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43回国会衆議院1963/05/15

社会労働委員会 第29号

発言数
102
登壇者
9
会派数
2
開催日
1963/05/15

会議録

秋田大助自由民主党

○秋田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出の麻薬取締法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 麻薬取締法の一部改正について若干質疑を行ないたいと思うのでございますが、本論に入ります前に、私は今回の麻薬取締法の一部改正の提案に際しまする政府側の姿勢と申しますか、心がまえと申しますか、そういう点につきまして若干御所信のほどをお聞かせいただきたいと思うわけでございます。と申し上げますのは、今日までも麻薬取締法は実施されてまいったわけでございますが、しかしこの法のもとでは、麻薬事犯に関しまする取り締まりというものがなかなか思うようにできないというところから、そういう取り締まり法というものを強化しようという観点に立って、今回の取り締まり法一部改正が提案をされたというように承知をするわけです。しかし、要は、この麻薬取り締まりと取り組みます政府の姿勢というものがきわめて重大な要素になると思う。この点は何人も疑う余地のないところだろうと考えるわけでございます。そういうためにも、私はやはり改正法案の審議に際しまして、一応政府の姿勢、心がまえあるいは意欲というものについてお尋ねを申し上げる必要があろうと思います。そういう意味で、ひとつ率直に政府側の本法案に取り組みまする姿勢というものにつきましてお聞かせをいただきたい。

西村英一自由民主党厚生大臣

○西村国務大臣 麻薬禍が国民、国家の発展に非常に重大な関係のありますことは、もう私が申し上げるまでもないことでございまして、政府も従来これを軽視いたしておったわけではございませんが、社会上のいろいろな変化等、つまり麻薬禍それ自身が暴力と結びついたり、あるいはまた他の犯罪と結びついたりするような複雑性を帯びてきたという一つの大きい社会悪に発展しつつあるような傾向がありましたことには注目をいたしておったのでございます。しかしそれとともに、政府が最も鞭撻を受けましたのは、衆参両院議員の諸先生方がこの問題をさらに大きく取り上げてくださいまして、せんだってから両院において決議もなされたのでございまして、そういうようなことを一つのポイントといたしまして、これを強化して社会悪を根絶しなければならぬというふうな考えに立ったのでございます。しこうして、法律の改正はともかくもといたしまして、現行法のもとで取り締まりを強化しよう、それもできないことではない、法律改正が取り締まりの全部じゃないと考えましたので、昨年来いろいろな手を尽くしてまいったのでございます。その効果は私はあがったと思うのでございます。しこうして三十八年度に対しましては、予算の強化あるいは法律の改正というようなことになったのでございまして、私たちはどうしてもこれは、大きく言えば国づくりのために絶対に麻薬禍を根絶する、ひいては他の犯罪をも減少せしむるというようなかたい決心を持って臨んでおるのでございます。したがいまして私は、この法律の通過——もう予算は成立いたしましたが、それとともに、皆さま方の御協力を得ましてこの麻薬禍の絶滅、あるいはひいては暴力、売春その他の犯罪の減少に全力を傾倒したい、かように考えておる次第でございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 それではお尋ねをいたします。大臣お読みになったかどうかわかりませんが、厚生省薬務局麻薬課から発行されておりまする麻薬公報は、今日の厚生省の麻薬行政の方針というものを集約して、そうして天下に公表されたというふうにお考えになっておりますかどうか、この点をひとつお聞かせいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 麻薬公報と申し上げますのは、従来麻薬課が、麻薬の担当部内だけの連絡をするためにガリ版で印刷したものを出しているわけでございまして、天下に公表するような公刊物でもございませんし、ただ部内の連絡のための課の一つの印刷物だというふうに私どもは考えておるのでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 麻薬課の課内におきます連絡事項に関する印刷物だというお答えでございますけれども、少なくとも私どもの手元に配られております麻薬公報、しかも発行者は厚生省薬務局麻薬課という名称で発行をされておるわけでございまして、いやしくも麻薬公報、しかも薬務局の麻薬課という名称で発行されたものが、単なる課内の連絡的な印刷物だというふうに私どもは理解しがたいのです。少なくとも麻薬公報という名称が付記され、しかも発行者は厚生省薬務局の麻薬課という名称が呼称されておりまする以上、私はやはり公の公報だというように理解すべきだと考えるわけでございますが、その辺はいかがでございますか。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 麻薬公報という名前が少し適当でなかったかもしれませんが、従来麻薬課の中でいろいろと各地方事務所に連絡したいようなことを、ここにこまかい事務連絡を書いておったわけでございます。昨年来麻薬の問題がいろいろと国会でも御審議になり、そういうものがあったらわれわれにもよこせという御意見もございまして、便宜お配りしている点もございますが、内容は、実質的にはあくまで麻薬課と八つの地方事務所、それから都道府県の麻薬取締員というものの連絡事項でございます。したがって、発行部数も三百部程度でございまして、公報という名前を使ったのはそういう意味で誤解を受けるので、私どもも名称については改める必要があるかもしれませんが、性質はあくまでそういうものであると御了承願いたいと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 私どもはなぜそういうことにこだわるかと申しますと、大臣からも、いま麻薬禍というものを絶滅したい、あるいはまた麻薬禍と関連を持ちまする暴力というものを撲滅していきたいという非常に強い意欲の開陳がございましたけれども、要はやはり、法律を改正いたしましても、その改正いたしまする法案に対してどういう心がまえで取り組んでいくか、こういう姿勢が私は麻薬禍を撲滅し、さらに暴力を撲滅するきわめて重要な要件になってまいろうかと考えます。ところが、部内の連絡誌、あるいはまた私どもは、麻薬公報でございますから、公のPR誌というふうな印象を受けましたけれども、それはさておくといたしまして、たとえ部内の連絡誌といたしましても、この公報の中に盛り込まれておる内容はきわめて不見識な内容であります。私はこの麻薬公報を読ましていただいて、こういう厚生省の姿勢でほんとうに麻薬禍の撲滅が期待されるのかどうか、こういう点は私は実に痛感をいたしたわけでございまして、大臣も非常に忙しいでしょうから、あるいはこの麻薬公報について一々目を通されておらないかもわかりませんけれども、私はその中の一、二の点について御指摘申し上げたいと思う。  たとえば、いま大臣は、社会上の変化に即応する、それからさらに衆参両院において大きく取り上げられたので、そういう点に対して非常に大きな啓発を受けた、そこでこの際徹底的にひとつ麻薬問題に取り組みたい、こういう強い意欲の開陳があったわけでございますけれども、しかし、少なくともこの公報に盛り込まれておる記事の内容等を見てまいりましても、私どもはすっきりしない感情がございます。たとえば、おそらくこれは厚生省がお認め願って掲載されたと思いますけれども、その記事の「麻薬こぼれ話」、もちろんこれは、そういう記事をお書きになった方々のお気持ちはわかるわけでございますけれども、しかしながら、たとえばその一、二の例を取り上げてまいりますと、「国会も、与論の力におされて昨年五月七日、対策強化を決議した。」それからさらに、「政府もこれに呼応して内閣に中央対策本部をおいた。予算もまがりなりではあったが、ヨタヨタではあったが、ズタズタではあった昨年度に数倍する額は獲得した。」こういうように、国会が世論の力に押されて決議をした。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕 こういうことを厚生省がお認めになってこの公報に掲載された。これは、私はお書きになった方の気持ちは別としても、少なくともそういうことを厚生省が認めて、こういう公報に記載をしたということについては、私は厚生省が国会を軽視するもはなはだしいと断定せざるを得ない。それからさらに申し上げますならば、「遅まき乍らも、その猛毒の対策を役人が寄ってたかって小田原評議しているのが今の政府なのである。ところが敵はそんなヘッポコ政府をどこ吹く風ととんでもない対抗策をたてつつあるのではないか」。こういうように、全くヘッポコ政府をお認めの上でこういう公報に御記載になっているのか。それからさらに、「厚生省は、持ち前の麻薬対策をやればよい、取締は国警に委せるのが妥当た——の一点ばりである。」これは厚生省は主管大臣が厚生大臣でございますけれども、麻薬取締法の一部を改正して、今後麻薬禍の徹底的な取り締まりをやっていこう、撲滅をやっていこう。ところが、そういう取り締まりは厚生省がやらぬでも、国警にまかしておけばよろしい、こういうふうにおっしゃったというふうに書かれておる。それをお認めになっておるから、公報に記載されておるわけでしょう。それからさらに、「アンチャン、パン助を取締るのは警官でも御巡りさんでもよい。が、麻薬Gメンならではのことを力説これつとめたが、納得しない。が、ひるがえって冷静に考えてみればこの若い事務官の言うが如く、厚生省に確固不抜の信念がはたしてあるや否やをうたがいたくなる数多くの事実あるのは何といっても見逃せない。」こういうことを厚生省がお認めになって、たとえ部内の刊行誌といえども、刊行誌に記載されておる。そうしてそれぞれの関係者にお配りになる。これではほんとうに麻薬撲滅の意欲がそれぞれの係官に出てまいりますか。私は、もうこの厚生省が発行された麻薬公報一つ見ても、厚生省の中に、大臣は別として、麻薬撲滅のために大いに意欲を燃やしてやるという御意思があるのかどうか、全く疑わざるを得ない。おそらくこれは大臣の意思と違うかもわかりません。しかし、少なくともこういう記事が、末端で実際取締り行政に当たろうという係官に渡されておる。こういうことでは、何ぼ大臣が旗を振って笛を吹かれても、太鼓をたたかれても、ほんとうに踊ることができるかどうか。私はこの公報を見まして、全く心外に感じた。こういう記事を、これは一部ですけれども御指摘を申し上げたわけですが、こういう記事を大臣はどういうようにお考えになるか。これは法案の審議に入ります場合にきわめて重大な問題でございますから、率直にひとつ御意見を聞かしていただきたい。

西村英一自由民主党厚生大臣

○西村国務大臣 私も公報をちょいちょい拾い読みをすることはあるのですが、いま、あなたのお読みになったのは私は初めてでございます。しかしこれは、公報は、いま局長が申されましたように部内の一つの連絡のものだ、こういうことでございます。それにいたしましてもさように士気を阻喪するようなことは、はなはだ不適当であろうと思われます。どなたがそれを書いて、どういうふうにしてそれに載せるようになりましたか知りません。しかし文意は、ちょっと聞きますと、厚生省のやり方をなまぬるいじゃないか、しっかりやれというようにも受け取られることもありますが、かりにその文章が非常に悪用され、部下の士気に影響するというようなことであってはたいへんでございますので、もう済んだことはいたし方がない、過去のことであるから、それよりも私たちの考えておるのは、厚生省のいままでのやり方にも反省すべきところが多々あった、また世論にかんがみ、また日本民族の消長のためにも、これは私たちの絶対にやらなければならぬことであるからということで今回は臨んでおるわけでありますが、そのような文章がこの公報で取り扱われ、それが厚生省の態度なりと誤解を受けることははなはだ残念だと思いますから、将来にわたっては注意をいたしますが、今回の決意は私は決して口先だけではなしに、名実ともにこの予算の通過、法律の通過とともに実績をあげたい、かように考えております。またそのためには、衆参両院の諸先生については今後ともいろいろ御相談をしてまいらなければならぬ実行上の問題もあろうかと思われます。決してその公報をもって厚生省の態度なりと、かように思わないようにお願いを申し上げたいのでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いま大臣がお答えになりましたように、たとえば、いままでの旧麻薬取締法の運営、あるいはまた今日までの行政指導、そういう点の反省に基づいて、実は今度の法律改正が提案をされたというように私どもは率直に理解したいわけです。ところが、そういう動きが出てきた以後においてこういう記事が出てきたことは、私ども非常に残念に思う。そういう以前に——もちろんこれは、そういう文章をお書きになった方も、厚生省を叱咤勉励しようという御意思でお書きになったと思う。思うけれども、そういう記事が、いよいよこの法律改正と取り組んで、今後さらに一そう麻薬の撲滅のために全力をあげて努力していこうというさなかに出たことは、私は何か水をかけられたような気がして、意欲に一ぺんにブレーキをかけられるような気がして、非常に残念でならなかったわけです。その点については、いろいろ適当な方というような局長の御発言もございましたが、少なくともこういう公報というものが、公の公報でなくても関係者に配られているわけですから、そして指導は厚生省がやっても、実際はそれぞれ現地の関係者が行政の運営に当たるわけですから、そういう実際の運営に当たられる方々にこういう記事が流されているということに対しては、まことに納得のいかぬ行動だったというふうに指摘せざるを得ないと思います。でございますから、ひとつ十分反省を願って、今後は現地の者が勇躍をして法律の運営に取り組むことができるように、最大の善処をしていただきたいと思うのです。それは本論ではございませんからそういうことにいたしまして、さらに話を進めてまいりたいと思います。  この法律そのものの改正もさることでございますけれども、やはり麻薬再犯というものは国際的な関係がございますし、そのことについては、さきの委員会においても若干触れられたようでございます。御承知のように、麻薬の密売組織は、麻薬密造者から密輸出、密輸入、そうして末端の立ち売り、こういうふうな段階を踏みますことはもう御案内のとおりでございます。そこで巷間では、十三段の組織がある、そのために麻薬メンは死の十三階段だというふうに称しておるというふうなこともいわれております。しかも日本の密売の大ものは、香港、ニューヨーク等国際密輸組織につながって、国際犯罪カルテルを構成いたしておる。そこでいま私が指摘をいたしますように、麻薬犯罪というものは一国の取り締まりだけではなかなか十分な取り締まりを行なうことができない。そこで、先般も話が出てまいりましたように、国際的な協力というものがきわめて重要だ。そこに出てまいりますのがやはり単一条約の制定だということは、否定することのできない事実でございます。この点は、先般の委員会でもございましたように、すでに十何ヵ所か批准をいたしております。しかし日本は批准をしておらぬ。ところが、いま日本は麻薬天国といわれておりますように、非常に麻薬禍の浸淫状態というものがきびしい。でございますから、数十ヵ国が批准しなければ単一条約が発効しないということであるけれども、それならそれのように、やはり日本が国連の中で先頭に立って、単一条約が一日も早く発効するような努力をやっていかなければならぬと思う。ただ四十ヵ国ですかが批准しなければ発効しないというようなことで、日本が手をこまねいてながめておるような情勢ではなかろうというように私は考える。それなら今日まで日本政府としては、国連の中でその単一条約の批准についてどういうふうな働きかけをしたか。もちろん日本はまだ批准を終わっておらぬわけですけれども、しかし日本は、いま法制上の問題が残っておるということだけのようですから、やっぱり国連の中で早く単一条約が発効するような努力というものを、日本が中心になってやるべきだと私は思う。そのためには、日本が批准するということも先決問題でございましょう。同時に、日本が批准しても効力がないのですから、そこでやはり国連の中で早く四十ヵ国なら四十ヵ国が批准するように、そういうふうな積極的な働きかけというものが必要ではなかろうか、私はかように考えるわけですが、今日までどういうふうな具体的な努力がなされてまいりましたか。これは厚生省あるいは外務省でお答えいただけますならば、ひとつお答えいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 新しい単一条約の制定は、一昨年でございますか、ワシントンにおいて草案が審議され、そしてその条約が一応できたわけでございます。そして、昨年と今年というふうに足かけ二年になるわけでございますが、この促進につきましては、毎年四月末から五月一ぱいにかけまして、国連の経済社会理事会の下にございます麻薬の国際会議があるわけでございまして、ここの議題として昨年も取り上げられたわけでございます。昨年は私が政府代表として出席いたしまして、そして単一条約の促進についての審議には日本側は積極的に賛成を表明しておるわけでございます。これに対しては、四十ヵ国の批准があれば効力を発効するわけでございます。現在約半数が批准をされておる、十七、八ヵ国が批准をされておる状況でございますが、日本もすみやかにそれぞれの準備をいたしまして、この賛成の中に早く入りまして、そしてこの単一条約が一日も早く発効するように努力したいと思います。国際会議では今年もそういう議題がおそらく議題の中には出ておりますので、今年は私の方から平瀬課長が同様に出席しておりますので、同じ指令を出しまして促進方を指令しておるわけでございます。私どもはこの条約については賛成でございますので、強力に推進していきたい、かように考えるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 外務省は……。

小沢辰男自由民主党

○小沢(辰)委員長代理 外務省は、要求がありませんので来ておりません。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 本来から申しますと、外務省からも若干御所見をお聞きいたしたかったのでございますけれども、御出席がないようでございますが、ひとつ、これは国際的な相互協力なくしては、この撲滅をはかることはなかなか困難でございますから、さしあたり政府としてもまずわが国が単一条約に批准をする、その批准方の促進をお願いいたしたいし、それから第二には、国連の中でも四十ヵ国がすみやかに批准を完了するように、ぜひ最大の御努力を願っておきたいと思います。  いま申し上げましたように、国際協力の必要性というものは否定することのできない事実でございますが、そこでこの際、若干そういうことに関連して、参考のために、一、二お聞きをいたしておきたいと思います。それは、昨年警察庁がコロンボ計画の一環として東南アジア麻薬ゼミナールを実施された、そしてその結果はかなり成果をあげたやに私どもは仄聞をいたしております。これも国際協力の一環であると思いますが、そういうような東南アジア麻薬ゼミナールの成果と申しますか、この成果があるならば、当然その成果というものを実際に法の運用その他に移してもらわなければならぬということであると思いますので、そういう点についてひとつお聞かせをいただきたい。

楢崎健次郎警視長(警察庁保安局保安課長)

○楢崎説明員 御案内のとおり、昨年の十一月十日から四十日にわたりまして、東南アジアの台湾、インド、マラヤ、フィリピン、シンガポール、 タイ、このほかにオブザーバーといたしまして香港、ベトナム、この八ヵ国の麻薬関係の国際ゼミナールを開催いたしました。成果はどうかというお話でありますが、これはゼミナールという性格から、主としてお互いの国の麻薬問題の実情の検討、あるいは麻薬捜査のお互いのやり方、そういったことをお互いに研究会の形式で披露し、検討し合ったわけであります。しかしわれわれとしましては、いま御指摘のありましたように、東南アジアという麻薬の中心地、世界の中心である問題の地域の関係諸国の担当官が集まりまして、そういった会合をする、一堂に会して四十日にわたって検討会を持つということによりまして、お互いの麻薬問題に対する国際的な協力あるいは連携の機運といいますか、そういったものが非常に盛り上がったということを確信しております。またこの会合の最後に、今後われわれが一緒に行なうべき問題としまして、定則的にお互いの麻薬犯罪の実情あるいは主要な犯罪の概況について報告し合う、また麻薬犯罪の取り締まりについて、捜査情報、取り締まり情報についてできるだけ密接に交換しよう、こういったことを申し合わせておりますので、今後も継続的にこれは毎年行なう計画をしております。そういう点で、全体的な東南アジアの麻薬対策の促進にいろいろな意味で効果があるものと確信しております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 要は、私はこのゼミナールの中で出されてまいりました貴重な意見、資料、そういうものをどう取り入れるかということが重大な問題だと考えるわけです。このゼミナールの中でいろいろ言われてまいりました意見の中で、非常に傾聴すべき意見が多々ございます。たとえば、日本は密造——これは密造はないわけですから、もっぱら密輸入が行なわれて今日の麻薬禍というものになっておるわけですから、したがって、水ぎわ撃退が大切である。そのためにはもっと税関、警察の取締官をふやすべきだというふうな貴重な意見もございます。ただ貴重な意見を聞きっぱなしでは困るので、それではその水ぎわ撃退をやるために、税関なり取締官をどのように増員していくかというようなことに、だんだん実行に移してもらわなければ困るのです。それでは一体、警察は今度の法律で若干、税関は一体どういう形になるのか、ひとつその辺は、大蔵省が御出席でございますので、お聞かせいただきたい。

前川憲一大蔵事務官(関税局業務課長)

○前川説明員 お答えいたします。税関におきましては、御承知のように日本の港に入ってまいります船、飛行機、荷物、人、それをまずウォッチ、監視しておるわけであります。その監視しておりますもののほかに、さらにその中で犯罪の処分、摘発に当たる者、一般的にウォッチしている者とこういうふうに分かれますが、われわれといたしましては、もちろん人員の増加ということが望ましいのでございますけれども、とりあえず犯罪の摘発、処分に当たっておりますところの審理課——と申しておりますが、審理課系統の増員をはかりまして、現在約三百名内外でやっておるのでございますが、それを三十名ふやします。したがいまして一割の増を考えておる、こういうことでございます。そのほかに、もちろん現有勢力の重点的、機動的な配置ということはずっと前から考えておりまして、特に麻薬ということに関連いたしまして、税関の全機能をあげてやるというつもりでやっておるわけであります。この前も小林先生の御質問に対して御説明申し上げましたとおりに、たとえば外国郵便物に関しましては外郵出張所というものを設けておりますが、そういうところにおる職員も、やはり何とかして麻薬の根拠地から来る小包その他につきまして発見しようと思いまして、非常な努力をしておるわけであります。それからまた、本来は品物の品質なりそういうものを分析いたしまして、それに非常にこまかい税法があるわけでございますが、そういうものを適用するということをやっておるのが任務でありますところのエンジニア、技官がおるわけでございますが、そういう人にも協力を求めまして、ある一定期間、ある一定の疑わしき地域から来る物につきましては、全部梱包をあけるというふうなこともやらしております。そういう意味合いにおきまして、単にウォッチしたり、処分、摘発に当たる人のみならず、全税関の職員をあげて、麻薬の水ぎわ摘発ということを機動的、重点的にやっておるということを申し上げます。そういうことをやった上に、三十名直接の担当官がふえたわけでございますから、人員の面におきましては——もちろん欲を言えば切りがございませんけれども、現状においては十分やっており、またやっていける自信がある、かように考えております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いま大蔵省のお答えでは、税状でも十分やっておったし、さらに少数であるけれども一割の人員増加であるので、さらに十分やれるだろうというようなお答えでございますけれども、現実には、日本の場合は密造でなくて全部密輸入だ。ですから、全部、どこかの港湾ないし空港というようなところから入ってくるということでございますから、現状で十分やっておったということには相ならぬのじゃなかろうか。個々の職員の方が一生懸命にやっておられるということはわかりますけれども、そうだから行政上取り締まりというものが十分であったということには相ならぬ。やはり機構の問題あるいは人員構成の問題等の不十分な点があるから、そういうような密輸入がふえてきた。そのために結局麻薬禍というものが非常にものすごい勢いで出てきたということになるわけですから、私は現状でよかったというようなことには当然ならぬし、またそういうような水ぎわ撃退ができなかったから今日の非常にものすごい麻薬禍というものが出てまいったわけでございますから、私は現状では満足もできないし、また三十名人員が増員されたといいましても、これは空港にも配置しなければならぬだろうし、港にも配置しなければならぬだろうから、これを全国的にばらまけば、これは実に微々たる人員だろうというふうに考えるわけです。ところが、いま申し上てげますように、日本の場合は特に密造がなくて、密輸入によって起こってきたという特殊事情がございますから、私は、どこに重点を指向するかといえば、やっぱり税関等に重点を指向せざるを得ないのじゃないかというふうな判断に立ちますので、そういうことを御指摘申し上げたわけです。ですから、いろいろ部下の職員のことをお考えになるのもけっこうでございますけれども、それだからといって、そういう現状というものを軽視されては困る。そこで私は、さらに今後とも御努力をお願いいたしたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。  それから、さらに貴重な意見として述べられておりますることは、マラヤでは国民から情報を集めて、そしてそういう情報に基づいて検挙をされる、そういう者には日本円で三千円から十万円の報償金を贈って、そして一般の啓発運動をやっておる、こういうよりな意見もあるわけです。こういう報償制度、こういう点によってかなり有力な情報がつかめて、そのために検挙されるということがあるとするならば、こういう制度というものも耳を傾けるべき御意見ではなかろうかというふうに考えるわけですが、こういう点については、いままでどのような処置がとられておったのか、またどういうふうにお考えになりますのか、一応その報償制度というものにつきまする御意見等もひとつお聞かせをいただきたい

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 麻薬取締官なり取り締まり関係につきましての報償制度は、ただいまのマラヤのお話と同じように、報償金制度を現在もやっておるわけでございます。現在は、情報によっては最高十万までを報償として考えておりますが、三十八年度からはそれを三十万まで最高額を引き上げまして、そしてそういう情報の収集に役立てていきたい、かように考えております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 大体かなり報償金が出たという実績がございますか。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 近畿地区の麻薬取締官事務所の事件におきましては、過去におきまして最高十万まで出した例がございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 このマラヤの意見を聞いてまいりましても、そういう制度があるということで国民の啓発をやっておるということでございますけれども、いま日本の状況をお聞きいたしましても、なるほど報償制度はあるけれども、一例が、的確な情報についてはその程度だというふうにお聞きするわけですが、やはりこれは一般国民の協力を得るという意味で、ある意味ではもう少し啓発をなさる必要があるのじゃなかろうか。一般の人は知らぬと思うのですけれども、これは後ほど触れますが、もしそういう制度ができれば、そういう制度が理解されれば、いろいろ一般からもかなり情報は入ってくると私は思うのです。ですから、マラヤの例ではございませんけれども、今後啓蒙される必要があるのじゃなかろうかというふうに考えますので、そのようにひとつ今後御配慮をいただきたいというふうに考えます。この辺が、大体国際的な関連についての荒筋のお尋ねであったわけですけれども、それではさっそく麻薬事犯そのものについての質問に入りたいと思います。  第一にお尋ねを申し上げたいと思います点は、麻薬というものは、医療上必要不可欠のものであることは御承知のとおりでございます。ところが一方、その反面、取り扱いを誤りますると、人数社会におそるべき害毒を流すということに相なってまいるわけです。このことは世界各国の共通の悩みであるわけですが、特にいままでは、申し述べてまいりましたように、わが国では麻薬事犯というものが、戦後ものすごい勢いで激増いたしてまいりましたという一つの経緯がございます。今日におきましては、年間約二千三百件程度の発生を見ておるというふうに厚生白書では説明しております。それでは、このおそるべき麻薬事犯というものは、いま一体どのような形でずっと推移してきておるのか、そういう点について若干お聞かせをいただきたいと思うのです。と申し上げますことは、戦後なるほど麻薬事犯というものはだんだん激増してまいった。その推移のしかたによっては、いまの取り締まりの法律の取り組み方というものについても、やはり再検討の必要があろうと私は思う。でございますから、一応どのような形で麻薬事犯というものが推移しつつあるのかというような概況について、ひとつお答えをいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 麻薬事犯のほとんどを占めるものがヘロイン関係でございまして、これはただいま御指摘がございましたように、海外からの密輸入がそのほとんどで、全部と言っていいわけであります。そういう密輸入されました麻薬というものが国内に入りまして、それが強力な組織をつくりまして、巧妙に連絡をされて消費地に運ばれているわけでございます。それで、現在のわが国のそういうおもな密売をされる麻薬の集散地とでもいいますか、そういう点は、一番大きいのは神戸、それから東京、横浜、大阪、北九州方面でございまして、運ばれる手段といたしましては、航空機なり鉄道なりあるいは自家用車等によって運搬をされており、麻薬事犯の性格は、賭博とか暴力とか売春などの事犯と同様に非常に組織化されておりまして、大都市を中心として発生しております。  事犯検挙の分布の状況は、大体ただいま申し上げましたような大都市が多いわけでございまして、地区別の検挙件数と人員等を申し上げますと、三十七年におきましては、北海道は二十五件、東北は百七十一件、関東信越は六百六十一件、東海北陸が九十件、近畿が七百四十八件、中国が六十二件、四国が二十六件、九州が二百二十七件、二千十件のうちでそういう分布をしておりまして、ただいま申し上げました関東信越がパーセントでいいますと三六・三%、近畿が三三・四%、九州が一〇・七%というように、こういう地区がほとんどを占めているわけであります。不正所持とか不正取引、不正施用など、麻薬事犯の大部分は、ただいま申し上げましたようにヘロインが一番多いわけでございまして、そのパーセントは全不正所持、不正取引の七四%を三十七年においては示しております。事犯の形態は、不正所持が一番多くて四八%、次いで不正取引が二〇%、不正施用が一七%、その他が一五%というふうになっております。麻薬の不正所持の多いことは、捜査が現行犯によるものでありますので一番多いというような結果でもございますが、こういうことで検挙は非常に困難であることがわかるわけでございます。  次に、国籍別に事犯を見ますと、麻薬事犯の大部分が日本人でございまして九〇%、これは数から言うと一番多いわけであります。その次が朝鮮人の八%、中国人その他が三%というようなかっこうになっております。  それで最近の麻薬のルート、どういう傾向をたどっておるかと言いますと、麻薬の密売ルートが非常に多岐に分かれてきておる。これは先ほど十三段階というふうに言われたわけでございますが、非常に複雑な系統図を示してきておるわけであります。  それから次は、麻薬密売の手口が非常に変わってきている。これは密売所を常に移動して、定着をさせていない。それから取引は日中を避けて深夜に行なう。それから一般の通行が少なくなって、見張り人がそういう取締官を見張って、その間にやるというようなかっこうになっていますが、特に最近の傾向は、大都市から大都市周辺の地域に、都市から郡部のほうに分散をしつつあるというのが特に最近の傾向でございまして、横浜の従来の日ノ出町なり黄金町地区よりも、むしろ最近は、横浜以外の川崎とかあるいは横須賀、あるいはさらに静岡県というようなところに密売の地域が移動しているというようなことも言えるわけでございます。  それからもう一つは、これはやはり取り締まりが厳重になったことも関係があるかと思いますが、密売ヘロインの品質が最近は非常に低下しておるというのも、一つの傾向でございます。  大体非常に概略程度でございますが、傾向としては、そういう点が特に最近の傾向として指摘できるのではないかというふうに考えております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 大体概況の御報告を拝聴いたしたわけですが、今度の改正案が成立をいたしますならば、さっそく取り締まりというものが強化されていくということに相なってまいるわけでございます。しかしながら、今後法律の改正に基づいて取り締まりが強化されていくわけですけれども、そのためには、やはり私は過去の実績について若干お尋ねをしておいたほうがよろしかろうということで、若干資料に基づいてのお尋ねを申し上げてみたいと思います。  まず第一にお尋ねを申し上げてまいりたいと思いますのは、ヘロインに関します問題点でございます。この麻薬事犯の中で特に問題がございますのは、厚生省の白書によりますと、事犯者のうちの八五%がヘロインに関係するというふうに言われておるわけです。ところが、御承知のごとく、ヘロインは麻薬取締法によりまして製造から所持、施用に至るまで、一切禁止されております。したがって、国内にございまするヘロインというものは全部密輸入、こういうふうに理解をいたしても差しつかえないわけであります。日本では製造することもできない、それで全部を密輸入するということにたる。それでは一体、なぜそのヘロインというものが事犯者の中の八五%という大きな比重を占めておるのか、そういう点について、ひとつお答えを願いたいと思います。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 これは日本の麻薬不犯の特徴、あるいは日本なりアメリカの特徴と言ってもいいかもしれませんが、大体東南アジアはヘロインの施用ということがほとんどないわけでございまして、むしろアヘンを吸煙しておるというようなかっこうの吸食のしかたであります。日本では結局ヘロインの注射によって麻薬の施用をしておる、非常に形態が違う。なぜそういうことになったかということでございますが、これは一つは少量で非常に効果があがるわけでございます。製造から販売、所持すべてが禁止されておる、そういう非常に効力の激しいものであって禁制品でございますので、少量で効果があるというような点でヘロインがそういうものの代表にあげられておる。それからもう一つは、日本人はわりあいに注射が好きだと一般にいわれておるような、そういう一つの民族的な性癖でもございませんけれども、傾向でございますから、そういうもので、自分で注射をしたり、あるいはお互いにやり合ったりする。ヘロインがちょうどそういうものに適しておる。これはアヘンとかなんとかを吸煙するということになれば、中華民国なりあるいは東南アジアにございますように、一定の場所でのんびりと施用をするということでございますから、これはやはり禁制されているものの性質からそういう時間的な余裕もない、いつ踏み込まれてもすぐ処分ができるようなものとしては、ヘロインがいいことになっておる。  それから今度は、売る側から見ますと、きわめて少量なもので効果があるものでございますから、そういう営利的に取り扱う人間から見ても、密輸のいい一つの品目になっておる。  そういうふうないろいろな弊害が集積されて、日本におけるヘロインの使用が他の麻薬よりも非常に多いというような結果になっておるのだろうと私どもは考えております。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕

河野正日本社会党

○河野(正)委員 密輸するほうの側、それから施用するほうの側でヘロインというものが非常に便利だ、そのために事犯というものが八五%の多きを占めておるということですけれども、実際には毒性が強いわけですから、国民としては一番困るわけです。ですから、われわれとしても、これはどの麻薬がいいというわけには参りませんけれども、一番毒性の強いヘロインが事犯の中で八五%を占めておるというようなことについては、特に関心を持たざるを得ないであろうというふうに考えるわけでありまして、特にその点につきましては、ひとつ取り締まり側においても重大な関心をお持ちを願いたい。  それからもう一つここで私どもが疑問に感じますことは、いま申し上げましたように、麻薬事犯の中でヘロインが非常に大きなウエートを占めておるということは、これは否定することのできない事実ですが、ところが資料を拝見しますと、たとえば厚生白書では八五%、警察庁が発行いたします麻薬特集では九五%だ。どうも麻薬取り締まりは、厚生省あるいは大蔵省、さらには警察庁、海上保安庁、こういう政府機関というものが、一体となってこの撲滅のために格段の努力をしなければならぬ。ところが、資料一つ見ても、八五、九五というふうに一〇%も違っている。こういうことだと、各省間の連携というものはうまくいっているのだろうかというふうな疑問を私は持たざるを得ないのでございますが、こういう資料が違うという点については、一体どういうものでしょうか。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 厚生省は、国連の麻薬委員会のほうに毎年暦年によって報告する義務を持っているわけでございまして、各関係省庁間で取り扱われているいろいろな事犯の取り扱い件数あるいは不正麻薬そのもの、それから中毒者の取り扱いの発見件数というものを全部集積いたしまして、それを年報として国連に報告しているわけでございます。そういう意味で少し時間的なズレはございますが、最終的には私のほうで責任を持って集積したもので国際的な報告をしている、こういう事情でございます。したがって、終局においては各省の集計みんな同じになるわけでございますが、ただ実際に具体的な行政統計としてやっておりますのは、一つの事犯の取り上げ方が非常に違う場合がございます。それを一件として取り扱うかあるいは数件として取り扱うかというような点もございますし、集計をした時間的な時差もございますので、多少そこに差が出てくる。しかし、ただいま御指摘になられましたように、いかにも政府の中の関係の部局で思い思いに数字を発表しているような印象を受けることは、これは私どももあまりいい結果でもないと思いますので、今年からは各省連絡いたしまして、ひとつできるだけ数字を統一して取り扱うようにしようということで、一番大きいのは警察と私のほうの関係でございますが、そういうふうにいま連絡しているわけでございまして、できるだけただいまの御指摘になった点を合わせていきたい、かように考えているわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 まじめにこの問題と取り組もうとする者にとっては、資料の中で数字が違うと、何か政府の資料に対して不信感を抱かざるを得ないと思うのです。私どもも、こういう麻薬禍という問題については、この際積極的に取り組んでいこうという意欲に燃えているわけですから、その際に違った資料が出てくるということになりますと、私どもも意欲をそがれる感じがなきにしもあらずだと思うのです。ですから、これは今後政府各機関が一体となってこの撲滅化に当たらなければならぬわけですから、ひとつそういう資料の発表等についても慎重を期していただきたいというふうに考えます。そういうことで、ひとつこの際注意を喚起いたしておきたいと思います。  それからさらに、この麻薬密輸事犯の検挙の問題について若干お尋ねをいたしてみたいと思います。幸いにいたしまして、だんだんと御努力が実って、検挙されました件数というものが増加はいたしておるようでございます。年次別に見てまいりましても、三十一年は五件、それから三十五年が八件、三十六年が十一件、三十七年は上半期だけで十一件というように、だんだんと検挙件数というものは増加をいたしておりまして、そういう点については御同慶でございますが、その際私どもがその内容をしさいに検討して感じますことは、検挙されました半数が船員、船客、こういう点だというようにいわれておるようでございます。そこで、この麻薬密輸事犯の取り締まりを重点的にやるということになりますと、いままでの実績が船員、船客が半分を占めておるということならば、そこにずっと重点的に取り締まりを強化すると、極端な言い方をしますと、半分はなくなるのではないかというような気もするのです。ところが、なかなかこの密輸事犯を検挙することは困難だというような実情にもございます。ところが、資料から見ますと、私どもしろうとから考えてみましても、船員、船客というものが検挙の半分を占めておるならば、そこに重点を指向すれば案外検挙件数が多くなるのではないかという気もするのです。そういう点については、海上保安庁かあるいは税関ですか、適当なところにひとつお答えを願いたい。

樋野忠樹海上保安官(警備救難監)

○樋野説明員 海上保安庁といたしましては、関係官庁と緊密に連絡をとりまして、立ち入り検査をひんぱんにやることによりまして、船内の麻薬を検挙したいと努力中でございます。またそのほか、船員につきましても、船舶に乗り組む船員そのものの平素の動向はもちろんでございますが、船に立ち入りまするいろいろな沖商、あるいは石炭その他沖荷役をやります人夫その他に情報を十分探るように平素から努力中でございますが、何ぶん船舶の大きさ、船の構造の複雑さによりまして、実績は、三十六年に大きなやつが一件ありましただけでまことに心外でございますが、情報の収集、それから基礎調査を十分やっております。今年に入りましても、昨年の暮れ以来三百件の立ち入り検査をやっておりまして相当な資料が集まりましたので、そのうちに必ずや御期待に沿い得るような検挙ができるのではなかろうかと思うのでございますが、先生御承知のように、何ぶん麻薬の捜査につきましては有力なる情報の提供が主でございますので、そういう面については極力努力中でございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 これはあらゆる面へ重点を指向することがけっこうですけれども、いまの人員配置、人員構成では、いま私どもが申し上げます方向ではいかぬと思う。そうすると、まずどこから重点的に取り締まりを実施していくかというような点が、非常に能率の上から問題になってくるだろうというように考える。そうしますと、私どもしろうと考えでございますけれども、検挙された中身というものは船員、船客が半分を占めておるということなら、そこに集約をしてやったらかなり大きな成果があげられるのではないかというようなこと、これは参考までに申し上げたのでございますけれども、そういう意味でお尋ねをいたしたわけでございます。  それからもう一つ、それに関連をしてお尋ねを申し上げてみたいと思います点は、密輸の港を利用する利用港の問題であります。この密輸の問題が海湾と最も密接な関係を持ちますことは、先ほど御指摘申し上げたとおりでございます。しかも最近特に目立ってまいりました傾向として、麻薬密輸拠点がだんだんと移動していくという一つの事実があるやに承っておるわけです。従来は横浜、大阪、神戸等だったのでございますけれども、最近では、鉄鉱石、くず鉄、農産物を処理いたしまする近くの開港、たとえば北九州の八幡、戸畑区、若松、あるいはまた唐津、四日市、新居浜、それから裏日本、それから瀬戸内海沿岸、こういう地方の港湾というものがだんだん利用されていくようになってまいりました。そうすると、そういう麻薬密輸に利用いたしまする利用港というものがだんだん地方のほうに移動していく。それは一体どういう理由であるのか、理由がわかれば、またそこでそれに対処する方策も出てこようと思う。こういう目新しい傾向が出てきたということに対して、どういうふうにお考えになっておりますか、ひとつこの際御見解をお聞きしたいと思います。

樋野忠樹海上保安官(警備救難監)

○樋野説明員 先ほども厚生省の薬務局長から御答弁ございましたように、やはり取り締まりの基礎の点について、密輸しようとする計画であろうと存ずるのでございまするが、幸い私どものほうは固定しません船舶を持っております関係上、関係の向きからの情報が入りました場合は、保安部署等のないところにも船舶を差し向けまして、容疑船の立ち入り検査の励行をやっておるのが実情でございます。いずれにいたしましても、やはり密輸、密入国その他につきましてもそうでございまするが、一つの点に重点を置きますと必ず弱い点が出てまいりますので、それらの弱い点をつかれるのは、朝鮮のほうの密入国についてもそうでございまするが、なるべく広い面につきまして海上において捕捉したいと思いまするが、勢力その他の点もございますし、また陸上でたとえますならば、横浜から東京の間に巡視艇が一ぱいというような傾向にもなるのでございまして、極力情報の収集に努力いたしまして、そういう動静が察知されました場合には、船舶の機動性を十分発揮してやっていきたいと思って努力中でございます。確かに、先生の御注意の点はもっともであろうと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いま私が御指摘申し上げましたように、大都市周辺の港に取り締まりを強化すると地方に散ってしまう。地方に重点を指向すると、また大都市に戻ってくる。こういうことでは、私はイタチごっこで、なかなか所期の目的を達成するということが困難ではなかろうか。それなら一体、そういう傾向についてはどういうふうに対処するかということが、私は、今後取り締まり上きわめて重要な点だと考えるわけです。ですから、いまも御意見を承ったわけですが、そういう点についてもひとつ十分御検討をいただきたいというふうに考えます。  それからもう一つ、ここで関連してお伺いをいたしておきたいと思いまする点は、厚生省でも密輸要注意船としてマークした船舶というものが、三百隻以上存在しておるというふうに承っております。マークしていただくのはけっこうでございますけれども、この三百隻もマークしなければならぬということは取り締まり上も並みたいていのことでなかろうと思うし、また三百隻もマークしなければならぬように今日まで放任しておったのかというふうな印象も受けますし、そういう点、どうもすっきりせぬわけですけれども、それではいま密輸要注意船としてマークされております三百隻の船舶というものが、現時点においてどういう状態であるのか。どうも三百隻もマークしておるというと、それを監視するだけでもたいへんだろうと思うし、また三百隻もいままでふえてきたという点については、逆にことばをかえて言うと、どうもあまり野放し過ぎておったのではなかろうかという印象も受けるし、どうも私どもはすっきりせぬ点がございますので、そういう点についてもひとつこの際御所見をお聞かせいただきたい。

樋野忠樹海上保安官(警備救難監)

○樋野説明員 容疑船の数でございますが、現在容疑のあるものももちろんでございますが、前歴のあるもの、いわゆる前科のある船、外国船あるいは漁船、商船全部でございますが、さようなものを累計いたしましたものが三百隻程度でございます。私どものほうといたしましては、一応そういう前歴のあるものは、情報がございませんでも入港した場合は常時ウォッチしておるわけでございます。またそれらのものが入港し、また一定の距離まで出帆したあとまでも追尾いたしまして、船内から麻薬を海中に投棄するというふうなものも発見したいと努力中でございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 前科がある場合、あるいはまた現在容疑がある場合、そういう船舶が、私は厚生白書を見たわけですが、その中でも三百隻以上あるというふうに明記されておるわけです。これは私ども、なかなかたいへんなことだというふうな印象を持ったわけですし、それからまた、いままでの取り締まりというものが少し手ぬるかったのではなかろうかというふうな印象を受けます。いずれにしてもこれはなかなかたいへんなことですから、こういう点に対して今後どういうふうに対処するかということにつきましても、ひとつ積極的に御検討を願わなければならぬのではなかろうかというふうに考えます。  それから今度は厚生省のほうに移ります。麻薬中毒患者の問題についてお伺いを申し上げてみたいと思います。  厚生白書を見てみますと、発見されました麻薬中毒者の数というものは、だんだん増加をいたしております。特に昭和三十二年ごろから急激に中毒患者の発見された数が増加いたしておるわけであります。御承知のように、麻薬中毒者というものは戦前は約四千ぐらい、だというふうにいわれておった。現在はそれが四万といわれるような膨大な数字になっておる。しかも毎年新しく発見される患者が二千人ということであります。ところが、ここで私もちょっとふかしぎに感じますことは、毎年新しく患者が二千人発見される。その二千人の中身は、事件を起こして検挙される、そのために発見されたものが六〇%、それからあとの四〇%が医師の届け出によって発見されるというような実情になっておるようでございます。そこで私どもちょっとふかしぎに感じましたことは、今度の法律改正の中では医師が届け出なければならぬということで明記されておりますけれども、どうも医師の届け出によって発見された数というものが、私ども予想いたします以上に少ないというような印象を受けるわけです。こういう点がどういうことに基因するのか、おわかりでございますならばお聞かせをいただきたい、かように考えます。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 ただいま御指摘のように、庭師の届け出によるものは非常に少のうございまして、昨年三十七年の状況を見てみますと、件数で、中毒患者の発見数が二千百七十六のうちで、届け出によって発見されたものは八百四十五名でございます。前年の三十六年におきましては七百五十名、それが九十五名ふえておる。送検者中から発見したものが大体千二百六十九人、それと比較しても、それほど少ない数ではないのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 まあ見解の相違ですけれども、どうも私どもは、医師の届け出によって発見される比重というものが、いまも指摘いたしますように四・〇%程度ですから、もう少し多いのではなかろうか。特に今度の法律では届け出制の義務が出てくるわけですから、もう少し多からぬとあまり意味がないので、そういう法律の改正の精神からいっても、私はもっと多いのが妥当ではなかろうかというふうに思うわけですけれども、現状は、検挙された者が六〇%、それから医師の届け出が四〇%ということになっておるので、もっと多いことを私どもは実は期待をいたしておる。  もう一つ関連をしてお聞きしてみたいと思います点は、この中毒患者が発見されました状況の問題であります。統計より見てみますと、いまも私が御指摘申し上げましたように、検挙によって発見されたものが過半数、ところが検挙により患者の発見されましたものは、大体がもう大都市等の麻薬濃厚地帯に多い。それから医師の届け出によって発見されたものは、どちらかというと全国各地、地方のほうから届けられた場合が多い。どうも私ども常識的判断によりますると、濃厚地帯で患者か多いわけですから、そういうところも医師の届け出というものが多かろうと思うのですけれども、そういうところは医師の届け出が少なくて、地方の比較的濃厚度の薄い地方では医者がどんどん届ける。患者が非常にたくさん出てくるところでは医者が届けぬ。どうもその辺について、私ども常識的に判断をして納得がいかぬ点があるわけです。やはり多いところから医者がよけい届けそうな気がするのですけれども、多いところから届けぬで、少ないところから届ける、こういうギャップというのがどうして生まれてくるのか、私はちょっと判断に苦しむわけでございますけれども、そういう点についてもひとつ事情等をお聞かせいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 なるほどただいま先生御指摘のように、ちょっと奇異な感じでございますが、私はそれをこういうふうに理解しているわけでございます。都市の医師の五十条による届け出、これは主として医師、医療施用者でございますが、そういうものの対象になるものは、いわゆるヘロインその他というような不正から来るものもあるでしょうけれども、医療から来る麻薬中毒者が相当多い。それから都市におきましては、中毒患者としてはなるほど都市が圧倒的に多いわけでございますが、これはその内容を見ますと、不正施用による患者の数が圧倒的に多いわけでございまして、したがってまた逆に言えば、ヘロインその他麻薬の不正入手の方法も、都市ではわりあいに容易に入手できますけれども、郡部ではこれはなかなかできない。そういうふうな関係で、都市の麻薬中毒患者はヘロインがほとんどでございまして、要するに不正の入手による麻薬中毒患者が多いわけでございますから、医師の手にかからないものがあるわけでございます。したがって、麻薬取締官なり警察官の検挙によってあがってくる者が多い。そういうふうな事情で、結果から出てきますこの内容が、都市ではわりあいにこれらの中毒患者が医師の門をくぐらないで、実態的にもそういう数は少なくて、ヘロイン等の不正施用の麻薬患者が多い。そういうところに原因があるのではないかというふうに考えるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 それも一理だと思うけれども、いままでずっとお尋ねをしてまいりました経緯等から見ても、大都市からだんだん辺地のほうに麻薬のルートというものが移っていくのですね。ですから、地方での届け出というものもだんだん上昇してきはせぬかという感じを私を実は持っておったわけです。ところがいま申し上げますように、なかなか中央では多くないということで、私どもも、今後大都市から地方に移っていく場合に、はたして今度地方からもどんどん医師の届け出をするのが急激に上昇するのか、あるいは地方はどういう推移をするのかというようなことをいろいろ考えた結果、いまのような点をお伺いしたわけです。しかし、その点を追及するのが真意ではございませんから、その点にとどめおきたいと思います。  それからもう一つは、最近非行少年と睡眠薬遊び、あるいはさらに発展すれば麻薬中毒というようなことも非常に関連してくるだろうと思う。こういう点が、最近社会問題として非常にクローズアップされてきたという経緯がございます。それでは一体、年齢と麻薬中毒との関係というものはどういう形に置かれておるか。たまたま非行少年の問題等が、最近社会問題として世間で大きくクローズアップされてまいっておりますので、そういう点についてもひとつこの際、資料がございますならばお聞かせをいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 中毒者の年齢別の統計でございますが、これは三十七年の二千百七十六人のうち、二十歳以下が男女合わせまして百二名でございまして、これは前年の九十五名に比べますとややふえております。それから二十一歳から三十歳までの患者では千四十九名でございまして、その内訳は、男が七百六十四名、女が二百八十五名、これは前年、男が八百二十二名、女が三百十三名で、前年よりは少し減っております。それから三十一歳から四十歳までが五百七十七名で、その内訳は、男が四百二十五名、女が百五十二名、これも前年に比べますと、男は前年が四百七十三名でございますので、少し少なくなっておりますが、女は前年の百二十五名が百五十二名で、これは相当ふえておるわけでございます。四十一歳から五十歳までが男女合わせまして百八十五名、その内訳は、男が百十四名で女が七十一名、これも前年に比較しますと、男女とも多少ふえているような傾向でございます。五十一歳から六十歳までは、男女合計しまして百三十四名、その内訳は、男八十名、女五十四名、これも前年に比べまして、男女とも多少増加しております。六十一歳以上は男女合わせまして百二十九名、これも男が七十九名、女が五十名でございますが、男女ともふえております。合計しまして男が千五百三十七名、女が六百三十九名、そのうちで、パーセントから申し上げますと二十一歳から三十歳が一番多い、こういう形になっております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いまの数字を拝見いたしますと、たいした特色がないというふうに判断してよろしゅうございますね。私どもは、非行少年の問題が最近非常に社会問題としてクローズアップされてまいりましたので、若年者に非常に急激に増加したのではなかろうかというような印象を受けまして、もしそうだとしたならば、それらに対処する対策というものが強力に推進されなければならないだろう、そういう意味でお尋ねをいたしたわけでございますけれども、いまの数字では、年齢的にはたいして特色はないということが、判断がついたようであります。  次は取り締まりの点について、一、二お伺いをしてまいりたいと思います。麻薬事犯の取り締まり状況につきましては、三十一年の検挙数が千二百五十一件、それがだんだん増加いたしまして、三十五年が千九百八十六件で、これが戦後最高であった。ところが、三十六年は二千二百三十五件でそれを上回り、さらに三十七年の上半期も、大体それを上回りつつあるような状況であるようであります。そういたしますと、この麻薬取り締まりはだんだんと、年々歳々強化される、ところが検挙数はどんどんふえていく、取り締まりが強化されるから、だんだん検挙数が減っていくかと思うとどんどんふえていくということは、次から次に無尽蔵に麻薬中毒者が出てくるということを、私は意味するだろうというふうに考えるわけです。そうしますと、いろいろ取り締まり強化、取り締まり強化といわれておるけれども、案外取り締まりというものが十分行なわれておらぬのでないかというような印象も、この数字から受けるわけです。だんだん取り締まりが強化されて、どんどん検挙されていけば、やはり逐年、一定の段階がくると減っていかなければならぬ、それがだんだんウナギ登りにふえていくばかりだということは、それほど急激に新しい患者が増加しつつあるということを物語っているのだろうというふうに考えます。そうしますと、なるほど口では取り締まり強化、取り締まり強化といわれておるけれども、実際には、この数字から見ると、たいした成果というものがあがっておらぬのではなかろうかというふうな印象も受けるわけです。こういう点  はいかがでございますか。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 取り締まりを強化しているにかかわらず、取り締まり件数がふえている。これは現在の時点におきましては、確かに密売買が行なわれている、そういう現実の中に取り締まりの体制が、手が伸びているわけでございますから、ある一定の時点までは、私は取り締まりを強化することによって、むしろ事犯がふえてくるんだと思います。また私どもが、そういう点で手足が足りないからということで、三十八年度予算におきましても取り締まりに関連する予算の増額、あるいは取り締まりの人員の予算的措置をお願いして、ある程度実現したわけでございますが、これはいまの時点におきましては、まだ密売の存在というものは、そういう取り締まり体制とのバランスから言うと、密売のほうのバランスが大きくて、私どものほうがまだうまくそれを撲滅するまでに、終息するまでのところにいっていない段階というふうに観念しておるわけでございますが、ここ数年間で必ず河野先生のおっしゃるように、取り締まりの強化、中毒者対策によって、件数なり中毒者も減るということが数字の上であらわれてきて、初めて取り締まりがほんとうに実を結んだ、こういうふうになるんだ、いまはその時期にいくまでの期間でございますので、数字の上では、強化をしたにかかわらず件数がふえてきたというふうに御了承願いたいと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 一定の段階がくれば、減少しなければならぬというふうに考えたわけですけれども、その段階に到達しておらぬという御判断でございますから、そういうことで理解をいたします。  それから、先ほどちょっと触れたのでございますが、御承知のように、いままで東京、横浜、大阪、神戸、福岡、こういう大都市というものが濃厚地帯であった。ところが最近は、それが全国的に広まっていった。それが何に基因するのか。そこで、私どもが一番心配するのは、この販路というものがずっと全国的に広がったんだ、そこで、最近濃厚地帯というものが、だんだんと全国に広がっていったんだということになると、これはたいへんなことです。要するに、いままでなかなか手に入れられぬから、乏しいながらも、地方でというような考え方もございましょう。ところが、いま私が申し上げるように、積極的に向こう側が販路を全国的に拡張してしまって、そのために全国津々浦々で手に入り、だんだんと濃厚地帯というものが移動していったということになりますと、これまた取り締まり上非常に大きな問題があったということになろうかと考えます。そこで大都市から、いま申し上げるようにだんだんと全国各地方に移動していった、それがどういうことに基因したのか。私が指摘いたしますように、販路が拡張されたということなら、これはたいへんなことだと思いますよ。それがどういうことでそういうことになってきたのか、ひとつその辺の事情もこの際お聞かせいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 これは、警察のほうの御意見もあろうかと思いますが、私の考えますには、確かにそういう濃厚地区の取り締まりというものを、警察その他関連の官庁が全部重点的に取り締まり強化をいたしたということが一つ。それから、たとえば横浜の日ノ出町、黄金町地区の住民が、非常にこういう問題に対して自覚いたしまして、自分の地区がそういう麻薬の密売の地区にされることを撲滅しようという、地区活動が非常に活発になってきた。そういうことで、従来はその辺の住民もあまり関心がなかったし、それから取り締まりもやってはおりましたけれども、なかなか効果が及ばなかったということで、半ばそういう点が公然と——公然とではありませんが、行なわれていた地区が、現在においては行なわれていないようになってきた。したがって、いわばやみのそういうマーケットというものを、いままでの地域から分散いたしまして、そしてなるべくそういう官憲の目のないところ、あるいはそこの地元民の批判が起こらないようなところで密売をやっていくというような現象が出てきたのじゃないか。しかし、それは売る側の一つの体制の変化でございまして、それでは、それを需要する側はどうかと申しますと、これは、ただいま河野先生が御心配になったように、都市から郡部においてそういう需要が急激に広がったというふうには、私どもは考えていないわけであります。依然としてそれを需要する側は、従来の都市におるやはり隠れた中毒患者というように考えておるわけでありまして、そういう点が、いま急激に都市における需要が、郡部にまで需要の拡大があった、そういう意味で、やみの市場が拡大されたというふうには、私どもは観念していないわけであります。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 この麻薬の移動と関連して、もう一つ注意を喚起しなければならぬ問題は、医療関係麻薬の問題でございます。この麻薬取り締まりがだんだん強化されますと、したがって麻薬が手に入りにくくなる。そうすると、今度は医療関係麻薬というものがねらわれるという結果になってまいろうと考えるわけです。このことは、さっきいろいろ御批判申し上げましたけれども、麻薬公報を見てまいりましても、そういう数字が明らかにされております。そこで、いままで申し上げましたように、麻薬の密輸あるいは密売に対する強硬な対策というものが必要でございますと同時に、今後は医療麻薬に対する対策というものも、当然並行して強化されなければならぬというふうにわれわれは考えるわけです。特に私ども心配いたしますのは、たとえば昨年、施用者でありまする医師が違反のために検挙されたものだけでも百五十五名に及んでおるというふうに仄聞をいたしております。もちろんその数の多い少ないは別として、私はやはりこういう医療関係者というものは、麻薬禍一掃の運動の中で中核となっていただかなければならぬ人たちだと思うのです。そういう人たちの中から、いま御指摘申し上げまするように、麻薬禍の渦中の一人になるということについては、私は非常に重大な問題だと思うのです。今後麻薬の取り締まりが強化されると同時に、こういう点が非常に大きな問題になってくると思うのです。この点についてどういうふうにお考えになっておりまするか、ひとつお聞かせをいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 御指摘のように、医療麻薬の取り扱い者としてのお医者さん、医師なり歯科医師の麻薬違反というものは、相当の数にのぼっておるわけでございます。これは私ども、やはり放置できない問題だと思います。しかし内容をよく見てみますと、非常に悪質のものと、それから中には麻薬中毒者がかけ込んで、医療をいわば強制されて知らずに麻薬を打ったら、それが中毒患者であったというようなところから、ずるずると関係ができて、半ば強迫的にやられたという、いわば同情すべき違反者もおるわけでございまして、そういう点に対しての私どもの指導なり監督は、十分、そういう悪質なものとそれ以外のものとの区分けをする必要があるかと思いますが、こういう点につきましては、私はやはり医師会の協力を得ることが必要だと思いますし、私どものほうにも麻薬の特別委員会というものを昨年つくっていただきまして、私どももそれに入りまして、まず予防的な面で医師のそういう一つの啓蒙の運動をやる、そうして仲間からそういうものを出さないように協力を願うという策も講じているわけでありますけれども、御指摘のように、最も麻薬中毒患者に接する立場に立つ人たちでございますので、われわれとしては全面的に協力をお願いしたい。しかし中には非常に悪質な医療担当者も現実におるわけでございますから、そういう点については、医師会は医師会として、自分の仲間から不名誉な者が起きないように、厳重にわれわれに報告してもらう、われわれもその点については厳正な態度で対処するという、そういう両面をうまく調整しながら医療担当者の麻薬違反がなくなるようにしていきたい、かように考えております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 そこで私は、医療麻薬をめぐりまする具体的な事例を一つ取り上げて、若干ここでお尋ねを申し上げておきたいと思います。それは北九州の小倉で起こりました例の熱科研の問題です。御承知のとおり、北九州小倉地区にございまする熱科研では、麻薬でございまするオピスコを注射し、その後蒸しぶろに入れて治療をやる、こういうことで実は麻薬違反を犯して摘発されたという事件の概要ですが、この熱科研の問題はきわめて複雑な点が多々ございます。それで私は、医療麻薬というものが問題となってまいりまする趨勢でもございますから、この際この問題について若干御所見をお尋ねしておきたい、かように考えます。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 小倉の熱科研究所のことでございますが、熱科研究所というのは戦前か戦中くらいに財団法人として認可をされたものでございまして、本部は東京にあって、小倉はその支部という形になっているわけでございますが、現在東京には本部はございませんで、小倉だけにそういうふうな研究所があるわけでございます。ここでそういう医療用の麻薬、オピスコが中心でございますが、そういうものが非常に乱用されているといううわさを受けまして、麻薬取締官事務所の小倉支所のほうで手入れをしたわけでございまして、現在これは起訴処分になっているわけでございます。私どもは、麻薬というものが医療上正当に使用されることについては、これは医者の判断によってするわけでございますから、その医療の範囲においては別に問題はないと思うわけでございますが、この小倉の事件は、たとえば二日酔いとか、そういう疲れをなおすために麻薬が使われたというようなことでございまして、これは明らかに麻薬の医療用の正当使用の範囲を逸脱しているものというふうに判断されるわけでございまして、検挙に踏み切ったわけでございます。司法処分がどうなるかということは、これは法務関係の問題でございますが、こういうふうな正当な医療行為のほかに麻薬が乱用されるその限界は非常にむずかしいわけでございまして、これに対しては私どももいろいろと学識経験者の意見も聞き、そういうふうなことをやったわけでございますが、明らかに麻薬の不正使用という判断のもとに行動を起こしたわけでございまして、不正使用以外の麻薬の施用ということは、これは医療法に基づく正当な医師の行為でございますので、その点については医師の良心的な判断におまかせする、しかし不正施用につきましては、これはわれわれとしては麻薬取締法によって処断せざるを得ない、かように考えておるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 ことしの初頭において、いよいよ摘発に厚生省は踏み切られたのですけれども、ところが状況をいろいろ承ってまいりますと、すでに昭和三十二年、昭和三十六年の二回にわたりまして、麻薬取締法違反の疑いがあるということで捜査をされたいきさつがございます。ですから私は、ことしいよいよ摘発に踏み切られたわけですけれども、従来からそういう容疑があった、それがどうして今日まで約六年間も放置されておったのか、もう少し厳重に監視されておればこういう問題も未然に防げたのじゃなかろうかと思うのですが、この問題が提起されて六年間推移をしておった。その辺がどうも不明朗な印象を受けるのですけれども、そういう点について不明朗な事情はございませんか。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 これは御指摘のように、昨年の前に三十二年と三十六年の二回手入れをしたわけでございまして、三十二年のときは起訴をしたわけです。しかしこれは証拠その他の点で不起訴処分になったわけです。そういうこともございまして、私どもとしてはもっとはっきりとした証拠を把握する、そういう準備行動を行ないまして、そうして三十六年にもう一ぺんそういう捜査を行なったわけでございますが、三十六年におきましては、残念ながらはっきりとした証拠がつかめなかった。それで昨年はいろいろと物的証拠も発見されまして、ようやく起訴処分にまでこぎつけたということでございます。三十二年以来私どもとしては放置したわけではございませんが、そういうなかなか困難な内容のものでございましたので、いわばそういう物的証拠というようなものをあげるために、いろいろと苦心をしたということでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 御承知のように、この熱科研の責任者は自民党の元代議士でございます木下重範氏でございますので、政治的な圧力といいますか、そういう点から、今日までこの熱科研の問題というものが放任されたのじゃないかというふうな印象も受けますし、また私はいろいろと事情を聴取しておるわけです。現地でも非常に残念だと言っております。そういう現場の声もあります。ですから、この熱科研の問題が今日まで放任された背後には、そういう政治的な圧力があったのじゃなかろうかという感じを持っておりますので、先ほど不明朗な事情というものはございませんかと御指摘申し上げたのであります。ある、ないは別として、いずれにいたしましても、今日までそういう容疑の診療行為というものが六年間も続けられたということについては、非常に大きな問題があったろうと思うのです。そういうような政治的な圧力があったとかないとかいうような点については、お聞きになったことはございますか。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 三十六年、三十七年は私が薬務局長のときでございますが、そういうふうな政治的なことは一度も聞いことはございませんし、また私の部下からそういうような声を聞いたこともございません。いま初めて私が伺ったような次第でございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 局長は中央ですから、あるいはそういう風聞には接しられておらぬかもしれない。しかし、もう一つ私どもが不明朗に思いますことは、この熱科研の法人組織ですけれども、この監事の中に元警察署長がおられる。ですから、そういう責任者が元自民党の代議士であり、それから役員の中に元警察の署長をつとめておられた方がおるというところに、不明朗な風聞が出てきたと私は思う。そういうように政治力あるいは警察権力を背景として三十二年から今日まで推移してきたのではなかろうかという、非常に強硬な意見が一部においてはあらわれておると私は思う。私はそういう意見を現地の関係者から聞きました。もしそうだといたしますならば、私はこれは全くけしからぬ点だと思う。特に警察当局は鋭意この取り締まりに当たっていこうというような今日の時点の中で、元警察官というものがそういうことでこの法の運営をはばまれるということになりますと、私どもは全く承認しがたいと思うのです。こういう点について、警察庁はお聞きになった事実はございますか。

楢崎健次郎警視長(警察庁保安局保安課長)

○楢崎説明員 警察官の前歴者がこの熱科研の幹部におるがゆえに、警察が捜査に手心したというようなことは絶対にあり得ないと思います。ただこの事件につきましては、前々から厚生省が中心になられておったわけでございまして、われわれのほうとしては伺ってもおりますし、お手伝いはしておると思いますが、現在事件は厚生省におまかせしている、こういう経過になっております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 それぞれ聞いていなかったということでございますけれども、私どもが仄聞する範囲では、そういう政治的な意味で非常にやりづらかったというような声を聞いておりますのは事実です。ですから、この際ひとつ十分頭に入れて、今後の問題の処理に当たっていただきたいというふうに思います。  それからもう一つ、それに関連をして私どもがぜひお聞きをしなければならぬと思います点は、これは麻薬公報に書いてあることですけれども、この熱療法について目下その筋の権威者の意見を集めておる、何か時と場合によっては、オピスコを注射して蒸しぶろに入れることが、学者の意見次第では認むべきだというような印象を受ける記事が出ておる。私ども、いかなる理由があってもオピスコを注射して蒸しぶろに入れることが適法であるというふうには理解されぬと思うのですけれども、それをあえてその筋の権威者に意見を聞いているということが麻薬公報に出ておるわけですが、この点は私ども非常に心外でございますので、この際その辺の事情を明らかにしていただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 これは私どもの捜査の証拠を固めるのになかなかむずかしい問題で、三十二年のときに私どもが捜査によって調べ得た証拠によりましては、医療目的であるかどうかという判定が非常にむずかしいということで、起訴処分をされなかった、不起訴処分になったというふうな経験もございますので、今回は、私どもはそういう点を十分に準備をしていきたいというような配慮から、念のためにそういうふうな御意見を学者に聞いておるわけでございまして、私個人としては、これは明らかに麻薬の不正使用だというふうに考えているわけですけれども、しかしもしも学問上そういうことがあるとするならば、その点はやはり念を押してちゃんと準備をしておくことが必要じゃないかということで、念のためにそういうこともやっておるという趣旨でございまして、それ以外に別に他意があってやっているわけではございません。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いまの点は、少なくとも私ども麻薬公報を拝読する限りにおいては、どうも学者の意見次第によってはこのオピスコをやって蒸しぶろに入れるということが適法である、そういうふうに理解していいかのような印象を受けるのです。ですから、そういうふうな印象を受けるような記事を麻薬公報に載せられて下部に流されることが適当な処置であるかどうか、これもまた私は非常に疑問を持たざるを得ない。ですから私どもも、どうもオピスコを打って蒸しぶろに入れることが適法であるというふうには判断しがたいし、厚生省のほうでもき然たる態度をとっていかれるという方針でございますならば、念のためにやるということぐらいならば、あえて麻薬公報に記載をして現場に流す必要はなかろうと思うのです。こういう点も、私は厚生省のやり方は軽率のそしりを免れぬと思うのです。こういう点どうですか。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 学者に聞きましたのは、事前においても聞いたわけでございますが、むしろ私どもとしてはこの問題を事件とするためにそういう努力をしたわけでございまして、ただいまのような御指摘を受けますことは、これは麻薬公報の書き方その他、私どもはその点よく読んでおりませんけれども、十分注意しまして——むしろ私どもの意図は、ただいま先生がおっしゃったこととは逆な意図でやったわけでございますから、その点は十分注意しまして、将来誤解のないようなやり方をしていきたいと思います。

秋田大助自由民主党

○秋田委員長 午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時五十一分休憩      ————◇—————    午後二時二分開議

秋田大助自由民主党

○秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。河野正君。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 さらに何点かについてお伺いを申し上げていきたいと思いますが、その一つは、先ほどいろいろと御指摘を申し上げてまいりましたこの地域的分布の一環でもございますけれども、先ほどもいろいろと申し上げましたように、麻薬事犯というものが都市から地方へ、また港湾の場合も大都市港湾から地方の港湾へ、こういうように逐次移動を行ないつつございますのが現在の状況でございます。それと関連をしてもう一つ注目すべき問題の一つに、次のような傾向がございます。それは、いままで大都市中心の中毒者というものが、最近沼津、銚子、こういったように、漁村といいますか、漁業を中心とした地域の方向にだんだんと浸淫状況というものが拡大をしていく。こういう一つの特色があらわれてまいります。それならどうして特に漁村に新しく中毒患者が出始めてきたか、こういう点について、もし事情等おわかりでございますならばお聞かせを願いたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 東京周辺におきましては、ただいま河野先生から御指摘のような、都市から周辺の遠洋漁業等の基地というような、沼津とか清水とかいうものに中毒患者が最近散見されるという報告を私ども受けております。しかし、これを全国的に見ました場合に、いわゆる都市から漁村に麻薬の中毒なり麻薬の施用が広がっていくということ、傾向としてはちょっとまだそこまではいってないのではないか。しかし、たとえば沼津は、あの近くに駐留軍関係のキャンプがあったり何かして、そこへ売春婦等がその周辺におりまして、そういうふうな関係で従来から麻薬の不正施用というのがあったわけでございます。そういうのがキャンプがなくなり、そういうものに関連する一団といいますかグループが、たとえば沼津等に流入してきた。そういうふうな意味の一つの現象として、私は沼津を注目すべき一つの基点だと考えるわけでございます。それから東京、横浜の周辺としての千葉あたりにも、そういうようなことが多少散見されるということは、私どもも拝見しておるわけでありますが、しかし、こういう傾向をもっと広く、一つの大きな傾向として見るかどうかということになりますと、そこまではまだ少し断定できないのではないか。だんだんそういうような都市周辺の特殊な形態、いろいろないままでのいきさつから、沼津、清水等が、従来なかったような中毒患者が少しふえておる。こういう現象は確かにあるわけでございますが、しかし、それは一般的な傾向というよりも、沼津の持つ、あるいはそれに近接する清水が持つ一つの特殊性ではないかというふうに私どもは考えておるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いまお答え願いましたように、たとえば基地の遺産物であるとか、またいままでそういうふうな浸淫地帯であったとかいうことで、別に新しい傾向ではないということでございますればたいした問題ではございませんが、しかし厚生白書を拝読いたしますと、そういう傾向が生まれてきたやに理解ができるわけです。そういたしますと、われわれとしても、一体漁業基地には漁船その他の関係があるので麻薬が入手しやすいという一つの理由によるのか、あるいはまた最近沿岸漁業が非常に圧迫を受けて、また漁村におきますいろいろなレジャーを楽しむ機会が乏しいという環境の事情によってそういう麻薬患者がふえてきたのか、それぞれ理由があるならばその理由を芟除していかなければならぬというふうに思うので、そういう意味でお尋ねしたわけでございますけれども、いまお答え願いましたように、これは特殊事情であって特別新しく発生した特色ではないということでありますれば、それでけっこうだと思います。  それからさらにお伺いをいたしてみたいと思いまする点は、この麻薬と暴力との関係でございます。この点は、先ほど冒頭において大臣からも若干御指摘がございました。また私どもいろいろな週刊誌を読んでまいりましても、あるいはまた今日のテレビ、ラジオ等を聞いてまいりましても、しょっちゅういわれておりますことは、麻薬の密売は暴力団の資金源になっておるというような事情であります。密輸業者から大体一グラム四千円くらいで買い取って、それを約二万円程度で売っておる。これは相当大きな利潤でございますので、そういう点が、今日暴力団の資金源のおもなものになっておるというふうなことが、しばしば報道されておるわけでございます。しかも日本で密売買されております麻薬は、年間約五百八十億円程度であるというふうにいわれておる。しかもその麻薬というものが、ほとんど海外から入ってくるわけですから、したがって、いま申し上げますように、ばく大な金というものが海外へ持ち去られておる。これはわが国の経済の面から見てまいりましても、きわめて重大な面だと思うわけです。したがって、ことばをかえて申し上げますと、麻薬暗黒街の息の根をとめるということが、まず暴力団の息の根をとめるということにも通じてこようかというふうに考えられるわけです。  そこで、この麻薬禍の撲滅は、いま申し上げますように、暴力街の撲滅にも通ずる問題でございますが、そういう点に対して警察庁ではどういうふうにお考えになり、またどういうふうに対処しておられますか、またその結果、どういう結果が生まれてまいっておりますか、その辺の状況をひとつお聞かせ願いたい。

楢崎健次郎警視長(警察庁保安局保安課長)

○楢崎説明員 御指摘のとおり、日本の麻薬犯罪は暴力団によってささえられておる。これは非常に大きな特色でございます。私どもの麻薬犯罪の取り締まり対策と申しますと、第一には密輸入の封殺、第二には麻薬暴力団の掃討、第三に中毒者の検挙、こういう三本の柱の一番中心的な部門が、麻薬暴力団の掃討という問題でございます。  御参考のために数字を申し上げますと、昨三十七年度の麻薬関係の犯罪の検挙者二千八百二名のうちで、暴力団関係の検挙者数は九百二十九名、これは三二%に当たっております。団体の数にいたしまして、これは逐年ふえておりますが、三十七年度につきましては、麻薬暴力団百四十団体を数えております。お話しのように、麻薬が非常に微量で非常に高価なもの、しかも非常に利潤の高いものであるということにつけ込みまして、暴力団がその組織を活用いたしまして、麻薬を有力な資金源にしておるということで、われわれ麻薬暴力団を徹底的に掃討することに非常に意を使っておるわけでございますが、暴力団の対策としましては、麻薬のほかにいろいろな問題がございまして、むしろ警察といたしましては、いろいろな方面の対策の一環として、麻薬による犯罪の防止の一つとしまして総合的に暴力団対策を講じたいと思っております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 その問題と関連をして、もう一つ、われわれが検討を加えなければならぬ問題の一つに白タクの問題がございます。この白タクは、年々歳々だんだん減少の一途をたどっておるというふうにいわれておりますが、減少の一途をたどった反面、追い詰められた白タクが暴力事件や麻薬犯罪の犯行手段に使われていくという傾向が、新しく出てまいったということが伝えられておるわけであります。こういう点について、いままでおわかり願っております点についても御説明願えればけっこうだと思います。

楢崎健次郎警視長(警察庁保安局保安課長)

○楢崎説明員 これも御指摘のとおりでございまして、最近白タクの運転手あるいは砂利トラの運転手、こういったものが麻薬犯罪に加入しておる傾向が目立っております。数字を申し上げますと、三十六年度は百三名が運転手として麻薬の犯罪で検挙されております。三十七年度は八十名となっております。事例といたしましては、白タクが暴力団の手先に使われまして、先ほどからお話がありますように、麻薬犯罪の分散化、あるいは機動化の一端をになっておる、こういう傾向のように見えます。われわれとしましては、タクシーの運転手について麻薬犯罪を極力追及するように、これは問題の一つとして取り上げておる次第でございます。さしあたりとしましては、まずタクシーの運転者が中毒者であれば、道交法によりまして運転の免許を取り上げる。さらにこれが麻薬犯罪に関係すればこれを検挙する、こういうことでやっております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 麻薬取り締まりが強化されますと、敵側もあの手この手で法網をくぐっていこうという対策を講じてまいる、これはもう常識でございます。そういう意味で、この白タクが麻薬の持ち運びに利用されるという点が最近多くなった。黄ナンバーのものでありましたたらば、しょっちゅう検問を受けるけれども、白ナンバーでありましたら比較的自由だ、そういう点をうまく利用して、夜間、深夜、麻薬を運ぶ場合には白タクを利用する。いかにも自家用車というかっこうで白タクを利用して、麻薬の持ち運びをするというケースが非常に多くなった。そういうところに私が白タクを取り上げてきたゆえんがあるわけでございますし、そういうケースが多くなったという話を聞くわけですが、その点はどのような状況でございますか。

楢崎健次郎警視長(警察庁保安局保安課長)

○楢崎説明員 先ほど申し上げましたように、お話のとおり白タクの運転手が暴力団の手先になる、あるいはみずからが麻薬中毒者となって麻薬を携帯運搬する。ことに白タクは夜間の仕事でございますので、どうしてもそういう方面に利用される率が多いということで、これは情報により、あるいは一斉取り締まりにあたりまして、そういうケースを極力追及しておるわけであります。白タクの麻薬関係の取り締まりにつきましては、しばしばこれが警察官をひき逃げしたり、そういった暴力的な犯行も伴っておりまして、こういったことについて、先ほど申し上げましたように非常に危険な悪質な犯罪でございますので、注意して取り締まっておる次第であります。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いま私が御指摘をいたしましたように、白タクというものが麻薬の持ち運びに使用されるということでございましたならば、白タクの摘発というものを一そうきびしく実行してもらわなければならぬだろうと思いますし、また東京都内において私どもが経験するわけでございますけれども、かなり白タクが存在するようです。しかし白タクは白タクで、これはもちろん法律違反でございますけれども、さらにそれが麻薬の運搬に利用されているとすれば、罪が罪を重ねていく。しかもそれが麻薬禍という非常に大きな悪影響をもたらすということですから、これはきわめて雨天な要素を持っておるというふうに指摘せざるを得ないと思うのです。でございますから、この点はさらに一そう取り締まりの強化をされる必要があると思います。  それからもう一つは、麻薬中毒者が発見される中で、どの程度自動車の運転手がおるのか。いま犯罪者は白タクあるいはまた砂利トラの運転手、そこから百近い数字が年々出ておるというようなお話を受けたわけですけれども、そういうような麻薬中毒者で実際に運転の業務に携わっておる者がどの程度おるのか。特に中毒者が実際に麻薬をやるのは夜間とか、深夜運転を実施する場合に注射を打つ、あるいは麻薬をとるというふうな傾向が強いわけですから、これは犯罪もさることながら、乗っておるお客さんも、それがためにあたらとうとい人命を失わなければならぬというようなことになりますとたいへんなことでございますから、したがって、この白タクあるいは砂利トラ、さらにはタクシーの運転手と麻薬との関係というものが、私は人道上から見てもきわめて重大な問題ではなかろうかと考えるわけです。でございますから、そういう点について現実にどの程度起こっておるのか、そういう事実がございますならばひとつお聞かせをいただきたい。

楢崎健次郎警視長(警察庁保安局保安課長)

○楢崎説明員 運転者のうちの中毒者がどういう状況であるかということについては、ここに現在資料を持っておりませんが、先ほど申し上げましたように、三十六年度については百三名、三十七年度については八十名というのは、麻薬犯罪者のうちの運転者の数でございます。そのうち中毒者がどのくらいであるかについては数字がございませんが、一般的に申し上げますと、たとえば三十七年度の麻薬犯罪者二千八百名のうちの約五五%が中毒者であるということになっております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いずれにいたしましても、この麻薬と暴力、さらにはそれと直結いたしまする白タク、こういう点は、事故を起こしたりあるいはそれに伴いまして犯罪が起きたりということで、きわめて及ぼす影響が甚大でございますから、私はやっぱり法の改正と同時に、そういう点についてもさらに格段の御努力を願わなければならぬ問題ではなかろうかというように考えまして御指摘を申し上げたわけでございます。したがって、それからの点につきましてはさらに十二分な御処置を願いたいというように希望を申し上げておきます。  そこで、いよいよ法律そのものについての質疑を若干最後に行なってみたいと考えます。  その第一としてお伺いを申し上げてみたいと思いまする点に、医師の届け出の問題がございます。御案内のように、五十八条の二では「医師は、診察の結果受診者が麻薬中毒者であると診断したときは、すみやかに、その者の氏名、住所、年齢、性別その他厚生省令で定める事項をその者の居住地の都道府県知事に届け出なければならない。」届け出の義務制というものが明記をされたわけです。ここで私どもが感じますことは、いままで私がしばしば指摘を申し上げてまいりましたように、麻薬中毒者と暴力団との関係というものが大きく所在する、そして通報する義務が医師に課せられる、通報することによって麻薬中毒者、さらにはその背景というものが判明いたす可能性が出てまいりますから、ややもいたしますると通報の義務を負わされた医師に対する報復手段と申しますか、そういう点がないではなかろうという感じを持つわけです。と申し上げますのは、たとえば伝染病予防法に基づきまする伝染病の届け出、この場合でも届け出の義務が開業医に課せられておるわけですが、実際に開業医諸君は、このために非常に苦境におちいる場合もあり得るわけです。ですから、特に暴力団と結びつく麻薬中毒者を届け出るということになりますと、この届け出からいろいろと事犯の追及が行なわれるということもございましょうし、そういう点から、この届け出の義務はまことにけっこうでございますが、それにはやはり届け出が確実にできるための処置というものが必要になってくるのではなかろうかと私は考えるわけでございますが、そういう点はどういうようにお考えになっておりますのか、この際ひとつお答えを伺いたいと思います。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 五十八条の二の医師の届け出義務の規定は、現行法の五十条の規定を新しい規定に直したわけでございまして、従来も届け出の義務を課せられているわけでございますが、麻薬中毒者対策ということで強制収容の道を開いていくということになれば、ただいま御指摘になったような危険も、従来よりもより多くなる可能性は十分にあると私は考えるわけでございます。その点につきましては、私どものほうの取締官なりあるいは一般的には警察等とも十分よく連絡いたしまして、そういう法の成規な義務執行のために御迷惑がかかるということはとんでもない話でございますので、そういう点の措置は十分注意をしてやっていきたい。そうしてこの法律の目的とする、早期に中毒患者を発見するという目的にはかなうようにしていきたい。それと同時に、そういうものからくる暴力団なりそういうものの報復については、それぞれ関係官庁とも十分連絡をして、そういう点の未然防止につとめていきたいと考えるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 この点は具体的に御検討願っておかぬと、法律では義務化されたけれどもなかなか実効が十分でないという結果になりますと、これはから念仏に終わります。したがってそういう点に対しては、単に十分注意しますということでなくて、具体的にどういう配慮をすべきかという点についてひとつ御検討を願いたいと考えます。  さらに、麻薬中毒者の診察についてお伺いをいたしてみたいと思います。  その第一は、第五十八条の六の二項にございまするが、「精神衛生鑑定医は、政令で定める方法及び基準により、当該受診者につき、麻薬中毒の有無及び第五十八条の八の規定による入院措置を必要とするかどうかを診断」する。この政令で定める方法及び基準という点は、具体的にはどういうことをお考えになっておるのか、ひとつこの際お聞かせをいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 これは具体的には政令で定めます。その政令をつくります場合には、精神衛生審議会の御意見も聞いた上でつくっていきたいと思って現在準備しておるわけでございますが、私どものほうで、ただいま一般的に大体こういうことだとして申し上げますと、まず麻薬取り締まりの精神に基づく精神衛生鑑定医が行なう診断というものは、大体次のような項目についてそれぞれ審査をし、かつ検査を行なうようにしていきたい。その上で総合的な判断をする。その次の各号の第一といたしましては、麻薬の施用に起因する身体の異常の有無、その程度、それから注射部位の瘢痕なり硬結及び膿瘍等の皮膚の異常、それから身体の衰弱なり消耗の状態、そういう身体的な症状、そういうものにつきまして問診なり視診なり触診なり聴診なり打診なりを行なう。必要に応じましては心電図検査なり脳波検査、自律神経機能検査等を行なうというのが第一点であります。第二は、禁断症状の有無及びその程度について検査をするという点でございまして、これは発汗とか、涙を出すとか、よだれを出すとか、ふるえがあるとか、そういうような症状の発現の順序とか経過、程度というようなものを観察して禁断症状の有無及び程度を診査するわけでございまして、この点についても一つの目安をつけていただくことになっております。第三点は、中毒者と見られる者の体内に麻薬が一体あるかどうかということを見ていく。それから麻薬の施用に起因する精神異常の有無及び程度、それから一般的な性行の異常の有無及び程度、最後には麻薬に対する精神的な依存の度合いとか、環境との関係、家庭とか職場、交友関係、居住地の環境その他というようなものを検討する。大体、まだ確定したわけではございませんけれども、そういう項目によって鑑定医が診断を行なうというふうに考えているわけでございます。  それから次の精神衛生鑑定医の行なう診断の基準といたしましては、次のような基準によって行なう。第一は、麻薬中毒患者である旨の診断というのは、受診者に禁断症状が認められる場合、または受診者に麻薬の施用に起因する身体もしくは精神の異常が認められ、かつ麻薬に対する精神的身体的依存があると判定した場合に、そういう者の診断を行なう。入院措置を必要とする旨の診断というものは、先ほども申し上げました規定によって、麻薬中毒患者である旨の診断を受けた者が、次に掲げるような者に該当する場合であり、かつその性行なり環境に照らして、入院させなければ麻薬中毒のために麻薬の施用を繰り返すおそれがあると認められる場合で、次の各号と申しますのは、禁断症状が認められる者、ただしその禁断症状の程度あるいは麻薬の施用に起因する身体もしくは精神の異常の程度、麻薬の施用歴等から判断して、麻薬に対する精神的身体的依存の程度が低いと認められる場合を除く、要するに禁断症状が認められる者は一応原則としてこれに該当する。それから次は、麻薬の施用に起因する身体または精神の異常が認められる者であって、その異常の程度、麻薬の施用歴等から判断して、「イ」の禁断症状を認められる者と同等以上の麻薬に対する精神的並びに身体的依存があると認められる者、そういうふうな者を基準として入院のあれをきめるというふうに考えているわけであります。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 たとえば禁断症状と一がいに言いましても非常に幅が広くて、どの程度が禁断症状なのか、どの程度が禁断症状でないのかという点についても、いろいろ疑義のある点もあるのでございますが、いずれにいたしましても、精神衛生審議会の意見を聞いて最終的に決定することになるのでありますから、私ども、またいずれ最終的にお尋ねする機会があればお尋ねすることにいたします。  それから、さらにお伺いをしておきたいと思います点は、同じく五十八条の六に「精神衛生鑑定医は、第一項の規定により診察を行なうため必要があるときは、当該受診者に対して、診察を行なおうとする場所に出頭を求め、又は必要な限度において、診察を行なう場所にとどまることを求めることができる。」というような規定がございます。しかし実際問題として、この麻薬中毒患者に診断のため出頭を求めても、私の経験から、ほとんど出頭の求めに応ずることはないであろう、そういうふうに考えます。もちろん五十八条の六の五項の「精神衛生鑑定医及び当該職員は、第一項及び前項の職務を行なうため必要な限度において、当該受診者の居住する場所へ立ち入ることができる。」ということで、実際問題として出頭の求めに応じないというような場合には、立ち入って診察するということだと思いますけれども、しかし原則的には出頭を求めるということになろうと思う。しかしその原則が実際に守られるというようなことは、現時点においてはほとんど考えられないというふうに私どもは理解をいたします。ですけれども、実際立案者がどういうふうに理解なさっているのか、またたいていのことは出頭を求めれば応じてくれるというふうな甘い認識でおられるとするならば、これは遺憾なことであって、私どもはそういうことでは法の運営というものはなかなかむずかしいのではなかろうかと思います。そこで、立案者としてはどういうふうに御理解なさっておりますか、その辺の事情もこの際承っておきたいと思います。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 ただいま御指摘になったような点は、私どももそう簡単に出頭に応ずるとは考えておりませんけれども、この規定の趣旨は、出頭できない者はこちらから行って立ち入って診断をする、こういう二本立てにしておるわけでございまして、私どもが知る限り、現在の麻薬中毒者の中でも、たとえば昨年の夏横浜で、麻薬の入手ができなくて禁断症状を呈しておるような者が街頭に出てきたというふうなときの取り扱い、そういうふうなものの経験から見ましても、たとえば売春等で麻薬中毒患者になっているような者とか、あるいは中毒者の中には、自分としてはなおしたいと思っているような者も相当おるわけでございます。したがって、この第三項の規定の趣旨で出頭を求めても、ほとんど来ないというふうには考えておりません。しかし中には、ただいま御指摘のように、なかなかそういう命令をしたくらいでは来ない、抵抗するような者もおるかと思います。自発的に、あるいはこちらから言われた場合にそう抵抗を感じないで来るのも、中には相当おるのじゃないか。しかしそれだけで十分とは思いませんので、場合によっては患者の家なりその人の居住地に立ち入って、そこで鑑定等をやって検査をする場合もある。そういう両立てで法律の規定を考えたわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 しかし現実の問題を申し上げますと、自発的に治療を受けようという患者は非常に少ないと思うのです。もちろん自発的に治療をしようというような患者なら、それだけの意志力があるならば、おのずからなおるのです。意志が薄弱ですから麻薬におちいるし、また次々に麻薬中毒を繰り返すというような現象が生まれてきておる。もちろん自分の経験も乏しい経験だと思いますけれども、大体自発的になおしてやろうということで求めに応ずる患者というものは、非常に少ないと思うのです。みずからなおしてやろうというような生きがいのある人はひとりでになおりますよ、何も治療せぬでなおるのですから。ところが、少なくとも私どもが手がけた中では、ほとんどやはり強制的にやらなければならぬという形でやってきたし、そういうケースがほとんどだったということを申し上げましても過言でないと思う。ですから、そういうきびしい現実はきびしい現実として、十分その理解に立って法を運営されぬと、非常に誤りを来たすと思うのです。そういう意味で、この点は御注意を喚起いたしておきたいと思います。  それから精神衛生鑑定医の職務の問題でございますが、もちろん精神衛生法の中でも、精神衛生法に規定されます職務を遂行する間は公務に従事をするというふうにみなされているわけです。また今度の麻薬の鑑定にあたりましても、その職務に従事する間は公務に従事する職員としてみなすということになっておるわけですが、それは当然だと思うのです。ところが、この精神鑑定医の身分については、私は根本的に改むべき段階が来ておるのではなかろうかという感じを持つわけです。と申し上げますのは、おそらくこの麻薬中毒者の鑑定の場合もそのような結果になろうと思いますし、いままでの精神障害者の鑑定を行ないます場合にも、なるほどその職務を遂行する間は公務に従事する職員とみなすということですけれども、実質的にはほとんど自分で車を出して、そして役所の職員を乗せていかなければならぬという事情がほとんどですね。その職務を遂行する間は公務に服務する職員とみなすというなら、たとえば今度の法律では患者の家に立ち入りが認められますが、当然立ち入りをする、あるいは精神鑑定なら精神鑑定を実施する、そういう場合には当然役所から車くらい持っていって、それで職員が一緒になって診察あるいは職務を遂行するということならわかりますけれども、ほとんど鑑定医が車を提供して、そして職員を乗せてそれで鑑定をしなければならぬ。おそらく今度の麻薬の場合にも、そういう形で職務を遂行しなければならぬという結果になると思うのです。現実にそのとおりですね。ですから、精神衛生鑑定医というものは、向こうにつまみ食い程度に、かってなときだけ利用されて、あとは全くその身分は保障されないというか、その立場は全然認められないというのが現況です。今度の麻薬取締法の一部改正法の中でも、精神衛生鑑定医の職務についての若干の規定ができたわけですから、もうこの段階では、根本的に精神衛生鑑定医の身分のあり方について再検討を加えるべき時期が来ておるのではなかろうかと考えるわけですが、その点はいかがですか。

舘林宣夫厚生技官(公衆衛生局長事務代理)

○舘林(宣)政府委員 御指摘のように、精神衛生鑑定医が精神衛生鑑定医としての職務を遂行する際は公務に従事するという扱いになっております。その公務に従事した際の手当と申しますか報酬は、診察の実費を供与する、そのほかに相応の報酬を支出しなければならない規定にはなっておりますが、御指摘のようにその額は都道府県によってまちまちでございますし、今日において決して十分でない、時には報酬などはない事例もないわけではないと聞いているわけであります。したがいまして、御指摘のように、仕事があるときだけ利用をしてめんどうをかけるというような一例はあるいは間々あるかと思う次第でございまして、私どもといたしましても、これらの経費に関して今日国は何ら実は補助金も出していない現状でございます。それ相応のしっかりした経費を予算上組みまして、ただいまお話のございますように、精神衛生鑑定医がみずからの車を提供して、旅費の埋め合わせをしなければならないような事例をなくすというような努力はしなければならない、かように考えている次第でございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いま御指摘申し上げましたように、精神衛生鑑定医は法では認められておりますけれども、むしろ犠牲のみこうむることが非常に多い。いま手当の問題が出ておりますけれども、手当は非常にささいでございまして、予算の関係上出ない場合もある。それからほとんどは自分で車は提供しなければならないということですから、おそらく麻薬の場合もそういうことになると思うのです。結局診察する場合に、出頭を命じて出頭の求めに応ずればいいけれども、それはほとんど不可能だということになりますと、ほとんど立ち入り診察しなければならない。そうしますと鑑定医が車を提供して、そして役所の職員を乗せて診察に行かなければならない。手当をもらっても足が出るし、手当をもらわなければ結局貴重な時間とそれから交通費はまるまる鑑定医が負担しなければならない。それが現状です。ですから、私はいま法律で規定されますように、公務に従事する間は公務に従事する職員とみなすということは、これは不慮の事故が起こってまいりますから、たとえば精神鑑定医もそうですし、おそらく、麻薬の場合も幻視幻聴等が出てまいりますから、いつ突き殺されるかわからぬというような事態も、不幸にして出てくるかもわかりません。そういう不幸な事態が発生する可能性もございますから、やはり職務を執行する間は公務員と同じような取り扱いを受けなければならないことは当然のことでございますけれども、それと同時に、いま申し上げますように、犠牲のみこうむることが多いのが今日の精神衛生鑑定医の実情だと思うのです。ところが精神衛生法の中でも、鑑定医というものは、厚生大臣が精神障害の診断または治療に関し少なくとも三年以上の経験がある医師のうちから、その同意を得て精神衛生鑑定医に指定するということで、かなり高度の技術を持った者の中から厚生大臣が指定するということになっているわけですから、政府としても国としても、やはりかなり厚遇してもらわなければならぬ立場にあると思うのです。ところが、いま申し上げますように名前ばかりは厚生大臣から——私もいただいておりますけれども、犠牲ばかりこうむることが多い。ところが同じ指定医の中でも、たとえば優生保護法の指定医のごときは、それこそ優生手術については指定医でなければできないという取り扱いをやっているわけです。ですから、同じ指定医の中でもそういうような差別がある。これは私は不合理だと思うのです。しかもいま言ったように、何も得する必要はないけれども、わざわざ公務員に準じて取り扱われるのが、いま言った時間も経費も負担しなければならないというばかなことはないと思うのです。ですから、私はやはり精神衛生鑑定医というものの処遇については、この際根本的に再検討を加える時期が来ていると思う。たとえばいま御指摘申し上げましたように、優生保護法の指定医というものは優生手術ができる。優生手術というものは優生保護法の指定医でなければできない、こういう法の制約があるわけです。ですから、精神衛生鑑定医の場合には、それ相応の技術と能力が認められて厚生大臣が指定をするわけですから、やはりそれ相応な特権というものが付与されて、身分が保障されなければならぬと思うのです。たとえばその一例として、都道府県知事が指定いたしまする指定病院の条件として、この精神衛生鑑定医の資格が必要であるというようなことも一例だと思うのです。これは優生保護法の場合は優生保護法の指定を受けなければできぬわけですから、したがって国あるいは公立の医療機関の代行機関として指定される病院に対しては、いま申し上げますように、精神衛生鑑定医という資格が当然必要だというようなことも、私は一つの解決方法だと思うのです。そうすれば、そういう形である程度保障されるということでございますけれども、現状のままでは、それこそすべて犠牲のみ多いというのが精神衛生鑑定医——しかもこれは麻薬患者の診察をし、あるいはまた精神障害者の患者を診察するという場合には、いつ不慮の災害を受けるかわからぬ。これは診察中に殺されたという例があります。特に精神障害者の場合にも、あるいは麻薬中毒者の場合にも幻視幻聴等があるわけでございまして、そういう幻視幻聴等に基づいて不慮の災害が起こってくるという危険性も大いにあるわけですから、精神衛生鑑定医の処遇については当然再検討していただかなければならぬ、私はこういうふうに思うわけですが、この点、大臣いまお聞きになっていかがでございますか。

西村英一自由民主党厚生大臣

○西村国務大臣 私、従来の取り扱いはよくわかりませんが、しかし精神鑑定医に任命をされて、またいままでは受けておるという事情も、持ち出しで受けるということはどういうことでありますか、持ち出しても受けるということになりますか、あるいはお医者の立場からしますと、そういういろいろな指定をされるということは、かえって自分の商売に利益になるというふうなことで受けておるのか、その辺がよくわかりませんが、持ち出しで、そういう名前を受けられるのかどうかということが、私、疑問です。しかし、そのために鑑定が非常に手落ちがあるとか、いいかげんなことをされるということでは困ります。いずれにいたしましても特定な業務、鑑定をお願いするのでありますから、職務とともにそれに見合うところの報酬がある、こういうのが普通の常識でございましょうが、何のために職務があってその報酬がないのか、これにつきましては私も疑問に思います。したがって、そのためにいま受けておる方々がいいかげんなことをやっておったのでは困りますので、ひとつ十分私たちとしては検討したい、かように思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 精神鑑定医の指定は大臣から受けるわけです。大臣から受けることが得になるか損になるかということじゃなくて、これを指定しなければ精神衛生法も今度の麻薬取締法の一部改正も運用ができぬわけです。ですから、好むと好まざるとにかかわらず指定をしなければ、精神衛生法の運用もできませんし、それから麻薬取り締まりの診察についての運用ができないわけですから、これは損得の問題ではないわけです。当然指定しなければならぬということです。そういう法の運営のために厚生大臣が指定をするわけですから、これはその人の身分等については厚生大臣が保障してくれなければ——指定だけしておいてあとはおまえのところで旅費も持て、自動車代も持てということでは、厚生大臣ちょっとあつかまし過ぎはしませんか。これをせぬと法の運用ができぬわけです。私どもが精神鑑定はごめんこうむると言ったら、法の運営は何もできぬわけでしょう。ですから、これはもう医者が得になろうが損になろうが、その指定をせぬ限りは法の運用はできぬわけですから、これはぜひ厚生大臣がお願いしなければならぬ問題です。お願いした以上は、やはりその人の身分保障、確立についてはある程度お考えにならなければならぬ問題ではなかろうか、こういうことを私は御指摘申し上げたいのですが、いかがですか。

西村英一自由民主党厚生大臣

○西村国務大臣 御意見ごもっともでございます。しかし今日までどういうわけで職務があって報酬がなしに行なわれたか、もう少し私は調べますが、いま先生からお聞きした範囲内のことにつきましては、先生の意見にどうも私も賛成の意を表するようなわけでございまするが、取り調べまして他日御返事をいたしたいと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 これは大臣のほうも十分御認識がないわけですから、ひとつ舘林さんのほうで十分御意見を開陳されまして、いまのような不合理がないように、不合理が解消するように御努力願いたいと思います。  その一例としては、いま私が申し上げましたように、優生保護法と比べるわけでございませんけれども、優生保護法と同じような処置が一つの解決方策ではなかろうかというふうな、これは私見でございますけれども、そういう私見を持っております。でございますから、そういう方向でひとつ再検討されんことを強く要望するわけでございますが、御異議ございませんか。

舘林宣夫厚生技官(公衆衛生局長事務代理)

○舘林(宣)政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、一応法の条文上は所定の経費を払うことになっておりますが、現状では必ずしも十分でないという点のほかに、ただいま御質問の御趣旨は、優生保護法における保護医のごとく、その鑑定に当たる時点のみならず、その他の場合におきましても何らかの特典といいますか、そのような扱いをしてはいかがか、こういう御意見のように承るわけでございまして、その点に関しましてはただいま大臣から御答弁ございましたように、検討させていただきたいと思う次第でございます。  ただいま例をあげてお話ございましたように、精神鑑定医の場合に、法に基づいた強制入院の場合、あるいはその他の法に基づいた入院の場合に、鑑定医がおる施設のみをその入院対象施設とするというような扱いにすることも考えられるわけでございまして、私ども従来から、扱いとしてはそういうことにしていくわけでありますが、このようなことが正式の規定にできるかどうかについては、今後なお検討さしていただきたいと思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 さらに入院処置に関しまする事項について、若干お尋ねを申し上げたいと思います。  御承知のように、わが国の重症麻薬中毒者で、しかもリストに載っております数というものは約六千五百というふうにいわれております。しかも現在中毒者用のベッドが五百、それから三十八年度に国立の収容施設が二百ベッド、それから都道府県関係が二百ベッド、そういたしますと、大体概算して麻薬中毒者関係のベッド数というものが九百ベッド、こういうことになろうかと思います。ところが、実際リストに載っております数が六千五百といわれておるけれども、そのうち直ちに強制入院さして治療しなければならぬ患者というものが一体どれくらいおるのか、それといま申し上げますように、ベッド数というものが九百ベッドというような関係についてどういうふうに御判断願っておりますか、その辺の事情をお聞かせいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 私どもが名前までわかっている患者は、ただいま御指摘のように大体六、七千名という数でございます。しかし、これはなお現実にはもっと確認をする必要があるわけでございます。それにベッドは今年度一ぱいで九百に——現在は約五百でございますから、いまの時点からいいますと、五百しか麻薬中毒患者専門のベッドがないということでございまして、麻薬中毒患者専用の病院ではとても収容し切れないわけでございまして、今度の法律でも、厚生省令で定める精神病院には収容するというたてまえをとっておるわけでございます。しかしこれは、だんだんそういう専門の病院をふやしていく考えではございますけれども、とりあえずは麻薬の専門の病院、それにプラス各府県に現在ございます国立なり公立あるいは法人立等の精神病院に委託いたしまして、そして現実の中毒患者を収容していきたい、かように考えておるわけでございます。現実にどの程度あるかということは、現在各府県別に調査をやっておるわけでございますが、地域的には、たとえば東京とか横浜のほうは精神病院も相当ございますので、大体私どもがいま見通しを立てている分では、とりあえずの収容能力はあるのじゃないか。しかし大都市は、隠れた中毒患者がどの程度かということが的確につかめませんので、その辺は実際にこの法律が運用されましたらどういう事態が起こるかわかりませんが、ただいまの見通しでは、各府県に散在しているであろう中毒患者と現在の麻薬の専門の病院プラス精神病院というものの利用ということによって、やっていけるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 この法律をうかがってまいりますと、入院措置の対象というものは厚生省令で定める病院、麻薬中毒者医療施設というように明記されておりますが、この麻薬中毒者医療施設というものは、一般の精神病院——法人、個人も通じてでございますが、そういう場合も省令で定める基準に合えば指定をされるというふうに理解していいのですか。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 ただいまの御指摘のとおりでございまして、省令で定める病院として厚生省でつくっているもの、あるいは都道府県でつくっている麻薬の専門の病院、これは初めから専門のほうでございますから問題はございません。そのほかには、国または都道府県が設置した精神病院、それから精神衛生法の第五条の規定によって都道府県知事が指定した病院がございますが、そういうものにもとりあえずは収容をお願いしたい、かように考えております。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 わかりました。その点は了解をいたします。  それから入院期間の問題でございますが、この五十八条の九を見てまいりますと、「入院期間は、当該措置入院者の入院の日から六月をこえない範囲内で、毎回二月を限度として延長することができる。」この六ヵ月間の入院ということについては、これは学者の間でもいろいろ議論があると思うのです。私どもは、できるだけ長いほうがよろしいというたてまえをとってまいっております。でございますが、それはお役所から言えば短いほうが費用も簡単ですし、またそれで済めばこれはけっこうなことだ。ですけれども、この点はおそらく学者の御意見をお聞きになってもけっこうだと思うのですが、長いほうがよろしいというたてまえをとる学者もかなりあると思うのです。また私どもは長いこと入院さして、そのほうが結果的によい効果があったというふうな事例をたくさん持っておりますから、そういう意味で、経験を通じてそういう意見を申し上げるわけでございますけれども、そういう点から、六ヵ月をこえない範囲でというふうに限定をしたというところに、私若干問題があろうかというふうに考えるわけですが、この点はいかがでございますか。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 強制入院の期間をどの程度にしたらいいかということは、これはなかなか議論のあるところでありますし、この点に関しまして河野先生は専門家でございまして、私は法律のほうでございますので、あまり議論をしても、これは私は議論の資格がないと思いますが、私どもが承ったいろいろ専門家の御意見に基づいてもちろんこの法律は立案したわけでございまして、そういう先生方のお話によりますと、要するに治療を主体とした、もちろん治療の中には作業療法あるいはアフターケア的なものも含むわけでありますが、そういう麻薬中毒という麻薬に対する肉体的、精神的な依存度というものを脱却させるための医療を施す期間としては六ヵ月あれば十分であろう、それ以上はむしろ家庭に帰して、そして環境に適応させていく、そこに指導をよくして再び中毒に返らないような配慮は必要であるけれども、そういうふうにしていったほうがいいのじゃないかというような御意見でございまして、私どももそういう御意見を一応とらしていただいたわけでございます。これは前回、前々回でありましたか、中野委員の御質問に対してだと思いますが、アメリカのシーバース博士のアメリカの実情を聞きましても、いままでは五ヵ年間とにかく長期に収容施設に収容しておったけれども、再び麻薬中毒になる率というものはむしろ七五%、八〇%の高率であった、そういうことからニューヨーク州なりカリフォルニアの二州くらいだけれども、新しく六ヵ月の収容期間で、あとは家庭に帰してそれをいわば観察をしていくというような制度に切りかえたというような話も聞きまして、これはどちらがいいか私もよくわかりませんけれども、治療としては六ヵ月で十分であるということで最長の期間を六ヵ月とした。それで他面、なぜ六ヵ月という期間で切ってしまったかという御質問に対しては、そういう治療上六ヵ月でいいという問題と、それから少なくとも患者であるにしても、人身をある期間拘束するわけでありますから、これをいわば無期限な、期限なしに麻薬中毒の症状がある間は何年でも強制入院さしていいというような規定をしますと、これは別の面のいわば基本的な人権の問題とも関連がある、そういうことから六ヵ月という期間をはっきりして、それ以上はこえてはならないという規定を設けた、そういう二つの面がこの規定の中にはあるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 これはケース・バイ・ケースと言いますが、いろいろなケースがあると思うのです。たとえば、いまアメリカの実例等についてお話がございましたが、なるほど長いこと入れても効果のないものもあります。それが長いこと入れても効果がないというのか、あるいは専門的に申し上げますと、麻薬中毒を繰り返しますとかなり性格異常がくる、そういう性格異常がきたために、長く入れても効果がないのかというような意見もございます。それからなるたけ早く家庭に帰して社会に復帰さして、そして社会環境なり家庭環境の中でできるだけ再発を防止していくというお考えもございますけれども、それは一面においては長く入れて、病院の監視の中で再発を防止していくという考え方もあるわけであります。これは医師の中でも、麻薬中毒になって、そしてそういう監視をやりながら実際診療の研さんをして、そして他の専門の人が麻薬中毒の治療を終わりますと同時に、今度は精神科の専門医になったというふうな事例もございます。そういうケースはかなり成功いたしておる。でございますから、アメリカの実例等も、これはさきの委員会において小林委員の発言でしたか、その中でもお答えがあったようでございますが、これはいろいろいま申し上げますように、一部においては異論がありますことは、私が御指摘申し上げたとおりです。でございますから、いろいろ見解の分かれ目はそれぞれの立場からあるわけでございますけれども、われわれがそういう体験を持っているからといって、断定的に申し上げるわけにはまいらぬだろうと思いますけれども、しかしそういう意見があるということは、ひとつ十分御承知おきを願っておきまして、今後いろいろ検討も加えていただきたいというふうに考えます。  それから麻薬中毒者の相談に応ずるための職員という問題がございます。第五十八条の十七には、「都道府県は、麻薬中毒者の相談に応ずるための職員を置くことができる。」、「前項の職員は、麻薬中毒者及び麻薬中毒者であった者につき、相談に応じ、必要な指導を行ない、及びこれらに附随する業務を行なうものとする。」、ところが実際、そういうふうな麻薬中毒者の相談に応じたり、あるいは必要な指導を行なうような相談員というものが現実に求められるかどうか。麻薬中番者なんというのは、普通の一般よりも、事麻薬に関しましては非常に知識が豊富な患者もいます。それこそ一般の医師の知識では及ばないような、いろいろ麻薬に関します知識をたくわえた者もおります。でございますから、麻薬中毒者の相談ということは、簡単でありそうで、実際やってみるとなかなかむずかしい問題であると私は思うのです。ですから、法律には都道府県では麻薬中毒者の相談に応ずる職員を置くことができるというふうな規定がありますが、現実の問題として、なかなかそういう人を求めるということは至難のわざではなかろうかというふうに考えるわけでございますが、その点はどういうふうに御理解をいただいておりますか、ひとつ伺ってみたいと思います。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 御指摘のように麻薬中毒者の相談、これは医療的なものにまでとなると、たいへん専門的な知識を要するわけでありますが、これはいま現実に行政の制度としてあるわけであります。たとえば神戸とかあるいは横浜というふうな、そういう濃厚地区におきまして、中毒者の更生のために、親身になってお世話をしてやる人がどうしても必要になってくるのじゃないか。そういうふうなものが現実にボランタリーでありましたのに着目して、三十六年度以来でございますが、東京、神奈川、静岡、愛知、大阪、兵庫、山口、福岡の八都府県にそういう相談員の制度を設けたわけでございます。これは月五千円程度でございますが、そういう謝金をやりまして、各都府県当たり十二名の配置をしたわけでございます。昭和三十八年度からはこれを倍の二十四名に増員をして、総計で百九十六名くらいになるわけでございますが、これは民生委員の中で非常にそういう麻薬に対して親身になって心を持って世話をしてくれる人、そういうふうな人に現実にお願いをしてやっているわけでございまして、そういう濃厚地区におきましては、相当の効果をあげているんじゃないか。現在まではむしろこういう強制入院の措置もございませんでしたので、治療をするための病院の世話とか、あるいはあとに残った家族の生活の問題というふうなことがいま中心になっているわけでございますが、今度新しい強制入院の制度をつくりました後におきましては、むしろ退院をした人の問題についても、こういう人たちに十分親身になって世話をしていただきたいというような運用でやっていきたい、かように考えているわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 私どもの考えておりまする相談に応ずるための職員、厚生省でお考えになっておりまする職員の評価といいますか、そういう点についての相違でございますから何をか言わんやでございますけれども、ほんとうに私どもがこの問題を解決するためには、やはりかなり高度な能力と識見を持った職員というものが必要でなかろうかというふうに私どもは理解をしたから、そういう立場から御指摘を申し上げたわけです。しかしいま厚生省のほうでは、もっと私どもの立場と違った意味での相談員でございますが、いずれにしても、できるだけその相談員としての効果が発揮できる方向でひとつ御選定を願いたいというふうに希望を申し上げておきたいと思います。  それから費用の徴収の点について、ひとつ御見解を承っておきたいと思います。第五十九条の四に、「都道府県知事は、措置入院者、その配偶者又は民法第八百七十七条第一項に定める扶養義務者から、その負担能力に応じ、第五十九条第三号の費用の全部又は一部を徴収することができる。」この費用の負担について、実は二通りの考え方があると思うのです。一つは、負担能力があればそれは当然負担さしてもいいじゃないかというような意見もございましょう。それからもう一つは、法のたてまえから、これは命令入院でございますから、命令入院させながら負担をさせられるということについては矛盾がありはせぬか、たとえば結核でも、あるいはまた精神病でも、措置入院の場合は公費負担ということになっておる。ところが麻薬の場合は負担しなければならぬというようなことで、いままで実施されてまいっておりまする他の法律との関係において問題がありはせぬかというような意見が一つあると思う。しかし、考えようによっては、これは私見でございますけれども、やはり負担能力のある者にはできるだけ負担させてもよろしいというような意見があると思います。これは極端に言いまして、患者になれば公費で全部見てくれるということになりますと簡単に中毒にかかってしまう。やはり負担がかかるからというような経済上の理由というものも、かなり制約すると思うのです。そういう意味から、ある程度負担能力がある者には負担させたほうが、この中毒にかかる率というものは低下していくのじゃないかという考え方もあるわけです。しかし、他の法律との関連から、命令入院でありながら負担させられるというのはおかしいじゃないかというような意見も多々あるわけです。こういう点は、どういうお考えで今度の法案を立案になっておるか、その辺の見解もひとつお聞かせをいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 この今回の麻薬取締法の改正の規定でございますが、この規定と同趣旨の規定は、実は結核予防法なり精神衛生法にもあるわけでして、原則として公費負担をする、その負担率は国が十分の八で都道府県が十分の二、ただしここで、ただいまお読みいただいたようなそういう者に対しては徴収することができる、その徴収率は、大体結核、精神、麻薬、三法とも八五%の援護率ということでございますから、百人のうち十五人だけが徴収をする部類になって、あとの八十五人はまるまる公費負担をするというように、これは予算的な見込みでございますが、なっておるわけでございまして、これは規定が、部分解釈でちょっと先生そういう点で誤解されたかもしれませんが、各法とも同じ趣旨でございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 だんだん時間が迫ってまいりましたから、あと一、二点お尋ねしておきたいと思います。  これは治療上非常に重要な点でございますけれども、今度の法改正によりますと、「麻薬施用者は、前項の規定にかかわらず、麻薬又はあへんの中毒者の中毒症状を緩和するため、その他その中毒の治療の目的で、麻薬を施用し、若しくは施用のため交付し、又は麻薬を記載した処方せんを交付してはならない。ただし、第五十八条の八第一項の規定に基づく厚生省令で定める病院において診療に従事する麻薬施用者が、同条の規定により当該病院に入院している者について、四・四−ジフエニル−六−ジメチルアミノ−三−ヘプタノン、その塩類及びこれらを含有する麻薬その他政令で定める麻薬を施用するときは、この限りでない。」こういうように漸減療法が特に今度の法案の改正の中で挿入されてきた。この点については、これは局長もお聞き及びと思いますけれども、いろいろ両論あると思うのです。あらためてこういうふうな漸減療法があえて取り入れられたという理由について、ひとつ御所見をお聞きいたしたいと思います。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 従来、日本の法律体系におきましては、麻薬取締法におきまして、たとえ必要であっても、麻薬中毒の治療の目的で麻薬を施用することは一切禁止していたわけでございます。ところが、外国の例を見ますと、あるいは日本の戦前におきましては、そういうことは一応許しておったわけでございますが、そういうものは別といたしまして、今回こういうふうに麻薬中毒の治療のために麻薬の施用を例外的に認めました趣旨は、中毒の治療にはいろんな治療方法があるわけでございますが、その人の身体の状況、持っている病気その他によって、そういういわば衝撃的な療法が非常にふさわしくない患者が現実におるわけであります。そういう者に対しては、それよりもっと緩慢に作用してくる治療方法を併用していくことも考えていかなければならぬじゃないか、そういうふうなことから、そういう特別な者にだけ例外的に漸減療法を認めるような措置をとったらどうだろうかということで、今回こういうふうなことを考えたわけでございます。この点につきましては、WHOでもそういう勧告を実は出しておるわけでございまして、アメリカやイラン等においては、そういうものが効果があったという報告が現実にあるわけであります。法律の考え方としては、従来のように非常に潔癖にそういう問題を禁止しておいた方がいいという御意見も、もちろんあるわけであります。しかし今回は、措置入院という特定の、厚生省なり各行政で把握できる病院において、そういうところだけでやる治療患者に対して、きわめて例外的な麻薬を使うというような非常に縛られた制限がございますので、一般的な治療の一環として漸減療法を認めるということになると、これは非常に弊害があると思いますが、これを認めますのは、そういう場所も非常に限られておる、それで対象も措置入院の患者だけに限るというような趣旨でございますので、私どもとしてはそういう一般的なWHOの勧告等も勘案いたしまして、例外的に認めていくことは差しつかえないのではないかというふうに考えた次第でございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 非常に潔癖に処理をするとか、そういう意味ではなくて、一つは非常に衝撃的な悪影響を及ぼすような場合には、これは緊急避難ですから、当然現行法のもとでも麻薬をやることはできぬことはないと私どもは思うのです。これは治療のためではないわけですから、できぬことはないと思う。ですから、そういう点から私はあえて漸減療法を認める必要はないではないかというような考え方が一つと、もう一つは、やはり限られた施設の中で行なうということでございますけれども、中毒患者というのはややもすると安易な道を選びたがる、これは従来からの強い傾向です。でございますから、漸減療法が認められると、私はやはり中毒患者には中毒患者的な性格があって、そういう性格が災いをして、またどうせ漸減療法をやってもらえるのだからというようなことで、繰り返す可能性というものが出てくる。それからもう一つ、反面から見ると、非常に苦しみを与えてなおすので、もうこりごりだというような、一つの苦しみを体験することによって再発を防止していくというふうなねらいがあるわけです。そういうような安易な道を選ばせないということ、それからもう一つは苦しみを体験することによって再発を防止していくということ、それからもう一つは、現行法でも緊急避難はできるわけですから、何も漸減療法をやらぬでも、衝撃的な悪影響が出てまいる場合にはやってもいいわけですから、私は、あえて今度の法律改正というものは無用のものではなかったろうかというような感じを持つわけです。それは学界でも漸減療法のほうがよろしいという説を持っておられる方もいるということは、われわれも承知しておりますから、何も漸減療法を否定するわけではないわけですけれども、いま申し上げました三点から、われわれはあえてそういう条項を挿入する必要はなかったのじゃないか、そういう感じを持つわけです。そういうことでお尋ねをしておるわけですので、そういう意味でお答えをいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 潔癖ということば、ちょっと私の言い間違いでありましたから取り消しをいたしますが、漸減療法を認めると非常に弊害があるのじゃないかという御心配、ごもっともでございます。しかし、ここの法文の中にもございますように、「四・四−ジフエニル」云々という、これは普通の商品名ではメタドンということでございますが、そういうメタドンというものは、モルヒネと同様の薬効は持っておるけれども中毒になることが非常におそいということと、それからちょうど酒のきらいになる薬のように、これをやると麻薬がいやになってくるわけでございます。そういうことから、結局副作用として不快感が伴うということがこの薬の特色でもございますので、そういうきわめて例外的なものだけをやっていく。いま河野先生がおっしゃったように、私どももこれが悪用され、あるいは弊害が起きるようなことは非常に心配しておるわけでございますから、これの実際のやり方についてはきわめて制限的な運用をしていきたい、かように思います。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 いままでの実際の経験からいいますと、漸減療法は認めていないわけですけれども、現実に漸減療法をやっておったのです。実際にはやられておるケースが多い。それは緊急避難という形で現実にやられている。ところが、そういうケースは比較的再発が高い。そういう体験から、前段のほうがよろしいというような学説もおありだと思います。私どもそういう体験から申し上げておるわけですから、そういう点はひとつ十分御考慮に入れてほしいと思います。  それから最後に、一点ぜひお尋ねをしておきたいと思います点は、ことしの予算の中でも、麻薬中毒専門の収容施設ができる、さらにまた、次々と増設されるという御計画であるやに承っておるわけです。ところが現在の施設、たとえば、いろいろな精神病院あたりの施設で麻薬中毒者を収容しておりますけれども、これはなかなか始末に困るのです。たとえば、麻薬中毒者が入って参りますとてこずりますから、主治医になり手がないのです。これはうそを言いますし、時には暴力を働きますし、とてもとても始末に困る。あるときは患者を扇動したり、あるときは職員をそそのかしたり、いろいろなケースがございます。ところが、それが五十人も百人も一緒に入るというような施設ができるわけですから、これはたいへんなことだと思うのです。しかもそういうのが、たとえば、いま一般の精神病院の収容施設の中で精神病患者が百人おる、その中に一人か二人しか麻薬中毒患者はおらぬ。それでも始末に困るわけですから、それが一つの施設の中に百人も二百人も入ってくるということになると、たいへんなことだと思うのです。そういう場合の病院内の治安という問題について、どういうふうにお考えになっておるのか。これはたいへんなことだと思うのです。これは、かなりたくさんの患者の中の一、二の麻薬患者でも、他の患者をそそのかしたり、扇動したり、あるいは職員をそそのかして扇動したりして、いろいろ不穏な行動に出るわけです。それが、同じ患者が百人も二百人も入ったら、その場合の施設内の治安というものは一体どうなるか。いつもということではないでしょう。一たん事があった場合にはどうなるかという点について、実は私どもは、いまからですけれども非常に憂慮せざるを得ないのです。そういう点について、いま厚生省ではどういうふうにお考えになっておるのか。この点は非常に重要な問題だと思うのです。特にそういう施設ができまして、その中で勤務される職員の方々は、重大な関心を持っておられると思うのです。これはへたをすると、そういう職員の方々の生命も保障されぬと思うのです。現状のままでもそういう問題がございますから、その施設ができ、また施設がだんだん増設されることはけっこうですけれども、しかしながら、それならそういう施設に対してどういう対策を講じておられるか。この点は非常に必要な問題だと思うのです。ひとつそういう点についても御見解がございますならば、お聞かせいただきたい。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 この点も、まことにごもっともな御指摘でございまして、私どももそういう点、非常に心配をしつつ準備を進めておるわけなんです。たとえば、今度国立、関東、関西一カ所ずつを大体予定しておりますが、これは警備要員といいますか、そういうものも当然その中に私どもが考えているわけでありますが、そのほかに、しばらくは麻薬取締官なり、そういうものをそこへある程度駐在させるようなことを考えたらどうであろうかというふうに考えております。そうして、これは何も犯罪検挙のためでなくして、むしろ治安のためでございます。そういうことから、一方においてはもよりの警察と常に非常的に連絡できるような施策もしておきまして、もしそういうふうな病院の職員等に対して不穏なような行動があった場合には、すみやかに措置ができるような、そういう通報その他の措置も考えていきたい。それで、決して病院だけにおまかせしないで、特に新しい一つの制度をつくるわけでございますから、しばらくは、むしろ過剰と思われる程度の警備体制というものをつくって様子を見ていきたい、かように考えておるわけでございます。

河野正日本社会党

○河野(正)委員 最後に一点お尋ねをいたしておきたいと思います点は、治療という問題も非常に重要でございますけれども、もう一つ考えなければならぬのは、やはり治療後の社会復帰、いわゆるリハビリテーションの問題が、私はきわめて重要な問題になってくると思います。特に、どんどん施設ができて、どんどん治療を終わって社会復帰の患者がふえてまいりますと、当然その点については重要にお取り上げ願わなければならぬと思うのです。その際に、私は社会的監視のもと、あるいは家庭監視のもとという問題がございますけれども、一つ考えておりますのは、いま結核患者ではアフターケアあるいはコロニーというような施設ができて、健康を管理しながら生業にいそしませる、こういう制度というものがどんどん発達をいたしてまいっております。でございますから、精神病もさることでございますが、麻薬中毒者も、なおれば十分生業にいそしめるわけです。ところが、また機会があると転落していくという問題もございますから、このアフターケア、それからさらに進みましてはワークコロニーというような施設に発展させて、監視しながらしかも生産に寄与させていく、生業にいそしませていくというような方向というものが、だんだん具体的にとられていかれなければならぬと思います。そうすれば、常に監視されているし、しかも十分生産に励まれるわけで、生活が保障できるということでございますから、私は、当面はまず取り締まるということ、治療するということでございましょうけれども、将来はだんだんと、やはりアフターケアあるいはワークコロニーの問題について御検討願わなければならぬのではなかろうかというような感じを持ちます。そういう点についてどういうふうにお考えになっておりますか、最後にひとつ御所見を承って、本日の質問を終わりたいと思います。

牛丸義留厚生事務官(薬務局長)

○牛丸政府委員 中毒患者の退院後の問題、この点は、私どもも今度の法律改正でも一番手が届いていない点でございまして、御指摘のとおり、これは大いに私どもこれから検討しなければならない点だと思いますが、とりあえず、とにかく現在どうしても中毒患者を強制収容したいという点をまず第一着手としてやったわけでございまして、将来の問題といたしましては、いまの相談員の制度というようなことにとどまらず、もっとこの問題を積極的に研究いたしまして、いま御指摘のような具体的な方策を考えていきたい、かように考えるわけでございます。

秋田大助自由民主党

○秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十六日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後三時三十八分散会

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