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第43回国会衆議院1963/06/25

外務委員会 第27号

発言数
57 件
登壇者
6 名
会派数
2
開催日
1963/06/25

会議録

野田武夫自由民主党

○野田委員長 これより会議を開きます。  所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とマラヤ連邦との問の条約の締結について承認を求めるの件を議題とし、提案理由の説明を聴取することにいたします。大平外務大臣。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とマラヤ連邦との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  政府はマラヤ連邦との間で所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約締結交渉を昭和三十七年四月以来行なってまいりましたところ、今般交渉が妥結を見るに至りましたので、去る六月四日クアラ・ランプールにおいて、わがほう在マラヤ連邦大隈大使とマラヤ側タン・シュー・シン大蔵大臣との間で署名を行なったものであります。  この条約は、十八カ条からなり、従来わが国がアジア諸国との間に締結した租税条約とほぼ同様の内容を有するものでありますが、マラヤ連邦の税制及び国内事情から次のような特徴を持っております。すなわち、船舶、航空機の運用から生ずる所得は全額相互免税としております。配当については、他の諸条約と同様一五%の軽減税率とし、親子会社間のものであるときは一〇%の軽減税率としており、使用料につきましては相互に免税としております。さらに、マラヤ連邦の創始産業(所得税免除)法の規定に基づいて免除されたマラヤ連邦の租税の額は、日本で総合課税する場合に、マラヤ連邦で支払われたものとみなして、日本の税額から控除することといたしております。また、教授、留学生、短期旅行者等に対して広い範囲で免税を認めることといたしております。  マラヤ連邦は国内産業開発のために借入金形態による外資の導入を重視しておらず、第三国との租税条約の締結交渉におきましても利子課税についての軽減税率を認めない方針をとっておりますので、この条約におきましては利子の軽税税率または免税の規定を設けないことといたしました。  マラヤ連邦は、わが国にとって主要な原材料供給国として、わが国の同連邦からの輸入の額も東南アジア諸国中最高であり、また、わが国から同連邦への企業進出、船舶寄港等も多いところ、この租税条約の締結によりまして二重課税を回避し、これらの経済交流が一そう円滑に促進されるものと考えられます。  よって、ここにこの条約の締結について御承認を求める次第でございます。何とぞ御審議の上本件につきすみやかに御承認あらんことをお願いいたします。      ————◇—————

野田武夫自由民主党

○野田委員長 次に、日本国とビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定及び千九百五十四年十一月五日にラングーンで署名された日本国とビルマ連邦との間の平和条約第五条1(a)(III)の規定に基づくビルマ連邦の要求に関する議定書の締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 ビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定等の質疑に入るわけでございますが、その前に伺いたいことは、最近のビルマの政情は、日本の外務大臣からごらんになってどういうふうにお考えになるかをまず伺いたいと思います。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 東南アジアばかりでなく、戦後独立をいたしました新興国は、おしなべて、経済的にはまだ貧困の域を脱しませんし、せっかく打ち立てられました経済計画の遂行自体も予期どおり円滑にまいっておるように思えないのでございまして、ビルマもその例外ではないと思います。  ビルマの特徴として見られるところは、政治的に独立いたしました国として、経済的にも独立をいたしたい、言いかえれば、外国との資本の提携等につきまして、あるいは外国の企業の国内における活動等につきましては、非常にきびしい態度をとりまして、これを国営に吸収していくというようなラジカルな措置がとられておりますことは御承知のとおりでございます。このために、これは自由圏ばかりでなく共産圏側もおしなべて、この措置によってビルマヘの経済の進出ということがはばまれておると思うのでございます。しかし、これはビルマ国として考えておる独自の政策でございまして、とかくの批判を行ないますことは慎まなくてはならぬと思うのでございますが、私どもとしては、この措置の成果いかんでビルマ側がより穏健な政策に変わってくる可能性が全然ないとは思っておりません。しかし、ただいまのところ、そういった気配は見えませんで、いま言うように、国有化計画、国営化計画というものを意欲的に進めれておる状況でございます。その成り行きを重視しておるわけでございます。  一方、どの国もおしなべてそうでございますけれども、ビルマにおきましても、去年の十月まで、あちらの状況も十分でないし、戦前に比べまして生産力は非常に各分野において落ちておりますので、まだ上向きの態勢に移っておるとは思えないわけでございます。そういう独立経験いたしました国としてのそれ相当の試練にいま際会いたしておるという状況であります。ただ、しかし、非常にモラルはしっかりしておりますし、その政策の是非は別問題といたしまして、それを遂行しようとする政府の意欲は至純なものが感じられるわけであります。  しかしながら、わが国との関係におきましては、きわめて友好的でございまして、ただいままで、わが国との間において、新しい政策を遂行する上においての摩擦というようなものは、じかに感ずるまでには至っていないわけでございます。  主体的に政府が非常にまじめで意欲的である、しかし、実態はまだ容易ならぬ条件のもとにあるというふうに感じます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 私どもから考えまして、どこの国でもいろいろな問題があるわけで、そういうふうな面から考えますと、一応、ビルマの指導者というものが相当若返っておりすし、これからだんだん前進的な、そしてまた発展的な政策をとりながら進歩していくというふうに考ているわけでございますけれども、いま外務大臣がたいへん御丁寧にいろいろお述べになりましたけれども、私どもの見方はそういうふうに考えているのですが、そういうふうに見てよろしいわけですか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、政府は非常にまじめに意欲を持って再建に当たられておるということは、十分認めてよろしいと考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 今度出されました協定なんですけれども、日本からビルマに対して一億四千万ドルを支払うことになっておりますが、この法律的な根拠というのは、日本国とビルマ連邦との間の平和条約の五条の1の(a)の(III)項によるものと思いますけれども、これはどうでございますか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 いま御指摘の条項によって交渉して、今度の経済協力というのを協定にいたしたわけでございまして、それによって再検討条項が消えていくという仕組みになっているわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 これによって交渉をして、そしてこの経済協力の協定にしたということでございますけれども、法律的な根拠というものは、あくまでもいま述べたものであるというふうに了解してよろしいわけですか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 法律的な根拠は、いまここに御審議を願っておる協定でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 今度のこの協定を拝見しますと、日本国とビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定、こういうことははっきりなっているわけでございまして、私どもから考えますと、前に日本が払った賠償協定の再検討条項、ビルマから再度の要求があった場合には考慮する、その条項によって今回の協定になったと思いますけれども、こういうふうな名前で新しく出されたという理由はどこにあるかということを伺いたい。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 これは方法論でございまして、いきなり再検討して政府がこれだけの生産物の役務を供与するということでもよろしいわけでございますが、私どもといたしましては、両国の間の今後の経済協力を進めてまいりまする上におきまして、経済及び技術に関する協定という形式によってやったほうがよりよいのじゃないかという判断で、こういう方法をとったわけでございまして、御指摘の再検討条項というものは、この協定によってもう先方が主張しないということにコンファームしておるわけでございます。あくまでも将来の経済の復興発展に協力するという考え方で、こういう形式をとったほうがよりベターであるというふうに感じたわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 こういう形式をとったほうがよいという判断をしたとおっしゃったのですけれども、どういうものと比べてよいという判断をされたわけですか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 端的に再検討条項によってやるという方法も、先ほど申し上げましたように、正しい方法なんでございます。それでやって悪いという性質のものではございませんけれども将来、この協定による経済・技術協力ばかりでなく、両国の間には今後いろいろな経済協力関係が出てくると思うのでございまして、そういう意味で・いま懸案の再検討条項も新しい観念である経済協力という大きな軌道に乗せて解決するという形式をとったほうが、今後両国間の経済協力を進める上において、単なる再検討条項に基づいてこれだけの供与をするということよりはよりよい、そういうような判断でございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 どこがよりよいかちょっとわからないのです。私たち国民から見ますと、これをこのまま出されたときに、賠償の意味をもって一億四千万ドル払うのだということはどこにも書いてないわけです。一億四千万ドル日本からやるということはわかるのですけれども、それがどういう意味でやるのだということが全然わからないのです。これは中を読んでも賠償によって支払うのだということが示されておらない。ですから、何で一億四千万ドルビルマにやらなければならないのだろうかという印象を、これを見たときに感じるわけです。だとすると、何かよりベターであるという理由が私どもにはわからないわけなんですけれども、この点はどうでございましょうか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 これは、どちらの方法が正しく、どちらの方法が間違っているというわけでなく、再検討条項に従いまして事柄を始末する場合の方法論の問題でございまして、私は、逆に申しまして、こういう方法でやってなぜ悪いのだという御反問もできるかと思うのでございます。こういう方式によることのほうが積極性を持ち、感じとしてこのほうがベターじゃないかということでございまして、どちらが正しく、どちらが間違いだという性質のものでは決してございません。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 外務大臣のおっしゃらんとするところはわかるのですよ。ですけれども、それでは逆に伺いますけれども、賠償を支払うというのは、どういう考え方に基づいて賠償を払うのでしょうか。この点をお伺いいたします。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 これはもう戸叶さんもよく御承知のとおりでございまして、わが国が戦争によって先方に与えました損害、これは、物的な損害、精神的な損害、いろいろあるでございましょうが、そういったものに対する加害国としての責任を果たすのが賠償であると心得ておるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いま大臣のおっしゃったとおりですね。先方に与えた損害は対する罪滅ぼしというような意味であると同時に、やはり、日本の国が間違った戦争をしたのだ、もうこうものはすべきではないというような考え方の上に立って、国内においてはそういう反省をしながら、先方に対しては償いをする、こういう意味で払うのが私は賠償だと思うのであります。いま大臣がおっしゃったとおりだと思うのです。  ところが、今度の協定を見ましたときに、その賠償というような考え方が少しもない。そこで、このものをそのまま出しましたときには、やはり、国民は、一億四千万ドルというものをなぜビルマに対してやらなければならないのだろうかと疑問に思うのではないか、たとえば、再検討条項によって賠償の意味をもってやるのだというならばわかりますけれども、今度は一億四千万ドルをビルマに対して経済及び技術協力に関する協定としてただでやるのだということになると、了解に苦しむものがあるのじゃないか、こう考えるのですけれども、私の考えは間違っておりますでしょうか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 被害国である先方も、再検討条項はこういう経済技術協力協定ができますことによって主張いたしませんということを心から了承されておるわけでございまして、この賠償の精神というものがネグレクトされておるわけでは決してないわけでございまして、両方がこれで合意したわけでございますから、御懸念のような問題は全然ないと私は思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 もちろん、私は、向こうのほうから、もう再検討条項は済んだのだ、これで解決するのだということで、お話し合いになってのことだということはわかります。それはわかりますけれども、この協定を見ましたときに、賠償で一億四千万ドルをやるのだ、日本として反省し先方に対する償いの意味でやるのだということは、どこにもないと思うのです。経済及び技術協力に関する協定という名前ですから、このものを見たときに、一億四千万ドルをただでやるのじゃないか、そういう考えしか国民は持たないのじゃないかと思うのですけれども、その点をどうやって納得をさせるかということを伺いたいと思います。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 問題を処理する方法論の問題でございまして、私が申し上げましたように、こういう方法をとって再検討条項に基づくクレームというものを解決するということが間違いでないということはおわかり願いたいと思うのでございますが、しかし、そういう形式をとることによって、賠償自体にまとわる日本側の賠償の精神がはっきり出ていない、あるいは戦争に対する罪悪感が希釈されるというようなおそれがあるのではないかというような御趣旨の御質問だと思うのでありますが、これはまたこの協定と別個の問題でございまして、私どもも当事者として賠償責任に対しましては非常に峻厳な責任を感じるわけでございまして、日本政府としても、日本国民としても、それだけの心がまえ、それだけの精神を持ち、それを忠実に実行するということは、もう論議を越えたそれ以前の日本の立場であり心がまえでなければならぬと思うわけでございまして、私は、こういう形式をとったがために、そういったことが若干でも誤解を生むのではないかというおそれがありはしないかという御懸念でございますけれども、そういう再検討のクレームをどういう形で片づけるかということで希釈されたりあるいは濃厚になったりするようなあいまいな精神でなくて、これはこの論議を越えた大前提としてそういう責任があるわけでございますから、これによってそこがあいまいになりはしないかという御懸念は、まああるまいと私は思うのです。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それでは角度を変えて伺いますが、たとえば、内容は賠償なんだけれども、名称は経済協力とか、あるいは技術協力という名前で結んだ協定がありますかどうですか。何でしたら、どなたでもけっこうですけれども、そういう例がほかにありますか。

宇山厚外務事務官(アジア局賠償部長)

○宇山説明員 賠償の意味合いを持ち、賠償協定でなくやっているものはございません。御存じのように、賠償の協定は、ビルマ、インドネシア、フィリピン、ベトナムとございます。ただ、そのほかに、ラオスとカンボジアにつきましては、賠償の権利を先方が放棄いたしました。賠償を放棄いたしましたけれども、やはり日本側から何かしてほしいという気持ちは持っておったわけでございまして、それで、賠償にかわって無償の経済協力をするという取りきめがラオスとカンボジアについて・あるわけでございます。しかし、賠償としてやっているわけではございません。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうでしょう。だから私はその点をふしぎに思うわけなんです。こういうことばを使ったということはほかにはない。たとえば、いま宇山賠償部長がおっしゃったように、ラオスとカンボジアとの間に経済及び技術協力協定ですか、そういうものを結びました。しかし、それは、最初にはっきりと戦争賠償請求権を自発的に放棄したという好意的な意思表示をしているわけですね。それによって、日本のほうでは、それにかわるものとして、経済及び技術協力協定というものを結んだわけでしょう。だから、今度の日本国とビルマ連邦との間の経済及び技術協力に関する協定というものと、ラオス及びカンボジアとの間の経済及び技術協力協定というものの性質は全く違っているものだと思うのです。こっちのほうは賠償を支払うわけです。向こうのほうは、向こうが好意的に賠償を放棄したのだから、こっちからそれではこういうことをしてあげますということで、経済及び技術協力協定ということになった。だからこれは話が通るんです。ところが、ビルマの場合は、こちらから賠償を払うんです。払うんだけれども、こういうことばを使われて、しかも賠償というような内容が全然示されておらないし、これだけを見た場合には、賠償という感じを受けない。そういうことを少し私どもはふしぎに思うわけです。だから、いま申し上げたことから見ましても、それからまた、いま宇山部長がおっしゃったように、賠償の場合にはいままでこういうことばを使った例はないとおっしゃるそのことばから言っても、何かこれはふに落ちないものがあるように思うのですが、この点もうちょっと明確にしていただきたい。

宇山厚外務事務官(アジア局賠償部長)

○宇山説明員 先ほど外務大臣から御答弁がありましたとおりに、ビルマにつきましては、御存じのように、平和条約によりまして再検討条項がございます。これは、ほかの賠償を受ける国に先がけてビルマが賠償協定をやったものですから、ほかの受償国とビルマとの間の均衡がとれない場合にビルマがもう一回交渉してもらいたいと申し出ることがあるぞという協定条項であるわけです。そこで、ビルマのほうから再検討の要求がございましたが、日本政府の立場では、ビルマに対する現行の賠償も十分公平である、均衡がとれておるという立場を一貫してとってきたわけでございますが、ビルマのほうから、どうしても均衡がとれておらない、もっと増額してもらいたい、こういう要求が繰り返しなされまして、長い間両国政府の立場が対立したままになっておったわけでございますけれども、先方はそういう交渉の段階におきまして、賠償の増額ということでなくてもよろしい、そして、日本側が無償の経済協力をしてくれるならば、賠償を増額してほしいあるいは再検討してほしいという要求は撤回する、こういう申し出がございました。そこで先ほど大臣がおっしゃいましたように、この問題がいつまでも両国の友好的な関係の上において懸案となっておることは適当でないという判断から、日本側は無償の経済技術協力をする、先方はそれを受けて、もう今後は再検討の要求は出さないということで、妥結に到達したわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そういういきさつは私どももよくわかっているのです。わかっているのですけれども、今度のこういう形で出てきたのは、内容は、ビルマとの平和条約による賠償の再検討条項ということが基礎になった、法律的根拠となったわけです。その法律的根拠でもって交渉をしているうちに、ビルマのほうから、それにはこだわらない、しかしもう一度請求するということはしない、だから何らかの形でしてくれということからこういうふうになったということは御説明があったわけです。私ども、そうは想像しますけれども、いままでの例から見ますと、賠償協定という感じはここからは全然出てきません。さっきからずっと質疑応答をやって言ったとおりです。そうすると、何かしら、このものだけを見ましたときに、国民は、一億四千万ドルをなぜビルマに払わなければならないのだろうかというような印象を受けるということを私は言っているわけです。だから、再検討条項を基礎にしてやったんだというようなことが少しでもあればわかりますけれども、ないから、何かしらはっきりわからない。ビルマに対しては、一億四千万ドルをなぜ日本がただやらなければならぬのだろうかというような疑問を持つのは当然じゃないかということを私は言っておるわけです。たとえば、この前ここでもってタイとの間の特別円協定を審議いたしましたときの名前を見ましても、特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定というふうに、もとの条約をちゃんとあげて、こういうことで代わるのですよという形でやっている。これは筋の通らないものですから私どもは反対しましたけれども、ともかく、しかし、名前はそういう形になっておりますね。だから、今度タイに特別円を払うのはどういう理由であるかということはこの条約を見たときにわかったわけです。ところが、今度の場合は、この一億四千万ドルを経済協力としてただでやるということは、私たちが考えてみれば、再検討条項を基礎にして払うんだということはわかりますけれども、国民がただこれだけを見た場合に、一億四千万ドルの経済及び技術協力に関する協定をなぜ結んだのだというふうに考えるのは当然じゃないでしょうか、この解釈は間違っておらないでしょうということを伺っておりますが、これだけ見て、これは追加賠償だということがわかりますか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 したがいまして、附属議定書にちゃんといま先生の言われたことが書いてあるわけでありまして、それは国会に提出しておるわけであります。「千九百五十四年十一月五日にラングーンで署名された日本国とビルマ連邦との間の平和条約第五条1(a)(III)の規定に基づくビルマ連邦の要求に関する議定書」というものをお手元にも差し上げておるわけでございまして、そこで、「平和条約第五条1(a)(III)の規定に基づくいかなる要求をも提起しないものとする。」となっておるわけでございまして、その間の連関を明確にしておるわけでございます。なるほど、御説のように、最初の経済技術協力協定だけをお読みになりますならば、這般のことが文面ではっきりしないわけでありますけれども、御提案申し上げておりますような議定書によりまして明瞭にいたしておるわけでございますので、そういう誤解は生じないようになっておると思います。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それは議定書を見ればわりかますけれども、これだけを見た場合にそういうことがわからないということをさっきから私は言っておるわけです。それではお伺いいたしますけれども、この協定でことさらに賠償の追加支払いであるということをおおい隠そうとしたのではないというように了解していいのですか。いままでの御答弁を伺っておりますと、追加賠償であるということを何とかカムフラージュしようというような意図は何にもなかったというように好意的に見ていいわけですか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 先ほども申し上げましたように、再検討条項が交渉のきっかけになったわけでありまして、結論として、いま御指摘の要求を先方がやらないということになっておるわけでございます。このことを全体からお考えいただきまして、それは再検討条項のあと始末であるということは当然のことでございます。そういう誤解はないと私は思っております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 これからよその国との経済及び技術協力協定というものを結ぶ場合に、賠償的な意味は全然なくてただ経済及び技術協力協定という形で結ぶものだというふうに今後においても理解していいわけですね。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 一応賠償債務についての処置は済んだわけでございまして、平和条約に基づきましての賠償関係の案件は済んだと承知しておるわけでありまして、今後そういうものが出てくるというようなことは予想しておりません。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうすると、もう今度のこれで賠償関係はないというふうに了解していいわけですね。そうしますと念のために伺っておきたいと思いますけれども、サンフランシスコの平和条約の十四条の(a)の1に、「日本国は、現在の領域が日本国軍隊によって占領され、且つ、日本国によって損害を与えられた連合国が希望するときは、生産、沈船引揚げその他の作業における日本人の役務を当該連合国の利用に供することによって、与えた損害を修復する費用をこれらの国に補償することに資するために、当該連合国とすみやかに交渉を開始するものとする。」と書いてあるわけです。そこで、この十四条の(a)のに1規定されたところによって連合国というものは将来いつでも交渉を希望してくることができるという法律的な解釈が可能であるように考えますけれども、これはどういうふうに解釈したらよろしいでしょうか。

中川融外務事務官(条約局長)

○中川政府委員 ただいま御指摘になりました十四条(a)1のいわゆる賠償条項で、連合国が日本に対して賠償請求をし得るのはいつまでであるかという問題。御指摘のように、この条項ではあるわけでありまして、いつまでにこれを申し出なければならないという規定がないわけでございます。したがって、理屈から申せば、だいぶあとになってから申し出てもいいわけでありますが、現実問題といたしましては、サンフランシスコ条約を調印いたしました際に賠償を要求する国は、自分のところは賠償を要求する考えだぞということを表明しているわけでございまして、したがって、日本はそういう国々と賠償の交渉をやり、賠償の交渉は全部妥結いたしました。片づいておるわけでございます。なお、条約上は権利がありながら、賠償を請求する意思がないということを明らかにした国としては、たとえばアメリカがございます。純理論といたしまして賠償請求権があり得るけれども、まだそういうことを言ったことがない国というものも、たとえばイギリスなどあるわけでございます。これは、しかし、平和条約を結びましてからもう十年を越しておるわけでありまして、その間そういう意思を表示してこないという事実から、もうそういう意思はないのだ、かように考えておるわけでございます。したがいまして、平和条約上の義務としての賠償というものは、今度のビルマ追加賠償の交渉をもって全部終わりである、かように考えます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いま条約局長の御答弁を伺っておりますと、どこの国ももう法律的にもそういうことを言ってこないんだ、全部権利はないというふうに理解していいわけですか。そういうことを言ってこないという何か法的な根拠がありますか。ここには、いまおっしゃったように期限がないわけですね。それに対して、法的にもう言ってこないんだ、イギリスはたとえば言ってくれば言ってこれるのだけれども、十年たっても言ってこないから、言っこないだろうという希望観測だけでなくて、言ってこないという法的根拠がありますか。

中川融外務事務官(条約局長)

○中川政府委員 法律的にもう絶対に言ってこないのだということをきめますためには、そういう、たとえばイギリスの場合でありますが、イギリスの政府と話し合いいたしまして、そういう意思はないんだということをはっきりさせなければいけないわけでございますが、賠償問題についてはっきり明示的にイギリスとそういう話し合いをした事実はございません。しかしながら常識的に申しまして、十年以上たってなお申し出てこないということからいたしまして、当然あり得ないというふうに考えておるわけでございまして、したがって、事実問題として賠償請求ということはこれ以上あり得ないというふうに考えておるわけでございます。  それでは、全然言ってこないか、法律的にはっきりしておるかとおっしゃいますと、十四条は(a)1の規定がございまして、いつまでということがありませんので、法律的には可能性があるようにも見えますが、事実上こういうことはあり得ない、こういうことでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 事実上そういうことはあり得ないという、その条約局長の解釈で私どもは安心していいものかどうかということがちょっと心配なのですけれども、法律的にそういう根拠がないときに、またどっかからか言ってこないかということがとても心配なのです。ここでだいじょうぶだとおっしゃったからいいのですけれども、ほかの条約局長のときでも言ってくることはないでしょうか。だいじょうぶですか。言ってこないんだというような希望的観測だけでなくて、何かもっと裏づけがないでしょうか。

中川融外務事務官(条約局長)

○中川政府委員 これは言ってこないと信じております。また、十年以上も言ってこなかったという事実をもちましても、これは、もしかりにイギリスが言ってきたという場合には、そういう事実をもって十分対抗できると考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 それでは、なお続けて伺いたいのですけれども、十四条の(b)項はどういうような国をさしているのですか。

中川融外務事務官(条約局長)

○中川政府委員 十四条(b)項は、いわゆる戦争中の行動から起きました連合国側の請求権、これを全部放棄しておる。十四条の(a)項に書いてあることあるいはそれ以上にこの平和条約に書いてあること以外の分は全部放棄するということでございます。なお、戦争中のみならず、戦後のいわゆる占領中の直接軍事費についても同様に規定をしておるわけでございます。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 そうしますと、具体的にこれはどういう国であるかということになりますと、連合国イギリスの請求権放棄の地域として、北ボルネオとかシンガポール、香港というような地域が考えられますかどうか、その点伺っておきたい。

中川融外務事務官(条約局長)

○中川政府委員 十四条(a)項は、要するに、日本が占領したことのあるところの地域を持っている国、そういう国は、日本に対して、いわゆる現物賠償と申しますか、金銭でない現物による賠償を請求し得るという規定でございます。したがって、先ほどからイギリスの例をあげて御説明したわけでございますが、シンガポール、北ボルネオ、あるいは香港というようなのがイギリスの植民地でありまして、これらは日本が占領した地域でありますので、そこを支配しておりまするイギリスというものは、十四条(a)項によって日本に賠償を請求する権利があるわけでございます。したがって、十四条(b)項のほうは、十四条(a)項でカバーされない分のいわゆる日本の戦争中のいろいろの行為に対する請求権というわけでございまして、対象が違っておるわけでございます。したがって、香港、シンガポール、北ボルネオというものは理論的に言えば(a)項のほうに入る。したがって、請求すればイギリスとして賠償を請求し得る、そういう地域になっております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 いまのをもう一度念のために伺いたいのですが、いまはそういう地域はイギリスが外交権を持っておるわけですが、今後独立して外交権がそれらの国に移ったとき、それらの国からの日本に対する賠償請求権は全然ないというふうに理解していいわけですか。そういうことはあり得ないとお考えになるわけですか。

中川融外務事務官(条約局長)

○中川政府委員 サンフランシスコ平和条約に基づくいわゆる賠償請求権というものは、サンフランシスコ条約を調印署名いたしました国が持っておるわけでございます。しかしながら、これは単に十四条(a)項だけではまだちょっと具体的に権利の内容がきまっていないわけでございまして、賠償請求権を行使した場合に、そこで日本との間に初めて権利義務関係が具体的な面としては出てくるわけでございます。もしイギリスが近い将来たとえばシンガポールとかマレー、——マレーは独立したわけでありますがシンガポールとか北ボルネオもまた近く独立するわけでありますが、そういう新しく独立した国がイギリスの権利を承継するかどうかということになりますと、これは、すでに発生しておる権利、たとえばイギリスがすでに日本に賠償を請求いたしまして、交渉はしたけれども金額がきまってないというような事態がもしあれば、これはそのイギリスがすでに発動いたしました権利が承継国家に継承されるということがあるいは考えられるわけでございまが、イギリスはいままでそういう権利を請求してないのみならず、いろいろな情勢からむしろ権利は放棄しておると考えられるわけでございます。放棄した権利が復活することはあり得ないわけでございまして、イギリスが行使しなかった権利は承継国家にも引き継ぎ得ない、かように考えております。これと事態が違いますのは、たとえば仏印三国でございます。これは、日本が戦争をいたしました際にはまだフランス領だったわけでありますが、戦後に独立したわけであります。平和条約で要するに仏印三国はおのおの自分の権利に基づいてサンフランシスコ会議に参加いたしまして権利を取得しております。これは平和条約によってはっきりそういう国はもとのフランス本国の権利を引き継いで日本に対して賠償請求権がある。つまり、それは条約のときにもう独立していたわけであります。これがあり得るわけでありますが、その後のものについては、そういうことで、本国が放棄した権利というものは復活し得ない、かように考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 もう一点だけいまの点を確かめたいと思います。そうすると、いまおっしゃったように、北ボルネオとか香港とかシンガポールが外交権を得て独立をしても請求することはできないのだという解釈はわかったのですけれども、そういう国から賠償を請求してきているような動き、しそうな動きというものは全然ございませんか。また、そういうようなことはないと日本の外務省が断定していても、もしもそういう請求をしてきた場合にはどうやってそれを不法であるといって断わる根拠がありますかどうか、その点も伺っておきたいと思います。

中川融外務事務官(条約局長)

○中川政府委員 現実問題といたしましては、たとえば、シンガポールの華僑の人たちから、戦争中に日本軍によっていろいろいじめられた、そういうことを理由といたしまして、日本から何らかあのときは申しわけないことをしたという意味のゼスチュアをしてもらいたいという希望が出ておることは事実でございます。しかし、これは条約上の権利として先方の方々が要求しておるのでございませんし、また、日本が現地でいろいろそういう話を聞いておりますのも、別に条約上の義務としてそういう話を聞いておるのじゃないのでございまして、もし万一将来そういうことについて何らかいわゆるゼスチュアが行なわれるものだといたしましても、それは条約上の権利義務の間とは全然離れまして、むしろ違った水準における外交上あるいは高度の政治上の考えからやる措置であろうと思うのでございまして、条約上の問題としてはこれははっきりしておると考えております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 これはもう少し質問したいのですけども、何か急いでいるようですから、明日に回したいと思います。      ————◇—————

野田武夫自由民主党

○野田委員長 次に、関税及び貿易に関する一般協定の譲許の追加に関する第十議定書(日本国及びニュー・ジーランド)の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とタイとの間の条約の締結について承認を求めるの件及び先刻提案理由の説明を聴取いたしました所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とマラヤ連邦との間の条約の締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 時間の関係で問題を一緒に伺いますけれども、タイとの間あるいはマラヤと日本との間の貿易状況がどうなっているか、輸出、輸入がどの程度になっているか、そして、主としてどういうふうなものを輸出し、どういうふうなものを輸入しておるかという点をまず伺いたいと思います。

須之部量三外務事務官(条約局外務参事官)

○須之部説明員 タイとの間の貿易の数字でございますが、まず数字だけ申し上げますと、一九六〇年、日本の輸出が一億一千八百万ドル、輸入が七千二百万ドル。それから、六一年、日本側の輸出が一億三千四百万ドル、輸入が七千八百万ドル。それから、一九六二年、輸出が一億四千九百万ドル、輸入が七千二百万ドルでございます。資料は通関統計でございます。次に、品目でございますが、まず輸出側の主要品目は、繊維品、機械類、金属製品等がおもなものでありまして、輸入品のおもな品目は、生ゴム、トウモロコシ、大麻、米というようなものでございます。  次に、マラヤのほうでございますが、一九六〇年、日本の輸出が三千二百万ドル、輸入が一億九千四百万ドル。それから、六一年、輸出が三千百万ドル、輸入がちょうど二億ドル。それから、一九六二年、輸出が三千九百万ドル、輸入が一億八千六百万ドルでございます。今度は品目でございますが、輸出のおもな品目は、機械類、金属製品、繊維製品という三品目が大体圧倒的な量でございます。それから、輸入のほうは、鉄鉱石と生ゴムが圧倒的な比重を占めております。

戸叶里子日本社会党

○戸叶委員 大きな商社として両国に出ているのは大体どんなところでございますか。

須之部量三外務事務官(条約局外務参事官)

○須之部説明員 大きな商社、つまり、どのくらいの駐在員なり支店員を出しているかということは、必ずしも私正確には存じませんが、タイに日本の企業で持っておりますのは支店が二十四ございます。それから、駐在員の事務所が四十一というふうに承知しております。そのほかに合弁会社の形で十七タイに出ておるようでございます。  それから、マラヤのほうでございますか、マラヤのほうに出ております日本の企業関係では、支店を持っておりますのが十二、駐在員事務所を持っておりますのが二十五、現地法人の形で出ておりますのが十七というふうに了承しております。

野田武夫自由民主党

○野田委員長 他に御質疑はございませんか。  御質疑がございませんので、これにて三件に対する質疑は終了いたしました。     —————————————

野田武夫自由民主党

○野田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  三件をいずれも承認すべきものと決するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田武夫自由民主党

○野田委員長 御異議なしと認めます。よって、三件はいずれも承認すべきものと決しました。  おはかりいたします。ただいま議決いたしました三件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田武夫自由民主党

○野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時一分散会      ————◇—————

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