法務委員会 第41号
- 発言数
- 58 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1964/06/05
会議録
○濱野委員長 これより会議を開きます。 法務行政及び検察行政に関する件、人権擁護に関する件並びに裁判所の司法行政に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤松勇君。
○赤松委員 警察庁の刑事局長にお尋ねしたいのでありますけれども、最近名古屋市におきましては、重要刑事事件について未解決の問題が非常に多い。いわゆる迷宮入りと言われておりますものが現在五件ある。第一は清水旅館の人妻殺人事件、これは三十八年の三月三十一日の夜行なわれた。それから明光旅館の売春婦殺人事件、これは旅館におきまして小野という人夫の内妻、森山ユキノという四十一才の女性が殺された。第三に、名古屋−大阪間にまたがる、いわゆるバラバラ殺人事件、これは国鉄笹島のガード下で歩いておるときにその事件が発生したようであります。それから名古屋駅の西の間借り売春婦の殺人事件、柵下町のアパート内の人妻殺人事件、こういうように事件が相次いで発生いたしました。昭和三十八年から三十九年四月にまたがって五件の重要な殺人事件が発生しております。これが未解決の状態である。これはいま捜査のほうはどうなっておりますか。
○日原政府委員 ただいまお話にありましたように、名古屋市における現在の未解決事件として五件ございます。現在の捜査状況等でございますが、最初の清水旅館の人妻殺人事件、これは昨年の四月二日に届け出がございまして、死亡推定時刻は三月三十一日の夜と考えられるわけでございますが、この捜査につきましては、中村署に捜査本部を設置いたしまして、三駅付近の売春婦、それからポン引き、この旅館の宿泊の関係者あるいは被害者のなじみ客等につきまして捜査をいたしましたが、まだ犯人を特定する有力資料は得られておりません。その後におきましても、被害者の行動の掌握、それから清水旅館の宿泊者からの聞き込み、この内縁の夫の浅沼一郎の行動の関係、それから従来からの被害者のなじみ審関係の捜査というようなことにつきまして引き続き捜査を行なっております。 それから第二番目の明光旅館の殺人事件でございますが、これは昨年の十月二十六日に発生して、二階四畳半の間で殺されておったわけでございますが、これにつきましても、名古屋駅西地区の売春婦、ポン引き、安宿あるいは飲食店の関係者あるいはこの明光旅館の出入り関係者等につきまして捜査をいたしております。これにつきましては三人くらいの目撃者がございます。一緒に旅館に入りました者あるいは飲食いたしました等の関係から犯人の目撃者がございますので、この犯人のモンタージュ厚真を作成いたしまして、引き続き捜査をいたしております。現在の捜査状況は、性交中に首を締める癖のある者という疑いが非常に強いので、そういう類似手口の捜査、それからモンタージュ写真もつくられておりまするし、人相、着衣等につきましてもある程度わかっておりますので、その面からの捜査等につきまして捜査員も各方面に出しまして捜査を続行中でございます。 それから第三番目は、いわゆるバラバラ殺人事件でございますが、名古屋で両足が見つかり大阪で胴体と手が見つかったという事件でございます。これも昨年の十一月十八日に発覚いたしまして、家出人——これは首は出ておりませんが、それ以外の死体の特徴から家出人、行方不明者、犯罪前歴者等につきまして身元の発見につとめておるのでございますが、相当な照会がありましたけれども、いままでのところ身元が発見できません。なお、死体を包んでありました薄葉紙、毛布その他につきまして現在捜査を続行中であります。 それから第四番目の名古屋駅西の間借り売春婦殺人事件、これは昨年の十二月二十六日に同じく中村区の椿町で起きた事件でございますが、これにつきましても捜査本部を設置いたしまして、被害者が平素出入りしている飲食店の関係、それから被害者のなじみ客の関係、それから現場付近の通行者等について調査をいたしております。これにつきましては遺留品もございまするので、遺留品に基づく捜査、それから売春婦、ポン引き、飲食店等からの聞き込みということによりまして、現在捜査を続行中でございます。 それから最後の柵下町のアパート内人妻殺人事件、ことしの四月十九日に起こった事件でございますが、これは南警察署でございますので、そこに捜査本部を設置いたしまして、現場のアパートの居住者、それから現場付近の通行者等からの聞き込み、それから被害者の前夫その他出入り関係等を重点に捜査をいたしております。 そういうようなことで、遺憾ながら五件が依然としてまだはっきりした容疑者を割り出しておりません。現在なお捜査を強力に進めておる状況でございます。
○濱野委員長 ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○濱野委員長 速記を始めて。
○赤松委員 竹内刑事局長にお尋ねをしたいと思うのであります。私は、この種の事件は竹内刑事局長の力で部内で解決を願いたいということを期待しておりました。ところが、残念ながらあなたの部下と一回お会いしただけで、あと私のほうから何回請求しましても、副検事の会議があるとか、片一方の何とかという検事の人もナシのつぶてで、全然御連絡がない。私は非常に遺憾に思っております。そこで、それはあなたの耳に入っておるかどうかわかりませんけれども、私は非常に好意を持って処理したい、こう思って、実は委員会で質問することはやめまして、内々この問題についてあなたのお力で部内で解決してもらいたい、こう考えておったのであります。ところが、いま言ったような事情と、もう一つは、処分につきまして納得できない処分が行なわれておる。 そこで私はまず第一にお聞きしますが、名古屋地検並びに名古屋高検の内部というものは非常に腐敗している。岐阜地検においても、何か暴力団と相通じておるということがもういまや岐阜市民の公然の世論なんです。これは警察部内で——ちょっと刑事局長に聞いておいてもらいたいのですが、警察部内におきましても、検察庁のやり方に対して非常な不満があるということをぜひよく認識して善処してもらいたい。これは徹底的な人事異動をやらなければあの腐敗は一掃されない。まず、いままで最近起きました驚くべき事件について、あなたはもうすでに御存じだと思うのでありますけれども、念のため委員会で明らかにしておきます。 第一は、昭和三十六年十月二十九日に、名古屋地検会計課領置係検察事務官西川俊之、彼は窃盗でもって一年六カ月の求刑、第一審判決は懲役一年二カ月、控訴審では控訴が棄却されております。これはどういうことをやったかといえば、三十六年七月ごろより同年九月ごろまでの間、前後十数回にわたって、領置物である洋酒ジョニーウォーカー等、合計約二百五十本を窃取したものである。名古屋地検会計課領置係検察事務官。 続いて、名古屋地検愛知中村区検事務課長永谷博、彼は公文書毀棄、それから実公文書偽造、同行使ということで、名古屋地裁におきましては懲役一年で三年の執行猶予になって、確定判決は昭和三十八年十月十三日。彼はどういうことをやったかといえば、三十七年六月中旬ごろから、かねて行きつけの小料理店のおかみの口添えで、当時豊橋区検に送致されていた山本孝に対する道交法違反被疑事件について有利な取り扱いを受けるよう右山本から依頼を受け、右事件を豊橋区検より愛知中村区検に移送させ、右事件記録を隠匿して毀棄し、右一の犯行を隠蔽するため、右山本孝に対する事件記録受領書を偽造して、豊橋区検へ送達させて、偽造公文書を行使したほか右同様手段により合計四件の道交法違反事件のもみ消しをしたものである。私は驚くべき——物をとったというのではないのです。豊橋区検で発生した事件を、これを中村区に移送をさして、そして自分の手にその事件を握って、そして公文書を毀棄し、あるいは偽造した。これで検察庁の権威が保てますか。前にはウイスキーを四十五万円、証拠物件を横領して、まだ飲んだのならいいんですけれども、これを横流しして売っている。窃盗をやっている。次は、豊橋区検にあがった道交法違反の被疑者を、中村区検に住所を変えさせて、そうして中村区検でもって事件をうやむやにした。 第三は、昭和三十八年十月三十一日検挙をされ、名古屋地裁で昭和三十八年十二月二十六日、懲役二年、四年間の執行猶予、これは名古屋地検半田支部事務課検察事務官小島克彦、彼はどういうことをやったかといえば、三十八年九月二十四日、宿直勤務中、同区検あてに配達された現金書留二十一通を受領して保管中、右書留の中から十通、在中金合計三万八千円を着服し、右犯行を隠蔽するため、右に相当する徴収金原票を焼却して毀棄し、右に相当する罰金納付領収書を偽造行使し、三十八年四月二十一日、名古屋地検において、同地検あて郵送された現金書留三通、在中金二万四千七百二十二円を窃取したものである。 続いて起きましたのが、あなたの耳にすでに入り、私が御忠告申し上げた事件であります。この事件は、酒色に惑わされ収監引き延ばす、名高検係長を逮捕、保釈男の所在不明とうそをついておる、こういう事件。これは名古屋高検総務部検務一課証拠品係長小川昭造、彼は公文書偽造と収賄、この男の憎むべき犯罪は、保釈中の者に対してしばしば電話をかけて、そして酒色を要求する、女を要求する、料理屋へ案内せよといってこれを要求する。そしてその際に同僚の事務官——現に私は私の知人をしてその現場を検証させました。そのときについてきた事務官は十人、飲めや歌えの大騒ぎ、私はよほど写真をとっておこうと思ったのですけれども、やめました。そして収賄の小川は起訴されました。ところが、高検汚職グループ立件できず、収賄の小川だけを起訴した。あとの者は行政処分。行政処分をどうするかということはまだきまっておりません。名古屋高検の野村検事長は記者会見で、「緒に行っていた他の者についても地検の最終捜査の結果を待ち、責任ある者についてはもちろん責任をとらせる」こういうように言っております。ところが新聞報道によれば、グループに硬軟句論がある。そして小川は、もてなしを受けたのは自分だけではない、他にも同僚がいたということを自供している。自供しているにもかかわらず、小川だけが起訴をされて、あとの者は全然起訴されていない。そしてその残されたのは行政処分、これについては高検の内部、地検の内部に、これはおかしいという意見と、いやそれでいいんだという意見、この新聞によれば、ある者は割り切れない終末だ、こう言っている。それからある者は、一般会社だったらおそらくこれほど問題にならなかっただろう、こういう同情論を吐いている。それから、こんなことは一般民間会社にはしょっちゅうあることだ、検察庁だから問題になるんだ、こう言っている。この認識、こういう考え方、これが私は問題だと思うのです。一般民間会社と、国が重要な権力を預けておる検察庁と、これを同一に考えるところに私は今日の検察官の能力の問題がある。あるいは考え方の問題があるというように思うわけであります。私は何も事件を荒立てて、そして多くの者を監獄へぶち込めということを言っているのじゃない。そんなことならもっと早くこの事件を私は法務委員会で取り上げて、あなたにそっと内密に注意を促すようなことはしません。しませんけれども、あなたは名古屋検察庁を御存じでしょう。あの二階は、こちらが高検で、そして向こうが地検なんですよ。しょっちゅう酒も一緒に飲んでおれば、便所も一緒なんです。お茶も一緒に飲んでおる。それを高検で起きた事件を地検に調べさせる、そんなことでほんとうの調べができますか。どうしてその問題を他の検察庁に移さないのです。他にあるじゃありませんか。三重県には津があるし、どこだってやれるじゃありませんか。しかも問題なのは、こういう事件がしばしば発生しておるにもかかわらず、高検の次席検事は栄転しておるじゃありませんか。私は相当長い間検察行政のために尽くしてくれた人なんだから、栄転なさることは当然なんですよ。そのことに何もけちをつけようというのじゃないのです。しかし、部内にこういう驚くべき汚職事件がどんどん発生しておる中で、上の者はどんどん栄転していく。どうしてこういう事件が発生するか。それはたとえば今日検事、事務官の待遇が、検事、事務官の体面を保つ、あるいは社会生活をするにふさわしくないような、そういう悪条件、つまり低賃金などで生活をしているという点なども一つの問題点でしょう。それならばそれで、上司はそういう事件が発生しないように物心両面から、政府に向かって予算を要求し、そういう事件の発生しないようにまず環境を改善するという努力をしなければならぬじゃありませんか。しかるにこういう事件が発生しても、だれも責任をとろうとはしていないのです。ここに問題がある。だれが責任をとるのですか。こんなことは一般の民間の会社なら問題にならない、ざらにある、そういうことで公文書を偽造し、重要な証拠品を横流しにする。だれも責任をとっておりません。そこに問題がある。そうして上司はどんどん栄転している。あの次席検事はどこへ栄転しましたか。私はこの間新聞で見た。切り抜いておこうと思ったけれども、あまりばかばかしいのでやめました。竹内さんは非常な能吏で、あなたは何を質問しても、べらべらべらべらうまくしゃべる。しかし、あなたが国会でうまくしゃべるというようなことはいま問題じゃないのです。そんなことはどっちでもいいことです。問題は刑事局長、こういう事件が発生しているその責任はあなた自身にあるのですよ。天埜さん自身にある。法務大臣自身にある。しかも警察の内部で、あんなことをされて、検挙をしてもみんな汚職でいいかげんにされちゃうのでという不満があるとすれば、私はこれは非常に重大な問題ではなかろうか、こういうように思うわけです。私どもは、たとえば労働運動に対して干渉するなとか、弾圧するなとか事前に話しに行っても、ほとんどけんもほろろですよ。裏ではこうやって汚職をやっておる。収賄をやっておる。一体これは何たるざまですか。私はあなたの責任ある答弁を聞きたい。
○竹内(壽)政府委員 ただいま、名古屋管内で起こりました幾つかの事件並びに現に最近起訴いたしました事件について、いろいろと検察のあり方等につきまして非常に愛情のこもった御質問をいただきまして、私、全く同感でございますし、感激をいたしておるわけでございます。 まず、ふつつかな点について順次お答えを申し上げますが、先般特に御内意をもってお示しいただきました御好意に対しまして感銘をいたしております。私も、この問題につきまして実はいろいろと対策等について考慮しておるやさき、さらに赤松先生から御内意をいただきまして、特にうちの担当の総務課長と人事課長をも派遣いたしたのでございますが、その後御返事等をせずにほうってあるじゃないかというおことばでございましたけれども、鋭意その対策等を考究しておる段階でございまして、決して先生の御好意を無にする考えはさらさらございません。その点をひとつ御了承賜わりたいと思います。 それから、本件につきましては、仰せのように一部の者が、いろいろ新聞記事等で見ますと、何か内部でいろいろ話があるようにただいま御質問がございましたが、私どもといたしまして、人の非違を糾弾する役所でございますので、その役所の役職員が、たとえ検察官でなくても、検察事務官でございましても、検察庁の職員だということからして、どういう犯罪でございましょうとも、みずからが法に触れるような行為をするということが、この職務の遂行のために単に支障を来たすというだけではなくて、検察庁としてこれでいいかというただいまのおことば、全く同感でございまして、私どもも深くそれを痛感いたして、おりまして、これにつきましてまだ責任をとっていないということでございますが、これは私は必ず明らかにいたしまして、とるべき責任はとらなければならぬと思っております。なお、私はじめ法務大臣がいろいろ責任があるじゃないか私もそういう責任を痛感をいたしております。どういうふうにして責任をとるか。その責任をとっても、とったことによって部内がしっかりしてくるということでなければなりませんし、またそれの対策というものにつきましても、私はいろいろ原因があると思うのでございまして、その実態を十分に調査いたしまして、適切な手を今後打って、再びこういうことのないようにいたしたいと思います。この問題につきましては、私の知っている限りでは、戦前においてはほとんどこういう事故はなかったのでございますが、戦後、残念なことに、ときたまでございますが、こういう事故が発生しております。特に名古屋管内に集中的と申してもいいほど数件続いて出ておるということは、これは何としても名古屋地検等の運営その他につきまして、私どもとして深く掘り下げて検討しました上で適切な処置をとっていかなければならぬと思っております。 なお、今回の人事異動につきましては、これは私は深く関与いたしておらないのでございますが、これは通常の人事異動であったように承知いたしております。この点につきましても、もちろん反省すべきものがございますれば、私としましては十分反省をして、今後運営の遺憾なきを期してまいりたいと思います。
○赤松委員 竹内さんの非常に誠意のある答弁をいただきましたので、私も今後のあなたの態度を見守っておきたいと思うのですが、ただ一言言っておきたいのは、高検、地検を通じて非常にまじめな人がたくさんいらっしゃると思うのですよ。ごく一部の者がこういうことをするために、高検、地検全体が世間から変な日で見られるということは、たいへん気の毒なことだと思う。そこで、処分の問題はしばらくおくとして、私は対策としては、各方面とのいろいろなつながりがもうできているのですから、この際徹底的な人事異動をやる。まじめな人は栄転させればいいですよ。それで、この際広範な人事異動をやって、とにかくくされ縁を断ち切る。そしてあなたたちの信頼する検事をどこからか持ってきて、高検、地検の立て直しをやるというのでなければ、私は問題にならないと思う。 それから岐阜地検のことについても私はいろいろなことも聞いております。これもこれから調べていこうと思っておりますけれども、このこともあわせてひとつ考慮していただきたい、こう思いますが、いかがですか。
○竹内(壽)政府委員 仰せに従いまして、十分私は責任をもって検討させていただきたいと思います。
○赤松委員 参議院へ行ってください。いいです。私はもっと責任追及したいけれども、この程度でやめまして、なお同僚議員の質問もありますから実、私はこれでよろしい。 それで、警察庁の刑事局長の先ほどの御説明でございますけれども、そういたしますと、捜査の見通しは現在ほとんどついていない、こういうことになると思うのです。ただ、私は警察の立場に一点同情しなければならぬ点がある。それはどういう点であるかというと、あの日本一の理想都市といわれました名古屋の恥部が駅西なんです。依然あそこだけは都市計画から取り残されているわけです。したがって、あそこは売春婦の巣くつになっているわけです。暴力団と売春婦の巣くつになっているわけです。今度は、新幹線ができると同時に名古屋は徹底的な都市計画をあそこで推進をするということになって、事情が非常に変わってくると思うのです。ただ、私はここであなたにぜひ考慮願いたいのは、そしてこれができなければ私は国家公安委員長を本委員会に呼んでその責任を追及したいと思うのでありますけれども、こういう重大な事件が五件も迷宮入りしている。これは、先ほど高検、地検の話をしましたが、これと同じように、だれでも責任をとろうとしていないのです。私は、この直接の責任者は田嶋刑事部長だと思います。彼のやり方を見ておりますと、中村の警察署長に責任を転嫁したり、内海警察本部長に責任を転嫁して、彼は非常に要領よく立ち回っている。これは県会議員諸君に聞いてみなさい。みんな一致した意見なんです。のみならず、非常に致命的な悲劇は、彼自身が捜査についてはほとんど無能力なんです。要領よく立ち回る小才はなるほどありますけれども、しかしながら、自分が全責任を負って全知全能を傾けて捜査に当たり、民心を安定させていこうというような、そんな気概のある男じゃない。私はよく知っております。したがって、ああいう無能な刑事部長がおる限り、こういう事件の発生は予防できないし、同時に発生しても解決することはほとんど困難だ、私はこういうように思うわけであります。御承知のように、中村の警察署長は一口何十万というような乗降客をかかえる名古屋駅を持ち、そして非常に広い区域、名古屋におきましても人口はあそこが一番多いのです。そういう広大な地域を持って、むしろ刑事政策よりも住民対策、あるいは交通対策、そういうものに忙殺されておる、警察能力の限界にきている。そういう事情でありますから、その責任を警察署長に求めるということは、私はこれは酷だと思います。内海さんも、中央におられてあなたもよく御承知であると思うのでありますけれども、あの人も非常に剛直な男でありまして、ああいう人柄は私は大好きなんですが、しかし、まだ愛知に着任して間がございません。この中には、現在警察庁の長官をやっていらっしゃる江口さんが愛知県にいらっしゃる当時に発生した事件も実はあるわけであります。そこで、着任間もない内海警察本部長を責めてもいけない。私はいま責任をとれということは言いませんから、刑事部長はぜひかえる必要があるのではないか。こういう五つも重大な事件が発生して、迷宮入りで、未解決で、県会で質問をされると、何とも申しわけございません。申しわけなかったら申しわけないような処置をとればいい。それを、あたかもその責任が中村の警察署長やあるいは内海警察本部長にあるかのごとき印象を人に与えるような、そういう態度をとるということは、私はけしからぬと思う。こういうような事件が発生をいたしまするから、したがって市民もまくらを高くして寝ることができぬということになる。この際、刑事部長に対しまして警察庁として何らかの措置をおとりになる意思があるかどうか、このことをお聞きしておきます。
○日原政府委員 名古屋市、愛知県の関係は、私よりむしろ各人のごとなど十分御存じのお話であろうと思います。ただ、お話にもありましたように、この未解決の事件、これはひとり刑事部長だけの責任でもないと思うのでありまして、現在幾つもたまってはおりますけれども、しかし、警察本部長以下一生懸命この解決に当たっておるわけでございますので、いましばらく時日をかしていただきたいと思うのでございます。もし刑事部長が県会等で責任転嫁のような印象を受けることばがあったといたしますれば、これはけしからないことだと思います。幹部全員がやはりみずから責任を持つつもりでもって事件の解決に当たっていかなければならないわけでございまして、ただ、この名古屋の駅西地区に非常に未解決事件がかたまっておるということは、お話しのようにああいう地区でございまするので、非常に情報も入りにくいし、従来からの警察の実態把握も非常にできていなかった。したがって捜査としては非常にやりにくい。しかし、われわれとしてはそういう弁解ばかりではなしに、とにかく事件を解決して、警察の信用を高めるようにしなければならないということで、いま一生懸命当たっておるわけでございます。いましばらく排日をかしていただきたいと思います。
○赤松委員 刑事局長、私が言うまでもなく、あなたは専門家だからよくわかると思うのですが、近時警察の犯人捜査その他は、民心の協力を得なければだめなんですね。そうでしょう。ところが、昭和三十六年以来こういう事件が重なってくる。そして依然として刑事部長が責任をとろうとはしない。あなたはさっき、彼だけの責任ではないとおっしゃった。こういう彼だけの責任ではないというところに問題がある。全体の責任でもございますが、同時に刑事部長が重大な責任でございます、こういう言い方をしなければいかぬ。それをあなたは逆に言っている。刑事部長だけの責任ではない、みんなの責任だ。みんなの責任だということになれば、一体だれの責任ですか。そんなばかな言い方というものはない。それは彼の責任であると同時に、これこれの上司の責任でございます、こういう言い方をしてもらいたいと私は思う。 そういう理屈はともかくとして、名古屋市民も、あの刑事部長ではしょうがない、県会議員も、あれじゃもうしょうがない、こういうふうにお手あげですよ。だれも協力しようとはしませんよ。だから私は、警察行政というものが市民の協力を得なければうまくいかないということならば、この際刑事部長をかえて、敏腕な刑事部長たらんとする人が幾らでもおるのですから、何でしたら私が推薦してもいいです。たくさん人材はおるのですから、遠慮なしにどんどんかえたらどうですか。この点は、これだけの事件を未解決のままほうってあるのですから——ほうってはないだろうけれども、未解決のままの状態にあるのだから、まことに申しわけないじゃ済まないと私は思う。そこで刑事部長に対してどうなさるか、重ねて聞いておきたい。
○日原政府委員 御意見は十分承っておきますが、お話のとおり、犯罪捜査につきましては市民の協力を得なければ一歩も進まないわけでございまして、われわれとしては、暴力団対策にいたしましても、あらゆる凶悪事件の解決にいたしましても、非常に大きな部分が国民の協力を得る点にかかっておるわけでございます。そういう意味におきまして、われわれとしても、協力を得るための方策ということにつきましては、細心の努力を払ってまいりたいと考えるわけでございます。 ただ人事の問題になってまいりますると、本部長その他の監督者もおるわけでございますし、また先ほど刑事部長だけの責任でないと申し上げましたのも、私をはじめとして、幹部全体がそれぞれ責任を持つつもりで処理していかなければならないという意味も含めて申し上げたわけでございますので、その点は御了承を願いたいと思います。
○赤松委員 それでは、きょう私がここで質した質問の要旨を、あなたから国家公安委員会に正しく報告をしてもらいたい。そうして特に法務委員の私から国家公安委員会の反省を求めるという強い要望があったということを、ぜひ伝達してもらいたい。これを希望しておきます。いかがでございますか。
○日原政府委員 連絡いたします。
○赤松委員 いま愛知県の警察本部で二件非常に重大な事件について捜査を行なっております。ただ、この捜査に携わる人たちの不安は、また検察庁がおかしなことをやって、事件をうやむやにしてしまったり、あるいは足を引っぱるようなことをやるのじゃなかろうか、こういう不安が警察官の中にあるわけであります。その事件の内容は言いませんが、そういう点のないように竹内さん、とくと御注意願いたいと思うのですが、いかがでございますか。
○竹内(壽)政府委員 仰せのとおりでございまして、決してさようなことはいたしません。私としましても、十分手当てをいたしまして、さようなことのないようにいたしたいと思います。
○赤松委員 刑事局長に対する質問はこれでけっこうです。 それでは最後に平沢の問題についてお尋ねしておきたいと思います。 まず矯正局長にお尋ねしたいのですが、前に私の要求で東北大学の教授が彼の健康診断を行なったのでありますが、その健康診断の結果、つまり健康診断書をもし持っていらっしゃるなら示していただきたい。持っていらっしゃらなければ後日提示をしていただきたい。なお、最近の彼の健康状況はどうであるかこれをひとつお尋ねしておきたいと思います。
○大澤政府委員 いま御説明を求められました東北大学教授の健康診断書は、ただいま手元にございませんので、後日写しを提出いたしたいと思っております。 なお、平沢の現在の健康状況につきまして、昨日仙台の刑務所に電話照会をいたしました。その結果によりますと、概括的には、特段の病的所見は認められない、数ヵ月前に比して体重も若干増加しておる、一般に健康状態は良好であるという報告であります。なおまた冬期間におきまして、本人は全身の皮膚の掻痒感を訴えてきましたが、現在はすでになく、その他本人からの不快の訴えもないということでございます。 健康状況の細部につきましては、六月四日、昨日のこちらの照会に対しまして、直ちに向こうが健康診断を行ないました結果でございますが、体重は四〇・五キロでございまして、若干増加しております。脈搏は八十二で良好であり、血圧も最高百三十八で、最低七十で正常でございます。また胸部、腹部に異常なく、腱反射も正常でありまして、一般状況は良好であるということでございます。 なお、宮城刑務所としまして、本人が何ぶんにも老齢でございますので、栄養剤であるパンビタンあるいは肝油、食欲増進剤あるいはまたビオフェルミンその他数種の胃腸薬を給与いたしております。なお、食事につきましては、副食物は胃腸病の患者に与える食事を与えております。なお牛乳二本を特に給与させておる次第でございます。なおまた、本人もそのほかに自弁食としまして、種々のカツどんでございますとかエビのてんぷらでございますとか、さようなものを摂取しておりまして、一応現在のところ、健康状態は良好であるという報告でございます。
○赤松委員 彼の無実を信じ、そうして再審をすみやかにやるべきだということで非常な御支持をいただいておりました大野伴睦先生が先般不幸逝去されました。これは本人にとって非常にショックだったらしいのであります。私のところに手紙が参りまして、私の父を失ったような気がする、こういうて切々として彼の悲痛な心境を訴えてきております。世間では、私がしばしば申し上げるように、もう七十四歳だ、法務省は再審をやらずに、再審をやろうと判事のほうで決意をすると、それをおそらく妨害するだろう。ちょうどがんくつ王の事件のように妨害するだろう、あるいは再審に反対するだろう、そうして仙台の刑務所で、もう七十四歳ならばそう長く生きられない、そのうちに死んでしまうだろうと自然死を待っておるのではないか、こういう声がしばしば聞かれるわけであります。私は、法務当局はそういうことはおそらく考えていないと思うのでございますけれども、ひとつ彼の健康については格段の保護を十分加えていただきたいということを希望しておきます。 次に、私が先般来委員長を通じまして要求しておりました、警視庁における平沢の当時の動静日誌と申しますか動静報告書と申しますか、それがただいま東京高裁第六部の帝銀事件の再審事件を取り扱っていらっしゃる兼平裁判長のところにこの記録が回っておるということを聞きました。これは先般法務省から使いが参りまして、私にそういうことを言っておりましたが、私は、その中から要項数点を書き抜いて資料として出すようにという要求をしておきましたが、その後これはどうなっておりますか。
○竹内(壽)政府委員 この点につきましては、内部でいろいろ検討してみたのでございますが、ただいま再審の審理中でございますので、審理中の記録といたしまして、部外に出しますことは適当でないという結論になりまして、いましばらく御猶予を願ったほうがいいのじゃないかというような考え方に大体なってきておりますが、まだ御通知申し上げるまでに至っておらなかったかと思います。
○赤松委員 そういたしますと、再審を受理するかしないかという結論が出てから、それから資料として、出すか出さないかをきめる、こういうことでございますか。
○竹内(壽)政府委員 さようでございます。確定記録につきましては、何人も手続を経さえすれば閲覧ができるという形になっておりますので、まあ確定記録ではございますが、いま再審の手続を受理するかどうかをきめる手続ではございますけれども、裁判所の審理のもとに置かれておりますのと、現に裁判所がその記録を持っておられますそういう関係から、多少問題があるということから、いまのような意見に大体なっておるわけでございます。
○赤松委員 これは委員長からもすみやかに、この再審を受理するかどうかという審査の上に影響のない限り、その中からたとえば写して私のほうへくれれば、原簿をくれというのじゃないのですから可能だと思うのですが、ぜひ約束どおり督促をしていただきたい、こう思います。 最高裁の刑事局長、この点はどうでございますか。この前委員長も約束してもらったのでありますけれども、それを写して私のほうへ資料として出していただけませんか。いかがでございますか。
○矢崎最高裁判所長官代理者 いま再審中の事件でございますので、私もよくわからぬのでございますが、至急検討させていただきたいと思います。
○赤松委員 それでは検討していただきましょう。 ただ、私がなぜこれを要求するかといえば、ほんの数日前、平沢から私のところに手紙が参りまして、その手紙を読んでいきますと、警視庁の留置場で実にひどい拷問にかけられておる。でありますから、私は警視庁の留置場内における彼の日常の動静についてこれを知りたいと考えて、その資料の提出を要求しておるのであります。三回自殺をはかっていることは御承知のとおりであります。 そこで私はぜひこれを国会の記録に残しておきたい、こう思いますので、委員長、この手紙を読むことを御了承願いたいと思います。 検事は、私が犯人でないことをよく知っていながら、その犯人でないものを罪に陥し入れるために、公文書を偽造し、取調べをしないのに取調聴取書を偽造することとして、安達係長——これは警視庁の安達係長——と共謀で証人調で証人から聴知した真犯人の犯行事実を恐るべきトリックで記録し、盲サイン、盲拇印を強制して作った「偽造の平沢自白」を唯一の証拠として死刑に処したのであります。 次ぎに証拠を列挙して検事の不正であることを証明します。 野坂薬局主婦が「宅になかった青酸加里が平沢さんにあげられる訳はありません」と証言された後、二、三日後検事は「ナア平沢青酸加里ナア、野坂から貰ったことにしておこうなあ……それでいいなあ」と言い、グロット睨んで勝手に所持したこととし、その架空の青酸加里が十何人殺した殺人兇器だとして帝銀事件を作文したのであります。故に検事は誰よりも平沢が犯人でないことを知り抜いていたのであります。 「アリバイ」 平沢が二時半近く迄船舶運営会にいたことを知っていたのです。そしてたとえ帝銀に直行したと仮定しても三時四十分頃でないと到着出来ないことを検事は知っていたのです。で「二時に運営会を出ると三時十六分三十秒到着する」ことを駅で調べて来たのを刑事から聞いた検事は勝手に「平沢は三時十六分三十秒に帝銀に到着している」と調書を偽造して胡摩化しているのです。故にこれでも犯人でないことを知っていたのです。即ちそれ以前に船舶運営会では午後二時に市川係長が外出から帰えり、「平沢が来た時市川係長が在席していた。二時二十五分に辞去した。」ことを広瀬昌子証人——これは運営会の事務員——からきき、山口伊豆夫——これは平沢の次女の婿です——から「今夜課の新年会であることと、タドンの出来ている事を話をし、父は帰途立寄ってタドン貰って帰るといって二時半ちょっと前辞去しました」と聴取っているのであります。故に二時辞去の記録は自己の偽造であることを検事は充分知り抜いていたのであります。之に加えるに、平沢から帰途山口宅に廻わりタドンを貰って帰ったことも、そのタドンを自宅玄関で来遊中のエリー米軍人が受取ったことも皆聴き知っていたことを検事は採用せず語録にもしなかったのであります。なお、公の試験報告には「平沢の洋衣類所持品等からは青酸加里の微量も検出せず」とあります。 この「エリー氏のタドン受取り」は国際公証の一部をなすものであります。平沢が中野駅下車焼跡近道を宅の見える所迄進んだ時、来遊中の米軍人エリー氏は縁側から平沢を望見し、手を挙げて歓呼し、先に玄関に出て待ち、平沢が戸をあけて入ると、「すぐタドン入りのボストンバックを受取ってくれ、次いで平沢が靴ぬぎで腰かけて短靴をぬぐのを見守って待ち、ぬぎ終って式台に上ると握手礼し、握手のまま座敷に入った。そしてこの時四時半ちょっと前でした。」そして晩餐を共にし、九時頃迄遊んでエリー氏は帰ったのでした。そしてこの一月二十六日のエリー氏の米軍勤務カードが、特別休暇となっているのです。そして一月中旬から二月上旬にかけてエリー氏の休暇日はこの一月二十六日だけしかなく、この日が来遊の日であることが立証されたのであります。ですからエリー氏は、平沢が帝銀犯人として逮捕されたとニュース放送のあったとき、これをきいたエリー氏は「違います。平沢さん犯人でありません。私証明します。帝銀の日私平沢宅にいました。三時頃に山口さんで貰ったブラックボール(タドン)持って帰って来ました。犯行の時間ありません。平沢さん犯人でないこと神様と正しい人信じるでしょう」と立証、証言した由です。ですからこの国際公証のエリー氏の勤務カードを見た人もこのエリー氏の証明聴いた人も皆「平沢は犯人でない」ことを信じていた由です。 その証拠には「平沢が自白した」と高木検事が発表した翌朝米国の大通信社UP通信東京支局長ホープライト氏は来訪し、高木検事と隣に座っている平沢に向って質問、唯一句「いかなる拷問で犯人にされたか」と犯人でないことを認識しての質問をしていることでも明瞭であります。 面通しで七人中一人も「平沢が犯人だ」と云っておりません。「犯人でない」が四人、「似ているが犯人でない」が三名の鑑定であっさり犯人でないことは決定し、おまけに下唇下中央にあった面瘍きず跡を唯一人も見た行員もなく、「このきず犯人にありましたか」ときかれた面通し行員は、「いいえそのきずはありませんでした。そこもヒゲ剃りたてでした」と証言していたのであります。 また、犯人の呑んで見せた茶碗から出た指紋は平沢の指紋でなく、金庫等の指紋も平沢のものでないことも判明していたのを検事は十分知っているのです。 ハンチングも安田銀行板橋支店の行員が「入って来た時から注意がひかれ、熟視して記憶していますが、土建の親方風でハンチングは格子が太く青で入ったのをかぶり、黄色の色眼鏡をかけた男でした。」と証拠品帽子の差異と、無い眼鏡を指摘しました。又同銀行で、同じテーブルで向い合って小切手裏書をした一大学生は「犯人は裏書する時眼鏡を外して字を書いていました」と「犯人は近眼」を立証し、「平沢は老眼九度だから平沢は犯人でない」ことを検事は知っていたのです。 又かばんは「この国防色でなく白布のくすんだもので第一ふたを止めるのにこのようなボタン止めでなくひもで結ぶ式でした。」と三菱銀行中井支店の行員が別々に同じ証言をしました。 かくしてなお欺瞞、不能に怯えていた検事は、駒込型ピペットを変更するために調室(37号調室)に旅行用化粧用セットケースを持込み、ひらいておき、歯磨のチューブ入りニッケルケースをわざわざ外して出して見せておき、「そのケースに入るスポイトを言え」の心を閃かせ、「ピペットは万年筆のスポイトさな」とさっさと言ってしまったのです。 ビンは高級な市販してないビン即ち「ビンはとても高級な薬か、医院でないとない高級なビンだったと言うじゃないか」と言った検事の言一果を自ら訂正するために「オキシフルのようなビンだったんだろう」と言って前言を変えてしまい、「スポイトを入れたのはあれか」と歯磨チューブ入り容器を指さしました。 さらに検事は「俺が行った時にはなあ……カウンターの端から営業室に入る廊下に三人の屍体があり、まん中が女の行員で、営業室内のテーブルの間に二行員が仕れていたぞっ。吉田代理はテーブルに斜に仆れかかっていたぞっ。さあ図を描けっ」と言ってグワット睨んだのでした。そして話をして教えた通り、検事の眼前で描かされたのであります。これは警視庁三十七号控室で只の一回描かされたもので他の所、外の日に描かされたことはないのであります。 所がこの三十七号調室で高木検事の言う通りかかされた地図が、第六十二回調書に添付されていて「出射検事の命令で描いた屍体見取り図だ」と添付されている由です。しかも最近の出射言明では「そんなもの描かせたことは無い。俺の知らないものだ」と言明している由です。これでは自分が製作責任者として記名調印している聴取書を自ら「俺は知らぬ、俺は製作はしない」と自ら偽造であることを証明してしまっているのではありませんか。 又出射検事と佐々木書記とは取調べをした部屋が全く異るのです。出射は「初の八日は午前十時頃佐々木書記と(同案同卓で本官聴取、書記記録は八日も九日も同様)小菅の被告人の居房の畳敷の部屋で本官訊問書記記録で作成し六十回の調書を作成した。夕方終了。二日目の九日はやはり午前に行き何課長かの応接室で本官聴取書記記録で六十一回、六十二回の聴取書を作成、夕方辞去。」したと言明しております。 所が佐々木書記は「出射検事と同行同室同卓で出射訊問を私が記録して八日は六十回、九日は六十一、六十二回の調書を作成しました。その取調の調書作成の部屋は両日とも戒護課長室で行いました。一時間は八日は午前十一時近く、九日は十時一寸前でした。」と証明しています。同日同時同卓で調書造りをした両者がこんな大きな相異したことをなぜ言ったのでしょう?呆れる外はございません。しかも「そんなもの描かしたことはなく、添貼したこともない。」と自己調書のなかったことを自ら証明してしまっているのではありませんか。 拘置所当局は「検事を取調書作成のために被告の居房に入れたことはありませぬ。調室はチャント用意してありますから、そこ迄被告を出して、そこで検事調書は被告訊問書記記録で作成されます。」との言明です。 検事も刑事も証拠捏造には懸命的努力をしたのですが、どうしても出来ないとあらゆる手をろうしたのです。 (一例)「どうしても平沢は知らない」とわかっても「知らないでは済まされなかった。」のです。高木、安達共謀共犯で、荏原区色刷大地図を安達が持込み、平沢の前にひろげておき「ここがえばらの銀行だかな……この銀行に行くにはどの駅が近いか探がせ」と言って一点の上に指先を置いたのでした。平沢が地図上の駅を探がし惑っていると、安達係長は「むさし小山駅」上に指先を置き、この「駅からこの銀行迄の行く道を往きを青、復えりを赤インキで書き入れろ」と言って、青赤両インクのペンを渡しました。そしてその地図上の印刷路線を青赤両インクで埋書させ、之を調書に添貼して、之を「銀行襲犯の証拠」としたのであります。 拘禁精神病が対人恐怖症に進患してからは、安達と共謀共犯で、安達等が面通し行員から聴取書留め実てあった真犯人の真行を編輯作文して、帝銀事件を捏造することとし、ある日安達係長を連れて高木検事は入室し来て、「俺は他の事件で他に行くから、その留守中この安達係長が代って調べるからな」と言い、書記をつれて退室し、安達はいつもの検事の座席に腰かけ、その真犯人の犯行を書いた手控帖を平沢の一番遠い窓際に開いて置き、面前に高木手控帖を之もひらいておき、先ず自分の手控帖の真犯人の犯行を黙読して言暗記してから九十度回転して平沢の方を見、「その時になあ、えばらの銀行のそばの交番の巡査がなあ……「伝染病であって、どこですかそれは」と言って入って来なかったか」と言いました。平沢はなにもわからないので、「そんなことあったのですかね」と言いますと安達は、「証人が言うんだものあったんだろう」と言いました。で平沢は「証人が言うのならあったのですかしら」と肯定でも是認でもない会話をしたのに安達は「そうかそうかあったのかそうか、そうか、では之も書いておこう」と言ってさっさと高木手控帖に記入して次に移りました。之はほんの一例ですが、このトリックで六日間を費やして真犯人の犯行を全部高木手控帖に記入し、それを高木検事に手渡し、高木検事はこの手控帖の安達文字を自己主観で勝手に編集作文して「取調なき取調聴取書」を捏造し、只サインと拇印さえ強要しさえすれば立派な調書が出来たのであります。 しかもこの偽造の聴取書内容が唯一の断罪の証拠とされたのですかかまさに国民の恐怖というべきであります。原審判決法廷で江里口裁判長は「被告には犯罪の証拠はないが、新聞にもラジオにもなかった犯行を自白しているから、之を断罪の証拠として死刑に処する。」と宣告したのであります。この「新聞にもラジオにもなかった犯行」とは、この安達、喬木共謀共犯の偽造調書のことであります。かくしてこの恐るべきトリックで帝銀事件は作文捏造されたのであります。 拘禁精神病が対人恐怖症に進患しました後は、何を言われても盲従、唯々諾々絶対に反擁することができなくなってしまっていました。ここに至らせるために検事は有りもせぬつくりごとを言って「お前の女房も子も向うの調室でお前の罪を詑びて泣いていたぞ」と言って胸に刃を貫かれた思いをさせたような悪辣の所業までして精神病を昂進させたのでした。 検事の奥の手は、悪辣な手段での策謀が常にとられておりました。調書記録が新証人調べで前の調書内容と違うと、すぐこれを「独り言で聞かせて訂正する」策をとったのです。「ああ、露店かあ、銀座の……」と独り言を言って、ぐっと平沢を睨み、「スポイトを買ったのはさあ……」と語尾をぼかして、平沢が何も言わないのにさっさっと「銀座の露店でスポイトを買った」と訂正記入しているのです。 この欺瞞意志は法廷にまで尾を曳いております。すなわち、原審法廷で大山渋子証人が出廷した時、大山証人は裁判長に向い「此方は犯人そっくりといってよい位似ているのですが、真犯人には左目と左肩を結ぶ線上の顎の下に長さ二センチ大の一目見てゾット寒気のするキズが有ったのでしたが、そのキズが此方には無いのが犯人と違う点です」と証言したのです。すると検事は自席から、つかつかと法廷にとび出して平沢のそばに来て、両手を平沢の頭にかけ、ずっと右に曲げて、左方の証人に向い「大山、あんた下から見たから此のキズがそう見えたんですよ」といい前記の血痂の二寸大のキズを大山に示して「そうだと一言え、そうだと言え」と目をしくしくして偽証をすすめました。しかし大山は正直に「いいえ」と自信をもって拒絶しました。位置も明らかに左顎下で、キズも二センチのものを唇下中央実の六センチ半もの大キズと置換えての此偽証はその悪辣さの程が窺われる事です。これは公開法廷での偽証策の顕現ですが、非公開の取調中の偽証は枚挙に遑なく、二つの目的を一度に変更し、記録した事さえもあります。「お前なあ、青酸加里をみんなの茶碗に注いだ時になあ」と言って今迄塩酸であったものを青酸加里に変え「コップを持ってこさせてそのコップに分け注いだ」と言ってコップを茶碗に代えてしまったのです。この方式での偽証製造はざらにあってそれこそ枚挙にいとまなしです。取調問答ではなく、検事は自己の予断を自己肯定する独り言を吐いてそれを勝手に調書に書いて自白だと詐称した丈であります。そしてこの偽造の自白が断罪の証拠になった事はすでに記した通りであります。 平沢を気弱くした事も一つの事実があります。ある一夫人から某新聞社気付けで弁護士宛に「私は平沢さんに「秘画十三ケ月」をかいていただいて十万円の御礼をして居ります。私の友人も御願いしてかいていただきました。このことを平沢さんにおききになって弁護士さんが、言われたら……金の問題はすぐ明らかに証明されるではありませんか」と、姓名を書いてはなかったが女実文字の手紙が届いた事実がありました。山田弁護士さんは、小菅に私をおとずれて「秘画を書いて十万の礼を貰った事があるでしょう」と言われました。私は驚いて、とんでもない秘画の事がどうして分ったのだろう大変だ……と思い、もし、肯定したら僕の画家としての面目は丸潰れだ、花田さんの二号関係だから特別の懇願で致し方なく「女護ケ島」をかいたんだが、これは言えないと瞬間走馬燈のような頭脳の回転でしたが、私は言いました。「そんな絵かいたことありません。そんな絵かいたら画家はおしまいですからね」と言いました。山田さんは「いや、有名な大家でも皆んなかいているというじゃないか。誰々のかいたのだというのを見た人も知人仲間におるよ」と言われて、かいた事を言えと慫慂されましたが、絶対に言えないと思いあくまで無いと言い切ったのでした。が、之は致しかたなかった事と思っております。棺を蓋って初めて「その時の絵か」と明るみに出るかもしれませんが、この女護ケ島の原画の写真は証拠品にある筈です。私は逮捕の時懐中しておりましたから、もし押収品中になければ居木井に横領窃取されたのです。ほかに窃取された事実が有りますから。 居木井の不正が出ましたから刑事の実態のその不正を立証しますと「逮捕の時、逮捕状は見せましたです」と裁判長の「逮捕状見せたか」の問に対し次のような不正を重ねました。「奥さんからのお言付を居木井がお預りして来ております」と欺いて連れ出し二人の刑事が最敬礼するとみせて、二人の刑事の手が平沢の手に触れるまで最敬礼し、触れた瞬間居木井と部長刑事はピストルを狙いつけ抵抗を封じ三人の刑事の二本の手は平沢の手をねじ上げ手錠をかけたのでした。 車中では、居木井は「俺達五人は命がけで帝銀犯人を逮捕したんだぞお」と昂然と放言したのです。 東北線盛岡辺で裁判長に「全線二等でした」と嘘を言いました。北海道線の三等から二等に乗換の料金を支払い、仙台の少し前で座席の上にG型に横仆にし、頭の上に背広を広げてからその上に布をかけ、その顔の上に帽子を置いて「この下に頭有り」の印としたことでした。十五時間の間、しびれは切れ、汗の湯に入ったようなくるしみで上野まで護送したのでした。 連絡船中では、居木井は「俺はお前の長女を妾にしている。だからお前の中野の家の月々の家計は皆俺が支払ってやっている。静子に、お前の父は旦那の俺にも父だもの、悪く取り扱う訳はないさなあ。俺は裁判官とも職業柄懇意だから、皆俺に捕った者は頼んで刑を安くまけて貰っている。其の礼状は五寸も積っている。お前も頼んで安くまけて貰ってやるからなあ。東京に着いたら俺にすっかり白状しろよなあ。ほかの奴には決して自白するなよ」と言いました。後に居木井は、この船中での言葉は総て嘘であることを裁判長の問で自白致しました。 一番大きな事は着京当日の拷問であります。上野駅でホームを埋める群集を避けて荷物用大エレベーターに逃げ込み、階上と階下の中間に止めて群集を避け、やっと連れ出し、五刑事のスクラムで群集を押し分けて改礼口を突破して、自動車を駒込署に廻し、階上で一睡もしなかった平沢を服、シャツを脱がせ、ひるねをさせ、起して再び自動車でゴウもストップもかまわず警視庁に辷べり込んだのでした。第三十九号調室ですぐ面通しです。テーブルにオーバー、背広、ワイシャツ、メガネ、カバン、ケース、スポイト、風呂敷から靴、カバン等陳列し、証人に手にもって調べさせ、居木井は談話して応答させて声を聞かせ、平沢に命じて、あるいは立たせ、あるいは歩かせ、平沢の周囲を証人に廻らせて鑑定させた上、居木井は別室に引移り、鑑定した報告をそこで一々聴き取ったのであります。 同一の証人が何度も何度も立戻ってきて見直して行って又来るのです。二人の女性の如きは「ねえ、いくら何度見直したってねえ」「そうよ、そうよ、いくら見直したって犯人と違うんですものねえ」「犯人と言えないわ」「そりゃね、犯人と言えばお気に召すかも知れないけれど、犯人でない人を犯人とは言えないわね」と語り合っていました。そして、警視庁発表のラジオ放送では、七人の鑑定者中犯人と言う者が一人もなく、四名は「犯人でない」三名は「似ているが、犯人とは思えない」と放送したのでした。そして居木井は真青になり、気の抜けたゴム風船のように部屋に入ったり出たりしていましたが、「おい、立て」「歩け、ついて来い」と言って三十七号調室につれ込みました。中には、平塚と飯田という二人の刑事が待っていて、後免の無い丸イスに平沢を腰掛けさせ、面前にはテーブルを五寸位の膝頭との間隔でおき、その上に平塚が左尻を斜めに尻を乗せ、右の靴のカカトを斜めに立てて、靴の金具が平沢の左膝頭に突当るように斜めに立てておき、まず、平塚が「何が画伯だ。ふてい奴だあ、貴様のような奴は殴り殺していいんだ、ねたはすっかり上っているんだ。さあ、すっかり泥を吐け、白状しろ」と大声で叫びながら右手を頭上に左右に大きな曲線を描いてふり廻すのです。すると左側の飯田が「そうがみがみどなるなよ、静かに言っても分るじゃないか」と言うのです。その飯田の言葉の途中、唐木井は両ヒザ頭で平沢のモモ太の肉を圧し集めてキュットつねり上げるのです。その技巧的なうまさはよほどの練習を経験した者でなければ出来ない事と思いました。そして、飯田がしゃべり終ると同時につねるのをやめて立上がり、平沢の胸、食道の上に掌を密着して擦り上げつつ、「ほらここまで出て来た、ほら三寸、ほら二寸可……ほらここまで出て来た、ほら一寸……のどまで出てきた……さあ出してしまえ」と言って下から上に掌を擦り上げるのです。「何というひれつさ」と思いがまんしていました。すると平塚は「何が画伯だっ太い奴だ」とどなり乍ら腕を振り廻し、ついで飯田が止め、居木井がつねり「ほら三寸……ほら二寸……」を繰り返すのです。これをくり返し、くり返し、この拷問を六回もくり返したのです。その証拠は、平沢の太ももが六ケの紫斑で紫にはれ上った事で判明しました。 この紫斑で平沢の右太ももが埋められ、左膝が紫に、どら焼の皮のように腫れ上っているのを一緒に入浴した隣の人達が見て、「ひどい事をしゃがるな、居木井の奴め覚えていろ」とはぎしりをしていました。このヒザ頭のドラ焼の皮のように腫れ上ったのは、平塚はどなり乍ら右のカカトを斜めに立てて平沢の左ヒザ頭を打ちおろすように踏み打ったのです。ですから、紫に血が死に、腫れ上ったのです。平沢は平塚に向い「殴れ」と、平塚が「貴様のような奴は殴り殺していいんだ」と言ったとき、「さあ、殴れ」と言ったのです。殴ったら「正当防衛だ」と大喝してアバラにひとあてして「肋骨の二本位折ってやらう」と嘗て当身で二本肋骨を折った経験からどなりつけたのでしたが、遂に「殴りつけること」は平塚はやらなかったです。かくて、居木井は調書に「犯人でないから犯行は無かった」という意味のことを書いて拇印をさせました。ところが、後の法廷で居木井は江里口裁判長に対する証言で、「私は、逮捕した責任上、着庁当日中に平沢に帝銀犯人だと自白させましたです」と偽証しました。 のちの法廷では平沢は裁判長に対し四つの証拠を挙げて「着庁当日自白させましたです」の居木井のうそを立証しますと、まず、居木井の調書作成に何分位かかるかを裁判長が居木井に訊問した、居木井は「なれておりますからほんの四、五分で出来ます」と答えてから「自白させていた」のなら、着庁当時行われた面通しで一人も犯人だと鑑定した証人がなく、謹慎を仰せ付けられたのをなぜ甘受したのか。自白させていたら着庁夕方の放送で「警視庁発表によれば「犯人だ」と言う者は無く七人の鑑定人中四人は「犯人でない」三人は「似ているが犯人とは言えない」との鑑定結果で「非犯人説」が勝っていると何故放送発表したのか自白していたなら「犯人だと自白した」と発表放送されていた筈ではないか」とせまり、又自白していたなら何故あの三人で拷問した時の調書を「なれていますから四、五分で出来ます」で「自白した」と書かなかったのかと迫まり、「前々回の法廷で証人は高木検事に何といって食い下ったか「検事さん、初めの面通しで犯人と言う者はなく、私に謹慎を仰せつけられたでせう。私は、あの謹慎が残念でなりません。あの謹慎が無かったらあんなに長くかかってやっと自白させたような醜態はしなかったろうと思うと、あの謹慎が残念でなりません」と言って高木検事に喰い付いたではありませんか、そして、「着庁当日自白させました」はウソであった事を自白して了ったじゃないか」と喝破された時には居木井は卒倒寸前の大戦慄をしました。この裁判官を欺いた偽証、しかも「着庁当日居木井は平沢に帝銀犯人だと自白させている」が証拠力を持っていて其効力が今日も影響しているとしたら、一番大きなこと(着京当日の拷問)に優る大きな不正でせう、これは検事の殺人強盗に匹敵する犯罪といえませう。 不正のついでに「高木検事の強盗・殺人」を挙げておきますが、高木検事はいつもの通り平沢を呼び出しました。平沢が三十七号調室に入るとテーブルの向側(窓の方)に見知らぬ若者四人が列座し各々掌に一枚宛絵を持っていました、画嚢が取り開かれてその中から一枚選び出したことは一目瞭然でした。検事は立って「ここにお見えになる四名の方と俺と書記さんに絵を一枚宛謹呈しろっ」と大声でどなりつけぐっとにらみつけ、「絵の裏面に謹呈何々様と書け、お名前を言うから」といって睨みつけて否応もなく私にこれを書かせました。 大村阪大教授の筆跡鑑定と拇印鑑定は科学的究明で〔署名は平沢の書けないサインで偽造の疑い充分のものであり、拇印は二日に渉すものを一日同時刻に、一回朱肉を擦付けた丈けで二日分一度に捺印され、しかも最後の六十二回、六十一回、六十回の逆の順で捺されている〕事が立証され、偽造の裏付けをしている事が立証され、六十二回のサイン之繞の如きは偽造現行犯を目前に見るようで上図で判るとおりAでボケ、Bで中断、後戻りして改めて起筆しております。これはサイン中には起り得ない現象であります。これを検訂審査しますと、まず、既存の署名の上に調書のサインすべき位置をのせ、指二本(人差指と親指先で紙をピンと張り)ペンで下の字の上を撫書で写すのです。所が紙の漉く時に出来た抄きむらで下の字が判明しないので筆行が逡巡して、そのためにインクが余分に実惨じみ、ために量けが出来、続いて全然見えなくなり、筆を切り、紙を捲くり下の字を見極めて下の字の通りの所に筆を改めて着け改めて書足したために、中断し、別の所から起筆書きつがれているので、まるで偽造の現行犯を目前に見るものであります。 こういうように、平沢は警視庁におけるところの取り調べというものが、二人の刑事とそして居木井警部補によって、拷問に次ぐ拷問が加えられておるということは、本人自身が私のところに、ほんの一昨々日、この手紙を送ってまいっておるのであります。私はこういう点から申しまして、これもぜひ有力な再審請求の一つの理由をなすものであると思います。 そこで先ごろからお願いしてございます、すなわち警視庁における動静日誌、なぜ彼が三回も自殺をはかったかこういう点につきましてはすなわち証拠がありません。ただ一つの証拠は、この調書が、自白調書が証拠になっておるわけであります。したがいまして、その動静日誌あるいは動静報告書と申しますかこれが非常に重要な資料になるのでありまして、先ほど最高裁の刑事局長から、十分検討するというお話がございましたので、それを期待したいと思います。 そこで、きょうは人権擁護局長見えておりますが、私はこの間の委員会にあなたを呼ばなかったのですが、この間、例の松井名刺の裏書きを消したのは、現在警視庁の通信司令部におる冥賀警部補であるということを私はここで申し上げました。そして当時事件記者をされておりました読売新聞の遠藤記者が、いつでも証人として出るからということを申しておるのであります。こういうような点がどんどんあらわれてまいっておるのでありますが、人権擁護局として、すでに確定判決があって、死刑執行前の平沢に対し、これを人権を守る立場から何らかの方法、たとえばこういうような重要な証拠を集めるとか先ほど私が要求しましたあの資料などを手に入れるとかそういうような努力を払う義務が人権擁護局にはあると思うのでございますが、この点はいかがでございますか。
○鈴木(信)政府委員 事件はすでに第一審、控訴審、さらに上告審といきまして、慎重な手続を経て判決が確定している問題であります。それに対して、確定後にいろいろ疑問も出てくるというのでありますが、それについてもすでに再審を開始するかどうか、これまた刑事訴訟法に基づく手続に入っておりまして、裁判所で現在審理中という時点でございますので、特にこの際人権擁護局として、この内容に関してあらためて調査をするという必要は、ただいまのところなかろう、かように考えております。
○赤松委員 この程度の質問で終わりますと、何だ赤松のやつ、けしからぬ、おれをわざわざ呼び出して、あの程度の質問で終わるとは何事だと、あとで人権擁護局長から恨まれるかもしれない。しかしながら、残念でございますけれども、あとまだ質問される方がありますから、私はこの程度でやめますが、ここで委員長にひとつお願いしたいのは、元読売新聞記者の遠藤美佐雄さん、当時の事件記者であります。松井名刺を読売新聞で写して新聞に報道されている当時の証拠品がございます。それから小林新平さん、これも当時やはり読売の事件記者で、現在は報知新聞の事業部につとめていらっしゃいます。とりあえずこの二人を参考人に呼んでいただきまして、さらに参考人の証言いかんによっては、現在警視庁の通信指令部におられまする冥賢岩雄さん、警部補でございますが、この人を呼んでいただきたい、こう思うのであります。とりあえず遠藤美佐雄さんと小林新平さんを参考人として当委員会にひとつ呼んでいただきたい。あとで理事会でこれをはかっていただいて、ぜひ私の希望をいれていただきたい、こう思います。
○濱野委員長 ちょっと赤松君にお尋ねしますが、間違うと困りますから、どういう意味で参考人をここへ呼ぶかもう一度お話しくださいませんか。
○赤松委員 前の当委員会で、週刊読売にこの遠藤さんが、当時松井名刺を、つまり彼が松井名刺を使ったということが問題になったわけです。ところが、その松井名刺というのは、成智警視の証言によりますと、事件から四カ月ほど前にすりにすり取られた。そうしてその被害描けが警察に出ているということを証言されておる。それからいま一つは、この名刺を持っておった当時の警察——ちょっと記録を調べましょう。私が前の委員会で申し上げている記録がありますから、これを申し上げたほうが正しいと思います。「先ほど申し上げました平沢が帝銀事件の犯人ではないということのきめ手が出てきた、すなわちそれは松井名刺である。この松井名刺につきましては、当時検事は、松井博士の名刺が約百枚、そのうち発見されたのが約七十枚と言われておりますけれども、この平沢逮捕の唯一の物的証拠でございました松井博士の名刺は、これはちょうど平沢が皇太子殿下に絵をかいて差し上げたい、こう考えて彼は北海道に行く途中、函館に行く途中、連絡船の甲板の上で会ったわけです。彼は当時帝展無鑑査のテンペラ画家として、日本の一流の画家であったわけでありますけれども、ここで松井博士と一緒にコーヒーを飲んでいる。そして名刺をもらった。そのときに仙台へ来たらぜひお寄り下さい、こう言ってその名刺の裏に仙台市米袋町、こういうように住所を書き込んだ、こういうように言われております。なお、この米袋町というのがあとで消しゴムで消されておった。平沢は当時これを否認いたしましたけれども、検事が強く追及いたしまして、とうとうこれは消しゴムで私は消しました、こういうように自供しておるのであります。そうしてこの判決理由書の中にも、消しゴムで裏面の住所を消して、つめでこすっておいたことは間違いない、こういうように出ております。ところが、奇怪なことには、当時この名刺を入手した警察官が現に警視庁に現存しております。」というのは、いま申し上げました通信指令部の冥賀という警部補です。念のために申し上げておきますが、いまなお警部補です。全然出世してないわけですね。どういうわけで出世していないのか私はよくわかりませんけれども、当時彼が上申書を出しております。おそらくその上申書の件が問題になっておると思うのであります。「それからその名刺を見た新聞記者がやはり現存しております。その警察官の名前は冥賀という警部です。それから新聞記者は当時読売新聞の記者で遠藤さん、この人が読売新聞の事件記者としてすべてこの帝銀事件を担当しておられたわけでありますが、この人が当時その名刺を見ている。それでこの名刺の裏に書いたのは平沢でなしに冥賀という警部が書いた。そしてこの名刺の裏に書いたのは、仙台市米袋町ではない。品川区小山町三の一一三鈴木八郎方、」こううい文字が書かれておったわけです。確かにこういうものが書かれておったということをこの冥賀警部は上申書を出しておる。昭和「二十三年の九月荏原署の警務主任をしていたこの冥賀岩雄警部、当時の警部補は、大堀という捜査主任あてにその上申書を出している。その上申書の中には「名刺の表面には他の文字は書いてありませんし、また書き入れた覚えもありません。裏面については、はっきりした記憶はありませんが、私が預かった当時は、何も書いてなかったと思います。しかし私が当時何か鉛筆でメモ式に書いて消しゴムで消したような記憶がありますが、支店長から名刺を受け取ったときは、表面にも裏面にも、活字以外に何も書いてはありませんでした。」これが三十三年九月、この荏原署の警務主任をしていた冥賀岩雄警部補が、大堀捜査主任にあてた上申書の一部なんです。ところが、一年後の第三十回公判になってくると、この冥賀警部補は、だれかの圧力がかかったのか「この名刺の裏に、何か書いて消したというようなことはありません。」こういうように上申書と異なった証書をしておる。」わけであります。したがって品川区小山町三の一一三鈴木八郎方と書いてあった、こういうように取材をし、現にこれが読売新聞に写真として載っておるわけであります。これを遠藤記者が確認をしております。したがって、遠藤さんはいつでもこのことについては自分の良心に誓って証言をする、こういうように言っていらっしゃいますので、本人も快く協力しようという希望もありますので、ぜひこの遠藤さんと、それからできればその当時やはり読売の担当記者をやっていらっしゃいました、いま報知新聞の事業部にいらっしゃいます小林新平さん、このお三人を呼んでいただきたい、こういう希望でございます。
○濱野委員長 いずれ理事会で協議することにしますが、しかしこの場合、最高裁の刑事局長が来ておるようでありますから——これは赤松君、要するに嫌疑を受けて裁判係属されている中でも、貴殿の読んだ書面の中には、しきりに暴力を加えられて虚偽の供述をさせられているようだが、そういう意味で、たとえ容疑者であっても人権は尊重されてもらわなければ困るのが、その辺の証言ならここへ呼んでも理事会は話し合いができると思うが、どうですかね、そのほうが適切じゃないですか。
○赤松委員 そうですね、人権擁護の立場からですね。わかりました。それでけっこうです。
○濱野委員長 それから、再審請求の事件ですから、むやみにそれに影響するようなことは、お互い憲法上三権分立の今日ではなかなか軽率には扱えませんから、何か別の角度で、そういう方面の理論の立つ、捜査には影響ない、それから再審の請求事件として直接影響のあるようなことは国会としては慎重に取り扱わなければならないし慎まなければならない。そういうこともありますから、それらを含めて理事会で相談することにいたします。
○赤松委員 そこで、理事会にかけていただくことはけっこうです。その前に委員長は委員部の諸君に命じて、その理事会にお出しになる、いま委員長のおっしゃったことを理論的にまとめたようなものを委員長私案として出していただきたいということを希望しておきます。
○濱野委員長 私案ができるかどうか、再審請求中の問題を討議中ですから、御承知のとおりの事情だから慎重に取り扱うことにいたします。いずれ理事会で協議いたします。
○赤松委員 人一人の命にかかっておりますからよろしくお願いいたします。 まだ質問はありますが、きょうはこれで打ち切っておきます。
○濱野委員長 石田君。 審議に入る前に尾之内道路局長に申し上げておきますが、やはり委員会に対する答弁は誠意を持ってしてもらいたい。前の次長のお話では何か委員会軽視、無視したような答弁であったものですから、特に技術者である局長の御出席を願ったわけです。そのつもりでひとつ誠意を持って親切に御答弁願いたい。そうでないと時間がかかってたまらないわけです。
○石田(宥)委員 先月二十九日の本委員会におきまして、人権擁護の問題として取り上げていただきました新潟県岩船郡荒川町におけるアスファルト・プラントの被害の問題でお尋ねをしたわけでありますが、当日道路同次長がおいでになりましたけれども、技術面などでよくわからないものがございまして、特に委員長からの御注意もございまして、きょう道路局長に御出席を願ったわけであります。なお、あわせて科学技術庁、厚生省、それぞれ微妙な問題もあろうかと思いまして御出席願ったわけでありますが、最初に道路局長にお伺いいたしますが、荒川町におけるアスファルト・プラントの設置については、昨年一応移動し撤去するということでございましたが、本年になりましてさらに、移動はいたしましたけれども、三十四、五メートルくらいの移動で同一敷地内に再建をいたしました。たまたま私が本委員会でこの問題を取り上げました日の朝、東亜道路株式会社は、その部落全員に手ぬぐいを配りまして、この施設を再開するからよろしくというあいさつ回りをいたしておるのであります。 そこで先般いたしました質問の際に明らかにならなかった点でありますが、今回は三十五メートルほど敷地は同じであるけれども移動した。それから煙突の高さが八メートルを十二メートルにした、防じん装置を施した、こういうことでありますが、本来アスファルト・プラントの中に含んでおります薬物、これはきょうは繰り返す必要はないと思いますが、概要だけ申し上げると、すぐその付近の人たちの中には、臭気の刺激でのどの病気になって県立病院にかかっておるわけです。ところが、そこにおって臭気を吸っておったのではなおりませんよと言われている。しかし、これは非常に大きなうちでもあり、農家でありまして、簡単にほかへ移るわけにはいかないのです。それから、そこのうちには二十四歳の女の病人がおるのですが、夏なかでもかやをつって、それでももちろん排除できない。それがためにぬれタオルを当てていなければならないような状態です。一方隣の國井さんのところでは、私も現地を見ましたが、これはまたひどいばいじんで、戸を密閉しておってもうちの中に二、三センチも入る。奥さんがすっかりノイローゼになって、去年の十月ごろにほかにうちを借りて、これもばかに大きなうちですが、家族が少ないので三世帯同居させておるわけです。その三世帯の者もはかへ移らざるを得ないという相談をしている。國井の奥さんはほかにうちを借りた。私が出かけていって何とかなるのではないかということでありましたが、たまたまこれは撤去移動をするということになって、その家は移転を取りやめたわけです。そういう経過がある。またすぐ近所のたんぼなどでは、風向きによってはたんぼに仕事に来てもとても作業をするにたえない、風の変わるのを待って作業に来るような実情のもとにあったわけです。それからもう一つ、山田のうちから新発田市へ嫁さんに行っているのが子供を産みに来た。これもやはりのどをやられて早々に新発田へ引き揚げて行った。引き揚げて行ったさきで子供もまたのどをやられて病院に通ったわけです。したがって、プラントの中のどういう物質がそういう被害を与えるのか、これは道路局長おわかりだと思うのです。それから、それがまた高熱の作用とかあるいは砂じんや何かとの混合の関係とかそういうところはどういうふうにお考えになっているかもし道路局長がよくおわかりにならなければ科学技術庁なり厚生省なりでこの点を明らかにいたしていただきたいと思うのであります。
○尾之内政府委員 アスファルト・プラントから排出されますガス、煙、これにつきましては、詳しい化学成分のことは実は私はわかりませんが、一番やはり問題になりますのはじんあいであろうと思います。これは使われますところの骨材、主として細石、砂、こういったものに含まれておりますところの砂じん、これが外へ放出されるもの、それから燃料として使用いたします重油、こういうものから出るもの、これは主として化学的なものであろうと思いますが、こういったものが一番ばい煙の大きなものであろうと思います。それが化学的にどういう成分であるかということは、私どものほうでは十分わかっておりませんので、これまた専門のほうからお聞き願いたいと思います。そういうものがございますので、そういったプラントの設置につきましては、常に私ども現場に対しても注意をしておりますが、大体これにつきましては、現場技術者がそのつど状況を判断いたしまして、できるだけ有効な措置をとるようにという指導をいたしております。
○石田(宥)委員 この点について科学技術庁でおわかりでございましたら承りたいのでありますが、最近公害の問題が全国的に起こっておりまして、これは全国的に問題のあるところでございますので、ここでできるだけ実態を把握しておく必要があろうかと思いますのでお伺いをしたいと思います。
○芥川政府委員 公害の問題は、ただいま御指摘のとおり非常に重要な問題でございます。ただ科学技術庁は、御承知のとおり科学技術に関する事務の総合調整をやっておる役所でございます。それでいま御指摘の公害の問題あるいは環境技術と申しますか、そういう問題につきましては各省庁が分担しておりまして、見積り方針の調整なりあるいは特別研究促進調整費を活用するようにしております。もう少し詳しく申し上げますと、たとえば環境科学技術を重要総合研究技術と認めますと、それに対していまのところは大気汚染の防止、水質汚濁の防止、騒音、振動防止というふうなことにつきまして各省庁一緒になりまして、たとえば大気汚染防止技術の推進をはかるために科学技術庁に大気汚染防止研究合同推進連絡会議というものを設けておりまして、さらに大気汚染につきましては無数の発生源があるわけでございますので発生源の部会、あるいはその発生源からどう拡散していくかという問題の拡散部会等を設けまして、各省と協力してやっております。したがいまして、ただいまお取り上げになりましたような問題は非常に重要ではございますが、これはとりあえず第一線官庁がお取り上げになるべき問題で、ことにこれは加害者と被害者が明確でございまして、科学技術庁はそういう問題には大体入らないで、第一線官庁で御処理になるというふうに考えております。
○舘林政府委員 通常アスファルト・プラントのようなものを置いて、加熱して出てくる有害物質として考えられますものは、すす、粉じん、先ほど建設省から御説明になったとおりでありますが、そのほかタール分よりの芳香性の炭化水素が出てまいるわけでございます。これがやや刺激性を帯びておりまして、呼吸器を刺激するというわけでございます。そのほか若干の亜硫酸ガス等も出てくるわけであります。なお、お話しのように燃料に重油等を用いておりますれば、重油の内容によりまして多少違いますが、その重油からある程度の亜硫酸ガスが出てくるわけでございまして、これが相当人体に影響を与えるわけでございます。
○石田(宥)委員 どうも第一線の道路局長のほうがさっぱり要領を得ないのですが、それはあとで伺いますけれども、環境衛生局長、毒物及び劇物取締法というのがありますね。その中で別表の一、二、三とあるわけですが、いまおっしゃった刺激性の毒物というのはどれに該当するのですか。
○舘林政府委員 毒劇物法に載っております毒物には該当いたしません。
○石田(宥)委員 そこで道路局長に伺いますが、先ほどの答弁だと、じんあい、いわゆる粉じんが中心で、重油をたいておるからというお話ですが、重油をたいたのでは、あんないらいらした鼻をつくような、のどを刺激して病気になるような刺激性の臭気は発散いたしませんよ。私は現地に行っているのです。この間次長では困ると言ったのは、局長はエンジニアだからそういうことはわかるだろうということで、きょう第一線の局長をわずらわしたのであって、そういう点がわからないようでは実は局長をわずらわすことはなかったのです。いま私が指摘したような甚大な被害を与えておるわけですが、そういう中にどういう物質が入っておって病人を出すかというようなことは、これはやはり道路局がもっと研究をしていなければならない問題だと思うのです。私は重大な責任問題だと思うんですよ。しかもこの間の次長の答弁だと、契約書についておる仕様書の中には、業者の判断によって害のない場所に置けということがある、こう言っておる。業者の判断によって害のない場所に置けということが仕様書の中にあるだけでは、業者は損得ずくだから、周囲にどんな危害があるかなどということは、特に今回の場合は考慮に入れておらないわけです。そういう点が私は本件のような事案を生んでおると思うのでありますが、その点、もう少しはっきりした答弁を承りたい。 先ほど申し上げたように、三十メートルや四十メートル横にずらして、人家からいえば二十メートルか三十メートル、むしろ国井のうちなどは、いままで四十メートルくらいあったのが、今度二十メートルに近くなっております。それで新潟地方法務局の村上支局ですか名称ははっきりわかりませんが、そこから警告などを受けて、移動します、こう育っておるが、これが移動と言えるかどうか。三十五メートルほど去年の位置よりも移動をして、それがどれだけの効果があるのか 八メートルの煙突を十二メートルにしてどれだけの効果があるかそれは何かやはり科学的な基礎というものがなければならないと思うのですが、それはどういう根拠なんでしょうか。
○尾之内政府委員 こういうプラント設置をいたします場合における発注者すなわち建設省と、これを施行いたします業者との間においては、各地建ごとに土木工事についての共通仕様書というものがございまして、それで一般的に現場の配置計画ということについて、請負人が工事を実施いたしますに必要な機械、設備等の配置計画あるいは段取りということについては、あらかじめ主任監督者つまり建設省の出先の長と協議しなければならないということになっておりまして、もちろんそれらは変更する場合も同様である、こういうたてまえになっております。したがって、詳細な基準を設けて、人家から何メートルというようなことまではきめておりません。先ほどちょっと申し上げましたが、現場におります主任監督員というのはどこでも全部技術者でございますので、それらが状況、地勢の判断によって適当と認めた場合にそれが許される、こういうことになっております。今回の場所につきましては、確かに当初、昨年施設いたしました個所は非常に適当を欠いた場所であったように現場としても判断いたしております。これにつきまして、前年度すでに工事途中でございましたために、地元の了解を得たということで、継続いたしましたが、今年度これからやります工事につきまして、どういう場所が妥当であるかということにつきましては、実は私どもこの問題を中央で承知いたしましたのがたいへんおそかったものでございますので、地方建設局との連絡も必ずしも十分でございませんでした。お話しのように三十数メートル離れた位置にこの四月に移したようでございますが、これらにつきましては風向きとかその他を考え、また前位置におきまして非常に適当でなかった点を改良いたしまして、御迷惑にならぬようにということを考えておるようでございます。それは、一つには煙突の高さを高くするということが一点でございます。それから使いますところの材料から出ますじんあいを少なくするような装置を施しておるということが二点でございます。それからこの機械は重油をたくような構造になっておりますが、できるだけ高級の重油を使いましで、揮発性の少ない、燃焼率の高いものを使うようにいたしております。こういうようなことがどのくらい効果があるかということにつきましては、実際にいろいろ測定をしなければならぬかと思います。現地におきまして、風の状況その他を勘案いたしまして、テスト的に見るべきものかと思いますが、そういうようなことでやってみなければわかりませんけれども、おそらく従来の五分の一あるいは十分の一くらいの程度以上に軽減されるということを考えておる次第でございます。しかし当委員会におきまして、ただいま現地において調査いたしておりますその調査結果によりまして、またどのような研究結果が出てくるかもわかりませんが、かりに三十数メートル離れました地点についていろいろテストをやりまして、この個所がいま申したように十分効果があるならば継続させてもいいかと思いますけれども、もしかりにそういう仮定したとおりにいかないとすれば、また別途考慮しなければならぬ、こういう種類の問題であろうかと私どもはただいまのところ判断をいたしておる次第でございます。
○石田(宥)委員 これは局長、去年法務局でも保健所でも北陸地建でも土木出張所でも取り上げて、ここでは再開させられないという態度をみなとっておったわけです。あなたは直接まだ聞いておられないかもしれないけれども、県庁の土木部でも、あなたの直轄の北陸地建の所長でもみな知っておるのです。ところが、同じ敷地の中へ施設をした者にまた工事を発注しておる。五月一日から八年二十八日までまた発注している。これはわれわれ納得できないのです。そこは移転をします、そこの施設は千葉県かどこかに持っていきます、ほかへ移します、こう言ったから、法務局のほうもそのままにしておった。また保健所もそのままに見過ごしておった。ところが、またのこのことやってきて、同じ敷地の中につくった者に対して、あなたのほうは十分それを承知しながらまたもや発注するとは一体どういうことなのですか。私どもはそういう点がどうも納得がいかない。
○尾之内政府委員 これは先ほど申し上げましたように、私どもがこの設置移転した個所について結果を知りましたのはつい最近でございます。そういう業者に再度発注したということでございますけれども、これは地方建設局長が責任を持ってやっておることでございますが、こういう舗装工事等につきましては、御承知のように指名入札によりまして各業者の間からとるわけでございます。そういうようなことで、特にそこにとらしたというものではございません。また、ただいまのお話のように、昨年いろいろ問題があったにもかかわらず、また同じようなところにやらすということにつきましては、出発のほうにおいても若干この問題についての扱い方が不十分であったことは確かに非常に遺憾でございますので、私ども今回のお話がございましてからは、単に業者が地元と話がついたからいいというような間接的なことではいけない。地方建設局の出先がみずから地元の方と話をはっきりつけてやらなければいけない、こういうことを申し伝えております。その辺につきましての地元との協力といいますか御理解ということが、前年度十分でなかったことは事実でございまして、これにつきましてはたいへん申しわけないと思っております。
○石田(宥)委員 この間次長が見えられたとき、私申し上げたのですけれども、前段申し上げたような非常な被害を与えながら、東亜道路株式会社という会社は、昨年部落全体に対して二万円の洗たく料を払っただけなんです。医者通いをしている事実も知っているし、作業ができなくてほかへ回っていっておる事実も知っておるし、患者がおってどうにもならないということも、もう何回、何十回となく言っておるのです。しかし、一銭の見舞い金も出していないのです。しかし、この深刻な被害を受けた諸君は人格者だから、何か金をもらうためにものを言うようで悪いからその点には触れていないのです。これは古い意味の人格者です。いまの都会人ならそんなことは黙っておるはずはありませんよ。ところが、部落全体に二万円の洗たく代を払っただけであとは何もしていない。この間二十九日に手ぬぐいを一本ずつ配っただけです。いかに土建会社が横暴だ乱暴だといっても、こんなひどい会社は私は初めて見るのです。過去にも同様なあるいはもっと深刻な事実があったのではないかと私は考える。また建設省のほうでも、さっき私が指摘いたしましたように、人権擁護局のほうからも問題になり、保健所のほうからも問題になって、あのくらい大騒ぎをして、地方新聞も何回かこれを取り上げておるにもかかわらず、また同じその会社に発注をするなどというに至ってはさたの限りだと私は思うのですよ。こんな理不尽な仕打ちをやる会社に建設省がまた発注をしたということは、私ども腹に据えかねるのです。もう少し常識的にこの問題を取り扱うように会社に厳重な警告をする、もし改めない場合には指名人としての資格を剥奪することが当然だろうと私は思いますが、どうですか。
○尾之内政府委員 先ほど来いろいろ申し上げましたとおりでございまして、今回の位置につきましては、昨年起こりましたような御迷惑は絶対かからないようにということで、私どもも出先の機関を通じまして請負人たる業者にもはっきり処置をさせたい、このように考えております。
○石田(宥)委員 出先のほうから報告があったと思うのですが、煙突を四メートル高くした。それから防じん装置をしたということを言っておるから、それで認めてもいいのではないかと建設省は考えておられるようですけれども、さっき私が指摘したような、単なる砂じん、粉じんというものだけではないのです実ね。薬物によって病気になっておるわけです。一体咽喉を刺激して病気を起こさせるような薬物を使わない操作ができるというなら別だ。しかし、それでもアスファルト・プラントの粉じんはただごとではないのです。人家の二十メートルか三十メートルの中に建てておいて作業をするなどということを、いかに神経の太い建設省といえども認むべきではなかろうと思うのですけれども、どうです。
○尾之内政府委員 これはたいへんむずかしい問題でございまして、適当な場所があれば全然人家に影響のないところに移すたてまえであろうと思います。私ども全国で舗装事業をやっておりますけれども、市街地におきましては、どうしても一ある程度地元の御協力、御理解を得ながらやらざるを得ない場合が多い場合がございます。そういう場合には、いま申しましたように、できるだけじんあいが出ないような施設をしてやるということになるかと思います。アスファルトはコンクリート・ミキサーのように、遠くで練りまして持ってくるというわけにまいりませんので、ある程度距離が近くありませんと工事ができません。したがいまして、幾らでも離れてもいいということにはまいりません。どうしても限られた距離内で選ぶということになりますと、いま言いましたように、ある程度、もちろん害にならない程度のことはがまん願わなければならぬ場合がございます。それは一般論でございます。今回の場合について、それにかわる場所がなかったかどうかということにつきましては、いま申しました市街地とは違う事情もございますので、この点、私どもまだ十分調査ができておりませんので、たいへん申しわけございませんが、今回の措置が不適当ならば、また変えることも考えなければならぬと思っております。そういうことをいろいろ現地において実験しておる最中でございます。変えるとか変えないとか、責任を持ってはっきりお答えする用意がございませんので、御了承いただきたいと思います。
○石田(宥)委員 局長、この間ここで申し上げたのですけれども、この土地は荒川町長の所有地なんです。そこで、これははっきり契約書を見たわけじゃないですけれども、大体三年分、二百万円くらいの貸し賃を前取りしておる。そこで町長がいろいろにらみをきかせたり、そしてまた問題が起こっても、町長がいろいろと策動をして、そして地元では異存がないんだというようなていさいをつくっておるようです。その中にあなたのほうの地元の諸君も巻き込まれておるような節がたくさんある。これは法務局のほうでせっかくいま調査中でありますから、私はさらにその結論を待って本問題と取り組まなければならないと思いますが、少なくとも建設省として、現状のような状態のもとで作業を開始させるということは、私は大きな問題が起こるであろうと思うのです。いまこれを停止させるとかさせないとかいう答弁はできないというお話であるけれども、あなたのところの、建設省道路局には具体的なものは入っていないかもしれないけれども、北陸地建は、そういう地方ボスの暗躍で困り抜いておるのです。地方の人たちは、建設省などというところは、土建会社に頭が上がらないところだから、どうも何ともならないではないかということであきらめておるようだけれども、私どもは、いかに土建会社が横暴であろうが、乱暴であろうが、やはり法律を無視して人権を侵害するようなことを見のがしておくわけにはいかないですから、これは法務省のほうでもう調査を始めておられると思います。その結論を持ってさらに対策を考えなければならないと思いますが、もう少しき然たる態皮で、勇気を持って本問題に対拠されるように私は要望申し上げておきます。 次にひとつ法務省のほうの調査の段取りを伺っておきたい。
○鈴木(信)政府委員 前回の当委員会で御要望もありましたので、実は昨日から現地に人権擁護局から二名、それから東京法務局の人権擁護部から三名の係員がまいりまして、現在まさに両石をしている、そういう段階でございます。したがいまして、結論につきましては、いましばらくお待ちを願いたい、かように存じております。
○石田(宥)委員 委員長にお願いしますが、小さな問題のようで恐縮ですけれども、私は、これは全国的にいま起こっておる大きな問題であろうと考えますので、先刻来指摘いたしましたような事態もございます。すなわち、問題を起こしておるにもかかわらず、さらにそういうところへまた発注をするというようなところには、どうしても納得のいかない問題がございますので、人権擁護局の調査と相待って、場合によっては東亜道路株式会社の責任者等を参考人として呼ぶなどいたしまして、本問題については徹底的に責任を明らかにしていただきたいと思います。いかがでございましょう。
○濱野委員長 承知しました。
○石田(宥)委員 じゃ、私のきようの質問は終わります。
○濱野委員長 本日はこの程度で散会いたします。いずれ公報をもって次会はお知らせいたします。 午後零時三十九分散会