予算委員会 第7号
- 発言数
- 314 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1963/03/06
会議録
○委員長(木内四郎君) ただいまから予算委員会を開会いたします。 まず、委員の変更について御報告いたします。 昨日、須藤五郎君が辞任せられ、その補欠として野坂参三君が選任せられました。本日、曾祢益君及び田上松衞君がそれぞれ辞任せられ、その補欠として田畑金光君、永末英一君がそれぞれ選任せられました。 —————————————
○委員長(木内四郎君) 昭和三十八年度一般会計予算、昭和三十八年度特別会計予算、昭和三十八年度政府関係機関予算三案を一括して議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。稲葉誠一君。
○稲葉誠一君 最初に日韓会談を中心として、少し基礎的なことを総理に質問したいと、こう思います。 日本は韓国を承認しているのかどうか。それだけ答えて下さい。総理、答えて下さい。総理に要求しているんだ、外務大臣、あとから聞くから……。
○国務大臣(池田勇人君) 平和条約によりまして、韓国というものの存在を認めております。国交はまだ開かれておりません。
○稲葉誠一君 今の総理の答弁で外務大臣いいんですか。
○国務大臣(大平正芳君) 総理のおっしゃったとおりです。
○稲葉誠一君 平和条約で韓国という国家を承認しているんですか。いいですか、平和条約に一体韓国は参加しておるんですか。
○国務大臣(池田勇人君) 平和条約で韓国の独立を承認しておるのであります。
○稲葉誠一君 平和条約のどこに韓国の独立を承認したという文字がありますか。
○国務大臣(池田勇人君) これは平和条約によりまして、朝鮮の独立を承認し、それに基づいて韓国というものが国連で認められておるのであります。
○稲葉誠一君 私は、日本が韓国を承認しているかどうかを聞いているのです。いいですか、総理。国連に国家を承認する権限がありますか。
○国務大臣(池田勇人君) 一九四八年十二月で韓国政府は合法なものと、こう認めておるわけでございます。
○稲葉誠一君 それは国連の決議で、韓国を唯一の合法政府と認めるということでしょう。日本が韓国という国家を承認したということは、別個の行為が必要なんじゃないですか。こういう解釈は総理の言うような解釈というのがおかしいんじゃないですか。
○政府委員(中川融君) 日本は韓国政府を平和条約発効と同時に承認しておると考えております。これは平和条約で朝鮮が独立するのを認めたのでございます。朝鮮が独立すれば、当然そこには政府がなければいけないのでありまして、その際、日本といたしましては、北と南と両方の政府がございますが、国連決議の趣旨にのっとりまして、韓国政府のほうを承認しておる、そういう承認がございますればこそ、その韓国政府との間に重要な国交正常化の交渉を続けてやっておるわけでございます。
○稲葉誠一君 それじゃ日本は韓国を正式に承認しておる、こう承ってよろしいですか。
○政府委員(中川融君) 韓国の承認はすでに正式に行なわれておると、かように考えております。現在行なわれておるのは、その韓国との間に外交関係を開設する、こういう交渉を行なっておるわけでございます。
○稲葉誠一君 参議院の法務委員会で私が確かめたところによりすまと、法務省は通達を出しております。昭和三十五年の六月六日の民事局の通達。これは厚生省に対するものですが、その中で、「わが国が事実上承認していると認むべき大韓民国の法律」云々と言っております。正式に承認しているなら、「事実上承認していると認むべき」という文言を法務省が出すのはおかしいじゃないですか、外務大臣どう考えますか。
○国務大臣(大平正芳君) 先ほど承認関係につきましては条約局長からお答えしたとおりでございまして、こういう日本側の承認ということを、法務省におきましてはそのように表現されたものと思います。
○稲葉誠一君 おかしいじゃないですか。だから私は念を押して確かめているのですよ。日本は韓国を正式に承認しているかという問いをわざわざ出している。政府を代表して条約局長は、今正式に平和条約で承認していますと言っているじゃないですか。それを法務省では、「事実上承認していると認むべき」と言うのはおかしいじゃないですか。政府の見解は違うじゃないですか。どうです法務大臣。——いや法務大臣に聞いている。
○政府委員(中川融君) これは平和条約発効と同時に韓国政府を正式に承認しておるわけでございますが、しかし承認には二つのやり方がございます。はっきりこれこれの政府を承認するという明示の承認をいたします場合と、ある特定の行為によりまして、実際上の行為でこれを承認する。しかし、その効果は同じでございまして、これは法律上の承認になるわけでございます。法務当局が、韓国を実際上承認しておると認むべきであるというような通達を出しましたのは、その後者の形をとっておるからそういうことを言ったのでございまして、これがいわゆる正式の承認あるいは法律上の承認であるというその性格には変わりない、このように考えております。
○稲葉誠一君 非常におかしな議論を聞くわけです。そうすると、条約局長の見解では、平和条約で日本が韓国を承認したのは黙示の承認だと、こうおっしゃるわけですか。
○政府委員(中川融君) 平和条約におきまして、はっきり韓国政府を承認するということを言っておりませんので、やはりこれは黙示の承認である、かように考えております。
○稲葉誠一君 だいぶおかしくなってきたんじゃないですか。平和条約で、はっきり韓国を承認しておるというようなことを前に言っておきながら、今度ははっきりとはそういうふうな形では言っておらないのだと、こういうわけですね。日本が韓国を承認するについての、それでは正式の方法はどういう方法があるわけですか。
○政府委員(中川融君) 日本は韓国をすでに平和条約締結と同時に承認しておるのでございますから、今さらあらためて正式の承認は要らないわけでありますが、そのときにどんな形があり得たかという問題でありますれば、明示の承認という方法もあるわけであります。韓国政府を承認するという意思表示を日本政府がそのときすれば、これは明示の承認であります。
○稲葉誠一君 そうすると、ちょっとくどくなりますけれども、平和条約の中では日本は韓国を承認するという明示の意思表示はしておらないと、こう承ってよろしいのですね。
○政府委員(中川融君) 平和条約では、先ほど申し上げましたように、朝鮮の独立を承認しておるのであります。しかし、韓国政府を承認するという字句は使っていないのでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、平和条約の朝鮮の独立の承認ですか、これがイコール韓国の承認だと、こういう考え方になるわけですね。
○政府委員(中川融君) 朝鮮の独立を承認いたしますと、国家としては当然政府がなければいけないのでございます。その政府としては韓国政府のほうを日本はそのとき認めた、かように解釈しておるわけであります。
○稲葉誠一君 それでは朝鮮の独立の時期は一体いつですか。
○政府委員(中川融君) これは韓国は一九四八年八月十五日に正式に憲法を作りまして成立したのでございまして、韓国としてはそのときから独立しておるというふうに韓国自体も考えておりましょうし、世界の各国もそれはいろいろ承認の時期は異なりますが、韓国というものが独立した時期は、一応そのときを考えているのじゃないかと考えております。
○稲葉誠一君 これは外務大臣にお尋ねしますが、朝鮮の独立の時期は——日本の国から分離したわけでしょう、日本の国から分離したというのは、平和条約の効力が発生したときに分離したのじゃないですか。その前に朝鮮が独立するということは考えられないんじゃないか。おかしいんじゃないですか。外務大臣。
○国務大臣(大平正芳君) 平和条約というものは、対日関係の戦後処理のルールをきめたものでございまして、戦後のわが国の状態というものを、終戦の瞬間において規律するルールがございませんでしたので、平和条約によってこれを具体化したというように私は考えております。
○稲葉誠一君 だから平和条約によって日本から朝鮮が離れたわけでしょう。外務大臣そうでしょう。平和条約前は、まだ朝鮮はいわば日本の領土じゃないですか。それをアメリカやあるいはソ連が承認するということ自身おかしいのじゃないですか。
○政府委員(中川融君) 厳格に法律的に申しますれば、稲葉委員御指摘のように、一国からある領土が分離独立するには、その国の同意がなければできないのでございますので、日本が韓国の独立に同意したのは平和条約でありますから、それまでの間は、従来の国際法の観念からいえば、韓国というものは独立しなかったのだという議論も十分できるわけでございますが、現実の事態は何と申しましても、四十八年に韓国政府ができまして、多くの国がその後これをすぐに承認しておるのでございます。また、これとの間に大使の交換等もしておるのでございまして、これらの世界の各国の扱いは、韓国を四十八年の八月十五日以後は独立したものとして扱っておるのでございまして、これはやはり今次戦争後の処理というものが非常に長期間かかって行なわれました結果として、やむを得ない事態ではないかと考えるのでございます。したがって、日本が純粋な法律論に従って平和条約発効までは韓国が独立していなかったのだということを主張することは、あまりに客観的な事態にそぐわない感がするわけでございまして、やはり常識的には四十八年に韓国は独立したと認めるのが適当ではないかと思います。
○稲葉誠一君 まあこの問題を、そうあまりここでやっても——私、ほかの問題に進みたいからこれ以上やりませんけれども、もう少し政府のほうでも勉強しておかれる必要があるんじゃないかと思いますね。 日韓会談の中で日本は、韓国は平和条約によって分離したんだと、こう主張していますね。韓国はそうじゃないでしょう。その前にすでに独立したのだと、そういう主張をしているわけでしょう。その主張が今まで食い違ってきていましたね、途中まで。これは事実でしょう。
○政府委員(中川融君) そういうことが会談の過程においてあったことは事実でございます。日本側は平和条約発効までは、少なくとも日本に関する限りは韓国は独立していないということを言いましたのに対して、韓国は、いや自分のほうはむしろ終戦と同時に独立しておるのだ、こういう主張をいたしまして、その間に意見の食い違いがあったことは事実でございます。その後しかし、その問題は会談においては取り上げられてはいないというのが実情でございます。
○稲葉誠一君 これはもう非常に議論のあるところですね。ところが、日本ではあまり論議をされておらないところですね。この問題、ずっと承認の問題からいずれ機会をあらためていたしますが、そこでもう一つ疑問になりますのは、これは条約局長ばかりでなくって、総理大臣や外務大臣もいるんですから、これは答えてもらいたいと思うんですが、総理、日本にある、韓国の代表部というのがありますね。これはとういう性格のものですか。——いや、ちょっと待って下さい、総理大臣に聞くんだから。いや、総理大臣。
○国務大臣(池田勇人君) 条約局長から答えさせます。
○政府委員(中川融君) 在日韓国代表部は、御承知のように、その一番もとは、マッカーサー司令部の占領下にありました当時から——その当時は司令部に対する機関として設けられていたのでございますが、平和条約発効と同時に、これを日本政府に対して交渉する代表機関に切りかえたいという韓国側の申し出がございまして、したがって講和条約発効と同時に日本と韓国との間に公文を交換いたしまして、その韓国代表部が引き続き日本に、日本政府に対する交渉の機関として存続することを相互主義のもとに認める。そうして、その機関の人に対しては領事館に準じた待避を与えると、こういう約束をして設けられておるのでございます。
○稲葉誠一君 これもまた、問題があるのじゃないですか。昭和二十二年の六月十九日の極東委員会によって決定された降服後の対日基本政策、これによれば、総司令部というものは日本領土の最終的変更に関する措置や分離地域の独立を承認する措置を取り得ない建前になっているのです。そうでしょう。だから、総司令部が韓国との間で、日本にこういう代表部を置くということ自身が違法なんじゃないですか。外務大臣どうですか。ここら辺のことはもうしろうとでもわかるのじゃないですか、議論として。外務大臣どうです。
○国務大臣(大平正芳君) 私は不敏にしてつまびらかにしておりませんので、条約局長から答えさせます。
○政府委員(中川融君) お答えいたします。 マッカーサー司令部がこれは日本に設置を認めたのでございまして、日本政府は何らそれに関与していないのでございます。司令部のいたしました行為でございまして、それが合法であるか違法であるか、さようなことは日本政府としてはそのとき判断はいたすべき地位にもなかったのでございます。したがって、これは司令部としては当然合法的にできるという見地に立ってこれを認めたものと考えております。
○稲葉誠一君 これは駐日代表部の性格の問題は、日韓交渉の中での基本的な問題じゃないですか、大前提としての——これは外務大臣あたりが、そういうふうな点についての根拠というものを当然国会で説明できる程度に私はわかっていなくちゃおかしいと、こう思うのですよ。まあ条約局長の言うのもはっきりしませんけれども。そうすると、極東委員会のこの原則とどうなっているのですか、GHQのやったことは。今さらそれをむし返してもたいした効果のないことですから、私はこれ以上言いませんけれども、それがそのまま日本に引き継がれると、日本と韓国との間のものに変わってきた。それじゃこれは一体大使館というふうなものになるわけですか。
○政府委員(中川融君) 在日韓国代表部はまだ大使館ではないのでございまして、将来日韓に国交正常化が行なわれれば、あらためて相互に大使館を設置するわけでございます。そのときに在日韓国代表部は実体的には大使館に移りかわるということになるわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、信任状やアグレマン、これはないわけですね。
○政府委員(中川融君) 大使館ではございませんので、普通全権大使に認められているようないわゆる信任状の制度もございませんし、いわゆるアグレマンという形のものもないのでございますが、しかしながら、日本政府といたしましては、これに領事館に準ずる待遇を認めておるのでございまして、領事については、当然こちらの政府が、もしその領事の人柄なりあるいは仕事ぶりに不満があれば、これを更迭してもらいたい、あるいは退去してもらいたいと、こういうことは言える立場にあると考えます。
○稲葉誠一君 しかし、駐日代表部の今のは何ですか、ペという人ですか、この人は大使だと、こう言っておりますね。これはどういうわけです。
○政府委員(中川融君) これは先方の国内上の資格といたしまして大使の肩書を持っておるということでございます。
○稲葉誠一君 それじゃ日本からいうと、あの人は大使じゃないわけですね。
○政府委員(中川融君) 日本に対しまする正式の資格といたしましては、在日韓国代表部の長でございます。
○稲葉誠一君 大体わかりました。そうすると、これは大使館でもないけれども、どういう関係か知らぬけれども、大使という名前をつけているわけですね。ほんとうの大使じゃないわけなんですね、これは。これは一体この駐日代表部の設置の問題は国会に承認を求むべき筋合いのものですか。あるいは報告をすべき筋合いのものですか。そこはどうなっているのですか。外務大臣どうです。ちょっと外務大臣、そのくらいのこと答えて下さいよ。
○国務大臣(大平正芳君) 外国の機関でございますので、国会とは関係ございません。
○稲葉誠一君 そうすると、こういう代表部を日本に設置をしたということ、そのことは官報にも別に掲載をしないのですか。どうなっているのですか。
○政府委員(中川融君) これは外国の大公使館、たとえ大公使館でありましても、日本にこれが設置されるということを官報には掲示しないのでございまして、したがって、在日韓国代表部が設置された場合にも、これを別に官報に掲載した事実はございません。
○稲葉誠一君 そうすると、この在日代表部というのは公式に国民はどうやってできたのやら、国会を通じてなり、あるいは官報に載っていない、さっぱりわからないわけですね、これは一般国民にはね。そういう形になるわけでしょう。
○政府委員(中川融君) この点は、従来からも国会でしばしば御質問がございまして、その政府側の答弁を通じまして韓国代表部の性格というものは明らかにしておると考えております。
○稲葉誠一君 ここの代表のペという方、これはたいへん失礼なことですけれども、どういう方なんでしょうか。
○政府委員(中川融君) ペ氏につきましては、たしかアメリカに留学した韓国人でございます。その後一ぺんアメリカに帰化したことがございます。しかし韓国銀行の総裁に就任いたします際に、また韓国籍を復活いたしまして、その後韓国の経済界における重鎮として名声のある方だと考えます。
○稲葉誠一君 そうするとわかってきたのは、失礼なことを聞いて申しわけないかもわかりませんが、今の駐日代表部のいわゆる大使というか、自分で大使と言っている人は、これはアメリカの市民権を持っていた人ですね、間違いないわけですね。
○政府委員(中川融君) そのとおりであると聞いております。
○稲葉誠一君 基礎的ないろいろな問題はあとでまた出てくるわけですけれども、一応ここら辺から本筋に入ってくるわけです。平和条約の四条(b)項、これに基づく日本の対韓請求権、これは条約局長でなくて総理答えて下さい。これはいつ放棄したわけですか。あるいは放棄しないのですか。
○国務大臣(池田勇人君) 条約局長から答えさせます。
○稲葉誠一君 こういう重要な問題について、これは総理なり外務大臣から当然答えて下さいよ。一々こんなことまで、基本的な問題まで条約局長に答えさせるというのは、私は総理としての識見がないとは言わぬけれども、だいぶんない——減ってきたよう感じを受けるわけですよ。総理、これは重要な問題ですよ、答えて下さい。
○国務大臣(池田勇人君) 年月日なんか間違ってはいけませんので……。御承知のとおり、ベスティング・ディクリーが出たのは昭和二十年の十二月だったと思います。そのベスティング・ディクリーをわれわれは平和条約で承認したのであります。それは昭和二十六年の九月に調印した。二十七年の四月だったかと思います、効力を発生したのは。大体は心得ておりますが、正確を期そうと思って条約局長から答弁させたような次第であります。
○稲葉誠一君 平和条約がいつ発効したとか、そんな日にちは——そんなと言っちゃ悪いけれども、日にちは昭和二十七年の四月二十八日発効したとか、前の年の九月六日に調印したとか、そういうことじゃなくて、平和条約によって日本は放棄した。こういう解釈を総理がとられるならば、平和条約の四条の(b)項になぜ日本が対韓請求権を放棄したということを四条の(b)項に書かなかったのですか。
○政府委員(林修三君) これは条約の書き方はいろいろあるわけでございまして、第四条(b)項は結局あそこで南鮮、いわゆる南朝鮮においてベスティング・ディクリーというものが出て、日本の財産が接収された、没収された、そういう事実を承認することを書いた、それでわざわざ放棄すると書かなくても、あれでその意味が出てくる、さように解釈されているわけでございます。
○稲葉誠一君 一生懸命何かそこでアドバイスしているけれども、いいですか。それじゃ総理、あなたは大蔵大臣として、全権として行かれましたね。この四条(b)項は日本の平和条約草案の八月十五日のものには入っておりますね。入っておりますけれども、その前の七月二十日ですか、これには入っていませんね。その事実をまず確かめます。
○国務大臣(池田勇人君) 全権として行きます八月十五日の案にはありました。その前の交渉の経過は存じません。
○稲葉誠一君 八月十五日の最終草案にはこれは入っていた、これは間違いございません。その前の七月二十日の草案に入っていないのはどういうわけですか。外務大臣どうです、総理でもいいです。
○国務大臣(池田勇人君) 全権として行く八月十五日にはありました。その前にあったかどうかは外務省の専門家から答えさせます。
○政府委員(中川融君) この四条(b)項が最終段階に入りましたことは事実でございまして、それまでの間にどうして入ってなかったかということでございますが、これは連合国としての考え方をそんたくする以外にないわけでございますが、この四条(b)項というのは、結局毛とは軍令三十三号でございまして、これはアメリカ軍司令官が朝鮮においてとった措置でございまして、したがって連合国側の起草者の考えとしては、この軍令三十三号が要するに連合国司令官が占領中にとった措置であるからして、当然に平和条約十九条で日本が請求権を放棄している中に当然含まれているから、特に特記する必要はないと、かように考えて、これは書いてなかったわけでございますが、それが最終段階で韓国側から念のために四条(b)項に入れてくれという注文が出ましたので、それじゃ同じことだから入れようじゃないか、これはそんたくでございますが、そう考えられるわけでございます。
○稲葉誠一君 今の四条(b)項に対する日本の政府の解釈、これは最初のころと今とは一体どうなんですか。違っているんですか、違っていないんですか。
○政府委員(中川融君) 日本政府の解釈は当初から現在のような解釈であるのでございます。しかし御承知のように、日韓交渉の当初の段階におきましては、交渉技術といたしまして今と違う主張をいたしたことは事実でございますが、これは昭和三十二年の暮れにそういうことを主張したこと自体、発言自体を撤回するということを声明しておるのでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、四条の(b)項は日本が韓国に対する請求権、これをはっきり放棄したと、こういうふうに政府の解釈は、くどいですけれども、ずっと統一しているわけですね、念を押しますよ。
○政府委員(中川融君) これは四条の(b)項でアメリカ軍司令官がとりました日本財産に関する処理の効力を日本は承認しておるのでございます。したがって、そのアメリカ軍司令官のとりました日本財産に対する措置、すなわち韓国の場合で申しますれば、いわゆる軍令三十三号の効果を日本は全面的にこれを承認しておる。したがってその三十三号自体が、日本財産に対する所有権を最終的に移しているものでございますから、したがって、日本政府としてはすでにその所有権はなくなったものである、こういうことを認めた、こう解釈しておるのでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、ここに「解説・平和条約」という本があるんです。これは外務省の条約局と法務府の法制意見局で出したものです——出したものでしょう。(b)項のことについていろいろ簡単に書いてありまして、「将来における問題の発生を防ぐための念のための規定であろう。」となっているのは何ですか。はっきりしたらよかった、そういうふうな政府の解釈が統一しているのなら。念のための規定であるならあるで、はっきりしていえばいいじゃないですか。それをどうして条約の解説を、「であろう」というようなあいまいな形でやっているわけですか。
○政府委員(林修三君) このパンフレットは、当時私のほうも関係して、これは先ほどちょっと条約局長も申しましたけれども、これは四条(b)項の解釈論としては、いろいろあり得たのであります。どういうふうにきめるかということについては、まあ先ほど条約局長の言いましたように、日本政府としては、ああいう考えでいかざるを得ないであろうということにはなっておりましたけれども、内容的にはいろいろ議論があり得た。それで交渉技術としても、初めは請求権は失われていないというような主張も一応出してみたわけでございます。そういうこともございましたので、そこでそういうふうにぼかして書いてあるわけでございます。
○稲葉誠一君 だから私は聞いているでしょう。交渉の技術の問題はあとで聞きますよ。平和条約ではっきり日本は対韓請求権を放棄したのかと聞いているのじゃないですか。したのだとこういうのでしょう。それならあなた、こういうふうに四条(b)項の解釈ももっとはっきりしたものが出てこなくちゃならないじゃないですか、ここへ。おかしいじゃないですか。こんなあいまいな有権的な解釈の中で、そういう「規定であろう」というあいまいな解釈が出てくるのはおかしいじゃないですか。
○政府委員(林修三君) この点につきましては、先ほど条約局長が申しましたように、まあやはり起案者であるアメリカの考え方が一番基本になるわけでございまして、これを日本としても念のためにその後取りまして、それによって三十二年の十二月三十一日のああいう覚書ももらいました。日韓両国の覚書も取りかわしておる。あのときに従来そういう交渉技術として主張したことを撤回すると日本側が言っておるわけであります。その以前においては、いろいろ内部的にもそれは議論を立てれば立て得る余地がなかったわけではありません。交渉技術として主張する行き方も一つの行き方だと思います。そういういろいろな背景もございますから、そういう外部に出します文書に、そこをあまりはっきりさせるのはどうかということで、そんなふうに多少ぼかしたわけでございます。
○稲葉誠一君 それじゃ軍令三十三号のベスティングという意味をどういうふうに解釈したわけですか、ベストという意味を。
○政府委員(中川融君) ベストという意味は、ある権利をある人に付与する、与える、こういう意味で法律的には使っておるものと考えております。
○稲葉誠一君 これは条約局長なり法制局長官は専門家だと思うけれども、じゃ、イギリスの敵産管理法、一九三九年——ありますね。この中でベストという言葉は使っているでしょう。これはどういう意味ですか。敵産管理じゃないですか、この言葉は。
○政府委員(中川融君) イギリスあるいはアメリカの敵産管理令の中にベストという字を使っていることは事実でございます。これは米英の思想では、やはり敵産を遺憾なく管理するためには、所有権を一時その管理者たる政府に移すということが必要である。その意味でやはり権利としては完全に移すわけでございます。しかしながら、敵産管理令にはいずれもはっきりこれがいわば信託の思想に基づいて所有権が移るのである。したがって、将来戦後処理の行なわれる際には、これのまたその権利がほかに移ることもあり得るのだ、こういう意味のことが同時に明らかになっておるのでございます。これは結局米英法にいわゆるトラストの思想に基づいて敵産管理が行なわれていることからそういう字句が使われるというふうに考えております。
○稲葉誠一君 じゃ、あなたの説明によると、軍令三十三号のベストという意味は、信託法によるいわゆるトラストなんだ、所有権が移転するだけだ、こういうふうに解釈してよろしいですね、米英法によって。いいですね。
○政府委員(中川融君) 米英の敵産管理令には、なるほどベストという字句を使い、所有権を移すのでございますが、同時にそれは留保がついております。これはあらゆる信託契約も同様だと思いますが、真正な所有権者のために、その利益のためにこれを所有、保持する、こういう思想でございます。ところが、いわゆる軍令三十三号では、ベストという字を使っている。したがって、所有権は完全に移るわけでございますが、片方の留保のほうは、実はどこにも書いてないのでございます。したがって、敵産管理令とはその意味でやはり違う。正当な解釈としては、所有権が最終的に全部移ってしまったのだ、かように解釈するほかないと、かように考えております。
○稲葉誠一君 それじゃ、今まで政府の解釈は、没収だと言っておりますね。没収というのは、英米法で何というのですか、コンフィスケーションでしょう。ベストと違うじゃないですか、全然意味が。どうですか。
○政府委員(中川融君) 没収と申します際に、通常日本語の没収に当たる英語の訳語といたしましては、コンフィスケイト、あるいはアプロプリエイトという言葉があるかと思いますが、この軍令第三十三号は、いわば法律用語で書いてあるわけでありまして、ある権利をあるものに属せしめる、移すという意味でベストという字句を使ってあるのでございまして、ベストという字句が使ってあるから、これはコンフィスケーションじゃない、こういうことは必ずしも出てこない。全体を見まして、対価を払う意思なのか、払わない意思なのか、そういうことをそんたくいたしまして、対価を払えば没収でない、対価を払わないならば没収になる、かような意味であります。
○稲葉誠一君 そうすると、日本の外務省の見解では、政府の見解では、アメリカは国際法——へーグの陸戦法規に違反して、韓国にあった日本の財産を没収した。アメリカが国際法違反をやったのだという認定をしているわけですね。どうです、総理。総理が答えられないならば、外務大臣から答えて下さい。一々政府委員相手にやっているのではない。基本的な問題です。
○国務大臣(大平正芳君) 政府委員から答弁します。
○稲葉誠一君 委員長、ちょっと待って下さい。どういうわけで総理なり外務大臣が、こういうような基本的な問題を政府委員の条約局長あたりと言っては悪いけれども、条約局長に答弁させるのですか。基本的な問題じゃないですか。それにどうして総理や外務大臣が答えられないのですか、この問題について。おかしいじゃないですか。
○政府委員(中川融君) へーグの陸戦法規によれば、占領軍が私有財産を尊重すべきこととなっております。したがって、アメリカ軍当局が朝鮮におきまして日本の私有財産を対価を払わずにこれをいわば没収措置をとったということは、陸戦法規からは逸脱した行為であると考えております。
○稲葉誠一君 陸戦法規から逸脱した行為かどうかを聞いているのじゃない。違法か違法じゃないかということを聞いているのです。
○政府委員(中川融君) 陸戦法規は、一九〇七年にできた法規でございます。その当時の占領というものは、戦争中に行なわれる占領が原則でございまして、戦後占領が十年も続くというようなことは、もちろん想像もしていなかったところでございます。したがって、そのときの陸戦法規のあの四十六条の規定が、はたして戦後長きにわたって占領という形による旧敵国の管理が行なわれております第二次戦争後のあの事態に直接適用されるべきかいなかということについては、いろいろ疑義が出てくると思うのでありますが、いずれにせよ、日本は平和条約によりまして最終的に承認しておるのでございまして、戦争中に戦時法規を逸脱したような行為がたくさん行なわれるのは、遺憾な事実でございますが、その最終締めくくりとしての平和条約でその効力を日本は承認しておる、かような関係になっております。
○稲葉誠一君 私は条約局長じゃなくて、総理や外務大臣にこれは基本的な問題だから聞いているのですよ。それを一々条約局長が答えるというのは、それはむずかしい法律論、こまかいところを聞くんなら、私の聞き方が悪いかもわからないけれども、日韓問題の基本的な問題なんですよ。この程度のことは答えがあっていいんじゃないかと、こう思うわけですね。 そこで、これは外務大臣にお尋ねしますが、外務省の条約局の法規課で、「平和条約四条について」という上下の書物を出していますね、どうですか、その当時。
○国務大臣(大平正芳君) 部内ではそういうことをやったことがあるようでございますが、外には出しておりません。
○稲葉誠一君 私はその本が見たいと思ったのです。それでおととい国会図書館からその本を要求したら、絶対出さないという、きのう私のほうが要求したら、絶対出さない、部外秘だと、じゃ、私が行くから見せてくれと言ったら、見せないと。平和条約四条の解釈が、平和条約で日本の対韓請求権を放棄したということがはっきりしているのだと前から言ってるでしょう。はっきりしたと言っているなら何もその解釈を国会議員に見せたっていいじゃないですか。今まで政府の言っていることと違っていることを条約局の法規課で言っているから、だから見せないんじゃないかということを私ども考えるわけですよ。どうなんですか、その資料を出して、私の言っていることが、私が不利になるかもわかりません。私はそれでもかまいませんよ。その資料を出して下さい。
○政府委員(中川融君) ただいま御指摘のありました資料は、これは講和条約締結当時に外務省におきまして部内参考用として、ある国際法学者の方にお願いして、その意見を書いていただいた書類でございます。これは秘でございます。そういうことでこれは部外に出すべき性質の書類でございませんし、また、それをお書きになった人の立場もございますし、これはせっかくの稲葉先生の御要望ではございましたが、事の性質上、やはりお断わりするほかないのじゃないか、かようなことでこういう措置をとった次第でございます。
○稲葉誠一君 政府の中で平和条約の四条の(b)項について、今までの政府の言っていることと違った解釈をしている人が現実にそのときおったわけでしょう。しかもそれが条約局の法規課の編集というか、正式に、正式というか、それがあるわけですね。その人の名前を言えといえば言いますよ、私は知ってますから。その人は条約局の法規課にいたんじゃないですか。いて、その問題を研究したんじゃないですか。その結果として、ベストというのはそういう意味じゃないんだとか、結局四条の(b)項は、日本の対韓請求権を全部放棄したものではないというのを出したんじゃないですか。これは外務省の条約局の一つの見解として出しているのじゃないですか、どうなんです、それは。
○政府委員(中川融君) これは、先ほど申し上げましたように、外務省の人が書いた書類ではなくて、ある国際法の学者の方に、その方の御意見をお伺いして、部内参考用に作った資料でございます。したがって、その方の御意見であって、外務省の意見ではないわけでございます。
○稲葉誠一君 いや、参考意見なら、外務省の正式意見じゃないんだと、参考意見なんだと……。その書類があることははっきりわかっているのですよ。わかっていたら出したっていいじゃないですか。今の政府に不利になるんですか。政府が不利になるから出さないんだという説明なら、これは私もよくわかりますよ。それならそれでいいですよ。もう少しはっきりしたらいいんじゃないですか、どうなんですか。
○政府委員(中川融君) 要するに、そのお願いいたしました方の意見でございますので、その方の御了承を得ずしては、そのときのお約束に違えて公表するわけにはいかないと考える次第でございます。
○稲葉誠一君 だから、私はくどいけれども、念を押しておるのは、平和条約四条の(b)項というのは、日本の請求権は平和条約によって消滅したのだという、それが確定した解釈だと、こういうのでしょう、政府は。そういう解釈なら何も国際法の学者とかなんとか呼んで聞いて、外務省の名前で四条(b)項の解釈をわざわざ研究してもらう必要はないのじゃないですか。そうじゃないですか。確定した解釈というなら、何もそのことをわざわざその問題だけを研究する必要はないじゃないですか。名古屋大学の山下教授でしょう、それ。
○政府委員(中川融君) 書かれた方は、今御指摘のとおりでございます。しかし、それが政府の見解と違うからお出ししないということではないのでございまして、ただいま申し上げましたように、御当人の御了承を得るよすがもないのでございます。御当人はすでにおなくなりになられたわけでございます。したがいまして、それはどうにもお出ししようがないわけでございます。ただ、いろいろ国際法学者の御意見を聞くことは、これは外務省として当然しなければならないことでございます。政府だけの見解ではどうしても片寄ることがございます。したがって、できるだけ公平にあらゆる方の御意見を聞くという立場で、これは外部に出さない、極秘という扱いでいろいろお願いして御意見を徴するのでございます。やはりその方の御同意なしにお出しするわけにいかない、こういうわけでございます。
○稲葉誠一君 それじゃ問題をかえましょう。交渉技術ということを言われましたね、外務大臣。これはあなたはずっと使っていますよね。日本の対韓請求権を放棄したのだけれども、放棄しないような主張をしていったのは、交渉技術だと、こう言われましたね。そういう意味で言ったのかどうか別として、交渉技術というのはどういうことですか。もう少し具体的に説明してくれませんか。
○国務大臣(大平正芳君) 軍令三十三号の効果を日本政府は承認をせざるを得なかった、このことは、そのこと自体、遺憾なことでございますけれども、全体として平和条約を見る場合に、日本が戦後国際社会に復帰をする条件として、全体として評価すれば受け入れるべきだという判断に立って当時の政府がやられたことでございます。その平和条約の第四条というものは、政府の見解としてはベスティング・ディクリーの効果を承認せざるを得ないという立場にあるということは申し上げたとおりでございます。しかし、先ほど条約局長からも御説明申し上げましたように、日韓会談、十一年にわたっておりますが、当初の段階におきまして、それぞれの代表がいろいろなやりとりをやられた段階におきまして、平和条約四条の解釈についてなお日本に全面的にベスティング・ディクリーの効果を受け入れるべきでないという主張を当時の代表の方々がやられたことはあるようでございます。私が交渉技術上の配慮と申し上げたのは、そういう経過について申し上げたわけでございますが、これは稲葉さんも御承知のように、三十二年にそういうような発言をしたことは撤回するということで始末がついたわけでございまして、第四条に関しまして政府部内に見解の相違はないわけでございます。
○稲葉誠一君 それじゃ第四条(b)項についての平和条約の解釈ね、これはアメリカから韓国にすぐ渡りましたね。知っていますね、外務大臣。その経過を説明して下さい。外務大臣に聞いているのです。韓国に渡ったでしょう、二十七年の四月二十九日付で。そうでしょう、条約局長。条約局長に聞いているのじゃないけれども……。
○政府委員(中川融君) 稲葉委員御指摘のとおりでございまして、第一次会談で日本の代表が今の交渉技術上の主張をしたのでございます。韓国のほうは非常にびっくりいたしまして、それでアメリカ政府といろいろ協議した結果だと思うのでございますが、第一次会談が終わりまして第二次会談が始まるまでの間、具体的な日付といたしましては、講和条約発効の次の日であったと思いますが、いわゆるアメリカの考え方というものをワシントンにある韓国大使館にアメリカからこれを渡しまして、なおその写しを、その後しばらく——二月か三月たってからだと思いましたが、あそこにおりました日本の大使館にもアメリカ政府から渡してきたのでございます。
○稲葉誠一君 今、初めて条約局長正直に答弁したと僕は思うのですよ。そのとおりです。二十七年の四月二十九日にアメリカの解釈は韓国に行っているわけです。日本には五月十六日に武内駐米大使……公使ですか、大使ですかを通じて、日本に回答というか写しみたいなのが来ています。外務大臣、その経過は御存じないですか、そういう経過。ちょっとこまか過ぎてわかんないですか。わかんなきゃわかんないでいいです。
○国務大臣(大平正芳君) アメリカの解釈が出て、双方に渡されたということは承知いたしております。
○稲葉誠一君 そうすると、アメリカの解釈というのはどういう解釈でした、その当時。
○国務大臣(大平正芳君) 私の理解では、平和条約四条というのは、軍令三十三号の効力を承認したものであるという原則に立っておると承知しております。
○稲葉誠一君 全体のうちの一割か二割しか外務大臣言わなかったのですね。それはいいでしょう。そうすると、アメリカの解釈によって日本は韓国に対する請求権を放棄していることは、韓国では知っているわけでしょう。アメリカからもらっているわけです。日本にだって来ているから、そのこと知っているわけでしょう。どうです。その後の日韓会談の中で知っているのじゃないですか、当然。
○国務大臣(大平正芳君) 日米韓の間に、その解釈につきましては問題はないと思います。
○稲葉誠一君 日米韓に解釈の問題がないとかあるとか聞いているのじゃなくて、その後に久保田発言があったでしょう。これは二十八年の十月十五日に首席代表の久保田さんの発言がありましたね。請求権を持っていると、二十八年の十月十五日に久保田首席代表が主張しているわけですよ、韓国に。その当時アメリカの解釈というのは韓国のほうにすでに行っている。日本でもすでに持っている。だから、そういうふうな日本の請求権の主張というようなことはもういれられないということがわかっていたのじゃないですか。それで主張したのが一体交渉技術なんですか。政府の言うとおりとすればおかしいじゃないですか。条約局長じゃないですよ、外務大臣、どうです。私の言うことわかりませんか。
○国務大臣(大平正芳君) 交渉技術と心得ております。
○稲葉誠一君 僕はもっとフランクにものを言いたいと思うのですよ。交渉技術というのじゃおかしいですね。韓国のほうでは、すでにあなた、日本が対韓請求権を放棄したということを十分アメリカの解釈によって知っている。日本もすでに知っている。そこで、交渉技術として、そんなことは知らぬ顔しておいて、いや、日本は韓国に請求権があるのだから、よこせよこせと言っている。そういうことであなた、日韓会談というものは、かりにあなた方の主張によっても、推進するのでしょうか。これは韓国をまるでぺてんにかけたようなものじゃないですか。そういうふうに考えませんか。それが交渉技術ですか。どうです、外務大臣。
○国務大臣(大平正芳君) したがいまして、後日それは撤回するということにいたしたわけでございます。
○稲葉誠一君 後日の撤回はずっとあとの話ですよ。後日だから、ずっとあとにきまっていますね。これはまたあとで聞きますがね。違うのじゃないですか、話が。対韓請求権というものは日本にあったのだけれども、それはアメリカが仲に立って放棄したのだ。結局そういうことになると、あれじゃないですか、韓国にいた日本人の財産などに対する財源補償などが起きてくるでしょう。日本政府の責任で放棄したということになれば、そういう問題が起きてくるから、だから、政府としてはそれは言えない。だから、それは平和条約で放棄したのだというふうに言っているのじゃないですか。それならあなた方の気持はよくわかると思うのです。どうです、外務大臣。
○国務大臣(大平正芳君) 平和条約の読み方といたしましては、ただいま私どもが申し上げているように読むのが一番すなおであり、正しいと思います。
○稲葉誠一君 それじゃ三十二年の十二月三十一日、これは藤山外務大臣ですね。このときの交渉の経過をひとつお話ししてくれませんか。これは外務大臣は答弁できるでしょう。
○国務大臣(大平正芳君) 一々その経過をつまびらかにいたしておりませんので、御要求がございますれば、政府委員から説明させます。
○稲葉誠一君 日韓会談の直接の責任者は外務大臣でしょう。これは昭和三十二年十二月三十一日に日本の韓国に対する請求権の主張をしたでしょう。放棄したと言うなら、なぜそういうふうな主張が出てきたのか。これはあなた、外務大臣としてこまかいことはいいですよ、大ざっぱなことはわかっていなくちゃ変じゃないですか。大ざっぱなことでいいですよ。
○国務大臣(大平正芳君) 先ほど申し上げておりますように、交渉の席においていろんなやりとりがあった、そして請求権の放棄について疑点を生むような発言があったということは、その段階におきまして撤回したというふうに私は承知いたしております。
○稲葉誠一君 それじゃちょっとこまかく聞きますけれども、十二月三十一日というと大みそかですよ。そうでしょう。それは事実を認めるでしょう。このとき、まとまったのは午後十一時三十五分でしょう。五分くらいどうでもいいけれども、午後十一時三十五分、もう夜中近いのですよ。なぜこんなに大みそかの晩の夜中近くまで、日韓のこの釈放の調印ですよ、かかったのでしょうか。その理由はあるのじゃないですか。どうです、外務大臣。
○国務大臣(大平正芳君) なぜそんなにおそく、大みそかも押し詰まってのことになったのか、私よく承知しておりませんので、もし——承知いたしている者から御説明申し上げます。
○稲葉誠一君 じゃあ条約局長。
○政府委員(中川融君) 昭和三十二年暮れの交渉が、非常に困難な交渉であったことは御指摘のとおりでございます。結局、これは先ほど外務大臣の申されました交渉技術ということと関連するわけでございますが、日本はなるほどこのアメリカの解釈というものを、すでに第二回会談のときには知っていたわけでございます。したがって、この韓国側の態度、またアメリカの態度というものは、これについてどうであるかということを知っておりましたから、交渉技術は、主として第一回会談における交渉技術であったわけでございますが、いつかはこれは撤回する必要は、その最初から認めていたのでございますが、いつこれを撤回するかということは、日本にとってはなかなか交渉技術をいかに生かすかという大事な問題でございますので、これは三年ほどがんばったわけでございます。それで、藤山外務大臣が当時折衝をされました内容といたしましては、韓国側にもこのアメリカの解釈というのを全面的にのますということと、それから、それに基づいて今後の交渉を再開するということ、これは第三回会談が決裂して、その後三年半も会談が行なわれなかったのでございますが、第四回会談を開くにあたりましては、この共通の地盤の上に立って交渉を再開させようという、これが大きなねらいであったわけでございまして、それについて韓国側は、日本側がアメリカ解釈によることは当然だが、自分のほうまでこれに縛られることは、初めは、いやだと言ってがんばったのでございます。これを、そんな話のわからぬことはないじゃないかというので折衝して、大いに最後までねばりまして、大体において日本側の目的とするところが得られることがわかりましたので、三十二年の十二月三十一日の解決となったのでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、四条(b)項の対韓請求権、これはいつ撤回しようか撤回しようかと思いながら、チャンスをねらいながら日本側は主張しておった、こういうことですね。そうですが、外務大臣。何か変な話ですね。そのとおりですか。
○国務大臣(大平正芳君) 当時の状況から申しまして、そういう交渉技術上の配慮はあったものと思います。
○稲葉誠一君 十二月三十一日の夜中までかかったというのは、その日の昼までに妥結することになっておったんじゃないですか。そうでしょう。そのときに韓国は、アメリカ政府の見解の表明を基礎として、と述べられておる。このアメリカ政府の見解を公表をすることをやめてくれ、こう言ったのでしょう。そこでごたごたが起きて、夜おそくまでかかったのでしょう。日本側としては、アメリカ政府のこの見解というものをそのとき公表するつもりだったのですか。どうなんです。
○政府委員(中川融君) 日本側といたしましては、共同声明において、アメリカの解釈を基礎として交渉を行なうということを書きます以上、その内容も国民の方々に知っていただくことが必要と考えまして、公表したい希望だったわけでございます。韓国側がこれを公表するのは困るということで、ごたごたしたことは事実でございます。
○稲葉誠一君 この問題はいろいろくどくなりますから、もう少しでやめますけれども、久保田貫一郎という外務省の首席全権代表ですか、これが昭和二十八年十二月二十七日参議院の水産委員会、当時水産委員会というのが参議院にあったのですが、ここに参考人として呼ばれて、これは漁業問題が中心だったから水産委員会にかかったのだろうと思いますが、参考人として呼ばれているわけです。そこで、国会の中で、あの軍令三十三号というのは没収じゃないのだ、したがって日本の対韓請求権はあるのだと、こう国会で答弁していますよ。どういうわけですか。その交渉技術というものを国会に対しても用いたのですか。それはちょっとひどいじゃないですか。国会まで、悪く言えば、ぺてんにかけるというか、ごまかすというか、そういうことなんですか、これは。自分のほうでは私有財産の尊重という原則に基づいて対韓請求権は放棄しておらない、こういう主張をした、こう言っておりますよ。国会の中でも、それがまた正しいのだ、こう言っていますよ。久保田さんは言っておりますよ。どういうことですか、これは。
○政府委員(中川融君) これは、久保田代表が国会で申し上げたことは、私も速記録を見ておりませんので知りませんが、そういう主張を日本はしておるのだということを言っておられるのじゃないかと思います。政府部内におきましては、いつかはこれは撤回する必要はあるということは内々考えていたのでございますが、しかし、これはもちろん交渉上の大事な点でございますので、表に出すわけにいかないのでございます。表に出したのは三十二年の暮れでございます。それまでの間は、少なくとも何か表に言及する際には、やはり従来の態度は変えていないという態度を貫かなければならないわけでございます。久保田代表が言われたのも、そういう趣旨の御発言ではないかと考えます。
○稲葉誠一君 これは外務省の発行した「わが外交の近況」という、グリーン白書というか、グリーンで白書というのもおかしいが、外務省のやつがありますね。これに日韓の問題、これは昭和三十二年、こう言っているわけです。その中で、韓国から昭和三十二年一月に回答として(1)が「日韓全面会談再開についても、平行して打合せを行うこと。」、(2)が「日韓会談再開の前提として久保田発言の撤回と対韓請求権の放棄その他若干の条件」を提示した、こういうことを言っていますね。そうすると、久保田発言の撤回というのは五項目あるわけでしょう。それと対韓請求権の放棄というのは別に韓国では考えていたんじゃないですか。韓国側ではどういうふうにとっていたのですか。日本では、対韓請求権という主張の放棄だった、こういうふうな解釈ですか。韓国側では、対韓請求権の放棄だ、こういうふうに言っているわけですか。
○政府委員(中川融君) 久保田発言と申しますのは、これは第三回会談の終わりに起きたことでございますが、主たる内容は、この日本が総督時代四十年間韓国で行なった施政は韓国民の利益になったかどうか、久保田さんは、全然マイナスばかりでもなかったじゃないか、はげ山が緑になったじゃないか、日本からもずいぶん金をつぎ込んだじゃないかというようなことを言われた。これが一つの大きな問題でございます。その次には、韓国が先ほども御議論がありましたが、韓国がいつ独立したかという論も久保田発言の一つの点でございまして、久保田氏はたぶん法理論に従って、平和条約発効によって韓国は独立したのだと言いましたところ、韓国側は非常に怒った。そういうようないろいろなことがございました。請求権の問題自体は、実は久保田さんは主張されなかったのでございまして、これは第一回会談では法理論を戦わしましたが、第二回からはもう法理論はやめて、現実の話し合いで歩み寄ろうじゃないかというのが久保田代表の基本的な方針だったのでございます。したがって、久保田発言というのは、むしろ韓国のほうからいえば、面子を損するようなそういう久保田さんのいろいろな発言、向こうからいえば、そういうように見たわけでございますが、これを撤回せよということでございます。それと同時に、あわせて第一回会談で日本側が交渉技術として持ち出しました平和条約四条(b)項の解釈、これをも撤回してくれ、この二つが今後の第四回会談を始める上でのまず基本の条件である、こういう主張を韓国側はしておったわけでございます。
○稲葉誠一君 じゃ、今の問題に終止符を打つ意味で、外務大臣にお尋ねするのですが、あなたは去年の八月二十七日の参議院の予算委員会、吉田法晴氏の質問、これに対してこういうように答えていますね。在韓の日本財産の帰属命令のことを言っておいて、したがいまして、これによって生ずる財産その他の損害はあくまで米国政府の措置により基因するものでございまして、日本政府の処分に基因したものではございません」、こう言っていますね。これはそのとおりでよろしいわけですか。
○国務大臣(大平正芳君) そう考えております。
○稲葉誠一君 そうすると、日本の韓国に対する請求権が、日本が今請求できなくなったということは、アメリカの違法な処分によって日本が損害を受けた、こういうことになるわけですね。それを平和条約の中で日本は認めた、こういうことになりますね。
○国務大臣(大平正芳君) 仰せのように、平和条約によりまして軍令三十三号の効果を承認したということを承知いたしております。
○稲葉誠一君 そうすると、韓国にある日本の財産は返還できなくなってしまった、そのことはアメリカの政府と日本の政府との共同責任ということになるんじゃないですか。それを、違法な処分を平和条約の中で認めてしまったのですから、結局共同責任ということになるんじゃないですか。そう考えざるを得ませんね。どうです、外務大臣。
○国務大臣(大平正芳君) 米軍が没収いたしました行為の効果を承認せざるを得ない立場になりまして、平和条約によりまして承認したということでございます。
○稲葉誠一君 あなたの説明を聞いていると、平和条約は戦勝国が戦敗国に強制的に押しつけたものなんだ——それに違いないかもわかりませんよ。だから違法な処分を認めた日本の政府には責任はないのだ、こういう解釈になるわけですか。そこはどうなんですか。やさしいことですよ。
○国務大臣(大平正芳君) 日本政府がイニシアチブをとりましてその財産を公益に使用するとかというようなことはやっていないわけでございまして、あくまでもこれは平和条約によりまして先ほど申しましたように米軍の行為の効果を承認したというにすぎないと思います。
○稲葉誠一君 そういうふうにこちらの問いに答えないと、私のほうでも前の話を蒸し返すようになってしまうのですよ。じゃ軍令三十三号でアメリカ軍が日本の韓国にあった財産を持っていったのは、一体どの程度持っていったのですか。
○国務大臣(大平正芳君) アメリカ側からその報告を求めておりまするが、まだ全部そろっておりません。
○稲葉誠一君 そうすると、僕は論理的な矛盾があると思うのですよ。平和条約で日本の韓国にある財産の請求権を放棄してしまったのだ、こういうのでしょう。しかもそれを平和条約で認めてしまった、こういうのでしょう。そんなら、アメリカが日本の財産を幾ら持っていこうが、そんな資料は日本に必要ないんじゃないですか。もう済んでしまったことじゃないですか。なぜ、じゃ日本からアメリカが持っていった資料をよこせという主張をするのですか。必要ないじゃないですか。どういうわけですか。外務大臣、どうですか。
○国務大臣(大平正芳君) これはアメリカの解釈とも関連いたしまして、アメリカの解釈といたしましては、没収したという事実は今後の日韓の請求権の取りきめの場合に考慮をされるという意味のことが表現されてあったと思うのでございまして、そういう角度から問題を取り上げますと、ある程度そういった材料を入手してしかるべしと、そう判断したものと思います。
○稲葉誠一君 しかし、四条の(a)項の問題は、それは別個の経済協力という形でもう解決するのだ、三億ドル、二億ドルで解決するのだ、しかもそれが大平・金の会談の回答で妥結したと、妥結というか合意ができたと、こういうのでしょう。そんなら、あなた(a)項の請求権の問題の中に考慮する余地なんかもうないじゃないですか。今になってはそうじゃないですか。それは論理的必然じゃないですか。なおかつ、いまだ条約局長は、鋭意アメリカに対してその財産の返還を求めている、提出を求めています、こう言っていますよ。おかしいじゃないですか、論理的に。
○国務大臣(大平正芳君) 今となりましては、稲葉さんおっしゃるように、そういう材料を収集いたしまする利益というものがどこにあるかということは、おっしゃるとおりだと思うのでございます。しかし、私どもの気持といたしましては、請求権問題を請求権の実体に即して解決するということがむずかしいと判断いたしまして、経済協力という方式に切りかえたわけでございまするが、なぜ経済協力方式に切りかえざるを得なかったか、請求権問題を請求権を通じて解決するということがなぜむずかしかったかということについて、国会初め国民の御理解をいただく意味におきまして、できるだけの材料は取りそろえまして御参考に申し上げる必要があろうと考えておるわけでございます。
○稲葉誠一君 そんなら、あなた、アメリカに資料を要求しなくても、あるじゃないですか、その資料が。アメリカの国務省が一九四七年九月二十五日付のパンフレットでそのことを発表しているじゃないですか。日本は韓国にあった全財産の八〇%くらい持っていっちゃった、こういうふうにアメリカは発表しているじゃないですか、どうですか。そういうことを調べていませんか。そんならすぐわかるじゃないですか、国務省の発行のものを見れば。見なくても、日本には韓国にあったいろいろな財産の台張なんかあることですから、わかることです。しかも、ベスティングしたものをアメリカは韓国に全部トランスファーしたのじゃないでしょう。重要なものはアメリカに持っていったのだけれども、そのほかに自分のほうの国に持っていったものがあるんです。これはいろいろな形があるんです。いずれにしても、これは横道にそれますから、これ以上は聞きませんが、こんなことは、アメリカの国務省に聞けば、そのことをまとめてやった資料があるはずですよ。そういう点、外務大臣は知りませんか。
○国務大臣(大平正芳君) アメリカに要求いたしているわけでございますが、全部そろっていないと承知いたしております。
○稲葉誠一君 それじゃ、別のことを聞きますが、韓国は一体日本に対して賠償請求権というものがあるんですかないんですか。どうですか。
○国務大臣(大平正芳君) 賠償請求権はないものと思います。
○稲葉誠一君 ないという根拠は。
○国務大臣(大平正芳君) これは韓国と交戦いたしておりませんから、私は請求権は成立しないものと思います。
○稲葉誠一君 そのとおりですね。そのとおりですけれども、韓国は日本に対して賠償請求権というものを今までずっと主張してきたのじゃないですか。どうなんですか、その点は。四条の(a)項に基づくものと賠償請求権というものとを一緒にしたような形で韓国は考えて請求しているのじゃないですか、どうなんですか。実際韓国の新聞なんか見ると、日本に対する対日賠償請求権だと、こう言っていますね。これは条約局長も知っていると思うんですが——条約局長に聞いたんじゃない。ただ名前を出しただけなんだ。それは外務大臣が責任だ。総理大臣が退屈しておれば、総理大臣にも聞きますが、外務大臣、どうですか。
○国務大臣(大平正芳君) 韓国の考え方とか国民感情というものがどのように表現されているか、つまびらかにいたしませんけれども、日本側といたしましては、韓国に賠償を払うというよよな根拠はないと思います。
○稲葉誠一君 それでは、(a)項の問題に入っていくんですけれども、これは、三億ドル、二億ドルというのは経済協力ですね、総理大臣。
○国務大臣(池田勇人君) 経済協力と心得ております。
○稲葉誠一君 総理、日本の韓国に対する経済協力なら、韓国から見れば権利の行使ではないわけですね。
○国務大臣(池田勇人君) と思います。
○稲葉誠一君 非常に重要なことをお聞きしました。韓国は日本に対して権利を請求しているのではないのだ、経済協力は日本が韓国に対して恩恵として与えるものだと、そこまでは言いませんけれども、とにかく韓国の日本に対する権利の行使ではない、これははっきりしました。私は、これはきょうの委員会の一つの大きな収獲だと、こう思います。そうすると、経済協力になってしまったというなら、もう請求権の(a)項の間でいろいろ問題が起きてきた八項目、この問題については国民の前に明らかにしても私はいいと思うのですよ。そうでしょう。八項目の問題じゃなくて、もう経済協力三億ドル、二億ドルで話がまとまった。これはまとまったかまとまらないかあとで聞くけれども、政府のあれはまとまった。八項目の問題は、これは説明願うとちょっと時間がかかるかもしれませんけれども、今まで、一体八項目は何であったか、どういう点に法律的な韓国、日本の見解の違いがあるか、事実論としてどこが違うのだ、こういう問題に対して八項目に対して統一してやっていたのは国会の中でないわけです。ばらばらにはあります。朝鮮銀行がどうとか、郵便貯金がどうとかありますけれども、短い時間でいいですけれども、八項目を説明して、一項目づつに、法律的に違うのか、事実論として違うのか、そこら辺のところを御説明いただきたいのです。それが政府の国民に対する義務だと思うのです。それでないとわからないですよ、この問題は。なぜ三億ドル、二億ドルになったかということをひとつ外務大臣答えて下さい。
○国務大臣(大平正芳君) ごもっともに存じます。したがいまして、八項目を分析いたしまして、これを討議の材料にして、彼此の間に法律論としてどういう差異があるか、事実の立証においてどういう差異があるかといろことはできるだけ明確にいたして、国会を通じて国民の御理解の参考にいたしたいと思っておるわけでございます。今稲葉さんおっしゃるように、経済協力方式に切りかえた以上、もうそういうことをやってもいい時期じゃないかという御判断、ごもっともでございます。ただ、われわれが心配いたしておりますのは、この法律論、事実立証論上の双方の見解の相違ということを具体的に発表するということは、その他の懸案を今から手がけて参らなければならぬ段階におきまして、やや時期尚早ではないかと思いまして、しばらくの猶予を国会にお願いをいたしておる次第でございます。いずれこれは発表いたしたいと思います。
○稲葉誠一君 だけれども、項目的に、八項目全部じゃないけれども、一部は国会であなた説明していますわね。郵便貯金の問題、朝鮮銀行の預貯金の問題、あるいは徴用の問題。今あなたがここで説明する時期じゃないと言われるなら、何かそれを発表しますと政府としていろいろな面で工合が悪いのですか。どうですか。三億ドル、二億ドルでまとまっているのだから、いいのじゃないですか。
○国務大臣(大平正芳君) 日本側に関する点としてはございません。これは二国間の交渉でございまして、先方の受け取り方も私どもといたしましては配慮いたさなければなりませんので、その時期につきましては政府の判断にゆだねていただきたい、こう思っております。
○稲葉誠一君 さっぱり要領を得ませんが、この「解説・平和条約」というもの、条約局と法制意見局の出しているのは、これは有権的解釈と見ていいのですね。これ以外には正式のものはないじゃありませんか。四条(a)項の解説にちょっと今までと違ったことが書いてある。これは、外務大臣に見せて、読んでいただいて、どこが違うか説明してもらいたいと思います。 —————————————
○委員長(木内四郎君) ただいま委員の変更がございましたので、御報告いたします。 二宮文造君、木暮武太夫君、小山邦太郎君がそれぞれ辞任され、その補欠として、牛田寛君、丸茂重貞君並びに二木謙吾君がそれぞれ選任されました。 —————————————
○稲葉誠一君 その中でちょっと注目すべきことが書いてありますね、一カ所。おわかりですか。
○政府委員(林修三君) 今それを読んでみましたが、特に変わったことは書いてないはずでございまして、どういう点でございますか、御質問いただければお答えいたします。
○稲葉誠一君 それじゃ、そこにこういうふうに書いてありますよ。「これらの地域の施政を行なっている当局及びそこの住民の財産が日本にあったり、日本の国家や国民に対してその当局や住民が請求権を持っている場合は比較的少ないであろうが」と書いてあります。どういうわけですか。
○政府委員(林修三君) 「比較的少ないであろうが」というのは、どういう趣旨で書いたか、私にもわかりませんが、それは書いた者の主観でございまして、別にその当時の政府の見解ではもちろんないわけでございまして、計算したわけでも当時なかったと思います。おそらく郵便貯金、恩給というようなものを頭に置いて書いたのじゃないかと思います。
○稲葉誠一君 平和条約の締結当時においては、韓国の日本に対する請求権というのは比較的少ないということを日本の政府自身も考えていたのじゃないですか。だから、この条約局の書いたものにちゃんと書いてあるのじゃないですか。そう見ていいじゃないですか。それがあれよあれよという間にふえてきちゃった、こういうふうになるのじゃないですか。どうです、外務大臣。
○国務大臣(大平正芳君) 請求権というものがどの程度になるかということを政府として計算をいたしまして自信を持って申し上げたということはないのであります。請求権そのものを捕捉することがむずかしいわけでございますので、それが多い少ないだろうというような判断は、その筆者のやはり主観だと思います。
○稲葉誠一君 いずれにしても押し問答しても始まりませんけれども、当初においては、日本の政府は、韓国が日本に請求権なんて持っていてもきわめてきわめてとは書いてないけれども、比較的少ないと考えていた。これが筋じゃないですか。それがだんだんいろいろな形で世界情勢の変化やなんかによってふえてきた、こういうことになるのじゃないですか。これ以上聞いても、あとは意見の相違になるかもしれませんが、それでお尋ねしたいのは、三億ドル、二億ドルの大平・金の合意ですね、これはいつできたんですか。あれはまだできないんですか。
○国務大臣(大平正芳君) 会談がございまして、それを基礎にいたしまして、両国最高首脳に御相談をいたしまして、そしてその結果を予備交渉に乗せまして、予備交渉で記録にとどめてあるというのが今の段階でございまして、御案内のように、対韓懸案の問題は一括して処理するという基本の方針をとっておりますので、その全部の懸案について妥当な解決を見て、双方が合意して署名、調印という段階になって初めて法的拘束力を持つと思うのでございまして、それまでは経過的な一応の合意であるというように私は承知いたしております。
○稲葉誠一君 法的拘束力を持つのは、あなた、国会が承認しなくちゃ持たないわけでしょう。そんなことはあたりまえのことですよ。合意は予備交渉でいつ成立したんですか。一月二十三日じゃないですか。どうですか。
○政府委員(後宮虎郎君) 最初口頭によりまして、大筋においては金前部長と大平大臣との間に話されたラインの大綱については同意するということを口頭で言って参りましたのが、十二月の二十九日だったと思います。それから、それをさらに正式の会談の席上で申しましたのは一月の二十三日だったと思います。
○稲葉誠一君 一月二十三日当時は、金鍾泌は中央情報部長をやめていたわけですか。
○政府委員(後宮虎郎君) そのとおりでございます。で、特にそのときにペ大使より、今官吏の資格を去っているけれども、その回答については朴議長の正式の承認を経たものであるから、公の回答と了解してくれという断わりづけでそういう回答がございました。
○稲葉誠一君 そうすると、その当時金鍾泌は中央情報部長の職にはなかったと。朴議長の何だったんですか、よくわからぬけれども。朴議長の何だったんです、その当時金鍾泌は。
○政府委員(後宮虎郎君) 当時は与党工作、民主共和党の組織委員長をやっておりました。で、特に官吏ないし公の委任状というようなものではございません。
○稲葉誠一君 さあさっぱりわからないですね。大平・金の合意が成立したのは一月二十三日だという。そのときの金の身分は韓国の役人でもなんでもなかった。そうでしょう。これが公の日本の外務大臣のあれですか、合意だと、こういうんですか。どうなんですか。
○国務大臣(大平正芳君) 私が交渉の相手になりました金氏は、政府の機関として会談に臨んだわけでございますので、正当な代表として、私は交渉相手として会談をいたしたわけでございます。しかし、これは今、日韓の間には、御案内のように予備交渉という場面がございまして、両方の政府の代表がそこで正規の交渉を続けておるわけでございまして、私どもの了解は、予備交渉の促進について側面的に寄与をしようということでございまして、その政府の機関で、政府の特使として来られた。それまでの間の会談の内容というものはすぐ予備交渉にかけまして、それで両代表の間で予備交渉に吸収していくという手続をとっておるわけでございまして、一月二十三日に金氏が政府の機関の地位を去っておりましても、そういうことは一向関係がないと思います。
○稲葉誠一君 じゃあ、総理大臣が今いませんから、来てから質問したいことがあるので、ちょっと別なことを質問していますがね。そうすると、日本の外務大臣である大平さんと、韓国の政府の機関ではない金氏との間の合意だと、こういうふうに承っていいんでしょうかね。そこ、どうなんですか。
○国務大臣(大平正芳君) 政府の機関であられた当時の金氏と私との間に到達した理解というものは、予備交渉にかけまして、両政府代表の間におきまして確認して予備交渉の記録にとどめておるということでございまして、私は先ほど申しましたように、一月二十三日の時点におきまして金氏が政府の機関の地位を去っておられましても、その予備交渉においてこれが正式に取り上げられ、確認されております以上、一向その了解につきまして両国政府の間にそごはないと確信いたしております。
○稲葉誠一君 それでは、別のことをちょっと聞きますが、きょうの新聞を見るというと、前田課長ですか、外二名が韓国へ派遣されるようなことが出ていますね。あれはどういうことで派遣されるのですか。それからまた、そのスケジュールはどういうふうになっていますか。
○政府委員(後宮虎郎君) 従来から韓国政府は、日本の官吏がときどき韓国の現状視察等に出張することは受け入れる用意があるということを申しておりまして、従来数回にわたって出張さしておったのでございますが、このたびもその一環といたしまして、前田課長以下二名を約三週間の予定をもって現地情勢の視察におもむかしめたものでございまして、特に交渉等の予定はございません。
○稲葉誠一君 この新聞によりますとね、外務大臣、何か韓国では諮問形式による各党の協議会を設置するという意向だと、こういうことがきょうの、特に毎日新聞などに出ているわけです。これはどういうわけなんですか。どの程度あなたのほうでこの問題についてキャッチしておられますか。
○国務大臣(大平正芳君) 今仰せのような報道は承知いたしております。しかし、どういう事情で、どういう目的で協議会が開かれるのか、これは韓国側の問題でございまして、詳しくは承知いたしておりません。
○稲葉誠一君 韓国が今までどおり日韓会談を推進していこうと、こういう強い気がまえなら、こういう各党の諮問委員会などを設ける必要はないのじゃないですか。韓国の中にいろいろな変化が起きてきているのじゃないですか。
○国務大臣(大平正芳君) 韓国がどういう目的でそれをやられているのか、つまびらかにいたしておりませんで、そういう企てに対する評価を私から申し上げるのもいかがかと思います。
○稲葉誠一君 それでは、総理が来られたから、総理に日韓会談のひとつ基本的な問題についてまたお尋ねしたいと思うのですが、日韓会談が非常におくれました。おくれた中には、何かこういろいろと韓国との間で基本的なものの考え方の相違、これがあるのじゃないですか。どの点が一番基本的な相違になっていますか。
○国務大臣(池田勇人君) 私は直接その衝に当たっておりませんが、やはり漁業問題等におきましてはいろいろ問題があると思います。法的地位の問題につきましても、竹島の問題につきましても。また非常におくれたとおっしゃいますが、私はそう早くできるものとも実は思っていなかった。なかなかむずかしい問題です。いろいろなかけ引きがございます。ことにここでよく議論せられておりました軍事政権が民政移管ということになりますと、いろいろな問題が起こってくると私は前からある程度の予想はしておったのであります。ですから、非常におくれたというわけのものでもございません。
○稲葉誠一君 これは私の言葉じりを取られたような格好です。私は日韓会談妥結に反対の立場ですから、おくれたということを言うのはおかしいかもしれませんけれども、そういう問題ではなくて、基本的な、もっと大きな日韓の考え方の違いがありますね。これは明治四十三年の日韓併合以来の日本の韓国における政治といいますか、その問題に対する日本と韓国との違いがありますね。総理、いかがですか。
○国務大臣(池田勇人君) 私と朴議長との間では、やはり前向きで今後の親善のいしずえを作ろうと、こういうことで前向きでやっていこうという話にいたしております。私は前の古いことをとやこう言うのでなくて、前向きでとにかく親善関係を打ち立てていこう、これが朴議長との基本的考え方であったのであります。
○稲葉誠一君 しかし、あなたにしろ外務大臣にしろ、ことに外務大臣は日韓併合に関連して日本と韓国の本質的な見解の差異があった、こういうことを、あなた、言っていますよ。だから、その本質的な差異というのは、これは私よくわからないのですよ。あまり歴史を勉強していないからよくわからないのですが、どういう点が違うのでしょうかね。日本は韓国を帝国主義的に侵略したのだ、日韓併合以来。こういうふうに今の政府は考えておるわけですか。
○国務大臣(大平正芳君) 私が申し上げましたのは、請求権論議の場面におきまして、たとえば法律論をたたかわしている中に、わが国が国会を通じて制定いたしました実定法というようなものにつきましても、韓国側といたしましてはそれの効果をすなおに受け入れられるというような気持ではないということを申し上げたわけでございます。そういうせんさくをやっておりますると、これはますます迷路に入るわけでございますので、先ほど総理が言われましたように、日韓の関係というのはそういう過去のせんさくからは値打ちがあるものが出てきませんので、将来の展望に立って、将来の友好関係をどう築きあげていくかという視点から取り上げるべきで、取り上げないと建設的な成果は得られないのではないかという判断に立っておるわけでございます。そういう判断をせざるを得ないというゆえんのものは、過去の分析評価ということに大きな見解の差異がある証左であると思います。
○稲葉誠一君 私は、私どもの先祖が一体韓国に対して悪いことをやったんだろうか、いいことをやったんだろうかということをやはり迷うのですよ。過去の分析に対して非常に評価が違うと言うでしょう、今の自民党の人は。韓国に対して日韓併合以来いいことをやったと、こう考えておるわけでしょう。あそこに金をつぎ込んだけれども何も搾取するためじゃない、韓国の経済を培養して韓国の人民の利益のために日本はその金をつぎ込んだりなんかしたのだと、こういうふうに今のあなた方は考えていられるのでしょう。そうでしょう。
○国務大臣(大平正芳君) これは一人一人の見方があろうと思いますが、私が申し上げておりますのは、総じて日韓の間に併合、韓国統治というものの評価の仕方が違うということを申し上げておるのでありまして、その是非の判断について申し上げておるわけではありません。
○稲葉誠一君 それじゃ、私は是非の判断を聞くのはやめましょう。統治の仕方に対して見解が違うのですか。是非の判断という意味じゃなくて、見解が違うのですか、どうなんですか、韓国と日本と。そうすると、そこだけはどうぞお答え願いたい。そうでないと話が進まないのです。これからいろいろなことを質問したいのです。経済協力の実態の問題について。ですから、日韓併合以来の統治が見解が違うと言うから、大平個人のあなたの見解はいかがですか。
○国務大臣(大平正芳君) 韓国の、日本の三十六年にわたる韓国統治がよかったものであるという判断を、韓国の方々は必ずしも持っていないと思います。わが国でこれをどう見ておるかといいますと、これはそれぞれ人によって見方が違うでございましょうが、日本の韓国統治の評価ということにつきまして帰一した見解を伺ったことはございませんけれども、私が申し上げておるのは、双方の間にその評価をめぐって相当越えがたい距離があるということを念頭に置いてこの問題はやらなければならぬのじゃないかと思っております。
○稲葉誠一君 韓国が日本の統治をどう見ておるかということは、今あなたの答えの中に出てきましたね。必ずしも日本の統治はよかったと見えておる人が韓国の中に多くない。その見方と日本の見方では開きがあるという見方ですね。韓国のほうじゃ、日本の統治が悪かったと言っておる。日本のほうでは、その見方として開きがあるというなら、今の大平さん初め自民党の人は、従来の韓国統治は日本としてよかったと、こういう考えのもとに日韓交渉を進めておる、こういうふうに考えざるを得ないですね、論理的な帰結として。そう承ってよろしいですか。
○国務大臣(大平正芳君) 評価の仕方に相当の距離があるという感じを持っておるわけでございまして、そういう問題だと、そういうむずかしい問題であるという認識をもって当たらなければならぬと思うのです。ただ、私が申し上げられることは、第二次大戦という史上想像を絶した大事件が起こりまして、わが国も大きな創痍を受けたわけでございまするし、同時に、朝鮮半島がああいった状態にあるということは、これは大戦の結果とはいえ、こういうような事態に置かれておるという状態は十分理解いたしまして、いろいろのことを考えて参らなければならないと思います。
○稲葉誠一君 私は、国会答弁のトラの巻というので五カ条というのがあるのです。それは第五条にあるのは、時間がないけれども、ちょっと読んでみましょうか。第五条は、聞いていると、その場ではもっともらしく聞こえるが、速記録になってから読んでみるとさっぱり要領がわからぬというのが上乗の答弁、これは第五条にあるのですがね。(笑声)しかし、これは帝国憲法時代の答弁だと、こういうのです。民主主義の今の憲法のときには、逆でなくちゃいかぬ。だから、もっと簡明直截に答えなければいかぬと思うのですよ。 政府としては言いづらいでしょうね、これは。それは、あなた、今外務大臣がしゃべったことだけでも、これはもう日韓会談の今後の進捗に大きな影響がありますね。だから、私は、韓国は日本の統治はよくなかったと見ておる、日本のほうではその見解と、ことに自民党の政府とは開きがあるのだ、こういうふうに念を押して承って、この質問を終わりたいと思います。この問題については……。 そこで、もう一つの問題、別の問題です。経済協力の問題。この三億ドルというのは、具体的に何をどうするのですか。さっぱりわからないのですよ。どうするのですか、との三億ドルというのは。これは総理のほうが、経済問題だから詳しいのでしょう。どっちでもいいですから。
○国務大臣(大平正芳君) 経済協力一般は、御案内のように、第二次世界大戦後、協力国も受益国も双方に、孤立した繁栄はあり得ないというので、お互いに協力し合う仕組みが生まれて、年々これが展開されておるわけでございまして、対韓経済協力というものもその一環として私どもは考えておるわけでございます。今、三億ドルの内容のお尋ねでございますが、それはこういうプロジェクトをこのようにやるのだというような話い合いはございませんで、わが国が求償国に対する賠償、またそれに関連した経済協力等で、年々歳々、ただいまでは八千万ドル程度も対外支払いをいたしておるわけでございまするが、わが国の財政能力、経済的な能力から判断いたしまして、これを十年間に供与をするという建前に立っていきましても、わが国の財政能力上何とか消化ができるという目安を考えていたしたことでございまして、内容につきまして、プロジェクト・ベースで固めていくという性質のものではございません。
○稲葉誠一君 そうすると、この三億ドルは、あるいは二億ドルにしても、生産財と役務だと、こういうわけでしょう。その生産財というのは、具体的にどういうふうな形で経済的に韓国へ行くのですか。そこがよくわからないのですよ。こういうことですか、日本にある設備投資が過剰になっておるでしょう、たくさん。そこで、作ったやつを韓国に持っていくのですか、どうするのですか。これは、実際問題としてはどういう形になるのですか。
○国務大臣(大平正芳君) 韓国の経済の復興に寄与するように、これがまとまりますれば、先方で計画を立てまして日本側に要請があると思うのでございます。日本側に余ったものがあるから、これだけのものを送るとかいうような、そういうぞんざいな考え方では決してございません。
○稲葉誠一君 そうすると、これは総理にお尋ねしますが、韓国の今の経済状態、これに対しては、一体総理はどういうふうに認識されているのですか。韓国の経済状態、いろいろあるでしょう。物価が高いとか、やれ軍事費がたくさんあるとか、いろいろありますね。どういうふうな状態になっているのですか、今韓国の経済状態は。インフレーションがひどいとかいろいろあるでしょう。どうなっているのですか。
○国務大臣(池田勇人君) 昨年の米の不作により、また経済改革と申しますか、通貨改革の跡始末の問題、それから外貨不足によりまする輸入の制限とか、あるいは輸出者に対する補償の問題等々で、ある程度物価高を来たしておると一応認めております。しかし、何と申しましても、二千六百万の韓国民の教育程度、労働意欲、技術等々から見て、これはアジアにおきましては私は相当進んだ国と心得ております。したがいまして、ドイツ、イタリア等々を初め、経済協力につきましてかなり話が進んでおることも承知いたしております。隣国の韓国は、しかも非常な教育程度を持ち、そうして非常に安い労働力、しかも労働意欲が非常に旺盛である。これはやはり東南アジアではまれに見る国だと私は考えておるのです。そこで、こういう国々と提携していくことは、日韓両国の繁栄のために、またアジアの経済繁栄のために非常に役立つと私は心得ております。
○稲葉誠一君 そうすると、総理、そういうりっぱな国に、じゃあアメリカは、なぜ経済援助をどんどん少なくしていったのですか。アメリカの経済援助の大体の数字、おわかりでしょう。だんだん減っていますね。なぜそういうふうにアメリカは減らしちゃったのでしょうか。
○国務大臣(池田勇人君) 経済援助を減らしたのは、アメリカは朝鮮にばかりじゃございません。台湾もそうでございます。早くひとり立ちでりっぱな国になるようにというので、援助を減らすのは、やはり先進国の当然の務めではございませんでしょうか。ただ、だんだんそうしてやっているときに、相当民政も進んでいるときに、こういった今申し上げたような不幸な事態が起きたということは、これは認めなければならない。したがって、アメリカとしてもどういう措置をとりますか、経済危機を乗り越えるように私は考えていくものだと思っております。
○稲葉誠一君 じゃあ、これは数字で、アメリカの韓国に対するいろんな援助が減ってきたところの数字を、総理にしろ、だれか、外務大臣か、説明して下さい。
○政府委員(後宮虎郎君) まずアメリカの開発借款を除きますグラント、この無償供与のほうで申しますと、統計のとり方もいろいろあるのでございますが、韓国銀行の発表によりますと、一九五七年から始まって、一九五七年がざっと三億六千万ドル、それから一九五八年が三億一千万ドル、一九五九年が二億一千万ドル、それから一九六〇年が一億四千万ドルになります。一九六一年が一億九千九百万ドルでございます。一九六二年の前半までわかっておりますが、これが一億一千二百万ドル。で、一九四五年からこれまでの累計が、二十六億ドルになっておる次第であります。
○稲葉誠一君 一月十七日ですか、ケネディが予算教書を発表しましたね。あの中で、日本の低開発国に対する経済協力をケネディはうたっていますね。あれは日韓会談と関係があるのですか、ないのですか。どっちですか。総理に……。
○国務大臣(池田勇人君) ケネディ大統領を初めヨーロッパ先進諸国は、日本に低開発国への経済援助はできるだけやってくれということを希望しております。しこうして、欧州諸国はどこと言っておりません、やはり低開発国であります。東南アジアに限ったことではございませんで、あるいはアフリカ、中南米等々でございます。ケネディ大統領の意向もそうではなかろうかと思います。
○稲葉誠一君 韓国に対して経済援助をやるということは、とのケネディの予算教書にいう低開発国には一体入るのですか、入らないのですか。韓国は低開発国として見るのですか。どうなんですか、そこは。
○国務大臣(池田勇人君) いろんな見方もございましょうが、今の通念からいって、やはり韓国は低開発国じゃございますまいか。これはいかなるものを低開発と申しますか、とにかく御承知のとおり、賠償を加えまして日本の低開発国援助は世界で五番目でございます。OECDのDAGの委員会に入りまして、非常に高く評価しております。したがいまして、ケネディ大統領のみならず各国首脳者は、日本に非常に期待している。しかし、これを決定するのはわれわれでございます。
○稲葉誠一君 国連総会があったときに、外務大臣がアメリカに行かれて、ラスク長官にお会いになった。あなたはそのことを国会で報告しておりますね。その中に、ラスク長官からいろいろ尋ねられて、日韓会談の早期妥結を祈るというか、希望するということをラスクから言われた、こうあなた述べておられますね、国会で。アメリカがなぜ日韓会談の早期妥結を日本に対して祈るわけですか、希望するのですか。どういうわけですか。
○国務大臣(大平正芳君) なぜ希望されるのかということは問いただしておりませんけれども、日韓の間が正常化することは望ましいことだということは、たびたび伺っております。
○稲葉誠一君 あなた、ラスクから日韓会談の早期妥結を祈る、こう言われたのじゃないのですか、国連総会かなんかの帰りにラスクのところに寄って。そういうふうに前に述べておりますよ、あなたは、アメリカは一体、日韓会談の早期妥結にどういう関係があるのですか。
○国務大臣(大平正芳君) まあ、日韓の間に国交が正常化されていないということは、自由圏全体を見ましても、こういう非常に異例なことでございますので、これが正常化されることは、アメリカの世界政策から見ましても望ましいことだと考えておると思います。
○稲葉誠一君 アメリカの世界政策から見て望ましいと、あなた、受け取ったわけですね。アメリカの世界政策と日本の政策と、一体どういう関係があるのですか。
○国務大臣(大平正芳君) 私どもは日韓の間は両国の間でやるべき問題と思っておるわけでございまして、アメリカの思惑とは別に関係ございません。
○稲葉誠一君 しかし、日韓会談が始まったときは、アメリカの仲立ちで始まりましたね。
○国務大臣(池田勇人君) アメリカが仲立ちで始まったというのはたいへんな誤解でございます。われわれはそういう気持は持っておりません。以前から日韓関係の正常化を念願しておったので、その念願に基づいてやったのであります。
○稲葉誠一君 防衛長官にちょっと聞きますが、あなたはソウルに駐在武官を置くという要求を三十八年度の予算に関連して要求しましたね。どうですか。
○国務大臣(志賀健次郎君) ソウルに駐在武官を置くということを考えたことはないのでございますから、要求するはずはございません。
○稲葉誠一君 これはちょっと、私も速記録を向こうへ置いてきてしまったので、とればわかりますが、衆議院で、あなた、共産党の川上さんが外務大臣に質問していますね。それに対して、そういうふうな要求があったのではなはだ迷惑に存じておる、こう外務大臣言っておるじゃないですか。川上貫一さんの質問に対して言っておりますよ、衆議院の外務委員会で。ちょっと私ここへ速記録を持って来ませんでしたが、そう言っておりますよ。どうですか。
○国務大臣(大平正芳君) そういうことを申し上げました。そういうことが報道されたようでございますので、それは私どもといたしましては考えていない、こういうことを申し上げました。
○稲葉誠一君 それはソウルに駐在武官を防衛庁としては要求しておると。それは公式か非公式か知りませんが、要求しておるから、そういうことを言われるのははなはだ迷惑じゃないかというんじゃないですか。そういうふうに取れますが、そうではないんですか。
○国務大臣(大平正芳君) そういうことが一時報道されましたので、そういうことを迷惑だということを申し上げました。
○稲葉誠一君 では、時間もありませんのでやめますが、韓国に日本の商社がたくさん行っておりますね。これは外務大臣ですか、通産大臣ですか。どのくらい行っていて、一体何をしているんですか。
○国務大臣(大平正芳君) どのくらい数が行っておるか、私はつまびらかにいたしておりませんが、御案内のように、現在日韓の間には相当巨額の貿易がございますので、そういった仕事に従事しておるものと思います。
○稲葉誠一君 日本商社と韓国の商社との間で、いろいろ仮契約が相当進んでいますね。この実態を調べたことがありますか。
○国務大臣(大平正芳君) 民間のほうでどういうことをやられておるか、一々つまびらかにいたしておりませんが、もしそれが輸出金融等で政府の認証という限界まで参りますれば、私どもの判断になるわけでございます。それ以前の先行する過程においてどういうことを考えておるか、一々つまびらかにいたしておりません。
○稲葉誠一君 その仮契約がどの程度にあるかということは、今の段階ではもちろんわからない。しかし、それが日韓会談が妥結して、三億ドルが出てくる、二億ドルが出てくるとなると、一ぺんに本契約になるんですね。そうすると、その支払いということは、日本の経済協力で日本の商社は保証されているわけです。いいですか。それで、その日本の商社と韓国との仮契約が一体幾らぐらいあるか。これは今私どものいろいろ聞いたところでは、大体において無償供与に見合うところの金額、この金額にひとしいものが仮契約の状態に今ある。だから、これは妥結をしてそれが出ることになれば、本契約になってきて、そこで日本の資本家たちは十分国民の税金で支払いを保証される、こういうことになるんだということを聞いておるわけですね。仮契約がどのくらいあるかということは、これは外務大臣なり通産大臣なりはまだ実態について調べたことはないわけですか。
○国務大臣(大平正芳君) そういうことは調べてございません。
○稲葉誠一君 それでは、貿易のことで一つの事柄を聞きますが、ソウルのそばにセナラがありますね。ここで日産自動車とセナラとが合弁してセナラ自動車株式会社というのを作っているわけですが、これは御存じですか。ノックダウン方式で作っていることは、外務大臣御存じですか。
○国務大臣(大平正芳君) そういうことを伺っております。
○稲葉誠一君 去年の夏、日本からソウルに対してブルーバードが四百台輸出をされたと、こういうことが一体ありますか、通産大臣、どうですか。
○国務大臣(福田一君) お答えをいたします。日産とセナラとの間に技術協定が結ばれておりまして、それに基づいてブルーバード四百台出しておる。それからそのほかに部品で出して、千四百台ぐらい出しておるということは聞いております。ただし、これは民間のことでございますから、政府として十分把握することはできません。
○稲葉誠一君 そのブルーバードの四百台が、いったい幾らで日本から出たのですか。これは税関を調べればわかるのじゃないですか。通産大臣、それはどうなっています。
○国務大臣(福田一君) 私の聞いておるところでは、国内の輸出価格と同じような値段で出ておるように聞いております。しかし、これはまだ、的確に調べたわけじゃありませんが、大体、同じような値段と聞いております。
○稲葉誠一君 国内の輸出価格と同じ値段というと、いったい幾らですか、四十万円ぐらいですか。
○国務大臣(福田一君) 四十二、三万円ぐらいだろうと思います。
○稲葉誠一君 これは日本から出たわけでしょう。ところが韓国へ行って百二十万円になって売られている。一台について八十万円、その差額は、大体三億二千万円ですか。この金が、伝うるところによれば金鍾泌氏のふところの中に入ったとかということが伝えられているというわけですね。そういう事実関係はあなた御存じですか。
○国務大臣(福田一君) これは韓国のことでございますから、私ども承知いたしておりません。
○稲葉誠一君 今、韓国での大きな問題は、この自動車の問題と証券の問題とパチンコの問題ですね、パチンコはまだいいとして。そうすると日本から経済協力という形で行って、それはいったい韓国の人民の民生の安定に役に立つか、ちっとも立たないで、一部の連中のふところへみな入ってしまっているのが現在の、全部とまではいかないかもしれないけれども、それが韓国の一つの姿じゃないですか、こういうのが現実にあるのじゃないですか。これでは日本が経済協力したって意味ないじゃありませんか、韓国の民生の安定なんかに、ちっとも役に立たないじゃないですか、現在の韓国の実情の中に。この金は、韓国から日本に払われているのですか、今の金は、どうなっているのですか。
○国務大臣(福田一君) お答えいたします。私の聞いておるところでは、その輸出価格のとおりに金が入っておるそうであります。しかし、輸出をすることは、われわれとして民間商社が正規に手続をしてやることを云々することはできませんから、われわれとしては、それ以上は関知はいたしておりません。
○稲葉誠一君 今の韓国の政治、経済のもとにおいて、経済協力をすれば民生の安定とか経済の復興に役立たない逆の立場がどんどん出てくる。しかもそれによって、国民の税金によって支払を保証されて、これで利益を得るのは日本の資本家だけだ、こういうことが結論として出てくるんじゃないですか。これはおかしいじゃないですか。それが実際、今の設備投資の過剰で余っているところのものを韓国に安く売って、そうしてその支払を確保しようというのが日本の資本家のねらいじゃないですか。だから、どんどん韓国に進出しているのじゃないですか、どうですか。
○国務大臣(福田一君) 日本の経営者、あるいは日本の会社が海外へ出すと同じ値段で品物を売ってはいかぬことはないということは、それはもうおわかり願えると思う。そういうよその国の事情まで考慮して、全部そういうような民生安定になるかならぬかというようなところまで考えるわけにはいかないと思う。また、そういう一つの例があったからといって、すべてがそうなっておると断定することはできない。私はそれまでは、むしろ私たちが触れる必要がない問題ではないか、こう考えております。
○稲葉誠一君 時間がもうございませんから、最後に、今の経済の協力の問題、実態の問題についてはいろいろまだ問題があるわけですよ。焦げつき債権の処理の問題についても、大蔵大臣勘定の問題なんかについても問題があるわけです。MOFの問題。これはいずれまた、日をあらためてお伺いしたいと思いますが。 そこで、最後には法的地位の問題について、少しお伺いしたい、こう思うのです。 そこで問題は、日本にいる、いわゆる在日朝鮮人というのは、今の状態で、これは韓国人なのか、北朝鮮人なのか、いったいどうなっているのか、外務大臣。
○国務大臣(大平正芳君) 終戦前に日本に住んでおられた方々、また、その後できた子供、それから不法入国した方々、そういったのが今のいう在日朝鮮人ということになるわけでございまして、これは日本の国籍を離脱しておるということは間違いないのでございますが、これをどのような処遇にするかということは、今御指摘の法的地位に関連いたしましての日韓間の交渉のテーマになっておるわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、日本は韓国を承認しているのでしょう。承認しているなら、あなた、日本にいる朝鮮人の中に韓国人というのはいるわけですよ。これは韓国の国交正常化の前だっているわけでしょう。それは、どういうふうになっているのですか、扱いは。韓国人というのはいないのですか。
○国務大臣(大平正芳君) 今申し上げましたように、在日朝鮮人ということであるわけでございますが、これをどういう国籍にして参るかということ、そうして、どういう範囲に永住権を認めるかというような問題を、すなわち今の法的地位の問題として討議しておるということでございまして、まだ処理の方式がきまったわけではございません。
○稲葉誠一君 永住権の問題は別の問題でしょう。国籍の問題がきまったあとの問題じゃないですか。日本が韓国を承認しているなら、日本にいる在日朝鮮人五十何万か、これは国連の人権宣言からいっても、国籍選択の自由を持っているのじゃないですか、そうでしょう。それはあなた、自分で韓国人だ、あるいは自分で北朝鮮人だというなら、そういうふうに分けたらいいじゃないですか。どうしてそうしないのですか、外務大臣。
○政府委員(中川融君) 在日朝鮮人が、日本国籍を失なったということははっきりしておるのでございますが、それが大韓民国人であるかどうかという点につきましては、御承知のように韓国政府が、すべてこの在外朝鮮人は自国民であるということを言っております。また国籍法にも、そう書いておるのでございます。しかし、当人の方方は、自分は大韓民国人ではないということを言っておる方がたくさんおるわけでございまして、この人たちの扱いにつきましては、まだ日本政府として、はっきり態度をきめていないのでございまして、これは日韓交渉が妥結いたします際には、何らかの形でこの点が明確になると思いますが、今のところは遺憾ながら韓国側との交渉もできておりませんし、扱いにつきましては、ただいま申し上げたような事態になっておるわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、日本にいる在日朝鮮人というのは、韓国人でもなければ朝鮮人でもない、在日朝鮮人だ、わかったようなわからないような話ですね。ところが、それらの人々に対しては、法令の適用で、大韓民国の民法を適用しろという日本政府のやり方ですね。これはどういうわけです、外務大臣。法務大臣ですか。
○国務大臣(中垣國男君) 在日朝鮮人の国籍の問題でございますが、条約局長がお答えしたとおりでありまして、日本政府自身にも、その決定権があるとは考えられません。だからといって、今の段階で在日朝鮮人が、北鮮であるとか、韓国であるとか、または統一朝鮮人であるとか、そういうことを言っているわけでありまして、それを申し出のとおりに日本が処理することも、実はこれは不可能であります。したがって、先ほどあなたのおっしゃったような人権宣言の中における国籍の自由選択というものが、実際には日本におる在日朝鮮人には、今のところ存在しない、そういう選択権というものをば認められない、こういう現在の地位に在日朝鮮人はあるわけであります。しかし、現実の問題といたしましては、たとえば婚姻であるとか養子縁組であるとか、そういうものが日々行なわれておるわけでありますが、これをどういう法律の根拠に基づいて日本の市町村役場が受理するかと、こういうことになるのでありますから、したがって、今のところ大韓民国民法に準拠した取り扱いをしている、これが一つの方法としましてとられておるわけでありまして、だからといって、そのこと自体が、ただいまのところ直ちに韓国人であると断定はしがたいと思うのであります。今、交渉しておる重要な内容の中に、やはりこういうことを含めて日韓交渉が行なわれておるのでありますから、そういうことの合意の点が出ないと、こまかい正確なお答えはいたしかねると思います。
○稲葉誠一君 そうすると、日韓交渉が妥結をすれば、日本にいる在日朝鮮人は、きのうちょっと言っていましたが、韓国人と韓国人でない在日朝鮮人にわかれる。こうなるわけです。一体、韓国人であるとかないとかということは、どうやってきめるのですか。
○国務大臣(中垣國男君) それは日韓交渉の協定が成立いたしました発効後におきましては、そういう問題を含めましてできるわけであります。その取りきめの中に、たとえば韓国人であるという証明書を日本の市町村役場に登録した場合には、それはやはり韓国人として私は当然のこととして認めていくべきだろうと思います。そういうときに、こういう国籍をみずから忌避する人がもしあるとしまするならば、協定成立後においては、韓国人と韓国人でない在日朝鮮人と、こういうことにわかれるのではなかろうかというふうに思います。
○稲葉誠一君 そうすると、韓国人だというのは、本人の希望によって韓国人だということをきめるのですか。どうなんですか。本人の希望、意思、希望というか意思によってじゃなくて、ほかの客観的なことによって韓国人ということをきめるのか。そこはどうしたんですか。
○国務大臣(中垣國男君) 日韓協定成立後におきましては、当然そうなるだろうと思います。ただ、私のこれは予想でございますが、今交渉の途中にあるわけでありますから正確に言いがたいのでありますけれども、ただ、本人が希望するだけでなくて、やはりそこの本国民法に基づきまして、やはりこれは韓国人であるという何らかの証明書等も必要ではないかというふうに考えます。
○稲葉誠一君 時間がないので、最後ですけれども、そうすると、韓国人になった者と、韓国人でない者が出てくると、韓国人になった者は、永住権その他の問題で有利に取り扱うと、そうでない者は不利に取り扱うと、こういうふうなことはしないことを約束できますか。
○国務大臣(中垣國男君) 日韓交渉が成立後の韓国民の処遇というものは、その協定内容によって、はっきりわかるわけでございまして、韓国は日本に大公使館を置くでしょうけれども、その本国がいかに韓国人に対する保護、管理、指導をするかということで、実質的には違うかもしれません。しかしながら、日本政府といたしましては、先ほど申しました在日朝鮮人の特殊性というものが、もともと日本人であったのだということに立っておりますので、たとえば義務教育の問題であるとか、あるいは生活保護法の問題であるとか、そういうことは、在日朝鮮人の権利として行なわれるものでなくて、日本政府の、そういう特殊事情に基づいた好意によって続けられているというのが今日の状態であります。で、こういうことは、私は差があってはならない、差別的な待遇があってはならない、こういうふうに考えております。
○稲葉誠一君 もう時間が来たようですから、これで質問を終わるわけです。日韓会談のいろいろな問題について、一応重要な点を確かめたという程度に終わってしまったのは、私としては非常に残念なんですが、きょうは予定しておりましたほかの問題、政治資金規正法の問題なり、あるいは国民生活の問題なり、その他の問題について、一般質問なりその他の中で、ひとつまた日をあらためてやらしていただきたい、こういうふうに考えます。きょうの私の質問は、これで終わらしていただきます。(拍手)
○委員長(木内四郎君) 稲葉君の質疑は終了いたしました。 —————————————
○委員長(木内四郎君) 次は野坂参三君。
○野坂参三君 私は、いろいろ政府にお聞きしたいことがありますけれども、時間の制限もありますので、ただ一つの問題についてだけ、総理、外務、防衛、あるいは私の発言に関連のある諸公にお聞きしたいと思うのです。それは今世界的にも、また日本国内でも、いろいろ深刻な問題を起こしており、また日本国民にとっても、大きな不安の種になっておる問題です。それはアメリカの世界的規模における軍事的な戦略、あるいは戦術の新しい傾向が出てきておる。よく世間では、新しいアメリカの戦略体制ともいっております。これが日本にどういう影響を与えるか、この問題についてだけお聞きしたいと思います。 よく世間では、今は世界及び日本でも、曲がり角に来ているのじゃないか、こういうこともいわれております。この意味については、いろいろなとり方もありましょう。一つの現われとしては、今申しましたようなアメリカの新しい戦略体制として現われてきておる問題です。これはケネディが発言されたように、中国封じ込め政策、こういうふうな発言の中にも象徴的に現われております。これは決して中国一国、これの封じ込め政策ではなくて、ソビエトその他の世界の社会主義国に対する封じ込め政策、別の言葉でいえば侵略的な攻撃政策、こう言ってさしつかえないと思います。今、日本の新聞の中で、またいわゆる軍事評論家の中でも、アメリカとしては何とかして、軍事、政治、経済、諸般の面において、社会主義世界体制からの劣勢を補うために相当あせってきておる。また、ヨーロッパにおいては、今日までアメリカの持っておったいわゆる権威というものがだんだん失墜してきている。これを挽回するためにあせってきているのが、今のアメリカの姿ではないかと思うんです。 そこで、私のお聞きしたいことは、いわゆる新しい戦略構想ともいわれていますアメリカの新しい傾向として、これは、敵、すなわち社会主義国を殲滅する。そのためには同盟国、すなわち世界に張りめぐらされているアメリカの軍事基地の存在する国々も犠牲にして、アメリカだけが生き残る。これはとうていあり得ないことです。一種の空想にすぎませんけれども、こういうふうな基本的な構想を持っている。具体的な現われとしましては、ヨーロッパでは、核兵器の、核兵力の拡散、あるいはヨーロッパにおける各地に、主要な国に核兵器を分散させておいて、引き金だけはアメリカが握っている、引き金だけはアメリカが持つ。これが一つ。もう一つは、いわゆるポラリスといわれている原子兵器によって武装されている潜水艦、及びミニットマンともいわれております地下から発射する大陸間弾道弾、これをこの戦略の一つの物質的な基礎として、これに基づいて新しい戦略体制が整えられている、こう言われております。ここで問題になるのは、いわゆる同盟国というものを犠牲にしてこういうことが考えられている。ここから、御存じのように、カナダのジーフェンベーカー首相がこう言っております。結局はアメリカを守るためにカナダが犠牲にされるだけだ、こういうことを言っております。また、ドゴールの最近における言動にも同じような点が見られます。つまり、今日までアメリカの主要な同盟国であったそこの最高の責任者さえ、こういうことを言い始めてきている。これは私は非常に重大な問題だと思います。この点について、総理のほうでは、こうしたアメリカの新しい戦略体制の危険について、どういうふうに考えておられるかということが一つ。第二に、これが主要な問題ですけれども、この戦略体制の中に入れられている日本とどういう関係を持つであろうかということについてのまず見解をお聞きしたいと思うんです。
○国務大臣(池田勇人君) われわれはわが国の安全を保障するためにアメリカと安保条約を結んで安全を保っているのでございます。アメリカの世界政策、アメリカの防御体制につきましては、私は今批判する立場ではございません。
○野坂参三君 アメリカの政策に対しての批判を聞いておるのではありません。こうした現実の事実は、あとでもあげますけれども、防衛庁の役人自身もはっきり申しております。また、アメリカの軍事上の責任者もはっきり言っている。これは決してアメリカが問題ではなくて、わが国の問題です。日本はアメリカによってなかば占領されております。北海道から九州まで軍事基地があります。首都である東京湾のあの入り口、横須賀は、アメリカの軍艦によって封鎖されている、実際上は。こういう事態ですから、アメリカの問題ではない。それが今、ポラリス、ああいう潜水艦とか、あるいはその他のミサイル化によって、日本をその方向へ引きずり込もうとしている。このことは私は少しでも日本の安全平和を願う者ならば、関心を持たざるを得ないし、総理もこの問題についてはお考えを持っておられるはずです。持っておられないとすれば、これはたいした総理大臣だと言わなきゃならないと思うのです。もう一度その点をお聞きしたいと思うのです。
○国務大臣(池田勇人君) 先ほど答えたとおりで、日本の安全を保障するために、日本は自分の考えによりましてアメリカと共同防衛の立場をとっているのであります。これはもう日本国民の大多数の意見によってやっているのであります。
○野坂参三君 もう一度やはりはっきりさせておく必要がありますけれども、つまり、こうした新しいアメリカ戦略体制をとっておるということについて、首相はどういうふうにお考えであるか。そういうことを御存じであるか、どうかと、こういうふうに聞いたほうがいいかもわからないが。
○国務大臣(池田勇人君) キューバ問題以後におきまして、いろいろアメリカも考えておりましょうが、先だって国防次官のギルパトリック等と会っていろいろ話をしたときに、日本に関する限りは何ら一害もございません。また世界的にいろいろ考えているようでございますが、そうたいした変化はないと思います。
○野坂参三君 私はその答えは非常に日本の国民に対して不親切な答えだと思います。ギルパトリックの問題については、あとでお聞きしたいと思いますけれども、最近のポラリス潜水艦が、あるいはノーチラスともいわれていますが、この潜水艦が横須賀に寄港する。これを政府は一応承認されたということも報道されております。こういうことを考えたときに、政府としてはアメリカに気がねをするのではなくて、日本国民に対してほんとうのことを私は知らしてもらう、こういう義務を総理大臣としては持っておられると思うのです。そのことを、ほんとうのことを私は日本の国民に言ってほしい。そして政府がこの問題についてどういう考えを持っているのだと、あとで質問しますけれども、ポラリスが寄港するといった場合においては、これは拒絶するのかしないのか。ですから、この問題については私はほんとうに総理が、一人の日本人として、民族の一人として日本の将来の安全を考えたときに、こうして世界がぐるっと変ろうとしてきている、それに日本が巻き込まれているのです。引きずり込まれている。これに対してどういう対策を持っているかということを、私は国民に知らしてもらうのが義務じゃないかと思うのです。
○国務大臣(池田勇人君) 国会を通じ、その他の場合に常に国民にほんとうのことを申し上げております。アメリカにも、ソ連にも何ら気がねしておりません。御心配になっているポラリス、核弾頭を持った潜水艦は、私は日本に寄港を認めない。また、先だって来たギルパトリックもそうはっきり新聞に言っておるじゃございませんか。御心配なすっているのはあなた方だけじゃございませんか。
○野坂参三君 それでは、そういうお答えがありましたから、その問題に入りますけれども、最近も国会でも論議されましたけれども、ポラリスでない、ノーチラス型の潜水艦が横須賀に寄港する。これを一月九日にライシャワー大使が政府側に申し入れられて、政府側としては原則的に承認した、こういうことを報じられていますが、これもまあ国会で聞かれましたけれども、もう一度これは確かめたいと思います。外務大臣。
○国務大臣(大平正芳君) 一月九日にライシャワー大使から申し入れがございましたが、政府のほうで安全とか補償の問題等について満足すべき回答が得られますならば、同意いたして差しつかえないと考えております。
○野坂参三君 「満足すべき」ということの具体的内容をお聞きしたいのですが。
○国務大臣(大平正芳君) ただいままで、御案内のように、原子力潜水艦は各地に寄港いたしている事実がございまして、何ら安全上の問題は生じていないというふうに伺っておりますけれども、念のために、政府部内における専門家が検討いたしまして、安全上、今のような心配がないのかということにつきまして、アメリカ側の見解を求めておりまして、そのほうは一部参っておりまして、検討いたしております。 補償の問題につきましては、これは先方からの回答がございません。参りましたら、検討いたしまして、政府部内の専門家の判断によりまして、差しつかえないということでございますれば、同意いたしたいと思っています。
○野坂参三君 安全の問題と申されましたけれども、今まで公表されたもの……公表されれば出すでしょうけれども、この原子力潜水艦というものが不安全であるということが、アメリカの責任ある人からも言われております。たとえば、一九六〇年の四月に、アメリカの上下両院合同委員会で、テーラー博士とリコーバー中将、これが、こういうふうに証言しております。「原子力潜水艦の原子炉は、実際は、安全な装置でなく、軍事上、必要ある場合を除いては、人口密度の高い港に寄るべきでない。」、さらにまた、いろいろな事実がありますけれども、二、三あげれば、一九五九年の十月には、原子力潜水艦が爆発をしたと、こういうことも報告されております。六〇年六月十四日には、真珠湾に停泊していたサーゴ号というのが突然出火した。この軍艦には核弾頭を積んでおったと、こういうふうな事故が方々で起こっております。横須賀にノーチラス号というのが入ってきて、そして、ここで、こうした事故を起こさないという保証はどこにあるかということを私たちは聞きたいと思います。つい数日前の日曜日に、横須賀で、こうした原子力潜水艦反対の大きなデモがあって、五万人ほど集まった。横須賀の市民に聞いてみますと、政府側は安全だ安全だと言っている。まるで、魚釣りにノーチラス号が日本に来たと、こういうことを言っているが、実際見ると、こういう危険があるのじゃないか。非常に不安な状態に陥っております。あなた方のほうでは、こうした事故が起こらないという保証がどこにあるかということを、私たちはお聞きしたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) 私どもが伺っているところによりますと、原子力潜水艦にからむ事故が、全然なかったとは聞かされておりませんが、問題の原子炉に関する事故はなかったと聞いております。しかし、仰せのように、この問題は、国民が関心を持たれていることでございますので、政府部内の衆知を集めまして、安全保障上の万全の備えはしなければならぬと思います。
○野坂参三君 いわゆるノーチラス型というのは、外務大臣の今日までの答弁によりますと、原子兵器は積んでないと言われておりますけれども、アメリカの権威ある資料によると、サブロックという原子兵器を積んでいると、こういうことがはっきりといわれております。この点、どうでしょうか、ノーチラス号というよりは、ノーチラス型といったほうがいいでしょう。
○国務大臣(大平正芳君) 私どもが伺っているところによりますと、ノーチラス型でございましても、核装備が可能であるというものもあると聞いておりますけれども、しかし、問題はそういうことではなくて、日米間に、核装備につきましては、これは装備の重大な変更でございますので、アメリカ側から日本に協議があるわけでございまして、アメリカはそういう意図は持っていないし、したがって、そういう事前協議を申し出たこともないわけでございます。私どもは、従来、政府の日ごろの方針としてとっておりますように、核兵器の持ち込みは認めないという建前を堅持いたしておりまするし、アメリカ側もよくそれを承知いたしておりまして、そういうものを持ち込むという意図は、先方も毛頭ないわけでございます。
○野坂参三君 すべてアメリカを御信頼されてのお話ですけれども、まあ、信頼するしないは別問題としまして、今通告と言われましたけれども、たとえば前の行政協定、今日の地域協定によると、アメリカは日本に対して通告する義務はないはずです。そうするとアメリカは好意をもって日本に通告するということになるのですか。その点はどうでしょうか。
○国務大臣(大平正芳君) 事前協議の対象にはならぬと思うのでございますので、アメリカ側が自発的に国民の受ける感触というようなものを考慮されて、政府に前もって御相談があったものと了解いたします。
○野坂参三君 そうしますと、その通告の内容ですけれども、たとえば装備とかあるいはどういう種類とか、数量とか等々について、具体的に通告されるようになっているかどうか、ただいつ幾日に横須賀に来るということにとどまるものかどうか、それからこうした内容について日本はいかなる検証をする保証が普段からあるか。ただやってくると、これは積んでないということだけで、われわれは納得することができない。そうすると、来たものについて、日本が一体、どういう権限をもってこれを保証することができるだろうか、こういう問題です。
○国務大臣(大平正芳君) 先ほど申しましたように、安全上の保障にからまる問題、そういった点につきましては、専門家で検討いたしまして、質問書を提出して検討しているということでございますので、私どもはその検討の結果を信頼いたしまして、措置いたしたいと思っております。 〔委員会退席、理事斎藤昇君着席〕 それから安保条約上、こういう規定になっておっても、現実に積んでいるかもしれないじゃないか、だから検証の問題はどうするのだという御質問でございますが、私ども条約を運用いたす場合、両国ともこの条約に忠実でなければなりませんし、両国の確固たる信頼がなければ、運用できるものではございません。一つ一つの場合について、検証するというようなことは、私どもいたさないつもりです。
○野坂参三君 そうすると、一言で言えば、結局アメリカは、自由自在に日本へ原子力潜水艦を持ってきて寄港させることができる、こういうようにわれわれ理解せざるを得ないと思うのです。これは非常にわれわれにとって不安を与えるものだと思います。これ以上こういう質問をしても、同じような回答でしょうから、先に進みたいと思いますが、やはりこれに関連して、一言聞いておく必要があるのは、最近ですけれども、アメリカの第七艦隊司令長官ムーラーは、ポラリスの基地は、横須賀か佐世保に設定するつもりだということを、はっきり言明しております。外務大臣にお聞きしたいのですけれども、これは御存じでしょうか。また、これに対して、どういうようにお考えか、これもお聞きしたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) そういうことは伺っておりませんし、あり得ないことだと思います。
○野坂参三君 それじゃ繰り返しますけれども、今後こういう要請があった場合には、政府は絶対に承認しない、こういうことを、もう一度総理から確言していただけるかどうか。
○国務大臣(池田勇人君) 私はたびたび申し上げておりますように、核弾頭を持った船は、日本に寄港はしてもらわないということを常に言っております。
○野坂参三君 もう一言。この問題について結論的に申し上げたいことは、それは皆さん御存じのように、最近モルゲンシュタインというアメリカの原子力軍事利用分科委員が著書を出している。これは日本でも翻訳されておりますし、筑土龍男という防衛庁海上幕僚監部総務課長、これが翻訳しております。この中で、われわれとしては先ほど私が申し上げたことが決して単なる杞憂ではないということをこういうふうに言っております。アメリカは、「基地のある同盟諸国は、結局、敵からの第一撃はさけられないだろう。」、いわば、かりに極東に戦闘が開始されたという場合において、第一撃を食らうのは日本だということ、さらに、この著書にはこう書いてございます。そうして、こうした同盟国は自分からこの危険から離脱することはできない、逃げ出すことはできない。 〔理事斎藤昇君退席、委員長着席〕 続けていわく、「しかし、われわれは、ポラリス潜水艦で、ソ連や中国を攻撃するのだ。」、こういうことを言っております。こういうことを権威ある人が公然と書いており、日本にも翻訳されている。したがって私たち、私の今まで申し上げたことは決してある杞憂ではなくて、現実にアメリカとしては、こうした基本的な原則をもって日本に臨んでいるということ、知らない間に横須賀やその他に何が持ち込まれてくるかわからない。これを政府としては検証する手段を何ら持っていない。アメリカの言うままになる、こういうふうに私たちは結論を引き出さざるを得ないと思います。 さて次に申し上げたい、またお聞きしたいことは、先ほども首相が触れられましたが、ギルパトリックの来日の問題に関連してでありますけれども、彼が日本に来られる直前に、ケネディ大統領から在日アメリカ軍の核武装の公然化に積極的に協力するよう強く求めた親書が総理に届いているということを私は伺っております。(笑声)決してこれは笑いごとでもなんでもありません。こういう事実がちゃんとあります。つまりアメリカとしては、原子兵器を今までのようにこっそりと、あるいは、いろいろな形において実質上日本に持ってくるのではなくて、何らかの形で、公然とした形において持ち込むということを、この親書に書かれている。これは、私は決していいかげんなことを言っているのではありません。こういう事実があるかどうか、総理にちょっとお伺いしたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) いいかげんなことでもなんでもない、全然うそでございます。そういうことはありません。
○野坂参三君 しかし、このことは、たとえば総理がギルパトリックと会われたときに、急がば回れと、ああいう日本の言葉を使われて説得されたけれども失敗したということもいわれているし、この親書については、吉田元総理にも総理が知らされ、しかし、ここにおられる大臣諸君全部がお知りになってはいないということも聞いております。お笑いになるのじゃないかと思うんです。これはもう公然たる秘密です。これは総理がお隠しになることは当然のことだと思います。言えないことです。しかし、自民党の内部には、この書簡をめぐってある問題が起こっているでしょう。 それからこの問題に関連しまして、ギルパトリックの来られたことに関連して、あの会談の中で総理が、事務当局で進めている作業をなるべく早く結論づけるということを言われたということを私たちは知っておりますが、こういう約束をされたということを聞いております。つまり、アメリカとしての要請としては、何らかの形においてポラリスその他の原子兵器を日本に持ち込む協定とか、あるいは覚書の交換とか、こういうことが要請されているというふうに私たちは聞いております。こういう事実もどうでしょうか。
○国務大臣(池田勇人君) 先ほど申したとおり、しかも私は、ギルパトリック国防次官と私との話は、先般のこの委員会でも大体申し上げたと思うのでございます。核兵器を日本に持ち込むとかなんとかいうようなことは、全然話題にも何にもなっておりません。
○野坂参三君 それではもう一つ、この問題についてお聞きしたいのは、この六月にバンディ大統領特別補佐官と、それからロストウ国務省政策企画委員長、これが日本に来られることになっていると聞いております。これが、先ほど私が言い、総理が否定されておりますが、今申し上げましたような協定、これの総仕上げをする、こういうふうにも私たちは聞いております。一体、この二人のアメリカの官吏が、六月に日本に来られるということを聞いておりますけれども、それの任務とか、今私が申しましたように、協定の総仕上げをするというふうなことがあるかどうか、こういう点もお聞きしておきたいと思います。
○国務大臣(大平正芳君) 二人の来日のことについて、民間側の一部にそういう計画があるというようなことは伺ったことがございますけれども、それ以上のことは私ども承知いたしておりません。
○野坂参三君 こうした新しい戦略の体制のもとで当然これは日本に影響を与えてきている。日本における軍事上、経済上その他の面においても、これが着々と今現われつつあるし、また今後現われてくるでしょう。この一つとしては自主防衛体制というこの問題です。総理たちは、日本もこうして経済力その他が強化されたんだから、当然自主防衛をしなければならない、つまり自前で攻撃的な兵器を日本で作り上げていくということが一つの新しい要請として出てきている。これが第二次防衛計画の修正というような形で現われる危険が出てき得るんじゃないかということを私たちはおそれております。この点について、政府としては新しいアメリカの戦略体制のもとで、日本における軍事上における新しい変化、これが第二次あるいは第三次防衛体制の中に取り入れられる、こういう事実があるかどうかということをお開きしたいと思います。
○国務大臣(志賀健次郎君) 先刻来アメリカの世界戦略のいろいろな御説を拝聴いたしました。しかし、わが国の防衛体制はすでに御承知のとおり、自衛のために最小限度の自衛力を整備するものでありまして、わが国の防衛体制は、アメリカの戦略体制がどのようになろうとも、これは左右されるものではないのであります。それがいわゆる自主防衛でございます。 また、第二次防衛計画が修正を余儀なくされるのではないかという憶測もございましたが、そういう心配はございません。私は、今日の最重要の問題としてすでに策定また決定を見ました第二次防衛整備計画を着実にこれを実行していく考えでございまして、修正する考えは持っておりません。
○野坂参三君 今、防衛庁長官のほうから自衛の問題について申されましたが、この自衛隊の数とか、それから陸海空の装備の状態とか、あるいはミサイルの装備の状態とかいうことについて、今、防衛庁長官がここでお答え願えますか。こまかい点はけっこうです。
○国務大臣(志賀健次郎君) 具体的な内容でございますから、防衛局長から詳細に御報告させます。
○政府委員(海原治君) 各自衛隊の現在の状況でございますが、陸上自衛隊は、定員十七万千五百人で五方面隊、十三個師団を中心に編制しております。ミサイル関係の部隊といたしましては、ナイキ・アジャックスを装備いたしました第百一高射大隊を本年の一月に編制しております。海上自衛隊につきましては、自衛艦隊及び五地方隊を基幹といたしまして、自衛艦は約十一万トン、隻数にいたしますと二百八隻でございます。航空機は二百三十三機を現有いたしております。航空自衛隊は、三航空方面隊と航空総隊という形で編制いたしまして、合計約一千百四十機を現有いたしております。
○野坂参三君 今そうした御報告を受けましたが、これは表面上のことですが、これは相当のやはり戦力を持ったものだと思います、今の報告だけでも。私は、これが自衛のためにこのような装備が必要であるかどうか、もう一度お聞きしたいと思います。
○国務大臣(志賀健次郎君) この問題については、国会を通じていろいろ論議がございますが、少なくともわが国の国情、国力に応じた最小限度の防衛力とわれわれは考えておるのであります。
○野坂参三君 少しこまかくなりますけれども、核弾頭をつけられるナイキ・ハーキュリーズ、これは採用している、あるいはボマークの国産というものが進んでいるということを聞いておりますが、この点はどうでしょうか。
○国務大臣(志賀健次郎君) 具体的な内容でございますから、防衛局長から確実にお答えいたします。
○政府委員(海原治君) そういう事実はございません。
○野坂参三君 事実はおそらくそれは言えないでしょう。しかし、これは常識的にも考えられております、今そういうことがやられているということは。この戦力というものは、私は、むろん今から十七年前のあの戦争時代の戦力に比べても、これは何倍になるかわからないことは、これはもうはっきりしております。この戦力自体がこんなに膨大になりつつある、毎年々々軍事費がふえてくる、さらに、これが自前で今後はやられ、さらに軍事費は膨大になるでしょう。これは明らかに私は憲法の第九条と違反した戦力だと思います。同時に、私たちの憂うることは、この戦力自体が物理的、自動的に大きな力を持ち、また政治上の上でも発言権を持ってきはしないか、これを私たちは憂います。最近外国にいろいろな例があります。軍閥、軍人が一体何を政治的にやっているか、今世界じゅうクーデターばやりで、私は自衛隊が今そういうことをやろうということを言っているのではありません。しかし、自衛隊の任務自身が決して防衛的なものでない、アメリカの戦力体制の中の一部隊としてアメリカの進攻に、攻撃作戦に日本の自衛隊が参加させられる義務を負っております。たとえばキューバのあの事件が起こったときに、アメリカは日本の自衛隊はいわゆる臨戦体制をしいたといわれております。それも総理も防衛庁長官もあとで聞かされたということも知っております。つまり日本の自衛隊というものはアメリカの戦略体制の中に巻き込まれただけでなしに、自衛隊自身を、御存じのように、アメリカの軍事顧問団が実質的には指揮しております。戦略もそうでしょう、アメリカの戦略で動いている。こういう事態を考えたときに、われわれ国民としては非常に不安を持っている。自衛隊自身がもう過去を振り返るまでもなく、警察予備隊からだんだんこういうふうになった。今ではもう、一流とは言えないだろうけれども、相当の大きな力を持ってきている。これが自動的に、みずからの発展方向にいかないという保証がありません。しかも、これがアメリカの指揮下にあるということ、もしあのキューバの事件が拡大したらどうなるでしょう。いやおうなしに、政府が何を言おうが、アメリカの戦略のもとに動員されるということは、もうわれわれ普通の日本人なら考えざるを得ないと思います。これについて、政府としては一体どういう保証があるのか、どうなのか。あるいは安保条約とか、事前協議とか、こういうことでごまかされてはいけないと思うのです。こういう点について防衛庁長官から……。
○国務大臣(志賀健次郎君) 自衛隊はアメリカの指揮下にはございません。総理大臣が最高責任者として、私は総理大臣を上司として、私の命令で自衛隊は動くのでございまして、決してアメリカの指揮下にあるものではございません。
○野坂参三君 これは、だれも普通の常識のある者は、ここにおられる自民党の方だってお信じにならないと思うのです。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)いや、ありませんよ。今の日本の状態を見てごらんなさい。われわれはここで日本人として、党派をこえて真剣に考える時期が来ているのじゃないだろうか。世界の緊張状態は決してこれは緩和しておりません。今後どういう事態が起こるかわからない。しかも、アメリカのポラリス潜水艦が日本の周辺をうろうろしている、こういう事態がある。しかも、自衛隊だけがだんだん膨張してくる、そうしたときにわれわれとしては、このためにも、日本の安全と平和のためにも、この際われわれとしては真剣に考え直す必要はないだろうかということを、私は自民党の諸君にも訴えたいと思うのです。見ていただきたい。日本民族二千年の歴史があります。誇るべきものは、われわれ日本民族は独立の民族であったということ、戦いに破れて今はどうです、アメリカに半ば占領されているでしょう。サンフランシスコ条約で独立した、独立したと言われていますけれども、だれも信じませんよ。日本の主要な基地はみんなアメリカに握られているのじゃありませんか。自体、自由にあなた方やれないでしょう。やろうと思えば横やりが出てくる、こういう事態が今の日本の現実です。だから、ほんとうに日本民族の血が流れているならば、この現実を率直に見るべきですよ。そしてわれわれがほんとうに日本の平和、安全のためには独立しなければならないということ、政府——総理大臣に私ははっきりお聞きしたいが、あなた方は独立している、独立していると言われておりますけれども、今申しましたあの日本の事実を見たとき、独立は何もやってない、基本的には独立をまだやってないということ、いろいろな面において……。日本政府もあります、国会もあります、しかし、基本的な問題になりますとアメリカの干渉が出てくる。軍事的にアメリカにほとんど大部分といってもいいほど握られている。いかにこれを打開するか。ほんとうの意味の独立を日本はいかにして回復していくかということ、これについての総理の見通しと決意を、私は、抽象的な問題ではありません、お聞きしたいと思います。
○国務大臣(池田勇人君) 国際共産主義の一員としての御意見ならばよろしゅうございますが、日本人の言としては、私は聞き捨てならぬと思います。日本人の大部分は独立国家として今進んでおるのであります。
○野坂参三君 これはもう根本的問題だと思います。それが私はいけないと思うのです。東京を見ていただけば、首都でしょう。それを横須賀で、入口はちゃんとアメリカの軍艦で扼されている。神奈川県、東京、埼玉、千葉、茨城、ここにずっとアメリカの膨大な軍事基地があります。これに今ナイキが装備されておる。これが日本の首都なんです。世界のどこに、このような国、アメリカの軍事基地に取り囲まれた首都がありますか。このような情けない状態を今後いつまでわれわれは続けなければならないのか。少なくとも、良心がある政治家ならば、これを真剣に考えるべきです。共産党がどうじゃない。これについて私はこれ以上政府に聞いても、同じ答えだと思うのです。われわれは、今二千年のあの尊ぶべき歴史をさらに汚し続けるかどうか、それともこの際奮起してアメリカから完全に独立して進むべきか——完全に独立して進むべきならば、私はどこの国とも軍事同盟を結ばないで中立の道を歩むべきである、これが私は日本民族の進むべき道だと思います。このことを申し上げて、もう時間がきましたから、私は私の質問を終わります。
○委員長(木内四郎君) 野坂委員の質疑は終了いたしました。 本日はこの程度にいたしまして、明七日午前十時から委員会を開会いたします。 本日は、これにて散会いたします。 午後四時二分散会