外務委員会 第2号
- 発言数
- 129 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1963/12/18
会議録
○赤澤委員長 これより会議を開きます。 国際情勢に関する件について調査を進めます。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。黒田寿男君。
○黒田委員 きょうは私は外務大臣と法務大臣に御出席をお願いしたのですが、法務大臣は他の委員会に御出席だそうですから、とりあえず外務大臣に御質問いたしたいと思います。 私の質問の主題は、ただいま問題になっております周鴻慶氏の帰還問題についてであります。 この事件は、現在のところ、法務省の問題としてだけでなく、外務省の問題としても取り扱われておるように見受けます。私どもから見れば、そのことが、率直に言えば外務省がこれに介入しておる、このことが適当かどうかは別にして、このことがこの事件の処理を複雑なものにし解決をおくらせておる、こういうように私どもは見ております。元来、この事件は、私どもから見れば、法務省管轄の事件として、法務大臣の法に基づく措置のみで解決せらるべきものであった、こう思うのであります。そして、私の見るところでは、法律的な面ではとるべき手続は全部終わっておりまして、強制送還を執行するということだけが残されておる、こういう段階まで来ておると思う。その段階において、外務省が政治的考慮、もっと率直に具体的に申しますれば、台湾政権への考慮からこの事件に介入して、法務省の法に基づく手続の進行を外務省のほうからチェックしておる、こういうように私どもは見ており、また、世間もそういうふうに考えております。この間の事情を明らかにしていただきたいというのが私の質問の趣旨でございますし、また、同時に、そういうことはやめてもらいたいというのが質問の趣旨であります。私はこれから事件のすみやかな解決を強く要求するという立場から質問いたします。 私は、外務大臣に対しまして、どういう理由で外務省がこの事件に介入しておられるのか、そのことをお聞きしたいと思いますけれども、その前に、私は事件の本質についてちょっと簡単に申し上げてみたいと思います。 第一に、外務大臣にお考え願いたいと思いますことは、この事件は法的に見ますればきわめて軽微な事件だということであります。これは、中華人民共和国の油圧機械訪日代表団の団員の周鴻慶氏が十月七日の帰国直前に代表団から離脱して、その翌日には警視庁の第二課で周鴻慶氏を逮捕しております。そして、その日にすぐ取り調べをいたしました後に、東京地方検察庁に送検いたしました。そして、その翌日に地検の取り調べを受けて、即日不起訴の決定を受けておる。こういう事件です。すなわち、この事案は、出入国管理令第七十条の第五号、すなわち不法滞留というだけの事件でございます。この法律の不法滞留に対する罰則に該当する事件、こういうことで取り調べを受けたのでありますが、不法滞留と申しましても、たった一日間。ですから、きわめて微罪と言うべきであります。普通の取り扱いとしましては、滞在期間が過ぎても何らかの事情のために一日や二日そのままで滞在の延期を認められるというようなことは、従来もたびたびあったことです。ただ、この事件では、いろんな事情で不法滞留の罰則に該当する事件として一応送検せられたのでございますけれども、この期間はわずか一日だけのことでありましたので、したがって、検事は微罪、不起訴という処分にした。これは当然のことであると思います。こういう軽微な事件であったにすぎないということをまず外務大臣として十分銘記されていただきたい。 このようにいたしまして、法的手続の上では刑事問題としては取り上げられませんでしたので、残るのは法務省の入国管理局で行政上措置を講ずるということだけになってまいりました。そこで、十月の十八日と二十一日と二十三日と三回にわたって入管における口頭審理が行なわれております。その入念な三回の口頭審理の結果、送還先に対する本人の意思も確認せられまして、十月二十六日に中華人民共和国を送還先と明記された退去強制令書が発付せられたということになっておる。送還先も令書にはっきりと書いてあります。本人もこれに対して異議の申し出をいたしませんでした。送還先が中華人民共和国であるということは、本人もむろん希望しておりましたところですから、異議の申し出をする筋合いでもございませんし、したがって、異議の申し出をしなかった。その後直ちに本人は十月二十八日に自費出国の申請をしておる。これが法的な面から申しまして本件の経過であります。 私どもは、法に基づいて強制退去令を執行しさえすればよいのだ、ただそれだけのことだ、こういうように考えております。法務省の見解は昨日法務大臣からある程度まで承りました。なお確かめたいと思う点が多々ございますけれども、きょうは法務大臣が出席しておられません。そこで、外務大臣に伺います。このように、法的手続は、私どもから見ればもう済んでおる。政治的考慮からこの送還事件をいま直ちに解決するということについて何か問題があるのかどうか。私どもないと思うのですけれども、その点について外務大臣としての御見解を承りたいと思う。まずこのことについて御答弁を承りたいと思います。
○大平国務大臣 御承知のように、わが国といたしましては、従来より、同種のケースに対しましては、本人の意思を尊重して措置をするという方針を一貫して堅持してまいりました。周鴻慶氏の事件に対して法務省当局のとられた措置も、本人の自由意思確認という点にその調査の焦点が注がれておったものと私どもは了解いたしております。御指摘のように、周鴻慶氏が入管における手続の最後の段階におきまして本国への帰還の希望を表明いたしました。これは十月二十四日と存じますが、結局この意思を尊重する措置がとられましたことも、いま御指摘のとおりでございます。他方、事件当初の同人の行動並びに入管当局者に対しての発言等からいたしまして、周鴻慶氏が本国の統治をのがれるための政治亡命者であるかのような印象を内外に与えてきたこともまた事実であろうと思います。このような観点から、周氏が最後の段階において本国に帰還する旨を表明したことに対して、若干内外に割り切れない印象を与えておることも事実であろうと思うのでございます。本件は、いま黒田先生御指摘のとおり、法務当局の管轄のことでございますが、外務省といたしましては、先ほど申しましたように、内外にわたってこの問題は公正に処理されるように希望いたしておるわけでございまして、中華民国政府からも何回か口上書が出てまいりましたが、これは、要するに、周鴻慶氏が心身とも正常な状態において意思表示をされたものかどうかに対して若干の疑点を持っておるという趣旨のものでございますので、先ほど申しましたように、内外にわたって公正に処理したという事跡を残したいために法務省当局と協議してまいりましたことは事実でございまして、別に他意はございませんで、あくまでも公正な取り扱いをしたということを内外に御納得いただくような方法において処理いたしたいということに終始いたしておるわけでございます。
○黒田委員 ただいまの御説明によりますと、政治的に内外にわたって公正な処置をとってこの問題を解決したという態度を外務省としても示したい、こういう御趣旨のようです。これをもっと具体的に申しますれば、内外と申しましても、このことを問題としておりますのは台湾政府だけでございましょう。ほかの国は別にこの事件にたいした関心を持っておるようには私ども見受けておりません。そこで、要するに、台湾政府に対し公正な処理をしたことを示して問題を解決したい、こういう御趣旨だろうと思います。そして、台湾政府のほうの意思は本人が正常な精神状態において送還先に関する意思を表示したかどうかについて疑いがあるというようにまだ考えておる、その疑いを晴らすというような見地から、公正な取り扱いとしてなお本人の送還先に関する意思を確かめたい、いまその過程にある、こういうふうにおっしゃるのですか。
○大平国務大臣 私どもの観点から申しますと、仰せのとおり、中華民国政府にも日本は公正に取り扱っておるということの御納得をいただきたいという希望を持っておることは事実でございます。
○黒田委員 昨日、法務大臣御自身から、本人の意思がまだ十分に確かめられていないというような御趣旨のお話を承りました。しかし、私どもはこの見解に対しては同意することができません。台湾政府に対する考慮から、理屈にならぬ理屈をつけて事態の解決を延ばしている、その方便として、本人の意思がまだ未確定である、これを確認する必要がある、こういうことを言っておられるのだ、私どもはそういうように理解せざるを得ないわけであります。 そこで、私は、政府がそういうように仰せられますのならば、私どもも自分の見方についてその妥当性を証明しなければならぬということになるわけです。単に抽象論だけで意思は確定しておるとかしてないとか申しただけでは、これは水かけ論になります。そこで、こういう事実があるから本人の意思は中華人民共和国に帰るということに確定しているものであるという、その事実を申し上げてみたいと思います。 御承知のように、本人が、最初送還先について若干の動揺を示したということは、それは事実でございます。これは私どもも認めておる。むろん本人も認めておる。しかしながら、先ほど申しましたように、本件につきましては、当局も十月十八日から二十一日、二十三日と三回にわたって口頭審理をされておるのです。入管が弁護士立ち会いのもとで口頭審理をされておるのです。その口頭審理の中で、台湾に行きたいという本人の意思がまだあるのではなかろうかという疑いは払拭されたと私は思う。それを確かめるのが口頭審理であります。私はそう思う。口頭審理の最重点は送還先に関する本人の意思を確かめることにある。私どもは、こういう角度から口頭審理が行なわれたと思うのであります。その口頭審理と、そして、その後、本人が中華人民共和国に帰りたいという意思表示をいたしました。これらの結果として、十月二十六日にはっきりと送還先を中華人民共和国と明示した退去強制令書が発付された、こういうことになるのであります。退去強制令書が発付されましたその時点において本人の意思が送還先を中華人民共和国として確定しておったということは明らかだったと言わなければなりません。この点は、昨日、穂積君の御質問に対する、また私のそれについての関連質問に対する法務省当局の御答弁において明らかにされたと思うのです。この点を私は昨日法務大臣に十分確かめたつもりであります。本人の意思の確定がされておるかどうかという問題については、令書を発付した時点においては確定しておったのだ。中華人民共和国を送還先とする希望を持っておる。それがまた本人の国籍でもある。それは法律にもかなっておるし本人の意思にも合致しておる。確定したから強制令書にはっきりと退去先が明示された。強制令書に明示される送還先というものは、退去を強制いたします場合の最も大きな問題点です。この点が確かめられないで退去強制令が出るというようなことは考えられません。もしその時点において本人の送還先に対する意思が不明確であるならば、明確になるまで退去強制令を発付するのを待つべきであった。ところが、本人の送還先に関する意思が確定していると見たから退去強制令が出た。これは少しでも出入国管理令に対する理解を持っております者には疑う余地がない。ここまでは私は昨日の法務大臣に対する質問で明らかになったと思います。 そこで、その後本人において送還先に関する意思決定の上に何か動揺が起こったのではないか、そういう事実でもあると見なければ意思再確認の問題は起こり得ないことです。私どもはそう考える。これは論理の上で当然そう考えなければならぬことです。法務大臣は今日になって疑いがあると言われるのです。退去強制令書を出したあとで、なお本人の意思に動揺があるのではなかろうか、それについてもっと確かめたい、こういうことを言われるのです。しかし、動揺があるということについては何も具体的には御説明はございません。しいて言えば過去において、すなわち逮捕されました当初のごく短い期間において若干の動揺があったというその事実以外に何も根拠とすべきものはないわけです。そこで、退去強制令書が出ましたあとで本人はどう考えておるか、それを率直に政府としても見ていただかなければならぬと私は思います。 本人は、十月二十四日に第一回の声明を発表いたしまして、中華人民共和国に帰りたいということをはっきりと意思表示しております。それに基づいて十月二十六日に退去強制令書が出たのであります。 それから、さらに、十一月の一日、すなわち強制退去令の発付せられましたその後ですよ。ここが私は肝心だと思います。法務大臣はその後においてまた動揺の状態にあるかのようなお話でございますから申し上げるのですが、退去強制令書の出ましたあとの十一月一日に本人は再度の声明を発表いたしまして、「私は早速中華人民共和国に帰りたい。一日も早く妻と子供に会いたい。私の退去強制令書が出たので、私は先月三十日に帰国すると決めた。私はこれまで待ったが、もう我慢ができないので、今日午前六時から帰国させるまで絶食することに決めた。政府は早速私を中国に帰せ。人道上からも法律上からも、政府が今日私を収容している理由がないと思う。私のことを心配してくれている全ての友好団体や国民に帰国が実現するようによろしく頼む。」、これが退去強制令書が発付せられました後になされた本人の意思表明であります。そして、この意思をなお他の手段をもって裏づけるために、周民は十一月一日早朝からハンガーストライキに入った。このハンストに入ったということも、中華人民共和国に早く帰してもらいたいという意思の存在を裏づけるものでなくて何でありましょうか。私はこのことを指摘する。政府は事実を見なければなりません。 それから、さらに、今度はそれから四日目に第三回目の声明を出しております。その内容を見ますと、「私は必ず中華人民共和国に帰ります。絶対台湾に行きません。もし、私を無理台湾に返したら私は死んでも行かない。しかしその場合は日本政府が困る。私は偉い人間ではない。命を要らなくてもいい。もし日本政府が私を一般の人と認めて何処でも美人と金さえあれば行けると考えたら大変まちがっている。だから私を台湾へ送還すると私が死んでしまう。その結果は台湾が私を得ない。日本政府は自分の法律を守らない。また、中華人民共和国に対して困ります。」、これは原文のままです。続けて読みます。「現在日本と中華人民共和国の間貿易もやっています。将来もだんだん拡大する。私の行く道は二つしかない。第一、私が中華人民共和国に帰ります。第二、もし日本政府が私を無理に台湾返すと私が死んでしまう。日本政府の指導者達よく私という人間を理解して必ず早速中華人民共和国に帰して下さい。」、こういう第三回目の声明を発表しております。 それから、さらに、第四回目の声明をまた出しておる。それは、仮放免の期間が十二月六日で切れたので、もうこのあたりで待ちに待っていた問題は解決されるものだと思っておった。ところが、また期限が延長されたということを聞いて衝撃を受け、本人が発表いたしました第四回目の声明であります。私は委員諸君にも十分にこの問題について御理解を得たいと思いますので、あえて朗読するのでまりますが、こう申しております。「私のことを心配し、いろいろと御協力下さっている日本の広い友人の皆さん。私は心から皆さんの御厚意に感謝いたします。皆さんもすでに私が発表した手記によって私の事件の概要を御了解いただけたと思います。私の事件は台湾の謀略にとりかこまれ、それにおびえて起ったものであり、私自身の弱さから日本の皆さんに大変御迷惑をかける結果となりました。このことを深くお詫びしたいと思います。私は十月二十四日わが祖国、中華人民共和国に帰国する決意を表明いたしました。日本政府はこのことを承認し、十月二十六日に退去強制令書を出しました。法治国である以上、日本政府は一日も早くこの法的措置を実行すべきだと考えます。しかるに御存じの通り私の身柄はその後一カ月以上不当にも拘束されたままであります。私は日本政府のこのような法律無視と、人権じゅうりんに対し、はげしい憤りを感ぜざるを得ません。私は健康であり、意思は不動のものであります。日本の皆さん、私を信じて下さい。私は皆さんの御協力にこたえ、日本政府の不当な措置に対して徹底的に斗います。台湾グループは私のことについていろいろ宣伝しています。身柄を拘束され、外部との連絡も絶たれ、しかも台湾の陰謀にとりかこまれた中で、一時混乱と動揺に陥った私の気持だけをとらえて、あたかも私が台湾行きを希望しているかの如く宣伝しているのです。彼らが何とわめこうとも、私の意思は中華人民共和国に帰ること以外にありません。日本政府は本日またもや私の仮放免期限を延期しました。一体これはどういうことなのか、台湾のいいがかりに屈し、私の祖国に帰りたい自然な、人道にかなった要求に、何のいいがかりをつける権利があるのでしょうか。私は自分の意思が貫徹できるまで、皆さんと共に斗うことをここに強く訴えます。どうか御支援下さい。」、こういう第四回目の声明を出しております。 このほか、私は項目だけを指摘いたしますが、御承知のように、十二月十三日号の週刊朝日に長い手記を書いております。それにも中華人民共和国に帰りたいという意思がはっきり出ておる。それから、十二月四日に、毎日新聞の記者の方が本人に会見されまして、その談話が夕刊に載っております。それにも中華人民共和国に帰りたいという意思がはっきり出ておる。それから、七日に共同通信の記者五人の方その他テレビあるいはラジオなどの関係者の方で約二十人ぐらいで同時に面会をしております。そのときの記事もある新聞に出ておりますし、またTBSのテレビで放送もされた。こういう事実があるわけです。これはいずれも退去強制令書が出ましたあとからの本人の意思表示ですよ。 私どもは健全な常識を持っておるつもりです。この健全な常識を持ってこれだけの事実を見て、退去強制令書が出ましたあとでどこに意思の動揺の存在、意思の不確定を本人について認めることができましょうか。私どもにはできない。すでに本人の意思は確定しておる。だから、出入国管理令の示すところに従うて、法に基づく行政をやっていただけばいい。そうすればすべて問題は解決する。これは私どもの考えです。外務大臣はまだいろいろと疑うておられるのでしょうか。疑っていなければ、すみやかに法務省が出しております退去強制令書に基づいて執行すればいいということになるのじゃございませんでしょうか。簡明にお答え願います。
○大平国務大臣 いま黒田委員が御指摘のような強制令状発付後の本人の御心境、御指摘されたような事実につきましては、法務省当局がよく承知しておられると思うのでございますし、法務省の御見解につきましては、昨日もおただしになったことと思うのでございます。ただ、私が申し上げますのは冒頭に申しましたように、この問題を内外にわたって公正に処理したいという一念でございまして、中華民国政府側にもまだ一まつの疑問を持たれておる気配もございますので、念には念を入れて最終的には公正に処理するようにいたしたいということで、せっかく苦心いたしておるところでございます。本人の意思確認の問題は、私直接やっておりませんので、法務当局のほうからいろいろおただしになったことと私は思います。
○黒田委員 私は、なお意思を確かめる必要があるということには、ただいま申しましたように、同意することはできないわけです。私どもは、先ほど列挙いたしましただけの意思表示があれば、もう意思確定という点なら問題はないと思う。台湾政府に対する考慮ということになれば、これは別個の問題になる。これをなすべきかいなかということが私のきょうの外務大臣に対する中心的な質問であります。そういうふうにお聞き願いたい。私は、それをなすべきではないと、こう考えるわけです。それは、今回のような事態の起こりましたときに、いたずらに外国の意思を聞かなければならぬということになってまいりますと、日本政府の自主性の喪失にもなるし、また、法の権威が行政の恣意によりまして曲げられてしまうわけです。これを私どもは心配する。私はここであらためて申しておきますが、私は中華人民共和国の側に立つものでもなく、むろん台湾政府の立場に立つものでもございません。私どもは日本国民でありますから、日本国民として守るべき態度がある。よるべき自主的態度がある。私はその立場から外務大臣にお尋ねしておるのであります。 そこで、外務大臣が台湾に対する考慮ということをお考えになるのは、その反面において法の尊重という点においてはなはだ欠けるところがありはしないかと私は思うのです。出入国管理令における送還先の決定問題は、本人の意思を尊重するということに最重点が置かれておるので、外国の意向よりも本人の意思を優先的に尊重するということが出入国管理令の精神であると思うのであります。その出入国管理令の精神の背後には、人権に関する世界宣言において示されている大原則が私はあると思います。この人権に関する世界宣言は、これはもう外務大臣であるからもとより御承知だと思いますけれども、この人権に関する世界宣言には、本人は自分の国に帰る権利を有しておる、このことを尊重しなければならぬということがはっきり書いてある。それだけではございません。国際間の友好ということも書いてあるわけです。世界人権宣言の前文の中には、個人の権利のために国際間の関係について考慮しなくてもいいなどということが書いてあるわけではありません。世界人権宣言には、個人の自国に帰る権利を尊重しておりますと同時に、そのことが国際友好に役立つのだ、こういう見地に立っておるわけです。各国間の友好関係の発展を促進するということが肝要である、そこでこの宣言を布告するものであるという前文のもとに、各人自国に帰る権利を尊重するという具体的条項も規定されておるのであります。こういう点から考えてみましてこの事案について言えば、出入国管理令の精神及び世界人権宣言の精神に基づき、台湾政府の意向というようなことは問題にしないで、本人の意思の確定を認定して、直ちに出入国管理令に従って本人を中華人民共和国に送還すべきである、国際関係という点からもそれでよいというのが私どもの考えであります。この点はどうお考えになりますか。私は、外務省には、出入国管理令と世界人権宣言の精神を軽視し、いたずらに外国の利害関係に右顧左べんするという、外交の自主性の欠除があるように思う。これは私どもは日本人としてよほど考えなければならぬことですよ。池田内閣の外交には自主性が欠けている、その一つの例がここにもあらわれているのだ、こう考えます。私は、この際、出入国管理令と人権に関する世界宣言の精神に基づいて、すみやかに本人を中華人民共和国に送還すべきだと考えます。台湾の疑点を晴らすということを当然の措置と考えておいでになるのでしょうか。
○大平国務大臣 仰せのように、私どもも、出入国管理令の精神を曲げたり、あるいは世界人権宣言の趣旨から逸脱するというようなことは、そういう大それたことは毛頭考えておりません。そういう許された権限の範囲内におきまして、これが内外にわたって公正に処理されるようにいたしたいということでせっかく努力しておる段階なんです。
○赤澤委員長 黒田さんにちょっと申し上げます。あとたくさん御希望者がありますので、恐縮ですが、大体一問で締めくくっていただきたいと思います。なお、法務省から入国管理局長も来ておりまして、これは大臣にかわって責任ある答弁をするそうですから……。
○黒田委員 法務大臣は見えましたか。
○赤澤委員長 法務大臣は要求してあります。
○黒田委員 公正というのはどういうことを言われるのでしょうか。結局、台湾の疑いを晴らすということをお考えになるのでしょうか。それならば、私は、必要はない、こう思うのです。公正という意味はどういうことですか。一般論として公正な外交をやるということは、これはだれも反対する者はありません。この場合の公正というのは何を意味するのか、具体的な…。
○大平国務大臣 本人の意思を確認してそれを生かすという方向で問題を片づけるという基本の方針はあくまでも堅持いたしておるわけでございまして、その意思確認の手順が一〇〇%満たされたと黒田さんはおっしゃる。法務当局のほうはまだ念査する必要があるという御見解の相違だと思うのでございます。私どもは、法務当局の権限行使に制肘を加える意図もなければ、先ほど申しましたように、人権宣言をじゅうりんしたり、そういうつもりは毛頭ないのでございまして、できることならば、これは踏むべき手順をちゃんと踏み、十分念査したものであるということが内外にわたって認められるようになった状況で処理していただきたいという希望を持って、法務省とも協議しておるわけでございます。
○黒田委員 ちょっとあと一問だけ。そうしますと、送還先を中華人民共和国にするということは、大体その方針は現在きまっておるのだけれども、なお台湾の持っている疑問を十分晴らすだけの手段を講じてからにしたい、こうおっしゃるわけですか。それとも、本人の意思次第によったらほかの地域に送還することもあり得る、そこまでの強い疑問を持っておいでになるのでしょうか。ちょっとそのことを、これは大切なことですから……。
○大平国務大臣 私の了解するところでは、法務当局におきましてなお念査する必要があるというお考えだと思うのでございます。外交上のイシューになっておることは事実でございますが、その観点からだけでこの問題を処理してもらおうなんという、そういうつもりではないわけでございまして、十分法務省に申し上げるべきことは申し上げて、入管令の定めるところによって法務省は処理されるものと私は期待します。
○黒田委員 どうも外務大臣は例によってはっきりしたことはおっしゃいません。はっきりすればもう質問を繰り返す必要がないのです。いやしくも退去強制令書には送還先まで明記してあり、確定的な意思が認定せられていた。その後に至って動揺性の疑いが生じているというのですが、しかし、中華人民共和国に帰すということまで変更しなければならぬほどの動揺が生じているという疑いであるか、中華人民共和国に帰すのだけれども、台湾側がまだいろいろ疑いを持っているから、その疑いを晴らす手段を講じてからにしたいというだけのことですか、その点はどちらなんですか。
○大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、大原則はあくまでも本人の意思を尊重していくということでございまして、先ほど申しましたように、本人の意思確認ということが最重点の問題でございまして、法務省ではなお念査の必要を認められておると思うのでございます。したがって、中華民国政府から疑問があるから、そのために、またそのためにのみ本件の解決が遅延しておるというものではないわけでございます。
○黒田委員 だいぶんはっきりいたしました。そうしますと、要するに、問題は意思確認という問題にしぼって考えればよろしいということになりますか。台湾政府に対する考慮というよりも、いま大臣が申されましたように、本人の意思確定ということがこの問題では最も重要な点であるから、その点が問題の解決点になるのだ、台湾政府に対する考慮ということは、意思確認ということに比べればそれはたいした問題ではない、要するに意思確認ということが一番の問題だ、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
○大平国務大臣 大体あなたがおっしゃったとおりに考えていいと思うのです。つまり、中華民国政府がおっしゃっておることも、結局本人の意思確認の手順において欠けるところがないかということでございまするから、そういう点を、私は、非常に恐縮ですけれども、念を入れて精査してやっておくべきじゃないかということでございます。
○黒田委員 これでよくわかりました。そこで、やはり問題は意思確認問題にある、これが重点であって、台湾に対する関係もその点に関するだけだ、要するに、意思確認ということがはっきりすれば問題の解決ができる、こういう御意見であったと思います。そこで、もしそういうことであるなら、先ほども大臣が仰せられましたように、意思確認は外務省の役割ではございませんから、もう今後一切外務省はこの事件から手をお引きになって、法務省だけに事件をおまかせなさるように私は要請いたしたいと思いますが、どうでございましょうか。それが理の当然ということになるのじゃございませんか。法務省だけに問題をおまかせなさい。それで問題は簡明に解決する道が開ける、こう思うのです。いまの大臣の論理から言えばそうですね。意思確認の問題は外務省が取り扱うべきではございません。これは法務省のやるべきことですから、今後は外務省はこの問題については口を出さぬようにしていただきたい。そのことを重ねて要請したいと思います。
○大平国務大臣 仰せのとおり、意思確認の仕事は法務省のお仕事でございます。それは間違いない。私も外務省が要らぬお世話をやこうなんて思っておりませんが、外務省と法務省がどういう協議をするかというようなことまで、これは政府におまかせいただきたい。
○黒田委員 政府にまかすべき問題とまかせない問題があるのです。たとえば旅券を発行するような場合には、外務省がある人について発行すべきかどうかということについて法務大臣に意見を聞くというようなこともあります。それは、法的根拠が旅券法で示されてありますから、私は外務省と法務省との交渉問題ということが起こると思う。けれども、今回の問題については法的根拠はございません。すなわち、本人の意思を確定するということについては、外務省と法務省との協議というようなことは法的根拠はない。その法的根拠のないものを外務省が持ってこられるから問題が紛糾するのだというのが私どもの見方なんですよ。外務大臣が干渉するようなことはおやめください、断じてそれをやめていただきたい、こう申し上げておきます。そのことを外務大臣にはっきり申し上げておきます。交渉という名目での干渉はおやめください。そうして法務省におまかせなさい。それから、法務省に対しましては、きょう大臣は出席しておられませんが、意思確定の問題は済んでおる、これ以上確かめる余地はもうない、私はそう考えますから、どういう方法で御確定になるのか、いつやるのかというようなことはきょうは質問いたしません。法務大臣もおいでになりませんから質問もいたしません。意思は確認せられておる、外務省は介入すべからず、出入国管理令に基づいて退去強制令書が出ておるのですから、それをすみやかに執行すべきである、これが私どもの考え方であります。 きょうは、時間がございませんので、この私の結論をはっきり政府に申し上げまして、これで私の質問は終えます。私が申しましたことを十分お考えいただきたい。
○赤澤委員長 次の質問者に移ります。穂積君。
○穗積委員 時間がありませんから簡単にお尋ねいたしますので、答弁も明確に一問一答で終わるようにお願いをいたしたいと思っております。 順を追ってお尋ねいたしますが、まず第一に外務大臣にお尋ねいたしたいのは、この周鴻慶氏の帰国問題に関連をして、台湾政府から日本政府に何らかの申し入れがあったように承っておりますが、その事実はいかがでございましょうか。
○大平国務大臣 十月八日から十一月十三日に至るまで五回にわたって口上書がまいっております。この趣旨は、周鴻慶氏が中共政府の統治をきらって脱出した政治亡命者であり、当人を本国に帰すことは非人道的であるというような趣旨の口上書でございます。
○穗積委員 それはあとでまたわれわれが文書として委員長を通じてわれわれ外務委員に提出を要求いたしたいと思っておりますが、きょうそれを読んですることはできませんから、ちょっとお尋ねいたしますが、そうすると、周鴻慶氏は中華人民共和国に帰すべきでない、理由は何かといえば、彼は中国をきらった政治亡命者であるからである、そして彼が台湾に行きたいという意思表示をしたからわが国へよこせというような趣旨の文書によるあるいは口頭による申し入れはありましたか、ありませんでしたか。
○大平国務大臣 中華民国政府によこせというものはございません。
○穗積委員 十月十六日に、台湾の在日大使館員と、それからそれの委嘱いたしました藤井弁護士とが本人に会いましたときに、台湾に渡りたいということを、いろいろな強制または利益の誘導をもって威圧を加えて実は取ったわけですが、そのことは大事な一つの材料にして台湾政府は声明その他を発表しておられますが、それについて、台湾大使館を通じ、あるいはまた本国からの文書を通じて、外務省その他日本政府に対して、その事実に触れた、それを口実とした申し入れ書あるいは申し入れはございませんでしたかどうか、もう一度念のために伺っておきます。
○大平国務大臣 先ほど申しましたように、中華民国政府はそのように考えておりますが、これは、たぶん、わが国の政府がいまとっておる措置そのものに対して十分御精通されておるかどうか、私どももそれに若干誤解があるのじゃなかろうかと思うのでございますが、他方、周鴻慶氏自身もソ連大使館に参られるというような事情で、当初の言動の中からこういう誤解を生ぜしめるような原因が少しあったのではなかろうかと私は推測いたしております。
○穗積委員 そこで、それでは続いてお尋ねいたしますが、この台湾側の申し入れ書あるいは理解ですね、これは日本政府に対する不当な申し入れであり、場合によれば内政に対する干渉でもあるというふうに私は考えますが、外務大臣はいかがお考えですか。
○大平国務大臣 どういう申し入れがあるかによって、それが内政干渉と直ちにならぬと私は思うのでございまして、日本政府がどう処置するかということでございまして、こういう口上書が発出されたということは直ちに内政干渉であるなんという短兵急な結論は、私は持っていません。
○穗積委員 内政干渉と強く言わないまでも、いいですか、中華民国にすれば外国です。中華人民共和国の代表団員として外国である日本に入国してまいりました者を、その日本に残留したいかあるいは本国に帰すか、そのいずれかを決定する事務について、横合いからの第三国からとやかく言うことは、一体何の関係があって周鴻慶氏の帰国先に対して台湾政府が日本政府にそういう申し入れをすることの妥当性がございましょうか。これで日本政府が動揺すれば、そこで内政干渉になる、内政干渉という結果が生じますけれども、しかし、あなたの趣旨並びに池田総理の趣旨としては、そういう問題については内政干渉を受けない、何らそのことを考慮して法の決定を曲げたり遷延したりしない、こういうことであれば、主観的には内政干渉を受けない結果になるでしょう。しかし、そうでない場合には、内政干渉ということになり得るわけだ。いずれにいたしましても、第三国の政府が、他国の代表団が外国に入国をして、そうしてその者が渡航いたしました外国に残留したいか本国へ帰すかというような問題について、横合いから一体何の根拠をもって、妥当性をもってそういうことを申し入れるのか。そうすると、百数十カ国の各国から、周鴻慶すなわち外国人が日本にまいりましたときに、その者を一々帰す帰さぬということを外交文書をもって申し入れるなんということは、常識に反しておると思う。そのことを賀屋さんもきのう言い、あなたもさっき最初に言ったのは何かといえば、公正な処理をしたという国際的な印象を与えて問題を解決したいということでしょう。その申し入れというものが、そんな不当な文書というものが、この問題の執行について日本政府に大きな一つの動揺を与え、あるいは遷延しております理由の一つに数えられておるわけです。私はそんな不当な文書というものは国際慣例から見て常識を逸しておると思うのです。そういうことはどうお思いになりますか。
○大平国務大臣 中華民国政府がどういう口上書を出すかは、中華民国政府の自由でございます。私どもは、冒頭に申し上げましたように、内外にわたって公正に解決したいということでやっているわけです。
○穗積委員 そうすると、あなたはもうすでに内政干渉を受けておるではないですか。こんなことは国内の全くの内政問題ですよ。しかも、政治的問題じゃない、事務的な問題だ。渡航の審査であるとか出入国管理令の処置の問題なんというものは、事務当局の事務的な行政事務ですよ。それがなぜ一体こういうように政治的問題になってきたか、われわれも大臣でなければ質問ができない段階に来たかということは、これはまさにその一片の全く非常識な不当な申し入れ文書によってあなたはもう非常に大きな影響を受けておるじゃありませんか。だからこそ、この問題が国内のほんとうの法務省所管のしかも事務当局の事務的な行政事務であるにかかわらず、内外の国際関係に見て公正な処置と見られるような処置をしてやりたいなどと言う。日本政府は、そんなことを言われようと言われまいと、渡航の問題にいたしましても、入国の問題にいたしましても、ビザの問題も、出国の問題でも、すべてそんなことは公正にやっておるはずじゃありませんか。要らざることをつべこべ言うなというのが日本政府のとるべき態度でしょう。しかも、日本政府と友好関係があるといって自負しておるその相手国台湾が、日本の法務省の行政事務に対して、不当であるとかあるいはああしろこうしろというようなことを言うこと自身が、常識を逸しておると思う。敵性を持っておると思う。日本に対する信頼を持っていない。日本政府自身はこういうような国内の行政事務に対しては公正にやるたてまえをとっておるでしょう。そうであるならば、そんなことをつべこべ言われる必要がないわけで、このことに関してのみ、国際的に公正な取り扱いをしたという印象を残して、そういう方法でそういう時期に帰したいと言っておる。何事でしょうか。その文書は一体何でしょうか。私は、国際慣例上、入国の問題あるいは出国の問題について、こんな大げさな外交的な申し入れ、口上書なんというものを出されたり受け取ったりした例というものは、寡聞にして聞いていないのです。関係のない第三国が何事ですか。外務省当局の自主性があると自負される自主的な御答弁をひとついただきたいと思います。
○大平国務大臣 先ほどたびたび申し上げましたように、私どもはこの問題を入国管理令の趣旨によって公正に解決したいということが日本政府の方針でございます。中華民国政府から口上書があったからどうこうするという問題ではないのでございまして、あくまでも日本政府が自主的にきめる問題と心得ております。ただ、私は、外務大臣といたしまして考えますことは、国際関係、国際的な友好関係というものはどういう場合でも保持してまいりたいという念願を持つのは、これは私は穂積さんも御理解いただけると思うのでございまして、日本の自主的な決定というものはあくまでしてまいるつもりでございますが、ことさらに国際関係を悪くする必要はないのでございまして、友好関係を保持するということが自主的な決定の中で許されるならば、外務大臣としてそのように希望するのは当然のことで、私はあなたも御理解いただけると思います。
○穗積委員 そこで、続いてお尋ねいたします。 こういうような五回以上にわたる口上書、あるいは大使館を通じてアジア局長その他には話があったかもしれません。あったかもしれませんが、これに対して外務省は一体どういう御返事をなさっておられますか。その事実と、五回にわたって一々御返事になっておられるか。なっておられるとすればどういう趣旨の返事をしておられますか。それを伺いたいのです。
○中川政府委員 国民政府からのいろいろ申し入れに対しましては、これに対しまして日本側のとっておる措置について十分な説明をそのつどしておりまして、国民政府側が納得するようにといろいろ努力してきておるわけでございます。
○穗積委員 それでは、事務当局にお尋ねいたしますが、この口上書は十一月十三日まで続いておるということですから、十月二十六日の強制退却命令、すなわち、本人の意見を確認した上で、出入国管理令五十三条の規定に従って中華人民共和国に帰りなさいというこの決定をしておるわけです。口上書がその前にもあり、それから途中でその決定がなされておる。そのあとからも来ておるわけだ。それに対して、外務省は、この十月二十六日の法務省の決定いたしました強制退却命令の趣旨というものは正しいものである、正当にしてしかも公正な手続を踏んでやった退却命令書である、したがってこれを執行したい、執行するためには貴国の誤解に基づくものは解いて了解をしてもらいたい、そういう趣旨の説明をするなら、これは外交上の一つの取り扱いとしては日本政府として自由でありましょう。そういう趣旨で御説明になりましたか。
○中川政府委員 ただいま申し上げましたとおり、穂積先生がいま繰り返されたような趣旨でそのつど説明してきているわけでございます。
○穗積委員 外務大臣にお尋ねいたします。すでに、向こうには、あなたの信頼しておる日本政府はあなた方の心配するようなことはなく、本人が政治亡命者であるか、日本に残りたいと言っているか、台湾に行きたいと言っているか、あるいは本国に帰りたいと言っているか、他から干渉されない任意なる意思によって確認をした上、慎重にしかも親切にその手続を踏んだ上で退却命令を出しておるのだ、そしてそのことによって理解をしてもらいたいということを、要らざることだけれども、われわれは友好国だと思っておらぬが、あなた方は友好国だと思っておる台湾に対して、親切丁寧にそのつど説明しておる。それでも納得しないもの、それでも日本政府の行政措置に対して信頼をしないもの、それに対して一体いつまでぐずぐずしておるつもりでしょうか。相手の誤解が続く限り、言いがかりが続く限り永久にわれわれは立ち往生すべきでしょうか。法務省のこの権威ある決定というものを、私はきのう法務大臣にも申し上げましたが、世間ではこれは昭和の大津事件だと言われておる。不当なる外交的な干渉、圧迫によって、日本政府は動揺して法の権威を失いつつある。心ある人はことごとくこのことに対して実は非常な憤慨をし、あるいは日本政府の態度に失望を感じておるわけです。もう手続は済んでおる。いま言われた公正な本人の意思の確認も済み、しかも、外交的には、そういう不当な申し入れながら、あなた方は親切丁寧にそのつど説明をしておる。十月二十六日の退却命令というものは正当にして公正な手続によってやったものである。しかも、ただやったのではない。台湾政府が信頼しておる日本政府が信義を重じてやった公正なる手続であるから納得してもらいたいといって説明したと、いま条約局長は言っておる。にもかかわらず、一体あと何をするのですか。することはないじゃありませんか。われわれから言わせれば、やらぬでもいいことを親切丁寧に度を越してやっておるくらいなんです。これ以上やることは私はないと思う。何か残っておりますか。それを聞きたい。相手を納得させる、友好国の理解を深めるということはけっこうですよ。そのことば自身は私は不当だとは言わない。しかし、このこと自身については、もうやり過ぎるくらい親切丁寧にやっておる。にもかかわらず、何か残っておるのですか。具体的に言っていただきたいのです。
○大平国務大臣 この問題の本体は、御指摘のように、本人の意思を確認するということでございまして、本人の意思を確認する手順でまだ残されたものがあると存念されて法務省のほうでも鋭意努力されておるわけでございまして、これがはっきりすればいいわけでございます。いつまでもこの問題に牽連してぐずぐずしておるつもりはございません。できるだけ早く解決したいと思います。
○穗積委員 法務大臣がおられないので残念でありますけれども、しかし、この問題は、先ほど言うたように、渡航の問題とか、ビザの問題とか、出入国の問題というものは、出入国管理令に基づく最高の決定・所管というものは入管局長ですので、入管局長にお尋ねいたします。 十月二十六日に意思確認を済ませて決定いたしましたこの退去命令は、その後重要な瑕疵が生じたとして、これは再検討しなければならぬと考えておられるか、あるいはこれを取消さなければならぬと考えておられるか、このものはまだ生きておる、この決定には誤りはなかった、これはまだ死んでおらぬ、瑕疵はなかったというふうにお考えになっておられるか、その点を伺っておきたい。
○小川説明員 入管事務当局としてお答えをいたします。 先ほど黒田先生から申されました口頭審理の段階、これは十月十八日、二十一日及び第三回十月二十三日、この段階を経まして、当時、同日の二十三日でございますが、われわれは、退去強制事由に該当するという認定に誤りがない、——これは不法残留ということでございます。判定をいたしました。そのときに周本人に判定書の謄本を交付しております。それで、そのときには、すなわち十月二十三日には、所定の期日内に、これは三日以内でございますが、異議の申し出書を提出する、こういうふうに述べております。それで、私ども昨日法務委員会におきまして逐次申し述べましたとおり、本人の意向というものが幾変遷をしております。これはもう事実でございます。そうして、口頭審理の段階におきましては、第一回、第二回とも、日本在留を希望しております。第三回におきましては、日本在留を希望し、それ以外のどこへ出ていくかということは考えていないというふうに申しております。そこで、所定の期日内に異議の申し出を出すということは、この日本在留に対する特在の嘆願を意味するものというふうに解釈しておったわけでございます。しかるところ、二十四日の早朝に至りまして、急に異議の申し出を放棄するというふうに申し立てておりまして、その結果、新聞発表となって、翌二十五日の朝刊、各紙に発表になったわけでございます。そこで、東京入管におきましては、いろいろと意向が変わっておりますので、しばらく様子を見まして、そうして二十六日に異議の申し出をあくまで撤回すると申すものでございますから、法律の所定の手続に従いまして、当然退去強制令書というものが出ておるわけでございます。これが退去強制令書が出ましたまでの経緯でございまして、皆さんのほうに多少誤解がございましたら、どうぞひとつそのように御了解いただきたいと思います。
○穗積委員 きのうも、本人の意思決定の経過につきましては、私は念のために詳細申し上げた。日本国内の日本人民にいたしましても、われわれは多数経験するところですが、警察または検察当局に調べられますときに、本人の意思というものは常に変わる、供述が変わる場合は幾らでもある。それはなぜかといえば、聞き方が誤っておるからなんです。そういうことはあるけれども、その点については私は時間がないからこまかくは申しませんが、変転があったからということによって、それを口実にしてまたもとへ戻って、本人の意思がぐらついておるから帰国が延びておるんだ、責任は本人にあるんだ、こういう不当な責任転嫁をして、不当な収容を続ける、監禁を続ける、こういうやり方は誤っておると思うのです。人道上もひきょうだと思うのです。その点は私は大臣とお話をいたしますけれども、あなたにお尋ねしておるのは、十月二十六日の、いろいろな経過の後に決定いたしましたこの過去命令が、重大な瑕疵があり、または正当性を欠いておるというふうにいまお考えになっておるかどうかということを聞いているのです。
○小川説明員 ただいま申し述べましたのは、穂積先生の御質問の途中までについてお答えをいたしておるようでございまして、はなはだどうも失礼を申し上げました。そのあとをこれからやらしていただきます。 ただいま申し述べましたのは、法律的に手続といたしましては十分慎重にやっておるということを御説明申し上げた次第でございまして、退去強制令書を発付したということにつきましては、法律的手続といたしましては間違いない、こう考えております。
○穗積委員 大臣、お聞きのとおりです。これは、再検討したり変更したり取り消す必要はない、こういう確信に満ちた取り扱いなわけなんです。法務省事務当局は、公正にして、昨日からの論理も非常に明快で筋が通っておる。ところが、これを不当な理由によってひん曲げようとしておるのは両大臣なんだ。そこが大津事件だと言われる根拠なんですよ。これは、人道上から見ましても、法律上から見ましても、本人に責任を転嫁して、そして、かつて本人がノイローゼぎみで動揺があったということをいまになって言って、事務当局は公正にして妥当な順序を踏んで最終決定をしておるという確信をいまでも持っておられるにかかわらず、両大臣が、本人の意思が動揺しているというようなことを言って、本人に責任を転嫁し、不法監禁をしておる。これは人道上または法律上許すべからざることです。これは不法かつ不当な監禁ですよ。そして、国際上の公正というならば、台湾政府に対しては幾たびか正当な説明をしておる。にもかかわらず、相手はごねて納得しようとしない。それじゃ一体中華人民共和国に対する公正な態度というものはどういうことですか。国交は回復はしないまでも、友好の精神は中国に対して持っている、だから経済交流はやりたいと思うということを幾たびか言っておられる。その中華人民共和国の代表団を、そんなひきょうな不当なことを口実にして不法監禁をいつまでも続けるというようなことは、一体国際的に許されることですか。大臣、いかがですか。そのことは二つの点で問題がある。すなわち、もう一ぺん言うならば、一つは、大津事件だといわれる、日本の公正な法の決定に対して、行政事務に対して非常に不当な干渉である。すなわち自主性が守れないということであります。もう一点は、国際上考慮する必要があるということなら、そのことについてまでわれわれ反対はしない。反対はしないけれども、台湾政府に対してはすでにもう礼を尽くし過ぎるくらいくどく説明をしておる。ところが、中華人民共和国に対する公正にして友好的な処置としては一体どうなりますか。欠くるところがありやしませんか。 法の自主性の問題と中華人民共和国に対する公正友好を傷つけるものであるという二点について答弁していただきたいと思うのです。
○大平国務大臣 私どもといたしましては、法令をひん曲げるというような大それた考えは毛頭ございません。法令の趣旨によって公正に解決したいという一念でやっているわけでございます。それから、外交的には不当な内政干渉を受けるというようなことはいさぎよしとするものではございませんで、あくまでも日本政府が自主的にやるべきものと心得てやっておるわけでございます。すべて問題は公正な解決に至る過程にあるわけでございまして、これから政府のやるところをよくごらんいただきまして、この問題を政府として結論を出しましたら、いろんな御批判をいただきたいと思いますが、いま公正な解決に至る手順を鋭意固めつつあるという段階でございます。
○穗積委員 時間がまいりましたから、一問で終わります。 二点についてお尋ねいたしますが、先ほど黒田委員に対する外務大臣の答弁の中で、本人の意思確認について、その方法、時期について台湾側に納得されるような時期を選びたい、方法をとりたいという趣旨と思われる御答弁があったわけですね。外務省が法務省にまかせきりでなくて、法務省の所管であるけれども、そのことに対して外務省も意見を述べたい、関与したいということは、そのことを表明しておるわけです。したがって、私のお尋ねいたしたいのは、今後外務省として、慎重の上に慎重を期するというので、念のためにもう一ぺん本人の意思を聞こう、——法務省事務当局は、もう意思の確認をするまでもない、法律的な十月二十六日の決定というものは、いまだに正しいものであり、誤っていない、手続の粗漏はないというふうに考えておられるけれども、両大臣あるいは政府が、この問題は国際的に誤解を招く心配が生じておるから、内政干渉は受けないけれども、慎重の上にも慎重を期して、本人の意思をもう一ぺん念のために聞こうという趣旨が、先ほどの御答弁の中に含まれておると思う。それに対して、本人の意思確認について台湾政府側の介入を許すべきではないと思うのです。これは日本の法務省が自主的に公正に他から何ら干与されないで処置すべき問題だと思うのです。念のための再確認にいたしましても……。それについて、外務大臣の、そういうことは台湾側に干与せしめないという御答弁をいただいておきたい。 それから、第二点は、時期の問題でございますけれども、時期の問題につきましては、すでに十月二十六日からえんえんといたしまして五十数日を過ぎておる。出入国管理令によれば、この強制退去命令というものはすみやかに実施すべきだということが条文にうたわれておる。にもかかわらず、これが行なわれていない。しかも、中華人民共和国側は、一日千秋の思いで、政府の人たちも、その家族である妻子も待っておるわけです。これは人道上も政治上も重要な考慮すべき点であると思うのです。しかも、たまたま年の暮れに迫っておるわけですから、まさか年を越すようなことはないと思いますけれども、一体、時期については、いつをめどにしてこれを決裁、執行されるおつもりであるか。 その二点について、再質問を必要としないように明快にお答えをいただきたいのです。
○大平国務大臣 意思確認の方法につきましては、自主的に日本政府がやるのは当然と心得ております。 それから、時期の問題でございますが、これはなるべくすみやかに解決いたしたいと思っています。
○穗積委員 年内であるか、年を越すつもりかどうか。
○大平国務大臣 なるべくすみやかに解決したいということで鋭意努力中です。
○穗積委員 それでは、まさか年を越すようなことはないというわれわれの期待に対して、その線に沿って努力されると理解してよろしゅうございますね。
○大平国務大臣 なるべくすみやかに解決いたしたいと思います。
○赤澤委員長 次の質問の方々、持ち時間十五分でお願いいたしたいと思います。 帆足君。
○帆足委員 私は、この問題はきわめて常識的な問題であるし、また、日本の国法の権威ということについては国民が関心を寄せておりますから、そういう点では、ある意味で超党派的に事を確かめておきたいのでございますので、時間もとりませんから委員長、御了解願います。 第一には、経済使節で参った者が、酒を飲んだり、まあ多少ごたごたしてよろめいたという事件でありますのが、結局、もとのわがふるさとに帰り、わが妻子のところに帰ろうというのですから、結論として、それほど複雑な問題ではなかろうと思うのです。それを台湾のほうで自分のほうに帰ることを希望するというのには、私は、多少無理がある、こう思っております。しかし、それより重要なのは日本国国法の権威でありまして、日本は人権宣言に入っておりますが、人権に関する観念というものが日本では比較的薄いというのが、われ人ともの通弊だと思うのです。人はすべて自国を含むいずれの国からも立ち去る権利を有する。同時に、自国に偏る権利を有する。もう一つ重要なのは、何人も専断的な逮捕、拘禁または追放を受けることはない。これは、新日本憲法の精神から言いましても、世界人権宣言とうらはらになっておるのでありますから、これは党派を越えてきわめて重要な原則だと思います。 そこで、まとめて簡単にお尋ねしたいのですが、第一には、法務省としては、意思確認の一応の事務手続は済んで令書を出しているわけでありますから、法務省として何か新しい確認方法をとるならば、どういう形態をとられるのか。私は第一にこれをお尋ねしたいのです。 それから、第二に、外務省が内外の誤解を解くために冷却期間を与えて、そして誤解のないようにしたいという気持ちはわかりますが、その期間があまり長いのでは問題になる。一週間ぐらいの期間なら、だれしも、常識と法との間、現実と法との間の矛盾で、理解しますけれども、もう数十日たっているというところに問題があると思いますから、いま穂積君から冷却期間はどのくらい置くのかという質問があったのに対しまして、答弁はあいまいでありましたけれども、そう長くはないもの、私はそういうふうな印象を受けて聞きました。そこで、この冷却期間があまりに長いと、不当なる人身拘束となりまして、再び人身保護法を適用せねばならぬ事態が来ると思うのです。念のために申し上げておきますが、この法律は非常にいい法律でありまして、「法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。」、これは私はすばらしい法律だと思うのです。これによって、たこ部屋などに人を捕えて隠したり、政治上の理由によって人身をみだりに拘束するということは、不可能になっております。したがいまして、あまり期間が長引きますと、この法令の適用を受けて、法務大臣並びに外務大臣がたこ部屋の親方同様の取り扱いを受けるということになりますると、国威を失墜するおそれがありますから、これは与野党の別ではなく、一国の外務大臣がたこ部屋の親方と思われるということになれば、野党としてもこれはほっておけない。何としてもこれは外務大臣をお助けして、よき助言をするのが外務委員会の任務であろう。したがって、強く警告する次第でございます。私どものこういう発言が国民の各位に知られるならば、日本では法の権威は保たれており、また、長い戦争の苦しみによって国会議員というのは人間の尊厳について深い認識を持っておるということの啓蒙にもなりますから、事柄を明確にしておきたい。 国際情勢が緊張しますると、スターリン事件などにも見られますように、進歩陣営の中におきましても、自分の権利は主張するけれども、人の権利に対して、自己を主張するの余りこれを無視する傾向も一部にはなきにしもあらずでございます。したがいまして、自他ともにこういうことのない世の中をつくっていこうというのがわれわれ共通の願いでありますから、そのことはとくと外務大臣にその事の及ぼす影響というものを考えていただきたい。池田大臣は人づくりなどということを言いますけれども、ああいう神仏に手を合わせて人づくり、−うちの子供などは神か仏かといって直ちに質問を発する。神仏混淆であろうか。こういうような素朴にして教養低い人づくりではだめでありまして、やはり、人づくりの根本は、政府が憲法を守り、法律を尊重し、人権を尊重するという気風にあふれておる、これが子供たちに勇気と自尊心を与え、そしてその自尊心から初めてモラルというものが生まれる、こういうことになるのでありますから、やはり教育上の見地からも外務大臣ひとつしっかりしていただきたい。したがいまして、ただいまの問題を事務的に整理いたしますと、意思確認はすでに済んでおるのに、事務当局は涙をのんで政治のよろめきのつき合いをする、こういう事態に対して事務的にどういう処理をされるのか、これを法務大臣の代理として入国管理局の局長さんにお伺いしたい。 第二に、これも法務省の問題ですが、不当に人身を拘束しておるということについては、これが長引くと法律違反になる。もうその前夜になっておりますから、それについて法務当局としてどうお考えになっておるか。この二つを正確に事務的にお尋ねし、そして重ねて外務大臣のそれについての所見をお尋ねしたい。
○小川説明員 ただいまの帆足先生の御質問に対して事務当局としてお答え申し上げます。 意思確認がすでに済んでおるのに、さらに確認する場合の問題についてお尋ねのことと存じます。 これにつきましては、入管令上は、退去強制令書が発付されますと、もし本人の所属する国との間に国交がございます普通の場合には当然その国に送還することになるわけでございますが、遺憾ながら中華人民共和国に対しましてはまだそういうあれがございませんので、そういう場合には通常自費による出国許可をいたす手続をとるのが今までの通例であります。そこで、どこへ自費によって出国するかという問題につきまして、昨日来いろいろ申し述べましたように、本人の意向も必ずしも一定しておりませんし、最終的には、退去強制令書発付の際に、本国に帰りたい、こう申しております。それらの点につきまして、退去強制の場合と自費出国の場合とで実際上の扱いはやや異なる点がございますので、その点をまず御了解いただきたいと思います。 それから、意思確認、通常そういう表現が用いられておりますので、私もそれを踏襲いたしますけれども、意思確認をどういう方法によってやるかというお尋ねにつきましては、事務当局としてもいろいろこれまで非常な苦心をしてもおりますし、また、問題が問題でございますので、上のほうともいろいろ協議をいたしまして決定いたしたい。あくまで、外務大臣もおっしゃいましたように、公正な方法をとりたいというふうに考えております。 それから、人身保護法の関係でございますが、これは、先般人身保護法に基づく請求が出ました当時は、東京入管の収容場に収容中でございました。御承知のように、絶食を始めてまいっておった当時のことでございます。ただいまは身柄は仮放免の状況でございますので、しかも、本人が、一身の安全という見地からいたしまして、なるべく動きたくないというふうな意向を漏らしておりますし、かたがた仮放免の継続中でございますので、直ちに人身保護請求というふうなところへまいるかどうかにつきましては、私どもは必ずしもそういうふうに見られない場合もあるのじゃなかろうかというふうに考えております。
○大平国務大臣 意思再確認の法律構成、それから、人権擁護、身柄拘束についての制約というような点の判断につきましては、法務当局を信頼いたしております。
○帆足委員 最後に、ただいまの大臣の発言によりまして問題の所在はもはや明確になりましたし、それから、人、身保護法の問題について、まだそれはその時期であるまいという局長の御答弁でしたけれども、これは、もう少し期間が過ぎますと、局長自身が被告になるわけでございまして、それは、被告の判断によることでなくて、われわれが皆さんを逮捕する問題でございますから、これは、そういうことにならないように、ひとつ期間その他について良識ある措置をおとりくださるようお願いいたします。
○赤澤委員長 川上君。
○川上委員 時間がありませんから、私の質問は簡単であります。 政府の御答弁を聞いておるのでありますけれども、非常にあいまいだと思うのです。そこで、確認しておきたいと思うのですが、ここに外国人退去強制命令の写しを持っております。これは御承知のように十月二十六日のものです。これは法務省の東京入国管理事務所主任審査官が出したものであって、あては周鴻慶、退去理由は出入国管理令第二十四条四号口該当、執行方法は出入国管理令第五十二条の規定による、送還先は中華人民共和国、こうあるのです。どうも政府の御答弁によるとわかったようなわからぬような気がするのですが、この命令書は、外務大臣、生きておるのですか生きていないのですか。この点を正確にひとつ確認しておきたい。
○大平国務大臣 先ほど法務当局から御答弁があったとおりと心得ています。
○川上委員 よくわかりません。
○小川説明員 ただいま川上先生から御指摘になりました退去強制令書は、入管令のたてまえといたしまして、主任審査官という制度と申しますか、独立官庁というたてまえになっております。退去強制令書に署名いたしておりますのは主任審査官たる東京入管所長の猿渡であります。それから、令書の効力でございますが、これはもう当然はっきりしておりますので、有効でございます。
○川上委員 これは有効ということの御答弁がありました。これでけっこうです。そのとおりだと思います。そうすると、これは、本人の意思を認めて送還先を中華人民共和国と御決定になったと思うのです。そしてこれは生きておる。これは本人の意思は確定しておると思うのです。ところが、御答弁を聞いておると、ここが非常にあいまいで困るのですが、本人の意思に疑義がある、これは外務大臣はどういうことを言うておられるのですか。これは生きておる。これで、これはもう間違いのないものだ。これは意思がきまっておって送還先を中華人民共和国としてある。ところが、いまになって意思に疑義があるという。いつごろそんなことになったのですか。答えは簡単でけっこうです。
○富田説明員 ただいまの川上先生の御質問は、退去強制令書が発付されておる、その発付は本人の意思に基づいてなされておるのだ、その意思がなおかつ不安定、いまだ動揺しているというのは何事であるかという御質問であろうと思います。 そこで、手続的に御説明申し上げますと、先ほど入管局長が申し上げましたように、口頭審理の段階におきましても、絶えず日本在留を希望し、そうして法務大臣に日本在留をお願いするために異議の申し出をすると申しておった状況でございます。それが、その翌日の二十四日になって、異議の申し出を放棄しますということを申し出たわけでございます。これを入管令上の手続から見ますと、周の異議申し出放棄がなされた以上は、その後に意思が変化するかどうかということは別といたしまして、その段階における本人の意思表示として退去強制令書を発付しなければならない。そしてその後の手続を進めていかなければならない。それで、退去強制令書が発付されました以上は、入管令のたてまえでは、すみやかにこれを執行するということになっておるわけでございます。そして、この執行をいたします場合に、入管令の五十二条の三項に、すみやかに執行しろということが書いてございますが、その四項に、「前項の場合において、退去強制令書の発付を受けた者が、自らの負担により、自ら本邦を退去しようとするときは、主任審査官は、その者の申請に基き、これを許可することができる。」、こうなっております。そこで、小川局長が説明申し上げましたように、現在、中華人民共和国に対しましては、強制送還という方法をとらずに、送還する場合に自費出国の許可をしてこれを処理しております。その関係で、いつその自費出国を許可するか、その時期、方法につきまして、先ほど外務大臣が御答弁になりましたようないきさつで出国の許可を留保しておるという段階にあるわけでございます。
○川上委員 さっぱりわからぬ。これが生きているという。これが生きておって、本人の意思によってこれをやったときょう確認したのです。ところが、何か知らぬが、その後本人は何も異議を言うていないし、意思はちっとも変わっていないのに、何でこれが実行できぬのですか。本人が何か言うておりますか。この決定に対して本人が異議の申し立てをするとか何かしておるのですかどうですか。
○富田説明員 異議の申し出が放棄されましたあとにおきまして本人の意思は変わっておりません。中国本土へ帰るという意思は変わっておりません。ただ、先ほど外務大臣が御答弁なされました趣旨は、その異議の申し出をなした時期における心境がはたして安定しておったのかどうかということがいろいろ問題になっておるのだということで、昨日の法務大臣の答弁も、その後の状況におきましても、いろいろ週刊朝日とか新聞記事などによって見ましても、多少、言うことがいろいろと、——これは帰国の意思以外の問題でございますけれども、いろいろ面接の状況その他につきましても言っていることが少し違っているんで、必ずしもすっかり落ちついているとは言えないのじゃないかというようなことを法務大臣が申し上げているわけでございます。しかし、中国本土に帰りたいという意思はいまだに変わっておらないことは確実でございます。
○川上委員 さっぱりわかりませんね。そんなことを言われたら。そんならこれはどうするのです。これが生きておる。そうして、その後いろいろ考えてみたらというようなことを言う。本人は何も異議の申し立てをしていない。考えているのは、外務省なり法務省、あなた方が考えている。本人はちっとも考えていない。どうしてこの命令書が執行できない。これはいろいろ理屈はありましょうけれども、外務大臣、筋は通りませんよ。だれが聞いても通らない。いま私ははっきりしたと思う。本人の異議の申し立てもない。聞くところによると、——聞くところなんて、だれが聞いた。そんなことでこの政府の命令が左右されるものではありません。本人の意思がない限りは左右されることはない。これを執行しなければならない。これを執行する上に、私は時間がないのだからあまりたくさん言いませんが、この外交問題にこれを持っていっておられる。こういう傾向がある。これは政府御自身のほうがわざわざ持っていきなさるのと違いますか。第一に、これは御答弁を聞いておるとこういうこともあるのです。台湾政府、蒋介石政府のほうを納得させる云々というようなこともあるのですが、納得させようと思いましても、ここにこれがあるのです。これは差し入れの雑誌なんです。これを差し入れたのです。面接禁止の時分にこれを許して政府は差し入れさせておるのです。ここのところには脅迫が書いてある。ここに小さい字で書いてあります。これはどういうことを書いてあるのか。これは重大な問題なのです。 参考のために読みます。これは外務大臣も御承知だろうと思う。台湾政府在日大使館から十月十三日に差し入れた中外グラフに書き入れてあった誘導文です。「周鴻慶先生、中華民国駐日大使館、領事館全体同人、中華民国留日華僑反共大同盟」、——これは大使館から入れた雑誌に書いてあるのですよ。そこの文句には、「復国反攻の事業に生死をともにする道を、あなたは自らえらんだ。あなたの終生の幸福を保証する。蒋総統もとくにあなたをなぐさめる電報をうってきて、あなたが共産匪からスパイとして処刑されようとしているが、民族の義士であると歓迎し」、こう書いてあるのですぜ。「われわれはすでにあなたのために資金と住宅とすばらしい職業を準備しておる。共産匪と手をつなぐことでは、結局あなたの問題を解決できない。あなたは心がさだまらず、妄想しているが、日本は反共国家であり、日本とわれわれは深い友好関係にある。あなたは一部の大局をしらない者のいうことをきいてはいけない。道は一つである。今のところあなたは妻子にあえないが、しかし日本にいるかぎりは永久にあえないであろう。あなたは情勢と、あなた自身のおかれている状況をはっきりとしるべきである。現在のあなたはみずから絶体絶命のところにきている。ただちに自由中国にかえるべきである。」 この種のものはこれだけではないのです。ここにあるのです。これだけではない。「中共はあなたを反逆児と決定し、代表団長は激怒、奥さんは強制離婚をさせられておる。」、こういうことが書いてある。これを入れさせてある。こういうことをやっておいて、そして外交問題とかあるいは台湾政府の了解とか、これはわれわれは要領を得ないです。どうしてこんな誘導文を入れさせたのですか。しかもこれは明らかに脅迫文です。これをどうして入れさせたのです。本人に入れさせておる。こういうことをしておきまして、そして、いまになって外交問題がどうとか言う。これは生きておるのですぜ。生きておるというのに、本人の意思を持ち出しておる。そうするとまた非常にややこしいかっこうで外交問題になる。こういう問題が出ておる。またややこしいかっこうで蒋介石政府の了解云々が出ておる。一方においてはこれをやっておるのです。しかも、これは、外務大臣、台湾政府在日大使館から十月十三日に差し入れたものですよ。大使館ですよ。こういうことをやっておきまして、いまになって、これが生きているのに、いろいろな口実を設けて、これは帰さずというようなことは、絶対に筋が通らぬ。日本政府のとるべき態度ではない。いろいろな人から疑念を持たれ、いろいろな人から批判されることを弁解する余地は私はないだろうと思う。外務大臣は、こういう問題についてはほんとうに自主独立の立場から断固とした態度をとられることを私は希望します。何でこんなにぐずぐずしているか。外務大臣のほんとうの考え方をもう一ぺん聞きたい。
○大平国務大臣 先ほど申し上げましたように本件の処理は、あくまでも入管令の趣旨によってすべきものと思っております。外交的なイシューである側面ももちろんございますが、外交的な側面だけでこの問題を曲げて解決しようなんという考えは毛頭ございません。ただ、私の希望といたしましては、できることならば国民政府との間の友好関係というものにひびが入らぬように処置できればということで、法令の範囲内で可能な限り努力し、また中華民国政府の理解を求めるということは、私の当然の責任だと考えております。
○川上委員 もう一問だけです。 委員長にお願いしたい。これは意思に疑点がある云々の答弁があった。われわれは意思には疑点がないと思う。そこで、もし参考人として来ていただくということがあればたいへんけっこうだと思うのだが、それができなかったら、委員会として調査をしたい。これを委員会としてひとつ決定してもらいたい。これは委員長にお取り計らい願いたい。 その次のもう一点は、中国赤十字代表がいま来ている。これは外務大臣御承知のとおり。これは普通の状態なら二十日に向うに帰る予定になっている。こういう事態で、これと一諸にこの周さんを帰らせる意思があるかないか。赤十字代表が来ているのだから、これと一諸に帰らせるべきである。この点だけ外務大臣からお聞きいたしたい。
○大平国務大臣 日本政府が自主的にきめまして解決いたしたいと思います。
○赤澤委員長 お申し出の件は、理事会にはかって、しかるべく取り計らいます。 岡田春夫君。
○岡田委員 簡単に伺ってまいります。 いまも川上委員から中外グラフの問題が出たのでありますが、私もそれと同様な中外グラフの問題が別にあるわけです。これについて、まず第一に、これは東京入管にいる間にこの事実があったのですが、この事実があったかどうか、この点を入管局長からまず伺いたい。
○小川説明員 突然の御質問で、ちょっといま……。
○岡田委員 きのうもあなたは聞いている。
○小川説明員 昨日は一般的に面会、差し入れ等につきましてお答えいたしたのでございますが、普通の場合には、差し入れの、食べものは別でございますが、新聞・雑誌等刊行物につきましては、十分に検閲した上で渡すことになっております。これははたして確かに入りましたかどうかということにつきまして、あらためて調査いたします。
○岡田委員 入管局長は、かねがね私は存じ上げて敬意を払っておったのですが、ちょっと無責任だと思います。きのうこの事実でグラフを見せられたじゃありませんか。私法務委員会におったのです。それなのに確認していないとおっしゃるが、それでは職務怠慢と言わざるを得ないじゃありませんか。あるいは国会を軽視されたのか、どちらか知りませんが、これは事実でしょう。違いますか、どうですか。
○小川説明員 事実かどうか、昨日法務委員会でお見せになりましたことは確かでございますが……。
○岡田委員 これをごらんください。事実です。——事実でしょう。そこの点だけはっきりおっしゃってください。どうですか。これについてお答えください。事実なんでしょう。
○小川説明員 私、そのものが確かにある時期に差し入れとして入ったかどうかということにつきましては、よく調べませんと、ちょっと私が事実であると申上げることは少し差し控えさせていただきたいと思います。
○岡田委員 それでは、差し入れ受付簿というものがあって、そういうものは調べれば当然わかりますね。その点はどうですか。
○小川説明員 それは、ちゃんと差し入れ簿というものがあるはずでございますから、調べればわかります。ただ、普通の場合は、本人の希望を十分確かめまして、そして入れるようにしておりますから……。
○黒田委員 ちょっとそれについて関連ですが、入管のほうには差し入れられたものの名簿はできておるわけでしょう。何月何日にだれが来てどういうものを差し入れたかという名簿はあるのでしょう。
○小川説明員 それは当然あると存じます。
○黒田委員 そうしますと、あなたのほうの原簿に十月の十三日に雑誌の表示がしてあると思いますから、中外グラフのナンバー五十三、そういうものが入っておるかどうか。その中に書いてあるのですから。
○小川説明員 それは現物でございますか。
○黒田委員 現物です。日にちは十月十三日で、中外グラフ五十三というのが入っておるのかどうかということを、原簿をお調べ願いたい。
○小川説明員 何ページですか。
○岡田委員 ごらんください。ここにかいてあります。
○穗積委員 いまの問題について、ついでに入管局長に申し上げておきたい。それをなぜわれわれは問題にするかというと、入管の差し入れ許可の取り扱い上一つ問題があるのと、それから、さらに、そのミステークが重要なことは、この本人の書いた手記です。この中外グラフを読んで絶望をした、それで彼の意思決定に重要なインフルエンスを与えたということを本人が言っておるわけです。十月十三日に台湾側から差し入れられた中外グラフである。その内容はいまここにあるとおりです。中共は周さんを反逆児として処置することに決定をした、代表団長はあなたの行動に激怒しておる、奥さんはもうすでに強制的に離婚されてしまった、おまえの帰る道はただ一つ台湾以外にないのだという、これは脅迫です。それが心理的に非常な影響を与えていると本人の手記に出ておるわけです。それがちょうど合っておるわけです。お調べください。十月十三日です。これです。だから問題にしている。
○岡田委員 それでは、私続いて、大臣もあまりいる時間がないわけですから、簡単に伺いますが、先ほど川上委員も質問をし、私も質問しているのですが、再三にわたっておるということは明らかになったが、これは、「中華民国訪日大使館全体同人」、こう書いてある。これは単なる落書きにしても、重大な外交問題である。正式にその国を代表する大使館が、このようなことを書いたということは明らかに外交問題であり、内政干渉の具体的な事実じゃありませんか。これは、外務大臣、どういうようにお考えになりますか。
○大平国務大臣 その問題は真偽をよく確かめてからお答えいたします。
○岡田委員 それでは、もしこれが事実であったならば、どういう措置をおとりになりますか。
○大平国務大臣 よく事実を調べまして、吟味の上、お答えいたします。
○岡田委員 これは明らかに外交問題でございますので、それでは、具体的にどういう措置をおとりになったかは次の機会に必ず私質問をいたしますので、その際には御答弁を願うことを要求しておきます。 それから、その次は、これも先ほどの川上委員の質問に関連するのですが、退去強制令書が出されておる。退去強制令書が出されたあとに、本人の意思の再確認をするということの意味を外務大臣は答弁をされておる。それは、本人の意思の再確認、確認を再度する、意思を確かめるということは、まず法的に伺いますが、入管局長としては、入管令の何条によってそういうことができるのか、それを伺いたい。できないはずなんです。
○小川説明員 入管令上には再確認という規定はございません。ただし、先ほど申し上げましたように、主任審査官の認定によりまして退去強制令書が出ておりまして、そのあとは、毎度申し上げて恐縮でございますが、国交のない国に対しては、普通は……
○岡田委員 それは知っております。私の聞いてないことを答弁されようとするから、それは知っておると言うのです。 再確認という手続は、法的には規定はないのです。もし再確認をされるのだったら、主任審査官のさきにとった法律五十一条に基づく令書というものが有効でなかったということになるんだと思うが、その場合に、もし再確認の法的な措置をとらなければならないという場合には、この効力のあるという令書の法的な性格はどうなるのですか。
○富田説明員 再確認ということばはございませんが、退去強制令書が発付されました場合におきましても、その退去強制令書によって、常に必ずしも強制的に送還しなければならないものではないわけでございまして、五十二条の第四項に、先ほど申し上げましたが、「退去強制令書の発付を受けた者が、自らの負担により、自ら本邦を退去しようとするときは、主任審査官は、その者の申請に基き、これを許可することができる。」とありまして、この場合には、要するに本邦を退去してもらえばいいわけでございまして、その前に、あなたはどこへいらっしゃるのだという意味で、そこで本人の意向を聴取することはあり得るわけでございます。
○岡田委員 それで、本人の希望に基づいたこの退去強制を執行するというのは、五十二条の三項にある。その場合に、あなたも御存じのとおり、「すみやかに」ということばがある。これは具体的な実例で周鴻慶の例で申しますと、退去強制令書が出たのは二十六日だ。三十日にBOACに乗ると言った。「すみやかに」でしょう。それなのにあなたのほうで待ったをかけた。その待ったということはどういう理由であるかということが法律的に明らかにされなければならないわけだ。それが、待ったということは四項によってと言うのだが、そこの点は「すみやかに」との関係はどうなるのか、法律関係をまず伺いたい。
○富田説明員 この同じ十二条の五項に、入国警備官は退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときは送還可能のときまで収容することができるという規定がございます。これはある程度出国の時期ないしは方法についての裁量権が主任審査官に残されておる。その裁量権の範囲内におきまして、先ほど外務大臣が申されましたような、本件がいわゆる亡命的な性格を持った一つの人道的ケースとしてスタートした、それにもかかわらず突如として異議の申し出を放棄して中共帰還がきまった、そういうような人道的性格を帯びた事件で、亡命という人道的性格を帯びたケース、慎重に取り扱わなければならないケース、それが突如としてそういう意思変更の結果退去強制令書が出された、そのことについて、先ほど外務大臣がおっしゃったように、国の内外においてそれが非常に問題になっている、この問題が円満に解決されまして、その疑問が解消された後に送還するという配慮も、これは五十二条の解釈上許されようではないかということで処理しているわけでございます。
○岡田委員 そういう拡張解釈は許されないのですよ。これは第四節の退去強制令書の執行の項にあるのですから。退去強制令書の執行ということは、すみやかに日本の国から去ることが本旨なんですから。それがやむを得ない場合はという、いわゆるただし書きの条項なんですから、そういう点まで拡張解釈することは、私は法律の解釈として拡張解釈であり乱用だと思う。 そればかりでなく、もう一つは、再確認という場合に、——再確認ではないとあなたはおっしゃった。そのとおりだと思う。たとえば、その場合でも、本人の自由意思によってそれを言わなかったらどうですか。言わなかったら確認できないでしょう。あなたは強制力を持つことができますかどうですか。
○富田説明員 本人が言わない場合には、もういたし方ございません。それがまた、言わないことがあるいは本人の最終的な意思ということになるかもわかりません。
○岡田委員 いまのような状態なんですよ。本人はもう意思の変更はないということはさっきから入管局長ずっと言っているのです。外務大臣、いいですか。ところが、あなたは本人の意思を確かめて云々と言っているのです。仮放免の期限は二十日なんですよ。このあとどうするのですか。仮放免の期限を再度延ばすという腹なんですか。そこの点はどうなんですか。国会はきょうこれで終わりなんです。あと質問する機会がないから、この点ははっきりしておいてもらいたいのですが、手続としてはどうされるのですか、外務大臣。
○大平国務大臣 政府部内でいま鋭意相談中です。
○岡田委員 鋭意相談中と言われても、あなたはなるべく早い機会にとさっき穂積君の質問に答弁されましたね。こういう形でいつまでも延ばせますか。本人自身が退去をしたいと言っている。大体仮放免というのは本人の希望に基づいて手続することなんですよ。本人は仮放免もいやだと言っているのですよ。それなのに、どういう形で政府はこれを拘束されようとし、どういう手続とどういう方法によって仮放免の延長ができるのですか。法的にそういうことは認められますか。その点、外務大臣もう一点伺います。
○大平国務大臣 そういう点も含めていま政府部内で検討中です。
○岡田委員 だけど、含めてといって、あなた、この前一回延長しているのですよ。この前のときはあれは合法だったのですか。私はあれは違法だと思うのですよ。その点はどういう解釈をとっておられるのですか。
○大平国務大臣 私といたしましては法務当局を信頼をいたしておるわけでございまして、これからどういう措置をとるかという点は、正直に申しまして、政府部内でいま検討中だとお答え申し上げているわけです。
○岡田委員 大臣も三十分までしかおられないそうですから、おられる間に聞いておきたいのですが、これは入管のほうに伺っておきますが、十一月二日に東京地裁で仮処分をしたはずです。それについてはもう少し詳しく申し上げましょう。十一月二日に東京地方裁判所に人身保護令の請求を弁護士を立てて正式に出しました。これが受理されました。これに基づいて仮処分が行なわれたはずです。その仮処分の裁判所の理由はどういう理由になっておりますか。
○富田説明員 正確にかつ詳細に記憶しておらないので申しわけございませんが、人身保護命令が出されたと記憶いたしております。
○岡田委員 だから、その理由を伺いたかったのですよ。それじゃ、私のほうで言いましょう。そのほうが早いから。不法監禁の疑いが濃厚であるという理由によって仮処分が行なわれた。大臣、よく聞いておいてくださいよ。政府のとった措置が不法監禁であるという疑いが濃厚であるという決定を裁判所がしている。不法監禁をやろうとしているのですよ。濃厚であることをやったんですよ。その後において、なるほど入管当局はこういうように答えられるでしょう。それは入管にいた当時のことであって、それから直ちに仮放免をいたしました、現在は日赤病院にありますから不法監禁ではございません、こういうように答えるでしょう。ところが、同じ状態ですよ。なぜならば、本人の意思に反して出国することを許されないのだから、不法なる監禁状態ですよ。これは裁判所の言っているとおりですよ。この事実をお考えの上で、このあと何日までこれを置かれるのですか、こういう状態で。すみやかになどと言って、五十日たっているのですよ。来年にまで延ばしてしまって、すみやかにすみやかにと外務大臣はそのままの状態をお続けになるのですか。こういう点についてひとつ外務大臣のもう少し明確な御答弁をわれわれは伺わないと納得するわけにはいかないのであります。
○大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、今後どういう措置をとるかという点につきましては政府部内で検討中でございまして、その検討を待ちましてでないといつごろの解決になるかということはいまの段階では私から申し上げられません。
○岡田委員 それでは、政府で検討中ということですが、いつまで検討されるのですか。その日にちだけでも明らかにしてもらいたい。
○大平国務大臣 御指摘のように、二十日に仮放免の期限が一応切れるわけでございますから、早急にそれまでに政府としては方針をきめなきゃならぬわけでございます。さっそくやらなければならぬ問題だと心得ています。
○赤澤委員長 外務大臣は退席されてけっこうです。かねての約束ですから。
○岡田委員 退席される前に、もう一点だけです。これ以上伺いません。 それに関連しますが、この退去強制令書が出たあと、そして三十日に本人はBOACに乗ると言っておった。たしかその同じ日だったと思うのですが、大野伴睦氏が台湾に行きましたね。台湾に行ったときに、何でもこの問題について政府の関係から親書を持っていったというように伝えられているが、それは外務大臣のほうでおつくりになったのですか。
○大平国務大臣 そういう親書の御携行を願った覚えはありません。 〔「思いつきでやるなよ」と呼ぶ者あり〕
○岡田委員 思いつきじゃありませんよ。私はそんないいかげんなことは聞いていませんよ。それまでに口上書が再三あったわけでしょう。口上書があって、大野伴睦氏が行くとするならば、当然そういう書類を持っていっていなければならないと思うが、そこの点、もし条約局長が御存じならばお答えいただいてもけっこうですが、親書という形のものでないにしても、何か持っていっているはずです。
○大平国務大臣 周鴻慶氏の事件に関しては、全然さようなものはございません。
○岡田委員 それじゃ、大臣にもう少し伺いたいのですが、何か外交事情があるそうですから、大臣、もうけっこうです。 そこで、入管のほうにもう一度伺ってまいりますが、先ほどの御答弁のとおり、意思の再確認というものをする法的な根拠はないわけですね。
○小川説明員 意思の確認ないしは再確認という言葉が始終使われておるのでございますが、私といたしましては、人間の意思はもう始終変わるものでもございますし、そういう確認というふうな言葉はなるべく避けたいのでございますが、便宜上用いておるわけでございます。それで、私はあえて先ほど来から意向という字を使っておりますので、それで率直に申し上げますが、これは法律論でも政治論でもございませんけれども、私個人といたしましては、やはり、一度間違っておったにもせよ台湾へ行きたいというようなことも申しておりますし、ですから、これは何かの間違いかどうかは知りませんけれども、これをやはりはっきりいたしまして帰るというのが妥当じゃないか。あえて申し上げておきますれば、最初からまっすぐ帰ってくれればよかったのでございますけれども、まあいろいろな異常な状況のもとにそういったことになったということはよく了解できますけれども、やはり、まいた種と申しますか、そういう意味で、私どもは、自分の口からこれははっきり言ったほうがいいのではないかという気がしておるものですから、それで、意向を何とか確かめたい、念のためにと、こういうことを申したわけでございます。
○岡田委員 しかし、入管局長、ちょっとおかしいじゃないですか、自分の意思ははっきり書面で出したじゃありませんか、台湾のほうから依頼された藤井という弁護人に対してまかせるというものを出しながら、そのあとで文書でそれは取り消しますという意思表示を明確に行なったじゃありませんか。それを、あなた、もう一度確認をするというのは、どういう意味ですか。その文書以外にもう一度何かしなければならないのですか。もう確認されているじゃありませんか。
○小川説明員 私の申しました意味は、疑いを持たれているとすれば、やはりそれに対してはもうはっきりしておればはっきりしているんだということをちゃんと申し述べて行ってもらったほうが万事うまくいくんじゃないか、こういう意味であります。
○岡田委員 これで終わりますが、だから、その意思は明確に文書でしてあるじゃないですかと言うのです。口で言うよりも文書で書いてあるほど間違いないことはないじゃありませんか。それはしかも政府に出しているのですよ。もちろん新聞に発表しているのもありますけれども、政府にその文書を正式に出しているのですよ。出しているのに、そのあとにもう一度何か取らなければならないんですかと言うのです。たとえば、あなた、そういうことをおっしゃると、今度の例は一応の先例になりますよ。周鴻慶事件というのは、われわれ社会党のほうとして、あるいはその他のわれわれ政府以外の者としては、これを先例として考えますよ。それは当然あなたは覚悟の上でしょうね、一つの先例ですよ。こういう例を残してよろしいんですか。入管の局としてですね。いわゆる特別な事情がございましたからしかたありませんとあなたは答えるかもしれないけれども、それは明らかに先例でございますよ。きのうの法務委員会の答弁でも、こういう先例はございますということを次長のほうが答弁しましたね。そういう先例があるなら、どんどんひとつこういう事例をお話しください。先例はあまり私は知らない。たとえば、退去強制令書を出して、その後五十日間もこういう形で執行しないで置いておったという先例がありますか。しかも、こういう例、周鴻慶と同じようなこういう一つの先例が今後において当然出てきますし、それから、意思の再確認といわれる、——意向を聞くというか、局長の意見では意向を聞くということばなんだそうですか、それは、ことさらそう言っておられるのは、法律的にはそういう根拠はないからそう言っておられるので、ところが、そういう法律の手続としてはすでに本人がしておるのですよ。それを再度聞かなければならないというようなことも、これは先例になりますよ。それではそういうことをあえてお考えの上でこういうことを言っておられるのですね。
○小川説明員 私の気持の表現のしかたも悪かったかもしれませんけれども、法律論とか政治論とかいうことでなく申し上げた次第でございますので、それをあくまでいま強行しようと言っているのじゃございません。意思を確かめると申しますか、納得のいくような、内外の多少の疑念をはらすのに、もし本人がそういうことを言ってくれるならば非常にそのほうがいいんじゃないかという意味でございます。
○岡田委員 それで、私は意見を言って終わりますが、入管局長、あなたは、法的には違法のことを政治問題としてやることは、違法でもあえてしかたがない、こういう入管局長の態度なんですか。そうじゃないでしょう。これはそんなことをしたら違法ですよ。あなたはさっきから法律的に根拠がないと言っているでしょう。しかも、本人がその意思を表明しなかったらどうですか。いつまでも置いておくのですか。置いておけないでしょう。意思の表示をしなかった場合どうするのですか。その点についてもう一度明確にしておいてもらわないと、さっきから外務大臣も言っているし、それから、きのうの法務委員会では法務大臣も意思の確認をしたいと言っているでしょう。本人が言わなければそれきりですよ。それは、いつまでも、本人が言うまで置いておくということですか。置いておくということは、そういう日本の国に仮放免という形で拘束するということは、これは明らかに人権じゅうりんですよ。本人の自由なる意思を拘束するのですもの、人権じゅうりんに違いないじゃありませんか。いつまでこういう状態に置いておくのですか。入管は、直接の担当の局として、この点だけは明確にしておいてもらいたい。いつまでも人権じゅうりんの状態を続けるのか。そうして、本人がそういう点を意思表示をしないといった場合どうするのだ。そこの点を明確にしていただくことが一つと、それから、これに対して、きのうの法務委員会でもだいぶ御発言があったのですが、台湾政府の関係者を、本人の意思を明確にする際に、そこにしゃにむに立ち会わすというようなことになると、これは明らかに内政干渉でしょう。特に本人がそれを要求しなかった場合においては、そういうことはできないはずです。法律の力に基づいてそれをやることもできないはずです。だから、台湾の関係者、あるいは弁護人も含めて、そういう者を立ち会わしてそういうことをさせるということは、これは日本の法律を守る意味においても絶対に入管としてはやらないでもらいたい。いまあなた方のやられるただ一つの道は、退去強制令書に基づいて、これをすみやかに執行すること以外にないのですよ。これのみが法律的に合法なんであって、それ以外には、いろいろな理由をつけても、全部それは違法なんです。違法ではないとしても、法律にはかなっておらないと思う。違法性を持っておると思う。そういう点では、法律の番人であるべき法務省の中の機関である入管の当局自身がそのような違法性を持ったそういう行政の措置を行なわないように強く私は要求いたします。あなたのほうにただいま申し上げたことについて御感想があるならばひとつぜひ伺っておきたい。どうも、小川さんは外務省から出向されている人だけれども、外務省からだいぶ圧力を受けて法務省は腰が砕けているのですよ。富田さんもおそらくそういう感想には同感だろうと思うが、ひとつ、しっかり、法律を守るという意味で、外務省が何と言おうと、この問題については法の命ずるところに従って思い切った措置をすみやかにとっていただきたいと思います。何か御感想があれば伺っておきたいと思います。 ————◇—————
○赤澤委員長 この際、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。 本委員会といたしましては、閉会中もなお国際情勢に関する件について審査をいたしたいと存じますので、この旨議長に申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○赤澤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後一時四十二分散会