社会労働委員会 第8号
- 発言数
- 92 件
- 登壇者
- 11 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1963/02/13
会議録
○秋田委員長 これより会議を開きます。 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
○吉村委員 きょう、私は、池田内閣の非常な重要施策といわれておりますところの社会保障の問題、これは池田内閣ばかりでなしに、国民のすべてが要求し、要望している政策でございますが、この社会保障の施策を進めるにあたっての厚生省としての、厚生大臣としての心がまえといいますか、あるいはその政策推進にあたっての体系とでもいいますか、そういうものについて、若干お尋ねをいたしておきたいと思うのです。特に、わが国の社会保障の中で全般的に大きな問題といわれておりますのは、それぞれの制度間の不均衡、こういうものがありますので、これをどういうふうに是正をするのかということが大へん大きな問題になっております。ですから、この体系上の問題の中で、きょうは医療保障の給付の格差の問題、こういうことについて、大臣としてどういう考え方でこの格差の是正の方向に進もうといたしておるのか、こういうことを中心にして、大臣の所見を承っておきたいというふうに思います。 実は、毎日の新聞を見ておりますと、それぞれ各省で、将来の政策展開にあたっての考え方をよく発表いたしておるのでありますけれども、この中で、特に厚生省ほど、こうやりたい、ああやりたいという計画とか構想とかというものを発表しておる行政機関はないのではないかと思われるほど非常に数多く、いろいろな構想が発表されています。一、二その中で例をあげますと、これは大へんなものですから読み上げる時間もありませんけれども、重要だと思われるものを申し上げてみますと、これは西村厚生大臣以前からの問題でありますが、三十六年の六月の十五日には、わが国の社会保障の水準というものについては、昭和四十五年度までに英国並みにする、こういうことを当時の古井厚生大臣が発表しております。さらに、同年の六月十七日には、児童手当を今度は創設をする、その目途は四十年から四十二年までの間にこれを実現する、こういうことを発表いたしております。それから特に重要な厚生行政の長期計画、こういうものを発表されておるわけでありますが、そのほか、去年になりまして、厚生行政の五カ年計画だとか、あるいはILOの百二号条約の批准、こういうことを実現をするためにすでに検討を始めている、こういう趣旨のことも発表されています。そのほか、大へん問題になっておりますところの無医地区の解消、それから児童の対策としての保育所についても三千カ所ぐらい増設をするとか、数限りないと言ってもいいくらいの構想というのか、計画というのか、発表されておるのでありますが、これらの新聞で報道をする厚生省あるいは大臣の談話、発表、こういうものについて西村厚生大臣は承知をしておるかどうか、まずお聞きをしておきたいと思うのです。
○西村国務大臣 お話がありました通り、最近の新聞紙上では、厚生省に関する報道がかなりたくさんあるのでございます。それはその新聞の報道のように、厚生省としても懸案事項がたくさんありまして、中には、私が特別に意を用いて事務当局に対して研究を命じておるものもありまするし、また、事務当局の発意によりまして研究をしておるというようなものが、新聞紙上に伝わっておるのではなかろうかと思っておるわけであります。要約して申しますると、御承知のように、今や社会保障というものが、それほど密接に国民の生活の中に食い入ったと申しますか、非常な関心を持って見られるようになった結果であろうと思っておるわけであります。私が言うまでもなく、保険制度にいたしましても、年金制度にいたしましても、皆様方の御努力によりまして、制度それ自身は一応の体系づけをされたけれども、その内容には、早い期間にやりましたために、非常にアンバランス等がある。その不均衡を直したい。その不均衡を直すのにはこうしたらいいのではないか、ああしたらいいのではないかと研究いたしておること等が、新聞紙上にいろいろ伝わってきておるのだ。またその他の、たとえば今御指摘がありました僻地の医療問題とかいうようなことについても、皆保険の今日ですから、私自身非常に関心を持って事務当局に言って、いい方法はないのか、また医師会等につきましても積極的にいい方法があれば一つ建議してくれ、皆保険の今日だから、僻地の問題等はみなで考えなければならぬのではないか。また保育所の問題等につきましても、これも非常にたくさんな問題をはらんでおります。たとえば保育所と幼稚園の関係いかんとか、あるいは保育所は一定の基準がありますが、一定の基準にならないようなところでもやはり児童の保育は必要であるが、そういうところをどうするのか、こういうようなたくさんな問題を厚生行政ははらんでおるのでございまして、私が知らないうちに大部分が記事になっておるというようなことではございませんので、全部私が知っておるわけではありませんが、あるものについては相当事務当局を督励して研究もさせております。そういうようなために新聞紙上に多く伝わっておる、かように考えておるので、新聞紙上に伝わっておることについては、私は詳細には知らなくても、その項目だけについては一応重要な関心を持って、自分としてもやっておることであるわけであります。
○吉村委員 そういたしますと、この数多い新聞発表というものは、いわば厚生省としての将来の厚生行政にあたっての計画ということになるのか、それとも厚生行政を担当する者としての願望的な、そういう性格を持っているのか、一体どちらのことになりますか。
○西村国務大臣 ちょっと質問の御趣旨がよく私にのみ込めませんが、新聞紙上のことでございますから、あるものにつきましては私の希望するような方向に掲げてあるものもありましょうし、あるいはその間を誤り伝えておるというようなものもなきにしもあらずでありまして、それはいろいろであろうと思いまするが、今の御質問の趣旨がどういうことか、ちょっともう少しわかりやすくお願いいたします。
○吉村委員 私の質問をしている要点は、厚生行政担当者として将来かくしたいという願望にすぎないものか、それともまた、社会保障というものを重要施策としておるところの池田内閣の厚生省として、あるいはその責任者である厚生大臣として、国民に対する政府の公約的な、そういう意味合いを持つのか、どちらなのでございますかという質問です。
○西村国務大臣 それはいろいろありまして、中には願望的な、希望的なことを書いてあるものもございます。あるいは誤り伝えられておるようなことを先走って書いてあるものもございますし、一がいにこうこうだということは、ちょっと申しがたいと思います。
○吉村委員 そうだといたしますと、社会保障は非常に国民の関心事でありますから、いろいろ新聞が大きく取り上げるのは当然かもしれませんけれども、ほかの省に比較しまして、その構想とか計画とかいうものがあまりにも乱発されていやしないか。いわば国民に対して、政府としてはこういう考え方を持っているんだという、バラ色の幻想を振りまいているというきらいすらあるように思われるのです。そういうふうに報道機関に発表されていくとするならば、当然それは行政執行の中で金の裏づけをもって実現、具体化されていかなければならないはずだというふうに私は考えるのです。その点では、どうも数多い新聞発表というものは、今大臣の答弁された中でのいわば願望といいますか、厚生行政担当者の悲願みたいなものを外に向けて発想しているというふうに見られてならないわけです。そういうような多くの計画、構想、こういうものについては、当然それは散発的に出されるものではなくて、一定の計画なり、それこそ一定のアイデアに基づいて個々の政策というものが打ち出されているのではないかというふうに私は考えます。そういたしますと、それらの発表の中で特に重要だと思われますのは、三十六年の七月一日に厚生省が発表いたしましたところの厚生行政の長期計画、これが長期の展望に立って、しかも相当総合的な計画を持っておるように考えられますから、個々の政策というものはこの長期計画を骨格として、その中から打ち出された構想ではないかというふうに私は考えますけれども、この関連は一体どのようになりますか。
○西村国務大臣 吉村さんの御心配の点は、こういうことじゃないかという想像がつくのです。厚生省は、あまり実質的にやらないくせにあまり新聞に発表し過ぎるのじゃないか、こういうようなことを思って御質問になっておるのじゃないかしらんと思っておりますが、実は現在でも、新聞に厚生省の記事がないことはないくらいたくさん出ておるのです。ところが、新聞社の中には、非常に厚生行政に興味を特別持っておる新聞社があるわけでございます。従いまして、そのために非常に記事が多いのですが、これは私は、何もから宣伝をするつもりでわれわれが特に頼んでやっておるものではございません。しかし、秘密にすることでもないわけでございますから、どちらかというと、やはり国民の理解を受けるために、努めて私は、記者諸君に対しましてはやはり報道機関としての務めを果たさせるように部下の者に言っております。それかといって、むやみに宣伝がましく、また、羊頭狗肉の方法でやるということは言っておりません。おりませんが、最近特定の新聞といいますか、大部分の方もそうですが、特に非常に厚生行政に興味を持って、それを非常に主眼にしてやっておるところがあるわけです。で、それらの記事と長期計画との関連いかんということでございまするが、これは必ずしも長期計画との関連を云々といって発表しておるものではございませんので、今申しましたように、長期計画との関連で新聞紙上にそれぞれ出ておることではありません。しかし、われわれは、宣伝がましくやるわけではございませんが、また一つ国民が理解を深めるということに対しましても、そう秘密主義で全部やってもかえっていけないことでございますので、その点は取捨よろしきを得てやりたい。決して、池田内閣が社会保障に重点を置いておるから実質以上にどんどん宣伝をして、やりもせぬことを先の先まで書きまくるというようなことをさせておるわけではないと思うのでございます。
○吉村委員 今の大臣の答弁によりますと、長期計画とは直接の関連はないという趣旨の答弁がございました。そうなりますと、社会保障施策の当面の責任官庁として、無計画的に、思いつき的にいろいろな構想というものを打ち出しているということになりはせぬかと思うのです。私は、このような構想あるいは計画というものが数多く報道をされるということは、それ自体に大へん問題があるというふうに実は考えておったわけです。もちろん、国民の関心を持っている政策でございますから、秘密主義にする必要はないと思います。しかし、そうして報道されたことが具体的に実現をしていかなければ、これは国民にかえって失望を与える。今日の日本の実情の中で、社会保障政策はこういう計画をもって、こういう年次的な計画で実現をさせていくんだという、何か一本の柱がなくては、それこそ先ほど申し上げましたように、単に国民に淡い期待だけを与えてしまって、最終的には失望感を与えてしまう。こういうことになることは、厚生大臣として決して好んではいないと思うのです。そういう意味では、厚生省は単に厚生省として存在する省ではないはずですから、池田内閣の社会保障を推進する行政機関として存在するはずですから、政府全体の中で社会保障政策をどういうふうに進めていくかということについて十分な問いがなされ、一定の方向が示された暁において発表されるのが、厚生省として当然の姿だろうと思うのです。ところが、厚生省が長期計画との関連もなしに、単にそれぞれの担当部局で思いつき的に発表されているんだとするならば、あるいはこうしたい、ああしたいという願望的なものを発表しているにすぎないのだとするならば、これは新聞発表は大へんに問題であるし、行政官庁としてはきわめて無責任なあり方のように私には考えられます。こういう点について、一体どのように考えられますか。
○西村国務大臣 私は、さいぜん長期計画と関連なしにと言ったのは、発表それ自身を、長期計画をつくってまたそれぞれを計画的にどんどん発表しておるんだということではないという意味でありましたので、個々の事柄については、もちろんそれは全部長期計画の一環でございます。しこうして、私たちの方でしいて発表するわけではございませんにしても、新聞社の方でそういうことがわかれば、報道するということもあるわけでございます。それは新聞社の方々が、社会保障というものに非常に関心を持ったということで、私たちが積極的に報道する以外に、新聞記者諸君自身の主体性でもって発表されるのが非常に多いわけです。特に厚生省としてこういうものを発表しなければならぬというものにつきましては、たとえば人口調査ができましてそれがまとまる、あるいは成人病の統計をとっておってそれがまとまる、そういうようなときは、私たちの方としては、務めとして新聞報道してもらいますけれども、あるいはある一定の計画をやっておって、それがこういうような方向にいくのだというような特定のものにつきましては、わざわざ記者諸君に記者会見をして報道しますけれども、あとの記事は、記者諸君の自主的にまとめたものを報道機関として報道することが多いわけであります。多いわけでございますが、それはとりもなおさず、国民の皆様方が社会保障というものを知りたいという記者諸君の記者的な勘でやっておるのじゃないかと思っております。ことさらに私たちは宣伝がましくやっておるのではないことを御了承願いたいと思います。
○吉村委員 新聞記者の方々が、社会保障の問題について強い関心を持って、そしていろいろな報道をむしろ積極的に取材に来るというその態度は、私はそれなりに是認をされていいと思います。しかし、新聞に報道される各部局なり、あるいは厚生省としての計画なり、構想というものは、決して火のないところから出たものではなくて、そういう計画を部局なら部局でもって立てておる、そういうものを報道されているというふうに、全体の内容からは察知されるわけです。ですから、積極的であるか消極的であるかのことは別といたしまして、厚生省の社会保障政策展開にあたってのそれぞれの考え方というものが、報道されているということには違いはないのではないかというふうに思いますが、その点はどうですか。それとも新聞の報道は間違っているというふうに考えられますか。
○西村国務大臣 いや、お説の通りでございます。そう間違っておるというものもありませんし、やはり大体の線を報道いたしておると思います。
○吉村委員 そうだといたしますと、この新聞に報道されている、いわば膨大な計画、構想というものは、国民がだれも望んでおるようなもの全体が網羅されておるのです。一刻も早く実現をしてもらいたいというものばかりです。こういうことについて、それは今日の政党政治のもとにおきましては、当然内閣全体として責任を負わなければならない、こういうようなものではないかというふうに思います。もちろん、厚生省が一つの構想を持って、これからの関係各省との交渉に当たらなければならない部面もあるでしょうけれども、この報道から感じられますものは、どうしても池田内閣全体としてこういう計画を持っている、このように理解をするのが素朴な国民感情ではないかというふうに思うのです。私は、このような構想なり計画に反対をするものではないのですけれども、ただ、こういったものを全体として実現していくためには、非常に大きな障害なり問題点というものがあるはずだ、あるからこそ、厚生省としては、いろいろ予算折衝の面とかその他の関係で苦慮しているのが今日の実情じゃないかというふうに思うのです。ですから、もっとほんとうに国民に信頼されるような計画を内閣全体として発表する、あるいはこれを推進する、こういうような方向に政治の姿勢というものが進んでいかなければ、単に国民に幻想だけを与えてしまう危険があるということを私は指摘しておきたいと思うのです。発表されるならば、それはやはり池田内閣全体の社会保障推進の姿として、しかも金の裏づけのあるものとして国民全体から納得されるような、そういうものを発表をしてもらうように特に要望をしておきたいと思うのです。 先にどの大臣の答弁の中で、長期計画というものの線に沿って、種々の構想なり計画なりが発表されておるのだという御答弁がございました。この前の委員会で、同僚の田邉委員が長期計画についての質問をいたした際に、私の記憶違いではないと思いますけれども、この厚生省の厚生行政長期計画については、再検討をする段階になったという趣旨の答弁があったように私は記憶します。それに間違いありませんか。
○西村国務大臣 ものによって、事によって変えていかなければならぬというふうに考えておるわけでございまして、たとえば環境衛生のごときは、長期計画によりますと十年間は長期計画ができておったけれども、それでは間に合わぬから、一つ緊急五カ年計画をつくろうじゃないかということで、五カ年計画を環境衛生についてはつくったのであります。その他の計画にいたしましても、この長期十カ年計画というのは、もともとやはり池田内閣の所得倍増計画の最終の姿のときに社会保障としてはどうなるかという構想をいたしたのでありますが、それよりも早いスピードで進まなければならぬもの、あるいはそういうばく然たることではなくて、もう少し具体的に積み上げていかなければならぬものというようなものは、この長期計画の中で特に取り上げて、短期計画といいますか、いろいろ修正をしていかなければならぬものが今も出てきております。今後も私は出てくるのではないか、かように考えておるわけでございます。
○吉村委員 そういたしますと、この長期計画というものは、客観的な情勢に応じて変更を加えるものは変更を加えていく、これは部分的にはあり得ることだと思うのです。ただ、この委員会でも再三にわたって問題になっておりましたものは、社会保障重視の熱意を表わすものとして、それを具体的にどう具現していくかということについての計画がないのではないかという主張がなされておったことは、厚生大臣も御承知の通りだろうと思うのです。そういう要望にこたえたものとして、いわば長期計画なるものが登場をしてきた、こういうふうに私どもは理解しておるわけです。それがそのときの情勢々々に応じて変更しなければならない、部分的にはそういうものも出ましょうけれども、しかし、大筋の点について変更を加えていくとするならば、まさにこれは計画ではなくて無計画な状態になってしまう、こういうことになりかねないと思います。私は、今までの大臣の答弁、前回の委員会におけるところの質疑応答の過程で感じられますものは、どうもいろいろな計画を厚生省が樹立するけれども、それがまた、そのときの情勢に応じてという言葉によって変更がそのつど加えられていく、こういうことでは計画がないにひとしいのではないか。ないと同じようなものだというふうに考えられてしょうがないのです。ですから、やはり所得倍増計画が十カ年の計画をもって進められておるという段階においては、その国民所得が十年後にどうなるか、そういう場合に雇用の状態がどうなるか、その場合に国民生活がどうなるか、社会保障の点は一体どうなるかという大綱が示されておって、それをもっと具体的に示したものが長期計画のはずでありますから、それをさらに変更しなければならないとするならば、長期の展望に立ったところの十カ年計画で長いとするならば、もっと短期の具体的な計画、こういうものに沿って種々の計画なり構想なりというものを打ち出していかなければ、厚生省というものはやたら新聞発表ばかりやって、実際にそれを実現していかない、そういう失望感、不信感を国民に与えてしまう、こういうふうになろうと思います。この点については、長期計画の変更というものがあり得るとするならば、それにかわるべき短期の計画、こういうものを総合的に打ち立てたものが必要だというふうに考えられますけれども、こういう点は一体どういうふうにお考えになられますか。
○西村国務大臣 長期計画は、まあ所得倍増に見合った長期計画でございますが、その中から取り上げまして、そうしてさらにその長期計画に合わした厚生行政のものも、やはり中にはばく然としておるものもありますから、なるべくそれを数字的に固めていきたいということを今盛んにやっておる最中でございます。しこうして、さいぜんも申しましたように、その長期計画ではいけないようなもの、もう少し繰り上げてやるというようなものをその中から取り出してやっていくのだ、たとえば生活保護なら生活保護にいたしましても、最終目標としては長期計画の終点でもって三倍にするというが、その年々何倍にするかというようなことまでずっと考えての数字は出ておらないわけであります。これあたりは早くそれに到達させていく、しかし、社会福祉施設等のようなものは、十年を待たずしてある目標に達したいというものもありますし、中にはいろいろありますが、もう少しこれを皆さん方にわかるように、また私たちが、計画は計画らしく一つずつ具現化していく具体的な数字をまとめたいということで、せっかく努力をいたしておるのでありまして、吉村さんの御心配のような点は十分しんしゃくいたしまして、この計画をコンクリートにするといいますか、しっかりしたものにして、それは厚生省のものではない、池田内閣のものとして、われわれはただ自分の慰めとしてつくったものではなく、それぞれしっかりしたものとしてオーソリティを持たしたいというような考えで、せっかく今努力をしてやっておる最中でございます。
○吉村委員 ただいま生活保護基準の問題等も出ましたけれども、もちろん全体の長期計画の中で、最終的にはこのようにしたいという計画があり、年次については、それまで所得倍増政策というものはきめているものではない、こういうお話でございますが、所得倍増政策の計画の中で、そこまでをきめろということはなかなか無理なことだと思うのです。ただ、経済の動向なり国民所得の動向なり、こういうものに見合って、たとえば生活保護の基準等についても引き上げられていかなければならないという、大網の方針というものは定まっておるわけです。私が特に大臣に申し上げたいと思いますのは、たとえば今の生活保護基準の問題につきましても、厚生省としては二一%の引き上げを要求した、しかしながら、実質的には政府全体としてはそれを認められなかった、こういう幾多の事例がそういうものの中に現われておるわけです。私としましては、そういう場合には、厚生省の社会保障推進の計画というものがやはり年次別にあって、それが内閣全体として裏づけされて、そういう計画を持たないと、そのつどそのつどの予算の動向あるいは財源の関係あるいは各省間の力関係といいますか、そういうことで押し切られるという結果にもなりかねない。ですから、国民が重大な関心を持っており、池田内閣としての重要施策であるところの社会保障の充実とその推進にあたっては、国全体としての方向、計画というものをもっときちんと立てていくようにしてもらわないと、厚生省の各種の発表というものは、ついに実現しないままで失望のみを与えてしまう、こういうふうになっていくと思うのです。先ほどの生活保護基準の問題等についてもその一つの現われではないかというふうに思いますから、こういう点については十分配慮をして具体的な計画というものを出し、しかもそれが、内閣全体として責任の持てるようなものを出すように、今後の計画については当たってもらいたいと思います。たとえば今まで各種の構想なり計画というものが発表されておりますけれども、では一体社会保障というものが、それほど重要な施策として進められているごとく金の裏づけ、財源上の裏づけというものがなされているのか、こういうふうに見て参りますと、厚生大臣も、それは自信を持って増額されておるというふうには言えないと思います。なるほど、昨年からの一般会計予算なりあるいは社会保障の予算の増大率というものを見て参りますと、一般会計の増大率からすれば社会保障関係のお金は増大しておる、こういうふうには言えますけれども、しかし、社会保障という政策がどのくらい重要視されておるのかということは、その国の一般会計予算の中で社会保障関係の予算がどういう割合を占めるかということによって証明されてくると思うのです。この前の委員会でも指摘をされておったようでありますけれども、たとえば昭和三十六年度の社会保障関係の予算というものが、一般会計に占める割合というのは一一・七%くらいになっておりましたか、それが三十七年度では一一・二、三%、それから本年度は一一・〇五か六くらいだろうと思います。そういう数字から見てみますと、どうも厚生省の各種の社会保障充実の構想とか計画とかいうもの、あるいは池田内閣の社会保障を重視しておるということは、看板倒れになっておるというふうに見なければいけないと思います。問題は、金の裏づけ、政策を実施する裏づけが一番問題なはずですから、こういう点については、大臣もこれでいいというふうには考えていないはずですけれども、私の特に指摘したいのは、国全体としての、内閣全体としての社会保障推進の姿勢というものが足りない。(「そうだ」と呼ぶ者あり)それは厚生省は厚生省として単独に苦労している、その苦労の姿が、あれもやりたいこれもやりたいということになって現われておる。いわば予算を獲得する一つの手段的に、予算編成の時期になると各種構想なるものが発表されてくる、こういうことでは私はいかぬじゃないかというふうに考えるわけです。こういう点についての大臣の見解はどうですか。
○西村国務大臣 社会保障制度がまだ非常になまぬるいじゃないか、そうだ、そうだという激励の言葉もあるようですが、試みに、これは何と申しましても国家財政との関係を持ちますし、国民所得との関係を持ちますのですが、私申し上げてあえて誇りとするわけではございませんが、事実は、今まで過去十年間の社会保障制度の進み方、国家財政は昭和二十九年度は一兆円——九千九百九十億円、これが三十八年度は二兆八千五百億、二八五%のスピードです。それで社会保障はどうなっておるかというと、社会保障という概念が、途中でいろいろ項目が変わってきたこともありますので、全般的の数字がちょっと出ておりませんが、厚生省関係の予算が社会保障制度の大部分だといたしますれば、昭和二十九年度の厚生省の予算は八百三十八億円で、ことしは三千三百十三億円でございまするから三九五%になっています。そういう数字がある。しかし、それはまだ少ないと言えばまだ少ないのでございます。手をかけるところが非常にあるのです。あるのですが、かなり重点を置いてやっておるということだけは、これは数字が厳として示しておるのです。それは君、少ないよ、そういうことは言えると思います。西欧諸国あたりに対しまして、まだ言えると思うのであります。しかし、これは西欧諸国あたりの社会保障というようなもののいき方も非常に違っておるものもありますし、一がいにパーセンテージは比較しませんけれども、とにかく重点を置いてやっておるのだということは、これは金の多寡を云々すれば別でございまするけれども、今の国家財政が十年間に二八五%、社会保障制度が三九五%のスピードで進んでおるということは、これは厳とした数字でございまするから、かなり重点は置いておるのだということだけは一つお認めを願いたいと、私はかように思う次第でございます。
○吉村委員 社会保障の費用の増大割合というものが、相当多くなっているということについては数字上そうでありましょう。問題は、そういうふうな政策というものを進めていくことは近代国家にとって当然の役割になるわけですから、ウエートの判断の問題になってくると思うのです。私は、その判断の仕方について議論をし始めれば、これはどうにも一致点というものがなくなってくると思いますけれども、では一体現実にどうかという現実の問題からながめてみますならば、かように飛躍的にとは言わなかったけれども、相当大幅に増大をしたといわれるところの社会保障の中で、今日の日本の国民の中には非常に数多くの低所得階層がある、こういうことは事実だと思います。そしてまた、生活保護を受けなければならないという人、今度ようやく四人家族で一万四千円くらいになりますが、こういうような状態のままになっておるわけですから、確かに多くはなっているとはいうものの、日本の経済の成長の度合、こういうものから見るならば、社会保障に使われている費用というものは決して多いと言うわけにはいかない。その現実的な姿が、非常に低所得階層というものがあり、かつまた、制度の問題について言うならば、たとえば医療にかかろうと思ってもなかなかかかれないという、そういう具体的な現実の問題もあるわけですから、そういう現実的な問題から考えてみますると、厚生大臣としては、今の数字にあまり胸を張っていばっていられるという状態ではないと私は思うのです。先ほど私が指摘しましたように、たくさんのことをやらなければならないということ自体は、そういうことを意味しているというふうに私は思います。ですから、そういうようなことにつきましては、今日の状態に満足するというようなことなしに、もっともっと飛躍的に社会保障の推進という方向に、特に厚生大臣としては努力をしてもらわなければいけないというように考えます。 そこで、若干内容の問題に入るわけでありますけれども、わが国の社会保障というものは、御承知のように、その発足の歴史等から考えてみまして、いわば保険主義というものをとってきて発足をしてきているわけです。保険主義でありますから、当然に被用者保険制度、こういうところから発展をいたしてきております。ですから、この制度の発足の歴史等が原因をいたしまして制度間に非常に給付上のアンバランスがある、こういう状態でありますけれども、この制度間のアンバランスをどういうふうにして除去していくかということについては、社会保険主義で発達をしてきたというところに大へん問題があるし、社会保険主義で社会保障の完全な自立は期し得られないというふうに私としては考えておるわけです。そういうような制度間のアンバランスという欠陥、加えてこのアンバランスというものは、所得の低い人ほど、本来ならば保障についてはその恩恵が厚くならなければならないのにもかかわらず、日本の制度間のアンバランスは、所得の低い者ほど給付水準は、これまた低いという二重の欠陥を持っておると思うのです。これらの点について是正していくため一体どういう考え方、どういうような計画を進められようとしておるのか、大臣の見解を承りたいと思うのです。
○西村国務大臣 医療保険の問題と年金制度の問題でございましょうが、医療保険の問題にいたしましても、今吉村さんが指摘しましたように、保険制度であるから貧しい者ほどということの御意見に私も同感でございます。同感でございまするが、やはりそれぞれ発達の歴史がありまするし、また、制度を全部一緒くたにするというようなこともできませんから、その制度の歴史をやはりある面については踏んで、秩序正しくそのアンバランスを直していかなきゃならぬ。言いかえますれば、医療保険にいたしますれば、健康保険、被用者保険と国民保険と、大体分けて二つになります。この二つの間にもアンバランスがあります。アンバランスがありまするが、われわれの考えといたしましては、被用者保険は被用者保険としてのいろいろな種類があるから、それのバランスをとっていきたい。しこうして、国民保険は国民保険なりに、これは非常に被用者保険との隔たりがあるから、まず国民保険は国民保険として被用者保険に接近していきたい。そのためには給付の改善ということが必要になろう。で、給付の改善が必要になれば、国民健康保険は事業主がありませんから、事業主にかわって国家がそれの負担をしなければならぬというこでありまして、その二つの体系をまず接近させるということが第一番でありまするとともに、この国民健康保険は一本でありまするが、被用者保険は数本に分かれておるから、被用者保険は被用者保険の中でバランスをとっていかなければならないじゃないか、かように考えておるわけでございます。 それから年金制度の問題につきましても、これももちろん厚生年金と国民年金との間に、これまた非常にアンバランスがありまするが、これとても、現在の厚生年金は厚生年金としての考え方を一つまとめていく、国民年金は国民年金としての一つの改善をいたしていきたい。それもなるべく同じ方に接近するような気持で改善をいたしていきたい。意見といたしましては、医療保険の場合にいたしましても、健康保険の家族を一ぺんに国民保険に入れるとか、いろいろなことはありまするが、やはり制度は制度として発達してきたのでありまするから、それを度外視して一ぺんに革命的な変化はできない。やはり、徐々にと言えば悪いですが、その制度は制度として尊重しつつ是正をしていく、その是正していく方法は非常にむずかしいのでございまするが、私は、三十九年度はいろいろな意味で非常に問題がたくさんあろうかと思いまするから、今年度はこれらの改善に向かって、それぞれ専門の方々に委嘱をいたしまして制度のアンバランスを取り除くようにしていきたい、かような気持でおるわけでございます。
○吉村委員 被用者保険と、いわば地域保険との間のアンバランス、さらに被用者保険ならば被用者保険の中でのアンバランス、こういう問題が存在をしておるわけです。ただ、私が先ほど指摘をいたしましたように、社会保障は低額所得者に対して所得の再分配の思想に立って保障額というものを厚くしていく、こういう考え方を持たなければならないはずだ。日本の社会保障制度の場合には、アンバランスの中で特に低所得階層ほどその給付水準が低い、こういうところに問題がある。たとえば国民健康保険と他の被用者保険、こういうものを医療制度の中から考えてみた場合に、国保の給付水準というものはきわめて低い。しかも、この国保に加入しなければならない、加入している人数というものは、大体今のところで四千四、五百万ございますが、国民の半数近い人がこれに加入するという制度になっているわけです。御承知のように、国民健康保険の加入者は、その大半が農民であり、自由業者である。農民の所得が今日どういう状態になっているかということは、農業基本法の際に議論されたごとく、非常に所得水準が低い、こういうことが問題になっておる。その低額所得者を包含するところの国民健康保険というものは、被用者保険に比較をいたしますと非常にその給付水準が低い、こういう状態になっているわけです。ですから、バランスを直すということにつきましても、たとえば被用者保険の中で問題になると思われますのは、一つは機構上の問題があるのではないかと思うのです。機構の問題と申し上げますのは、たとえば共済組合の場合には各省にまたがってその事務を取り扱う、あるいは管掌をする、こういう制度になっておる。そういうようなそれぞれの制度ごとでこれを管理する機関の違うというようなことも、大へん問題じゃないかというふうに思います。こういった機構上の問題を一本化していくということが、一つは必要じゃないかというふうに考えられますし、そのバランスをとるための方法としては、単に財源上のプールというようなことで水準を平均化する、こういうようなことでなくて、低い水準から高い水準にどう引き上げていくか、こういう思想がなくては社会保障の充実の方向というわけにはいかないと思います。このように考えて参りますと、今日のこのアンバランス是正のための非常に重要な方向としては、何と言いましても、医療保障の中では、国民健康保険の給付水準というものを被用者保険並みに引き上げていく、こういうことでなくてはいけないと思います。この点は、社会保障制度審議会からの答申等にもあったわけでございますが、ただ、その引き上げる方法についての問題でありますけれども、冒頭に申し上げましたように、保険主義でこれをやっていくということについては、どうしても問題が残るのではないか、あるいはまた、社会保障というその本来の精神からするならば、保険主義でやっていくということ、必ずしも私は妥当というふうには考えません。そこで、この国民健康保険の給付水準を引き上げていく方法としては、どうしても国庫を大幅に導入をして、国庫補助というものを思い切って増額するしか他に方法はないのではないか、こういうふうに考えますけれども、先ほど申し上げましたこのアンバランスを是正するための一つの方法としての機関の統合といいますか、そういうような問題についての厚生大臣の考え方、それから一番劣悪だといわれる国民健康保険の給付水準の引き上げのための方法として、国庫導入、国庫補助を増額する以外に道はないのではないかというふうに私は考えるのでありますけれども、大臣の考え方はいかがですか。
○西村国務大臣 保険主義でなしに、保障制度としてやっていけというような御意見のように承るのですが、やはり保険主義で社会連帯の責任でやっていって、そして国家も被保険者も負担するということではなかろうかと思うのでありまして、これを全部保障制度という概念でやっていけということは、少し無理があるのじゃなかろうかと私は思うわけであります。やはり保険主義で社会連帯の責任でいく、しこうして被保険者も負担し、しこうして足らざるところは国家も負担する、こういうことで、ただ国家だけが全部負担して、そして保障で全部やっていけということは、少し私はどうかというように考えるわけでございます。
○吉村委員 私は、今一つの具体的な例として、国民健康保険を例にあげたわけです。国民健康保険の加入対象者というものは、大臣御承知のように、そのほとんど大部分が農民なんです。農民の所得水準というものは、他産業従事者に比較してみてどのくらいかというならば、四分の一くらいになっているでしょう。そういう方々を、保険主義のもとで他の給付水準まで引き上げるという方法が、はたして社会保障の考え方に立っておるかどうかというならば、私はそれはそうではないと思う。では、今大臣が言われましたように、国もある程度保障をしていく、あるいは連帯の中で保障するために各人にも負担をしてもらう、保険主義と保障主義の併用みたいなことを言われましたけれども、具体的な例として、国民健康保険を他の被用者保険水準まで引き上げていくために、もっと保険料を増額するということが一体できるかどうか。私は、今日の国民健康保険の中では、この適用対象者の状態あるいはその他の条件から見て、ほとんど不可能に近いのではないかという気がする。ですから、本来の、大臣もお認めになっておるように、給付水準を上げてバランスをとっていくというためには、医療の問題について言うならば、一番問題になる国民健康保険、これを引き上げていく以外にない。引き上げる手段として、保険料を増額し得るというふうに大臣は考えられますか。
○西村国務大臣 そういうような気持に立っておりますから、国民健康保険の低所得者に対する今回の七割給付にいたしましても、その四分の三は国家が持っておる。四分の一だけ保険者の負担ということになったのでございまして、しかもまた、最も貧しい者については、保険料も相当な数、保険者の二割くらいの数は減免しようという処置をとったのでございまして、あなたのおっしゃるような線にいっておるのであります。そういうように国家が大部分の費用を持って、そして給付の改善をやっていっておるのでありまして、そういうような方向で今後も進まなければならぬと思います。保険料ばかりを上げて給付の改善だけをやろう、こう考えておるのでないことは、今度の七割給付の例を見ましても、保険料の減免の処置を見ましても、十分にわれわれの意のあるところはおわかりであろうと思うのであります。
○吉村委員 意のあるところはわかるだろうと言うけれども、それは国庫負担が若干ふえてきているわけですから、その努力を私は認めないという立場ではないのです。私の言っておるのは、給付水準が非常に違う、こういう状態を直していくためには、国庫導入以外には、国保の充実というものはあり得ないのじゃないかというものの考え方に立っておるわけです。先ほど大臣が言われましたけれども、たとえば今度の世帯主七割給付ということを実施するということになると、平均の給付水準はどのくらいになるかといったならば、大体五割四分くらいにしかならぬ。被用者保険の場合には、大体七割二、三分になっておるはずだと思うのです。付加給付を含めますと、被用者保険の場合には大体八割ないし九割、平均してそのくらいになっておるはずだと思うのです。給付水準というものが、非常に差があるわけです。ですから、今度世帯主七割を実施したからといって、これは給付水準というものを平均すれば、五割四分くらいにしかならない。現在のところは五割一分か二分のはずですから、そう大きく改善されたことにはならぬと思うのです。こういうように非常に差がある。大臣が骨を折って世帯主七割までやっても、非常に大きな差があるのです。これを直していくためには、私は、やはり思い切ってこれは国庫導入をやるしかない。それ以外にはこのアンバランスというものを是正できないし、そうやっていくことが、社会保障充実への一つの施策として当然のことではないかというふうに私は考える。国民健康保険あるいは国民年金という工合に農民全体が入るような制度、所得の非常に少ない人たちが適用される制度については、それ以外に給付水準というもののバランスをとるという方法はないと思いますが、こういう点については、大臣も一つ特に考えてもらわなければならないと思うのです。私が特にこういう点について強調いたしますのは、今農民の間には、無医地区といいますか、僻地等では、国保によって掛金だけは取られる、取られるけれども、医療施設等がないために、取られっぱなしになっておる、ばからしいじゃないかという声が非常に強い。これは大臣も御承知の通りかと思うのです。農民というのは、今までの歴史的な——戦後の状態はどうであったかというならば、言うまでもありませんけれども、あの食糧不足の当時には、もう食糧増産ということでさんざんかせがせられて、そしてちょっとでも自分のつくった米を他に流用すれば、それは食管法違反だといって罰せられる、そういうきびしい条件の中で働いてきて今日の日本の産業の発展というものがあったとするならば、その食糧を確保した農民の努力があったから、今日というものは生まれてきたと思うのです。同じように、石炭産業労働者の場合にも言い得ると思うのです。ところが、そういうような国家の再建のために非常に努力をしてきた農民に対する社会保障制度というものは、国民年金にしても、国民健康保険にしても、きわめて低劣な制度である。こういうものを放置しておったのでは、私はこれは政治じゃないと思うのです。つまりそういうところにほんとうに国庫を導入するなり、あるいは国の施策として、他の産業に従事する者と同じような老後の生活の保障あるいは医療の保障というものを与えていく。このためにお金がかかるということについては、私は、国民はそう反対をするはずはないという気すらするのですが、そういう点について、特にこの国民健康保険の他制度の水準までの引き上げについては、もっともっと思い切ったところの国庫導入、こういうことを十分心がけて努力をしていただきたいと思うのです。だからといって、私は被用者の健康保険というものが、必ずしもこれで給付がいいというようには考えておりません。これはもちろん引き上げなければならない。組合健保にせよ、あるいは政府機関の場合は別ですけれども、いろいろ財政運用上には問題があると思うのです。私どもが特に望んでいますのは、給付水準というものを被用者保険については引き上げていく必要がある、こういうふうに考えまするから、そういう点については、被用者保険と国民健康保険とを比較し下——被用者保険がこれでいいという立場に立つものではありませんけれども、その被用者保険と比較してみて、非常に国保の場合には劣悪な条件にある。これを充実していくということが、医療保障の立場から見たところの社会保障充実の非常に重要な方向じゃないか。単に十月から七割給付ぐらいでオーケーというわけにはいかない。何か新聞発表によりますと、国民健康保険の五カ年計画というものも発表されておるようでありますけれども、これですらも、先ほどの例から見ますと、どのくらい具体性を持ち、どのくらい裏づけをされているのかということについては、私は疑問とするわけです。ですから、よほど本腰を入れてかからないと、アンバランスというものは解決しない、こういうふうに考えます。大臣は他の方から呼ばれておるそうでありますから、この程度にしたいと思いますけれども、低所得者に対してきわめて劣悪な条件であるところのこの制度間の矛盾というものについては、いわば厚生大臣だけの責任という問題でなくて、池田内閣が社会保障充実を口にする以上は、大蔵とか各関係省の大臣が社会保障充実のための一つの機関的なものをつくって、内閣全体としての社会保障充実の計画とその姿勢というものを明確にする、そういう体制というものをつくり上げていくということが、今日の段階では、厚生大臣として非常に必要なことではないかというふうにすら私は考えますので、十分ここらの点について努力をしてもらいたい。見解があったらお聞きしておきたいと思います。
○西村国務大臣 最も国民健康保険が弱体であることは、御案内の通りでございますが、これが改善につきましては、今後とも引き続き強力にこの給付の改善に努力したい、かように考えておりますし、なかんずく皆保険でございますから、その恩恵に浴しない僻地の医療の問題につきましても、今までは第一期計画としては三百数十カ所の診療所をつくりましたが、引き続き今年度から約二百カ所の診療所をつくって、無医村の人々にもこの恩恵に浴せしめるように、制度そのものの強化につきましては今後とも力の限り努力をする、こういうことを申し上げたいのでございます。せっかく皆様方も一つ御後援のほどをお願い申し上げる次第でございます。
○吉村委員 今最後に、大臣がいわゆる僻地、無医地区のことに触れていったのですが、本年度の予算等を見てみましても、今まで厚生省が発表しておるものからすると、これは全く微々たるものだというふうに私は思います。 そこで、この国保の問題について若干質問を続けていきたいわけでございますけれども、国保に加入している人たちの罹病率というのは、非常に高いわけです。それから加入者の居住地というものは、これまた僻地であり、場合によっては無医地区すらもある、また低所得者が大部分だ、こういう状態ですが、特に先ほども申し上げましたように、保険料を納めていながらも医療施設がないために医療の機会に恵まれない、そのために、あたら助かる命も場合によってはなくなってしまう人たちすらもある、こういうような状態に対して、一体厚生省としては、具体的にどういうようなことでこれらの素朴な不満、あるいは社会保障は国民全体に公平に写えらるべきであるという、その当然の施策というものを進めようとしておるのか、承っておきたいと思うのです。
○渡海政府委員 僻地の医療の充実につきましては、従来無医村部落の解消のために、個所をあげまして五カ年計画を実施してきたのでございますが、これが完了しましてもなお細部の、その下のまた部落単位というようなことになりますと、現在なお、そこまで持っていってもそれ以下のところで医療に恵まれないという地区がございますので、新たにこういった地区百九十何カ所を出しまして、ぜひともまた第二期五カ年計画によりましてもう少しきめのこまかい解消を実施したいというので、本年度三十九カ所、これを予算的に取り上げていただいた次第でございます。しかしながら、この予算をつけますときにも指摘されましたように、診療機関を設けましても、現実において医師の充実をはかりがたいということが、無医地区の解消のために非常な難関になっておりますので、医師の充実ということにつきまして、あるいは医師に対する給与制度の改善または親元病院の整備等、あらゆる方法をもって、診療所を設けると同時に、この地区に対する医師の充実ということにつきまして、私たち今後ともに努力して参りたい、かように考え、処置しておるような次第でございます。
○吉村委員 三十七年の三月四日の新聞報道ですけれども、無医地区解消を推進するために、厚生省が第二次五カ年計画をもってやるという趣旨のことが報道されている。この中で、次のようなことが報道されています。「無医地区の解消については、昨年暮れ、厚相の諮問機関である医療制度調査会からも灘尾厚相に対し「すみやかに有効適切な措置を講ずべきである」との中間答申が出されており、厚生省としてはこれらの事情を考慮し、来たる五、六月ごろ僻地を対象に、医療需要を中心としたわが国で最初の総合的な保健福祉水準の実態調査を行なう。」こういうことが報道されていますが、この実態調査は行なったわけですか。行なった結果はどうなっておりますか。
○渡海政府委員 実態調査の結果につきましては、数字等細部にわたりますので事務当局から説明させますが、今係の局長を探しに行っておりますので、後刻御返答させていただきたいと思います。
○吉村委員 そこで、無医地区なりあるいは僻地の医療対策の中で、もちろん施設を早急に確立するということが最も大切なわけでありますが、先ほども次官からもお話がございましたように、あわせてお医者さんをどうするかという問題が出てくると思うのです。今までの予算の面等からこれを見て参りますと、この程度の予算措置あるいは待遇改善ということだけで、はたして医師の確保ができるのかどうか、あるいはこの程度の予算措置によって無医地区というものが早急に解消できるのかどうかということについては、はなはだ不安なしとしないわけです。これまた、先ほどの話ではありませんけれども、相当積極的な、思い切った措置をとっていかないと、無医地区解消ということはから念仏になってしまって、実現するのは十年か二十年先になってしまうだろうと思う。これではそこに住んでおる国保加入の農家の方々、いわゆる国民としては非常に困りますし、同時に、そういうことを放置しておくということは、厚生行政担当者としては許されないわけでありますから、よほど思い切った措置が必要だと思う。今までのような対策で、無医地区の解消ということは一体五カ年計画の中でできるのかどうか、できるというようにお考えになっているのか。
○渡海政府委員 無医地区の解消は、先ほども答弁させていただきました通り、ぜひともやらなければならないことでございますが、困難性を伴うということは、ただいま吉村さん御指摘の通りでございます。私たちも、単に診療所を五カ年計画で建てて事足れりとしておってはならないということでございまして、これとともに医師の確保、またそういう診療所は当然赤字を生むことも考えられますので、これらに対する運営費の補助ということもあわせ考えまして、私たちはできるだけ早く、ぜひともきめのこまかい無医地区の解消というものをはかっていきたいと思います。本年度の予算が僅少であるということでございますが、私たちは、五カ年計画のもとにすみやかにこの解消をはかりたい、かように思いますと同時に、ただ単に机の上のプランだけではなしに、実際において無医地区が解消されるように、巡回診療車の運営、親元病院の育成、それらについても強力にはかりたいと思っております。実はこれは私見でございますが、私のところでございませんが、この間視察に参りました。その地区は但馬という地区でございまして、今度雪害に非常に見舞われておる地区でございますが、そこには国立病院も県立病院も全然ございません。数カ町村が寄りまして組合立の病院を建てた。私はその病院に参りましてびっくりしたのでありますが、県立病院でやっておるのに負けぬ程度のりっぱなものをこしらえております。それが自分の傘下の組合の僻地に至るまで、診療車を持って各地に巡回診療をやっておる。また、その病院が各地に診療所を持って、適宜医者が交代で診療に行っておるというので、実際におきまして、僻地を持ちながら運営面においてこれらの需要を非常に満たしておるというのを私はながめまして、非常にりっぱなシステムとしての行き方じゃないか、かように感じ、ぜひともこの現地を当局からも視察に行くようにと言うて事務官にも命令したのでありますが、運営の面におきまして、そういった制度の採用等によりまして、できるだけ予算の効率的効果を上げ、無医地区に対する医療の浸透に努力して参りたい、かように考えておる次第であります。なお、細部につきましては、ちょうど局長が参りましたから、お答えさせていただきたいと思います。
○尾崎政府委員 僻地の状態に対します調査は昭和三十五年の六月にいたしました。総数千四百八十九カ所、そのうちで四つに分けまして、第一種と申しますのは、近隣の医療機関があってそれで十分利用できる、特に手を打つ必要がない、こういうふうに考えられるものが三百八十五、第二種と申しまして、人口とか面積、交通機関等からして、そこに医療機関の経営が困難であると考えられるものは九百九十六、第三種と申しまして、医療機関の運営がその地域でも十分できそうだというのが百八、こういうふうにありますが、それをさらにいろいろ検討いたしました末、僻地といたしまして手を打たなければいかぬというのが四百二十七、その他のものが四百三十二、こういうわけでございます。第三種のものは、一般の開業医の方とか国保、それから第二種のうちの僻地以外のものも国保の方で、一般開業医の方でやってもらったらどうか、こういう考え方でいろいろ手を打ってきたのでありますが、その前に、僻地の診療所につきましては、直接にこちらがいろいろ援助をいたしまして、そこに診療所を、親元病院との連絡をつけまして開設することをずっとやっておりまして、大体の計画といたしまして、第一次計画でそのうちの二百三十七カ所を昭和三十七年度で大体終わったのでございます。また、それ以後に手を打たなければいかぬものが百九十四カ所あるということで、今それに対して措置を講じておるところでございます。三十八年度でそれを三十九カ所、以後五カ年間で三十九カ所くらいずつやりまして、この診療所をつくるところは解消していく。また診療所をつくるほどでもないというふうなところにつきましては、マイクロ・バスを親元病院とか県に持たせまして、それで発生した患者を町の方に連れ出す。またさらに、特別僻地というものが七百十一カ所くらいございますが、これは広くて人口が少ないようなところで、そういうようなところでは巡回診療をやるように、府県に巡回診療をやるための自動車また船というようなものを、購入補助してつくらすようにやっております。こういうようなものがちょうどこの計画の運行でございますが、今お話しの需要調査の問題は、現在われわれの方で医療機関の整備計画をやっております。それが今度医療法の一部改正によりまして、公的医療機関の乱立に対する規制というようなものも行なわねばならないときでありますし、現在の医療機関の整備計画に対しまして、もう一そう検討を加えていく必要がある、こういうふうな考え方から、たとえば今の医療機関の整備計画に対しまして、各保健所を単位としていろいろのものを考えております。その考え方に対しまして、診療圏との関係は、はたしてこれでいいかどうかというふうな点を、もう一ぺんわれわれ事務当局といたしましても検討してみる必要があるのじゃないかというので、医療需要と病院とか診療所、そういうふうな医療機関との関係は一体どうか、交通関係の影響はどうかというふうな問題、病院の能力と申しますか、そういうようなものとの関連性はどうか、諸般の問題にわたりまして医療機関整備計画、現在われわれが持っております計画も再検討し、反省してみるための調査をやってみたい、こういうので、三十八年度予算におきまして医療需要の調査をやってみたいと考えておりますので、僻地だけの問題ではないのでございます。
○吉村委員 ただいまだいぶ詳細な説明がありましたが、全部書き切れませんから、これはあとで、少し説明をした資料を委員会に提示してもらいたいと思います。 そこで、今こうもやりたい、こういう計画だという話がだいぶ出ています。では一体そういうものを実現していくための予算的な措置、こういうものを見て参りますと、昨年度よりは僻地医療対策費は相当な増額を見ております。見ておりますけれども、これでどうにかなるという数字でないことは、御承知の通りだと思うのです。私は、政治の中には、ぜひともやらなければならない問題もあるはずだと思う。年次計画で逐次充実していくということも、政治の中の一つではあるかもしれぬ。しかし、どうしてもこれだけはやらなければならぬというものもあるはずだと思う。そのどうしてもやらなければならない政策の中に、この無医地区あるいは僻地に対するところの医療の確保というものがあるはずだと思うのです。だから私は、今いろいろ説明がありましたけれども、そういうものを、国民の生命を維持するための医療の機会といいますか、これを全国民に公平に与えてやるくらいの、その施設とかあるいは人の確保ということについては、年次計画というようなものであってはならないと思う。これはもっと真剣に、即時にでもこれを実現していくのが正しい意味での社会保障推進の姿勢であり、それが政治の姿であるというふうに思います。だから、もちろん次官もいろいろ努力されておると思うのですけれども、これはだんだんと充実をしていくというような、そんな性格のものではない、早急に、他のものを犠牲にしてもこれだけはやはり確保する、こういう性格の施策であるというふうに思います。どうですか。
○渡海政府委員 もとよりでございまして、国民ひとしく医療の恩典に浴し、しかも皆保険になりました今日におきまして、一日も早くそういうものを解消するということは当然でございますが、金さえ与えればそれででき上がるかと言うたら、そうもならないということは吉村さん御承知の通りの状態でございます。私たちは実施の面に即して、それが効率的に運用されるという目安をつけまして本年度予算もお願いしたような状態でございまして、計画と申しましても、もしそれが可能であれば、できるだけ五カ年計画でありましてもそれを二年に直しても三年に直しても実施させますが、それと同時に、その地区がほんとうに無医地区としての状態が解消されるように、その受け入れ態勢を完備しながら実施に移していきたい、そういった観点から本年度の予算を組みました次第でございまして、今こうもやりたい、ああもやりたいということでございましたが、その結果組みました本年度の予算が、御承知の通り、明細御説明になっている通り最初のきめのこまかい部面の診療所の設置、または巡回診療車あるいは歯科巡回診療車、今局長が答えましたマイクロ・バス等の設置等によりまして、これを運営に移していきたい、かように考えているような次第でございます。
○河野(正)委員 関連して。今吉村委員からいろいろと無医地区の解消、ないし、さらには僻地医療機関についての御質問があったのですが、いろいろ御努力願っている点につきましては私どもも敬意を表しますけれども、その際、私どもがさらに今後御善処をお願い申したい点の中に——この僻地あるいはまた無医地区の問題につきましては、いろいろ御答弁をなさった方向で若干解消する点があろうと思います。ところが、もっと深刻な問題は離島の医療の確保、この問題はきわめて深刻だと思う。もちろん、今日までいろいろと助成政策が用いられております。ところが、私どもがこいねがいますることは、なるほど離島におきます医療対策については国の助成政策が行なわれておりますけれども、これはかなりきびしい基準があるわけです。ところが、そういう基準にかからない離島について格段の御努力を願いませんと、そういう非常に零細な離島の住民が、憲法で保障された健康で文化的な生活、そういう面から言いましても一番かけ離れているところでございますので、この離島等における医療施設あるいはその他の諸要求がある場合には、これらも一つ最善の優遇処置を講じていただかないと、たとえば今の巡回バス、マイクロ・バスを用意して云々というようなことがございましても、なかなか離島の場合はマイクロ・バスを利用するわけにいかぬ。あるいはまた、僻地ではある程度交通機関を利用することはできる、けれども離島の場合は必ずしも交通機関を利用することはできぬ、というようなことで、離島の医療対策としてはきわめて深刻な問題があると思うのです。この点については、私はもし離島の方で強い熱意があった場合には、完全にその意向を満たすという方針で臨んでいただくことがきわめて肝要だと思うので、そういう点について、この際政務次官の御所信を承っておきたいと思います。
○渡海政府委員 御趣旨ごもっともでございます。私たちも、今回の予算の中におきましても、たしか巡回診療船といったものもバスと同時に取り上げておったのも、このためじゃなかろうかと思います。なお、詳細につきましては局長から報告させますが、今申されましたように、そういったものを用いてもそれを利用することができないというのは、御承知の通りでございまして、私も自治省政務次官をいたしておりましたときに、そのために、こういった僻地あるいは離島といったところに診療所ができても、なかなかそこまで通うのに道ができない、巡回バスを与えてやっても、そこまで道をこしらえなければ行けないという意味から、僻地、離島に至るまで文化水準の潤いに浴させることができるように総合的な施策が必要じゃないかというところから、僻地総合開発、このものに対する大幅な財源をその町村に与えるというようなことで、今の僻地振興法というようなものを出させていただいたような次第でございますが、これらの施策と相待ちまして、私たちも歩調を合わせて、それらの方々の困難を救っていただくようにしていきたい、かように考えております。 なお、離島に対する施策の細部につきましては、局長から御答弁いたさせます。
○尾崎政府委員 今お話しの通りに、また政務次官からお答え申し上げました通りに、陸続きと申しますか、本土の僻地に対しましても医者を確保するというようなことがなかなかむずかしい。また、その患者さんが医療機関のところへ出かけるといっても、いろいろむずかしい問題があって、根本的には交通関係だとか、文化の程度とか、また医療費の問題だとかいうような問題もからむだろうと思います。しかし、できるだけ僻島の方々にも医療があまねく行き渡るように努力しなければならぬという立場で、われわれも極力努力しておるわけであります。今のレベルといたしまして、われわれの考えております方向といたしましては、その状況によりまして、人数がかなり多ければその固まっておる地域に診療所をつくる。それ以外のところには、ちょっとお医者さんがおりましても、今度は仕事がごく少なくなってくるというような問題もありますので、巡回診療船というようなものを県の方で持ってもらって、そうしてときどき巡回をしてもらう、こういうふうなことしか考えにくいのじゃないかと今思っておるわけでございます。来年度予算には巡回診療船を二隻予定しておるのでありまして、全体といたしましては、五カ年計画が終わりましたら、二十七隻くらいの巡回診療船を必要な県には持たせるような計画にいたしておる状態であります。ただ、それにいたしましても、僻島における医療は、しけその他のとき、なかなか大へんなことはもちろんわれわれも承知しております。いろいろお教え願いまして、できるだけの努力をしていきたい、こう思います。
○河野(正)委員 今いろいろお答えをいただきましたが、私どもが申し上げておりますゆえんのものは、実は今基準等の話もありましたけれども、その基準等で救われる離島というものは、運営その他においてかなり容易なんです。ところが、基準で救われない小さな離島が、非常に深刻な問題をはらんでおるわけです。そこで、それには今政務次官がおっしゃいましたように、総合的な面から解決するということが抜本策であると思います。しかし実際、その離島における医療対策というものは、しりに火がついておるわけですね。ですから、抜本的な総合的な施策によって解消するというふうなことでは、ちょっと間尺に合わぬ。でございますから、その離島の方で一つ診療所をつくってほしいというような強い要求なり要望なりがある地点については、できるだけ厚生省も万全の配慮を払っていただきたい。これは財政負担能力がなくて、もう初めからできぬというようなところは別ですけれども、国から誘い水をかけてくれればやりたいというふうな離島もかなりある。ところが、それが基準があるものですから、基準に漏れてできないというようなことで困っておるようなケースについては、一つ今後格段の御配慮を願いたい、こういうふうに考えるわけでございますが、それについて局長いかがですか。
○尾崎政府委員 今のお話の点、よく検討させていただきまして、そこに診療所を置きましてその診療所に医者の行き手があるかどうか、またその可能性がどうか、患者数の関係等を見まして、われわれの方はかなり基準はおろしておるつもりでございますが、まだとてもその基準に合わぬというところでも、巡回診療船とか巡回の関係では困るというようなところにつきましては、府県とよく相談いたしまして、御趣旨に沿うように検討してみたいと思います。
○吉村委員 無医地区あるいは僻地、離島、こういったところに対する施策については、相当思い切ってやってもらわなければいけないと考えます。 そこで、先ほど次官も指摘されましたように、施設の問題ばかりでなくて、人の問題ということになるが、この施設の問題に関連をして、私は少しお伺いしておきたいと思うのです。医療の問題については、医療法の改正でこの前公的医療機関の設置について若干の国家的規制を加えることになったわけです。これはあくまで公的医療機関の開設をどういうふうにするか、都市に偏在をしないようにという考え方に基づいておるわけですが、医療従事者の大多数はやはり個人経営の、いわゆる民間のお医者さんですから、これらの方々の協力なくしては、どうしても僻地に対するところの医療施設というものについても、あるいは人の配置についてもうまくいかないことは言うまでもないと思います。そこで、医療金融公庫法という法律があるわけですが、私はつまびらかにいたしておりませんけれども、この医療金融公庫法の中で、民間の診療所設置の場合に、たとえばできるだけ僻地の方にとかなんとかいう、規制といいますか、そういう方向への努力が、この法律の運営にあたって実際になされているものかどうか、一つお伺いしておきたいと思います。
○渡海政府委員 僻地診療の充実に対、公的医療機関だけでなくして、私的医療機関の活用ということが大事であるということはもう御指摘の通りでございまして、私たちも、このために僻地の近くにあるそうした私的医療機関に対しまして、順番制によって僻地までときどき行ってやっていただく。たとえば頼みに来ても断わることなしに、当番制を設けてやっていただくというふうな制度を呼びかけまして、そういった地方の医師会にまで協力方をお願いしておるような状態でございます。 なお、その僻地に対するところの医療金融公庫の運営でございますが、私もつまびらかにはいたしておりませんが、医療金融公庫の貸付条件の中に、充実しておる地区に対しましては金利を高く、必要やむを得ない地区に対しましては、その地区の知事等の御証明を得まして金利を引き下げるというふうにやりまして、できるだけそういった部面におきまして、医療機関の少ないところにそういった制度が利用されるように、金利等の面におきまして、または運営の面におきましても、できるだけそこに重点的に指導するというような運営をやらしていただいておるように承知いたしております。
○吉村委員 今の次官の答弁は、医療金融公庫法の運営にあたってできるだけ都市に偏在しないように、これは私的医療機関についてもある程度、なるたけ医療機関の少ないところに設置をせしめるように、こういう指導がなされているというふうに理解していいわけですね。それはわかりました。 実は先ほども次官から答弁がありましたが、設備はそうしてできるかもしらぬ。できるかもしらぬけれども、医療従事者がいなければどうにもならないわけですが、金だけでは解決しないというお話が先ほどもありましたけれども、しかし解決する最も近道としては、今日の社会情勢では、これは経済的な裏づけ、いわゆる研究費だとかその他の裏づけによってやっていく以外には方法がないと思うわけです。そういう観点から見ますと、今度の予算案程度では、とうてい医療の従事者というものは、僻地なりあるいは山村地区に進んで行くというわけにはいかぬだろう。当然これは公的な医療機関からの医療従事者をそちらの方に充当する、こういうふうに当面ならざるを得ないだろうと思う。しかし、これまた待遇上の問題その他の関係で、非常にこの実現は容易でないことは次官も御承知の通りなのですが、私は少し冒険的な考え方でありますけれども、こういう状態の中で、なおかつ国民全体に医療の機会というものを公平に与えていくというためには、医師という公的なそういう職務等から見て、人の面に対する規制といいますか——設備に対する規制は、先ほど言うたように医療法の改正なりあるいは金融公庫法の運営によってある程度実現し得るとしても、人自体に対する規制的な方向をとらなければ、抜本的な解決ということにならぬのじゃないかというふうに考えておるわけです。こういう点についてはどう考えますか。
○渡海政府委員 人の面に対する規制ということがどういう内容を持っておりますか、私もはかりかねますので、ちょっとお答え申し上げにくいのでございますが、事実私も、北海道等における診療所で、医師の充実に苦しんでおられるというふうな町村の公的機関のケースをずいぶんながめましたので、金だけで解決することができないことであるということを申し上げたのでございますが、それで一つの例といたしまして、私たちは親元病院というものを育てまして、親元病院の中から定期的にそこへ医師を派遣するということによりまして、そういった面の個人の欲望ということをある程度満たしながら、しかもその方面に対する医療を確保していくというふうな制度を運用しておるわけです。本年度も、予算も少ないということでございましたが、金の面からするということも必要でございますので、運営費の赤字を補うというふうな面で出ておりますが、これなんかも、研究費あるいは医師の給与というものが、おそらくその面に対する赤字の補いとなって現われて、結局は人の確保のために使われていく予算であろう、かように考えておりますが、そういった面をできるだけ十分に運用いたしまして、これの充実を期するとともに、もう一つは、御指摘になりました通り、私的医療機関を利用するということが非常に必要でございますので、こういった面とも、今後各出先当局におきまして緊密に連絡をとりまして、そういった方の、何と申しますか、今、医療の公的機関であるという立場を十分御認識賜わりまして御協力を賜わりますように、医師を持っておる地区々々ごとに、そういった私的医療機関の御協力を仰いで、その面に対するところの国民の機関をできるだけ是正していきたい、かように考えておるような次第でございます。
○吉村委員 私の、人に対する規制ということについて、どういう意味かよくわからぬというお話でありましたが、私も冒頭に、やや相当冒険的な考え方でございますという話をしましたが、簡単にいえば、どこの山の中へ行っても、子供を教育する教育の機関というものはある。教育する機関があればそこに教員がいるということになるわけです。と同じようなものではないかということを申し上げておるわけです。 〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕 しかし、これは相当研究を要する問題だと思いますから、あえてなにしません。 今、避地の問題なり無医地区の問題なり等について、特に私が強調をしてその対策の万全を要求をしましたのは、これは医療制度間のアンバランス是正の中で国保が一番問題だ。その国保の適用該当者というのは、これまた、ほとんど山村に位置しているわけですから、そういう意味から、その充実の一環策として実は強調しておったわけです。この制度間のアンバランスを是正して高い水準のところに引き上げていくというために、国保については直接の給付の面での国庫の導入、あるいは間接的にいうならば、今の施設の面に対するところの国の施策に万全を期さなければならない、こういうふうになろうと思いますけれども、最後に私は申し上げたいのは、厚生省ではずいぶんいろいろな考え方を持っておるようだ。部局もそうであるし、大臣になった人全部そのようでありますが、そういう国民の多数が望んでおるところの社会保障充実への施策、これをほんとうに実現するためには、厚生省だけで幾ら騒いでみてもどうにもならないんじゃないかというように思います。もっと内閣全体としての社会保障への姿勢というものを確立する、こういう立場に立って、今の制度間のアンバランスの解消の問題を初め、社会保障制度充実のために積極的に取り組んでいただくように特に要望をして、一応私の質問を終わることにします。
○柳谷委員長代理 暫時休憩します。 午後、零時十八分休憩 ————◇————— 午後二時三十七分開議
○秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続けます。井堀繁男君。
○井堀委員 私は、民主社会党を代表いたしまして、厚生行政各般について、政府の方針を二、三確かめておきたいと思います。 御案内のように、厚生行政は、日本の政治の中で最も重要な地位に私は当面しておると思うのであります。それは、国際的にも大きな変化が起こっておりますし、国内的にも大きく脱皮しなければならぬ時期に当面しておるその際における厚生行政のあり方というものは、従来の行きがかりやあるいは従来のしきたりにならうといったような考え方では、根本的に大きな間違いを生ずると思うのでありまして、言いかえるならば、厚生行政の刷新をいたさなければならぬ時期に当面しておると思う。 言うまでもなく、国際的には、大きな二十世紀の前半期における革命が押し寄せてきておるわけであります。その一つは、世界人類の約三分の一近い人々が独立を完成して、国際政治情勢を大きく変更しておる。これが日本に影響なしであるはずはありません。さらには、交通通信機関の革命ともいうべき非常な進歩発展があった。また第三には、今国連を中心にして世界的な運動になろうとしておりまする飢餓防止運動、こういったような、日本がいかにそういうものの影響からのがれようとしてものがれることのできない客観的な、新しい世界の情勢が巻き起こってきておる。ことに、日本は貿易の自由化あるいは為替の自由化といったような国際経済社会の自由な競争に打ち勝たなければならぬという羽目にあるわけであります。ところが、そういう大きな世界的な流れがあると同時に、日本が立ち向かおうとしております世界市場というものは非常にきびしいので、そういうものに対処する国の政治体制というものは、言うまでもなく十分でなければならぬわけであります。とりわけ私は、厚生行政の問題については、この際抜本的な将来を見通しての方針を打ち立てなければならぬと思うのです。そういう観点から、厚生行政の池田内閣における態度というものは、私は非常な不満を持つのみならず、将来大きな危惧を感ずるのであります。わが党は、こういう意味で厚生大臣の所信表明を伺いまして、いささかがっかりしておると申し上げたいと思うのであります。しかし国会はこれからでもあるし、予算の上では具体的にわが党は組みかえ動議を用意して、わが党の意のあるところを予算面では明らかにしていきたいと思っておりますけれども、行政面における大臣の決意というものは、そういう意味できびしく追及されなければならぬと思うのであります。そういう趣旨でお尋ねをいたしますから、御答弁も、どうかそういう観点に立って、一つ大胆な方針をお聞かせいただきたいと思っております。 第一にお尋ねをいたしたいと思いますのは、技術革新と一般にいわれておりますけれども、日本の今後貿易に立ち向かう前面に、一番先に現われてくるのは、私は技術革命だと思います。その技術革新の中に、日本の労働行政なり厚生行政なりというものがどうあるべきかという点で、一番先に問題になると思うのは、日本の労働者の生活のあり方です。第一にあげることができますことは賃金の問題です。これは労働行政の点でお尋ねをする予定でありますが、政府は決して低賃金ではないということを抗弁しておりますけれども、これはもう事実が証明するのであって、名目賃金の上からいきましても、実質賃金の比較からいっても、先進国とは比較にならないのでありまして、賃金が安い、所得が低いということは、他の方法によって補われてきてこそ、国際競争に打ち勝つ一つのてこになるわけであります。それが厚生行政における大事な点だと思います。でありますから、比較的所得が低くても実質生活が豊かである、あるいは後顧に憂いのない状態が確立してこそ、私は今後の技術競争に勝つことだと思うのです。言うまでもなく、日本の古い言葉にもあります仕事に打ち込め、すなわち三昧境の境地に労働者がなれなければ、創意工夫を前提とする技術革新には問題にならぬと思う。でありますから、物質的にも精神的にも、そういう状態をつくり上げていくということが一私は労働行政、厚生行政の今日の一番大切なものになると思うのであります。ところが所信表明を伺いますと、そっと上をなでただけでありまして、たまたま問題になりましたものを二、三あげておるということであります。こういう態度では、私は、今後の貿易自由化の前に、日本民族の経済生活を保障するような国際競争に勝ち得ないと思う。 そのために、まず第一に私はあげなければならぬと思いまするのは、日本が戦争前からいろいろ大きな変化のある中で、厚生行政の報告の中でも指摘をしておりますように、人口構造の大きな変化からくるものと、それから憲法その他の制度の改正などによって、日本の家族制度というものが大きく変化を遂げておるということであります。たとえば戦時中あるいは戦争以前の日本の場合でありますならば、労働者の生活単位というものが、一つの世帯なり家族の中にあった。でありますから、家族の中において、ある程度の相互扶助的な操作が行なわれたわけであります。たとえば賃金所得が低くとも、共同の生活の中でお互いに助け合うことができた。昔は、失業問題が話題になりますとすぐ帰農の問題、都市で失業すると農村で生活の一時的な維持をするというようなことが許された。しかし、今日の場合は、そういうことはもちろん考えられませんが、さらにそれが家庭の中で、家族の中においても操作ができた。総領が失業しても。二男、三男が働いて何とか食わしていく、あるいは親兄弟の所得によってその危機をのがれるといったような——これは食糧問題にたとえるとわかると思う。戦時中、配給制度がありましたが、日本の配給制度が比較的成功したというのは、なるほど配給の単位は、老人、子供、婦人などによって、あるいは働き盛りの者については分量も相違があったわけです。しかし、それは必ずしも自分が二合三勺もらったから二合三勺消費するのではなくて、ある場合には年寄りが働き手や育ち盛りの子供のために、あるいは工場に弁当を持っていく人のために、家に残る人が配給量の水準をはるかに下回る、極端なことを言えば、おかゆをすすっても働く者に弁当を持たせるといったような操作が、非常に耐久力としてあったということは有名な事実であります。 そういう家族制度が、この際日本では大きく変化を遂げようとしておる。ところが、日本の厚生行政も労働行政も、そういうものに対応する何らの措置もないのであります。こういう制度や法律の、要するに大きな変化に見合うような厚生行政というものがあるのではないか。まずこの点に対して、一体厚生行政としては、新しい時代に立ち向かうものとして、新しい一つの線を出すべきではないか。何かこういう点に対する西村厚生行政として、今すぐ用意がなくとも、あるいはそういうものに対して検討を加えておるとか、あるいはお考えをお持ちであるならばお示し願いたい。まずこのことを一つお尋ねしてみたいと思います。
○西村国務大臣 御質問は非常にむずかしい御質問でございますが、端的に申しまして、あなたがおっしゃいましたように、社会保障が新しい観点から考えられなければならぬのではないか、言いかえれば、曲がりかどにきておるのではないかというようなことについては、やや同感でございます。しこうして、社会保障というものが従来のような考え方ではいかぬだろう、私も、少なくとも社会保障はやはり勤労の前提条件だ、社会保障を満足にやらないと勤労が満足にできない、そういう意味におきましては、やはり今後の貿易にも結局関係しますし、貿易自由化の体制にも関係します。いろいろな面におきまして関係するわけでございます。 それからもう一つは、所信表明で上すべりしておるのではないかということでございますが、上すべりをしておるのではないのでありまして、社会保障を考える際に、あなたの申しますように、何と申しましても、どういう点に目をつけるかということは、これはどうしても社会の変遷を考えなければならぬ。その社会の変遷を考える場合に、所信表明でも申しました通り、やはり都市の人口集中、人口の年齢的構造が非常に変わっておるということであります。しこうして、それぞれの施策がそこから生まれ、なかんずく、それはやはり人口の年齢的構造が産業に影響を及ぼすということになるのでございまして、そういうようなことにつきましても社会保障は密接な関係を持っておる。家族制度のことにつきまして言及いたしましたが、家族制度というものは、これは井堀さんも申されましたように、だんだん家族中心から個人中心に移りつつありまするけれども、日本といたしましては、やはりこういうものは急激にやろうとしてもなかなかできないのでございまして、またそうすべきものではない。家族制度を中心に考えていかなければならぬものは、やはり家族制度を中心に考えていかなければならぬ。世の変遷に伴いましてそれが徐々に昔よりも変化を来たしておる。その変化を見つつ、社会保障もそれに相応してやる、こう考えるべきではないかと思うわけであります。 全体といたしまして非常にむずかしい御質問でありまするが、一言で申しますと、社会保障というものが、日本が繁栄になり、また国民が安心して勤労していく上の前提条件だ、そういうもとにおきまして社会保障を今後考えていかなければないらぬ。しこうして、社会情勢も徐々に変わりつつあるから、その社会情勢の徐々に変わりつつある重要なところに目を向けて、その施策を重点的にやっていかなければならぬ。私は、大体の気持としてさように考えておる次第でございます。
○井堀委員 私が家族制度の問題を取り上げましたのは、厚生行政の基本の上にどういう方針が生まれてくるかということを知りたいためにお尋ねしたのでありますが、今大臣の御答弁によりますと、まだ家族制度を重視すべきであるという御意思のようであります。しかし実際には、どう希望しようとしても、私は家族制度は崩壊をしておると思う。そういう残滓があるのは別として、しかし、そういうものをたよりにしてもしやるとしたら大へんな失策だと思うから、新しい時代に備えるために——特にこの問題を取りしけましたのは、これから政府が提案される法案の中でも関係を持ってくる、それから具体的にこれからお尋ねすることの結果が変わりますのでお尋ねしたわけですが、私はやはり家族制度というものはもう時間の問題で、そう家族制度の中で社会保障制度が操作できることを当てにしてはいかぬのじゃないかという前提ですが、考え方の違いはやむを得ません。実際問題としては、そういう事実が動いておるわけであります。そういたしますと、結果は非常に大きく変化すると申し上げましたのは、たとえば生活保護法の問題を取り上げてもわかると思う。政府の生活保護基準を取り上げる場合でも、こういうように制度が大きく変わっているにもかかわらず、現実把握あるいは将来の展望になりますと、まだ家族操作を重視していろいろな計画が組まれておるわけであります。この点に対する考え方をぜひ大臣からもう一度念のために聞いておきたいと思う。やはり家族制度の中における社会保障というものを重視されるのであるか、あるいはそういうものに対する変化を急速に認めて、その前提の上で対策をお立てになるつもりであるか、政策を立てる上に非常に大きな影響を持つと思いますから、念のためにもう一度伺っておきたいと思います。
○西村国務大臣 生活保護に対する家族単位、世帯単位でいくかどうかという問題ですが、これは社会保障制度審議会も、やはり世帯という観念の変遷によって考えなければならぬ、こういうことを勧告しております。私もそういうように考えるのは当然だろうと思います。従いまして、いつまでたっても世の中に合わないような家族中心で考えていこうとは思いません。しかし、現在の段階においては、やはり世帯単位でという考えも実情に即すると思うのでありまして、今後だんだん変わっていけば、その変わり方に応じてその単位を考えていく。しこうしてまた、現在でも特例はありますが、だんだん特例等もつくって、あくまでも家族全部を世帯単位、家族単位で縛りつけておこうという考え方は毛頭ありません、さりとて今の制度を一挙に全部個人単位にしようということを直ちに考えるわけにはいきませんが、世帯の変化を見つついくということではなかろうか、私はかように考えておる次第でございます。
○井堀委員 この問題は、厚生省が提案をいたしております老人福祉法の問題のときに必ず出てくると思いますので、そのときに譲ってもいいと思いますが、この問題は非常に今後問題になると思いますから、お尋ねしたのであります。なお、訂正される御用意があればなんですけれども、あなたは今、お話を伺うと現状に即応してということをおっしゃられたが、しかし、現状というものは動いておる。それから今後非常に動くだろうということを、世界情勢などについて私のつたない見方でありますけれども申し上げたのは、きょうの時点はあすの時点ではないということ、しかもその変化は非常にスピーディである。今われわれがここで討議をし、またここで法案を審議しようというのは、きょうこの時点だけではなくて、少なくとも明日以後の将来の見通しの上に立って企画されなければなりませんし、討議されなければならぬと思いますから、お尋ねしたわけであります。私は、今のような姿の家族制度というものは急速に変わっていくだろう、老人福祉法を出されたのは、やはりそういうところから刺激されたものだと思っておるわけであります。とにかくこの問題は今後の厚生行政を批判する上に基本的な問題だと思いますから、念押しをしたわけであります。 次に、もう一つ基本的な問題をお尋ねしておきたいと思うのです。それは先ほど申し上げたような国際情勢の大きな圧力が日本にひしひしと迫っておるのでありますから、そういう点からも非常にスピードがかかるという前提であります。それから現実の問題として、すでに今起こっておりますものは都市と農村の関係であります。これは社会保険の上でも、年金保険の上でも、あるいは健康保険の上でも非常に影響してくる問題でありますから、この点を根本的な問題としてお尋ねしておきたいと思いますが、言うまでもなく、農村の近代化はもう必至であります。農業基本法も、そういう意味で政府も野党もその点には触れておるわけでありますから、説明を要さないと思います。でありますから、都市と農村との変貌をどう見通しておるかということが、今後の健康保険あるいは年金保険の上にも、またその他の厚生行政の上でやはり影響してくる、この点の政府の見解をただしておきたいと思います。今もうすでに問題になっておるものは、農村の人口が都市に移動しつつあるという、量よりも質の問題であります。だんだん労働力の低い人口だけが農村にとどまって、労働力の比較的高い、また将来飛躍的向上を予定されるような若い労働力が都市へ吸収されていく、こういう関係が農村経済に及ぼす影響は言うまでもありませんが、さらに社会構成を大きく動かしていく一つの要素になると思います。そういうものを一応見通さないと、年金保険にいたしましても、健康保険にいたしましても、その他の厚生行政にもこれが影響してくると思いますので、これも見通しの問題でありますが、大臣の一つ厚生行政の基本的な問題としてお答えを願っておきたい。
○西村国務大臣 残念ながら今おっしゃる通りでございます。都市はやはりどうしても人口が集中的になりがちであります。ただその場合に、私たちは、政治といたしまして、ある程度の集中はいいのですが、今見られるように特定なところだけに過大に集中するということは日本全体の繁栄にはなりません。なりませんから、やはり全国各都市に適当に集中するというふうに指導したい。しかし、いずれにいたしましても、農村から優秀な人間がますます消えつつある。それから、あとに残る人は労働力の少ない人が残りつつあるということは、これは事実といたしましては、私もたびたび農村に帰りましたときに、地方の人からそういう訴えられ方をするわけであります。よく聞いております。従って、それは事実であろうと思います。しかし、これをいかにして防ぐかということは、なかなか一言でお答えはできないことでございますが、今事実としてはそういう事実であるということであります。しかし、そうあってはならないから、何らかの方法はとらなければならぬと思います。今政府が一生懸命力を入れておるのは、なかんずく過大都市をつくらない、地方々々に適当に農村から集まることはやむを得ないだろう、こういうようなことであります。そういう認識はいたしておりまするが、それと今度は、厚生行政のあり方いかんということになろうかと思われまするが、もちろん農村の環境をよくしてやる、あるいはまた、都市も同じようでございますが、農村の環境をよくしてやって、そうして住みよいところにしてやるというようなことは当然なことであろう。その他の環境以外の厚生行政についてどういう手があるかということは、ちょっと一言には申されませんが、いずれにいたしましても、そういう事実のもとに、やはり私たちの行政も注意深く進めていかなければならぬという認識は持っておるつもりでございます。
○井堀委員 決して意地悪く責めるつもりはありません。ありませんけれども、これは非常に重要なことなので、たとえばあなたは、社会保障制度審議会の勧告を尊重してということを強調されておる。社会保障制度審議会の勧告の内容をつぶさに見ますると、やはりその模範を欧米の先進国に置いておるわけであります。これは一つには、さっき私が申し上げましたように、国際情勢の大きな変化をある程度見通しておるけれども、百歩譲っておるという控え目の答申だと私は見ている。それだけになおさら実情判断の把握の仕方が議論の分かれ目になる。そういう意味で実はお尋ねをしておるわけであります。今御答弁によりますと、私が農村と都市との人口の質的な大きな変化や、量的な移動が行なわれているということを取り上げたのは、だれも承知していることだろうと思うのであります。事実であります。でありますから、そういう大きな地すべりをしているわけでありますから、そういう地すべりに備える、たとえば所得保障の部分から考えてみましても、あるいは国民健康保持の保健やその他の福祉行政などの上から考えても、そういうものをあらかじめ見通さないで——特に私がこういうことを質問するのは、西村大臣は就任後日が浅いので、厚生省としては厚生行政長期計画を明らかにしている。これをここで私が一々述べて質問すればわかりやすいのでありますが、かなり将来を展望しておるわけです。そういうものを世に公開しておりながら、予算の編成を見ましても、あるいは厚生大臣のわれわれに対しての厚生行政に対する所信の表明を伺いましても、一向そういうものが響いていないと私は感じているのであります。今農村と都市の人口の移動というものは、たとえばあなたがここでお述べになりました社会保障制度審議会の勧告を尊重するという立場からも、この点に対するはっきりした見解を持たれておるはずだと思って質問したのです。さらに、あなたは低所得者に対する施策に言及されております。さらには、これに対する具体的な御方針がいろいろおありになると思いますから、これからお尋ねするわけであります。たとえば、低所得者と一がいに言いますけれども、農村における所得内容と都市における所得内容とは、ただ金額だけで律するわけにいかぬと思う。分量もやはり質に見合っておるといいますか、実質所得については名目所得と著しく相違したものがある。そういうものを正確に把握してないと、今のように過渡的な日本の社会保障制度といいますか、まことに僅少の原資をもって社会保障をやろうとする場合においては、その序列を定めるということは非常に重要なことになるわけです。そういう意味で都市と農村との関係というものを考慮して、予算の配分なり施設の配置なりが考えられてこなければならぬと思う。それが将来の国際的競争に打ち勝っていくような、最も近い機会における近代国家としての社会保障制度が見合ってくるかどうかということが、私どもとしては厚生行政を監視しなければならない一番大事な点だと思う。そういう点で、実は今都市と農村の人口の量的な移動、あるいは質的変化などについてお尋ねしたわけであります。でありますから、そういうものに対する厚生行政は、紙背に目を徹するような態度であればわれわれは安心していられるわけであります。安心しないまでも、速度は別として、前進の方向をとっておる、言いかえますれば、社会保障制度審議会の答申に忠実であるといった言葉だけを私は信用するわけにいかぬと思います。そういう方向を向いておるかどうかということを知る一つのよすがにもなると思ってお尋ねしたわけであります。でありますから、ほかの一般の問題を具体的にこれからお尋ねして、明らかにいたすつもりでありますが、もう一つ、農村と都市の人口構造の大きな変遷といいますか、それに対する何か備えがあるかないか、あるいはそういうものはそのときだというお考えであるか、この点はもう一度だめ押しをしておきたい。
○西村国務大臣 農村と都市に対する厚生行政のあり方でありますが、十分意を用いておるつもりであります。たとえば、お医者の問題に一例をとりましても、都会地の方はますます集まるし、偏在する。それに対して僻地の医療をどうするか。また、農村の方々が働くのに非常に不便だから、子供さんを預かる施設をうんとやろうじゃないか。どちらかというと、そういうものについては農村に力を入れたい。事によってはいろいろ農村に力を入れなければならぬと思っております。すべてがすべてというわけには参りませんが、ものによっては農村を重視するということは当然考えなければならぬことであります。 それから社会保障制度審議会で欧米並みに社会保障をという意味は、やはり欧米に日本の富が追っついていくということが前提でありまして、いずれにいたしましても、社会保障だけがぽんと飛び抜けていくわけじゃございませんで、日本の富の増加とともに、社会保障も先進国並みにということであります。従いまして、十分おっしゃる意味はわかります。わかりますから、私たち、当然この人口の今の急激な変化に対応しつつやはり物事を考えていくということが、最も重要な点であるわけでございます。
○井堀委員 この問題はその程度にいたしまして、次にもう一つ、これは厚生省も指摘していることでありますが、日本の産業構造といいますか、あるいは生産の機構といいますか、そういうものが、貿易自由化によって、あるいは技術革新によって大きく変化してくる。特に今当面しているものは、エネルギー革命によって石炭が斜陽産業に落ちてくる、こういったような変化が目まぐるしく貿易自由化に伴って起こってくるということが一つ、それから日本の産業構造の一つの宿命的なものであるといわれておりまする大企業と中小零細企業との関係であります。この関係を、厚生省が白書の中で二、三年来取り上げられたということは一つの進歩だと思うのであります。実態把握の上の一つの進歩だと思うのであります。しかし、せっかくそういうものに着眼をされながら、厚生行政の内容にどれだけの変化があったかということについて、私は一向知ることができない。皮肉を言っているわけではありません。着想はいいのであります。 そこで、実はこのことも基本的な問題の一つになるわけでありますが、問題は、厚生行政は、あなたも言うように現実に即応して、しかも乏しい原資をもって高率の社会保障制度を行なうことを迫られているものがあるわけであります。そういう点から問題にいたしますと、これは具体的な例をたくさんあげることができると思うのでありますが、たとえば、厚生年金の還元融資というものが実にはっきり出てくる。こういうものが、今度は法によって一つの事業体を設けたのでありますから、一つの整理はだんだん進みつつあるとは言えるかもしれない。しかし、こういう場合に、厚生行政のあり方としては、よほど関心を持たなければいかぬ。こういうことは、具体的にお尋ねすればすぐわかると思います。たとえば、厚生年金の積立金の経過を見てもわかるように、ことし厚生年金法の改正案が出てこないことを非常に不満に思って、私はお尋ねをしたいと思うのであります。その改正案が準備されていると思うのでありまして、そういう場合に重大な関係を持ちますから申し上げるのでありますが、厚生年金法の中で一番不合理だと思うものは、長期の、比較的貨幣価値の高いときに、その所得に比較するとかなり重い負担をして積み立てた年金が、要するに政策の移動のために、言いかえますならばインフレを起こして、そのときの積み立ての金では今日の年金保障としては役に立たないような大きな変化が起こっている。にもかかわらず、積立金はだんだんと累積していっている。でありますから、一つには、そういう被保険者の立場からいいますと——あるいは雇い主も一部負担をしておりますけれども、負担者側からいいますと、価値のある積立金は受け取るときには全く意味のないものになってしまう、こういう長期保険というもの、公共団体や国などがそういうものを経営するという場合には、そういうものに対する償いをしていかなければならない。農地補償の問題や何かが今出ておるような時代であります。その以前に、こういう問題に対する秩序ある法改正というものがやはり行なわれてこないと、私は厚生行政に対する国民の信頼というものは起こってこないと思う。こういう点からも問題になるのであります。でありまかすら、日雇い保険というものは、やはりそういう点に対する見通しと正確な現実把握をした上に対策を立てていく、こういう意味で必要でありますからお尋ねをしておきます。 それは、現在の積立金の運営などについては、そういう趣旨からいたしますならば、比較的能力の高い企業に雇用されている人たちは、いろいろな福祉施設などがだんだんと拡大されていきつつあるわけであります。その速度は非常におそいので、先進国に比べると低いものでありますけれども、大企業はやられているわけです。賃金格差の問題をやかましく言っておるのでありますが、労働省では何か初級賃金の上昇によって格差が縮まったことが、いかにも中小企業と零細企業の賃金格差を縮めたように、故意かあるいは無意識か知りませんけれども、宣伝しておるようであるが、厚生行政の中では非常にこれが重要なものになるわけです。なぜかというと、厚生年金保険にしても、報酬が要するに基礎をなしているのであります。でありますから、賃金問題に無関心でおるわけにはいかぬわけであります。実質賃金の低いところから同じ率で掛金を取ったとしても非常な不公平になる。そういう点では悪平等を生ずる。それでは厚生行政の中で反対給付をやらなければならぬ。保険で給付する場合においては、その掛金に見合う建前しか貫いていない。保険という部分から見れば正しいかもしれませんが、厚生行政ということになると、それをカバーする道を開いていかなければならぬでしょう。その場合に、要するに還元融資などというものは格好な一つの調整を行なう——まあごくわずかな部分ではありますけれども、芽を出してきたところであります。ところが、厚生省の方針はどうか知りませんけれども、一向にそういうものに新しい息吹きが出ていないということは一体どういうわけでしょう。それは基本的なものをお尋ねすれば明らかになるのでありまして、そういう日本の産業構造の一つの宿命といいますか、大企業と中小企業の賃金所得及び労働条件一般もそうでありまするが、特に福祉施設なんかに対しては、非常なアンバランスがある。格差がはなはだしい。こういうものに対する調整を至急にやらなければならぬ立場にあるあなた方厚生省が、厚生白書の中で取り上げたということは進歩であるけれども、実際には何もやっていない。それは基本的な考え方が問題になるだろうと思う。もっと立ち入ってものを言いますと、役人の中には、なかなか見通しのきく人がおるかもしれない。作文はできておる。しかし、行政の長である厚生大臣あるいは政府が、そういう新しい時代の動きに即応する態勢が出てこなければ、これはどうにもならぬわけであります。それをきょうは着目しておったのでありますが、あなたの所信表明を見ても出ておりません。予算の中に見ることができません。これはいい機会でありますから、この基本的なものに対する厚生行政の考え方を一つ伺っておきたいのであります。
○西村国務大臣 非常にむずかしい御質問で、厚生行政の立場から中小企業あるいは農民に目をつけたことは非常にいいが、それに対しての施策が一体何かあるのかというような御質問と承るのですが、実は今、中小企業といってもピンからキリまでございましょう。たとえば例の五人未満の事業所の方々と、そういうような貧しい方々は国保から健康保険になるべく入れるようにしようというような努力もいたしておりますし、また来年はそういうことも相当期待をいたしておるのであります。その他労働力が人口構造の上から不足になるから、今後は中小企業等に勤める人もなくなるだろう、従って、こういうような人口構造になったからなくなるだろうから、今から一つそういう方面は注意しなければならぬよというようなことも、厚生白書で言っているのでございまして、いろいろな面につきまして、今後はやはり、その就業構造の変化に目をつけつつ厚生行政を進めていくということは、もう当然のことでございます。 還元融資の問題が出ましたが、それは還元融資と申しますれば、皆さん方から集めてもらった金でございますから、その納めた方に返してやるというのが第一の主眼になっておるわけでございますが、どちらかといいますと、やはり農村関係の福祉施設をよくしてやろうじゃないか。しかし、また農村関係が比較的貧乏であるから集まらないということ、還元融資であるから、集まらないところにそういう施設を持っていくということも、これもどうか、こういうこともありますけれども、いずれにいたしましても、農村の方にやはり福祉施設を持っていこうじゃないかという気持は、私自身にあるわけでございます。あるわけでございますから、事によっては、さように指導いたしておることもあるのでございます。 大企業と中小企業との関係を厚生行政の上から取り上げて、今どうするというような特別な施策を私の方で持っておるわけではございませんが、しかし中小企業、農民、そういうような零細な、あるいは所得の貧しいというものを国家の恩恵に浴せしめる、国家の繁栄に均霑せしめるということが厚生行政の主眼でございますから、あらゆる面につきまして注意を払いつつ進めております。また、今後も進めるように努力しなければならぬと、かように考えておる次第でございます。 返事がはなはだピントが合わないかもしれぬが、私が御質問を理解した範囲内においてお答えをした次第でございます。
○井堀委員 これは各方面にこれから出てくることでありますから、予算分科会などでもお尋ねしようと予定しておるのでございますが、たとえば健康保険のように、長い歴史を持って、何回となく世論の批判の中で改善、改正を加えてきたものとしても、まだ大きな矛盾が残っておるわけです。日本の保険制度の中では歴史も一番古いし、内容も充実したといわれておる健康保険でさえ、政府管掌のものと組合管掌のものとがあるわけであります。組合管掌はおおむね大きな事業場、政府管掌のものは中小企業を多く把握しておる、さらに最近では日雇い労働者も健康保険を別にしておる、こういったようなやり方についても、私は日ならず改善を加えなければならぬと思う。こういうような問題も実は控えておるのであります。また、一方では、産業政策なり金融政策なり税制その他一般の経済政策などで日本の二重構造をなくすように、あるいは改善するように、新しい政策が次々と出てこなければならぬ。しかし、言いかえますならば、古い思想でいいますならば社会事業、近代的にいえば社会保障、そういうものがそういう政策の上で急速に是正ができない、また是正するまでにも期間がかかる。その間の問題を厚生行政の中で解決をしていくというのが、資本主義社会における当然の任務である、こういう点では、厚生行政というものはそういうものに先行して、予算の面でも大胆に割愛をさすべきである。また、そういう意欲が担当大臣に一番燃えているようでなければ、池田さんが所得倍増などということを言っても、これは単なる——悪口を言うわけではありませんけれども、自由競争の弱肉強食をやって、力の強い方にだんだん集約されてくる。そういうものを厚生行政の中でどう調整するかということが同時に出てくるところに、近代的な保守政党としての政策があるはずである。ここであなたに聞けば——池田さんの自民党の政策というものが、いかに超保守的なものか、時代おくれのものか、いかに先進国を見て回っても何を見てきたか。言うまでもなく、民主社会における共通の広場というものは、貧困をなくす、所得のアンバランスを調整して、下を上げて上を押えていくということが、これは資本主義を指向しようと、あるいは新しいイデオロギーに立つ政治にしても、全く共通の広場である。そういうものが見られてこなければ、私は保守、革新と分けてみても、議会政治の中で共通の広場は得られないと思う。こういう点にも関係をしてくるので、実は今申し上げたように、日本の中小企業、零細企業というものは、今後貿易の上に非常に大きな役割を果たすのです。現在でもそうなんです。でありますが、実は日本の輸出産業をになう企業としてはきわめて脆弱なんです。そこで期待されるのは優秀な労働力なんです。新しい技術がその弱点を補うかどうかにかかっている。それを補完していくのは、私は厚生行政以外に今のところはないと思う。労働省の行政の中ではどうもから回りをします。あなたのところでは、比較的そういうものに見合うものを持っておられる。たとえば厚生年金保険にしても、あるいは健康保険にしても、あるいは低所得者層を対象とする福祉行政の中でも、そういうものに歩調を合わせた形が出てこなければならぬ。そういうものに対する厚生大臣の見解というものは、私は池田内閣にとっては重大だと思うのです。あなたのような優秀な大臣をそのポストに選んだというのは、そういう意味だろうと思う。そういう意味で、実はあなたの所見が非常に大切でありますから伺っているわけであります。でありますから、今お尋ねをいたしておりまするのは、要するに日本の産業構造の大きなアンバランスを厚生行政の中で調整するという意欲が欠けていたのでは、今日の厚生行政としては、池田内閣としても、私はもう非常なマイナスだと思う。今あなたの御答弁によりますと、私の質問が予告してなかったものでありますから、準備がなかったかと思いますけれども、そうむずかしいことを私は聞いているのじゃありません。ごくありふれたことを伺っておるわけであります。でありますから、どうしてもこの際、中小企業、零細企業の比較的所得の低いもの、要するに福祉施設に恵まれぬもののために大幅に厚生行政が移行していくという態度がありまするならば、私はある程度ゆがみが直ると思う。しかし、従来なりの考え方で厚生行政をお続けになるとするならば、それは単にサボるだけであって、それは要するに時代の進歩の速度と逆になりまするから、それは一つの停滞じゃなしに、後退もしくは進歩をはばむ反動的な役割になる。そういう意味で、私は、今お尋ねしておりまする零細企業と大企業との関係における厚生行政のあり方というものが非常に大切だと思いまするから、重ねて大臣の決意のほどを伺っておきたい。そういうものに対してどれだけの情熱を傾けていただけるかを伺っておきたい。
○西村国務大臣 御説はごもっともでございます。私たちも、これは企業といたしましても、中小企業の方にわれわれの施策を持っていく、また所得にいたしましても、低い所得の方々についてより一そうの考えをする、これは当然でございまして、決して今までの厚生行政がそれと反対なことをやっておるわけではございません。まあ私のところの厚生行政の施策のすべてが、金持のためにやっておる——共通なものはありましょうが、金持のためにやっておるというような行政は少ないのであります。公園を一つとりましても、国民宿舎をつくっておるというようなことも、金を持っている人はああいうものは必要ない。幾らでも施設はあるし、宿泊するところはあるのですが、一般の方にレクリエーションの場所を与えよう、これもそういうような低い所得の方々を対象に考えておるということでございまするし、その他の福利施設にいたしましても比較的所得の低い人を相手にする、それに対して力をそそぐということは当然でございまして、今十分とは申されませんが、厚生行政を進める心がまえといたしましては、井堀さんのおっしゃることと全く同じ気持でいたしております。
○井堀委員 次は、環境衛生関係の行政でありますが、これもさっき申し上げたように、大都市周辺の地域における変貌といいますか、たとえば住宅問題一つ取り上げてみても厚生行政がついて回るわけでありますが、比較的高額所得者、今の水準から言うと三万何千円以上の所得のある者のためには、公団住宅がある程度役割を果たしている。そういう公団住宅のようなところには、環境衛生関係の施設も、自力あるいは他の公共団体などと連絡があってできるわけですが、低所得者が都市を追われて遠隔の不便なところに土地を——安いところを見つけるという事情もありましょう、宅地の入手難という関係もありましょうが、そういう人人の住宅というものは、近ごろスラム街の形を方々で現出しつつある。東京の近辺にも、私の住まっている近くにも、建売住宅と称してひどい住宅がどんどん建っている。そういうところには、排水なんというのはまるきり考えられていない。今の環境衛生法の関係から言うならば、何とか解決をしなければならぬものも今新しくつくっているという実情であります。これらの点は、都市計画なり日本の産業、あるいは他のいろいろな政策との関連も出てくると思いますけれども、厚生行政としてこういうものに対する配慮が足らない。その足らないのはどこからくるだろうかということをわが党では検討をいたしましたが、ここに厚生大臣の決意のほどを伺っておきたいと思うのは、環境衛生というものは、ただ下水をよくするとか、あるいはハエや蚊が出ないようにするとかいったような、だれでも目に見えるようなものを言うのではないのであります。少なくとも、先ほど申し上げましたように、日本民族の福祉、国家全体の地位を高めていこうという大局的な見地からするならば、保守党のやり方に対しては、私どもとしてはとてもがまんのできぬほどの問題はありますけれども、さりとてわれわれは現実をゆるがせにできませんから、多少でも前進してもらいたいと思うのです。最も急がれる一つは、次の日本の経済のにない手です。それはさっき申し上げた零細企業の労働者の双肩にかかっている。その人たちの住宅を見たらいいのです。その人たちの居住地帯を皆さんはお調べになったことがありますか。厚生行政であなたは、弱い者のために、貧しき者のためにということをもちろん心がけておられるけれども、実際は逆のことをやっている。 一例をあげましょう。厚生年金の一部還元融資の中から産労住宅に回しておるが、産労住宅の貸付というのは、もちろんそういう資金は確実に、しかも元利がすみやかに返済されなければならぬことは言うまでもありません。そういう事情にとらわれまして、金融政策から言えば当然かもしれませんが、みな大口ですよ。自力でやれるような業者でなければ借りられない。中小企業、零細企業などには渡りません。今度は年金事業団がそれをどう調整するか、新しい店を開いたばかりですから見守っておるわけですが、これは厚生行政の中の一つのポイントだと思うのです。事業団を責めるわけにはいかぬかもしれません。要するに、焦げつきの責任を問われますから必ず返してもらう。安心して貸せる、信用度が高いものということになりますと、言うまでもなく大企業にきまっております。そういう危険をどうやってチェックしてやっていくかというのが、私は厚生行政のむずかしさであるし、急所だと思う。それを出先にまかせるとか、あるいは社会の流れの中で、じっと順調に流れるのを見守っていくということであれば無意味だと思う。でありますから、厚生省の環境衛生の方針というものは、要するにどこに根拠を置いて、どういう方針で指導されるかを実は伺っておきたいと思う。というのは、さっきから何べんも繰り返しておりますように、乏しい原資を配分していくのでありますから、その序列、どこを先にするかという優先順位は非常に大切だと思います。わが党の考えを率直に申しますならば、今、日本の中小零細企業の中で、要するに貴重な労働力、そうして生産性を一番急速に高めなければならぬ人々のところに、環境衛生——これはあとで局長に聞きますが、そういう話をしても畑違いのことを聞いているような感じがするだろうと思う。それほどずれている。はなはだ失礼な言い方ですが、専門的になることはけっこうですが、総合的なものとのからみ合いは大臣の責任だ。指導力にあると思う。そういう意味で環境衛生については従来のマンネリズムになっておるのを、この際大きくカーブを切りかえるべきだと思う。そういうことに対するあなたの決意のほどを一つ伺っておきたいと思います。
○西村国務大臣 御意見として承っておきます。私たちもこう見まして、あなたのおっしゃるように、都市の非常に貧しいスラム街をどうするかとか、あるいは特別に環境の悪い場所等が相当にあることも知っております。しこうして、そういうことは厚生行政として、もちろん進めなければならぬということも十分わかりますが、早く言えば、国家財政とのにらみ合わせもあって、そこまでいかないのだという申しわけをするより方法がないような次第でございます。しかし、徐々にそういうところまで手をつけていかなければならぬ、かように考えておるのでございます。ことに勤労者が最も大事とされるのは、やはり住宅関係であろうと思うのであります。従いまして、私どもは住宅関係それ自身を担当はいたしておりませんが、二種公営住宅等につきましては、建設省がつくるものについて私たちの方で相当に意見も申し上げ、戸数も厚生省の立場から増すようにということは今までも十分言っておるのでありますし、また今後せっかくの御意見もありますから、そういう方面につきまして私たちは最も気をつけなければならぬことだ、かように思っておる次第でございます。
○井堀委員 具体的な例をあげましょう。私どもの調査によりますと、通勤距離と住宅の配分関係を見ますと、所得の低い人ほど遠隔の地におる。不便なところにおる。もちろん環境衛生の恩恵を受けないような山村僻地ですから、こういうところの人たちは、途中で労働力を半分摩滅してしまうのです。自転車を飛ばして満員のバスに乗って、満員のバスから込んだ電車に乗りかえて、電車でさんざん押されてへとへとになって事業所に飛び込む。これは交通その他の行政でありましょうが、何ぼやかましく言うても一向解決しない。その傾向は、自由競争の原則にならってその通りの図を描いていっておる。少なくも厚生行政ぐらいは、それに拮抗して新しい方向ぐらい出したらどうだろうと実は思うのです。厚生行政が実はそのしり馬に乗るようなやり方、これはまたもう一ぺん例を出すのでありますけれども、事業団が住宅貸付をやるでしょう、あの法律の精神とはおよそ似合わぬものにいってしまうと思う。零細企業や低所得の勤労者層にはあの金はいきませんよ。問題は、こういう事実を一つずつ解決していかなければならぬわけです。私は今抽象的なお尋ねばかりしておりますけれども、あなたは就任早々でお気づきにならぬと思いますが、一番私は皮肉だと思うのは、ああいう厚生年金のようなものが還元融資されるような場合、以上申し上げたような点から言えば説明の余地はない。その貸付の道が開かれていないという点、一体厚生行政は何をやっているのか。それなら銀行屋にまかしておけばいい。だからこういう点にどうも新味が出ていないのです。ですから、今一番厚生行政の中で急がれなければならぬのは、この面にあると私は思う。だから厚生行政の中でこそ、そういう資本主義のややもすれば自由競争の陥りやすい弱肉強食のしわを是正していく、それがほんのおざなりになってしまっておる。あなたの方の経済白書を見て私はいつも感服するのですよ、ああいいところを指摘しておられる。ところが、やることは旧態依然としておる。この点しつこいようですけれども、たとえば環境衛生その他の関係などについてもっと抜本的な切りかえをやる時期じゃないか、この点どうですか、何かお考えありますか、それとも前任大臣の衣鉢を継いでというお考えでしょうか。経済白書を公開しておるのだから、私はそういう意味でそれを読んで、感心しておるのですが……。
○西村国務大臣 私たちは自由経済主義を奉じて、その線で経済を立て、国を立てておりますが、御指摘になりましたように自由経済主義の一番悪いのは、ややもすると富める者はますます富み、貧乏人はますます貧乏人になるということであります。従いまして、厚生行政はその間にその調整を強くしなければならぬということは同感でございます。しこうして、経済白書にいろいろなことが指摘されております。その指摘されたものにつきまして、全部の施策をそれによってやっておるというわけにも参りませんが、その経済白書に現われた現象に沿うて今後の厚生行政を進めたい、だてや酔狂でそういうものを出したのではありませんから、その線にひずみがあれば、そのひずみを直すということに向かって勇往邁進するということは当然なことでございますから、御意見も尊重いたしまして、大いに今後そういう方面に努めて参りたい、かように考えておる次第でございます。
○井堀委員 それでは、次にお尋ねしたいと思いますのは、あなたの方の行政の中で今まで一番困難とされておりました医療団体との関係ですが、医術の進歩、薬学の進歩というものは、今後もフルスピードで発展していくだろうと思うのであります。その場合に、健康保険を初め、国民健康保険などの保険行政の上に問題が山積みになっております。それから、その他今後の国民保健上の問題については、出先の、要するにいろいろな役所がありますが、しかし開業医あるいは病院、公立あるいは法人などのものがいろいろ雑居しておるのでありますから、そういうものとの調整を誤りますと、結局被保険者や国民全体が被害を受けるわけであります。医師会と厚生省がいがみ合った、両者の間はそれでいいかもしれません。被害は国民に及ぶのでありますから、この問題はいつもわれわれの憂いの種になっておるわけであります。最近どうやら日本医師会、歯科医師会との間はうまくいっておるやに見受けるのでありますが、私はその問題について、問題のあるときに出しますと刺激していけませんからこういうときにお尋ねしておきたい。根本的な問題としては開業医のあり方、それから公的な医療機関の配置や割合がどうなっていればいいかとか、いろいろむずかしい専門的なものもあるだろうと思うのであります。しかし、そういうことはわれわれのよく理解できぬところでありますが、しかし主張しておきたいことは、せっかくの医術の進歩、薬学の進歩によって人類福祉全体のために均霑さるべきものが、ここにも自由経済が一つの弊害となり、壁となて出てきておりますのは、低所得者層に対する問題あるいは地理的に不便なところ、都市と農村というような関係、そういうものの中に——無医村の問題なんかは最近下火になったとはいわれるものの、優秀な施設と技術を持っておる人は、どうしても利潤の高いところに集まるという自然の現象はやむを得ない。それに抵抗するためには、公的な医療施設を設けようとすると、医師会との利害の上で衝突するというむずかしい問題がある。こういう問題については、あなたが言う自由主義経済をてこにしております保守政党としては、責任を持って解決しなければならぬ問題だろうと思う。ぽっぽと燃えているときにはなかなか手出しができませんけれども、あなたの時代になって比較的これはうまくいくようになっておるのじゃないか。それで今後の保健衛生と医療担当者の問題は、もっと新しい一つの方針が打ち出されてこないと、一時おさまってもまたその休戦状態がどこかで破れる、こういう点に対する方針を一つ承っておきたい。
○西村国務大臣 私的病院と公的病院の関係でございますが、これは非常にむずかしい問題だと私は思っております。もちろん、その制限をしたり何かすることはでき得ましょうけれども、自由な職業としての自由も与えなければなりませんし、それらの関係をどうしたらいいということは、なかなか一言には言えぬと思います。しかし、ほうっておくわけにはいきませんので、それ相当な考えは進めております。 それから、医療問題の全体のことにつきましてのお尋ねでございますが、実は私たちは、医師会とかなんとかいうことでなしに、あくまでも患者本位に物事を考えて、そして医師会に対してもその態度で臨んでおるわけであります。今まで厚生省と非常に事をかまえておったようなことにも見受けられましたが、何と申しましても行政の責任はわれわれが持っていかなければならぬけれども、医師会は医師会なりにそれ相当の専門知識は持っておると思うのであります。従いまして、私はその医療のうちでも最もむずかしい公的な医療機関、私的医療機関、そういうようなもののあり方、あるいは僻地の医療のあり方、あるいは医療にいたしましても今問題になっておる中央医療協のあり方、こういうようなことにつきましては随時専門家の意見を聞いて、知識を活用してやっていきたい。われわれの行政機関が、行政の権力を持っておるからといって、何もかも権力で押えつけていくということではありませんので、やはり専門家には専門家の知識があるのでございますから、そういうような知識を十分活用しつついきたい。その他医療問題全般につきましては、研究すべき事柄が非常にたくさんあると思います。ことに皆保険になりましてから、いろいろの問題が出てくるのでございまして、今後は、それぞれ問題によりましては専門の方のお知恵を拝借する、あるいは委員会等にもかけるということで相当に研究しつつ進まなければならぬのじゃないか、かように考えておる。要は、患者が十分便利なようにということがあくまでも主眼でありまして、行政をやるわれわれ、それから医師会、その他の関係者はその一点に向かって御協力をなさるように私としてはお願い申し上げつつ、ただいま進んでおる次第でございます。
○井堀委員 意見は差し控えたいと思いますけれども、今のあなたのお考えでは、私はまた近く医師会と厚生省の対立が起こるんじゃないかという心配をいたします。これは本質的なものもありましょう。しかし、何をいいましても、やはり強力な一つの組織を持っておる団体ですから、ただ事なかれ主義で、今ないからいいというような考え方ではなしに、たまたま問題が起こってからその問題を中心にして解決するというのではなしに、今のような比較的平穏の維持できるときにこそ、医療行政のあり方というものを大上段に振りかぶって医師会も胸襟を開いて問題の処理に当たる、あるいはあなたの言うように、学識経験者その他の知識を動員して問題の処理に当たるということも当然だと思うのです。いずれにしても、この際積極的な対策を今にして立てるべきではないか、そうしないと、この被害は、先ほどから繰り返しておりますように、一般の被保険者あるいは一般国民に犠牲が転嫁される。これは民間の労働者がストライキによって一般に及ぼす影響と似たり寄ったりといえばそれまででありましょうが、私は多少本質的に違うと思う。こういう点は、私は厚生行政にとっては緊急な対策を必要とする問題だと思う。私どもの党の意見もありますが、一応本日のところは、今日の平和なときに、今後再びああいう問題を繰り返されないように、緊急に措置をとるべきだということを申し添えておきたいと思います。 せっかく局長さんもおいででありますから、あとは具体的な問題を一、二お尋ねをして、大臣の答弁との食い違いなどについて、あるかないかを一つ確かめたいと思います。 第一にお尋ねしたいと思いますのは、環境衛生関係で、さっきも申し上げたような考え方でお尋ねするのでありますが、都市で屎尿の処理の問題とごみの問題がやかましい問題になっております。結局、屎尿の処理がうまくいかなかったり、あるいはごみの処理がうまくいかないということは都市全体の大変な問題ですけれども、これもさっき申し上げたように、低所得者の住居地域に一番危害が大きい。この屎尿の問題について、なかなか詳細な報告口をちょうだいいたしました。そこで、非常にとっぴな質問をすることになるわけですが、オリンピックも近い機会に予定されております。少なくとも外国のお客さんが旅行されて一番不愉快に感ずるのは、便所の問題だと思う。この点について、予算の中であまり画期的なものも見ません、それとも来年度の予算でお出しになるのか、水洗便所にするということがどれだけ私は費用がかかるか、あるいはまた、どれだけあれが要るかわかりませんけれども、外人の眼の届く範囲、影響のあるところを水洗便所に直すということになると、ホテルだけではだめだと思います。それらについて、何かこの際計画があるのかどうか承りたい。
○五十嵐政府委員 環境衛生の中でも屎尿処理、ごみ処理の問題は、行政的にも一番おくれておる分野でございます。実は先生も御承知のように、昭和三十六年から十カ年計画を立てまして、四十五年を終局の目標にしてその整備を考えて参ったわけでございます。最近、都市といわず農村といわず、全国的に見まして非常にこの点が大きな社会問題となっておりますので、三十八年度から緊急五カ年整備計画を立てまして、これを急速に整備して参りたいという考え方で予算の要求をいたしておるわけでございます。この中で、御指摘になりましたオリンピック関係等との問題でございますが、東京都を例にあげて申し上げますと、屎尿、ごみ処理関係の予算あるいは起債の中に、オリンピック分というものをある程度見込みまして、下水道につきましては品川から渋谷、池袋を通りますいわゆる環状六号線、この内側については、オリンピックまでの間に下水道並びに私どもの所管の終末処理施設を完備するという方針で、設備の整備に努力をいたしておるような事情でございます。ごみ処理につきましても、やはり緊急に処理する必要のあります分には起債を見込みましてその処理に当たる、こういうことで、オリンピックの際には、万全とは申し上げられませんが、あまり見苦しい姿を出さないようにということで、現在私どもとしては最善の努力を尽くして整備に当たっておるというようなことでございます。
○井堀委員 便所を水洗にする場合に、地方の都市によって多少違うようでありますけれども、助成金の形で奨励している市町村が多いのです。ところが、その助成金を受けてでもやれるようなところは比較的豊かな階層で、実を言うとそういうところは自分でもやれるのだ。ところが、急がなければならぬようなところは、助成金じゃなくて、自分の出す負担ができぬものですからおくれてしまう。これは先進国のどこのことか私はよく記憶しておりませんけれども、ああいうものは公費でずばりやるか、あるいは他の方法で、目的税のようなものにしてやるか、そういうふうにそれぞれやっているような例を聞いております。助成金の制度というのは、何ぼ大きな邸宅だけに水洗便所ができても、周辺がくみ取り式でやっていたのではだめなんで、むしろ低所得者の方へ助成の道を開くような案はお考えになったことはありませんか。 それからもう一つ、オリンピック関係のところでは、一体範囲はどのくらいににらんでおいでになるのか。もちろんオリンピックに直接関係する地域というのが、せっかく日本に来たんだから旅行しようということになってきますと、観光地あたりにも行くことになる。そういうものについて、何か計画がおありでしたら、今お聞きせぬでもいいのですが、資料でもいいからちょうだいしておきたい。
○五十嵐政府委員 水洗便所の普及の点では、私どもの方の直接担当いたしております範囲では、これは特に貧困であるから、生活困窮であるからというので、そちらに集中して助成をするという考え方は、環境衛生局の立場ではとっておりません。全体として下水道の整備をし、終末処理施設を整備し、あわせて水洗便所につきましては、貸し出しなどをいたしまして、この普及をはかるという立場をとっておるのであります。 それから、オリンピックの範囲と申しますのは、一応私どもは、東京並びに横浜の競技場あるいは宿舎等の置かれます地域を予想してやっておりますが、なお全国的な、そういった清掃施設の整備につきましては、五カ年計画とも勘案いたしまして、観光地等の整備につきましては、実施の段階でこれを考慮していきたいというような考え方を持っております。
○井堀委員 次に、公害のことでちょっと伺っておきたいと思います。最近公害問題は、前国会でもずいぶん問題になりましたが、皮肉なような現象がある。事実をあげるとよくわかります。厚生省と労働省の競合した点を一つ紹介しましょう。けい肺関係で、工場の中で塵埃整理をやらず、外へ出してしまう。ひどいのになると周囲にばらまいてしまう。そうすると、保健所の方では、それは工場施設の中だからと言う。なるほど工場の中で吹いているのですけれども、出るのはずっと遠くへ出るわけです。今一例ですけれども、そういったように、公害対策というものについてはこの委員会でも論議されているところでありますが、いい機会でありますから申し上げますが、厚生省としては、今後ひんぱんに都市、特に工場地域においては多くなってくると思いますが、そういうものに対する新しい計画でもお持ちですか、ごく通り一ぺんなことしかしておりませんが。公害問題についてもいろいろな種類のものがありましょうが、今一例をあげたのですが、どっちにも言い分はいろいろありましょう。そういったようなことが問題になると、ちょっと手をかける。ですから、私は姿勢は低くてもいいけれども、将来それが時期を追ってだんだん芽を出してくる、育ってくるというやり方でなければいけないと思う。ちょっと前でごまかして、あとはしり切れトンボというような傾向です。今ちょうど発足したところですから、厳に戒めていくべきじゃないか、こういう説を私は聞いたことがあるのですが、なかなかいい意見だと思います。公害対策のようなものは、それぞれ専門的な知識を要することでありましょうけれども、これはやはり徹底した対策が前提になって、そして段階を追って完成に近づけていくというやり方にすべきじゃないか、こう思うのですが、どうも厚生省としては、何か問題になると、それにこたえるといったような形のように思われますが、この点どうなんです。
○五十嵐政府委員 公害対策につきましては、御指摘の通りいろいろ問題があるわけでございますけれども、厚生省としましては、どちらかと申しますと、国民の保健衛生の立場から、被害を受ける側に立ってこの問題の処理に当たっております。例としてお取り上げになりました問題は、おそらくばい煙等の問題だと思いますが、こういった問題も非常に広域的な、広い範囲の問題として、いろいろな方面に影響を及ぼすわけでございますけれども、私ども昨年の十二月一日から施行されました、いわゆるばい煙規制法の中でも、このばい煙を主として取り上げたわけでございます。そのほかにも特定有害物質、あるいは自動車の排気ガス、騒音等、いろいろな問題があります。これらにつきましては、私ども技術的に、また行政的に取り上げ得る時期をできるだけ早くするという意味で努力をしておるつもりでございますので、逐次問題を究明しつつ実態をとらえまして、その対策が立ちます時期を早めまして、これを処理して参るように努力を払っておるつもりでございます。
○井堀委員 当面している問題でもありますが、私は公害地域というものを、今のようなテンポののろい行政でやりますと、将来、経済能力のある者はその地域を変えていくわけです。環境のいいところへ変わっていく。入れかわって低所得者がそこへ戻ってくる。そういう人たちは、やはりいずれも生産の直接のにない手じゃないか。言いかえれば労働者が多い。こういう点では、私どもはよほど考えていかなければいかぬと思います。日ごろ最も長い時間非衛生な職場で働いている人が、新しい労働力を捻出するためには、環境のいいところ、日当たり、空気のいい、そういうところで休息をしてこそ意義があると思うのですよ。近代国家といわれている国々では、労働者住宅の問題は、そういう点に重点が置かれているようでありますけれども、自由主義経済のそこにも悩みがあると思いますが、やはりこういう問題とのからみ合わせにおいて、公害問題というものを考えていかないといかぬのじゃないか。西ドイツの例なんかを見ますとよくおわかりのように、ノイエ・ハイマートといって、労働者住宅を一手につくってやる。やり方のあれもありましょうが、私はなかなか合理的だと思う。ところが、もし今の公害対策をそのままにしておくと、そういう弊害が、気のついたときにはやはり後手になる。これも、冒頭に大臣にお尋ねした基本的な考え方からいたしますならば、要するにいずれを優先させるか、今やはり序列が非常に大切なときだと思います。何も私は、労働者の地位だけをやかましく言うのじゃありません。やはり今、日本の国の力を培養し、あるいは日本の国民の福祉を少しでも国際的に高めていこうとする努力目標が一致するなら、順序としては、私はやはり生産に直接いどむ労働者のためのいろいろな政策というものが、絶えず考えられていなければならぬ。環境衛生などは、特にそういう点が留意されていかなければならぬのじゃないか。やや専門的になり過ぎて、そういう政策とのからみ合いが、要するに欠けておるのじゃないか、実は私は厚生白書を拝見して、そういう感じを強くしておるわけであります。私は、専門家の知識は大いに敬服いたしたいと思うのでありますが、それが政策との結び合いがなかったらナンセンスだと思います。どうもそういう傾向があるやに感ぜられましたが、今私が例をあげたのはけい肺関係で、ばい煙じゃなしに粉塵なんです。だから、その粉塵などを工場などに置いておきますと、それを呼吸するからけい肺にかかるというわけで、それを基準法の関係その他で労働省が監督して、一定の装置をさせて工場の外へ出す。やり方はいろいろあるようでありますが、やはり金のかかる施設はあと回しになって、やかましいからごく簡単なもので、工場の中のものを外へ出せばいいというので外へばらまいてしまう。実にナンセンスで、こんな極端なものはないと思います。こういうところで指摘するのはどうかと思いますけれども、一例をあげたのであります。それは保健所にお聞きになるとすぐわかる。保健所も手をあげております。だから、実におかしいなと思っておったのでついでに申し上げたの ですが、そういうように、実に日本の行政というものはばらばらなんです。思いつき、思いつきです。だから、今一貫したものが出てくるかどうかということは、冒頭に大臣に私がお尋ねをいたしましたように、基本的な問題といつでも取り組んでいなければだめじゃないか一その部分だけ見ると非常にりっぱですが、厚生行政全体から取り上げてみますと、ほんの手慰みになってしまうというきらいがあるのじゃないか。せっかくの知恵をしぼり、精力をそこに動員しても、政治の上に生きてこない。こういう点が厚生行政の上で一番大きく目立つ点だと私は思います。その一例としてお尋ねをしたわけです。 そこで、もう一つお伺いいたしますが、スラム街関係でちょっと大臣にお尋ねしたい。これは、あなたの方の行政じゃないからでありましょうけれども、顕著な例を申し上げますと、東京にすぐ隣接したところですが、おそろしい大がかりな建売住宅をやっている。地方庁では迷惑なんです。それで何とかならぬかというわけで、町役場と県庁が騒いでいる。土地を買って、そこに建築基準法で文句さえなければどうにもならぬ。建てちゃったのはいいけれども、行ってみればわかりますけれども、実に安いものだから飛びついてしまう、今のように住宅不足の事情もありますから。だからこういうような関係というのは、スラム街ができてから、そのスラム街の要するに弊害を除去しようとする行政が、どうやら厚生行政のように見受けられるのですが、その原因をとるためには、これは大臣のお仕事でしょうね。だからやはり住宅の関係は建設省だからということじゃなしに、私は、こういうものの政策上のアンバランスというものが露骨だと思うのです。こういう点、ここにも指摘はちょっとされておりますけれども、対策がされていない。そういうものに対して、厚生省と建設省との間に何か臨機なお話し合いでもあるのでしょうか。最近、建設省はなかなかいろんな新しいアイデアをばんばんと発表しておるようですが、厚生省との話し合いはどうなっておりますか。これをちょっとお答え願いたい。
○西村国務大臣 正直なところ、スラム街問題について、私自身は建設省と話し合いをしたことはありません。ありませんが、やはり一つの問題点であると思って、私自身は注意をいたしておるのでございまするが、今あなたが御指摘になりましたような問題が、どういうことによってそういうふうになったのか、おそらく建築許可も要ることでしょうし、その建築許可をとれたから、そういうことができたのかもしれませんが、いずれにいたしましても、私たちの行政もスラム街等にも取り組むぐらいなものにならなければいかぬ、今までは実は財政的にそれだけの余裕がない、あるいは考えの上にもそれだけの余裕がなかった、こういうことでございましょうが、そういうことではいけないのでありまして、十分今後は関心を持っていきたい、かように考えておる次第でございます。
○井堀委員 これは大臣に一つ注文しておきたいと思いますが、具体的の事例を一つ指摘いたしますが、どうも許可せぬわけにいかぬらしいですね。できるんですね。また買手があるんですよ。困っておるから人は集まってくるでしょう。それは言うまでもなくスラム街になってしまう。狭いところに、ひどいものですよ。行ってみたって今は手の打ちようがないらしい。そういうものをつくっておいて、そこへ公衆衛生の見地からこうせい、ああせいと言ってみたって、おかしなものだと思うんです。これは総合的な問題です。資料は提供いたしますから、そういう具体的な事例で御検討の上で対策をお立てになることが望ましいと思います。 それから次に、生活保護法関係についてぜひ一つお尋ねしておきたいと思うことが一、二あります。これは冒頭にもお尋ねしたことと関連がありますが、今日低所得者対策として、なかなかりっぱな文書を出しておる。そこで、低所得者の定義の問題もありましょうし、把握の仕方もありましょうが、まあそれはそれとして、一体保護基準、生活費といいますか、生計費といいますか、そういうものを一体どういう基準で、またその基準を動かす必要があると考えるのか考えないのか、今まで通りでいいのか。いいとするなら、現在のものに対する説明を簡単にしていただいて、その根拠を一つ明らかにしていただきたい。
○大山(正)政府委員 生活保護基準につきましては、昭和三十六年度から、御案内の通り算定方式——従来積み上げ方式でありましたのを、エンゲル方式ということにいたしまして、飲食物費等につきましては、栄養審議会の答申によりますカロリーを基礎といたしまして計算し、その他の経費につきましては、その生活保護費に相当する程度の支出をしております。一般家庭のエンゲル係数を用いまして計算するというような方式によってやっておるわけでございますが、厚生省といたしましては、一般国民生活の向上、あるいはまた、消費者物価の上昇というようなものとにらみ合わせまして、一般国民の生活水準との格差を逐次縮小していきたいというような考え方から、毎年その引き上げを考慮している、こういうような次第でございます。
○井堀委員 一般国民生活の経費といいますか、生活費ですか、これは理論生計費はいろいろな学説があるようで、私どもも多少心得ておるつもりですが、実態生計費だと思うんです。一般国民の生活水準というものをどうしてつかむかということは、なかなか問題になるところだと思う。日本のように統計が乏しく、しかも不確実な資料しかないという場合に、今あなたの専門家の御意見ではありますけれども、一般国民生活とはあまりばく然としているのじゃないか。一般国民生活の中で今エンゲル係数という、これは理論生計費の一つなんでしょうけれども、もう少しそういうものを明らかにしていきませんと、基準が高いとか低いとか論議をいたしましても、これはのれんに腕押しになってしまう。そういう意味でこれをはっきりさしていただきたい。今あなたの言質をとるわけではありませんが、一般国民生活に見合う一般生活とはどんなものをものさしにしておられるのか、できるだけ一つ具体的にお答え願いたい。
○大山(正)政府委員 一般の国民生活の水準と生活保護の基準を比較します場合に、御案内の通り、生活保護基準は各級地によって違うわけでございますが、私どもは類型的なものといたしまして、標準的には東京都の標準四人世帯をとっておるわけでございます。従いまして、一般国民生活の水準をこれと比較します場合には、総理府家計調査に基づきまして、東京都の勤労世帯と比較してその格差を考えるというような方式をとっております。
○井堀委員 総理府の家計調査及び東京都の二、三の公共団体や法人のとっている統計は、われわれも心得ています。どうも根拠がきわめて薄弱で、科学性が欠けているとか、それから範囲が狭いとか、いろいろな批判があるようでありますが、しかし、あなたの方では、厚生行政基本調査をおやりになっている。これは何ですか、そういうものの資料を修正するときにお使いになるのですか、それとも直接調査されたものが軸になって、他の資料が補完されていくという形をとるのですか、その点一つ……。
○大山(正)政府委員 ただいま総理府家計調査につきましていろいろ御指摘があったわけでございますが、現在のところ、最も公的な調査としまして、統計資料として信頼するに足りますのは総理府家計調査であろう、かように私ども考えまして、それを基礎にいろいろ考えておるところでございます。厚生省で行ないます厚生行政基礎調査は、毎年三月でございましたか、一カ月だけの聞き取り調査ということになっておりますので、具体的な数字といたしましては、私どもはあまりこれを用いてはおらないのでございます。なお、御指摘のように、総理府の家計調査では一般の家計調査になっておりまして、いわゆる低所得者あるいは生活保護の水準に合うようなはっきりした調査というものが現在のところございませんので、厚生省といたしましては、そのような低所得の家庭を抽出いたしまして、これの生計の実態調査を行なうということで本年度から始めてやっておりまして、まだこの結果等出る時期に至っておりませんが、最近の機会にそのような調査結果が現われますれば、今後生活保護基準を考えていく上においても非常に大きな資料になる、かように考えております。
○井堀委員 せっかく厚生行政の立場から基本調査をおやりになっておりながら、実際を拝見いたしますと、どうも総理府の家計調査や商工会議所の調査などが、存外影響力を持っておるように思われます。そうすると、われわれとしては、一応総理府の家計調査の問題を堀り下げていかなければならないことになってくる。もちろんそれはそれといたしまして、ここで問題にいたしたいのは、一体地域的な差も問題になりましょうが、それでさっきの農村と都市の関係、あるいは所得者の中でも、ただ単に所得が低いから、高いからということを名目的な所得だけで判断するのでなくて、質的な問題が取り上げられてくるようにならなければならぬじゃないか。こういったような関係が今後当然出てくると思うのです。そういう意味で、私は厚生省の厚生行政基本調査というようなものが存外ものを言ってくると思う。そういう意味で、あの調査に対しては相当私は期待をかけておるわけです。問題は、要するに、調査のやり方についてもっと堀り下げて問題にする必要があると思うのでありますが、他の問題もありますから、この関係につきましてはいずれ近く機会があろうかと思いますので、その節にお伺いしたいと思います。ただ、注文だけをいたしておきます。少なくとも、やっぱり理論生計費というものがある程度出てくると思いますが、その理論生計費に実態生計費というものが見合ってきてないという事実を、あまり無視しているのじゃないか。日本の場合は、先ほど来大臣に質問いたしましたように、産業構造、あるいは人口構造、あるいは生活の実態というものが、統計の上で把握されていないという悩みがあると思うのです。こういうものを総合的に、一応厚生省としては問題にしてもらいたい。たとえば労働省は労働省で統計をとっております。それから地方の府県では力のあるところはやっているし、ないところは何もやっていない。実に突っ込んだ話をしますと、こんなでたらめはない。専門家に言われるようなつかみで基準をつくっておる。その基準を上げた下げたで、われわれも予算を承認したり、批判をしたりしておるわけです。これもずさんだ。少なくともさっき申し上げたように、日本の国民生活の基準というものをどこに置いたらよいか。それを厚生白書の中でも明らかにすべきだと思うのです。それは今日の段階においてこれだ、社会保障制度を十年後にはと言っておりますけれども、一体十年後の日本というのは、ちょっとおかしいと私は思うのですけれども、それは別な意味があると思うのですが、十年も待っていたのじゃ競争に負けである、だめになってしまう。だから社会保障それ自身がそういう姿を整えてくるという抽象的な意味だと思うのでありまして、少なくとも生活保護のような低所得者対策、特にそれが勤労者層に多いという場合においては、もっと他のものに率先して、生活水準というものはここにある、たとえばエンゲル係数を持ってくるということは、これだけの労働力を捻出するためにはこれだけの再生産費がかかるというものは持っていなければならない。しかし、厚生省の見解とあるいは他の行政庁の見解が違うという場合はあるかもしれぬ。しかし、そういうものを出して国民の批判を受けて、修正をするなりあるいは成長させていくという、そういう気魂がなければ私は権威がないと思う。そこで、私は失礼な言い方ですけれども、国民生活の水準とは具体的には何かと言ったら、さっきあなたに御答弁をいただいたように、総理府の統計と二、三の資料を出されるに違いない。それを私が追及してそんなものは国民のどこだと言ったら、実にたよりないものになっちゃう。存外こういうところに厚生行政のおくれがあるのではないかと思う。おくれを取り戻すためには、大胆に、厚生省の基本調査によれば、国民の——これは地方のいろんな色分けはあるでしょうけれども、それはここだという線を出して、そして批判を求めればいい。そういうあり方でなければならないじゃないかと思うのです。まあいろいろな立場があってやりにくいが、大臣がいませんから次官に注文しておきたいと思います。事務当局としては、政策にそれによって大きく影響させますから、政策上の見解が固まって、そうして許可がなければ出せないでしょうと思いますから、そういう意欲を具体的に実現してもらいたい。そうすると、それだけでも一つの進歩になる。今一般の賃金や所得の問題を論議する場合には、どうも日本の場合には腰だめが多い。その一角として、厚生行政の中で最低生活という以上は、その最低生活は、こういう理論生計費と実態調査でこうなる、しかし、われわれはこういう答えを求めるということをはっきりさせることを要望しておきたい。そうしませんと論議がから回りする。きょうはこの程度にとどめておきたいと思います。 それから保護法の運営の上で、方々で私どもはいろいろ陳情を受けるのです。それは、一つには地方公共団体の財政が困窮しているというような事情も影響してくると思うのでありますが、なるべくああだこうだという条件をつけてチェックするという傾向がある、最近はだいぶ改まってきたようですが。それから一般の人がそういう事務に不案内だということで、手続などにももちろん落ち度があるものもあります。そういうものは指摘したらいい。やはり窓口の指導だと思いますね。これはむずかしい他の行政と違いまして——もちろん法律に規定された仕事でありますから、それ以上のことはやれぬでありましょうけれども、少なくとも厚生行政の場合においては、保護行政の本質というものをはっきりつかんで、そうしてその精神にのっとって運営が行なわれていくということが望ましいのであって、そのためには一般の職員と違いまして、そういう教育といいますか、訓練といいますか、そういうものが必要ではないか。もっと言いますならば、厚生行政についてさっき大臣にお尋ねいたしましたことに対して、お答えは全く同感の意を表されたのですが、そうだとするならば、これは末端についてもっと要望をするという前提に立ってでありますが、どうもほかのものに比べていろいろ条件が悪いのです。せっかくそういうものに精通して専門家になるといいますか、なっても栄進の道が閉ざされる。それから待遇がほかのものに比べてあまり上昇してこない。一口に言えば割に合わないということ。私は厚生行政は特にそうだと思うのでありますが、そういうところにはもっと優遇をしていくようにしなければいけない。これは一般に言えることであります。どうも一般的に見ますと、貧乏人を相手にしておるものだから貧乏くさくなって、同情はするけれども意欲がなくなっておる。もっと私は意欲が持てるようにしなければいかないと思う。これは今の待遇の改善が前提になると思います。もし厚生行政が軌道に乗るか乗らぬかということになりますならば、一つには、先ほど来質問いたしましたように、基本的問題について政府の方針がはっきり示され、同時にまた、それが末端にまで行き届いて、そうしてその人たちの仕事が認められるという体制をつくり上げていく。これは保護行政だけではありません。全体の厚生省の出先の問題であります。とかく権力を持たせると勇ましくなるが、権力の乏しいところは、どうも萎縮してしまう傾向が残っております。せっかく局長は全国的にそういうものを指導なされる立場ですから、そういう方面にも大いに予算を請求されて、待遇改善、さらにはそういう人たちに栄進の道を開くというようないろいろな方法があるかと思います。意欲を持たせる方向にしていただかないと、せっかくいい法律をつくっても、末端にいきますとどうも隔靴掻痒のきらいが非常に多い。私に陳情が多いのですが、この機会に要望いたしておきたいと思います。 次に、社会福祉施設関係の問題でありますが、これは先ほど大臣に質問いたしましたように、今まんべんなく割り振りをするといいますか、国の助成金あるいは交付金のような形の場合はある程度やむを得ぬかと思いますけれども、われわれが国政調査で地方を回ってみましても、どうも画一的に、どこの府県は何ぼというようなやり方がまだ依然として強いようです。そればかりではもちろんないでしょう。やはり現在の姿をもっと再検討されて、来たるべき日本の人口構造なり、あるいは経済の躍進などに備えて、そしてこういう施設はここになければならぬというようにしなければならない。私は思ったのですが、かなり山間僻地に鉄筋の四階建の公団住宅ができているんです。どこにも分けてやらなければならぬということで分けておるのかもしれません。それもいいかもしれませんが、ある意味において悪平等ではないか。だからそういう末端の山の方は、むしろ鉄筋のコンクリートで建てるよりは、材木も近いところにあるでしょうし、風致関係からいっても、木造の方が案外いい場合もある。これはしろうと考えかもしれません。こういうような実際にその土地にそぐわないようなもの、それは地方庁に委任してあるからそうなったのだとおっしゃられるかもしれません、あるいはそうかもしれません。しかし、それにしても、やはりもっと厚生行政としては一貫したものが地方にも流れて、下の地方の意見も十分採用するということは大切なことでありましょうが、おまかせにならないで、やはりある程度こちらの企画を明らかに示して——もちろん、その前に企画がなければならない。さっき大臣の御答弁では、そういう点、心細いのです。そういう方法で、厚生省関係の予算をもっと効率的に運営するというところに一つふんばって、そうして必要な経費、必要な事情を明らかにして強く訴えていくべきじゃないか。われわれ野党といいながら、厚生省の予算その他については、決して協力を申し上げるのにやぶさかではありません。いな積極的に予算の確保をしていただいて、自由主義経済の中における厚生行政のあり方を一つ敢然としていただきたいと思うのです。そういう意味で、今言う福祉施設なんかについて、幾つか材料を持っておりますけれども、抽象的な要望だけいたしておきたいと思います。 それから次に、これはあなたの関係ではないかもしれませんが、非常におもしろい例を見てきたのであります。これもさっき申し上げた厚生年金の還元融資関係、今度は国民年金保険が一緒になったものでありましょうけれども、どうもおかしいと思ったのです。府県の名前は遠慮させていただきますが、全体の統計からいうと、非常に低所得者の多い県です。そこが国民保険の加入率が非常に高いのです。低所得者がこんなに多いところでどうして保険の加入の成績が良好なんだろうと思いまして、少し立ち入ったのでありますけれども、いろいろと資料をちょうだいして検討してみた。ところが、厚生年金の還元融資を受けるとして、国民年金事業団の資金を借り入れるためにはそういうことが必要だということらしかったのです。とにかく私がそういうことをここで申し上げるのは、いろいろなやり方が必要でしょう。ということは、どうもお役所の仕事の中でつらいところであるかもしれませんけれども、形式にこだわって実質を見失っている。こういう点は、他の役所と違ってもう少し政策が流れてきて、そういう場合にも——それは実際だれでもわかりますよ、向こうでも言っておりました。これも手ですといって、まんまとその手に乗っているようです。手ではないかもしれません。あるいはそういうことできめると、役人にやかましく言われないで済むということかもしれませんが、これはほんの一例でありまして、どうも厚生行政がこういうことになると意味をなさなくなる。それと似たようなケースは随所に見受けられる。たとえば託児所の設置の要求がありましても、府県の順番をつけて出すのです。順番をつけて出すと、その順番に乗っていけば責任が軽くなるからでありましょう。一体厚生行政の基本調査をやる場合に、府県の資料だけでおやりになるのか、あるいはそういう実態を直接統計の上で把握なされるような仕組みになっておるのか、実はこの機会に伺っておきたいと思う。一体実態調査をおやりになるときは、たとえば労働省の場合は、労働基準監督署を使って調査をやるというようなことは、これは権力もありますし、それから手足を持っておるということであります。厚生行政の基本調査は、非常に勉強になりますから私ずっと見ておりますが、信憑力を疑う点が非常に多い。これはどなたからお答えいただけるのですか。
○秋田委員長 企画室長がおられないので、この次の機会に御答弁させていただきたい御様子でございます。
○井堀委員 それでは次の機会にいたすことにいたしまして、資料関係が出てくると、次に非常におもしろい具体的な事例が上がっていいと思うのでありますが、次に私のお尋ねいたしたいと思いますのは、厚生行政の中で、私が一番敬服できるのは統計だと思う。だからその統計の出どころと、その編集がどういう形をとってきておるかということは、説明によってある程度つかむことができますが、そこで問題になりますのは、ボーダー・ラインがたとえば八百万だとか七百五十万だとかいう数字を出してきますね。そこで、そのボーダー・ラインのつかみ方についてでありますが、これはさっき生計費でお尋ねいたしましたように、私が非常に疑問を持ち始めたのは、一方総理府の就業構造基本調査の中に所得がずっと出ている、あるいは労働省の統計なども引用できるわけです。一番大がかりなもので、しかも信憑力のあるものは総理府の調査によるものが多いと思う。さっきもお話しした通りです。あれとボーダー・ラインの数の開きです。これをお答えできますか。——だから問題は、低所得者というものは、あの数字をつかんでいけばあのボーダー・ラインになる。だから一応そのボーダー・ラインが他の統計とやや一致するということであればいいのですが、就業構造基本調査によりますと、所得の把握の仕方にも違いがあります。把握の仕方に違いはありますが、それを修正されてああいう数字をお出しになるとすれば、私は疑問があるからお尋ねをしたい。それからそうではなくて、厚生省の厚生行政基本調査に基づいて実態を把握したり、あるいは推計を試みたというあの説明書の通りだとすれば、また疑問がある。先ほど私が生活保護基準の問題の際にお尋ねいたしましたように、生活費の基礎を明らかにするのと全く同じ意味において、もっと正確な数字を出してくるべきではないか。それが正確でないとするならば、どうして正確を期するかということのための努力があってしかるべきじゃないかと思います。こういう問題が、実は私どもが厚生行政に対する掘り下げた質問をする場合に、よりどころになるわけです。でありますから、そういうものがはっきりしておれば、そのつかみ方がいいか悪いかの批判もありましょうし、高く引き上げればどういう問題が起きる、下に置けばどういう結果になるということが論議されてこそ、政策討論になると思う。先ほど来だんだんとお尋ねをいたしましたように、厚生行政は国民生活の一番きわどいところの実態を処理していく行政なんでありますから、その事実が正確でないと、議論も全く議論のための議論に終わるという傾向が強いと思う。実はそういう意味で最後にその統計を伺って、基本調査の問題の中からお尋ねいたそうと思ったのですが、またの機会に譲ることにいたしたいと思います。 次に、厚生年金についてお尋ねをしたいと思います。厚生年金保険の改正が厚生省で取り上げられてからかなり長い歳月が流れて、それが国会にも出てこないということは一体どういうわけでしょうか。国民は疑っておるわけです。もう御存じのように、理由はあげるまでもないと思うのです。大臣に対するお尋ねのときにも触れましたように、いろいろな意味において厚生年金の改正は必至なんであります。これはどういうことになっておりましょうか。いつお出しになるのですか。
○渡海政府委員 多方面にわたりまして、いろいろ有意義な示唆をいただきましての御質疑、私も控えておきましたので、十分調査し、なお、先ほどお話がありました統計の問題、本日は事務当局が参っておりませんので、今御指摘のありましたような点につきましてよく調査させまして、後刻御質問に答えさせるようにいたしたいと思います。 なお、今の厚生年金の問題でありますが、厚生年金の法改正のことにつきましては、必要性のあることは今御指摘の通りでございます。私たちもぜひこれが改善のために努力をいたしたいと思いまして、目下着々準備中であります。法にも指定されました再計算の時期が昭和四十一年になっておりますので、これにこだわるというわけではありませんが、目下各方面の審議機関等を通じまして 着々準備をいたしておりまして、ぜひとも来たるべき三十九年度には実現させていただきたいと思いまして鋭意努力中でございますので、御了承を賜わりたく存じます。なお、細部につきましては、係の局長から答弁させます。
○井堀委員 いつごろ出せるようなお見込みですか。
○渡海政府委員 現在すでにそれぞれの各諮問機関等について調査、研究を進めておりますので、昭和三十九年度の通常国会にはぜひ提出いたしたく準備をいたしておりますので、御了承賜わりたいと存じます。
○井堀委員 ぜひ一つ早目に提出をしていただきたいと思います。それはその節の質問に譲ることにいたします。私が出てこられるかどうかわかりませんが、いずれにいたしましても、厚生年金の問題は非常にいろいろな方面に影響が大きいと思うのです。それと関連して、当然一緒に問題になるだろうと思うのは国民年金の問題です。厚生年金保険は、これは雇い主が負担をする年金保険とは大へん違うと思うのです。しかし、社会保障制度審議会も類似の保険の統合を勧告いたしております。しかし実際問題として、そういうことが実現できるかどうか、問題がいろいろあると思いますけれども、これは私どもの方の党としても、基本的な政策の一つにあげておるわけなんです。そういう労務対策といいますか、雇用政策の中での一つのものと、それから全く国民全体のものとが、歴史的には理由が大いにありますけれども、今後のこういう年金保険という立場から理想を見通しますと問題がある。こういう問題を次にどういう工合に取り扱ってくるかということにつきましては、この際伺っておく必要があると思います。われわれ政策を策定する上においても関連がありますから、そういう点に対する御所見等があったらちょっと伺っておきたい。
○山本(正)政府委員 厚生年金につきましては、今政務次官から御答弁がありましたように、本年中に成案を得て国会の御審議を願うような段取りにいたしたいと考えておるわけでありますが、国民年金につきましては、実は三十六年の四月に拠出制の年金が発足いたしまして、再計算の時期といたしましては昭和四十一年度ということになっておるわけであります。そこで問題は、今御指摘のありましたように、特にわが国の所得保障の問題ということが非常におくれておる。そこで、まず第一に厚生年金の大幅改善を期さなければ、なかなか他の方面が進まない点がございます。昭和四十一年度は国民年金の再計算の時期にはなっておりますが、先ほど申しましたように厚生年金の改善ということに目をつけまして、この際に、抽象的に申し上げますれば、国民の最低生活保障というものは一体どういうものを考えるかということによりまして、国民年金等のかね合いにおいて議論がされるわけでありまして、現在それぞれ審議会を持っておりまして、厚生年金関係を審議いたします社会保険審議会においても御議論を願っておりますし、また、国民年金審議会におきましても、国民年金の長期計画をどう考えるかというような観点に立ちまして御審議を願っておるような次第でございまして、引き続き国民年金の検討をいたしたい、かように思っておる次第でございます。
○井堀委員 これは関連があるので、同時提案をなされるようなことになるのではないかと思っておりますが、厚生年金を三十九年度の通常国会を目途にされ、国民年金も同様御提出の用意はありますか、念を押しておきたい。
○渡海政府委員 同時提出するというところまでは現在きめておりませんが、引き続いて国民年金保険もやりたいと思っております。今のところ、同時に提出するというところまでは考えておりません。
○井堀委員 時間もおそくなりましたので、要望だけを申し上げて私、質問を終わりたいと思いますが、厚生年金の改正は内容も十分検討されると思います。申しわけのような提案ではもちろんないと思います。相当抜本的な改正が行なわれるものと期待をいたしております。国民年金との関係もありますので、同時にというのは何も同じ日というのじゃなしに、同じ三十九年度の国会に審議できるように取り計らっていただけないものか、以上要望だけを申し上げます。そうすることが社会保障制度審議会の答申に忠実なあり方であると思いますし、実質的にもそうあるべきじゃないかと思いますので、強く要望をいたしておきたいと思います。 長い間、いろいろとありがとうございました。
○秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は明十四日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。 午後四時五十分散会