大蔵委員会 第36号
- 発言数
- 38 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1964/06/04
会議録
○委員長(新谷寅三郎君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。 租税及び金融等に関する調査のうち金融に関する件を議題といたします。 本日は、特に中小企業金融につきまして田中大蔵大臣に御質疑をしていただくことに予定をいたしております。御質疑のある方は順次御発言を願います。
○野溝勝君 少々おなかをいためていますから、このままでひとつ質問することをお許しを願いたいと思います。また、大臣のほうでも楽な姿勢でひとつお答えを願いたいと思います。 いまの主題は中小企業金融ということになっておりますが、大体、金融問題全般の中から中小企業問題という点も出てくるのでありまして、一応私は、中小企業の金融問題に触れる前に、ひとつ大臣からお伺いしておきたいと思います。 最近の経済情勢でございますけれども、昨年十二月の金融引き締め以来、今日に至りその影響が広範に浸透してきたわけでございます。私はさきに国際収支の動向について、いち早く国会で警告してきましたが、幸い最近に至って、新聞紙上に出ているように、貿易収支改善のきざしや、国内景況において生産、在庫の鎮静の傾向というような、いい面があらわれてきております。しかし、他面、中小企業の倒産と手形不渡りの続出があらわれてきています。そこで、一方に引き締め緩和論があり、他方に慎重論が出ている状況です。まあざっくばらんにいって、大蔵大臣も、自民党の総裁選挙を前に控えて、どうも煮え切らないところがうかがわれます。この点について、大臣ひとつ、展望と忌憚のない意見をあなたからおお聞かせ願いたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 確かに、いま御指摘のとおり、国際収支はよくなる方向に明るさを増しておりますが、一面、国内においては中小企業の問題等がございます。御承知のとおり、十二月から三月の公定歩合の二厘引き上げまでの間には、国内の中小企業等の状況を十分考えながら、格段の配慮をしながら調整政策を進めてまいったわけでございます。 今度の一連の金融調整政策は、三つの前提を置いておるわけであります。開放経済に向かいましてあと戻りのできない状態でございますので、国際収支の長期安定改善ということをはかりたい。もう一つは、国内経済の正常な成長、安定成長をはかってまいりたい。第三点は、物価の安定をはかり、できれば物価の抑制をしてまいりたい。こういう考え方に立ちまして以上のような調整政策に入ったわけでございます。 その結果、ただいま御指摘がございましたように、確かに輸出も好調でございますし、輸入もおおむね鎮静の方向を進めておりまして、貿易収支は相当改善の徴を顕著にあらわしておりますことは事実でございます。 しかし、日本の国際収支の内容をごらんになればおわかりになるとおり、貿易外収支は依然としてまだ赤字基調を続けてまいると、場合によっては少し拡大傾向にあると、こういうような状態でありますので、経常収支をバランスせしむるような国際収支の長期安定という問題に対しては、これからもなお引き続いて努力をしてまいらなければならない現状であることは御承知のとおりでございます。 それから、資本収支の面につきましては、長期資本収支が非常に西欧市場等で好調を続けておりますが、御承知の短期資本につきましては、輸入が減って輸出が伸びるというようなために、輸入ユーザンス及び輸出ユーザンス等の関係で短期収支は赤字の基調でございますので、資本収支長短合わせて黒字という基調では現在のところないわけでございます。でありますので、国際収支の長期安定的な方向を確保していくためにも、調整政策を進めてまいらなければならないということでございます。 ひるがえって、国内の情勢、特に中小企業の倒産状況等を見ますと、戦後、件数、金額等も最高であるということでありますので、これらにつきましては、金融調整の過税にありましても、金利を引き上げないように、資金量を確保するように、また金融調整の結果、黒字倒産が起こらないようにというように、各般の面に配慮いたしまして、国内的な均衡も十分はかってまいるようにいま考えておるわけでございます。 総裁選挙等が近くなったので、どうも、貿易収支がよくなったということで、また金額調整政策をゆるめるのじゃないかというようなことが一部の新聞等で言われております。まあ池田総理も田中も低金利論者だから、下げるのじゃないかというようなことを想像して言っておる者もございますが、いま申し上げた事実を考えますと、大体どういう方向をとっているのだなあということは御理解いただけると思うわけでございます。
○野溝勝君 まあ、大臣、この両面の見方についてはただおおよその見当話をされたのですが、特にその中で問題なのは、貿易収支がよくなったといいますけれども、私の見るところでは、貿易収支といえども、いまのままでは、これ以上の好転を期待するには多大の努力を要すると思うのです。 なぜかならば、御承知のとおり、大体アメリカは故ケネディのバイ・アメリカン、シップ・アメリカン、金利平衝税・あるいはダンピング防止法などドル防衛政策を強化しておる。さらに、日本にとって容易でないことは、御承知のように、ケネディ・ラウンドの問題もあり、あるいは対日輸入制限等不平等な取り扱いもしておる、こういう情勢なんですね。じゃ、欧州方面はどうかといえば、EECといっても、やはりこれは何といっても西欧諸国優先、中心なんです。 そこで、問題は、それじゃどこに一体今後の輸出増大、貿易収支好転のめどをつけるかということです。当然、中国あるいは東南アジア、あるいはソ連、あるいはAA地域、そういう方面に相当力を入れなければならないだろう。ところが、このほうは、いまのところどうも鳴かず飛ばずといいましょうか、思い切った手を打っていない。昨日の新聞を見ると、ジョンソンですらも、ルーマニアとプラント延べ払い輸出をもやろう、最恵国待遇の国々と同様に五カ年間の期間を認めるというような、大幅に前進した方針を打ち出しておるわけです。日本はいま申したとおり。 そうすると、わが国としても、貿易収支の黒字増大をはかるには、輸出金融等について英断といいましょうか、一つの政策の転換をやらなければ、容易にそういうことはあらわれぬと私は思っております。いわんや、貿易外の収支の問題、特に特需はなくなったし、いま合理化に入っているとはいっても、海運界もこれからは必ずしもいいとは言い切れないと私は思っています。すなわち貿易外収支赤字基調は当分変わらない。資本収支においても、いま大臣がお話しされましたように、長期、短期の資金についても、非常にむずかしいのです。特にユーロダラーの問題などはなかなかまだ解決しておりません。いわんや、金利平衡税の問題がまだ解決しておらぬ際でございます。こういうような情勢を見ると、とてもいまのままでは容易ならぬことです。 しかし、まあいまは悪いよりは確かによろしい。それから、最近とってきた政策もある程度私は効果をあげたと思う。悪いというのじゃないのですが、ただ、このままでは私は済まされぬと思う。国際的にそういう手を打っている際に、いまのままで推し進めていればいいというようなことについては、私、大臣と少し考えを異にしておる。もし考えを異にしておらぬとするならば、どういう手を今後打っていこうとするのか、またその展望においては誤りない、いまのままでよろしいというなら、これまた何をか言わんやでありまして、意見の相違としてこの問題は私は考えます。しかし、せっかく、単刀直入であり、非常に努力家である田中大蔵大臣のことでありますから、その点私はざっくばらんにものを言うても、またあなたがそれに答えてくれると思うので、いま質問をしておるのでございますが、この点どういうふうに考えられておりますか、お伺いいたしたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 先ほども申し上げましたように、日本の国際収支の状態は、貿易収支がバランスをし輸出が伸びましても、貿易外の赤字は相当大きなものでございます。この貿易外の赤字を貿易収支の黒字でバランスをせしむるというところまでには、まだ相当の大きな問題があるわけでございます。でありますから、輸出は大体当初政府が考えておりましたものは六十二億ドル、輸入も大体六十二億ドルということを考えておったわけでございますが、その後、御承知のとおり、月間約五億五千万ドル程度の輸出ができておりますので、一年間に直しまして、輸出会議等では六十五億ドル程度のものができるだろうということを、民間自体で指数を発表いたしておるわけでございます。輸入は大体初めは六十四、五億ドルになるのじゃないかというような御質問もございましたけれども、これに対しましては、調整策がだんだんきいてまいりまして、輸入も鎮静をし、逆に六十四、五億ドルと見込まれておった輸入は六十二、三億ドルにとどまるのではないかと、こういつて、もしその数字が事実となってあらわれたといたしましても、貿易収支において約二億ドルしか黒字がないのでありまして、貿易外の赤字は四億ドル以上になるわけでございますから、そういう意味からいいまして、経常収支がバランスをするということに対しては、貿易外収支の改善策につきましてはいろんなことをやっております。観光政策、それから海運政策、また港湾使用料の引き上げ等々、いろいろなことをやっております。けれども、なかなか経常収支をバランスせしむるということはむずかしい問題でございまして、いま中期経済見通しも立っておるわけでございますが、この過程において、四十三年くらいまでに、できれば経常収支のバランスをとりたいということを考えておるわけでございます。 それから、貿易が、一体その経常収支をバランスせしむるためには貿易をどの程度伸ばせるのかということでございますが、日本の貿易構造の内容をごらんになればおわかりになるとおり、対米貿易が非常に多い。第二の問題は、低開発国向けの輸出が非常に多いという特徴を持っておるわけでございます。御承知のとおり、アメリカは近年非常に景気上昇の機運にございます。この間の減税法案等を契機にしまして、景気上昇の状態でございますので、対米貿易はわれわれが考えたようもより大きく伸びておるということでございます。それから、低開発国の問題につきましては、国連貿易開発会議等でもございますとおり、低開発国向けに対して経済協力、経済援助等を大幅に進めていこうという国際的な機運の中にあるわけでございますし、日本自体もいままでのように低開発国に対してはできるだけ経済援助をしながら輸出シェアの確保をはかってまいろうということでございます。 東西貿易の問題に対してもっと重点を置かなければならぬということを言外にお示しになったわけでございますが、一九六三年統計から見ましても、対共産圏貿易の総額は輸出入とも二億ドル、共産圏に対する貿易は二億ドルということでございます。東西貿易、南北貿易等、国際的にもことばとしては相当はやされておりますけれども、五十数億ドル、六十億ドルに近い中で、共産圏に対してははわずか三億ドル。しかも、この共産圏に対しての問題は、御承のとおり、その収支をバランスせしむるということであります。ソ連貿易等は、日本からの輸出に対しては同額日本で輸入しなければならぬ、こういうワクをはめておるところに、非常に共産圏の貿易のむずかしさがございます。六三年度のソ連を申し上げますと、輸出をしたものが一億二千二百万ドル、輸入が一億四千五百万ドル、三千三百万ドルの入超でございます。でありますから、日本が共産圏から買い得るものは一体あるのか、こういうところに非常に問題があるわけでございます。 そういうことで、やはりいま共産圏貿易を伸ばさなければならぬというような議論も非常に強いのでございますが、やはり共産圏貿易には一定のワクというものがあって、これを急激に倍、三倍をしていくことはむずかしいので、やはり国際競争力をつけながら全世界に対して輸出を伸ばしていくということによって、貿易収支の黒字幅を拡大し、ひいては経常収支のバランスをとりたい、こういう考え方でいま進めておるわけでございます。
○野溝勝君 私の言わんとするところは、いまの西欧陣営中心の貿易も限界に来たということです。だから、それ以上手を伸ばすには、やはり共産圏と、それだけではなくて、AA地域の方面にも積極的に手を伸ばさなければならぬ。しかし、共産圏、特にソ連に対する貿易上の困難なお話が出ましたけれども、私は、ソ連だけではなく、いわゆる、低開発国、中国に大いに働きかけなければならないと思う。いま、どこの後進国に対しても、先進国は積極的に働きかけておるわけです。特に英国にしても、イタリーにしても、そうです。もちろん西ドイツもそうです。もう積極的に、その国の思想、イデオロギーを問わず、積極的にやっているわけです。だから、日本も解放農地に二千億もあるいは千何百億も金を出すというなら、プラント延べ払い輸出でも楽にできると思う。ともかくいま国がよくなるということに政策をとっていくのが私は大事なことだと思う。そういう点は、大蔵大臣、特に予算関係のほうでは解放農地の問題などについても突き上げられているということを開いておりますが、特に国が非常に有利になる、貿易収支が改善されるということは、延べ払い、プラント輸出をやれば相当伸びることは間違いない。よその国もやっておるのでありますから、その点、一体どういうふうに考えておられますか。こういう点はいかがであろうか。
○国務大臣(田中角榮君) 先ほど申し上げましたとおり、共産閥貿易というものは、わが国の貿易総軍から見ますと非常に小さいものであるということは、先ほど御指摘したとおりであります。一九六三年度が輸出入で約二億ドル、これは国はソ連、アルバニア、ブルガリア、チェコ、東独、ハンガリー、ポーランド、ルーマニア、ユーゴ、アジアにおいては中共、モンゴール、北ベトナム、こういうものを合わせて二億ドルしかないわけでございます。アメリカや西欧諸国と日本の共産圏貿易の状況というものはどうかというと、いままでは大体同じだったわけであります。でありますから、いままでは各国とも同じことをやっておったわけでございます。 今度延べ払いを大いにやったほうがいいという。また、この間ミコヤン副首相が来まして延べ払いと言うのですが、なかなか政治的な発言がございまして、日本が五年を十年にしてくれれば物を買う、頭金は三〇%をもっとうんと低くできないか、それから、プラント輸出をしたら、プラントでできたもの、生産品でひとつ決済できないか。これは非常にうまいことを言っておりますけれども、事実一つずつを検討いたしますと、なかなかむずかしいのです。プラントといいますと、日本で生産が十分にできるプラントをソ連に出すわけでございますから、そのプラントが建設されて、その製品を日本で買い取るというには、日本で余っている品物、余り得る品物でございますから、これは事実ことばの上では非常に政治的なことを言っておりますけれども、実際問題としてプラントを出して延べ払いにして、その製品をもって日本が代金決済に充てるということは不可能なことであります。 それから、五年を十年にしなければならぬという延べ払いを言っておりますけれども、これはいま国連貿易開発会議でも問題になっておりますものは、これは低開発国であって、二十世紀以後において世界の主要工業国の製品がもっと多く消化されるには、世界の半分以上を持っておる低開発国の連中のレベルアップをしなければ主要工業国の製品が伸びていかないから、そのためには先行投資としてやむを得ないのじゃないか、こういう考え方で延べ払い等が議論されておるわけでありますが、ソ連は少なくとも低開発国じゃない。これは非常に主要工業国、われわれが主要十カ国と言っております自由間の十カ国よりも大きくいっておる国でありますから、どうもソ連に十カ年の延べ払いということは一体できるのか、こういう問題もあるわけであります。 中には、シベリア開発等々を暗におわしておるのじゃないか、日本がもっと積極的に話に乗っていけば、そんなに延べ払い、頭金なしということが目的ではなく、政治的にシベリア開発という大きな問題とくっついておるのじゃないかという議論もございますが、ミコヤン氏が来て、いろいろな状態において話をしたときには、私がいま申し上げたものよりも一歩も出ておらないわけでございます。 もう一つは、ソ連が輸入をした場合には、ソ連の品物を必ず買わなければならない。これは共産圏はほとんどそういうことでございます。輸出入のバランスをとる。そうすると、こちらから買うものがない。一体買うものがあるのか、こういうところに非常に大きな問題があるわけでございます。 私はもちろん、共産圏貿易でも、資金がこれを許し、また世界的な方向からいってもできるならば、大いにやっていきたいと思っておりますが、日本は自由経済、自由貿易の思想でございますし、共産圏はほとんど国家貿易である、というところに大きく輸出が伸びないというものがあるのでございまして、こちらが及び腰であるから伸びないというのではなく、やはりこちらも前向きになり向こうも前向きになってもらって初めて共産圏貿易というものが伸びていくだろう、こういう現状認識でございます。 また、農地補償に出す金があったらソ連や共産圏に出したらいいじゃないかということでございますが、同時に、東南アジア諸国ではもっと出せということもございますので、そういうまあいろいろなことを考えながら、なかなか、御指摘のように急速に対共産圏貿易が伸びるというなかなか見込みが立ちにくいということでございます。
○野溝勝君 大臣はソ連を中心にいまお話しされたのですが、それはミコヤン氏との懇談などの結果はそうであっても、私は、単にソ連貿易だけでなくて、やはり中共その他後進地域に対する問題を含めて言うておるのですが、その点、詳細にお答えがない。 いま一つは、さように困難な点がありましても、解放農地に対する金があるならば、この際、わが国の健全経済を確立する意味におきましても、やはり貿易収支の拡充ということが絶対必要なんだ、そうして完全なる外貸の保有——いまのように借り入れ保有ではなく、無理な操作の外貸の保有高ではなくて、私はそうすることが国の将来について輝ける日本経済の樹立ということになる、こういうように考えているんです。そこら辺の御答弁がないようでした。
○国務大臣(田中角榮君) 国内でなるべく出さないでいい資金は、輸銀資金等に回して延べ払い等にすることは、将来の日本の輸出伸長の基礎になると。それはそのとおりでございます。それは私たちもそう考えておるわけでございますが、中共問題その他、先ほど申し上げましたとおり、共産圏諸国のことをずっと申し上げましたが、いまソ連、中共のほかに、共産圏の諸国で延べ払いを強く要求をしてきておる国はありません。二、三私が言いましたものもございますが、これは延べ払いをしてもらいたい。が、貿易というものはバランスをとらなければいかぬので、日本から三千万ドルの延べ払いをしてもらうときには、こちらの品物を三千万ドル買ってくれ、こういうものが前提で話が来ておりますので、向こうは国家貿易というところにどうしてもなかなかうまくいかないところがございます。 先ほど申し上げました十カ国などをずつと見ましても、ソ連が一億ドル台でございますが、ブルガリアなどは百八十六万八千ドル出しまして、百三十二万ドル入っておる。それから、チェコなどは三百十万ドル出して二百十万ドルを買ってくれている。東独などは七十一万ドル出して、二十四万ドルしか買ってくれない。こういうことで、これが五倍、十倍になるには、体何年かかってどういうところまで信用供与しなければならぬのか。私どもも、ただ締めているのではなく、こまかくケース・バイ・ケースで検討しておるのでございますが、いまのところ、やはりこっちのほうからだけ信用供与をして、向こうのほうは日本が言うようなことはできないというところに壁があるわけでございます。ソ連が逆に、五年の延べ払いを二年半にしてもいいから、その差額の二年半を東独やその他へやれ、こういう話にでもなれば、まだ話もわかるということになるのですが、一番力のあるソ連でさえも十年の延べ払いにしろ、こういうことでございますので、なかなかわれわれが妥勢的に前向きであっても、事実問題としましてどう考えるかということになりますと、現実的には非常に困難な状況が存在いたしますということでございます。
○野溝勝君 私は、いま大臣の答弁の中で一つ了解ができないことがあるんですがね。やはり中共は延べ払いの要求をしていますよ。そういう点もあるんですから、その点に対する……。ただソ連ばかりあんたは言うておるが、私はソ連ばかりでなく、中共などを重視しています。ルーマニアなどは共産圏陣営であり、しかもそんなに内容がいいわけではないが、それでもアメリカはちゃんとそういう五カ年等の延べ払いや、よその国に対してやっておるように最恵国待遇を与えるというときなんですから、そういうふうにひとつ考えたらどうかと言うておる。蔵相はソ連、ソ連と言っているが、私はソ連ばかりを言っているのではない。 それから、もう一つは、そういうことをやるためには、向こうからはパーパーの貿易を要求しているのでむずかしいと言っているが、そういう場合でも、また後進地域の育成、将来への展望、こういうことを見て、それらの所要資金、資金繰りなども、解放農地の予算などを組むくらいなら、十分できるじゃないかと思うんですけれども、そこへいくと、ぴたりと黙ってしまうんだから、そこら辺をひとつ忌憚なく……。
○国務大臣(田中角榮君) どうも解放農地の非常にむずかしい御質問をいただくもんですから、なかなか歯切れよくお答えできないわけですが、解放農地の問題ということは、野溝さんも御承知のものでございますから、これはひとつ離れまして、ルーマニアの例を申し上げますと、六十三年度にはこちらから出たものが九百八十五万ドルでございます。それから、輸入したものが五百六十五万ドルでございます。まあ中には機械を買え、バーターをしようという話もございますので、ケース・バイ・ケースで検討いたしております。 中共は、御承知のとおり、六十二年には出たものが四千百万ドル、輸入が三千三百万ドル。これが六十三年には、出たものが五千百万ドル、入ったものが四千七百八十万ドル、こういうことでございます。まあビニロン・プラント等の延べ払いを認めました。まあ塩アンとかその他のものの延べ払いを認めておりますが、いま新聞等の報道には、大日本紡のビニロン・プラントを出してくれというような話があるようでございますが、まだ民間から正式に内閣には申し出ておらないようでございます。まあ中共に対しましても、御承知のとおり、政経分離の基本方針を立てまして、貿易は大いに両方とも拡大していこうということでございますし、また中共の見本市等も開かれておるのでありますから、われわれが特に中共とかソ連とか、共産圏貿易というものを故意に締めていこうというような意味では全然ないわけでございます。前向きに対処していこうという考え方でございますので、この間の事情をひとつ御理解をいただきたいと、こう考えます。
○野溝勝君 私の質問のしかたも徹底しないのか、お答えも徹底していないんですが、その点はまた後日の機会に譲るといたしまして、特に私はこの際大蔵大臣に希望を述べておきたいのです。その点に対して希望を述べておきたいと思うのです。 いま私が申し上げたとおり、なかなかよその国は遠慮会釈なくどんどんとやっております。表面はEECであるとか、あるいはOECDであるとか、あるいはIMFであるとか、いろいろ国際機関を巧みに操作して、最恵国待遇という名は与えてはいても、実質は今日の日本に対するように差別待遇をやっておるわけです。昨日も通産大臣がこの点について抗議する意見書を出しているのを私は見ました。同じ内閣におい工経済閣僚である一大臣はかようなことを言っているのです。この事実というものを私は重大に見なければならぬと思うのです。まあ一応諸君らの努力によりまして経済は好転したといえども、まだ日本経済は福助経済、頭ばかり大きく見えて、あと下のほうが整わない。これを称して私は福助経済という。こういう福助経済の日本の経済でございます。幾ら池田総理が大きなことを言いましても、先進国だとか言っても、中身が違う。頭だけが先進国のかっこうをしているが、いま言うとおり、からだはやはり整っていない。それが証拠には、株式界だってそうでしょう。政府が貿易収支はよくなると発表いたしまして、国際収支の展望が開けそうだとなると、ちょっと株が上がったけれども、瞬間だけです。福助経済だから、これは五体が整わないというために……。そうじゃないですか。わが国国際収支の実態は、たとえば外貨準備高のかさ上げをやって、表面をつくろった。 だから、株価も、これはまだまだ本物じゃないというところから、また下がってくる。こういう実態というものは大臣はもう詳しく知っていると思うのです。しかし、あなたの健闘と努力でここまで好転したのだから、一応ちょっと楽になった。 私は前回のこの委員会におきましても、強く要望しておいたのですが、国際収支の均衡安定をはかる基本というものは、貿易収支の黒字、経済収支の均衡、黒字という健全政策でなければならないと思う。この基調の上に初めて好転の見通しがつく。それを待たなければだめだということを言いました。幸い、貿易収支については一応そのきざしがあらわれました。しかし、経常収支としては、まだまだ赤字基調をぬけ切れない。そこで、さらにいまの貿易収支の好転も、大体在庫品一巡ということもうかがわれ、これはけっこうなことだと思う。だから、これから先は、ちょっと手をゆるめれば、引き締めを緩和すれば、またまた今度原材料輸入に入るだろう。原材料輸入をやって、生産に大いに馬力をかけるということになると、国内消費も限界に来ておりますから、ここでどう調整するかということにぶつかってくる、ここに日本経済の弱さがあり、わが国今日の経済はこういう基調にあるわけです。 だから、私はそういう展望をもって、単に中共だけということを言うのではなくて、やはり各国がやっているごとく、国内の政策の中で財政の中で、貿易振興に回すというのでありましょうか、予算を相当計上すれば、長期に立つところの貿易収支の黒字の展望が立つのでございます。そういう点について、だめだだめだということだけでなくて、西欧陣営といってもうまみはありませんよ。そんなにうまみはない。アメリカだけがバイ・アメリカンを言っているのではない。どこだって、自国の経済をまず重点に考えているのでございます。そこで、日本もあまりアメリカや西欧陣営のほうばかり向いてはおられない。もちろん、ミコヤンを見ろというのではない。やはり参考にして善処する必要がある。南漢宸をまねろというのではない。南漢宸の言うことをよく聞いて、またこちらも話して、そうして政経分離などと言っていないで、自国の経済にいいことはどんどんやっていくべきです。悪いところは直してやったらいいと私は思う。そういう点について、大蔵大臣はじめ政府は、与党の総裁選挙を目の前に控えて思い切ったことができないようであるが、私はそういうものではないと思う。ここで、あなたは大胆に日本の将来を考えて、ひとつ手を打ってもらいたい。これを約束しないと総裁には推さないというくらいの決意を持ちなさいよ。あなたは率直な大臣だと私は思うので、この点を強く要望します。 次に申し上げたいことは、国際収支の動向はさっきもお話しになりました。これは私もそう思っております。しかし、この中で、特に生産在庫の点でございますが、まあ、鎮静状態に入りつつあるように見えます。 しかし、民間大企業の投資意欲はやはり相変らず根強いものがあると思うのです。根強い投資意欲ということは、今日の企業に、競争の必要からということのほかに、相当の力が出てきていると、こう見ていいと思うのですね。通産省の調べによると、国民所得計算で、昨年の四兆一千億円に対してその約八%強の増加になるような民間投資が予定されているのですね。すなわち民間投資計画四兆三千数百億、こういうベースを示しておりますが、この点は大蔵省でもさように認めておりますか、どうですかな。
○国務大臣(田中角榮君) 三十八年度の第四四半期あたりは非常に高い生産でございます。これをひとつ少し鎮静せしめたいということで、大体鎮静の方向へ向かっております。でありますから、在庫率は非常に低い。八〇くらいでございますから、非常に低いのであって、これが九四・五くらいまで上がると輸入もまたふえるということをいわれておりますが、私たちはこう考えております。いままでは、貿易・為替の管理をやっておりましたが、四月一日から八条国に移行しましたので、必要なものは国際価格の変動等によりましてすべてがいつでも入れられるということではございませんが、少なくとも十四条国におったときよりも必要なものは自由に輸入できる、こういうことで、輸入原材料の積み増しをしておくということは、三月よりも四月になってからそういう考え方は非常に楽になったということが一つ。 もう一つは、在庫積み増しを大いにしなければならないほど高い生産水準ではなく、だんだんと生産も鎮静になりつつある。こういうことで、九〇を割った在庫率というものは、そう低いものではないというふうに考えておるわけでございます。 設備投資は大体、政府が当初考えましたときには、年間四兆円程度、こういうことでございましたが、三十九年の三、四、五月の三カ月を見てまいりますと、設備投資もそう急激に落ちておるという状態ではございませんので、通産省が四兆三、四千億になるのじゃないか、日銀等も四兆二、三千億になるかもしれぬ、こう言っておりますが、私たちも三兆七八千億から四兆一千億円と見ておりましたが、四兆をこす、四兆一、二千億をこすかもしれぬ、こういうに考えておるわけでございます。
○野溝勝君 そこで、私の見方は、こういうように民間投資には根強いものがあるということですが、この民間の投資意欲が根強いということを、いまここでとやかくは言いません、しかし、ここで少しく私の考えを述べておきたい。 かような民間の投資計画がある、計画する力を持っている反面に、中小企業の倒産が増加傾向にある。農業はますます他との格差を広げてひどくなっているというアンバランスがある。こういうことは政策上から見て、日本の財政経済の立場から見て、均衡を失しているというだけでなく、破綻に導くもので、まことに危険であると思うのでございます。一体、大臣はこれをどういうふうに考えますか。
○国務大臣(田中角榮君) 高度成長が続いてまいりましたために、確かに鉱工業部門は非常に高い成長率を遂げておりますことは御承知のとおりでございます。この第二次、第三次産業部門の成長率に第一次産業、すなわち農業部門等が追いついていかないということは事実でございます。でありますから、中期経済見通しを立てますときに、経済企画庁長官もいみじくも言ったわけでございますが、ひとつ中小企業とか、農業のように所得格差のいまだ開いているものに対して十分なてこ入れをしなければいかぬ、こういう方向を明らかにいたしておるわけでございます。農業が相当合理化を進められたといたしましても、なかなか二次、三次産業に対する比率三〇%とか四〇%というような所得率が、二次産業、三次産業と一緒になるということは考えられないことでございますが、いずれにしましても、立ちおくれておる農業方面に対しては重点的な施策を行なわなければならないという考え方を持っておるわけです。 中小企業につきましては、消費者物価が上がっておりますように、サービス料金等を考えてもおわかりになるとおり、大企業との間の償金格差をだんだんなくしなければ人が集まらないというようなために、賃金のアップが大幅に行なわれる。これが合理化や生産性の向上で吸収できないということによって消費者物価も上がっておるわけでございますが、いずれにしましても、中小企業が大企業並みに国際競争力をつけていくということに対しては、設備の合理化、近代化等が急速に行なわれなければならないわけでございます。でありますので、政府も中小企業の近代化、少なくとも金融調整期間中といえども、中小企業が前向きで努力をしておるものが金融の調整だけによって黒字倒産をしないように、また設備の近代化、改善等がおくれることのないように、賃金上、金融上十分な配慮をいたしておるわけでございます。 このような中にもかかわらず中小企業の倒産が多いと、こういうことでございますが、確かに三十九年の一月、二月、三月までは戦後最大でございました、一月は百九十八件、二月が二百三十八件、三月が二百七十五件、四月が三百三十二件、五月はもっと大きくなるのじゃないかとこういう風潮でございましたが、統計が出ましたところを申し上げますと、四月の三百三十二件に比べ五月は二言八十二件というふうに、相当われわれが初め考えておったような倒産件数よりも実情としては非常に減っております。四月の三百三十二件で、負債金額の総額は三百六十四億であり、五月は二百八十二件、総額二百五十二億というふうに大きく減っておるわけでございます。 この中でもって金融引き締め等の状況から倒産をしたのかということで調べてみましたが、東京商工興信所で調べました、大蔵省が手を入れない数字で申し上げますと、昨年の十月から今年四月までの統計が出ております。放漫経営が、今年四月の統計で見ますと、一三・六%、過小資本が五・四%、既往の長い間のしわ寄せが二四・七%、それから売り掛け金の回収不能になったもの、回収難、これが一五・一%、在庫状態の悪化をしたものが三〇・四%、設備投資の過大が一〇・八%、計一〇〇となっておるわけでございます。 まあ、こういう問題につきまして、少なくとも黒字倒産のないようにわれわれとしてはあらゆる面から中小企業の育成強化ということに意を用いておるわけであります。
○野溝勝君 大臣、いま倒産状況について、東京商工興信所の調査を読まれました。その中で統計の分析がされておりましたが、それによっても、いかに大企業の小さいものへのしわ寄せが多いかということがわかるわけですね。大臣はどこの機会でしたかね、そこのお話で、放漫経営が多いと言いましたが、放漫はこの件数の中では一三%、中央からのしわ寄せが……。
○国務大臣(田中角榮君) 既往です。既往というのは、何年かつぶれそうで、ようやく持ちこたえていたものが参ったというのが二四・七%ということです。
○野溝勝君 それで、いずれにしても、それも入るし、過小資本、これも含んで、この状態を見れば、まあ財政経済にどこか欠陥があると言わざるを得ないと思うのだ。単なる従来からの惰性的金融対策だけでないものが必要だと思う。放漫をやったというのは、これはしょうがない。だから、あとのものは放漫とは言えないのですから、ここで政治的、経済的配慮を要すると思うのです。この点がなかなか、中小商工対策なんて言っても、私は欠けておると思う。 たとえば、まことに矛盾した政策がとられている。時間がないからあまり詳しくはやりませんけれども、いま政府は酒の小売り免許制を大幅に緩和しょうとしている。伝えられるようなことでこれが実施されると、これからスーパー・マーケットあたりでどんどん酒を売っていく。そうすると、しまいに投げ売りをやるのです。自由競争ですから。そうすれば、皆そこへ集まってくるだろう。そこで、零細な小売り商人は浮いてしまう。こういうところにもこまかい配慮をしないと、中小零細企業は、特に零細企業はとんでもないことになると思うんですが、こういう点はどういうふうに考えておりますか。あなたは一方においてそれを許し、一方においては中小企業対策なんて、さっぱりわからぬ。
○国務大臣(田中角榮君) 中小企業につきましては、時間があれば、政府がやっておりますあらゆる施策を申し上げることができるわけでございまして、できるだけ中小企業の施策はやっております。 ただ、例に引かれた中小企業を大いにやってあるかわりに酒などはどうか、こういうことでございますが、これは国税庁で長いこと考えておったことを実行に移そうということでございます。私も国税庁当局の案の内容に対して十分話を聞いたわけでございますが、こういうことでございます。これは免許を簡単にやってしまうと、だれにでもやるんだと、こういうふうにとられまして、全国の小売り商の皆さんがたいへん困ると、こう言われておったようでございまして、そんなことを、いままで戦前戦後について長いこと税金にも協力をした中小企業というものを見殺しにするようなことではいかぬということで調べましたら、そういうことではないのであります。 いままでは何メーターでしたか、まあ小売り商と小売り商との間が二百メーターなければいかぬというようなことでありました。そういう基準でやっておりますが、その後都市構造等が変わってきたわけでございます。これはメーターでもってやるということも、初めからメーターではなく人口、やはり消費者何千人に一軒、こういうことを考えたわけでございますが、それが規則の上であらわしておるのは、小売り商に免許を与える場合には既存の業者よりも二百メーター離れていなければならぬ、こういうことでございましたが、今度は、団地などができましたり、高層アパートなどができましたので、人数によりまして、まあ高層アパートがずっとできておる丸の内や銀座あたりでもって二百メーターというと何十万人ということになりますし、それから郊外に行きますと、二百メーターといっても何千人しかおらぬ、こういうことがございますので、人間の数でひとつやるようにしょう、こういうことで規定を変えるというにすぎないのでございます。 そういうことでありまして、その間の事情を十分小売り商の皆さんにも説明をしまして、よくわかったと。わかったが、われわれの商売をなるべく圧迫しないように十分の配慮をしてもらいたいということで、話がついたというように理解をいたしております。具体的な基準について現在検討中であります。これが一部小売り業者が初め考えたように、ほんとうに既存の免許権の剥奪になるということであれば、これはもう慎重に考えなければならぬといべようにこまかく内情を見ておるわけでございます。
○野溝勝君 私は、酒の小売り店をふやしサービスが拡大されるということはけっこうだと思うんですよ。けっこうなんですが、いま大臣の言われたように、税金を集めるためには信用がなくちゃいかぬ。そのためには、その店をつぶさぬようにしなければいかぬ。で、許可制を設けたわけです。ところが、今度は時代が変わって人数ということに重点を置く。これもけっこうです。しかし、酒が自由販売ということになって、いわば貿易の自由化でどんどんと外国品が入ってくる。そうすると、国内の酒業者はこれに対抗するために相当にコストを引き下げなければならぬ。ところが、そうは簡単に下がらぬ。そこで、外国資本にどんどん押されてくる。そこで、しまいにはやっていけないから、この企業は金融の道もつかないから、ここで投げ売りと。投げ売りということになると、デパートであるとかマーケットあたりが一番それをやりいいということになる。そうなってくると、いままで税金の集荷所みたいに考えられておりました小売り店が、商売にならなくなってくる。それで、たまらぬというわけでいまもそういう声が出ておると思うのでございますが、私はそういう形勢はあると思うのです。だから、ひとつ、大臣、国税庁長官によく話をして、それはよいけれども、その場合に投げ売りなどはさせないようによく業者問の協定というものをまっていくということにしないと、少し罪になりますよ。ですから、そういう点は、特に私はこの点を大臣に希望しておきます。よろしゅうございますか。
○国務大臣(田中角榮君) わかりました。
○野溝勝君 次に、私は、もう時間が参りましたので、最後にひとつ言います。 大体、今日の金融引き締め政策により、他面で中小企業倒産の悲劇が出ておりますが、質材収支がどうやら軌道に乗ってきて、その限りでは効果的なものがあるわけです。これは功罪相半ばというよりは、功のほうが少し多いよというところでしょう。ですから、その罪の点の中小企業対策というものを十分ひとつ考えてもらいたい。 それから、これは高度経済成長の罪だと思うのだが、あまりに商成長をあせってきたために、外貸の借金政策でやってきて、国際収支が危うくなって引き締めをやり、対外信用にも影響するところから、外貸準備商のかさ上げをはかるようなことまでした。しかし、こういう基礎の弱いことではいけないので、健全政策をとってもらいたい。やはり貿易収支の黒字をはかって、絶えずみずから力を培養し、こういう基礎の上に立って、国際収支安定、外貸準備増大をはかってほしい。いまのように長期あるいは短期の資金など、大臣がIMF会議あたりに出てお願いして、その金融をつけてもらう、そんなだらしのないことはやめてもらいたい。 ところで、これまでのこういう政策で犠牲になったのはだれかというと、中小企業と農業だと思う。特に、中小企業はその全部じゃございませんが、農業においてはほとんど全部なんだからひどい。先ほど大臣から、鉱工業生産、第一次産業、第二次産業、第三次産業のいわば所得格差の開きを簡単にお話しになりましたが、ひどいですよ。第一次産業と、農業は名を第一次とつけられているが、第一次で喜ばしておいて、実態は最下低である。徳川時代には士農工商といって、さむらいの次に農をつけて喜ばしておいて、しぼり上げたけれども、いまのやり方はそれと似てきておる。第一次産業なんて農業を上に出しておいて、工業や製造業、建設業なんというのは第二次産業、第三次産業はサービス業、いかにも第一次でおだてあげておいてしりの毛を抜くという政治のやり方だ。どうもそう見えてならぬ。私はこれは間違ったら是正を願いたい。現にそう思えるのです。 第一次産業の所得の比較を産業別国民所得構成で見ると、三十四年が農業一二%・二%、第一次産業全体で一六・五%、第二次産業が三五・八%、それから第三次産業が四八・一%、こういう所得構成ですな。そして三十七年度になると、まことにひどいものですよ。第一次産業全体で一四・一%、農業だけでは、何とわずかに一〇%と、ぐっと下がった。第二次産業が三九%。上がっておる。第三次産業は四七・四%です。この格差の開きですよ。こういう状態がつくりだされるところ、私はいかにいっても財政経済のやり方がおかしいと思うのですよ。 高度経済成長だといって、だれが成長しておるか知らぬけれども、農林統計、あるいは経済企画庁の統計でも、ちゃんとかように示しておるんですな。政府が示しておる政府統計は、どうしても下目に見た統計だと思う。これは私は、調査資料がありましたならばもっとひどいと思う。特にこの席上で申し上げますが、農業生産性において、工業の三分の一以下です。所得におきましては、第二次産業、第三次産業のそれぞれ四分の一強、五分の一強になっております。 特に、五月の三十一日夜十時、NHKテレビは、「出かせぎの村」と題して、秋田県仙北郡の農民の出かせぎの状況を知らせました。御存じですか。実に悲惨なものです。また、同僚、全日本農民組合代議士栗林君からも、仙北出身でございますから、聞きました。郡内出かせぎ農家は約四百戸、その出かせぎのうち、今日七十名がどこへ行ったかわからぬ。郷里には老父母、妻子を残し、村を捨て家を捨てて、これらの諸君は不明になっております。これは、最近の映画じゃありませんか、全く現代日本残酷物語というべきです。これはNHKのルポルタージュであり、こういう状態で、いかに今日の農業と農民生活が追い込まれているか、農村の格差がひどいかということを物語るものです。 政府は農業基本法なぞをやらまして、農業の近代化、所得格差の是正なんということを池田さんは言っておられますけれども、一体何が是正だか、事実は逆にますます格差が開くばかりです。特に大臣は農村出身でありますから、この点非常によくおわかりになると思うのでございますが、これを今後一体どういうふうにして改めていこう、あるいはどうしようと考まえすか。この際お聞きいたしまして、それをもって私の質問をきょうは終わりたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) いま御指摘になりましたとおり、二次、三次産業に比べまして、一次産業の所得は非常に低い、三分の一であるということは、これは御指摘のとおりでございます。そういう意味で、農業、中小企業に対しては、ひとつ全面的な積極政策をしなければならないということをいま考え、在来もそうでございましたが、引き続き努力をいたしておるわけでございます。 ただ、高度成長経済と農業、一次産業との関係でございますが、端的に申し上げますと、高度成長経済をやったために輸出も伸びたわけでございます。それから、高度成長経済が行なわれましたために、農村の次三男対策等も、いま問題としては何にもなくなったわけであります。日本で一番の問題は失業問題でございましたが、この失業問題は、ほとんど完全雇用になった。失業問題というものは、政治の大きな面からはなくなってしまった。これが、少し農村や中小企業からの労働入口の移動が激しかったために、農村においては戦時中にひとしいような労働力の不足ということになり、その意味で、農村の合理化、近代化というものが、多少われわれが考えたよりもテンポがおくれておる。また、中小企業等は、人口が大量に大企業等に、また都市企業に移ってきたために、中小企業では人手不足になり、また、大企業との所得格差の解消ということで賃金の急激なアップをしたために、これを生産性と事業の合理化で吸収できなかったために、先ほども申し上げたとおり、消費者物価が上がっておる。こういう二面があらわれておるわけでございます。これはしかし、ある意味からいいますと、そこでいろんな政治問題であった農村の次三男対策も片づいたわけで、それから失業問題も片づいた。完全雇用という大きな政治問題は片づいてきた。いまアメリカなどにおいては失業問題がたいへんなんです。こういう問題も片づいてまいりました。同時に、中小企業と大企業との賃金格差の問題も片づいてきたわけであります。 でありますから、この上に政府が施策を行なうのは、これから農業や中小企業というものを育成強化をいたしまして、一次産業のマイナス面、中小企業の非常に困っている面、これをカバーしていくということになると、先進工業国の形態になっていくわけであります。まあこれはひとつ簡単にあれですが、賃金をヨーロッパ並みにする。ほんとうに実質的にヨーロッパ並みに賃金がぴしゃっとした場合には一体どうなるかというと、現在の農山村がつくるところの農業製品等はぐっと上がるわけであります。 結局、サービス料金にしろ、散髪代にしろ、御承知のとおり、日本は高い高いといっても、まだ二百円、三百円ということであります。ヨーロッパに行くと千円、アメリカに行くと二千円であります。そういうところにまだまだ中小企業のレベルアップというものは幅があるわけであります。キャベツも高い、何も高いと言っておりますが、しかし、ヨーロッパやアメリカの状態から比べてみますと、国民が得る賃金も低いかわりに農産物というものの価格も低く押えておるわけであります。でありますから、賃金が西欧並みになれば、少なくとも農業でもってつくる米も、それから野菜も何も、すべていまの倍になる、こういうのが先進工業国の経済体系でございます。でありますから、まだまだ私は安定成長経済を進めていく過程において、農村、中小企業の合理化、近代化をはかるとともに、格差是正、レベルアップというものは当然そこで解決ができるのだ、そういう考え方で政府は施策を行なっておるのであります。
○野溝勝君 大臣、この前の選挙のときに、農業と中小企業に対しては革新的な施策をもって近代化する、これが重点だと言っておったのですが、これからそれに力を入れるというんじゃ、ちょっとどうもおかしいのですが。私は大臣の言われたのは本音だと思う。だから、農村がこうなってきた。いま言いましたが、確かに高度成長経済の功績というものは失業者をなくしたということ。その一面、農村はどうなったか。農村に専業農家というものは二割しかない。今日、出かせぎでようやく農業をやっているわけです。ほんとうの農業をやっていけるところはないわけですね。そうなってくると、いかに農業が強引な成長政策の犠牲をしいられているかといことがわかる。 特に、赤城農林大臣をこの前本委員会へお願いいたしまして私は質疑をしたのですが、昨年は史上第三番目の大豊作といっていながら、早場米を七十万石食わなければやっていけない。さらに外米を何十万トン繰り上げ輸入しなければやっていけない。何を言うのかと私は言いたいのですね。こういう状態で、農村がいかに苦しいかということがよくわかっているわけです。農業を放棄すると、政治的にも、経済的にも、社会的にも、まことに危険であることは言うまでもないこと、これはもう西欧陣営だろうと東欧陣営だろうと、体制にかかわりなく、実に危険なことです。強引な高度経済成長、重化学工業に重点を置いた結果、こうなったのですから、これはゆゆしきことになりますよ。 外米を買わなければならないことは、国際収支の大きな赤字要因ですからね、現に三十八年度の農林水産物輸入額は二十七億ドル余、総輸入額の四一%、食糧としての農産物は十六億ドル強、二二・八%に達している。こういう点を考えれば、ひとつこの際、大臣、閣議におきまして強調してもらいたい。全日農が、一俵七千円、石当たり一万七千何百円、これを要求するのは、これは最低限です。だから、大臣がいま、これから格差をなくすということならば、これは私は安直に承認されてしかるべきだと思うのでございます、がこの点をひとつ、どういうふうに考えておられるか、この機会に。ちょうどいい機会であります、大臣、非常にいい答弁をされたから。
○国務大臣(田中角榮君) いままでやってきた。やってこなかったというんじゃないのです。いままでも最重点政策としてやってまいりましたけれども、これからは特段の配慮をしなければならない、こう申し上げたわけでございます。野溝先生は日農の大先達でございますから、米の値段までお出しになりましたけれども、私も新潟県の出身者で、米の問題に対してはもう四十五年も話も聞いております、実情も見ておるわけでございます。しかし、これは一万七千円そのままのむなんということは、なかなか申し上げられる段階じゃございませんが、いずれにしましても、農山村というものは民族の苗しろだ——まあそのとおりだと私は思います。 私はもう、ただ政治的な発言ではなく、実際の上で、戦前の労働力また高度成長の労働力、それから頭脳、大蔵省などを見ましても、全部の出身地を見ると、豊かならざる農村の出身者が相当多いわけであります。でありますから、頭脳が農山村から供出をされておる、こういうことでございますし、まあ戦時中においては東京、大阪からみな豊かならざる農山村の故郷に帰って再出発をしたわけであります。私は、民族的に見て農山村、中小企業というものをいかに大切にしなければならないかという考え方に立って、非常に深刻にものを考えております。でありますから、これからもひとつ農山漁村の振興というよりも、まさに民族の苗しろとして維持、確保していくためには、政治上どうあるべきか、また財政投資の上にどうあるべきかということに対しては、まじめに考え、勇気を持って施策を進めてまいりたい、こう考えております。
○野溝勝君 これは答弁は要りません。これで終わりますが、非常に誠意のある御答弁で、私は結果を大いに期待をしております。 次に金融政策について、もうそろそろここら辺で引き締め緩和をして、公定歩合引き下げをしたらいいじゃないかという意見も出ております。これはなかなかそう簡単にはできないことでありますから、ひとつ慎重にこの際善処願いたい。 それから、特に農林予算について、かつて河野一郎君が農林大臣をやっておった昭和二十九年でしたか、従来の農林予算を半減されましたが、あのとき以来、農林予算は一般会計総予算のうち一〇%前後。今日も膨大な予算の中で、いずれにしても比率は一〇%前後。戦争前、あの軍閥はなやかなりしころでも、一六ないし一七%でした。こういうことから見ても、今日の農村の格差というものが政治的につくり出されてきていると思うのです。財政投融資につきましても問題になりません。大臣は先ほど誠意のある見解を示されたが、どうか特に農村に関しましては全体の財政の中で十分留意して善処してほしい。特にこれらをお願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
○渋谷邦彦君 二、三の点について若干お伺いしたいと思います。 ことしに入りましてから、特に一月、二月は、表面的には金融の引き締めということが非常に話題になりまして、倒産がそれによって起こった。また二面、専門家筋によれば、それは先ほども御説明がありましたように、特に日銀総裁などは、放漫経営の結果である、こういうことで一月、二月のいままでにない倒産の実情があったわけであります。客観的にこれを見た場合に、特にことしの一月、二月は暖冬異変であった。そういうような状況におかれまして、特に繊維関係の中小企業が倒産の憂き日を見なければならない、こういうようなことであったと思います。 今日、六月を迎えて、あるいは三月危機とかあるいは四月危機とか、まあおそらく今年じゅうにおいては六月危機が最大であろう、こうして六月を迎えたわけであります。最近の傾向を見ますと、特に繊維関係のほうは刑といたしまして、倒産の傾向が金属あるいは電機、化学というような、そういう面に向けられてきておる。繊維ならば、暖冬異変というようなことがあって、一応考えられないこともない。また、そこに放漫経営とかいろいろな多種多様な条件がからんでまいりますと、倒産ということも一応想像できるのでございますが、最近のそうした金属や電機をはじめとする倒産がきわめてふえてきておるということについて、特に当局として意どういうところに原因があると考えるのか、その点について専門的なひとつ御見解を承りたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、四月は三百三十二件で、負債総額で三百六十四億でございます。五月は多くなると思っておりましたが、件数は二百八十二件、負債総額で二百五十二億、約百十億円ばかり減っておるわけでございます。これは一部落ちつきを取り戻しつつあるということでございます。 ただ、倒産の内容を見ますと、いま御指摘のように、繊維企業というようなものからだんだん化学工業、機械工業、それから電機メーカー等、いろいろな問題が出てきておることは事実でございます。この内容をこまかくケース別に見てまいりますと、さっき申し上げたとおり、どうも放漫経営というか、過小資本とか、金融のしわ寄せとか、在庫の悪化とか、設備投資の過大とか、大体三つ四つがあるようであります。特に、私はこの倒産に関する東京興信所調べと別な角度から見ておりますが、東京興信所では、自己資本の過小ということは、これはあまり線の引き方がむづかしいので、統計上はあまり強く出しており産せんが、私の見たところでは、どうも過小資本というもの、企業間信用の膨張にたよっておる経常というものは非常に多いんじゃないかというようにどうしても見られるわけです。 一例をいいますと、五百万円ぐらいの会社で年間の年商が約三億ないし四億、倒産をしましたときの負債の総額が大体四億ないし五億、年商以上の負債を持っておる。そうしてそれを、資本金千万円以下五百万円程度で、いままでは非常に信用でつないできておったわけでございます。そういう意味でいいますと、一体いままで資本金の十倍、二十倍、百倍というようなものを回してきたのがここで倒産をするということになると、当然金融引き締めの影響じゃないか、こういうふうにすぐ即断されやすいのですが、私は中を見ますと、いままでつないできたのが非常に無理なつなぎ方をしてきた。こう人たちが銀行でもって最後に取引停止になった場合どうなるかというと、一体何に使うのですかといいますと、融通手形の決済をしなければつぶれるんです、こういうことを窓口で平気で言うような状態、また言わなければならないような状態もある。 すべてがこういう状態であるわけではないわけでございますが、いずれにしても、日本の自己資本比率が戦前の六一%から二四%を割っておるという事実が、この中に倒産の数字を見てみますと、相当大きなウエートを持っておるのではないか。でありますから、自己資本比率、オーバー・ローンの解消、オーバー・ボローイングの解消、こういうことの前提に、やはり自己資本比率をよほどスピーディーに厚くしていかないと、これらの問題はなかなか解決できないんじゃないか。こういうような考えを、いままで私の調べましたもののうち、そう看取しておるわけでございます。 中に、親企業が倒産をしたために倒産をした、こういうものもございます。特に東京発動機等の倒産によりまして関連産業が倒産した。一〇〇%から九〇%、最も少ないので八〇%、東発の子会社というよりも東発の一部分であった、こういうものでございます。七〇%、六〇%、少なくとも五〇%以上一つの企業にウエートをかけておった、そのものがあぶなくなった。五〇%以下というところでもって業の多様化をやっておるような中小企業というものはまだ根強いということが、私の調査の結果から出てきておるわけでございます。しかし、金融引き締め等で黒字倒産ができないように、あらゆる角度からいま措置をいたしておるわけでございます。
○渋谷邦彦君 先ほど御指摘の御説明によりますと、ただいまもお答えになったわけでございますが、先ほどの統計の中で、倒産の主たる原因の一つとして在庫状態が非常に悪い、こういう数字がきわめて中心をなすくらいにパーセンテージが高いわけです。こまかい内容等については省略いたしますが、たしか三十何%。そういう実情にかんがみまして、今後もおそらくそう急激に——中心企業の近代化であるとか——ということが推進されれば、これほど望ましいことはないんでありますけれども、これらの国際競争等の関連を考えましても、あるいは場合によってそういう在庫の悪化というものが当然考えられる。あるいは時期的によってもそういうことがあり得るであろうということは考えられます。 そこで、国としてそうした在庫について買い上げるという、たとえば公団を設けて買い上げるというような方法が現在考えられていないのか、これは自民党の政策の中にもあるかどうか、見ておりませんけれども、お伺いできれば幸いだと思います。
○国務大臣(田中角榮君) これはまあ中小企業の本筋問題を御指摘になったわけでございますが、確かに今年の四月、三〇・四%、一番高い比率でございます。これがわずか五、六カ月前の昨年の十月は一四・五だった。それが十一月には一八・二になり、十二月は二〇%になり、一月は一二になり、二月は三一、三月が二六、四月が三〇、こういうように急速に倍加しておるわけでございます。 私は、この十月時代に企業間信用等を十分調べたわけでございますが、この当時、過去三年間の企業問信用は倍になった。ですから、割賦販売とか延べ払いというよりも——また延べ払いは、何年間千円ずつ月々というようなものが、私が十月調べた当時はございました。こういう状態で急激に引き締めを行なうと、一律画一的な引き締めを行なうと、中小企業は軒並み倒産になるおそれがある。こういう考え方で、回り道でございますがやはり三、四カ月物を考えなければいかぬだろうということで、この当時日銀総裁とも意見が一致しまして、中小企業の金融というものはひとつ十分その窓口で内容を見て除々に引き締めていかないとたいへんになると、こういうことを銀行の首脳部を呼んでホテル・オークラで話をして、十分検討し、考えてくれ、こういうことを言ったわけでございますが、それから十二月に準備率を上げ、一月に窓口規制を行ない、三月まで公定歩合をずっと待ちましても、その間において終息しなかったわけです。だんだんまいりまして、四月は三〇%、これは引き締めていきますともっと大きくなる、こういうことも言い得るのです。 それは結局、中小企業がなぜこんなことになったかというと、この原因は大別しまして、はっきり申し上げると二つある、一つは、設備投資が大きくなった、一つは賃金が急激に上がった。賃金が上がりましたために、どうして生産を上げなければいかぬ。生産を上げるには、ちょうど設備はちゃんとつくってありますから、十分フル運転すると、売れないということで、製品在庫はこのように多くなる、こういう面があるわけでございます。 それは、買い上げるほかないではないかと、こういうことでございますが、これはなべ、かま全部買い上げてしまうということは、なかなかむずかしい問題でございますので、いわゆる生産テンポが正常に落ちる場合に、一体救済融資がどのくらいあるのか、こういうことは、金融機関で十分黒字の場合は倒産をせしめないようにという指導をしておりますので、各金融機関で、こういう中小企業をケース別に内容を検討しておりますから、そこで滞貨融資ということになりますか、製品滞貨製品在庫融資というようなことを相当やっておるから、まあ中小企業は倒産を、比較的に内容のいいものは倒産をしておらない、こういう状態が逆にあらわれておるわけでございます。 まあ自民党の政策というよりも、政府は、一体三〇%以上になっておるものを買うから、ますます生産ピッチを落とさない。無制限に自転車操業をしていくということが、中小企業のほんとうの育成になるのか。しかし、現状を無視しておればつぶれてしまうおそれがある。その問の調整をどうとるかということは、これからの中小企業対策の非常にむずかしい問題だと思います。
○渋谷邦彦君 いまの説明で大体了解したのですが、そうしますと、政府のほうでは、いまの問題を勘案いたしまして、まだ考慮はされていらっしゃらないと、そういうように理解してよろしいでしょうか。
○国務大臣(田中角榮君) 先ほど申し上げましたように、非常にむずかしい問題であります。ほうっておけばダンピングする。ダンピングすれば、多少物価は安くなるという面もございますが、それで一体その中小企業はもてるのかということでございます。でありますから、政府はいまこれを買い上げるとか、滞貨金融を大いにやるとかということを積極的に指導するという立場にはございませんが、ただ黒字倒産をせしめてはならない。いままで少なくともA銀行がB社の主力金融機関としてやっておったものが、黒字のものをなぜつぶしたのかという問題まで、調査の上相当強く言いますよと、こう言っておるのでありますから、まあその内容になりますと、多少製品在庫に対しても貸し増しをしているという事実もありますから、表に出てつぶれないということでございます。
○渋谷邦彦君 中小企業に対して、政府としても、最近融資などを通じまして相当努力されているようでありますが、いま心配になりますことは、総対的に中小企業といっておりますけれども、やはりその中でも特に零細企業の部分にわたる企業というものがわが国においては御承知のとおり相当の数を占めている。その中には、案外文化財的な、そういう人間国宝といわれるような立場人もおりますし、また、その人自身がつくる美術工芸品なんというようなものも、将来世界のマーケットに——マーケットと申しますかどうか、極端な言い方かもしれませんが、実際何らかの援助の方法を講ずれば、相当強力に推進できる。これは一例でございますそのように、零細企業といってもピンからキリまでございますので、一がいに中小企業全部をあわせて言っているわけではございませんが、特に零細企業の場合には、資金的にきわめて弱体である。 また、一例をせともの、陶磁器工業に例をとってみましても、そうでございますが、先祖伝来の仕事を受け継いで今日までやっているような人たちがたくさんいることは私も知っております。ところが、その人たちの話を聞いてみましても、いままで輸出が非常に伸びておったけれども、最近非常にそういうものが少なくなった。どうしても自分たちの生活をささえるためにも、またいい品物を出すためにも、どうしても資金の背景というものがないために、自分たちよりも大きな企業に圧倒されて、まあ、どうやら生きていくということで一ぱいである。これでは企業を育成するということでなくて、むしろ企業をつぶしていくというこういうことになりまして、先ほど来から問題になっておりますように、早急に中小企業の近代化というものが叫ばれるゆえんもわかるわけであります。 そこで、この零細企業に対して、政府として、今後中小企業と並行しながらどのような方針に立たれて救済なさっていこうとするのか、その点についてお伺いしたいと思います。
○国務大臣(田中角榮君) この問題は三つございます。一つは輸出の問題、輸出に対してはもういろいろな優遇措置を講じていることは御承知のとおりでありますから、申し上げません。 第二の問題は、零細企業全般の問題。これは国民金融公庫の資金をふやしたり、また中小企業専門金融機関の無担保融資のワクというものを、いままでの三十万円を五十万円に上げる、あるいは百万円程度にまで無担保融資というものを考えたらどうかというふうに、零細企業育成ということをいま考えておりますが、どうもこの零細企業に無担保の金を貸しますと、どうしても一部において、何も担保なしというわけにもいかないので、また保証でもあれば別でありますが、保証融資ということにも限度がありますので、歩積み・両建てを暗に両方とるという問題もありますので、無担保ワクを拡大するために、歩積み・両建てをとってはならないということをいま指導しておるわけでありますが、零細なものは、金融だけでなしに、税制上の問題とあわせて、やはり検託していくということでないと、いま零細企業そのものの金融が万全であるということは、受ける側から見るとなかなかそうは言いにくい状態であろうと思います。 ただ、この零細企業の中で非常に問題になりますのは、つとめておって、二、三人で二、三年間働いて、こんな月給もらっておったのじゃ困るから、友人同士でもって五十万円の資本金でひとつやろう、そういう会社がいまたくさんできるわけであります。これが長い伝統を持っている零細企業と中小企業というものと同一視されて、混淆されて、この人たちの荒っぽい経営のために金融機関が非常に困っておるというような問題がございます。 しかも、これは無担保融資ということになって、特にそういう問題がからんできて、中小零細の問題に対しては金融機関も非常に困っておるという問題がございます。 しかし、国民金融公庫等の資金、中小企業金融公庫等の資金ワクの増量等で、できるだけのことをしてまいりたいということでございます。 最後の一点は、彫金師とか、それから人形をつくっておる人とか、それからせとものやっている人、これは頼むと三年くらいかかる。それから、私が見て同じと思いますが、陶工柿右衛門という、こういう優秀なものですと、非常に高くて、もう幾らでも売れる。同じ弟子であっても、弟弟子のほうは一つも売れない。なかなかむずかしい問題でございます。これをもっと先に行くと、絵かきや彫刻家と区別がつかなくなる、こういうことでございますが、これは有名なものであって、世界的に伸びていくというようなものに対しては、これは御承知のとおり、地方銀行が地方産業としてめんどう見ておりますが、親子だけで、一族だけでやっている、五、六人だけでやっている、そういうものが非常にむずかしいという事実は私自身も知っております。私のところなども、刀かじとしては当代一流だという人がおりますが、銀行は一銭も金を貸してくれない。私に少し貸してくれないか、こういうことがございますので、こういう芸術家と商売との区別がつかないようなもの、こういうものに対して将来どうするのか。 それよりもあなたの言っているのはもっと実際的で、輸出振興になる、日本の国宝的なものに対してでございましょうから、文部大臣もそういうものに対して何か文部省にそういう基金でもつくってくれないかというような話もございましたが、これに対していま結論を出すような状態ではございません。しかし、せっかくいまお話がございまして、重要な問題でありますので、ここに銀行局長もおりますから、いま銀行局長にそういうことはたいへんなことだから一ちょうやるかと言ったのですが、返事をしませんので、ひとつ帰りましてから、十分検討をいたして、実情を調査いたします。
○渋谷邦彦君 大臣、十二時から御予定があるそうでございますので、もう一点だけお伺いしておきたいと思います。これは中小企業と関係ございません。 実は先般羽田空港の税関の状況を見ておったのですが、日本の税関というものは世界でも有名なくらいにやかましい。やかましいことはけっこうだと思います。不良旅行者等もおることでありましょう。ただし、さばき方が実におそいのです。私もちょうど一時間くらい待たされましたけれども、これからオリンピックを控えて、外人の観光客をはじめとするいろんな人の往来がますます激しくなると思うのです。それとまた、乗務員等の扱いについても、これは一般の旅客と同じような取り扱いを受けていたようでありますが、私が感じた点は、あそこの空港自体が最近整備拡張されまして、非常に近代的になったことはけっこうだと思いますが、どうもやはり施設そのものが非常に足りないのじゃないかということと、それから人手が不足であるということを感じてまいったのですが、その点がある程度是正されれば、もっとスムーズに通関の手続を終えて、外来の旅客者に対しても不愉快な思いをさせないで済むのじゃないか。 ちょうど私の前に、機長らしきものとスチュワーデス、パーサーが盛んに、外人と並んでおりますと、相当ぶつぶつ言っているわけですよ。これは非常に日本がこれから世界的に雄飛しようという、国際的な立場を堅持しょうというときに、そういうわずかな問題でございますけれども、おもしろくない印象を与えるということは、日本自体がそういうつまらぬことから——つまらないというわけにもいかないと思いますが、評価されるということは非常に思わしくない、こう思うのでございますけれども、その点について大臣もあるいはいろんなそういう状況、あるいは御報告も受けておられると思いますけれども、今後そういう問題に対する改善策をどのようにお考えになっていらっしゃるか。
○国務大臣(田中角榮君) 絶えずおしかりを受けているわけでございますので、私も、服装からまずよくしろ、それからおこられないようにしなさい、こう言っておるのですが、なかなかどうもおこられないようにはできない、こういうところが実際ございます。これは卒直にひとつ申し上げますが、こういう機会でございますので、卒直に申し上げますと、これから、羽田の税関の人間も大きくよけいにしなければなりませんし、また外人等に対して少なくとも悪い感情を持たせないようにもしなければなりません。そういうものに対して厳重に私のほうも訓練をいたします。 ただ、なぜ世界じゅうで一番羽田がうるさいか。羽田とアメリカが一番うるさいというのがほんとうでございます。あとはヨーロッパなどは非常に簡単じゃないか。これよく考えてみますと、なかなか税関にも言い分があるのであります。これは税関の代表をして私が言うわけじゃございませんが、税関にもございます。なぜかといいますと、ヨーロッパの国などというものは、これは国境はあるけれども、ほとんどもうフリーパスなんだ。そうして、これは持ち込もうとすれば何でも持ち込めるし、もうヨーロッパ自体が一つの経済圏になっておるのです。アメリカが非常にこまかく旅行者をやるのは、これは軍事機密、そういう立場で、経済的にいろんな物が持ち込まれることがアメリカの経済にどうとかいうのじゃなく、麻薬と、もう一つは病気と。それから検疫の問題麻薬の問題、それから軍事機密の問題で、非常にやかましいのです。日本はヨーロッパやそういう国、アメリカ等と比べて特別なものは、なかなか日本はむずかしい地球上の位置にございまして、あらゆる人が来るのだ。しかも、周囲海でございますから、ヨーロッパで国境を越えてというのじゃなく、やはり日本に持ち込むということは、これはヨーロッパの各国でもって流通するようなものとは違って、海を越えてくるときに、持ち込むものが高級品等を持ち込むと、相当な価格で日本人は買ってくれる、こういう日本人の国民性とか特徴もあるのです。ですから、いま申し上げると、ウイスキー、たばこ、ゴルフ道具とか、洋酒とか、こういうものをみんな見ますと、一年間に入ってくる半分以上、多いものは七五%も無税品が入ってくるのです。こういう国が一体あるのか、こういうことでございます。 私も、羽田の税関が悪いということで、いろんな文化人等の席に呼び出されて糾明を受けているのですが、どうもそういう文化人の方々も相当な荷物をお持ちになる、こういうところに問題がある。ヨーロッパ間ではそういうことはないのです。ですから、今度はいろんなことをして、ウイスキー三本とか言っておりますが、三本が六本どころじゃないのでございますので、日本に持ち込むものの七五%が無税品、こういう特殊なものがあるわけです。 私は、しかし、その問題に対してこういうことを言ったのです。これは卒直に申し上げますが、アメリカから入ってくるようなものと、それからどうしても検査をしなければならぬというようなものと、同じ時間かけちゃいかぬ、こう言いましたら、これはアメリカから来る人は何も持っておりませんからといって、やはり同じ時間かけてやらないとたいへんなんですと、こういう事態であるようであります。そんなことは非常にまずいのだ。ですから、もうこれはどうせ麻薬の問題などは出先から情報が入らなければなかなかつかまらぬのだから、そういうものを形式的なことをやるために非常に外人にいやな感じを持たせるということはやめなさい。ですから、外人でもって、これはだいじょうぶだと思う人は少しうまくやりなさい、日本人でこれはたいへん持ってきたというようなときには、二時間かかってもいいから徹底的にやりなさい。だから、どこへ出ても堂々としゃべれる、こういう態勢と自覚を持ちなさいということで、特に私はいま税関職員に対して私自身が訓示をしておる。こういうことでございますので、まあお持ち込みにならないような国民の方々からはほめられるように、持ち込んだ方々はひとつ徹底的にやる、うまくやると思いますから、どうぞひとつ御了解いただきたいと思います。
○渋谷邦彦君 時間がありませんから、次回に譲ります。
○委員長(新谷寅三郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめておきます。 次回の委員会は六月九日午前十時から開会いたします。 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時五十九分散会