社会労働委員会 第32号
- 発言数
- 161 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1965/05/15
会議録
○松澤委員長 これより会議を開きます。 この際、参考人出頭、要求の件についておはかりいたします。 来たる十七日、精神衛生法の一部を改正する法律案審査のため参考人より意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○松澤委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。 ————◇—————
○松澤委員長 内閣提出の労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
○滝井委員 労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案について、二、三の点について尋ねてみたいと思いますが、まず第一に、今回のこの改正によって労災の賠償を一時金から、全面的とは言わないけれども、ほとんど年金化した理由というのは、一体どういう理由から年金化を行なったか、それをまず述べていただきたい。
○石黒政府委員 今回の改正で年金化というのは最大の眼目でございますが、一時金の補償を大幅に年金にいたしましたのは、一言で申しますと、必要な期間必要な補償を行なうというのが最も補償の形として適当ではなかろうか、その形にできるだけ近づけたいという趣旨に基づくものでございます。
○滝井委員 そうしますと、当然、この年金というものは、最低の保障をしなければならない部分と、それから企業の経営者として労働災害に無過失賠償責任論の立場から賠償しなければならない部分、この二つの部分がくっついておらないと年金の意味がないわけです。そういう考え方に立っておるのかどうかということ。少なくとも年金と言うからには、最低の生活を保障する部分と、同時に、それに今度は賠償責任というものが加わって、それが年金になっている、こういう形でなければならぬと思うのです。そういう理論に一体立っているのかどうかということです。
○石黒政府委員 労災補償の方法が一時金から年金に変わったということによりまして、労災保険の性格が基本的に変わった、すなわち無過失賠償責任の遂行のための保険という性格から、社会保障にすっかり変わったものではないというふうに考えております。ただ、年金という方式で補償を行なうことによりまして、結果として所得保障的な効果が一そう強まるものであろうという考えは持っておる次第でございます。
○滝井委員 もちろん、年金によって所得保障的な効果が強まることは認めます。しかし、その所得保障というものは、まず第一に、最低生活を保障する年金でなければならぬことは当然です。同時に、その最低生活を保障する年金の中に、経営者としての無過失賠償責任の部分が当然きちっと加わっておらなければならぬわけです。だから分析してみると、その最低生活保障部分と賠償部分とが、二つ入って年金化が行なわれておるのかどうかということを聞いておるわけです。
○村上(茂)政府委員 日本の場合、労働基準法上の災害補償制度と労災保険法上の制度が、実質的には同じ基盤の上に立ちながら、法形式としては、労働基準法上の災害補償とそれから保険法上の保険給付があるわけでございます。これがかりに、これは外国の例を引き合いに出して恐縮ですが、イギリスのようにワーカーズ・コンペンセーションがありまして、保険でそれをカバーしてなかった、それが第二次大戦後、保険法でほとんどカバーするようになりました段階においては、労働者災害補償法のほうがほとんど後退いたしまして保険法に席を譲ってしまった。また、ドイツのように、最初から保険法でカバーしてきたという国におきましては、保険給付と災害補償額というものがほとんど同一な形であらわれておりますので、いま先生御指摘のような無過失責任による災害補償か社会保障的な生活保障かという問題は、必ずしも大きな問題とならずに処理されてきたものと考えます。したがいまして、労災保険法がほとんど全事業場に完全適用になった場合における労働基準法上の災害補償はどうなるかということになりますと、事実上はほとんど機能を喪失するということになろうかと思います。 そこで、要するに、無過失賠償責任による災害補償額の問題と保険制度による——しかも年金化いたしますと、形態としては社会保険にだんだん形態が類似いたしますので、いわゆる社会保障的なものとの重複のぐあいがどうなるかということは、理論的には問題はなかろうかと思いますが、そのダブリの調整につきましては、それぞれ保険法等の場において調整すべきものであろうかと存じておるわけでございます。
○滝井委員 どうも頭が悪いせいか、村上さんの答弁がよくわからないのですけれども、この労災法の一条をごらんになっても、これは当然負傷とか疾病とか廃疾または死亡に対して迅速かつ公正な保護をする、そのために災害補償を行なって、あわせて労働者の福祉に必要な施設をなすことを目的とする、こうなっております。まず労働者の保護をして災害補償を行なうわけでありますが、そうすると、当然、手が切れる、足が切れるという労災が起これば、これは生活の手段を失うわけですから、まず生活保障というものがその基盤になければならぬと思うのです。これが第一の基盤じゃないか。そうしなければ労働者の保護にはならぬわけです。そして同時に、そのものにプラスアルファになるかどうか知らぬけれども、あるいは明らかにそのものに含まれるかもしれませんが、企業の賠償責任というものがきちっとやはりあらわれておらなければならぬと思う。そういう二つの要素が加わって年金化というものが行なわれるときに、初めていままでの一時金よりかより所得保障ができる、こういうことになるんじゃないですか。いわゆる労働者の保護ができるということになるのじゃないかという感じがするのです。
○村上(茂)政府委員 災害補償の場におきましては、無過失賠償責任による損害賠償という考え方が先行しておるわけでございます。損害発生時点における稼得能力を基礎にいたしまして、損失のてん補を行なう制度であるというふうに考えております。そのような基礎の上に労働基準法上の損害補償も、それから従来の労災保険法も成り立っておると思うのでございますが、その災害補償の額が一時金でなければならないかと申しますと、一時金でなければならないということではなくて、要するにその損失てん補の状態がより適切であればよいわけでございますから、その度合いを考えますと、一時金よりは年金のほうがベターであり、各国ともそのような法制をとっておる。またILO条約等の指向するところもそういう方向であるということにかんがみまして、一時金制度を年金制度に改めた、こういうふうに私どもは考えておる次第であります。
○滝井委員 そうしますと、労災保険の中には最低生活を保障するという理念は明白にないわけですか。
○村上(茂)政府委員 考え方としては損失のてん補でございますから、損害発生時点における稼得能力、アーニング・キャパシティの喪失程度を補てん、補完するという意味を持っておると思います。しかし、それは補償理論の問題でございまして、それが実質的に生活を保障するかいなかということになれば、生活を保障するという意味を持つものであることは当然でございます。ただ、社会保障的な意味の平均的な生活保障、その当時の状態において考えられ得る、いわゆる標準的な生活保障ないしは最低の生活保障ということを第一義とする制度であるかいなかということになりますと、むしろ損失のてん補であり、それが結果としては当然に生活保障の機能を持つものである、こういうふうに私どもは考えておる次第でございます。
○滝井委員 私は、だから初めに年金化する理論を尋ねておるわけです。たとえば滝井義高が十の能力を持っておって、右の手をばっさり切ってしまった。したがって十の労働能力が三だけ減ってしまった。したがって、三だけ補てんをすればそれで済む、いまの局長の理論からいえば、そういうことなんでしょう。そうすると、三だけ補てんすればいいというものを年金化す場合に、一体その理論的な根拠というものをどういうところに置くかということになるわけです。いまのその理論の置き方は、平均賃金日額の六割というものを基礎に置いてやっておるわけでしょう。そうすると、賃金の六割程度あれば最低生活ができるだろうと、こう考えてきておったと思うのです。これは日本の生活水準その他から、そういうものを基礎にして三だけの補てんをしてやればいい。その補てんをするという場合に、一体これを年金化していくという理論がすぐそれにつながってくるかどうかということです。どうも私は、そこには、補てんをすれば済むというものを年金にずっとしていくということになりますと、理論的にいえば三の補てんを——たとえば私の平均余命率を見て、滝井義高が四十のときに右手を切り落として三の労働能力の喪失を来たした、滝井義高の余命率はこれからもう三十年ある。そうすると、その三だけのものを三十に割ってしないと年金の理論は成り立たないわけです。これから三十年滝井義高が生きていくとするならば、その三だけのものの三十年分の補てんを年金でやればいいということになるわけであって、何も賃金の六割というようなことはたいして関係ないわけです。そういうことから考えると、一体年金化というものは、どういう理論的な根拠から出てきたかということがはっきりしないわけです。いまのような部分的になくなったものを補てんするのですということからは、どうしてもすぐに年金にはつながってこないのですよ。
○村上(茂)政府委員 損失をてん補する場合に、どの程度の額であればよろしいのかという額の算定の問題と、それから支給の問題があろうかと思います。同じ年金と申しましても、療養補償的なもの、障害補償的なもの、遺族補償的なもの、幾つかあるわけでございます。それにはそれぞれの計算の方法というものがあろうかと思います。御承知のように医療補償は、かかった医療費はそのまま全部支給する、休業補償は、基準法の休業手当との均衡を保ちまして、御承知のように六〇%支給、こういうことにいたしておるわけでございますが、問題になりますのは、障害年金と遺族年金であろうかと存じます。障害補償年金につきましては、御承知のように、現行制度は第三等級を労働能力一〇〇%喪失したものといたしまして、それを基準に上下の加減をしておるわけであります。このやり方がいいかどうかということにつきましては、いろいろこれは御意見があろうかと思いますが、現行制度は第三等級を労働能力一〇〇%喪失ということにして起算をいたしておるということになるわけでございます。それからまた、遺族補償の今度の年金化でありますが、これは御指摘のとおり、どのような方式によって計算するかという問題があろうかと思います。この点いろいろ考え方はあると思いますが、私どもといたしましては、従来あった制度の上に立脚し、そうして他の年金方式等をも考慮いたしまして政府原案をつくったということでございまして、立法論としてはいろいろあろうかと思います。ただ、出発点としましては、先ほど申しましたように、一時金よりは年金のほうが損失てん補であってもよりベターであるという基本理念に立脚いたしまして、あとはその年金額の算定、支給方式といったものについて技術的な配慮を加えたというふうに考えておる次第でございます。
○滝井委員 根本論をあまりやっておると時間がありませんから——昭和二十二年の四月七日にこの労災法が実施をされて、十七、八年の長い間、一時金というのになじんできているわけですね。もちろんけい肺その他は、三十五年ですかに改正以来、年金化が行なわれてきたわけです。ところが、他の一般の障害というものは、年金になじんでいなくて、一瞬金になじんでおるわけです。そうしますと、政府としては当分の間、一時金と年金との選択ということを許す意思があるのですか。どちらでもひとつ選びなさいという意思があるのか。
○石黒政府委員 一時金と年金との選択制という問題につきましては、年金による補給が補償の形としてより合理的であり、労働者の幸福になるというふうに考えられますので、選択制を認めるという場合に、一生年金がもらえるのを、一時少しまとまった金が入るからといってそれを棄権してしまうというような形をとりますことは、日本の労働者が、必ずしもいまだ年金制度になじんでいないという現状から適当ではないというふうに考えまして、選択制は認めないというふうに考えているわけであります。
○滝井委員 そのもののお考え方は、天上天下唯我独尊の考え方に通じないか。なぜならば、労災保険だけがいまの日本における生活を保障する、あるいは生活の欠陥を補てんをする制度ではないのですね。それは、他にも生活保護はあるし、厚生年金もあるし、あるいは国家公務員共済組合みたいな別な制度もありますが、とにかく他に制度があるわけですね。そこで、いままでそれが長い間制度的にわれわれが、いまはやりのことばで言えば、その制度で飼育されてきておったわけです。飼育されてここまで成長してきている。それを一挙に年金化してしまうということになると、やはり戸惑いを生ずるおそれがなきにしもあらず。だから、たとえば暫定的にそういう制度ができたときには、ひとつ三年なら三年はお選びなさい、五年なら五年はお選びなさいと言うことは、たとえば女子の厚生年金における脱退一時金の制度というものは、労働省の統計によると、抜き取り調査をやってみると、その調査した女子従業員の〇・五くらいしか二十年勤務しない。厚生省はこれを一四か一五程度に見て今度の法律を出しているようですが、これだけしかない。そういうところに、一挙に強制的に年金を適用してしまったのではぐあいが悪いだろう。やはりこれは、一時金の制度というものを残す必要があるというので、今度与野党意見一致して残したのです。と同じで、むしろこういう労災制度というものが、いまあなた方が言うように、必ずしも最低生活を保障する制度としての意義というものは幾ぶんニュアンスが薄いのですね、いまの答弁を聞いておっても。ということになると、全面的に最低生活を保障するものでないとすれば、一時金制度というものを残してもいいんじゃないか、いまのあなた方の理論から言うと。これは理論的に私のほうが筋が通っておるような感じがします。いわんや、生活保障をするといって立ちあらわれた厚生年金でさえ、女子については一時金を許した今度の修正を与野党でやったのです。そうすると、当然こういう生活保障そのものずばりでない制度において、何もかにも一挙に年金化する必要はないじゃないか。幾ぶん、三年なり五年なりの選択制をとっていいんじゃないかという感じがするのです。
○石黒政府委員 厚生年金の制度のことは私どもも勉強不十分でございますけれども、厚生年金で短期間加入しておって脱退した人に一時金というようなものを出すのがよろしいか、あるいは将来何十年かたって退職するときに通算するというだけでよろしいかという点につきましては、御指摘のごとき御議論が十分あろうと存じます。労災年金につきましては、障害年金は、御承知のごとく三十五年に一級から三級まで年金化をいたしました。このときも選択制はとりませんでしたけれども、スムーズに移行いたしております。障害年金の場合と遺族年金の場合とは、若干やはり違う点があるのじゃなかろうか。遺族年金につきまして特に選択制の要否が審議会におきまして議論されたのでありますけれども、千日分なら千日分を一ぺん取ったならば、年金は永久に棄権するということは、これはどうもよくないのじゃないか。保険財政上からは、むしろそのほうが保険財政の負担は軽くなるわけでございますが、それでは年金制度の趣旨がだいぶ減殺される。しかし、一時の金の入用ということが遺族について必要であるということもわかるということで、この点は、滝井先生の御指摘の趣旨に十分沿っておるかどうかわかりませんけれども、今回の改正におきまして、選択制ではなくて前払いという制度でもって、五年間の、そういう年金制度に十分習熟し、他の制度がさらに発展するまでの間のつなぎといたしまして若干の金をまとめて前払いする、ただし、その金を使ってしまってあとにおいて、それでも年金が永久にもらえないというのではなくて、その前払いした金に対応するだけの年金期間が過ぎたならば、年金を継続してやるというような制度をとった次第でございます。
○滝井委員 どうも私は、この労災が最低生活をずばり保障する制度でないということになれば——遺族年金とかあるいはけい肺のような非常に長期のものについては、私は年金化の方向というものはいいと思う。なぜならば、それはある程度やはり生活を保障する要素が、あなた方が否定しようとしまいと相当加わっていると思うのです。しかし、今度一級から七級までの障害補償を全部年金化していくということになりますと、いままでそれらの人たちは、六年分の一時金をもらっておったわけですね。その間は厚生年金は停止をされておった。しかし、一時金はもらっておったわけです。そこで、これはやはりある経度の期間、暫定的な選択制は許してやっていいんじゃないか。そして、ある程度みんながその制度になれてしまったら徐々に年金化に移っていくということのほうが、覚悟はきまるわけですよ。まだ制度が普及をしていない。最低二、三年でもいいです。それでどちらでも選べる。それで、みんな労働者の中にだんだんこれから年金化していくんだ、三年まではもうどちらでもいいということになって、それぞれ計算をしてみて、一時金をもらうよりか、あなた方の言うように、年金をもらっていたほうが所得保障についてはいいんだという考え方が被保険者の中にずっと浸透してきたときには、年金に移行したほうが私はいいんじゃないかと思うのです。
○村上(茂)政府委員 先生の御指摘の趣旨はごもっともでございますが、過去における運用の実際を見ますと、一時金の支払いは原則でないのであります。労災保険法の十六条では、障害補償費等の支給方法は「六年以内の範囲内において、分割して毎年支給する。」というのが原則で、「ただし、命令で定めるところにより、一時に支給することを妨げない。」という、そのただし書きの方式が一般化されたということにかんがみまして、そういう択一制をとる場合に、またしても現在のやり方が、原則とただし書きが逆になっておりますような慣行がございますので、なかなかこれは原則を貫くことが困難であるというような体験に基づく私どもの理解もあるわけでございます。いろいろ御意見があることは承知いたしておりますけれども、この際各方面の御意見を伺いまして、年金化に踏み切ったような次第でございます。
○滝井委員 これは、村上さんがいみじくもみずから自白したように、十六条には、ほんとうはこれは分割して支給するはずのものであったのだけれども、むしろ主流でないただし書きのほうが制度的に固まったわけですよ。それはやはり六割の療養給付費をもらうわけですからね。だから、それで何とか一時金をもらわなくたって、食っていっておったわけですよ。そして今度は、まあ三年たって打ち切りになるといったときに、六年分ぽっともらって借金を返したり、その後の生きる道を考えていくということだったわけです。だから、むしろ、あなたが御指摘になったように、十六条というものは分割をして支払う、いわゆる年金的な払い方をするのが本筋だったけれども、日本の労働階級としては一時金のほうを選んでおったわけです。これが現実の問題なんです。だから今度それを本筋に戻して、ずっと年金化していくということについては、いままでわれわれが飼育されておった姿というものがあまりにも固定化しておるので、ひとつ両者選択の形をとってください。そうして三年なら三年したときにはもうなれるんだから、今度は年金化してもいいんですよという、きわめていままでの、過去の実態に立って私は質問をしているんですよ。だから、あなたの理論のほうが、いまあなたがいみじくも十六条を言ってくれて、みずから状態を暴露したようなものですよ。
○村上(茂)政府委員 補償費を一時金としてもらうことについてのプラスの面もあろうかと思います。しかし、私どもは、行政経験上、一時に多額の金を取得することによって、いろいろな家庭悲劇その他の問題も惹起しておることも承知いたしておるわけであります。そこで、どっちをとるかというかね合いの問題であり、どっちのほうをよしとするエネルギーが大きいかということも比較考慮の上に立ったわけでありますが、大勢としては年金化に踏み切るべきであるというエネルギーと申しますか、お考えのほうが強いように私どもは理解いたしまして、法律案におきましては御指摘のような制度を採用しなかったわけであります。
○滝井委員 そうしますと、障害補償は、一級から七級までは年金にしたわけです。八級以下は一時金にしたわけですよね。そうすると、これは八級以下は傷病の程度も軽い。だから一時金でやっておっていいだろう、こういうことだろうと思うんですよ。しかし、あなた方が初め考えたときは、一級から八級までを年金化することの案を考えおったはずですよ。ところが、それは厚生年金の障害等級表との関係があって、これを一級から七級までにしてしまったんじゃないかと思うのですよ。そうしますと、八級以下は一時金だという形になっているわけです。そうすると、そこらあたりの理論のつじつまが今度はやはり合わないんですよね。
○村上(茂)政府委員 御指摘の問題は、軽微な障害について年金にするか、一時金にするかという問題が特にその中心のようでございますが、これはわが国のみならず、諸外国におきましても、軽微な障害については一時金の支給という制度をとっておる例が多うございまして、それは結局、あまり零細な一時金は、年金にしても年金としてもらう額がほんとうのわずかな額になって、金額があまりにも零細化するという趣旨で、軽微な障害の補償については一時金制度を採用しておるわけでございます。そういった大筋にのっとりまして今回の改正案を検討したわけでございますが、まさに御指摘のように、厚年の障害年金との調整上、完全に相合致する部分を年金化したということでございます。今後このままの姿で移行するかどうかという点については、さらに検討を要するものと私どもは考えておる次第であります。
○滝井委員 八級というのは、一つの目が全然見えなくなって、片一方の目が〇・〇二以下ですよね。それから脊髄に運動障害があるものです。これはなるほど軽微ですけれども、ここらあたりまでは、十分年金の適用の可能性のあるところですよ。片一方の目が見えなくて、片一方の目は〇・〇二以下ですよ。非常に、何というんですか、社会的活動というのは阻害されるのですよ。独眼流の上に〇・〇二以下ですからね。だから、こういう点を考えると、むしろ年金化の方向を貫かなければいけなかったのです。ところが、厚生年金との関係でそうはいかなかったわけでしょう。それからいま一つは、一酸化炭素中毒、職業病。今度国民年金では、精神障害まで全部入れることになっちゃったのですね。非常に範囲を広めてきているわけです。そうすると、そういう関係というものは、こちらには年金化の方向はないわけです。だから、ここらあたりをもう少し私は検討してもらう必要があると思う。八級の病気のあれを見ますと、軽いのもありますけれども、相当重いのもあるわけですよ。だから、そこらあたりを、むしろあなたのほうで他の制度に気がねをして、せっかく年金に踏み切ったのに、一時金を残しておるということはやはり問題だと思うのです。一級から八級までやるものなら、きちっとおやりになったほうがよかったのではないか。一時金の制度を残すと、厚生年金との関係が、さいぜん言ったように問題になってくるわけです。あなた方が一級から八級まで年金化すれば、これは幾ぶん減ずるけれども、厚生年金と併給はずっと行なわれる。一時金のところは、これは厚生年金との併給が全然ないわけです。一時金にされた部分は、厚生年金をその間はストップされるわけでしょう。そうすると、一時金というのは、あなた方がいま理論展開をやったように、労働者を補償する制度としてはよくないんだ、こうおっしゃったわけです。よくないから年金化したのだ。そうすると、よくない制度ならば厚生年金を初めからやっておっていいわけなのに、一時金を残しておきながら厚生年金をおやりになっていない。そうでしょう。全然おやりになっていない。そうすると、一体一級から七級までについては、部分的であっても厚生年金は併給をする、五十七・五を引いて併給します。それなら一時金はなぜ厚生年金を併給しないんだということになります。
○石黒政府委員 労災の障害等級十四級ございますうちのごく軽微なものは、これは非常にわずかな年金を毎年もらってもしようがないので、一時金でやったほうがよかろうということは、どの方面からも御異論のないところでございますが、どの辺までを軽微として一時金とし、どの辺からを年金で補償するかという点につきましては非常に議論がございまして、今日の障害等級表は、そういう一時金と年金と二種類の補償方法があるのだということを前提としてつくったわけではない、どこで切りましても問題があるわけであります。十級までにすべきである、あるいは九級、八級にすべきである、七級にすべきである、いろいろ議論があったわけでございまして、審議会におきましては八級までというふうに一度結論が出ましたが、いろいろな関係で御指摘のごとき事情もございまして、七級までということにいたしたわけでございます。ただいまの障害等級表そっくりそのままで、この年金と一時金の二つの補償方法を併用することが、恒久的制度として合理的であるかどうかにつきましては問題があると存じます。したがいまして、ともかくも、障害補償の二つの大きな制度でございます厚生年金と労災の年金と、両方が食い違っておることもまずいことでございますので、厚生省と協力をいたしまして、両方の制度の障害等級表を、いまよりももっと両方がぴたりと合わさるように調整をする。それに従って等級の分け方もさらに合理的なものにする。それに伴って、またもちろん何日分という点につきましても検討が加えられるわけであります。八級のうちのわずかな部分を七級に上げるというのは、とりあえずの措置として出るのじゃないかと考えております。さらに、ここ一両年の間に障害等級表全般の検討をいたして、その結論が出ました場合には、さらに立法措置を講じて御審議を仰ぎたいというふうに考えておるわけであります。現在の状態そのままでは、若干の無理があることは御承知のとおりでありますが、これは早晩是正をいたしたいと考えておるわけでございます。
○滝井委員 等級表が非常にアンバランスがある点については、これはぜひ早急に専門的な学者の検討を経て、厚生、労働等にあるところの等級表をきちっとしてもらわなければならぬと思うのです。 その前に、一級から七級までが年金化されることによって、厚生年金は初めからずっともらっていきます。それから障害補償費のほうは、今度の障害年金のほうは、厚生年金の五十七・五を差し引いたものが併給されていくという形です。ところが、八級以下の一時金はどういうことになるかというと、この六年分の一時金はもらえることになるが、厚生年金は六年間は停止されてしまうのでしょう。ここを私は問題にしておる。それならば、六年のところもひとつ五十七・五を差し引いたものでもいいからしてください、そのかわり厚生年金もこの一時金は初めからもらってください、そういうことをやるのが理論的に筋が通る。それをやっていないのはおかしいじゃないかということなんです。だから私は、やはりこの点は修正してもらわなければいかぬと思うのですよ。そこだけ一時金を差別待遇しておいた上に、厚生年金の適用もストップするなんという理論は成り立たないですよ。七級と八級のたった一級の違いのところで、片や一部減らされるにしても厚生年金と併給される、片方は六年間は全然併給がないという片手落ちの制度は、こういう画期的な改正をやるときにはやってはいかぬと思う。これはわかるでしょう。 〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕
○石黒政府委員 身体障害に対する厚生年金保険の年金が出ます場合は、労災は必ず年金になるように今回仕組んでございます。したがいまして、こちらが一時金であるという場合に、厚年から年金が出るというふうにはならないように調整をいたしております。したがって、こちらの八級の一時金が出る場合に、厚年のほうが年金であって六年併給停止という事態は生じないようになっております。ただ、ごくわずかな点で等級表の食い違いがございまして、きわめてレアケースとしてそういうケースが出得るので、それは障害等級表全般の検討を待たずに早急に改めまして、八級から七級に上げるという措置を講じて、そういう事態が絶対に生じないようにしたいと思っております。
○滝井委員 そうしますと、八級については厚生年金の併給ができるように全部きちっとしてしまいます、こういうことでだいじょうぶですね。
○石黒政府委員 八級について厚年の併給がということではございませんで、私の説明がややこしくて、たいへんまずくて申しわけございませんが、厚年の年金が出るケースはうちの七級でほとんど全部カバーしてしまって、八級の一時金をもらう人が厚年の年金をもらうということは、きわめて少数のレアケース以外はない。したがって併給停止という事態は起こらない。そのきわめて少数の例外的ケースも、この法律が成立いたしましたならば早急に手当てして、なくすようにいたしたいと思っております。
○滝井委員 少数のものでも不公平があってはいかぬですから、ぜひそうしてもらって併給ができるようにしてもらいたい。 そうすると、休業補償費は、いままでは七日まで待期して八日から支給しておった。今度は、健康保険と同じように、三日待期して四日目からもらえますね。これは健康保険がそうなっておりますが、これは健康保険にならってこうやったのですか、何かほかに理論的根拠があったのですか。
○石黒政府委員 私どものほうといたしましては、健康保険にならうというよりは、むしろILO百二号条約の基準にならう。ほんとうならば、一日目から補償するのが理想でございますけれども、休業一日、二日というのは非常に多うございますから、直ちにこれをやるのは困難であるので、現在はやむを得ず最低限のところだけは、いわゆる足切りをするということで、ILOの最低限として認めておるところでやることにいたしたわけでございます。
○滝井委員 そうしますと、休業補償の給付は賃金日額の六〇%ですね。傷病手当も六〇%、失業保険も六〇%、ところが、公務員の共済は一〇〇%です。それから、いまあなたの言ったILOは三分の二の六七%ですね。そうすると、三日までは待期、四日からはILOにならったのなら、どうして一番大事なところをILOにならわぬの、ですか。
○石黒政府委員 先生のおっしゃいました三分の二というのはILO百二十一号条約で、百二号条約は五〇%と記憶いたしております。
○滝井委員 私は、百二号の精神から言って三分の二だから、六七%になると思うのだけれども——まあ、これはあとで調べてください。 次は、この五十七・五です。この、五十七・五というのは、どういう理論的な根拠から出たか。事業主の負担は四十二・五で国庫負担が一五%、だからそれを足して五十七・五を、厚生年金と労災の給付が併給になるときには引くことになるわけですね。一割五分の国庫負担を引くという理論はどうもおかしい。保険は、片や無過失賠償責任為に基づく経営者が、全額保険をメリットシステムで出している。厚生年金は、国の法律に基づいて、労使がそれぞれいままでで言えば千分の三十五、新しい法律で言えば千分の五十五を折半して出して、そうして国が厚生年金の給付をするときに一割五分を負担する、こういうシステムになっているわけでしょう。だから、一番最後になって給付をするときに、一割五分がくっついてくる形になるわけですね。こういう異なった制度の間の調整をやる場合に、一割五分の国庫負担を引いてしまうということはおかしいじゃないかということなんです。
○石黒政府委員 ただいまの御質問にお答えいたします前に、百二号条約のことを申し上げますが、百二号条約の六十七条の末尾において休業補償のことが規定してございます。この場合は、標準家族につきまして百分の五十というふうに定められております。第十一部の附表でございます。 それから厚年との調整の問題でございますが、こういう調整というような規定が必要でありますのは、厚生年金と労災保険との適用範囲がずれておるために生ずることでございます。全労働者が完全に再保険によってカバーされております場合には、こういった制度は不必要なものでございまして、その意味におきまして、最終的な完全な制度とは私ども考えておらないわけでございます。とりあえず五七・五%を差し引くという原案を作成いたしましたときには、御指摘のごとく使用者貧打分と国庫負担分を差し引くということでございます。使用者負担分が負担として同じ使用者にかぶさっておるということは申すまでもないことでございまして、国庫の分につきましては、現在現行の法律及びこの改正案に基づく年金が行なわれるのみで、現在の国庫負担は、御承知のごとく長期納付についてなされておりまして、これは打ち切り補償相当分を使い果たしたあとに出して補助するというたてまえでございますが、非常に高率でございまして、現在の長期給付の半額前後というものは国庫負担の金でまかなわれておるわけでございます。それほどの高率の国軍貧打がありますのに、厚年の国庫負担とダブって支給するということはやはり穏当ではあるまいということで、三十五年に導入されました五十七・五という算定方式を今回も一応援用することといたした次第でございます。
○滝井委員 そうしますと、今度千分の三十五の保険料率が千分の五十五になって、国庫負担が一割五分から一側にふえてくるということになった場合に、この理論を適用すれば、労働者はますます損をすることになるわけですね、引かれ方が多くなるわけですから。御存じのとおり、厚生年金もようやく一万円年金が実現をしたのだけれども、一万円もらうのははるかかなたでもらうのであって、現在の平均標準報酬が二万五千円でなければならぬ、そうして掛け金を二十年かけなければならぬというような人というものはほとんどいないわけですよ。いまの平均標準報酬は一万四、五千円ぐらいです。そうしますと、今度一時金であったものが年金化するということになれば、そんなにばく大な金をこれからもらうわけにはいかない。というのは、基礎的、理論的には、さいぜんから私が設例したように、滝井義高の十の労働能力が、ばっと手を切られて三だけ減った、その三だけ補てんしてそれを年金でくれるものだから、したがってこれも生活の保障にならぬ、年金も生活の保障にならぬというのに、障害給付のほうから厚生年金の五十七・五を差し引かれることになると、合わせても生活の保障にならぬわけです。そういたしますと、やはりこれは、そういうものを引かずに併給しなければならぬのじゃないかということになるわけです。一体ここらの理論をあなた方は検討してきたのかということです。将来はそれを併給する展望でも持っておるのかどうか。
○石黒政府委員 先ほど簡単にちょっと申し上げましたけれども、厚生年金における障害年金と労災の障害補償給付としての年金との関係というものは、現在両保険のカバレージを前提といたしますと、どうしても最終的な完全な解決というものは非常にむずかしいのじゃないか。将来の姿としてどうあるべきかということになりますと、これは理屈の上で割り切るのには二種数考えられるわけであります。 一つの割り切り方は、イギリス方式と申しますか、社会保障は社会保障として、純粋の社会保障として厚生年金的な給付を常に全額出す。その上に使用者負担の損害賠償として足す分が幾らかということを別途計算して、業務上の人たちには損害賠償を上積みで出す。その上積み額というのは、全部の人が必ず厚生年金をもらうわけですから、上積み額も、一定の率でもって調整とかなんとかがなしに上積みする。すなわちその額がどうなるかは別といたしまして、両方が調整なしに一〇〇%併給という形になります。 もう一つのやり方というのは、厚生年金が見るのはもっぱら業務外の障害である、業務上の障害というのは全部労災が見るのだ。これは健康保険と労災との関係のように、縦にすぱっと割ってしまう。その二つのやり方があろうかと考えます。 現在の厚生年金及び労災保険の今日までの発展の歴史、それに基づく既成事実を前提といたしますと、そのいずれの方式をとりましても、いま直ちにどちらかに割り切ることはできないことが現実である。したがって、厄年を底にしてそれに労災を上積みするけれども、労災からも若干足す、こういうかっこうをとっております。将来はいずれかの方向に割り切りたい。おそらく今日の形をとりますならば、イギリスの方式に近い形になるのじゃなかろうか。これは両方の保険財政の問題並びに全面適用の問題、すべてが片づかなければ最終的な割り切りはできない、こういうふうに考えております。
○滝井委員 私は本で読んでみましたが、あなたの言うように、生活保障部分は厚生年金なら厚生年金が見る、それから労災はその上積み分を労災の補償として見ていく、こういうイギリス方式と、それからすぱっと縦割りにして、健康保険と労災みたいに業務上の傷病と業務外の傷病と、二つすぱっと分ける方法がある。もう一つは、いま私が言うように、どちらも併給しなさいという方式がある。これを忘れちゃいかぬ。どちらもしなさいというのがもう一つある。もう一つは、そのイギリス方式と、それからそれぞれ分担をするものの中間形態というのが幾つかあるわけです。木を読んでみると四つくらいあるのですよ。中間のはややこしいから、やはり私は三つだと思うのです。完全併給というものを、あなた方ひとつ考えておいてもらわなければならぬ。というのは、日本では、御存じのように年金額は制度的に見てどれも少ないのですよ。だから、合わしてもなお少なくて、生活保護を受けている人がおるのです。それほど低いのですから、それを考えてすみやかに将来の制度的な方向を出してもらいたい。厚生年金の審議のときに実は私、質問をしたのです。そうしたら保険局では、最低生活を保障する部分については厚生年金で見ましょう、そうして災害補償の上積み部分として労災で見ていくという、イギリス方式ですか、そういうことがいいと思います——厚生省はそういう答弁です。それならば、それできちっとしてやれば、そこから国庫負担の整理が起こってくるだろうし、保険料率の整理が起こってくるだろうし、事務的にも非常に簡素化されてくる、こういう形になるのです。だから、そこらのきちっとした方針を早く出してやらないと、あいまいもこたるうちにこういう制度があっちこっちにできて同じようなことをやっておったのでは、非常に迷惑をするのは労働者です。実に事務が複雑ですよ。厚生年金の障害の手当をもらう手続、それから労災の手続、それは戸籍謄本をとったりして実にややこしいわけでしょう。それから、あなたのほうだって事務的にも、片や社会保険出張所でやるし、片やは基準監督署でやるというように、事業主は同じような書類をあっちこっち何回も出さなければならぬ。日本の経済活動にこういう各省割拠の弊が支障を与えていくわけです。そういう意味で、これはすみやかにやっていただく必要があると思うのです。
○石黒政府委員 前半の御質問でございますが、私、不勉強でございまして、学説が二種類に分かれておりますか四種類に分かれておりますか存じませんけれども、私が申し上げましたイギリス方式というのは、損害補償として支払う額は一定にしておいてそれはいつでも全部払う、すなわち完全併給方式というふうに考えておるわけであります。ただ、上積みが薄いか厚いかという問題があるわけでございますが、全労働者が障害の場合に必ず厚年をもらうならば、労災はその上積みを常に出す。したがって、その上積みから何も差っ引くなどという必要はないわけでございますので、両方完全併給方式というふうに考えて、イギリス方式が完全併給方式であるというふうに考えたわけであります。もちろん、その高さということにつきましては経済事情その他の問題があります。 それから、いろいろな保険がてんでんばらばらであるという御指摘は、私ども労働省からそういうことを申してはあるいは差しさわりがあるかもしれませんが、非常にばらばらであるという印象を持っております。今回の改正にあたりましても、各種保険をいろいろ調べましたけれども、非常にばらばらでありますために、労災との関係をきちんとするのに非常に苦労をいたした経験がございます。しかし、これはほかの保険を全部直すわけにまいりませんので、厚年の全面適用というようなことから始めまして、すみやかに何とかすっきりした制度にいたし、かつ徴収の窓口なんかは、特にできるだけ一本にするように努力いたしたいと考えております。そういう問題を全部ひっくるめまして、私どもとしましても、いまのままでいいと思っているわけではございません。いまの制度を前提とすればこのような案しかないけれども、将来はもっといい制度にいたしたいという趣旨で、今次の改正におきまして、一番終わりに、附則四十四条で全般的な改定の検討を行なって、その結果に基づいてすっきりした法律をつくれというような趣旨の規定をわざわざ設けた次第でございます。
○滝井委員 そうしますと、もとに返りますが、今度の改定で五十七・五を差し引くのが、それより以上のものを——国庫負担が一五%から二〇%になったし、事業主負担が四十になって、六十引かれることになって損になるわけですね。したがって、当然、これは法律の改正のときに、その分の厚生年金の改正に伴う修正というものは、政府はすなおにやるのですね。
○村上(茂)政府委員 先ほど来るる御意見があり、石黒部長から答弁がありましたように、この調整問題につきましては、附則第四十四条で将来の検討事項とされておるわけであります。したがいまして、すでに提出しております法案を直ちに六〇%減額に修正するかいなかという点については、ただいまのところ、政府としては六〇%減額の修正案を出す意思はないということを申し上げたいと思います。
○滝井委員 修正の意思がなくても、国会の意思としてすでに法律が通ったわけです。そしてここで、厚生大臣は政府を代表して国庫負担二割、それから保険料率は千分の五十八を五十五に下げることについては異議ありません、こうおっしゃったわけです。したがって、当然五十七・五は、いまの厚生年金法に基づいて五十七・五になっておるんだから、私もこれについては理論的な根拠が非常に薄弱でよくわからないんだけれども、とにかく法律が変わったことは事実なんだ。法律が変われば、変わったことに基づく修正をやらぬことには話にならぬ。ちょうど四月一日施行というのをいまになってやるんだから、五月一日施行に機械的に変えるのと同じですよ。全く法律が変わったら、前の法律が消えてなくなったら、今度新しい法律ができたらそれを根拠にしてあとから通す法律は変えていかなければ、国会としては非常に片手落ちになるわけです。これは政治的なものではない、全く機械的な、事務的なものとして処理しなければならぬ。
○村上(茂)政府委員 先ほど来いろいろ御質問のございました点は、法文の裏にひそみますところの一つの理論であり、計算方式でございますが、表面にあらわれました法文そのものは、五十七・五という数字ですべて尽くされておるわけでございまして、その裏の計算方式というのは法文の表面に出ておりませんので、五十七・五をいかにすべきかという問題として、一応技術的に考えられるかと存ずるのであります。そこで、五十七・五という減額率をとらえまして、それを六十にするかいなかという点につきましては、先ほど政府としては、あえて理論的な基礎が変わったものだから、法文そのものにあらわれた五十七・五という数字を直接直ちにいじるという考え方はないということを申し上げたのでございますが、私からはとりあえずその程度お答え申し上げておきます。
○石田国務大臣 いま基準局長が申しましたように、政府として修正するという意思はございませんが、国会で御意思が決定されるならば、それを尊重していく方針でございます。
○滝井委員 しかし、理論的に言って、こういうところは、政府として意思がないなんという言い方は通らぬのじゃないか。なぜならば、五十七・五という数字の基礎はどこから出たんですかと言ったら、それは厚生年金の千分の三十五を一〇〇として折半をすると、事業主負担は四十二・五になります。それから国庫負担が一割五分ついておりますから、一割五分を足すと五十七・五になります。裏も表もない。それがこの五十七・五というものの冷厳な数字的な基礎であります。その数字の基礎の十五が二十に法律的に変わりました、それから四十二・五が四十になりましたということになれば、足し算をしたら六十になりますよ、こういうことなんです。だから、それに伴う改正というものは当然やらなければならぬと思います。しかし、そのままやったのでは労働者は損になりますよ。ここから先が政治的になるわけで、ぼくはまだこれから先のことを尋ねておるわけじゃないんだ。だから、そういう事務的なところは、当然政府としてはやらなければならぬ責任と義務があるんじゃないか。それから先をどう取り扱うかということはわれわれの関知するところでない、こういう答弁ならいいのです。
○石黒政府委員 御指摘のごとく、純事務的に計算をいたしますと、すなわち、厚生年金保険法の改正が国会修正どおり成立した後にわれわれがこの法律を出したといたしますならば、五十七・五が六十ということになるはずでございます。ただ、私ども原案を出しておる立場から、五十七・五を引くのも多少気の毒な気がしながら出しておるわけでございまして、それを六十に国会で御修正いただきたいというふうにはお願いしたくない、これがわれわれの気持ちでございます。
○滝井委員 まあいいでしょう。理詰めで質問をしておるものですから、きわめてビジネスライクにやっておるわけで、政治的にはやっていないのです。だから、大臣には答弁を求めていない。 次は、この年金の受給資格者の範囲を制限して、年金受給資格のない者については一時金四百日分を支給しますね。この四百日分というのは、どういう理論的根拠から出ているのですか。
○石黒政府委員 従来の労災において補償いたしました被災労働者の平均家族数を調べましたところ、三・八人ということになっております。今回の改正案におきましては、遺族一人の場合は三〇%、以後一人につき五%ずつふえていって五〇%で頭打ち、こういう算式をとっておるわけです。そこで三・八人の家族の場合の遺族、これが理論上受け得る遺族年金の三年分という計算を原価計算いたしまして、そして二、三日分の端数がございますが、まるめて四百日というふうに計算をしたわけであります。
○滝井委員 そうすると、いままで千日分やっておったのを、三年分やるからということですが、そうすると三百日にしかならない。千日にどういう計算をしたら、これが四百日になるのですという数式をちょっと示してもらいたい。
○石黒政府委員 千日分に直接連結した算式はございません。遺族が一人の場合には三〇%、すなわち三百六十五日かける〇・三、これに一時金でございますから利息計算をするわけでございます。三百六十五日かける、遺族一人でございますから〇・三、これが一年分でございます。三年分にいたしますと、これにさらに三をかける。そうすると三百十何日かに相なる。それと同様の方式々もちまして、三・八の家族数に対応いたしましてその三年分、こういう計算が約四百日ということになります。
○滝井委員 その一人三〇%、ILOの最低基準は四〇%ですね、労災審議会は一人三〇%、いま一人加算が五%だと言っておったが、労災審議会は一人加算一〇%じゃなかったですか。それで頭打ち六〇%、こういうところもだいぶ切り下げられておるようですが、御存じのとおり、厚生年金では遺族の一番典型的な代表である妻については、四十歳以上でないといままでは遺族年金がもらえなかったのです。それを年齢を撤廃して、非常な前進をはかったわけです。こちらも幾ぶん前進をはかったのかもしれないけれども、もう少し出してもいいんじゃないか。遺族ですからね。御存じのとおり、国家に功労があったという軍人の公務扶助料というのは非常に上がってきていますね。しかもそれが毎年もらえるわけです。それで戦場には行かなかったけれども、いわゆる生産戦争に働いておった、そうしてそこで命をなくしたという人には、やはりもう少し、保守党としても労働省事務当局としても、考えてみる必要があるんじゃないか。ゆうべあれだけ無理をして、千五百億の金をはるか霧のかなたの地主に支給をするわけでしょう。現実に生産に寄与して、業務上の災害で命がなくなった人に四百日分ということも、しかも兄弟姉妹はだめだったんじゃないですか。ある程度制限しましたね。もとより遺族の範囲を狭めたでしょう。こういう点があるから、ILOの最低基準までくらいは持っていく必要があるんじゃないか、その三〇%をもう一〇%上げて、四〇%くらいにする必要があるんじゃないかという感じがしますがね。
○石黒政府委員 ILOにおきましては、子供二人を有する寡婦に対する年金を四〇%とせいというのが百二号です。それで、今回の改正原案におきましてはぴったりそれと合わしたということでございまして、われわれも少なくともILO百二号条約までは持っていきたいというふうには努力したつもりでございまして、かつかつILOの最低基準には合っております。
○滝井委員 かつかつILOに合っておればいいんですが、長期傷病給付の一種、二種の区別を撤廃して二百十九日ですか、いままで一種が二百日で二種が二百四十日だったんですね。結局一種の人はいいのですが、二種は日数から言うと二百四十日が二百十九日になるわけですから、損をすることになるわけですね。いままでは、二百四十日というのは薬代や通院費が入っていたわけですね。今度二百十九日というのは、それ全部を見てくれるわけですか。まあ見てくれるというふうに頭を縦に振っておるから、それにしても他のものを年金化して安定をさせようというのに、これだけが二百日と二百四十日の間ぐらいの二百十九日ということでは、やはりちょっと問題じゃないかという感じがするのです。というのは、私は、これを二百十九日で認めようとするならば、こういう長期の傷病というのはけい肺とかせき損ですから、脊髄骨折ですから、したがってこの六十を少なくとも八十ぐらいには上げる必要があるんじゃないか。賃金日額の八〇%、まあ一〇〇%と言いたいところだけれども、そうもいかぬでしょうから、つつましやかに謙虚な要求として八〇%ぐらいにする必要があるんじゃないか。私はやはり、ここ数年来あの箱根やその他に休んでいらっしゃるけい肺の患者の皆さん方が、たどたどしく手を動かしながらわれわれに幾度か切々訴える手紙をくれたわけです。今度は、われわれが何も言わなくたって、そういうものの賃金日額は当然八〇%になっておるだろうと私は期待しておったのです。はぐってみたらなっていないのです。そうしてスライドのほうも、二〇%を一〇%ぐらいにしたかと思ったら、これもしていないということになれば、なるほど年金化していいほうに向いたかもしれぬけれども、長期の傷病給付については、ほとんど前進してないと言っていいわけですよ。だから、これはわれわれとしては、少なくとも、範囲を限局してでもいいから、こういう長期傷病給付については六割を八割には絶対にしてもらいたい。これは私のほうの理事にもお願いしますけれども、これくらいのことをしてもらわなければ、実際にこの法案を簡単に通すわけにいかぬですよ。お互いにヒューマニズムを持っているんですから、しかもそれが何万人おるという数ではないのですから、けい肺とか脊髄損傷というものは非常に限られた数です、そういう人たちに二〇%のスライドをそのままにしておいて——私もここで何回か言った。もうここ三、四年、村上さんが局長になってから何回も言いましたよ。ところが、われわれが言っても六〇%のままだということでは、これは納得できないですよ。だから私は、これは絶対今度の修正をやる場合には八〇%にしてもらわなければ納得できない。きのうも、わざわざ手押し車に乗ってたくさんやってきましたよ。こういう陳情書を、滝井義高と書いて、そうして写真まで入れて、こうして褥瘡も出ている哀れな状態を入れてきているわけなんです。そこで、あなた方が一番望むところは一体どこですか——これはなけなしのさいふから出して、ずいぶんみんな金をかけておるわけですよ。そうすると、一番の願いは、私たちはこうたくさんしています、しかしもうこの段階にきて私どもの最後の一つの願いは、休業補償、長期傷病補償の第一種、第二種の給付率は平均賃金の一〇〇%の支給としていただきたい、これ一つなんです、こう言うわけなんです。しかし、それは一〇〇%は無理じゃないかな、まあぼくらが言える限界は、いままであなた方も八割は最低のお願いだと言っておったから、まあ八割くらいじゃないでしょうか、それでいいです、ぜひひとつ八割にしてくださいと切々と訴えて帰ったのです。われわれもやはりヒューマニズムを持っている政治家だしするから、それはそんなに多い数じゃないので、少なくともけい肺なりになってからの賃金というものはぐっと下がっておるわけです。下がっておるものの六割だから、聞いてみると七千円か八千円だと言うのです。それでは私はいかぬと思うのです。したがって、こういうところは労働省もひとつ目をつぶって八〇%にすべきだ。少なくともこれは八〇%にして、その人たちの賃金、いわゆるけい肺とかせき損とかいう非常に長期の傷病だけに限ってでもいいから、そこらを八〇%に計算をしてあげることが一番いい。これはいま附則の四十四条でどうせもう少し根本的な検討をおやりになると言うけれども、それまで待てないですよ。こういう褥瘡が出ておるとかして休んでおる人たちは待てないですから、ぜひひとつしてもらいたいと思うのですが、御意見どうですか。
○石黒政府委員 従来の長期給付の患者につきましては、そういう気の毒な実情を私も十二分に承知しておるつもりでございまして、法律の面のみならず、保険施設その他につきましてもこの患者を最優先として、非常に微力でございますけれども、できるだけの努力をいたしてまいっておるつもりでございます。今回の改正法におきましては、御指摘のごとく二百十九日というのが出たわけでありますが、従来の長期給付患者は、入院患者につきましては第二種で二百日ということになっておる。すなわち、三年たつ前は賃金日額の六〇%の平均賃金を受けておったわけでございます。三年たちますと、二百日に落ちて五二、三%でございますが、だいぶ落ちるわけでございます。これを休業補償と同率に上げたわけでございます。休業補償との均衡上、この六〇%という数字を動かしますことは非常に困難でございます。ただ、御指摘のように、特にけい肺患者のような人たちは、管理一、二、三と順次進んできて、最後に四になっておる。その間に賃金が低くなっておるので、普通どおりに、管理四の発病前三カ月で計算されると非常に損である。そのために非常な低賃金の人が出ておるということは、私どもも十分認識いたしております。したがいまして、発病時といいますか、管理二になったときの時点がはっきりしておる人につきましては、その時点にさかのぼって計算をし直すようにという措置を昨年来講じております。今後におきましてもこの方針はさらに徹底をいたしたい。また、そのほかの特別に気の毒な方につきましては、基準法どおりの平均賃金を基礎として給付日額をきめますのは非常に無理である、非常に気の毒過ぎるという場合につきましては、その算定方式に特例を加えまして、できる限り救済をはかりたいというふうに考えておる次第でございます。
○滝井委員 平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが、著しく不適当であると認められた場合にやることになるわけです。その場合だって、あなた方が自由にやるのじゃなくて、やはりこれは人権に関係することなんだから、一万五千円なら一万五千円の最低賃金を法律に書いておく必要がある。あなた方のほうにすれば、大蔵省の制約を受けていつも不安定になるわけです。だから、きちっと一万五千円の最低賃金を、炭坑一万六千円なら一万六千円ときめて、今後、春闘の共闘会議との交渉でも石田さんが、最低賃金を全国一律のものをきめたいと言っておるのですから、こういうものから先にやるべきだと思うのです。そうしてまず安心させて、力関係で風のまにまにゆれるのではなくて、一万五千円なら一万五千円の最低は、せき損なりけい肺の管理四区分の者には上げますよという形を法律でつくってやる必要がある。そうして物価が上がったら、今度それを法律で直していったらいいんです。一年目でも二年目でも、毎年国会はあるんだから、そのくらいの配慮が必要だと思う。昔のはるかかなたの賃金を基礎にして、それを管理二のところに持っていって直してやると言ったって、管理二のところが、非常にインフレが高進したときは安いものになってしまうのです。だから、そういう点では、やはりこの際は、根本的な改定をやるまでは当分これらのものについてだけでも八割なら八割ということをここにきめておく必要がある。そうでなければ定率、定額を法律に書くか……。私はこれは党に帰って言いますよ。これだけやってもらわぬことには、率直に言って絶対通されぬですよ。もうきのうごろからみんな来て言われた。おそらく参議院だってそうですよ。だから、これは新しい折衝の項目になるかもしれませんけれども、これをあなた方がお通しになろうとすれば、絶対にやってもらわなければいかぬです。これは大臣が来たら大臣に言いたいところですが、来ていないですから、私のほうの理事にも私から申し上げます。 次に、農業のことなんです。この農業者の労災適用の問題について、ちょっと時間がないですから先に触れますが、特別加入の制度ができて、「労働省令で定める種類の事業を労働者を使用しないで行なうことを常態とする者」という、この一人親方、これに農業が入るわけですね。そうでしょう。 〔澁谷委員長代理退席、小富山委員長代理着席〕
○石黒政府委員 農業につきましては、一号に入るもの、三号に入るもの、五号に入るもの、いろいる出てくるのです。
○滝井委員 そうすると、一号の「労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業(労働省令で定める事業を除く。)の事業主で労災保険事務組合に労災保険事務の処理を委託するもの」、これにも入る。中小規模事業主ですね。そこでこの範囲や何かを少し詳しくやらなければならぬが、時間がないから、先に大事なところを言います。農業労働に起因する病気と災害とは、大ざっぱに言って五つに分けられる。一つは、農耕地の不潔に由来するものですね。一つは、農民の取り扱う動植物に起因するもの。一つは、過労及び特殊な作業姿勢に起因するもの。一つは、農業外傷。一つは、農薬中毒。淡谷さんが、この特殊な作業姿勢というか、自動ノコの白ろう病を取り上げた。それから農薬のことも言っておった。この五つに分けられると思うのですが、農耕地が不潔だというものでは、たとえばいま日本の農民に一番多い回虫病、それから十二指腸虫病、貧血が起こってどうきがして、昔で言えば肥たごをかつげなくなるというもの、こういうものですね。これは農耕地の不潔に起因するものです。それから動植物を取り扱うものとして豚の丹毒ですね。それから放線菌症、アクチノミコーゼ、それから炭疽病なんかありますね。あるいはこういう新芽の出るときに行って、農園で働いているとかぶれますね。いわゆる皮膚炎が起こってきますね。こういう農民が取り扱う動植物によって起こるものがあるのですね。それから過労や作業姿勢というのは、これは腰椎の分離症があるわけですね。こういうのは、一つの農業の姿勢その他から出てくるものです。それから農業の外傷が、あなた方の言ういわゆる農業の機械化に伴って出てくるわけですね。耕うん機やトラックに巻き込まれるなんというのがうんとあるわけです。それから、そういう中には妊娠中の主婦——いま三ちゃん農業、じいちゃん、ばあちゃん、かあちゃんの農業が、最近は、じいちゃんとばあちゃんが年をとって、かあちゃんが主体になろうとしている。というと流産が起こってくる。いま出かせぎ地帯で子供の生まれる時期が集中しております。それは御主人が出かけていって、帰ってくる時期が大体きまっておりますから、妊娠する時期も同じで、つまり子供が生まれる時期が一定化しているわけです。それがたまたま農繁期にぶつかると流産が起こってくる。それが耕うん機の振動による、あれは耕うん機の上に乗って行ったり来たりしますから……。それから農薬の中継が、有機の燐剤から抗生物質に至るまで非常にたくさんある。こういうようなものを、今度の中に一体系統的に入れるということになるのかということが一つ。それからいま一つは、労働基準法施行規則の三十五条、「法第七十五条第二項の規定による業務上の疾病は、次に掲げるものとする。」という、いわゆる職業病的なものですね、ここにたくさん書いてある。そうしてこの前、この三十五条の十一の「さく岩機、鋲打機等の使用により身体に著しい振動を与える業務に困る神経炎その他の疾病」という場合で、白ろう病というのがこの中に入るじゃないかと言って淡谷さんが質問したんですね。農村医学会等の意見をあれしてみますと、いま私が言った五つの分類の中から、労働基準法施行規則第三十五条のこのリストの中に入れなければならぬものがたくさんあるわけですよ。当然そういうものを入れておいてもらわぬと、いま言ったように、特別加入の一号と三号があると言われたので、私は三号だけかと思ったら一号にも入るんだ、こうおっしゃいますと、このリストをきちっとしておいてもらわぬと、なかなか議論の起こるところになるわけですね。どういうものを適用するかということがわからぬことになるわけです。ですから、そういう点を一体きちっとできるんでしょうねということです。その二点についてひとつ……。
○村上(茂)政府委員 御指摘のように、農業につきましては、特別加入方式を採用するについてはいろいろ問題があろうかと存じます。特別加入の方式につきましても、一口に農業と申しますけれども、果樹栽培のような場合と水稲の栽培あるいは牧畜といったようないろいろな形態があるわけでございまして、そういった作業形態に即応しまして、一号を適用するのか、三号か、五号かということについてもそれぞれの配慮をしなければならぬというふうに考えておるわけであります。たとえば果樹園等につきまして、労働者を雇って仕事をするというような場合もございます。それから一人でやっておる自営農民の場合もございます。さまざまございますので、先ほど労災部長から申し上げましたように、第一号の場合もあろうし、第三号、第五号の場合もあろう、こういうふうに申しておるわけであります。それを具体的に労働省令でどう定めるかという点につきましては、まだ原案を固めておりません。農林省及び農業関係団体ともよく御連絡を申し上げまして、具体的な省令制定の際に定めたいと考えます。 ところで、業務上疾病等の問題でありますが、私どもは、基本的には、本来の労災補償の問題におきましては、補償制度に先行して安全衛生対策を事業主に強く要望し、法定いたしまして、その違反については罰則を適用するという措置を講じておるのであります。何ら予防措置対策を講ぜずして、ただ病になったあるいは災害を起こしたということが、本来の労災補償との関連においてどのように考えらるべきかということが問題になるわけでありまして、その点、むしろ一般労働者より農民のほうが厚きに過ぎるという問題が起きますれば、そこに若干の均衡上の問題があろうかと思われます。私どもとしましては、農林省並びに関係団体とも十分御相談いたしまして、まずその災害の予防について合理的な方策が考えられ得るかどうかという、一般労働者と比較いたしましてバランスを失しないようにこの点をまず考えたい。それから当然に補償の場合の補償事由でありますが、御承知のように一般的な理論としましては、業務上とはどういうことかという点について、業務起因性、業務遂行性という二つの条件を業務上概念の要件といたしております。農業の場合には業務という概念をどのように考えるかという問題につきましては、御指摘のように非常にむずかしい問題がございますので、これも農林省及び関係団体とよく御相談して定めたいと思います。 ところで、労働基準法施行規則三十五条に定める業務上疾病との関連でございます。この規定では三十八号まで業務上の疾病を列挙いたしておりますので、ほとんどがこれに入るであろう。たとえば動物を扱って炭疽病になる、あるいは丹毒になるという場合ですと、三十六号に「動物又はその屍体」云々、「その他古物の取扱による炭疽病、丹毒、ペスト及び痘瘡」といったようなのがございます。そういった規定の活用をはかり、なおかつ規定の明確でないものにつきましては、第三十七号で「中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の指定する疾病」といったような措置も講ぜられますので、この三十五条の規定の活用によって対処し得ると思います。ただ、腰椎症のごとき、一般労働者におきましても職業病とせずに、個別なケースについて業務上因果関係がどの程度に認められ得るやいなやという立場から、個別的に判断しておるものにつきましては、農業においてもそれと同様な原則を用いざるを得ないのではないかと考えておる次第でございまして、いずれにしましても、そういった特別加入の具体的方法、業務の範囲の確定、疾病等についての範囲等につきましては、農林省及び関係団体とよく相談をいたしまして決定させていただきたいと思います。ただ、基本的な点におきましては、本来の労災保険の適用を受ける一般労働者よりむしろ厚きに過ぎるというようなことになりますと、これはいろいろ問題があろうかと思いますので、ミニマム、そういう点につきましては、やはり均衡上適切な配慮を払わなければならないと考えておる次第でございます。
○滝井委員 たいがいこれに入ると言うけれども、たとえば——全くたとえばですが、農耕地の不潔に起因するということになりますと、たとえば「湿潤地における業務に困るワイル氏病」、これは三十五条の三十四、それから三十五の「屋外労働に起因する恙虫病」というのがあります。ところが十二指腸虫というのはないでしょう。これは明らかに瞳外労働に起因する恙虫病と同じようなものですが、ないわけです。それから、湿潤地における業務によるワイル氏病と、昨日ここで通しました寄生虫病予防法の一部を改正する法律の日本住血吸虫病は同じようなものであるので、入れなければいかぬのに入ってないわけです。今度は新たに農業をやろうとすれば、当然そういうようなものもやはり入れなければいかぬわけです。この日本住血吸虫病をするために、国は予算を出してコンクリートのみぞをつくらしているわけでしょう。予防的にやっているわけです。しかし、それにもかかわらずそういう湿潤地において農業をやっているうちに、いつの間にか日本住血吸虫病にかかってしまっておるという場合だってあるわけです。だから、そこらは、私は、どれを入れてくれ、これを入れてくれということを言って、確約をとろうとは思いません。しかし、今度農業に労災を適用されようとすれば、そういう五つ、六つの項目の中で該当するものを、当然この三十五条の業務上の疾病のリストの中に入れてもらわなければならぬ。それは、いまのように農林省等を中心とする関係各省と協議をして入れると言うから、ひとつすみやかにそうやってください。これはいいですね。
○村上(茂)政府委員 そういった点についても十分検討してみたいと思います。ただ、それは規則改正そのものでなくて、先ほども申しましたようにその他いろいろありましょうが、第三十七号で「前各号の外中央労働基準審議会の議を経て労働大臣の指定する疾病」といったような方法がありますので、立法技術的な問題としては格別の措置は必要なかろうと思います。なかろうと思いますが、ただ、いわゆる業務上も関連するという因果関係等につきましては、十分医学的にも究明をする必要があるであろうと思います。 なお、適用範囲の拡大、あるいは補償の対象となる疾病の拡大ということは、一面的に見まするといいんですが、他面保険料の負担という問題もあるわけでございまして、農林省及び関係団体と話し合いをします場合には、やはりそういった全体の中におきましてどのように判断すべきかという考慮もいたさなければならないと考えておる次第でございます。
○滝井委員 労働基準法の施行規則で明白に書かなくったって、「その他業務に起因することの明かな疾病」というようなことで入れていただけるということになれば、運用上でできればちっともかまわぬわけです。しかし、最近は非常に農薬が多岐にわたってきたものだから、必ずしもこの規則だけの運用ではいかぬのが出てくるのじゃないかという感じがするのです。したがって、規則の改正を必要とする場合にはしてもらうし、運用上でできるものはぜひひとつやっていただきたい、こういうことです。 大臣がいらっしゃらないですが、いまの局長の答弁をもって、そういうことでやっていただけるものと期待をして、次は、療養補償費千円未満は、いままでは事業主負担であったですね。今度は全部労災保険で見るのですね。そうすると、いままでよりか事業主の負担が軽くなる。で、千円以下のものは相当あると思いますが、いままで大体額にしてどの程度あったと推定されますか。
○石黒政府委員 千円未満の療養費につきまして正確な統計はございませんけれども、推計によりますると年に約六十万件、金額にして三億円種皮でございます。
○滝井委員 そうすると、六十万件、三億円程度を事業主が負担しておった。その中にはずいぶん事業主が払わないのがあるのですが、そういうのを調べたことがありますか。
○石黒政府委員 払わないというのに二種類ございまして、特に千円未満の場合多いのは、労働者は医者のところに行って直してもらった、そうしてその会社の労災指定医が、これはごく軽い傷であったから五百円で済んだというので事業主に五百円の請求書を送ったけれども、払ってくれない、取りに行けば足代だけで損しちゃうというようなことで、ほうりっぱなしになっておる件数は非常にたくさんあるという話を、しばしば私ども聞かされておるわけでございます。正確に何件未払いというようなことは把握はいたしておりません。
○滝井委員 いま言ったように、千円未満ですから五百円とか二百円とかいう件数が、一人の事業主だけでなくて、二人、三人の事業主と重ねてやるけれども取れないというのはざらなんです。それで今度こういう改正をしたと思いますが、その場合の事務的な処理というのはどういうことになるのですか。いままでと同様に労災の請求書を、滝井義高なら滝井義高一件について百円なら百円、こういうように一件一件請求書をきちっと出すようなことになるのですか。
○石黒政府委員 もちろん一件一件につきまして請求書を出していただくわけでございますが、その請求の書式、様式等につきましては、役所のほうも、こまかいのであまり精力を使いたくございませんので、できるだけ簡単に、お互いに楽にいくようなふうにいたしたいということで研究いたしております。
○滝井委員 そうしますと、健康保険でいまの九・五%が問題になっておりますけれども、九・五%の医療費のアップがあった。中央社会保険医療協議会の昨年の四月十八日の答申を見ますと、これは緊急是正ですね。恒久的な是正についてはなお今後検討する。その検討ができずに、いま緊急是正のままで、その緊急是正の一部も宙に浮いた形できておるわけです。そうすると、一体労災の診療というものはどういう形で、どういうルールできめられておるのか。労災の診療報酬の額といいますか、それはどういうルールできめられておるのですか。
○石黒政府委員 労災保険は、必要な場合に必要な治療を行なうという原則で、大体発足当初におきましてはいわゆる慣行料金によったわけでございます。その慣行料金を幾らにするかということは、各都道府県労働基準局長が労災保険指定医との間で取りきめておるわけであります。ところが、いわゆる慣行料金と申すものがその後急速に減りまして、自費患者がほとんどなくなってきて、全部が健保その他の公費患者であるということになりましたために、原則的に慣行料金によることができなくなりましたので、原則といたしましては健保の点数によるというふうな方針を全国に示しておりまして、各都道府県基準局長は、その方針で指定医に相談をしておるわけでございます。ただ、点数だけ健保と同様ではいろいろな点で多少問題がございますので、現在のところ、一点当たりの単価は十一円五十銭というふうに原則的にいたしておるわけでございます。前述の緊急是正による点数の改定によりまして、労災のほうもその分は自動的に上がっておるわけでございます。
○滝井委員 そうしますと、いま問題になっている四つの組合については、労災が起こった場合は九・二五のほうは引くことになるのですか。
○石黒政府委員 この点は、実は私どものほうもたいへん弱っておるわけでございますが、法律的に申しますと、あれは健康保険組合が当事者となった訴訟に対する仮処分でございます。これは健康保険に関して、しかもその四組合に関するものでございますので、当然に労災の点数まで、かりにあの四組合に所属する同じ労働者が医者にかかりましても、労災でかかる場合と健保でかかる場合と、健保のほうが仮処分の効力が発しましても労災が自動的にとまる、九・五が下がるという意味合いじゃなかろうと思っておりますが、非常にむずかしい問題でございますし、われわれのほうの診療費は、ただいまの状態は一月おくれて請求が出てまいるわけでございますので、目下研究中という問題でございます。
○滝井委員 同じ組合員で九・五のアップをしておるので、健康保険に準ずるという、準じたほうがもとの料金だと、こう考えると、準じたほうがもとの料金に返るというのが理論的なあれですね。ところが、いまあなたの言うように、四組合だからということで、しかもそれは健康保険だからということになると、健康保険はいよいよへこんでしまうわけですね。そうすると準ずべき根拠がなくなってしまうわけです。きょうは保険局長はいないので、保険局長にこの次に来てもらう、これだけは、委員長お願いをしておきます。 そうしますと、いま一点単価十円のところを十一円五十銭、これは全国的にそういう形になっておるのですか、それとも地域によっては十一円五十銭が十二円五十銭になったり、十三円五十銭になっておるところもあるのですか。
○石黒政府委員 それは、法律的には、都道府県基準局長が当該都道府県の指定医と取りきめることに相なっておるわけでございます。私どものほうの方針といたしましては、全国十一円五十銭ということを基準といたしております。若干の都道府県におきまして、そのとおりになっておらない点が、少数ではございますがございます。
○滝井委員 ひとつこれをあとでもう一回資料として、各都道府県の料金の一覧表を出していただきたいと思います。これはいま保険局長が来ておりませんから、次会に譲りたいと思うのです。 それから健康保険においては、あるいは社会保険と言ったほうがいいか知らないが、社会保険においてはその経費を七二%に見て、所得を二八%に見ることは御存じのとおりです。ところが、労災は自由診療で取り扱われてきておるわけです。したがって、十一円五十銭と一円五十銭高くしても、実質的に労災は所得を七〇とか六〇に見られてしまうわけですね。ちょうどいまの社会保険と逆に見られる。社会保険は二八%を所得と見て、七二%を経費と見るのですが、経費を二八と見て、七〇とか七二を所得と見るわけです。そうしますと、十一円五十銭で一円五十銭高く取って、あなたの言うように労働能力の再生産のために適正な医療を考えてくれる、いわゆる自由診療と同じだ、慣行料金によるのだ、こう言っても、それが健保より低くなる情勢が出てきているわけですね、税というものを考えれば。この問題について、一体労働省としては国税庁とどういう話し合いをしておるのか。
○石黒政府委員 国税庁とは機会ありますごとに健保並みにしてもらいたいという話をいたしておりますが、たてまえといたしまして、法律にもちろん単価等が定められておるものでもございませんので、いままでその交渉は成果を得ておらないわけでございます。今回法律も変わりましたことでございますので、さらに続けて、ともかく健保と全く同じになるか、どこまでまいりますか、やってみなければ相手のあることでございますからわかりませんが、引き続きできる限りの努力をいたしたい。 それから、先ほどの健保料金の点でございます。四組合の仮処分との関連の問題でございますが、私、若干考え違いをいたしておりました。現在の労災の医療費は、医師会もしくは指定医師会と都道府県基準局長とが協定をつくっておる。これは中表によるとか乙表によるとかいう書き方になっておる。特定の健保組合がどの表によるかということは全く関係なしにやっておりますので、甲表、乙表それ自体が変わらない限りはよろしいのではないかと考えておりますが、なお続けて研究してみたいと思っております。
○滝井委員 甲表によろうが乙表によろうが、健康保険は甲表を選ぶか乙表を選ぶか医者の自由ですから、それに甲表の点数に十円をかけたものが診療報酬の点数になるとか、乙表の診療報酬になるということは変わらないわけです。それに準じて、甲表をとる人は十一円五十銭をかければ労災のお金になるでしょう。そうしますと、労災というものが一円五十銭高かったがゆえに、それを自由診療として、他の社会保険と区別をして税を取られるというところに問題があると私は言っておるのです。そこで、もし労災保険を非常に公のものとして、年金を——あなたのいま法律が変わったという、年金化していく、そのほかに医療の面は千円以下を保険が見るということになっただけで、他には変化はないでしょう。他に変化ないとすれば、国税庁に折衝してもそういままでと変わったことはない。ただ、年金化したからしてくれという理論だけでは弱いと思うのですが、何かほかに理論をお持ちですか。
○村上(茂)政府委員 幾つかの問題がございますから、私からお答えいたします。 健康保険におけるあの問題は、労災では現に問題になっておることを聞かないのです。事柄の本質は、つまり指定医と地方の確率局長との協定によってきまるのでありますから、大臣告示であるとか、そういうものは根本的には波及しないのでありまして、料金はそのようにして個別的に協定しておると同時に、払う場合においても個別に処理をしておるのでありまして、現在厚生省における行政措置と関連して、労災で指定医が問題にしておるという話は寡聞にして私どもは承知しておらないのであります。かつ、現在の制度上から、そう直接的に直ちにはね返るかどうかという点については、厚生省の場合と若干事情が違うのではなかろうかというふうに存じております。 それから、いまの国税その他の税の必要経費の算定の問題であります。これはもう私が労災補償部長をしておりましたときから国税庁に折衝いたしまして、通達で必要経費の算定をある程度考慮していただいたのであります。ただ、理論的には、一方において自由診療ないしは慣行料金制度を主張せられ、健保と多少違った面を見ろという御主張が指定医のほうからあるわけです。税金のほうになりますと、今度は健保並みにしろ、こういう実は論理的にやや私どもが関係官庁に折衝します場合につらい面もあるわけでありまして、したがって全国一律ではなくて、比較的健保の制度に近似しておるものについて、必要経費の算定については健康保険に準じて扱ってもらいたいというふうに従来措置してまいったわけであります。したがって、その措置も全国一律というよりも、むしろそういった現行の料金の協定方式と相関連せしめまして、さらに一段と努力をいたしたいという趣旨でございまして、年金制度の採用とは直接関係はありません。従来からの要請にこたえまして、一段と努力いたしたいというふうに申し上げたいと存じます。
○滝井委員 そうすると、法律が変わったというのは石黒さんの勇み足であって、法律が変わったというわけではないんだといういまの基準局長の答弁になるわけです。石黒さんの答弁とちょっと食い違った。 それから、指定医と基準局長とが協定を結んでおるのであって、四組合の九・五がどうなろうと、それは関係がないと、こうおっしゃる。しかし、さいぜんの答弁では健康保険に準ずるんだ、そこで健康保険が九。五上げたんだから、当然労災も九・五上げました、こういうことでしょう。そうすると、四組合は健康保険にならないわけですよ、もとに返ってしまったんだから。そうすると、四組合の労災を九・五上げてもいいですかと、こういうことになってくる。そこにちょっとひっかかるところが出てくるんじゃないか。法律的には、あの決定というものは四組合だけだという感じはするけれども、行政事件訴訟法三十二条でこれは第三者に及ぶということが書いてあります。厚生省は及ばぬのだと言うけれども、わが党はみんな、成田書記長以下及ぶんだと主張している。そこらに解釈の食い違いがある。またこの問題はこの次——きょう保険局長に来てもらいたいと思ったが、来ておらぬからいいとして、いまの内簡通達で必要経費を差し引くということは、国税庁と了解の上でそういう形が行なわれておるわけですか。まだわれわれは寡聞にしてそのことを聞かないわけですよ。
○村上(茂)政府委員 私がお答え申しましたのは、もう六、七年前のことでございますが、その際にも、事柄の性質上料金の決定が全国一律でありませんから、したがって必要経費の算定も全国一律に行なうには適しない。 〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕 それぞれの国税局の管内事情において措置するということで、含みのある発表であったと記憶いたしております。その内簡は、外部に公表しない税務職員の取り扱い基準であるから、そのように処置してもらいたいということで、当時は公表いたさなかったものでございます。そのような経過をたどってきたわけでございますが、ただ、都道府県の中には個別問題が生じておるということは重々承知いたしておりますので、先ほど御答弁申し上げましたように、さらに努力したいと考えております。 なお、本法案の改正と関連して一段と努力するという点について、労災補償部長の勇み足かどうかという問題がございましたが、規定の改正としては、従来は療養補償は補償費の支給と療養の給付と並列的に扱っておりましたが、今度の改正法案では療養給付が原則でありまして、療養費の支給というのが従来のような扱いではなくなった。むしろ療養の給付が中心であるという考えがとられましたために、それとの関連においてこの問題の取り上げようもあるであろうという気持ちを労災部長が申し上げたのでありまして、勇み足というふうなおしかりはいただかぬように、よろしくお願い申し上げます。
○滝井委員 いまの点は、保険局長いらっしゃらぬからこれでやめておきます。 それで大臣がいらっしゃったから二点だけ賛同してやめますが、今度の改正の十二条の二で、平均賃金に相当する額を給付基礎日額とすることが苦しく不適当であるとするときは、労働省令で定めることになる。すなわち、平均賃金日額の六割というものが非常に不当のときは、労働省で定めることになるわけですね。それで私は、さいぜんからるる両者にあなたのいないときに質問をしておるのは、脊髄損傷、けい肺という人たちが先日からもう何回もいらっしゃって、われわれは六割の賃金をもらっている、これではとても食っていけません、六千円か七千円しかないんだ、そこでやむなく生活保護を受けなければならぬ、こういうことでは困ります、幸い今度の改正だからこれを一〇〇%にしてくれと、こう言う。しかし、それはちょっと無理でしょう、まあ、そこらは八割ぐらいじゃないでしょうかと、こう言っているわけです。ところが、幸い今度の条文の中に、「著しく不適当であるときは、」という労働省、あなたの権限で定めることができるわけです。そこで、私たちも、ほんとうはそういうものについては八割にするという修正をしたいわけです。これはもう一ぺん努力してもらいたいのですが、しかしできないとすれば、ここで最低額はこのくらいにするというくらいのことを言ってもらわないと、箱根や九州の労災病院の皆さん方にわれわれは報告のしようがない。われわれは、できれば一万五千円とか八割とかいう数字を入れたいわけです。ところが、ここでは非常にあいまいもことしておる。あいまいもこでは人権に関係する問題、今日の生活の問題です。なるほど附則の四十四条では、将来はバラ色の夢を与えますと言っておるが、将来ではない。いまのいま、生きていくためには何とかしなければならぬという人がたくさんおる。いまのいま生きていかなければならぬ人に、生き抜こうとしておる人たちのために、十二条の二というものは一体どういう考え方を持っておるのか。
○石田国務大臣 これは、その人が生活をしていくに足りるということが基本であります。したがって、最低賃金とかあるいは失業保険の給付額とか、そういうようなものを参考にし、あるいはその人の生活実態等も参考にして、そういうたてまえで御趣旨の点を尊重しつつ検討をいたしたい、こう考えておる次第であります。
○滝井委員 そうしますと、明白な額がなかなか出てこないわけですね。それではちょっとわれわれ不満ですが、これは理事さんとも相談をして数字を入れてもらわなければならぬ。今度の改正で一番の主眼点はここです。われわれはここ数年来、こうしてなけなしのさいふの中からはたいて、たくさんの陳情書をもらっておる。一番のおもなのは、日額の六割というものをどうするか、ここになっています。いま一つは、保険料の定め方です。いままでは過去五年の災害率を三年にしたわけです。これは保険給付に要する費用の予想額とか、将来にわたって財政の均衡を保つことができるというようなことを考慮に入れて、五年を三年に修正したようにあるのですが、三年にしたほうが保険料率がよけいに取れて財政に寄与することになるのか、五年にしたほうがよけいに取れて財政に寄与することになるのか、どちらですか。
○石黒政府委員 三年か五年につきましては、五年を三年に縮めましたのは、あまり昔の災害の人を引っぱっておきますと、ことし一生懸命災害防止に努力しても、その響き方がごくわずかであるということで、災害防止意欲をやや減退させるきらいがあるから三年にしたということでございまして、どっちかと申しますと、平均災害率でもって、こっちの給付費を割るわけでございまして、その取る金は同じでございます。ただ、どの事業主にいくかという基礎が変わるだけでございまして、要するに、保険給付に要する金は、保険料として全体で取るわけでありますから変わりはございません。
○滝井委員 保険局長に対する質問だけを残して終わります。
○松澤委員長 古川兼光君。
○吉川(兼)委員 このたびの労災法の改正は、第一次、第二次、第三次に分けて逐次施行することになっておるようでありますが、私の質疑もその順に従い、三つに分けて試みることにいたしたいと思います。 まず、適用範囲についてでございますが、政府は、昨年ごろは全産業、全労働者に対して全面的に適用するようなことを打ち出しておったように思いますが、そのような構想がこのたびの改正案ではくずれておるようであります。それはどういう理由に基づくものでございますか。
○石田国務大臣 政府といたしましては、答申の趣旨にも沿い、またこの労災保険の本来の目的から申しましても、いまお説のように全産業、全労働者に適用すべきものだと思うのであります。しかしながら、事務的な準備、その実施のためにいろいろな技術的、事務的な準備が非常に手間がかかります。そこで、二年という期限を切ってその準備を急ぎまして実行をいたしたい、こう考えておる次第であります。
○吉川(兼)委員 その二年以内に必要な措置をとるということは、それは立法措置を意味するものでありますかどうかお伺いしたい。 それからもう一つは、政令によって行なうというところの適用範囲の拡大というものを、ひとつ具体的にお示しいただければ幸いだと思います。
○石黒政府委員 全面適用を改正いたします際には、あらためて立法措置を考えたいと思っております。 それから、政令による拡大につきましては、今後労災保険審議会と御相談の上、逐次政令改正の措置をとりたいと考えておりますが、とりあえずのところは、今日製造業のうち、使用動力のうち三馬力以上のものは全部、労働者数のいかんにかかわらず適用になる、特に危険業種については、二馬力以上に適用する、こういうことになっておるわけでございます。これをとりあえず、全部について二馬力程度以上というふうに改めることは、なるべく早くいたしたいというふうに考えております。それを第一段階といたしまして、さらに逐次、今後二年の間に政令の範囲を拡大いたしたいと思います。
○吉川(兼)委員 次は、保険関係の成立についてお尋ねいたします。これについては、届け出制と政府の確認制度等を設けているようでありますが、政府が確認しなければ保険関係というものは成立しない、こういう場合もあり得るのでしょうか。
○石黒政府委員 ここに申します確認というものは、事業主及び政府双方にとりまして関係をはっきりしておくという純粋の確認でございまして、創設的なものではございません。したがいまして、強制適用事業であるものが、事業主がうっかりして、事業をつくって動いていながら一年間ほうっておいて、一年目に見つかって監督署から注意を受けたという場合に政府が確認をするわけでございますが、これはその一年前にさかのぼって、この日から強制適用事業になったんだということを確認するわけでございます。確認の手落ちのために保険給付がもらえないということはございません。
○吉川(兼)委員 それでは、幾段階かにわたります請負事業の場合に、元請人と適用事業主との取り扱いまする、労働省令で定める事業、これは建設業のほかにどういうものを予定しておるか伺いたい。
○石黒政府委員 ただいまのところは建設業を予定いたしておりまして、そのほかのものについては、さらにこまかく検討いたしたいと思います。
○吉川(兼)委員 建設業のほかに、たとえば造船業などもあると思うのですが、これはまだ研究の段階ですか。
○石黒政府委員 造船業につきましては、これはやる仕事が最近非常に多角化いたしまして、いろいろなことをやっておりますので、造船業と簡単につかみかねる点がありますので、いましばらく検討いたしたいと思います。
○吉川(兼)委員 今度は新たに給付基礎日額というものを用うるようでありますが、その理由はどこにあるのでありますか。
○石黒政府委員 今回の法律で書いてございますように、平均賃金によることが原則でございますけれども、例外的な場合は、平均賃金を手直ししたものを、たとえば休業補償あるいは年金の基礎にいたすわけでございます。平均賃金ということばを使いますとまぎらわしいために、給付基礎日額ということばをつくったわけでございます。たとえば、基準法の有給休暇なんかの場合に使う平均賃金そのままを、療養費、特に長期の療養に使うのは適当でない場合がございまして、従来でもときどき手直しをしておったわけでございます。まぎらわしいので、別の名称を用うることといたしたということでございます。
○吉川(兼)委員 この算定方式はどうなんですか。
○石黒政府委員 算定の方式は、大部分の場合は平均賃金と同様でございます。しかし、例外的な場合には、特例的な計算をいたすわけであります。
○吉川(兼)委員 けい肺の患者などで、転任をしてからやめたりいたしまして、たいへん賃金が低くなっているものが少なくないと思います。ついては、給付基礎日額なるものに対しまして、最低補償額をきめてほしいという陳情がわれわれのところにもたくさんきております。この点につきましては、どういうふうに考えておられますか。
○石黒政府委員 従来は、運用によりまして、けい肺患者のうち、はっきりしておりますものについては、管理四になって、ほんとうに病人になる前の三カ月という平均賃金方式ではなくて、さらにさかのぼりまして、管理三でございますかになったときにさかのぼって、その前の三カ月で平均賃金を算定するというような方式をとっておったわけでございます。これで救われますのは、けい肺の大部分が救われるわけでございますが、そういう管理三になった時点がはっきりしないとか、そのほか特殊の事情のものもございまするので、この方式の精神をさらに広げたような形におきまして、けい肺患者全般について、できるだけ合理的な給付基礎日額を定めたいと思います。
○吉川(兼)委員 次は、リハビリテーションなどの施設の現状をお聞きしておきたい。それから今後の対策といいますか、計画のようなものがあればあわせてお伺いをいたしたい。
○石黒政府委員 リハビリテーションは、私どもしろうととして、大きく三つに分けておりまして、第一は理学療法と申しますか、PTといわれるもの、第二が作業療法と申しますか、職能訓練療法と申しますか、OTといわれるもの、そのOT、PTを理学的リハビリテーションと申してよろしいかと思います。三番目は、その理学的リハビリテーションの域を越えまして、さらに社会復帰をさせるためのいろいろなリハビリテーションであります。PTの施設は、現在三十四ございまする労災病院のほとんど全部にございまして、活発に活動いたしております。OTにつきましては、これは非常にいろいろむずかしい点もあり、特に技術者が少ないという点もございますので、現在三カ所でございまして、本年中に四カ所に逐次増設いたしたい。それから、理学的リハビリテーションを行ないました後におきまして、一面においては、身体障害者の職業訓練の拡充のために、労災保険の金を昨年来相当支出してこの面を拡充いたしたい。そのほかに、身体障害者で直ちに民間事業所に復帰することが困難な者につきましては、労災で特殊な作業施設をつくってこれに収容する。将来の問題といたしましては、さらに家族ぐるみの療養施設を含んだ施設にまで拡充いたしたいと考えております。
○吉川(兼)委員 社会復帰に対しまする援護金でありますとか、または補助金などの制度、これは今日どのような形で実施され、また検討されておりましょうか。
○石黒政府委員 ただいまのは、労災——社会復帰関係の援護金でございましょうか。
○吉川(兼)委員 社会復帰を助けるために必要なすべての援助金のことです。
○石黒政府委員 援護金は非常にいろいろな極数のものを出しておりますが、総体的にそれほど大きな額に実は相なっておらないわけでございます。今後保険施設の充実という面から、援護金という制度を含めましてさらに社会復帰のために必要な、たとえば特殊自動車とか、そのほかのものを購入するための融資制度といったものも含めまして、援護制度の拡充に努力いたしたい、来年度予算において努力いたすつもりであります。
○吉川(兼)委員 それから、例の費用の負担の問題でありますが、メリット制を採用しておりますことは私は賛成であります。ただ、一口に費用といいましても、入院者の車賃なんというものも、遠方から来ます場合には相当かかるわけですが、その実施状況はいかがでしょうか。それからもう一つは、メリット制を採用しておりながら、一方におきましては「財政の均衡を保つことができるものでなければならない。」という規定を置いておるようでございますが、これはちょっと矛盾をするように感じますので、その点を御解明いただきたい。このようなきめかたで、はたして将来うまくいくと思っていられるかどうか。
○石黒政府委員 遠方から通院を余儀なくされるものにつきましては、患者の移転費といたしまして、一定以上の距離のものにつきましては交通費の一部を支弁いたします。 それから、メリット制と将来にわたって云々との関係でございますが、これは、今回保険給付が年金化することに伴いまして、従来は、一年分の支出を事業主の災害費に割りつければ、それで保険料が出たわけです。年金にいたしますと、支出は数年間は相当落ちるわけです。これを割りつけただけでは非常に安い料金になって、将来たちまち、毎年毎年保険金を上げなければならないということになりますので、いままでのような一年間の支出で計算するのではなくて、将来幾ら払うかということまで計算してそれを割りつけるようにするのだという趣旨でございまして、その事業主に対する割りつけ方についてはメリットに応じてやるということで、矛盾はいたさないというふうに考えます。
○吉川(兼)委員 次は労災保険事務組合についてでございますが、組合をつくることができるところの中小企業、これはどの程度の規模の企業であるか具体的にお示しいただきたいことが一つ、それから、この団体なるものは協同組合のほかにどのような極数の団体を考えておられるか、あわせて伺います。
○石黒政府委員 原則的に申しますと、この事務組合の対象となります事業主の範囲というのは、中小企業基本法にいう中小企業主の範囲というふうに考えておるわけでございます。しかしながら、業種によりまして三百人というふうなものがどんどん入ってくるのが適当かどうかという点がございますので、各地方の実情、それから業種の実情に応じまして、適当な行政指導をさらにこれに加えて、まいりたいというふうに考えております。 それから、協同組合以外の団体といたしまして考えておりますのは、たとえば商店街とか商工会といったようなものもございます。あるいは労務管理研究会というようなものもある。いろいろな団体があり、特に制限するつもりはございませんで、要するにその実体として適当であり、かつしっかりしたものであるかどうかというところで判断いたすつもりであります。
○吉川(兼)委員 この際、あなたの所管外と思いますが、おわかりでしたら失業保険事務組合の現状をお聞きしておきたい。 それから、なぜ同じ労働省の中で二つの事務組合を持たなければならぬのか、これを統合することはできないものか、統合してもらったほうが便利ではないかと思われるのです。はなはだ言いにくいことでありますけれども、役所内でのなわ張り争いのようなものがここに出ておるのではないのか、この点をひとつ、もしあなたが適当でなければ大臣からでも伺いたい。
○石黒政府委員 失業保険事務組合の実態につきましては詳細には存じておりませんが、私どもの考えております事務組合に比べますと、組織の範囲が非常に小そうございまして、零細業者だけを入れるという構想にただいまのところは相なっております。これにつきましては、労災保険事務組合と失業保険事務組合を将来一本で、さらに理想を言えば、要するに社会保険事務組合一本でまかなえるようにいたしたい。したがって、失業保険につきましても、将来改正の機会に労災保険のほうと合わせるようにいたしたいと考えております。 それから、それまでの間、運用の実態におきましては、お互いの事務組合が実は二枚看板の実体をなしたというふうになるように、できるだけ協力いたしてまいる考えでございます。
○吉川(兼)委員 附則に組合に交付する報奨金というのがありますが、あの額は大体どの程度のもので、どういう基準で交付するつもりなのか、伺いたい。
○石黒政府委員 報奨金の額につきましては、ただいまのところまだ定まっておりません。私どもといたしましては、失業保険事務組合に対する程度のものは当然いただきたいと考えておりますが、さらに労災の特殊性といたしまして、事務組合の努力によって災害率がうんと低くなったというところには、ひんぱんに出すように予算を構成いたしたいと考えております。
○吉川(兼)委員 それでは、特別加入のところに入っていきますが、労働者でないものの特別加入を認めるという理由をまず伺いたい。私は、労災保険の性格に社会保障的な性格と機能を加えたものが、つまり特別加入制度である、こういうふうに考えておりますが、よろしいかどうか。
○石黒政府委員 特別加入制度を設けました理由は、二つあると申してよろしいのじゃないかと考えます。一つは、零細企業に労災保険を及ぼそうと思った場合には、おやじさんもひっくるめて入れるようにしないとなかなか入ってこない。権力だけで無理に入れようと思ってもむずかしいという点が一つ。それからもう一つは、零細企業の事業主あるいは従業者といったようなものが、労働契約こそ結んでいないけれども、その労働の実態は非常に労働者に似ておる。そういう人たちが労働者と同じように働いて、同じようなけがをした場合には、われわれに余力があったら何とかしてあげたいという気持ちでございます。これが社会保障的であるかどうかという点につきましては、私ども、必ずしもこれが非常に社会保障的であるというふうに考えてはおりませんで、むしろ全くの任意加入でございまして、強制的に加入させるものではございませんので、労災保険も一種の契約保険を営むものであるというふうな考え方でございます。
○吉川(兼)委員 それでは、特別加入を認められるものの範囲といいますか、それをひとつ具体的に聞いておきたいと思います。
○石黒政府委員 特別加入制度は、たとえば土建の一人親方のように、いままで入っておった人は、これは問題がございません。それから今後どの程度に広げていくかということは、あまり一ぺんに手を広げますと、われわれの事務能力を越えて不必要な混乱も起こるというふうに考えられますので、労災保険審議会と御相談の上、無理のない範囲から逐次省令をもって入れるようにいたしてまいりたい。実績に応じて拡大をはかるようにしてまいりたいというふうに考えております。
○吉川(兼)委員 特別加入の対象には、先刻来滝井委員と労災部長との間にやりとりがありましたように、農民などもあるわけですが、私が聞きたいのは、農民だけというのか、漁民までも広げておるのかということを、ひとつこの際はっきりしていただきたい。
○石黒政府委員 漁民につきましては、漁業労働者はすでに全部強制加入になっておりますので、漁業の自営業主も当然特別加入の対象になるのであります。これはまっ先に取り入れていく考えでございます。
○吉川(兼)委員 それから状況の申請でありますが、自営業者などを加えたこと自体は私はたいへんいいことだと思いますが、災害の業務上——どう言いますか、いわゆる外における仕事の場合の認定がかなりむずかしくなるんじゃないかと思います。極端な例になりまするけれども、たとえば農民の場合、かまでけがをしたのと、あるいは家の中でしろうと大工の道具か何かを使っておってけがをしたのと、ちょっと識別しかねる場合が出てくると思います。そういう場合にはどうするのですか。どういうふうな基準で判断するのですか。
○石黒政府委員 特別加入は、先ほど申し上げましたように、一種の契約加入であるという趣旨に立っておるわけでございます。省令等でできるだけ詳細に書きますけれども、さらに、この業種については、当面こういう態様でこういう災害が起こった場合補償をするというようなことは、契約上検討して一々はっきりしておきまして、業務上であるか業務外であるかということで不必要な混乱の起こらないような措置をあらかじめ講じておきたいと思います。
○吉川(兼)委員 先刻あなたは、社会保障的性格はないのじゃないかと言われましたが、私は逆に、いまのような問題等から考えまして、近き将来には社会保障的にならざるを得ないのではないかという見方をしております。私の考えが間違っておれば別でございますが、もし社会保障的なものとならざるを得ないということに前提を置きますならば、私は、国庫の負担は当然増額されなければならぬ、こういうふうに考えるものであります。これは私の前提に基づく質問で、あなたの前提とは違うかもしれぬが、その辺をどういうように考えておりますか。
○石黒政府委員 実は、この特別加入制度がどこまで広がっていくかと申しますか、一体何万人、何百万人入ってこられるか見当がつきかねるままに踏み切ったわけでございます。たとえば、将来二千万農民のほとんどが入りたいということになりました場合には、これは当然強制加入に切りかえまして、そうしてほんとうの社会保障にしなければならぬ。その場合は、所管省として労働省が適当であるかどうか、これは考え面さなければならぬ。そういう段階に至りました場合には、もちろん社会保障としてしかるべく国庫負担をなすべき筋合いでございます。現在のところは、余力をもってサービスするという程度でございますので、特別の手段は考えておらないのであります。
○吉川(兼)委員 それから、いわゆる政府の考えておりまする年金化した場合に、従来の給付に比べましてむろんプラスの人もありましょうが、マイナスの人が多いのではないかというふうに私は考えるのであります。予算がことしからは大幅に増すというのであればとにかく、そういう面も見られないのでありますから、したがって、この給付の内容は低下するのではないかという危惧があるわけでございます。単なる危惧であるのかどうか、それをひとつ……。
○石黒政府委員 全般的に申しますれば、もちろん大幅な給付改善でございまして、個々の被災者ないしその遺族が、その一生にもらう年金額を計算いたしますと、二倍半以上になるわけでございます。ただし、障害年金で申しますれば、障害者が生きていなければ年金はもらえないので、非常に早くなくなってしまったという場合には、これは従来の日数よりも少なくしかもらえないで、なくなるという場合も例外的にあり得ると考えます。
○吉川(兼)委員 ここで、ちょっと大臣にお伺いしたいのですが、先日の本会議における大臣の御答弁の中に、通勤途上の災害でございますが、あなたはえらくはっきりと、通勤途上の災害は加害者が買うべきであると、大声を上げて御答弁をされたのでございます。実は、通勤途上の災害の補償につきましては、まだ相当の議論が残っているのじゃないか。大臣があんなにはっきり言わるべきものが、はたして現状であるのかどうかというのです。現に労災保険審議会に、大橋労働大臣の時代に諮問を出されて、それに対する答申が今度の資料にもちょっと出ておりますように、通勤途上の災害については、もう少し検討すべきであると書いてありますね。現に検討を要すべきものであるという答申が出ておりますのに、あなたはあっさりと加害者論で断を下しているのは、どういうものでしょう。私から申し上げるまでもございませんが、西ドイツ、フランス等の西欧諸国では、通勤途上の災害を補償する制度がしかれているのでございます。大臣は、いまもなお、先日の本会議における御答弁のような割り切ったお気持ちでおられるのかどうか、それともこの答申にありまするように、将来前向きの検討を加えていくつもりがあるのかどうか、はっきり伺っておきたい。私は、今度の特別加入というものは、あなたの相当の善政のように理解をいたしておるのでございますが、こういうものを一方に行なっておきながら、ひとり通勤途上災害については、きわめて簡単にけ飛ばしてしまうというような石田労政では、はなはだ失望せざるを得ません。また画竜点睛を欠くものと思うのでございますが、この点については、ぜひ具体的な、親切な御答弁をわずらわしておかねばならない仕儀に立ち至っております。どうぞ……。
○石田国務大臣 私は、この問題は、答申にもありましたように、労災補償審議会でさらに御検討を願いたいと思っております。それが根本的な考え方であります。しかしながら、一方において交通事故その他における人命、あるいは人間に対していろいろ傷害を加えた場合の補償額というものがあまりに安過ぎ、また、それに対する保険加入義務もあまりに低過ぎるのではないか。そういうものについてもっと厳格な、そうしてもっと実情に合うような制度が必要であろうと思うのであります。そこで、私は、根本的にそういう制度をさらに確立をしてもらいたい。 それから、元来通勤途上の事故と申しましても、いろいろ性質はございましょう、いろんな事情の性質があるけれども、たとえば自動車にはねられるとか、ダンプカーにはねられるという場合は、それは事業主の負担に属するということよりは、もっと根本的に、その加害者がその責任に応ずるという体制をつくることが必要だということを強調したかったので、ああいう意味の答弁をいたしたのであります。
○吉川(兼)委員 それだけ説明がつけば、まあよろしいでしょう。 次は障害補償給付の年金化のところでございまするが、先刻滝井さんも触れておったように思いますけれでも、これも答申には八級までとあったはずでございますが、どうして八級を削ったのか。八級を入れると、非常に数がふえて金がかかり過ぎるというような理由でもあってのゆえか、その辺のところをお伺いしておきたい。
○石黒政府委員 答申で八級とございましたのを七級に改めましたのは、先ほど滝井委員からも御指摘がございましたように、現在の社会保障制度必ずしも統一がとれておりませんで、こういう陳弁に年金を出すかというのは、かなりばらばらでございます。で、私どもといたしましては、一番大宗をなす年金である厚生年金保険の障害年金に、できるだけ合わせるのが最も現状としては穏当であろうということで検討いたしました結果、七級でもってほとんど救われる、わずかはみ出す点につきましては、行政措置をもって救済されるという結論が出ましたので七級にいたしたという、全く技術的な理由でございます。
○吉川(兼)委員 次に、従来けい肺の特別保護法であったものが、今度は引き続いて労災の患者になるわけでございますが、これに対する給付の実態はどういうふうに行なわれるのでありましょうか。私の見るところでは、どうも新しいやり方では損をするように思われるのでございます。先刻もちょっと申し上げたつもりですが、かりに五年も寝ておるものといたしますと、平均賃金はずっと低いはずでございますから、これらの点を考え合わせますと損をするのではないか。もっとも附則には、労働大臣がきめる方式で新しい形に移行することになっておるのでございますが、どうもこれだけでは具体性がわかりかねて心配ではないか。その辺をもう少し具体的に話してもらいたいものです。
○石黒政府委員 けい肺等の長期患者に対してどの程度今回給付が改まったかということをまとめて申し上げますと、入院患者につきましては、従来二百日であった年金額が二百十九日と相なります。一割弱の年金の改善でございます。そのほかに、もちろん医療その他の保険施設の充実というようなことはいろいろあるわけでございます。それから通院患者、いわゆる第一種といわれた人たちは、二百四十日分ということに従来相なっておったわけでございます。この人たちも二百十九日となるということで、これは一見下げるように見えるわけでございますが、従来の二百四十日は、この中から医療費を自前で支弁するということに相なっております。その医療費の額は、平均的に計算いたしますと三十八、九日分に相当いたします。そこで、今回の制度で二百十九日の年金をもらって、医療費は全部政府持ちということにいたしますれば、平均的な方々はだいぶよろしくなるわけでございます。ただ例外的に、二百四十日分の年金をほとんど全部生活費に使っておって、医療費はごくわずかで済ましておるという方々が、生活費が少なくなるという現象が起こるわけでございます。そのためにこれはいろいろ考えたところでありますが、あまりいい線もございませんので、とりあえず附則におきまして、もし従来の医療費を、自分持ちで二百四十日分のほうが得だとお考えの方は、申し出でによって従来どおりの給付をもらえますという暫定的な選択規定を置いた次第でございます。したがって、悪くはならない。将来、その人たちが、医療費が上がったからやはり新制度に乗りかえたいというときには、いつでも乗りかえられるような措置を講じておる次第でございます。
○吉川(兼)委員 そうすると、従来のけい肺患者の長期給付は決して悪くはならぬと、はっきり言明できますか。
○石黒政府委員 少なくとも悪くはならない。大体はかなりよろしくなるつもりでございます。
○吉川(兼)委員 それから各種社会保険との併給関係でございますが、それはどうなるかということをお尋ねしたいのであります。それこそ法案を見ればわかるとおっしゃるかもしれませんが、どうも附則のほうにえんえんと書いてあって、私どもが読んでもちょっとわかりかねるのですが、この辺をもう少しわかるように、簡明直截に御答弁をしておいてもらいたい。
○石黒政府委員 各種社会保険制度というものは非常に複雑多岐にわたっておりますので、全体につきまして一言で中しかねるわけでございますけれども、厚年を中心にして申しますと、従来は、労災年金と厚生年金と双方が出る場合には、厚生年金は六年間ストップしておいた。そして七年目から労災と厚年の両方の年金が出るけれども、その際五七・五%を差し引くという方式で六年間ストップしたことが骨子でございます。今回の改正では、六年間はストップは全廃する。したがって、七年目からと同じように一年目から両方が併給されるけれども、若干差し引きが行なわれるということで、この点は従来よりもかなりよくなったものと考えております。附則で長々と書いております相当部分は、この六年間併給停止という規定を置いたためのものでございます。それから厚年の五七・五でありますが、そのほかの年金の調整率は一々とても書けませんので、五七・五%の範囲内で政令で定めるというふうにまとめておるわけでございます。
○吉川(兼)委員 それから葬祭料の額は、これも何か労働大臣のきめる金額だけなのか、もっとほかに出す道があるのか、大体でよろしいから額がわかれば、この際具体的な数字を聞いておきたい。
○石黒政府委員 現行法の葬祭料は六十日分でございまして、これは実額に直しますと四万何千円かに相なるわけであります。東京都における葬儀費用の実額というものは、お坊さんに対するお布施も含めて四万四、五千円というふうに私どものほうでは承知しております。大体見合うわけでございますが、こういうあれはだいぶ上がっておりますので、もう少しゆとりを持った金額といたしたいというふうに考えております。
○松澤委員長 伊東正義君。
○伊東(正)委員 私は、今般労災保険法の改正にあたりまして、特別加入を認められるという農業問題に関して二、三点だけ御質問しておきたいと思います。 第一点は、先ほど滝井委員がおっしゃったのですが、この農業関係は、三十四条の十一の何号で入るのだという御質問がありましたのに対して、労働省から一号から五号までだという御答弁がありましたが、五号というものと一号から四号というのは若干性格が違うのではないか、これは業務災害の範囲が違ってきますので、その点をもう一回はっきり御答弁願いたいと思います。
○石黒政府委員 御指摘のごとく一、三、五とそれぞれ違いますが、なかんずく五号は相当性格の違うものでございます。ただし、制度の発足の当初におきましては、いきなり全部のものを取り込むということはなかなかむずかしゅうございますので、五号も活用いたしまして、必要かつ適当なものを取り込むのに使いたいという考えでございます。
○伊東(正)委員 五号で特殊なものを取り込むというお話でございましたが、一号は、たとえば農業で考えますと、若干雇用労働者を使う農業生産法人とか、そういうものがこれに入ってきて、三号は労働者を使用しないで行なうということで、一号と三号は雇用があるかないかだけの違いなんです。ですから、本質的な違いじゃない。特別加入に関しては、五号になってきますと作業を限定しているということになりますので、農業ということじゃなくて、作業ということになりますので、そこの点、五号が入ってくるのだということになりますと、何かこれはどうも——本会議で労働大臣が、これは農業関係についてはサービスだというお話がありまして、何か限定していこうということにとれるので、むしろ農業は一号から四号までということで入ってくるのじゃないかというふうに私は思うのですが、その点はどうでしょうか。
○石黒政府委員 私どもが農業に特別加入を適用いたしまして、十分経験と知識を得ましてこの制度が軌道に乗りました場合には、御指摘のようなことに相なるかと存じます。しかし、当初は、何でもかんでも全部入れますというふうには定めるわけにまいりませんので、若干しぼった規定のしかたになる。その場合に、三号だけでもってうまくいくかどうか、しぼり方によってこれはどうしても入れなければならぬのがはみ出すのじゃないかというので、出たときには五号を使う場合もあろうかという趣旨で、五号も適用する場合もあり得ますということを申し上げたわけでございます。将来の姿といたしましては、御指摘のとおりであります。
○伊東(正)委員 それでは、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。大体は一号ないし四号で該当するが、特殊な場合だけ例外として五号を考えるのだ、大体のものは、農業は一号ないし四号で見ていくのだというふうに解釈してよろしゅうございますか。
○石黒政府委員 できるだけその本来の姿に、私どもすみやかに持っていきたいと考えております。
○伊東(正)委員 それでは次に、先ほど滝井委員から、農業労働に起因する疾病の問題は、労働基準法施行規則三十五条で大体カバーできるという御答弁でありましたので、それ自体はいろいろ特殊な疾病がございますが、三十五条でカバーしてもらい、できないものは中央労働基準審議会の議を経て労働大臣が指定するから、何とかやっていけるだろうという御答弁がありましたので、その点は重ねて御質問申し上げませんが、ひとつこれは希望になりますが、労働基準審議会のメンバーの中へ、少し農業や何かがわかるような人も将来は考えていってもらうというようなことをしてもらえればなおいいのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○石黒政府委員 御趣旨の点も将来の問題として考えさせてもらいたいと思いますが、当面のところは、こういう農業専門問題につきましては、必ず農林省及び農業専門団体とお打ち合わせの上で、私どものほうの審議会に付議するようにいたしたいと考えております。
○伊東(正)委員 その点はわかりましたが、次に農業労働災害の認定の問題なんですが、農業労働といいますと、時間的にも場所的にも広範囲のいろんな調査がございます。事例調査を見ましても、農業労働災害が起きるのは田畑だけじゃなくて、圃場だけじゃなくて、その次は屋内だという事例調査も多うございます。あるいは農道とか庭とか、そういうところでも農業災害が起きるということがございますので、この災害の認定にあたっては、こういう農業自体の特殊性もひとつ考えていただきたいというふうに思うのですが、その点はどうでしょうか。
○石田国務大臣 御趣旨のようにいたしたいと思っておるのでありますが、しかし本会議でも、またいままででもしばしば申しておりますとおり、サービスと言うと恩着せがましいことばでありますけれども、本来の労働災害補償法でやりまする仕事の目的に付随したものでありまして、本来対象として補償されるものよりは手厚いというわけにはいかない、おのずからそこに限度があることは、これは御了承を願います。
○伊東(正)委員 大臣のおっしゃることもよくわかるのです。それはわかりますが、特に手厚くということを言っておるのじゃなくて、あるいは将来、農林水産業独自の労災保険法というものがあっていいのかもしれませんが、それは別としまして、せっかく特別加入をつくったのですから、農民がやはりこれはありがたいという、そういう気持ちを起こさせるような運用といいますか、そういうことをしていただきたい。せっかくつくって、あれはサービスなんだということを言われますと、その辺に非常に誤解を生じますので、その運用だけは気をつけてやっていただきたいことをお願い申し上げます。 それから、先ほど安全規則の話が出ました。これは私もごもっともなことだと思うのです。ただ、安全規則をどういうふうにつくっていくかということが非常に新しい問題でして、農機具の研究所でございますとか、農薬の研究所でございますとか、いろいろございますが、いま労働省としては、安全規則のつくり方、どういうふうにしてつくっていこうというようなお考えか。私は、農林省その他の役所が、最初は何か模範的なものをつくるということをやっていく必要があるのじゃないかと思いますが、現段階ではどういうふうにお考えになっておりますか。
○村上(茂)政府委員 私からお答えさしていただきます。 一般の労災保険の場合ですと、その前提としての災害対策が、いずれも法的な基礎を持ちまして罰則の適用があるような厳格な規則であるわけでございますが、それは使用者の責任を前提としたものでございます。したがって、同性質の規則を自営農民について考えるということは、法本系が別でございますので、私どもは労働基準法の体系に属する安全規則といった系列ではなくして、農林省及び関係団体の御意向を十分聞きまして、農林省が農業政策の観点から一定の災害防止基準といったようなものをおつくりいただきまして、それの励行と相まちまして考えていきたい。具体的には、そういった守るべき基準と申しますか、そういったものが可能ならば、保険事務組合の組合との協定書のようなものの中になるべくならば明示いたしたい。そのほか、業務上概念その他もできるだけ明らかにいたしまして、実際の運用によって波乱を来たさないように善処いたしたいと考えております。
○伊東(正)委員 もう一つ、保険料の算定の基礎になります賃金の総額とか、これは農林省に農村の物価、賃金、物賃調査というのがありますが、そういうものを基準にして、その地方の実態に合ったようにきめていくということが必要だと思うのでございますが、いま労働省ではこの賃金総額の算定等はどういうふうにお考えになっておりますか。
○石黒政府委員 農業の賃金総額につきましては、御指摘のような農家の収入というようなものと、それからその地方における労働者の賃金水準というようなものと、双方考えまして均衡のとれたものを、農林省と御相談の上定めてまいりたいと思います。
○伊東(正)委員 もう時間がありませんから、最後に一つだけ。先ほどから労働大臣にもお願いしたのですが、この制度がせっかくできました場合に、農民が加入します場合にも、農家の経済その他を考えて、保険料率の問題だとか、現行千分の二ということになっておりますが、そういう保険料率もなるべく据え置いていくとか、加入がなるべく容易にできまして——サービスということばがほんとうに気になるのでございますが、そういうところは十分御注意願って、ひとつせっかくの制度でございますから、喜んで入る、そしてうまく運用できるということにこの制度をぜひ運用していただきたいということを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わります。
○石田国務大臣 むろん、せっかくつくったものでありますから、御趣旨のように運営できるように努力をいたしたいと存じます。
○小林委員 私も農業労働の問題について実は質問しようと思ったのですが、伊東君が質問してくれましたから、私の本質問はやめて関連して一言押えておきたいと思いますが、いまいみじくも伊東君が、農業労働の問題を労災の問題で質問するというところに、大臣、日本の農政というものがいかに貧弱であるかということがかかっていると思うのですよ。彼は多年農林省にいた農林事務次官ですよ。だから、本来ならばこういう農業労働災害の問題なんかは、ほんとうは農林省の中で解決しなくてはならぬというのが、ぼくは労働省の皆さん方の考えじゃないかと思うのです。しかし、日本の農政というものはそれほどおくれているのですよ。明治初年そのままなんだ。日本ではあらゆる行政があるけれども、事農林に関する限りは農林行政なしだ。その証拠が、きのうあたりも国会がああやって大騒ぎをしているように、何です、終戦面後における解放した地主に、二十年もたってその補償金を給付するという、そういうことの農政しかないのですよ。実に貧弱きわまる。だから、結局いま痛めつけられている農民の問題を農林省や関係団体で解決できないから、こういうように労働省へ持ってきて、労働省の労働行政でひとつそういう災害問題を助けてもらう。まことに恥ずかしい話です。 そういうことでございますけれども、私はここでひとつ大臣に申し上げながらお願いしたいと思うのは、ぼくは農林行政が貧弱であるということと合わせて、日本の農政が近代的に質的に変わっているということを、やはり考えてもらわなければいかぬと思うのです。農民は性格的に一体何だ。中小企業者のように、一つの経営者的なとらえ方をしているのですよ。けれども、農民というものはもう国が押えていて、米価というものは国がきめているんだ。だから、普通の労働者のように拘束時間八時間とか十時間という、そういう範疇の中には入らないけれども、やはり国と半雇用的な関係にあるという、こういうとらえ方を私は農民についてしてもらわなければだめなんじゃないかと思う。一体米価なんというものは、農民が取っているものは、これは米をつくる労働賃金ですよ。それは天災や気候によって若干の収入の高低はあるでしょうけれども、特に米なんかの主食を主体にしている農民の収入、農業の労働賃金は米価がその主体をなしているのであって、これは賃金労働者なんです。農民なんというものは、私はそうとらえていいと思う。そういう意味において、まず農民の質的変化に即応した行政というものがやはりついて回らなければなりませんから、その意味において労災等は他に先んじて適用していただくという、こういう進歩的な考え方を私は労働省の方々に持っていただけないかと思うのであります。 時間もありませんし、関連ですからやめますけれども、ここに一つ資料がきております。これは農業者の労災適用問題について、日本農村医学会という学会が多年研究いたしまして、「最近の農業労働災害の実態について」という報告書を出しているわけです。その災害の根本をなしているものをこれは五つあげられています。 一つは、農耕地の不潔に原因するもの。この具体的なものは何かと言うと、さっき私は字がむずかしくてわからなくて河野さんに聞いたんですけれども、鉤虫症というんだそうです。腸の中にかみついて胃腸を荒らす、こういうようなおそるべき病原菌が田畑の中に介在している。これは農業する老人の身体をおかしている特殊な病気です。 第二番目は、農民が取り扱う動植物に原因するもの。動物や植物や家畜を扱うことによって、特殊な職業病、伝染病というものが出てくる。その具体的なものを言えば、炭疸病あるいは丹毒とかという家畜から感染するもの、こういう病気、そのほかに田畑を歩けばマムシにかまれたとか、これだってやはり農業における特殊な職業病ですから——これは皆さん方はお笑いになりますけれども、あのわが新潟に盛んなツツガムシはちゃんと職業病に入って、労災の対象になっておる。ならばマムシなんかにかまれたなんというのは、ちゃんとこれは入れてもらって何も間違いではないと思っている。 第三番目は、過労及び特殊な作業姿勢に原因するもの。農民というものは、どうしても職業上腰を曲げて働かなければならぬ。そこで腰椎分離症とかいろいろな職業病がついて回る。 それから、第四番目は農業外傷。これはいわゆる耕うん機だとか脱穀機だとか、非常に近代的な機械を使うことによってどうしても避けがたい一つの傷というものが職業病として出てきた。 それから、第五番目は農薬中毒です。この農薬の中毒などというものは避けられない。これは農業を営んでいる限りは、有機燐剤、有機水銀剤あるいは有機塩素剤、有機砒素剤、抗生物質、それから除草剤——先日も淡谷君が質問しておりましたけれども、山林ですね、林業による職業病というものが出てくる。 こういうものをやはり職業病の対象として、農民を労災法によって人並みの待遇をしたり、人並みのめんどうを見てやるというくらいな考え方を——農林省ではだめなんです。農林省は、農地解放の地主たちに報償金をやろうということを考えるぐらいしかないんだから、そこでひとつ労働省がこういうことを考えてもらえないか。これは大臣、どうです。サービスなんということを言わないで、労災の本質の中へ入れて、ひとつ徹底的にやってください。
○石田国務大臣 農業就業者の立場というものについては、これは私が申し上げる立場ではないと思うのであります。われわれから見ますと、他人の指揮命令を受けて働くか働かぬかというところで、一般の雇用労働者との間に違いがあるように思いますが、これは私どもの答弁することじゃない。農民を国家の雇用者と見るなら見るという国としての意思決定が先に必要でありますから、私の言うことではないと存じます。そこで、できる限り農民の方々がこの保険制度の恩典に浴するように、こういう一般的な方針ではむろん適用したいと思います。しかし、現在のわれわれの行政対象は、いわゆる他人の指揮命令を受け、雇用されている人々がわれわれの行政対象であります。その余裕をもって、別に農林省から委嘱を受けたわけではなく、労働省の自発的な発意によって今度の改正を意図しておるのでありますが、これは出発であります。出発でありますから、あまりに手を広げてしまいますと、初めから混乱を生じます。それと同時に、それがいまおっしゃったようなところへぐっともし広がって、そして千二百万を数えます農業就業者が全部加入するということになりますれば、これはわれわれの、現在まで加入しておる人の千九百万とほぼ似たような数になるわけであります。そうして就業状態が違うのでありますから、そこまでになってまいりますならば、これはやはり、農林省でやるかやらぬかは別といたしまして、特別の制度として考えていかなければならないのではないか。現在は、そういう、いかなるところまで対象としていくかということは関係方面と御協議をいたしますと同時に、私どもの行政能力というものもあわせ考え、堅実に地歩を進めていきたい、こう考えておる次第であります。
○小林委員 農民も農業じゃ食っていけぬから、季節労働者になって健康保険の分野へ入ったり、失業保険の分野に入ったり、実態はだんだん労働省や厚生省の管轄の中に入ってくるのですよ。労災の問題に全部入ったときに、それはまた別個のそういう形のものを考えてもよろしいとおっしゃるけれども、好むと好まざるとにかかわらず、農民は、やはり労災というふうな形で救ってもらわなければこれはだめなんです。 それから大臣は、拘束されてないとおっしゃるが、政府から命令じゃないけれども、政府に入る米をつくっている。ちょっと自由に流せばやみ流しで縛られるのです。できたものは、そのままそっくり政府がきめた値段で持っていくのですから、そういう意味においては自由業者じゃないです。 まあそういう論争は別といたしまして、そして大臣の御答弁にも決して私は満足じゃありませんけれども、この問題はいずれまたあらためて論争させていただくことにいたしまして、きょうはこれで終わります。
○松澤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる十七日、月曜日午前十時より開会することとし、これにて散会いたましす。 午後四時四十三分散会