運輸委員会 第3号
- 発言数
- 78 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1963/12/14
会議録
○川野委員長 これより会議を開きます。 海上保安に関する件について調査を進めます。 質疑の通告がありますので、これを許します。内海清君。
○内海(清)委員 先般の当委員会におきまして、多くの人命が犠牲になりました国鉄の鶴見事故を中心にしまして、事故防止の見地から、国鉄経営のあり方等について真剣な論議が行なわれたのでありますが、かかる傾向は、私は、今日わが国の社会の基調の中に人命を尊重するということが失われておるのではないかというふうに考えるのであります。ことにいろいろ産業のスピード化あるいはマスプロというふうなことからいたしまして、とかく今日人命尊重ということが第二義的になっておるような傾向を見るのであります。したがってこのことは、私どもは十分この際一そうの反省をいたしまして、人命の維持発展ということ、これが社会の基調の中に確立されなければならぬ、すべての生産の出発点はまずこの人命尊重ということから出発されなければならぬと思うのであります。こういうふうな観点から考えますときに、陸上も次々と重大事故が発生いたしておりまするが、海上におきましてもまたこういう海難事故が多く発生を見ておることは御承知のとおりであります。そこで海難防止の問題につきまして若干お伺いしたいと思うのでありますが、特に海難の最も多くなりまする冬季を迎えまして、一そうこの問題が十分な検討がなされまして、陸上交通安全の問題とともに海難防止の万全の措置が講ぜられなければならぬと思うのであります。 まず海上保安庁にお尋ねいたしたいと思うのでありますが、最近の五カ年間くらいにおきます海難の発生状況から見てどういう傾向にあるか、海難の特徴というふうなものについてひとつお伺いしたいと思うのであります。
○辻政府委員 最近の海難の傾向といたしましては、漁船それから機帆船の小型船の海難は減少の傾向にございます。ところが一方、汽船のほうはむしろ増加という傾向にございまして、汽船の中で特に千トン未満程度の小型の鋼船の増加が目立っておる次第でございます。それからもう一つ、港内におきます海難の発生が、やはり多少ではございますが、むしろ増加の傾向をたどっておるというふうな傾向にございます。
○内海(清)委員 大体漁船、機帆船の海難は減少した、それから貨物船で、特に小型鋼船の海難がふえておる、さらにまた港内におきまする海難事故あるいは衝突事故等がだんだんふえてきておる状態であるということでございますが、その他船の大きさでいけばどういうふうな傾向にあるか、あるいはまた遠距離海難の状況等についてもお知らせいただきたい。
○辻政府委員 したがいまして、先ほど申し上げたような傾向でございますので、海難船舶の平均トン数は、大きさはむしろ上がっておる傾向にございます。それからまた海難の中におきまするいわゆる全損の割合は多少ふえつつあるような状況でございます。それからいま御指摘がございました遠距離の海難数もふえつつあるという状況でございます。
○内海(清)委員 次には、これも最近の五カ年間程度でいいと思いますが、一般海難の船種別の海難発生状況の推移であります。——それでは、いまわからなければ、時間の関係もありますから、あとから聞くことにいたしてもよろしゅうございます。
○辻政府委員 それでは、ちょっといま手元に五カ年のものを持っておりませんので、後刻資料で提出させていただきます。
○内海(清)委員 それでは次に、昭和三十七年度におきまする一般海難の船種別発生状況はどうなっておるか。
○辻政府委員 三十七年度の海難の状況でございますが、これは全体の隻数で申し上げますと二千八百十八隻でございます。これは暦年でございます。そのうち漁船が千百七十四隻で四二%でございます。それから機帆船が八百九十一隻で三二%でございます。それから汽船が五百九十八隻で二一%でございます。いま申し上げました漁船、機帆船、汽船以外のその他船舶が百五五十隻で五%、こういう状況に相なっております。
○内海(清)委員 次に、原因別の発生状況を承知いたしたいのでありますが、これはなかなか複雑でありますから、これもあとから資料をちょうだいしたいと思いますが、ただ一つお伺いしてみたいと思うことは、この原因別の発生、状況の中で、不可抗力と判断されるようなものがどの程度にあるのか。
○辻政府委員 私どもの見るところでは、不可抗力と見られるものは、原因不明のものも合わせまして一〇%以内というふうに一応考えております。
○内海(清)委員 不可抗力のものが一〇%以内、これはいろいろとり方によって違いますが、もっと少ないのじゃないかというふうに私は考えておりますが、これは資料をちょうだいいたしたいと思います。 そうすると、その他の不可抗力以外のもの、たとえば運航の誤りであるとか、機関の取り扱いの不良、貨物の積載方法の不良あるいは船の構造の不良あるいは材質の不良と、いろいろなものがあると思いますが、こういうものは、たとえば検査官の検査を厳格にすることによって、あるいは船体の構造を改造することによってあるいはまたやむを得ないものにつきましては、積み荷の制限をする、こういうふうなことによって、これらは防ぎ得るのであります。こういうふうなものが相当あるのじゃないかというふうに考えますが、それらの点につきましては、どういうふうにお考えですか。
○辻政府委員 先ほど申し上げましたのを正確に申し上げますと、いま御指摘ございましたように、不可抗力と考えられますものは先ほど一〇%以内と申し上げましたが、私どものところでは一応四%程度というふうに考えております。 原因別の海難の発生の点でございますが、これは運航の誤りによる海難が最も多うございます。以下機関の取り扱いの不良、気象海象の誤認、それから火気の取り扱いの不良、積み荷の不良等というふうな順序に相なっておりまして、いわゆる乗り組み員の人為的な原因に基づくと考えられますものが、約七五%程度というふうに考えております。
○内海(清)委員 そうすると、人為的なものによるものが七五%ということでありますが、こういうふうなものは、先ほど申しましたように、検査を厳格にするとか、あるいは船の構造を改良していくとか、ないしは積み荷に対する規制を行なうとか、いろいろな方法でこれは今日なお一そう防ぎ得るものだ、こういうふうに考えられますが、その点はどうですか。
○辻政府委員 先ほど申し上げましたように、人為的なものが原因になっておるわけでございますから、船体の整備でありますとか、あるいは運航を慎重に行なうというふうなことによって相当に海難は防止できるものと考えております。
○内海(清)委員 それでは次にひとつお尋ねいたしたいと思うのでありますが、今月の八日の夜、北海道の松前沖で沈没しました加明丸の海難事故ですが、これにつきましてここに資料もいただいておるようでありますが、御説明いただきたい。
○辻政府委員 いわゆる加明丸の海難でございますが、加明丸と申しますのは汽船でございまして、総トン数九九八・九二トンでございます。乗り組み員は二十二名でございまして、船主は神戸の正向海運株式会社という、いわゆる中小船主でございます。この船を日正汽船株式会社が用船をいたしまして、亜鉛鉱を千四百五十五トン積みまして、十二月の八日午前零時に小樽を出帆いたしまして、敦賀に向かって航行しておったのでございます。なおこの船は、三十六年四月竣工でございます。救命設備は、三十名定員の救命艇二隻と救命浮環八個、救命胴衣三十個を備えておったものであります。 八日の午後五時九分に本船の積み荷移動のために船が傾斜しつつある、それでいま函館に向かいたいという緊急通信を発信いたしまして、続いて五時十三分に遭難通信、いわゆるSOSを発信したのでございます。ところが五時二十七分になりまして船長はSOSを解除いたしまして、再び緊急通信に切りかえて発信いたしました。それから六時三十六分に船体が三十五度傾斜して再び危険状態におちいったというので、六時四十二分に再びSOSを発信したものでございます。午後七時四十五分にボートに移るという連絡を最後に通信が途絶したわけでございます。乗り組み員二十二名のうち二十名がこの七時四十五分にボートに移乗したのでございますが、ボートが着水前に転覆いたしまして、二十名は全員海中に投げ出され行くえ不明となっております。二名はボートのおろし作業をいたしまして、おそらくその作業の後にボートに乗るつもりであったわけでありますが、ボートが転覆いたしましたので、加明丸の沈没直前に海中に飛び込みまして、付近を航行中の汽船清河丸に救助されたということであります。救助された時間は二十一時十一分でございます。それで当該船は午後八時四十分に沈没をいたしております。 大体加明丸の遭難概況は以上のようなことでございます。
○内海(清)委員 御承知のように、この加明丸はいわゆる硫化鉱を積んであるということでございます。この資料の中にも、戦後に含水微粉鉱石を運送中沈没したものがあげてあります。これは沈没したもののみでありますが、しかしこの貨物の性質上、今日まで沈没までには至らないけれども、いろいろ船が傾斜いたしましたとか、あるいは傾斜したためにやむなく乗り上げたり、いろいろな事故というものがこれ以外にずいぶん起きておる。だから沈没までに至っていないから表面に出ていないが、実際こういう微粉鉱石の積み荷による海難事故というものは表面にあらわれたものよりもかなり多いのではないか、こういうふうに私は想像いたしておるのでありますが、その点どうですか。
○辻政府委員 私どものほうで調査したものによりますと、三十八年の一月一日から加明丸の遭難した十二月十二日までの汽船のいわゆる積み荷の荷くずれに起因すると推定される海難は八隻でございます。沈没したものもございますし、それからいま御指摘がありましたような、そのために航行不能となって座礁したものあるいは曳航救助されたもの、あるいは全損になりましてあとかたもないというようなものも全部含めまして八隻ということでございます。
○内海(清)委員 三十八年の一月から今日まででも八隻ということであります。私どもの調査によりましても、微粉鉱石のバラ積みによる海難事故というものは表面に出ないものもまだかなりある、こういうふうに考えておるのであります。これはきわめて重大なことであると思うのでありますが、この微粉鉱石の積み荷によりまする事故の特徴、これについてひとつ御説明いただきたい。
○藤野政府委員 微粉鉱石による海難沈没の特徴と申しますると、貨物の特性に基づく荷物の片寄りということが考えられるわけであります。微粉鉱石と申しますと、御承知のように浮遊洗鉱法によりましてある程度不純物を除きましてつくりましたこまかい鉱石の粉でございますが、これは積みます前は一見しめったどろのごとき感じがするものでございます。これは大体水分が一〇%内外というのが普通であります。これを船舶に積載いたしますると、波による衝撃でありますとか、機関の振動等によりまして貨物に含んでおりました水分が漸次析出されまして貨物の表面に水分が浮かび上がる、これが適当な措置をいたしませんと動揺によりまして荷物が片方に寄ったままになりまして、ついに復原性の限界を越えて沈没するという危険がある貨物でございます。
○内海(清)委員 微粉鉱石の積み荷による事故の特徴としては大体いまお話しになったようなことだと思うのであります。しからばそういう特殊な積み荷に対して、従来運送対策としてはどういうふうなことがやられておるか、これについてひとつお示し願いたい。
○藤野政府委員 含水微粉鉱石の運送の安全のために昭和三十一年に関係四団体が自主的な規約を設けまして、その規約に基づきまして積みつけの自主的な規制をいたしておるわけでございます。これは船主協会、鉱業協会、損害保険率算定会並びに社団法人の日本海事検定協会、四つの団体でございます。それによりまして積み地におきまして積みつけ検査をいたしまして、合格したものに対しまして海事検定協会が合格証を交付しておるわけでございます。
○内海(清)委員 この運送対策としては、昭和三十一年にこの関係の四業者によります運送の規約というものが自主的にきめられて、それによって積み荷をやっておるということであります。しかもこれにつきましては含有水分の量の多寡によりまして、いろいろ考えられておるようであります。ところがそういう自主規制のもので今日までやられてきて、なお海難事故が非帯に多いという。これはあとでお伺いいたしますけれども、そのことが四十三国会におきまする船舶安全法の一部改正によって、これに対する法規制の根拠規定ができたということだと思うのであります。そこで一つお尋ねしておきたいのでありますが、国際的にこうようふうな積み荷に対する規制がございますか。
○藤野政府委員 国際的にこの種の特殊貨物の積みつけ並びに運送に関する規則あるいは規約がございます。あるものは自主的規則であり、あるものは国が法的な規制をやる。いろいろまちまちであります。それぞれそういう規則を持っております。
○内海(清)委員 そうすると国際的なその規制としては海上人命安全条約に基づくものはないということですね。各国がそれぞれ自主的に法的な規制をしてはおるが、国際的にはないということですね。
○藤野政府委員 微粉精鉱につきましては、国際的なものはございません。
○内海(清)委員 しかし外国ではこの微粉精鉱につきましては各国国内の規制を持っておると思いますが、それはどの程度のものでありますか。
○藤野政府委員 微粉精鉱の積みつけあるいは運送の規制の自主的な内容を見ますと、現在自主的な規制をやっておる線と大体似たようなものであります。あるものはそれよりもゆるやかであり、あるものはそれよりもやしシビアーであるということでございます。大体日本の積みつけ基準はむしろ厳格なほうに近い規則でございます。
○内海(清)委員 各国で国内規制は規則をもって法規制をやっておる。それがかなりあるということであります。ところがわが国では、先ほど申しましたように、従来の関係四団体の自主規制ではやはりこの海難がなかなか防げない、こういうことで、先ほど申しましたように、さきの四十三国会で船舶安全法の一部が改正されまして、この微粉精鉱と、いま一つ本年の六月ですか非常な問題になりました例の洞南丸のラワン甲板積みの問題、こういうふうなものが規制されるような根拠規定ができた、こういうことであると思うのであります。ところがその規則のこまかい技術的な問題につきましては、これはすべて省令にゆだねられておる、こういうことであります。すなわち穀類その他の特殊貨物船舶運送規則、これにいま申しましたように新たに対象になったものが甲板積みのラワン材である。それとこの微粉精鉱の問題である。この省令案については、私の聞くところでは、すでに本年一月以降六月の初めごろまでに、関係機関でありまする特殊貨物研究会、これによってすでに結論を得ておった、こう聞いておるのでありますが、これはいかがですか。
○藤野政府委員 ただいま御指摘のとおり、ラワン材のごとき特殊貨物を含めまして、ただいまおっしゃいました穀類その他特殊貨物船舶運送規則の原案が特殊貨物研究会において官民合同で審議をされましたことは御指摘のとおりでございますが、完全に結論を得たということではございませんで、なお規制の基準につきましていろいろ議論がございまして、最後的な結論には到達していなかったわけでございます。あらかた合意の線が出かかっておったことは事実でございます。われわれといたしましては、先般の国会で根拠規定を設ける改正を御承認いただきましたので、この線に沿いまして極力この省令の制定公布を急いでおる状況でございます。
○内海(清)委員 本年の一月から六月の初めまでで大体省令案の原案というものが、私はこの研究会で大体結論を得た、こう聞いておるのであります。もちろんこの研究会は運輸省の船舶局なり海事検定協会なりあるいは損保協会なり鉱業協会、船主協会、海員組合、こういう構成になっておると思うのですが、これの合意はまだ得られていなかったのですか。その点ひとつ明らかにしてください。
○藤野政府委員 ただいま申し上げましたように、技術基準につきましてなお一、二問題点がございましたので、最後的な合意までには達していなかったというふうに了解いたしております。
○内海(清)委員 それでは最後的な結論を得たのはいつですか。
○藤野政府委員 最後的な結論はきわめて最近大体得られたというふうに考えております。最近、ちょうどこの事故が起こりまして、翌日実はこの研究会が予定どおり開かれまして、たまたま事故の起こりました翌日これを検討されまして、そのときにも、従来問題になっておりました問題の一〇〇%合意という段階ではなかったようでございまするが、この点につきましては、その後事務的な折衝をいたしまして、やや結論に達したと考えてよろしい昨今でございます。
○内海(清)委員 その辺に私どもの聞いておりますのと若干の食い違いがあるようでありますが、私どもは六月初めまでに大体結論を得た、かように聞いておったのであります。その後これは一部荷主等からいろいろな問題が出て、それがあいまいにされたというふうに聞いておりますが、その点はどうですか。
○藤野政府委員 この点につきましては、御指摘のように、鉱山側あるいはその監督官庁であります通産省からなお意見が出たことは事実でございますが、こういう点につきましても、先ほど申し上げましたように、事故の起こりました翌日予定どおり開かれました研究会、その後の折衝を通じてほとんど結論に達したというふうに考えてよろしいのではないかと思います。
○内海(清)委員 それでは最近結論が出たといたしまして、その結論は六月初めに大体最終的な合意を得たというものと内容的には違うところがございましょうか。
○藤野政府委員 内容につきましては六月ごろ得られた結論とほとんど変わってないようでございます。
○内海(清)委員 そういたしますと、ここで一つお尋ねいたしたいのは、この船舶安全法の一部改正はすでに十月一日から実施されておるわけですね。したがって、当然この特殊貨物運送規則も十月一日に実施さるべきであったと思うし、なおかつ運輸省当局としてはこの十月一日に実施するということをそれまでに一応公約しておられるように私は聞いておるのです。ところがこれがいまだに実施されていない。もしこれが十月一日から実施されておったならば、今度の加明丸の問題はあるいは起きなかったのではないかというふうにも想像できるのでありますが、なぜ最終的には六月の結論と同一であるものが今日まで実施されなかったか、それらの点についてお伺いしたいと思います。
○藤野政府委員 私ども十月一日にその規則を実施したいというふうに考えまして鋭意努力しておりましたところ、これはほんとうに申し上げにくい理由でございますけれど、安全法施行規則の改正が意外に手間取りましたのも一つの理由でございまして、十月一日に間に合わなかったのは非帯に残念に存ずる次第でございます。しかしながら、この研究会を通じましてこの種の特殊貨物輸送上の問題点につきましては、関係者に十分この認識が深まってきたということを考えまして、少なくとも関係者はこの点について、かりにもおろそかに考えるようなことは絶対になかったというように考えております。しかしながら御指摘のとおり、この種の規則は安全に関する規則でございますので、一日も早く公布し、一日も早く実施すべきであるというふうに考える次第でございます。
○内海(清)委員 私の特に遺憾と思いますのは、六月に大体結論を得たのに、通産省あるいは荷主の一部等から異論が出て、その結論が得られなかった。それで今回の加明丸のような事件が再び起きたということは、私は非帯に問題だと思うのです。つまり今度の規制によれば、運賃コストが上がるのではないかというふうな問題によってこれが結論を得られないで、ここに多くの人命の損傷を見たということは、根本的に考え方が間違っておるのではないか、人命尊重の問題はすべてに優先しなければならぬと私は思うのであります。この点についてはどうお考えでありますか。
○藤野政府委員 御指摘いただきますまでもなく、私どもといたしましては、人命安全の問題は最優先すべき問題でございます。安全法の改正によりまして、この点がいろいろな根拠法規ができまして、さらに一段と安全性の向上が期せられるような体制ができましたことをわれわれは非帯に心強く思っておる次第でございますが、経済問題に安全問題が、何と申しますか譲歩するというようなことは絶対あってはならない問題でございます。しかしながら、経済問題の程度でございまして、ただいま御指摘がありましたように、この特殊貨物の特定の問題だけに限って申しますると、運航コストが上がるという反対によってわれわれが技術的な基準を譲歩したということは、ただいまちっともないわけでございまして、われわれはいろいろな反対その他もございましたが、原案を極力実施する考えで、ただいま進んでおるわけでございます。このような経済問題に安全問題を置きかえると申しますか、譲歩することは、われわれ毛頭考えておらぬところでございます。
○内海(清)委員 局長のせっかくのお言葉でありますけれども、実際においてそういう通産省その他一部荷主の反対によってこれが今日まで結論を得ないで、そうして引き延ばされたということは、結果的にはやはり人命軽視ということに相なることであります。ことに通産省側としてそういうことがありますならば、この海上におきまする人命尊重の立場にあります運輸省としては、これはあくまでも強力に排除していかなければならぬと思うのであります。それがいままで弱かったんじゃないか。さらにまたこの安全法等のために成文化の作業がおくれたというふうなことは、これはまたもってのほかだと思うのであります。こういう点につきましてひとつ大臣の御所見をこの際伺っておきたいと思います。
○綾部国務大臣 従来船舶安全法に基づくその積み荷の規制の省令につきまして交渉の結果、ただいま局長から申しましたとおりでございまして、私どもは近時——従来もそうでごさいましたが、近時の非常な、ややともすれば人命軽視の疑いのあるようなやり方については非常に強く反対いたしまして、速急にその案をきめるように指示してございまして、近くきまることと思っております。ことに通産省とか荷主の人あるいは船舶所有者等がそういうようなことを申しましても、いま内海委員御指摘の人命尊重の趣旨に従って強くこれをやる決意でございますから、さよう御了承願います。
○内海(清)委員 大臣も人命軽視のこの傾向には強く反対ということでありますけれども、現実の問題として今日までこれが軽視される方向にいっておったということははなはだ遺憾であります。これらにつきましては、今後運輸省当局としても強力に進めていただきたい。特にすでに冬季を迎えておるのであります。海難の多く発生する時期にきておるのであります。したがってこの特殊貨物の運送の規則につきましても、即刻これは実施されなければならぬと思うのであります。いつごろ実施の見込みでございますか、大臣。
○綾部国務大臣 御趣旨、よく了承しておりまして、できることならば、もう年内と申しましても余日があまりございませんので、暦年の来年の早々には実現いたすべく努力いたしております。
○内海(清)委員 来年早々ということでありますが、これがまた実施されないうちに次の海難事故が起きるかもわからぬ。ひとつ、年内きわめて日が少ないのでありますけれども、年内に実施されるように最善の御努力を願いたいと思います。
○綾部国務大臣 了承いたしました。
○内海(清)委員 それから船舶局長にもう一つお伺いしてみたいのでありますが、新聞によりますと、この加明丸につきましては、三十六年の四月の二十七日、千葉県館山沖で材木を満載して初航海中、荷くずれを起こして船体が四十五度傾斜したまま、五ノットの速度でかろうじて館山に避難した、こういう事例があったということでありますが、このことは御承知でありますか。
○辻政府委員 いま御指摘のような事実は、私のほうの記録にもとどめております。海上保安庁のほうでも確認いたしております。
○内海(清)委員 どうかこういうふうな問題につきましては、特殊貨物の運送規則というようなものも早急に実施して——今日ラワン材の甲板積みにいたしましてもあるいは銑鉱の積み荷にいたしましても、きわめて多くの海難事故を起こしておるのであります。したがって、今後運輸当局といたしましても、この積み荷とあるいは船体構造との関係、これらにつきましては十分御考慮のことと思うのでありますが、大体の御方針についてこの際お伺いしておきたい。
○藤野政府委員 海難の原因は、申すまでもなく多種多様でございますが、船体の構造あるいは整備の欠陥ということ、船舶の運用の不適正あるいは気象海象の異常性というような三つの原因に大別できると思いまするが、最初の船体の問題、船舶自体の問題と運用の問題は、これは非常に関連性の深い問題でございまして、船舶の性能、構造を十分承知して運用の適正化をはからなければならぬと考える次第でございます。このうちで最も密接な重大な関係のあります問題は復原性の問題でございます。復原性につきましては船舶復原性規則というものがございまして、この規則の運用は構造自体をも規制する重要な規則でございまするが、昭和三十四年にこれを改正いたしまして、国内の貨物船といえども新造時に傾斜試験を強制いたしまして、復原性に関するいろいろなデーターをとることを強制しておるわけでございます。貨物船等の復原性につきましては、積み荷の有無によりまして非常に喫水が違いますし、また重い荷物、軽い荷物その他によりまして非常に船舶の復原性は変わってくるわけでございまして、数量的な規制は非常に困難でございまするが、今後はなおこの点につきましては運用者あるいは船主その他とも十分連絡をいたしまして、運用の適正化につきましてはわれわれのほうからもいろいろ御要望もし、御注意もし、なお一そう、特にこの特殊貨物の積載等につきましては慎重に積みつけ運送に配慮をしていただきたい、そのようになお今後の注意を喚起していきたい、かように存ずる次第でございます。
○内海(清)委員 次に私は港則法の問題についてちょっとお伺いしたいと思いますが、御承知のように昨年の十一月の十八日でしたか、京浜運河におきまするタンカーの衝突事件があった。それから一年経過したのであります。ところが、御承知のように、その当時この問題は当委員会でまことに激しい論議が行なわれて、その後港則法の一部が改正され、そうして特定港におきまする小型船の寄港規程が制定されるということに相なったのであります。ところがこの小型船の範囲をどうするかということでいまだにこれが決定を見ていない状態でありますが、この間の経緯についてひとつお知らせいただきたいと思います。
○隅説明員 港則法の改正に伴いまして、省令のトン数の規程でございます。これは海上保安庁と海運局その他いろいろ協議いたしまして、一応五百トンという原案を考慮したわけでございます。たまたま内航海運の小型船業者、ことに中国、四国の五百トン未満の小型鋼船を持っております業者からこれらに対しまして反対が出てまいりまして、運輸省といたしましてもこの点十分彼らに対して説得を続けておるところでございます。
○内海(清)委員 この問題もまた、さっきのいわゆる特殊貨物の運送規則が今日まで遅延したと同様に、そういう一部の業者の反対によりまして今日まで一年間も遅延しておる。これははなはだ遺憾に思うのです。特に特殊港湾におきまするその後の状況は御承知のとおりであって、ますます船舶の運航はふくそうしておる。なおかつ船は大型化しておる。当時よりもより一そうこういう事故の起こる要因は強まっておると思うのであります。しかるにこれがいまだにきめられてないということにつきましては、当局としては十分努力はされておりましょうけれども、これはもっと強力に進めていただかなければならぬ。もちろん五百トンということについてははっきりした基準というものはない。しかし、今日こういう特定港湾つまり神戸とか大阪とか、これらの状況を見ますと、確かに五百トン以下のものがほとんど八割程度を占めておる。しかもこの狭いところにおいてこれを曳航するという問題については、どこで線を引いたら最もいいのか。当時の問題としては大体五百トンが適当なところであろうということであったのでありますけれども、これらにつきましてその後いろいろ問題が生まれておるようでありますが、どういうふうなことになっておるのか、もう少しその点を詳しく承りたい。
○隅説明員 最近に開催を予定しております航行安全審議会においてもう一度この問題を取り上げまして、できるだけ早くこの省令の施行を急ぎたいと考えております。
○内海(清)委員 できるだけ早くこれを航行安全審議会においてやるというのでありますけれども、一応五百トンということが基準とされて論議されていたのが、その後一部業者の反対によってこれが今日までじんぜん日を延ばしているという。これは私は許さるべきことじゃないと思うのです。だから実際運輸当局が考えられてこの線が最も妥当であろうという場合には、これについて強力に、ひとに関係団体と話し合って早急に進めてもらわなければならぬと思う。これは大体いつごろ結論を得るような見通しでありますか。
○隅説明員 私聞いておりますところでは、年内はちょっと無理かと思います。来年早々にできるだけ早く施行いたしたいと考えております。
○内海(清)委員 来年早々できるだけ早く施行いたしたいということは、どういうふうな方向でですか。五百トンというものがどういうふうになるのか、五百トンの線でいくのかどうか。
○隅説明員 この点につきまして、三百トンという案もございますし、三百トンか五百トンかという点において至急にこの点を検討いたしまして、施行に移りたいと考えております。
○内海(清)委員 これから結論を得られるでありましょうけれども、五百トンが今日の特殊港湾の状況から最も妥当であろうという一応の結論を得たわけです。これがトン数が下がれば、その効果というものはだんだん低下すると思うのです。したがって、最も妥当と考えられる線においてこれが早急に決定されまして、施行されることをこの際強く要望しておきたいと思います。
○隅説明員 よくわかりました。
○川野委員長 久保三郎君。
○久保委員 船舶局長に一つお伺いしたいのですが、いまの加明丸ですか、これは満載喫水線が新造時にはあったというが、今日ない。これはいかなる理由で満載喫水線を新造時にはつくっておいて、あとでこれをなくしたのか。これについてはお調べがありますか。
○藤野政府委員 新造時は近海区域を主とする目的でつくりましたものでございますので、国際満載喫水線が強制され、表示をいたしておりましたが、その後、沿海区域に航行区域を下げましたために、満載喫水線の表示の義務がなくなりまして、これをなくしたわけであります。
○久保委員 あなたの説明でわからぬではありませんが、その必要性がなくなった満載喫水線というのはどういうためにあるのですか。
○藤野政府委員 満載喫水線の目的は、安全の基本的な規制の手段でございます。
○久保委員 聞かぬでもいいようなことを聞いているのですが、意味がなくなったということはどうも指導官庁としてはおかしい。
○藤野政府委員 意味がなくなったとは私は申し上げていないわけです。ただ義務がなくなったということを申し上げたのです。表示の義務がなくなりましたので、自発的にこれを抹殺したというようなわけであります。
○久保委員 これは船舶安全法の点から私は申し上げているのでありますが、言うなれば、こういうものを強制できるように考えるべきだという考えを持っておるわけです。この際は確かに、いわゆる積載荷物の性質によって、荷物の荷くずれというか、片荷ということによって転覆したのだろうと思いますが、そういう点、積載方法についての規定は、先ほど内海委員からお話のあったとおりであります。しかしかたがたこういう安全について、私はしさいに今後規制していかなければならぬと思うのですが、そういう考えで、新たな観点から船舶航行の安全について、船舶局長として検討する用意がございますか。
○藤野政府委員 特殊貨物を積載することに基づく船舶運航の危険からこれを守るというための法的規制につきまして、先ほど内海先生からの御質問にお答えいたしましたとおり、安全法第二十八条に基づく省令をただいま準備をいたしておりまして、関係方面の意見が合意に達したという段階でございます。 なお、満載喫水線の問題につきましては、先般久保先生からも強い御要望がございましたとおり、満載喫水線の人命安全条約に基づく規制を拡大いたしまして、さらに広範囲な沿海区域、その他国内航海の船につきましても、積み荷制限をすることによって、船舶の航行の安全を向上させるということを当然考えるべきじゃないかという強い御要望がございましたが、これにつきましては鋼船と木船といろいろ性質が違うものがありますが、鋼船につきましてはそういう方向に向かってわれわれは検討したいと考えまして、調査のための予算要求もいたしておる次第でございまして、御要望に沿う方向に検討を始めたいと考えております。
○久保委員 加明丸の問題でございますが、積みつけの検査は日本海事検定協会がしたというのでありますが、ここにあるような積みつけはいわゆる四団体のきめたところの規定というか、そういうものに合致して、しかも的確に検定協会がこれの積みつけ検査をしたのかどうか、そういう点をお調べになっておりますか。
○藤野政府委員 この四団体の協議に基づく運送規約によりまして、日本海事検定協会の小樽支部が適正に積みつけ検査をいたしまして、これに対しまして合格書を発給しておるということの報告を受けております。
○久保委員 大臣がおらぬけれども、政務次官がおられますから一言要望申し上げたいと思います。最近の交通運輸の関係では、交通運輸ばかりではありませんが、特に動くものにおきまして、先ほど内海委員からも指摘があったように、人命尊重——人命を軽視するわけでないでしょうが、人命に対する配慮が非常に薄らぎつつある。薄らぎつつあるというよりは、そういうところに配慮をするいとまがないようなかっこうで輸送が続けられておる、これが現実だと思います。これは陸海空全体にわたっての傾向だと思います。そこで政府部内には交通基本問題調査会というものもあるようでありますが、これはかかって輸送力の配分なり総合的な交通体系の樹立ということでその作業を進められておるわけでありますが、こういうところでやるかどうかは別にして、陸海空全体の交通運輸の安全の基本対策を樹立する必要がもう当面焦眉の急になっておると思います。事故が起きてからどうするこうするでは、もはやとうてい収拾がつかない事態だと思います。そういう意味で政府部内においても、交通運輸の安全対策の基本方針というか、そういう対策を樹立するための何らかの具体的な動きをすべきじゃないかと思うのですが、この点についてどういうふうに今日政府は考えられておるか。いかがでしょうか。
○田邉政府委員 ただいまの交通事故、また海運の海難事故等の問題につきましては、実は先般来大きな不祥事件が続いておりますので、運輸省内におきましてもこの根本対策というものを目下考究中でございます。もちろん閣議においてもこの問題を取り上げて慎重にこれを検討する、こういうことでございます。御指摘のような御趣旨に沿って、われわれ運輸省におきましても、また政府におきましても最善の努力を払うと同時に、これが対策を樹立するということは当然やらなければならないとわれわれも考えております。
○久保委員 お考えのほどはわかりましたが、具体的に来年度予算もすでに作業を開始しておるさなかでありますから、当然閣議の中に持ち込みまして、そういう対策を樹立するような姿勢というか、組織をつくって作業を進めるべきだと思うのです。これは一運輸省だけの問題ではないのでありまして、関係各省庁にまたがる問題が多いと思うのですが、これはそれなりに組織を政府部内として設けて、来年度予算なり政府なりの関係があるならば、その方面にやはり一つの芽を出してやっていくべきだと思います。できますならば閣議に対して政府自体の責任において、一運輸省の責任じゃなくて、政府自体の責任で対策を樹立する、こういうふうにしてもらいたい、かように考える次第であります。
○川野委員長 次会は来たる十七日火曜日、午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午前十一時五十一分散会