予算委員会 第2号
- 発言数
- 240 件
- 登壇者
- 18 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1963/01/29
会議録
○塚原委員長 これより会議を開きます。 昭和三十八年度一般会計予算、昭和三十八年度特別会計予算、昭和三十八年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、審査を進めます。 この際、川俣清一音君より議事進行に関し発言を求められております。これを許します。川俣清音君。
○川俣委員 予算審議を始めるにあたりまして、政府に注意を喚起いたしておきたいと存じます。 それは、今国会に提出されまする予算関係法案九十六件といわれておりますし、条約について十四件等がございまするほかに、地方財政計画をすみやかに提出されなければならないと思うのでございます。そのことは、地方選挙を前にいたしまして、各自治体が早く議会を終了いたしたいという念願に対しまして、政府はこれに対応しなければならないと存じます。本予算委員会をすみやかに審議をし、十分意を尽くすためには、少なくとも予算関係法律案は二月の中ごろまでに提出を願いたい。もしもこれがおくれるということになりまするならば、総理のいわゆる十分審議してほしいという趣旨にも反し、私どもの審議にも差しつかえまするので、すみやかに予算関係法律案を提出されることと、並びに、地方選挙を前にして、すみやかに地方財政計画を本委員会に提出されるよう要望いたします。これに対して総理の見解をお尋ねいたします。
○池田国務大臣 川俣委員のお話、まことにごもっともでございまして、政府におきましても、予算関係法案九十数件は二月の中ごろまでには出せるよう着々準備を進めております。また、地方財政計画につきましては、御承知の通り、各府県より資料をとってその後に作成する関係上、えてしておくれがちでございますが、今年は地方の統一選挙もあることでございますから、特に意を用いまして、できるだけ早くお出しするようにいたしたいと思います。
○塚原委員長 これより総括質疑に入ります。 井出一太郎君。
○井出委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、昭和三十八年度予算に関連をして質問をいたします。 先般行なわれました総理の施政方針並びに外務、大蔵両大臣の演説にも言及しつつ、予算の背景をなす諸問題についてただしたいのでありますが、本日は主として外交関係にしぼって申し上げたいと思うのであります。 本年の年頭にあたりましては、世界の指導者というべき各国の首脳から活発な外交上の発言がございました。一月十四日、若きケネディ大統領は、二カ年の経験と実績を踏まえて、さらにキューバ問題の解決に自信を得て、世界の未来像にも触れた年頭教書を発表いたしました。翌々一月十六日には、東独社会主義統一党大会に臨んだフルシチョフ首相は、一段と老練さを加えて、平和共存を主とした長時間の演説を行なっておるのであります。ケネディ教書と日を同じくして、フランスのドゴール大統領は、ナッソー協定に同調せず、英国のEEC加入に冷淡な口ぶりをもって応酬をいたしておるのであります。さらにまた、中共の伍修権代表は、言葉激しくユーゴの修正主義を攻撃することによって、中ソの対立はまことに顕著なるものがあることを示したのでございます。とのように、二つの陣営はそれぞれ内部において問題をはらみながら、国際環境はまことにきびしくかつ険しいものを思わせるのでございます。 本年の国際関係は、このように、それぞれの陣営が内部調整に追われるというふうなことに相なりましょうが、日本の外交もこれと波長を合わせまして展開される必要があろうかと思うのでございます。 わが国をめぐる外交問題の中で、最初に、まず一番手近な、そして当面の急務であります日韓交渉の問題から入って参ります。これはやや詳しく伺いたいと存じます。外交上機微に属する点もございましょうけれども、どうか、国会の論議を通じて国民に語りかける、こういうおつもりで御答弁をいただきたいのでございます。すでにこの問題は長い間議論されておりますので、あるいは重複する点もございましょうけれども、一応この辺で日韓関係についての議論を整理をしておく、これは政府にとっても与党にとっても必要な時期でございましょうか、さような意味で以下申し述べたいと思うのでございます。 もとより私は日韓両国の国交正常化をできるだけ早い機会に実現するように願ってやまない一員でございます。かつて、漁業の問題でございますが、私が農林省におりました当時、抑留漁民の家族の方々から切々たる訴えを幾度か受けたことがございまして、このような形でほうっておくということはどうも耐え得ないのでございます。ただ、問題は、国民の納得を十分に得なければならないのでありまして、相手国の事情というものもありましょうけれども、まず自国民が支持するという問題が先決であるわけであります。そして、今日良識ある国民の心の中に宿るものは何かというと、納得のいく線であるならば、これは早いところこの辺で幕を引いて、そして善隣友好の関係を樹立したい、こういう気持ではなかろうかと思うわけでございます。 そこで、第一点として私が伺いたいのは、今日素朴なる国民の率直な疑問というものがある。それは、在日韓国代表部というものは東京に存置しておりますけれども、一方日本の代表部というものがソウルに置かれておらないという問題でございます。これはどうもいかにも片手落ちではないか、対等の関係を欠いているのではないか、こういう疑問があろうかと思うのであります。かつて金裕沢という人が日本に参りましたときに、私は会談をいたしてこの問題に率直に触れたのでありますけれども、向こうは言を左右にして明快な答えをいたしませんでした。今日韓国の情勢というものはなかなか変転きわまりない情勢である。こういう際に、やはりこちら側としても的確な情報を得なければ、なかなか外交を処理していくことも困難だろうと思うのでありますが、こういう点、どうも片手落ちだといった国民の疑問に一つお答えを願っておきたいのであります。
○大平国務大臣 仰せの通り、ソウルに日本の代表部が置かれてないということは、非常に不便でございまして、私ども、終始、相互主義に基づきまして、ソウルに代表部を置くことを認めるように韓国側に要請いたしております。遺憾ながら今日まで向こうの同意を得るに至っていないのでございます。去年の三月、小坂前大臣と崔徳新外務部長官との会談の際、先方にこの要請を小坂大臣がされましたところ、ただいま国交正常化の話が進んでおる、今代表部を置くということになりますと、韓国民に与える影響といたしましては、何か正常化の話が延びるのではないかという印象を与えはしないかとおそれるので、国交正常化を早めて、正常化のあとにしたいということを申したのでございます。その後の朴最高会議議長の言明も、このラインに沿った意思表示であると思っております。従いまして、私ども、先方の同意が得られない以上は、本体でありまする正常化の話し合いをできるだけ早く促進して、正常化のあと公館を設置するということにするのもやむを得ないのではないかと思っておるわけでございますが、しかし、必要に応じまして、要すれば、その過程におきましても、代表部の設置を極力先方の同意を得るように努力いたしたいと考えております。
○井出委員 これからの折衝過程においてもさらに代表部設置を要求し得る機会というものはあるであろう、かように私今了解したのでありますが、これは、早期に妥結をすればけっこうでありますが、どうもまだ相当手間がとれそうだという情勢であるならば、やはり一つそういうところは遠慮なく相手方に御要求になってしかるべきものだ、こう考えるわけであります。 そこで、問題の核心でございます請求権その他の問題に入りますが、われわれ承っておるところでは、いろいろな案件がある。請求権はもとより、李ラインないしは漁業問題、さらに在日韓国人の法的地位の問題、竹島の問題、こういった全懸案を一括して同時に解決をするのだ、これが先般の外務大臣の御演説の中で明確に指向されました。この解決の仕方、内容、これはいろいろございましょうけれども、この一括解決の原則、このいずれもが並列的に、いずれが重い、いずれが軽いということなしに、いずれも必要な条件なんだということで、同時解決の原則、これを私はもう一ぺん確認をいたしたいのですが、いかがでございましょうか。
○大平国務大臣 仰せの通り、全懸案を一括いたしまして同時に解決するという基本方針に変わりはございません。
○井出委員 この交渉の結論というものはどういう形になりましょうか。条約を結ぶ、協定ができる、こういうことでありましょうが、一括したものが一本の条約協定という体裁をとるでございましょうか。それとも、総論的なものと各論的なものとが分かれて、たとえば漁業なら漁業というものについては別個に漁業条約が結ばれるという構想でありましょうか。その辺を明らかにしていただきたいと思います。
○大平国務大臣 今実体の究明をやっておりますので、そのでき上がりを見ないと、どういう形式のものにいたしますか、確たる方式を今持っているわけではございません。ただ、漁業なら漁業の協定と請求権の問題の協定とが別個にできましても、その協定は同時に発効するという手順にいたしたいということは変わりございません。
○井出委員 ずいぶん長い間の会談の継続でございまして、十年交渉あるいはそれ以上になるのでしょうから、そのあたりまで私はかなり煮詰まっておるもののように考えておったのですが、これはいずれにもせよ同時に解決をするのだということであればけっこうかと思うのであります。 そこで、請求権の問題でございますが、これは一昨年の十一月でしたか、朴議長が池田総理と会談になられた。そのときあたりから非常な了解が進んで今日になったわけでありますが、従来、法的根拠のあるものに限るのだ、こういうふうに承知をしておったわけでございます。その過程におきましては、ときには、大蔵省側の見解あるいは外務省側の見解、いろいろ数字のようなものが流れて聞こえて参りましたが、法的なものを積み上げて参りますと七千万ドル程度だというふうなことが聞こえて参ったわけでございます。しかし、おそらくは、もう終戦以来二十年近くにもなるのでありますから、いろいろな資料などにおいて散逸をしたものもございましょう。はたしてほんとうに明確な積算というものができるかどうか、このあたりは困難のように見るわけであります。しかし、ともかく、最近、無償援助で三億ドル、有償援助で二億ドル、こういう数字が出てくるに至りまして、何か一足飛びにそこまで上がってしまったという感じが国民の間でいなみ得ないようであります。これは、外務大臣がよく言われる大所高所に立ってといいますか、高い次元において解決をされるということでございましょうけれども、二十三日の予備会談でありましたが、向こうからこれに対する合意書というものが提示されるやに聞いたのでございますが、このあたりは、提示されたのでありましょうか。あるいは、もしそれが来たとすれば、向こう側はどなたが責任の署名をされておるのか、こちらはだれにあてられたものであるか、そういうあたり、もしお漏らしがいただければお聞きをしたいわけであります。
○大平国務大臣 請求権問題は、日韓間の懸案の中で一番厄介な問題でございます。御案内のように、韓国側からは八項目にわたる要求がございまして、これはすでに新聞紙上を通じて発表いたしてあります通りでございます。それで、一昨年の十一月の池田・朴会談で、今御指摘のように、法律的根拠のあるものに限ってやろうというお話し合いがございましたことは事実でございまして、従いまして、先方の要求されます八項目につきまして、予備折衝を通じまして法律論を戦わしてきたわけでございます。たとえば朝鮮銀行が日本の朝鮮統治時代に搬出いたしました地金でありますとか地銀、金、銀というようなものを一例をとつてみますと、これは、韓国側は、地金銀の搬出そのものが不法なんだ、それを規制している法律そのものは正当性を持っていないんだという建前をいつも主張されたのでございますけれども、わが方としては、実定法上朝鮮銀行というものは地金銀の売買をやることになっておりますし、その当時の相場で対価を払って搬出したものであるから正当なんだということを主張する。一つの事案をつかまえてみましても、そのように事実関係がはっきりしているものにつきましても、法律論といたしましては平行線をたどるわけでございます。それから、事実関係がはっきりしていない例を申しますと、たとえば徴用工の被害の補償にいたしましても、一体、徴用の事実の有無、それから、それに対する賃金の支払いの有無、これを的確に捕捉する事実を捕捉するということができない。一部はできても全部はできないというような例がたくさんあるわけでございまして、従いまして、その後の予備折衝の討議を通じまして私どもが考えましたことは、請求権について正確に事実関係を踏まえた上で法律関係を明確にして、しかもその両方について両者の意見が一致するということは、非常に望ましいことではございますけれども、事実上非常に困難、あるいは場合によっては不可能という事態に逢着いたしたわけでございます。しかし、そういう過程をいつまでも繰り返しておるということは、せっかくわれわれが意図いたしております国交の正常化ということが百年河清を待つということになりますので、適当でないと判断いたしまして、私どもといたしましては、そういう過去の不正確な資料をせんさくするという態度を変えまして、将来に向かって日韓は協力して相互の繁栄をはかる、こういう意味合いにおきまして、前向きの展望に立ちまして、日本は今御指摘のように有償・無償の経済協力をする、そして、その反射的と申しますか、随伴的な結果として、そういう厄介な請求権の問題というのはないことに両国で確認し合うというようなことでこの問題を割り切っていくよりほかに道はないじゃないかという判断に立ちまして、そのような方向に進めてきたわけでございます。 しからば、請求権の問題につきまして、現時点におきまして完全に日韓双方に合意があるかというと、そうでないのでございます。これは、大筋において合意はございますけれども、細目につきましてまだ煮詰めなければいかぬ問題がございますので、全体として請求権問題に関する限り合意があるとは申し上げられない一わけでございます。従いまして、この問題につきまして日韓双方でイニシアルをかわすというようなことは一切いたしておりません。一つの交渉の過程における合意でございまして、これは何らの拘束力を今の段階では持っておりませんで、先ほど井出委員がおっしゃったように、全懸案を一括して解決する時点において本ぎまりするわけでございます。これは、今後、漁業問題でございますとか、その他の懸案をも同じようにそれぞれの交渉過程におきまして荒筋の合意はして参らなければ、本協定の材料が整わぬわけでございますので、そういうことはやって参るつもりでございますけれども、それは両国の間で責任を持ってやるという外交文書ではございません。交渉の過程における合意でございます。その最後の協定の素材をつくっておるというふうに御承知願えたらしあわせだと思います。
○井出委員 承りますと、これはなかなか複雑な問題であることはよくわかります。先方が要求しました八カ条というものも、今おっしゃる地金銀の問題、その他韓国人の保有しておった有価証券の問題だとか、徴用者に対する賃金その他の問題とか、いろいろあるようでございますが、これが、予備会談その他の過程においては、向こうの要求額の項目の中で、これは認められる、これはアウトであるといったような仕分けは十分にされまして、そうして、とどのつまりが、それにこだわって計算を積み上げるということはなかなか困難だ、こういう認識の上に立たれたというふうに私は了解をするわけであります。 そこで、請求権と申しましても、この金銭で評価されるもののほかに、船の問題がある、あるいは文化財の問題がある、こういうことを聞くわけであります。従って、これらは別建に相なるのかどうかということを伺いたいのでありますが、船については、韓国の港の船籍簿に登載をされておる船は向こうに引き渡せ、あるいは終戦直後に向こうの水域へ日本の船が逃避をしたというふうなものをどうとか、今度こちらから言えば、朝鮮戦争当時に何隻かの船を貸与したということも私聞いておる。また、漁船が抑留されて、向こうに没収されたままになった船もおそらくあるだろうと思うのです。これをバランスシートをつくって調べて、差引はどういうことになるのか、そのとどのつまりは、何がしかのものを向こうの要請に応じて船を供与するとでもいいますか、あるいは独立のはなむけと言っては何でしょうけれども、何かそういうような気持でこれを処理されようとでもお考えになっておるのか、船の問題について一ぺん伺いたいのであります。 ついでに、文化財の問題でございますが、これは、韓国の古い文化というものを考えてみれば、たとえば、新羅の都であった慶州の仏像など、私も見ました。あるいは向こうの陶磁器、李朝のものなどは、日本の茶人のこれは垂涎おくあたわないものであります。こんなものを一体よこせというのであるか、法隆寺の国宝百済観音も、美術史家は向こうから来たものだと言っていますが、まさかそれをよこせと言うのじゃないでしょう。何か、文化財について、今国立博物館あたりにある何かを引出物みたいに向こうに渡す、そういうお考えを持っておるのか、船と文化財の問題についてお伺いをいたします。
○大平国務大臣 船舶問題も文化財の問題も、広い意味における請求権の問題でございます。当初八項目を一緒に要求されておったのでございますけれども、船舶の問題と文化財の問題は別建にいたしまして要求して参っておりまして、先ほど私が申しました八項目以外に、船舶の問題と文化財の問題があるわけでございます。そこで、請求権というものは、先ほどの大原則によりまして、日本が経済協力をやるということの随伴的な效果として、こういう船舶の問題も文化財の問題一切ないことに確認し合うということが私どもの基本的な方針でございますが、ただいまの段階で、まだその二点につきまして先方がそれでよろしいというようには言って来ていないわけでございますが、私どもとしてはそういう方針で対処していきたいと考えております。 ただし、漁船の問題は、これは終戦後の問題でございまして、いわゆる対日請求権の範疇に属さない問題でございまして、これは漁業交渉を通じての一環の問題として処理して参りたいと考えております。 ただ、文化財につきましては、出土国がそれを保存し、かつ鑑賞するということが望ましいという先方の要望も一応理解できるところでございますので、国際法上返す返さないという問題になって参りますと、法律論として考えますと、必ずしもその義務はないと思うのでございますけれども、将来の日韓の友好関係を考えてみますと、先方の要望につきまして私どもある程度の考慮はしなければならぬのじゃないかというような気持は持っておるわけでございます。
○井出委員 船舶問題と文化財の問題は、先ほど申し上げましたような大きな意味の請求権の中には入っても、ここで今金銭で表現をされておる請求権とは異なる、こういうふうに一応理解をいたします。 そこで、私は、国民諸君が何か非常に一足飛びに三億ドル、二億ドルという額が出ましたことに対して意表をつかれたような感じもあるではないか。従って、このあたりはPRが必要だと思うのです。私は、きょうは、限られた時間でありますから、ほかの問題もございますので、そう詳しくは詰めませんけれども、この点は十分御留意になって、これだけの額にまとめるのにはかようかくかくな理由に基づくのだということで、ただ大所高所という表現以外に、もう少しその辺をきめこまかく説得をなさる必要があろうと思うのであります。 そこで、請求権の問題がかりに片づく、こういう場合に、これはもう相手方に信を置いて交渉をいたしておられるのですから、私は、俗に言うように、請求権だけが解決をして、あとの問題はすったもんだトラブルが起こるというふうなことでは困る。よく、請求権だけ食い逃げにされるおそれはないのか、こういうふうなことを下世話で申します。もちろん、これであっては相なりませんが、せんだって、総理が記者会見で発言をなさったあと、向こうの外務部長官が、請求権と漁業問題は別だ、こういうような発表もしておりますので、そのあたり、もちろん一括解決が原則でございまして、請求権だけ済んで、あとはごたごたするというのでは、これは問題にならぬと思うのですが、この辺の感触を一つ確かめておきたいと思うのです。
○大平国務大臣 仰せの通りでございまして、全懸案は一括して同時に解決するという基本方針は不動の方針でございます。
○井出委員 そこで、請求権問題はまだいろいろございますが、例の平和条約四条に基づきまする、これは法的解釈になりますが、あれは(a)項と(b)項とあったと思います。そこで、日本側の韓国へ残して参りました国の財産、あるいは在留同胞の持っておった個人財産、こういうものは置いてきたわけでありますね。これが米軍の接収するところとなって韓国側に返還をされた、こう理解をいたすわけでございます。これはもうはっきりわれわれは放棄をしておるので、とやかく言う筋合いのものではないでしょうが、しかしこの個人財産については、やはり向こうにおりました営々辛苦の結晶でございますから、そういう関係者は、これが日韓解決の一つの具に供せられておると解釈をするならば何らかの主張をされるのではなかろうか。こういう点に対してはどうお考えでございますか。
○大平国務大臣 平和条約は全体として無条件に受諾して、日本が国際社会に復帰したわけでございまして、日本が公私の財産を放棄したということは厳たる事実でございます。従いまして、日本政府はこれに対して発言権を遺憾ながら持っておりません。ただ、しかしながら、そういう在鮮財産を放棄させられたということは、今回の交渉と全然無関係ではございません。今御指摘のように、私有財産につきましては、いかにも理不尽かつお気の毒であるという感情は、私も井出委員と同一にするものでございますが、しかし、在鮮財産を放棄したということは、政府の意思に基づいてやったことではないのでございまして、連合国の要求であったわけでございます。従って、これに対して、政府が自発的に放棄したもの等に対する措置と、ああいう状況のもとにおきまして放棄させられた場合における措置とは、おのずから政府として違った措置をとらざるを得ないわけでございまして、これに対する補償というような点につきましては、政府は考えておりません。
○井出委員 これは国内問題にもなることでございますから、今補償ということはお考えにならぬとおっしゃいましたが、これはまた別個に議論をすることにいたしまして、先へ進みたいと考えます。 この第四条を解釈するにあたりましてアメリカ政府の見解を求めたということがあったと記憶します。そして、(a)項にいうところの特別取りきめの際に考慮をする対象になるのだ、概略こういう意味の回答が米政府からあったように思うのでございますが、これは交渉過程において相当ものを言ったのでございましょうか、向こうの覚書はそう大して役に立たなかったのか、このあたりはいかがでございましょうか。
○大平国務大臣 米国の解釈なるものは日韓双方とも同意いたしたわけでございまして、その限りにおきましては、交渉の一つの共通の足場があったわけでございます。しかし、先ほど私が御説明申し上げましたように、請求権の問題を、請求権を通じまして法律関係、事実関係を明確にした上で片づけるという方式で進む限りにおきましては、この足場は共通の足場として活用できたわけでございましょうけれども、私どもは、そういうことによってはいつまでも平行線をたどるだけで、じんぜん時間を浪費するばかりでございますので、別な方式を考えたということでございまして、今私どもが話し合っておるベースの上では、この問題は特に取り上げる必要のないものになったと思います。
○井出委員 かねがね、韓国に対しまして、焦げつき債権が四千数百万ドルでございますが、これがやっかいな問題として残っておったわけであります。この請求権の問題を処理するにあたりまして、これはどのように扱われることに相なりましょうか。たとえば無償供与の分の中から差し引くというふうなことにすれば、これは一番簡単でありましょうが、あるいはそうでなくて、これを年賦で別建に、やるものはやってしまうんだ、もらうものはもらうんだという形で解決をすることになりましょうか、これを明らかにしておいていただきたい。
○大平国務大臣 対韓債権、これは厳然たる債権でございますので、この処理につきましては政府は慎重にやらなければならぬと思います。従いまして、本来の請求権問題とは別にいたしまして、このこと自体明確に処理いたしたいという方針で臨んだわけでございます。従って、この債権は一定期間内に政府に返していただくということは、双方でただいまの段階で合意し合っております。しかし、その一定期間を何年にするかということにつきまして、細部はまだ遺憾ながら煮詰まっていない状況でございます。
○井出委員 この請求権の内容でありますが、こまかな具体的な問題になりますと、なかなかまだ煮詰まっておらぬ部分もあるようでございます。これらは一つ御如才もありますまいが、十分気をつけられまして、やはり何といったってこれは国益と言いますか、国の利益を中心にお考えになっていることはもちろんでございますが、そのあたり一つ御如才なく処理をしていただきたいと存じます。 次に漁業問題でございますが、私は、日韓会談に対しまして、これを即時打ち切りとかあるいは反対だとかいう御異議が一方にあることを承知しておりますけれども、事漁業に関しまして、ほんとうに零細な漁民の諸君が、知らず知らず李承晩ラインの中に飛び込んでしまった、これでひどい目にあっておるという現状に接する場合には、これは一種の人道問題だと思うのです。こういうあたりからも、やっぱり日韓の問題をこのままにはしておけないという気持が強くいたすわけでございますが、この方はいかがなことなんでありましょうか。これもわれわれ新聞情報程度しか存じませんけれども、日本側は、向こうの沿海六海里程度まではこれは韓国の水域として認める、そのまた外側にもう一つベルト・ラインを六海里くらい認めて共同操業水域とするんだ、こういうふうな案というふうに日本側の分は伝えられておりますが、向こう側は、とてつもなく幅の広い四十海里というふうなものを主張をしておられる。その上にさらにまた禁止水域のようなものを設けられる。ただいまのところでは、これはずいぶん食い違っておるようでございますが、これはどうでございましょう。この開きは徐々には詰まっておるのでございましょうか。それから、これが妥結に至るお見通しというふうなものはいかがでありましょうか、これを伺います。
○大平国務大臣 漁業問題に関して、わが方からも先方に提案をいたしてございます。それから昨年の十二月五日には、先方からの御提案もあったわけでございます。これから本格的な討議に入るわけでございますが、今の段階におきまして、韓国案はどういう仕組みを持ったものである、日本側の提案はどういう構図を持っておるかということにつきまして私が申し上げますことは、ただいま本格的な討議が始まるという段階でございますので、遺憾ながらここで明らかにし得ないことをお許しをいただきたいと思いますが、ただ、今日の段階で言えますことは、先方の提案の内容は、まだまだ柔軟性を欠いておるということは申し上げて差しつかえがなかろうと思います。 しからば、わが方はどういう考え方でおるかということでございますが、わが方の考え方の基本は、一九六〇年の第二次ジュネーブ海洋法会議におきまして、米加両国から提案されて可決になっております方式がございます。それは、沿岸国に対しまして最大限十二海里の排他的漁業専管水域の設定を認めるということでございまして、この方式は、最近英国と北欧諸国との間における国際漁業紛争の解決がこれを基礎として行なわれておる例もございます。従って、こういった海洋法の最近の傾向はふまえておかなければならぬのじゃないかという考えが一つございます。それから第二として、わが国は第三国との間に漁業問題をたくさん持っておりますので、今度の日韓の間の漁業問題の解決におきまして、国との間の漁業問題の処理において日本側が不利な影響があるようなことが起きてはならないと考えておるわけでございます。同時にまた、韓国の漁業者の利益も考えなければならぬと思っておるわけでございまして、そういえ、ような考え方を基礎に、今私どもとしては提案をいたしておるわけでございまして、これから鋭意この問題と取っ組んで参りたいと考えております。
○井出委員 今、後段でおっしゃった、日本は四面環海の国であるから、ほかの第三国との漁業問題もなかなか幾多ある。これに差しさわりがあるようなことになっては困るという御配慮をなすっておる。これは非常に大事なことでございます。おそらく日ソ漁業問題もありましょう、中国との関係もあるでありましょう。そういうことにおいて、ここで一つ前例を打ち立てられる、しかも日本に非常に不利なものが生まれたということに相なっては、これはまことに困ります。今伺いますと、米加の間の問題、イギリスとノルウェーあたりとの問題、最近それぞれ一つの見本のようなもの、前例のようなものができた。こういうものに十分準拠されまして、一つ御交渉にお当たり願いたいと思うのであります。 そこで従来李承晩ラインをはさみまして、日本の漁船が今まで幾多拿捕されておる。一体その隻数、トン数あるいは人員、そのうち没収されたものがどうか、返還されたものがどうか、こういうことを、時間の都合もございますから、このことは水産庁に関係しますか、外務省ですか、いずれにもせよ、これは私は資料でちょうだいしておきたいと思います。そうしてそのぎりぎりの結論として、一体今没収されたものがどれくらいあるのか、あるいは向こうに抑留されておる漁民は現在幾人おるのか、これだけは一つ明確にしておいていただきたい。
○大平国務大臣 李ライン設定以来今日まで、一月二十八日現在まで、韓国側に拿捕された漁船の総数は二百四隻でございます。一万二千百十三トンでございます。抑留漁船員の総数は二千五百六名となっております。このうち、未帰還の漁船は百七十一隻、九千六百六十六トン、現在も抑留中の漁船員は二十七名でございます。
○井出委員 今伺いました数字によりますると、人員は大部分釈放にはなったものの、漁船はほとんどまだ大部分のものが向こうに拉致されたままになっておる形のようでございます。これは今までもう少し何とか手だてがなかったものかという感じがいたしますが、これに対しては、終戦以来起こった事柄でございまして、補償を要求する、向こうはそれを考える、何かそういうようなことは議題になっておりませんか。
○大平国務大臣 先ほど私が申し上げました通り、この問題は、漁業問題処理の一環として処理して参りたいということでございまして、当方から、おっしゃったように要求すべき性質のクレームであることに間違いがございません。
○井出委員 それでは少し先へ進みますが、在日韓国人の法的地位を明確化する、これも一つの大きなテーマであるわけであります。そこで、この法的地位を明確化するということはいかなることでありましょうか、この内容を一つ明らかにされたいわけであります。現在、在日韓国人というものがおよそ何名おるということに相なりましょうか、これは南と北と区分をして数を示されれば一そうありがたいのですが、そうしてこの人々の納税の問題とか、教育の問題とか、婚姻の問題とか、あるいは戸籍が一体どうなっておるのか、いろいろな問題が私はあろうと思いますが、時間の都合もありますので、これはまあ問題を指摘するだけにとどめまして、法的地位を明確化するということの具体的内容を、簡単でよろしゅうございますがお示しを願いたい。
○大平国務大臣 在日韓国人は総数約五十八万人でございます。それで、これらの方々は終戦の日以前に日本人として来日し、引き続き在住されておる方と、それから日本で生まれたその子孫でございます。この方々はほとんど日本の言語、風習に同化しておりまして、平和条約発効時までは日本人として居住していたのでありますが、平和条約発効に伴いまして、自己の意思によらないで日本国籍を喪失されて、その結果として、日本人として受けていた待遇を失ったという事情にございます。政府としては、このような特殊な事情を十分考えると同時に、国際慣行にも照らしまして、あるいは国内に将来政治的、社会的禍根を生じないように配慮いたしつつ日韓双方の納得がいく解決点を見出したいと考えておる次第でございまして、現在永住権の問題、永住権を付与された問題に対する退去の問題、それから永住目的で韓国に帰還される場合の持ち帰り財産の問題とかいうような問題が、いうところの法的地位に関連いたしまして討議が行なわれておる状況です。
○井出委員 これもこまかく申し上げておると長くなりますから、いずれ外務委員会等に譲るといたしまして、一つだけ予算に関連をいたしまして、ことしの予算は社会保障を一つの柱として大きく取り上げられました。その中で、生活保護費七百二十二億という近来にないふくれた数字がございますが、聞くところによると、在日韓国人でかなり生活に困っておる人々が多いのだ、こういう人々が、生活保護を受けておるという数が相当にあるようであります。これは厚生大臣の管轄になりましょうか、これは一体何人くらいあって、そういう人々にわが国民の納税から出るところの予算、その生活保護の費用がどれくらい向けられておるか、これを一つ伺っておきたいと思います。
○西村国務大臣 在日朝鮮人の総数は約五十八万人ということで、そのうちで生活保護と同様な保護を受けておる人が、三十七年十月現在で六万人くらいでございました。その経費は、約二十八億円くらいになっております。
○井出委員 それでは先に進みまして、もう一つの話題の竹島問題であります。 竹島問題というものは、びょうたる一孤島であって、大して経済価値はないものだ、こんなふうなことも申します。しかし、何と申しましても、わが国固有の領土である、この認識においては間違いないのでありまして、この問題の処理は北方領土の問題その他にも影響なしとはいたしません。そこで、これをやはり懸案事項の一つとして重大にお考えになっておるということはもちろんでありますが、これは大野副総裁あたりから共有案などというものが出たことがあります。これは加えて二で割るという方式かどうか知りませんけれども、そういう前例があるかどうか存じませんが、総理はそういったことは否定されていらっしゃる。そこで、第三国の調停とか、あるいは国際司法裁判所へ提訴をする、こっちが提訴した場合は向こうが応訴しなければ成立しないように聞いておりますが、この辺の見当はどうでしょう。まだ煮詰まるというところまでいっておりませんでしょうか。
○大平国務大臣 このような領土紛争の解決の見通しがなく、日韓間にわだかまっておるということは、将来の影響を考えますとよろしくないことであると思っております。政府は、国際司法裁判所という機関がありますが、この機関は種々の領土紛争を適切に解決された能力、実績を持っておりますので、この問題を国際司法裁判所に提訴し、先方も応訴していただくということで提案いたしたのでございます。この提案に対しまして、韓国側は、第三国または第三者の調停に付して、調停が不調に終わったときに、国際司法裁判所に提訴するか、もしくは他の解決方法をとるかは、日韓間で協議したらどうでしょうかというような提案をしてきておりまして、今御指摘のように、まだ煮詰まっていないのでございます。しかしながら、私どもとしては、どんなことがございましても、少なくともこの竹島の帰属問題の決定は、日韓どちらに帰属するかということがはっきりしないまでも、いかなる手段によって帰属を決定するかの点はきちんとさしておかなければいけないのではないかということでございまして、ただいまそういう双方の意見がまだ煮詰まらないまま討議を続けておるという段階でございます。
○井出委員 今伺います御感触の中からくみ取れることは、この問題を韓国側が面子にかけてでもとか、あるいは非常にかどばった態度ではおらぬように私はうかがいとれたわけであります。そういうふうに承知をしつつ、ここでもう一ぺん、今まででも私は大体懸案事項に触れたつもりでございますが、諸懸案を一括解決をするという原則、これは私は総理からも御答弁をいただいておきたいと思うのでありますが、もう一つ、ついでに、この日韓会談に反対をされる向きからは、日韓交渉というものが成立することによって、これが軍事同盟になるんだという懸念が指摘をされておるのであります。たとえば社会党の長老である黒田さんなんかの最近の総合雑誌に寄せた論文等を拝見しましても、これがまさに日韓軍事同盟を形成するものだ、これは事実上NEATOを成立させるものだというような意味のことがございます。事ごとに何かアメリカ極東政策の一環というふうなことに結びつけてものを考えようとされるようですが、私は、これはかえってみずから冷戦の渦中へ自分を投入するような御議論だとも思うのです。でありまするから、こういう懸念はないのだ、これはやはり総理から明確にされておいていただいた方がよかろうかと思います。
○池田国務大臣 先刻来の御質疑で明らかにされたように、日韓関係を正常化していこうというのでございまするから、あらゆる懸案を全部解決しなければ、正常化というものはあり得ないわけです。だから、個別にどうこうしようということは根本的に誤りなんだ。新聞記者会見で言った御破算にするということは、もとへ戻るということ、全部成り立たぬということでございます。そういう考え方に変わりございません。 それからまた、日韓会談、正常化は、NEATO参加を意味するものだということは、あまりに日本が自信がなさ過ぎることを現わすものであって、国に対する自信の有無の問題だ。われわれは決してそういうことはしない。する必要がない。それをいかにもそういうことがあるようなことを言うことは、私は、よそから見て、いかにも日本はだらしがないと思われるんじゃないかといういやな気がするので、そういうことは一切いたしません。 またこの機会に申し上げておきますが、NEATOの問題で、先般本会議で成田君の質問に、総理は韓国への借款をしないと言っておるがどうか、うそを言っているじゃないか、こういうお話でございますが、これは、さきの江田君の質問に、日韓交渉を成立さして、将来の日韓の間には借款ということはあり得ますが、今正常化しない前の借款ということはしない、こういうことでございます。ちょうどNEATOの問題と同じときに答えておりましたから、参考に申し上げておきます。
○井出委員 そこでただいまの韓国の政情というものが、なかなか変転きわまりない情勢にあるやに伝えられます。私は、この韓国の歴史であるとか、あるいは民族性というものを考察をいたしますと、これはああいった半島に位置を占めておりましたがゆえに、しばしばその独立を危うからしめるような客観事態に見舞われたという、何か歴史的にそういう不幸な運命を負わされた民族であるような気がいたすのであります。また人種的あるいは血液的に見ましても、相当これは複雑な民族でございまして、常に闘争が行なわれてきたというふうなことも顕著である。一口に言えば、韓国というものは政治過剰にして逆に経済が貧困だ、こういう気の毒な現状にあるようであります。 最近を回顧いたしてみましても、李承晩氏の強圧政治がずっと続いた。張勉内閣があとできたが、これも弱体であった。そうして政界、財界は腐敗をする、貧官汚吏がばっこするといったような、目も当てられない状態というものになって、学生諸君、あるいは教授諸君が決起をして学生革命が起った。その後どうやら幾らか民主化の曙光が見出されたものの、これまた思うようにいかない。青年将校が決起をする、その青年将校は貧困な農村の子弟である。何かわが五・一五事件を思わせるような軍事革命であったと言えるわけであります。 そこで、この軍事政権というものが非常に気にかかる。野党の諸君などは、この軍事政権と交渉することはけしからぬじゃないか、こう言われるわけでありますが、おそらく政府とされては十分な分析を遂げて、これは軍事政権といえども非常に純真なる動機に出ておるのだ、彼らがやっておることは比較的清廉な政治もやっておる、国内民衆の支持もあるんだ、こういうふうに認識をされておると思うのであります。これは日本の歴史を見ましても、明治維新以来憲法ができ、あるいは議会政治が生まれるというまでに、やはり二十何年かかかっておるのでございまして、そういった近代国家建設にあたっての陣痛と言いましょうか、そういった苦悩のさなかにただいまあるという意味においては、これは同情もしなければならぬわけでございます。 そこで政府は、この朴政権を相手にずっと交渉をなすっていらっしゃるのですが、やはりこの政権が十分信頼に値する。これは総理は朴さんと親しくさしで話されたのですね、人間的なものにもしみじみ接しられたわけでありまして、そういうことも根拠になるでしょう。あるいは法的にいえば、にオブザーバーとして出席をしておるのだ、五十何カ国が韓国を認めておるのだ、こういうことも根拠になるでしょう。この辺を、韓国の政情が動揺しておればおるだけに、やはり国民を説得なさらなければいかぬという意味において、朴政権に対する評価というものをこの際伺わしていただきたい。
○池田国務大臣 お話しの通りでございまして、私は直接朴議長とも会って人柄も知っております。また革命後朴政権のとってきた民主化への努力というものを私は認めております七そうしてまた、私のみならず世界各国が、朴政権が発生するまでは三十数カ国だったと思いますが、朴政権発生以来それが五丁六カ国に相なっておる。こういうところから見まして、国際的に朴政権は合法的な正統のものと認められる、また人柄もいいし、その後の努力も私は見るべきものがあると思うのであります。その下におる人が、政党を結成する場合において、入るか入らぬかということは、これは日韓交渉に直接の関係のあるものじゃないので、われわれは隣国のよしみをもって、しかも正常化しようとお互いに努力しておるのですから、その内部に起こったことでとやこう言って交渉をやめるとか交渉に影響さすということは、私はとるべき策でないと考えておるのであります。
○井出委員 相手方の内部に起こった不幸といえば不幸、こういう事実でございますから、今の総理のような御態度でよろしいと思いますが、韓国は八月半ばをもって民政に移管をするんだ、そのプロセスとしまして、四月には大統領選挙、五月には国会議員の選挙、こういうプログラムを設定しておるようでございますが、いろいろ問題はあるようでありますね。もとの首相でありました宋堯讃という人が、朴最高会議議長が軍服を脱いで大統領に出るということはいかがなものかというような内部批判もある。あるいは最近金鍾泌氏と金東河氏との間の確執というようなものも伝えられております。これは向こうのことでございますから、私はあえてかれこれ言いませんが、ただ、こういうとき残念なのは、もう少し向こうの状況をはっきりつかみ得るという意味において、やはり在ソウル日本代表部というようなものがこういうときこそあってしかるべきものだ、こういう気がいたします。これはこれでその設置をさらに要請される御努力を願うことにいたしまして、こういった最近の政情からしまして、こちら側のプログラム、日韓妥結をなるべく急ぎ、しかるべき国会にはもう批准まで持っていくんだ、こういう予定が幾らか狂いがきておるというふうなことはどうでしょう。観測を伺います。
○大平国務大臣 私といたしましては、一日も早く全懸案がも煮詰まって妥結に至ることを希求し、そのために努力をいたしておるわけでございますが、しかし、これも相手のあることでございますので、いついつまでにこうしてみせるというわけには参らないと思います。段取りといたしましては、請求権の問題の基本につきまして一つの前進を見ておりますけれども、これから漁業問題に取っ組まなければなりません。この漁業問題というものがどういう姿において妥結が得られるかということは、今後のスケジュールに決定的な影響があるのではないかと思います。しかし、政府としてはなるべく早く妥結するように希望し、努力しておりますことに変わりはございません。しかし、外交交渉でございますから、いついつまでというお約束を申し上げるわけにも参らないことは御了承いただきたいと思います。
○井出委員 韓国問題については、まだいろいろありますが、ほかにも言及いたしたいので、この辺で一応の締めくくりをしておきたいと思います。 今外務大臣の御答弁のようになるべくこれはスピーディでなければならぬ。しかし、いろいろな事情もありますからステデイでなければなりますまい。同時に、何と申しましても国民の納得を求めるという御努力をさらにさらに払っていただきたいのであります。私は、この韓国というものは日本も責任があると思うのです。総理は分裂国家というふうな表現を用いられましたが、とにかく終戦の結果こちらから分かれていった新国家でありますから、この新国家というものが、発足のその瞬間からこれは百点満点というわけにはなかなかいきません。まあ及第点であるならば、これは一つ大いに支援をしてやる、こういうことでいいのではないか。今おそらく政府は、諸般の事情から韓国の現状は及第点だ、こういうふうに見て当たっておろうかと思うのですが、日本が大国である、これはただいたずらに胸を張るというだけの大国じゃいけませんけれども、国際社会において韓国問題一つ解決ができ得ない姿はどうも醜態ではないか、大国たるに値しないではないか、こういうことにも私はなると思うのであります。キューバの現状というものがアメリカののどにささったとげであるというような表現がしばしば用いられますが、私は、韓国は日本の内臓疾患ではないでしょうけれども、少なくとも神経疾患だという感じがするのです。従いまして、これをやはり解決をしなければならぬ。それは困難ではありましょうけれども、さらに一つ勇を鼓して、これはおそらく池田内閣としては政治生命をかけてやる問題ですよ。そういう意味で一つ御努力を要請いたして、韓国問題はこのくらいにいたしたいと思います。 そこで、次に私は日中の問題を少し伺ってみたいと存じます。 今からもうかれこれ四年前になりますが、一九五九年の秋に松村謙三氏が訪中をされました。私もそれに同行いたしまして、約一カ月半、北京はもとより、かなり中国の奥地まで、揚子江をさかのぼって遠く雲南省へも参りました。黄河をずっと遡航たいしまして甘粛省あたりまで参りました。その際に松村・周恩来両氏の間で最終的に煮詰まった結論というものは、次のようなものであったと記憶をするのであります。つまり、日中両国はお互いにその政治体制を異にいたしておる、これはもう互いに認め合って、それを相侵さないことにしようじゃないか、その上に立っての文化の交流、経済の交流、これをはかっていくことは可能だ、こういった意味のものであったろうと思うのでございまして、これは一種の積み上げ方式がそこから生まれてくるのでありますが、これによって当時、言うならば糸が切れておりました日中の関係をまあまあつなぎとめることができたというふうに思うのであります。このことは私は今でも続いておると思うのですが、しかし、当時は岸内閣のことであり、かつ安保問題等が日本の内部にございまして、なかなか日中の接近というものはあり得なかったわけでございます。しかし、池田さんが総理になられて以来は向こう側も漸次認識を変えてきたようであります。そして総理のいわゆる前向きの姿勢というものがだんだん向こうにも理解されて、きたように観測をいたすわけでございます。先方が日本に何となくアプローチして参りました理由は、これは向こうの内部事情も確かにあると思う。最近の食糧危機と言いまし、占うが、凶作はひどいもののようであります。先方は、これは天災地変だというふうなことに藉口しておりますけれども、事実は、それは悪天候もあったでございましょうけれども、やはり人災的な意味のものもあったと思うのです。ことに人民公社の方式に急激に切りかえたということで、さまざまなフリクションを起こしておる。食糧増産の意欲が減退するというふうなこともありまして、一方猛烈な大躍進という言葉で表現される工業化への傾斜方式を急にとったがためにバランスを失したということがあの食糧事情の悪化に現われたものだろうと思いまするし、同時に中ソ問題というものがどうも思わしくいっていないということは、これは確かであります。私どもも、三年あまり前に黄河の中流にございます三門峡のダムというものを見せられました。これは現に私はこの目で確かめたのでございますが、あのとうとうたる大黄河の濁流をせきとめてりっぱなダムができておることはこれは確かであります。これは人海戦術を用い、いろいろやったのでしょうが、ともかく大規模のダムができた。これは日本の黒部や佐久間とスケールがちょっと違います。そのときに彼らの言うのには、来年になればソビエトから発電機が十数台到着して百二、三十万キロワットの電力がここで起きるのだ、それが楽しみなんだ、彼らはこう言っておりました。しかるに三年あまりたって最近この現場を見てきた人の報告によりますと、大黄河の水はただいたずらにむなしく放流されておるのみだ、発電機はさっぱり到着しておらぬ、こういう情報を聞くにつけましても、どうも中ソ関係というものは思うようにいっていないということは確かでございます。そういう意見で日本に向こう側が接近を開始してきたと見ていいと思うのでありますが、さてこの際、向こうは困っておる、実際食糧危機だ、困っておるからむしろ困らして、それによって共産政権が崩壊をするであろうというふうな見方をする人もございます。けれども私は、それは必ずしも考え方としては前向きではない、こういうように思うのでありまして、それにかんがみて、わが党の長老である松村さんにせよ、高碕さんにせよ、老躯をひっさげて昨秋向こうに渡られたわけでございます。松村さんが政治的なレールを敷いたとするならば、その上に高碕さんが車を走らしたのだ、こういうふうに理解していいと思うのですが、高碕さんは非常にうまい言葉で日中問題を表現をしています。ちょうど日中の関係はトンネルを掘るようなものなんだ。トンネルを掘るには、いきなり大きな穴をあけちゃいけない。これは土砂の崩壊の危険があるんだ。小さい穴でいいんだ。その穴は両方から掘り進むということが必要なんだ。その穴を掘るについては方向を誤っちゃいけないんだ。この三つの点をあげて、トンネルを掘るのにたとえて表現しておられます。私は、こういう意味において、日中の間柄というものは、今すぐに大きな貿易量を期待することは、客観的事態がこれを許しますまい。けれども、向こうの連中の言葉で言うならば、穏歩前進だ、こういう感触でおるわけでございますが、総理がよく言われる日中関係に対する前向きの姿勢とおっしゃるのは、ほぼ今私が申し上げたようなことを大体是認をされるお立場と解してよろしゅうございましょうか。総理の御見解を承りたい。
○池田国務大臣 大体においてお考えと同じでございます。歴史的、地理的に、また文化的に深い関係のある中国のことでございますから、政治体制は違っておりますが、お互いの立場を尊重し、内政不干渉の建前から、私は、貿易は徐々に進めていくべきだと思います。ただ、政治的問題になりますと、日華条約もありますし、また、事アジアを中心とし、世界の平和にも非常に影響のある問題でございますから、政治的なあれは、国連におきまして、国際世論に従っていくべきだと考えております。
○井出委員 そこで、具体的な中共貿易の点でありますが、これはおそらく量においては大して多きは望めないでありましょう。それは、向こうは支払い手段としての外貨にも事欠いておるわけでありますし、輸出と輸入がぴったりバランスしないわけであります。それは、鉄鉱石とか粘結炭を入れるということになれば、貿易量はもっとふえるでありましょうけれども、今のところ日本側としては、鉄鋼メーカー諸君は他に長期契約をすでに結んでおりますから、そうも簡単には参らない。しかし、たとえわが国が中共との間に貿易をしなくても、西欧の諸国がどんどん進出をしてくるというようなこともございますから、これはやっぱり日本としては、量はたとえ少なくても、十分意を用いておく必要はあろうと思うのであります。日本の産業界から申しましても、設備投資はかなり増大をし、生産性は向上してきておるのでして、それがさて製品となって現われるという場合に、市場は広く求めておく方がいいわけであります。ただ、向こうは国家貿易でありますから、何々公司というものが一本の窓口になっておる。こっちはいろんな商社がひしめいてやっておるわけでございまして、向こうに友好商社などといって勝手にレッテルをはられて、今まで不見識なこともありました。そうじゃなくて、これを一つの日中輸出入組合ですか、何かそういったような機関を結成することによって、向こうとの取引を円滑にするという方法が考えられる。通産大臣にこういう点は伺っておきたいのですが、こういう貿易取引の方法をやっぱりあなたも前向きでお考えになっていらっしゃると思うが、御見解はいかがですか。
○福田国務大臣 日中貿易に関する先生の一お考えについては、私も大体同じような考えを持っておるわけであります。ただいま輸出入組合の問題についてお話がございましたが、これは御承知のように、今回の貿易はやはり民間貿易ということに相なっておりまして、貿易と言います以上は、やはり相手のあることでございまして、相手がどういうことをお考えになっておられるかということが非常に大きい。そこで、向こうの感触も見ながらこの問題は処理していった方がいいんじゃないか。中共の方で特に希望もしてないのに、むやみにまたそういう方面にだけ力を入れてみてもおかしなもので、そこら辺は向こうの感触も見ながら順次具体化をしていくというような形に持っていくのがいいのじゃないか、こう思って、あまりそこに力こぶを入れるというようなやり方はいたしてはおりません。しかし、必要があればもちろんそういうふうに持っていく、そういう感触で見ておるわけであります。
○井出委員 日中関係につきまして、旧臘十二月三日でありましたか、日米貿易経済合同委員会の席上で、ケネディさんが、その午餐会において発言されたコンテインという言葉の意味が、かなり論議をかもした。これは、その前にハリマン国務次官補の発言等もありまして、ちょうど大平さん以下六閣僚のお留守中でありましたが、日本側には相当の衝撃を与えた事柄でございます。そのときに総理は、事日中の関係については、あえて他国の指図を受けるべきではない、独自の考え方で進むのだという見識をお示しになった。これは私は高く評価されていいと思うのです。そこで、総理からは、やっぱり今後もそういうお考えであるかどうか、まあそうだろうと思うのですが、これを伺いますとともに、大平さんから、そのときあなた方が受け取られました感じですね、何かケネディさんの言葉というものは強く響いたのか、このごろ大平さんは英語も大へんごたんのうでありますから、そのあたりを先に伺いましょうか。
○大平国務大臣 十二月三日に第二回の日米貿易経済合同委員会に私ども招待されたときに、大統領の午餐会のあいさつがございました。これは大統領としては、アジアにおきまして共産主義運動の脅威、その拡張を阻止することの必要性につきまして、率直に御見解を述べたものでございます。アメリカの立場、大統領の立場としてああいうことを言われることは、一向奇異な感じを受けなかったわけでございます。しかしながら、具体的に日本にどういう協力をしてもらいたいというようなことは一切なかったわけでございまして、私どもその場におりました者といたしまして、特別のショックを受けたというようなことは、同僚の皆様も同様でございますが、そういうことはございませんでした。
○池田国務大臣 さきの国会でも申し上げましたごとく、われわれは自由国家群の一員ではございまするが、やっぱり日本の利益を第一と考えてやっていくのであります。従いまして、先ほど来外務大臣がお答えしたように、共産主義の拡大を防止すること、阻止することには協力いたします。しかし、それと日中貿易促進の関係とは、私は別個の考えで進んでおります。
○井出委員 中国側におきまして、かつて政治の三原則、こういうものを示したことがございます。これは、中国に対して敵視政策をとってもらっては困る、二つの中国の陰謀に加わらぬこと、そうして国交の正常化を望むのだ、こういうことであったと記憶をするわけでありますが、私は、これは何か的違いのことを日本に要求しておるという感じがするのです。われわれはあくまで善隣友好を望むものでございまして、六億五千万の中国の民衆の幸福が傷つけられ、これを敵視するというふうなことは毛頭考えていないわけでございますし、また、二つの中国の陰謀というようなこともとんでもないことだと私は思う。現に大陸の政権と台湾の政権と二つ存在をするという厳然たる客観的事実は、これは日本が関知してできたことじゃないわけです。さらに、日中両国が将来必ず正常化しなければならぬ。当面これはわが方においてなかなか困難な事情というものはありますけれども、これも別に問題ないことなんで、こういうことを事あらためて向こうから申される筋合いのものではない、こう思うのです。しかるに、ずっといきさつがございましたが、かつては社会党の淺沼委員長が共同声明を北京で出された。鈴木前委員長がまた行ってこれを再確認をされた。鈴木さんはその後これを取り消されるというようなことがございましたが、去年の秋に行かれた使節団の諸君、これはまた中共ぺースのもとに同じようなことを再確認して帰っておられる。どうもこの辺が私には理解に苦しむところなんでございます。私どもはいわゆる中立主義にくみする者では断じてない。これは、インドのネール首相も、いわゆる非同盟主義の哲学があの中印国境紛争問題においてむなしく崩壊をしていくという前に、いろいろと考えさせられておられると思う。そういう意味において、私はかつてレーニンの言った言葉だと聞いておるのですが、かきねの上にはすわれない、これはやっぱり翫味すべき言葉だと思うので、そういう意味において、私どもは中共とは接触はいたしましょう、けれども、自民党の立場というむのはおのずから守るべき限度がある、その限りにおいてはやっぱりきぜんとした自主性を堅持して当たらなければならぬ、こう考えておるのでありますが、こういった政治一般に対する対中共に関する心がまえといいましょうか、私は私見を申し上げて恐縮なんですが、これはどうでしょうね。大体首肯なさいますか。総理の御意見を伺いたい。
○池田国務大臣 組閣以来、機会あるごとにお話のような点を言っておるわけであります。わが国は中立主義はとり得ない、わが国に対しては非現実的だ、こう申し上げて、全くあなたのお考えと同じでございます。
○井出委員 そこで、通産大臣に伺いたいのですが、高碕使節団が向こうで結んでこられた協定、これは、ここで内容をくどくどは申しませんけれども、五年間にわたる総合長期バーター・システムとでも申しますか、往復で五億ドル前後だ。向こうへ輸出をする品目は肥料あり、鋼材あり、農機具、農薬あり、向こうから入れるものは大豆であるとか、あるいはトウモロコシ、塩、それに鉄鉱石あるいは石炭もあるでしょうが、そういったものをやり取りをするのだ。そこに延べ払いという問題も出てきておる。それから化学繊維のプラントはこれは別立てだ。およそこんなふうな内容に承知しておるのですが、これは使節団から大臣の方にも内容についての報告がございましたろうか。また、私の今申し上げたことは大体そう間違っておらぬのでしょうか。それを念を押しておきたいと思います。
○福田国務大臣 お答えをいたします。 そういう協定を結ばれた内容については、非公式に承っております。それから内容につきましては、今、井出さんがおっしゃったような大体内容と了承をいたしております。
○井出委員 その場合、延べ払い二カ年ということでありますが、これは品目とすれば何と何か、これはいかがでしょうか。
○福田国務大臣 特殊鋼あるいは農機具というようなものは、大体二年というふうに了承しております。
○井出委員 今のは認められないものですか、認めるものですか。
○福田国務大臣 いやいや、認める認めないという問題ではございません。その内容を申し上げたのでございます。
○井出委員 通産大臣が最近の記者会見において、鋼材、農機具などの輸出については、あと払いのシステムは認めがたいんだ、こういうことを言われたように聞くのでございますが、これは事実でありましょうか。また、もしそうであるならば、それはどういう理由からでございましょうか。
○福田国務大臣 御承知のように、貿易というものは、できるならば現金でやるのが一番いいわけでございます。ところが、最近いろいろの事情がありまして、延べ払いという制度もだんだん出てきておりますが、しかし、同じ延べ払いといいましても、相手のあることでありますから、この点も考えなければいけません。延べ払いを考える場合におきましては、相手の外貨の事情がどうなっておるとか、あるいはまた延べ払いをしておる間債権が十分に確保できるかどうかという、相手国の側の事情も見なければならない。それから日本の国の立場から言いますと、輸出入銀行というものが、はたしてそういう延べ払いにどれだけ耐え得るかという問題も考えてみなければいけません。一国に許して、そうしてよその国には認めない、こういうわけにはいきませんから、延べ払いの条件を緩和すればするほど、やはり輸出入銀行の金はよけいかかってくるということになるのは当然でございます。こういうようなことをいろいろ考えてみますと、できるだけ延べ払いというものはやらない方がいいんだということは、私は一般論として認められることだと思うのでありまして、これは中共でなくても、あるいはその他の東南アジアの諸国にしても、よその国にしても、私は同じだと思うのであります。そこで、そういうような延べ払いというものはできるだけ少ない方がいいという考え方でございますが、ただ問題は、延べ払いというのにもまた解釈が二つございまして、たとえば、二年の延べ払いという場合に、品物は渡しておいて、そうして二年後に全額払うというのも延べ払いでございます。それからまた、品物を渡したとき幾部分金を受け取りまして、あと一年目に半分なら半分もらって、その次にまた二年目に半分をもらうというのも一つの延べ払いだと思うのであります。ここいら辺に延べ払いのいろいろな種類、と言ってはおかしいですが、考え方があるわけでありますが、今回の民間の協定によってでき上がったものは、あと払いの方式になっておるように私は承っておるのであります。こういうようなあと払いの方式になっておるものを、そのままここですぐに認めていいかどうかということになりますというと、やはり品目の関係とか、品物自体の内容、それから日本の国内における、先ほどあなたが仰せになりましたが、いわゆる過剰設備をうまく動かしていくには延べ払いも認めにゃいかぬじゃないかというようなものの考え方、これは当然われわれとしても考えるべきことであります。そういうような問題とか、その商品別に従いまして、そうしてまた、それが中共あるいはソ連、あるいはまた東南アジア、あるいは欧州というような国と、どういうような今現実その品物自体の取引があるかというような問題もまた考慮しなければならない。そういうふうに一つ一つの品目について十分見きわめた上で、これは態度をきめていくべきである、こういうふうに考えるのでありまして、総括して言えば、延べ払いというものはどっちかといえばあまりやりたくない。またあと払いはなおさらやりたくない。分割ならまだいいのでございますが、あと払いはなるべくならやりたくないということは、私は当然だろうと思うのであります。そういう意味での発言はいたしましたが、それでは、協定自体に盛られておるものを全部私が否定する考え方でそういうことを言っておるかというと、そういう意味では申したことはございません。そういうことは言っておりません。原則としてはそういうものだということを言っておるのであります。これは、今後個々の問題について起きた場合に、その品物によって、またそれの貿易関係等も見た上、各国との関係、あるいはまた日本の輸出入銀行の資金関係、またこれが将来ほかの国に及ぼす影響等々も十分見合わせ、同時に、日本の国内における産業の姿、あるいはまたいわゆる需給の関係等々ももちろん考慮のうちに加えた上で、慎重に検討をして態度をきめて参りたい、かように考えておるわけであります。
○井出委員 一般論としては、通産大臣の言われることはわかります。あなたは通産行政の主宰者として慎重でなければならぬ、これは当然でございます。ただ、せっかく芽が出た時期ですから、石橋をたたいて渡る、石橋は十分たたいていただかなければならぬが、たたいただけで渡らぬのじゃ意味がないのです。せっかく総理が前向きの姿勢と言っていらっしゃるのですから、あなたもそういう心がまえはお持ちを願いたい。現にソビエトには相当な延べも認めておるようでありますし、西欧水準ということがよく言われましたが、これはもうほうっておきますと、やはり一種の空間ができているのですから、これは西欧が入っていく。私かつて向こうで幾つか工場を見せられましたが、向こうにある機械類はかなり国産のものができておることは確かです。同時に、共産圏のチェコであるとか、あるいは東独であるとか、この方面からの機械も入っておりましたが、その中で目についたのは、カナダあるいは西ドイツ――ちゃんとそのメーカーのネーム・プレートが打ってある機械を幾つか見たわけであります。そういうふうなこともございますので、そうかたくななことでなく、少なくとも西欧水準、こういうふうな感触をお持ち続けを願いたいと思っております。 それから、延べ払いないしはあと払いというところまで一歩前進をいたしましたことは、従来の民間だけのバーターの取引ということではなくて、少なくとも輸出入銀行が、政府機関であるこういったものがそこに介在をして保証の責に任ずるということでありま旧すから、まず一歩前進だ。政府間協定ということを――向こうは貿易三原則とか、何かあっちは原則が好きなのですね、そういうことを言ってはおりますが、政府間協定というものに踏み切るということは、これはいろいろな事情もございましょうけれども、これも非常に話題になっておることですから、やはりこの席上でこれは総理から、そういうふうなことはまだ無理があるのか、そのあたりをお話し願っておきたいと思います。
○池田国務大臣 正常な国交が開かれておりませんので、政府間協定ということは、私は差し控えたいと思います。ただ問題は、通産大臣がお答え申し上げましたように、外貨の向こうの事情でございます。最近の状況を見ますと、農作物の不作のために、大体一九六一年から六四年までに千二百万トン小麦を入れる。それが八億ドルでございます。運賃を入れますと九億ドルぐらいであります。今その半分五百五十万トンぐらいの支払いはしておるようであります。なかなか外貨事情もよくございません。先般の塩安につきましては二十万トン、これはあと払いということでやむを得ずいたしました。これは滞貨もありますし、生産能力が相当あるものであります。しかし硫安をやりますということになると、これは台湾とか、あるいは韓国、あるいはまた契約ができそうで今ちょっと悩んでおりますインドネシアにも関係いたします。こういう点がございますので、ことにどこの国でもあと払いということはない。みな延べ払いというのは、ソ連にいたしましても、どこの国でも、また中共自身が濠州やカナダから買いますときも、やはり三〇%の前金を出して、そうして初めは九カ月、今は一年くらいになっております。日本にだけあと払いということを言うのは、日本の常識にも合わぬわけです。だから、塩安はやむを得ずいたしましたが、鉄鋼あるいは農機具等につきましては、なかなかこれはむずかしい問題であるのであります。よその国に影響いたします。これはやはり今慎重に考えておる次第でございます。ソ連なんかにもやはり前金幾ら、そうして年賦あるいは半年賦ということになっております。中共だけということにつきまして非常な悩みがあるわけであります。
○井出委員 少し先を急ぎまして、日中関係の問題でもう一点です。志賀長官おられますか――このごろ私は新聞で見た範囲でございますが、中共が原爆を保有するに至るであろう、これはおそらく情報を基礎にしての御発言であったろうと思いますが、これがかなり耳目を聳動した、こういう事実があったようであります。中共というのは、たとえば一種の軍事国家みたいなものであって、常備兵力地上軍四百五十万というふうなことを、かつて私は向こうへ行ったときに、向こうから直接ではありませんけれども、そういったことを聞いたこともあります。航空機は三千を保有する。そのうち半分はジェットである。こういった兵力を持った上に核兵器を持つに至るということは、これはなかなか看過し得ないことである。こういう意味において、長官のこの間の御発言というものをここで確かめておきたいと思います。
○志賀国務大臣 お答えいたします。 中共の核開発の進展につきましては、防衛庁といたしましても、注意深くいろいろな情報なり資料に基づいて検討いたしておるのであります。ただいまのところの判断では、中共の最初の核爆発は早くて一年、二年のうちに行なわれるという観測の上に立っておるのであります。これはただいま仰せの通り、いろいろな世界じゅうで行なわれておる観測なり、あるいは新聞報道、資料その他の情報に基づく私どもの観測でございます。なお、こうした趣旨に基づいて私の発言があったわけでございますが、私の発言の中に、核二個の保有説というものが新聞に伝わったのでございますが、今日核を持っておりまする国々の実験の経過を見ますと、最初の核爆発は少なくとも二回行なわれております。もとより一回の試験では十分ではないのでございますから、少なくとも二回試験が行なわれておるのでございまして、もしも中共が初めて核爆発を行なうとしますならば、少なくとも二個は持たなければ実験はできないというのが常識であると私は判断いたしておるのであります。
○井出委員 そこで、ただいまの問題でありますが、私は志賀長官の御発言を一つの観測という程度に伺うのでございますが、これは場合によりましてはなかなか大きな波紋を呼ぶ問題でございまして、これによりまして極東の戦略的均衡というふうなものにも異変が起こるのではないか、あるいは米軍もこれに対処するためには、さらに核装備を増強するというふうなことにも発展しかねない、こういう問題をはらんでおることでございまして、私はここで注意を喚起するという程度にとどめておきまするが、問題は、中共の将来というものを考えましたときに、そういう事態にまで相なるという場合は、これが国連の中に入っておらないというならば、トラを野に放っておるにひとしいわけでございまして、これを考えずして一体世界の軍縮というものが可能なのか、あるいはこの核爆発の実験停止交渉というようなものも、やがては中共を考慮のうちに置かなければならぬのではないかというような問題にも相なるかと思うのでございます。従って、国連総会において、中共の加入を重要事項に指定をするということで当面をしのいでおるようでございますけれども、はたして将来こういったなまぬるいことでいいのか、このあたりは将来の問題でありましょうけれども、どうか総理からそういったお見通しというようなものをこの際伺っておきたいと思います。
○池田国務大臣 二、三年前から中共の核爆発ということが話題に上って参りました。私がヨーロッパへ参りましたときにも、いろいろ聞かれましたが、私は十分資料がございませんので、適当に答えておきましたが、しかし、何と申しましても、核爆発の実験をしたからといって、すぐ核装備に移るということはなかなか困難でございます。しかも、核爆発の実験に至る原材料がどこから来ているかということも問題でございます。そうしてまた、幾つ持っているかということも問題でございます。もちろん、中共には二人ほど非常に有能な学者がおられることも知っております。しかし、数年前から建設中の黄河の水力発電が、ただいまお話のようにほとんどできていない。そして最近の共産圏の多元化と申しますか、中ソの関係等々から申し上げまして、私は、非常にこのことは慎重に考えなければならぬ、研究しなければいかぬことだと思っております。そうしてまた、核爆発を中共がやることによって、これを国連加入との問題に関連せしめるという考え方もございます。それは核爆発のみならず、六億五千万の民、しかも相当陸軍の強力な力ということも話題に上っておるのでございます。そこで、われわれは、中共の問題を世界の重要な案件として解決をはかるべきではないかということで、一昨年来やっておるのであります。これは今軽々に核爆発を一、二年のうちにやるだろうということで、すぐ中共の問題をどうこうということにはいきませんが、しかし、世界的に大きい問題として各国が考えなければならぬ問題だと思っております。
○井出委員 どうかその点十分に御注意を願いたいと思います。私は、ここで一応中共の問題はこれくらいにいたしますが、要は、やはり中共というものが、あの膨大な国土と六億五千万あるいは七億といわれる人口を擁しておって、日本とは、何といいましても総理が先ほどお話のような、従来の深い関係があるわけであります。それじゃ今の北京政権というものが簡単に転覆するかと言えば、私どもの認識をもってしますると、どうもさようなものではなかろう、やはり一つの権力国家、軍事国家でありますけれども、かなり末端まで統制力は浸透しておるようであります。 そこで、私は東亜という地帯を考えました場合に、将来の展望としては、日本も東亜における一流国である、これは間違いない。中国の将来というものもこれは軽々に看過すべきものではない。向こうへ参りますと、日本にも非常な影響力を与えております。同時に、中共自身が日本のことに非常に関心を持っておる。日本の放射能もある意味においては向こうへ行っておる、向こうの放射能も来ていましょう、そういうことでございまして、やはり中共というものをわれわれは軽々しく扱ってはならぬのであって、このためには、もっと交流なども密にしていいと思うのです。向こうの旅券なんかも、外務省がしょっちゅう値切って、滞留期間を短かくしたりなどというけちなことはもうなさらないで、もっとおおらかにつきあっていいと思う。向こうから人間がくることによって、これで日本が赤化をされる、向こうの病菌をふりまかれるという意見もありましょうけれども、そんなことで日本がどうかなるというような虚弱体質ではないと思う。やはり日本というものは、もっと健康な国家だと思うのであります。そういう意味で、自由陣営の中で、何といったって日本が一番中国に対して、地理的にいっても何からいったって、深い関係があるのでございますから、世界政策をやる上において、これはケネディさんでも、かりに中共をどうするという場合に、まず日本に対して、あなたの方は中共をどう考えるのだ、こちらの考え方が世界政策を動かすに至るであろうというような、そういう見識を私は日本が持たなければいかぬと思うのであります。そういう意味で中共に当たっていただきたいと存じます。 あと残り時間もだんだん迫って参りましたので、少し飛ばしまして、私は、最近のEECの問題を少し議題にいたして参りたいと思うのであります。もちろん、対米外交というものが、日本外交の一番中心的な基軸であるということを私はいなむものではございません。これは何といったって、貿易量からいいましても、日本の安全保障からいいましても、対米外交というものが、円滑にいっていなければならぬ。これが基本であるということは申し上げるまでもございません。また、アメリカとの間にも若干の問題はあります。向こうの輸入の制限の問題であるとか、あるいは最近の、ノーテラス潜水艦が日本へ寄港する問題であるとか、問題もありましょうが、これも私は飛ばしまして、むしろそれに対する政府の善処をお願いするというだけにしまして、西欧の問題を少し取り上げて参りたいと思うのであります。 これももうかれこれ私が申し上げるまでもなく、総理は昨秋のヨーロッパ旅行においてはだに感じてこられたわけだと思いますが、今日の六カ国の共同体は、人口から申しましても、あるいは石炭、鉄鋼といったような資源、エネルギーないしは工業力等において、米ソとあえて拮抗し得る力をたくわえつつある。貿易量のごときはアメリカを抜いておる。ソ連をはかるかに引き離しておる。だから、今日ヨーロッパの天地に咆哮する怪物は何か、それはEECだというようなことまでいわれておるわけでございます。私も、実は昨年の五月、かけ足で一歩きいたして参りました。そこで、今日大きな問題になっておりますのは、英国のEEC加入の問題でございます。マクミラン首相は、保守党の運命を分かつと申しましょうか、あるいは英帝国の王冠をかけて、そしてEEC加入の措置に踏み切ったわけでございます。国内の農業者はこれに反対をしておる。英連邦諸国はかれこれ文句をつけておる。これをしんぼう強くあるいは説得をする、あるいは打ち切る、こういうことでもって、英国の運命を展開しようとしておるわけでありますが、そこに立ちはだかっておるドゴール大統領という厚い壁があるわけであります。ドゴールさんはおそらく大国の栄光といいましょうか、フランスの栄光を取り戻したい、欧州大陸のリーダーならんという気がまえでこれに対して立ちはだかっておるようでございますが、英国のEEC加盟問題は、きのうから開かれたブラッセル交渉で最終的に煮詰まるかどうか、なかなか逆賭しがたい状態にあるようであります。英国の加入というのは英連邦にも響きますし、カナダ、豪州、ニュージーランド、これらの国が日本に対してどういうビヘイビアになってくるか、このあたりもなかなか重要な問題であろうと思うのであります。そこで総理が回られました英国のEEC加盟問題について、何か御見解がありましたらこの際伺いたいと思います。
○池田国務大臣 六カ国のうちで五カ国まで回り、この問題について見て参りました。ルクセンブルクには参りませんでした。しかし英国の加入に対しましての考え方は、やはりいろいろ変わっております。しかし全体といたしましては、私があの当時行ったときには、一九六四年、五年くらい、すなわち一年か一年半のうちにはできるんではないかというのが、大体の意向でございました。しかしその後フランスの態度がかなり変わってきたようで、これは核兵器の問題等から変わってきたようであります。今のところでは、英国の加入がいつできるかどうかという問題は、なかなかむずかしい問題ではないか。ブラッセル会議でヒース国璽尚書がどういう発言をいたしますか。英国内にもかなりの議論もあるようであります。なくなられた労働党の党首、また副総裁の方々も、あの当時は参加賛成ということでございました。その後ある程度の変化はあるんじゃないかと思います。それからまた今フランスとドイツの意向がああいうように出たのでございますが、イタリア、ことにベネルックス三国は必ずしもそうじゃない、イギリスの加入を強力に願っておるようであります。六カ国の関係がどうなりますか、いましばらく様子を見る必要があると思います。またお話しの通り、英国の加入によりまして、カナダ、豪州、ニュージーランド等にも相当な影響があります。これが別の方面から日本にまたかなりの関係が出てくると思います。まあしばらく様子を注意深く見ていくべきだと思います。
○井出委員 だいぶ遠いヨーロッパのことですから、ここで今すぐどういうきめ手もないでしょうけれども、英国のEEC加入問題と、もう一つ、私の回りました当時非常な関心を呼んでおった問題は、ヨーロッパ政治統合の問題でございました。経済統合までは曲がりなりにもいくであろう、しかし政治統合というものははたしてどうか。これは藩籍奉還みたいなことをして、主権国家というものを解体して一つの新国家を形成するという論者と、そうではないのだ、各主権は保持しながら国家連合的なものをつくるんだ、この論争もあったようでございまして、これらも重大な問題の一つでありますが、これは飛ばして次に参ります。 そこで、EECに対する日本の関心というものもかなり高まっておりまして、このごろはメジロ押しに向こうへ視察その他で出かけて参ります。日本の財界などの中にも、この影響を受けまして、向こうにあれだけの強力な一つの経済共同体ができる、アメリカは中南米を中心にブロックを形成する、日本は一体孤立をしてしまうのではないかというような感じを持つ人々があるようでございます。しかしながら、欧州の経済がよくなり、そうして生産性が高まり、生活水準が上がってくれば、日本の商品といえども、単にカメラやトランジスターばかりではない、いろいろな品物が、たとい関税障壁があっても、それを乗り越えて向こうに行くであろうというふうに、希望を持ってながめておるわけでございます。 これは私は河野設建大臣をわずらわしたいのです。河野さん、手持ちぶたさでおられるようであります。そこでなぜ私は河野さんに伺うかといえば、二、三年前に河野さんが出されたパンフレットがございます。EECというものにいち早くあなたは注目をされたという先見を私は大いに評価するからであります。そこで日本の産業もなかなか国際競争力という点になりますと、EECとの対抗というようなことにおいてずいぶん問題がある。自動車一つとってみましても、フォルクスワーゲンが一社で七十万台くらいつくるといわれる。最近イタリアのフィアットとフランスのシトロエンが合同するという、そうするとこれも四、五十万台の規模になるというようなことで、よほど日本側も体質を改善いたしませんと、これは相拮抗はできないと思うのであります。特に河野さんの受け持っておられる公共事業などの方ですが、道路といい港湾といいあるいは上下水道といいないしは工業用水の問題といい、日本としてはよほどこの立ちおくれを回復しなければついていけない、こんなふうに感じますので、あなたの当面の主管のお仕事とあわせて、日本のEECに対するこれからの態度、あり方、こういったものを一つ伺っておきたいと思うのです。
○河野国務大臣 当面私の所管いたしております建設行政とEECの関係につきましては、ただいまお話しになりましたような点もさることながら、現在のイギリスの置かれております立場というものは、よほどわれわれとして深く考慮いたさなければならぬじゃなかろうか。EECが順次発展強化して参りましたことの圧力が英国に及びまして、そうして英国が今日のような状態を――初めはEECに入る意思はなかった、ところが今や入るとか入らぬとか議論しましても、必然的に入ることの方が、イギリスとしてはあらゆる立場を乗り越えてそうしなければならぬということになって、今日のイギリスとEECの問題がある。わが国といたしましても、当然年を経てその影響力は順次深まってくる。そうして国際的にこういったブロック経済というものが強化して参り、それが日本の経済に非常に強い圧力を及ぼしてくるものであるというふうに考えまして、日本の農業というものは、イギリスの崩壊いたしております農業とそれは問題になりませんけれども、それがやはり一つの大きな問題になっておるということも深くわれわれは反省いたしまして、日本の農業に対する政策を、今にして広域経済に可能なように日本の農業というものの構造の改善が必要であるというふうに私は考えております。われわれといたしましては、今はイギリスの問題のように考えておりますけれども、これは単にイギリスの問題でない、日本自身の問題であるというふうに考えつつ、EECに対処する。すなわち世界の広域経済、いわゆるブロック経済の世界の動向に深く留意し、われわれの将来の行くべき道を考えなければならぬじゃなかろうか。それにつけても、私の所管いたしております建設行政におきましては、新産業都市の建設、これらの経済と強力に日本の経済が競争できますように、ただ単に国内的な視野に立っての産業施設、公共投資でなしに、世界の経済の動向とにらみ合わせて公共投資を行なっていく必要があり、これらと競争のできるようにしていく必要があるだろう。これは先般も総理からもお話がありました通りに、ラインの流れを中心にした欧州の全体の動き等も、われわれとしては大いに参考にして考えていかなければならぬだろうというふうに考えております。
○井出委員 あと通産大臣に一点伺います。 河野さんは今農業のことに言及をされました。私はむしろ産業構造の問題をも伺いたかったのでありますが、農業の問題その他はいずれまた機会をあらためて質問したいと思っておりますが、通産大臣、現地を歩きまして、日本の商社が非常な勢いでネコもしゃくしもヨーロッパへ殺到しております。これはまあ日本民族のエネルギーの発現と見れば見られますが、中にはろくな商売もしないで、外貨をいたずらに食っておるのもあるようです。そこで向こうの連中の申しますのには、この過当競争の弊害を何とかしなければならぬ。お互いに足を引っぱって売りくずしをして、みすみす国損を招いておる。何とかこれをもう少し系列化でもする道はないものか。たとえば国別にやるとか、商品別に分けるとか――特に、輸入というものは割合楽ですけれども、輸出は、これはなかなか困難ですね。大蔵大臣はせんだっての演説で、輸出を大いに強調されたけれども、輸出業者というものは、たとえば雑貨を例にとるならば、一つ一つの商品をPRしてこれを侵透させて売り込んでおる姿というものは、これは努力は大へんなものだと思うんです。そういう諸君から、今の、何とかもう少し過当競争を防止する道はないか、あるいは独占禁止法が障害になっておる部分もある、これをもう少し緩和してもらいたいというような要望も受けたことがございますが、これについてのお考えを承りたい。
○福田国務大臣 ごもっともな御意見でございまして、実はEECだけでもなく、日本の貿易というものから見て、今のような問題が各地に実は存在をいたしておるようなわけであります。特にEECになりますと、御承知のように、欧州といろところとほかとはまた違って、あそこはやはり秩序を重んずる。商慣習というものはまた別であります。よそとまた違った、特に秩序を重んずる土地でございますから、そういうところへ日本が過当競争でいってむやみな競争をしますと、非常なひんしゅくを買うわけであるし、またそれが日本の輸出に大きな障害になってはね返ってくることにもなるわけであります。そこで、そういうことを考えますと、今のところは、貿易の額は日本の貿易の額のうちで六、七%しか占めておりませんけれども、これは今もお話がございました通り、EECというものはだんだん強力になってくる。そうしてまた日本にとって大きな輸出市場になるべきもの、またしていかなければならないものであるということを考えますと、今のいわゆる秩序の問題というものが非常に大事だと私たちは考えておるわけであります。もっとも、これは全然手を打っておらないわけではございませんので、系列化等の問題につきましては、洋がさでありますとかカメラ等は一応系列化をやっております。数量制限については、やはり繊維とか、あるいはトランジスター・ラジオ等についてもやっておるわけでございます。しかしそういうことを今後一つ大いに考えていかねばいかぬ。そこで、この春も輸出会議をやるのでありますが、ただいま通産省といたしましては、商品別に輸出の秩序を立てるということが必要である。特にEECだけではございませんけれども、そういうことを今やらしておるわけでありますが、それをやるにつけても、お説の通りいわゆる独禁法の問題等も十分考えていかなければならない面が出てきておるわけでございまして、お説のような御趣旨を体しながら、一つ輸出振興ということについて特に力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
○井出委員 私は日韓、日中、EEC、それぞれ不十分ではございましたが触れて参りましたので、ここに締めくくりの意味で、もう一つ外交問題で伺いたいのは、せんだって妥結を見ましたビルマとの賠償問題でございます。ビルマ賠償については大筋の妥結が見られてオン・ジー代表以下がこのごろ帰国されたわけでございますが、前回の協定とは別個に、これは新協定というものが結ばれることになりましょうか、あるいは前の協定を生かしながら一部修正というふうなことになるのか、支払いの時期は前のものが完了をしたあとに継ぎ足していくというふうなことになるのか、そのあたりを、これは事務的な問題ではございますが、この際一ぺんお聞きをしておきたいと思います。
○大平国務大臣 現行協定と別個の新協定にするつもりでございます。支払い開始時期は、現行賠償が終了いたしましてから、すなわち一九六五年の四月から開始するということになります。
○井出委員 この間来、賠償はこれでもって終止符を打つのだ、こういうふうに承っております。昨年の今ごろを顧みますと、当委員会の席上で一番大きな話題はガリオア、エロアであり、あるいはタイ国との特別円の問題でございました。そこでいよいよ賠償が大体これで終結をしたというときに、一言私は申し上げておきたいのですが、ビルマ賠償以外には再検討条項のついた協定というものはないのだ。韓国の請求権問題がございますけれども、こういったものが寝た子を起こす、連鎖反応を起こして、ほかからまた何か上回った要求が出てくるというふうなことはもうない、これは一つ確言をしておいていただきたいのでございます。これが一つ。 それからちなみにもう一点。せんだってのあなたの演説に、すでに賠償実施済み金額が三億八千万ドルだ、こういうふうに申された。賠償が終結したという機会に私はこれは資料としてでいいのですが、日本の各国との間の賠償関係の記録といいますが、リストといいますか、どこの国にはどれだけでどれほど済んだんだ。これからまだどう残っておるのだ、こういうものを一括した表のようなものを本委員会にお示しをいただけば、審議上非常に便宜かと思います。そうして賠償について申し上げたいことは、これは何と言いましても国民の税金をこれに充てておるのでございますから、生きた使い方をしてもらいたいわけです。これはもう死んだ使い方をされては実に残念なんです。賠償というものは、過去の償いではあるにしましても、同時にこれは将来に対する一つの布石であるわけでございます。このパイプを通じて、東南アジア各国などの経済自立のこれは呼び水になるわけでございます。そこでこの国民の税金で払われた賠償というものが現在政商の食いものになっておるというようなものは一体ないのか、あるいはプラントを向こうへ持っていったが、どうもさっぱり運転ができないで、むなしくさびついておるというふうなものはないのか、現地のまだ未熟な政権によって運用されて、何か政治資金かなんかで湯水のように使われてしまっておるような心配はないのかというようなことを私はやはり十分監視をしなければならぬ。それは相手国の内政に干渉するわけにはいきますまいけれども、国民に対してはそういう措置をして、ただ賠償協定ができたからそれで能事足れりというのではいけないのじゃないか、こう思います。私は今大体二つの点について申し上げたのですが、御答弁を願います。
○大平国務大臣 ビルマ以外の求償国には、御指摘のように再検討条項がございません。従いして、ビルマ以外の求償国から追加求償を受けるものとは考えておりませんし、万一そういうことがございましても、当方としてはそれに応ずる意思はございません。 それから賠償実施済み額等につきましての資料でございますが、さっそく取り整えまして、当委員会に御提出申し上げます。 それから賠償実施は、国民の尊い負担によってやるわけでございますから、政商の食いものになる、その他、そういうことのないようにという御注意でございました。私もその通り考えるものでございまして、各国との実施交渉にあたりましても、いつもその点先方の政府にも御要望申し上げておるわけでございまして、終始清潔にしかも有効に実施しなければならないと決意いたしております。
○塚原委員長 井出一太郎君に申し上げますが、申し合わせの時間も経過いたしましたので、結論をお急ぎ願いたいと思います。
○井出委員 それでは、委員長のお言葉もありますから、結論を申したいと思いますが、これは私はあえて御答弁は求めません。 以上で、私は、外交に関する若干の質問を終わったわけでありますが、この機会に一音しておきたいことは、岸内閣当時以来、外交についての三原則というふうなものがございました。これは言うまでもなく、一つは自由陣営の立場に立つということ、第二は国連中心の外交である、第三にはアジアにその位置を占めておるという点に留意をする、こういったことでございますが、この三つは、独立にそれぞれを見れば、これは正しいといわなければなりませんし、またしごく当たりまえなことを言っておるわけであります。この三つのものがプリンシプルだ、日本外交の三原則だと言うのには、どうも少し内容がラフだという感じが私はこのごろいたすわけであります。今の複雑にして変転きわまりないこの国際外交に処するためには、やはりもう少し密度の高い、きめのこまかいものが必要になってくるのではないか。この三原則は、言うならば初等数学における三元一次方程式みたいなもので、どうもこれだけでは、二次、三次の未知数をどうやって発見するかということには少し頭を働かせなければだめじゃないか、こう思うのです。たとえばアジアの問題を考えます場合に、アジアの諸国家というものは、自由主義の国もある、共産国もある、また中立主義もなかなか数が多い。してみれば、この新興国家に対する問題を取り上げる場合、自由陣営にも頭を向けておる、同時に共産陣営にも顔を向けて、そうしてできるだけ援助をよけいに得たいというふうな格好でございます。だからして、こういう具体的現実的な問題に対処いたしますためには、この三原則はそれでいいとしても、もう少し日本外交というものが、流動性、弾力性を持って当たる必要がありはしないか、こういうことをこれは私の感じとして申し上げるわけでございます。 そこでもう一つ、国連外交、これが日本外交の場としては中心の舞台であるといたしましても、もう少し日本の外交の地位なり権威なりというものがあそこに表現されてほしい、こういう願いが私は国民の間には充満しておると思うのであります。総理は、この間、日本の経済的地位が非常に高まったことを申されました。これはこれで事実でございますが、しからば、国連のわが国の外交が、この大国たる経済を背景とした日本の国力が、はたしてそのままに映っているかというと、どうも何かそうではない、言いわけばかりしておるような事態が従来ございました。キューバの危機に際してアメリカの立場を理解する、これは理解することはいいのですよ。もう少し何か知恵がないものかというような感じもしないではありません。核実験停止の問題にしましても、ケネディ、フルシチョフ両氏の交換書簡によって、かなり具体的な曙光が見えつつありますことは、これは大きな喜びであります。今日人類の願いは、何よりもまず私は平和であると思う。私は、かりに繁栄を失うことがあっても、平和を失ってはいけない、こういう気持でおるわけでございまして、核による被爆の経験をした唯一の民族の声を、やはり日本外交というものは、世界にもっとコミュニケートするというような義務が課せられておるはずだと思うのでございます。さような意味におきまして、総理が、日本が尊敬される国、畏敬される国となるための御努力を一そう続けなければならぬことはもとよりでありますが、経済上の力に合わせて、それを裏づけた日本外交というものが、もう少し見識というか信念というか、こういうものをお持ちになっていただきたいことを希望するわけでございます。 もう一つ委員長お許しをいただきたいことは、これで私は予定した質問を終わりますが、もう一つ、豪雪対策の問題を最後にお願いをして質問を終わりたいと思うのであります。これはこの間の本会議でも取り上げられておって、政府も総理府に雪害対策の本部を設けることに決定された、そうして政務次官を団長とするお見舞というか調査団というか、こういうものが派遣をせられたわけでございますが、きょうはこの予算委員会の壁頭でございますから、本委員会を通じて政府の雪害対策についてのお考えを御発表をいただければまことにけっこうであります。
○池田国務大臣 先般、今回の豪雪に対しまして、関係職員を派遣することを申し上げておいたのでございますが、本日の閣議におきまして、災害基本法に基づきまする非常災害対策本部というものを正式に置くことにいたしました。豪雪の被害調査並びにこれが善後措置につきまして万全を期する考えでおります。
○井出委員 これにて終わります。
○塚原委員長 午後は一時十分から再開することとし、暫時休憩いたします。 午後零時三十六分休憩 ――――◇――――― 午後一時二十分開議
○塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 昭和三十八年度総予算に対する質疑を続行いたします。 勝間田清一君。
○勝間田委員 私は、日本社会党を代表しまして、主として経済並びに外交の問題についてしぼって質問いたしたいと考えます。 まず、外交問題の中の特に日韓問題についての質問をいたしたいと思います。 日本の戦後の外交の中で一つの大きな誤りがあったと考えますのは、吉田内閣の当時における、台湾を承認して、これと平和条約を締結したことだと考えております。もしこの誤った外交がなかったならば、今日の日本の状態なりあるいはアジアの状態はおそらく一変いたしておったのではないかと私は考えるのであります。しかし、今やはり池田内閣によって同じようなあやまちが繰り返されようといたしておることを見のがすわけには参らぬと思うのであります。それは、とりもなおさず、日韓会談の今日の池田内閣の強引な進め方がそれだと考えるのであります。 この会談は、過去半世紀にわたって日本が支配をし、また、平和条約によりまして、第二条あるいは第四条等によって朝鮮の独立を承認をいたしまして、全朝鮮人民に対する日本全国民の抱いている友好的な念願というものを、それぞれ深刻に、またきわめて峻厳に考えていかなければならない、私どもの重要な課題だと実は考えるのであります。この会談が、またこの会談の結果が、将来、日本の、あるいは韓国、朝鮮のそれぞれの両国民に対してどういう運命をもたらすものであろうか、あるいはこれがアジアの平和に対してどういうような関係を生み出すものであろうか、こうした問題に対する深く洞察された考え方に基づいてなされているのではなくて、私は、一時的な、あるいはきわめて自主性のない追従精神とでも言いましょうか、そうした非常な浅い軽挙な立場で扱われておるような感がしてならないのであります。従って、まことに原則的な、まことに当然のことのようであって恐縮でありますけれども、私は池田総理にこの際お尋ねをいたしたいのであります。 この朝鮮半島並びに朝鮮全人民、これと日本との外交というものは、基本的に両国人民と友好関係を回復していくことが第一の原則であって、これが私どものゆるがすことのできない目的だと私は実は考えるのであります。この目的をどう達成するかという場合に、もちろん現実というものもあるでありましょうし、もちろんその場合における日本の利益という問題も考えていかなければならぬでありましょう。しかし、この原則は、私は絶対に忘れてはならない態度でなければならぬと実は思うのです。特に、講和条約の第二条及び第四条などというものは、思想のいかんを問わず、政情のいかんを問わず、日本国民が当然果たしていかなければならぬ義務というものをそこにうたわれたのだと私は実は考えているのであります。この基本的な考え方に間違いがあったのでは、私は日韓会談なりあるいは朝鮮半島との国交の回復なりというものは非常な間違いを生ずると思うのでありまして、まことに原則的なことを申し上げなければならぬことを遺憾に思いますけれども、私は総理大臣にこのことをまず一つお尋ねをしておいて、以下いろいろ質問をいたしたいと考えております。
○池田国務大臣 われわれが南北統一を願うことは当然のことでございます。また、国連におきましても、一九四七年、四八年、朝鮮問題につきまして国連監視下のもとにおいて自由な選挙によって統一をはかろうと試みたことは御承知の通りでございます。しかるに、われわれの願望は達せられません。南朝鮮、すなわち韓国が国連監視下のもとに自由な選挙で政府をつくり、しかもこの韓国政府というものが国連において認められておる唯一の合法政府として取り扱われておるのであります。しかる場合において、日本と韓国との状態を今のままで置くことは、両国民の不幸でございます。不自然でございます。だから、われわれは、現実のこの事態に即して、そうして、できるものを早くして、お互いの国民の繁栄をはかっていこうというのがわれわれの考え方でございます。しこうして、この考え方は過去十年にわたっていろいろ実現しようとして努力したのでありまするが、いろいろな事情でできなかった。最近の朴政権によりまして、このことが実現の機運に向かい、今交渉しておるということは、現在の状態からして当然のことであり、日本国民もそれを念願しておるという確信を私は持っております。
○勝間田委員 総理は、これで日韓会談を進めることが南北朝鮮の統一の妨げになると考えておりますか、推進するものと考えておりますか。
○池田国務大臣 私は、朝鮮の南北の人の気持は知りませんが、日本人としては、現実に即して早くいいことをするということが必要だと思います。これをやったからといって害になるとは毛頭考えておりませんし、また、これをやれば、私は、あなた方と違って、韓国の統一が早くできる機運を醸成する一助になるのじゃないかという気持を持っております。
○勝間田委員 あなたは北鮮に朝鮮民主主義人民共和国があるというこの事実は否定することはできないと思いますが、いかがでしょうか。
○池田国務大臣 北鮮にそういう一つの政権があるという事実は、私は認めておるし、知っております。
○勝間田委員 これはオーソリティと考えてよろしゅうございますか。
○池田国務大臣 オーソリティというのをどう訳すか、いわゆる政権が存在するということは知っております。
○勝間田委員 外務大臣、北鮮におけるオーソリティを認めることは、あなたしばしば答弁をされておりますが、確認してよろしゅうございましょうね。
○大平国務大臣 さよう心得ております。
○勝間田委員 平和条約の第四条におきまして、かかるオーソリティ、当局とこの請求権の問題を主要な課題にしなければならないというその当局は、一体何でしょうか。
○大平国務大臣 第四条にいう請求権討議の対象は、韓国政府であると心得ております。
○勝間田委員 どうしてこの条約が北鮮の当局というものを対象にしたものではないのでしょうか。どうしてこれから免れることができるのでしょうか。
○大平国務大臣 平和条約の地域性は、当時の韓国政府が現に支配している地域という限界を持っておりますから、当然請求権交渉の相手方は韓国政府であると心得ております。
○勝間田委員 北鮮のオーソリティを認めて、しかもこの条約にいうサッチ・オーソリティのそのオーソリティをどうして認めることができないのですか。
○大平国務大臣 平和条約と北鮮のオーソリティとは直接関係がございません。平和条約にいうオーソリティは、先ほど私が申しましたように、韓国が支配している領域というものに平和条約の地域性の限界があるわけでございまして、平和条約にうたわれているオーソリティというのは、北鮮のオーソリティでないと心得ております。
○勝間田委員 非常な意見の相違でありますから、これからさらに明らかにいたしておきたいと思いますが、今外務大臣も北鮮のオーソリティは認めるということをはっきりこの際にも明言をされておるわけでありますけれども、同時に、韓国が三十八度線以北に及ばないというこの事実も、私は認めておられると思いますが、いかがでしょうか。
○大平国務大臣 今言われたような認識に立っております。
○勝間田委員 もしその認識に立つならば、今度の日韓交渉の何らかの妥結というものの効果が三十八度線以北に及ばない、また逆に一言えば以南に限定されたものであるというその明文化をいずれかで明らかにする必要が私はあると思うが、外務大臣はいかに考えておられますか。
○大平国務大臣 たびたび申し上げておりますように、韓国政府と交渉いみしまして、何らかの妥結に達した場合の効果は、韓国が現に支配する地域に限定されると心得ております。
○勝間田委員 それを明文化する必要があると思う。明文化をいたしますかということを聞いておるわけであります。
○大平国務大臣 今私が申しましたのは当然のことでございまして、最終の協定におきましてどのように表現いたしますか、そのところまではまだ固めておりませんけれども、今申しました認識は、私どもが交渉にあたりまして当初から終始一貫堅持しておる方針でございます。
○勝間田委員 堅持している精神ということはともかくといたしまして、それはもう疑いません。明文化をいたしますかどうかということを聞いておるわけであります。
○大平国務大臣 協定の案文の作案に入っておるわけではございませんので、まだそれに言及する材料を持っておりませんけれども、たびたび申し上げておるように、そういう認識に立ってやっておるということは、繰り返し申し上げておる通りでございます。
○勝間田委員 明文化をするかしないかということをはっきり言っていただけばよろしいのでありまして、それをぜひ一つお願いをいたしたいのであります。
○大平国務大臣 先ほど申し上げましたような認識に立ちまして交渉を進めておりますし、そして、その実体が煮詰まりましたら協定案の作案にかかるわけでありまして、今言ったような認識に立ちましてその問題の処理をやりたいと考えております。
○勝間田委員 私は、これは明文化をすると解釈をいたします。異議ありませんか。
○大平国務大臣 協定案が幸いにできました暁に御討議をいただきたいと思います。
○勝間田委員 もう一つ、大切な問題だと私は思いますのは、将来、これからとる日本の北鮮に対する外交、これは広い範囲で考えていいと私は思うのでありますが、たとえば貿易あるいは人事的交流その他そうした広い外交の問題について、日本と朝鮮民主人民共和国の持っている当然の権利、当然の義務というものをも含めまして、これらに制限を韓国側から加えない、またその干渉は受けないというのが私は当然だと思いますが、この態度をあなたは了承されますか。外務大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
○大平国務大臣 今日与えられた状況のもとにおきまして、わが国として自主的な判断に基づいてやって参るつもりです。
○勝間田委員 私は、池田内閣の日韓交渉の立場には反対でありますけれども、もしこの韓国との妥結ができたという場合でも、日本と朝鮮民主人民共和国が持っている正当な権利義務の関係は決して消滅するものでもなければ、決して干渉されるものでもない、その権利は残る、こう私は解釈いたすのでありますが、外務大臣はそれをどう考えていらっしゃいますか。
○大平国務大臣 双方の権利義務は残るというように心得ております。
○勝間田委員 外務大臣は、外務委員会あるいは予算委員会におきまして、請求権レベルの段階ではどうもうまくいかないので、新しい工夫を今考慮しているんだという答弁をしばしばされて参ったわけであります。その新しい工夫というのは、もう何か目鼻がついたわけですか。井出委員に対しても、何か請求権の問題については原則的な話はついたが、まだ細部にわたってはできておらない、またそれが拘束力は持たないというようなことも言われておったように私は聞いておりますが、一体どの程度の目鼻がついたのですか。その点を一つお聞きをいたしたいと思います。
○大平国務大臣 先ほど井出委員の御質問に対しましてもお答え申し上げました通り、日韓の間の懸案がたくさんございます。請求権問題はその一つでございまして、私どもは全懸案につきまして十分これを煮詰めた上で一括して同時に解決するという基本の方針でおりますことは、たびたび本議場を通じて申し上げておる通りでございます。従って、現在の段階は、各懸案につきましてこれを討議いたしておる段階でございます。すなわち、交渉の過程にあるわけでございます。 請求権問題について一つの前進があったと申し上げたのは、請求権問題は、本来法律的根拠の明確なものに限定しようというような考え方であるべきはずでございまして、その線に沿いまして、予備交渉を通じまして討議を重ねたわけでございますけれども、たびたび私が申し上げましたように、法律的解釈に依然として彼我の間に距離があるばかりでなく、平行線をたどるケースが多いということ、またそれを支える事実の立証が不可能または不可能に近いものが多いということを発見いたしたわけでございまして、そういう状態のままいつまでも請求権の討議をやって参りますことは生産的じゃないわけでございます。そこで、この問題を何か割り切る工夫がないものかということを考えまして、私どもといたしましては、韓国に対しまして有償・無償の経済協力を将来に向かってやる、供与する、こういうことをいたしますその随半的な効果として、請求権の問題は双方主張しないというか、あるいは解決したことを確認するということでこの問題を割り切る以外にほかにいい工夫がないと判断いたしまして、そういう構想で先方とお話し合いをいたしたわけでございます。そういう構想の大筋につきましては、交渉過程の合意は得ておりますけれども、しかし、その細目につきましてはまだ煮詰まっていない面がありますので、請求権問題全体が交渉過程において合意に達しておるという段階ではないということを申し上げたわけでございます。しかし、かりに請求権問題全体が交渉過程において合意に達しましても、それは、ほかの懸案が煮詰まりまして、同じような交渉過程の合意を得て、そうして最終の協定成立というまでは、法的拘束力は持つものではございません、こういうことを申し上げたわけです。
○勝間田委員 そのいわゆる無償・有償の供与で請求権の方は解決をするという、まあ新しい工夫と言われますけれども、私は大へんなすりかえだと思います。しかし、その方式は合意を得ておるわけですか。
○大平国務大臣 その方式につきましては、交渉過程を経て合意を得ております。
○勝間田委員 その交渉過程というのは、あなたと金情報部長との間における書簡でできておるわけですか。
○大平国務大臣 金氏と私との間の会談は、側面的に予備交渉の支援をする、協力をするという立場でございまして、その間、私どもの間で到達した理解というものは、あげて予備交渉に移してございまして、予備交渉の場面におきまして大筋は合意する、こういう返事をちょうだいいたしております。
○勝間田委員 その予備交渉が十二月二十六日の予備交渉ですか。
○大平国務大臣 さようでございます。
○勝間田委員 それは、いわゆる基本構想だけではなくて、やはり、金額まで、あるいは条件までその予備交渉では合意に達しておるのじゃないですか。
○大平国務大臣 金額、条件等ももちろん含んでおります。
○勝間田委員 それを今ここで発表はできませんか。
○大平国務大臣 無償協力といたしまして韓国に三億ドル十年間に供与する、有償協力につきましては、同じく十年間に二億ドル、しかも、その条件は、利率は三分五厘程度、据置期間七年程度、償還期限は二十年程度というような大筋につきまして、大体の合意を取りつけております。 なお、それと同時に、そういうことをやることによって請求権問題は片づいたという確認をするということ。あわせて、今まで残っておりました対韓債権四千五百七十三万ドルというものは一定期間内に返済するということもあわせて合意いたしております。
○勝間田委員 これの全文を文章でわれわれに示していただくことはできますか。
○大平国務大臣 今私が申し上げた通りでございますが、文書で出せといえば、お出しいたしましてけっこうです。
○勝間田委員 もう少し事実をはっきりさしておきますが、無償供与は三億ドルで十年間に平均分割払いを原則とする、ただし、韓国側の消化能力に応じて支払い期間の繰り上げを考慮するのですか、しないのですか。
○大平国務大臣 韓国側の消化能力でなくして、わが国の財政能力に応じて繰り上げることが可能であれば、双方合意の上で繰り上げることができるという話し合いはいたしております。
○勝間田委員 そうすると、これは、韓国側の消化能力ではなくて、わが国の経済能力ですか。それから、今のいわゆる経済協力基金による返済期間の据置期間の七年というのは、もうすでに合意に達しておるわけですか。
○大平国務大臣 七年程度で考えていこうという大筋には合意いたしております。
○勝間田委員 焦げつき債権は、これは結局三カ年無利子ということですか。
○大平国務大臣 三カ年ときまったわけではございませんけれども、一定期間内に償還を求める、払いましょう、こういう合意でございまして、もちろんその期間中無利子でございます。
○勝間田委員 これは文書をもって外務省から一つ提出していただきたいと私は思いますが、あなたと金情報部長との間における書簡はどういう内容のものであるか、これを明らかにできませんか。
○大平国務大臣 これは、外交の慣例上、そういったものは先方の同意がなければ公表すべき性質のものではございませんので、ここで公表するということは差し控えさせていただきたいと思います。
○勝間田委員 これは、一説には、大野伴睦氏も、韓国を訪問したときに、そういう約束があったということで向こうから見せられて、びっくりしたということも伝えられておりますけれども、しかし、もし内容がここで明らかにならないとするならば、それは単に請求権の扱いだけの問題なのですか。請求権を扱うことと他の諸懸案との関連の問題にも及んでいる問題なのですか。この点はお答えできると思いますが……。
○大平国務大臣 もちろん、会談全体の進め方、それから、われわれが全懸案の同時解決でおるというような点はつけ加えて申し上げてございます。
○勝間田委員 たとえば、韓国側における外務長官の記者会見などを見ますと、同時解決という問題については、これは少しも了承していないように実は発表をされておる。また、請求権の問題は過去の問題なのであって、李ラインその他の漁業の問題はこれから将来の問題なのだから次元が違うのだ、これを同時解決あるいは請求権を条件としてこれらの問題を解決するということはできないのだ、そういう態度を実は表明しておる。これは私は大平外務大臣のただいまの答弁とは違うように思う。この一括解決という問題、また、一括解決しなければこの請求権がたとい合意されてもそれは白紙に返す、池田総理の記者団との会見談が正しいならば、御破算にする、これでよろしゅうございますか。
○大平国務大臣 そのように心得ております。しかし、私どもはそういう事態がないように努力しなければならないと思っております。
○勝間田委員 そこで、事実はお聞きいたしたわけであります。問題はやはり非常にあろうかと私は考えるわけでありますが、池田総理、大平外務大臣ともども、今日までの請求権に関する答弁というものは、全く混迷、私は答弁の資料をずっと読ましていただきましたけれども、前に言ったことはもう次にくつがえされておるというのが実は今日の状況です。これはまことに遺憾なことだと考える。まず不思議に思う事柄は、昭和三十六年十一月の池田・朴会談においての対日請求権に対する処理の方針というものは、すでに公表されておる通り、法的な根拠のあるもの、また事実関係の明白なものに限るということを確認されておる。しかも、三十七年八月二十三日の森島委員の質問に対する大平外相の答弁においては、今度は、ただいまのお話の通りに、積み重ね主義ではどうも格好が悪い、何か工夫をこらしたらどうかという考え方に変わった。それから、ただいまのお話によると、合意に達したと言われるけれども、無償供与と長期借款の方式に変わっているわけであります。私は、単に請求権の問題が法的なものあるいは事実明らかなものについての交渉が困難だから、だからこういう無償・有償の供与に変えたのだ、こういう論理は成り立たないと思う。第四条の条約において一つの財産権に対する請求権というものは明確にきめられておることなんだ。これが国際法上のはっきりした立場なのだ。この国際法上の立場というものを、いかに困難といえども、目的を変えた他のものにこれを切りかえるということは、私は不可能だと考えておる。それができないならば、それは池田内閣の責任なのである。それができないならば総辞職をすべきなのである。それを便宜な他の方法に持っていくというのならば、それは私は実は間違いだと思う。一体、法的な根拠、明白なものに限るいうこの合意というものについて、なぜ追及をしなかったのですか。なぜそれに努力しなかったのですか。それをにわかに三億、五億というようなものに切りかえて、無償・有償に切りかえて、こっちがまずかったのだからこつちの方法にしましたというようなことで、一体世間が納得するでしょうか。国民はそれで納得いくでしょうか。私はそこに外務大臣としての責任があると思う。四条にきめられたる請求権をいかに処理するか、これが池田内閣の日本国民から受けておる大きな義務だと私は思う。こういう意味から言って、一体、この方式というものは、二条、四条にきめるところの請求権の問題というものとどういう関係があるのか、その関係をここで一つはっきりお示しを願いたい。
○大平国務大臣 勝間田委員がおっしゃる通り、請求権の問題を事実関係をはっきりさせて、法律関係を明徴にいたしまして、しかもそれを双方が合意いたしまして解決することができれば、それにこしてのことはないと思います。また、そうすべきだと思います。そうして、私どもは、一昨年の秋以来、法律的根拠、事実関係の立証につきまして懸命に努力して参ったわけでございます。ところが、御案内のように、法律論自体も対立でございますし、事実関係は捕捉が困難または不可能なものがあるわけでございます。だからこの問題はそのまま放置しておいていいかと思いますと、私ども責任者といたしましてそういうわけには参りません。こういうことでじんぜん日をむなしゅうするわけに参りません。国交の正常化を庶幾いたします以上は、何らかの工夫をこらさなければならないというのは、私ども責任者といたしまして当然の責任だろうと思うのでございます。そこで、先ほど申しましたような新しい構想でもって、将来にわたって経済協力をすることによって請求権問題を片づけるという決意をいたしたわけでございます。平和条約に、請求権の取りきめを将来日韓の間で行なうということになっておるわけでございまして、それは御指摘の通りでございます。私どもは、この取りきめを請求権を通じて法律的根拠によってやることがむずかしいと判断いたしましたので、今申しましたような構想で経済協力をやるということによって、四条にいう請求権というものはないのだということを双方で確認するということによってこの問題を最終的に片づけよう、こういう態度で臨んでおるわけでございます。
○勝間田委員 これこれの無償・有償の供与をやるから、平和条約にいうところの請求権はないのだということを向こうが承知すればいいのだ、こういう論理だと私は思いますが、それならば、朝鮮民主人民共和国がこの四条ご請求してきた場合に一体どうなるのか、これはどうされますか。
○大平国務大臣 その点につきまして政府はただいま白紙でございます。ただ一言指摘しておきたいことは、軍令三十三号というものは、韓国の支配する領域以外には及んでいないということは指摘しておきたいと思います。
○勝間田委員 先ほど来申し上げた通りに、北の朝鮮民主人民共和国と日本との権利義務も残るんだ、こういうお話を確認をいたしておるわけでありますが、私は、その意味では、韓国といかなる取りきめを行なっても、北の方を制約するものではないと思いますけれども、そのように南の方にはかくかくの状態で請求権を処理し、北の方ではかくかくの請求権を処理するというような状態で、一体真に友好的な外交というものが進められるかどうか。一時的にそういうことはできても、永久の友好関係というものがそれで回復できるかどうか。私は、日本の外交というものがそう行き当たりばったりのものであってはならないと考えているからはっきり申し上げる。これが一つ。 もう一つ大事なことは、正当な請求権として国民が納得して平和条約四条というものをわれわれは承認したわけです。全国民が国会でこれを承認したわけでしょう。法的な根拠の明らかなものである、正当にきめられた四条の請求権というものをやってもいいという状態で平和条約を皆さんは承知されたのだと私は思う。しかし、そうならば、たとえば池田氏と朴氏との間におけるように、法的な根拠が明らかであり、同時に事実の明確なものに限るという状態でいった場合と、無償、有償のこうした経済援助でいった場合における日本国民に与える不利益というものは非常に大きな違いです。早く言えば、あなたが請求権を有償、無償に切りかえることによって生じるところの日本国民の不利益は実は重大なものだと私は思う。もっと別な言葉で言えば、金額の算定の基礎が違ってくるということであります。目的が違うだけでなく、金額も違うということであります。これは私は著しく日本国民に不利益を与える自民党のやり方だと思う。いかがですか。
○大平国務大臣 私どもは、日本政府並びに国民に対しまして不利益を与えるというようなことは寸毫も考えてはならぬと思います。あらゆる瞬間におきまして、日本政府と国民の利益になることをこそ希求いたして真剣にやっているわけでございます。ただ問題は、日韓の間にわだかまっておる懸案を解決しなければ国交の正常化はないということでございまして、日本の都合によりまして、そういう日本の財政的負担を全然伴うことなく国交の正常化が可能であれば、もちろんそれは一番けっこうなことでございますが、こういうわだかまった永年の懸案をどのように日本国民の利益のために解決するかという点に苦心を重ねておるわけでございまして、日本国民の不利益などということは寸毫も私どもの脳裏をかすめたこともございません。
○勝間田委員 私は、明確に請求権として考えていけば、また池田・朴のお互いの約束からいけば、最大限度見積もっても七千万ドルという話を今日しばしば聞いている。それが三億になり五億になるというのは、いや無償供与だ、有償供与だ、いや経済協力だと、それにすりかえていくから、そういう膨大なものになってくるのであります。あなたはいかにも国民に不利益を与えていないと言うけれども、国民は、約束した請求権を忠実に処理して下さい、正当にやって下さいと願っておるのであります。経済援助の問題は別個の問題です。条約処理の問題とは関係いたしておりません。条約処理の関係の問題でなくて、国民が現に池田内閣に対して要求していることは、四条による請求権を処理して下さい。それだからこそ平和条約に皆さんは賛成されてやられたのでしょう。それを、請求権の問題という国民の利益にかかる重大な問題を、今度は経済協力にすりかえて解決をつけていくのだというような考え方で国民は平和条約を了承したのじゃないでしょう。だから、いかにも合理的に見えて、いかにも言いのがれのように見えるけれども、全く目的も内容もすりかえたというのがこの実態じゃないですか。だから、たとえばここに自民党の総務会まで決定されたPR版がありますよ、三十七年十二日八日の。これは何ですか。このパンフレットを読みますと、いわば朝鮮が独立したのだから本国の日本が独立した国に何か見舞金をやるのはあたりまえじゃないか――請求権は見舞金ですか。隣の国が困っているのだからこれに金をやるのはあたりまえじゃないですか、人道的です――四条の請求権は人道的な恵みなんですか。またこれは、南鮮が反共で戦っているときに経済援助をするのはあたりまえじゃないか――請求権は反共のための資金なんですか。これが今日の自民党のPR版です。いかにも国民をごまかすかのごとく見えるけれども、誠実に実行すべきものは四条の請求権をどう計算しどう処理するかです。経済援助の問題はこの条約とは関係がないのです。あなたはそこにまことに重大なあやまちを犯そうとされている。国民に著しき不利益を与え、国民をまどわす議論をされておる。もし請求権の問題が処置できないなら、それはあなたが無理にやる必要はないのです。あなたは解決しなければならぬ義務がある、こう言われるけれども、それなら北鮮もあります、それなら中国もあります。あらゆる懸案が今日終戦以来十数年続いておるのです。韓国問題だけを今日こうしたすりかえを行なって解決しなければならぬ、国民に相済まぬなどという状態ではないと私は思う。ここにどうして、こうして請求権の処理の問題をこういう経済援助の問題にすりかえていくのですか。目的も金額も違ってきますよ、それならば私ははっきり聞きます。三億ドルという金は何が基礎で計算されたのですか、バナナでも売るようにきめたんですか。なぜ一体二億ドルといういわゆる協力資金の三分五厘でやらなければならぬという基礎が生まれたんですか。大平さん、国民に、この金はどういう計算をされてきまったんですか、どういう話できまったんですか、われわれはこれをどういうわけで払わなければならぬのですか、その基礎を聞かして下さい、こう言われて、あなたはこれに返事ができますか。私は、そういう意味で請求権の処理を経済援助に切りかえる、請求権なら七千万ドルであるべきものを、こういう五億ドルのものにすりかえる。しかも計算の基礎もないということは一体どうなんですか。私は、こういう考え方で請求権問題を処理するなどという考え方というものはもってのほかのことだと実は思う。 まず私は聞きたい。請求権の処理とこれとどう一体解決つけるのか。どういう計算で一体五億ドルという金が出てくるのか、これを一つ聞かしてもらいたい。
○大平国務大臣 私がたびたび申し上げておりますように、私と勝間田さんの一致する点は、請求権を法律的な根拠のあるものに限ってきちんと処理したいという願望はあなたと私と同一です。私もできればそれをやりたいのです。そのような方向で努力いたしましたところ、法律論のみならず、事実関係につきましても、双方の意見は大きな扞格を来たしたままでございます。従って、こういう状態をいつまでも放置しておけないから、新しい構想をこらしたのだということは、私がたびたび申し上げたわけでございます。請求権の問題が、あなたのおっしゃるような方法論で彼我の間に一致した見解を見出すことが可能であれば、私が何を好んで新しい工夫をこらす必要がありましょうか。請求権の問題の検討を通じまして私どもはそういう困難に直面いたしましたから、これを打開する方途として、責任者として考えたわけでございます。 それからまた、請求権の問題と経済協力の関係いかんということでございまして、あなたがおっしゃる通り、これは全然無関係でございます。ただ、経済協力を将来に向かってやるということが、反射的結果として、請求権問題は主張しないよう、にしようということで請求権問題は処理するんだということを申し上げておるわけでございまして、幾ら幾らが請求権だから、経済協力のこの金額の中には幾ら含まれておるというようなものではございません。全然別個の問題でございます。しからば、三億、二億ドルの有償ご無償の経済協力というのはどういう積算の基礎で作ったかと申しますと、これは、もとより韓国も独立当初、経済再建の計画をお進めになっておられますので、外貨に期待するところがあることは承知いたしております。また、わが国といたしましても、わが国の財政能力、経済能力から判断いたしまして、十年間にこの程度の経済協力は可能であろうという確信に立脚いたしまして私どもが考えた案でございます。
○勝間田委員 全然話にならぬと私は思いますけれども、それならば池田総理、一つお尋ねしますが、今言ったような請求権の処理の仕方をするのですけれども、あなたの方の政党の総務会決定のPR版で、自分の国が独立をするのに、本国であるわれわれが金を贈るのはあたりまえじゃないかという主張と、請求権とは関係がありますか。また、隣の人が困っているのに、これに金を与えるのは人道上あたりまえなのじゃないかということと、請求権とは一体関係ありますか。
○池田国務大臣 平和条約第四条によりまして、韓国には請求権がございます。しこうして、今お話しのあれによりますと、私と朴議長との会談で、法的根拠があり、事実関係の明らかなもの、こうつけ加えられておりますが、それは二人の間にはございません。法律的根拠のあるものということだけでございますから、事実関係の明らかなものというのは、あなたがつけ加えられたことでございます。 そこで、分離国家に対して、その分離国家の繁栄、ひいて韓国と日本との関係、これをよくし、両方を繁栄に導くために、請求権という条約上の権利を消滅させるために、無償あるいは有償のあれをやるということは、請求権の変体でございます。変体というのは、請求権がそういうものに変わってくるということでございます。これはあり得ることであります。しかし、お気の毒だから隣の人に援助するということは、これは請求権に基づくものではございません。それはもうわかり切ったことであります。
○勝間田委員 それならば、自民党のこのPR版が、まことに今の総理大臣とは違ったものであるということはわかったのですけれもど、念のためにもう一つ聞きますが、韓国が北と反共で戦っているときに金を出すのはあたりまえじゃないか、これはどうですか。これは請求権とどういう関係がありますか。
○池田国務大臣 請求権と直接関係はございません。これは、有償・無償供与をやるという気持には関係がございません。しかし、そういういろいろな点から請求権を消すために、いろいろな現実の事態から有償・無償の供与をしよう、こういうことでございます。
○勝間田委員 しかし、事実はどうであろうと、結局はやはりこれがねらいなんでしょう、今度の五億ドルの金を払うというのは。それは自民党さんの方が正直なんでしょう。これは自民党さんの言うのは、はからずも正直に出たということではないですか。反共の戦線を結成するために韓国に経済的援助を行なう無償有償の供与である。それをやれば請求権は何とかかんべんしてもらおうじゃないか、こういうのじゃいなですか。だから、このPR版がその点では正しいのではないですか、どうなんですか。
○大平国務大臣 私どもは、たびたび申し上げております通り、日韓間の国交が不正常なままでいいとは思っておりません。これは、できるだけ早い機会に正常化すべきものだという基本の観念に立っておるわけでございまして、その正常化をどうして達成するか、その前提に横たわるもろもろの懸案をどのようにして割り切っていくかということでせっかく苦心いたしておるわけでございまして、あるべき国交の正常化を希求いたしまして、そのための努力を払っておるわけでございます。自民党側におきましてそれに対してどのようにPRされるか、これは自民党の問題でございます。
○勝間田委員 もう一つ大きな変化だと私が思いますのは、これは本会議でもありましたけれども、池田総理が江田三郎議員に対して、韓国への借款はやらないのだ、こういう答弁をされた。その後また総理は、速記録を読みますと、いや正常化した国に借款をやるのはあたりまえじゃないか、こういう言葉にまた切りかえた。それからまた、これは三十七年十月十五日ですけれども、わが党の森島委員に対して大平さんは、「世上いろいろ借款の問題が論議されておりますけれども、私ども、少なくとも、借款ということは、国交正常化の条件ではないと思います。従いまして、この問題は、政府におきましても、民間におきましても、将来韓国との間に経済の交渉を通じましてそういう事態があり得るかもしれませんけれども、少なくとも、今の段階における交渉におきまして、そのことは国交正常化への条件であるというような形で取り上げるべき性質のものではないと考えています。」こういう答弁をされておる。そうすると今度の長期借款は、これは経済援助なり借款なりではないですか。
○池田国務大臣 この前本会議でも成田君の御質問がございまして、私がうそを言った、無責任というような言葉がございました。私は速記をとって調べてみた。江田さんの質問はこういう御質問でございます。「一体、日韓交渉はどこまで進展しているのか。政府は、韓国の政権を安定した政権と認めて、長期の借款を与えるのかどうか。」こういうことでございます。そこで私は、その前提が日韓交渉がどこまで進展しておるか、朴政権を安定した政権と認めて長期の借款をするかどうか、こういうことでございますから、今国交が正常化するまでは、私は政府借款をするつもりはございません、そこで政府借款をやるつもりはない、こう言ったのでございます。そうすると、今度江田さんはあと立って、政府借款はしないということをおれは確かめておくぞ、こういうのでございますが、この質問は、日韓交渉はどれだけ進んでおるのか、これが前提なんです。そうして朴政権を正統の安定した政権と認めて、あるいは安定した政権と認めて長期借款をするかと、こうおっしゃるから、その気持はありませんと言っておる。国交が正常化して韓国と日本との間がほんとうに繁栄する場合におきましては、これはインドやパキスタンやらと同じように、国際社会における日本の立場からいって、正常化したならば、私は借款はやらぬなんということはあり得ない。交渉がどういうふうに進展しておるかということが前提でございますので、今、国交正常化までは私はしないと、こう言っておるのでございます。
○大平国務大臣 それから私が外務委員会で述べた答弁に言及されましたが、私の申します意味は、つまり借款というのは、大へん広い意味がございまするが、たとえば輸出における延べ払いの問題とか、ああいうことも借款でございます。従って今、日韓の間には貿易関係があるわけでございまして、その輸出金融等の形で借款、信用供与があり得るわけでございますから、そういうものは国交正常化の条件――今総理が言及されました政府借款というものじゃない。そういう考えでございます。
○勝間田委員 私は、総理の答弁もさることながら、今の外務大臣もどうですか、借款を条件に国交回復はやらないのだ、条件にはしないのだ。しかし、あなたは今度はやっぱり借款を条件にするのでしょう。しかもこれは請求権の放棄の条件なんでしょう。条件になっているじゃないですか。
○大平国務大臣 今有償・無償の経済協力というものは、これは協定化いたしまして、一連の懸案とともに国交正常化の前提として片づけなければならぬ問題でございますけれども、しかし、個々の取引に伴う信用供与というようなことは現にあり得るわけでございますから、そういうものは国交正常化の条件というものじゃございませんということを申し上げた。 〔発言する者あり〕
○塚原委員長 御静粛に願います。
○勝間田委員 この経済協力の金、三分五厘の金を出すということは、これは借款じゃありませんか。それが国交回復の今度は条件になるわけでしょう。それと、一体今まであなたが借款を条件にしないと言ったこととはどう違うのですか。
○大平国務大臣 三分五厘で二億ドルの供与を考えておるということは、先ほど申しましたように、国交正常化の前提になるもろもろの懸案を片づける場合に、これを両国の間で協定を結びまして、きちんと取り整えた上、国交正常化に持っていくわけでございまして、その政府借款というのは国交正常化の条件になっておるということは、あなたの御認識と私と同一でございます。私が国交正常化前でも借款はあり得るという意味は、そういうものでなくて、個々の商取引を通じましての信用供与というものは、韓国ばかりでなく他の国々でもやっているじゃありませんか。そういう意味の借款は、これは国交正常化の条件じゃございません。このように区別して申し上げておるわけでございます。
○勝間田委員 国交回復と借款という問題をそういうように言いのがれをして、本筋を間違えたような議論というものは私は初めてです。もっとお互いにはっきりと正常化の問題と借款の問題とが交換条件になるかならぬかという本筋の議論として私はしてほしい。とにかくそういう常に言いのがれをしていこうという考え方はいかにも大平さんらしくないと私は考える。この池田総理が朴氏と話をして、法的根拠が明らかになるものに限ろうじゃないかという同意をしたのですが、これが七千万ドルであったということを大平さん承知しますね。
○大平国務大臣 七千万ドルというのは例示的に言ったわけで、いろいろ計算の仕方があるわけでございます。先ほど申しましたように、法律論としても問題が多々あるわけでございますが、こういう法律論が正しいと仮定すればこういう数字になるという仮定の数字は幾つかつくったことがございます。しかし問題は、日本側がそれで納得いたしましても、先方がそれで納得しなければ問題の解決にならないわけでございまして、そういう点が私どもが最も苦心をいたしているところでございます。
○勝間田委員 その七千万ドルに匹敵する法的根拠のあるというものは一体どういうものですか。その場合の法的根拠のあるものとは一体何ですか。
○大平国務大臣 ただいま私どもは各項目につきまして御説明申し上げる材料は持っております。しかしながら、問題は、交渉全体がまだ緒についたばかりでございますので、この請求権の考え、そういうようなものをこの段階で本委員会を通じて明らかにするということは、微妙な交渉に影響を与えるおそれがございますので、大へん恐縮でございますぶ差し控えていただきたいと思います。
○勝間田委員 この法的根拠の明らかなものの七千万ドルの内訳が一体われわれに発表できないということは不思議だと思います。法的根拠の明らかなものなら明らかなもので出して下さい。法的根拠の明らかなものは法的根拠の明らかなものなのですから、それをかく信ずるというものを出していただきたい。何も隠す必要はない。
○池田国務大臣 誤解があってはいけませんから……。私と朴氏との間においては金額は一切出ていないのであります。法的根拠のあるものによってやろうという話だけで、いかにも今の御質問だと、私と朴氏との間で法的根拠のある七千万ドルにしようというように国民がとられちゃ大へんでございますから、そうじゃない。法的根拠のあるものによってやろう、こういう申し合わせだけであります。七千万ドルというのはどこから出たか私は知りません。しかし、これはいろいろ計算の仕方がございまして、たとえば、先ほどお話しになりました朝鮮銀行から持ってきた金に対してどうするかとか、あるいは徴用工とか、あるいは死亡者等々の人数、あるいはそれに対する補償、そうしてそれがいつやったがいいか、それから後の金利、いろいろな点がございますので、これはいろいろな計算の仕方もありましょう。ことにインフレなんか入れたら大へんなことになる。大平君が言ったのかも知りませんが、私は、あのころからの交渉で七千万ドルというのは日本政府が有権的に出した数字じゃないと私は心得ております。
○大平国務大臣 その資料を出せということでございますが、いずれ出したいと思います。しかし今はその時期でないということだけ申し上げます。
○勝間田委員 これは今出すのが当然だと私は思うのですけれども、しかし時期でないというならば若干それは待ちましょう。しかし、こういうものをはっきり出して主張して、国民世論を問いながら外交をしていくのが本筋なのであって、そういうことをやらないで、今度はどうも困難だからおれは無償、有償の供与に切りかえたんだ。やぶから棒に切りかえられちゃ国民は目をぱちくりしますよ。ましてやごまかされますよ。私は、そういう外交のやり方は非常な災いを残すと実は考えますから、せっかく外務大臣に注意してほしいと思います。 もう一つ私どもの明らかになっていない点は何があるかというと、けさも井出委員から拿捕事件その他の問題で非常な被害があることがわかったのですが、池田総理はこれに対する賠償を要求するようなことはないと言い、大平さんは、ああいう総理の答弁をするのは迷惑だ、はっきり言えばそういうことです。だから、私は、一体総理の方の言うことを聞いた方がいいのか、大平さんの主管大臣の方のことを聞いたらいいのか、間違います。国民はこういうものははっきりさすべきだと思います。一体こういう拿捕の問題は当然賠償要求すべきだし、そうしてそれは閣議決定なさっておる通り、内払いとして現在払っておるのでしょうから、漁船に対する保険料あるいは遺家族に対する見舞金、そういうものは内払いとして当然払って今後精算をすべきでしょう。これは一体どういう統一意見に決定されたのですか。明らかにしていただきたい。
○大平国務大臣 午前中井出さんの御質問に対してお答え申し上げました通り、この問題は請求権とは範疇を異にする問題でございます。終戦後に起こった問題でございます。そこで、私どもは請求権と別個に漁業問題の処理の一環としてこの問題の処理をしてみようという考えでございます。
○勝間田委員 この金額はどの程度になるのですか。またそれは漁業問題の一環としてその賠償を請求するということは日本政府の態度だと思いますが、そう理解してよろしゅうございますか。
○大平国務大臣 これまでの拿捕の事実、拿捕された漁船の状況を勘案いたしまして、漁業問題の処理と関連して片づけるつもりでございますが、現在その評価が幾らであるかという的確な資料は私の手元にまだ持っておりません。
○勝間田委員 もう一つ明らかにしておきたいと思いますが、一括同時にということを言われておるわけですが、一括同時に入るものはどういう案件ですか、どういう懸案事項ですか、それに含まれるものは何ですか。
○大平国務大臣 広い意味の請求権の問題として、平和条約第四条に基づく請求権の問題として一つございます。その中には、けさも言及いたしましたように、船舶の問題、それから文化財の問題が含まれております。それからいうところの新しい漁業協定をつくりまして、安全操業を確保するという問題、それから在日韓国人の法的地位の問題、それから問題の竹島の処理の問題、それだけが一括国交正常化の前提に横たわる全懸案でございます。
○勝間田委員 そのいずれもが解決がつかなければ請求権も御破算だ、こう解釈してよろしゅうございますね。
○大平国務大臣 さようでございます。
○勝間田委員 私はここで政府に一つお尋ねをいたしますが、アメリカの韓国に対する経済援助の金額はどういう変化をいたしておりますか、実数を一つお示しを願いたい。
○大平国務大臣 今私は手元に持っておりませんから、後刻取り調べまして、御報告いたします。
○勝間田委員 これは政府委員がおると思いますから、直ちにここで発表していただきたい。
○後宮政府委員 お答えいたします。米国の対韓経済援助は、主としましてAID援助と米国公法四百八十号によるものでございますが、最近におきます対韓経済援助額は大体年間二億ドル程度で、この額は漸次減少の方向にございます。なお、そのほかに軍事援助がやはり年間およそ二億数千万ドル行なわれているというのが実情でございます。
○勝間田委員 これは言うまでもなく、アメリカの韓国に対する援助は年々これを減少させ、しかも今日までの状態は、経済援助もまた軍事援助もほとんど失敗であるというのがアメリカ側の調査からもはっきり出ていると私は思う。そういう状態の中で、この請求権の問題を、全く性質と目的の異なったこうした経済の援助、すなわち無償、有償の援助に切りかえていこうという態度は、われわれが懸念をしたいわばドル防衛の片棒をかつがされて、反共体制を整えていこうというところに私はこのねらいがあるのではないだろうかと思う。まことに遺憾なことでありまして、われわれはこの請求権の問題については絶対に賛成することができないということを明らかにいたしておきたいと思います。 時間も相当経過いたして参りましたから、さらに私は最近の韓国の政治情勢について一つお尋ねをいたしてみたいと思う。これは御案内の通りに、金情報部長があるいは除名勧告を受ける、あるいは民主共和党の発起人委員長を辞任をする、やれ金東河が同じようなことをする、また昨日は急遽また復帰する、妥結ができたなどという、まことに不可解な経過があるのであります。現在の朝鮮政情というものを一体政府はどう見ているのか。特に今度の対立は、どういうところにいかなる者といかなる者とのどういう対立があったのか、対立の性格をはっきりこの際に明らかにしてほしい。
○大平国務大臣 韓国の政権が民主政治に移行する決意を持って手順を公表いたしておりますことは、御案内の通りでございまして、ことしの一月から政党が認められて政党活動が始まった。そのことは政府に対する批判勢力が育成される素地をつくることでございまして、私は全体として見てみまして、韓国が民主化の過程をたどっておると見ておるわけでございます。それからその過程におきまして、各政党内部にどういう勢力の対立があり、それはどういう考え方の対立であるかというような点につきましては、寡聞でございますが、つまびらかにいたしておりません。問題は、民主化を目ざしまして今いろいろな意味で陣痛の苦しみを苦しんでおるという状態につきましては注視を怠っておりませんし、同時にまた深甚な同情を持っております。
○勝間田委員 どういう対立があるのかということをよくつまびらかにしておらないというのでありますが、しかし、金鍾泌と金東河との対立は一体何なのか、派閥的な性格のものなのか、あるいは主導権的なものを求めているのか、政策上の相違からきておるものなのか、これは実は私は重大な問題だと思う。これは自民党の派閥以上のものだと思う。だから、その意味からいけば対立の性格というものを明らかにすべきだ。また、私どもの一番大切だと思うのは、今度でき上がってくる民主共和党というものが非常な独裁的な性格を持っているものだということも明らかだということです。また最近これが民政移管という点を考えてみましても、たとえば憲法のでき上がったものの内容、やがて政党法をつくろうとする態度、政党法で縛っておいて選挙法をつくっていこうという態度、早期な総選挙に移行していこうという態度、また、各地域に党組織の事務局をつくっていこうという態度、私は、この態度というものは全く共産党と同じ、あるいは独裁的な国と同じ傾向が韓国に現われておると思う。そういう政権というものは、真に民主的な政権の移行とは私は考えていない。だれが考えたってそれはそうだ。その政党の首班であろう、その政党の指導者であろう金鍾泌というものと、正常化前に、あるいは民政移管前にこうした条約を結んでいくということは、政権てこ入れの政治ではないか。それは結局朴政権をてこ入れしていこうというやり方ではないか。 〔委員長退席、野田委員長代理着席〕 その意味では非常に重大な問題だけれども、これは内政干渉を含んでいると私は考える。もし日本に何らかの選挙が行なわれているときに、その政権を他の国から援助をされ、てこ入れをされるとするならば、日本国民は怒るに違いない。これは決してやるべき外交の姿ではないと思う。民政移管前に、こうした特定の政権を支持するための日韓会談なんというやり方というものは、この際絶対にやめるべきだ。これは基本原則でなければならぬと思う。ましてや、今日のようなこの政情不安の中で、こうした日韓友好の非常な長期的に重大な関係のある問題を解決していこうなんという軽率な態度は、遺憾しごくだと思う。総理どうですか、これはおやめになったらけっこうじゃないですか。
○池田国務大臣 たびたび申し上げておりますごとく、日韓が一日も早く正常化することは、国民大多数の気持と私は思います。さきには軍事政権だからいかぬと言い、今はまた政情が不安定だ、こういうことを言っておったら、いつまでたってもできない。われわれはいいことは早くやるべきだ、こういうふうに思います。
○勝間田委員 これは大平外務大臣にお尋ねいたしますが、私は率直にもう無理をすべきときじゃないと思う。この日韓会談は、もう事実上私は相当おくれるのじゃないかと思う。また、おくれるのはあたりまえだと私は思う。日韓会談のこれからはどうですか。
○大平国務大臣 私は、これまでも特に急いでおるわけではございません。無理をいたしておるわけではございません。長い間の懸案でございますので、責任者といたしまして、できるだけ早く妥結を庶幾いたしたいという気持で交渉いたしておるわけでございますが、交渉はようやく軌道に乗りつつある段階でございまして。これからもろもろの懸案がたくさんございますので、これを全部こなした上で、最終の解決に持っていくのには相当の時間がかかります。特に急ぐ、特に無理をするわけでもございません。当然の仕事を当然のごとくやっておるにすぎないわけでございまして、いついつまでにどうしようという、特にかまえた姿勢でおるわけではございません。
○勝間田委員 日韓問題については、一応その程度にいたしておきます。 もう一つ、私はこの際に特にお尋ねをしておきたいと思いますのは、沖縄に対する問題であります。これは時間もありませんから、一つ明確にお答えを願いたいと思いますが、池田さんとケネディ氏との話し合いによって、沖縄に対する援助のいわゆるケネディ・プランというものができて、経済援助の構想あるいは自治権の回復、そういうようなものを主内容とするところの話し合いができて、調査団その他も往復をするという状態ができた。しかし、この際に私は非常に疑点に実は思うのは、一体これらの経済援助が、的確に行なわれておるかどうかということも一つでありましょうし、また、自治権の回復が予定通り行なわれておるかどうかということも、重大な問題があると思う。だか、経済援助なり自治権の回復なりが、施政権の返還につながり、沖縄の本土復帰につながるということでなければ、これは何らの意味がないと私は思う。これはどぶに金を捨てるとは私は言いません。同じ日本人が助かることには違いないでしょう。しかし、あくまでも自治権の回復、経済援助が施政権の返還と本土復帰につながるということでなければならぬ。一体これをどう実現をしていくかという基本的な態度を私は聞きたいのであります。答弁をいただきます。
○大平国務大臣 ただいま沖縄がアメリカの施政下にあるということは、勝間田委員御承知の通りでございます。私どもは日本国民といたしまして、沖縄が一日も早く復帰することを希求いたしておることに、これまた間違いがないわけでございます。そこで、現在の沖縄政策というものがどういう構図で進められておるかと申しますと、これは基本的にはアメリカが手離して、日本に復帰することをアメリカが認めなければ、第一話にならぬわけでございます。幸いにわが国朝野の努力によりまして、去年の三月、ケネディ大統領が声明いたしましたように、沖縄に日本の潜在主権を認めるという態度をはっきり明言されたこと、そしてこれから行なう沖縄援助というものは、沖縄の生活水準、経済の水準を上げまして、そして日本に復帰する場合の困難を少なくしていくんだという構想がこれまた明らかにされたわけでございまして、私どもはこのラインに沿いまして、今回も沖縄援助を去年の倍額にふやすという決意をいたしたわけでございますし、アメリカにおきましても、去年よりも今回は倍にするということにいたしておりますゆえんのものも、そういう方向に沿った施策であると承知いたしておるわけでございます。問題は、かくいたしまして、アメリカが日本に沖縄を返すという決意をされる時期をしんぼう強く待たなければなりませんし、また、アメリカにそういう決断をしていただく情勢をつくって参らなければならぬのであります。すべてこの問題は、日米間の信頼が一番大事だと思うわけでございまして、沖縄につきまして私どもがただいまやっておりまする政策は、そういう意味におきまして、きわめて建設的な歩みを続けておるという意味に判断いたしております。
○勝間田委員 いつもそういう議論をされるのですけれども、実際現地の報告を聞いてみますと、むしろ逆で、施政権返還なり、本土復帰をたな上げするという傾向の方がむしろ強いのじゃないですか。しかし、それを議論しておってもいけません。 私は大蔵大臣に一つお尋ねしますが、沖縄に国有財産はどのくらいありますか。その収入は幾らですか。それはどこの会計に入っているのですか。
○田中国務大臣 本年三月の国有財産台帳によりますと、大体三千四百万程度でございます。収入は御承知の通り、平和条約に基づきまして、沖縄の米国側がこれを管理し、琉球政府に交付をして使用せしめておるわけであります。
○勝間田委員 今の国有財産三千四百万円ですか、これは琉球政府に入っていないのじゃないですか。琉球政府にこれを繰り入れてもらいたいというのが琉球の要求じゃないのですか。
○田中国務大臣 私の知るところでは、アメリカ側が管理をして、この利益分を琉球政府に交付をしておる、このように承知をいたしておりますが、詳しいことは調べて御報告をいたします。
○大竹政府委員 ただいまの国有財産から生ずる収入でございますが、一九六〇年の六月までアメリカ側が管理をいたしておりました。それ以後、国有財産のうち、山林原野の管理、これは琉球政府に委任されまして、それから出て参ります収入はすべて琉球政府の歳入に入れておりますそれ以前の収入につきましては、一部アメリカがまだ持っておるようでございますが、その他の部分は、やはり琉球政府に交付されておる、こういう格好になっております。
○勝間田委員 その国有財産の管理をアメリカがやっておって、その収益が結局琉球政府の一般会計ではなくて、それはアメリカの民政府の一般会計、すなわち、いわゆる弁務官資金という中にこれがつぎ込まれて、各種の政治資金に使われたのじゃないですか。また、その国有財産を貸しておるのにも、たとえば八セントというような民間ベースよりも、半分以下でこれが使われているのじゃないですか。この国有財産の使い方というものについてやはり明確にして、これを真に琉球政府の会計に持っていくという努力がなされるということが、簡単ではないけれども、重要なことではないかと私は考える。また、今も申した通りでございますが、弁務官資金というものは、一体どんなもので、その財源は一体どこでどう使われるのかということも、これは総理府の方からでも御答弁願いたいと思います。
○徳安政府委員 災害対策委員会の方に出ておりまして、おくれて参りました。 高等弁務官の資金につきまして申し上げますが、琉球列島における経済的社会的発展の促進に関する法律におきまして、いわゆるプライス法第三条によって高等弁務官に設置の権限を与えられた特別資金でありまして、ガリオア援助の見返り資金を積み立てて運用し、その収益を大統領の承認のもとに沖縄の利益に還元しているものであります。 〔野田委員長代理退席、委員長着 席〕
○勝間田委員 これが今言ったような資金もあり、他の資金もあって、結局選挙のときなどは、その選挙地域に行って小切手で、お前のところは水道をつくれと言って小切手を渡す、お前のところは一つ井戸を掘れと言って小切手を渡す、こうした選挙干渉の費用にまでこれが使われて、この前の選挙の際は選挙管理委員会から重大な抗議を受けるといったようなことまで引き起こしておるのです。こういう自主性のない財政の問題についてもきびしく批判すべきだし、それからこれは総理大臣に念のために聞いておくことでありますけれども、アメリカの下院の軍事委員会において、御存じの通り、施政権とは第三国に譲渡できない、それを拒否する権利だ、こう言っておりますが、そういう解釈はあなたは了承されますか。
○池田国務大臣 私は下院の決議を見ておりませんが、施政権返還の問題につきましては、先ほど外務大臣が答えたように、ケネディ大統領は、潜在主権があり、行く行くは日本に返還することを前提にして物事を考えておるようでございます。下院の決議の問題につきましては、法制局長官から解釈をお答えさせます。
○林(修)政府委員 もちろん、これは御承知のように下院の決議でも何でもないので、下院で議論された問題だと思っておりますが、これはいわゆる潜在主権の内容について議論されたことだと思います。潜在主権というものの内容について、現在においてはいわゆる施政権は完全にアメリカが持っておる。従って、日本に残されたものは、現在においては日本の承諾なしにあそこの領土主権を他に譲渡することができない、こういうことではないかというような趣旨だと思います。この点につきましては、だいぶ前でございますが、私あるいは外務省からもこの席でお答えしたことがあると思います。現在においては平和条約第三条で、施政権は全部アメリカが持っておるわけでございます。従って、いわゆる施政権の内容は日本にはないわけで、ただ領土主権は日本が持っておる。これがいわゆる潜在主権で、この潜在主権は、現状においては日本の承諾なしに他に領土主権を譲ることができない、こういうことが現在における状態であると思います。そういう意味で、きわめて法律的に割り切って言えば、ああいう議論も出てくることかと思うわけでございます。表現の問題はいろいろあると思います。
○勝間田委員 この際、一つ要求しておきたいと思いますが、沖縄の問題をわれわれは真剣に考えてみるときに、はたして現在の沖縄の皆さんが希望ある経済生活なり文化生活をやっておるかといえば、まことに悲惨な状態に私はあると思います。また、これが、たとえばライシャワー氏なりが、日本の本上の県並みにまで一つ行政水準を引き上げていきたいのだ、こう言われましても、はたしてその適確な施策が行なわれているかどうかということについても、私は重大な疑問を持つのです。ただ、私どもが忘れてはならないことは、沖縄の皆さんに対しては、日本の本土が国家の財政をもって積極的に援助していくということが、私は絶対に必要だと思います。同時に、その援助というものが、先ほど来申し上げた通りに、施政権の返還につながり、またそれが本土復帰につながるものでなければならぬということを、私は根本的に考えておかなければならぬことだろうと思います。もしそのことを怠るならば、この援助というものは、結局アメリカのドル防衛に協力するにすぎないという結果に陥ってしまうのであります。ドル防衛に終わるか終わらないか、真に沖縄の人たちの幸福につながるかつながらないかは、やはり施政権返還、本土復帰にこの援助がつながるかつながらないかということにかかっておると私は思います。この意味で、私どもは一つ強く政府に要望しておきたいと考えるわけであります。 次に、私は、池田総理並びに大蔵大臣その他の皆さんに、日本の経済、財政の問題について一つお伺いをいたしたいと思います。 この前の本会議の席上で、成田書記長が、池田内閣の経済政策は酔っぱらい運転だという意味のことを言われましたが、まことに適切な表現だったと思う。 まず、私はお示し願いたいと思いますけれども、最近の十ヵ年間の、予算説明当時における当初の経済成長見込みというものと、一年たった実績というものとは、一体どういう数字になっておりますか。この数字を経済企画庁長官に一つ発表していただきたいと思う。当初見込みは幾らで、実績は幾らだったか、過去十カ年です。
○宮澤国務大臣 昭和二十七年度から申し上げますが、この当時には見通しによる推定がございませんので、推定と実績との比較を三十年度から申させていただきます。 実質で申し上げる方が御便宜でありましたら、実質で申し上げます。三十年度の推定は四・五と推定をいたしまして、実質は一〇・三でございます。三十一年、四・二と推定いたしまして、実績は九でございます。三十二年、六・五と推定いたしまして、実績七・九、三十三年、三%と想定いたしまして三・二、三十四年、五・五と推定いたしまして一七・九、三十五年、六・六と推定いたしまして二一丁二、三十六年、九・二と推定いたしまして一四、三十七年につきましてはまだというところでございます。
○勝間田委員 池田総理どうですか。われわれに予算を説明し、経済の見通しを話すときにはかくかくの数字だが、結果は全く違ったものになる。特に私は思い出すのでありますけれども、三十六年の正月のときに、当時いわゆる安定成長か、高度成長か、七%か九・何%かという議論をしたことがございます。その当時、経済企画庁もわれわれも、この際は安定成長でいくべきである。私は、その当時本会議におきまして、景気の上向くときにはむしろ政治は控え目にやるべきだ、景気が悪いときには積極的にてこ入れをやるべきだ、問題は、安定がこの際政治のとるべき態度だという話をしたところが、また私にまかせておきなさいというあなたの答弁だった。が、そのときに私どもが非常に痛烈に批判したのは、同時に公定歩合を引き下げるという政策をとってはならぬということだった。たとい、あるかないかは知らぬけれども、あなたが証券業界に義理があったとしましても、金利を下ぐべきじゃないんだという主張をわれわれはした。しかし、これを押し切った。そこで、どうです。経済は過熱になって、そうして膨大な成長になって、国際収支は赤字。これからせっかく引き下げた公定歩合も二回にわたってまた引き上げざるを得ないという状態になって、あのときの一年間の結果を見れば、池田さん、あなたは落第でしたよ。これは結果においてはっきり現われていると私は思う。これは一体見込みの間違いですか、政策の間違いだったのでしょうか、両方だったのでしょうか。過去十カ年間におけるこれほどの乱脈というものは、これは成田書記長が言われるように酔っぱらい運転だったかもしれほい。一体、今までの経過を見、特に三十六年度から今日までの推移を考えてみて、見込みの間違いですか、政策の間違いですか、どっちですか、池田さんに一つお尋ねをいたします。
○池田国務大臣 ごらんの通りに、三十二年、三十三年のときがよかったか、あるいは三十五年、六年のときがよかったかといったら、やはり成長率の多いときの方がよかったと言うでしょう。私はここでとやこう申しませんが、これは客観的立場にあります世界の人が言うことを一つお聞きになったらどうですか。見込み違いということももちろんあります。経済の成長というものは、なかなか見込みの立たぬものです。それはなぜかといったら、日本人の努力と創造力が強いのです。まあ見てごらんなさい。最近世界で一番景気がいいといっているのは、フランスとイタリアでございます。これが五%程度です。五%ないし五・五%の総生産の増加でございます。しかし、イギリスなんかに至っては二・七%くらいです。前年は、一九六二年ですが、一%程度なんです。ドイツがあれだけいっておりましたが、ドイツも生産は非常に鈍って、国民所得の伸びは三、四%くらいじゃございませんか。それが、今企画庁長官が言ったように、三十七年度はわかりませんが、過去平均三年間一五%いっておる。こういうのは世界の驚異なんです。政策の見違いとか、あるいは政策の拙劣とか、見込みのどうこうということよりも、高度成長したがゆえに、格差もだんだんなくなりつつあり、そうして国民全体の生活水準が非常に上がってきておる。これを何と見るか。こういう意味からいえば、減税もやり得たり、あるいは社会保障も拡充したり、文教も刷新できる、これが一番の政策でしょう。成長率がどうこうということよりも、社会保障や社会資本や減税や、あるいは国民生活水準が上がるということが政治の目標ではありますまいか。私は、その点からいって、見込みは過大に見込んで非常に少なくなったよりも、九%という見込みが、ごらんの通り一五%平均になったのです。これがいいか悪いかということは、後世の人が批判するでしょう。らち外の第三者が批判してくれると思います。私は、こういうことがあったから、日本がだんだん先進国に早足で近づきつつあるということでございます。後世の批判と第三者の批判を待ちたいと思います。
○勝間田委員 私は、経済成長というものを決して否定するものではない。しかし、経済成長というものが、たとえば一四だとかあるいは一三だとかといったような、そういう成長をしたのだから、おれは成功したのだ、こういう考え方をするのは非常な間違いだと私は思う。何となれば、そのために犠牲を受けるものがあるわけです。たとえば国民の消費率が五四・八なら五四・八というものに低く押えられるという条件なり、あるいは社会保障、社会資本がそれだけ立ちおくれるという、そういう犠牲の上になされるのだから、決して成長だけがあなたの自慢になるわけじゃないと私は思うのです。よくあなたは、高度成長が世界的だから評判がいいのじゃないかと言います。よく外国ではワンダフルという言葉を使いますけれども、ワンダフルということは、私も辞書を引いたわけでもございませんが、驚異ということも、感嘆ということもあるでしょうけれども、どうも奇妙きてれつというような、不思議ということも私はあると思うのです。だから私は、池田さんの一体一三%の成長率というものがほめられたのか、よくもまあ日本国民はこうがまんをさせられたものかという、一体どっちに解釈しているのか、一ぺんまた機会があったら調べてみたいと実は思っておりますが、いずれにしましても、私はここで経済企画庁長官に一つ聞きたいと思いますが、なぜこんなに見込みが違ってくるのでしょうか。また違ってもいいものなのでしょうか。一つお尋ねいたします。
○宮澤国務大臣 お尋ねは、なぜ見込みが違っているか、もう一つ何とおっしゃいましたか。
○勝間田委員 またそんなに見込みが違っていいものなのでしょうか。
○宮澤国務大臣 それは、なぜこれだけ見込みが違ったかということの一つの基本の問題は、いろいろ説があると思いますけれども、わが国が戦後技術革新の波にかなりおくれておったわけでございますが、一九五五年ごろから急速に技術革新に入りまして、そうして現在まだその過程のどこかにあると思われます。しかし、それがどの程度の波にどの程度入っておるかということの判断がつかなかったということが、やはり私は問題の基本にあると思います。その点は正直を申して、今日といえども、大企業については技術革新の傾向が一巡したように思われますが、中小についてはまだそのように思われませんので、従って、わが国の経済そのものが、何分通りそういういわゆる技術革新によるところの経済構造の変革をなし終えたかということが、正直のところ何人にも明らかでないと思います。この点についての見通しを欠き、現在といえどもなおこれを確証するところの確たる要素をつかみ得ないというところが、やはり問題の基本にあると思います。 それからもう一つは、それと直接に関係のあることでありますが、先ほど総理から答弁のありましたように、これだけの国民の持っておるところの創造力とエネルギー、それがどういうふうにどっちへ向かうかということについての予測がやはりやりにくい。これは現在でもやりにくいと思いますが、そういうところに基因をいたしておると思います。
○勝間田委員 池田総理の施策が手放しで私は賞賛するわけには参らないと実は考えておる。結局この経済の成長が、たとえば三十四年が一七とか、五年が一三、あるいは六年が一四とかということで、これが結局民間の設備投資をこれだけ余分にやったことなんでしょうけれども、この結果生まれてきているいわゆる欠陥、日本経済の課題というものは、設備の過剰ができてきている、あるいは物価、料金が値上がりせざるを得なかった、あるいは通常いわれておる社会資本の立ちおくれがきてしまった、また国際収支を悪化させた、この重大なことだけはあなた認めるでしょう。こういう結果が今日生まれたということは、あなたはわかるでしょう。これを認めますか。こういう結果を生んでしまったということはあなた認めますか。
○池田国務大臣 設備の過剰があり、そうして卸売物価の弱含みがあり、そうして国際収支が赤になった、これは認めます。しかし、その設備の過剰が今後働き出し、そうして三十七年度の成長をある程度抑えたために、国際収支は黒字に変わり、将来伸びていく発展があったと私は考えております。
○勝間田委員 そこで、一つ大蔵大臣に御意見を聞かしていただきたいと思うのですが、本会議におけるあなたの演説をお聞きいたしましたが、なかなか精細にわたって述べられたことについては、私は敬意を表します。しかし、ことしの経済の課題は何だろうか、私はその経済の課題にこたえるためにかくかくの予算を組みました、この透徹した議論をあなたから聞きたかったのであります。どこどこに何パーセント出した、どこどこに何パーセント出したということよりも、ことしの経済の課題は何だ、これにこたえるために私はかくかくの予算を組みました、それがこういう結果になりました、こういうやり方があってしかるべきだろうと私は思うのです。これは有名な、私どもも敬服しておるのでありますけれども、たとえばイギリスの労働党のある大蔵大臣のごときは、これをやりますと皆さんにフランスのコティをもう一個お届けすることができます……私はそういう態度が望ましいと思うのです。ことしの経済の課題をあなたは一体何とつかまえていらっしゃいますか。それを一つあなたに聞かしてもらいたい。
○田中国務大臣 お答えいたします。 自由化の波の中に洗われながら、新しい日本を築いていく、新しい立場からの第一年次になるであろう、またしなければならない、こういう基本的な気がまえを前提としたわけであります。御承知の通り、IMFは二月の初めに理事会を開いて、日本に対する八条国移行勧告を行なうであろうと思われますし、また、ガットの会議も日本の自由化に対しての議論を二月から始めるわけでありますし、関税の一括引き下げというような時代に対応していかなければならない日本でありますから、御承知の通り、国際収支改善という大きな仕事と取り組んで参ってきた日本が、最終段階において円満に国際収支改善の実を上げ、新しい立場に立って自由化に対応し、輸出第一主義をとりながら産業の基盤強化に処さなければならない、これが日本の経済に対する基本的な考え方であります。
○勝間田委員 基盤強化、特に八条国移行に伴う日本経済のあり方、それに対する経済対策、私は、これは最も重要な課題だと考えておる。もう一つ、やはり重要な問題は、言うまでもなく、現在の経済のいわゆる景気後退、あるいは不況とも言っていいと私は思いますが、この状態をいかにして回復するかという課題、それからもう一つは、所得格差なりその他の格差の是正という、国民全体に対する公平の原則をどう実現していくかという問題が私はあろうと思う。この日本の現在の経済不況の原因というものをあなたはどうつかまえていらっしゃるか、この点をどう回復されようとして考えておられるのか、その点を一つお尋ねをさしていただきたい。
○田中国務大臣 ただいま勝間田さんも申されましたが、先ほどの御答弁につけ加えて申し上げれば、健全にして長期安定的な経済の発展を築かなければならない具体的な問題としては、国内均衡をはかりながら、地域格差や業種間格差の是正もあわせて考え、立ちおくれておる社会資本の充実をはかりながら、文教や社会保障を充実せしむるというのが、三十八年度予算の大綱をなしておるわけであります。また、経済の萎縮面に対してどういうふうな刺激対策をとるかという問題でありますが、これは事実を申し上げると、その認識は非常にむずかしいのであります。その意味で、私は先ほど、新しい国際情勢に処して日本が長期安定的な経済発展をせしむる第一年次にしなければならないという基本的な考えを申し上げたのですが、確かに一四%実質の経済が伸びた三十六年度に比べまして、三十七年度は御承知の通り名目六・五%、実質経済の成長率四・五%と押えておりますから、この通りの数字を考える場合には、まさに三十六年の三分の一にもなるわけでありますから、その面において相当しわ寄せをされておる産業部面があることも認めるわけであります。でありますから、それらの産業に対しては十分の配意をしながら、各種のてこ入れを行なっていかなければなりませんし、同時に、輸出振興という意味において、輸出産業に対する諸般の施策も行なわなければなりませんし、また中小企業や、一面において、三十六、七年度までに設備の過剰投資が行なわれたといわれながら、自由化に対して中小企業その他まだ設備改善、近代化が行なわれておらない部面もたくさんあるわけでありますから、それらの部面に対しては、なお設備改善を進めていかなければならないわけであります。でありますから、大きな企業や設備過剰のものに対しては、設備投資を押えながら、立ちおくれた産業に対しては設備の改善、近代化を進めていかなければいかぬ。相反する面に対して合理的な施策を適切に行なわなければならぬというのが、今年度、来年度の一番大きな問題であり、またむずかしいことだと考えるわけであります。私は、そういう意味で、ちょっと手を許すと国際収支の危機を、また逆戻りをするようなおそれもありますし、ある一面においては、沈滞した産業に対して適切な処置をしながら景気刺激を行なわなければならない。こういう問題に対して、われわれが三十七年度の下期からいろいろな施策を行なっております。ただ、一般会計による景気刺激というようなものだけではなく、産業投融資の面において弾力的な運用を行なったり、御承知の日銀の買いオペレーションやいろいろな施策によりいわゆる民間資金の活用等をはかって、昨年六、七月から適切な施策を行なっておるわけであります。また、三十八年度の予算で、御承知の石炭鉱業に対する問題、非鉄金属鉱山の再建に関する問題、なお外航船建造に関する問題とか、肥料工業に対する施策とか、各般の施策を行ないつつあるのでありまして、ただ萎靡沈滞をしたからということだけに目を奪われて、国際収支をまた逆調に導かないように十分の配意をしながら、国内産業の均衡をはかるという面に重点を置いて施策を行なっておるわけであります。
○勝間田委員 有効需要をふやしていくという場合に、田中さんはどの有効需要をふやしていこうとするのか、それをどうして持っていこうとするのか、それを端的にまず一つお尋ねをいたしたいと思います。
○田中国務大臣 有効需要をふやすという問題については、一つには輸出を拡大することでありますし、もう一つは国内的に消費の拡大ということになるわけでありますが、消費拡大ということにつきましては、あまり消費を拡大することに重点を置くと、三十五年、六年、七年のように、異常なともいうべき消費の拡大が行なわれるわけであります。また、現在のような状態をずっと続けて参ると、国民消費は非常に沈滞をしていくということになると思いますので、適切な目標を立てながら、国民消費をどの程度に押えるかということに配慮をして参らなければいかぬ。来年度の国民消費の目標は、御承知の通り一〇%という程度に考慮をいたしておるわけであります。
○勝間田委員 経済企画庁長官に一つお尋ねをいたしたいと思いますが、最近の重要産業の操短率はどの程度になっておりましょうか。
○宮澤国務大臣 製造工業を平均いたしまして、八〇をちょっと割っておると思います。鉄鋼業が七五くらい、化学、石油化学に至っては六〇%台であります。
○勝間田委員 池田総理に一つお尋ねいたしますが、あなたはよく賃金インフレだとか、コスト・インフレだとか盛んにそういう言葉を使われますけれども、一番今大きな問題は、私は、操業率が低くて、逆に言えば操短率が高くて、資本負担が非常に重くなっておるというのが今日の状況ではないでしょうか、そこが問題点じゃないでしょうか。
○池田国務大臣 資本負担というのは、やはり設備拡張によりますもの、そうしてまた金利の高いということ等の原因がございます。コスト・インフレということは、各国でずっと悩んでおるところでございます。御承知の通りイギリスからアメリカ、そうして三年ぐらい前からドイツという状況です。日本も生産性が非常に伸びておるときは、賃金がある程度上がってもやはり下回っております。本会議でお話しいたしましたごとく、生産性は相当伸びておりましたが、昭和三十六年の六月ごろから、三十六年の春闘から賃金の上がりが非常に多いようになりまして、そうして三十七年も相当賃金が上がっておりますが、生産性はあまり伸びなかったということで、これは一時的現象としてはそう心配はございませんが、この生産性の向上よりも賃金の上昇の方が上回るということになりますと、いわゆるコスト・インフレということに相なるのであります。一番いい例はドイツでございましょう。最近におきまして、ちょっとイタリアが今その傾向があるというので調べておりますが、これはやはり賃金の上昇ということもある程度考えなければなりませんが、やはり生産性の向上よりもこれが上回る、それが長い間上回るということは、健全な経済の発展によくないと私は考えておるのであります。もちろん最近操業率が落ちまして、生産性の向上が十分ではございません。しかし、いずれはまた相当の、生産も伸びることでございましょう。こういうときに、もちろん生産性の向上よりも賃金の上昇が半年あるいは一年くらいあとになるということは、これはわかり切ったことでございます。この間の関係をよくしていかないと、健全な長い目で見た経済の発展はあり得ない。それで私は、ここ二、三年前からそういうことを言って、反省と申しますか、自戒をお願いしておる状態でございます。
○勝間田委員 この生産性と賃金との関係の問題を非常にわずかな短期の間の変動だけで見ていこうとする、早く一言えば、短期の傾向から見てそれで鬼の首でもとったような考え方を持っていくという、そういう態度のものであってはならぬと思います。生産性と賃金の問題は、少なくとも三年ないし五年のロングランに見られた比較でなければ、これが正実なものということはできないと私は思うのです。この点で池田総理と何も議論をする必要はございませんけれもど、問題は、この非常な低い操短率、これは逆に言えば、あなたの無計画な民間設備投資の激成からくる反動としてのこの非常なきびしい操短率というものを一体いかにして引き上げていくか、そのための有効需要をいかにしてつくり上げていくかということ、あるいはそのための経済条件をどうつくっていくかということが、私はそれが中心だと実は考える。その中心から真剣に取り組んでいくならば、私は、当然考えられるべき事柄は、設備投資を誘発していこうというその考え方ではなくて――これは非常に景気刺激としては有効な手段でしょう。設備投資なり在庫投資に持っていこうということで一番やさしいことなのでしょう。しかしそれは自己撞着でありまして、自分の景気をつくるために、また自分と対立する工場を拡張していくということでありまして、こういう手段をやっているから、これが私は自転車競争のようなあるいは自分の足を自分で食うような経済政策のやり方だと実は考えるわけであります。やはりこの際に問題になっていくのは、やはり最終需要を目的として対外貿易あるいは国内消費あるいは公共事業、こういうところに問題を持っていくということでなければならぬと私は実は思うのです。その意味からいくと、設備投資の刺激に期待をかけていこうとする政策のようにどうも見受けられてならない。それはたとえば金利政策なり、あるいは政策減税のやり方なり、あるいは財政資金の使い方なりというものを見れば、私はよくわかると思うのです。だから私はむしろこの際に大切なことは、一つは貿易の振興、一つは国内の一般消費の引き上げ、公共事業、こういうことになると実は考えるのであります。ところが大蔵大臣の今回の説明を聞いておりますと、まず一般消費の面を非常に押えていくかに見受けられてならない。それは世間で言われるような所得減税というものが非常に押えられたということが、一つの印象からきておるのでありましょうし、なぜ一体この所得税減税というものをこんなに押えたのですか。これはあなたの財政政策に直接つながる方針だと私は思うのです。所得税減税をなぜこんなに押えたか、この点を一つ大蔵大臣から明らかにしていただきたいと思うのであります。
○田中国務大臣 お答えいたします。 所得税減税を押えたわけではありませんし、所得税減税を押えるなどという考えは毛頭持っておりません。過去数年間において、減税は一兆一千億以上も行なわれたわけでありますが、これが七〇%に及ぶ金額は、所得税中心の減税であったということは御承知の通りであります。でありますから減税というのは、いつの時代でも時の政府、時の財政当局は、できるだけ減税を行なっていかなければならぬということは、これは政治の基本でありまして、私も財政の責任者として当然そのような基本的な考えを持っておるわけであります。しかし、経済は御承知の通り非常に微妙な段階でございますし、テンポの早い国際情勢に対処して日本の経済を運営していくのでありますから、そのときの情勢によって取捨選択しながら、弾力的な運用をやらなければならないこともまた言うを待たないわけであります。その意味において昨年までに――御承知の通り昨年度は税制改正の三年目でありましたが、間接税中心の大幅減税を行なったわけでありまして、税制に対しましては、根本的な税制のあり方を新しい内閣につくられた税制調査会に諮問をいたしております。その諮問については、広範な角度から、将来の日本の税制そのものに対して、また減税のあり方そのものに対して諮問をいたしておるわけであります。三十八年度の予算編成に際して、少なくとも三十八年度予算編成の中に織り込まなければならない部面に対しての答申があったわけでありまして、われわれはその答申を十分尊重をする建前で検討いたしました結果、先ほどから申し上げておるように、国際収支の改善という問題もありますし、自由化という問題もありますし、一括関税引き下げという問題もありますし、八条国移行という問題もありますし、日本民族としては非常に重大な立場に立っておるわけでありますから、元も子もなくするというようなことよりも、先ほどから総理が申し上げておるように、国際収支の状況をよくし、自由化に耐えていく国際競争力をつくり、貿易を振興していかなければ、社会保障の拡充も教育の振興も何もできないのだから、まず基本的な貿易の振興ということを前提にしようということでありますので、経済政策の第一に輸出振興を掲げました。 その輸出振興を第一にやらなければならない産業はどうかというと、あなたが先ほど言われておるように、多少設備の過剰等がありまして、鉄鋼でも肥料でもあらゆる産業に対して何らかの措置をしなければならないような状態になっておるわけでありますので、産業政策の一環として政策減税を行なったわけでありまして、来年も再来年も、これから何年か引き続いて税制の改正が行なわれるわけでありますので、われわれは所得税の減税に対しては、将来、今までやってきたと同じような立場で減税政策を進めていくつもりでありますので、今年度に対して、答申の一万円控除が二項目にわたって五千円に減ったという事実だけをもって、われわれが非常に減税に消極的であったということではないというふうに考えておるわけであります。
○塚原委員長 勝間田君に申し上げますが、申し合わせの時間が経過いたしましたので、結論をお急ぎ願いたいと思います。勝間田清一君。
○勝間田委員 減税に不熱心であったというわけではないとこう言われますけれども、それでは所得税の納税者数は、一体ここ数年間どういう数字になっていますか。
○田中国務大臣 こまかい数字問題は、政府委員をして答弁せしめます。
○松井説明員 お答え申し上げます。 シャウプ税制当時千四百万人でございます。それから二十九年、三十年に減って参りまして、二十九年が千百万人、三十年が一千万人でございます。大体千百万程度が三十四年まで続いております。三十五年に入りまして千三百八十四万、三十六年度で千五百万でございます。本年度、三十七年度は、当初予算で千四百七十三万と見込んでおりましたが、見込みでは千七百万くらいに相なるかと思います。現状のままで参りますと、税制改正がなかりせば、千八百万以上になるかと思いますが、減税の結果、平年度百五十万、初年度百二十万の減員になる予定でございます。
○勝間田委員 今の数字ではっきりわかる通りに、納税者を減らしていきたいと言って池田総理、豪語しておりましたが、遺憾ながら総理とは逆な結果がここに出ております。 それでは、もう一つお尋ねいたしますが、税制調査会を云々されましたけれども、あの税制調査会でいきましたのは、御存じの通りに所得税の自然増収の約三〇%程度でしたか、やはり減税をしていかなければ、いわゆる物価の値上がりと名目所得の増加からくる累進課税との関係から、むしろ増税になってしまうのだ、私は、あれはこういう答申であったと実は記憶をいたしておるわけです。そうならば、今日、たとえば所得税の自然増収を二千億円として考えてみるならば、その三〇%、六百億円というものは減税をすべきはずだった。六百億円の減税をしないで、あなたは今度二百七十五億円の減税だということになりますれば、実質的に三百二十五億円の負担増になるのじゃないですか。だから、あなたは減税々々と言うけれども、減税じゃないのです。実質的な増税ですよ。これは税制調査会のはっきりした答申に基づくものを基礎とする数字でありますから、私は申し上げていいと思うのですけれども、明らかにこれは所得税に対する負担増です。調整の域を越えています。そういう意味からいくと、池田内閣は、今度所得税を減税したと言うわけには決していかぬと私は思う。これに反駁する理由がありますか。
○田中国務大臣 先ほどお答え申し上げましたように、昭和三十三年当時千百万であったものが三十五年に千三百万になり、三十六年に千五百万になり、三十七年に千七百万近くになるという数字から見まして、非常に増税になっておるという簡単な理屈を言っておられるようでありますが、そうではなしに、その間には基礎的控除率をどんどん上げておるのでありますし、実際において経済成長率は、先ほど宮澤長官が申した通り、三十一年度九%、三十二年七・九、三・二、一七・九と大幅に経済指数が上がっておるのでありますから、収入がどんどんふえて日本の国力がふえれば納税者がふえるということは、これは総理がいつもお答えになっておる通りだと思うわけであります。しかし、こまかい数字をずっと検討しまして、物価の値上がりよりも減税率が少ないという場合には、あなたの言われる通り増税式になるというような理論が生まれるかもしれませんが、少なくとも今度政府が減税をいたしました一般減税については、物価の値上がりを十分織り込んで、少なくとも増税にはならない、増税よりもむしろ政府が長年考えておる基本的な線に沿った減税が行なわれておるという線において減税の率をきめたわけであります。もちろん今年だけで終わるものではなく、来年、再来年ということを考えておるのでありますし、御承知の通り、三十六年、七年の両年度にわたっては、日本が自由化に対応して一体先行きどうなるのだ、日本の経済というものは鎖国経済では行けないのだ、こういうことを真剣にお互いが検討したわけであります。でありますから、減税ももちろん必要でありますが、一年でも半年でも二分の一に延ばし得るものであって、その金を公共投資に向けるとか、また産業基盤の強化に向けるとかということをもって今年度五%の減税をするということと、より積極的な施策をするために明年度以降一〇%の減税が行なわれるとしたならば、政治の責任としては後者を選ぶべきであります。私たちは政策減税との間のバランスを十分考えて、もちろん増税にはならない、明らかに減税であるという限度を守りながらこの減税政策をきめたわけでありまして、いやしくも増税にはならないという理論的根拠を持っております。
○勝間田委員 いやしくも増税にはならぬと言いますけれもど、税制調査会の答申を見ますと、所得税の方は本来は実質所得に対する負担を中心に考えるべきであるという勧告をして、そうして結局三十八年度の実質的な負担増というものは三〇%であるから自然増収に対して三〇%約六百億円というものは減税をすべきだったのに対して調査会は三百九十二億円を減税すべきだ、こういう勧告をしたのでしょう。この勧告を政府はとって二百七十五億にこれを切り下げた。そうでしょう。もし六百億円減税をすれば、これは実質所得からいけばとんとんなはずだった。そのとんとんなはずだったやつをあなたはここで二百七十五億という小さな幅にしちゃったから、実際上は実質所得から見れば三百二十五億円の増税になるのです。こういう点をはっきりさせなければ、いかにも減税々々と言われますけれども、これは田中さん大きな間違いでないでしょうか。 まだ私はもう一つ、時間がなんですから申しますけれども、なぜ一体三政策減税をやらなければならぬのですか。配当と利子に対してどうして減税をやらなければならぬのですか。これをまず私は聞きたいと思う。
○田中国務大臣 お答えいたします。 私は減税をやらないなどということは言っておるのじゃないのであります。過去も歴年やりましたし、これからも内閣の税制調査会の答申を尊重しながら、より大きな減税をやっていきたいという基本的な態度を明らかに言明いたしておるわけであります。今度の内閣税制調査会からの答申と提案をいたしました減税政策をただそのままに比べますと、あなたの言われたような議論が成り立つわけでありますし、私たちも答申の線そのまま六百億を守れずして、平年度二百数十億という減税案に踏み切らなければならない場合には、その軽重に対しては十分慎重な配慮を行なったわけであります。これはしかし、政治の責任者として考える場合、やはり比較をしまして、将来にプラスになる道があるならばそれを選ばなければならないときも当然あるわけであります。それは皆さんがいつでも言っておられる通り、人事院は五月一日からの昇給を勧告したけれども、諸般の情勢、いろいろなものを比べてみる場合には、やむを得ず十月一日に施行しなければならないというより高い立場から考えなければならないことは当然あるわけでありまして、私たちは、そういう意味で今年度の答申の線を守りながら、明年度以後において行なわれるものに対して、一部政策減税に振りかえて調整をとったというにすぎないわけであります。しかも今預金の利子を五%に下げた問題や、株式に対する課税率を五%に下げたような問題について言及されましたが、私が先ほど申し上げている通り、日本が国際競争力をつけていくために一体何をしなければいかぬのか。先ほどあなたも言われた通り、過剰設備投資にあえいでいるではないか、これに対して一体どうすればいいのだということを言われまして、それを一歩進めてあなたが質問せられれば、低金利にならないのか、低金利だけではなく、石炭鉱業や今の海運に対しては政府は一般会計から繰り入れを行なえ、また行なわなければならないという状態もあるわけでありますから、やはり先ほど申した通り、元も子もなくするような政策はとれないのであります。私たちも政党政治家でありますから、当然減税政策を行ないたいということはあなたと同じことです。答申より以上に減税を行なった過去の例もあるのでありますから、今度も、私も初めての大蔵大臣でありますから、大いに減税をやりたい。あなたの言う通りのことを考えているのですが、そこがやはり責任ある立場で、将来の日本の長いあしたを考えるときには、ある時期だけ一般減税を待っていただかなければならぬというような配慮をやったわけでありまして、産業資金が不足をしていると皆さんがお考えになっても、日本の大半の産業が自由化の嵐を前にしながら、借入金と自己資本の比率がどのような状況になっておって、このような状態で一体自由化に立ち向かえるのかということは、お互い皆日本人は考えているのでありますから、その意味において、一般減税を一年減じていただくかわりに、より深刻な事態に対処する政策減税を加味したにすぎないのであります。
○勝間田委員 大へん恐縮ですけれども、大事なところですからもうしばらくお願いします。 この政策減税、利子、配当の減税をやる。すなわち、一つは、今までのたとえば分離課税をもう二年間延期しようとか、あるいは今までの源泉徴収の特別措置というものをやって、しかも一〇%を五%に下げよう、そういう施策というのは一体目的は何だということ、その目的というものは、あなたの言う通りに、一つここで金を集めていこうという考え方でしょう。その金を集めていこうというのは、政府保証債の発行ともつながり、日銀の買いオペともつながり、産業投融資の計画の資金源ともつながっておるということは、私はわかっております。ところがそういう減税の仕方が今の経済の実態に合ってくるのか、むしろ増税に悩んでいる所得税の減税をやって、一般消費を高めていった方がいいのかということは、私は政策論上重大な問題だと実は思う。だからここで二百二億の金を利子課税、配当課税の方に持っていかずに、なぜ当然増税になる一般の所得税の方の減税に持っていかなかったか、ここが私は重大な点であると思いますけれども、これ以上あなたと議論をしてもしようがありませんから、その見解を明らかにしておきたいと思います。 次に私は、今度のあなたの予算を見て非常に重大に思いますのは、長いことを、三十九年のことを言えば鬼が笑うかもしれません。そのころには池田さんはもう内閣から辞職されておると私は考えておりますから、何も九年のことをそう心配する必要はないと私は思いますけれども、しかし三十九年に一体内閣をとる者があるとすれば、それは非常に迷惑な話だと私は考えておる。すなわち、その意味で私は申しますけれども、われわれが今心配をいたしておりますのは、そういう減税をやりながらもここで政府保証債を広範にやっていこう、外債をやっていこう、そして金を集めてぎりぎり一ぱいの財政政策をとった。もう一つ大事なことは、本年度の財源をほとんど使ったということであります。第一次補正、第二次補正、これで三十七年度のいわゆる増収分というものはほとんど使って、九年度に持っていく部分というものはほとんどなくなったということであります。あなたの今度の財政というものはその意味ではぎりぎり一ぱい、あるいは少し多過ぎかるもしれない一般会計を組んだ。それでもなお足らないで一兆一千億以上の産業投融資をつくった。そして今言ったような無理な資金を動員するという体制をとった。この積極的な態度というものについては私は必ずしもとやかく言いませんけれども、一番大きな問題は、三十九年に及ぼす影響というものを私は非常に重大に考える。そこで支出増、収入の減あるいは弾力性を失うということから見て、一番問題になってくるのは、私は減税の問題ではなくて、公債政策というものがどう首を出してくるかということが一番の課題だと実は思うのです。この国会で、あるいはインフレ論、何論というものが本会議でもあったりして、池田さんもかなり興奮した答弁をされておりましたけれども、問題はここだと私は思うのです。でありますから、先ほど田中さんは、これは池田さんもそうです。この前の答弁を見ておりますと、記者団の会見において何と言っておるかというと、いや来年は大幅に減税をやります、そういうことを言っておる。一体来年大幅の減税の余地があるのですか。これを私ははっきりしておいてもらいたい。
○田中国務大臣 三十八年度、現在提案いたしております財政規模が積極性を持っておるということに対しては、勝間田さんも同感の意を表されたのでありまして、非常にありがたいと思います。私も先ほどから申し上げておるように、国際収支の改善という微妙な問題を考えますときには、財政規模がどうあるべきかということに対しては非常に深刻な配慮をいたしたわけであります。同時に、先ほどからあなたが言っておられます通り、何らかの景気刺激をやらなければならないという事態がたくさんあるじゃないか、かくかくの産業に対しては首切りをやらなければいかぬじゃないか、かくかくの産業に対しては配転ができないじゃないかというような問題、こまかくは申し上げませんでしたが、そういうことを前提にして御質問になられておるわけでありますから、それらの問題に対してどういうふうに景気刺激をしなければならないか、これをいかにして調和をせしむるかというのが三十八年度の予算だ、私はそう考えて予算編成に深刻な考えで当たったわけであります。 その意味において、一面産業刺激というような面から見た予算の積極性に対しては賛成をせられましたが、一面、三十七年度の財源を全部食ってしまって、弾力性がなくなってしまって無責任な予算だ、あとから予算を組む人は一体どうするのかという問題でありますが、これは理屈を申し上げるつもりはありません。いつでも、大きな自然増収を残すと財政法違反だ、こういう議論も絶えず行なわれたわけでありまして、財政法の考え方からいえば、もちろん単年度の財政収入でまかなうという健全性を堅持すべきでありますから、これは、私はそのような財政法上の理屈だけで押そうという考えではありませんが、少くとも三十七年四・五%の経済成長率を議論したときには、これで一体いいのかという問題と、これでもまだ国際収支は逆戻りをするおそれもあるぞという相反する議論がなされておることは事実でありまして、私はこれを調整をとるために三十七年度の予算というものに対しても非常に配慮をしたつもりでありますが、今、三十七年度に財政法を改正して、三十六年度の剰余金千何億かの半分を取りくずすというような意見もありましたし、今年度は、どうしても社会資本をふやすためには一部建設公債の発行もしなければならないという議論もありましたし、また外債などは、三億も五億ドル借りても大したことはないではないかという議論もありましたが、いずれにしても、それらのことを配意しながら三十七年度の税収を中心にした経常収支の範囲内で予算がまかない得ておるということについては、ただいまあなたが申された通り先食いをしたというような考えは持っておりません。私はこの三十七年度の第一次、第二次補正予算を合わせて、われわれが今心配をしておるような諸般の事情に対処でき得て、前向きに長期安定の第一歩を踏み出せれば幸いだと考えておるわけであります。 もちろん、そうすると三十九年度の予算を組めなくなるということでありますが、その程度、多少景気刺激を盛り込み過ぎたではないかというような状態で予算を組んでも、来年は、一体あなたは、一面においては予算が大き過ぎると言いながら、需要は何によって起こすのだ、私たちは三兆六千億の民間設備投資は三兆五千億にはどうしても減るだろう、あるいはもっと減るかもしれぬ。それは財政資金でまかなわなければいかぬ、おくれておる公共投資その他でまかなわなければならないという配慮のために予算を組んだわけでありますが、それでもまだ、来年は総理が言う通り景気がよくなるのですかという逆な面からの御質問もあるわけでありますから、私は三十七年度の予算を通じて景気は上向きになり、三十八年度、私は積極的にも考えておらないわけでありますが、この予算は三十五年、三十六年、三十七年、比べてまあ健全均衡のワク内の予算である、こういうふうに考えておりますが、こういう予算を続けていくために日本の経済は健全化し、来年の三月はうんと法人決算は悪いだろうと思ったものが、九月決算も思ったより悪くならず、十二月決算の会社も何とか横ばいになり、このままでは三月決算もわれわれが考えておるものに近い決算の数字が出るだろう。そういう状態を配慮しながら予算を組んだわけでありまして、私としては精一ぱいの予算を組んだ。それは量において精一ぱい組んだというのではなく、合理的な範囲において予算を組んだと考えております。 第三点は、これが三十九年度には当然赤字公債になる。赤字公債をつくらないためにこのような予算を組んでおるのであります。公債論につきましては、総理が本会議で御答弁を申した通り、公債必ずしも出さないというのがいいのではないという議論を総理からはお述べになられましたが、私は財政当局者として、戦後混乱の中で十七年間も健全性を貫いてきたものでありますから、三十八年も同じように、三十九年も赤字公債を発行しないで、また赤字ではなく建設公債といっても、公債のようなものにたよらないで、税収を中心にした経常収支内でまかなって十分な伸びを期待していけるような予算を組む、また組むためにも三十八年度の予算で相当な配慮を行なった、こういうことでありまして、三十九年度に赤字公債を発行するなどという考えは、現在予算の編成をいたした過程において一度も考えたことはありません。
○勝間田委員 先まで答弁されたのでありますが、私の質問したことは、そういう状態であるならばおそらく減税はできないだろうということ、それを聞いたのです。
○田中国務大臣 減税問題は先ほどからたびたびお答えをいたしましたので申し上げなかったわけでありますが、減税に対しては、先ほど申し上げましたような、減税は数字の上で減税をしてはならないのであります。私が率直に申し上げたいのは、実質的な減税を行なうためには、物価の安定もはからなければなりませんし、通貨価値の維持もはからなければなりませんし、そういう意味で、三十七年度、八年度の両年度予算を通じて健全な経済成長を促して、長期安定的な初年度、次年度にしたいという考えでありますから、私がただいま申し上げたような状態が三十七、八年度の政府施策において行なわれるならば、当然正常な経済発展が行なわれるわけでありますので、税収もふえるでありましょうし、また、その場合当然減税問題が起きるわけでありますし、三十八年度に行ない得なかった減税は三十九年、四十年と将来ますます減税政策を進めて参るという考えでございます。
○塚原委員長 勝間田君に再度申し上げますが、だいぶ時間も経過いたしましたので、結論をお急ぎいただきたいと思います。
○勝間田委員 もう十分お願いしたいと思います。やはり双方の関係から出ているのですから、もうちょっとお願いします。 〔発言する者あり〕
○塚原委員長 御静粛に願います。
○勝間田委員 公債も発行しませんし、減税も毎年どんどんやりますと、まあ田中さんもいい気持でやられておるのでございますけれども、そういう態度では、とても踏み切れない。むしろ自民党では漸次公債政策に切りかえていくのじゃないかという危険を私は考えますから、ここでむしろ警告を発しておきたいと考えるわけであります。 最後に御質問をいたしたいと思いますのは、何といっても、今重大なのは、最初申しました八条国移行に伴う国内体制を一体どうするかというこの緊急の問題であろうと実は考えるわけであります。御案内の通りに、二月、もう間もなく、IMFの理事会においては日本に対する勧告をきめて参るだろうと私たちは想像いたしておるのでありますが、そうなれば勧告が行なわれる。そして、それに対する交渉が行なわれるにいたしましても、直ちに起きてくるのは、ガット十二条への問題が出て参ろうと思います。そうして、経常取引に対する為替統制ができないだけでなく、いわゆる貿易に対する自由化というものが無条件的に進められてくるという状態が今の日本の状態ではないだろうかと私は思う。一体これにどう対処していくかという問題はたくさんあります。金利問題も聞きたいし、いろいろな問題も聞きたいと私は思いますけれども、きょうはそれらの問題に言及をいたしません。 そこで、一つ重要な問題は、やはり日米通商航海条約が一体このままでいいかどうかということが私どもの心配になるところであります。一体、この日米通商航海条約というものの改定をせられるのかせられないのか、すなわち、為替統制をできるようにしておくかおかないか、ここが一つの問題点だろうと思う。 もう一つは、国内法として、外資導入の関係から見て、いわゆる日本産業の保護の政策をとっていく必要があるかないか、この問題が第二の点だろうと私は思うのです。 それから、第三の点は、これは通産大臣に重大な関係を持つものだと思うのですけれども、いわゆる新産業体制というものを何か計画されておるようでありますが、これは重大な内容、結果をもたらすものでありまして、非常に警戒をせなければならぬ一種の国家独占資本主義のいき方だと私は思う。その場合に、中小企業に対して中小企業基本法を考えるのだろうが、これをどうするのかという一つの課題と、もう一つは、独占禁止法というものを一体どういうような扱いにするのかという問題が私は当然残ってくると実は思うのです。 いろいろの問題があるけれども、これらの諸問題というものがどのように進められていくかという緊急な事態にある。これが私の一つの問題点でありますから、関係大臣からそれぞれ御答弁を一つお願いをいたしたい。 もう一つ重大なことは、これは農林大臣がそうだと私は思いますけれども、重政農林大臣、一つお願いをいたしますが、特に最近は、こうした事態もありますために、砂糖の自由化の問題が出るし、ネーブル、オレンジその他の自由化の問題が出る。しかし、いずれにしましても、八条国移行の問題が出れば、来年か再来年の春ごろまでにはどうしても農産物のウエーバー獲得ということは困難だという見通しが出てくるのではないだろうか。そうなりますと、農畜産物に対する影響というものは、私どもは非常な深刻なものがあると実は考えるのであります。これを一体どう処理するかということは今日考えておかなければならぬ問題であろうと私は思う。そういう問題について一体農林大臣はどう考えるのか。砂糖の問題、ネーブル、オレンジその他の問題、やがて八条国移行の実現の暁における農畜産物の扱いの問題、特に後進地域諸国が農畜産物に対するウエーバーに対しては非常な反対をするというのが最近の傾向であることは御存じの通りであります。そういう状態のもとで、一体この問題について農畜産物を守り通せるかどうか。私は断じて守らなければならぬと思いますが、一体政府はこの農畜産物の問題に対してどういう態度をとるか。 八条国移行に伴うこれらそれぞれの問題について関係大臣はどのように考えておられるか、これを私は最後に質問を申し上げるのであります。 なお、この問題と直接関係のある問題でありますけれども、通産大臣に申し上げておきたいと思いますが、最近石炭に対する閉山あるいは合理化、全く無計画にここに殺到し宣伝をしているという状態は、単に宣伝だけでなく、労働者の生活不安を非常に招いているという状態は、私はゆゆしい状態だと思う。しかも、政府もそう約束したし、また、有澤調査団もそうだと思うけれども、審議会をつくり、雇用計画というものを立て、そして雇用と生活の不安のない体制の中で並行的に近代化を進めていくのだ、そういう組織をつくっていくのだ、こういうことが勧告もされたし、それが正しいことだと私は思うのです。そういう事態をまだ招かない今日において、労働者に不安を与えるような現在の資本家の態度というものは、私は許すべからざるものがあると思う。これを一体どう処置されるのですか。これを私はこの際通産大臣に伺うと同時に、特に私は今のこの石炭問題に対する池田総理のはっきりした態度を一つお聞きをいたしたいと思います。 そして、ここに自由化八条国移行に対する諸問題をそれぞれ一つ各閣僚から御答弁をいただきまして、もし不審な点がございましたらば、またそれに対する質問は当然さしていただきたいと考えております。
○塚原委員長 答弁は簡潔に願います。
○田中国務大臣 御説の通り、来月の初め行なわれるIMFの理事会において、国際収支上の理由によって為替制限をすることができないという決定がなされるであろうというふうに看取せられるわけであります。これが行なわれればガットに通報せられるわけでありまして、こうなれば、自由化というものは一そう促進を要求せられるわけであります。その後時期を見て日本が八条国移行宣言を行なうわけでありますが、もちろん、これが行なわれれば、経常取引の自由化を行なわなければならないわけであります。この場合といえども、資本取引に対しては幾らかの制限をするということは各国ともやっておる問題であり、各国との間にもこれらの問題に対して了解を取りつける等、十分な配慮を進めなければならないというふうに考えているわけであります。いずれにいたしましても、こういう情勢でありますから、自由化に対応して国際競争力をつけるためにはあらゆる角度から検討するとともに、実際的な具体的な手段を講じていかなければならないことは当然であります。そのような状態で、日米通商航海条約との問題についても、これが関連に対して政府部内で早急に検討を始めなければならないというふうに考えておるわけであります。
○福田国務大臣 産業新秩序の問題についてのお話でございますが、お説の通り、今、日本としましては、これはどうしても、八条国移行の問題にも関連し、自由化にも関連しまして、この際国際競争力を産業につけていくということは重要な命題になっております。しかし、その場合において、政府として、何でもそういうようなものを政府の方針としてこうせいああせいというような考え方を私たちは持っていないのでありまして、おのおの産業に関係しておられる人が、自主的に一つこの日本の置かれた経済情勢、国際情勢をよく理解されて、そうして新しい秩序をつくって、いわゆる体質の改善をやってもらうというようにわれわれとしては希求いたしております。しかし、中には、そういうような場合においても、やはり何らかの、官僚統制ではございませんが、そういう、この産業だけはどうしても何かした方がいいんだというふうに考えた場合においても、これは役所だけで考えるのではございません。もちろん、第三者も入れ、その産業の人たちも入れ、また金融業界の人も入れ、役所の人も入れて一応考えてみても、どうしてもこれは何らかの処置をとっていった方がいいというようなものもないとは言えないのであります。そこで、ただいま私たちといたしましては、こういう国際競争力をつけるという意味において、特定産業に関する国際競争力強化に関する法案というものをこの国会に出したらどうかという考え方に基づきまして、各方面と折衝をいたしておる段階でありますが、しかし、それは、決して、今申し上げたように、官僚統制をやろう、また、あなたが御心配になっているようなそういう考え方を持っているものではございません。ただ、そういうことをやる場合に、これが独禁法とどういう関係にあるかというようなことは、これはもちろん十分いろいろ話はしなければなりませんので、ただいま公取等とも打ち合わせをしているという段階でございます。 一方、これに関連をいたしまして、たとえば特定産業をそういうふうに一つのワクにはめて競争力を強化するというか、体質改善をはかる場合に、中小企業との関係はどうなる、そういうものをした場合の下請、中小企業との関係はどうなる、また中小企業基本法との関係はどうなるという御質問であったと思うのでございますが、これは別個の――全然関係ないとは申しません。その産業についてはそういう関連はもちろんありますが、日本の経済の中における中小企業というものは、特殊の、各国には例を見ない一つの位置を占めている。これをどういうふうにして今後強化し、また近代化していくか。中小企業といえども、やはり今言った八条国移行の問題等の自由化の波にさらされていくことになるのでありますから、これもやはり強化していかなければならぬ、近代化もしていかなければならぬというようなことから、これをどういうふうにしてやっていくがいいかということを基本にいたしまして、中小企業基本法というものを今度は出すということで、今案を進めておるということでございまして、私は、これは直接関係はそれほど大きくはないと思いますけれども、しかし、そういうようないわゆる特定産業の国際競争力強化に関する法律という毛のができて、それによって、ある程度そこの中小企業に影響がある場合等につきましては、これは具体的な問題として私は処理ができるものである、こういうふうに考えておるわけであります。 それから、石炭のお話でございましたが、確かに、最近三井、三菱あるいは北海道炭礦等の整理の問題を会社の重役あるいは社長が言っておることは、新聞紙上で散見をいたしております。しかし、これは、私は、経営者としてはどういうようなやり方をするのだと言うことを、お前らは言ってはいかぬと言うわけにはいかぬと思うのであります。われわれはこういう計画を持っておるのだということを言ってはいかぬと言うわけには私はいかないと思う。しかし、それでは政府としてはどういう立場をとっておるかといいますならば、今お話がございました通り、また有澤調査団もそれを言っておるのでありますけれども、いわゆる合理化審議会というものをつくりまして、審議会におきまして、どういうものを閉山をし、どういうものをスクラップ化していくかという案を立て、また閉山に見合うところの雇用の問題をそこでちゃんと出して、そうして、見合った形において、一応地域別、炭田別くらいに計画を立て、その内容を決定をしてもらい、その決定の内容に基づきまして、今度は炭鉱の鉱山主と組合の方とでいろいろ話をして、そうしてそれをやっていく、こういうふうに指導をしていきたいと考えておるのでありまして、私は、会社の社長がそういうことを言っておるという事実は聞いてはおりますけれども、そういうことを一切言ってはいかぬということまでは言うわけにはいかないのじゃないか、かように考えておるわけであります。
○重政国務大臣 八条国移行の問題が日程に上がって参りまして、おそらく両三年後にはそういうことになるだろうと思うのであります。お述べになりましたように、そうなりますと、ガットに対してウエーバーの申請をして、特定の農産物等につきましては、例外を設けてもらうということをやらなければならない。これが、仰せになりました通りに、そう簡単なものではあるまいということは、私も想像をいたしておるわけであります。昨年の十二月の日米貿易経済合同委員会におきましても、また本年の一月の中旬の日加経済の閣僚委員会におきましても、私は、米麦でありますとか、あるいは酪農製品というような農家の所得を形成する上においてきわめて重要な農産物、また、日本農業の特殊性である零細農経営によっているという構造上の事情もございますので、そういうものについては、特に自由化は早急にできないということを強調しておいたわけでありますが、いずれにしましても、これらの農産物につきましては、八条国に移行せられましても、どうしてもガットに例外の申請をやって、その目的を達せなければならぬと思うのであります。しかし、いつまでも鎖国農業をやるというわけには参りませんから、たとえば、酪農製品のようなものは、少なくともその飼料政策を確立をいたしまして、そうしてその生産コストのダウンをやって国際競争力をつける、こういう方向に向かっていかなければならぬ、こう考えております。三十八年度予算におきましても、こういった方針に基づきまして、何としても農業構造の改善を各方面にわたっていたさなければならぬというので、これを重点に置きまして予算の編成もいたしておるというようなわけであります。
○池田国務大臣 八条国移行に基づきます対策につきましては、各大臣が答えた通りであります。 また、直接御質問の石炭につきましても、通産大臣が答えた通りに、われわれは、有澤調査団のあの報告に基づき、そうして、御審議願っておる石炭関係法案に基づいて施行するのでございます。新聞その他に出ておりまするけれども、これは、通産大臣が言ったように、単に会社の経営者としての見込みを言っておるだけであります。実際には、調査団の報告に基づき、そうしてまた法律に基づきまして善処いたしたいと思います。
○塚原委員長 次会は明三十日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後四時二十一分散会