外務委員会 第10号
- 発言数
- 68 件
- 登壇者
- 6 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1963/03/26
会議録
○野田委員長 これより会議を開きます。 日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の通商、居住及び航海条約及び関連議定書の締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行ないます。 質疑の通告がありますので、これを許します。 戸叶里子君。
○戸叶委員 この条約が国会にかかっておりますときに、たまたま英国のヒューム外相が来られる結果になったのでございますが、このヒューム外相が今回日本に来られる目的は何かあるのでしょうか。
○大平国務大臣 去年の秋池田総理が訪英いたしました際に、マクミラン首相の訪日を日本政府として要望申し上げたわけでございますが、その後マクミラン首相の訪日は時間がとりにくいということでございまして、先方が首相の名代としてヒューム外務大臣を差し向けるということになったわけでございます。特別に日英間に交渉する案件はございません。日英間の親善、相互理解に資したいということでございます。
○戸叶委員 そうすると、何らとりきめらしきものはせずに、友好親善の交歓ということだけでございますね。 政府は今全般的にわたって経済外交ということを盛んにPRしていらっしゃるわけでございまして、それが成功すればまことにけっこうだと思います。そこで、イギリスとの間の経済外交ということに対してはどういうふうなことを具体的に考えていらっしゃいますか。
○大平国務大臣 日英間の貿易関係は、御承知のように、去年も大幅な伸長を見まして、EEC諸国の伸びに比較いたしまして日英間の伸びの方がもっと大幅なものでありましたことは、戸叶さんも御承知の通りでございます。今回、六カ年交渉でございました日英通商航海条約がいよいよ結実を見るに至りましたゆえんも、外務当局の努力というよりは、むしろ、やはり英国の日本に対する信頼というものの度合いが高まってきて、恒久的な関係を結ぶ相手としての評価が確立してきたことの証左であるわけでございまして、この条約ができますと、貿易ばかりでなく、商社の活動、人の移動、資本の移動、経済関係全般にわたりましての安定した基盤ができるわけでございますので、このことは、日英の将来の経済関係の増進ということに非常に大きな寄与をなすものと私どもは期待いたしております。 さしあたっての問題といたしましては、この前、前回か前の委員会におきましてもお答えいたしました通り、これは規制品目も縮小になりました関係等もございまして、外務省の推算によりましても、ただいまの条件のもとにおきましても千万ドル内外の輸出の増進は確保されるということになるわけでございますので、日英間の経済関係というのはこの条約の運営にかかっておると思うのでございます。この条約が英国、ユナイテッド・キングダムに入っておる国々との間に受け入れられますと、さらにその期待が大きくなるわけでございます。従って、私どもといたしましては、せっかくできましたこの基盤を十全に活用いたしまして、従来以上に日英間の貿易は進めて参りたいという決意で臨んでおるわけでございます。
○戸叶委員 この条約の締結によって、この日英間の経済外交というものが大へんに進められるように、抽象的ではございますが、お話しになったわけでございます。 そこで、これまでの日英間の貿易状態を、輸出入の関係なり何なり、大ざっぱでけっこうですから、ちょっとお述べいただきたいと思います。
○大平国務大臣 通関統計でわが国と英国との貿易実績を申し上げますと、一九五二年から一九六二年まで一応申し上げます.が、一九五二年には、輸出が七千三百七十二万一千ドル、輸入が三千七百一万六千ドル、従って、貿易のバランスは三千六百七十万五千ドルの黒字です。五三年は、輸出が三千三百四十万四千ドル、輸入が四千九百四十六万四千ドルで、一千六百六万ドルの赤字です。五四年は、輸出が五千百五十三万一千ドル、輸入が三千七百三十九万九千ドル、一千四百十三万一千ドルの黒字です。五十五年は、輸出が六千百二十五万ドル、輸入が千八百二十一万七千ドル、二千三百三万二千ドルの黒字です。五六年は、輸出が六千三百七十九万二千ドル、輸入が六千七百十一万六千ドル、三百三十二万四千ドルの赤字です。五七年は、輸出が七千四百三十五万ドル、輸入が九千九百三十七万一千ドル、二千五百二万九千ドルの赤字です。五八年は、輸出が一億六百七万五千ドル、輸入が五千九百八十八万ドル、四千六百十九万四千ドルの黒字です。五九年は、輸出が一億四百二十一万六千ドル、輸入が一億四百三十万二千ドル、これは八万六千ドルの赤字です。六〇年は、輸出が一億三千百五十万八千ドル、輸入が九千九百九十二万六千ドル、二千百五十八万二千ドルの黒字です。六一年は、輸出が一億一千五百五十七万八千ドル、輸入が一億三千八百十九万六千ドルでございまして、二千二百六十一万八千ドルの赤字です。六二年は、輸出が一億九千三百六十九万五千ドル、輸入が一億四千六百九十三万五千ドル、四千六百七十六万ドルの黒字、こういう趨勢をたどっております。
○戸叶委員 今、総体的に見ますと、赤字、黒字で大体赤字の方が少し多かったわけですけれども……。
○大平国務大臣 黒字の方がずっと多いです。
○戸叶委員 ちょうど同じくらいですね。今後においてこの条約が通れば一千万ドル内外の輸出の増進がはかれるというふうに先ほどおっしゃったので、そのことを一応了承したいと思うのです。 そこで、イギリスがEECに加盟できなかったということが先ごろ大へん問題になりまして、そして、この条約を締結する場合には日本の国はイギリスがEECに加盟できるという前提のもとにしたのじゃないかと私ども考えたわけでございますけれども、そういうことはどちらでもいいような形でこの条約が締結されたというふうにおっしゃったわけですが、外務省の見通しとしては、イギリスがEECに加盟できるものだというふうな想定のもとにこの条約を結んだのではないか、こういうふうに考えますけれども、その点はいかがでございますか。
○大平国務大臣 これは、昭和三十二年から交渉に入っておったわけでございまして、何も加盟という問題が現実化しない前から交渉をやっておったわけで、本来、加盟しようが加盟しまいが、日英間にはこういう安定した基盤がほしいわけでございます。従って、加盟を前提にしてつくったという性質のものではございません。しかし、加盟問題も、何もまだ結末がついたわけではないわけでございます。これからヨーロッパ大陸とイギリスがどのようなことになりますか、まだ予断を許さないと私ども考えております。
○戸叶委員 今の問題につきましては、前に自民党の松本先生の方からも御質問があったわけですけれども、ただ、この条約の交渉が進められておるころは、やはりEECにイギリスが入るものというような考え方でいたと思うわけです。そうしますと、今の外務大臣の御答弁を伺っておりますと、このEECの問題は全然別個で、もう加盟しようが加盟しまいがこの条約でよかったのだ、こういうふうにお考えになっていらっしゃるわけですか。EECに加盟しなかった場合にはやはり幾らか違うだろうとか、加盟した場合にはこれでいいのだとかいうようなことは全然考えられないかどうかを念のために伺っておきます。
○大平国務大臣 この条約自体から申しますと、無関係で考えてけっこうだと思います。
○戸叶委員 条約自体から、法文の上からはそういうことが言えると思いますけれども、経済全体の面、貿易全体の面から見ると、やはりそこに何らかの違いがあるのではないかと私どもも考えるわけですが、その問題について深くやっておりますと時間がないので、先に進んであとでEECの問題だけで取り上げてみたいと思っております。 そこで、この条約に第一議定書と第二議定書とあるわけですけれども、セーフガード、センシチブ・アイテムですか、この二つがあるわけですが、これは、イギリス側が非常に強力に主張して、そして押し切られたというような経緯があるわけでございます。日英の経済力を比べてみましたときに、何といってもイギリスの経済基盤の方が強いと思うわけです。そういうふうな形をとって結ばれた第一議定書、第二議定書でありますが、どういう理由でイギリスがわが国にセーフガードとかセンシチブ・アイテムというような要求をせざるを得なかったか、この辺をすっきりさせていただきたいと思います。
○大平国務大臣 すべて、われわれが問題を取り扱う場合には、やはり時の流れというものの上で現実を踏まえて解決の指針を見出していくという方法をとらなければいかぬわけでございまして、白紙に理想的な通商航海条約の典型をつくり上げるというのが現実に私どもの仕事ではないわけでございます。今までに日英間がどういう関係にあったかということ、それをどうインプルーブするかということが切実な現実の課題になってくるわけでございます。で、過去の欧州特に英国における対日信用というものは、遺憾ながら、御承知のブランド盗用であるとか、いろいろな事件が起こりまして、どちらかというと芳しくなかったわけでございます。しかし、官民が一致して秩序ある輸出ということにだんだん心を配り始めましたし、わが国の経済そのものもだんだんと近代化され充実して参りましたので、そういう忌まわしい事件はだんだんと跡を断ってくるようになりましたので、先ほど私が申しましたように、日本に対する信用というか、評価というものが高まった。それが今度の条約を締結するようになりました決定的な契機であったと私は思います。そこで、セーフガードの問題にいたしましても、センシチブ・アイテムの問題にいたしましても、われわれはそういう重い過去の荷物を背負っておったわけでございますが、今度はともかく対等のつき合いにまで持っていく基盤をつくらねばいかぬということで、センシチブ・リストの方は、相当向こうにも御遠慮いただいて、数をうんと圧縮してもらって、たしか十八品目になったと思うのでございます。それから、セーフガードの問題は、日本が弱いとかなんとかいうのでなくて、逆に言えば、日本の競争力が非常に強い関係で、輸入国の方が手放しで自由化するには何となくまだ心配だという懸念もあることもまた事実でございます。しかし、これはいつまでもそうだというのでは困りますので、今度の条約では、一つのタイム・リミットを置いて、先方の懸念に対応してセーフガード条項というのを日本側は認めたわけでございます。しかし、これは無期限でないので、期限を付して、そして対等の正常化に持っていこうという基礎をつくり上げたのが今度の条約の一つのメリットであると考えております。これは、日英間の経済力が強い弱いの問題でなくて、むしろ、今までの過去のわれわれの実績と、それから日本の競争力、そういうものに対する英国の反応の仕方の問題だろうと思うのであります。そういう点については、今申しましたように、将来完全な対等の貿易関係に持っていく基礎が提供されたという意味で評価していただきたいと私は考えます。
○戸叶委員 イギリス側にとってはこういうものがいいかもしれませんけれども、日本の国としても何かこれに対抗するような措置をとらなくてもいいかどうかということを心配するわけです。具体的に申し上げまして、たとえば、イギリスの生花品がわが国の生産者を圧迫するというようなことが将来において起きてきやしないか、そういうふうなものをどうやって対処していくかということをお伺いしておきたいと思います。
○大平国務大臣 セーフガード条項というのは、一方的なものではなくて、日本も持っているわけでございまして、日本に対する異常な急激な市場撹乱がある場合に日本へセーフガード条項を援用し得るレシプロカルなものでございますので、その点は御心配ないと思います。
○戸叶委員 そうしますと、はっきり、イギリスの生産品が日本の生産者を圧迫するようなことは絶対ないと、こういうふうに考えていいわけですか。将来においても大丈夫であるということを自信を持っておっしゃり切れるわけでしょうか。
○大平国務大臣 これは貿易上の競争でございますので、ふところ手しておって安全だなんという貿易は世界じゅうにないと思います。だから、日本の業者もイギリスの業者もそれぞれ合理化に努めて、コストの低下に努めて、品質の改善に努めなければならぬのは当然の前提として判断いたしますと、私は、今戸叶先生から御心配のようなことはないと思います。
○戸叶委員 大臣がおっしゃるまでもなく、貿易は、手をこまぬいていたんでは、商売ですから、いつまでたっても成り立たないので、努力をしなければならないのですが、努力をいたしましても、こういうふうな形でイギリスとの間に一応第一議定書、第二議定書の内容では押し切られたような形でやっているわけなので、将来そういう心配がないかどうかということを私どもは懸念するわけです。そういうことがないように、あらゆる措置といいますか、今後においても考えていただきたいと思うわけです。 第二条の二項のところを見ますと、第二条の一項に、「植民地の市民」ということと、それから、「英国保護民」というのがあるわけですけれども、植民地の市民というのと英国保護民というのはイギリスの国内法上の地位はどうなっているのかということをまずお伺いしたいと思います。ついでに、国際法上の地位はどういうふうになっているか、両方を説明していただきたい。
○中川政府委員 ただいま戸叶先生の御質問でございますが、ここに書いてあります「連合王国及び植民地の市民」、こういうことを書いてございますが、これは、イギリスの国籍法によりますと、連合王国及び植民地の市民という一つのカテゴリーがございます。それから、その次に書いてある、連合王国が国際関係について責任を負う領域の市民、こういう一つのカテゴリーもあるわけでございます。それから、英国のブリティッシュ・プロテクティッド・パースンズ、こういうカテゴリーもそれぞれございます。従って、ここに書いてございます字句は、いずれもイギリスの国籍法の中に出てくる表現をそのまま使っておるわけでございます。 具体的にどう違うのかと申しますと、連合王国及び植民地の市民というのは、これはいわゆる英本国市民と同じ地位にある。従って、イギリスの国籍法に関しましては、いわば同じ一つのカテゴリーに入っております。それから、ブリティッシュ・プロテクティッド・パースンズというのは、イギリスの保護領でありますとか、あるいは信託統治領でありますとか、こういう、いわゆる昔の英帝国のいわば残滓がまだ残っているわけでございますが、これらの地域のプロティクティッド・パースンズというのでございまして、イギリス政府がどの程度の保護を与えるかというその具体的なことは、おのおのの保護条約なりあるいは信託統治協定なりによってそれぞれ内容がきまってくるわけでございますが、大きく申しまして、イギリス政府が外交的に保護しておる地域の市民であるわけでございます。それから、第二番目に書いてございます。連合王国が国際関係について責任を負う領域、これも、イギリスの属領の一部でございますが、いわゆる植民地には入らずに、その領域が独自で自分の市民を持っている、こういう地域でございます。具体的に言いますと、イギリスの植民地ないしいわゆる属領と称するものの中でこのカテゴリーに入るものとしては、現在のところは、アフリカにありますローデシア及びニアサランド連邦、これがあるだけでございまして、これだけが独立の市民という制度を持っておるのでございます。従って、この第二のカテゴリーに入るのは、具体的にはローデシア及びニアサランド連邦だけでございます。 従って、ここに書いてあるももの中で、いわゆる植民地はほとんど全部が第一のカテゴリーに入ります。ローデシア及びニアサランドだけが第二のカテゴリーに入る。それからあとは、信託統治であるとか、保護領であるとか、こういうものが第三のカテゴリーに入る、こういうことになっておるわけであります。
○戸叶委員 その次に、「日本国に関しては、すべての日本国民をいう。」というのがあるのです。この中で、日本には特別に沖繩という地域があるわけですけれども、この沖繩の住民が日本の国籍であるということは、政府も年じゅう答弁していることは事実なんですけれども、そういう事実からして、沖繩に居住する日本国民については特別に規定が必要ではないかと思いますが、この点はどうでございますか。
○中川政府委員 これは、一般の通商条約におきましても、日本国民というときには沖繩の人も含むことになっておりますが、このイギリスとの通商条約では特にその点をはっきりいたしまして、付属の署名議定書の第一項の中に、「日本国に関し、「国民」には前記の地域」——これは平和条約三条地域でありますが、「前記の地域の住民で日本国民であるものを含む。」ということを特に明記いたしまして、その点をはっきりさせております。
○戸叶委員 そうすると、今おっしゃった通り、沖繩もこの中に入るというふうに了承していいわけでございますね。 第二に、第五条の二項にあるのですが、特に五条の二項で埋葬とか火葬についての規定を設けてありますけれども、こういう条約にこれまでこういうようなものを設けていたでしょうか。私よく覚えていないのですが、埋葬、火葬なんということは、おそらく通商航海条約にはなかったと思うのですけれども、特にこれを入れた理由、何か問題があったのかどうかということを説明していただきたいと思います。
○中川政府委員 いろいろな通商条約におきまして、こちらの国の人が相手国に行った場合に、いわば宗教上の自由を享受するという点についての規定の仕方はいろいろあるのでございますが、最近日本が結びました条約での普通の形では、比較的この点は簡単に書いており、単に宗教上の自由を保障されるという程度に書いてあるのでありますが、御指摘のように、このイギリスの条約では、埋葬、火葬というようなことまで相当具体的に書いております。これはできるだけ詳しく書いた方がいいにはさまっておるのでございますが、これは、日本側の原案ではなくて、イギリス側が出した原案に基づきましてつくりました。イギリスは戦後イランとの通商条約を結んでおりますが、そのイランとの条約に同じような規定があり、その関係で、イギリス側がこういう詳しい条項を出してきております。日本としても、詳しい方がいいわけですから、それをそのまま採用して、こういう規定になっているわけでございます。
○戸叶委員 それでは、別に何かの問題を予定してとか、問題があったというような理由からこういうことを入れたのではなくて、イギリス側がこれを原案として出してきたので、入れたというにすぎないわけでございますね。念のためにもう一回伺っておきたいと思います。
○中川政府委員 そういうことでございます。
○戸叶委員 第二十九条(a)項に関してでございますが、この条約の適用の除外として、平和条約第二条でわが国がすべての権利、権原及び請求を放棄した地域に原籍を有する者にのみ日本国がいずれかのときに与える待遇、特恵または特権、というふうに規定されておるわけでございますが、これについて疑問に思いますことは、これらの地域に原籍を有する者というのは一体どういうことを意味するのかということを疑問に感ずるのです。これは一体どういうことを意味するのかということを疑問に感ずるのです。これは一体どういうことを意味するわけですか。
○中川政府委員 これは、平和条約におきまして日本から分離されました地域、すなわち朝鮮、台湾、樺太、北千島、中千島あるいは旧南洋委任統治地域、こういう地域に原籍を有する人、こういう人たちに与える待遇を、この日英通商航海条約の最恵国待遇の除外例とした規定でございます。第三条地域はその次の(b)に書いてございますので、日本から完全に分離された地域の住民の人、これは、いわゆる台湾の人に対し、あるいは朝鮮の人に対してどういう待遇を与えるかということにつきましては、条約がまだ実はできておりません。従って、具体的にこの待遇はきまっていないわけでございます。将来たとえば日韓間の条約あるいは日本と中華民国との間の条約で、これらの旧日本国民でありますが日本国籍から離れた人たちに対して特権的地位を与えることもあり得るのでございまして、従って、そういう場合の待遇、特恵または特権は、これは日英通商航海条約の最恵国待遇には適用がない、例外としておく、こういう趣旨で規定してあるわけでございます。
○戸叶委員 そうしますと、将来、韓国の人、あるいは朝鮮の人、それから台湾の人、そういうふうな人たちが、日本との特別な状態といいますか、条約が締結されて、そうしてその地位の問題が取り上げられた場合の待遇、特恵、特権についてはイギリスに適用しないと、こういうふうに考えるわけでございますね。そうすると、この場合に、これらの地域に「原籍を有する者」とここにはなっているわけですけれども、有した者ということになると、どういうことになるのですか。有した者ということになると違ってきますか。
○中川政府委員 原籍というのが、必ずしも、日本の国内法にいう原籍、本知と申しますか、そういう意味で書いておるわけでなくて、常識的に、そこに籍のある者という意味で書いておるわけでございます。従って、現在でもやはり朝鮮籍の人あるいは台湾籍の人、こういう意味でこれを現在形で書いているわけでございます。こういう人たちに与える待遇は、必ずしもイギリス人に与えるとは限らないぞ、こういう規定でございます。
○戸叶委員 そうしますと、将来はどういうことになるわけですか。今のことではちょっとわからないのですけれども、有した者というふうになった場合にはどうなるわけでしょう。将来日本と韓国との間に条約か何か結ばれる、朝鮮との間に結ばれるというふうになってきた場合には、有する者というふうな形ではなくなってくるわけですね。そういうふうに解釈してはいけないわけですか。
○中川政府委員 この条約は六年間有効期限が続くわけでございまして、さらにその後も廃棄されなければ続くわけでございます。その事態が起きた際に、やはりこの条約を見て、そのときの現在形で見るわけでございます。やはり、将来におきましても、朝鮮籍の人、台湾籍の人に対して日本が与える待遇は、必ずしもイギリス人に同様の待遇を与えるわけではないぞ、こういう意味でございます。従って、将来におきましても、もちろんこの条項によりまして判断するわけで、現在でもそうでございます。ちょっと御質問の趣旨がよくわかりませんでしたが……。
○戸叶委員 そうすると、将来において、日本と、特に南北朝鮮の場合でございますけれども、何らかの形の協定が結ばれて、そして、そういう人たちの法的地位というものがきめられる。日本にいる場合に、そういうようなときでも、この条約の解釈はこの通りに受け取ってもよろしいのでございましょうか。この条約の内容通りに受け取ってもいいわけですね。将来においてもこの条約の内容通り受け取ってもいいわけでございますね。おわかりになったでしょうか。
○中川政府委員 大体わかったと思いますが、今でなくて将来、たとえば日韓間で何か協定ができまして、このような特権的地位を朝鮮の人に与えたという場合には、当然それはこの日英条約の例外になるわけでございます。そのときを基準にいたしまして判断して最恵国待遇の除外例とするということで、そういう趣旨でできているのでございます。
○戸叶委員 最後にもう一つ伺いたいのですが、署名議定書の二項に、「市民権のない英連邦市民」という言葉があるのですけれども、これはイギリスの国籍法に従ってのことのようでございます。しかも、そこに、イギリス国籍法第一三条(1)ということが書いてあるのですが、私どもとしてはそれがどういうふうなことを意味するのかちょっとわからないので、具体的にそういうのがわかるように資料を出すなり説明なりをしておいていただいた方が親切ではないかと思うのですが、この際にはっきり説明をしていただきたいと思います。普通から見ますと、この「市民権のない英連邦市民」というのはちょっと理解に苦しむわけでございますが、この点をはっきりさせておいていただきたいと思います。
○中川政府委員 この点は、戸叶先生御指摘のように、実は非常に難解な表現でございますが、イギリスの国籍法というのが、昔の大きな英帝国というものがだんだん縮小してきたその過程においての状況に基づきまして、非常に複雑でございます。このイギリスの国籍法第十三条(1)の規定により市民権のない英連邦市民というのは何であるかと申しますと、これは、インド、パキスタンが独立いたしました際に、これはもとより英連邦の一部でございます。しかしながら、英連邦の中にインドという国ができ、パキスタンという国ができて、おのおの、インド国籍、パキスタン国籍を取得したわけでございますが、その中で、インドに住んでおるパキスタン人、あるいはその逆に、パキスタンに住んでおるインド人、こういう人たちが、ほんとうなら、その住んでいる所に応じまして、インドに住んでいる者はパキスタン系の人でもインド国籍になる、あるいはパキスタンに住んでいる者はインド系の人でもパキスタン国籍になるというのが原則であったわけでございますが、宗教上の理由によりまして、自分はインド国籍はいやだと言うパキスタン人も出てきますし、自分はパキスタン国籍はいやだと言うインド人も出てきたわけでございます。そういう人たちに対します特例といたしまして、イギリスが保護権を行使いたしまして、インドにおりましてもインド国籍を取らなくてよろしい、イギリスが保護してやるということで、市民権のない英連邦市民という一つの特別の地位をつくりまして、イギリスが自分で旅券を発行してやる、そしてイギリスの保護のもとにどこでも旅行できるという制度をつくったわけでございます。一つの例外的な制度でありますが、それをここの十三条(1)による市民権のない英連邦市民と言っておるわけでございます。従って、これが要するに今度の条約によってイギリスの国定の中に入る、こういう規定がここにしてあるわけでございます。
○戸叶委員 わかりました。 この条約については私質疑を打ち切りますが、これに関連してちょっと外務大臣に伺っておきたいのですけれども、日米通商航海条約の期限が大体ことしの夏だったと思うのですが、これを改定されようとするお考えがあるかどうか。一応黙っていればそのまま有効の形をとるのがあの条約の内容でございますけれども、これを改定する御意思があるかどうか。私どもは、あの条約を審議するときにいろいろな問題点を指摘しておりますけれども、そういうふうな問題があった条約だけに、一日も早くその内容を改定すべきではないかと思いますけれども、これに対してどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、伺いたいと思います。
○大平国務大臣 本件につきましては、この前の委員会で穗積委員の御質疑にお答えいたしたのでございますが、まず、過去におけるこの条約の運営、運用の実績を検討して、どこに問題点があるかという点を検討しなければなりませんし、また、アメリカが第三国との通商関係においてどのように対処しておるかという点も検討をしれなけばなりませんので、政府としては、そういう点の検討を今やっておる最中でございます。従って、この条約を一体改定する要があるのかないのか、運用上の工夫で克服できるのかどうか、そういう点を十分見きわめてから政府の方針を固めたいと思っておるわけです。ただいまそういう点について検討中であるということでございます。
○戸叶委員 この前私おりませんで、穗積委員の質疑応答を伺っておりませんが、今の外務大臣の御答弁による限りは、改定するともしないともまだきまっていない、今後改定するかどうかを検討しているということでございますね。それはいつごろ大体結論が出てきますか。
○大平国務大臣 いつごろと時限を別に限っていないわけでございますが、ただいま検討をいたしておりますような問題が煮詰まってきたら政府は決意をしなければいかぬと思うわけでございます。従って、今その時限をはっきりここで申し上げるという段階ではないように思います。
○戸叶委員 そうしますと、大体期限が来るまでには結論が出てくると了承してよろしゅうございますね。
○大平国務大臣 さようでございます。
○野田委員長 川上貫一君。
○川上委員 この条約の締結は、日本とアメリカの通商条約に次いで行なわれる重要な条約だと思うのです。ほかの大きな国とはまだたくさん条約もできておらぬのです。そこで、将来の日本との通商航海条約の前例ともなる、こういうものだと思うのです。そこで、私の質問は一点だけですが、この条約に伴う交換公文で輸出自主規制に関するとりきめがあるわけなんです。これは日本だけがどうして自主規制をしなければならぬのかという点を外務大臣にお聞きしたいのです。
○大平国務大臣 この間の委員会におきまして穗積さんから同じような御質問がございましたが、本来、輸出がオーダリーに行なわれていけば、そういう必要はないわけでございますけれども、過去の実績を見ますと、急激に爆発的な輸出がある時点に集中するというようなことがまま起こったので、これを長期にわたって安定した拡大に持っていくために、そうして、その方が、輸出者にとりましても、メーカーにとりましても、また相手国にとりましても望ましい状態であるという意味におきまして、自主規制という措置がここにおいてとられてきたわけでございます。輸出の慣行がだんだんと固まりまして、そういう必要がなくなれば、必ずしも置く必要がないと思うのでございますが、当面、われわれとしては、まだその必要があるというように判断いたしております。
○川上委員 それも日本自体がいろいろ輸出振興の関係上考えるということはあり得るかもしれませんが、条約にどうして入れなければならないのですか。一方的に日本だけが自主規制をいたしますということをどうして入れなければならぬか、それをお聞きしておるのです。
○中山説明員 この通商航海条約の締結に伴いまして、先方としても漸次対日輸入制限を自由化していくわけでございます。従って、日本としてはそれだけ輸出の機会が増大するわけでございます。その際、日本の商品のうちには、あまりにも競争力の強いものが入っておりますために、これは単にイギリス側の利益だけでなくて、われわれとしても、長い目でイギリスのマーケットを確保するために、一応自主規制をしまして、そうして、あるものにつきましては一定の年限を認めて、その間に長き目でイギリスのマーケットを育成していくという意味からも、これが必要だということでございます。
○川上委員 長い目で見るとかいろいろありますが、条約の中へ日本の方だけ、自主規制をいたします、どうしてそういうことになるかということを聞いている。日本が輸出振興の必要上国内でいろいろな操作をするということはあり得ると思うのです。しかし、二つの国の条約で、一方の国だけが、私の方は輸出規制いたします、これをやったのはどういうわけかと聞いておる。
○大平国務大臣 これは、やりとりでございまして、先方に自由化を迫っていく以上、こちらも対応して一応自主規制をやるということによって、それを跳躍台として先方も自由化しているわけでございまして、日本が一方的に不当な措置を甘受しているというわけでは決してないのです。
○川上委員 一方的な不平等条約じゃないですか。日本だけが輸出規制をしますと言う。向こうは何もないのです。そうすると、繰り返していますように、日本の国の輸出振興上日本がいろいろの操作をするということはあり得ると思うのです。しかし、条約の中へ日本だけが輸出規制をしますということをどうして入れたのかということです。将来の見通しとかなんとかということは、それは国の考えの問題であって、イギリスと日本との条約の中へなぜ入れたか、これなんです。
○大平国務大臣 そうすることによって先方の譲歩を求めたわけなんでございまして、何も日本が頭から自発的に自主規制するというものではございません。
○川上委員 うまいこと言われますが、今後フランス、イタリア、その他の国々とも条約を結ばなければならぬ。これは前例になると思う。そうすると、次に来る条約は自主規制なんかをせぬで済むとほんとうに外務大臣思いますか。第一、アメリカとの通商航海条約にこれをやられたんです。これが一つの前例になっている。今度イギリスとやる。こうなりますと、今後の日本の通商航海条約にはほとんどこれがくっつかなければならぬということになると思いませんか。
○大平国務大臣 日本もなかなか痛いところがあるのでして、残存輸入制限が日本側にもあるわけなんでございます。先方の輸入制限をできるだけ撤廃の方向に持っていく対価としてこういう工夫もこらしたわけでございまして、一方的に譲歩したという性質のものでは決してございません。
○川上委員 どうもよくわからぬのですが、日本とアメリカの通商航海条約には今これがあるのです。これと同じようにイギリスと今度これをやる。このアメリカとイギリスとの条約は、今後条約を結ぶときに前例となるということです。そうすると、将来日本が通商航海条約を結ぶ自分には、多くの国と自主規制をしなければならぬという形になる。そう思いませんかということです。
○大平国務大臣 それは、条約の条文のつくり方の技術の問題ではなくて、実態的にやはり日本の特定産業におきましては非常に強い競争力があるわけでございまして、それに対して世界各国の市場が非常に脅威を感じておるという実態があるわけでございます。しかし、それに対して、先ほど申しましたように、一ぺんに爆発的に市場が拡大いたしましても、あとがしりつぼみになるというようなことがあっては日本の利益になりませんので、このような工夫をいたしているわけでございまして、問題は、条文作成上の技術と申しますよりは、そういう実態的な競争力をどのように秩序ある拡大に持っていくかという工夫として御了解をいただきたいと思います。
○川上委員 もう時間をとらせませんが、それは日本の輸出上の要請の問題なんです。条約の問題ではない。こうした方がいいということで、国内で操作するということはあり得るだろうと言っているのです。条約にこういうことを入れましたら、これは不平等条約です。こういうことを入れると、将来条約を結ぶときに、これは必ず前例になる。そう思いませんかということです。
○大平国務大臣 実態的な競争力がそのようなものである以上、これは条約を作案する上のテクニックの問題ではなくて、こういう競争力をどのように秩序ある拡大に動員するかという根本の問題になるわけでございまして、あなたが言われるように、日本側がそのように条約面に書かずに、日本側の自主規制にまかしてもらいたいということでおさまれば、それが一番いいと思うのでございます。ただ、そこまでまだ事態がいっていないという段階におきまして、過渡的にはこういう工夫もこらさざるを得ないという現実的な必要からでございます。あなたの言われる意味はよくわかるのでございまして、あなたの言われるように、条約面から落として先方が了承していただければ、そうやりたいわけでございますけれども、まだそこまでいっていない、ある過渡期間はこういう工夫はこらさざるを得ないという事情を御了察いただきたいと思います。
○川上委員 同じようなことを繰り返すことになりますが、将来フランスもある。イタリアもある。その他の国もある。その国と条約を結ぶときに必ずこれが必要になってくる、そう思いませんかということです。これは大臣どう思いますか。
○大平国務大臣 なるべく条約面に書かずに、あなたが言われるように、先方がそれで了承すれば、それでやりたいと思うのです。しかし、問題は、戸叶さんのときにもお答えしましたように、現実を踏まえて改善の方向に踏み出していくのが私どもの仕事でございまして、非帯に理想的な通商航海条約の典型をつくるというのが私どもの仕事ではないわけでございます。しかし、今後御懸念のような問題があるのでございまして、他の国々との通商航海条約の締結におきまして、自主規制条項を入れるかどうかということにつきましては、そういうことはできるだけ入れないように私ども努力いたしますが、現実に先方の輸入制限の撤廃を強く要請する上におきまして、その対価として必要な場合が、日本の利益のためにあり得るかと思います。
○川上委員 もう一つに聞きます。なるべくそういうことをせぬよう努力すると口でおっしゃいますが、アメリカもそうなんです。今度イギリスとそういう条約を結んでしまうのです。ほかの国に対し努力すると言うても、なかなかそんなことはできるものじゃない。しかも、イギリス連邦王国全体との関係もある。これは日本の対等の条約上きわめてよくない前例を残すと思う。 そこで、こういうことのないように努力をすると言われますが、大体、ILO条約でも、今国会に提案されてはおるが、あの八十七号さえ批准していない。もう八回もILOではやっておるが、まだやれぬ。それから、ずっと以前にあった四十時間労働制の条約も批准していない。最低賃金法の条約も批准していない。こんなことをやっておいて、努力をしますということでいきますか。いかぬと思いますが、外務大臣はほんとうに将来のことを考えなければいかぬと思います。これは何と言いましても、不平等条約です。日本だけが自主規制をして、向こうは何にもせぬのです。いろいろな事情があるというなら、向こうでもしたらいい。これがあたりまえだと思う。前例になります。今後条約を結ぶ上において日本はこの立場をくずすことはなかなかできない。これが入ってくるのです。こういうようには思いませんか。この点もう一度だけ外務大臣の意見を聞いておきます。
○大平国務大臣 せっかくの御指摘でございますが、今まで現にそういうことをやっておったのです。それから、今まで相互に輸入制限の品目をたくさんかかえておったわけでございまして、それを漸次整理の方向に持っていって、しかもそれに期限をつけてやろうということで、あなたが言われる完全な対等の状態にまで持っていく基盤をつくる、手順をきめるという機能もこの条約のメリットになっておるわけでございます。今まで全然なかったのを今度の条約でつくるというのなら、おしかりは十分拝聴いたしますけれども、現在あったものをより少なくてて、しかもそれを撤廃の方向に順序立てていこうということをやっているわけでございますので、満点とまでいきませんけれども、まあ及第点というようにお受け取りをいただきたいと思います。
○川上委員 ILO、ソーシャル・ダンピングの問題は……。
○大平国務大臣 これにつきましては、政府部内でもいろいろ苦心検討いたしているようでございますので、私といたしましては、一日も早く批准の状態に持っていくことができればと念願いたしております。
○野田委員長 他に御質疑はございませぬか。 御質疑がございませんので、これにて本件に対する質疑は終了いたしました。
○野田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。 日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の通商、居住及び航海条約及び関連議定書の締結について承認を求めるの件、本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
○野田委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。 お諮りいたします。ただいま議決いたしました件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午前十一時二十四分散会