法務委員会 第19号
- 発言数
- 29 件
- 登壇者
- 4 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1964/03/27
会議録
○濱野委員長 これより会議を開きます。 法務行政及び人権擁護に関する件について調査を行ないます。横山利秋君。
○横山委員 冒頭に大臣に、この間は大臣も私も少し興奮しておったようでありますから、冷静にひとつ御注文をいたしたいと思います。大臣と私とは年配もきわめて違いますし、それから大臣のような昔から政治に多年の経験を持っていらっしゃった人と私のような浅学非才な者とはこれまた違う。しかし、その意味においては苦言を呈したいと思うのでありますが、今日の日本の政治は私どものような若い者がどんどん出ておるわけであります。その意味では、私どもは合理性ということをきわめて高く評価しているのでありますが、どうも大臣の御意見を承りますと、合理性よりもむしろ政治的判断というか、極端に申し上げれば、詰めるということよりも詰めないということのほうに力点を置かれるような感じがいたすわけであります。そこであなたと私との歯車が食い違っているという感じがしてなりません。大臣のお話になることは少なくとも質問者を納得させなければならぬと思うのであります。意見が違うことがあっても、少なくとも私が納得しなければ大臣がどういう御答弁をなさってもだめなんです。私が納得するということは、大臣が言っていらっしゃることが私にわかるということでなくてはだめだと思う。その意味では、この間最後の幕切れで大臣がおっしゃったことを何回も問いただしたのでありますけれども、大臣はそれは二回とは言わぬ、わしも速記録を見たいくらいだ、そういうお話では質問にもなりませんし、御答弁にもなりません。そこで、もう一度いま私が申し上げたような気持ちをくんでいただいて、そして私にも大臣の言わんとすることがわかるような懇切な御答弁をまず願っておきたいと思います。 そこで、御要望によりまして速記録を、大臣の手元にもあると思うのですが、読み上げます。最後のところは、私から「できるならばということをそれではとりましょう。日本政府として、基本的には南であろうと北であろうといろいろな利益供与について差別はしない、こういうのが日本政府の基本的立場と理解してよろしゅうございますか。」「賀屋国務大臣 それは人道的考慮に基づきまして、在日朝鮮人の生活その他を考える立場におきまして基本的に変わりはないのです。」「横山委員 そうすると、これはあとあと交渉が成立しました場合に、大臣のいまの御発言は非常に重要な話題になると思いますから、あらためて言うておきます。要するに、大臣のお話は、世界人権宣言その他からも徴して、南であろうと北であろうと日本政府が差別をつけるつもりはない、これが日本政府の態度だ、こういうことですね。」「賀屋国務大臣 私の言ったことばどおり御了解願いましょう。あなたが言い直されるとまた違ったことになるかもしれません。」「横山委員 私の言った言い方が悪かったならば大臣の言い方でもよろしい。もう一ぺん恐縮ですが、正確に、あいまいなことを言わないで正確に大臣の基本的な日本政府の態度をおっしゃってください。」「賀屋国務大臣 先刻申し上げましたとおりであります。一々ことばじりをつかまえて、ああだこうだ、それじゃ私は話し合いにならぬと思うのですよ。」 そこで速記録の要求、こうなったのであります。 同校諸君もお聞きになって、問題の焦点はおわかりになったと思うのでありますが、私の聞きたいのは、そもそも日韓交渉をするにあたって、法的地位について日本政府はいかなる立場をとったかということが聞きたいことなんです。私どもの主張だとかなんとかさらっと一ぺん流して、そもそもどういう基本的立場であったかという質問でありました。賀屋国務大臣は「人道的考慮に基づきまして、在日朝鮮人の生活その他を考える立場におきまして基本的に変わりはないのです。」こういうおことばだと了承がされます。それでよろしゅうございますか。
○賀屋国務大臣 私も速記録を取り寄せまして、私どもの考え方ができるだけ御了解願えるようにつとめるつもりで速記録を読んでみました。最後に私が「私の言ったことばどおりで御了解願いましょう。」と、結論的に申し上げまして、その「私の言ったことばどおり」というところがどういうことであるか、前に私の結論的に申し上げましたことをもう一度そのとおり読んでみます。「相手が違うのですから、国交があって条約がある国と、その国民と、そうでない国民と、どこをさがしても差別があるかないか、いま申し上げたように、それは条約ができまして、それに対して日本はどういう法律を出して実行するかというところにまいりまして、いろいろこまかいことはきまるので、いま申し上げましたように、もとから日本人として長く日本におって、そうして当人の意思はどうかわかりませんが、ああいう桑港条約、その前にはいろいろ各国の協定、宣言もあったかもしれません。そういう結果国籍をとられた人から、実質的にはなるべく生活の本拠になった日本で暮らせるようにしたい、こういう意味の基本の考え方に差別はないということを申し上げているのです。だから片方は法律で保障され、片方はないじゃないか、差別があるじゃないかとおっしゃれば、それは差別ができるかもしれません。基本の考え方は差別する気持ちはございません、こういうことを申し上げておるのであります。」これを読んでみまして、私は、表現はあるいは非常に不完全かもしれませんが、内容、気持ちは少しも変わりません。それで、同じことで別の表現をもってしたらば、あるいはあの場合以上に御了解が願えるかと思いまして、これを読んで、私がそういう意味で書き直してみました。それを読み上げますから、ひとつお聞きを願います。 終戦以前より日本に引き続き在留し、生活の本拠が日本にできまして、日本の風俗、慣習、言語等に多分に同化し、日本人として在留した人が桑港条約の効果によって日本の国籍を失い、他の普通の外国人と同様に取り扱うこととなっては、はなはだ気の毒でございますから、日本の利益を害さぬという点をも考慮し、一定の条件を備うる者は日本に永住権を与えることとしたいと考えております。しこうして、その永住権を得る資格と日本住居中の待遇並びに強制退去の条件等は、普通の外国人の永住の場合より寛大と申しますか、韓国人永住者にとって利益、便宜が多くあるようにしたいと考えております。 しかし、みずから韓国籍を選択しない在留朝鮮人に対しても、将来その法的地位が確立せざる期間においても、実質上大体同様の取り扱いをなさんと考えておる次第で、基本的の考え方において差別はないのであります。ただし、どういう角度から見ても、いかなる点においても、全然同じかといいますと、一方は国交があり——、これは条約が定められた後の状態でありますから——条約がある国の国民であり、他方はしからざる外国人でありますから、そのとおりと申し上げるわけにはまいらぬのであります。それ以上は——それ以上のことはという意味です。ただ両者の差別のあるかないかにつきまして申し上げる時期ではありません。日韓交渉が済み、両国の条約ができまして、その実行に必要な法律案を御審議願うときに至りまして正確に申し上げ得ることとなると存じます。 前会の御審議のときに申しましたことばは、表現が不十分かと思いますが、言い直してみますと、いまのような考え方でございます。
○横山委員 いまのお話は非常に要領を得ています。大体大臣のおっしゃらんとすることもわかったような気がします。 そこで、その点についてもう少しただしたいと思いますのは、この間私とあなたの意見の違いました点は、韓国籍を希望する者については法律的な永住権を与える、韓国籍を希望しない者については、基本的には差別しないつもりではあるけれども、法律上これが守られていないし、協定上も守られていないからしかたがない。その違いについては、交渉が済み、そして諸般の手続を経たらはっきりすると思う。こういうお話ではございますけれども、私どもの最も言いたい点は、交渉が妥結しなければ、本来あるべき永住権というものが韓国籍以外の者については与えられない理由は何であるかということと。もう一つは、こういうことを差別待遇をする結果においては、在日朝鮮人六十万の諸君に利益誘導を日韓両国が行なって、結局、本人の国籍選択の自由を阻害しはしないか、日本政府みずからが人権に関する世界宣言の違反に参画することになるのではないかという点が大臣と私と非常に意見が違う。違うというよりも突っ放しのような言い方で、あなたとわたしとはまるっきり話が違うのだということで、私の言うことについて、大臣は、それは人権に関する世界宣言に違反しないという理由を、私には腹に落ちるように御説明をなさらない、そこがポイントの一つ。 もう一つは、いま言いましたように、韓国籍を希望しなくても、こういう永住権を法的に与えてなぜ悪いか、北朝鮮と国交が回復していなくとも、すでに実質上の永住権のようなものを法律によらず協定によらずに現在持っているではないか、そういう実績があるならば、韓国籍を希望する諸君に与えられると同じ法的地位を北朝鮮を希望する諸君に与えてなぜ悪いか、この二つの点をあなたは突っ放すように、あなたと私は意見が違うのだということで、私に十分に腹に落ちるように話をしてくれぬ、こういうことなんですが、いかがですか。
○賀屋国務大臣 世界人権宣言には違反しないと思います。たとえば適切ではないかもしれませんが、ある国がある国と移民条約をする。そしてこういう条件の人は何名入れてやる、そういう条約をしない国からは移民ができないことになっている。そこに区別があります。それじゃ、それは世界人権宣言に違反しているか、これは違反していると解釈する人はいないと思います。現在、在日朝鮮人にいまのような特別の永住権を与え、ほかの外国人には与えるわけにいかない、それでは差別しているか、そういうことは世界人権宣言にいういわゆる差別ではないと思うのであります。現に中国人にも与えていない。中国人のうちの台湾人、在来日本人であったが、これも別にそういう取りきめはございませんし、したがって法律も出ていない。それから大陸の人ももちろんであります。そういうことによって、それが人権宣言に違反するとは私どもは思っていないのあります。 それから、現在昭和二十七年の法律によって、法的地位が確立するまでは従来どおりに待遇するということ、それは在日朝鮮人が韓国籍であろうとなかろうとすべてそれで扱っております。現にそれでいっている。それはむろん差別がない。そういうのは在日朝鮮人だけでございます。ほかの人にはない。では法的に何もないかというと、法的にきまるまでは現状においていくというのが昭和二十七年の法律にあるのであります。ただ国交がないし、条約がありませんから、法律は出しませんけれども、事実上において、私どもはそういうのは差別があるとは思わないということでございます。 それから、なぜ法律を出さぬかということでございますが、現に日本人であった中華民国籍の人にも法律を出していない、それでも実際には昭和二十七年の法律の適用でやっております。別に不平もございません。それで将来いずれの国とそういう問題について交渉するか知りませんが、交渉しまして、その国との話し合いがきまりますと、いろんな生活保護とかあるいは学校に入れるとかという以外の点についてはどういうことが起こるかわかりません。だから、現に、ほかの国にもしていないことを、条約のないほかの国にしなければいかぬという理由がない以上は、そういう両国の協定、合意ができてきめるほうが正当であります。現に南と北を問わず在日鮮人は今日まできておるわけであります。そういう意味で、いま法律を出すことはどうも早過ぎる、かように思うのであります。
○横山委員 そうしますと、この協定が成立をしたといたします。そうすると、もちろん協定だけでは実効があがりませんから国内法の改正をすることになる。国内法は何法と何法をこの永住権の問題については改正をされるか。またその中に、韓国大使館なり代表部なりの何か証明書を添付しろ、こういうことまで法律に書くことになりますかどうか、それをお伺いいたします。
○小川政府委員 それでは私から、技術的な点にも関連してまいりますのでお答えをいたしたいと存じます。 協定ができました暁に国内法のどういうものを改正するつもりかという第一点の御質問でございますが、実はわれわれの法的地位委員会の折衝の現段階におきましては、まだ詰めてない部分も相当ございますので、国内法にどういうふうな特別な立法をしなければならないかというめどが必ずしも完全には立っておりませんが、たとえば、ただいま問題になっております昭和二十七年の法律百二十六号は当然手をつけなければならないと思います。その他の国内法につきましては、交渉が煮詰まりまして、ある程度まとまりました段階において、いろいろ手をつける法律について早急に検討を要することと考えておる次第でございます。 韓国籍を希望すると申しますか、そういう人たちに韓国側の証明書を添付するかどうかという問題につきましては、法的地位委員会におきましても当初から非常に問題になっておったものでありますが、これもまだ完全にはまとまっておりません。われわれといたしましては、協定該当者というものを日本国政府だけで認定するということは、国籍をきめる場合の国際慣習と申しますか、国際法一般の原則に従ってできないのでございますから、できるだけ韓国側の何らかの形における証明をとりたいと考えて折衝しておる次第であります。
○横山委員 韓国籍の証明書がなければ永住権を与えられない、それによって利益供与は法律上できない、こういうことは在日朝鮮人六十万の諸君に対して非常に心理的動揺を与える、私はこういうことを言うのであります。大臣は先ほど、移民条約のないところには移民が行けないのではないかと言われたが、これは理屈の筋違いというものでありまして、人権に関する世界宣言は何びとも自由に国籍を選択する自由を持つ、これはあらゆる前提条件抜きの基本的問題をきめておるわけであります。この六十万の諸君の、おれは南がよい、おれは北がよい、おれは日本に帰化するという全く白紙の権利というものを、韓国大使館に行って証明書もらえばあなたは利益がありますよということを、韓国のみならず日本が宣伝をすることになるじゃありませんか。これは事実問題として結果として宣伝になると思います。日本政府は、初めからこういうようなやり方を希望しておったのか、こういうことが人権に関する世界宣言に何ら抵触しないと考えたのか、交渉の結果やむを得ざるものとしてこういうことになったのか、その辺の真意を開きたいと思っておる。日本政府としては、六十万の諸君が自由に北朝鮮に、あるいは南朝鮮に国籍を選択することを、正しく望むのが必要である。その方途というものをまじめに考えられたのか考えられなかったのか。ただ日韓交渉であるからそれを盛っていくのはしかたがないのだ、差別待遇になって国籍選択の自由が自然に侵されていくのはしかたがないのだと初めからきまったものであるかどうか。私はその点どうもあなた方にじくじたる気持ちがあるような気がしてしかたがないのでありますが、これはしようがない、初めから韓国の主張と全く一致しておったというふうに、ほんとうに腹を割ってお答えなさるつもりであるかどうか、私はきわめて不審に存ずるのでありますが、基本的なお気持ちをこの間から迫っておるのはこの理由からです。
○賀屋国務大臣 ただいまのお話の中で、一つ私の言っておることをお取り違えになったことがあったのではないかと思います。一方は利益を得る、一方は利益がない。一方というのは韓国国籍、国内で利益は大体同じなのですね。昭和二十七年の法律でやっております大体おもなことは、生活保護でございます。それから義務教育というような、それ以上にむしろ北鮮のほうは北鮮帰還などという、自費で帰還すべきことを日本が財政的に援助しているといういままでの実情も決して否定をいたしておりませんし、そういうことが続くのだから、一方は韓国国籍を符なければ生活保護もすぐに打ち切られるのだ、それから学校にも入れない、そんなことではないわけですから、一方は利益があり、一方は何ら利益がないというふうにもし御理解になりますならば、その点はいま申し上げたとおりでございます。それが一点で、それから国難の点はどうなのでしょうか、私も国際法学者ではござ一いませんが、国籍の選択は自由なりといって、外国人が日本の国籍にあると言われましても、これは私は承認するわけにはいかないと思います。日本国籍を認めるか、認めないかは、その国の主権の作用として、どんな人も、おれはAの国籍だと自分が主張すればA国籍だと言われるのはいかぬと思います。人権宣言でもそんなむちゃなことを言っているのではないと私は思うのです。だから、おれは日本人だと言われても、日本の国家は日本人と認めない場合があるのです。帰化を認めた場合に初めてなるわけでございます。さような次第でございますから、韓国人だと御自分が選択されることは自由でございますが、御自分が選択されたから、日本でそれは韓国人だ、ちょっと名称は不完全でございますが、おれは韓国人だと言われたから、日本は無理にもして——かりに北鮮の人が何か悪いことをします、そうしたら北鮮のほうに、おまえさんの国の人はけしからぬと言っても、それはおれの国の者じゃないと言われて、ちゃんと国籍の決定に正当な手続をしない、これはいたし方のないことだと思います。ですから、国籍選択の自由と言われましても、御当人だけの考えで言われたことを、日本でどうしてもそれを認めなければならぬということではないと思うのでありまして、この点は別にお話しのように、他意があってそういうことをしたわけではございません。
○横山委員 この際ひとつ入国管理局長に、法律上の立場について明確にしてほしいのですが、大臣のおっしゃる永住権が法的に与えられた者と与えられていない者と事実上違わないということを盛んに力説していらっしゃるのですが、ぼくは非常な違いがあると思うのです。それはどういうことかと言いますと、私もしろうとでございますけれども、協定並びに法律によって永住権が与えられるならば、これは権利ではないか。それから、それでは与えられないけれども、事実上それに熱するようなものを付与するというのは、これは恩恵ではないか。その違いというのはきわめて重大で、後者のほうにつきましては、これは日本政府の自由裁量にまかされる問題ではないか。これはその人々は日本政府を相手どって争うことのできない問題ではないか、この点についてはどうですか。
○賀屋国務大臣 この点も、前にも申し上げたのでございますが、生活保護とか、義務教育の学校に入って無償で教育を受けるということにしたいと思っております。しかし、それを権利として認めますかどうかということも、まだ煮詰まっていないのでございます。それで初めに申し上げましたとおり、われわれは同じようにいきたい、ただ、まだ会談はそこまで煮詰まっていないのでございます。会談が煮詰まって、条約ができまして、その施行について法律ができました上で、そういう点はいろいろ御審議を願いたい、こういうのが趣旨でございます。
○横山委員 ことばをそらされるようでありますけれども、それは永住権によって利盛を供与される者についても、権利となるか恩恵になるかそれはわからぬ、こうおっしゃるのでありますが、そういうこともあり得るだろう。しかし権利の問題もあるのではないか。たとえば両国がもう合意したと伝えられる財産搬出問題につきましても、「原則的に帰国時に全財産を搬出できるが、双方で専門委員会を構成して、時期節次方法を決定する。但、日本法律で定めた禁止品目、商品として認定された物件は搬出を禁止し、時期節次細目は両側が専門委員会を構成して協議した後決定する。現金搬出に関しては一世帝単位で一時五千ドル搬出することができる。」そのほかいろいろ私の手元に入手しておる情報によりますと、これも事実であるかどうかは別といたしまして、かりにこういうようなことが決定をいたしますれば、韓国籍を希望する人は財産搬出については五千ドルを、法律なり協定なりできまったのだから、それを日本政府が阻害するならば、なぜやってくれないかといって争うことができるではないか、そうでない人たちは、もう協定にも法律にもないのだから、日本政府がうんと覆えばいいが、日本政府はそれに対してどうにでもチェックできる、こういう立場でないのか、こう言っているのです。
○小川政府委員 ただいまの御質問でございますが純粋に法律的に考えますならば、確かに先生の御説も正しいということが言えるのじゃないかと思うのでございます。ただし、私どもがいま考えております方式につきまして、たとえば一例を申し上げてみたいと存じますが、国際間に条約を結びます場合に、権利もございますけれども、同時に義務を伴うのが通常でございます。したがいまして、いま一例を申し上げますと、強制退去事由に関する問題でございますが、これは日本側から申しますと、ある一定の退去強制事由に該当した者につきましては、相手国政府に引き取ってもらうことを要求をするわけでございますから、われわれが普通の退去強制事由よりももっと緩和された事由を今度つくろうとしておりますけれども、それがわれわれの側から申しますと一つの義務になります。しかし、同時に相手国の政府にとりましては、そういう退去強制事由に該当した場合には必ず引き取らなければならないという義務を生ずるわけでございまして、やはり条約というものはそういう面がございますので、そこで韓国人とそうでない者との間にそういう意味で差別ができるということは、これはやむを得ないことだと存ずるのでございます。ただし、われわれはその場合におきましても、戦前から引き続き在留しておりまして、自分の意思に反して国籍を喪失したという背景につきましては十分に考慮いたしまして、それでなるべく粗漏のないように実質的にあらゆる方途を講じたいという気持ちでおる次第でございまして、大臣が先刻からるる申し述べておられますことも、そういう意味であると私は確信しておる次第でございます。
○横山委員 その強制退去の条件の場合の例はよくわかりました。けれども私が聞きたいことは、法律的に、協定によって与えられるものは、これは権利義務の関係になる。しかしながら、正式に法的地位の与えられない在日朝鮮人に対する条件というものは、これは権利義務の関係ではないじゃないか、日本政府が恩恵的に与えるものではないか、こういうことのずばりとした御返答がないのです。
○賀屋国務大臣 何が在日朝鮮人の権利になりますか、恩恵になりますか、事実上の日本政府の行為でありますが、これもきまってみなければわかりませんが、それは形の上で差異があるというこうは否定しません。そういうことは初めに申し上げましたように、条約がある国ない国、国交がある国ない国、いろいろな観点から言いまして、全然同じになるということは申し上げられぬと言っておるのでございます。また違う理屈も出るかもしれません。だから、違うと仰せになれば違うかもしれませんが、そういうことは今後条約が煮詰まり、また、それによって法律をきめたときに出る問題でございまして、われわれはそこにおいて差別待遇はいたしませんけれども、やむを得ざる形の上の差別ができるかどうかということは、いろいろ御批判が起こると思いますが、いま仮定しまして、条約ができない、法律ができない前に、これはどう仰せになりましても、そういう違いはできるかもしれませんということを、私は初めに申し上げておるのであります。それがいいか悪いか、具体的どういう違いができて、その違いはよくない、それはそのときに十分御審議をいただきたい、こう申し上げておるのであります。
○横山委員 私どもが、本委員会において緊急にこの問題を取り上げたいというゆえんのものは、少なくとも在日朝鮮人六十万の諸君が本問題において非常に動揺しておることが一つ。それから同時に、日本国及びその国民にとりましても、この結果いかんによっては、その紛争に巻き込まれる、また参画をするということになる。それが目に見えていますから、かくも心配をするわけであります。この条約ないしは協定、ないしはその他のものが妥結をして、そうしてこの国会に上程をされるということがもし万一ありとすれば、そのときには国と国との条約及び協定でありますから、われわれには、本質的には修正とかいうことではなくて、賛成か反対かということしかないわけであります。そのときには、政府としても一たん約束したことだから、これは何ともならぬのだということを言うのは、いつものとおりであります。したがってそれ以前に、今日交渉をされる政府として、かかる国籍選択の自由というものが阻害されるおそれがあり、日本に在住する朝鮮人はまっ二つに分かれて、いよいよ激化する紛争がここに生ずることになる、また日本政府及び国民としても、その中に巻き込まれていく可能性があるから、そのようなことのないようにするにはどうしたらいいかということな考慮すべきである。われわれはその点を心配しておるわけであります。もちろん基本的に申しますと、われわれは日韓交渉に対して反対をいたしておる立場でありますから、われわれがこの問題一つ、法的地位に限って議論いたしますことは、少し本質的な問題から言うと、いかがかと思いますけれども、それにしても交渉しておる政府として、目に見えるような紛争及び危険に介入をするような取りきめのしかたというものはいかがなものであろうか。できるならば強制送還でも、たとえば北朝鮮に強制送還をする。北朝鮮が権利義務で関係でないから受け取らないという問題は、私は特異な例だと思う。そういう特異な例は一応除外して、自余の問題については在日朝鮮人すべてに平等な、法律上の機会均等の措置をすることが、一体どうしてできないのであろうかという点が、私はどうにも納得ができぬのであります。これは国交が回復していないからというならば、現在行なわれておる暫定的な措置というものは、何らの国交上の協定、取りきめによってなされているわけではない。事実問題としていまなされておるのである。この基盤に立てば、これはすべての在日朝鮮人に同じようにこのことを与えてどうして悪いのか。あなたがもし、日本としてはそう主張するけれども、韓国政府がそういうものだから、話し合いだからこういう結果にならざるを得ない、相手仕事だと言うならば、まだ私は立場はわかる。けれども、日本国政府がみずからそういうことを主張したといたしますならば、これはいかがなものであろうか、こういう気持ちが私はしておるのです。
○賀屋国務大臣 それは交渉ですから、相手方の希望も尊重しなければなりませんが、お示しのように、いま私どもも申し上げておりますように、事実上、基本的には同じような扱いをする気持ちです。条約がある国ない国、国交がある国ない国、そういうことからどういうひずみがくるかわかりませんが、それまではどこからつついても同じだというわけにはいきますまいというふうに申し上げておるわけです。日本はけしからぬ、紛争を起こすというお考えは、それはあなたがおっしゃるのじゃないでしょうが、私どもには理解できない。われわれは非常に親切に考えていると思うのです。現に二十七年の法律で、法的地位が確定するまでば同じように扱っていこうというので、大体私は日本は善意に進んでいると思います。 それから朝鮮人に限ってのお話ですが、中華民国の人で朝鮮人よりはもっと長くおる人もあるわけです。それに対してももちろんいままでの扱いでずっとやっております。事実上われわれは誠意を持ってやっておりまして、そう別に、それで紛争を起こすということはございませんが、やはり紛争を巻き起こさないように、われわれの善意につきましてもよく了解していただきたい。それは紛争を巻き起こすからけしからぬというのですと、私はそのお考えも必ずしも承服できないわけでございます。
○横山委員 どうも承服できないということでは問題にならぬと私は思うのですが、私は何回もここで言っておりますから、大臣も私の主張しておる点はほぼおわかりじゃないかと思うのです。もう一ぺん、恐縮でありますが、簡単に言いますけれども、現在南北すべての朝鮮人に対して平等の待遇を与えているではないか。この現在与えているものを、一方はより高き地位にする、一方は現状どおりにするということは、日本国政府としてとるべきことではないではないか。それは法律上、国際法上の問題以前に、日本の立場としても、日本において紛争を起こさないようにするためにはそうあるべきではないか。これがよその国の中で行なわれていることならともかくとして、日本国政府として、国内における六十万の人たちについていろいろな問題が起こるではないか。法律上平等な地位を与えていかぬということは、あなたの説明ではたった一つある。それは、一方は国交が回復する、一方は国交が回復していないとおっしゃる。国交が回復していないから永住権が与えられないという理屈はないではないか。いままでだってないではないか、一方的に与えているではないか。そういうのが私の意見です。
○賀屋国務大臣 紛争というのはどういうことでございましょうか。いま横山委員の御想像のようにきまりました場合に、在日朝鮮人の間で紛争が起こるという意味ですか、あるいは日本に対して在日朝鮮人が紛争を起こすという意味でしょうか、私は前者ならおかしいと思うのです。日本と韓国がやったことで、しかもそれは在日朝鮮人が一歩一歩改善される方向に行き、日本も将来国交回復をするような場合にはそう行くということがわかるのですから、それで在日朝鮮人相互の間に紛争が起こるというようなことは、私はどうも起こさなさいほうがいいのではないかと思う次第でございます。 それから日本政府に対してもそうでございます。それはいま申し上げました中華民国の人に対しましても、どっちかというと、中華民国との条約ができましたときに、この点は入っていないために、むしろ今度の韓国人よりおくれるわけでございます。ただ、いま申し上げましたような、たびたび申し上げますような気持ちなら、たいがいの外国人に納得してもらえると思うのでございます。紛争を起こす起こすと仰せになりますが、どうもわれわれは、常識なら紛争が起こるわけがない、率直に申しましてかように考えておる次第でございます。
○横山委員 紛争が起こるわけがないということは、私は法務大臣として非常に甘い考えだと思うのです。なぜなれば、現在においても、法的地位を含む今日の交渉の問題について、北朝鮮の諸君が反対をしておるばかりではなくて、南朝鮮の国民も非常に反対をしておる。一方国内におきましては、六十万の諸君は、ある者は法的地位が与えられ、ある者は法的地位が与えられなくなる。明らかにそれは法律上また事実上差別待遇が起こる。そうして日本政府及び韓国の代表部なり大使館は、申請を五年の間にしなさい、 さあ、したほうが得ですよ、こういうことがありますよといってPRをするに違いない。そうすれば、それが在日朝鮮人の間に非常に議論になる。手続をするかしないかで議論になる。中立状態におる人は、韓国側から盛んに慫慂がされる。それに対する妨害が行なわれる。そして朝鮮人団体の間に相互の摩擦が起こる。摩擦が起これば、一体どうしてこんなことになったのか、日韓両国の合意だ、こう言う。したがって、日本国政府もその問題は当然責任を負わなければならぬ、こういうことに私はなると思うのです。それが、そういう紛争は起こりませんよということは、私は大臣の観測がきわめて甘いと思うのであります。あなたは全然紛争が起こるような考慮の余地はない、こういうふうにお考えでありましょうか。
○賀屋国務大臣 常識といたしまして、国交がありちゃんとした条約ができた国と、そうでない国と、どうしても同じようにしなければならぬということは、私は一般の常識として必ずしも世界的に首肯されるとは思いません。それで南北統一ができないということはどういう点にあるか。統一ができればけっこうなんですけれども、それはどっちがいいとも悪いとも申しませんが、主因は朝鮮民族、その中にあるということは一つ重大じゃないかと思います。それですから、大体われわれのほうではまず常識どおり国際通念からみて合ったことをいたしておりまして、どうしてもこれでは南北が差別を受ける、私どもが見まして、日本が非常な道義にはずれたり法違反なことをやって紛争が起こるなら、これは考えなければなりませんが、常識上いろいろな角度から見まして妥当なことはしなければならぬ。それで南北の間に紛争が起こるのを一々日本の責任だ、これは私ばどうかと思うのでございます。われわれはそういうふうには考えておりません。それば日本の責任だ、そこまで考えるのはけしからぬ、これはちょっと御議論でございますが、私の考えを言えと仰せになれば、どうもそういうようには考えないという次第であります。
○横山委員 それはもう根本的な問題でありますから、ここで私も意見を申し上げるとたいへんな広範な議論になりますから、一応さておきまして、それじゃ教育問題で例を引いてみます。伝えられるところによりますと、日本側と韓国側の主張の合意点は、教育問題については、「一、小学校、中学校の義務教育課程は同待遇とする。二、高等学校、大学の進学は機会均等である。一、二の項目に於ては両側合意した。三、民族教育機関に対しては日本教育法第一条の規定による正規学校の認可取得を主張して来たが、現状では不可能なので其他各種学校として認可する。」つもりで日本政府はおる。これをひとつ例に引いてみましょう。この一、二の合意によりますと、韓国籍を名のった者は法的地位によって小学校、中学校の義務教育課程は日本人と同待遇でありますから、これはもうある程度権利として入学ができる。ところが、その他のつまり韓国籍を主張しない朝鮮人諸君は、小学校、中学校へ行こうと思っても、ある者は許可されるし、ある者は許可されない、こういうふうに判断してよろしいか。また高等学校、大学の進学は機会均等であるというならば、これは南朝鮮を名のった者は機会均等の待遇が与えられる、そうでない者は機会均等の待遇が与えられない、こういうふうに考えてよろしいのであるか。それから民族教育機関に対しては、日本政府は各種学校として認可する、こう言っておる。南朝鮮の国籍を名のっておる諸君がやっておるものは各種学校として認可するけれども、自余のものはそうはしない、こういうふうに考えてよろしいのですか。
○小川政府委員 ただいま義務教育の問題を取り上げて御質問があったのでございますが、この教育の問題につきましては、実は委員会でもまだ完全に議論が煮詰まっておらないのでございまして、いろいろな報道にそういうふうに出ておる面があるかもしれないのでございますが、私どもが文部省側と一応打ち合わせをしまして、韓国側と折衝の段階におきましては、まだいろいろと問題が残っておりまして、ただいまのような義務教育の問題一つをとりましても、まだ先方のほうでもいろいろな議論をしておる段階でございますので、文部省当局がどういうふうな考え方を持っておられますか、私どもが代弁いたしまして、もし誤りがあるといけないと存じますので、この問題につきましてはいましばらく交渉の成り行きをお待ちを願いたいというふうに私は考えるのでございます。
○横山委員 それじゃこれは法的地位の中の重要な問題でありますから、次回にはひとつ文部当局を呼んでいただきたい、委員長にお願いします。私は、来ればわかるということにはなると思いますけれども、しかしながら、教育問題を法的地位の中の重要な一環として取り上げるということは重要な問題で、何らかの話が進展しておると私は見ておる。進展するならば、当然この義務教育及び高等学校、大学の進学について優先条件を与えるということもこれまた事実である。そうすると、結果がどうなるにしろ、この法的地位の中で教育問題は、韓国籍を名のる者だけは、権利とまではいかないかもしれぬけれども、日本政府が許可するという原則に立つ。あとの者はこれはもう恩恵として与えるんだ。それじゃ大臣、先ほど私が言うように、在日朝鮮人の諸君は小学校から大学まで申請をする。国籍を見て、ああおまえのところはいい、ああおまえのところはあかぬ、こういうことになる。それでけしからぬというて韓国籍以外の人は小学校から大学まで押し寄せる、こういうことを想像しないのですか。
○賀屋国務大臣 おりおりそういうときに多衆連動をやるようですが、それは運動をやるような人が考え直さなければならぬ。とにかく南北が統一していないのは日本の責任だ、それは社会が悪い、こういうことでは私は穏やかじゃないと思うのです。それまで日本が責任をかぶるわけにはいかぬと思うのでございます。
○横山委員 そこで、基本的な問題にお触れになって言うならば、私もどうしても一言わざるべからずという気になるのでございますが、その南北が統一していないからしかたがないじゃないかと言わないで、私の言う、こういうことになるということをあなたもお認めになるならば、問題は二つしかない。一つは、南北統一がされるのを、いろいろな困難があっても待つということ。もう一つは、一方的に南であろうと北であろうと同じ条件を許すということである。その二つしかない。あなたのおっしゃるこのまん中の道と言いますか、いま妥結に近づきつつあるものは、南北朝鮮統一の悲願をここで阻害することになる。そうでなければ、国内に紛争を学校関係から引き起こすことになる、私はそう言うのであります。大臣もひとつ白紙の立場に立って、いま教育を例に引きましたけれども、考え直しをなさるべきではないか。この教育の問題は、私どもの同僚諸君もすべてそうでありますけれども、本年の入学期に際して、全国の親がどんなに必死の運動をしたか、お互いに痛感をしておることでありますから、身にしみてわかっておることであります。それを六十万の場君にも、これほど根本的に違うような差別感を持たせて、それによってあらぬ紛争を引き起こすということは、私としてはどうもとるべき策ではないと思う。大臣が、南北が統一してないからしかたがないじゃないかというふうにおっしゃるならば、これは議論が根本になるわけでありますが、かりに百歩譲って協定をするとしても、この教育問題について差別をつけるということは至当ではないじゃないか。これは理屈以前の親と子の問題、教育の問題としてお考えなさるべきではないか、こう考えますが、いかがですか。
○賀屋国務大臣 南北統一、また御主張は、横山さんの属しておられる政党では、南北統一するまで日韓交渉をしてはいけないということでありますが、これは率直に申し上げまして、政府及び自民党はこれには全く、反対でございます。反対の理由は私は持っておりますが、いまこれは法務委員会で申し上げることは適当かどうか、ほかの機会に総理も申しておりますので、私は申し上げませんが、われわれは南北統一まで持つことはよくない、そういうことを強制されることはよくないという基本的に考えが違っておるのでございます。これはいま私がこの席で申し上げないほうが適当かと思いますから、いま申し上げないことにいたします。それで南北が別にある事情は日本の責任にあらずと私は思っております。それからまた、別状において一番人道にも合い、国交の普通の観念にも合う、国際観念にも合う最善の方途をとっていくわけでございますから、率直に申し上げますと、これはけしからぬ、日本の責任だということのほうをむしろお考えの方があったら、もう一度考え直していただきたい。御意見は御意見として伺っておきますが、大体いま申し上げましたような感じでございます。
○濱野委員長 ちょっと、速記をとめて。 〔速記中止〕
○濱野委員長 速記を始めて。 本日はこの程度で散会いたします。 午後零時十四分散会