法務委員会 第21号
- 発言数
- 96 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1963/06/20
会議録
○委員長(鳥畠徳次郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 本日は、まず、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案を議題といたします。 質疑を行ないます。稲葉君から質疑の要求がありましたので、発言を許します。
○稲葉誠一君 この第三者没収の法案でまず問題となるのは、没収の法律的な定義が問題となると、こう思うのですが、これはどういうふうに正確に解したらいいでしょうか。
○政府委員(竹内壽平君) 第三者没収の定義でございますか。
○稲葉誠一君 いやいや、没収の定義です。
○政府委員(竹内壽平君) 没収は、現行刑法のもとで十九条に規定してあるのでございますが、これは被告人に対する附加刑ということで規定されておりますので、現行法上におきましては、これを刑罰という理解をせざるを得ないのでございます。
○稲葉誠一君 そういう意味ではなくて、もう少しほかの角度から没収の定義を規定づけることができるわけじゃないですか。たとえは、一体何をどこへ移すというか何を移すのですか。ちょっと私の意味がおわかりでしょうか。わかりませんか。所有権を移すというふうに考えてよろしいのか、あるいはその他の考え方もあるのかという意味をお聞きしているわけです。
○政府委員(竹内壽平君) わかりました。
○説明員(臼井滋夫君) 没収を定義づけますならば、没収とは、一定の犯罪行為が行なわれたことを原因といたしまして、当該犯罪行為に関係ある一定の物件、たとえば、犯罪の用に供せられた供用物件、犯罪行為を組成した犯罪行為の組成物件、犯罪行為から生じた犯罪行為の産出物件、犯罪行為によって取得されたいわゆる犯罪行為の産出物件、これらの物件を刑事裁判において国庫に強制的に取得する言い渡しをする処分、これを包括して没収と定義することができると存じます。
○稲葉誠一君 私の質問は、そういう点ももちろん重要なんですが、没収というのは、所有権を移すのを没収というふうに考えるのか。ことに第三者没収の場合では、所有権は第三者が持っているわけですね。被告人は所有権を持っておらない場合が多い。占有権なりあるいは用益物権を持っている場合が多いと思いますが、そうすると、被告人に対する関係で占有権その他の権利を国庫に帰属せしめること、これは一体没収という概念に入ると考えるのですか。これはどういうふうに考えておるのですか。そこをお聞きをするわけです。
○政府委員(竹内壽平君) ただいまの御質問の点につきましては、没収の効果といたしまして、その物の上にある所有権が国庫に帰属するのでございます。そのまた反面の効果といたしましてもちろん占有権も国庫に帰属する、こういうふうに私どもは理解しておる次第でございます。
○稲葉誠一君 所有権が帰属するのは間違いないけれども、第三者没収の場合に、その反面の効果として占有権が帰属するという考え方をとるとすれば、被告人に対する関係では占有権、第三者に対する関係では所有権、こういうことになるわけですか。これは最高裁の判例の中でもこの問題に対する考え方は相当分かれているのじゃないですか。たとえば山田作之助判事の考え方によれば、元来没収なり刑なりは被告人に対するものでなくちゃならないはずなんだ、それは刑法の原則であり訴訟法の原則なわけなんだ、第三者に刑が及ぶというのは理論的におかしいじゃないか、だから没収そのものはやはり被告人に対する占有権の剥奪というのが没収の法律的な効果じゃないか。こういうふうな考え方のほうが理論的に筋が通っているのだと私は思うのですが、それはどうなんでしょうか。どういう考え方のもとに法務省は立案しておるのですか。
○政府委員(竹内壽平君) ただいま御指摘のような議論も存しますことはよくわかっておりますが、判例もその効果が第三者に及んで参ります。つまり第三者の所有権が失われるという結果になりますので、それでその手続を経ないで没収しますことが憲法二十九条にも違反する結果になるというふうに、まあ私この前申し上げましたような理解をいたしておるわけでございまして、判例も私どもと同じ理解に立っておるというふうに思うのでございます。もちろん少数意見にはただいま御指摘のような考え方もありまして、それから学説の中にもそういう考え方を持っておられる学者もある、こういうことは承知いたしております。
○稲葉誠一君 没収について前に刑事局長の答弁は、附加刑的なものと保安処分的なものというか、あるいは両方の性格が日本の刑法の没収の規定の中にはあるということを言われておったように思うわけですね。そこで、ちょっと私よくわからないのですが、保安処分というのはどういうことを言うわけですか。
○政府委員(竹内壽平君) 第三者の所有物までも没収するということは、これはまあ例外でございます。その例外をあえてしなければならぬというのは、その必要性は保安処分的なものである、こういう意味で申し上げておるわけでございます。したがって、第三者没収という制度の性格は、その必要性というようなものは刑事政策的に考えまして保安処分的な性格を多分に持ったものであって、被告に対する刑罰という考え方では誤用がしにくい場合がある。元来、没収というものはそういう二つの性格を持っておるということが、今日学者によって解明されておる考え方でございます。まあ日本の現行法のもとでは附加刑として処罰をされますので、その形から見ますると、被告に対する刑罰ということとしか理解できないわけでございますが、その本質を掘り下げてみると、なお形式的にはそうでありますけれども、実質をよく見ますと、被告人の物を没収する場合にはいかにも刑罰としての附加刑として理解できますが、第三者の物を没収するという場合には、被告に対する刑罰だという形式的な法令のあり方はともかくとして、本質はやはり保安処分という考え方に立ってそれが没収されなければならぬという必要性を理解する、こういうことになるわけであります。現行法のもとにおきましても、形式はもう附加刑でございますから異論はないのでございますが、その本質を理解する理解の仕方としては二つのことが考えられるということを申し上げ、かつ、準備草案におきましては、その二つの性質を別々の規定で表わしておるということも附加して申し上げた記憶がございます。
○稲葉誠一君 そうすると、保安処分的な性格が強いとなれば、それは第三者没収をきめる上においていわば厳格に解釈をしなければならないということがそこから出てくるわけですか、どうなんでしょうか。刑罰としてでなく権利を侵害する要素が非帯に多くなっているわけですから、それだけ憲法二十九条に関連をし違反となるような懸念というものが相当問題として起きるような可能性がある。だから、解釈の上において没収の範囲を厳格にするとか、あるいは補償の問題を規定するとか、いろいろ考え方があると思いますが、そこはどういうふうになってくるのでしょうか。
○政府委員(竹内壽平君) それは、仰せのとおり、解釈を厳重といいますか、これは立法的に解決をすべき問題であると思います。たとえば悪意のものだけに限定するか、悪意からさらに一歩出て知らざりしことについて重大な過失があったというようなことでなければならんといったようなしぼりがかかるのは当然だと思います。それからまたさらに、補償の制度を考えて補償もする。この両々相まって一方の保安処分の目的も果たす、これが憲法二十九条を合理的に解釈した考え方であろうと思います。
○稲葉誠一君 今の点は重要な点で、これは私も今この法案の内容についてその点から関連してより研究しているところなんです。ということは、この法案を審議して、かりに可決した。しかし、この法案の運用いかんによってまた憲法論議をすべき問題が出てきたのでは、国会としてわれわれの責任が大きいわけですから、その問題は私はもっと深く掘り下げて研究したいと思って、別な機会というか、もう少し別にその点をしぼって質問したい、こういうふうに思うわけです。 そこで、今の問題の中に出てくる関税法の規定では、いわゆる無差別没収ということを、これは旧関税法ですか、新関税法ですか、ちょっと忘れましたが、旧関税法の八十七条ですか、片方は百十何条でしたかに無差別没収というものを規定しているようにも考えられるのですが、最高裁の判例は分けましたけれども、無差別没収というのはどういう考え方ですか。法律的にはどういうふうに説明すべきですか。
○政府委員(竹内壽平君) 無差別没収という言葉があるわけでございますが、これは、所有者の主観的な事情いかんにかかわらず何でもかんでも被告人以外のものを没収できるという意味において無差別という言葉を使っているのじゃございませんで、その意味は、所有関係が被告人以外のものであっても没収し得る。所有権が被告人のものであろうと被告人以外のものであろうとつまりいわゆる第三者没収ができるという意味の第三者没収を主として無差別没収、こういうふうに言っておるので、事情を知っておったか知っていなかったというところまで突っ込んで、事情を知らなくても没収できるという意味において無差別というふうな用語の使い方ではないというふうに思っております。
○稲葉誠一君 そうすると、いわゆる悪意ですね、最高裁の判例では、悪意の場合に限るというふうに関税法でなっていたわけですが、その関税法の条文そのものからはそういうことは出てこないのじゃないですか。
○説明員(臼井滋夫君) 御指摘の判例は、昭和三十二年十一月二十七日の最高裁大法廷の判例をおっしゃっていらっしゃると思うのでありますが、この判例は、旧関税法すなわち昭和二十九年まで施行されておりました関税法の八十三条についての判例でございますが、この没収規定の要件は、犯人の所有または占有に属する船舶または密輸貨物を没収するということでございまして、所有者であるところの第三者の主観的要件である善意悪意とか、あるいは過失の有無というようなことについて明文の規定はございませんけれども、この最高裁の大法廷判決は、その文理解釈は一見広く解されるようであるけれども、憲法二十九条との関係で、実質的に見れば第三者が事前に悪意であったという場合に限って没収できるのである、そう解釈しなければ憲法二十九条との関係でこの合憲性が確保できないと、こういう趣旨の判断をいたしたわけでございます。御指摘のとおり、文理解釈よりも実質解釈を狭く判断いたした上で憲法二十九条との関係で合憲であると、かように判断したわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、悪意、それから害意というか、とはどういうふうに区別して用いているわけですか。
○説明員(臼井滋夫君) この最高裁判決で言っております悪意というのは、第三者がたとえば密輸犯人に船を貸します場合に、当該相手方がその船を密輸に供するであろうという情を知っていたと、そういう意味で悪意と言っておるわけでございます。
○稲葉誠一君 よく刑法などで害意という言葉を使いませんか。マリスというのは害意というんじゃないですか。悪意というだけの意味ですか。
○政府委員(竹内壽平君) これはいろいろ概念内容が条文によって多少違うところがあろうかと思いますが、今問題の判例をちょっと出しましたので、さらに敷衍して御説明を申し上げますと、こういうふうに三十二年の判例では申しております。「犯人以外の第三者の所有に属する貨物または船舶でも、それが犯人の占有に係るものであれば、右所有者の善意、悪意に関係なく、すべて無条件に没収すべき旨を定めたものではなく、右所有者たる第三者が貨物について同条所定の犯罪行為が行われること、または船舶が同条所定の犯罪行為の用に供せられることをあらかじめ知っており、その犯罪行為が行われた時から引きつづき右貨物または船舶を所有していた場合に、その貨物または船舶を没収できる趣旨に解すべきであって、憲法二九条に違反しない。」と、こう言っておりまして、この悪意の程度でございますけれども、これはその供されることをあらかじめ知っておったということ、その犯罪が行なわれたときから引き続いてその船舶を所有していたものであると、そういう場合には没収できる趣旨であると、こう言っているので、あとからあれが使われたということを知ったとかいうような場合は入らないという、そういうふうに悪意の程度を説明をいたしておるわけでございます。
○稲葉誠一君 「あらかじめ」ということはどういうふうに解釈したらいいわけですか。犯罪行為が始まる前にという意味だと思いますが、そうなればあれじゃないですか、場合によっては幇助で律することができる場合も相当あるんじゃないですか。
○政府委員(竹内壽平君) そういう場合もあると思いますし、共同正犯になる場合もあると思います。で、事実幾つかの実例を調査してみますると、共犯で論ずべき場合が大多数じゃないかと思うのでございますが、その所有者が国外におったり、いろいろな事情で共犯として国内で起訴することができなかったといったような実情にあるものが多いわけでございます。
○稲葉誠一君 共同正犯にしろ、教唆、幇助にしろ、共犯として起訴をされている以上は、この第三者没収の規定は適用がされないわけですか。
○政府委員(竹内壽平君) 共犯であります場合には、起訴されておりません。でも、そういう事実認定ができますならば、これは第三者じゃなくなるわけでございます。でありますから、被告人と同じ立場で、犯人以外の所有に属しない、犯人の所有だという考え方に判例もなっておるわけでございます。ただ、しかし、起訴されておりません共犯者の場合につきましては、そうであるかどうかは審判してみないとわからないので、第三者没収の手続におきましてはこれを第三者と同じ扱いで参加の申し立てができるような道を開いているわけでございます。審判した結果、実体法上没収される立場のものでありますれば、参加をいたしましても没収という結果になるという違いが出てきますけれども、手続としましては第三者の中へ入れて処理しますのが、この手続の趣旨でございます。
○稲葉誠一君 そうすると、起訴されている場合と、起訴されておらない場合とで、手続では変わってくるわけですか、そういうわけですね。それが今言った共犯者になるけれども、起訴されておらない場合でも、実体法上は刑法第十九条の適用で共犯者になると、共犯者というか、その適用を受けると、だけれども、その手続はこの応急措置法の適用を受けるのだというのですが、条文はそういう点ははっきりしているのですか。
○説明員(臼井滋夫君) 第三者没収と一口に申しましても、実体法上の意味と手続法上の意味と両方あろうかと存じます。実体法上の意味におきましては、先ほど御指摘ございました何ぴとの所有関係であるかを差別しないで無差別没収と同じ意味で第三者没収と言われるわけでございますが、手続法上の場合は、被告人であるかどうかということを中心として第三者没収――要するに、被告人以外のものであれば第三者であるとか、かように手続法上は考えられるわけでございます。したがいまして、実体法上の第三者という概念と手続法上の第三者という概念は必ずしも相合わないわけでございまして、実際には共同正犯あるいは幇助犯でございまして、当該被告事件手続におきまして被告人として起訴されておりません場合には、これは第三者になるわけでございます。この法案におきましては、第二条で「被告人以外の者(以下「第三者」という。)」というふうにしてずっと第二条以下「第三者」という言葉を用いてございますのは、これは手続法上の意味であります。したがいまして、起訴されていない者は、実際にはそれが犯人、共同正犯なりあるいは幇助犯であってもこの第三者に当たるということがこの条文で明らかにしてあるわけでございます。
○稲葉誠一君 第三者が法人である場合はどうなんですか。
○説明員(臼井滋夫君) 第三者が法人でございます場合も、当然にこの第三者に含まれるわけでございます。
○稲葉誠一君 第三者の中に法人が含まれるというのですが、日本の刑法の建前として法人に刑事責任能力をどういうふうに考えているわけですかね。刑法の十九条が附加刑だということで、刑だということになれば、法人も普通刑法の中で犯罪責任能力があるというふうに考えているわけですか。
○説明員(臼井滋夫君) 御指摘の法人に犯罪能力があるかどうかという点については、議論の分かれるところでございまして、わが国の法制におきましても、法人に犯罪能力があるという学説もございますが、これは少数説でございまして、大審院以来の判例並びに学説の多数説におきましては、法人には犯罪能力はないと、かように解されております。 それと、ただいまの御質問との関係でございますが、しかし、法人に犯罪能力がないということと、法人が処罰される主体、すなわち被処罰主体になれるかどうかということとは、これは別個の問題でございまして、たとえば、両罰規定におきましては法人を処罰する。一定の法人の従業者の違反行為を要件といたしまして法人を処罰するというのが特別法においてはもうむしろ通例の形になっておりまして、犯罪能力はないけれども、その従業者の違反行為を要件にしてこれに刑罰を科するという法制が認められておりまして、この点は、法人に犯罪能力を否定する学説も、こういう立法例はおかしいということや言われる方は、どの学者もそういうことはおっしゃらないわけでございます。したがって、法人の所有物を没収するということは、いささかも法人に犯罪能力がないということは矛盾抵触するところはないと存ずるわけでございます。
○稲葉誠一君 それは現行法でそういう説明になると思うんですが、しかし、特別法で、法人が刑事責任を負うというか、処罰されるというのは、特別規定が必要なわけじゃないですか。ですから、第三者が法人である場合に、法人の所有物が没収される、そういうことになってくるとすれば、この応急措置法の中でなり、あるいは特別法の中で、そういう規定が必要になるんじゃないですか。たとえば麻薬だとか関税だとか、関連する特別法がたくさんありますね、その中でそういうふうな規定はあるんですか。
○政府委員(竹内壽平君) 御質問とただいま臼井参事官からお答えしましたところがちょっと食い違いになったかと思いますが、御質問の、法人に犯罪能力がないという考え方に私ども立っておるわけでございますが、それが処罰されることも、もちろん処罰の対象としては現行法上認められている。そこで、処罰をする場合には特別法が要ると、これも御指摘のとおりでございます。ここで第三者の中に法人が入っておるという考えでございますが、第三者たる法人がその所有物を没収されるというのは、刑罰として没収されるんではなくて、刑罰はあくまで被告人の刊罰でございまして、第三者がなぜそういう犠牲を甘受しなければならぬかということになりますと、先ほど御説明したような悪意でございますね、悪意の場合にその犠牲を甘受しなければならぬ。これは保安処分上やむを得ないことなんで、そこが憲法二十九条との関連において妥当な線として判例が示しておる解釈でございます。そういうふうに理解をしておるわけで、その場合の法人というのは、刑罰を受ける、つまり処罰をされるというのじゃなくて、処罰されるのは被告人個人なんでございまして、それの影響が第三者たる法人に及んでくるということの理論だと思うわけでございます。
○稲葉誠一君 まあ大体私が考えていて求めていた答えを今刑事局長が言われたんですがね。だけど、あなたの言われたのは、第三者に対する没収、これが保安処分的なものだというふうにも言われるし、今法人の問題を私が出したときには、保安処分だと言われましたね。今までは保守処分だとはあなたは言っていないですね。保安処分的というふうにいつも説明していますね。どうしてそういうふうに言葉を使い分けるのでしょうか。ここに僕はこの没収の基本的な問題が少しもこの法案の中でも論議されていないような感じを受けてしょうがないのですよ。
○政府委員(竹内壽平君) 言葉があいまいに使われまして申しわけないのでありますが、第三者没収の本質は保安処分である、こう私は理解しておるわけでございますが、現行法のもとにおいてそういう規定はないわけでございまして、第三者没収もまさしく被告人に対する附加刑として処罰しておるわけで、現行法を改めまして、その性格をありのままの姿で規定をいたしますと、私はそれから以後におきましてははっきりと保安処分、こういうふうに申し上げていいと思いますが、今、現行法のもとでは、本質はそうだが、現行法の形式ではそうでないというので、保安処分的という言葉を使ったわけでございます。終始「的」と使うべきところを保安処分と申し上げたのは私の誤りでございまして、保安処分的というふうに御理解をいただきたいと思います。
○稲葉誠一君 没収については、没収法というような単独法を作るという考え方は今あるのですか。
○政府委員(竹内壽平君) まだ検討の過程にありまして、没収法という特別法を作るという考えがいいか、あるいは、やはり刑法の総則の中に規定をいたしまして、刑事訴訟手続にその点を明らかにし、あるいは特別法におきましても刑事訴訟手続によってやるわけでございますので、特殊なものについて特別法の中に手続を定める必要があるかどうか、そういうようなことすべてをひっくるめまして検討中でございます。ただ、まあ参考になりますのは、一九五二年に西ドイツに秩序違反に関する法律という法律がございまして、これがかなり進歩した手続を定めております。これは刑法の規定ではなくて、そういう特別の規定で定めておりますが、そういうものも参考にいたしてみたいと思っております。ただいまの準備草案の中には、刑法の総則の中に、附加刑という考え方を廃止しまして、没収という一章を設けまして、かなりたくさんの条文を置いておりますので、おそらく法制審議会もそのラインで解決をはかろうとしていくのじゃなかろうか、こういうふうに想像いたしておるわけでございます。
○稲葉誠一君 私の質問は、結局、本質は保安処分だ、現行法では保安処分的なものだ、こういうふうになってくれば、刑の場合と保安処分との場合で法律上いろいろな面で違いができてくるのじゃないかということをお聞きしたいわけなんですが、これはもうちょっとあとでお聞きします。 その前に、私もこれはもう常々疑問に思っていたのですが、被告人に対する判決ですわね、被告人に対する判決が、附加刑であっても、被告人以外の者に判決の効果が及ぶということは、一体現在の訴訟原理の中にあることが考えられないのですよ。どうも建前からいっておかしいのじゃないかということを私は考えていたわけですが、これはそういうふうなことを最高裁の判事もどなたでしたか、言っておられますね。名前は忘れましたが、山田さんかな、どなたか言っておられますね。そこで、これはあなたのほうからいただいた三十八年一月の「刑法の没収・追徴規定の沿革、法務省刑事局」」これは本田正義さんが書いたものですね。この二十一ページのまん中ごろの「第三は、」というところで、「没収の効果について新たに規定をもうけたことである。」――これは改正の準備草案のことを言っておると思うのですが、そのあとに、「現行法の下では、没収言渡の効果が犯人以外の第三者に及ぶかどうかに争いがあり、又没収の効果発生の時期いかんについても説が分かれていた」、こう書いてありますですね。没収の効果発生の時期については四つくらいの説があるようですけれども、これは常識的に見ても判決言い渡しがあって確定したときに効力が発生するというのは通説ですから、問題はないと思いますが、その前に、現行法の下では、没収言渡の効果が犯人以外の第三者に及ぶかどうかに争いがあり、」と書いてありますですね。これはどういう争いなんでしょうか。原則としては及ばないのだと、だけれども例外的には及ぶのだという意味にもとれるのですがね。どういう基本的な争いがあって、法務省はこの法案を立案するについてどういう考え方でやっておられるのですか。
○説明員(臼井滋夫君) お答えしたします。 没収の効果につきましては、非常にむずかしい問題が御指摘のとおりあるわけでございますが、沿革的に申しますと、第三者の没収というのが認められますようになりましたのは昭和十六年の刑法改正であります。第三者没収が、実体法上の第三者没収が刑法に導入せられまして、これと並行して特別法に第三者没収規定がたくさん規定せられるようになったわけでございますが、そういうように第三者の没収が規定される以前におきましては、没収の効果というものは、先ほど来稲葉先生仰せのとおり、起訴されております当該被告人だけに及ぶ、すなわちいわゆる対人的効果、こう考えるのが通説でございまして、戦前の民事の判例でございますけれども、昭和十三年に大審院の民事判決がございまして、その民事判決などもそういう対人的効果説をとっておったわけでございます。ところが、第三者没収が刑法及び特別法に数多く規定せられるようになりましてからは、むしろ没収の効果は、被告人だけに及ぶという対人的のものではない、起訴されている被告人以外の第三者に対しても及ぶのである、いわゆる対世的効果説が非常に有力になって参りまして、今回の立法の機縁になりました大法廷判決も、多数意見はこの対世的効果を前提にして違憲論を展開しておられるわけでございます。仰せのとおり、山田裁判官その他少数意見の裁判官は、稲葉先生と同じような説でございまして、対人的効果説でございますが、これは結局判例も従来の考え方を改めて、対世的効果に改まって参りました。そういうことでございますので、今回の立法も、大法廷判決の多数意見に従って、対世的効果を持っている、そういう前提に立って立案いたしております。 なお、立ちましたついでに参考に申し上げますと、第三者が没収は、わが国の法制のみならず、大陸法系の法制におきましても、また英米法系の法制においても、広く認められているところでございますが、この効果につきましては、対人効果ではなくて対世的効果であるというふうに解釈がされたり、あるいはその点が明文ではっきり規定されていたりしているわけでございまして、そういうふうに、没収の効果につきましては、日本のみならず、諸外国でも第三者没収を認めるのに伴いまして、対人的効果説から対世的効果説に変わって参った、こういうふうに言えると思うのでございます。
○稲葉誠一君 対世的効果ということになれば、第三者没収も本質的にはやはり保安処分ではなくて刑だという考え方が一貫してこなくちゃおかしいのじゃないですか。そこのところがどうも法務省当局の考え方があいまいじゃないですか。対世的効果ということになれば、対人的、被告にだけではなくて、第三者に対しても当然刑の効果が及ぶわけですから、第三者に対しても刑なんだということの基本に立っていかなくては筋が通らないのではないかと思いますが、それを保安処分的だとかということになってくると、ちょっとその点がどうもあいまいなところがある、こういうふうにも考えられるし、また、今の二つの考え方はいわゆる次元を異にする問題なんだ、だから、対世的だということを言って、それは一応刑とは考えられるけれども、その本質は保安処分的だということにするのに矛盾はないのだ、こういう考え方をとるわけですか。
○政府委員(竹内壽平君) お考えごもっともでございますが、私どもは、考え方といたしましては、効果が及ぶということで、すぐ及ばれた第三者が刑罰を受けているのだという考え方には立っていないわけで、そういう効果が第三者に及んでいくということの理解は、むしろ財産権侵害との関係においてどう理解するかということだと思うのでございまして、そのことがすぐ効果が及んでくるからといって刑罰を受けているのだという理解をせねばならないというふうには考えておりません。その面で、面が違うというふうに理解をいたしております。
○稲葉誠一君 そうすると、附加刑という意味は、対人的な意味に使うわけですか。その人に対する主刑のほかに附加されるのだという考え方で、第三者に対する関係で附加という意味とは全然別個な問題だ、こう解釈するわけですか。
○政府委員(竹内壽平君) 附加刑は、もちろんその被告人の主刑にあわせて附加されて科せられる刑でございますから、第三者の所有権が失われたとしても、第三者が附加刑を受けたわけじゃない、そういう意味で仰せのとおりでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、前にちょっとお話しした刑の場合と保安処分の場合とで法律的な効果が違ってくることがあるのですか。たとえば刑の免除の場合だとか、時効の場合だとか、刑が廃止になった場合とか、恩赦の場合とか、いろいろありますね。そういうような場合に、被告人に対する関係と第三者に対する関係とが分かれてきちゃうというか、別々になってしまう関係が発生するおそれはないのですか。
○政府委員(竹内壽平君) これは、別に没収というものを附加刑という考え方から解放いたしまして、実体的にも没収という規定を定めておいて、その手続を定めておくということになりますと、これはもう被告人の刑とは切り離れて、たとえば、被告人の刑は科せられない場合がありましても没収的な手続を進めることも可能になってくると思いますが、現行法では附加刑ということの建前をとっておりますために、今の時効の点とかそういうものは運命を共にしていくと思うのでございます。そういう法律的なつながりはあるわけでございますが、そういうふうに理解しているわけであります。そこにこの立法の苦心も存するわけでございますけれども、むつかしい点といえば、まあそういう点をどういうふうに理論的にも切り抜けて解決するかということと思います。
○稲葉誠一君 私も、だから、その問題をいろいろいただいた資料なりあるいはその他の論文などを読んでみまして考えてみるというと、現行法のもとでは何かはっきりしないというか、あいまいというか、そんなところがどうも生まれてくる感じがしてならないわけなんですよね。現在の段階では附加刑なんだから、そうすると、被告人に生じたいろんな消滅理由はすべて第三者にもそのままに影響があるというふうに見ていいんですか。そこのところはどうなんですか。
○政府委員(竹内壽平君) これは現行法のもとで附加刑という建前をとりながら違憲性を排除しようという考えでございますために、第三者を手続の中へ参加させる場合にも、当事者という地位を与えるわけにはいきません。そこで、参加人という特殊な法律上の地位を作ったわけでございます。そして、その参加人の地位を作るとともに、二人の当事者らしいものがそこへできてくるので訴訟が遅延するという問題が起こってくる、これを防ぐにはどうしたらいいかということ、それにはまた証拠法上の制約を当事者であればそのままかぶってくるのでありますが、参加人には適用しないということにしますと、参加人としても非常に不利益をこうむる場合があるので、またそれを緩和するには一体どうしたらいいかといったような苦心がこの法文の中にあるわけでございまして、仰せのとおり、これを本格的に解決をしませんとすっきりしないものでございますが、本格的な改正を試みるということを前提といたしまして^とりあえず当分の間この違憲の状態を排除するための最小限度の手続としてこの案を考えましたものでございますから、カバーする範囲も現在残されておる問題のすべてをカバーしておりませんし、手続上もやや複雑難解になったわけでございまして、私どもとしましては十分御疑念を晴らすように説明を申し上げていきたいわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、第三者没収が保安処分だとすれば、被告人に生じたいろいろな事由、これはまあいろいろな事由といっても、違法阻却もあるし、責任阻却もいいろあると思うんですけれども、それは全然第三者没収とは関係がなくて、切れてしまうということになるわけですか、あるいは、場合によっては残るんですか。たとえば対物訴訟なんかのやり方でも、被告人に対して発生した事由が第三者没収にも影響がある場合もあるんですか。そこはどういうふうに考えているんでしょうか。
○説明員(臼井滋夫君) ただいま仰せの問題は、将来の立法論として考えます場合と、現行の刑法その他の実体法を前提として考えます場合と、考え方が――考え方と申しますか、この解釈、そういうものが違ってくると思うのでございますが、将来この第三者没収というものを名実ともに保安処分あるいは保安処分的な制度と規定いたしますならば、そういう実体法になりますならば、仰せのように、手続法は対人訴訟というふうな形になりまして、被告人に対するたとえば被告人の死亡とか、あるいは被告人について公訴が時効を完成したというような訴訟要件を欠く場合においても、そのもの自体が将来また再び犯行に使われるおそれがあるというような場合には、再犯の防止、こういう保安処分的な目的から、対物訴訟によってそれを没収できるようにするのが適当な方法であろう、かように存ずるわけでございます。これは、あくまで現在の実体法の附加刑であることから解放いたしまして、名実ともに保安処分として規定した場合の立法論でございます。現在の法制においては、実体法は、刑法は没収を附加刑として規定しております。実質的には保安処分的な没収も規定されておりながら、形式的には附加刑であるというのが現在の法制の姿でございます。それを前提にいたしますならば、あくまで特定の人が被告人として起訴されまして、当該被告事件手続においてその起訴された人について有罪になりまして、しかも主刑が言い渡される、それに附加して没収が言い渡されなければならないわけでございますから、御指摘の訴訟要件を欠いたような場合、たとえば公訴棄却とか、免訴にするような場合がございますれば、どうしても没収の言い渡しもできない、そういうことになるわけでございます。
○稲葉誠一君 そういう場合にも保安処分的な要素が濃くなければ困るというならば、没収の効果が及ぶように応急措置法の中に立法でしようと思えばできたのじゃないのですか。それをやらなかったのはどういうわけなんですか。
○政府委員(竹内壽平君) それは、仰せのとおりでございます。しかし、それをやりますためには、準備草案の条文をごらんいただいてもわかりますように、まあ実体法の面で相当な条文をそこへ作り足さなければなりませんし、それに照応した手続法を定めるということになりまして、これは私どものほうとしましては非常な大事業になってしまう。とうていこの違憲判決の応急措置としましては、仕事が大き過ぎまして短期間にできないわけでございまして、そこで、そういうふうに将来直すことを前提としてとりあえずの処置――各庁の第三者没収の裁判の実況等も可能な限り調べましたが、わずかに半年や幾らの調査でございまして、推測も十分ではありませんが、それらから見まして、必要にして最小限度のもの――あるものは割愛せざるを得ないのでありますけれども、必要にして最小限度のもの、特に私が留意をいたしましたのは、この国会に麻薬法の罰則強化を目的とした法律案が係属しているわけで、この罰則が非常に強化されているにもかかわらず、肝心な麻薬がこの手続がございませんために没収不可能というような問題が越こってくるというのでは、これは文字どおりかご抜け、底抜けのことになってしまいますので、事件もそれが一番多いのでございますが、そういう問題だけでも解決がされないようでは、まことに事務当局としまして申しわけないことでありますので、そういう点を考えまして、不満ではございますけれども、最小限度のものとして緊急立案した、こういうことで、仰せのような趣旨はよくわかっておりましたけれども、そこまで手が届きにくかった、こういうふうに思っているわけでございます。
○後藤義隆君 関連してちょっとお聞きしますが、刊が時効によって消滅した場合には、附加刊の没収はどうなりますか。
○政府委員(竹内壽平君) もちろん附加刊も言い渡しができないわけでございます。
○後藤義隆君 いや、公訴時効でなしに、刑の時効です。
○政府委員(竹内壽平君) もちろんそれは刑の時効でございますれば、当然だめでございます。
○後藤義隆君 没収をまだ執行しないうちに刑の時効にかかった場合、公訴時効でなしに判決確定後に逃亡か何かしておって刑を執行しない、また、したがって、第三者でもあるいは被告の場合でもかまいませんが、没収もまだ執行しないうちに刑のほうが時効にかかった場合には、どうなっておりますか。
○説明員(臼井滋夫君) お答えいたします。 現行刑法の三十二条の五号によりまして没収についての時効は一年になっておりますので、ただいま御指摘の死刑について執行ができないような場合でございましても、物がありますので、それより先に執行ができますれば時効が完成いたしません。しかし、何らかの事情で執行ができない場合には、確定後一年で時効が完成いたします。
○稲葉誠一君 今の後藤さんから質問した点に関連するのですけれども、没収は、これはわかり切ったことですけれども、押収してある物件に対して没収ができるのが建前だと思うのですが、押収していなくても没収ができるという法制もあるのじゃないですか。
○説明員(臼井滋夫君) 没収の言い渡しができるのは押収中の物についてだけであるかどうかという点については、外国の法制等もいろいろございますけれども、わが現行法制の解釈といたしましては、没収の言い渡しができますのは、現に裁判所なり検察庁で押収中の物のみならず、押収されていない物についても没収の言い渡しができる、こういう解釈が最高裁判例によってとられております。
○稲葉誠一君 ここで没収のこの法の規定の仕方、ことに範囲の問題ですね、それは、日本の法制では少し広過ぎるのじゃないですか、外国と比べて。ことにドイツなんか非常に狭く解釈しているのじゃないですか、押収できる物を。たとえば組成物件と供用物件というようなものに限るとか、こういうきめ方をしているので、日本のやつは非常に広いのじゃないですか。
○政府委員(竹内壽平君) 没収の範囲でございますが、これは資料にも差し上げてありましたように、沿革を見まするとだんだん広がっているわけでございますが、広がったのもありますし、あるいはその解釈ですでに確立しておるものを法文に明確にしたというのもございまして、今度の準備草案におきましては、さらにまたこれを観念的に分けてはっきりさしておるということで、諸外国に比べては私も詳しいことは存じませんから、臼井参事官から御説明をいたします。
○説明員(臼井滋夫君) 英米法系の没収の法制と大陸法系の没収の法制とはかなり違っておるわけでございますが、わが国の建前はドイツ、フランス等の大陸法系の制度と同じような立て方をしておるわけでございます。 没収できます物件の範囲については、たとえばドイツ法と比べますと、ドイツ法では犯罪行為の組成物件という概念を認めていないわけでございまして、この点では組成物件を認めるわが刑法のほうが若干表面的には広いわけでございますが、ドイツ法におきます解釈といたしまして組成物件というのを認めないのは、組成物件に属するものは、供用物件、産出物件のいずれかに含まれてしまう、したがって、組成物件という概念を認める必要がないのだ、こういう考え方がとられておるわけでございます。組成物件という概念を認めておりますのは、フランスとかベルギーとか、いわゆるフランス法系の刑法の諸国においてでありまして、この点についてはこの没収規定は組成物件を認めたという限度では、フランス法系の影響があるのではないかと考えられるわけでございます。 一般的に申しまして、第三者没収をわが国の法制は非帯に広く認めておるかと申しますと、第三者没収を非帯に広く認めている傾向にある、だんだんそれ心拡充しておる傾向にあるということは、これは日本ばかりでなく、ドイツ、フランスその他大陸法系の諸国においても、またアメリカの連邦法や各州の制定法におきましても、保安的な見地から第三者没収を次第に広く認めつつあるということが言えると存じます。 それから第三者の悪意とか過失とかいう点でございますけれども、この点では日本の判例はむしろ狭いのでございまして、先ほど来の問題になりました事前の悪意という点にしぼっております点は、これは日本の判例が一番狭いと考えられるわけでございまして、ドイツやアメリカの判例、学説は、第三者に過失があってもいい、過失の場合でも没収できるというような解釈、さらにアメリカでは過失がなくてさえいいという一部の判例さえあるようでございまして、そういう点ではむしろわが国の判例によって認められる第三者没収の範囲は狭いと、かように言えると思うのであります。
○稲葉誠一君 日本の刑法は、「犯人以外ノ者ニ属セサルトキ」と十九条の二項の本文で規定しておりますね。こういう規定の仕方は世界の立法ではあまりないので、たとえばドイツなどでは、その物は正犯または共犯に属することが必要だ、フランス刑法であっても、犯人の所有に属することが必要だ、そういう形をとって、その面においてヨーロッパの刑法の没収の仕方のほうがずっと範囲が狭いのじゃないですか。日本はその点はずっと広がっているのじゃないですか。そういう意味からも、この没収の規定は刑法の改正の中で論議すべきことでしょうけれども、応急措置の中でももう少し論議してもいいじゃないですか。その点はどうなっておるのですか。
○説明員(臼井滋夫君) お答えいたします。 ただいま御指摘のように、ドイツ現行刑法の四十条におきましては、仰せのとおり、正犯または共犯に属する場合に限って没収できるという規定になっております。しかし、これは総則規定であって、刑法の各則規定には数多く第三者没収を認めた規定が日本の刑法以上に広くございます。それから日本の関税法に相当するライヒ租税法、それから特別法の運用においては、非帯に広く第三者没収を認めております。それからフランスにおいても同様であり、刑法の総則規定自体から見ると非帯に狭いが、各則規定あるいは特別法には日本と同程度にあるいはむしろそれよりも多くと言ってもいいくらいに第三者没収が規定されておるわけでございます。
○稲葉誠一君 日本の第三者没収制度は、これはまあ外国と比べて法の建前が違うし、歴史的事情があるから、一がいに比較することも無理だと思うが、昭和十六年という戦争中の問題、ことに戦争遂行に関連して第三者没収の制度が認められてきたというふうに考えられる。昭和十六年の刑法の改正でなぜ第三者没収というものが基本的に認められるようになってきたのですか。
○政府委員(竹内壽平君) この点は、資料として十分なものを持っておりませんけれども、あのときの改正を見ますると、臨戦体制ということで作られた刑法の規定ももちろんありますが、その改正の際に、従来懸案となっておりました諸外国の立法例を導入したいというあれもありまして、あのときの改正は両方の趣旨が含まれておったように思うのでございますが、この第三者没収の規定などは、むしろ戦争目的に役立たせようということで作ったのじゃなくて、すでにそれより前に日本に紹介されておりました第三者没収の制度というものを日本刑法に取り入れたいという考え方、そういう意味の補正であったというふうに思うのでございます。このことは、手続も設けずにこういう規定を導入したことはやや問題でございますが、現行のフランス法などは、やはり手続法の面では、西ドイツを除きますと、まだ旧態依然でございまして、日本と同じような程度になっておりますので、当時の導入をしました政府当局者の考え方が必ずしもけしからぬというわけには参りませんが、やはり大竹武七郎さんは、この資料の中にも書いておきましたが、あの当時、手続がないことについて差しつかえないということを言っておりますのは、多少そういうことが問題にされたことがうかがわれるわけでございます。
○稲葉誠一君 戦時刑事特別法ができたのはいつでしたっけ。それと一緒のころに第三者没収の制度というものができてきたんじゃなかったですか。だから、結局、そういうふうな日本の戦争との関連で没収制度を広げて、ことに禁輸の物資とか何とかをどんどん没収していって、広げて戦争目的に役立たせようという形ができてきて、それが戦後も、まあ内容はちょっと変わっているが、考え方は違うにしても、これがずっと広がってきて惰性で来ていたのじゃないですか。あの戦時刑事法は十八年でしたか……。
○説明員(臼井滋夫君) お答えいたします。昭和十六年の刑法改正は、刑法十九条あるいは十九条の二という没収追徴に関する件の改正だけではございませんで明治四十年に刑法ができましてから現在まで、戦前戦後数回にわたって重要な改正が行なわれておりますけれども、その中で最も広範な改正が行なわれたのがこの昭和十六年の刑法改正でございます。これはどういう事情でそういう刑法の改正が行なわれたかと申しますと、御案内の戦前に行なわれました刑法改正事業の所産であるところの改正刑法仮案が昭和十五年に一応脱稿いたしまして、ただ戦時中の事情でございましたために、全面改正事業を引き続いて行ない得ないというようなところから、その改正刑法仮案をもとにいたしまして最初限の必要な措置を講じたのが昭和十六年の刑法の一部改正でございます。その改正条文も総則、各則にわたって相当数の条文に上っております。十九条の二項に但し書きとして第三者が情を知って取得したという第三者没収制度が導入されましたのも、改正刑法仮案、これは、御案内のとおり、昭和の初めから十数年かかって昭和十五年に一応の脱稿を見たわけでございますが、十数年にわたる審議の結果できました仮案の五十二条二項但し書き、これをそのまま十九条二項但し書きとして加えたわけでございまして、そういう事情から見て、御指摘の戦時中の臨戦体制というような、戦時刑事特別法的な性格のものとはかなり性格を異にする改正であったのではないかと、かように推察されるわけであります。
○稲葉誠一君 今刑事局長が言われた昭和十六年の刑法改正で第三者没収の制度ができた当時に、国会の中で、第三者没収の制度はできたけれども、手続がきめてないということで論議がちょっとあったように言われましたね。やはり出発点から、これは特に第三者の権利を侵害する危険が非常に大きいことであるし、また、一面において一つの保全的な目的もあるわけですから、いろいろ問題があったと思うのですが、そのできた当時にどういう議論があったかということですね、今でなくてけっこうですよ。それをある程度何か資料の中に加えていただけませんか。ポイントだけでいいのですか……。
○政府委員(竹内壽平君) 先ほど申しましたように、完全なものはもとより私どもも持ち合わしておりませんが、できるだけ集めまして、これもお手元に差し上げてある「沿革」の中の十ページ以下のところは若干それに触れたところがあろうかと思いますが、御一読願えればしあわせでございます。 なお、私が議論があったということを申しましたのは、国会で議論があったという意味でなくて、立案当局あるいは学者の間で議論があったということでございまして、むしろ帝国議会の速記録を見てもらいましたのですが、そによりますと、国会では全然議論はなかったようでございます。 もう一つ、今になって結果論でございますけれども、憲法第三十一条のようなデュー・プロセスの規定が帝国憲法にはありませんし、そういったようなことで、そういうふうに適正手続というようなことはそんなに強く言われない。むしろ財産権侵害との関係で理解をしておったようでございます。
○稲葉誠一君 今の点は、この法案の最初のところの出発点ですから、私のほうでも少しどういう議論があったのかを今度の法案審議の関係で少し研究してみたいと、こう思っております。 そこで、きょうは時間がありませんので、最後のところをお聞きしたいのですが、法案の内容についてはゆっくり日を改めて聞きたいと思うのですが、法案として私の疑問に思うのは、まだ、よく読んでいませんけれども、手続の問題ですね、もちろん。それから補償の問題だとか、それから十三条の問題とかいろいろありますが、それは別として、「法律時報」に鈴木義男というあなたのほうの刑事局の方が書いておるのですが、六十四ページですが、「刑事裁判の実務は、没収の裁判の効果が第三者にも及ぶという考え方(対世的効力)を前提にしてきたが、「法の適正手続」を保障する憲法第三一条との関係で問題とされることは必至であった。」、こう書いてあるのですね。そうすると、法務省は、憲法三十一条との関係で、前の関税法違反の問題や何か起きたときに、これは当然憲法違反の問題が起きるのだということは必至だというふうにお考えになっていたようにとれるのですね。それはそれでいいと思うのですよ。それなのに、あなた方は最高裁の裁判のときには、いやそれは憲法違反じゃないと言って主張しておるのですね。検察官は。それは法務省当局の考え方としておかしいのじゃないですか。これは私のきょうの最後の疑問で質問ですがね。
○政府委員(竹内壽平君) これは、検察官の立場は、現行法を不可能のものまでも合法であるというような言い方をもちろん検察官はすべきではございませんが、一応判例の支配しております限りにおきましては、合法という一応線が出ておるわけです。これは昭和三十五年の判決で一応合憲ということになっております。そこで、その理論をふんまえまして、合憲であるという主張をされたものと思うのでございますが、それはそれなりに一つの行き方だと思います。しかし、事務当局の私どもとしましては、それとはまた別個にこの判例の動き方というようなものは絶えず注視をしていなければなりませんので、ことに、三十五年十月十九日の大法廷は、合憲とはしたものの、中の判事の構成等を見ますると、八対七ということで合憲とされたわけで、七人の判事さんはそれに異論を唱えたわけでございます。その中の二人はさらに今度の判決のような非常に強い線を打ち出しておりますし、この判事さん方がやがて退官をされたり何かして変動があるであろうということも判事局長としましてはにらんでいなければなりません。そういうような趨勢を見て、これはあぶないぞ、研究しておかなくちゃいかんというような考え方で私ども事務当局としては現実の問題として研究しておったのでございまして、その間の事情を鈴木義男君が書かれたと思うのでございますが、これは内部のことでございまして、お気にとまりました点をむしろ私は感謝しておるのでございますが、われわれとしては努力をして参ったわけでございます。
○稲葉誠一君 刑事局長の答弁も、非常にいい答弁ですし、考え方によっては苦しい答弁だと、いろいろ人によっては解釈できると思うんですが、そんなら、「第三一条との関係で問題とされることは必至であった。」 というなら、今度の関税法違反のときに、当然最高検は、今度の被告人のほうの上告趣意書の中に憲法違反が出ておるんですから、これは憲法違反だと認めるというようなそういうフェアな態度をとったら僕はよかったと思うし、かりにそれが確定すれば、非常上告という制度もあるわけでしょう。そういうような形でやっていけることが当然考えられるわけですよ。だから、あなた方のほうでも、第三者没収という制度は実体法ではあるけれども、実際には手続はきめてないんだ、これは特にデュー・プロセスの三十一条との関係で問題なんだということを前から相当考えられておられたと、論文はそうとれるんですよね。おそらく刑事局の中でもそういう議論が出たはずですよ。それなら、そういう態度をもっとあっさりとられたらよかったんじゃないですか。相も変わらず、そうじゃないそうじゃないと言って、何でもかんでも被告人の言うことに反対していく態度をとっていたような印象を与えるんです。もちろん、前の関税法違反のときの憲法違反かどうかということの判決のときの考え方などでは、実体に入るよりも、むしろ上告の利益があるかないかの問題、これが中心となっていたわけですね。今度の場合は、どうも第三者が黙っておるのに、第三者にかわったような形で被告人が憲法違反だと主張しているわけですね。そこの点でそういう利益があるかないかということで議論があったと思いますけれども、「憲法第三一条との関係で問題とされることは必至であった。」と法務省の刑事局が考えているなら、そういう態度をもっとフェアに前もってとるべきだったと思うのですね。内部で議論したことはあるのでしょう。
○政府委員(竹内壽平君) 内輪を御指摘になりましたので、内輪を申し上げざるを得ないわけでございますが、必至であるというような言い方をしましたのは私でございまして、みんなに動いてもらうためにはそういうふうに強く申す必要があったわけでございますが、同時に、それは内部の、ほんとうに内部のことでございます。しかし、検察庁に対する関係におきましては、三十五年の判決の八人の方は合憲であるという立場をとりましたが、残りの七人の中の五人の方は多数意見に反対ではありますけれども、証人としてその第三者を喚問する手続をとってそうして弁解の機会を与えるようにすれば、手続がなくても違憲と言うわけにはいかないというふうに述べておられるわけであります。そこで、八人と五人を寄せますと十三人の方がその手続までやればいいということでありますので、私どもとしては、その判決が出た直後に直ちに通牒を出しまして、第三者のものを没収するというような問題が起こってきた場合には、必ずその第三者を検察官側から証人に申請して意見、弁解の機会を与えるようにということで、すべてそういう手続をとってもらっておるわけでございます。しかし、それと同時に、たった二人ではありますけれども、手続がない以上はだめだというこの意見がだんだん成長発達していく可能性があることを察知いたしまして、それで、先ほど申したように、大いに勉強してもらう意味で必至だというような言葉を私使ったと思いますが、皆さんに研究していただいたわけでございまして、その間のあれは、検察官がそういう態度をとらなかったことにつきましては、この三十五年の判決の中で十三人まではその手続をとればいいという考えであったわけでございます。ところが、昨年の判決は、その手続を踏んでない事件について起こったわけでございまして、三十五年以後におきましては、そういうものはすべて今日になりますれば違憲でございますけれども、検察官としては三十五年の判決の精神に従ってすべて証人として尋問をしていただいてそうして弁解の機会を与えるような処置をとってきておるわけでございます。
○稲葉誠一君 一応きょうはこの程度で終わります。
○委員長(鳥畠徳次郎君) それでは、一時間ほど休憩いたしまして、午後は本案並びに調査事項の質疑を続行いたします。 暫時休憩いたします。 午後零時二十七分休憩 ―――――・――――― 午後一時四十分開会
○委員長(鳥畠徳次郎君) それでは、ただいまより委員会を再開いたします。 これより検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 稲葉君から発言を求められておりますので、これを許します。
○稲葉誠一君 これからお聞きするのは、今東京都の知事選挙の違反があり、それはまあ千葉県の知事選挙の違反がリハーサルだとかなんとか言われているのですが、その千葉の知事選挙にもからみ、東京都知事選挙にもからみ、その基本となっておる非常な疑惑に包まれておる千葉の工業大学の事件、これはまた肥後亨その他が関係しておるのですが、きょうは詳しいこと聞きませんで、検察庁に対してどういう告訴があったとか告発があったとか、それに対してどういう結論が下されて、それに対するたとえば不服の申し立てとか、いろいろあると思いますが、どうなっているのか、それから今刑事裁判にかかっているものがあればどういうのがかかっているかとか、この程度のことだけをお聞きをしておきます。
○政府委員(竹内壽平君) 千葉工業大学の問題につきましては、非常に複雑な様相を呈しておりますが、今お尋ねのように、この大学に関連して刑事の問題、民事の問題、それから検察審査会の問題等が派生しておるわけでございまして、告訴、告発につきましては合計七件出ておりまして、一件が未済になっております。それから民事につきましては、聞くところによりますと、三件出されておるようでございます。それから告訴事件の不起訴になりましたもの二件について検察審査会に不服の申し立てがなされましたが、その間に千葉の検察審査会の事務局長に対しまして有利な処分が出るようにという趣旨の贈収賄関係がそこに発生いたしまして、これは現在東京地検において取り調べ、公判請求になって、ただいま公判に係属中であります。まあこう申し上げただけでは何のことかさっぱりわかりませんのでございますので、やや中身に入りましてごくあらましを申し上げてみたいと思いますが、この千葉工大につきましては、昭和二十五年から三十四年ごろまで川崎理事長を中心としてかなり信頼のあるりっぱな大学として育ってきたようでございますが、この川崎理事長のもとに坂本という方がおりまして、この人と理事長との間に意見が食い違うことが起こって参りまして、これがきっかけとなりまして、昭和三十四年から五年にかけまして紛争に紛争を重ねたわけでございます。 それで、その坂本氏が理事長のもとを離れまして、同窓会のグループの青木派と称しておるグループの中に入ったわけでございまして、この青木派の中におります豊田という者が、川崎理事長及びその下で働いております佐久間を相手にとりまして背任横領というような告発を出す、こういうことが事の起こりになっております。 そして、川崎派におきましては、その間に問題の人肥後享にこれが解決策を依頼した模様でございまして、この肥後がその段階から現われて参りまして、まず、反対派である青木派の人たちを、あるいは誣告、あるいは理事長にいろいろ迫った事柄をとらえて脅迫というような告発をしておるのでございます。そうこうするうちに、この肥後享なる者が、だんだん横着といいますか、勝手なふるまいをするようになりまして、所きらわずの告訴、告発をし出したわけでございまして、川崎派に頼まれて入ってきたのに、今度は逆に川崎派の者をも背任とか横領とかいうことで告発をする、こういうようなことになって参りまして、全く調停どころではない、新たなる波紋がそこに越こってきたのでございますが、その間に自民党の当時幹事長でございました川島正次郎氏を仲間に入れることによって問題の解決をはかろうということになって参りましたわけでございます。紆余曲折を経ました結果、川島氏が理事長になりまして、青木派、川崎派ももう大体おさまってきたわけでございますが、その間に肥後亨だけはつまみ出されたような格好になりまして、不満であるということが残っておるようでございます。それから当初川崎理事長のもとで働いてその後川崎氏から離れた坂本なる者も、問題を起こした張本人ということでありましたでしょうか、これも解決後の仲間からははずされるということになりまして、この方が不満な状態で残っておる、これが現状のようでございます。 肥後につきましては、理事を退任することのまあ手切れ金のような意味におきまして三百数十万円の金を正式に支出したのでございますが、この事実をとらえまして、坂本氏が、その行為は背任行為であるということで告訴をしております。この最後の告訴が現在千葉地検において取り調べ中でございますし、それまでに出されました合計六件の告訴、告発は、円満示談が成立した時期と相前後いたしまして、昭和三十五年の三月、五月、十一月と三回にわたってそれぞれ不起訴処分になっておりますが、中身は、嫌疑不十分になったものもありますし、一部は起訴猶予になったものもあるわけでございます。 概況は以上のとおりでございます。
○稲葉誠一君 そのいつ幾日だれがだれを告発した、どういう嫌疑で告発して、その結果はどうなったかと、それだけでいいですから、一つ二つに分けてひとつ説明を願いたいと思うのです。 それから最後に言われた三百数十万を肥後にやったということが背任だというので告発されておるというのは、告発されておる人はだれですか。 政府委員(竹内壽平君) 告発の日時がちょっと報告にございませんのでわかりませんが、事件の処分の月日に従いまして申上げますと、昭和三十五年三月三十日に不起訴処分をいたしました誣告と脅迫の事件につきましては、告訴人は肥後亨でありまして、被告訴人は豊田耗作外一名、これが誣告事件であります。脅迫事件は、肥後亨が告訴人でありまして、被告訴人は青木運之助外五名の先ほど申し上げました青木派の連中でございます。 それから三十五年五月十八日に不起訴処分になりました業務上横領、背任の事件は、告訴人は肥後亨でありまして、被告訴人は坂本重威外二名でございます。 それから同年十一月二十九日不起訴処分になりましたのは、告訴事件としては三件になっておるのでございますが、そのうちの二件は同一事実についておりますので、合一して処分されておりますが、そのうちの一つは有印私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使、業務上横領というので川崎守之助外一名が被告訴人でありまして、告訴人は坂本重威外一名、こういうことになっております。それからもう一つは、業務上横領、背任でございますが、豊田耗作、肥後亨――これは二つの事件が一緒になっておりますが、十四名の告訴にかかるもので、被告訴人は川崎守之助外一名でございます。 それで、大体六件の事件が処理されたわけでございますが、最後の未済になっております一件が、これははっきりわかりますが、告発の受理は三十七年七月二十日でございまして、告発人は坂本重威、代理人弁護士は津田騰三氏であります。被告発人は川島正次郎氏及び小沢久太郎氏、この両名でございます。罪名は背任でございまして、先ほど申しましたように、解決のために肥後亨に三百数十万円を贈与するという決議をして、大学保管の金の中から、その金を肥後亨に渡した行為を目しまして背任である、こういうふうにいった事犯でございます。
○稲葉誠一君 今のあとのほうの事件についてはいずれ別の機会にお尋ねするわけですけれども、その金を渡した趣旨、これはいろいろ争いがあったかとも思うのですが、それは今の段階で法務省にはわかっていますか。
○政府委員(竹内壽平君) まだこれは受理報告をいただいておるだけでして、中身はわかっておりません。
○稲葉誠一君 それから検察審査会の事務局長の天野徳重、これが収賄で起訴され、贈賄が三名東京地裁に係属中ですね。これはどういうことなんですか。
○政府委員(竹内壽平君) これは、先ほど申し上げました告発事件の三十五年十一月二十九日に三件を不起訴にしておりますが、この三件につきまして肥後が検察審査会に事件を持ち出したわけでございます。その起訴状によりますると、肥後が、三十六庫の五月、審査会の事務局応接室におきまして、事務局長でありました天野徳重に対して、事件の審査にあたって有利な取り計らいを受けたいという趣旨で現金十万円を供与した、それが第一の事実でございますが、さらに、先ほどの理事長の川崎守之助氏と肥後亨及び内出周作、この三人が共謀しまして、同年の五月十八日ごろ、東京中央区日本橋所在の川崎定徳株式会社応接室において、天野事務局長に対して同じ趣旨で現金十万円をやった、さらに、六月七日に、料亭の若まつ、これは港区芝宮本町でありますが、この若まつ亭におきまして、やはり天野に対しまして同趣旨で現金十万円を供与した、こういうことが天野の職務に関して収賄した、こういうことになるわけでありまして、他の被告たちはこれに同趣旨のもとに贈賄した、こういう事件でございます。
○稲葉誠一君 この天野という人は、裁判所の職員ですか。
○政府委員(竹内壽平君) さようでございます。
○稲葉誠一君 これは、贈賄者が三名で、収賄が一名ですね。贈賄者はだれとだれでしたか、三名は。
○政府委員(竹内壽平君) 贈賄者は川崎守之助、肥後亨、内出周作、この三人が贈賄者、収賄者が天野徳重であります。
○稲葉誠一君 その事件は、今、東京地裁の刑事三部に係属しているわけですね。今度、ある人が二人証人として、肥後亨に関連する事件というか、それに関連する証人として、お二人の方が証人として喚問をされている。こういう事実は法務省ではお調べになっておられますか。
○政府委員(竹内壽平君) 私自身は存じておりませんが、調べればすぐわかることでございますけれども、ただいまの階段では存じておりません。
○稲葉誠一君 六月二十五日に、私の調べた範囲では、証人として川島正次郎氏、前の千葉の地検の検事正の某、このお二人がその事件の証人として東京地裁刑事三部安村裁判長掛に証人として召喚を受けているという事実があるわけです。あなたのほうでも、事実があるかないか、調べてくれませんか。 それでは、私は、この事件はついてはきょうはこの程度にしておきます。詳しいことはきょうは聞きません。ただ、この事件に関連をして、千葉の地検で背任の告訴が出ていますね、今の川島正次郎氏が被告訴人の。これらに対する調べもまだ十分なところまでいっておらないようですし、それから検察審査会の不起訴の決定、これはまあ起訴猶予のものとそれから嫌疑なしのものとありますが、ことに理事会の招集権限をめぐっての文書偽造の問題、これがありますね。これに対して検察審査会の不起訴決定に対する不服申し立てですか。昔のいわゆる検察官の処分に対する抗告ですね、今は不服申し立てですか、これが東京高検へ係属しているわけです。これらの調べもまだその後発展しておらないようです。その他これに関連をする事件は相当あるわけだと思います。それから東京不動産信用金庫に関連をする問題がこの事件とからみ合ってくると思うんですが、これについての調べがどういうふうになっているか、こういう問題は、きょうでなくしていいですから、これは非常に重要な問題であります、日本の政界に対する大きな影響を及ぼす事件になっていく可能性があるものですから、今後ずっとお聞きしますから、よく調べていただきたいと思います。 きょうは、この点についてはこの程度にしておきます。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。 それでは、本日はこの程度にとどめておきます。本日はこれにて散会いたします。 午後二時二分散会