法務委員会 第45号
- 発言数
- 126 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 4
- 開催日
- 1964/06/26
会議録
○濱野委員長 これより会議を開きます。 民事訴訟法の一部を改正する法律案を議題といたします。 本案は本日午前十時五十五分本付託となりました。念のため御報告申し上げます。 質疑の通告がありますのでこれを許します。竹谷源太郎君。
○竹谷委員 民事訴訟法の一部を改正する法律案についこ二、三質疑をしたいと思います。 第一に、現行法による場合、手形債権者すなわち所持人が、支払い人なり、振り出し人なり、この手形債務者に対して手形上の訴訟を提起する場合、その管轄裁判所はどうなっておるか。それに対して今回の改正は、第六条の従来の民訴の規定としては空文になっておりましたが、そこへ支払い地を加える、こういうことでありますけれども、その概要を簡単に御説明を願いたいと思います。
○平賀政府委員 現行法のもとにおきまして、手形上の請求をする訴えを提起する場合には、被告となるべき者の普通裁判所の所在地、すなわち被告の住所地の裁判所に訴えることになるわけでございます。
○竹谷委員 民訴の第五条によれば、義務履行地の裁判所に対して訴えを提起することができるように書いてあるが、これは住所地が即管轄であるのか、それとも義務履行地も加えてやってもいいのではないか。そうでなければ、特に第六条に新たな改正をしなくてもいいと思うのですが、どうです。
○平賀政府委員 五条の義務履行地でございますが、手形上の債権、これは取り立て債務でございます関係で、義務履行地はどうしてもやはり被告の住所地ということに相なります関係で、五条の関係からいきましても被告となるべき者の住所地の裁判所に訴えるということになるわけでございます。 それからなお、手形には支払い地の記載がございますけれども、これは解釈が必ずしも確定はしておりませんが、手形に記載されておりますところの支払い地は手形の呈示期間内における支払い地でございまして、呈示期間を経過いたしますると、義務履行地は債務者の住所地ということになるという解釈が正しいと私ども考えておるわけでございます。
○竹谷委員 それでわかりましたが、そこで今度は、手形に記載されておる支払い地も裁判管轄に含まれるということになりますが、専門家の中では、それだけでは足らない、手形所持人の住所地の管轄裁判所にも提起し得るようにするほうが経済上の取引関係に適合するのではないか、こういう意見があるようでございますが、手形所持人がかってほうだいなところに行って訴訟を提起せられるということになると、債務者として非常に迷惑千万な場合も起こる。だとすれば、手形の最初のあて名の受け取り人かなにか、そういう制限のもとに、手形は転々と所持人が十人も変わっていくという場合もございますが、多くは手形は一つの債務証書のような形で最初の債権者、所持人が権利を行使する場合が多いと思うのでありますが、これはなかなか法律上そこを明確にすることは技術的に困難な面があるかもしれませんが、最初の権利者の場合だけで申しますと、最初の権利者の住所地においてもできるというような便法はないかどうか、これは私の思いつきだから技術的にうまくいくかどうかわかりませんが、それに対する御見解を承りたい。
○平賀政府委員 ただいまの御質問は、手形の最初の権利者、手形の受け取り人の住所地というものを考えたらどうかというお尋ねのようでございますが、なるほど最初の所持人がずっと手形を持っております限りではそれでいいかとも思われるのでございますけれども、御承知のとおり、手形というのは本来転々流通する性格のものでございます関係で、第二、第三の権利者というものが出てくるわけでございます。そうなりますと、第二、第三の権利者、ことに現在の所持人の立場からいいまして、最初の権利者の住所地の裁判所の管轄を認めることがはたして権利者のために有利になるかどうか、これは必ずしも有利になるとは言えない場合もあろうかと思うのでございます。それからまた、最初の権利者の住所地は、これは必ずしも手形上にあらわれない。手形上の義務者なんかにとりましては、一体最初の権利者の住所かどうかということは手形上からわかりません関係で、やはりどうしても全然予期しないようなところに訴えを起こされるというような懸念がなきにしもあらずでございます。そういう関係で、この法律案におきましては債務者の普通裁判所、これは同時に義務履行地にもなるわけでございますが、そのほかに手形には必ず支払い地の記載をすることが手形の有効要件になっております関係で、支払い地はその後の手形の取引関係に入ってくる関係者に全部わかるわけでございますから、支払い地の裁判所の管轄を加えるということが一番合理的ではないかというふうに考える次第でございます。
○竹谷委員 手形所持人の住所地の裁判所に訴えを認めるということについての法務省としての御見解いかん。
○平賀政府委員 一部の商工会議所方面から手形所持人の住所地の裁判所の等軸をも認めろという要望がございましたが、これも先ほど申し上げましたように、手形が転々として流通するという関係から申しまして、どうしても手形上の義務者にとりましては全然予期しないような裁判所に訴えを提起されるという可能性がございますので、その関係では被告となる手形上の義務者にとりまして非常に不利になるのじゃないかということで、一部の商工会議所なんかからはそういう陳情がございましたけれども、これを取り上げなかった次第でございます。
○竹谷委員 次に、今回の改正法案によると、通常の場合、最初に支払い命令督促手続で催促をする、そして次に今度新たに認めようとする手形訴訟をする、それで異議申し立てがあれば、結局裁判が行なわれるということになって、三度手続が繰り返されるということになると、手形訴訟をできるだけ短期間に、敏速に、簡潔に処理しようという目的の趣旨とは逆に、かえって手形訴訟を認めるそのために、その期間だけ裁判の確定がおくれる、そうしてかえって所期した目的とは反対の結果になる。こういうような疑いが起こってくるのでありますが、その点について、これは場合場合によることでありますが、どのようにお考えになるか。手形訴訟をやっているその期間だけが結局むだな、訴訟を長引かすという結果になりはしないかということをおそれるのでありまするが、これに対する御見解を承りたいと思います。
○平賀政府委員 この法律案のもとにおきます手形訴訟におきましては、厳重な証拠制限があるわけでございます。原則といたしまして証拠は書証のみに限るということにされております関係で、審理は非常に早く済むと思うのでございます。一たん審理が終わりまして判決がございますと、仮執行の宣言を裁判所が職権でつけるわけでございます。しかも、その仮執行の宣言に基づく強制執行の停止は、非常な厳重な要件をつけております関係で、執行停止も容易にはできない。一応それに基づきまして強制執行ができるという仕組みになっておるわけでございます。なるほど、この手形訴訟の判決に対して異議の申し立てがありますと、判決の確定はおくれますけれども、とにかく手形訴訟の判決がありました以上は、直ちに強制執行ができるということでもって、債権者にすみやかに満足を与えることができる。そういう関係から、たとえ異議の申し立てがありまして、その後の訴訟が通常訴訟に移りまして、判決の確定がおくれるということになりましても、債権者の権利の満足というものはすみやかに得られるということに相なりますので、ただいま仰せのような、確定が非常におくれて、手形訴訟の期間だけ訴訟が遅延するということにならないかということでございますけれども、そういうことにはならぬというふうに考える次第でございまます。
○竹谷委員 支払い命令の外側手続は、異議申し立てをしなければ仮執行の宣言をするぞ、支払い命令を出すぞというおどかしをかけて支払い命令を督促する、こういう意味では、裁判といえども単なる手続上の問題にすぎない。ところが、手形訴訟になりますと、訴訟行為が非常に制限を受けて、敏速に問題を処理するということになりますから、裁判所の審理というものが非常に簡単な、そして制限をされた審理を受けることになるのであります。そうしますと、それに対して異議申し立てが出れば、今度は普通の訴訟手続による。こういうことになって、一ぺん手形訴訟で審理されたことを、また普通訴訟で審理をするということになると、確定判決に対するものではないのでありますが、同じ第一審の段階で一事再理するというふうに見えてくる。いわゆる厳格な意味の一事再理ではありませんが、裁判の級審が三つになっているのが四つにも五つにもなるという形になりはしないか。厳格な意味の一事不再理の原則に反するという意味ではありませんが、それに類することになりはしないか。これはどうお考えか。手形訴訟、普通訴訟と、二つ第一審の段階で同じ問題について出すということになると、むろん一方は著しく制約された範囲内でしか攻撃、防御ができない、また裁判所はその範囲内での審理しかできないのであるが、二重になる。こういう点については法理上どうであるか、問題はないかどうか、承りたい。
○平賀政府委員 手形訴訟の判決がございまして、それに対して異議の申し立てがございますと、口頭弁論終結前の状態に訴訟が復しまして、もう一回裁判をやり直すという形になることは仰せのとおりでございます。しかしながら、ただいまも申し上げましたように、手形訴訟の判決には必ず仮執行の宣言がつきます。手形訴訟の判決確定はいたしませんけれども、原告のほうは、その判決に基づいて直ちに強制執行できるわけでございます。それによって手形の権利者の権利の満足ができるわけでございます。手形上の権利者としては一応訴えの目的を達することに相なるわけでございます。その後に訴訟が今度は普通の訴訟として継続いたしまして、またやり直すということになりますけれども、そのやり直すということによって原告の権利の満足を得ることが非常におくれるということにはならぬわけでございます。 それからなお、手形訴訟におきましては、異議の申し立てがございまして、訴訟が通常の訴訟ということになりまして、判決をします場合には、手形訴訟の判決を認可する、あるいはもしそれが間違っておれば取り消すということになるわけでございますが、認可するという形で裁判をすることになる。もう一回同じように、これこれの金幾らを支払うべしという判決をするのではなく、判決を認可するという形にいたしておるわけでございます。ただいま御質問の点も、私ども法制審議会におきまして、審議の過程において十分検討いたしまして、仰せのような結果にならないようにということで立案いたした次第でございます。
○竹谷委員 そうしますと、手形訴訟と普通の通常訴訟とが合体をして第一審における一つの裁判、そういう形にいけば、訴訟の敏速、簡潔なる促進をはかる意味で、第一審の裁判を一部分割して行なえる。そうしてそのまま承認する場合でも、裁判所が事後承認する、補完をする、あるいは第一審において再審理して手を加える、あるいは取り消すということで、新たな裁判でなく、裁判の訴えのうちの第一審の完結を普通訴訟でやる、こういうような手続だ。したがって、同じことを二度やって一事不再理の原則に反するような場面にはならない、こういう考えでございますね。すなわち、第一審の訴訟手続というものが半分づつ行なわれるといいますか、そんなような考えなら、私も疑問はありますが、これはこの程度にいたしておきます。 それから、この改正法によると、無担保で仮執行の宣言をすることができる、こういうことになります。それは従来でもできるのであるが、裁判所の公正な判断によって今まででも無担保で仮執行の宣言はできたものを、なぜ特に法律で裁判所の判断を制限をする必要があるのかどうか。自由なる妥当なる裁判所の判断にまかしてもいいのじゃないかと思うのであります。それを法律で裁判所に制約を加えるということはいかがなものか、こう判断されますが、これに対してどういう御見解からこういう無担保ということを特に取り上げて規定する必要を認めるか、御答弁願いたい。
○平賀政府委員 現行法のもとにおける仮執行の宣言は、ただいま仰せのとおり、職権でも無担保で仮執行の宣言がつけられることになっておりまして、ただこれは現行法では裁判官の裁量にまかせてあるわけでございます。その裁量権の適正な行使によって十分まかなえるかとも考えられるのでございますが、やはり手形上の債権の特殊性にかんがみまして、できるだけ画一的に処理するということが手形債権の性格にも合うのではないか。そういう関係で、必ず職権でもって、原則として無担保で仮執行の宣言をつけなければならぬというふうにしておくということは十分意味のあることではないかというふうに考えておる次第でございます。
○竹谷委員 これはどうも裁判官を信用しないような形で、その点まずいような気もしますが、しかし、法律上の方針としてこの点がきまれば、手形上の権利というものが相当強くなる点の効果ということも認めるに私もやぶさかではないのであります。 この点はこの程度にいたしまして、しからば手形の信用を一そう確立をするために無担保で仮差し押えさえも認めたほうが一そう効果があるのではないかという意見もあるようであります。これに対する御意見を承りたい。
○平賀政府委員 たとえば手形を疎明資料として出せば仮差し押えも無担保でやれていいのではないかという意見が現実にあるわけでありまして、これは現行法のもとでもそういう運用は十分可能であると思うのでございます。ただ、仮差し押えの問題になりますと、ただいまのところ強制執行制度全般につきまして法制審議会におきまして検討いたしております。そういう関係で、強制執行制度の改正の一環としてなお十分検討した上でこの点を善処したいということで、今回の案には仮差し押えの点までは触れなかったのでございます。しかし、これは断然仰せのような点は問題になるところでございますので、強制執行制度の改正の際には十分その点も考慮いたしましていい案をつくりたいというふうに考えておる次第でございます。
○竹谷委員 手形上の権利がなかなか商人には実現ができない、取り立てがむずかしいというようなことから暴力団などを使って取り立てをするというような弊害はないかどうか、そういう点について法務省は現状をどう見ているか。また、そういう弊害があるならば、これに対処するにはどうしたらいいか、そのためにこうした訴訟手続を簡素にして手形に関する請求の結果のすみやかなる実現を所期するためにこれをつくったんだとは思うのであります。それらについてお伺いしたい。
○平賀政府委員 私ども、商工会議所のほうから資料をもらいまして調査をいたしたのでございますが、それによりますと、手形金の請求につきましては、裁判所に訴えるという場合ももちろんございますけれども、第三者に中に立ってもらって取り立てをしたというケースがかなりあるように思われるのでございます。この第三者の中には同業者でありますとか、あるいは顧問弁護士でありますとかもあるようでございますが、中にはただいま仰せのような、暴力団といっては少し語弊があるかもしれませんけれども、そういう人々の力によって取り立てをしておるという例もなきにしもあらずというふうに思われるわけでございます。これに対しましては、もちろんそういうことは好ましくないことでございますが、私どものほうといたしましては、何としてもやはり訴訟を促進すること、それから判決がございましたらその判決の執行がすみやかにされること、そういう積極的な面からそういう弊害を除去するということに努力をすべきではないかというふうに考えておるわけでございます。今回の手形訴訟制度の新設というのもやはりそういう目的に沿う一つの手段であるというふうに考えております。もちろん、そういう暴力団まがいのものを排除するということは、手形訴訟制度を設ければそれで解決するというものではございません。強制執行制度も根本的に再検討いたしまして、これを合理化する必要がある。裁判所に訴えたならばすみやかに権利の実現が得られる、そういう制度を確立するということがそういう弊害を除去する一番有力な方法ではないかと考えておる次第でございます。私どもの所管の範囲におきましては、近い将来におきまして強制執行制度、それから競売制度の改正案を立案いたしまして御審議を仰ぎたい、そういうふうに考えておる次第でございます。
○竹谷委員 以上で終わります。
○鍛冶委員 別にこれで質疑がないようですから、質疑打ち切りの動議を提出いたします。
○濱野委員長 鍛冶君の動議について採決いたします。 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○濱野委員長 起立多数。よって、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。 ————◇—————
○濱野委員長 この際、恐縮でありますが、日程を変更して別の議題をおはかりいたします。 この際、小委員会設置の件についておはかりいたします。 再審制度について調査をなすため、小委員十一名よりなる再審制度に関する調査小委員会を設置いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 なお、小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、小委員に 上村千一郎君 大竹 太郎君 鍛冶 良作君 小島 徹三君 田村 良平君 三田村武夫君 坂本 泰良君 神近 市子君 赤松 勇君 竹谷源太郎君 志賀 義雄君 なお、小委員長に鍛冶良作君を指名いたします。 なお、おはかりいたします。今後における小委員及び小委員長の辞任及び補欠選任につきましても、委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 なお、ただいま設置いたしました再審制度に関する調査小委員会は、閉会中もなお引き続き存続し、調査を行ないたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 なお、午後一時半から委員会を開会いたしまして、ただいま中断いたしました民訴の問題について審議を進めます。 この際、しばらく休憩いたします。 午後零時二十一分休憩 ————◇————— 午後三時三十六分開議
○濱野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 民事訴訟法の一部を改正する法律案について審査を進めます。 議事進行につきまして発言を求められておりす。この際これを許します。田中織之進君。
○田中(織)委員 ただいま議題になっております民事訴訟法の一部を改正する法律案は、本院では、参議院に付託となると同時に、予備審査として回ってまいりまして、予備審査の段階では若干の質疑を行なっておりますが、本院に正式に参議院より送付になりましたのは、ようやく会期末の本日でございます。わが社会党といたしましては、正式に送付されてまいりましてから、本案についての質疑の準備もいたし、委員長の手元に坂本委員等の質疑の通告も行なっておったわけであります。御承知のように、やはり会期最終日は率直に申し上げまして何かと落ちつきのないものでございます。したがって、こういう手続法の問題についてじっくりと質疑をするというような委員の気持ちにもなれないという点は、委員長も多年の経験から見て十分察知せられておることだと思うのであります。ところが、午前中民社党の竹谷委員の質疑だけで本案に対する質疑を打ち切ったということは、私ども坂本委員等の質疑通告を残しておった段階だけに、私は委員長のこの処置はきわめて遺憾なことだと思うのであります。私どもの党としては、最終日に送付された案件でございますし、もちろん参議院におきましてはわが党も本案には賛成をいたしておりますから、本案については結論としては賛成をいたしたいと思いますけれども、賛成に至るまでの過程においては、やはり十分法運用の指針になるべきことについてたださなければならない幾多の問題を残しておるのでございまして、その道が形式的にはすでに閉ざされておるという点は、私非常に残念に思うのであります。 今後、こういうような重要な案件につきまして、衆参両院のそれぞれ国会運営の立場から、最終日に参議院から送付されるというようなことも間々あろうかと思うのでありますが、本案に対するような取り扱いが前例となったのでは、われわれが国会審議権を十分尽くしたとは言い得ないと思いますので、本案に対する取り扱いの問題は、今後特に立法府の中でも一番重要な法務委員会の審議のあり方といたしましては、絶対に前例としていただいてはならないと思うのであります。その意味から、この点について今後特に最終日の忽々の間におけるこういう審議を十分尽くすことのできないうらみを持つような法案の審議を進めるということは前例としないということについて、委員長よりこの際明確にお考えを承っておきたいと思います。
○濱野委員長 お答えいたします。委員長としてまことに遺憾でございまして、ただいま田中君の御発言の御趣旨によって、将来前例としないように心がけたいと存じます。御了承を願いたいと思います。 本案は先刻質疑を終局いたしております。 これより討論に入る順序でありますが、別に討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。 民事訴訟法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○濱野委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり決しました。 —————————————
○濱野委員長 本案に対し、自由民主党、日本社会党及び民主社会党共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が鍛冶良作君から提案されております。 この際、本動議について提出者よりその趣旨説明を求めます。鍛冶良作君。
○鍛冶委員 いま委員長のお述べのとおり、三派共同の附滞決議を提出したいと存じます。 その決議案を朗読いたします。 民事訴訟法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) この法律案は、中小企業者の利害に重大な影響のあるものであるから、この法律の施行に当っては、裁判所は、本法の精神を体し、迅速正確に手形上の権利者の権利の実現に努められるよう期待する。 右決議する。 以上、説明までもないと思いますから、一同の御賛成をお願いいたします。
○濱野委員長 本動議について採決いたします。 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○濱野委員長 起立総員。よって、本動議は可決されました。
○濱野委員長 この際、本附帯決議に関し政府より所信を求めます。賀屋法務大臣。
○賀屋国務大臣 ただいまの附帯決議の御趣旨には同感でございます。最高裁判所に対しまして、御趣旨の旨を伝えます。 —————————————
○濱野委員長 おはかりいたします。ただいま可決せられました本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議はございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 〔報告書は附録に掲載〕 ————◇—————
○濱野委員長 次に、法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。山田長司君。
○山田(長)委員 この機会に、会期末ではありますが、わが党の委員が本委員会でたびたび質問しておることについてですが、近江絹絲の問題の結論を実は出したいと思いますので、大臣から御答弁願いたいと思います。 それは近江絹絲の政治献金問題についてのことなのであります。告発いたしました内容というのは、一億二千万の横領事件について株主から告発せられましたところが、たまたまその内容につきまして五千八百万の政治献金があるという当時の社長からの答弁に端を発しているわけですが、そこでこの二月ごろこの担当の検事、特捜部長、検事正の異動が起こってしまうのではないかというので、当委員会でわが党の議員の野原覺君が法務大臣に実は質問しているわけです。聞くところによると、担任の検事及び特捜部長あるいは検事正が異動してしまうという話があるが、これについてこの問題の処理が終わるまで異動を差し控えてもらいたいという質問をこの委員会でしているわけです。そのときに法務大臣の答弁は、異動については差し控える旨の答弁がなされているわけです。ところが、そういう答弁がなされておったにかかわらず、たまたま先日四月、五月に担任の人たちを三人とも異動させてしまった。これは何としても私たちにとっては不可解な事件なのです。一体何で三人の担任の検事及び特捜部長さらに検事正の異動をせしめなければならなかったのか、この理由を大臣からひとつ伺いたいと思います。
○賀屋国務大臣 ただいまの異動のことでございますが、私の記憶では、異動をさせないということは申し上げることはまことに困難でございます。よく承っておくというような意味のことを申し上げたと思います。それで、率直に申しまして私は責任は負いますが、法務省の検察官を一々よく存じません。それでただいまの仰せの特捜部長その他がどうかわったか、大阪地方検察庁の検事正が札幌の検察庁にかわったことは承知しております。その異動は私の責任でございますから。ほかの方はかわったか、かわらぬか、率直に申しましていま存じません。そういう次第でございます。
○山田(長)委員 そういう事態があると思うので、当時三月十七日ですが、当委員会で質問をしているわけなんです。政治家として政治献金という問題は与野党ともに明らかにしなければならない筋で、どうしてもこれは明らかにしてもらいたかったので、当時このことについては念を押しておったはずです。しかるに検事正の異動だけは知っておると言う。そういうことがあると思うからこそ、しかもそのことは、このことについて異動があるのだということは流布されておった。流布されておることをわれわれは早くも察知しましたので、こんなばかばかしいことは司法権の独立しておる今日においてあり得るはずがないと思っておったところが、それが偶然とは思われないのです。その転勤が三人ともなされてしまった。このことについて、やはりただいまの大臣の御答弁では、正の異動だけは知っておるけれども、ほかは知らぬということでは、この委員会において担当の検事と特捜部長の異動のうわさまであるがどうだと質問したことについて、それではあなたは聞いておらなかったのですか、検事正の異動だけは知っておるけれども、ほかの連中は知らないと言っておるのじゃ、この委員会で質問したときのことをあなたは知らなかったのですか、うわのそらで聞いておったのですか。
○賀屋国務大臣 関係者を動かさないようにというお話かと覚えておりますが、それで私は、異動しないとは申し上げません。これは検察庁の全体の人事の必要からくるわけでございますから、この事件があったから異動させるなとは私からは言えない次第でございます。お話はよく承っておきますということを申し上げたと思います。それで、いま異動の時期を申し上げたので、その関係者のなにを見ますと、異動いたしております。しかし、異動いたしておりますことは、検察の実行の上に支障がないという判断の上でいたしたのでございます。
○山田(長)委員 大臣はそう簡単におっしゃいますが、あなたの三月十七日の日の答弁では「人事異動は行ないますが、いつ行なってだれが何するか、ちっともまだ私の頭の中にはございません。」こういうまことに逃げのいい答弁をしているけれども、そのときさらに野原君は念を押しておるのです。それは、この問題の結論が出るまではひとつ政治の明朗化のために、これは与野党ともに政治献金の問題というのは、これが黒白を明らかにしなければ政治家の名誉にかかわることであるから、一応明らかにしてもらいたい、その結果によって動いてもらいたいということの質問がされているわけです、あなたに伺っているわけであります。それについて、あなたは、期待に沿うよう努力をするという意味の答弁をされているわけであります。いまのお話を伺っても、それではこれは全然支障を来たさないと言うけれども、あの分厚い調査書類を、担任の竿山氏にかわって、今度新しい吉川検事というのがこのことを担当しているそうでありますが、かなり分厚いものをあらためて新たに見直さなければならないということで、告発側の前堀弁護士に、私、この間大阪へ行って会ってきました。そうしたところが、分厚い書類のためにとてもこれはちょっとやそっとではすぐに調査にかかれぬと言ったそうであります。それでは、これはもうすでに支障を来たしたということになるじゃありませんか。あなたは支障を来たさないと言うけれども、やはり約二年にわたっての歳月を費やされて、われわれがこの委員会で詰問したことについて、さらに私は党の綱紀粛正特別委員長という立場でこのことを明らかにしなければいけないと思って、このことの調査にかかっておったわけでありますけれども、支障を来たさないと言っても、すでに支障を来たしたじゃありませんか。こういう問題は、やはり検事正の異動にあたりましても、特捜部長の異動にあたりましても、あるいは担当検事の異動にあたりましても、このことが起こると思うからこそ質問した。前もってこの委員会で、そういう事態が起こるのではいかぬと思ったので質問をしたわけであります。これでは、ちまたに流布された検事の異動というものがほんとうだったということになってしまう。まことにこれは私たちにとってはゆゆしい問題で、いわば指揮権発動に類似する行為であると思って実は憤慨しているわけです。一体三人の異動の内容というものはどういう理屈をつけてあなた方は三人の異動をしたのですか。竿山検事及び卜部特捜部長、井嶋検事正の三人の異動はどういう内容によってしたものですか。
○賀屋国務大臣 検察庁の人事はあらゆる角度から見なければいけないので、私は異動はしませんということは申し上げていないと思います。御意見は十分伺いますが、一々人事の異動をするとかしないとか言うわけには参らぬと思います。それで犯罪事実があるかないか、これは必ず明らかにいたします。それで支障と仰せになりますが、いまのように調べの上でいろいろございましょうが、犯罪事実を明らかにするということは必ずいたします。それから異動は人事のいろいろの角度からくることでございます。率直に申しまして、私はこういう事務的の異動についてくちばしをいれない、それはいれてもわかりません。へたにいれると間違います。かえって不公平になりますからいれておりません。人事の異動の理由は、申し上げられる範囲があれば政府委員より申し上げます。しかし、人事のことでございますから、必ずごうごうという理屈を申し上げるということは、これはいずれの場所においても困難なことと思います。
○山田(長)委員 この機会に政府委員からもこの異動内容を——何か聞くところによると、担当検事の異動は、函館に娘の女学校の入学に、向こうにキリスト教の高等学校があるので、その高等学校へ入れるために異動したというような話も聞きました。だけれども、この委員会で、事件の真相が明らかになるまでは、この事件を担当されている検事正及び特捜部長、検事の異動については、国民の疑惑がある以上、この疑惑を解くために、検察当局の威信を保つためにも、検事正や特捜部長がこれを明確にするまでひとつ動かさないでもらいたいという、わが党の野原委員が陳情をしているわけですよ。それはなぜ野原委員に陳情してもらったかというと、もうこの事件は途中でやめて、みんな転勤されてしまうのだということがちまたに流布されておったから、これは聞いてみてくれということで、私は野原委員にお願いしたわけだったのです。ところが、はからずもこのとおりの事態が起こってしまったのですから、これはわれわれとしても理解に苦しんでいるわけなんですよ。何で二年近い歳月の間かかってわれわれが調べていたものを新たにしなければならないような事態に、三人とも検事をかえてしまったのかということについて、これはひとつ局長からも伺っておきたいと思うのです。
○竹内(壽)政府委員 人事異動につきましては、私の承知しております限りでは、これは恒例の、通例の人事異動でございまして、特段の考慮によって早くしたり、おそくしたりという性質の人事異動ではなかったというふうに承知をいたしております。ただいま仰せのような事件が現にペンディングになっておりますので、異動をいたします場合におきましても深甚な考慮を払いまして、たとえば竿山検事の後任にこの事件を担当せしめるために吉川検事を指名し、すでにこの竿山検事と吉川検事とが共同でこの捜査に当たり、現に東京へ捜査に参りましたときも、両検事とも参っておるやに私は承知しております。それから特捜部長につきましても、相当年限に至っておりますので、やはり交代をする。これもいま申したように一般の人事異動の例によっていたしたことでございますし、検事正に至りましては、先般の退官されました検事長の候補に上がっておられた方でございまして、これも常識的な人事異動でございます。この間に捜査と関連せしめまして異動したという事実は私は決してないというふうに承知をいたしております。なお、新任検事がかわりましてから後におきまして、鋭意捜査をいたしておりますし、現に東京方面の捜査をさらにするということで、私どものほうも一応の内報を受けておりますが、近日中にもまた上京するような様子でございまして、この捜査を打ち切ったとか、あるいはそういう考えをやめたとかいうようなことは毛頭ございません。その結論につきましては、私も捜査の上でないと何とも申し上げかねますが、あくまで真相究明に努力をいたしておる状況でございます。
○山田(長)委員 通例の異動ということのようでありますが、それならば、去年の国会で質問したとき、さらに去年の七月私が質問したときに、竿山検事は暑中休暇をいままで一日もとってなかったから、八月に暑中休暇を一週間ほど与えるが、その一週間の休暇が終わったならば一意この問題だけに取り組んで、秋までには必ず結論を出すという答弁を、当時私が調査に大阪に行ったときに、担当の特捜部長からも、それから検事正からも聞いておるわけです。ところが夏過ぎて、秋も過ぎて、しかも今度は十月、十一月の選挙になってしまった。私はこの問題の結論を出さずに選挙になったことを非常に苦にした。しかし、何としてもこれは明らかにしなければならないものであると思うので、さらにこの二月も、三月も、四月にわたっても大阪に調査に参りました。その調査に参っている期間中に、みんなこれは異動してしまうかもしらぬという声が出たので、この異動についての事実か事実でないかをこの委員会で確かめて、さらにこのことについてはひとつ大臣の配慮方を野原委員からかわってお願いをしたわけだったのです。ところが、通例の異動であるからということでこの異動をさせてしまったとするならば、それならばなぜ去年の七月、八月の見通しをわれわれにしたのか、なおそのとき刑事局長は、全くその経理に明るい、しかも優秀な担当者にこれを依頼をしておるから、すみやかなる結論が出るものであるということを言われたのは、去年の六月ごろだと思うのです。それがもう一年たった今日においても、その鋭意捜査に当たられた検事は札幌のほうへ伝動されてしまった。しかも特捜部長は神戸に行っちゃった。何とか結論を出して動いたならば、私は承知しますよ。しかし、その調査に当たっていた者を全部かえてしまって、それで通例の異動でありますと、こう言われたのでは、いままで私は努力して捜査に当たったかいがなくなってしまうのです。一体この結論はそんな簡単なことで出る筋のものじゃない。一国の総理に関連のあるような事件でありますから、簡単に出るものではないと思ったけれども、しかし、当局の捜査に当たる人たちの熱意に私は期待をしておって、今日に至ったわけです。ところが全部異動してしまった。それでさらに先月から今月へかけましても、この法務委員会へたびたび顔を出しまして、大臣の御出席があるものかと思って顔を出しておりましたけれども、とうとう今日まで大庭のこの委員会に出席される機会がなかった。とうとうそれだから異動されたあと五月、六月と明らかにこの真意を聞く機へ会がなくて、きょう刑事局長から通例の異動だという話を伺ったわけですけれども、通例の異動というものであるならば、それは明らかに前にわかっていたことだと思う。それならばなぜ去年の七月、八月ごろ、その結論を出すためにスピーディーな督促をするなり——これは全体の政治家に関係のあることだから私伺うのですよ。わが党の一党員とかあるいは自民党の一人、二人の党員にかかわるのじゃなくて、政治献金という大きな政治家の名誉にかかわる事件として考えますから、私はこのことについてのスピーディーな調査方をたびたびおじゃまして伺っておったわけです。それでは一体どういうわけで通例の異動があるというのにもかかわらず、これが去年の秋ごろに結論が出なかったのですか、その理由を明らかにしていただきたい。
○竹内(壽)政府委員 山田先生のおっしゃいますように、検察庁の捜査の結論を早く出すということにつきましては、私どもも及ばずながら側面から努力をいたしてまいっておるわけでございます。ところが、いろいろ捜査に、私も詳しいことはここで申し上げかねていたわけでございますが、問題点があるわけでございます。そういう問題を打破するためにどうして突破口を開くかというようなことを苦慮しておりましたやさきに、昨年の十二月でございましたか、いわゆる総会荒らしの事件が起こりました。これはこの事件とは別だというお見方もあるかと思いますが、検察庁としましては、およそこの半作に関連のある問題であるならば、どこから突破口を開きましても、捜査としてはやるべきことであると信じます。したがいまして、大阪地検当局におきましても、この事件を別件というような考えでなく、総合的な立場からもう一回見ていくという、あくまで慎重な態度で臨むようにということで、もう一回これを見直していくという考え方からいたしまして、その後の捜査を続けておるわけでございまして、漫然と遷延している意味ではございません。このことは先生も現地で御調査なさいまして、ある程度は御理解をいただいておるんじゃないかというふうに私は間接に地検当局から聞いておるわけでございますので、地検当局もこの事件の真相究明を熱心にただいまでもいたしております。先ほど申しましたように、近日中にもさらにまた東京方面の捜査に来るというふうに私は内報を受けておるような次第でございまして、鋭意やっておることは間違いないことでございます。
○山田(長)委員 捜査をやっておらないという、私はものの見方をしているわけじゃなくて、当時の大阪の地検当局の言から推して、夏休みは一応とらしたけれども、夏休みのあと、これがすみやかな捜査をするから、秋までには必ず結論が出る、こう言っておったのが、秋に結論が出ないで今日になってしまっておるから、この点についてどこにその出ない理由があったのか、あるいは結論がまだ出ないとするならば、これは捜査のことにかかっていることではありますが、秋までに出ると言ったことが出ずにいるところが私は理解できない。その見通しだけはあったはずなんですから、その点が理解できないというのです。
○竹内(壽)政府委員 捜査はある程度見通しをつけてやっておりますし、上司からいつごろできるんだというような質問を受ければ、大体このころまでには結論をつけたいと思っておりますというような返事は往々にしてあるわけでございますが、現実に捜査をやってみますと、結末を予定のときまでにつけ得ないケースというものは、これは私も現場で経験がございますが、これはしばしばあるわけでございます。ことに本件につきましては、証拠が隠滅されておったりいろいろいたしまして、十分な真相が明らかになし得ない面も多々あるやに私は承知しておるのでございます。そういうものももう放棄して、もうしようがないということでありますれば、それは昨年の秋ごろでも結論を出すことは、あるいはしようと思えばしたかもしれませんが、私は、国会の熱心な激励もあるわけでございまして、簡単に証拠がないとかなんとかいうようなことで捜査をあきらめてしまわないで、あくまでも食いついて真相究明に努力してほしいということを言っておるわけです。たまたまさっき申した総会荒らしの事件も出てきましたので、それともにらみ合わせながら捜査をさらにその辺から割り出していくことができるかどうかという点を検討しておるわけでございまして、この遅延しましたことは、むしろ熱心からくる遅延でございまして、見通しが誤ったとかなんとかいうふうに、私はこの事件につきましてはとりたくない。私は熱心にやっておるもの、かように思います。
○山田(長)委員 派生的な問題の取り調べを始められたということに私は異議を差しはさむものではないのです。五千八百万の政治献金が明らかにされている過程において、金額が明示されてきたにもかかわらず、この五千八百万の金額についての追及は、強制的な取り調べを当然されてしかるべきだと思うのですけれども、この点が全然なされておらないという話を聞いておるので、それがために次に派生的なことが起こってくるんじゃないかという危惧を持っているんです。その点、どうして強制的な形の捜査がなされないものなんですか。
○竹内(壽)政府委員 事件によりましては、仰せのように強制捜査によって身柄を逮捕し、勾留して調べることもやります。しかしながら、この事件に関しましては、逃亡のおそれがあるかないかという点につきましては、逃亡のおそれはないということであります。証拠隠滅のおそれがあるかないかという点は、供述のそごというような問題ではなくて、供述を求める根拠となる資料の割り出しに困難を感じておるので、その割り出しの資料となりますものは、すべて提出を受けておるわけでございます。こういった一種の会社事件でございますが、この種の事件は、涜職事件とか、そういった事件と違いまして、身柄を拘束して取り調べる必要はない事件のほうがむしろ多いのでございます。問題は、帳簿からどれだけの供述を求めるに足るだけの資料をつかみ出すかということでございますが、遺憾ながら、かなり証拠隠滅がすでにされてしまっておって、関係の数字を説明するような伝票とか、そういったものに十分なものがないという現状であるようでございます。したがいまして、いまこれを身柄を拘束して取り調べるということになれば、何らかの自白を求めるがためだけの身柄の拘束というそしりを免れないわけで、一般に会社事件につきましては、身柄を拘束することもありますが、いま言ったような事態のもとにおきましてはいたさないのが通例である、かように考えております。
○山田(長)委員 汚職事件として告発されておったが、それがたまたま調べておる過程においてタコ配の問題も明らかになってきたということは、過日の当委員会で刑事局長から明らかにされたとおりです。これらのことを考えますと、法的な解釈からしても商法二百六十六条あるいは四百八十九条、四百九十八条、これらに該当する違法行為であるということを私はしろうとながら感知するわけです。ところが、こういう現実な問題が明らかになってきているにかかわらず、やられてないというところに、どうも本人が、もうこの問題は幾らか金を入れたから無罪なんだ、もうこれは全部終わってしまって、国会の終了と同時に、これはもう結論が出て何もないということを本人が言っておるということの、何となしに裏づけを耳にする感じになるわけです。その明らかな商法上の違反になる条文までがあげられておるのにかかわらず、これが取り調べをされずにあるというところに何かしらその危惧を持つわけですが、そうすると、この事件をただいまの答弁から推してみますと、まだ捜査線上にのぼっておるということと、それからもう一つは、通例の一般の異動であって、何らこれに関知せざる、いわゆる一般に流布されているような圧迫等によって異動がなされたという危惧はないと見ていいのですね。
○竹内(壽)政府委員 全くそのとおりでございまして、この異動とこの事件の処理との間には何の関係もない。もちろん関係者が転任いたしますので、多少の不便を生ずることはおおいがたいことでありますが、それもできるだけ円滑を期するように最善の配慮をしての異動のように、異動の結果はそういう配慮が尽くされておることが私どもにはうかがわれるのでありまして、先ほど大臣もお述べになりましたように、この事件の処理に支障のない限り、通常の異動からはずしてそのままにしておくということは人事管理上適当でございませんので、この人山異動が行なわれたと思うのでございますが、そのために影響は最小限度にとどまるように十分な配慮がなされておる、しかも現在も熱心に捜査をしておる。これははっきりと申し上げられると思います。
○山田(長)委員 最後に希望だけを大臣に申し上げて私の質問を終わりますが、どうもこの事件は、できるだけ信じたいと思っていることばかりあるのですけれども、どうかすみやかにやはりこの事件につきましては結論を出すように、通例の異動が明らかになっておったならば、やはり通例の異動前に、異動があることを許されているくらいな状態があったのですから、すみやかな結論を出してもらうべきだったと私は思うのです。やはり危惧の念を持っている事件でございますから、大臣におきましても、どうかすみやかなる結論を出すように、ひとつ新たにこの仕事を初任なされた人たちに叱咤激励をしていただきますように願って、私の質問を終わります。どうぞ大臣ひとつ答弁願います。
○賀屋国務大臣 一般に検察事務を迅速にしかも的確にやっていくということは全く御同感でございます。ただし、私の方針としては、具体的な事件で早く結論を出せということは申さない私の考えでございます。これは非常に人権上重大なことでございますから、そのあれに犯罪ありとお考えになる人は早く早くとおっしゃいますが、もし急いで間違ったら、その人の人権上、名誉の上、すべてにおいてたいへんなことだ。ですから、私は率直に申しますが、しろうと大臣が口を出さぬほうがいい。早くおやりなさいということは言うが、この事件をいつまでにやれとか、それはよくないと私は思う。それが公正を期するゆえんだと思う。私は具体的な指図はいたしません。一般的には早くやれと申します。
○山田(長)委員 ただいま大臣の答弁を伺って、一応もっとものように聞けるけれども、実際は、やっぱり長い歳月を費やしているうちに、犯罪をくらますような行為というものが行なわれないとは限らぬと私は思うのです。こういう問題について、人権に関係あるからのんきにしておけばいいというようなことで、この事件などは、口がたっているうちにもうすでに何かしら横領した金を穴埋めしているのですよ。だから、これは穴埋めする期間を持ってやったのではないかという印象すら持っているのです。そういうことが起こり得ると思ったのでこれは早くしてもらいたいということを頼んでおったのです。大臣の考えている考え方と私の考えている考え方とは違っている。時間を待っているうちに横領した金を一部穴埋めしているのです。穴埋めしたものはそれじゃ犯罪にならないのかということになる。こんなばかばかしいことがあるものですか。ちまたには、小さな金額でも物品でも、横領する場合には完全に横領の犯罪者として扱われていると思うのです。五千八百万という横領をしたということが明らかなんです。第一本人が言っているのですから。本人が言っているのを、そのままにしているうちに、本人が今度穴埋めしているのです。ただ穴埋めしたからそれで済むという筋合いじゃない。待っていたから穴埋めした。だから、その事件を調べる内容、あるいは捜査上におけるいろいろ急いでもいいものもあるだろうし、思いものもあるだろうし、この事件について急がなければならぬという結論も場合によっては出なければならなかった筋のものだと思うのです。大臣のおっしゃった答弁だけでこれは処理できるものじゃないのです。その点どうです。
○賀屋国務大臣 私のしろうと論では、穴埋めをしても、横領したらやはり犯罪になると思うのです。しかし、それはとにかくといたしまして、穴埋めをさせる時間を与えるために捜査をゆるめるとか、そういうことは決してございまません。これは断じてあるべきものじゃないので、そういうことは私は厳重に早くやれと、そういう意味においては申します。ただ、お気持ちはよくわかりますが、誤解があってはいけません。私は期限を切ってやれとか、かえってそれはよくない、それはほんとに逆の場合には、何だ、こんな場合には逮捕しないのに逮捕してけしからぬ、早急に結論を出して人を傷つける、こういう非難もずいぶん受ける。またそういう非難があってはいけないのです。きわめて厳正公正に、たゆまず、その意味において迅速にやるということは、私はそのとおりに指揮いたします。
○山田(長)委員 これで私の質問を終わります。この事件は、はたで見ていると、こういう手が打たれるのじゃないかと思っているそのたびに手が打たれてきたのです。だから私は疑念を持っておるわけなんです。たまたま偶然の一致であったかどうかわからぬけれども、ともかくそう思っているとおりの手を次々と打たれてきている。そこで大臣に、やはり急ぐべきものは急いで指示をしなければならぬと思いましたから、老婆心ながら申し上げたわけです。この結論は急がぬというようなことでありますけれども、どうかすみやかに厳正公平にやっていただきたいと思うのです。これを要望して私の質問を終わります。
○濱野委員長 志賀義雄君。
○志賀(義)委員 去る四月三日の当法務委員会において、下山事件について、私は死体検案書並びに物質鑑定書の提出を請求いたしました。数日前から本日にかけて、全法務委員にこの資料が渡ったようでありますが、これを見ますと、他殺である、死後轢断である、静止状態で轢殺されたものであるということがはっきりしておりますが、東京地検検事金沢清名義で鑑定を嘱託した結果の報告が昭和二十四年十二月三十日、及び東京地検検事布施健の鑑定嘱託で秋谷七郎を鑑定人として昭和二十六年二月十九日に鑑定書の報告が出されております。死後轢断、しかも他殺であるということが書かれておりますが、これは検察序としては肯定して、この嘱託した鑑定の結果に従って今日まで捜査を進められたものかどうか。それをまず伺いたいと思います。
○竹内(壽)政府委員 犯罪の成否に関する判断は、鑑定書が唯一のきめ手ではございませんけれども、少なくとも科学的に判断をいたしました一つの結論として、いまお読みになりましたような判断が出ておるわけであります。検察庁におきましては、この鑑定も一つのよりどころとし、その他諸般の事情調査の結果に基づきまして、他殺という疑いがきわめて濃厚であるという観点に立ちまして、今日まで検察庁の立場で捜査を続けてきた、かように承知をいたしております。
○志賀(義)委員 それでは、この鑑定書も有力な参考にして今日まで他殺の疑いきわめて濃厚のものとして捜査されてきた。その結果、おおよそこの犯罪がどういう経過で行なわれ、また犯人がおおよそどの範囲にしぼられているということが明らかになったでありましょうか。どの程度まで明らかでありましょうか。と申しますのは、この七月五日に十五年の時効になります。そうなりまして、時効になったら、これはもう捜査を打ち切ったのだということになる。しかも、当法務委員会においては、この通常国会はきょうが最後の日であります。その点についてはどの程度まで明らかになっておりましょうか。まだ、捜査を進めているから、そこは申し上げかねるということになりますと、法務委員会では、もうきょう伺うのがほとんど最後になって、七月五日は時効だ、こういうことになる危険がありますから、その点いかがでしょうか。
○竹内(壽)政府委員 私の聞いておりますところでは、まことに遺憾ながら、今日まで真犯人と思われる容疑者を確定するに至っていないわけでございます。その間、どういう捜査をしたかということにつきましては、いろいろ苦心があるようでございまするけれども、その内容につきまして、私ここで申し上げることは適当でないというふうに考えておるのでございます。御承知のように、この事件につきましては、鑑定としまして、死後の轢断であるかどうかという点につきまして、生体でもこういう轢断現象があり得るというような意見を述べた鑑定者もあるわけでございます。したがって、あらゆる捜査を遂げました中においては、これは自殺ではないだろうかという嫌疑もあったようでございまするし、それらの双方につきましてまんべんなく——まんべんなくということは悪いことばでございますが、あらゆる、できるだけの捜査を警察当局においてもなすったはずでございます。検察庁におきましても、検察庁も独自の立場でこの捜査に当たったのでございます。しかし結果は、いま申しましたとおり、犯人の割り出しに到達できないという現状でございます。しかし、なお今日といえども、情報その他について検察庁が受け取っておりますものにつきましては裏を当たってみるといったような捜査は引き続きやっておるというふうに承知をしております。
○志賀(義)委員 では、鑑定書に従いまして伺いますが、はっきりしたことは御答弁願いたいと思うのでございます。 おそらく鑑定書が出たら、それに従っていろいろ捜査を進められたことであろうと思いますが、第一に、下山総裁がはいていたくつでございますけれども、「靴の色は、下山氏が自宅で常時使用していたクリームは、朱系の赤茶であって、現に塗られているクリームの色は全く異ったものである。」しかも鑑定結果の第二には、「アスファルト様物質を踏みつけた時刻以後は、この靴を誰も履いて歩かなかった。」こうなっております。そうしますと、くつはアスファルト様物質のある場所で脱がせ、おそらくよごれていた。あるいは証拠を隠滅するためかしれないが、きれいにくつを塗りかえた。そのくつのクリームの色が全然違う。このクリームの色は、あとからつけたクリームはどういうクリームであるか、この鑑定の結果でははっきり出ておりませんが、そういう点は検察庁としてはお調べになったのでしょうか。現に轢断された場所にはこのくつがありましたね。これはどういうことになりますか。
○竹内(壽)政府委員 検察庁においては、その鑑定の結果問題とされておる事項につきましてはもちろんのこと、その他およそ推定できる、憶測できる限りのあらゆる推定、想定のもとに捜査をしておると聞いております。
○志賀(義)委員 そうすると、そのクリームは日本製のものか、外国製のものか、どういう系統のものか、そういうこともお調べになったのでしょうか。
○竹内(壽)政府委員 その点は確認いたしておりませんが、捜査をしているに違いないと、かように思っております。
○志賀(義)委員 そういうことも発表されていませんから、あなたのほうでは確認されているというのに、この結果ではわかりませんから、それで私が、こういう結論だけでなく鑑定書全体を示していただきたい、そうしてさらにそれに基づいて検察庁がどういう調査をされたかを示していただきたい、こういうことを申したのは、そういう理由があるからでございます。ですからこの前も私は、なおこの鑑定書についていろいろ調査になったことも発表していただきたい、こういうことを申したのであります。これはなおあとで申しますが、その次に、桑島直樹外三名の鑑定の中に、「死因並に自他殺の別」の中に、「死因として最も考えられ易いのはショックである。又、本屍は他殺されたものと推定します。」となっておりますが、このショックはどういうことで起こったと検察庁はお考えでございましょうか。
○竹内(壽)政府委員 この点につきましては、この鑑定の結果に書いてあること以外に、このショックをどう理解したかということは、これも捜査の中に入ることでございますので、私としてはお答えしないのが適当であろうと考えます。
○志賀(義)委員 桑島鑑定の鑑定結果の一「傷害の部位程度」「本屍の陰莖、右睾丸、右側胸部及び四肢には、夫々出血を伴う鈍傷を存し、」となっております。「又殆ど全身に出血を伴わない離断その他の鈍創傷を存している。」そうしますと、これは法医学のABCから申しましても、前の「夫々出血を伴う」というのは生体であったときにやったものだろうということがわかる。ところがほとんど全身、今度は離断ですね。離れて切れ切れになったときには出血を伴わない。これは死体になっても轢断されてばらばらになったときには血が出るはずのものであります。これが血が出ていないというのは、この点はどういうわけかお調べになりましたか。さらに下山君の血液型はA型であるということまで鑑定の結果出ておりますが、しかれてもうばらばらになったときに出血がなかったのはどういう理由かお調べになりましたか。
○竹内(壽)政府委員 鑑定書の理由の中に明らかにされておる事項だと思いますし、検察庁としましても、その鑑定の結果につきまして、それに伴った裏づけ捜査、そういうものを一応遺憾なく尽くして調べをしたと私は考えております。
○志賀(義)委員 遺憾なく調べたら、そのばらばらにされた、しかれてばらばらになったときに出血を伴わなかったのはどういう理由でありますか。そこは検察庁でお調べになりましたか。それを伺っているのですが、その点はいかがでしょうか。
○竹内(壽)政府委員 ただいま申しましたように調べておると思います。
○志賀(義)委員 たよりない答弁ですね。これは血を抜き取ったのではありませんか。血を抜き取らなければこういう現象は起こらないのではありませんか。その点はいままでの過去の事例なんかでいかがでしょうか。死後轢断でも血は出るはずですが、これはいかがでしょうか。血を全然伴わないで死体がばらばらになるとすれば、しかもこれが他殺であるとすれば、血を抜き取ったというふうに考えるよりほかはないのでありますが、その点はお調べになった結果どういうふうに出ているか、これを伺いたいのであります。
○竹内(壽)政府委員 その点はどういうふうに調べたか、その調べの結果を御質問でございますが、その調べた結果は、私ここで申し上げることは、先ほど来申しますように、はばかるわけでございまするが、この鑑定結果の一のところに書いてありますような現象、外見所見でございます。この所見から学問的に死体を轢断したものであるかどうかということが、先ほど申しましたように法医学的に異論もあったことば申し述べたとおりでございますし、また、当日の前夜来のひどい豪雨のあとで発見されたといったような点等、これはもう現場におきましては、詳細に調査をされたことと思いますが、その結果どうなったかということは、私としてはお答えをいたすのは適当でないというふうに考えております。
○志賀(義)委員 その豪雨があったために血が流れた、散ったということですね。そういうふうに御答弁なさるのですか。しかし、それでもなお普通の状態ならば死体の中に残る血液もあるはずですね。死体の中に血が残っておったのか、あるいはこれを抜き取ったために死体の中に血がもうなかったのかどうか。そういう点は私でさえもすぐ疑いを持つところでございますが、いかがですか。公表をはばかると言われますが、何ですか、遠慮なさるところがあるのでございますか。これをはっきりするとぐあいの悪いことがあるのでございますか。
○竹内(壽)政府委員 ぐあいの悪いことは捜査中の記録の内容を明らかにすることでございまして、それ以外に理由はございません。
○志賀(義)委員 そうしますと、捜査に差しつかえがなくなったら発表されるとおっしゃるのですか。
○竹内(壽)政府委員 それは検討いたしました上で判断をいたしたいと思います。
○志賀(義)委員 今日まで、こういう鑑定書が出て、これを重要な参考として調べられてきて、もうあと時効になるのが迫っているときに、遺憾ながらわからない、しかも捜査内容については発表できないというのでは、私はこれはよほど何かあなた方が遠慮されるところがあるんじゃなかろうか、こういうふうに鑑定します。あなたのいまおっしゃったことはとうてい首肯できません。だからこそ、こういう結論だけでなく、捜査の過程で一この鑑定書でも、ここに至るまでの詳しいこと、なおそれによって裏づけされた捜査、こういう点について発表していただきませんと、検察庁に対しての疑惑がますます深まります。 では、もう少し伺いますが、先ほどのくつですね。轢断の現場には散乱してあった。しかも本人がアスファルト様の物質を踏んだあとが——はいていないくつですね。そのくつに何がついているか。「アスファルト様物質と緑色色素とを踏んだ時刻」、これが同一場所にあった場合はどちらを先に踏んだか。とにかく同一床面上にあるからどちらでもいいことになる。また別個の場所と考えた場合には「色素類を先に踏み、その後にアスファルト物質を踏みつけたことになる。」こうなっております。「文藝春秋」及び「改造」、当時のこの二つの雑誌に出たところによりますと、警視庁の自殺説によると、これは下山総裁があの場所に行って線路に上がるまでに踏みつけた草の色素であると言われている。しかし草の色素、葉緑素は御承知のとおり有機物質、植物性の色素です。しかるに鑑定の結果は植物性の画素は一つも出ておりません。この緑色色素は、鑑定書にははっきりと次のように、書いてあります。油蝋製のペンキかクレオンのような物質も含めての色素が、鉱物性のものですね、これを踏んでいた、こういうふうになっております。そうして、そのあとで今度はぬか油が下帯、シャツ、ズボン、こういうようなものにもついておりますね。この油のあった場所はアスファルト様物質や緑色色素のあった場所とは別個でなければならない。また、おそらく普通の屋内の平面上に、この油は数リットル以上あったと推定される。油が着衣に付着した時刻は、アスファルト物質や色素の付着以後の時刻ではないかと推定される。そうしますと、アスファルト様の物質と緑色色素のあった場所と、このぬか油のあった場所、これはこういう鑑定書が出るならば、その場所はどこであるかということを検察庁はお調べになったに違いない。お調べになりましたかどうか。
○竹内(壽)政府委員 当然調べていると思います。
○志賀(義)委員 その場所は、日本人の住む場所ですか、外国人の住む場所ですか、あるいはまた軍事上の施設であったかどうか。そういう点はお調べになりましたか。あるいは推定されましたか。
○竹内(壽)政府委員 この鑑定書を見まして、志賀委員もいろいろ疑問を出されますし、私が見ましてもいろいろ疑問の点——こういう点は調べているだろうかどうだろうかという点は多々あるわけでございまして、私はその一々につきまして、これはこうなっておる、これはこうなっておるという説明は、先ほど来申しますように、私は申し上げるのは適当でないと思うのでございますが、東京地検当局としましてはあらゆる捜査をいたした。抽象的に申しますと、まことに抽象的でございますが、あらゆる調査をしました、こう申しておるわけでございまして、調査をしたに違いないわけでございます。さよう御了承願いたいと思います。
○志賀(義)委員 そうしますと、あなたははっきり申されないけれども、あらゆる場所を捜査した。そうしますと、いまのような物質のある場所は非常に限定されますね。米ぬか油はどういうところにあるか、それが数リットルも家の中の同じ場所へこぼれておったとか、そしていまのようなアスファルト物質と色素があった、こういうところは場所が非常に限定されますね。そうしますと、あなたはここでははっきり言われないけれども、検察庁ではおおよそしぼって捜査をしたということだけはおっしゃれるのでございますね。
○竹内(壽)政府委員 おことばの意味がよく理解——間違って理解をしておるかもしれませんが、この鑑定も、一つの、えられた資料からする一つの推定でございますので、この推定がすべて間迷いのない推定であるという前提に立って、そういうところ、ああいうところというふうに判断をしていきますことは、これは私どもの実際にやりました経験に徴しましても、必ずしも適当ではございませんので、もちろん、これをよりどころにはいたしておると思いますが、できるだけのことをやったというふうに申し上げざるを得ないのでございます。
○志賀(義)委員 そのあとに、今度は石炭がついているのですね。右腕の黒みがかったところが、特徴のある黒みとよごれ方をしている。あたかも石炭のあったところへ、右腕が指先を先にして突き入れて汚染されたかのごとき状態、こうなっております。そして、要するに下山氏は、当日の朝から轢断現場までの間に次の場所を経たと考えられる。「(一)アスファルト様物質のあった場所、(二)色素(油蝋製のペンキかクレオンのような物質も含めて)のあった場所、(三)米糠油と鉄の破片又は粉末のあった場所」これは同時に付着したものですね。「(四)建築材料の如き塗料のあった場所、(五)石炭のあった場所、常町国鉄等に優先的に配給せられていた高カロリーのものと類似した石炭のあった箇所とも考えられる。」右腕に黒みがついている。そして指先にもついている。これが国鉄なんかで使う高カロリーの優良炭と類似したものと思われる。この石炭の場所なんかも一応は捜査なさったかどうか、その点を伺いたいと思います。
○竹内(壽)政府委員 この辺の記述は、科学的に見た可能性の高い一つの推定だと思います。したがいまして、この推定は単なる想像ではないわけでございますので、これに相当する場所があったかどうか、あるとすればどこであったろうかというような点等につきましても十分な捜査をしたと承知をしております。
○志賀(義)委員 そういうふうに捜査をされたところでは、自殺説と他殺説、検察庁としては結局これをどちらにとりましたか、そこから出てくる結論は。これを伺いたいと思います。
○竹内(壽)政府委員 私の承知しております限りでは、今日でも他殺説が有力である、他殺の容疑が濃厚であるという立場に立ちまして、そう信ずればこそ捜査を放棄せずに、今日まで鋭意可能な限りの捜査をいたしてまいったのでございます。
○志賀(義)委員 なお消化器、ことに胃の中にあった食べものの検査をやっておりますね。その結果、何を食べたかということはわからない。もうほとんど消化された状態になっていた。少なくともほとんど消化し尽くした時間、数時間ないし十数時間ということから、これは桑島鑑定書のほうでありますが、鑑定結果の五に「飲食物の種類並に飲食より死亡時までの時間、最後に摂った飲食物の種類は判定しえません。最後の食事をとってから死亡時までの時間は、数時間以上十数時間である。」こうなっております。そうなりますと、食事も与えられずに、前に食べたものはほとんど消化し尽くすほど長時間にわたってこういう作業が行なわれた。消化機能は死んでしまえばありません。死んだあとの解剖報告はこういうことになっておりますから、これは相当長時間にわたってやられた。また食事のあと相当長時間たってからこういうことが行なわれたということもわかるのでありますが、下山総裁が例の車に乗って方々回って、最後に姿を見失った場所、そこからの時間を考えてみます。そうして両方の鑑定書はいずれも死体解剖をやったのが昭和二十四年七月六日、幾日の午後一時四十分でありますが、「死後約一五、六時間を経過しているものと推測します。」というのが、桑島さん外三名の鑑定の結果であります。なお、秋谷鑑定書によりますと、死亡時刻は「下山氏の心臓の搏動の停止した時刻は、本鑑定人の測定法の結束では、七月五日午後九時半となったが、この時刻を中心に、前後二時間ずつの誤差を考えに入れると、同日午後七時半から同二時半頃までの間となる。」こうなっております。そうしますと、午前中に姿を消して死亡に至るまでの時間は相当長時間を経過していることになる。その時間の中の足取りその他についてはお調べになりましたか。
○竹内(壽)政府委員 当時の新聞にもいろいろ記事が図面入りで出ておることを私も記憶いたしておりますが……。
○志賀(義)委員 新聞のことを聞いているのじゃない。捜査のことを聞いておるのです。
○竹内(壽)政府委員 捜査の結果の内容は、私先ほど申し上げたようにお答えできませんが、与えられた資料は十分検討して捜査をしたというふうに聞いております。
○志賀(義)委員 死体が轢断されたのは翌日のまだ夜の明けない前でございますね。死体の発見されたのが七月六日の午前五時何分でございますか、そうなりますと、列車の運転その他について、当日列車が一本間引きされたということがいわれております。そういうことばあったのでございましょうか、いかがでしょう。
○竹内(壽)政府委員 私もそういうふうに聞いております。
○志賀(義)委員 ただいままで伺ったところでは、非常に奇々怪々の事件でございます。ケネディ大統領が殺された。前方と後方から殺したという説もある。オズワルドが建物の上から殺したという説もある。いまもって判明いたしません。しかし、これでアメリカという国にいかに暗黒の犯罪状態があるかということがわかります。これはアメリカが全世界に向かってその道徳的権威を失墜した最大の事件の一つであります。ただいままでのお話、鑑定書がこういうふうに出ておる。それから鑑定書ができてからも十四年半もたっているのに、そうしてあなた方が、あなたのことばで言えば鋭意捜査をなさっても、いまだにはっきりしないということでは、これは一体どういうことになりますか。あなた方自身で、これはやはり道徳的権威を全世界の前に失墜する状態のままこれを時効にしておくということになりますが、どうでしょう。早く時効になればいいとお考えですか、どうですか。そこのところを伺います。
○竹内(壽)政府委員 私がいままでお答えしておりますのは、検察庁として独自の立場で捜査をした模様について申し上げてきたわけでございまして、検察庁とは別に、また警察が大きな警察力をあげて捜査をしたわけでございます。まあ、私ども検察庁に関しまして申し上げますならば、検察官の捜査にはおのずからなる限界があると申しますか、人手その他の関係で限界があるわけでございますが、限度をかなり越えて熱心にやりましたことは私もよく承知をいたしております。そういうことでありますが、結果におきまして犯人を割り出すことができないで今日に至りましたことは、検察庁といたしましてはもちろん遺憾千万なことでございますし、私どもも法務大臣を補佐する立場で検察庁関係の検察行政に携っております者といたしましても、しごく遺憾に存じます。いままでもこういう重要事件で犯人未検挙のまま公訴時効を経過した事例も絶無ではございませんが、ほんとうに申しわけない、遺憾千万であるというこの一語に尽きます。
○志賀(義)委員 繰り返して申しますが、七月五日が時効の期限になりますが、これは将来とも、いままでお調べになった結果を絶対に発表なさらないつもりなのか。こういうところまではしぼってきたんだ、しかし最後のところを割り出すことはできなかったというような、今日までの全捜査の結果及び鑑定書の詳しいものまでも含めて、これは何らかの形で発表される御用意があるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
○竹内(壽)政府委員 その点について、東京地検当局にどういうふうな態度をとるべきが相当であるかということを申し伝えてはございますが、まだ結論を得ておりません。
○志賀(義)委員 すでにある週刊誌では、いま発光されておりますものに、いろいろ下山事件のことが、暗黒に包まれたままだと出ております。きょうの夕刊あたりにも早いところ出ているものもあるようであります。今後も出るでありましょう。そうなれば、検察庁は今日まで一体何をしたのか、また警察はどうしたのか、警察の自殺説と検察の他殺説と二つありますが、そういうことについて多くの日本人は疑惑に包まれたままわからないということになる。警察でも、あの吉展ちゃんのことはいまでも全力をあげて調べていると言われるが、警察のことはしばらくおくとして、検察庁は、あと時効まで十日足らずの間ですが、これをなお極力捜査を進められるかどうか。進められるについては、さらに範囲をしぼって、ここまでは確実に進みそうだというお見通しがありますかどうか、その点を伺いたいと思います。
○竹内(壽)政府委員 どういう見通しを持っておるかという御質問には、私十分答えられないのでありますが、現段階におきましては、いやしくも下山事件に関連のありそうな事項については、そういうものが検察庁の耳に入ります限り、その裏づけ等の調査をいたしまして、最後の最後まで捜査体制をくずさないで続けていく所存だというふうに私は聞いております。
○志賀(義)委員 最後の最後までというのは、いつまでのことでございますか。七月五日までのことでございますか、どうでしょうか。
○竹内(壽)政府委員 最後の時期といいますのは、公訴時効の成立いたします。月五日を一応の目標にしておりますが、ものごとの真相というものは、公訴が提起できなくなったから真相が消えてしまうものではございませんので、今後といえども、起訴ができるできぬということは別といたしまして、真相を明らかにしていくという気持ちはなおも続けていくものと思いますが、捜査という形で処理をいたします場合には、七月五日をめどにして、最後の最後までというのは、そこを一応のめどとして仕事をしていく、こういうことだと思っております。
○志賀(義)委員 たとえば七月五日になりまして、報道機関のほうで、いよいよ時効がきょうで切れるというときになって、法務当局及び検察庁に何か発表なさる御用意がありますかどうか。ただこのままでほおかぶりじゃ済むまいと思いますが、その点で御用意がありますかどうか。
○竹内(壽)政府委員 それは先ほど申し上げましたように、どういうふうに対処するのが検察庁として一番いいかという点を、いま東京地検のほうに考えてもらっておりますが、法務当局としてどういう態度をとるかということにつきましては、今後大臣にもよく御相談申し上げまして、最終的な決定をいたしたいと思っております。
○志賀(義)委員 では最後に法務大臣に伺います。 前に伺いましたときに、決してこれをうやむやにしておくのではない、苦慮しているところであると言われましたが、ただいままで申されたとおりの御答弁でありますけれども、法務大臣としてはこの問題についてどういうお考えでございますか。それを伺いたいと思います。
○賀屋国務大臣 刑事局長が申しましたとおりでございます。
○志賀(義)委員 この前は苦慮していると言われたのです。まだ御苦慮中でありますかどうか。そこの御心境をちょっと伺いたいのでございます。刑事局長は刑事局長、あなたはその主なんだから……。
○賀屋国務大臣 全くどうもお活のように時効が迫りますし、長い間調べてなかなかわからない。これから一生懸命やったら、あと十日のうちでわかるか、これは率直に申してどうなるかわかりませんが、そういう意味ではほんとうに苦慮しておるわけであります。発表するかしないか、五日の夕方にそういうことをするかしないか、大体は刑事局長が申し上げたとおり。実はそこが私も実際よくわからないのです。それはいろいろなことが言われますけれども、それじゃ言われたことがみなほんとうか、信ずるわけにも正直に言ってまいりません。ほんとうのところむずかしいのでございます。どうするかということにつきましては、大体事務当局の考えておりますそのとおりと申し上げるほかないと私は思います。
○志賀(義)委員 松川事件の被告にされた人たちが無罪であるという判決は出ました。しかし真犯人はわからない。下山事件に至っては、ほかに被告としてつかまった者があるわけではなし、ほんとうにこれは全くわけのわからない事件になっているのであります。どうでしょうか、これは日本人でない者がやったんだというような推定を下し得るいろいろな手がかりは、今日までのところでございましたかどうか。そういう点はどうでしょう。
○賀屋国務大臣 それはお答え申し上げかねます。いろいろ推定はございましょうが、やはりこれは全く重大なことでございますので……。
○志賀(義)委員 これで最後にしますが、いままで伺ったところでは、何だか調べているようだが、さりとてどういうことをされているのか、私どももさっぱり首肯のいくようなお答えはありません。率直に言って、私は、もう法務当局も検察庁も警察も、これをほおかぶりをして済ませるつもりじゃなかろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。法務大臣は暴力法を通すためには一生懸命になられるが、こういうことはとんとあまり御熱心でない。そういうことでは、これは政府及び法務当局、警察、検察に対する国民の信頼が失われる。それで暴力を取り締まると言ったって、これはなかなかうまくいきもしませんし、また国民が迷惑する結果になるのであります。なおあと九日ばかり残されておりますから、ひとつもう少し踏んばってこの点を明らかにしていただきたい。きょうの御答弁は一つも私どもを首肯させていない。国民もあなた方の御答弁には満足しておりません。国民の信頼を失うくらい危険なものはないのであります。こういうことを申し上げまして、とにかくいままでお調べになった、これでは不十分ですから、少なくともこの鑑定に関するものだけでもひとつ出していただきたい。これをお願いしまして、私の質問を一応終わることにします。
○賀屋国務大臣 志賀さんに御納得いただけないのはまことに遺憾でございます。私どもは国民の信頼を失っていないし、この上一番それを重大に考えまして、ほんとうに善処するつもりでございます。
○濱野委員長 細迫兼光君。
○細迫委員 入国管理行政についてお尋ねをしたいと思います。 国交未回復の国からの入国許可申請について、これを許可するかいなかという処理をするにあたっては何らかの基準を持っておられると思います。たとえば要人であれば、その警備の態勢がとれるかとれないかとか、あるいはいわゆる政治活動を使嗾するおそれもないとかいうようなことが判断の基準になるのではないかと想像するのでありますが、何らかの基準というものをお持ちであるならばお示しを願いたい。
○富田政府委員 未承認国からの入国問題の処理の取り扱いにつきましては、未承認国と申しますのは、やはり政治体制が違うということ、それと対立点などもあるということで未承認になっておるのだと存じますが、そういうことを考慮いたしますと、未承認国からの入国問題というものにつきましては、やはり内政上、外交上の問題もいろいろ考慮いたしまして処理するわけでございます。そこで貿易、経済でございますとか、スポーツでございますとか、あるいは演劇関係と申しますか、文化関係と申しますか、そういうような面でわが国の利益にとってもこれはプラスになるという面につきましては、これはできるだけ交流を認めていこう。ことにそういう目的でいらっしゃいます方は、はっきりしたそういう目的にのっとって行動されますので、政治的な活動をするというような心配もございませんし、そういう方々については、できるだけこれを認めていきたいと考えているわけでございます。しかしながら、目的がはっきりしないと申しますか、ただいま申し上げましたような貿易、経済、スポーツ、演劇、そういうものでなく単なる友好親善というような名目だけで、内容が必ずしも明確でない場合には、とかく従来の実例に徴しましても、日本の重要な基本的な政策を批判されましたりするような言動もございますし、こういうものについてはできるだけ慎重に考えてまいりたい。それを考慮する際に、いろいろと在日の保証人の力から、こういう活動はさせないというような誓約をしていただくわけでございますが、その誓約につきましても、従来の経験に徴しますと、はっきりこれが入ってこられる方々に徹底しておるかどうかというような問題もございますので、そういうような問題を全部総合いたしまして、これは入国を認めてもよかろう、これはいろいろな保証をつけて認めようというふうに処理しているわけでございます。
○細迫委員 処理せられるにあたって、いわゆる自由諸国、イギリスであるとか、イタリアであるとか、西ドイツであるとか、オランダであるとかいうような国々の処理方法なども参考にせられますか。そうしてそれらの国となるべくなら同様な扱いをしたいという気持ちがありますかどうか、その点をお伺いします。
○富田政府委員 諸外国の取り扱い事例をわかるだけ収集いたしまして、それを参考にすることはもちろんでございますが、やはり日本の置かれた立場というものは、日本特殊のまたいろいろな立場もございますから、そういった諸外国の取り扱いを参考としつつ、日本は日本で独自にきめてまいるということに相なると存じます。 先般、これは新聞で拝見したのでございますが、NATO諸国が東独人の入国に対する制限を解除したと申しますか、入国を認めるということになった際に、やはり東独政府の支持をするような言動をさせないという保証と申しますか、制約をつけて、NATO諸国への入国を認めたというようなニュースも聞き及んでおりますし、やはりそれぞれそういった問題を考慮しているんだなということを、われわれもそのニュースを聞いて感じた次第ございます。
○細迫委員 ことに船舶がわが国の港に寄港した場合の船員の上陸につきましては、これは諸外国にほとんど国際法令と言っていいような慣習ができておると思います。その慣習は尊重したいというお気持ちはありますか。あるいはよそはよそだ、日本は日本独自だということで考えておられますか。
○富田政府委員 もとより諸外国の慣行等は十分に参考にしてまいりたいと存じております。
○細迫委員 あとまだ大臣に聞きたいことがありますけれども、大臣がおられませんから、また個人的にでもやることにいたしまして、質問を終わります。
○濱野委員長 本日は、これにて散会いたします。 午後五時十八分散会