社会労働委員会 第7号
- 発言数
- 94 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1963/02/12
会議録
○秋田委員長 これより会議を開きます。 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。田邊誠君。
○田邊(誠)委員 ちょっとかぜを引いていますので、小さい声でやりますから、お許しをいただきたいと思います。 現在の日本の労働問題の中で、いろいろな重要な問題が山積をいたしておりまするけれども、その中でも、雇用問題と並んで賃金の問題は、当面をする非常に重要な課題であることは大臣も御案内の通りであります。労働省は、昨年の十月に「日本の賃金事情」というものを外務省と共同で出しておりますけれども、この小冊子に盛られておりまする現下の日本の労働賃金の問題については、かなりの問題点が含まれているように思うのでありますけれども、まずもって、この労働省と外務省が共同で編さんをいたしました小冊子というのは、一体どういう目的で、どういう範囲にこれを使用されているのか、お伺いしたいと思います。
○大橋国務大臣 御承知の通り、一昨年の日米貿易経済閣僚会議におきまして、日米貿易に関連いたしまして日本の賃金水準が問題になり、アメリカ側では、日本の賃金の実情につきまして、日米両国の政府機関による共同調査の希望もあったのでございます。その後、昨年になりましてからは、アメリカの労働運動家でありますルーサー氏が来られました際に、わが国の総評との間に賃金の共同調査の話し合いもございました。昨年の十二月には、第二回の日米貿易経済閣僚会議が予定されておったわけでございます。こうした状況のもとに、日本の賃金がいろいろ国際的に問題になっておる状態でございますから、労働省といたしましても、日本の賃金水準、ことに貿易に関係ある業種における賃金の実態について十分に検討を加え、そして国際的な賃金水準との格差の状況を明らかにする。はたして日本の賃金が、外国で唱えられておりますような低賃金であるかないか、これはいろいろ見る人の角度、立場によって結論は違いましょうが、しかし、日本といたしましては、正確な事実を基礎にして、われわれのこれに対する考え方をまとめまして、そして各国の関心ある人たちの理解を得るということは必要なことじゃないか、また、それが日本の貿易振興上有益なことではないか、こう考えまして、当時労働省にありました既存の資料の中から適当なものを引き出しまして、そしてこれを編さんいたしたわけでございます。外務省におきましてはこれを英文に翻訳いたしまして、両者の共同調査ということでこの冊子をつくり上げたわけでございます。
○田邊(誠)委員 今大臣のお話がありましたように、貿易の面からいっても、あるいは対外的な日本の地位からいっても、現在の日本の賃金の状態というものを、正確に、国内はもちろんのこと、対外的にこれを知らしめることは、きわめて重要な意味合いがあると私も思うのであります。そういった意味合いで、PR資料とし、あるいは一つの問題提起としてこれを発表されることは当然なことであると私は思うのでありまするけれども、問題はこの内容でございまして、たとえば二十六年度基準という基準のとり方なり、あるいは消費者水準の分析なり、いろいろな面でもって非常に大まかであると同時に、やや正鵠を欠く、あるいはその実態を知らしめておらないという疎漏の点、そういった点があることを非常に残念に思うのでありまして、これが正確な意味において日本の現在の賃金の状態、そしてまた、向かうべき賃金のあり方、こういったものをさし示しているというふうに見受けられる冊子としては、あまり的確のものであるというふうに言いがたい点があるのではないかと思うのでありまして、この問題と関連して賃金問題をお伺いしたいと考えたわけですけれども、その点は大臣もお認めになっておると思いまするし、また、万全なものでないというふうに考えられるからこそ、また将来にわたって、これらの問題に対してさらに深い検討をしなければならぬ、こういうようにお考えではないかと思うのでありますが、その点はいかがでございますか。
○大橋国務大臣 調査のことでございまするから、私どもといたしましては、でき得る限りの正鵠、的確を期しておったことは、もちろん申すまでもないことでございます。しかし、この種の冊子をつくろうと思い立ちましたのは、たしか昨年の八月の末ごろであったと思います。そして、時期の関係で十月ごろまでにはつくり上げたい、こう思っておりました。そういう短期間に急に計画を立て、つくり上げたものでございまするので、あるいは御指摘のように大まか過ぎはしないか、あるいは多少正鵠を欠いておる点はないかということになりますと、結果的には、そういうことは絶対にないとは必ずしも言い切れないわけでございます。たまたまこういうものをつくりましたので、労働省といたしましても、今後できれば定期的にこの種の調査を進めていって、今後の賃金の動向を明らかにするようにいたしたい。それについては、いろいろな御批判なり御意見なりを十分お聞かせ願いまして、今後のために指導いただければしあわせに存じます。
○田邊(誠)委員 そこで一体賃金というものがどうあるべきかということは、いろいろな角度から論議のあるところでありまするけれども、われわれはそういったことは抜きにして、実態論として、一体日本の賃金というものが、現在の経済の成長の度合い、あるいはそのペースからいって、全体的に見た場合にまあ適切なものであるかどうか、あるいはもう少し賃金をよくするところの要素というものが日本経済の中に存在しているのじゃないか、こういうようないろいろな論議は当然あると思うのであります。 池田総理も、しばしば比較論として発言をされているように、欧米の賃金と比べてみた場合に、従前ややもすれば低賃金の国であるといわれておった日本が、つい最近は低賃金国として規定されるような地位から脱却をしている、こういうお話を承るのでありますが、私どもは、そういった総理なりあるいは給与担当の大臣である労働大臣なり、それらの政府の責任のある方々の言明というものと、現在の国民生活の実態から出て参るところの、まだ賃金が低い、もっと生活の維持向上のためには、より以上の賃金をほしいという勤労者の要望というものが、なかなか合致しておらないのが現在の状況であろうと思うのであります。そこで、実は幾つかの角度から現在の賃金の状態というものに対して御見解を承っていきたいと思うのであります。 私は、必ずしも労働者の欲求の中に、すぐさまヨーロッパ並みの賃金をもらいたいという要求が、現在の日本の経済事情の中で、あるいは公務員の面に限るならば、日本の予算の規模なりの面からいってできるものかどうか、こういった点に対して、せっかちにものを判断しょうとは実は思っておらないのであります。しかし、政府が言うような、賃金がかなり上昇して、まあまあそんなに諸外国に劣らない状態になってきたという言明というものが、ややもすればある種の錯覚を国民に与えているといった点から、もう少しく現状というものを的確に判断していただくことが必要ではないかと考えるのであります。賃金は、もちろん労使間でもってきめるべき問題でありますから、いわば一般的に言えば、経営者の側の意見というものもある程度聞いておかなければならぬことは当然だろうと思うのでありまするけれども、たとえば日経連が昨年の十月の臨時総会において、現在のいわゆる景気調整ないしは不況に立ち向かう状態と貿易自由化という面から言いますならば、日本の経済の成長率の見込みというものを当時五%くらいに見込んだとするならば、賃金もそれに見合うべき程度にとどむべきではないか、こういう考え方を打ち出しておるのはきわめて注目をすべきでありますけれども、いわゆる経済の成長率ないしは国民総生産と賃金というものを結びつけて考えるという思想でございますが、この面から見まして、はたして経済の成長率に見合うべき賃金というもの、こういう考え方というものが端的に言って一体正しいものかどうか、あるいはまた、日本の現在の賃金事情から言って、これをとらえてそういう考え方でもって賃金の問題を論ずることが的確であるかどうか、はなはだ疑問に思う面があるわけでございますけれども、これに対する大臣の所見はいかがでございましょうか。
○大橋国務大臣 原則的には、経済の成長と賃金の上昇というものは相伴うものでなければならないと存ずるのでございます。ただ、その率が、経済成長が何%になった場合賃金が何%上がればいいというようなこまかい問題になりますと、これはそのときどきのいろいろな条件で、国民経済的な見地から言いましても、直ちに万人の納得する結論に到達するということはむずかしい場合も多いであろうと存じます。ことに日経連なりあるいは労働組合の全国団体なりで、ただいま打ち出しておりまする春闘の目標として掲げておる数字につきましては、それぞれの立場で十分に理由のあるものには違いないと存じますが、もともと賃金は、御指摘の通り労使の話し合いできまるべきものであり、その話し合いに際しての、双方のいろいろなかけ引き等もありまして、そういった目標が具体的にはきめられておるのでもございまするので、この際は、今申し上げました一般的な原則を抽象的に肯定するにとどめまして、具体的な数字についての論評は差し控えたいと存じます。
○田邊(誠)委員 その次の問題に移る前に、局長に、今密接不可分の関係にあるということは大臣も言われておるのでありまするが、私はこの考え方を肯定をするか否定をするかということは、大臣のいろいろな角度からの御発言もございましたから、私の方からの意見もこの際一応差し控えて、次の問題に移りながら、また一つ考え方を聞いて参りたいと思うのであります。 その前に、一応、今経済成長率の問題が出ましたから。政府が三十八年度に見込むところの経済成長率は、御案内の通り名目八%、実質六%の予定であります。その他予算の規模等も、あるいは公務員の賃金、それらが、また民間賃金との関連でもって考えられるという現在の情勢の中では問題にはなりましょうけれども、それらは一応おくといたしまして、日本の経済成長率の予定というものは、毎年実は策定をされるわけでございますけれども、一体諸外国では、この経済の成長率というものと賃金というもののかね合いというものがどういう工合になっておるのか、こんなものは抜きにして、そのときそのときの労働情勢なりによってそういったものが考えられておる、こういった一般的な一つの空気なり情勢にあるのか、ある程度そういったものがやはり関連をされて、賃金問題が論じられて、いるというようなことがあるのかどうか、一つ念のためお聞きしたいのであります。たしか、つい最近の西欧の経済成長率というものが、日本に比べて非常に低い状態にあることは、御承知の通りであります。一番例に出されまするのは、アメリカの二%なり二・五%、イギリスも大体その程度でございますけれども、それに比較をして、フランス、西ドイツ等がやや上回った、四%程度の経済成長率を示しておるということがいわれておるわけでありますけれども、これとのからみ合いにおける賃金問題、こういったところがどういう事情にあるのか、一つお教えを願いたい。
○大島政府委員 先ほど大臣から申し上げました通り、経済成長全般と賃金水準一般との数的関連というのは、直ちに結びつけることは非常に困難な問題であります。たとえば、アメリカの経済計画におきましては、ちょうど日本の経済計画におきまして、一つの目標と申しますか、安定的な成長のメルクマールになっておりますのが、国際収支の問題でありますと、同じような意味合いにおいて、アメリカにおいて一つのメルクマールになっております労働の問題と申しますのは、失業率であります。ただ、賃金について、経済成長全般の一つの目標になるということは、私承知いたしておりません。ヨーロッパにおきましても、また賃金水準が経済の安定的な成長の一つのきめどころになるというようなことについては、私は承知いたしておりません。ただ、現在ヨーロッパ各国におきまして、経済成長と賃金水準の問題について一具体的な問題になっておりますのは、いわゆるコスト・インフレの危険性であります。すなわち、賃金水準と物価の関係、この辺がどう関連するか、この数字的な連関については、かなり詳細なる研究なり調査も行なわれている模様でありますが、経済成長計画と賃金水準を直接に結びつけた点については、私はまだ承知いたしておりません。
○田邊(誠)委員 次の問題に移ろうと思ったのでありますけれども、とにかく物価の問題と、それを上回る賃金という場合における、コスト・インフレ論というのが問題になっておる、こういうお話がございました。これは、池田総理がしばしば言われる点でございますが、そうしますと、次の問題の前にちょっとその問題だけさらにお教えをいただきたいのでありますけれども、三十六年度の日本の賃金というものは、一体どの程度上昇したか、こういうふうに見ますと、たしか名目賃金が一一・五%上昇したというふうになっておるのでありますけれども、その場合における労働生産性が問題だということでありますが、これは一一%であります。三十六年度に限っては、労働生産性を名目賃金が上回ったという、実はこういう政府の発表であります。しかし、もちろんこの中には消費物価の上昇率五・三%というものが含まれておらないのでありますから、実質的には、賃金の上昇というのは、三十六年度においても五・九%にとどまった、こういうふうになっておるわけでありますけれども、一体ここ数年間に、その労働生産性というものと日本の賃金というものがどういう推移にあったか、この点に対して、やはり今の答弁から推して、私どもとしては非常に注目すべきことであろうと思いますので、その点に対するところの趨勢をお伺いしておきたい。
○大宮説明員 日本における最近の労働生産性と賃金の推移につきまして、製造業に関する数字を申し上げます。 三十三年以降年々の変化を申し上げます。と申しますのは、三十三年がちょうど不況のときでございまして、今度三十七年がまた景気調整の年に当たりますので、ちょうど一つのサイクルのような形になるので、その間のことを申し上げます。三十三年の対前年上昇率は、生産性の方がマイナス六・〇、賃金が二・四%増、三十四年が生産性が九・一%増、賃金が七・四%増、三十五年が生産性が八・七%増、賃金が八・〇%増、三十六年が、生産性が八・三%増、賃金が一一・八%増、これは、先ほど先生がおっしゃいましたのは調査産業総数の数字でございますが、今申し上げておりますのは、製造業の数字であります。それから三十七年度の一月から十一月までの平均の対前年同期比を見ますと、生産性が三・一%増で、賃金が一〇・七%増となっております。
○田邊(誠)委員 今御答弁のありましたように、三十六年度のある側面だけを見ますと、確かに名目賃金が上がったということになりますが、あとでもって質問いたしますように、これはいろいろ消費物価の問題が、卸物価の動向にもかかわらずやはり上昇している、こういう時点もありますので、それらを加味し、あるいは生産部門におけるところの賃金のコストというものは一体どうなっておるか、こういう問題ともからみ合わせて考えなければならないと思いますので、判定の材料になりませんけれども、私はここに「東洋経済」の一九六二年の秋季号の中でもって見た労働生産性と賃金との割合というものが、これは今部長が答弁されたことをそのまま表わしておるわけですけれども、問題は、単年度にどの程度労働生産性が上がり賃金が上がった、こういうことも重要でありますけれども、実は、ある期限を長い目で見た場合に一体どういうふうな工合になっておるかということが、また重要だろうと思うのです。そういった意味合いから見ますならば、三十年度を基準といたしますならば——今製造業について御答弁がございましたけれども、三十年を一〇〇といたしました場合に、労働生産性は三十六年に一五九、賃金は一五〇・二、こういうふうに今の答弁から引き出して参れるのであります。従って、全体的に見た場合に、労働生産性よりも賃金が上がったという意味では、まあこの五、六年を通じて見た場合にはなっておらないのでありまして、必ずしも、この面から局限された形でもって賃金の上昇率というものをとらえて、コスト・インフレ論を振り回すことはちょっと危険な考え方ではないか、私はこういうふうに考えます。ここにはイギリスの場合の六年間の状態、西ドイツ、フランスの状態も出ておりますけれども、いずれも労働生産性よりも賃金がかなりの上昇率を示しておるのであります。この諸外国の例というものが、はたして日本の経済事情にマッチをするかどうかは、またいろいろと議論のあるところでありますけれども、いわゆる生産性の問題と賃金という問題だけをとらえて、日本の賃金が上昇率がいいからといって、そのことによって満足すべきであり、あるいはそのことだけを見て経済に至大の影響、ことに悪影響を及ぼす、こういう論理というものは、日本の現状から見ても、決して完全な意味において適切な論議であるというふうには認められないと私は思うのでありますけれども、その点に対する大臣の端的な所見を承りたい。
○大橋国務大臣 私も田邉委員と同様に、生産性と賃金の上昇率が相伴うことが望ましいという場合におきましても、短期の各年度ごとに、厳密にそうなければならぬとは考えておりません。ことに相当長期にわたって生産性と賃金の関係をながめてみますというと、非常に生産が伸びておる間におきましては、生産性の増大の方が、賃金の上昇率よりも率としては常に数字的には一大きくなっておるようでございます。逆に、生産性の増大が多少停滞いたして参りますと、そういう時期になりますと賃金の上昇率が率としては逆にふえていく、そういうような過去の実情でございますので、これはやはり生産性と賃金ということを考える場合におきましても、かなり長期の展望を必要とするんじゃないか。各年度ごとの比較によって、直ちに、この賃金の上がり方はコスト・インフレにつながるものだというような結論を軽々に出すべきものではないと思っております。ただ、いろいろコスト・インフレについて議論の出ておりますのは、生産性に対して賃金が率多く上昇した場合においても、それが一時的な現象としてとどまるのならば、これは先ほど申し上げましたごとく、長期的な展望においては何ら憂えるに足りないのでございますが、それがもし相当長期にわたるというようなことになりますと、これはコスト・インフレという心配も決して杞憂ではないのでございます。そういった観点から、賃金の上昇の原因なり、あるいは今後の傾向というものについて十分に検討を加えるということは、やはり経済全体の成長を考える上からいって適当なことではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。 それから、現在の日本の賃金の上昇率は、諸外国に比べまして、非常に上がりの率が大きくなっております。そこで私どもは、現在の賃金状態は満足すべきものであるという結論を出しておるわけではございませんので、やはりこの上とも賃金の上昇によってますます労働者の生活が向上安定し、また、労働能率が向上していくことが望ましい、こういうふうに思っておるわけでございます。ただ、そういった将来の賃金の上昇ということを考えます場合におきましては、どうしても経済全体の成長ということが何といっても今後の賃金上昇を保障する基礎になることは、これは疑いのない事実でございますから、従って、今後の経済の上昇を阻害しない程度で、堅実に賃金が逐次上がっていくということが望ましいであろうと思います。
○田邊(誠)委員 今大臣の答弁にもありましたように、つい最近盛んにいわれておるコスト・インフレ論というものが、単純な意味において労働生産性を賃金が上回った、しかも短い期限に限ってそれを側面から見るということだけではにわかに論じがたい、そういった論議が非常に誤りの多い内容を持っておるということを言われたのでありますが、私もその点は同感であります。三十年度を基準としなくても、さらにさかのぼって、ここ十年間ぐらいを私どもがずっとながめてみましても、日本の賃金というものは、三十五年まで、労働生産性を上回ってきたということは一応ないという工合にわれわれは見ておるわけであります。諸外国の場合は、ここ十年間ぐらい賃金が常に生産性を上回ってきているという状態にあることを、先ほど来の例でもってもおわかりの通りでございますから、そういった点から、私どもは一応他の要素というものをさらに加味してみて、日本の賃金事情というものを正しく評価することが必要ではないか、こういうふうに考えておるのであります。今大臣が言われました中に、今後の日本の経済事情というものを一体どういうふうに見込み、これに見合うところの賃金というものを策定することが必要である、こういうふうに言われましたけれども、あまり長い論議をこの部分でやることを私は実は避けたいと思います。昨年、一応賃金の引き上げというものが集中的に行なわれたのは、たしか春でございます。例年のように、春がこのところ賃金の引き上げの時期というふうになっておるわけでありますけれども、一体昨年の春の経済事情というもの、特に政府が考えた景気の一つの切りかえ時期、こういう状態というものと、ことしの春の状態というものは、一体どういうものであるか、これを一つ労働大臣の立場からお話を承りたいと思うのであります。昨年は、いずれにいたしましても好況から不況への一つの切りかえ、いわば景気調整を非常にしなければならぬというスタートの時期である、いわゆるスタートした直後の時期である、こういうふうにわれわれは思うのであります。それに比べて、ことしは景気調整が非常に行き渡って参りまして、これに対するところのいわば景気刺激の政策というものがとられようとしておる。政府、日銀は金利の切り下げをし、高率適用の緩和をし、あるいは業種別に見た場合における融資の拡大というものも考えてきた、こういう状態でありますし、国際収支は、池田総理が言うように、これはつい最近の状況を見れば、その部面においては黒字に転じている、こういう状態でございますから、いわば昨年の春に比べて、今の経済事情というものは、より以上悪化をしているというふうには政府自身が見ておらないではないか、こういうふうにわれわれは端的に思うわけでありますけれども、賃金問題と関連をして、こういう事情についてどういうふうなお考え方、把握であるか、お伺いしたいと思います。
○大橋国務大臣 概括的には、今御指摘になりましたごとく、昨年の春は景気調整の最盛期というべき時期であったと思うのであります。その工作が効果をおさめまして、現在は上昇期を迎えようとしておる時期であるわけでございます。ただ、賃金という点になりますと、現在の賃金の水準というものは、個々の企業単位としてきめられるような状況でございますので、企業々々によって、現実にはいろいろな事情の違いもあろうと存ずるのでございます。一般的には、これから景気がよくなるというふうな気持でみんなおられることは、これは確かであります。しかし、個々の事業なりあるいは特殊の事業、業態というものについては、これはまた別でございます。
○田邊(誠)委員 大体わかりました。賃金も、これは好むと好まざるとにかかわらず、企業によっていろいろな状態というものが違う、こういうことも、実は私、そういうふうに把握をいたしておるのであります。これは日本の賃金事情の中において、一つの特異的な性格を持っておるというふうに考えておる問題でありますから、この点も実は続いてお伺いしたいのでありますけれども、その企業別のいろいろな賃金の状態というものをお伺いすることと関連して、賃金というものが、日本では今どのくらいの状態になっているかということに対してお伺いしたいのであります。特にその中で、ただ単に賃金のベースがどういうふうになっているかということだけではなくして、その内容、賃金の質の問題、こういった問題に対して、もう少しく数字の面からこまかく当局に質問をいたしたいと思うのであります。大へん大臣に申しわけないのですけれども、その結果というものが、実は総体的に見て一日本の賃金というものの水準なり今後のあり方につながる問題であるというふうにお考えをいただいて、しばらくお聞きをいただきたいのであります。 一体、賃金が上がった、上がったというのでありますけれども、上がったという観念は、われわれ大体三十から四十過ぎの者にとっては、戦前の賃金に比べて一体どのくらい上がったのだ、水準がよくなったのだ、こういう実は単純な考え方というものがあると思う。しかし、これはまた重要な要素を持っておるのでありまして、一体日本の賃金というものは、戦前に比べてどういう状態になっておるのか、この点が実は第一の問題として浮かび上がってくるのであります。いろいろな資料の基準がありますけれども、昭和九年ないし十一年の日本の賃金というものを一〇〇と見た場合に、一体戦後の状態はどういうものかということを調査いたしてみたのでありますが、一番戦後において状態の悪かった昭和二十年の十二月は、戦前に比べてわずかに一三・一%という極度の悪化を示した。ここから実は戦後のスタートが切られてきた、こういうふうに言われておるわけであります。基準が違いますから、私の基準と違うお答えがあってもけっこうでありますけれども、私の今の基準から申しますと、昭和三十六年は、戦前の昭和十年程度を基準といたしました、いわゆるシナ事変に入る前の状態でありますが、それに比べて一四九・八%まで上がったというふうになっておるのでありまして、この点から見ますと、かなりの賃金の上昇を示したということになっておるのでありますけれども、一つ労働省なり政府側のお持ちの資料でもって、戦前との単純な比較でけっこうでありますけれども、どういう状態かお示しを願いたいのであります。
○大宮説明員 戦前と戦後の賃金水準の比較につきましては、技術的になかなかむずかしい点がございます。しかし、一応戦前の得られる単純な平均賃金と、それから戦後得られた資料からの単純な平均賃金というものを、できるだけ範囲をひとしくするように努力した結果、比べたものを見てみますと、大体、先生御指摘の数字に近いものではないかと思います。すなわち、昭和九−十一年を一〇〇といたしまして、製造業の労務者の賃金の推移を見てみますと、大体昭和二十七年ごろに戦前の水準に回復いたしまして、その後上昇を続け、昭和三十六年には大体一五〇くらいになっておるものと思われます。これは、もちろん名目的な額ではございませんで、その間の消費者物価の上昇で修正した実質賃金としての比較でございます。
○田邊(誠)委員 これはいろいろな生活の基準が変わり、全般的な生活水準が向上し、特に消費支出があおられつつありますけれども、非常に多くなってきておる。こういう事情でありますから、私どもとしては、戦前に比べて生活水準がよくなりつつある、こういうことは当然、日々進歩の現在においてまたうかがわれる点でございます。ですから、今の点だけを申し上げますと、賃金が戦前に比べてだいぶよくなったではないかというふうに実はわれわれも思い込んでおったのでありますけれども、もう少し視野を広げまして、諸外国に比べて、一体日本の国際的な賃金の地位というものは戦前と比べてどうなっておるのか、こういうふうなことを比較をいたしてみますと、どうも残念ながら、今お話のありましたように、かなり二十五、六年前と比べて賃金の状態というものはよくなったというふうに見受けながらも、その上昇率というのは必ずしも国際的には高い地位にあるというふうには見受けられない、こういうのが実情ではないかと思います。きょうは経済企画庁がお見えでございませんが、その点に対する経済企画庁で調べた状態というものもあるようでございますけれども、労働省は、アメリカなりあるいは西欧のおもだった各国の戦前の基準と比べてみた場合における戦後の賃金というものの上昇率と、日本の今お話のありました賃金の上昇の度合いというものと比べてみた場合に、一体日本は諸外国に比べても非常によくなっておる、こういうふうに誇り得るところの賃金状態であるかどうか、一つ状況がおわかりでありましたらお話しいただきたいと思います。
○大宮説明員 外国の場合には、今次の世界大戦によってどれだけその経済が影響を受けたかによりまして、かなりまちまちな数字を示しております。たとえば、日本と同じように非常に戦災の影響を受けました西ドイツにつきましては、大体日本と同じような状況で推移しておりまして、終戦直後には、戦前に比べまして非常に低い水準にまで一たん低下して、そこから急速な回復を示してきておるという趨勢でございます。また、アメリカのような国につきまして、戦後もそのような落ち込むという趨勢は見られないで、大体戦前からの上昇の趨勢が続いておりますが、しかし、戦後の上昇の傾向は、日本、ドイツあたりから比べますと非常にゆるやかな上昇でございます。戦前のどこを基準にするかということは非常に問題でございまして、われわれも的確な数字ははじけないのでございますが、かりに一九三五年前後くらいのところから大まかな見当をつけてみますと、日本もドイツも、まだアメリカほどには戦前の基準に対しては伸びていないのではないかと推定されます。しかし、最近の上昇率が、日本、ドイツの場合には非常に大きいので、その差は非常に詰まってきておるようでございます。
○田邊(誠)委員 外国の例が出ましたから、経済企画庁でもって調べた、大体今お話のありました一九三五年を基準といたしまして、一九五七、八年ごろから一九六〇年に近い状態というものを統計的に調べたものがございますけれども、これを見ましても、昭和三十二年から三年は、さっきお話もありましたが、大体戦前に比べて一二三%から一二七%になった時点でございます。その時点の中で、西ドイツは、大体一五〇%の戦前に比較して賃金の上昇率を示しておるというふうに報告されております。アメリカは一八〇%でございまして、これは今お話し申しましたように事情は違うわけでございまするけれども、その中間にイギリスその他の国々が存在する、こういう状態でございまするから、戦禍を受けた度合いやその他の復興の条件等が違いまするけれども、いずれにいたしましても、非常に戦争の犠牲を受けた西ドイツに比べても、単純な比較だけで正確なものとは言いがたいにいたしましても、まだまだ日本の賃金の上昇率というのは、日本の中ではかなりよくなったにしましても、国際的に見た場合には、必ずしも非常な急激な上昇率でもって、よりいい賃金になったというようには見受けられない要素が実はあることを、大臣も御承知をいただきたいと考えるのであります。戦前との比較等は別といたしまして、諸外国と賃金の比較をしばしばされるのでありまするから、この際もう一つだけ、名目賃金なり実質賃金なりにおいて、諸外国との賃金の比較というものは一体どうなっておるのか、この点に対して一つお伺いしたいのでありますけれども、時間の関係もございまするから、ILOの統計によりますると、名目賃金が、アメリカが八・八、西ドイツが二・四、フランスが一・六、イタリアが一・四、日本が一・〇、こういう状態であることを二年前の統計でもって示しておるのであります。一番最近の統計でもって、これはILOの資料でなくてもけっこうでございまして、あるいは国連の統計年鑑等の資料もございますけれども、最近の状況というものは一体どうなっておるか、おわかりでありましたならば一つお教えをしていただきたいと思う。
○大宮説明員 一番最近の数字といたしましては、やはりILO年報によりまして、一九六一年の数字がわかっております。それによりますと、製造業の一人一時間当たりの賃金でございますが、アメリカのセントに換算いたしまして、日本が三十三・九セント、アメリカが二ドル三十二セント、イギリスが七十八・九セント、西ドイツが六十九・〇セント、フランスが四十五・八セント、イタリアが三十九・五セントでございます。
○田邊(誠)委員 これは大体私の発言したのと計数的には同じでございまして、アメリカはもちろんのこと、西ドイツに比べても日本は半分以下、フランス、イタリアに比べてみても下位にあるという状態でございます。従って、現在におけるところの日本の賃金の水準というものは、残念ながら池田さんが、あまり数字がお得意でないようでございまして、単純に西欧に比べてひけをとらないなんということをお話しになりますけれども、西ドイツに行ってエアハルトに聞いたら、もう低賃金国でないということを言われて大へん喜んでおるようでありますが、西ドイツに比べてみても半分以下という状況でございます。おせじを真に受けて帰ってきたのでは、どうも困るのではないかと私は思うのでありまして、そういった点から、一つこれは一段と奮起を要する状態にあるのではないかと思うのであります。その他実はその中のいろいろな要素であります食糧、賃金なり、あるいは国連の統計年鑑一九六一年版によるところのカロリーの計算からいいましても、あるいは今の生活水準の一つの的確な現われであるといわれる乗用車一台についての人口につきましても、まことにこれは寒い話になって参るのでありまして、ここまで発表いたしますると、実は日本の賃金事情がさらに実質的非常に劣勢である、こうような証拠が歴然として参るのでありますから、あまり大臣に寒い思いをさせてもいけませんから、その点は一応省きますけれども、私が数字を申し上げなくても、非常に諸外国よりも劣っているという状態について、よく御検討をいただきたいと思うのであります。 私はこの際、婦人少年局長がお見えでございまするから、実は、いろいろな要素はありますけれども、その中で特に婦人の地位というものが戦後非常に重要視されて参ったのでありますが、その端的な現われというのは、やはり賃金であろうと思うのであります。そういった面で、日本の婦人の賃金というものが、男子の賃金に比べて一体どういう状態にあるか、こういうことを一つこの際、私は国民とともに検討しなければならぬと考えるのでありますけれども、もし婦人局長御存じでありましたならば、日本の婦人の賃金の平均というものが、男子の賃金に比べて一体どのくらいの割合にあるのか、またさらに、もしおわかりでありますならば、諸外国の婦人の賃金というものが、男子賃金に比べて一体どういう状態にあるか、お教えをいただきたいと思います。
○谷野政府委員 婦人労働者の賃金につきまして、最近の傾向を申し上げますと、女子の賃金は、この一両年、男子の賃金よりも増加が著しいのでございます。これは一つには、職場へ入りました当座の若い人たちの初任給が上がって参った、それともう一点は、平均賃金といたしまして、女子の職場が、比較的従来の単純作業から複雑な作業の方へ幾分ずつ進出してきている、こういう結果で、女子の賃金が男子の平均よりも幾分ずつこの一両年上がっていることがわかるのでございます。 今、男女の賃金格差につきまして数字で申し上げてみますと、全国平均といたしまして、一九六一年の現金給与での男女の賃金格差は四三・七%になっております・これは一九五七年には四一・四%でございまして、これが一番、女子の賃金が男子との差において低かった時代でございます。一九五七年には四一・四%と非常に開いていたのでございますが、最近は四三・七%になっているのでございます。やはりこれも、最初に申し上げましたような理由で、女子の職種が幾分開けたのと、若年層の初任給が男子の増加よりもきわめて多く、また、小規模の企業におきます女子の初任給が最近大へん上がって参りましたので、こういう影響で、平均といたしまして男女の賃金格差を狭めているような傾向があるのでございます。 そこで、第二の御質問でございます男女の賃金格差を国際的に比較いたしてみますと、これは国際比較の年次がばらばらで大へん恐縮でございますが、時間当たり、フランスにおきましては一九六一年が八四・七%、西ドイツが週六一・八%、イギリスが週五〇・七%、オーストラリアが週七一%、デンマークが時間で六六・七%、それから日本が月四三・七%でございます。男女の賃金格差からいたしますと、日本の女子の平均賃金は諸外国から比べてまだ非常に低いということが、この表からは見られます。
○田邊(誠)委員 今お話のありました中で、女子の賃金は非常に著しく増加をしている、特に初任給が上回ってきたというお話は、傾向としてはやはりそういう傾向にあると私は思います。非常に喜ばしい傾向であろうと思いますけれども、しかし結果として見た場合には、残念ながら日本の賃金というのは、諸外国に比べて、婦人に対してその地位を的確に約束をしてくれておらないという状態でございますから、この点は非常に残念な状態でございます。私の資料によりますならば、日本の女子の賃金は男子に比べて四三%でありますが、一九六一年度の場合に、フランスは九一%、西ドイツは八五%、イタリアは八〇%になっておるという、こういうことも実はあります。大体趨勢は同じでありましょう。私はこの女子の賃金を取り上げましたのは、今婦人局長のお話の中に、小規模の企業の賃金が非常によくなってきたというお話がございまするが、これも一つの傾向として以前よりはよくなったことは事実でありますけれども、あとで全般の中でお伺いいたしますから、特に女子の賃金が、全体的な企業別の賃金格差の中で著しくよくなっているという例がございますならば、一つ具体的な例をお示しいただきたいと思うのであります。あとでけっこうでありますから、御検討をいただいておきまして、婦人の賃金というものが、やはりまだまだ外国に比べてみた場合に非常に劣悪な状態にあるということは、これはやはり日本の賃金の質的な面、内容の面からいって、非常に悲しむべきことではないかと思うのであります。やはり同一労働同一賃金、ないしは婦人においても企業の中におけるところの地位を与えますならば、それに見合うところの賃金を支払うべきである、こういうふうに私どもは考えるのでありまして、こういった点の認識の足らなさというものが、日本の賃金事情をレベル・ダウンさせておるところの大きな要素ではないかと思うのであります。このことは、これは婦人ばかりではございませんで、青少年あるいは社外工、臨時工等の賃金にもつながる問題でございますし、あるいは現在非常に大きな問題になっておりますところの中高年令階層の賃金の問題にも、やはりつながる問題であろうと思うのでありまして、そういう点からさらに問題を突き詰めてみたいと思うのでありますが、先ほどの大臣のお話にもあり、今の婦人局長の御答弁の中にもありました、小規模の企業の賃金事情というものが著しくよくなったというふうに言われておるのでありますけれども、私はどうもやはり、日本の経済の二重構造、特に中小零細企業が、国あるいは国と関連をするところの大企業の重圧の中でもって、きわめて苦難の多いところの企業の経営をとっておるという、こういう状況の中で、最終的にはこれが労働者の賃金にしわ寄せになってきておる、この現実の姿というものは、やはり変わっておらないと思うのでございまして、企業別の賃金の格差というものは、これは依然として現在日本に厳存しておるという、こういう事情にあるかと思うのでございます。一体小規模の企業と言いましてもいろいろとございますから、その判断にむずかしい点がございますけれども、一番小さな、いわゆる一人から四人までの企業、いわゆる社会保険の強制適用にもならないような企業の給与というものは、一体どのくらいになっておるのか、この点をまず一つ明らかにしてもらいたいと思うのであります。私は、おそらくやこの状態というものは、数字で示されるならば、その向上、上昇というようなことでなくて、現状の把握の中でもって、きわめて遺憾な賃金事情にあるということが明らかになって参ると思うのでありまして、その点に対するところの状態を一つお示しいただきたいと思います。
○大橋国務大臣 中小企業の賃金が、大企業の賃金に比べて劣っておるということは、これは各国ともさような傾向が、程度の差こそあれ、一般的に見られる現象でございます。これは普通には、大企業と中小企業の労働生産性の格差に伴うものである、こういうふうに了解されておるのでございまして、日本においても同じようなことがいわれておるのでございます。しかし、それにいたしましても、日本の格差は諸外国に比べて現実に非常に大きくなっております。ただ、先ほど婦人局長からも申し上げましたように、年々この格差が縮小の傾向にあることは、これは明らかに認められるところでありますが、数字的の問題でございますから、政府委員の方から申し上げます。
○大宮説明員 一人から四人までの規模の企業というのは、だいぶ住み込み労働者という形態のものが多うございますので、単純な比較には多少問題があるのでございますが、あえて単純な比較をしてみますと、五百人以上の規模の事業所の賃金を一〇〇といたしまして、一人から四人までの規模のところは、昭和三十二年七月のときには四一・六であったのでありますが、三十六年七月には五一・一になって参っております。
○田邊(誠)委員 三十六年のあなたの方の調査によりますと、一人から四人までの規模の企業の産業別、年令別の定期給与というものが調査をされておりますけれども、これを産業総数で言いますならば、八千二百六十七円ということになっておるのであります。従って、大企業に比べて五一・一%である、こういうお話がございまして、幾らかの上昇を示しておるといってもこれはきわめて劣悪な状態にあるわけでございまして、一万円以下のこの賃金でもってはたして満足な生活ができるかどうかは、もうこれは言わずもがなでございます。住み込み等の事情というのは、賃金が劣悪であるので、これをカムラージュするための一つの便宜的な措置にすぎないのでございまして、本来的に言いまして、家計は独立すべきものであり、それに見合うところの賃金を支払うべきでありますけれども、これができ得ないところは、実はこういった小規模企業の非常に苦しい状態があるわけでございます。大臣は、この小規模の企業の賃金の格差というものの一つの要因として、生産性の格差ということをあげられました。しかし、現在の日本の生産性の格差というのは、端的に言いますならば、いわば資本力の格差からくるものであります。私は、資本力の格差というものが労働者の賃金にしわ寄せされているこの現実の姿というものを、政府が厳粛に見詰めなければならぬと思うのでありまして、この資本力の格差というものは、いわば今や国家独占の状態にまで発展をしておるところの日本の独占企業の立場から見ますならば、集中的な国の投資というものが大企業にいっておるところが、ひいては小企業の資本力を持ち上げ、生産性を向上させ、そのことによって、大臣の言われるような賃金の上昇を見ることができない大きな要因になっておることを私どもは知っておるわけであります。そういう点で、非常に残念な状態というものがこの企業別賃金格差の中でも出てきておるのでありますけれども、私は、一番最初に取り上げました「日本の賃金事情」という、労働省と外務省との発表いたしました資料の中でもって、一々これを的確に申し上げませんでしたが、最近の賃金事情がかなりよくなっている、こういうお話も、今私が一々申し上げましたような内容を大臣が判断をされますならば、どうも少し甘い観測であったというふうに見受けられるのではないかと考えるのでございます。 そこで、いわゆる生産性の向上ということがいわれておりますならば、全体的に見た場合に、日本の工業水準というものは諸外国、特にヨーロッパの水準に比較をして一体どういうふうな工合になっておるのか。全体的に見た場合に、これが一つの標準になるというお話もございますから、論議の途中でありますけれども、この点を一つお伺いしておきたいのであります。特にその中でもって、一番比較の重点にしやすいのは重工業の比率でございますから、一体、日本の状態と西欧諸国のこの上昇の比率というものはどうなっておるのか、この点を、この際おわかりでありますならばお話をいただきたいと思うのであります。
○大宮説明員 御承知のように、日本は、特に昭和三十年ごろから技術革新を軸といたします経済成長期に入りまして、重化学工業が非常に伸びてきたわけでございます。従いまして、単純に製造業の中で、就業者ないしは出荷額の点で重化学工業が占める割合というものを取り出してみますと、日本に欧米一流国並みの比率のところまでいっております。しかし反面、日本の重化学工業は、ほかの産業と同じように規模がまだ非常に小さいものが多うございまして、重化学工業の中を規模別にとってみますと、中小企業の比率が外国の場合に比べまして圧倒的に多いわけでございます。従いまして、その中小企業が多いということが、日本の賃金の二重構造等を反映いたしまして、まだ、重化学工業全体として平均してみますと、賃金その他の労働条件におきましてやや割り引かれておるような形を示しておるわけでございます。しかし、中小企業の問題は、先ほど来先生からの御指摘があり、大臣からも御答弁がありましたように、最近は非常に著しい改善を示しておりまして、賃金その他労働条件におきましても平均よりは非常に改善されつつありますので、平均として見ましても、次第に上昇の傾向は強めておるのであります。しかし、まだ日本に二重構造があるということは事実でございまして、今後経済成長の過程において、さらに今までのような傾向を促進されることによって、さらに一段と欧米一流国並みのところに平均として、あるいは全体としての姿が移っていくのではないか、しかし現段階においては、まだまだ改善すべきものがあるようであります。
○田邊(誠)委員 日本の工業水準がどういうふうになっておるかということについても、いろいろな資料もございまするけれども、今端的に出て参りました機械、鉄鋼、非鉄金属、いわゆる重工業の鉱工業部面に占めるところの割合というものは、日本は非常に高くなっておるのでありまして、一九六一年にはアメリカの三九、イギリスの四七、西ドイツの四二、イタリアの三七に比べて、日本は五四にまで実は比率が高まってきておるのであります。従って、いわゆる日本の資本主義の量的な発展というものを側面から判断するところのこの比率の面からいっても、日本は非常に高い水準にあるということは御案内の通りでございますからそういった点で、この賃金事情の中における、あるいはインドやインドネシア、マラヤ等の低開発諸国というものと賃金の事情というものを比べることは、私は的確でないと考えたのであります。 もう一つ、婦人局長さんがせっかくおいででありますかな、先にお伺いいたしまするけれども、日本の賃金事情の中で、あるいは生活の実態の中で問題になりますることは、まだほかにもございますが、特に一つは、いわゆる単数でかせぎまくって、それで生計を維持しておるという状態ではなくて、親子、兄弟あるいは夫婦の共かせぎという状態で、いわば一家総動員の形でみな労働をやっておるということが必要な状態、こういうことでございます。一体、日本の全体の家計収入の中で世帯主勤労収入というものがどのくらいを占めておるのか、一九六一年のILO資料というものがございましょうから、これによって諸外国と比てみまして一体どういうふうな状態になっておるのか、お示しをいただきたいと同時に、その世帯主の中で、特に婦人の労働によって家計を維持しておるところの部面というものが一体どのくらいになっておるのか、もしおわかりでございましたならば、婦人局長さんからお示しをいただきたいと思います。
○大宮説明員 日本の場合につきましては、総理府統計局の家計調査によりまして、昭和三十六年の状態を見てみますと、実収入総額といたしましては四万五千百三十四円でございまして、そのうち世帯主収入は三万七千六百九円で、約八割ぐらいでございます。この場合の世帯人員は四・二二二でございまして、家族で働いておりますのが平均して一人程度はこのほかにある。それから、外国の場合には、家計調査をやっておりますところは非常にまれでございまして、またやっておりますものも、消費支出の方だけしかやっておらないというところが大部分でございますので、日本の家計調査に匹敵するような資料はなかなか得られないのでございます。二、三の、アメリカとかイギリスにおきましては、非常に古い時点におきまして、特定の層につきまして狭い範囲の調査をやりましたけれども、これは全国的な数字ではない。しかし、日本の場合に比べますと、これは家族構成にもよるのでございますが、四人世帯とか五人世帯に相当するようなところですと、日本の世帯主収入の比率の方が低い。しかし二人世帯、夫婦世帯ぐらいをとりますと、アメリカあたりの方がまたさらに世帯主収入の比率は低い、つまり奥さんが相当な収入で働いているものが多い、こんな状況のようでございます。
○谷野政府委員 総理府の統計局の家計調査の資料によりますと、都市の勤労者世帯の月間平均収入につきまして、世帯主の収入が、一九六一年の平均が三万七千六百九円でございますが、妻の収入といたしまして千二百三十四円、大体三%ぐらいのところでございます。
○田邊(誠)委員 ILOの一九六一年版の統計年鑑によりますと、いわゆる家族構成や、あるいは一つの生計の営み方や、伝統的な家族主義、こういった点の日本との違いから、一律一体にこれを判断することはいけないと思いますけれども、しかしスイスの場合は、家計収入のうち世帯主の勤労収入が占ある場合というのは九〇%以上、西ドイツの場合は九一%以上、オーストラリアの場合には八四・五%、こういう状態でありまして、今お話のありましたように、同年度におけるところの日本の場合における世帯主勤労収入というものが、全家計収入に占める割合七九・六%に比較してやはり非常に高い率を示しておるのでありまして、日本がいわゆる共かせぎでようやく家計を維持している状態というものがいまだに全的に払拭できておらない、こういうふうな工合になっておるのではないかと私は思うのであります。 時間があまりございませんから、実はその他いろいろな要素がございますけれども、省きましてまた次会にいたしますが、以上私がいろいろと申し上げましたような要素を見ましても、大臣はすでにおわかりの通り、どの要素をとってみましても、日本の賃金状態というものが諸外国に比べてよりよい状態である、こういうふうには必ずしも言えないではないかと私は思うのでございます。そこで、一体全体的に見て、賃金引上げという問題がいろいろと提議をされておる現在の時点の中でもって、日本の経済の状態やあるいは民間企業の経営の状態からいって、賃金引き上げというものが全般的に見た場合にはたして無理なものか、ほんとうにでき得ないものか、あるいはまだまだ十分その余力があり、工夫すれば賃金引き上げというものは可能なものである、こういうふうに私は思うのでありますけれども、一体大臣はこの点に対して、現下の情勢をどういうふうに把握されておるのか、この際重大な時点でありますから、明確な所見を承りたいと思います。
○大橋国務大臣 労働者の生活を逐次向上させていくという意味におきまして、賃金の引き上げが行なわれることはけっこうでありますし、また、そういう要求が労働組合からも出てくるのは当然だと思います。しかしながら、一時的に大幅な賃上げが行なわれればそれでいいというものではございませんので、将来長く、生活の水準が継続して引き上げられていくためには、やはり企業の安定ということも考えなければならぬのでありまして、その辺は、個々の企業において労使双方が、日本の経済の現状に対する十分なる認識の上で、それぞれの立場を尊重し合いながら円滑に賃上げの交渉を進められることを期待いたしております。
○田邊(誠)委員 いろいろ科学的に見た場合には、いわゆる賃金の分け前というものを一体どういうふうにすべきかということについての学者的な論議はあると思います。私は、現在日本の経営者陣営が、たとえば原料費が高い、あるいは資本の負担が非常に大きい——その中には金利が高いとかいろいろな要素があるでございましょうし、自己資金の足らないという点も強調されておるだろうと思うのでありますが、そういった点から実は企業別の利潤があまり多くなってないのだ、こういうようなことを言っておるではないかと思うのでありますけれども、しかし、私は、いわゆる企業の中における労働の分配率という面から見ましてもまだまだ工夫を要する面が非常に多いのではないかと実は思うのであります。これはアメリカ等の状態と比較にはなりませんけれども、五〇%ないし六〇%以上の分配率をかちとっておるところの西欧諸国に比べて日本がいまだに低い状態である、しかも、一九五七年の三七%に比較をして、一九六一年には三三%に下がったと、通産省の工業統計の資料によっては算出をされておるのでありますけれども、必ずしも、私は、その労働分配率が非常に低いし、また最近その率が非常に低まっておるという、こういう一つの統計の資料だけでもって問題を提起しようとは思わないのでありますが、しかし、現在の状態というものは、全体的に見た場合に、やはり経営者側の言い分だけに耳をかすわけにいかないようないろいろな要素あるいはいろいろの内容を含んでおる、こういように思うのであります。その他、もちろん物価の上昇等の問題が十分考慮されなければならない事態でございますし、企業別に見た場合には、かなりの賃金引き上げの要素を含んでおるところの企業も存在すると考えるのでありまして、これらの事情というものを的確に把握をされて、政府の中における労働賃金の問題、雇用の問題の最も的確な把握をすべき立場にあるところの労働大臣が、より高い次元でもって、より広い視野でもって日本の賃金事情というものをながめていただいて、これに対してそのつど適切なアドバイス、指導をされることを私どもは強く望んでおるわけでありますけれども、当面するところの賃金問題と関連をして、大臣のこの問題に対する決意を最後にお伺いしたいと思います。
○大橋国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、労働者の生活の安定向上ということが労働の生産性を高めるゆえんであり、このことが、また国民経済の将来の発展の基礎になることでございますから、私どもも、賃金の問題につきましては常に大きな関心を持っているわけでございます。そういう立場に立ちまして、今後とも、国民経済と切り離すことのできない賃金の問題につきましては、十分に善処を心がけたいと思います。
○田邊(誠)委員 実はその他雇用の問題、特に再雇用におけるところの賃金の状態等をお聞きしてみたいと思ったのでありますけどれも、具体的な法律案の提案等が見られました際に、さらにその推移、展望についてお伺いをしたいと思いますが、大臣のただいまの御決意というものが、具体的な事象の中でこれが適切に発揮されるように強く要望いたしまして、とりあえず本日の質問を終わります。
○秋田委員長 この際、暫時休憩いたします。 午後零時二十八分休憩 ————◇————— 午後二時七分開議
○秋田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。 質疑を続けます。島本虎三君。
○島本委員 きょうは、大臣と一対一でゆっくりと御所見を伺わしていただきたいと思います。 まず私は、直接議事録で——十月二十三日、この席で、ちょうど失業対策問題調査研究報告に関連して大臣に質問したその経過を思い出してもらいたいと思います。その一つは、この一番末尾の二行に、「最低賃金制度と完全雇用政策ならびに社会保障制度の合理的な作用がなければ失業対策の効果は期し得ないから、広くこの面についての政策の推進を図るべきである。」これが最後にあるけれども、これをトップにして、こういうような社会保障ができない以上、失対問題については打ち切るべきじゃないのじゃないか、こういう質疑を私がしているわけです。それに対して、「これを尊重いたして参りたいと思っております。」こういうように大臣は答えております。もちろん、その前には、いろいろ「社会保障の対象とすべきではないかというふうに答申も見ておるのでございます。しかし、社会保障が現状の程度でありまするならば、これを社会保障として引き取るわけにはいかないというので、やはり失業対策事業のワク内にとどめておるというような点もあるわけでございます。これらの点から考えまして」云々、こういうようになっているわけです。しかし、「これを尊重いたして参りたいと思っております。」こういうようにはっきり言っておるわけです。その次にももう一回これをはっきりしてあるのですが、尊重ということは、この政策の推進が三つとも行なわれた以後でなければ打ち切りはしない、こう解釈してもいいか、こういうことに対して大臣は「三点が完全にできなければ無理だ、こう思っております。」これは言い切ってある。私はこれが大臣の良心であろうと思って、今までいろいろと推移を見守っておるわけです。それで、社会保障の現在の状況について、完全雇用の現在の状況について、最低賃金制の現在の状況について、これとマッチする状態になったのかならないのか、これについて大臣の親切丁寧なる御所見を承りたいと思います。
○大橋国務大臣 失対事業につきましては、その就労者がだんだんに老齢化、固定化いたしつつありますし、そのほかにもいろいろと問題がございますので、各方面から、この制度の刷新ということが強く要望せられておるわけでございます。労働省といたしましては、この問題につきまして、学識経験者の意見に基づきまして、改善の構想を取りまとめますために、昨年の春以来いろいろ調査を願っておったのであります。御承知のごとく、昨年の九月末に調査研究の報告を受け取りました。その報告を基礎にいたし、さらに昨年の十月から雇用審議会に諮問をいたしまして、そして政府としての失対改善の構想を取りまとめ、これに基づきまして来年度の予算を編成し、また関係法の一部改正の必要がありますので、その改正案を今国会に提出することにいたしたわけであります。この法案は、本日の閣議で決定をいたしましたので、今明日中に提案の運びになると思うのでございます。いずれその案につきましては、また詳細に申し上げる機会があろうと存じますが、この調査研究報告の末尾に、御指摘になりましたようなことがしるしてございます。私は、最低賃金制度、それから完全雇用政策、社会保障政策、これらの一そうの向上発展ということが、むろん失業対策の効果を期するために必要ではございますが、しかし、現実にあります失業問題につきまして、何ら改善の措置を講じないで放置するということは、これは不可能でありますので、現段階におきまして、これらの実情につり合いのとれました案として、改善案を考えたわけでございます。
○島本委員 今その内容について、先般の十月二十三日に大臣が答弁されたその三つの条件が、具体的に熟したのかどうかということを聞いておるのです。法案を出すか出さないかということを聞いておるのじゃないのです。大臣も御承知のように、二月五日に吉村委員が、この場所から、いろいろと各般にわたって質疑をしております。その場合に、この議事録によってもはっきりされておる通りに、最低賃金制度というものに対してはまだまだ不十分である、しかし、これからいろいろとこの方面の完璧を期したい、こういう事務当局の答弁があった。それだけではなくて、社会保障制度の問題にしても、これは十年後に西欧の現在の社会保障制度に追いつきたいというのが、制度審議会のあの池田総理に対する答申になっておる。そういうような状態で、まだまだである。それと同時に、完全雇用の点に至っては、数字をあげて具体的にまだまだなっていないという、この三つの条件について一応質疑を終わらしてあったわけです。ところが、こういう状態に対して、三つとも完備しなければこれはもう行なわないというように、はっきり前に私に対する答弁があったのと、この吉村委員に対する答弁によると、まだまだ不完全である、こういうような段階であるとこの問題に対してまだまだ手をつけるのは時期尚早である、従って、もっともっと社会保障の問題、完全雇用の問題の推進の方が先である、こうでなければ大臣の答弁とは一致しないということになる。この点に対して、だいぶ大臣の見解がずれてきたかのように思われますので、この三つの点がはっきりしたのかどうかということを質問しておるわけです。
○大橋国務大臣 御質問の要点は、ここに掲げてある三つの点が解決しなければ失対事業の刷新はやるべきではない、こういうような趣旨にこの文句を読まれておる。それを前提として今お話があったように思われますが、私は、この報告そのものは、現在の段階において失業対策事業を現状のままで続けることは不適当である、従って、すみやかに失業対策事業のやり方を改むべきである、しかし改めたからといって、直ちに失対事業の全面的効果が上がるかというと、それはこれらの三点が不完全であるから、十分な効果は直ちには期し得ないだろう、従って、将来失対の改善をやった後においても、引き続き最低賃金制度、完全雇用政策並びに社会保障制度の合理的な前進をはかるべきだ、こういうふうに私はこの文句を読んでおります。その趣旨でやっていきたいと思っておるわけであります。
○島本委員 大臣、われわれは前の議事録に基づいて的確に質問しておるわけです。この議事録によると、これは十月二十三日に私の質問に対する大臣の答弁があったのです。その答弁に基づいての質問なんです。そうすると、前に言った議事録によっての答弁は、この三つの条件が整わない以上、失対の打ち切りについては考えないと言っておるわけですから、そういうふうになった以上、今度新たに提案するということになると、三つの条件が成熟したということになるのじゃないかと考えられるわけです。私どもの方では、やはり成熟しないということは、前の二月の五日の吉村委員に対する答弁で明確になっておりますから、現在そういうような状態のもとにはそっとしておいて、社会保障の完備の方に意を集中すべきであり、そのほかの最賃の問題と完全雇用の点を、もっと事務的にも行政的にもはっきりした施策を打ち立てて、それから政治的にはっきり手を打っていくのが目下の急務である、こういうふうに今まで理解してきておるわけです。しかし、その点今明確に聞いたところが、どうも大臣は途中から急に出す方にいくようで、私どもとしては、当時の答弁とここにずいぶん納得し得ないものがありますので一その点を私は遺憾に思うわけです。
○大橋国務大臣 実はこの前私が、これらの二点が完備しなければ失対の打ち切りはしないのだろうという御質問に対しまして、その通りだと申し上げたのは事実でございます。それは失対の打ち切りということは、私は就任当時からやらないということを申しておるのであります。今私どもの考えておりますのは、失対事業の刷新、改善でございまして、これを打ち切りと言っておられますけれども、私どもは、あくまでもこれは打ち切りじゃないのだ、失対を改善して存続するのだ、こういうふうに考えておったわけでございます。従って、打ち切りはいたしませんという意味でお答えをいたしたわけでございますから、その辺を一つ御理解をいただきたいと思います。
○島本委員 この問題については議事録ににのっとってやったわけですけれども、ここに一つの事実としては、改善して存続するものである、改悪ではない。従って、ここで最後まで議論し、われわれも国民も納得するところまで行って、改善であるという事実が認められた場合に、これはなおそういうような点をあわせて、あくまでもこれは存続していくものである。もちろん、これは改悪なんか一切しない。少なくとも改悪になるのじゃないかと思われる点は最後まで議論するのだ、こういう民主的な考え方をお持ちだろうと思うのです。少しでもわれわれがこれは改悪だと思ったならば、大臣は強行はとうていせぬだろうと思っておりますが、そういうような意味で改善して存続するというように解釈しておきたいと思います。そういうようなことで議論しても始まりませんし、きょうは大臣の意向を聞くためのものですから、ここが大手を上げたけんかはやめておきます。 次の方に移ります。これも前からの質問の継続になっておるわけでございます。私どもの方としては、あの農業基本法という法律ができて以後、人口の推移というようなものに対してはまことに敏感になっております。と申しますのは、年間に二百四十三万人、このような農民の労働者への労働力の移動が、今度は計画的に明確になっておる点であるわけです。これは明確になっている以上、やはり見のがすわけに参らない。しかしながら、職業指導という面ではまず最高七万六千くらいしか考えられないという現在の状態である。これを受け入れる側、また、いろいろ指導する側から見ましても、これはやはりまだ情勢に計画自身がマッチしない。どっちへいってもこれは大へんなことになるのじゃないか、深刻な問題になるのじゃないかということをおそれる。農民の場合はそういうようになっているのです。これは、農民の場合には今言った計画がありますが、沿岸漁民やそれに類するような生活をしている人、こういうような人たちに対しては何ら計画がないわけです。ただ改善事業という名において若干の施策が行なわれておるだけで、農民と同じように漁民に対しての計画的な事業計画というものが、まず立っておらないのじゃないかと思う。そうすると、農民の場合はいいが、漁民の場合は、これはこのままにしておいていいのかという疑問が当然起きて参ります。この漁民の場合の対策という問題、これは大臣としてどのようにお考えでありますか、お聞かせ願いたいと思います。
○大橋国務大臣 経済成長に伴いまする労働人口の産業別の移動につきまして、その労働の流動性を高め、また、新しい産業分野において需要するところの技能労働力を養成するということが、労働行政の当然の使命に相なっておるわけでございます。これにつきましては、労働省といたしましても、年々職業訓練施設の整備に努めておるわけでございます。それで、この職業訓練におきましては、特に農民、漁民を区別はいたしておりませんが、その設立される地域的な配分等につきましては十分考えまして、農漁民の十分な利用を許すようにいたして参りたいと思います。
○島本委員 農業基本法があっても、漁業基本法はまだできておらないのであります。従って、この沿岸漁民を含んだ漁業人口の推移、移動ということに対しては、全然計画にも載っておらない、こういうようなことではないかと思っております。従って、この二百四十三万の労働力の移動計画というものには、漁民は入っておらない。漁民が入った場合には、これはもっともっと深刻な移動ということになってしまうわけです。これは計画自身もこれから改めておくか強化しておかないと、これは困る状態になるのではないかと思うわけであります。こういうような点について、抽象的ではなしに、率直ひそうであるならばそうである。施策をするならするでいいのですが、私は、農民と同時に漁民の方も心配のあまり、これは大臣の所感を聞いておるわけであります。この点いかがでありますか。
○大橋国務大臣 この十年間に二百四十三万の人口が工業以外の産業から諸工業へ移動していくということになっておりますが、これは農民だけではなく、第一次産業全般から流れる労働力を集計したところでございますので、漁民もこの数の中に入っているそうでございます。
○島本委員 中小企業者も、またはそのほかの不完全就業者も全部入っておりますか。
○三治政府委員 中小企業や不完全就業という関係ですが、そういうふうなものは、この前の長期計画では分けておりません。第一次産業、第二次産業、第三次産業、こういうふうな分類でございます。非常なマクロな、いわゆる全産業を一次、二次、三次と分けて、三つのマクロでやったわけでございます。従って、第一次には、いわゆる原始産業としての農林漁業が入り、それから中小商工業の方は二次、三次に分類される、こういう格好になっております。従って、不完全就業者につきましては、一次、二次、三次ともあるわけでございますから、それを特別——不完全就業者の産業再転換という問題につきましては、別に現在のところそこまで計画が細部にはわたっておりません。
○島本委員 大体わかりました。そうすると、農業基本法によるところのものには全部漁民も入っている。第一次産業に従事している者は、漁民もみんな入っておる。こういうような考え方だといたしますと、農業即漁業だと考えてもいいような結果になってしまって、農業基本法は漁業協業組合まで全部これを律するものである、こういうふうに考えても差しつかえないようにも思いますが、こういうようなことにまで発展しておりますか。
○三治政府委員 農業基本法は、農業の関係、いわゆる農家の範疇に入る方たちだけでございまして、それは違いいます。私が先ほど申し上げました、また先生が言われました二百四十三万という転換の数字は、第一次産業から非一次産業への転換人口ですと申し上げたわけであります。農業基本法による数字は、別に農業基本法の中でどれだけの農家人口が減るのだ、またこれだけ減らしていくのだというふうな計画は、詳細のやつはないと承知しております。
○島本委員 大体了解いたしました。むしろそれだけの問題ではない。入っているか入ってないかの問題じゃなくて、漁業人口といわれているそういうような人たちの現在の労働状態、生活状態というものは、一般に組織労働者や組織的な農民よりも、もっと悲惨なものがあるんじゃないだろうか。法の適用は一つもない。失業保険もない。そのほかに、いろいろな労災関係のものも何ら認められない。しかし、自分で家族と一緒に、ほんの一トンや二トンくらいの小さな船で行ってやらなければ生活もできないことになっている。あえて、経営労働者というような言葉がまだないのですが、そういうふうに言っても差しつかえないような状態に放擲されておる。これに対して労働省は全面的に法の適用を受けさして、少しでも生活の前進をはかってやるべきじゃないかと思う。現在のところでは、あまりにもほったらかされ過ぎていませんか。こういうようなことなんですが、いかがですか。
○三治政府委員 漁業関係の、ことに沿岸漁業の半農半漁的なもの、あるいは専業にしても非常に小さな船で、なりわい的な漁業をやっておられる方が各地に多くて、戦後だんだんその方たちの生活について困窮しておるわけでありますが、しかし一面、沿岸漁業でも雇用形態がはっきりわかり、しかも産業としてその地の重要な産業になっておりますところにつきましては、先ほど先生が御指摘になった、一番最初、労災保険を、イカ釣り漁とかその他沿岸漁業にも若干適用しております。最近におきましては、失業保険の方も、そういう雇用形態が何らかの形で認識できるというようなのは、いわゆる擬制適用と事務的に申しておるわけでありますが、そういう格好で逐次加入していただいております。全般的にどの沿岸漁業にもというわけにはまだ参っておりませんし、まあこれは希望によって集団的包括適用でやっておるわけであります。
○島本委員 大臣にまたお伺いいたしますが、この中で私がほんとに心配でたまらない点は、池田総理に対して総理府社会保障制度審議会会長から出された「社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」というやつ、これはもう大臣は十分御承知だと思う。これには、憲法二十五条にいうところの健康で文化的な最低限度の生活をすべての国民に保障することが、日本国憲法第二十五条によってきまっている。「これが社会保障の目的であるけれども、それを実現する手段方法は時代とともに、とくに経済構造の変化にともなってかわるのは当然である。近年におけるわが国の経済成長は著しく、それにつれて人口、就業、生活の諸状態における変動は大きい。具体的にいうならば、出産率の低下、人口の老齢化、農村人口の減少、人口の都市集中等のため、所得の格差、地域の経済力の格差は拡大して、その解消がいよいよ強く要請されるようになっている。これはいうまでもなくある程度は政府の所得倍増計画に由来するものであるから、これに対応して、社会保障についても、またそれを革新する意味において長期計画を樹立することは、政府当然の責務といわねばならぬ。社会保障のこのあたらしい計画の立案にあたって、われわれに与えられている公準は大体つぎの三項に要約される」、そして三つあげておるわけであります。これはすでに御存じの通りなんです。私としては、この三つの公準の前に現実の問題として、労働省はこれと同じ状態に対して、政治的にも行政的にも刻々と手を打たなければならない状態がずっと発生している、現在そういうような状態にあるということを十分考えなければならないということなんです。なぜこんなことを言うかと申しますと、この地域の格差ということがひどくなり、これが農民、漁民の方にも及んで一定の現在の法律のもとに発展する。都市はぐっと発展し、発展しない農村、漁村の方はほとんど疲弊してしまっておる。そうして中には、今のような状態のもとに一村全部失業対策化というような、こういうような貧困な状態に陥っている村もあるわけです。そうして春になると全部出かせぎに行って、ほとんど男の人の姿は見えないし、いるのは老人と子供だけである。こういうような状態になっておるわけです。そういうようなところに対しての社会保障の現況は、まだまだの状態です。それと同時に今度の地域格差を是正しなければならない、こういうような状態にありながら、具体的な手は、それと反対に打たれていっているような傾向があるのではないか。すなわち、そういうようなところには計画的な地域産業を興さなければならないし、具体的な社会保障を実施して購買力をぐっと高めるような状態にまでしていかなければならないことは、公準の第一のところに、はっきりこれがうたわれておるはずです。ところが、そういうようなことに対して何ら具体的な手が——ほんの少しは進んだとしても、打たれておらないというのが現状です。私どもの方としては、そういうような状態のもとに、一村全部あげて失対事業化というような状態に追い込められるということは、政治の一つの貧困であり、現在の所得倍増計画の失敗じゃないかと思っているのです。 こういうようなことに対して、労働省の方では、何より先に現在のような地域経済計画の樹立、それとともに社会保障を底の厚い深いものにして、安心してそこにたよって、安心してそのもとに産業を振興するような状態を来たすように、大臣の責任として閣議にまで持っていったりして、これを推進するのが当然の責務じゃなかろうか。これは十年たって西欧の現在の社会保障制度にまで追いつきたいという願望なんです。しかし具体的にはまだまだそこへ行ってないわけです。そういうような場合の一つとして、完全雇用が現在ないということと、ほんの少しでもいい状態で就業しても臨時工であったり、この臨時工という状態もほとんど日雇いの状態で、日々雇用の形式でこれが行なわれて、一年たっても二年たっても、全然こういう者の待遇の改善がないという状態のままにほったらかされている。完全雇用の面は、労働省が一つの責任を持って行なわなければならない行政だと思う。こういうような場合には、ほとんどどこの出かせぎでも、中小企業または失対は言うに及ばず、ほとんど不完全な身分の状態で就業しているのが、こういうような漁民のほとんどの人々のとっている態度です。これはまことに残念だと思う。私は、社会保障の前進と一緒に完全雇用の問題と、そうしてこの身分をはっきりつけてやるという問題は、現にもう、それを指導して強化していかなければならないはずの、一つの労働大臣の持っている責任だと思っているのです。これに対して、私はまことに残念なことを言って申しわけありませんが、これを堂々と反論して、そうじゃない、社会保障も完全雇用も最低賃金もこれほど前進しているのだということを、大臣の口から私はもう一回聞きたいと思います。
○大橋国務大臣 現在の段階におきましては、臨時工あるいは日雇い形式による、実質的には常用的な労働者が相当あることは事実でございます。わが国にはおのずから雇用上の慣行がございまして、常用工あるいは本工というような身分と臨時工、社外工、日雇いというような労働条件に対する身分上の取り扱いの違った慣行があるようでございまして、このことが労働市場を混乱させ、また、賃金その他の労働条件の向上の一つの障害に相なっておることも事実であると思うのでございます。労働行政といたしましては、かような形態はすみやかにこれを改善いたしまして、あるべき姿に直したいという方向に進むのは当然でございまして、労働省でもさような面にできるだけ努力をいたしては参っておりますが、しかし、従来からのいろいろな労働界の慣習は、にわかに清算できないような状況でございまして、この点はまことに遺憾に存じておるのであります。しかしながら、最近雇用事情も非常に変わって参っておりますし、私どもは、この機運に乗じましてこういった面を徹底的に改善するようにいたしたい。それには労働基準の監督の面、また、職業安定所を通じての労働力供給の面、この双方の機能を密接に結びつけまして、これによって行政指導の上においてできるだけ実効を上げていくようにいたしたい、こう考えまして、ただいま省内におきましても関係局間で具体的な方策について協議、研究をさせておるような状況でございます。
○島本委員 大臣の答弁は、ほんとうに書いておっても見ておっても、てにおはから初めりっばな日本語であって、それだけでは私としては何ら言うところのないほどりっぱなんです。ところが、いつの答弁もりっぱ過ぎて、答弁ばかりりっぱで、やっていることが一つも実がならないということでは困るのです。あなた自身は、私は尊敬する大臣ですが、これを聞いている官僚の方では、あなた自身にいいことを言わして、よそを向いて舌を出しておるような状態では、これは統制力の問題で大へんなことになる。今の答弁は、今度そのまま行政的に実を結ばせるように監督しなければならない。今の答弁はりっぱですから、りっぱなままほうっておくことはまことに残念ですから、これをすぐ実施させるようにすべきだと思うのです。そのためにももう一回決意を明らかにして、実施させますぞということだけは、この機会にはっきりしておいてもらいたいと思うのですが、この点いかがでしょうか。
○大橋国務大臣 私も、しばしば社会労働委員会で、皆様からいろいろ労働行政の現状について御批判もいただき、また、将来の方向につきして御指導をいただいておるのでございまして、この委員会における皆様の御批判なり御指導を、今後の労働行政の上に生かしていくということを、労働省ではみな一致して念願しておる次第でございまして、私がここで答弁申し上げましたことは、それぞれの局において責任を持って実施いたす気がまえでおるわけでございまして、一つ今後そういう方針で進むつもりでございますので、容赦なくおしかりをいただきたいと思います。
○島本委員 まことに感服いたしました。今の大臣答弁について、具体的に三治局長はどのようにやろうと思っておりますか、伺いたい。
○三治政府委員 まず、私の方でやり得る範囲の三十八年度の新規計画につきましては、予算、法律関係では失対の改善、失業保険の改革、それから石炭離職者に対するさらに手厚い離職者対策というのが、法案、予算では三大項目になっております。そのほか、来年度におきましては、新産業都市の指定に伴いまして、現在相当数の、各府県から、いわゆる新産業都市の指定のいろいろの打ち合わせがございます。そういうのを見ますと、今後五年ないし十年の間に、大体において労働供給の二倍半くらいの労働需要を来たすような、いわゆる新産業都市建設計画を持ってきております。そういうのを見まして、私たち、来年度におきまして地域別、産業別の雇用計画を、各地方のそういう新産業都市建設に伴う雇用計画と見合って指導し、また全体としての労働力の需要供給とあわせてやるような計画作業をやることに努めたい。これによりまして各府県が自分のところの問題としてだけではなくて、全体の雇用の需要供給関係がわかるように指導していきたいと思っております。また、そういうことによって、先ほど来問題になりました、一、二、三次間の労働移動が円滑に行なわれる、また低所得者から高所得に参るためには、やはり産業構造の高度化が必要なわけで、新産業都市その他低開発地域開発法によるいろいろの投資によって、新しい、またより高度の所得が得られる就業あるいは雇用の場に転換させていく、それがスムーズに行なわれていくような政策と真剣に取り組んでいきたいというふうに考えております。
○島本委員 基準局長どうですか。
○大島政府委員 私どもの方で関係いたしますのは、臨時工であります。先ほど大臣から申し上げましたように、臨時工の中でも、一般には業務の繁閑とか、季節労働とか、そういう関係で臨時雇用形態が存在しますことは当然なことなのでありますが、ただ、臨時工の中で作業の実態そのもの、あるいは勤務の実態そのものが常用工と同じような、すなわち臨時工という名の常用工、これが問題であろうと思います。ただ、この雇用形態そのものも、臨時工、常用工、この区別があるわけなんですが、なかんずく私どもの方で問題になりますのは、同じような仕事をしながら労働条件の差が非常にはなはだしい場合がある、こういった点が特に問題であろうと思います。すでに私どもの方でも、部分的な調査でありますが、臨時工の調査もいたしてみたのです。賃金の面あるいは時間の面、いろいろな差もあります。それから福利施設の利用状況等においても差があります。また一方、職種等によりましては、賃金等においてあながち差がないという職種、産業等もございます。要するに、臨時工という名のもとに労働条件の格差をつけようという悪意のものについては、やはり公平の見地からいたしまして是正して参るべきものだと思っております。これが直ちに基準法違反という問題ではございませんが、やはり労務管理の近代化、労働条件の向上、こういった一般的な政策の中で逐次、ただいま大臣から申し上げたような方針で進みたいと考えております。
○島本委員 それで大臣、大体わかりましたが、その中で地域格差から生ずるところの半失業者、こういうふうな人たちが現在の港にはずいぶん多いような状態を現出しております。それで港の場合には、失対の身分のままで雇用され、、日々更新か一週間、二週間更新と、こういうようにやって直行するというような形態がとられる。しかしながら、いつもこれは失対の労務者であるということになっておるわけです。こういうような問題については、これはまことに重要な問題であるので、去年この解決のために総理府に港湾労働等対策審議会をつくって、船込みの状態や、こういうような労務者の問題だとか、いろいろな問題解決のためにこれを発足さしてあるはずです。そしてそこでは、港湾労働法というものを、その必要によって調査の上ですぐ立法化するかどうかも検討することになっておったわけです。こういうような問題は、不完全労働者というか、就労者といいますか、現在のような状態の身分を完全にするための、港湾に限っての一つの特殊性かもしれませんが、りっぱな一つの構想だと思っております。これができ上がってから、全然そういうようなこともなければ、その結論がどうなったということも聞いておらないのですが、現在まで第六回まで行なわれているかのようにも聞いております。その間においてこういう問題について十分審議されましたかどうか、港湾に働く労働者の身分の安定の方策について立法化を促進されておりますかどうか、こういうような問題について、大臣の高邁なる御答弁を承りたいと思います。
○大橋国務大臣 港湾労働につきましては、一昨年あたり非常に労働力の不足が訴えられまして、それを契機にいろいろ港湾労働の実情を調べて参りますと、港湾労働の需要が不安定である、それからまた、港湾労働に関する労働基準がなかなか適正に守られておらない、こういったいろいろな欠陥が痛感されまして、これらを総合しまして港湾労働の根本的な保護、改善策につきまして審議いたしますため審議会が設けられたわけでございます。労働省といたしましては、この審議会は二カ年間に十分な調査をして結論を出すことになっておるそうでございますので、できるだけ労働の面から協力をいたしまして、りっぱな答申ができるのを待っておるような状況でございます。その答申ができましたならば、それに基づきまして港湾労働についての抜本的な改善策を実施いたしたいと思っております。
○島本委員 ことに、大臣は御承知のように、前大臣の福永さんは、この問題については明確な答弁をしておるわけです。この中で取り上げて、結果によって港湾労働法を提案いたしますというところまでいっているわけです。この結果によってということなんです。従って、この結論を待望しているのです。その経過も何も今まで聞かされておらないわけです。おそらくは第六回くらいまでもう聞いておるというふうにわれわれ聞いておるのですが、その中でこの問題について一回でも討議されたことはあるのかどうか、どんなことが討議されたのか、それさえもわれわれわからぬのですが。今のような点が討議されたことはございますかどうか、これは事務当局だけでけっこうですから、御答弁願いたい。
○三治政府委員 港湾労働等対策審議会は、毎月大体一回開いて討議されておりますが、まだ港湾労働法をつくるべきか、時期尚早か、あるいはどういうふうな内容にしたらいいかというふうな具体的な問題まで入っておりません。まだ港湾の状況全体の問題を討議されている状況でございまして、従って、港湾労働法というふうな具体的な問題はまだ出ておりません。労働省といたしましては、毎回私なりそれぞれ関係者が出ておりますが、労働関係の方はまだ審議が進んでいないといってもいいのじゃないかと思います。その理由はと申しますと、港湾労働関係の審議につきましては、今まで労働省に非公式に置かれました港湾労働対策協議会というふうな名前で、港湾労働の関係につきましては、労働関係部面からだけは相当こまかい資料、対策が出ておるわけであります。それとの関連で、港湾の全体の運営、それからそういう港湾労働の方に悪影響をもたらす状況の改善のやり方について、通産、大蔵等各省のいわゆる税関とか、荷さばきとか、出船、入り船等、港湾の利用、改善方法という面での全体のことをやっておられます。従って、これは私の個人的な判断でございますが、港湾労働等対策審議会のメンバーの方たちは、港湾労働についてはずいぶん審議されて、大体の港湾労働の非常な問題点が摘出された、しかし、その摘出された問題点を改善するためには労働対策だけではできないのだ、港全体の運営のやり方、それから船の出入りの調整の問題、税関の取り扱いの問題、そういうものを改善していかなければ港湾労働の問題は解決しないのだ、従って、それをどの程度までどういうふうに改善できるかという問題を中心に現在やっているというふうに認識しております。
○島本委員 当時来年と言っておるから、現在です。通常国会と言っておるから、ちょうど今の国会です。この国会に、できるならば法案を提出するようにいろいろと事を運びたいという意思の表示もあったようです。これでまる一年たっています。そうすると、その当時は法案を出す意思がなかったと思われましたけれども、船込みの状態や、いろいろ港湾労働が、神戸であのいろいろな非人道的な事件が起きたりすることに端を発して、これはこのままにしておいたらいけない、こういうふうなことからして、やはりこの状態の解決は港湾労働等対策審議会で十分調査し、審議し、それで法案をつくるかどうかをきめて、一年たったこの通常国会までに何とかしたいと思いますということだった。ところが、結論が出ておって作業するというならわかるのですが、まだ一回もこの問題について討議されていないということは、労働省の方からそれを言われるということになると、私は少しさびしい気がするわけです。当時事件が発生すれば、その問題を中心にしていろいろと雇用安定の問題について議論が沸騰するが、それがさめしまうと、いつの間にかまたその問題はその問題として放擲されてしまう、こういうようなことになりますと、やはりその良心はいずこにありやと疑わざるを得なくなるわけです。それまでに十分検討してやるというならば、その中で一度か、二度か、三度か、四度ぐらいは、当然検討されていなければならないと思うのです。重要でない場合は別として、これは緊急性もあり、重要性もあるからということで、総理府に港湾労働等対策審議会というようなものをつくってやっているはずなんです。それに対してまだ一回もやってないということになったら、これはちょっと困るのじゃないかと思うのですが、これは労働省は重大な決意を要するところじゃないかと思います。大臣、この点、決意をお聞かせ願いたいと思います。
○大橋国務大臣 なるほどこの港湾荷役の問題は、最近は一時より見ますと落ちついて参っております。さような関係で、この労働の審議が二の次になっておるようなことがありますと、これはまことにけしからぬことだと存じますので、私もその辺の事情をよく取り調べまして、できるだけ御期待のように、すみやかに労働に関する対策につきまして結論を出してもらうように、この上とも努力をいたしたいと思います。
○島本委員 そういうような努力を心から要望しておきます。 それと今度は、これまた事務当局でけっこうですが、現在、日本のいわゆる失対労務者といわれる人たちの身分は、正確にはどういうような言葉で表現したらいいものなんですか。これを一つ、はっきりした定義をお聞かせ願いたいと思います。
○三治政府委員 別に失対事業の就労者の身分というものはない、また、そういう者に身分がある得べからざるものだとわれわれは思っております。ただ、前の国家公務員法や地方公務員法ができたいきさつ、その後の改正のいきさつ上、失対労務者は国家公務員法上あるいは地方公務員法上特別職という名前が出ておりますが、これは別に実態的に、失対事業に就労した者の身分をそう規定したものとは考えておりません。
○島本委員 これは前に、非常勤による特別職の地方公務員ということであるというふうにそっちから答弁されたことがあったんですが、これではないのですか。
○三治政府委員 今身分とおっしゃいましたから、一般の会社、工場における本工とか職員、工員とか、そういうふうないわゆる肩書き的なものはわれわれの方は特別つけておりません、こういうことを申し上げました。ただ、今申し上げましたように、国家公務員法上、地方公務員法上特別職になる、その規定の仕方は、雇われた日に限って、その日に就労した時間において、その間法律上地方公務員の特別職である、こういうふうな規定になっておるわけでございます。いわゆる非常勤の、就労したとき、その間だけのいわゆる特別職、こういうふうな規定、法律上はそういうふうになっております。
○島本委員 そうすると大臣、これは大臣を含めて、この衆議院議員の身分はどういうふうになるわけですか。これと同じに、非常勤の特別職による国家公務員ということになるんですか、これはどういうふうになるんですか。
○大橋国務大臣 議員は、国家公務員法によりますると、今お話しの通りでございます。
○島本委員 そうすると、われわれ任期の間という一つの期間があります。日雇いにしてみれば、雇われた日に限ってという期間があるわけです。そうすると、雇われた日に限って、日雇いの場合は非常勤の特別職による地方公務員である、われわれは、当選して次に改選される機会までの間は、非常勤の特別職による国家公務員である、こういうふうになってやってみますと、長短はあり、いろいろなことはあっても、就労している瞬間的には、地方公務員であるのと国家公務員であるだけの違いしかないようになる。こういうようなことが言えるわけです。そうする場合には、現在の失対労務者に対しての石炭手当という考え方については、私はもっともっと考えてやらなければならないんじゃないかと思われる。これは今まで、ほんとうに大臣が歴代この問題に対して努力されてきた。これはわかる。それから三治局長も、この問題に対して、相当やみにもぐってまで、という言葉は悪いですが、相当努力されてきた。その結果は認めないわけではないんです。ただ、今のままにしておいてこれでいいということにはならないんじゃないかと思うわけです。国家公務員の場合や地方公務員の場合は、それぞれはっきり法制化されたものがあるわけです。しかしながら、現在の場合、それに見合う額ということにして失対の場合には考えられておるわけです。いわゆる見合う給与として出されているわけです。こういうような場合に対しては、もっともっと改善の必要があるのではないか、改善の方法をもっともっと考えておかぬといけないのではないか。むしろこれは、社会保障の面から見れば、生活保護者の面なんか、これより進歩した格好で考えられておるのですから、失対の場合には、働いておって、いわゆる限られた、一日であろうと身分がはっきりしておって、地方公務員である人たちが、やはり全然そういうようなものも考えられないし、制度としても考えられておるのかおらないのかわからないけれども、努力のあとを認めるだけでは少しさびしいじゃないか。それに対しては、このままにしてはおかれないと思いますが、大臣は、こういうような点では、北海道に参った場合には十分陳情もいただいてきておると思うのですが、これに対する御高見を拝したいと思います。
○大橋国務大臣 失業対策事業の従事者の石炭手当につきましては、確かに行政上措置する必要があると思っております。そのやり方でございますが、一般の公務員につきましては、給与はすべて法律で規定いたすことに相なっておりまするので、その石炭手当につきましても法律に明文をもって定めておるのでございますが、失業対策事業の従事者は、給与そのものが非常勤の地方公務員ではございますが、法律でこれをきめるというやり方でなく、特別の定めを各事業主体がいたすことになっておるのでございます。それにつきましては、労働省としては、おのずから一定の基準を与えておるわけでございます。その基準の中の一部に石炭手当に相当するものを含めておるのでございまして、これは最近、逐年増額しておりますが、明年度におきましても引き続き増額することに予算上措置してございます。国家公務員に比べてなかなか金額が十分でないという点もあるいはあるかもしれませんが、政府といたしましては、できるだけ必要な石炭手当に金額を近づけるように努力を続けております。
○島本委員 なるほど大臣もわざわざ北海道へ行って、その点等についてもつぶさに視察してこられておるようであります。その場合に、石炭手当を四十円にふやすつもりである、しかし、公務員に準ずるようなやり方はむずかしい、こういうことを答弁されてきておるようであります。しかしながら、これは労働省自身としても四十円にふえたという考え方、三十円から十円でもふえればふえた、これはその通りです。ところが、ほんとうは生活そのものを考えた場合には、今ごろ石炭手当毎日二十円か四十円くらいで一日暮らしておるというところは、積雪寒冷地の北海道ではほとんどないわけです。四十円くらいで石炭をどれだけ買えますかと言ったら、子供でも主婦でも、わかりません。単位が何十円じゃないのです。何千円になっておるのです。そういうような場合には、おそらくはかますに一つで何百円、こういうような段階です。それで一日働いて四十円だけ石炭を手かごに入れて買っていくにしても、一かたまりしか入らない。これでもって一家全部暖をとるというわけにはとうてい参らない額です。これだけでは、毎日もらってもそのまま生活の足しの方になってしまって、暖房用に入るかどうかさえもわからない。こういうような悲惨な状態なんです。おそらくそのままにしておいて、三十円が四十円になったのだからいいという考えに甘んじておられては、これはほんとうに血の通った行政ではないと思います。私どもの方では、こういうような問題について、前から手がけてやって参りました。大臣はわざわざこのために北海道の美唄まで行って、いろいろ調査をしてこられましい。あの山の状態を見たりしても、今スクラップになるならない、また、したしない、これでもって村が、町が、市があげて全部、もうこのまま存続さしてくれという運動を展開している。こういうような中で、一つでも山を生かすための方法を大臣も考えなければならないと思う。そういった場合は、あえて私はさっきそのために聞いたわけじゃないけれども、やはり就労している瞬間は非常勤の特別職の地方公務員ですから、そういうような人に対して、これはつぶれそうな山からでもいいじゃないですか、買ったら安く買えるのですから、それを買い占めて、そこから三トンなりの石炭を現物配給でもしてやって、せめて冬でも石炭を十分買えるような、使えるような、こういうような状態にして働かせるならば、喜び勇んで働くだろうし、いろいろ皆さんに対策を考えてもらわなくても、このままでけっこうですと言ってやるだろう。現在やれることをやらないおいた結果、今のような状態に失対労務者が追い込められているのではないかと思うのです。これでほんとうに四十円に上げてもらってありがたい、大臣よくがんばって十円でも上げてくれた、こういうように思うわけです。思うわけですけれども、それだけの額では、まだまだ予定の三分の一にもいっておりません。こういうような状態であるわけでして、もしそうであるならば、せめて現物支給、またボーダー・ライン層のスクラップになるような石炭山を救済するためにも、そういうような問題を、北海道へ行ったら知事と話し合って十分この点の検討もしてきてほしかったわけです。皆さんの方の事務系統の人たちは、こういうことを十分知っておられるはずです。こういうようなことについて、大臣は十分お考えになってこられなかったのか、山を見てきて、実除はこういうような点でもはかって山を生存させるように努めたいと思わなかったのかどうか、行ってきた感想なりを交えて一つ承りたいと思います。
○大橋国務大臣 石炭手当というものが、北海道におきましては生活上特別の意味を持っておるものだということは、十分認識いたして参ったつもりでございます。そこで、失業対策事業従事者の賃金の問題なのでございますが、現在の方法といたしましては、失業対策事業従事者は、これを日雇いの形によって失業対策事業に従事させる。そしてその稼働日の日割りの賃金として、すべての給与を一括して支払うというのが元来の建前でございまして、それに即応して、石炭手当の計算も、毎日の賃金の中に一部として含まれるようなやり方になっておるわけでございます。私どもも、この失業対策事業全般の運営の仕方につきまして改善をいたしたい、こういう考えをもちまして、今度失対事業の改善の法案を提出いたしておるのでございますが、この案が成立いたしましたならば、これに基づいて逐次改善の実をあげて参りたい。必要があれば、そうした場合において、またこの給与全体につきましても、方式などについて十分再検討もいた、逐次に、漸を追うて趣旨の達成に努めて参りたい、かように存じております。
○島本委員 それ、また一つ大臣問題になるのです。以前に私どもがやりましたところのこの失業対策問題調査研究報告というのが出されて、これがそもそものいろいろな発展の原動力になってしまって、今にしてみれば、いいか悪いかわかりませんで、こういうのはやらなかった方がよかったんじゃないかと思っておるのですが、この中で、いろいろいわれた問題がございましたけれども、山中先生が直接ここへ来てその答弁の中で言ったことは、原則と現実は違うような話しぶりで言ったのは、石炭手当も期末手当も、そのほかのあらゆるものは給与の中に全部入れて出してやって、そういうものは別に出さないのが給与の体系として好ましいと思います。その中で石炭手当も入れてしまっているのです。そういうような場合には、おそらくは現在の公務員でも地方公務員でもやっている、このやり方と全然違う方式を出してしまっているのです。おそらく、これは言ってもあまり理想過ぎるし、やろうとしても中途半端なことしかできないし、大臣としても、現在中途半端な石炭手当のこういうようなものに踏み切らざるを得ないような状態にしておいて、この失業対策問題調査研究報告なるものは、まことにもってけしからぬ報告だと思っています。しかしながら、この中でもいいものはいいのですから、いいものはうんと生かして使わなければなりませんし、せっかく金をかけてやった報告書ですから、最高限度りっぱに使ってほしいと思う。そのためには、この石炭手当の問題は、公務員並みに十分考えてやるような行き方でないとだめなんじゃないかと思います。そうでなければ、北海道の場合だけはその分を別にして、給与とプラス・アルファ幾らでもって併給にしないとだめになってしまう、こういうようなことは当然許さるべき問題でないし、一本にしていくならば、地域的に東京より北海道の方が高くなってしまって、おそらくこういうようなことは、皆さん言うべくして行なわれるような方式ではございません。従って、現在は石炭手当というものが地方公務員の中でもあるのですから、こういうものを十分考えておいてやったらいいのではないか。今まで労働省の中でも十分これを考えておったということも聞いております。原案として、百円の線までは万やむを得ない必要額であるということを認めておったということも聞いておるのです。それが四十円では、まだちょっと不足なんです。この将来に対する努力は当然すべきだと思いますが、体系の問題と別にこれは生かすべきだ、そして額を上げるべきだ、そして一括支給を考えるべきだ、こういうように思うわけですが、大臣、この点いかがですか。
○大橋国務大臣 そういう点は、十分研究すべき問題だと存じます。つきましては、いずれ失対事業の改善の関係で法案を提出いたしますから、早くそれを通していただきまして、今後の対策を力強く進めることのできるようにしていただきたい、この機会にお願いをいたします。
○島本委員 それと石炭手当は同じですか。国じだったら考えますが、大臣、同じですか。
○大橋国務大臣 とにかく全般的に改善をいたしたいと思って、その基本的な法案を出しておりますので、それに応じて逐次他の改善すべき部分も考えて参りたい、こう思います。
○島本委員 私の方は、どのようなことになっても、この石炭手当の問題は離すべきではないという考えです。おそらく大臣は、この点は北海道に行ってきて十分知ってこられたから、あえてあまり深追いはしたくはございませんが、おそらくは事務当局の方でも、この問題は別に扱った方がいいという考えで終始してこられたはずです。これに対して、将来どういうふうにしていくのだという構想ぐらいはっきりしておいてもらわないと困るのですが、職安局長の方では、こういう構想は全然ないのですか。
○大橋国務大臣 事務当局としては、いろいろ研究を進めておると思います。しかし、何分にもこの事業の遂行につきましては、予算を伴う問題でございまして、予算の積算におきましては、三十八年度では予算単価として一人一日二円を積算してあるばかりでございまして、この支給方法につきましては、十一月から四月までの間、就労日ごとに一日につき石炭手当分として四十円を、別に所定賃金のほかに付加しよう、こういうことで大蔵省と一応話し合いをつけてやっております。従いまして、三十八年度の石炭手当は、そういう趣旨で、またそういう線で実施いたすほかはございません。三十九年度以降においては、それまでに十分研究をし、その結果に応じてどういうふうにするか、これはまた予算要求までに十分考えて参りたいと思います。ただ、時間の関係を申し上げますると、通常国会に法案を出しますので、まず法案をよろしくお願いいたしたい、こういう順序でございます。
○島本委員 大臣は、どうもポイントをはずしてよくない大臣ですな。やはり山へ行ってきたのだから、山を救うための方策とあわせてこれは考えてもらえないかという質問をしているのに、自分の法律だけ通してくれればいいということばかり言って、大臣は狡智にたけてきたような感がしないでもありません。せっかく山へ行って調査してきたのですから、この山の石炭を買い占めてでも、一括して配給してやったらいいじゃないかと思われます。山が一つ救われますよ。そのために北海道の三井美唄まで行ってきたのですから、そういうような点なんか構想のどこかにございますか、そんなものは全然話にもなりませんか。どうですか。
○大橋国務大臣 金額につきましては、先ほど申し上げましたようなことで、予算の拘束がございます。支給方法につきましては、また十分に研究をいたしてみたいと思います。 ただ、せっかく北海道まで行きまして、私も今度の失対事業の改善はぜひともやるべきものだという考えを持って帰りましたので、この点も一つお察しをいただきたいと思います。
○島本委員 私の質問だけに答えてくれればいいのです。 最後に、前回の議事録にのっとって、大臣に、究明ではございませんが、聞きただしておきたいことがございます。それは時間短縮の問題で、大臣は、将来時間短縮の点についてはどうしても考究する必要があるということを吉村委員の質問に対して述べておられたわけです。それで一応済んでおりますけれども、私の仄聞するところによると、先がけをしたわけでもなかろうと思いますが、ちょうどタイミングがよかったのは、千葉県庁のあの週五日制の問題が発生して、それが閣議にかかったときに、これが違法であるというような考え方と、違法ではないという考え方とがあったということを聞いているわけなんです。これはもう労働大臣は、せっかくいい、こういうような労働時間短縮の機会があったので、はっきりした態度をお示しになっただろうと思うのですが、これに対して大臣はどういうような処置をとりましたか、一つこの際はっきりお知らせ願いたい思といます。
○大橋国務大臣 これにつきましては、閣議で結果についての報告はございましたが、違法かどうかというような問題について議論をしたようなことは、記憶いたしておりません。かりに違法だという説明があったといたしましたならば、それはおそらく地方自治法の条項から見てこの措置はまずい点があるのではないか、こういうようなことが言われておったのじゃないかと思いますが、私も最近の地方自治法をよく存じませんので、その議論に参加するだけの知識は持っておりませんでした。
○島本委員 自治法だとは思います。しかし、その際に、黒金官房長官の方では、これは違法ではないと思うというようなことで、組合側の人に答弁されたようでした。しかしながら、篠田自治大臣の方では、これははっきり違法だというようにして言われたそうです。それも私どもの方では聞いており、なお、参議院の議事録によっても、この質疑応答を私は拝見いたしました。 しかしながら、十一日に、今度何か閣議で大体十八日までにやめさせろということをきめたとかいうのですが、もしそうだとすると、その中に当然大橋大臣はおったはずですが、こういうような問題に対しては、タイミングがいいのですから、あくまでも労働時間短縮の意味——おそらく全能率を発揮して仕事をするということから、国際的な見地からしても、当然週五日制の問題に対しては踏み切って実施させるべきじゃなかったかと思うのです。大臣は、これに対してどういうような見解を示しになりましたか。そこを一つ御披露願いたいと思います。
○大橋国務大臣 違法かどうかの議論は、閣議の席上で行なわれたということは、私は記憶いたしておりません。従って、おそらく閣議外でそういう発言があったのではないかと想像いたしますが、閣議では、少なくとも違法かどうかという議論はなされなかったと思います。この問題につきましては、私は、問題が地方行政の観点から論議されておるものであって、労働行政には一応関係のない問題だ、かような認識を持ってこの問題に対処いたしておりました。
○島本委員 労働時間に関する問題である場合は、地方行政であろうと公務員であろうと、すべてこれは労働問題に関係するというふうに解釈するのが妥当だと思うのですが、これだけは全然タッチしなくてもいいという考え方は、一つの逃避じゃなかろうかと思うのです。こういうようなものに対しても積極的に労働省の意思を表明するのが、私は積極的で正しい行き方だと思うのですが、これはしなくてもいいという考え方は、逃避ではございますまいか。
○大橋国務大臣 労働行政といたしましては、労使間の話合いで労働条件がきまるのが一般でございますから、法規に触れない限りは、話し合いできまったものを尊重していくということは当然だと思います。ただ、この場合は、その話し合いの結果が、地方自治法に照らして適法でないというような点が問題になっておったのでございまして、従って、事柄は労働時間に関係ある事柄でございますが、しかし、論議の的になりましたポイントは労働行政そのものの問題ではない、こういうふうに私としては認識をいたしております。
○島本委員 これでやめます。 問題は、私はやはり大事なポイントだと思いますので、時短の問題とからめて、後刻あらためて大臣の御所見をこの場所で十分に伺い、私どもの意見を述べて十分戦いたいと思います。それと石炭手当の問題については、まことに私は不十分に受け取りました。これはもっともっと研究の余地があり、対策を立てる必要もあろうかと思いますので、事務当局に命じて、この点については、大臣の方から十分準備させておいてもらいたいと思います。これも次の機会までお預けにしておいてもらいたいと思います。私はこの問題に限ってだけは、これで終わらせてもらいます。二つだけは、この次までに延ばさせてもらいます。
○秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十三日午前十時より委員会、委員会散会後理事会を開会することとし、これにて散会いたします。 午後三時二十八分散会