法務委員会 第20号
- 発言数
- 113 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1963/06/18
会議録
○委員長(鳥畠徳次郎君) ただいまより法務委員会を開会いたします。 本日は、まず、理事の補欠互選についてお諮りいたします。 去る六月十四日、後藤義隆君が一時委員を辞任されましたため、理事に欠員を生じておりますので、その補欠互選を行ないたいと存じます。互選の方法は、慣例によりまして委員長の指名に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) 御異議ないと認めます。それでは、私より理事に後藤義隆君を指名いたします。 —————————————
○委員長(鳥畠徳次郎君) 次に、刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案を議題といたします。 質疑を行ないます。
○稲葉誠一君 この法案についていろいろお聞きしたいわけなんですが、実は私もこれはいろんな学者の意見とかあるいはその他の人の書物などをずっと今調べているのですが、なかなか十分にまだいっておりませんので、少しくこまかい点になるかもわかりませんが、何回かに分けてお聞きをしていきたい、こういうふうに考えます。結局、この法律についての一つの私どもの建前としては、憲法違反の判決があったわけですから、さらに憲法違反の処分を生まないような法改正を行なって、法体系が混乱しないようにする義務があると同時に、憲法解釈によって影響を受けるほかの法令についてもいろいろ再考をして、さらに違憲判決を誘致しないようなものに仕上げていかなければいけない、こういうふうに基本的に考えるわけです。 そこで、お聞きしたいのは、この法律を作るときに関係方面からの意見聴取をしたということが言われておるんですが、法務省としてはどういう方面の意見をまず聴取をされたのか、お伺いしたいわけです。特にこれは裁判にあたって一番大きな問題になるわけですから、最高裁判所関係の意見なりそういうふうなものを法務省として十分に聞いて、それを法案の中に取り入れて立案をされたかどうか、これをひとつ——そればかりじゃないですよ、関係方面というのは。ありますけれども、それを含めてひとつお聞きをしたいわけです。
○政府委員(竹内寿平君) 立案に際しましての基本的な考え方は、ただいま稲葉委員の仰せのとおり、全く私ども同じ考え方に出発いたしております。そして、この法案につきましては法制審議会にかけることをいたしませんでした関係もありまして、最高裁判所事務当局とは密接に連絡をいたしましてしばしば会合をいたしまして御意見を聴取したほか、刑事法学者の御意見等もいろいろ承りまして、そしてせっかく作る法案でございますので、この法律がもしできた場合にまた違憲の判決を受けるというようなことではまことに相なりませんので、その点を十分考慮いたしまして作りましたわけでございます。
○稲葉誠一君 最高裁当局にお尋ねしたいんですが、今法務省では最高裁とはしばしば会合していろいろ意見を聴取されたというふうなことを言われるのですが、私どもの聞いている範囲では、どうもこういう法案の立案のときには法務省が単独でやる傾向が強過ぎて、最高裁の意見を十分に聴取しない行き方がある、絶えずその関係がうまくいかないというようなことも一部で聞くわけですが、どの程度最高裁の意見を聴取されて、この法案の中で一体どこに最高裁の意見というものが十分に生かされておるでしょうか。どの程度意見の聴取、協議というものが行なわれたのでしょうか。
○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 法務省の刑事局長から御説明のありましたとおりに、最高裁のほうに対しましてもこの問題につきましては相当早い時期から御協議がございまして、担当の局は刑事局でございますが、刑事局長以下関係の課長も何回か折衝して意見も申し上げておるようでございます。こまかいどの点が最高裁の意見が生かされたかという点につきましては、ちょっと経過の詳細は私存じませんので、必要がありますれば刑事局長に答えてもらうことにいたします。
○稲葉誠一君 じゃ、最高裁の刑事局長、今事務総長が言われたことでおわかりになる範囲のことがあればひとつお答えを願いたいと思うんです。最高裁の側の意向がどの程度どこの部門に意見がいれられておるかという点について。
○最高裁判所長官代理者(樋口勝君) 法務省側との連絡の点は、今総長の言われたとおりでございます。密接な連絡をいたしております。裁判所側の意見として法務省側に考慮を促したといいますか、そういう点は、主として裁判所の訴訟運営の面から見まして、第三者が訴訟事件に参加をして弁論をする、そのために本来の刑事被告事件の進行が不当におくれないように保障しながら、同時に参加する第三者の権利をできるだけ防衛するように、こういうような点について特に意見を交換したわけでございます。
○稲葉誠一君 これは応急措置法案と言うわけですが、基本法は何に対する応急措置法案と理解したらいいでしょうか。
○政府委員(竹内寿平君) 没収制度につきましては、現行法は、御承知のように、附加刑として規定いたしておりますのでありますが、本来の没収というのは、最近の学説の発展等から見まして、諸外国の現実の立法例にも現われておりますけれども、保安処分的な性質のものと刑罰的なものと二種類あるようでございます。そういうものをひっくるめて一つの没収という実体法規を作り、それを実現する方法として国によりましては特別の手続規定を設けておるところもあるのでございまして、わが刑法の準備草案におきましても、大体そういうような考え方をとりまして、没収を二つに分けて規定をいたしております。それの手続はもちろんまだできておりませんのでございますが、そういうふうにいやしくも根本的に没収を考えていくということになりますと、そこまで実体法規においても配慮をしていかなければならぬというふうに考えるのでございますが、さらに外国におきましては、個々の法律ごとにそういう没収を規定してあるものもありますし、大陸法系の諸外国におきまするように刑法の総則の中にそういう規定を置いているのもあります。その辺が外国の立法例を研究してみますとまだ千差万別でございますけれども、その辺に一つの筋を立てて新しく作る場合には根本的な策を構じていかなければならぬと思います。 それから現行法の特別法の中に第三者没収の規定は非常に多くございますが、これらにつきましても、憲法二十九条との関係で情を知っておる第三者にだけ必ずしも条文の上では限定していないようなものもありますし、あるものは必要没収になっておりますし、あるものは、裁量没収になっております。その辺のバランスの点も必ずしもとれておるとは申せないように思うのでございまして、刑法並びに特別法を通じて没収制度全般を考慮しなければならぬ、こういうことを考えておるわけでございます。 まず刑法の没収制度を改めるということが先決問題だと思いますが、これにつきましては、刑法改正の際に法制審議会においても十分検討していただくことになっておりますが、刑法改正というものもそう簡単な二、三年の間に解決がつくという性質のものでもございませんので、その間差し迫った、たとえば麻薬のようなものなどにおいて一番第三者没収の規定の適用を見ておるわけでございますが、そういうものが没収できないような状態になって参りますので、そういう点の必要を満たしますためには、何としても一時的ではありますけれども、とりあえず違憲判決を受けないような制度を作って対処していかなければならぬ、かように考えまして、ほんとうのりっぱな法制ができたときには当然廃止せられるということを前提とした応急措置法案を作ったわけでございます。
○稲葉誠一君 刑法の応急措置法案なのか刑事訴訟法の応急措置法案なのかということをちょっと端的に聞いたわけですが、これはまあ私の聞き方が悪いのかもわかりませんけれどもね。刑法の応急措置法案、刑事訴訟法の応急措置法案という分け方がそこに理論的に混迷を来たしておるのかもわかりませんが、これを見ると没収手続に関する応急措置法案ですから、刑事訴訟法の応急措置法案というように考えられるわけですね。そうならば刑事訴訟法の改正という形でよかったのじゃないかとも考えられるのですが、ここはどういうふうになるんでしょうか。どうもはっきりしないのですがね。
○政府委員(竹内寿平君) ごもっともな御質疑だと思います。この法律の形式としましては、刑事訴訟法の特別規定でございます。刑事訴訟法そのものは直しておりませんのでございますが、この特別規定と現行の刑事訴訟法と相まってこの手続を実現する、こういう建前でございます。でありますから、あくまで刑事訴訟法の完備されるまでの間の応急的なものというふうに御理解を一応形式的には考えていただいて差しつかえないと思いますが、先ほど申しましたような実体規定の整備ということが前提になり、それを前提としてのまた刑事訴訟法の改正ということがございますので、両々相まっての応急措置法案というように先ほど来申し上げておるわけでございます。
○稲葉誠一君 しかし、今の段階で考えられておるのは、刑法の改正が昭和十六年ごろから改正仮案が出てからずっと考えられているわけですね。新刑訴ができてから新刑訴の改正ということはいまだかつて考えられてはいないのじゃないですか。考えられているわけですか。
○政府委員(竹内寿平君) 新刑訴の改正につきましても、部分的な改正が昭和二十七年にございましたし、その後も刑事訴訟法の改正ということは絶えず議に上っておりまして、事実上休んだような状態になっておりますが、形式的には法制審議会に付議された状態が現在も残っているわけでございまして、これはまあ実体法と刑事訴訟法とは車の両輪のごときものでございますので、一を改正いたしますれば、その他の訴訟法の方面にも影響を持つわけでございまして、今回の刑法の改正の諮問が発せられましたに際しましても、法制審議会におきましてはある時期になりますとあるいは刑事訴訟法の改正についても御審議を願わなければならぬことになるのじゃないかという含みでおるわけでございます。
○稲葉誠一君 法制審議会にはどういうふうなものをかけなければならぬかというようなことはどこできまっておるわけですか。本件を法制審議会にかけなかったというのは応急だからということなんでしょうが、何かかけなくてもいい根拠があるのですか、どこできまっているのですか、それは。
○政府委員(竹内寿平君) これは本来はかけるべき性質のものだと私たちは理解しておるわけでございます。でありますが、法制審議会にかけます場合には相当な時間を必要とするのでございますし、そこで、私どもの全く気持だけを申し上げますと、法制審議会の委員の先生方にも、刑法改正の際にはひとつ根本的なことは御審議を願うので、必要によりましては特にその部分を早く御審議を願うというようなことも考慮していただかなければならぬと思いますが、とりあえず違憲判決に対処するための応急措置法を作るのでありますし、刑事訴訟法、刑法そのものを改正いたしておりませんので御了承願いたいということで大かたの御了解を事実上でございますが得、他面、先ほど申し上げましたように、裁判所、学者等とも密接に連絡をいたしまして、その御示唆を受けながらこの案を立案をいたしたわけでございます。
○稲葉誠一君 法制審議会へかけなくちゃならないという根拠、法的規制というのはどこにあるのですか。
○政府委員(竹内寿平君) これは法制審議会に関する政令で法制審議会のことはきまっておるわけでございますが、その政令に、民事、刑事の基本法についてというふうになっておりまして、これは基本法の範囲は一体どうなるのかということになりますが、これは過去の運用の実績等を参考にいたしまして運用しておるわけでございますが、まあ本件につきましては事情が許せば法制審議会にかけて提案をするのがいいと思いましたけれども、何さま緊急に立案することが必要とされました関係もありまして、今言ったような手配をしながらそれにかけないで直接国会に御審議を願うようにいたしたわけでございます。
○稲葉誠一君 これは判決が出たのは去年の十一月二十八日ですか、判決が二つありますが、今度の国会が始まるときには提案されなくて、去年の十二月に国会が始まったわけでしょう、ずっとおくれてこの法案は提案されたわけですね。どういうわけなんでしょうか。
○政府委員(竹内寿平君) この法案自身をごらんいただきますとわかりますように、条文の数は十三条でございますけれども、ここへまとめますまでには私どもほんとうに寝食を忘れて努力をいたしました結果でございまして、それがおそ過ぎるというお言葉でございますれば、私どもの無能のいたすところでございますけれども、われわれといたしましてはできるだけの努力をいたしましてやっとこの国会に間に合わせたわけでございます。
○稲葉誠一君 私はおそ過ぎるということを言っておるのじゃなくて、最高裁の違憲判決が出たのですから、この提案はいつでしたっけ、四月ですか、四月一日……。
○政府委員(竹内寿平君) はっきりした日を今覚えておりませんが、たしか三月の終わりかと思います。あの休会になります直前であったかと思います。
○稲葉誠一君 三月二十九日に閣議決定されて、政府案として四月一日に内閣から衆議院に提出された、こういうことですね。そうすると、十三条の条文の中に、法務省当局が寝食を忘れて非常に努力されたということは、この法案が非常に実務上、理論上むずかしいというか、いろいろな多方面の問題も含んでいるのだ、こういうふうに承ってよろしいですか。
○政府委員(竹内寿平君) ただいま御指摘のような点、いろいろ問題が学問的にはあろうかと思います。そういう点をいろいろ考慮いたしました結果むずかしかったと考えられます。
○稲葉誠一君 そこで、最高裁の二つの関税法違反の判決の受け取り方ですね。これは衆議院でもちょっと問題になっていたようですけれども、最高裁のほうでは、憲法の三十一条と二十九条をそのまま並べてあるわけですね。法務省の提案説明か何かでは、憲法三十一条ひいては二十九条に違反するという書き方をしているように私は見たのですが、これはどういう見解の相違なのか、あるいは見解の相違がないのかということをお聞きしたいのと、それから憲法の二十九条には一項、二項、三項とあるでしょう、一体どれに違反するということを最高裁の判決は言っていると法務省当局は理解しているか、そこらのところもはっきりしないのですが、むしろデュー・プロセスの三十一条違反ということだけで足りて、二十九条違反の問題は引かなくてもいいのじゃないかという気も私は持っているのですが、この最高裁の判決に対する法務省の受け取り方はどうなんですか。
○政府委員(竹内寿平君) 法務省といたしましては、提案理由で御説明申し上げたと思いますが、三十一条のデュー・プロセスの条項に違反するのであって、したがいまして、実体法については別に違憲であるということを申しているのじゃなくて、実体法は実体法でよろしいけれども、それを実現する手続が法律にきめてないので、それが違憲になる。つまり、その部分が三十一条でございます。もしそういう手続がないのにやるということになりますと、それは憲法二十九条の問題にも触れてくる、こういう言い方ではないか。したがいまして、判決はなるほど三十一条、二十九条とそういう順序でたしか書いてあったと思います。その間に、ひいては二十九条というふうには書いてございませんが、私どもの理解では、三十一条ひいては二十九条にも触れるという、こういうふうな理解の仕方をしたわけであります。
○稲葉誠一君 三十一条が全うされてくれば、没収なんだから、無償によって国家に所属するわけでしょう。そういう形で三十一条が全うされれば、二十九条の問題は起きなくなるわけですね。そういう解釈ですね。ただ、今三十一条にまだ違反だという形だから、二十九条の問題も起きてくると、こう考えるわけですね。 二十九条は一項、二項、三項とあるが、どこですか、一項ですか。
○政府委員(竹内寿平君) 二十九条につきましては、一項に違反するということになるのじゃないか、かように考えます。
○稲葉誠一君 しかし、この最高裁の判決についての考え方は、具体的な処分が違法だというのじゃなくて、むしろ関税法の規定そのものが違法だという解釈も相当行なわれているのじゃないですか。そこのところはどういうふうに解釈しているのですか。たとえば東大の伊藤教授もそういうふうな考え方をしているし、谷口判事なんかも大体それに近い考え方をしておるのじゃないですか。 それから、この応急措置法が成立しない現段階においては、今の関税法の規定百十八条一項、これは効力を発生しないわけでしょう。それは憲法違反だからというので、関税法の百十八条の一項は効力を発生しないのじゃないですか。現在の応急措置法が成立して効力を発生するまでの段階ですね、現在は。だから、この応急措置法は効力を発生していないわけでしょう、そういうわけですね、今は。その段階では、関税法の百十八条一項というのは、適用の余地が全くないわけですね。だから、今の段階においては、関税法の規定というのは、憲法違反じゃないですか。この応急措置法ができ上がってそれと補完し合ってはじめて関税法の規定が生きてくる、憲法違反でなくなるというのがすなおな解釈でないでしょうかね。どうも私はこの点がわからないので、あちこち考えてはいたのですがね。
○政府委員(竹内寿平君) この点につきましては、学者の間には意見があると思います。先生御指摘のようなお考え方に立っての意見もあるようでございますが、それは後ほど御紹介を申し上げたいと思いますが、私どもの理解しております関係で申し上げますと、関税法の規定そのものが憲法二十九条に違反するという意味においての憲法違反だというようなことは、最高裁の判決は申しておらないという考え方でございます。それはなるほどこの違憲判決以後におきましてはこの応急措置法が施行されます間はこれは動けない、つまり凍結状態と申しますか、冬眠状態ということになっておると思いますが、しかし、憲法違反だと最高裁が申しておりますのは、この実体法の関税法百十八条の規定を生かして使えるだけの手続法が欠けておると。それは、前の判決では、手続法がなくても、第三者を公判において証人に呼んでその意見、弁解を聞く機会を与えればいいという御意見もあったわけでございます。そういう手続では今度はいけないので、やはり法律に定めた弁解、聴聞だけじゃなくて、防御の機会も与えておかなきゃならぬ。こういう防御の機会を与えるという手続ということになりますと、これは単に証人として呼んだだけではいけないわけで、証人以上の権限を訴訟上持たなければならぬということで、そういう手続規定がない以上は憲法違反になる。それは三十一条の違反だと、こういうふうに理解をいたしておるわけです。しかし、各学者によりましては、いろいろな意見がございますので、臼井参事官から御紹介申し上げたいと思います。
○説明員(臼井滋夫君) ただいま刑事局長から申し上げましたことにつきまして、若干補足して申し上げます。 ただいま御指摘のとおり、この判決の受け取り方につきましては、この判決の理由がかなり抽象的でございますために、いろいろ理解の仕方があろうかと思います。また、この判決言い渡し後に現われました学者等の意見におきましても、いろいろ見解が分かれるようでございます。御指摘のとおり、伊藤教授などは、この実体規定そのものが違憲というふうな受け取り方をしておられるように解される発言も、これはたしか「ジュリスト」の座談会であったかと思いますけれども、述べておられます。また、御指摘の谷口判事も、当初「ジュリスト」にお書きになりました判例解説におきましてはそういうふうな解説をしておられましたけれども、後に「判例評論」というものにお書きになりました判例解説におきましては、その点についての見解をお改めになりまして、実体規定そのものが違憲であるというふうに前に書いたことは訂正するというように言っておられます。 なお、刑事法の専門家であられる平野教授その他刑事関係の専門家の先生方は、むしろ私ども理解しておりますように、実体規定そのものを違憲としたものではなくて、手続規定がないために、その実体規定を適用して第三者没収の裁判を言い渡すこと、そういう具体的な処分としての裁判の言い渡しが違憲なんだと、こういう受け取り方をしておられるように見受けられます。また、判決の判決文自体からも、そのように受け取るのがすなおな受け取り方ではないかと、こういうように考えられるわけでございます。
○稲葉誠一君 それで、その法律が憲法違反だというのと、処分が憲法違反だという判断によって、最高裁のこれに対する取り扱い、ことに国会に対する関係では、最高裁の事務処理規則ですか、この中での違いが出てくるわけですね。どういうふうに違うわけなんですか。
○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 法律が違反でありました場合には、内閣のほうに通知するとともに、国会のほうにも御通知申し上げておりますが、それ以外の場合におきましては、内閣のほうに御通知申し上げているだけだと思います。ただいま正確に記憶いたしておりませんが、国会のほうにも参考のために御通知申し上げるようなふうに考えております。
○稲葉誠一君 それは法律が憲法違反だとなる場合には、最高裁判所の事務処理規則第十四条で、裁判書の正本を国会にも送付しなければならない。だから、そうでない場合は裁判書の正本を国会に送付しなくてもいいけれども、この場合は最高裁は裁判書の正本を国会に送付する手続をとったのじゃないですか。
○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 今ちょっと資料を持っておりませんので、正確にお答えいたしかねますけれども、私の記憶によりますと、参考のために国会のほうに御送付申し上げたように思います。その点は特に参考のためということを書いてこちらへお送りしたと思います。
○稲葉誠一君 そうすると、最高裁としても、法律が憲法違反だという解釈はとらないで、処分が憲法違反だという解釈をとったから、特に参考のためということを書き加えて裁判書の正本を国会に送られたと、こういうわけですね。
○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) そのように記憶しております。それですから、正確に記憶しておりませんが、おそらく正本という形では扱わなかったかもしれませんです。写しというようなことでお送り申し上げたかと思います。
○稲葉誠一君 今、処分が憲法違反だという話が出ているわけですが、憲法の八十一条の法令審査権と最高裁判所、これだと思いますが、「一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と、こう書いてあるのです。この処分というのは、具体的には何をさしているとお考えになっておられるのか、最高裁のほうはどうなんですか。あるいは法務省でもいいですけれども、法務省はどうなんですか。どういうふうに考えてやったわけなんですか。この処分ということの内容はどうなんですか。
○政府委員(竹内寿平君) ごく通俗的に申しますと、行政官庁の行ないます処分ですね、これをも含めて理解をいたしておるのでございます。
○稲葉誠一君 それじゃ、別のことになるのですが、法務省の刑事局の鈴木義男という人、これは刑事局付の検事の人ですか、この人の書かれたものが「法律時報」に出ているわけですが、これで見ると、この法案は「実務上・理論上の重要問題を含んでいる」ということがまっ先に書いてあるわけですね。この「理論上の重要問題」というのは、一体どういうところが理論上の重要問題として考えられているわけですか。
○政府委員(竹内寿平君) 先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、没収というものの本質をどういうふうに見るかということでございますね、保安処分的なものと見るか、被告人に対する刑罰的なものと見るかというような点をまあ理論上というふうに申しておるのじゃないかと思うのです。運用上というような問題につきましては、これはこの鈴木君の頭にある運用上の問題点というのは……
○稲葉誠一君 「実務上」と書いてある。
○政府委員(竹内寿平君) 実務上と書いてありますか。これはアメリカの制度と日本の制度と非常に違っておりますので、その辺の実際上没収しなければならぬという必要性はだんだん広まってきておるようでございます。最高裁の昭和三十二年の判決でございましたか、これはもう悪意のある者だけに限るというふうに非常に限定的に実体法を理解しております。その限りにおきまして運用するならば、条文の上でははっきり悪意であるか善意であるかを問わないかのごとき表現がありましても、それは悪意の者だけに限定されるのだという解釈になりますと、運用の面では、諸外国の立法例やあるいは一般の傾向に考えてみますると、それは少し狭過ぎるという感じがするわけでございます。まあそういったような問題も含めましていろいろ問題があるということを指摘しているのじゃないかと思います。
○稲葉誠一君 この第三者没収ということの法律的な定義をどういうふうに限定するのですか。これは条文にございますか。条文をあまりまだ見ていないのだけれども。目的はありましたね、たしか。
○政府委員(竹内寿平君) 第三者没収という法律用語はどうも見受けませんのでございますが、判例ではまあそういう言葉を使っておるようでございまして、私どもの理解いたしておりますところを申し上げますと、刑事手続において犯人である被告人以外の者の所有に属する物を没収することを意味するものである、かように理解いたしております。
○稲葉誠一君 そうすると、これに類似の制度として見ていいのですか。刑法十九条でしたっけ、共犯者の所有物を没収する場合がありますね。この共犯者という場合には、起訴をされている人以外の、起訴されていない人も共犯者として認定されて、その者の所有物を没収することができると、こういう判例だと思いますね。こういう場合は、この第三者没収ということにこの法律に該当するのですか。どういうふうになっておるのですか。
○政府委員(竹内寿平君) これは、実体的に見ますと、判例の説明しておりますとおり、共犯者はいわゆる第三者じゃないわけでございます。しかしながら、この応急措置法において、手続上起訴されておりません第三者という共犯者というのは、やはり第三者の扱いでいく、こういう考えでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、その場合もこの応急措置法の適用を受けるのですか。
○政府委員(竹内寿平君) 応急措置法の適用を受けるというふうに考えております。
○稲葉誠一君 そうすると、それは従来の判例の解釈とは違ってくるわけですか。
○政府委員(竹内寿平君) 判例の解釈とは違っておらないのでございまして、そういう共犯者である人は、調べてまさに共犯者であり第三者でないということがはっきりすれば没収をされるわけでございまして、没収をしてもよろしいというのが判例の趣旨でございますから、没収ができるという意味においては何にも判例と違わない。ただこの手続においては一応第三者の扱いで防御の機会を与える、こういう趣旨でございます。
○稲葉誠一君 もう一つ、これはちょっと違うかと思うのですが、たとえば保釈の決定の場合ですね。保証金を被告人が積まないで、第三者が保証書で積む場合がありますね。これはまあ弁護士が保証書を入れる場合もあるし、それから親族その他が入れる場合もある。この場合に、保釈取消決定をすれば、保釈保証金のこれは没収ではなくて没取ですか、であった場合に、保釈保証書を入れている第三者との関係はこの法律では一体どうなるのですか。
○政府委員(竹内寿平君) ただいまの設例の場合は、この法律とは何の関係もございません。これは没収刑として言い渡す場合の手続の規定でございます。
○稲葉誠一君 この法律と関係がないという意味は、保釈金のやつは没収ではないと、没取だからと、こういうのですか。あるいは、第三者が保証書を入れていても、これは第三者の所有物ではないのですからという二つの考え方から本法案とは関係がないということなんですか。
○政府委員(竹内寿平君) 第三者が保証して金をかりに出しておるという点ではいかにも第三者でございますけれども、それは保釈金の保証の問題でございまして、これはそうではなくて、被告人のある犯罪行為に付随してその主刑に附加して没収刑が言い渡される場合に、その没収物の所有者が第三者であるかどうかということで、もしその第三者が何らの防御の機会も与えられずして被告人の判決言い渡しに際して自分の物が持っていかれてしまうということを手続上担保して、防御の機会を十分与えてその上で裁判をしてもらうと、こういうことでございますから、事柄の性質も全然違いますし、また、本法案がそういうものにまで及ぼしていくという考えはないわけでございます。そういう意味におきましてそれとはまあ全然違うのですが、これによく似ている没取だとかあるいは官没だとかあるいはまた通告処分とかといったようなものも行政処分でございますから、さしあたって第三者没収の規定とは関係ないわけでございますけれども、違憲の判決はそういうものの精神についてもこれに準じて同じような考え方を私はとるべきだと思います。そういうものの整備も、もしこれを完全無欠なものにして参りますためには、整えなければならないと思うのでございます。そこまではとうていこの応急措置法では及びませんので、さしあたりの必要な刑事処分の場合についてのみ規定をいたしたわけでございます。
○稲葉誠一君 どうもその点が私はっきりしないのですが、没取というのはどういうふうに解釈しているわけですか。保釈保証金のやつは、あれは没取だったと思うのですが、これは下村さんのほうが詳しいと思うのですが、それはどうですか。
○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) おっしゃるとおりでございます。保釈保証金を取り上げるのは没取——没収とは言っておりますが、いわゆる没取、取るという字が書いてございますから。
○稲葉誠一君 そういう場合でも、竹内さん、保釈保証書を出している人の意見だとか弁解だとか防御の機会を与えないで、それで没取を決定してしまうでしょう。そうなってくると、その保証書に対する執行力というものが出てくるわけですね。そうでしょう。そうなってくると、やはりそこでだってそこまでのことをやって与えなければやはり憲法違反の問題が起きてくるのじゃないでしょうか。私はそれを疑問に思うのです。憲法違反の問題は起きてくるけれども、今ただ間に合わなかったからやらなかったというならば、またそういう考え方もあると思うのですがね。
○説明員(臼井滋夫君) 没取にもいろいろ性質があると存じますけれども、たとえば、仰せの刑事訴訟法に定める保釈保証金の没取、それからまた先ほど刑事局長が申し上げました行政処分の没取といろいろございますけれども、かなりこれは性質が違うと思うのでございます。一般の行政法に定めますところの没取は、それぞれの行政法が当該行政目的を達しますために、一定の違反物件等につきまして行政処分としてこれを国庫に帰属させる処分、たとえば旅券法にございます不正に使用された旅券等を外務大臣が行政処分として没取をする、こういう手続は純粋な行政処分でございますから、これについて不服申し立てば行政訴訟等によって争うということになろうかと存じます。ところが、保釈保証金の没取につきましては、これは刑事裁判手続の中で刑事裁判に付随する派生的な一つの手続として行なわれる派生的な裁判でございまして、これに対してはその手続の中でまた不服申し立てが許されるわけでございますし、また、保釈保証金の場合におきましては、保証書を差し入れる第三者は、被告人が保釈の条件等に違反した場合にそれが没取されるということを承知した上で差し入れているわけでございまして、したがって、違反行為がございました場合に第三者の差し入れた保証書につきまして没取決定を行なうということは、憲法三十一条と二十九条という問題は生じてこない、かように考えるわけでございます。
○稲葉誠一君 そこら辺のところは、私はもっと相当問題点があるのじゃないか、こう思いますが、たとえば今の場合でも、その条件に違反したかしないかということが争いになる場合があるのじゃないでしょうか。それを争う方法があるからといって、今の段階では、十分な告知の機会なりあるいは防御の機会というものを保証書を差し入れた人に与えてないじゃないですか、現行法では。だから、そこら辺のところで問題が出てくるのじゃないですか。それは、そういうふうな条件を知っていて差し入れたのだということになれば、第三者没収の場合でも悪意でやっている人だけを限定しているわけですから、そこで同じになっちゃう。第三者没収という場合と、これに類似したいろいろな行政処分なりその他の法律の中で同じように類似なものが相当あるのじゃないでしょうか。だから、それが一々憲法違反であるかどうかということまでやはり研究していかないというと、この法案が一体どこまで適用されるかということがわからなくなってくるのじゃないか、こういうことを私は疑問に思うわけです。そこで今のやつをお聞きしたわけです。これは私まだ十分に今の段階で研究しているわけじゃありませんから、また日を改めてもう少し研究させてもらってから聞きたいと思うわけです。 そうすると、この法律に関係をしてくる第三者没収なり、第三者没収に類似するような制度が規定してある単行法というのは、どういうやつがあるわけですか。
○政府委員(竹内寿平君) 刑法の十九条ノ二それから賄賂罪の規定にございます。このほかに、大部分第三者没収というものは保安処分的な性質を帯びたものでございますので、特別法の中にあるわけでございます。これについての法律の規定一覧を資料といたしましてお配りしてございますが、これをごらんいただきますとわかりますけれども、この目次のところでおわかりのように、没収のみに関して規定するものの中にも、必要的没収規定で必ず没収しなければならないというふうになっているものと裁判官の裁量によって没収することができるというふうに規定したものと二種類あるわけでございます。さらにまた、没収だけではなくして、没収に加えて追徴に関する規定を持っているもの、この中にも、必要的没収・追徴の規定を設けているものと裁量にとどめているものとがございます。さらに二十二ページ以下に行政処分による官没、破毀等について規定するもの、それから最後に没取に関するもの等、一応私どもの目に触れましたものを収録いたしまして御参考に供したわけでございます。
○稲葉誠一君 これはいただいておったのですから私も検討しますが、この中に非常に古い法律があって、いわゆる憲法ができてから、その憲法の精神なり何なりとそぐわないというふうなものも相当あるのじゃないですか。相当古い法律がだいぶありますか。
○説明員(臼井滋夫君) お答えいたします。 この一覧表の中に、御指摘のような古い法律もございます。しかしながら、第三者没収の規定、すなわち犯人以外の者の所有に属する物を没収する規定というものができましたのは、昭和十六年に刑法の一部改正によりまして、刑法十九条で、第三者の犯行後における情を知っての取得という条文が設けられまして、それと相前後しまして第三者没収規定が非常に特別法の分野で多くなりまして、第三者没収規定が多く見受けられますのは、むしろ戦後の立法に多く見られるわけでございます。 ちなみに、問題になっております関税法の条文にいたしましても、戦後の関税法までは犯人の所有に限っておったわけでございますけれども、戦後の関税法に至りまして、諸外国の立法例と同じように、第三者の所有に属する犯罪貨物や船舶等の没収も認めるようになりました。したがいまして、古い法律におきましては、むしろ没収すべき物件は犯人ないしそれに準ずる者の所有に属するものに限定しておるというのが一般の姿でございます。
○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 先ほど稲葉委員からお尋ねがございました保釈を取り消す場合の没取に関することでございますが、私のほうの立場から申し上げるのもいささか出過ぎておりますが、一応将来の御審議のために参考までに申し上げておきたいと思います。 没取のその規定は、刑事訴訟法の九十六条の第二項でありまして、「保釈を取り消す場合には、裁判所は、決定で保証金の全部又は一部を没取することができる。」と、こういうふうになっておりまして、それから今度は同じく刑事訴訟法の四百二十九条でございますが、これは抗告の章に当たっておりまして、まあ普通準抗告と言われておるものでございますが、これによりますと、「裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。」、第二号でありますが、「勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判」、こういうのがございます。これは裁判官がした場合でございますから、起訴前の保釈の問題になると思うのでありますが、起訴後の問題になりますと、上訴編のうちの抗告の章の第四百二十条に、「裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除いては、抗告をすることはできない。」と、こう書いてありますが、第二項に「前項の規定は、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定及び鑑定のためにする留置に関する決定については、これを適用しない。」と、こういうふうに書いてありまして、要するに、保釈に関して裁判官あるいは裁判所が没収の決定をいたしました場合には抗告をすることができるわけでございます。それから四百九十条で「罰金、科料、没収、追徴、過料、没取、訴訟費用、費用賠償又は仮納付の裁判は、検察官の命令によってこれを執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。」、第二項は、「前項の裁判の執行については、民事訴訟に関する法令の規定を準用する。但し、執行前に裁判の送達をすることを要しない。」と、こういうふうになっておりまして、いよいよ執行する場合においては、民事訴訟法が準用されるわけであります。そういうような関係におきまして、裁判所が没収の裁判をしました場合においても、その保証金の没収されたものは、ある程度の不服申し立ての方法を持っているわけであります。 御参考のために申し上げました。
○稲葉誠一君 第三者所有物を没収された場合でもやはり不服申し立ての方法があるわけでしょう、現行法では、そこはどうなんです。今のお話を聞いていると、保釈の保証金の場合は、そういうようないろいろな不服の申し立ての方法があるから、だから一応完備していて憲法違反の問題なんか起きないのだ、こういうふうに聞こえるわけですが、しかし第三者没収でも、違法の没収なら、それについての異議の申し立て、不服の申し立ての方法が現行法のもとでも与えられているのじゃないですか。
○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) ただいま申し上げました条文等には没収の関係は入っておりませんので、すぐ不服申し立てばできないのじゃないかと思います。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。 本案に対しましては、他に御発言もないようでありますから、この程度にとどめます。 —————————————
○委員長(鳥畠徳次郎君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 稲葉委員から発言を求められておりますので、これを許します。
○稲葉誠一君 いろいろ国民が大きな関心を持っております狭山の事件ですが、これが、きのう一たん保釈が許可になって、出たときに逮捕をまたされたということが新聞紙上に出ておるのですが、この間の経過をひとつ御説明願いたいと私思うわけです。これは法務省のほうですか、警察庁ですか、どちらでもいいですが。
○政府委員(竹内寿平君) お尋ねの事件でございますが、去る五月二十三日に、所轄狭山警察署におきまして、石川一雄容疑者を暴行、窃盗、恐喝未遂——この恐喝未遂というのは、中田善枝さんの身代金二十万円を要求して未遂となった事実でございますが、この容疑に基づきまして令状をもらって逮捕をいたしました。翌二十四日、浦和地方検察庁川越支部に事件を送致しておるのでございます。翌二十五日、検察官の請求によりまして石川容疑者に対しまして勾留状が発せられ、自来石川容疑者の身柄を狭山警察署に勾留をして取り調べが続けられて参ったのでございます。この間、六月四日には、裁判官による勾留期間の十日間の延長が認められておるのでございます。川越支部の検察官といたしましては、六月十三日に石川を暴行、窃盗と、その間取り調べ中に新たに判明いたしました窃盗、傷害、暴行、横領等の事実をも合わせまして、勾留のままで浦和地裁川越支部に事件を起訴いたしましたのでございます。もちろん、この新たに判明した事実につきましては、同日別途勾留状の発付を受けておるようでございます。で、勾留事実の中で恐喝未遂の点につきましては、証拠を検討いたしました結果、起訴の結論に達せないで処分留保ということになっておりまして、さらに今後証拠の検討によって処分を決するということになっておるのでございます。それで、起訴をいたしました後、石川被告の弁護人から保釈の請求がなされておりまして、六月十七日、裁判官はこの要求をいれて保釈の決定を行なったのでございます。そういうわけで、石川被告人は一たん釈放されたのでございますが、同じ日に、警察におきましては、さらに本件の中心的な容疑事実であります強盗、強姦、殺人並びに死体遺棄の容疑で逮捕令状をもらいましてこれを逮捕し、引き続きその事件についてただいま捜査中でございます。
○稲葉誠一君 このきのうの逮捕は、これは警察が請求してやったんですか、検察庁でやったんですか。そこのところがどうもはっきりしないんですが、どういうふうになっているんですか。
○政府委員(宮地直邦君) 警察におきまして逮捕状の請求をいたしました。
○稲葉誠一君 そうすると、強盗、強姦と殺人ですか、それに死体遺棄の併合罪ですか、これできのう逮捕できるならば、それだけの証拠が集まっているということならば、昨日の段階で検察庁が追起訴をしたらよかったんじゃないですか。
○政府委員(竹内寿平君) これは、稲葉先生もよく御存じのように、起訴の考え方の問題だと思いますが、逮捕令状の出されます条件は、犯したことを疑うに足りる相当な事由があれば逮捕令状はいただけるわけでございますけれども、その程度で起訴するのがいいか、さらに有罪判決を受けるに足るだけの資料を持った場合に起訴するのがいいかという問題がありますけれども、検察庁といたしましては、逮捕事由のあります程度の容疑では実際には起訴しておらないのでございまして、有罪を受け得るある程度の証拠、確信、検察官としては確信が持てる程度に証拠が集まった場合に、さらにその上で諸般の状況を考慮した上で起訴不起訴を決定する、こういうことに運用しておりまして、その運用と現実の捜査の状況とを照らし合わせまして検察官側は処分留保にいたしましたけれども、捜査といたしましてはさらに続ける必要があり、かつ、その程度の容疑は裁判所も認める程度のものであったと、かように考えるわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、現在の段階では、逮捕はしたけれども、今の時点ですね、起訴をできるところまで証拠が集まっておらないと、こういうことになるわけですか。
○政府委員(竹内寿平君) 現地の検察官におきましてはそのように判断をしたと思われます。
○稲葉誠一君 そうすると、現在の段階で足りないものは一体何なわけですか。これは警察でも検察庁でもどちらでもいいですが、今の段階では足りないわけでしょう。逮捕することはそれだけの証拠はあるけれども、起訴するだけの証拠は今集まっておらないと言われれば、一体どこが足りないのかということは当然次の質問に出てくるわけですね。どこが足りないのでしょう。
○政府委員(竹内寿平君) そういう御疑念も出ると思いますが、どこが足りなかったか、どの程度に足りなかったかというようなことは、これは一線の検事が良心に従って判断することでございまして、ただいま事件は捜査中でございますので、私も聞いておりませんのでございますけれども、まあかりに聞いて明らかにし得たといたしましても、これを公に申し上げますことは遠慮さしていただくほうが適当かと思います。
○稲葉誠一君 警察は、従来本件の捜査がいろいろな点で足りない点があることは、国会なりその他のところでいろいろ認めておられるわけですね。そうすると、警察としては、今どういうふうな証拠が足りなくて、一体その何を本件について求めたいということのために逮捕されたか。この点は微細の点にまでお聞きするのがここでは仕事ではないと思いますけれども、ある程度のことは当然従来の答弁の結果から見て答えられていいのじゃないでしょうか。
○政府委員(宮地直邦君) 六月十三日に、今竹内刑事局長から申されましたように、窃盗その他九件について起訴がせられました。しかしながら、本件の一つの問題点であります恐喝未遂について起訴をせられなかった。これは検察官のほうで起訴せられなかったことでありまして、これについて警察として意見を申し上げるべきものではないと思います。しかしながら、そういう起訴の処分が保留になっておるというようなことにつきまして、われわれのほうは五月一日以来捜査を継続いたしておりますので、何と申しましてもこれは殺人事件でございます。したがって、殺人という事案を解決するためにあらゆる努力を払って参りまして、ようやく昨日に至りまして強盗、強姦、殺人、死体遺棄等に関しまして疑うに足る相当の事由を発見したと、こういうことでわれわれのほうは逮捕状を請求した、こういう結果になっております。
○稲葉誠一君 結局、新聞紙上世間で言われておるのは、本人の自供がないということのために捜査が行き詰まっておるということがおもな理由に言われておるわけですね。そうなってくると、今度の逮捕というのは、いわゆる強盗、殺人というか、これに対する自供を本人からとるための逮捕ということに結果としてはなっていくし、そこがまたねらいである、こういうふうに見られてもしようがないのじゃないですか。警察はどういうふうにお考えでしょうか。
○政府委員(宮地直邦君) われわれのほうは自供のみに頼って捜査をしているわけではございませんので、あらゆる証拠というものを集めることに努力をいたしておるのでございます。
○稲葉誠一君 自供だけを求めるために逮捕したということになれば、それは人権問題が起きてきますから、そのほかの足りない証拠も集めなければならないことは事実ですよ。だけれども、その足りない証拠というのは、身柄を逮捕しなくても、警察の力なり捜査の力で発見できる筋合いのものだと考えられるわけだと思うのですが、そうなってくると、これはやはり自白を求めるための逮捕としか考えられないようにも私はとれるのですが、それはまあ見解の相異になってくるかと思うのですが、そこでひとつお聞きしたいのは、ちょっとこの事件と離れるわけです。離れて、一般論としてお聞するのは、よく行なわれるのですが、たとえば殺人の事件が発生した。殺人事件で逮捕をし、勾留状を請求するだけの十分な証拠が集まっておらない、こういう場合があるわけですね。そのときに、全然別の小さな事件、古い事件、あるいは普通ならば起訴に値しないような事件で逮捕をする。そして、その事件についてはあまり調べないで、もっぱら主目的の殺人事件の捜査に当たる、そういうことをやるということが近ごろ非常に行なわれて、それが問題になっているわけです。いわゆる別件逮捕というような言葉を使っておりますが、こういう言葉の使い方がいいか悪いか、これは法律用語でもありませんし、正式な用語でもないので、私も疑問ですけれども、そういう行き方がしきりにとられておるわけです。一体こういう行き方を警察は正しい捜査の行き方であると考えておるのでしょうか。裁判官の発した逮捕状がなければ、その人を逮捕することはできない。殺人事件の逮捕状がなければ、本来ならば殺人事件についてのそれを中心とした調べはできないはずだ、こう思うのです。それがむやみに許されてくるならば、憲法に保障した逮捕状がなければ取り調べができないということが、殺人の逮捕状がなくても、全然古いような小さなことをちょっとつかまえてきて、それで逮捕しておいて、勾留し、どんどん殺人なりその他の大きい事件を調べていくということになれば、その関係においては逮捕状や勾留状がなしに人間が逮捕をできるということに結果としてなってくる。これは捜査の行き方として正しい行き方であると警察は考えているのでしょうか。
○政府委員(宮地直邦君) 本狭山の事件につきましても、別件逮捕ということを言われたわけでありますが、この事件につきましては、私どもは、これは別件逮捕と思っておりません。 いわゆる一般の別件逮捕の問題でございますが、われわれとしましては、あくまでもその事件の本質に触れた逮捕状において身柄を拘束し、必要がある場合には調べるべきものだと思うのであります。ただ、捜査の一過程といたしまして、ある段階において逮捕して調べる必要がある場合に、他の現在ある証拠をもって疎明し、令状をとって調べるということはあると思います。その結果、逮捕した被疑事実につきましてそれを調べないというようなことがありましたら、これは御承知のように刑事訴訟法でも送致の時間の制限がございますので、そういうことはあり得ないと思いますが、捜査の結果、逮捕して調べておる途中におきまして別件が出てきた場合にいかにするかという問題があるのでございますが、さような場合につきましては、現在逮捕状をとって調べている罪種より重いものが出てきた場合におきましては、これは逮捕状の切りかえをもって措置するように指専をいたしておるのでございまして、逮捕権の適正なる行使ということにつきましては、昭和二十八年の刑事訴訟法の改正以来、われわれの最も留意いたしておるところでございます。
○稲葉誠一君 そのあなたの答えは、狭山の事件に触れてお答えしたかったのでしょうけれども、これは、私も、あなたの言うように、いわゆる別件逮捕とちょっと違うと思うのですよ。これは恐喝未遂が入っていますからね、二十万円の。これはまたあとで論議になると思いますが、今あなたの言われたのは、古い小さな事件をつかまえてみたら大きな事件が出てきた、出てきたから、そっちのほうで逮捕状を請求して調べるのは違法じゃない、これは当然です。しかし、現在問題になっているのは、そういうのじゃなくて、殺人とか、強盗殺人とかいう大きな事件を初めから目標にしている、けれどもこれは証拠が足りない、その自白を求めたり何かしなくちゃならない、古いところで小さな事件を持ってきて逮捕して、それで勾留をして調べる、こういう行き方をとっているわけですね。だから、これは最高裁に先にお尋ねしたいと思うのですが、明らかに前の小さな事件を調べるのが目的ではないのだ、大きな事件を調べるのが目的である、そのことでは逮捕状なり何なりはとれない、とれないから前の古い事件で逮捕しておいて、事実上は大きな事件が中心となり、ほとんどそれをずっと調べておると、こういう行き方ですね。これは憲法の裁判官の発する令状がなければ逮捕できないという規定に直接あるいはその精神に触れるものだと私は考えるのですが、法務大臣とそれから最高裁は一体どういうふうにその点についてお考えなんでしょうか。法務大臣どうですか。
○国務大臣(中垣國男君) 具体的な問題についてお尋ねになったわけではありませんから申し上げますけれども、私は、容疑者を逮捕するということに対して、正当な手続を得て身柄を勾留するということについては、これはもう何も異存がなかろうと思うのです。で、一つの事犯の容疑者として逮捕されておる、その捜査中に再びほかの事件が起きてきたときに、それをば、たとえば狭山事件のような場合に、再び新しく出てきたことの容疑者としての逮捕状を要求してそうして身柄を拘束する、そういうことは、これは法律論はどうであるかわかりませんけれども、そういうことをしなければその事件の捜査はできないのであるから、これはやむを得ない措置としてそういうことが許されていると、私はこう思います。ただ、人権問題になって参りますと、そういう逮捕状に記載されておる内容というものが、はたしてその逮捕するだけの理由に足るものであるかどうか、ただばく然とした理由で逮捕要求がなされてそれが逮捕の令状を得て行なわれるということでありますと、人権問題もそこに起きてくるかと思うのでありますが、逮捕理由というものが、ある程度容疑者としての明らかなものがあれば、それは少なくも人権違反等には私はならないと、このように思います。
○稲葉誠一君 最高裁にはあとでお尋ねしますが、ばく然とした理由で逮捕状が出るというのは、日本の刑事裁判の制度ではそういうことはないですよ。これは勘違いをされておるのじゃないですか。ばく然とした理由で逮捕状なんか出た日にはあぶなくてしようがない。具体的な、いつ幾日どういうふうなことをやったということと、それに対する十分——十分というか、それを疑うに足る疎明資料が添付されていなければ、裁判官は逮捕状を発しないわけですから、それはちょっと勘違いじゃないかと、こう思うのですが、私の質問した意味が法務大臣には正しく理解されなかったのか、それをことさら正しく理解しない方向にあなたが答えを持って行っているのか、ちょっと疑問があるのですよ。私の言っているのは、初めからその古い事件とか、小さな事件というものを取り調べようとしないわけです。ある程度取り調べます。しかし、このことは事実は明白だし、別に逮捕状を発付しなければならない理由はないのです。ところが、それに籍口してそれで逮捕して、実際は初めから別の大きな事件を取り調べる目的でやっておる場合、これが非常に多いわけです。そういう場合に、一体その逮捕は憲法の規定からいってどうなるのかということをお開きしているのですよ。逮捕してきた、逮捕しているうちに新しい大きな事件が出てきたというのなら、逮捕状を切りかえるのはあたりまえの話ですよ。そういうことを聞いているのではないのですよ。具体的な例はたくさんありますよ。たとえば、殺人事件でなかなか犯人がわからない。証拠が集まらないでしょう。ところが、どうもこれは犯人らしいということになってくれば、これはつかまえようとする。何でつかまえたかというと、道交法でつかまえたことがありますよ。ライトをつけないで来たということで道交法違反でつかまえて殺人事件を取り調べたというのもありますよ。それからゴルフのボールを一つとったというので窃盗で逮捕して、そしてどんどん殺人事件を調べている。そういうやり方もこれはあったと言われているくらいなんですよ。今のは極端な例かもしれませんけれども、それに見合うようなことは現実に行なわれているわけですよ。これを私はそういう場合には憲法の精神に違反するのかということを言っておるのです。そういう場合でも、捜査のためにはやむを得ないのだということを言われるならば、これは何をか言わんやですが、それはちょっとおかしいんじゃないかと思います。そういう点をお聞きしておるわけです。
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。 これは、最初逮捕令状が出たとたんに、先ほどあなたからも御意見がありましたように、正当な手続を経て理由があって逮捕される、こういうことだろうと思うのです。したがって、その面については、事件の大小といいますか、事件の内容と申しますか、そういうことにかかわりなく、手続を経て逮捕令状が出たということには、その逮捕に足りる理由があったから逮捕状が出たと、私はこういうふうに判断いたします。したがって、その途中で他の犯罪がそこに発生してきた、それによってまた新たな逮捕状が出るということも、先ほどあなた自身の御意見の中にありましたように、そういうばく然としたものでは逮捕ができないし、そういうことで逮捕令状は出るものではない、そのとおりでありまして、私にはよく御質問の御趣旨がわからないのでありますが、ここで最初の逮捕を甲とします、次の逮捕を乙としますと、甲も乙もちっとも矛盾もしなければ何ものもないと、私はこういうふうに判断いたします。したがって、逮捕についての人権問題というものはそこにあり得ない。ですから、常識的に言いますと、逮捕に足りる理由を明らかにして逮捕を裁判所が許したものであるならば、もう憲法上の問題は発生の余地はない、私はそう思うわけでありまして、事件の大小であるとか、犯罪の内容とか、そういうこと等を私は申し上げておるのではないのでありまして、いかなる問題であっても、その手続が間違いなく行なわれ、しかも逮捕令状を裁判所が認めるだけの内容であるものは、もう人権問題は憲法上発生の余地がない、私はそう思いますので、そのほかどうも考え方がないと思いますが……。
○稲葉誠一君 私の質問をしておる意味が大臣にはちょっと理解されなかったのじゃないかと、こう思うのですね。これは法律の専門家の方には、もうよくおわかりになっていることだと思いますが、こういうことなんですよ、私の言っているのは。たとえば強盗殺人事件が起きるでしょう。その証拠は、それで逮捕するだけの証拠が集まっていないわけです。集まっていない場合、何とかしてそれをしょっ引いて身柄を拘束してそのことで調べたいわけです。ところが、それに対して逮捕状を請求するだけの証拠がないのです。そうすると、古い小さな事件や何かを見つけてくるのです。そのこと自身では逮捕に値もしない、起訴価値もないような古い事件を見つけてくる。たとえばどこかの小さな窃盗とか、鶏一羽盗んだとか、どこかでけんかしたとか、そういう事件で逮捕状をとるわけです。その事件はもう本人は認めているわけですから、そこに証拠隠滅もないし何にもないわけです。ところが、それを見つけてくる。実際は隠されている大きな事件を初めから捜査をしたいために、身柄を拘束したいために、そういう方法をとるわけです。だから、今の小さな事件を逮捕してやっているうちに新しい事件が発生をしてきたというのじゃなくて、初めからそいつを目的にやるのですよ。それが現実に行なわれているわけです。そういう場合に、そういう捜査は一体憲法の精神に違反をしないかと、こういうことを私は言っているわけです。
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。 いや、ようやくわかりました。そのお尋ねがどうも私は狭山事件のことを聞いておられると思ったのですが……
○稲葉誠一君 一般論で言ったんです。
○国務大臣(中垣國男君) 御指摘のように、一つの大きな事件がある。その事件を捜査するために、その過程の加害者と申しますか、そういう容疑者というものがあるが、それをいきなり逮捕する事由はない。そこで、本人がずっとさ細な事件があって、それを事由に逮捕した、こういうことでございますね。私は、その問題につきましては、もう逮捕するまでもなく本人も自供している、証拠も出ておる、こういう問題でしょう。それを逮捕するということは、やはり逮捕権の乱用じゃないかと思います。これは確かに憲法の人権の上から見てそういうことは私は避けたほうがいいと思います。そういうふうに思います。
○稲葉誠一君 じゃ、最高裁のほうも、今の法務大臣のあとから言われたことと同じ御意見ですか。
○最高裁判所長官代理者(樋口勝君) 最高裁の意見とおっしゃいましても、結局、判例ということになると思います。御承知のように、ある種の事件の判例の中にそれを裏から言っている判例があるわけでございます。それは、検察官において初めから乙事件の取り調べに利用する目的または意図をもってことさらに甲事件を起訴し、かつ不当に勾留を請求したものと認められない場合には、右取り調べをもって直ちに違法、違憲と解すべき理由はなく云云と、こういうふうな、これを裏から解すればその結論が出ると思いますが、その点の直接の判例はございません。ただ、一言付け加えておきたいと思いますのは、これはあとから調べた場合にそういうふうな目的があったかどうかということが判明するわけでございますが、当該の逮捕に当たっております裁判官といたしましては、捜査官の意図いかんにかかわりませず、現在令状を請求されました事件そのものを勘案しまして、相当小さな事件でありましても、もし何らかの事情があってその事件そのものについて身柄を拘束する必要がある、そういう場合にはやはり逮捕状なり勾留状なりを出す場合があるということをお含みおき願いたいと思います。
○稲葉誠一君 これは最高裁の言われたのはそのとおりですが、判例を裏返しにして言えば、乙事件を取り調べる目的を中心として、古いというか小さいというか、甲事件の逮捕その他でやる意図が明らかな場合には違法だと、こういうふうに受け取ってよろしいと、こう思うわけですが、そこでこれは法務省にお尋ねしたいのですが、勾留期間が、最初の三日は別として、二十日間あるわけですね。二十日間というのは、十日間を延長して十日間で二十日間ですが、これはどういうところからこの規定はできているんですか。どういう精神から十日間ということで、特別な場合に十日間延長できるという規定はできているのでしょうか。
○政府委員(竹内寿平君) この勾留期間というのは、捜査の期間は長ければ長いほど捜査機関としては便利を受けると思いますが、一応十日という線で起訴不起訴をきめていこうという考えだと思います。それで、複雑な事件とか、事案にもよりますけれども、それだけでは間に合わないと合理的に判断される場合には、さらに十日間の範囲内で裁判所に一つ一つ許可を受けて期間を延長してその間に勝負をつけていけ、こういう法の趣旨であろうかと思います。
○稲葉誠一君 そうすると、十日間が原則なんでしょう。ところが、現在の建前からいうと、初めから二十日間の勾留期間、だから十日間の延長ですね、初めから十日間の延長というものを前提として捜査が行なわれている傾向が非常に強いですね。もう裁判所のほうは当然あとの十日間の延長は認めてくれるんだという考え方でやっているんじゃないですか。そこは一体どうなんですか。十日間というものが原則なんでしょう。それを、あとの十日間延長というのは当然すぎるくらい当然だという考え方のもとに事実が進められているのじゃないですか。だから、最初の十日間の夕方の終わりごろになってきて、検察庁のほうじゃ、いや、あと十日間勾留を延長してもらわなければ困るとかいって書類を裁判所のほうに急いで回すわけです。裁判所のほうでは、内容をちょっと調べるけれども、勾留延長を却下する場合もありますけれども、あるいは期間を短縮する場合もありますけれども、ほとんどそのまま認めてしまうというのが実情じゃないですか。
○政府委員(竹内寿平君) お話のように、個々の事件について見ますと、あるいは妥当でない扱い方も中にはないとは言えないと私もその点は認めざるを得ない運用になっておるかと思いますが、しかしながら、これは考え方によるのでございまして、原則は十日でございますが、この十日の間に確信は持てないけれども、嫌疑が残っておるから、あとは裁判所にまかせていくというのがほんとうに被告人のためにいいか、あるいは現在検察官がとっておる態度のように、とにかく検察官としては確信の持てるところまで調べをして、もし持てないというならば不起訴にするということによって事件をきめていくほうがいいか、そこの何といいますか、検察権運用の考え方にも私はよることだと思います。で、ただいまの検察官の考え方というものは、やはり検察官としては確信の持てるところまで調べる、法律の許す限りにおいて調べをして、そうしてもしどうしても証拠が集まらぬということであるならば不起訴処分にしていくということのほうが被告人のためにもいいという、そういう考え方に立っておると思うのでございまして、それが御指摘のようなルーズな運用がありますために、十日間も十五日間もあまり調べずにおいて、最後のところへいってちょこちょこと調べてきめるというような運用がもしあるとすれば、これは運用の面としては戒めていかなければならぬ点だと、こう思います。
○稲葉誠一君 実際には十日間の勾留請求をしても、初めの一週間くらいは調べないでおいて、あとの三日間くらいちょっと調べて、これはもうどうせ間に合いっこないのだから延長だという、そういう安易な気持でやっているのが実際には多いのですよ。これは法務大臣、そういう点はよく調べてもらいたいと思います。竹内さんのような人ばかりだといいのですが、なかなかそうもいかないので、実際にはそういうことがずいぶん行なわれております。これはきょうの問題じゃないので別として。 そこで、もう一つの問題は、狭山の事件に帰ってくるわけですが、狭山の事件では、いろいろ恐喝未遂も入れて勾留されたわけですから、その点について二十三日間調べがあったわけですね。そうすると、今度また恐喝未遂の、まあ事実上罪質を同じくするというか、その発展と見られる強盗殺人でしょう。それでまた二十三日間調べるとなると、しかも前の段階のときにおいては、恐喝未遂で勾留したけれども、実際の調べは殺人の容疑のことで二十三日間調べるわけです、中心は。そうすると、せっかく訴訟法で規定した十日が二十日になり、それが今度は合計四十六日間、同じ一つの犯罪容疑で取り調べができるということが結果としてはここに現われてきているんじゃないですか、この狭山の事件では。こうなってくると、いわゆる昔のたらい回しというか、どうも訴訟法の行き方としては筋が違うし、新しい憲法、訴訟法の建前からいくとおかしくなってくるのじゃないですか、問題は。その点、刑事局長はどうお考えですか。
○政府委員(竹内寿平君) 恐喝未遂の点は、大体御指摘のとおり、この次の本犯と申しますか、殺人事件と関連のある事項でございます。まあ理屈を申しますならば、石川容疑者はあるいは脅迫文を届けたにすぎない共犯者の一人かもしれませんし、本犯はまた別にあるかもしれません。そういう関係においてその部分だけを取り上げての捜査であったと思いますが、まあそれに関連して、本人自身かあるいは共犯者か知りませんが、そういう方面の捜査もしたであろうことは私想像にかたくないと思うのでございますが、この事件を抽象的一般的に申しますと、関連事件でもう一回同じようなことを二十日間やって合計四十何日になるのはまことに不当のようにも思いますが、しかし、他面、この犯罪の罪質そのものを見ますと、これはもうきわめて重大な犯罪でありまして、それとの関連においてもまたこの当不当を議論しなきゃならぬと思うのでございます。この種のきわめて重大な犯罪につきましての容疑がどの程度に濃厚かは、先ほど来申しますように私自身は存じておりませんが、重ねて逮捕令状が出るところを見ますと、相当な容疑があるということは法律上も裁判官も認めておるところであると思いますので、それらの容疑の嫌疑の程度、それから犯罪の重大性、そういうようなものを総合して考えますときは、四十日間にわたるかもしれないこの捜査もそこに別扱いされる理由があるのじゃないかというふうに私個人の見解でありますが考えております。
○稲葉誠一君 重大な犯罪であることは私も認めるのですが、重大な犯罪であるから四十六日間やってもいい、さらに二十三日間延長すると六十九日間ですか、幾らでもやってもいいというふうなお考えですか。そういうふうに聞こえるのですよ、あなたの回答は。それはちょっとおかしいのじゃないかと思いますがね。それが一つと、今度の十七日の逮捕状の中に、強盗、強姦、殺人ですか、ちょっとはっきりしないのですが、それは、恐喝未遂とどういう関係になっているんですか。恐喝未遂の事実も今度逮捕状の中に入っているんじゃないですか。言葉そのものとして入っているかどうかよくわかりませんが、どうです、それは。
○政府委員(竹内寿平君) 第一の点で、六十日まで差しつかえないという意見ではございません。新しい事実について十日間、さらに延長しても二十日間ですね、逮捕の時期から勘定したら二十三日になるかもしれませんが、そういう期間の捜査が今後続けられることはやむを得ないと思われるということを申したわけでございます。その理由としましては、容疑の内容の嫌疑の程度、これは私は存じませんが、その程度いかんによっては考えられることでもあるし、それからさらにまた犯罪そのものがきわめて重大な犯罪であるという点からも、そういう両方の面から考えてみて総合して妥当であるというふうに判断しなければならぬ場合もあるということを申し上げたわけで、この事件はこれが正しいのだということを申し上げているわけじゃございません。 それから関連性の問題でございますが、私どもの報告を受けておるところによりますと、強盗、強姦、殺人、死体遺棄、こうなっておりまして、今の恐喝未遂の点は入っていないようでございます。
○稲葉誠一君 強盗というのは何ですか、そうすると。逮捕状の強盗というのは、どういう事実なんですか。
○政府委員(宮地直邦君) それは、善枝ちゃんの所持品を奪っております。所持品を奪ったという疑いを強盗と言っておるわけでございます。
○稲葉誠一君 善枝ちゃんの所持品を奪ったということが現在の段階で証拠によってそれが疑うことができる相当な理由があるというのは、私は捜査の内容を詳しく知っておるわけじゃありませんけれども、そうすると、もう捜査はそこまで行っていると見てよろしいのですか。これは捜査の内容ですから、ここで詳しくお聞きするのもいかがと思いまするけれども。 そうすると、この恐喝未遂というのは、脅迫状をやって金を取ろうとしたやつですね、それは、今度の逮捕状の中には入っていないわけですね。入ってはいないけれども同じ一連の行為ですね。全体の行為の中の一こまが恐喝未遂になっているわけです。だから、実際問題としては、同じ事実関係を四十六日間調べると、こういうことになるのじゃないですか。
○政府委員(宮地直邦君) 今のところわれわれのほうはこの疑いをもって調べているわけでございますので、実態というようなことは必ずしも最終的には申せないかと思いますが、関連があるという想像はつくわけであります。ただ、五月二十三日に逮捕いたしましたときには、四囲の状況、狭山の状況、捜査の状況、その土地の状況その他を考えまして隔離して調べる必要があることが如実に発生いたしました一方、われわれのほうの捜査の得た資料というものに基づきましてここで恐喝未遂、窃盗、暴行容疑で逮捕いたした。その後捜査を継続いたして、昨日、強盗、強姦、殺人、死体遺棄と、こういう罪名を立証、疎明するに足る資料を得たと、こういう形になっているわけであります。
○稲葉誠一君 この事件は調べ中の事件ですが、しかし、そういう手続、ことに捜査の技術の問題、これは再三前から言われてきているわけですね。そこに不備があったということが出発点になってきているわけだと思うのですが、その最初のところで犯人を逮捕しそこなったということは前々から言われておることですが、そうじゃなくて、そのほかでも、たとえば、死体が発見されたのが五月四日、スコップが発見されたのがそれから一週間たった十一日、教科書やノートが見つかったのが三週間後の二十五日、こういうことのようですが、どうして——あの地帯を警察が全力をあげて調べたと思うのですが、スコップの発見なり教科書やノートの発見がこういうふうにおくれたのでしょうか、どうもちょっとみんな理解できないのですが、どういうところに原因があるのですか。
○政府委員(宮地直邦君) 恐喝の際に逮捕できておればこのようにわれわれも苦労しなかったと思うのでございますが、その後全力をあげて捜査いたしまして、まず第一に死体の現場を発見したわけでございます。しかし、その後、これは現地をごらんになりますというとすぐ御理解がいくかと思いますが、ある場合には茶畑であり、やぶであり、非常に捜査の困難な所でございます。 なお、この地方と申しますか、いなかの性格といたしまして、非常に聞き込みもできない、あるいはこういうふうな大きな事件にかかわり合いになるということを非常におそれて、知っていることも言ってくれない、こういうふうな状態でございますので、捜査がきわめてそういう意味において難航いたしたのでございます。 それから、本なんかの発見のおくれておりますのは、地上にそのままほうってあったものをわれわれが発見しなかったのではなくて、掘ったときに結果的に出てきたという状況なのであります。その状況も、直ちにわれわれのほうに届け出る、率直に自分が発見したことを言うこともちゅうちょするようなその土地の空気というものを前提としてひとつ御判断いただきませんと、警察がこれだけの全力をあげておって結果のおそいということから今のような御意見が出てくることはごもっともだと思いますけれども、われわれのほうも、石川を逮捕しまして後にようやくぽつぽつものを言ってくれる人が出てきたというのが現状でございます。
○稲葉誠一君 いろいろお聞きしたいこともありますが、これについてはきょうはこの程度にして、最終的にお尋ねをしておきたいのは、今の段階で、検察庁はこれを逮捕の容疑で起訴できる自信というか、そういうのはあるのでしょうか。
○政府委員(竹内寿平君) これは、現地の検事正の意見が新聞にも出ておったわけでございますが、あの時点におきましては、起訴するに熟していないということと、それからさらに引き続いて捜査を行なって黒白を明らかにしたい、こういう気持を表明しておられるようでございます。私は、検察庁の考え方というものは、現時点において考えますと、そういう状態にあるのじゃないかというふうに思います。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 他に御発言もないようでありますから、本件に対する調査は一応この程度にとどめます。 本日はこれにて散会いたします。 午後四時二十八分散会