内閣委員会 第23号
- 発言数
- 47 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1964/04/15
会議録
○徳安委員長 これより会議を開きます。 労働省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。 質疑の申し出がありますので、これを許します。大出君。
○大出委員 昨日は、時間の関係もありまして保留をしたのでありますけれども、きのう、きょう来のストライキの問題をめぐりまして、何としても解決の方向へという政府の御努力も、多少表面に出てきておりますから、その意味で、せっかく労働大臣が御出席の上ですから、その点についてひとつもう少し突っ込んだ御答弁を承りたいと実は存じますが、その前に、実は二、三点どうしてもお聞きしておかなければならぬ問題が、多少法律的な問題とからみますけれどもございます。それは、このところ数日の新聞あるいは本会議の答弁等で、しきりに違法ストということが言われているわけであります。確かに今日公労法十七条のスト禁止という条項がございますから、それをたてにとっての違法ストということばは、その意味ではわかるわけでありますが、しかし、それだけでは済まない。ILOとからみ、あるいは憲法に基づく法手続の問題もございますので、誤解を生ずることは私どもとしてもまことに遺憾である、こういう立場から質問を申し上げますが、まず公労法の十七条のストライキ禁止の条項は、私どもは、憲法二十八条に違反をしておると実は考えておるわけであります。つまり憲法二十八条というのは、本来的にストライキ権は固有の権利であるということで認めている、こういう理解をしているわけであります。したがって、ストライキ権を回復するという運動が行なわれる、これは当然のことで、これは言いかえれば憲法二十八条の完全実施を要求をする、こういうことだと考えておりますから、憲法論としても当然あってしかるべきもの、このように理解をいたします。そこで、さらに憲法の九十八条におきましては、最高法規の規定でありますけれども、国の最高法規たる憲法に違反をする法律命令は効力を有しないと宣言をしているわけであります。さらに憲法の八十一条において、最高裁判所の違憲立法審査権を定めているわけであります。しかもこの違憲立法審査権は、一般的、抽象的になされるのではなく、係争事実としての個々のケースを通じてのみ審査し得るということになっているわけであります。したがって、国民が、ないしはわれわれが違憲だと感ぜられる悪法につきましては、これに反対する行動をもって違憲審査を促すという以外に、憲法に違反する法律を改めていくという手続はないというふうに考えているわけであります。したがって、そのことが、今日全逓がILOに提訴をする等の問題で、三十三年以来いろいろ行なわれている問題の中心の一つでもある、このように実は解釈をしているわけでありますが、この辺について、単に違法だということでなしに、そこから一歩突っ込んだところにある今日の問題点を、労働大臣という立場でどういうふうにお考えになっているか、ひとつ見解をお聞きしておきたい、こういうふうに思います。
○大橋国務大臣 御指摘のごとく、憲法二十八条によりまして、労働者の団結権、団体行動権が保障をされておるわけでございます。いわゆるスト権というものは、この団体行動権の一つであるわけでございます。ところで、この二十八条は労働基本権でございまするが、この憲法に保障されておりまする国民の権利は、第二十二条に規定いたしてありまするごとく、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うておるわけでございます。そして十三条におきましては、すべて国民の権利については公共の福祉に反しない限り尊重される、こういう規定があるわけでございまして、この十二条、十三条等の規定の趣旨から見まして、二十八条の団体行動権、すなわちスト権につきましても、公共の福祉に反すると認められる場合においては、その限度において行政上あるいは立法その他国政の上で制限を受けることを免れない、こういう趣旨に相なっておるわけでございます。この点につきまして、これは二十八条違反ではないかという学説もあることはあるのでございまして、逆にまた、これは先ほど来私の説明いたしましたごとき趣旨によって、合憲的なものであるという説もあるわけでございます。学界におきましては両説が争っておる実情でございまするが、私ども国政の当局者といたしましては、やはりこうした問題につきましては、司法権の定める有権的解釈に従わざるを得ないと思うのでございます。そうなりますると、違憲立法審査権というものを持っておりまする最高裁判所が判示いたしたところに従うということに相なるのでございまするが、最高裁判所においては、昭和二十八年の四月八日にこの問題につきまして判断をいたしております。 〔委員長退席、辻委員長代理着席〕 すなわち大法廷において、この種の制限は憲法二十八条に違反するものではないということを申しておるわけでございます。したがいまして、私どもは、日本の憲法解釈といたしまして、二十八条に違反せざる合憲的な制限である、かような解釈を持っておるわけであります。ILOにおきましても、この点が、日本の憲法の問題と離れまして、スト権についての国際慣例という立場から問題になりましたことは御指摘のとおりでございまするが、その際におきましては、日本の公労法をILOにおいて審査されまして、公労法の適用を受ける労働者の特殊的な地位にかんがみて、この制限はやむを得ないものである。ただし、これについてはスト権制限に対する代償措置が考慮されることが条件である。そして現行の公労法における公労委の制度、ことに公労委の仲裁裁定というものが国政において尊重されておるという点、これらに着目されまして、これは支障なしという判断を得ておる次第でございます。
○大出委員 実はそういう御答弁があろうという予測をしていたわけなんです。そこで、その種の答弁だけが、いま新聞その他を通じて一般に明らかにされている。ところが、いま言われるように二つの学説的にも大きな争いを持っており、現実にも争われているこの事実が明らかになりませんと、どうも一方的言い分に過ぎてしまうという考えが私どもにありますので、そういう点でさらに申し上げるわけであります。いま言われた昭和二十八年四月八日の最高裁判決なるものは、弘前管区事件の最高裁判決のわけでありますけれども、つまり昭和二十三年のころから、これは大臣も御存じのとおり、公務員法の改悪という形で労働基本権が剥奪された。このときに役立った理論が、いま言われる理屈であり、有権的解釈と言われる意味なのであります。しかし、公共の福祉という観念が生まれてきたそもそもの出発は、人権相互の矛盾あるいは衝突に対して、これを公平に調和させようとする趣旨、これがつまり公共の福祉というものの出発点である。したがって、人権相互に矛盾や衝突が生じた場合には、この人権を相互に具体的に考慮して、その均衡をはからなければならない。ここに問題の中心が存在すると考えているわけであります。そうなりますと、かりに官公労働者のストライキが国民に重大な迷惑を及ぼす、それによって公共の福祉がそこなわれるというのであれば、ストライキによって国民がこうむる迷惑と、ストライキをやらないことによってこうむる官公労働者とその家族全体、さらにはそれによって賃金の水準が日本の産業にわたるとすれば、全産業に働く人たちとその家族、この諸君が賃金が上がらないことによって生ずる迷惑、この両者の均衡をどう保つかということになってこなければうそだということになるわけでございます。そういう点から、いま大臣が言われるように二つの学説が対立をし、現実的にも二つの理論が対立をし、行動も対立をしているということになっているわけでありますから、その相手方の立場というものも十分に理解をされてものを言っていただかぬと、単に有権解釈に基づいて、法律違反である、したがって、違法なストライキを行なうのだから、三・一五判決にいうところの労組法一条二項の刑事免責もない。だから刑事罰も科せられるし、あるいは損害賠償も民事請求でもできるのだ。したがって、ストライキに参加した全員を処分するのだ。こうなると、納得ではなくて、一方的おどかしになってしまうというところに、今日の労働行政のまずさがあるのではないか、こう考えるわけです。したがいまして、いまの点は議論として申し上げているわけで、ここで結論が出る筋合いではなし、時間がかかろうと思いますが、そういう立場をやはり理解を願いたい、こういうふうに申し上げておきたいわけであります。 それから権利闘争云々ということで組合が長いことやってきておりますが、これとても三月十五日の最高裁の第二小法廷の判決が、島根県の松江事件等に関連をして出ているわけでありますが、これは憲法二十八条に照らして、公労法十七条は憲法に違反をしない、こういうことでありまして、これだけが、今日のこの種の有権解釈という意味では、唯一の政府側のよりどころ、こういうふうになっております。しかし下級審で、たとえば岩手県盛岡事件の判決であるとか、これは憲法二十八条に公労法十七条のストライキ禁止の条項は違反をする、明確な判決が下級審では出ているわけであります。幾つも出ております。これを昨年三月十五日の最高裁第二小法廷の判決で、下級審のこの種の違憲判決を否定したわけであります。しかし、大臣はおそらく御存じだとは思うけれども、あるいは御存じないかもしれないが、その後にすでに静岡の地裁におきまして、昨年の五月六日、つまり最高裁の三・一五判決が出たあとで、さらに続けて静岡地裁では、公労法十七条は憲法二十八条違反であるという明確な判決がまた出ているわけであります。さらに本年の二月十七日になりまして、長野地裁におきまして、ここでもまた公労法十七条のストライキ禁止は、憲法二十八条違反の疑いがある、こういう判決と、ここではいまだかつてない、さらに踏み込んでILO問題に触れて、ILO九十八号に違反をするという説もあって、それによれば、憲法の最高法規、つまり国際法の基準に従えというこの問題ともからんで、憲法九十八条の違反という問題も起こってくるという判決が、さらに出ているわけであります。そうなってくると、最高裁の三・一五判決をたてにとっておられるけれども、それが行なわれたあとに、なおかつ従前幾つも地裁で出ているところの同じ趣旨の判決が下級審でどんどん出るということは、今日この種の法理論、法解釈について、適用について、日本の裁判所を通じても大きくゆれているという現実なんでありますし、さらにILO条約があるのでありますから、その点等について先ほど大臣が言われていることは、さっきのお話にありましたようにいにしえの理屈でありますので、世の中の事情もうんと違っているのであります。つまり昭和二十八年のものを十年たった三十八年に持ってこられても、なかなかそういうわけにはいかないわけでありますから、それらのことについても、ひとつ御見解を賜わっておいて、この種の論争は、単に大臣が言われるような一方的政府解釈だけではないということを、私は明らかにいたしておきたいわけであります。
○大橋国務大臣 いろいろな裁判例につきましてお話がございました。確かにこれらの裁判例があることは、事実であります。ただ、この点は御承知のとおり、日本の裁判制度におきましては、最高裁判所の判断というものは、法律的判断として一つの判例、すなわち法規の解釈として残るのでございますが、しかし、それは将来のあらゆる事件について決定的なものであるのではございませんので、その覊束力はその事件に限っておるというのが、裁判例の特質でございます。そういう意味で、一つの判例が確立された後において、下級審においてこれと異なる判決が出るということは、制度上やむを得ざることであるのでございます。しかし、これが最高裁判所に参りました場合においては、再度検討されまして、前の判決が否定されるか、あるいは前の判決が維持されるか、どちらかにきまるだろうと思うのであります。行政当局といたしまして、現行法を運用いたしてまいる立場から申しますると、とにかく最近判例として打ち立てられておりますものを行政上の手がかりとして法の運営をいたしていくということは、これは立場上当然ではなかろうか、こう思うのでございます。それに反する学説あるいは判例の存在を否定するわけではございませんが、私どもは、法律の解釈、運用ということになりますと、行政当局の立場上、最近の最高裁の判例をもってよりどころとするのが当然だ、こう思うわけでございます。したがって、そうした趣旨でこの公労法の違法性の問題について申し上げておる次第でございます。
○大出委員 いま大臣が言われることは、それなりに私も理解をいたします。しかし、こういうことになると思うのです。つまりいま大臣が言われた点は、われわれの側から言えば、憲法に違反する法律であるという理解をしているのでありますが、裁判所がその法律を是認をした。つまり三・一五判決は、われわれが考えて憲法違反だと思っているのに、公労法十七条のストライキ禁止は憲法二十八条違反ではないという最高裁第二小法廷判決として断を下した、これは国の司法機能の、このときにおける一つの限界を示している、私はこういう理解をいたします。また学説的にも、それが正しいと思います。したがって、その後に、この最高裁第二小法廷判決を否定をする意味での地裁の判決がまた幾つも出ている、これもまた現実であります。そうなってくると、憲法に抵触をすると考えている限りは違憲審を求めなければなりませんが、その法手続は、憲法八十一条に規定をされている個々の係争事実という形で争われなければなりませんから、四・一七の公労協職員のストライキというものが用意をされておるわけでありますが、これが行なわれた場合に、いかに違法だと大臣が言われても、そのぎりぎり決着を法で争うとなれば、それに対する処分の問題つまり係争事実をとらえて、さきの三・一五はそのときにおける国の司法機能の限界であったと考えれば、次の段階としては、もう一度最高裁まで行って判決を求めるという態度があっても、憲法の定めるところからいって不届きではないと私は考えているわけであります。そうなりますと、先ほど来申し上げているように、やはりそこに実体法を適用していく政府の政治的な責任という問題が生じてまいります。その意味では主食運搬を禁止している法律があったかつての戦後の時代に、にもかかわらず連日主食は人の手によって運搬されている。しかし、これを取り締まろうにも取り締まりようがない時代に、すでに法の適用を度外視して、罰則規定そのまま適用していなかったという事実もあるわけでありますが、ここに、時の国の政治の動かし方を誤ると、今日ある法律がその社会に適合しなくなる、こういう原則が一つあると私は思います。その意味で、十七条違反のストライキであるから違法ストだ、したがって処分をする、あるいは刑事罰を適用するということだけを振りかざすのではなくて、なぜそういうことにならざるを得なかったのか、あなた方としては、被使用者側、雇われている側の生活の実態、あるいは置かれている労働条件というふうなものをやはり御理解を願い、御検討をいただくということでなければならぬと思いますから、その意味で一つ伺いたいのは、今回の、戦後最大の規模といわれる四・一七ストライキについて、政府の政治的責任、国民に責任を負う政府という立場から、これを収拾するという徹底した御熱意がおありであるかどうか、誠意があるのかどうか、この点についての御見解をあらためて明確に承っておきたいと思います。 〔辻委員長代理退席、内藤委員長代理着席〕
○大橋国務大臣 先ほど来申し上げましたるごとく、判決例が正しいか正しくないか、いわゆる学理的に、あるいは学問的に正しいかどうか、その問題はいろいろ議論の余地のあるところでございまするが、しかし、現実に行なわれておりまする法規範といたしまして、公労法十七条に違反した場合においては、これは労働組合法による免責事由を失うという最近の判例があるのでございますから、労働組合の諸君におかれましては、このことを頭に置いて行動していただくということが、大事な点だと思うのであります。一部の学説が、いかに違憲性を唱えましょうとも、裁判所が合憲性の解釈をいたしておりまする以上は、現実のケースといたしましては、あるいは刑罰を受け、行政処分を免れないという結果に相なるのでございまして、私は、今度のストにあたりましても、多数の組合員諸君の中には、この点について誤解があってはいけない、誤解に基づいて思わざる責任をかぶられるようになることは、私どもとしてぜひ避けさせて差し上げるのがつとめだ、こういう意味で、違法のストライキと考えられておるということを申し上げておるわけなのでございます。しかし、いずれにせよ、このストライキを避けるということは、政府、ことに労働当局といたしましては、大きな仕事でございます。責任を持ってこのストライキを回避いたしたいということはもちろんであり、また私どもといたしましては、これにつきまして熱意と誠意をもってただいま立ち向かっておる次第でございます。
○大出委員 いずれにせよ、四月十七日のストライキが行なわれれば、法規に従って処分をする、こう言われるわけですから、してみると、三・一五判決の是非論をめぐって、さらにこれから将来に向かっての大きな争いが続けられる。その意味での運動が長く続く。これは間違いはないと私は思いますし、そのことは、当面別な角度から問題になっておりますILO批准の問題をめぐりましても、国際的に大きな角度からの論争にまで発展をせざるを得ない。こういう事情に私はなっていくと存じますから、その意味では、いま最後に大臣が言われておる、いずれにせよ、このストライキを回避するという立場に立っての御努力という点が、短い期間ではありますけれども、今後より一そう強調され、それらしい誠意ある施策が打ち出されてくることを御期待申し上げたいと思うわけであります。 次に、ILOの問題とからんでまいりますから、その点についても、本題に入ります前にひとつ明らかにしておいていただきたいのでありますけれども、先ほど大臣が答弁の中で多少ものを言っておられる点について、これは本会議でも多賀谷真稔氏が質問に立ちまして、ILOの五十四次報告を引用されて、すべての公営企業を同一の基準においてストライキを禁止しているということは、諸外国のどこにもないという意味の立論をしたわけでありますが、大臣が答弁をされていわく、五十四次報告の、ストライキ権の制限について、企業の業務の中断が公共の困難を惹起すると、こういう理由で真に不可欠であるもの、こういう五十四次報告の一文を抽出をされて、つまり今日のストライキ禁止というものは、企業の業務の中断が公共の困難を惹起する、ここに論点を合わせて行なわれている、こういう趣旨のことを言われているわけでありますけれども、舌足らずか、さもなければ多少都合のいいところだけをお取りになったと理解をいたします。その意味で、もう少し突っこ込んだ御答弁をいただきたいのでありますけれども、ILOの五十四次報告に述べられておりますのは、いま大臣が言われているそれだけではなくて、特に前後の関係があるわけであります。つまり「必要不可欠な役務又は職業に従事する労働者のストライキが制限又は禁止される場合には、かかる制限又は禁止には、調停手続及びその裁定があらゆる場合において両当事者を拘束する公平な仲裁機関が付随すべきであり、かつ、かかる裁定は、一旦下されたときは完全にかつ迅速に実施されるべきであるという原則に本委員会の付している重要性に、日本政府の注意を喚起すること、」 〔内藤委員長代理退席、委員長着席〕 こういう条項がついているわけであります。したがって、この五十四次報告の前文のほうと、そのあとのほうと、さらに六十四次報告とが相関連をいたしまして、日本政府に一つの要求をしているわけでありますが、つまりそれは何かと言いますと、いま申し上げました点から引用をし、類推をいたしまして、日本政府の第三者機関と言われる代償機関の人の選定、この問題にも触れて、かつて公労委の中には現職の労働官僚の方々がおられたり、公労委の仲裁委員をやっておられた方々が、次には労働次官になられたり、こういうような形になっていることは、公平な第三者機関とは言いがたいということ。さらにもう一つ大きな問題は、国鉄労働組合に出されました第一号裁定というのがございます。この第一号裁定の必要予算額は四十五億円であったわけでありますけれども、国鉄の予算上資金上支出可能な限界ということで、十五億円の支給が承認をされて、三十億は支給されなかったわけでありますが、その後数回にわたります裁定の結果として、四百数十億にものぼる不履行額が現にある。これらのことをILOはいろいろ審議をいたされまして、結果的に日本の代償機関公労委というふうなものは、公平な第三者機関ではないということを言っておるわけであります。したがって、その上に立っておる六十四次報告では、代償機関の役割りを果たしていないものだから、そういう点で日本政府に対して六十四次報告F項で、当該条約批准の意向表明に関連して、言いかえれば八十七号条約を批准すると政府が言っておるから、これに関連をして、右批准まで、同条約に含まれる諸原則に逆行するような一切の措置をとることを避け、特に労働組合活動による一切の逮捕、解雇あるいは懲戒を避けるよう努力することを日本政府に要求をする、こういうふうに六十四次報告はまとまっておるわけであります。この関連を無視した形で、つまり企業の中断が云々という形で抽出をされて言われますと、私どもとしてはそのまま聞いておくわけにはいかない問題でありますから、この点についての見解をもう一ぺん明らかにされたい、こう考えます。
○三治政府委員 この五十四次報告と六十四次報告、さらに六十四次報告のF項の関係でございますが、このF項が入ったというときに、これは公共企業体の違法な争議行為と、わが国の国内法において法理的理由によって正当ならざる組合活動とされているものについてまでも、そのことを理由とする逮捕、解雇または懲戒を避けるよう努力することを慫慂するものであると解されて、八十七号条約を批准すれば、公共企業体の違法な争議行為を野放しに認められなければならないかのごとき、誤解を招くおそれがあることを憂慮いたしまして、そのときの五月三十一日に政府としても談話を発表いたしました。その後六月二日には、ジュネーブの代表部から公電をもって、理事会において六十四次報告が採択された旨を伝えるとともに、F項、については、青木政府代表から日本政府の立場を明らかにいたしまして、同項は違法な争議行為に対する処分等を制約するというものではない旨を確認いたしました。理事会ではこれを記録にとどめられたという報告があったのであります。 なお、F項につきましては、ILOからは特に情報は求められてもおりませんし、また理事会において、青木政府代表から日本政府の立場を十分説明してあります。その後も、ILO事務局関係者、その他関係方面にも説明しておるところでありまして、これについては、日本の禁止されてあることに違反した行為についてまで、それをやめろということではないというふうに理解しておる次第でございます。 なお、委員の関係につきましては、これは公共企業体等労働関係法において厳格な規定がありまして、これは国会の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。しかもその公益委員におきましては、使用者側委員、労働者側委員の意見を聞いてもおる。こういうことで、これは非常に客観的な第三者の公平機関の確保の道が十二分に講ぜられているというふうに、われわれは考えておる次第でございます。
○大出委員 結社の自由委員会で特に労働者側から取り上げてF項ができ上がるところまでものが進んだという過程、さらに理事会がこれを承認するかどうかという過程で、日本政府がたいへんにあわてられて現地の青木公使と再度連絡をとっておやりになったことについては、私も直接行って聞いておりますから知らぬわけではありませんが、しかし、日本政府も内政干渉と言わんばかりの話までされていろいろ手を回されたわけですから、御苦労のほどはわかるわけですが、しかし、それにしても、明らかな意見の対立ということになるわけであります。したがって、冒頭に申しましたように、あまりに一方的にものを言い過ぎないように、こういう事情があり、相手方はこういう立場に立っているのだということを御理解を賜わって言っていただかないと、せっかく有権解釈であると言われる労働大臣のものの言い方が、逆に説得力を欠くということになります。労使というのは、つまり相手の立場を認め合うというところに正常な慣行が存在をする、こういう理解をいたしますから、そういう意味で申し上げたので、どうか一つその辺のところは十分に御理解を賜わりたいと私は考えるわけであります。なおまた、この問題は今後とも争われていくわけでありますので、いま皆さん方の反論はそれなりに私はわかりますが、さてこれから先しからばいかがなっていくかということは、いまだにお互いに予測はつかぬのでありまして、そういう点も含めて、ひとついま申しましたような労働政策あるいは施策をお考えを賜わりたいと存ずるわけでございます。 次に、もう一つ国会でものを言っておられる中で問題がありますのは、ストライキ宣言という問題をとらえて、さらに十七日のストライキという問題をとらえて、調停期間中にストライキをやるのはけしからぬということで、だいぶおしかりをいただいているわけであります。社会党がそれに賛成するのは何事だと言わんばかりの総理のお話も出てくるわけでありますけれども、これとてもどうも認識が少しおかしいのではないかという気がいたします。つまり、公労法の規定の中に、調停期間ということについての単独の明示はないと私も存じます。しかし、公労法の三十三条の三項、ここには「委員会があっせん又は調停を開始した後二月を経過して、なお紛争が解決しない場合において、関係当事者の一方が委員会に仲裁の申請をしたとき。」つまり仲裁に移行するわけであります。この条項が明確にございます。これによって今日まで調停申請後二カ月を経過してなお紛争が解決をしない場合は、当然調停は不調であり、したがって、当事者の一方が仲裁申請をすれば調停は終わる、こういうふうに理解をされ、このことをもって調停期間は二カ月だと一般的に解釈をされ、言われてきていると私は考えているわけであります。この意味では、二カ月は経過してもなお調停が続けられるという場合があり得るとしても、それはつまり両当事者が調停という性格上続けるというものの考え方があるということであって、かといって、これは調停の性格上許されているわけでありまして、事実上は、二カ月たっても結論が出なければ調停は終わる、こういう理解が正しいと私は考えているわけであります。そこで、今回公労協の諸君のやっておりますのを調べてみますと、二月の十六、七日、ここのところで調停の申請をしているわけであります。そこで、四月の十六日がまいりますと、二カ月の経過となってくるわけでありまして、十七日はすでに二カ月の調停期間が終わった、こういう理解をしているのであります。それゆえにこそ、昨日もちょっと申しましたが、わざわざ二月の十四日に労働大臣に会見を求めて、労働大臣に、本日をもって残念ながら調停に申請をいたします。こういう意思表示をして、十六、十七日に調停申請をし、十八日の公労委総会がこれを取り上げたという経緯でありますから、したがって、調停申請から二カ月たったという日にちは十六日であります。十七日という日にストライキということをかまえた理由も、調停期間中であるという皆さんの口実をできるだけ避けてまいりたいという考え方、もう一つは、常識判断からいきまして、調停中にストライキということは穏やかでないという考え方があって、十七日というふうにしているのであります。さらに、全電通の諸君の側がおくれて提出をしておりますが、これはおそらく組織の事情があったのでございましょうが、この種のことは先例があるのでありまして、そういう九つなら九つまとまっている中の一つくらいずれても、さて調停を提示するときには全部一緒になってきておるのが今日までの事情でありまして、してみると、八つの組合については二カ月間の調停期間が過ぎる段限で、調停が不調である、電通だけは提示がおそいわけだから、あとに残っている期間がまだ続くという理解ではなしに、つまり大多数の組合が調停が成立しなければ、電通も含めて終わりになるということが旧来の慣行だと私は理解しております。先行して出した組合に準じて片をつけていくというのが、過去の委員会の事例でありますから、そういうふうに考えてまいりますと、どうも十七日のストライキというのは、調停中にけしからぬ、こういう言い方は、これまた一方的に過ぎるような気がいたします。この点は、組合側も経験者がそろっているはずでありまして、皆さんと長年やりとりをした相手方でしょうから、それらのことを十分判断の上で、皆さんに調停期間中と言われない配慮をしておるはずでありますので、それらのことについても、どうもけしからぬとだけ言わずに、それらの組合の事情というものも知っておられるとすれば、考えた上でものを言っていただく、こういうふうにしていただきたいものだというふうに考えますが、この点についても、一言御答弁を願っておきたいと存じます。
○大橋国務大臣 だんだんと打ち割ったお話を承ったのでございますが、池田総理大臣が、調停期間中にストライキを宣言するのは、労使関係のルールからいってうまくないではないかということを申しておられます。これに対して、ただいま今度の十七日のストは期間中というわけではない、期間が終わった上のことだから、その非難は当たらないのではないかという御趣意のおことばであったと思うのであります。しかし、まことに残念しごくでございますが、私どもの計算によりますと、かりに二カ月たったということになりますと、その二カ月は、大部分の組合につきましては四月の十七日午後十二時に終わるのでございまして、そうすると、総理の言っておりますような、調停期間の最後の一日が待てずに最終日の午前中にストが起こったということにならざるを得ない、そういう暦の計算も成り立っておるような次第でございます。しかし、いずれにいたしましても、期間中であるとかないとかいうことは、このストライキについては問題にならないのでありまして、問題解決の方法は他に幾らもあるし、決してストライキが問題解決の道でないのにあえて違法といわれるストライキを行なおうということ自体が問題だ、それに対する一つの批判として総理が言われたのだろうと思うのでございまして、日付の点を深く問題にするべきものではない。そもそもあのストライキはやってはいけないストライキだ、そしてわれわれは力を合わせてこれを回避しなければならぬ、こういう趣旨で総理も言われたことと考えます。
○大出委員 二月という月は、どうも普通の月と違いますから、はみ出した日にちがあったりなかったりということもあり、どちらが計算が正しいか間違ったか、それはわかりませんが、いま私が申し上げたのは、つまり調停期間中は避けるべきであるというものの考え方が、一貫して組合側にあった、こういうことを申し上げておるわけでありますから、計算の間違いがあって半日か一日かひっかかったとすれば、真意でないところに問題が発展していったということになると思いますので、この点は、いま大臣がそれにあまりこだわっておられぬようでありますから、理解をいたします。 ところで、いま私がるる申し上げておりますのは、できれば、国の政治を預かる方々でありますから、国民に対する責任を負うということで、国会で森山さんの質問に対して総理以下がお答えになることもある意味では必要かもしれませんが、あそこで述べられておる皆さんの言いっぷりからいたしますと、ないしは言われている内容からいたしますと、とてもじゃないが、このストライキを回避しようなどということは、けぶりにも実は考えられない態度であり、言い方であると私は理解をいたしました。その後今日まで、ここ数日の間動いておられる政府の方々の出方、言い方からいたしますと、どうも本会議の席上は席上として、それなりの形をとったということであり、実際には、ひとつ何とかものごとをまとめていこう、回避していこうという誠意、熱意がおありのように、ここ一両日の間見受けるわけでありますが、それらの点について、そういうことであればあるように、相互理解の上に立っての解決の方向づけというものが必要になってまいりますから、あらためてひとつ承っておきたいと思うわけであります。
○大橋国務大臣 まず、政府といたしましては、この問題については、使用者側の立場を代表する政府があり、また、私どものように、労働行政の立場からこれに対しておる政府もあるわけでございます。どちらの政府といたしましても、この内閣のもとでかような不祥なるストが起こるということは、避けるべきであるという考えを持っておるのでございまして、そのためにあらゆる努力をしておるところでございます。
○大出委員 という前提に立ちますと、次に承りたいのは、けさの読売新聞の岩井総評事務局長と大臣との対談の中で。この朝刊には五大臣という表現が載っておりますからそう申しますが、この方々と大臣が言われていることと多少の食い違いがある。さらに突っ込んで言えば。きわめて大きな食い違いがあるというふうに私は理解をいたします。その大きな食い違いは何かといいますと、昨日岩井総評事務局長が黒金官房長官に申し入れたことに対する回答ということで、黒金という署名入りの、関係の組合の責任者に、岩井事努局長を含めてお会いしたいという招請文書がありまして、それに基づいて会って話をしているわけでありますが、この席上で述べられております。しかもそれは文書に書いたものを綾部運輸大臣が読まれたわけでありますが、この文書に書いたものを読まれた内容と、労働行政を担当される大橋労働大臣が言われることの内容に、極端に大きな開きがある。五大臣のほうからは、調停というものについて、戦後十八年間なかったことであるけれども、今回は組合側の出方も戦後かつてないようなことをおやりになっておるから、わがほうとしても、この際調停の段階で結論が出たということになれば、これを尊重したい、こういう話が一つあるわけであります。ところが、この対談の中で大臣が言われていること、テレビ等で言われていることによりますと、調停などということはもう考えられぬという、全くもって否定をされる立場で仲裁だというふうに言い切られておるのでありますけれども、同じ閣内のことでありますので、ここのところは一体どういう意味でこう食い違ったかということについて、明らかにされたいと思うわけであります。
○大橋国務大臣 問題は公労委にかかっておりまして、公労委は独立機関ではございまするが、労働省でお世話をいたしておりまする立場上、私どもも中身についてかれこれ指図がましいことを言うことは絶対にできませんが、問題になっておるこの調停の進行状況等につきましては、随時事務当局を通じまして様子を見てきておるわけでございます。そこで、私どもはそのスケジュール等から判断いたしまして、十七日以前において調停案が提示されるということは、現在の段階ではほとんど不可能であろう、こういう見通しを事務的につけておるわけでございまして、そうした認識のもとに、昨日いろいろな機会において私が発言をいたしておるわけでございます。一方におきまして、五大臣が組合の代表に対してお述べになりましたことばは、私その席に立ち会っておりませんので、どういうことばが使われたかはつまびらかにいたしておりませんが、私どもに連絡のありました口上の原稿と申しますか、メモと申しますか、そういうものによりますると、政府としては公労委の結論を尊重していきたい、こういう趣旨を述べられたはずなのでございまして、その結論は、調停であるか、仲裁であるか、それについては特に限定をしていないはずでございます。すなわち、公労委の示す結論はこれを尊重していきたい、こういう趣旨で述べられたものと私は了解をいたしておるわけでございます。
○大出委員 そういう理解を労働大臣がされておるとすれば、私は、この重要な段階に来て、今回のストライキを冒頭申し上げましたように回避をされよう、そういう誠意を示して片づけよう、こう考えておられる政府の意図にもかかわらず、問題は逆のほうにいってしまう、こういうふうに思います。 なぜかと言いますと、大臣はいまそう言われますが、私は、はっきりここでものを言うのは、きのうの五大臣対各公労協の委員長等とのやりとりがありまして、田中大蔵大臣が公にものを言ったのだということであります。公でないといわれれば、私も口がかたいほうですから、一切言いませんけれども、公に言ったということですから、申し上げるわけです。それによりますと、文書も実は書いてある文書そのまま、原文を組合側はいただいて帰ってきたのでありますから、うそや隠しを申し上げるわけではないのでありますけれども、そのいただいてまいりました内容は、三つの点に分われているわけです。簡単に言いますと、第一点は、調停が今日進行している。ところで、この調停の結論が出れば、政府としては尊重いたします。ところで田中大蔵大臣が口添えをした内容は、できるだけ尊重いたしますと言っているわけです。そうなりますと、疑問がわきますので、岩井事務局長が質問をしているのでありますが、調停を尊重するというのは一体どういうことだということについては、これは戦後十八年間ないことだ、ないことだけれども、今回はこの大きなストライキが国民に迷惑を及ぼすことを考えた場合に、何としてもこれは回避をしたほうがいい、こういう気持ちに立っておるので、率直のところを申し上げるけれども、その意味で、調停が出されれば、旧来なかったことだが尊重する、こういう態度なんだ、こういうお話で、田中さんができるだけと言ったら、黒金さんは、どうも大蔵大臣は渋いのでという冗談を入れましたが、実はそういう事情なわけです。となりますと、調停を尊重する、しかもそれは、いまだかつてないことだが、それを尊重する、ここまで明らかにされたのでありますから——大臣は確かにおられませんでした。しかし、これは私どもも画期的なことであろうという受け取り方をいたしているのであります。そこまでの誠意を政府が持たれるのならばという気持ちを私は持ちました。ほかの人はどう思ったか知りませんが、そういう方々もおられたと思うのであります。 そこで、いま大臣が言われる面からいきますと、公労委の結論を尊重するのだ。これならば、何も旧来と一つも変わったことはないのであって、十七日を控えて、冒頭に言われているようにいろんな意味で違法であり云々ということはたくさんある。あるけれども、しかし、どっちがいい悪いという問題もある。国民に迷惑がかかるという点では、これはどういう理解をしたにしても変わりははいのだから、ひとつ収拾の方向を考えようという、このところから出発をした、旧来ないことを言っておられるわけでありますから、大臣がどうももとに戻してしまうような、つまり裁定でなければということをやたら言われるということについて、どうしても私は理解がいかない。しかも、いまも仲裁の結論だ、公労委の結論だと言われると、ではなぜ一体五大臣が顔をそろえて、官房長官も入って、調停の結論が出れば尊重すると言い切られたかという問題に問題は返ってまいりますから、この点を私は明確にされたいと思うわけであります。
○大橋国務大臣 私は、この問題につきましての私の立場を、まず前提として御理解いただきたいと思うのでございます。 今回のストライキ計画は、まこと重大な問題でございまして、政府といたしましては、異常な決意でこれに対処し、何とか回避したいと考えておるのでございまするが、私は、元来この問題は、労働問題としては、一方においては労働組合、他方においては使用者、しかもそれは政府でございます。その政府関係の労働組合の紛議でございまするから、ともすれば政府という素朴な考え方の中に巻き込まれて、労働行政の担当者としての労働省の立場というものがなくなってしまうようなことがあっては、問題が重大であればあるほどこれは警戒をしなければならない。どこまでも労働省というものは、この労使間の紛争に対しましては、労働行政という立場に立ってものを言うべきものだ、こう考えておるわけでございます。したがいまして、私どもはそういう立場でこの問題に対処し、また、そういう立場で五大臣と一緒になって協同して相談をするという立場ではなく、使用者たる五大臣の立場に対して労働行政の立場を政府の中で保ち続ける、こういう立場で行動をいたしてまいりたいと思っておるわけなのであります。したがいまして、私がそういう立場で申しますることと、使用者の立場における五大臣のことばというものは、立場が違いまするから、あるいはときとして一致しない場合もあるかもしれません。ただいま御指摘の食い違いは、その一例ではないかと思うのでございますが、私どもは、使用者としての立場でなくて、労働行政の担当者という立場から、この問題の最終段階まで見通しながら注意をいたしておるのであります。五大臣は、個々の時点に応じて、使用者としての立場からこの問題を収拾していきたいというお考えで行動されているのではないかと思うのであります。ですから、その間においていろいろ食い違いが、ことばの上において必ずしも一致しない点があるのは、これはやむを得ないのじゃないか。私が先ほど申し上げましたことと、五大臣の言われたことが違っておる。おそらく五大臣の言われたことを直接お聞きになりましたあなたのおっしゃることが、正しいかもしれません。それにもかかわらず、私は、労働行政の立場から、先ほど申し上げたような見通しと気持ちをもってものを申し上げておる次第なのでございますから、このことをひとつ御理解いただきたいと思います。
○大出委員 非常に重大なことで、私は、せっかく政府がそこまでの誠意をお持ちであるならば、しかもそのことを新聞を通じて表に出された以上は、それをできる限りわれわれの側も誠意をもって受け取って、社会党という立場でまとまるべきものはまとめていかなければならぬ責任が、国民に対してあり得ると思うわけです。そういう点でものを申し上げたいわけであります。つまり言われたことの内容は、いま申し上げたのが一点。つまり今日調停が進行中である。したがって、調停の結論が間もなく出るであろう。政府はその結論を尊重をする。これは五大臣がわれわれ組合代表を呼んだのは今回が初めてでありまして、これまた戦後十八年間ない。また調停を尊重すると言われたことも、戦後十八年間ない。そのことを大蔵大臣みずから口にされながら、政府は誠意をもって収拾にあたると言っているわけであります。 さてその次に、金額を明示せよと言われるけれども、金額の明示という点については、明示するわけにはいかない。なぜいかないかといえば、予算との関係がある。さて、そこで財政上こうなっているとか、経理上こうなっているとかということは、すべて公労委に話をしてある。したがって、公労委は、各省、公社の経理内容、財政内容は十分にわかっているはずである。したがって、金額明示は行なわないけれども、調停あるいは仲裁は出せるはずだ、こういうものの言い方をされているわけでありまして、ここは残念ながら組合の諸君が要求するように金額明示ができない。このことについては、福田通産大臣もことばを継いで、まず財政事情、経理事情等の説明をして、さあわかってくれたはずだから調停を出してもらいたい、これはあなた方におまかせをする、こういう言い方も一つある。さらにもう一つは、五百円とか千円とかという金を言って出してくれという言い方もある。しかし、後段の金ということについては言えない立場にある。したがって、前段でものを言っているのですということを言い切っておられるわけです。そうなると、それなりに言わんとすることは私どもにもわかる。 そこで第三点目は、もしも皆さんが、調停案が出されるまで、つまり調停の結論が出るまで待ち切れないと言われるならば、あなた方が仲裁申請をされたらいかがですか。その場合は政府側のわれわれも賛成いたしますから。これが第三点目でありまして、しかもその結論は尊重いたします。こういうわけであります。そこで、その席上で、私どもに仲裁を申請しろと言われるが、その意思はない、このことを明らかにいたしたのであります。そのことをまた政府の五大臣、官房長官は理解をされております。そうなりますと、両者のやりとりの中で残ったのは、金額明示はしてないが、財政事情の説明は公労委に十二分にしてあるから、調停の結論を待とうではないですか、調停の結論が出ればわれわれは尊重しますから、こういうことになった筋合であります。してみると、けさほどの新聞に大臣がこれだけのことを言われると、私はせっかく政府の誠意のほどを理解しようとして、かつまた理解をした人たちもあるばずでありますが、そういうわかり方をしているやさきに、さてけさ新聞を手にとって見ると、時の労働行政に携わる大臣は、調停なんというものはだめだ、仲裁だなんということになると、しろうとがながめると、きのうも大臣がきわめて誠意を持った形で責任者を呼んで、しかも岩井事務局長まで入れて、私どもまで立ち会って説明されたことが、うそであって、労働行政に対する責任は労働大臣が負うんだとなるならば、政府の労働政策というものは労働大臣に責任があるとするならば、労働政策の一環なんでありますから、そのほうが優先をするという理解をするとすれば、しからば五大臣の言われたことはうそである。闘争に水をかけるためにうそを言ったのではないかということになってくる。すでにそういうものの考え方があり、電話なども入ってきております。ということになると、せっかくここで国民全体に対する政治責任ということを相互に考えながら、けさほども成田書記長が黒金官房長官に申し入れをしております。これらのことが、どうも大きな誤解を生んだ結果になってしまう。そうすると、せっかくきょう、あすという段階で、大きく情勢が転換をするかもしれない様相を持っている昨日から本日にかけての相互の努力が、一つ間違うとたいへんな結果にぶち割れてしまう。私は懸念をいたします。その意味で、その辺についてもう一ぺんひとつ責任のある御答弁を賜わりたいと存じます。
○大橋国務大臣 私が岩井さんとお話ししましたのは、いかにして問題を妥結さすかという問題ではなく、さしあたって予定されておる十七日の危機をいかにして回避するかという問題でございます。したがいして、われわれの間で問題になるのは、数字がどうなるか、あるいは結論がどうなるかという問題ではなく、十七日以前においていかなることが考え得るかという問題であるわけなのでございまして、十七日以前においては、私の判断といたしましては、現在までのスケジュールを通じて考えるというと、調停案が公労委から提示されるということはむずかしいんではないか。むずかしいとすれば、それによって問題が妥結され、ストが回避されるということは、十七日までの回避策にはならない。そうすれば、それ以外の方法を何か考えていかなければならない。そうなりますと、当事者の話し合いによって、当事者からストをやめようという気持ちが盛り上がってこない限りは、このスト回避は非常に困難である。そしてそういう気持ちが盛り上がるきっかけとなるものは何だろう、こうなりますというと、これはやはり仲裁への移行というような形があるいはきっかけになり得るかもしらぬ、こういうことを話し合った次第なのでございまして、五大臣が組合の代表にお会いになりまして、使用者としての側からのお考えを述べられたことを、私は否定をするわけではございません。ただ、先ほど申し上げましたごとく、私は直接相談をいたしておるものではございません。したがって、私の先ほど申し上げたのと違ったことを述べておられるとすれば、おそらくそのとおりであろうと思いますが、要するに、これは立場の違いでございまして、五大臣は五大臣としての立場から危機の回避に努力をしておられる。しかし、それは使用者としての立場が主になっておると思います。私は、労働行政の立場からいろいろ方法を考えておる、こういう次第でございます。
○大出委員 きのうやきょうでない長いやりとりをしておられ、またし合っておられる大臣と私のことだから、大臣を私は決して責めようなどとは思ってないのですが、ただ、事がきわめて重大であるから、責める、責められない、立場云々ということを離れて私は聞きたいのですけれども、つまり政府の見解が二つあるわけですね。きのう五大臣が言われたこと、さらに労働大臣という立場で言われていること、立場の違いはそれなりにわかります。しかし、受け取る側というのは、一人や二人が受け取るわけじゃないのであります。疑心暗鬼を持つということが、紛争解決の一番大きなマイナス面だと私は思っているわけでございまして、信頼し合わなければ、これだけ大きなことはまとまりがつかぬと私は思います。実はそういう立場から申しますと、五大臣の言われることが、政府という立場で考えてみて、立場が違おうとどうしようと、閣議を構成される大臣なんですから、してみると、われわれはどちらを信用してものごとをまとめたらいいのかという問題が、どうしても残るわけです。調停でというならば、調停の段階でどうしてもこれはしかるべき結論を出してまとめるという方向に動かなければならない。しかも五大臣のそういう話で、けさほど官房長官に成田氏が会ったら、官房長官もその努力を云々される。したがって、社会党成田書記長のほうもその努力を確約をする。こういう場面さえあるわけです。ところが、労働大臣の側は、広場が違うということで違った見解を持っていて、しかも調停案は出ないだろうと言う。そうなってくると、いずれがいずれに優先をするか、われわれは一体どちらを政府の誠意として信用をしてまとめたらいいか。協力をせよというふうに大きく官房長官から私も要請をされた一人でありますけれども、さてその要請にこたえて、どう政府の責任、誠意を受け取ってまとめたらいいか、私はこれに非常に迷うわけでありますけれども、そこのところは一体どう理解をしたらいいのかという点を、これは無理なことを私言うつもりで申し上げているのじゃないので、そういうふうに政府の側がおっしゃるわけですから、やはり同じ国会を構成する立場なのですから、われわれもともに努力をしなければならぬのでお聞きをするのですけれども、ポイントですから、お答えを願いたい。
○大橋国務大臣 これは、こういうふうに御理解いただいたらいかがかと思います。私は、昨日の時点におきまして、と申しまするか、五大臣の会見以前の時点におきまして、公労委の事務の進捗状況から見て、十七日までに調停案の提示があると思うことは無理だ、こう判断をいたしておったわけでございます。しかるに、五大臣の会見におきまして、私の予想しなかった御提案があったわけでございまして、そういう新しい要素が生まれたならば、使用者側におかれまして、公労委の調停段階において、それの裏づけとなる新しい行動が何か出る予告であるのかもしれません。したがって、そういう新しい行動が出てくるということに相なりますると、先ほど申し上げました私の見込みというものは、その新しい要素によって変わってこざるを得ない。そうなれば、私の昨晩の時点で申し上げたことは、その後の新しい事柄によって、見込み違いということに相なるわけでございます。しかし、ただいままでのところ、そういう新しい事実は、公労委に対してまだあらわれていないのではないか。特に私報告を受けておりませんので、そういうふうに思っておるのであります。
○大出委員 そうすると、公労委の大野事務局長等から、大臣のところには報告がいろいろされておる。その中に新しい動きの報告がない、こういう意味でありますか。
○大橋国務大臣 事務的には別に報告が来るべきものではございませんが、この問題は非常に重要でございまするから、私どもの事務局のほうから、いろいろスケジュール等を問い合わせいたしております。新しい事実があれば、そうしてそれによってスケジュールが変更するということになりますと、このスケジュールがどうなっておるかということが、ストに非常に影響ある問題だものですから、始終私どもも情報をいただいておるのですけれども、まだスケジュールが変わるであろうというような徴候は、受け取っておりませんのです。
○大出委員 だから、きわめて問題が重要なわけでありまして、ある新聞記者などは、五大臣が片方で調停を尊重すると言い切る、こんなことはいまだかつてない。これはきわめて大きなウェートだ。ところが、労働大臣は、昨日から——私が昨日質問したときも同じことを言われたのだけれども、一貫して、仲裁でなければと言われる。しかも大臣に直接聞いたのだが、同じことを言われる、こういうことであるということから、これは一体どっちがどうなのか。どうも政府の中に何とかラインというのが二つあるのじゃないかという話が、ほんとうの話出てくるわけであります。真にそう思っていて、何とかライン、何とかラインという名前まであげて私のところに話しに来る記者までいるわけであります。そうなってくると、この種の疑心暗鬼のままできょうの夕方を迎えると、たいへんなことになりはせぬか。つまり今夜の六時から七時の間で一巡をするわけであります。つまり全逓関係の問題が最後で、六時から七時ということで合議が一応一巡をしておしまいになる。さて七時から以降は、公益委員の方々だけの合議に入る。これが公労委のスケジュールですね。そうなってまいりますと、この間に、いま大臣が報告を受けていないということを言っているわけでありますけれども、ここのところが一つ間違うと、これはまとまるものもまとまらぬ。たいへんなことになる。だから、どうも私は気になってしかたがないのです。どうしてもこの調停ではまとまらぬと言い切られたままになっているのでありますから。片一方の五大臣の方々は、けさ官房長官が代表して、成田書記長に、何とかその線でひとつ政府の側は努力をする、したがって、あなた方もこうしてくれという話が出てきているわけでありますから、そうなると、せっかくのこの段階で、もし公労委を担当されている、先ほど労働大臣が言われるとおりの立場ならば、むしろまとまる方向に大臣を含めて御努力願わなければならぬ筋合いだと私は思うのでありまして、それが頭からどうも、いまもここで言われたのですけれども、調停はどうにもならぬのだという言い方になってしまうとすれば、これは公労委の諸君だって、使用者側あるいは政府、こういうところの者の言うことをいろいろと検討され、気にされるわけでありますから、そうなってくると、どうも妙なことができ上がる。この辺のところを何としてもはっきりしていただかないと、社会党としても、あるいは成田個人としても、おそらく責任を負いかねる問題になるというふうに私は思いますから、そこのところが打ち合わせなしでわからぬということであれば、何とかかっこうを変えて私は明らかにしていただきたいと思うのです。だから、新聞の今夜の夕刊の書き方なんかも、その受け取り方のウェートによってまちまちになってしまうわけですね。調停、そんなものは出っこない。なぜ出っこないかと聞いてみると、大橋さんがこう言ったというんですね。いや調停が出るかもしれない。何で君そう言うんだと聞いたら、どうも五大臣の、けさの官房長官の言いっぷりからだ。こういうことになっているということは、私は、非帯にむずかしい時点だけにうまくないんじゃないかという気がするのです。
○大橋国務大臣 実は正直なところを申し上げますと、私は、昨日の十時から晩の八時半まで、今日も朝から現在まで、国会の本会議あるいは委員会に出ておりまして、他の閣僚と連絡をとる時間が全くないわけでございます。したがいまして、次官その他の補佐官の情報によって判断をいたしておるのでございまして、先ほども申し上げましたるごとく、私の申し上げたことと五大臣の言われたことに、お立ち会いのあなたがお聞きになりましたことに違いがあれば、それは私のほうが違っておるでしょう。こう申し上げたごとく、打ち合わせの時間がありませんので、ただいま御指摘の点は非常に重要な点でございまするが、ここで自信を持ってこれ以上のお答えを申し上げるだけの材料を持っておりません。この委員会から出ましたならば、重大な点でございまするので、至急その点を確かめたいと思っております。
○大出委員 その点は、そうはっきりおっしゃられれば、それ以上申し上げる何ものもございません。よくわかりました。 ところで、これは額の問題とからむ問題でありますから明らかにしていただきたいのですけれども、昨日社会労働委員会が夜おそくまで、国鉄公社総裁、大臣も御出席であったように承っておりますが、相互努力ということも含めて長い論議をおやりになっているわけでありますけれども、この中で石田さん等が言っておられる賃金の時間単価ですね、これが百五十六円、他の公社が百七十円というふうな数字をあげられて、さてこれをそれじゃどういうふうにするかということで論議が発展をいたしまして、料金値上げの問題が飛び出したりいろいろいたしまして、財源五百億ぐらい、つまり他の公社と国鉄とを埋めていくにはこのぐらいかかる。つまりその額が五百億なんでありますが、それも一ぺんにということにはいかない、つまり東海道新幹線の問題その他金の要る問題もあるからというふうなことになっていきまして、二割賃金値上げ五百億、こういうわけであります。ところで、国鉄総裁の言うことでありますから、その言わんとするところはわかりますけれども、さて労働大臣という立場で考えられてみて、今日における各公社、現業という、いま公労協ということばで代表された問題の対象になっている方々の賃金のあり方というものについて、民間の状態その他をながめてみて——今夜どう動くか、あしたどう動くかわかりません。あるいはストライキをやるかもわかりませんけれども、その辺のところで、大臣のお考えで、国鉄公社の総裁の言われるようなことが、今日の公社、現業というものについて、つまり民間その他に比べて低いということなんですけれども、お認めになっておられるのかどうか。こまかいことは、要りません。
○大橋国務大臣 実は平素ならばいろいろ資料などをお示しいたしまして、それによってお答えがすぐ申し上げられるのでございますが、何分にもいまこの問題が中心になりまして、十七日のストを控えておる段階でございますので、労働大臣として国鉄、公社、あるいは公労協関係の各職員の給料がどうであるかというようなことについての感想を申し上げることは、いかがかと存じますので、差し控えさせていただきたいと存じます。
○大出委員 心配の点が二点ありますから聞きますが、いずれにせよ、問題が解決をするとすれば、それは賃金引き上げの額の問題になると私は思うわけであります。おのおの高い安いというものの考えはありますけれども、額の問題です。そうなると、先ほど仲裁という言い方をしきりにされる大臣の言い方はわかりましたけれども、この点と、それから大臣が昨年の十二月二十七日に、最近の賃金動向についてという談話を発表されているのでありますけれども、この二つの、見解といいますか、角度から言っておられることを聞いていると、できるだけ低く押えたい、それも一つのワクを考えて低く押えたい、こういう実は結果に——大臣はそうではないと言われるかもしれぬが、労働省というものはどう考えられるか知りませんけれども、賃金動向からいくと、われわれとしてはわれわれの常識をきわめてはずれたところにものの考え方の中心が置かれていると考えますので、多少具体的な質問をするのでありますが、かつて昨年六月末だと思いますが、宮澤経済企画庁長官がコストインフレ論を出されたときに、労働省はとたんにこれに反対をされて、特に三%くらいのものは企業の努力その他で何とでもなるから、今日の段階でコストインフレということは当たらないということを、大臣みずからが言われているのであります。さらに事務当局相互にも論争が幾つかありました。資料も私はいまここに持っておりますが、そういう事情であったにもかかわらず昨年十二月二十七日に、明確に言い切っていない点はありますけれども、まさにコストインフレが起こると言わんばかりのものの言い方に百八十度変わられたということになると、五大臣の言うことと、大臣の言われることと違うだけに、この点がどうしても私は解せないし、心配になりますから、そこのところについて、これは今夜、明日の問題とからんで重要でございますので、お聞かせを賜わりたいと存じます。
○大橋国務大臣 私は、昨年春以来、賃金の水準の動向につきまして、何ら見解を変える必要はないと思っております。また、事実昨年暮れに発表されました労働省見解なるものも、昨年春以来の私の見解と違ってはおりません。
○大出委員 私、実はここに大臣が発表された全文を持っているのでありますが、こまかいことを申し上げてもしかたがない。つまり大臣がいま、昨年春以来の見解と変わらない、こう言い切られてしまうのですから。そうすると、どうもここで言っておられることがおかしくなる面が幾つかあります。つまり不況によって生産性の上昇の率と賃金動向とが、賃金のほうが上回ったという場面が、二つばかりこの中には出ておるわけですね。それらのことをとらえて、ものを言っておられる。この言っておられることが、多少言い過ぎだった、ないしは含むところがあったということになる筋合いだということにいまの答弁からはなるわけでありますけれども、昨年の十二月に言ったことからすれば、ほんとうはそうはならないはずなんですね。たとえば一月から十二月までの間に賃金は九・九%上がったというところから、生産性の伸びを二年続けて計算をされて、このままでいけばどうも物価の上昇その他というかっこうで、賃金の引き上げが物価を押し上げていく、こういうふうな立論になるのでありますけれども、そこのところあたりは、どうも賃金部長さんもうしろにおられるようでありますけれども、いまの大臣の答弁をそのとおり信用してよろしいというならいいですけれども、念のために……。
○大橋国務大臣 ここらの表現は、これは統計をそのまま紹介したことでございまして、これに対する解釈といたしましては、昨年の春以来申しておりまするごとく、こうした傾向は、継続的な傾向としてつかまえるべきものである、あるいは一時的な現象であるとしてつかまえるべきものである、そこらにいろいろ問題はございまするが、しかし、私は昨年十二月の段階においては、なおいわゆるコスト・インフレの徴候がすでに始まっておると判断すべきものではない、こういう見解をとっておったわけでございます。そうした意味でこの賃金の動向については書いてあるわけでございまして、それ以上の意味をつけて、これによって賃金を抑制しようというような意図を御想像されるとすれば、それは私の意図に全く反するものでございます。
○大出委員 それではもう一つだけ聞いておきますが、今国会の開会劈頭に、池田総理大臣が施政方針の演説をされた中で、生産性向上の結果を賃金と利潤という形で分配をしてしまうということは正しくない。つまり生産性向上という部分については、これをコストの引き下げ、つまり物価の引き下げという形に回すことが正しい、こういう言い方をされているわけですね。昨年の十二月二十七日にここに書いてあることを労働大臣が言われて、追っかけて池田さんのそういう発言が出てきているわけですね。これは外国に行って、たんのうな知識をお持ちの方々がここにおられる皆さんの中にもたくさんおられるのだけれども、二年ばかり前になりますか、足かけ三年前に、英国でやはり同じことを言っているわけです。コーエン委員会が出した報告の中に、国の企業の平均生産性を越えた企業、利潤を越えた企業、そこの企業をとらえて、その場合は必ず賃金引き上げが起こる。企業利潤がそれだけ上がっているんだから、引き上げを認めざるを得ない。これがコスト・インフレにつながる。したがって、平均生産性を越える部分については物価の引き下げに回せ、こういう理屈がコーエン委員会の発表として出されて、英国総同盟はゼネラル・ストライキ論争まで実はやったのでありますけれども、つまり池田さんが言っていることは、一つ間違うと、二月の二十四日に発表をされておる閣議における統一見解というもの、日経連の五%以内というもの等々とからんで、統一見解の是非論に発展をし、大臣は社労かどっかで発言をされているはずでありますけれども、この総理が言っていることばと、いま大臣が言われることは多少矛盾を来たす。これらの問題にからんで、私はいま大臣が言われていることをもうちょっと突っ込んで明らかにしておいていただいたほうが、今日きわめて低い賃金で泣いている、しかも過酷な労働条件で泣いている国鉄の皆さん方をはじめ、三公社五現業の諸君の今日置かれている状態を改善をし、救済をするのに大きく役立つと考えているのですが、その辺のところをもう一ぺんひとつ御答弁を賜わりたいと思います。
○大橋国務大臣 昨年の暮れ労働省の見解に述べてありますところ、また池田総理が施政方針演説において言っておられるところは、その意味はいずれも同じだろうと思うのでございます。これは、賃金を抑制しようというような意図を毛頭含んでいるものではございません。ただ、個々の企業における賃金が、一般水準から飛び離れて高くなっていくというようなことは、適当でない。これはあくまでも個々の企業の問題でございまして、個々の企業において、その企業が特にばく大な利潤があるからといって、それを利潤と賃金というもので分け取りしてしまうことは望ましくない。やはり価格の引き下げ等によって一般消費者にも均霑させるということが、経営のあり方として正しいのだ。それだけの意味でございまして、賃金抑制というような事柄とは何らかかわりのない事柄でございまして、私は、これは経済改革としては当然考えられていいことだと思うのであります。ただ、英国において、それをさらにそのことから発展さして賃金抑制策と結びつけたというところに問題があったのではなかろうか。私は、あくまでも現在の賃金水準の上昇ということは、これは生産力の増大に伴います労働需要の増加、したがって労働の需給の不均衡ということが根本でございまして、この不均衡が是正されない限り、それをそのままにしておいて、賃金だけ押えようというような試みは、これは労働関係をいたずらに混乱させ、産業の発展を破壊する結果を招くばかりである。これは今日の日本の経済政策として断じてとるべきではないという考えを持っておるわけなのであります。
○大出委員 もう一つお答えをいただきたいのですが、ここで何も私は、宮澤さんの言うコスト・インフレ論、あるいは賃金インフレ論、ウェージ・プッシュ・インフレーションというものをあえて論争して、否定をして、さて今度はそれを利用して第三者機関でものを言わせようというわけではないのですが、どうもひっかかるわけなんで、いま一貫して大臣の言われていることから見ると、結果的に今日の時点ではコスト・インフレというものは起こしていない。つまり、ハーバードのハンセン教授ではないけれども、ミスコンセプションだ、謬見だと言っているけれども、そうまでは言わないけれども、現段階ではとにかくコスト・インフレ云々ということではないという見解に立って、したがって、この際世間一般の民間の賃金もあるわけですから、そこまでの賃金引き上げというものの可能性——まだわかっていないのですから、可能性を認めておられるように私は思うのですが、そういう理解にいまお話しになっていることからすればなるのですけれども、したがって、さっきの質問で、公社の、特に国鉄はじめ安過ぎる、こういう理解を私はしているので、言ったら、お答えがなかったので、大筋で民間のあるいはその他の賃金と比べてみて、これは何とかひとつ上げていくという、そういう可能性をお認めになっているように思うのですけれども、そこのところについて、ひとつ大筋でいいんですが、お答えをいただきたいと思います。
○大橋国務大臣 この点は、先ほども申し上げましたるごとく、ただいま公労委で最終段階を迎えようとしておる今日、労働大臣という立場で、ことに労働賃金の問題につきましては、労働省は、御承知のとおり、その調査機構といたしましては、世界でも有数な調査機構を持っておるわけでございます。しこうしてこれらの調査の結果は時々発表されておるのでございまして、それに対する私の判断をここで取り立てて申し上げる、しかもこの問題のさなかにおいて申し上げるということは、避けるほうが適当ではないか、私はこう思いますので、どうぞこれだけはひとつ御容赦をいただきたい。
○大出委員 実は大臣が言われる、いま争点となっておるからここで具体的に申し上げたくないということはわかります。わかりますが、しかし、数字というものはすでにいままで実際に出されてきているわけですね。それから現に苦しいという——何べんも言いますけれども、国鉄をはじめ各公社、現業の諸君の生活実態というものがあるわけですよ。そうなってくると、やはりこういう時期だからこそ、ある意味では大臣が差しさわりがあるということを云々しているのではないのだけれども、実は労働省側がいろいろな統計数字を発表されていますが、それがとかく安くするほうに使われそうなんですよ。昨日、私は、大臣がおられなかったので、やむを得ず辻賃金部長さんに、公労協の基準内モデル賃金というものがいま算定をされておるが、それともう一つ全産業のモデル賃金という話をしたら、あっさり違った数字をあげられて——違ったというのは、別な資料をあげられて、どうも問題をはぐらかされたような感じがするのでありますが、実は私が昨日聞いた資料は、中労委が三十八年六月に賃金事情調査という調査をされているわけです。これは辻さんのきのうの答弁でも——大臣がおられなかったから私はがまんしたのですが、私にきのう説明した以上、ああ簡単に否定をされては困るので申し上げておるのですが、中労委が三十八年六月に賃金事情調査というのを出された。これは千人以上をとっているように思いますが、百以上の大手企業から抽出をされて、そして全産業のモデル賃金を出されている。そうしますと、この賃金と公労協のモデル賃金を比較すると、似たような筆法でやった結論を出すと、十八歳で公労協の平均が一万二千九百三十円であるのに対して、全産業の中労委の三十八年六月の賃金事情調査でいけば一万四千七百九十一円になり、二十歳で公労協平均が一万四千八十七円になるのに、全産業のほうは一万七千四十九円である。二十二歳をとりますと、公労協が一万五千五百九十七円であるのに、中労協の全産業調査は一万九千五百四十一円になる。二十五歳で公労協は一万八千九百六十九円であるのに、中労委側は二万五千四百五十円、さらに三十歳については、公労協が二万五千百五十一円であるのに、中労委は三万四千百四十七円、三十五歳までにしておきますが、三十五歳で三万七百三十円に対して、四万四千七百七十八円という数字になっているわけです。ですから、あるところでは、国会その他を通じても言われるのですが、公労協というのは官庁組合で、しかも大組合で、生活が楽なのにストライキなどというかってなことをやるということを世間一般も言われ、とかくそういうあおり方をされる。しかもここになって、新聞などもまさにそう言わぬばかりです。名前は申しませんが、そういう新聞もある。ところが、こういう新聞との関係からすれば、労働大臣も関係がないわけじゃないわけでありますから、やはりこれらのことは正しくとらえておいていただかないと困るという意味で、公労協の、特に国鉄はじめ三公社五現業の諸君の賃金は、非常に事故多発という今日の事情等の中で神経をすり減らしている職員がたくさんいるにもかかわらず、安過ぎると私は判断をいたしますので、そういう意味で差しさわりがあるというふうにしきりに言われるけれども、一貫して言われている大臣の先ほどからの理論からすれば、最大限可能な賃金引き上げの余地をこの際政府の一員として考えてしかるべき段階だと思いますので、最終的にひとつその問題について御答弁を承っておきたいと思います。
○大橋国務大臣 今日いわゆる春闘の時期でありまして、各産業とも、それぞれ賃金のいままでのベースを新しく改訂する時期に参っておるのでございます。こうした時期におきまして、例年行なわれたごとく公労協が賃金の改訂を申し入れられるということは、当然のことであろうと思います。これに対して最後までゼロで押し通すということは、これはどう考えてもあり得ることではございません。したがって、政府といたしましても、何がしか回答をなさざるを得ないという考え方でありますが、しかし、それは自分のほうで数字を出すという形でなく、公正なる第三者の機関である公労委によってその数字を示してもらいたい、こういうことを希望しておる、これが現在の段階でございます。しこうして公労委は、労働大臣から独立した機関ではございますが、労働省の一機構でございまして、私は、その独立性またその使命を高く評価いたしますがゆえに、当面する問題について、私の立場で内容に影響を与えるがごとき発言を公式にいたしますことは避けたい、こういう考えでございます。
○大出委員 わかりました。いま大臣の言われる、いままでゼロで通してきたが、最後までゼロで押し通せる筋合いではないということが一つと、しかし、数字となりますと、政府の機関という立場で言いにくい、だから、数字については公労委に判断をしてもらうよりしかたがない。つまり公労委に聞いてくれということになったわけでありますけれども、しかし、時の労働大臣の立場でそこまで言われたわけですから、公労委はおそらくそのことを受けておやりになる性格だと思いますから、その点はそれで了解をいたします。 そこで一つの心配は、いまの公労委の判断とからみますが、先ほど来大臣が自説を曲げずに言っておられて、閣僚との連絡が不十分であるから実は詳しく聞いておらないと言っておられた調停の段階、仲裁の段階というものについて、いま重ねて仲裁とおっしゃってなかったので、そういうことになれば、調停の段階であっても、大臣が言われるように数字の判断を公労委がして出される筋合いである、結果的にこういうことになってまいりますので、そのことを私は考えまして、仲裁といわれると、額の明示がないままにいってしまうわけですから、どうしても額を明らかにしてもらわなければならぬという組合側の強いものの考え方があるので、先ほど来その食い違いを詰めておったわけでありますが、いまは仲裁ということをあえて固執しておっしゃっておらないので、そのことを私は記憶にとどめて質問を終わります。
○徳安委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○徳安委員長 本案に対し、内藤隆君外二名より三派共同提案にかかる修正案が提出されております。 ————————————— 労働省設置法の一部を改正する法律案に 対する修正案 労働省設置法の一部を改正する法律案の一部 を次のように改める。 附則 この法律は、公布の日から施行する。ただし、 第二十二条の表の改正規定は、昭和三十九年四 月一日から適用する。 —————————————
○徳安委員長 この際、提出者より修正案の趣旨説明を求めます。内藤隆君。
○内藤委員 ただいま議題となりました労働省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。 案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただきますが、その要旨を申し上げます。原案では施行期日について「昭和三十九年四月一日」としてありますが、すでにその日は経過しておりますので、これを「公布の日」に改め、定員に関する改正規定につきましては、四月一日から適用しようとするものであります。 何とぞ御賛同あらんことをお願い申し上げます。 —————————————
○徳安委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決をいたします。 労働省設置法の一部を改正する法律案について採決をいたします。 まず、内藤隆君外二名提出の修正案について採決をいたします。 これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○徳安委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。 次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。 これに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○徳安委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては原案のとおり可決いたしました。 これにて労働省設置法の一部を改正する法律案は、修正議決すべきものと決しました。 なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。これに御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○徳安委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 〔報告書は附録に掲載〕
○徳安委員長 これにて本日は散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。 午後三時二十二分散会