法務委員会 第21号
- 発言数
- 106 件
- 登壇者
- 10 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1963/06/07
会議録
○高橋委員長 これより会議を開きます。 法務行政に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますのでこれを許します。猪俣浩三君。
○猪俣委員 法務大臣にお尋ねいたしますが、一つは死刑囚平沢貞通に関する件であります。これは前にやはり大臣の所見をお述べいただいた問題でありますが、平沢は中央更生保護審査会に対して仮釈放の申請をいたしておりましたところ、最近却下せられたわけであります。先般磯部弁護士が彼の拘置されております宮城刑務所を視察いたしますと、所長の態度及び教戒師の言動その他から推測すると、どうも死刑の準備をやっているのじゃなかろうかというように、たいへん心配をして帰っておられるわけであります。ところが、この平沢に対しましては再審の申立てがされておりますが、最近になりまして、判決にたいへんな間違いがあることが弁護団から発見せられまして、これにつきまして再審裁判所に上申をしているのであります。詳しいことはいずれ大臣もお読みいただけると思いますが、要は、判決には平沢が赤痢が流行しているからこの薬を飲んでくれいと言って飲まして歩いたようになっておりますけれども、被害者の一人の生き残りの人、あるいは未遂に終わったところの銀行の人たちの証言は、全部腸チブスがはやっておるから飲んでくれいと言うて犯人が持ってきて飲ませようとしたというふうな表現になっているにかかわらず、判決では赤痢がはやっておるというふうになっておる。これは弁護団もそれから裁判所もどういうミスでありましたか、赤痢がはやっておるから飲んでくれといったようなことは全然証拠がないわけで、犯人は腸チフスということを言って歩いているということが発見せられたわけです。平沢は、事件が起こりましてから一年たってから逮捕せられたのでありますが、その間当局は鋭意捜査してあるわけでありますから、検察庁にもあるいは警察にもいろいろの人の調書があるわけであります。それを見ますと、全部腸チブスがはやっておるからという理由で薬を飲ましたと言っているはずであります。なぜかと申しますと、当時まだ平沢が逮捕せられなかった前に、生き残りの人あるいは未遂に終わった人たちの言うことがあらゆる新聞に報道せられておりますが、それを見ますと、全部腸チブスとなっておるわけであります。そういうことが最近になって発見せられたのみならず、なお平沢の自白したという中には、とうてい平沢が承知しているはずのないところのことが陳述せられておるわけであります。平沢が、たとえばどこそこのところに赤痢がはやって、どこそこの井戸の水をみんなが飲んでおるという陳述をしておるように判決にはなっておりますけれども、そのどこそこの井戸というようなものは、その近所の人でなければとうていわからざるものであることが、平沢が出現せざる前の証人の調書にみんな出ておるはずでありまして、これも新聞記事になっておるわけであります。そういうことがどういうことでありますか、裁判上明らかになっておらぬのであります。 そこで、詳しいことは省略いたしますが、大臣にお願いいたしたいことは、一つは大臣の権能としても限度がありますけれども、平沢が逮捕せられるまでのあの警察及び検察庁におけるもろもろの捜査の調書、あるいは証人の証言、こういうものがたくさんあるはずであります。この中には平沢に非常に有利になる、すなわち平沢の自白と称するものと非常にそごするような証拠がたくさんあると思われます。いま申し上げた、赤痢と言うて歩いたという判決になっておるのに、被害を受けた人はみな腸チフス言うてきたというふうに、非常に食い違いがある。こういうふうなことが、公判廷に提出せられないところの警察なり検察庁で押収になっておるところの調書その他の証拠にたくさん出ておると思うわけであります。そこでいま再審の申し立てを熱心な弁護団がやっておりますが、これに対しまして、検察庁から、やはり真実発見のために、地球より重い人命のためでありますから、そういう平沢の供述に矛盾するような証人の陳述等があるはずでありますから、そういうふうなものについて裁判所に出すように検事に御相談していただきたい。これが第一の要望でありまして、それにつきましての御所見を承りたいと思います。 第二点といたしましては、いま私が申し上げましたような事実があるのみならず、先般も私が一覧表まで提出いたしましてお見せいたしましたように、どうも検察官の調書には幾多の疑義がある。ある検察官の調書と称せられるものは偽造であると平沢は主張いたしておりますし、平沢を刑務所にたずねて行ってそこで調書をつくったことになっておりますが、刑務所の看守も、そういう検事は刑務所には調べに来ておらないという証言をしておるのでありまして、どうも奇怪なる調書ができておるわけであります。しかも、その調書が基本となりまして死刑の宣告がされておるというような事情もあるわけでございます。また、平沢の自白が相当の拷問によってでっち上げられたものじゃないかという疑いが、この証拠となって出ております平沢の供述調書の模様を見ると明らかでありまして、ほとんど朝から晩まで調べたにかかわらず、調書は二枚しかできておらぬというようなことがたくさん出ているわけであります。どんなに検事が追及したであろうか、あるいは警察が追及したであろうかは、この調書の枚数と取り調べに当たった時間関係からも、いかに執拗に犯人の自白を迫ったかが想像できるわけであります。かような意味におきまして平沢の再審事件は相当注目すべきものがあると思いますので、いま少しく再審事件が明らかになるまでの間、法務大臣が死刑執行の判を押さないように私ども懇願したいと思うのであります。 御存じのように、松川事件におきましては十名からの死刑囚を出したのでありますが、ついに仙台の門田判決によりましてことごとく無罪となった。そのときに門田判決の中に、あるいは門田氏の談話の中に、いままで裁判所に提出せられなかったところの千六百点にわたる証拠を検察官が出してくれたために、その中から珠玉のような証拠を発見することができて、ついに無罪の判決をすることができたという声明をされておるわけであります。こういう例を見ますならば、いま私が申し上げましたような平沢逮捕以前の一年間にわたります捜査記録を裁判所に出していただきますならば、新たなる真実がここに出てくるのじゃなかろうか、かようにも思われるわけでありますので、このあらゆる平沢に有利な証拠書類も公判廷へ出すように検察官にすすめていただきたいし、それからいま少しく再審がはっきりするまで死刑執行の判こをお押しなさらぬように、この二点について御所見を承りたいと思います。
○中垣国務大臣 お答えいたします。第一点の平沢貞通氏に関しましての再審に関する問題でありますが、平沢氏に対します再審は、現に東京高等裁判所におきまして三件ほど係属中であります。なお、あらためて六月のたしか四日の新聞であったかと思いますが、東京高等裁判所に重ねて再審の要求がなされておると聞いております。この再審につきましては、たびたび申し上げておるのでありますが、新しい事実であるとか証拠であるとか、そういうものを当然のことといたしまして裁判所側が受理されましたならば、この審理をするかしないかという重要な判断がそれによって行なわれると存じております。法務省といたしまして、そういう際に証拠、調書等についての資料全部出していただきたいという御希望でございますが、この事件は旧刑事訴訟法に基づきまして起訴されたのでありますから、すべてのものが裁判所に提出をされておるわけでございます。そのほか検察庁におきまして保管しておる資料、証拠等は何ものもないということを承っております。私といたしましては、これは平沢に限らずそうでありますが、再審問題は非常に重大な関心を持っておりまして、いかなる人といえども再審に値する新しい事実や証拠がありましたならば、関係者が良心的にこれらの問題を取り扱っていただくことを期待をしておるものであります。決して検察庁が再審に反対をするとか、そういうことがないように私はかねがね教育をしておるつもりであります。 第二点でありますが、このような現に進行中、係属中の三つの再審事件というものが行なわれておるのでありますから、これらの問題を待たずに死刑確定者である平沢の死刑執行を命ずるための法務大臣の裁決というものは私はすべきではない、法的にはできるのでありますけれども、そういうことはできるだけすべきでない、こういう考え方に立っております。 この際特に申し上げたいのでありますけれども、平沢はいままでに約十三回の再審の要求がなされておるようでありまして、取り上げられたのが過去におきまして三回あるようであります。いま係属中の三つの再審の請求に対しまして、これはどうなるか、私の権限の及ぶところではございませんけれども、もしこれが取り上げられるということでありますと、日本の裁判史上かつてない措置を彼は受けた、かつてない自分の権利の主張を認めてもらった、こういうことが言えるかと思うのでありまして、先ほど御指摘のように中央更生保護審査会の結果は、恩赦に該当しないということで恩赦を出願しないということにきまったそうであります。私といたしましては、すべての手段を尽くしまして、そうしてなお最高裁判所の判決というものに変わりなければ、そのときには法務大臣といたしましては、この執行を行なうということは最も重大な職責の一つであろうかと考えておるのであります。責任が重大であればあるほど、私は慎重に取り扱うべきものだと心得ておりますので、ただいま猪俣先生から御要望がありましたように、再審中に無理に死刑執行をするという考え方はとらないつもりであります。
○猪俣委員 実は御答弁を聞いてたいへん安心したのでありますが、多少私が心配いたしましたのは、この再審問題につきまして最も熱心で、しかもりっぱな、再審問題に関する卓抜なる意見を持った書物をあらわされておりますところの安倍治夫検事が、何か左遷されたような印象を実は受けるわけでありまして、さような法務省の空気、したがって検察官の空気だというと、これはどうも少しあぶないのじゃなかろうかというて、実は再度質問したわけでありますが、いま大臣の御答弁によれば、さようなことが杞憂に帰したというふうに思うわけであります。 先ほど、旧刑事訴訟法で取り扱っておるから、すべての捜査記録が裁判所に出ておる。何も検察庁にはないという御答弁でありますが、いま弁護団の意見を聞きますと、平沢が逮捕された後のいろいろの参考人、あるいは証人の記録だけであります。あるいは捜査も平沢を中心とした捜査だけであって、その間一年の間捜査当局が手をこまねいておったはずはないのであります。これは国会の問題にもなりまして、警察、検察庁は捜査を相当強力に推進しておったはずでありますから、その間じゅうの材料があるはずだと思うのです。一年間も捜査を続けたのですから、何らの記録がないということは想像できぬわけであります。これは何とかして大臣から検察当局とお話の上に——何も記録がないということでは承服いたしかねるのです。何とかひとつ、何かあるに違いないと思います。松川事件のときにも、いわゆる諏訪メモその他の提出しなかった証拠というものは、全部被告人に有利な証拠であったわけであります。これは実に不都合だと思いますけれども、いま、まだ判決前でありますから、私どもも門田判決に示された範囲だけしか、国会でお尋ねをしておらないわけでありますが、それが千六百点も隠されておる。これはもちろん新刑事訴訟法の後ですから、そういうことも合法的にできるかもしれませんが、公益の代表者としての一面を持っておりまする検事のやり方としては、不都合千万なことだと思うわけであります。いま仰せのように旧刑事訴訟法時代なら、捜査記録一切が出ておらなければならぬわけであります。もし何もないとすれば、一体警察ないし検察庁は、一年間何らの捜査もしておらなかったのであろうかということになるわけでありまして、さようなことは常識上判断がいたしかねるわけであります。この点につきましては、再度法務大臣の御答弁を願いたいと思います。
○中垣国務大臣 お答えいたします。平沢貞通氏に関しまして、検察官がとってまいりました従来の起訴の内容がどうでありましょうとも、ただいま御指摘のような、そういう資料がもしありとしますならば、私は全部提出して一向差しつかえない、むしろそれを拒んだり、ちゅうちょしたりする理由はないわけでありまして、そのようなものがあったら、出すことを私命じたいと思います。私の聞いた範囲では、旧刑事訴訟法に基づいてなされたもので、全部が提出されておると聞いておりますけれども、なお十分調査いたしまして、ありましたならば提出させたい、かように考えております。
○猪俣委員 平沢事件はこれで終わりまして、中性洗剤の毒性につきまして、これは先般法務大臣もおいでの節に厚生省の説明も聞いておったわけでありますが、法務大臣にお尋ねする時間がなかったわけであります。 これは世界にもまれな事件が不幸な運命のもとに起こった。ライポンFという中性洗剤を庵島弘敏という人があやまって飲んで、これがほとんど即死の状態でなくなったという事件、しかもこれは変死体を取り扱っておりまする公の機関の東京都の医務院で解剖いたしました結果、中性洗剤の中毒死であるということが明らかにされたわけであります。この中性洗剤につきましては、先般も申し上げましたように、アメリカにおきましてもいま問題になっておりますし、それからドイツにおきましては、すでに数年前から取り定まりの法律ができているわけであります。ちょうど日本におきましてこの稀有な例が出たわけでありますが、何ゆえか、どうも厚生省の態度がはっきりしないわけであります。これは昨年、衆議院の科学技術振興特別委員会にもはかられまして、これを放任できないということで千二百万からの予算をとりまして、中性洗剤にいかなる毒性があるかということにつきましての綿密な調査をし、その調査の研究結果が報告せられております。これは厚生省の環境衛生局食品衛生課というところで、公にその実験のデータを発表しております。これを専門家が点検いたしますならば、初めから中性洗剤を有毒なりとして主張しておりました学者のほとんどの所見と一致したデータがここに出てきております。私は、いまこれを詳しく説明する時間がありません。どこにそれが出ているかを一々私は学者に指摘してもらいました。これが明らかになっているわけであります。これに対しまして、一体法務省は放任しておいていいのかどうかということ。 なお、それに関連してお尋ねいたしたいことは、このライポンFなるものを誤飲したのでありますが、そのときに飲んだ人が、このライポンFのレッテルを読んだところが、厚生省の試験済みということで、何ら毒性がない、こういうふうなレッテルが張ってあるために、胃の洗浄もせず、胃の薬か何か飲んで、すぐなおるわということで、非常に気持ちが悪かったけれども、何しろ本品は毒性を有せずとして厚生省がレッテルを張っている、そのものを飲んだのでありますから、日本の役所を信用することの厚い日本人でありますので、そこで何か胃を静める薬、売薬を飲んでそのまま寝たところが、ついに死亡したという父親の涙ながらの訴えがあるわけであります。これは三十二歳の子供二人をかかえた人であります。こういうふうな状態でありますが、なお、この中性洗剤は厚生省内日本食品衛生協会推奨というようなレッテルを張ってあるものもあるわけであります。ところが、この日本食品衛生協会なるものは、何ら特別な技術を持っている人がいるわけでもない、検査をする機関があるわけでもない。そして財閥や厚生省の役人でもって組織しているわけであります。なお、このレッテルを商品に張るにつきまして、この日本食品衛生協会が相当の金をとっておるということが出ておるのでありますが、一体こういうような有毒であるものを無毒という証明をして証明料をとるというようなこと、それが厚生省の役人が大部分関係しております日本食品衛生協会なるものがとっておる。そうすると、そういう金は一体どういうふうに使われておるか、はなはだ疑問だと思うのでありますが、こういうことにつきまして法務省としては相当の取り締まりを考えるべきじゃないかと思いますが、法務大臣の御所見を承りたい。
○中垣国務大臣 お答えいたします。市販の薬品の製造並びに販売ということにつきましては、薬事法によって規制がされているようであります。中性洗剤につきましては、衛生的な見地からの何らの規制をただいまのところは受けていないようであります。このことは中性洗剤というものが有毒性のものであるということが考えられていなかったということが言えるのではないかと思います。ところが昨年の九月に、ただいま御指摘のようにこの中性洗剤をミルクと間違え後飲いたしまして、その結果中毒死に至ったということが起きたわけでありますが、法務省といたしましては、検察庁を指揮いたしまして、ただいま刑事事件としてこの問題を捜査中であります。その結果、御指摘のようにほんとうに中毒死であるかどうかという死因が明らかになるのではないかと思うのでありますけれども、そういうことの結果を見まして、これを取り締まりの対象としてどうするか、法律的にもどうするかという、その新しい観点からの研究をしなければならないかと思うのでありますけれども、ただいまのところ、法務大臣といたしましてこれが中毒死であったかどうかということをば、根拠を持ちまして言明するということはなかなかむずかしいのでありまして、あるいは猪俣さんの御指摘のとおりであるかと思うのでありますけれども、なお私のほうでは刑事事件として慎重にこれを調査いたしまして結論を得たい、かように考えております。 それから、その衛生協会が会員から金を集めておるということにつきましては、資料か十分持っておりませんので、これをどういうふうに考えるかということにつきましての意見は差し控えさせていただきたいと存じます。
○猪俣委員 中性洗剤は大部分の家庭で使っておりますものでありますので、これはわが国民の生命身体に関係する重大な問題だと存じます。いま御答弁によれば刑事事件としてお調べになっておるということですが、徹底的にひとつ調査をしていただきたい。そうして有毒説を数年前から唱えておりまする有力なりっぱな学者が相当おるわけでございますから、そういう学者の意見も十分お聞き取り願って——学者の中には御用学者みたいなものもあるわけでありまして、そういう者にも相当金が回っておると聞いておりますが、私はいま的確なる資料を持っておりませんから、これを摘発するまでに至っておりませんが、とにかく万全の徹底したひとつ捜査をしていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を打ち切ります。
○高橋委員長 志賀義雄君。
○志賀(義)委員 総理がこられてから新暴力取締法案についての質問を始めますが、その前に、東京都知事の選挙のときに立った候補者で前科のある人の調査ができておりますか。またその所属している団体でどういう前科があるか、そういう点の調査がありますか。というのは、きょうここに配付された書類で、法務省刑事局として「暴力団構成員の前科概要について」というのがありますが、これは町のぐれん隊なんかについて書いてある。そういうものはないのですか。できておりますか。できていなかったら調べてもらいたい。
○中垣国務大臣 刑事局長から答弁いたさせます。
○竹内(壽)政府委員 お答え申し上げます。この前科の調べを検討さしていただきますが、そうしてできるだけ御要望に沿うように明らかにいたしたいと思います。 ただ申し上げておかなければならぬことは、犯罪に関係のない立候補者であるということだけで、前科を調べる、その前歴を明らかにするということは、私どもの立場で適当でございませんので、そういう点をお含みいただきまして、御期待にできるだけ沿うような調査をいたしたいと思います。
○志賀(義)委員 私は何もかもでなくて、この新暴力取締法案でずいぶん納得のいかない点がありますから、それに関連して必要な資料を出していただきたい。 次に、これももう一つ法務大臣にお願いしたいのでありますが、新聞にも出ております神戸市交通局松原自動車運輸事務所の車掌若林栄子さんという娘さんが、身体検査を受けて、自分のお金五百円を持っておったというので、午後三時から午後七時過ぎまで四時間以上にわたって、一人の女の人、あと三人は男でありますが、一室に連れ込まれて、朝九時に朝飯を食っただけで、まだ昼飯も食っていない。それを調べた。これは神戸の法務局の人権擁護課でも調査を開始しているということでありますが、残念ながら、組合の上部機関のほうでもまだ事がはかばかしく進んでいないので特に私から伺うのであります。 その娘さんは、一たん帰宅したあと、遺書を残して電車へ飛び込み自殺をしております。この手紙は池本礼子さんという友人に出した遺書の一つであります。消し印は六月三日午前八時から十二時となっておりますから、死の直前に投函したものであります。これらを見てみますと、いかにも残酷な、乱暴な事件になっておるのであります。バス、市街電車その他で、料金問題でいままで身体検査で非常に問題が起こっておるのであります。これは大阪の生野の巽の市バスでもこういう事件がありました。取り調べがめちゃくちゃで、おまけに組合員が見かねて立ち会わせろと言ったら、「組合が局側と団交して立ち会いを認める規定ができたら立ち会わせてやる」と言った。ことに安田三次という指導員は、立ち会わせろと言った組合員に対し、「調べで死んでも知ったことでない」、こういうことまで放言しております。それから帰りには丁寧に送ったと局側は言っておりますが、心配した大山一郎という支部の書記長が帰りの車で送っていったのですが、指導員が途中で、「あんたの言ったとおりかどうか家人に聞くからあんたは何もしゃべってはいけない」と言ったという。それからお父さんの建蔵さんという人に「給料は幾ら家庭に入れているか、現金は幾ら持っていたか、貨幣の種類、千円札、百円札、硬貨などは、何だったか」などということまで聞いております。全くめちゃくちゃな行き過ぎ事件で、五百円のためにあたら一人の娘を自殺させて、しかもこれは近く同じ組合員と結婚する予定になっておったという問題であります。 これはきょう地方行政委員会でも問題になったし、昨日運輸委員会でも問題になっておりますけれども、事は神戸の法務局人権擁護課も関与しておりますから、人権擁護局にけさ電話をかけましたところ、あいにくと局長はきょうは御病気でこちらに出られないそうでありますから、ひとつ法務大臣のほうから至急この問題についてお調べを願いたい。これだけ申しておきます。
○中垣国務大臣 ただいまのような御指摘の問題は、人権問題といたしまして非常に私ども重要視せざるを得ませんので、十分調査を命じたいと思います。まだ何も報告が来ておりませんので、内容について御説明をいたしかねますが、十分調査の上で善処したいと思います。
○高橋委員長 それでは午後零時四十分まで休憩いたします。 午後零時三十五分休憩 ————◇————— 午後零時四十七分開議
○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 暴力行為等処罰に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。 質疑の申し出がありますのでこれを許します。坪野米男君。
○坪野委員 私は、政府提案の暴力行為等処罰に関する法律等の一部改正法案につきまして、最初に総理に対して、この法案を提案された趣旨、あるいはこの種のいわゆる治安立法に対する総理のお考えを聞きたいと思うわけでございます。 政府の提案理由説明によりますと、本法案は暴力団の構成員などが行なう社会不安を惹起するような暴力犯罪に対して、より一そう強力かつ適切な対策を講ずるため心要な法改正を行なわんとするものである。単に強い世論にこたえるというばかりでなく、国家の刑政からみてもきわめて緊要なことと考える。こういう趣旨でございますが、はたして本法は、もっぱら暴力団のみを取り締まりの対象とするものであるかどうかということが問題でございます。刑法あるいはいわゆる治安立法というものは、いわばもろ刃の剣であります。一たん法が成立いたしますというと、立法者の意思を離れて、裁判官によってこれが適用される、また検察官や警察官によって法律が運用されるものでありますから、はたして本法が、民主的な団体や労働組合の大衆運動弾圧に乱用されるおそれはないかどうか。治安立法については慎重な態度をもって臨まなければならぬと考えるのでありますが、総理は、この種の治安立法、特に本法案を提出されるにあたって、どういうお考えをとっておられるかを最初にお尋ねしたいと思います。
○池田国務大臣 今回御審議を願っております法案は、最近の暴力行為の横行、ことに銃砲刀剣類によります傷害罪が頻発する現状にかんがみまして、特にそういうふうなものを防止するために改正を提案したのでございます。一般の治安立法のごとき性質のものじゃない。具体的の個々の問題でこれを防止する方法を考えておるのでございます。
○坪野委員 私たち社会党は、暴力団や暴力犯罪の取り締まりに何ら反対するものではないのであります。民主主義の敵ともいうべき暴力を憎む国民の世論にこたえて、警察当局がきびしい態度で暴力の取り締まりに当たるのは当然のことでございますし、また政府も、この種の暴力対策についても効果的な適切な対策を政府の責任で当然とるべきであると考えるわけでありますが、本法が主として暴力団の処罰強化を目的としたものだということは理解できるわけであります。一部には、本法がいわゆる政防法の再現だという考え方から反対をする向きがございますが、われわれは政府の意図が主として暴力団の取り締まりに向けられておるということはわかるわけであります。けれども、はたして暴力団対策として本法が必要であるかどうかということが問題でありますし、また本法が暴力団取り締まりにはたして実効があるのかどうか、効果があるのかどうかということも疑問でありましょう。さらにまた本法が民主団体の運動の弾圧に乱用される危険な条項を含んでおらないかどうかという点について、われわれは疑義を持つものであります。 そこで私は総理にお尋ねしたいのでありまするが、はたして本法は暴力団のみを対象とされる立法であるのか、あるいは民主団体の運動弾圧に乱用されるおそれがないかどうかという点について、総理のお考えを重ねてお尋ねしたいと思います。
○池田国務大臣 法案は、暴力団とかあるいは民主団体とかいうものではないのでございまして、暴力行為を取り締まろうとするのでございます。それはえてして暴力団の人は暴力行為をやりやすいという実例は大いにございます。しかし、法の目的としているところは、最近刀剣銃砲によりまする傷害、暴行が相当多くなってまいりましたので、この際そういう暴力行為を取り締まる必要がある。したがいまして民主団体のいわゆるデモとかなんとかいうふうなことは、一体いままであまり行なわれておりませんから、自然そういうものを対象にするのじゃない。真意は暴力行為、ことに刀剣あるいは拳銃等による暴力行為を特に厳重に取り締まろうとしておるのであります。これが効果につきましてはいろいろ議論はございましょうが、しかし、いまの事態から見まして、こういう法律の改正は私は必要なことと考えておるのであります。
○坪野委員 現行の暴力行為処罰法も、大正十五年に成立の際には、国会で審議をされて、もっぱらこれは暴行団の取り締まりの必要上立法するのだということでありましたけれども、一たびこの暴力行為処罰法が成立いたしまするや、これが小作争議あるいは労働運動、あるいは民主的な大衆運動の弾圧に使われてきたということは現実でございまして、むしろ現行の一条一項が非常に危険な弾圧法令に成り下がっておるというのが現実でありますが、今回の改正法案についても、なるほど主たるねらいが暴力団の取り締まりであるといたしましても、大衆運動弾圧にこれが乱用される危険がないかどうかということは、やはり慎重に審議をして検討を加えなければならぬというように私は感ずるわけであります。 そこで次にお尋ねしたい点は、暴力団の取り締まりには、政府や警察がその姿勢をきびしくすることによって、私は現行法令のもとにおいて十分取り締まりの効果をあげ得ると確信をいたすのでありまして、法定刑の最下限をただ若干引き上げたという程度にとどまる本改正法でもって、どのような取り締まり効果が期待できるかということは、きわめて疑問だと思うのであります。現行法令で十分取り締まりはできるんじゃないか、特に本法を必要としないのではないかという感を強く持つのでありますが、総理は、どうしても現在の情勢のもとで現行法の不備があって、現行法以上に本法を何が何でも必要とするんだという根拠がどこにあるのか、その点所信をお尋ねしたいと思うのであります。
○池田国務大臣 いまの法制で関係当局が厳正な態度でいけばいいじゃないかという議論はあると思います。しかし、実際の点から申しまして、最近の事犯が続発しておるというこの情勢を見ますると、やはり姿勢を正して厳正に運用するということももちろん必要でございますけれども、やはりその姿勢に沿い、世論に沿って法定刑を強くすることによって未然にそういうことを防ぐという方法も、これは一つの方法じゃないかと考えます。だから私は、今回法定刑を少し重くして、そうしてこれを国民にその気持ちになってもらって、非常に厳重に取り締まるんだ。両方からいくべきだと私は考えます。
○坪野委員 現行法で取り締まりができるという議論があるということじゃなしに、実際の問題として、私は現行法で十分取り締まりが可能だと信ずるものであります。いまの法定刑を若干引き上げると言われますけれども、長期は、法定刑の最高は現行のままにしておいて、ただ下限を、短期を若干引き上げた、これが世論喚起に役立つんだというような御説ですけれども、私は世論喚起の方法はほかにあると思うわけであります。現に交通違反に対しまして検察庁当局が非常にきびしい態度で臨む、そうして法廷において求刑の引き上げというような措置をとることによって、相当交通違反なりあるいは交通事故犯罪なりの判決も間接的に相当重くなってきておる傾向もあるわけでありまして、刑罰を強化するということであれば、政府の直接あるいは間接の指揮下にある求刑の引き上げその他の行為によって世論喚起も十分できるんじゃないか。法定刑の最下限を引き上げなければ裁判官が軽い刑を下して困るというようなお考えから出ておるとすれば、これは裁判官不信の念に通ずるものであって、私はこれはどうかと思うわけでありまして、法定刑の上限を上げるということであれば、またある種の効果、意味を持つでありましょうけれども、最下限を若干引き上げて、本法程度の刑罰の強化で一体どんな効果があるか、きわめて私は疑問だと思うのです。池田総理は、経済はおれにまかしておけということで、経済の専門家のようでございますが、しかし、総理として治安立法あるいはこういった刑政の問題については十分慎重にお考えをいただきたいし、必要があれば必要の立法をされることもけっこうでございますが、本法は、十分現行法で取り締まり可能じゃないか、専門家が検討してみて、これは十分可能じゃないかということが考えられるのでありますが、政府はあえてこの程度の改正は緊要であるというように提案理由に説明しておられますが、現行法のどこに不備欠陥があるのか、現行法で求刑の引き上げその他の行政指導によって刑罰の強化も十分可能だと考えるのでありますが、重ねてその点お尋ねしたいと思います。
○池田国務大臣 いまお話にもありましたごとく、刑の量定につきまして、だんだん交通事犯なんかが重くなったというお話、そういう気持ちがわれわれにもあるのでございます。しかし、これは国民の権利義務に非常に重大なことでございますので、私は、最近の暴力行為の情勢を見ると同時に、法制審議会にも意見を徴しまして、最低限を上に上げて、そうして予防的措置をとるということも、検察当局の厳正な態度と同時に、うらはらでそういう措置が必要である、こう考えておるのであります。最高限をそのままにされまして、最低限をやるということが適当な方法じゃないかと私は思います。
○坪野委員 適当な方法だということ以上に納得のいく御答弁が得られないわけでありますが、最近の立法活動の経過から、刑罰強化によって取り締まりの目的なりあるいは法の目的を達成しようという法万能主義の考え方というものは誤りだと私は思うのです。たとえば売春防止法がざる法だ、もっと強化しなければいけないというようなことでもって、ただ刑罰の強化だけ、あるいは麻薬取締法、それぞれの事情から刑罰強化の必要な場合もございますけれども、普通の行政法規においても、ただ罰則を強化するということだけで取り締まりの目的を達成しようという考え方は、私は根本的に検討し直す必要があるのじゃないかというように考えるわけです。ですから本法も、最低限を上げれば、それだけ法定刑が上がれば幾らか刑罰が重くなるだろうという程度の効果しか期待できないわけでありまして、先ほど私が申したとおりに、政府なり警察なりあるいは検察当局なりが、その姿勢をきびしくすれば、十分現行法で取り締まりが可能なわけなんであります。それを法定刑を引き上げて、政府は暴力対策を強化したという、ただ単に点数主義と申しますか、これで暴力対策なれり、政府の公約の一つを果たしたというような形式的な点数主義に堕しておると私は考えるわけです。現行法で十分可能なんだ。それをあえて十分の効果の期待できないこのような若干の刑罰強化をされて、暴力対策をごまかそうとされておりますけれども、私は納得がいかないと思うのです。これは委員会で徹底的に慎重審議をして私たちの意見を展開したいと思いますが、この法万能主義と申しますか、刑罰強化で事足れりというような最近の立法の動きに対する私の意見に対して、総理の御所見を承りたいと思います。
○池田国務大臣 刑罰法規を強化し罪を重くすることによって犯罪の予防ができるというようには考えておりません。そのことだけによって防止できるとは考えておりません。刑罰の目的につきまして、予防とか、あるいは教育とか、いろいろな議論が昔から行なわれておりまするが、やはり時代の情勢によりまして、行政の態度を厳正にすると同時に、片一方では、そういう犯罪の増加に対しまして、刑罰につきましての強化の方法も、これも一つの防止の方法でございます。いろいろな点を考えまして、私は、いまの時世においては暴力行為に対してこの程度の強化を行なうことが暴力防止に必要な手段と考えておるのであります。いろいろ議論はございましょう。しかし、刑罰を重くすることによって事足れりと考えておるのでは毛頭ございません。それも一つの方法だというのでこうしておるのでございます。
○坪野委員 本法である程度の効果が期待できるということで本法が必要だ、とりあえず当面の暴力対策として本法を出したという御答弁のようでありますが、私は昭和三十六年の三十八国会でありましたか、いわゆる嶋中事件が起こった直後に、総理に対して法務委員会、地方行政委員会の連合審査会でお尋ねしたこともございますが、政府の抜本的な暴力対策というものをはたしてお持ちなのかどうか。ただ当面こういった暴力に対して刑罰を強化する、あるいは銃砲刀剣類等所持取締法の一部改正をやるというような形で、びほう的に当面の対策に追われておって、抜本的な暴力対策ということについて具体的に検討を加えられておるのかどうか。もし検討を加えて結論らしきものがあるということであれば、あるいは首相の暴力対策の抜本策についての御所見でもけっこうですが、お尋ねしたいと思います。
○池田国務大臣 犯罪の防止にはいろいろな方法がございましょう。これが抜本的というものはなかなかむずかしいのでございますが、もし抜本的な方策があるとすれば、私の言っているりっぱな人をつくることが抜本的な方法でございます。そういう犯罪を犯さないりっぱな人をつくることが根本の対策だと思います。しかし、それは理想でございまして、その間における犯罪に対しましては、刑法その他のいろいろの法を改正いたしまして、そうして時宜に適した措置が必要であると考えております。
○坪野委員 りっぱな人をつくって犯罪人をこの世の中から根絶すれば刑罰法令の必要がなくなる、これは当然のことでございます。それの具体策をお尋ねしておるわけですが、なかなかむずかしくてということで、刑罰強化以外に具体策をお持ちでないようでありますから、これ以上お尋ねすることは意味がないと思います。しかし私は、いま政府の出しているこの法案は必要がない、効果がない、こういうもので暴力団取り締まりに役立つということは毛頭考えられないわけでありますが、抜本的な暴力対策の一つとしては、右翼のテロとか、あるいはこういった暴力団構成員による凶悪な暴力犯罪に対する対策を、ただ刑罰強化という形でなしに、政府の責任で当然立つるべきだと思いますが、同時に町の小暴力と申しますか、町のチンピラの暴行脅迫、あるいはまた暴力団構成員によって行なわれておりまする小暴力に対しても、警察もそうでありますが、政府もきびしい態度で臨まなければならぬのじゃないか。小暴力を見のがしておくこと、そういう暴力が許されるという風潮の中で凶悪な暴力犯罪も出てくるということでありますので、ぐれん隊防止条例が都条例で出ておりますけれども、こういった小暴力に対する対策についても何かお考えがあるか、これは総理並びに法務大臣にお尋ねしておきます。
○池田国務大臣 小暴力対策といって特にどうこういうことはございませんが、この小暴力に対しましてはやはり国民の方々の協力を得ることが必要であると思います。したがいまして、昨年から今年にかけまして、特に今年になりまして、町の小暴力に対する社会的非難、制裁というものがだんだん強くなってまいりました。これは私は非常にいい傾向だと考えておるのであります。こういうことがやはり世論の力、国民各自がその方向で進んでいっていただけるように政府としてもつとめたいと考えております。
○中垣国務大臣 お答えいたします。小暴力の規制につきまして目下検討中でございます。
○坪野委員 私は暴力団の取り締まりあるいは暴力犯罪取り締まりも当然必要なことだと考えますが、暴力対策あるいは暴力団対策としては、さらにそういった暴力の起こる社会的背景あるいは経済的な原因といった抜本的な原因を追及していかなければ、ほんとうに有効適切な暴力対策は立て得ないのではないかと考えるわけでございますが、これについても具体的に検討をされておるのかどうか、これもひとつ総理の御所見並びに法務大臣にお尋ねして、私は質問を終わりたいと思います。
○池田国務大臣 いまお話し申し上げたように、法務省のほうにおきまして、また関係当局において検討を続けておるのであります。
○中垣国務大臣 お答えいたします。科刑を引き上げるということだけで暴力行為の根絶を期することはできないであろうという御見解に対しましては全く同感であります。同時に、総合的に暴力に対する対策は当然のこととしてとられるのでありますが、そういうことにつきましては、政府は、過去におきましても、昭和三十六年を初めといたしまして、過去二回にわたって、これらの問題についてはすでに発表もいたしておるのであります。どこまでもそういう社会的な背景等も十分考えまして、できるだけ効果のある施策を行なっていきたい、かように考えております。
○坪野委員 終わります。
○高橋委員長 次に猪俣浩三君。
○猪俣委員 この暴力行為処罰法、これはまず暴力を取り締まる、これは私ども全く賛成であります。ただ実は総評弁護団あるいは労働運動に携わっております弁護士団から、反対の陳情が実に盛んにあるわけであります。彼らの言い分は、この暴力行為処罰法のできたときにも、労働運動等には拡張解釈して適用しないということを政府委員はたびたび言明しているにかかわらず、実際は非常にこの法律を悪用して、労働運動の弾圧に使っているといって、過去の実例をたくさん示してわれわれに陳情してくるわけであります。そこで私どももこの点が心配なわけであります。一つは、法律はできてしまうと、生きものとして、それ独自の活動を始める。さっき坪野君が言ったとおり、その実例は、議員立法としてつくりました鉄道公安官に関する法律、その際にも当局者は、これを決して労働運動には使わない、ストライキ弾圧なんかには使わないということを再三証言したにかかわらず、国鉄の争議等には心ずこの鉄道公安官が出動いたしまして、労働組合の恨みの的になっておる。同じ仲間から出ておる連中でありますために、かえって非常にやりにくいというようなことで、社会党はこの公安官の廃止の法律を出したことがありますが、通らなかったわけであります。そのようなわけで、法律が生きものになるのみならず、これは総理大臣も法務大臣も心得ていただきたいことは、実際これを適用する際に、検事の中には、国会における立法理由、そういうものを無視いたしまして、彼ら独自の見解によって法を遂行する、これが正しいのだという考えを持っている検事があるわけであります。私は札幌の地方裁判所で政治資金規正法を適用されて起訴された者の弁護に当たりましたとき、その検事の解釈は全く国会における質疑応答とは違った解釈である。そこで議事録を示して、私はその検事の解釈の間違ったことをただしたのでありますが、検事は、法をつくるのは国会であっても、できてしまった法を施行するのはわれわれの任務だ、国会でどういう質問があろうが、政府がどういう答弁をしようが、われわれを覊束しないというごう然たる態度で有罪説を主張しておりました。そこで、これは法それ自体に一つの規制を加えなければ、いかに総理大臣がさように使わないと言いましても、いま総評弁護団が心配するようなことが起こってくるわけであります。そこでいま総理大臣が言うがごとき趣旨の、全くの暴力そのものを規制する意味であるならば、破壊活動防止法の二条あるいは三条のようにしぼりをかけてはどうだろうか。この破壊活動防止法は、このしぼりのために裁判問題としても相当無罪になっておるのが多いのであります。そこでかような意見を私ども持っておるのでありますが、ただここでそういうことを一々総理大臣にお尋ねいたしますのも遠慮がありますので、総理大臣から、これは絶対に労働運動等に拡張解釈して適用するようなことはしないということをはっきり明言していただきたい。それから法務大臣からも、検察官等が、国会における立法理由、これは法解釈の第一の準拠だと思っておるにかからず、その法を適用するのはわれわれで、解釈もわれわれがするんだというような検察ファッショ的な考えを持つ検事もあるわけでありまして、それに対しても適切な指導をしていただきたいと思いますが、これに対する御所見を総理並びに法務大臣からいただきたいと思います。
○池田国務大臣 法の解釈につきましては、これは関係当局の人が独自の判断でやりましょうが、法案成立の際における国会の質疑応答は、私は、法の精神をあらわすものでありまして、これは法の解釈上やはり重要な問題として考えなければならぬ問題と思っております。 それから今回の改正は、労働関係には及ぼさないんだということを言明しろというお話でございますが、先ほども触れましたように、暴力団を取り締まるのだということも言えないと同時に、片方の、民主的の運動は取り締まらない、これは言えますが、労働関係争議その他については、これは何ら及ばぬということは言い得ないと思います。これは法の示すがごとく暴力行為をやるので、その人が民主的団体であるとか、あるいは暴力的団体であるというので法の適用を左右すべき問題じゃございません。暴力行為が銃砲、刀剣等によって行なわれた場合ということでございます。ただ全体的に言いますと、普通の労働運動なんかは刃物なんかを持っての暴力行為が行なわれるという事例は少ないのですから、そういうことを目的にしていないということは言えます。暴力行為を取り締まるのでございますから、それによって御了承願いたいと思います。
○中垣国務大臣 法律を提案しますときには、その提案理由をできるだけ具体的に説明申し上げるわけであります。したがって、この法が存続する限り、その提案理由というものは最後まで尊重されるべきものであろうと思います。そういう考え方によって検察官はこの法の運用をすべきではなかろうかと思います。 それからこの法律が労働運動その他民主団体等の労働運動に何らかの影響を持つものではないかということでありますが、これはそのようなことは絶対にございません。まことに単純な明快な法改正でございまして、第一に銃砲、刀剣を持ったそういう傷害、これを規制しようというのであります。第二番目には、恐喝、傷害等に対しましての常習者を規制しようとするものでございまして、これ以外の場合は別に規制をしてないのでございます。私どもは良心的に考えまして、労働組合運動の中に常習的な恐喝、傷害が行なわれるとは思っておりませんし、銃砲、刀剣等による傷害が起こるというようなことは考えられないと思っております。もしたとえば労働組合運動でありましても、銃砲、刀剣等を持ってそこに傷害が行なわれましたならば、この法律を適用することは当然のことであると考えておる次第でございます。
○猪俣委員 実はこういう暴力に対する取り締まりも結局人権尊重からくると思うのでありますが、人権の最大なものは生命であります。ですから最高裁判所の判決にも、一個の生命は全地球よりも重いという判決理由の説明があるのであります。そこで、暴力そのものを鎮圧するには取り締まりだけではいけない。そういう風潮を厳に排斥しなければならぬのであります。 そこで私は、最近沖繩に起こりました人権侵害問題についてお尋ねしたいと思うのでありますが、これは本年の二月二十八日に沖繩の上山中学校の学生である国場秀夫という人物が青信号によって道路を横断しておったところ、アメリカのジャクソンという上等兵がトラックを運転して来て、ひき逃げをやってしまった。これについてアメリカの軍法会議にかかりましたが、彼は無罪になってしまった。そこで沖繩の世論が非常に激高いたしまして、新聞なんかも毎日書き立てるし、ついに五月二十三日の午後、沖繩の広場で大会が開かれまして、これには十三の団体が加盟し、四千人の人間が集まり、ひき殺されました中学の校長が声涙ともに下る憤激の演説をやっておったということが、新聞に堂々と出ておるわけでありますが、その日の琉球新報の朝刊に、日本内地のこの問題についての有識者の意見が載っているわけであります。その中には関西の法曹の重鎮である吉川大二郎氏、あるいは立教大学の総長である松下正寿氏、あるいは評論家である中野好夫氏等、ことごとくこの判決がはなはだ不都合な判決である、無罪にするという理由は成り立たぬということを論評しておりますが、ひときわ囲み欄になりまして大きな宇で「政府の立ち場から」と称して、そうしてまたこれも大きな宇で「りっぱな判決」だ、これが総理府総務長官徳安實藏氏の談話として発表されております。この午後この大会が持たれたのでありますが、これが沖繩の人たちに非常にショックを与えて憤激させたというのであります。 そこで私が総理大臣にお尋ねいたしますことは、かようなことは過失死であることは、いまここで詳細申し上げませんけれども幾多の証拠がある。すでに沖繩立法院では自民党、社会党、人民党、各党を通じまして満場一致で不都合だという決議をすると同時に、いま沖繩の立法院の行政法務委員会は、この五月十四日から本問題の調査をやっているわけであります。続々としてあらわれた証拠を見るならば、赤信号によってほかの車は全部とまっておるにかかわらず、このジャックソン上等兵だけが突っ込んでいってひき殺したということが明々白々になっているわけであります。こういうことについて無罪の判決がされた。軍法会議でありまして、五人の将校の陪審員と、それから裁判長、弁護士、検察官というのでこれは成り立っておるそうでありますが、無罪の判決ということは、常識上考えても、このひき逃び犯に対して、しかも死んでいるのであります。はなはだむざんな判決だとわれわれは思う。しかるに徳安さんはりっぱな判決だと言う。しかもまだ判決は見ていない、こういうのでありますから、はなはだ矛盾したことを言っているように思うのであります。判決は取り寄せているけれども、まだ見ない、しかしりっぱな判決だ。こういうことはどういう意味かわかりませんけれども、まあ徳安さんのことだから大目に見て、総理大臣からひとつ、こういうことが琉球新報に出ているのでありますから、あらためて政府の見解を表明していただきたい。これはいま沖繩で非常にショックな問題として騒がれているのであります。
○池田国務大臣 四、五日前に私もそのことを聞きまして、軍法会議の判決に対しまして、私自身がいま批判とか意見を申し上げることは差し控えますが、(「おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)事実を調べまして外交折衝に移し善処いたしたいと思います。軍法会議の判決に対していま総理大臣が批判を、事実を十分調べていないから控えるということはおかしいじゃないかということでありますが、これは私はおかしくない、実態を十分調べてから意見を申し上ぐべきがほんとうであろうと思います。
○猪俣委員 実は時間がありませんので、私は単刀直入にお尋ねしますが、こういうことは厳重に抗議すべき筋合いのものであると思うのです。それは私は総理大臣にその所見を聞きたいが、時間がないのであります。前の鳩山内閣のときに重光外務大臣からは所見を承ったことがある。日本に潜在主権がある、そういうことと、それから沖繩人は日本の国籍権を適用された日本人である。こういう二つのことから、沖繩人に対する最後の保護権は日本政府、日本にあるんだ、いわゆる外交保護権と申しますか、これは日本にあるんだ、沖繩の施政権はアメリカに移譲したといえども、無制限に煮て食っても焼いて食ってもかってにしなさいという移譲じゃないのであって、それには一定の限界がある。それはいわゆる国際連合の各憲章、世界人権宣言、こういう世界的な一つの通念から施政権にも限界があって、限界を越えたならば権利の乱用である。権利の乱用に対しては、日本が本来の外交保護権に基づいてアメリカに厳重に抗議する権利があるんだ、それがきかなければ国際連合の人権委員会に訴える、あるいは国際司法裁判所に訴える権利があるのじゃないか、こういう私の論理に対しまして、重光外務大臣は、しかり、国際連合あるいは国際司法裁判所に訴える権利がある、牧野法務大臣も、外交保護権があって、わが国はそういう権限があるんだというふうな答弁をされておりますが、私のいまの法的根拠に対して総理大臣はいかなる御意見をお持ちであるか、お聞かせ願いたい。
○池田国務大臣 沖繩住民はお話しのとおり日本国民でございます。しかし平和条約によりまして、立法、行政、司法の権限はアメリカ政府が持っておるのであります。ただ、お話しのようにやはり日本人であり、また潜在主権がございますので、沖繩における日本人が一般の日本人と同じような待遇を受けるようにこっちが希望し、そしてそれを向こうに申し出ることはできると私は思います。しかし、あなたのいまおっしゃる外交権の問題につきましては、たとえばアメリカにおける日本人の旅行者等に対しまする立場と、沖繩における日本人に対する立場とは、私は専門家でないのでよくわからぬと思いますが、違う点があるのじゃないかと思います。しかし、あくまで日本人でございますから、日本人として一般の安寧、福祉につきましては、私は当然アメリカに対して要求することは適当な方法だと考えております。
○猪俣委員 それは沖繩以外の各国に沖繩人がある以上は日本の外交保護権が及ぶことは当然でありますが、ただ沖繩には施政権の移譲がありますから、その間その外交保護権が制限されておる。ただその施政権が権利の乱用の概念にあてはまるような無謀なる統治権を乱用いたしますならば、本来の外交保護権によって厳重な抗議をすべき権利が日本にあるのだという私の論理でありますが、アメリカを旅行中の沖繩人も保護する、それは当然のことであります。私は沖繩における沖繩人に対しましても、最後の保護する責任は日本にあるのじゃないか。だから沖繩の統治権の乱用というものは厳重に日本政府は監視すべきものじゃなかろうかという論理の上に立っておるわけであります。そこでなおその論理から、もしそれを守れない場合においては、国際司法裁判所あるいは国際連合の人権委員会に訴える権利が日本にあるのじゃないか、これに対しての御答弁ができましたらいただきたいのであります。
○池田国務大臣 専門的な問題でございますので、関係当局から答弁させます。
○中川政府委員 ただいまの猪俣先生のお尋ねの点でございますが、総理がお答えになりましたとおり、外交保護権という名称は、普通には外国にある日本人、本国人というものに対して政府が保護する権利でございますので、施政権を認めました沖繩における沖繩住民の方々に対する日本のどう言いますか、主張することを外交保護権という名前で言うことは必ずしも適当ではないと思うわけでございます。したがいまして、沖繩における沖繩住民の方方の福祉について日本政府がいろいろアメリカに申し入れをしたり、交渉したりすることがございますが、これは外交保護権という観念で必ずしもしておるのではないのでございます。したがってこれを国際法上の権利といたしまして国際司法裁判所に持っていくというようなことは、いまの日米関係ではやはり適当でないというのが政府の見解でございます。必ずしもこれは法律問題として裁判所まで持ち出して争うというかっこうでなく、外交上の折衝によって円滑に所期の目的を達するという方法が一番適当な方法である、かように考えておる次第でございます。
○高橋委員長 猪俣君、だいぶ坂本君の時間に食い込んできていますので……。
○猪俣委員 ただ、最後に念を押しますことは、昭和三十一年七月十二日に、外務、内閣、法務、この三委員会の連合審査会におきまして、私がいまの問題を重光外務大臣、牧野法務大臣に質問いたしましたところ、重光外務大臣も牧野法務大臣も、外交保護権はあるし、さような統治権の乱用に対しては国際司法裁判所に訴える権利があるという答弁になっておるのですが、同じ自民党の内閣でも考えが変わってきたわけですか。それを総理からお聞かせ願いたい。
○池田国務大臣 当時の事情をよく知りませんが、速記録その他を見まして、また別な適当な機会に答弁をすることにいたします。
○猪俣委員 最後に一点だけで終わりますが、とにかくいま直ちに沖繩における軍事基地を撤廃して施政権を返上せよ、復帰せしめろ、これはわれわれの年来の叫びでありますけれども、現実の姿としてこれが無理だと思います。第二点は、軍事基地だけ存続を認めて、そして施政権だけ日本に復帰せしめる、こういうことがアメリカの利害とも調和して私はできそうなものだと思うのですが、そういう御努力を政府でなさったことがあるかどうか。これはいかに沖繩が日本に復帰したいという念願が世論としてあるかは申し上げるまでもなく、なおまた最近内閣の広報室で調査いたしました国内の世論におきましても、ほとんど大多数の国民が沖繩の日本国復帰を念願していることが内閣の世論調査にも出ているわけでございます。そこで沖繩及び日本内地ともに国民は沖繩の復帰の一日も早からんことを願っておるわけでありますが、政府はこれに対してどういう御努力をなされたか、御答弁をいただきたい。
○池田国務大臣 沖繩の施政権を日本に復帰することは国民全部の悲願でございます。われわれは機会あるごとに、その気持ちをアメリカに表明いたしておるのであります。今後ともできるだけ早く施政権の返還ができるよう努力を続けていきたいと考えております。
○猪俣委員 私はいま一点で終わりますが、いまの総理の答弁は、アメリカにおけるプライス法の改正に際しまして、アメリカの軍事委員会における陸軍次官の答弁と違っておる。一ぺんも日本政府から沖繩を日本に復帰せしめてくれろという交渉を受けたことがないという答弁をしております。しかし、時間がありませんので、これはその程度でおきますが、最後に一点、せめて裁判権だけでも日本に返してもらうようなことができませんか。政府はまたそういう努力はいたしませんか。これは実に惨たんたる状況を呈しておりまして、沖繩におけるアメリカ駐留軍の暴行は、あらゆる刑法の強盗、強姦、殺人、放火、窃盗、私が沖繩に行きましたときに種々調べましたが、一九五九年でありますけれども、三千件以上にのぼっているのであります。これの裁判がことごとくアメリカの裁判所の裁判、アメリカの軍法会議の裁判で、その結末を沖繩の人に聞けば、死刑になった者はたいていこっそり本国に帰している。殺人、放火、強盗、強姦、住居侵入、窃盗、あらゆる刑法の罪を犯しているのであります。それがことごとく彼らの手によって裁判せられておりまして、その判決文というものも出さない、何をやっているかわからないのであります。かようなことで沖繩におきます一般住民は戦々恐々としておりますが、この国場秀夫君の犠牲の事件をきっかけにして、せめて裁判権だけでも日本に復帰せしめようと御努力する意思はありますかありませんか、最後にお尋ねいたします。
○池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、施政の全般の返還をできるだけ早い機会に実現できるよう努力いたしておるのであります。その場合において、全部ができなければ一部でもというお話、ことに裁判権についてというお話でございますが、これはやはり全体の問題と考えながら、また相手の気持ちをそちらに向けるように努力することが先でございまして、一部だけをやろうという交渉が全体のためにいいか悪いかは検討しなければならぬ問題だと思います。
○高橋委員長 猪俣君は熱心のあまり持ち時間をオーバーされましたので、坂本さんはもう十分もないのですけれども、特に委員長取り計らいまして十分ということにいたしますから、ひとつそのつもりで御質問願います。坂本泰良君。
○坂本委員 暴力にも大いに関係することでありますが、今回の統一選挙、ことに東京都の東、阪本の両対立といわれた都知事選挙におけるところの選挙違反は、悪質な集団暴力による妨害戦術に終始したのであります。さらにはにせ証紙事件、はがきの流用等、計画的知能犯化した、暴力化した、まことに遺憾であったのであります。このような暴力に対して警察は、自民党公認候補の東龍太郎の利益になることであるから、何ら検挙もしない、取り締まりもしない。だから、こういう状態であっては、いかに暴力処罰法の法定刑の引き上げをやったところで何にもならない。こういうことがこの選挙によって如実に証明されておる、かように思うのであります。 ことに立ち会い演説会は、十九日間やじ、妨害に終始したのであります。暴力であります。制服を着た右翼団体者は、約二十人くらいがいつも同じ顔ぶれで、連日各会場に自動車で乗りつけ、阪本候補について回っておるのであります。六十回の演説会中、阪本候補が満足に演説をしたのはたった二回であった。各会場は、選挙の立ち合い演説でありますから、政策を披瀝して朗らかに、しかしながらその政策の上で戦いをやるべきところである。それをいままでなかったような、演説会場かもうすでに異様な暗い雰囲気が出ておる。集団が廊下その他でにらみ回っておる。そして阪本候補が登壇しますと、猛烈なやじをやる。よろめきとか、アル中とか、隅田川にほうり込むぞとか、懸命に怒号をして演説なんかやれない。たまりかねて聴衆や係員が静止しますと、これを待っていたとばかりに仲間が走り寄って怒号する、あえて床を踏み鳴らす、前のほうでつかみ合いをする、騒いで結局演説はめちゃくちやにする、これが手であるのであります。さらに泡沫候補は、阪本候補の車について歩いて、そうして街頭演説を始めると、その近くに拡声器を大きくして軍艦マーチなんかをやり、阪本候補の演説はちっとも徹底しない。政見発表なんか絶対できない。こういうような状態でありまして、これは私は暴力による威圧であり、組織的なやじによる妨害である。これを警察は何もしない。選管の係員がやると、逆にたたかれる。 こういうような選挙がこの東京都に行なわれておる。これは公職選挙法の二百二十五条の選挙の自由妨害罪でもありますが、やはり暴力行為等処罰に関する法律も適用になる場合がだいぶある。刑法の暴力傷害あるいは脅迫等、こういう点が見られるのでありますが、こういう点からいたしますと、現在暴力行為の処罰法があるのです。これを何も好んで、この法定の引き上げをやっても何にもならぬのじゃないかと思うのです。警察がこれを取り上げなかったら、法はないと同じである。こういうような都知事選が行なわれておるのでありますが、この点に対して、この暴力行為の処罰法の改正とあわせて総理の見解を承りたい。
○池田国務大臣 選挙における妨害行為を禁止せられておることは御承知のとおりでございます。しかし、今回のこの法案の改正は、暴力行為のうち、最近ひんぴんとして起こりまする銃砲、刀剣類による暴力行為でございまして、対象が異なっておるのであります。したがいまして、選挙の妨害行為が違法であり、これを取り締まることは当然でございますが、しかし、それに手落ちがあったからといって、十分法の命ずるところの完ぺきの措置がとられなかったからといって、今回のこの法案が、提案の理由がないというわけにはいかぬと思います。法の対象としておることが違っておるのでございまして、私は、先ほどお答えいたしましたように、ひんぴんとして起こる銃砲、刀剣類による暴力傷害行為に対しましての措置は、この際としてはとらなければならぬ改正だと考えております。
○坂本委員 先ほどの総理の答弁にも小暴力対策、これは社会的政策としても考えておる。しかしながら、一番大事な選挙闘争から、自由民主党の公認候補の利益になると、取り締まりも何もしない、放任する。これは町の暴力なんです。これは都民の全部が認めておることである。だから、こういう法律が現在あってもそれを適用しない。さらにその法定刑を重くしても何にもならない、こういうふうに考えるのであります。 この返事を聞いておりますと、時間がないから次に進みますが、また、この暴力選挙違反とあわせて一番大きいのは、自民党のにせ証紙事件であります。事件の首謀者である自民党本部の松崎長作事務主任、昭文社社長三沢美照、これからが事件の関係者として逮捕され、その自白によって自民党の最高幹部や現閣僚にも波及するのではないかとうわさされておるのであります。自民党幹部は事件をうやむやのうちに葬り去ろうと懸命になっており、過般の本会議並びに予算委員会の質問に対して、総理並びに法務大臣は指揮権の発動はしない、このにせ証紙事件でこうも世論が沸騰いたしましたもとではできないのであります。やったら世論が承知しないと思うのであります。これは吉田内閣の末期の症状と同じでありまして、造船汚職の際の指揮権発動のときのようにわれわれは考えるのであります。この問題については東京地検がいま捜査を進めておりますが、この点に手心を加えるとか、威圧をするとか断じてやるべきではないと思うのであります。 そこで、五月二十八日に飯田新太郎ほか四名が起訴されましたが、その起訴状によりますると、飯田新太郎は公記号偽造、偽造公記号使用、公職選挙法違反の罪名で、石井荘司ほか二名は偽造公記号使用、公職選挙法違反幇助、こういう罪名で起訴されておるのであります。その犯罪事実を見ますると、三沢昭文社社長、これが三月二十四日飯田新太郎に一万六千枚をつくらせて、飯田新太郎がつくったものを四月七日から十一日まで、安井謙参議院議員の事務所に持ってまいりまして八千枚のポスターに張っている。この八千枚のポスターの責任者は大野伴睦副総裁であるのであります。そしてそのうちの三百枚を自民党の本部に持ち込んで、東候補の運動員に都内の団地に張らせておる。こういう事実になっておるのであります。これは公正であるべき選挙を不公正にしているのであります。選挙無効であると思うのであります。阪本候補は所定のポスターだけ、東候補はここにあがっただけでも一万六千枚よけいに張っている。さらにはがきを泡沫候補から買うて出しておる。こういうことは選挙の公正を欠いている、選挙無効である、こういうふうに考えるのでありますが、総理の御所見を承りたい。
○池田国務大臣 都知事の選挙にいろいろの不正のあったことは聞き及んでおります。しかし、これはいま検察当局で厳重な調査をいたしております。結果を見なければ何とも申し上げることはできません。また、選挙の無効有効というのは行政機関の判断すべきものでありません。選挙管理委員会の裁決あるいは裁判所の判決によってきまるべきものと私は考えております。
○高橋委員長 総理は本会議出席のため退席されますから、これで打ち切ってから……。
○坂本委員 もう一つだけ。こういう公正を欠いた、にせ証紙、ごまかしの結果、また暴力の結果、不公正な選挙によって東候補は当選をしている。このような選挙無効の前例としてはたくさんありますけれども、一つ例をあげますと、数年前に参議院議員選挙の際に、栃木県の佐野市で社会党公認候補の平林剛君が、投票所の入り口の候補者の掲示板に共産党公認と書いてあった。三時間ばかりでそれが消されたわけです。しかしながら、この掲示は投票に行く者がそれを見ていく。党名が間違っておる。だからこれに対する当選無効の訴訟を起こしまして、東京高等裁判所は佐野市だけは無効の判決をした。そこで最高裁に上告になりまして、最高裁でも同じく無効であるという判決になりまして、佐野市だけ再選挙をいたしたわけであります。その再選挙の結果は、一年余りの後でしたが、最下位の三年議員の楠見氏が落選をしまして、次点の平林剛が当選をした。こういうことになっておるのであります。いまやオリンピックを控えての東京都知事が、暴力とにせ証紙によって、不公正な選挙によって形式上当選をしておる。だからこれは無効である。来年のオリンピックを控えて、訴訟をするまでもなく明らかにこれは選挙無効である。だから東龍太郎氏に辞職を勧告する御意思があるかどうか、最後に承りたいと思います。
○池田国務大臣 本会議で同じ問題につきまして答弁したとおりでございます。いまお話にもありましたように、選挙管理委員会でそうした判決によってきめられていくことで、行政機関である私が、いま判決を待たないでいろいろな批評を加えて、無効であるなんと言うことは、私は民主的なことじゃないと思います。
○坂本委員 私がそれを言うのは行政機関としての問題じゃないのです。あなたは自民党の総裁でしょう。さらに大野副総裁はその選挙の責任者である。赤城宗徳氏が東京都の選挙責任者だ。だから東龍太郎氏が自民党公認候補としてこういう不公正な選挙によって当選をしているから、その選挙をやった総理以下の方々によって、これは間違った不公正な選挙であるからやめたらどうだと言うことは当然であるし、またそういう不正な選挙をやらせた総理以下の自由民主党の幹部諸君の責任があると思う。だから辞職を勧告したらどうかと申し上げておるわけですが、いかがですか。
○池田国務大臣 先ほど来答えたとおりでございます。
○高橋委員長 暴力行為処罰法の日程は本会議散会後理事会で協議することといたします。 —————————————
○高橋委員長 法務行政について志賀君から質問があるそうですから、御飯も食べなければいけないそうですし、本会議が始まるそうですからごく簡単にお願いいたします。
○志賀(義)委員 委員長、どうも少し混乱しておられるようですが、私は暴力法案についての質疑と、ちゃんとそこに書いてあるでしょう。あなたはかってに法務行政と言われたけれども、法務行政はさっき済んだでしょう。まず伺いますが、総理が私の質問に対して出ておらない。それではこの次控えておいてくださいますか。
○高橋委員長 お答えいたしますが、これは理事会で社会党の質問済みの三人の方から二十分ずつというふうなことの確定意見になりまして、それによって本委員会でただいまのような段取りになったわけですが、特に志賀さんの申し出がありましたから、委員長大いに志賀さんのために苦労したのですけれども、とうとう時間がなくなりましたから、また別の機会に総理大臣に対する志賀さんの質問ができますように委員長最善の努力を払いますから、ひとつごかんべん願いたいと思います。
○志賀(義)委員 最善の努力はいたしましたが、できませんでしたということにはならぬでしょうな。
○高橋委員長 それは委員長の手腕ひとつで……。
○志賀(義)委員 ただ、いま速記録に残りますから事実を訂正しておかなければなりませんが、理事会で最初の問題、私が質問するということを入れて、それではといって委員長も了承されたのです。理事会で決定されたから私の名前も出ておるのです。そういうわけで委員長もなかなか気を使ってくださる。特に考慮してくださることはあなたもいま言われたとおりだから、この問題はあなただけの問題ではないですよ。ちゃんとそういうふうにきまっていて、ちゃんとそういうふうに書類も出ておるようなことでありますから、そこは間違いのないようにしていただきたい。
○高橋委員長 ちょっとおはかりいたします。本会議が始まったそうです。本会議が始まったら、委員会を開会するのに議長の許可が要るそうですから、志賀さん、きょうは本会議終了まで暫時休憩しますので、それから後に……。
○志賀(義)委員 暫時休憩を言う前に聞いてください。きょうは十時半からということでございましたね。十一時半から一時間にわたって総理が来られるということでした。これは協議の結果、おくれて十二時四十分から総理が来られるということになった。その間みんな待っておったわけですね。それがまた若干時間がおくれました。総理の都合でおくれられた。それでいて時間がきたから行くという、これはどういうことですか。
○高橋委員長 これは志賀さんにちょっと誤解、思い違いがあるようです。総理が出席するまでに法務行政その他について審議をしようというので審議をすることになっておったのですが、ただ志賀さんの質問をはじめとして、質問者の質問の内容について、理事会で申し合わせをしたとおりであるかどうかというふうなことについていろいろ紛議が起こりまして、それで時間をとられまして、結局総理の出席が三分か五分というふうなことになったので、まあ三分か五分だったら待っていようじゃないか、休憩しようじやないかということになったので、決してわれわれ同僚の怠慢でもありませんし、だれの過失でもないと思います。そのくらいで御了承願いたいと思います。
○志賀(義)委員 私の質問が法務行政について池田首相にあるのだと言われましたが、いつ私が池田首相に法務行政について質問すると言いましたか。だいぶあなたはきょうは混乱しておられる。こういうことで議事を進めてはだめですから、本会議後というのはやめて、さっきのあなたの約束どおり最善の努力をされて、新暴力法案に対する質問をやらしてください。逐条審議その他のことはそのあとのことです。あなたが最善の努力をされるのを待ちましょう。
○高橋委員長 さようなわけにはまいりません。最善の努力は努力、それから委員会の進行は進行ですから、本会議終了まで暫時休憩いたしまして、本会議が終了しましてから引き続き本委員会を開きます。 暫時休憩いたします。 午後二時七分休憩 ————◇————— 午後四時二分開議
○高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案を議題とし審査を進めます。 質疑の申し出がありますのでこれを許します。坂本泰良君。
○坂本委員 本法律案は、提案理由の説明にもありますように、最高裁判所の大法廷の判決に基づいて第三者没収に対する手続に関する法だ、こういうことになっているわけであります。そこで二、三伺いたいのは、手続の基本である没収の問題ですが、第一に憲法二十九条との関係でございますが、第三者の財産権を没収する場合、これは国家の一方的意思表示によりまして国民の財産権を剥奪するものでありますから、二十九条第三項にいう「正当な補償」、これを心要とすると考えますが、この点についてはいかがでございますか。
○竹内(壽)政府委員 昨年の十一月にありました最高裁の判決は、憲法二十九条との関係のいわゆる実体法規については何ら違憲ではない。でありますけれども、これを没収する手続といたしまして、没収手続が、刑法はもちろんのこと、特別法の各没収の規定について何ら規定してありませんので、その手続を欠くという点で憲法三十一条に違反する、こういう判決でございます。したがいまして、手続を補正いたしますれば、何ら憲法違反という問題はないというたてまえになっておるわけでございます。 それで、ただいま御質問の点でございますが、没収をする場合には、特に第三者のものを没収する場合には、それに対する補償が必然的に要るのではないかという御質問でございますが、被告人のものでありまして、しかもそれが犯罪に悪用されたということでありますれば、これに対して何らの補償をする必要がないのみならず、そのこと事態が一つの刑罰でございます。であるから補償の問題は当然起こりません。 それからまた犯人以外のもの、つまり第三者のものでありますが、この第三者がもし事情を知っておった、悪意のものである、こういったような状態にありました場合に、憲法二十九条との関係を理解します場合には、公共の福祉と所有権の保障の憲法の規定との調和点をどこに求めるか、この悪意であるというようなところに求めれば、これは無償でただで没収いたしましても差しつかえない、これは昭和三十一年の最高裁の判例にもすでに明らかになっておるところでございます。もし全くあやまって、全然善意の、しかも第三者のものを没収したという場合には、やはり補償を必要とするものである。かように考えるわけでござまして、そういう場合を予期いたしまして、本法案におきましても十三条でその旨の規定を置いて、補償の道を明らかにいたしておる次第でございます。
○坂本委員 これも従来のとおりだと思いますが、この際聞いておきたいのは、憲法三十一条との関係ですが、これはわれわれは罪刑法定主義の規定だ、こういうふうに了解しておりますが、刑事訴訟法では当事者以外の第三者に判決の及ぶ場合を認められていないのであるから、刑罰だといたしましても、判決の第三者に及ぶ点からいたしまして疑義があるわけですが、この点についてどういう御見解ですか。
○竹内(壽)政府委員 ただいまの御質問は、没収そのものについての性格をどういうふうに理解するかという問題と、三十一条の問題と二つあるかと思いますが、没収そのものの法的性格、これにつきましては学者の間にいろいろ議論の存するところでございますが、先ほど問題となりました昨年十一月の大法廷の判決は、この没収というのは個別的な効力ではなくて、対世的な効力を有するものだということを前提といたして判決をいたしております。したがいまして、被告人の付加刑として没収の刑罰が言い渡され、それが確定いたしますると、その訴外の第三者の所有権がそれによって失われるという結果になるということを申しているわけでございます。したがいまして、判例の態度は没収の性格をそのように解しているのでございまして、この規定は通説だと私は思います。今回の応急措置法も、その解釈を前提といたしまして立案をした次第でございます。 なお、憲法三十一条は、お話しのようにこれは罪刑法定主義を定めた規定であるという解釈もありますが、むしろ通説はそれよりも広く、アメリカのいわゆるデュー・プロセス条項、適正手続に関する条項とそっくりそのまま同一であるという理解にまでは至っていないように思いますが、それに近い理解のいたし方をするのが通説のように思うのでございます。したがいまして、刑罰を法律手続によって定めるというだけではなくて、刑罰並びに制裁的な、刑罰に準ずるような制裁を科するような場合におきましても、同条の刑罰という中には、刑法の形式上の刑だけではなくて、制裁的なものをも含めまして理解し、そのようなものを定める場合には手続が法定されていなければならない、こういう趣旨の保障の規定だというふうに理解をいたしております。そういう理解の上でこの法案を作成立案いたしておる次第でございます。
○坂本委員 この法案を見ますと、第七条が没収の裁判の制限になっている。裁判のことについては何ら規定がないわけですが、これは従来の主刑に対する付加刑と言いますか、主刑とともに判決でやる、こういうので変わりがないことを前提にして裁判については規定がないのかどうか、その点はいかがですか。
○竹内(壽)政府委員 さようでございまして、従来と変わりなく、刑としましては被告人に対する付加刑として言い渡す、これを前提といたしております。
○坂本委員 大体従来のとおりですが、いろいろ判例等も出ておりますから、この際裁判について一、二点お聞きしておきたいと思います。 没収の理由に関しては証拠の説明が要らないという判例がありまして、それに従っているようですが、やはりそういうように考えておられるかどうか。 それから一、二ありますから続けて申しますと、没収の物について証拠調べをしないで没収の言い渡しをすることができるかどうか。これも従来の判例では違法でないという判例が出ていると思うわけですが、その点についての考え方と、それからもう一つは没収の裁判の執行の問題ですが、これも従来と変わりがないかどうか、この三点についてお聞きしたいと思います。
○臼井説明員 お答えいたします。ただいまの第一点でございますが、御指摘のように没収の裁判につきましては必ずしも理由を付する必要はないという判例がございますが、この点につきましては、この法案はその判例を否定する趣旨ではございません。 第二点は没収について証拠調べを必要とするかどうかという点でございますが、没収は主刑ではございませんが、やはり付加刑でございますので、没収の要件たる事実につきましては一定の証拠に基づいてこれを認定する必要があるわけでございまして、証拠調べが必要であるわけでございます。もっとも犯罪事実の認定そのものと同じような厳格な証拠調べが必要であるかどうかについては確たる判例がございませんで、その点につきましては従来の考え方に立ってこの法案も規定されておるわけでございます。 第三点の没収の裁判の執行の問題でございますが、この法案におきましては、従来の没収の裁判の執行に関する考え方を何ら変更するところはないわけでございます。 以上、簡単でありますがお答えいたします。
○坂本委員 次に、没収によって国庫は原始取得をするということになるわけですが、その権利取得の時期について学説が分かれているようですけれども、その点を伺っておきたい。
○臼井説明員 お答えいたします。ただいま御指摘のように、没収の裁判の確定によって対象物件の所有権がいつ国庫に帰属するかという問題につきましては、種々学説上争いのあるところでございますが、今回の立法の契機となりました最高裁の違憲判決の多数意見は、没収の裁判の確定によって、確定と同時に対象物件の所有権が国庫に帰属する、しかもそれが対世的効力を有するという見解をとっておるもののように解せられるのでございまして、この法案もその最高裁判決の多数意見を前提として立案してございます。
○坂本委員 もう一つ、次に疑問になります点ですが、没収物そのものが第三者の手中にある場合の執行の問題ですね。その点どういうようにお考えですか。
○臼井説明員 ただいま御指摘のように、没収の裁判確定の際に対象物件がいまだ国の機関に占有権が取得されておりませんで、第三者の手中にある場合がございますが、そのような場合につきましては、この法案は従来どおり第三者に対して執行を必要とするという考え方に立って規定いたしてございます。
○坂本委員 それから次は第二条の告知の問題ですが、第二項の問題で、「官報及び新聞紙に掲載し、かつ、検察庁の掲示場に十四日間掲示して公告しなければならない。」検察庁の掲示場に掲示することは費用の問題なんかありませんが、官報及び新聞紙に掲載してやることは相当費用もかかると思うし、こういう費用の予算の問題ですが、これはどれくらい見ておられるか、その点をお聞きいたします。
○竹内(壽)政府委員 これは相当費用のかかる問題でございますけれども、私どもの予想としましては、事件そのものが非常に少ないのでございます。これはお手元に差し上げました資料の中にもあると思いますが、半年の間に二十数件でございまして、しかもそのうち所在不明等がございますし、額の少ないものもありまして、実際問題としては、ただいま私どものいただいております予算で今年度は十分まかなえるという考え方をいたしております。
○坂本委員 本法案は最高裁判所の判決に基づく手続の規定ですから、いろいろ手続上の問題等があろうと思いますが、これは省略いたしたいと思います。 ただ、これは私の希望意見になると思いますが、没収そのものについてはいま数点御見解も承ったわけですが、やはり相当問題があるわけなんです。しかしながら、刑法の改正の際にその問題は解決される、こういうふうに思って、これは手続法としての時限立法ですから、没収に対する本質論については、なお法律の改正が行なわれる際に十分検討されることと思いますから、この程度にして質問を打ち切っておきます。
○高橋委員長 坪野米男君。
○坪野委員 前回に続いてちょっと二、三点法文についてお尋ねをしておきたいと思いまするが、第三条で参加の手続の規定がございます。この条文の説明の中で、上訴審においてもはや参加の申し立てができないのだ、第一審の裁判判決言い渡しまでに限るという解釈になっているようでございますが、これと関連しまして十三条では、確定判決があった後に違法な没収に対して取り消しの申し立てができる。そういう規定になっておるのですが、一審の判決までに告知を受けて、そうして機会を得て参加しなかった者に対して上訴審以後に救済を与える必要はないわけですが、一審の判決があるまでに、公告されたけれども、自己の責めに帰すことのできない理由で参加の申し立てができなかった第三者に対して、上訴審において参加を認めてやれば、判決が確定してから別個に没収取り消しの裁判を求めるというようなめんどうな手続きに入る必要はないのではないか。だから原則は第一審の判決までに参加をするということでありましても、責めに帰することのできない理由よる場合は、上訴審においても、もちろん事実審でございますが、最高裁は別として、上訴審においても参加申し立てができるというような規定をしたほうが便宜ではないのかということを考えますが、立法技術的にどういうお考えであったのか、ちょっとお尋ねします。
○竹内(壽)政府委員 御意見ごもっともなことでございますが、十三条は事後救済の規定でございますし、十二条までが事前の参加の規定でございます。それで第一審の判決のあるまでといたしまして、それから以後のことは十三条のほうで救済を与えるという線を引いたわけでございます。その線を引きました理由は、御承知のように上訴審はいわゆる事後審という性格を持っておりますために、事実審理の行なわれる第一審と違いまして、自己の権利を主張するために十分な訴訟活動をすることが困難でございます。もし上訴審においてもそれを許すということになりますと、上訴審としては事実審理をいたしませんので、もし理由がありそうだということになりますと、事件を一審に破棄差し戻しするか、あるいは再審理を原審に命じてやらせなければならないわけでございます。そういうような煩瑣な手続をやらせますことは、結局事件そのものの審理が遅延してくる結果になりますので、その辺は利害を調整いたしまして、一審の判決以後におきましては事後救済のほうで救っていこう、こういう考え方を立てまして、この問題を解決いたしたつもりでございます。
○坪野委員 その点わかりました。 もう一点、参加人の証人の適格ということで、参加人は刑事被告人でないので、証人として取り調べを受ける、またその際にいわゆる黙秘権というようなものは認められないのだ、こういうことでございます。しかし、一般の刑事の証人——刑事に限らず法廷における証人には、証言を拒否する正当な理由がある場合に、特に刑事訴追を受けあるいは有罪判決を受けるおそれがある場合には証言を拒むことができるという規定の適用は、もちろんこの参加人も受けることになると思うわけでありますが、この参加人は、やはり訴訟の当事者という立場でその善意、悪意を争う。自分の所有権を争うということになるわけでありますから、第三者の所有であり、かつ違法と言いますか、没収を受けない理由があるのだという事実上の主張がありますが、その主張に関連して、いわゆる証人に呼ばれた場合に自分の善意を主張するについて黙秘権があるのかないのか。黙秘権に限らず、そういう自分の主張に合う証言をした場合に、刑訴の証言を拒否する理由云々という場合は刑事訴追、有罪判決ということばに限ってございますが、参加人という、当事者という立場でいまの善意、悪意を争う、あるいは自己の所有を争うという点に限っての証言には、どの程度の黙秘権——ということばは不穏当でありますけれども、当事者の防御権との関連でどういうふうに理解したらいいか。
○竹内(壽)政府委員 参加人は当事者ではございませんので、したがって、当事者として認められておりますただいまの黙秘権というようなものは、これは認める必要はないし、また、その限りにおきましては証人と同じでありまして、もし自分の述べたことが自分の犯罪になるというふうに思われます場合には、もちろん拒否できるわけでございます。ただ、いまお話のありました善意、悪意を争うような問題等については黙秘権を認めてもいいではないかという点でございますけれども、これは参加人の権利を保護してやろうというたてまえでございまして、義務をしいるものではもちろんないわけでございます。したがって当事者ではございませんけれども、当事者に準ずるような、当事者と同じような証人尋問権もあるわけでございますし、自己の主張、いまの犯罪事実に関する自分の意見を述べることもできるわけでございます。それに必要な証拠を申請することもできるわけでございまして、ただそれはあくまで自分の権利を保護するためにやることでございますので、被告人のような防衛するための保障をここで考えてやる必要はないし、またそこまでやりますことは行き過ぎである、かように考えておるわけでございます。
○坪野委員 もう一点お尋ねしますが、第六条の証拠の点ですが、この文章の意味がもう一つわからぬ点があるのです。第一項の「参加人の参加は、刑事訴訟法第三百二十条から第三百二十八条までの規定の適用に影響を及ぼさない」というこの意味ですね。逐条説明書には書いてあるのですが、この文章をどういうふうに理解したらいいのか、ちょっと説明してもらいたいと思います。
○臼井説明員 お答えいたします。六条一項は非常に簡潔に書きましたのでございますが、内容は二通りございまして、その一つは、参加人の参加することによりまして、刑事訴訟法第三百二十条から第三百二十八条まで、すなわち伝聞証拠に関する証拠法の証言に影響がないという意味でございますが、その一つの意味は、参加人が証拠とすることに不同意であっても、本来の被告事件について証拠となる証拠、たとえば検察官側及び被告人、弁護人側が証拠とすることに同意した証拠は証拠となるというのが第一の意味でございます。それから第二の意味といたしましては、参加人が提出する証拠につきましては、これはやはり本来の証拠法の法則に従いまして、検察官側、被告人側双方の同意が得られなければ、伝聞証拠である限りは原則として証拠にならない、こういう意味合いでございます。
○坪野委員 そうすると、私が誤解しておったのかもしれませんが、被告人に対する証拠は、この参加人の同意、不同意にかかわりなしに、刑訴法どおりにその証拠になり得るということですね。そしてこの参加人の所有物であるかどうかとか、あるは善意であったか悪意であったか、あるいは法律上没収を受けるべきものかどうかというような点についての証拠は、検察側もあるいは参加人側も、やはりこの刑訴法の伝聞証拠の制限どおりの適用を受ける、そういうように理解していいわけですか。
○臼井説明員 ただいま仰せのとおりでございます。
○坪野委員 終わります。
○高橋委員長 他に質疑もないようでありますから、本案に対する質疑はこれで終了いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって本案に対する質疑は終局いたしました。 —————————————
○高橋委員長 これより討論に入る順序でありますが、別に討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。 刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○高橋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 なお、ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 次会は来たる十一日午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午後四時三十三分散会