社会労働委員会 第5号
- 発言数
- 123 件
- 登壇者
- 12 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1963/02/06
会議録
○秋田委員長 これより会議を開きます。 厚生関係の基本施策に関する件について調査を進めます。 質疑の申し出がありますので、これを許します。島本虎三君。
○島本委員 大臣、政務次官が来ておりますが、そのほかいろいろ関係ある水の問題、騒音の問題等もございますので、きょうは煙の問題を主にした公害の問題について大臣の所見を承りたい、こういうふうに思うわけでございます。 大臣も十分この問題に対しては、みずから飛行機に乗って研究されたりして知っておられる通り、公の害、いわゆる公害という問題が最近大きくクローズ・アップされて参りまして、昨年の十一月ごろから、これは東京その他の工業都市に発生したスモッグの問題、それからまた名古屋、あの辺の一帯では人権侵害の訴えのうちの大部分がいわゆるこの公害の問題であった、こういうような問題があるわけです。総件数が八百五十八件だそうです。石油会社のガスの臭気だとか航空会社の騒音を含めたものが二百八十八件あるそうでして、公害は人権侵害の王者として最近はぐっとのし上がってきたわけです。そういうような状態ですので、その具体策というものが今国民の間から望まれて参りました。この公害に対しての具体策というものは、大臣も十分考えなければならないと思います。その具体策がほとんどないということは悲劇だと思うのです。こういうような状態の中で、大臣も知っておるように、総理府の社会保障制度審議会からも、その点についての答申案が出されました。その答申案の中には、はっきりと、河川や空気の汚濁、騒音等に対する公害対策、蚊、ハエ、ゴキブリ、ネズミ等の駆除等の生活環境の衛生対策は著しく不十分な状態にある、この立ちおくれはすみやかに取り戻さなければならない、こういうふうにして勧告をされてあるわけです。こういう勧告を受けて立つ大臣の身がまえというものは、はっきりしておると思います。これに対するはっきりした所感をまずお聞かせ願いたいと思います。
○西村国務大臣 公害、なかんずく大気汚染の問題は、最近非常にやかましくなりました。どちらかといいますと、今までは、厚生省といたしましてはそういうものに真剣に取り組むようなことがなかったわけでございますが、だんだんやかましくなりましたので、御承知のように、各府県の条例等ではもう防ぐことができないということで、昨年ばい煙の規制法の制定を見たわけであります。そこで今後は、その規制法に基づいた政令等も出まして、法律による強化をいたして参るわけでございます。しかしながら、私は個人的な考え方としては、現在の条例でいろいろ取り締まっておってもなおかっこうなるのは、やはりどうもきめ手がないからでございまして、今のままでも行政指導をやればかなり大気汚染はよくなるのじゃないかという、私自身はそういう気持があるわけであります。従いまして、十分行政指導をやりたい。しかしその行政指導は、ばい煙の発生源が大部分は通産省でございますから、通産省がその気になってやってくれなければ困るのであります。その点は通産省と十分な協議をして行政指導をやりたい、こういうことをまず思っております。 それから法律の施行につきまして、さらにこれを強化して参って、とにかく煙を出さないように、あるいは出さないような施設をするということを考えなければならぬのじゃないかと思っております。具体的に今までどういう施策があったかと申しますと、端的に申しまして、あまりいい施策はなかったのであります。しかし、法律ができましてからだいぶん世間の認識が違いまして、今までですと、大工場は相当に設備をしまして、コットレル集塵装置その他の集塵装置を取りつけておりますが、中小企業は煙突に対して一つも設備はいたしておりませんので、中小企業のばい煙装置につきましても、ある程度安い集塵装置等もできつつありますので、今後はやはりわれわれがやかましく言っておって世間に対してPRしていけば、かなり小規模の工場でも、多少経費をかければばい煙の除去装置を取りつけられるのじゃないかと思っておる次第でございます。 もう一つ、工場以外に汚染の原因になるのは、御承知の通り自動車関係でございます。この自動車につきましては、これは所管が運輸省になっている関係もありますが、私の方からいいますれば、運輸省になっておろうと通産省になっておろうと、そういうばい煙につきましての規制は十分しなければならぬと思っております。御承知のように、自動車の取り締まりにおきましては、すでに今の法律で自動車はばい煙を出してはならぬというようになっておるわけですが、しかし、その基準もなければ、取り締まりも強化しておらないために、あなた御存じのように、やはりああいうように自動車が排気ガスを出して走るというようになっておりますから、そういう意味からいいましても、現在のままの法律でも行政措置をやれば、ある程度よくなるのじゃないか。しこうして、それで及ばないものは、工場につきましてはさらにばい煙規制法を強化していく、また自動車の排気ガス等につきましては、今後これは研究いたして、あるいは特別な取り締まりをしなければならぬじゃないかと思っております。ことに自動車の方は、どういうふうな状態であるかということを調べるために、明年度の予算で私の方は多少の経費をとりまして、東京につきましては特に自動レコーディング・メーターを取りつけて、自動車に関する限りのものは測定をし、その結果を待って、今後の施策を運輸省等とも打ち合わせをして考えたい。で、端的に申しますと、今までは施策はなかった、あまり見るべきものはなかったが、一つこれから宣伝をし、施設の方も十分やってもらい、また取り締まりも十分やってもらって、この大気汚染につきまして、少しでもきれいな空気にしたいと考えておる次第でございます。
○島本委員 大体大臣の決意はわかりました。ただ、今の中で、法律にないものを行政措置によってこの取り締まりを強化していきたいという意見がありました。その点についてはあとから具体的に質問をして参ります。ただ、それに入る前に、一つ大臣の場合に特にめんどうを見、努力してもらいたいことがあるわけです。大がい今までは、この公害というものの範囲をやってみると、十三に分けている人もあるし、八つぐらいにしている人もあるわけです。これは騒音や震動、ばい煙、粉塵、ガス、悪臭、汚水、放射線という程度にとどめておくと八つほどになる。ところがこれを、最近のように地盤沈下というようなものまで入れたり、それから騒音の中でもいろいろ種類があるものを入れて参りますと、十三、四になるようです。この公害と一がいに言っても、煙だけが公害じゃないわけです。大体これを三つに分けても、少なくとも水質汚濁の問題とこの騒音の問題と、大気汚染の問題があるわけです。こういうような問題が、すべて、これが対策そのものには決断を要する段階に追い込められてきておる。通産省の人、来ておられますか。——ことに今大臣の発表されたような意見を具体的に実施しようとしても、産業の発展という見地と国民の健康の調整の見地の両方から見た場合、どうしても産業保護の立場をとりがちになるのが、今までの内閣のやり方だったわけです。いかに国民の生命の安全を唱えても、産業の保護のためには、どうしてもそういうような問題よりも、まず大工業を育成する考え方をとっておったわけです。ここに問題があると思うのです。私自身としても、今この場に臨んで、通産省でもはっきり態度を変えなければならない時期に来たんじゃないかと思うのです。ことに最近のような新産業都市の問題も発生したり、またはコンビナートのいろいろな問題が発生して、その公害が今訴えられている状態の中では、今までの観念を全然変えられないと、これはならないと思うし、厚生大臣の今言ったようなことは実施できないと思う。これは通産省の方ではどういうふうに考えておりますか。
○柴崎説明員 通産省の公害問題に対する考え方は、ただいま島本先生御指摘いたしました通り、最近非常に公害の問題が社会問題として重要度を加えております。その状況に応じまして、ばい煙の規制法、あるいは工業用水法による地盤沈下の対策、あるいは排水の規制の問題、そういった各部面にわたりまして、関係各産業間あるいは関係の住民、おのおのの間を相互の協和ということを趣旨といたしまして、お互いに両立しなければ公害の問題は解決しないというような立場で、現在具体的な施策を懸命に実行中でございまして、御指摘のような方向で、通産省としても大いに検討しておるという段階でございます。
○島本委員 具体的に水質の問題一つ取り上げてみましても、どれだけやっているのかやっていないのか、私ども一つだけ例をあげて答弁を求めたい点がある。それは、現在のような水質二法ですね、これは昭和三十三年の十二月にできて、現在公共用水域の水質の保全に関する法律、それと工場排水等の規制に関する法律、こういうようなものができているわけです。いろいろな官庁がその中に加わってこれを運用しておるけれども、窓口担当官庁が経済企画庁水質保全課というふうになっているようです。そして今まで何をやってきたか。ほとんど各官庁のなわ張り争いばかりやっている。その結果が二十二水域にわたって仮調査をやったとはいいながらも、今まで出てきた結果は、江戸川を今度指定した、これ一つだけです。あとはまだ何も結論が出されていないと聞いている。こういうようにして、ただ調査研究だけをする。昭和三十三年以来こういうようなことばかりやっている。こういうようなことでは、まさに船頭多くして船が山へ上がってしまったようなあんばいで、こういうようなことでは、対策なんか百年河清を待つというようなものではないかと思うのです。今あなたは、これをすぐやっていきたいとおっしゃったけれども、具体的に今すぐ私の方で指摘してもいいと思うのでありますけれども、北海道では石狩川が調査中でございましょう。調査中だけれども、水産庁の方では、特別にまた魚類の関係を中心にして調査を終わっているのですけれども、調査を終わっても依然としてあなたの方の調査は終わっていないままに、今度漁民の方からは、これは大へんなものだというデータが出ている。現在これは国が六億の損害を払うべきだという、こういうような損害賠償まで起こっているのが石狩川の下流の実情だ。これに対してまだ結論が出ないのが、通産省や経済企画庁のこの調査なんです。水産庁の方では調べている。北大の学者を動員してできているのです。こういうような状態で、まだまだマンマンデーでやっている。こういうような状態でございましょう。この水質保全の問題と合わせてさっぱりやっていないままに、もう漁民は泣いて水はよごれっぱなし、こういうようなのが現在の実情じゃないですか。ただ調査して、そのあとこれをどのように規制して、漁民に対する損害なんかはどのようにして見ようとしているのか、そこまで考えが及んでおるのか、この際はっきりしておいてもらいたい。おそらくそだれけではないと思う。騒音の方も、きょうはまだ来ていないけれども、防衛庁もその通りです。これは別の機会に騒音をやりますが、これは住民が被害者ですから、厚生大臣はその被害者の代表としてこの問題を聞いておいてもらわないといけない。この騒音の問題もこれは大事な問題ですけれども、これに対して立法さえまだ出ておらないですよ。ほとんどそういうような状態で、基地住民の人権問題が発生しているのです。今度はF104ジェット機がやったその衝激波のために、子供がもうすでに病気になっている。北海道の千歳ではそんな状態が起こっているのです。それだけじゃないのです。ほかの都市でもみな起こっているのです。これに対する基地中心のデータを集めた結果、子供の進学率が約一〇%下がっているそうです。こういうようになってみたら、これもまた文部大臣の所管かもしれませんが、こういうような住民をかかえて基地立法さえまだはっきりしていないということは、これは大臣、重大な問題だと思うのです。それと大気汚染の問題です。大気汚染の問題でも、排気ガスに対しては完全に手を抜いておるということは、これはまた住民、国民の生命に対しての危害をはっきり加えているような結果が最近は現われてきているのです。この三つだけにしぼってみても、まだまだ一生懸命やりたいという、着々と効果を上げていきたいという通産省の考え方でも、法律効果どころか、具体的に立法措置さえもまだしていないような結果が現出してきているでしょう。今の水質保全の問題等にからんでも、どういうふうにするのか、この際はっきりしておいてもらいたい。
○西村国務大臣 仰せの通り、大気汚染の問題、水質汚濁の問題、騒音の問題でございまするが、最近はやはり非常にやかましい問題になりまして、またこれは徹底的に一つ防止しなければならぬと思っております。しかし、御承知のように関係行政機関が非常に多いのと、技術的に非常に研究しなければならぬことがある。とりもなおさず、日本といたしましては、非常におくれているということは一言で言えるのであります。水質の問題にいたしましても、もちろん通産省も関係しますし、私の方も飲料水となればやはり看過することはできない問題で、従いまして、今経済企画庁でそれをまとめているようでありまするが、これもなかなかわれわれが期待するようにうまくできていないのであります。いわんや騒音の問題になってきますと、今までの騒音というのは、結局市内の電車の音がする、自動車の音がする、あるいはラジオの騒音というようななまやさしいことであったのですが、今では、御指摘のようにそういうものじゃなしに、もう即時に飛行機の問題ということになったのでございますので、またこれは非常に大きい問題でありまして、とても一省でもって振り回せる問題ではございません、従いまして、私の考えといたしまして、これらにつきましては、やはり何か各省総合的な対策機関を持つということが一つと、もう一つ、やはりいろいろ技術的な問題で研究しなければならぬことが多々あろうと思うわけであります。たとえば私の方で大気汚染で自動車の取り締まりをやるといたしましても、現在の道路運送車両法においてきめられておる自動車の排気ガスを出してはいかぬということは、それは車それ自身の整備の問題として言っているので、衛生の見地からは言っていないようなわけでございます。しかし、もしこれが衛生上の非常な重大問題ということになりますれば、さらに、道路運送車両法の規定ではなしに、もっと突き進んだ法律をまた制定しなければならぬのではないか、かように思っているわけでございまして、いずれにいたしましても、皆様方の御協力を得まして、法律の制定なり、あるいはこの取り締まりの強化なりということを徹底的にやるとともに、今度は技術的な研究を非常にやりたいということを思っておるわけでございます。
○島本委員 水の問題はどうですか。
○崎谷政府委員 水質の問題について、今まで企画庁がやっておりましたことを簡単に申し上げます。 三十六年七月に基本計画ができまして、それから二十八水域を調査して参りました。その中に、今先生お話しの江戸川のほかに、昨年末に淀川、木曾川を指定水域にいたしまして基準を設定いたしました。そのほか調査の進み工合に応じていろいろな部会を設けまして、先生のお話しの石狩川、これは上流でございますが、遠賀川、渡良瀬川、そういったところをただいまそれぞれ専門委員で部会で検討していただいております。 水質の問題は、なぜおくれるかというお話でございますけれども、これは法律自体が産業の協和と衛生の向上をはかる——産業の協和と申しますと、はっきり言って加害と被害というようなことになるわけでございます。加害産業、被害産業と言うと言葉は露骨でございますけれども、加害産業と被害産業それぞれ主務省がございまして、主務省の意見はそれぞれ違って参りまして、これは各省間の争いというよりは、それぞれ正当な主張が相当展開される。その間に、水質の問題はそうでございますけれども、非常に学者の間でも議論が分かれております。最近水質をよくする設備自体が非常にどんどん新しくなり、その関係で専門委員の間でもなかなか意見が分かれております。たとえば石狩川で申し上げますならば、水生菌と加害との間に、はたしてどういう関係があるだろうか、どの程度にどうしたらいいのだろうか、これは学者、専門委員の間でも非常に争われている問題でございます。私どもとして今まで二十八水域を調査いたしましたが、残りにつきまして、どんどん部会で御審議をしていただき、指定基準を設定して参りたいと思います。さらに、ことし七水域を新たに調査する、そういうように毎年進めて参りたいと思います。
○島本委員 そうすると、大臣の答弁でわかりましたが、これは総合的窓口をつくってこれに当たらなければならない、これはその通りだと思うのです。それで総合的研究機関を設置することと同時に、この総合的な窓口もつくって、この中で公害の処理をするのでなければ、とうていこういうような問題に対しての対処はできないと思う。この点、大臣の答弁はこれで満足いたしますが、これをすみやかにつくるようにしてやってもらいたい、これをお願いしておきたいと思います。 それと基地立法の問題なんかになりますけれども、いまだこういうものがない。こういう問題も、あわせて住民の声として今後どんどん出てくると思いますが、基地住民の人権の問題にもなりますので、こういうような立法の点も、あわせて十分考慮願いたいと思うのです。 それと同時に、今まで言ったような水質のマンマンデーな調査の問題は、もう少し急いで結論を出して、そして各省間のなわ張り争いにならないように調整する窓口は企画庁ですが、こういうようなマンマンデーにならないような方法も、大臣、同時に考えておいてやってもらいたいと思います。この点については、私が言ったようにしてやってもらいたいと思うのです。大臣、よろしゅうございますか。
○西村国務大臣 十分御意見のあるところを尊重しまして、一つ研究したいと思っております。
○島本委員 それと同時に、現在こういうような公害の問題で、煙、音並びに水の問題でいろいろ紛争を起こしているところがあります。こういうような紛争を起こしているところには、公害に対する何か仲裁かあっせんか、こういうようなものの必要性が今叫ばれてきています、が、こういうようなことに対して、厚生当局は別に何らか考えがございませんか。
○西村国務大臣 大気のばい煙防止法では、その仲介の制度があったと思いましたが、水質その他については、私はちょっと存じませんが、関係の方から御答弁をいただきたいと思います。大気の方はあったと思います。
○崎谷政府委員 水質の方は、仲介制度をとっております。すでに二十件ばかりのうち、八割くらいを一応仲介制度で効を上げております。
○島本委員 ある場合には、大臣が言った煙の問題は、指定都市でなければそれがないのです。指定都市でないところにも、こういうようなことを全国的に行なっていくようにしたらいいのじゃないかと思うのです。それは指定都市以外でもこれをやるのですか。
○西村国務大臣 仲介の制度は、指定都市じゃなくて、全国だと思いますが、環境衛生局長がおりますから、もし私の答えが間違っておればいけませんが、私は、仲介制度は全国だと思っております。
○五十嵐政府委員 大臣の御答弁の通りでございまして、全国各都道府県で和解、仲介の制度はとれることになっております。
○島本委員 和解、仲裁のやつは法によってきめられておる、そのほかに、条例によってそれぞれそういうような制度を持っているところもあるわけですが、全然条例の制定のないところもあるわけです。法によるところの適用は、これは指定都市または排出基準、こういうようなものがきまったあとで、それに対するいろいろな損害の起きた場合の調停、あっせん、和解、こういうようなあっせんじゃないか、こういうふうに理解しておりましたが、現在ほとんど関係のないどこでもこれは実施しておるものである、こう理解してもよろしゅうございますか。
○五十嵐政府委員 私が申し上げましたのは、いわゆるばい煙規制法と申しておりますが、ばい煙規制法の関係で和解、仲介制度を取り上げておりますので、地域指定とは無関係に、その他の都道府県でも和解、仲介の制度をとっていく、こういうことを申し上げたわけであります。
○島本委員 その問題は了解します。 なお、大臣にもう一つ、今度は大きい問題でお聞きしたいのです。こういうふうに現在のいわゆる公害という場合は、ばい煙を含めて大きい問題になってきて、企業の問題としてもその解決は重大になってきておるのです。公害を防止する設備、こういうものがなくては企業そのものも考えられないし、考えてはいけない、こういうような社会的ないろいろな制限と申しますか、いろいろな義務というか、こういうようなものも課せられるような全世界的な状態になっているわけなんですが、日本だけは、残念ながらまだそこまではいっていないようなわけであります。しかしながら、これは企業内だけの問題として労使の問題、また経営の問題これだけで考えるべきではなくて、おそらくは公害を負担するに足るような経費も十分考えてやって、これを指導するのでなければならないと思うのです。これからの経営そのものは、そういう点を十分考えられないといけないと思う。今度の新産業都市建設促進法、こういうようなものによっていろいろ今運動をし、なおこれを進めておられるようですけれども、この法律の中で公害除去の問題をはっきり載せてありますか、ありませんか。この点、はっきりしてもらいたいと思います。
○西村国務大臣 新産業都市——新しく都市をつくっていく場合第一番に重要なことは、各地域で産業地区であるとか、工場地区であるとか、あるいは住宅地区であるとかいうその地区制度を分けるということは、これはやっておるようでありますが、工場を建てる場合にいたしましても今欠けておることは、気象観測が欠けておるのであります。従いまして、やはりその気象観測をやらないととんでもないことになりまして、風向きによって一番ばい煙の被害を受けるようなことになりますから、おそらく四日市が今非常に困っておるといいますのは、あれは水があるから四日市に工場ができたのですが、おそらく気象観測等はやっていないから、その風向きによって最も住民が被害を受けるのじゃないか、そういうような綿密なところまで考えまして工場立地をやらなければならぬ、こう私は思っておりますが、御指摘のような新産業都市においてそういう配慮がしてあるかと申しますと、あまり大した配慮もしていないように私には見受けられるのであります。この点につきましては、今後新産業都市をやる場合において、私どもの方は行政指導で十分やりたい、その他新産業都市をやる場合に、公害のみならず、私の方の関係として、交通事故等のために非常に子供さんがたくさん死ぬのでございますから、児童公園をたくさんつくるとか、ある面積をつくるとか、その他厚生行政から産業都市に対して要望を私自身はたくさん持っておるのですが、今の法律で、はたしてそういうものが満足に織り込んでおるかどうかということは、ちょっと私も自信がないのでございます。おそらくそう満足に織り込んでいないのじゃないか、かように考えております。
○島本委員 こういうような問題は、労働問題と一緒にこれは大事な問題だと思うのです。これから発生するのにこれから措置する、いろいろな法律によって措置しなければならないような国の施策の中にこれが盛られていないということになったら、これは大事な問題じゃないかと思う。この公害の問題について、これは盛られていないというのは重要なんです。大臣として、今後これに対してどういうように措置していきたい考えですか、この際もう一回、くどいようですが、はっきりしておいてもらいたいと思います。
○西村国務大臣 法律の中には、私も十分よく知りませんが、根本思想の中には、そういう衛生的にということをうたってあるわけです。しかし、その新産業都市で公害を除去するというような具体的事項は、あまりその法律の中に見受けない。根本的ないい衛生都市を築くのだということでは、抽象的にはうたってある。しかし、実際の指導といたしまして、新産業都市をつくる場合には、私はこの公害のみならず、厚生行政の上から十分満足のいくような都市をつくるようにしたい、かように思っておりますし、また今後、その法律で抜けておるところがあれば、法律の問題につきましても十分検討をしてみたい、いずれにいたしましても、新しい都市には今までのようなことはさせたくない。たとえば工場をつくる場合にも、ある程度の大きい工場であったならば、集塵装置の義務を課する。現在はおそらくそういうことまでは法律にうたってないと思いますが、今後は、ある程度のものでありますれば、集塵装置の義務を課する、その他の公害除去の義務を課するというようなことも、検討しなければならぬ問題ではないかと思っております。今の法律には、はっきりとない、かように私は理解しておる次第でございます。
○河野(正)委員 関連。公害防止についてのいろいろな要望というものが述べられておるのですが、この公害を防止するために諸施策を強力に遂行していかなければならないことは当然のことでございますが、同時に、その前提として、あらゆる角度から調査、研究というものが必要であるということは、当然考えられることです。その際に、私どもは、今日いろいろ承知しておる範囲におきましては、その調査、研究という点につきましても消極的な態度が見受けられる。私は、諸施策を遂行するその前提としては、そのための調査、研究というものは必要でございますし、その際にやはり衆知というものを集めなければならぬ。いろいろな協力者があるならば、その協力者に対して、厚生省は積極的に協力を求めるという態度でなければならぬ。ところが、私どもが承知する範囲におきましては、たとえば国立大学におきましても、研究したいというても研究費も出てこない。もちろん一部は文部省の所管でありましょうけれども、しかし、公害を防止するという建前からは、大学の機関が文部省に所属するということではなくて、やはり公害という立場から、厚生省においても積極的に協力を求める態度がなければならぬ。ところが、今日公害の問題が国民の中でも強力に論議されて参りましたので、学者の間でも積極的にこの問題と取り組みたいというような強い熱意があるけれども、ところがなかなか文部省も受け取ってくれぬし、また厚生省の所管外ということで、なかなか積極的に協力を求めてこないということを私は仄聞いたしております。こういうことで、せっかく公害問題が積極的に論議されておるわけでございますから、そういう点、大臣として今後どう処置される御所信であるのか、この際一つお聞かせを願いたいと思います。
○西村国務大臣 これに対する政府の今までの考え方も、十分であったとは申されません。たとえば私ども、大気汚染の問題について、三十七年度八百万円くらい、大蔵省もその必要性を認めまして、明年、三十八年は三千五百万円の予算に——八百万円から三千五百万円の予算になったのであります。これは三千五百万円なんて非常にけちな、ちっぽけな予算でありますが、去年に比べれば八百万円が三千五百万円になった。大蔵省としては、清水の舞台から飛びおりるようなつもりでやったのです。やはり非常に認識した結果でございまして、自動車の問題につきましてもやはり調べなければならぬということで、レコーディング・メーターを取りつけよう。しかしそのレコーディング・メーターを取りつけるにしてもどういうものがいいか、まだしっかりしたものがないと思います。従いまして、やはり研究とともにこの大気の問題は、いずれにしても公害の問題は進まなければならぬという問題が多いわけであります。それと非常に各部門にわたっておりますので、総合性を発揮しなければならぬ。現在も、水の問題につきましても相当にたくさんの研究機関がございます。これは水の管理、公私たくさんの研究機関があるが、それがばらばらにやっておる。それから大気の問題につきましても、これも世間では相当に心配をして、苦心をしておる学者たちもたくさんおりますが、総合性が一つもないわけであります。従いまして、私はそれらの方々に働いてもらって、それが行政に反映するように総合性を持たしたい。大気汚染といいますと、ことに医療問題等の方もいるし、それから工場設備のわかった方もいるし、気象観測の面の方もおります。いろいろな面の方が大ぜい寄ってその総合性を発揮してこそ、初めて効果が上がるのでございますから、予算とともに総合調整ができるようにしたいと思うのが、私の考え方でございます。どうぞ御了承願います。
○河野(正)委員 もちろん今大臣のおっしゃいましたように、総合性を発揮していくということは、私どももその必要性は十分認めます。ところが、総合性の必要はあっても、もちろん各部門における研究がなければ、積極的の推進がなければ総合性の発揮はできぬ。そこで私が今言っておるのは、大臣がおっしゃいますように、総合性を発揮するということはけっこうなことでありますけれども、各部門における研究の協力者を求めていく、こういう面の努力というものが今日まで欠けておった。実は具体的に、私のところにも大学のある教授が、実は大気汚染の問題について研究したい、ところが、今まで数十万円の私費を投じてやったけれども、もうこれ以上は財力が尽きてしまった、そこで一つ今後については何とか国の力で——せっかく研究と取り組んできておるので、これは個人の利害ではございません。国立大学の教授でございますから、せっかく大気汚染と取り組んできておるので、一つ今後は、もう自分の力が尽きておるので、国の力をかりて続けていきたい、こういう要望があるわけであります。ところが、それに対して、それならというふうになかなか出ていただけぬというところに、私がきょう申し上げるゆえんの面があるわけであります。そこで大臣のおっしゃいますように、今後そういう協力者の協力を求めたいということでございましたならば、一つ財政的にも何らかの配慮をしていただいて、そして総合性の前の、各部門における研究体勢というものを確立していただくことが必要じゃなかろうか、こういうふうに思いますので、若干具体的な問題に触れましたが、一つその点に対します御所見をお聞かせいただきたい。
○西村国務大臣 各部門の研究者の方々の研究の成果は十分一つ尊重したい。また、研究費に困っておるようなところは、それが研究に値するものでありますれば、やはり科学技術庁を通じまして研究費をその方に出してもらうということも努力しなければならぬと思います。要するに、非常に特殊な仕事でございますから、それぞれの専門家の研究を大いに生かしたい、かように考えておるのであります。全く河野さんの御意見に同感でございます。十分気をつけてやりたいと思います。
○島本委員 それで大臣、私は今までのいろいろな答弁を聞いておって、厚生省は公害の問題でも、今後腹を固めてがんばらなければならない段階だと思う。今のように、三千五百万円にこれがふえて、来年度の予算措置を講じておるということのようです。しかし、これだって、池田さんに言わせると、日本は一流国家で大国だそうですから、ほかの方の国と比べてみたら、アメリカでさえも約四十億円、千百万ドルを費やして研究しておるのです。それだのに、去年の八百万円よりふえて三千五百万円になったからと、こういうようなことでは困りますよ。これでは何のためにやるのかわけがわからなくなります。私があえて言う必要もないので、こういうことはわかっておると思いますが、公害の原因を一言で言うならば、資本主義の無計画な国土利用によって生ずるのです。だからこれに対しては、もうけを全部つぎ込んでやって国民の生命、財産を守ってもいいはずです。こういうようなことは、アメリカでさえも約四十億円もつぎ込んでやっているのに、三千五百万円でいいなんということではちょっと困るじゃないですか。もっともっとこれはがんばってもらわないとだめだし、大臣だけではない。政務次官もいるし、各局長も全部いるけれども、厚生省は、こういうような点になったら大蔵省の前で一等弱いのじゃないですか。一等だらしがないのは公害部門じゃないですか。これじゃだめですよ。こういうふうな点で一つ心機一転して、おそらく、このためにストライキをやるなら、われわれ応援に行きますから、大いにがんばってもらいたいと思う。 それと、もう一つ具体的に聞いておきたいのですが、もしそこまで決意してもらうならば、今度政府の方では、大臣は公害除去に対して、公共投資の利用を十分考える必要があるのじゃないかということなんです。いわゆる企業の公害除去施設設備、こういうふうなものに対しては、財政投融資や補助金というものを出して助成してやるほかに、住宅投資を中心にやって、今度住宅でも上下水道、清掃設備でも森林でも入るでしょう、公園や街路、病院だとか、そのほかのいろいろな施設なんかを含めて生活環境整備投資、こういうふうなものを行なって、どんどん金を貸してやってもいいじゃないですか。そういうのも一つの方法だと思うのです。これをやらない以上、やはり愛情のこもった行政だということは、また、一生懸命これを考えて大臣が実施しているということまで言い得ないじゃないかと思うのです。直接利潤を生み出さないからやらないのだといったって、間接に再生産を行なう原動力になるじゃないですか。そこを一つ考えて、アメリカでさえも現在千百万ドルも研究費を出しておる段階に、三千五百万円、この不足を補うためでもいいから、政府の公害除去のための公共投資を利用させる考えはないか、これは重大な段階じゃないかと思うのですが、ここで総理大臣に対する決意を、一つ大臣から承りたいと思います。
○西村国務大臣 たとえば大気汚染にしましても、工場の煙を出す原因になるばい煙を出さなければ、大気汚染はないのであります。ところが、それ自身の所管と申しますのは、通産省が工場管理をしておるから、それからまた、自動車の面につきましても結局運輸省が管理しておるから、自動車の整備をして排気ガスを出さないとか、そういうことに公共投資をどうこうと言うことはできませんが、環境整備全般につきまして公共的な投資をする。屎尿処理をするとかごみの処理とか、そういう全般のことにつきましては、ある部分には公共投資をするけれども、ばい煙除去について公共投資をするかどうかということは、今直ちに申し上げるわけにいきません。 いずれにいたしましても、公害というものが今後都市の発達に見合いましてますますひどくなれば、これは大へんな生活の脅威であり、また労働する環境の脅威でありますので、今のうちに十分直していきたい。もちろん今までは、日本といたしましても、そういうことにあまり関心がなかったのであります。またそれは、ばい煙の防止のために多額の費用をかけるというまでゆっくりしたことがやれなかったのでありますが、今からはそれではいけない、やはり十分生活環境あるいは労働環境をよくするために、これも産業発達のための一つの重要な前提と考えて、公害を除去しなければならぬ、かように考えることは島本さんと同感でございます。従いまして、できるだけわれわれといたしましては、どこの省であろうとも、厚生省はそれらにつきまして絶対に空気はいい空気、水は良質な水ということに対して責任がありますので、十分注意をいたしたい、こう思う次第でございます。
○島本委員 それでわかりました。 なお、今のような問題では、生活環境整備投資というようなことについて、住宅投資を中心にして強力に進める必要があると思いますが、この点、大臣がそういうふうにやるというなら、これ以上追及いたしません。 なお、今度は事務当局に一つだけ聞いておきたいと思います。それは最近の主要都市の降下煤塵の量、これがはっきりしたデータによって示されてあると思いますが、これを発表願いたいと思います。
○五十嵐政府委員 三十七年の、いわゆる厚生白書に載せました数字を申し上げたいと思います。範囲は、一月当たり一平方キロメートルについてのトン数でございます。測定年次は大体三十四年、新しいもので三十六年になっております。大体多い順序に並んでおりますが、釜石、これが三十九トンでございます。札幌が三十一、大牟田が二十八、戸畑が二十七、若松同じく二十七、八幡二十七、東京が二十三、川崎二十三、大阪二十一、小倉二十、小野田二十、宇部十八、尼崎十七、門司十五、四日市十四、横浜十四、神戸十四、名古屋十三というような状況であります。
○島本委員 外国の方はどうですか。
○五十嵐政府委員 同じ資料にあげました外国の例でありますが、同じ単位でベルリン四・八、ロンドン十一・五、マンチェスター六・四、ロスアンゼルス七・七、ピッツバーグ十六・四、デトロイト十四・八、ニューヨーク二十五・七というような数字でございます。
○島本委員 厚生白書に載っていた通りで大体間違いないようですけれども、以外に日本では、工業地帯だけではなく、そうではないと思われる方面でも、この降下煤塵の量が多いということがはっきりしているわけです。これを平均してみますと、日本が世界一になるのではないかと思うのです。日本より多い降下煤塵量を持っておる国がありますか。
○五十嵐政府委員 ただいま申し上げました数字では、ニューヨーク二十五・七というのが、外国では非常に多い数字のように見受けられます。
○島本委員 釜石が三十九でしょう。釜石の方がよけいではないですか。そうすると、日本でオリンピックが来年だというのに、これでは都市大気汚染のオリンピックをやったら日本が優勝するのではないでしょうか。釜石優勝でしょう。今白書にこういうことを出してやるということ自体が、完全に産業と結びついて協和が必要だと言いながらも、厚生省の方で具体的に手を抜いていた結果がこういう数字になって現われると思うのです。私どもの方としましては、今遠慮をする必要はないと思うのです。こういうことがスモッグの一つの原因でしょうから、こういうようなものの除去施設や、それから排気ガスの問題も重大な決意を持ってやるのでなければ、これはおそらくは厚生行政がいかに発達していっても、依然として都市大気汚染では世界一だという汚名だけは、もうぬぐうことができない結果になるのじゃないかと思うのです。私の方としては、この問題に対しては大事だと思っております。こういうものを除去する方法が、スモッグの解決策にもなりはせぬかと思います。これとあわせてスモッグに対してどういう解決策をとるか、この際はっきりお示し願いたいと思います。
○五十嵐政府委員 スモッグの対策につきましては、先ほど来大臣のお話にもございましたように、やはりこのスモッグを招来するもとになる施設に対してまず予防的に働く。スモッグの事態になってからそれに対して措置をとるということでなしに、予防的に措置するということを念願して参りたいわけでございまして、そういう趣旨で今回のばい煙規制法にその規定が置かれたものと私は承知しておるわけでございます。従いまして、十二月一日からばい煙規制法の一部が施行されたわけでございますが、なお引き続きまして地域指定あるいは排出基準の決定、なお、緊急非常事態にスモッグに対して措置をとる場合の基準等を引き続いて決定して参りまして、まずばい煙の規制から始まって、万が一非常に不幸な場合にはスモッグそのものに対して措置をとるという、二段がまえの具体的な方策を展開して参りたい、こういうふうに考えている次第でございます。
○島本委員 その具体的な手段は、法によって行なえますか、行政措置によって行なえますか。
○五十嵐政府委員 もちろん、私どもの立場といたしましては、ばい煙規制法に基づく法的な措置を根拠にしてこれを展開して参りたいわけでございますが、民間会社、事業場等の積極的な御協力なしには、この問題はなかなか解決のむずかしい問題でございます。強力な指導もこれに合わせまして、対策を講じて参りたいと思っております。
○島本委員 現在の規制法で、これは全面的にやれるというふうにあなたは考えて、行政措置でやるというなら、はっきりやって見せてもらいたいと思うのです。私どもの方では、排気ガスに対しての現在の状態——あれから除外されている大企業の火力だとかああいう発電関係だとか、こういうようなもの、これは全然煙が出ないというような想定で法律を通しておったけれども、現在の被害は、大臣も飛行機に乗って見たでしょう。これはひどいと大臣さえも新聞で発表しているでしょう。これはどこから出た煙ですか。除外されている大企業からの煙突から出ている煙にびっくりしている。火力発電所だとか、こういうふうなものをそのままにして、法によってこれはできます、行政措置によってできます、こういうようなことを言っているのでは、これはやはりそのままいただきかねると思う。はっきり申し上げまして、ここにいる皆さんの手元にも行っておるでしょう。国会図書館の方で出しておる諸外国のこれに対する対策なんかも、はっきり行っているでしょう。ほかでは、こういう問題に対しては法律によって取り締まっていますよ。ことに一等わかりやすいのはロスアンゼルスです。これはもうはっきり第一段階、第二段階、第三段階まで設けて、有害濃度、危険濃度、緊急濃度、これを測定した上で、おそらくは車をとめ、救急車以外は全部、工場もとめてしまう権限を持っているのですよ。こういうふうにして、法によって措置しておる。しり抜けと思われるような現在のばい煙規制法で、これは行政措置にしてやっている。他の方では完全な法律を持っていながらも、これによって別に特別に立法をしてやっておる。それなのに、あなたがこれによってやっていくというのは、少し現在の重大なスモッグ禍に悩む日本の国民、ことに東京なんかに住んでいる都民を前にしては、それはあまりにも軽々しい言葉ではないかと思うのです。一つこれに対して、もう一回はっきりした御意見をお聞かせ願いたい。
○五十嵐政府委員 先ほど大臣のお話の中にも今の状態を悪化させずに、よりよい方向に持っていきたいという趣旨のお言葉が再三あったように拝聴いたしておりますが、私どもも、このスモッグにつきましては、ロスアンゼルスの例もよく承知いたしておりますが、スモッグについての規定が設けられましたのは、今回のばい煙規制法の第二十一条が初めてでございまして、この第二十一条によりまして、非常緊急の最悪の場合には、ばい煙を発生するいろいろな施設に対して協力を求めなければならないという知事の義務が規定されたわけでございますが、私どもは、その事態を招く前にこれを防ぎたいということを考えておるわけでございます。そういうことを申し上げますのは、確かに最近の東京都のスモッグの状態などは望ましい状態ではございませんが、しかし、これをしさいに数字等を検討して参りますと、まだロンドンの一九五二年の事例などに比較いたしまして、ややそれに開きを持った——数字で申し上げますと、亜硫酸ガスの数字など見ますと、ロンドンのあの当時の数分の一の程度に達しておるというような状態でございますので、これをさらに悪化することなしに事前に防ぎたい、二十一条を活用するような事態を前もって防いで参りたい、こういうような考え方でおるわけでございます。
○島本委員 そういう考えもあるでしょうが、それだけかと思ったら、そうでない考えもあるそうです。というのは、今度、なるほど現在の法律によってそれを強化して、これ以上悪い状態を現出させないようにしてやっていきたいという大臣の希望もあった。しかしながら、現在その法律を実施していく都道府県の知事が責任者になる。そうなった場合、さしあたり既成工業地帯の京浜や川崎、阪神、北九州、こういうようなところを指定——まだ指定しておりませんが、指定するでしょう。そういうようになった場合、五カ年くらいは今度データをそろえるのに一生懸命やって、それから今度は排出基準をきめていきたい、そうして二年くらいは排出基準を越えてもこれは経過措置くらいは置いてもよろしい、こうしないと自由化を控えて企業が困るだろうからという配慮もあるのじゃないか。現在、そういうようなことに運営される可能性がある法律だから、それも心配だといわれておるでしょう。しかし、そういうふうにしてはとんでもないことだ、こう思いますので、おそらく私の言ったことは杞憂である、法はそういうふうに運営するわけじゃないということをはっきりさせてもらえば、今後の行政措置としてはいいと思います。今の法をそのままやっても、今言ったようなことをやろうとしても、やれる範囲がありますか。これはちょっと心配な点です。それからロンドンほどのスモッグによる被害はまだ東京にはない、こういうように言っておりますが、ないうちにこれをちゃんと防止しておかなければだめだと思います。これを、いつくるかわからないような状態について、これがこないからいいのだという考え方で安閑としていてはだめだと思います。この点は十分注意してもらって東京だけじゃないのです。日本全国でしょう。割合そういうような面で薄いといわれておる北海道、こういうような方面でさえも、厚生白書によるとこの降下塵が多い方です。こういうふうになってしまって、なるほど多いと思って調べてみたところが——北海道大学でもこれに対して十分調査研究を進めておるようです。夕張や室蘭のような工業都市のほかに、札幌市でもこれに対して重大な脅威にさらされておるわけです。あそこで二月一日、二日、三日と雪祭りがあったのですが、それを上から見るために知事がヘリコプターで行ったら、スモッグのために全然下の方の雪像が見えないというのです。見えたのは、一面に張りめぐらされた煙だけだった。これはとんでもないというのでおりてきて、これはびっくりして語っておるわけです。対策を今講じなければならないと言っておるのです。おそらくあそこに行って見た人もあるだろうと思いますが、優秀なる雪像ができて、三日間の雪祭りをいろいろ有意義にやっております。しかしながら、その雪祭りの像自体が黒いのです。まっ黒ではないけれども、黒いのです。大臣の顔ぐらいにはまだいっておりませんが、だいぶ黒いのです。北海道でさえもそういうような状態なのです。行った人の話を聞いてみますと、この雪祭りの雪でつくった像よりも、そこに二日に現われた山本富士子の顔の方が白かったそうです。こういうような状態です。そういうようなことも十分考えて、スモッグ禍というものは東京だけじゃなしに、全国をおおっている一つの公害ですから、こういう点を十分考えて対処してもらわないととんでもないことになると思います。おそらく先進国より二十年のおくれはあるでしょう。こういうようなことに対しての防止対策は、具体的にやってもらわなければならない。具体性がまだないようです。しかし、これに対して大臣の答弁がございますから、これ以上ひどくならないような対策をとりあえず講じておいていただいて、そうして今度は公害問題——おそらく、あなたの方でこの問題をひっさげて総理にいかにぶつかっても、国民全体があと押しをします。あなたはここに重大な自信を持って当たってもらたい。これだけは特に要請しておきたいと思うのです。そしてこれに対する対策の強化等も、これから十分考えておいてもらいたい。 それと豪雪でも集中豪雨でも対策本部というものができて、現にもうやっています。新潟の長岡なんか、ひどい豪雪の災害でしょう。こういうのに対して対策本部があるんです。しかしながら、これが人のからだにさわって、いっこういうような被害が起きるかわからないような、徐々にくるスモッグ、公害の被害、こういうようなものに対しては、安閑として、これから窓口を考えましょうではおそいんじゃないですか。研究機関と一緒にこの窓口をつくって、予算と同時に常設窓口によって、厚生大臣が先頭に立って、この排除の問題と、もう一つ被害を受けた人の万全を期す、いろいろの問題を合わせて、すでにこれに対する対策を持っていなければいけないと思います。これに対して、大臣どう思いますか。
○西村国務大臣 北海道の話が出ましたが、札幌市は特にひどいのであります。あれは各家庭がそれぞれ暖房を持っておって、それとちょうど霧が一緒になるからでございます。私は札幌にもたびたび行きましたが、何とか蒸気暖風をするセンター・ステーションを持てないかということを、札幌に行くたびに考えたのでございます。また、札幌に転勤になる人は、あの空気がいやでということで非常にきらうのでありますが、貧乏な国だと見えて、なかなかうまいことができないわけであります。みんな原因はわかっておるのです。各家庭の暖房が原因をいたしておる。センター・ステーションを持って、熱管理をうまくやればあんなことにはならないのです。 私はこのうち、ちょっとヘリコプターで拝見しましたが、どうも川崎等の大工場のあるところは、やはり大工場は集塵装置を取りつけてありますので、煙は多いですけれども、中小企業の集まっておるところは違うのです。中小企業の集まっておるところは、もっとひどいのでございます。というのは、やはりたき方が悪いのと、オーバー・ロードをさしておる。仕事が忙しいものだから、百トンのボイラーに二百トンのロードをかけて、むやみやたらに燃料をかけておる。ますます煙だけになっておるから、ほんとうに視界は全然さえぎられて、中小企業のところの方がはるかに悪いのであります。従いまして、小規模の熱発生装置に、何とか安くてうまい集塵装置はできないものであろうか、それができるということになれば中小企業の方々でも多少それを考えていただき、もちろん大工場は、今申しましたように、これから大きい燃料を使うところは集塵装置をつけないようなところはないでしょう。おそらく通産省もそういうように、火力発電所とかその他大工場は集塵装置ををつけさせる指導をすると思いますが、むしろ中小企業につきましても、そこまでやったらどうだろうか。また、非常にたき方の乱暴なやり方をするのは、やはり行政指導をする。総体的に申しまして、今いろいろお話がありましたが、御趣旨の点は十分わかっておりますから、私の方も今後研究をいたしていきたい。いろいろまたいいお知恵がありましたら十分拝聴いたしまして、その線に沿ってやるつもりであります。
○島本委員 それはもう十分やっていただくように心から要請いたします。 それと同時に、さっきから何回も出て、おそらくこのままにしておけない問題は、自動車の排気ガスの問題です。この排気ガスの問題にしぼって、もう少し大臣の意見を聞いてみたいと思うのです。これは経営上の問題から、企業上の問題から、おそらくは厚生省よりも通産省が監督官庁ではないかと思っているのです。この前のばい煙規制法が出たときも、やはりこういうような問題に対して、大臣からも大事な問題だという答弁があったわけです。しかしながら、この排気ガスについて、これを取り締まる方法や、これを出さないで現在車を走らせるような方法はないのかあるのか、あるならばそういうような施設を今後取り入れさして、この排気ガスをまかせないような方法を取り入れる意思があるのかないのか、この点について具体的に一つ考えを伺いたいと思います。
○西村国務大臣 自動車につきましては、さいぜんもちょっと触れましたように、道路運送車両法にちょっと、排気ガスを出してはいけない、こう書いてあるだけでございます。その他それのきめ手がないのであります。その意味は、車両の検査を十分よくやれという意味で車両法がいっておるのであります。従いまして、それが衛生上の見地からどういうような程度とか、あるいはそのほか車両の整備の問題にしましても、具体体的にその基準というものが示されておらない。ところで、それは車両そのものに投資をすれば、ある程度これは可能であろうと思うのですが、そこは経済とのにらみ合わせになるわけでございまして、あなたが御指摘のように、車両工場、自動車工場を管理しておる通産省あるいはその運営に当たっておる運輸省、こういうようなところと十分打ち合わせをして今後検討しなければならぬと思いますが、なかんずく車両整備をやる、それの監督官庁は運輸省であります。今でも車両整備を十分やってくれれば今ほどではなかろう、それが、これはどういうふうになっておるか私も詳しくは知りませんが、検査に手心を加えておるわけではないでしょうけれども、やはり検査が十分でないからあのような排気ガスを出しておるのではないか。しかし、私の方といたしましては、ただ何となしに悪いと言っておってもいけませんので、来年度は特に自動車の排気ガスにつきまして多少の予算をちょうだいいたしましたから、東京都におきましては、適当なところを指定しまして、そこにおいて自動直の排気はかくかくのごとく毎日なっておるということを日勤記録計でもってとりたい、しこうして後に、一つ自動車の排気につきましては根本的に関係各省と打ち合わせをしてみたい、かように今の段階では考えておる次第でございます。
○柴崎説明員 排気ガスの点につきましては、自動車の車両の数と運転の方法とそれからエンジンの構造と、大きく見まして三つ解明すべき点があるわけでございます。車両の数と運転方法とにつきましては、道路運送車両法、これは運輸省の所管でございまして、運輸省の方でしかるべく御検討を進めていただいておると思いますが、エンジンの構造につきましては、特に二次燃焼装置といいますか、排気が出る段階におけるアフター・バーナーをどういう形でつけたらいいか、これによってガスの完全燃焼をはかるというようなことで、通産省の工業技術院で現在研究を進めておる段階でございますが、いろいろむずかしい問題がございまして、まだ結論を得るに至っておりません。かりにその研究ができ上がりましても、設備といたしまして大体二十万円ないし三十万円、一台当たりその程度かかるのではないかというような見通しがございますので、その辺をどういう形で消化していくか、これも経済的に非常に検討を要すべき大きな問題だと思います。
○島本委員 おそらくは、そういうような経済的な問題で暗礁に乗り上げるのではないかと思うのです。大臣も言っておるように、このスモッグの問題に限定してみても、大きい粉塵はとれるのですね。機械でやったならば、こまかいのもある程度とれるのですね。しかしながら、亜硫酸ガスが発生するような、こういう目に見えないガスを発生しているやつだけは、現在の施設ではどうしてもうまくない。自動車の場合は、一基に二十万円か何かかかるそうですね。そうだとすると、亜硫酸ガスの発生を制限するというところに基本を置いて、今後は自動車にはそういうものをつけなければならない。それでは中小企業の場合は困るだろうから、その場合は国の方で適当に考えて、補助してやるなり、またいろいろの財政投融資の面も、特別に環境衛生の問題と考えてめんどうを見てやるなり、いろいろの方法を講じでやれないわけはないと思うのです。これに対する具体的な対策をもう持たないといけないし、厚生省では一部持っているのじゃないかと思うのですが、私の方は、そういうようなことは厚生省のデータによって今質問しているわけなんですから、これはあるはずです。とめればとめるだけの、やめさせればやめさせるだけのデータが整っているはずです。しかしながら、どうしてなんですか、これは通産大臣が強いせいで、厚生大臣が弱いせいなんですか。どうもせっかくあるのに、これからまた研究してみないとそれに対する措置ができないという考え方、これだったら、おそらくとんでもないのじゃないかと思うのです。研究するのはいいと思うのです。しかしながら、もうデータは出ているのですから、そのデータによって、早くそういうような措置をするように進めてもらいたいと思います。いろいろとやるうちに集塵装置、こういうようなものを使ってやると九九%ほどとれるそうじゃないですか。それでもとれないような浮遊粉塵用の集塵装置、これでやったならば残りのものの半分以上もとれるのだ、若干は逃げる。しかしながら、どうしてもしょうがないのは亜硫酸ガスの発生である。目に見えないこんなものはどうしようもない。こういうようにやってみますと、大事なのは自動車である、近東方面からやってくる重油を使ったりした火力発電である、こういうようなものによるところの被害なんだということを聞いた場合に、法の盲点をちゃんとついてしまっているのです。これじゃうまくないのです。大臣が幾らさか立ちになっても、これじゃうまくないのです。それだったら、これから研究するのじゃなくて、もうわかっているのだから、そのデータによって、予算措置をするとか規制措置をはっきりここに出して、もう再び東京の空がこういうふうに雲ることのないように、雪祭の像も白くはっきり見えるような措置を講じたらいいと思うのです。そういう重大な決意をする前に、データは厚生省の方で関係方面に整っているのです。これから一年か二年研究してからじゃなくて、今からではもうおそいのですから、ロンドンの二の舞を踏まないために、これに着手してはどうかと思うのです。データはほんとうに不足なんですか、これは事務当局から伺います。
○五十嵐政府委員 排気ガスの問題につきましては、具体的な防除装置の点などにつきまして通産省からもお話があったわけでございます。厚生省におきましても、それは保健衛生上の重大な問題でございますので、三十五年以来三年間引き続きましてその測定方法あるいは測定器具等の研究を続けて参ったのであります。その結果、先ほど大臣からお話のございました自動測定器の設置というようなところまで参ったわけでございます。これを具体的に規制していくのにどこが欠けておるのか。記録が不備なのか、あるいは財政問題なのか、あるいは技術的な研究問題なのかということでございますが、私どもの理解いたしておりますところでは、これは主として技術的な問題がおくれているというところからまず考えていかざるを得ないと思います。世界各国の排気ガスの規制の状況を見ましても、自動車の非常に普及しておりますアメリカにおきましても、一九六四年から自動車につきまして排気ガスの規制のための装置を取りつけるというような規定をいたしておるわけでございまして、私どもは、技術的な研究あるいは排出されたガスの種類、量等の測定等とも相待ちまして、できるだけ早い機会にこれを規制していくという方向に向かって努力して参りたい、かように考えております。
○島本委員 現在、ばい煙規制法によって指定地区がきまっていますか。
○五十嵐政府委員 これは、ただいま資料を整備して検討中でございまして、この三月には指定できるようにいたしたいという予定で進めております。
○島本委員 そうすると、大体どの方面が内定されておりますか。それをここで発表できませんか。
○五十嵐政府委員 私どもが今主として検討いたしておりますのは、東京から川崎、横浜にかけての京浜地帯、それから大阪から神戸にかけましての阪神地区並びに北九州の工業地帯、これを中心に検討いたしております。
○島本委員 四日市、名古屋、あの方面は入らないのですか。
○五十嵐政府委員 四日市等の石油コンビナート関係の地区、あるいは宇部その他につきましても、ただいま資料を検討いたしておる段階でございまして、まず、とりあえず第一次的に先ほど申し上げました三地区を予定いたしておりまして、第二次、第三次というふうに、逐次資料の整備次第これを追加して指定していくという方法をとりたいと考えております。
○島本委員 結局、排気ガスによっていろいろな東京ぜんそくとか横浜ぜんそくとかいうのがはやって、駐留軍の人は本国に帰ったらなおってしまったというようなこともいわれておるのですが、東京でもそういうようなのが発生しておる。目に見えるものに対してはそういうふうにしてすぐやっていくが、目に見えないこういうような亜硫酸ガスの被害、ことに石油コンビナートの場合はこれが一番多いんじゃないですか。こういうような、四日市の場合はこれから研究していく——もうすでに四日市ぜんそくなんかも発生しており、その治療費として、あそこでは一人五万円か六万円くらいずつかかるそうじゃないですか。こういうものをそのままにしておいて、目に見える方だけやっておいて、これで対策は十分ですか。おそらく、こういうような方面をもっともっと先に考えてやるべきではないかと思うのですが、これだけあとにしなければならないという理由は特にあるのですか。
○五十嵐政府委員 最初に申し上げました三つの地区につきましては、すでにその地方で条例等の制定もございまして、長年こういった問題について資料を収集して参っておりますので、あらためて私どもが新しく調査をしてこれを指定するというふうな必要のないほど資料がそろっているわけでございますが、四日市等、最近非常に発達して参りました産業都市におきましては、先ほど申し上げております三つの地域に比べまして、まだまだ資料が不足いたしておるような状況でございます。これをおそくするという意味でありませんけれども、できるだけ早く、新年度の予算にもその予算を、わずかでありますが、組み込んでいただいておりますので、これによって調査をして、追加して指定するという方法で進みたいと考えております。
○島本委員 そういうような目に見えないものの方はできるだけ急いでやった方がいい、それが親心だと思います。ことに被害の発生の度合いが目に見えないだけに、これは強い、高いということもはっきりいわれておりますから、そういう点、十分考えておいた方がいいと思います。そのほか基準なんかもあると思うのですが、その基準は何に準拠してこれからきめていくんですか。
○五十嵐政府委員 ばい煙の排出の基準につきましては、従来各国の例を見ましても、わが国の条例を見ましても、リンゲルマンの濃度表というふうに目で見て煙の黒さで判断するという基準が使われておりますが、私どもがただいま検討いたしておりますのは、一立方米の煙の中にどういう物質がどの程度含まれて、どの程度以下でなければならないというその量的な基準をきめまして、それを政令で定めていくというふうに考えているわけであります。
○島本委員 その対象は、住民にしていますか労働者にしていますか。
○五十嵐政府委員 これはもちろん一般の市民を対象にした基準を考えているわけでございます。
○島本委員 その中で、労働衛生関係または安全衛生規則とか、こういうようなものを参考にして、ただ単に働いているだけの八時間ぐらいの例をとって考えるようなことは、全然あなたの方ではしていないと思うのですが、その点はっきり、私ども安心してよろしゅうございますか。
○五十嵐政府委員 御指摘の通りでございまして、労働衛生の立場とは別個に、国民の保健衛生の立場からこれを考えて参りたいと存じております。
○島本委員 それから、現在こういうようないろいろな被害が発生しておりますが、たとえば四日市のぜんそく、横浜のぜんそく、こういうようなぜんそくが多いような被害に対して、何か行政指導をやっておりますか、おりませんか。
○五十嵐政府委員 被害を防止するという意味では、従来の条例その他によります指導等によってその対策を進めておるわけでございますが、なお私どもの直接の予算関係では、厚生科学研究費等によってその研究調査を実施いたしております。
○島本委員 特にこの際、大臣にお聞きしておきたいのですが、いろいろと公害によって起こる被害というようなものは、現在のところでは訴えようがないし、訴えても長くかかってどうにもならないし、これが産業上の一つの宿命的な見方からしてあきらめが多いし、また、こういうような病気にかかっていつか侵されているからだのような場合には、自然と、だれにも訴えないでしまうというような場合が多いわけです。これは大事なことなんです。こういうような場合には、おそらく企業に対してそういうような状態を十分調査した上で、はっきり全額補償をさしてやるような、そしてはっきりしたデータが出ない以上だめだと言っても、そういうふうになっているのですから、現在病人がたくさん出てしまってどうにもしようがない、こういうような場合には、ある程度大臣権限によって、これは金額の補償そのほかのいろいろな必要な措置、こういうようなものは当然とってやるべきじゃないかと思うのです。公害が現在発生しておってどうにもならない、個人負担になっているような、こういうような病気に対して、どういうように大臣は考えて処置しようとしておりますか。
○西村国務大臣 むしろ私より労働大臣の方の管轄になるのじゃないかと思います、労働によって、いろいろそういうような病気だとかなんとかいう災害が起きる場合でございますから。しかし、そういうことのないように私のところは努めたいということでございます。そのこと自身は労働大臣の方のことじゃないか、かように思っております。 さかのぼりますけれども、今いろいろ政府委員から指定のことがありましたが、私は早く指定をしなさい、それでもう悪いところというのは、今五十嵐局長から言いましたようにわかっておるのだが、第二の指定として、これから新産業都市になるようなところは早く指定して、そうならぬ前にやはりすべきじゃないか、そういうようになったら大へんで、初めの工場設備のときに指導すべきだ、こういうことを私は言っておるのですから、早くやって、そして第二段、第三段——四日市のごときはその例でありますし、今後工場がどんどん建っていこうというようなところは、第二次指定を早くやれということを言っております。ただ、基準の問題で多少おくれておる。基準の問題は、今申しましたように、ばい煙、すす、これは容積内の重さでもってやろう。そういう場合、通産省と厚生省と多少意見が違うと思うのです。通産省の方は、これはすぐ製品にかかってくる、設備投資をすることの製品にかかってくる問題でございます。それから、御指摘のありました亜硫酸ガス、これをどうして防ぐか、幾らにきめるかということによって、今後工場に非常に負担がかかってきます。私の方は、極端に言いますると、ひどければひどいほどいいわけです。よく取り締まれば取り締まるほどいいわけです、健康から言いますれば。しかし、それはやっぱり今度は、工場につきましてはおのずから限度があります。その辺の多少の調節が要るわけでございますので、その辺で今検討いたしております。いずれにいたしましても、指定にいたしましても基準にいたしましても、できるだけ早くやる、こういうことでございまして、お話のありました工場の労働者等が、そういうことによって働けないようになったらどうなるか、労働補償はどうなるのかということにつきましては、これは私は、そうしないようにということでございまして、労働大臣の方の所管じゃないかと思われますので、さように御了承願いたいと思います。
○島本委員 排気ガスの問題に対しましては、ほんとうに大臣もほぞをきめてこれに対する措置をしてもらいたいと思う。それに対してもう一つ大事なのがあるのは、今までの現行法には罰則があまりないのです。あまりないといったって、あるくらいなら、施設をするより罰金を払った方が安くつくというような考え方を持っている人も、ないわけではなかろうと思います。将来は、そんなようなことになってはとんでもないことです。おそらく今度は、この罰金の問題に対しては、やはり罰金なんかということじゃなしに、大臣も、規制法の罰則について、あまり罰金が少ないがために措置を怠るようなことがないようにするためには、操業停止くらいにして——二カ年などということを考えないで、すぐ操業停止して強化するぞ、こういうような考えで、通産省とよく打ち合わせてこの完璧を期してもらいたいと思う。そうでないと、被害者が意外なところに現われてきます。交通整理の巡査です。最近、交通整理の巡査が排気ガスの中毒でだいぶからだが弱り、現在の交通整理の方法も、それによって若干変わったと聞いている。これに対して公傷と見るのか何と見るのか、まだ中でははっきりきまっていないそうです。職業病とはもちろん見てないようです。しかしながら、こういうような状態にしておいて、これは排気ガスの中毒であるということがはっきりしていながら、そのままにほったらかされている。交通整理の巡査の場合は、厚生省としては、もっともっと考えてやらなければいけないのじゃないかと思います。こういうような排気ガス中毒で困っておる警察関係の交通整理の巡査についての、特に調べたデータや現在困っているような事態がありましたならば、この際発表してもらいたいと思います。
○五十嵐政府委員 私どもの手元にありますいろいろなデータによりますと、やはり自動車の排気ガスによりまして非常に街路の空気がよごれておるという関係で、特に一酸化炭素の量などにつきまして幾つかの資料があるわけでございます。また、ただいま例としてお取り上げになりました交通整理の巡査の点につきましても、内勤の者と外勤の者とを比較いたしまして、一酸化炭素、ヘモグロビンのパーセントなどを調べた数字がございまして、やはり外勤の者が一酸化炭素の影響が強く出ておる、強くと申しますか、その影響を受けておるというようなデータも承知いたしておるのであります。
○島本委員 そのほかに京浜国道沿い、あの辺の排気ガスによるところの肺ガンの患者の増加ということが訴えられているようですが、これは事実ですか。
○五十嵐政府委員 排気ガスの中に出て参ります炭化水素、ベンツピレン、そういった物質によりまして、肺ガンが統計上優位の差をもって出ておるというようなことを発表いたしております学者もおるわけでございますが、これはなお今後研究すべき問題だと考えております。私どものところには、ある程度資料はそろえてございます。
○島本委員 なお、この際ですから、はっきり伺っておきたいと思うのですが、法が実施されてから今度——それぞれ以前から条例によって実施されていた自治体が相当あろうと思います。そうすると、今度は法律ができたので、法によって指定地域になると条例の効力を失ってしまう。東京都を初めとして、そういうような関係都市がだいぶあるのじゃないかと思いますが、そういうような場合には、逆に公害の関係、排気の関係は野放しになるおそれはないか。法と条例との関係について、また、都内で約一万八千本の煙突の五八%が法の規制外になる、こういうようなことをいわれておりますが、もしそうだとすると、これはとんでもないことになるのじゃないかと思うのです。条例よりも甘い法律ですから、その法律を中心にして実施し、指定してしまえば、条例は今度もう利用されなくなったならば——東京都の場合は、現に被害を見越して、知事からの申し出があるとも聞いております。条例と法の調整は完全につけておかないといけないと思うが、大臣、やっておりますか。 〔委員長退席、小澤(辰)委員長代理着席〕
○西村国務大臣 もちろん、法律が優先することは明らかでございます。ただし、目的を異にする場合には、やはりその条例の一部分が残っておるのであります。しかし、今までのように条例があって、その条例が満足に行なわれたならばこういうことにはならないのでありますが、その条例が広く取り締まることだけは書いてある。しかし、実際問題としてそれが行なわれていないということになれば、それは結局目的の達成にならないのでありますが、法律となりますると、御承知のように、これはその法律のあれに基づいてしっかりした取り締まりをやらなければならぬから、範囲等は多少狭くはなっております。おりますが、必ずしもそのために条例を全部廃止してしまう必要もない。そのうちの多少部分的なものにつきましては、条例は条例としてあってもいいのではないだろうか、かように私は思っておるのです。 なお、法律上の解釈につきましては、いろいろむずかしい問題も出るかと思われますが、もちろん、目的としましては、そのために法律ができて、かえって除外されたものが多くなるから大気の汚染がますますひどくなるのだというようなことになりますれば、法律自身のことにつきましても考え直さなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
○島本委員 局長の方ではその通りですか。
○五十嵐政府委員 ただいま大臣から答弁がありました通りでございまして、条例と法律の関係は十分調整して参らなければならないと考えております。また、趣旨、目的を異にいたしました条例は、これは制定することが可能であるというふうに私ども考えておりますので、その点、大臣のお話のございましたように、法の施行によりまして、基本的に都なら都のばい煙対策が後退するということのないように、十分都とも協議をいたしまして万全を期して参りたい、かように考えております。
○島本委員 この辺で時間ですので、終わらなければならなくなってしまったのは遺憾ですが、強く要請しておきたいと思います。それは、ふだんから私どもは警官にいじめられて困っているのですけれども、やはり交通巡査であろうとも警官であろうとも、交通整理をやって、それによって排気ガスの中毒を受けて、それによって心身がだんだん弱くなってくるような人道上の問題に対しては社会党はいつでも味方でございますから、そういうような場合には、排気ガス中毒による職業病のおそれがあるかないか、これを適用さしてやって——今度千何百人か二千人近くの人も、十分これの調査の対象になってやっておられる。東京都だけでもそう聞いておりますが、そういうような場合には、厳格に過ぎるようなことがないように十分注意して、その方面には手落ちのないように十分やってもらいたい、かように思うわけであります。 それとともに、今の公害の問題に対しては、全世界的な一つの大きい問題になって参っております。この解決は、産業の振興と不離一体のものになっている。公害の方だけをほっちゃらかしておいて、産業だけ発展すればいいというようなものではあり得なくなって参っておりますので、ここを十分考えて、それを担当する大臣の方では、今後は、予算の獲得やその他の法令の設定等については、遠慮なしにどんどんやっておいてもらいたい。そうして、ほかの国からは二十年あるいは三十年のおくれを持っているのが公害対策であると言われておますから——社会保障では、西欧の社会保障に十年で追いつくそうですね。この公害の場合は、もう二十年のおくれがあるのでありますから、これも十年で追いつくようにして、十分これを考えて実施してもらいたいと思いますが、この決意を、一つ最後に大臣から表明してもらいたいと思います。
○西村国務大臣 交通警察官のお話がございましたが、あれは、あの空気の中で、やはり健康も実際は相当に害せられると思うのです。従いまして、大気汚染のことにつきましては、自動車の排気のことにつきましても十分気をつけなければなりません。また、現にそれによってからだを悪くしたというようなことにつきましては、私の所管でなかろうとあろうと、これは十分私も注意いたします。 公害全体につきましては、さいぜんも申しましたのですが、これは勤労の前提です。労働条件の前提でございます。世間もようやくそのように認識してきたと思います。従いまして、私もできるだけのことはやりまするが、前にも申しましたように関係官庁が非常に多い。私の方は、取り締まりはやるけれどもきめ手を持っていないので、きめ手を持つようにしたい。通産省、運輸省、この公害の原因になるところの官庁がそれぞれありますけれども、しかし、通産省にしても運輸省にしても、今までのような態度ではいかないだろう、相当に認識をしていただく、かように私も考えておりますので、せっかくの御意見、十分尊重いたしまして努力をいたすつもりでございます。
○小沢(辰)委員長代理 田邊誠君。
○田邊(誠)委員 池田内閣ができてから二年半ばかりたちましたけれども、その間に、総理大臣のいわゆる施政方針の表明の中でも、あるいはそのつどの施策の発表の中でも、社会保障というのは重要な柱であるということを言われてきたのです。特に来年度の予算編成にあたっても、公共投資、減税と並んで、社会保障は三本の柱の一つであると言われてきたのでありますが、いわば最近の政治のうたい文句になっているのが社会保障であります。しかし、一体社会保障というのはどういうものであり、具体的な政治を行なう上に立って、どういうような意義を持っているのかということについては、はなはだ明確性を欠くという恨みがあるのであります。特に、現在の日本の経済がいわゆる高度に成長しておる、そうして池田さんが所得倍増計画を進めておる、これが予定以上に伸びて、まぶしいほどに日本の経済はよくなってきているという、こういう事態の中で、一体社会保障というのがどういうような役割を時の政治の中で果たそうといたしておるのか。一体、池田内閣のいうところの社会保障の確立というのは、この所得倍増計画の中でもってどういうような意味を持っておるのか。この点が明らかでありませんのは、われわれとしては、今後の社会保障の問題を論ずるにあたって、実はきわめてあやふやな観念でもって対処しなければならぬということになって非常に残念だと思いますので、この際、一つ端的に、一体社会保障が池田内閣の施策の中でどういう積極的な意味を持っておるのか、この点に対して大臣の所見を承っておきたいと思います。
○西村国務大臣 非常にむずかしい御質問でございますが、社会保障の学問的なことにつきましては、いろいろな考え方があろうと思います。たとえば、教育を社会保障に入れておるとかいうようなこともありましょうが、やはり憲法第二十五条にうたっておる文句、つまり国民は全部その最低生活が保障されて、健康で文化的に暮らすことができるように、こういうことに要約されるわけでございます。そういうような意味におきまして社会保障を進めておるんだ、私はさように解釈いたしております。社会保障という言葉の学問的意味いかんということになりますと、これはまたいろいろ意見があり、非常にむずかしいと思いますが、憲法第二十五条による社会保障を進めておるんだ。それを端的に申しますと、経済が繁栄いたしましても、一部分の者だけが繁栄になってもそれは国全体が福祉国家にはならぬということから、及ばざる者に国が援助して及ぼす。また貧しい者だけじゃなくて、共通な国民一般につきましての社会保障というものも、ないわけではございません。貧乏人だけを相手にするというものでもございません。あるものについては、やはり社会保障は国民全般に及ぼすものもありましょう。従いまして、学問的な意味は別といたしまして、今池田内閣が実行いたしておるのは憲法第二十五条によっておるのだ、それによって全般的な国民が繁栄に浴するように、かような意味でやっておる、私はその点はさように了解いたしております。
○田邊(誠)委員 大臣の話は、ごく一般的な常識的な御答弁でございますけれども、しかしその中に、私は必ずしも積極的な意味合いを受け取れないものがございます。公共投資と減税と、もう一つ社会保障と言っているけれども、減税々々と言っても、われわれが見るところによれば、来年度予算上に現われた減税措置というのは、国民の全般的な生活向上という面からいい、あるいは税負担の軽減という面からいうならば、きわめて危険な要素を持っておる。いわば実質的な意味においては、増税をも意味するような内容を含んでおるわけでありまして、これは税制調査会の答申すらも踏みにじっておるという点で、きわめて政策的なにおいの強い大資本中心の減税という形になっております。社会保障の問題も、今大臣が言われましたように、国民全般に対するところの問題も含めて、いわゆる豊かな生活、福祉国家の建設といううたい文句があるわけでありますけれども、しかし私は、それを経済の面からとらえて、ただ単に貧しい者に対して国が援助してやる、生活の向上を幾らかでもめんどう見てやるという、こういう恩恵的な社会保障というのは実はもう時代が古いのであります。いわば日本経済の中におけるところの、特に池田内閣の所得倍増計画というものが、必然的に、結果的に国民の所得の間におけるところの大きな格差を生じ、経済力の面においても大きな格差を生じてきておる、こういう状態の中で、いかにこの所得のアンバランスというものを是正させ、国民の所得の一部に片寄っているものを振りかえて、これを経済の面にどういうふうに積極的に役立てるか、こういったものを考えていかなければ、本来の意味におけるところの社会保障でもないし、また現在の、経済を非常に重要視しておるという、いわゆる池田内閣の倍増計画のもとにおけるところの社会保障の持つ意味合いではないと私は考えておるのでありまして、大臣のお言葉の端をとらえるわけではございませんけれども、この際一つ新しい認識の上に立って社会保障を論じ、それに対する積極的な取り組みをしてもらいたいという観点から、私の今言ったことに対して大臣はいかがお考えでありますか、お伺いしたいのであります。
○西村国務大臣 私も田邊さんの御意見に同感でございまして、昔の社会保障といえば、どちらかというと、恩恵的といいますか、慈善的というような考えがありましたが、今社会保障について、さような認識に立つ人はきわめて少ないのであります。従いまして、それは貧しい人にはいろいろ手を差し伸べるけれども、それはそれだけの意味ではないので、やはり自立更生を主眼にして、働いてもらうためにというような意味でやっておるので、恩恵的に、情けでというような意味においては、もうずいぶん皆さんの認識が違ってきておろうと思うのです。そういう意味におきまして、あなたの御意見にも私は賛成でございますし、決して私たちも、そういう意味において、困っておるから何とか慈善事業をやってやろうじゃないかというようなことではございません。結局、国家が福祉国家になるためには絶対必要な条件だ、かように考えてやっておる次第でございます。
○田邊(誠)委員 今の大臣の話で、一応前提条件としてはよくわかったのであります。特に所得の格差をなくし、所得の再配分をしながらこれをいわゆる経済の面で役立てていく、こういうことが必要であるということがよくわかったのでありまして、いわば日本の経済のこれから先の発展や、あるいは景気の調整その他万般の意味におけるところの積極的な経済的効果を持つものである、こういう観点で社会保障の問題に取り組みたいという御熱意のほどがよくわかりました。しかし、今大臣のおっしゃったようなことは、実は御熱意というものは、ただ単に抽象的に努力をするあるいは取り組むというだけではならぬのでありまして、具体的な効果というものを持たなければ何もならぬのは、大臣おわかりの通りだろうと思うのであります。今まで実はしばしば大臣のお話を聞いて参り、あるいはさきの本会議におけるところの小林議員等の質問に対する大臣のお答えを聞いて参りましても、きわめて限定された答弁の場でございますから、せっかくの識見なり具体的な方策というものが答弁できなかったうらみはあるといたしましても、きわめて抽象的に過ぎる面が今まで多かったのでありまして、私は、そういうことでなくて、一つこの際、あなたのいわゆる積極的な役割というものを御認識であるといたしますならば、具体的な各部門におけるところの施策の中で、それに対する十分な取り組みをされている、こういう実は成果と経過というものに対してお伺いをしていきながら国民の納得を得ていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。そういった観点で若干質問をいたしますけれども、特にその中で、私は、昨年の八月二十二日に総理府の社会保障制度審議会が政府に対して答申と勧告をいたしました、この制度審議会の答申というものに対して具体的にどういうふうに取り組んでおるか、その点に対して一つ大臣の現在までの経過をお聞きをしたいのであります。本会議の中では、十分意思を尊重しながら心がけてこの実施に邁進をしておる、こういう実は御答弁がございましたが、しかし私は、はたしてこの制度審議会の答申なりあるいは今まで政府が考えて参ったところの社会保障というものが、具体的に着実に年次計画の上に乗った一定のテンポとペースでもって進んでおるかどうかと考えますると、きわめてあやふやなものがあり、またその政策にいたしましても、きわめてテンポのおそいものがあるというふうに考えざるを得ないのでありまして、あなたは一つ、本会議の答弁におけるような社会保障制度審議会の勧告というものを着実に実施に移す、こういうようなお考えと決意があるかどうか、この際もう一度お伺いしておきたいと思います。
○西村国務大臣 答申、勧告を尊重するというのはもう当然でございまして、それはやる。しからば、どこでそういうことを具体的にやっておるのだ、こういう端的な御質問ですが、たとえば、それはやはり日本がおくれておるのだから、西欧諸国並みに——西欧諸国と言ったっていろいろございましょうが、たとえばイギリスならイギリス並みに、ドイツ並みに、そういうことでそれに接近しつついこうじゃないか、これに異論を唱える人もないし、またそうしなければならないと思うわけです。しかし、その内容が非常に多岐にわたるから、一言で、このものをやれば西欧並みになるのだというわけにいきません。すべてのものを推し進めなければならぬと思うのです。しからば、その年次計画をつくって、ことしはどうなる、来年はどうなると言って社会保障制度審議会の試算もあるようでございますけれども、私どもも実は試算を今検討はしておるのです。最後の目標でどうなるかという検討はいたしておりますけれども、まだ年次計画のきちっとしたものが——昭和四十年にはどうなるか、どこまで追いつくのか、こういうような年次計画がきちっとしたものはできておりません。できてはおりませんが、私はその社会保障制度審議会の意見を尊重して、それに一歩ずつ近づきつつあるということは、一つお認めを願いたい、こう私は思うのでありまして、全部一ぺんになかなかいかないのです。日本はようやくその緒についたくらいなものでございますから、たとえば国民皆保険にいたしましても、一挙にこれをやれと言っても、なかなかそうはいかないと思うのです。しかし、その線に近づけつつある。また近づけなければならぬ。でこぼこが皆保険にも皆年金にもありますから、そういうものにいたしまして逐次これを統一をはかっていく、そうして勧告の線に近づける、こういうこともあります。それからまた、特に指摘されておりました環境衛生等におきましても非常におくれておるからというので、実は三十八年にも、予算的には私自身としては相当な気持でやったのですが、やはり国家財政とのにらみ合わせもありまして、あなた方の方から申しますと、そんなものを厚生大臣は考えないでいいじゃないか、こういうことになりますが、やはりどうしても国全体としての大きい問題は国全体としての問題ということになりますので、私の意のように全部いくわけではございませんが、少なくとも社会保障制度の答申を尊重しつつ、大きい目的に向かっては西欧諸国並みに近づける。それも数字的にはございませんので、やはり内容的に——数字を今論じますと、いろいろその内容のブレーク・ダウン、分析を一々やってみないとなかなか簡単にいきません。それは人口構造が違いますし、また就業の様子が非常に違いますから、それから分析をしなければならぬ。しかし希望は、やはりああいう答申が出ておりますから、架空のものではなしに、最終年度の何かの目安らしいものは持ちたいということで、せっかく今事務当局においても試算をさせてみたり、いろいろなことをやっておるところでございます。どうぞかように御了承を願いたいと思います。
○田邊(誠)委員 期待や希望的な観測では事は成就しないのでありまして、今大臣は、社会保障制度審議会の答申になるべく近づけたいというお話でありますけれども、あとでやや具体的に御質問いたしますが、この制度審議会の答申すらも、実は十年後の四十五年度における西欧の社会保障制度の水準に達しようというのではないのでありまして、十年後において、現時点における西欧諸国の水準にようやく近づけたい、こういうことでございますから、この勧告すらも何か希望的な一つの目標であって、これになるべく近づけたいというような、こういうはかないお考えでは、社会保障の問題をこれから真剣に取り組んでいただくことにならないのではないかと私は危惧するのでありまして、これはよほどの決断とよほどの具体的な計画がなされておらないと、他のいろいろな計画、特に公共投資が今大きく実は浮かび上がってきておる、政策減税という問題も実は取り上げられておる、こういう実は事態の中で、これはややもすれば社会保障の問題は置き忘れられがちな問題であるだけに、あなたの言われるような実は控え目な、控え目であるだけにことしは実は着実に、一歩々々やりたいというお気持であることは認めるにやぶさかではございませんけれども、しかし、何といっても明確な一つの構想と計画というもの、これを持たなければ、これは決して、あなたの目標にされるような目標に到達しないという心配を実はするのであります。そういった点からいいますと、一体厚生省は、これは社会局長でもよろしいのでございますし、次官はおいでございませんから、一体厚生省は、さきに厚生省の社会保障に対するところの長期計画の基本構想というものを立てたわけでございますけれども、この長期計画の基本構想というものは、一体今でも生きておるのですか。これはまた、事態の推移によってこれを修正するということはその計画に載っておるし、特に物価水準の引き上げ等に対して、これは当然手直しをすべきであるということは付記されておりますけれども、いずれにしても、この所得倍増計画下におけるところの厚生省の社会保障の長期計画の展望というものに対して、厚生省がさきに試算をいたし、いろいろな基本構想を練ったはずでございますが、この問題に対して一体現在はどういうふうな工合になっておりますか、お伺いをしたいのであります。
○伊部説明員 お答え申し上げます。 厚生行政長期計画基本構想を厚生省試案として発表をして、いろいろ各方面の御意見をいただいておるわけでございますが、その後社会保障制度審議会の勧告もございまして、ただいま大臣のお言葉にございましたように、これにつきまして、またさらに検討を加えておる段階でございます。
○田邊(誠)委員 従って、社会保障制度審議会の答申なり勧告と、いわゆる厚生仁政長期計画基本構想というものは、若干数字的な面や見通しの面で、これは迷うところがございます。違うところがございますけれども、一応目ざすものはやや同一のものであろうと考えるのでありまして、手直しをする、さらにこれを発展さす、充実させるという方向は当然望ましいのでありますけれども、そのことによって、あなた方の考えておるところのいわゆる年次的な着実な方針というものが、根底からくつがえるものではないと私は判断をいたすのでありまして、それならば、今手直しをするというけれども、これに対して具体的な基本構想なり長期計画なりというものが、一体いつごろ、どういうような大体めどでもって制度審議会の勧告と見合って樹立されようとするのか、それに対するところの見通しを一つお聞きしたいと思います。
○伊部説明員 厚生行政長期計画基本構想は、厚生省試案として発表したのでございまして、その意味におきましては、生きておるか死んでおるかということになりますれば、試案の姿で今日も生きておるということだと思いますが、これは審議会の勧告もございまして、いろいろもう一度基本的には勉強いたそうと考えてやっておる段階でございます。これはいつごろ、どういう形になるかということは、まだ申し上げられるところまで至っておりませんが、せっかく勉強をいたしておるというところでございます。
○田邊(誠)委員 一体制度審議会の画期的なといわれる、これは総合調整を主としてやったわけですけれども、われわれから見てきわめて控え目であり、中には、どうもさらにこれは充実してもらわなければならぬというような内応もありまするけれども、一応総合的なと見受けられるところの勧告をされたわけです。それを、さきに試案として発表された厚生省の長期計画の一つの構想というものは、これは私は非常に重要な意味合いを持っているものだというふうに受け取っておるのであります。従って、生きておる、死んでおるというような、そういう端的な言い方ではなくて、これを土台にして早急に着実な見通しというものを立てて、それに対するところの一つ一つの段階というものを、大臣が言われた数字的な意味において西欧各国といつも比校しなければならぬという意味ではないのでありまして、わが国の社会保障の将来にとって、この辺で一つしっかりした展望というもの、しっかりした土台というものをつくろうではないか、こういうお気持はあろうと思うのでありまして、この点に対して、今事務当局から言われたような早急に勉強したいというようなことではなくて、これは昨年の八月に制度審議会の勧告もあり、その前におけるところの厚生省の一つの考え方も明らかになったのでありますから、決してむずかしいことではございません。これに対するところの具体的な対策は、一体いつごろお立ちになるようなお考えであるか、一つ大臣からお伺いしたいと思うのであります。
○西村国務大臣 所得倍増計画に見合って、厚生省の所管の事業といいますか、社会事業がどうあるべきかという試案をしたということでしょう。それから後に審議会の答申をいただいたわけです。そういうことでありまするから、当然これは長期計画の手直しをやはりやらなければならぬ、これは当然でございます。また一方、最近非常に厚生行政をやる場合に考えなければならぬ問題も、長期計画を立てたときよりもいろいろ問題が出てきておると思うのです。従いまして、その長期計画で十年間でやっては間に合わないから、早くやろうじゃないかということも中には起こっております。たとえば、環境衛生のごときはそういうものの一つでございます。従いまして、全体として、一口に言うなら手直しをいたしておるということですが、せっかくああいうりっぱな答申をいただいたのですから、そのもとにおける厚生省といたしましても、しっかりしたものを持ちたいということで、ほんとうに検討いたしておるのでございます。昨年の八月に出したものを今ごろ考えておるかというようなお尋ねもあるかもしれませんが、それはそうじゃありません。できるだけ早くと思ってやっておるのですが、あの答申も実はやはり三年くらいかかっておるのです。それですから、やはりもうしばらく余裕をかしていただかないと、すぐすぐつくれと言っても実際問題はなかなかむずかしいのです。たびたびこれは滝井さんからも御質問がありましたが、それじゃいつ出すのだ、こういうことになりまするならば、それはなるべく早くそれを取り入れたものをやらなければならぬ。しかし中には、私は前にも言いましたように、賛成すべきもの、検討すべきもの、その答申であるけれども必ずしもそのままにいかないというものもないわけではございません。答申があるからすべてのものがあのようにやるのだ、こういうようには言い切れないのでございまして、そういうものは多いわけではございませんけれども、中にはそういうものもある。今十分検討いたしまして、あの線をどういうふうにいかせるかということについては、今真剣に、私からも事務当局に、もう口がすっぱいほど命じておるわけでございます。しかし、今ここに、こういう工合になりましたよ、皆さんどうですか、こう出すような成案を持っていないわけであります。その点ははなはだ遺憾に存じますけれども、さように御了承願いたいと思います。
○小沢(辰)委員長代理 関連を許します。大原享君。
○大原委員 大臣、あなたはお疲れになったと思いますが、これは大切な問題ですから、企画室でつくった厚生省の案、それらをも参酌しながら、全体の諮問機関である社会保障制度審議会は去年答申を出したわけですね。だから、これは政府全体の社会保障の十カ年の展望を出したわけで、社会保障を重点施策にしておるわけですから、これは厚生省だけでやるというのではなくて、政府全体がこれだけはやるべきである。そういうふうにしてやらないと、金鵄勲章の一時金を出したり、二千八百五十億円も地主補償をしたり、そういう戦後処理だとか、党利党略で、てんでんばらばらにとられてしまう。その際には、貧しい人にやるのだ、地主の中で困っている人にやるのだとか、大蔵大臣なんかにしましても、予算委員会ででたらめな答弁もしておるわけです。これはきわめて混乱しておって、そういう限られた金をあちらこちらに圧力をかけて奪い合ったのでは、実際には社会保障全体が建設的に進んでいかない。日本の社会保障は、七十才で福祉年金の千円がたった百円ほど上がっただけでしょう。そんな所得保障はどこにもありはしませんよ。全然問題にならぬですよ。養老保障がないから、たとえば五十五才なりあるいは六十になって失対に働くとか、働かなければ生きていかれない。厚生年金にいたしましても、どういうふうに改善するという目標がないでしょう。そういうふうに、きちっとした前向きの社会保障前進の計画がないから、予算は党利党略であちらこちら、ばらばらにとってしまって、社会保障の名前において予算を食い散らすのですよ。そういうことは、かえって社会保障前進の障害になっておるのです。名分野、各団体がてんでんばらばらにとるということになるから、これではいけない。せっかく社会保障制度審議会で、非常に不備なものですけれども答申案が出たのですから、それを基盤にしながら推進力にして、具体的に本年はどう、来年はどう、再来年はどう、こういうきちっとしたことを厚生大臣が国務大臣として内閣において推進して、きちっとしたそういう展望を持たなければ、日本の社会保障、失業保障、家族保障はいつできるのですか。こういうことから考えてみましても、これは何と言っても、池田さんが世界の中で三つの大きな国だというようなことを言ったところで、全然裏づけがないでしょう。国民生活の安定ということはないでしょう。進歩、向上ということはない。そういう安定度がない。だからその点について、もう少し厚生大臣は、具体的な、しかもはっきりした決意を持って、国会にもあるいは国民にも表明しながら、内閣においてこれを推進してもらうということでなければならぬと思うのです。そうでなければ前進はありませんよ。大臣、いかがですか。
○西村国務大臣 もちろんあの答申、勧告は、厚生大臣ではなしに内閣自身に投げたものでありまして、内閣として十分考えなければならぬ問題でございます。その私に関する部分につきましては、私もできるだけ努力をいたしておるのでございます。しかし、一方また公共投資等も、国全体として重要であるからということで、バランスをとりつつやるので、来年の予算に見ましても、私の力が非常に足りないので社会保障は非常な発展はしませんでしたけれども、まあバランスがとれてということでありまして、将来もいろいろな御意見のあるところは尊重いたしまして、私も努力するつもりでございます。
○田邊(誠)委員 大臣は、中には勧告よりもさらに進んで一つやりたいというようなことも言われて、だいぶうれしい答弁をしてくれるのですけれども、しかし、具体的にあなたがそういう決意を持たれておるにもかかわらず、制度審議会の答申のありました直後におけるところの来年度の予算、あるいはそれに伴うところのいろいろな施策、こういった面からいいましても、必ずしも着実な一歩、二歩が踏み込まれておるというふうにはわれわれは考えられないのであります。早急に長期計画を立てていただくというお気持を、この国会の間に、具体的に一つわれわれの前にあなたが示していただきたいとわれわれは強く要求するものでありますから、その点は一つよく頭の中にのみ込んでいただいて、直ちに事務当局に、これに対するところの具体的な作業について拍車をかけていただくようにお願いをしたいのであります。長期計画を立てるかたわら、今社会保障制度の確立の中で特に重要な問題は何かといえば、これは所得倍増計画の中で、むざんにも露呈をしたところの国民各階層の間におけるところの所得の格差であります。この点は、制度審議会の答申にも、所得の格差あるいは地域の経済力の格差は拡大をしているというふうにこれは断定をいたしております。そしてまた、厚生大臣が昨年の十二月に閣議でもって報告をいたしました、いわゆる厚生行政の年次報告書三十七年度版の低所得階層対策という中でも、経済は非常に伸びて所得水準の向上は見られるけれども、その反面において、国民の間の所得の差の開きもまた大きいというふうに言っておるのであります。この認識は、大臣も私も一致をするところだろうと思う。ただし、認識が一致したのでは困るのでありまして、いわゆる高度経済成長によって生まれたところの、国民の間におけるところの所得の格差を縮めるものこそが、実は厚生省の一番重大な問題なんです。こういう報告書を出されておりまするし、あるいはまた勧告を出されて、よく尊重いたしますといいまするけれども、具体的に、この所得の格差が縮まるという仕事をやっていただかなければ何にもならぬのでありまして、あなたがこういう報告を閣議でされたということを私は承知しまして、実はたいへん悲しく思ったのであります。責任者であるところの厚生大臣は、この格差という問題に対して——これは政府の責任であるし、政府の責任の中における特に厚生行政を担当する大臣の責任はきわめて重大なのでありまして、今後社会保障を論ずるその前提として、現在におけるところの所得倍増計画から生まれた国民各階層の間における所得格差を縮めることを、第一義として私は取り組むつもりだ、こういうふうに明確な御答弁をこの辺で一ついただきたいと思うのですが、いかがですか。
○西村国務大臣 所得格差を縮めることは、私の仕事の根幹でございます。そのためにすべてのことをやっておるのでございます。しかし悲しいかな、現在は、だんだんよくなってはおるけれども、縮小はしつつあるけれども、それはわずかな縮小であって、現在でも相当な格差がある.あるから、われわれは厚生行政を進めなければならぬと言っておるので、その格差があっていいということを絶対に言っておるのではありません。もう少し格差を縮めなければならぬということを申しておるのでございまして、だんだん縮まりつつはある、あるが、わずかな縮まりで、まだ格差は相当あるから今後やらなければならぬ、かように言っておるのです。私は所得格差を縮めることは私たちの仕事そのものだ、こういうふうに思っておる次第でございます。
○田邊(誠)委員 大臣の今御努力の点は、お言葉としては十分承っておきたいと思うのでありますけれども、具体的に、たとえば来年度の予算の問題の御答弁が今大臣からありましたけれども、それならば、一体来年度の予算の中で、厚生省の予算なり社会保障の予算というものが、どの程度目標に向かって一歩、二歩近づくような内容であったか。これは数字を私はもてあそんではいませんけれども、重要な問題でありますから、一つこの点に対してお伺いをしたいと思うのであります。 ことしの厚生省の予算は、国の予算の一般会計における二兆八千五百億円のうち三千三百十三億円です。これの総予算の中に占める割合というものは 一一・六二%であります。 〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 昨年の当初の総予算は二兆四千二百六十八億円であります。その中でもって、厚生省の予算の占める割合は二千七百二十三億円でありまするから、一一・二二%であります。そういたしますると、いわゆる厚生省の予算そのものが社会保障のすべてであると規定づけることはきわめて単純なやり方でありまするけれども、一応のめどとして考えた場合に、厚生省の予算が総予算に占める割合というのは、昨年の一一・二%から一一・六%、わずか〇・四%上がったにすぎない。それでも昨年よりもよくなったじゃないかという論議があると思うのでありますけれども、どっこいそうは言えないのであります。なぜかといいまするならば、社会保障を論ずる場合に、何といっても一番大きなめどになるのは、いわゆる国民所得であり、あるいは国民総生産であります。従って、国民所得なり国民総生産の中において占めるところの社会保障の金は一体どのくらいか、厚生省の予算は一体どのくらいか、この辺まで論じてきませんとこれは的確な数字の発表にならぬのであります。ところが、御承知の通り、昨年、三十七年度の国の当初予算二兆四千二百六十八億円というものをその当時策定をいたしましたが、国民総生産十七兆六千三百億円のうち占める割合というのは一三・七%でございます。ところが、三十八年度の国の予算案であるところの二兆八千五百億円というのは、政府が策定をいたしました国民総生産二十兆三千九百億円のうち一四%を占めるのであります。従って、昨年度のいわゆる国民総生産に対する予算の割合の一三・七%よりも、三十八年度の総生産中の国の予算の占める割合というのは、一四%というように比重が重くなっておるのであります。そういたしまするならば、これは大臣もおわかりでございましょうけれども、国の予算の中における厚生省の予算がわずか〇・四%にしても上がったことは私どもの努力だというふうに言い切るわけにはいかない要素というものが、数字の上からいっても歴然として現われてきておるのでありまして、大臣の御努力は、言葉として私どもはまことに尊いものとして受け取りましたけれども、実は具体的なあなたの努力の結果というものが、今呪われた数字の示すごとくきわめて貧弱であるどころか、いわば三十七年度に比べてみても、決して前進態勢をとっておらないという事態になるのでありまして、いわば西村厚生大臣下におけるところの厚生省の予算は、大蔵省あるいはその他の人たちの圧力によりまして、みごとにぶんどりをされたという認識をわれわれはせざるを得ないわけであります。きわめて残念な結果でありまするが、大臣はこの点は認めざるを得ないと思うのですが、いかがですか。
○西村国務大臣 私も昭和三十八年度の予算が十分であると思っておりません。私自身の気持からいいまするならば、もう少しという気持が十分あるのでございます。しかし、そういうふうに国全体の予算として決定をいたした次第でございます。従いまして、多少財政に対する比率が上がったからといって、それでこちらが満足しておるものではありませんし、また、それを誇りにしておるものでもございません。国民所得も上がっておりますし、そういうようなことからいたしまして、決してそういう気持はありません。ただ、やはり、さいぜんも申しましたように、一定の目標を持ってその目標に向かって進みたい、ますます進展をさしていきたい、かように考えておる次第でございますので、社会保障の進展につきましてはもうあらためて申すまでもないことで、今後とも努力をしたい。私自身、来年度は十分やったというような気持は毛頭ありません。個人としては不満なことが多々あるわけであります。さように御了承を願いたいと思います。
○田邊(誠)委員 厚生大臣が不満であったら、われわれはもちろんのこと、国民全体はあなた方の厚生行政のあり方とその内容に対して、大きな不満を持つことは当然の話であります。それならば、社会保障制度審議会の答申のように、たとえば三十六年度の予算総額中社会保障の占める割合というのが一一%であるものを、四十五年には二七%まで全体として引き上げたい、その内容はいろいろな紆余曲折がありましても、大体の目安としてはそういうふうにしたいというのが、これはだれしも持たなければならぬ目標だろうと思う。あるいは国民所得の中における社会保障の占める割合というのを、三十六年度の六・九%から四十五年には一四・三%まで引き上げたいというのであります。といたしまするならば、これはいわゆる予算の総ワクの中における社会保障の占める比重というものをだんだん多くする、こういう努力というものが具体的な予算の折衝や予算の成立の過程の中から出てこなければ、これはどうにも、あなたが一生懸命努力されたという、こういう言葉というものを、内容のあるものとして受け取るわけにはいかないのであります。それでは国民所得の中において占めるところの厚生省の予算の割合というのは、これは企画室長でもよろしゅうございます、三十七年度に比べて三十八年度は一体どのくらいになりますか。
○西村国務大臣 国民所得の中における社会保障六・四%云々というような話ですが、それは西欧並みの、今現われておる一〇何%というものについては、内容を少し数字的に検討しなければならぬ。数字だけで比較されぬと思います。やはり老人が多いとかなんとか、それから就業の問題もありましょう。それですから、数字自身を西欧並みにおいて比較するというわけにはいかぬ、私はこういうふうに思うのです。なお、今の数字は……。
○田邊(誠)委員 きわめて良心的だから、あとで報告して下さいよ。あとでというと必ず報告しないことが例になっておるようですが、そういうことでは承知しませんよ。実は順を追うて質問をするつもりならば、今の話はわからぬというのでその次の質問にならぬのですけれども、協力しまして質問を続けます。大体しろうとである私どもすらもが、その程度のことは、社会保障に注目して関心を持つ者として、当然知っておる問題であります。厚生省の長期計画を立て、基本構想を練った御当人が知らぬというはずはないのでありますから、その点は明確な御答弁をいただきたいと考えるのであります。しかも、大臣から今、西欧と単純に比較するということは当を得てないじゃないかというお話がありました。私もそういったことも言えると思う。私は今問題になりますることは、いわゆる減税の問題一つをとらえてみても、いわゆる税を負ける、こういった方にたくさんなウエートをかけた場合は、あるいは振替所得というものは、幾分当初の予定より少なくなるということはあり得ると思うのでありますけれども、来年度をごらんなさい。いわゆる所得税にいたしましても、これは国税、地方税を通じて、税制調査会の答申のように約四百億の減税をするということに決してなっておらぬのであります。こういう事態の中では、せめて、減税をあまりできないけれども、所得振替という、こういった意味におけるところの厚生行政の中において占めるところの割合だけは、一つ必死にがんばってこれをかちとろう、こういうふうになるべきでありますけれども、そういった面からいいましても、三十八年度の政府予算案の性格を全般からながめてみても、ただ単に今数字が、昨年に比較をいたしまして、きわめて一歩後退的な数字であるだけでなくて、残念な結果ではないかと私は考えるのであります。大臣のそういった面におけるところの御配慮もさらになければ、厚生大臣としての責任を全うしたとは言い得ないと思うのでありまするが、どうですか。
○西村国務大臣 そういう、たとえば財政に占める社会保障のパーセンテージをある程度に自分が腰だめをしておいて、それを目安に予算をとっていくという方向も一つの方向でしょう。しかし、内容的に一つずつ事柄でもってやはりやっていくということで、そのパーセンテージというものは、その結果、積み上げてこういう結果になったのだという行き方もあると思うのです。事柄別に、老人福祉はどうするか、児童福祉はどうするか、国民年金はどうするかという事柄別にきめていって、自分の思うように、まあ来年度は、国家財政もあるからこの点にしたのだ、この結果が予算の財政に占める割合で何%になり、国民所得に対して何%になるという行き方もありましょう。また、ある程度そのパーセンテージを、三十八年度は財政見通しとしては一二%以上譲ってはいかぬ、こういう行き方もあろうと思うわけでありますが、今申しましたように全体の試算がはっきりしたものができておらないので、私といたしましては、三十八年度は事柄別にやはり積み上げていって結果がこうなりましたよ、こう言っておるわけでございます。行き方としては、今後あなたの御意見も十分考えたい、かように思っておる次第でございます。
○伊部説明員 三十八年度の経済見通しによります三十七年度の国民所得との対比におきましては、三十七年度の厚生予算の占める率は約一・七九%でございます。それから三十八年度予算が、同じく三十八年度の国民所得に対する率は一・九九%でございます。
○田邊(誠)委員 大臣の方式によれば、各項目別にいろいろと内容を充実させ、拡大させて、それを積み上げていったらば結果的にこうなったから、あるいは数字の面ではあまりどうもいい数字が出なかったけれども、そういった方式についても一つ理解をしてもらえないか、こういう答弁でございましたから、せっかく大臣がそういう積み上げ方式をやったそうでございますから、一つその中でもって、生活保護やその他一、二の問題を取り上げて、各項目別に、一体あなたの努力というものがどのように実を結んだのか、お伺いいたしたいと思います。 さっきも私が言いましたように、所得の水準は全般的に向上したけれども、所得の格差はきわめて大きい、こういうふうに私は言いました。また、事実その通りになったのでありますが、特にいわゆる、もちろん一般の勤労者の生活水準というものは非常に上がっておりますけれども、現在の中では約四分の一を占めるといわれる、厚生省の考え方によれば二万円以下の生活水準の人たち、こういったものは、実はその水準の向上というものが、パーセントの上では伸びておるかもしれませんけれども、実質的な生活の内容とその水準の面からはきわめて低いという状態、こういったことを明らかにしておるのであります。大体一般の生活水準というものが八万四千七百十三円になりまするに比較をいたしまして、今言った一番下の層の所得というものは一万七千四百四十九円で、大体二対一〇という割合だということを厚生省は言っておるのでありますが、この面から見ましても、きわめて実は大きな状態にきているのであります。私は、労働大臣がおいででございませんから詳しくはお伺いいたしませんけれども、この倍増計画の中でもってそういった所得の開きが決して縮まっていない、こういう事態というものは、これは何といっても池田内閣の大資本中心の政治の姿というもの、その性格というものを改めなければ、これは根本的には立ち直らないものであるというふうに考えておるのであります。国家投資がやはり大資本中心に振り向けられる。そういう中でもって、資本力の格差がそこから生まれてくる。必然的に、これは大企業と中小零細企業との間に生産性の格差がさらにひどくなってくる。これは決して生産性の格差だけで終わるものでなくて、必然的に、資本主義の世の中では労働者の賃金の格差に響いてくる。このいわゆる二重構造のしわ寄せが勤労大衆、国民大衆に振り向けられてきているというこの悪循環をどこかで断ち切らなければ、これは決して直らない問題です。これを実は断ち切るのが私は社会保障であり、厚生行政であろうと考えるのでありまして、大臣の御認識もそこに着目をされていかなければならぬのではないかと私は思うのであります。いわゆる五百人以上の従業員の生活水準を一〇〇といたしまするならば、五人から二十九人までの従業員を持つところの企業の労働者の賃金は四九にしかならない。こういうことを実はこの年次報告は教えておるのでありまして、そういった点からいいまするならば、これはおそらくは中高年令層の生活水準なり賃金の格差は、さらに大きくなってきているだろう、こういうふうに私は判断をいたすのであります。そういった点から、大臣は、他の所管にまでくちばしを入れるべき筋合いのものではないかもしれませんけれども、やはり社会保障を充実させる、さらに確立をさせるという観点から言いまするならば、この経済の仕組み、しかも、これを助長させるところの意味合いを持った現在の倍増計画に対して、あなたの社会保障を充実させるという立場から手直しをしていく、こういうことまでも考えなければ、本来の意味におけるところの厚生行政の担当者とは言い得ないではないかと私は思うのでありまするけれども、あなたの閣議に報告をされた資料に基づいて私が今お話をいたしました通りでありまするから、この点に対しては一体どういうようなお考え方をお持ちであるか、この際、一つ明確に承っておきたいと思うのであります。
○西村国務大臣 さいぜん申しましたように、所得の格差を縮めるということは最も大きい政治の問題でございまするが、どちらかと申しますると、今までの厚生行政は生活保護を中心にやってきた。従って、一般にいわれる低所得者に対する対策があまりなかった。私は、今回につきましてもそれではやはりいかぬ。もちろん、生活保護を救うことは当然なことであるが、それ以上に今の社会保障は格差を縮める意味で低所得者対策を考えなければならぬ。しかしこれは、非常に多くの人を含まなければならぬ問題でございます。従いまして、その多くの人を一ぺんに考えて、すべてをやってやるというようなことは、とうていできないことでございまするから、このうちのどういう部分の人に、どういうような政策をしていくかということが大事なことになるわけでございます。今申しましたように、人口の四分の一の人は、それこそ保護者ではないが、非常な貧しい生活をしておるということは、私も認識があるわけでございます。従いまして、今度そういうような低所得者対策を進めていこうじゃないか。それには、低所得者は一体今の次元でどう考えればいいんだということも、一つの問題点であります。そういうようなことにつきまして、厚生省といたしまして今まで十分な検討ができておるということは申しません。これから大いに検討しなければならぬということでありまするが、昭和三十八年度予算につきましても、国民健康保険の保険金等を負けたならば、多くの人に行き渡るんじゃないかということを考えたのも、その一つの現われでございまするが、何さま非常に数が多い、しかも、われわれが考えなければならぬ対象はどこに置くべきかというようなことをも合わせまして、いろいろ施策を今後とも進めて参りたい、かように考えておりまするし、また、特に御指摘がありました所得倍増計画で二重構造がますますひどくなるんじゃないか、その問題について厚生大臣としての心がまえはどうかということでございまするが、これは、厚生大臣としてはもちろんでありますが、国務大臣といたしましても、所得倍増計画によって二重構造がますますひどくなるということは厳に警戒しなければならぬのでありまして、われわれの目的は、二重構造にならないことを政治の中心にいたしておるのでありますから、さような意味で私といたしましても努力をしたい。また、今後も保護者はもちろんのこと、低所得者のことにつきましても十分な配意をして、どうしたらこれらの者が救われるかということに対して、配意をしたいというのが私の気持でございます。
○田邊(誠)委員 大臣は非常にいい話をしてくれましたから、一つ、それじゃ低所得層というのは一体どういうものなのか、この辺でもってやはりこれを聞いておきましょう。低所得階層に対する対策というようなことが一般的にいわれておりますけれども、一体低所得階層というものを、どういう工合の位置づけをしておるのかということがばく然としておるのであります。昭和二十八年から十年ごろにかけては、生活保護法の適用を受けるところの人たちに対して、予算上きわめて締めつけがあった。ラジオを持っておってはいかぬとか、若干でも収入があればそれを差し引くとか、非常に実は予算上の締めつけがあったのでありまして、生活保護を受けるに相当する同じレベルであるけれども、生活保護を受けられない、そういった人たちは非常に膨大な数に達しておったという時代がある。これを称してボーダー・ライン層と言ったのであります。しかし、私はそういった一般的な見方だけじゃなくて、一体政府がこれから重点を置いててこ入れをしようとするところの低所得階層は、現在の経済の中でもって、一体どういうような性格を持っておるものを称するのか。これは何も学者の見解として言ってもらわなくてもいいのでありまして、大臣がこれからてこ入れをしようとする階層は、たとえば数字をあげてもよろしゅうございます。神奈川県では一応具体的な例として、低所得層は、一番下の層は生活保護基準の一・一倍、上の基準は市町村民税の均等割を払っておる層以下、こういうようなところでもって、一人当たりの所得は五千円以下を規定しようじゃないかというような報告書を出しております。しかし、そういうことじゃなくて、現在の経済の中で占めるものとして、この階層をどういうふうな工合に位置づけをしておるのか、この際、今後の審議の参考にしたいと思いますので、定義づけを大臣から承っておきたいと思います。
○西村国務大臣 なかなかその定義づけができないのであります。いわゆる生活保護者と、それにつながって、それとどっこいどっこいの生活をしておる人は、今までの保護基準の引き上げの問題もありますが、生活保護者及びそれとどっこいどっこいの生活をしておる、いわゆるボーダー・ライン層というものが、一般に今までは低所得者とうたわれておったのです。その方たちは、確かに今は相当に減っておると思うのです。昭和三十六年度は、あらかた言いますと一千万人くらいあったが、今は五百万人くらいじゃなかろうかと思うのです。私が言いたいのは、そういう方々を目安じゃなくて、もう少し範囲を広く、低所得者といわなくても、所得の低い人のところにもやはりわれわれは施策を及ぼすべきじゃないかというので、これこれの人間、二万円以下の人間を低所得者と名づけるとか、あるいはどれだけのものを低所得者と名づけるという定義は言いませんが、今の格差を縮める意味からいきますれば、いわゆる低所得者という従来の観念と、さらに所得の低い人に対して、格差を縮める意味において社会保障を何らかの形で進めていかなければならぬのじゃないか、こう考えておるわけで、低所得者の定義を今言えといっても、ちょっと私の方ではできない次第でございます。そういう意味で考えておるわけであります。
○田邊(誠)委員 ボーダー・ライン層の見方というのはいろいろあろうと思うのです。この厚生行政年次報告書の中でも、そのボーダー・ライン層というのは一時から比べれば大へん減った、こういうふうなことを実は第七章の二ページあたりに書いておるのでありますけれども、そうかと思えば、第七章の四ページには、「所得または支出の階級からみた四分の一の階層」、二万円以下の所得の階層というのは二千四百七十八万人もおって、「この階層には生活保護階層約六十万世帯、百六十万人およびボーダー・ライン階層約百六十万世帯、六百九十万人が含まれている。」こういうふうに書いている。ボーダー・ライン層六百九十万人といえば、今までと変わりない。あなた方の規定の仕方自身も、これは数字の面でもきわめてあやふやでございまして、こんな年次報告が出されておるので、実はわれわれとしては大へんあやふやで困っておるのであります。私の言うのは、そういう数字的な面や、ただ単に生活保護基準よりもちょっと上の層だ、こういうのじゃなくて、現在の生産関係あるいは社会関係の中でもって、一体どういうようなところに置かれている人たちを低所得の人たちというか、こういった面に対するところの政府の見方というものがやはり必要であろうと思うのです。私は何といっても、現在の中でもって、低所得の人たちというのはいわゆる所得の不安定な人たち、これはいわば生活保護の人たちよりも労働力は持っておる、しかし、これは職業がきわめて不正常である、あるいは職業があっても、それが決して安定した生活を営むだけのものでないという状態、これがいわば低所得に規定すべき経済面から見たところの見方ではないかと私は思うのです。しかも、この労働力は持っておるけれども、職業が不正常なためにきわめて不安定な生活をしておる、こういう層というものは、従って、きわめて不完全な労働力、犠牲にされた労働力というものを売っておるわけであります。売っておる中に、労働力自身もだんだんに正常なものから不正常なものになってくる。そして職業が不正常でありますから、そのうちにこれが生活保護の、職業すら持つことができないという層に転落していく、実はこういう仕組みになっているのじゃないかと私は思うのでありまして、この点の見方をやはり明確に持ってもらわぬと、あなた方がこれから低所得の対策を講ずるといっても、これは決してそれに対するところの抜本的な対策にはならぬのであります。いわゆる本人は働く意欲を持っている、最初のうちは労働力というものが買われるだけのものを持っておっても、いわゆる職業的に見た場合に、これが決して正常的なものでない、こういったところに実は有力な原因があるということはやはり認めなければならぬと思うのでありますが、どうでありましょうか。
○西村国務大臣 御意見として十分承っておきますが、今申しましたように、生活保護者それ自身はずっと横ばいの状況です。それからそれにとんとんにつながった人は、ちょっと調べたところでは、数字の上では少なくなっておるが、私たちの今考えることは、さらにそれ以外の方々でもいわゆる所得の低い人たちというのは相当にあるのだから、ことに労働の不安定な方々というようなことについても考えなければならぬ。しかしこれは、小林さんの御意見のときも私ちょっと申し述べましたが、そういうひどい層の低所得者という意味においては、厚生省のことだけではなしに、住宅、教育、税金その他あらゆる面において、それらは全部社会保障と言うことができるのであります。私の方の関係する部面につきましてももちろんのことでありますけれども、行政のあらゆることを通じて取り組まなければならぬ、私はさように考えておるわけでございます。十分気持はわかりまするが、今後に向かっても、さらに所得の低い人に向かって格差を縮めるために努力しなければならぬということだけは、十分認識をしておるつもりでございます。
○田邊(誠)委員 いわゆる政治、経済の上から見た低所得の対策というものが、一体どういうものであるべきかということについて、さらに大臣の御研さんをわずらわしたいと思いますので、私の言ったことをそのまま認める、認めないというようなことでなく、一つよくその点は御理解をいただくように要望しておきたいと思うのであります。 いずれにいたしましても、低所得にひっくるめるかひっくるめないかは別といたしまして、その中の一番下の生活保護を受けておるところの被保護階層の問題というのは、これは何といっても非常に重要でありまして、厚生省のこれに対するところの規定づけというものが一体あるかないか、いろいろ探してみましたら、ここ二、三年前の白書と社会保障年鑑に、やはり生活保護というものは、本来、労働能力が欠けている者に対して最低生活保障をそのおもな機能とすることが望ましい。労働力を持っておる者に対する生活の問題は、これらは公的扶助というだけでなくて、いわゆる最低賃金なり雇用問題として取り上げることが望ましい。これは失業対策事業に通ずる問題でありまして、また一つ労働大臣等を通じてお伺いしたいと考えておるわけでありまするけれども、そういった性格を持っておるのが実は生活保護であろうと私は思うのであります。しかし、小林議員も本会議で質問いたしましたが、非常に有力な数字的な根拠を示されたのでありますけれども、大臣はこれに対してにわかに賛成しがたいような答弁を実はされたのであります。しかし私は、この際、やはり生活保護基準の問題についても、あまり突っ込むだけの時間がございませんから、なるべく端折りたいと思いますが、やはり生活保護基準というのは、憲法二十五条によると最低生活の保障でありまして、これを実は具体的に規定したのが生活保護法であります。それで、その中におけるところの基準でございまするから、これは常に流動すべきものであり、常に不明確なものであろうとは決して私は思わないのであります。生活保護基準というのは、やはり一つの時点において、一つの社会において絶対的な一つの基準というものがあるべきものではないか、こういうように考えておるのであります。たとえば、一般の世帯の消費支出というものが上がってくるならば、それにつれてこれを上げていく、こういう要素もありましょうし、あるいはまた、エンゲル係数の上からいって、どの程度までは当然生活保護基準として見るべきものである、あるいはその中における食費のカロリーは一体どの程度のものであるべきである、こういう規定づけというものが当然あろうと私は思います。あるいはまた、物価の変動によって何%以上消費物価が上がった場合には当然保護基準というのは上げていくべきものである。あるいは外国の例を出すと、大臣がまた、それはあまり比較にならぬと言いましょうから、そういうことでなく、一つの社会、一定時点においての生活保護というものは、絶対的な一つの基準がなければ、これは常に党利党略的に扱われ、あるいは予算の上からいって、いわゆるつかみ取りでもって保護基準というものがきめられていく、実はこういう事態でありまして、これは憲法の条項を具体的に具現することにもならぬと私は考えるのでありまして、生活保護法の法の厳格な精神を守る意味からいっても、こういったことが当然必要ではないかと考えるのであります。これは将来にわたるところの大きな問題でございまするから、生活保護基準に対する厚生大臣の明快な御見解を一つ承っておきたいと思います。
○西村国務大臣 生活保護基準の問題です。私も非常に研究したわけではございませんが、私の今まで承知いたしております範囲内では、やはり社会保障制度審議会も、一般の所得が倍増になるならば、一般の所得が非常に上がるならば、生活保護の人は今でも非常な苦しいみじめな生活をしておるのだから、それは三倍ぐらい上げるべきだということで、われわれの長期計画もその線に沿って、また審議会の答申も三倍に上げなさい、ほかのものが相当よくなるのだから生活保護の人は三倍に上げなさい、こういうように言っておることを見ましても——基準そのものが固定したものでいいかどうかということには多少疑問があると思うのです。そうかといって、流動性があるといっても、それではどんなものでもいいかというと、そんなものではなしに、やはり常識的なことで、少しでも上げていくということではなかろうかと私は思うのであります。それにつきましては、その目標を、たとえばエンゲル係数等にいたしましても相当に悪いから、これは早く五〇%なら五〇%に持っていくというように、一定の目標をつくりまして進むことはいいけれども、やはりそれが全然固定されてしまうとか、実情に合わなければ直ちに死んでしまうのだというようなものでもありませんから、弾力性はある。しかし、今の生活は相当に苦しいものであるから、少しでもこれは上げていくということではなかろうか、私はさような意味でこの審議会の答申も、われわれの長期計画の最終目的にいたしましても、ほかのものが少々よくなるのだから、生活保護は三倍にしようという言葉もそこから出ておるのじゃなかろうか、かような観点でその問題も早目に到達するようにしなければならぬのじゃないか、かような感じを持って基準を見ておるわけであります。
○田邊(誠)委員 それでは、これは社会局長でもけっこうですから、三十八年度の予算要求で、四人家族に直して現在の一万二千二百十三円を一万四千八百二十円、約二一・三%の引き上げを予算要求したのは一体どういう根拠ですか。つかみですか、これは。
○大山(正)政府委員 来年度予算の最初の概算要求を出すにあたりまして、二一%アップを私どもとしては考えておったわけでございますが、ただいま大臣からもお話がございましたように、一般国民との生活水準の格差をできるだけ早く縮めていきたい、そういうような観点からいたしまして、あるいは飲食物費の内容の改善、あるいはエンゲル係数の内容の改善というようなことを考えまして二一%の要求をした、こういうことでございます。
○田邊(誠)委員 従って、その二一%の要求は、予算の折衝の中でもって最終的に一七%になったということは、実はあなた方の目標が、一歩も二歩も後退をしているというふうに見ていいわけですな。これは基準が絶対的なも一のであるなしということにかかわらず、あなた方の要求額というものが、いわゆる予算の折衝の中で削られた政府案となって現われてきたことは、これはきわゆて遺憾だと思いますが、あなた方の将来にわたるところの目標は、この年度において大きくくずれている、こういうふうに考えて間違いないですね。
○大山(正)政府委員 私どもは、その格差をできるだけ早く縮めていきたいという考え方に基づいて要求したわけでございますが、来年度一七%ということに国全体の行財政の立場からきまっておるわけでございますが、この一七%アップによりましても相当程度一般との格差も改善されますし、保護基準の相当な引き上げにもなりますので、来年度はこの一七%引き上げということでやって参りたい、さように考えておるわけでございます。
○田邊(誠)委員 これは伝え聞くところによりますと、最初は昨年十二月の一二・四%の消費者米価の値上がりに見合って、生活保護基準を二・三%引き上げるということがいわれておって、これは別にして、一七%ということが予算の折衝の過程でもって出てきたというようにお伺いしておるわけでありますけれども、しかし最後には、この消費者米価の引き上げ分二・三%を含んで一七%、従って、この米の引き上げ分を除くならば実質的には一四・七%に落ちついた、こういう形になっておるそうでありますけれども、これは大臣、ほんとうの話ですか。
○西村国務大臣 予算折衝のときには、それのみならず、いろいろな話し合いが行なわれるわけでございまして、最終的に一七%ときまったということだけは申し上げられますが、予算折衝の内容は、ああも言いいこうも言い、いろいろなやりとりをすることは当然であろうかと思うわけであります。さよう御了承願いたいと思うわけであります。
○田邊(誠)委員 従って、今度の引き上げというのは、実費的には一四・七%と承知していいわけですな。
○西村国務大臣 米価の値上げ前を基準として一七%ですから、それを引けばそういうことになるかと思います。
○田邊(誠)委員 今までの第十八次に及ぶところの生活保護基準の改定にあたって、一体米価の引き上げの際は、必ずといっていいほどそれに対するところの補正を、戦後四回ほど過去において出させた例があるわけであります。今回、われわれとしては、米価引き上げに伴うところの引き上げというのは、特に飲食物費の占める割合というものが非常に多い、この要保護世帯の中でも、ことに基本になるのは米価であります。米価というものが非常に大きなウエートを占めるものであることは、大臣もおわかりの通りであります。だから、米価に対するところの補正というのは当然別個に取り扱われて、これに対するところの補正がまずもって行なわれる、こういうことが必要であったというように考えるのでありまして、過去の例からいっても当然そういう措置をしてきたのでありますけれども、たまたま予算折衝の段階にぶつかった、こういうことがありますけれども、私どもとしては、いろいろと伝え聞くところによりますと、最初に米価を含めないで一七%の折衝というものが、厚生大臣と大蔵大臣との間において、米価を含めて一七%というように最終段階では変わった、こういうように実は叩いておるのでありまして、この面からいっても、この生活保護基準というものの考え方、取り扱いの仕方、これに対するところの最低生活を一つ守ってやろう、こういう決意とそれに対する具体的な、明確な規定というものが政府にはない、その証拠というものがこの予算折衝の中でもって呪われてきたというように私は認識いたしておるわけでありますけれども、一体、なぜ米価というものを別に取り扱って、これに対しまずもって引き上げるという措置をとり得なかったのか、お伺いしたいと思います。
○大山(正)政府委員 昨年十二月の米価引き上げに伴いまして、十二月から生活保護基準を、その引き上げに見合った分だけは上げたのでございますが、これが予算措置といたしましては、とりあえず年度内の予算でやっておきまして、今回の第二次補正でその分の予算の計上をお願いする、こういうことになっておるわけでございます。そこで一七%やります場合に、予算折衝の過程におきまして、これは前年度の当初四月からの基準に対しまして何%かというようなことで論議されまして、それが一七%というようにきまった、こういうようないきさつに私は承知いたしております。
○田邊(誠)委員 従って、生活保護基準というものは今回は一四・七%である、こういう認識は誤りない事実でございまして、まことに残念でありますけれども、大臣の言われるような、画期的な引き上げのようには見受けられないのであります。これによって幾らか、いわゆる一般世帯との間におけるところの差が縮まってきた、あるいはエンゲル係数の面で、その比率というものがよくなってきた、こういうようなことを言われるのでありますけれども、私は、一般の生活水準が向上しているという、こういう事態の中では、決して相対的に見た場合に、この被保護世帯の生活水準の実質的な引き上げにはならぬ、こういうように私は考えざるを得ないのです。その具体的な数字を申し上げる前に、つい最近の新聞にこういうように載っていました。最近の消費者物価は非常に値上がりをしておって、前年度に比べて六・八%の値上がりだ、政府の見通しでは二%か三%くらいと言っておったが、ひどい見込み迷いである。ところが、勤労者の税込みの収入は、前年同月に比べて約八・九%上がっている。物価が七%ぐらいで収入が約九%上がっているのだから、池田さんあたりの単純な数字計算によると、万々歳ということになりそうだ。しかしちょっと待てよ、実質八・九%というのは平均の数字だ。だから簡単に考えても、そのうち半分は、その平均数値以下の増加にしかなっていない。そうすると、世帯数の半分近いものは、物価の値上がりで実質収入の増加が帳消しになっているか、あるいはむしろマイナスになっていると見なければならない。こういうようにいってるのでありますが、物価値上がりでもって一番大きな影響を受けておるのは、御承知の通り一番下の層であります。従って、十二月の米価が一二・四%引き上げによって、東京の勤労世帯というものは〇・七三%の影響を受けた、全都市の勤労世帯の大体五分位層の第一段階層は一・五三%の影響を受けた、東京の被保護世帯の影響は一・八五%であるというように年次報告では書いてある。それだけ見ましても、この米価の引き上げ、あるいは万般の物価の高騰、こういったものが一番下の層にきわめて重圧となって現われてきていることは、疑いない事実であります。これに対するところの対策を、この際政府みずからがとることこそが、物価対策の第一義ではないかというように私は考えるのでありまして、こういった点が、実は今回の生活保護基準等において現われておらないことは、きわめて残念でございます。 時間がございませんから、一つ社会局長も大臣も、生活保護基準がだいぶよくなったようなお話をいたしておりますけれども、一体一般世帯に対して、生活保護の被保護世帯の消費支出というのは、前年度に比較してどのくらいになっておりますか。それからエンゲル係数は、一体今年の四月でもってどのくらいになる予定でございますか。あわせて、一番大きな比率を占めるところの食費の一日のカロリーというのは、一体今度の改定でもってどのくらいのカロリーの計算になっておりますか、三つお伺いしたいと思います。
○大山(正)政府委員 最初にお尋ねの一般との格差でございますが、東京都におきまして、一般勤労世帯とそれから被保護世帯の勤労世帯、この格差を常に比較しておるわけでございますが、三十七年度、本年度の推定が四一・八%、つまり一般勤労世帯を一〇〇としました場合に保護世帯が四一・八%でありますが、来年度引き上げによりまして、格差が四三・七%というように上がる計算に相なっております。 それからエンゲル係数でございますが、三十七年度の被保護世帯のエンゲル係数は五六・二%でございます。それに対しまして、三十八年度は五四・一という計算に相なっております。東京都の一般勤労世帯のエンゲル係数は、三十七年、これは暦年でございますが、三十七年の平均で三八・四ということでございます。 それからカロリーにつきましては、ただいまお話がございましたが、これは栄養審議会の答申に従ってカロリーを計算しておるわけでございますが、このカロリーの量につきましては、前年度と変わりございません。今回とっております標準四人世帯におきまして、一人一日のカロリーが、平均いたしまして千八百八十五カロリー、これは、基礎控除等抜きました純粋に生活保護基準の中に考えられましたカロリーでございます。
○田邊(誠)委員 これは、あとでもって一つ具体的にお伺いしたいのでありますけれども、大臣、今局長が答弁をされた通りでおわかりだと思うのでありますが、一般世帯に対するところの被保護世帯の消費支出の割合というものは、本年度の四一%から四三%になる。わずかに二%ですが、上がったのだからけっこうだと言いたいのですけれども、われわれが忘れることのできないのは、十年前の二十六年のいわゆる消費支出の割合というものは、当時において五六・五%であったということであります。これはまだ終戦後の状態から全体的に抜け出すことができなかった当時の、一般世帯と一番下の階層というものの割合は、五〇%以上、半分以上の生活をしておったのであります。これがだんだんと経済が伸び、一般の水準が伸びてくるに従って、この割合というものがひどくなってきた。これをやや縮めようというのでありますけれども、実は十年前の状態にもまだはるかに追いつかないのであります。十年後において、西欧諸国に追いつこうなどということを、私があえてここで言わぬでも、十年前の日本の一般的な生活の状態というものと比較しても、一番下の層というものは、実ははるかにその所得の格差というものがひどくなって、それをまだ縮めることができないという、こういう現状にあることを、あなたは十分御認識をいただきたいのであります。しかも、一番最後の食費の問題についても、今局長のお話の通りでありまして、幾らかは引き上げたからいいように思いますけれども、よく突き詰めていきますと、実は食費、食糧が一番重要であります。この食費のカロリー計算が決して前年度よりよくなっていない。千八百何カロリーというものが一体どういうものであるか、これは学者の意見はつまびらかではありませんけれども、しかし、おそらくこれはあまり効いては生存できない、こういうカロリーであることは間違いない。なるべくじっとしておればやや生きていけるというカロリー計算であることは、これは疑いない事実でございまして、これが実質的に向上していないというこの具体的な数字を今見せつけられるといたしますならば、大臣の言われるような、個々に実績を積んでいって、最後の数字はどうであれ、かなり改善されたというふうに見ることはできない。これは確かに、いわゆる数字の面で、昨年よりも、一万二千何がしというものが一万四千何がしになるのでありますから、幾らか収入はふえたかに思いますけれども、現在の時点におけるところの、いわゆる他の一般的な世帯と比べてみた場合、あるいはまた、現在すでに政府の予定が狂っておった消費物価の引き続きの高騰、こういう事態の中にあっては、残念ながら、これは形式的な手直しにはなっても、実質的な生活水準の引き上げというふうになったとは言えないのであります。私が、厳格な意味における一定時点における絶対的な基準がほしいと言ったのは、何もこれを学理的にとらえてそうなくてはならない、こういうような話をしているのではなくて、あなたの意図される一番下の層を引き上げていくという、こういう意図というものが、必ずしも予算の面やその他の政策の面で、具体的に実施されつつあるとは言いがたいという、こういう一つの例にいたしたのでありまして、この面で一つ大臣が、今までの不十分な点を十分慰められて、さらに今後の具体的な対策を講じていただくことを私どもは強く要求いたしたいと考えるのであります。 本日は時間がございませんから、私は後日あらためて具体的にいろいろとその内容についての質問をさらにいたすことにいたしますが、以上申し上げたような観点から見ましても、せっかくの御努力というものが無にならないように、さらに事務当局も督励されて、政府全般に対してもあなたが一番抵抗の壁を張らなければならぬ一番苦しい立場にあることはわかります。何といっても忘れられそうなんですから。しかし、それを忘れさせない、それを充実させるのはあなたの役目ですから、そういった面で一つ十分な対策を講じていただくことを要求いたしまして、私の質問を本日は一応終わります。
○秋田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明七日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。 午後一時四十一分散会