法務委員会 閉会後第3号
- 発言数
- 127 件
- 登壇者
- 7 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1964/09/10
会議録
○委員長(木島義夫君) それでは、これより法務委員会を開会いたします。 まず、先般当委員会が検察及び裁判の運営等に関する調査の一環として行ないました委員派遣についてその報告を願います。稲葉君。
○稲葉誠一君 このたび北海道地方へ派遣されました委員を代表して、調査の結果を御報告いたします。 去る七月二十一日から十日間にわたり、木島委員長、岩間委員、それに私の三名が、菊池調査員、松谷参事を伴いまして北海道地方における青少年非行の実情、並びに裁判所、法務省関係諸施設の実態等を調査してまいりました。 なお、この調査にあたって、酷暑のおりにもかかわらず、現地の各関係機関が貴重な資料を取りそろえ、熱心に御協力下さいましたこと、並びに最高裁判所の長井課長、今江事務官、法務省の菅野課長、横堀、山本両事務官が終始同行され、種々御便宜をお計らいくださいましたことを特に報告して、厚く感謝申し上げる次第であります。 以下、調査項目に従いまして順次述べたいと存じます。 まず、このたびの調査目的の一つであります積雪寒冷地における青少年非行の特殊性という点に目を向けながら、北海道地方における青少年非行の傾向について申し上げます。 昭和三十四年から同三十八年までの間の道交法違反事件を除いた少年保護事件の受理状況から見ますと、北海道地方における少年非行は、その絶対数において漸増の傾向を示していることがうかがわれます。ただ、これをこの地方における十四歳以上二十歳未満の少年人口千人当たりの非行率の点に着目しますと、昭和三十七年一一・二件、同三十八年一〇・七件と、ほぼ横ばいないし減少の傾向にあることがわかります。したがって、右の絶対数の増加は、一応少年人口の増加に対応するものと見ることができましょう。注意を要する点は、道警察本部の統計によりますと、昭和三十八年中に札幌方面本部管内で補導された少年は一万八千七百余名に上り、前年のそれに比べて五三・九%の増加を示しておりますが、そのうち札幌家庭裁判所に送致された虞犯少年は三百十八名、補導件数のわずか一・七%にすぎないことであります。このことは警察において補導された少年のすべてが虞犯少年としての要件を備えているものとは言えないことはもちろんとしても、補導された少年の中にはなお虞犯の要件を備え、家裁の保護的措置を要する少年が少なくないことが推測され、青少年非行の量的奥行きの深さがうかがわれるわけであります。したがって、前に述べた保護事件数の推移も必ずしも少年非行の動向をそのまま示すものとは言えないばかりでなく、補導少年の数と虞犯送致件数との間に右のような大きな開きがありますことは、問題のある少年を早期に発見し、これに適切な保護方策を講ずることを目的とする少年法の立場から重大な問題が含まれていることを示すものであって、見のがすことができないわけであります。 次に、札幌家庭裁判所から提供された資料によって、その取り扱った少年保護事件の内容を少しく掘り下げて検討してみますと、まず、その罪種の点において窃盗犯が比較的に多いことが指摘されます。すなわち、全刑法犯に対し窃盗犯の占める割合は、昭和三十四年から同三十八年の間の全国総数では五〇%前後を示しているのに対し、同家裁の取り扱いにあらわれた数字では、昭和三十五年六一%、以後次第に上昇して、同三十八年には六五%を示しております。これに反して、粗暴犯、凶悪犯においては、全国総数のそれよりほぼ五%の低率を保ちながら次第に減少の傾向が見られます。次に、年齢構成と行為別との関係について見ますと、窃盗犯は各年齢層を通じて増加の傾向が見られますが、高い年齢層においてはその増加の程度がかなり低く、年少少年における増加の徴候がきわめて顕著であります。この傾向は全国のそれと一致しますが、ただ、増加の程度は全国のそれよりも小さく、減少の程度は全国のそれよりも大きいことが認められます。さらに、刑法犯の月別発生状況の点について見ますと、全国平均において一月に最低を、十二月に最高を示しているのに対し、北海道のそれは、最低において全国平均と一致しておりますが、最高のそれは九月に集中しております点が目立っております。 以上のような諸点にやや地域的特色のようなものが見られますが、このような点から直ちに寒冷地という地域的傾向性を引き出すことは困難であります。少年非行の地域的特色をとらえようとする場合は、何よりも寒冷地という自然的条件下にある地域社会の生活実態を具体的に深く分析し、その上に立って多角的、総合的な検討が必要であることは申すまでもありません。この報告においては、そのような点に深く触れるゆとりはありませんが、ただ一点、本道における社会事情と少年非行との関連について、北海道の季節的労働、移動性労働の問題を申し上げることにいたします。 本道においては、近年失業保険の受給者数が著しく増加し、昭和三十三年から同三十七年の間における全国平均の増加率が四%にとどまっているのに対し、本道のそれは九四・八%にも上っていることがまず目を引きます。そうして、その背景として、沿岸漁業の不振とか、石炭産業の不況と合理化による影響等がうかがわれるわけでありますが、これらの問題に関連して、本道における季節的労働、移動性労働の問題を見のがすことができないのであります。すなわち、本道においては、気象的条件から、農業、漁業、造材植林、建設関係事業、でん粉、ビート工場など、季節的労働者を使用する例がきわめて多く、これらの労働者の主たる供給源は、不漁にあえぐ沿岸漁民や、農業だけでは生活を維持できない零細農民、炭鉱離職者などであります。このような労働者は、夏は土工夫、冬は造材と、年じゅう仕事を追って出かせぎを続け、盆、正月に数回しか自宅に帰らないような例も少なくないようであります。こうした父親を持つ家庭は、事実上の欠損家庭になってしまうわけでありますし、このような家庭は、父親の仕送りだけではとうてい生活ができないところから、たいていは母親も日雇い仕事などに稼働する場合が多く、こうした家庭の少年は、貧困に加えて父母の愛も適切な監護も受けられないまま放任されて成育するようなことになりがちで、これが少年の育成という見地から見て大きな問題をはらんでおりますことは申すまでもありません。また、学校を卒業してしまった少年自身がこのような移動労働者となった場合は、年少のうちから各地を流れ歩いて、行き当たりばったりの好ましくない生活態度を身につけてしまう例が多いようであります。とりわけ、積雪を利用して行なう造材の仕事は冬期間に多く、建設工事は夏季しかできないところから、そのシーズン以外には他に仕事のない地域では、一年のうち稼働しない期間がかなりの長期にわたり、中にはこの期間を失業保険金で食いつないだりする者もかなり多く、このような徒食の間に、時間をもてあました上、不健全な遊びやかけごとを覚え、非行化していくケースも少なくないようであります。 以上に述べた北海道地方における失業保険金受給の問題、その背後にひそむ地域社会の特殊な労働事情と少年非行の原因等につきましては、検討を要する幾多の問題が含まれているように考える次第であります。 次に、札幌家庭裁判所の取り扱いにあらわれた同地方における少年の道路交通法違反事件の動向を見ますと、受理件数は、昭和三十一年を一〇〇として、同三十七年二七八、同三十八年二一八という指数を示しております。右の数字によりますと、昭和三十八年は前年のそれに比べて若干の減少を示しているわけでありますが、このことから直ちにこの地方における少年の道交法違反事件が減少の傾向にあるものと速断することはできないように思われます。すなわち、札幌市を含む石狩・空知支庁管内における人口千人当たりの自動車数が八二・〇台の高率を示し、近年さらに急増の傾向が見られる点からも、この地方の今後における道交法違反事件の激増が予測されるわけであります。 違反別には、例年無免許運転が四八%前後、速度違反が一七%前後となっており、車種別には小さな車が圧倒的に多く、特に原動機付自転車がほぼその半数を占めております。また、職業別には勤労少年がほぼ八〇%を占めている状態であります。 なお、同家裁が少年の道路交通法違反事件の処理について多くの事件を試験観察に付し、相当の期間終局的処分を留保しながら、その間に専門的立場から環境の調整、再犯の防止、免許取得のための指導等、教育的、矯正的措置を施し、その処理体制の強化、合理化に積極的意欲を示しておりますことは、この種事件の取り扱いの将来における方向を示唆するものとして注目に値するものと言えましょう。 次に、少年法、少年院法並びに保護観察制度の運用に関して、関係諸機関から提出された意見、要望等を要約して申し上げます。 元来、非行少年対策につきましては、少年の非行性に応じた教育的手段により、健全な育成をはかることを原則とし、このような手段によることが不可能かまたは不適当な者についてのみ刑罰的手段によるべきであることを主張するいわゆる教育主義ないし保護優先主義的考え方と、たとえ少年であっても、罪を犯した以上、原則として成人と同様に刑罰をもって臨むべきであるとするいわゆる刑罰主義ないし処罰主義的考え方に立つ、二つの相対立する立場があるわけであります。このたびの調査におきましても、前者の考え方を基本とする裁判所側の意見と、後者の考え方の基調に立つ検察庁側の見解とが明らかな対立を示していることがうかがわれました。すなわち、裁判所側の意見としては、第一に、現在十四歳未満の非行児童については、児童福祉機関が第一次的取扱機関とされているが、その機構、施設がきわめて弱体で、ほとんど適切な手が打たれていない実情にかんがみ、早期発見、早期治療の見地から、現在の少年年齢の下限を十二歳ないし十三歳の線にまで引き下げ、それ以上の少年は警察などから直接家裁へ送致し、適切な保護措置ができ得るよう関係法令を改正すること。第二に、現行法においては、禁錮以上の罪に当たる事件でも、少年が十六歳に満たない場合は刑事処分ができないたてまえになっているので、これらの少年については、検察庁を経由しないで警察等から直接家裁へ事件を送致でき得るように改めること。第三に、現在、少年法に規定されている保護処分は、少年院送致、教護院・養護施設送致及び保護観察の三種類に限られているが、家裁が専門的調査の結果さぐり出した非行原因に即応して十分な措置がなし得るよう、保護処分の種類の多様化をはかること。たとえば、(一)少年・保護者に対する指示、(二)児童福祉法、精神薄弱者福祉法、身体障害者福祉法、売春防止法等、所定の各種福祉施設への送致、(三)精神障害者等の病院送致、(四)職業補導所・少年補導寮・トレーニング・スクール等の教育施設への収容などの諸制度を採用する必要があること。第四に、現行法においては、家庭裁判所が一たん保護処分の決定をすると、その後において事情の変化があってもこれを取り消したり、別の処分に変更したりすることができないたてまえになっているが、これを改正して、保護処分の決定後も、少年自身やこれを取り巻く環境に変化があった場合は、これに応じて弾力的に処分の取り消し、変更ができ得るよう、その権限を家庭裁判所に与える必要があること。第五に、少年の道交法違反事件については、その原因が職場における労働条件や労務管理ないし雇い主の態度などに問題がある場合、あるいは少年自身の精神的、肉体的条件に欠陥がある場合、または運転の知識、技術の不足ないし安全運転についての無理解に基づく場合等の多い点にかんがみ、これらの少年に再び違反や事故を犯させないためには、原因や問題点をさぐり出し、これに応じた教育的、保護的処置をとる必要があること。第六に、補導受託者のこうむった損害の補償制度とか少年の保護処分について再審や刑事補償に類似した制度を設ける必要があること、などの諸点が強調されておりますのに対して、検察庁側の意見としては、第一に、今日の少年は身体的、精神的成熟が早まっているので、十八歳以上の年長少年は成人として取り扱う必要があること。第二に、十六歳未満の少年の犯罪であっても、殺人、放火、強盗、強姦などの凶悪、重罪については刑事処分を相当とする場合が多いので、少年法二十条ただし書きの規定を廃止する必要があること。第三に、現行法制上、少年に対しても自由刑の執行が認められている以上、少年に対し換刑処分の言い渡しを禁止した少年法五十四条の規定はこれを削除するのが相当であること。第四に、少年事件に対する検察官の先議権、少年事件の審判における検察官の立会権、家庭裁判所の保護処分に関する決定に対する検察官の不服申立権等を認める必要があること、などの点が力説されておりました。 次に、保護観察所の意見のうち、おもなるものとして、北海道地方においては特に冬期間は積雪寒冷にはばまれ、交通が不便となり、保護観察対象者との接触が不自由となるところから、これらの対象者を完全に把握して保護観察を強力に実施するために、保護観察官の大幅増員、及び裁判所、検察庁の支部所在地に保護観察所の支部を設置する必要があること。なお、それまでの応急的措置として、主要都市に保護観察官駐在事務所を設ける必要があること、などがあげられています。 ただいままで述べてまいりました立法上、運用上の意見には、それぞれもっともな点が含まれておりますが、中には基本的立場の相違から来る見解の対立等も多く、これらの問題の解決にはなお慎重な検討を要するものがあるように考えます。 次に、関係官衙の営繕の実情について申し上げます。 一般的に言って、庁舎においても、宿舎においても、なお不満足な点が多いように見受けられました。特に地方裁判所、家庭裁判所、地方検察庁等の本庁の庁舎はともかくとして、これらの庁の支部ないし下部機関の建物の中には、たとえば函館地、家裁江差支部の建物のように、建築以来すでに七十年を経過し、朽廃はなはだしく、間取り、採光、通風等も庁舎としてきわめて不適当な建物が少なくないばかりでなく、札幌地検岩見沢支部庁舎のように、終戦直後の粗悪資材で建築されたために、経過年数の割合に老朽度が早く、すでに改築期に達している建物も相当の数に上っております。さらに釧路地方法務局庁舎のように、朽廃の上に、きわめて狭隘で、執務の上にも影響を及ぼしているもの、あるいは札幌刑務所大通支所庁舎のように、老朽に加え、場所的関係から移転を必要としているもの等、早急に全面改築の実現が要望されている建物も少なくない状態であります。 職員宿舎につきましては、裁判所、検察庁ともその絶対数がはなはだしく不足しているばかりでなく、改築、補修を要する建物も少なくない状態であります。具体的に申しますと、たとえば札幌地検管内における公営宿舎の入居率は二〇%、釧路管内におけるそれは四〇%という低調ぶりであります。とりわけ五、六等級以下の月収二万円前後の職員の大半が間借り生活、下宿生活を余儀なくされており、これらの職員は、月収の二五%ないし三〇%にも当たる高額の宿舎費を負担させられている実情でありまして、その勤労意欲、士気の点にも影響するところが少なくない状態であります。 なお、刑務所、少年院、保護観察所等につきましても、人的機構、物的施設の両面において早急に充実、改善を要するものが多いように見受けられました。 最後に、釧路市長から、道東地方における産業の急激な発達に伴う人口の急増、積雪寒冷地における交通事情の特殊性等にかんがみ、釧路市に札幌高等裁判所、同検察庁の支部を設置されたい旨の熱心な陳情がありましたことを申し添えて、この報告を終わることにいたします。 なお、詳細な点につきましては、調査室に保存してあります資料をごらんいただければ幸いと存じます。
○委員長(木島義夫君) 何か御意見、御質問がありましたら……。
○岩間正男君 ちょっと緊急に当委員会にはかってほしいのですが、それは厚木と大和の今度の米軍機の墜落事故ですね。この前、町田市の問題のときは、当委員会で大きな問題にして質問したわけです。そのとき、日米合同委員会の事故分科委員会が開かれておって、それについていろいろ要望したわけです。その結果についての報告はまだ受けていないわけですね。今度の事件と非常に深い関係がある。あのときは、市街の上を飛ばないというような申し合わせをしたのではないか、こういうふうに思われる。そういう点から考えますと、あのときの決定がどうなっているということは——今度の四人も死者を出すというようなこういう痛ましい事件が繰り返し行なわれている。これについて、取りあえず合同委員会の報告を当委員会に求めてもらいたい。休会中でありますけれども、速急に事務の手続をやって、そうして書類なり何なりで各委員に配っていただきたい。これは当委員会でやってきた問題でありますから、特にそれをやるのが当委員会の責任と思いますので、この点委員長におはかりを願いたいと思います。
○委員長(木島義夫君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(木島義夫君) 速記を起こしてください。 ただいま岩間委員から発言の原町田事件の合同委員会の事故分科委員会の決定事項の記録を各委員に配付することに取り計らいます。 —————————————
○委員長(木島義夫君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 まず、検察官の綱記粛正に関する調査を行ないます。稲葉君。
○稲葉誠一君 大臣の選挙区になるのか——選挙区には別に関係ないですが、広島の検察審査会で今年の七月十日に建議というのをやっているのですけれども、この内容について法務省のほうで大体のことを調べておられますか。
○国務大臣(高橋等君) 調査してあります。
○稲葉誠一君 大体の調査の結果を御報告願いたいのですが……。
○説明員(津田実君) ただいま御指摘のように、広島検察審査会から検察庁に対しまして建議勧告と申しますか、そういう措置がございましたことは事実でございます。で、これはその点につきまして広島の検事正から報告を受けておりますので、その点について申し上げます。 広島区検察庁におきますところの、大島副検事が交通事故の参考人として取り調べました向原某という婦人でありますが、そのことに関連いたしまして建議勧告があったというような事情のようであります。しかしながら、具体的な建議勧告書の内容につきましてはそういう事実には触れておりませんので、そのことが動機になったものであるかどうかということは、当該検察審査会が新聞に発表——正式な発表じゃありませんが、新聞にある程度報道された事実からそういうことが動機になっておるということ、もう一つは、窃盗犯の逮捕、勾留の関係において不適当なことがあったというような事実を中心にいたしましての勧告のように受け取れたわけでございます。 その議決書の内容の要旨は、「検察官は公益の代表者として威厳を保つことも必要であり厳正公平な態度をとらなければならないことも当然であるが被疑者や参考人等の人権を損傷しないように配慮して捜査を遂げるように努力願いたい。」、こういう趣旨になっております。したがいまして、そのこと自体については格別の問題はないわけでございますけれども、ただ、この建議が行なわれました動機あるいは理由として述べられましたその事実——事実と申しましても抽象的な事実でございますが、その事実については検察側の調査した結果と違っておりますので、その点に問題があるということになると思うのであります。すなわち、先ほど申しました当該婦人の取り調べに対しまして不当な言動があったというようなこと、あるいはその窃盗犯の被疑者の逮捕に関しまして適当でなかった措置があったというようなことが動機になっておるようでありますけれども、そのような事実に対しましては抽象的にもさような事実は存在しなかったということになるわけでありますし、また、この検察審査会がこのような建議をされまするにつきましても、何ら大島副検事をはじめその上司等について照会調査等がなかったわけでありまして、そういう意味におきまして、この建議の議決のよってきたる理由が適当ではなかったのではないかということは考えられます。ただ、建議の趣旨として掲げられておることは、常に検察庁として心得ておることでもあり、また心得なければならないことでありますから、その点には何ら問題はありません。
○稲葉誠一君 検察審査会が建議をするというのですから、よっぽどのことだと、こう思うんですが、これはなんですか、その中に「特に婦人の参考人に対して名誉にかかわるようなことを言ったり、ふざけるような言語、動作をする等不謹慎であり、もっての外である。それこそ検察官の人格を低下させるだけでなく国民が全検察官を信頼しなくなったときのことを思えば心して貰いたいものである。」、こう検察審査会ははっきり建議の理由の中で言っておりますね。全然こういう事実はなかったというのですか、あるいはそれに近い事実はあったというのですか。ぼくはそのことはそれほど問題にしたいとは思わないんですよ。個人のことではあるし、問題ではなくて、あとの窃盗の取り調べのほうが、伝えられておるとおりとすれば、そっちのほうに問題があるのじゃないかと思いますけれども、いずれにしてもここまではっきり検察審査会という公の機関、裁判所に設置してある機関が言っておるのですから、まさかこれは全然うそだったということは考えられないのですが、こういう事実はないのですか、あるいはこういうふうに疑われるような事実はなかったのですか。
○説明員(津田実君) ただいまお話しの点は、その向原それがしという参考人の取り調べの際のことを検察審査会が考えているものと考えられるわけでありますが、それは昨年の五月二十五日のことであり、約三十分間大島副検事が検察庁の公判部検察官室において取り調べを行なった際のことであろうと思うのであります。で、その検察官につきましては、他の検察官も同室しておりますし、立ち会いの検察事務官もおることでありますから、そのような言動がそのとき行なわれたということはとうてい認められないわけでございます。
○稲葉誠一君 だけれども、この検察審査会が審査をするについて、審査会は裁判所に設置されている機関ですね。これは事務局長がおると思うんですが、事務局長は裁判所の職員がやっておるのじゃないですか。事務も全部裁判所がやる。裁判所がタッチして、そうしてこれだけの建議が行なわれたのだと思うんですがね。裁判所でやっているのが全然事実と違うんだというふうなことだと法務省では言うわけですか。そうすれば、検察審査会のこういう審査のやり方自身が根本的に問題だということになってきますね。
○説明員(津田実君) 検察審査会がどういう資料に基づいてそのような議決になったかということはつまびらかにできません。おそらくは、ただいま申し上げました参考人あるいはその関係者の申し立てあるいは陳述等によるものというふうに解するのほかないわけであります。で、特に当該建議勧告がなされます前に、当該副検事、問題の副検事あるいはその上司等について検察審査会から何らの照会等もなかったわけでありますので、あるいは一方的にそういう事実を信用してさような建議になったのかもしれません。しかし、それはこちら側の推測にすぎないのでありまして、それ以上のことはわからないわけであります。
○稲葉誠一君 検察審査会がこういうふうなことを調べて建議するのに当該検察官を呼ばないでやったということになれば、私はその審査会のやり方も問題だと、こう思うんですがね。じゃなぜ呼ばないでやったのかということもわからないし、その間の事情がつまびらかでないのですが、そのあとのほうの問題として、「検察官が令状請求を二度三度とするのは何故だろうか。却下されたら次々に余罪の一部で新請求をする。その間被疑者は不当に拘束を受けたことにはならないか。いくら被疑者が犯罪事実を認めていたとしても不当に拘束することはできない筈である。権利の濫用にもなり得る可能性があり人権軽視のそしりは免がれないと思う。捜査に関して、さしでがましいことを申し入れるつもりは更にないが国民が納得できる捜査をして貰いたい。即ちめんつうとか意地を考えての度重なる請求でなければ幸いである。要するに裁判の民主化が軌道に乗っていると思うので検察の民主化も是非軌道に乗せて全国民から信頼され敬服されるようになることを期待する次第である。」、こう言っているわけですが、そうすると、令状請求を二度三度とするというふうなことが、これはあったのですか。何か令状請求したら却下され、その余罪についてまた令状請求した、そういうふうな事実があったのですか。
○説明員(津田実君) ただいまの事実は、この事実に当たる事実だと思うのであります。本年の六月一日に、広島の西警察署におきまして、靴の窃盗事件について被疑者を逮捕いたしまして、これを検察官に送致してまいった。ところが、当該検察官がこれの勾留請求の手続をとりましたわけですが、これについては相当余罪があるという資料がありましたので勾留請求をしたのであります。その勾留請求が却下された。そういたしましたところ、また数日を経まして同一人に対して広島西警察署が別の靴の窃盗の事件で逮捕いたしました。これはもちろん逮捕状による逮捕で、裁判官が逮捕状を出しているわけであります。逮捕状による逮捕をいたしまして、これまた身柄拘束のまま送致してまいった。そこで、やはり検察官におきましてこれを逃亡、証拠隠滅のおそれあるとしまして勾留請求したところが、裁判所がこれを却下した。そこで、今度は、検察庁におきましてはあらためて別の窃盗事件につきまして令状逮捕すべく逮捕状の請求をいたしたのでありますが、当該事実については逮捕請求は却下になった、こういう事実でございます。
○稲葉誠一君 勾留請求が却下になるというのは珍しいことだと思うんですが、どういう理由で、勾留請求が却下になったのですか。
○説明員(津田実君) その点につきましては、理由そのものはつまびらかでありませんが、勾留の必要がないという判断であろうというふうに考えられるわけであります。
○稲葉誠一君 それは勾留請求却下なんだから、勾留の必要がないということは、それはきまっているんですよね。これはしろうとの答えなんで、法律家としての答えにならないと思う。どういう理由ですか、わかりませんか。どういう場合に勾留はできるのですか、そこから入っていくと結論が出ると思う。
○説明員(津田実君) 御承知のように、逃亡あるいは証拠隠滅のおそれがあるとしてやったのでありますが、そういうような認定が、つまり検察官の認定と裁判官の認定が違ったということにならざるお得ないわけであります。結局、勾留理由がないと裁判所は判断されたということでございます。
○稲葉誠一君 これはそのとおりでしょうけれども、具体的に事件としては靴を取ったのですか。靴一足の窃盗容疑で、それが検察官としては、あれですか、勾留請求したときは、どういう理由で勾留請求をやったんですか。それは本人が住居もちゃんとしてあり、事実も認めておったのですか。ただ、余罪があるから、余罪を割り出すために勾留しようという考え方で勾留請求したのですか。
○説明員(津田実君) ただいまの事実は、警察で逮捕いたしました事実は、もちろん逮捕状による逮捕をいたした事実でありますが、それは靴一足を窃取したという事実でございます。しかしながら、本人につきましては、必ずしも居住関係がはっきりしないという点もありますしいたしますので、その証拠をはっきりするために勾留請求したということでありますが、ただ、そのほかの事情といたしましては、本人も他に同様のことをやっているということを警察において自供しておったというような事実があるようであります。
○稲葉誠一君 これは裁判所でどういう理由で勾留請求を却下したのか、どうも抽象的でわかりませんけれども、その人は住所はあったんですか、住居不定だったんですか、どういうふうになっているんですか。
○説明員(津田実君) 大体の調べによりますると、市内某所に内妻と称する者と同居しているというような事実であったようでありますけれども、その点は必ずしもはっきりしないようであります。
○稲葉誠一君 そうすると、二回目は別の逮捕というのですが、別の逮捕というのは六月一日に勾留請求するときにはもうそういう事実があることはわかっていたのですか。——質問の意味がわかりますか。六月一日に勾留請求して却下されたんでしょう。そのときには、すでに別の事件というか、犯罪があることがわかっていて、そうして勾留請求したが却下されたんだということになっているのですが、その関係はどうなんですか。
○説明員(津田実君) これは警察が逮捕状を請求いたしましたので、その問の事実ははっきりいたしませんが、六月一日に逮捕状を請求して裁判官の逮捕状が出た。当時、さらに別罪がある、あるいは別罪について逮捕するに足る理由があるという資料があったとすれば、警察としては同時に二つの理由をもって逮捕状を請求すべきでありますし、それを分割して逮捕状を請求するということは相当でないことであることはもちろんであります。しかしながら、勾留が却下されまして後、別の事件について同一警察署で同一人を逮捕するについて裁判官に逮捕請求をしたわけであります。ただ、裁判官は、当該勾留を却下した裁判官と二回目に逮捕状の請求をいたしまして逮捕状を出した裁判官とは同一の裁判官でありますので、おそらくその間の同一人に関するものであるということはわかっておったかもしれません。
○稲葉誠一君 二回目に勾留請求を却下されたんですが、これはどういう理由ですか。それは証拠隠滅のおそれがないということと逃亡のおそれがないということですか。
○説明員(津田実君) おそらくそう考えるよりほかないと思います。
○稲葉誠一君 三回目にまたやったんですね。三回目は、逮捕状だけですか、勾留請求もやったんですか。逮捕状の発付が却下されたんですか。
○説明員(津田実君) 逮捕状を請求いたしたわけですが、それが却下されたわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、一回目に勾留請求が却下され、二回目に勾留請求が却下され、三回目に逮捕状の請求を却下された。そうすると、本件の被疑者は特に逮捕や勾留をしなくても調べはできたようにもとれますね。現実にはどうなったんですか。
○説明員(津田実君) 現実には、在宅によりまして起訴をいたしております。
○稲葉誠一君 在宅で起訴して、そしてどうなったんですか。起訴事実は幾つくらいあったんですか。
○説明員(津田実君) 起訴事実は、起訴状によりますると、大体十五であります。
○稲葉誠一君 十五の窃盗があったんですね。それは在宅でも十分調べはできた事件ですね、結果から見るというと。それをなぜそういうふうにして勾留請求を何回もしたんですかね。勾留しておいて、そしてその中で余罪を割り出そうということでやったとしか考えられないじゃないですか。どうもそういう意図が非常に強かったというようにとれるのですがね。
○説明員(津田実君) 結果的に見れば、この起訴事実は在宅でも取り調べできたということは言えるかもしれません。しかし、在宅で取り調べのできたものか、あるいは前回の逮捕状による逮捕の間に取り調べをしたものか、そこのところははっきりいたしませんが、結果的に申せばそういうことかもしれません。しかしながら、当該勾留請求をするときの警察官の判断としては逃亡及び証拠隠滅のおそれがあるということを判断いたしたことはやむを得ないところだと私は思います。
○稲葉誠一君 まあ一般論として、一つの犯罪があって、それを逮捕し、勾留した。その場合に、勾留状を請求するのに、その人がほかの犯罪を犯している可能性が非常に強い。それを割り出すというために、そういうために勾留請求をするということは、どういうことなんですか、これは違法なんですか、違法じゃないんですか。
○説明員(津田実君) 一般論といたしましては、その勾留理由となっておる事実を明らかとするためでありますので、他の事実を取り調べる目的をもって、他の事実によって勾留をするということは、これは当然認められておりません。
○稲葉誠一君 認められないというのは、なんですか、違法だというのですか。
○説明員(津田実君) 認められないということは、法律的には違法ということであります。ただ、その勾留の間に他の事実について取り調べをするということは当然あり得ることでありまして、それは別に違法だとも何とも申されないと思います。ただ、その目的のために逮捕したり勾留したりするということは違法であるということであります。
○稲葉誠一君 そうすると、話は横になっちまうので、きょうのあれになりませんけれども、別件逮捕ということがはなはだ大きな問題になってきますね、法律的な。別件逮捕の場合は、違法なほうが原則としては多いということですか。いわゆる別件逮捕というのはそういうふうに考えていいのですか。
○説明員(津田実君) 別件逮捕と申しますのは、一言にして述べると言葉の意味ははっきりいたしませんが、ただいま申し上げましたように、すでにわかっている事実、つまり逮捕なり勾留の理由と資料となり得る事実がわかっているにかかわらず、その事実を一つずつ理由にして再度逮捕するというようなことは違法であるという考え方であります。でありますが、逮捕している間にその事実の捜査をするということは何ら違法ではありません。ただ、問題は、いかなる目的のために逮捕あるいは勾留をしておるかということにすぎないのでありまして、その目的が必要がなく、また目的が終わったにもかかわらず、逮捕なりあるいは勾留を継続して他の事件を取り調べるということは違法であるということであります。
○稲葉誠一君 この六月の事件の被疑者は、そうすると、あれですか、四日間の間に三通の逮捕状を請求されたということになるんですか、日にちの関係で言うと。
○説明員(津田実君) そのとおりでございます。六月一日から四日までの間に起こったことであります。
○稲葉誠一君 そうすると、第一の場合に勾留請求が却下されておれば、それと同じような事情なんですから、第二回の場合も勾留請求が却下されるということは大体わかるのじゃないですか。なぜそういうふうなことをやるんですか。
○説明員(津田実君) 勾留請求を却下した裁判官によって逮捕状が発付されておるわけであります。もちろん逮捕の理由と勾留の理由とは違いますから、一がいに申すことはできませんけれども、第二の事実から見て勾留の必要があると判断されるのが相当だという意味において勾留請求をするということになると思います。
○稲葉誠一君 検察審査会の行き方全般に——いま法務省の言うようなやり方だとすれば、この検察審査会の審議のしかたも疑問があると思います。これは私も調べてみますが、しかし、検察審査会がここまではっきり言っているのだし、これにはおそらく裁判所の職員がタッチしてやっているわけですからね。事務局長なり何なりがちゃんと関与してやっているわけでしょう、一般の場合に。それが言っている事実が違うということになってくると、これは検察審査会というもののあり方も問題になってくるし、問題だと思いますが、これは私のほうもよく問題を調べてみましょう。 話は別になってくるのですけれども、今度の臨時司法制度調査会でも出ているんですけれども、副検事の資質を向上させなければならないというのがちょっと出ておりますけれども、それは具体的にはいままではどういうふうにやっているんですか。
○説明員(津田実君) 副検事につきましては、一般的に申しますと、研修に力を入れるということ、いわゆる研修というようなものをしばしば開催する、あるいは中央におきますところの法務総合研究所においても行なうということでありますし、地方におきましては、監督官あるいは検察官におきまして地検の事務の取り扱いについては十分いろいろ常時その監督並びに指導に力を尽くしておるということでありますが、これとてもやはりそう完全だというわけにはまいりませんので、調査会におきましてもああいう結論が出ておりますが、今後ますますその点については資質の向上に努力しなければならぬというふうに考えております。
○稲葉誠一君 それでは、検察官の関係のほうは、きょうはこの程度にして、あとの問題のほうに移りたいと思います。 —————————————
○委員長(木島義夫君) それでは、本日委員の異動がありましたので、御報告いたします。 吉武恵市君が辞任され、田中啓一君が選任されました。 —————————————
○委員長(木島義夫君) 次に、選挙違反事件に関する調査を行ないます。稲葉君。
○稲葉誠一君 建設省の官房長の平井という人が橋梁業者から集めた政治献金、これに関連して山本という代議士の人が起訴されたようですが、これは現在はどういうふうになっているんですか。どういう事実で起訴されたわけですか。これは大臣から答えていただきましょう。
○国務大臣(高橋等君) これは現在公判係属中でございまして、その起訴されましたのは国家公務員法違反及び公職選挙法違反ということで起訴されております。
○稲葉誠一君 これについて最高検、東京高検が協議したということはいいと思うのですが、一部の新聞によりますと、これは九月二日の読売新聞ですか、高橋法務大臣の了解をとった上に三人を公選法、国家公務員法違反で起訴した、こういうふうに出ているのですけれども、了解というかどうかは別として、あなたのほうにこの事件の起訴について報告なりあるいは了承を求めるなりということがあったわけですか。
○国務大臣(高橋等君) 起訴すること自身は検察庁の固有の仕事であって、大臣の了解を得るとかなんとかという筋合いのものではありません。しかし、国会議員を起訴いたしますような場合は、一応報告は参ります。それはあくまでも報告の程度で、大臣が決裁すべき事項ではないわけであります。
○稲葉誠一君 それはあなたの了解をとった上と新聞に出ておりますから、私は法務大臣がこういうふうなものに関与すべき筋合いのものではないので、変だなと思って見ていたわけですが、そうすると、報告というのは、起訴する前にあるのですか。立ち入ったことをお聞きしてはなはだ恐縮でございますけれども。
○国務大臣(高橋等君) これは起訴する前に報告があるという習慣になっております。
○稲葉誠一君 それは、あれですか、国会議員の場合に限るのですか。起訴前に法務大臣に報告するというのは、国会議員を起訴する場合に限定されているわけですか、あるいはその他あるわけですか。
○説明員(津田実君) 現実の取り扱いの問題でございますので、私から申し上げますけれども、全国の検察庁におきまする事件につきましては、捜査中、つまり事件を受理いたしました場合に報告するものもありますし、処理いたしました場合に報告するものもありますが、それはいろいろ事件の種類等によりまして、あるいはその重要度等から見て、その報告の一般的基準はきめておりますが、その基準自体はここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。 しかしながら、少なくともただいま大臣からお話がございましたように、国会議員につきましては高等検察庁あるいは最高検察庁にその捜査の経過を報告いたしているわけでございますし、国会議員に限らず、重要関係事件、世間の耳目を聳動したような事件につきましては、当然最高検まで報告してくるわけであります。そういう報告があったということを現地の地方検察庁から法務大臣に報告する、つまり最高検にかような報告を出しましたということを法務大臣に報告するというふうになっているわけであります。そういう報告を受けて法務大臣が承知していると、こういうことであります。
○稲葉誠一君 最高検へ報告するとか、高検へ報告するというのはわかりますが、報告なんだから、起訴した後にするのが当然なんで、いま大臣の話を聞くと、起訴前に報告を受けたというように私聞いたのですが、そうなってくると、報告じゃなくて、あなたの了承をとったというふうに世間で考えるのはちょっと常識的になってくるんじゃないですかね。
○説明員(津田実君) それは、法務大臣は検察官を一般的に指揮監督しているわけでありますから、最高の監督者に対して事件内容を報告するということは当然のことでありまして、別に特段のことではございません。まあ当委員会においてもしばしば御審議をいただいている渉外関係事件につきましても、もちろん現地から報告が参っておりますから当委員会でも御説明を申し上げ得るわけでございまして、法務大臣のほうに報告がなければその間に御説明申し上げるということはできないわけでございますが、そういうことにはなっていないわけでありまして、すべて一般的に指揮監督しているわけでありますから、いかなる段階において報告しようとも、それは現地の判断によってなし得ることであります。そういう意味の報告を受けているということであります。
○稲葉誠一君 特定事件の捜査の指揮権というものは法務大臣にないわけでしょう。それははっきりしていますね。それが、こういうふうな場合には起訴する前に大臣に報告という、形は報告だけれども、事実上は決裁というような形にとられるのじゃないですか。事実上は決裁ということじゃないですか。こういう特殊な事件は、そうなってくると、指揮権の問題も出てくるし、いろいろな問題が起きてくるのじゃないですか。
○説明員(津田実君) 法務大臣は、個々の事件につきましては検事総長のみを指揮するということに検察庁法ではなっております。法務大臣は、検事総長に対しましてはいかなる具体的事件についても指揮ができるわけでございます。したがいまして、たとえば具体的に申し上げますと、外交関係に重大な支障を及ぼすような事件、先般のライシャワー大使に関する事件というようなものにつきましては、法務大臣まで現地から稟請をしてまいりまして、法務大臣の指揮によって処分をしているわけであります。そういうことでございまして、個々の事件につきましても法務大臣が指揮をしている場合はしばしばあるわけであります。ただ、指揮権発動として問題にされましたのは、検察庁すなわち検事総長の意見と法務大臣の意見と違った指揮をしたということに問題があったわけでありまして、個々の事件について法務大臣に稟請をしているという事件は、先・ほど申し上げましたライシャワー大使に関する事件等、ある種の事件についてはあるわけでございます。したがいまして、その場合は法務大臣は指揮をいたしたわけでございます。ただ、ただいま問題になっております事件につきましては、法務大臣は報告を受けているのみでありまして、具体的に了承とか指揮とかいうことは全然いたしておりませんし、従来からもいたさないことになっております。
○稲葉誠一君 それで、この事件についてお伺いするのは、これは警察のほうに聞くわけですけれども、警察は初めだれとだれとを被疑者ということにしたのですか。
○説明員(日原正雄君) 警察では、元建設省大臣官房の官房長の平井学氏と、人事課長補佐の高岩迪資両名を公職選挙法の違反、国家公務員法の違反として検挙いたしたわけでございます。
○稲葉誠一君 それで検察庁へ行ってからこの山本という代議士が被疑者になってきたわけですが、警察の段階では、あれですか、どうして山本という人は被疑者にならなかったのですか。
○説明員(日原正雄君) 山本を共犯で検挙しなかった点でございますが……。
○稲葉誠一君 検挙とは言わなかった……。
○説明員(日原正雄君) 私どものほうが被疑者として扱わなかった理由でございますが、警察のほうにおける私どものほうの取り調べの段階では、山本氏の共犯性が認められなかったので、一応参考人として調書を作成しておったわけでございます。
○稲葉誠一君 どうして警察では共犯性は認められなかったのですか。日本の警察は世界でも最高の捜査能力を持っているんじゃないですか。
○説明員(日原正雄君) この事件でございますが、元来が東京都の職員等の橋梁汚職事件から派生してきたわけでございますが、捜査の着手段階から検察庁とも密接な連絡をとって、両方が協力してこの平井事件につきましても捜査を進めていたわけでございますけれども、警察の段階では、先ほども申しましたとおり、共犯性が認められないままで、一方、取り調べ内容につきましては早急に検察庁に連絡することが適当と認められましたので、被疑者、関係人の取り調べの終了を待って関係記録を送致したというような状況でございます。
○稲葉誠一君 警察関係でどうして共犯容疑というものが認められなかったのですか。ここがはっきりしないのですが、警察出身の人だからそこまでやるのはあんまりだということでやらなかったのか、あまりやると疑われるということで、あとは検察庁にまかすという態度をとったのか、そこのところはどうなんですか。
○説明員(日原正雄君) 私どものほうは、警察関係ということで遠慮するというようなことは一切ございません。もっとも、そういうような気持ちであれば、この平井事件そのものが初めからくずれておるわけでありまして、そういう気持ちは毛頭ございませんでしたのですが、一応私どもの段階における調べでは、山本氏の共犯性がどうしても出てこなかった、一方、早急に検察庁に連絡するほうが適当であるというふうに認めたということで、その後検察庁に参りましてから約一カ月の取り調べではっきりしたということであると思います。
○稲葉誠一君 まあなかなかちょっと答えにくいというか、あれですね、苦心したような話みたいに聞こえるのですけれども、そうすると、あれですか、家宅捜索なんかやらなかったのですか、この事件に関連して。
○説明員(日原正雄君) 警察の段階ではやっておりません。
○稲葉誠一君 警察の段階でどうして家宅捜索をやらなかったのですかね。これだけの政治献金の問題やなんかあるのだし、そうするとある程度の共犯関係なんかはっきり出てくるんじゃないですか、おかしいじゃないですか。
○説明員(日原正雄君) 関係被疑者の取り調べの状況その他全般を判断いたしまして、十分これで捜査の目的を達し得るというふうに考えたのでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、この山本という代議士が金を受け取ったということは警察段階で調べがついたのですか。そこまで調べがつかなかったという話もある。何か秘書官が受け取ったという話もあるんですが。
○説明員(日原正雄君) 山本氏の警察における調書では、十一月の中ごろ、義弟の林から、平井さんから鉄骨橋梁関係の会社約二十社くらいから集めた六百万円を受け取ったという話があったというふうな供述になっております。
○稲葉誠一君 一警察の段階においては、山本さんは自分が受け取ったんじゃないんですか。林という人ですか、が受け取ったという話だったというんですか。
○説明員(日原正雄君) そういうことであります。
○稲葉誠一君 林というのは何ですか。
○説明員(日原正雄君) 義弟ということで、東京の秘書役のようであります。
○稲葉誠一君 そういう話を聞いて、ああそうかというわけですか。そのとおり間違いないと思って、それで警察では調べを終わりにしちゃったわけですか。
○説明員(日原正雄君) まああとのいろいろな関係を考えられますればいろいろ出てくると思いますが、私どものほうの段階ではこのような調書の形で終わっておるので、さらにそれはもう少し日にちをかけて十分な取り調べをすべきではなかったかという御意見も出ようと思いまするけれども、先ほど申しましたような状況で、とりあえず二日間の取り調べでそのままの形で検察庁に連絡することを適当と考えて送った、こういう状況でございます。
○稲葉誠一君 二日間の取り調べで検察庁に送るのが適当と考えたらしいんですけれども、適当と考えたという具体的な根拠は一、二、三くらいあると思うんですが、これはどういうことですか。抽象的にそう言われるとはっきりしないのですが、まあ推測はできますけれどもね、常識的に。常識的にぼくらの推測で、それはそのとおりでいいようなものだけれども、ちょっと何かおかしい点もあるのだけれども、あなた方の先輩だしするし、やりにくかったという点もあるかもしれませんがね。
○説明員(日原正雄君) 私どものほうでは、先輩と申しましても、やはり犯罪は犯罪でございますから、その点はむしろ変に思われないようにやりたいという気持ちはむしろあるわけでございます。ただ、これは当初から検察庁とも連絡して、取り調べの手順その他も絶えず連絡してやってきておる事件でございます。それから世間に出た場合に影響も激しいというようないろいろな事情を考えて、早く連絡をして早く送ったという状況でございます。
○稲葉誠一君 そうすると、警察の段階では、いまの六百万円か幾らの金は、これは何だっていうことなんですか、どうしたということなんですか。
○説明員(日原正雄君) この資金について詳しい使い道ははっきり出てきておりません、警察の段階では。
○稲葉誠一君 はっきり出てこなかったと言ったって、はっきり聞かなかったわけですか。はっきり聞かないから出てこないのですか。
○説明員(日原正雄君) 聞いてもなかなか出てこないということでございます。
○稲葉誠一君 まあ聞いても出てこないものを無理に聞くわけにもいかぬでしょうし、警察のこの事件に対する取り扱いはいろいろ事情もあるのでしょうから、あまり追及しても気の毒だと思いますけれどもね。 そこで、これは、大臣は、あれですか、どういうふうにお考えなんでしょうかね。どうしてこういうふうに事件が起きるのだというふうに大臣としてはお考えでしょうかね。
○国務大臣(高橋等君) もう一度……。
○稲葉誠一君 どうしてこういうふうな事件——特に業者が、橋梁の建築とか何とかにからんで、役人が出る場合に政治献金をして運動をするわけですね。そういうふうなことにどうして業者や何かどんどん金を出すのでしょうか。その点はどういうふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(高橋等君) そうしたことがときどき行なわれておりますということはまことに遺憾のことだと考えております。業者としては、これは推測ですが、何か便宜をはかってもらいたいというような気があってやるんだろうと思います。
○稲葉誠一君 金は六百万円か六百何十万か、これは何に使われたということなんですか、検察庁の調べでは。
○説明員(津田実君) 六百余万円の使途についても、現在公判係属中でありますので、この席で申し上げかねます。
○稲葉誠一君 いまの段階で言えないというのは、これはわかりますが、公判が開かれて検察官側から冒頭陳述があれば当然出てくるので、公開の法廷で出てくることですから、そうなってくれば明らかになってくると思うのですが、この金は山本という代議士の人が個人で受け取ったというふうになっているのですか。
○説明員(津田実君) 個人として受け取ったというお尋ねの趣旨があるいは取り違いになるかもしれませんが、大部分は直接受け取ったという——受け取りというのは、事実としての受け取りであります。自分が領得するという意味ではありません。事実としての受け取りは本人平井の場合は大部分であったようであります。
○稲葉誠一君 それは山本という人が個人で受け取ったというよりも、何かもっと別な形の後援会というか、ある派閥というか、そういうふうなところへその金が行ったというように一部に伝えられているんじゃないですか。その派閥のだれかの名義で領収書が出ているということが巷間伝えられているんですがね。いまの段階でそこまでは言えないというか、はっきりしないということになればいたしかたないかもわかりませんが、その点はどうなんでしょうか。
○説明員(津田実君) 起訴事実によりますと、山本、平井及び高岩という三人が共謀してこの六百三十万円を受け取った、これは寄附金として受け取った、こういう事実であります。それ以上のことにつきましては公判で明らかになると思うのであります。現在その程度に申し上げることにとどめさしていただきたいと、こう思います。
○稲葉誠一君 あまりこまかく私ども聞きたくないし、そこまで聞くのはどうかという気がするのでしませんが、山本という人の選挙費用の収支の一覧を取ってみたのですが、収入の中にこれは入っていないんですね。収入が百八十八万六千円で、支出が百八十四万三千四百二十円という選挙費用の収支の報告ですが、これは自治省から取ったのですが、この六百何十万というのは選挙費用の収支の中に入っていないんですが、これはどうでしょうか。
○説明員(津田実君) その点につきましては、具体的に詳細な報告も受けておりませんし、また、この段階ではちょっと申し上げかねると思いますので、その程度に御了承を願いたいと思います。
○稲葉誠一君 では、いま自治省の人が来ていると思うのですが、この金が政治資金の寄附として届け出はされているんですか。
○説明員(小池昌雄君) 選挙費用の収支の一覧につきましては、お手元にお配りしておりまするような形で収支の報告が来ておりますということで、これだけしかわからないわけでございます。
○稲葉誠一君 私の聞くのは、一般の政治資金規正法による政治資金として受けたという届け出がされているのかされていないのかというんです。それはわからないですか。
○説明員(小池昌雄君) 政治資金の場合は団体の場合についての届け出ということになりますので、この場合は個人でございますので、別な問題となるわけでございます。
○稲葉誠一君 検察庁が警察が送ってこなかったこの山本という代議士の人を起訴したというのは、証拠が出てきたからということもあるでしょうけれども、一つの何といいますか、業者と政治家のくされ縁といいますか、そういうようなものをこの際一掃したいというか、そういうような社会的な一つの制裁といいますか、そういうようなものをという意味もあって起訴に踏み切った、こういうことなんですか。
○国務大臣(高橋等君) そうしたほかの目的をもって起訴したわけではありません。事実に基づいて起訴いたしたわけであります。
○稲葉誠一君 それは事実に基づいて起訴するわけですが、起訴にするか不起訴にするかということの裁定のときに一つの判断となってくるのじゃないでしょうか。政治家とこういう業者との非常なくされ縁があって、これが日本の政治を毒しているのだ、だからこういうものは処罰に値するのだ、起訴に値するのだということで起訴されたのじゃないですか。それはそうじゃないんですか。
○国務大臣(高橋等君) 先ほどお答えしたとおりであります。
○稲葉誠一君 それじゃ、こういうふうな業者と政治家とのいわゆるくされ縁というか、政治献金が、法律的に違法になる場合は相当あると、こう思うのですが、そういうふうな問題に対して今後どういうふうな一つの取り締まりというか、体制というものを組んでいこうとするのか、それは大臣としてはどうなんでしょうか。
○国務大臣(高橋等君) そうした事実がありますれば、法務省としては厳格公正にやりたいと、こういう考えでおりまして、その他は綱紀粛正その他全般的な問題は内閣自体の問題で、法務省だけの問題ではありません。
○稲葉誠一君 そうすると、来年に参議院選挙があり、その他にいろいろ選挙がありますが、そういうときに役所の高級官僚が相当立候補することが考えられているわけですが、その地位を利用して政治献金を受ける。地位を利用して政治献金を受けたからすべてが犯罪になるのじゃないでしょうけれども、そういうような形が目に見えてことしから来年にかけてあると考えられているのじゃないですか。それはどうですか。役人は、相当次官、局長が立候補するのじゃないですか。そうすると、いろいろの組織の下部の業者に向かって金を出せ金を出せといって中に立って要求することが目に見えているのじゃないですか。この前もあったのじゃないですか。今後もそういうことがあり得ると考えられるのですが、そういうことに対して、法務省としてというか、検察庁としてどういうふうな体制で行くかということはもっとはっきりしていいのじゃないですか。
○国務大臣(高橋等君) 公職選挙法に違反するような行為につきましては、先ほど申しましたように、厳正で公正な立場で取り締まっていきたい、こういうふうに考えております。
○稲葉誠一君 そうすると、高級公務員といいますか、そういう人たちが立候補するときに、その前後に業者から金をもらって集めたりしますね。どういう場合に選挙法の違反になるのですか。なる場合とならない場合があるでしょう。すぐ答えが出なければ研究してからでもけっこうですが。
○説明員(津田実君) 抽象的に申しまして、あるいは抽象的なものを具体化して、どういう場合をどうと言うのはむずかしいわけですが、本件の場合はまさに公職選挙法のこれに該当する場合のかなり典型的なものだというふうに考えておるわけでございます。
○稲葉誠一君 いや、だから、本件の場合は、前に戻っちゃって恐縮ですけれども、具体的にはどういう違反になるわけですか。
○説明員(津田実君) これは、先ほど申し上げました三名が、共謀の上、昨年施行されました衆議院議員総選挙に際しまして、国と請負契約を締結する橋梁業者二十一社に対しまして、三重県第一区から立候補した被告人山本のために選挙運動資金としての寄附を求めまして、三回にわたりまして政治的目的をもって二十一社から合計六百三十万円の寄附金を受領した、こういう事実でございます。
○稲葉誠一君 それはわかるんですがね。公選法の二百条の特定寄附の禁止でしょう。それから国家公務員法もありますけれども。そうすると、いわゆる各省の次官なり局長が立候補する、そういうときに、いろんな関連のある業者がいっぱいありますわね、各省ごとに。そういうところから金を集めても、違反になる場合とならない場合とがあるわけですが、それをちょっと聞いているわけですがね。
○説明員(津田実君) 御承知のように、公職選挙法の第二百条の第二項には、何人も選挙に関して百九十九条に規定する者それから外国人等から寄附を受けてはならない、ということになっています。その百九十九条に規定する者、つまり、衆議院議員、参議院議員の選挙に関しましては、国または公共団体と請負その他特別の利益を伴う契約の当事者である者からの選挙に関する寄附、こういうことでありまして、その範囲において公職選挙法の違反になる、こういうことであります。
○稲葉誠一君 これは立法論になるわけですけれども、そうすると、いまのように国と直接請負契約の当時者ということになると、範囲が狭くなってくるのじゃないですか。それ以外のいろいろな関係のある業者からいろいろな寄附やなんかをうんともらっても別に違反にならないということになるわけですか。
○説明員(津田実君) それはまあ具体的事実に即しませんと何とも申し上げかねるわけでありますが、百九十九条の「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者」、それの相手が国または公共団体というものでない場合には、少なくともこれには当たらないということであります。しかし、他の関係において何らかの違反になるということはもちろん考えられるわけでありますけれども、まあ具体的事実に即しないとどうも申し上げかねると思います。
○稲葉誠一君 そうすると、今後の問題として、建設省で起きたようなことが各省でも選挙に関連をして起きる可能性というものは相当多くあるということが考えられる、この条文の適用という面から考えても。ですから、そういうようなことが来年の参議院議員選挙その他に関連して起きる可能性が相当あるわけですから、法務省としては、こういうようなことがあった以上、こういう事件がまた起きないような形でしっかりした一つの体制というか、指示というか、そういうようなものを組んでもらいたい、こういうふうに思うのですがね。この点については、大臣としては、そのとおりしっかりやるということは言えるわけでしょう。こういうような事件を再び起こさないように法務省当局としてどういうような決意を持っておられるかという点だけを最後にお聞きしたいと思うのですがね。
○国務大臣(高橋等君) ただいま申し上げましたように、法務省といたしましては、検察を厳重にやるということ以外に法務省としての分野はないわけであります。その他のことにつきましては、内閣全体の問題として考えていきたい、こういうことでございます。
○委員長(木島義夫君) それでは、本日はこの程度で散会いたします。 午前十一時四十六分散会