P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
43回国会衆議院1963/06/26

国際労働条約第八十七号等特別委員会 第4号

発言数
52
登壇者
7
会派数
2
開催日
1963/06/26

会議録

倉石忠雄自由民主党

○倉石委員長 これより会議を開きます。  結社の自由及び団結権の保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案、地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案、国家公務員法の一部を改正する法律案及び地方公務員法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河野密君。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 私は、社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする諸案件につきまして、基本的問題については総理、各般の問題につきましては担当大臣からそれぞれ承りたいと存じます。  御承知のように、日本の政府は、岸内閣以来ILO第八十七号条約は早急に批准いたしますということを国会の中でもしばしば言明し、ひとり国内においてのみならず、国際労働総会の席上におきましても、歴代の労働大臣が参りまして、言明をしてきたのであります。しかるに、今日に至るまでなお批准がなされておりません。その結果ILOにおきましては、日本政府に対して、あるいは結社の自由委員会において、あるいは理事会において、またそれを受けた総会においてさえ、日本政府に第八十七号条約を批准するようにという勧告をいたしておるのであります。すでにその勧告は十四回に及びまして、最近におきましては、池田総理の言明のようにこの国会の会期末までには必ず批准をすることを期待しておる、こういうことを述べておるのであります。これは一般新聞紙も伝えておりまするように、日本にとって非常に不面目なことではないか、われわれもさように考えるのであります。  そこで、私は池田総理にお尋ねいたしますが、政府は、このILO第八十七号条約を本国会において必ず批准する、こういう決意を持っておいでになるかどこか。会期もすでに余すところわずかになりましたが、政府の決意いかんにかかっておると存じますが、この問題に対する池田総理の決意を承りたいと存じます。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 内外の事情は、河野先生のおっしゃるとおりでございます。私はこういう事情を勘案いたしまして、御承知のとおり、施政演説にも、特にILO八十七号条約を今国会で通過し、批准したいということを特に申し上げたような次第でございます。したがいまして、三月の初めに関係法案を提出いたし、そうして今日までいろいろ御心労願っている状況でございます。私は重ねて、今国会でぜひこれを通過せしめたいという強い熱意と努力をいたしたいと考えております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 池田総理のぜひとも通過せしめたいという熱意のほどを伺って、非常にわれわれも意を強うするのであります。  そこで、私はお尋ねいたしますが、ILO第八十七号条約に対する総理の考え方を承りたいのであります。昨日自由民主党の森山委員の質問を承っておりますと、ILO第八十七号条約の批准の問題が起こったのは、全逓の組合が提訴したり、あるいは動力車労組が提訴したり、何か国際的な圧力をかりて、日本の労働組合がいろいろな策動をするからこの問題が起こってきたかのような印象を与える発言があったわけであります。また、これはたいへん個人的になって恐縮でありますが、先般ILO問題につきまして放送討論会をやりましたときに、倉石委員長の発言の中にも、日本がILO条約を批准するといろから勧告などということが起こってくるのだ、批准しないたてまえをとれば何もそんな問題は起こってこないのだ、こういう、私から考えればはなはだその意を得ない暴言のようなことがあったのであります。私は決してそれらのことを、個人を責めようということではございません。こういう考え方があることを私は非常に懸念いたしまして、もしそういう考え方の片りんだも池田総理の念頭にあったとすれば、これはゆゆしき問題であると思うのであります。  ILO条約第八十七号は、批准するとかしないとか日本できめる問題ではございませんし、また、これを批准するといったから勧告が出てきたという性格のものでもないのであります。日本が国際労働機構に復帰を許されたそのときにおいて、すでに当然批准すべきものであることを日本政府も約束をしてきたものであります。この意味におきまして、私は、池田総理がこの条約についてどういう考え方を持っておるか、この条約の重きというものについての考え方を承りたいと思うのであります。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 ILO八十七号は、御承知のとおり、結社の自由と団結権の保護を規定しております。いわゆる労働関係としては相当重要なものでございます。基本的なものでございます。したがいまして、理想といたしましては、われわれはその方向へ向かっていくことは、流れからいって当然のことだと思います。しかし、批准するかしないかということは、やはりその国の国内事情等によって最後の決定をすべきものでございます。倉石君がそういうことを言ったかどうかは知りませんが、私の考えでは、そういうことはこれは二の次の問題で、勧告と申しましても、批准するからと言った後の勧告と、そういうことを言わない場合の勧告と、いろいろございましょう。  しかし、私の聞いたところでは、国際労働機関に日本が一九五一年復帰した場合のときに、政府として約束をしたとは聞いておりません。私はそういうことは聞いておりません。ただ、向こう側としてそういうふうな気持ちがあるということはわかっておりますけれども、政府が、復帰した場合にはこれを批准しますと一九五一年に約束したことは記録には残っていないようでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 これがきわめて重要な基本的なものであるということにつきましては、私が申し上げるまでもなく、この条約の成立した経過によりまして、きわめて明白であると思うのであります。このILO条約が採択されるに至りました経過を見ますと、戦後の国際情勢を安定せしむる上において、平和を確保する見地に立っては、どうしても結社の自由という問題を各国が基本的に認め合わなくてはいけないという考え方に立って、一九四七年の四月に、国連経済社会理事会でこれを問題とし、その年の六月の第三十回国際労働総会でこれを議題として議決し、同年十月から十二月にわたり開かれた国連総会において、——ILO総会の議決を受けて、国連総会は、労働組合の結社の自由という普通の原則が労働者の生活水準の改善とその経済的公正の改善に欠くことのできないものであると思料し、労働組合に関し国際労働憲章及びフィラデルフィア宣言で述べられている諸原則を支持することを宣言する。国連総会におけるこういう議決に基づいて、一九四八年六月のILO第三十一回総会においてこの条約を採択したわけであります。  でありますから、この条約は基本的なものでありますので、特に結社の自由委員会というものを設けて、まだ批准していない国に対しましても勧告ができるというような制度にしておるわけでございまして、それだけこの条約の重さというものがあると思うのであります。  先ほど総理のお話のように、日本はILOに復帰を許されましたときに、従来日本が国際労働総会に加盟しておる当時において批准しておった条約については責任を負う、新しい条約、しかも基本的な条約については、明文では確かに責任を負うとは書いてありませんけれども、その基本的なものに対しては当然責任を負う、日本では労働組合法もできておるし、憲法の二十八条もあるのだから、それは当然に責任を負います、ということで再加盟を許されておるわけであります。したがいまして、日本が国際労働総会を脱退しておる間に批准された条約の中で基本的なものは当然批准しなければならない義務を負うておるものと私は思うのでありますが、総理はその点についてどうお考えでありますか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 復帰によって当然義務を負うと考えることはいかがかと思いますが、先ほど申し上げましたように、結社の自由とかあるいは労働条件の改善によって社会不安を除き、そうしてそれが世界の平和に貢献するゆえんであるというこの基本観念についてわれわれは同じような気持ちを持っておるのであります。個々の問題につきまして法律的な義務を負うということはいかがなものかと思いますが、しかし、われわれとしては、方向が一つでございますから、できるだけ国内の事情、世界の情勢を考えながらILOの各般にわたりまして協調的態度をとっていくことがわれわれとしての責務と申しますか、つとめであるべきだと私は考えております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 このILO八十七号条約は、いま申し上げましたように、国際労働憲章、フィラデルフィア宣言等、労働の基本権の問題に当然触れる問題であります。総理も、国際労働憲章が示しておるように、またフィラデルフィア宣言が示しておるように、この表現及び結社の自由というものが社会的進歩のために欠くべからざるものである、こういうふうな問題については同じような考えをお持ちである、こう理解してよろしいでしょうか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、国際労働機関憲章の前文あるいはフィラデルフィア宣言等につきまして、前文も大体同じ意味でございますが、私は、方向として賛成し、これに乗っかっていこうということは、保守党であろうと革新政党であろうと、いまの政治理念においては当然の帰結だと考えております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 そこで、日本政府は九十八号条約、団体交渉権の問題についての条約は批准いたしましたが、八十七号条約については今日まで批准がおくれておるわけでありますが、国際労働総会の席上におきまして、労働問題懇談会が設置されておるから、その労働問題懇談会の結論が出たならば批准をいたしますと、こういうことを約束いたしたわけであります。労働問題懇談会の結論が出てからすでに四年になります。それから、これを受けて、閣議で批准すべきものであると決定をしてからすでに四年になるのでありますが、何が支障となって、何が原因でこの条約の批准が今日まで行なわれなかったのでありますか。政府側から見て、この条約批准が今日まで遅延した理由はどこにあったのか。これをひとつお聞かせ願いたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 原因につきましてはいろいろあると思いますが、その道の権威者であるあなたのほうがよく御存じかと思います。私も、岸内閣のときにILO八十七号を批准しようという閣議決定に参加した一人でございます。その後も総理といたしましていろいろこれの通過に努力いたしましたが、与野党の意見が合わない。その意見の合わないということは、公労法四条三項だけに限るか、あるいは一般国家公務員につきましてもいままでの慣例上からいって改正の要ありという考え方と、そのほうは改正の要なしという考え方、いろいろその点の議論があったと思うのであります。  しかるところ、それが何かから回りというだけで、ほんとうに掘り下げて与野党がこれを通そうという気持ちになったのはごく最近ではないかと考えておるのであります。私は、そういう意味におきまして非常に進歩した、いわゆる話し合いの政治が行なわれるようになったことを非常に喜び、好機であると、施政演説のときにも申しました私のこの悲願がようやく実現しようとしておることを心から喜んでおるわけでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 いろいろ御説明がありましたが、要するにILO条約の批准と国内法との関係の問題であると思うのであります。そこで、私はその点についてお尋ね申し上げたいのであります。このILO条約と国内法との関係について、私はILO条約の精神からいってこういうふうに考えるのでありますが、これをひとつ総理大臣並びに担当大臣からお答えが願いたいと思うのであります。  ILO八十七号条約の中には、この条約を批准しても国内法は尊重するという条項があります。しかし、この条約の精神に反する国内法はこれを認めるわけにはいかぬと明文が置いてあるわけであります。国内法は尊重するが、しかし国内法はこの条約の精神に反してはならぬ、こういうことに相なっておるわけであります。  そこで、お尋ねを申し上げたいと思うのでありますが、この国内法との関係で、私は、このILO八十七号条約の精神からいって、国内法は本条約の精神に反してはならない、国内法は本条約の眼目である結社の自由が害せられることのないよう措置しなければならない。したがって、本条約批准にあたっては、従来労働組合、職員団体等が持っていた諸権利はあくまでこれを保障し、本条約に抵触する国内法は削除しなければならない。旧来の労使慣行をゆえなく剥奪することを企図したり、あるいは便乗的に国内法を改悪するということは排しなければならない。団体権の保障と裏づけが当然必要であると思うが、そういうものを考慮すべきでないか。いずれにしても、条約の精神を生かすよう、前向きで国内法を改正しなければならない。私は、この条約から当然生まれてくる国内法との関係はこういう点に要約することができると思うのでありますが、この点について、まず原則の点を総理に承りたいと思うのです。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 お話しのとおりでございます。ILO八十七号条約を批准する以上は、やはりその精神に沿っていかなければならぬことは当然であると思います。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 いま私が申し上げましたことがILOの条約の批准と国内法との関係の問題であるといたしますれば、私はここでひとつ具体的にお尋ねしたいと思うのでございます。  御承知のように、労働組合法の第七条には不当労働行為を禁止するという規定が置いてあります。しかし、この公労法、地公労法、あるいは国家公務員法、地方公務員法、いま問題となっておる諸法の改正案にそういうのがどこにあるでありましょうか。これをひとつお聞かせ願いたいと思う。

林修三内閣法制局長官

○林(修)政府委員 御承知のように、公労法、地公労法関係では労働組合法が基礎になっておりまして、当然にいまの不当労働行為の問題はその適用になるたてまえで従来からできております。それから、国家公務員法、地方公務員法は御承知のように労働組合法の適用をいたしておりません。したがいまして、労働組合法七条に——またいわゆる拘束的な意味の団体交渉権もいまないわけでございまして、一応の交渉権はございますが、いわゆる普通の意味の拘束的な団体交渉権はないというたてまえになっておる。これは御承知のとおりだと思います。したがいまして、いわゆる不当労働行為に当たるような規定は、いまのところ国家公務員法、地方公務員法にはないわけでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 結社の自由というものが、御承知のようにこの条約の骨子である。私が御説明申し上げるまでもなく、条約の精神を要約してみますと、労働者及び使用者と毛に結社の自由、団結の自由が保障される。これらについて何人からも制約を受けないことというのがこの結社の自由の条約の根本精神だと思うのであります。  しかし、これは結社の自由、団結の自由というものが保障せられるという、何らかの意味においてこれを保障する措置を講じなければ、労働組合法にはいま申し上げた保障の措置があるのでありますが、国家公務員法、地方公務員法にはそういう措置がない。この条約を批准する以上、そしてその批准の線に沿うて国内法を改正するとするならば、当然これに対する保障の措置が講じられなければならないと思うのでありますが、この点はどうでありましょうか。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 従来から国家公務員法につきましては不利益処分についての救済規定がございますので、当然不当労働行為についてはこの規定の活用によって救済ができるわけでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 その点については、またあとでお尋ねしますが、一応念を押しておきます。そうすれば、当然不当労働行為に準ずるものに対する救済手段、何らかの保障措置が講じられなければならないということはお認めになるわけですか。

林修三内閣法制局長官

○林(修)政府委員 御承知のように、第八十七号条約と第九十八号条約とあるわけでございまして、いわゆる団体交渉権の問題は主として九十八号条約が扱っておるわけでございまして、九十八号条約はいわゆる公務員には適用されないということが書いてあるわけでございます。ただ、しかし、いわゆる団結権の尊重という意味においては、もちろんそういう意味の拘束的な団体交渉権でなくとも、合理的な意味のいわゆる勤務条件の改善の交渉ということはここでは認められるべきことで、これは現在の国家公務員法でもそのことは認めておるわけでございます。そういうことについてはもちろん人事院の定める手続によってやるということが保障されておりますし、またいま労働大臣が言われましたような不利益処分に対する救済措置もあるわけでございまして、これは国家公務員については九十八号条約と照らして、私たちはこれでいいのじゃないかと考えております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 労働大臣にお尋ねしますが、不利益処分に対する救済手段というのは、国家公務員法の八十六条の規定をいうのですか。

増子正宏総理府事務官(内閣総理大臣官房公務員制度調査室長)

○増子政府委員 八十六条の不利益処分と関係の規定でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 あとからその点にもう一ぺん触れると思います。  次に、さっき申し上げた、基本的には総理の同意を得たわけでありますが、したがって本条約を批准するにあたっては、従来労働組合、職員団体等が持っていた諸権利はあくまでこれを保障すべきである、本条約に抵触する国内法は削除する、これが本条約批准にあたっての、国内法を改正するにあたっての基本的な考え方でなければならぬと思います。この点はそのとおりだと言われるのでありますから、私は当然だと思うのですが、労働大臣どうでしょうか。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 総理大臣から申し上げたとおりでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 従来労働組合、職員団体が持っていた諸権利はあくまでこれを保障するというのがたてまえであるとするならば、その改正の際に、従来労働組合、職員団体が持っていた権利、たとえて言うならば天引き制度、チェックオフの権利であるとか、あるいは在籍専従の権利であるとか、あるいは組合員の範囲の問題であるとかいうものを労働団体、職員団体というものが反対をし、あるいはそれをそうすべきでないといっておるにかかわらず、なぜこういう権利をとろうと、特にこれを剥奪、というと少し言葉が強過ぎるかもしれませんが、これをとにかく否定しようとなさるのはどういう理由であるか。われわれはこれを理解することができないのでありますが、これはどうでしょうか。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 総理大臣から申し上げましたことが、今回の改正におきましては、まずこの結社の自由に関します八十七号条約の基本的精神をどこまでも尊重するということ、したがいまして、結社の自由、ことに労使不介入の原則、かようなこの条約の基本的原則をよりよく発揮いたしますために最小限度必要な改正はやむを得ないと考えました。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 いまの労使不介入の原則という点が、いま私が申し上げました点についての改正の考え方の基本である、こうおっしゃるのですか。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 御指摘の問題につきましては、そういう条約の基本精神から考えた次第でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 これはわれわれから言わせるならば、組合員の範囲の問題については多少そういうあれがあるかもしれませんが、在籍専従の問題であるとか、あるいはチェックオフの問題であるというようなものは、労使不介入ということとどういう関係があるのか、われわれには理解することができないのでありますが、これはどうでありますか。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 労働組合の運営は、労働組合の自主的な行為によってやられることがこの条約の精神に合致するものと考えるのでございます。しかるに、労働組合の運営上欠くべからざる事柄が使用者の行為をわずらわすという仕組みに相なっておりましたのでは、労働組合の健全な自主的な運営を阻害するおそれが多いのでございまして、この点に着目いたしましてこの改正は必要やむを得ざるものと考えた次第でございます。   〔発言する者あり〕

倉石忠雄自由民主党

○倉石委員長 委員外の人の発言を禁じます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 一昨日の国家公務員法の一部を改正する法律案の提案理由の説明の中に、こういうことが言われておるのであります。  「今後における当局と職員団体との間に正常な労働関係を維持確立するためには、職員団体について期待される自主性、責任性の確立と対応して、当局側についてもその人事管理に関する責任体制を整備する必要があるのにかんがみ、この際、従来から責任関係に明確を欠くきらいのありました中央人事行政機構を改編整備することといたした次第であります。」  この点についてお伺いをしたいのでありますが、「当局と職員団体との間に正常な労働関係を維持確立するため」これはまあよろしいといたしまして、「職員団体について期待される自主性、責任性の確立と対応して、」これはどういうことをゆびさしておられるのでありますか。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 職員団体につきましては、従来から官庁の協力によって組合の運営をやっておったというような点もございまして、これらの点は自主性を確立いたしまするために、今回の改正案においては是正されることに相なっております。この点をさしたわけでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 官庁の協力によって運営されるというのは、具体的にはどういうことですか。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 たとえばチェックオフとか、あるいは専従とか、こういう問題でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 在籍専従の問題については、これは法的根拠はどこにあるんですか。

増子正宏総理府事務官(内閣総理大臣官房公務員制度調査室長)

○増子政府委員 お答えいたします。  現行法におきましては国家公務員法百一条「職務に専念する義務」の三項でございます。「職員は、政府から給与を受けながら、職員の団体のため、その事務を行い、又は活動してはならない。但し、職員は、人事院によって認められ又は人事院規則によって定められた条件又は事情の下において、第九十八条の規定により認められた行為をすることができる。」この規定に基づきまして人事院規則が定められており、それに基づいて行なわれておるわけでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 お話しのとおり、人事院規則に基づいて在籍専従というものが認められておるわけであります。この人事院規則と人事院の機能、人事院のあり方というものは、当然、さっき私が申し上げました団結の保障とか、結社の自由の保障とか、そういうものに、不十分であるけれどもある程度まで役立ってきておるわけであります。そういう趣旨で設けられたのであります。人事院規則で在籍専従のものが法律上の根拠を得て設けられておるわけであります。これをどういう理由で——私がさっき申し上げた、原則的にはこれは一応認められておる労働組合あるいは職員団体の既得の権利であります。その認められておるものを、結社の自由を保障するという条約を批准するにあたって既得の権益までも取り返さなければならないのか。私はその理由を承りたいのです。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 先ほど申し述べましたとおり、今回の条約におきましては結社の自由を保障いたしまするために、組合の自主性というもの、ことに使用者の側からいたしまする干渉の排除ということが基本に相なっておるのであります。従来からわが国で行なわれておりまする在籍専従の制度は、この点につきまして弊害が予想されまするので、条約の精神に忠実にありますためにはぜひともこれを改正することが政府の責任であると考えたのであります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 今度は、その政府の側から、「人事管理に関する責任体制を整備する必要があるのにかんがみ、」と。職員団体が自主性を持ち責任性が確立するということは、いま述べられたところによって私たちは必ずしも納得しておりませんが、しかしこれに対応して今度は人事管理に関する責任体制を確立する。いま政府側の御説明によりますると、いままであった在籍専従とかあるいはチェックオフとかいうようなものがあっては干渉になるし、労働組合、職員組合の自主性を侵すことになる。  自主的になるから、それに対応するものとして人事管理を強化する、これはどういう連関性があるのでありますか。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 人事行政の実施につきましては、現行法においては御承知のように人事院にその事務を所掌せしめております。しかしながら、人事院は制度上内閣から独立した機関でございまして、国会に対しまして責任を負う政府といたしましては、この人事行政につきましてもみずから権限を持ち、みずからの責任で職員団体と接触をし、そして職員の利益のために直接責任をもって行政をやっていくということが責任体制として必要だ、こう考えたわけでございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 人事院総裁が見えておると思うのですが、総裁に承ります。  人事院は、今度内閣の人事機構を一元化していわゆる人事局を設置するということについては反対であるということを政府に対して進言しておるというのでありますが、人事院としての人事局の設置に対する考え方を承りたいと思います。

佐藤達夫人事院総裁

○佐藤(達)政府委員 お答え申し上げます。  すでに国会の御審議に入っておるわけでありますから、もちろん最終的には国会の御判断にまたなければならないことでございますけれども、ただいま御指摘のとおり、従来の経過といたしまして、この法案の行き方に対しては、前にも同種類の法案が出たことがございますが、それらを通じまして、人事院としてははなはだ遺憾ながらにわかに賛成いたしがたいという態度をとってまいりました。ただいま御指摘のように、この法案が政府部内において立案されております段階におきましても、その意味の意思は表明した次第でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 人事院総裁に伺いますが、人事院のにわかに賛成しがたいという理由は、どういうところにあるのでありますか。

佐藤達夫人事院総裁

○佐藤(達)政府委員 もとより今回の条約に直接関係すると認められる部面については何ら申し上げることはございませんけれども、それ以外の幾多のポイントにつきましては、どうも人事院の従来の考え方から申しますと、公務員法で予定されておる人事院の使命というものに触れるような問題点が相当あるのじゃないかという疑問を持っておりまして、その意味で賛成いたしがたいという態度を表明してまいった次第でございます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 総理大臣に伺いますが、むしろ職員団体の立場を擁護する、中立的な立場に立つ人事院が反対をしておる人事局の設置というもの、いま根本的にはいろいろの説明がありましたが、要するに結論としては現在の職員団体の持っておる既得の権益と申しますか、そういうものを奪って、その上になお人事院が反対をする人事管理機構というものを一元化するという。総理大臣としては、これは本条約の批准とは無関係のものである、本条約の批准の精神に反するものであるというふうにはお考えになりませんか。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 人事院の機構並びに職務権限につきましては、すでに御承知のとおりいろいろ議論のあるところであります。私といたしましては、人事院はその本来の性質として公務員の給与の改善勧告とか、あるいは試験その他基本的な問題を取り扱う中立機関にしておいて、そしてそのつくられた基準に基づいての実施面はやはり内閣に人事局を設けて担当していくことが実態に沿い、公務員にも親切な行き方であると考えまして、御審議願うことにいたしておるのであります。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 もし人事院が反対するような方向に人事局の設置が行なわれるということになりますと、二重に従来の職員団体はこの条約の批准によって圧力を受けなければならない、こういう結果になる。従来持っておった権益、しかもそれは人事院規則によって保障されておる権益を今度新しくとられるという結果になるし、新たに人事管理機構である人事局というものによってその管理監督を受けなければならぬ、こういうことになりますと、二重にこの条約の批准によっての圧力を受けなければならぬ。これは労働大臣としてどうお考えですか。こういうことは不合理であるというふうにはお考えになりませんか。もし必要ならば、何らかのこれに対する救済手段がなければならぬ。どういうふうに考えられますか。

大橋武夫自由民主党労働大臣

○大橋国務大臣 今度の考え方は、基本的な事項についての勧告でございますとか、あるいは意見の申し出というような人事院の権限が設けられるわけでちりまして、この人事院の権限を背景といたしまして、すべて法律によって直接に、あるいは法律に基づく命令によって勤務の諸条件が定められるわけでございますから、したがって総理府の所掌になることによりまして、これらの事項についての人事行政の公正とか中立性の確保というような事柄が危うくされるという心配はないと思って、おるのであります。先生は職員団体が二重に押えつけられるのじゃないか、こういうふうに仰せられましたが、私どもは逆に、二重に守られるというふうに考えます。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 人事局の問題は、いずれまたわれわれの同僚からあとで質問すると思います。この問題については、ILO八十七号条約を批准する機会に前向きに解決していかなければならない問題を、この際この条約を批准するに際して、それと無縁なもの、無関係なものを設けなければならないという理由が、どうしてもわれわれには納得がいかない。この点はひとつあとから、われわれの同僚から重ねて質問をして明らかにしてほしいと思います。  根本問題として、ILO八十七号条約を批准する機会に、少なくとも労働関係法規は前向きに解決しなければならない、こういう点については意見が一致しておると思うのであります。その前向きに解決しなければならないという中には、既得権益というもの、権益というと語弊があるかもしれませんが、とにかく既得の権利というものを保障しなければならぬというのは私は原則じゃないかと思う。これを機会に何か日本の労働運動に対してあるいは圧力を加えたり、それをどちらかの方向に向けようとしたりというような、そういう意図が働いておったとすれば、これはたいへんな間違いであると思うのであります。政府のILO八十七号条約批准に関連して出されました改正案というものは、残念ながらわれわれとしては、いま申し上げたのは片りんでありまするが、納得することができないわけであります。  そこで、われわれはこの条約の批准を促進するというたてまえをとりながらも、それに関連して便乗して改悪しようとされる法案についてはあくまでもこれを是正しなければならぬ、こういうたてまえで、過去長い間努力してまいったのであります。私は、総理に最後にお尋ねしたいと思うのでありますが、この特別委員会の設置についても、われわれは難色を示しておりまして、条約の批准は条約の批准、すっきりとした形においてなすべきであって、これが日本政府が国際的に約束した問題を履行する道でもあるし、日本の国際的なメンツからいっても当然なすべきことである、こういう考え方のもとで、条約の批准はあくまでも早くやりたいという考え方を持っていながらも、これに結びつけられた法案というものにわれわれは納得がいかないという見地から検討してまいったのであります。過去長い間われわれは、この政府が提出した法案の修正についていろいろと考えてまいりました。  しかし、その点については、与党である自民党と野党であるわれわれとの間でいろいろと折衝を重ねてまいりましたが、その成果は今日まだ具体的にあがっておりませんが、もしその成果が、何らかの帰結が得られるといたしましたならば、先般自民党の幹事長、社会党の書記長の間でその結論を尊重するということが言われたと同様に、池田総理大臣も自民党総裁の立場から、またこの条約を批准したいというたてまえから、この結果については十分尊重していただけるものと考えるのでありますが、この点についての池田総理の考え方を最後に承って、私の質問を終わりたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 ILO八十七号条約の批准につきまして先ほど来お話がございましたが、四年にわたっていろいろ論議せられたのがいままで実を結ばなかったのであります。今回法案を提出いたしましたにつきまして与野党の幹部の方々がいろいろ御審議、御検討いただいたことは承知しております。内容の点におきましては十分あれでございませんが、そういうやり方につきましては非常にけっこうなことだと私は考えております。その与野党の幹部のお方のお話し合いは当然この委員会に出てくるものだと私は思います。しこうして、そのお話しになった点をいまどうこうというのじゃなしに、委員会で十分論議され、そして委員会で決定いたしましたものにつきましては十分尊重いたしたいと考えておるのでございます。どうぞ、そういう意味におきまして、せっかく河野さんをはじめとして皆さんの御努力を今回は実を結ばすように、この委員会で十分御審議、御討議いただきまして、世界の人が見ております。また日本の進むべきいわゆる自由にして民主的な労働運動発展のために、ひとつ実を結ぶよう御努力願いたい。私も委員会の審議につきましては十分尊重してまいりたいと考えております。

河野密日本社会党

○河野(密)委員 終わりました。

倉石忠雄自由民主党

○倉石委員長 この際、暫時休憩いたします。    午前十一時三十五分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕

国会会議録検索システムで原文を見る ↗