本会議 第5号
- 発言数
- 10 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1965/01/27
会議録
○議長(船田中君) これより会議を開きます。 ————◇————— 国務大臣の演説に対する質疑
○議長(船田中君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。和田博雄君。 〔和田博雄君登壇〕
○和田博雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、先日行なわれました佐藤総理大臣の施政方針演説に対しまして、若干の質問をいたしたいと思います。(拍手) 総理が、昨年の臨時国会におきまして、数回にわたって答弁の取り消しを行ないまして、その方針の動揺を隠しきれなかったのに比べますと、今度の演説では、日米会談の成果を誇示しまして、外交政策だけではなしに、国内政治におきましてもいささか気負った感じさえ受けたのであります。 私は、まず総理に対しまして、日本の国際的な地位が高まったというかけ声だけを高くしまして、肝心の国内政治経済の実態から国民の目をそらすようなことがあってはならないということを警告しておきたいと思います。(拍手)物価の問題一つとってみましても、一日でもこれをほっておきますことは許されないほどに深刻な苦しみを国民に与えております。経済の高度成長政策から生まれましたひずみの問題をそのままにしておきまして、あるいはそれを隠すために、米国と対等になったとか、また復古調の精神主義を強調して、問題をごまかすようなことがあってはならないのであります。(拍手)これらの非常に重要な国内政治の全般の問題につきましては、すべてその質問は同僚の議員に譲ることにいたしまして、私は、主といたしまして外交問題を中心にして、先般行なわれました日米会談に触れながら若干の質問を展開していきたいと思います。 外交方針におきまして、総理はしきりに自主外交を強調されております。およそ主権を持った独立国が外交を行なうにあたりまして、自主的な外交を行なうのは当然のことでありまして、国民のだれ一人としてこれに異議を申し立てる者はございません。自主外交をいまになって政府がことさらに言うことは、いままで自主性を欠いた外交を行なっていたということを自分で認めたものとしか考えられないのであります。(拍手)問題は、むしろ自主外交の具体的な内容とその方法にあると私は思います。 私は、政府のいわゆる自主外交の一つの試金石として、沖繩をとらえてみたいと思います。現在沖繩は、極東におけるアメリカ軍の最大の基地であり、核武装された基地となっております。日本の政府は沖繩に対しまして施政権を持たず、八十万の同胞は、戦後二十年たった今日においても、なお依然としてアメリカの実質上の軍政下にあるのであります。日本復帰の願いは全く無視されております。この現状に対しまして、自民党と政府はいままで一体何をしてきたでございましょうか。(拍手) さきに、前池田総理がケネディ前大統領と会談するために渡米するに際しまして、社会党は、本院におきまして沖繩、小笠原の祖国復帰を要求する決議を行ないまして日米会談に臨む日本側を激励することを提案いたしました。ところが、アメリカ側を刺激してはならないというので、これを握りつぶしたのは自民党であります。また、社会党は、沖繩の核武装を撤去することをアメリカ側に要求するように再三にわたって政府に申し入れておりますが、政府はがんとして聞き入れません。社会党は、さきに第一次の視察団を沖繩に送りまして、さらに来たる二月十六日から第二次の視察団を送りまして、沖繩問題に全面的に取り組む決意があることを、この際に表明しておきたいと思います。(拍手) およそ自主外交というものは、私の考えでは、日本国民の全体の意思を代表しまして、それを率直に相手方に主張することであろうと思うのであります。(拍手)外国の政府の意向や方針を日本国民にうのみにさすというのであれば、それは自主外交ではありませんで、他主外交と私は言ったらいいと思うのであります。(拍手) 質問の第一点は、日米共同声明によりますと、沖繩、小笠原諸島につきましては、極東全体の安全のため重要であることを認めた上で安保体制を維持し、また、その範囲で沖繩についての日米協議委員会の権限を調整するものにすぎないようになっております。この協議会の権限を行政全般に及ぶものに拡大しようという、そういうような着想は一向に感ぜられないのであります。政府がほんとうにこの協議会の権限を拡大するのであるならば、その具体的な内容を示してもらいたいと思うのであります。 質問の第二点は、日本にとっての沖繩の問題は、その本質は施政権の返還と祖国復帰にあると私は考えるのであります。沖繩、小笠原が米国の極東戦略のかなめとして核基地であることが問題を困難にし、複雑にしておるのでありますけれども、しかし、そのために事の本質を見失ってはならないと思います。総理はジョンソン大統領との会談で、沖繩の核武装の撤廃をアメリカに要求したのかどうか、率直に御答弁を願いたいと思うのであります。(拍手) 質問の第三点は、共同声明は、また、総理が施政権返還に対する日本政府及び国民の願望を示したのに対してジョンソン大統領は理解を示した、こういっております。そうして、国民の悲願である施政権の返還は、またまた不定のはるかかなたに遠のいた感じを、私たちは受けるのであります。総理は沖繩、小笠原の日本復帰をアメリカに要求しなかったのではないかと、私たちは共同声明の文面からはどうも推測したいのであります。この推測は一体正しいかどうか、お答えを願いたいと思うのであります。(拍手) 私は、沖繩、小笠原の施政権の返還、祖国復帰を、たとえば短い期限を明確に区切って要求するということは、平和条約の第三条の精神からも許されるところであろうと考えております。アメリカはこの要求に対しては答える誠実を示さなければならぬと考えております。もしもそれに答える誠実を示さないならば、それが持つ政治的な重大な影響ということを考えてみますと、非常に私は重大なものがあると思うのであります。もしアメリカがこれをさえ拒否する場合には、この問題を国連やその他の国際舞台に持ち出して、あくまで日本の主張を貫くべきであろうと考えるのであります。(拍手)総理は、近い機会に私の考えるような要求をし、また、あくまでも日本の立場を貫いていこうとする決意を持っておられるかどうか、それをお伺いしたいと思うのであります。(拍手) 次に、日韓問題と南ベトナムの問題についてお伺いしたいと思います。 今回の佐藤・ジョンソンの会談において、私が最も心配いたした事柄の一つは、韓国と南ベトナムについて日本がアメリカから大きな荷物を背負わされて、中国貿易について政経分離方式で、従来の締めつけが若干ゆるめられるという妙な取引をされたのではないかということであります。(拍手)私のこの心配は、全くの杞憂であってもらいたいのですが、もし総理がほんとうに杞憂だというのであるならば、国会のこの議場で、はっきりと言明して、そのとおりに実行することを約束してもらいたいと思うのであります。(拍手)総理は、出発の前には、朝鮮問題を非常に重視するという意味の発言をしばしば行なわれたのであります。そうしながら、共同声明は一言もこれに触れておりません。そうして、帰国後にはさっそく日韓会談を早くまとめるために椎名外相派遣の方針を述べられておるのであります。現に、沖繩はアメリカの南ベトナム作戦の根拠地となっておりまするし、また、韓国軍から二千名の部隊を南ベトナムに派遣するということが決定されておるのであります。総理は、この派兵に賛成である旨をアメリカの大統領に言明したと、こう韓国の外相は話をしていると伝えられておるのであります。(拍手)南ベトナムの戦火が北に拡大するようなことがありますると、その日本に及ぼす影響につきましては、国民は非常に心配をいたしております。私は、政府が力を入れて援助する国が、南ベトナムにしても韓国にしても、よりにもよって軍部のクーデターと民衆の抵抗デモとが繰り返されているという実情を指摘せざるを得ないのであります。(拍手) さきに岸内閣の際、社会党の強硬な反対を押し切って強行された南ベトナムの賠償二百億円は、最近その支払いを完了したといいますが、その南ベトナムは、すでに国土の四分の三は反政府軍の手のうちにありまして、サイゴンの陥落はもはや時間の問題であるといわれております。この事実の教える教訓の一つは、次のことであろうと思います。すなわち、外国の援助がなければ共産化するなどといわれた国は、たとえ外国の援助があっても安定することはできない国であるということであります。(拍手)蒋介石政権のもとの中国がそうでありました。バチスタのもとのキューバがそうでありました。そうして、いままた南ベトナムで同じようなことが起こりつつあるのであります。 ところが、自民党の一部には、釜山に赤旗が立ったらたいへんだ、だから韓国には五億ドルの援助をしようと、無責任なことをいっておる人たちがございます。アメリカは第二次大戦後、韓国に対して五十億ドルをこえる援助をいたしておりますが、韓国の政情はといえば、クーデターとデモとの繰り返しでありました。私は無責任な援助論者にお聞きしたいのでありますが、一体日本が何百億ドルの金をつぎ込んだならば、韓国の政治は、経済状態は安定するのでありましょうか。一国の政治や経済情勢がよくなるか悪くなるかは、それをきめるのは基本的にはその国の国民と政治家であります。(拍手)ほかの国の援助の多少ではございません。 日米共同声明におきまして朝鮮問題に触れていない理由につきまして、三木幹事長は、日韓問題は日本と朝鮮との間の関係だから、アメリカはこれに介入するという誤解を招くのをおそれて触れたがらなかったのだ。だから自然に共同声明からは落ちたのだということを記者会見で述べておられます。しかし、総理がアメリカへ出発する前には重大問題の一つと考えられたことは事実であったし、アメリカ側としましても、去年の十一月、バンディ国務次官補が来た際に、日韓交渉の促進がその主要目的であったことも周知の事実でありまするし、また、日本側におきまするその後の動きから考えましても、朝鮮問題が会談の議題にならなかったということは、どうしても考えられないことでございます。(拍手)もし、三木幹事長の言うような事情で、ろくに朝鮮問題についてお互いの間に話し合わなかったとするならば、私は、それは政府が怠慢のそしりを免れないと思うのであります。(拍手)そこで、総理はどんな話し合いをされたのか、そして何か言えない事情がそこにあるのかどうか、率直にお答えをしていただきたいと思うのであります。(拍手)そして、国民の疑惑を一掃してもらいたいと思うのであります。今度の会談では、声明にうたわれておる部分よりも、声明にいわれてないほうが、より大切なんだという国民の間にある直観的な疑惑に対しては、政府は、私は明らかに答える義務があると思うのであります。(拍手) 私がそういうことを言うのは、朝鮮の問題について、ジョンソンと総理との間の話し合いに一点の暗さがあってはいけないからであります。そして、この問題は、中国問題にも関係があるのであります。そして中国問題については、総理は、非常に重要な問題である、外交はこれに尽きるのだとさえ言われております。そうして中国問題を処理するのには、やはり国として、自由党としましても、政府としましても、より自由な形においてこれに接近していく必要があるからであります。その意味において私はこの質問をしておるわけであります。(拍手)ですから、非常に大切な質問であります。政府はこの疑問を解くべきであろうと私は思います。(拍手) 次に、日本が南北両朝鮮に対する政策の間に設けている差別を撤廃して、両鮮との経済、文化及び人的交流の拡大を通じて、朝鮮の平和的な統一を側面から促進し、同時に、日韓会談を打ち切って、そのかわりに朝鮮問題解決のための関係国際会議の召集を提唱するつもりがあるかどうかということを朝鮮問題についてはお聞きしたいのであります。この問題は、この前の臨時国会において成田書記長がお尋ねしました。しかし、それに対する首相の答弁はあいまいであって、明確を欠いております。したがって、私は、もう一度これをお聞きする次第であります。(拍手) 南ベトナムにつきましては、次の点を総理にお尋ねしたいと思います。南ベトナムに対しまして、総理は慎重に、そして忍耐強く接近していくことを申し述べております。私もその態度は賛成であります。しかしながら、南ベトナムに対しましては、一切の軍事的な援助の要請をはっきりと拒否する決意が必要であります。したがって、南ベトナム問題の解決のためには、ジュネーブ会議を直ちに開催して、外国の軍隊を撤退して、南ベトナムの戦争に終止符を打つことを日本が提唱し、特にアメリカを説得することが大事だと思います。(拍手)総理が一昨日の施政方針演説において、日本の国際的な地位とその重大な責任を強調されました。非常に興奮されて強調されました。しかし、それには、私は実行が伴う必要があると思うのであります。その実行の第一歩は、やはり南アジアにおいて平和をもたらすためにアメリカを説得する役割りに回るべきであります。これをやる御意思がはたしてあるかどうかということを私は総理にお聞きしたいのであります。(拍手) 次は、中国問題であります。 今日アジアには、朝鮮、南ベトナムなど、危機がいろいろと起こっておりますが、その根本は、米国と中国との対決にあるということは申すまでもございません。総理は、就任以来、中国問題の重要性を事あるごとに強調して、わが国の外交は、結局中国問題に尽きるとさえ言われております。事実はまさにそのとおりであります。それでは佐藤内閣は、その重要な中国問題で一体何をするのでありますか。佐藤内閣がしていることといえば、国連における中国代表権承認問題で、またまた重要事項指定方式をかつぎ回っているということであります。この方式にいまだにかじりついている目的については、さきの臨時国会で同僚の勝間田議員の質問に対しまして、椎名外務大臣は、これは中国の国連加盟を阻止し、引き延ばすためだといって、非常に率直に申し述べたわけであります。しかし、あまり露骨に佐藤内閣の真意を告白されたので、総理も自身でこれを取り消されたわけでございます。総理は、口では中国封じ込め政策には反対だということをおっしゃいます。そのアメリカの封じ込め政策のかなめをなしている沖繩が核武装をされていることにつきましては、一言の抗議も発せられておりません。行動においては、ひとつもこれがあらわれていないのであります。また、今回の共同声明では、どうも承認されたのではないかとさえ疑われるのであります。かりに、いわゆる政経分離の方式によって中国との貿易を拡大することについて、アメリカの黙認があったことをもって、いわゆる自主外交の成果として自慢するとしましたら、これは実に私は奇妙な話であると思うのであります。(拍手)およそ、一つの国がどの国と貿易をし、どういう品物を取引するかどうかをきめるのは、その国自身がきめるべきであって、よその国がいろいろとくちばしを差しはさむべきことではないと思うのであります。(拍手)さきに、アメリカは、ソ連に対しまして、大量の小麦を輸出しました。その際、アメリカが、日本に対して、ソ連に小麦を輸出してよいかどうかということを相談したという話を私は聞いたことがありません。(拍手) 現在、日本と中国との関係は、新しい段階に差しかかっております。事態を前進させるかどうかは、政府の決意いかんにかかっておるのであります。政府は、この決意を渋る理由としまして、米国との安保条約と国民政府との平和条約の存在をあげております。しかし、日米安保条約のもとにありましても、そして領土問題は未解決でありましても、鳩山内閣は日ソ共同宣言の調印に踏み切り、ソ連との国交を回復いたしました。社会党は、これを全面的に支持いたしたわけであります。また、フランスは、台湾の国民政府と国交をもっておりましたが、中華人民共和国との国交回復に踏み切ったのであります。日本とソ連との国交正常化と中国とフランスの国交回復、この二つの事実は、時の指導者が断固としてその正しい方針の実現に邁進するならば、国民の圧倒的な支持を背景に必ず困難を克服して目標を達成できるということを証明しておるのであります。(拍手) 佐藤総理の前には二つの道が横たわっております。一つは、アメリカと台湾政権とに気がねをして、中華人民共和国との国交正常化に背を向ける道でございます。もう一つの道は、日中国交正常化に対しまして積極的な姿勢をとり、政経分離という段階からさらに前進して、日中両国の平和共存のために努力をする道でございます。佐藤総理が二つの道のうちのどちらを選ぶかは、総理自身のきめるべき事柄でございます。ただ、どの道を選べばどういう結果になるかは、ついこの十年間の歴史が教えていると思います。私は、佐藤総理が歴史の教訓から学んで、歴史に名前を残す人物になってもらいたいと切望してやみません。(拍手) 総理に私がお尋ねしたいのは、確かに日中関係は新しい段階に立ち至っております。経済の面が進み過ぎて、政治の面がはるかにおくれたのが現状でございます。中国問題はもともと高度に政治的な問題なのですから、政治的なおくれを取り戻さねばなりません。総理は、政経分離の従来の方針を踏襲することを共同声明で、あるいは方針演説でうたわれましたが、しかし、国民の知りたいのは、政経分離方式で次の新しい一歩が踏み出せるかどうかということであります。総理は、この方式によって政治の面でのおくれを取り戻し、日中間の友好がより深まり、国交正常化ができるとほんとうにお考えになっておるかどうかということについてお答えを願いたいと思うのであります。(拍手) 政府間の協定は中国承認につながるというので、いままでも貿易の政府間協定に反対する人たちがございました。だが、民間協定では限度はたかの知れたものだということは、現在では明らかになっております。私は、一国の承認に至るまでには種々の段階があって、そしてまたあり得ると思いますから、貿易協定だけではなしに、航空協定、郵便協定というような両国間の政府協定を結びまして、日中友好の促進、国交の正常化に資したらいいと思うのであります。総理のお考えをお聞きしたいのであります。(拍手) 次に、アジアの平和、ひいては世界の平和を維持するためにも、中国を国際社会から孤立の状態にほっておいたり、または封じ込めようとすることは決して賢明とは言えません。核実験の禁止やあるいは核使用の禁止や、そういうことについての世界首脳会議を開くにしても、中国を孤立させたままではどうともしようがないのであります。私は、国連における中国代表権問題については、日本が進んでこれを支持し、その実現に努力すべきであると思いますが、政府としましては、従来の経過もあるでありましょうが、少なくとも自主外交を主張するからには、中国問題の打開を企図される総理としては、重要事項指定方式の提案国となることだけは取りやめるべきだと考えますが、総理のお考えをお聞きしたいのでございます。(拍手) 次に、アジア外交について質問いたしたいと思います。 総理は、アジア外交の重要性を強調し、アジアの一国である日本こそ最もアジアの平和と安定とを実現する能力を持った国であることを誇りました。それでは一体政府は、どういうアジア外交を過去においてしてきたか。また将来しようとしているのでございましょうか。一九五五年、インドネシアのバンドンにおいて第一回のアジア・アフリカ会議が開かれましたが、その際政府は、初めは外務省顧問を団長とする代表団を送ってお茶を濁そうとしたのでありますが、インドネシアから閣僚級の代表団を送るようにと要請されまして、初めてやっと故高碕氏を団長とする代表団を送ったのでございます。このたび、第二回アジア・アフリカ会議の準備会議がインドネシアで開かれた際に日本は招待を受けたのでありますが、それには参加をいたしませんでした。それでインドネシアや中国などよその国々からぜひ本会議には出席するようにとすすめられている状態でございます。近くアルジエで開かれる第二回会議に対しましても、政府の方針は動揺いたしております。どうも今度の日米会談の結果は、アジア・アフリカ会議に対する政府の出席や態度というものが、非常に後退したような感じを私は受けるのであります。口を開けばアジアの一員といいながら、アジア・アフリカ諸国の重要な集まりであるこの会議に出席する段になりますと、及び腰で少しも腰がすわらないようでは、一体どの国が日本をほんとうのアジアの一員として信用するでしょうか。(拍手)また、昨年ジュネーブにおいて開かれました国連貿易開発会議におきまして、日本は最初はアジアの一員というふれ込みで参加しながら、実際の行動では西欧先進諸国側の立場に立って、後進国の要求に一々留保条件をつけまして、そのためとうとう後進国から締め出されて、最後のどたんばで西欧先進国のグループに頼み込んで、やっとそのグループに入れてもらったという経緯は、もうだれでも知っていることです。(拍手) この二つの事実は一体何を物語るでしょうか。それはアジアにおける最大の工業国である日本が、その工業、技術、教育のすべてを、かつて侵略し、大きな迷惑をかけたアジア諸国の開発と発展のために、平等互恵の立場に立って誠意をもって協力しようという心がまえを欠いているということを示すものであろうと私は思います。(拍手)それが証拠には、総理は施政方針演説で、高度成長をなし遂げたわが国は、ともすれば自由民主主義に対する自信を喪失しがちなアジアの諸国民に対し、好個の模範を示してきたと言っており、先日の記者会見におきましては、AA会議ではこのことを述べたいと言われておりましたが、もし、そうであるならば、これは腐敗した独裁政権の圧制下に苦しんで、自信を失うどころか、民族独立の決意を固めて、そのために戦っておるアジアの民衆の動きに全く無知であること、そして、その上に、経済成長を背景に大国主義を振り回して、その民衆に対してお説教する態度を露骨に示したものであると私は思うのであります。(拍手)こういう態度でアジア・アフリカ会議に臨んだならば、私は、それこそ日本の国威は失墜すると思います。アジアの国の一員であるということが、ほんとうに情けない状態になってくるのではないかと私は思います。日本の外交の恥だと思います。 首相にお尋ねしたいのは、政府はどういう方針で第二回のアジア・アフリカ会議に臨むつもりでありますか、また、積極的に参加する意思があるかどうか、さらに、アジア・アフリカの開発のために、国連を通ずるひものつかない援助、その他の積極的方策を実施する用意があるかどうかということを、この際お聞きしたいと思うのであります。(拍手) 最後に、私は、ただ一つ、科学の問題に触れて、私の質問を終わりたいと思います。それは、政府の政治に対する姿勢に関することであり、率直に申しまして、日本の政治は科学の問題を軽く取り扱ってきたと思うからでございます。 さきに、イギリスのウィルソン首相が、野党の時代に、イギリスの学者が続々とアメリカに帰化しまして、イギリスの科学の将来に暗影を投げかけておる事実を指摘いたしました。しかし、これは何もイギリスだけに限った話ではないのであります。わが国におきましても、数学、理論物理学をはじめといたしまして、基礎科学に従事する優秀な頭脳は、多くアメリカに渡ったきり帰ってこない例がすこぶる多いのであります。また、日本に残って研究を続けている人々も、その待遇はきわめて悪く、したがって、これだけ悪い条件のもとで、日本の科学が世界の水準に伍していけるのは、全く学者諸君の努力のおかげであり、世間には、金のかかるじみな基礎科学などを何年もかかって勉強するよりは、外国からできたものを買ったほうが安上がりだという風潮が支配しているのであります。加えて、各種の調査研究機関相互の間の連絡調整及び管理上の欠陥は目に余るものがあるのでございます。政府は、科学的な深い世界観を持った人間形成には熱意を示しておりません。もし、このような状態にほうっておかれますと、わが国の基礎科学は世界の水準から立ちおくれて、わが国は国際競争からやがて落伍することは明らかであります。たくましい文明も文化も日本には育たないでありましょう。 およそ、一国の持つ最大の財産は、鉄鉱石でもありません、石炭でもありません。それは高度の教育と技術と深い教養とを備えた厚い人間層の存在だろうと私は思うのであります。(拍手)この意味におきまして、いまの政府のやっていることは、この財産の食いつぶしであります。これでは、現在幾ら経済の高度成長を誇っていても、やがて日本は二流、三流国になるおそれがなしとしないのであります。総理は一昨日の施政方針演説で、自分は自主外交によってわが国の安全と国家利益を十分に追求していくが、自分の言う国家利益というのは、世界の平和と結びつき、そして国際協調を基礎とするものだ、決してそれは狭いナショナリズムではなく、インターナショナルなものだ、こういうことを言われました。私は、この考え方には賛成であります。しかしながら、その考え方は、日本の憲法がもっと明確に、はっきりと述べておるわけであります。この憲法の精神を完全に実現することに、前向きの姿勢で、私たちも一生懸命になって努力しておるわけでございます。政府の政治に対する姿勢が正しくありませんと、せっかく演説に述べられましたりっぱな方針も、外交につきましても内政につきましても、誤った方向に行くだろうと思うのであります。政治に対する姿勢を正しくしなければならないのは、言うまでもなく総理自身がまず第一にやってもらわなければならないのでありまして、それから政府であります。 佐藤内閣は非常にことばが多いのであります。そして実行がこれに伴わないのであります。私が政治の姿勢において佐藤内閣に要求したいことは、あまりに美辞が多過ぎる。そして実行がこれに伴わない。こういう姿勢では、どんなに佐藤総理が施政方針演説においてりっぱなことを言われても、国民の政治に対する信頼がなくなるということが言いたかったわけであります。(拍手) そして、いま日本の将来を考えるときに、大きな影を投げておる、科学に対するこのひずみを是正する意味において、政治の姿勢を正す意味において、佐藤総理はどういうようなお考えを持っておるかを、私は最後に質問いたしまして、私の質問を終わりたいと思うのであります。(拍手) 〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 和田君の質問にお答えをいたします。 先ほど来いろいろ御高見を交えてのお話を伺いましたが、まず第一に、自主外交について、たいへんそのことばには賛成だと言われるが、社会党の方々の自主外交と、私の考えているものとは相当の開きがあるということを看取いたしました。(拍手)どうもお話の筋をそれぞれたどってみますると、どこかにコンプレックスを感じていらっしゃるのではないか、たとえば日米交渉にあたって隠れた事件はないかとか、あるいは、話し合いをしたと言うが、縛られたのではないか、かような疑問を持たれること自身が、実は自主外交の精神に反すると私は思う。(拍手)私は、これからの一国の外交は、少なくとも国論が統一された後に、堂々とその国家利益を擁護する、主張すること、これが必要だと思います。私は、野党第一党である社会党の和田君の質問につきまして、この点でまず失望したことを率直に申し上げます。(拍手)私どもは、御承知のように、出る前におきまして、できるだけ国論を統一したい、こういう立場に立ちましてお話し合いをしたつもりでございます。激励も受けたと思います。しかしながら、ただいまのようなお話を聞きますと、どうも悲観せざるを得ない。まだまだ国論統一には道遠しという感がいたすのであります。 具体的内容についてお答えをいたします。 まず第一は、沖繩の問題であります。私はジョンソン大統領と話し合いをいたしました際に、沖繩島民百万の方々の願い、同時にまた九千万国民の願望である沖繩の祖国復帰、これを強く申し出ました。これに対しまして、十分の理解は与えてくれましたが、今回は実現はできなかった。いずれその理由については後ほど説明をいたします。しかして、復帰ができないまでは、どうしてもできるだけこの島民の自主権を拡大すること、また政治的、経済的な自由を拡大してほしい、これまた島民の願いであります。この線につきまして私は努力したつもりであります。これらの問題につきましてアメリカ側の申しますことは、もうすでに戦後二十年を経ておる、かような占領状態が続いておることは、確かに沖繩の方々が非常に不満にしておられるに違いない、もしも極東における自由諸国の安全保障上の必要がないなら、私どもはこれを返すことにやぶさかでない、かようにはっきり申したのでございます。私は、本会議の席上におきまして、このことをはっきりと申し上げます。どうか皆さま方も、極東における安全保障の状態、その必要がなくなるような状態を心から私どもが願い、沖繩島民のためにも協力するということをこの際に誓うべきものだと私は思います。(拍手) 第二の問題で、沖繩の核武装撤去について抗議をしたか、申し合わせをしたかというお尋ねでございます。御承知のように、沖繩につきましては、ただいま施政権をアメリカが持っております。私どもはこれについてとやかく言う立場ではございません。したがいまして、これについてのお話はしておりません。 重ねて申し上げますが、先ほど来申し上げますごとく、沖繩、小笠原の施政権返還の問題については、極東における安全保障の必要によるものでありまするから、この事情が変わればもちろん返すということでありますので、私どもはその方向について努力してまいりたいと思います。 韓国問題についてのお尋ねでありますが、この韓国問題は、三木幹事長が申しておりますように、これは両国の問題でありますので、もちろん日韓交渉の実情が日米間の会談の対象にはならなかったということをはっきり申し上げます。 しかして、この日韓交渉妥結につきましては、私どもは数次にわたって政府の考え方を声明しておりますから、もうこの点について重ねてお答えするまでもないと思います。私は、両国間が大多数の国民の支持を得るような方向で早期に妥結することを心から願っております。(拍手) 第三に、南北韓国の統一の問題でございます。これができるまでは早急に日韓交渉を打ち切って、この統一に協力すべきではないかということの御意見でございますが、実はこのことについては、皆さま方御承知のことだと思いますが、一九四七年十一月、国連総会において南北統一の問題が取り上げられております。そうしてこれは、国連管理のもとにおいて南北の自由な選挙によってきめるべきだ、かようなことを申しておりまして、いわゆる国連方式なるものがきまっております。私どもは、もちろん国連中心の外交を進めておりますし、その意味でこの国連方式を支持しておりますし、また韓国自身も、この国連方式に沿って解決をはかりたい、かように考えておりますので、ただいま行なっておりますこの日韓交渉と直接の関係のないことは御了承がいただけると思います。 次は、ベトナムの問題でございますが、私どもは、ベトナムが長期にわたる戦乱のためにたいへん気の毒な状況に置かれており、心から同情いたしております。もうすでに二十年にも及ぶものだ、かように考えます。できるだけ早く政局が安定し、そして国民が経済的にも活動のできるように生活向上をはかるべきだと思います。わが国は、申すまでもなく憲法下におきまして、軍事的援助は一切いたすことはできません。先ほど、何か裏に話があったのじゃないか、かようなことを言われましたが、さようなことはございません。私どもは忠実に現憲法を守っておりますから、さようなことはございません。私どもがベトナムのこの国民の気の毒な状態につきましてなし得ることがあるなら、これは人道上の立場からも協力をしたい、かように考えておりますが、ただいままではっきりした方法はなかなか見つかっておりません。 また、ジュネーブ会議を開いて、できるだけ早い機会に話し合いをしたらどうかということでありますが、これは確かに一つの着想だと思います。しかしながら、ただいまの状況のもとにおきましては、いわゆる時期でない、このせっかくの提案もそれが実を結ばない、かように私は考えます。(拍手) 次に、中国問題についてお答えをいたします。 中国問題につきましては、数千言を費やされたように思いますけれども、ただいままで私どもの態度は、中共に対して政経分離の状態において貿易を進めていく、また交流もやっている、こういう態度でございます。 しかして、この状態のもとにおいて、これをいつまでも続けていくのかどうかということでございますが、これはなかなか困離なことで、将来の見通しを立てることはなかなかむずかしいと思います。 ことに、中国代表権の問題になりますると、いままで中共の国連加盟、同時に代表権をこれに与えろという立場の国々は、ただいままでの国民政府、これを自動的に押しのけて取ってかわるということでありますし、私どもはこれには賛成しかねるというのでありまするから、ただいまの代表権問題にからんでまいりますと、いま早急に解決はつきかねる問題でございます。 かような状態で、政経分離のたてまえで交渉、接触を持つということ、これはいわゆる正規の国交が回復していないということであります。したがいまして、御提案になりましたような郵便協定あるいは航空協定等が政府間で結べないことも、これは御了承がいただけるのではないかと思います。 ただ、私は、かような状態がいつまでも続いておることは、これはたいへん残念なことだと思います。アジアの問題でこういう状態がいまなお続いておる、これについて何らかの方法があるならば、また教えていただきたいと思います。 そうして、この重要事項問題、ただいま申し上げますように、まことに重要なる事項であることは御理解いただいたと思いますが、第十六回国連総会におきまして、これを重要事項指定方式として取り上げられております。今日もなおこの決議は私どもは有効だと思っております。今後の問題で、重要事項としての提案国になるな、こういう社会党の御意見でございますが、この点はよく伺っておきまして、今後私どもが提案国になるかどうか、それはそのときの情勢によりまして判断すべきものだ、かように考えますので、お預かりをしておきます。 AA会議に対する態度でありますが、これは昨年の暮れにわが政府の考え方、私の考え方は声明したとおりであります。したがいまして、そのときにおきましては、AA会議に出席したい非常にはっきりした気持ちを持っておりました。また、今日もその気持ちでおります。ただ、御承知のようにインドネシアが国連から脱退をいたしました。いわゆるAA会議なるものも、技術的な面で、あるいはホテルができていないとかいうようなことで、三月十日の開催はむずかしいようであります。また、正式には招待を受けておらない、こういうような立場でありますので、ただいま、出席はしたい、かような気持ちではありますが、まだはっきり、いかにするか、こういうことではないのでございます。 それから最後に、科学技術についてのお尋ねでございましたが、これは確かに最近の問題になることでございますし、ことに、英国労働党党首ウィルソン、これが政権をとる前に、これからの英国は新しい科学技術を導入しなければいかぬ、これを大事にすべきだということを申しました。各国に反響を呼んだと思いますが、わが国におきましても、いち早く科学技術の重要であることを考えまして、政府に科学技術会議というものがございます。もうすでに開催をいたしまして六年あるいは七年ぐらいになっておるかと思います。科学技術、最近のものをここに取り入れるという新しい感覚で、そうしてあらゆる面でこれが協力を願っておるのであります。科学技術は、申すまでもなく、総合的にその学術機能を発揮するところに今日の新しい文明があるわけでございます。そういう意味におきまして、この科学技術、先ほど御指摘になりましたような物理学あるいは数学等の基礎科学につきまして特にその重要性を痛感しておる、また、さような意味から科学者が必要だし、科学者の養成、活動、研究に便するようにしなければならない、かように考えまして、政府もこれらの問題と真剣に、具体的に取り組んでおるような実情でございます。(拍手) —————————————
○議長(船田中君) 福田赳夫君。 〔福田赳夫君登壇〕
○福田赳夫君 私は、自由民主党を代表して、政府の施政方針につきまして、佐藤総理大臣に対し若干の質問を行なわんとするものであります。(拍手) 本年は、申すまでもなく、終戦後ちょうど二十年、佐藤総理が申されたように、日本はまさに成人式を迎えた年柄とも言えるのであります。この二十年の間にわが国は、終戦のときにはだれもが想像し得なかったような復興と、世界の国々が目をみはるような偉大な発展をなし遂げ、国際社会におけるわが国の地位もいよいよ向上してまいったのであります。まことに感慨にたえないところであります。この繁栄は、わが国が全体主義と独裁主義を排し、自由と民主の二大原則を堅持いたしまして、たゆまぬ努力とたくましい創造力を発揮した成果であります。(拍手)われわれ国民は、このことについて、限りない誇りと自信を持ってしかるべきだと、かように信ずるのであります。(拍手) しかしながら、こうして成人となり、新たな出発点に立ちましたわが国にも、幾多の困難な問題をかかえていることもまた事実であります。最近の経済成長は、いわゆるひずみ現象を引き起こし、社会各般に無反省な消費と物質万能の享楽主義的な風潮が生み出されつつある一面もあるのであります。このような風潮が、また一部若い世代の非行化の原因ともなっているのであります。さらにまた、科学技術の発達の反面に人間疎外の傾向がかもし出されつつあるということも見のがすわけにはまいらないのであります。今日、われわれはこれらのことを率直に反省し、形と量だけが整った国がまえに、さらに実質的な内容と質の裏打ちをなすべき時期にきていると思うのであります。(拍手) それには、まず新しい時代に臨む政治がなければならないと思うのであります。成人日本の政治は、いまや世界につながるものでなければならないと思います。日本の国家的、国民的利益を追求することはもちろんでありますが、世界の平和に対してできる限りの責任を遂行すること、すなわち世界の中の日本の立場をとることこそが、新しい日本政治の基本的姿勢でなければならないと思うのであります。(拍手)次の世代のにない手は、今日の青少年であります。青少年に夢と希望を与えるとともに、その夢と希望にこたえるような政治は、このような姿勢で展開せらるべきものと信ずるのであります。 この際、佐藤総理に対しまして、今日の政治に取り組む基本姿勢につきまして、あらためてこれを伺いたいのであります。 この意義ある佐藤政権のスタートにあたりまして、総理はアメリカを訪問し、ジョンソン大統領と隔意なく意見の交換をいたしてまいられたのであります。総理は、さきの施政方針演説において、この会談をもって日米関係は新段階を迎えたと申されたのであります。私もそのように思うのであります。それは、かねてわが国の外交方針として唱えられてきた対米自主外交、このことにつきましては、社会党がとやかく申しますが、それがいわれもない難くせであり、反対のための反対であったことが明らかにされたことであります。(拍手、発言する者あり)このことは、中国に対する日本側の見解を共同声明に明記し、アメリカとの対立点を明らかにいたしたことの一事をもってしても明瞭であります。特に、従来の日米会談におきましては、主として日本とアメリカの関係が論ぜられたのでありますが、今回は、アジアの問題について多くが語られたことが特徴であります。総理自身も、アジアにおけるわが国の責任の重大さをはだで感じ取られてきたことと存ずるのであります。 いまやアジアは、ベトナムを中心に世界の緊張が集約されているかの感があるのであります。東西問題と南北問題の交錯するさなかで、長い植民地体制から解放されて、欠乏と戦いながら、新しいナショナリズムに燃え立っているというのがアジア諸国の現状であります。アジアにおけるただ一つの先進国として、わが国はこの情勢を正しく把握し、これらの諸国の安定にさらに一そう積極的に協力することが必要でございます。(拍手)と同時に、アジアの政治と経済に深いつながりを持つアメリカが、アジア政策の運営にあたりまして、アジアの風土を無視してアメリカ的民主主義に走り過ぎることのないように、アジアの立場に立ちまするわが国といたしましては、適時適切の助言を行なうことが必要であります。(拍手)総理の所見を承りたいのであります。 このような基本的態度でアジア政策は進めらるべきだと思うのでありますが、まずその第一は、日韓問題であります。 私は、一衣帯水で隣合っておりまする日韓両国が、戦後いまだ国交を持たぬ現状はきわめて不自然であり、日韓両国のため不幸なことであると思うのであります。日韓交渉には、漁業問題、法的地位の問題、竹島の帰属の問題など難問も少なくないのでありますが、両国が相互の繁栄のために協力し合う精神に立ちまして、特に韓国政府が過去のいきさつにとらわれず、前向きの姿勢をとると同時に、わが国が隣国的感覚で臨むならば、早期妥結は不可能ではないのであります。この際、総理が大局的立場に立ちまして決断すべき時期に到来したと考えますが、所見はいかがでございますか。(拍手) その第二は、ベトナム問題であります。 私は、最近とみに深刻な様相を呈しつつある南ベトナムの情勢について、深く憂慮するものであります。困窮する南ベトナムに対しまして、わが国はこの際人道的また経済的な協力を惜しむべきではないと思います。同時に、大事なことは、アメリカが佐藤総理の言われる寛容と調和の精神にのっとってじっくりと取り組み、あくまでも平和的手段によって事態を収拾するように適切な助言をなすべきだと思うのであります。(拍手)御意見を承りたいのであります。 その第三は、インドネシア、マレーシアであります。 今回インドネシアが、世界唯一の平和維持機構である国連を脱退したことは、まことに遺憾であります。しかしながら、これからのインドネシアが、事態の収拾を武力に訴えるようなことがありますると、アジアの平和のために重大なこととなります。インドネシアと友好関係に立つわが国としては、そのようなことのないように積極的に説得の労をとるべきである、さように考えるのでありまするが、いかがお考えでございますか。 また、マレーシア紛争の解決には、インドネシア、マレーシア両国と親善の関係にあるわが国が、その間の調停について仲介の労を惜しむべきではないと思うのでありまするが、総理はいかにお考えになられますか。 その第四は、沖繩問題であります。 私は、今回の佐藤・ジョンソン会談で、日米両国政府が沖繩に関する日米協議委員会の権限を拡大し、経済援助問題にとどまらず、住民福祉のための諸問題についても協議できるように改めることになったのは、総理訪米の大きな成果だったと思います。(拍手)この成果の上に立って、沖繩住民の熱望にこたえ、施政権の返還、自治権の拡大については、この上とも根気よく交渉を続けていくことを強く要請いたします。 ただいま、私の尊敬する和田博雄君の質問を聞いていますと、社会党は沖繩の復帰にきわめて熱心であります。これはそれでよろしいと思います。ところが、沖繩の問題と異なり、本来わが国固有の領土でありながら、ソ連が不法に占拠している国後、択捉以南の島々に何らの関心を示さなかった、このことを心から残念に思います。(拍手)この際、総理は、北方領土に関する基本的の見解をこの席でお示し願いたいのであります。 国民政府との間に従来どおりの友好関係を続けていくべきことは当然のことであります。と同時に、中国大陸にいかに対処するかは、わが国の当面する最も重大な問題であります。今日、アメリカは中共ときびしく対立しており、また、わが日本とアメリカは、緊密なパートナーとして結ばれておるのであります。その間にありまして、わが国が共産主義の中共といかに接触を保つかということは、きわめてむずかしい問題であります。しかし、わが国はアメリカとは異なり、中国大陸とは歴史的、文化的に深いつながりを持ち、また地理的にも隣国の関係にあります。このような関係にある日本と中国大陸との間にもつれが生ずるようなことがあれば、アジア全体の安定と平和に大きな障害となるものと考えます。このような見地から見るならば、中共に対する日本の姿勢は、アメリカとおのずから異なるものがあってしかるべきものと思うのであります。(拍手) 日本は、従来、中共に対する姿勢といたしまして、政経分離の方針を堅持してまいったのでありますが、総理の施政演説においても、また日米共同声明においても、政経分離の方針のもとで、経済、文化の接触をプロモート、すなわち推進すると言われておるのであります。私は、この方針には全面的に賛成するものであります。しかしながら、私は、政権分離で日中間の接触を推進するには、その前提として、中共に対するわが国の政治原則を明らかにしておくことが絶対必要であると、かように思うものであります。(拍手)私は、その意味におきまして、中共に対するわが国の政治姿勢を、この際明確にすべきことを主張いたします。 一つは、接触の態度についてであります。わがほうにおきまして主体性を持てということであります。第四次協定の決裂以来のわが国と共産中国との関係を見ますると、中共側からの対日三原則の提示などで、日本は常に受け身に立ち、中共側の積極的態度に振り回されてきた感があるのであります。この際、わが国は、中共に対し、積極的にわがほうの政治的立場を表明し、これを中共側に理解させておくことが必要であると考えるのであります。(拍手) その二は、中共のマナー、つまりその態度の問題であります。中共の膨脹主義的圧力が、アジアの平和を脅かしていることを憂慮している、これは日米共同声明でアメリカの言っておることばであります。このような国際的な世評が、中国問題を一そう複雑にしておることは事実であります。日本と中共との関係につきましては、中共がアメリカを批判することは、これは自由でありましょうが、しかし、アメリカが日中共同の敵であると言って、米中間の問題に日本を巻き込もうといたしましたり、日中貿易におきまして、いわゆる友好商社を特定する、さようなことは、一種の内政干渉であり、わが国として、断じて容認できないところであります。(拍手)このような中共の態度、マナーでは、たとえわが国が経済、文化の接触を推進しようとしてもできないようになる。この際はっきりと、わが国は中共との間に相互に内政不干渉を実践する、このことを確認し保障し合うべきだと思うのであります。(拍手)その確認と保障があって初めて日中間の経済、文化の接触も推進されるのであって、この確認と保障をあいまいのままにして政経分離と申しましても、かえって両国の友好的な接触を妨げ、ひいてはアジアの安定を阻害する原因にもなると思うのであります。(拍手)わが国が、この際、日本の中国大陸に対する政治原則を打ち出し、これを明らかにしておくことは、佐藤総理の中国問題に対する考え方を一歩伸ばすための一つの方法であると考えるがいかん、お伺いいたしたいのであります。(拍手) 次に、中共の核実験についてであります。 中共が昨年十月核実験をあえて行なったことは、まことに遺憾であります。口に平和を唱えてきた中共が、核を目的のための手段として、また 一個の武器として所有しようとしていることに対しまして、われわれ日本人は深い憤りを覚えるものであります。(拍手)中共の核実験はアジア諸国に相当の不安と動揺を与えました。ただ、わが国におきましては国民が何らの不安を感じなかった。それは第一に、核を兵器として使用する時代はあり得ない、また核戦争をあらしめてはならない、さようなわが国民の平和への自信、第二に、日米安全保障条約に基づく安全と平和への信頼がゆるがなかったからであります。 わが国の高度の科学技術は、宇宙開発の面においても、世界の先進国の水準にすでに達しており、核実験のごときも、もしそれを欲するならば、いつでもこれをなし得る潜在力を持つに至っておるのであります。しかし、わが日本がこのような潜在力を持ちながら、あえて核実験を行なわなかったゆえんのものは、世界最初の被爆国として、ひたすらに平和を願い、核のおそろしさを世界から一掃しようと念願いたしておるからであります。(拍手)この日本の立場、これは今日の国際社会においてきわめて貴重だと思うのであります。この貴重な立場こそ、世界平和の推進力として大いに活用さるべきだと私は考えるのであります。(拍手) 総理は、このような意味におきまして、核武装国に対しては、全面的な核実験禁止はもとより、さらに一歩を進めて、核兵器の破棄を求めるとともに、核武装をするに至っていないスウェーデン、カナダ、インド、西ドイツなどの国々に対しては、核武装の愚かさを説き、これ以上核が拡散しないよう呼びかけるべきだと思うが、総理の所見を伺いたいのであります。(拍手) また、かかる立場にあるわが国が、現在ジュネーヴにおける国連軍縮委員会に参加いたしておりませんことは、まことに残念なことであります。わが国は、国際的に平和活動を展開するため、この際、軍縮委員会に積極的に加入すべき時期に到来いたしておると思うのであります。総理の所見を伺いたいのであります。 わが国が、今日、アジアの日本、世界の日本として、強力な外交を展開するためには、国論の統一が必要であることは申すまでもないところであります。そのためには、前提として、与党と野党が共通の基盤に立ち、イギリスやアメリカで行なわれておるように、超党派的な外交の実現が最も望ましいのであります。ところが、ただいまの質問を聞いておりますると、和田博雄君は、日米会談で、日本は韓国と南ベトナムについて大きな荷物を背負わされた、あるいは日本の自主性を束縛しておる根本は日米安保条約である、かようなことまで言っておられます。私は、こうした見方こそが、占領以来社会党に根をおろしておる対米卑屈感、対米屈従感そのものであると思うのであります。(拍手) 世界の流れは急速に変わっておるのであります。世界は流動化、多元化しております。日本の立場も違ってきております。この変化と流れを無視して、十年一日のように古い固定観念にとらわれた考え方こそ、自主性も現実性もないと批判せざるを得ないのであります。(拍手)このような状態では、超党派外交と申しましても、必ずしも容易に実現するとは思いません。しかしながら、その道への努力を捨ててはならないと思います。先般、佐藤総理が訪米の前後、野党の幹部諸君と会談されたことは、国論統一への道を一歩進めたものと思いますが、今後も、総理は、このような方向に向かって粘り強く努力せられたいと期待をいたします。 さらに、アジアの政治問題がわが国の当面する最大の問題となった今日、アジア問題に対処すべき基本方針を総合的に検討するために、政府にアジア問題調査会とも申すべき高級な機構を設けてはいかがかと思います。総理の御見解を承りたいのであります。 AA会議につきましては、ただいま総理の答弁にもありましたが、わが国といたしましては、積極的にこれに参加し、そうしてわが国の立場を理解せしめる好個の場所として活用されることがよ いと考えるのであります。 次に、内政の問題に移りますが、まず経済問題、特に物価問題について質問いたします。 戦後、驚異的な復興、発展を遂げましたわが国経済は、今日なおたくましい成長を続け、いまや、わが国の国民総生産は、世界第五位の地位を占めるまでに立ち至っておるのであります。しかしながら、その反面、成長下の不況といわれているような異常な様相を示しておることも事実であります。わが国経済の成長発展をささえてきた力は、主として設備投資であったことは言うまでもありません。この設備投資がさらに需要を呼び、さらにその需要がまた設備投資を呼んで、設備過剰の現象を来たしておるのが実情であります。それと同時に、あまりにも急速でありました設備拡張が物価と賃金の高騰を招き、特にここ数年間にわたって、消費者物価は年々かなりの早さで高騰を続けてまいりました。設備過剰というデフレ的要因と、物価、賃金の高騰というインフレ的要因とがもつれ合いながら苦悩しておるというのが、現在のわが国経済の実相であると思うのであります。 したがいまして、経済を正常な姿に戻すことは決して容易なことではありません。技術的な、小手先の手段だけをもってしては、これを早急に克服することはとうてい不可能と思うのであります。インフレ対策とデフレ対策とを巧みに織りまぜ、しかも粘り強く、急ぎつつもあせらず、長期的な、また確固たる態度で対処しなければならないと信ずるのであります。(拍手)もちろん、中小企業の倒産、農村の困窮、株価の低迷など、当面の諸問題に対しましては、それぞれの施策がとらるべきであり、また、とられつつあります。大事なことは、それとともに二、三年にわたる長期の展望に立って経済正常化の構想を固めることにあると思うのであります。 特に大きな問題は、何と申しましても物価の問題であります。物価の安定は、実に佐藤内閣内政面での最大の課題と申しても過言ではないと思うのであります。(拍手)佐藤さん、物価を下げてください、そういうことばは、国民の佐藤内閣に寄せる期待であり、願いであります。私は、総理が施政演説の中で、物価上昇の構造的要因の問題にまで言及され、また、政府が物価安定のための総合施策を策定し、これを推し進める態度を示されたことは、一応これを了とするものであります。しかし、さらに深く考えますときは、物価安定への道は遠くまたきびしく、さらに根本的な角度から検討してみる必要があると思うのであります。すなわち、物価対策は、経済政策上の技術的な角度からだけでなく、国民大衆にも協力を求める総合的な国ぐるみの次元でのみ、初めて解決せられることと思うのであります。(拍手)何よりもまず、総理御自身がこの問題の解決を佐藤内閣の最大の課題としてとらえ、国民の前にこれが解決について不退転の決意を披瀝され、全国民の信頼と協力をかちとること、これが先決条件であります。この前提に立ちまして、私は、国ぐるみの物価対策を進めるために、その基礎固めとして、次の二つのことを提案いたしたいと思います。 第一は、財界の協力を求めることであります。財界にも採算を無視したシェア競争的な設備投資の行き過ぎに対しまして、いまや反省の機運が見られつつあります。この際、財界が今後このようなことの反復を防止するために何らかの自主的調整機構を整えることが必要と考えます。政府側からも、この点につき強力に誘導の手を差し伸べることが必要であると考えます。同時に、政府におきましても、独占禁止法の運用を再検討するなどの措置をとることも必要である、さように考えますが、総理の所見はいかがでございますか。 第二は、勤労者との話し合いであります。物価上昇の最大の根源は、賃金の高騰にあると思います。もとより、われわれは生産性の向上に伴う賃金の引き上げを否定するものではなく、むしろ、そうありたいとさえ念願いたしております。しかし問題は、生産性を上回る賃上げ、毎年繰り返されるスケジュール闘争による大幅賃上げ、これが消費者物価の上昇に刺激を与えていないとは言えないのであります。(拍手)賃金問題の解決がなくては、私は物価問題の解決も経済の安定もあり得ないと思います。(拍手)インフレこそが、農民、中小企業も含めて、勤労大衆にとって最大の敵であります。このことは、勤労者自身もよく御承知のはずであります。と同時に、物価と賃金が悪循環を続けるならば、勤労者の職場自体も立ち行かぬようになるのであります。また、ひいては、せっかくここまで発展してまいりました日本経済そのものも重大な事態に立ち至るのであります。それがわからぬ勤労者ではないはずであります。政府は、話せばわかるとの確信の上に立って、勤労者に率直に呼びかけを行なうべきであると思います。(拍手)総理の所見を承りたいのであります。 この二つのことに成功しますれば、物価克服の基礎固めができたと申してもよいと思います。勤労大衆も明るい見通しを持つようになります。国民は将来の希望に燃えて貯蓄にいそしむようになります。貯蓄意欲の再建こそは、今後の経済施策を進める上のいしずえとなるものであります。かくして、政府の物価安定のための総合施策も初めてその実効をあげ得ることになると思うのであります。 物価安定の見通しがつき、国民の貯蓄意欲も高まる機運となりますれば、そこで初めて安定成長、成長の中の繁栄への道が開かれるのでありますが、この際、特に国民を悩ましておる二つの大きな問題の解決が可能となるのであります。すなわち、金融引き締め政策の解除と大幅な減税であります。 私は、物価安定の大体のめどをつけつつ、企業、特に中小企業の活動を不自然に押えつけている今日の金融引き締め政策をすみやかに解除すべきものと願うものであります。そのことが経済の安定成長の条件でもあるのであります。また一方におきまして、物価が安定し、貯蓄が増加するならば、その豊富な民間資金を国家公共のために活用することが可能となるのであります。画期的な減税を断行し得る基礎が生まれ出るわけであります。減税問題は、あすの日本を築くための重大な課題であります。今日の税負担は、企業の正常運営にとりましても、国民生活の安定にとりましても、決して軽くないのであります。このままでは、企業も、国民も、あすへの夢と希望に燃え上がるわけにはいかないのであります。一刻も早く物価を安定し、貯蓄意欲を再建して、圧迫感のない租税負担、無理のない納税への道を切り開くべきと思うのであります。(拍手) 総理は、昨年七月の党総裁選挙に立候補された際に、三千億円の減税構想を発表されたのでありますが、それは、このようなお気持ちを表明されたものと存ずるのであります。といたしますれば、三千億円などと申さず、さらにさらに野心的な大減税を目標として、その前提となるべき物価の安定、貯蓄の増強の施策を進めるべきだと思うのでありまするが、総理の所見はいかがでありましょうか。 私は、このようにしてわが国の経済を安定的、永続的に成長発展させると同時に、その過程において、国民一人一人の福祉の向上がひとしくはかられるように施策を進めるべきだと考えます。経済成長それ自体は政治の目標ではなく、国民の福祉増准のための手段にすぎないのであります。総理の強調される人間尊重の精神とは、この趣旨を示されたものであり、社会開発とは、この精神にのっとって豊かな国民生活の建設につとめるということと理解いたすのであります。 高度の経済成長と技術革新の中で、国民生活の上に生じている各種の不均衡を除きつつ社会開発を推進していくにあたりましては、その取り扱うべきテーマは広範でありますが、特に重要なことは、住宅と土地の問題であると思うのであります。多くの国民の願いは、みずからの住まいを持つことである。二十年も三十年も働いたあとで、そこばくの土地に住まいを持ち、庭の芝生と花を楽しむ、これは勤労者共通の夢ではないでしょうか。この夢を現実のものとする施策こそは、今日特に重要な課題であると考えます。政府は、他の施策に優先し、この国民の夢の実現と取り組む考えがあるかどうか、その決意を承りたいのであります。 また、この住宅の問題と関連して、その解決を困難ならしめている問題は、土地の問題であります。特に地価の騰貴は、住まいを持ちたいという国民の夢を奪い去るのであります。また、住宅を持ちたい、そのために土地を買いたいと、苦労してためた貯蓄の価値を著しく減少さしているのであります。同時に、この騰貴によりまして、土地を持っておる者と持たない者の間の格差がますます拡大してきます。このようなはなはだしい不合理、不均衡が存在することは、社会上、政治上きわめて重大なことであります。この問題については思い切った考え方に立つ必要があると思います。政府、公共団体が未開発の土地を豊富に保有し、逐次開発していくということも一案でありましょう。また、西ドイツがすでにやっているように、土地先買法を制定することも一案でありましょう。土地収用法についても再検討の必要があるのではないかとも思います。しかし、この際土地についての考え方を確立し、私権の侵害にならぬように慎重に配慮すべきはもとよりでありますが、何らかの社会的考慮を払う必要があると考えるのであります。政府の所見を承りたいのであります。(拍手)総理も土地問題を重視され、建設省に宅地部を設置すると申されましたが、一建設省の問題ではないのであります。この際、総理じきじきこの問題と取り組み、土地問題に関しまする基本的理念を確立されたいのであります。 次は、政治の姿勢あるいは政治の運営のあり方について伺いたいのであります。 総理がいろいろ述べられました施策も、理念も、これをよく達成する大前提は、議会民主政治が清潔に、しかも公正に行なわれるということであります。いかにけっこうな政策を並べられましても、これを実現する政治の姿勢が正しくなければ、国民の信頼を失うようなことになり、無意義のこととなるのであります。これはすべての政党、すべての政治家の共通の責任ではありますが、特に政権をになうわが自由民主党は、常に厳粛な反省の上に立ってその体質を改善し、真に進歩的な近代的国民政党へと前進を続けなければならないと思うのであります。わが党の近代化は唱えられてすでに久しいものがありますが、佐藤総理が新しいわが国のリーダーとなられたこの際、この問題を勇気をもって取り進めるよう切に期待いたします。総理の決意のほどをお伺いいたしたいのであります。 また、政治の運営のあり方と深い関係を持つものは選挙制度であります。選挙の実情を見ておりますると、中央地方を問わず、回を重ねるに従い金権選挙が横行するようになってきたことを否定しがたいのであります。同時に、中選挙区制度の結果として、選挙は個人後援会本位となり、政党対政党で政策を争う傾向が薄れつつあります。このことは、政界の浄化刷新と健全な議会民主主義の発達を阻害するものであります。この見地から、現行の選挙制度を抜本的に改め、政党本位の選挙制度、金のかからない清潔な選挙制度を確立することが急務である。(拍手)この点につきましては、政府の選挙制度審議会において目下真剣に検討中でありますが、その答申が出ました際は、万難を排してこれを断行せられる決意を固められたいのであります。 私は、戦後二十年もの長い間、よくもわが国は、平和と繁栄を楽しみ得たと思うのであります。しかしながら、この平和と繁栄は、決して平和のかけ声と非現実的な中立論から生まれたものではないのであります。それは、日米安全保障条約によってわが国の安全が保障されてきたからであります。と同時に、この条約によりましてわが国は膨大な軍事費の負担を免れ得たのでありまして、このことが戦後わが国経済の奇跡的ともいわれる大発展の大きな力であったことも、また忘れてはならないのであります。(拍手)わが国の一部には、いまなお日米安保体制に反対する勢力が存在いたします。これらの人々は、さきの安保条約締結にあたり、日本は戦争に巻き込まれるとか、あるいは日本はアジアの孤児になるとか、いろいろな宣伝をいたし、国民大衆を惑わせたのであります。しかし、皆さん、その後日本に戦争がいつ起こったでしょうか。戦争どころか、平和と繁栄の連続であったのであります。(拍手)一体、日本はアジアの孤児になったでありましょうか。逆に、わが国はアジアの先進国として、アジアばかりじゃない、世界じゅうから期待される日本国となったのであります。(拍手)世界の軍縮が実現し、国連の平和維持機能が充実するまでは日米安全保障体制を存続せしめること、これは国の利益と世界の平和のため当然のことであります。 しかるに、近時、安保体制に反対する勢力は、安全保障条約改定十年目でありまする昭和四十五年、すなわち一九七〇年を期して、安保条約を破棄に持ち込もうとする動きを見せております。この動きの裏には、日米安保体制にくさびをぶち込み、日本革命の条件をつくり出そうとする企図のあることを忘れてはならないのであります。(拍手)日本政府としては、このような事態に対し国民が迷うことのないように、安保体制の趣旨を徹底するよう、あらためて努力をすべきものと考えますが、総理大臣の所信はいかがでありましょうか。 佐藤総理大臣、いまわが国はきわめてむずかしい立場に立っております。考えれば考えるほど、あなたに課せられた使命は大きいと思うのであります。しかし、このような時期は、日本の歴史ではしばしばあったのであります。仏教が初めて伝来し、大陸文化が日本の国を席巻するという混乱の時期もありました。また、黒船が来航して、西欧の物質文明に周章ろうばいした時期もあったのであります。これらの難局に臨みまして、われわれの祖先は、あるいは大化の改新を断行し、また明治の維新をなし遂げて、民族興隆の転機をつくり上げたのであります。(拍手) 歴史はめぐりめぐって、現在同じような問題の前に立たされておるのであります。復興と発展の過程で、新しいものと古いものとが雑居し、伝統の中に外国文化が未消化のままで根をおろしておる今日のわが国に調和と秩序を回復し、新しい国づくりにスタートすること、これが私は当面する政治の最大課題だと思うのであります。(拍手) 新しい愛国心が論ぜられております。しかし、新しい愛国心は、次の時代をになう青少年一人一人の心の中に自然に芽ばえてくるものでなければならないと思います。輝かしいあすの日本の歴史の基礎固めをして、りっぱな遺産を次の世代に引き継いでいく、その政治への発足が佐藤政権の使命であると存じます。(拍手) 佐藤総理は、いま新しい日本を建設するという重大な使命と責任の前に立たされておるのであります。われわれの祖先がなし遂げたことをわれわれにできないことはないはずであります。要は、われわれを率いる立場の佐藤総理が、あなたに与えられた使命遂行の前に、自信と信念と勇気を持つことであります。 切に総理の御健闘を期待して、質問を終わりたいと思います。(拍手) 〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇〕
○内閣総理大臣(佐藤榮作君) 政治の基本姿勢につきましては、私がしばしば申し上げておりますように、私どもはどこまでも自由を守り、そうして平和に徹する、これが私どもの最高の目標だということを申しております。この立場に立ちましてあらゆる努力をしていきたい。ことに国民各界各層の協力を求め、そうして新しい時代に対応する勇気と、そうして寛容と同町に調和をもって取り組んでいきたい、かように考えます。(拍手) アジアの問題は、御指摘のように、今回の日米会談をまつまでもなく、もちろん今日世界の中心課題であります。私は、アジアに平和、安定なくして世界の平和と安定はない、かようにも考えております。ことにアジアに位するわが国としては、その責任がまことに重いと思っておりますので、今後、一そう協力関係を樹立していくように各国を歴訪する機会も得たい、かように考えております。 日韓交渉の問題につきましては、先ほども和田君にお答えしたように、これは私どももできるだけ早い機会に日韓国交の正常化をはかりたい、かように考えておりまして、幸いにして、ただいままでは順調にその交渉が進みつつある、かように考えております。 また、ベトナムの問題につきましてのお話がございました。これはやはりアジア人はアジアを知る、そういう立場で、アメリカ等の合理主義に対してもよく話し合いをすべきではないか、この点も御指摘のとおりでございます。最近、わが自由民主党から現地の実情を調査して帰られた、その方の報告を聞きましても、やはり現地の実情、その把握が最も大事だ、そして各民族の願望、その民族的な要求を十分つかんで、それに対応していくということが望ましいことのように思います。 次は、マレーシアの紛争について積極的に調停すべきだということでありますが、このマレーシアの問題は、かつて池田内閣時代に一度手を染めたことがあります。しかし、不幸にしていい結果を見ることはできなかった。今回はインドネシアが国連を脱退いたしまして、これは同時にマレーシア問題に重大な影響を与えておるという事態でございますので、この関係はなかなか容易ではないように思います。インドネシアとも、またマレーシアとも友好関係にあるわが国が果たすべき役割りはおのずから明らかでありますので、今日の段階におきましても両者と十分の接触を持ちまして、できるだけの協力をして、そうしてアジアからいわゆる不安を一掃するといいますか、アジアに動揺を来たさないように、最善の努力をいたしたい、かように考えます。 次に、沖繩の問題についてるるお話がございました。私は、沖繩の問題については和田君にお答えいたしましたので、そのほうでさいて、和田君からお尋ねのなかった、福田君から特に、南方も南方だが、北方領土はどうしたかという点についてのお尋ねがありましたので、お答えいたしたいと思います。 この北方領土の問題は、あらゆる機会にわが政府はソ連に対しまして日本の正しい主張を宣明してまいっております。しかしながら、今日まで国後、択捉、これが古来の領土であるといいながらも、ソ連側に十分了承さすことができないで、今日のような状態になっております。私は、今後ともこの両島、これがわが国への復帰、これにつきましては最善の努力をするつもりでございます。施政方針の演説のうちにも、ソ連から招待を受けたその事柄の後ほどに、この領土問題もぜひ解決したいものだということを申したのも、その点でございます。(拍手) ただいまお尋ねがありました北方領土、これは沖繩とは別な理由から生じておる現状でありますが、わが国にとりましては、ぜひとも歯舞、色丹、これは平和条約が締結されれば返るということでありますけれども、国後、択捉、この両島をぜひとも返るようにしたい、かように私は念願いたしておりますので、一そうの御協力をお願いいたします。(拍手) 中共の問題につきまして、いろいろの御提案がございました。私は、今日までとっております基本的態度、これにつきましてはもう重ねて説明をいたしませんが、事いやしくも外交ということになりますならば、お互いがお互いの立場を理解する、これが一方的であってはならないと思います。そういう意味におきまして、わがほうにおきましても多分に相手の国について深い理解を持たなければならない点があるだろうと思いますが、同時に、わがほうといたしましても、わがほうをより理解してほしい、これは当然の希望でございます。私は、両者が十分その立場を理解することになれば、必ずや今日のようなみぞはなくなるのではないか、またそういう事態を希望するのであります。それを福田君は、お互いが内政不干渉の原則に立ったらどうだろうか、お互いがお互いの立場において処理するんだ、みずからを処理していくんだ、外国の事柄についてはよけいなせっかいをしないことだ、こういう表現をされました。私が申し上げるまでもなく、わが政府は、先ほど冒頭に申しましたように、自由に、また平和に徹する、こういう立場から、できるだけお互いによけいなことはしない、内政不干渉、同時にまた不可侵、各国と接触する場合に、いつもそのことを念がけておるのであります。私は、かような状態が双方にできますならば、今日の状態はより変わってき、改善されるのではないだろうか。(拍手)先ほど来言われまするごとく、今日の政経分離、そのたてまえで、また、国民政府とは正規の外交ルートを通じといいながら、どこかむずかしい事態が起こる。今日の外交——貿易にいたしましても、だんだん支払いその他について困難な状態にも立ち至るだろう、そういうことが予想されますが、ただいま申し上げますような基礎的な考え方が明白にお互いに守られるようになっていくならば、順次これらの間の間柄も改善される、かように私は期待するのであります。 次に、核兵器の問題についての御提案もございました。私どもは、核兵器は、唯一の核被爆国としての、その国民としての念願から、核兵器をわが国は持たないのだ、かような立場で、また核の拡散については、これはどこまでも反対するのだ、こういう態度で今日まで国連で活動してまいりました。国連においてそういう意味から活動したことは、よく御承知のことだと思います。なお、ただいまのお話もございましたし、さらにわれわれの核を持たない国、その立場に立っての正しい主張、これはどこまでも続けてまいりたい、かように思います。 また、国連軍縮委員会に積極的に参加したらどうかということでございますが、これは最近アメリカに行き、国連ウ・タント事務総長と会っていろいろ話し合ってみますると、最近、軍縮会議等を強化するという立場でいろいろくふうされるやに聞いております。こういう際はたいへんいい機会だと思いますので、わが国がそのメンバーになることを心から願っております。(拍手) 中共の核爆発、核実験につきましては、当時政府の声明を出しまして、ぜひともそのことをやめてもらうように、同時にまた、モスクワの部分的核実験停止協定に参加するようにおすすめしておるようなことはすでに御承知だと思いますから、重ねては申し上げません。 外交についての国論統一は、先ほどお話しいたしましたが、ぜひとも与野党とも国の基本的な問題については機会をとらえて忌憚なく話し合う、こういうような慣例をつくりたい、その意味で今後とも努力してまいるつもりでございます。 アジア問題についての調査会を設けたらということでございますが、これはなかなか大きな問題でありますので、十分考えてまいりたいと思います。 AA会議については先ほど来私がお答えしたとおりでありますから、これは誤解がないと思います。 次に、物価問題、内政の問題についてお答えいたします。 物価問題こそは、私どもの当面する最も重要な問題でございます。しかして、この問題は、御指摘にありましたように、本来の姿としては、やはり長期のかまえで経済を安定、正常化しない限り、物価問題は是正ができない、かように私は考えます。しかしながら、本来の姿、経済の正常化、それをはかるためにはしばらくの時間を必要といたしますので、当面しての物価対策、これまたあるわけでありますから、これはお説のように当面する短期的な一つの処置、同時にまた長期的な処置、ことに大事なのはその長期的な観点に立っての処置こそ最も望ましいことであり、これが最もむずかしいことだということでございますから、その点を十分わきまえて対処してまいるつもりであります。どこまでも総合的に、また、この事態は国民各界各層の協力を得なければならないことは申すまでもないのであります。そういう立場におきまして、国民ぐるみの運動、そういう運動が成功するようにいたしたいものだ。政府は、最近経済界からの代表者とも話し合ってみたい。また、春闘等を控えておるこういう際に、賃金を上げるばかりが能ではない、インフレにでももしなるならば、それこそ労働者としてもたいへんな事柄だから、これも御協力を得なければならない。最近ILO調査団が参りましたが、私がILO調査団の一行から学びましたことは、双方においてよく話し合うことだ、こういうことを盛んに繰り返しております。私は、国民経済的な立場に立って、双方が忌憚のない話をし、お互いに協力し合う、こういうことができるならば、ひとり物価対策ばかりではなく、よほど今日の世の中も変わってくるのじゃないか、お互いが不信の状況、あるいは物価問題につきましても、お互いに不信の状況であるようでは、これはなかなか容易なことではない。私は、ILO調査団が来ましたこの機会に、これから学び得たもの、これを皆さまに御披露いたしまして、御協力を得たいと思います。(拍手) なお、独禁法の運用等について考慮の余地はないかというお尋ねでございましたが、独禁法が果たしておりますものは、申すまでもなく、福田君御承知のように、これは価格形成の自然的条件を整える、こういう意味におきまして、これはいい働きをしてくれておると思います。したがいまして、ただいまは独禁法を改正するというような点でなしに、ただ、独禁法が行き過ぎてくる、そういたしますと、今日の現状からでもこれはやや行き過ぎではないか。ものごとは行き過ぎが最もよろしくないように思いますので、そういう点では、公正な態度で、行き過ぎにならないように注意したい、かように思います。 そうしてお話しのように、物価の問題が安定してまいれば、必ず国民から貯蓄、かような状態になる。貯蓄ができるようになれば、また減税もできる、国の財政も豊かになる、財政投融資も楽になる、こういうお話でございます。私は、そのものの考え方、これには基本的に私自身賛成でありますし、私が総理になります前の私の発言などを引用されての御指摘でございますが、確かに福田君の仰せのように、私は、国民自身が富む、そういう形において国の政治が行なわれることが望ましい姿だ、かように考えております。 住宅問題につきましては、これも御指摘のとおりでありまして、私は、何といっても、中堅勤労者を対象としての持ち家への夢、これはぜひ実現してやりたいものだ、かように思います。今回住宅供給公社をつくったというのも、この夢を実現したいという点でございますが、もちろん、ただいまはまだその資金が非常に少なくて、これをもって解決したというのはほんとうにおこがましい次第でございますが、これが一つの方向でございます。そういう方向で今後とも長期にわたりましてこの施策を充実していくということにいたしたいと思います。 また、土地の確保等につきましても同様の考え方があります。ただ、地価の場合に注意しなければならないのは、私権絶対優先という考え方を改め、その公共性を尊重する理念を確立していくことが必要だと思います。こういう点は、基本的なものの考え方でありますので、各界の協力を得ないとうまくいかないと思います。 最後に、政治の姿勢を正せ、党の近代化、清く正しく進んでいけ、これはもちろん問題はございません。そのとおりでございます。 また、選挙制度の改正と真剣に取り組み、選挙制度審議会の答申を得たら、勇断もってこれに当たれ、これまた当然のことだと思います。 以上、お答えといたします。(拍手) ————◇—————
○海部俊樹君 国務大臣の演説に対する残余の質疑は延期し、明二十八日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
○議長(船田中君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(船田中君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。本日は、これにて散会いたします。 午後三時十三分散会 ————◇————— 出席国務大臣 内閣総理大臣 佐藤 榮作君 法 務 大 臣 高橋 等君 外 務 大 臣 椎名悦三郎君 大 蔵 大 臣 田中 角榮君 文 部 大 臣 愛知 揆一君 厚 生 大 臣 神田 博君 農 林 大 臣 赤城 宗徳君 通商産業大臣 櫻内 義雄君 運 輸 大 臣 松浦周太郎君 郵 政 大 臣 徳安 實藏君 労 働 大 臣 石田 博英君 建 設 大 臣 小山 長規君 自 治 大 臣 吉武 恵市君 国 務 大 臣 小泉 純也君 国 務 大 臣 河野 一郎君 国 務 大 臣 高橋 衛君 国 務 大 臣 増原 恵吉君 出席政府委員 内閣官房長官 橋本登美三郎君 内閣法制局長官 高辻 正巳君 総理府総務長官 臼井 莊一君 ————◇—————