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46回国会参議院1964/03/05

外務委員会 第7号

発言数
30
登壇者
7
会派数
4
開催日
1964/03/05

会議録

黒川武雄自由民主党

○委員長(黒川武雄君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  本日は、遺言の方式に関する法律の抵触に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず補足説明を聴取いたします。村岡法務省民事局参事官。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) 第一に条約成立の経緯を御説明いたします。  この条約は、一九六〇年十月に開かれましたヘーグ国際私法会議の第九回の会議で採択された条約案に基づくものでございます。  ヘーグ国際私法会議と申しますのは、国際私法の漸進的統一を目的とする政府間機関でございまして、そのおもなる事業は、右の目的のための条約案を作成することでございます。この会議が発足いたしましたのは、一八九三年——明治二十六年でごございまして、現在では二十一ヵ国がこれに加盟し、原則として四年ごとに総会が開かれております。戦前は六件の条約を成立させるにとどまったのでございますが、戦後三回にわたる総会で十一件の条約案を採択いたしました。そのうち四件がすでに条約として効力を生ずるに至っております。わが国は一九〇四年——明治三十七年の第四回の会議以来これに参加しております。  この条約は一九六一年十月に署名のため開放されまして、現在までに十二ヵ国がこれに署名し、そのうちユーゴスラビア、オーストリア、イギリスの批准によりまして、本年一月五日に効力を生じております。わが国は本年一月三十日にこれに署名いたしました。  第二に条約の目的を申し上げます。この条約は、第一に、遺言の方式に関する各国の国際私法の規則を統一することを目的としております。  遺言は法律が定める方式を備えたものでなければ有効とされないのが普通でございますが、各国の法律が定めております遺言の方式は同じではございませんので、国際的な遺言については、いずれの国の法律に従うべきかが問題となるのでございます。これは国際私法によって解決されるべき問題でございます。ところが、遺言の方式に関する国際私法の規則は国によって異なりますために、同じ遺言が、ある国では方式上有効とされるのに、ほかの国では無効とされる、こういう事態が生じやすいのでございます。この条約は、遺言の方式に関する国際私法の規則を統一することによりまして、このような不便、不合理が生ずることを避けようとするものでございます。  次に、この条約の定める統一規則の特色を申しますと、非常に多数の法律が準拠法となり得るものとされておりまして、それらの法律のいずれか一つに適合しておれば、その遺言は方式上有効であるものとしている点でございます。その遺言と関係のあるほとんどすべての国の法律が取り上げられておりますので、遺言者は条約の規則をかりに知りませんでも、遺言が様式行為であるということを知っていれば、結果的にはこの条約の規則に従ったこととなるわけでございまして、多くの場合、その遺言は方式上有効と認められる結果となるわけでございます。  この条約の第二の目的は、このように遺言が単なる方式上の理由で無効とされることを国際私法の立場からはできるだけ避けようとする点にあるのでありまして、もとより遺言者本人の意思を尊重し、できる限りその実現をはかるということを目的としているわけでございます。  第三に条約の内容につきまして、逐条的に簡単に御説明したいと思います。まず第一条でございますが、第一項は、遺言の方式の準拠法を定める原則的な規定でございまして、遺言はその方式が同項の各号に掲げられております法律のいずれか一つに適合するときは方式に関し有効であるものとしております。第一号は、遺言者が遺言をした地の法律でございます。第二号は、遺言者が遺言をしたとき、または死亡のときに国籍を有した国の法律、いわゆる本国法でございます。第三号は、遺言者が右と同様の時点に住所を有した地の法律でございます。住所については後ほど御説明いたしたいと思います。第四号は、遺言者が同様の時点に常居所を有した地の法律でございます。常居所というのは熟さないことばでございますが、人が常時居住する場所をいうのでございます。常時居住する場所であることを要するという点で、単なる居所とは区別され、また常時の居住という客観的事実のみを要素とし、国によってその決定基準を異にするものでないという点で、住所と区別されるのでございます。第五は、不動産に関する遺言については、その不動産の所在地法をも準拠法として認めるというものでございます。  第二項は、遺言者が、米国のように地方により法律を異にする国の国籍を有した場合に、第一条第二号の適用上遺言者の本国法をいかなる基準によって決定すべきかを定める規定でございます。遺言者が本国のいずれの地方に属したかについて、その本国によるべき規則があるときには、その規則に従って遺言者が属した地方の法律を本国法とし、そのような規則がないときは、遺言者が最も密接な関係を有した地方の法律を本国法とするというものでございます。わが国の現行法の法例第二十七条第三項に同様の問題について規定がございます。それによりますと、「其者ノ属スル地方ノ法律二依ル」と言っておるのにすぎないのでございますが、これと比較いたしますと、条約の規定のほうがより具体的になっておるわけでございます。ただ、この条約の規定と同様の趣旨に法例も解釈すべしという説がほぼ通説となっております。  第三項は、第一条第一項の第三号の適用について遺言者が特定の地に住所を有したかどうかは、その地の法律によって定めることとする規定でございます。住所は、抽象的には人の生活の本拠である、あるいは人の社会生活における場所的中心を言うとされておりますが、それが具体的にいかなる場所を意味するのか、住所の決定についてよるべき基準いかんということになりますと、それは国によって同じではないのでございます。これは、住所は、先ほど述べました常居所と異なりまして、原則として定住の事実だけではなく、定住の意思をも要素とする概念でございまして、各国における既存の法律概念となっておることによるものでございます。とりわけ、住所を法律によって擬制する法定住所の制度、たとえば、未成年の子の住所は父の住所である、あるいは妻の住所は夫の住所に従うと、こういう法定住所の制度につきましては、これを認める国と認めない国がございます。また、認める場合も、その内容は国によって同じではないのでございます。したがって、各国がそれぞれ自国の法律によって住所を決定するということになりますと、その結果がまちまちになるおそれがございます。これは、同一の遺言についてはいずれの締約国においても同じ法律が準拠法となることを保障しようとする条約の目的に沿わないのでございまして、そこで、そのような不統一を避けますために、遺言者が特定の地に住所を有したかどうかを、その地の法律によって決定することとしたのでございます。この解決方法は、住所を国籍と同じように取り扱うものでございまして、ドイツに住所があるかどうかは法律によってきめる。これは、ドイツの国籍を有するかどうかをドイツの国籍法によると同じことでございます。  なお、この問題につきましては、現行法例には明確な規定がございませんために、解釈が分かれておりますが、この条約の規定と同趣旨に解する見解も、かなり有力でございます。  第二条は、遺言を取り消す遺言につきましてさらに準拠法を定める補足的な規定でございます。  遺言を取り消す遺言につきましては、第一条の規定によるほか、その方式が、従前の遺言を、同条の規定により有効とする法律のいずれかに適合するときは、方式に関し有効であるものとしております。遺言を取り消すには遺言書を破棄するとか、その他各種の方法によることも可能でございますが、ここでは、遺言をもって遺言を取り消す場合の、そのあとの遺言の方式だけを対象としておるものでございます。「従前の遺言を第一条の規定により有効とする法律」と申しますのは、言いかえますと、次の二つの要件を充たす法律でございます。一つは、従前の遺言について第一条の規定により準拠法とされる法律、たとえば、従前の遺言がスイスでなされたといたしますと、スイスの法律が遺言をした地の法律ということで、従前の遺言の準拠法となるわけでございます。第二の要件は、従前の遺言の方式がその法律に適合していることでございます。言いかえれば、前の遺言をするときにその遺言者が準拠したところの、その法律に従って取り消せば足りるという趣旨でございます。先ほどの例で申しました、スイスでいたしました遺言を日本で取り消すという場合には、後の遺言については、スイスの法律は、もはや行為地法、遺言をする地の法律とは言えないわけでございますが、この二条の規定により、従前の遺言をした地の法律であるスイス法も、準拠法として認めるというものでございます。  それから第三条は、締約国が第一条及び第二条に規定されていない法律の方式に従ってした遺言を有効と認める国際私法の規則を有する場合に、条約に参加した後もそのような規則を維持することを認めまして、また、あわせて、締約国が条約参加後にそのような規則を新たに設けることをも認めるものでございます。第一条及び第二条には、従来各国の国際私法で認められております準拠法のほとんどすべてのものが採用されておりますので、第三条によって、それ以外の法律が準拠法とされることはまれであろうと思われるのでございますが、考えられますのは、遺言の内容をなす相続その他の法律関係の準拠法、あるいは遺言者の指示する法律等でございます。第三条は、国際私法の統一という目的には沿わないわけでございますが、遺言が方式上の理由で無効とされることをできるだけ避けるという見地から、また、条約への参加を少しでも容易にしようという考慮から設けられたものでございます。わが国にとりましては、この規定によって準拠法をつけ加えるということは考えられないのでございます。  第四条は、いわゆる共同遺言の方式につきましてもこの条約が適用されることを明らかにした規定でございます。  共同遺言につきましては、そのような遺言が許されるかどうかという問題がございます。たとえば、日本民法の九百七十五条によりまして、共同遺言は許されないとなっておりますが、国によってはこれを許す国もあり、またあるいは夫婦に限って認めるという国もございます。この第四条の規定は、その問題についてこの条約が適用さるべきことを定めたものではないのでございます。この規定は、遺言が共同遺言である場合においても、その方式に関する問題についてはこの条約は適用されるということを明らかにしたものにすぎないのでございます。わが国におきましては、従来、先ほどの共同遺言そのものを許されるかどうかという問題は、方式の問題ではなくて、事実の問題であると解釈されておりますので、この条約の規定は、この共同遺言の拒否という問題には適用がないこととなるわけでございます。  次に第五条は、遺言者の年齢、国籍その他の人的資格による遺言の方式の制限、及び遺言が有効であるために必要とされる証人が有すべき資格は、方式の範囲に属する問題であり、したがって、それらの問題については、この法律が適用されることを明らかにした規定でございます。まず、前段の例といたしましては、未成年者については、自筆証書及び秘密証書の方式の利用を認めないとするドイツ民法の規定、また、外国にある自国民については自筆証書及び秘密証書等の方式の利用を認めないオランダ民法の規定等をあげることができます。後段は、証人について成年者であることを要する等の要件を定める日本民法第九百七十四条をはじめ、諸国の民法にその例が見られるのでございます。このような方式の制限や証人の資格は、方式の範囲に属する問題であるかどうかについて若干疑義を生ずるおそれがないでもございませんので、それを明確にするためにこの規定が置かれたのでございます。  第六条は、まずその前段は、この条約に定める抵触規則の適用はいかなる相互主義の条件にも服するものでないことを規定しております。後段は、その具体的な結果を明らかにしたものでございまして、この条約は関係者の国籍が締約国の国籍でない場合、または前諸条による準拠法が締約国の法律でない場合においてもひとしく適用さるべきことを規定しているのでございます。この条約は、各締約国において一般的に適用される、つまり他の締約国との関連のある事案についてだけでなく、一般的に適用される国際私法の規則自体を統一することを目的とするものでございます。第六条はそのことを明らかにしたものにほかならないわけでございます。  第七条は、公の秩序を理由とする外国法の適用排除に関する規定でございます。この条約によって外国法を適用すべき場合に、その外国法を適用することが自国の公の秩序に反する場合があり得るのでございます。「公の秩序に反する」と申しますのは、その国が維持しようとする私法的社会秩序が破壊される場合、言いかえると、その国の私法の根幹をなします基本的な原則が否定されることとなるような場合を意味するのでございます。このような場合には、その外国法の適用を排除することができるというのが、国際私法において一般的に認められた原則でございまして、わが国の法例第三十条にもその種の規定が置かれておりますが、条約七条は、この一般的な原則を明らかにしたものにすぎないのでございます。もっとも、この条約は遺書の方式のみを対象としておりますので、外国法の適用が公の秩序に反するという事例は、実際上ほとんど生じないであろうと思われるのでございます。  第八条は、この条約の効力発生に伴う経過措置を定めるものでございまして、この条約は、遺言者がこの効力発生後に死亡したすべての場合に適用されるものとしております。  遺言の時を基準とするよりも、死亡の時を基準とするほうが明確でございます。また、条約の効力発生前になされた遺言について条約を適用しても、有効な遺言がそのために無効とされることとなるような事例はほとんど考えられません。逆に方式上の理由で無効となるはずであった遺言が有効となることは、これは差しつかえないことでございます。しかし、条約の効力発生前に遺言者がすでに死亡している場合にまで条約の適用をさかのぼらせることは、法律関係の安定を害しますので、明らかに不当でございます。第八条は、以上のような考慮に基づいて立案されたものでございます。なお、ここで言う「この条約の効力発生時」と言いますのは、もちろんその当該の国についてこの条約が効力を発生した時期を意味するわけでございます。  それから、第九条から第十三条までの五ヵ条の規定は、その各条に定める事項につきまして各国に留保の権利を認めるものでございます。主としてヘーグ国際私法会議に加盟しております一部の国の国内法に由来する要請に基づいて設けられたものでございまして、わが国にとってはいずれの留保もその必要がないものと認められますので、留保は行なわないこととしております。  第十四条以下は、この条約の署名、批准、効力発生、加入等のいわゆる最終規定に属する規定でございます。  なお、以上で条約の御説明を終わりますが、この条約の批准に伴う国内法上の措置といたしまして、遺書の方式の準拠法に関する法律案をこの国会に提出いたしております。条約中の国際私法の規定は、先ほど申しましたように、他の締約国と関連のある甲案にのみ適用されるのではございません。わが国の一般的な国際私法の規定となるべきものでございますので、右のような国内法に基づく措置を講ずるのを相当と考えたのでございます。この法律案には、この条約の第一条、第二条、第四条、第五条、第七条及び第八条の規定が、その表税に、国内法の規定に調和いたしますように、若干の修正を加えた上で取り入れられておりまして、条約が日本国について効力を生ずる日から施行するものとされております。以上でございます。

黒川武雄自由民主党

○委員長(黒川武雄君) 以上で説明は終了いたしました。これから質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。

井上清一自由民主党

○井上清一君 この条約を今度の国会で承認することになりますと、国内法も当然変えなければならない。今度の国会にこれに伴う国内法の改正案が出ているようですが、それをまた参考資料としてちょうだいできませんか。どういうふうな案が出ているのですか、法律案に。実は私はまだ見ていないので。法律案の、審議のほうは相当進んでおるのですか。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) この条約について承認を求める案件と同時に提案されまして、提案理由の説明が済んだ段階でございます。法務委員会にかかっております。

井上清一自由民主党

○井上清一君 現在もそうですが、今後国際的な人的交流は非常にひんぱんになってくるわけだし、それから、国際結婚なんていうものも、これから非常に多くなってくるだろうし、現在も非常に多いわけですが、今後も多くなってくる。それで、日本人の一番関係の深いアメリカとか南米とか韓国とか中華民国というような国がこの条約に入っていないということは、私は非常にそういう意味からいって、何か非常に不十分なような感じがするわけです。今後アメリカとか中華民国とか韓国とかあるいは南米の国々というような国々が、この条約に将来どういう態度をとっていくか、そしてまた、今後これらの国々も入る見通しがあるのかどうか。それからまた、それらの国々の現行法律が、現在国際結婚をしたり、向こうへ移住をしたり、あるいはまた旅行者などに現在不都合がないのかどうかという点について、若干御説明を願いたい。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) このヘーグ国際私法会議は、従来主としてヨーロッパの国が加盟いたしまして国際私法統一の事業を進めました関係で、ただいま仰せになりましたような、アメリカ合衆国、中南米の諸国やアジアにおける諸国は、ほとんど加盟しておらない状態でございます。ただ、アメリカ合衆国はこの国際私法会議の事業に非常に関心を持っておりまして、前々回の総会からオブザーバーを送りまして、条約案採択の審議にはかなり積極的に参加しているのでございます。ただ、アメリカは、御承知のように、連邦制度になっておりまして、こういう私法の制度は各州の立法権限として取り扱われております関係上、連邦がこの種の条約に加盟いたしまして、直ちに各州の国際私法の規定をこれに統一するというわけにはまいらないような状態でございまして、そのためにヘーグ会議の正式の加盟国にはなっておらないのでございます。ただ、アメリカでは、国内におきましても五十の州のこの種の法律を統一する必要性が十分あるわけでございまして、その統一のための事業もかなり行なわれております。その場合の方法といたしましては、モデル立法、モデル法をつくりまして、それにならって各州が立法することを勧奨するといいますか、すすめるというやり方をとっておりまして、事項によってはかなりそれによって統一の目的が達せられたものもございます。ヘーグ会議におけるアメリカのオブザーバーの発言等に徴しますと、このヘーグ会議でできました条約に加盟するということは無理だけれども、これをモデル法として各州にその採用を呼びかけるということは十分考えられるということを申しております。なお、中南米の諸国は、まだそれほどの関心を持っておりません。と申しますのは、中南米には中南米諸国の間で国際私法を統一する機構がございまして、そのための非常に大部な法典ができているのでございます。ブスタマンテ法典であるとかモンテビデオ条約であるとかいうのがございますが、そういう条約で地域的な統一はかなり達せられているのでございます。今後は、ヘーグ会議とそういう中南米の地域における統一とはさらに調整をはかるということに将来はなるのではないかと思われますが、現状ではそこまで至っておりません。なお、最近ヘーグ会議には数年前にアラブ連合が加盟いたしまして、最近ではイスラエルが加入するという申し出をしておりまして、従来のヨーロッパの国々だけ——主としてヨーロッパの国々を中心にしたものから、だんだんと広い地域にわたって加盟国を持つ組織になるのではないかと期待されるわけでございます。なお、アジア、アフリカ地域におきましては、アジア・アフリカ法律諮問委員会という組織がございまして、毎年回り持ちで会議を開いておりますが、この機関におきましても、ほかの案件と同時に国際私法の統一ということも検討されておりますが、何分発足間もないものでございますので、まだ十分な成果をあげるに至っておりません状態でございます。この委員会につきましても、将来ヘーグ会議や中南米のそういった機構との協力調整ということは当然考えられるのではないかと思うわけでございます。なお、この遺言の方式に関する条約は、先ほど御説明いたしましたように、非常に各種の準拠法を網羅的に採用しておりますので、ヨーロッパに特有の特色とかあるいは英米法に特有の特色といったようなものが実はない。非常にその意味では一般的抽象的性格を持った条約でございまして、この種の内容のものであればこういう立法をヨーロッパ以外の地域で採用することも一向差しつかえない、何らの支障もないのじゃないかと思われるのでございます。大陸諸国と非常に法制を異にしておりますイギリスが率先してこの条約に入りましたのも、そのような理由によるものでございまして、この条約に関する限りは、非常にグローバルなものとなることが期待できる条約ではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 日本は世界で有名な、条約とか法律をつくるのがうまいそうですね。ことに外務省あたりは、どこかで、EECか何かでほめられたそうだから、どうも学者さんとかお役人さんがこういう会議へ出てつくったんだと思うのだが、実際にこういう、法律の抵触の事例ですね、これは困ったのだというようなこと、何かおもしろい話はないですか。何か変えなくちゃならぬとかいったような、ためしに、よその国がやるから、定期的なヘーグの会議があるから、出て行って、まことにけっこうだといったような、国際的性格も帯びなくちゃならぬが、池田さんの言う大国だけれども、遺言に関係してはそこにいっていないと思うのだが、どうしても入らなければならぬという具体的なおもしろい例があったら、眠けざましにひとつお聞かせいただきたい。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) 残念ながらそういう具体的な例をあげることができないのでございますが、従来、日本では地理的な事情もございまして、国際私法の対象になりますような事案そのものが非常に欧米諸国に比べますと少なかった感じでございます。ところが最近では、御承知のように非常に交通機関も発達いたしまして、人的往来が盛んになるにつれ、日本人が外国に出かけていく、そこへ住みつくということが非常に多いわけでございます。逆に外国人も盛んに日本にやってくる。こういうことになりますと、この条約の対象になるような事案もこれからだんだんと出てくるのではないか、そういう不都合が生じないうちに事前に法律体制を整備しておこう、こういうわけでございます。

黒川武雄自由民主党

○委員長(黒川武雄君) 速記をやめて下さい。   〔速記中止〕

黒川武雄自由民主党

○委員長(黒川武雄君) 速記を始めて。

加藤シヅエ日本社会党

○加藤シヅエ君 私も例について、今後起こり得ると思われるような例をひとつつくって考えてみたいと思うのでございますけれども、たとえば日本人がアメリカとかあるいは南米のどこかに土地を買って、それを自分の財産として持っている。それでその遺言を、その土地をだれだれに相続させるというような遺言をして、それで日本以外の、アメリカとか南米とかそういうような土地で死亡した。それで、そういうような場合に、その外国に持っていた土地は、日本の法律で認める遺留分のその分野より過ぎた、遺留分でもって、あと被害を受けたと思われる遺族の人が抗議することができるほどのものになっているというような場合にでも、たとえばアメリカとか、南米のどこかの土地では、そういうような遺留分なんていうものはないというようなふうになっている場合には、その外国にある土地はどういうふうに処分されるのですか。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) ただいま仰せの遺留分の問題で、ございますが、これは結局自己の遺産をどの程度自由にその意思によって処分できるかという問題になるわけでございまして、これは相続の実質的な問題であるということで、この条約は遺言の方式だけを問題にしておりますために、この条約の対象からは、はずれているわけでございます。それではどういうふうに処置されるかということでございますが、いま仰せのような事案が、どこの国の裁判所で取り上げられるかということが、第一の問題なわけでございまして、おそらく南米にあります不動産ということになれば、その不動産の引き渡しとか、名義書きかえをめぐって、南米のその国の裁判所で問題になることが多いと思われるわけであります。したがいまして、その国の国際私法によりまして、そういう相続の関係については、どの国の民法を適用するかという、国際私法の問題になるわけでございます。日本の国際私法でありますと、そういう相続の問題は、被相続人の本国法でございますので、日本民法による。したがって、日本民法で定める遺留分を侵害することはできないということになりますが、中南米の問題は、相続問題は住所地法を適用している国が多いのでございます。その場合に、もし日本人の住所が、その中南米の国にある、しかもその住所のある国では、そういう遺留分の制度を認めていない、自由に全財産を処分できるということにしているとすれば、その遺言は完全に有効になる、こういうことになるわけでございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 どうも気分的にさっぱりしないんだがね。けっこうなことだと思うんだ。コンフリクツというのだから、コンフリクツがなかったかというと、まだない。これから起こるということなんですね。いろんなぐあいの悪いこともない。しかし、つくっておけば、いつか網に魚がかかるだろう。こういうことですか、そういうことなら、それで抵触するものがあったら、その関係国との間で、専門家が話し合えば、お互い文明国の場合はある程度常識的解決ができているのじゃないかと思うのですね。それで済むのじゃないんですか。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) 国際私法の統一ということになりますと、できるだけ多くの国が統一のルールを採用することが望ましいわけでございまして、二国間でそのつど協議して解決をはかるということは、かなり困難なのでございます。たとえば、英国に長年住所を有しますところの日本人が、日本人でございますので本国法、日本法に従って遺言すればいいと考えまして、日本法で遺言をした。英国にももちろん財産を持っております。ところが、その財産について英国で争われたといたしますと、英国では住所地法を適用することとされておりますので、その遺言者の住所が英国にあると認定される以上は、日本法によってした遺書は無効であるということになるわけでございます。これは一方が本国法、一方が住所地法というプリンシプルの違いでございますので、これを協議によって解決するということは、事実上非常に困難な問題ではなかろうかと思われるわけでございます。

森元治郎日本社会党

○森元治郎君 しかし、遺言なんてのは、日本の場合は一般的じゃないですね、お互い、遺言して処分する権利も金もあまり持ってる人がないようだから。そうすると、いまの例を引いた場合、イギリスにいて日本法で遺言したということは、いやしくも外国に住むような人、そうして遺言をするくらいだから死ぬまでに時間的に余裕のある人だ。そうすれば、あそこに住んでいる人は弁護士を雇うのが当然なんです。その弁護士はイギリス人の弁護士、イギリスの国籍を持った人。そうすれば、あえて英国にいて日本法を適用するというようなばかなことをする必要はないと思うのです。格別急ぐ必要はないと思いますが、どうですか。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) おことばを返すようでございますが、その人が日本にも財産を持っているといたしますと、日本の財産につきましては本国法に、日本法によらなければならないということになるわけでございます。ですから、委任された弁護士としては、日本法とイギリス法両方に従って遺言をしなさい、こういうことになると思います。それは非常に繁瑣なことでございまして、できればそこまで注意を払わなくても有効な過言ができるようにする。本人の意志が明確にあらわれている以上は、方式がその所定の国の法律に合っていない、別の国の法律に合っているところもあるというような理由で無効になることはなるべく避けよう、こういう趣旨の条約であるわけでございます。

曾禰益民主社会党

○曾祢益君 ですから、やはり方式について、この条約ができこの条約に参加国がふえても、やはり実質的の各国の法律の違い、また各国の国際私法の解釈とかその違いの問題は残るわけですね。この遺言の方式だけについてこういうものができて、これに日本人が非常に関係の深そうな国々がこういう方式に関する条約に加入したとしても、それは方式の問題についてはある程度の進歩になっても、実質の違いというものは残るわけでしょう、国際私法で。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) 仰せのとおりでございます。その実質についての統一をはかることも望ましいことでありますが、実質の問題になりますと、非常に各国の利害、制度が鋭い対立を示しておりますので、なかなかむずかしい事業ではなかろうかと思うのでございます。

二宮文造公明会

○二宮文造君 さっきの事例ですがね、こういうふうに理解すればいいんですか。日本人が本国法の方式に適合する条件を備えておれば、イギリスにある財産についてもその遺言の方式によって参照される、有効である、こうなるわけですか。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) 仰せのとおりでございます。

二宮文造公明会

○二宮文造君 それはイギリスの国内法には抵触しても……。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) さようでございます。ただ、イギリスもこの条約に加入いたしまして、この条約と同じような内容の国内法を制定しておりますので、遺言の方式が本国の法律にかなっておればそれは有効と認めるというルールが採用されておるわけでございます。したがって、日本人であれば日本民法に従っておればよろしい、こういうことになるわけでございます。

加藤シヅエ日本社会党

○加藤シヅエ君 この法律は現在批准している国は三国、今度は日本を入れて四ヵ国、そのほかにどこか批准するであろうという見通しはどういうふうになっておりますか。

村岡三郎法務省民事局参事官

○説明員(村岡三郎君) 現在までにドイツとオーストリア、デンマーク、フィンランド、フランス、ギリシア、イタリア、日本、ノルウェー、英国、スエーデン、ユーゴ、この十二ヵ国が署名しております。したがって、署名国で批准していない国が九ヵ国あるわけでございます。従来の実績に徴しますと、おそらくこのうちの数ヵ国が近い将来に批准するのではないだろうか。明確な見通しを立てることは困難でございますが、従来のあれから見ますと、ドイツとかフランス、イタリアあたりは批准が予想できると思うのでございます。

黒川武雄自由民主党

○委員長(黒川武雄君) ほかに御発言もございませんければ、本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黒川武雄自由民主党

○委員長(黒川武雄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黒川武雄自由民主党

○委員長(黒川武雄君) 御異議ないと認め、それではこれより採決に入ります。  本件全部を問題に供します。本件を承認することに賛成の方の挙手をお願いいたします。   〔賛成者挙手〕

黒川武雄自由民主党

○委員長(黒川武雄君) 全会一致でございます。よって本件は、全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

黒川武雄自由民主党

○委員長(黒川武雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、本日はこの程度で散会いたします。    午前十一時十六分散会

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