予算委員会公聴会 第1号
- 発言数
- 74 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1964/02/12
会議録
○荒舩委員長 これより会議を開きます。 昭和三十九年度一般会計予算、昭和三十九年度特別会計予算、昭和三十九年度政府関係機関予算について公聴会に入ります。 本日午前中に御出席を願いました公述人は、東京教育大学教授美濃部亮吉君、国井社会保障研究所長国井国長君のお二人であります。 この機会に御出席の公述人各位にごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中のところ御出席をいただいて、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。申すまでもなく、国の予算は国政の根幹をなす最重要議案でありまして、この予算委員会といたしましては連日真剣な審議を続けておるところでありますが、この機会に各界の学識経験豊かな各位の貴重なる御意見を承ることができますれば、本委員会の今後の予算審議に多大の参考となるものと信ずる次第であります。何とぞ各位におかれましては、目下審議中の昭和三十九年度総予算に対して忌憚のない御意見を承りたいと存ずる次第であります。 御意見を承る順序といたしましては、まず美濃部公述人、続いて国井公述人の順でおおむね三十分程度において一通り御意見をお述べいただきまして、そのあと公述人各位に対し一括して委員から質疑を願うことにいたしたいと思いますので、あらかじめ御了承を願い、なす。 なお、念のために申し上げますが、衆議院規則の定むるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ることと、また、公述人は委員に対しまして質疑をすることができないことになっておりますので、この点もあらかじめ御了承をお願い申し上げる次第であります。 それでは、まず美濃部公述人からこの際御意見を承りたいと存じます。
○美濃部公述人 私、ただいま御紹介にあずかりました美濃部でございます。三十九年度の一般会計予算につきまして、私の考えておりますことを述べさせていただきます。 私がいまさら申すまでもなく、三十九年度の一般会計予算は三兆二千五百五十四億円となっておりまして、三十八年度の当初予算に比べますと一四・二%の増加となっております。 〔委員長退席、機内委員長代理着席〕 しかし、国立大学の運営予算が昨年度は一般会計予算に組み入れられておりましたのが、今回は特別予算に回されておりますので、昨年とあるいはそれ以前の予算と比べます際には、それを含めたほうが正確であると思います。しかしながら、それもわずかでございますが、国立大学の運営予算をもし一般会計予算の中に組み入れて、含ませて昨年度の当初予算と比べますと、約一五%、一四・九%の増加となります。私が申すまでもなく、三十七年度は一七・六%、三十八年度は一七・四%、いずれも前年度の当初予算と比べまして予算は膨張しておりますから、これに比べますと、三十九年度の一四・二%あるいは一四・九%という増加は決して膨張ではない、むしろ増加の程度が鈍っているという意味において、縮小とは申せませんけれども、あまり膨張していない予算であるというふうに言えないこともないと思います。 しかしながら、予算が膨張しているか膨張していないか、一般的なことばで申し上げますれば、膨張予算であるかどうかということを考えます場合には、経済全体の膨張、いわゆる経済の成長の速度あるいは成長率というものとにらみ合わせて考える必要がもちろんあることであると思います。経済が膨張する、いわゆる高度成長しつつあるときには、全体の需要も急速に増加しつつありますから、全体の需要の中における政府需要も、予算が相当大きくなっても政府需要の比重がそう大きくなることもございません。また、高度成長に際しては、国民の一般の所得もふえるから、財政が相当膨張いたしましても、国民からよけい税を徴収する、国民の負担が重くなるということもない場合が多いと思います。それでありますから、膨張予算であるかどうかというふうなことは、前年の予算と比べただけではなく、経済全体の成長の速度というものとにらみ合わせて考えなければならないことは、私が言うまでもないことであると思うのです。 そういたしますと、もちろん三十九年、ことしの日本経済の成長がどのくらいになるかということは、いまは単に推定の域を脱しません。したがって、正確なことは申せませんけれども、貿易、国際収支その他が御承知のような状態になっておりまして、どうしてもこの貿易ないし国際収支の赤字をなくさなければならないというところに差しかかっておりまして、その赤字を解消させるためには、どうしても成長の速度を、程度の差はあってもれ当に低めなければならないということが、現在の時点における日本経済にとってはおそらく絶対的なことであると言っていいと思うのであります。そうであるとするならば、三十九年度の経済の成長率も二十八年度に比べれば相当に低下する。経済企画庁の推定においても、大体名目で一〇%くらい、実質で七%ちょっと上くらいになるであろうというふうに推定しております。思ったよりも貿易の収支も悪いようでございますから、おそらくは経済企画庁の推定よりもことしの経済の成長率は落ちるのではないかというふうに私個人としては考えますけれども、大体において経済企画庁の推定どおりことしは名目で一〇%の成長をすると考えまして、そしてまた、三十八年度の経済の成長も最終的な数字は出ておりませんけれども、これもやはり経済企画庁の推定にほぼ従いまして、名目で一二%ぐらいの成長があったというふうに考えてみます。そういたしますと、経済の成長のほうは一二、三%から一〇%前後に落ちるということになりますと、予算の増加率が一七・四%から一五%に落ちたということが、経済の成長の速度と比べてみますと、膨張予算と一般に言われております三十八年度の予算と比べてそう変わっていないのではないかということが推定されます。 それで、そういう推定が根拠のあるものであるかどうかということを数字的に調べますために、各年度の経済の成長率を一〇〇といたしまして、予算の増加率の指数をとってみます。そういたしますと、もちろん経済の成長率のほうが予算の増加率よりも高ければ指数は一〇〇以下に出ますし、逆に経済の成長率よりも予算の増加率のほうが多くなりますれば、指数は一〇〇以上に出ます。そうして、一〇〇以上に出た出方が多ければ多いほど、予算の増加の率のほうが経済の成長率よりも大きく上回っているということになるわけであります。それで、そういうふうに経済の成長率を一〇〇にして予算の増加率の指数をとってみますと、昭和三十六年度が八七、三十七年度が一九八、そうして三十八年度が一四五、そうして三十九年度が一四九という数字が出ます。もちろん、いま申しましたように、三十八年と二十九年の数字は推定でありますから、いまのところまだ最終的な数字は発表されておりませんで、一時的な推定の数字でありますから、そうして、そういう推定の数字を基礎にして計算でございますから、これが絶対に確実の数字であるということはもちろん申せません。しかしながら、大体において三十八年が名目で一二%前後、三十九年が名目で一〇%前後の経済成長を遂げた、あるいは遂げるであろうということは、それほど大きく間違ってはいないと思いますので、この数字も大体において正しいのではないかというふうに考えていいと思うのであります。そういたしますと、三十七年は、これは御承知のとおり三十六年のあとで急激に経済の成長の速度が落ちた年でありまして、その結果として予算は経済の成長の速度を大きく上回っております。それから、一千八年は若干減っておりますが、三十九年度は三十八年と同じくらいか、あるいは若干経済の成長の度合いを三十八年よりも大きく上回っているということは言えると思うのであります。そうして、世界のほかの先進諸国家の財政の増加を比較的長期にわたって見ますと、もちろん正確には申せませんけれども、大体において経済の成長と速度を合わせて予算も増加している。そうして、経済が大きくなる度合いと、それから予算が大きくなる度合いとがほぼ見合うというのが大体において健全財政であるというふうに言われておりますし、それからまた、経済の成長の速度を上回る、それも相当の程度に上回る、そういう財政を一般に膨張予算というふうに言っているというふうに申して間違いはないと思うのであります。そういたしますと、日本の財政は、三十七年、三十八年、三十九年と三年続けまして経済の成長の度合いを相当大きく上回っているということが言えます。 なお、念のためにそれ以前の情勢を申しますと、昭和三十四年は、いま申し上げましたように経済の成長率を一〇〇にいたしましたときの予算の増加率を見ますと、実に五八というふうに、予算の増加率が経済の成長率をはるかに下回っております。それから三十五年が九九、三十六年が八七と、三十四、三十五、三十六という三カ年間は、若干その数字の出入りがあるかもしれないと思いますけれども、大体予算の増加の速度は経済の成長の速度よりも下回っている。それが、三十七、三十八、三十九という三カ年は、それまでの三カ年の事態とは逆に、予算が経済の成長の速度を上回るようになってきたというふうに申せると思うのです。 さらに、いわゆる財政投融資を合計いたしまして、そうして、国民所得に対しまして財政投融資と一般会計予算とを合計したもの、これはもちろん地方財政は除きまして、いわゆる政府需要、政府から出ます需要がどのくらいの大きさになるかということの本体を示すものであると思いますが、その財政投融資と一般会計予算とを合計いたしましたものを国民所得に対する割合として計算してみますと、もちろんこの場合も、三十八年、三十九年は、さっき申し上げましたような経済企画庁の推定に基づいて国民所得も増加するものと仮定してあるわけでありますが、そういう財政投融資と一般会計予算とを合計したものの国民所得に対する割合は、三十六年が二〇%、三十七年が二一%、三十八年が二四%、三十九年が二五%という数字になっております。 それでありますから、経済の成長の速度と見合わせて考えましても、また、財政投融資と合計いたしましたものを国民所得に対する割合として見ましても、三十九年度の一般会計その他の予算は、あるいは大きく申しまして財政は、膨張的な傾向をたどりつつある、あるいは膨張予算であるというふうに考えて間違いないのではないかというふうに思います。 それで、もちろん、膨脹予算がどういう場合においても悪いものである、いけないものである、予算は膨脹してはならない、つまり経済の成長率といつもペースを合わせていなければならないものであるということは、私は言い得ないと思うのであります。しかしながら、日本の経済の現在置かれております情勢とにらみ合わせて考えてみますと、現在財政が膨脹的な傾向をたどるべきときではないのではないか、つまり、財政はむしろ緊縮させなければいけないときではないだろうかというふうに考えられるのであります。 それは、第一は、もちろん消費者物価の上昇の関係においてでありまして、消費者物価が三十八年のように一年間に八%以上も増加する、こういう状態は一刻も早く解消されねばならない事態でございます。それは国民の生活を圧迫するだけではなくして、日本の経済にとって致命的な問題である貿易に対しましても悪い影響を及ぼす。何しろ八%一年間に消費者物価が上昇いたしますれば、ほぼ十年間で消費者物価が二倍になるのでありますから、こういう事態は、戦争の場合を除きまして、世界の経済の歴史の中にかつてないような事態でございます。こういう事態は一刻も早く取り除かなければならないということは、私が申すまでもないことだと思うのであります。そうして、そういう意味において、もちろんこの物価上昇がどういう原因に基づいて起こってきたかということについては、いろいろの主張がなされておりまして、その主張は人によって異なって、一致した意見というものはないようでございます。しかしながら、物価懇談会の結論にもございましたように、消費者物価が上がっているのは消費財貨の生産あるいは供給に比べて需要が多くなり過ぎているからだ、そういう点においてはほとんど意見が一致しております。ただ、それからあと、なぜそういう消費財貨に対する需要と供給のアンバランスが起こってきたか、その需要と供給のアンバランスがなぜ起こってきたかというその点において意見がいろいろ食い違っている。ただ、どういう原因であろうと、物価に及ぼす直接的な影響力としては需要と供給のアンバランスである、そういう点においてはほぼ意見が一致しているというふうに言っていいと思うのであります。その意味において、物価を安定させるということの最大の要件は、一方においてはもちろん供給を増加させるということが一つの方法であります。そうして、そのことは、中小企業の近代化をできるだけ促進するということで、いわば前向きの政策であって、最もいい政策であるには違いありませんけれども、しかし、早急に一年間において中小企業の近代化を促進するということは、事実においてほとんど不可能であるというふうに言って差しつかえないと思うのです。そういたしますと、どうしても、物価問題に対する応急の措置というものは、需要のほうを減らすとまではいかないにしても、需要のほうを増加させる要因をあらゆる面において抑えるという点に、物価対策の即効薬としてはそういう点に集中せざるを得ないものではないかというふうに思うのであります。そうして、その点において、間接的ではあるにせよ、財政を膨張させる、あるいは従来の膨張路線をそのまま続けるということは、物価の安定が目下の焦眉の問題となっているときにおいては、政府需要をふやすという点から申しましても、決して物価の安定をまねく政策とは言えない。そういう意味において、財政は膨張路線をたどるべきではないのではないであろうかというふうに思うのであります。 もう一つ重要な、ある意味において日本経済全体にとりましてはもっと決定的な重大な問題があるわけでございます。それは、貿易収支の問題でありまして、大蔵省の発表によりますと、昭和三十八年、つまり暦年で勘定いたしました昭和三十八年の貿易の入超はほぼ十三億ドル、——十二億九千七百万ドルという額に達しております。これは、言うまでもなく通関実績によって計算された入超額であります。それで、もちろん、通関実績で計算いたします限りにおいては、日本は終戦以後ずっと一年の例外もなく入超を続けておりますが、しかし、入超が十億ドル以上に達した年はいままでに四年あるだけでございます。それは二十八年と三十二年と三十六年と三十八年でございまして、二十八年が入超十一億ドル、三十二年が十四億ドル、三十六年が十六億ドル、そうして三十八年が十三億ドルであります。それで、日本の経済の体質と申しますか、構造と申しますか、そういう点から申しまして、通関実績で入超が十億ドル以上出ますと、どうしても国際収支全体が三億ドル前後の赤字が出るというのが原則となっております。それで、その点において、最近はむしろ以前よりも情勢が悪くなっております。昭和三十五年ごろは、貿易外の収支はいつも黒字を出しておりましたが、昭和三十五年からは貿易外収支が赤字に転じまして、その赤字が漸次拡大する、増加するという傾向をたどっております。その上、従来は資本収支の黒字によって経常収支の赤字を埋めておりましたが、資本収支の黒字も減ってきているというのが現在の情勢であります。そういたしますと、通関実績で十三億ドルという入超を出しましたその結果が、従来よりはむしろ大きく国際収支の赤字にあらわれるということも避けることができないというふうに思われます。そうしてまた、日本の外貨は一応十八億ドルございますけれども、そのうちの多くの部分は外国から借り入れた資金の返済準備金なり担保なりに入っておりまして、自由に日本では処分できない外貨が多いわけで、日本の自由に処分し得る外貨がどのくらいあるかということは、局外君の私には全然わかりません。しかしながら、それは、また聞きによりますけれども、六億ドルから七億ドルくらいではないかというふうな意見が専門家によって言われております。といたしますと、三億ドル前後の国際収支の赤字が二年間続くと、日本の外貨は実質的にはほとんどゼロになるということであります。それでありますから、どうしてもこの国際収支の赤字はなくさなければいけない。その場合においても、もちろん輸出をふやすということが最もいい方法でありますけれども、急速に輸出をふやすということはもちろん容易なことではございませんので、対策といたしましては、どうしても輸入のふえ方を抑えるという以外にはないと思うのです。そういたしますと、やはり需要のほうのふえ方を押えるということが即時の対策としてはどうしても中心とならざるを得ない。そういう意味において、物価と同じように、需要のふえ方をできるだけ抑えるということに対策の中心を置かざるを得ないと思うのです。そういう意味においても、財政、つまり政府需要をいままでどおりふやしていくという政策は、国際収支の赤字を解消させなければいけないという焦眉の問題を持っている日本経済といたしましても、決して賢明な財政ではないのではないであろうかというふうに思うのであります。 財政は、最初に大蔵省等が発表いたしましたように、一〇%以内の増加に抑えるということが、現在の日本経済の情勢から見る限りにおいては妥当ではなかったかというふうに思う次第でございます。 それでは、私の持ち時間の三十分が過ぎましたので、これで終わらせていただきます。(拍手)
○櫻内委員長代理 次に、国井公述人の御意見を承ることにいたします。
○国井公述人 私は、国井社会保障研究所長の国井園長でございます。私は町の独学無名の社会保障研究者でございまして、右手の不自由な身体障害者でございます。私は、新聞社、社会福祉協議会などの主催で全国各地で社会保障の講演をいたしまして、母子世帯、身体障害者、社会保障受給者、あるいは生活保護を受けている方々、民生委員さん、こういうふうな方々と常に接しておりますので、そういう方々の声なき声もお伝えいたしまして、私の意見を公述申し上げたいと存じます。 日本の社会保障は、国入会の先生方や政府の御努力によりまして、わずかずつながら前進しておりますことをこの機会に厚くお礼を申し上げます。私のきょうの意見の公述の第一は、一九六四年度の社会保障関係予算についてでございます。第二は、社会保障行政の適正運営の確保についてでございます。 私は、日本で最初の国民の社会保障の権利意識の調査を、昨年東京その他十五都道府県におきまして、身体障害者、母子世帯、社会保障受給者、民生委員などを対象にいたしまして、二百三十九人を調査したのでございまするが、その方々の意見のあらましを申し上げますると、日本の社会保障は、国力に比較しまして不十分だと言っている者が六〇%、社会保障をよくするために税金や保険料をもっと負担したいけれども、生活が楽でないからできないと言う者が六五%、社会保障の生活保護でございますとか、年金、医療、労災などの不服申し立て制度を知っている者はわずかに三三%でございます。そのために、調査を受けました方方は、不服申し立てをすることを知らないために泣き寝入りしている人が多いであろうということを七六%の方が憂えておりまして、この不服申し立て制度をもっと詳しく知りたいと七〇%の方が希望いたしております。 この社会保険、労働保険の審査制度は実効をあげていると申しております点について、不服申し立ていたしまして、終局的に申し立てが認められませんで棄却された方々の四四%も、この審査制度は一般的には権利救済に役に立っている、このように申しておるのでございます。私がその調査の一環といたしまして東京、大阪、大津で社会保障の権利を確保する座談会をいたしたのでございまするが、東京の座談会には、行政管理庁、行政監察局、それから厚生省、社会保険審査会、労働保険審査会からも担当官に御出席いただきまして、御出席されました国民の皆さまとひざを交えまして社会保障の権利確保につきましてお話し合いをしていただいたのでございます。その際に出席いたしました、結核カリエスのお子さんをお持ちになっておりまして現在生活保護を受けております一人の御婦人が、かつて生活保護を御当人が納得できないような理由で打ち切られまして、当時この不服申し立て制度があることを存じませんために、泣き寝入りをし、さらにその後、この御婦人が、やはりお子さんの医療の問題につきまして役所の手落ちでたいへん御迷惑されたのですが、そのときも不服申し立てができるということを存じませんで、泣き寝入りをしておったのでございます。そして、この座談会におきましてその事実を訴えたのでございます。そこで、当日席上に御出席されておりました政行監察局が直ちに調査して、今後こういうことの起こらないようにしてしてあげましょうということでお取り上げをくだすったのでございますが、この御婦人は、昨年の六月現在、生活保護をまた再び別の理由で受けておりましたので、福祉事務所が報復措置に出まして保護を打ち切られることをおそれまして、行政監察局に対しまして苦情の申し立てを取り下げたというふうな事実がございます。これは、何もこの御婦人だけではございませんで、こういうような事実は全国至るところにたくさんあるということを、私は遺憾ながら申し上げざるを得ないのでございます。 ところで、厚生省におきましては、生活保護の適正な運営をはかるというふうな理由で、今年度から生活保護監査官を十人増員いたしまして、十八人にするとのことでございす。その理由といたしまして、新聞が伝えるところにより擁すると、市町村長や知事などのいわゆる政治的な圧力、それから集団の政治的な圧力によって生活保護に乱給があるので、それを正すのだというふうに新聞は伝えております。国民の税金によってまかなわれるところの生活保護は、適正に行なわれなければならないことは私が申し上げるまでもないのでございますので、乱給は厳に戒めなければなりません。そのためには、このような御措置も必要だと思います。しかしながら、ただいま私が国民の社会保障の意識の調査に基づきまして御説明申し上げましたように、現段階におきましては、国民の権利意識は非常に薄いのでございますし、また、日本では民主主義も残念ながら未熟な状態でございます。こういうときにおきまして、ともいたしますると乱給を取り締まる、是正するということに藉口いたしまして、むしろ弱い母子世帯でありますとか、身体障害者でございますとか、あるいは職を失いました御老人などにこれがしわ寄せされまして、むしろ漏給になるということを私はおそれるのでございます。この点、どうぞ国会の先生方におかれましても、特に御留意を賜わりまして、社会保障行政が先生方が意図せられますように適正に運営されますことを、私は心から望むのでございます。 ところで、それではそのようなきびしい制限のある生活保護の基準はどうかと申しますると、この一九六四年度の生活保護の予算を拝見いたしますると、厚生省は二二・八%の引き上げを、要求いたしまして、非常に御努力されたのでございますが、終局的には前年度対二三%の引き上げでございまして、これは、物価の上昇を差し引きますと実質八・八%ぐらいで、エンゲル係数は五六ぐらいだと言われますし、この食費は、東京都のような一級地でも八十六円八十銭、町村では六十三円ぐらいでございまして、人間としての最低の栄養もとれないというふうな基準でございまして、もちろん、社会保障制度審議会の昭和三十六年度から毎年実質二二%引き上げという勧告よりもはるかに下回っているような状態でございます。生活保護の基準が低いということは、福祉年金その他社会保障の諸給付でございますとか、あるいは労働者の賃金にもこれが影響いたしまして、それらが低く押えられるというふうな事実がございますることは、私が申し上げるまでもないところでございます。 私の公述は、申し上げたい点がたくさんございますので、まず先に結論を申し上げたいと存じます。 第一は、一九六四年度の社会保障関係予算は、厚生省、労働省など社会保障の担当省の当初の要求どおりに修正して成立を願いたいと存じます。厚生省なり労働省の当初予算につきましては、自民党の社会保障に熱心な先生方も支持されたのでございまするし、社会党からも、この予算編成当時に大蔵省にそれをさらに上回る申し入れをされておりますので、国会の各会派の先生方が一致しましてこれをいたしまするならば、私は修正ができると存じます。そしてその財源といたしましては、過当な交際費の非課税を廃止いたしまするとか、あるいは不労所得や高額所得に対しまする実効税率をもっと引き上げる。私は町の研究者でございますから詳しいことはわかりませんが、たしか一千万円程度の所得のある人に対しましても、実効税率は二二・八%ぐらいであるやに伺っておりますので、もっとこれを引き上げるとかいたしまするならば、私は、この財源は出し得るものであろうと、このように考えるのでございます。 二といたしましては、厚生年金の大幅な改正でございます。厚生年金の改正は、現実の問題となりまして、今国会にこれが提案されると存じますが、厚生年金の改正につきましては、いろいろの立場から御意見があろうと存じますが、私は、少なくともこの機会に、ILOの社会保障百二号条約を批准いたしまするためにも、また老齢保障を必要にして十分なものを早く確立いたしまするためにも、また国民年金の次の改正をいたしまするためにも、厚生年金の改正は、ぜひこの国会におきまして諸先生方の御努力によりまして成立するようにお願いいたしたいと存じます。 〔機内委員長代理退席、委員長着席〕 その際には、調整年金の要件をもっと厳格にいたしまして、たとえば調整年金の基金などに被保険者、労働者の代表を理事、監事に入れまするとか、もっといろいろございますが、そういうふうにいたしまして、要件を厳格にする。給付内容も定額部分をもっと引き上げまして、厚生省の原案にありました程度までに引き上げるとか、あるいは老齢年金を、七十歳以上の場合にはもっと額を引き上げる。障害年金を、特に重度の人には特別一級を設けて額を引き上げる。あるいは最低保障額を引き上げたりいたしまして、国庫負担も原案のように二〇%ぐらいにしていただく。そのようにお願いをいたしたいのでございます。 三は、この国民年金、日雇い健康保険。このように日の当たらない弱い階層の社会保障の給付を明昭和四十年度から大きく改善できますように、今国会におきまして御措置を願いたいと存じます。特にこの日雇い健康保険は、今年度予算では百四億の借り入れを要求しておるような状態でございまして、非常に財政内容は悪いのでございますが、大体日雇い保険の被保険者は、申し上げるまでもなく日雇い労働者でございますので、特に厚い社会保障の給付が必要な方々でございますので、これを引き上げたりいたしまして、おくれた附属、おくれた部門をもっと引き上げて、高い次元で調整していただくようにお願いいたします。 第四といたしましては、重度身体障害児の問題でございます。先生方御承知のように、昨年重度の障害者のお子さまをお持ちになっておりまする作家の水上勉さんが「拝啓池田総理大臣殿」という書簡を中央公論に発表いたしました。私も身体障害者の一人でございますが、あれを見まして、とめどもなく涙が出たのでございます。当時政府では、官房長官が総理大臣の意を受けまして、これに対する返書をやはり中央公論にお出しになったのでございまして、私ばかりでなく、身体障害者あるいは身体障害児を持つ親御さんたちは、必ずや一九六四年度の予算では大きく前進するだろうと期待いたしておったのでございます。なるほど、一九六四年度予算でも、重度障害者のベッドの増加でございまするとか、そのほか約一億円で身体障害児童、あるいは結核児童関係の福祉が増進するなど、いろんな御配慮がございましたし、精薄児童の月千円の手当もできようといたしておりますが、総体の感じといたしましては、率直に申し上げまして期待を裏切られたというのが偽わらざる声でございまして、私は、全国各地でこういう方々に講演をいたしましたりお話し合いをいたしておりまするが、期待を裏切られたという声が強いということを先生方のお耳に入れておきたいのでございます。社会保障制度審議会が一九五八年に国民年金の基本方策の答申をいたしました。自民党では野田卯一先生がこの実施対策委員長になりまして、さっそくこれを実施に移されまして、ある部分では社会保障制度審議会の答申の線を上回ってよくなった点も多々ございまして、この点、私感謝いたしておりますが、その中で、社会保障制度審議会はすでにいまから六年前に、六歳以上の身体障害児、精薄児に千五百円の障害児童手当を出しなさいということを、はっきり答申でうたっております。そこで、必ずや来年度からこれが実施されるだろうと思ったのでございまするが、この予算では、厚生省の原案が削られまして認められないという状態でございます。ことしの一月二日に、私は水上勉さんと社会党の河上委員長との対談を偶然にテレビで拝見したのでございますが、そのとき、水上さんが親御さんの立場からこれを訴えまして、もっと政府は身体障害児童に対して、またそれを持つ親に対してあたたかい思いやりをしてほしいということを訴えておりまして、結局水上さんは、社会党に身体障害児童に対する対策を立ててほしいということを言われまして、そのテレビで河上委員長は、社会党は身体障害児童、あるいは成人の身体障害者の総合的な対策をいま立てようとしつつあって、党内でこの問題に最も熱心な議員を中心にやっておりますから、しばらくお待ちくださいということを言っておられたということもお耳に入れておきしたいと存じます。 五は、社会保障の不服審査制度でございます。社会保障の生活保護、年金、医療あるいは労災などの不服申し立ての制度が御承知のようにございまして、この中で社会保険審査制度、労働保険審査制度は、外国にも誇っていいようなきわめて完備した制度でございまして、無拠出の、いわば公的扶助の一種とも見られます国民年金もこの適用を受けまして、非常に手厚い保護をされております。私は、厚生大臣の指名を受けまして、社会保険審査会の参与といういわば官選弁護人のような立場でこれに実際に携わっておりまして、この制度が被保険者の保護に非常に厚い、外国に誇るべき制度だということを身をもって体験いたしておるものでございます。朝日新聞が昨年の十二月二十一日に、「社会保障に不服があれば」という私の談話を出しておりますが、これにございますように、不服申し立てをいたしますると、三つに一つは政府の最初の決定が誤りだったということでこれが取り消されまして、終局的に給付が受けられるような状態になっておるのでございますが、ところが先ほど申し上げましたように、この不服申し立て制度を知らないために泣き寝入りしておる人が非常に多いのでございまして、この新聞にこれが出ますると、四国、九州その他全国約二十人くらいの方々から相談が寄せられておりますが、これは社会保障ばかりでなく、道路の問題その他行政に対するいろいろな苦情の問題も含めてでございますが、大きな反響があったのでございます。ところで、ただいま社会保険、労働保険の審査制度は権利救済に実効を博しておるということを申しましたが、しかし、受け付けてから裁決までに、再審査の場合には平均一年、そういうふうな点からいたしまして、これをもっと早くしなければならないということや、社会保険、労働保険は非常に手厚く保護を受けておりますが、生活保護あるいは児童福祉手当、あるいは社会福祉関係は、このような官選弁護人的なものが参与しないで、行政庁内部で一方的にこれを審査するという点で、国民の権利救済の機能を十分に果たしておりませんので、これは根本的に改革する必要があると存じます。それから、ただいまの社会、労働保険審査、生活保護の不服審査を含めまして、行政不服審査の状態がどうなっておるかということは、国会に報告されておりませんので、これも国会に年次報告することが必要でございますし、行政監察も、正式に国会に年次報告することが必要であろうと存じます。不服審査制度なり行政苦情相談制度というものは、まだ十分にこれが広報されておりませんのと、教示が不十分でございますから、これを十分に教示する、広報宣伝を十分にいたしまして、泣き寝入りがないように、政府がPRをもっと強化していただきたいということをお願いいたします。 第七といたしましては、事後的な権利救済制度が確立されましてそれによりまして十分に救われるといたしましても、中には、先ほど申し上げましたとおり、この制度を知らないとか、知っておりましても手続がめんどうであるとか、その他の理由でこの申し立てをしないで泣き寝入りをする方がございますので、必要なのは、事後救済制度を確立するとともに、事前の行政処分の過程を公正な手続でいたしますように、行政手続法の制度が必要でございます。これは、臨時行政調査会からも行政手続法の制定が必要だというふうな勧告が出ておりますので、これをお願いいたしたいと存じます。 次に、現在の日本の行政機構は、必ずしも国民の福祉というものを重点に、中心に考えられておりませんで、お役人の都合のいいようになっている点も少なくございません。たとえば福祉事務所と保健所と公共職業安定所との連絡が不十分でありますとか、多々問題がございますので、これは国民の福祉に重点を置きまして、高い次元で調整をしていただきたいということと、もう一つは、社会保障関係でもいろいろの審議会がございますが、この体質を改善いたしまして、もっと民主的な構成にし、もっと民主的な運営にしていただきたいということをお願いいたします。 次に、行政監察が現在ではいたされておりましても、必ずその監察の結果が改善されているということは言いがたいのでございますので、行政監察の権限をもっと強化する。もう一つは、民間から行政監察の担当部局に対しましていわば民間人の参与というものを登用いたしまして、民主的な行政監察をするということも必要でございますので、この点もお願いいたします。 次に、もう一つ申し上げたいことは、日本の社会保障は、先ほど申し上げましたように、わずかずつでございまするが、前進しておりますけれども、まだまだ不十分でございます。政府では、高度福祉国家を目ざしておるように伺っておりますが、申し上げるまでもなく、社会保障は福祉国家の欠くべからざる要件でございます。それで、これは完全雇用の達成、それから教育が高い水準で普及されること、それから健康で文化的な生活が維持できる賃金が保障されること、それから生活環境も整備されるなど、関連対策とともに、この社会保障が高い次元で総合的に完備されることが望まれるのでございます。経済成長は、所得倍増計画の線を上回りまして伸びておりますので、政府では、一九七〇年度に西欧の水準に追いつくような社会保障を実現したいということを努力されておりますし、社会保障制度審議会からもそのような勧告もあり、古井喜實先生の自民党の社会保障長期計画構想も、そのようなことをねらっておりますし、さらに、一九七〇年というふうな長い時点ではなく、もっと早くこれを西欧の水準のように達成すべきであるということは、すでに社会党では、一九六二年の党大会の社会保障政策でおきめになったように伺っておるのでございますので、どうかこれらの社会保障構想がよりよく、高い次元で調整されまして実現することを希望いたしておるのであります。 あともう五分ばかりちよょっとつけ加えさしていただきますが、一つ申し上げたいことは、身体障害者の雇用の問題でございます。政府では、身体障害者を近代的な雇用労働者として職業更生させるために、一九六〇年に身体障害者雇用促進法をおつくりになったのでございまして、私も、その三十四国会で、社会労働委員会で参考人といたしまして意見を述べたのでございます。その際、政府は、ことしの三月、この昭和三十九年の三月までに政府関係で新たに五千人——きょう、当時労働大臣で、この法律の御制定に御努力いただきました松野先生も御出席されておりますが、五千人を新たに雇用する、民間では六万人を雇用して、雇用率は平均して一・三%から一・五%ぐらいにするというふうなことでございまするが、その後、これが残念ながらあまり進んでいないのでございます。政府では、ようやくいまの時点で一・三%ぐらいになっておりまするが、大企業関係がこれをサボリまして、身体障害者の受け入れは遅々として進まないのでございます。もっとも、社会事業団体でありまする鉄道弘済会のように、法律の雇用率一・三%を上回りまして、四百四十人を雇用して、一・六八%というふうな高い雇用率をすでに達成して、両腕がないとか片手片足のないような重度障害者がその四百四十人の中に五十人もおるというふうな理解のある事業主がございますが、おおむね大企業や官公庁では、この点が非常に不十分でございます。日本では、イギリスや西ドイツのような、法律に強制力を持たせて公権力で雇用を増大するというふうな措置もとりませんで、公権力でいわゆる強制雇用をやらないかわりに、それでは人格的な関係で身体障害者の雇用が伸びるように、作業設備の改善でございまするとか、その他の経済的な裏づけをやっているかというと、これまたやっていないのでございまして、今年度の一九六四年度の労働省の身体障害者雇用関係の予算は、わずかにたった千七百万円でございまして、前年度に比べましてわずか百五十万円ぐらいしか増加してないというような事実でありますことをつけ加えまして申し上げておきたいと存じます。 なお、先生方にお耳に入れたいことはたくさんございまするが、時間の関係がございますので、一応これでなにいたしまして、あとは先生方の御質問にお答えいたしながら補足してまいりたいと存じます。(拍手)
○荒舩委員長 以上をもちまして、美濃部、国井両公述人の御意見を終了いたしました。まことにありがとうございました。 —————————————
○荒舩委員長 続いて、両公述人に対しまして質疑を行ないたいと思います。両公述人とも時間の都合もございますので、なるべく簡単に御質疑を願いたいと思います。 山本勝市君。
○山本(勝)委員 美濃部先生にお伺いいたします。 先生のお話では、今度の三十九年度の予算は大き過ぎると思う。その理由は大体二つあげられたように思います。一つは、消費者物価がこのように上がっては困る。それでは貿易にも影響する。これを押えるためには生産をふやすということも必要だが、急にはいかない。だから、需要を減らすということであるが、その観点から、むしろ緊縮予算をとるべきだったのじゃないか。第二は、国際収支の点から、これは何といっても決定的に重要だ。外貨の余裕がないから、これも輸出をふやせばいいけれども、それもなかなかそう急にはいかないから、輸入を減らすという点から、そういう面で緊縮予算が必要だ、こういうふうに承ったわけであります。 それでお伺いしたいのですけれども、消費者物価は確かに問題でありますけれども、しかし、貿易に影響するという点からいえば、むしろ消費者物価というよりも、卸売り物価ではないか。卸売り物価の点では幸いに横ばいという見通しだということではないかというのが一つ。それにつけて、なぜ消費者物価と言われて、物価の上昇を防がなければいかぬと言われなかったのか。物価と言われないで消費者物価と言われた理由を承りたい。 それから第二の国際収支の面でありますが、日本銀行総裁の話でも、設備投資はだいぶ減ってきた。ただ、すでに投下しておる資本の高度操業という点から、原材料の輸入がふえておるという話でありました。そこで、その原材料の輸入というものは、すでに設備ができ上がっておるのですから、外貨を外貨のままで遊ばしておくよりも、すでにできておる設備に原材料を投じて、そして生産をあげたほうが、むしろ物価の点からいっても、また貿易の点からいっても、一方設備を遊ばしておき、外貨を金のままで遊ばしておくよりも、原材料の輸入にかえて、生産をやったほうがむしろいいのではないか、こういう点が疑問なわけであります。いろいろ外貨については議論はありましょうけれども、しかし、金の形で遊ばしておくよりも、むしろそれが少なくなっても、品物にかえておけば、そのほうが輸出にもいいんではないか、こういう点であります。 ひとつ、時間がございませんから、その点だけお伺いしたいと思います。
○美濃部公述人 ただいまの御質問の第一点でございますが、それは、もちろん貿易に敏感に影響いたしますのは卸売り物価でございます。しかし、消費者物価は、消費者物価の上昇が賃金の値上げを呼び、そして賃金の値上げがさらに輸出される商品のコスト周で日本の商品の輸出に影響を及ぼすということと、それからいまの段階においてもっと重要なのは、消費者物価が上昇するということは、つまり、ことに貿易の自由化を控えまして消費関係の輸入が非常にふえるということを意味しますから、卸売り物価ほど直接的ではないにしろ、消費者物価の値上がりも、間接的ではあるかもしれないけれども、貿易に相当影響を及ぼす。そうして、昨年のような勢いでことしももし消費者物価が上がりますと、それは貿易にも相当重大な影響が出てくる、そういう意味でございます。 それから、なぜ物価と言わないで消費者物価と言ったのかという御質問でございますが、私は、つまり物価全体が上がっているんだと思います。それで、卸売りのほうは非常に近代化が進み、かつ供給がふえておりますが、むしろ卸売り物価のほうは、下がるべきものが下がっていないという意味において上がっているので、現実に上がっているのは消費者物価のほうでございますから、そして、それが国民の生活と密接な関係があるという意味において消費者物価だけを申し上げたのですけれども、しかし、こういう状況がなお続きますれば、物価の上昇は、消費者物価だけに限らないで、卸売り物価にも波及するおそれは十分にあるというふうに思います。そうして、もしそうなったならば、これは非常にたいへんな問題になる。そこまでいかない間に何としてでも——その場合は、消費者物価でなくて、物価全体を押し上げる力を押えなければいけない、そういうふうに思っております。 それから第三の問題でございますが、外貨を遊ばせておくよりも、現実の商品、原燃料として輸入して生産をふやしたほうがよいではないかという問題でございます。もちろん、それによっていまの問題の中心である消費財貨の土産がふえるということになりますれば、そういう効果はあると思いますけれども、外貨で輸入したものの大半は、いわゆる資本財とか生産財とかいう原燃料に回りまして、そうして資本財、生産財のほうはむしろ生産能力の過剰ぎみを呈しておるのでありますから、そういう際に、生産財、資本財の生産を現在の時点においてふやすことは、むしろ生産過剰を促進して、そうして経営の状態を改善させるという効果はあまりないと思います。それから、それだけではございませんで、外貨というものは、外国と取引する際の準備金であって、円滑に外国と取引する場合においては、ある程度の準備金である外貨というものを保有していなければならないということになっております。その準備として保有すべき外貨の最低限がどこにあるかということは、一定した額が決定されておりませんけれども、五、六億ドルは持っていなければ外国と円滑な取引ができるのに十分な準備金とは言えないということは、大体において認められていると思うのです。そういたしますと、それ以下に減るということ、これは外国との円滑な取引ができなくなるということ、そして外国との取引なしに日本の経済は生きていけないということになりますから、そういう意味から申しましても、外貨をこれ以上減らすということは、日本経済全体に対して一種の危機をもたらすと言ってもいいのではないか。つまり、外貨として持っている外貨はこれ以上減らせられないという、実はぎりぎりのところまでいっている。そして、それ以上外貨がありますれば、いまのお話のように、ある場合においてはそれを使って必要な資材を買い入れるほうが外貨として持っているよりも有利であるという議論も成り立ちますけれども、いまのところは最低限ぎりぎりのところまでほとんど来ているということが言えるのではないかというふうに思います。
○山本(勝)委員 もう時間がありませんけれども、一つだけ伺いたいのですが、消費財の価格を下げるという点から、財政規模をもっと小さくせなければならぬという御意見についてでありますが、そうすると、財政規模を小さくするということになりますと、歳入のたな上げでもすれば別ですけれども、たな上げをしなければ、それだけ減税に回すよりほかはない。そうすると、減税になって民間に金があったほうがいいか、あるいは政府が使ったほうがいいかということには、これは問題がありましょう。問題がありましょうけれども、しかし、減税に回した場合に、消費財に対する需要が減るかどうか。むしろその点は消費ムードといいますか、今日の国民の手にある金が貯蓄に回らないで消費に回るということに大きな問題があって、むしろ政府の手にあるか国民の手にあるかということは、消費財に対する需要の減退ということには比較的影響がないのじゃないかという点が一点です。 それから、あとの外貨の問題でありますけれども、御説もごもっともと思いますが、私の意見は申しませんけれども、しかしたとえば中共のような、相手が共産主義という特殊の体制をとっておって、しかも外貨もなし、売るものもなし、しかも共産政府という、ああいうまことに貿易のしにくいような国柄でありましても、各国とも中共にものを売り込もうとして血眼になっているという事情を考えますと、日本のように、とにかく経済は他国よりも成長しておる、みんな一生懸命に働いておる、ですから、目先はかりに輸入超過になりましても、行く行く品物で売る品物があるのだという場合に、中共などですらそれくらいの状況にあることを考えると、日本に外貨がなくなりましても、私は、小汀さんのように一ドルもなくてもいいというふうには申しませんけれども、しかし、それほど外貨の形で貫いておかなくても、外国が日本には品物を売らぬというふうなことにはならぬのではないか、こう思うのですけれども、この二点についてなお伺いたいと思います。
○美濃部公述人 第一の点でございますが、もちろん財政が膨張する、それが国民の消費需要と直接につながるということは、大体においてないと思います。しかし、財政が膨張するということは、何といいますか、全体の成長ムードをかき立てると申しますか、そういうふうにして、財政の緊縮とそれから金融の引き締めとは裏表の関係にあって、財政だけが膨張する、そして金融の引き締めはうんとするということでは歩調が合わないので、需要を引き締めるという意味においては、両方見合っていかなければいけないと思うのです。そういう意味において、財政の膨張は、ある意味においては値上げムード・ムードというのもいやなことばでございますけれども、値上げムードを促進する重要な要素になるのではないか。それから、もちろんその財政の需要の増加が、直接ではないけれども、あるいは道路の建設とかいろいろな建設を通じて消費力を前よりもずっと増す、そして需要がふえるという効果も持つ、そういうふうに思うのでございます。 それから中共との話ですけれども、中共のように社会主義国家で、計画経済で、そうして経済も貿易も確実に統制されている。そこで、輸入が多くなれば、政府の強制命令で、不必要なものは命令によって輸入をとめられる。それを政府なりなんなりの強制命令ですべて動かし得る場合には、ある程度まで外貨が少なくなってもいいけれども、いまのように自由経済の場合、ことに開放体制に向かおうという場合、その場合にはどうしても貿易ないしその他の外国との取引を円滑に、そうして要求があれば輸入を許すというプリンシプルを守らなければならない、そういう経済においては、外貨をどのくらいの程度に持つかということは、人によっていろいろな意見があってなかなかきまりませんけれども、相当の程度持つ必要があるということは明白であると思うのです。それからまた、そのことから、貿易の規模に比べまして外貨の手持ちが非常に減るということは、外国の信用にも非常にかかわりますし、日本の場合においてはユーロダラーが非常に流入しておりますから、外国の信用が落ちるということは、ユーロダラーの流出とも非常に関係がありますから、その点においても非常に重大ではないかというふうに思います。
○山本(勝)委員 いろいろありますけれども、あとに質問者がございますから、また……。
○荒舩委員長 次に淡谷悠藏君。
○淡谷委員 美濃部先生に、二、三御意見を伺いたいと思うのですが、歳入の自然増がかなり多くなってくる。これを財政投融資なんかに入れるということについての御意見が一つ。つまり国民の税金を何か事業会計みたいなものに入れることについて一体どういうお考えを持つか。 もう一つは、特別会計のことなんですが、特別会計はあくまでも特別会計の原則を貴くべきものと思いますが、これまた非常に多くなってきている。一般会計よりもはるかに、数倍というくらいまで伸びておるのでありますが、これについての御意見もやはりお伺いしたいと思うのであります。 それから特に防衛予算などの膨張から影響を受けまして、他の省などでも国庫債務負担行為、これを非常にふやしますので、これは表面予算に出てくるのは、その年度限りですからいいのですが、先になってから支払いの過重が見通されてくる形になりますし、それから、継続費などもやはりそれに応じてどんどんふえてきておりますが、予算単年度の原則からいきましても何か不安を感ずるわけなんですが、そういう点についてひとつ御意見を伺いたいと思います。
○美濃部公述人 一番最初の自然増収の問題でございますが、理論的に申しますれば、予測した以上の増収であり、そうして、そういう自然増収がないことを前提として予算が組まれておるのでございますから、それは一種の不必要なものを国民から取り過ぎたのですから、それは国民に返すというのが理論的には言えるわけで、そうあるのが一番国民としては望ましいということはもちろん言えると思います。それを、日本の財政は、そういう自然増収があるということがもうほとんど前提された財政になっております。そうして、そういう自然増収が出てくるということは、高度成長が続くということにおそらく原因があると思うので、そうすると、今後高度成長がいままでのように続くことが相当むずかしくなった場合に、今後の財政の組み方というものがいままでとは変わらなければならない。そこに何か非常に大きい問題があるんではないかというふうに思います。 それから、それを財政投融資等に回す。それは、財政投融資を通じてその金がどこに行くかという問題で、国民の生活を豊かにするというふうに回ればいいですけれども、それが一部の企業のところに入るというふうな形で使われますと、理論的には、国民から取り上げ過ぎたものを別の階層の人たちのほうの所得に回すということで、財政としてははなはだ不適当なことになるおそれが十分にあると思います。 それから特別会計の問題でございますが、もちろん経済が膨張して複雑になり、そうして、それに対する国家の介入の度合いがどこの国でもだんだんふえてくる。そうして国家が自分で行なう事業というものがますますふえてくる。それでありますから、そういう形において一般会計とは別の性格を持った特別会計がふえるということは当然だと思うのですけれども、ややともすると、つまり一般会計を外見的にあまりふやさないような見てくれをつくるために、ほんとうは特別会計に回すべき性格でないものも特別会計に回す、そういう傾向が起こってまいりますと、これは相当の問題になってくるのではないかというふうに思います。 それから国庫債務負担行為。初年度は少なくても、それがあとでもってだんだんふえてくる、そういう形がだんだん大きくあらわれてくるのは憂うべき傾向で、頭を出すときには少ないから、わりあいにそう財政は膨張しないように見えますけれども、それが毎年毎年加わってきますと、それが元来の規模に拡張したときには財政の膨張がたいへん多くなって、それに対しては、始められた事業ですから節約することが非常に不可能になってくる。そうすると、財政の膨張に拍車をかけるということで、あまり国庫債務負担行為がふえてくるのは危険ではないかというふうに思います。
○淡谷委員 ありがとうございました。 もう一つ、あとで同僚の諸君からも質問が出ると思いますが、例の物価の問題です。物価を押えるために需要を押えるということは、これはもうそのとおりだと思いますが、簡単にこれが取り上げられますと、所得の面でも非常に格差ができておった国民の消費生活を、勤倹とか貯蓄とかいう名前でまた一方的に圧迫するような、ごく簡単な現象が起こると思う。それに人つくりの構想なんか入ってきますと、ますます勤倹節約が一般国民大衆の、むしろ物価にあまり影響のない方面にかかりまして、肝心かなめが抜けるおそれがないかと心配するのですが、この需要を抑えるという場合に、どこに重点を置いて抑えるかという問題をひとつお聞きしたいと思うのです。
○美濃部公述人 その点は、人によって意見が非常に違いますので、私は、需要がふえる基本的な要因は、通貨と信用の膨張にあった。つまりインフレ的な圧力が一番強くかかっている、そこに基本的な原因があると思っております。しかし、それに対しましては反対する方々も非常に多い。ただ、それが何がほんとうの原因であるかというのは、経済については実験することができないのでわかりませんけれども、それを事実ではないかと思いますのは、信用と通貨との膨張と商品の供給とを比べてみますと、商品の供給を上回って通貨、信用の膨張がどんどん進む、そういう傾向だけは明らかに見とれます。したがって、もちろんほかにも物価を上昇させる要因はいろいろあると思いますけれども、通貨と信用との膨張、それをとめることが、私は需要を減退させる一番重要な要因であるというふうに思うのです。そうして、そういうふうにしてインフレ的な圧力によって物価が上昇する、それは、需要がふえますけれども、そういう際には、結局物価が需要以上の速度で上昇いたしますから、結果的に言いますと、需要は実質的に減ったということになって、国民の暮らしはかえって低下したことになる。だから、その意味において、つまりインフレ的な力で需要がふえる、そこに原因があるということであるならば、それはたいへんに危険な傾向であって、その点においては、一方においては金融の引き締めと、それから他方においては財政の緊縮と、両面相まった政策が必要ではないだろうかというふうに思うわけでございます。
○淡谷委員 ありがとうございました。終わります。
○荒舩委員長 次いで堂森芳夫君。申し上げます。美濃部先年、もう時間がきているので、簡単にお願いします。
○堂森委員 美濃部先生に簡単にお尋ねをいたします。 すでに淡谷君から質問もございましたが、政府が、この一両年中に消費者物価の上昇を抑えます。安定させます。こう言っておるわけであります。そうしていろんな対策を経済関係の閣僚の間で決定をしまして、これをぴしぴしとやっていくんだ、こういう方針をとっておるわけでありますが、先生の立場で、そういう対策ではたして物価が安定していくだろうか、こういう事柄に関しましてお答えを願いたい、こう存ずるわけであります。
○美濃部公述人 私は、政府のいわゆる対策として新聞に出されているいろいろの対策は、何と申しますか、物価上昇のほんとうの核心をついていないというふうに思います。たとえばいままで流通行程の簡素化であるとか、あるいは管理価格をどうするとか、あるいは公共料金の一年間ストップとか、もちろんこういう政策は悪い政策でない、いい政策であって、やっていただきたいことはもちろんでありますけれども、私は、先ほど申しましたように、インフレ的な圧力が加わっているということが基本的な要因であって、流通行程の簡素化とか等々の問題は、そこから出てくる物価の上昇をより以上に押し上げている力として働いているので、いわば副次的な要因ではないか。したがって、副次的な要因を除去するだけでは、物価上昇のほんとうの原因を除去したことにならないのではないだろうかというふうに考えております。しかし、私は現下の日本経済の問題としては、物価問題はむしろことしはそれほどもう問題にならないんじゃないだろうかというふうに思うのです。それはなぜであるかといいますと、貿易収支、それから国際収支の問題から、どうしても相当に強い金融引き締めが必要になってくる。そうして金融の引き締めというのは、いわば一種のデフレ政策でありますから、その金融の引き締めが相当強く行なわれているということは、私が申します物価を押し上げる一番中心的な力であるインフレ的な圧力がなくなりますから、どうしてもそこから物価の問題は、今後の問題としては、いままでよりはよほど大きい問題でなくなってくるのではないだろうか。それは、政府の政策というよりも、むしろデフレ政策をとらざるを得ないような状況に日本が向かう、つまり貿易収支、国際収支の問題を解決するために、一時であるかどうかわかりませんけれども、少なくともここ二、三年は、成長の速度をもう一そう低めなければならないという事態に当面していて、その低めるためにはデフレ的な政策を行なわざるを得ない。そうすれば、物価問題はある意味においてはふっ飛んでしまう、そういうふうに思っております。
○荒舩委員長 以上で質疑は終了いたしました、 美濃部、国井両公述人にお礼を申し上げます。長時間にわたって貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手) 午後は、本会議終了後、大体二時と思いますが、直ちに再開することといたします。 暫時休憩いたします。 午前十一時五十五分休憩 ————◇————— 午後二時九分開議
○荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 昭和三十九年度総予算についての公聴会を続行いたします。 本日午後御出席の公述人は、全国銀行協会連合会長、第一銀行頭取井上薫君、経済同友会幹事会副議長、明治生命常務取締役山中宏君であります。 この際御出席の公述人各位にごあいさつを申し上げます。本日は御多用中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。申すまでも、なく、国の予算は国政の根幹をなす最重要議案でありまして、この予算委員会といたしましては連日真剣な審議を続けておるところでありますが、この機会に各界の学識経験豊かな各位の貴重なる御意見を承ることができまするならば、本委員会の今後の予算審議に多大の参考となるものと信ずる次第であります。何とぞ各位におかれましては、目下審議中の昭和三十九年度総予算に対して忌憚のない御意見を承りたいと存ずる次第であります。 御意見を承る順序といたしましては、まず井上公述人、続いて山中公述人の順序でおおむね三十分程度において一通り御意見をお述べ願うことといたしたいと思います。公述人各位に対しその後一括して委員から質疑を願うことといたしたいと思いますので、あらかじめ御了承願います。 なお、念のために申し上げておきますが、衆議院規則の定めるところによりまして、発言の際は委員長の許可を得ること、また公述人は委員に対しまして質疑をすることができないことになっておりますので、この点あらかじめ御了承をお願い申し上げます。 それでは、まず井上公述人にお願いをいたします。
○井上公述人 ただいま御紹介にあずかりました井上でございます。 本日は、本委員会から昭和三十九年度の予算案に対しまして意見を述べるようにとのことで御指名がございましたので、金融の立場から、若干感ずるところを申し上げてみたいと存じます。 本論に入ります前に、簡単にわが国経済が当面いたしております課題について一言述べさせていただきたいと存じます。 御承知のように、日本銀行は昨年の十二月、預金準備率の引き上げを実施いたしまして、金融引き締めに対するはっきりとした意思表示を行なったわけでございます。さらに本年一月からは、いわゆる新しい窓口規制が行なわれておりまして、銀行貸し出しの増加は、昨年同期の一割減といった水準に押えられているのでございます。こうした景気調整策の適切な運用によりまして、景気の行き過ぎを未然に押え、国際収支と物価の安定を確保するという仕事がさしあたっての重要な課題であることは、いまさら申し上げるまでもないところでございましょう。もちろん最近の国際収支の悪化や消費者物価の上昇には、構造的な要因が作用しておる面も少なくありません。また昨年秋以降、中小企業の倒産も目立つようになってまいりました。したがいまして現在の情勢は、ただ単に引き締めさえすれば事が解決するといった簡単なものではないのでありまして、国内の需要を適正な水準に押える配慮と構造的な対策、社会的な摩擦の回避といった多面的な政策がうまく組み合わされて適時適切に推進される必要があると思うのであります。しかし、これは現実にはなかなかたいへんなことでございます。いまや政策のかじのとり方は、まことにむずかしい段階に差しかかっていると言えるように存じます。 円滑に景気調整を進めるということと並んで、ことしの日本経済のもう一つの重要な課題は、本格的な開放経済体制移行のいわば一年目を迎えて、いかに経済の体質を強化していくかという点であります。景気の調整と並行して、経済基盤の強化と拡充をはかっていくということは、これまたなかなか容易ならぬことと思っております。いずれにいたしましても、財政金融政策の進め方が今後の日本経済の安定成長にきわめて重要な役割りを果たすことは、間違いのないところだと存じます。 以上のような点を一応頭に置きまして、三十九年度の財政を見てまいりますと、まず予算編成の背景となっております経済運営の基本的態度は、経済の安定と均衡を重視していこうということが骨子でございまして、この点、私どもは全く異論がないところでございます。一般会計におきましても、収支均衡の健全財政が貫かれておりますことは、この意味でまことにけっこうなことと存ずるのでございます。また一般会計、財政投融資の内容につきましても、こまかい個々の面ではいろいろ意見もございましょうが、全体としては輸出の振興、農業、中小企業の近代化、社会資本の充実など、時宜にかなった施策に重点が置かれており、おおむね妥当なものといってよろしいかと存じます。 なお、私は資金運用部の資金運用審議会の委員として、各省の財政投融資要求の説明を拝聴する機会がございました。 〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕 当初の段階では、公社、公団等特殊機関の新設要求がきわめて多かったのでありますが、政府の最終的な計画案では、これが必要最小限度にとどまっております。これは行政組織の簡素化とか、資金の重点的、効率的な配分という観点から、当局が一方ならぬ調整努力を払われた結果にほかならないのでありまして、審議に携わっておりました一人として、ここにあらためて敬意を表したいと存じます。 しかし、三十九年度予算に関し、若干の意見もございますので、そのおもな点につきましてこの機会に私なりの考えを二、三率直に申し上げてみたいと存じます。 まず、規模の点でございますが、前年度の当初予算並びに当初計画に比べまして、一般会計では一四・二%、財政投融資では二〇・八%の増加となっております。特別会計の新設などを考えますと、実質的な増加率はもう少し高くなるかとも存じますが、経済規模の拡大その他の特殊事情を考慮に入れますと、まずまずこの程度の規模の増加はやむを得ないということができると存じます。しかしながら、予算の規模が膨張するということ自体、何がしかの景気刺激効果を持つということは否定できないように思われます。先ほども申し上げましたように、金融引き締め政策が現に進行中なのでございますから、財政、金融政策の一体的、有機的な運用という見地から申しますと、この際、財政と金融が一体となって同じ方向に働くことが特に必要なのであります。財政からは金が出て、金融はそれだけさらに引き締めしなければならないといったことにならないように、予算の実行面でさらに実情に即した慎重な配慮をお願いしたいのでございます。 第二は、一般会計につきまして、どうも経費の硬直化といいますか、当然増的な経費が大き過ぎるのではないかという点でございます。三十九年度の歳出に充て得る新規財源のうち、約半分は当然増的な経費に充当されるという見方もあるようでございますが、当然増的な経費がふえる原因としまして、一つには、人件費とか予算単位の上昇をあげることができましょう。しかし、もう一つの理由としては、後年度の歳出増となるような経費が多かったのではないかという点も指摘できるかと思います。申すまでもなく、これらの経費は必要な経費として、十分な御審議の上承認されるものばかりでございますが、初年度はかりにわずかの金額で済むものでも、後年度の負担が年々大きくなるというような性質の経費がふえてまいりますと、新しい政策をダイナミックに予算に織り込む余地がどうしても少なくなると存じます。この点をさらに掘り下げてみる必要があるのではないでしょうか、というのが私の率直な感じでございます。 第三は、以上の点とも関連するのでございますが、予算の単年度主義といいますか、会計年度独立の原則について再検討してみる必要はないだろうかという点でございます。すでに道路や港湾の建設をはじめ公共投資につきましては、長期的な計画が策定されて、長期的な構想のもとに着々と工事が進められております。また、経済全般につきましても、所得倍増計画や中期経済見通しの策定といった形で、長期的な視野に立った経済運営が行なわれているのであります。こういう事情を考えますと、予算もまた単年度主義ということでなく、長期的な視野と構想のもとに編成されるほうが実情にも合い、また、景気対策としてもより弾力的に動き得るのではないかとも考えられるのでございます。もっとも、会計年度独立の原則というものは、その年度における財政の計画的運営とか、歳入歳出の均衡とかいう見地から止まれたものといわれておりますし、それなりの制度的、歴史的背景を持っているわけでありますから、これを改正するということになりますれば、いろいろと慎重な検討を要するであろうことは申すまでもございません。 第四に申し上げたいのは、財政投融資計画における民間資金の活用についてでございます。この点につきましては、先般開かれました金融機関資金審議会におきまして、政府保証債の消化にはわれわれといたしましてはでき得る限りの協力をするけれども、金融情勢は引き続いてきびしいものと予想されるので、次のような点に御配慮いただきたいということを申し上げておいたのでございますが、ここでその要点を申し上げますと、第一は、政府保証債発行の時期とか規模については、そのときどきの金融情勢を十分に御勘案の上、弾力的におきめいただきたいということであります。第二は、三十八年度におきましては、年度の途中で政府保証債の増額がきまって、結局、民間の金融機関がこれを引き受けるという形になりました。三十九年度は、できるだけこうしたことのないようにしていただきたいということでございます。第三は、三十九年度の政府保証債、民間事業債を含めた全体の起債額は、三十八年度に比べまして大幅に増加するとは必ずしも申せない状態でございます。したがって、政府保証債が計画のように増額されますと、民間の起債が三十八年度以下にもなるというおそれがあるのでございます。この点いろいろ議論があるところだろうと存じますが、少なくとも民間の起債が必要以上に圧迫されることのないように御配慮をお願いしたいのでございます。第四は、現在の政府保証債の消化は、ことばは悪いかもしれませんが、事実上割り当てという形になっているのでございます。これを自由市場における本来の意味での公募というところまで持っていくことは、これはなかなかむずかしいとは存じます。しかし、基本的な方向としてそういう形に近づげる、ほんとうの意味の公募という形に近づけるという努力を怠ってはならないと存じます。以上が、民間資金の活用についての私どもの考え方でございます。 次に、税制の問題につきまして一言申し上げたいと存じます。開放経済体制を迎えて、輸出の増強、資本蓄積の進推、この二点を特に重視すべきことはいまさら申し上げるまでもございませんが、三十九年度予算においては、かかる見地を十分考慮の上、国税、地方税を通じて相当額の減税が計画されておりまして、この点たいへんけっこうなことと存じます。ただ、本年の税制改正におきまして、私ども金融に関係のあります者が最も大きな関心を持っておりますのは、貸し倒れ準備金制度の改正の成り行きでございます。三十九年度の税制改正要綱によりますと、貸し倒れ準備金制度につきまして所要の経過措置を講じつつ、毎期全額洗いかえ方式をとる等、制度の整備合理化をはかるということになっております。経過措置の具体的内容は、いまのところ必ずしも明らかにされてはいないのでありますが、本格的な開放体制への移行というきびしい環境の中で、内外ともに競争が激化すると予想されておりますから、貸し倒れ準備金の積み立てがかえって従来より圧縮されるということでは、私どもにとって大きな問題といわざるを得ないのでございます。今回の改正につきましては、こうした点を十分御考慮の上、慎重な御検討をお願いしたいのであります。これは、金融に関連の深い問題を特に取り上げたようになりましたが、この点はひとり金融機関ばかりでなくて、商社などにとっても同様の問題があると存じますので、あえて一言申し上げる次第でございます。 最後に申し上げたいことは、予算というものをもう少しわかりやすいものにするくふうはないものだろうかというお願いでございます。国民が深い関心を持っております税金の問題一つを取り上げてみましても、これがなかなかわかりにくいのでございます。まして一般会計、特別会計、政府関係機関などの予算、財政投融資計画、地方の財政といった財政全般の仕組みや内容ということになりますと、一そう理解がむずかしくなるのでございます。もちろん国のやるべき仕事がふえて、機構も複雑になっております以上、財政の仕組みも複雑になるのはやむを得ないものと考えます。また予算がわかりにくいというのは、私ども自身の不勉強ということかもしれません。しかし、国民に対するPRのしかたや、予算の仕組み自体にも問題がないとはいえないようにも思われるのであります。いずれにいたしましても、予算をできるだけ理解しやすいものにすることは、国民の予算に対する認識を一そう高めさせるという意味で、やはり大切なことではないかと存ずるのでございます。 以上、来年度の予算案に関連いたしましていろいろ申し上げましたが、要は、金融の側から見て、予算の基本線はほぼ妥当であるということでございます。ただ、現在は、昨年秋以来の引き締めの効果が徐々にあらわれ出したという微妙な情勢にあります。したがって、この情勢いかんによっては予算、特に財政投融資の実行面で慎重な配慮をお願いしたいと考えるのでございます。先ほどもちょっと触れましたように、予算の問題の理解には専門的、技術的な知識を必要とされる部面が多うございますので、その点、私の申し上げましたことは、金融の側から見た一つの考え方であるというふうにお受け取りいただきたいと存じます。 時間の関係もございますので、これをもちまして私の公述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○愛知委員長代理 どうもありがとうございました。 次に山中公述人の御意見を承ることにいたします。
○山中公述人 経済同友会の木川田代表幹事がお伺いすべきでございましたが、ちょっとかぜを引いておられまして、かわりに副議長の私がお伺いしたわけでございます。 時間もございませんので、私は次の五つの点につきまして意見を述べさせていただきたいと思います。 第一は、本年度、三十九年度予算の編成のあり方、基本的な考え方はどうあるべきかという問題であります。第二番目は、そのような見地から、今度の予算案の規模、あるいは内容につきましての私どもなりの考えでございます。第三番目は、政府支出の合理化の問題でございます。第四は、これとうらはらをなす減税についての考え方であります。最後に、今後の運営へのお願いをいたしたい。大体この五つの項目を考えてまいりましたが、いま井上さんのお話を伺っておりますと、かなり重複する面もございますので、できるだけ簡単にお話しいたしたいと思いますが、多少重複いたします分はお許しいただきたいと思います。 経済同友会は、毎年新年の年頭見解というものを発表いたしますが、ことしも新年早々に、前進のための構造調整というタイトルをつけまして、本年度のわれわれ経済界の考え方、企業の考え方、政府へのお願い等々を盛り込みましたわけでありますが、その最初のところに、ことしは開放経済の年である、そしていろいろな問題は非常に重要になってきておりまして、それはあたかも明治維新、明治開化のときに匹敵するものではなかろうか、一部ではややオーバーな表現だという御批判もございますけれども、そういう認識に立ちまして、しかもこの開放経済にわれわれ入っていく時期に当たりまして、われわれは国際収支の問題、消費者物価の高騰という二つの大きな問題をかかえているわけでございます。そこで、この大きな問題に取り組んでいかなければならないわけでありますが、われわれやはり新年度の予算を考えます場合、一方において開放経済体制へ取り組む最初の年であるということと、他方において国際収支の問題と消費者物価の問題の解決に努力しなければならない、この二つの点を基本として考えなければならないと思います。しかも国際収支の問題とかあるいは物価の問題は、いつの景気調整過程においても出てくる問題ではありますけれども、今度の場合は、単なる景気調整の問題というよりは、構造的な問題を非常に含んでおりますので、おのずからその対策も異なってこなければならないというふうに考えます。昨年の十二月二十日の予算編成の政府の方針には、予算がいやしくも景気を刺激することがないように、健全予算、均衡予算でいくのだという基本線がうたわれております。また、この一月二十一日でございますか、政府の経済運営の基本態度が出たわけでございますが、これにも、やはり開放経済に対処しながら経済の安定成長を確保することを目途として財政金融政策を中心とした経済政策の適切な運営をはかっていくのだ、これによって国際収支及び消費者物価の安定を期するということがうたってございますが、そのような予算の編成の基本的な方針並びに本年度の経済の運営の基本的方針は、私どもの考えと全く一致するところでございまして、たいへんけっこうだと考えているわけでございます。その意味で、今度の予算をそういうような角度から私どもはやはり考えていきたい、批判していきたいというふうに思うわけでございます。 こういうような観点から拝見いたしますと、今度の予算は均衡予算の大原則を貫いておられます。また政策を拝見いたしますと、国際収支の改善とか、物価の安定とか、あるいは企業の体質改善とか、そういうような方面にいろいろの配慮を十分に払われた予算原案ができておりますので、この点も私どもは非常にけっこうだというふうに拝見しております。そういうふうに、基本的には安定成長を目ざす予算案に対して賛成の意を表するわけでございますが、ただ、この予算の組み方、あるいは今後の運営方針につきまして若干の意見を持っておりますので、以下それについて申し上げさせていただきたいと思います。 そこで、第二番目は、予算の規模あるいは内容の問題でございます。規模につきましては、先ほどもお話に出ましたように、一般予算において一四%、財投におきまして二〇%の増加ということになっておりますが、これが何に比べて大き過ぎるのか、いろいろ議論のあるところでございますが、私ども、気分としては多少、やや大き目の予算ではないか、先ほど申し上げたような安定成長を目ざすことしとしては、やや大き目ではなかったか。私ども直接に財政その他にタッチしておりませんし、特別に研究しておりませんが、昨年の九月ごろ、予算の編成方針等がぼつぼつ論じられたころに、大体前年の一〇%増くらいにしたいという御意見が各方面でだいぶ出ておりましたけれども、その辺ならばちょうどいいのじゃなかろうかという感じを持っておりましたが、これに対しまして多少予算が大き目ではなかろうか。ことに財政投融資の面がやや大きいのではないかというような感じは、依然として残るわけでございます。 ただ、それでは減らすばかりが能ではないわけでありますが、事実今日の日本経済の置かれた情勢からすると、どうしても膨張せざるを得ない要因はかなりたくさんあるように思います。たとえば社会資本の立ちおくれという問題は、これは厳然たる事実でありまして、このために、数年前の経済成長期においても産業活動にブレーキがかかるということもございましたし、今後やはり社会資本の充実という問題は、強くやっていかなければならないと思います。また、社会保障費などにいたしましても、近代国家といたしまして先進国の方向を歩む日本としては、まだまだ先進諸国に比べて不十分であるという感じを受けるわけでございます。さらに、今度の予算は、先ほども申し上げましたように、物価の安定とか、国際収支の改善とか、企業の体質改善などを十分に織り込まなければなりませんので、その面からもおのずから経費の膨張は免れないというわけでありますし、さらには人づくり、文教政策その他盛り込むとすればいろいろの問題がある、そのためにある程度は膨張の方向はやむを得ないという面も確かに出てくると思います。 また予算の内容を拝見いたしますと、先ほどからことしの重点であるべきだと申し上げた国際収支の改善につきましても、たとえば貿易収支については、貿易振興費を大幅に計上しておるとか、輸出振興のための税制を考慮に入れておるとか、さらにけさの新聞でも拝見いたしましたが、財政投融資を通じての資金を貿易外収支の改善、海運あるいはホテルというような、いま日本の国際収支問題に対して一番大きな問題である貿易外収支の改善に、かなりたっぷりと出そうというような方向が出ておりますことは、非常にけっこうなことでありまして、今後の日本の安定成長のためにも、国際収支問題を、従来の景気調整という観点だけではなくて、構造的な角度から解決しなければならないという面は、そういう施策がなければ解決できないわけでありまして、非常にけっこうだと思います。 また、物価対策の根本は、やはり貨幣価値の安定というようなことであろうと思いますが、さらに、昨年の消費者物価問題を見ましても、生鮮食料品の高騰とか、サービス料金の騰貴などがございますが、その基本には、やはり農業の生産性向上とか、中小企業の近代化という問題が控えておりますので、この点についても今度の予算においてはかなりの配慮が払われておるという点は、内容を検討たいします場合に、私どもたいへんけっこうだというふうに考えるわけでございます。 こういうふうに考えますと、非常に必要な経費が多いわけでありますが、それだから予算が大きくなってしまったということでもまた困るので、こういうような必要な経費も織り込みながら、他方でできるだけ予算の規模をこの際ふくらまさないためにはどうしたらいいか、これは、要するに支出面の合理化以外にあり得ないというふうに考えます。 そこで、第三番目に支出面の合理化というような問題について申し上げたいと思います。この点は、先ほど井上さんからも十分に御指摘があったところでございますが、この際既定経費の再検討を行なうとか、さらに官庁機構などにつきましても、機構の簡素化、事務の機械化、さらに自由化に伴って統制的な業務は当然に減ってくるわけでありますから、そういうような方面の人員の圧縮もやっていただいて、これの人員の転換などもぜひとも考えなければならないと考えます。定員の圧縮というような問題、あるいは各省間の人事交流の問題、新規採用などにつきましても、この際できるだけ人手を少なくやっていただくような配慮、こういうようないろいろの問題を含めて、財政支出の合理化という問題をぜひともここで考えていかなければならないのじゃないか。従来、年々予算は膨張する、いわばそこに予算の、硬直性が出ているというような批判もかなりあるわけでありますが、この際、一方で出すべきものはぜひとも出す、しかし、反面において削るべきものはぜひとも削るという努力をあらためてするべきではなかろうかというふうに考えるわけであります。また、補助金などにつきましても、従来封鎖経済下でとかく総花的になり過ぎておりました補助金なども、大いに再検討していただきたい。民間は、いよいよ開放経済を控えまして、生産性向上、体質改善が何より大切な問題であり、これなくしては国際競争に勝てないという感覚でやっておりますが、政府関係におきましても、政府の行政の効率化、いわば出席性向上、この辺に、新たな開放経済を迎えまして一そう真剣な努力を払っていただきたいと考えるわけでございます。従来歳入面につきましては、ことに税の問題については、税制調査会はじめいろいろな角度から検討されておりますが、歳出面については、行政調査会などもありますが、もう少し広い角度から歳出面の合理化というものに本気で取り組むべきではないかというふうに考えます。たまたま、ことしの新年のジョンソン新大統領の予算教書を拝見いたしますと、それには節約と進歩の予算というタイトルが付せられておりますが、そこには思い切った経費の節減の方向と努力が盛り込まれているように思います。たとえば、この予算教書を読みますと、政府機関職員の過剰の問題、機能の無用な重複の問題、高くつき過ぎる公共サービスの問題、権限外の面で政府が出しゃばり過ぎていはしないか、こういうような問題について徹底的な削減の努力をしたということが予算教書に書いてございますけれども、アメリカの予算も年年ふえておりましたのが、ことしは五年ぶりで初めて予算規模を減らしまして、五億ドルの節約が出る予算案になっております。これは、もちろん大きな部分は国防費の削減からきておるわけでありますが、しかし、各行の経費の削減ということにもかなりの努力を払ったあとが見受けられる。私どもは、やはりそういうような態度が今後の予算編成においては必要ではなかろうか、国民の負担を減らす努力、またタックスペイヤーと申しますか、納税者のほうも、そういう問題にはもっと従来以上に関心を持ってしかるべきではなかろうかというふうに考えるわけでございます。 第四番目は、それとうらはらをなします減税の問題でございます。減税につきましては、先ほどもお話が出たところでございますが、新年度の減税につきましては、もちろん所得減税けっこうでございます。しかし、それと並んで、最初に申し上げたような国際競争力の強化とか、産業の体質改善のほうにつきましては、今度の予算に盛られておりますよりももう一段の努力が必要ではなかったかというような感じをなお残すわけでございます。もちろん、先ほど申し上げましたように、国際競争力の強化や体質改善につきましても、経費面でいろいろの施策を盛り込んでいただいておりますけれども、一方減税の面においても、企業課税の面あるいは資本蓄積税制の面で、もう一段の盛り込みが必要ではなかっただろうかという感をなお残すわけでございます。 たとえば、今度は企業の自己資本充実の角度から、機械の耐用年数の短縮化などもやっていただいております。こういう問題は、西独などでは非常に早くから始めておった問題であり、日本でもすでに部分的には行なわれておりますが、こういう線を中心に企業の内部蓄積強化の方向が出てきたことは、非常にけっこうでありますが、さらに進んで、一方の経費削減の努力と相まって、法人税の引き下げをやって、さらに内部蓄積が可能になる、国際競争力が出るというような方向も、ぜひとも望ましかったのではなかろうか。さらに、体質改善の面から、企業がもっと増資をやりよくするというような、増資がやりやすい税制をもっと進めていただく、借金のほうが増資よりもコストが安いといろ姿では、これまた資本構成の是正を叫んでもなかなか進まないわけでありまして、こういう企業の資本構成是正の面などについて、なお税制面からのバックアップが必要ではなかっただろうかというような感じを残すわけでございます。 さらに一方、資本蓄積税制といま申し上げたのは、企業の内部の問題でありますが、さらに貯蓄ともからみまして、日本の貯蓄というものをもっとふやすことが、やはり今後の産業資金の充実その他の面からいって必要ではなかったか。もちろん今度の予算にも、たとえば投資信託への分離課税であるとか、生命保険料控除の引き上げであるとか、いろいろの施策を盛り込んでいただいておりまして、たいへんけっこうな方向だと思いますが、さらに進みまして、生命保険料控除のさらにこれ以上の引き上げとか、配当の分離課税については、各界いろいろ議論のあるところでございますし、私も無条件賛成論者ではございませんけれども、やはり一方で企業が大きな増資をやる場合に、これを消化できるような受け入れ態勢強化という角度から、さらに検討が望ましいというふうにも考えるわけでございます。 そういうふうにいたしまして、国際競争力強化というような角度、企業の体質改善というような角度から、減税の方向を、一時的には企業課税重点という声が出るかもしれませんけれども、企業減税を政策的にもう少し推進していただくことが必要ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。 最後に、今後の財政運営の注文を申し上げたいと思いますが、これはずばり申し上げるならば、財政支出の弾力的な使用、いまの段階においては、できるだけ繰り延べなども考えていただきたいという問題でございます。財政と金融が必ずしもいま一体化しておらないという批判が、各界から今度の予算原案を見まして出ておるわけでございますが、私は、先ほど申し上げたように、基本的には、今度の財政がそれほどその本筋からはずれておるとは思いませんけれども、多少大き目の感じはせざるを得ない。そのために、多少金融面にこのしわが寄る。いまの事態を改善するために金融政策を強化しなければならないという方向に、どうしてもきておるような感じがするわけでございます。しかしながら、金融政策につきましては、最初にも申し上げたように、今度の置かれたきびしい情勢が、単なる景気調整という問題ではなくて、もっと構造的な問題を含んでおりますだけに、従来景気が過熱をして設備投資が行き過ぎたとか、あるいは輸入が行き過ぎたとかいう場合には、今日よりも一そう金融政策のきき目は大きうございましたけれども、今度は金融政策だけではとても解決できない問題が多々含まれておるように思います。 第一には、たとえば国際収支問題をとりましても、なるほど貿易収支の改善が何といっても一番大事でございまするし、いま高過ぎる輸入水準を低めるには、生産をもう少し下げなければならない。そのためには、金融政策もちろん必要でございます。金融引き締め政策を強く進めることももちろん必要でございますが、しかし、いま国際収支問題においてより大きなウエートを持つのは、むしろ貿易外収支の問題でございます。年々一億ドルずつふえていく貿易外収支をどう改善するか。これには、先ほどから申し上げたような海運対策とか観光対策とか、いろいろすでに対策の萌芽は現われておりますが、こういうような問題は、とても金融引き締め政策では解決しない。それだけに金融政策は、今度の場合にはおのずから限界があるわけであります。 第二番目には、金融政策にもう一つの限界がある。それは、今度の金融引き締め政策が、従来のように、ある程度景気がよくなって、相当企業がもうけて、不況への対処策もできてからきたのではなくて、景気がよくなり始めて間もなくやってきた。しかも、相当企業間信用も膨張しておりますし、過剰設備もかかえておりますし、かなり抵抗力が弱い。この段階で金融政策一本やりでいくことには、おのずから限界がやはり出てこざるを得ないわけでございまして、まあそういう意味において、金融政策は必要だけれども、おのずから限界があるということになります。 それでは何をやるべきかということになるわけであります。一つに、構造政策的な問題をさらに強く展開するということであります。もう一つは、やはり財政面の支出をできるだけ、最初に申し上げたような安定成長路線にふさわしいような形でやっていただくということしかないというふうに考えるわけでございます。その意味におきまして、今後の景気段階ともにらみ合わせて、財政支出、ことに比較的景気に対しては刺激性の強い財政投融資関係の経費の使い方を、微妙なやり方、何といいますか、きめこまかいやり方で進めていただくことが必要ではないだろうか。公共投資の充実は、やや中期的、あるいは長期的に日本の経済のビジョンを描きながらやっていただくことが必要でありますが、と同時に、きめこまかく、そのときの景気段階とのかね合いで使っていただくということが何より必要ではないだろうか。いまのままでの姿で経済情勢が展開してまいりますと、金融政策にはおのずから限度が出てくる。しかし、財政支出とか消費のふえ方がかなり大きいがために、おそらくは日本の経済成長率は、年度の初めに政府の運営方針できめたよりは少し高くなるのではないかと私は考えます。と同時に、国際収支とか消費者物価の問題がはっきりと解決しないで、先へ矛盾を持ち越していくおそれもないではないという感じもいたします。その意味で、ここで金融政策ももちろん必要でありますが、それと同時に、構造政策の展開と、もう一つには、予算の支出の弾力的な運営、これがぜひとも必要ではなかろうか。そして、何とかして日本経済を、この一月二十一日の閣議決定のような方向の、安定成長路線に持っていきたいものだというふうに考えるわけであります。 まとまりませんお話でございますが、これで終わります。(拍手)
○愛知委員長代理 ありがとうございました。 —————————————
○愛知委員長代理 それでは、これよりただいまのお二方の御意見に対する質疑を行ないます。 辻原弘市君。
○辻原委員 時間がございませんので、公述人の方々に要点だけ簡単にお尋ねをいたしたいと思います。 井上公述人にお伺いをいたしますが、最初に、銀行の立場で実は私承りたいのでありますが、一つは、景気動向についての銀行筋としてのお見通しは、一体どうであるのかという点であります。なぜこういうことを申し上げるかといいますと、実は、例年私ども野党としては、政府の経済見通しについては天気予報より当たらぬということで悪口を言っておるわけです。ところが存外、この前に、去年でしたか、勧銀がかなり精細に調査された経済見通し、特に物価の動向なんかにつきましては、政府のそれよりも、これは結果においてでありますけれども、近かったと私は受け取っておるわけです。そういう意味において、特に昨今、これは国民全体がそうでありますが、ともかく今後の景気動向というものについては、いままでとは違うぞ。ただいま山中さんからもお話がございましたが、従来の一般的な循環説なんかではとうてい理解のできない複雑な問題をかかえておる。そういった場合に、一体これからどうしたらいいんだろうかということは、これはだれしも聞きたいところなのでちりまして、そういった意味において、いま政府が述べているような、現在の比較的ゆるやかな金融調整下において大体今秋を見通す場合には、国際収支の均衡もやや回復に近くなるのではないか、そういった政府の経済見通しについては、われわれはどうもすなおに合点のいった形で受け取ることができないのでありまして、その辺の今後の歩みというものを、先ほどちょっとお話がざいましたが、若干かいつまんでお話しいただければけっこうだと思います。 〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕
○井上公述人 金融界方面から見た今後の景気の見通しについて話せということでございますが、私ども民間企業に携わる者としての見方でございますから、政策をどうするとかいうことには直接関係ございませんけれども、しかし、やはり景気の今後の動きに対しては、何といっても政府あるいは日本銀行のとっております政策が大きく響いてまいりますわけで、そういう意味で、せんだってから政府あるいは日本銀行がとっております——当面といたしましては引き締め政策をとっていくということでございますので、その影響は、当然まともに受けてくると存じます。したがって、財政のほうでも、先ほど来お話も申し上げ、また山中さんからもお話があったように、均衡財政であって、またこの支出の配分いかんによって景気に対して必ずしも大きな刺激を与えない、金融のほうは、一方引き締め政策を続けていくということでございますから、私は、この効果は漸次あがってくるというふうに考えます。 それと、一番大きな問題の一つは、皆さま御承知のとおり、現在の産業界の全体といたしますれば、かなり生産過剰といいますか、過剰ぎみの経済だといえると思います。戦後非常な勢いで生産設備も拡充されて、生産が上昇してまいっております。もちろんこれに対する国内消費、あるいは輸出との関連でものを考えなければならぬかと思いますけれども、現在のところでは、やはり財界、産業界の一部においては、むしろ生産過剰というふうな動きが見られるくらいでございまして、これは、当然景気に対しては抑圧といいますか、景気を抑える、物価を引き下げるという方向に作用してまいりますわけでございます。 それからもう一つ、これも先ほどからお話が出ましたように、日本もこれからほんとうに世界経済の一員として開放体制に入っていくわけでございます。日本の物価が上がりますれば外国から品物を買ったほうがいいということになり、また一方輸出はそれだけ阻害されるわけでございまして、当然現在でも自然調整作用と言いますか、そういう作用を持っておるわけであります。いやおうなしに世界経済の一環としての動きをせざるを得ない、各国の経済の動きと同じような歩調でいかざるを得ないので、日本だけが一方的にひとり過熱状態あるいは好景気というふうな状態になることは許されないわけでございます。 こういう二、三の点から考えまして、私は、今後の景気の動きはまあ横ばい状態で推移するのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
○辻原委員 いまもお話がございましたが、それに関連をいたしまして金融調整の問題でありますが、この間からも政府、それから日銀、いろいろわれわれ承っておるのでありますが、一体現在の窓口規制や準備預金率の引き上げ等の措置で一応推移するかのごとく見えておるのでありますけれども、しかしながら、依然として国際収支の問題は予断を許さない。こういった状態の中でこの程度で推移をして、いまあなたが述べられたように、大体景気動向としては——もちろん構造的なものもありますから、一がいには言えぬといたしましても、金融の面から、いわゆる金融引き締めというその効果の面からながめた場合、大体所期の目的を達する状態に下半期持っていくことができるのかどうか、これは若干懸念されるところなんでして、ところが、公定歩合の引き上げ等唐突な形でこれは出るに間違いないのでありますが、それが存外下半期に深刻な影響を与えるという逆な悪影響もこれは予想されますから、だから、その辺に対する踏まえ方を心がまえとして国民全般も持たなければならぬという意味において、一体実際おやりになっているあなた方の目からながめた場合に、すでに着々相当の実効が、現在とっておる二つの方法において上がっているのかどうか、これがわれわれの聞きたいところであります。承りたいと思います。
○井上公述人 現在日本銀行がとっております金融引き締め政策が効果が上がっておるかどうかという問題を中心として御返事を申し上げますが、現在去年の暮れから例の準備預金率の引き上げ、そしてことしに入りまして新しい窓口規制を出したわけでございまして、これが効果と言いますか、まだ一カ月あるいは一カ月足らずの時間しか経過しておりませんので、現在のところでは、はっきりした数字は出ておりませんけれども、まあ全体として見ますれば、産業界のムード、あるいは金融界のムードも相当落ちついてきているというふうなことは言えるかと存じます。物価の面では、すでにある程度の効果が出ておるようでございます。それから産業界の在庫、あるいは生産の指数を見ましても、まあ幾ぶん一時よりは低調になっておるというところを見ますれば、その効果が、わずかながらではありますけれども、出ているように私どもは感ずるわけでございます。国際収支の面についての影響はどうかということは考えなければならぬわけでありますが、これは、どうもすぐに出るというような性質のものでもございませんので、ことに十一月、十二月あたりは多少異常な輸入があったような感じもいたしますけれども、しかし、これはもう大体峠を越して、一月、二月、三月あたりからはそういった効果が出るのじゃないかというふうに、これは期待でございますけれども、持っておるわけでございます。過去の、前の政策よりもっと早く調整政策をとったらいいのじゃないかというふうな議論はむろんあるかと存じますが、少なくとも現在の時点において、今後どうするか、あるいはどうなるかということを考えてみますと、いまの金融政策で大体現在の、これまでの事態の収拾はできるように考えておるわけでございます。
○辻原委員 最後に一つお伺いいたしたいのでありますが、それは新しい窓口規制の問題であります。先ほどからも申し述べられておりますように、現在の経済の状態というのは、構造的な問題が非常にウエートが大きいのだから、そういう意味においては、むしろ日本における優良な産業ひっくるめて、基幹産業を含む大企業において、やはりその生産のあり方、経営のあり方、こういった問題は相当再検討していただかなくては、何といいましても今後の経済を正常化していくことはむずかしい。特に、これは物価対策に至るまで、私はその任務たるや非常に大だろうと思うのです。そういう立場から考えてみれば、いわゆる金融の引き締め期に入って窓口の規制を行なうという場合に、最も現実的に打撃を与えられるものは、大企業にあらずしてむしろ中小以下であったというのが現在までの実績だと思うのです。これは、特に私たちは金融界に要望したい点でありますが、いわゆる選別融資というふうな形になります場合、いわゆる産業の必要度合い、あるいは国の経済に対する寄与度合い、こういうものよりは、実際においては、その企業の優良の状態、あるいはその企業と銀行との系列の関係、こういったいろいろな副次的な問題から実際の融資あるいは救済措置等が行なわれておるようにわれわれは見受けるわけなんです。専門外ですから、具体的にそうではないとあるいはおっしゃられるかもわかりませんが、しかし、一般的にどうも私どもはそう感ずるわけです。もしそういう傾向のままこの新しい窓口規制というものを今後いわゆる金融調整の大きなウエートの問題としてやっていくということになりますれば、これは私は、いま所期しているごとく、現在のいわゆる窓口規制及び準備預金率の引き上げといったようなこの金融調整策というものが、二面においてくずれてくる心配があると思うのですね。構造的、構造的と言われていることはいまもお話しになりましたが、むしろ現在の生産過剰問題が重大な問題であり、あるいは物価対策としては管理価格の問題が非常に重大であるという一面からいえば、やはり当然大企業の設備投資の抑制というものが非常な強力な形で行なわれなければならぬ。それが逆に、その方面がいわゆる優良企業あるいは基幹産業といったような形でもしバルブがゆるまっていくということになれば、これはその効果は期待することができない。いたずらにしわ及び体質の改善を急速度に進展させなければならぬ中小以下が逆におくれていく、ますます格差を広げていくという結果になる。したがって、新しい窓口規制等においては、やはりその方面におけるきびしい方向というものをわれわれとしても出していただきたいということを希望するわけなのでありますが、現実にいわゆる新しいと言われておりますが、この窓口規制の実際というものはどういうふうにおやりになっているのか。また今後、いま私が申し上げましたようなことを配慮されつつおやりになる方針というものを金融界としては堅持せられているのか。この点を私は最後に承っておきたいと思います。
○井上公述人 この春から実行されております日本銀行の新しい窓口規制の現状でございますが、これは、それの影響を受けます銀行の窓口は別といたしまして、それを通して産業界にむろん影響があることでございますけれども、産業界のあるいは企業別に、あるいは業種別とか、そういうふうなものについては、特別な片寄った影響はないわけでございまして、これは全面的な影響と言いますか、一つの色合いに塗られた影響を受けるわけでございます。まあ大企業は銀行関係融資金額も多いわけでございますから、もちろん大企業のほうにかなり大きな影響があるわけでございますが、それを通し、あるいは直接銀行の窓口を通しての中小企業への影響もないとは言えません。しかし、中小企業については、始終問題になっておりますように、別の面で市中銀行としてもいろいろな措置を講じておりまして、影響があまり過激に出るようなことがないように、保証の問題、金利の問題、あるいは融資のワクの問題を十分に考慮されておりますし、それから政府のほうとしても中小金融機関、政府のほうの機関を通して非常な特別の厚い配慮が払われておりますようでございますから、この影響自体をそれほど直接にかぶるようには私は考えないわけでございます。 それから、これと関連いたしまして、大企業の設備投資にもむろんこれは影響をしてくるわけでございます。むろん引き締めの一番大きな眼目はその辺にあるかと存じます。輸出入に関する影響は、もちろん大企業の設備投資を通して大きく響いてくるわけでございますから、この辺への影響はむろん強く出てくるわけで、またこれがなければ引き締めの効果はあらわれない、いい影響はない、そのねらった目的は達せられないわけでございますから、この辺の影響は出てくるかと思います。ですから、この窓口規制も、もちろん当面のこの金融情勢、あるいは経済情勢を考慮した上での問題でございまして、情勢が変わってくればむろんこの政策自体も変わってくるわけでございます。現在のところ、私はこの窓口規制で、それと去年から実行されました準備率の引き上げということで、当面の景気調整は、そして産業界のいろんな影響も考慮しながら政策が立てられておりますわけでございますから、まず妥当な結果が出てくるというふうに考えておりますわけでございます。
○辻原委員 議論の場ではございませんので、議論を申し上げるつもりはありませんが、私どもの認識は、もう少し深刻な考えを実は持っておるわけなんです。というのは、大体一流銀行、市中銀行含めて景気調整期に入って金融が逼迫してくれば、通俗的にいうと、どうも弱い企業はおつき合いをごめんこうむるという傾向が非常に強いのです。これは、実際もうすでにあらわれておるのですね。そうして結局弱い企業というか、さらにことばを進めると中小企業が、そういう場合にはややみずからの努力で体質改善をして近代化をして、まあ従来相互銀行にお世話になっておったのをせめて金利の安い、あるいは歩積み、両建ての強要されぬ市中銀行にひとつおつき合いを願おう、こういうことでせっかく入っておったのが、今度は金融引き締めの段階になると、銀行さんのほうからおつき合いをごめんこうむる、こういうことになって、また相互銀行に逆戻りをするという傾向が常に起きているわけです。今回の場合も例外ではありません。私はそのことを言っているわけなんです。だから、常に四年を一周期として云々ということの景気の端境期には、必ずそういう現象が起きてくる。今度は至短時間に、わずか一年足らずでそういう事態に逢着をしているわけです。そこに企業それ自体のいわゆる金繰り対策、金融対策というものが非常に混迷を来たしておるので、したがって、御指導をなさるならば、あるいは本格的に政府の方針に協力をして、そうして金融対策をもっていわゆる経済の正常化というものを銀行筋としてお考えになるなれば、当然そこにいわゆる金融対策から起きる企業の格差というものを真剣に埋めるための御努力が、私は新しい金融措置の中で講ぜられなければならぬということを申し上げておるわけです。幾ら声をからしてわれわれが国会の中で相互銀行さんに、歩積み、両建てはやめてもらいたいと言いましたって、一向実効が上がっておらないわけです。それは、需要と供給の関係で、そんなことをしない企業はお相手いたしませんとかで、やむにやまれずその歩積み、両建てをやってでも相互銀行のお世話になる、こういう現状がそれなんです。また政府金融、機関金融といいましても、やはりこれは実際面から、裏から返して見ると舌足らずなんです。まあ、これは別の機会にわれわれは議論をいたしたいと思うのですが、これは舌足らずなんです。たとえば、中小企業が現在代理貸しでわずか一千万のワクに押えられておる、しかし、今日資金需要というものは、少なくとも設備の中で、一千万の設備によって企業の体質改善ができるという企業はよほど小さな企業だ。勢いそれはいわゆる銀行の一般金融に仰がなければならぬ、そういう段階にきているわけです。だから、それを本格的に体質改善、近代化を進めていこうとするなれば、少なくともやはり市中銀行の負う部面というものはきわめて大きいわけだ。そのときに、いわゆるきびしい選別融資ということをもし進められるならば、いわゆる企業の将来性、あるいは国家的要請というものをもちろんお考えになるだろうと思いますけれども、それを相当重く見てかかっていただかなければ中小企業の改善なんということはあり得ない。だから、そこらあたりに、まあこれはあるいは言い過ぎることばになるかもしれませんが、いわゆる金融オンリーという考え方から一歩歩を進めていただくような、そういう前向きの姿勢をいわゆる市中銀行、金融界にぜひおとり願わぬことには、中小企業の今後の体質改善も近代化も実際上私はあり得ないと思う。何といっても金がなければそれはできないわけですから、そういうことを申し上げておりますので、この点はあるいは若干いろいろな議論になるかもわかりませんが、特にお考えを賜わりたいと思います。
○井上公述人 市中銀行の融資に、たとえば中小金融機関から取引が移ってきて、これがまた景気引き締めによって逆戻りをして、非常に不幸なことになるというお話もございましたが、いままで私どもの——これは私どもの銀行だけのことを申し上げてはかえってあれかもしれませんけれども、全体としましても、そうひどいことにはなっていないのじゃないか。ひどいというか、むしろ——むろん全体のいまの融資は、八百万とか一千万近くございますから、その間にいろんな問題があるかと存じますけれども、私ども銀行の窓口で中小企業に対する融資の考え方というものは、決して中小企業だからこれを粗末に扱うとか虐待するという考えは全然ございませんで、もちろん企業でございますから、内容いかんによって、あるいは経営のしぶりいかんによっては、これに対して信用の度その他の取り扱いの違うことがあることはもちろんでございますけれども、大企業だから優遇する、小企業あるいは中企業だからこれを冷遇するという考え方は全然ないのでございます。もちろん大企業で信用のあるものに対しては、信用に応じてそれ相当の優遇もいたしますけれども、しかし、現在の中小企業でも非常にいい内容を持ったものが、またりっぱな経営をしているものがたくさんございますので、こういうものに対しては、大企業に劣らず、金融のしにおいてもその他についても十分な配慮をしておるつもりでございます。しかし、われわれとしては、今後さらに最近のような情勢下においては、中小企業に非常な不幸なこと、あるいは大きなしわが寄らないように十分配慮いたしまして、できるだけ中小金融についての努力はいたしておりますつもりでございます。その点は、どうぞ御了承をいただきたいと思います。
○荒舩委員長 次に加藤清二君。 委員各位に申し上げますが、両公述人は四時までというお約束でございます。加藤清二君の次が石野久男君でございます。なお続いて中井徳次郎君でございます。続いて松浦周太郎君でございますので、どうかひとつお含みの上、簡潔に要領を得た御質疑を願いたいと思います。
○加藤(清)委員 国会正常化はもとより望むところでございますので、委員長さんのおっしゃるとおり協力して、ずばり三点だけお尋ねをいたしたいと思います。したがいまして、お答えもおせじでなくして、ほんとうのところをずばりと答えていただきたいと存じます。 第一点は、井上さん、あなたは金融政策は経済界に妥当な結果を生むだろうとの御答弁でございました。私は、それを望まほしいことと存じます。妥当でないように思われる点がございまするので、最初にその点をお尋ねいたします。第一番は、大企業に非常に操短が多うございますね。たとえば製鉄、セメント、紙、繊維、なぜ操短が行なわれるのでしょうか。設備が、おっしゃったとおり過剰だからでございます。設備過剰は、これは融資があったからこそ設備が行なわれたわけでございます。その結果は、銀行金融はオーバーローンというようなことをたびたび繰り返してきているのでございます。この設備過剰は、やがて生産が上昇したにもかかわりませず、卸売り物価を引き下げることのできない原因をつくっていると思うのでございます。はたして今日の金融は正常化されて、オーバーローンもなく、大企業に偏重された融資も行なわれていないと断定することができるでございましょうか。
○井上公述人 現在オーバーローンが相当激しくなっておりますことは事実でございます。これはなかなか簡単に変わらないと私は存じます。いまの産業構造からいいまして、一朝一夕に改めることはむずかしいと存じます。
○加藤(清)委員 それは、それでけっこうです。 次に、片やオーバーローンでありながら、片や過酷な引き締めということが行なわれているようでございます。それが中小企業でございます。あなたは、都市銀行も決して中小企業に冷たい態度をとっていないとお答えになりました。しかし、遺憾ながら、示す数字はだんだんに減っておるのでございます。たとえて申しますと、昭和三十五年三月に都市銀行十二行は二七%を貸しておりました。ところが、三十六年にはこれが二五%と減っているのでございます。次の三十七年には二二%と減っておるのでございます。だんだん減っておるのです。預金量はふえ、扱い量はふえているにもかかわりませず減っているのでございます。これと同様に政府資金も減っているのでございます。政府資金はわずか七%——八兆九千億中小企業に融資されておりまするが、そのわずか七%か八%しか政府は与えておりません。あとは地方銀行ないしはいわゆる中小企業を専門とするところの相互その他でございます。はたして、今日の都市銀行十二行の中小企業に対する金の貸し方というものは、あなたのおっしゃるように親切に行なわれているのでございましょうか。満足する姿でございましょうか。
○井上公述人 満足であるかどうかということはかなり主観的な問題もございますのでわかりませんけれども、客観的に見まして、私どもは、いま数字をあげられましたけれども、私どもの考えております数字は、それほど中小企業の金融額が、あるいは率が減っているというふうには考えておりません。もう少し高いように感じております。そうして、もう一つは中小企業という概念のとり方、それからもう一つは、中小企業というものは、御承知のとおり、毎年々々大きくなってまいりますので、その統計に入らない、何と申しますか、学校で言えば卒業生になるものが相当あるわけでございます。それを入れてみませんと、貨幣価値の変動その他もむろんございますけれども、そういった卒業生のものも入れておきませんと、数字の上でははっきりした比較はできないかと存じますが、私ども、数字はそれほど比率が減っているとも考えておりません。
○加藤(清)委員 ここは討論の場ではございませんので、あえてあなたと討論しようとは思いませんが、私の言うておるのは、これは私がつくった数字ではございません。日本銀行、内閣統計局でおつくりいただいたのを私はいただいておるだけのことでございます。決してこの数字がうそというわけではございませんですから、その点、認識をひとつ改めていただきたいと存じます。 さて、次に妥当であるか過酷であるかの問題でございます。歩積み両建て、担保凍結、このことは、すでに去年前会長の宇佐見さんとこの席で討議をした問題でございます。私が申し上げることだけではございません。全国いかなる新聞でも、毎日それを新聞に出さないところはございません。それほど重要な問題でございます。にもかかわりませず、歩積み両建て、担保凍結は依然として絶えないのでございます。一体どうしたものでございましょうか。自粛決議は何回も行なわれておるはずでございます。銀行局長名では過去十五回余も出ておるのでございます。にもかかわりませず、歩積み、両建て、担保凍結は一そうその度合いが加わっていきつつあるのでございます。いつの答弁も、いつの趣旨説明も、それはいけないから直しましょうとおっしゃってお帰りになるのでございます。にもかかわりませず、かかる実態でございます。あなたのここで行なわれまする趣旨説明、あなたの答弁、それははたして下部組織に行なわれるのか行なわれないのか。行なわれるとしたら、いつの日に行なわれるのでございましょうか、これを承りたいのでございます。
○井上公述人 歩積み、両建て問題については、おっしゃるとおり昨年来、あるいはもっと以前から御指摘がございました。私どももその線で十分考えて自粛しているわけでございます。お話しのように、何べんかの銀行関係の自粛案が立ったわけでございます。しかし、去年以来私どもはさらにそれを強化いたしまして、内部的には非常な緻密な周到な案を立てまして、いま実行しておりますわけでございます。先ほど申し上げましたように、銀行の融資は非常な数になりますものですから、その間の一部のものにあるいは不当な歩積み、両建てがあったというような例があるかもしれませんけれども、私は、全体といたしまして歩積み両建ての問題は、相当自粛の実績をあげていると思います。なお、足りない点は大蔵省、銀行当局ともいろいろ御相談申し上げて、さらにこれ以上なお万全を期していきたいというふうな措置を講じておりますわけでございます。
○加藤(清)委員 それでは、歩積み、両建ては絶えない、じゃ私は率が多過ぎる、こう申し上げたい。三割も四割もという例がございますので、それの結果金利——裏金利が高くなるということになってまいりますから、あなたは一体それじゃことし金融の正常化にあたって、どの程度の歩積み、両建てならば大目に見、どの程度のものはいかぬとお考えでございましょうか。と同時に、政府みずから——われわれ政治家も考えなければならぬと思うのです。どんなにあなたがここで何とおっしゃったとしても、支店長としては成績をあげなければならない、ノルマが課せられている。その集積はやがて十二行の競争、これの意欲を満足せしめる結果になる。また政府がこの十二行に預金高でランクをきめて、そのランクの高いものにのみ政府資金の預託なり、あるいは新しくできた公団の金融なりをまかせる、こういうランク利用のしかたをしていられる。これは直さなければならぬ。これは、やがて拍車をかけ、支店長にノルマをかけ、その支店長が中小企業にノルマを課される、こういうことになっているようでございますので、これは政治家みずからも姿勢を直さなければならないが、銀行協会自体としてはどの程度をめどとし、それをいつの日に行なおうとなさるのか、これを承りたい。
○井上公述人 歩積み、両建て、どの程度がいいのかということでございます。これは、どの程度という一律な線は出せないのでございまして、申し上げるまでもなく、銀行のほうは、担保措置あるいは歩積みの措置というものは、相手の信用を補完する意味で講じておりますわけでございますから、融資先の信用いかんによって何%ということが自然にきまるわけでございまして、三割がいいとか、四割が悪いとか、私のほうは全然そういう線は出ないのでございます。あるいは御承知かと存じますけれども、不渡りが出まして倒産するというような不幸な例は、むろんこういう自由経済でございますからあるわけでございます。そういう場合に、商業手形の割引をしておりまして、融通手形というものは非常な率に達することがございます。実例で見ましても、手形のうらの六割ないしは七割が融通手形、書き合い手形であるという例が少なくないのでございまして、したがって、そういう特殊なケース、あるいは特殊ではございませんけれども、そういうケースに対しては、おそらくそれに相当した担保措置を講じなければ、それは預金でなくてもよろしいわけでございますけれども、そういうものに対する担保措置をとりませんと、銀行は責任を果たせないわけでございまして、そういうこともございますので、一律に歩積み、両建てが何%であってはいかぬというふうな線は、全然出せないと私は存じます。
○加藤(清)委員 これで質問を終わりたいと思います。失礼なことを言いますけれども、会長さんとか頭取さんというところへは、こういうことは知らされていないだろうと思います。信用補完のために必要だとあなたはおっしゃいまするけれども、そんなもんじゃございません、今日行なわれているのは。今日の歩積み、両建て、担保凍結というものはそんなもんじゃないのです。二千万相手に貸して二千万そっくりそのまま両建て、歩積みをさせられている例が幾つもある。ここで私は例をあげてあなたと討論はしたくないが、ぜひひとつ、金融引き締めという政策によらなければ今日のこの経済が乗り切れないというならば、やむを得ざるの措置でございましょうけれども、そもそも過重投資であるとか、設備過剰であるとかいうことは、これはほとんど大企業において行なわれたことであり、それが赤字の原因になっている。にもかかわりませず、それの対策となりますると、常に中小企業へ引き締めが寄る。つまり罪をつくった者に罰が与えられるのでなくして、罪をつくらざる者に罰が与えられるというのが過去三回行なわれたりセッションのおりの中小企業の実態なんです。ここをよくお考えいただきまして、そうして、私はあなたの御答弁、あなたの御趣旨がほんとうに銀行協会を通じて末端に実行されるよう、その実行方法をひとつぜひ樹立していただきたいということをお願い申し上げまして質問を終ります。
○荒舩委員長 ただいま加藤清二君から御質疑がございましたのですが、井上公述人は全国銀行協会連合会長さんでございます。議会で、この予算委員会におきましても、大蔵委員会におきましても、歩積み、両建てという議論は毎日毎日繰り返されております。歩積みにいたしましても、おのおの銀行と取引する側の人が自発的に歩積みをすることであれば、これはまあけっこうだと思うのですが、この議論は、次ます。どうかひとつ、これはいかにしたらこの議論をしないでも済むようにできるか、会長さんといたしまして御考慮、御配慮を願いたいと思います。(拍手) 次に石野久男君。
○石野委員 井上さんにはやはり私もお尋ねいたしますが、もうたびたび中小企業に対する引き締めがどういうふうに及んでくるかということは聞いておりますので、あまりこまかいことはお尋ねしませんけれども、ただいま委員長からも、引き締めというのが中小企業に非常にきびしくなってくるということのために、歩積み、両建て、担保凍結などについて考慮をしてほしいという要請がありました。私は、この際、もしことしの予算がこのまま通過しますとすれば、やはり財政の金融へのしわ寄せというものが非常にきびしくなるだろうと思いますし、当然やはり引き締めをやらなければならぬということになりますが、その結果、中小企業へのしわ寄せがもっときついものになってくもということはもうはっきりしておりまするので、銀行協会のほうでは、そういうものに対して、特に引き締めの中で出てくる中小企業への圧迫というものを排除するための何らかの御配属をなさっておられたのか、まあたければよろしいのでございますけれども、もしあるとすれば、どういうようなことをやはり配慮なさっておったかということを、この際一言だけ聞かしていただきたいと思います。
○井上公述人 銀行関係から中小金融への引き締めのしわ寄せを排除するいろいろな措置は、当然とっておりますわけでございます。制度的にそれが完成しておりますものもございますし、また新しくやりますものもございます。たとえば、数をあげますと限りがございませんけれども、大きなものだけあげましても、中小金融の保証ですね。中小企業の信用補完の意味で各地に信用保証協会ができた、これが相当な活躍をしておりますることはあるいは御承知かと存じます。そういう保証協会の活動、これは民間でつくっておりますわけでございます。それから中小企業信用保険、これも相当な活動をしております。それから、われわれとしましては中小金融の特別な店舗をつくっておりまして、こういうものは、中小金融専門店として全国に八十三カ店ございますわけでございます。これは、いろいろきめこまかに中小金融についての配慮をいたしておりますわけでございます。それから、銀行協会にも金融相談所というものをつくっておりまして、ここでまたいろいろ相談を受けて、できるだけの措置を講じておりますわけでございます。それから、去年の年末でございますが、毎年、年末には特別の融資をしておりますけれども、これも去年は、十月から十一月までで三千億の融資を目標としてやっておったのでございますが、実際には三千三百九十億という数字が出ております。中小企業に対する融資でございますね。それから下請促進についても、大企業が下請の中小企業に対して延べ払いをする場合に、必要に応じてひもつきをして、ひもつきとして銀行が大企業に貸して、そして中小企業にそれをまた融資するというような形をとっております。そういういろいろな措置を講じて、中小企業のことですから非常に数も多いし、またいろいろな面がたくさんございますので、それに対して一つ一つ具体的に措置を講じてやっておりますわけでございます。
○石野委員 ただいまのような措置がなされておりましても、それが、先ほど加藤君から話がありましたように、やはり歩積み、両建ての問題との関連性の中で、結局大企業優先というような形と、それからまた、大企業のひもがついていくというような形からいろいろな弊害が出ていると思うのです。ですから、先ほど委員長から要請があり、加藤君からも要請のあったような問題については、やはりこれは積極的に施策として——皆さんのほうの施策というのはおかしいけれども、方針として実行してもらいたい、こう思います。 先ほどあなたから御公述がありました中に、本予算の中には後年度歳出の増加経費が非常に多い、後年度支出のそういう経費が多いのだというお話がございました。そういう問題について、金融筋で見ておりまする後年度歳出の増加を含んでおるそういう経費というものは、会計上あるいは予算上どういうものとして出ておるのか、また、そういうようなものに対して、それをどのようにして予算編成の上では処置すべきか、財政の上から、金融界の面から見てどういうふうにお考えになってその御発言をなさったのか、そのことをちょっと聞いておきたい。
○井上公述人 具体的に実は私どもも成案があるわけではございません。いまの制度が決して十全だということでないということで申し上げたわけでございまして、繰り返して申し上げますけれども、いろいろな政府のおやりになる仕事は、長期間にわたる計画がございます。それをただ単年度で予算を組んでしまっては、かりに翌年度でそれが予算として取れなければ、極端に言えば、そういう工事は中止せざるを得ないということも理論上あり得るわけでございます。しかし、一ぺんきめた以上は、何年か継続して出さざるを得ないということでございますが、それについて御検討を願って、長期にわたる計画をつくっていく、財政上の裏づけをしていくということを何か御検討願いたいということでございまして、別に私どもがいまここに成案があるわけではございません。
○石野委員 どういうものですか。
○井上公述人 建設関係の仕事なんか、一番その大きなものだろうと思いますが、多年度にわたる大きな仕事は、大部分がそうだろうと思います。
○石野委員 財政投融資の額が非常に多くなっているというような御発言もございましたし、また、その財政投融資が非常に大きくなっているという関係は、御承知のように、公募債借り入れ金、あるいはまた政府保証債の増大というようなことに依存しておるわけでございますが、そういうものを、公述人のなんでは、政府保証状なんかなるべく弾力的にやっていただいて、事実上いま割り当てのようになっておるのだけれども、そうしないようにしてほしいという要望もあったわけでございます。しかし、この予算が通過しますれば、当然のこととしてやはり引き締めをしなくちゃならなくなってくることは、もうはっきりしているわけです。そうなってまいりますと、政府保証債というものは、割り当てなどのような形の中で銀行筋なりなんなりが引き受け、それは当然やはり日銀の買いオペというようなものを通じて消化されていくというようなことになってくるんじゃないだろうか。その場合に、日銀がそういうような形で買いオぺを行なっていけば、それがだんだん日銀へ累積されていって、実際には赤字公債を日銀が引き受けるというようなことになりはせぬだろうかというふうにわれわれは思うのですが、あなたはそれをどういうふうにお考えになられますか。
○井上公述人 理論的に申しますれば、確かにそういう結果になると存じます。しかし、要するに、公募債はわれわれ市中銀行が引き受け、それを日本銀行に持っていく場合は、そうなるわけでございますが、しかし、現在の金融情勢、少なくともオーバーローンの情勢では、公募債でなくても、われわれの貸し金は、ほとんど全部貸して、預金でまかない切れない部分は、日本銀行にいくわけでございます。ですから、結果においては、公募債そのまま日本銀行引き受けの公債発行になるという理屈になりますけれども、しかし、それは全部が預金で消化される、われわれが公募債を引き受けた場合に比べてでございまして、現在では、われわれが引き受ける公債はもちろんのこと、その他の社債にいたしましても、これは全部ほとんど大部分が日本銀行からの融資でまかなうということになりますので、効果的に見ますと、政府引き受けの公債になるから、つまりインフレ上の懸念から見ますと、格別ほかの融資あるいはほかの債券の引き受けとは変わりないと存じます。
○石野委員 いま、効果的にいえばインフレ増長にはならないだろうというようなお話でございましたが、私は、その点は論議じゃございませんからおきます。 もう一つお尋ねいたしますが、外貨保有のことでございますが、日本の現在の経済の規模からいって、国際収支の面で外貨保有というものを、国際間の信用を確保する上からどの程度実質的に保有したらいいのか、その点について、金融界のあなたからひとつお話を承りたいと思います。
○井上公述人 これは、私はそのほうの専門家ではございませんので、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、外貨保有の正当な量というものは、これは、いろいろ人によっても説が分かれておると思います。私ども常識的に考えておりますことは、やはり輸入の三分の一程度というのが一つの目標かなというふうに考えておりますわけで、したがって、六十億程度の輸入がありますれば、二十億というところが一つの目標かと感ずる次第でございます。
○荒舩委員長 続いて中井徳次郎君。
○中井委員 時間がありませんから、ごく簡単に伺いますが、一点は、先ほどのお話の中で、政府保証債がいま割り当て制度になっておる、できれば公募にしたいというふうなことでありました。これは、いつごろから割り当てになりましたか。戦前、だいぶ長い歴史のように思いますので、この状態をちょっとお聞かせをいただきたい。それからまた、公募にしたほうがいいと思いますけれども、その理由等を簡単に伺いたいと思います。
○井上公述人 私も、実は歴史をいまはっきり覚えておりませんけれども、統制経済に入った戦争中から、すでにそういう傾向はあったのではないかと存じます。ことに戦後は、資金不足の状態でございますから、しかも、それに加えて金利についてのいろいろ政策がございます。そういうことで、自然の金利とマーケット・レート、マーケットの金利というものはかなりかけ離れておりますために、普通の公募というのができない状態でございます。これは、いろいろな原因がございますので、もちろん金融が正常化してまいりまして、金利も自然な体系になってまいりますれば、いわゆる海外でも行なっております。また日本でも戦前に行なわれておりましたような自然な公募ということができることになるわけでございます。現在、いかにいたしましても資金不足の状態でございます。また、金利を上げれば産業界は非常に困るわけでございまして、そこに金利の自由な動きもないわけでございますので、やむを得ざる状態になっているかと存じます。
○中井委員 もう一点でございますが、先ほどのお話の中で、財政全般の仕組みが非常に複雑で国民にわかりにくい、これを何とかわかりやすくするようにというふうな御意見でございまして、この点は、私全く同感でございます。したがいまして、実は先般もこの席で、財政をもっとわかりやすくしろというようなことで政府に質疑をいたしたのであります。つい二、三日前でございます。そこで、将来のこととして御参考までに伺うわけでございますが、さしあたりいま考えられますわかりやすくする具体策、もちろん固まっておられなくてもけっこうでございますが、長年金融家として事業主体なり経営主体をごらんになっておる、そういう目からごらんになって、いま思いつかれる二、三の具体的な、こうすればいいだろう、ああすればいいだろうというふうなことを承ることができれば非常に幸甚だと思うのですが、その点について御意見を伺いたい。
○井上公述人 はなはだ申しわけないのでございますけれども、私、こうしたらいいという案は実はまだ持っておらないのでございます。むろんこれから検討いたしますし、政府のほうの方とも相談しながら研究はしていきたいと存じますけれども、実は内容についていま具体的なものは持っておらないのであります。
○中井委員 その点について、この間国鉄の予算なんか調べてみましたら、すぐ減価償却幾らだとか、利益幾らなんというような資本金勘定が出てきまして、資本金が幾らだ、財産が幾らだというのは、その説明書の奥のほうに書いてある。私は、そういう政府機関関係とか、あるいは特別会計的なものは、一般会社とまではいかないと思いますけれども、バランスシート、貸借対照表その他そういうものに準じたものがまず冒頭に出てこないことには、なかなか審議もはかどらなくて、ごく専門の人たちだけにわかっておるというふうなことじゃなかろうかという意味の大まかな感じを持ちまして、その点で質問したようなわけなんでございますが、その点について、ぜひとも今後民間の側にあって、そういう御意見でございますので、早急に御研究を願って、この点は経済同友会の山中さんでございますか、私は社会党でありますけれども、別に政党はどうだというわけじゃないのでありますから、ぜひ御研究が願いたいということをひとつ希望を申し上げて終わりたいと思います。
○荒舩委員長 続いて松浦周太郎君。
○松浦(周)委員 たいへん長くなりまして恐縮ですが、簡単にお尋ねしたいと思います。 きょうは、午前中二人と、午後からただいまの二人とにお話を伺いまして、午前中の美濃部亮吉先生と、きょう午後からのお二人の御議論は、大体同じような線でございます。予算が少し大き過ぎる。したがって、これを地方銀行及び金融機関で引き締めていかなければ国家の経済は平常を保たぬであろうという結論が、どちらの三人も同じようなお話でございます。 しかし、午前中の国井先生、これは社会保障研究所長でありますが、社会保障のほうから見れば、これでも足りない、ここまでやってくれたのならば、もう少しやってくれたらいいじゃないかという議論で、資金が足りないというので終始せられました。それから、今後もあることと思いますが、文教、農業、中小企業、あるいは公共投資、道路、港湾、土地改良というようなものに対しましては、相当資金を投じておりますが、これは、予算編成にあたりましても、なおかつ足りないというのが定評であります。これを充足することができなかった。非常な苦心をして押えて、ようやくここでとどまったのであります。しかし、その中においても、一般会計からは出し切れないから財政投融資のほうで何とかしょうというのでございますから、先ほど仰せになりましたように、一般会計は一四%昨年よりふえ、財政投融資は二〇%増になった理由もそこにあるのであります。けれども、何とか財政投融資のほうを少し少なくしたらどうかというような御注意もございましたから、それはできる範囲において——これは、国の経済をこわしてしまっては何にもなりませんから、運用の妙が大事でございますから、これからいろいろやっていかなければならぬと思います。 これは、経済同友会の山中先生にお伺いしたいのですが、経済同友会は、われわれ保守党の政調会よりももっと進歩した政策を常に持っておられるので、この際、お教えを願いたいと思うのであります。国際収支の均衡の問題をお三人ともお述べになりました。特に午前中の美濃部さんのお話は、国際収支を非常に御心配になっておられます。また、日銀総裁も、国際収支の均衡が日本の経済の第一であるということを強調せられたのであります。でございますから、それにはやはり輸入超過というものを押えるのが一番いいということは、だれでもわかることでございますが、先ほど山中さんがおっしゃるのには、それはやっぱり縮小生産に持っていけば自然に輸入が押えられる、こういうことでございますが、それは私もそう思います。しかし、現在の生産量を縮小して、輸入が激減するほどに縮小いたしましたならば、せっかく努力して卸物価が現状維持か、三%か二・八%くらいしか上がっておらぬものが、購買力をこのままに捨てておいて縮小生産することによって、卸物価も相当上がるのじゃないかということが心配になるのです。それならば、日本の経済の伸びを今年は七%前後に押えようということで予算を組んだ。山中さんやまた井上先生からもお話を聞きたいのですが、金融業者はどのくらいか、企業家としてはどのくらいか、日本の経済の伸びは一体どのくらいに押えて、そしてどのくらい縮小生産にしたならば、輸入も抑え、卸物価も上がらないというところにいけるかということを、ひとつお漏らし願いたいと思います。
○山中公述人 非常にむずかしい問題を提起されましたのですが、生産が著しく減ると、いまお話のように卸売り物価がまた上がりやしないかという御指摘があったわけですが、生産がいまのままでいくと、政府の運営見通しなどと比べても、非常に高いところにいくのではないかという懸念があるわけです。というのは、あれは年度間の比較でございます。現在のこの三月ごろの生産水準との比較ではなくて、年度間の比較で、この一年間ずっと上がっておりますから、ことしの見通しぐらいにはめるためには、もうこれ以上あまり伸びてもらっては困るという程度のところで——ですから、月々ずっと、御承知のようにもう九カ月間続けてふえておりますのが、十二月でやっとちょっと頭を打ったわけですが、その辺でやはり押えないといけないのじゃないかという感覚なんです。これまでのような趨勢でいくと、どうも見通しの中にはまらないで、もうちょっと成長率などが高くなり過ぎやしないかという感じを私どもは持っておりまして、そうすると、そのためにいろいろの国際収支その他とのバランスも少しくずれてくることがあるのじゃなかろうか、その程度の感覚で、なかなか幾らなら非常にぴたりと安定成長にいくかというところがむずかしいのですが、まあ現在の運営方針その他で目途されております実質七%というようなところ、この辺ならばいいんだが、これまでの趨勢ではちょっと上へいきそうだというので、抑えなければならぬのじゃないかという感覚でございます。
○松浦(周)委員 七%ぐらいがいいということでございますが、さっきのお話の中に、金融の調整だけではどうにもならなくて、他に方法を講じなければならぬという時代がくるかもしれないという御心配がありましたが、私もそういうことを考えます。ただ単に公定歩合の引き上げや金融の引き締めだけでは、今度の波は越せないかもしれない。イギリスでもフランスでも、ときどき賃金ストップから輸入制限、消費規正まで行なって、ときどきくる波を越しておりますが、山中先生のお考えは、金融調整だけでいけない場合には、どの辺までの手を打てば安定されるかということを、ひとつ御経験やいろいろの点からお漏らし願いたい。
○山中公述人 お説のとおり、金融引き締め政策だけでは、先ほど申し上げたようにいろいろ限界があるわけです。これは少し平たい話になりますが、いつも景気調整を必要とするような時期には、この犯人があった。設備投資が犯人であったり、在庫投資が犯人であったり、買いだめが犯人であったりしたが、今度は犯人がないじゃないかということをよく言われるのです。ある方は、比喩的に、それは所得がふえたことだということをよく言われるわけですが、この所得がふえて生活水準も上がっていくということは、われわれもこれを望んでいるところですし、政治家の目標でも当然あるわけですが、ただ感じからいうと、やはり消費者の態度と申しますか、その辺が、私ども、やはりいまの日本の国力やわれわれの力からいうと、小し先へ進み過ぎているのではないかという感じもするわけです。消費は美徳というか、レジャーというか、日本はもともとは二宮尊徳だったわけですが、最近は、消費のほうはかなりアメリカ的になった。非常にけっこうな面だし、生活は楽しいんだが、それが所得や日本の現在各家庭や個人が持っている富とかいろいろなものとのバランスからいうと、ちょっと進み過ぎているのじゃないかという感じがするわけです。古い形で、国民に節約せよ、貯蓄せよと呼びかけるということは、非常にむずかしいわけですけれども、やはりこの個人個人の生活、消費者のビヘビアというようなものが、いま、かりに同友会の言うような明治維新以来のたいへんな時期であるとすれば、個人個人のそういう意識がやはり必要じゃなかろうかという感じがするわけで、同友会は、いつも産業にも呼びかけ、われわれ自身の企業にも呼びかけ、政府にもお願いするのですが、今度初めて消費者といいますか、一般国民も——国際収支問題は、結局一般国民の問題ではないか。ご承知のように、最近完成品の輸入などもかなりふえておりまして、古いことばの消費節約とか国産奨励というのは、ちょっといまの若い方なんかにはうまく合わないことばだけれども、根本はやはり国民の一人一人が自国製品のよさを認めるとか、それから同じ時計でも、日本の時計のほうがいいならやはり日本の時計を買うとか、自動車にしてもしかりで、そういう点、みんながその気持ちになるということがやはり必要ではないか。その辺に、金融引き締めだけではこれまた解決のつかない問題もあると思うのですが、これは、皆さま政治家の方々にどういうふうに呼びかけていただくか、われわれ非常にむずかしい問題だと思う。昔の統制経済、戦時経済のように、貯蓄債券を給料袋に入れることもむずかしいのだが、しかし、国民の消費のビヘビアという問題が、私は非常に大事なときにきているのではなかろうかという感じがいたします。
○荒舩委員長 松浦周太郎君、簡潔に願います。
○松浦(周)委員 そこで、消費規正の問題、あるいは貯蓄奨励の問題、あるいは賃金の問題等の三つの問題が消費市場、いわゆる購買力をあおるのですね。ここのところをあけっぱなしにしておいて片方のほうだけやっても、これは片手落ちだと思うのです。ここのところをもう少し大胆に政府もやる、皆さんもおやりになる。一つの例を私は申し上げたい。日本の賃金が現在のようなやり方で、一体貿易が続けていかれるかどうか。現在の日本の賃金は、戦時中の生活給です。これを生産給あるいは能率給にしなければ、ヨーロッパやアメリカに伍していけるかどうかという問題なんです。これは、経済同友会においても相当調査しておられると思うのです。つまり手当が、家族手当から始まって交通手当まで七つもある。それで、本給とその手当があって、盆暮れにはもちろんボーナスがある。よその国にはそういうものはないのです。もう本給一つなのです。そして、年功序列というようなものもよその国にはない。日本の国は、年功序列を廃して、若年給をうんと上げる、能率給にする。そうして、現在日本の賃金を安い安いと言っているけれども、これは、私は全国の合板や木材の組合長をしているのですが、それの輸出先はおおむねアメリカとイギリスです。その競争相手はどこかというと、フランスです。それからイタリアです。ところが、プライウッドなんかは、日本の賃金よりもイタリアの賃金のほうが安いのです。しかし、日本の賃金が安いというのは、中小企業から零細企業まで全部平均だから安いのです。そのもの一つを抜き出してやったら、あるものは向こうの国よりも高いものがあるのです。それを全部に平均してやっているものだから、中小企業が高い賃金を払うだけの経済力がないのです。だから払えないのです。中小企業が高い賃金を払いましょうと思えば、中小企業の金融を直してやらなければ払えないのです。だから、現在の賃金のあり方というものを他国と同じような状況にもっていって、労働の生産性向上に正比例した賃金に直さなければ、日本は輸出国として立てないと思うが、これについてどういう考えを持っておられますか。
○山中公述人 おっしゃるとおりでございますが、私ども同友会は、もともとこの問題は、経済団体では日経連とかその方面がおもで、特に正面からは取り組んでおらないのです。いまの給与体系とか賃金体系の問題、これは、やはりいろいろな角度から、従来のあり方では開放経済下にやっていけないという感覚を持っておりまして、今度の教書にも、正面からその問題と取り組んでおりませんが、企業への提言いたしました中に、いまの年功序列とか、そういうことではいけないという問題と、それから生産性と賃金の問題については、個別企業における生産性と賃金の問題が一つあるわけです。それともう一つ、それでは、個別企業で非常に生産性が上がったから、それだけが賃金が上がっていいかという問題にからんで、国民経済全体の生産性との関係をもう少し重視すべきではないか。個別企業で生産性が非常に上がったところは、これを値下げに向けるという形で物価対策の方向と関連さしていったらどうか。これは、今度の年頭の意見の中にごく簡単に触れてある点なんですが、そういう点で、これからの国際競争力強化という角度からすると、いま申し上げたような点は、すべて新しい観点で考えなければならないというふうに考えております。
○松浦(周)委員 もうこれでやめます。実は政府に対しては七%以上の——五%と言いたいでしょうけれども、それは言いかねて七%とおっしゃったと思うのです。それから社会党さんのほうのもあるから、まあ貯蓄奨励及び消費規正ぐらいの線でとめられたと思うのです。ほんとうに国の経済を救うなら、私は、これは五%か三%半ぐらいにして、あるいは賃金のストップ令ぐらいのところまでいかなければ救えないのじゃないかというふうに憂慮しているのです。それでこの質問をしたのですが、そのお答えは得られないと思いますから、これでやめます。
○荒舩委員長 大体御質疑は終了いたしましたが、井上さんに私から一つ申し上げたいと思いますが、実は、私がどうしてもわからない点が一つあります。何といっても銀行は預金をますます吸収しなければだめだと思う。それから預金が集まらなければ中小企業へは貸せない、こういうことであろうと思う。その預金の吸収策について、大蔵省とも、日銀とも、銀行協会連合会はなかなか意見が同一でないと思う。端的に申せば、どうしたら預金がもっともっと吸収できるか。預金が吸収できれば、いま言う消費は美徳だとか、あるいは二宮尊徳論が解消できると思うのですが、そういうことだからこそ、中小企業のいわゆる歩積みだの両建だのという問題が起こってくると思うのです。銀行協会連合会が預金の吸収策を大蔵省あるいは日銀等と御相談いただいて、もっと積極的な手が打てないかと思うのです。地方銀行に参りますと、定期預金を五分五厘で預かって、そうして暮れからお正月にかけて、コールマネーの三銭以上のものを集めてきてやっている。非常に矛盾があるのですが、連合会として大蔵省あるいは日銀とももう少し話し合いをつけて、もっともっと拠金の吸収策に積極的な方法がありはしないかと、しろうとながらそう考えておるのですが、この点、一点質問いたす次第でございます。
○井上公述人 実際いまのような状態では、預金が集まれば金融は楽にできる。これは大企業のみならず、中小企業に対しても十分の融資ができるわけございます。その資金需要がどうだというような問題は別問題といたしまして、資金の需要を前提として考えますれば、できるだけの預金を集めなければならぬということでございます。しかし、この拠金の増加についての一番の根本は、貨幣価値の安定でございます。お金の値打ちが下がるときに貯金をせよといっても、これはできないことでございまして、何といっても物価の安定が第一の前提条件でございます。そのほかに、預金をしよう、貯蓄をしようという意欲は、経済行為でございますから、それに対する報酬をねらって求めるわけでございますから、これはむろん金利でございます。これも、政府のほうでもいろいろな政策がございます。それとのかね合いで考えていかなければならぬわけでございますけれども、金利は、高いほうが預金の増加には役立つということでございます。もう一つは税金でございます。これは、何と言っても預金その他の貯蓄というものに対する課税があれば、金利がそれだけ減るということになるのみならず、相続税その他の関係もございますということで、やはり税金関係がかなり大きな影響を持っております。それ以外は、これは金融機関の個々の努力といいますか、現在は集金などもしております。外交員を派遣しておるところもございますが、そういう窓口におけるお客さんに対するサービス、それ以外に、なおこまかに考えますれば、きめのこまかい、広告であるとか、あるいはその他の大衆に対するPRというようなものも、むろんこれは最大限度、銀行も商売でございますからやっておるわけでございます。そういった一連の前提が満たされれば、むろん貯蓄というものは増強される筋合いになると考えます。
○荒舩委員長 ありがとうございました。 これにて質疑は終了いたしました。井上、山中両参考人には、御多忙中にもかかわらず、長時間にわたり貴重な御意見をお伺いいたしまして、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。(拍手) 明日は、午前十時から引き続き公聴会を開くことといたします。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時十二分散会