外務委員会 第25号
- 発言数
- 84 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1964/05/20
会議録
○臼井委員長 これより会議を開きます。 国際情勢に関する件について調査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。 帆足計君。
○帆足委員 きょうは、沖繩の祖国復帰の問題につきまして、国民の要望を申し上げ、また政府の最近の御見解、その後の措置を問いただしたいと思います。琉球立法院では満場一致祖国復帰の要請決議があり、並びに、二カ年前に本土の日本国会におきましても、与党の敬愛する床次徳二議員が沖繩祖国復帰の決議案を提案して趣旨説明をなされ、野党から不肖私がこれに賛成演説をいたしまして、沖繩祖国復帰の願いを一日も早く実現することは、これは国家の意思として、また国民の意思として公認されておることであります。したがいまして、この問題につきまして、政府御当局のその後の措置、並びに現在の御心境のほど、また御努力のほども承りたいというのが趣旨でございまして、また、それに付帯しまして、沖繩における社会保障の問題並びに経済復興の問題につきましては、やがて野田長官並びに小林厚生大臣が見えますから、お見えになりましたときにその問題に触れさせていただきたいと思います。 まず第一にお尋ねいたしたいことは、民主政治の要諦は自由と平和と民主ということで、このことは新日本憲法にも規定した国の歩むべき道でありまして、国民はもとより、公務員たるものも、この憲法の精神を擁護し、それを完全に実施するために協力する権利があり、同時に義務があるわけでございます。したがいまして、まず、沖繩祖国復帰の問題を明らかにしまするために、私は、政府に対して、民主政治の要諦とは何であるか、政府はどのように理解されておられるかということをお尋ねしておきたいと思います。小学校の社会科の教科書をひもとくまでもなく、人民による人民のための人民の手による政治、これが有名なアブラハム・リンカーンの残したことばでありまして、私はこのことばが民主政治の要諦であると思っていますが、人民による人民のしあわせのための人民の政治、外務大臣はどのようにお考えでありましょうか、御見解をまず明確にしておきたいと思います。
○大平国務大臣 仰せのとおり考えております。
○帆足委員 しかりとするならば、人民の手によらず、人民のためは第二義であって、他国のためを第一義とし、他国の専制支配による政治、それはかって英国支配下の植民地であった時代のアメリカがそうでありましたが、そういうやり方に対してワシントンは決起して独立宣言を発し、独立宣言がやがてフランス革命、世界の民主革命の導火線になったことは御承知のとおりでありますが、先ほど申し上げましたアブラハム・リンカーンの定義を正しいとするならば、人民の手によらず、人民の幸福は他国の幸福と適当に調整し、そして人民の政治でなくて他国の支配による政治、これは民主政治の常道から少なくとも離れておるということはお認めでございましょうか、ちょっと承っておきたいと思います。それはかってのアメリカの状況です。
○大平国務大臣 常道から明らかに離れておる状態であると思います。
○帆足委員 外務大臣から民主政治の定義に対しましてかくも明快な答弁を得たことを私は満足に思う次第でございます。 そうだといたしますと、具体的に、沖繩において行なわれていることは、人民による人民の政治が行なわれているかどうか、あるいは人民の施政権によらざる他国の支配が行なわれておるかどうか。こういう複雑な世の中でありますし、外務大臣からこのもやもやしておる世の中に割り切ることはできないとよく言われますけれども、しかし、こういう問題は、やはり国民の誇りと自尊心にかけて割り切っておかねばならぬと思います。人民の手によらざる政治が沖繩において行なわれておりますことはお認めになりますか。
○大平国務大臣 アメリカの施政権下にあるわけでございますし、沖繩住民の手による立法権・行政権は大きい制約を受けている状態でございます。
○帆足委員 これは、善悪の問題でなくて、そういう事実がある。その事実は、先ほど申し上げましたアブラハム・リンカーンの原則に反している。すなわち、善悪は別、理由の釈明は別としても、アブラハム・リンカーンの定義した民主政治でもないものが沖繩において行なわれているとわれわれは理解し、残念に思っておりますが、植民地解放宣言が論議されましたときに、アメリカ代表はこう言いました。われわればかつて英国の植民地であったがゆえに、植民地の苦しみをまだ十分に知っている、ひおじいさまの寝物語でも覚えている、このような見地からアメリカはこれに対して理解ある発言をする権利がある、すなわち、植民地の定義とは、住民に自治権がなく、他国の支配を受けていること、これが植民地の定義である、こう言いました。このアメリカ代表の言うことは愚昧であり間違っているでしょうか。または、その定義はやや正確に近いものとお考えでしょうか。
○大平国務大臣 りっぱな主張だと思います。
○帆足委員 これは非常に重要なことですから、重ねて伺いますが、りっぱな主張ということではなくて、植民地に対するアメリカ代表の定義はやや正確な定義であるとお考えでしょうか。
○大平国務大臣 仰せのとおりです。
○帆足委員 しからば、論理学に従ってこれを進めるならば、どういうことになるか。琉球においては、すなわちわが沖繩県においては、人民の施政権は理由はいかんにしろ奪われ、他国の専制支配が行なわれている。少女が兵士に暴行を受けようと、ジープでひき殺されようと、われわれはこれを裁判する権能すら持たぬ。今日の人類の教養の段階をもってすれば、とかく各民族に利己主義があって、そういう裁判のときにもMPが来て、そうして逆に犯人をうまく逃がしてやったり、犯人を追っかけている者が逆に殴打されるというようなことも間々ある。これが基地の実情です。まことに遺憾なことです。この定義に従えば、すなわち、人民に自主権がなく、他国の支配を受けている、それを植民地という、このアメリカ代表の定義に従えば、私は沖繩の状況は一種の植民地的状況であると言うことができると思います。これに対して外務大臣が御答弁されることはたいへん苦しいと思いますけれども、苦しかろうが苦しがるまいが、それは心理学と生理学の現象でありまして、論理学においては、もはや回答を求めなくても、新聞記者諸君もおられるし、親愛なる与党の方もおられますから、それは植民地的状況である、これはもはや明確であると思います。ところが、大平さんは非常に聡明な方でありますけれども、大平さんに比べるとちょっと、聡明の度が足らなかった元外務大臣は、植民地の定義はそうではない、搾取をしている事実があることが植民地だと言う。これは外務省の官僚諸君の苦しまぎれな入れ知恵でございます。前の条約局長の入れ知恵でございます。条約局長というものは、碁の名人のようなもので、なかなか頭もいいし緻密でありますけれども、悪知恵を発見する。すなわち、頭はいいけれども、心がけがよろしくないということが間々ある。これも職業上やむを得ないことでありましょう。ところでそういう入れ知恵のために、沖繩は植民地の一タイプではないということを弁明されたのでございます。 それでは、それを考慮に入れてお尋ねいたしますが、搾取されていなくても、かりに搾取という事実がなくても、自治権なく、外国の支配下にあるとするならば、それは植民地であると、国際法の本に書いてありますが、その定義は間違っておりますでしょうか。これは大平さんに御質問するのは過酷でありますから、人道上の見地から私は条約局長にちょっと伺っておきたいと思います。
○藤崎政府委員 恐縮ですが、もう一度質問の内容をお示しいただきたいと思います。
○帆足委員 やがて二、三分で厚生大臣がお見えだと思いますから、——お見えになりましたか。それでは、研究の時間を与えますから、これは国家の主権に関する非常に重要な問題でありますから、条約局長その間ひとつ御研究を願います。 厚生大臣にはお忙しいところを委員会をはずして数分おさきくださいまして、まことにありがとうございました、野田長官もお見えでございますから、御一諸にお聞き取り願いたいのですが、沖繩における県民の生活水準が、亜熱帯地方の経済的過渡期としましていまだ生活貧しく、また、アメリカ軍事基地の特殊性を受けまして、一部は潤っておりますけれども、大部分は生活が苦しいことは厚生大臣の御承知のとおりでありまして、また、基地の財政に追われまして、社会保障が本土並みになっていないことも御承知のとおりでございます。それにつきまして、せっかく厚生大臣の今後の御努力、また野田長官の御協力もともどもお願いいたしますが、本日とりあえずお願いいたしたいことは、たとえば広島、長崎で被爆地帯にたまたま住んでおり、また中には看護婦さんでかいがいしく原爆被害者を放射能のまっただ中で看護された、その人たちがやがて沖繩が安定いたしましてふるさとに帰られた、そうしたところが、ぼつぼつ原爆症の症状があらわれたということがあちらこちらに起こっておるのでございます。アメリカは、原爆を投下したまあいわばその点においてば戦争犯罪人でありますから、この問題に深く触れるのは面はゆい思いがするのでしょうが、むしろ積極的に罪滅ぼしをなさったほうがよかろうとは思うのでありますけれども、やはり古い傷にはさわられたくないという人情のしからしむるところでしょうか、あるいはまた私どもも注意が足らなかったのか、一種のエア・ポケットになっておりまして、原爆被害者が何らの保護を受けずに今日不安な生活をしている状況でございます。それらの方の多くは、正確な診断を受けておりませんから、ちょっとかぜをこじらせましても、ちょっと紫班病のようなことになっても、動脈瘤ができても、原爆のためではあるまいかといって不安を感じ、また、わが子、わが孫への影響を心配してノイローゼの状況になっているように伺っております。このたび沖繩原水協の事務局長さんで原爆被害者の世話をしている大島修君がまいりまして、厚生大臣に御紹介申し上げ、及び野田長官にも御紹介申し上げましたが、幸いにしてその人たちの人道的な御努力によって、市町村長に御照会をいたしまして、一応簡単な調べをいたしました。ところが、原爆被害地から帰郷された方々が七十九人おりまして、ノイローゼ状況になっており、そのうちの約二割五分、二五%程度の人が自覚症状を訴えておる。しかし、何ぶんにも専門医の診断の結果がなければわかりませんから、まず第一に、被爆地におりました方々がどのくらいおるか、これを調べていただいて、第二に、最も適切な方法で原子病に関する専門のお医者さまに診断をしていただく機会を与えまして、診断が一回あるいは定期的に行なわれれば、ノイローゼは解消するものと思います。そうして、発見されました軽症の原爆病の患者の方に対しましては、現地の病院に適切な協力、指示をいたしまして、また現地の琉球政府並びに赤十字社等の御協力を得まして適切なお世話をし、重症の患者に対しましては、結核の療養において厚生大臣御指導のもとに御援護いただいておりますように、本土に引き取って治療を加える等、専門家の御研究を待ちまして適切な措置をしていただきたいと思うのでございます。こまかなことは専門家の方が系統的に御研究くださいまして適切な措置をいただかねばならぬことでありますけれども、厚生大臣の御配慮と野田長官の適切なる琉球現地政府並びにアメリカ当局との連絡が必要でございますから、あわせて御考慮願いまして、大臣の御答弁及び野田長官のそれに対しまするお気持ち、お心がまえのほどをこの際承っておきたいと思うのでございます。
○小林国務大臣 ただいまのお話、まことにごもっともなことでございまして、御案内のように、内地におきましては、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律、こういう法律によりまして、国の費用で一切医療をいたしておる、こういう事情にございますので、これらの方々が日本の内地においでになれば当然その法律の適用によって国の費用で治療が受けられる、こういうことになるのでございますから、そういうふうに内地に来られる人はまた来ていただくということも考えたいと思いますが、来られない方につきましては、あるいは必要によって日本から専門の医者を派遣する、現に沖繩の医療のためには七、八人の医師が沖繩にまいっておりますので、そういうようなことも考えられるのでありますが、いずれにいたしましても、これは米国側との関係もございますから、総理府ともよく相談いたしまして、でき得る範囲においてひとつぜひお手伝いをいたしたい、かように考えております。 それにつきましては、まずもって実態を把握する必要があるから、さような被爆者関係の調査もいたし、その上で適当な措置を講じたい、しかも、これらにつきましてはできるだけすぐにわれわれも相談をいたしまして善処をいたしたい、かように考えております。
○野田政府委員 ただいま厚生大臣からお答えがありましたように、原爆の被爆者の問題でございますから、これはきわめて重要な問題でございます。先般総理府にも沖繩の原爆禁止協議会からの御報告がございました。したがって、総理府といたしましては、現実にそういう苦しみを受けておる方があれば、すみやかに対策を講じなくてはならぬ。講じますにつきましては、厚生大臣がいまお話しになりましたとおり、厚生省と連絡してこの措置を講ずる。現在総理府から厚生省と打ち合わせまして沖繩に約三十名くらいのお医者さんが行っております。歯医者さんも三人か四人行っております。したがって、いままでまいりました医師は、この情報がなかったものですから、原爆関係のお医者さんは行っておりません。そういうことでございますから、できますならば、そういう被爆者の患者があるとするならば、いま厚生大臣が申しましたとおり、内地にその患者を収容するか、また、それが不可能な場合は、それに適応したお医者さんを厚生省に御依頼して派遣するとか、そういう考え方を持っております。幸いに今度約二百名の結核患者を内地へ収容することになっておりますから、あるいは、これができますれば、そういう患者がおられますればその際また何人かの方も一緒においで願う、そういうことも今後考えなければならぬと思っております。実は、現在そういう患者が何人おられるかということの的確な資料がございませんから、これもすみやかにアメリカとそれから琉球政府に連絡をとりまして資料を得たいと思います。その対策につきましては、いま厚生大臣並びに私から繰り返して申しましたとおり、いわゆるできるだけの措置を講じたい、こう思っております。
○帆足委員 ただいま厚生大臣から御懇篤な御回答をいただきまして満足でございまするし、また、沖繩に格別に御理解の深い野田長官から御協力の御答弁をいただきまして、私ども満足でございます。沖繩の同胞の皆さんは、一本の指の痛みは全身の痛みと感ずるほど本土の人たちに考えてもらいたいと口ぐせのように申しております。私どもは戦争中戦災で苦しみ、また物資不足で苦しみ、また、私ども政治家の卵は、王難の罪によって、いささか平和のことを念頭に置いたがために政治犯として獄窓の生活をいたしましたけれども、しかし、沖繩の現地は、本土決戦のいけにえにされまして、ひめゆりの塔、健児の塔、まことに深刻な犠牲でございました。そのことに思いをいたしますならば、社会保障の問題もまた格別厚生大臣並びに野田長官に今後とも御配慮のほどお願い申さなければならぬと思っておる次第であります。 厚生大臣には、ただいま他の委員会で御審議中でございますから、どうぞお引き取りくださいまして、野田長官に私は経済政策の問題を少しお尋ねいたしたいのでございます。 その前提といたしまして、長官にお聞き取り願いたいのですが、ただいま植民地という穏やかならざることばの定義について条約局長にお尋ねしましたが、かりに経済上の搾取がなくても、その国が住民に自治権がなく他国の専制支配を受けておる場合にはこれを植民地という、これは百科辞典のどれにも書いてありますし、国際法の初歩の書物全部に書いてございますが、条約局のほうはどういうふうにお考えですか。
○藤崎政府委員 沖繩の場合に……。
○帆足委員 沖繩のことを言っているのではないのです。植民地のことを言っているのです。沖繩のことは忘れて答弁願いたい。
○藤崎政府委員 それでは抽象的に申しますが、ある地域がある国の植民地であるという場合には、その前提に、その地域に対してその国が領土主権を持っておるということがあると思うのでございます。したがいまして、この問題の場合には植民地という概念は当てはまらない、かように考えます。
○帆足委員 条約局長の御職業でありながら、政治家のように顧みて他を言うようなことはやめていただきたい、だれもあなたを処罰する人はないのですから。植民地の定義について、これから論議を進めるためにこれは非常に重要なことですからお尋ねしているわけです。すなわち、植民地とは、一国の住民の施政権、自治権がなく、他国の支配を受けておる国をいう、これがアメリカの行なった定義でありますが、その場合に、かりに経済的搾取はなくても、自治権もなく他国の専制支配を受けているという例がアフリカなどにたくさんあるわけです。貧しい国であって経済搾取はできないが、軍事的にちょっと役に立つから長い間スペインが持っておったとかポルトガルが持っておったという国があるわけです。そういう国を含めまして、アメリカの代表は、植民地とは住民に自治権がなく、他国に奪われており、他国の支配を受けておる国である、こういうふうな定義を下した。それを条約局長はどうお考えですか、こう聞いたわけです。沖繩のことなどお考えにならなくてもいいのです。ゴアのこともお考えにならなくてもいい。
○藤崎政府委員 先ほど申し上げましたように、私は、寡聞にして、ある国とある地域との間に主権関係がなくして植民地というような事例があることを存じません。
○帆足委員 おかしな答弁ですね。主権関係がなくしてというのは、たとえばコンゴがベルギーの植民地でありましたときでも、あなたの言うのは、潜在主権が置かれておりさえすれば植民地でない、こう言いたいのですか。それならそれではっきり言われたほうが、人生は短いから、どんどん早く率直に言っていただきたいと思うのです。
○藤崎政府委員 だから、具体的の場合を申し上げたほうがはっきりすると思いますが、アメリカが沖繩に対して主権を持っていない以上、沖繩がアメリカの植民地であるということはあり得ない、こういう趣旨のことを申し上げておるわけでございます。
○帆足委員 それでは、植民地解放宣言の場合に、ベルギーでも、スペインでも、ポルトガルでも、かりに植民地に潜在主権という絵にかいたもちを与えれば、非常にこうかつにしてうまい政治家がいて、アルジェリアに潜在主権がございます、それだけ一言声明すれば、植民地解放宣言の適用を免れますかどうか、伺っておきたい。
○藤崎政府委員 いまの場合はちょっとまた関係が違うと思いますが、潜在主権を持っておるのは日本なんでございまして、いまお示しのような事例には日本の他位に当たる国家がないわけだと思うのです。
○帆足委員 私が伺ったのは、たとえば、アルジェリアならアルジェリア、コンゴならコンゴに、その植民地支配国が潜在主権を与えたならば、すなわち絵にかいたもちを与えたならば、それは植民地とは言えないということにあなたの定義によればなるのかということです。そのようになることが国際的に公認されたら、世界の植民地支配国は大喜びに喜んで、全部、潜在主権があなたのほうにある、こう宣言するでしょう。私にそういうばかばかしいことを言わせておるというのは一体どういう論理であるかをひとつ良心的に反省しながらお答え願います。
○藤崎政府委員 いま潜在主権とおっしゃった意味がよくわかりませんが、形式的に言いまして、ある国が従来の植民地に独立を与えましたら、その独立が実体的にそれほどしっかりしたものでなくても、法律論としては植民地でなくなると申さざるを得ないと思います。
○帆足委員 そういう御答弁をたびたび聞きたくはないのですけれども、一体東大を出たのか早稲田を出たのか知りませんが、私は、にせ大学生ではないかといって一ぺん身元調査を必要とすると思う。というのは、私が申したのは潜在主権という絵にかいたもちさえ与えれば、実際上に外国の支配が行なわれ、拒否権があり、治外法権が行なわれ、少女が暴行を受けても少年がジーブでひかれても自分の国で裁判する力がない、そういう場合でも、潜在主権という絵にかいたもちさえ与えれば、コンゴでも、ゴアでも、西イリアンでも、大体植民地という定義の対象に国際法上ならないかどうかということをお尋ねしているわけで、沖繩のことなどここでは忘れて、淡々としてお答えになったらいいでしょう。その結果沖繩のことで都合の悪いことが起これば、それは大臣があとで政治的に考慮しますから、ぼくらも考慮しますから。一体条約局長が論理学を曲げるとはどういう意味ですか。ですから、学歴を調べなければならぬということになる。
○藤崎政府委員 私は、ポルトガルがゴアに潜在主権を与えるなんというような、非常に珍奇なことをおっしゃるのでまごつくわけでございますが、もしゴアに独立を与えるということであったら、それがいかに形式的なものであろうが、それは植民地でなくなるということを申し上げたのでありまして、潜在主権をゴアにポルトガルが与えるなどということは、いままで私かつて耳にしたことがないものですから、まごついておる次第でございます。
○帆足委員 私は抽象論でお尋ねするということを最初から申しておるのであって、ゴアでなくても、西イリアンでも、コンゴでも、象牙海岸でもいいわけです。ただ、ある国が、そのときに実際は治外法権であって施政権もなく裁判権もなく、そうしてただ潜在主権ということばを与えればそれで植民地でなくなる、植民地ということばは当てはまらないというようなことは、国際法上可能かどうかということをお尋ねしたのであって、あなたの御答弁が珍奇珍妙、奇妙きてれつ、こう言わざるを得ないと思うのです。珍奇とは何ごとであるか。
○藤崎政府委員 国際法の本にも、国際法上の先例にも、ある国がいままで植民地であった国に潜在主権というものを与えた例はないと思います。
○帆足委員 潜在主権を与えたときはどうなるかということを聞いたわけです。これから大学に入って勉強するなら勉強すると言えばいいでしょう。珍奇とかなんとか言われるより、この沖繩の例に従って潜在主権という絵にかいたもちを与えれば、これは植民地と言えるか言えないか、または、自分はまだわからないならわからないとか、政治的配慮をなさらずに条約局長としての御職業の俸給の許す範囲において御答弁なさればいいのです。
○藤崎政府委員 そういうことは本にも書いてございませんし、先例もありませんので、どうとも断定いたしかねます。
○帆足委員 無礼なこと言って人をおこらせるということで、これは条約局長じゃなくて珍奇局長ということになることを私は心配しますが、ちょっとおっしゃりにくい理由が背後にあることはよく知っておりますから、これでやめましょう。しかし、国民はどちらの議論が正当であるか知っておるでしょう。すなわち、アメリカの代表の言われた定義は、施政権がなく、裁判権が外国の手によって行なわれ、外国支配を受け、強烈な拒否権等を持っておる場合は、それを植民地という、それはアメリカの代表が国連の特別委員会で述べた速記録にあることばです。それでわかったと思います。 したがいまして、私は、これは広義の意味で原則的に植民地解放宣言の趣旨に反するものであると思います。また、国連憲章、人権宣言にも反しております。国連憲章の原則にも反しております。 それから、もう一つお許しを得てやはり原則を明らかにしておきたいと思います。 日本国民の大多数の人が、沖繩が他国の支配を受けている点について十分にまだ認識していない点があります。これは政府もPRしておりませんから。国と国との条約によって軍事基地を貸与し、若干の地代を受ける、または便宜を受けるということは、条約でいま許されておることであります。それの是非については、与党、野党、世界戦略または平和政策について見解の相違もあり、いろいろな中間段階の意見もありますから、私はここでいま触れようとは思いません。しかし、今日、一国の住民の施政権を他国に譲り渡すことも、国連憲章では、これはよくないこととされており、その施政権をもらうほうの側ももらうほうである、これもよくないこととされておる。これは国連憲章に書いてあるとおりです。現在、婦女の誘拐、国際的売笑組織、麻薬の国際的密売買、またはギャングの国際的横行、こういうものに対しては、国際条約によって禁止されております。したがって、麻薬は取った場合は悪いけれども金を払ったらいいじゃないかとか売春はその少女がイエスと言うて金を払ったんだからいいじゃないかとか、そういうことにはならない。あるいは売ったほうも買ったほうも無知であるがために知らないでやっておる場合もあると思います。沖繩の例はまさにこれに当たるわけでありまして、私は条約上きめられた基地に対してただいま云々しておるものではありません。これは高度の政治問題であり外交問題でありますから、これは善意をもってそれぞれの立場から論議することができます。いま私が論じておるのは、基本的人権、植民地解放宣言、国際連合憲章の立場から申し上げておるわけでありまして、日本は国際連合の有力なる一員であります。沖繩は御承知のごとく信託統治にするときめられて、それに対して多くの戦勝国の連合国の国々が賛成署名をしたのでございます。インドもインドネシアもその趣旨には賛成いたしました。それはなぜであるかというと、国際連合による信託統治というのは、その住民の自治権を培養し、一日も早く本国に復帰させる。またはそれが独立国であるならば独立の民主政治を持つために、保護育成するというのが信託統治の本質でございます。ところが、アメリカは、そのようにするけれども、それまでの間ちょっと時間がかかるし、国際緊張もあって基地の始末もせねばならぬから、その間暫定的に軍部占領を続ける、こういうふうに説明いたし、これに対しましてインドが質問を発しましたのに対しては、英国がとりなしまして、永久と言っておるのではない、暫定的に軍事占領を続け、そしてやがて信託統治についての手続をするのであるから、それくらいの期間は猶予してもよいじゃないか。この英国のことばに対して吉田全権も承認したのでございます。ところが、それに対しましてインドは、それならば占領期間はどれくらいかと聞いた。それに対してダレスは答えませんでした。したがいまして、ネール首相の訓令によりまして、期間を明示せずして軍事占領をすると、実いかに善意を持っておっても、とかく今日の段階では軍事占領がずるずるべったりに続いて、せっかくの講和条約の最後にやはり民族の争いの禍根を残す、いまこの戦争の目的はファッショとの戦争であって、この勝利の成果は植民地解放ということに漸を追うて進む、そのときに新たに施政権を剥奪するような場所が日本の一角にできることは極東に災いの種をまくものである、この点は遺憾ながらインドとして賛成することはできないというので、直ちにナセル大統領と相談いたしまして、インドは全面的に脱退し、ナセル大統領は、この条項については留保条件をつけて、この条項だけは賛成できないということで、二国は反対の態度をとったのであります。 この信託統治が、国連憲章によりまして、本土が国際連合に加入した場合には信託統治はもはや無効になるということですから、アメリカ軍占領の最後の終着駅はすでに無効になってしまいました。終着駅が無効になった新婚旅行のようなものでありますから、一体その結末はどうなるか。私は、このままの状況が続くならば、これは結婚詐欺のようなことになってしまうと思う。このことはすでにアメリカ国務省はよく知っております。ケネディ大統領の理論的顧問といわれたスカラピノ教授はコンロン報告にこのことを書き、また、ライシャワー博士、彼がプロフェッサー、教授でありました時代に書かれた「太平洋の彼岸」という書物にも、このことが詳しく書かれております。また、ケネディ司法長官が日本にまいりまして実情調査をいたしましたときも、人権協会や国際連合に対する琉球立法院の陳情書などを読みましてよく理解しておりまして、ワシントンに帰りまして、お兄さん、これはたいへんだ、沖繩は合法的に占領しておるかと思ったが、あれば、軍事基地については合法的権利があるけれども、しかし住民の自治権を剥奪するということたついては国際法上多少の疑義がある、これは何らかの法的措置を講じておかなければ、口に民主主義を唱えながら、実際上は旧植民地と同じようなことをやっておるのでは困るではないかということで、有名な三月二十日のケネディ大統領の声明となりまして、沖繩領土権は日本にある、ただ暫定的に国際緊張の必要上アメリカは沖繩の住民諸君の自治権を極度に制度をして、なきにひとしいものにしておるけれども、漸次住民の自治権、施政権を回復し、やがて日本に少なくとも政治的人権に関する限りは復帰せしむるための手順をとり、スケジュールをつくり、同時にまた、そのときに経済上の落差が大き過ぎると、日本政府も困り琉球の住民も困るだろうから、その落差を小さくするための手順として、プライス勧告の法案を修正して、その金額の限度をもっと三倍以上にふやしたい、これがケネディ大統領の声明であったことは御承知のとおりであります。ちょうど私ばその直後に沖繩に約一月ほどまいりまして、そのときの沖繩県民諸君の期待と喜びのほどをまのあたり見て知っておるのであります。翌月アメリカ上院に軍事委員会が開かれまして、アメリカの中のがんこ派といわれる保守派議員と職業軍人の諸君が、それでは沖繩の軍事費が削減されやしないか、また弁務官の権限が縮少されやしないかという不安を抱きまして、そのときの速記録は、「希有なる沖繩の戦略価値」という題名をもちまして、ところどころバツバツがありますけれども、ほとんど大部分が速記録として公表されておるのでございます。私はこの速記録を一晩寝ずして涙を流して読みました。それは、国務省の沖繩に対する理解の深さに反比例して、アメリカの職業軍人、——どこの国の職業軍人というものもつまらぬ者でございます。今日原爆、水爆とロケットの時代に、敵は五千メートルのかなたと言って走る連中でございますから、素朴な昔流の職業軍人の視野から脱することができがたいこともやむを得ないということもありましょうけれども、そのときの速記録の内容を読みますと、これが一体民主主義国における軍事委員会の速記録であろうかと思われるような乱暴ろうぜきの限りのことばが尽くされておりまして、国際連合もへったくれもあるものか武力で占領した沖繩であって、日本に調印させた沖繩であるから、われらの自由である、永久にわれらのものである。潜在主権などというあいまいなことばを若いケネディ輩が使ったことが誤解のもとになるというような意味のことばまでが、失言でありましょうけれども速記録にしるされておるのでございます。こういう事情のために、若きケネディ大統領も主観的にはあの声明どおりの道を漸次踏み、アイゼンハワー大統領のパリ会談は失敗いたしましたけれども、フルシチョフ首相との話し合いの過程にあって極東の緊張がだんだん緩和され、ラオスにおいてジュネーブ会議の精神が生かされていく過程において、また中国問題がやがて解決の方向に向かう過程において沖繩の問題を解決する日が来るであろう、そのスケジュールを考えようというので、善意に解釈すればこれがアメリカ国務省の意見であったし、悪意に解釈する人は、それは見せかけの退却であるという解釈も成り立つと思います。私は両方とも一面の真理であろうと思いますけれども、そのようなことで、ついに二カ年たちまして、大山鳴動してネズミ一匹と言える程度、野田長官が御就任になってやっと少しばかり問題が進展し始めたというところであろうと思います。ところが、御承知のごとく、その後若きケネディ大統領は痛まくしもファッショの凶弾に倒れまして、私どもも、その日は胸の痛む思いがいたしまして、これから世界はどうなることかと思ったのでございますが予想外にジョンソン新大統領ば平和の問題に対して熱心でありまして、ケネディ大統領の志を継ぎまして、とにかく話し合える場所が国連にできつつあることは御同慶しごくでございます。もちろん、ジョンソン大統領といえども、アメリカのナショナル・インタレストを代表しておりますから、私どものような無産階級を代表しておる政党から見まするならば、アメリカの大資本に制約を受けまして思うとおりにならないでありましょうし、多くを期待することばできませんけれども、とにもかくにも、ジョンソン大統領の教書などを読みますと、語り合える若干の広場、胸を打つ論理があるのでございます。まさにこのときにキャラウェー弁務官がちょうど更迭になりまして、新弁務官が近く就任することになっております。 このとき、四月二十八日、沖繩では祖国復帰記念日でございまして大デモンストレーションが行なわれました。私も、沖繩の舞踊、音楽を愛するのあまりつい深入りいたしまして、沖繩のことをいろいろ学ぶ機会に恵まれまして、二年前に沖繩を訪れましたのが縁となりまして、その後次第に沖繩のことを深く研究する機会を持ち、ただいま社会党の沖繩対策委員会の副委員長をいたしておりますが、このたび二十七度線の海上交歓のデモンストレーションにまいりました。御承知のように、与論島からは双眼鏡で見ますと辺戸岬を通るトラックの姿が見えるくらいでありまして、何万の沖繩の島人たちが辺戸岬に集まりまして、かがり火をたきました。私どものほうも与論島の南端の金刀比羅神宮境内の上で花火を打ち上げ、たき火をたきまして相呼応し、翌朝は二十七度線で互いに船と船と舷々合わせまして握手をかわし、心と心を通ずる象徴的な示威運動を平和のうちにいたしたのでございます。 これらのことがテレビ、ラジオを通じて全世界に伝えられまして、たまたまアメリカのワシントン・ポストは五月の初めから十一日に至るまで連日沖繩のことを取り上げまして情報を伝えました。そして、ここに一人の良心的新聞記者さんがおられまして、彼が沖繩の情況を詳しくワシントンに伝えております。そして、この情報をもとにいたしまして、ワシントン・ポストほどの権威ある新聞が社説の全面を使いまして、沖繩の現在の統治には無理がある、確かに若いケネディ大統領が指摘したように、国際緊張の現段階では軍事上の理由のためにアメリカも引くに引かれぬ一線はあるけれども、住民権に関する限りアメリカが今日やっていることは無理があるということをるると書きました。これに対して陸軍長官が若干反論を発表いたしましたけれども、どうも、先ほどの条約局長の御答弁のように、まことに珍奇な反論でありまして、自信がなく、良心に反する反論でありますから、顔色もさえず、一般の世論としてはどうも軍部に旗色が悪いように新聞は伝えておるのでございます。新大統領選挙も近づきまして、いまアメリカは転換期である。また、いつも大平大臣の言われるように、国際情勢はとどまるところなく変わりつつありますから、日本の与党政府といたしましても、穏歩前進ということが必要でありましょうけれども、しかし、情勢は移りかわりつつあり、せっかくの弁務官更迭の機会でありますから、この機会は政治的に重要なものであると思っております。 ところが、琉球立法院は、ついに、保守党、野党全員一致、県民の要望を代表いたしまして満場一致の決議をいたしまして、この決議を国際連合並びに世界諸国及び日本の国会等内外に発表いたしました。短い文章でありますから、読み上げて、この際御注意、御配慮を促したいと存ずるのでございます。 沖繩の日本復帰に関する要請決議 日本国との平和条約が一九五二年四月二十八日に発効してから十二年が経過した。 この条約が結ばれようとした当時、沖繩の全住民は祖国から分離されて米国の施政に服することに対し強烈な反対の意思を表明したのであったが、われわれの訴えは遂に顧みられることなく条約は締結され、沖繩は米国の統治下に置かれることとなった。かくて、条約発効前からの米軍政以来、沖繩住民が米国の支配下にあること実に十九年の長期に及んでいる。その間、われわれ沖繩住民の祖国復帰の願望は年月の経つにつれて燃え盛るばかりであり、本院においても既に過去八回にわたり院の決議をもって日本復帰を要請し続けてきたが、未だその実現をみないことは甚だ遺憾である。 いうまでもなく、沖繩の統治は沖繩住民の総意に基づかなければならない。ところが祖国復帰という沖繩住民を含めた日本国民の総意が無視されて、沖繩は平和条約第三条によって祖国日本から分断され米国の統治が続けられている。このことは近代民主政治の基本原理に反するものであるが、更に、日本が国連加盟国の一員となった今日、なおその領土の一部である沖繩に対して右の統治が継続されているということば、主権尊重、民族自決の国連憲章の精神にもとるものであるといわなければならない。よって本院は、貴国が国連加盟国の一員及び条約締結国として、本院の意思を尊重し沖繩を日本国の主権下に復せしめる措置を速かに講じてもらうよう強く要請する。 右決議する。 一九六四年四月二十七日 琉球政府立法院 これと同じ文章で、ただ最後の文章だけが、内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長あてで、そして、三行だけ違いまして、「よって本院は、祖国日本が沖繩に対する主権回復を最高の国策として強力に推進してもらうよう強く要請する。琉球政府立法院」、こういう声明書を発しております。私は、この声明書の内容を読みまして、措辞まことに穏健、論理明快でありまして、もっともな要求であると、胸を打たれておる次第であります。できますならば、与党の皆さまとも相談して、二年前に行ないましたように、この要望にこたえて祖国復帰のためにわれわれは努力を惜しまぬという意思表示を両院としてもいたすように、私はお願いを申し上げたいと思っておる次第でございます。 そこで、時間もありませんから、具体問題に入りまして、野田長官はお急ぎでございますから、先に経済問題を申し上げまして、若干施政権の問題について、アメリカと折衝する要点、要訣を私は御助言もし、要望もいたしたいのでございます。 順序が逆になりますが、経済問題につきまして、私はこう思っております。長官は八重山にはまいったことと存じますが、西表にまいりましたでございましょうか。八重山、西表は、いまから十年前はマラリアがありまして、少し僻地にまいりますると住みにくいところでございました。いまはマラリアもなくなり、ハブもほとんど消えつつあります。私は、キャラウェー殿に、あなたのやったことの中でたった一ついいことは、マラリアを退治したこと、これだけは私は心から感謝する、その他は一つも感謝することはありませんと申しておきました。八重山は山高く水清く、あれほど山が高いのですから、私は水もあり得ると思います。西表に至っては、うっそうたる大森林を持っております。かつての私どもの土木の技術、農薬の技術ではこの島はどうすることもできませんでした。しかし、今日の農薬並びに土木技術、農業技術をもってすれば、開発は可能であります。戦前に私どもは豊かな台湾を持っておりました。台湾の植民地統治は、植民地統治であるという点においてやはり誤った歴史的宿命を持っておりましたけれども、開発は比較的円滑に進んだと言われておりました。そのために、私どもは、台湾の亜熱帯農産物に依存する安易な道になれまして、この豊富な亜熱帯の産物、特に台湾のバナナの改良はすばらしいものであり、パイナップル、砂糖、米、これらのものに豊かに依存することができましたために、つい、沖繩の島々、亜熱帯の離島の島々は、それに比べますると経済価値が低いように思われまして、また、当時の技術水準と農薬の水準をもってしてはそれもやむを得なかったでありましょうけれども、そのために沖繩の島々はおおむね多少やっかい者に扱われたきらいがあったのでございます。これは歴史の事実でございます。私は、野田長官が今後沖繩の問題に対処されるにあたりましては、後ほど大平外務大臣に御質問します施政権の問題は念頭に置きつつ、同時に、経済の問題はまた経済の問題として御担当せねばならないでありましょうから、まず、豊かな台湾を持っていたときと違うということ、われわれのただ一つの残された亜熱帯の島だということをお忘れにならないように願いたい。しかも、諸外国にまいりますと、沖繩の人口は五万とか三万とかいうように思われている。われわれの友人ですら、二十二万ぐらいと思っている。二十二万などという数字が一体どうして出たか。実は、私も、大島がすりの大島を人口五万ぐらいだと思っておりましたら、今度まいりまして、人口二十万をこえると聞いて驚きました。無知ほどおそろしいものはありません。鉄のカーテンより無知のカーテンのほうがおそろしい。無知は今日もはや罪悪であるとすら言えると思うのであります。私もそのような一人でありまして、沖繩はひめゆりの塔でつぶれて人口は二十万前後であると思っておったのです。ところが、いまは沖繩の人口は九十六万、大島の人口は、沖繩ではありませんけれども、二十万をこえております。この亜熱帯の島々は、台湾を永久に失った私どもとしては、一億国民の持っている大切な亜熱帯、大切な温室、そしてハワイにも匹敵すべき風光明媚の地、そして、われわれの半数は南方から来た民族でありますから、寒いところも悪くはありませんけれども、暑い国に一種のあこがれを持っております。観光地としてもすばらしいものです。その上、いまでこそ日本の国際収支はどうにかやっていっておりますが、世界景況の荒波次第であって、あるときは赤字になることは当然です。一億の国民があがなう原材料の数量というものは膨大なものでありまして、やがて為替が困難を来たし、バナナやパイナップルなどはぜいたく品だから入れる必要はないではないかということになれば、これは暴騰することは必至でございます。その暴騰による為替の不足と比べますと、当面多少コストが高くても、ある程度パインでもバナナでも品種を改良して亜熱帯地方にこれを持っておることは、私は経済上有利なことであると思います。しかも、今日われわれ本土の生活水準が高くなってくるにつれまして、パイナップルはもはやぜいたく品ではありません。北のリンゴ、南のパイン、第一パインなくしてみつ豆はできません。みつ豆ができないで女性をおこらして、どうして与党の投票をかき集めることができるでありましょうか。あるいはまたバナナでもそうです。二十年前の育児法によりますと、バナナは赤ちゃんに食べさせてはならぬ、疫痢の原因であると言われました。しかし、今日は、一流の病院では、乳児の離乳期にバナナを食べさせるようにというふうに変わっております。また、整形外科にも必要な食餌です。バナナは単なるぜいたく品ではありません。また、砂糖にしてもそうです。日本は砂糖の約半分をキューバから輸入しておりまして、多いときは六十万トン、少ないときでも三十万トン輸入せねばなりません。今後ともキューバからの砂糖の輸入は大切であり、輸入しただけのものは全部、従来はドルで払っておりましたのを、今後は商品で払うことをキューバ政府は通商協定によって認める意向を明らかにいたしましたから、キューバから砂糖を買って悪い理由はありません。しかし、それだけでは為替で足らないこともあり得ると思います。
○臼井委員長 ちょっと帆足委員に申し上げます。質問中ですが、そこの紙に書いてございますように、野田総務長官はもう時間がありません。それから、三時までにあとお二人ございますから、どうぞ御同僚にお譲りいただきたいと思います。
○帆足委員 わかりました。委員長の御意見を守ります。 そういうことでありますから、沖繩産の砂糖が日本国内の総需要の二割なり二割五分になっても、——私はそれは軍事的アウタルキーから言う意味ではありません。今日の過渡期の段階における日本の為替事情をも考慮いたしますならば、多少高い砂糖であっても、輸入がストップして切符制度になって砂糖の値段がつり上げられることを思うならば、やはり沖繩産の砂糖の保護政策をとりましても、数量から言ってもたいしたことではありませんし、国民経済全体に及ぼす影響はさしたるものでないと思います。また、九州の石炭、中国の長蘆塩を使って化学工業を興すこともできます。私はいつも香港の造花を見るたびに無念残念に思います。あの造花はとてもよくできておりますけれども、趣味としてはあまり高尚なものではありません。しかし、あれに押されて日本の輸出産業の花形といわれた造花が全滅したことを思うと胸が痛みますが、私はこれは沖繩でできることだと思います。また、精密加工工業をなすだけの手の器用さを沖繩の友は持っておりますし、人的労働力も豊富にございます。これらのことを勘案いたしまして、お役所の単なる五カ年計画でなくて、最近の最も進歩した科学技術に通達した専門家にも加わっていただき、それから、亜熱帯の農業生産の改良について卓抜した意見を持っておられる方にも参加していただいて、さらに今後沖繩の復興計画に努力していただきたい。特に、沖繩産業復興助成法には、できれば奄美大島から喜界島、種子島まで入れて、この亜熱帯の島々についてわれわれの十分な配慮を注いでいただきたい。今日の日本の進歩した農薬、トラクター、かんがいの技術、栽培の技術等をもってしまするならば、必ず成功して、経済的にまかない得るものと私は確信いたすのでございます。この次の機会にはぜひとも野田長官は西表まで足をお伸ばしくださいまして、そのことを確かめていただけば一そうしあわせでございます。また、台風があります。洪水はありませんが、干ばつがございます。干ばつに対する対策も、地下水はまだ豊富でございますから、方針はなり立つと思います。台風に対しましては、フクギというすばらしい樹木がございます。防風林をつくることによっても、地勢の活用によってもある程度までこれを緩和することもできるでありましょう。戦争もしなかった南朝鮮の朴政権に二千億円もぱくられる約束をしたり、サリットはこの前なくなりましたけれども、そのサリットさんに百億円も追加賠償したり、そういうようなことはもう少し配慮くださいまして、金額を小さくしていただいて、一億の国民が人口百万の沖繩を救えないはずはないのでありますから、アメリカの援助なくても沖繩が自立し得るように配慮することは、私は日本国民の義務であると思うのです。なぜ沖繩を本土決戦のいけにえにしたか、ひめゆりの塔、健児の塔を思うたびに、私は胸が痛みます。私どもは、国内でともに一億国民戦争で苦しみましたけれども、本土決戦の苦しさというものは味わっていないのです。敵が銃剣を持って迫ってきたときのその恐怖と苦しみというものはどういうものであったか。そして、日本に疎開しようとした子供たちの何百人が沈没して死んでしまった親たちの心持ち、健児の塔、ひめゆりの塔でなくなった青年たちの心持ちを思うならば、九十六万の沖繩の人たちの産業助成法に朴政権に対するよりももっと大きな愛情を注ぐことができないはずはないのではないか。決して池田さんも悪い人柄でないのに、そこまで深くお考えにならないのは、やはり事情を深く御存じにならないこと、忙しくてゆっくり考える暇がないためだと思います。芭蕉は、朝に思い夕に思うべしと言いましたけれども、お互いに忙しくて、議員や大臣などという者は廊下とんびのように走り回ってゆっくり考える暇がない、そこであちらこちらに手落ちができるのではないかと平素思っております。 したがいまして、与党におきましても、沖繩問題をもう少し深く考えていただきますならば、与党、野党共通の広場があるものと確信いたすのでございます。先ほどの原爆症患者の問題にいたしましても、両大臣からあのような懇切な御回答をいただきました。語り合えばある程度まではともに解決し得る問題があると思うのでございます。そういう点で、野田長官に、沖繩に対する経済協力についての最近のアメリカとの話し合いについて、経過と問題点のあらましを承りまして、詳細は、外務委員はこれに非常に関心を持っておりますから、文書で、やり取りの文書、交換文献等を参考資料として別な機会にいただきたいと思うのでございます。
○野田政府委員 ただいま帆足さんから、沖繩に対するいろいろの知識のもとに御示唆をいただきまして、私のほうではむしろ感謝いたします。それだけの御熱意を持っていただける方があることは、将来の沖繩の政策に対して非常に力強い感じをいたすのであります。政府といたしまして、沖繩の経済の発展ということは、これは当然、先ほどお話のありましたとおり、わが領土であるし、わが日本の沖繩住民でありますから、内地におけるいろいろな経済政策と同様に、積極的に考えておりますことはもとよりでございます。したがって、日本の沖繩への経済援助額も毎年増加いたしております。また、ただいまお話のありましたとおり、沖繩は、その地理的条件、気候、風土等によりまして、また、お話の亜熱帯地域というようなことを考えまして、これらに最も適応した産業政策を考えねばならぬことはもとよりであります。特に、沖繩の地理的条件からいたしまして、主として農業、漁業を今日主体として考えておりますが、農業におきましては、先ほどお示しになりましたとおり、砂糖、パインあるいは畜産等いろいろな産業の助長、また、お話の八重山その他各島嶼の森林開発とか、幾多の問題がございます。特に、現在沖繩農業の主体となっております砂糖、パイン等に対しましては、さらに積極的に考えておりまして、数字から申しますと、大体沖繩の砂糖も、三十八年度と三十九年度と比べますと、年間で三三%の増産をいたしております。先ほどキューバの砂糖のお話がございましたが、われわれも帆足さんと同様でございまして、沖繩住民がつくる砂糖をまず内地でもって消費するのはあたりまえのことでありまして、そういうことで、特恵、つまり保護政策をとっております。関税も免除しております。また、全部政府が買い上げる。これは帆足さんなんかにも御協賛いただいておりまして、その点につきましては、お示しのとおり、できるだけの保護政策をとっております。また、農業関係につきましても、三十七年から九年までにわたりまして、琉球の農林関係の金融公庫に大体七億三、四千万円の金を日本から流入いたしております。こういうことでございますから、いまお話のありましたとおり、私どももやはり帆足さんと同じ気持ちで沖繩の産業開発に当たりたい。 また、いまお話のありました西表その他のことでございますが、これはアメリカの政府で調査団を数年入れております。日本の調査団もしばしば現地にまいりまして調査いたしております。まだその結論は出ませんが、これは、いま御心配のとおり、やはりほんとうの専門家でなければいかぬというので、専門家に調査を依頼して数年続けておりますが、まだ結論は出ておりません。 いずれにいたしましても、私どもは、特に沖繩の今後の経済政策の上におきまして、私が先般沖繩を訪問しましたときの最後の帰りしなに、沖繩の各方面の方にお会いしましたとき特に強く要望してまいりましたが、現在は遺憾ながらアメリカの施政権下にありまして、相当の範囲基地経済によって沖繩がまかなわれていることは御存じのとおりであります。しかしながら、いま申しますとおり、日本政府といたしましてもできるだけの経済援助をいたしております。しかし、帰するところは、沖繩が当然日本本土に復帰して名実ともに日本国土となり、日本民族として将来の発展を期待するわけで、したがって、援助政策なり保護政策ということは今日の段階ではやむを得ないけれども、将来はやはり自立経済ということを目標にするように、私どもも考えるから沖繩住民諸君もお考え願いたいということは強く言って帰ってまいりました。御意見のとおり、私どもは今後もさらに沖繩の産業の開発に向かって積極的な態度をとりたいと思います。しかし、今日は現実にアメリカ政府の施政権下にありますので、今後これらの問題を解決しますためには、私どもアメリカ側とも交渉いたし、また、幸いに日米協議会が発足いたしておりますから、外務大臣ともいろいろ御相談いたしまして、これらの問題に政府としてもできるだけの施策を講じたい、こういう心組みでおります。
○帆足委員 時間が限られておりますから結論に入りますが、ただいまの野田長官の御答弁を伺いまして、私は今日の段階において人を得た長官であると考えまして、一そうの御努力をお願いいたす次第でありますが、まずそのために予算を必要な場合には惜しまぬことを、将来は自立するけれども、過渡期における保護政策は必要であることを明確に認識すること、また、贖罪ということばは同胞に対して水くさいけれども、贖罪という思いもわれわれ本土の国民にあることをお考え置き願いたい。それから、経済協力をいたしましても、施政権の問題にすぐタッチせざるを得ないわけです。野田長官が政治的に問題を持っていくことをできるだけ避けて円滑にやろうと思っても、なおかつ、そういう金は日本から要らないとか、そういう産業は要らないとか、すぐ向こうは言い出しますから、電力料金問題一つでも、ことごとくに施政権の問題とまたタッチします。したがいまして、外務大臣の御協力なくしては円滑にいかないと思います。せっかく御両所の御協力をお願いする次第であります。 最後に、外務大臣に対しまして、琉球立法院からのあの決議文は外務大臣並びに両院議長のもとに送達されましたでしょうか、ちょっとそのことを伺っておきます。
○大平国務大臣 私あてのものはございませんけれども、総理大臣あてのものは承知しております。
○帆足委員 総理大臣並びに両院議長あてにまいっておりますときには、できますならば外務省御当局のごあっせんによりまして全議員にこれを配っていただきたいということを、私は一人の議員として御要望いたしたいと思います。ましてや、筋違いの国から出た要望書ではなくして、われわれの同胞の琉球立法院の満場一致の決議としてまいったものでありますから、これを全議員に配付することは、これは議長の任務であり、また総理の任務であろうと思います。もちろんこれを外務大臣に強く申し上げますことは筋違いでありますけれども、御記憶にとどめていただきたい。 それから、アメリカへの折衝をなさったと言われますが、何か蚊の鳴くような声でときどきちょっと沖繩のことも困っているというようなことも申し上げたのではないかと思われる節がある。と申し上げますのはたいへん失礼でありますけれども、「希有なる沖繩の戦略価値」という速記録を見ますと、日本趣府から正式に抗議が出た、施政権の返還の話が出たことばないという答弁がここに出ております。しかし、あれはいまから二年前のことでございますから、その後事あるごとに筋を立てて折衝されておられるか、同時に、今後とも強く論理を立てて折衝なさるお気持ちがあるか、このことを確かめておきたいと思います。
○大平国務大臣 ただいままでも、政府首脳の対米折衝に際しましては、沖繩の施政権返還の問題はアメリカ側にそのつど注意を喚起いたしております。今後ももとよりその方針に変わりはございません。ただ、最近設けられました協議委員会の取り扱う問題にならなかったわけでございますが、私はむしろそのほうがよかったと思っております。ああいう一つの機関で議論するというよりも、もっと高度の性質のものであろうと思うのでございまして、そういう感覚で高度の政治問題として今後精力的に処理してまいりたいと思います。
○帆足委員 折衝の技術といたしましては、いまの外務大臣のお考えのほども私は一方法であろうと思います。そういうようなときには、沖繩の立法院の諸君にも、また沖繩経済協力に関心を持っておられる琉球代表の諸君にもよく知っていただいて、そうして高度の見地から強く折衝していただきたいと思います。 最後に、このワシントン・ポストの記事でありますが、ワシントン・ポストにこれほど書いてある。最初に報道を送りました記者がスタインバーグさんですが、ワシントン・ポストはこれを社説に取り上げております。朝日でも読売でも、同じく私の敬愛する毎日でも、それぞれこれほどの紙面とこれほどの関心を払われていないことを残念に思います。ましてや、条約局長の御答弁のごときは、まことに恥ずかしいことであると思っております。ワシントン・ポストの社説の一節の中に私たちの心を打つものがありますが、こういうことを言っております。ボストンの軍事占領に並行して独立国家としてその建国に出発したアメリカ人は、沖繩の住民がわれわれが押しつけた軍政に対して反感を持っておるということをあたたかく理解すべきであろう、この軍政は彼らから自治権を奪い、彼らと日本との歴史的関係を切り離してしまった、沖繩の人々はひしひしと身に感ずる苦情を持っており、その苦情はいかなる慈悲深い占領行政をもってしても軽減できないような性質のものである、習慣や道徳を異にし、アメリカがいかにはでに見せかけようとしても、そのはでな軍隊の存在することが沖繩にとってはしゃくの種であり、日常の侮辱に当たるであろう、そのような侮辱感は十分に考慮に入れられていないが、それを減少させることをアメリカが政策の対象とするならば多少緩和できるはずである、もしアメリカの民間人と軍人たちが沖繩の植民地統治者の目で今後とも見下すようなことを継続するならば、いつかは沖繩にもパナマにおけると同じ問題が起こるかもしれない、これほどまで極言して警告しておるのでございます。私は、この記事を見まして、われわれ本土九千万の国民はまだ三十八度線あるを知って二十七度線のあるを知らないという感を深めました。あるわれわれの友は、沖繩では日本語の新聞ができていますかと聞いたそうです。沖繩ではドルが使われておることも知らない人もある。墓参りに行くのにパスポートが要る。 さらに、最後に一言注意を促しておきたいことは、国連憲章の植民地解放宣言には、その国の住民の自治権を育成すべきであり、また、その国が分断されておるようなときに祖国復帰を叫ぶなど自治権の回復と自由のために努力する人々に対して圧迫干渉を絶対に加えてはならないということを第四項によって規定しております。祖国復帰のために努力したから、自治権の回復のために努力したからというので、かっては、そういう努力をしたインド人を不逞インド人と言い、そういう朝鮮人を不逞鮮人と言いました。同じように、そういう平和の友を不逞日本人として取り扱うことは、国際連合満場一致の——九カ国棄権はございましたが、八十数カ国の賛成による植民地解放宣言第四項のかたく禁じておるところでございます。したがいまして、沖繩復帰の記念祭のありましたようなときに、沖繩に入り、沖繩から日本の本土へ来る人に対して政治的理由をもってパスポートを渡さないということは、国連憲章違反でございます。そういうことがいまときどき起こっておりますが、そういうことが行なわれたときは、どうか条約局長、そういうときにこそ元気を出して、これは植民地解放宣言第四項の違反であると言って、アメリカ当局の中の無知なるやからに警告を発していただきたい。それのみか、国連憲章ではこう書いてある。そういうような住民の自治権を得ようとする努力、その良心的努力を保護し育成する方向に国連加盟国が心を向けねばならないと書いてある。彼がアブラハム・リンカーンの弟子でありジェファーソンを尊敬し過ぎたということをもってパスポートがもらえないというようなばからしいことがないように、どうか外務省当局においても特別の御注意をしていただいて、総理府の連絡事務局にもよく連絡をしていただきたい。また、そういう行為が国際法違反であるのに、条約局長は何してござる。さっきのような珍妙なお答えをなさるよりも、そういうことをよく外務大臣、総理府長官等にずっと教えてあげて補弼の任を全うすることが必要であろうと思うのでございます。私は、沖繩の国際デーのときには、国際連合植民地解放宣言第四項、それを英文で書いて記章にして胸に張っておいたほうがよかろうと思う。というのは、その条文の存在することを知らないアメリカのオフィサーの方もたくさんおられるわけです。無知ほどおそろしいものはないと申したのはそのことの意味でございます。 どうか、そのことをお含みをいただきまして、重要な時期でありますから、緩急よろしく御折衝くださって、沖繩県民の悲願を達成することに与野党一致協力してお骨折りのほどをお願いいたしまして、質問にかえる次第であります。
○臼井委員長 松井誠君。
○松井(誠)委員 私は現在の時点における日韓の間の重要な問題の二、三についてお尋ねをいたしたいと思います。 去る四月の六日に日韓交渉が中断をされましてから、韓国においては政治情勢だけでなく経済情勢にもいろいろ大きな変化があったわけであります。去る十日には新しく内閣ができまして、その内閣から先般日韓交渉の再開方を申し入れてきたということが新聞で伝えられております。それは閣僚クラスによる漁業会談の再開をしたいという申し入れがあった。新聞の報ずるところによりますと、それに対して赤城農林大臣は、国会の関係もあって今月一ぱいは無理だ、お会いするなら来月からだという返事をされたやに伝えられておるわけであります。そこで、当面の交渉の最高責任者である外務大臣に最初にお伺いをいたしたい。詳しいことはあとでいろいろまたお尋ねをいたしますけれども、現在における韓国の中の非常に不安定な政治的な情勢あるいは経済的な情勢の中において、現在の時点においてなおかつ実質的な交渉を進めていかれるおつもりであるかどうか。われわれは、御承知のように、日韓交渉の打ち切りを主張いたしておりますけれども、しかし、それは別にしまして、少なくとも政府のペースに立って考えても、いまの段階で、いきがかりもありますけれども、形式的にお会いするということそのものはあるいはやむを得ないかもしれませんが、しかし、現在の段階においては、実質的な交渉を進めるということは、私はよもやお考えになっておらないと思いますけれども、念のために最初にその点からお伺いをいたしたいと思います。
○大平国務大臣 日韓交渉自体は中断することなく続けておるわけでございます。いま松井さんが御指摘の、中断しておったのは農林大臣会談でございまして、その問題につきましては、先方から、先日、前の農林長官でございました元氏、今度無任所長官をされておりますが、その方と赤城農林大臣との会談を再開したいという申し出がございました。いまあなたからお話がありましたように、今月中は農林大臣の御都合がつかないようでございます。こちらの日本政府の都合も相談いたしまして返事をすることになっています。まだ先方には返事をいたしておりません。いずれ近く返事をいたしたいと思っております。 それから、実質的な討議をやるつもりかどうかということでございますが、私どもはいつもそういうつもりでやっておるわけでございます。ただいままでの日韓交渉の経過を見てみますと、ときに消長はございましたけれども、実質的に進展を見せたときもありますし、停滞をしたときもございますけれども、日本政府としては少しも姿勢を変えてないわけでございます。先方が交渉に熱意を持って、誠意を持って臨まれる限り、当方といたしましては、終始誠意を持ってこれに当たるという態度は変えておりませんし、今後も変えるつもりは毛頭ありません。
○松井(誠)委員 そうしますと、これから漁業会談再開についての返事をされる。お伺いしたいのは、それでは一体どういう立場からそういう御返事をされるのか。これは、けさあたりの情報でも、韓国のほうで、もうすでに日本政府は少なくとも当面日韓交渉には熱意を失った、いろいろの日本自体の国内情勢もからんで日韓交渉に冷たくなった、そこで、日韓交渉が長期に延びるという事態に備えて、具体的な朴政権の首脳部の会談が開かれたというニュースさえ伝わっておるわけです。われわれも、常識的に考えて、大臣として儀礼的なそういう御答弁の趣旨はわからぬではありませんけれども、しかし、もうすでに向こうのほうで、日韓交渉は当分脈なしという、そういうたてまえをとっておることがはっきりしておる以上、日本政府としても、儀礼的にお会いするのは別ですけれども、しかし、ここ当分、この激動する政治情勢や経済情勢がどう落ちつくかというそういう見きわめなしに、実質的な交渉というものはされるべきではもちろんないと思う。そこで、御返事をされるとすれば一体どういう御返事をされるのかというのがお尋ねしたい第一点。 それから、もう一つ。われわれは日韓交渉についてもうすでに二度にわたってしょっぱい口にあってきておるわけです。交渉する相手がどっか国外に亡命してしまう、あるいは交渉する相手が急遽国から呼び帰されるという、非常にしょっぱい目にあっている。それは、やはり、韓国の中のいろいろな情勢について日本政府が十分な分析というものを持たなかったのではないか。相手と交渉するからには、もちろんその政治情勢なり経済情勢なりというものを十分に検討しなければならぬ。それをしない、いわゆるめくら外交というものの弊害をわれわれはいやというほどいま思い知らされておるわけです。したがって、これからかりにもし実質的な交渉をそれにもかかわらずされるということであるならば、当然なことですけれども、韓国の中における政治情勢なり経済情勢なりについて十分な検討をし、情報を集め、分析をされておると思うのですが、その点もあわせて、詳しいことはだんだんまたお尋ねいたしますが、お伺いをいたしたいと思います。
○大平国務大臣 どういう返事をするかということでございますが、これは、農林大臣の都合を聞きまして、なるべく早く再開の返事をいたしたいと思っております。 それから、ただいまの政治情勢と交渉との関連の問題でございますが、松井さんの言われるのは、政治が安定し経済が安定して、これで心配ないから交渉を始めるという御趣旨のように拝聴いたしましたが、政治情勢と経済情勢というのは、座して安定・繁栄があり得るわけじゃなくて、日々の努力、鋭意がそういう状態をもたらすわけでございまして、ひとつ安定したから始めようかというような、そういうものでは私はないと思うのでございます。いま御指摘のように、いままでの日韓交渉でも、先方の政治情勢はいろいろの局面を経験なすったわけでございますが、それにもかかわらず日韓交渉は一貫して続けてまいったわけでございます。私は、その当面の局面で、こちらの交渉に対応する姿勢を一々変えるなんということをやっておったんでは、これは、対韓外交だけでなく、どこの外交もできないと思います。私は、最初に申し上げたように、やはり一貫した姿勢で臨むということを変えるつもりは毛頭ありません。 それから、ただいまの政治情勢でございますが、軍政から民政に移管する、このこと自体につきましても、本委員会におきましては相当いろいろな議論が行なわれたことも御案内のとおりでございまするし、韓国の政情の将来をトする議論というのはたくさんあったわけでございます。しかし、私どもは予言者じゃございませんから、これはこうなるんだなんというようなことを軽率には権威のある国会では言えないわけでございまして、ただ、民政に移っていく段階におきまして、また、民主政治というものが韓国民の間にだんだんと基盤を確立していく段階におきましては、いろいろなことがあると思います。ただ、そういう試練を経てだんだん基盤が確立してくることを念願しておるわけでございまして、ただいまそういうことに対して政府も国民も非常に苦悶し、試練の中に努力をいたしておることに対して、隣国として十分の理解と同情を惜しんではいかぬと考えております。 経済の問題につきましては、なるほど、いまの韓国の経済は非常に困難な状況にあるということはまぎれもない事実であろうと思うのでございます。この議論もずいぶん今国会でも行なわれたわけでございまするが、ただ、春窮の段階もどうにか克服されてきたということも、また評価しなければならぬと思うのでございます。これはたびたび申し上げることでございますが、韓国政府自体が経済政策ということに施策の重点を置いて御努力中でございますから、いまその成功をこい願っておるということでございます。
○松井(誠)委員 私は、普通の国との外交ではなく、特殊な、つまり南北に分断されておる、その一方だけを相手にする交渉であるだけに、通常の場合よりも政治的な安定性というものはやはり欠くべからざる要件だと思う。しかし、そのことはすでに何度も議論されておりますので、いま申し上げません。しかし、相手の姿勢がどうであれ、とにかくこちらのほうでは基本方針どおり猪突猛進というのは、私は外交ではないと思う。やはり、相手の具体的な情勢の分析を行なって、それに基づいて交渉をする。そうでなければ、めくら外交といういままでのそしりからどうしても脱却できないんじゃないか。少なくとも、いま大臣がいろいろ政治情勢や経済情勢について言われましたけれども、相手の国の政治情勢なり経済情勢なりについて十分な関心を持って、できるだけの分析をされておるだろうと思いますので、最初に現在の韓国の政治情勢についてお尋ねをいたしたいと思うのです。 今度誕生しました新しい内閣、これは、私は率直に言って、やはり、いままでの内閣、崔内閣よりももっと不安定な内閣だと思うのです。そういう評価については、大臣の表現によると、権威のある国会で予言をするということはできないというわけで、私は無理な予言を求めようとは思いません。しかし、少なくともこの内閣の運命というものをトするに足るような具体的な事実については、あるかないか、存しておるかいないかということの御答弁はできるだろうと思います。そういうことをお尋ねいたしたいと思います。 もう十分御承知だと思いますけれども、今度の内閣ができるときに、いわゆる朴・金ライン、PKラインというその中で、すでに内閣改造をめぐっての意見の相違がある。あるいはまた、そういう与党の中でも反主流派と主流派との争いというものがあって、この前の国会で二度にわたってその反主流の反乱によって野党の決議案が多数を制するという事態があった。これは御承知だろうと思う。そういう与党の中における不安定性というものが出てきておる。それから、さらに、今度の内閣改造、総辞職、新内閣の誕生をめぐって、野党というものが、さらに野党色というものを強めてきておる。国会の中における朴・金ラインというものは、朴・金ライン自体が一度ひびが入ったという経過があるだけでなしに、与党の中、野党との対立関係そのものがやはり不安定ではないか。そういう国会の中における不安定性というものは、国民の中における朴・金ラインに対する評価というものと密接につながっておるのではないか。今度の内閣ができた原因というものは、もとをたどれば、やはり学生の三月二十四日から始まったあのデモというものに端を発しておる。そうして、そのデモは、あの当時私たちは申し上げましたけれども、単に日韓交渉そのものを切り離してそれに反対するというだけでなく、反政府的スローガンさえ出ておる。それどころではなくて、アメリカに対する非難のスローガンさえも出ておる。つまり、現在の朴・金ラインそのものに対する批判がああいうデモの形になって出てきておる。そして、そういう形の動きは、いまこそ小康を保っておりますけれども、実はきょう、いままでのように日韓会談反対というスローガンではなくて、つまり内政問題を中心にした食糧よこせデモというものを大学生が計画をしておるということが伝えられておるわけです。つまり、これはもう反政府的な明らかなデモになっておる。それからまた、韓国の中の注目すべき動きとして、軍隊の動向というものがあると思う。韓国軍がこの朴・金ラインに対してどういうかまえをとっているか。これは、大統領選挙の際における韓国軍の態度、朴候補の得票率そのものから公然と言われておる。そして、そういう韓国軍の動きがだんだん不穏化をして、最近は、聞くところによりますと、一個小隊くらいの軍隊の移動でさえもずいぶん厳重になったという話を聞いておる。そういうことは大臣のお耳に入っておるかどうかはわかりませんけれども、しかし、その点を除いて、私がいま申し上げたようなことは、これはもう大臣の耳にもおそらく入り、目にもとまっておると思う。それをどう評価をするかという評価の問題についてはあえてお伺いをいたしません。しかし、そういう事態がいま韓国の中にあるということは御存じだろうと思います。いかがでありますか。
○大平国務大臣 新内閣が、いま御指摘のように、与党色が強くなった、党員閣僚が多くなったということは、与党と内閣との関係が従来より密接になったと客観的に言えると思います。これに対して丁内閣はまだ船出したばかりでございますので、これが韓国の内政・外交にどういう能力を示すか、——いま御指摘のような事実につきましては詳しくは存じませんが、反政府的な運動は日本のほうが兄貴でございまして、反政府、反米運動なんというのは日本にも盛んにあるわけでございます。民主政体におきましてそういうことがあってもちっともふしぎはないわけでございます。そういう事情に対してどのような政治主体としての能力を示すかというのは、これからの課題であろうと思うのでありまして、それを見てみないと、私からは何とも言えないと思います。
○松井(誠)委員 私は、大臣の立場上、そういう評価について御答弁を求めようとは思いません。しかし、これは明らかにそういう不安定性を示す具体的な事実というものが国会の中にあるいは国民の中に出てきておるということ、このことをやはりはっきりと頭の中に入れておいていただきたいと思うのです。そして、こういう内閣が、私が一番気になるのは、そういう国内的な自分の脆弱な立場というものを強化するために、非常にファッショ的な弾圧政策というものを取りだしてきたこと、もう一つは、国内的なゼスチュアとしてでしょうけれども、日本に対して高姿勢のゼスチュアを示し始めたのではないか。その一つの事例は、もう御存じかもしれませんが、京郷新聞という新聞の編集局長以下四名が新聞記事の内容のゆえをもって逮捕された。これは新しい内閣ができて間もなくの十三日です。このことと、それから、先般問題になりましたけれども、日本の海上保安庁の巡視船の「ちくご」が公船であるにかかわらず拿捕のような形で連れ去られたということ。こういうことは、やはりいままでの内閣とは少し行き方が変わっておるのじゃないか。力で押えようという力の内閣的な性格がここににじみ出ておるのではないか。この拿捕の問題については、運輸委員会で久保委員のほうから質問があった由でありますし、時間の関係がありますから私はお尋ねいたしませんけれども、とにかく、国際法無視がさらにひどくなる、あるいはまた言論を弾圧をするという、少なくともしばらくはなかったことが新しく起きてきておる。そして、私は、この新聞記事の弾圧の内容を見るときに、さらに重要な意味を持っておると思うのです。この内容は大臣御存じかどうか知りませんけれども、問題は、新しい内閣に望むという国民の声を収録した投書の中の一つで、ある自由労働者からの投書がある。それは、北朝鮮のほうでことし三月二十六日に最高人民会議があった。そこで、米が足りなければ毎年二百万石を差し上げましょう、あるいは木材は何がし、電力は何がし贈与いたしましょうということをきめた。そして、失業者が多いならば北朝鮮のほうへどうぞおいでください、そういう趣旨のこともきめた。そういうことをとらえて、ひとつ北朝鮮からもらおうではないか、われわれ仕事がないのだから北朝鮮へ行こうではないかという趣旨の投書があった。その投書を載せるようになったこと、その新聞社がそれほど勇気を持つようになったということ自体も問題ですけれども、しかし、自由労働者がそういう意見を発表するようになったこと、これはもう言うまでもなく統一への悲願を公然とあらわしておる。そして、その中の結びの文句というのはこういうことなんです。いま一番必要なのは、日韓会談ではない、南北会談だ、そして、日本から品物や金をもらうよりも、同じ民族である北からもらおうじゃないかという、非常に血の出るような叫びが載っておる。これは、こういうものを新聞に堂々と載せたということ自体が、私はいまの政権の非常に危険な不安定性をあらわしておると思うのです。そういうことをこれからあと交渉をされるときに御配慮をいただきたいと思うのです。 時間がありませんから、政治の問題はそれぐらいにしまして、いま韓国が当面しておる経済情勢についてお伺いをいたしたいと思います。 今月の三日に、御承知のように、対米ドルレート約二分の一の切り下げが行なわれたわけであります。この切り下げの持っておる意味、これがこれからあと韓国の経済に及ぼす影響についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
○中山政府委員 ウォンが対米レート百三十が二百五十五に切り下げられました。非常に大幅なディヴァリュエーションが行なわれたわけであります。このときの理由等は、朴大統領みずからの御発言を引用するのが一番早いと思います。二つ理由をあげられまして、一つは、ウォンの実勢が最近二百五十から二百六十の間を行き来しておったわけでありますから、実勢レートに沿うようにすることが第一点。第二点は、何と申しましても、ディヴァリュエーションをいたしますと、輸出はやさしくなり、輸入はむずかしくなるわけで、朴大統領の声明によれば、国民のむだづかいを減らすというところに意図がある、こういうふうに伝えられております。
○松井(誠)委員 そのあとそれが及ぼす具体的な影響についての御答弁がございませんけれども、いまの朴大統領の声明の中におそらくもう一つ、単に実勢に合わせるということだけでなく、現在公定レートと実勢レートに開きがあって、その開きを利用していろいろの不正腐敗が行なわれている、それをなくするということも一つの理由である。あるいは輸入を減らし輸出をふやすという観点もありましたけれども、それが国内のそういう不平の一つの根源になった。これは、朴政権がいろいろ資金を捻出する一つの場所であると見られた公定レートと実勢レートとの開きをなくするということも一つの理由にあげておったと思う。これは、今後の経済情勢に対する影響という点から言えば欠くべからざる原因ではないにしても、現在の韓国の政界というものを考える上に、やはり重要な意味があると思う。そういうことを理由にあげておったということは間違いないですね。
○中山政府委員 先ほど申し上げましたような公式の見解からウォンの切り下げが行なわれたと思うのです。そのもたらす効果につきましては、一応輸出の促進ということが第一であり、第二は輸入の抑制ということが問題になると思います。ことに、海産物であるとか絹糸布とか鉱産物のように、韓国の国内で産出されるものにつきましては、原料の問題もございませんので、それだけ輸出がやさしくなるということは事実であると思います。ただ、輸入の問題につきましては、韓国としては原材料について輸入の依存度がかなり高いものですから、しかも、大体もともと為替のきびしい事情もありまして、原材料その他必需品の輸入に限られているものですから、どの程度抑制できるかということは問題だと思います。しかし、一応通貨を安定して、輸出の増進に向かうという態勢をとったものと考えております。
○松井(誠)委員 かまえとしてはそうかもしれませんが、それがそういう所期の目的を達するかどうかということになると、われわれは非常に疑問があるのではないか。いま言われましたように、今度の切り下げは実質的な切り下げでなく実勢に合わせたということになると、輸出の面で必ずしも大きな期待はできない。そればかりでなくて、このことによってかえって国内の物価が上がる、国内の物価騰貴に拍車をかけるということが起きるということが言われておる。いままでは援助資金による輸入というのは公定レートで輸入をしておる。ところが、今度は、その公定レートというのがなくなって、為替が自由化されたらしくて、そういう援助資金によるものも、いわゆる実勢レートということになる。それが公定レートとどのくらいの開きがあるか、当分わかりませんけれども、とにかく、いままでの公定レートから見ればはるかに高い値段で援助物資の輸入というものが行なわれる。しかも、その援助物資の輸入というのは、韓国の経済の中において非常に大きな比重を占めておる。そこからまず物価の騰貴があるんじゃないか、そういう見通しをされておるのですけれども、それはそのように考えてよろしゅうございますか。
○中山政府委員 われわれといたしましては、一応為替の引き下げというものがもたらすよき効果というものを期待しているわけでございます。ただ、もちろん為替相場の切り下げだけで韓国の経済が非常によくなるというものではないので、やはり全体的な立ち直りというものが必要である。それにはやはり国内の生産が増加していくこと。ことに、農業に依存している国ですから、非常に天候等にも支配されますので、穀類その他が農作であるというようなこと。あるいは、今後の韓国にとって非常に大切なことは、私は輸出の努力であると思うのです。これは、御案内のように、非常に韓国は輸出と輸入がアンバランスになっているということが経済困難の最大原因でございますからして、このバランスを縮めていく。そのためには輸出市場を求めなければいかぬ。ところが、従来からいろいろな理由でまだそこまで手が回っていないのですけれども、今後こういうことを機縁に輸出を伸ばしていく。ことに、最近では若干香港等に対する軽工業品の輸出も伸びている。ようやく目鼻がつきかけたころじゃないか、こういうふうに考えております。
○松井(誠)委員 その輸出にしましても、いま言ったように、物価が上がればその輸出に対する期待も裏切られる。しかも、為替相場が安定をするだろうというのは、保有外貨がたくさんあって、それの操作によって公定レートになるべく近く実勢レートを持っていくということがなければだめだと思う。ところが、あとでお伺いしますけれども、現在の韓国の外貨保有というものが、そういう操作ができるような余裕のあるものではなくて、むしろ支払いにさえもこと欠く、破産寸前というよりも、むしろ破産してしまったと考えるほうが適当なくらいな外貨しかない。だから、そういう操作によって為替相場の安定を期するということはできない。そして物価が上がっていく。これが戦後十四回目の引き下げだそうですけれども、十五回目の引き下げが一年かそこいらしたらまた起こり得るという、そういう見通しを持っておるのが普通だと思う。そうなりますと、むしろこれは、これからあとの韓国の経済情勢を困難に持っていくという契機になるだけではないか。特に私がお伺いをしたいのですけれども、この背後にアメリカの圧力があったといわれる。アメリカは、援助ドルを入れるについて、公定レートの切り下げが前提条件だということを言ったという。切り下げることによって、同じドルでありながら韓国の価格から言えば倍になるわけですから、つまり、援助資金を減らすためには、それは確かに一つの方法であったに違いない。そのことは一体何を意味するかというと、韓国の経済に対するアメリカの支配力がやはり強まるということの意味しかない。それが韓国の自主性を失わせる。その自主性を回復するためのレートの切り下げだといううたい文句があるけれども、実はしかし逆な方向をたどらざるを得ないのじゃないか。私は、やはりそういう一般の評価が正しいのじゃないかと思う。 そこで、現在の韓国の国際収支あるいは外貨の保有というものについてちょっとお尋ねをいたしたいと思いますけれども、先般委員会の資料としていただきました韓国の国際収支の表があるのですが、それは一九六三年までの表であって、一九六三年末の国際収支あるいは外貨の保有は載っていないのですが、この六三年末の外貨保有量はどれくらいになっておるのかまずそのことからお尋ねをいたしたいと思います。
○中山政府委員 お答え申し上げます。 一九六三年末、つまり昨年末の外貨保有高は、大体、韓国中央銀行の統計によりますと、一億三千万ドルになっております。
○松井(誠)委員 十二月末ですね。
○中山政府委員 そうです。
○松井(誠)委員 一億三千万ドルという数字があったり、一億一千五百万ドルという数字があったり、いつも二様の数字があるのです。一説によると、大体韓国銀行の統計そのものが当てにならぬという説さえありますから、これを基礎にして議論するのは、あるいはおかしいかもしれませんけれども、しかし、よるべきものはこれしかないわけですが、一億一千五百万ドルではありませんか。
○中山政府委員 この韓国銀行調査月報をもとにしてお答えいたしておるわけですが、一九六三年の末の外貨準備は一億三千百五十万ドルということになっております。 ちなみに、今年になりまして、四月末の残高は一億三千万ドルでございます。
○松井(誠)委員 ここに統一朝鮮新聞という新聞があります。これは日本における朝鮮人の団体が出しておる新聞ですけれども、それの一月二十五日号に、昨年の十一月十四日現在、韓国銀行の外貨の資産・債務の状態を載せておる。それによりますと、昨年十二月十四日現在で、資産が一億一千四百五十万ドル、負債が一億八千百七十万ドル、そのほかにいま手続中の支払い保証の分を含めると、結論を申し上げますと、負債が資産の二倍にもなるという状況です。これは単に新聞社の情報ではなくて、韓国の金融通貨運営委員会というのが韓国銀行のそういう悪化した外貨の事情というものについて心配をして調査して、そうして建議をしたそのニュースなんです。このことは外務省のほうでも御存じだろうと思いますけれども、いかがですか。
○中山政府委員 私、その新聞の記事を読みました。そして検討もいたしました。
○松井(誠)委員 私も、あらかじめこれをお調べ願いたいということをお願いをしておいた。それによりますと、これはまさに、韓国銀行自身の発表ではありませんけれども、少なくとも韓国銀行自体が作成した数字であることはほぼ間違いない。この負債というのはどの程度の負債が入るのか、これは必ずしもはっきりしませんけれども、しかし、もう保有外貨がこれだけあるといってそれで安心できるような状態ではない。私は、すでに破産をしてしまった経済状態ではないかと思う。そういう状態である。 いまお伺いしますと、大臣の時間がないそうでございますので、大臣にお尋ねをしたいと思うのですが、政治情勢なり経済情勢なり、相手がどうであろうと、私は私の道を行くんだというその考え方が、やはり正しいであろうかどうだろうか。われわれはかってあの南ベトナムの泥の中へわれわれの税金をつぎ込んだという苦い経験を持っておる。もし今度の有償・無償合計五億ドルというものがほんとうに法律上払わなければならない義務に基づいて払うものであれば、その金がどう使われようと、われわれは関係がないと言えるかもしれない。しかし、そうじゃなくて、政府の説明だと、独立の祝い金、随伴的な効果として請求権はなくなるけれども、しかし独立の祝い金だと言う。だとすれば、その独立の祝い金が有効に使われるかあるいは泥の中に捨てるということになるのかそういう判断はぜひ必要だと思うのです。こういう点を考えると、いまもう少し詳しくお伺いをしなければなりませんけれども、すでに破局に面しておる韓国の経済事情に対して、その経済状態がどうであろうとお祝いをやりましょうという考え方が一体いいかどうか、そういう点をひとつお答えいただきたいと思います。
○石野委員 関連。
○臼井委員長 石野君。
○石野委員 いまの松井委員の質問に関連して、けさの新聞を見ますと、日韓会談に対する政府内の意見として、特に外務省の意見として、どうも会談が早期にまとまりそうもないから、経済協力の実施を妥結前にやろうじゃないかという意見が外務省に強く出ておるようであります。記事は非常にこまかくそういうことを書いております。大臣は非常に急いでおられるそうですから、私はいまの松井君の質問に関連して質問いたします。けさ各社みなこの記事を出しております。とにかく、懸案の一括解決、国交正常化、そして経済協力というこれまでの基本方針にこだわらず、国交正常化前でも民間ベースによる経済協力を拡大すべきだという考え方を、いま韓国に対して外務省はお持ちになっておるかどうか、この点ひとつ明確にお答えいただきたいと思います。
○大平国務大臣 松井さんのほうの御質問に対しまして、日本だけはあぶないことをせずに、きれいなところで安楽に暮らしたいというお気持ちはわかりますが、お隣の国の経済が悪い、外貨の締めを見たところどうだという御批判、このことにつきましては、私が申し上げておるように、韓国の政府が第一責任を持って善処しておるわけでございまして、日本のほうで悪いじゃないか悪いじゃないかなんと言う必要は私はないと思うんです。やはり、あたたかくこれを見ておいてあげるほうが韓国の経済の安定に役立つわけなんで、ここでいろいろ論議してみても、私はたいして意味がないのじゃないかと思うのでございます。しかし、論議は論議としてございますが、私といたしましては、私が申し上げました趣旨は、向こうの経済が安定したら、そして政治が安定したらひとつ正常化をやろうなんという、そういう観念論ではないということを言っているのです。われわれのほうはいつもちゃんとしたオールウェイズ・レディーの姿勢におりますということです。しかし、向こうの局面、それは相手国の事情がいろいろ変わるから、その変に応じてそれぞれそのときに処置してまいることは当然のことなんであって、われわれは、あなた方がよくわれわれに御鞭撻いただく、自主外交の姿勢は変えないでいこう、こういうことなんでございます。 それから、石野さんの御質問でございますが、これはどういうところからどういうニュースが出たのか存じませんが、きわめてあたりまえのことなんでして、つまり、民間の商業ベースで商売を行なっておるわけでございます。韓国でなくて、未承認の国、中共ともやっておるわけでございますね。そういうところと商業ベースで商売をやっておるわけでございまして、そういったことで韓国はやらないのだなんて言う必要はちっともないわけなんで、(「そうじゃない、違う違う」と呼ぶ者あり)わざわざそういうことをだれが言うたのか存じませんが、言うたほうも頭が悪いが、載せたほうもどうかと思うのでございます。これはきわめてあたりまえのことなんで、承認していようがいまいが、自由圏であろうと共産圏であろうと、日本の貿易政策というのは商業ベースでやるのだということでいっておるわけでございますから、政府が干渉する性質のものではないわけでございます。したがって、私に対する御質問でございますから、私の心境はそうでございますから、特に穂積さんのように色をなして言われる必要はちっともないのです。
○穗積委員 関連。
○臼井委員長 穂積君。
○穗積委員 大事な発言です。単に民間ベースで日本の商社と向こうの商社との間でいろいろな経済取引をすることと、それができてから日本政府がこれをどう処理するかということとはこれは別なんです。民間ベース民間ベースと言っていますが、あなたと金との間の話し合いで、日韓交渉に伴う請求権処理の内容の一つとして包括されているんじゃないか。日韓交渉の条件じゃないですか。第三の、民間ベースによる経済協力一億ドルというのは、これは日韓交渉の条件ですよ。したがって、日韓交渉で日本政府がその問題を出せば、あの場合民間ベースという名前になっておるけれども、政府がある程度の政治的責任を持ってやるという民間ベースの協力でしょう。日韓交渉の条件の一つじゃないですか。それを日韓交渉妥結前にやるということは、全面解決、同時解決でなければ日韓交渉の問題はやらないということと非常な食い違いを生ずるわけです。あなた、そんな中国にやっておるような民間の自発的な経済交流を政府はどう処理するかという問題と混同してごまかすということは、これは非常な欺瞞です。あれとは別です。性質が違うのです。でたらめを言っちゃ困る。
○大平国務大臣 それは言いがかりというものでございまして、つまり、きょうは天気がいい、天気がいい日は天気がいいということだけで、あなたと私が朝会いまして、きょうは天気がいいなあというあいさつをしようがしまいが、天気はいいわけなんですよ。私は日韓の間には民間ベースでいろいろ商売が将来行なわれるでしょうということを申し上げておるわけなんで、そういうあたりまえのことを言おうが言うまいが、実体は同じなんですよ。それは、日韓の正常化をしなければこんりんざいやっちゃいかぬぞなんて、そんなにかたくお考えになる必要はないので、商業ベースでやる取引は、民間がわれわれよりりこうで、ちゃんと、この商売はやっていいか悪いか、確かかどうか、よく調べておやりになるでございましょうから、そういったことを政府が制約する意図は私はない、こう申し上げているのであります。
○石野委員 天気がよかろうが悪かろうが、いやあなたがどう言おうが天気のいいものはいいのだ、こういうお話だ。そこで、今度の問題が民間ベースとしてやられるということになるならば、金・大平合意書というものの内容は、民間の経済協力一億ドル以上というものについては政府がそれを保証するという、いわゆる輸出入銀行があとに立ってあと立てをするという一つの内容があるのだから、今度出てくるこの問題については、政府は一切それに対する保証がないということをあなたが言うことと同じなんです。そういうふうに理解してよろしいのですか。
○大平国務大臣 そればまた、石野さん、あなたの議論になりますと、韓国を除く国々には、民間商業ベースで輸出をした場合に、輸出入銀行は輸出金融をやっていいが、韓国に対してはやっちゃいかぬぞという議論になりますね。そういうことは若干むちゃじゃありませんか。韓国というのは、いま日本にとって三番目のお得意なんですよ。一億四千万ドルの輸出をやっておる国なんでございまして、大事なお得意でございますから、日本の商社が物を輸出されるという場合に、現に輸出入銀行が融資をしているわけでございまして、それがいままでのところ延べ払い輸出というのはございませんが、延べ払い輸出というものが、民間でそろばんをはじいて、そしてこれはひとつ取り上げて検討してみようということになれば、それも検討するにやぶさかでないのです。共産圏もやっておるのでございますから、私は、韓国はやってはいかぬなんということ、そんな酷なことはできません。
○石野委員 共産圏もやっているんだから韓国もやってはいかぬということはないという理解はわれわれもできるが、問題は、韓国の場合については、日本はすでにこげつきの債権を四千五百万ドル持っている。その取引の中で出てきた損失といいますか、非常な大きな負担を政府はいままで肩がわりしておるわけですね。今度の日韓会談の内容、先ほど穗積委員からも話があったように、日韓会談の内容の中に、請求権解決の方法として、いわゆる民間の経済協力一億ドル以上というものは出てきておるわけです。この問題は、日本と韓国との通商交流の関係のほかに、いわゆる日韓会談の内容としての内容を持っておるわけです。ですから、この問題は、もし民間のベースで政府が全然関係なしで処置してよろしいということならば、日本の有能な新聞社はこういうふうに取り上げないと思うのです。いまここでやられておるところの、取り上げられた内容というものは、日韓会談が調印妥結しない限りにおいては、この経済協力の路線というものは進みにくいという内容を持っているから、そこで、政府の方針はこういうふうに変わってきたというところを取り上げているわけだ。だから、日韓会談の内容は、本質的には、やはり、われわれはつとにこれを主張しておるように、政府の朴政権に対するいわゆるてこ入れという内容を持っているわけです。現在の韓国の国内事情、特に経済事情というものは、いま松井委員からも言われたように、破産の状態にある。だから、その破産の状態に対していまてこ入れをしなければならぬ、これをやらなければどうにもならぬということのためにこういう措置をするということになるのです。私は大平外務大臣にお聞きしたいのだが、あなたはこの国の外務大臣として、いろいろな外交上の措置をされる、あるいは経済外交をなさる場合に、国の損になるようなことはなさらないことと思う。国の損は、あえてそれを承知の上でやるようなことはなかろうと思う。われわれは、経済の中で、いわゆる第三のお得意さんだという韓国から、いまどういう取引のあれで内容的に実質的に利益をしているのであるか。むしろわれわれから持ち出しの金で、お持たせで経済をやっているのではないですか。実質的には支払うべき外貨は何もない。そういうものをかかえ込まなければならぬ理由はどこにもないわけです。それをやるのは、一つにはアメリカの強い要請があるし、日本の業者の強い要請があるからそういうことになっている。日韓会談の内容はそういうものであるということをわれわれは常に前から主張しているわけです。そういうようなことが現実にこういうような事態になって、あなたは、こういうことを言ったやつも頭は悪いけれども書いたやつも頭が悪いと言うけれども、書いた者は頭はいいわけです。これはおかしいですよ。大平さんは眼がどこかほかを向いているんじゃないですか。日本の実情から見た場合に、非常に大事な問題です。これはどうです。ひとつこれは大平さんの明確な答弁を願いたい。
○穗積委員 大平さん、答弁する前に、関連して……。 日韓交渉の討議の中で、請求権問題の処理の方法として、いわゆる大平・金メモというものはできた。その第三項目の民間ベースによる経済協力というものを実行するとするならば、それはできないはずなんです。妥結前にはできないはずなんです。もしそれを、それとは別ワクの純粋なる民間のあれではなくて、ほんとにそれをやろうとするならば、あなたは、金との約束、あのメモを全部御破算にしてしまって、ないことにしてからでなければ第三項目の実行はできない。明確ですよ、そういうことは。それをごまかしてはいかぬですよ。
○大平国務大臣 穂積さん、どうも案外官僚的なことをおっしゃいますね。 私は、まず、石野さんのめがねは、どうも色めがねでないかと思うんですよ。つまり、われわれがこの商社をつかまえて、おまえぜひ朴政権を助けるために取引せにゃいかぬぞとか、けつひっぱたくわけじゃ決してないのです。われわれ政府はそんな力はないのでして、そうして、損した場合にそれをしりをぬぐうということは、あなた方も政府に認めないでしょう。つまり、政府も、商業ベースでやるということは、民間の危険負担においてやるということなんでして、そういうことを日韓の間でやって何が悪いですかと、私からあなたにお聞きしたいくらいなんですよ。よそさまの国にやっておって、韓国に悪いということはない。 ただ、穂積さんが言うように、あの請求権を片づける場合に一億ドル以上のなにがあるじゃないか、その中にあるんだから、これを一部取り出してやると、これはもう全体の一つだからと言われる。これは、穂積さんのおことばでございますが、あなたほどの政治家が案外官僚的な解釈をする。たとえば、われわれが昼飯を食べて、どうもおなか一ぱいしないのだが、何かまだ食べたいと思うが、ごちそうはない、しかし、窓をあけてみれば世は新緑だ、きょうは空気もよございますというあいさつをやる。われわれ、外交交渉をやりまして、三億ドル、二億ドルというものは、これは政府が責任を持って考えるものでございますが、このほかに民間ベースで日韓の間に未来永劫にわたっていろいろお取引があって、あなたのほうの経済に益することが多いじゃありませんか、まあおなか一ぱいじゃないけれどもこのあたりでどうですかという、これはあいさつというものであって、そのあいさつをしたから、この三億ドル、五億ドルもひっかけて、ちょっとそのあいさつのことばじりをつかまえて、それで私に言いがかりをつけられるのは、多少友情にあなた反するんじゃないですかね。そこはあなたもっと考えていただきたい。純然たる商業ベースのものである、そしてそれは韓国といえども例外じゃないということを申し上げておるだけの話なんで、それ以上のものじゃないのです。 実態がそうでございますから、石野さんも、こいねがわくはそういう頭でもう一ぺん考えてみてくれませんか。私が申し上げておるのが間違いであれば、私いつでもかぶとを脱ぎますよ。私、何も間違ったことをここで申し上げてその場をごまかそうなんて思いませんし、次回もその次も外務委員会に出て答弁をせなければいかぬのですから、私はいいかげんな答弁はできません。私の申し上げることは間違いはないと、私は確信してやっておるわけでございます。そこをお考え願いたいと思います。
○臼井委員長 松井君に申し上げますが、予定の時刻がだいぶ過ぎておりますから、あと一問で……。
○松井(誠)委員 いまの点なんですけれども、私はやはり大臣は間違っておると思うんですよ。きょうの新聞に伝えられておるのは、これから普通の民間経済協力、おそらく延べ払いが中心になると思うんですけれども、それをこれからやるというわけではなしに、具体的に名前が出ておるのは、プラスチックだとかセメントだとか、認可さえすればいつでも実行ができるような、そういう商談をこれから進めようということ。つまり、いままで話がきまっておったけれども認可をしなかった。なぜ認可をしなかったか。それが単純なる商業ベースならば認可をしておった。そうじゃなくて、これはまさに、五億ドルの交渉がきまって、そうなったらそれで肩がわりをしようということで経済協力が先に進んでおったけれども、しかし認可をしないで待っておった。その認可をしなかったのを、これから大いに認可をしていきましょうということで、単純な商業ベースじゃないです。商業ベースならもうすでにいままでやっておりますよ。そうじゃなくて、五億ドルのめどがいまのところはっきりしない、だから今度ひとつ経済協力という形で延べ払いを先にやろう、いずれは五億ドルで肩がわりをしようということになった。そうでしょう。そうよりほかには、あの新聞記事が間違いになるわけです。現実にプラスチック、セメントという名前をあげておる。それはもう認可を待つばかりになっておるということが書いてある。おかしいじゃないですか。 それから、もう一つ、今月十六日に向こうの大使が農林大臣のところにやってきて、そして、いままで押えられておった漁船の輸出をひとつ認めてもらいたい、それにプラス漁業資材の輸出を認めてもらいたいという申し入れをした。農林大臣は、いまは日韓交渉がこういう形になっておるから、つまり、日韓交渉の経済協力との見合いにおいて返事をしたいというふうに言って、待ってもらっておるわけです。これも単純な商業ベースじゃない。 つまり、商業ベースでないものを日韓交渉でベースに乗せようというのが経済協力じゃないですか。その経済協力を、日韓交渉の五億ドルがあとになるから、やはり経済協力のほうを先に進めようというのがきょうの新聞記事です。大臣によると頭が悪いそうですけれども、そういう考え方で言いますと、外務省も頭が悪い、新聞記者もみんな頭が悪い、頭がいいのは大臣だけということになりますけれども、そういうさか立ちした議論はない。すでにまとまっておるものをこれから認可するというのじゃないのですか。
○大平国務大臣 逆にお伺いしますが、あなたの言われるとおりとして、認可して何が悪いのですか。韓国に日韓交渉をやらない前にやったらなぜ悪いのかそれをぼくは松井さんにむしろ聞きたいのだ。私が申し上げているのは、自由圏であろうと共産圏であろうと、商業ベースでやる延べ払い輸出につきましては、可能なものはやったらいいと思うのです。どうも韓国とやっちゃいかぬなどというのが無理なんです。でございまするから、原則に返ってすなおに御判断いただきたいと思います。
○松井(誠)委員 それは何か非常に大臣らしくない三百代言的な議論だと思う。つまり、いままで商業ベースでいったのなら当然やっているわけでしょう。ところが、韓国に対する延べ払いというものは非常に少ない。少ないのは、相手の支払い能力がなく、普通の商業ベースで延べ払いができないから。しかし、それをこの際やろうということで用意だけはしておった。用意しておったけれども、日韓交渉が案に相違して長引いたから、しびれを切らしたということなんです。いままでどんどんやっておったのを、それと同じペースでこれからもやろうというのなら、われわれとしても何をか言わんやです。しかし、延べ払いというものがほとんどなかった。現在あるのは一件くらいなものでしょう。それはなぜかと言うと、向こうの支払い能力がないからです。支払い能力が、日韓交渉が急に遠のいたから出てくるということは考えられない。今度の切り下げで三千万ドルか何かアメリカがやるそうですけれども、そういうことで落ちつく情勢じゃない。日本の五億ドルを全部一年間に向こうにつぎ込むならば、これは多少の支払い能力が出てきましょう。だけど、そういうものじゃない。そうとすれば、一体、急に支払い能力が出てきたのではないのに、経済協力を大いに進めようというかまえになるというのはおかしいじゃないかということ。
○大平国務大臣 一億数千万ドルの輸出に対しまして、いままで滞りなく支払っておるわけでございます。つまり、韓国の国際収支を心配しておるのは、韓国の中央銀行であり、韓国の外務省であろうと思うのでございまして、それが支払いが滞れば自分のほうの経済が手詰まりになるのは当然でございまするから、いままでの対韓輸出は滞りなく支払われておるわけでございます。 それから、一体この延べ払い輸出があぶないかどうかという判断は、私はたびたび申し上げておるように、メーカーなり商社がするわけなんでございまして、政府がするわけじゃないのでございます。政府は、輸銀の資金の制約がある関係上、全体の自由圏、共産圏を通じまして限度があるから認許可権を持っておりますけれども、その決意をするイニシアチブは民間がやるわけなんです。そういうことを対韓関係においてやって悪いということが立証されたら、それをひとつ教えてもらいたいと思うのです。私はそういう酷なことはできません。
○臼井委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる二十二日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。 午後三時三十四分散会