社会労働委員会 第35号
- 発言数
- 55 件
- 登壇者
- 5 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1963/05/29
会議録
○秋田委員長 これより会議を開きます。 この際、おはかりいたします。 理事片村重雄君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○秋田委員長 御異議なしと認め、同君の理事辞任を許可することに決しました。 つきましては、理事に一名欠員を生じましたので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、補欠選任につきましては、委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○秋田委員長 御異議なしと認め、藤本捨助君を理事に指名いたします。 この際、午後一時まで休憩いたします。 午前十一時四十四分休憩 ————◇————— 午後二時九分開議
○秋田委員長 休憩前に引き続き争議を開きます。 内閣提出の国民年金法及び児童扶養手当法の一部を改正する法律案、及び老人福祉法案を議題とし、審査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
○田邊(誠)委員 今回提案をされました老人福祉法案は、わが国の老人福祉の政治的な対策の一環といたしましては、きわめて画期的な法案であると政府は申し述べておるのでございまするが、戦後老人問題が非常に大きくクローズアップされてまいりまして、たしか民間におきましても、十年ほど前から、老人憲章なり老人福祉法なりというものの制定を待望する声が非常に高まってきたことは事実でございます。これに呼応して、政府が今回この法律案を提案いたしましたのは、私は、一つの老人問題なり老人福祉対策に対する転換を来たす課題を提供したんではないかと、実は注目をしておる一人でございます。そういった意味合いで、各方面から注視されておる法律案でありまするだけに、私は、この老人福祉法案の持つ意味合いとその内容というものが、つまびらかに国民の前に提示をされて、国民の望むものが着実に実践をされるという方向をこいねがっておるものでございます。そういった意味合いから、以下若干この法の目的とするところ、また法律案の持つ内容の中でもって特に具体的な対策に対して、政府の持っておる方針と心がまえをお聞きしておきたいと考えるわけであります。 法律案の逐条的な内容に入る前に、いま申し上げたような観点から、ただ単に老人問題だけでなくて、老人を含める日本の社会保障というものが、一歩前進の体制に入らなければならない時代にまいりました。これは現在の社会保障が進歩し、また現在の社会的な経済的な状態の中では、特にこの社会保障の充実が叫ばれておることは、これは御案内のとおりであります。私は特に、この老人問題というのがただ単に老人に対する敬愛の念とか、あるいは老後をひとつ安らかに送らせようじゃないかという同情心や、そういったいわばあわれみの観念、いわば一つの人間的な、あるいは人道的な意味合いだけでもってこの問題をとらえることは、必ずしも老人福祉に対する的確な問題の把握のしかたではない、もっと私どもは、これはやはりいわば社会的に、経済的に、そしてその意味からも政治的な重要な意味合いがあるというこういうとらえ方でもって、この問題に対処しなければならぬと考えるわけでございまするが、まずひとつ大臣にお聞きをしたいのは、そういった点から、提案説明にもございまするし、一番最初の目的にうたってありまする老人の福祉に関する原理を明らかにする、こういうようにいわれておるわけでございますけれども、一体この老人福祉に対するところの現在の内閣の持つ対策の基本というものは、言いかえますならば、老人福祉というものを現在の社会的にとらえ、あるいは経済的にとらえて最も重要な意味合いというものは一体何であるか。いま申し上げたように、ただ単なる非生産的な老人に対するところの一つのいつくしみというか、同情という、こういう意味合いでもってこの問題に対処するという、こういう考え方でありますのか、さらに竿頭一歩を進めて、経済的な意味合いにおいても積極的な一つの意味合いというものをその中から発見していこう、そういうことでもってこの問題に対処しようといたしておるのか、その老人福祉なり老人問題に対するところの積極的な意義づけというものは一体何に求めようとするのか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
○西村国務大臣 今回この法律を提案いたしましたのは提案の理由のときにも御説明申し上げたのでまず大体尽きておりまするが、さらに田邉委員から、その真意はどこにあるのかという御質問でございまするから、率直に申し上げたいと思いまするし、私は申すまでもなく、厚生省といたしましては、いわゆる揺籃から墓場までといわれておる行政をやっておるのでございますから、常日ごろ、わが国人口のこの年齢別構成ということに注意を払っております。そういう意味から見まして、もうこれは十分おわかりでしょうが、最近におきましては老齢人口が著しくふえております。その数字につきましては、後ほど政府委員から年齢別に数字を示してもよろしいと思います。かくのごとく非常に老齢人口がふえておるということが一つ。したがいまして、この点が非常な変わり方だということと、もう一つは、御承知のように、新憲法以来家族制度の崩壊といいますか、崩壊までにはいかなくても、著しい変化ということからくるいろいろな老人に対する問題というものが、やや著しい傾向を帯びてきたというようなこと。もう一つは、経済成長に伴って世の中が、いろいろ国民所得が上がり、国全体としては繁栄を来たしつつありまするけれども、そういう経済成長に伴う環境の変化が、必ずしもこの老人にいい環境をつくりつつないというようなこと。以上あげましたのは一般的な社会情勢の変化でございまして、かような変化から国民ひとしくこの老人問題に関心を持って、議員の皆さま方も私たちも関心を持つようになったということでございます。したがいまして、これらのことを主軸といたしまして、やはり老人の福祉と申すことにつきまして、ぜひ考えなければならぬと思われる客観的情勢が起こっておるのでございます。したがいまして、そういうことから考えますると、それによって起こりました結果といたしましては、まあ家族制度の崩壊にいたしましても、いろいろ老人に対して、どちらかと申しますと尊敬の念がややともすれば失われてきた。それは家族においてもそうでございましょうが、社会一般についてもさようなことを見受けられるのでございます。しかし、ひるがえって考えますると、老人はやはりだれでも若いときは仕事をしておった方でございまして、こういう方に対してそういうような家族から締め出され、また社会から締め出されるというような条件はよくない。少なくとも老人をそういうような意味においては尊敬し、あるいは老人の意見等も十分聞かなければならぬというようなことが当然起こるわけでございます。もう一つは、経済的な問題でございますが、経済成長の今日におきましても、老人は肉体的に、それから所得的に非常なハンディキャップを相当に持っておる。これらのことにやはり着目いたしますれば、その老人に対するハンディキャップをやはり何とかしてやらなければならぬ。すなわち健康の点につきましても国家が留意してやるとともに、また所得の点につきましても、国家がこれはある程度の留意をしてやらなければならぬ。いわゆる老人は、低所得者になることはあたりまえでございます。しかしそれとともに、それはただ単に国家が援助してやるということではなしに、やはり年齢にふさわしいところの労働もできるように国家が心がけていかなければならぬ。家族もきらうとともに、社会もこれはきらっておる。年をとったらもう雇わない。しかし年寄りの中には、相当に働く、適所を得ればまだ若い人にも負けないという方もありますので、一方においては老人に向くところの適職、適所をあっせんするとともに、もうどうにもならないという人には国家が徹底的にめんどうを見てやって、少なくとも一老人が人生を終わる場合に、やはり満足な気持ちを持って人生を終わらせたいというようないろいろな考え方から、今日老人福祉法をまとめて提案をいたしたような次第でございまして、これはもう田邊さんもおそらくそういうお気持ちであろうと思われますが、提案をいたしました気持ちはそういうことから出まして、そしてそれに対するおのおのの施策を講じようというのが、今回の法律の提案の理由でございます。
○田邊(誠)委員 いま大臣から御答弁がございましたことを、私は非常に注目してお聞きをいたしました。大臣の言われましたようないろいろな要因というものが、この老人福祉を前進させるという政府の心がまえになっておると了承いたしたいと思います。ただその中で、人口の状態が変わってまいり、あるいは家族制度の変遷があり、いろいろな条件の変化等があったということを言われましたけれども、そういうことがありました中において、大臣のおことばをとらえて云々しようというつもりはございませんけれども、老人が低所得になるのは当然だというようなお話がございましたが、私は現実的にはそういうことだろうと思うのです。あとでいろいろ数字の面は局長にお伺いをしたいと思いますけれども、しかし低所得であり生活に困る、あるいはまた肉体的にも非常に老衰化して健康を保持できない、こういう状態というものが、ただ単に老人だからやむを得ないのだということだけで済まさるべきものではないと思うのでございます。問題は、老人になれば職はなくなる、あるいはまた低所得になるという、この要因、この社会的条件というものが一体どこからきておるのか。したがって、この社会的な一つの障害というか、老人対策として、非常に冷たい条件というものを一体どういうふうな形でもって除去していくか、取り除いてやるかというところに、老人対策の基本的な考え方があろうと私は思うのであります。いわばこれらの悪条件なりこれらの悪い環境になりましたのは、いにしえはそういう観念でなかったかもしれません。いにしえの観念は個人の能力の問題であり、個人の境遇の問題であり、いわば運命的なものだということで片づけて、他のものはそれに対しては見向きもしなかった。国も一それに対しては、何らかの手当てをすることの必要性を感じなかった。実はこういう状態であったと思いますけれども、現在の社会はそういうことではないと思うのであります。実はこれらの悪条件が積み重なっておるということは、老人自身の責任というよりも、一つの社会状態、社会の条件というものが彼らをしてそういう非常に悪い境遇、非常に劣悪な環境に置くようになったというように見詰めなければならぬと思のでございます。そういったところに、私は老人福祉の現在の社会における、特に日本におけるところの社会保障制度のたてまえからいって、一つの重要なポイントがあるんではないかというように思うのでございまして、大臣が答弁をされた中で一番重視することは、現在の経済成長下において老人が非常に悪い状態にあるということに対して、これをひとつ何とか解決してやろう、こういう気持ちがあるということが、私は一番大きな問題点ではないかと思うのでございます。そういった点で私は、やはりいろいろな趨勢がありましたし、日本にはいろいろな変転がございましたけれども、現在の社会制度の上に立って老人福祉というものがあくまでも必要になってきている。その重要性が認められつつある、こういうことがやはり基本ではないかと思うのでありまして、その点に対しては大臣もおそらく同じお感じであろうと思いますが、立案をされました事務当局も大臣のその考え方を受けて、これをひとつ具体化するという意味合いで法律案をおつくりになったのではないかと思うのでございまして、局長のほうから補足的に、大臣に同じことをお聞きするのもなんでございますから、まず前段の説明をひとつお願いいたします。
○大山(正)政府委員 本法案制定の目的なり趣旨につきましては、ただいま大臣から御説明申し上げたとおりでございますが、まず最初の人口の増加と申しますか、最近における老齢人口の変遷の状態について申し上げますと…
○田邊(誠)委員 基本的なことだけでいいです。
○大山(正)政府委員 数字は後ほどにいたしまして、私どもの考え方といたしましては、一つにおきましては、老人が過去の社会におきましていろいろ現在の社会を築き上げるのに寄与してきた功労者であるということから、やはり敬愛すべきものであるという考え方があり、一面におきまして、どうしても肉体的あるいは精神的に一般的にいえばハンディキャップを持っておるのでございまして、いわば社会的弱者というような点に注目いたしまして、これに対する一つの生活保障というような考え方から何らか適当な措置をはからなければならない、こういう二面の観点からいたしまして、一方社会環境から、先ほど大臣からお話し申し上げました人口の増加あるいは私的扶養の減退、あるいは社会条件がいろいろ変わってきているというような点に着目いたしまして、今回の老人福祉法を立案いたしたのでございまして、単に老後を安穏に送ればそれでよろしいというような考え方ではございませんで、老人は老人なりにその希望、能力に応じて働くようにしなければならない。しかし何ぶんにもハンディキャップを持っておるものであるから、これに対しては何らかの生活保障的な措置を考えなければならない。そういう点に着目してこの立案をいたしたような次第でございます。
○田邊(誠)委員 大臣と局長からの答弁でもって、大体法の第一条にあります目的と、第二条、第三条を通ずる基本理念というものが判明してきたわけでありますが、実はいま局長の話もありましたし、法律案にも明記してあるのでございますが、いわゆる基本的な理念といわれる中にあって、老人というものは多年社会的にも、国家的にも非常に尽くしてきた人物であるから、当然の帰結として、老人というものは、いかなる時代的な変遷があっても、いわば敬いたっとばれるべきである。この敬愛さるべき老人というものが、いわゆる安心をしたところの生活が送れないのは非常に気の毒である、こういうことが実はいわれておるのでありますが、私はこの意味合いというものを否定するものではありません。やはりいつの時代にも人間的な意味合い、あるいは倫理的な意味合いというものが必要であるし、それはまたこういう時代に忘れられがちな現在でありますから、これを強調することは大切だろうと思います。 あとでまた具体的な点に触れたときに内容をお聞きいたしますが、たとえば老人の日というのが設けられておる。昭和二十六年でしたかに老人の日というのが制定をされた。それから十年以上たっておるわけでございまするけれども、しかし当初、この老人の日というものが制定をされていろいろな行事がやられてきた。これはもちろん政府の方針というよりも、あるいは民間の人たちのそういった盛り上がった力があったんでしょうけれども、いずれにしてもそういったことでやられてきた。しかし、この老人の日というものを設けて、老人を慰安したりする行事をやるという気持ちの中に、何といっても現在の気の毒な年寄りに対して同情して、一日すべての苦労を忘れて遊ばしてやろう、いわばさっき言った人道的というか、倫理的な面だけが先行して一それが先立ったことが悪いとは言いません。それがまたすべの対策の一つの基本にもなるし、あるいはムードづくりにもなるかもしれませんから、そういったことを否定するという意味合いではないけれども、しかしそれをあまり強調することによって、私が大臣のことばから引き出してまいりましたように、いわば経済的な意味合い、社会的な条件からくる老人に対する対策の必要性、特に現在の経済成長下における老人問題の持つ性格と意味合い、こういうものが、ややもすればそこにすりかえられるというおそれがなきにしもあらずであろうと私は思うのでございます。そういった点から、第二条の基本的な理念にまずもって老人は敬愛さるべきであるというように、大上段といいましょうか、いわば古い観念からいう頭からきめつけたような形でこれを書いて、一つの老人憲章ともいうべき理念をうたっておるのでございまするが、私はやはり第三条にありまするところの経済的な意味合い、これが一番重要な問題であろうと思います。その点は、考え方が大臣と一致をしたのでありますけれども、やはり多年にわたって、特に日本においては戦前戦後を通じてとられてきた、いわば現在的でない老人に対する一つの考え方、あわれみという上から見たところの一つのものの見方、こういうものが払底されないところに老人対策が現在的なとらえ方をされなかった、逆説的にいえばそういうものがあるんじゃないか、こういうように思うのであります。また現在の考え方というものは変わってきているんじゃないか、変わるべきものじゃないか、こういうように実はとらえておるわけでありまするけれども、もし私の考え方が誤りであるというなれば、先輩である大臣のほうからひとつお教えをいただきたい、こういうように思っておるわけですが、いかがですか。
○西村国務大臣 田邊さんの考え方は誤りです。田邊さんの若さでは老人問題はあまりわかりません。それは敬愛ということにあなたの言うのは、いいことはいいのですよ。ただかわいそうだからという博愛的なことで言っちゃいかぬ。それはそのとおりです。ただ敬しなければいかぬというのは、私も老人という年になりかかったから多少わかるのですが、昔話をして家族の者に対してもつらく当たる、それは自分が経験しているからではないですか。社会に出ても会社に行っても、ああしよう、こうしようと若い者に言う。そうすると、それは多年の経験から若い者を導こうとするのですが、若い者にとっては口やかましくてどうもきらいです。敬しなければならぬというのは、言うことをよく聞いてやれというのでして、年寄りのほうは、集まって盛んに過去のことを言いたいようですな。私も老人まではいかぬが、ややそれになりかかっておりますけれども、どうも年をとればとるほどやかましくなって、過去の経験を物語って、若い者いかぬじゃないかと、家族でも家庭でもそう言いたがる。社会に出てもそう言いたがる。そう言いたがるからどうしても社会もきらうし、家族もきらう。そこでそれはそうでないのだ。昔の功労者、昔の経験者は、何かいいことがあるのだから敬して、つとめて意見を聞いてやらなければならぬということを織り込んで、敬愛の意味合いで敬の字に力を入れておるのでありますから、それはひとつそのつもりで——ただ単なる博愛衆に及ぼす的なことでは、ここはいけないと思います。そういう意味で一つ集会所をつくってやると、必ずいろいろなことを言い出して昔のことを言うのです。それは非常に参考になることもある、こういう意味でございますから、今回の福祉法はそういう意味だということを、どうか十分御了承を賜わりたいわけであります。
○田邊(誠)委員 大臣からお小言をいただきましてたいへん恐縮をいたすのであります。私も実は、老人福祉についてはいささか関心を持っておる一人であると思っておるのでありますが、間違いを指摘されましてたいへんありがたく感謝をいたす次第であります。普通ならちょっとおこりたいところなんですけれども、この問題は非常に共通点がある問題ですから、大臣の率直なお話として私は承っておきたいと思うのであります。 大臣の言われたように、何かあわれみ的な意味合いでなくて真の意味合いにおける老人を敬愛する、こういうことで言われることは、実はそのとうりだと思うのです。ただ問題なのは、老人もまた現代の時代にいろいろと即応した考え方を持ってもらわないとだんだん置き忘れられていくと同時に、ただ単にそういった敬愛を強調するという問題の中から老人対策というのが引き出されてくるのではまだまだ十分でない、それだけでは不足である。いまの老人がたどっておる道、現在の境遇に対してこれを社会的に、経済的にどうとらえていくかということが第一と、ただ単にそれに対するてこ入れをしてやるというだけではなくして、これは実は最終的なねらいでもあるし、だいぶ広大な理想ではありますけれども、第三条にも書いてありますように、老人をできるだけ生産の場に何とかもう一度入れてやる、引き戻してやる、こういうところに何といっても政府として——これはただ単に西村さんが一国民として、あるいは一評論家として言われるならば、先ほどのことばはそのまま受け取ってありがたくちょうだいするのでありますけれども、政治の場においてこれを解決し、対策を講じようということになれば、やはり生産の場に老人をいかにして投入するか、そういう理想を持ちながら、そこまで行かないにしても現状をさらに改善してやる、こういうところに最大の力点がなければ、老人福祉対策というものはきわめて表面立った、からだけの、内容のない形におちいりがちではないか、こういうように私は思うのであります。そういった意味合いから先ほどちょっと逆説的なお話をいたしまして、大臣からそういった御叱正を賜わったのでありますけれども、この音加味合いを現在の政治の場において政府が的確にとらえて、これを力点とした対策を講じようという熱意と具体的な努力がなければならぬのじゃないか、こういうことを私は言いたいのでございますが、この点に対しては、先ほど大臣の強調された点は私は率直に了解をいたしますから、さらにこれを肉づける意味合いにおける政府の考え方、心がまえというものがぜひともほしい、こういうように実は考えるのでありますけれども、これは大臣の立場から、この点に対する心がまえと対策というものがおありであって、こういった法案が提出をされたのではないかと了解するのでありますけれども、その点はいかがでございますか。
○西村国務大臣 たいへんいい御意見を承りまして、そのとおりでございます。老人といいますか、年をとっても一働ける人を生産の場に考えるべきじゃないか、そういう施策をやるべきじゃないか、そういう意味からいって、この法律のどこにそういうことがあるか、こう指摘されたら実際はあまりない一といって法案に反対されるといけませんが、そういうふうなことはあまりない。しかし、あくまでも働ける人をその分に応じて働くようにするということは、これは最も必要で、今後そういう施策につきまして一これは働く場と申しますと、厚生省だけでできることではない。いろいろな面に関係を持つ行政でございまするが、精神はまさにそのとおりでございます。そういうことは十分考えておりますが、また客観的に見ましても、弱小年齢が非常に減りつつあることも、これは事実でございます。おそらく十九歳未満の人が昭和三十年で、パーセンテージは忘れましたが、人口の半数、四四、五%までは二十歳以下の人口であった。これがだんだん昭和四十五年くらいになりますと三〇%、三割ぐらいにしかなりません。いまの人口構成でいきますと、それですからますます年寄りに働いてもらわなければならぬという結果にもなりますが、これはそのために老人福祉法というものをやるわけでもございませんけれども、やはり分に応じて生産の場にどうして老人を引き入れていくか。これは会社とかその他官庁あたりも、そんなところに関係するわけであります。私たちのねらいもその辺にあり、非常に重点を置いておるということだけは御了解賜わりたい、かように思う次第でございます。
○田邊(誠)委員 いろいろと基本的な理念についてお聞きをしましたが、その理念について、一体老人福祉として対策を講ずるその内容と申しましょうか、これは非常に多岐にわたっておると私は思うのです。この老人福祉法にいろいろな対策の一環が載せてありますけれども、私は必ずしも、この法律案に基づく対策だけが老人福祉対策の全般ではないと思う。その一環といいましょうか、いわばその一つの柱と申しましょうか、大臣、ごく項目だけでよろしゅうございますから、大体老人福祉対策として考えられる点、ここに載っておる一つの福祉的なサービスの面もありまするけれども、それ以外の、老人福祉ばかりでない全般的な社会保障にわたるものもあります。しかし同時に、当然対象としてとらるべきところの福祉対策というものがあろうと思うのです。大体、大別されてどんなぐあいに考えておられましょうか。現在講じられておりましょうか、ひとつこの際まずお示しをいただきまして、その中で、一体老人福祉法に示されるところの内容はどういう位置づけがされるべきものか、こういうふうに私どもは実は考えてみたいと思いますので、その点に対するお答えをいただきたいと思います。
○西村国務大臣 この法律で一体何をやるのだということでございまするが、大別いたしまして、従来もありまするような老人ホーム——これは有料、無料、軽費、いろいろありましょうが、老人ホーム、それから老人クラブ、老人が寄っていろいろ話をし合うというようなもの、それからその他老人の養護施設、いろいろな養護施設がございましょうが、そういうような養護施設のことについていろいろやりたい。老人養護施設ですね。 〔委員長退席、柳谷委員長代理着 席〕 それから老人の日をつくって、その日にはやはりそれぞれの催し等も一やる、こういうような仕組みに大体なっておるのでございまして、この律法の制定を見ましたら、いま申しましたような施設のそれぞれにつきまして、ひとつ国家の援助を強化したい。また地方公共団体の努力等もひとつ促したい、かように思っておるのでございます。こまかい点につきましては、政府委員から答弁いたさせます。
○田邊(誠)委員 私のお聞きしたしかたがちょっとまずかったと思いますので、私のほうから、それでは大体考え方を明らかにいたしてまいりたいと思いまするが、この老人福祉法案の内容に示され、いま大臣から御説明のありました点は、いわば老人福祉対策の全体ではないと思うのです。いまも大臣のお話があった老人ホーム、これは各種のものを段階的に、いろいろな条件に即応してつくる、こういういろいろいままでよりも深みのある考え方でありまして、これらを中心としたいわゆる老人福祉サービスといいましょうか、こういった点が一つあると思うのであります。もちろんこれは施設ばかりでなく、住宅の提供、これは外国等では特に強調されておるわけでありますけれども、そういった面もありまするし、健康診査等の保険医療、こういった面にわたるもの、奉仕員等を通ずる家庭サービス、あるいは老人ホームや老人クラブ等を通ずるそういった一つのレクリエーションまで至る行き届いたサービス、こういったものが一つあることも疑いない事実であります。しかし、これだけで私は老人福祉対策というのが終わりであってはならないと思うのです。これは老人福祉法案という法律案の持つ中身ではなくて、老人福祉の全体的な面からいいまするならば、当然これと相応した社会保険の問題、あるいは老人福祉法の中の範疇には属さないけれども、生活保護法として当然同じく併用されるところの公的な扶助の問題、特に老齢扶助の問題、こういった問題も、やはり生活保障、所得保障という面からいって、当然なおざりにできない老人福祉の問題であろうと思う。それと、私が先ほど言いまして大臣のこの点では共感を得ました、いわゆるより生産的な、より積極的な意味合いにおいて、老人に対するところの職業を選ばせる、いわば労働をさせるという面におけるところの対策、職業を保障する、そのためにはもちろん老人向きの職業を開拓する必要もありますし、あっせんをする必要もありましょうし、あるいは若い者とは比較にならないほどのいろいろな悪条件にある老人に対していろいろな再訓練をする、こういう必要もございましょうし、これらの老人の特殊な条件というものを考慮した、いわば中高年齢層の労働問題、職業問題というのがいろいろ問題になっておりますけれども、私はそれ以上に高度の政治的な配慮を必要とするところのこれらの職業問題というのがあると思う。いわばこれらのものが総体的にからみ合いながら、お互いに補完し合いながら対策が講じられているところに、実は非常に重要な意味合いを持ってきた老人福祉対策というものが一歩前進をし、また全体的な対策として樹立されるというかっこうになろうと私は思うのでございまして、この点に対するところの基本的な心がまえというものを実はお聞きをしたかったのであります。大体いままで私が言ったこと——まだ足りない点もあろうと思いますが、これらの点を考えることが老人福祉の全体的な筋合いではなかろうかと私は判断をいたしておりますけれども、一体政府ではそういうような観点でこの老人福祉を見ておるのか、あるいは老人福祉法に規定をされんとするものが老人福祉の全般であって、これをもって足れりといたしておるのか、この点に対しての考え方を実はお聞きしたがったのであります。
○大山(正)政府委員 ただいまお話がありましたとおり、老人福祉法に規定いたしております各種の施策が老人福祉の全部ではない。 それ以外に、老人福祉に関連のある施策と申しますか、そういうものがほかにもたくさんあると考えるのでございまして、大体ただいまお述べになりましたような保険医療の問題、あるいはそれに関連しました社会保険の問題、年金の問題、それから生活保護の問題、それから労働住宅あるいは老人に関するところの租税でございますね、公租公課の問題等が、やはり老人福祉の観点からいろいろ取り扱われなければならない問題ではないか。これ以外にもいろいろあろうかと思いますが、国あるいは地方公共団体の行ないます施策として老人福祉に関係のあるのは以上のような事項ではないか、かように考えております。
○田邊(誠)委員 大体考え方が明らかになってまいりました。私はその考え方に立って、現在の状態というものが一体どういうふうになっておるかということを正しく把握することが、この対策を講ずる上からいって何としても一非常に重要なポイントであろうと思うのでございます。もちろん、その現状を把握した上に立ってすべての対策が一挙にやれるも一のでも一ないし、また解決されるべき状態にないことはよく承知しておるつもりでありますから、そのことをもって政府当局の不備を責めようという気持ちではございません。あくまでもやはり老人福祉、それを含める社会保障全般の前進のために、現在の事態というものを正しく認識することが欠くべからざることであろうと私は思うのでございまして、そういった点から、以下若干数字的な面も含めましてお聞きをいたしたいのでございます。 その前に、いま老人老人とおっしゃいますし、さっき大臣もやや老人になってきたようなお話がございましたけれども、通例の意味合いにおいて、たとえばいろいろな統計を拝見いたしますと、六十歳以上に対していろいろと規定をしているところもありますし、六十五歳以上をとって老人の範疇に入れるという政府の統計もございますので——もちろんこれは年齢でもって画一的に区別することの是非というのはございましょうから、私は単純にそういったことでもって区切ろうという意味合いではございませんけれども、一応、以下申し上げるようないろいろな社会的な条件もございますし、それらを総合いたしまして、大体どの程度から老人福祉としていろいろな対策を講ずるのか、その基礎的な考え方と、どう規定をされておるか、この点はいかがですか。
○大山(正)政府委員 この老人福祉法案におきましては、ただいまお話にもありましたように、年齢で区切ることが必ずしも適当でないというように考えまして、老人の定義というものを実は規定しておりません。社会的通念に従いまして考えるという立場をとっておるわけでございますが、ただ、具体的な措置をとります場合に年齢を区切らざるを得ない場合がございます。たとえば健康診断をやると申しまして市町村の健康診断を行ないますのに、やはり年齢を区切らざるを得ないというので、この法案におきましては、その場合には六十五歳ということにいたしております。それから養護老人ホーム等に措置をする場合も、一応の年齢をとらなくてはなりませんので、そのような場合には原則として六十五歳とする、ただし、特別の事情のある場合には六十五歳未満でもよろしいというような立て方をいたしまして、法案全体としては年齢で区切りませんで、個々のケースにあたって必要に応じて規定するという立て方をとったわけでございます。一般的にいって、老人というのを年齢で考えた場合はどうかといいますと、定義としてはないわけでございますが、しいていえば、六十五歳くらいというように一応考えております。
○田邊(誠)委員 いま大体六十五歳なら六十五歳と健康診断等の場合における年齢の基準も一明らかになりましたが、この是非はいずれにいたしましても、先ほど大臣から、話が途中までございましたけれども、この老人のこれから先の数といいましょうか、人口といいましょうか。これは一体どのくらいになっていくのか、もちろん、それには日本人の平均寿命が一体どのくらいか。これはだんだん延びてきておりますし、現在男は六十六歳、女が大体七十一歳、こういうところにまでなってきたのでありますけれども、この平均寿命が延びていくという事態も一考えなくちゃなりませんが、この二つの問題も、第一番目の老人人口というものがだんだんとふえていく、特に若い層との間における対比が非常に変わってきている、あるいはまた、これから先の出産の状態というものが変わっていくという事態の中でもって、この比率というものがさらに変革がある、こういうように実はわれわれは見ておるわけでございまして、これが老人問題をこれから先、取り扱うにあたって、長期的な展望を政府が考えるといたしますならば、やはり非常に重要な要素になってまいると思いますので、簡明でけっこうでございますから、わかりやすくこれから先の見通し、これは一つの見通しでございますから、的確なものでなくてけっこうでございますが、一応の見通しというものが一体どのくらいになるのかということを、この際ひとつお示しいただきたいと思います。
○大山(正)政府委員 六十五歳以上の人口について申し上げますと、昭和三十八年におきましては、六十五歳以上の人口が五百八十四万九千人ということで、総人口に占める比率は六・一%ということに相なっております。その後六十五歳以上の人数並びに総人口に占める割合が増加してまいる傾向にあるということが、人口問題研究所の推計に出ているのでございまして、昭和五十年をとりますと、六十五歳以上の人口が八百二万人、総人口に占める割合が七・五%、それから昭和七十年になりますと、六十五歳以上の人口が千二百六十二万三千人で、総人口に占める割合が二・一%、昭和九十年をとりますと、六十五歳以上の人口が千九百七万二千人、総人口に占める割合が一七・七%というように、六十五歳以上の人口数並びに総人口に占める割合が逐次増加していく傾向にあります。
○田邊(誠)委員 いま御答弁がありましたような状態でございますから、昭和三十年なりを起点といたしまして、ここ半世紀の間に、六十五歳以上の人口にいたしましても一約三倍からの増加になる、こういうことが見込まれておるわけでございますから、われわれはこれをまず基本といたしまして、この老人対策というものをよく腰を落ちつけて考えなければならぬと思うのでありまして、何か現下の時流に押されて、老人福祉法をつくってもらいたい、老人憲章をつくってもらいたい、こういう形のものだけでもって老人福祉対策というものが講ぜられるべきものでないことは、御案内のとおりであろうと思います。だんだん長生きをしていくかっこうになりますけれども、長生きをしても生活の環境に苦労をさせない、苦労をしないという状態をひとつつくり上げたいというふうに、われわれは念願をいたしておるわけでございます。 ついでですから、この際ひとつ、第二番目に質問をいたしました平均寿命というのは一体いまどれほどになっておるか。いままでの過去の大体の推移が出ておりまして、昭和二十年は別といたしまして、昭和二十五年においてすらもが戦前よりも一平均寿命は延びておる、こういうぐあいになっておるわけでございます。したがって、おそらくや、これから先もさらに平均寿命の延びは著しいもがあると考えるわけでございまして、現在日本は、まだまだ、平均寿命の点から見ますならば、諸外国に比べて必ずしも一番高位にあるとは言い得ないのでございますけれども、今後大体同じような推移で、同じようなカーブでもって——カーブはもちろん鈍化しますけれども、大体延びるものと判断してよろしゅうございますか、こういう際ですから、ひとつ教えていただきたいと思います。
○大山(正)政府委員 日本人の平均寿命の推移は、明治時代には大体男子が四十二・八、女子が四十四・三というような状況でございました。昭和に入りまして、戦前、昭和十一年から二十年までは非常に下がっておりまして、男子が二十三・九歳、女子が三十七・五歳ということでございましたが、終戦後次第に平均寿命が延びまして、昭和三十年には男子が六十三・六歳、女子が六十七・八歳、昭和三十六年には男子が六十六歳、女子が七十・八歳ということに相なっておりますが、今後の推移の推計につきましては、目下のところまだ的確な数字がございませんので、残念ながらお答え申し上げかねます。
○田邊(誠)委員 きっとだんだん、現在のところ一番長生きをしているといわれるノルウェー、スウェーデン、それに次ぐところのイギリス、こういう状態に、社会保障の充実やいろいろな経済的な、あるいは社会的な施策が講ぜられる中において、寿命は延びていくというようにわれわれは判断をいたすわけでございまして、いずれにしても老人人口が非常に多くなってきておる、そうしてまた平均寿命が延びてきておるという事態が、私どもはいまの御答弁で明らかになりましたので、これはますます老人というものに対してないがしろにすることはできないということが、よく理解されてきたわけでございます。 そこで私は、一般的なそういうお話もございましたけれども、老人問題を考える場合に、何といっても日本の経済的な条件というものが非常に劣悪であり、一般的な国民というものは、若いときに汗水たらして働いていながらも、これは十分老後を養うに足るところの賃金なりあるいは退職金なりをかちとることができない、こういう状態でございまするし、またあとで年金局長等にも、お伺いをしておきたいと思いますけれども、公的年金やその他各種の年金制度等も一完備しておらない、こういう状態でございますだけに、老人福祉の問題というのは、他の国に比べて二重の非常にむずかしい条件があるんではないかと私は思うのでございます。 そこで、これは厚生省でも一労働省でもよろしゅうございまするが、いま大体、老人福祉の対象となるべき年齢というのが六十歳なり六十五歳ということを言われたのでありますけれども、日本で働いておる労働者といいましょうかあるいは勤労国民が、一体どのくらいまで職にあって賃金をもらうことができ、そして一応の日常の活動を続けることができる、こういう状態であるかということを、私はやはりこの問題と関連して承知をしておかなければならぬと思うのでございますけれども、いろいろ定年制等の問題がございます。定年制をしいてないところもございますし、また、しいてないところの中小零細企業等が特に賃金も低い、あるいはまた退職金も少ない、きわめてそれが合理的でない、こういうことになるわけでございますが、一応政府でお調べになっておる範囲で、一体、現在日本の働いておる人たちというのが、どのくらいでもって大体職を離れていっておるのか、それと関連をして、定年制をしいておるという企業がありますならば、一体どの辺の年齢というものが一番多いのか、数字がおわかりでございましたならば、ひとつお示しをいただきたいと思うわけであります。
○大山(正)政府委員 定年制の問題でございますが、日本経営者団体連盟の昭和三十六年三月末現在の調査によりますと、調べました会社の数が三百七十九社でございまして、そのうち定年制のないものが十三社、定年制のあるものが三百六十六社、九六・六%が定年制を持っておるということに相なっております。その定年制のうちでも、一律の定年制をとっておりますものが二百六十四社ございまして、そのうち五十五歳を定年としておりますものが二百三十四社、六十歳を定年としているものが二十社、その他が十社ということになっておりますので、五十五歳を定年としているものが圧倒的に多いということになります。別に男女別で定年制をしいておりますのが七十四社ございまして、この七十四社のうち、男子五十五歳、女子五十歳というのが三十八社、男子五十五歳、女子四十五歳というのが十六社、その他が二十というようなことに相なっております。
○田邊(誠)委員 いまお話がありましたように、大体大きい企業は定年制をしいているところが多いというのは事実でございまして、そういった点から見ますると、五十五歳の定年というのが大体圧倒的に多いわけでございます。諸外国で定年制をしいているいろいろな状態は、内容的に違いますけれども、それを見ますと、多くは大体六十歳以上でございまして、ノルウェー、カナダ等のように七十という、こういった多い国もございますけれども、大体六十歳以上というのが非常に多いということが現状でございますから、それと引き比べますならば、日本の働いておる人たちというのは、より早くその企業から離れていかなければならない、いわば職を離れていかなければならない、こういう現状でございます。五十五歳といたしますならば、年金の開始時期あるいは老人福祉のいろいろな施策を受けるに足る一応の対象になるところの年齢でございますると、かなり実は下回っておるという状態でございます。しかも加えて、私がいろいろと聞いてまいった範囲でも、五十五歳なりでもってやめる人たちよりも、それに至らないでもってやめる人たちが、かなり多いのが実は現状でございます。また、一たんやめてほかの小さな企業等に就職をする、こういうことも実はばかにならぬほど多い状態でございます。これを私どもが見た場合には、まだまだ働けるところの年齢でありながらも一、これが実は生活の基盤を失う、こういうところでもって、これは国家的に見た場合に、いわば労働力の浪費といいましょうか、でありまして、再雇用の見込みは非常に少ない中高年齢の方々がその職から離れていくことは、きわめて実は注目をしなければならない現状であろうと思うのでございます。しかし、もちろん早くやめたにいたしましても退職金が非常に多かったり、あるいはまた退職金の基礎になるところの賃金を非常にたくさんもらっておる、こういうことでございまするならば、これはまた事情は別でございます。退職金の問題の前に、労働省の職安局長は来ておりますか——職安局長がお見えでございまするので、これはあなたに数字的な質問をする前に、労働省が出している毎月の勤労統計の調査によりますると、昭和三十五年の十月の工業労働者の大企業におけるところの平均賃金は一万八千九百九十円、小さな工場における平均賃金が一万三千二百七十円、大体これは工業労働者であります。大学出の職員は大体一万三千五百円、こういうことになっておるわけでございまするが、これは書物によりましたのですから、あるいは的確なものでないかもしれませんけれども、戦前の賃金に比べますると、昭和十年の内閣統計局の賃金統計を対象として見た場合には、工業労働者の昭和十年の平均賃金が六十三円十四銭、大学の職員が約七十円、これをまあ大体四百倍ぐらいの指数で直しますると、工業労働者の賃金というのが約二万五千円、大学出は約二万八千円、こういうかっこうになるわけでありまして、戦前に比べることは、必ずしもこの際、単純に比較できない点もありまするが、かなり実質的な賃金というものが上回っているということにはならぬと思うのでございまして、私の大体いま申し上げたような点が誤りでなければこれでよろしゅうございまするが、いいですか。
○三治政府委員 私、賃金関係の行政に携わっておりませんので何とも申し上げられませんが、いまおっしゃったように、戦前の同職別の賃金格差から見ると、戦後は非常に平均化してきた、男女別の賃金もそうであるという意味において、いわゆる大学出のサラリーマン、技術者というものが、一般の賃金水準から見れば、割合において相対的には低くなっておるということは多少言えるかと思います。
○田邊(誠)委員 まあ下のほうへレベルダウンしていきますから、なるべく上のほうへ上げるような気持ちで答弁をしてもらいたいと思うのです。これは職安局長の答弁としては無理かもしれませんけれども、大体退職金は、企業別に見まして一体どのくらいの程度になっておるか、数字はおわかりでございますか。
○三治政府委員 政府の公式の調査としてやった退職金の調査というものはないと思います。あるいは一部の経営者団体とか民間で調査した資料はあるかと思います。われわれが調べた石炭の関係では、今度の合理化でやった場合において、大体大手のほうでは平均五十万円ないし七十万程度、これは一般の労働者でございます。中小の零細のほうでは、大体半数くらいが退職金規程を持っていない炭鉱会社でございます。石炭産業につきましては、そういう合理化による解雇者の退職金の問題で特別調査をやりましたので、そういうことについて私はお答えできるわけですが、一般の製造業その他でどういうふうな比率になっているかという問題につきましては、私は資料も一持ち合わせておりませんし、私の経験からいくと、政府が調べた実際の離職者の退職金がどのくらい支払われているか、産業別の、企業規模別の方式の統計はないと思います。
○田邊(誠)委員 これは私のほうから明らかにしても、別に直接いまの審議に関係ございませんから差し控えますけれども、たとえば大阪の労働部でもって昨年の二月に調べた賃金、退職金事情調査概要というものがございます。これを見ましても、百人以下の企業でもって、これは大阪という事情もございますからかなり高額でありますけれども百万円以下、一番多い五百人以上をとらえてみましても、中学出の労働者が百三十四万円、高等学校が百九十万、大学出は二百五十万、こういう程度でございまして、あなたのおっしゃったのと大同小異でございますが、退職金としては——私どもとしては、その規定のあるところはまだしもでございますけれども、問題は実は退職金規程のないところが非常に多いと思うのであります。これもおそらく数字が明らかでないでございましょうね、わかりますか。
○三治政府委員 わかりません。
○田邊(誠)委員 これはしかし、私は非常に多いと思う。こういう状態でございますから、賃金も戦前に比べて必ずしも急激な上昇を見ているというわけにはまいらない。退職金はまたまだ非常に不安定な状態でございます。しかも先ほど申し上げたように、定年までつとめないでやめる、こういう人たちもかなり多い。これらの状態を逐一お聞きする時間がございませんけれども、大体の趨勢がわかったわけでございます。 そこで、職安局長は急ぐような話でございますが、老人問題は、中高年齢層の問題以上に実は非常に深刻であります。職業問題というのは非常に深刻でございます。そういった点から、老人福祉と雇用という問題は非常に難解な問題であろうと思う。先ほど大臣からもその点に対するお答えがあったのでございますけれども、一体六十歳なり六十五歳以上で職業につこうという人たちはどのくらいありますか、お聞きをしたいと同時に、この職業につく際において、一体どのくらいの率でもって就職ができるのか、われわれとしてはおそらく非常に困難な状態ではないかと推察いたしておりますけれども、ひとつその点の数字を明らかにしていただきたい、これが一つ。 それから一たび居職をいたしましても、以前のように正しく生活ができるような賃金がもらえない、こういう状態というのは非常に多いと思うのでありますけれども、再就職後におけるところのこれら老人層の収入状態というものは、一体どのくらいになっておるのか、これをひとつ、おわかりでしたらお教えいただきたいと思います。
○三治政府委員 中高年齢層の再就職問題をわれわれ意識しまして、ここ一、二年、毎年十月に職安の窓口にあらわれました年齢階層別求職者の状況を調べておるわけでございます。それによりますと、昨年の十月で二万九千余でございまして、そのうちで、その十月一カ月の間に就職された方が千二百五十名ほどでございます。有効求職に対する有効の就職率でいきますと、大体七、八人に一人の就職者というふうで、この率はあまり芳しくございません。いまのは六十歳以上の方でございますが、失業保険の受給者につきまして、五十歳以上の方、これは若干資料が古いわけでございますが、三十五年では、失業保険をもらわれてから一年一カ月後の調査によりますと、五九・六%が再就職をされておるということでございます。若年層のほうではほとんど九〇%でございますが、こちらは五九%の再就職ということでございます。失業保険をもらわれても一、その後引退された方も相当あると思います。そういうことからいきまして、やはりわれわれのほうとしても、まだほんとうの中高年齢者の就職の状況というものを、ここ一、二年のいろいろの窓口や資料で調査はしておりますが、全体的に見る資料というものをまだ十分把握しておりません。今後ともその点は努力してまいりたいと思いますが、いずれにしても一この統計資料で見ても、中高年齢者の再就職の問題はなかなか困難だと思います。 それから現に今後の炭鉱離職者の状況を見ましても、三十五歳以上につきましては雇用奨励金を雇用主に出しても再就職をはかろう、こういうふうな対策を立てておるわけであります。しかも、実際問題として、この炭鉱離職者の再就職につきましては、政府は責任を持ってやるということで、いろいろの職業紹介方法をいま考えて実行しておるわけであります。そのうちで転職訓練というのがあります。中高年齢者向きの転職、これはやはり年功序列型の大企業になかなか入れない。そうするとやはり職人的職種と申しますか、技能を持って独自の責任でやれるというふうな仕事、たとえばコンクリート工とか起重機の試験を受けて起重機の運転をやるとか、いろいろの職種を考えまして、その点の就職訓練その他をやるということと、それからもう一つは、いまおっしゃいましたように、大企業のほうから定年後、ことに石炭なんかは大手から出ます離職者で高年齢者が多いわけでございますが、そういう方たちに対しては、やはり再就職のときにはどうしても賃金が、現在の年功序列型の賃金からいいますと、下がります。したがいまして、そういう方たちがやはり家族を生活させていくためには、どうしても必要な所得がなければできないわけですから、そういう場合には、夫婦で同じ職場、あるいは同じところから付近に無理なく通勤なり就職できるという、一種の共かせぎみたいな就職の紹介の方法とかいうような問題をやっておりまして、これで企業者にも一労働者側にも喜ばれるという現状でございます。
○田邊(誠)委員 いま大体お聞きをしましてわかってまいりましたけれども、老人の再就職は非常に困難であります。またその場合においても、必ずしも一生活を保持するに足るところの収入を得るわけにいかない、こういう状態が非常に多いわけです。実は私がいろいろな点をお聞きしてまいりましたが、老人対策を考える場合に、一体どの程度のてこ入れをしたならば、老人に対して、満足とまではいかないにしても、最低の生活を与えることができるのか、こういう点をまず考えていかなければならぬと思うのであります。その点からいいますならば、現在の施策は、きわめて貧弱であるということは申すまでもないことであります。 それでもう一つだけ実はお聞きをしたいのでありますけれども、いま大体の観念として、一般国民はもちろんですけれども、老人に限ってみて、老人はいろいろな生活環境の違いがありますし、子供に扶養されておる状態や、あるいは独立でもって生活しなければならぬ状態、あるいは施設に収容されるところの状態、こういう状態状態によって違いますけれども、大体最低生活を維持するためには一体どの程度の金が必要であるか、どの程度の収入があったならば長生きをするだけのことが保持できるのか、生活保護法の規定等もありますけれども、これは私は今国会を通じ、これまでもいろいろな機会を通じて大臣等にもお話をしてまいりましたとおり、実はもう的確な標準にならぬ。まだまだ不十分な点がございますから、生活保護基準でこうなつておるからこれが最低基準だということでなく、ごく常識的にいってどの程度になっておるか、お伺いしたい。
○西村国務大臣 いまの御質問の全部に答えられませんが、大体さいぜんからのお話のうち、中高年層の就職の問題、これは私に特にお尋ねでありませんでしたけれども、中高年層をして再就職の機会を与えるには、やはり家族手当、児童手当の問題が密接な関係を持っております。これが中高年層としては、再就職には一番条件が悪いと思うのです。しこうして中高年層でなしに、さらに老人に対しての再就職というようなことになりますと、おそらく、いまは定年制があって、定年でやめましても大部分の人はさらに再就職をするわけでございます。そういう場合には、やはり労力、能力とも相当に減退することは確かでございますから、自然に、給与の面につきましてもサービスの面につきましても、別な考え方は持たれますけれども、それよりも一老人にどういう職が適職かということをさがすことが第一じゃないか、そういうことでもっていろいろな指導をしていくということも、西村個人の考えですが、考えられるわけでございます。もし、てこ入れをするということになれば、そういうことにつきましても、私労働省と連絡をとりまして十分研究をしてまいりたい、かように考えておりますし、さらに政府委員から、ただいまの質問については答弁をいたさせます。
○大山(正)政府委員 老人が生活をしていくのには最低どのくらいの費用が必要であろうかという御質問でございまして、生活保護の数字ではだめだというお話でございますが、一応生活保護においてどのぐらい出るかということが現在での目安になろうかと思いますので、その数字を申し上げますと、世帯人員によって非常に違うわけでありますが、老人が一人で生活している一人世帯の場合をとって考えますと、一級地の場合で約五千円というのが日常の生活費ということに相なっておりますので、これに家賃を加えて考えなくてはならぬと思いますので、かりに千五百円の家賃のところに入っておるということでありますれば、六千五百円ぐらいが大体生活保護の基準になるというように考えられますので、大体いま申し上げましたような数字が最低生活費というように考えてよろしいのではないか、かように考えております。
○田邊(誠)委員 軽費老人ホームに入るのにどのくらい必要か知っていますか。
○大山(正)政府委員 軽費老人ホームの現在の入所の費用は、月額七千円ないし八千円ということになっております。
○田邊(誠)委員 大体生活保護を受けておる人たちの状態で、それよりも若干上と見られる人たちがいま軽費老人施設へ入っておる、こういう状態でありますから、これを見ましても大体七、八千円というものが軽費老人ホームに入る人たちの要する費用である、こういう形になるわけでございます。私はここまでいろいろとお答えをいただいてまいりまして、大臣にこの際あらためて、実は各種の年金の問題とあわせて、現在の不備をさらに指摘するという気持ちは私にはございません。しかし大臣おわかりのとおりでありまして、福祉年金の問題につきましても、現在の千円というのは、これはちょうど小づかいを使う額というのが大体二千円くらいまでが多い数字でございますから、小づかいにも一やや足りるか足らぬかということでございます。小づかい銭をやるという意味合いで福祉年金を設けるとすれば、それもけっこうでございますけれども、そういう意味合いではないと思うのでありまして、そういった点から、非常に現在の各種の年金制度や助成法というのは、老人に対してここに法律が規定せんとするところの基本理念というものを決して正しく貫いておるとはまだまだ言いがたい現状である、こういうことを私は理解をされたと思うのでございます。 いろいろな問題をお聞きする前提として、いろいろな数字をお聞きしてまいりました。もう一つだけお聞きしておきたいのでありますけれども、こういう状態でございますから、今後のいろいろな施設や対策を講ずる際のウェートを一体どこに置くかという問題にも関係してまいるのでありますが、おそらく老人層におけるところの被保護世帯なり保護を受けるところの人たちというのは、私は年々ふえておるのじゃないかと思うのでありまして、法案資料等を拝見しましたところが、かなりそういった状態というものが明らかでございます。三十二年には、被保護世帯、被保護者の総数のうちで六十歳以上の占める割合は一三・二%でありましたけれども、三十七年七月には一六・四%になっておる、こういう状態でございますから、老人の被保護世帯は年々歳々ふえておる、こういう状態が明らかでございますけれども、一体この状態というのは、今後もやはりふえる傾向にあるというようにわれわれは考えておっていいわけですか。
○大山(正)政府委員 私どももそのように考えております。
○田邊(誠)委員 そういった点をお聞きしてまいりまして、繰り返すまでもなく老人人口はふえていく、しかも生活は不安定である、就職もなかなか困難であるし、たとえ就職しても完全な生活を維持するに足るだけの賃金が保障されておらない、こういう状態でございますから、老人問題というのは今後ますます重大な意味合いを持ち、好むと好まざるにかかわらず、政府がさらに重大な決意を持ってこれに対処しなければならぬ、こういうふうになってまいったと思うのでございます。私は大臣にたびたびお聞きをしてまいりましたけれども、特に私は、現在の池田内閣のいわゆる所得倍増計画の推移を見てまいりましても一、先ほど中小企業の賃金と大企業の賃金の格差が縮まってきたというお話がありますけれども、私はこの国会でも指摘いたしまして、大臣もすでに御答弁をいたしましたように、必ずしも所得の格差は縮まっているとは言いがたい、こういう状態でございますが、実はこの成長経済下におけるところの所得の格差がさらに著しい、こういう現在の状態の中でもって、この経済事情が老人層に及ぼす影響が、また私は非常に至大ではないかと思うのであります。大臣はこの点に対しては当然一言お認めになると思うのでありますが、大臣、そういうことになりましょうね。
○西村国務大臣 やはり経済成長下の現象といたしまして弱者に非常に圧力がかかるということ、その弱者というのはからだが弱いということ、身体上の問題のハンディキャップという意味からいきまして、老人もまさにそうでございます。また一方、いわゆる富んでいない人、貧しいというものにその圧力がかかっていくと思うのでございます。 〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、こういうような状態でいきますれば、それこそ経済成長の目的とするところに合わないのでございますから、経済成長を円滑にはかろうとするならば、その圧力のかかる部分に対して、相当なてこ入れをしなければ経済成長の目的とするところに沿わない、かように思いますから、今後池田内閣は経済成長をはかろうとするならば、その弱者、圧力のかかる部分に対して十分てこ入れをやってこそ、十分目的を達するのではなかろうか、私はかように考えておる次第でございます。
○田邊(誠)委員 そういう厚生大臣のお心がまえは、私は非常に重要だと思うのでございますけれども、しかし現在、具体的な施策の面になりますと、先ほど大臣が最初に予防線を張られましたように、この法律案の内容は必ずしも万般の対策を講ずるところまでいっておらない、こういう状態でございます。現在、池田内閣がいろいろと諸外国との比較をされる場合に、お手本にされるのは何といってもアメリカでございますが、私は必ずしもアメリカが、この面に対して他の欧州諸国に比べて先進国であるというふうには考えておりませんし、また実はいろいろな違った面における悪条件があると思うのでございますが、それは一応抜きにいたしましても、アメリカにおいてすらもこの老人福祉の問題に対しては非常に関心を払っておることは、私は注目しなければならぬと思うのでございます。本年の二月の二十一日に、ケネディが議会に対して老人福祉に関する特別教書を送ったことは、すでに御承知であろうと思うのでございまするが、その中でケネディは、六十五歳以上の老人が病気にかかった場合には、ひとつ社会衛生施設においてこの医療費を国でもって担当すべきである、第二番目には、低所得や中間の所得層の老人の者は、時別な税の減免をしなければならない、第三番目には、老人用の住宅の建設のために、低利の融資をすることをひとつ積極的にやろう、さらに第四番目に、老人の就業の促進をはかるべきである、こういう内容を盛った教書を送り、この立法を議会に対して要請いたしたわけであります。私はその中で時に注目すべきことは、やはりこれに対しては長期的な展望が必要である、こういう観点でもって大統領は、五年間にアメリカ政府はこの老人福祉に対して百億ドルの経費をつぎ込むことを予定をしたい、こういうことを実は織り込んでおるのであります。五年間に百億ドルでございますから、大体一年に直しまして約七千二百億円くらいの額になるわけでございます。これと比較をいたしまして、実はそのあとでもって御答弁をいただくことはたいへん恐縮でございまするけれども、しかしものにはたとえがございまして、アメリカがこれだけの熱意を持って老人福祉に取り組もうとしておる現状の中で、はたしてこの画期的といわれる老人福祉法を提案いたしました政府としては、これに要するところの——今年度予算としてすでに成立をいたしましたけれども、どのくらいの額を見込んで、この法律の裏づけとして具体的な対策に充てようとするのか、この際、ひとつ相対的にものを考えるという意味合いから、あらためてその総額に対して、前年度との比較においての数字をお示しいただきたい。
○大山(正)政府委員 本法案の関係の予算といたしましては、前年度が三十五億四百九十五万八千円、三十八年度予算といたしましては四十七億七千四百二十九万五千円でございます。もちろん本法案直接の関係の予算以外に、あるいは社会保険に関するいろいろな公費負担の問題、あるいは年金等の公費負担の予算というものを合わせて考えなければならないわけでございますが、本法案直接の費用といたしましては、ただいま申し上げましたような数字でございます。
○田邊(誠)委員 大臣いかがでございましょうか、私が言わなくてもケネディの老人福祉に対する特別教書はすでに御案内であろうと思うのでありますが、私は繰り返して申し上げます。アメリカに見習うということを盛んにいわれておるわけでありますが、やはり私は内容のある老人福祉を推進をする、こういう政府の心がまえの点から見まして、いま局長のお話のありました今年度予算がすべてではないと思いまするから、そういう観点で私はこれに対して追撃を与えようとするのではありませんが、今後の心がまえと対策といたしまして、ある程度やはり全般的な社会保障に対する対策を講ずべきであるということをしばしば申し上げておるのでありまして、事老人福祉に限っても、現在の時点におけるところのその重要性、今後の大きな課題としてこれが対処を要求されておるという現時点におきまして、アメリカのケネディがとったところのこういった思い切った一つの処置というもの、これはもちろんアメリカは軍事費等の増大等がありますから、全体的に見た場合には、この予算がはたして日本の社会保障関係の予算と比較をして、どのくらいの開きがあるかということに対してにわかに即断はできませんけれども、いずれにしてもそういった考え方を打ち出しておるという点、こういった点を注目いたしまするならば、わが国におけるところの老人福祉の行くえに対しても、政府はこの法案を出すと同時に一つの展望をお持ちでなければならない、こういうふうに私は考えるわけでありますけれども、いまの私のアメリカにおける状態等をお話をしましたこととにらみ合わせまして、政府は今後一つの具体的な長期展望というものを立てるところの御意思がございまするかどうか、あわせてひとつお聞かせいただきたいと思います。
○西村国務大臣 ケネディ教書のことにつきましては、私もちょっと拝見をいたしました。いずれも非常にわれわれにとって示唆に富んだことでございます。しかしもう田邉委員も御案内のとおり、すべてにおいてアメリカと比較すべくもありません。ただ今回の法案の提案に至りましたのは、どちらかと申しますと思想的に非常にまとめて、これをひとつ起点といたしまして今後肉づけをしていこう。したがいまして、今後老人福祉に対しまして、いまあなたが申されましたようないろいろな面につきまして、今後十分な施策をはかっていくことが老人のためのみならず、日本の繁栄のために当然の責務であると思って、これを起点にいたしまして長期展望をいたして、明年度からの予算につきましても考慮したい、かように考えておる次第であります。
○田邊(誠)委員 今後いろいろと施策を講ずるという、こういうお気持ちがあることはわかりましたけれども、われわれとしてもやはり老人福祉法というものが、世論が言うように、ほんとうの意味におけるところの今後の老人憲章的な性格を持ち、これが軸となって福祉対策というものが講じられていくという、こういう希望を実は持っておる老人なり国民の側から見た場合には、必ずしもその内容が一歩前進のかまえであるというふうには見受けられない。実は予算的な面あるいは具体的な施策の面において、まだ不十分であるということをわれわれは指摘せざるを得ないのでございます。もちろんこの内容とする中には、いままでにないようないろいろな施策や、あるいはまた、現在までの対策のうちでもってさらにそれを充実したということも含まれておりますけれども、しかし私は、ただ単に総体の予算がふえたというだけでなくて、たとえば国が出すところの、国が持つべき責任、国が負担をすべきもの、こういう負担割合というものに対しても、いままでの観念以上に私は考えてやらなければならない点が多いのじゃないかと思うのであります。軽費老人ホームに対する事務費を、今回国がある程度持つということになりましたことを私は承知いたしておりますが、その他の状態は、負担率等において変わっておらない、こういうぐあいにいわれておるのでありますけれども、今後これらの、私はただ単に額の増額でなくて、あるいはまたいままでのたとえば方針をふやす、あるいはまた各所の老人ホーム等の施設の増改築なり新築を促進する、こういうことが必要であると同時に、やはり国なりあるいは地方自治体なりという、社会的にこれを解決し、これが責任を持つ、こういう体制を確立する意味合いからいいますると、国の負担率、補助率等も、当然私はやはり変えていくべき性質のものでないかと思うのでございますけれども、すべて一挙にこれがいま解決をされるという状態にはないと思います。思いますけれども、だんだんにこれを変えていく必要があるのではないかと思うのでございます。たとえば養護老人ホームにいたしましても、新しく建てる場合には、法人の場合には二分の一が公費負担というかっこうになるわけでございますけれども、これが実は、最初のそういう施策を打ち立てるということが困難な事態に現在なりつつあるのであります。これは地方公共団体であろうとあるいは法人であろうと、その他であっても同様でございます。そういった率の変更等に逐次手をつけていくというお気持ちがあるかどうか、この際ひとつお伺いしておきたいと思います。具体的にこれから手をつけるというようなお考えがあればなおけっこうでありますけれども、あわせてひとつお聞かせいただきたいと思います。
○大山(正)政府委員 ただいまの施設整備費等につきましての補助率の問題でございますが、大体におきまして、いろいろな福祉施設を建設します場合には国が二分の一、都道府県が四分の一、それから私法人が四分の一という割合になっておりまして、この補助率は実は全部のこの種の施設に通じておりますので、老人の施設についてだけ補助率をさらに改善するということは、なかなか困難な問題ではなかろうかと思っております。さらにもう一つの問題は、補助率はこのようになっておりますが、実は予算上の単価がきわめて限定されておりますために、実質上このような補助率になっておらない、法人の持ち出し分が非常に多いという点で問題がございますので、この単価の問題をさらに改善していくということが、施設側にとりましてかなり有利な解決の方法ではあるまいかということを考えますし、さらに自己負担分につきまして、社会福祉事業振興会なりその他からの融資の面についてあっせんし、あるいはそれを低利にするという面についても一ひとつ努力してまいりたい、かように考える次第でございます。補助率の点も一、確かに御指摘のようにこれを改善することが望ましいのでございますが、しかし全般的な問題といたしまして、見通しはなかなかむずかしい問題ではないか、かように考えております。
○田邊(誠)委員 実はそういった内容の改善等もはかられながら、この対策が逐次前進をするところに私は大きな意味合いがあろうと思うのでございまして、これらについて、さらにひとつ前進をするところのお考え方を持って対処されるように私は希望したいのでございます。 いろいろと全体的な御質問をしてまいりましたが、なお実は他の環境衛生やいろいろな施策との関連等の問題もございますけれども、それらはあとでお伺いをいたすことにいたしまして、具体的な法律案の内容に対して、とりあえず逐次お伺いしてみたいと思います。 いろいろな施策があるわけでございますが、一番最初に大臣にお聞きをいたしまして、老人福祉の増進をすることは、老人に対する敬愛の念からまず出発することが必要である、こういうお話がございました。たいへん教えられるところが多かったのでありますけれども、私が最初指摘をいたしました一つの問題として、老人の日というのがここにございます。そして老人の日には、実はたいへんいい行事が行なわれてきておるわけであります。長生きをしたことに対するお祝いをしたり、表彰したりするということがやられてきたり、あるいはいろいろな慰安や娯楽の催しがございましたり、中には、私のところのように温泉の多いところでは、温泉に行って保養してもらいたいというような話があったり、あんまさんや理髪者が収容施設に来まして、きれいさっぱりにしてくれるというようなことをやってくれる、あるいは観劇の割引券をくれて、それに参加をさせたり、中には日本舞踊や浪花節等をうなってくれる人もございますが、こういうようなことを実は老人の日にやってきたんです。これが実は繰り返されてきたんです。私は、そのこと自身が間違っておるか、あるいは足らないかということではないのでありまするけれども、見た目には非常にはなやかといいましょうか、非常ににぎやかな一日が送られるわけでございますけれども、何か、きょうみたいに私が静かに質問をいたしておりますると、あと終わってもあまり感激がありませんが、大きな声を出したあとというものは、かえってさびしさを感ずるわけです。それと同じように、老人の日ということで一日にぎやかにしてもらったあとの三百六十幾日かというものは、非常によけいなさびしさを感ずる、こういうかっこうに実はなりがちであります。私は、老人の日というものの持つ意味合いというものは、こういう各種の行事をやることも一つの手だてではございましょうけれども、その繰り返しだけで済ますのは、ほんとうの意味合いにおける老人福祉の一環として、これを重要な柱として意義づけるわけにはいかないのではないかと思うのでございます。これはいままでの経験に照らしまして、民間で自主的にいろいろやってきた行事が多かったことは事実でありますけれども、この法案の中にこれを一つの重要な柱としたゆえんをお聞かせいただきまして、さらにひとつ十分な理解を得るという道がおありでしたら、この際お知らせをいただきたいと思います。
○大山(正)政府委員 老人の日につきましては、ただいまお話がありましたとおり、昭和二十五年以来行なわれておりまして、大体民間の運動といたしまして年寄りの日、あるいは年寄りの週間ということで、老人に対するいろいろな行事が行なわれておりますので、老人福祉法が制定されます際に、これをぜひ老人の日ということでこの法律にも取り上げたい、こういうような趣旨で案をつくったわけでございますが、お話のように、その日だけ老人を大切にしてあとは知らない、あとはさびしくなるということでは全くこの趣旨にもとるわけでございまして、そういう老人敬愛、老人福祉の思想を高めるためにそういう日を設けるわけでございますから、その日を契機といたしまして、老人福祉の思想がさらに一般国民の間に関心と理解を高めるという趣旨で設けられ、また実行されなければならない。われわれとしてもそういう趣旨で進めてまいりたい、かように考えております。
○田邊(誠)委員 いま局長は、老人の日の非常に重要な意味合いというものをPRといいましょうか、理解をさせる、こういうことを言われましたけれども、私はやはりこの点をさらに重要視して、老人そのものに対していろいろな慰安をしたり、慰めてやるということももちろん続けなければならぬことでありまするけれども、それと同時に、老人の日なら老人の日というものを制定いたしました一つの意味合いというもの、それを柱とするところの老人福祉というものが非常に重要だということを一般の国民によく理解をさせて、それに対するところの関心と協力を得せしめるという態勢をつくることにも、私はやはり十分な心がけを用いてもらわなければならぬじゃないか、こういうように実は考えておるわけでありますが、ちょっと舌足らずの御答弁でございますけれども、私のいま活をいたしました点で御理解をいただきまするならば、その方向に向かってさらにひとつ努力をお願いしたいと思います。よろしゅうございますか。
○大山(正)政府委員 全く御趣旨のとおりであると考えますので、その線でひとつ努力したいと考えております。
○田邊(誠)委員 それでは法案に対する具体的の質問にいま入ったところでございまするが、さらに明日続けて質問をさせていただくことにいたしまして、本日はこれで一応打ち切りたいと思います。
○秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明三十日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。 午後四時十一分散会