社会労働委員会 第23号
- 発言数
- 112 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1963/06/13
会議録
○委員長(加瀬完君) ただいまより開会いたします。 失業保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。 まず、政府より提案理由の説明を聴取いたします。大橋国務大臣。
○国務大臣(大橋武夫君) ただいま議題となりました失業保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。 失業保険法は、昭和二十二年第一回国会において制定されて以来、数次の政正によりその内容を整備充実し、今日に至るまでわが国における雇用失業対策の重要な柱の一つとして、よくその機能を発揮してきたところであります。 近年、わが国の雇用失業情勢は、経済の高度成長に伴い全般的に著しい改善を示しておりますが、なお、石炭鉱業、金属鉱業等の一部の産業からは、相当数の離職者が発生しつつあり、また、中高年令の失業者等はその再就職が依然として困難な事情にあります。したがって、これらの者を含めた失業者の生活の安定をはかり、その再就職を促進するための諸施策は、さらに一段と強化されなければならない現状にあります。 また、昨年八月、社会保障制度審議会から社会保障制度の総合調整に関する基本方策について内閣総理大臣あてに行なわれました答申及び勧告には、社会保障制度を一そう充実強化すべきことが要望されているところであります。 さらに、失業保険財政の問題につきましては、さきの第三十四回国会において可決されました失業保険法及び職業安定法の一部を改正する法律の附則において、国庫負担の割合、保険料率等について昭和三十四年度から昭和三十六年度までの収支の実績に照らして検討の上、昭和三十八年三月三十一日までに所要の改正を行なうべきこととされております。 このような事情にかんがみ、政府といたしましては、ここに、給付の改善及び失業保険受給者に対する就職促進に関する措置の充実をはかることを主とした失業保険法の一部を改正する法律案を提出いたした次第であります。 次に、その内容について概略御説明申し上げます。 第一に、一般失業保険の給付の改善についてであります。まず、失業保険金の最高日額を最近における賃金の上昇傾向等を考慮の上、現行の七百円から八百六十円に引き上げることとし、また、最低日額につきましても、告示の改正により現行の百二十円を百八十円に引き上げることとするほか、新たに、扶養親族を有する受給資格者について、配偶者及び子の数に応じて扶養加算を行なう制度を設けることとし、給付内容を改善することといたしました。 次に、同一事業主に継続して雇用された期間の長短に応じて給付日数を定める現行制度につきましては、今回これを改めることといたしました。すなわち、失業保険に関する事務処理体制を大巾に機械化する方針の下に、これが整備を待って、昭和四十年度からは、異なる事業主に雇用された場合にも、被保険者として雇用された期間を一定の方法により合算し、その期間の長短に応じて給付日数を定めることとし、制度の合理化をはかることといたしました。 次に、現在受給資格者が公共職業安定所の指示した公共職業訓練を受ける場合に行なっている給付日数の延長措置を、法令の規定に基づく訓練、講習についても行なうこととするとともに、新たに、転職訓練期間中は技能習得手当及び寄宿手当を支給することとし、受給資格者が進んで転職訓練を受け得る条件を整え、その再就職促進に資することといたした次第であります。 さらに、失業中に疾病にかかり、または負傷した受給資格者に対しては、新たに、失業保険金相当額の傷病給付金を、所定給付日数を限度として支給することとし、これら失業者の労働能力の回復保全に資することといたしました。 第二に、一般失業保険の保険料率の改訂方法についてであります。現行制度におきましては、短期間の給付予想額によって、緊急に保険料率を引き上げ得ることとしておりますが、最近における失業保険財政の状況に照らし、また、失業保険制度においては、好況期に生ずる剰余をもって不況期に増大する給付を保険料率を引き上げずにまかなうよう、その財政を運用することが適切であるとの観点に立ちまして、今回これを改めることといたしました。すなわち、積立金の適正規模を定め、この規模を積立金が上回り、または下回るに至ったときには、一定の範囲内で、保険料率を弾力的に上下させる措置をとり得ることといたしております。 第三に、日雇失業保険についてであります。まず、国庫負担率につきましては、昭和三十五年度以降三分の一の国庫負担を行なっても、なお相当額の赤字が生じている収支の状況にかんがみ、現行の原則四分の一の国庫負担率を原則三分の一に引き上げることといたしました。 次に、現行の継続三日、通算五日の待期制度は、月の前半には失業しても保険給付が行なわれない場合が多い等の問題点がありますので、これを改め、各週最初の不就労日については失業保険金を支給しないこととし、制度の改善をはかったところであります。 また、公共事業等に就労する日雇労働者の場合に見られるように、予算年度の切替期、積雪期等年間一定の時期に三カ月ないし四カ月にわたって、就労機会が少なくなる者に対して、その期間失業保険金の支給を受けることができるようにするため、新たに、日雇失業保険の給付の特例制度を設けることといたしました。 第四に、失業者多発地域で給付延長措置の適用を受けている受給資格者が、労働力需要地域へ移転して求職活動を行なう場合にも、給付延長措置の適用を受けられることとしたこと、就職促進措置の拡充に伴い給付制限事由を整備したこと等所要の整備をいたしております。以上のほか、本改正案の附則におきまして、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の一部を改正し、激甚災害による事業の休廃止に伴い被保険者が休業した場合、その休業を失業とみなして失業保険金を支給する措置を決定できることとするとともに、その他関係法律の条文につき所要の整備をいたしております。 以上、簡単でございましたが、この法律案の提案理由及びその概要につきまして御説明申し上げた次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
○委員長(加瀬完君) 本日は、提案理由の聴取のみにとどめます。 —————————————
○委員長(加瀬完君) 次に、労働災害の防止に関する法律案を議題といたします。 前回に引き続き質疑を行ないます。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
○柳岡秋夫君 本日は労働大臣もお見えになっておりますので、基本的な問題からお聞きしていきたいと思いますが、まず、この法律を制定した目的につきましてですが、最近、産業の近代化あるいは高度成長政策の進行、こういうことで、政府の統計等を見ましても、この労働災害の件数が漸増しておるわけです。そこで、もちろんこの労働災害の防止につきましては、官民一体と申しますか、それぞれ十分な対策を立てていかなければならぬということはわかるわけでございますが、しかし、私どもが、この法律の内容を詳細に検討して参りますと、この法律は、どちらかと申しますと政府の監督行政、これをこの法律で作られる団体に肩がわりさせる、いわゆる政府が当然やらなければならないような任務、責任というものをこの団体に転嫁するものではないか、こういう疑問が多分に持たれます。 詳細につきましてはまた一条一条によって見解を申し上げていきたいと思いますけれども、事業主の意識的なサボタージュによって、むしろ労働災害が増大をする、そういう危険も一面には持っておるのじゃないかというふうに思うわけでございます。私は、むしろ今の労働基準法なりあるいは安全衛生規則あるいは災害補償法、こういうものを充実、改正をして、そうして監督行政を強化する、事業主に厳格に守らせる、こういうことのほうが、労働災害の防止には当面大事ではないか、こういうふうに思うのでございますけれども、この法律を制定した趣旨について、もう一度労働大臣からお伺いをしたいと思うわけです。
○国務大臣(大橋武夫君) 政府の労働基準についての監督行政は、御承知のとおり、近年におきまして経済の著しい発展に伴い、基準法適用の事業場が非常な勢いで増加の趨勢にございまするし、これに対する工場監督、すなわち基準監督官の定数というものは、それに応じて増加いたしておりません。このために現実面におきまして基準行政の監督上、若干の手不足を感じられておりますことは、これは事実でございます。 しかしながら基準監督ということは、これはどこまでも政府の責任において実施すべきものでございまして、これを民間団体に肩がわりするということは、労働行政の本旨に反するのでございまするので、政府といたしましても、さような考えは毛頭ないわけでございます。ただ、しかし基準監督と申しましても、御承知のように技術の革新、その他工場の設備あるいは作業の態様というものが日進月歩でございまして、これに対しましては、安全を確保し、あるいは衛生を確保するための手段というものも、これに応じて考えていかなければならぬものであります。なかなか、政府といたしましては、できるだけこれらの新しい環境に適合するような基準を作りたいと思って努力はいたしておりますが、御承知のように技術革新のテンポはすこぶる早いので、この方面におきましては、やはり安全維持の責任の一端を、当然社会的に分担をしなければならぬ。事業者及び労働者の諸君にも、これらの新しい分野における災害予防施設ということには、全面的に御協力をいただかなければ、安全の目的を達しがたい面があると考えられるわけでございます。 そこでこの法律におきましては、政府として災害防止計画を樹立する、この計画にあわせまして、事業主の団体による自主的な活動を促進する措置を講ずることにいたしておるのでございますが、これはあくまでも事業主の自主的な活動でございまして、監督行政の肩がわりを民間団体にやらせるという考えではございません。これはあくまでも監督行政については、政府の責任で行なっていく。政府といたしましては、現在の手不足につきましては、できるだけすみやかに人員の充実をはかり、監督の完璧を期するようにいたしたい。しかし、その政府の監督だけでは災害防止の目的は達成できない実情でございまして、この面においては、当然事業主及び労働者の自主的な活動が必要であるから、この面を今後助成して参りたい、こういう趣旨で立案をいたした次第でございます。
○柳岡秋夫君 今労働大臣も率直に、今の基準監督官の数から、あるいはその他の監督行政の体制の面に、十分現在の産業の発展に、即応した、そういう体制がとられておらない、こういうことを言われました。 そこで私は、今度こういう自主的な活動をするといっても、労働省として、それでは三十八年度、どういう、民間とは切り離してこの労働災害防止のために、監督行政の体制として、どういう予算的な措置あるいは監督官の増員の問題、あるいはまたその他の機動力の問題、こういう点について前進をはかろうとしておられますかどうか、私の点を……。
○国務大臣(大橋武夫君) 三十九年度の予算についての労働省の方針というものは、まだ現在三十八年度の予算に伴う法案が国会で御審議をいただいておるような状況でございまするので、労働省といたしましては、その法案の御審議について努力をいたしておる段階でございまして、来年度の予算の方針をまだ省内で準備をする段階に至っておりません。したがいまして、明確な具体的なお答えをいたすことは困難でございまするが、先ほど申し上げましたような実情にございまするし、また、災害の防止、また労務管理の指導その他労働行政は、今後非常に重要性を認めざるを得ない段階でございまするので、私どもは工場監督制度の充実ということを来年度の労働行政の重点施策として取り上げなければなるまい、かような気持を持っておる次第でございます。
○柳岡秋夫君 私は、これは労働省としても相当な監督行政の体制というものを確立していかないと、この法律ができることによって、今まで個別的に監督行政をしてきた労働省が、今度は個別的なそういう監督行政から、この団体に対する集団的な監督行政、こういうところに移っていく危険性が十分あるのではないか、こういうふうに思うのですが、この点いかがですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 現在の手不足の状況が、この上とも続いて参るということになりますと、おのずからやすきにつくといいますか、あるいは何とかその場を糊塗していくと申しますか、そういうことの結果、自然に御指摘のような弊害に陥りやすいと存じます。これに対しましては十分監視をいたしますと同時に、監督行政の強化拡充のために、急速に措置をとることによって、さような心配をなくしていきたい、かように存ずる次第でございます。
○柳岡秋夫君 この集団監督行政に陥る危険性があるという面につきましては、なお条文の中で、見解をただして参りたいと考えております。 この防止団体に対する補助金の関係でございますが、おそらく労働災害防止のための予算というものは三十八年度予算三億八千万円、しかも防止団体にはわずかに一億五千万円の補助金である。これだけの資金といいますか、費用をもって、労働省が考えておられるような効果、成果を期待できるとお考えになっておりますか。
○国務大臣(大橋武夫君) これは新しい制度のまず最初のスタートでございまして、今後、もっともっと力を入れなければならぬと思っております。
○柳岡秋夫君 先般も局長のほうに、ちょっとお伺いをしたことですが、この労働災害の発生原因ですね、これにつきまして、私どもとしては、やはり現在の労働者の低賃金、あるいは労働強化、特に労働災害が中小企業、零細企業に非常に多いということから考えても、大企業と比較をした低賃金あるいは長時間労働、こういうものが、私は労働災害の発生の大きな要因になっておるのではないか、こういうふうに思うのです。したがってこの労働条件全般の向上というものを考えていかなければ、やはり根本的な労働災害の防止もはかれない、こういうふうに思っております。この点、労働省として、どういうふうにお考えになりますか。
○国務大臣(大橋武夫君) 安全のためには施設の改良も必要でございまするが、しかし、いかに施設を改良いたしましても、その現場で行動する労働者の適応性が欠けておりましては、災害の防止の効果が上がらないと思うのでございます。そしてその労働者の災害防止についての適応性を築き上げる根本は、労働条件、すなわち労働者が心身ともに健全な状態で常に労働に対処する、こういう条件を維持していかなければならない、こう考えて参りますると、お説のとおり労働条件の維持向上は明らかに災害防止上必要なる、また欠くべからざる点であると思うのでございまして、かような意味におきまして、労働省といたしましても、長時間労働のできるだけすみやかなる短縮、また不当なる低賃金を排除するための最低賃金法の運用の強化充実、こういうことを早急に進めたいと思っております。
○柳岡秋夫君 そこで、先般も中央労働基準審議会の運営状況あるいは今までの審議会で討議をされ、また労働省等に建議をされた内容についてお伺いしたのでございますが、当然私は最近の雇用の近代化、産業の近代化に伴うこの労働基準全般の労働条件向上の方針に沿った労働基準法の改正なり、あるいは労働災害防止のための労働基準法の改正、こういうものを私は検討していく段階ではないか、こういうふうに思うのですが、先般の委員会における御答弁では、中央労働基準審議会では、そういうことはやっておらない、こういうふうにお聞きしております。労働大臣として、現在の労働基準法の抜本的な改正あるいは労働災害防止のために関係法令の改正をする、そういう意思があるかどうか、お伺いしたいと思います。
○国務大臣(大橋武夫君) 労働基準の問題は、人道上あるいは保安上、また労働者の衛生上あるいは災害防止上、こういった点で、いろいろ問題があるのでございまして、これらの点につきましては、労働省といたしましては、産業経済界の進展に対応して、常に災害防止の目的を達成するよう不断に研究を続けなければならぬと思うのでございます。ことに今回の法案におきましては、長期あるいは年々の労働災害防止計画を政府としては確立することにいたしております。その計画の立案並びに実施を通じまして、今後とも労働基準の改善に努力をし、要すれば法案の改正ということにも当然進むべきものと考えております。
○柳岡秋夫君 その労働災害が中小企業、零細企業、特に百人未満の事業所において非常に多い、こういう点が監督行政の中で把握をされ、そうして事業主に対しても、それ相当の措置をするような注意なりあるいは監督をしておる、こういう御答弁があったわけでございますが、しかし一般の基準法に示された労働条件すら、百人未満の事業所においては、なかなか守られておらない。ましてやこういう労働の安全衛生という面については、なかなか手が回らないというのが事業所の実態ではなかろうかと思うのですが、そういう百人未満の零細企業に対する、特に安全衛生に限ってでけっこうでございますけれども、もっと政府として思いやりのある対策というものを立ててやらなくちゃいけない。問題は、やはり設備をしよう、あるいは安全な機械を入れよう、こういっても、資金的な裏づけというものがなければ、なかなか思うようにいかないのじゃないかと思うのです。こういう点について、三十六年でしたか去年からですか、何か十億の特別融資をきめた、こういうふうなことをいっておりますけれども、わずか十億くらいの金で、この適用事業所が百七十二万三千六百七十八もある、しかもその約九〇%が中小企業であるということを考えますと、非常にわずかな資金的措置ではないか、こういうふうに思うわけです。しかもこれは今後、今のところはこの増額については考えておらない、こういうようなお話でございましたけれども、労働大臣としてそういう百人未満、特に零細企業に対する金融的な措置をどういうふにはお考えになっておりますか。
○国務大臣(大橋武夫君) 政府といたしましては、中小企業における安全のための融資につきまして、御指摘のような措置をとっておるのでございます。従来のやり方が、あるいはうまくいかないのか、あるいは指導の方法がまだ研究不足でありますのか、現在まで、またこの原資は使い切っておらないような状況でございますが、今後、この労働災害防止に関する法律案に伴いまして、年々の災害防止の計画を樹立し、またことに事業主の団体による自主的な活動を促進する等の措置を講じまするので、安全の問題についての一般の理解を深めることができるわけでございます。また、特に基準監督所等の行政機関並びに各安全団体等の官民の機関、こういうものを通じまして、大いに安全の必要性を強調することによりまして、事業主の一そうの安全についての自覚、したがって設備の改良についての熱意を高揚いたして参りたいと思います。さようになりまするならば、これに対する資金需要も増大いたすのでございますので、労働省といたしましては、事柄の性質上、最優先的に取り扱っていくべきものであろうと思いますので、今後とも資金の必要額を常に満たし得るよう努力をいたす考えでございます。
○柳岡秋夫君 そうしますと、この十億の融資につきましては、本年切れるわけですね、一応。ですから、それをさらに増額をする方向をもって検討すると、こういうことで確認してよろしゅうございますか。
○国務大臣(大橋武夫君) そのとおりでございます。
○柳岡秋夫君 次に、労働災害の防止につきましては、私はやはり事業主が、当然その責任を負うべきことはもちろんでございますが、やはりその当該職場に働く労働者の協力がなければ完全な災害防止もできない、こういうふうに思うのですが、この法律案を見てみますと、労働者の協力という点に非常に消極的な面がうかがえるわけです。たとえば労働基準法の中で、就業規則等の作成、変更、そういう場合には労働者を代表する者の意見を付して届け出ること、こういう一歩進んだ面があるのですが、この法律の中には、そういう面が書いておらない。ただ労働者の意見を聞くと、こういうだけです。 これでは、労働基準法に示されたいろいろな規定を最低として、この法律なり、これからの防止規程というものは作っていくのだ、こういうふうに言われていますけれども、私は労働基準法よりも、一段下がった内容のものではないか、こういうふうに思うのですが、この労働者の協力態勢について、もっと前進をさせる考えはございませんか。
○国務大臣(大橋武夫君) 就業規則につきましては、何分百万以上の事業所の問題でございまするので、手継等を簡素化する必要があり、しかも労働者の意見が確実に反映しておるということを行政手続の上において明らかにする必要もありまして、書面上の手続を詳細に規定いたしてあるわけであります。しかしながら今回のこの事業主の団体におきましては団体の数も中央団体でございますのでわずかで、労働省といたしましては、これらの団体において、いかなる手続によって、いかなる内容の規則が制定されるか、これは常に留意いたしておるところでございますので、労働者の意見が正しく反映されておるかどうかということは、あえて書面の添付をいただかなくても、はっきりわかる事柄でございます。 したがいまして、私どもはこの問題について、労働者の協力ということが全面的に必要であるということは、就業規則の場合と変わりなく認識をいたしておるのでございます。ただ、その手続は、必らずしもそれに準じなくとも、労働省としては、はっきりその労働者の意見を確認の上認否を決することができる。かように存じまして、特に規定をいたしてないわけでございます。しかしそのことは、労働者の協力が必要であるということを否定するわけではございません。全く労働者の協力が必要であるということは承知をいたしておりまするので、今後必要に応じまして手続等によって、要すれば、それをはっきりきめるようにいたしたい。またきめめる場合におきまして、省令等においてきめるということも考え得るのでございまして皆さまの御意向等もございますれば、省令に規定をするという方法をとりたいと思います。
○柳岡秋夫君 省令できめると言いますが、この法律案の中には省令できめるというのが非常に多いのですね。私はやはり省令というものは、これはもう、われわれがその内容の審議に参加はできないということもありまして、しかも勝手に労働省が作れる。こういうものではないかと思うのですよ。したがって、私どもは信用しないわけではないのですけれども、非常にこの法律なり、あるいはわれわれの真に考えている労働災害防止の精神に反するような法の運営、運用というものが行なわれる危険性が私は十分今までの例を見ましてもあると思うのです。したがって、できるならば私はやはり、この中に明確に労働者の代表の意見を聞くにはどうするのか、具体的にどうなのかということを入れれば一番いいのじゃないかと思うのです。 その点については、また後ほどお聞きしますけれども、もう一つ、一段と労働基準法よりも条件が悪いという一つの点としては、労働基準法に違反をした場合には罰則があるのですね。ところが、この法律には防止規程に違反しても、罰則はないのです。そうしますと、事業主は何か労働基準法によると罰則があるから、そっちに、この防止規程のほうに肩がわりしてしまって、責任をのがれる。こういう危険性が非常にあると思うのです。しかも事業主が意識的に、その防止規程をサボっても罰則はない。自由にやれる。それに対して、労働者は何ら抗議をすることができない。これは使用者と労働者の力関係ということに、また最終的にはなるかもしれませんけれども、たとえば一事業所で防止規程に違反した。守っておらないことがやられている。そこの労働者が抗議をする。そうすると、事業主は、いや、これはもうちゃんと就業規則ではなくて——労働基準法関係ではなくて、いわゆる団体の防止規程によっているのだから、こう言いのがれをしていく。そういう点から、私は防止規程を作っても、事業主が意識的にサボっていく。こういう危険性も十分に考えられるわけです。そういう点はひとつ、どういうふうにお考えになっておりますか。
○国務大臣(大橋武夫君) この安全についての事業主の責任というものは、労働基準法によりまして罰則で強制されるというのが、これが法的な規制としての原則でございます。 しかしながら、先ほど来申し上げましたごとく、時勢の進展によりまして、いろいろ産業設備の改良等がございまするので、安全の問題も、常に日進月歩しなければならぬと思うのでございます。そこで基準法に規定はしていなくとも、安全のための経験あるいは理論の上から考えて、防止上必要な措置を事業主が自主的にきめ、そしてこれを実行していく。そのうち重要なる事柄は、これは防止規程の中に、業者団体の申し合わせ的なものとしてきめられるわけです。それについては業者間の制裁はありますけれども、罰則はございません。しかし、これできめられたことは、業者といたしましては、それを共同責任として実現に努力すべきであって、その努力を怠った場合には、団体の内部の罰があるわけでございます。そういう団体の安部の罰という制裁によって、この新しい安全の責任を進めていくのでございますが、ある程度時期もたち、また、それに伴う各事業場等の設備等も完備いたして参りまするというと、政府といたしましては、もはやこの段階においては、事業主のこの責任は基準法によって強制しても差しつかえない段階にきたと認める時期があろうと思います。その場合においては、私は当然防止規程の内容は、今度は基準法上の責任として取り上げられる。そして基準法上の罰則によって強制されるというものになるのではないか。すなわち防止規程というのは、将来事柄によっては基準法に取り上げられるようなものにだんだん成長していく。その初期の過程がこの防止規程になるのではないか、こういうふうに思うのでございまして、これは安全に関するいろいろな問題は、やはり業者、労働者、行政官庁、こういうものの相互の協力によって、初めて効果を上げ得るのでございまするから、そういう意味から申しましても、私は基準行政の発展のために、今回のごとき措置は前向きのものであると、こういうふうに考えておる次第でございます。
○柳岡秋夫君 そこで先ほど私は、一つの懸念として、この団体が作られることによって、監督行政が個別監督から集団監督に移る危険性はないかということを申し上げましたけれども、この防止規程に違反をした場合、当然個別監督の強化によって、労働基準法違反ということで、事業主に対する注意、監督をすることは当然あるべきだと思うのですけれども、そういうことは当然だとも思うのですけれども、どうも先ほど申し上げましたように、何かこの個別監督行政がおろそかにされて、ただ、防止団体に対する監督行政のみに陥るということになって参りますと、今言った罰則の問題についても、労働省としては事業主に対して厳格な態度がとれない、こういう危険性を私は感ずるわけです。そういう点はございませんか。
○国務大臣(大橋武夫君) 御懸念のお気持はよくわかりまするが、基準行政の監督ということは、あくまでも、これは基準法の範囲内に属することでございます。しこうして、この基準法の要求する監督というものは、どこまでも基準監督官に属しておるわけでございます。で、この範囲内においては、この災害防止団体は何ら関係する余地はございません。ただ、そういう基準を守るように業者がお互いに自制をし合うという程度でございまして、法的には、何らこの団体は基準監督そのものにはタッチしないのであります。 したがいまして、この防止規程の目標といたしておりまするのは、基準法では、そこまで事業主に要求しておらない、しかし産業労働界の実情からいって、災害の防止の完璧を期するためには基準法では要求されていないが、事業主に対しては、ここまで注意、あるいは努力をしてほしいという法律以上の事柄について、防止規程というものが定めをいたすわけでございます。したがって、その防止規程の範囲につきましては、基準行政外のことでございますから、これは基準監督官の仕事の範囲ではございません。しかし先ほど申し上げましたるごとく、防止規程の中でも、だんだん時勢の進展に伴いまして、これは全国的に基準法中に取り上げて、基準法上の事柄として全事業者に対して責任を持たせるべきものだというものになった場合には、その事柄は、これは基準法の中の規定に取り上げられて、したがって防止規程で今まできめておったことを、今度は基準法の規定としてやっていくというふうに、だんだん基準法の内容が進歩整備されていくべきものだと。その場合には、当然その事柄は、今度は基準監督の個別監督の対象となる、こういうふうに考えております。
○柳岡秋夫君 まあ何か聞いておりますと、防止規程というのは、この労働基準法、あるいは安全衛生規則、そういうものより一段上の高いレベルの規定が作られるような感じを受けるのです。しかし、現実に労働基準法の基準すら、安全衛生規則の基準すら守られていない現実の中で、それ以上の高度のものの規定が作られるかどうかということです。 この防止規程を作るときに、労働大臣は、防止規程の内容が法令に違反せずと、こういうふうになっておりますがね、だから、労働基準法以下ということは私もあり得ないと思う。しかし、それよりも上の規定が、この団体によって作られるというふうに私は思わない。最低でも基準法ぐらいの規定が作られて、そして今度は一方では罰則があったけれども、今度は罰則がないから、さらに事業主は意識的にサボタージュをしていくという危険性が感じられる。これに対して労働省は、今までのような個別的な監督行政がおろそかにされて、防止団体に対する集団監督行政のみにしていく。そうすると集団監督行政になりますと、防止規程の内容は、法令に違反せずということになって認可しておりますから問題ではないということで、集団監督行政もおろそかにされる、こういう危険性を私は非常に感ずるわけです。ですから私は、やっぱり監督行政は監督行政として、その態勢を強化をして、そしてそういう個別的な事業主の違反に対しては、これは徹底的なやはり注意なり監督をしていく、こういうことがあわせてやられていかなければ片手落ちになる、こういうふうに思うのですが、その点はどうですか。
○国務大臣(大橋武夫君) その点は、全く同感でございまして、私どもは、この労働災害防止計画の樹立に際しましては、基準法違反については、従来以上の厳重な態度をもって臨んで、そうして少なくとも労働基準法の要求する最低基準は行政庁の責任で確保する、それよりもさらに高度の問題について、これらの団体の活動をお願いしていく、こういうふうにやりたいと思います。
○柳岡秋夫君 この法律が、労働省の説明によりますと、あくまでも労働災害の防止に対しての基準監督行政の一つの補完的な法律なんだ、法律というよりも団体が補完的な仕事をしていくんだ、こういうことなんですね。ところが、どうも内容を検討してみますと、補完的というよりも、当初私が申しましたように、労働省として当然やらなければならない仕事を肩がわりさせているという点があるわけです。 それはたとえば中央協会、さらにまた、防止協会に安全管理士、衛生管理士、こういうものをおく。それが事業主なり事業家に対しての技術の指導、援助をしていく、こういうことになっているのですね。私は今、全国の各職場に、それぞれ安全管理士、衛生管理士というものがたくさんございます。しかも先ほどから申しましたように、最近の技術の進歩、革新によって、さらにこの安全、衛生に対する知識、学識というものは、さらに高められていかなくちゃならぬ。したがって、当然そういう点については、まず労働省がこの安全管理士、衛生管理士に対する訓練を積極的にやる。そして民間団体は民間団体で別個のものを作ってまたやる。こういうことなら、ほんとうに補完的な業務というふうに私はなろうと思いますけれども、労働省としては、そういう各職場の安全管理士、衛生管理士に対しての訓練、これは職業訓練制度とも私は関連してくると思うのですが、これは今度の法律によりますと、団体が一つの養成所、そういう研究所を作って、そしてそういう衛生管理士、安全管理士を養成していく、こういうふうになっておるわけですけれども、私はこれは、労働省自体が今の産業態勢の発展の段階においては、もうこういう安全責任者、衛生責任者の知識の向上をはかるための、あるいは技術の向上をはかるための、そういう養成所を全国に一つ、あるいは各ブロックに五つでも六つでも作っていく。そういう積極的な意欲が私はあってしかるべきじゃないか、こういうふうに思うんですが、そういうお考えはないですか。
○国務大臣(大橋武夫君) 御説は全く同感でございまして、安全についての労働行政の、今後進むべき道は、まさにお示しのような方向に進むことだと思います。ただ現状においても、安全管理士あるいは衛生管理士に対しまする労働省の指導行政は行なわれておりますが、何分にも安全衛生の問題は、別によりまして、重点のおき方がいろいろ違いがあるのでございます。労働省といたしましては、現在においては、人員等の関係から全般的な、一般的な指導をいたしております。しかし個々の産業ごとに、重点的に指導していくということが必要だと思います。 これにつきましては、今後この業者団体に、まずそれをやらしてみる。将来自信のついた場合は、むろん労働省がそこまで進んでいくという時期もあるのではなかろうかと思います。
○柳岡秋夫君 それでは、具体的な問題につきましては、また次の委員会に譲りまして、最後に私は、この中央協会なるものが、労働省の外郭団体となって、今後労働省官僚と申しますと皆さん方に失礼かもしれませんけれども、そういう方々の、何か就職先のように陥る懸念を持つわけですけれども、私は今までの各政府機関で作られた、こういう民間団体は、往々にして、そういうような傾向を持っておりますので、懸念するわけですが、そういう点はいかがですか。
○国務大臣(大橋武夫君) さような意識を持って作ったわけではございません。もっぱらこの団体は、事業主の団体でありまして、その自主的な意思によって、必要なる人員の整備をお願いすべきものだと思います。労働省で、かれこれ干渉すべき事柄では断じてないと思っております。
○藤田藤太郎君 私はちょっと基本的なことを、大臣がおいでですから聞いておきたいと思います。 この法律案による団体、災害防止団体というものが、まあ外国の例が、三つ、四つ出ていますけれども、カナダのスタイルと大体同じようなスタイルだと私は理解をいたします。 そこで少し原則にかえって、私は形式の上では、今労働省から説明がありました、労働省は災害に対する監督をやる、そしてこの団体はそれを指導−むしろ災害防止のための促進をする。私は、その形式的な流れについてはわからぬでもないのです。しかし私の懸念するのは、人を雇うという心がまえだと、使用者の心から私は始まると思うのです。この前も少し議論をしたことがあるのですけれども、人を雇うのには、この人が社会人としてりっぱに生活もでき、そういうだけの待遇、労働条件をしなければ、持たなければ、人を雇う資格がないというところから、労使関係が始まっているのが、私は近代国家の姿だと思う。日本のように安ければよかろうという格好ですべてだと私は申しませんけれども、そういう関係で、労使関係が大筋としては行なわれていく。そこに私はあらゆる面の、資本に対する利潤追求というものが中心になって、災害がなかなか減らないのだ。だから、こういうPR団体ができてくるという筋道は、こういう運動を起こさなければいかぬという筋道はわかる。しかしむしろカナダの労使関係の事態と、日本の労使関係の事態というものを、どう分析されているか。私はどうも結論から先に言って悪いようでありますけれども、この事業団体というものが、ここで労働大臣以下が御答弁なさるような格好で、最も有効な役割を果たすのだということであったら、事業者から、そっぽを向かれるという答えになると私は思うのです。そうでない。この事業者が、事業団仲が持つ、協会というものが持つというならば、そこには、われわれが懸念するような問題がたくさん出てくるというのが私たちの不安なんです。 たとえば労働災害に対する安全衛生の監督行政をやると、こうおっしゃるわけです。私は、労働監督官が二千三百人だから、足るとか足らぬとかいう議論をしているわけじゃない。違反行為が起こらないという——産業、生産の公器をになう経営者が、それに応じての意識があったら、四十万件や五十万件の私は違反行為は出てこないと思う。私はそこに根本の問題があると思うのです。それからもう一つは、そういうことであれば、労働大臣以下がおっしゃるように、より効果を上げたいということであれば、私は、予算上を見ると一億五千万円ずつ出てくるわけでありますけれども、そんならなんなぜこの団体に最も有効な宣伝、要するに促進団体として、使用者ばかりでなしに、労働者だとか学識経験者が入って、より有効な団体をなぜお作りにならぬか。それが作れないということであれば、そういう議論が進んでくると、何か隠れみのにこの団体がなるのではないかという不安が出てくるのが私は普通の人情の流れだと、こう思うわけであります。そこらあたりの問題が私は根本だと思う。労災保険から金を出す。しかし労災は、使用者だけが金を出しているのだから、この金を主として使うのだから使用者だけなのだ。私は災害防止という概念は、そんなものではないと思うのです。むしろ使用者の認識が、私はみんなとは言いませんけれども、改めてもらいたいことは、より労働力を有効に生産に使って、経済が発展していく、国民の生活が向上していくというところに問題の焦点があるのではないか。そういう立場から、私は、労働省はなぜこのような団体をお作りになるときにお考えをいたされなかったか。労働省の監督行政を補強するために作るのだ。それなら、それで流れとしてはりっぱな運営を——要するに、何ですか、効果を上げるのだという、この筋だけを聞いておったら、そのようでありますけれども、受け入れ態勢はどうなんだという問題になってきたら、私が今申し上げたような議論にならざるを得ないのじゃないかという気がいたすのです。 だから、私は、そういう点を労働省として、なぜもっと大きく、たとえば生産と消費のバランスをとる、経済が全体に繁栄していく、それには、せっかくの労働力というものを、設備が悪かったり一または、不注意といいましょうか、もう過度の労働によって災害が起きたりするようなところの意識を、なぜ変えるという問題もおやりにならないか、そこらあたりが第二点。 第三番目は、私は、今のような状態であるから、二千三百人の監督官では、どうにもならないという、だからそういう業者、経営者、生産業者や人を使う方々の意識が高かったら、二千三百人でも監督官は余るかもしれません。私はそう思う。違反行為が出ない。その中で安全衛生の設備を拡大していくというところに、大いに労働省がおやりになって、そうして、こういう団体をお作りになって、より促進していくということになれば、幾らかわからぬことでもない。ところが、受け入れ態勢というものに、肝心の基本問題にメスを入れないで、こういう団体をお作りになったら、結局答えは私が前提に申し上げましたように、これがシビアーにあなた方がおっしゃるとおりにやるなら、これは事業者からそっぽを向かれる団体になります。適当なことを事業者が入ってやるようなことになればこれは隠れみのになる心配がある。そこらあたりが、私たちの心配になってきておるところです。だから、そこらあたりの概念を、私も先日から労働省の方々から、いろいろと説明を受けて、方向だけはわかりましたから、その根本の問題をひとつ大臣からお聞かせを願いたいと思うんです。そうでないと、前へ進まないんです。
○国務大臣(大橋武夫君) 今、藤田委員からお述べになりました、今日の雇用関係において、事業主が労働者を雇う場合の心がまえの問題が問題だ、どう考えるかという点でございますが、これは先生もお述べになりましたごとく、やはり事業主というものは、事業の経営のために労働者を必要として雇うのでございまするが、しかし相手は労働者という人でございまして、事業主が自己の経営を大事と思い、自分の人格を大事と思うと同じように、労働者は、その経営に雇われることによって自己の生活を維推し、自己の人格を守っていくということを考えておるわけなんでございまして、これはお互いに相手の人格、そして相手の人生というものを頭に入れての関係の成立でなければならない、かように考えておるのでございまして、労使関係というものは、常に労使がお互いの人格としての存在を認め合うということ、そして人格・主義というものを基本にして、あらゆる労使関係を考えていかなければならぬものである、かように存ずるわけでございます。 しからば、今日の労使間の実情が、はたしてそういう状況になっておるかどうか、これはいろいろ議論のあるところでございましょうが、今申し上げましたような趣旨が、現在の労使間において完全に具現しておるということを私は断言する勇気はもとよりございません。しかしながら労使関係が、常に人格主義ということを目標として進みつつあるし、また今後といえども進まなければならないと思うのでございます。そこで現在のような段階においては、この団体を作った場合に、労働者の利益を守り得ない、あるいはまた、労働者の利益を守ろうとすれば事業主と衝突する、どっちにしても本来の趣旨を実現することは困難ではないかという点でございますが、あるいはそういうことも言い得るかもしれません。しかし私は、労使関係のこの人格主義を基礎にすべきものである、そしてこれを徹底させるということは、これはなかなか、不断の努力によって積み上げていかなければならぬむずかしい仕事でございまして、お互いにその方向に努力はすべきでございまするが、しかしそれまでの間、この安全の面において、事業主及び労働者の自主的な努力、こういうことを、そういう段階が完成するまでは、全然やらなくてもいいと言い切るわけにもいかないんじゃないかと思うのでございます。したがって、この団体は一面において事業者の思惑との間に、困難な面があろうということを十分頭に置きながら、この団体を進めることによって、労使関係の理想に一歩でも近づいていく手段にもなるという面も考えられるのではないかと思うのでございます。 要するに労働省といたしましては、労使関係の発展ということに、誠心誠意を持って努力をし、また、そういう考え方のもとに、この団体の運営にあたりましても、事業者及び労働者の全面的な協力を得て、この目的を達成するようにいたしたいと思っておるのであります。 最後に、労働者が団体に加入せず、事業主だけが団体の構成員になっておる点はどうか、なるほどこの団体の資金源は、労働災害保険の会計から出るのでございます。この会計の拠出者は事業主でございます。しかし、別の角度から申しますと、拠出されたこの資金というものは、労働者の災害のために使用されるわけなのでございまして、したがって労働災害保険の金だからといって、事業主だけで自由に使うべきものだということを私ども考えて、かようにしたわけではございません。これはあくまでも、この金の用途ということについては、労使の対等の立場というものを基礎にして、双方の気持をくみながら決定すべきものだと思っております。ただ、一応この団体の構成員を事業主といたしましたのは、特別会計からの支出金以外に、この団体を維持するために経費の負担をしなければならない、この負担については、事業主に負担をさせるのが建前でございますので、そういった点から事業主を構成員といたしておるのであります。しかし、私どもは事柄の性質上、できれば労使双方を対等の立場に置いて構成員としてやっていきたい、こういうつもりでございますが、全く労働者を構成員に入れなかったのは負担の問題にすぎないのでございます。
○藤田藤太郎君 問題は、労働災害をなくするというところに目的があるわけです。安全衛生上……。そのために資金が、どの立場から出されていかるということにもなのわけです。だから日本の現状というものの中で労災保険というものの歴史的な経過——個々でやるよりか、より効果的だということで、労災保険特別会計というものができてきたわけです。だから、単にそれは慈善や恩恵でなしに、労働災害をいかになくするかというところに問題の焦点があると私は思う。災害を受けた人の補償というものも、重要なウエートがありますけれども、それよりか、災害が起こらないというところに問題の焦点がある。だから特別会計から出す金は多少多くなっても私はいいと思います。特別会計から出す金は多少多くなってもいい。しかし、働いているのは労働者なんです。経験や、実際を知っているのは労働者なんです。その労働者が、いかにしたら災害が防止できるかという基本をきめるときに、つんぼさじきに置かれて、どうして効果が上がるか。ほうっておくわけにはいかないと言われるけれども、私たちはそこを言っているわけです。何の都合が悪くて、そこに実際に働いて機械を動かし、そして生産を上げている、その代表の意見が、何でここに入らないのか。一億五千万円の金が入ってきて、そしてその金が足らないから、事業主が金を出さなければならないから、労働者は排除しているのだ、それは私は理屈は通らないと思います。ドイツの例を見ると、これは災害組合というのを——集団に、災害組合というのに労使が入っていると私は思う。これは集団で二・八%の保険料から費用を出して、こういう団体を作って運動をやっておる。それからカナダにおいても。——私は、そういう労使関係が整然としておれば、私は何も経験者として入ることは、必ずしも固執することはないと思います。基本的な母体がはっきりしておるカナダでは、二・六%を保険料から出しておる。フランスは少し形が違うけれども二%、アメリカは一%出しております。これは人間関係だと、私は思うのです。 たとえばアメリカのことを言って私は恐縮ですけれども、アメリカの労使調停というものが、どういう人によって行なわれているかということを、もう一度振り返ってみていただきたいと私は思うのです。労働者調停斡旋局ですかというもの、ここの人によって、あっせん調停が行なわれる、これに信頼をして、そうして仲裁裁定に五割も六割もの労働組合、労使が、仲裁裁定にゆだねていった歴史をだれが作ってきたか。それは信頼の問題から出発している。人間関係ですね。日本に持ってきて、今そんな状態が合うかどうかということも議論になります。また、たとえば労働大臣がいつも言われるように、最低生活の保障という最低賃金法ができました。業者協定の関係でできました。二百五十万にするのだとおっしゃいますけれども、二百五十万どころか何としても——ここで最低賃金の議論はいたそうとは思いませんけれども、今の現状はどうなんです。むしろ賃金を押えるために、最低賃金のあの業者協定ができているような私は感じを持っている。国民に、そういう感じを与えているということを自身も、そういう一つの例だと私は思うのです。 だから、そういうやはり条件のもとに、労働災害をなくするという目的的な法案ですから、これは団体にしたって、労災保険にいたしましても、その目的をやはり一〇〇%効果を表わす、それにはAの条件にはAの姿ができるだろうし、Bの条件の母体には、Bの姿のものを作っていかなければ実効が上がらない。だから、そういうところを探究して参りますと、使用者、事業主がそっぽを向く団体なのだ。使用者がそっぽを向かないで協力する団体になったときには、私は隠れみののような役割りになるのだ、そういう懸念を、この団体に対して持っているわけです。だから、ほうっておくわけにいかぬと労働大臣がおっしゃるなら、ほうっておくわけにいかぬなら、ほんとうに実効の上がるような格好でもってやる。今大臣の概念を、労災保険の金の問題もお聞きしました。要するに労働災害をなくする、補償じゃなくて労働災害をなくするということ、やめるということと、労働災害に対して補償するという二つの大きな柱を持ったのが、労災の特別会計の任務なんです。その任務のあとの基本的な面が欠けているという懸念を私たちは持っているわけなんであります。 そこらあたりの説明を私が聞いても、なかなか答えが得られない。だからもっと大きく、労働政策というのは、よくここで議論しますように、経済の政策なんです。労働者を雇って生産を上げるという生産の、災害が起こる前の手段の問題に、労働省はうんと——近代国家、外国と同じような自由民主権の近代国家に行こうとしている、ああいう姿に、ほんとうにどんどん基本的な問題にメスを入れて、労働省直轄でないところに要求していただいて、そういうところと、あわせてやっていかないと、これは予算を見ましても、労働監督行政の多少予算はふえましたけれども、実際に今行なわれている労働監督行政については、私はこんなたくさんの人が、なぜ費用が要って、人を二千何百人も監督官を置かなければならぬかという、それでもとても追いつかないという母体が私は認識されていいのではないか、そこらあたりから、労働災害の問題を論及していかなければ私はどうもいけないのではないかと思うのです。そこらあたりのところが、十分に論及されないで、整理されないで、形の上ではプラスになるのだというイコール・プラスだけでは、なかなかこれはむずかしい、われわれはなかなか理解ができないと思う。基本的な問題に、私はどうも理解ができない問題を持っている、もう一度御所見があったら承りたい。 —————————————
○委員長(加瀬完君) 委員の異動についてお知らせいたします。 本日、村尾重雄君が委員を辞任され、その補欠として、田上松衛君が選任されました。 —————————————
○国務大臣(大橋武夫君) ただいまお述べになりました藤田委員の御意見には、全面的に同感でございます。私どもも、そういうふうな考え方で進んで参りたいと、こう思います。ただ、この法案におきまする取り扱いが、御趣旨に合わないような点もあるわけでございますが、この点は、今後の労働行政のための少なくとも前進である、そうして将来は、当然先生のお述べになりましたような方向へ進むべきものであるという考えのもとに、まずスタートの形として、さしあたりは産業労働界の現状から申しまして、ここらの形でいくべきではないか、こういう現実的な条件のもとに考えられていくべきであります。 したがいまして、かような姿で出発はいたしまするが、すみやかに客観的な情勢の成熟いたしますよう努力をいたしまして、その上で、できるだけ早く理想的な姿にもっていきたい、かように思うのでございます。
○藤田藤太郎君 大臣、将来努力するとおっしゃいますけれども、この法律が通れば、この法律が歩くわけでしょう。だからどういう格好で努力を…、私の言っているのは、今のなぜ一番実態に触れた、百パーセント実態に触れた人の意見、公式的な権利——権利というのはおかしいけれども、なぜ聞くような形にせられないのだということを言っているのだけれども、その問題については、将来努力するとおっしゃるのだけれども、法律が通ったら、法律は歩くのですからね、これ。だから、そこのところあたりは、もうそれじゃひとつ、労災保険の金が多いとか少ないとか言っているのじゃない、有効なだけ労災保険の金を使うのは、災害を無くすという目的なんだから、そこらに文句を言っているわけではない。むしろたくさん使ってやったらいい。私はそう言っている。その限度はむろんあります。そこらあたりの問題は、労働省として、かまえがあるのですかね。
○国務大臣(大橋武夫君) 御承知のように、この種の事柄につきましては、労働省といたしましては三者構成の委員会を通じて、一応関係者の見解を取りまとめまして、それを基礎として法案の御審議をいただくというようなやり方をいたして参っておるのでございます。本案につきましても、やはりそういうような運びでやって参っておるのでございます。結果的には、先生の御指摘のような点が明らかに残されております。しかしこれは現在の段階においての、やはりこれで一つの立場を示しておると思うのでございまして、私といたしましては、この法案を運用していくことによりまして、労働災害防止についての労使の協力ということが、現実に災害防止の基礎になる。この面においては、労使は区別なく手を握って進むべきであるということが、おのずからこの法案の運用によって、だれにも明白に認識されるであろう。その場合においては、当然こういった団体構成の問題については、再考慮される時期が到達すべきものだと、こういうふうに考えておるわけでございます。
○藤田藤太郎君 これはちょっと、私は納得できぬけれども、この次にします。
○委員長(加瀬完君) 本法案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。 午後は一時十分に再開することとし、暫時休憩いたします。 午後零時十三分休憩 —————・————— 午後一時四十四分開会
○委員長(加瀬完君) ただいまより再開いたします。 麻薬取線法等の一部を改正する法律案を議題といたします。 前回に引き続き、質疑を行ないます。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
○藤田藤太郎君 まず、最初に、法務省の方にお尋ねをしたいのですが、今度の法律を実施しますと、罪を憎んで人を憎まずということがあるわけでありますけれども、実際問題として「十年」が「無期」になったわけであります。私も、その段階を強化してやらなければ取り締まれないという皆さんの意見もわからぬことはないわけです。ただ、しかし、罰金のほうは、金さえ納めたらいいという刑罰意識というものは、そこは金さえ納めたらということになるわけです。そこで、今までの「五十万円」が「五百万円」になったわけでありますけれども、その五百万円というようなところで切られたことが、どうも私にはよくわからぬのです。これはぜひ聞いておきたい。問題の事案は、七百億円の金が日本から流出をしている。問題になる根は、むしろ日本の人たちが使われた形によってその麻薬事業が動いているというのが今までの歴史的な姿だと思うのです。その五百万円で罰金を切られたということの理由が私はようわからぬのですが、それはどういう概念につながっているのか、これをまず先に聞きたい。
○説明員(桂正昭君) 最初に、罰金自体は五百万円でございますが、そのほかに重い体刑がついているわけでございます。それから、次に、罰金自体につきましては五百万円ということになっておるわけでございますが、これまで現行の刑罰法規に規定されておりますところの罰金刑についていろいろ見て参りますと、それらのバランスを考慮いたしますと、現在あるところの刑罰法規の最高額が五百万円ということになっておるわけでございまして、その最高に合わせたいといいますか、そういう形になっておる次第でございます。 なお、今回常習営利犯の規定を廃止したわけでございまして、 したがって、個々の行為が別々に評価されると申しますか、そういう形になるわけでございますから、事実が幾つかございますと、それらの事実の数に従いまして、五百万円の合算額、その倍数と申しますか、それまでの罰金刑を課することができる、かようなことになっておるわけでございます。
○藤田藤太郎君 案件ごとによる合算額ということになりますと、たとえばどういうことですか。
○説明員(桂正昭君) これは法定刑の最高なんでございますが、かりに二つの事実がありますと、五百万円足す五百万円、つまり一千万円以下と、こういうような形になるわけで、案件がさらに数多くになって参りますと、その合算額、かりに十だといたしますと五千万円以下、かようなことになっておるわけでございます。 なお、先刻ちょっと申し落としたわけでございますが、罰金刑の関係で考えなくちゃいけないのは、罰金をかりに納付しなかった場合の問題でございますが、その場合には労役場留置ということに相なるわけでございまして、これは刑法によりまして、労役場の留置は二年以下の期間ということに制限されておるわけでございます。こうなって参りますと、非常に多額の罰金が課せられた場合に、労役場留置の日数を換算して参るわけでございまして、かりに五百万円といたしますと、それを二年の日数で割って一日当たり幾らというふうな計算になって参るわけで、五百万円の罰金のときにかりに二年間留置するとして、一日が六千八百円といったような金額になるわけでございますが、改正案によりますと、おもな犯罪について、罰金刑だけを言い渡すということができなくなるわけでございまして、必ず懲役刑とともに言い渡すということを配慮しているのも、かようなところから出ておる次第であります。
○藤田藤太郎君 今五千万円とおっしゃられたのはどういうことになるのか、ちょっとようわからないので、ちょっと御説明を願いたいのですが。
○説明員(桂正昭君) 懲役刑のほうで申しますと、多額の、一番最高ということになるわけでございますが、懲役刑のほうで申しますと併合罪という形になりまして、罰金刑の加算額、合算額といいますか、それでいくわけでございますから、したがって、一つの事実では罰金の最高が五百万円でございますが、二つでは五百万円足す五百万円で、一千万円の罰金刑を課することができる、かような趣旨でございます。
○藤田藤太郎君 五千万円というのは聞き違いですね、今五千万円ということをおっしゃったようですが、聞き違いですね。
○説明員(桂正昭君) 五千万円と申しましたのは、十の事実があるという場合は五百万円掛ける十で五千万円、かような趣旨でございます。
○藤田藤太郎君 それでは、その麻薬という格好で十も摘発されるということは考えられないのですね。私は、何も罪を高くしろ、こういう目的ではないわけです。しかし、こういう違反行為の中では、たとえば一億利益があった、五百万円さえ罰金を納めれば、少少併合罪で懲役に行っても二年くらいで事は済むのだ、私はそういう意識があるのではないかと思うのです。私は法の専門家ではありませんが、しかしそういう意識のもとに間違いが起こされるということであったら、私はただ五十万円が五百万円になったというだけで、よりたくさんの利益を上げておけばいいのだということではこの問題の解決にはならない。ですから、やはりこれだけのものによってその事犯を起こしたときには、一億とか二億とかいうものが麻薬で適当であるという判断がくだればこれは一億全部とは申し上げませんけれども、とにかく年間七百億とかいうものが流れているわけだから、そんな五百万とか三百万の事犯ではないと思うのです。そういうものを五百万で切って、結局大きい仕事をして、たくさん利益が重なれば、それではもう併合罪で懲役で、出てきたらそれで事は済むのだという意識は、私はこの犯罪に関してこそやるべきではないではないか。問題は私の言いたいのはそこなんです。そういうところをどう判断されるのか。
○説明員(桂正昭君) あるいは御趣旨をとり違えておりましたら、あとでお教えいただけばそれに従って直しますが、まず、第一に、五百万円で足らないというふうな御趣旨だといたしますと、それは別途懲役刑の面で、懲役刑も非常に引き上げておるわけでございまして、そちらのほうでも考慮されておるのだということになろうかと思うわけでございます。それから、もうけておるのに五百万円では足りないのだというような御趣旨だといたしますと、先ほどるる申し上げたような次第でございまして、麻薬だけではないわけでございまして、それ以外にも、たとえば密貿易の関係等で、あるいはそのほかの経済事犯のたぐいで、そういった現行の最高の罰金は五百万でございますが、それ以上の利益を上げておるというような事例もたまには出て参ることであろうかと思うわけでございます。それもやはり五百万円という制限になっておるわけでございます。なお、取り違えておりましたら、また御説明申し上げます。
○藤田藤太郎君 私はそこを聞いておるわけです。一つの事犯で、たとえばの話ですが、五千万円とか、一億の利益を上げた、しかし、併合されましても、罰金刑というのは五百万円どまりだから、それで終わりだということになると、悪用されないかということなんです。そのところは法の概念はどうなっておりますかということを聞かしてほしい。これが限度だから、それ以上取れませんでしょう法律だから。それがかえって悪用されないか。それは同情されなければいけない人もたくさんありましょうし、下のほうだけたくさん取られて、上のほうは水が漏るという格好になっておったら困る、私はそう思いますから、五百万円のところをいやにこだわっているようだけれども、もう一度聞かしていただきたい。
○説明員(桂正昭君) 先ほども申し上げましたように、現在の刑罰法規の最高まで持ってきたという、非常に思い切った考えで私どもやっているわけでございますが、それと、先ほどの労役場留置の関係で、もし罰金を納めないという事犯があった場合には、一日当たりの金額があまりにも多くなり過ぎて、これは現在の法体系上からすればおもしろくないのじゃないかという考えで、かような考えで一応五百万円になったのじゃないかと思います。それから、事犯によりましては、現実にヘロインの大量を持っておったりすることもあろうと思いますが、それが押えられるというふうな面からも、別途の実質的な懲罰といいますか、そういうものがなされるのじゃないか、かように存ずるわけでございます。
○藤田藤太郎君 どうもそういう現物没収とか、または懲役という体刑の併用によってこの辺が限度なんだ、まあこういういろいろの角度から見て、今までの事例から見てこの辺が限度となるのだということをおっしゃるわけですね。それならそれで初めから言うてもらったらいいわけですけれども、それじゃ今までの事犯のうちで、どんなに利益を上げた例があるか、そういうものを警察局は摘出しておられると思いますから、どれぐらいの今まであなたのほうで、罰金は五十万円ですけれども、どれだけの不当な——不当という言葉を使っていいかどうか知りませんが、とにかくやったということの事例はどういうのがありますか。
○説明員(桂正昭君) ただいまちょっと手元に利益を集計した資料を持っておりませんのでございますが。
○藤田藤太郎君 お尋ねしますが、ヘロインを三キロとか四キロと見つかった分だけですけれども、そういうものがきているわけですけれども、見つからなければ、それで三キロ分ならどれくらい売買されて価格がある。大体一CCですか、三百円ぐらいのものが二万円から二万何千円で売られているわけですから、それで計算すれば直ぐ出てくるわけですけれども、押収されて、もし三キロなら三キロというものが見つからないといたしますれば、日本での販売価格はどれぐらいになっておりますか。
○委員長(加瀬完君) 今の価格の問題は、厚生省のほうでお答えをいただけますか。
○政府委員(牛丸義留君) 過去の事例で申し上げますと、一度でつかまった一番大きな事件は、ヘロインで四万三千四百九グラム、四キロ半くらいのものでございますが、これを一グラムのやみの価格を三万円といたしますと一億二千万円でございますが、そのくらいの金額、そのときの相場によって、やみの値段でございますから、かりに一グラム三万円とすれば、そのくらいの金額が過去の事例にはございます。
○藤田藤太郎君 これはあっては困る事例だけれども、一つの事例なんですわね。だから、五百万円の罰金というのは、五百万円のワクの中できびしくこれは法律でやるんでしょう。ところが、そこから上のほうは五百万どまりになってしまうということについて、あなたのほうは没収だとか体刑とか合わせて適当だと言われるのだけれども、私はどうもそこのところあたりがようわからぬ、よう理解ができないわけですよ。結局、下のほうの使われている連中はきびしい罰則を受ける。そんなところは、根がとまれば一ぺんにとまってしまう。売る品物がなくなりますから。ところが、肝心の根元のところは、今のは一つの例ですけれども、四キロでたとえば固まっていったとすれば一億二千万円のものがある。それはたとい半分にいたしましても六千万円ということになると、それでも五百万円だと、そこらはそれでいいのかどうか、法律を作るときには何を基準に作られるのか、そこらあたりの話をちょっと聞かしてもらいたい。
○説明員(桂正昭君) ただいま一億二千万円の数字が一応出たわけでございますが、その一億二千万円が全部が利益だという形にはならないんじゃないかということが言えるかと思います。
○藤田藤太郎君 だから、半分にしても……。
○説明員(桂正昭君) 半分としてというお説でございますが、実際上よそから手に入れて、それをさらに売るという形なんでございますが、それは罰金なんでございまして、その利益相当額という観念とちょっと違うじゃないかと私は思うわけなんでございまして、五百万円の罰金をもって最高限としておる趣旨は先ほどから申し上げておるとおりで、それ以上別に追加するところはないわけなんであります。
○藤田藤太郎君 ちょっとそこのところあたりを教えていただきたいのですが、今おっしゃったように、利益弁償的なものじゃないということですと、これは罰金の概念はどうなるんでしょうかね。そういうことになると、五百万円なんてする必要はなくなってくるんじゃないですか、そこのところはどうですか。もっと安くていいんじゃないですか。
○説明員(桂正昭君) 先ほど二年間の労役場留置の関係で御説明したわけでございますが、一日が六千八百円でございますが、罰金につきましては、そういった労役場留置の面からの一つのしぼりがあるわけでございます。それから、今度は罰金だけを課するわけではないのでありまして、別に非常に重い体刑がついている、あるいは十年、あるいは十五年といいますか、そういった体刑がついている。それをかりに先ほどの六千八百円というもので割ってみますと、おつりがくるような場合も出てくる可能性があるのではないかと思うわけでございまして、もし罰金だけをもってやるという場合だと、多少直接的に利益を剥奪すると申しますか、そういった趣旨が出てくるかと思うわけでございますが、別途体刑があって、それによって処罰をする、それにつけ足してと申しますか、罰金がついてくるというような場合であろうと、かように思うわけでございます。
○委員長(加瀬完君) 私もそこを関連して伺いたいのですが、この罰金の五百万という数字が出たことは、結局その麻薬の売買をしても、懲役その他の問題もありますけれども、そうでなくても経済的にももうからないという、そういう意味の制約をひとつ与えようというのが罰金の金額を上げた一つの理由じゃないですか。そういうことであれば、たとえば今、藤田委員の御指摘のように、五千万円ももうかって五百万円の罰金ということでは、これはまだバランスがとれるということになるのじゃないですか。それでは五百万円に罰金を上げたという意味がなくなるのじゃないか、その間の事情をもう少し詳しく御説明いただきたい。私はこういうことのように伺っておったのですが、その点を私も伺いたい。
○説明員(桂正昭君) 先ほども申し上げたことの繰り返しになって恐縮でございますが、一つには、現在の全体的な法律体系の上で、麻薬があるいは最高かもしれませんが、これに匹敵するような利益を上げるような犯罪というものはいろいろあるわけでございまして、それらとの振り合いと申しますか、バランスと申しますか、そういうものが一点なんでございます。 それから、第二点は、先ほどからるる申し上げておりますような労役場留置というのがありまして、これは罰金を納めない場合に、そのかわりに懲役に準ずるような拘禁処分に付するわけでございますが、その場合の最高限度は二年というふうに刑法が一応きまってしまっておるわけであります。もし払えない場合は、先ほどから繰り返し申し上げて恐縮でございますが、一日六千八百円分が消えていくといいますか、そういう形になるわけでございまして、これがあまりにも金額が上がり過ぎますと、これは労役場留置としての意味がなくなって参るわけでありまして、そうすると、刑法全体の問題として、もう一度考え直さなければならぬと申しますか、そういうことになろうかと思うわけでございます。そういうような問題でございますと、現在、刑法改正の問題が出ておるわけでございまして、そちらのほうで基本的に考え直さなければならないという格好になるのじゃないかと思います。 それから、先ほど現物を押えた場合の例が出てきておるわけでございますが、現物そのものを押えて、それを取り上げた場合には、それに相当するものが、没収されることによる利益の剥奪というものが大きく出てくるわけでございます。 それから、具体的な事実が、かりに出てきたというふうな場合においては、その利益金が具体的にあれば、それが没収の形になってくるわけでしょうし、それから、利益金が具体的に残っていないという形であれば、追徴といったような問題も出てくるのじゃないかと思うわけであります。そういう面でカバーもできるのじゃないか、かように考えられるわけでございます。
○藤田藤太郎君 それじゃわかりました。そうすると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。Aという人が、四キロなら四キロ、三キロなら三キロでもいいですが、入ったことまではわかった、それを販売して利益を上げたこともわかった、こういうような犯罪がございますね。こういう犯罪があって、五千万円というような格好の——三千万円なら三千万円という利益を上げておったら、それは罰金と違って、それは罰金という形式じゃなしに、その金は没収する、それで足らなければ追徴金という格好で取る。だから、五百万円とか百万円というものは一つの刑としての限界なんだ、こういう理解でよろしいですか。
○説明員(桂正昭君) はあ。
○藤田藤太郎君 そんならわかりました。そうでないと、私の理解の仕方でいきますと、不当利益を上げておった、罰金は五百万円なら五百万円を罰金で取る。そこまではいいけれども、上のほうは何の取り手もないということになってしまうわけですから、それが利益金として、その罰金のほかに一億なら一億というものが出たら、それは取るわけですね、罰金という形式でなしに。
○説明員(桂正昭君) 譲り渡し、あるいは譲り受けと申しますか、そういう事実が具体的にはっきりして、それが裁判で認定された場合でございますと、その場合においてはお説のとおりになろうかと思います。
○藤田藤太郎君 どうもありがとうございました。 それでは、次に、厚生省にお尋ねをしたいわけです。私は、この問題点はいろいろ皆様御協力をしていただいてやっていただくわけなんですけれども、このあとの収容期間が六カ月ということになっているわけです。私の聞いたり、また、調べたりする範囲では、この前もちょっと議論をいたしましたけれども、きょうはまあ最後ですからお尋ねしておきたいと思うのですけれども、私は、一応の症状がなくなるのは、人によって違いますけれども、禁断症状ですが、そんな六カ月もかからないと思うのです。で、それからあと、むしろその保護をしてあげるというところが問題の中心点ではないか。一年たっても二年たっても、麻薬の薬を見たら飛びつくという意識——飛びつくというのはちょっと表現が大きうございますけれども、どうも薬を見たら飲みたいという感情になるのが、もう一ぺん麻薬を経験した人の常だと、こう言っている。ですから、そういうことを考えてみますと、事後処置というものが非常に大事ではないか。ひどい患者に対して六カ月収容していただくのはけっこうなんですけれでも、その事後書道というものが、私は、生活の面からも、やっぱり働いて生活するという道の導きがあるでしょうけれども、再び麻薬につかない、関係せないということに導くことが大事ではないか。福岡県あたりの陳情を見ますと、最低一年はとにかく隔離してくれなきゃ困るということを、非常に強くあの経験者の皆さんが口をそろえでおっしゃっている。だから、一年がいいのか六カ月がいいのか、まあ私はそこのところあたりこだわらないのですけれども、問題は、次に薬を飲まないという条件を作ることだと、こう思うが、その点はどうなんですか。どういう工合に指導されるわけですか。
○政府委員(牛丸義留君) ただいまの藤田委員の御指摘のとおりだと私どもも考えておるわけでございまして、とにかく麻薬中毒の症状をなおして、そして一定の期間、その最長期間は六カ月というふうに私ども考えておるわけでございますが、そのあと、とにかく再び麻薬のとりこにならないようにするということが非常に大事なことと考えておりまして、その非常に刺激の強い期間を入院の期間においてまず抑制をしまして、そうして六カ月たった後、しかし、そういうものが完全に治癒する、気持の上からもなおるということは、これはただいま御指摘のように、言えないと思いますので、結局それからあとは、社会に帰しましても、そういう麻薬が再び自分の近辺で容易に手に入らないような環境の中に置くということが大事であろうかと思います。したがいまして、漫然ともとの古巣に帰すということではなくて、できるだけ新しい職業をあっせんするなり、あるいは新しい環境に置くなりという、そういうふうなものを私どもは相談員の活動——これはもちろん県なり、あるいは麻薬取締官等もそういうことをやる必要がございますが、相談員のボランティアの活動を中核としてそういうふうな仕事をやっていく、そして社会には復帰させるけれども、再び麻薬が手に入らないような環境に早く定着させていく、そういうふうな方策を考えていきたい、こういうふうに思っております。
○藤田藤太郎君 私は六カ月にどうもこだわったからそういう答えが出たのだと思いますけれども、六カ月を想定して、早くなおる人はもっと早く出すわけですから、麻薬を一ぺん経験した人に対しては考えなければいかぬということじゃなしに、画期的にどういう工合にしていくのだという厚生省としてその答えを私は聞きたいわけですよ。で、まあこれはぐるぐる回っていけば、麻薬さえ日本の国に入らなければいいのだということになってしまいますけれども、それは今まで議論してきましたから申し上げませんけれども、問題は、そういうあとの指導をたとえば何とか政府や府県が委託して、指導員をこしらえてどうするとか、どういう計画でどうやるのだ、特に濃厚地帯と申しましょうか、そこを中心にどういうふうにやるのだということは、私は、やはりぴちっとやってもらわなければ実効が上がらないのじゃないか、それを聞いている。
○政府委員(牛丸義留君) 出て参りましたあとの措置といたしましては、私どもが考えておりますのは、麻薬相談員を設置いたしまして、これは現在、麻薬濃厚府県に予算措置として設置をすでに昨年からやっているわけでございますが、そういう麻薬相談員の設置を、できる限り全府県にも増強いたしまして、そして相談員のそういう活動によって、生活の相談なり、あるいは新しい職業のあっせんなり、そういうようなものを関係の職業安定所その他とも連絡をした上でやっていてもらう。あるいは家族につきましては、生活保護なり、生活の確保の問題がございますから、そういう相談役を相談員の活動によってとりあえずやっていくようにしたらどうだろうかというのが、現在のわれわれの事後対策に対する措置でございます。
○藤田藤太郎君 相談員の制度がありますし、それでまた部分的には実効を上げておりますけれども、私は、今の現状ではとても足りないのじゃないかということを考えますからそういう質問をしているわけでして、私は、実効がやはり上がるようにしていただかなければ、結局これは繰り返しになって、一ぺんやった事犯を摘発して中毒患者を病院に入れた、出てきた、また中瀞患者になる、また入るという繰り返しのないように、これはひとつ大臣もよくその点は力を入れていただきたいということをお願いをしておきます。 それから、今度は海上保安庁の方おいでになりましたら少しお聞きをしたいわけです。海上保安庁の資料を出していただきまして、これを読ませていただきましたが、予算上の問題にいたしましても、イからニまで書いてあります。取締職員を主要港に置いて水ぎわ作戦をやるというのに、少なくとも四十八人必要なんだという要求に対してゼロでございます。それから、活動費の増額に対する予算は半額に削られた。それから、麻薬職員が連絡用に携帯無線やその他の計算で二千九百万円要求されておりますが、これはゼロです。それから、その次には、巡視艇とか自動車とか、そういう一般の予算が、巡視艇九隻、三億一千五百万円、これがゼロ、警備用自動車十六台、一千三百万円、これがただの四百万円ということになっておるわけですね。これはまああなたを責めるわけではございませんけれども、大蔵大臣に来ていただいてこれは答えていただかなければならぬのですけれども、ちょうど池田内閣の閣僚として厚生大臣がおいでになりますから、今までこの委員会で、麻薬の問題については非常に論議をして、皆さん各省関係方面が協力をしていただいて、方針としても緊密な連絡をとって今の町限においても具体的な努力をしていただいている。ところが、一番問題になっているのは水ぎわ作戦だということになっているわけです。で、税関のほうも予算要求されています。これは大蔵省なんですけれども、どうも予算要求に対して、増員計画につきましても、具体的なことがこの予算から見ましても出てきていないわけです。たとえば三十七年度には七千四百七十八万円の要求に対して千六百万円、まるきり四分の一か五分の一程度しか予算がきてないということで、出先の方に、私は、その問題というわけでありませんけれども、まあもう少し努力をしていただきたかったと言いたいところですけれども、これはこれ以上言いません。その麻薬というものの責任官庁は、何といっても厚生省だと私は思う。そうすると、厚生省は水ぎわ作戦のところには今までどういう工合に取り締まりの件についてお考えになってきたか。この麻薬取り締まり全体について、厚生大臣としてはどういう責任を果たしてこられれたか、私はそれが聞きたいわけです。海上保安庁の人にはまことに気の毒で、やろうという熱意はあるけれども、肝心なところがみんなゼロなんです。これではざるに水を入れているような調子で、入ってくるのは自由とは言いませんけれども、ほとんどあまり抵抗なしに入ってくる。入ってきたものに対して厚生省や警察などが一生懸命にやっている。これでは幾ら繰り返しても、麻薬を予防する基本的な問題は解決はせないのじゃないか。私は資料をこの前お願いして、出していただいたのを見るとそういう答えになる。だから、厚生大臣は、こういう麻薬対策の総体的な概念をどこに置いて、そして、このようなことについてどうお考えになってきたかということをちょっと聞いておきたい。
○国務大臣(西村英一君) 最も重要なことでございまして、たとえば予算の要求にしても人員の要求にしても、麻薬自体を取り締まるのにどこにポイントを置いて、どうしたほうが効力があるか、こういうことに帰着するのでございます。内閣といたしましても推進本部を作っております。閣僚懇談会もありますが、今年度の三十八年度の予算要求のときには、全然連絡をとらなかったわけではございませんが、まず、予算概算のときには、おのおのやはり自分のところの所管業務として、一応の概算要求をしたのでございます。で、今おっしゃいました海上保安庁等につきましても、これは予算の面で要求は相当にやりましたけれども、あまり認められなかった。私のほうから全般として口をきいたわけではございませんが、これはやはり非常に議論がございますので、つまり巡視船を増すことによってどれだけの効果をあげ得るか。もちろんそれはないよりはあるほうがいいのはあたりまえでございます。また、船を作るにいたしましても、ほんとうの快速船を作る。海上保安庁ですと、非常な快速船を作れば今よりは防げるだろうというようなことは思っております。しかし、一定のワクの中と申しますか、財源問題がございますので、どこに主力を注いだら一番いいのかということになるわけでございます。人員の点につきましても、これは海上保安庁は認められませんし、私ども厚生省も、これはわずかな人間の増でございます。しかし、一方、警察庁のほうで相当に認められまして、やはり今の取り締まりの現状としては、警察のほうで、暴力、売春と結びついた現象の面でたくさんの患者が起こっているからということで、私は、むしろ厚生省の人間が認められなくても、警察庁の人間が認められたということについて、総体的にはいいと思う、警察庁は五百人も認められました。私のところは全部認められても百人足らず、それがわずかに三十人しか認められなかったのですが、非常に現われている現象面をつかまえることは、むしろ警察のほうがいいだろう。それ以上の突っ込んだことになると、警察当局よりは、厚生省のほんとうに麻薬に専門の方のほうがいいだろう、こういうふうに思われますから、今年度の予算の増大を見まして、人員の点は厚生省としてはまことに微々でありましたけれども、今度施設の金の面におきましては、私のほうははるかに多く、三十七年度の三倍以上、六億数千万円の金が認められた、つまり患者をどうするかという一つの問題が起こったから、私は、人間の問題よりも、その患者をどうするかという施設のほうが先じゃないかと考えましたから、この辺で全体としてまあ落ちついたのでございまして、海上保安庁の今後の水ぎわ作戦が大事じゃないか。それじゃ船を作ったら防げるか、こういう問題に帰着している。これはなかなか今後検討を要すると思います。しかし、海上保安庁の方々は、この麻薬と、それ以外の密輸入の問題とがありますので、それはあの麻薬のみではございませんが、おそらく希望といたしましては、巡視船をたくさん作り、しかも、快速船をたくさん作ってもらいたい、こういう御希望だろうと思われますが、ヘロインはこっちにありませんから、御案内のようにその水ぎわでもってぴしゃっと押えることがもし確実にできるならば、これは厚生省は金を減しても、警察庁は金を減しても、海上保安庁のほうに金をうんとつけて防がしたほうが最もいいと私は思うのでございます。来年度の研究問題として今研究しておるのかと申されますが、実は、これは非常に複雑な犯罪でございますから、非常に困難です。海上保安庁が、かりに巡視船を作っても、やはり情報をキャッチしなければ、あれだけ多い出入りの船に対して、一一こまかいことをやっておられんと思うのです。情報をどうしてつかむかということ。ことしは警察庁のほうで、バンコックに一人の駐在員が認められましたが、これは私は少し足りないと思います。これは警察庁が送るにいたしましても厚生省が送るにいたしましても、なんとか情報機関をお願いしたい。そうして、もしかりに水ぎわ作戦によって海上保安庁で自信があるというならば、厚生省の予算は削っても有効に海上保安庁につける、こういうようなことを考えなければならんじゃないかと思います。内閣全体として効果をあげることを私は考えていきたい。実は、この人員の増ということは非常にきびしい今日の予算になっておりますにもかかわらず、六百三十八人、予算にいたしましても、今までは三億の予算が三倍になりまして、十億になんなんとする予算を政府が示したのは、やはり皆さん方両院で議決し、やかましい問題でございますので、政府といたしましては相当に思い切った手をやったと思いまするが、さらに来年度予算につきましては、十分効果的な予算の方法を考慮したい、私はかように思っておる次第でございます。
○藤田藤太郎君 厚生大臣が代表してお答えを願ったわけでございまするが、私も、今明確に何から順番にしたらいいというはっきりした言い方はいたしませんけれども、しかし、皆さん方努力して、国内の中毒患者をないようにしていこうという努力は実ってきたわけです。ところが、だんだんとここで審議しておると、入口でみんなざるに水を入れたような感じになっておるという感じを私は受ける。これは皆さんそういうお気持じゃないかと思うのです。ですから、今度の三十八年度の予算使用をお立てになるときに、こういう問題は、やはり密輸入をなくし、麻薬患者をなくするという方向で、やはり有効的な予算の使用というものが出てきていいんじゃないか、私はそう考えておるわけです。大臣が、来年度までにはそういう方向をひとつはっきりして、重点的に予算を使いたいという決意を申し述べられましたから、私はそれを了といたします。了といたしますが、その点はぜひひとつやっていただきたい。 そこで、海上保安庁の方または税関の方に、今ここへお出し願ったこの資料で、大体今まで入ってきたその麻薬密輸をどの程度まで防げるか、一応どの程度防ぐということでこの案を立てておられたことだと私は思う。私も福岡に参りまして、情報のあった船に乗り込んで行ったところが、人が足らんでどうにもならなかったという苦心談、海上保安庁の人や警察に応援してもらってやったが、どうにもならなかったという話があったが、非常に深刻なんですよ。ですから、海上保安庁と税関から説明を聞きたい。
○説明員(井上文治君) どうも昨年の予算につきましては、われわれの努力も足りませんで、御期待に添い得なかったのは残念に思っております。ただいまのお話でございますが、われわれとしましては、水ぎわ作戦を強力にやるためには、まずやはり情報が第一である。これにつきましては、他の関係機関とも連絡をとりまして、情報を密にやるということとともに、最小限度の情報関係、麻薬の専従職員というものは、やはりどうしてもほしいという考えでございます。それは、われわれのほうの担当いたしております海事関係の関係者——船員とか港湾労務者とか、そういうところに対する情報網というものをやはりほしいという考えを持っております。それと、船艇がなければ十分な立ち入り検査もやはりできない、最小限度の船艇はほしい、それによりまして容疑船をできるだけしらみつぶしにやっていく。これはある意味で防犯という点にもなると思いますが、そういった点で何とか来年度はもう少し強力に皆様の御協力もお願いいたしましてやっていきたいというふうに考えております。それでどのくらいの効果が上がるかということは、ちょっと非常にむずかしい問題でございますが、少なくとも専従艇と専従職員があれば、相当効果を上げ得るというふうに考えでおります。少なくとも、現在の人員におきましても、われわれとしましては、できるだけ船と人とそちらのほうにさきまして、すでに相当の立ち入り検査等もやっております。しかし、現状では、非常多くの船に対しまして徹底的に全部やるという状況には至っておりません。来年度には何とか最小限度の人間と船艇を得てやりたいというふうに考えております。
○藤田藤太郎君 税関の人にさっき言ったようなことを……。
○説明員(丸山幸一君) 税関関係についてお答えいたします。税関におきましても、やはり情報のキャッチということが最大の眼目でやっております。本年につきましては、すでに沖繩航路及び香港航路につきましては、捜査員を警乗させて、そして情報をキャッチする、あるいは現行犯をつかまえるというようなことを本年度予算で考えております。まだ実施に移っておりませんけれども、大体七月あたりから実施したい。さらに、来年度は、大蔵省は大蔵省としてのいわゆる情報のキャッチの仕方というものを考えて、要注意地域には駐在官等を派遣したいと考えております。 なお、その他、水ぎわ作戦につきましては、たとえば門司港等におきましては、すでに要注意船と目されるものにつきましては船内一斉検査を行なって、大体これは月に四、五十隻行なっておりますが、かなりの効果を上げておる。さらに大きな港につきましても、人員を重点的に使って、こういった要注意船について船内検査を実施するということを考えております。税関につきましては、大体港内が活躍場所となりますので、大きな船等はもちろん必要でないわけでございますが、すでに税関も八十数隻の船を持っておりますが、これは中にはだいぶ耐用年数のきたようなものもございますので、こういったものを逐次新造船に切りかえる。来年度はもう少し機動力もふやしていきたい、こういうふうに考えております。
○藤田藤太郎君 まあこの前の議論のときに、まず情報というものが第一の問題。それで、情報のあった船、まあ飛行機もむろんのことですけれども、情報のあったもの。その次には、たとえば香港だとかフィリピンだとかタイとかという要注意国ですか、そういうところからくるものを第二の問題にするということにして、いつもリストをあげてやっているというお話があったのです。だから、そういう面からいって、今の海上保安庁のここに要求して出された予算でいくと、大体要注意港または国から入ってくる船については、一応これはこれだけの体制ができれば取り調べは可能だという格好でお出しになったのだと理解してよろしうございますか、海上保安庁。
○説明員(井上文治君) 昨年の要求につきましては、一応当時の要注意船、そういったものから一応の立ち入り検査その他をやることができるということでございます。ただ、非常に情報にもいろいろな種類がございまして、以前に容疑があったという程度の船は、そう厳重な立ち入り検査はやらない、その程度の考えで、情報が相当濃いものについては徹底してやる、そういう考えからこういう人数、隻数というものを考えたわけでございます。
○藤田藤太郎君 私が福岡へ参りましたときに、その要注意の船が一そう着いた。それで、その税関、海上保安庁、警察まで動員協力して乗り込んでやった。やって非常に苦労をした。それには最小限度百人の人が上がって徹底的にやろうと思ったら二日ぐらいかかるという話を聞きました。だから、やっぱりみんながそうでないわけですから、そういう要注意国や、それから情報でもっと船についてやっぱり徹底的に調べるという体制がなければ、私は食い止めることはなかなかできないのではないか。せっかくわかっていても、人が足らぬ、機動力がないので、結局見のがしてしまうというようなことになるようなことでは困る。だから、そこのところをひとつ何とかしてもらわなければならぬのではないかということを申し上げているわけです。これは厚生大臣、政府においてほんとうにやってもらわないと、ざるに水を入れたことになりますから、今もお話がありましたように、ぜひひとつお願いをしておきたいと思います。 それから、警察の方がおいでになっていますね。警察の方にお尋ねをしておきたいと思います。警察で今度予算が少し増額をいたしまして、これから力を入れていただくわけですけれども、私の認識が間違っておったら御指摘願ってけっこうだと思いますけれども、どうもこのままの状態に置いておくと、麻薬は今までスラム街であったけれども、スラム街からはみ出て——はみ出てという甘い方はどうか知らないが、とにかくもっとビジネス・センターのところで取引されるような私は印象を受ける。だから、スラム街のようなところだけに今焦点が合っているようですけれども、そうでなしに、堂々とビジネス・センターで麻薬取引がされるような気がいたします。そういう点、一体、警察はどういうふうにお考えになっていますか。
○政府委員(大津英男君) 御指摘のように、特にまた麻薬取締法が改正になりますると、いろいろ罰則も強化されますし、いろいろな意味で麻薬の取引ということにつきましてむずかしい問題が出てくるということから、麻薬犯罪につきましても非常に巧妙化してくる。また、スラム街等で非常に顕在化しておったものがだんだん潜在化する。それから、今まで都市であったものが、だんだん地方にも密売人等も流れていくというようなこともあるわけです。そういう意味におきまして、現在の法律のもとにおきましても、といたしましては、極力調査を続けておるわけでございますが、御指摘のような点ももちろん考えられると思いますし、たとえば麻薬の取引の場所、あるいはその金の授受の仕方、あるいはそういう麻薬の密売の組織の潜在化というような点、いろいろの意味から各方面にわたって内偵をし、捜査を続けていかなければならぬということで、現在極力そういう点につきましても考慮を払いましてやっておる。先般も全国の麻薬の担当をいたしておりまする保安関係の課長会議を開いておりますし、また、全国の警察本部長会議等におきまして、こういう点についていろいろ指示もいたしておりまして、今後御期待に沿うようにやって参らなければならない、こういうことでやっております。
○藤田藤太郎君 私は、ずっと見ていきますと、麻薬犯罪が行なわれるのだと言って説明されるのは、川のふちか、取り締まりがきたら船の中か水の中にはかすと、これでなくなるのだというようなことを説明されております。これは事実これがあるから説明されるのですけれども、一袋いろいろのものを混ぜて二万も三万もするような品物が、そんななまやさしいことで私は続くものじゃない。少し強力にいけば、すぐ場所を変えて、むしろビジネス・センターでこういうことが行なわれるのじゃないかという気分がしたものですから、申し上げたわけですが、今のお答えのとおり、ぜひそういう問題はひとつやっていただきたい、研究していただきたいと思うのです。 それから、もう一つは、暴力団が資金調達をするためにどうもこういうことをやっているというのが国内における根のような気がする。一般人じゃなしに、そういうところの資金調達にこれが利用されているというのが非常に印象に深いわけです。説明を聞いてもそういうのが多いわけなんですが、そこらあたりの問題はよほど気をつけていただかないといかぬのじゃないかという気も印象としていたしましたから、皆さん方専門家ですから、取締官や警察の方々専門家ですから、われわれはしろうと考えですけれども、何とかして麻薬を絶滅したいというこの一点にみんな尽きているわけですから、私のように発言している者も発言していない者も、皆一致して、麻薬は何としても撲滅したいという熱意でこの社労委員の方々は皆おるわけですから、そういう点はぜひひとつ私たちの期待にはずれないように、皆さん方の警察の方々、海上保安庁、税関、厚生省、検察庁という工合に、ぜひ緊密な連絡をとって、機動的にこれが実効をあげるようにぜひお願いしたいことを申し上げまして、私の質問を終わります。
○阿具根登君 私は一、二点の問題についてお尋ねいたします。ほとんど同僚議員から質問になっておりますから、もしも重複したら簡単にお答え願います。 今日、非常な世間の人を驚かしているこの種の麻薬の問題につきまして、それぞれの所管で非常に注意をしていただいていることはわかりますが、私ども過去を振り返って見る場合、戦時中、あるいは戦争前、陸海軍は緊密な連携のもとに云々ということをいつも言われたけれども、戦後になってみると、陸海軍が一番意思が疎通しておらなかった、いわゆる所管争いといいますか、これは大体日本の政治形態の中で、一番今も各省の所管争いというのが世上のうわさに上っているとおりでございます。そうしますと、海上保安庁、あるいは警察庁、厚生省、大蔵省、それぞれの出先の方がそれぞれ苦労しておられますが、統一した指揮系統がない場合、不便を感じられることはないかどうか、率直に御意見をお聞きしたいと思うのです。たとえば麻薬に関する限りは、麻薬取締官として特殊な組織を作って、一本の系統でやったほうがいいのか、今のように、厚生省は厚生省として、あるいは税関は税関としてやられる、海上保安庁は海上保安庁というところに——おそらく私がこういう質問をしても、緊密な連携のもとにやっておりますとしかお言いにならぬと思う。しかし、そういうあり方でいいかどうか、私はそういう点で少し問題があるのじゃないかと思うのです。一方では予算を非常にたくさん要求しておられるけれども、その予算はほとんど通っておらない。これでは海上保安庁としてやろうとしてもやれないのじゃないかということを裏書きしたと同じです。そういうお互いの出発の力といいますか、そのアンバランスがこういう方面からきても、あるいは情報を一方はとって、一方はとっておらなかった、その情報に危倶を持つ、いろいろな問題が起こってくると思うのです。おそらくどんな徴密な計画をしても、これが完全に今の場合日本に入ってくるのを、水ぎわ作戦と言っておりますけれども、水ぎわで食いとめることができるかというと、私はなかなか困難だと思うのです。先般これらの問題が問題になりましたが、これは水ぎわで完全に防げるけれども、飛行機ではどうもこうもしようがない。今日飛行機の問題は出ておりませんけれども、これは早晩この問題も必ず起こってくると思うのです。人権問題その他もありまして、飛行機で入ってくる場合に、とことんまでからだを調べるということは、これはできない。何トンもあるというようなものではない。こういう非常な弊害があると私は思う。そういう場合に、今のあり方で万全であるかどうか。それとも私が心配しておるように、所管をどこということではありませんが、一つの系統立った一本の指令によって完全に掌握できるような組織が必要じゃないか、こういう点について、ひとつ各省の忌憚のない御意見を伺っておきたいと思います。
○政府委員(牛丸義留君) ただいまの阿具根先生の御質問でございますが、麻薬取り締まりに関しまして私どもが経験いたします限り、これは非常に各方面に分かれておりますし、仕事の上でお互いに張り合うということは、これはもちろんあるわけでございます。過去において完全に緊密な連携をとってやったかと言われますと、私どもも大いに反省しなければならない点があるわけでございますが、しかし、そういう過去のいろいろな経験を積み重ねまして、現在私ども各省を通じてやっておりますのは、結局こういう犯罪捜査ということは、地方検察庁が最後は中心になるわけでございますので、各地検がほとんど各横浜なら横浜地区、兵庫ならば兵庫地区というふうに、その地検を中心にしまして連絡をとっているわけでございまして、これは事件があるときには、もちろんその事件について連絡をとりますが、事件がなくても、毎月そういうふうな連絡会議を開いております。そういうふうなことで、少なくとも麻薬に関しましては、現在、私は、そういう点は各省非常に緊密な連携をとってやっていることを信じておるわけでございます。しかし、もちろんこれ以上いろいろと情報の収集なり、そういう点でお互いに特殊な情報網もございますから、一つの情報が他の捜査機関に必ず連絡されるかというようなことになりますと、それは場合によってはできないこともあるかと思いますが、今後とも私どもは今のような体制で、中央におきましては、各関係官庁が対策本部を中心に連絡をやっております。地方においては、それぞれそういう一線の段階において、地検を中心に緊密な連携をとっている、こういうやり方は非常に理想的かどうかは知りませんけれども、仕事の実際に即しておるやり方ではないかというふうに、少なくとも私ども麻薬取締官の活動を通じまして、そういう印象を持つわけでございます。
○政府委員(大津英男君) ただいま薬務局長からもお話がございましたが、一面、一つの機関だけでなくして、いろいろな機関でやっていくということからいろんな手がかりが得られるという点もあると思いまするが、御指摘のように、完全に緊密に連絡が保てなかったというようなことが必ずしも皆無ではないと思うわけでございます。警察といたしましては、全国におりまする警察官が一番末端にあって情報を入手し、いろいろ調査の探知もします。また、海外におきましても、先ほどお話がありましたような駐在官からの情報の問題もありまするし、さらにICPO、国際刑事警察と申しますか、こういう面からの情報あるいは連絡というようなものもございまするし、こういうものと、やはり一応事務局のようなことを警察庁がやっておるというようなこともございますので、そういう関係で、少なくも各府県の中でも、場合によっては一つの事案について必ずしも競合しないことはないと思いますが、そういう点につきましては、少なくも麻薬捜査に関します限り、調整をとってやっていくという状態になっております。また、厚生省麻薬取締官と警察官との麻薬の犯罪捜査に関しましては、協定事項もできておるというようなことで、この協定のもとにお互いに努力し合っていく、こういう形でございますし、その他ただいまお話がございましたようなことも私どもも十分に注意をいたしまして、相互の緊密な協力で、麻薬対策について完全にあやまちのないように、さらにやっていきたいと考えております。
○説明員(丸山幸一君) 大蔵省といたしましても、現在の税関は、いわゆる逮捕権限がないわけでございまして、麻薬事件と申しますのは、大体逮捕事件になる。したがいまして税関におきまして情報なり何なりキャッチした場合には、必ず司法当局と連絡の上、それぞれ共同でこれを行なうということになっておりますし、また、私の聞いております範囲では、第一線においても非常にこの間の連絡が密にいっていると聞いております。また御趣旨の点もございますので、今後中央、地方を通じまして、なお一そう緊密化をはかりたいと考えております。
○説明員(井上文治君) 今皆さんからお話がありましたように、われわれも地方のほうには、関係機関と連絡を密にとってやれということを指令いたしております。密接な連絡があれば現在の体制で差しつかえないのではないかというふうに考えます。われわれといたしましては、先ほど藤田先生が私の言い足りないことを御指摘になりましたが、実際、非常に重要な情報によりますときには、われわれの力の足らないところはほかの機関の応援を頼んでやっております。また、情報によりまして追尾しなきゃならないという事態では、やはりわれわれでなければできない任務だと思っております。
○説明員(桂正昭君) 麻薬取り締まりに当たる検察の役割につきましては、前に藤田委員から御要求があって、書面としてお出ししたわけでございますが、そのほか、第一線における検察庁の役割と申しますのは、先ほど厚生省のほうからお話のあったようなことでございます。私ども考えまするに、第一線の触手は、いろんな触手と申しますか、アンテナと申しますか、これはいろんな方面からいろんな角度でやっていくことが最も広範な角度で情報をキャッチできるわけでございまして、そういうふうな角度で、それぞれの機関がそれぞれの特性を生かしてやっていくことが非常に大事かと思います。それで、従来、確かに若干の摩擦と申しますか、そういうものがあったようでございますが、最近私どもが見ておりますと、非常にその間の連絡が密になってきたのではないか、かように思うわけでございまして、さらに一そうこうした緊密な連絡によって御要望に沿っていくことが大事ではなかろうか、かように考えます。
○阿具根登君 お答えはそういうようなお答えしかできないだろうと思いながら私は質問したのです。それではもう一つ御質問申し上げますが、それだけ緊密な連絡をとってやっておられて、しかも、これだけ世論がやかましいときに、名古屋で麻薬患者が一人もおらないような情報、いなくなったという情報、これはどういう原因か。密輸した人がおらないようになったというならわかりますよ。ところが、患者が一人もおらないようになった。そして最近これはまあ警察当局の努力のおかげでしょうが、鳥取県ですか。どこかで、覚醒剤を山の中で大量に作っておったのが摘発された、こういうことがあったわけです。結局、結果論になりますからやむを得ぬのですけれども、こちらが一つの体制を整えれば、向こうは、より体制を固めてきている。こちらが追うほうですから、確かにそうなるのはいたし方ないとしても、それにしても新聞が伝えているところが正しいとするならば、今日までずっとマークされておったはずです。そういう人たちが行方不明になってしまった、病院がからになってしまった、一体こういうことが考えられるか、何か不備がなければそんなことは考えられぬと思う。私は、一人か二人の人が何がしかの麻薬を持っているのはなかなか発見するのに困難だと思いますのですが、病院の中ががらあきになってしまって、病院が失業状態になるのがわからなかったというのはわからない。どういうところに原因があったのか。各省がそれだけ密接な連携をとってやっておられるならば、おそらく情報網というものは私は相当発達していると思うのです。それが何でそんなにわからないようになっていたのか。また、山の中で覚醒剤を作っていたのが、そこまで大がかりに製品が出てくるようになってやっとそれがわかったのはなぜなのか。どこが不備だからそんなことになったのか、そういう点をひとつどなたか御説明願います。
○政府委員(牛丸義留君) 数日前に某日刊紙に、麻薬の中毒患者が非常にいなくなったというような記事が出ておったわけでありますが、ちょっとあの記事は、私どもが少なくとも承知いたします実態とは少し違うわけでございまして、最近の入院、退院の実例を言いましても、一月、二月等におきましても、四十三名なり三十名というように、毎月入院はあるわけでございます。もちろん退院もあるわけでございますが、現在の制度では、これは自分の意思によって入院をしているわけでございますので、おそらくあの記事は、この東京近くの総武病院等の麻薬の専門の病院の状況を報道されたのではないかというふうに推察しているわけでございますが、中毒患者が全然影を没したというのは少し言い過ぎでございまして、しかし、少なくとも昨年の八月に、ああいう横浜で中毒患者が町にあふれて、一時的な現象として出て来た、そういうふうな現象とは非常に違った一つの現象を示している。これは、これからあと多少私の推測にもなるわけでありますが、強制収容なり、新しい麻薬の取締法が改正されるということで、多少警戒ぎみになっているということは事実でございます。しかし、患者は依然として全国的にも入院患者がございますし、限院の患者もそういう例があるわけでございますから、全然影を没したというような、そういう現象とは、多少報道の内容とは違うと思います。
○阿具根登君 覚醒剤の大量生産は…。
○政府委員(大津英男君) 新聞に出ておりましたように、兵庫県におきまして、去る六月の十日、兵庫県と広島県、島根県県境にまたがるところに麻薬の密造所があることをずいぶん前から内偵、捜査を進めておったわけでございますが、これを検挙をいたしまして、約十キログラムの覚醒剤の押収をいたしておるというような状況でございます。最近の傾向といたしまして、麻薬や覚醒剤に関しましては、昭和二十一年当時、非常にはなはだしいしょうけつをきわめたような状況があって、その後全国的に非常に取り締まりもいたしたようなせいもございまして、下火になって参ったわけでございますが、またここ数年の間、少しずつ覚醒剤の使用事犯、あるいはその密売というようなものの件数がだんだんふえてきておるというような状況も見られておった際でございまして、やはり暴力団関係者等がこういう密売、密造ということに関係をしておるという事実が出て参って、御指摘のような取り締まりが行なわれたということでございます。
○阿具根登君 最後に、一つ質問いたしますが、今度の一部改正で、非常に罰金も刑もひどくなったのですが、三十六年の裁判の結果が出ておりますから、これをちょっと見てみますと、裁判の結果ですから、ここで私らが結果を云々と言うわけじゃない。しかし、十万円以上の刑が一人です。五万円以上の刑が一人です。一万円以上が四人、五千円以上が一人、こんな軽いことでいいだろうか。内容がわかりませんから、私は内容の問題で刑がいい悪いと言っているわけじゃないんですが、たとい五百万円にしても、こういうことだったら私は何にもならぬと思うんです。これだけの麻薬を扱っておって十万円が一人、こうなんですね。たとえば懲役だって十年以下は一人です。で、ほとんどが六カ月以上二年までが大部分です。そうすると、そういう感覚であるとするならば、いかに法律で罰を上げても、結果は同じことじゃないか。私は、最高の刑をいつの場合でも裁判官が打ちなさいと、そういう意味で言っておるわけじゃないんです。そういう意味で言っておるわけじゃない。特に麻薬関係を見てみますと、この密輸の大元締めはほとんど第三国人です。そうして刑がこのくらいだ。逆に、日本人がよその国でこういうことをやったならばどのくらいの刑を受けるかと私は思うんです。そうすると、いかにここで刑罰を重くしても、結果は同じことじゃないか。わずか六カ月以上じゃないか。五万円以下じゃないか。麻薬を密売をやって五万円とか何とかいったら、それは笑いものですよ。どうお考えになりますか。ひとつこれは大臣にお答えを願っておきましょう。
○国務大臣(西村英一君) 現行の法律はそうなっておりましたので、それではいかぬだろうということで今度刑を重くしたのでございます。今までの考え方が、まあ国会の考え方と申しますか、そういうような法律になっておりましたので、その最高がそんなに低いものですから、その刑によって最高がきまっていますから、それによってずっと刑が軽くなっておった。それじゃあいかぬだろうということで、今度は実際に最高を無期までやったんです。無期じゃ軽いじゃないか、死刑にしろという議論も法制の審議中にはありました。しかし、それもいろいろ討論の末、まず無期という、有刑にしても最高の有刑、罰金刑にしても最高の罰金刑ということになりましたので、あとの実際の処刑の問題は、これは裁判官がやることで、私たちがとやかく口を出すことじゃなかろうと思いまするが、これによりまして十分な取り締まりの効果ということもあげ得るのではないかと、かように期待をいたして一おるものでございます。
○阿具根登君 私の当初申し上げておりますように、裁判官がやられたのに三権分立の日本で私たちがそれにとやこういうことはできないのです。しかし、刑が低かったとするなら、ほとんどの人はこの最高刑にしておるのはずなんです、私の考え方からいえば。われわれの今までの法律が悪かったというなら、おそらく今の物価の問題から、あるいはヘロインその他の価格からいえば、最高刑にこれを打たれるのがあたりまえじゃなかろうかと思うのです。そうしてそれがないということになるならば、いかにこれをあげても私は何にもならぬのじゃないかと思います。それは考えられぬでしょうか。私は、いかに刑が下であっても、しかし、一般の犯罪から見てここまではやれるというなら、そういう世相が現われておるならいざ知らず、私らの考え方が違うかもしれない。そうするならば、私たちがここでどんなに法律を審議をしても何にもならぬじゃないか。どんな高い刑罰を打っても、結果は同じじゃないかという気がするわけなんです。裁判が悪いとかいいとかいう問題じゃないのです。感覚なんです。それで、私のしろうとの考え方から言うならば今じぶんに十万円なんていうなら、これは低い罰金のうちに入ると思うのです、この種の犯罪については、そうするなら、ほとんど十万円ぐらいの罰金になっておれば、これは刑が低いのだと、おまえたちがあまり法律を低くしているからこれ以上打てぬじゃないかということは言えます。ところが、まだ十万円に達しておるのはたった一名なんです。そうしてわれわれがこんなに心配して法律を作っておるのもこれはまだ世の中にそれだけ受け入れられない。われわれだけがから回りして、審議しておりはせぬかという心配を私は持つわけなんです。大臣のように、十万円だったからこんなに低いのだと五百万円にしたら、今度は三百万、四百万が出てくるというふうに簡単に割り切ればそれは問題はない。私はそういう問題を言っているのじゃない。そういう点を私たちはこれだけこの刑を重くしなさい。そうしなければとてもこれはやれるものじゃないということで、真剣に審議をしておるのです。しかし、実際問題から出てきた計数を見てみますと、あまりにも私たちの考え方と差がありはしないか、それならわれわれだけがああいう心配をしておるのじゃなかろうか、こう思うわけです。その点答えにくいかもしれないが、どうですか皆さん。私も率直に申し上げているのですから、どなたか率直にひとつお答えを願います。
○国務大臣(西村英一君) 私もしろうとですが、最近、これは申し上げていいのかどうか知りませんが、やはり非常に世論がやかましく、また、日本としても麻薬禍というこの問題が重要な問題になりましたので、今の法律でも、見ておりますと、多少量刑が何かひどくなっておるような気もいたすのでございます。もし今回この法律が改正になりましたら、これはおそらく適当な量刑になろうかと、私は個人的にはそう考えておる次第でございます。法務省の方が来ておるから、実際の量刑はそのほうからお答えしたほうがいいかと思います。
○説明員(桂正昭君) ただいま御指摘の、私たちのほうから提出いたしております表の関係でございますが、ここで懲役と書いてありますのは、懲役刑のやつ、あるいは懲役と罰金刑と併科となった分でございまして、罰金と響いてありますのは、罰金刑だけについての甘い渡しがあった分でございますが、麻薬取締法にいろいろ罰則はあるわけでございますが、その中には、実質犯と俗に申しまして、輸入あるいは譲り渡し、譲り受け、所持、施用、こういったたぐいのもののほかに、あるいは届け出の違反だとか帳簿の記載の問題とか、こういった形式犯が多数ございますわけでございます。そういうふうな関係で、それらにつきましてこうした罰金の状態となって現われていると申しますか、そういうことになっております。そこで、さらにごらんいただきたいのは、たとえば懲役のほうで十年以下のが三十五年から始まって一件ずつ出ている、あるいは七年以下の分が次第にふえている、あるいは五年以下の分も同じようになっているといいますか、全体としてごらんいただきまして、刑は次第に重くなって参っております。これは現行法のもとにおいても、検察官のほうも次第に求刑を引き上げる、そうしてその求刑が維持せられるように種々の努力をやって参る。さらに一審の判決で刑が軽いと思量されるときには、これを控訴して、さらに詳細なデータを提出いたしまして裁判所の判決を仰ぐ、かような努力を続けて参ったわけでございます。ところで、今回法定刑の引き上げがございますと、それに従って、当然、検察官のほうの求刑基準も上がるわけでございますし、それから、法律が改正になって法定刑が上がったということは、当然にまた裁判所のほうでもお考えいただける、かようなことになろうと思うわけでございまして、したがって、今回の法定刑の加重によって、刑自体もさらに上がって参ることになろうかと、かように存ずるわけでございます。
○委員長(加瀬完君) 他に御発言もないようでございますので、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加瀬完君) 御異議ないと認めます。 これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——御意見もないようでございますが、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加瀬完君) 御異議ないと認めます。 これより採決に入ります。一麻薬取締法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案どおり可決することに賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(加瀬完君) 総員挙手でございます。よって、本案は、全会一致をもって、原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
○高野一夫君 この際、麻薬取締法等の一部を改正する法律案に対して、私は、各派共同提案にかかる附帯決議案を提出いたしたいと思います。 まず、案文を朗読いたします。 では簡単に、一つ一つではなくて、総論的に附帯決議の趣旨を御説明いたします。 先ほど来の質疑応答ですでに御承知のとおり、この麻薬取り締まりに関連する役所が、厚生省、法務省、自治省その他公安委員会、大蔵省、運輸省、総理府、国民の啓蒙のために文部省、いろいろな所管がございます。この連係をますます密接にされて、効果ある取り締まりが行なわれるようにしてもらいたい。なお、予算のことに関係するわけでございまするが、次年度以降におきましては、麻薬関係の専従者、麻薬取締官、麻薬取締員、麻薬関係の警察官、検事、海上保安庁関係、港湾、空港を含めての税関関係、広報関係、麻薬指導員、あるいは海外駐在員等の増加をはかって、効果ある取り締まりが行なわれるようにしてもらいたい。さらに、密輸による犯罪でございますから、その密輸を防ぐ意味においては、どうしても国際的な警察関係、あるいは麻薬関係の連係が必要でございますから、海外駐在員の増加も必要でありますけれども、特に関係各国との警察官、取締官、情報交換、あるいは連係の必要を特に痛感いたします。その点に政府は一そうの考慮を払っていただきたい。さらに、国民に対して、国民が案外に麻薬のおそるべき実態を知っておりませんから、いかにこれがおそるべき問題であって、日本の民族の将来を誤るものであるかということの啓蒙をしなければならない。文部省、厚生省、法務省各関係者は、こぞってそういう国民に対する啓蒙運動をしていただきたい、こういう趣旨からただいまの決議案を提案したわけであります。
○委員長(加瀬完君) ただいま提出されました附帯決議案を議題といたします。 本附帯決議案を本委員会の決議とすることに賛成の方の挙手を願います。 〔賛成者挙手〕
○委員長(加瀬完君) 挙手総員と認めます。よって高野委員提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。 この際、本附帯決議について厚生大臣の御所見をお述べ願います。
○国務大臣(西村英一君) ただいまの附帯決議の趣旨は、十分政府といたしましては尊重いたしまして、十分善処をいたしたいと考えております。
○委員長(加瀬完君) なお、本院規則第七十二条により、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(加瀬完君) 御異議ないと認めます。よってさように決定いたしました。 —————————————
○委員長(加瀬完君) 長期間にわたりまして、ふつつかな委員長をお助けいただきまして、ありがとうございました。明日交代をすることになりました。いろいろの御迷惑をおかけいたしました点をおわびいたしますとともに、お世話になりました点、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手) 本日はこれにて散会いたします。 午後三時十九分散会