酷であり、公序良俗に反するから、こういうことがテレビで放映されることは好ましくないというようなことであったのか、日本テレビにおいては、そういう税関の勧告と申しますか、そういうことを聞かないで公開をしたということも、真実かどうか知りませんが、私は聞いておるのであります。映画には映倫というものがありまして、相当審査をされておりますけれども、テレビは各社が良識によって自粛していく以外にないのでございます。こういうことは、戦争の実態を知らせるということよりも、少し限度を越えて、あまりにも残酷であり、また実態を知らしむること以外に、限度を越えて一方的な宣伝に使われておるというようなきらいも私ども感ずるのでございまして、こういうことははなはだ好ましくないというふうに考えて、きわめて遺憾であったと私は考えておる次第であります。
○川崎(秀)小委員 私は私としての所見もありますけれども、あなたのいまの段階でのお話を伺ったことだけにしておきましょう。 文官優位という原則は厳として貫かなければならぬ。これは江崎さんが与党の質問の際におきましても明確に述べられて、そのいわれ、根拠についても社会党のほうからも相当追及もありましたし、この国会を通じてこのことは党派を越えて一致した。防衛の必要性の点については相当の距離がある、これが今度の三矢研究会の大勢のようでありますが、いまの自衛隊の組織あるいは編成の状態で文民優位というものが最後まで貫かれ得るものかどうか。防衛庁長官の回りにいる文官の諸君は、ほとんど一握りの者にしかすぎない。一方制服というものは、各師団、各隊において相当優秀な、少なくとも軍事というものに対してはセレクトされたエリートたちだろうと思うのです。そうすると、国内情勢からはもう二度と昔のような軍人優位のようなことが起こる可能性もないが、外国でいろいろな事件が起こる、たとえばドミニカの問題あるいは東南アジアにおけるもろもろの国における反乱が起こると、ああいうものは後進国で起こっておることであって、近代文明国、ことに民主主義を基礎とする国においては起こるべきものではないということが一般には定説づけられておって、国民の常識にもなり、憲法の精神にもなっておる。けれども、自衛隊の中では、いまの自衛隊ではどうも自分たちの意見も十分上層部にも反映しないというようなことから、やはり実力を持ておる自衛隊の諸君の中には、外国情勢の刺激によってふらちな考え方を起こさない者がないとは限らないのであって、これが今後の国際情勢の進展あるいは東南アジア戦局の進展いかんによっては起こらないとは限らない。そこで私が思うのには、文民優位ということは国会優位であり、国民優位ですから、国会が健全である限りはそのようなことは絶対に容赦しないし、また守られておるとは思いますけれども、それ以前において、やはり防衛庁内部において文民優位の原則を貫くためには、もっと防衛長官のまわりの文官の中に、あなた方は優秀でしょうけれども、優秀なスタッフを組織する考え方があってしかるべきではないか。また先ほど私が指摘したように、国防会議議長たる総理大臣の周辺にも、政治一般常識というものが非常に卓越した人々を集めて、そういうことのないように平素から組織づくりを行なっておくべきではないかというように考えるのですが、こういう考え方に対して小泉防衛長官、どう思いますか。ひとつ御所見を承っておきたい。
○小泉国務大臣 今回の三矢図上研究の問題からシビリアンコントロールの問題が大きく論議をされたことは、将来のためにもたいへんけっこうなことであったと考えておるものでございます。またいままでの数次の質問においてもお答えいたしましたとおり、シビリアンコントロールが侵されておるのではないか、あるいは制服が政治優先の原則を侵すおそれがあるのではないかというような疑問も一時ございましたが、そういう御心配は全く無用であって、神経質なくらいに自衛官の諸君はそういうことがないように、現にこの民主主義体制下の自衛隊の本義というものに非常な関心を払い、慎重な態度をもって終始しておる。また三矢図上研究の問題が起こってそういう疑惑を受けたことはまことに自分らとしても申しわけない、また本意でもないということで、そういうことがなかったということをこもごも申しておるのが実情でございまして、私はそういう諸君の心情を察しましても、そういう誤解をば一日もすみやかに解かなければならない。そうじゃなければ自衛官の諸君にあまりにも気の毒だというような気持ちがいまもって続いておるわけでございますから、その点は御心配がないようにお願いをいたしたいと思います。しかし、いままでも申し上げましたとおり、これで完全無欠であるということは私申しません。今後ますますこのシビリアンコントロールの確立のためにわれわれは大いな努力をしていかなければならない。アメリカやイギリス等においては、御承知のとおりシビリアンコントロールの制度というものは二百年の歴史を経て、その間にいろいろな曲折があり、いろいろな面に努力がなされて今日りっぱなシビリアンコントロールというものが完全に行なわれておる。日本においては戦後わずか十数年のことでございまして、その歴史も浅いし、その経験というものもきわめて短いのでございますから、むしろ今後の努力に待たなければならぬ点も大いにあると私は考えておるわけでございます。そういう点からして、いま川崎委員が申されましたように、将来にわたって、今回のこういう問題を契機としてさらにシビリアンコントロールをば徹底をいたし、また完全な運用をするために一そうの努力をしなければならぬのじゃないか。あるいは防衛庁長官の周囲の内局の事務も、いままでももちろん十分ではございませんが、さらにさらに強化していくということは、これはもう望ましいことでございます。また国防会議議長であり、自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣の周囲にもそういうスタッフをつくることは、私は非常にけっこうだ、むしろつくるべきであるということを私は感じております。またここに国防会議事務局長も来ておられますが、国防会議事務局のスタッフを増加して、その内容を充実し、さらに拡大をしてりっぱなものにしていくということは、私は当面の急務でなければならぬということは痛感をいたしておる次第でございまして、川崎委員の将来に対するお考え方、御構想、また御関心のほどについては全く同感でございます。
○川崎(秀)小委員 先般、バートランド・ラッセルの本を読んでおりましたら、イギリスでは陸海空三軍の予算を下院に提出するときに、必ず三軍の担当大臣は、この予算は国民の利益に反するものではない、また同時にこの予算を出す場合において、軍はいかなる場合においても国民の意思に対して実力を持っておるからといって国内で反乱行為に出る等のことは一切しないということを言明して、それから審議に入る、これが行なわれておるかどうか、実はイギリス議会政治研究家の木下広居君に頼んで調べてもらっておったが、本人も何か都政の刷新のことで忙しいので、十分にそこまでいかなかったようでありますが、そういうことがもし原則としてずっと行なわれておるとすれば、これはやはり大事な模範とすべきことではないかというふうに私どもは考えるのであります。それにつけても、小泉防衛長官あるいはその前の志賀防衛長官、江崎先生等が防衛庁長官になられたときに、第一にやはり国防の充実、国民の生命、財産の保護という崇高なる任務にわれわれは徹しているとともに、いやしくも政治に容喙などするということは今日の憲法では厳として禁止されておるし、そのことのために戦争の前の軍は国を誤ったんだということは、訓辞としてしょっちゅう防衛庁長官はくどくても言うべきじゃないか。どうもこれはわれわれが三面記事だけ見ておって、実際防衛庁へ自衛隊の勢ぞろいのときに行ったこともないものですから知らないのですが、新聞紙上から見ると、防衛庁長官になると栄誉礼とかいうもので敬礼をされて、それで何かえらい感激をして、そういう面だけが出るというのははなはだよろしくないように私は思っておるのですよ。だれかそのうちには一人変わり種が防衛庁長官になって、そういうことも締めてかからなければいかぬ。それでないと、そういう面が多少でも出ると、これはとめどがない。一ぺん出れば、とにかく国のためあるいは民族のため、いろいろなことを言うて軍の経費は膨張するし、しまいにはだんだん見えざる政治関与を行なってくるのであって、そういう点で、やはり文民優位ということはただ言っておるだけではいけない。防衛庁長官自身がただいま仰せられたような政治哲学を現実にお示しいただく。自衛隊が日陰者のような存在になっておった期間もずいぶん長かったわけですから、今日そういう姿を見て非常に感激する点もあるでしょうけれども、そういう面ばかりが強調されない姿勢をひとつぜひとっていただきたい。そういう意味で、そういう教育は常に行なわれておるものかどうか、そういう教育の実態があればこれこそお示し願いたいと思うのです。
○小泉国務大臣 栄誉礼を受けて歴代の防衛庁長官がそれに陶酔しておるなんというようなことは絶対にございません。私どもはそれに陶酔しておるわけではないのであります。これはやはり部隊の統率の面から、長官として一つの栄誉礼として行なわれるものでありまして、そういうところにいわゆる自衛隊の厳正な規律というものが保たれておるのではないかと私は考えております。シビリアンコントロールということがいろいろな面から言われますが、私はせんじ詰めれば、シビリアンコントロールというものは、長官が自衛隊員全体から信頼をされるということです。いわゆる長官と隊員との間の相互信頼が一番シビリアンコントロールの根底でなければならぬと私は確信をいたしております。そしてまた、長官たるものは、自衛隊員に信頼をされ、心服される長官でなければ、このシビリアンコントロールというものはいかに制度があってもやれないのだ。私はそういう考え方から、今日まで防衛庁長官としてやってきたつもりでありまして、長官が隊員を完全に握っていく、精神的にもこれを掌握をしていく。隊員も長官を信頼をしていくというところにシビリアンコントロールの私は根底があり、また終局があるのだというふうに考えておるのであります。教育の面につきましても、常時あらゆる陸海空の学校において民主主義教育、政治優先ということは厳にこれを励行をいたしておるのでありまして、詳細につきましては政府委員から答弁いたさせます。
○島田(豊)政府委員 自衛隊員に対する精神面の教育につきましては、ただいま長官から御説明のなされたとおりでございますが、さらにそれをやや詳細に申し上げますと、自衛官の精神面の指導のよりどころというものは、自衛隊法の五十二条に「服務の本旨」というものがございますけれども、これに基づいてやっておりますのと、それからもう一つは、先般防衛庁におきまして「自衛官の心がまえ」というパンフレットを作成いたしまして、これを各幕僚監部を通じまして、部隊あるいは学校に徹底をさしておるのでございます。この「自衛官の心がまえ」は、使命の自覚という問題、それから個人の充実、責任の遂行、規律の厳守、団結の強化、こういう五つの項目を示しておりますけれども、その項目の前文といたしまして、自衛隊員として民主主義国家における自衛隊のあり方、自衛官としての心がまえ等についてその基本を示しておるのでございます。特に民主主義との関係につきましては、ちょっと読ましていただきますと、「自衛隊はつねに国民とともに存在する。したがって民主政治の原則により、その最高指揮官は内閣の代表としての内閣総理大臣であり、その運営の基本については国会の統制を受けるものである。」ということを明確にいたしておるのでございます。 また政治、思想的な活動に関与しないということも、この前文において強調いたしておるのでございます。これは、各学校、部隊を通じまして普遍的にこの趣旨が徹底いたされておるというふうに考えておりますが、幹部の要員教育は、御承知のとおりに、防衛大学校でやっておりますし、また初級幹部としての教育は幹部候補生学校でやっておりますが、防衛大学校におきましても、憲法の時間あるいは政治学の講義の時間におきまして、新しい憲法の理念、特に国会中心主義でございますとか、あるいは基本的人権の尊重ということでございますとか、あるいは国民主権主義、こういう点についてはかなりの時間を使って文官の教官が講義をいたしておるのでございます。それから政治学におきましても、独裁政治と民主政治との違いというような点につきましては、明確にこれを認識させ、把握させるということに力を入れております。 また同時に、愛国心の問題あるいは幹部としての必要な指導力、統率力、徳操というふうな問題につきましても、あわせて指導いたしておりますことはもちろんでございますけれども、民主主義の教育につきましても、もちろんそういうことをやっております。 また幹部候補生学校、陸海空それぞれございますが、そこにおきましても、民主主義国下の日本国民、なかんずく自衛官としての愛国心、あるいは愛民族心、あるいは戦争の防止抑制を基調とする近代国防の意義と防衛力の地位、民主政治の統制下にある自衛隊の本質、運営等について明確な基礎知識を与えるとともに、幹部自衛官としての誇りと忠誠心を確立させる、こういうことを基準として徹底しておるのでございます。こういう点の教育は、われわれといたしましてはかなりな成果があるというふうに確信いたしております。
○川崎(秀)小委員 そういうぐあいに内部だけの教育でなしに、部外から講師を呼んでくるというようなことも活発にやっていますか。
○島田(豊)政府委員 これは防衛大学校におきましても、さらに幹部候補生学校、また高級の幹部につきましては各自衛隊に幹部学校というのがございます。また防衛、国防につきましての、あるいは自衛隊の運営管理というような問題につきましては防衛研修所というものがございまして、高度の教育をやっておりますが、いずれもそういう面での権威の方に来ていただきまして、それぞれの専門的な見地からの教育を行なっております。
○川崎(秀)小委員 私は、防衛庁長官になられる方の言動あるいはその性格によってかなり自衛隊そのものに与える影響というものも大きいように思います。国防会議の議長である首相でも同じことだと思う。わが国の戦後の首相は、幸いにして現在の首相に至るまで一人を除いては自由主義の系列からずっと出ていることはいいことだと思う。その点で、非常な信頼を小泉長官の上に寄せるんですが、あやまって自衛隊員を激励するのあまり、自衛隊員は国のシンボルであるというような考え方を政治家がおだてて言うと、これはえらいことになると思うのです。日本は今後いかなる場合においても平和国家の姿を貫かなければならぬ。自衛隊員にわれわれは見えざる敵から生命、財産を守ってもらっている感謝はあります。犠牲という意味での非常な感謝は私どもは持っているんですが、しかし、それが発展する日本のシンボルかのように置きかえられると、そういう観念が頭のどっかにあると、国は次第に急坂を下るように軍国主義的な色彩を持ってくるのであって、これは厳に政治家自身が戒めてかからなければならぬ最大の急務だと私は思っているんです。そういう意味で、防衛庁長官の先ほど来の哲学に信頼を寄せるわけですが、自衛隊は政治関与は絶対ないということを言っておっても、無限の信頼をかりに与えても、何らかの安全弁というものはなければならぬのだから、いわゆる文官優位であれば、先ほど御言明のあったように、防衛庁長官の周囲の組織の強化、文官による組織の強化というものをふだんからし、また総理大臣の周辺を、政治と軍事と双方よくバランスのとれた知識を持つ優秀な人材によって固めて、そうして今日のベトナム問題の処理についても誤りのないように企図していただきたいというふうに私は念願をいたしております。 かなり長く質問をいたしまして、恐縮でありましたが、実はまだまだ材料もあるわけですが、問題になった点は、今まで各委員によって相当論議され尽くしている。ただ、私が冒頭に申し上げたように、自衛の必要というものを自民党員として強く意識いたしております。同時にあくまでも文民優位によるたてまえというものを堅持していただきたい。歴史をこの際繰り返すわけではありませんが、とにかく軍がああいうような大失敗をした根源は、それは、さかのぼれば日本は千数百年というものは武家政治が行なわれておって、おそらくこのような文明国家で千数百年も封建政治の中に没入しておったという国家はない。したがってその余波が大正、昭和の時代に及んだことも、まあ歴史的必然ではあったかと思うのです。しかし国会の言論もはなはだ振るわないで、わずかに尾崎先生はじめ十数人の自由主義者、あるいは社会党の関係でも戦時中に非常に抵抗された方があった。けれども、主流はむしろ保守党の自由主義者たちが身を挺してこれを食いとめようと思ったけれども、非力であのような大東亜戦争になったわけであります。この間うちから実は齋藤隆夫先生、中野正剛氏——中野正剛氏は、一時は戦争をやれと言った方で、途中からやめろと言った、多少問題があったでしょうけれども、今度の三矢研究の問題で一番思い当たる節は、実は昭和十七年だったか、戦時中ですが、食糧管理法並びに戦時動員法の二案を国会に上程をして、当時翼賛会から発展をした翼賛政治会の総会で一気にこれを事前審議と称して可決をして、国会の委員会はむろん省略、翌日の本会議でこれを可決しようとしたときに、われわれの大先輩であった鳩山一郎氏が、国民の糊口に最も関係のある問題をわずか一日にして可決するとは何事である、自分はこの法案に対して十分の意見があるし、たてまえとしては反対であるということを現在の自民党の代議士会の控室で言われたことを思い出します。われわれはそこに立ち会ったわけではないけれども、三木武吉先生、中野正剛の三氏が翼賛政治会の幹部に対して、審議権の放棄ではないか——それと同じようなことがあの三矢研究の問題の中にある、それは国会がそういうふうにしてくれたというふうに書いてはあるのだけれども、何か不吉な予感が、あれだけを見るとするわけでして、どうかそういうことの絶対に起こらないようないまからそういう組織づくり、編制を防衛庁の中で考え、総理の周辺でそういうことのないような安全弁をつくっていただきたい、これが私の熱願であります。 はなはだ粗雑な質問で恐縮でありましたが、防衛長官並びに皆さんに対する質問はこれで終わります。
○小泉国務大臣 将来の自衛隊のあり方につきまして、かつての軍の実例を引かれて、川崎委員からまことに深刻な傾聴に値する御議論を拝聴いたしました。川崎委員は先代の克先生以来父子二代にわたって、いわゆる戦前の軍の横暴を身をもって戦われ、自由主義のために挺身をされた方でございまして、そういう体験を通じての肯綮に触るる御意見は私どもも深く銘記しなければならないと考えます。私も先ほど来当時の情勢をほうふつとして思い起こして、まことに感慨にたえないものがございます。 また川崎委員から指摘されました、防衛庁長官というものの言動や姿勢というものが隊員に及ぼす影響は大きいということでございまして、もちろん私は防衛庁長官の言動、その政治姿勢、長官としての職務のとり方というものが隊員に影響力がないようでは私は長官としての資格はないと考えております。それがあって初めていわゆる長官と隊員というものが一体となってシビリアンコントロールの完全な運用ができるのでございます。 私も、いま川崎委員から大事な点で御指摘がありまして、もちろん自衛隊員が国の平和を守り、国民の生活を守るために日夜の訓練を励んでおるという点では敬意を表する、しかしながら、それが限度を越えて思い上がらすようなことがあってはならないという御意見に対しては、私も同感でございまして、あくまでも自衛隊は国民とともになければならない、国民のための自衛隊であるということを、私は長官就任以来あらゆる機会にこのことばをば隊員に申さないことはないのでありまして、やはりどこまでも国民とともに自衛隊は進んでいくべきであるということを常時隊員に訓示をいたしております。そうして国民から信頼をさるる自衛隊になってもらいたいということを言っているわけでございまして、この信頼という中には、もちろん川崎委員その他諸先生が心配をしておらるるような、いわゆる政治に優先するというような思い上がりがあってはならないということももちろん含めて、あくまでも民主主義政治体制下における全国民に信頼をさるるりっぱな自衛隊員であるように、私は教育訓練に努力を尽くしてきたつもりでございまして、本日のただいまの川崎委員のいろいろな御意見に対しましては、われわれ将来ともに十分肝に銘じて、川崎委員の御心配がないようにしていかなければならぬということは深く感銘をいたした次第でございます。
○松野小委員長 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時十七分散会