社会労働委員懇談会 第1号
- 発言数
- 56 件
- 登壇者
- 9 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1964/02/27
会議録
○委員長(鈴木強君) これより社会労働委員懇談会を開会いたします。 本日は、先般ジュネーブにおいて開催されました国際労働機関第百五十八回理事会におけるILO八十七号条約批准促進に関する経過について、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部特命全権大使青木盛夫君、国際労働機関理事会使用者副理事三城晁雄君、国際労働機関理事会労働者副理事原口幸隆君、以上御三名の御出席を願って御懇談願う次第でございますが、皆さんには、公私とも、たいへん御多忙中にもかかわりませず出席をいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。 まず、代表の皆さんより経過の御説明を願いたいと存じますが、お一人大体二十分くらいでお願いいたしたいと存じます。 最初に、青木大使にお願いいたします。
○特命全権大使(青木盛夫君) ただいま御紹介にあずかりました青木でございます。 ILO八十七号条約の案件と申しますと、ちょっと批准の問題だけのように見えますけれども、実は、批准の問題に加えまして、総評からの提訴によって、それに付随した案件がたくさんある。御承知のとおり、全逓の事件に端を発しまして、国鉄、日教組、公務員組合、だんだん発展してまいりまして、この日本関係案件、すなわち百七十九号案件というものは、ILO結社の自由委員会の始まって以来の大事件でございます。大事件のみならず、年数のかかっている点におきましても、足かけ六年、けさほど衆議院でも御説明したのですが、最も長かったのがカナダの事件なんだそうです。これは三年ぐらいで片づきました。わがほうは六年、こういう関係から、日本政府が悪いとかいいとかということを抜きにいたしまして、この問題を片づけたいという考えが非常にILOの事務当局、それから、これは原口さんからことによると違った御意見が出るかもしれませんけれども、労働グループ、使用者グループ、みんなそういう解釈を持っておるようです。もちろん政府といたしましては、法律的に約束したわけでもございませんけれども、この次の国会では必らずILO条約を批准し、関係法規を改正するというようなことを何べんも言明いたしました。かつ、労働大臣がジュネーブにお見えになって、演説の中にもそういうことを言っておられるということから、ILOのほうといたしましては、どうも日本政府はおかしいのじゃないか、いつも約束をして実行しない、何かILOの連中はばかにされておるという感情があるようでございます。また、それと同時に、あまりに長くなりまして、これは一体日本政府というのはまじめた政府だろうと向こうは思っておりますから、何かふしぎな原因があるのじゃないか、そういう点に関しまして、もうこの際、この事件のめどをつけるという点からも、特別の事実調査調停委員会というものを日本に派遣したらいいじゃないかという話もおととしの暮れごろから出まして、去年の三月ごろから、理事会で労働代表が、そういうことも考えなければならぬのじゃないかということを申してきたったわけです。しかし、去年の通常国会におきまして、日本政府が非常にまじめな、かつ、衆参両院の与党、野党の先生方が、非常に御熱心にこの問題に取り組んでおられるという情報も入りましたし、ILOとしては、そういう際に事をあまり荒ら立てるということは、かえって批准措置及び国内法制の改正というものをおくらすのじゃないか、そういう解釈から、去年の五月の理事会では、いろいろ注文はつけましたけれども、この調査委員会の問題は報告にならなかった。しかし、秋になって、いまだに何と申しましょうか、通常国会ではできなかった、失対法その他の関係で時間切れになってしまった、臨時国会においてもやる意思がないようだというような雰囲気で、結社の自由委員会といたしましては、先ほど申しましたように、このままほうっておくわけにいかぬということで、とにかく本委員会を設置することをきめまして、その具体案を本年の二月の理事会に事務局長が案を出すということを決定いたしました。もちろん日本政府に対する不信感というものが基礎になっておるのでございます。日本政府とすれば、私、代表といたしまして、あらゆる言いわけをしたのでございます。たとえば一番先方の皆さんがふしぎにお思いになるのは、与党が大多数である、その与党の内閣で、総理大臣が与党で、それでおってなぜ批准ができないのか。これに対しましては、私は、まず第一に、池田総理及びいまの内閣の方針として、こういう大事な問題に関しては、与野党が十分話し合って、両方の納得のいくようなかっこうでやりたいんだ、それで交渉に長くかかっているのだ。たとえば政府が一方的に無理押しをするというようなことになりますと、先般の安保条約のああいうむざまをするかもしれぬ、そういうことも一つの原因である。 もう一つの原因は、戦後、日本の労働問題というものを、この際、一ぺん勉強し直して、できれば新しい基礎のもとに再出発をしたいという関係から、労働省その他、非常に御勉強になっておる。こういう意味でILO八十七号条約の批准案件及びその関係法律の改正ということを通じて、労働問題一般に関して、新しいページをめくるという意味なんだと申してまいったのでございますが、また、東京においてそういうようなお考えで、御勉強、御研究になっておったと私は承知しておりますが、いかに何でも、あまりに時間がかかる。南アの問題が長いこと問題になっておりまして、二月の理事会におきまして、これがいよいよ総会に憲章改正の案件として出すことにきまりました。日本の問題は、むろん人種の問題ではなし、関係国というものはないわけです。政府と総評の——南アの問題は、関係国がたくさんございます。アフリカの黒人因みな非常な憤慨をしておりました。しかし、この南アの問題が理事会の手を離れました以上は、今度日本のこの問題が非常にクローズ・アップされてきた。こういう面で、はたしてこの際、もし御批准がなかった場合にはいかなることになるかと申しますと、私は、すでに調査団の派遣というものがきまった以上、派遣ということを日本の政府の承諾を条件としてきめた以上、あとは歯車がわりあいに早く回るのではないか。これはもう日本政府の意思いかんにかかわらず、相当自働的にいく。御承知のとおり、ジュネーブには、ILOのほかに、たくさん機関がございます、ガットとか、世界保健機構とか、赤十字とか。その中で、一番政治的なのがILO関係です。それで、ILOはガットに対してもいろいろ連絡をとっておりまして、確かに日本として貿易上の差別待遇の改善ということを及ばずながら私らが一生懸命やっているのでございますが、こういう際に、いわゆる欧州の一部、先進国の連中が、低賃金あるいは低コスト、低価格という問題をよく取り上げるのです。この問題に関しましては、私はガットの中で相当活発に戦っておりますが、ILOがいままでこれに対して、非常に私の活動をむしろ擁護してくれた。しかし、事実上、ある程度の賃金を払っておりましても、基本的人権に関係のある結社の自由があるかないかという問題はまた別でございまして、たしか私の記憶では、去年の五月の理事会のあとで、有名なロンドン・タイムスの記事で、日本という国は非常に産業がいま進んでおる。しかし、どうも労使関係においておかしなことがあるのじゃないかというような記事が載っておったという記憶があるのでございますが、こういういわゆる先進国の悪宣伝が、もしこの条約を批准しない場合には、急速に広がるのではないか。その際は、日本の輸出というものは非常に打撃を受けまして、国内の労働問題のほかに、輸出産業は非常な打撃を受けまして、たとえばいま政府がうたっておられる所得倍増とか何とかというものは、まるで夢のような話になってしまう。 私が先ほど基本的人権と申しましたが、ILOの戦後の条約の中で、結社の自由と差別待遇、強制労働、この三条約が基本的人権に関する重要条約になっておりまして、日本がILOを脱退して復帰するときに、八十七号条約を批准しないで入ったというのがそもそもおかしい。しかし、その間、いろいろ日本の国内状況がありまして入らなかったのでございますが、批准をしないで入ってしまったのであります。その後、全逓の問題を契機にして、八十七号条約というものと日本の国内労働法というものが問題になりました以上、当然先進工業国といたしましてはこれを批准し、また、ILO条約に反する国内法制は変えるのが当然である。そんなことは要求しなくても日本政府がやってくれるのじゃないかというふうにみんな思っておりますし、また、今度も私がいろいろ言いわけをいたしますと、各政府代表及び労働代表、商社代表は、またできないかもしらない、青木がああ言っているのだから、ほんとうになるかもしらぬ、ほんとうにやってくれるのだという期待がいまだにある。この事実調査委員会をつくりましても、ILOは相当これは金がかかるのでございまして、二千何百万円かかるのでありまして、ILOの予算から見ますと、相当大きな金です。それで、ILOは、その金をむしろ労働者の福祉のために使ったほうがいいのじゃないかという議論がございますが、ILOの事務当局その他は、なるたけこの委員会を日本に派遣しないで済ましたいということを希望して、かつ、それを期待しております。その辺先生方にお願いいたしたいのでございます。国内法の改正の問題につきましていろいろむずかしい問題があるそうでございますが、ぜひこの国際的な影響をお考えくださいまして、ぜひともILO八十七号条約の批准及びこの法律改正問題を今国会で終了していただきたいと思うのでございます。 簡単でございますが。
○委員長(鈴木強君) どうもありがとうございました。 続いて、原口労働者理事からお願いいたします。
○国際労働機関理事会労働者副理事(原口幸隆君) 労働者側の原口でございます。今度の理事会で、事務総長から、去年の理事会の経緯に基づきまして、日本に対し、事実調査調停委員会に対する提案があったわけですが、このことはILOにとっては歴史的なできごとというふうに言えると思います。御承知のとおり、八十七号条約は、ILOの諸条約の中では基本的な条約でございまして、この条約に関する限り、かりに批准していなくても、結社の自由委員会というものに提訴ができる仕組みになっておりますし、こういう委員会を設けて、この結社の自由の実施適用というものが世界的に消化されるように特別配慮を払われた条約でございますし、結局結社の自由委員会ではもうどうにもケリがつかない。五年を経過し、五回その間日本の国会において上程をされ、十二回にわたって批准する方向への政府の意思表示があったにかかわらず、されていないというようなところから、この結社の自由委員会の問題ではなしに、いままで一度も日の目を見なかった事実調査調停委員会というものの発動を提案したというところに、ILOとしてはぎりぎりのところまできた非常措置というふうに受け取るべきだと思います。で、いまままでソ連、ハンガリー、チェコ、ベネゼーラというような国を対象にした調査団の派遣の提案があったそうでございますけれども、これらは共産圏ないし全体主義的な国に対して政治的な要素を非常に込めた調査団の派遣、つまり結社の自由がないのではないかということを政治的に過分に利用しようとするような意図も込めた提案だったように私は聞いておりますけれども、いずれも当該国々によって拒否をされて、一度も発動をみていない。ところが、日本の問題については、いま申し上げたような数年にわたる経過、しかも、政府はやると言っている、それでもできていないところから調査団が派遣されるのでありますから、経過からいきまして、また、世界の有力な先進国として見られている日本としては、これを拒否するということは非常にむずかしい事情にある。したがって、この調査団の派遣というものが実際に発動になれば、これは文字どおりILOにとっては歴史的なできごとでございまして、ILOという膨大な機構からいえば、いままでお蔵の中にしまい込まれて日の目を見なかったこの制度というものは、やはりILOの最後の決め手としてあるのだぞということをはっきり全世界に示し、日本に名を借りて、他国にも将来の可能性の実績を与えるという意味から言っても、ILO自身がこれに期待するところもまた大きいものがあるというふうに判断をされます。ここにおられる青木大使が、この提案のあった際に日本政府の態度を表明されましたけれども、それをお聞きしていた理事会の雰囲気としては、日本政府はこれはアクセプトするという雰囲気で受け取ったと私は感じております。少なくとも、労働側はそのように感じました。そうして、また、労働側としても、日本政府が、ちょうど青木大使が言われたように、この調査委員会が実際に発動する以前に問題が解決されることを希望するという表現を使われたと思いますけれども、労働側としても、日本政府がこの問題を善意でアクセプトしてもらって、できることなら自主的に解決することを望むという態度を理事会において表明をいたした次第でございます。で、いま申し上げましたように、八十七号条約というものがILOにとって非常に大切な条約である。で、総評としては、いろいろな組合の問題をこまかいところまで提訴をいたしておりますが、ここまで大きくILOの中で問題になってきた背景について私は触れていきたいと思います。 というのは、日本のこの問題は、結社の自由の委員会では百七十九号という通しナンバーがついておりますけれども、現在ではほとんど三百五十台の番号になっておりまして、百台で残っておるのはありません。しかも、日本という国は、ILOの中では自動的に選ばれる常任理事国であります。世界の十大産業国、工業国といわれ、その経済の問題とか貿易の問題という点を中心に考えれば、五つの指の中にも入るような国である、そういう国の労使関係というところに私は問題の焦点を向けなければならないのではないか。いままでILOがつくりました条約は百九だと記憶いたしておりますけれども、その中で、日本はまだ二十四しか批准をしていない。しかも、先ほど指摘がありました基本的人権に関する結社の条約、差別待遇、強制労働という条約も批准されてはおりませんし、また、労働時間の問題、社会保障、最低賃金というような重要な条約も含まれておりません。さらに、問題になっております八十七号条約も、世界の六十五カ国においてすでに批准済みであります。しかも、日本はILOの精神を代表すべき常任理事国であります。その理事国が、たとえば昨年は総理大臣が国会において批准への明快な態度を表明されたあの内容が、そのままILOに報告されているのでありまして、ILO当局としては、全面的に日本の批准というものを昨年は期待していたはずであります。私も、現地の空気の中では、全く批准について一るの疑いも持たないほど昨年においては批准が完了できるのではないかという見方で、早まった総会の演説をしてしまいました。結局西欧の雰囲気の中で、いわゆる民主主義というものの中で、一国の責任ある労働大臣が総会に来られて言質を与えられ、総理大臣が明快な態度を表明ざれたことが結果的に行なわれないということは、私の感じます限りにおいて、西欧の中ではちょっと考えられない点ではないか。この点は、われわれ労働組合運動に携わる者も反省いたすところですが、われわれも世界労連とか国際自由労連とかという団体に接触があるわけですけれども、そういう団体の中に飛び込んだときには声明書に署名をする。しかしながら、帰って来ればそのことは守られないというような、日本の中にあるものの一つの象徴のような、きわめて外国の人たちに不信感を与える実績というものを残してきているのではないだろうかというふうにも反省する次第です。労働側グループとしても、もちろん日本の提訴については当初から強力な指示を与えられ、もうすでに日本の労働組合の手を離れて、ILOの労働側全体の重要な問題に質の転換をしているというか、焦点が労働側全体の問題として受け取られておるわけですが、片方、まだ解決しないのか、一体日本の労働組合は何をしているのだという、そういう仲間からの逆の批判もございます。日本のほうは、賃上げその他の具体的労働条件についてはよく争議をやっているようだけれども、権利の闘争については何をやっているのだ。われわれであれば、賃上げ闘争をやめても、この問題にゼネストをかける戦いをやるということすら、最近ではそういう仲間の忠告というものもあるぐらい、この延びておる問題に対する早急なる解決方への強い期待というものがございます。今度の理事会の前のグループ会議においても、いままでにない激しいこの日本の問題に関する議論が、イギリス、アメリカの労働組合代表の口を通じて、あるいは結社の自由委員会に属しておる労働組合の委員を通じて、強い意見が飛び出したのでありますけれども、日本政府の態度を勘案しながら、また、日本政府が必ずこの通常国会において批准をするであろうという期待と信頼というものを前提にして、理事会の場においてはあまり強硬な発言ではなしに、事務総長のこの提案を支持し、日本政府に対して、すみやかに批准をされるようという簡単な表現でとどまってはおりますけれども、これ以上の延引というものは、労働側としても、どうにも最後のぎりぎりのところまできておるというふうな感じで全員がおりますし、また、そういうふうに受け取っていただきたいというように思うわけです。 最後に、若干私の私見も述べさしていただきたいと思いますが、八十七号条約を批准するということは、たとえば全逓の宝樹委員長が合法的な委員長として認められるというだけの意味合いではなしに、日本の労働組合が、使用者あるいは政府と独立した存在、独立した労働組合として社会的に認める、そうしてその権利を保障し、運動の自由を認めるということを前提にした労使関係というものがその背景になければ、真の意味で八十七号条約を批准したというふうには言えないと思います。労働組合がなければいい、あるいは弱いほうがいい、御用組合であってほしい、強くなれば、それを押える制度が必要であるというような、組合を正当に社会的に認めるという以前の対労働組合関係というものが存在する限り、私は、八十七号条約の批准というものも、真の意味は生きてこないのではないかというように思います。と同時に、日本の労働組合が持っておりますいろいろな課題というものは、自主的に組合自身が検討すべき問題であって、やはりこれも独立した労働組合として、自分で解決をしていくという方向を、この条約批准を契機にして発展さしていきたいというふうに考えております。私の立場は労働側でございますから、日本政府に対する批判なり批評を言わなければならない。また、ILOの性格からそのことが許される立場にありますけれども、最近の心境としては、やはり日本という国という感じ、いつもかつも日本政府を批判し続けることが必ずしもりっぱな役割りを果たしておるというふうには言えない実感を持っております。そのためにも、やはり日本が有数な工業国とじて、また、ILOを代表すべき常任理事国としての実体を労使関係で早くつくり出すよう、諸先生方の御善処をお願いする次第です。
○委員長(鈴木強君) どうもありがとうございました。 それでは、続きまして、三城使用者側副理事からお願いいたします。
○国際労働機関理事会使用者副理事(三城晁雄君) 先約がありましておそくなりまして申しわけございません。この参議院の委員会の参考人としては、すでに昭和三十四年であったかと思いますが、皆さま方からお呼び出しをいただいて、実はいろいろ御報告も申し上げました。ここにおられる藤田さんからもいろいろきびしい御質問をいただいたことも実は記憶しておるのでありますが、今日すでに五年を経過しましても、なおこの問題が解決しないでいるということは、まことに私個人としても遺憾に思います。また、理事会のメンバーとしても、たいへん残念に思っておる次第であります。ただ、御承知のように、問題は、実は日本政府と労働組合との問題でありまして、日本の民間産業の団体である日経連と労働組合、民間の労組との問題ではないのであります。したがいまして、この問題に関しましては、形式的に言いますと、私は部外者であります。さらに実質的に申しましても、この八十七号の問題は、民間産業を規律しているところの日本の労組法には全然抵触していないのでありまして、労組法、すなわち八十七号の精神によってできておりますので、私どもは、先ばしった話でありますが、かりに調査団が来ましても、民間の産業に関しては、何ら問題はないという確信を実は持っておるようなわけであります。そういう関係で、実はジュネーブにおける問題の経過その他にも、私は間接にタッチしているというわけで、ただいま青木代表並びに原口代表からるる御説明があったと私は思いますので、これらについては私は重複を避けますし、また、その立場にもないのでありますから、説明、経過報告は御遠慮申し上げたいと思います。ただ、あるいは重複になるかとも思いまするけれども、理事会における使用者側のメンバーの使用者側の人々の考え方、あるいは気持というものを私は若干皆さん方に御報告申し上げておく必要があるのではないかと実は思って、その点だけについて簡単に御報告申し上げたいと思うのであります。 日本におきましては、結社の自由の問題、あるいは九十八号の問題、そういう問題については、経営者ないしは経営者団体というものは、きわめて消極的じゃないかという実は疑いがあるのであります。当然そうであるかのごとく思っておられる方もありますが、ILOの舞台における使用者側の組織体というものが、一体八十七号問題について一般的にどういうふうな考え方を持つ七いるかということを実は御披露申し上げるということは、何らかのまた御参考になると思いますので、直接日本の事件と離れまして、八十七号、すなわち結社の自由というものに対して使用者側はどう考えているかということを実はまず先に申し上げたいと思うのであります。 八十七号条約、すなわち結社の自由というものは、単に労働組合だけの結社の自由ではないのでありまして、使用者側の結社の自由というものも保護しておるのであります。われわれのほうは、日本においては結社の自由を十分享楽いたしておりますので、こういう問題についてきわめて無関心でありますけれども、後進国、あるいは全体主義の国におきましては、使用者側といえども、結社の自由を相当に束縛し、制約を受けているところがかなりたくさんあるのであります。われわれは自由なる経営者団体の代表者であるといってジュネーブには表明しているにもかかわらず、実際は政府方面の一豊一笑によって動いているような団体もしくは団体の代表者がかなりあるのであります、使用者側において。そういう意味において、ジュネーブにおける使用者側のグループというものは、この結社の自由というものが世界各国に徹底するということを非常に願っておるのであります。それがまあ第一、それから同時に、また、われわれが共産主義諸国の使用者代表を仲間に入れないという立場をずっととっておりますが、その理由とするところのものは、共産主義諸国には結社の自由というものは守られていない、批准はされていながら、現実には守られていない。したがって、彼らは自由な意思を持った使用者代表ではないからわれわれの仲間に入る資格はないんだということで実は突っぱってきておるのであります。こういう点におきましても、この結社の自由条約というものは、いわばわれわれの錦の御旗であると言うことができるのであります。それから第三には、経営者、あるいは産業界というものは物質的方面において大いに努力をして、人類の幸福、福祉を増進するというのが主たる使命だと心得ておりますけれども、それだけでは足りないので、やっぱり精神的方面にも人間の基本的権利というようなものを保護して、精神的、道義的な方面においてもこれを助長するということが、同時に今後の経営者の責任であるというのがわれわれ使用者、自由資本主義の基盤に立っておるところの使用者側のこれは総意であります。そういうこれらの三つの点からしまして、この八十七号条約というものを、国際舞台においては使用者は強く裂こうとしているというのが実情であります。しからば、それじゃ日本の問題についてはどうかと申しますと、もともと政府対労働といいましても、政府の使用者的立場における問題であります。使用者たる政府に対する、訴える事件であるということになっておりますので、使用者側としては、同じ使用者というような立場から、かなりの同情的の見方をしておったのであります。それで、総評方面から訴えられておる事件に対しても、かなり批判的な考えを持っておりましたし、それから、あまりたびたび事件を持ち込まれるので、まことに迷惑だという感じも実は持っておりました。日本の国内における民間産業においては八十七号の問題は全然ないので、結社の自由は完全に守られているというようなことも私は強く説明しますし、また、政府の立場についても、いろいろと実は長年説明を続けてきたわけであります。したがいまして、使用者側の人々はかなりに理解を持っておったと私は実は思っておりました。しかしながら、それにもかかわらず、日本政府においては、国会において、あるいはまたILOの場において、日本政府の代表、あるいは総理、そういう方面から、すみやかにその関係法規を改正して条約を批准するであろう、あるいはもう今国会にやるのだというようなお約束がたびたび繰り返されましたので、使用者側の人たちも、これは少し妙だ、必ずしも労働側だけにその非はないのじゃなかろうか、訴え出る方面にだけ罪はないのじゃなかろうか、政府のほう、あるいは政党のほうにもこれはかなり問題があるというようなことを実は感じ出してきたのであります。それにもかかわらず、私どもはまあ今度だけはかんべんしてくれ、この次はこの次はと実はやってきたのでありますが、だんだん私も説明に窮するように実はなったのであります、正直のところ。そこで、使用者側の人はもちろんのこと、すべての人たちが、これは日本政府の誠意がどうもおかしい、誠意が疑われる、こういうことになった。そこで、私どもに対して、一体政府はやるやると言っていてどうしてやらないのだと、こういう質問でした。ですから、私は、それは池田内閣はきわめて民主的であって、野党の言い分も十分聞いて、願わくは野党と与党が全会一致でこの問題を処理したいという強い願望を持っておる。したがって、万事低姿勢でやっておるのでなかなかすみやかに解決できないのだと、こう申しますと、彼らは、それでは一体日本の議会政治というものは多数決主義というものが通用しないのか、与党は聞くところによると多数、しかも、大きなる多数を持っておるという話だが、それでどうして与党の意思が通らないかと、こういう質問であります。それには、日本の議会政治というものは、ほんとうに民主主義政治が行なわれるにしてはまだ歴史が浅い、そういうわけで、まず論議を尽くしてやると、その次にボートに持っていこうというときに、ボートの数では大体勝敗の数がきまっておるので、そこで、ひとつこれを阻止するためには、つまり少数の意見を貫くためにはボート以外の方法を用いなければならないというような慣習も若干あるので、なかなか与党多数であるからといって、イギリスなどにおけるがごとく、与党多数をもって採決しますというわけにはいかないのだというふうに実は説明をしております。しかしながら、それも実はおかしい話で、一回ぐらいならそれでよろしいけれども、二年も三年も四年も低姿勢でやるのはおかしい、これはとりもなおさず、日本の政府はILOという国際機関を侮辱しておるのではないか、愚弄しておるのではないか、何とかかんとか言ってごまかして時を過ごせばいいのではないかというふうに考えているんじゃないかと彼らはどうも察したらしい。そこで、非常に日本に対する使用者側のメンバーの同情が最近はすっかりなくなってしまって、私の弁解も役に立ちません。彼らは聞こうともしません。そこに昨年の理事会の判決が出たのであります。そこで、提訴事件と同時に、一括して条約批准の問題もそのうち調査すると、こういう結論が出されたのであります。そこで、私は、この原案が出ましたときに、使用者側の仲間で、これはおかしい、調事団というものは、訴えられたいわゆる訴訟事件、提訴事件の実情を現地に即して調べるというためにできたものである、条約批准の問題なんということは、これは調査委員会の権限外だから、条約を批准するかしないかということは、それは各国の政府の権限の問題であって、ILOが云々する立場にはない。ILOは、どうぞ早く批准をしてくださいという希望を表明することができるけれども、調査団を派遣してこれに対して干渉するということは、これは越権である、筋が通らぬ、それがもし通るとするならば、カナダ、米国、インドにも調査団をなぜ派遣しないか。それらも批准していない、なぜできないかという事情をそれらの国においても調査する必要があるんじゃないか、こういうことを言ったのであります。それから、一応それはそうだけれども、しかし、日本政府は批准をすると約束したからいけないのだ、約束して、そして何べんも果たさない、そこに道義的な疑問もある、また、国際機関として、先進国日本からそう愚弄されては、多数の後進国に対して国際機関の権威も失墜する、これを黙って愚弄されているわけにはいかないというのがわれわれの気持ちである、しかも、この批准の問題を調査するということは必ずしも違反ではない、憲章違反でもなければ、制度上の違反でもない、理事会がそういうふうにきめれば、内政干渉にならない範囲内において調べるということはかまわないと思うということでわれわれ使用者側も賛成をしたのだ、こういうお話で、使用者側も全然そのとおりだということで、まあ実は去年の秋に理事会を通ったわけなんです。まあそういうわけでありますから、事は必ずしも一本の筋だけでも解決し得ない複雑な場面がある。こういうふうに事が複雑になったということは、やっぱり日本にも責任があると私は思うのであります。そこで、この使用者側の人たちは、どうかひとつ調査団を送らない前に、日本政府はすみやかに、しかも、政府は与党多数を持っているから、与党多数の信ずるところによって、これをひとつ多数決できめて、そうしてその調査団派遣をせぬでもいいようにというようにしてもらいたいというのが彼らの熱望でありますし、私も非常に共鳴している点であります。 簡単でありますが、この程度で……。
○委員長(鈴木強君) どうもありがとうございました。 それでは、お三人の御説明を伺いまして、これに対して質問をしたいというお申し出がありましたから、しばらく質疑をいたしたいと思いますので、お三人の方も御協力願いたいと思います。徳永委員。
○徳永正利君 皆さま遠くジェネバにおかれましていろいろ御苦心なさっていることにつきましてお話を拝聴しまして、心から敬意と感謝の意を表する次第でございます。 日本国内のことにつきましてはわれわれのほうが詳しいのでございまして、このことに対する御意見等は、いろいろいま国内におきまして本微妙な段階にございますから、御意見をお聞きすることは差し控えたいと思います。で、以下数点につきまして現地の状況をひとつ御説明いただければしあわせだと存じますが、お三方のお話によりまして、大体のことは了承したのでありますが、まず第一に青木大使にひとつお尋ねいたしたいと思います。 このたびの理事会において、日本に対する調査の調停委員会の決定を見たわけであるわけでございますが、ILO関係国の間にどんな反響をこの決定について呼んでいるか、どういう反響を呼んでいるかということについてお話をいただきたいと思います。なお、大体私ども手さぐりで感触は持っておりますから、要点だけお答えいただきたいと思います。
○特命全権大使(青木盛夫君) お答えいたします。反響とおっしゃいましたけれども、今度の理事会での本件の調停がありましたあとで、私が大会に出ましたところが、アメリカ、イギリス、フランス、、ドイツ、この理事が皆さん、何とかもう早く解決してもらいたい、早く解決できないならば、少なくも調査団を受けてくれ。その意味は、ソ連が非常にいままで結社の自由委員会を白眼視いたしまして、先般も断わっている、また、ソ連の委員からは、私に対して、受けなくてもいいじゃないかというような申し出があったぐらいでございますから、自由主義国はみんなそろって、今度の調査委員会を受けてくれ、しかし、何でもいいから、それより先に解決していただきたい。先ほど申しましたとおり、長年の問題でございますもので、ILOが日本の労働問題のためにだけあるわけじゃございません、百何十カ国の国々の労働問題があるわけでございます。日本だけであんまり占領しないでもらいたい、こういう話でございました。
○徳永正利君 このたびのILO理事会の決定によるいわゆる調査調停委員会というのは、五月ごろに予備審査でございますか、それから秋ごろ現地調査をやるというようなことが新聞に報道されているわけでございますが、それぞれ具体的にはどういうふうなことが行なわれるのか、どういうふうな形の調査、調停が行なわれると予想されるのか、この点について大使の感触をお聞きしたいと思います。
○特命全権大使(青木盛夫君) ただいまの件は、ILOの理事会がきめましたことは、でき得れば、すなわち日本政府が承諾をした場合には、五月初めに第一回の会合を持ちたい、その会合において今後の予定をつくりたいということでございまして、これは委員会自身が今後の予定をきめる。それで、私はどうなることかと思いまして、事務当局に、どういう考えを持っているのかと聞きましたら、事務当局では、五月の会合で書面審査をして、それで問題点をきめてしまって、それからできるだけ早い機会に証人喚問をして、それでおそくも——できれば日本のオリンピックとぶつからないように九月ぐらいに派遣をして、帰ってまいりまして十一月の理事会に報告が出せれば出す、どんなにおくれても来年の三月の理事会までには最終報告をする、こういう予定だ、こういうお話でございました。しかし、これは先ほど申しましたように、委員会がきめるべきものであって、事務局としては、総会とか理事会とか、いろいろ自分のほうの予定があるものですから、その予定の間にそういうふうに組んでいる、こういうふうに言っております。
○徳永正利君 先ほど来いろいろお話がありましたが、われわれだって、これは何とか早く円満妥結をみたいということは、もうみんな各党とも熱心にお考えになっていることでございます。そのことは別といたしまして、おそらくこの国会で批准が見られるようにわれわれも努力することにやぶさかでございませんが、もしかりにその批准が達成されないような場合、調査調停委員会の受諾は、従来からの経緯にかんがみて、避けられないというような意向を大使はお持ちでおられる、こういうふうなことが新聞に報道されておるその根拠でございますね、どうしても受諾せなければならぬじゃないかというふうなことを大使はお考えになっているというふうに聞いておりますが、その根拠と、また、拒否した場合の国際的な影響というものを現地で大使はどういうふうにお考えでございますか。
○特命全権大使(青木盛夫君) この今度の実地調査委員会、これを受けるか受けないかということは、全く日本政府のかってでございます。しかし、日本政府がいままでILOに対していろいろ方向を出しておる、あるいはいままで大臣その他がきて、いろいろ説明をされた際、その経緯からいって、断わる理由がなかなかむずかしいのじゃないか、また断わった場合に、それによって起こる結果というものは、私は相当心配しておるのです。要するに、日本政府がこれだけ約束し、約束というか、法律的な約束じゃございませんけれども、意向を明らかにしてきたことについて調査をしたわ、やましいところがなければ受けたらいいじゃないか、それを断わると、いかにもやましいことがあるような感じを持たれる。私は先ほども、衆議院のほうでも申したんですけれども、断わるということはアドベンチャー、冒険だ、私はどういう結果になるのか人間の身でわかりませんけれども、相当なアドベンチャーだ、こういうふうに感じております。
○徳永正利君 言外に了承するものがあると存じます。日本は十大産業国と世界でもいわれているその一つとしてILOの常任理事国となっているわけでございますが、それ相応の評価を受け、その責任を果たさなければならぬというふうに私どもも考えております。ところが、いわゆる八十七号条約問題で、これに食いついて振り回されているというのが先ほど皆さま方の御意見でもよくわかりますし、私どももそのことを心配しておるわけでございますが、将来に向かって、この日本がILOにおいて果たすべき役割りと申しますか、そういうものについて、この経緯から見て、どういうふうにお考えでございましょうか。
○特命全権大使(青木盛夫君) ただいまの御質問に対しましては、実はモース局長が私に去年の暮れでございましたか、重ねて申したということは、これはたしか加藤先生がおいでのときにも言ったことがありますが、日本は単なる十大産業国というほかに、アジアの唯一の工業国であり、かつ先進国、どうか日本の労働問題ということだけじゃなくて、アジア全般のことを考えていただきたい。ILOといたしましては、各国の成長のいわゆる産業構造の程度によって、相当手心を加えておる、それで日本はガットあたり見ておりますと、イギリスの次くらいにきておる、その日本が八十七号の条約、すなわち結社の自由という簡単な条約でございます、こんな毛のが批准できないというのは、何かおかしなところがあるんじゃないか、それでむしろ日本に対して日本の経済が発展しているから、あるいは極東において、アジアにおいてただ一つの先進国であるから、その要求がまた非常に強い、そういう現在の状況から見まして、もしこれにしくじった場合、いままでの信頼あるいは期待というものがくずれまして、私は将来のことは申しませんけれども、わかりませんけれども、なかなか困難な状況になるのじゃないかと存じます。
○徳永正利君 先ほど原口さんでございましたですか、あるいは王城さんからもお触れになったことでありますけれども、八十七号条約の批准問題と関連しまして、ILOに提訴している、いわゆる日本に関するいろいろな事件があるわけでございます。これについてILOの加盟の主要国の代表は、どういうようにいま見ておるだろうかということを、もう一度大使から、大使の御感想を伺いたいと思います。
○特命全権大使(青木盛夫君) ちょっといまの御質問が……、私がさっきお答したのではいけなかったのでございましょうか。もう一ぺんちょっと……。
○徳永正利君 八十七号条約問題と関連しましてILOに日本の国内のいわゆる事件、いろいろな問題を提訴しておる、訴えているわけですね。それについてILOに加盟しているおもな国々の代表というものは、一体それを通じて、どういうふうに見ているだろうかというふことでございます。
○特命全権大使(青木盛夫君) 日本の事件というのは非常に膨大な事件でございまして、ILOの加盟国の理事が、大体全部報告を読んでいるかというと、私は読んでいないと思います。非常に長文なもので何冊にも本になるようなものでございまして、そして主要な国、たとえばアメリカとかイギリスとか、あるいは結社の自由の委員会に出席しておる連中は読んでおると思います。そういう連中の話を聞きますと非常にむずかしい問題だ、なかなか組合側の攻勢も激しいようだ、政府も非常に困っておられるようだけれども、何でこの問題をうっちゃっておくのか、解決できそうなものじゃないか、これは原口さんのお答えになるかもしれませんけれども、政府と組合の両方に対して、もういいかげんにしたらどうかというようなことを、よく私は先進国の理事あるいは結社の自由委員会の関係者から聞いております。
○徳永正利君 先ほどちょっと原口さんがお触れになりましたですが、たとえば、従来、調停委員会の決定が数件あったというふうにお聞きしたわけでございますが、当事国も受諾しなかったというふうに拝承したわけでございますが、その実情を大使から、ちょっとお伺いしたい。
○特命全権大使(青木盛夫君) なぜ受けなかったかと申しますと、ベネズエラを除きましては、すべて共歴圏でございまして、先ほど王城理事からお話がありましたように、組合役員と政府の関係がおかしいとか何とかいう、ソ連、共産圏にとって非常にぐあいの悪いことを理由に結社の自由委員会で問題になったことのように承知しております。その意味で、ことにソ連圏の国は、自分の国の内情などを調べられるというようなことは非常にきらいますので断わる。それからベネズエラは当時独裁軍事政権でございまして、やはり組合を圧迫、それはもう普通の圧迫じゃなかったようでございます。みんな牢屋や何か入れたり何かしたらしいのでございます。そういうことに関して調査団を派遣しようということに対して、独裁国でございますから独裁政権がおこりまして、ILOを脱退いたしまして、その後、その独裁政権が倒れまして、ベネズエラはまた復帰いたしております。
○徳永正利君 八十七号条約につきましては、前段申し上げましたように、われわれも各方面とも熱心に誠意を尽くしておる微妙な段階でございますから、私はこれ以上触れるのを遠慮したいと思いますが、最後に大使は、ガットの日本代表としても、いろいろ接触されていると思うのでございますが、ILO問題がこのようにこじれることについて、何らかの悪い影響があるのではないかということについては、先ほど大使の御報告の中にも簡単にあったようでございます。その点をできればもう少し具体的に、大使のお考えをお聞かせいただければしあわせと存じます。
○特命全権大使(青木盛夫君) お答え申し上げます。ただいまガットにおきましては、関税一般引き下げ交渉、いわゆるケネディ・ラウンドというものをやっておりますが、それよりも先にその前提として、日本政府といたしましては、日本の輸出貿易に対する各国の差別待遇の撤廃ということに全力を注いでおります。差別待遇と申しますと、三十五条問題が非常に大きく日本の新聞その他で取り上げられておりますが、これはやはりこの前の大戦のいわば二日酔いというようなものでございまして、今日まで、こういうものが残っておるということは、はなはだ遺憾であり、また、われわれの努力が足りぬということにもなるのでございますが、他方日本の輸出、日本の貿易体制というものは非常に強い、日本の品物というものは、単に安いだけじゃなくて非常にいいのだ、しかもそれが非常に多量に短期間に出てくるということで、ガットでたびたび問題になっております。そのときに一番問題になりますのは、いわゆる低価格——近ごろ低賃金ということを言いますと、なかなか問題がむずかしいもので、低価格ということを言うのでございますが、貿易というものは、低価格のところから高価格のところに物が流れるのが普通でございまして、それだけじゃどうも言いわけができない。 それで最近は、産業構造の違った国、要するに共産圏を含めて、産業構造の違った国、こういうようなことばを使っております。あるいはこれは低賃金を含めて、たとえば香港のような——何とかして日本をこの範疇に追い込んで、それで差別待遇を、要するにガットで最もガット違反である差別待遇を合法化しようとしている。こういう際に、この結社の自由というような問題が、出ますことは、いままでも出ておったわけでございますが、大きく出るということは、非常に日本の輸出産業にとりまして不利なんじゃないか、かように考えております。
○徳永正利君 どうもありがとうございました。
○委員長(鈴木強君) 永岡委員。
○永岡光治君 青木大使にお尋ねいたしますが、ガットの問題で、やはりこれが批准されないというと、日本の貿易の問題にかなり影響を及ぼすんではないかということを非常に憂慮している、そのとおりだろうと思うのです。やはり必要に応じては、向こうもそれにこじつけて差別待遇をしてくるおそれなしとしないわけです。別な観点でOECDの問題もあるわけですけれども、今国会で、いま加盟することについて国会にも提案されておりますけれども、昨年のたぶん、私の記憶に誤りなければ七月ごろじゃなかったかと思うのですが、国際自由労連のバクーという書記長がOECDのほうに向けて、もし、この八十七号条約を日本が批准しないのであれば、そのOECDについても、日本の加盟について反対だと、こういうような意味のことも声明したような記事を私は見たわけです。 それで同様な意味でお尋ねするわけでありますが、労働関係の発言権と申しますか、発言力と申しますか、それがかなりOECD等にも影響するのではないかという印象を受けているわけですが、このOECDとこの労働組合の、国際自由労連の発言の力と申しますか、影響力と申しますか、どういうようなことになるのか、私あまりよくわからないのですが、わかっておれば、ひとつ御説明いただきたいと思うのです。
○特命全権大使(青木盛夫君) 私のわかっておるだけをそれじゃお答え申し上げます。OECDというものは大体先進国、ヨーロッパ諸国並びにカナダ、アメリカ、日本という先進国を加えた組織で、大体の方針を決定する、要するによく連絡をして、お互いに協議をし、そしてたとえばガットで問題になっておることをあらかじめ連絡をして話をする、あるいは国連で問題があったものをどうするということをきめる、こういう場所なんです。 それでございますから、自由労連はヨーロッパにおいては、もう絶対の力を持っておる。その自由労連が、日本が八十七号を、要するに結社の自由の関係条約を批准していないような日本は入れるのはおかしいじゃないかと言ったことに対しては、むろん十分OECDは考えていると、しかし、これはOECDとすれば、自分のほうは協議機関だということから、そういうこともあったろうけれど、何しろ日本は非常な大きな貿易国で、かつ経済協力と申しますか、後進国の開発に関しても相当な寄与をしておるというところから、自由労連からの申し出を了承したままで日本の加盟を受けたというふうに私は解釈しております。
○永岡光治君 これは私どもまた聞きで、そういう風評を承っておるわけですが、先ほどるる陳述の中にありましたように、今日に至っても、なおかつ批准をしないということであれば非常な大きな問題を及ぼすであろうし、そういう意味で、何としてもこれはこの国会で批准させなければならぬと、そういう決意を青木大使自身はお持ちになっておると思うのです。そういう意味で日本政府のほうにも説得されたのではないかと思うのです。一説には職を賭してもひとつ批准させなければならぬと、こういうような決意じゃなかろうかという話もあるくらいでありますが、その政府筋に当たりました、これは漏らせる範囲でけっこうでございますが、どういう意向なのか、あなたの働きました、動きました感じです、どういうことでございましょうか。
○特命全権大使(青木盛夫君) 私は、総理以下関係各大臣にもお目にかかって、この批准の問題に関して、いろいろお願いをいたしました。各大臣ともニュアンスは皆様少しずつ違ったように思いましたけれど、批准ということに関しては、はっきり今度の国会でぜひやりたいというお話でございました。私は関係法規のことは、先ほど徳永先生のお話じゃございませんけれども、私よりも皆さん方のほうが御承知と思いますので……、しかし各大臣とも多少いわゆるニュアンスが違ったかもしれませんけれど、皆様、今度の国会でやるのだというお話でございました。
○永岡光治君 これは原口さんのほうにお尋ねいたしますが、私、日本政府が何回も約束をして、なかなか批准ができないのだということをおそらく国際の無台でも、いまお話しありましたように論議になっておるのですが、なぜ批准ができないだろうか、王城さんのお話によると、絶対多数を持っておっても、少数の意見を尊重して話し合いをするようになっているから、なかなか進まないのだと、こういうお話がありましたが、もっと掘り下げて話がなかったのだろうか。すなわち私から言うならば、条約批准そのものは、そう大した問題ではないのであって、むしろこれは批准ができない大きな原因が話し合いがまとまらないというところにあるとするならば、それと関連をして、直接関係のない関係の法案を、たとえば人事局の設置なり、公労法の改正なり、いろいろあるわけでありますが、そういう問題が支障になって批准がされないのではないだろうかというような話は出なかったのか、こういう話はどうだったのでございましょうか。原口さんにお尋ねします。
○国際労働機関理事会労働者副理事(原口幸隆君) 労働側のグループの会議の中で、なぜ批准が延びているのかという説明をしなければならないわけなんですけれども、先ほど王城さんからも言われましたように、的確に仲間たちを了解させることができにくいわけです。そこで私なりの表現を使って、八十七号条約には、たれも日本では批准自体に反対している人はいません。政党もない。ただ、この批准に関連して、日本全体の労使関係をどういうふうに持っていこうかというところに問題があるのだから、これは大問題なのだ、実は。そこで日本の労働組合が、政府なり、使用者から離れて、独立した労働組合になるのか。それともやはり自分でつかまえておく、独立しない労働組合のまま置かれるのかというところに問題があるのだというような、少し抽象的ですけれども、連中、わかったようなわからぬような顔をしているのですけれども、しかしながら、団体交渉権等の問題については、これは昨年秋の公務員の専門家会議でも明らかなように、組合があれば団体交渉権が当然くっつくというのは原則ですし、常識であります。団体交渉権のない労働組合というのは労働組合ではないわけですから、そういう点については、日教組なら日教組の交渉権が問題になっているという説明には、連中は、それはおかしい。これは交渉権があるのが当然だ。ただその交渉のし方をどうするかという方法論についてはいろいろあるだろうが、というような意見の表明がありました。
○永岡光治君 なかなか理解しにくい。ヨーロッパ関係の労働組合代表の仲間には理解しにくいであろうという、こういう話があったわけですが、この段階になって、まだ批准ができないというのであれば、その批准そのものには、どの政党といえども、また、だれも反対でないというのであれば、批准だけ済ませたらどうかという、すてばちかどうかわかりませんけれども、あまり問題なら、この批准だけ先にやったらどうかという、こういうような意見はなかったのかどうかですね。
○国際労働機関理事会労働者副理事(原口幸隆君) その点は、結論がはっきり出ていると思います。と言うのは、日本がすでに条約を批准しております九十八号条約、この条約については日本の国内法である公労法四条三項、また地公労法五条三項は違反であるという事実が、すでに数年前から指摘されておりますので、その際に、日本政府の言い方として八十七号条約を批准すれば、自動的にこれは直るからということで、実際問題として片がつくからという説明になってきているわけです。しかし、ILOの法律的解釈としては、日本という国は、すでに批准した九十八号条約に違反している国内法律を持っているということが、条約勧告適用委員会で確認をされておりますので、その点はもう明確になっておると思います。
○永岡光治君 明確になっているということは、それだけでは意味がない。条約を批准をして、公労法四条三項なり、地公労法五条三項だけを削除したらいいじゃないか、それでけりがつくのじゃないか、あと各種の法なりは、あとでゆっくりやったらどうか、これは言い方が悪かったかもしれませんが、そういう意味の意見は、各国の代表のほうから出なかったのか、それを聞いてみたかったわけです。
○国際労働機関理事会労働者副理事(原口幸隆君) 初めは、そういうような態度の意見も出て、簡単にその法律さえいじくれば、八十七号のほうも批准できるではないかという意見が労働側から出ましたけれども、最近の労働側グループの焦点というのは、八十七号条約がもっている精神というものが、どのように日本の労使関係の中で具体化されるのかというところに、すでに国内の問題も焦点が移っているという理解でございますので、その辺をやはり明らかにしなければ、この条約批准というものは、本格的な気持ちで条約を真に批准したということにはならないのじゃないかというような見解であります。
○永岡光治君 先ほど徳永委員のほうから、青木大使に質問して、大体、おおよその輪郭はわかったんでありますが、これを受諾して、調査団の派遣を受諾するということになると、それから五月に委員会を開くというんですか。五月に委員会を開いて調査の方法をきめる、受諾するかいなかは、まずその前提に立つということでございましょうか、念のためにお尋ねしておきたい。
○特命全権大使(青木盛夫君) ただいまおっしゃいますとおり、受諾したらば、五月の初めに最初の委員会を開く、こういうことでございます。日本の受諾の意思表示があったらば、五月の初めに開きたい、こういうことでございます。
○永岡光治君 そういたしますと、新聞記事等で私ども見ているのでは、それから参考人を呼ぶなり、あるいは具体的な調査の方法なりをきめて派遣するということになるわけですね。そうして、その結論をおそくも来年の三月までには最終的に結着をつける、こういうように理解しているわけですが、そういうように理解してよろしゅうございますか。
○特命全権大使(青木盛夫君) さようでございます。
○永岡光治君 さらにお尋ねいたしますが、これも徳永委員のほうから質問され、お答えになったわけですが、まだ想像の域を出ないといえばそれまででありますが、もし、これを拒否するということになれば、これはアドベンチャーだ、こうおっしゃっているわけですが、具体的にその影響、想像される国際舞台における理事国としての問題なり、その他貿易上の問題なりについて、もうちょっと突っ込んだ具体的なあなたの見通しというものを述べられれば述べていただきたいと思います。
○特命全権大使(青木盛夫君) これは、私はぜひ御批准をしていただけるものとまだ思っておりますので、どうもその御質問は非常にむずかしいのでございますが、少なくも、この五月の終わりから六月の理事会において、私はもうもみくしゃにやられる。少なくともそれから十一月くらいの理事会で何か決議がとられるかもしれない。結局日本政府は、もうこの問題で、今度ひどく追い回される、いままで以上に追い回される。今度は、いよいよとなれば総会まで持っていくということになるんじゃないか。要するに歯車がここまできた以上、だれの力でもとめられない、もう。百何十カ国の国際機関の、国際世論で動いているところでございますから、いくら私が悪知恵を出してがん張ってみても問題にならぬ、そういうふうに理解しております。
○委員長(鈴木強君) 藤田委員。
○藤田藤太郎君 私も青木大使にお尋ねをしたいわけでございます。いまガットの関係、それからOECDの関係のお話がありましたが、私は、欧州が今日近代化の中心勢力になっていると思う。この欧州が近代化の中心勢力になっている母体とは何か。その母体とは、住民主権の国家体系における基本的人権の尊重という立場から、国が栄えている、そういう意味で、この問題が経済交流の中にも深く入ってくるという、単に欧州だけが発展するんじゃなしに、世界全体が発展していくというILOの宣言にも、いずれかにおける貧困は全体の繁栄の障害になるというフィラデルフィアの宣言にもあるとおりなんでありまして、そこらあたりが、やはりいま、青木大使の言われた心情というものが、私はよくわかるという気がするわけです。その意味で私たちも一日も早く——この基本的人権の問題は、批准するせぬは、まだ批准手続が完了していないところで毛、この問題は、基本的人権を守っていこうというところに行政の趣旨が置かれているということも私は理解するところでございます。ですから、そういう今日のILO八十七号の結社の自由、団結権の擁護のこの流れというものが、ずうっと私は三人の御意見を聞いて、三城さんでも説明ができなくなったんだというところに、よくうかがえると私は思うわけでございます。ですから、そういう意味では八十七号の批准という問題は、非常に重大な問題だと私は思う。 そこで、お聞きしたいんですが、欧州の各国は、最近労働力不足で、アフリカその他からたくさんの労働力を輸入をいたしております。その労働者と各国の労働者との関係、そこらはどういうぐあいになっているか、その受け入れをしている各国のかまえ、この基本的人権八十七号条約に含んでの受け入れのかまえ、それから実態というものは、どうなっているか、そういうことをできたら関連してお聞かせをいただきたい。
○特命全権大使(青木盛夫君) ただいまの御質問は、私十分に承知しておりませんけれども、知っている限りで申しますと、ドイツあたりに行っております外国人労働者については、全然問題がないようでございます。基本的人権全部国内の労働者と同じ待遇をしているようでございます。スィッツルにおきましても、六百万の人口に八十万近い外国労働者がきておりますが、これもセゾニエと申しまして、一年のうち何カ月か——ここは農業労働者が多いのでありますが、来て、クリスマスと正月、冬は帰るという労働者を除きまして、やはり同じような待遇をしているようでございます。ただし、スイッツルにおいてメーデーのときに私が新聞を読みますと、いつでもこの外国人労働者の待遇とスイッツル人の労働者の待遇が少し違うじゃないかといって、外国人労働者の面々がデモをやっておりますので、やはりその点では、内国人と同じ待遇を法律上やることになっておっても、多少違っているというようなことはあるように聞いております。
○藤田藤太郎君 原口さんにお聞きしたいんですけれども、まあお三人とも八十七号を批准していただかないと、こういう近代的な、世界に発展しようという中において、日本の立場は非常に困る。最後に原口さん言われたように、私は私の立場を乗り越えて、日本のこの問題を解決したいという決意を申されたわけであります。そういう意味で、いまの大使のお答えをいただいたような問題も、やはり原口さんの知っておられる点があったらお聞かせいただきたい。
○国際労働機関理事会労働者副理事(原口幸隆君) 本来ならば、西欧先進国みたいに提訴しないで、国内的に解決すべきだと思うのですけれども、残念ながら日本の総評は弱体なために、国内で解決する社会的な力というものが認められていない。そういうところから、ILOというのは、やはりそういうコンプレイントを受け付けるところでありますから、われわれとしては提訴をしましたけれども、私が過去七年間、ILOに直接間接関係をしてきた経緯の中から考えますことは、工業国としての日本が、なぜこまかいことまでILOに持ってこなければならないのか、そうして、政府のほうも、日本の労働組合が向こうに持っていったことに対して、またそれに対抗して、組合の運動方針書の一部をひっこ抜いて報告をされたり、あるいは西欧の常識にある労使関係というものを、どうして日本の国内に導入しないのかというような点については、やはり日本のおくれているのは労使関係が一番——この十大工業国といわれている日本の中で、一番の課題である、したがって、せっかく、外国に対して、ある程度の不信感を与え、日本政府も、その権威を若干は失墜しておるわけですけれども、せめて長くかかっただけに、この条約批准をとらえて、日本の労使関係に内在しているものを、この条約の精神に合うように、日本の当局なり、政府なり、またわれわれも、自主的に問題を解決するようなふうに、特に国を代表される政府与党の方々が善処されることを心から願わずにはいられないわけです。お答えにならなかったかもわかりませんけれども。
○藤田藤太郎君 青木大使にもう一言お尋ねをしたいのですけれども、ガットの三十五条援用という問題が非常に問題に今日までなってまいりました。まあ日本の発展のためにも、この三十五条援用をはずしてもらいたいということに非常に経済の立場から、また、国民全体の立場から、そういう意見があるところでございます。日本がこの三十五条を援用しているのと、八十七号を初めといたしまして、やっぱり近代化の方向との関係というものは非常に因果関係があるのではないか、私はそういう気がするわけです。もう一つの問題は、三十五条援用がたとえばはずれたとしても、新しい通商条約の中でセーフ・ガードの問題が出てくる。そういうことが、ガット協定三十五条がはずれて通商条約にセーフ・ガードが生まれ、これに移行するようなかっこうが続くとすれば、自主的に前の考え方が続いていくということになるわけですから、日本としても、やっぱり重要な問題だと、こう思うわけです。そこらあたりの基礎が、単にそろばんの経済の取引ばかりでなしに、私は生産力が伸びれば、国民生活もともに、住民主権の体系を持っておる国でありますから、そういう意味で、全体が発展していくかいかないかということが、やはり貿易の問題に関係をしてくるような気がするわけであります。 まあそういう意味から八十七号の条約が、だんだん私流の解釈でいきますと、貿易の問題にも関係してくるようなぐあいに受け取れるわけでございますが、そういう点について、お考えがあったらお聞かせいただきたい。
○特命全権大使(青木盛夫君) ただいま御指摘がございました三十五条と八十七号条約の関係につきましては、むろん法律的に、因果関係が決してないわけではございません。私が、ガットの代表をやり、かつILO理事会の代表をやっております関係上、ILOのほうに参りまして、八十七号条約ということばが出ると、みんなが私の顔を見る。それからガットのほうで三十五条というと、みんな私の顔を見る。だから実際上ジュネーブにおいては、ある程度つながっておる。ただし八十七号条約を批准したからといって、三十五条問題はまだ解決いたしません。というのは、先ほど徳永先生から御指摘のありましたようなセーフ・ガードの問題とか何とかということは、日本のやはり貿易のパターンと申しますか、仕方が、まだヨーロッパ流じゃないのです。そういう点で、ただ差別待遇というだけではすまない面もございまするので、われわれとしては今後とも努力をいたしますけれども、八十七号条約を批准したからといって、三十五条が直ちに自動的に解決するということはございません。ただ、三十五条問題がだんだんに、いまなくなってきている際に、この八十七号案件から、ひいて結社の自由というものがないということになった場合には、逆戻りした差別待遇というものが加わるのじゃないかということをおそれております。
○委員長(鈴木強君) 加藤委員。
○加藤武徳君 私は一点だけ青木大使と原口さんにお伺いしたいと思うのでありますが、先ほど世界の労働者代表の日本の労使関係についての基本的なあるべき姿に関しての非常に広い視野で物を見ておるのだ、かような観測と、それから原口さん個人の気持も若干含めた御意見があって、私はその点には非常に敬意を表したい、かような気持がするのでございますが、そこで伺いたいと思いまするのは、青木さんはもとより政府の代表として、政府が、ただいま八十七号条約と関連する国内法の改正案が上程されておることは御承知のとおりで、政府の一員として、改正案が最良なり、かように考えておられるはずでございますが、そこで、もとよりこれは国際的な関連というよりも国内問題として解決をすべきことなんですが、しかし、改正法案の内容と関連することに関して、ジュネーブでも、若干の意思表示があったと記憶をするのでありまして、たとえばおととしの春でございましたか、理事会の第五十四次報告として在籍専従の問題あるいはチェック・オフの問題、かような問題が報告をされておるはずでございます。これはたしか日教組の提訴に対しまする回答というような形で出たと思うのでございますが、青木さんから、もしこの五十川次報告に関して御記憶がおありなら、そのことにつきましての輪郭をごく簡単にお話をいただければと、かように思うのでございます。 それから原口さんに伺いたいと思いますのは、先ほど世界各国の労働者代表が、単に八十七号条約あるいはさっき御指摘のように九十八号条約を日本は批准しておりますから、公労法四条三項、あるいは地公労法五条三項は、九十八号条約にも抵触をするのだ、かような専門家会議の結論が出ておることは私も承知をいたしております。 そこで、各国の代表はその点のみに焦点を合わしておるのではなく、もっと広い立場で、結社の自由と日本の労使関係の基本的な姿というか、そういう広い立場で物を見ておるのだ、かようなお話があったのでございますが、チェック・オフあるいは在籍専従、これは明らかに使用者の労働者に対しまする便益の供与といいますか、かように理解をして差しつかえない、こう思うのでございますが、世界各国の労働者代表は、たとえばチェック・オフとかあるいは在籍専従等の問題に関しても、この機会に解明してしかるべし、こういう問題意識というか、そういう考え方を持っていらしゃるのかどうか、この点も簡単にお教えをいただきたい、こう思うわけです。
○特命全権大使(青木盛夫君) ただいま加藤先生からお話がございました、国内問題に関してILOが、どのくらい事務当局あるいは結社の自由委員会が融れておるかという点に対しましては、国内法の改正という問題につきましては、この段階においては国内干渉になるということをおそれましてか、全然意見を公的にも私的にも述べません、事務当局は。 それから、ただいまお話のございました結社の自由委員会の報告なんかは、総評から提訴があったために、日本の国内法の運用についてILO自体の考えを述べたわけでごさいますが、その間の事情は、当時新聞等でもよく——よくか間違ってかしりませんけれども、報道されましたように、たとえば中央交渉権というようなものにつきましては、地方自治団体が使用者の立場である場合には、その人が交渉に応ずるべきだ。しかし中央において話しするかしないかということは別の問題である、これは結社の自由という問題ではないのだというような、たしか回答であったと私は記憶しております。 それからチェック・オフあるいは在籍専従の問題に関しては、在籍専従そのものは、もうこれは九十八号条約の精神から申しましても、これが既得権というふうに認めるということに関しましても、ILOあたりでは後進国の慣習じゃないかというような考えを持っておりますし、また、あの報告自体も、はっきりその点はしておったと思いましたが、チェック・オフに関しましては、これもおかしい、おかしいけれど、労使の間でそういう便法を使ったって、それはまあ御自由でしょうというようなふうに、まあ、結局、使用者のほうが組合に対して便宜をはかったからといって、そのために使用者側が罰にならぬというようなことが書いてあったと私は記憶しておりますが、もう、あまり昔のことで、その後もたくさん事件がございましたので、はなはだ申しわけございませんけれども、それ以上覚えておりません。
○国際労働機関理事会労働者副理事(原口幸隆君) 御承知のとおり、われわれの提訴というものが、きわめて膨大でございまして、八十七号条約批准という問題だけにしぼるわけにはいかないので、それぞれの組合のこまかいことまでも入っておりますので、その相当部分については判断が下ったところもございます。そこで、向こう側がしぼって見ようとしているのか、広げて見ようとしているのかということよりも、すでに広げて問題を提供してありますので、広げて見なければならないという経緯になっておる。そこで問題は、いままで明らかになったこと、さらには共同提訴人になっております国際自由労連というようなものの強い意見もございまして、まあ、御指摘の在籍専従なりチェック・オフの問題については、協定事項だ、これが法律によって規定さるべきものではないという基本的な態度をとっておりますし、ILOとしても、ILOの性格からいって、労使がそれぞれ対等で、特に弱い立場にある労働組合というものが自主性を持った形で、労使の対等な原則の中から労使関係の取りきめを行なうということを歓迎しておると私は確信をいたします。さらに、私の立場で、日本の労働組合自身——私自身も努力しなければなりませんが、いま政府なり与党から持ち出されておる問題の多くの課題については、日本の労働組合自身が自主的に考えなければならない問題も確かにございます。 しかしながら、これが政府から注文をつけられて、しかも、法律の形で、それを強制的に求められているところに問題があるのであって、私どもとしては、やはり日本の労働組合が、西欧のように独立した労働組合、そしてまた、当局も、使用者も、自分の子供のように組合を思わないで、やはり独立した労働組合として見る、そのために権利と運動の自由を与えて、その上に立って社会的自覚なり責任を求めるというようなふうに持っていかなければ、私は、この八十七号条約の長い紛争という毛のが生きていかないというように考えますし、それから民間の労働組合には無縁のごとく言われておりますけれども、形式的には、確かに八十七号条約の違反にはなりませんけれども、私の見解によれば、日本の民間の大部分は、八十七号条約の精神には実質的に違反すると思います。それは産業別労働組合がありながら、団体交渉ができないとか、あるいは指令指示権が産業別本部からできないとか、あるいは労務の提供をしないで、会社側が便宜供与をしているとか、やはり当局のほうは、組合に対する介入なり便宜供与の事実がありますし、また、われわれのほうも、こういった課題については、自主的にこれを自分で考えていくというところに、労使関係の正常の出発点があると思いますので、ひとつこの辺をよろしく御勘案願いたいと思います。
○委員長(鈴木強君) 柳岡委員。
○柳岡秋夫君 時間が非常にたちまして、お疲れでございまして恐縮でございますが、いまの問題に関連をいたしまして、原口さんにお聞きしたいと思います。 いま原口さんが申されましたように、労働組合が、真に政府なり使用者から独立をして、そして自由な運動をすることがなければ、単に批准をしただけでは何にもならぬ、真の批准にはならないのだ、そういう御説がございました。私もそのとおりだと思います。しかし、いまもお話がありましたように、五条三項あるいは四条三項の問題以外に、これらの真の独立した労働運動を進める上にあたって、それを阻害するような改正案が出されておるということがあるわけでございます。そこが、いま批准の大きな焦点になっておるわけでありますが、そうした場合に、たとえば、先ほど三城さんなりが、与党は多数を持っておるんだから、与党の信ずるところでひとつ通してくれ、やってくれ、こういうことを言われましたけれども、しかし、そういう形での批准ということになりますと、それはILO条約の精神に私は沿わない結果になるんじゃないかと思う。原口さんが先ほど言われたことばからも、そういうことになるんじゃないかというふうに思います。したがって、ここで日本の今後の貿易なり、あるいはその他の世界各国からの日本に対する信頼、期待というものがなくなってしまうというようなことのみに重点を置いて、いいかげんに、というと語弊がありますけれども、真に労働組合が独立した労働運動ができないという立場での批准が行なわれるということがあってはならないというふうに私は思っております。また、形式的な批准をするよりは、そうした労働組合の独立した運動ができるような形をつくってからの批准のほうが、日本の民主主義のためにも、あるいは世界に対する日本の評価を植えつけるためにもいいんじゃないか、私はこういうふうに感じておるんですけれども、そういう点、非常に差し迫った時期にあたって、判断が私どもも非常に苦しいんですけれども、原口さんのほうで、何かそういう点についてのお感じがありましたら、お聞きしたいと思います。
○国際労働機関理事会労働者副理事(原口幸隆君) たくさんやはり課題を持っておると思います。そして、それを解決していかなければならないということについては、私どもも強く、そういう考えを持っておりますが、すべて一挙に問題が解決いたしませんので、この条約批准というものを契機にして、それらの問題が解決できて前向きになるように、みんなが努力をするような雰囲気の中で、この条約の批准がなされることが望ましいというふうに思いますし、先ほど青木大使のお話のように、時間的な制約、国際信義の問題が、ある程度時間というものを要求いたしておりますので、その辺もよろしく御理解願いたいと思います。 それから私の実感として、西欧の労働組合ということばを使いますけれども、何といっても、その国の政府は、国柄の影響をその国の労働組合は客観的に受けておると思います。中山先生じゃありませんが、会社を見ればその組合がわかるというのと同じように、やはり日本の場合も、国の一つの反映というふうに、ILOの場では強く私、感じますので、そういう意味において、多くの課題を、ひとつ、この条約批准を契機に結びつけて解決できるようにしたいというのが、私の気持ちでございきす。
○委員長(鈴木強君) 本問題に関する懇談会は、これをもって終わりたいと存じますが、お三人の方々には、長時間にわたりまして、終始、きわめて熱心に御説明下さいまして、まことにありがとうございました。重ねて厚く御礼を申し上げます。 本日は、これにて散会いたします。御苦労さまでした。 午後三時二十八分散会