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46回国会参議院1964/03/27

予算委員会第二分科会 第3号

発言数
60
登壇者
5
会派数
2
開催日
1964/03/27

会議録

村山道雄自由民主党

○主査(村山道雄君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  まず、分科担当委員の異動について報告いたします。  本日、稲葉誠一君、戸叶武君及び向井長年君が委員を辞任され、その補欠として渡辺勘吉君、羽生三七君及び村尾重雄君が選任されました。以上でございます。

村山道雄自由民主党

○主査(村山道雄君) それでは昭和三十九年度総予算中経済企画庁所管及び科学技術庁所管を一括して議題といたします。  時間の都合上、両所管に関する説明はこれを省略して、お手元に配付してあります資料をごらん願うこととし、なお説明資料は、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

村山道雄自由民主党

○主査(村山道雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これより質疑に入ります。速記をとめて。   〔速記中止〕

村山道雄自由民主党

○主査(村山道雄君) 速記を起こして。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村君。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 最初に伺いたいことは、春闘の大幅賃上げに対して政府の見解を発表するということが、きのうの黒金官房長官と記者との会見でそういうことが述べられているわけです。大体宮澤長官の談話の形で、この春闘に対する政府見解というものを発表するということを黒金長官が新聞記者に語っておるのですが、そういう段取りになっているわけですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 先般来閣議などでそういう御意見の閣僚が多うございました。後の御質問に従いまして、どういうことを考えておるのかということは、後ほど申し上げればよろしいのだと思いますので、ただいま申し上げませんが、何か考え方を申したらいいのではないかという意見が多うございましたので、ただいまそのこと自身及び何か申すとすればどういう内容のことを申すべきかということを検討いたしております。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 その内容について後ほどでなく、ただいまですね、どういう談話を政府見解として発表しようとしておれらるか、大体構想がありましたらお述べ願いたいと思います。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) まず、これを政府見解と申すべきかどうかということについては問題があるように思います。政府全体の統一した見解であるとすれば、おのずから別な形が考えられるのではないかと思いますので、したがって、政府見解と申すべきものではないであろうと考えております。私が経済企画庁長官としてどういうことを考えておるかというお尋ねとしてお答えを申し上げるわけでございますが、私ども経済政策をずっとやってまいりました過程で、基本的な考え方は国民の生活水準を上げる、それがもとより国民の福祉につながるわけでございますが、それと同時に国民の生活水準を上げ、さらに消費水準を上げるということが国内の生産活動を大きくし、それによって企業の国際競争力もついていく、輸出振興にもなる。日本のここ何年か、過去十年足らずの経済のありさまというものは、国内の需要を締めることによって輸出をふやすという考え方よりは、むしろ消費を抑制せずに、大きな消費、大きな生産、それによって企業のコストも下がっていく、そういう一貫した考え方で経済政策をとってまいりました。ときどきによっていろいろな問題が起こりますので、そのときどきに多少のバリエーションはこれはございましたが、一貫して大筋ではそういうふうにやってきたつもりでございます。その方針は現在も変わりません。基本の方針は、やはりわが国の消費水準というものがGNPの五十何%程度であるということは、決してそれ自身でも満足ではないし、消費生活が非常に先進国並みに充実しておるということはこれは申せないわけでございますし、経済政策としても、なお先ほど申し上げましたような基本的な考え方は今後も続けていくべきものであるというふうに考えております。しかし過去においても時々そういうことがございましたように、経済の動きでございますから、時々曲り角もあり山もあり谷もございます。そこでいまの時点におけるさしずめ昭和三十九年の経済というものは、たまたまここで開放体制に入ってまいります。そうして開放体制を迎える姿としては、外貨保有等々は必ずしも満足の状況ではございません。しかし、開放体制に入ること自身には非常に意味がございますので、四月一日から八条国に移向するわけでございます。もし外貨がたっぷりしておりましたら、もう少し楽に移行していけるという感じはいたしますが、実際のところ外貨の保有は決して十分な状態ではない。他方で昨年の半ば以来企業の生産意欲というものはかなり高うございまして、在庫が相当高い水準にあると思われるにかかわらず、損益分岐点が高いために生産がやはり続いて行なわれておる。しかもそれを金融が支えておるという現状だと考えまして、先般いろいろな意味合いもありまして、公定歩合の引き上げをいたした。昭和三十九年の経済は全体として引き締め基調に運営されなければならない、こういうふうな基本の認識を持っております。  そこで、そういう状況の中で公定歩合を上げ、また公共料金をストップをしたといったような状況でございますから、今年の給与、賃金水準の上がりが国民経済全体として非常に大きなものになるということは、現在の局面では私は心配をいたしておるわけでございます。すぐにそのことが消費者物価に関係があるとは一般的には申しにくうございますけれども、中小企業などでは初任給がすでに大企業よりも現金給与に関する限り高くなっております。しかも資本装備率は改善を著しくはされておりませんために、中小企業としてもかなり無理をして高い給与を出さなければならないというのが実情であると思います。中小企業、サービス業、あるいは農業等では、したがってそういう高い給与を生産性の向上で十分にカバーできないのがただいまの現状でございますから、その限りでは物価にも関係がある。かれこれ考えまして、ただいまの経済、今年の経済を大局的に判断いたしました場合に、あまり高いところへ賃金水準、いわゆるベースアップというものが行なわれてまいりますことは、私は心配である、そういうことを率直に表現をしてみたらどうであろうか、ただいまそんなことを検討いたしておるわけでございます。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 非常に大幅な賃上げは、また物価を引き上げ、国際収支の赤字を招来するというのが心配だというお話ですが、非常に大きいという程度をどのぐらいに考えているんですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 談話を出すにいたしましても、私は直接に、賃金の引き上げがどの程度であるべきかというようなことを申すつもりはございませんし、また、それは事柄の性質上申せないことだと思います。したがって、企業側に対しましては、自分の企業がやはり相当の利潤があるといたしましても、それは一部は製品の価格引き下げというような形で消費者に均てんをしてもらいたいと思いますし、一部は労働に分配されるということも当然でございます。また一部は、企業が配当なり留保なりの形で持つということもようございますが、ともかく、そういう利潤の配分ということについて考えてもらいたい、できるならば、自分の企業のことばかりでなく、それが国民経済全体に与える影響も考えてやってもらいたい、こういうことを申したいと思います。また、労働団体側に対しましては、名目賃金もさることながら、実質賃金が向上していくような考え方で協力をしていただきたい、こういうことを申そうかと思っておるわけでございますが、それはいかなる意味でも、賃金のベースアップは、これだけを越えては困るとか、あるいは、これこれでなければならないといったようなことを申すつもりはないわけでございます。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 また、そういうことは政府が言うべきことでももちろんないと思うのですが、これからもっと本格的に質問してまいりたいと思いますが、その前に、先ほど外貨は十分でない、心配であるということを申されましたが、これまで何回も政府は、外貨は心配ないということを委員会を通じて言ってこられたが、いま外貨が心配であるということは、これまでの発言と非常に違うわけです。その点は首尾一貫しておらないですね。前に大蔵大臣は、ゴールド・トランシュあたりを入れ、スワップ等を考えれば心配ない、心配ないということを言っておるわけですよ。それが日銀の公定歩合二厘引き上げから、急に政府の外貨に対する考え方が変わってきておるのですよ。心配なら心配だということをもっとはっきり国民に訴えて、そうしてそういう考え方を発表するならまだわかります。しかし、発表することがこういう際にいいかどうかは、これは私にも意見がありますけれども、あるときには心配ないという非常に楽観論を言っておって、そうして、賃上げを押える理由として外貨は心配であるというのは、首尾一貫しておらないですよ。ほんとうに心配であるのか心配でないのか、はっきりとお答え願いたいと思うのです。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) それは、前にも木村委員に申し上げたと思うのでありますが、まず第一段、現在のわが国の外貨の保有が非常にたっぷりしたものであるというようには考えておらないわけでございます。外貨の天井が高いとは決して申せないので、したがって、もっとたっぷりしておれば楽に八条国に移行できるんだがなあという考えは持っておるのであります。しかし、それならば、いまの外貨の状況が、たとえば自由な輸入ができないような、そういう意味での心配の状況かといえば、私はそうは思いません。ゴールド・トランシュを勘定するということは、何もウインドー・ドレッシングのつもりではございませんので、そういたすことは、むしろ一つの常識ではないかと思いますが、問題は、さらに将来IMFなり、あるいは外国の市中銀行なりから入り用があれば、外貨を借りることができるわけでありますから、そういう意味で心配だとは思いませんが、しかし、かりに借りるといたしますと、借りないで済めば、それに越したことはないわけでありますから、そういう意味では、外貨の保有がたっぷりしておるという現状ではない、こう申し上げておるわけでございます。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 長官が一番最初、前段に述べた見解については、私も必ずしも不賛成ではない。従来下村君が述べていたような議論ですね。大体成長政策をとっていく場合に、設備がどんどん拡大する、そういう過程において総需要を押えるということは、設備過剰の問題も起こるし、また、国民総支出の中で個人消費の占めるパーセンテージが、戦前は大体六〇%ですね、あるいはそれ以上であった。戦前には平時において六〇%を割ったことはない、戦時中は別として。それで戦後には、戦時でもないのに設備投資が非常に旺盛であった。そのために個人消費の国民総支出に占める割合は漸次低下して、三十八年あたりは、多少は前年よりふえましたけれども、まだ五四、五%ですか、非常に低いわけであります。ですから、決して個人消費は行き過ぎておるとは言えないと思う。したがって、まだ個人消費はふやすべきである、また個人消費をふやすことによって、拡大された設備をフルに操業させ、それによってコストを引き下げ、それが輸出にやはり有利になる、この考えは私は正しいと思う。私もそう考えておる。しかし、それはこういう現在のような物価が上がり、そうして国際収支が非常に赤字が多くなって困難になった、この時点においてこの方針を変えるのはおかしい。むしろ、それだからこそ、ここでやはり個人消費をふやしてコストを下げて、そうして輸出をふやすべきじゃないか。国際収支にも寄与するし、それから物価対策にも貢献する、操短なんかするよりはそのほうがいいと思うんです。しかも、いま労働組合は春闘を戦かっておるこういう時点において、賃上げを抑制するような政府の見解を発表するということは、これは私は労使間が対等で話し合ってきめるべき賃金に政府が介入する、干渉するという印象が強いわけです。それで私は、三月の十三日の大蔵委員会で大橋労働大臣に質問したのです。政府は労使間できめるべき賃金に対して何か干渉し、介入するような印象を私は抱いている、そういうことは好ましくないと思うのですが、この点労働大臣に伺いたい、こういう質問をしたら、労働大臣は、これは速記のとおり申します。「その点、私も全く同感でございまして、ことにただいま春闘のまっ最中でございますので、労働省といたしましては、賃金問題について特別な発言を極力抑制することにいたしております。また、政府全般といたしましても、注意いたしている次第でございます。」こういう発言をされている。労働大臣は労働政策担当の大臣でございますから、こういう春闘につきましては、やはり労働大臣のこういうお考えは尊重されるべきではないかと思うのです。労働大臣のこまかい御説明もありましたが時間がありませんから、これは長官よく御存じだと思うのですが、私は合理的な考えだと思うんです。それと、もうひとつは、これは世論は支持しておりません、政府のそういう介入のしかたは。きょうの朝日新聞の社説におきまして、「政府は、経済企画庁長官をはじめとして、積極的な賃金政策にのりだすかのような態度を示し、それがまた、労働組合を刺激しているのであるが、この政府の態度は軽卒にすぎるきらいがある。政府としては、さいきんの消貴者物価の上昇にかんがみ、所得政策を加味した物価・賃金政策をこの辺で打出したいと考えているのであろう。たしかに現状のような物価の上昇を放任しておけば、わが国でも、賃金上昇とあいまってコスト・インフレーションの危険が将来発生しないとはいえないが、それには、政府みずからが膨大予算の実行くりのべや、物価値上りの抑制に十全の手段をとることが先決であって、賃金規制に直接、間接に介入してくることは、成功の可能性もすくないし、また採るべき態度でもなかろう。」、これは新聞で私も読んだのですが、池田総理が、西欧諸国のオランダ、イタリア、フランス、ドイツ、西ドイツなどのコスト・インフレに悩んでいる諸国もそういう所得政策を実施している、そういうことを言って、日本でもそういうことを考えたらどうか、この際。そういう発言をしている。どうも私はこういう発言は、OECDに参加する、OECDは御承知のように、所得政策あるいはガイド・ライン政策を検討しているわけです。あそこに特別委員会がありますね。御承知のように必ずしもそれは成功していない。確かにまた、各国でいろいろ意見が違うのです。そういうことをこの際もってくるということは、私は問題だと思うのです。その点どうですか。こんなにはっきり労働大臣は私に答弁している。それは労働省の立場ではなく、政府全般として注意いたしておる労働大臣の立場は全く無視されておる。しかも、労働大臣は労働政策担当の大臣で、そういう人たちの考え方、主張が全く無視されてしまっている。それで何か経済企画庁長官が音頭をとって、あなたが先頭に立ってそういうことを主張しているような印象を持っている。それは全く私は正しくないと思う。それは全般論として見解を述べることはいいが、特にこの春闘をいま戦かっているその最中にそういう見解を述べるということは、政府の見解でないとしても、それは企画庁長官の考え方、あるいは大蔵大臣あるいは通産大臣の個々の考え方の発表であっても、それを国民は政府の見解として受け取る。それはとるべき態度ではない、やめなさいよ、やめるべきですよ。その点いかがですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 冒頭に、政府ではないと申し上げましたのは、私も意識して、労働大臣をこの問題に巻き込みたくないと思ってしているからでございます。経済の動きでございますから、非常に早く動くときもあるし、ぽつぽつ歩くときもあると思いますが、ことしはぽつぽつ歩いてほしいということを私は考えているわけでございます。とにかく給与水準、賃金水準というものは、これはやはり経済に関係のある一つの大きな要素でありますことは間違いがないのでございますから、経済企画庁長官として、あまりことし賃金が上がっていく、極端に上がるということは、どうも自分は心配である、と申しますことは、私はむしろ自分の職責ではないかと考えております。賃金、給与だけが経済の諸要素の中でものをいってはならないものであるというふうには私は考えませんので、それでは経済運営はいたしてまいれませんから、見解を申しておりますことは、私は必要な、しなければならない種類のことであろう、こういうふうに考えているわけでございます。それがどのように受け取られるかということは、これはお受け取りになる側の自由であると思いますが、私どもに企業なりあるいは労働団体を拘束する力がないことはもちろんでありますし、また、具体的に介入をいたそうというつもりも全くございませんが、しかし、たとえば少し生産活動が高過ぎるとか、設備投資が多過ぎるとか、あるいは輸出がどうである、輸入がどうであると申すことと同じように、国民の給与所得、勤労所得が少な過ぎるとか、あるいは少し多く行き過ぎはしないかというようなことは、これは経済の一要素として、それにさわることはタブーであるというようなふうには、私は考えておらないわけでございます。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 一般論として、賃金が価格に影響する、それからまた、ひいては国際収支等に影響するということは、これはいえるわけです。しかし、少なくとも日本のこれまでの、特に昭和三十六年から断層的に急速に上がった消費者物価の値上がり、それから国際収支のアンバランス、赤字の問題とか、これは賃上げによってもたらされたのでないことは明白だと思うのです。それで、よく生産性の上昇率以上に賃金を上げてはいけないとか、そういういろいろ議論はありますが、これまでは、昭和三十七年は別としまして、賃金は絶えず生産性の上昇率以下なんです。賃金の上昇は以下なんです。ヨーロッパでも、これはイタリアがそういう形をとっているといわれております。それから賃上げも物価上昇率に追いついておりません。大体消費者物価が一%上がった場合に、賃金は〇・四%しか上がっておりません。ですから少なくとも日本のいまの現状において、賃上げが物価値上がりの原因であるということは言えません。先ほど中小企業について言われましたが、中小企業は生産性は低い、賃上げをする、それが生産性によってカバーできないから、料金の引き上げ等、価格の引き上げ等によってカバーせざるを得ない。だから確かに値上がりが不可避であるといいますけれども、これは長官もお読みになったかもしれませんが、伊東光晴君が詳細な調査をやっております。伊東光晴君の調査によれば、中小企業だって賃金の値上がりは、物は売れますから、そこで生産がふえる、そういう形において賃上げが吸収されているというのです。これは具体的調査がありますよ。賃上げが吸収されておって、値上げ分は大部分は利潤になっている。多くは利潤になっている。そういう実態調査があるのですよ。経済企画庁長官は、そういう調査はやはり企画庁でおやりになっていないのですか。最近ではただ一般論で、ばく然と若年労働者が不足になってきた、そこで初任給の引き上げをせざるを得ない、中小企業のほうでは高い賃金を払わないと若年労働者が来ないから賃上げをする、ところが生産性の向上によってカバーできないから、料金を相当引き上げる、こう言うんですが、もっと実態調査をやるべきですよ。さっき中小企業のお話もありましたけれども、実態調査によれば、やはり物がどんどん売れていきますから、そこで賃金を上げても、それは物が売れて生産がふえるという形においてそれは吸収されているというんですよ。それで料金、物価値上がり分はやはり大部分は利潤となっている。そういう利潤のほうを押えないで、賃金のほうを押えることばかり考えている。こういう考え方は、私はさかさまだと思うんです。私は決して賃金が価格に影響しないなんということは言いません、これは影響します。しかし、少なくとも日本の現時点においてはそうではないです。もっとこれは具体的に検討すべきです。ですから、私は賃金と物価と生産性について、もっと具体的な調査をやるべきだと思う。この前私は長官に伺いましたら、賃上げと物価値上がりとの関係については、まだ具体的なそういうはっきりした調査がないと——これは外国でもそうかもしれません、ですからハンセンもアメリカで問題になったとき、すぐに物価の値上がりをコスト・インフレあるいは賃金、ウェージ・プッシュですか、コスト・プッシュに結びつける議論はトリッキィである、詐術的といいますか、ごまかしであるということを言っておりますよ。ですから、まだ具体的に賃金と物価と生産性について十分な調査がなされていないその段階において、政府が春闘について何か介入するような軽々な態度をとることは慎しむべきだと思うんですよ。しかも、労使間においてこれは決定すべきもので、いまの物価の値上がりなり、あるいは国際収支の赤字の問題は、みんな何か勤労者に責任を負わすような印象を非常に強く持たせる。これは政府の政策の失敗からきているんです。これはもう明白なんですよ。それだからこそ、春闘が済んだらまたもっと具体的な調査に基づいて、科学的な調査に基づいて見解を発表されることは、これは私は反対しません。ですから、大蔵大臣はあれは思いつきで言われたのかもしれませんが、そういう審議会でもつくって検討してみたいということを言われました、大蔵大臣も。そういうはっきりした——特に日本の最近における賃金と物価と生産性についての相関関係についての——具体的な調査がないんです、ないでしょう。それは長官お認めだと思う。そういう状態であるし、特に大橋労働大臣が言うように、春闘やっているこの期間にこういう御発言をするということは、これは私はお避けになったほうがいいんじゃないか。春闘が終わってからじっくりそういう調査に基づいて見解を発表する、それならわれわれもその見解の内容に賛成不賛成は別としまして、そのことについてはわれわれも決して反対しません。発表されましたら、それで不満ならわれわれもまた具体的なわれわれの調査研究によって反論するなりして、大いに議論があっていいと思うんです。議論を起こさなければならぬと思うんです。ですからこの際は、大橋労働大臣の言われるように、やめたほうがいいんじゃないか。朝日の論説でもかなりいろいろ総合的な立場から判断をして述べている。これも一つの世論と見ていいと思うんです、朝日の論説も。ですからこの際お考えになったほうがいいんじゃないか。もう少し時期を延ばされる必要がある。そうしてもう少し具体的なデータ、賃金と物価と生産性についてもう少し具体的な調査なくしては軽率ですよ。その点どうですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 生産性と賃金という問題は、確かに木村委員のおっしゃいますように、基本的な研究が不十分でございますから、私もあまりそれについて計数をあげて論争をする用語が十分にあるとは申し上げにくいのであります。先刻三十三年を除くとおっしゃいましたが、確かにそのとおりで、三十年から三十五年ごろまで、これは三十三年をたまたま除きまして、その間、生産性の伸びのほうが賃金の伸びより多かったことは、おそらく確かであろうと思います。三十六、七年ぐらいから少しその関係が逆になっておるのではないか。これは製造業だけにつきましてもそういう傾向があるのではないかと思いますが、これはしかし、いま申し上げましたように、何もそれだからどうという、大いに論争をしなければならないほどの学問的な根拠をまだ私ども持っていないと思います。ですから問題は、現在の局面において、本年の経済というこの局面において、非常に賃金が上がっていって、そうしてそこから消費が非常に活発になる、あるいはことに中小企業、サービス業等においてこれは利潤になっておるというお説でございますけれども、それは事業主あるいは家族労働者のいわゆる給与的なものになっておる部分もあると思いますし、一般に資本費の増大になっている部分もあると思いますので、何か利潤というと、勤労者をつらい口にあわせて業主だけがたんまりポケットに入れておるというような印象を受けますが、そういうことではないのであろうと思います。で、そういうことも考えますと、どうもこの局面で、まあ労働団体が西欧並みの賃金水準ということを言われる気持はわかりますし、私どもも長期的にはそれをこいねがっておるわけでございますが、こういうたまたまあまり早足で歩けないような経済の局面で、それをひとつ一挙に実現をしようではないかということは、多少短兵急に過ぎて、むしろ結果としては実質賃金をそこなうことになるのではないか。こういうことは経済企画庁長官として所見を申しても私は差しつかえないのではないかと思います。で、木村委員の言っておられることはわかりますので、それを何もこの時期に言わなくてもいいだろう、春闘という問題があるときに言わなくてもいいだろうとおっしゃいますことは、一面でわからないわけではございませんが、経験的に見ますと、やはり春の賃金のべース・アップというものが、大体その年全体の給与所得、賃金所得の水準の上がりを決定するほとんど決定的な要素を毎年持っておりますので、今年が心配で、今年の問題について言うとすれば、やはりこの時期に申さなければ私はほとんど意味がないであろう。私が申しましても一向に世の中はやっていただけないということであればそれだけのことでございますが、申すとすれば、やはりこの時期でなければ意味合いが薄いのではないかというふうに考えております。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 そこが重要なポイントですよ。もう一度朝日新聞の社説を引用いたしますが、こういうふうに述べている、「政府は、賃金決定については民間労使の自主的な責任と交渉にまかすべきであるし、それが困難なら、中労委など第三者のあっせん、調停にまつという従来の態度を、この段階では堅持すべきであろう。賃金問題に限ったことではないが、政府が積極的に介入してくることは、労使ともまだ十分身についていない経済的な民主主義の態度の成長をはばみ、権力依存、官僚統制の傾向をつよめる懸念がある。」、こう言っておる。そこで私が言いたいことは、今度は経営者の側において、政府がそういう賃金を押えるような見解を発表すると、それに依存してほんとうの経営の合理化とか経営の努力によって物価の値上がりに影響しないような賃上げをも、政府のそういう介入に依存して怠る、そういう可能性も出てくるのですよ。ですから、これから開放経済体制に入って、きびしい、ますます経営者みずからの努力によって——それは非常にむだがあるのですから、たとえばシェアの拡大競争をやって非常なむだをやる、それから広告なんかもそうでしょう、非常なむだをやっている。また交際費等、そういうことについてもっと経営者みずからの反省を求めなきゃならない。政府が安易にここで賃上げを押える形において何か政府の権力に寄っかかれば、困難な事態に直面したときに安易に切り抜けられるのじゃないかという、こういう態度になってくる。ですから、いまの自由企業の原則のもとを貫くならば、政府がそういう態度で臨むべきではないと思うのですよ。むしろ労使にこれはまかすべきものですよ。それで、経営者が経営上どうしても、そろばんはじいても出せなきゃ出せない、また、経営者の努力によって出せるものは出せる、いろいろ場合によって非常に違うのでありますから、出せるところもある、出せないところもある、いろいろ違うのでありましょう。だからこの時点においてあなたはやらなければやる時期がない、チャンスがないと言うが、むしろこういう時点であるからこそやるべきじゃないのです。試練に耐えさせなきゃいけませんよ、経営者に。ですから、この点についてはもっと慎重にして……。それで、何か逆に政府はいままでは楽観的な態度をとっておった。ところが、いままでは政府の見通しと、特に国際収支については見込みが違ってきた、鉱工業生産も予想のように落ちない。それは政府のやはり見込み違いであって、こんなに設備が拡大されて損益分岐点が高くなって、押えようとしてもなかなか押えられない、そういうところに問題があるのであって、労働者に責任があるのではもちろんない。したがって、これは自主的な交渉にまかせるべきであって、政府がここで干渉しちゃいけないと思うのですよ。そうすると、いろいろな面についていろいろな権力依存の問題、官僚統制の感じを非常に強く受けますよ。池田内閣は、いままでの経済見通しが誤ったので、そこで今度は、日銀の二厘値上げだけでは、どうも国際収支の均衡は少し危ぶまれる、だから政治的なそういう賃金抑制という、労使間できめるべきそういう問題に介入して、官僚統制によって、そうして事態を切り抜けていこう、こういう印象をぬぐえない。朝日新聞の社説もそうです。これが今後そういう官僚統制の傾向を強める懸念がある。それは宮澤長官の今度の発言がきっかけになりますよ。あなたが音頭をとって官僚統制を強めるきっかけをつくったということになっていきますよ、客観的に見まして。ですから、この際は控えるべきである。それで、また第三者の調停というのがあるじゃありませんか。中労委なり、そういうものがあるんです。従来そういう態度をとってきたんです。これまでと非常に違うわけです。何か非常に政府は、官僚的になり非民主的な態度になり、国際収支の危機に直面して、政治的にファッショといっては少しことばが過ぎるかもしれませんが、どうもそういう方向にいくような感じがする。だから朝日新聞の社説も警告を発しておる。だからこれは率直に慎重に考えるべきですよ、そんなメンツにとらわれないで。私の言うことは間違いでしょうか。むしろこういう際であるからこそ賃上げ問題についても、企業努力によって出せるものは出せる、そういう自主的な態度に待つべきである。すぐに政府がここで助け舟を出すということは、これはとるべき態度ではない。慎重にひとつお取り扱いになったらいかがですか。これは池田内閣の長期安定政権の助けになるかもしれませんよ。ここでむしろ私はこんな助言をしないほうがいいのかもしれませんがね。逆説的な言い方ですけれども。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 御心配いただいておることがわからないわけではございません。よほど慎重に取り扱わなければならない問題だということもよくわかります。で、企業家の態度というもの、私も確かに、かなり不合理なところがございまして、考え直してもらわなければならないと思うことがたくさんございます。仰せのとおりだと思います。まあそればかりでもございませんけれども、公定歩合を上げたということは、やはりそういう意味での一つの契機ともなればという気持ちもあったわけでございます。一つ感じますことは、かりに企業家の態度が、企業家自身として非常に合理的であり、かつ労働問題あるいは従業員の福祉ということにも十分に理解があるといたしましても、性質上その企業家は自分の企業のことだけを、極端に言えば考えやすいのではないか、国民経済全体から見て云々ということは、これは一人一人の企業家にそれを求めることは、私は実際問題としてなかなかむずかしいことであろうと思います。たまたま私どもは公僕として、国民経済全体を考えなければならない立場でございますから、国民経済全体から見てこういうふうに思われると言うことは、これは国民に申し上げる義務もありますし、また申し上げて差しつかえないことだと思います。本質的に給与というものは雇用者と被雇用者との間の自主的な交渉できまると、これは大原則でございますから、その大原則に何もものを申すことはございませんので、第三者の仲裁機関もございます、それに何か申そうというのではございませんので、ただ、企業家として自分の企業のことだけでなく、国民経済全体のことも考えてほしいということを言わなければならない人間があるとすれば、それは私どもであろうと、こう思うのでございます。木村委員が御心配になっておられますような一つの傾向というのは、私もわからないわけではございません。けれども、いまの憲法あるいは社会制度のもとで、それがいまおっしゃいましたような官僚統制に進んでいけるかといえば、とうていそういうことは考えられませんので、御心配の一つの傾向というものはわからないわけではございませんが、そういうことは、もうこの世の中では起こってもなりませんし、とうてい起こり得ないだろうと私は思うのでございますが、しかし、いずれにいたしましても、慎重に考えろとおっしゃいますことは、私にもよくわかります。慎重に考えてみたいと思います。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 慎重にということですね、大切なんですが、この際は、私はやめるべきだ、大体労働大臣が私に答弁されましたね、その線が正しいのじゃないかと思うのです。ですから、労働大臣の立場を尊重するというその線を、やはりお貫きになることがいいんではないかと思うのです。これは労働行政の点からいってもそうですし、そうでないと、労働大臣の立場は非常に苦しくなりますよ。そうでしょう。政府全体としても慎むべきだと言っているのです。少なくとも春闘をやっている最中には、そういうあれを発表すべきでない、こういうふうに言っているのです。ですから、それが一つと、もう一つは、さっき長官もはっきり言われましたが、まだ日本の場合、これはむずかしい問題ですが、賃上げと物価値上げと生産性の関連性について、その相関関係について、これは日本ばかりではございませんが、非常にむずかしい問題ですよ、この相関関係については。ですから、ほかの官庁はと言っては語弊があるかもしれませんが、少なくともやはり経済企画庁としては、ある程度理論的な裏づけがあって、そういう発言をなさるならばいいんですけれども、科学的なそういう裏づけがまだないのでしょう。ないときに、そういう御発言をするということは、ぼくはいかがかと思うのです。ですから、もう少し時期を置いて——それは特別の審議会を設けるとか、そういう形式をおとりになってもいいのですし、また、おとりにならなくてもいいのですが、もう少し諸外国なりあるいは日本の実態をもっと検討されて、その裏づけに基づいて発言をされる、それならば、これは裏づけがあるのですから、今度これは論争になるわけです。そうして正しい論争が発展すればいいのですが、まだそういう科学的な根拠は、長官も正直に——その点、長官は非常に良心的な面があると思うのです。科学的とか、実証的な裏づけとか……。非常にある面では長官は正直ですよ。これは別におせじで言うのではない。いろいろ発言を聞きまして、非常に良心的に正直にお答えになる面がある。そうかと思うと、ちょっと飛躍して、どういう政治家の範疇に入ってしまうのか、何かそこのところは飛躍するのです。そこは、長官の言わんとするところはわかります、いまがチャンスだということ。しかし、これは私がこれまで述べたような論拠から、いまやってはいけないのだ。そういう立論というものもあるわけなんですよ。ですから、少なくともこの春闘の時期には、労働大臣の考えていられる線で一応ここはいかれてそうしてもっと具体的な実証的研究を積んで、そうして政府の見解を発表される、これが正しいやり方だ。まだ客観的な、理論的な裏づけがないのに発表されたということは、いかにも政府がこれに介入するというふうに見られるわけです。その点、むしろここで政府が見解を発表しないほうが、労働行政を今後やっていく場合にもいい。これは労働大臣は非常に苦境に立ちますよ。そういう点もありますしね。これは延ばすべきではないかと思うのです。これはひとつ率直に長官が決意されれば、私はそうなると思うのです。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 私どもの三十九年度の経済見通しというものでは、実質の成長率を七%ぐらいであろうと考えておるわけでございます。それが国民経済全体のいわば生産性ということに、言って言えないことはない。国民経済全体の生産性の向上を考えるとすれば、やはり実質成長率というもので表現するということになるのであろうと思います。それは一つのものを考えるめどに、私としてはやはり使っても差しつかえないであろう。この見通しが間違っておるということになりましたら、それはまた別問題でございますが、一応そういうめどをやはりもって経済を運営していくという立場はございますわけで、だからといって、給与がすぐ七%とか何とかということを申すわけではございませんけれども、どっちかといえば、国民経済としては、ことしはあまり大きく成長をすることは好ましくないという考えは持っておるわけでございます。そういう見地からものを考えておるわけでございますが、しかし、よほど慎重にやれと言ってくださいますのは、これは御親切な御注意だということも私もわかりますので、よく慎重に考えてみます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 ちょっといまの問題に関連して。春闘の中で政府の見解を発表する——ところが、この数年来、設備投資の増強で企業家が生産性を向上さして利潤を上げた部分、その利潤部分を価格の引き下げに一部当てることについて、政府がかつて企業家に勧告したようなことがあるでしょう、要望……。望ましいというようなことは、答弁では言われましたが、今度の春闘に対して労働者側に与えるような影響を持つ形で、少なくとも企業家にそういう姿勢で立ち向かわれたことはないように思うのですが、その点はいかがですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) その点は、昨年来でございますが、いろいろ消費者物価の問題などを研究しておりまして、その結果を閣議できめたわけでございますが、その中でも、やはりいわゆる所得政策とまだ本格的に申し得るものではございませんけれども、企業家に対しても、利潤があればその一部は価格の引き下げという形で消費者に均てんさせるべきであるということは、正式に閣議の了解として申しておるわけでございます。また、いわゆる管理価格等につきましても、この節は、以前に比べましてかなり踏み込んでものを言ったりしたりしておるわけであります。したがって、政府のそういう態度というものは、企業家も当然に知っておられるというふうに考えております。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 十分慎重にお考えになるということは、大体まあ私としては、この際は控える、大体労働大臣のお話の線でいかれる、そういうことを強く要望いたします。また、あなたは国際会議に行かれるそうですが、帰ってこられてから、これはもう少し激しく論戦をしなければならぬと思いますが、そういう客観的なやはり裏づけがなくて経済企画庁が軽々にそういう発言をすることは、宮澤長官の将来のためにもよくないと思います。ほんとうですよ。いま宮澤長官の値打ち——非常に科学的にものを考える、学問的に考える、確かにそういう点、われわれは評価しているのですからね。非科学的な発言、それで音頭とって——科学的な根拠があって、確信があるならいいですよ。ないのにやることは、将来にとっては私は好ましくないと思うのですがね。ほんとうにこれはお互いに全体の経済なり国民生活の安定を憂えていることには違いないと思いますけれどもね、立場は違うけれども。そういう点は、やはり真剣にひとつ考えていただきたいと思います。  それから国際収支についてお伺いいたします。もう大体三十八年度末も近づいてまいりましたが、三十八年度の国際収支の見込みが、大体もうわかったと思うのです。それで、この輸出はとにかく、輸入は大体どれくらいになる見通しでございますか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 前回も五十七億五千万ドルでおさまることは困難ということを申し上げたわけでございます。そのことは再度ここで申し上げられると思うのでございますが、はたしてそれがどの辺までいくであろうかということは、依然として各省ともまだ具体的な見通しの合意にも達しておりませんで、一億五千万ドルくらい上回る、少なくともそのくらいは上回るだろうということは、私はほぼ間違いないと思いますが、それがどの辺であるかということをもう一つ具体的に申し上げるだけの各省の意思の統一がまだございません。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 そうすると、三十九年度の輸入の見通しも六十二億ドルということになっていますが、三十八年度の見込みは大体一億五千万ドルくらい予想よりは上回るということになってきたので、ひいて三十九年度の輸入も上回ると思うのですが、きのう通産大臣が、三十八年度五十九億ドル、ちょっと割るかもしれないが、大体それくらいの見当じゃないかというお話でしたね。そうしますと、総合収支で九千九百万ドル、これは資本収支のほうがどうなるかわかりませんけれども、大体九千九百万ドルに一億五千万ドルくらい加えたものが総合収支の赤字、こう見てよろしいのですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) どうもそうではないようでございます。自慢できる話でもないのでございますけれども、やはり資本収支のほうがかなりいいと申しますか、流入が多うございまして、結果としては年度末の外貨保有はやはり十八億ドルくらいを前後する。これは見通しでは十七億六千四百万ドルと考えておったわけでございますが、それを多少上回るのではないか、どうもそのようでございます。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 三十九年度については、これはまたいろいろな、二厘公定歩合を引き上げたということも影響してくると思うのですが、前に私は——いまになって言うのはおかしいのですけれども、大体日銀が五十九億ドルくらい予想しておったわけですね。そうして今度は三十八年度が予想より上回るから、今度はそれを基準として三十九年度を推定していけば六十二億ドル以上になるんではないか。そうなると、六十二億ドルの輸入にとどめるためには、成長率をもっと下げなきゃならぬじゃないか。実質五%くらい下げなきゃならないのじゃないか。こういうふうに日銀では見ているかどうかということを話したわけです。そうすると、任意に引き下げたということは、実質成長率を大体五%くらいに下げるという、そういう見通しに変わってきているんじゃないかと思うのです。七%ではなく五%に下げないと六十二億ドルにならぬ。二厘引き上げということは、ひいて七%を五%に下げるということを意味しているように思われるのです。その点どうなんですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 三十八年度の輸入のベースが、予測よりもかなり高くなりましたときに、低いベースで考えておった三十九年度の六十二億ドルというものが低過ぎるのではないかという御質問はしばしばございますわけです。で、そのことを考えますときに、経済が直線的に動いていくというふうに考えましたらそういうことになるでございましょうが、実際には、過去何回かの経験の中に、調整期になりますとかなり輸出のドライブがかかったり、また、輸入が目立って落ちたりいたします。したがって、これから一年の経済が直線的な伸びをするというのではないのではないか、この点は、しかしいずれも、しかと申し上げるわけではございませんけれども、調整期にはしばしばそういうことがございますので、したがって、かりに三十八年度が五十九億ドルあったら、三十九年度の六十二億ドルは低過ぎるではないかということには、必ずしも私はならないだろう、一ぺん申したからこだわるという意味ではございません、こだわるという意味ではございませんで、必ずしもそういうふうに、過去調整期のときにものが動いていないということを申し上げておるわけでございます。そこで二厘引き上げたということで、実質成長率の七%というのは実は五%くらいになるのではないか——なるのではないかというお尋ねではなくて、そのくらいでないと六十二億ドルではやっていけないのではないかとおっしゃったのかもしれませんが、したがって、五%の成長で現実に済むかどうか、政府として、金融操作以外にどれだけの成長率を調整いたします武器を持っているかといえば、御承知のように、そういろいろなものを持っておるわけではございません。ですから、一般的に経済がやや沈むと申しますか、静かになると申しますか、そういうことを期待をしておるわけでございますが、それでもなお三十七年度の経験からいいますと、五%という成長率ではなかったわけでございますから、そこはやはりなかなかそういうことにはならないのじゃないだろうかと思いますが……。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 もう私の持ち時間が少なくなりましたので、簡単に二つだけ伺います。  一つは、国際収支改善に対してですが、前に長官が言われましたように、各省集まって総合的に検討されるいよいよ第一回の会議を開いたようでありますが、時間がありませんから端的に伺いますが、いままでの六十四万トン、これは財政資金でまかなう分ですね、六十四万トンベースを百万トンに引き上げる、これは社用船は含んでいないと思いますね。百万トンですね、そうすると財政資金がどうなんですか、三十九年度でやると。そうしますと、財政資金が足りなくなるのじゃないか、もしそっちのほうに向けますと、ほかのほうの財政投融資計画等にかなり影響が出てくるのじゃないか、こう思うわけです。その点はどうなんですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 昨日、一部の新聞に経済閣僚懇談会で、三十九年度の自己資金船を除きますと、建造を百万トンにすることをきめたという報道がございましたが、これは実は多少不正確でございます。そういう議論が相当出たことは確かでございますけれども、かりにそういうことをいたすとしますと、もちろん所要の財政資金を何かの形で追加しなければならないという事態になり得る、おそらくなる、そういうことに考えますので、もう一ぺんそれを次回の経済閣僚懇談会までに検討してみよう、こういうことで昨日は終わっているわけでございます。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 それから、最後に伺いますが、政府の国民所得の倍増計画ですね、高度成長政策は、前に衆議院で池田総理が、どなたかの質問に答えて、とっくにこれは転換しちゃっているんだと、そういうことを言われましたが、いつ、そういう、はっきり、転換させるということを明らかにしたのか、わからぬうちに、そういう答弁をしておりましたが、倍増計画については、これは、まだ撤回はしてないと、この線でいくと、これは依然として、方針としてまだ変わってないんだと、こういうふうに理解してよろしいですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 倍増計画に、いろいろ述べております思想そのものは変わっていないと思うのでございます。そこについておりますデータは、これはだいぶん、事実上誤りがあることがはっきりしておりますものもございますが、思想そのものが変わっておるというのではございません。倍増計画を実施いたしますときに、三十六、七、八でございますか、その三年間は、大体九%ぐらいの成長でいこうということが閣議で決定をされておりまして、したがって、その三年間は、そういう目標を持っておったと、しかし、今度明年度、三十九年度からは、そういう方針はそこでなくなるわけでございます。それならば、三十九年度からあと三年間なら三年間、どういうふうにいくべきかということを中間検討で、ことしの秋ごろまでにいたすわけでございます。したがって、倍増計画そのものが、全部四十三年度までにあらゆる面で達成し得るかというと、そうとも言い切れませんので、あと二年ぐらいがさらに、中間検討のあとに残ることになるわけでございます。いま、そういう中間検討の作業を五年間についてやっておるわけでございます。基本的な思想がなくなったというふうには考えておりません。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 その基本的な考え方というのは、たとえば金利政策、金融政策、方針、あるいは税制、税負担率、そういうものについて変わらないということですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) それは私は、こういうことだと思います。たとえば、金利についてはわが国の金利は、かなり高いので、長期的にこれを下げていかなければならないというような基本的な思想は変わっていないと思いますし、また、今日、冒頭に申し上げました、消費生活を充実することによって、総需要をふやすことによって、生産規模を上げる、生産コストを下げるという考え方も変わっていないと思います。租税負担率につきまして、これは三年間倍増計画をやってまいりまして、公共投資が過去の蓄積がないせいもあって、民間の経済活動よりはるかにおくれてきておるということは、相当はっきりいたしてまいりました。したがって、そういう公共的な投資を、これからよほど続けていたさなければならないということは明らかでございますが、その際に、それを、そればかりでございません、他方で振りかえ所得の問題がございます。つまり、社会福祉に関するもろもろの施策というものも推し進めていかなければなりませんが、それらのことを国民の租税負担だけで行なうべきか、あるいは投資の種類によっては、いわゆる建設的な性格を持つ信用創造をいたすべきかというようなことは、これは一般論としては問題になると思います。けれども、当面、わが国でそういういわゆる公債政策というようなものを大幅にやってよいとは考えられませんので、勢いそれが租税負担の増という形になってくるということは、これは一つの、やはりそういう傾向にあるのではないか。問題は、福祉国家を建設するという考えに立ちますときに、そのような租税負担は、やはり負担能力のあるものに負担させてもいいと、それがある意味で、福祉国家の理念でございまますから、租税負担率がかくかくでなければならないというようには、必ずしも私は考えません。問題は、そのようにして集められた租税が、いかに国民全体の福祉のために使われるかということによりまして、その点はやはり考えていくべきではないか、こういうふうに思うわけであります。

木村禧八郎日本社会党

○木村禧八郎君 これはもう時間がございまんから、あとでまた総括質問のとき質問したいと思いますが、ここに書いてある租税負担率、金利政策等、最近の政府の考え方ですが、これは非常に違うのですよ。ですから、全くこれと離れちゃっているのですね。ですから基本的な考え方が違ってくる。成長率だけの問題じゃないのですよ。いままで成長率ばかり、かなりそれを問題にしましたけれども、中身が非常に違っているのですよ。ここに書かれていることと、実際に行なわれ、また政府が最近租税負担率についても言っていますが、そんなことちっとも書いてありませんよ、これにはね。これには税制調査会の答申そのとおりが書いてあるのですからね。これは国民に公約してあるから私は非常に問題だと思う。それはまた別の機会に伺います。  最後に一つだけ、これでおしまいです。中小企業の問題につきまして、所得倍増計画をつくるときに、中小企業の小委員会というものをつくりまして、そこで大体昭和四十五年の軽工業と重工業との比率をどの程度にきめるかということに基づいて、そうしてそれに基づいて中小企業の設備資金とか運転資金をどのくらい配分するかという、そういう作業をしたわけです。ところがこれについて、中小企業小委員会で提案したのだけれども、それが削られちゃっているのですね。それで小委員会の案よりも、政府のほうの案が、重工業の比率を非常に大きくしちゃっているのです。それで小委員会の案によると、設備資金なり、あるいは運転資金を中小企業に対してかなり大幅に認めるという線であったのを削っちゃってあるのですね。そのいきさつですよ。私は中小企業の小委員会の案どおりで行っていれば、私は最近の中小企業のこの金融難というのは、こんなに深刻にならないで済んだのではないかと思うのです。重化学工業化もこの答申よりも政府は非常に強化しちゃっておりますよ、諸外国よりも。この点がやはり中小企業問題を一そう深刻に金融面からしてさした一つの——全部とは言いません、一つの大きな原因ではなかったかと思うのですが、そのいきさつを述べていただいて、そうしてやはりこの軽工業と重工業との比率について今後再検討する必要があるのじゃないかと思うのです。これは中間作業ですか、において、その点はどういうふうに考えられているか、この御答弁をいただいて、私はもう再質問いたしませんから、これで終わります。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 倍増計画をつくりますときに、そういういきさつがございましたことの詳しいことは私は実は存じません。やはり考え方としては輸出を伸ばしていこうと、そうして先進国型の経済に近づいていこうという意識が、やはり二重構造の上部構造をとにかく早くつくろうというふうに進んでいったものであろうと思います。で重化学工業化は、国全体を重化学工業化に近づけていこうということは、それはまあそれ自身にはおそらくあまり御異議のおありになる方はおられませんでしょうし、また、国連の世界貿易会議なんかの考え方の背景にありますのも、先進国と後進国との間でそういういわゆる分業をやれというふうな考え方のようでございます。ですが、ここへきましてその上部構造を急ぎましたために、下部になっております構造がはなはだおろそかにされておりまして、その間にギャップが出てきたということはもうお気づきのとおりでございます。でございますから、中小企業及び農業に問題があるわけでございますから、中間検討ではそれらの下部構造をどうやって急速にいわゆる生産性を上げる姿に持っていくか、こういうことが当然にこれは一番この際大きな課題になる。第二ラウンドというようなことをかつて私申したことがございますが、当然中間検討ではそれに重点が置かれた検討がなされるものというふうに考えます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 渡辺さんがあとだいぶ御質問があるようでありますので、私は一点だけお伺いいたします。  いまの木村さんの御質問にも関連をすることですが、また、先ほど企画庁長官の御答弁の中でも、たとえば労働者の実質賃金が実際にはそこなわれるようないままでの経済成長のあり方は、企画庁長官としても大いに考え直さにゃならぬと、こういう先ほど木村さんに御答弁があったのですが、それに関連をして、最近一部に今後の成長率は七%以内に押えたいというような見解を、直接述べられたかどうか、そういう報道が伝わっておりますが、率直に言って所得倍増計画の初年度から三カ年間九%、それから十年平均七・二%、これがその七・二%と、七%以内に押えたいということとは、そうパーセンテージでいえば大差があるわけではないのですが、問題は、いままで総理が高度成長は依然として続けるという答弁を繰り返されておるが、最近は超高度から高度成長である、こういう表現に変わられた。それから今度は、その高度成長か安定成長かという問題もあるわけですが、私はそういうことばのあやはたいして意味ないと思うのです。そんなことはわれわれ問題にするわけではありませんが、しかし、いままで一般に考えられてきた、一般に与えられてきた印象、また、国民が受け取ってきた考え方から言うと、やはり一〇%あるいはそれ以上にならなければ好況とは言えないという、六、七%というのはなれっこになつちまった、そういう傾向はぬぐい得ないと思う。そこで、まあかりに七%以内くらいで、いま木村さんの御指摘では、場合によったら三十九年度は五%くらいになるのではないかというお話も出るくらいですね。そういうことになっていくとすれば、単にいままでのような金融、財政上の問題でなしに、予算編成——もちろん財政投融資の問題も含めてですが、それはかなり基本的な姿勢を変えていかないというと、そういうことにならぬのじゃないか。だから平均でありますから、ときには一〇%以上はね上がったり、五%くらいにダウンしたり、ならせば七・二%だと、これはできているのですね、いま。だからそういうことがいろいろな問題を実は起こしておる。ですから七・二%程度ということに問題があるのかどうか。それもあるかどうか私しろうとですからよくわかりませんが、むしろ問題は、ものすごく高過ぎたりあるいは急激にダウンしたり、この振幅の度合いですね、これも一つの非常に大きな問題だと思う。それと御承知のとおりに、設備投資中心のいままでの経済成長率、だから今後、社会保障とか、あるいは社会資本、公共投資等も含めてどうしても必要不可欠な要因というのはたくさん存在しているわけですが、それはそれとして、とにかく七%ぐらいに押えるとすれば、かなり経済構造上の問題なり、財政金融上の運営がいままでとよほど変わらないというと、平均して七%程度の線に押えるということは非常に困難じゃないか。そうなってくると私はことばのあやを問題にするわけじゃないが、まさしく安定成長ということばの表現のほうがむしろいいんじゃないかという感じがするわけです。特に外国の、一ころイギリスやアメリカなんかで二、三%程度というときに比べれば、六、七%でも高度成長には違いないけれども、しかし、最近では五、六%ということも西欧でもあり得るのですから、そうなると日本だけが特別に高度成長高度成長と言って肩を張る必要は毛頭ない。むしろ安定成長なら安定成長としてこの振幅の幅を縮め、そうしてそういう中でやはり生産力増強に見合う消費というものもある程度確保しながら国民大衆の福祉をはかっていくというような形に——政府じゃあるいは移行しているというかもしれぬが、そういう移行の性質をいよいよ深めて、それに基づく財政金融上の問題あるいは予算編成上の問題がいまや単なる成長というよりももっと深い意味を持って取り扱われなければならないのじゃないか、こう考えるのですが、いかがでしょうか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 基本的には羽生委員の仰せのとおりだと思います。過去において十何%というような成長がございましたのは、これはやはり先ほど木村委員の御指摘になりましたように、重化学工業を中心とした設備投資が非常に多く行なわれた。その結果ああいうたいへんな成長率があらわれてきたと思います。大企業を中心とするところの設備投資はまずまず——まだ幾らかごさいますけれども、かなりいわゆるリノベーションというものが進んだと思いますので、これからは設備投資にいたしましても、中小企業とか、農業とかいうほうへ国の財政も力を入れていかなければなりません。そういたしますと、おのずから中小企業、農業への投資は成長率となってあらわれるときには小さなものとしかあらわれないようになるだろうと思いますから、相当時間のかかることでもございます。また、社会福祉施設、社会福祉政策のためのことに金を使いますのも、これもどちらかといえばあまり成長率に寄与する種類の金の使い方ではございません。そこからもやはり高い成長率はおそらくは生まれてこないようなことになるであろう。で、公共投資だけが少し残るわけでございます。この点はやはりかなり成長に寄与すると思いますが、しかし、全体が中小企業、農業向けの投資あるいは社会福祉の施設といったようなものでございますから、十何%というような成長率が今後再々あるということはおそらくないと思いますし、また、実はあっても困るというぐらいに考えるわけでございます。したがって、財政としてあるいは経済全体の運営としても七%あればけっこうこれは高い成長でございますから、もうそれ以上のことを望むこともございませんし、また望まないほうがいいと、ことに昭和四十三年ごろになりますと労働の需給関係がにわかに一変するに違いないと考えますので、そのころになりましたら、七%でも非常に高い成長率であるというふうに思われる事態が来るのではなかろうか、こう考えております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 そういうことから、いまの所得倍増計画でございますね、計画の再検討をするようですが、私はやっぱりアフターケアなんかという段階ではなしに、もう改定だと思うんです。先日もちょっと農業問題に関連してほかの委員会でお尋ねしましたが、予算の第三分科会で、赤城農林大臣にそれに関連してお尋ねした際にも、やはりそういうことかもしれぬと言っておられましたが、ずっと私考えてみると、やはりもうアフターケアということで片づく性質のものでないところへ来ているのじゃないか。もう改定と、考え方は変わりなくても、先ほどお話がありましたが、それはそれとして全体としての中身というものはもう相当根本的に近い改定を必要とするのではないか。これも呼び方なんかどっちでもいいようなものですけれども、しかしやはり相当政府が、ことばでごまかされますから、それで申し上げているわけですが、私は、やはり改定という時期に来ている、そういう感じがありますが、いかがでありますか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 重点の置きどころは確かに最初に考えましたころと非常に違ってきていると思います。ただ、改定といたしませんでしたのは、最初に掲げましたいろいろな目標が、なお四十三年までいきましても達成できない部分があちこちにあると、こういうことでございましたので、あえて改定ということを申さなかったわけでございます。しかし、中間検討そのものは、もう一ぺん全部問題を見直し、考え直すくらいな気持ちでいっておりますし、また、それで続けてやっていきたいと思っております。

渡辺勘吉日本社会党

○渡辺勘吉君 地域格差を是正するということに対する政策要求というものは、今日ほど高まっておる時期はないと思う。そのことが池田内閣の想像を絶したものとなっておるということをまず指摘しなければならぬわけです。そういうことを指摘する客観的な背景をなすものとしては、後進地域から大都市に人口の流出が地すべり的にきわ立った動きを示しておる。そういう流れ方が最近特に加速度的に進んでおる。それから後進地域に共通する地方自治体の財政の窮乏というものは、過般の白書にもあったように、そのことがまた相対的に中央依存度を高めておる。あるいは先進地域と後進地域との交通網なり、あるいはマス・メディアの発達によって接触が非常に密着したことによる後進地域住民の格差意識が非常に高まってきておる。また、県民一人当たりの分配所得指標による格差拡大ということが、逐次後進地域住民一般にこれが認識が浸透してきておる。それが格差是正という政策課題に対して、目に見えない大きな力で、エネルギーとして拡大しつつあることは、客観的に認めなければならぬと思うのです。そういう認識が、はたして池田内閣におありなのかどうか。認識がかりにあったとしても、私は、そのことは認識に終わっているだけではないか。なぜかなれば、ごく最近の時点をとっても、それらの地域格差に対する施策はきわめて消極的であり、従来同様に大都市に社会資本が重点的に投下され、大企業擁護の政策が一そう強化されておるということであります。まあ、これは私、最近各国の革命史を読んで見るのですが、そこで、私が受け取った共通的なことは、時の支配権力者が豚のごとく鈍感で、権力に酔いしれてくる。一方革命のエネルギーがひたひたと押し寄せておるということを、列国の革命史を読んで共通的に受け取れるわけであります。これは、まあ各国の例でありまして、だからどうということを申し上げるつもりはないわけであります。地域格差を是正するということは、これは国会でも池田総理が所信表明の中にもしばしば述べておられたことでありますけれども、このことは単に人間の能力を開発する、あるいは経済発展に寄与するばかりではなくて、過密都市解決に対する国の基本的な政策路線でなければならぬと思うのです。そういうことについて、一体それを推進する責任をお持ちの経済企画庁長官としては、どういう認識と、どういう具体的な、基本的な方針でお臨みになっているかをまずお伺いしたいのであります。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 地域格差の是正ということは、国民各層の中における所得格差の是正ということと同じように大切なことだと思っております。で、全国総合開発計画というものを立てました際にも、やはり地域格差是正ということが基本の考えになっております。そして、具体的には新産業都市でありますとか、あるいは低開発地域の開発のための特別な施策でありますとか、そういう施策を現に具体的に進めておるわけでございます。しかしながら、この地域格差というものは、やはり長年、きわめて長い間の歴史的な所産でございますから、これが非常に急激な、すぐに是正できるという性格のものではもとよりございません。しばしば地方の格差の低いところに住んでおる住民が、ただいま御指摘のように、そういう意識に目ざめてまいりまして、何か急速にその格差の是正が行なわれるという、一年とか、二年とか、三年とかいうことで考えておられるのは、やはりこれは何百年という歴史の所産でございますから、そう簡単には参らない。しかし、政府の政策課題としては、この際わが国の経済が興隆期にありますこの際に、やはり地域格差の是正というものに本格的に取り組もうと、それは積極面からそうでございますし、消極面から申しますと、東京とかあるいは大阪とか、いわゆる過度に密集した地帯の経済なり産業の運営がもう非常に現実の問題として困難になってきておりますので、自然に条件のもう少しいいところへ経済なり産業が動いていこうと、消極面からはそういう動きになっておりますが、ちょうどこの機会をとらえて地域格差是正を政策上の非常に大切なことの一つとして押し進めていこう。現実にまたそうやって、かなりおくればせではございましたが、やり始めたっもりでございます。

渡辺勘吉日本社会党

○渡辺勘吉君 地域格差是正には、当然これは政策的費用が非常にかかり過ぎるということと、しかも効果がなかなかあがりにくいということは、私も認めるにやぶさかではないわけであります。確かに後進地域の経済発展には、たとえば工業化にいたしましても社会資本の投入が署しく膨大になり、しかもその効果は短期的に期待できない。これは長官もいま何百年来の歴史の経過の中にと、短期的に私も期待することは無理だと思います。思いますけれども、こうした後進地域の開発ということには投資効率が低いという判断の基底をなすものとしては、判定基準というものが、すぐに効果を期待する短期的評価があるということを政府でまず払拭していただかなければならないのじゃないか。きわめて長期展望の中にそれらを国民経済全体の中で位置づけていくということが必要ではないかと思います。また、後進地域開発が持つところの機能として、過大都市抑制効果というものが忘れられておるのではないか。また、後進地域開発というものが、おくれたその地帯における資源というものを開発するということを、忘れたとは言いませんが、現実に後進地域開発という政策課題に取っ組んだ場合に、非常にそれが軽視されておるというふうに理解せざるを得ないと私は思うのですが、長官のこれに対する御意見はいかがですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申し上げました具体的な最近の施策の効果が、特に地域格差がはなはだしいと思われますたとえば東北地方のようなところには、特殊会社を、もう何十年になりますが、置きまして、特別に地域開発、産業振興というものをやってまいっておるわけでございます。これはある意味で国が経済性を多少飛び越えまして特にその地方の開発をしようということではかって今日に至っておるわけでございます。そういう意味では、地域格差是正ということは、経済性という面からいえば、必ずしも経済的なものでないということはこれは十分考えられることでございますが、しかし、それを越えましてやはり格差の是正ということは大切である。のみならず、国なり地方公共団体の手によって、ある程度の先行投資をいたしておきますれば、今度は、企業の上から見て経済性がそれだけ高い。私企業に経済性を無視して投資をさせよということにはこれはまいりませんので、やはり国なり地方団体が力を合わせて先行投資をしていって、そうして、そこに企業投資をすることが経済性の面でも考え得ることであるというところまで持っていきたい。これは、具体的には新産業都市などの考え方がそういう考え方でございます。

渡辺勘吉日本社会党

○渡辺勘吉君 いま長官が触れられたように、東北地域に限ってみましても、この前の東北開発審議会には長官は都合が悪くて御出席にならなかったけれども、あの政府から示された東北開発促進計画というものには、これは与野党を通じて大きな問題が出て議論が沸騰したわけであります。私はあの計画の中で、いま長官が言うたことに対して、問題を具体的に指摘をしてお尋ねをいたしたいのでありますが、たとえば、あの計画の中には目標が全国平均の九〇%台から八〇%台に引き下げられておるということ、また、いま長官が触れられたように、新産業都市計画というものがそれ以外の地域の開発については非常に顧みられていないということであります。確かに作文の中にはあるけれども、現実には、全体を通じて読み取る場合には空文的なものにすぎないという受け取り方をせざるを得ないわけであります。  第三点としては、あの計画には投資計画が姿を消してしまっておる。実質的には開発計画ではなくなっておる。具体的な政府の、いまおっしゃった先行投資国による先行投資というものが一体あの促進計画の中に、いかに長期展望の中に、全国の立場において東北に投下されるかということもない。こういう点を私は指摘をいたしたいのでありますが、それは一体どういう理由に基づくものでありますか、御所見を伺います。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 渡辺委員の御指摘のことは、確かにそういうきらいがございます。で、これは基本的には私は地域格差是正ということが、何といいますか、政府の関係の各省にもうひとつ徹底し切っていないというふうに考えるわけでございます。たとえば、鉄道を敷くとすれば、やはり採算のいいところに敷こうというふうに考えますし、道路にいたしましても、まあさしずめ必要なところ、効率の高いところというふうに考えられやすいわけでございます。それでございますから、まあ、新産業都市のようにはっきり基本計画を立ててまいりますと、これは具体的に投資の計数が明らかになってまいりますけれども、大きな、東北開発促進計画というようなもので、これは数字をはめ込もうといたしますと、かなり実は関係の各省から、正直を申しまして、抵抗がございます。で、これはやはり認識がだんだん深まっていくという、これ政府全体、まあ閣僚から現実に事務をいたします者まで、全体がだんだんそういう認識を深めていかなければならないのだと思います。で、いまの御指摘の具体的な問題について申しますと、いま所得倍増計画の中間検討をやっております。これが済みますと、各公共投資別の投資計画が、国全体の総額として出てくることになりますので、それを今度は地方別に割り振っていく。その時期には計数的にそれを具体化していくということになろうと思うのでございますが、現在ちょうどその全体の投資計画が全部が再検討の段階に入っておりますこともありまして、今度計数が盛り込めなかった。しかし、前に申しましたような理由も確かにございますので、これはもう少し政府全体が現実に行政の上で認識を深めていかなきゃならない問題だと思います。

渡辺勘吉日本社会党

○渡辺勘吉君 まあ、池田内閣の中で知能参謀として大きな役割りを発揮される宮澤大臣の御答弁でありますが、私は冒頭に申しましたように、池田内閣全体としてこの地域格差是正に対する政策要求というものが、その現実の要求という声なき声の大衆のエネルギーというものは、池田内閣が認識している以上の現実であるということを指摘したのも、いま大臣が言うたように、なお各省の間でもそういう認識に立っていないということと、これは遺憾ながら一致するわけであります。  そこで、私は、限られたきょうの分科会でありますから、具体的課題の一つであるむつ製鉄問題にしぼって具体的に政府のお考えを、伺いたいわけであります。御承知のように、このむつ製鉄株式会社は、東北三法の趣旨にのっとって、東北の地域開発の目的をもって、むつ市に工場を置いて、下北半島の砂鉄を原料とする特殊鋼の会社を政府と民間の共同出資によって設立することを、政府は去年の三月二十日に認可を与えておる。この認可に基づいて四月一日にむつ製鉄株式会社設立総会が持たれ、十日には会社の設立登記が完了しております。ところが、その後、今日に至るまで、一年間も経過をしておるのに、正式の事業認可が行なわれておらない、事業がその緒についていない、こういう実態であります。このむつ製鉄のことについては、二月二十五日の衆議院の予算委員会の第二分科会で、淡谷委員と川俣委員が取り上げておりますから、その際と重複を避けてお尋ねをいたしたいのであります。そこで、むつ市に工場を置いて特殊鋼の製鋼事業をやるという方針に変わりはございませんか、どうですかということです。変わりはないとするならば、遷延、今日まで事業認可をしていないということは、一体どういう理由に基づくものであるかを、まずお伺いをいたします。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 少し詳しくなりますが、お許しをいただきたいと思います。むつ製鉄を昨年の三月に認可をいたしたわけでございます。これは、民間の企業と一緒になってやることが必要であると考えまして、ずいぶん相手をさがしておりましたが、幸いにして、三菱グループが一緒になってやっていいということになりまして、そういう形で会社が発足をいたしました。ところが、ちょうどそのころから、母体でありました東北開発会社の経営の内容が、従来から決してよくはなかったわけでございますが、非常に悪くなっていることが、はっきりいたしてまいりまして、御承知のように、ただいま御審議願っております予算案に、再建資金の計上をお認めいただくことをお願いしているわけでございます。これは今後数年引き続いて、できますればお願いいたしたいと思っているくらいでございますから、母体が、そういうことで非常にいたみまして、そのことが、直接間接に一つ関係がございます。  それから、特殊鋼の業界がかなり不況になりましたことと、さらに、より採算のいい特鋼の製造を他の民間の会社が、考えているというような問題が出てきたりいたしまして、そこで、当初ぼんやり考えておりましたむつ製鉄の生産規模なり生産計画というものがそのままでは採算的にも非常にむずかしいということになりまして、やるとすれば、もう少しよけい資金を必要とするのではないか、余分な資金を必要とするのではないかということを会社当事者が考えるに至りました。そういたしますと、その出資を、従来の例によりますと、民間会社と政府とが共同でいたすわけでございますけれども、民間の会社側にはその増加資金を負担する用意がないということに、片方でなってまいりました。したがって、当初考えておりました計画の規模というものを改めなければならないが、それだけの資金的な用意が民間の会社側にはないという問題が一つ出てまいったわけであります。それらのことから、むつ製鉄の事業を始めます際に、やはり、将来いつまでも赤字であるということではやってまいれないのでございますから、決して早くもうけろとは申しませんけれども、ある段階からは採算に乗ってこなければいけないわけでございます。そういう環境の中で、どういうものにすれば採算に乗ってくるか、その資金手当てはどういうふうにすればいいかといったようなことが、今日まで最終的な結論を得ないままになっておる。長くなりましたが、大体そういう経緯と承知しております。

渡辺勘吉日本社会党

○渡辺勘吉君 いろいろな理由を伺いましたが、私は、賢明な宮澤さんが企画庁長官になられて、かなりの年月も経ておる。東北会社自体のそういう経理の内容というものも御存じであったと思うのであります。それから、この会社が設立するに至るまでの経過は、政府としても認可を与えるまでにはかなりの検討を重ね、吟味をし、それらを経て認可をされた経過があります。それが、認可をし、会社ができて一年以上たっておる。たとえば、これは、私は財政的な点にしぼってみても、会社が毎月支払っておる人件費が六百万に達しておる、その他の経常費が四百万をこえる、年間で一億二千万を上回る赤字がすでに事業認可が出ないために生じておるわけです。これがなお今後も遷延日を送ることによって当然これらの赤字が座して出てくるという実態にあるわけです。いつ一体これが事業認可になるか。いまの御答弁では検討中であるということでありますが、その将来にわたる会社の経常費も、これは莫大なものになると思うのであります。そういう財政的な責任は、私は、認可をした政府のこれは責めに属すべきものだと思うのです。そういう点について一体どういう措置をお考えになっておりますか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 昨年認可をいたしましてから、ただいま申し上げましたようないろいろな事情、ことにその中で特殊鋼の将来の需給関係等がかなり問題に新しくなってきたわけでございます。渡辺委員の御指摘のように、認可をいたしましてから何も仕事をしない、生産をしておりませんが、会社が人件費などを食っておるわけでございます。その状況は私も非常に心痛をしております。ただ、そこで問題なのは、それならば早く仕事をすればいいではないかということに考えますと、将来採算の見込みがないのに巨大な設備投資をかりにするということになれば、そのほうの損失のほうがこれはけた違いに大きくなってまいります。そこで、ただいまの状況は、会社が仕事をしたいのだが政府が認可をしないというのではございませんで、会社自身がむしろ自信を持って推進できる計画を持っていないということでございます。で、それは、金を幾らでもかけていいのなら計画はできるといったようなことは、これはございますでしょうが、ある程度会社としても負担でき、政府としても負担できる金額で、現実にいつかは採算に乗り得るような、実行し得るような、計画というものを会社が持っておらないのが現状でございます。私も非常に実はこの問題に困っております。会社も実は同様に困っておるようでございます。それがまあ実情でございます。

渡辺勘吉日本社会党

○渡辺勘吉君 ことばを返すようですけれども、私は、その会社の設立を認めた経過には、事業を、予算目論見書まで含めて、会社の設立を認可したものだと当然思うわけです。それが、認可をして、なおかつその目論見書にも不審を抱くということは、これはどうしても会社に責任を転嫁することとも受け取れますが、しかし、良心的な長官は、政府としても心痛しておると、前の衆議院の分科会では、表現上は、読めば同じとこ——「いまになって考えますと、東北開発会社がこういう病状であったということであれば、むつ製鉄をあの際に認可すべきであったかどうかということは、正直申して疑いなきを得ないのでございます。」——これは大臣の答弁です。「その点は、もう少し実情を十分知っておったらと、いまになって申しわけないと思いますし、いろいろ考えておるところもござ  いますけれども、しかし、いずれにしましても、むつ製鉄で仕事をするということは、御指摘のように既成事実になって、地元その他もそういうつもりになっておられるわけでございます。」、きわめて良心的な答弁をされておるわけです。すでに政府が、間接投資ですか、政府として出資をし、会社が用地を買収して、三億の資本を投下しておる。あるいは、地元の青森県では、土地の整備のために一億二千万を県費によって投下をしておる。すでに経常費が年に一億二千万をこえておる。こういう現実の姿に目をおおうわけにはいかぬと思うのです。  で、一体、その採算ベースに乗るという年次計画なり——そこで、私は前段にお伺いしたのは、地域格差解消に対する政府の姿勢というものは、短期的に経済効率を見るという見方ではなしに、あくまでも長期展望の上に立って後進地域の開発ということを基本方針として臨まなければならないということをお尋ねし、抽象的には長官からもその確認を得ておるわけです。であるとすれば、一体どういう点にこの会社が事業をやる問題があるのか。これは抽象的ではわからぬのでありますから、具体的に、それらの年次計画が再修正をされて約六十五億程度の現在では企業資金の内容も出ておる。そういうものと、いま長官が触れられたように、他の地域にも問題があるという抽象的なお答えでありましたが、それは一体どういうことなのか。他の地域という場合、伝えられるがごとき木更津計画というものがそれであったとすれば、東北開発三法の精神を堅持する限りにおいては、基本的な政治路線としてはそういうものには私はかかわり合うべきではないと考えます。また、伝えられるように、それが八戸案との比較であれば、これはまたもつと科学的な検討を経る必要があると思うのであります。そういう点は、具体的にはどういう内容になっているのですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま私が他の地域と申し上げましたのは、前段に御指摘になりました千葉県に某会社が特殊鋼をつくろうという計画を持っておるということを申し上げるつもりであったわけでございます。つまり、それによりまして特殊鋼の需給関係が非常に変わってまいります。生産費も変わってくると思うのでございますが、そういたしますと、単に短期的な採算の問題でなく、長期をとりましても、むつ製鉄の生産いたすでありましょう特殊鋼がマーケットに乗らないかもしれない、そういう心配をいまいたしておるわけでございます。  なお、これはもっと具体的に計数をあげて申し上げるべきであると思いますので、経緯並びに現状を政府委員からお許しを得て御説明をいたしたいと思います。

渡辺勘吉日本社会党

○渡辺勘吉君 その計数の点は、午前中という限られた時間ですので、私は時間を気にして遠慮してやっているつもりです。で、計数の点は、いまは遠慮しますが、私もその資料は持っております。しかし、これだけでまたあとの問題の時間にセーブされるので、きょうは伺わないのであります。たとえばそういう千葉県における製鋼事業というものを考えても、一体これがしからば企業ベースに乗っていつ出るかということについても非常にこれは問題があるわけであります。たとえば日本における鉄鋼計画というものを全体として踏まえて考えましても、川崎製鉄の水島プランがある。日本鋼管の福山プランがある。富士の東海プランがある。住友金属の和歌山プランがある。八幡製鉄が木更津計画を立てているやに仄聞するのでありますが、八幡製鉄としては、木更津の前に堺のプランも持っておる。こういう一つの鉄鋼計画を考えると、これはいわゆるまぼろしの計画と言われている点もそこにあると思うのであります。またそこには、共同出資会社の現実に資本参加から脱落しているという最近の現象がある。単価の問題は、これは抽象的な、非常に実現不可能に近い単価が計画の中には立てられておるというふうに理解をいたすわけであります。  したがって、繰り返しますけれども、政府の考え方としては、東北三法が実施されておるあの基本的な法律の考え方を順守していくならばまず、政府が責任を持って会社の設立を認可したその責任の上からも、またそういう東北三法の精神からいっても、すみやかに事業認可を与うべきであると考えるわけです。どうしてもそういうことが長期の展望によってもそういうマーケットというものが非常に不安であるということであれば、これはいまの時点でできたことではない、二年も三年も遡及した時点でもそういうことが考えられたはずでありますが、これはわが国のすぐれた精鋼製品というものは世界に冠たるものである。現に最近でも二万トンの輸出契約が結ばれておる、ソ連向けが出ておるというような経過もあって、そのむつの計画は、多少どの会社でも設立数年はこれは赤字であることは免れないと思います。しかし、あくまでも長期にわたる地域開発という基本的な姿勢を踏まえてこれは善処をしてもらわなければならない大きな政策課題の一つだと思うのであります。私は、それを現段階において阻害しておるものは、親会社である東北会社の再建が路線に乗るという見通しが立たなければ、このむつ製鉄の事業認可もそのあとに検討するいう衆議院の答弁では、これは納得いたしかねるわけであります。ですから、むしろ具体的な計数というものは、たとえば八戸案に示されておるものを見ましても、これは木更津プランと同じベースで計算されておる。このことが実は現実から見ればなかなか当てはまらない実態であるというように考えられるわけでありますが、繰り返しますけれども、木更津プランというものとむつプランというものとを比較検討して、しかる後にいずれかを決するというお考えでありますか、どうですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 各鉄鋼会社が、先ほど御指摘のように、各所に鉄鋼一貫のプラントを新設いたしておりますことは承知をいたしております。これは何ぶんにも普通鋼、鉄鋼でございますから、わが国の将来を考えて相当需要が大きいもの、こういうことで各社が考えておるものと思いますが、問題になっておりますむつ製鉄の場合には、これは市場の小さい特殊鋼でございます。したがって、有力な競争相手が地理的に有利な地点で新しくプラントをつくりましたときには、かなりこれはあなどりがたい市場での競争相手になると考えなければならないと思います。その点をつまり心配しておりますので、二年なり三年なり数年間建設当初は、採算に乗らないということはこれは一向に差しつかえないと。もちろんのことだと思いますが、恒久的に採算に乗らぬというような工場をつくってはならぬ、こう思うわけでございます。  したがって、もう少し話を詰めまして、どのくらいな投資をしたならばともかくある段階から採算に乗るような事業になり得るか、その投資の負担を民間会社と国とでどのようにやっていけるかということをもう少し詰めていかなければならないと思います。会社が、人件費だけを食っておるという実情は、実に私も心痛しておるわけでありますから、それを詰めていかなければならないと思います。で、東北開発会社が再建の軌道に乗るまでむつ製鉄の事業認可はしないのだという、そういうきびしい考え方をしておるわけではございません。東北会社も今度予算を御可決いただきますと、具体的に再建に入っていくことになりますので、それを何年か様子を見てからでなければこのほうには何にもしないということは、これは考えておりません。ただ一つのことは、将来ある時点からは採算に乗る、そういう事業でなければならないし、そういう計画で出発をしなければならない、こう思っておるわけでございます。

渡辺勘吉日本社会党

○渡辺勘吉君 政府と会社当局が折衝して、企業資金等も三度にわたって圧縮をしてそうして出たものから見ますと、約六十四億の企業資金というものになってきておる。そういう計数整理の関連において、政府が当初考えておったよりかなり大幅に総体の企業の資金のボリュームが増大しておる。そのときに、三菱グループが民間資本として技術とともにこれを会社の中心に置いていくという場合、より多くの、さらに当初予定したよりも政府出資も投下しなければならないし、民間資本も導入しなければならないというときに、民間資本がもう四億が限界であるから云々ということでありましたけれども、これは仄聞をいたしますと、政府ももっと積極的にその企業資金の拡大に伴って政府資本も増額をする、三菱グループもしたがって当初計画を上回って資本を投下するべきであるということについて政府自身が確たる方針で臨むことであったならば、民間資本といえどもさらにこれを導入するに困難ではなかったと思うし、いまでも困難ではないと思うのであります。すべては、そういう政府資本をこういう企業を進めていく場合には必要であるというものにまず積極的な姿勢を示すということなしに、何となくおっかなびっくりというようなことで相談されたのでは、民間といえども一そうしり込みをせざるを得なくなるというふうに受け取れるわけであります。何年も赤字であっていいというようなことを申し上げてあるのではなくて、少なくとも修正した会社の計画によれば、四十一年を製品の販売年次初年度として、五年後には黒字に転化するという計画もあるわけであります。かりにこれがさらに計画が狂ったとしても、見通しのない収支に立って事業を考えておるわけではないのでありまして、もっと積極的に地域格差解消ということ、解消とまでは申しませんでも、是正という政策の課題に取っ組むということで、私は大局的にこれは臨んでいただきたいと思うのですが、その点はいかがですか。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 衆議院で申し上げましたように、昨年の三月に認可をいたしましたのが、いま考えますと、これは将来のことはわかりませんが、少なくとも疑問の手であったという感じがいたしております。そういうときには、しばしばそれをどうかいたしますために次にもっと悪い手を打ちやすいものでございますから、よほどよくここで考えまして、今度仕事を始めますとこれは何十億ということになりますので、よほど考えないといけないと、こういう気持ちでおります。  いずれにしても、しかし長くこの事態のままで置いておくわけにまいりません。東北地方開発のためにする仕事でございますから、えらくもうけてくれとは考えておりません。しかし、民間の資本も入っておりますことでございますから、いつかは採算に乗るということのまず確信の持てる案と規模とでやらなければならないだろう。率直に申しまして、私自身もこの問題にもう一つ本格的に首を突っ込んで取り組む時間の余裕が昨年秋ごろから今日までございませんでした。東北開発のほうに実はよけいな力を使ったりしております。近い将来に問題を私自身でよくもう一度洗って考えてみまして、そしてその上で政府としてどれだけの決心をし、したがって民間側にもどれだけの決心をしてもらうといったようなことを検討してみたいと思いますので、遷延しておりますことは私もはなはだ遺憾でありますし、申し一わけないと思っております。最近のできるだけ早い機会に私自身取り組むつもりでおります。

渡辺勘吉日本社会党

○渡辺勘吉君 一時も過ぎたようですから、私もそろそろ質問を打切りたいと思いますが、一、二重ねて確認をいたしたいことは、いま長官が触れられましたように、まず東北開発株式会社なるものの再建に頭を痛めておられるということでありますが、そのことも実は触れてまいりますと、相当私は時間を持ってお尋ねをいたしたい大きな問題の一つであります。東北開発審議会の際にも私は繰り返し申し上げたのでありますけれども、赤字が東北会社で出たのは一体どこに責任があったのかということであります。これは何といってもわれわれから言えば行政庁にある責任が非常に大きい要素を占めておる、そう断定せざるを得ない。そのためにまた東北会社の地域住民の期待する機能というものがおそろしく制約をされている。これで一体地域格差の是正ということができるかどうかということであります。しかし、せっかく検討されていろいろな手を加えておられるわけでありますから、それはそれとして、私のこの東北開発会社に寄せる期待というものは、巨額な赤字の整理は整理として、東北開発のために必要な東北開発株式会社として当然やるべきいろいろな事業は並行して積極的にこれを取り上げていくべきである。たとえば観光事業にしても、あるいは民有貨車の設備にしても、いろいろ地域における要望があるわけでありますが、三十九年度の予算にはそれがほとんど出ていないということでは、これは東北三法を政府が行政的に無視し軽視しておるものであるというふうにこれは理解せざるを得ないのでありますから、そういうことでないように、繰り返しますけれども、この地域格差の拡大ということに対する地域住民の政府に対する憤りというものは、あなたがたの想像を絶したものであるということを御確認を願いたい。  それで、きょうは一つのむつ製鉄にしぼってお伺いをいたしたのでありますが、いまも長官が言われたように、親会社である東北開発会社が再建を完了した上でなければということは考えていないと。もとよりのことでございましょう。であるとすれば、すみやかにこの懸案を解決して、一日も早く会社設立を認可した行政責任を事業開始の線に踏み切って、長期展望における地域格差是正の一手段として位置づけていただきたい。そういう場合に、いま二、三の質疑の中に出たように東北地域以外の木更津というようなこともこれは検討していただくことはけっこうでありますけれども、あくまで東北の後進地域の開発ということに、この会社設置のまた大政策限月があったのでありますから、この点はひとつ大きくまず前提に置いて御推進を願いたいと思うが、その点はどうであるかということと、また、青森県自体、あるいはわれわれ日本社会党としても、あるいは、伝え聞くところによればあなた方のよっておるところの自由民主党さんにおかれても、むつ市にちゅうちょすることなく事業を開始すべきであるという方向が確定していることでありますから、そういう東北地域の中でも八戸案というようなことにも惑わされることなく、既定方針どおりむつ市に製鋼事業を開始するということできようの長官の考え方を理解していいかどうか、この二点をお伺いして、私のきょうの質問を終わります。

宮澤喜一自由民主党経済企画庁長官

○国務大臣(宮澤喜一君) 東北開発会社につきましては、これは普通の会社等でございましたら、当然破産をするか、あるいは会社更生法の適用を受けているような実情であるわけであります。しかし、東北三法に盛られました考え方、東北の開発というためにできている会社でございますから、あえて再建資金を計上して、何とか本来の任務をこの会社に果たしてもらいたいと考えておりますわけで、その点地方民の熱意を現地の方々ほど私どもが促々として受け取っておらない点があるかもしれませんが、かなり私どもとしてはその点は理解をしてやっているつもりでございます。むつ製鉄の問題につきましても、そういう観点から考えておりますことはもとよりでございます。で、八戸云々ということにつきましては、私ども正式にいままで検討いたしましたことは一度もございません。むつというところで、いかにして長い将来でもようございますから採算に乗るかということを検討いたしておるわけでございます。  なお、渡辺委員の御指摘のことはよくわかりましたし、私の申すこともお受け取りいただいたわけでございますから、早急に私自身検討いたしてみたいと思います。

村山道雄自由民主党

○主査(村山道雄君) 以上をもちまして質疑通告者の発言は終了いたしました。よって、経済企画庁所管及び科学技術庁所管に関する質疑は終了したと認めます。  これをもちまして、本分科会の担当事項であります昭和三十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府のうち、防衛庁、経済企画庁、科学技術庁、並びに外務省、大蔵省及び通商産業省所管の予算の審議は全部終了いたしました。  なお、予算委員会における主査の口頭報告の内容及び審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

村山道雄自由民主党

○主査(村山道雄君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。   午後一時八分散会    ————・————

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