法務委員会 第12号
- 発言数
- 414 件
- 登壇者
- 14 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1963/05/09
会議録
○委員長(鳥畠徳次郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。 本日は、まず、暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。中垣法務大臣。
○国務大臣(中垣國男君) ただいま議題となりました暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。 近年における暴力犯罪の実情を見まするに、その数において依然減少の傾向を示さないばかりでなく、特にいわゆる暴力団すなわちばく徒、暴力テキヤ、青少年不良団、売春、麻薬暴力団その他の暴力的不良団体の構成員またはその仲間ともいうべき人々による悪質な暴力犯罪が増加の傾向を示しておりますことは、きわめて憂慮にたえないところであります。もとより、政府におきましては、このような事態に対処するため、さきに昭和三十三年には刑法等の一部改正について、また、昨三十七年には銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正について、それぞれ国会の御審議をわずらわし、法律としてこれらを逐次実施に移しますとともに、法の運用面におきましても、関係政府機関において緊密な連携のもとに暴力犯罪の防圧に努力して参っているのであります。しかしながら、いわゆる暴力団の構成員等が依然として常習的に暴行、傷害等の暴力犯罪を繰り返し、また、その犯行の手段としてしばしば拳銃、日本刀等きわめて危険な凶器を用いていることは顕著な事実でありまして、この際、この種の社会不安を惹起する暴力犯罪に対して、より一そう強力かつ適切な対策を講ずるために必要な法改正を行ないますことは、単に強い世論にこたえるというばかりでなく、国家の刑政から見ましても、きわめて緊要なことと考えられるのであります。これが本法案を提出することといたしました理由であります。 この法律案の骨子は、次のとおりであります。 第一点は、銃砲または刀剣類を用いる傷害を特別の犯罪類型として一般の傷害罪より重く処罰する規定を新設しようとすることであります。この規定を設けます理由は、銃砲または刀剣類を用いる傷害がきわめて高度の危険性を持つ悪質な犯罪であるばかりでなく、すでに述べましたようにこの種の危険な傷害が暴力団の構成員等によって多く犯されている実情からみましても、当面、特にその必要性が認められるからであります。なお、本罪については、その犯罪の性質にかんがみ、未遂罪を処罰するとともに、日本国民の行なう国外犯をも処罰することが相当と考えられますので、その趣旨の規定を設けることといたしたのであります。 第二点は、常習的暴力行為に関する規定を整備、強化しようとすることであります。すなわち、現行の暴力行為等処罰に関する法律第一条第二項に規定されている常習的暴力行為に対する法定刑を引き上げるとともに、現在でも右の常習的暴力行為に含まれている暴行、脅迫、器物損壊のほかに、新たにこれに刑法第二百四条の傷害を加え、傷害を含む常習犯について通常の傷害罪より重い刑を定めたことであります。その趣旨は、暴力団の構成員等の多くが暴行、脅迫、器物損壊のみならず、傷害をも含めた暴力犯罪を常習的に繰り返している現状にかんがみ、一面において、この種の常習犯に対する法定刑を引き上げその強力な防止をはかるとともに、他面、この種の常習犯人に対して相当期間にわたる適切な矯正処遇等の措置を講じその改善更生をはかることが、当面最も緊要と考えられるからであります。 最後に、裁判所法の一部改正は、右に申し述べました暴力行為等処罰に関する法律の一部改正によりまして、短期一年以上の懲役に当たることとなる罪にかかわる事件については、事案の性質等にかんがみ、地方裁判所は、原則として、一人の裁判官でこれを取り扱うこととしようとするものであります。 以上が暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案の趣旨であります。 何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますよう、お願い申し上げます。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 以上で説明は終わりました。本案に対する質疑は、後日に譲ります。 —————————————
○委員長(鳥畠徳次郎君) 次に、商業登記法案及び商業登記法の施行に伴う関係法令の整理等に関する法律案を議題といたします。 商業登記法案については、すでに提案理由の説明等を聴取いたしておりますので、本日は、商業登記法の施行に伴う関係法令の整理等に関する法律案について提案理由の説明を聴取いたします。中垣法務大臣。
○国務大臣(中垣國男君) ただいま議題となりました商業登記法の施行に伴う関係法令の整理等に関する法律案につきまして、提案の理由を御説明いたします。 この法律案は、商業登記法の施行に伴い、関係法令の整理等を行ならとともに、所要の経過措置を定めようとするものでありますが、その要点を申し上げますと、第一、商業登記法の制定に伴って、現行非訟事件手続法中の商業登記に関する規定を削除するとともに、会社以外の法人の登記手続に関して非訟事件手続法中の商業登記に関する規定の準用を改めて商業登記法中の相当規定を準用することとする等、関係法律に所要の整理を加えたものであります。 第二、商業登記法において会社が本店を移転した場合に旧所在地においてなすべき登記と新所在地においてなすべき登記とを同時にすることとしたことに伴い、会社が本店を移転した場合の登記の期間を改めるとともに、会社以外の法人が主たる事務所を移転した場合における登記の期間もこれに準じて改めたものであります。 第三、会社以外の法人についても、その登記の申請は、会社の場合と同様に、原則として代表者がすることとし、また、その主たる事務所の移転、合併等の場合における登記の手続も、会社の場合と同様の手続に改め、これら法人の登記手続の合理化をはかったものであります。 第四、特別法に基づく各種の法人について現行法では役員の全部を登記することとしているものが少なくないが、役員の全部を登記することは実益がきわめて乏しいので、これらの法人についてはその代表者だけを登記すれば足りることとして、これらの法人の登記手続上の負担を軽減するとともに、登記事務の簡素化をはかったものであります。 第五、商業登記法及びこの法律の施行に伴う所要の経過措置を定めたものであります。 以上がこの法律案の主たる内容であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますよう、お願い申し上げます。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 以上で説明は終わりました。それでは、両案につきまして質疑を行ないます。
○稲葉誠一君 これは、商業登記法案と、この施行に伴う関係法令の整理等に関する法律案と、二つになっておりますが、どうして一緒に提案しなかったのですか。
○政府委員(平賀健太君) ただいまの御指摘、非常にごもっともでございまして、私どもも当初この二つの法律案を一本にいたしまして、この整理法のほうは要するに商業登記法の施行に伴うものでございますので、附則のほうに規定いたしたらいかがかと考えたのでございます。ところが、単なる施行に伴う整理だけではございませんで、ただいま大臣の提案理由の御説明の中にもございましたように、従来、役員の登記を全役員について登記しておったのを代表者だけに限るとか、あるいは、本店、主たる事務所の移転、合併その他の手続は商業登記法に合わせてほかの法律も改正するわけでございますけれども、これはどうも整理という範疇に入りませんものですから、そういう関係で、私どもとしましてもやむなく別の法律案にしたという次第でございます。
○稲葉誠一君 今の最後に言われた二つの点は、附則という形ではまずいのですか。
○政府委員(平賀健太君) これは、従来の立法の場合の法制局の慣例と申しますか、に従いまして、商業登記法の施行に伴う純粋の整理と申しますと、非訟事件手続法の一部を改正する、これは整理に完全に入るわけでございます。それだけにとどまらず、ただいま申し上げましたような商業登記法と同じ建前にするということ、これも広い意味では整理とも言えるかと思うのでございますけれども、それは従来の慣例では整理ということに入れていないということでございますので、別の法律案にいたした次第でございます。
○稲葉誠一君 商業登記に限定しないのですが、登記制度の目的ですね、目的はどこにあると考えたらいいんでしょうか。
○政府委員(平賀健太君) 登記制度の目的は、不動産の登記、それから商業登記、それから会社以外の法人の登記、若干違いはございますけれども、根本は、要するに取引の安全を保護するというところが根本であろうかと考えております。
○稲葉誠一君 近ごろの法律は、第一条でその目的というのを明示するのが普通のやり方になっているわけですが、この場合では特にそういうふうな目的などは書かなかったのですか。
○政府委員(平賀健太君) これも、従来の慣例と申しますか、登記では、不動産の関係では不動産登記法があるわけであります。不動産登記法におきましても、実は第一条に目的の規定がないわけでございます。まあ目的の大原則というのは、不動産登記でありますと民法の百七十七条に規定がございます。商法におきましても、十二条でございましたか、商業登記の大原則、大目的と申しますか、規定が出ているわけでございます。従来、不動産登記法に目的の規定を置かなかったのもやはりそういう趣旨にあるので、そういう趣旨からではないかというふうに考えられるわけでございます。不動産登記法などにならいまして商業登記法におきましてもその目的の規定というものを最初に置かなかったのでございます。
○稲葉誠一君 不動産登記法は、いつできたのですか。
○政府委員(平賀健太君) 現行の不動産登記法は、明治三十二年の法律でございます。
○稲葉誠一君 だから、いわゆる戦前の法律の場合には、法律の目的というものを書いた法律というのはほとんどないわけでしょう。戦後の法律は、全部第一条に目的を書くのが普通のやり方になっているわけでしょう。商業登記法というのを確立したとすれば、商業登記の目的というのを第一条にしっかり書くのが普通の行き方じゃないですか。不動産登記法と比較したって、不動産登記法はずっと古い法律だから、そこに目的がないのはあたりまえです。特に民法の百七十七条といったって、それは対抗要件をきめただけでしょう。不動産登記の目的が民法の百七十七条に書いてあるということは、ちょっとおかしいじゃないですか。
○政府委員(平賀健太君) ただいま仰せのように、戦前の法律には、戦後の法律のように目的に関する規定なんかを置かないのが通例でございますが、ただ、不動産登記法、それから非訟事件手続法、これも古い明治三十一年の古い法律でございますけれども、これが手続法ということもあるのじゃないかと思うのでございます。たとえば戦後できました戸籍法なんかも、これも民法の手続法になるわけでございますが、戸籍法にもそういう目的に関する規定は置いていないのでございまして、やはり民法の大原則を受けた手続規定だというところにあるのじゃないかと考えるのでございます。
○稲葉誠一君 まあ私の聞いたのは、それほど問題点になるほどのことではないわけです。手続法でも、刑事訴訟法には第一条にちゃんとその目的が書いてあるわけでありますから、いずれにしてもたいした問題じゃないのですが、その登記の目的が第三者保護だということになれば、やはり企業の内容というものを登記簿の中にはっきり出しておくことが第三者保護になると、こう考えられるんですね。企業の内容というふうなこと——内容にもいろいろあるでしょうけれども、それは現在の商業登記の中には全然といっていいくらい出てこないのじゃないですか。商業登記簿を見たって、第三者をどう保護をされているのですか。現在そういう会社があるかないかということ、資本金が幾らだということはわかるけれども、そのほかのことは何にもわからんのじゃないですか。現在の商業登記の制度、ことに株式会社の登記制度の場合に、それによって第三者保護の目的が一体達せられているんですか。また、達するためにはどういうふうにしたらいいとお考えですか。
○政府委員(平賀健太君) 取引の安全保護という見地からいきますと、一体会社が、株式会社について申しますと、そういう株式会社があるのかどうか、存在するとすればどういう商号を持ちどういう目的を持つ、それからどういう資本の内容であるかということがまた肝心であるわけでありますが、特に取引の安全保護という見地から申し上げますと、会社と取引をしようとする人がだれを相手にやったらいいか、その会社の代表者はだれか、この代表者の登記、まあ株式会社についていいますと代表取締役でございますが、この会社の組織機構が登記されておること、これが絶対不可欠であるわけでございます。ただ、現行の登記制度におきましては、なるほどその会社の商号、目的、組織機構はこれで全部わかるわけでございますが、その会社の現在の資産の内容がどうなっておるか、資産状態がどうなっておるかということは、現在の商業登記の制度ではこれは把握できないわけであります。この商業登記法におきましても、そこまでは実は踏み切っていないのでございまして、さらに商業登記制度の完璧を期しますためには、会社の資産状態を明らかにすることができるように、商業登記の制度のそれ自体、あるいはそれに付加した他の制度によりまして、登記所においてそれがわかるようにすることが理想であるわけでございます。法制審議会におきましては、株式会社の計算書類、すなわち貸借対照表と損益計算書を登記所に備えるという制度を採用するようにという答申が実はあったわけでございますが、遺憾ながらこれは予算の関係でまだ実現を見ておりません。そういう制度が完備いたしますと、ほんとうに理想的な商業登記制度になるのではないかと私ども考えておる次第でございます。そういう制度ができるだけ早い機会に実現しますように、今後も努力いたしたいと考えておる次第でございます。
○稲葉誠一君 今、そういうふうにやったほうが理想的だけれども、予算の関係でできないと言われたんですが、そんなに予算がかかるのですか、それは。
○政府委員(平賀健太君) 株式会社の数も全国で相当の数に上っておりますが、一年に一回あるいは二回、定時総会の都度、貸借対照表、損益計算書ができまして、総会の承認を得てこれは確定するわけでございますが、それが登記所に提出されますと、まずその保管設備というものを考えなくてはならない。登記所におきましても、そういう書類の提出がございますと、ただ単に内容を全然審査もしないで受け取って保管しておけばいいというわけではございません。やはり、それが様式にかなっているかどうか、適法に作成されているかどうかにつきまして、ある程度の審査をしなければなりません。そうなりますと、人員がやはり若干名の増員というものが考えられなくてはならないわけでございます。ところが、御承知のとおり、現在の法務局の現状というのは、庁舎が非常に古いところが多いのみならず、新しいものも庁舎が狭隘を告げておる。ことに書庫が挾隘を告げているところが非常に多いのでございます。そういう関係で、計算書類を登記所に備えるという制度を採用するにつきましては、施設の改善、人員の増加ということがどうしてもこれは先決問題になりまして、その関係でにわかに実現ができないという非常に遺憾な現状なのでございます。
○稲葉誠一君 登記官吏は、登記事項について、これは形式的審査権しかないわけですね。実質的な審査権がないということは、これは明らかなんですが、これは今の登記法の中では明文化はされていないわけなんですか。そこはどうなっているのですか。
○政府委員(平賀健太君) これは、私ども法務局のほうで所管しておりますところの登記の事務、あるいは、市町村で所管しておりまして法務局が監督いたしておるわけでございますが、戸籍事務なんかにつきましては、登記官吏あるいは戸籍事務の管掌者である市町村長は、実質審査権がない、形式審査権しか持たないということが今まで理論上言われておるわけでございます。ただ、この形式審査権、実質審査権という言葉も、多少誤解を招くおそれもなきにしもあらずと思うのであります。要するに、形式審査権と言われておりますのは、提出されました登記の申請書あるいは戸籍の届出書並びに添附書類、それから登記所なり市町村役場に備えてございますところの登記簿、戸籍簿、そういうものを資料にして審査をするということなのでございます。それ以外の資料を用いては審査をしない。たとえば、申請書に書かれておる事項が真実であるかどうか、添附書類に記載されている事柄が実質に合っているかどうかの審査をすることができないという意味なのでございます。形式審査権だけしか有しないということは、法律の明文は実はないわけでございますが、これは法律で申請書の記載事項を定め、申請書の添附書類を定めておる、そのことから、これは当然これらのものを資料にして審査をしろということになると思うのでございます。法律全体の解釈から、いわゆる形式審査権を有するだけであって、実質審査権を持たないという解釈が生まれてくると思うのでございます。
○稲葉誠一君 だから、形式的審査権しかないんだということをはっきり条文の上に表わせば、それによって登記事務も明白な誤謬とか脱漏がない限り受け付けるという形になってきて、今よりももっと早く登記事務が進捗するということは考えられるんじゃないでかす。この点の審査権が、実質的審査権がないことはわかっていても、なかなかいろいろ詳しくあちこち調べますから、結局時間がかかってしまうから、それでおくれてしまうのじゃないですか、今の段階は。
○政府委員(平賀健太君) その点につきましては、法律全体の解釈から、従来、いわゆる形式審査権しかない、実質審査権を持たないという解釈でございますので、登記所におきましてはその大原則に従って事件を処理しておりますので、提出されました申請書、添附書類、それから登記所に備えてございます登記簿以外の資料を申請人に要求するとか、あるいは職権で登記官吏が調査をいたしまして、そのために登記が非常に渋滞をするというようなことは、これは絶対にないと申し上げていいと思うのでございます。 それからなお、形式審査権しかないということは、その趣旨の明文の規定はございませんが、かえって実質審査権を持ちます場合は法律に規定がございます。その例が不動産登記法の第五十条でございます。不動産の表示の登記、すなわち、土地、建物の現況を不動産登記簿の表題部に記載するわけでございますが、その表題部に不動産の現況を記載するにつきましては、登記の申請書あるいはその添附書面のみによることなく、実態の調査をしなければならぬということになっておりまして、むしろ実質審査権を持っております場合は、その旨の規定が明文で置かれているわけでございます。こういう趣旨からも、その反面解釈からも、その他の事項については実質審査権がないということがさらに明らかになろうかと考えるのであります。
○稲葉誠一君 今、登記所、ことに商業登記の中で非常に仕事が忙しいわけですが、人数が足りないとうことももちろんあると思いますが、これはあとで聞きたいと思うのですが、仕事の中ではどういう仕事が一番多いわけですか、登記所で扱う事務では。
○政府委員(平賀健太君) 商業登記の中で量的に申しまして一番多いのは、何と申しましても株式会社に関する登記でございます。会社数が非常に多い関係で株式会社に関する登記が多いわけですが、その株式会社に関する登記の中でも一番分量的に多くを占めておりますのは、役員の変更登記なのでございます。
○稲葉誠一君 ちょっと私の質問の仕方が悪かったのですが、答えが私のお聞きしたい答えではなかった。商業登記に関連して登記所で扱ういろいろ仕事があるわけでしょう。この事務がいろいろあるわけですね。その中で一体どういう仕事が一番多いか。たとえば、謄本とか抄本の下付申請に対して登記所でそれを作らなければならない仕事もあるだろうし、それからそうでなくて、登記申請が出るでしょう、申請書を見て原本を転記するわけですね、その仕事が事務量として非常に多くを占めているというふうに私ども聞いているわけですが、そういうふうな事務量の中でどういう事務が量が多いのかということを聞いているわけです。それが多いとすれば、それに伴っての改善策というものもそこで考えられてくるわけですが、その点を聞くわけです。
○政府委員(平賀健太君) ただいまの御質問、簡単にお答えすることはちょっと困難なのでございますが、と申しますのは、私ども登記の事件の量を申します場合には、甲号事件と乙号事件というような分け方をしているわけでございます。甲号事件というのは、登記簿に記載を要する事件。それから乙と申しますのは、登記簿の閲覧でございますとか、あるいは印鑑証明その他の登記上の証明書の交付、そういう登記簿に記載しない事件を乙号事件と申しておるわけでございます。一般的には、甲号事件のほうが手数がかかるわけでございます。申請書を受け付けまして、関係の登記簿を出しまして、登記簿と対照して申請書の内容が整っているかどうか、添附書類が整っているかどうか、調査の段階でございます。それから登記簿に記入をするということになるわけであります。この甲号事件につきまして一番時間がかかりますのは、調査の仕事でございます。これは、書くのは、調査が済みまして登記簿に記載するわけでございます。記載事項が非常に長いと時間がかかりますけれども、甲号事件の事務処理の中で一番頭を使い、手数を要しますのは、やはり調査の仕事なのでございます。それから乙号事件は、これは最近では事務機械をだいぶ入れまして、大きい登記所においてはこれはだいぶ手間が省けるようになりましたけれども、まだ末端の小さい登記所におきましてはそういう機械が配賦されておりません関係で、登記所に謄本の申請が出ますと、一々筆写して写さなければならぬ。そのために非常に時間がかかるということにもなるわけでございます。ですから、登記所によりましては、乙号事件に非常に時間を食われるところが実はあるわけでございます。
○稲葉誠一君 商業登記の場合は、申請という制度をとっているわけでしょう。申請というのと届出というのは違うのですか。
○政府委員(平賀健太君) 登記のほうでは、申請か、あるいは官庁の嘱託か、この二種類でございます。届出のほうは、これは戸籍のほうでは申請と言わずに届出という言葉を使っております。
○稲葉誠一君 どう違うのですか。
○政府委員(平賀健太君) まあ実質は似たり寄ったりのことでございますが、申請は、これは登記を請求する、そういう趣旨があろうかと思います。それから戸籍事務の届出は、報告でございます。いわば報告なのであって、そのことに基づいて戸籍の記載をする。戸籍に記載をすることの請求という趣旨ではない。まあこれは沿革的なところからそういうふうになっておるんだろうと思いますが、現行法では、戸籍のほうは届出という言葉を使っております。登記のほうは申請という言葉を使っておるわけでございます。
○稲葉誠一君 申請だからというので、そこで登記官吏としてはいろいろ内容を調べる権限があるというので、いわば実質的審査権に近い権限がそこにあるんだという考えが出てくるわけではないんですか。
○政府委員(平賀健太君) そういうようなことはございません。戸籍のほうにおきましても、届出がありまして、届出書の内容が不適当である、あるいは添附の書類がついてないという場合には、これはやはり不受理という処分をいたすわけでございます。その点は、届出と申請がそういう違いから登記のほうは実質審査権が多少加わってくるというようなことはございません。
○稲葉誠一君 だから、事務が非常に煩雑になってきておくれるわけです。それは、申請書を出して、それから原本に内容を調べて転記するわけでしょう。そうでなくて、届出書を作って、その届出書をそのまま原本として認めるという形をとれば、事務量というものは非常に少なくなってくるんじゃないですか。人数も少なくなり、仕事も減ってくるんじゃないですか。こういう点についていろいろ改善策が考えられているんじゃないでしょうか。
○政府委員(平賀健太君) ただいまの御意見、非常にごもっともでございまして、ヨーロッパあるいはアメリカの制度なんかでは、提出がありました登記の申請書をそのままファイルいたしまして、それが登記簿になるという例をとっているところがございます。ただ、その制度は、登記所のほうとしてはこれは非常に楽でございますが、登記簿を閲覧しまして、現在の権利関係がどうなっているか、つまり、会社に例をとってみますと、会社の現在の組織がどうなっているかということが一覧して非常に見にくい点が実はあるわけでございます。日本の現在の制度でございますと、申請書をそのままファイルするのではなくて、登記簿に記載するということで、一目で現在の組織機構がよくわかるという利点があるわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、今回の商業登記法案が可決していただきました暁におきましては、商業登記規則、法務省令をやはり改正しなければなりませんので、省令の段階におきましては、ただいま仰せのような点も考慮に入れまして、ファイル・システムと申しますか、これも取り入れる可能性のあるものはできる限り取り入れるように工夫をいたしまして、もっと合理化したいというふうに実は考えておるのでございます。
○稲葉誠一君 登記官というのが条文の中にありますね。第四条に登記官というのがありますね。これはどういう人で、全国で何人ぐらいいるのですか。
○政府委員(平賀健太君) 登記官というのは、現行の制度で、この商業登記法案にも出ておりますが、第四条でございますが、法務局、地方法務局またはその支局、出張所に勤務しておる法務事務官の中から法務局長、地方法務局長が登記官として指定をするということになっております。この登記官として指定を受けておる者が現在何人おるか、これは正確な数を把握しておりませんが、大体、法務局でございますと、登記課長というのがおります。登記課長がこれは登記官に当然指定されております。そのほかに二人、三人あるいは四人、若干名が法務局においては登記官に指定されております。それからそのほかの支局におきましては、大体、支局長とそのほかに一名、大きいところになりますと二名というふうになりますが、そういう者が登記官に指定されております。それから出張所におきましては、小さい出張所では、大体、出張所長一人が登記官に指定されておる、大出張所になりますと、そのほかに若干名が登記官の指定をされておる、こういう状況で、これは随時変更もございますし、登記官の数字は現在正確に把握いたしておりません。ただ、登記官以外にも、登記官に指定をされない法務事務官で登記事務に従事しておる補助者がいるわけでございまして、その数字を申し上げますと、現在のところ大体七千三百人くらい、これは不動産も含めてでございますが、不動産登記、商業登記、法人登記、全部含めますと約七千三百名ぐらいの者が登記事務に従事いたしております。
○稲葉誠一君 登記官というのはよくわかったのですが、登記官補助者というのが扱う仕事ですが、その仕事、登記事務をやれるという根拠はどこにあるのですか。
○政府委員(平賀健太君) 登記事務の処理者は、これはあくまで登記官でございまして、登記官に指定されていないその他の者は補助者でございます。実際はしかし事件の受付をしたり、調査をしたり、あるいは記入をしたりする仕事を分担いたしておりますが、でき上がりました登記簿を最後に調べまして、登記の記載を調べまして間違いがないかどらかということを確認いたすわけでございます。まあ私どもこれは校合と申しておりますが、登記官が最後に校合いたしまして登記官の認印を押すということで、個々の事務の過程におきましては補助者がやる部分が少なくないわけでございますが、責任はあくまで登記官が持つという建前なのでございます。
○稲葉誠一君 今の中で一つ問題があるのですが、それは、登記官にしろ登記官の補助者が非常に数が少ない。そのために民間人を使っておりますね。あれはどういうわけですか。
○政府委員(平賀健太君) 民間人を使っておるところが実は遺憾ながら少なくないのでございますが、大体、民間人と申しましても、司法書士あるいは土地家屋調査士の方々の援助を受けておるわけでございます。そういう方方にお願いいたしておりますのは、登記簿の謄本の作成でございます。謄本を作成します場合に、どうしても法務局の職員だけでは手が足りません関係で、やむなくお手伝いをお願いしておるという次第でございます。
○稲葉誠一君 それは、全国的にどの程度の人数が手伝っているのですか。まあ今わからなければ、あとでもいいのですが。
○政府委員(平賀健太君) これは、延べにいたしまして相当の数になるわけでございます。それから謄本の作成以外に、土地改良の登記であるとか区画整理の登記であるとか、いわゆる特殊登記の事件がありますと、大量に事件が出てくるわけでございまして、そういう場合には、土地改良区あるいは土地区画整理組合の職員の方々にも手伝いをしていただく。そういう者も含めますと、これは相当の膨大な数に実はなるわけでございます。
○稲葉誠一君 その土地改良とか特殊な場合は別としまして、一般の登記の謄抄本を作る場合ですね、こういうふうなときに、司法書士だとかその他のところの人に援助を願っているのですが、これは司法書士なんかが直接やっているわけじゃないでしょう。司法書士のところに勤めている事務員がやっているのでしょう。それはあとでまた聞きますがね。具体的にそういう人たちがやっていることに対して、国としては何か報償費か何か知らぬけれども、補助しているとかなんとか、金銭的な謝礼みたいなことをしているのですか、どうなんですか。
○政府委員(平賀健太君) 実は、それは全然やっていないのでございます。こういう状態をできるだけ早く解消したいというので、先ほどもちょっと申し上げましたが、事務機械、最近はいい複写機がたくさんできておりますので、複写機を登記所に配賦いたしまして、それで作るように、以前は全部筆写して非常に時間をかけてやっておったのでございますが、筆写をやめて最近の新しい複写機を使って、これで登記所自体で謄本を作って申請人に交付するようにということで努力いたしておるわけでございます。ただ、一つ非常に支障になりますのは、複写機を使います場合に、登記用紙が本来のいい紙で作った登記用紙ばかりであればいいのでございますが、戦後非常に粗悪な用紙でもって登記簿を作った時代がございます。その粗悪な用紙による登記簿がかなりの量にあるわけでございます。これはどうしても複写機にかからないわけでございます。これはもういきおい筆写によらざるを得ない。そうなりますと、登記所の職員が一々書いておったのでは非常に時間がかかる。また、申請人のほうも早く謄本をくれという希望もございまして、司法書士の事務員に手伝ってもらって書いておるというのがまあ現状でございます。
○稲葉誠一君 司法書士の事務員にどの程度手伝ってもらっているのか、延べの人員とか、これらのものはあとで明らかにしてもらいたいと思うのですが、そこで問題になってくるのは、謄抄本の交付を申請する人たちが二重の費用がかかっている場合が出てくるのですよ。その点は民事局でおわかりですか。
○政府委員(平賀健太君) 仰せのように正規の登記手数料令に定めてございます手数料を納める以外に、司法書士に対して若干の報酬を申請人は払っておるわけでございます。どのくらいのものを払っておるかということをちょっと私のほうでも知りたいと思って調査したことがあるのでございますが、正確なところはどうも把握できておりません。しかし、非常に不当に高額なものであるということはないように私ども思っております。
○稲葉誠一君 まあ不当に高額でないかもしれませんが、本来なら法務局へ手数料を払えばいいわけです。それが、法務局の人数が足らないからといって、法務局のほうで司法書士の事務員が何か頼んで謄本、抄本を作らしているわけでしょう。だから、依頼者はよけいに司法書士のほうへも金を払っているわけですね。こんなことはおかしいですね。筋が違うわけです。これは早急になくするように法務省当局として努力してもらいたいと、こう思うのです。
○政府委員(平賀健太君) ただいまの仰せのとおりでございます。私どもとしましても、これは非常に遺憾な事態なのでございまして、あらゆる点、あらゆる面においてこういう状態を一日も早く解消させるために努力をしなくてはならぬと考えておる次第でございます。
○稲葉誠一君 それから、さっきちょっと話が出ました登録税のことですがね。株式会社や何かで設立のときの登録税は、資本金によって違うわけですか。
○政府委員(平賀健太君) 仰せのとおりでございます。
○稲葉誠一君 どういうふうになっていますか。
○政府委員(平賀健太君) 資本の額の千分の七というふうになっております。
○稲葉誠一君 ところが、取締役の変更登記、これは非常に多いと先刻言われたわけですが、その場合には、資本金の額によらないで登録税がきまっているのですか、額が。
○政府委員(平賀健太君) これは変更登記ということになりますから、一件について千二百円ということになっております。
○稲葉誠一君 そこがまたおかしいのじゃないですか。設立の場合は資本金の額によって取っているわけですから、資本金の多いものはそれだけ登録税を払うのだけれども、変更になってくると、十億の会社も二十億の会社も、百万の会社も、全部千二百円ですか。それは改善して、大きな会社からはもっと変更の場合でもスライディングか何かしてたくさん取るような形に改めるのを考えたことはないのですか。これはアメリカやヨーロッパなんかではどうなっているのですか。
○政府委員(平賀健太君) 現行の登録税法の建前といたしましては、設立のときにその資本の額によって差別をつけておりますので、その後の変更登記におきましては、この登記をされることによって会社の受ける利益、それからまた変更登記をするのに要する手数というようなものを勘案しまして、資本の額によってそう差別を設くべきではないだろうという見地だと思うのですが、一律にこれを千二百円ということにしておるわけであります。 なお、商業登記におきましては、不動産登記と違いまして、登記事項に変更が生じますと、登記の義務を課することになっております。罰則が強制されておる義務がございます。そういう関係がございまして、変更登記による場合は、資本の額のいかんによって差別をするのは適当でないという考え方だろうと思うのでございます。
○稲葉誠一君 それなら、設立のときだって差別をするのはおかしいじゃないですか。
○政府委員(平賀健太君) 設立の場合でございますと、これは、設立の登記をすることによって会社が成立する。登記されることによって会社というものが法人格になって、法人として存在することになるわけでございますので、設立の登記と、設立登記をなされた後の変更登記とは、質的に違いがあると言っていいのじゃないかと思います。
○稲葉誠一君 じゃ、その点の、取締役の変更登記とが一般の変更登記の場合に、ヨーロッパやアメリカとか、そういうようなところで登録税がどういうふうになっているかということを、これは後ほど調べてくれませんか。私も非常に疑問に思っておるところなんです。 それから、増資なんかはどうなっておりますか。
○政府委員(平賀健太君) 増資の場合は、これはやはり増加資本の金額の千分の七、設立の場合と同じことになっております。 それから、ヨーロッパやアメリカにおきましては、日本と同じようなところもあるかと思いますが、国によりましては、こういう登録税という形ではなしに、毎年、ライセンスと申しますか、特許料と申しますか、それを取っておるところもあるようでございます。アメリカの州におきましては、そういうところがあるようでございます。日本の登録税法はちょっと建前が違いまして、会社が法人格を承認された承認料と申しますか、特許料と申しますか、これを毎年払っておる、もしこれを納めませんと登録を抹消される、そういう国もあるようでございます。
○稲葉誠一君 ちょっともとへ戻って質問が超きたのですが、そうすると、会社の設立の場合に登録税を納めるという理論的な根拠はどこにあるのでしょうか。
○政府委員(平賀健太君) 設立登記をすることによって会社が成立をする、その会社がそれによって利益を受ける、その関係で、対価というわけでもありませんが、そういう国家の登録行為によって、会社というものが成立するということで登録税を取るという思想だろうと思うのであります。不動産でございますと、登記をすることによってその物権の変動が対抗力を持つ。国家の登録行為によってその物権の変動が法律的な保証を与えられる、それに対する対償という意味で不動産につきましても登録税が取られるのと同じ思想であろうと思うのでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、あれですか、法人の設立ということは、国の効力の付与によってはじめて設立ができるという考え方に立っているのですか。そうじゃなくて、法人設立という事実について国が承認をするだけだという考え方じゃないんですか。どういうふうに考えておられますか。アメリカ流の考え方で特許料を取るとかいう形になれば、国が効力を付与するという考え方が出てくるかと思いますがね。
○政府委員(平賀健太君) 法律的に申しますと、ただいま仰せのとおりでございまして、国が付与するというよりも、登記をすることによって会社が法人格を持つ、成立する、いわゆる準拠法主義と申しますか、これは公益法人なんかは国の設立の許可によって成立するわけでございますが、その点は、ただいま仰せのように、実は国が法人格を付与するということじゃなしに、登記という公法上の行為が行なわれることによってそれで会社の法人格というものが発生するという考え方でございます。
○稲葉誠一君 ここは学会じゃないんですから、どうでもいいようなもんですけれども、どうも登録税を取る法律的な根拠のもう一歩奥の理論的根拠というものが何だかはっきりしないような印象を与えるのですよね。これはやっぱりアメリカやなんかの法制等とも関連をしてよく研究しておいていただきたいと、こういうふうに思います。 それからもう一つ問題があるんですが、今、法務局の統合が非常に行なわれていますね。どういう根拠に従って行なわれているのですか。
○政府委員(平賀健太君) ただいま仰せのように、昭和三十三年ごろから以降今日まで登記所の統合ということを実は行なっておるのでございますが、まずその法律上の根拠を申し上げますと、この法律案で申し上げますと、二条の事務委任の規定でございます。それから現行の非訟事件手続法にも同趣旨の規定がございます。それから不動産登記法にもやはり同趣旨の規定がございまして、法律的にはそれに基づいてやっておるのでございますが、統合いたします実質的な根拠と申しますか、その理由と申しますのは、要するに、現在の登記所というのは、明治年間から大正の初年にかけましてできましたのがほとんど全部なのでございます。その当時から見ますと、交通事情も非常によくなっておりまして、多少登記所が遠くなりましてもそう地元の方には不便をかけないという事情が一方にございます。他方、いわゆる登記所、法務局の出張所と称するものが昭和三十三年の当初におきましては約千八百ございまして、非常に多数の庁が全国に分散しているわけでございます。その千八百のうちの四百カ所ぐらいが職員がたった一人の登記所という状況でございまして、これをもう少し集約しなければ登記事務の近代化と申しますか合理化というものがはかられないということで、ちょうど地方行政におきましても広域行政というようなことがいわれまして町村合併が盛んに行なわれてきたのでございます。それと同じ精神で登記所の統合ということを三十三年ごろから行なっておる次第でございます。
○稲葉誠一君 その統合で、各法務局でいわゆる統合の案を作っているわけでしょう。まるで統合のコンクールみたいに、うんと統合したほうの法務局が成績がいいような形で一種のコンクールみたいな形が行なわれて、自分のところの法務局はこれだけ統合したのだということを民事局のほうへ報告して、自分のところの地方法務局の成績が上がったような形で一種のコンクールみたいなものが行なわれているのじゃないですか。
○政府委員(平賀健太君) 統合につきましては、私どものほうで全般的な方針を示しましてやっておりますが、具体的にどこの出張所を統合するかということは、現地で計画を立てるわけでございます。しかし、これは、地元の交通事情、それから管轄区域その他いろいろな事情を考慮しまして、漸進的に無理をしないように、地元のできる限り了解を得た上でやるということを指示してやらしております。そういう仰せのようなコンクール的なことにならないように厳に実は戒めてやっているわけでございます。たくさん統合したからそこの法務局が成績が優秀であるというようなことは、決してそういうことにならぬように十分注意をしてやっているつもりでございます。
○稲葉誠一君 今の統合の問題については、私もいろいろ聞いているわけです。これは、きょうでなくて、別に機会があったら質問したいと思います、具体的な例をあげて。 もう一つお伺いしたいのは、本店とか支店の所在地が行政区画が変更になりますね、このごろよく町村合併に伴って。そういう場合は、一体やはり変更登記申請をしているのですか。
○政府委員(平賀健太君) 変更登記を申請させております。
○稲葉誠一君 それはおかしいというより、むしろ職権で登記したほうがいいのではないですか。行政区画の変更があれば、当然それは変更になるべき筋合いのもので、むしろ職権でやるのが親切なやり方じゃないですか。申請をしてやればまた登録税を取られているのでしょう。そこはどうしているのですか。
○政府委員(平賀健太君) ただいま私が申し上げたのは正確でなかったのでございますが、いろいろ行政区画の変更、たとえば、町村合併の結果幾つかの村が集まって町になる、幾つかの町が集まって市になるというようなそういう行政区画の変更がありました場合は、この法律案でも第二十六条で出ておりますが、「その変更による登記があったものとみなす。」ということで、申請の必要はないということになっております。ただ、申請の必要がありますのは地番の変更でございます。たとえば、本店の所在場所の地番変更、あるいは代表取締役の住所の地番が変わったというような場合には、登記所のほうでこれは職権で把握することが非常に困難でございます。これは申請に待つよりほかないということで、これは申請によってやってもらう建前になっているわけでございます。
○稲葉誠一君 それから、商号ですね。商号は同一市町村ではもちろん同じものは使えないわけですけれども、それが合併なんかになった場合はどうしているのですか。町村合併なんかになった場合は。
○政府委員(平賀健太君) 合併は、御承知のとおり二種類ございまして、二つの会社が合併して新しい第三会社を設立して合併するということ、いわゆる新設合併……
○稲葉誠一君 いや、その場合じゃない。町村合併。
○政府委員(平賀健太君) 町村合併の場合でございますと、それは、合併の結果同一市町村内に類似商号が二つ以上登録されるという事態がございます。これはちょっとやむを得ない。一たん登記された商号が、町村合併という外部の事情によりまして、同一市町村内に同一あるいは類似した商号が登録されるという結果になるわけでございまして、これはもう登記の消しようがないわけでございまして、それはそのまま置いておくよりほかないということになるわけでございます。
○稲葉誠一君 それは、第二十七条との関係はどうなんですか。
○政府委員(平賀健太君) この二十七条は、新たに商号の登記をする場合の規定でございまして、一たん登記されたものがどうなるかという点は、これは百九条、百十条に抹消の規定があるわけでございますが、この登記の抹消の事由というものをこういうふうに百九条の一項で限定しております関係で、類似商号があってもこれは職権で抹消するということはしないという建前でございますので、町村合併の結果類似商号が登記された形になりましても、それはもう抹消できないということになるわけでございます。
○稲葉誠一君 きょうは商業登記法案に直接関連することを聞いたのですが、登記所に勤める人の待遇の問題ですね、非常に仕事が多いのに待遇が不十分で、いろいろな問題があるのですが、これは今私のほうで研究していますから、それに基づいていずれ日を改めて質問をします。きょうはこの法案についてはこれだけです。
○委員長(鳥畠徳次郎君) それでは、他に御発言もないようですから、一応この程度にとどめておきます。 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。 —————————————
○委員長(鳥畠徳次郎君) 次に、検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。 稲葉君から発言を求められておりますので、これを許します。
○稲葉誠一君 在日外国人の渡航に関する件という形でお聞きするわけです。それで、今日現在日本にいろいろな外国人がたくさんいるわけですが、それはいろいろな分類の仕方があると思うのですけれども、どういう形に大ざっぱに分類したらいいのでしょうかね。たとえば、外国人登録をしている外国人と登録していない外国人、こういう分け方もありますね。これはどういうふうになっていますか。
○説明員(富田正典君) 外国人の管理上、入国管理局のほうで区別しておりますやり方は、在留資格による区別というのがございます。これは、わが国に入って参ります外国人につきましては、一応こういう在留資格を持った者でなければならない、その目的に応じまして在留資格を与えまして、その在留資格に従った活動なり行動なりをしていただく。また、在留資格というものにそれぞれの在留期間というものがございまして、それによって在留を規制する。これが、今稲葉先生がお尋ねになった趣旨から申しますと、外国人の在留の区別と申しますか、そういうものに該当するのではないかと思います。登録している外国人と登録していない外国人と、これはいろいろな見方によって区別はございますけれども、在留管理上の区別は、ただいま申し上げました在留資格による区別、その詳細は、出入国管理令の第四条に(在留資格)というものがございまして、一から十六までの種類に分けております。
○稲葉誠一君 そうすると、日本にいる外国人で、いわゆる平和条約発効以前では日本人だったけれども、平和条約発効によって外国人となった人、これは一体どういう名前で呼んでいるのですか。
○説明員(富田正典君) これは、昭和二十七年法律百二十六号によりまして、ただいま申し上げました出入国管理令第四条に掲げる一から十六までの在留資格を持つことなく当分の間在留できると、きめておりまして、いわゆる一から十六の在留資格を持たないで本邦に在留することができる。俗称これを一二六(イチニイロク)と呼んでおります。
○稲葉誠一君 その一二六というのは、法律の番号でそう俗称しているのでしょうけれども、そうすると、今の法律百二十六号によるところの人たちというのは、現在どのくらいいるわけですか。そして、その内訳はどういうふうになっておりますか。
○説明員(富田正典君) 詳細な数字はただいま記憶しておりませんが、現在わが国に在留する外国人が約六十万ございますが、その大体九割は、いわゆる戦前から引き続き在留する者、またはそれから生まれた子供というものに当たると思います。正確な数字はいずれまた調べてお答えいたします。
○稲葉誠一君 その九割のうちでまた分けると、どういうふうになるのですか。大ざっぱでいいですよ。朝鮮人だとか中国人だとかいろいろあると思いますが。
○説明員(富田正典君) いわゆる朝鮮半島出身の方々と、それから台湾出身の方々と、こういうものに分かれます。それとまた、戦前から引き続き住んでいた者とその子というような種類にも分かれると思います。
○稲葉誠一君 これらの人は百二十六号で規制されているでしょうけれども、外国人であることは間違いないわけですね。
○説明員(富田正典君) 外国人でございます。
○稲葉誠一君 そうすると、それらの人が外国へ出る場合には、旅券法の適用はあるんですか。
○説明員(富田正典君) 旅券法は外務省の所管になりますが、私の承知しております限りでは、旅券法は日本人の出国に関する場合の旅券の出し方なりいろんなことをきめておるのでございまして、旅券法の規制を受けるということには外国人はならないと思います。ただ、入管令上、日本に在留する外国人が出国する場合、または日本に入国してくる場合、この場合の入国要件なりあるいは出国手続なりに旅券を必要とする規定がいろいろございます。その意味で外国人旅券というものが入管令上登場して参りますが、わが国の旅券法とは直接関係はないと思います。
○稲葉誠一君 今の入管の次長のお答えなんですけれども、外務省もそういう考え方でよろしいですか。きょうは旅券課長は来ていないのですか。
○説明員(前田利一君) 本日旅券課長は参っておりませんので、私、北東アジア課長で、直接の所管でございませんが、ただいま入管の富田次長からの御説明にありましたとおり、旅券法は日本人に対する旅券の発給に関する法律でございまして、外国人である在日朝鮮人、在日台湾人には適用がないものと考えております。
○稲葉誠一君 今まで韓国から日本へ来た韓国人ですね、これはどのくらいいるのでしょうか。
○説明員(富田正典君) その合計数につきましては、ただいま手元に資料を持ち合わせておりませんが、昭和三十年以降韓国から——韓国と申しますか、朝鮮から日本に、これは統計上朝鮮ということが表示いたしておりますから、朝鮮と申しますが、朝鮮から日本に入国した朝鮮人の入国者の数は、昭和三十一年が七百七十六名、昭和三十二年が二千百二十二名、三十三年が二千三百二十一名、三十四年が千八百二十七名、三十五年が四千四百五十二名、三十六年が六千五百五十名となっております。
○稲葉誠一君 私が聞いたのは、韓国から来た韓国人について聞いたのですが、今聞くと朝鮮から来た人だと言いかえられたのですが、これはどういうわけですか。
○説明員(富田正典君) 法務省のほうで総計年報を出しておりますが、その表示では朝鮮となっておりまして、内部で北または南の区別はしておりません。ただ、実際問題といたしましては、北のほうからの入国は、先般の世界スピード選手権大会のとき以外は認めておりませんから、実際上は韓国からということになると思います。
○稲葉誠一君 法務大臣にお尋ねするのですが、日本は韓国を承認しているのですね。承認しているならば、韓国と表示したらいいじゃないですか。
○国務大臣(中垣國男君) 御承知のとおり、韓国を事実上の承認をしているということは御指摘のとおりであります。ただ、日本にいる朝鮮人というものを一つの土台にして考えますと、それが韓国人であるか、あるいは韓国人にあらざる朝鮮人であるかという非常に困難な問題等がありますから、一応こういう入管関係で従来の資料を出しますときには、すべて朝鮮人ということで取り扱っていることは、ただいま入管次長が申し上げたとおりであります。
○稲葉誠一君 それはこの前私は予算委員会でも問題にしたのですが、日本は韓国を、法務省では、事実上承認したという言葉を使っている。池田さん、大平さんにしろそうは言っておりません。日本は韓国を承認しているとはっきり言っております。これは大臣、聞いているでしょう。違うんじゃないでしょうか。
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。稲葉さんが予算委員会で大平外務大臣との一問一答、それから総理大臣との一問一答のとき、私もそこの席におりまして拝聴をしておったわけでありますが、そのときに、総理並びに外務大臣は、韓国を承認しておるということを確かに言われたと思います。私どもが事実上承認しておると言いますのは、まあ国交正常化のために日韓交渉が今行なわれて、途次にあることは、これは御承知のとおりでありまして、そういう前における韓国の扱いというものは、御承知のとおり日本に韓国の代表部もあることでもありますし、それからずっと今までのいきさつ等から見ましても、事実上承認をしたことにしての取り扱いをしておるということから、法務省としましては従来終始一貫事実上の承認をしておるという表現で答弁をしてきたことも稲葉さんの御承知のとおりだと思います。
○稲葉誠一君 まあ議論を蒸し返してもあれですし、きょうはそのことが本筋じゃありませんから、別の機会にゆっくりあれしますが、そうすると、法務大臣の考えておる国交正常化というのはどういうことなんですか。
○国務大臣(中垣國男君) 御承知のとおりに、私はごく常識的にお答えするわけでありますが、国交正常化というのは、大公使の交換を行なうというようなこと、それからその他のたとえば条約等がそれぞれの国によりましてこれが承認されていくと、そういうような他の独立国と日本が行なっておるようなそういう承認の仕方と申しますか、そういうことができたときにほんとうに私は正常化されてきたと、こういうふうに考えております。
○稲葉誠一君 今韓国からこれだけの人が来て、三十六年が六千五百五十人——三十七年はまだ統計はないのですか。
○説明員(富田正典君) ただいまの統計は三十七年の十二月にできておりますが、まだ整理中でございます。
○稲葉誠一君 そうすると、これだけの人が入ってくるときに韓国の国籍証明書を持ってくるんじゃないですか。
○説明員(富田正典君) 韓国の旅券を持って参ります。 それから、ただいま申し上げました数字の中には、本邦に在留するいわゆる韓国人が再入国の許可を得て行ってまた戻ってくる者の数も入っております。
○稲葉誠一君 韓国の旅券を持ってくるというんだから、あれでしょう、韓国人だから韓国の旅券を持っておるわけなんでしょう。
○説明員(富田正典君) そうでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、結局、韓国の国籍のある人であることを認めて日本では入国を許可しておるわけでしょう。
○説明員(富田正典君) 国籍問題になりますと、法律的にいろいろ微妙な問題がございまして、その点についてもはっきり韓国の国籍を持って入ってくるというふうに申し上げてよろしいのかどうか、ちょっとその点ははっきりいたしかねます。
○稲葉誠一君 だって、日本の旅券法だって、日本人に対してだけ日本の旅券法が適用があると言ったでしょう。だからそれを確かめたのですよ。韓国の旅券を持って入ってき、それを日本の政府が認めているということは、韓国の国籍を持っているということを認めているということになるでしょう。それ以外にないでしょう。論議は平凡な論議ですよ。
○説明員(富田正典君) 日本に在留している朝鮮半島出身の方の国籍については、先ほど申し上げましたようなまだはっきりしておらない状態にございますが、韓国から韓国の旅券を持って入ってくる者は韓国籍というふうに一応認めて取り扱っておるわけでございます。
○稲葉誠一君 それなら、統計の中で韓国の旅券を持ってきた者と北朝鮮の国の旅券を持ってきた者とちゃんと分けて統計を出したほうがはっきりするのじゃないですか。どうですか。
○説明員(富田正典君) 統計上の数字は朝鮮から入国してきた者という統計で出ておりますので、ただいま申し上げたような説明をいたしたわけでございますが、朝鮮から入国してきた者の数字の中には、日本に在留しておるまだ現在国籍問題についていろいろ検討中の者も含まれておりますので、これを区別いたしましても、区別することが困難ではないかと思われます。
○稲葉誠一君 そうすると、在日朝鮮人の中で、韓国へ行ったり、韓国からまた日本へ来た者、これはこの中にどの程度含まれているのですか。
○説明員(富田正典君) いわゆる再入国の許可を受けて入ってきた者の数を申し上げますと、三十一年が三百五十一名、三十二年が千四百十四名、三十三年が千二百四名、三十四年が千二百八十六名、三十五年が三千百十八名、三十六年が四千百五十六名と、こうなっております。
○稲葉誠一君 日本は韓国と事実上承認しているというふうに法務省としては考えているというのですけれども、それはいつからです。いつから事実上承認と考えているのですか。今次長が答えた人数と関連するのでお尋ねするわけです。
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。 韓国と日本の間にはすでに十年以上にわたりまして日韓会談が実施されておるわけであります。そうして特に駐日代表部も存在しておりますし、そういうことを考えますと、やはり韓国と日韓会談に入ったそのころが一つの韓国を事実上承認したという時期になろうと思います。——これはちょっとただいまのやつは少し訂正をさせていただきますが、法律的には御承知のとおりに講和条約の発効だろうと思うのです。それから事実上の日本が承認関係に入ったというのは、やはり日韓会談に入った十数年前から事実上の承認の扱いをするようになっている、こういうことであろうと思います。
○稲葉誠一君 これは法務省としてやっぱり統一解釈をしっかりしておかないと、あとで問題になるのじゃないですか。駐日代表部ができたというのは、平和条約発効前ですよ。日韓会談も平和条約発効前でしょう。平和条約によって韓国は日本から独立したわけですから、その以前に韓国を事実上承認しているというのはおかしいです。その辺のところは、はっきり統一解釈を法務省はとっていかないと、あとで問題になりますよ。どうですか、今のお答えは。統一解釈というものを私ははっきりさしておいたほうがいいのじゃないかと、こう思うのですよ。
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。これが政府の統一的な見解ということにはならぬかもしれませんが、法務省といたしましては講和会議成立後ということになるだろうと思います。
○稲葉誠一君 その問題はきょうの問題じゃありませんから、これ以上あれしませんけれども、成立後ですか、成立したときですか。いろいろ議論が出てくるのじゃないですか。政府の解釈というものは非常にまちまちで統一しておらないですよ。法務省は事実上承認した文書を出していますから、それならいつから事実上承認したのかということをはっきりしておかないと、あとで問題になるのじゃないでしょうか。きょうは別ですが、僕は法務省に好意的に聞き過ぎているので、帰ってあとでおこられるのじゃないかと思うのですが……。 話は別ですが、そこで、韓国から日本へこれだけの人が来ている。再入国もある。日本にいる在日朝鮮人、これが韓国へこれだけ行っている人がいるわけですけれども、そうじゃなくて、朝鮮の民主主義人民共和国ですか、あそこに自分の郷里だからということで帰るということは、これはどうなっているのですか。
○説明員(富田正典君) 再入国は、現在のところ一名も認めておりません。ただ、御承知のように、出国につきましては北鮮帰還によりまして相当数の者が帰国しております。出国しております。
○稲葉誠一君 じゃ、日本にいる台湾人が台湾へ帰ってまた日本へ再入国する、これははどうなっているのですか。
○説明員(富田正典君) 台湾へ行ってまた戻ってきたいという場合の再入国許可の数もございます。
○稲葉誠一君 日本にいる中国人ですね、中華人民共和国の人、これが中国へいろいろな関係で行ってまたこっちへ帰ってくる、こういうこともあるのですか。
○説明員(富田正典君) 国交のない国への再入国につきましては、これはその国へ行ってまた戻ってくるということを事前に保証する制度でございますので、きわめて例外的な場合に限ってのみ認めるという方法で処理しております。したがいまして、きわめて数は少数でございますが、中華人民共和国への再入国も、少ない数ではございますが許可しております。
○稲葉誠一君 中華人民共和国への再入国を認めておるその根拠はどこにあるのですか。
○説明員(富田正典君) これはきわめて微妙な問題——微妙な問題と申しますか、法律上微妙な問題がからむわけでございます。と申しますのは、中華人民共和国の再入国には——その前に一般的な手続を申し上げますと、一般には旅券を呈示して再入国の許可を申請するということが要件になっております。そして、中華人民共和国と国交関係がございませんので、その旅券を正式に認めるというわけには現在のところ参りませんので、いわゆる旅券を呈示して再入国の許可をもらうというこの入管令の建前からいきますと、これは入管令にそのまま載ってはこないのでございますが、病気で重態である父母を見舞いたいというふうなきわめて特殊な人道的な場合に限って、法令には載っておりませんけれども、特殊な便法を講じて少数ながら認めておる、こういう状態でございます。
○稲葉誠一君 私は、国交は回復していなくとも、当然中国へのそうした者はどんどんもっと人道的な問題の場合などは認めるべきだという考え方に立っているわけです。そこで、中国へ一たん行ってこちらへ再入国する場合の手続、これは具体的にどういうふうにやっていますか。
○説明員(富田正典君) ただいま申し上げましたように、旅券というものはございませんので、日本赤十字社で特殊な証明書を発行いたしまして、それを旅券にかわるものと認めて許可しておるということになっております。
○稲葉誠一君 その人数はどのくらいですか。きわめて少数だと言われるけれども、これはきわめて少数という言葉の解釈によりますけれども、どの程度でしょうか。
○説明員(富田正典君) 昭和三十年四月以降昨年の十二月までの間に三百十名でございます。
○稲葉誠一君 これはいわゆる日赤の社長が身元引受人になるのじゃないですか。そして入管や何かへ書類を出すのですか。そういう形をとっておるのですか。
○説明員(富田正典君) ただいま稲葉先生がおっしゃったような形で出ております。結局、旅券というものはその国が保証するということになりますから、それがございませんので、日赤がかわって保証するという形で証明書が出ているわけでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、それは人道的な問題の場合に限って認めると、こういうことですか。
○説明員(富田正典君) さようでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、日本にいる在日朝鮮人が、自分の祖国の北朝鮮へ人道的ないろいろな問題、たとえば、父親が病気だ、母親が病気だ、あるいは子供が病気だ、その他いろいろな問題があるでしょう、そのときに帰りたいといったときに、今までどうして認めないのでしょうか。あるいは認めていたのですか。そこはどういうふうになっているのですか。大臣はその点はおわかりでしょうか。大臣、その辺のところはまだわかりませんか。
○説明員(富田正典君) 中華人民共和国への再入国許可を発行して往来を認める場合には、ただいま申し上げましたように、人道的な場合に限るということが一つの要件でございますが、そのほかに、やはりそれを認めることによって惹起するところのいろいろの内政、外交上の諸問題という点も考慮に入れまして許可しておるわけでございます。したがいまして、現在、北朝鮮との関係につきましては、日本といたしましても、日本が置かれておる国際的地位と申しますか、また、前の入管局長が国会で答弁されたと思いますが、わが国と近接する地域における一つの特殊の事態、こういうものから高度の政治上の要請というものによって往来を差し控えておる状況にある、こういうふうに申しておりますが、そういうような点から北朝鮮との間には再入国を認めるということは現在の段階においてはまだ適当ではない、こういうふうな判断のもとに認めておりません。
○稲葉誠一君 今、入管の次長が答えられたのですが、それは入管の次長が答えるのはちょっと筋が違うというか、気の毒だと思うのですね。これは大臣が当然答えるべきだと思うのですがね。今入管の次長が言われたのも、いろいろ考えに考え抜いて言っているような印象を与えるわけですね。気持はわかりますが、しかし、おかしいのじゃないでしょうかね。いろいろ人道上の問題で帰りたいということ、またこっちへ来たいということを認めているのですね。中国に対しては、これだけの人を。朝鮮の場合だって同じことじゃないですか。日赤の社長なら社長が身元引受人になって保証すれば、当然認めていいのじゃないでしょうか。なぜそれが今、日本じゃ認めてないのですか。そんなことが閣議できまったのですか。
○国務大臣(中垣國男君) これは、率直に申し上げますと、朝鮮半島の場合は、日本は韓国政府を正統政府と認めて日韓交渉に入っておるわけであります。北鮮人民共和国とは国交というものがまだ全然認められていないわけでありますから、朝鮮半島では、われわれが承認をしてそういう日韓交渉に入っておるという韓国政府に対する対立政権のような形の今日状態に置かれておると思うのです。そういう国に日本から再入国を保証して帰すということが、一体再入国の保証ということが責任をもって行なわれるかどうかという問題が一つあると思います。それで、おそらくそういう再入国を事前に保証するというようなことは、やはり外交上その他の問題を惹起するおそれがあるのではないかというようなことで、北鮮に対しましては、そういう政治的な考慮から、再入国づきの北鮮の旅行というものは許可しないという方針を今まで持ってきておる、これが実情であると思います。
○稲葉誠一君 日本は台湾政府を認めているわけで、中華人民共和国を認めてないわけでしょう。この二つは、やはり同じように対立しているのじゃないのですか。片方のところへそういう形で認めていて、そして同じような問題を朝鮮に認めないというのは、どうもよくわかりませんね。それは日韓会談と関係があるのですか。関係があるとすれば、どういうふうな関係があるのですか。
○国務大臣(中垣國男君) 中国の問題は、これも率直に申し上げますと、やはり台湾に置かれている中華民国政府並びに大陸の北京にある北京政府は対立政権ということになるのでしょうけれども、台湾に置かれておる中華民国政府とは、すでに国交の正常化というものは、もう交渉の段階ではなくて、確実に双方において親善関係が行なわれておる。したがって、そういう特殊な人道上の場合に再入国の許可をいたしまして中国に旅券を出しましても、外交上その他の問題は何ら起きる心配はない。しかし、北鮮の臨時政府の場合と韓国政府の場合におきましては、韓国とは目下諸種の問題につきまして交渉中でありますから、そういう外交交渉をしておる途次におきましてそういうような問題が具体的にどういうことになるかというお尋ねでありますと、実は私も非常にこれは困るのでありますけれども、そういうおそれがあるということであります。問題を引き起こすおそれがある、そういう懸念がありますので、しばらく北鮮関係のものは旅券を制限していこう、こういう考えに立っておるわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、今の大臣のお話を聞くと、台湾とは国交が正常化しているから、だから中国のほうへ日本にいる中国人というものを帰して再入国させても問題は起きない、こういう論理で発展していけば、かりに日韓会談が妥結して、日本と韓国との間に国交が正常化すれば、日本にいる朝鮮人を朝鮮へ一たん帰してまた再入国を認めても何ら問題は起きない、こういうことになるのじゃないですか。
○国務大臣(中垣國男君) そのときの日本と朝鮮半島との客観情勢等によりまして、北鮮行きの旅券を出しましても、何らの問題が惹起されるおそれがないということであれば、これは私は許可してもいいと思うのです。ただし、今のところは、非常に具体的にこれを言うことは差し控えたいのでありますけれども、外交上の問題ばかりでなく、私は治安上の問題にもからんでくるのじゃないかと思うのでありますが、そういうようなことで、諸種の困難な問題を引き起こす、そういうことが予想される今日におきましては、やはり北鮮に対する旅券というものを、政府がそういう高度な政治的な判断によりまして制限をしていくということは、これは御了承をいただきたいと私は思います。
○稲葉誠一君 そうすると、何かその再入国が責任をもって行なわれるかどうかというふうな今答弁がありましたね。責任をもって行なわれるかという意味は、どういう意味でしょうか。ちょっとわかりませんね。
○国務大臣(中垣國男君) そういう北鮮のような状態にある国へ旅行をして、帰ってくるときの入国を事前に許可するということは、入国の保証ということになるのでありますが、はたしてそれが完全に実行できるかどうかという問題について不安があるということは、これは当然のことだろうと思います。現在の情勢におきましては、そういう予想を私どもがするということはこれは当然のこととしてそういう措置をとるわけであります。
○稲葉誠一君 そうすると、結局、今帰されない。親が病気だとか、あるいは死にそうだとか、あるいは子供が病気だとか、こういうようなことがあっても、日本にいる朝鮮人は自分の国へ日本の政府は帰さない。結論ですね、それは。しかし、そういう以前の人道的な問題じゃないのでしょうか。自分の国へ一体帰るということを日本が拒否するということが、一体単なる政治的な理由でそんなことが外国人に対してできるのでしょうか。おかしいのじゃないですか。人道上の問題は、それ以前の問題じゃないでしょうか。
○国務大臣(中垣國男君) 非常に微妙な問題だと思うのですけれども、日本から出国する場合は、これはもうほんとうに認められておるわけです。ところが、再入国する場合に、今のところ、今のような日本と北鮮とのこういう状態のときに、再入国を保証して帰すということがそれが何ら不安なく再入国の許可が出せるかどうかということになりますと、これはやはり私は若干の不安を持つということがほんとうだろうと思うのです。 それから、ただいまのあとのほうのお尋ねでありますが、人道上の問題ということは法律以前の問題じゃないかというお尋ねでありますが、私もそのことは同感です。ですから、そういう外交上も治安上にもあまり問題になるようなことがないというようなことが明らかになって、しかも、再入国についての保証が何らかの形で確認ができるということであれば、再入国つきの朝鮮人の日本からの出国ということを私はやはり認めていいと思います。ただいまのところは、日韓交渉という、いわゆる対立政権を持っておる韓国政府が日韓交渉日本と韓国との間にそういう外交交渉が今行なわれておるのでありますから、そういうときに、そういうこと自体までが困難になるような問題を惹起したのでは日本政府としてはたいへん困るのでありまして、そういうあらゆる予想される困難な状態が発生するようなことは、この際政府としては差し控えていくべきだ、こういう考え方に立ちますと、北鮮に対しまして再入国保証つきの出国許可を出すということは、やはり慎重にやらざるを得ない、こういうことでございます。
○稲葉誠一君 いろいろな事態が予想されるというのですけれども、具体的にどんな事態が予想されるのでしょうか。私らは何も別に予想されないのですが、何が予想されるのでしょうか。ひとつ一、二、三というような形で説明してくれませんか。大臣の問題ですよ、これは。ただそう言われてもわからないですよ。いろいろな事態といっても、こっちはいろいろな事態がわかっていないから、説明してもらわないとさっぱりわからない。
○国務大臣(中垣國男君) 先ほどからお答えしておりますように、たいへん微妙な問題があるので、ここでそういうことを言うのは差し控えたいのでありますけれども、まあそういう外国に影響のない問題といたしましても、国内のことは私は治安の問題からもそういうことが考えられると思うのです。それは稲葉さんはそういうおそれはないと言われますけれども、そういうおそれがあるという考え方もできるわけでありまして、それらの問題がすべて一定の期間を経まして解決するようなときになれば、あなたのおっしゃったような人道上の問題としてのそういう措置は当然私はとっていくべきだというように考えております。
○稲葉誠一君 おそれがあるとかないとか断定をするよりももう一つ前の段階でしょうね、どういう点が考えられておるのかということを聞かないと、おそれがあるのかないのか、何のおそれなのかわけがわからない。朝鮮人の再入国を認めることによってどういう問題が現実に起きてくるのでしょうか。日韓会談がうまくいかなくなるのですか。そういうことはあるのですか。例をあげて聞きましょうか。では、韓国を不当に刺激して、日韓会談が妥結しなくなってくるということが考えられるのでしょうか。
○国務大臣(中垣國男君) これはたびたび申し上げておるのでありますが、在日朝鮮人というものの法的な地位というものはまだ明確にはなっていないという一つの問題があると私は思います。講和会議以前に日本におりました朝鮮人は、当時日本人としての処遇を受けておったのでありまして、講和会議発効と同時に外国人になった。ところが、今日の朝鮮半島の情勢を見ますと、これは朝鮮人という名称で呼んでおりますけれども、韓国籍の韓国人であるという人もありますし、北鮮の国民であるという主張をしている在日朝鮮人もいるわけです。それから統一朝鮮人だという主張をしている人もありまして、それは現段階におきまして日本が一方的にそれらの在日朝鮮人の国籍をば決定をするという立場や権能がないわけでありますから、こういう不安定な状況にある特殊な外国人である。そういうものを今一般の外国人同様に再入国の保証をして出国の許可をするということが適当であるかどうか、そういう点から考えてみましても、この際はやはり差し控えていったほうがいいということに私はなると思います。日韓交渉が北鮮に対する事前に再入国の許可証をつけた出国を許すことによって何らか影響があるかというお尋ねであるかと思うのでありますが、そのことが直ちに悪影響があるとかなんとかいう問題ではないでしょうけれども、一応日韓交渉を進めていく上に、そういう在日朝鮮人の法的地位等の問題をめぐりまして必ずしも日韓間の意見はまだ一致していないわけでありますから、そういうときに日本がこれをどうも明らかにしたような態度をとっていくということは、私はやはり日韓交渉にも何らかの影響をもたらすであろう、こういうふうに考えているものであります。
○稲葉誠一君 中国へ一たん行って再入国したのが三百十名いるわけでしょう、日赤の社長の身元引き受けで。これは、行って帰ってきて、そうして日本に対してその後何か悪い影響でも与えているのですか。
○国務大臣(中垣國男君) 中国に再入国を事前に保証を与えて出国を許可した者で外交上、治安上の何らかの悪影響を日本に与えたというようなことは聞いておりません。また、再入国しました後におきましても、それらの人々が日本の国家や国民に害を与えたというようなことは聞いておりません。
○稲葉誠一君 だから、日赤の社長の引き受けによっていろいろ身元の調査なんかするのだと思いますが、きわめて限られたというか、ほんとうに父親とか母親が病気だとかいうことに限定しているわけでしょう。それと同じことで、それが日本に帰ってきても別に害がないというようなことであれば、朝鮮へ同じような事情の人を帰したところで、日赤なら日赤の社長が身元引き受けをする限度において帰したところで、別に日本にあれはないのじゃないですか。それでは日本にいる朝鮮人というのはまるで一種の監禁状態ということになってくるのじゃないですか。現実問題として、渡航の自由も何もなくなっているのじゃないですか。少し筋が違うのじゃないですか。国際的に国際法上の一つの大きな問題になってくるのじゃないですか。ちょっと日本は文明国らしくない行き方をしているのじゃないですか。
○国務大臣(中垣國男君) 先ほど申し上げましたように、在日朝鮮人がそういう法的な地位というものは非常に不安定な形のままで置かれていると申し上げたのでありますが、さような問題がございまして、御承知のとおりに、在留許可というものが一年ごとに与えられているという、そういう特殊な存在をしているわけであります。この在日朝鮮人に対しまして、先ほど申し上げましたように、韓国政府の主張というもの、日本政府の考え方というものは、必ずしも意見が一致していなかったということも、前の委員会等でも、外務委員会等でも明らかにされているようでありますが、そういう問題等がありますので、中共政府と中華民国政府と申しますか台湾政府と申しますか、あのような関係よりも、同じ韓国政府と北鮮政府との対立というものはもっとけわしいものがあると思います。したがって、日本がこのような問題の措置をば誤るということになりますと、やはりいろんな問題がそこに新しく惹起するという不安が事実あるわけであります。そういう不安がないというお考えもあるでしょうけれども、政府といたしましてはそういう心配を持っておるわけであります。ですから、一般論といたしまして、稲葉さんがおっしゃるように、人道上の問題であるから再入国を条件とした出国を許可してもいいじゃないかという、ほんとうに一日も早くそういうような関係に入ることが望ましいのでありますけれども、ただいま政府は日韓交渉の途中でありまして、そういうこともいろいろ何回も御答弁申し上げましたが、法的な不利益になるとかそういうことでないような、非常にできるだけ公平な立場に立ってこれらの問題についての決着をつけていかなければなりませんので、あまりこの結論、結果が出る前にこういう問題でいろいろと困難な問題を引き超こすということは得策ではないと思います。そういう点で御理解いただきたいと思います。
○稲葉誠一君 じゃ、結論的にお聞きするわけですが、日本の政府の政治的な要求が人道的な要求よりも優先をするのだ、これが一つの結論。もう一つの結論は、今朝鮮に一たん行ってこっちへ帰ってくる再入国を認めることは現在行なっている日韓会談の妥結に悪い影響を及ぼすということがあるからこれを認めないのだということが第二。これはまあ第一と関連するかもわかりませんが、第二。第三は、はっきりいたしませんけれども、そういうことを認めることによって日本の治安上の問題が起きる可能性があるのだ、これが第三。こういうふうに承ってよろしいでしょうか。
○国務大臣(中垣國男君) 非常にこれは微妙な問題でございまして、私は、重大な問題を惹起するからと言われましたが、そういうおそれがあるということを先ほどから申し上げております。そういう心配がある。その点がちょっと違うのでありまして、それから人道上の問題よりも日本の国の政治的目的のほうが重要なんだということでありますが、この問題に関しましては、確かに私はそうだと思います。これは永久にそうだというわけじゃないのでございまして、今の日本が置かれておる情勢から見ますと、ただいまのところは政治的な判断に基づいて北鮮への出国は再入国を保証するという仕方はただいまのところは差し控えたほうがいい、こういうことであります。それから国内の治安に対してもそうでありますが、決定的に治安問題がどうのこうのというんではないのでありますが、そういう心配が予想されるということでありまして、いずれもあなたの言われた決定的な結論に基づくものでなくて、そういうことが予想される、そういうおそれがあるということにおきまして、慎重にやっていくべきだ、こういう建前に立っているのであります。
○稲葉誠一君 今のお話で、特に治安上の問題云々という点がありましたね。これは法務省としての見解ですか、内閣全体としての見解と承ってよろしいでしょうか。具体的にどういうことでしょうか。治安上の問題があるとか今言ったじゃないですか。何でしょうか。ちょっとわからなかったんですが、微妙だ微妙だと盛んに言われるので、何かこっちも催眠術にかかったように微妙な気持に巻き込まれてはいけないと思うんですけれども、別に微妙でもなんでもないんですが、そこはどうなんでしょうか。
○国務大臣(中垣國男君) せっかく稲葉さんのお尋ねですけれども、そういう治安上どういう心配があるかということを言われますと、そういうことが具体的にどうのこうのというわけじゃないものですから、それについては私は差し控えさせていただきたいんです、申し述べることを。治安上のどういう点が心配されるかというようなそういうお尋ねだと思うのでありますが、それはこういうことが心配されると言うことが私は実は益がないと思うんです。そのことはむしろ在日朝鮮人に対しましては私はいい影響を与えないと思いますので、やはり国会のこういう委員会の席で答弁することではないと、こういうふうに考えております。
○稲葉誠一君 そうすると、在日朝鮮人が、朝鮮へ帰りっぱなし——今帰国をやっていますね。帰りっぱなしならば別にどうこうという影響はないんだと、こういうことですか。今大臣言われたようないろいろな影響とか、いろいろ言いましたね。帰国しっぱなしならば問題はないんだ、こういうことに承ってよろしいですか。
○国務大臣(中垣國男君) 北鮮に対する出国の問題は、御承知のとおりでありまして、国際赤十字の監視のもとに日本の赤十字社と北鮮の赤十字社が相互にこれを話し合いで進めておるわけであります。で、単に北鮮に出国させて、帰りっぱなしならばいいじゃないかと。それは何にも問題がないということではないわけであります。問題はあるのでありますけれども、これは人道上の見地に立ちまして、自分の国へ帰りたいというそういうことを国際赤十字並びに日本赤十字、北鮮の赤十字との話し合いによりまして、一応日本政府はそれに同意をしておるという形でこれは行なわれておるわけであります。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。
○稲葉誠一君 今大臣が答弁されたのを聞いておりますと、非常におかしいと思うのは、では自分の祖国である朝鮮へ帰る、帰国ですよ、再入国じゃないんですよ、帰国自身にも問題があると言われましたね。これはまたおかしいじゃないですか。どうして問題があるんです。そういうことを言われるとなると、僕はもっと聞かざるを得なくなってくるんですよ。ずいぶん遠慮して聞いておるんですけれども、そうなってくると問題ですね。何が問題なんでしょうか、帰国が。
○国務大臣(中垣國男君) このことも稲葉さんよく御承知だと思いますが……
○稲葉誠一君 いや、知らない。
○国務大臣(中垣國男君) そんなことはない、知っておられる。その当時、北鮮送還が始まる直前におきまして韓国政府が非常にこれを反対したということも御承知のとおりであります。私は、その問題というのは、問題があるとかないとか、具体的にどういう問題というのでなくて、やはりそういう意味の問題はあるのだということを申し上げたのであります。ところが、今の日本の建前としまして、国際赤十字のそういうあっせんの労を政府は同意しておるのでありますから、今北鮮へ帰りたいということにつきまして、日本政府自体がどうのこうのと言って反対するとか、そういうことはないわけです。先ほど何か問題があるかと言われましたので、それは返すことならいいじゃないか、返すことには問題がなかろうと言われましたので、返すことにもそういうような問題があるのだということをお答え申し上げたのです。
○稲葉誠一君 それは問題があるというのじゃなくて、問題があったということならば私もそれは了解いたしますけれども、今でもなおかつ問題があるような話ではちょっと違うのじゃないか、こう思います。 それから、念を押すという形になるのですが、じゃ、日本赤十字なり国際赤十字が仲へ立って自分の責任のもとにおいて引き受けるという範囲であれば、日本の政府も北鮮へ帰って再入国ということを認めてもよろしい、こういうことも考えられてくるわけですか、将来の問題として。
○国務大臣(中垣國男君) これは、将来の問題といたしまして、その問題については非常に重要だと思いますので、慎重に検討いたして参りたいと思います。
○稲葉誠一君 国際赤十字は、近い将来、人道上の問題として、人道上の問題に限定してこれは認めるべきだという動きがどうも高まってくる可能性があるのですよ。これはどうも法務省全体の空気というか日本政府全体の空気は少し考え方が私はおかしいと思いますが、私としてはもっとこの問題について突っ込んでいろいろまた別の機会にお尋ねしたいと思いますし、これは日本の中の一つの大きな世論として盛り上がってきます。ですから、法務省当局としても十分考えて、世界から笑い者というと語弊ですけれども、ならないように、ひとつ私は配慮願いたいと、こう思うのです。 私のこの点に関する質問はこの程度にいたします。
○岩間正男君 ちょっと関連……。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 簡単に願います。
○岩間正男君 法務大臣に聞いておいてもらいたいと思うのですが、今までの質疑応答を聞いていますと、日韓会談というものはいかに悪いものだということを証拠立てているのです。全く人道上の権利まで奪って、朝鮮民主主義人民共和国の連中が国内にはさっき稲葉さんの言葉でいうと監禁されている、そういうことく、そういう前提のもとでなければ行なわれない。そうでしょう。そういう立場に日本が立つのですから、日本の外交というやつは国際的に通用しないような、そういうことをまざまざと今語っているのです。これは私はこういう態度について了承することはできないので、だからこそ朝鮮民主主義人民共和国の在日朝鮮人は反対している日韓会談——日韓会談そのものがどんなにゆがんだものであり、そうして筋の通らないものであり、人道的なそういう要求さえも抑圧しなければやれないものか。そうして、現実的な政治的な顧慮とか、韓国に対する何というか全く気づかいばかりやって、日本の立場というものが乱れていくために、通らない、国際的にとてもこれは相手にされない、こういう立場に立っているような形は取るべきじゃない。ことに法務省というものはもっと筋を通した立場に私は立つべきじゃないかと思うので、法務大臣ももう少し先ほどの答弁、どうも私は了承することはできません。こういう考えを持っていますが、答えられなくてもよいのですが、その点私は今までの一時間以上にわたる質疑応答を聞いていて、結論としてはそういうことがはっきり出てくる。どうですか。
○国務大臣(中垣國男君) どうもこれは少し誤解をしておられると思うのですが、そうじゃなくて、原則としては国交のない国に対するそういう再入国許可というものを認めていないというこの原則の上に立って先ほど来申し上げておるのです。稲葉さんのおっしゃった人道上の問題ということは、なるほど御指摘のとおりだと思いますので、それについて、それでさえなぜやらないかということについて私は非常に苦しい立場に立ってお答えを申し上げたのでありますが、そういう国交のない国への往復というものは当然国の自由裁量行為でありますから、そのワクの中でいろいろ困難な問題があるということをお答えをした、そういうことでありまして、今のあなたの言われたような、そういう監禁状態においてどうこう、そういうような意図は全然政府は持っておりません。
○委員長(鳥畠徳次郎君) それでは、ここらで暫時休憩いたします。 午後二時に再開いたします。 午後零時五十六分休憩 —————・————— 午後二時十九分開会
○委員長(鳥畠徳次郎君) それでは、委員会を再開いたします。 休憩前に引き続き調査を続行いたします。関連質問がございましたら…。
○岩間正男君 旅券の問題で、十月十一日から六日間東京オリンピック会場でプレ・オリンピックをやる。それで各国の外国選手、役員を招待しているのですが、これに対して、ルーマニア、東独、チェコ、メキシコなどから自費で参加を希望している。この問題で、外務省が許可に難色があるということが最近報道されているのでありますが、この問題について、入管としては、今までどういうふうにタッチしておられるか、お聞きしたいと思います。
○説明員(富田正典君) まだ正式に入国の申請が出ておらないわけでございまして、きょう、こちらに参ります前に、外務省の情報文化局にもその点をいろいろ連絡いたしてみましたところ、正式に出てから態度を決定するという段階で、まだ断わるとか断わらないとかいうことを表明したことはないというふうな状況でございます。
○岩間正男君 これは、まだ外務省の関係が見えていないのですけれども、入管としては、オリンピックには東独の参加を認める方針をはっきり返事しておられますか、どうですか。
○説明員(富田正典君) 政府内部でまだ正式に方針を決定したという段階にはございませんが、先般の二月に軽井沢で行なわれた世界スピード・スケート選手権大会のときも東独の入国を認めておりますし、オリンピック大会という国際的な一つのスポーツ大会としての趣旨にかんがみますれば、当然、その前の世界スピード・スケート選手権大会の事例にならうことになるかと存じます。
○岩間正男君 そうすると、今のお話では、世界選手権とオリンピックの場合は認める方針だと、こういうふうに了承していいと思うのですが、これを認めるという趣旨はどうなんですか。国交未回復の国にもこの参加を認めるという理由は、どういうところにあるのですか。
○説明員(富田正典君) オリンピック委員会に正式に加盟しておる各国の委員会、これから参加希望を表明いたしました場合に、世界選手権大会の場合でも、またオリンピック大会の場合でも、これを認めなければ大会の成立にも支障があるという趣旨の憲章がございます。そういう見地から、本来、国交のない国との間の往来というものについては非常に消極的な立場をとっているわけでございますが、これを認めるということになろうかと存じます。
○岩間正男君 この中心には、文化とかスポーツの問題と政治の問題は混同させたくない、あくまでもスポーツの発展、それから文化の興隆、そういうことを原則的に打ち立てたい、そういう考え方があるんだと、こう了承してよろしゅうございますか。
○説明員(富田正典君) 根本にはそういう精神があると存じますが、スポーツであるからといってこれは入れなければならないということには必ずしも参らない。やはりスポーツでありましても、それが一つの大きな国際的な行事、しかも、その行事に政治的な問題を抜きにして各国を参加をさせるという趣旨のもとに、一つの規約なり憲章なりができ上がっている。そういうものを総合いたしまして入国の許否を判断し決定して参るということになるわけでございます。
○岩間正男君 オリンピックの憲章からいえば、これは政治とスポーツを混同さしたくない、あくまでもスポーツの発展のためには平等にやりたい、こういう精神ですね。その精神を日本政府は受れ入れて、それでその方針に従う、こういうふうに解釈していいわけですか。
○説明員(富田正典君) しかも、その趣旨を徹底させまするために憲章にそのことがうたわれているということがあわせて判断の重要なキー・ポイントになって参ると思います。
○岩間正男君 そうすると、オリンピック参加を認めて、しかも、それと深い関係のあるいわば前哨戦とも言うべき、それから来年のオリンピックを真に効果あらしめるためには、日本の風土とか食事とかそういう条件になれるということはだれでも考えることですね。そのために、プレ・オリンピックは、今年の十月、しかも来年の開催期と同じような季節を選んで行なわれる。そうすると、オリンピック参加は認める方針であって、そして、それと深い関係のあるプレ・オリンピックに参加を認めないというのは、これは非常におかしいと思うんですが、そこに矛盾があると思うんですが、これはどういうことでしょうか。
○説明員(富田正典君) プレ・オリンピックは、オリンピックという名前がついておりますが、これはオリンピックに備えての強化練習にすぎない。そうして、諸外国の選手を招聘するかどうかということは、それぞれの競技団体が決定するということになっていると伺っております。したがいまして、国際的に従来オリンピックの例を見ましても、プレ・オリンピックの際に、すべてオリンピックの際に入国を認めると同様な状態においてと申しますか、と同じような規模で入国を認めているという事例はないようでございます。結局、それぞれの競技団体自身が決定して、それから政府に対していろいろ交渉なり申請なりをするという段階で、現在はその以前の段階かと了承しております。
○岩間正男君 そうしますと、これは日本のオリンピック組織委員会の問題ということになるわけですか、これを認めるか認めないかということは。ただ、オリンピックは、先ほどから言われましたように、これは公平の原則に立たなければならないと思うんです。そうして、これに対して参加を希望して、しかも自費参加を希望した。とにかく、条件の熟さないことには、これはほんとうに成果を上げることができないのは、今までの国際競技の場合、いつでもそういう問題が起こっているわけです。したがって、これになれよう、そのために参加を特に要望してきている。これは東独のオリンピック委員会のヘルムント・ベレント総務主事から体協の選手強化対策本部あてに、選手強化のためにぜひ参加させたい、また、東京の風土、食事などを研究するためにチーム・ドクター数人を送りたい、こういう趣旨のもとに、はっきりとオリンピックに対するそういう備えをやりたい、こういうことで申し込んできているわけですね。したがって、当然、これはオリンピック参加を認めるという方針であったら、そのような希望に対しては、これは認めるという方針を同時にとるべきだというふうに考えるわけですけれども、これは、ここにオリンピック委員会の責任者がきょう見えていないわけで、これはまああとになると思んですが、オリンピック委員会がこの問題を決定をすれば、入管のほうでは結局何の異存もない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
○説明員(富田正典君) オリンピック委員会がかりにきめましても、その段階でまたあらためて考慮するということになるかと思いますが、これはもち岩間先生もきょうの朝日新聞でお読みかと思いますが、やはり「日本の選手強化の一環として対外試合の経験を積ませる」ということに重点があるというふうに聞くわけであります。したがって、招待選手というものも「世界の五位以内の実力のもの」を選ぶというような、いろいろな各競技団体の自主的な判断に基づいて、さらにオリンピック組織委員会のほうに働きかけがあって、それからの問題だと思いますので、現段階においてどうするこうするということは、ややちょっとお答えいたしかねるのじゃないかと思います。オリンピック委員会がオリンピックそのものについていろいろきめますことについては、これは政府としても尊重しなければならないかと思いますが、その他の事項については、かりにオリンピック委員会がいろいろ要望なり希望なり申し出てきたといたしましても、本来のオリンピック大会と同様にはこちらはそれを考えていくことは必ずしもできないのではないかと考えております。
○岩間正男君 どうもそこがなかなか納得のいかないおかしいところだと思うのですがね。オリンピックを認めておって、それでそれを強化するために事前の大会を持つ。それに参加希望しておる。そうすれば、オリンピック参加を認めているという精神からいえば、そのような要求を受け入れる。そしてやはり公平の立場に立つこれはスポーツの当然の精神だと思うので、その点から、ことに今度はオリンピック組織委員会がそれを認めた場合ですね、これに対してさらに、何ですか、条件が加わるというのですか。それを選択する、入管なり外務省にそういうことをやる余裕があると、こういうふうな御答弁ですか。その点、はっきりしないのです。
○説明員(富田正典君) 最初にも申し上げましたとおり、国交のない国からの入国というものについては、これは特に例外的な場合に限って許可するというふうに処置しております。したがって、スポーツの場合におきましても、その日本で開催される世界選手権大会なりオリンピック大会なりというものが入国を拒否することによって開催が実際上不可能になる、それがひいては一つのオリンピックというものなり世界選手権大会というものなり認めたスポーツに政治を入れてはいけないという趣旨から出た憲章にもひっかかってくる、そういう許さなければならない例外的な場合に限ってのみ許可していくという建前をとっておるわけでございます。したがいまして、オリンピックそのものでないものについては、その点は許すか許さないかという条件はこちらが最後まで持っておるということに相なるわけでございます。
○岩間正男君 これはオリンピックそのものでないというのですが、オリンピックと深い関係があるのですね。オリンピックと関係ないというふうにこれは断定することはできない。しかも、のっぴきならない深い関係がある。そういう中で、態勢の強化をはかっているわけでしょう。それに対して、そうすると、オリンピックそのものじゃないから選択権はこちらにあるのだ、こういうことになるのですか。
○説明員(富田正典君) 一般論としてはそう相なるわけでございますが、このプレ・オリンピックの問題につきましては、先ほど申し上げましたように、まだ競技団体のいわゆる自主性の段階に現在ございますので、この問題についてどういう態度をとるとかとったとかということは、今のところはまだ言えない段階と申しますか、そういう段階に立ち入っておらないわけでございます。
○岩間正男君 このニュースの伝えるところによると、「外務省、許可に難色」というのですが、外務省に一つのこれは隘路があるように思うのですが、その考え方について旅券課長はどういうふうに考えます。
○説明員(矢野泰男君) 基本的な考え方は、今富田入管局次長から御説明のありましたとおり、国交のない国については原則として人が入らない、例外的にいろいろな理由からより高次の見地から入国を認めるというのが建前でございます。その場合に、オリンピックなんかの場合は、先刻富田次長からの御説明のあったとおりでございますが、現実のこのプレ・オリンピックに関しましては、まだそういう話があるという程度のことでございまして、私のほうとしましても、正式に招待団体のほうから話が持ち込まれて申請という段階になりませんと、この問題に対する態度は決定し得ないと思うのでございます。
○岩間正男君 ここに、五月七日の報知新聞によると、「外務省、許可に難色」とあるが、これは外務省の態度でないと、こう解釈してよろしいですか。
○説明員(矢野泰男君) まだ最終的に決定しておりません。そういう申請がありませんので、いろいろ話は出ておるようでございますけれども、そういう態度は決定しておりません。
○岩間正男君 そうすると、これは瀬踏みの段階で、何ですか、予備交渉か何かそういう中で外務省の意思が表明されたということですか、どうです。
○説明員(矢野泰男君) まだ正式にこういう話が表明されたということを私聞いておりません。
○岩間正男君 じゃ、表明された場合には、やはり「許可に難色」というような、これに対して難色を示すというような意向ですか。どうですか。
○説明員(矢野泰男君) これは、旅券課といたしましては、やはり外交の問題、あるいは入国管理局のほうの治安の問題いろいろな検討の条件がございますから、まだそういったことを十分相談する段階にも至っておりませんが、私ども事務をやっておりますほうといたしましては、今いずれとも申し上げかねるところでございます。
○岩間正男君 アジアオリンピック大会の場合ですね、日本の態度としては、政治とスポーツを混同させるべきじゃない。そこで、インドネシアがイスラエルその他の選手の入国を拒否したことに対して、そういうことは非常に論議になったはずですが、これと今度のやり方というのはどうも一貫しないのですが、非常に矛盾した感じを受けるのですが、どうなんですか。
○説明員(矢野泰男君) この問題に関しては、私の旅券査証発給の事務当局の立場としては、非常に高度の外交あるいは治安上の問題にまでの発言の資格がないと思いますが、やはりスポーツといいましてもなかなか限界がございまして、必ずしも純粋のスポーツとのみ言い切れないのが現在世界の実情であるのじゃないかという私個人的に感じを持っております。それで、それが現実にスポーツの考え方で徹しましても、ほかの国でまたそういうふうにとらない国も現実に存在するような実情でございまして、問題はしかく簡単には処理できないのじゃないかと、こういうような印象を持っております。
○岩間正男君 まあ課長さんをここで相手にして押し問答をやってもしようがないのですけれども、純粋でないスポーツというのはそれは何ですか。あなた自身の個人見解というのは非常に私は問題だと思う。純粋でないスポーツというのはどういうことなんですか。どんなスポーツです。そうすると、オリンピックそのものに対しては、これは許可するという方針をとっているということは非常におかしいことだ。純粋でないスポーツというものの内容はどういうものです。
○説明員(富田正典君) 矢野課長の答弁の中に出てきた言葉でございますが、この問題についてわれわれ考えておりますことを申し上げますと、スポーツそのものはまことに純粋であると思うのでありますが、その純粋なスポーツをいろいろ政治的に利用いたしましたり、あるいは純粋なスポーツというつもりでやっておりましても、それにまたいろいろ政治的な問題をからめているというような、たとえば先般のインドネシアの大会における問題にしましても、純粋なスポーツ大会であるにかかわらず、これがやはり政治的な目で見て処理したためにああいう問題が起こった。だから、世界じゅうすべてスポーツというものを純粋にスポーツのみで割り切ってしまうことが非常に困難だという趣旨のことをわれわれ常に考えておりますし、その趣旨のことを矢野課長も言ったかと思います。
○岩間正男君 非常にどうもおかしいと思うんですよ。首尾一貫しないじゃないですか。政治的なものを排除するといって、しかも断わることによって逆に政治的なのはこっちのほうじゃないんですか。逆にそういうことが今の御答弁から指摘されると思う。今のような考え方のほうがむしろ政治的になっているんじゃないですか。おかしいと思う。
○説明員(富田正典君) スポーツというものをそういう目で私が見ているという問題よりも、あるいは入国管理局が見ているという問題よりも、そういう目でまだ見られているところが残っている。たとえば二国間のスポーツでございましても、その勝敗というものを非常に問題にいたしまして、そこで血の雨が降るというような事態も欧州あたりのいろんなサッカーとかラグビーの試合でもあるように聞いておりますし、そういった問題、純粋にフェア・プレイで勝敗のみを争うのでなくて参加することに意義があるんだというふうに割り切ればよろしいのでございますが、これを利用したり、あるいは色めがねで見るというような傾向がまだ残っておるということを申し上げたわけでございます。
○岩間正男君 一、二のそういう何といいますか偶発的な問題を取り上げて、そうしてオリンピックのそういうものにからませるのは、私はオリンピックを開催する国としては望ましくないんじゃないかと思うんです。大体、これは参加する方針をもうほとんど決定している。そういう国として、またさらにそれを色めがねで見て、逆に政治的な色彩をこっちからつけるという感じが非常にするんですが、ドイツは、御承知のように、近代スポーツの祖国といわれている国ですね。そして西独が来るのに東ドイツの入国を認めない、こういうことになると、今度のオリンピックそのものが政治的な一つのそういうワクの中で行なわれるという感じが非常に強いんじゃないですかな。私は、日本がほんとうに政治とスポーツの問題を混同させない、そういう方向ではっきりした態度を堅持するというなら、もっとフリーな立場で、公平な立場でこの問題に処するということが非常に望ましいと思うんですが、どうも今の旅券課長さんのお話、それから今の説明の中で非常に矛盾があると思うんです。この点は、日本の政府の態度としては、私は当事者がはっきり割り切る必要があると思う。そういう点、どうですか。
○説明員(矢野泰男君) 私、先刻御説明申し上げましたのは、ちょっと言葉足らずでございまして、純粋なスポーツで割り切ろうと思いましても、なかなか現実にはスポーツを見る目がスポーツの範囲でとどまらないで、たとえば先刻入国管理局次長のお話もありましたように、応援団が血の雨を降らすというような現象も考えられないわけでもございませんでして、なかなかそういったことで広い面から考えざるを得ない場合が現実に存在するんだというところをわれわれは軽々しく見のがせないような実情でございます。
○岩間正男君 どうも関係者が——大切な重要なそういういわば一つのセクションなんですが、そういう人たちが、どうも先入観があるような気がするんですね。ほんとうにこのオリンピックにまだ国交未回復の国まで参加させるというそういう精神をむしろ推進するんじゃなくて、一つの障害をむしろ作っているような感じを今の答弁から受けるのですが、これはここであなたと議論をしてみてもしょうがないですけれども、こういう点を払拭しなければ、ほんとうに公平なそうしてオリンピックの精神にかなった方向に運営することはできない。そういう危惧さえも持たれる危険がありますよ。私は、十分この点は考える必要があると思います。それじゃ好きな仲間だけ集まってのオリンピック強化態勢だ、そういうふうにとられてもしょうがない。それじゃオリンピック強化態勢をやるところの精神に合わないじゃないですか。オリンピック強化態勢をとると同時に、事前にその国に行って風土や食事いろいろな条件になれる、そういうことはだれでも考えますよ。日本でもそうですよ。それについて垣根を設けて、何か今言ったような実際はこっちで垣根を設けて締め出す。そういうことをやり出す理由として政治的な色彩があるといってこっちから逆に政治的な垣根を設けている。このように私は今の応答の中から感じられるわけですが、これはまずいのじゃないかと思います。これは十分検討をすべきだと思います。オリンピックの責任者が来ておりませんので、また、外務省としてもこの方針はまだ決定されてないということですから、十分にこれは関係者はこの点について反省する必要があるのではないかと思います。 今までどうですか、東独から日本に来朝した選手というのは、どういう例がございますか。
○説明員(富田正典君) ただいま詳細に入ってきた年次並びに人数というものは記憶しておりませんが、レスリング世界選手権大会、スケートの世界選手権大会等で入ってきておる事例がございます。
○岩間正男君 これは全部世界選手権大会の場合ですか。
○説明員(富田正典君) 世界選手権大会でございます。
○岩間正男君 こういう前例があるし、プレ・オリンピックそのものはオリンピックに準ずるような重要なやはり会合になります。しかも、今言ったようなスポーツの公平の点から考えても、やはり門戸を開放すべきじゃないか。そういう方針でいかなければ、日本にオリンピックを開催して、ほんとうにオリンピックの精神で来年のオリンピックを応援するというそういう方針にも合致しないように考えられる。この点も十分検討する必要があると思います。この点については、またそのような書類とか手続上の問題が解決していないというのですから、十分今後検討していかなければいかぬと思います。
○説明員(富田正典君) 問題が具体化して参りましてから慎重に検討したいと思います。
○岩間正男君 もう一点お聞きしますが、鑒真和尚の大法会がことし千二百年祭ですか、奈良で行なわれて、日本仏教会が招いた国で中国仏教代表団がやってきたわけです。しかし、これはヴィザの発給がおくれて、四月二十八日に香港に来ていたが、実際はその日の朝十時から開かれた法会には間に合わなかった。その後入国したようでありますけれども、どうですか、どうせ入れるならもっとちゃんと間に合うように入れてあげるのがほんとうだと思うのですが、これはどういういきさつだったのですか。
○説明員(富田正典君) 鑒真和尚千二百年祭の際に参加するための中国から四名の方の入国の申請と申しますか、事前に瀬踏みに参られたのが四月の中旬でございまして、その際に、こういう書類を作って出して下さいということを申し上げておいたわけでございます。その段階におきましてはまだ四人の方の氏名がはっきりしておらなかった。四月の二十六日にようやく参加される方の名簿が提出になった。その間のいわゆる招請者側の事情はわかりませんが、今岩間先生のお話では、二十八日にもう香港に来ておった。その後五月の四日になりまして、香港のほうに来て入国の申請がされているから至急してほしいということで、五月の四日に、申請が出たら至急渡航証明書を発行していただきたいという電報連絡を五月の四日にした、こういうことでございまして、まあその間に例のゴールデンウイークが入っていた関係もございましょうが、具体的の氏名の提出がおくれたということ、それからその招請団体のほうから入国申請に必要な書類の現地への発送がおくれていたというようなこと、いろいろな事情が重なり合っておくれた次第でございまして、確かに入れるものならもっと早くなきゃならないということは当然でございますが、申請者側と当方といろいろその間に込み合った事情がございましておくれたということに相なるかと思います。
○委員長(鳥畠徳次郎君) ちょっと速記とめて。 〔速記中止〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記つけて。
○岩間正男君 四月の二十八日に香港に来ていて待ってたけれども、なかなかヴィザがおりなかった。その理由の一つに、本人の自筆署名の申請書がなかった、こういうことですが、今までは招待団体の保証があればそういう必要はない、こういう前例がしばしばあったように聞いておるのです。今度だけ特に自筆署名にこだわったというのはどういうことですか。
○説明員(富田正典君) 本来、自由圏の国交を回復している国の皆さんにいたしましても、査証を申請する場合には、必ず自分が在外公館に出頭して、自分が署名して申請する、これは当然の建前でございます。ただ、中国との間には在外公館もございませんし、そういった書類の往復というような点にも、多少できることはできるのでございますが、時間的な問題がある。その他の事情で例外的に保証団体の署名による入国申請というものを便宜的な取り扱いとして認めておったわけでございますが、やはり本来の建前に——現在のように相当往来が頻繁になって参りますと、やはり当然の本来のあるべき姿に戻さなければいけないということで、必ずしも今度のケースが最初でなくて、従来からも時間的余裕の許す限りそういうこともお願いして参っておりますし、今後もこの方針をずっととっていきたいと存じております。
○岩間正男君 まあ今度の鑒真和尚の法会というのは非常に日本の文化史上重要なものだということは、私がここで申し上げる必要はないと思いますがね。千二百年前に鑒真和尚がどのような日本文化に対して大きな貢献をしたか、ここで私は繰り返す必要はない。そうしてまたその本国からわざわざ代表が来られる。ここヘゴールデンウイークもはさまっておくれたというのですが、非常にやはり与える印象も私はまずいんじゃないかと思います。当然入れるならその日の夕方に着くので、もう少し何か工夫していただければ、ちゃんと法会に間に合ったわけです。十二時間も早くいけば間に合うわけだ。どうも私はこういうやり方というものはあまりに形式的であり、それからやはり今までの官僚的なやり方というのが残っているように思うのですが、こういう点、どうでしょうか。もっと時宜に適したそういうやり方でいけないものでしょうか。二十八日に来ているのですから、ゴールデンウィークがずっと続くくらいわかっている。逆に悪く言えば、ゴールデンウイークであとはどうにもならないのだ、結局間に合わないことを承知の上で問題をこじつけて言っているような印象を受けかねない。これは非常に私はまずいのではないかと思いますが、両国の文化交流上、こういう点について単にしゃくし定木でこういう問題を決定するというやり方でないほうが望ましいと思いますが、いかがでしょうか。
○説明員(富田正典君) なるべく手続が円滑に参りますようにわれわれも努力していきたいと思っております。したがいまして、招請団体のほうの方もわれわれに協力していただきまして、スムーズに事が運びますようにお互いに協力して参りたいと存じます。 —————————————
○委員長(鳥畠徳次郎君) 稲葉君。
○稲葉誠一君 それじゃ、検察行政に関する件、これはいろいろ私の考えていることは非常に多いわけです。いろいろ聞きたいこともあるのですが、きょうは、時間の関係その他のこともありますので、これは別の機会に譲りまして、一つだけちょっとお尋ねをしておきたいのですが、今再審を申し立てている事件で、死刑囚ですが、免田栄という人の事件があるようです。この事件の概要をちょっとお聞かせ願いたい。
○政府委員(竹内壽平君) お話のありました免田栄というのは、最高裁の判決が確定いたしまして死刑執行を待っている状態にありますいわば死刑確定囚でございます。 この免田の犯罪事実は、罪名といたしましては、強盗殺人、同未遂、住居侵入、窃盗と、こうなっておりますが、死刑の対象となっております重要な部分は強盗殺人、同未遂でございまして、その内容は、要旨を申し上げますと、被告人は金銭に窮したあげく、九州の人吉市の白福角蔵、犯行当時七十六才の老人でありますが、これが祈祷師として非常にはやっているのを聞いて、同人方から金を盗んでやろうということを決意して、時は昭和二十三年十二月二十九日午後十一時三十分ごろ、なたを持って同家の表雨戸をこじあけて屋内に侵入しまして、家人が就寝しているのをよいことにして、金品などを物色をしておりましたところが、右角蔵の妻のトキヱ、当時五十二才が物音に驚いて目がさめて、どろぼうと叫び出し、次いで角蔵も起き上がって騒ぎ出しましたので、犯行の発覚をおそれ、逮捕を免れるために、とっさに家人全部を殺害しようという決意をして、なたでもって白福夫婦及びその長女のイツ子当時十四年、次女のムツ子当時十二年の頭部をめった切りにした上、その場にあった刺身ぼうちょうで右角蔵の咽喉部にとどめをさし、頭部の割創に基づく脳挫滅及び失血のためその場において即死させ、妻のトキヱに対しましては脳挫滅並びに失血のため翌三十日山口外科病院で死亡させ、長女に対しましては入院治療約十三日、次女に対しては約一カ月を要する頭部割創傷を負わしめたものであります。確定されております犯罪事実は以上のとおりでございます。
○稲葉誠一君 この事実について、この人が再審の申し立てをしたわけです。いずれこれは詳細な事実関係などについては私も確かめなければならぬわけで、そこまでやっておりませんから、きょうは概括的なことだけしかお聞きできないのですが、何か書いたものによりますと、十数年来無罪を叫んでおるということが一応出ているのですが、本人が自供をしておるのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
○政府委員(竹内壽平君) 私自身記録を実は見ておりませんのでございますが、ここに一緒に参っております総務課長は担当の課長でございますが、担当課長の話によりますと、一審当時自白をいたしておったそうでございます。また、ときに否認もしたこともある、こういうことで、終始自白をしておったわけではないようでございます。
○稲葉誠一君 この人の再審の請求は、これは熊本地裁に出されたのですか、福岡高裁に出されたのですか、よくわかりませんが、再審請求がなされてそれがいれられて再審開始決定があったことがありますか。あればその日時や何かちょっと、裁判所とか……。
○政府委員(竹内壽平君) お答えを申し上げます前に、この事件の確定の日を申し上げますが、昭和二十六年十二月十二日最高裁におきまして上告棄却になって、あけて昭和二十七年一月五日確定をいたしております。 それから以後のことになるわけでございますが、再審は前後四回いたしております。 第一回の再審は、昭和二十七年六月七日、本人から福岡高裁に対して、控訴棄却の判決について再審の請求をいたしております。この請求に対しましては、昭和二十八年一月二十四日、決定をもって棄却されております。 第二回の再審は、昭和二十八年二月十一日、弁護人から熊本地裁八代支部に対して、一審判決について再審の請求をいたしております。 次いで、同年七月二十二日、八代支部におきまして決定をもって棄却されております。 この決定に対しましては、七月二十九日、本人から即時抗告の申し立てをし、同年八月七日、福岡高裁において決定をもって棄却されております。理由なしという理由でございます。これが第二回の再審でございます。 それから、第三回は、昭和二十九年五月十八日、本人から熊本地裁八代支部に対して、一審判決について再審の請求をいたしております。 昭和三十一年八月十日、熊本地裁八代支部におきましては、再審開始の決定をいたしております。これは、有罪の言い渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したと、こういう再審理由でございますが、それによりまして開始決定をいたし、同時に刑の執行停止をしておるのでございます。三十一年の八月十六日、検察官から右再審開始決定について即時抗告の申し立てをいたしました。 その結果、昭和三十四年四月十五日、福岡高裁におきまして原決定を取り消すという決定をいたしております、そして、同時に、再審請求を棄却いたしております。 三十四年の五月三日、この福岡高裁の決定に対しまして、本人から特別抗告をいたしております。 三十六年十二月六日、最高裁第二小法廷は、決定をもって棄却いたしております。この棄却決定に対しまして、十二月十二日、弁護人から異議の申し立てをいたしましたが、やはり十二月二十六日、最高裁第二小法廷はこの申し立ては不適法であるという理由で棄却決定をいたしております。これが第三回の再審の申し立ての経過でございます。 次に、第四回でございますが、三十六年十二月十六日——最高裁の前の再審の決定がなされた後でございますが、十二月十六日、弁護人から八代支部に対して、一審判決について再審請求をいたしております。これに対しましては、まだ裁判所の決定がなされておらないのでございまして、この部分が未済になっております。
○稲葉誠一君 これは、今、いわゆる第二の吉田石松事件となる可能性があるということでいろいろ注目を集め出しておる事件なわけですが、三十一年八月十日ですか、熊本の八代支部で再審の開始決定をした。これは再審の開始決定ですから、非常に珍しいことですが、無罪になり得る一つの明らかな証拠を新たに発見をしたという理由でこの支部が再審の開始決定をしたというふうに聞いたわけですが、そうすると、無罪になり得るような新しい証拠というのは、これは再審開始決定の中に現われているのでは何なんでしょうか。
○説明員(辻辰三郎君) 免田栄関係の事件につきましては、先ほど刑事局長が申しましたように、現在八代支部で再審請求が係属いたしておりますので、その事件記録等が八代のほうに参っております。したがいまして、的確さを多少欠くかとも存じますが、一応私どものほうでわかっております事実について申し上げたいと思います。 ただいま御指摘の昭和三十一年八月十日の八代支部の再審開始決定の理由は、もともと再審請求につきまして、この犯行の日であるとされております昭和二十三年十二月二十九日でございますが、この犯行の当時に、本人は、当時ありましたおそらく赤線区域か何かであろうと思うのでございますが、接客婦のところに泊っておったという供述といいますか、そういうことでアリバイを主張した事実があるようでございます。そこで、当時の本案の第一審のときからこの点は詳細に調べられておるようでございまして、当時同衾しておったといわれる接客婦につきまして、本案の第一審で十分調べをしておるようでありまして、この接客婦が二回公判に証人として証言しておるようであります。その一つのほうの証言は、この日ではなかった、犯行の日に泊ったわけではない、こう言って証言いたしておるようでありますが、他の機会にもう一度証人として調べを受けました際には、この犯行の日に泊っておったように思うという趣旨の証言をしたようなんであります。そういう二つの相反する証言につきまして、最初の本案の第一審裁判所は、泊ったという日は犯行の日ではなかったという証言のほうをとりまして有罪の認定をいたしておるようでございます。ところで、免田栄のほうでは、この第一審に証言いたしました犯行の日に泊ったという接客婦の証言、このほうが正しいのだという主張をいたして、その主張を裏づける証拠といたしまして、二、三の関係人の供述調書、これを持ち出しまして、こういう供述を総合してみると、接客婦の二つの相反する証言のうちで、第一審裁判所が信憑力がないといってはねてしまった、犯行当日に泊ったというほうの証言、これが新たに他の供述人の供述からこっちのほうが真実であるというふうに思われてくる、こういう主張をいたしまして、新たな−これは過去において調べられておる証拠ではあるけれども、そういう他の証拠と総合いたしまして、そちらのほうに新たに証拠価値が見出された、この新たな証拠価値が見出されたということも、刑事訴訟法の四百三十五条でございますか、新たな証拠を発見したというものに当たるのだというような主張をしたようでございます。その主張を八代支部の再審におきまして入れまして、そういう認定のもとにおいて再審事由があるということで再審の開始決定をいたした、こういうふうに理解しておる次第でございます。
○稲葉誠一君 これは、再審の開始決定は、年間、全体の再審申し立ての事件の中でどの程度ありますか。
○政府委員(竹内壽平君) これは私のほうで調べたものはございますが、うかつにも持って参りませんで、まことに申しわけありませんが、取り寄せまして、正確な数字でお答えしたいと思います。
○稲葉誠一君 そうすると、きょうはこの事件を詳しく聞くわけじゃありませんからあれですが、一審のときからいわゆるアリバイがあったのだということで犯行をずっと否認をしている。多少途中で認めたこともあるかもわかりませんが、大体第一審以来ずっと否認している、こういうふうに見ていいのですか。
○政府委員(竹内壽平君) 先ほども総務課長から申し上げましたように、記録は一時私のほうに来たことがあるようでございますが、昭和二十九年の五月にちょっと戻ってきた記録を、再び裁判所の要請によりましてお貸しをするというか、お渡しいたしまして、自来今日まで私どものほうに来ておりませんし、その間に、局長はじめ全部の職員が新らたになっておりまして、この記録を見た者は実はないわけなんでございますので、詳細なことは申し上げかねるわけでございますが、再審申し立てに関連して検察庁から報告書が来ておりますので、その報告書に基づいて今お答え申し上げているわけでございますが、正確にはわかりませんが、自白したこともあるが、おそらくはあとは否認しているのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。
○稲葉誠一君 今出ている三十六年十二月十六日、この弁護人から出ている再審請求というものの要旨、理由はどこにあるのですか。
○政府委員(竹内壽平君) 中身の詳細はわかりませんが、報告によって見ますと、今の接客婦のところに行っておったというこの主張は、これはアリバイの主張だと思いますが、これと、本人が自白した部分がありますが、この自白が任意性がないのだという主張、この二点で弁護人から再審の請求がなされているように理解いたしております。
○稲葉誠一君 これは最高裁にほんとは聞くのでなければ、法務省ではわからないかもしれませんが、現在再審で係属しているというか、それはどのくらいあるのですか。
○政府委員(竹内壽平君) それは、死刑確定者についてのお話でございますか。
○稲葉誠一君 ええ。
○政府委員(竹内壽平君) これは、ここに表がございますが、現在十二件係属いたしております。
○稲葉誠一君 死刑確定以外のものでもありますか。それをまぜるとどのくらいになるのでしょうか。
○政府委員(竹内壽平君) 死刑確定以外のものでも相当数あるのでございますが、それは今本省のほうに取り寄せておりますので、後刻正確にお答え申し上げます。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記つけて。
○稲葉誠一君 この免田栄の事件について、これはいろいろな角度からもっと調べたい点もあるものですから、調べてまた日をゆっくり改めて質問をする、こういう形をとりたいというふうに考えております。それですから、きょうのところは、これに関連してはこの程度にしておきます。 それから、検察行政の運営の問題等については、これはきょうは時間の関係もありますから、日を改めて、少し時間をもらってゆっくり聞きたいと、こういうふうに考えます。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) それじゃ速記をつけて下さい。 —————————————
○稲葉誠一君 主として国家公安委員長にお尋ねするわけですが、非常に問題となっております吉展ちゃん、あるいは女子高校生殺し、これらの点について、この二、三日来参議院、衆議院でいろいろ質問があって、国家公安委員長も答弁をされているわけです。私はきのうその報告も本会議場で聞いたわけですが、できるだけダブらないような形で聞きたいというふうに考えます。 そこで、公安委員長の考えておられる科学的捜査ということですね、あなたのお考えになっておられる科学的捜査というのはどういうものなのかということからひとつお聞かせ願いたいと、こう思うわけです。
○国務大臣(篠田弘作君) 科学的捜査と一口に言いましても、いわゆる初歩的なものから非常に高度なものまであると思います。装備にいたしましても、人間の力ではなくて、たとえば科学と言えるかどうかしりませんが、警察犬を使うといったことから、もっと非常に高度な科学の装備を使う。あるいは、常識ではありますけれども、現在の刑事がこうもりがさを持って電車で聞き込みに歩いている。これを自動車に切りかえるということも、考えようによってはやはり科学的捜査の段階であろうと思います。 それから、まず頭の問題が先決であると思いますが、今回、言葉が過ぎたかもしれませんが、全く今回の捜査のミスというものは、私自身から考えまして頭を使っておらない、依然として銭形平次時代の捜査の域を出ておらないということを考えましたので、もっと科学的捜査、たとえば照明弾を使う。あるいはまた、張り込みで、犯人が出てきているのでありますから、犯人の追跡のためには警察犬を使う。あるいはまた、科学的というところまでいきませんが、ねえさんにお金を持たせてやるかわりに、婦人警官に持たせてやれば、十分間も問答して、こっちに来いこっちに来いと言っておるときに、婦人警官なら、それを持っておって渡すときにピストルでも突きつければ逮捕できるでしょう。あるいは、投光機のようなものを佐野屋の内部に隠しておくということもできましょうし、また、数学的に考えるならば、吉展ちゃんのときも今度のときでもそうでありますが、捜査員はおりましたけれども、いわゆる非常線というものは何にも張っていなかった。ことに犯人が自動車で行くと言ったことだけで、道路上は全部張り込みをしておりましたけれども、裏の茶畑に一人もおらなかった。それを、まず三十人おるならば、直径百メートル、周囲二百メートルのいわゆる茶畑なりあるいは佐野屋の家なりに刑事を張らせることができる。問答しているうちにそれを狭めていけば、それは数学上からいっても、とにかく直径百メートルならば三十人で巡査が足りるということはわかっている。そういう初歩的な科学的な頭の使い方というものすらも今度の場合はしておらないということを言ったのでありまして、科学的捜査といえば、それはまあいろいろなもちろん鑑識の面におきましてもあるいはその他の面におきましても、指紋の問題も一つの問題でありましょうし、血液の問題、あるいはまたその他こういう事件につきましてはそういった問題がやっぱり科学的捜査になると思います。それ以上装備の問題その他につきましても私は非常に足りないものがあった、こういうふうに考えております。
○稲葉誠一君 そうすると、今国家公安委員長が認められたように、初歩的な問題、そうすると、それは科学的捜査以前の問題だと承ってよろしいと思うのですが、どうでしょうか。
○国務大臣(篠田弘作君) 特に埼玉県の問題は、私は科学以前の問題である、こういうふうに考えております。
○稲葉誠一君 埼玉県の女子高校生殺し、吉展ちゃんの事件でなぜそういうふうに科学以前の初歩的な問題で日本の警察がミスをしたのでしょうか。その本質的なところは一体どこにあるのでしょうか。それは国家公安委員長としてはどうお考えでしょうか。
○国務大臣(篠田弘作君) それが私にも実はわからないのです。こんなことをどうしてミスしたかということは、実は私は不思議に思っておる。ただ、現在は捜査のまっ最中でございますから、そういう人たちを呼んでその責任なりやり方を追及するということよりも、むしろ現段階においてはこれはあと回しにして、大いに激励をして犯人を逮捕させるということのほうがいいじゃないかというような、国家公安委員会の会議におきましてもまた係の会議におきましてもそういうことでございますので、その責任の追及あるいはやり方というものにつきましてはもちろん捜査課長会議というようなものではやりますけれども、当事者に対する直接の追及ということは、今犯人逮捕を優先にするという建前で、やっておらないわけであります。
○稲葉誠一君 それは、私も、犯人逮捕をもう全面的に今は押し出してやらなければならない時期だと、こういうふうに考えます。その点はもう公安委員長と全く考え同じです。ただ、何でこういうミスが起きたかということを不思議に思っておる、それでそれはあとから原因を探究するのだというだけでは、何かこう問題が今の段階でも解決しないのじゃないかと私は思うのです。こうなってくると、全くそれじゃ捜査に当たった人が個人的に能力が足りなかったというだけの問題に帰せしめられたのでは、問題の解決にならないのじゃないかと、こう考えますが、それはどうですか。
○国務大臣(篠田弘作君) 吉展ちゃんの事件は、初め親から迷い子として届出が参ったわけでありまして、その後において警察の判断において誘拐事件ということに切りかえられた。ところが、善枝さんの問題は、警察が初めからこれは営利誘拐であるという認識のもとに立って、犯人が自動車で何時何分に行くといえば自動車で来るというような認識のもとに対処しております。しかし、私は、あの話を聞きましたときすぐ、ちょうど新聞記者の諸君もおられましたけれども、そんなばかな誘拐事件なんてあるか、大体十六にもなって、そしてそんな田舎で大柄の高校生を一晩も二晩も隠しておいてお金を取りにくるなんてそんなことはできるものじゃない、これは暴行殺人だよということを僕は新聞記者諸君の前で言いました。こういうものを、ただ片一方に幼児の四才の子供を営利誘拐したから、この問題も十六才の大柄のほうもお金を要求してくれば営利誘拐であると簡単に割り切るその警察官の判断というものにまず最初の誤りがあった、私はそういうふうに思うのであります。今も実は衆議院の本会議におきまして、猪俣浩三先生から、お前は参議院の地方行政でもって責任が自分にあるなんというなまいきなことを言っているけれども、お前には責任がないのだ、警察法をよく見たか、警察法は、第一の責任は当事者にあり、第二は地元の国警本部長にあり、第三は警察庁長官にあり、第四は総理大臣にある、お前は会議を主宰するだけでいわば連絡係だ、その連絡係がなまいきに政治責任があるなんてとんでもないやつだとお叱りを受けましたから、私は、責任がないならばなぜ衆議院の本会議なんかに呼ぶかと、こう言ってやったのですが、私には実際捜査の責任は制度上も法律上もないわけでありますから、あまり詳しいことを聞かれましても私はわからないわけでありますが、今申しましたようないわゆる初歩的教育といいますか、科学的教養というものの必要ということは非常に大切で、ものの判断というものを簡単にし過ぎたのではないか、私はそういうふうに考える次第であります。
○稲葉誠一君 そうすると、まああなたに法律上責任がないということになってくると、一体だれに責任があるとあなた自身はお考えになるわけですか。
○国務大臣(篠田弘作君) 制度上、法律上の責任はないけれども、私も政治家といたしまして国家公安委員長という——それは連絡係であるか会議の主宰者にすぎないか知りませんけれども、少なくも社会的には国家公安委員長というものは警察の親玉だというふうにみんな見ております。そうでないならそうでないということをはっきり天下に声明しなくちゃいけない。そうである以上は、私は国家公安委員長として政治責任はあると判断いたします。でありますから、そういう私の責任という問題が追及され、そしてそれが責任があるという判断のもとに立った上においては、私は政治家としての国家公安委員長としての責任はいつでもとる、こういうふうに申し上げておる次第であります。私は、法律上は、私は法律家じゃありませんからよくわかりませんけれども、私はあると自分で考えております。
○稲葉誠一君 あなたが自分が責任があると考えられるところは、私も非常に敬服するわけです。非常にあなたの純粋なものの考え方というもの、それには私は前々から一応個人としては敬服するのですが、それは別として、制度上、法律上の責任はどこにあるのですか。
○国務大臣(篠田弘作君) これは、警察法上、内閣総理大臣の所轄のもとに国家公安委員会が置かれているから、警察行政の主任の大臣は内閣総理大臣であるが、警察行政の政治的中立性をはかるため、国家公安委員会には強い独立の地位が与えられており、警察法上、内閣総理大臣は警察行政については指揮監督の権限を有しないので、具体的事件について法律上の責任はないということが内閣総理大臣に対しては言われております。 一方、私のほうに関しましては、現在の警察法では、第一線の警察運営の責任者は都道府県警察であり、国家公安委員会は警察法第五条に規定されている特定の事案についてのみこれをつかさどり、これらの事案については警察庁を通じて都道府県警察を指揮監督し、また、警察行政全般について全国的な見地から必要な統轄または調整を行なう責務を有するものである。委員会は合議制の機関であるから、その運営は会議によって行なわれるのであるが、委員長は、委員会の会議を主宰し、委員会を代表する等の権限を有し、内閣と委員会との間の連絡を保つ立場にある。以上の責務に伴う責任を国家公安委員会の委員長及び委員はそれぞれ負うものである、こういう事務的な解釈です。私はこんなむずかしいことを実はほんとうはわからないのですけれども、とにかくどういうものだということを今書いてもらいましたら、こういうものだということで、そういうことから見ますと、直接捜査の責任であるとか、法律上、制度上のいわゆる警察官のミス等に対する責任というものは、私も猪俣先生にしかられるまでもなく、ないんじゃないか、私はそういうふうに考えております。しかし、先ほど申し上げましたような意味の責任ならば、それは当然負うべきものであるという、そういう法律論というよりむしろ私の信念ですから、どうぞひとつ……。
○稲葉誠一君 そういうところで時間をとりたくないんですよ。あなたの政治的責任は別として、それじゃ制度上の責任は一体だれにあるか、こう聞いておるわけですよ。
○国務大臣(篠田弘作君) それは都道府県の警察本部長にあると、こういうふうに解釈いたします。
○稲葉誠一君 それは、第一次的にはそうでしょうけれども、都道府県の警察本部長だけですか。
○国務大臣(篠田弘作君) その次の責任は、これは猪俣先生の法律解釈でありますが、警察庁長官が負うべきものである、最終責任は総理大臣が負うべきものだと猪俣先生がさっき衆議院でおっしゃいました。しかし、さっき申し上げましたように、最終責任というものは総理大臣にはない、具体的な問題についてはそういうふうな解釈が妥当である、こう思います。
○稲葉誠一君 責任の問題は、これはまたあとでいろいろな別個な形で別な機会にいろいろ追及されるかもわかりませんし、それがどうなるかは、とにかく犯人がつかまってからの話にしたいと思いますが、この警察庁の刑事局で出しておる昭和三十七年の「刑法犯の情勢」というのをきのうもらったのですが、これは三十八年の「刑法犯の情勢」というのはまだできていないのですか。これはいつできたものですか。
○政府委員(宮地直邦君) 昨年末期でございます。
○稲葉誠一君 昨年末にできたわけですね。いわゆる略取誘拐罪、これは二百二十四条と二百二十五条両方でありますが、営利誘拐も含めて、近年相当事件が起きているのじゃないですか。
○政府委員(宮地直邦君) 統計は刑法の条文に従って分類いたしておりますが、略取及び誘拐の罪というものは、昨年度三十七年度におきまして二百二十九件でございます。大体二百件前後と申しますか、三百件になりましたのは三十一年でございます。それから下がりまして、昨年が二百二十九件になっております。
○稲葉誠一君 この昭和三十七年の「刑法犯の情勢」、警察庁刑事局で出しておりますね、この中に略取誘拐、営利誘拐のことについて何か触れておりますか。
○政府委員(宮地直邦君) 具体的な事例としては触れておりません。数字においては触れておりますが。
○稲葉誠一君 具体的には触れていない、数字に触れておるというのですが、これは去年の十二月にできたというのなら、略取誘拐、営利誘拐というのが近年非常にふえているということから見ても、この「刑法犯の情勢」の中で、どういう事態が起きてきて、将来どういうふうにしたらよいかということの予測とかなんとかいうものが当然あってしかるべきだと思いますが、これには触れていないのじゃないか。私もけさもらったばかりで内容を具体的に見ていませんが、一読した範囲では触れておりませんので、そういうことは一体警察庁の中でこういう誘拐関係の事件が相当将来ふえてくるかもわからないようなことについて関心を十分持っておらなかったということを示しておるのじゃないか。研究していなかったのじゃないか。そういうことについて……。
○政府委員(宮地直邦君) この二百件余りの数字の中の、これは統計の分析は今資料でできませんけれども、大部分はいわゆる人身売買の形態をとっているものじゃないかと思うのであります。いわゆる今回起こりましたような嬰児の営利誘拐というのは、個々のケースといたしましてわれわれのほうでは十分これの検討もし、これを先訓といたしておるのでございます。雅樹ちゃん殺しとか、あるいはその他の事件は、個々のケースとしてわれわれのほうは貴重な教訓と心得ております。
○稲葉誠一君 私の聞いているのは、去年一ぱいかかった中で、将来こういうふうな嬰児関係ばかりでなくてそういう誘拐関係の事件が起こり得るかもしれないというこういうふうなことを警察庁としては考えて十分な対策を立てていなかったのじゃないか。もしそれを立てておるならば、当然国会に配った資料の中にそういうふうな問題についても触れていなければならないのじゃないかと、こう思うわけです。さっぱり触れていないのですね。そういう点について十分な研究も、一つの例ですけれども、なかった、足らなかったということが言えるのじゃないか。
○政府委員(宮地直邦君) 御指摘の点につきましては、十分な統計的な検討ということにつきましては、御指摘のとおりだと思います。われわれといたしましても、こういう事犯が起こりまして後におきましては、この性質にかんがみまして十分注意いたしておるところでございます。
○稲葉誠一君 言葉じりをとるようで恐縮ですけれども、統計的な検討はしていないと言われましたね。そうすると、あれですか、具体的にこういうふうな事件が将来起きるかもわからないから、その場合の捜査についてこういうふうにしなくちゃいけないとかどうとかということは、十分にあなたのほうで検討していたということになるのですか。
○政府委員(宮地直邦君) 今私の申しましたのは、この内容が嬰児誘拐だとかこういうふうな意味において分析はしていなかったということでございますが、そういう意味において検討が足らなかったと存じております。しかしながら、われわれとしましては、誘拐略取というような問題の性格におきましてそれは十分関心を持っておったのでございます。
○稲葉誠一君 関心を持っていたのはこれはもう当然のことなんですがね。前にも本山のああいう事件もあるのですし、関心を持っていたのはわかりますが、その関心に基づいて警察庁としては具体的に今までどういう研究をして、どういう指示を各都道府県の本部に対して与えていたかということを私は聞いているわけですよ。まあそれはこういうふうな中にそれが入っていなかったということだけで判断してはいけませんけれども、具体的にどういうふうな研究をし、どういうふうな指示を今まで各都道府県本部にしていたのですか。
○政府委員(宮地直邦君) 一般的には「捜査規範」の中に書いてあることでございます。それから具体的に申しますというと、近い例が、今御指摘のありましたような雅樹ちゃん殺しという事件、このときの反省というものがあるのでございます。なお、これらに伴いまして、部外との協定というようなものも一番近い例におきましてはございましたので、それを会議資料等において配付して教育資料として活用いたしたのでございます。
○稲葉誠一君 この女子高校生殺しの事件の捜査について、いろいろ各新聞あるいは国会の中でも問題になっていることですが、私は一つ疑問に思うのは、一体あの捜査の現場における捜査の責任体制ですね、だれが総指揮者なのか、どうもよくわからないのですよ。あの警察署長が発表することと、それから刑事部長は何というのですか——中というのですか、埼玉県警のあれが発表することと相当違ったことがときどき出るじゃないですか。これは新聞記事で見る程度ですけれども、たとえば首の絞め方なんか違っていたように思いますし、だれが一体あそこでの総合責任者ということになっているのですか。
○政府委員(宮地直邦君) 今御指摘の中刑事部長が総括的な責任をとっているのでございます。
○稲葉誠一君 中刑事部長、埼玉県警、それが総括的な指揮をとっているというのは、最初からですか。現場のいわゆる張り込みの態勢の前からその刑事部長が指揮をとっているのですか。あるいは現場へ行った最初は狭山の警察署長がやっておったのだけれども、途中からかわってきたと、こういうのじゃないですか。
○政府委員(宮地直邦君) 確かに最初に届出を受けましたのは狭山の警察でございますが、直ちに県警本部に報告いたしまして、総括的な現場における指揮というものは刑事部長がとっているのでございます。
○稲葉誠一君 それは、中という県警の刑事部長が現地へ行って指揮しているのは、一体いつからなんですか。
○政府委員(宮地直邦君) 具体的な時間は承知いたしませんけれども、報告を受けましたときから指揮に入っている。現場に何時に行ったかということは、ちょっと私現在資料を持っておりません。
○稲葉誠一君 狭山の警察というのは、どの程度の警察なんですか。埼玉県に幾つぐらい警察があるのです。
○政府委員(宮地直邦君) 具体的に資料を持っておりませんのですが、狭山の警察は、埼玉県中におきましても最も小さい部類に属する警察でございます。人数も五、六人以内……(「何人ですか」と呼ぶ者あり)これは具体的な数字はまたあとで調べてからお答えいたしますが、小さい警察であるというふうに私承知いたしております。
○稲葉誠一君 小さい警察というのははっきりしないけれども、もとは警部警察だったのですか。そこらはどの程度なんですか。
○政府委員(宮地直邦君) それのお答えにつきましては、また回を改めまして具体的にお答えいたしたいと思います。
○稲葉誠一君 それはわからなければあれですけれども、小さい警察であることだけはわかりましたけれども、何人ぐらいの警察であるかということは刑事局長としてそんなにむずかしいことではないし、わかっていないとまずいですね。 それからもう一つ。最初、捜査本部は狭山の支署ですか、支署にありましたね。どういうわけですか、あったのは。
○政府委員(宮地直邦君) 警察署の所在地がこれは相当離れておりまして、都市の合併の関係におきまして不便なところにありますので、最も近いところに置くということで、御指摘のようなところに置いたわけでございます。
○稲葉誠一君 それをあとから狭山警察署に移したわけでしょう。そこの関係はどうなっておりますか。
○政府委員(宮地直邦君) 現在におきましても刑事の現場の捜査の拠点としては支署を使っておるのでございまして、それの対外的な発表その他につきましては本署に置いておるわけでございます。
○稲葉誠一君 それでは、あとで、県警の刑事部長が現地へ行った時刻、それとずっとそこへ行って行きっきりで指揮をしておったのかどうか、こういう点を明らかにしていただけませんか。狭山の警察はそういう小さい警察であまり事件のない警察ということもちょっと出ておりましたから、あまり刑事事件になれていない警察じゃないかとちょっと考えるのですがね。ですから、そこにちょっと問題があるわけです。 それから、あまりこまかいことを聞いてもあれですけれども、警察の刑事になるのには一体どういう形で今なっておるのですか。
○政府委員(宮地直邦君) そのお答えの先に、話が逆になっておりまして、当初は署におきましては捜査本部を前進せしめて現地に置いたという形になっております。 なお、刑事にいかにしてなるかという点でございますが、これは現在制度上にはっきりした規定というものはございませんけれども、警察官が学校等を出ましたあと、多くの場合これは外勤その他の勤務をいたします。その中から適格者を選びまして刑事にする。そして刑事の幹部になります場合に管区学校等におきます刑事専科の教養を得て参る形をとるのが一般の例でございます。
○稲葉誠一君 そうすると、刑事をやっておる人は、いわゆる若い人はあまりおらないのじゃないですか。戦前からずっとやっておる人がなおかつ残っておって、今の段階でも多いのじゃないですか。埼玉県のこの狭山の事件に行った刑事の人、四十人がいますね、そういう人たちの例をあげてもいいと思うのですが、新しい教育を受けた人は少ないのじゃないですか。それはどうなっておりますか。
○政府委員(宮地直邦君) 他の部門と比較しまして多いか少ないかということになりますと、これもまた具体的に数字を研究してみなければならぬと思いますが、刑事にのみ片寄って多いと思いませんけれども、比較的老齢であっていわゆるヴェテランというふうな者が刑事の世界にあることは事実でございます。
○稲葉誠一君 これは老練でヴェテランの人もおりますよ。しかし、現実には戦争前からのいわゆる警察の中の刑事といいますか、そういうのをやっていた人が非常に多いんじゃないですか。そこは埼王県の例をよく調べて下さい。私は栃木県の例で調べたことがあるのです。それが一つありますね。 それから、これはこういうことを言っちゃ悪いけれども、新しい警察官に出てくる人は、普通の高等学校を今出ているわけでしょう。ところが、刑事の人は、これはちょっと気の毒だけれども、高等学校を出ておらない形で入ってきておる人がほとんどと言っていいか、多いのじゃないですか。
○政府委員(宮地直邦君) 新警察制度になりましてから、御指摘のとおりの高等学校卒業以上の者を採っておりますが、古くからおります者の学歴となりますというと、その程度に達していない者があるのでございます。
○稲葉誠一君 そこで、女子高校生殺しの捜査の問題に入ってくるのですが、そうすると、刑事局長の考えているのでは、この捜査のミスというのはどこにあったと考えて、そしてそれを防ぐためにはあのときにおいてどういうふうにしたら防げたかということですね、どうですかその点は。
○政府委員(宮地直邦君) 私どもが現在の段階におきまして反省いたしております点は、五月一日の夕刻差し入れられました恐喝の内容の手紙に、自動車で行く、したがって、自動車で行く者を目じるしに渡してくれというふうな趣旨のことが書いてあった。非常に判読の必要のあるような文章でございますが、そういう趣旨が読みとれた。それで、捜査の幹部が、ただいま大臣も指摘いたしましたように、逮捕に必要なる人員の配備を自動車で来るということに結果的には非常に重点を置きましたために、現在私どもが配備計画を見ておりますというと、広範囲に分散し、また、持って行って参りました資材等も検討いたしますというと、そういう方面に片寄っておる。やはり捜査幹部のこういう面の判断というものについてわれわれ反省をいたしておるのでございます。
○稲葉誠一君 今のその捜査の初めのときに自動車にとらわれたという話ですが、それは県警の刑事部長が指揮をしてそういうふうな一つの捜査の方法というか、張り込みをやったわけですか。どうなんですかね。県警の刑事部長がやれば、その点のミスはちょっと考えられないのですがね。狭山の警察だけでやったのじゃないですか。そこはどうなっているのですか。
○政府委員(宮地直邦君) これは、具体的に申しますと、五月の一日の夜にも警官をある程度配備をつけた。これは狭山の署長の判断でとっさの措置をとっております。二日に至りましては、これは中刑事部長の総括的なもとに入っての計画になっておるのでございます。
○稲葉誠一君 そうすると、初めの段階は、やはり狭山の警察の独自な捜査がこうずっと進んじゃったのじゃないですか。あなたのお話を聞きますと、どうもそういうふうに考えられますね。
○政府委員(宮地直邦君) これは具体的な問題になりますが、五月二日の夜十二時ということが書いてあった。その意味をどういうふうにとるかということを考えまして、あるいは正確に申しまして五月一日の夜中かもしれぬというときのとっさの措置を署長がとった。そのときには指定されました佐野屋という家の現場の付近には現われませんでしたので、いよいよこれは厳格に申します意味の五月二日の十二時ということになりまして、本格的な配備のときには県警本部の指揮のもとに入った、こういう形をとっております。
○稲葉誠一君 そうすると、最初の段階でこの事件が脅迫状が来たという届出があった程度のときには、狭山の警察では県警には連絡してないわけですな。
○政府委員(宮地直邦君) それは、およそ八時ごろに最初に父親及び兄から駐在所に届出があった。事の性質にかんがみまして、駐在所の警官がその車に同乗しまして署まで参った。署は直ちに本部に連絡をとっておりましたわけです。これは本部も承知の上の措置になっておるのであります。
○稲葉誠一君 そうすると、最初は、本部も承知の上で狭山の警察が単独の捜査態勢をとられた、こういうことですね。
○政府委員(宮地直邦君) その応急的な措置を狭山警察がとったということであります。
○稲葉誠一君 そのときの捜査では、あれですか、問題点はなかったわけですか。
○政府委員(宮地直邦君) なかったと具体的に——これは詳細に検討すべき問題については触れておりませんけれども、現在のところ表面に現われてきておりません。
○稲葉誠一君 それじゃ、今現在、この女子高校生殺しとそれから吉展ちゃんの事件の捜査は、どういうふうに進んでおるのか。実は国家公安委員長の参議院の本会議における報告を聞いたわけですけれども、これは非常に簡単なものであって、新聞記事の百分の一ぐらいで、ほとんどあれですが、現在の段階はどうなっているのか。
○政府委員(宮地直邦君) 吉展ちゃんの誘拐事件につきましては、最初委員長が報告をいたしましたように、家族の届出も迷い子としての届出で、したがって、当初の状況というものがはっきりわからない。ただ、これはもう稲葉委員御承知のことと思いますが、どこか遠くの遊園地に行っておって迷い子になったというのならば、その状態も納得できるのでございますが、家の道路を距てた向こうにおける遊園地で行方不明になったということで、これはいわゆる迷い子と思えない。迷い子として取り扱うべき性格ではないというので、警視庁のほうにおきまして、これを誘拐事件として取り扱い始めた。しかしながら、誘拐事件として取り扱うべきだという可能性を考えただけであって、具体的にその場において証拠がない。その当時におきましても、八才になる子供が見ておって、ある年寄りが——年寄りと申しますか、中年の者が、持っておった鉄砲をほめた、こういう状況だけでありまして、その人間を直ちに誘拐犯人ときめつける材料もない。これが一部の事実を発表するまで一つも変わらない状態であったのであります。 それから狭山の事件につきましては、違っておりますのは、犯人はたくさんの遺留品を残しております。たとえば、手ぬぐい、タオル、ひも等を残しております。事件といたしましては、死体現場においての遺留品が相当ございますが、地形の関係で現場の目撃者が現在に至るまで——現場と申しますか、その現場に至る間における目撃者等というものは、地理的に非常に不便なところでございますので、ほとんどないというのが現状でございます。
○稲葉誠一君 そういうことを聞いているわけじゃないのです。国民が知りたいのは、現在の捜査がどういうふうに進んでおるかということを知りたいわけです。私も知りたいわけです。それは、捜査の秘密がありますから、あらゆることをここでしゃべるわけにはいかぬと思います。たとえば、今の女子高校生殺しの問題にしても、手ぬぐいについてどういう形の捜査をやっておるとか、タオルはどうとか、ひもはどうとか、いろいろありますね。こういう点についてのもう少く説明があってしかるべきだと、こう思います。これは国家公安委員長から本会議で説明があるかと思っておったが、あの説明を聞いてみて、あれならばどうということはない。失望したのですが、そういう点を聞いているわけです。
○政府委員(宮地直邦君) 御承知のとおり、吉展ちゃん事件につきましては、犯人の声を整理いたしまして公表いたしました。昨日までにおきまして約五千八百件にわたりますこれに関する警察に対する協力というものが現われてきております。この中には相当われわれのほうとしましても具体的に検討すべきものがあると思いまして、鋭意これらを基礎に捜査を進めております。それから、われわれがそれを基礎にして捜査をいたしておりますというと、やはり有力な、有力といいますか、犯人に到達するという意味において一過程においての一つの拠点というものが何か得られているような感じがしているのでありますが、これはまだ点でありまして、どっちにいくかということはなお相当の捜査の困難性をわれわれ自覚いたしておるのであります。 なお、埼王県の事件につきましては、さような遺留品がございますので、遺留品の鑑定からいくと、どうしてもこの犯行は相当その土地に対してカンのある人間のしわざであろうという前提のもとに、具体的に聞き込み及びそういういわゆる鑑識の科学的な方法をもって、両方の面からこれを捜査範囲を縮小せしめているのが現状であります。
○稲葉誠一君 もう少しこの点はこまかく聞きたいわけですけれども、それはあなたのほうとしてもいろいろ立場もあるでしょうから、あれしますが、吉展ちゃんのほうは、何か吉展ちゃんが運ばれるのを見たという人も出てきたという、そういうふうなこともあるのじゃないですか。
○政府委員(宮地直邦君) 捜査の一部を公開いたしましたら、ちょうど公園の対角線、吉展ちゃんの家の対角線上の方向に当たるところで吉展ちゃんらしい者を三名の学生が見たということの届出を受けております。で、学生の証言それ自体は正しいと思いますが、人体を決定するまでには至っておりません。なお、一部新聞にも出ておりますが、ちょうどあの時刻にその品川自動車のかどから挙動のきわめておかしい人間を山谷方面に運んだという人間の出てきていることも事実であります。これら、いずれも協力によりまして得た捜査の結果であります。
○稲葉誠一君 今の山谷の自動車ですね、自動車のところから帰りがけかなんかに刑事が張り込みかなんかでずっと行って、そこで会ったという話があるんじゃないですか。
○政府委員(宮地直邦君) 刑事が分かれて単独行動して品川自動車を遠回りをした者がある。その者がちょうど品川自動車の反対、裏側というようなところで人に会っている。しかしながら、現場に急行するためにそれは見過ごしたと申しますか、通りすがった人があったという報告がございます。
○稲葉誠一君 吉展ちゃんのときに、お母さんですか、打ち合わせをして一緒に行くつもりだったのが、お母さんのほうが早く着いちゃったのですが、現場へ刑事が行くのがおくれたのですが、どういうわけですかね、打ち合わせは。ちょっと考えられないのですが。
○政府委員(宮地直邦君) 捜査の常道といたしまして、警察がある程度の警戒態勢を敷いた上でさようなことをいたしたかったのであります。それが現場におりました警察官が十分被害者との連絡が取り得ずそういう結果になった。この点になりますというといろいろ問題があろうかと思いますので、われわれそういう警戒態勢を取り得る状態にまで指揮能力と申しますか、被害者との関係を良好に保ち得る警察官を配置をすべきであるということを反省いたしておるのであります。
○稲葉誠一君 結論として、この女子高校生殺しの犯人逮捕の目安、それについての現在の時点における警察庁の一つの確信というのはどうなんですか。
○政府委員(宮地直邦君) これは、われわれのほうとしては、国家公安委員会の強い御要望もあり、われわれとしましては一刻も早くこれを解決すべく努力をいたしておりますが、ここで確定的にいつまでというふうに申し上げることは、捜査の途中でございますので、お許しを願いたいと思います。しかしながら、われわれの怠慢によってじんぜん日が送られるということのないように努力をしておりますことはお認め願いたいと思います。
○稲葉誠一君 そうすると、現在の段階で、女子高校生殺しの犯人を大体の目安のもとにおいて逮捕できるという一つの確信、これはないのですか。
○政府委員(宮地直邦君) われわれは、いかなる努力を払いましてもこの事件を解決してみせるという努力をいたしておるのでございます。
○稲葉誠一君 これはまあ私の考えとあなたの答えとは食い違っていますね。あなたのほうも慎重な態度で進むべき事案ですから、いろいろ立場もあるでしょうが、もう少し確信的なことは言えないものですか、現在の時点において。あなたのほうの主観的な努力は、これはもう僕らも認めます。主観的な努力は当然ですけれども、もう少し確信的に何かないのですか。
○政府委員(宮地直邦君) 吉展ちゃんの事件につきましては、これは相当広い地域の調査を要する。また、現在の段階に至りまして国民の御協力によりまして資料的なものを得ましたので、これも努力いたしたいと思います。しかし、捜査の貴重な当初においてそういう資料がなかったということからこれは御判断いただきたいと思います。 狭山の事件につきましては、今申しましたように、諸般の状況を考えまして、専門語で——稲葉先生でございますから、専門語でありますが、土地カンがあるという前提のもとにいっております。相当物的証拠が残っております。ただ、非常に人家まばらな土地で、ちょっと近所の状況がまばらなところでもあり、土地の風習その他によって相当捜査に困難性はあると思いますが、事件を解決するための資料というものは狭山の事件のほうがはるかに多いと、こういうことで御了承をいただきたいと思います。
○稲葉誠一君 もう少しまあできれば強い言葉を私どもは聞きたいわけですけれども、それ以上あなたはおっしゃらないのですから、押し問答しても始まりませんが、公安委員長にお聞きするんですが、四、五日前のNHKテレビですか、あなたが角田房子という女の人と対談をしておりましたね。その対談のテレビを見ておりましたが、あなたが言われた中に、警備警察は一歩進んでおるけれども、刑事警察は一歩おくれておるということをあなた言われたのを私記憶しておるのですが、それはどういうあなたのお考えなんでしょうか。
○国務大臣(篠田弘作君) 警備警察は一歩進んでおるが、刑事警察はおくれておるということは、言っておりません。
○稲葉誠一君 言っておりますよ。
○国務大臣(篠田弘作君) それを写しなおしてもらってやるほかありませんが、私は、今自分の記憶に関する限りは、そうは言っておりません。また、そういう観念は私は持っておらないわけです。ただ、問題はこういうことです。警備警察の場合には、たとえばデモとかなんとか大衆を相手にするから、相当たくさんの警官を動員する、何千人、何百人と。ところが、突発的なこういう強力犯というものを逮捕するときには、非常に秘密といいますか、犯人の目に見えないようにするためには、そんな大ぜいの警官は繰り出さない。そういう意味のことは自分の頭の中にもありましたから、そういう警備警察の場合には非常に大きく人を繰り出すが、刑事警察の場合には繰り出さないということ、そういう意味のことは少しは言ったかもしれませんが、警備に重点を置いて刑事を軽んずるというような発言は自分でしておりません。これはしておりませんと言いましても、記憶の問題ですから、それを写しなおして、しておれば、それは今申し上げたような意味の比較の問題だと、こういうふうに御了承願いたいと思います。
○稲葉誠一君 警備警察は一歩進んでおるけれども、刑事警察は警備警察と比べるとおくれておると、こういうふうに私は聞いたんですよ。あなたは今そう言った覚えはないと言われたのは、警備のほうはたくさんの人数の事件が多いから、だからそっちのほうにたくさんの人が行くんだと、一般の刑事の場合には警察官はあまり大ぜい行かないのだと、こういうふうなのが普通の例だという意味ですか。ちょっとわからないのですが。
○国務大臣(篠田弘作君) ちょっと放送する前に時間がありまして、ちょっと雑談をしました。だいぶ頭が悪くなっておりますから御容赦願いたいと思いますが、そういう雑談をしたときに、犯人をつかまえに行く場合の人数が少ないじゃないかという話が待っておる間にちょっと出ました。ところが、これはあまり大ぜいでやるとかえって逃がしてしまう。だから、非常線を張るということは僕は絶対必要だと思う。時間があったかどうかわかりませんが、吉展ちゃんのときも、犯人が自動車の上に置いてあるくつの上に置けということを言ってきておりますから、先ほども刑事局長も言いましたように、もう少しお母さんを説得できる、何といいますか、説得力のある指揮官がお母さんを待たせるとか、それからお母さんといってもそんな暗やみの中ではどこの女かわかりませんから、婦人警官をやるとか、あるいは、自分のほうから刑事が出ていくということは犯人の目につきますから、電話連絡なりしてあるいはその周囲を各警察官に取り巻かせるとか、そういうことの人数は必要だと思います。それから、善枝ちゃん殺しの場合にも、張り込みや逮捕にばかり重点が置かれておりまして、水も漏らさぬといいますか、非常線を張っていなかった。そういう欠陥は確かに認めますが、何万という人数のデモの場合は、これは、御承知のとおり、メーデーにおける宮城前の事件もあります。一たび誤ればそういう暴動にもなりかねない。年じゅうなるわけじゃないが、ないとは保証できない。そういう場合に繰り出す人数と、一犯人をつかまえる人数は、おのずから違う。しかも、その犯人逮捕のためにはできるだけ少数精鋭主義でいくということは当然だ。そういう話をちょっとしておった。そこで、警備のときにはうんと人を出すけれども、あるいは刑事のときにはそう出さぬと言ったかどうか私は記憶しておりませんが、あなたが言ったとおっしゃるならばそう言ったかもしれませんが、私は全然記憶しておりません。
○稲葉誠一君 ここで言った言わないといっても、これはNHKのテレビを持ってこなければわかりませんが、それでは、あなたのお考えの中には、刑事警察はとにかくおくれているということは頭にあるわけですか。
○国務大臣(篠田弘作君) おくれているということではないですが、たとえば、刑事警察の場合には、刑事が捜査するという場合でも、電車で歩いたりバスで歩いたりするということは実際あるわけです。警備の場合も、もちろん警官がくつをはいて走っておりますから、やはりそれは歩いているということはあるでしょうが、組織としては、片方はトラックに乗ってつうつうと急いでやっているし、片方は電車に乗ってやっているという、そういう頭が——刑事局長からしかられましたが、そういう頭が僕には幾らかあったのじゃないか、そう思います。しかし、実際調べてみると、そういうことは、ただ刑事がかさを持って電車に乗っているという事実はありますが、いろいろ統計を見せてもらったところによると、決してそういうことではないということです。
○稲葉誠一君 おくれているとかということを、まるでスピード競技のようにあなたはとっておられるようですが、片一方はトラックだから速いとか、片方は電車に乗って行くからおそいとか、そんなことは別にこの委員会で問題にしているわけじゃないのです。そういうことでなく、組織とか能力かそういうことにおいて刑事警察はおくれているとお考えになるかどうかということをお聞きしたわけです。
○国務大臣(篠田弘作君) そういうことは委員会の問題にならぬとおっしゃいますが、犯人逮捕ということはスピードの問題なんです。スピードの問題が問題にならぬならば、一カ月後に逮捕しても今逮捕しても同じです。これはスピードの問題でありますから、きょうの公安委員会でも、刑事を歩かせるということをしないで、たとえば小型自動車でもいいから五十台なり百台なりモーター・プールに置いておいて、そうして刑事が必要な場合にはみずから運転できるような刑事を置いておいてスピードと労力を節約できるようにしようということをやっているのです。やはりスピードを抜きにした捜査というものは全然ないと私は確信いたしております。
○稲葉誠一君 これは、問題が、私の聞き方が悪かったのか、あなたの聞き方が上手なのか、ちょっとわかりませんが、私の言っているのはそう意味で言っているのじゃない。それは、スピードというのは何といっても基本問題です。早く捜査をして早くつかまえなければならないということはあたりまえですが、そういう意味でなくて、刑事警察というのは、日本の刑事警察ですよ、組織なり能力なりそういう面においておくれているというふうにあなたはお考えなのかどうかと聞いているのです。
○国務大臣(篠田弘作君) 日本の刑事警察は世界でも有名な刑事警察でありまして、おくれているというふうには考えませんけれども、いろいろな面において制約を受けているということは言えると思います。証拠がなければ——あなた御専門ですが、証拠がなければ、たとえばつかまえて持って行っても、裁判でもって自白だけでは有罪にならない。したがって、そういう証拠を集めるためにも労力が要る。証拠を集めるためには、たとえば犯人が隠匿していると思われる——この前の雅樹ちゃん事件のときに、確かにあの歯医者の家に犯人がいるということが大体見当がついて、刑事が張り込みをしておった。ところが、人権の問題になるからそこへ入っていけなかった。そのとき入っていけば雅樹ちゃんは救われただろうというふうに私たちは聞いておるのでありますが、そういう点についてある意味の法律的といいますか、社会的といいますか、そういう制限を受けているということは事実でありますけれども、もう少し装備をしてあれば、日本の刑事警察が世界の刑事警察からおくれているとか、警備からおくれている、そういうことは私はないと思います。
○稲葉誠一君 じゃ、日本の刑事警察が世界で優秀だ、ちっともおくれてないというなら、今度のような事件がどうして起きるのでしょうか。これはおかしいじゃないでしょうか。そこをどういうふうにお考えになりますか。
○国務大臣(篠田弘作君) そういうことをおっしゃるけれども、世界の刑事警察だからといって、起こった犯罪は全部検挙しているわけではありません。迷宮入りというのがたくさんあります。たとえばスコットランド・ヤードなんて世界で一番優秀だとか、アメリカの連邦警察なんていいましても、われわれが今まで聞いたところによると、全部犯人を検挙しているか、統計を見なければわかりませんが、どっちが犯罪件数に対して検挙率が多いかというと、これは統計を見なければわからないが、ここで世界のほかの警察はみんな犯人をつかまえて、日本の警察だけがつかまえられないということは、そんなことは、私は統計がない限りはそういうことは承認しません。
○稲葉誠一君 どうも、少し話が横へ行っちゃうんですよ。それはあなた、世界の警察だって、犯人をつかまえていない、迷宮入りはたくさんありますよ。今、お話を聞いていると、女子高校生殺しでも、吉展ちゃん事件でも、迷宮入りになったところで、世界の警察でもほかにもあるのだから別に何ということはないじゃないかというふうな、何かあなたのお話は少し脱線しちゃった関係からそういうような印象をちょっと与えますよ。これはちょっと言葉が——あなたの気持はよくわかりますが、ちょっと言葉がおかしいんじゃないですか、ラフじゃないですか、少し。
○国務大臣(篠田弘作君) 私は、現在の事件が迷宮入りになっても仕方がないと、そういうことを言っておるのではないのです。日本の刑事警察がそういう世界に劣らない警察であるならば、なぜこんな事件の犯人をつかまえることができないかとあなたがおっしゃるから、つかまえるのは、そこにおるから持ってくるわけじゃないのです。証拠調べをしてつかまえるのだから時間がかかる。日本の警察が非常にこの事件については拙劣であるかもしれないけれども、刑事警察全体としてそういうことが別に日本の警察が特に外国の警察に劣っておるという証拠にはならない、こういう意味のことを申し上げておるわけです。あなた、もう少しやさしく聞いて下さい。そしたら、私幾らでも答えます。
○稲葉誠一君 あなた、やさしく聞いているのですよ。あなたに対してはほんとうに丁重に静かに聞いているつもりですよ、あなたがどうとられるかは別として。 そこで、問題は、一体、日本の全体の警察官はどのくらいいるのですか。その中で刑事警察、保安、交通、警備、こう分けてひとつ説明してくれませんか。
○政府委員(宮地直邦君) 昭和三十七年で申しますと、今御質問の警備と刑事との点について申しますと、総数約十三万二千二百のうちにおきまして、捜査に従事しております者が、正確に申し上げますと二万二千二百十四でございます。このほかに鑑識を入れますと約二万五千になるわけでございます。警備警察に従事いたしております者が一万八千六百十六と、こういう数字になっております。
○稲葉誠一君 保安関係、交通関係、これも明らかにして下さい。
○政府委員(宮地直邦君) それでは、全部をここで申し上げますというと、三十七年におきまして、警務に従事しております者が四千二百三、捜査に従事しております者が今申しましたように二万二千三百十四、鑑識が二千九百二十一、防犯、保安関係が九千五百四十六、交通関係が一万二千三百五十、外勤が五万一千六十一、警備が一万八千六百十六、その他が一万一千百九十九、計十三万二千二百十となっております。
○稲葉誠一君 それでは、三十八年度の警察庁の予算で、国費だけ、刑事警察、保安、交通、警備、この金額はどうなっておりますか。
○政府委員(宮地直邦君) 今、私、国費だけの資料を持ってきておりませんけれども、これはちょっと数字を整理しておりませんけれども、刑事警察の費用は国費を支出すべきものは一定の範囲に限られておりますので、国費だけの比較ということよりも、私の手元に持っておりますのは、これを補助金の形にして二倍にした形において申し上げますというと、刑事の経費は約二十七億三千万円になります。警備の経費が二十二億一千万円になります。
○稲葉誠一君 保安と交通も言って下さい。
○政府委員(宮地直邦君) これはさしあたり私の手元にあるので申しましたので、いずれ資料でお答えいたしたいと思っております。
○稲葉誠一君 そんなことないじゃないですか。私はきのう警察庁から調べとしてもらったのですよ。ここに手元にありますよ。これは個人的にもらったのだからあれだけれども、ちょっと今の刑事警察の金額が違いますね。二十六億九千八十八万五千円となっております。警備は合っておりますが、保安警察が十一億一千二百万円、交通警察が七億六千七百万円、これは警察庁からもらった資料ですが、これは地方行政委員会に出した資料じゃないですか。あなたのところにありませんか。
○政府委員(宮地直邦君) 今、私は手元に持っておりませんが、帰りましてさっそく取り寄せます。予備費等の関係で多少数字が食い違っているかと思っております。
○稲葉誠一君 そうすると、この中で捜査費というのがあるのです。国費と補助金と両方あるでしょう。この捜査費は、刑事警察と警備警察でどういうふうになっていますか。
○政府委員(宮地直邦君) 具体的な数字につきましては、私の参りますまでに間に合いませんでしたので、資料をもってお答えいたしたいと思います。
○国務大臣(篠田弘作君) これは、今途中ですが、官房長——係の者を呼びますわ。係の違う者に幾ら聞いたってわからないと思うので……。
○稲葉誠一君 刑事警察のやつはわかりませんか。——じゃ、刑事警察についてはこの捜査費を刑事局長から答えてもらって、警備警察の捜査費については警備局長から答えてもらいたい。公安委員長、これはきのう請求してできているんですよ。私のところに来ているのですよ。二部ありますから、一部あげてもいいですよ。
○国務大臣(篠田弘作君) あなたが警察庁から出した資料をお持ちになっていて、事務当局が持っていないということは、内部連絡が不行き届きでございますから、資料を取り寄せまして、それぞれの責任の局長をここへ呼びますから……。
○委員長(鳥畠徳次郎君) ちょっと速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。
○稲葉誠一君 それでは、法務大臣にお尋ねしますが、刑法の二百二十四条、二百二十五条、片方が略取誘拐、片方が営利誘拐、これの法定刑の引き上げの問題ですね、これについて法務大臣の考えをひとつ述べていただきたい。
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。 法務省といたしましては、刑法の改正の準備を進めておりまして、五月二十日ころ刑法改正準備草案を法制審議会に提案をするということにきまっておりまして、作業を進めておるわけでございます。その準備草案の中に、こういう身のしろ金を要求するような誘拐事件につきましての新しい形態の犯罪と申しますか、そういうものの刑というものが必ずしも十分ではないと考えられておりましたので、そういうものも規定をするように、準備草案には盛り込まれております。 しかし、いろいろこのたびの女子高校生誘拐殺人の問題、それから吉展ちゃんの誘拐事件等の問題等がありましてから、この種の悪質犯罪に対する法定刑というものが軽いのではないかというような世論も高まって参りましたので、そういう法定刑の諸外国との比較等もしてみました結果、確かに外国よりも量刑が軽いというように考えられますので、これを改正するという方向に今踏み切っておるわけでございます。
○稲葉誠一君 外国よりも軽いというのは、特にアメリカと比べて日本の刑が軽いということだと思いますが、アメリカでは死刑までありますが、ただ、アメリカの死刑の場合は、無償で返さなかった場合、陪審員が宣告するか何かするまでに無償で返さなかった場合に死刑があるということだと思いましたが、アメリカの法制なんかどうなっておりましたか。その他の国についても……。
○説明員(長島敦君) 御指摘のとおりでございまして、アメリカでは、例のリンドバーグ大佐事件がございまして、その結果、アメリカの各州で一斉に刑法の改正がございまして、御指摘のような規定ができております。御指摘のように、アメリカでは、被害者が無事に帰りました場合には刑が減りまして、死刑にしないというような州がむしろ多いわけでございます。 なお、アメリカ以外の国で比較的重いと考えられますのはフランス刑法がございまして、これは十五才未満の未成年者の場合の略取誘拐でございますが、被害者を殺害いたしました場合には死刑ということになっております。無事に帰って参りましたときには有期懲役、生死不明のままになりましたときには無期刑というような三段階を考えているわけでございます。 なお、西ドイツの刑法あたりも、現行刑法も日本よりは重いわけでございますが、ただいま西ドイツ国会でやっております刑法の全面改正案がございますが、これによりましても、普通の身のしろ金目的の誘拐で、誘拐中に残酷な扱いをしたとか、あるいはその間に死亡させたというような場合には、十年以上二十年以下の重懲役というような規定が入っているようでございます。
○稲葉誠一君 法務大臣、結局、刑法改正の審議会は、これはわかりますけれども、これは何年かかるか。三年かかるか四年かかるかです。暫定的に単独法で何か刑を上げるとかいう話も伝わっているし、あるいは刑法の改正としてこの条項の法定刑を引き上げるというような話もちょっと新聞なんかに現われておったのですが、法務省当局としては、その点についてどうなんでしょうか。ちょっと前の答弁を聞き漏らしたものですから。
○国務大臣(中垣國男君) この二つの事件が起きる前の段階におきましては、実は法制審議会に今度準備草案として諮問をいたしますそれらの結論が出てからということに考えておったわけでありますが、その後いろいろこのような悪質の問題が発生して参りましたので、目下検討しているのでありますが、臨時措置法的なものをやるか、あるいは刑法の一部改正の行き方をするかということについて検討いたしているのでありまして、その成案ができましたならば、できるだけ早い機会に国会に提案して御審議をいただきたいと、かように考えております。
○稲葉誠一君 今一応試案として考えられているのは、どの程度法定刑を引き上げるということなんですか。まだ発表までの段階に至っていないわけですか。
○政府委員(竹内壽平君) 現在どういろふうに考えているかという点でございますが、法定刑につきまして、準備草案では、代償目的の誘拐については二年以上の有期懲役ということになっております。これに対しましても、学者その他の方からそれでは軽いのではないかというような批判もございます。したがいまして、それでは二年を三年にするとか、あるいは有期懲役を無期にするとかいうような具体的なことは考えておりませんが、ただ、いろいろ検討しておりますことは、今のアメリカの例でもありましたように、これが殺人と結びついたり、あるいは身柄を抑制している間に何らかの形で死の結果を生じてしまったというようなものと結びつく傾向があります。もちろん、目的がそういう目的でありますから、命をまた要求するということ、つまり財産犯との関係、生命犯との関係がございます。そういうものをも含めて、たとえば強盗罪の致死、殺傷のような場合に、刑法二百四十条のような規定を営利誘拐の規定の中にそっくりそのまま入れたほうがより効果的であるか、あるいはそれは併合罪の関係で適用の面で処理していくほうがいいかというような点は、今一応検討しております。しかし、大臣も申されましたように、刑が軽いという点と、それから規定としましても十分整備されていないのではないかというような点につきまして、ただいまいろいろな角度から検討を加えておるところでございます。
○稲葉誠一君 それじゃ、前に戻って、捜査費——刑事警察と警備警察と、これはどういうふうになっておるか、ちょっと御説明を願いたい。これは純粋に捜査費という項目にあがっておるものですね、これをお聞きするわけです。
○政府委員(三輪良雄君) 私の所管でございます警備警察につきましては、捜査費が、集団不法行為、外事合わせまして八億三千五百万円でございます。
○稲葉誠一君 これは、国費が一億五千四十八万三千円、補助金が二億二千九十四万円かで、合計三億七千百四十二万三千円じゃないですか、捜査費としてあがっておるのは、刑事警察で。
○政府委員(宮地直邦君) ちょっと資料を……。
○国務大臣(篠田弘作君) 今官房長が来ますから、ちょっと待ってくれませんか。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をとめて。 〔速記中止〕
○委員長(鳥畠徳次郎君) 速記をつけて。
○岩間正男君 それじゃ、関連した二、三の問題でお聞きします。そのうちで、戸口調査の問題ですが、今度の誘拐事件を契機にして戸口調査を実施するようなことが非常に話題になったわけですね。これについて一体どういう態度をとっておられるのか、この点明確にしてもらいたい。
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。 戸口調査の問題につきましては、この問題が一応一部の新聞に報道されたのでありますが、これは先般の閣議におきまして、吉展ちゃん事件が発生しましたときに、現在の制度というものは家族の状態調査というものが行なわれていないので、もしそういうことができるならばもう少し犯罪検挙等が順調にいくのではないかといったような発言をした閣僚がありまして、それに対しまして、これは正式に閣議で決定したわけではなかったのでありますが、一応法務省で検討いたしましょうというようなことになったわけであります。その後法務省として検討いたしました結果、国民の協力の得られないそういう個々の家庭状況調査というようなものは、憲法上から申しましても疑義があるということになりまして、戸口調査をば昔のような制度を復活させるという考え方は全然持っておりません。また、閣議でもそのようなことを今後検討するとか進めるとかいうことにはなっていないのでありまして、そういうことはやらないつもりであります。
○岩間正男君 今のは法務大臣からそういう確言があったわけですね。まあ今度の誘拐事件の真相は、今も現に質問されておるわけですが、あらゆる角度からこれは究明しなくてはならぬわけです。戸口調査をやらないので何か今度のような事件が起こったというような、そういう簡単な、いわばこの問題を逆用するようなやり方でまた戦前のような体制に持っていくことは非常に大きな問題だと思う。これは戦前でもう戸口調査の弊害はきわまっておると思う。これはもうこの点あらためて言う必要もないと思うのですが、特に戦後戸口調査を廃止された原因については、法務大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。ただいま確言されたのでありますが、それとも関連してここでなお念のために明確にしておいてもらいたい。
○国務大臣(中垣國男君) 先ほどお答えいたしましたとおりに、戸口調査といいますか、それはやらないというのでありますから、そのことについては御疑問がないと思います。これを廃止したといいますのは、これは前に行政警察規則によりまして戦前はやっておったのでありまして、これはそういう弊害もありましたでしょうし、また一面、犯罪の調査並びに犯罪検挙等に非常に大きな役割を果たしておったということも事実のようであります。この問題はもうすでにそういう行政警察の規則が変わったのでありますから、これは問題にはならぬと思うのでありますが、ただいま私のほうで調査をしたところによりますと、国家公安委員会規則によりまして警察のほうの巡回連絡という制度がありまして、それはもちろん強制的なものじゃございませんが、国民の協力を得てそういう災害の予防、犯罪の予防というようなことに役立てるような巡回連絡の調査は今でもやっておるのでありますが、権力的なものであるとかそういう一方的なものであるとかいう建前になっていない、こういうわけであります。
○岩間正男君 巡回連絡というのは今でも行なわれているというんですが、これは何ですか、職務行為でやっておるんですか、これがもしも戸口調査というふうに発展すれば、これは職権行為にはっきり変わってくる。そうしてしかも、個人の市民の家庭生活まで立ち入る、こういうことになるんですから、明らかにこれは憲法違反ですね。そういうことになるんですが、この巡回連絡というのは、これはいつ始まったんですか。
○国務大臣(中垣國男君) この国家公安委員会規則による巡回調査といいますのは、別にそういう権力的なものでも何でもなくて、任意調査でありますから、強制をするという、しいるというような制度にはなっていないわけであります。でありますから、今お尋ねのような疑問点は生ずる余地がないという建前からできておるのでありまして、特別にこれを発展させるとかさせないとかいう考え等は別に持っておりません。
○岩間正男君 巡回連絡の問題でも、非常にこれはまだ戦前の警察に対するそういう考えを持った立ちおくれた思想があります。そういうところで、これが運用されますと、相当な圧力になって、現に家庭調査のようなものも相当これはやっている、そういう事態が生じてくる。この点については、これは厳重に行き過ぎ、それからそれがさらに今言ったような戸口調査に発展する、そういう契機に今度の誘拐事件なんか逆用されるということがあれば、非常にこれは重大な問題だと思うのですね。この点はさっき法務大臣が明言されたように、断じてこれは戸口調査というものは今後行なわない、閣議でも話題には出たけれども、これは誤りであった、こういうふうに確認してようございますか。
○国務大臣(中垣國男君) 私が先ほど申し上げました戦前の行政警察規則によるそういうようなものを復活させる考え方は毛頭ないと、これははっきり申し上げておるのでありまして、閣議で出ましたのも、以前のような戸口調査というものができたらというようなものが前提となっての検討をしてみましょうというような結果になったわけでありますが、その結果、そういうことは復活させないと、こういうふうに申し上げておるわけです。 それから、御指摘をなさいました巡回連絡によりましての今までたとえばそういう弊害が起きたことがあるかというようなことでありますが、そういうようなことは一ぺんも聞いたことはございません。これをもっと権力的なものにして一方的な調査ができるようなことにするとかいうようなことは、政府としては全然これは考えていないわけであります。 それからなお、この問題につきましては、ここに国家公安委員長がおられますから、公安委員長からひとつ聞いていただきたい。法務大臣の主管ではないと思いますので。
○岩間正男君 公安委員長からもこれは伺いたいと思うのでありますが、この点ですね、明確にして下さい。
○国務大臣(篠田弘作君) この巡回連絡というのは、ここに書いてありますとおり、「受持勤務員は、良好な公衆関係を保持するため、家庭、商社、工場等各戸を訪問して行う巡回連絡に際しては、強制にわたることをさけ、犯罪の予防及び災害、事故等の防止の指導をする等公衆に対する積極的な奉仕を行い、公衆との融和の増進を図るとともに、その自発的協力によって犯罪情報を収集するようにつとめなければならない。」と書いてありますから、ここにあるとおりの問題に関する限りは巡回連絡は継続するつもりでおります。
○岩間正男君 これは、きょうの質問の中で詳細にやる気持はありません。これは別な機会にやりたいと思いますから、相当行き過ぎの問題もこれはあるので、そういうことは確認されていないというけれども、いろいろそういう問題があるのです。これが一般職務行為からさらにまた職権行為の方向に発展する、こういう事態があればたいへんだし、これは警職法の改正のとき非常にやはりこの問題も大きな問題になった問題であります。警職法の改正は、これは国民の意思で一応できなかったのでありますが、これがこういう機会に誘拐事件というようなものに藉口して復活される、こういうことのないように、これははっきり戒めなければならぬと、こういうふうに思います。 もう一つお聞きしたいのですが、これは法務大臣ですが、今度の問題で罰則強化あるいは法改正に持っていく、そういうふうに誘拐事件そのものを、ともするとそういう形だけで解決しようとなると、問題の本質からやっぱりそれるのじゃないか。リンドバーグ事件の問題が出ましたけれども、これはどうですか、リンドバーグの問題があってアメリカで法改正をやって死刑を科すと、こういうことで、実際は犯罪は消えましたか。犯罪は少なくなっていますか。これは統計的にあなた方調査されていると思うが、そう行っていない。だから、法改正をして刑量を重くしてそれでこの問題は解決するというような簡単なわけにはこれはいかないのじゃないか。問題はやはりこの誘拐事件のしかも逮捕捜査、こういうものの不備の問題について、これは私はあとで質問したいと思うのですが、もっと本質に触れる問題を明確にする、そうしてそこで現状の不備というものをはっきりえぐり出すということをしないと、単に法改正をやって刑量を重くすればそれでもって何とか解決するというような簡単なところに問題を持っていくべきでないと思いますが、その点はいかがですか。
○国務大臣(中垣國男君) お答えいたします。岩間さんのお説のとおりに、法定刑の引き上げで刑罰を重くするだけでこの種の問題を全部防ぐことができるというようなふうには実は考えておりません。その点は同感であります。しかしながら、最初に私たしか稲葉さんにお答えしたと思うのでありますが、身のしろ金を要求するようなこういう誘拐事件、かりにそういった新しい形態の犯罪に対処しようといたしますと、現在の刑法では実は必ずしも十分とは言えない問題もあるのです。それからその他の誘拐事件の刑につきましても、いろいろほかの犯罪とのバランスという問題もありまして、やはりこの際は引き上げるべきであるという結論に到達して、刑法改正準備草案には盛られているのでありますが、これはまあこれだけで全部を防ぐということはできないでありましょうけれども、それでは刑罰を引き上げることが何ら影響がないかというと、私はやはり影響があると思うのです。ただ、これで事足れりというふうに考えるべきではないというそういうお説に対しましては同感でございますから、その趣旨は十分尊重して参りたいと考えております。
○岩間正男君 まあ……。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 簡単に結論をつけて下さい。
○岩間正男君 これは警察機構問題ですね、この問題を徹底的に論じなければ今度の誘拐事件の真の原因というものは明らかにならないと思う。これはあとでやりますけれども、要は、ほんとうに民衆の警察として警察の任務というものを徹底させる、そこにはっきりした根拠を置かなければ私はやはり今度のような事件というものは実は根絶されない、こういうふうに考えております。そういう点からいいますと、どうも今の刑量だけを問題にする——むろんそう大臣は言っておられないわけですけれども、このほうが一番大元なんです。一番大元の問題を明らかにしないでおいて、小手先のような第二次的な量刑だけの問題を出してきたのでは根本的な解決はあり得ない。アメリカの例を見ますというと、かえって死刑を出したので犯人は死を覚悟して凶暴化する、こういう事態が現実に起こっているのですから、ですから、どうしてもこの問題の一番大元である根因をはっきり突き詰めるということが最大の問題だと思いますので、念のためにこれは付け加えておきたいと思います。
○稲葉誠一君 ちょっと、私がさっきお聞きしていました捜査費の問題、警備警察は答えがあったのですが、刑事警察のほうが何かはっきりしないので、ひとつ正式にお答えを願いたいと思うのです。
○政府委員(宮地直邦君) 刑事警察の捜査費は、三億七千百四十二万三千円でございます。
○稲葉誠一君 そうすると、私がいただいた資料のとおりですね。そこで、これは気づくことですが、これは警察行政の基本問題にも関連をするのですが、一般刑事警察の捜査費が三億七千万しかない。警備警察の捜査費が倍以上の八億三千万もあるということ、これは、現在の警察がいわゆる公安警察を中心に行き過ぎていて、個人の生命、財産、身体を守る一般刑事警察というものを軽視をしている、そういう行き方、これをはっきり表わしておるのじゃないですか。それは刑事局長はどういうふうに考えます。
○政府委員(宮地直邦君) 刑事警察と警備警察との比較を金額、人員等においていたすことは困難でございます。やはり費用は多いほどいいことは事実でございますが、その事案の性質上こういう数字になっておるものと考えます。
○稲葉誠一君 人員、費用で比較をするのは困難だと。それじゃ何と比較するのですか。比較するしようがないですか。
○政府委員(宮地直邦君) 刑事警察の対象としておりますのは、御承知のとおり、ことに刑法犯を中心とする事件でございます。こういう場合の質にかんがみまして、この費用で足りるか足りないかという問題になりました場合に、われわれ刑事警察の刑事の活動を促すために予算が多いことを期待いたしますが、はたしてそれでは警備警察の費用と比較においてこれで不十分かどうかということは、これは一がいに言えるものじゃないと思うのでございます。
○稲葉誠一君 私は、刑事警察が警備警察と比較して不十分だとかなんとかということを聞いているのではなくて、日本の警察の動向を見るときに、捜査費がどういうふうに配分をされているかということを一応見ますと一番わかりいいじゃないですか。そうならば、警備警察に重点をずっと置かれて、いわゆる公安事件中心に日本の警察が運用をされているとこの数字から見られるじゃありませんか。それから、人数の点でもそうですよ。全体が十三万人の中で、刑事警察が一九・一%です。それで鑑識を入れないというと二万二千です。刑備が一四・一%で一万八千幾らですね。これは今交通事件が非常に多いわけですが、交通ラッシュで交通事件が非常に多くて困っているわけです。それじゃ交通事件の一体人数はどのくらいあるかというと、一万二千三百五十人じゃありませんか。警備警察よりもずっと少ない人数で交通警察というものが運用されているじゃありませんか。こういう国民に必要な部面のものが非常に少ない。交通警察の予算を見れば七億六千万でしょう。警備警察は二十二億です。三倍以上の金が警備警察にかかっているじゃありませんか。そういう形の日本の警察の運用ということ、これが一般刑事警察というものが軽視をされてくる現実に一つの原因をなしている。日本の警察行政の一つの流れというものが公安行政を中心に行なわれ過ぎている。そっちにウエイトがずっといっているわけです。だから、普通の警察が予算の面でも人的な面でも少なくされてきて、そこに一つの問題が出てきているわけです。これが日本の警察の今の姿じゃありませんか。これは予算面、人数の面から見れば、率直にそういうことが私は言えると思うわけです。しかし、あなたは言えないと、こう言うかもしれない。見解の相違であるかもしれぬが、私はそういうふうに考える。だから、だれが見ても警備警察のほうが進んでいっちゃって、刑事警察のほうがあと回しにされておるのじゃないか。こういう一つの形が日本の警察に現われていると考えざるを得ない、こう私は思うわけです。ここに警察制度のわれわれが考慮しなきゃならぬ問題がある、こういうふうに考えるわけです。 それで、刑事警察が現実に扱う事件と警備警察が扱う事件で、そうして警察が立件をした事件、これはどういうふうな割合になっていますか、全体として大ざっぱでもいいですよ。刑事警察が扱って警察が立件をして検察庁に送る事件と、警備警察の中で立件をして検察庁に送る事件と、これは一体どういうふうな数字になっているのですか、割合は。
○政府委員(三輪良雄君) 警備事件と申しますものを単純に件数で申しますと、三十七年が九百四十六件ございます。人員にいたしますと二千三百三十九名検挙いたしております。
○稲葉誠一君 刑事警察は……。
○政府委員(宮地直邦君) 刑事警察と申しましても、犯罪統計で参りますと、こういうものを含めまして最近は約百五十万件であります。
○稲葉誠一君 大体、一般刑事警察だから、一人一件と見ていいでしょう。そういう勘定ですね。共犯のやつを一件と見ているのですね。大体百五十万人でしょう、大ざっぱに見てね。これは交通違反、道交法事件は入れないのですか。
○政府委員(宮地直邦君) 入れておりません。
○稲葉誠一君 ここにまた日本の警察のあり方が問題になってくるのじゃないですか。これは国家公安委員長、あなたお忙しいのでやめますけれども、まあ聞いておいていただきたいと思う。法務大臣も聞いておいてほしいと思うけれども、こういうような形の統計を一つ見て、刑事警察が三億七千万円、警備警察が八億三千万円。事件となってくるものを見れば、警備警察はわずかに九百四十六件で二千三百三十九人、事件として上がってくるものが。一般刑事事件は百五十万人以上が事件になって立件をされておる、こういう数字ですよ。こういう形の中で、しかも捜査の費用というのは警備警察が一般刑事警察の倍以上になっている。このあり方、これは非常にゆがんだ形で日本の警察が運用されておるわけです。それは政治目的があってそういうゆがんだ形がとられているかもわからぬけれども、いかに何でもあまりにいびつ過ぎるわけですよ。刑事警察が手薄になっていることが今度のような事件を生んだ一つの大きな本質的な原因になっていると私は考えざるを得ないわけです。そう私は思うわけです。これは今しかしあなたと問答しても、結局意見が分かれるところでしょう。私どもはそういうふうに考えておるわけです。だから、公安委員長としては、それは会議のチェアーマンで済むかどうかわかりませんが、全体に日本の警察がこういう動向に行っているということを私ははっきり把握してもらいたい、こう考えておるわけです。まあこれだけのことを言って、私は答弁を求めていませんから、きょうの私の質問を終わります。終わった中で最終的に私はもとへ戻って、この二つの事件を何とか早急に解決をぜひしていただきたい。こういう批判は批判として、それはもう別として、早急に解決をしていただきたいと、こういうことを私としても心からお願いをして、期待をしてというか、そういうふうな形で一応きょうの私の質問は終わります。いずれまた日を改めて警察制度の基本的な問題については私自身ももっと深く研究をした中で質問を続けていきたい、こういうふうに考えます。 きょうは、時間の関係で、私の質問はこれで終わります。
○委員長(鳥畠徳次郎君) 他に御発言もないようでありますから、一応この程度でとどめます。 本日はこれにて散会いたします。 午後五時十九分散会 —————・—————