内閣委員会 第26号
- 発言数
- 84 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1963/06/13
会議録
○永山委員長 これより会議を開きます。 首都建設問題調査会設置法案を議題として、提案者より提案理由の説明を求めます。中島巖君。
○中島(巖)議員 ただいま議題となりました首都建設問題調査会設置法案につきまして、その提案理由及び法律案の概要について御説明申し上げます。 東京都への過度の人口集中は急激な人口膨脹となり、すでに一千万人を突破し人口は世界最大の大都市となりました。このため交通難、住宅難、水不足などの過大都市の弊害が如実にあらわれて、わが国の首都としての政治・経済・文化・教育の中心機能が麻痺し、いまや動脈硬化寸前の状態におちいっております。政府はこれに対処して高速道路や地下鉄の建設及び鉄道の復々線化などを行なっております。国会周辺はいうに及ばず、東京都全域にわたって掘り返し工事が行なわれております。全世界のどこの都市にこのような大都市全域にわたって大規模な工事を行なっているところがありましょうか。行き詰まった後に行なう後進性の工事は、ギャップが多ければ多いほど困難を伴ない、ばく大な工事費を必要とするものであります。のみならず、これらの土木工事は東京都の動脈硬化をさらに高進させ、動きのとれないところまで追い込む危険性さえあるのであります。その理由は、現在の諸施設が東京都の現況と将来の展望との見通しの上に立っての全体計画でないこと、その場のがれの施設を個々に行なっている現状だからであります。 都市機能の基本的な問題について、東京都と世界の著名都市と比較してみますと、第一点に人口増加の問題を取り上げてみます。 ロンドンは一九五一年から五六年の五カ年間に三百三十四万八千人から三百二十七万二千人と七万六千人の減少であります。ニューヨークでは一九五〇年に七百八十九万二千人であったのが、一九六〇年は七百八十万六千人と十カ年間に八千六百人減少しております。パリが一九四七年に二百七十二万五千人が一九五四年に二百八十五万人、すなわち七カ年間の人口増加が十二万五千人となります。年間の平均人口増は一万八千人となっております。また、世界で最も人口の増加している上海ですら一九三五年三百五十五万九千人が一九五〇年五百四十万七千人と、十五年間に百八十四万八千人の増であります。東京都の人口増は一九五一年に六百四十五万三千人、一九六〇年に九百十六万七千人とこの十カ年間に二百七十一万四千人増加しています。この人口増加の状態は現在もなお続いております。 第二点、道路面積について申し上げます。 東京都の道路面積は一〇%であります。ワシントンは四三%、ニューヨークが三五%、ベルリンが二六%、世界の著名都市のうちで最も少ないロンドンですら二三%であります。 第三点、公園面積の比較であります。 一九六〇年度調査で見ますと、東京都は一人当たり一平方メートルであります。ワシントンが四十五・二平方メートル、ニューヨーク十一・九平方メートル、最も少ないといわれるロンドンで九・二平方メートル、パリで八・九平方メートルとなっております。 以上が都市機能の基本的問題としての人口の推移、道路面積、公園面積の三点について申し上げたのであります。この三点から考えましても、東京都は都市機能の基本的諸条件の絶対量が不足していることがわかると思うのであります。これらの諸条件の絶対量不足がいまや東京都を動脈硬化寸前に追い込んだのであります。このことは何人といえども否定することができないと思います。 これに対して政府はいかなる抱負と施策があるのかといいますと、前四十国会の論議を通じて明らかになりましたことは、政府は首都問題については首都圏整備委員会が当たっておるので新たに首都問題の調査機関設置の必要はないということであります。 首都圏整備法が昭和三十一年に成立し、首都圏整備委員会が発足して十数年になりますが、東京都に対していかなる実績を残し、また、いかなる計画を持っているのかと申しますと、首都圏整備委員会は昭和三十一年に三十二年を当初として昭和四十一年に至る首都圏整備の白書を発表しております。これによりますと、首都整備計画の前提条件である人口増加と交通問題の見通しについて見ますと、人口計画目標として昭和五十年の市街地適正人口千百六十万人、衛星都市の新定着人口二百七十万人となっております。しかし、すでに本年度において東京都だけで一千万人を突破しておるのであります。交通量につきましても、都内国鉄八路線、私鉄十五路線について、昭和四十一年の既成市街地路線別交通需要の推定と実績の比較として、最も混雑する一時間の最大通過人員表を発表しておりますが、これも現在全路線とも四十一年の推定交通量を三〇%前後も上回っております。このように首都整備計画の基本となる条件の見通しが大幅に狂っております。このことは東京都への激しい人口集中で計画の根底がゆらいでしまったと見るべきであります。 首都圏整備委員会は単なる調査会でなく、行政委員会であり、当然現状計画に引きずられてせいぜい現状の改良計画にとどまらざるを得ないのであります。その実例として、東京都の過度人口集中の防止のため、昭和三十四年に首都圏の既成市街地に於ける工業等の制限に関する法律を制定しました。また、昭和三十六年には学園都市建設構想の試案を発表したり、あるいは官庁都市建設の試案を発表しております。前に申し上げましたように、東京都の将来の見通しに根本的な狂いのある上に、東京都の現態をそのままとしてわずかにその一部の脳溢血的部分を周辺都市に潟血しょうという改良主義計画程度を出ることができないものであります。 このような首都圏整備委員会の首都整備に籍口して、東京都を今日の事態に追い込み、なおかつ目をおおわんとしている政府の態度は許せないものがあります。以上の実情にかんがみまして、行き詰まっている東京都百年の大計を一日もおろそかにすべきでない。また、一行政委員会にゆだねるべきではないと考えます。学識経験者や政治家により、より広くより高い視野から根本解決の方針を決定すべきであります。 以上が本法案の提案理由の説明であります。 次に、本法案の内容について申し上げます。 東京都の都市機能が麻痺している現在、わが国の政治、経済、文化、教育の中心にふさわしい首都を建設するため、これに関する重要事項を検討するのを目的として内閣に調査会を設置する。この調査会は二カ年以内に結論を得て調査審議事項を内閣を通じて国会に報吾すること。 調査会は関係大臣、国会議員、学識経験者等五十名をもって組織し、会長は総理大臣が当たること、調査会の事務処理のため事務局を置くこととし、所要の事務局員を置くことなどが主たる骨子であります。 東京都が各般にわたり行き詰まり、今後さらに人口が増加せんとする現状にかんがみて、この根本対策樹立のために、本法案をすみやかに御審議の上、御可決あらんことをお願いいたしまして、本法案の提案理由及び内容の説明を終わることといたします。
○永山委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。 本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。 ————◇—————
○永山委員長 法務省設置法等の一部を改正する法律案を議題として、質疑に入ります。 質疑の申し出がありますので、これを許します。 西村関一君。
○西村(関)委員 ただいま提案になっております法務省設置法の一部改正法案につきまして、その趣旨といたしますところにつきましては、運営のいかんによりましては、私個人としては必ずしも反対ではございません。ただ、若干問題となるような点につきまして、この際お伺いをいたしておきたいと思うのでございます。 まず第一は、法務省のとり行ないます業務の中で、いま、国内的にはもちろんのこと、世界的にも大きな問題の一つになっております少年非行の問題であります。イギリスのような格式のある、伝統のある国におきましても、あるいは北欧諸国のような社会保障の進んだ国におきましても、少年非行の問題は、非常に大きな問題として識者の深い関心を集めておることは御存じのとおりであります。近年わが国の少年非行の現状がとみに悪化の一途をたどっておる。これは、国の将来を思う者にとりまして、まことに憂慮すべき状態であることは申すまでもございません。政府が常に言っておられる人づくりの問題も、おびただしい数にのぼっておる、またその非行の内容が凶悪化しておる現状を、どのように解決するかということを抜きにしてはできないと思うのであります。この点につきまして、少年非行の状態が現状どうなっているか、どのような種類において行なわれているか、まず、その現状について法務省当局が把握しておられる点を伺いたいと思います。
○中垣国務大臣 お答えいたします。 御指摘のとおりに、最近の少年犯罪、特に非行青少年の問題は、政府におきましても、これが対策につきましては相当に重要視いたしておるのでありまして、御意見の中にもございましたように、人つくり懇談会等におきましても、これらの問題は、総合的な施策を進めることによりまして非行青少年対策を進めていく必要がある。こういう結論には到達しておるのでありますが、それではこれらの原因は一体どういうところにあるかという点になりますと、必ずしもまだ統一した見解というものは生まれていないのであります。一般論的に申し上げますと、社会環境と申しますか、家庭環境と申しますか、そういうものと、本人の持っておる素質、資質、そういうものとのからみ合いから、青少年の犯罪というものが発生しておるという、その大ざっぱなものは、大体把握しておるのでありますが、それでは具体的にどうすべきかということになりますと、相当に検討する必要があろうと思います。 また、ただいま少年犯罪、少年非行の性質、そういうものの内訳についての問題がどうなっておるかというお尋ねでありますが、これは担当の課長を連れてきておりますので、課長から答弁をいたさせます。
○辻説明員 犯罪少年に対する対策といたしまして、検察庁を所管いたしておりますものの立場から、主として検察面からする対策について……。
○西村(関)委員 対策は後ほどお伺いするつもりですが、まず現況をお伺いしておるのです。そしてまた、犯罪少年と言われましたが、非行少年という呼び方で総括されております現況、たとえば十四歳未満の触法少年の場合でありますとか、あるいは刑法犯に問われるところの少年でありますとか、あるいは犯罪におちいるおそれのある虞犯少年でありますとか、そのような点に分けて、現在の状態がどうなっておるかということをまずお伺いしておるのであります。
○辻説明員 御指摘の非行少年のうちには、厳格に申しまして、犯罪を犯しました少年と、犯罪を犯していない、犯すおそれのあるいわゆる虞犯少年とがあるわけでございますが、検察庁が受理いたします少年は犯罪少年でございまして、しかも、その犯罪少年のうちの一定の軽いものは、警察から家庭裁判所のほうに直送されます関係で、必ずしも検察庁を通らないわけでございます。検察庁を通りました、いわゆる検察庁で受理いたしました少年について申し上げますと、昨昭和三十七年におきましては総数が六十四万五千七百六十五人になっておりまして、これを十年前の昭和三十七年の受理総数十四万九千三百四十八名に比べますと、約四・三倍という数字になっております。
○西村(関)委員 非行少年の内訳につきましては、いま御指摘になりましたように、警察を通じて家庭裁判所あるいは検察庁に送られる者、あるいは十四歳未満で、児童相談所、福祉事務所、警察の少年保護係というような方面に送られる者、こういうふうに年齢によって分かれてくるわけでございますが、後者につきましては、これは検察業務と直接関係がございませんから、その問題は私の質問からはずしてまいりたいと思いますけれども、しかし、やはり関連いたしまして、一般非行少年のその非行の内容が、年齢が逐次低下していっておるという現状をからめて、検察業務の中においてもお考えにならないと、ただこれは検察業務ではないのだ、触法少年は、十四歳未満はこちらの管轄ではないのだという考え方だけでは、それこそ役所のセクショナリズムにおちいることでありまして、大体児童福祉法と少年法との間に年齢の差があるというところに、一つの問題があると私は常に考えておるのでございます。そういう点も一応分けて質問をいたしますが、お答えいただく場合には、そういうことも含めて、関連して問題の根拠をついていただくような御答弁を願いたい、こう思うわけなんです。 ただいま数字をおあげになりましたが、そのように非常に激増をしておる犯罪もしくは虞犯少年として問われる非行少年の内容は、一体どういうふうになっておるか。その行為の内容はどういうふうになっておるのですか。
○辻説明員 先ほどお話の低年齢層化と申しますか、年少少年の犯罪がふえてきておるという点でございますが、これを一例をもって申しますと、十四歳以上十六歳未満の少年を一応低年齢少年といたしました場合に、この千人当たりの犯罪人口、これを見てまいりますと、この十六歳未満の少年につきましては、昭和三十一年におきましては、千人につきましては、千人につき五・六名の犯罪少年がおるという数字になりますけれども、三十七年におきましては、これが千人につき十二・七名という形でふえてまいっております。これがただいま御指摘の低年齢層化の一応の数字でございます。 次に、少年犯罪が凶悪化してきておるのではないかという御指摘でございますが、この点につきまして、刑法犯におきまして、各罪種について成人と少年が占めておる割合を見てまいりたいと思うのでございますが、特に顕著なものは、少年の全刑法犯中におきまして、恐喝事件は九・五%を占めております。これに対しまして成人の場合は、成人の全刑法犯中に恐喝事犯が占めておりますのは二・八%でございます。また、強盗罪をとってみますと、強盗罪につきましては、少年の刑法犯全体のうちで一・三%でございますが、成人につきましては、成人の全刑法犯のうちでわずかに〇・五%という数になってまいっております。かような点から、少年の事犯の凶悪化という点もあらわれてきておるというように存ずるのでございます。
○西村(関)委員 ただいまお示しになりました犯罪行為のほかに、特に強姦とかわいせつとかいうような犯罪における少年の傾向はいかがでございましょうか。
○辻説明員 昭和三十七年の検察庁受理の刑法犯について見てまいりますと、恐喝罪につきましては、全受理件数のうちの五六・八%が少年事犯でございます。強姦につきましては五一・一%でございます。
○西村(関)委員 少年非行の特性として、特に私が心配いたしておりますのは、少年の強姦が非常にふえていっておるということが一つでございます。しかも、それが精神薄弱児、いわゆる知能指数の低い子供の場合を除きましては、通常少年の場合におきましては、共犯率が非常に多い、つまり、輪姦を行なう少年が非常にふえてきている、こういうことが、私の承知しておる、また若干関係しておる面におきましてもあるのでございますが、全国的に見まして、こういう事犯に問われる少年、特に共犯の傾向というものはどうなっておりますか、その点もお伺いいたしたいのであります。
○辻説明員 これは警察の検挙というものを基礎にしてまいりますけれども、昭和三十六年に警察関係で検挙いたしました事件のうちで、単独で行なわれたものと、共犯であったものと、二つに分けてまいりますと、共犯事件の総数が十八万一千六百七十八件でございますが、そのうちで、成人のみの共犯事件は八万一千四百六件でございます。次に、少年のみの共犯事件は七万五千四百八十二件でございまして、成人と少年との一緒になっております共犯事件が二万四千七百九十件でございますから、全共犯事件の半数余りが少年が関係しておるという形になっております。
○西村(関)委員 ただいまの警察の調査による統計から見ましても、少年の強姦共犯がふえてきておるということが明らかになりますが、全国の少年鑑別所に収容された者、それから少年院並びに少年刑務所に収容された者のうちで、強姦の共犯に関与した者、いわゆる輪姦に関与した者のパーセンテージはどうなっておりますか。
○大澤(一)政府委員 少年関係の少年院あるいは少年刑務所における受刑者の罪名の資料は、本日準備してまいっておりませんで、ただいま御即答できませんが、いずれ調査の上、御報告申し上げたいと思います。
○西村(関)委員 私の知り得ております統計から見ましても、強姦事件は、全国少年鑑別所に収容された者の六〇%を占めておる。少年院においては六五%を占めておる。少年刑務所に至っては全収容者の七五%である。私の入手しました統計が間違っておらなければ、そういうふうになっておるわけでございまして、そういううちの大部分の者が共犯、輪姦に関与しておる。こういう実態を考えますときには、私ども政治に携わるものといたしましても、軽々にすることができない、非常にゆゆしい問題であるというふうに考えるのでございます。成人の場合は、先ほど警察の事犯の統計から見ると半々くらいだということでございましたが、私はもっと成人の場合少ないのじゃないかと思う。強姦事件に関しては、少年の場合のほうが共犯が多い。そういうことは、やはり非行少年の犯罪の一つの傾向であるというふうに思うのでございますが、そういうところに非常に問題があると私は考えるのでございます。 非行の原因につきましては、先ほど大臣からもいろいろお示しがございましたが、特に非行少年の強姦事犯だけに例をとってみまして、しかも、共犯が非常に多い、輪姦事件が非常に多いということにつきまして、どういうことからこういうことが頻発するのであるかということでございます。この点が法務当局としてはどういうふうに把握しておいでになるか、いかがでございましょうか。
○辻説明員 一般的に申しまして、少年の相互依存性、それから自己の抑制力が不足である、こういう少年特有の性質が、特に御指摘のような強姦の場合に共犯が多いという理由になっておるのじゃなかろうかと考えております。
○西村(関)委員 確かにいまお答えになったとおりだと思いますが、こういう少年の再犯事犯が非常に低いように私は伺っておるのであります。と申しますと、これは底の浅い、いわばでき心でやっておるという場合が多いと思うのでございますが、その点いかがでございましょうか。
○辻説明員 御指摘のとおりと存じますが、なお、先ほど申しましたほかにも、一般のマスコミの影響であるとか、そういうものも自己の抑制力の不足になお影響いたしまして、一つの原因をなしておるんじゃなかろうかと考えております。
○西村(関)委員 それから関連をいたしまして、特別法に触れる不純交遊であるとか、桃色遊戯であるとかいったようなことが、戦後の特徴として、ジャズ喫茶や深夜喫茶や温泉マーク等において、ひんぱんに少年の間において行なわれておるということでございますが、これは警察において補導される面が多いわけでございますけれども、それと暴力行為というようなものと結びついておる。いわゆるチンピラの犯罪というようなものと結びついておるというようなこと等を考えまして、これはいまお示しになりましたような諸種の原因が折り重なって、こういう現象を生み出しておるのだと思いますが、それともう一つは、女子の少年非行の問題でございますが、女子の少年が売春によって少年院に送られるということが非常に多い。これは、少年院に送られてもなかなか売春行為というものは直らないというふうに聞いておりますが、これらの一連の現象に対しまして、こういう流れをどのようにして食いとめていったらいいか。これは単にマスコミの影響、社会環境の影響、あるいは先ほど大臣のお話もありました個人の素質の問題とか、それには遺伝の問題も関係がございましょうし、いろいろな原因が折り重なっておると思いますが、それらの原因を突きとめていって、どのようにしてこういう流れを食いとめることができるか、これは非常に大きな問題であり、大事な問題であると思うのですが、この点、現行の制度を十分に活用して非行少年の犯罪を食いとめていくということになるかと思いますが、こういう戦後特に顕著になった、戦後と申しますよりは、近年、この数年特に顕著になってまいりました、こういう少年非行の問題に対しまして、法務当局としては、どのようにこの流れを食いとめるべきかとお考えになっておいでになるか。
○中垣国務大臣 お答えいたします。 社会問題としましても、また国家の施策の上から見ましても、根本は、人間そのものをいい意味の育成をすることが一番緊要な問題でありますから、非常に各般にわたっての議論になるかと思うのでありますが、根本的には、道義が支配する社会というものを実現する、そういう努力こそ政府は必要である。これは子供の社会だけではないのでありまして、おとなを含めまして道義支配の社会を実現するための施策を進めていく。これには内容的にはいろいろ問題があろうかと思うのでありますが、学校の教育、家庭の教育、社会における教育、そういうものがやはり一貫した人間形成の上の進め方でなくてはならない、私はかように考えております。 それから、御指摘になりました、すでに犯罪を犯し、あるいは犯すおそれのある者等に対する指導につきましては、法務省といたしましては、政府の機関といたしまして直接責任を担当するものでありますから、たとえば少年鑑別所の問題、少年院、少年刑務所等におきます教育のしかた、あり方、あるいはそういうところで身柄を拘束して収容して、これらの人々の欠陥あるいは資質等の矯正を行なうわけでありますが、そういうことに対しましても、教育主義と申しますか、懲罰主義的な考え方に立たずに、やはり教育をしていくのだ、教化するのだ、そういうたてまえに沿っての施策を進めていくべきではなかろうかと思います。 先生御承知のとおりに、社会のあらゆる原因を追及いたしますと、限りなく広がると思いますので、大局的な立場に立った御答弁をさしていただきます。
○西村(関)委員 私の直接触れました一つの事例を申し上げて、大臣の御関心を求めたいと思います。それは、実は未解放部落の少年の事例でございますが、たまたま高等学校の女子の同級生との間に恋愛関係ができまして、その恋愛関係を続けております間に、きわめて清純な交際をいたしております間に、彼が部落出身であるということが友だちから言いふらされたために、その女子の学生との交際が断ち切られたということからぐれまして、そうして親の金を持ち出し、凶器を振り回す、あるいは学校の先生のスクーターに乗って、その女子の友だちのところに出かけていくといったようなことが重なりまして、警察の補導を受けたのでございますが、その少年の心情に思い至りますならば、ただ一がいにその少年の非行を責めることができない社会的な問題があるというふうに私は考える。そのために、ついに学校もやめなければならないことになり、実はこの少年は私のうちに預かっております。そして、何とか学校に行かなくてもりっぱな人間になれるように配慮をいたしておるのでございますが、この少年の事例を考えてみまするときに理由なき身分的、社会的、経済的差別を受けております部落の存在というものが、この少年の非行の一つの大きな原因になっているということ、これは一例でございますけれども、そういうことを除外して問題の所在を究明するということはできないのじゃないかと私は思うのでございます。この部落問題の解決につきましては、これはなかなか大きな問題であり、むずかしい問題であり、国もまたわれわれも力を合わせて、責任を持って部落問題の解決に当たっていかなければならないことは言うまでもございませんが、そういう社会の不平等、社会の不正義というものが、感じやすい少年を非行に追いやるという場合が非常に多いと思うのでございます。こういうことをあわせ考えながら、ただいま大臣のお話しになりましたような道義の高揚——私はただ道義の高揚ということが少年に説教するという形で言われることは、感じやすい少年にとりましてはむしろ逆効果だと思う。おとなの世界の道義の高揚ということが、これは私ども国民の代表という立場にあります国会議員を含めて、この点は深く考えなければならぬ点であると思うのでございます。むしろ、そういうおとなのうその世界、ごまかしの世界、そういうものに対して反抗しておる。そういうところに少年非行の大きな原因があるということを、いま大臣の御指摘とあわせて、私は考えなければならないのではないかと思うのでございます。このような点につきましていろいろな施策が考えられるだろうと思いますが、現行の制度を生かして、たとえば少年鑑別所に送られる少年の取り扱いにつきましても、少年院あるいは少年刑務所等につきまして——たとえば少年鑑別所の例をとりますと、その施設はまことに不完全でございます。その人員もまことに手薄である。その待遇も実に悪い。国家公務員の資格を持っておられる方でございますが、所長さんが何もかも、小使いも給仕をやらなければならぬ。専門の鑑別に当たる人が場合によっては事務もやらなければならぬというようなことで、数十名の少年のからだを拘束してそこで鑑別の業に当たっておられるのですが、実際ほんとうの仕事ができない、できにくいという現況にあるというふうに私は見ておるのでございます。これはやはり国の責任ではないかと思う。こういうようなことでほんとうの鑑別ができるかどうか。刑務所に入れられるなら、そこで分類という業務によっていろいろな調査資料が出されるわけでございますが、しかし、まず最初の少年鑑別所の施設が実にお粗末である。また、その人員もきわめて少ないし、優秀な人が集まらない。優秀な人が集まっても続かない。また、そういう人が所を得て使命を感じて、非行少年の問題に取っ組むというような環境になっていない。そういう状態になっていないということを私は感ずるのでございますが、この点当局はどうおぼしめすか、お伺いをいたしたいと思います。
○中垣国務大臣 お答えいたします。 御指摘のとおりに、いわれなき不平等と申しますか、あるいは因襲等からくる封建性、そういうものが個々の少年に非常に悪い影響を与えて、そういうことで虞犯少年になり、非行少年になりするような場合があるということは、ほんとうに私も同感でございます。そういうことをやはり政治の力によりまして取り除くことも必要だと思うのでありますが、政府が同和事業等に力を入れておる理由も、そういうことが一つの原因かと思うのでございます。それから個々のそういう非行少年につきましてのその子供自体の環境、その子供だけが持っておる特別な事由、そういうことを重要視する矯正ということは、御指摘のとおりに、私は実はそれがすべてだと思うくらいに、先般少年係の検事会同をいたしましたときも、そういうことを申し上げたのでありますが、やはりああいう少年院であるとか、刑務所等に収監をしますと、だれもかれも同じような教育をするということであっても、御指摘のとおり効果があがらないと思うのであります。それで、ただいま御指摘なさいました理想どおりのことを行なおうといたしますと、教官の質の問題、なおまた処遇の問題、それからただいま御意見の中にもありました施設の問題等が、やはり大きな問題になってくるのでございまして、昭和三十八年度の予算で御審議をいただきました中にも、予算はすでに通過したのでございますが、教官の増員の問題あるいは施設の予算等は通過させていただいたわけであります。本日御審議をいただいております法務省設置法の一部改正案の中にも、これらのことも織り込まれておるわけでございまして、十分ではございませんが、非行少年問題につきましての、法務省としては重要部分といたしまして、教官の質の問題、あるいは待遇の問題、施設の問題、そういうことは今後とも努力を続けてまいりたいと存じております。
○西村(関)委員 ただいまの大臣の御答弁で一応了解がつくのでございますが、少年鑑別所だけではございません。家庭裁判所の調査官にいたしましても、大体調査官が調査をいたしまして、多くの場合裁判官の代行をするような形で、鑑別の結果を参考にしながら、処遇に必要な判定を行なう場合が多いのでございます。したがいまして、この調査官の素質の問題、調査官の専門的な教養や訓練の問題というものが、もっと重視されなければならぬと思うのでございます。処遇の問題に関係いたしますから、先ほども御指摘申し上げ、大臣もお話しになりましたように、優秀な専門的な教養と訓練を受けた調査官が集まってこない、集まりにくいというところに、私は問題があると思う。これは今回の設置法の一部改正だけで事足れりとする問題ではありません。この非行少年の問題、非行少年が犯す犯罪の素質の悪化、年齢低下等の趨勢等を考えあわせて、現行法におけるところの非行少年の実態をとらえ、あるいは処遇についてのいろいろな資料を取りまとめるところの、そういう施設の充実をはかっていくということを、ぜひもっと意欲的に考えていただきたいということをお願い申し上げる次第でございます。少年犯罪、少年罪行の問題は、私は少年の心の病だと思う。この心の病をどのように除去していくかということは、科学的なリサーチも必要でございましょうし、また、社会的、経済的環境の整備ということも必要でございましょうが、何としても少年の心の安定を与えていくような措置を考えていく。大臣のお話しになりました道義の高揚ということも含めて、これは一般おとなの、特に指導的な立場にあるわれわれの大きな責任であると考えるのでございますが、同時に、現行の施設を充実していくということとともに、民間のボランティア組織を十分に重視し、これを活用していただくということも考えあわせていただかなければならぬと思うのでございます。 私は、この少年非行の問題につきましては、まだお尋ねしなければならぬ点が多々ございますが、他の問題についても御質問を申し上げなければなりませんので、一応この問題はこのくらいにとどめさせていただきますが、ぜひとも今申し上げました点につきまして、当局としては十分に御留意いただきたい、かように思うのでございます。 次に、麻薬の取り締まりにつきまして、麻薬の検察業務につきまして、お伺いをいたします。 麻薬事犯の激増につきましては、これも大きな社会問題でありますが、この点につきまして、厚生省の薬務局の方がお見えになっておられますから、現在の麻薬事犯の実態と、その取り締まりのごく大まかな状況についてお伺いしたいと思います。
○牛丸政府委員 麻薬の違反事例というものは、毎年大体二千件前後くらいが、私ども、警察その他関係の取り締まり官庁の一年間の違反件数としてあげられておる数でございますが、最近の年度別にそれを申し上げますと、三十五年は違反件数が事件の件数といたしまして千九百八十七件、検挙人員が二千三百十二人でございます。三十六年は二千二百三十五件、検挙人員が二千六百六十五人、三十七年は件数が二千十件で、検挙人員が二千四百十八人というふうになっておりまして、大体事件において二千件、検挙人員において二千五、六百人というものが、毎年の事件の総数、内容でございます。 最近のこの内容といたしましては、従来、東京、神奈川、兵庫、大阪というような麻薬の濃厚地区が、全国で大体数カ所ないし十数カ所あるわけでございますが、そういうところでほとんどこの事犯が行なわれ、検挙がなされたわけでございます。最近の傾向といたしましては、これは取り締まりの強化との関連もございますが、都市からだんだんとその周辺、いなかのほうにそういうものが分散してきたというのが、一つの傾向として指摘できるかと思います。 それから年齢別の事犯を考えますと、一番違反の多いのは、二十歳から三十歳までの者が一番そういうものにかかっておるわけでございます。しかし、最近は、二十歳以下のいわば青少年の違反も、わずかではございますが、増加をしているような状況でございます。 麻薬につきましては、以上述べたようなことが大体の傾向でございます。
○西村(関)委員 麻薬取締官は現在何名おられますか、
○牛丸政府委員 現在厚生省が所管しております麻薬取締官は、定員が百五十名でございまして、事務系統も含めまして八地区に百五十三名の者が配置されております。これは、麻薬取締官事務所というものが、北海道、東北、関東、信越、それから中部、近畿、中国、四国、九州というように、各地区を受け持った取締官事務所がございまして、取締官が配属されております。そのほかに、各府県に麻薬取締員というものがございまして、これは都道府県の職員でございますが、百名全国に配置されております。全額国庫補助の職員でございます。
○西村(関)委員 いまさら私が申し上げるまでもなく、麻薬の害毒というものは、国を滅ぼすくらいにおそろしいものでございます。そのくらいの人員でもって十分に麻薬の害毒を取り締まることができるであろうか。厚生省の所掌として、いまお答えになりましたような人員では、おそらく十分な取り締まりができてないのじゃないかと思うのですが、同時に、その取締官の労働量は非常に過重なものであり、昼夜を分かたない労苦が人知れず払われておると思う。同時に、その取締官の中から、いろいろな誘惑を受けて、それにおちいるような人があるやに聞いておりますが、そういうミイラ取りがミイラになるようなことがないようにしていくためには、厚生省としてはどういうふうにお考えになっておられますか。
○牛丸政府委員 もちろん、厚生省の麻薬取締官なり麻薬取締員の総計二百五十数名の人員ではとてもやっていけない。麻薬の違反につきましては、警察と海上保安庁、税関、そういうそれぞれの関係のある官庁の取り締まり体制が総合的なことでやっておるわけでございまして、三十八年度におきましては、そういう意味で人員の増加も予算措置をしていただいたようなわけでございまして、それで十分であるかといえば、これは私はなおもっと増加する必要があるというふうに考えておるわけでございます。 それから、厚生省の麻薬取締官の業務遂行上、誘惑にかられたり、そういうふうな非行がありはしないか、そういう者に対する対策でございますが、これは私どもとしても常日ごろ非常に気をつけている点でございますが、第一は、取り締まりの捜査活動を十分にやっていけるような予算措置なり人員の配置というものを考えていく。それから行動が、非常にそういう金銭なり物との関係でございますので、所長並びに私ども幹部といたしましては、そういう取締官の個々の行動については常に監督をする。しかし、同時に、待遇の問題に関しては、むろん十分これは考慮していく。現在、警察官と同様に、特別助成の方法も施行されておるわけでございますが、そういう点についてもその他の点につきましても、われわれとしては、将来とも、待遇の問題についてさらに考えていくべきじゃないかというように考えるわけでございます。
○西村(関)委員 麻薬の取り締まりにつきましては、ただいまお答えになりましたように、厚生省だけではなくて、警察庁でありますとか、大蔵省の関税局でありますとか、海上保安庁でありますとか、あるいは国有鉄道公安本部等の関係があろうかと思いますが、もう一つ、法務省の入国管理局の立場から、麻薬の取り締まり、麻薬の検察につきまして、それぞれどういう措置をおとりになっていらっしゃいますか。
○小川政府委員 麻薬対策につきましては、御承知のように、入国管理局も幹事の一人になっておるわけでございますが、麻薬対策と申しましても、先ほど厚生省のほうから御答弁もございましたように、入管独自の立場で実効をあげると申しましても、なかなか困難な面が多々ございます。もちろん、予算、人員のにおきましても、そのほかの密入国対策に追われておりまして、なかなか麻薬対策に協力するという体制にまでは立ち至っておらないのが実情でございます。しかしながら、やはりわれわれといたしましても、もともと、麻薬取り締まり法規違反者は、もちろん退去強制の事由の一つにもなっておりますし、また上陸拒否もいたさなければならないたてまえになっておりますので、乏しい人員と予算でできるだけの御協力をしておる現状でございます。その内容につきましては、具体的にどういう方策で——密入国者なり、あるいは麻薬持ち込み者、これは船員が最も多いように統計上ではなっておるのでありますが、そういったものを取り締まる上におきましても、やはり十分にやろうと思いますると、二六時中、俗に見張りと申しますか、そういう措置もとらなければならないのでありますが、そういった舷門立哨というような有効な方法もできるだけ今後はとってまいりますとともに、外からの入国者につきましても、従来以上に情報を集めまして、関係者官庁と協力の上で、できるだけ有効な方法をとりたいというふうに考えておる次第でございます。
○西村(関)委員 なかなか御苦労の多いことだと思うのですが、入国管理局で得ておられる情報として、海外から来る麻薬のルート、それはどういうルートになっておりますか。
○小川政府委員 海外からの麻薬のルートといたしまして、私どもが現実にそれをつかまえたと申しますか、したと申しますか、そういう場合は非常に少ないのでございますが、一般的に申されておりますように、香港、シンガポールのルートが従来は最も多かったように記憶いたしております。最近では沖繩ないしは南朝鮮と申しますか、韓国等をクッションといたしまして入ってくるケースが、多少ふえつつあるのではないかというふうな情報も持っております。
○西村(関)委員 今度の法の改正の中で、麻薬検察官、検察業務といいますか、そういうことも含めてぜひ改正をしたい、こういうお考えのようでございますが、法務大臣といたしまして、この麻薬の取り締まりにつきまして、いろいろな各関係省庁の協力のもとになされることであるわけでありますが、法務当局としての心がまえを大臣からお伺いをいたしたいと思います。
○中垣国務大臣 お答えいたします。 麻薬事犯は、西村先生が御指摘のとおりに、日本にとりましては、もう非常に大きな政治問題にまでなっておるのでありまして、いかにして麻薬犯罪をなくするかということで、政府といたしましては、先般関係省庁の機関をもちまして閣僚会議等をやりまして、いろいろ施策を進めてまいっておるのであります。このたび御審議をいただいております法務省設置法の中にも、麻薬専門の検事並びに事務官等の増員をお願いいたしておるのでございまして、これは先ほど薬務局長や入管局長等からもお答えがありましたとおりに、各捜査担当の機関がそれぞれ努力をいたしておりまして、検察庁といたしましては、これらの連絡の調整ということに努力しなければならないと思います。連絡機関が緊密化することによりまして、相提携することによりまして、取り締まりの実をあげることができる、こういう考え方に立っておるのでございまして、特に、御承知とのおりに、最近のこの種事件を起訴いたします場合における求刑等の基準も引き上げまして、徹底を期しておるというやり方をいたしておるのでございます。薬務局長が雷われましたとおりに、濃厚地域ということばを使われましたが、自然にそういう地域が形成されておりますので、そういうところには特に麻薬専門の担当検事を指名いたしまして、それに事務官等を配置いたしまして、積極的な取り締まり活動を続けておるという次第でございます。これは最近の関係省庁の意見をまとめてみますと、かなり効果をあげつつあるということでございますので、この問題には一段と政府は各機関を督励するとともに、なお一そう努力をいたしまして取り締まりの実をあげたい、かように考えております。
○西村(関)委員 次に、入国管理業務につきましてお伺いをいたしたいと思います。 従来、諸外国からわが国に入国をする場合には、外務省におきましてそれぞれの入国者の旅券の査証をいたしまして、入国をするのでございますが、入国管理業務の中におきまして一つお伺いをいたしたいのは、国交未回復国からの入国者の取り扱いについてでございます。例を中国にとってみまするならば、これはなかなか簡単に入管の窓口をパスすることができない。いろいろな話し合いが関係者の間になされてまいったようでございますが、人民共和国からの入国者に対する政府の取り扱いの基本的なお考え方をまず伺いたいと思います。
○高木政府委員 国交未回復の国からの入国につきましては、旅券の査証等は行なわれないことになっております。したがって、結局中共から日本に見える場合には、あらかじめ日本に来られるときに、無事に入国できるかどうかを確める措置を講じて見えるわけでございます。日本側でこれの呼び寄せを保証する人が、法務省の了解をとって、そして現地で渡航証明書等に入国が確実であるという手続をしてもらって、見えるというのが実情でございます。
○西村(関)委員 国交未回復国からの入国については、ビザが出されないということも承知いたしておりますが、その場合に、従来受け入れ団体が代理いたしまして、それぞれの方々にかわって手続をしてきたと思うのでございます。たとえば中国からのお客さんに対しては、日中友好協会が代理手続をやってきたと思うのです。事前の入国の手続と申されたのはその点であろうと思うでありますが、承りますと、このようなやり方は今後はやらないというようなきついお達しがあったというふうに聞いておりますが、そうでございますか。
○小川政府委員 本件につきましては、外務省と私ども法務省との両方にわたります問題でございまして、国交のない国、これは対立政権と申しますか、そういうふうな複雑な国情にある国の方々が多いのでございますが、ただいま西村先生の御指摘のございました手続問題につきまして、今後は厳重な態度をとると申しますか、代理申請的な手続は一切やめていただくというふうな方針をお聞きになっておいでになるようにただいま伺ったのでございます。この点につきまては、実は私どもといたしましても、好んでそういった複雑な手続をとっていただくようにいたしたくはないのでございますけれども、何と申しましても、国交のない国との交通ということは、出入国管理令においても認めておりませんたてまえでございますし、これは外務省の管轄でございますが旅券法を見ましても、明確では必ずしもございませんので、やはり国交のない国から、及び国交のない国への往来につきましては、一応の規則と申しますか、そういうことを行なわざるを得ないというのが、従来の政府のたてまえだろうと私信じておる次第でございます。しかしながら、最近におきましては、いろいろな関係からいたしまして、たとえば、よく通俗的に申されておりますような人道上の問題でございますとか、あるいは国際的序スポーツ競技会というふうな問題につきまして、少しずつそういった規制が緩和されていっているような傾向にございますことは、御承知のとおりでございます。したがいまして、ただいま御質問の厳重ら手続規制をいたしますという問題につきましても、目下いろいろな見地から、外務省と私ども法務省の間で、なるべく合理的で、そして簡潔な方法を編み出そうといたして苦心をして、協議を続けてきておる状態でございますので、いましばらくその成り行きをお待ちいただきたいというふうに私は考える次第でございます。
○西村(関)委員 いろいろ御苦心をなさっていらっしゃる点はよくわかるのでありますが、御承知のとおり、国交未回復国からの経済、文化、スポーツ、その他各方面の代表の方がわが国に来られ、また、わが国からも招かれて未回復国へ参るという場合が非常に多くなってきておるわけであります。そういう場合に、従来の中国からの入国の事例を見ますと、香港まで来られて、香港の総領事館で手続をなさる。その前に一応事前の代理手続が受け入れ団体からなされておるわけでありますが、すぐに香港の総領事館では決裁ができない。ビザの審査については法務省の入管局でいろいろ調べる。治安上の立場その他の立場からだいじょうぶかどうかということを調べて、外務省と相談して、香港総領事館に外部省から指示をなさる、こういうようなことで、非常に長い日数がかかるというのが従来の事例であったようでありますが、こういう点、香港の総領事館で決裁ができるようになるならば、もっと日数を縮めて、むだな日時を香港に過ごされることなく、来られる方は来られるということになるかと思うのでございますが、そういう点、両省の間でいろいろ話し合いをして、できるだけ簡略にしていこうという御苦心を払っていらっしゃるということでございますから、その御苦心の成果を待つべきであろうと思いますけれども、こういう点につきまして、外務省の移住局長
○高木政府委員 国交未回復以外の国の旅券の査証の場合も、出入国に関しましては入管局に権限があるわけでございます。したがって、査証の場合でも、法務省とは相談しておる次第でございます。特に国交未回復の場合には、日本側におきまして、外交上あるいは国内治安上十分を期するための手続として、現在やっておる次第でございまして、不必要な手続でございましたならば、できるだけ簡素化することは、われわれ賛成でございますが、最小限度の必要手続はやらなければならない、こういうふうに思っております。
○西村(関)委員 従来の一般の国交回復国に対する渡航の場合におきましては、外務省へのアプリケーションによって事が済むのでございますが、未回復国の場合に限っては、これはやはり入管の審査を受けなければならないということなのでございますけれども、それは、国内的な法務省と外務省との間においてなさることは当然であろうと思いますけれども、相手国の入国を希望せられる側に対しては、やはり外務省が一本になって入国の査証をなさるということになるのが当然であろうかと思うのでございますが、そういうことが何らかの措置によって両省の間で話し合いができて、先方に対しては外務省から必要な書類に記入をして署名をしてもらうというようなことでうまくいくんじゃないかと思うのです。治安上の問題でも、いままで数回あるいは十数回中国から入ってきておられますが、一回もそういう心配があったことはないと私は記憶しておりますし、また、日本から中国に出かける場合でも、香港から深切に参りまして、簡単に手続をして向こうに入れるというような取り扱いを向こう側はしているのに、日本側においては、なぜそのようなむずかしい入管の審査を経て、両省が相談をして十数日もかからなければ許可がおりないかということ、しかも、法務省の関係の書類にいろいろ記載しなければならないということでは、メンツを重んずる中国の人に不快な感を与えると思うのであります。そういう点等も考えあわせまして、いろいろ両省の間のお話し合いが進められておるのだと思いますが、大体どういう方向にこれをお取り扱いになろうとお考えになっていらっしゃいますか、入管の局長の御意見を伺いたいと思います。
○小川政府委員 ただいま外務省との間に、この問題につきまして、鋭意簡素化の方向を目ざしまして協議を行なっておりますことは、ただいま申し上げましたとおりでございますが、その見通しにつきましては、先ほど移住局長から御答弁がございましたように、最小限度の手続と申しますか、いままで、法務省入管局に対する申請の手続と、それに基づきまして発給されますところの渡航証明書というふうな手続を一本にしてもらえないかということが、日中友好協会その他関係の諸団体の方々の要望事項になっておりまして、私どもも始終陳情を受けておる次第でございますが、その方向は一番好ましい姿ではあろうと存じまするけれども、この問題につきましては、私どもの伺っておりますところでは、やはり外務省といたしましては、国交のない国を承認する、明示でございましょうとも、黙示でございましょうとも、事実上の承認があったかのごとく誤解を受けましたりすることを特に注意して、慎重にやっておられるのじゃないかと存ずるのでございまして、私どもといたしましても、その点は、外務省の御意向も十分に尊重しながら、何とか一つのよい考えを編み出したいと考えておる次第でございまして、見通しにつきましては、ただいま予測いたしかねるのであります。
○西村(関)委員 外務政務次官がお見えになっておられますから、この問題につきまして、いろいろ国内の事情、また国際間の事情等を考慮せられまして、同等の取り扱いをしたいけれども、いろいろ配慮しなければならない面もあるということで検討しておいでになるということだと思うのでありますが、今日の国際情勢を見まして、東西両陣営の対立激化を緩和するという方向に立つことが、日本の国策として、むしろ世界の平和に貢献する前向きの姿勢ではなかろうかと思うのであります。これにはもちろん見解の相違があろうかと思います。池田さんもしばしば言われるように、自由主義陣営の中にある日本としては、日米安保条約を結んでいるアメリカ合衆国に対して、特に密接な関係を持たなければならないという政府の基本的な立場に立つならば、それは私の申し上げておる点に対して問題があろうと思いますが、しかし、そうであるといたしましても、アメリカ合衆国におきましても、御承知のとおり、ケネディ大統領とフルシチョフ首相との間には直通の電話を引き、いろいろ意思の疎通をはかっていこう、緊張緩和をはかっていこうという努力がなされておる。そういうことを考えますときに、わが国といたしましては、むしろ国交が回復してないということ自体が不正常な状態にあるのでありますから、そのような状態を一日も早くなくする。二つの主権が存在しておるという政府の見解に立ちますと、そうにわかに中華人民共和国と友好関係を結ぶということはむずかしいという議論もなさるであろうと思いますけれども、現実において中国の大多数の国土の中にある人民によって立てられておるところの政権である中華人民共和国に対して、少なくとも多くの日本人が友好関係を結ぼうということを願っておる、経済的な面からも、文化的な面からも、いろいろな面からそういうことを願っておる人たちが多数あるということを考えるときに、向こうから正当な理由で、またわれわれが望んでおるところの目的をもって来られるという場合には、快く迎えられるような態勢をつくり出していく努力を一方において政府がなさっても、私は、国民の中から批判が出るはずはない、むしろ、そうすることが、世界の緊張を緩和する方向に持っていくことができる道ではないかと思うのであります。この点につきまして、私は外務次官の御見解を承りたいと思うのであります。
○飯塚政府委員 ただいま西村先生からいろいろ御高説を伺いましたが、その中には私も同感申し上げる点が多々あるのでございます。したがいまして、中国からの日本に対する入国、これは国際慣例としては、未承認国からの入国は認めないのが慣例になっておるようでございますけれども、中国からの入国の申し出に対しては、現在までかなり御希望に沿うように努力はしてきております。昭和三十七年度には、団体数からいうと十団体でございますが、七十六名、昭和三十八年度には、まだ年半ばでございますけれども、団体数にしては六団体でありますが、人の数においては八十八名も入国が認められておる状態でありますし、また、両陣営の問題あるいは隣の国である中国に対してのいろいろな御高説に対しては、おそらく外務当局においてもその方向に沿うような方針で努力を続けておると私は心得ておりますから、この点申し上げます。
○西村(関)委員 次に、朝鮮の問題でございますが、二つの政権があることは言うまでもございません。特に朝鮮民主主義人民共和国からの入国の問題、これは先般スケート選手団でありましたかの入国が初めて認められたように聞いております。ほかの国交未回復の国々、いまの中国等と比べますと、なおいそうきびしい規則が行なわれているわけでございますが、これは選手団の入国を認められたわけでございますから、今後もそういう道を開くように努力をせられるお考えでございますか、政務次官。
○飯塚政府委員 ただいま御指摘になりました北鮮からの入国に関しましても、将来できるだけそのような方向で進めていきたいと考えております。
○西村(関)委員 法務省入管のお考えは……。
○小川政府委員 北鮮からの入国問題につきましては、衆議院並びに参議院各関係委員会において、法務大臣並びに入官局側からも御質問にお答え申してきておる次第でございますが、法務省といたしましては、先般のたしか参議院であったかと記憶いたしますが、法務大臣から、この問題につきましてはるる御説明を申し上げておる次第でございまして、私どもの考え方といたしましては、もちろん広い立場に立ちまして、人道上の配慮という見地から、できるだけ広く世界の国々の方々、それがどういう国であろうとも、その国人について差別待遇をしたくないのでございますけれども、やはり外交上あるいは内政上のいろいろな現実的な立場からいたしまして、従来とも非常にきびしい線を出しておる次第でございます。この考え方につきましては、もちろん外交当局におかれまして、外交上の理由から、だんだんとできるだけこういった差別をなくしていきたいというお気持ちであることは、ただいま外務政務次官からもお答えがあったと存じますし、私どもといたしましても、ただ外交上の理由だけでございませんで、やはりいろいろな国内の諸事情を勘案いたしまして、慎重にやっておる次第でございます。 具体的にどういう問題かという御疑問もお持ちになるかと存ずるのでございますが御承知のように、国内におきます朝鮮半島出身の方々のいろいろな対立関係というものは、われわれ治安当局からも終始連絡を受けておりまして、必ずしも非常に心配のない状態というふうにも受け取れない節もございますし、また、いろいろな関係でいろいろな人々がひそかに入ってくるというふうな事態も、われわれといたしましてはこれを検討いたす要素と相なるわけでございます。外交上の理由、おそらくこれは日韓会談が主たる原因であろうと存じます。もちろん、日韓会談がスムーズに妥結の方向に行っておりますれば、また考え方もおのずからそこに新しくできてくる可能性もあるやに存じますが、そういう外交上の面のみならず、やはり私どもといたしましては、内政上の諸要素というものも同時に勘案をしてまいらなければなりませんので、その点につきまして、われわれの立場も非常に困難な立場におちいることもございますので、その点を御了承いただきたい。こういうふうに存じております。
○西村(関)委員 いまの局長の御答弁ですと、内政上の諸要素も考慮して、手放しで認めるわけにはいかない、外交上の問題は所管が違うけれども、国内の情勢の諸要素を勘案するとむずかしい一おそらくこれは公安上の問題だと思うのです。特に日本におられる朝鮮人の方々の二つの団体の対立というようなことから、御心配をなさっていらっしゃると思うのでございますが、そういうことは、この間のスケート選手団の入国によって、事実それが心配がなかったということが証明されておると思うのでございます。それだからといって、スケート選手団のときには事がなかったから今後も事がないとはだれも保証はできませんけれども、入管のお立場として、そういう治安上の問題、公安上の問題からいろいろ御心配になるということだと思うのでございますけれども、そういう点は、この前のスケート選手団の入国によって一応の目安がついたんじゃないかというふうに私は思うのでございます。 外交上の問題につきましては、いろいろ議論のあるところでございますが、日韓会談の問題については、これはわれわれの立場からも非常にきびしい現実の批判がございますし、また、政府与党側における見解とわれわれの見解の相違というものもございますが、そういうこととは全然関連がないということは私も断言いたしませんが、しかし、そういうことと関連があるといたしましても、全然シャットアウトすることは、むしろ世界の流れに逆行することになるのではないかというふうに思うのでございまして、外務政務次官が、逐次緩和の方向をたどっていきたい、そういう方向に進めていきたいという御答弁でございますから、一応きょうのところは御答弁に信頼いたしまして、一日も早く渡航の自由が樹立せられるように心から願うものでございます。 と同時に、日本から北鮮に参ります場合におきましても、従来から多くの人たちが北鮮に参っておりますが、正式旅券を得て北鮮に参ったのは、私の承知する範囲においては、国会議員二君のみであると思います。他の方々はいわゆる横すべりで入国しているわけなんでありますが、これも情勢の推移によって逐次緩和の方針をとっていくというお考えでございますか。
○飯塚政府委員 西村先生のお話しの北鮮との出入国に関しての問題に関しましては、これもできるだけ御期待に沿うようにやっていきたいと考えておりますが、御承知のように、昭和三十五年に、国会議員が、北鮮帰還の問題のときに三名、平壌を目的地として日本を出ておるのでございますが、それ以後は全然ございません。約八万人に近い北鮮の諸君は行ったきりでございます。それから北鮮の赤十字社からは毎月一ぺんくらいずつ新潟までおいでになっておりますが、これも新潟に上陸する程度でございますから、この点も十分考慮に入れておきたいと思っております。
○西村(関)委員 いま日本に在留しておられる朝鮮人は六十万人と聞いておりますが、これらの方々は外国に行けない、自分の祖国である朝鮮にも帰れない、往来の自由がないという現状でございますが、人間として祖国を思わない者はだれもないのであって、自由に祖国に帰りたい、墓参りもしたい、年取った両親のめんどうも見たい、顔も見たいというような希望を持たれることは、人間として当然の至情の発露であると思うのでございます。こういうことがとめられておるということは、きわめて不自然な現象だと思うのであります。どういう理由によって日本と朝鮮との自由往来というものがとめられておるかということについて、どちらからでもけっこうですが、お伺いいたしたいと思います。
○小川政府委員 ただいまの御質問は、在日朝鮮人の北朝鮮への再入国許可を何ゆえに入管局でとめておるかという御質問の趣旨と存じますが、この問題は、管理令の二十六条に基づく許可でございます。その許可の要件といたしましては、施行規則のほうで特に旅券の必要を規定しております。したがいまして、形式的に申し上げることを許していただきますならば、出入国管理令では、旅券のない人々の再入は原則として認めていないわけでございます。しかしながら、ごく少数ではございますが、国交のない、したがいまして、旅券を持っておりませんところの中国人につきましては、最近約五年間にわたりまして、たしか三百名くらい中国本土への再入国を認めておる次第でございます。したがいまして、何ゆえに中国本土と北鮮とを区別するかということになりますれば、先ほど来私が申し上げましたように、やはり政治的な一つの大きな理由と申しますか、そういうものに影響をされてきておるわけでございまして、この問題につきましても、たびたび国会で御答弁申し上げておりますように、現在までのところは、そういう既定の線をくずすような、新しい大きなファクターになりますような情勢というものがございませんので、ただいまのところ、そういう既定方針を取り続けておる状況でございます。また、将来の問題といたしましては、私どもといたしましても、この問題について絶対に既定方針どおり続けていきたいというふうには考えておらないのでございます。
○西村(関)委員 いまの御答弁ですと現在の状態においては、国際情勢、特に日韓会談の外交上の問題からの配慮が強いように思いますが、そういうところがもう一つ私には納得がいかないのであります。日韓会談が一方において進められておるという段階と、北鮮への自由往来という在日朝鮮人の方々の希望がかなえられないということと、どう結びついていくか。これは北と南との二つの政権があって、相対立している現実から、政府がそういう方針をおとりになるということもわかります。私は、その背後に政治的な意図があるとは思いますが、それは一応抜きにいたしまして、人間本来の至情から出る、祖国へ帰りたい、そしてまた墓参りもしたいという気持ちをとどめることは、私はどうももう一つ納得がいかないのであります。その点につきまして、法務省の見解はいま伺ったのでありますが、むしろ、外務省の方針が、これを現状のままとどめておるというふうに私は考えるのでございますが、いま入国管理局長は、いつまでもこういう方針を堅持していこうとは考えない、できるだけこういう方針が緩和されるようにということを言われたのであります。現在はこれを変えるような諸条件が打ち出されてないからいたし方がない、しかし、いつまでもこういう状態を続けるというふうには考えていない、こういう御答弁でございましたが、外務省のお考えはいかがですか。
○飯塚政府委員 法務省同様、いつまでもそういう考えを固持していくという気持ちは持っておりません。
○西村(関)委員 質疑を終わります。
○永山委員長 緒方君。
○緒方委員 法務省にお飼いいたします。法務大臣がおいでになっておりますので、直接法案との関係はないのですが、この際、法務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。 法務委員会などにおいては、過去において論議をされ、いろいろ御検討なさっておるかも存じませんが、最近、いろいろな裁判の間違いで、無罪判決というのが過去にさかのぼって行なわれておる。裁判が正しく行なわれて無罪が出てくるのはいいが、無罪になったからそのままで済むということでは済まされない問題がある。長い間犯罪人として、社会の悪事を働いた者として刑罰を受けながら、今度はそれが間違っておって無罪である、これは間違いが解けたからいいじゃないかということだけでは済まされない問題があると思います。いまではそれに対して多少の日当というか、過去に通算して幾らかの弁償を払うておるようでありますが、その基準は一体どういうことできめられておるのか、その辺のことを教えていただきたいと思います。
○中垣国務大臣 お答えいたします。 一応地方の裁判におきまして罪状が決定し、その刑罰が決定いたしましたものを、その後におきまして無罪の判決が言い渡されました場合に、当人にとりましては、その間罪人扱いをされ、また自分の名誉や信用を傷つけられ、苦痛にも耐えさせられた、そういうことに対して、単なる裁判の無罪判決だけでは済まされないではないかという御指摘に対しまして、私も全く同感であります。そういうことに対しましての国家賠償の義務等も規定になっておるわけでありますが、かりにそういう賠償をいたしましても、なおそのような方に対しましては非常に申しわけのないことであると思います。原則といたしましては、検察におきましても、裁判法廷におきましても、あやまちのない真実を追求することによって誤審をしない、そういうことこそ望ましいものであると存じます。 なおまた、国の賠償等につきましてのこかまい規定がございますので、調査部長が来ておりますから、調査部長から答弁をいたさせます。
○津田政府委員 ただいまのお尋ねの、無罪判決によります場合、そのこ・とに関連いたしまして、抑留または拘禁を受けたことに対する補償につきましては、刑事補償法にその規定を設けておるわけでございます。現在、その補償は、裁判所の健全な裁量により、一部または全部に対してなされるわけでございますが、それには若干の条件がございます。額といたしましては、その日数に応じまして、一日二百円以上四百円以下の範囲内においてきめる、こういうことになっております。
○緒方委員 二百円以上四百円というのは、これは法で定めた基準ですか。
○津田政府委員 さようでございます。
○緒方委員 これは私も調べてなくてあれですが、いつきめられた額ですか。
○津田政府委員 昭和二十五年であると思っております。
○緒方委員 二十五年の状態の中できめられた補償金額というものが、十数年だった今日になお据え置かれるということは、非常に矛盾したものではなかろうかと思いますが、これを訂正するお考えはないのですか。
○津田政府委員 確かに御指摘のような問題はございますが、この面につきましては、実は裁判所のほうの予算に計上されている問題でございます。したがいまして、裁判所の予算と法律とが見合わない場合におきましては、改正が困難になるわけでございますが、その問題について裁判所と法務当局と協議をいたしたことはございますが、まだ本年度におきましては、この最高額、つまり、これには予算を伴うわけでございますが、この最高額を上げるような結論が出なかったものでございますから、いまだ改正の提案もいたしていないわけでございますけれども、確かに御指摘のような問題は十分あると思いますので、今後その点につきましては裁判所と十分協議をいたしまして、できるだけ改善をいたしたいというふうに考えております。
○緒方委員 いろいろ協議したけれども、まだ改定する結論に至らなかったという、その結論に至らなかった理由、どういう理由があってそういう困難な面があったのか、その点をお聞かせいただきたい。
○津田政府委員 御承知のように、裁判所所管の予算の問題と、政府の法律案の提出の問題とには、非常にめんどうな問題がございまして、かつては証人の日当を増額する問題につきまして、いろいろいきさつがあったわけであります。証人の出頭日当につきましては、これが改善をいたされまして、今日一日千円以下ということにまでなったわけであります。その際にも、この問題は一応出たわけでございますが、最高裁判所のほうの予算的措置についての結論が、どうも結論を得られないというようなことで、今日におきましてこれを改正することができなかったというのが実情のようでございます。
○緒方委員 どうも私は本末が間違っているのじゃなかろうかというような気がするわけです。法の仕組みで上げたり下げたりはなかなか困難だ、こういう何でございますが、今日十数年前の基準が、無実の人たちに損害の補償をしなければならないという問題に対して、法の手続がうるさいから放任されているということは、これはまことに本末を間違えた議論じゃなかろうか。法の手続が間違うているなら、間違うている法の手続というものを変えた上でやらなければならない性質のものじゃありませんか。めんどうな手続があるならば、これはいつまでも放任しておくのですか。その点をひとつお伺いしておきたい。
○津田政府委員 この最高裁判所の予算につきましては、御承知のとおり、最高裁判所が直接概算要求をいたしまして、政府との間で取りきめをするわけであります。最高裁判所がこの問題について予算的措置をとらない限り、これに見合う法律案の作成ということは政府としてはできないというたてまえになっておるわけであります。そういう事情がございますので、最高裁判所にこれを踏み切らせないと、この問題は解決しないという問題であります。御承知のように、三権分立でございまして、最高裁判所と政府と意見が違った場合におきましては、調整の余地がないわけでございます。そこで、そういう意味でいろいろ裁判所との間に意見の相違等がございますが、この問題もその一つであると言って差しつかえないかと思うのでございます。しかし、私どもといたしましては、先ほど申し上げました証人の日当の関係につきましては、結局今日の実情に合うようにできたわけでありますから、この問題につきましても、御指摘のとおり、努力いたしたいというふうに考えているわけでございます。
○緒方委員 直接法務省自身に予算編成の責任がないような状態なんですが、法務大臣としては、これは早急に最高裁判所とお打ち合わせになって、時宜に沿うたような状態につくっていただかなければならない問題じゃなかろうかと思いますが、御努力できますかどうか、その点をお伺いしたい。
○中垣国務大臣 無罪の判決を言い渡された人が、有罪の判決を受けている期間、並びにそれまでに至った期間における苦痛や、あるいは名誉の失墜、そういうものを考慮に入れますと、十年前の二百円以上四百円以下というのは、ほんとうに低きに失すると私は思います。ただいま調査部長からも御説明いたしましたとおりに、裁判所の予算のたてまえというものがああいう独自のたてまえに法律上なっておりますので、法務大臣といたしましてこれを引きずるようなやり方はできませんけれども、誠意をもちまして申し入れいたしまして、裁判所側に近い国会におきまして改正案を提出いたしますように申し入れをしたい、かように考えております。
○緒方委員 努力をしていただくというお約束ですから、その点はひとつお願いしておきますが、もしこの基準を変える場合の構想ですが、いままでのように最高四百円から最低三百円の範囲内を今後変えるなら、それを二倍にした金額にするか、三倍にした金額にするかということの問題にしかならないと思います。やはり実際に即したような体制の方向でなければならないのじゃないか、単に日当という形でもってすべき性質のものであるかどうか、これは非常に研究すべき性質のものではなかろうか、こう思います。犯罪的な何らかの責任が当人にあることならばともかく、全く関係のない人が誤審の上に基づいて受けた損失というものは、国が当然精神的なものは抜きにして補償をしなければならない性質のものではなかろうかと思います。単にいままでのように改正するとするならば、基準引き上げという形にしかならないのかどうか、その点の大臣の御見解をひとつ承っておきたい。
○中垣国務大臣 刑事訴訟法による国家弁償の内容につきましては、それぞれの概定がこまかにあるわけであります。御趣旨のような御意見につきましては、非常に私も同感でございますが、いかなる金額が適当であるかということにつきまして、いまここで結論的なことを申し上げるのは適当でないと思いますので、できるだけ合理的かつ適正なものを定める改正をしたい、かように努力をいたします。
○緒方委員 何も私はここでどれくらいな金額にするのが適当かということをお聞きしようとは思っていない。一つの構想としてあなたにお伺いしておる。たとえば、いまでも選挙違反なんかでずいぶん出てきておりますが、相当高給取りの方々も選挙違反なんかで身柄を拘置されるような問題もたくさん起こっておる。それらの中に、もし全く事実のない、誤った形でもって御当人に迷惑をかけたとするならば、月に百万円だとか百五十万円だとかいう月給をいただいておる人に千円かそこらの弁償を払うようにしたからというて、これはとても比較にできない問題じゃないだろうかと私は思う。それはそれに相応するような何か基準をつくらなければならない性質じゃなかろうかと思う。でなければ、これは少々間違っておるかもしれぬが、引っぱって調べれば何かあるかもしれない、間違っておったら無罪にすればそれまでじゃないかということで、無責任な刑事行政が行なわれていく一つの危険性がある。誤ったことに対しては国が全部賠償の責任を持つという基本態度がなければいけないのじゃないだろうかと思う。そういう形で当人の収入を基準にしてこの賠償ということを何かつくられるかどうか、その点のお考えをひとつ承っておきたい。
○中垣国務大臣 補償金の定め方につきましての基本的な考え方というものは、御指摘のとおりに、そういう諸般の事情を当然見込んで、定めるべきものだろうと思います。本人の受けた、たとえば経済上、財産上の損害であるとか、あるいはそれによる苦痛、あるいは刑務所等に収監された場合でありますと、その勾留された期間、そういったもの等も考慮に入れて、この際できるだけただいま言われましたような考え方を取り入れて定めるような、そういう話し合いを裁判所側としたい、かように考えております。
○緒方委員 何ぼこういうことをされても、先般無罪の宣告を受けました吉田老人にいたしましても、五十何年間という長い間をついに獄舎の中で過ごしていかなければならなかった。一億の金を積もうとも、当人の人生を取り戻すことはできないほどの大きな犠牲を法の名前でもって与えておるわけです。何ぼ裁判長が過去の先輩のあやまちを謝すると言ってみたからというて、そのことばでもっていやされるべき性質のものではないでしょう。もちろん、裁判をする人にしても、あるいは検察当局の方々にしても、お互いに人間ですから、あやまちは絶対にあってならないとは私も申しません。しかし、もし万一あやまちがあったならば、その人にかけた迷惑というものは、これは国が一切の責任を負うて償うてやるという基本の上に立っていただかなければならない問題ではなかろうかと思う。 私の地元にもこういうかわいそうな人が出てきておる。新聞の中でも、晴れて無罪になったのに、家も仕事もふいになり、家族は分散してしまって、どうすることもできなくて、とうとう国を相手に訴訟をしなければならないというような問題まで起こってきておる。この人も疑われた面はあったかも存じません。しかし、明らかに犯行日時のアリバイはりっぱに成立しておる。何日の何時何分まで私は家族と一緒にこういう番組のテレビを見ておりましたと言っておりながら、それが取り入れられずに、第一審でもって三年の懲役を受けた。高裁でもってこれが無罪にされて帰ってきた。帰ってきたけれども、働いておったところはすでに首になって、持ち込んでおった道具は一つもなくなってしまい、貸しておった金も、借り手はどこに行ったかおらなくなってしまって、失業保険をもらおうと思っても、六年も七年もかけておる失業保険ですら、一美ももらえない。家財道具一切がなくなってしまった。こういう状態に立ったら、この誤った判決をしたところの裁判官、誤って検束したところの検察官は、当人に対してどういう申しわけをしますか。だれがこの責任をとってくれるのです。わずか一年、三年の間に一家四散するような、そういう事態に追い込まれた人たちを、煙が悪かったなどで済ますつもりですか。その点をお伺いしたい。
○中垣国務大臣 ただいま事例をあげられましたそういう方に対しましては、まことに申しわけのないことであると思います。同情にたえません。しかし、先ほど来申し上げましたように、国家の補償というものは、それぞれのこまかい規定によって行なわれておるのでありますから、この基本の二百円以上四百円以内というこれを直さない限り、私がここでどのようなことを申し上げましても、実効は伴わないわけであります。何回も申し上げたのでありますが、裁判所側と誠意をもちまして話し合いを進めて、近い国会でこれらを改正したい、かように考えております。
○緒方委員 法の規定を運営していくために、どんなに気の毒と思ってもしかたがないとおっしゃるけれども、それだけでは私は済まされないと思う。裁判所自身も、間違った判決の上で迷惑をかけたならば、働いておったところに、この人は首を切らないでもとどおり働かせてやってくれと言うくらいの努力をする義務がある。こんな疑いをかけられなかったら首になる必要もなかった。そうでしょう。失業保険も、六年も七年もかけて、刑事問題で勾留されて、その間一年も二年もかけられなかったがために、もらえない。労働省に行って、あなた方これだけは何とかしてくれと言って折衝する義務があると思う。そういう義務も努力もせずして、まことにお気の毒でございますと言ったのでは済まされないでしょう。あなたたちにはそういう努力をするお気持ちもわきませんか。必要も感じませんか。
○中垣国務大臣 具体的にその人につきましてどうするとかこうするとか、私はよう申し上げませんけれども、一般論でございますと、そういう者をいかにして救済していくかということは、りっぱな、また非常に大事な政治の問題であろうかと存じます。たとえば保護司の任務の中にも、そういうようなお世話等をしなければならない点もあるようであります。また、人権擁護といったような面からも、そういうことをお世話しなければならぬ点があろうかと思います。これをお金の面でどうこうということになりますと、一応どういう認定をするか、どういう査定をするかということは、御承知のとおりに、裁判所で行なうわけでありまして、法務大臣がこれをどうこうするというわけにはまいらないのであります。しかし、人道的にそういう目にあわれた人に対しまして仕事のお世話をするとかいうようなことは、何らかの形ですることのほうが正しい、当然だろうと思います。
○緒方委員 裁判所の管轄ですから、法務大臣をあまり責めてもしょうがないようでありますが、裁判所自身も、間違いを起こしたからというて、一がいにそれを責めるわけにもいきますまい。もし間違いが起こったときには、何ぼ法律を守る人だからというて、法律にばかりかじりついているのではなくて、これは気の毒をしたというて、当人に対して与えた損害の一部くらいはやはり償うてやる気持ちがあってしかるべきだ、そういうくらいな指導がやはり必要ではなかろうかと私は思います。もし今後こういうことが改正される運びになり、それに対して御試案をつくられる段階においては、間違った中でもって善良な国民に迷惑や損害を与えた場合には、国がその一切の責任を持ってやるという基本に立脚して、構想を練っていただきたい。それでなければ、法は国民を保護する法だとは言われなくなると思う。法あるために一切を棒に振らなければならないという運命の者が国民の中に存在してはならぬ。そういう意味から、その上に立って新しい構想を練っていただくように私はお願いしておきたい。
○永山委員長 本日はこの程度にとどめて、次会は、明十四日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとして、これにて散会いたします。 午後二時十六分散会