大蔵委員会 第12号
- 発言数
- 71 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1965/02/24
会議録
○吉田委員長 これより会議を開きます。 金融に関する件について調査を進めます。 本日は、宇佐美日本銀行総裁が参考人として出席しておられます。 参考人には、御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございました。 まず当面の金融情勢について宇佐美総裁から御意見を述べていただき、そのあと質疑を行なうことといたします。宇佐美日本銀行総裁。
○宇佐美参考人 昨年十二月に山際前日銀総裁がおやめになりまして、私がはからずもその後任に任命された次第でございます。何とぞ前任者同様よろしくお願い申し上げます。 ただいま委員長から、当面の金融情勢について御報告を申し上げるようにというお指図がございましたので、ただいまから簡単に申し上げたいと存じます。 御承知のように、日本銀行は一昨年、昭和三十八年の後半から非常に悪くなりました国際収支の傾向を懸念いたしまして、三十八年の末以来金融の引き締め措置を実施してまいったのでありますが、各界の御努力によりまして、幸いにも引き締め政策の効果が、だんだん経済各方面に浸透するに至ったのであります。 まず、昨年の金融面について申し上げますと、年初以来銀行貸し出しの増勢が、前年よりもその増勢の度合いを下目に持続いたしまして、またその貸し出し抑制傾向が続きましたために、預金通貨残高も昨年後半は著しく増勢を鈍化いたしてまいったのであります。また昨年の十一月ごろからは、銀行券の発行の増勢も鈍ってまいったのでございます。 こういうふうに金融面にあらわれております情勢がだんだん落ちつきを示してまいりましたが、一方生産について見ますると、引き続き引き締め後もかなり増勢を続けておりましたものの、これまた昨年十月ごろよりは生産調整を行なう企業がだんだんふえてまいりました。そのために鉱工業生産指数にも十一月以降増勢鈍化の傾向がうかがわれてまいったのでありまして、いままでの非常に強い生産の勢いが基調的に変わってきたように思われるのであります。 この間物価の動向について見ますると、卸売り物価はまずまず落ちついた推移をいたしておりまして、また消費者物価につきましても、昨年中の騰貴率は一昨年に比べまして落ちついてまいったように考えられます。しかし消費者物価につきましては、なお上がる気配は失われないのでございまして、一月には御承知のように米価の引き上げの影響もございまして、一月の消費者物価は上がっております。今後この消費者物価の問題については、私どもは深甚の注意をいたさなければならぬと思っております。 かくのごとき国内の金融引き締めの状態でございますが、さらに、先ほど申し上げましたとおり、引き締めの当面の目的でございます国際収支につきましては、貿易収支、経常収支とも七月−九月ごろより黒字基調に変わってまいりまして、十月−十二月におきましてはかなりの黒字を見るに至ったのであります。十−十二月は例年輸出期でございますけれども、なお施設調整をいたしましても貿易収支は黒字という状態でございます。これは輸出が引き続き好調である上、輸入も、企業の原材料などに対する輸入態度が慎重であったということも言えるのではないかと思うのであります。本年に入りましてからもなおこの傾向は引き続き持続いたしておるのでございます。 これに反しまして、昨年秋ごろから企業倒産の増加がかなり目立っておりましたことはまことに遺憾でございまして、私どもといたしましてもこの動向につきましては最も注意を払っておるのでございます。特に中小企業関係の倒産でございますけれども、これはまことに日本の中小企業の特殊性を考えますと痛心にたえないわけでございます。日本銀行といたしましても各支店を督励いたしましてその原因を調査せしむる一方、これが健全なものにまで及ばないように、地元の各金融機関とも協力してできる限りの措置をとるように指示してまいったような次第でございます。 以上のごとき情勢を総合判断いたしまして、日本銀行といたしましては金融引き締めを一部解除したほうがいいのではないかということで、昨年十二月に預金の準備率の引き下げを行ないまして、その後においてもこの情勢が別段懸念すべき刺激的なものとも考えられませんので、一月九日に公定歩合の日歩一厘引き下げを実施したような次第でございます。私どもといたしましては今回の処置によりまして景気が特に刺激されないように考えておったのでございますが、この公定歩合引き下げ後の状況を聞きましても、まずまず刺激的な処置ではないのではないかというふうに考えておるのでございます。 この意味におきまして、今後の情勢は国際収支につきましても、やや長期的に考えますと——短期的にはただいま申し上げたような状態でございますが、長期的に考えますと、海外の市況の先行きもどうなることか、また通貨価値防衛に関連して各国が輸出マインドを非常に強くしております現況から考えまして、やはり将来この貿易につきましてはいたずらに楽観することは禁物だと思うのでございます。特に去る二月十日米国の国際収支特別教書に示された金利平衡税の期限延長、さらにアメリカの銀行の海外貸し付けに対する新しい処置、こういうものを考えますと、これまでのごとく経常収支の赤字を資本流入によってまかなうことがだんだん困難になってくることは当然だろうと思うのでございます。国際収支以外におきましても、企業経営基盤強化の問題であるとか、あるいは消費者物価の問題であるとか、わが国経済にはなお問題が多くあるのでございます。したがいまして、わが国経済の今後の状態は、先ほども申し上げましたとおりなかなか手放しにこれでよいという状態ではないと思いますので、したがいまして、今回の一厘の公定歩合引き下げも、その一厘にとどめましたのは、いろいろだだいま申し上げましたような先行き問題がございますので、きわめて慎重な態度で一厘にとどめたような次第でございます。 さて、今後の見通しでございますが、幸い当面の経済情勢は先ほど申し上げましたとおり一応落ちついておるようでございますが、また企業の調整の問題も私どもが聞いておりますところではだんだん進んでおるようでございます。また貿易収支も当面はそれほど心配もないというようなことでございますが、先ほども申し上げましたとおりいろいろ問題もございます。特にこの際申し上げておきたいことは、今までの日本の経済が需要が非常に強かったのでございますが、今日において供給過剰というふうにいわれるようになったことでございます。このいまいわれております供給過剰が一体どういう性格のものか、またその大きさあるいは深さというものがどんなものであるかという判断でございまして、この判断が今後の景気の見通しをつける上において、また言いますれば金融政策の緩和の進め方につきまして大いに研究せねばならぬ問題だろうと思っておるのでございます。したがいまして、私どもは過去のいろいろの経験を十分反省いたしまして、申し上げるまでもないのでありますが、過去何度かの引き締め期におきましても、その引き締めの末期におきましてはいずれも供給過剰という現象が出てくるのでございますが、今回の場合は同じ供給過剰といいましてもこれまでにない大きなものではなかろうかと思われます。また内容的に見ましても、投資財とか耐久消費財といったような最終需要財の在庫率がふえておる。それに引きかえ中間需要財の在庫がそれほどふえてないというような点を考えますと、かなり構造的な問題ではなかろうかというふうにも考えるわけでございます。それに加えまして、供給過剰をささえるものとして、ただいまいわれております企業間信用の異常な膨張、二十兆円といわれるようなその企業間信用をどういうふうに考えたらいいかという問題について、私どもいま慎重に検討をいたしておるような次第でございます。今後の金融緩和によりまして、供給過剰のこの事態が、かえって緩和したためにふえる、あるいはそういう状態が、企業間信用が少しも減らないというようなことでありますと、わが国の経済の基盤が、緩和することによって強化されたとは言いがたいのではないかと思っておるような次第でございます。当面の貿易収支、生産の動向とともにこれらの問題の推移を見守っておるところでございます。 以上簡単ながら公定歩合一厘引き下げの前後の事情、今後の見通し、問題点について簡単に申し上げた次第でございます。私は、こういう問題については、ひとり日本銀行だけで解決すべき問題ではございせん。政府との協力はむろん申すまでもないのでございます。さらに民間、産業界、金融界ともよく相談をして今後の金融政策を進めてまいりたいと思っておる次第でございます。 簡単でございますが、一応これで報告を終わらせていただきます。
○吉田委員長 続いて質疑に入ります。 通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
○佐藤(觀)委員 宇佐美さんに、山際さんのあとを受けられて非常に御苦労であるということばを最初にしまして、実はあなたは三菱銀行の頭取りをやっておられましたし、長年民間の金融のベテランとしておやりになった方であります。一昨年でしたか都市銀行の会長もやられて、なかなか手腕、力量を発揮せられたといわれておりますが、実はお伺いしたいのは、前の山際さんはいわば大蔵省の役人から出た人でありますが、あなたはずっと民間から出た人でありますから、同じ日銀の総裁としてもそこに考え方と抱負とか経倫というものが違っておるのじゃないか。そこでまずまつ先にお伺いしたいのは、前の総裁と違った観点に立っておられる御意見なり抱負なりを簡単でけっこうでございますから、お伺いしたいと思います。
○宇佐美参考人 山際総裁とどういうふうに違うのだという御質問ははなはだお答えしにくいのでございますが、私は終戦後二十年間におきまして日本の経済がすばらしく発展したことはこれはもういまさら申し上げるまでもないのでございますが、そうかといってその間の過程を考えますと、やはりこれで満点だという経過はたどっていないと思うのでございます。その中には多くの反省をしなければならない問題がございますが、何と言いましても経済は生きものでございますので、そのときによっていろいろ浮沈があることは免れないのでございますが、その浮沈の幅がもっと小さかったならば国民はなおよかったのではないかということを考える次第でございます。それにはむろんいろいろの、単に政府といわずさらに民間のこういう経済発展に対する態度も十分反省されなければならないのでございますけれども、やはり金融につきましてももう少しやりようがあったのではないか、これは結果論でございますので、そのときの金融当局を責めてはいけないと思うのでありますけれども、しかし結果論にしろ何にしろ、そういう点を私はかねがね考えておったような次第でございます。これは日本銀行がいかにがんばってもなかなかできないことではございますけれども、しかし各方面の御協力を得るように努力をすれば、民間のあるいは政府の御支持を得ればもう少しうまくいくのではないか、こういう点において努力をいたしたいと思っておる次第でございます。 簡単でございますが一言。
○佐藤(觀)委員 宇佐美さんはやっぱりおとなしい、なかなか要領のいい人でありますから、なかなか簡単に私らの言うことを真に受けておられないと思いますけれども、何と言っても日銀は御承知のように管理通貨制度の中で紙幣を発行するという独占的な仕事でありますので、その及ぶ影響というのは相当大きなあれがある、国民の日常生活にも影響するような大きな仕事をやっておられると思う。そこで私は、よく前の山際総裁が来られるたびにいろいろ質問したのでありますが、ちょうど一昨年あたりの経済のひずみが起きてからはだいぶいろいろ悩みがあったらしく——これはわざわざ山際さんに聞きに行ったわけじゃありませんけれども、自分の意見と多少政府の意見が違うというような、そういうことばも多少ござました。そこで、あとで申し上げますけれども、現在のこういう大きな世界の中で、日本は大体ドルやポンドにリンクしておるわけですが、最近ドゴールが金本位制の復活というようなことを、これは政治的な意味もあると思うのでございますけれども、そういう問題が出てきた。こういう場合に、総裁はどのようにお考えになっておられるのか、そういう点を簡単でけっこうでございますから、ちょっとまず伺っておきたいと思います。
○宇佐美参考人 ただいま御質問がございました日本銀行が独占的に通貨を発行しておる、これはおそらく非常な大きな力を持っておるというお話だろうと思うのであります。このごろの通貨につきましては、むろん経済の発展に伴いまして、ふえてまいることは当然だろうと思うのでございます。さらにその通貨のふえ方につきまして、やはり物価の問題なりと当然関係してまいるわけでございます。私は先ほどはそこまで話は申し上げませんでしたけれども、やはり日本銀行の一番大事な仕事は、通貨の安定、通貨価値の安定ということでございまして、通貨価値の安定というのは、対内的にいえばやはりこの円なら円というものが国の内外におきましてその信任といいますか、それが維持されるということが必要なんでございますが、具体的に申しますと、物価の安定と為替相場の安定、これが国際収支という問題を通じて安定をしなければならない、かように思っておるわけでございます。それで、いまお話のとおり、国際通貨いわゆるキーカレンシーにつきましても、いろいろの議論が出ております。その間に処して日本の円をどういうふうに維持するかということは、大きな問題だろうと思うのでございます。これはやはり全体として考えなければいけないのでありまして、ただいま御指摘のようなフランスの一つの問題によって日本の通貨をどうするかというようなことをぐらぐら考える必要はないのではないか。ただ、その成り行きは慎重に考えなくちゃなりませんが、それよりもやはり日本としては大事なことは、国際収支を安全に均衡をとらすという点と、物価の問題につきまして、円の通貨が信用を失うような状態にならないように、いわゆるインフレ防止といいますか、そういう見地からこれを考えていくのが当然の処置だと考えておるような次第でございます。
○佐藤(觀)委員 ちょうど宇佐美さんがかわられたあとで、御承知のように今度は大蔵省から日銀法の改正問題が一番大きくなってきておる。おそらく今国会で大蔵省が出した案の中で、今度の日銀法の改正ほど重要な法律はないと言われております。そこで、その問題を中心としてお尋ねするわけですが、一番問題になっておるのは、日本銀行の中立性という問題であります。この問題を総裁はどういうふうに受け取っておられるか。金融制度調査会でもいろいろ議論がありまして、中立性の問題について、ある一面では中立性をあくまでも保つべきだという意見と、もう一つは、政党内閣の政府が責任を持っておるのだから、やはりある程度まで政府の財政政策の方針で押しつけるのが当然じゃないかという意見もあるわけでございます。この点について、総裁はどういうような考えを持っておられるのか。それから大蔵大臣の了解の点をどれまで尊重さるべきであるかという問題について、いろいろ議論があるわけですが、私は、今度の改正によってむしろ日本銀行の中立性が多少薄れて、大蔵大臣の権限が強うなり過ぎるのじゃないか、そうなるといろいろな問題が起きるように考えておりますが、この点はどういうように総裁は解釈しておられますか、伺いたいと思います。
○宇佐美参考人 私も、民間におりましたときも、当然この日本銀行法の改正については非常に関心を持っておったわけであります。それはやはり日本銀行法というものが日本の金融の基本法ともいって差しつかえないのではないかという意味でございます。しかもこれはずいぶん長い間論ぜられた問題でございます。金融制度調査会におきまして結論が出されてからも、もう四、五年でございますか、たっておるような問題でございます。しかも、現行の日銀法を見ますと、いわゆる戦時立法でございます。これを直さなくちゃならぬことは、どなたも御異議がないところだろうと思います。これを今度大蔵省が取り上げて国会にお出しになるという御意向を承っておりますが、私もたいへんけっこうなことだろうと思っておるような次第でございます。 そこで、ただいまお尋ねいただきました中立性の問題でございますが、この日本銀行の中立性あるいは独立性というものについて、世間でいろいろお話がございまして、いろいろその内容につきましても、必ずしもはっきりいたしておりません。申し上げるまでもなく、私は、日本銀行の中立性といいましても、完全なる中立あるいは独立、すべてのコントロールを排除する、もうわが道を行くというような中立はあり得ないと思っております。また、実際問題といたしましても、私はじめ日本銀行の首脳者は政府が任命するわけでございますし、中にはただいま国会の御承認を得るような制度にもなっておりますし、また、そのほか、大ワクといたしまして、日本銀行のいろいろな法律上の制限も現にございます。そういうわけで、一口に言いますと、きわめてばく然たる表現でございますけれども、やっぱり相対的中立性ということになるかと思うのであります。絶対的の中立性なんというものはあり得ないし、また、現在の組織からいいまして、政府が最高の責任者であることも当然だろうと思うのであります。それでは、この相対的の中立性とは何だということが、やはり日銀法を決定するものだろうと思うのでございますが、それはやはり非常に大きな大ワクの中で、個々の政策については日本銀行にまかせる、日本銀行の自主性を尊重するというのが、いまわれわれが申しております中立性だろうと思うのでございます。したがいまして、その中立性というものは、あくまでも法律できめられた権限のワク内における個々の政策、あるいは日銀のその政策に基づく業務の施行というものの中立性でなければならない。その個々の政策の決定につきましては、やはり日本銀行にこれはまかせるというのが中立性だろうと思う次第でございます。
○佐藤(觀)委員 それから、今度大きな改正になるといわれております政策委員会の問題ですね。この政策委員会については、まあ先日佐々木副総裁がここに来られましたので個人的にちょっと話したのですが、非常に大きな改正であると同時に、これは理事をどのようにするかというような問題とからんできまして、私の意見では、まあこういうような重要な政策委員会——政策委員会という名前は変わっても、実際は日銀の方針をきめる重要な役割であるので、広く一般の社会の学識経験者とか、あるいは地方の代表とか、農業界の代表とか、そういうような者を含めた意味の委員を選んでいただきたいということを考えておるわけです。その点について総裁はどんなふうに考えておられるかということが一点。 それから、身分の保障の問題でありますが、まあ、いま政策委員会はおそらく一週間に二回くらいあるらしいので、これはほかの業務と兼任をされるようでありますけれども、少なくともこういうような重要な職にある委員というものは、やはりある程度まで専属にして、そうしてその優遇措置をとるというような立場を堅持しなければ、政策委員会のいまの人たちは内職程度の感じでようやっておられるようでありますけれども、そうではなくて、やはりはっきりした身分の保障をするべきが至当ではないかと考えております。 それから、理事の問題は、まあ局長まではいくけれども、理事になれぬようでは、日本銀行の中におる人の将来のためにもこれは問題があるのじゃないかと思いますので、この点を総裁はどのようにお考えになっておられますか、伺いたいと思います。
○宇佐美参考人 お答え申し上げます。 まあ、ただいまの機構の問題、組織の問題でございますが、私自身は、世間ではよく日本銀行はツーボードだ、二つの組織を持っておるというふうにいわれておりますけれども、私が実際あそこに入りまして感じましたことは、そういうような印象はあまりないのでございます。と申しますのは、一番大事な政策決定はむろんただいまの政策委員会で決定いたしますけれども、さらにいろいろの問題につきまして政策委員に御報告し、意見を聞いております。そうして、私を補佐します理事と私、副総裁が一緒になりまして、その決定に基づきまして運営をいたしておるような次第でございます。事実そういうシステムというような感じはないのでございます。 ところで、ただいまの政策委員でございますが、これはただいまの現行法がちょっと書き方が不明瞭な点があってそういう誤解もあるいは起こるんじゃないかと思うのでございますが、委員の皆さんは決して利益代表というような立場から御発言にはなっていないと思うのであります。むろん出身がいまのようにきめられておりますので、そうして経験もそういうふうに多方面におありになりますので、一見そういう感じもいたすわけでございますけれども、しかし、やはり御発言は決してその自分の出身についてのみ発言するというようなことはないのでありまして、むしろ全体の高所大所からいろいろ御意見を述べておられるような次第でございます。したがって、私は今後もやはり政策委員会——これはどういう名前になりますか、とにかく、そういうものは利益代表的になりますとかえって何か運営が非常にむずかしくなるのではないかというふうに感じておるような次第でございます。いろいろ御経験のある方が委員になっていただくのはけっこうでございますけれども、何の代表、何の代表というようなことになりますとどうしても利益代表的になりますので、私の意見を率直に述べることをお許し願えるならば、もっと高所大所から金融政策について論じていただくという方がいいのではなかろうか。 それからもう一つは、そういうふうに利益代表といいますと、いろいろの、何といいますか、人数の制限のほうもございますし、金融の政策委員会が非常に大勢の方で論議するということは避けたほうがいいのではないか。まあ五、六名くらいが一番よいところではなかろうか、かように感じているような次第であります。はなはだ率直に申し上げていかがかと思いますけれども、さように考えております。 それから理事のほうは、これはあくまでも総裁の補助者だいう立場でおりますが、現在でも、これは規定にはございませんけれども、必要なときには私の説明を補助するという意味で、会議にも出ておりまして、今度の改正案ではその点も明らかになったというように承っておりますので、非常に喜んでおるような次第であります。 政策委員会が日本銀行の最高機関であるという点につきましては、現在もさようになっております。そうして、理事は理事としていわゆる一般の会社の重役、役員という資格を与えておりますので、まずその辺がいいんじゃないかと考えているのであります。
○佐藤(觀)委員 これは私、法的に問題にすべきかどうかわかりませんけれども、日銀の資本金の問題でありますが、現在一億の資本金を持っておられるわけです。そこで、今度は無資本にするということで、これはどうもわれわれ解せない点がある。あるいは社団法人というものも資本金というものがあるわけです。それから、いままでの四千五百万円の株主に対してはどのような方法をとるのか。大蔵省は何か百円の額面に二十円のあれをつけて返すと言っておりますけれども、時代が違いますから、いま百二十円もらってもおかしい話だと思うわけです。こういう問題は非常に重要な問題でありますのでそう軽々に扱うべきではないと思っておりますが、総裁はこの点どういうふうにお考えでありますか。
○宇佐美参考人 ただいまの御質問にお答えいたす前に、前の御質問で私お答えを落としておりました。それは、いまのいわゆる政策委員の兼業の問題であります。これは、兼業は何もされておりません。そうして、会議はなるほど週二回というふうにきめておりますけれども、しかし、ときどきお集まりを願ってあるいは臨時会議を開くこともございますし、委員の皆さんは毎日日本銀行にいわゆる常勤と同じ状態で御出勤になっていろいろ政策の研究をされております。どうぞその点は、決していわゆる外部重役的のものではなくて、毎日出勤されておることを追加申し上げておきます。 それから、ただいまの日本銀行の資本金の問題でございますが、これはただいまでも日本銀行という大きな組織において、わずか一億円というようなことでございます。そのうちの政府が五五%ですか、持っておるということでございます。出資者が日本銀行の方針あるいは運営について御関係になってくることは実際問題として何もないわけであります。それでこの際改正につきまして、この資本金をどうするかという問題が当然出てきたわけでございますが、私はやはり理想の形としては無資本がいいと思うのでございます。これをかりに出資金を政府が買い上げて全額政府出資ということにしますと、完全なる国有になってきます。そうしますと、やはり先ほど申し上げました中立性の問題もここに侵される心配があるのではないかという意味におきまして、全部これを政府が持つというような形でなく、無資本のほうが私はいいと思うのでございます。ただ、ただいまお話しのとおり、現在の出資者の方々をどうするかという問題でございます。これはなかなかむずかしい問題でございまして、まあいろいろな説がございますが、どちらの説がいいか悪いかということを、いま私の立場から申し上げかねるわけでございます。これはひとつ政府並びに国会において御決定願うほうがいいのではないか。ただ円満にいくならば無資本をとるべきであるという点を申し上げるにとどめたいと思います。
○佐藤(觀)委員 またいずれ大蔵大臣に伺いたいと思っておりますが、もう一つ大きな問題になっておるのは、日銀の発行する管理通貨の問題に関して、今度日銀券の発行限度を廃止するということになっておるようでありますが、これは将来インフレの影響、あれがあるのではないかという懸念も生まれてくるのでありますが、その反面、いま御承知のように日銀券はペーパーと同じで金の準備がありませんので、少なくとも私は政府の持っておる金というものを準備のために日本銀行が全部持ってしまうことのほうが、どうも筋が通るように考えておりますけれども、この点は一体どういうふうに考えておられますか。
○宇佐美参考人 ただいま各国ともいろいろな持ち方をいたしておるようであります。おっしゃるとおり、いま大部分の金というものは日本銀行が持っておるわけであります。これを全部集めてしまうのがいいのか、またこれは現在政府が持っておりますのも、持っております理由があるように聞いております、ごく少数のものについて。それほど大問題ではないのではないか、かように考えております。通貨につきまして発行限度を今度日銀法で改正してなくなすわけでございますが、ただいま現状を申し上げますと、一応形式的には限度を設けておりますけれども、実際の問題はこれが伸びてまいり、限度を越しますと、限度外発行というようなことで、追認する、ただ形式だけをやっておるような次第でございます。したがいまして、むしろ根本的の問題、通貨を決定するのは何かということを考えますと、やはり国際収支であるとか物価の問題であるとかいろいろ消費の問題であるとか、そういう問題、むしろそこのところに問題があるのでありまして、ただ限度をつくったからといってそれでどうなるものじゃないというように考えておる次第でございます。
○佐藤(觀)委員 最近証券が不況のために昨年あたりから日本銀行のほうで援助しろということで、だいぶ日銀の融資ということが問題になって具体的にやっておられますが、これは信用を保つ意味において何だか不安定のような感じがするのですが、この日銀の証券界への融資の問題については総裁はどのように考えておられるか。民間におられるときおそらく推進者であったと思うのですが、その点はどのようにお考えになっておりますか、承っておきたいと思います。
○宇佐美参考人 私は、証券というものはやはり日本の経済を支える非常に大きな機構である、かように考えておるのでございまして、証券界が非常な不安の状態になりますと日本の経済が安全に成長していくということはとうていできない、かように考えております。単に経済界のみならず現在におきましては証券関係者というものは全国民といってもいいくらいになっておりまして、これに不安人気が出てくることは何としましても防止しなければならぬ、かようにただいま御指摘のとおり民間のときから考えておったような次第でございます。ただ、そう理屈ばかり言いましても、現実に株式が非常な不安になっておる、これはむろん根本的には日本経済がやはりひずみがあり、さらに個々の企業が非常に不安定である、企業がりっぱな成績をあげる限りにおいて私は株式の不安ということはないと思いますが、しかし一方におきまして株式業界というものも、これは日本銀行もさらに政府も責任があるのじゃないかと思うのでございますが、しかしいままでの株式業界の運営のしかたについては、もっと早く警戒を与え、あるいは運営につきまして指導しなければいけなかったのじゃないか、ただやはり根本的に株式というものは需要供給によって放任しておくべきだというような考えがあったために、いろいろの指導がしにくかったのではないか、かように考えておるのでございます。しかし重要性という見地から見ますると、決して証券界は放置する業界ではない、かように考えておるわけでございます。したがいまして、日本銀行としては、やはり個々の証券会社につきましては個々の取引銀行においていろいろ援助すべきものだろうと思って個々の問題については関与いたしませんが、しかし業界としてながめますと、そこにたまっておりますいろいろの問題を一応きれいにしないと正常化ができないと思いまして、御承知のようないろいろな処置を、共同証券であるとかあるいは引き受け組合であるとか、いろいろな問題につきまして、われわれのできる援助をし、市場の安定あるいは世間の不安除去につとめてきたつもりでおります。まあ一応これで基礎的の問題は片づいたのではないかと思っておりまして、あとは産業界の成績の回復と、それから業者自体の努力によって改善してもらいたい、かように考えておるわけであります。総体的の問題につきましては、さように考えておりますが、個々の銀行の、さらに今後証券界にどういう援助をするかというような問題につきましては、むろん相談に乗らざるを得ない場合もあるのではないか。これもあくまでもわれわれの相手である銀行との話し合いについて、証券界には一応いままでの最低の線は食いとめたのではないか、かように考えておるわけであります。
○佐藤(觀)委員 もう一つ中小企業者の立場からいいますと、宇佐美さんは御承知のように、大銀行の系統の、いわゆる大都市銀行、いわば大きな企業家の立場から、銀行の頭取をやっておられたという立場からも、どうも日本銀行のあれになられると、大きなやつばかりは注意して、中小のやつは注意しないんじゃないか、そういう批評があると思うのです。こういう点で、中小企業にどのような観点——私は三菱銀行は、全部大きなものに融資しておるとは言いませんけれども、しかしニュアンスとしてはそういう感じを一般に与えたんじゃないかと思われますが、中小企業の金融に対しては、どのようにお考えになっておりますか、伺っておきたいと思います。
○宇佐美参考人 私が前におりました銀行が、そういう誤解を受けておりますことは、私の不徳の至りかと思うのでございますが、しかし決して前の銀行におりましたときから、中小企業の重要なこと、ことに日本の経済にとりまして、あるいは日本の国民全体にとりまして、その中小企業に従事されておる人口の大きさ、あるいはその業種の幅の広いこと、そういう点を考えますと、中小企業については、中小企業の健全なる発展がなければ、大企業もなかなか仕事ができないというふうに私は考えておったつもりでございます。したがいまして、日本銀行に参りましてからも、過般の一月に私は初めて全国の日本銀行の支店長を集めて会議をいたしたのでございますが、特に中小企業について、日本銀行がもっと関心を持たなければいけない、これがやはり国民生活におきまして、その基盤をなすものであるという意味におきまして、中小企業の問題について、常に、単にうわのそらで表をなでるだけでなく、いろいろの問題について相談をして、相談に応じてもらいたいということを述べておるわけであります。ただ中小企業の問題は、決して金融だけでは解決できる問題ではございません。これはあらゆる問題につながる問題だと思っておりますが、しかしまた一方からいいますと、金融という問題は、いろいろな問題につながっておるものでございますので、御指摘の点を十分今後もつとめてまいりたい、かように思っておる次第でございます。非常にむずかしい問題であることをどうぞ御了承願いたいと思います。
○佐藤(觀)委員 同僚議員もたくさん質問があると思いますから、これを最後にいたしますが、実はちょうど池田さんが病気になられ、退陣されて、佐藤内閣ができた。そういう場合に、私は、あなたが日銀の総裁になられたということは、相当思い切った人事だといわれておるし、これは佐藤内閣の一つの切り札じゃないか。またある人は宇佐美さんによって、日本の経済の動揺するのを押えるために、あるときは前へ進み、あるときは、断行する人柄だといわれておるし、それからこの間、雑誌、「新文明」で、高木壽一さんが、宇佐美さんのやり方は、ちょうど三井における池田成彬のような、そういう重要な立場にある。それだから静かなる勇断を望む、ということで、いろいろあなたのことを書いてあるのです。実はわれわれの立場からすれば、日本銀行というのは、国民大衆に非常に影響がある。しかし、いわばいままでは、財界から日銀の総裁が出た例が非常に少ないということであります。おそらく、将来どういうことになるか知りませんけれども、宇佐美さんはそういう点では期待をされ、またわれわれは警戒をしておるのです。おそらく財閥のあれをやるのではないかというような一るの懸念はございますが、しかし何といっても、いま宇佐美さんは三菱銀行の代表ではありません。日本の国民と関係の深い紙幣の発行を独占している日銀総裁という重要な役割りのある方でございます。どうか、そういう点で、あなたの人柄ということもいろいろ聞いておりますけれども、何としても非常に重要な、特に日本の経済のひずみがいま非常に不景気で、われわれ選挙区に帰りましても、倒産ということを聞かない日はないくらい非常に悲惨な状態になっておるわけでございます。どうかそういう点で、金融だけでむろん直りませんけれども、何といっても日本銀行は、日本の銀行の中の銀行でございます。そういう点に立ってやっていただきたいと思うのでございます。そういう運営について何か御所見があれば伺いたい。
○宇佐美参考人 ただいま身に余る御激励といいますか、ちょうだいして、まことに感慨にたえないわけでございます。私はおっしゃるとおり、確かに三菱銀行におったのでありますが、日本銀行に参りましたならば、そういうことをすっかり忘れまして、日本のために全部をささげたい、かように考えておる次第でございます。 そこで、ただいまいろいろの御注意でありますが、全く私もこれから守らなければならない御注意だと思っておるのでありますが、この日本の経済が、ただいま申し上げましたとおり、決して金融だけではまいらない、いろいろの各いきさつが総合しているものと申しましたけれども、だからといって、そういう問題にすべての責任を負わして、そうして金融はもう何ともならないのだというようなことは言うべきではない。やはりその金融に関して、金融がただいまお話のように日本全体に及ぼす影響が非常に多いことをみずからよく考えて、そうしてほかの施策がだめだから金融が幾らやってもだめなんだというふうなことは、これはやはり責任の解除ということにはならないのではないか。やはり金融は金融としてあらゆる方面に、場合によってはあるいは金融はそこまで言うのではないというようなことにつきましても、やはりそういうことによってでないと通貨価値の維持ができないというような場合は、やはり申し上げることは申し上げないといけないのではないか、かように決心をいたしておる次第でございます。ただ、なかなか微力でございますので、先生方の御支援をほんとうにお願いしたいと思っておる次第でございます。
○吉田委員長 平岡忠次郎君。
○平岡委員 私のあなたに対する本日の質問は、日銀法改正に関する件、国際通貨基金対日報告に関する件、金ドル準備のうちに占める金準備のパーセンテージに関する件、この三つでございまするが、以下順を追うてあなたにお尋ねをいたしたいのであります。 まず最初に、日銀法改正に関する件でございまするが、宇佐美日銀総裁は、総裁御就任のおりに、新聞、テレビを通じて所信や見解を発表せられております。おそらく、日銀法の改正案を暗黙の前提に置かれてのことでありましょうが、政府と意思疎通をはかり、間断なき話し合いを通じて対立することもなしにうまくやっていけるという趣旨をお述べになっておられます。もとより政府とともに金融施策につきまして連携を強めるというかまえは当然なことでございまするが、中央銀行の使命は政府のそれと比肩するものであり、財政と金融とは同等の立場で並び立つ二つの権威たるべきなのでありますから、政府の側に優位を認めるまあまあ主義に堕するということになりますと、日銀総裁に託された使命をみずから軽んずる結果におちいると思うのでありまして、この点を私は憂えるものであります。第二次世界大戦後、フランクフルトのバンク・ドイッチェル・レンダーに君臨したヴイルヘルム・ホッケ初代総裁は、財政と金融とはおのずから別個の使命を持つとの観念に徹しておられたわけであります。ここで彼の使命観に触れることはきわめて意義の深いことと私は存じます。彼によると、議院内閣制の政府のもとにあっては、財政は膨張し続ける必然性を持っている。政党政治である限り、選挙支持層の一挙手一投足に気を使って圧力団体等に対しての迎合は不可避である。財政は必ず膨張の一途をたどるものである。政府が保守党であれ革新政党であれ、それは問うところではない。予算はその国の経済の成長の実勢以上にふくらんでいくことを阻止できないものである。これを阻止できるものは通貨維持を至上命令とするところの、論理上政府と独立した別個の機関でなければならない、それが中央銀行であるべきである。第一次大戦後のドイツは、歴史上最高の通貨の乱発をあえてして、空前絶後ともいわれるインフレーションを招来した。それによってドイツの復興は著しく阻害され、また年月も多くを要した。この経験に徴して、ドイツ中央銀行総裁としての私の使命は、ドイツ・マルクの価値維持のために身命を賭することだと心得ている。ドイツ・マルクの価値維持は、現在と将来のドイツ国民から託された国家の大事であって、一政党政府の恣意にゆだねられるべきではない。すなわち、断片的、現象的なものの恣意にドイツ・マルクの永遠的価値をまかしてはいけない。財政と金融は同一の権威に立って併存する。言いかえれば、チェック・アンド・バランスの使命を双方でにない合うべきであると言っておられるのであります。一九五七年の夏、フランクフルトのドイツ中央銀行の総裁室で、私は愛国の至情を吐露する彼の全人格に触れました。フランクフルトはボンに対して、意見調整のための協議を義務づけられてはおりません。事実におきまして、フランクフルトの牙城によって、ボンと彼は対決をいたしておったのであります。ドイツ・マルクの価値維持を国家の最高の使命としてアデナウアーの放漫、恣意に決して屈しませんでした。アデナウアーはしばしば歯ぎしりをし、当時のエアハルト商相、シェーファー蔵相などはホッケに傾聴いたしまして、むしろアデナウアーを押える側に回って、ホッケの言う、いわゆる永遠的な国家につかえる使命観を彼と分かち合ったほどであります。ドイツ経済の着実なあぶなげのないところの伸展と、全国民が、ドルに対して四分の一の価値比率をぴたりと守り通したマルクのもとにおいてインフレ不在の生活を享受し得たのは、まさに理由なしとはいたしません。ドイツ中央銀行戦後初代の総裁ヴイルヘルム・ホッケこそドイツ国民経済復興の中核的人物であり、この見識はもって他山の石とすべきであると考えます。 一万田前々日銀総裁、山際前日銀総裁は、それぞれ有能な政策マンでありまして、私の尊敬する方々でございます。しかし、よってもって立つ中央銀行総裁の使命観について、ホッケ総裁との比較は遠慮申し上げるべきだと思っております。さりながら、国家の大事でありますから、あえて申し上げますと、日銀は大蔵省銀行局の日銀課であるとの酷評が世評として流れた事実に特に御留意を願いたいのであります。 現在日本は、高度経済成長政策によって多くの国民は二重構造のひずみを悩み、経常的国際収支は赤字の危機にさらされっぱなしであり、インフレの激化に国民は苦悩し、あえいでおります。すべての禍根は円の下落に発し、円の価値維持は制度的てこ入れなしには危殆に瀕するものといって過言でないと思うのであります。日銀の権威を高め、政府の暴走を食いとめる必要の今日ほど痛感されることはございません。円の価値維持は、その前提として日銀の中立性を制度的に強め、その首脳部にしっかりした人材を集めることをおいてほかにないのであります。 日銀権威の復興は、日銀法の抜本的改正により新しい土台の上に築かるべき構造的な立て直しであるべきであります。しかしその方向は、政府追随に日銀を位置づける方向とはまるで逆な方向であるべきだと考えております。 宇佐美さんへの魅力は、官界出身でないだけに、政府のひもつきにはならないだろうとの期待にあります。日本国民は、当委員会の良識をはじめといたしまして、政党政府を超絶した国家に対する使命を通貨価値維持の面において十全に果たしていただけるのが宇佐美さんではないかと期待しておるのであります。 当大蔵委員会におきまして、あらためて日銀総裁の使命観をお述べいただきたいと思います。
○宇佐美参考人 ただいま日本銀行の使命ということについてまことにありがたいお話を承りまして、感激にたえないのでございます。おまえはまあまあ主義でやるのではないかということでございますが、決して私はそういう気持ちであれを申したのではないのであります。ただ、政府と日本銀行はこれからけんかするのかという質問に対しまして、私は、けんかした場合に一番困るのはだれだといいますと、国民だろうと思うのであります。決してけんかするのが目的でなくて、いい政治をやってもらうように、また日本銀行も日本銀行の大事な使命である通貨価値が維持できるように、これをやっていくためには、私どもはやはり政府の賛成を得ないとむずしいと私は考えておるのであります。これは私が政府に賛成する場合もございましょうが、また、ときには政府が私の考えに賛成してくれる。これがばらばらであった場合に、ただいま申し上げましたとおり、だれが困るかということを考えると、やはりわれわれは政府と日本銀行というものは一致していかなければならないと思うのであります。ただどっちの主張を通すかということが問題であろうと思うのでございます。これは、私は自分の主張が間違っておるという場合には、いさぎよく下がるべきだと思いますが、自分の主張が正しいという場合には、もし説得できなかったならば、やはり自分の考え方が弱いんだというふうに考えております。考えが、説得できる力がない場合には、これは自分の力が弱いので申しわけない、かように考えておるのでございます。 ただいまいろいろドイツのお話を承りまして、確かに財政と金融というものはチェック・アンド・バランスでいくべきであろうと思うのでございます。そのためにはただいま申し上げましたとおり、やはり日本銀行の使命というものを、常に忘れずにしっかり抱いていかなければならぬと思う次第であります。ほんとうにただいまのお話は感激して承っておるのでございますが、常にわれわれは、政府も日本銀行も日本の中にあるものでございます。これがばらばらであっては、非常に迷惑するのは国民だということを考えて、どっちが正しい意見を言うかという点に問題をながめていただきたいと思っておるのでございます。 私も昨年ドイツに参りまして、私が参りましたときのブンデス・バンクの総裁はプレッシングでありまして、お目にかかりまして、やはりそのときに言っておられましたけれども、中央銀行が昔のような金融政策であってはいけないのだ。金融の問題はあらゆる問題に影響するので、これは金融の問題以外の問題だというように言っていては、やはり完全なる金融政策はできないのだ。自分は政府に対してもいろいろの問題でどんどん意見を言っていくというようなことを言っておられましたけれども、やはり金融の重大ということを十分考えて、しかしそうかといって謙虚でなければならぬこともよく心得ておるつもりでございます。 そういう面におきまして、これは人さまの批判を受ける問題で、自分から申すことではないのでございますが、はなはだ僣越な言い方をしますと、私はやはり今後金融の重大な責任を負わされている人間だということを忘れずに進みたいと思っておるような次第でございます。きょうはほんとうにいいお話といっては失礼でございますが、ありがとうございました。
○平岡委員 あなたのお人柄と申しましょうか、それは内剛外柔と私は受け取りました。私の申し上げました、日銀は政府と対等の権威に立つべしというのは、けんかせいというのではない。論理上そうあるべきだということの主張なのです。そういうことで幸いあなたも、この意見に反対ではないということがわかりましたので、次の質問をいたしたいと思うのであります。 そうした観点に立つ限りにおきましては、今議会におきまして政府原案の名で出されるところの大蔵省案につきまして、拙速的な審議に入るべきではないとのお考えも当然あってしかるべきだと思うのであります。と申しますのは、この地固めはあなたの就任前にされたわけでありまして、あなたとしては不本意だと思うのです。あなたの積極的発言の権利を確保するために、案を最初から一緒に練り直そうじゃないかという立場も当然あると思うのです。ですからあなたの御見解を、何にもとらわれることなしにここで述べていただきたいと思います。当大蔵委員会も日銀法改正は重大な事案と心得ておりますから、これはおそらく与野党を問わず、提案それ自身についても慎重であるべしとの良識は持っております。御遠慮なくあなたの希望をこの際述べていただきたいと存ずるのであります。 なぜ私がこのことを強調するかと申しますと、今回提案されるといわれている政府原案は、財政金融一体論の思想的根拠に立っておるのであります。これはこう割り切っていいかどうか知りませんけれども、根本にはそういう思想的根拠があるわけであります。その点は田中大蔵大臣の見解に代表されております。田中大蔵大臣は、明らかに財政金融一体論の立場に立っておられまして、その所信によりますと、金融施策も財政同様に、国民に対して最終の責任を負うところの政府の責任に帰着せしめるべきであるとの見解をとっておるわけであります。なるほど改正案の要綱の中には、日銀の目的すなわちそのレーゾンデートルは、円の価値維持にあるとうたわれてはいますけれども、それは通り一ぺんのことばとしか受け取り得ぬ点もあるわけでありまして、改正法案の構想の中には、かかる日銀使命が政府の威令から独立して権威づけられてはおらないのであります。制度上の日銀の中立性いまだしの感が深いのであります。日銀を権威あらしむべしとの意向については、金融制度調査会の答申より後退しているというのが朝日新聞の論説をはじめとする世評であります。田中蔵相の見解のごとく、すべての責任を政府に帰着せしめること、すなわちそれだけ政党内閣が何でもやり得るのだというケインズ流の政府万能主義すなわち財政金融一体論が政府部内に厳存している限りにおきましては、全体的に見て、大蔵大臣が日銀総裁の上に立つ改正案となっていることは当然のことでございます。現行の日銀法から、あなたの言われたように、国家総動員法的な戦時色を払拭しなければならぬということ、このことは当然過ぎることでありまして、今回の法改正の当然の筋でございます。これはしかし議論以前の問題であって、改正案についてのあるべき議論はここには存しません。問題の焦点は、むしろ極論するならば、政府の日銀支配の傾向がいいのか悪いのかという問題でございます。 さて、原案が出された場合におきまして、どう修正してみても、それには限度のあることでありまして、むしろこの場合、今回の日銀改正法案には待ったをかけて、やり直すべきだという見解があってよいと私は思うのであります。あなたの御見解をその意味で述べていただきたいのであります。どうぞ御遠慮なさらずに述べていただきたい。
○宇佐美参考人 日本銀行法の改正につきましては、むろんこの法案の性質上慎重でなければならぬことは申すまでもないのであります。しかし一応日本銀行法の改正につきまして、金融制度調査会で結論が出たのがもうすでにあれはたぶん三十五年と思いますが、相当たっておるわけであります。その間たなざらしになったようではございますけれども、常にこの問題については、日本銀行としても検討を続けてまいったようでございますし、私自身も決してそのとき日本銀行に入るとは夢にも思わなかったのでございますけれども、金融の基本法としては早くやはりこういう問題は片づけないといけないのではないかというような考えもばく然と持っておったような次第でございます。と申しますのは、やはりこういう問題が、基本法でありますだけにたなざらしになっているということは日本の金融のためにもよくない、やはり前進をしなければいけないというような考えでおったような次第でございます。 さて、御指摘のとおりこの戦時立法を払拭するなんということは改正前の問題でございます。これはもう議論の余地のないことでございます。そこで一番問題なのは、やはり日本銀行と政府との関係というところが一番重大なことだろうと思うのでございます。それで今度の改正の基礎が財政金融一体という思想のもとにあるというお話でございました。財政金融一体という関係でございますが、これがもしも金融は財政に追従すべきものだというような考えの一体論であったら、これは私は絶対に反対すべきだと思うのであります。決して財政が主人であって金融が従者であるとは考えられないのであります。一体という意味はそういう意味でなくて、それが相互に独立しながら助け合う。これは相互に助け合うという形でなければいけないと思いまして、もしも田中大蔵大臣がそういうふうに言われるならば、私はこの金融財政一体化というものはやはりこれが画然と分かれて別のものであるという関係にはあり得ないという立場から一体化という説も正しいと思うのであります。私個人としてはさように考えてきたわけであります。ただ財政一体化という名のもとに、財政が常に金融を圧迫し、あるいはこれを利用してくるというならば、これは決して一体化ではない、とかように考えておるのでございます。 そこで今度の改正の中立性の問題でございますが、先ほどもお答え申し上げたつもりでございますが、やはり絶対的に日本銀行が独立するというようなことはとうてい私は考えられないと思うのであります。常に政府というものが国会の支持を受けながら、そしてその中に日本の全体の情勢について最高の責任をとるという意味から言いますと、やはり日本銀行も政府のある面におきまして——政府というか、法律の範囲内において日本銀行の職分はおのずから制限されることはいたし方ないと思うのであります。その法律をここにきめていただくということになったのだと思うのであります。ただいまおまえは日本銀行総裁になってわずか二カ月なんで研究の余地がないだろうというお話で、撤回しろ。正直に申しますと、もっと私としても研究をしたい面もございます。ございますけれども、それでは一年待ったらいい結論が出るかということになると、これは非常にむずかしい問題で、やはり政府がお出しになった場合に、国会において十分論議をしていただくということも大切な過程ではないかとかように考えておるのでございます。ただ私は今度の立案——まだこれは最後的ではないというふうに承っておりますが、この程度であれば私は日本銀行の運営によって独立、というよりも中立性はかなり守れるのではないか、かように考えておる次第でございますが、その点は決して完全だとは申し上げかねますけれども、いま私どもが政府から内示されております法律案の原案によりますれば、まず中立性というものは維持できるのではないか、かようには考えておるのでございます。ただ問題は運営でございます。この運営がはっきりこの法律に述べられておるとおりにできるかどうかということは、やはり日本銀行側の運営のしかたによってこれはさまってくるのではないかと思うのであります。ただいま条文にはこう書いてあるけれどもというお話がございましたが、私は、条文どおりやるのが日本銀行の使命だろう、かように考えております。もしも条文どおりいかない場合におきましては、これは日本銀行がゆがめられて運営しておるというふうに考えておる次第でございます。日本銀行側が悪いか政府側が悪いかは別にいたしまして、この条文どおり行なわれれば、中立性は日本の現在の限度においてはまずいいのではないか、かように考えております。
○平岡委員 御意見を伺っておりますと、今度の改正法案につきましてあえて手直しということを御主張なすっておるわけではないと存じます。そこで、それでは改正法案の土俵の中に入っての質問をいたしたいと思うのであります。時間の関係上、三つだけにこれをしぼります。 その一つは、意見調整に食い違いを生じたとき、大蔵大臣の能動的な通知によって日銀は受け身で意見調整の義務を負うという趣旨が三十五条に盛られております。この条文はこれでいいのかどうか、この点につきましての御意見を承りたい。 第二番目は、日銀総裁の任命権者が内閣とありますが、任命権者を内閣以外に置くいいくふうがあるかどうか、御見解があったならばお示しを願いたい。非常に大事な点です。 第三番目は、総裁をバックアップすべき政策委員またの名を運営委員と申しましょうか、その選任につきまして、国権の最高機関である両院の同意を必要とせずとするがごとき反動的企図について、あなたはどうお考えであるか、御見解のほどを示されたい。
○宇佐美参考人 まず三十五条の問題について申し上げたいと思います。三十五条の規定は、大蔵大臣が日本銀行の運営に関する重要な事項について政府の政策と調整を有すると認めたときは、日本銀行にその旨を通知して、その場合には日本銀行はすみやかに大蔵大臣と協議しなければならない。かようにきめられておるこの第二項についての御質問だろうと思うのでございます。それで大事なことは、その前項にございます日本銀行は、運営にあたって常に政府と密接な協力関係を保ち、十分な意思の疎通をはからなければならない、かように述べられておりますが、これから続いて第二項にわたるように読んでいただく必要があるのではないか。私はさように読んでおるのでございます。それで日本銀行といたしましては、これは日本銀行の法律でございますので、日本銀行は、ということが常に書いてあるわけでございますが、この金融の問題につきまして、政府と日本銀行が常に意思の疎通をはかるということは、もう世界各国どんな中央銀行でも私はやっていることだろうと思うのであります。ただ問題は、こう書いてありながら常に日本銀行が大蔵省にお伺いを立てるというようなやり方がこれは根本的に間違っておるのでありまして、その意味におきましては、ただいま先生のおっしゃいましたとおり、おのおの対等の地位——とは申しませんが、態度でこれは調整を保っていくべきだろうと思うのでございます。したがいまして、政府の政策と調整を要するという場合は、この前段のほうの努力が常に行なわれたならば、ほとんどまれなることになるのではないか、かように考えております。しかも従来私どもが民間にいて、これは実情はどうか知りませんが、見ておりますときには、政府が日本銀行なりあるいは民間銀行に対しても、こう何となくムードでいろいろ指導するというようなことがあるのでございますから、そういう点は、今回のこの改正案におきましては、日本銀行に対して通知するという、明らかな通知をしなければならないと私は考えておりますが、そういう点は非常に改善されてきたのではないか。その場合に、政策と違うという通知を受けた場合に、日本銀行がそれは知りませんというわけには、実際問題としていかないわけで、またそういうことはあり得ないわけでございます。その意味におきまして、やはりこの条文で、日本銀行の態度がおっしゃるとおりき然としておれば、これでいけるのではないか、私はかように考えておる次第でございます。 それから、第二の題題は任命権の問題でございますが、日本銀行の総裁がただいまの現行法でもそうでございますし、今度の改正案でも内閣の任命ということになっておるわけであります。これは現在の政策委員は国会の同意を得るということになっておるのに対しまして、総裁はその点が省かれておるわけであります。また、改正案でもさようになっておるわけであります。ただ、私考えますのに、日銀総裁の仕事というものは、国際的にも毎月会議があるような仕組みになっておるわけでございますが、遠いところでございますので、先方の了解を得て、私自身まだ参っておりませんけれども、また、国内的にもやはり日銀総裁というものは一日もあけておかないということも必要ではないか、かように考えますので、国会の同意という問題につきましては、やはりないほうがいいのではないか、かように考えておる次第でございます。やはりこの問題につきましては現行でよろしいのではないか、かように考えておるのでございます。 それから、政策委員の国会同意の問題でございます。これは国会と政府においていろいろ今後問題になるのではないかと私思っておるのでございますが、しかしどちらがいいかということはなかなかむずかしい問題でございまして、私としては、政府と国会で法律をおきめになるときにおきめを願ったらいいのではないか、かように考えておる次第でございます。 最後に申し上げたいことは、任命委員といま私ども申しておりますが、政策委員の人選でございますが、やはり先ほどもお話がございましたが、金融政策というものが重大であるという場合に、国民の信頼を受けるには何で受けるかということになりますと、その大きな一つは、やはり政策委員の人選ということにあるのではないかと思うのでございます。国民の信頼が、日本銀行のとります政策に何で信頼をするかという場合には、やはりその決定する機関の構成ということが大事だろうと思うのでありまして、その意味におきまして、私個人の考えでございますが、やはり十分なる人を選んでいただきたいという点はぜひ御考慮を願いたいと思うのであります。
○平岡委員 日銀法の問題につきましての質問を終わりたいと思いますが、きょうの問答を通じまして私が受けた感触は、あなたは底の底まで紳士ですから政府と事をかまえずにやっていくということを強調されております。これはけっこうです。けっこうですけれども、私は、日本銀行の総裁たるあなたとたとえば佐藤首相、田中蔵相との間に意見が食い違うほうがかえっていいと思っておるのです。そのほうが健全なのであります。政府に向かってあなたをはじめとしてすべて草木もなびいてしまったら、これは佐渡おけさは成り立つと思いますけれども、日本経済は保たれないのであります。別言いたしますと、総裁は政府と心中するのではなしに、ひとつ国民と心中するの気魄を持っていただけますように今後のあなたの御奮闘をお祈りしたいと思うわけでございます。 そこで、時間的な制約がございまするから、次の課題について質問いたしたいと思います。 国際通貨基金が二月の十日の理事会の対日報告で、金融緩和は尚早と指摘いたしておりますが、日銀はこれをどう受けとめておるか。十日の理事会の焦点は、日本の経済政策、特に金融引き締め政策が適切であるかどうか、日本の急速な経済成長は目ざましいが、これに伴う景気波動と国際収支の赤字による不安をもう少し円滑にできないものかどうか、三番目、そのために財政政策を活用する余地はないのかどうかの批判に集中したと伝えられております。特に報告書自体は、日本の金融引き締め政策緩和は昨年十二月の預金準備率の引き下げの例などから見て時期が早過ぎると批判しておるわけでありますが、このIMF理事会の批判はおか目八目で見た客観性を認めないわけにはいかないと思われますが、日銀はこれをどう受けとめておるかをお伺いしたいのであります。
○宇佐美参考人 ただいまのお話で、最初に、とにかく日本銀行は佐藤内閣のためにあるのではないのだ、国民のためにあるのだ、全く私もそのとおりだと思っております。総理なり大蔵大臣に対して常にあらゆる問題について自分の信じるところは申し上げるつもりでおります。さように御了承願いたいと思います。 それからただいまのIMFの報告についてお話がございました。私ども聞いておるところにおきましては、その質疑応答におきましては、その質疑応答におきまして、あるいはこの質疑応答の内容は極秘のことかもしれませんので、私はただそのときの、こういう雰囲気であったという意味で、決してそのことばを引用はできないのは残念なんでございますが、しかし日本が今度の、準備率を引き下げ、公定歩合を引き下げたことについては、われわれは——われわれというのは、理事会におきまして了解をした。と申しますのは、日本では、たとえば窓口規制であるとか、そのほか世界にあまり例のないいろいろの処置もとっておる。またその後の貿易の情勢も、大体よさそうだというので、その報告の内容とは別に、やはり今度の処置は、決して、どういうことばでありますか知りませんけれども、大体了解を得たというふうに聞いておるのでございます。むろん私どもも、先ほど来いろいろ申し上げましたが、今後の日本の経済につきましては、やはり問題が多いのでございまして、決して手放しの楽観はできないわけでありまして、今度の公定歩合をわずか一厘にとどめたのも、そういう前提のもとに慎重にやったつもりでおります。これが、一年ぐらいの見通しと、現在のいろいろの経済指標に出ているものが一致しておればもっと勇敢に金融政策もとれるかと思うのでありますが、指標は指標としてかなりいい指標になっておりますけれども、しかしその中にもまた一方において倒産であるとかいう問題もございますし、国際収支の問題もございますので、その一厘にとどめて、なお慎重に考えておるような次第でございます。 〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕
○平岡委員 いまお答の中に、対日報告に対するIMFの理事会の意向というものもくんで、それで一月における金利の引き下げも一厘にとどめたというふうに聞かれる節がありました。しかし対日報告は二月の十日ですからね。二月の十日に対日報告があったわけで、一月の引き下げよりあとの話なんですね。したがいまして、その影響があるとするならば、巷間流布されている三月になったらもう一厘引き下げるのだというようなことに対して、あなたがなお慎重でありたいという、そういう意味ではないかと私は思うのです。要するに、IMF理事会は二月十日でした。ですからあなたはそこを混同されているのじゃないかと思う。あなたの内心に——やはりそれは傾聴すべきだということがそのことばとなって出たのではないかと私は想像するのですが、どういうことでしょうか。
○宇佐美参考人 そのただいまの報告は、去年の秋にIMFから日本に人が参りまして、いろいろ調査した結果に基づく報告だと思うのでございます。したがいまして、その二月十日という御指摘のとおり、公定歩合が下げられた後に、その議論が出てきたのだ、かように考えておる次第であります。私はそういう議論も出て、一応日本はほかのいろいろの政策もとっておるので認められたというような報告を聞いておるのでございますが、そこでかりにほめられても、そんなことは実際は問題でないのでありまして、日本の経済が公定歩合一厘下げたということをどう受けとめておるのかということが問題でありますし、その後の景気の動向を見て今後判断していくべきだ、かように考えておるのであります。
○平岡委員 何か、多少錯綜しましたが、対日報告書の論理は相当傾聴しなければならぬ。ですから、巷間に伝えられるさらに一厘というようなことについても相当慎重でなければならぬという、そういう御所見と承ってよろしゅうございますか。
○宇佐美参考人 そのとおりでございます。
○平岡委員 最後に、金ドル問題についての質問をいたします。これは佐藤委員が触れたかもしれませんが、一月七日、フランスは手持ちの米ドルのうち、一億五千万ドルで米国財務省保有の金を買い付けると発表いたしました。今後外貨準備がふえるのに応じて、さらに一億五千万ドル程度を金にかえる態度を明らかにしております。ゴールド・ウォーの開始として注目されております。越えて二月四日、ロイター電は、ドゴール仏大統領の記者会見の模様を報じまして、国際通貨制度についての彼の言及点を次のとおり報じております。すなわち、「現在のドル・ポンド本位の国際通貨制度はもはや現実に即さなくなり、その欠陥は目立ってきておる。いまや国際通貨制の問題について冷静に考えなければならない。EEC六カ国はいまや米国と同じくらいの金準備を保有し、もしこれら六カ国が手持ちのドルの全部を金にかえるならば、その保有高はさらに大きくなろう。ドルの超絶的な価値はすでに失われておる。ドルはもはや公正な価値の国際的尺度ではなく、ある一国の持つ支払い手段にすぎない。一国のマークをつけていない、文句なしに権威のある通貨の基礎の上に、国際貿易を確立することが必要と考える。なお新しい基礎の上に立つ国際通貨制度の問題は、各国、特に経済的、財政的能力のある諸国、たとえばIMF加盟の先進十カ国で構成するところのパリクラブなどによって慎重に検討さるべきものであると考える。」かかるゴールド・ウォーの開始にあたって、日本の現在の金保有高は約三億ドル、一月末の金ドル準備二十億二千七百万ドルの金ドル準備総量のうち、一五%以下の保有率にすぎないのであります。その改善は早急に行なうべしとしないまでも、かまえとしては従来のような放置のままでは許し得ないと思いますが、日銀当局はいかにこれを考えるかお答えをいただきたい。 実は、田中蔵相は、十八日、同僚の平林委員の質問に対し当委員会で、諸般の世界情勢、日本の対米密着の政治態勢を考慮する政治的配慮から逡巡いたしまして、適当なごまかし答弁で逃げてしまっておるわけであります。そこは日銀の中立性の権威におきまして、政府の政治的思惑と別しての独自の判断があると私は思うのです。大体、日本銀行券の発券は、その基礎に、金ドル準備を置いておるわけですから、その基礎のほうが変わってくる、そういう展望に立っては、これはよそごとではないのでありまして、日銀自身の独自の御見解が当然あってしかるべしと思いますので、お答えのほどをお願いします。
○宇佐美参考人 お答え申し上げます。 このドゴールの政策につきまして、私どももかねがねあのフランスの考え方、金準備に対する考え方、あるいは新しい通貨という問題につきまして注意を払っておる次第でございます。しかし、やはり金本位に復帰するというように伝えられておりますけれども、実際よく内容を見ますと、やはり金本位に復帰するのではなくて、金本位の精神に帰るというふうに述べられておるところを見ましても、なかなかそう簡単な問題ではないと、かように考えております。いわんやほかの国々におきまして、決してフランスのように簡単にあの問題を解決するとは思っておりませんが、しかしそれでは問題は全然ないかというとそうではないのでありまして、今後の国際通貨の問題につきましては、日本銀行といたしましても十分勉強して、その間、各国の情勢を考えるとともに、さらに日本の通貨保持のためにも考えなければならぬと思っておるのでございます。 そこで、金の問題になるわけでございますが、私はやはりいまの通貨の基礎になる金として、あるいは外貨準備全体からの金の持ち高からいいまして、できたならばもっとふやしたほうが安全ではないかというふうな考えを持っております。しかしこれは御承知のように、いまは金の産額からいいまして、やはり単純に金を持つというわけにはいかないので、どこかの金を奪ってこなくちゃならない状態でもございますので、なかなかこれは、日本銀行が純粋に日本銀行の考え方として実行できないいろいろの支障のあることはやむを得ないと思うのであります。すなわち、国際的の関係ということがありまして、そこで日本銀行としては、金の保持はなるべくふやしたほうが私はいいと思うのでありますが、国際的の環境というものを無視して日本銀行が独自の見解を出すということはこれはとうていできないと思います。いかに中立的とはいいながら、その問題をかってにやるわけにはまいらない。そこで、ただいま田中大蔵大臣のおことばも御引用になりましたが、やはりこの問題は政府と十分連絡してやらなければならない問題だと思います。私の基礎的の考えはそういう考えでございますが、実行については、どうも日本銀行の中立性だけでは解決できない問題のように考えておる次第でございます。
○平岡委員 私の、日銀が政府とチェック・アンド・バランスに立つのが正しいんだということは、いまのような問題においては、むしろ日銀が能動的に政府に通告し、政府がこれに応じて協議をすべしという立場もあるということの好個の例だと思うのですね。こういう点で、やはり日銀の独自性は、これは国民を悲しませるところの独断的な立場ではない。論理上財政と金融は別個だというそのかまえだけはしっかり銘記していただいて、今後のあなたの御奮闘を祈念して、私の質問を終わりたいと思います。
○宇佐美参考人 どうもありがとうございました。
○藤井委員長代理 平林剛君。
○平林委員 本日は、当面の課題である日銀法の改正を中心にいたしまして、金融政策あるいは日銀総裁のお考え方をただしてまいりたいと考えるわけであります。最初に、ただいま平岡議員がお尋ねになりました公定歩合の問題についてお尋ねをいたします。 最近の新聞を読みますと、来月つまり三月、再び公定歩合が引き下げられるのではないか。日銀の見解によれば不安材料はないと判断をしておるとか、あるいはもう再引き下げも近いとかいう報道がしばしば行なわれておりますことは御承知のとおりであります。これに対する日銀総裁の旅行先における談話、あるいは新聞記者会見におけるお答えなども承知いたしております。しかし、一方においてこの問題に重要な関心を持つ政府、大蔵大臣は、当国会におきましていろいろな質問に答えておる点もございます。たとえば公定歩合が引き続き引き下げられる条件としてはどんなことがあるのだという質問に対しまして、国際収支の動向である、物価の問題もつけ加えておりますけれども、重視されておるのは国際収支の動向でございます。先般二月上、中旬におけるところの信用状収支の結果が発表になりまして、さてこの状態でいくと、大蔵大臣が言われておるように、また新聞で報道されておるように、三月、公定歩合の引き下げが再び行なわれるのではないかという情勢に傾いておることは間違いないのであります。ところが、本日、総裁にお話を承りまして、当面の金融財政情勢を考えますと、どうもそういう条件のようには見られない。いま平岡議員のお尋ねに対しましても、その後の事情を見て慎重に検討したいとお答えになっているわけでございますが、私はこういう最近の事情から考えまして、しからばその後の事情を見て慎重に検討するというその時期ですね、そういう情勢を慎重に検討して決断をする時期というのは、一体いつごろなのか。新聞で伝えられるように三月ごろが予想せられるのか、あるいは、それではまだその後の事情は的確につかめないのかどうか。この辺の見通しといいますか、総裁としてのお考えを承りたいと思うのであります。
○宇佐美参考人 日本銀行のただいま公定歩合に対する考え方は、新聞がどういうふうに伝えておりますか存じませんが、先ほどから申し上げましたとおり、現在の貿易上の指数は確かにいいのでございますが、しかし現在におきまして、単に貿易の指数だけではこの問題は決定できないのであります。これも大きな決定条件でございますが……。そのほかの問題というと、いろいろあげればただいま御指摘のとおりでありますが、さらにいま進められようとしております——いままでの金融引き締め緩和の際に必ずといっていいくらい起こってきます。設備投資を頭にしました大きな走り出しが起こってきたわけでございます。これがやはり日本の安定経済成長という立場からいいますと、最も警戒しなければならないものであります。現在、御承知のように各業界において調整ムードは起こっておりますけれども、これはただ、まだ業種によって違いますけれども、相談をしつつあるとか、あるいはこれから調査をしようとかいう段階が多いのでありまして、はたしていまのこの調整をもって、そういういわゆる走り出しがもう大丈夫かということになると、これはたいへんなことになるのではないか。私が再三申し上げましたとおり、これからの経済はどうしてもなるべく景気の波動を小さくして、そして安定経済を進めていかなければならぬと思うのであります。そういう点もよくながめ、さらにいまいろいろ御審議中の法律案なりあるいは予算案なりの状況もきまってきませんと、なかなかむずかしい問題ではないかと思っております。これはわれわれといたしまして、いつ公定歩合をどうするというようなことは、先ほどからお話がございました日銀法によって、政策委員会でひとつ十分研究して論議さしていただき、そうして決定したいと思っております。ただいまの御質問は、私としてはいつごろやるんだというようなことはお答えできないわけでございます。慎重に取り計らわなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
○平林委員 御承知のように、公定歩合の問題はしばしば政治的に取り扱われることが多いのであります。前に二厘引き上げたときも、その時期を失したというような批判がございまして、当時の政府の政策がそれを左右したこともございまして、私、現在問題になっておる日銀法の中立性という角度から考えてかなり検討しなければならぬことがあると思うのであります。今度の場合も六月に参議院の選挙がございまして、政府の気持ちを私どもおもんばかると、多少景気が上向きになったというような情勢、ムードをつくり出さないと都合が悪いという政策的な、政治的な意図というものが動いてくることは当然あり得ることだと思うのであります。そこで、しばしば田中大蔵大臣も公定歩合のさらに一厘引き下げの時期は近いのだ、国際収支がよくなればいいんだというようなことを述べられたり、あるいは預金準備率の引き下げがあったから、それから一カ月を経ないうちにそういうこともあり得るでしょうというような調子でムードをつくっていることは事実であります。 〔藤井委員長代理退席、委員長着席〕 私はいま、慎重に今後の情勢を見て判断をなさるというお答えをいただいて——ただ時期は明らかにできないということでございますけれども、先般参議院の大蔵委員会に御出席になりまして、同僚の木村議員からこの問題についてお尋ねがあったことを御記憶なさっておると思います。そのときには「四月以降の国際収支の動向がどういうふうに出てくるかというようなことを慎重に考え」「公定歩合の今後の進め方も慎重にきめてまいりたい。」と答えておるわけでございます。これから見ると三月実施なんということばはちょっと出てこないように思うのですが、時期判断無理に詰めようとは思いませんけれども、この点からいかがでございましょうか。
○宇佐美参考人 ただいま引用されました木村議員に対するお答えはこういう意味で、あるいは私のことばが不十分だったかと思いますが、私の頭の中でお答えしましたのは、いまのところ国際収支は信用状その他から見まして三月までは大体相当の結果が得られる。おそらく貿易収支としましては予想以上に黒字が多くなってくるのではないか。そこで考えれば下げてもいいようなもんだけれども、しかし四月以降がどうなるかわからないという点において、やはり四月以降の情勢も考えないと判断はしにくいという点で申し上げたわけでありまして、四月以降になればこれはやるんだというようなつもりで申し上げたわけではございません。つまり木村先生に対するお答えは、現在私どもがわかっておるのは三月までは間違いなくいいだろう、四月以降はとうなるか——そのときはまだ例のジョンソン大統領のいろいろの問題もわかってないときでございましたので、そういうような漠然たる表現をしたわけでございます。どうぞさように御了承を願います。冒頭に申し上げましたとおり、その後の情勢を考えますと、やはり貿易収支はとにかくとして日本の国際収支を考える場合に、今度のワシントンのジョンソン大統領の政策なんかは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、影響するところが多いんじゃないか。アメリカのああいう政策は大綱だけ出しまして、実際はその後だんだん固まってくるというやり方をやりますので、いろいろ慎重に考えなければならぬ問題が次から次に出てくるようなわけで、いつどういうふうにそれを結論づけるかということは十分政策委員会で審議していかなければならぬと思っておるような次第でございます。
○平林委員 いずれにいたしましても、今後の金融政策の動きというもの、ただいま申し上げました公定歩合の引き下げの問題なども、私は当面の情勢を慎重に検討しておきめをいただきたい。特に伝えられるように参議院選挙の思惑とか、あるいは政府の政策的な意向に沿うてこの時期を誤ったりおくらしたり早めたりすることのないことが、私は今回問題になっておる日銀法の改正における真の意味の中立性をはかるものさしになると考えるわけでございまして、私どもはいろいろな角度から審議して納得のいくような形でどうかおきめになっていただくようにお願いをいたしたいと思うのであります。 そこで、昭和四十年度の経済全般を展望いたしまして、私はこれからの金融政策を担当なさる総裁に対してお願いをしておき失いのでありますが、私の一番気がかりになりますのは何といっても消費者物価がまた大幅に上昇するのではないかという点でございます。年初めの早々に消費者米価が一四・八%上がりまして、一月十六日からは東京都を含む七都市の公営バス、大手十一社を含める十九の民営バスの料金が引き上げられ、公共料金の一年間ストップの期限切れを待つように国鉄運賃の三二%引き上げ要求を筆頭にいたしまして、私鉄運賃あるいは入浴料、水道料金、医療費関係でも目下問題になっておりますように、診療費や薬剤費、保険料の自己負担が大幅にふえよう。これは公共料金のこうした引き上げが他の一般物価にも当然影響するということを考えますと、私どもこれからの国民生活を考えますと非常に暗たんたる思いがする次第でございます。物価上昇のこうした再燃の懸念に対しまして、政府に対してもわれわれいろいろと注文を出しておるのでありますが、今日まで物価上昇の原因をいろいろ考えますと、その中には日銀当局のいわゆる金融政策上のいろいろの失敗といいますか行き届かなかったことがございまして、私どもの批判の対象になっておるのでございます。たとえば日銀券の増発などの傾向が物価に与えた影響も相当の要因をなしておる、こう見ておるわけでございまして、そういう点から考えますと今日の情勢から見て、日銀総裁としてはこの物価問題の直接の責任者ではないにいたしましても、先ほども議論がございましたように、財政と金融とは同時に重要な柱として考えるものだという御説から考えますと、この金融政策の面で物価問題に対して何らかのお考えがなくちゃならぬ、あるいは物価上昇を押えて国民の不安を解消するために役立つ政策というものを具体的に打ち出してもらいたい。こういう希望が私どもとしてあるわけでございます。これについての御見解を承りたいと思います。
○宇佐美参考人 冒頭に最近の金融情勢を御説明申し上げましたときにも申し上げたのでございますが、私どもがいま問題にいたしておる幾つかのことがございますが、そのうち大きな一つはやはり物価問題でございます。これは非常に懸念いたしておるわけでございます。物価が御指摘のようにいろいろな問題を含んでおることは、これは一朝に来た問題ではないと思うのでありまして、これを一挙に片づけることは容易ではないと考えておるわけであります。金融の面からこれをながめてみますと、通貨価値の安定のために必要であることはいまさら申し上げるまでもないのでありますが、ただいま御指摘の通貨の関係について一言申し上げてみたいと思います。 経済が非常に拡大されますと、通貨がふえることは、これは当然のことだろうと思います。ただ、その通貨のふえ方が経済の発展とどういう関係にあるかということをさらに私どもは究明しなければいけないのではないか。つまり、経済発展に伴ってこれくらいの通貨の増発は当然だというような程度のものか、あるいはそれをこえる通貨の増発が行なわれているかという点を、やはり検討する必要があるのじゃないかと私は考えておるのでございます。ただ、通貨の増発といいましても、やはり預金通貨という問題が一つあるものでございますので、経済成長を考える場合に、単に現金通貨だけで考えられないというむずかしさがあるのでございます。しかし、それはそれといたしまして、やはり通貨の増発というものを、まあ腰だめ的になりますけれども、適当かあるいは行き過ぎておるかという点はやはり考えなくちゃいけないのじゃないか。やはり物価と通貨量というものは関連しておるというふうに私は考えておるのでございます。それで、昨年の十一月ごろから一昨年の十一、十二月を比較いたしますと、この通貨の増発量が減ってきております。増発はいたしておりますが、しかし、増発しておる増勢といいますか、それは減ってきておるのでございます。これがやはり公定歩合を一厘引き下げのときの決心を固めた一つでございます。まず、通貨の増発ぐあいが落ちついてきている。いつも、十一月十二月というものは暮れでございますのでうんとふえるのでございますが、日本銀行が予想しましたよりも内輪であったということでございます。ただ、一月以降になりまして、去年の一月よりもやや還流がにぶった点もございましたけれども、これは前に手形が少ないために戻りが少なかったのじゃないか、かように考えて、まず十一、十二月の通貨の面から見た経済は、そう危険ではない、かように考えた次第でございます。したがいまして、今後この通貨が先に出るのか、物価が先に上がるのかという問題は非常にむずかしい問題でございまして、これをいまここで結論を申し上げかねるのでございますが、しかし、いずれにしましても、通貨と物価というものは関連しておる。したがって、異常に通貨が出るときは、やはりわれわれは警戒警報と考えなければいけないと思う。それがどこで出てくるか。あるいはまたいろいろの結果になりましょうけれども、いずれにしましても、終局的には物価にやはり影響を及ぼす、かように考えて、通貨の伸びぐあいについては、今後一そう注意してまいりたい、かように考えておるのであります。そういう次第で、いろいろ考えなければならぬ問題が多いので、一口に言うと、慎重にこれからまいりたい、こういうことになる次第でございます。
○平林委員 いろいろお尋ねをいたしたいのでありますが、このことに関連して、日銀法の改正に戻りますけれども、通貨の増発という点について、物価に与える影響を考えますと、今度の改正案でこうした通貨の増減についての取りきめがはずされるわけでございますね。私は、その点、最近国民が体験をしてきた物価と通貨という面から考えますと、これは非常に軽視できないものが含まれておると思うのでございます。こういうことになると、政府の政策いかんによりましては、あるいは政府との同じワク内でもって通貨の安定といっても、通貨の安定ということと物価の安定ということは異なる場合でございますから、必ずしも一致しないという見解もあるわけでございまして、そういう意味では、国民は大きな不安を抱くのでございます。そういう意味から、一部の学者も述べられておりますように、この通貨の増減ということと、それから金外貨準備高の増減というものをある程度関係づけたらどうか。前にも委員会においても議論がされたことがございますけれども、そういう問題についてはどうお考えになっているか、これが一つ。それからもう一つは、これからいずれにしても大勢としては金融緩和をせざるを得ない情勢になっていくだろうと思います。その場合に、現在日銀当局でもお考えになっている選別融資、これはどういう方面に選別融資をするかということが議論になりまして、日銀総裁のお答えも何かの機会に読んだことがあるわけであります。しかし、その中に、たとえば選別融資の条件として、国際競争力をつけるとか、あるいは現在の自己資本の比率を直すためとか、いろいろ条件がございましたけれども、私はしろうとだから言うのかもしれませんけれども、今日の物価問題を考えますと、ある程度上がるべき物価はやむを得ないものもあります。サービス料金とか、それから公共料金の中でも幅は別にいたしましても、ある程度必要であるということは納得できる場合もございましょう。しかし、下がるべき物価が下がらないというような点が国民に物価問題に対する恐怖を与えているわけであります。こういうこれからの金融政策をやる場合に、どうだ、物価をひとつこういう面で独占価格というか——これは独占価格はないというのですけれども、寡占価格といいますか、こういうものを下げるようにしたらどうかというような金融政策というものがあってもいいのではないかと、私は、しろうと考えでございますけれども考えるのです。物価を考える場合に、そういう面はいかがでしょうか、この二つの問題についてお答えをいただきたい。
○宇佐美参考人 お答え申し上げます。 第一の発行限度の問題でございますが、金本位時代はやはりそういうものにリンクをしておりますので、発行限度というものはやっておったわけでございます。 〔委員長退席、藤井委員長代理着席〕 それが現在も続いてきているのでございますが、現在の通貨制度のもとにおきましては、やはり何で発行通貨が増減するかというところが問題なんでありまして、たとえば限度をつくって、そうしてこれを、現在においては、限度をこす場合には限度外発行をして、そうしてもう出たものはしかたがないというので発行限度額を上げるというようなことでは、実際まあ俗なことばで言うと、ツケが回ってきたので払うというような結果になってしまっているようなわけでございます。発行限度というものを設けて、そうして国民が発行限度を上げるというときに大きく取り上げて、日本の通貨は非常に出ているんだというような関心を引くという程度のものならば、あるいはそれも意味があるのじゃないかとも私は思うのでありますが、実際に発行限度を設けても、現在においては、ほかの限度で押えられないほかの要素、たとえば物価の問題もございましょうし、あるいは賃金の問題もございましょうし、そのほかいろいろの在庫の問題、国際収支の問題とかいうものの収益したところが現金通貨というところに集まってくるわけであります。そういう問題をどうするかということなしに、ただ形式的に発行限度をつぐっておいても実際は意味がないのでございます。発行限度というものが現在どういうふうになっているかということにつきまして、おそらくいまは国民の皆さんどなたも御存じないんじゃないかというふうに思うくらい薄れてしまっているわけでございます。薄れてしまったから思い出さす必要があるんだという御議論もあるかもしれませんけれども、またその議論も私も一理あると思うのでございますけれども、そういうことによって発行を押えることはできないというのが現状でございます。発行を決定するものは、その限度額ではなくて、そういう経済のいろいろの欠陥がそこに集まってきておるので、まああっても意味がないというような考えで今度廃止されたのではないか。その廃止された理由は、私はさように考えておるところでございます。また大体各国とも発行限度というものがなくなってきておるというふうに聞いておるのであります。それでただ、それでは無制限に発行するのかというと、今度の発行の保証という三十八条に規定がございまして、そこに保証物件というものがございます。そういうつまり発行額以上の保証物件を保持しなければならない、こういうふうになっておるわけで、無制限にどんどん出せるという問題ではないことを御了承願いたいと思うのであります。 それから第二の問題、選別融資の問題でございますが、これから経済成長を安定的にやっていくという場合には、金融緩和という場合におきましても、無制限な緩和はできないとかように考えておる次第であります。そこでそれではどういうふうにやっていくかということにつきまして、いろいろの考えがあるだろうと思うのです。現在におきましても、金融制度調査会においてもそういうことをやっておるわけであります。いままでのいろいろなやり方を考えてみますると、やはりある法制というか、法の関係、自主的というものに対しまして法的というか、法的に考える場合に量できめようという考えもございます。これはたとえば企業で言いますと、世銀融資方式というのがその一つだろうと思うんです。それからまた銀行側の、貸すほうの規制としては、たとえば預金貸し出しのいわゆる預貸率の制限をしていこうというようなやり方が、法的な量規制というような方法としていままで考えられてきたわけでございます。それからもう一つは、法的な質の差別というような点で、かって融資準則というものをきめたことがございます。それはどういう産業は甲とかどういうのは乙とか、あるいは不要不急は丙とかというふうにきめまして、そうして銀行がそれによって、あるいは企業側は自分は丙だからもうあきらめるというようなことで、融資準則というものをやったことがございます。またある意味においては、やや趣きは違いますけれども、先般の通産省から出ました特振法なんかも、これに類する考え方ではないか。仕事によって、これは特別に金融を考えようという考え方、それからもう一つの方法は、もっと自主的な方法で、企業のほうに対しましても、自分の企業が、日本経済の立場からあるいは地方経済の立場からいいまして、どういう地位にあるということの認識をもっと強めていただく、そうしてあるいは先ほどお話のように国際競争というような立場からも考えてみたいし、あるいはあるときは非常に必要だけれども、あるときは不必要になるというような産業があるわけであります。そういうものを業界自身が、企業ごとにあるいは業界ごとに考えてもらう。いま起こりつつあるムード、それからそれを金融側でいいますと、金融機関もそういうムードといいますか、事情をよく考えてそうして選別してもらう。さらに量的規制、その全体のもう一つ外のワクについては、日本銀行がいまやっているような方法をもう少し改良する必要がございますけれども、そういうもので進んでいったらどうかというようないろいろな考えがあり得るのじゃないかと私は思うのでございます。それで、私は、できればそういう法的ないろいろ基準をつくるというようなことも避けて、そうして第三の方法でいけたら一番いいのじゃないか、まあかように考えておるような次第でございます。しかしこれは影響するところも非常に多うございますし、また金融制度調査会でもいま検討中で、また銀行協会も何か研究しているように聞いております。そういうところの結論も承りながら、日本銀行がどういうふうにそれに対処していくかということを研究しておるところでございます。
○平林委員 私のお尋ねしたことに必ずしも意にかなったお答えではなかったわけでありますけれども、時間がありませんからこの問題はこの程度にしておきます。ただ、私は、金融政策の中にも、国民の生活に重大な影響を与える物価ということを考えると、何かくふうすべきものがあるのじゃないか。たとえば同じ融資をするにしても、管理価格、寡占価格を下げるように努力せよというような条件をつけて、積極的に、同じならばそういう活用のしかたがあるのじゃないかということも研究してもらいたい、という意味を込めたわけでございます。 それから、もう一つの日銀法の問題につきましては、私は、人間が体温をはかるときに体温計がありまして、たとえば三十七度まではだいじょうぶだ、三十八度までいったらこれはいかぬといったような一つの警戒線というものがあると同じように、日銀法の中にも、通貨価値の安定をはかるためにはある程度の規定というものがあったほうがいい。これは人間によっては三十九度、四十度あったってとことこ歩いている者があります。しかしそれは将来の予後の上においては重大な影響を与えるわけでありまして、四十度あっても動ける、池田さんの時代でしたら四十度あったって動けるというような時代があったでしょう。しかしそれは結果的に見まして、やはり将来の健康によくないということを考えなければいけません。体温計にやはり三十七度線というものがあると同じような意味で、日銀法にもこうした点を置いておきませんと、私は、だれの責任がある、かれの責任であるということを言っている間に、取り返しのつかない状態になるということを心配するものですから、こうしたものは置いておいたほうがいいという考えを持っているのでありまして、これはまた別な機会に政府と議論してまいりたいと思います。 それから次に、きょうお話しになりました企業間信用の問題についてたいへんな状態であるというお話を聞いたわけでございます。前に、松下電器の松下幸之助さんが、——日本の経済界では日銀券にかわるような私製の紙幣がはんらんしておる。つまり手形であって、お互いの信用を供与し合っておる。幾ら日銀券の発行に制限があっても手形の発行には法律的に何の制限もないわけでございますから、際限なく乱発をされていく。これはこれからの日銀の銀行券の発行を押えたとしても、こっちのほうを何とかしなければだめだ。幾ら金融の引き締めをやっても何をやってもこれはきかない。——それで最近の傾向を私調べてみたのでありますが、いまお話しのように二十兆円にもなろとしておる。しかもその手形の乱発というものがどういう方面にあらわれてきておるかという傾向を調べますと、大企業のほうが多いわけです。大企業のこうした企業間信用の膨張が多いわけでございまして、これはゆゆしき問題だと思うのでございます。 そこで、こうした膨大になりつつある企業間信用の問題につきまして、ただこれはたいへんだとかむずかしいとかいうだけでなくて、具体的にはどういう手をお打ちになろうとしておるか、日銀総裁の御見解を承りたい。
○宇佐美参考人 冒頭に申し上げましたとおり、企業間信用が非常に大きくなっている点は問題であることは申し上げるまでもないのであります。ただいま松下さんのお話を御引用になりましたが、これが際限もなく伸びていくものじゃないと私は思います。それは必ず壁にぶつかります。そのぶつかったものはどういう形かといえば、やはり大きくいえば経済の破壊であり、あるいは恐慌というような問題、あるいは倒産という問題、いろいろ壁にぶつかる。これを避けなければならぬというところが大事な問題だろうと思っておるのであります。したがって、この企業間信用というものは、非常に無制限に出せるものはいいのですが、無制限に出せないところに危険性があるというふうに私は考えておるのでございます。 そこでいまはどういう状態かといいますと、根本的にいいまして、私はこういうふうに考えておるのでございます。 経済が発展しますと、企業間信用というものが当然起こる。これはまず経済取引の始まりでございます。どんな古代におきましても、何か交換するという場合に、時期的の差が出てきました場合には、相手を信用して何か証拠をとるということから始まるわけでございます。企業間信用自体は、経済が発展するとだんだん大きくなるのは当然だと私は思います。その企業間信用が現在の制度におきましては、決済をしなくてはならぬときに初めて今度は銀行といいますか、金融間取引がそこに起こってきて、そうしてそれをさらに決済するには現金決済、こういう三段階にきているのじゃないか。したがって、その関係がうまくいっておれば企業間信用も、これは一つの経済発展の段階において当然起こってくるものである。これを全部なくすというようなことはかえって日本の経済をまた破壊するもとだろうと思うのであります。 そこでいまお話しのようにそれではいまの——これは二十兆といいましてもきわめて大ざっぱなものでございますけれども、かりに二十兆としてそれではこれでいいのか。一つのあらわれは、やはり最近の倒産というところにきているのではないか。それからもう一つ。この企業間信用というものが、金融がゆるむときに減ってきて、そうして引き締めのときにふえる。弾力性と言ってはおかしいですが、これが増減があればまだいいのであります。ところが最近におきまして、今度の金融の引き締めの場合に、どうもこの前の引き締め、それから緩和がございましてそれから引き締め。この緩和のときに存外減ってないというところが私は問題ではないか、かように考えております。引き締めをやれば当然信用でやるよりしようがないという時代がある程度経過しますが、ゆるんだときにそれが縮小してくれればいいのですが、そういう状態にないところに一つ大きな問題があるのではないかと心配しておるような次第でございます。 さらに状況を見ますと、一体いまの経済が大きくなったために信用の総量がふえているのか、条件が悪くなったためにふえているのか、そこのところをよく調べる必要があると思っているのであります。経済が大きくなったために条件は悪くならないけれどもふえたという場合と、経済がそんなに大きくなったためでなく、条件が悪くなれば残高がふえるのは当然でございます。どっちからきているのだというような点をいま調べておるところでございます。 それから一体買い掛けが多いのか、売り掛けが多いのかどっちの力が強いのか、結局ある意味において企業間信用というものは力関係で起こってくるのであります。そういう力がどこにあるのかというような点、それからいま大企業が多いとおっしゃいましたけれども、大企業が多いというのは中小企業のほうで注文を取りたいので大企業にまいっておるのか、その辺をもっと根本的に調べないとなかなか対策が立てにくい。ただ問題はそんなことも言っておられないので、いま研究中でございます。どういう方法がいいか、ただ研究をするだけでなく、われわれの手に負えなければ政府にお話しして考えていただきたい。最近日本銀行でも通産省の人にもいろいろの方にも直接意見を聞くように勉強しておるつもりで、まだなりたてでそこまでいかないのははなはだ申しわけないのでありますが、至急対策を講ずるつもりにしております。
○平林委員 最後のところを聞きたかったのですが、まだ十分のお答えはいただけませんで、きょうはこの程度にしておきます。 最後に、これは日銀総裁でないと聞けない問題ですから一つだけお願いします。 最近の新聞を見ますと、経済団体連合会が日銀の総裁に対して市銀に対して国庫金の預託制度を実施するよう要望したという記事が出ているわけであります。この記事によりますと、金融界では数年間の懸案であって、民間出身の日銀総裁であるからこの際ひとつ頼めということで、日銀総裁のほうでも検討を約束したということが報道されておるわけであります。先ほど佐藤議員がお話しになりましたように、どこの出身であろうとも、今日は国家的見地から金融行政をおやりになるというお覚悟のようですから心配しないのですが、新聞記事とちょっと心配されるような報道になっているわけであります。この国庫金預託制度の構想は私は反対であります。白銀の代理店に国民の税金が集中をいたしまして、そしてその税金を二日後に日本銀行に納めるという仕組みになっておるのですけれども、中央と地方との資金のバランスが悪いから、ひとつこれを預託させてくれという考え方のようでございますけれども、こういう国民の税金を利潤のために、これはいろいろ理由はあるでしょう、金融情勢を調整するというような理由はあるでしょうけれども、いやしくも国民の税金を、金融機関がそれによって利潤を追求するという考え方が内在的にあるわけでありますし、こういうことはやはり感心しないのであります。こんなことを許せるなら、たとえば専売公社においてたばこの代金なども、日銀へ行かないでそれを動かして、そしてうまいことをやろうじゃないかという企業家の意欲というものが動いてくるわけでございまして、これは重大な問題であろうと思います。こういう観点から考えまして、日銀総裁は財界の出身でもあるし、向こうも同じ出身であると思うから気軽に相談をかけたのでございましょう。それに検討を約したということになりますと私は問題だと思いますから、この点についてはどんなお考えであるか、きょうは確かめておきたいと思いますので、この点を最後にお尋ねいたしまして私の質問を終わります。
○宇佐美参考人 その問題につきましては経団連から何も申し入れがございません。したがってまた検討を約したこともございません。ただ従来、私が民間の銀行におりましたときにそういう話が出ておりましたので、おそらくあれはその事情を知っているからひとつ考えておるだろうというよらなところではないかと思うのであります。それはこういうことから起こってきておるのです。つまり大部分の税金、法人税がおもでございますが、これが東京といいますか大都市へほとんどみんな吸い上げられてしまう、それが交付税交付金ですか、地方税交付金あるいはまた米の代金というようなものになって地方に流れていく。ですから地方銀行さんというか地方のほうには金が流れていって、こちらが自然に吸い上げられるのでたまったものじゃない。ことに税金が時期的にかたまってまいりますと、そのときは実際市中銀行の手元は非常に苦しくなってしまうわけです。それをならしたい、つまり納税期をならす。私ども税金を四半期ごとにですか取っておるのを、毎月取るように何とかできないものか、ならしてもらうということ、これはできもしない税制の話ですけれども、言ったことがあるのでございます。とにかくならしたい、ならすには税金は税金で納めるけれども、しばらく滞留させてくれというのがその趣旨であったと思うのであります。その当時の状態はいまの引き揚げ超過の時代であったわけです。引揚げ超過の場合は確かにつらさが非常に多いのであって、最近は先生方御承知のとおり、むしろ払い超の状態になってきますと、それじゃ払い超のときはどうするのだと当然問題が出てまいりますので、なかなかそういう根本的の問題は、国民の税金を私の銀行に戻すということはその精神からいって悪いという以外に、実際問題としてもその問題はもうすでになかなかむずかしい段階にきておるのではないか。それよりもいまのように地方からこちらへ吸い上げまして地方にいく、地方に金がいってそうして今度は中央はどういう形でとっておったかというと、いままでは非常に高いコールという形でとっておった、それを直すのが本筋だろうと思っております。
○平林委員 この問題は財投の揚げ超であろうと払い超であろうと問題なく私反対です。きょうは、いろいろ申し上げましたけれども、私の意のあるところをおくみ取りいただきまして、これからの日銀の運営にあたってくださるように期待をいたしまして、質問を終わります。
○藤井委員長代理 武藤山治君。
○武藤委員 たいへん同僚各位から御質問がありまして、予定をしておりました項目のかなりの部分はもう質疑が終わりましたので、要点だけ個条的にお尋ねいたしますから、総裁のほうでも率直に簡潔に御答弁を願いたいと思います。総裁の御都合でおそくも一時十分にはここを出なければならぬということのようでありますから、約十五分間でございますので、要点をひとつお願いいたします。 まず最初に、日本の金融政策の上で大きなガンになっておるオーバーローンの解消の問題でありますが、先ほど総裁は三十八年末と三十九年末の貸し出し残高は減少したとおっしゃった。確かに四百五十億ばかり減ったのであります。これはいい傾向だと思います。しかしながらいまの買いオペレーションのやり方が、条件つきの買いオペという方法をとっておる。このことは少し私たちが考えてみますと、偽装したオペのような感じを持つのであります。完全な公開市場操作というものが行なわれない事態のもとで、こういう傾向ではあまり好ましくないと私は考えておるわけであります。そこでまず基本的にオーバーローン解消にはどうすべきか、日銀としてどういう方法を考えてやっていくおつもりであるか、この点をひとつ端的にお伺いしておきたいと思います。
○宇佐美参考人 オーバーローン解消につきましては、これは急にはなかなか直らない問題でございますが、しかしさしあたりいまのところはやはり証券の売買オペレーションで、なるべくふやさないように押えていくということに努力いたしておるつもりでございます。したがいまして、最近も、日銀貸し出しというものは相当大きな金額になっておりまして一兆をこしておるわけでございますが、しかしその内容はだいぶ変わってまいりまして、たとえばこの間来やっております証券対策の資金というようなものになっておりまして、銀行の個有の日銀借り入れというものはだんだん減ってきておるようなわけでございまして、これは確かにオペレーションの効果が出てきているのではないか。ただおっしゃるとおりいまは御承知のように公社債市場というのがないものですから、なかなか理想の形でオペレーションができないことは御承知のとおりでございます。やむを得ざる措置と御了承願いたいと思います。
○武藤委員 第二番目に、今度の日銀法改正の第二十八条で、円価値維持のためのマーケットオペレーションの制度が今度はっきりうたわれるような情勢だと思うのですが、私が心配しておるのは日銀が債券を持っておる間は売りオペができるが、今度いよいよ債券の手持ちがなくなった、そういうときに、今度は法律上買いオペができるということになっておりますと、最後には日銀の手形で操作するようになるのではないか、日銀自体が手形を書くようになりはせぬか、こういう心配をするのでありますが、そういう点は危惧でございましょうか。
○宇佐美参考人 日銀がみずから手形を振り出すというような場合を考えるのは危惧であろうかという御質問だろうと思いますが、私どもはそういうような時代はまずないと考えておりますが、オペレーションを今後、つまりオペレーションの対象物件はやはりふえていくのではないか、かように考えておるわけであります。
○武藤委員 第三番目に、金利自由化の問題でありますが、いまレートが下がって、時期としては非常にいいチャンスではないか、少なくとも金利の自由化をやるならば、ここ六カ月くらいが時期としてはよろしいのではないかという意見があちこち出ておるのでありますが、総裁の御見解はいかがですか。
○宇佐美参考人 いまいい時期かどうかという時期的な発言は非常に申し上げにくいわけでありますが、いろいろの情勢を考えて善処いたしたいと思います。 それから前の御質問でございますが、今度の日銀法の二十八条に、一応の場合を考えまして、通貸及び信用の調節をはかるために必要なるときは日銀は手形を出せるという対策を講じてございます。さよう御了承願いたいと思います。
○武藤委員 次に、先ほど公定歩合の問題が何回も質疑されておりましたが、現在日本はIMFからスタンドバイ契約、いわゆる借り入れ予約をいたしておりますが、このIMFとの予約があるために一挙に二厘下げられないのか、あるいはもう一回一厘下げる場合には、このスタンドバイ・クレジットはやはりじゃまになるのか、もう一厘下げたときにはIMFのほうへこの申し込みは取り消しをしなければならぬのか、そこらはどういうことになるのですか。
○宇佐美参考人 今度の一厘引き下げにつきましては、スタンドバイの関係は全然それを使わないでいいという見込み、使わざるを得ない状態になりはしないかという心配がないという前提で考えております。したがって、一厘とそれとの関係はそういう意味において、ないとは言えませんが、つまりなくてもいい状態だという関係において考えただけでございます。これがあるために一厘にとどめたのだというようなことは絶対にございません。先ほど来申し上げましたような事情でございます。
○武藤委員 次に第五番目に、増資の再開の問題でありますが、昨年九月から増資が全面ストップのような形になっておる。しかし現在二百六十八社程度から増資の再開が強く期待をされておるようでありますが、今日の経済情勢から見て、増資再開はいつごろをめどにしようか、年度間における増資の総額はどの程度で押えることが、今日の金融のひずみを発生せずに済むか、そこらの見当はどういう見通しでありますか。
○宇佐美参考人 先般増資を全面的にストップするということになったわけでありますが、これは本来はやはり常道の方法ではないのでありまして、一日も早くそういう増資ストップというような形は解かなければ、やはり日本の経済のためによくない、また世界に対しても決していい影響があるとは思わないのであります。ただ当時の事情からいいまして、当時の株式市況の状態が増資にとてもたえられないという状態で、臨時措置としてやったわけでございます。これを解除するには、やはり標準になるものは、一つは市場の回復状態、一つは企業の回復状態、この二つから考えなければならないと思うのでございます。いかに資金が不足しているとはいいましても、そういうものをあえて増資いたしますと、かえって日本経済のためによくないというような形で、いまそれらの問題についても増資懇談会等で検討されておるような次第でございます。ただいつまでもほっておけないということは確かでありますし、また場合によっては、たとえば世銀の関係であるとかやむを得ないものもある、あるいは増資をしても十分に配当を持続できるというような会社につきまして、しかも株主が非常に熱望しておるというようなものにつきましては、情勢を見ながら解除していくという方向は当然だろうと思うのであります。したがいまして、いまここでことしの増資予想というものを金額的に申し上げることは、いまの段階ではとうてい算出できない状態であることを御了承願います。
○武藤委員 算出できないという状況であることはよく理解できますが、現在希望しておる金額というのが、新聞の報ずるところによると約七千億円もある。いまの株価あるいは株の市況、証券界の実情、こういうものを判断したときに、先ほど総裁は手持ちがなくなるような指導を日銀はしたい、しかし手持ちがなくなるような指導をずっと日銀が、日証金を通じて金を出したり、いろいろな方法をとってみても、いつかはまたこれを放さなければならぬわけですね。そうすると、その放せる時期、めどというのは二年というような数字になるのか、どの程度の間にそういうものが正常な形になるとお考えになっておるのか、そこらは総裁としてどんな見通しを持っておりますか。
○宇佐美参考人 いろいろそういう見通しについて申し上げられないというのは非常に残念なことなんですが、これはわからないという点もございますし、また要するにそういう株価の予想のようなことは、日本銀行総裁としてこのくらいの株になるからというようなことはとうてい申し上げられることではないことを御了承願いたいと思います。
○武藤委員 次に、公社債、起債の問題、これも日本の資本市場にとっては関心の高い重要な問題かと思いますが、政府は今回の予算で、政府保証債二千二百七十億円、公募地方債四百六十億円、かなり膨大なものを放出をするわけでありますが、これに関連して、民間債を一応どの程度考えることがいまの日本の金融情勢上妥当と考えるか。半々にしたほうがいいだろうという意見もあるだろうし、政府がこうみだりに財政投融資をふやされて、民間資金を圧迫するのではないかという不安、いろいろあると思うのですね。これのあり方については、一体総裁としてはどんな見解をお持ちになっていらっしゃいますか。
○宇佐美参考人 民間債と地方債、政府関係債、それとをどういうふうな比率にするかということにつきましては、なかなかその算定はむずかしいのでありますが、民間のほうからいいますと、一応自分のほうで社債を出して、そうして余分があったら政府のほうも消化したいということは、これは当然考えるべきことでございます。ことに現在におきまして社債市場がございませんので、こういう社債市場がないときに、どういうぐあいというよりも、早く社債市場をつくるような環境をつくる、そのためにはいま率直に言いますと、これも率直過ぎる表現かもしれませんが、金利ですね、長短金利のぐあいが、短期金利は高過ぎるし、長期金利は低過ぎるといってもいいんじゃないかと思うのでありますが、そこを直して、それからいまのような割り当てでやるような方法を直していくということが大事じゃないかと思っておるのであります。いま、やや力関係で奪い合いをしておるというような非常に残念な状態じゃないかと思っておるのであります。
○武藤委員 総裁の予定の時間がありますからこれでやめますが、国会は五月十九日までございますから、あらためてもう一度ゆっくり対策などについてもお尋ねをしたい。きょうの質問は、まことに私は不本意な質問の形式をとったわけでございますが、もう一度お願いしたいと思います。 最後に、国鉄の今度発行する債券の問題で、日銀が適格担保としてこれを認めるか認めないかということは、非常に大きな問題であります。縁故債にするといわれても、国鉄の下請業者は、これだけの膨大なものはとても消化できぬ。しかも、それを銀行に持っていけば結局また同じことになってしまう。したがって、私は、この際日銀が思い切って適格担保付債券にしてやったほうがいいじゃないか、こういう見解を持っておるのでありますが、総裁の御所見はいかがですか。
○宇佐美参考人 この問題はいろいろいわれておりますが、やはり日本銀行というものは大事なことは筋を通すということで、便宜主義にならないというところが大事なことじゃないかと私は思うのであります。したがいまして、いまの国鉄の御事情はよくわかるので何とかして上げたいというのは、国民的感情からいってそう思うのでありますが、しかし、やはり日本銀行というものが、とめどもなく適格社債を出す。もう相当金額にのぼっております。さらにこれをとめどもなく出すということは、やはり金融政策としてつつしむべきじゃないか。それでどこで筋を引くかということになると、やはり、公募とか市場性とかあるいはその会社の条件とか状態とかいうようないろいろの筋を引いて、一番大事なところは、やはり縁故債というような出し方の問題は差し控えるべきではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。国鉄に対しては非常に同情しているのですが、やむを得ないことだと思っております。
○武藤委員 最後に、今回の増資の再開の問題にしても、あるいは社債の問題にしても、いまの国鉄の債券の問題にしても、政府があまりにも安易な道を常にたどっておる。これに対するブレーキをかけるものがない。先ほど平岡先生が非常に傾聴すべきドイツの例を引用しましたが、宇佐美さんはその当時、まだ予算査定当時は総裁になっておられませんから本年はやむを得ないと思います。しかし、明年は、ひとつ総裁は、日本経済を自分たちの力で正常な方向に持っていくんだという、大いに誇りを持ってがんばっていただきたい、かように考えて私は質問を終わりたいと思います。
○藤井委員長代理 これにて宇佐美日銀総裁に対する質疑は終了いたしました。 委員会を代表いたしまして委員長より一言ごあいさつを申し上げます。 宇佐美総裁には、御多用中のところ、長時間にわたり御出席をいただき、貴重かつ忌憚のない御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。 次会は、明後二十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後一時十三分散会