外務委員会 第3号
- 発言数
- 84 件
- 登壇者
- 8 名
- 会派数
- 2
- 開催日
- 1963/02/22
会議録
○野田委員長 これより会議を開きます。 日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の通商、居住及び航海条約及び関連議定書の締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行ないます。 質疑の通告がありますのでこれを許します。松本俊一君。
○松本(俊)委員 日英通商航海条約が、先般ちょうど池田総理が英国へ行かれました際に、大野大使と英国のヒューム外務大臣との間で調印されまして、今度国会に承認を求めるために政府から提出になったのでありますが、日英関係に非常な関心を持っております私といたしましても、この条約交渉の推移について、相当長くかかりましたが、非常に注目いたしておりました。ことに、ちょうど今からもう十年以上前になりますが、私が初めて英国に赴任いたしましたときの日英関係から考えますと、今度の通商条約の調印は、非常な日英関係の改善をもたらし、かつ将来に向かって非常に大きな影響を及ぼすものと考えますので、この条約の持つ意義、それからその内容等につきまして政府に御質問いたしまして、日本の国会を通じてこの条約の意義がよく国民にも徹底されることを私としても非常に希望いたす次第であります。 私が参りました今から十一年前の英国では、二つの意味で日本を非常に恨んでおりました。私どもに対する風当たりも非常に強かったのであります。 一つは、皆さん御承知の通り、日本が一九二〇年、三〇年ごろにわたって世界の市場で英国のことに繊維製品と非常に競争をやりまして、ついに英国のランカシア地方、すなわち、世界の綿業の発祥地ともいうべきランカシア地方が、日本が英国の市場を奪ったために多数の失業者を出したのでありまして、非常に悲惨な状況になったのであります。その記憶をどうしても英国人は忘れないのでありまして、ことに、ランカシアは、英国の国内の政治から申しましても、ちょうど保守党と労働党との天下分け目の場所でありまして、ランカシアを制する者が天下を制するというような状況になっておりますので、この日本とのかつての競争の記憶は英国人に非常に深刻に行き渡っておりましたので、日本がいわゆるソーシャルダンピング、低賃金と悪い労働条件のもとに安いものをつくって、そうして英国品を世界の各市場から追い出してしまったといえ考えがどうしても残っております。 もう一つは、戦争中に、これは多分に英国の政府自身が宣伝したのでありますが、香港、シンガポール、ビルマ等で、日本軍が英国の軍人の俘虜を非常に虐待したということが英国人の心にしみ渡っておりまして、日本に対する感情が非常に悪化いたしました。その悪化の例を一々あげる必要もございませんが、相当深刻でありました。 ところが、最近だんだん、日本の戦後の経済の発展に伴いまして、英国の日本を見る目が非常に変わってきたと思うのであります。私は、今度の日英通商航海条約は、経済上も非常に重要なものと考えますけれども、それにも増して、日本の産業、また日本の国際社会における言動と民主主義的な平和的な国際的の活動というものが英国でほんとうにわかってきたというその一つの証拠でありまして、そういう意味におきまして、この条約は、単なる日英間の通商航海条約としてではなく、日本がかち得た一つの勲章のようなものであります。私はそういう意味でこれを非常に重く見るのであります。 しかしながら、この条約はやはり経済上の基盤に立っておる条約でありますので、いろいろな点においてまだまだ今後これを改善する余地は十分にあると思うのであります。そういう意味におきまして、私はいろいろ御質問を申し上げたいと思いますが、まず最初に、この条約を締結しましたあと、英国側は英国の議会等においてすでに報告をしておるようでありますが、どの程度批准の方向に向かって英国の政府は今日まで努力をしたか、その点についてお伺いしたいと思うのです。
○大平国務大臣 英国の国会におきましては十二月に批准を終えていると聞いております。
○松本(俊)委員 それでは、英国はもう批准を終えて、日本が国会の承認を得て批准手続をすれば、それで批准交換で効力を発生する、かような状態と承知して差しつかえございませんか。——そのときに、英国の政府はどういうふうにこの条約について一般的に説明をし、そしてこの国会等においてはどういう点において主として注意が払われたかというようなことを、もしわかれば一つ外務省の方から承りたいと思います。
○中川政府委員 昨年十二月、イギリスの下院におきましてこの条約の討論が行なわれたのでございますが、その際、討論の大きな趣旨、大きな流れというものは、イギリスとしても、この日英通商航海条約が、やはり今後の日本との貿易関係を増進する意味で非常に役立ついい条約だという趣旨の論議が行なわれたのでございます。しかし、やはり若干の心配の念も表明されました。これは政府与党である保守党の方からもそういう意見が出ました。労働党の方からも出たのでございますが、やはり、何と申しましても、イギリスの繊維業界、ことに毛織物の方の業界から、これが日本からの競争を防止するための十分な保障がないじゃないか、この条約の結果日本品がイギリスに入ってくる場合に、この条約の保障だけでは十分でないのじゃないかという点が、やはり一番強く主張されたのでございます。それに対しまして、政府側の答弁は、それはもちろん完全な保障ということは不可能である、しかし、日本の戦後における貿易のやり方というものは非常に誠意をもって当たっており、日本側の今までの態度から見て、そういうイギリスのマーケットを荒らすような心配はないものと信じてよろしい、むしろ今後は日本と提携して世界全体においての貿易をスムーズに増進していくという方向に向かうべきであるという趣旨の答弁がなされたのでございます。従って、若干の心配の念は表明されましたけれども、全体としては、もちろんこの条約は承認すべきものであるということで、政府案の通り、別段これに対して反対の討議はいたされなかったわけでございます。
○松本(俊)委員 それでは、通産省の方からお答え願ってもけっこうなのですが、日英間の貿易のまあ最近十年間くらいの、詳しい数字は資料として後ほど配付願ったらけっこうなのですが、大体の趨勢、たとえば私どもおりましたときは日本のカン詰類が日本から非常にたくさん行っておりましたし、最近ではどういう傾向になっておりますか、日英間の貿易の傾向と今後の趨勢について一般的の御説明が伺えればしあわせだと思います。
○松村(敬)政府委員 日英貿易の最近の趨勢でございますが、こちらの輸出超過あるいは輸入超過の場合、年々若干の変転がございますけれども、最近はおおむね四千五百万ポンド程度で、数年を考えて参りますれば輸出入大体均衡したような状態でございます。現在の英国は、わが国から申しまして欧州では第一の輸出市場というふうになっておるわけでございます。輸出の伸びも、昭和三十二年二千六百万ポンドから、三十六年四千百万ポンドと、かなり顕著な増加をいたしております。また、英国の対日輸出は、昭和三十三年の二千百万ポンドから、三十六年四千九百万ポンドということになっておりまして、イギリスの方から考えましても日本も非常に有望な市場である、そういう考え方に基づきましてこの条約をつくりまして、今中川条約局長からお話のありましたように、イギリスの国内において相当日本からの輸入がふえることの心配もございますが、同時に、日本に対する輸出の伸びる可能性もある、そういうことを両方あわせまして、イギリスの国内の産業といたしましてもこの条約を好ましいものというふうに考えておるのではないかと思う次第であります。
○松本(俊)委員 今度条約が調印されまして今日までの間に、英国並びにヨーロッパ、あるいは世界と言ってもいいのですが、経済外交上の大事件は、英国がEECに加盟する交渉が一月の終わりに中断されたということであります。とのEECに英国が加盟する申し出をして以来、大体一般的に少なくも七、八割は英国が加盟するだろうという考え方で認められておったのでありますからして、おそらく、これは私の想像でありますが、日英間の通商航海条約の交渉にあたっても、英国がEECに加盟した場合のことを考えてできておると思うのであります。しかし、もし英国がここ数年間EECに加盟できないという事態が生じましたときには、この条約の運用自体について何か影響を受けるようなことはないのでしょうか。その点を一つ明確にしていただきたいと思います。
○大平国務大臣 日英通商航海条約締結交渉は、御案内のように、昭和三十二年からやっておったわけでございまして、英国のEEC加盟を前提としたものではございません。また、協定の内容にわたりまして、英国のEECに加盟するかしないかということには一切関係がないわけでございまして、従って、運用上も支障が起こることは一切ございません。
○松本(俊)委員 だけれども、条文を読みますと、署名議定書の第十四項に、英国のEEC加盟の場合の協議と通報の規定があるようでありますが、この点について外務省としてはどういうふうに考えておられるのでしょうか。
○中川政府委員 全体的には、ただいま外務大臣の御説明されましたように、この条約は別にイギリスがEECに加盟することを前提としてつくったものではないわけでございます。むしろ、経過から申しますれば、英国がEECに加盟するという考えが全然ないころに発足いたしまして、その後にイギリスの加盟という意向が相当はっきり出てきた。従って、ただいま御指摘になりましたような署名議定書第十四一項の規定等は、イギリスがEECに入った場合も日本に支障がないようにということで、念のために入れた規定でございます。従って、この署名議定書の第十四項は、御承知のように、イギリスがEECに入る際には事前に、また入ったあとにもできるだけさしつかえない程度で日本と協議する、スムーズに日本とイギリスとの関係が進むようにしよう、こういう趣旨の規定でございますので、従って、イギリスがEECに入ればこの議定書第十四項が生きてくるわけでございますが、入らないうちは、これは必要がない規定でございます。条約全体としては、日英間を律するわけでございまして、EECにイギリスが入ることがそのいわば重要な一要素になってできているものではむしろないわけであります。
○松本(俊)委員 ただ、英国がEECに入れないということになりますと、これはアメリカに対しても非常な影響を及ぼすことは申すまでもございませんし、EECの性格が、英国が入ると入らないのとでは差ができてくることは、予想にかたくないのであります。そういう意味におきまして、私は二つの点を懸念するのでありますが、英国がEECに入らないためにEECそのものは非常に閉鎖的の性格を強めはしないかということ、従って、それが日本のヨーロッパに対する貿易に強い支障を来たしはしないかという懸念が一つ。もう一つは、せっかく日英間に通商航海条約ができて、先ほど条約局長から御説明がありましたように、英国も日本と貿易に非常に期待をしておる、これははっきりしております。しかしながら、英国はEECに入れないということになりますと、やはり、英国としては、どうしても貿易を伸ばしていかなければいけませんので、関税の引き下げ等いろいろ努力はするだろうと思いますが、しかしながら、どうしてもやはり海外の市場を求めなければならないということで、日本との間に再び昔のように各市場で相争うという事態が生じはしないかという懸念を述べる人もあるのであります。この二つの点について外務省ではどういうふうにお考えになっておりますか、伺っておきたいと思います。
○大平国務大臣 EECが閉鎖的になるか開放的になるかという見方でございますが、EEC自体は、私どもとしては、その内在的な必要からも開放的な方向に行くものと思います。現に、ただいままでの経過から見ましても、第一次、第二次の関税交渉で、第一次から第二次に関税を下げて、外に向かってEECの市場を開放するという方向に行っておりますし、ことしの五月に予想される一括引き下げ交渉におきまして、EECがどういう態度をとるか、これはまだわかりませんけれども、方向としては開放的な方向に行っておる、そして、そのことがEEC自体の経済の拡大をはかっていく場合に必須のことになるのではないかというように私どもは見ております。 それから、第二点の、英国がEECから締め出された場合、対日経済競争が激化するのではないかということでございますが、これは、EECへの加盟が今中断いたしましたが、それはいわば振り出しに戻ったことでございまして、現在の状態に加重した条件が形成されたわけではない、振り出しに戻ったというにすぎないと思うわけでございます。もちろん、貿易のことでございますから、英国ばかりでなく、世界のどの国とも競争関係に立つことは覚悟しなければなりませんけれども、今度の中断の事実があったから特に加重するというふうに私どもは見ておりません。
○松本(俊)委員 時間もあまりありませんので、もう少しこの問題は質問したいと思いますけれども、この程度にいたしまして、次にガット三十五条の関係について御質問をしてみたいと思います。 ガットは、私も二回ばかり代表として出席いたしまして、英国が終始日本の前面に立ちふさがっておるという感じを受けております。私が最初にガットに出ましたときも、今英国の国防大臣をしておりますソーニクロフトが英国の代表でありました。非常に雄弁をふるって、日本の加盟を阻止しようとしました。私もとうていかなわないと思ったのでありますが、そういう非常な私としても苦い経験をなめておる。ところが、それから二年たって、今から七年前にガットへ日本はいよいよ加盟を許された。加盟を許されたと思ったら、三十五条を適用されて、英国、フランス、ベネルックス等々、日本にとって貿易の量は大したことはなくても、非常に重要な世界における文明国が日本に対してガットの三十五条を適用して、ガットには入れてやるけれども、しかし自分たちは日本とはガット関係に入らないぞという、まことにこれは妙な関係になりました。そこで、それ以来、歴代の日本の政府、外務大臣は、英国初めフランス、ベネルックス、また豪州、ニュージーランド等もそうでありましたが、ガット三十五条の適用を免除する、やめるということを非常に強力に推進されましたが、しかしながら、なかなか頑強でありまして、ことに英国も三十五条の適用をやめるということになかなか同意しなかった。ところが、今度この日英通商航海条約が締結されると同時に英国はガット三十五条適用をやめることに踏み切ったのでありまして、この点から申しましても非常に重要な条約であります。 そこで、このガット三十五条の関係の議定書は非常に重要でありまして、その内容、それから将来における実際の適用等は、十分に外務省においても注意深く取り扱っておられると思うのでありますが、現在は幸いに日英関係は非常に友好親善の関係にありますので、この議定書も円滑に運用されることを私も信じて疑いません。しかしながら、もし一たんそういう状態がくずれるようなことがありますと、この条項も日本に対して相当つらい条項になるかもしれない。そこで、この点については十分に慎重に検討をしておく必要があると思うのであります。 まず第一に、非常に原始的な質問ですが、英国がガットの三十五条を撤回しますと、さしあたり日英間の貿易関係にはどういう利益が生じてくるでしょうか。この点をはっきり一つ教えていただきたいと思います。
○大平国務大臣 ガットの三十五条援用撤回ということは、関税の面では、わが国に対する最恵国待遇がガット上確保されるということでございます。言いかえれば、代償がなければ条件の撤回ができないという保障が与えられることになるわけでございます。数量制限の面では、センシチブ品目として第二議定書に基づいて認められている例外品目以外は、英国の対日輸入はすべて自由化されるということになるわけでございます。それで、私ども一応の計算をしてみたのでございますが、条約が発効いたしました初年度の対英輸出は約千二百万ドルくらいの増大を来たすのではないかと見ております。 なお、対英関係ばかりでなく、英国が三十五条の援用を撤回するということになりますと、これは英系の新独立国に対するのみならず、まだ援用を撤回していないヨーロッパのフランス等に対してもこれを促進する効果があると思います。現に、私がフランスに参りましてデスタン大蔵大臣に会って、英国は撤回に踏み切る決意をしたので間もなく通商航海条約の調印を見ますよということを申し上げたら、それは大へんショッキングなことであるというような、相当強く響いたような印象を私も受けました。
○松本(俊)委員 外務大臣が今言われたように、他の三十五条適用国に対してこれは非常な影響を私は及ぼすと確信いたしますが、今、ガット三十五条撤回について、この間新聞で拝見しますと、ベネルックス三国と交渉しておられるようでありますが、あれはどういうふうに今進んでおるのでありましょうか。
○大平国務大臣 近く援用撤回になるものと私どもは見ております。
○松本(俊)委員 大体において英国と同じような条件で撤回になるわけでありますか。条件がもっと酷になるというようなことはないでしょうか。
○大平国務大臣 大体において英国と同じと思います。細目の点にちょっと違いがございますけれども、大体において同様の条件になると思います。
○松本(俊)委員 英国がガットの三十五条の撤回をするのに、第一議定書、第二議定書の内容であるいわゆるセーフガードの条項、それからセンシチブ・アイテムというものを置いて、これで、日英問の貿易関係において、ガット三十五条撤回に英国が踏み切ったことから来る非常なショックを緩和しようという考え方だろうと思いますが、英国側が従来日本に対していろんな貿易上に有しておった懸念をこういう形でなしくずしにだんだん、正常なものに持っていこうという考えで、英国のその考えは私の経験から申しまして非常に実際的だろうと思いますが、この内容、仕組みについては、議定書を読んでもわれわれしろうとにはなかなかよくわかりませんので、この仕組みについて、どういうことでこういう議定書があって、これがどういうふうに動くか、それでいっこのセンシチブ・アイテムなんてものがなくなるかというようなことについて、説明が聞ければしあわせだと思います。
○中川政府委員 ただいま松本先生からお尋ねの点でございますが、第一議定書、第二議定書と二つ議定書がございまして、この二つがいわば合わさりまして、イギリスに対する、日本品がイギリスの市場を撹乱するようなことはしないということの保障になっておるわけでございます。第一議定書というのは、いざという万一の場合のことを書いてあるわけであります。これはいつも発動しているわけではないのでございまして、むしろ、現在の面で申せば、現在発動している分は第二議定書の方でございます。これが結局、今イギリスで対日差別待遇ということで日本品だけをほかの国の輸入品と区別いたしまして量的制限をしております。百八十品目ほどあるわけでございますが、これをぎりぎりにしぼりまして、十分の一の十八品目にしぼって、これだけは少なくとも一定期間だけ、一定期間というのはもちろんできるだけ少ない期間に撤回さしたいということでございますが、あるいは一九六四年の終わりまでに撤回する、あるいは六六年の終わりに撤回する、あるものは、一番おそいのでも六七年の終わりに撤回する、こういうふうにしぼりまして十八品目だけは暫定的に日本品に対する制限を認めておこうというのが第二議定書でございます。従って、これはまあ三、四年すればなくなってしまうことにちゃんとそのスケジュールがきまっておるわけでございます。 それから、その裏にある、いわば万一の場合の保障というのが第一議定書でございまして、これは、結局、日本からの品物が非常に急激にイギリス市場にはんらんしたというような場合には、イギリス側から日本に善後措置について相談をする。相談した結果、双方が合意する善後措置があればそれで実施するわけでございますが、それが三十日たっても解決をしないというような場合には、やむを得ない措置としてイギリス側で一方的措置を暫定的にとることができる。しかし、とった場合においてもなお協議を続けるわけでございます。それから、万一非常に急迫したような場合には、三十日の期間がたたない間でもイギリス側が一方的な規制措置をとることができる。しかし、日本はイギリスの規制措置をするのを一方的に見ておるわけじゃないのでございまして、相談ができる。そのイギリスの規制措置によって日本の利益を害されたと思えば、実質的に同等である限度でのイギリスの品物が日本に入るものについて対抗措置をとることができるわけでございます。結局、イギリスがその対抗措置をとる際に、日本がそれに身がわる何か代償をイギリスから得て満足するということもあるわけでございます。その代償について話が合わない場合は、日本がイギリス品に対して対抗措置をとるということもできるわけであります。そういうことで、イギリスが対抗措置をとる道があるわけでございますが、しかし、原因がなくなったというような場合には、対抗措置はすぐにやめなければいけないということになっておるのでございます。これはまさしく万一の場合の規定でございまして、おそらくこれは発動されることはないだろうというのが、条約をつくりました際の日英面当局間の印象でございます。これがあるから安心して貿易ができる、しかし、これはおそらく発動しないで済むのじゃないかという考えでございます。 なお、この議定書は、第一議定書も第二議定書も条約と同じ有効期限でございます。条約は六年の期限でございまして、六年たったあとはいつでもこの廃棄ができることになるわけでございます。従って、その保障措置の方も条約と同じ六年の期限付である。なお、六年以内でも、その必要がなくなったような際には、協議によってこの議定書の方はやめることができる。こういう仕組みになっております。
○松本(俊)委員 そういうふうに非常に用心深く第一議定書、第二議定書でセーフガード、センシチブ・アイテムというふうに二重に保障されておる。その上に、交換公文を見ますと、自主規制を日本は約束しておるわけでありますが、これは、交渉の沿革から言いまして、この自主規制の規定はどうしても約束しなければいけなかったのでございますか。その点を一つはっきりさせてもらいたいと思います。
○中川政府委員 先生御指摘の通り、日本側の自主規制に関する交換公文がございます。これによりまして、日本側からの自主的な措置といたしまして、繊維品その他の約六十一品目につきまして自主規制をやるということになっておるのでございます。これはやはり従来百八十品目という制限があるのでございまして、それにつきまして、イギリスという通商航海条約をつくって最恵国待遇の原則を認めさせる、完全なガット関係に入る、こういうことをイギリスをして承知せしめるためには、いわゆる議定書によるセーフガードのほか、日本側の自主規制の措置ということがどうしても必要であったわけでございます。なお、この自主規制は、たとえば繊維品などがそのおもなものでございますが、これは、先ほど松木先生が御指摘になられました、要するに戦前の日本品がイギリスに脅威を与えたということの非常な中核をなす品物でございまして、イギリスにおける脅威は依然として続いておるわけであります。従って、やはりこれを自主的に規制することによってイギリスの恐怖心をなくしていく、そして秩序立った対英輸出を確保するということが、むしろ日本の利益にも合致するという考え方から、この自主規制という措置に日本側としても同意したわけでございます。従って、これは、今度の日英通商航海条約を結ぶにあたりましては、やむを得ないと同時に、日本側から見ましてもむしろ必要な措置であると考えて、これをとることにした次第でございます。
○松本(俊)委員 自主規制まで約束したことについては、いろいろもう少し研究してみますと、あるいはそこまでいかなくてもよかったのじゃないかということもあるかとも思いますが、今の条約局長の説明によりますと、日本がかつて韓国品と世界の市場で競争した品目が大体この自主規制の内容になっておるということであります。これはある意味で感情的な部面もあるし、また実際的の部面もあると思います。しかし、このようなものが長く続くことは、私は非常におもしろくないと思うのですが、大体いつごろまでにこういうことの義務を日本は免れることになっておるのですか。そういう話し合いはあったのでありましょうか。
○松村(敬)政府委員 先ほど中川条約局長から説明がございましたように、自主規制品目の大部分のものは、特に繊維品が主となっておりますので、全部この際に自由化することは非常に無理なものでございまして、むしろ、センシチブ・アイテムとしてイギリス側の規制にゆだねるよりも、わが方の自主規制という形に移した方がはるかにわが方として有利であるというような考慮もございまして、自主規制品目として入っておるわけでございます。松本先生御指摘のように、こういう品目が非常に長期にわたりまして存在することは好ましくないわけでありまして、その点は、条約の有効期限内におきましても双方で協議をいたすような仕組みになっておりますが、一応さしあたりの三年間につきまして、ある程度のワクを大体話し合ったものもございます。しかし、これは相当毎年の増加の比率が多くなっておりまして、従来の輸出の増加程度に比べますれば、はるかに著しい伸びを示しておるのでございます。また、その一部の中には、三年後になりましたならば自主規制品目から落とすというようなものもございますし、また、自主規制をやりました結果、あまり市場撹乱のおそれがないというような品目につきましては、条約有効期間中の協議で自主規制品目から落とすことも十分可能であると考えておる次第でございます。
○松本(俊)委員 それで、外務大臣に私はお伺いしておきたいのでありますが、この三十五条撤回の英国の措置は、ほかの国に対しても前例になりますので、非常に重要な事柄と思います。日本の貿易の将来にとっても非常に重要な意義を持つと思うのでありますが、この第一議定書、第二議定書、それから自主規制の交換公文、これをあわせて運用して、三十五条撤回が無意味になるようなことになると、これは何にもならないので、その点の懸念が運用次第によってはないこともないような気がいたしますので、この三十五条撤回の条件について政府としてもはっきりした考えを持って、将来の運用についても、三十五条の適用を撤回をして実際上日本の英国に対する輸入の待遇は非常に改善されるという方向へ持っていってもらいたいのでありまして、その点に関する外務大臣の所見をお伺いしたいと思います。
○大平国務大臣 先ほど両局長から御説明申し上げましたように、センシティブ・リストは十分の一になっておるが、自主規制にして六十数品目残っているということ、これは歯切れの悪いことであることは御指摘の通りでありますが、今日の状況から見まして、輸入市場の状況に照らして、自主規制の方がむしろ輸出を伸張するための有効な手段ではなかろうかということでございまして、先ほども私が申し上げましたように、年率相当程度の輸出の増大を期待いたしておるわけでございます。しかし、目先のそういうことよりも、今御指摘のように、この条約並びに付属議定書、交換公文等の運用にあたりましては、細心かつ周到な配慮を加えまして、三十五条援用撤回の効果の減殺にならぬように、最善の努力をいたしたいと思います。
○松本(俊)委員 なお時間がありましたらもう少しいろいろな点についてお伺いしたいのでありますが、さしあたり以上の点について質問するにとどめまして、最後に一つお伺いしたいのは、英国と米国との非常な親密な関係からいたしまして、日英間の関係は日米間の関係に非常に影響するところ大きいと思うのであります。最近アメリカの綿製品の規制のことが問題にもなっておりますし、それから、日米通商航海条約も近く改定の時期になっておるように思うのでありますが、アメリカとの通商航海条約の改定の交渉にあたって、アメリカは従来ガットに日本が入ることは非常に促進してくれた国でありますし、もちろん三十五条の問題もありませんが、しかしながら、今度のような綿製品の問題も起きますし、これは将来アメリカ人がどの程度日本の国内において事業活動ができるかというような問題もあります。英国人の事業活動については、この条約はどういうふうな規定で、どういう考えでできておりますか、その点を一つはっきりさしておいていただきたいと思います。
○中川政府委員 この条約におきましては、日本人のイギリスにおける事業活動及びイギリス人の日本における事業活動につきましては、最恵国待遇を与えておるわけでございます。 御承知のように、アメリカとの条約におきましては、内国民待遇及び最恵国待遇を与えておるのでありまして、この点、イギリスと規定のやり方が違うのでございますが、これは、考えました結果、結局内国民待遇という規定にいたしますと、いろいろ例外をたくさん設けなければいけないわけでございます。アメリカとの関係でも、内国民待遇を与えながら、制限業種という形でいろいろ事業活動を制限する業種が列挙されているのでございます。イギリスとの場合は、アメリカとはまた事情が少し違いますから、制限業種の種類がまたアメリカとは変わってくる複雑な規定の仕方をしなければいけませんので、むしろ最恵国待遇ということに規定いたしますと、たとえば日本におけるイギリス人の活動について申せば、日本がアメリカ人に与えている待遇は全部最恵国待遇でイギリス人にも自動的に与えるという結果になります。従って、イギリスとしては、まず実質においてはアメリカ並みが確保されますから、これは実質においては支障がないわけでございます。 それでは、日本のイギリスにおける待遇はどうかと申しますと、米英間では、アメリカ人に対してはほとんど内国民と同じ待遇をイギリスは与えております。従って、日本は、イギリス国内におきまして日本人がアメリカとの最恵国待遇を確保することによって、これまた日本が与える内国民待遇と同じ程度の待遇をイギリスにおいても日本人が与えられることが保障されるという結果になりますので、最恵国待遇という簡単な規定にした方がよろしいじゃないかということで、それに踏み切りまして、従って、実質的には内国民待遇とほとんど同じでありますが、形は最恵国待遇ということになっておるわけでございます。
○松本(俊)委員 まだいろいろ質問したいこともありますが、この程度にいたします。 せっかく、日英問としては、私自身の感じでもこういう画期的な条約ができ、日英間の将来にとっても非常に明るい見通しを持つことができることになりましたのでありますが、日本のいわゆる経済外交はこれからなかなか多難だということは外務大臣もよく御承知の通りでありますので、一つこれを十分活用して有終の美をなすように御努力をお願いいたしまして、私の質問を一応打ち切りたいと思います。 ————◇—————
○野田委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とオーストリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件、及び、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュー・ジーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件、以上三件を一括議題とし、質疑を行ないます。 質疑の通告がありますので、これを許します。 森島守人君。
○森島委員 ただいま上程されました三件につきまして一括して御質問いたしたいと思います。 この種の条約は、大体ほかの国との間にすでに締結されました同種の条約に範をとっておるようでございます。関係各省の専門家が審議にも参加せられたことと存じますので、大した質問はない。しかも、技術的な方面に関する問題のみでございますので、私が一覧いたしました結果思いついた二、三点をお伺いしたいと思います。 第一点は、政府側の提案理由の説明、特に英国との間における条約に関する提案理由の説明を見ますと、この交渉は通商航海条約の締結交渉と並行して昭和三十一年以来五、六年にわたって行なわれてきたようでございます。ほかの国の例を見ますと、大体一、二年で実質的な合意を見ているようでございますが、イギリスとの間においては六年以上かかっているように思うのでございます。何らか交渉が難渋した点が特にあるのかないのかということに関しまして御説明を求めたいと思います。
○中川政府委員 特にイギリスとこの条約が難航したという事情はないわけでございますが、何と申しましても、通商航海条約をぜひつくりたいというのが日英当局の非常に強い希望でございましたので、この税の方の条約はむしろ通商航海条約と一体として考えていたわけでございます。従って、現実に署名するに至りましたのも、結局通商航海条約ができることがわかりまして、これが署名されたのでございまして、むしろ通商航海条約との相関関係という点で六年間交渉がかかったわけでございます。内容自体についてはさして難航した事実はございません。
○森島委員 私、その事情はわかりましたが、同時に、ここに指摘をされておるのは、OECD財政委員会が欧州諸国相互間のこの種条約の典型として作成した勧告案をも参考としたということが特にうたわれておりますが、この関連におきまして、何らかの特徴と申しますか、特色と申しますか、変わった点があるのかないのか、この点を伺いたいと思います。
○中川政府委員 OECDが、パターンというものをつくりまして、これはOECDの諸国の中で租税条約をつくる場合の一つの。パターンとしてつくったものでございますが、これが先進国同士の間の租税条約についての一つのいわば理想的な形を示しておりますので、日英間で租税条約を交渉いたすにあたりましても、このOECDパターン、日本はOECDに入っておりませんが、そのOECDパターンにできるだけよろうということにしたのでございます。これは、一括して御審議願っておりますオーストリア及びニュージーランドとの租税条約でもやはりこのOECDパターンというものを採用いたしておるのでございます。 それでは、今まで日本がつくりましたほかの国との租税条約とどこが違うかという点でございますが、第一には、恒久的施設という観念が租税条約にあるわけでございます。恒久的施設という観念をOECDパターンでは明確に詳細に規定いたしております。この点が非常に明快になるわけでございます。なお、配当課税につきましては、一五%というのが、やはりOECDのパターンでございます。それから利子及びロイアリティにつきましては、いずれも最高税率を一〇%とするという点、これもOECDパターンの一つの特徴でございます。そのほかにも二、三特徴がございますが、おもな点はただいま申し上げましたような点でございます。
○森島委員 この条約を見ますと、第一条に、対象となるものとして、「租税は」といたしまして、グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国においては所得税及び利得税、日本国においては所得税及び法人税、こういうことになっておりますが、オーストリアの条約を見ましても、法人税が当然対象になっておりますが、特に英国について法人税をあげていないという理由はどこにございますか。
○中川政府委員 各国によって税の名前が違うわけでございまして、イギリスでは、いわゆるインカムタックスという中に個人の税も法人の税も両方含んでおるのでございまして、別に法人税という名前がイギリスではないわけでございます。従って、各国ごとに税の名前を掲げておるのはそういう趣旨でございます。実質は全く同じわけでございます。
○森島委員 その点は、この第二条の(e)項にも、「連合王国の法人」ということがありますので、私了解いたしました。 その次に、第二条に関しましてお伺いしたいのですが、第二条においては、諸種の用語の定義をあげているようでございますが、特に日本国に関して「「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域をいう。」ということを特に規定しておりますが、地理的意味以外で用いられる場合があるのでございますか。
○中川政府委員 日本国と申します場合に、国家としての日本、一つの法人格を持った団体と申しますか、国家としての日本国ということを言う場合もあるわけでございまして、また、地理的な意味で用いる日本国という場合もあるのでございまして、この定義は、後者の場合には日本の租税に関する法令が施行されている領域をいうのだという意味の規定でございます。従って、国家として用いている場合にはこの定義は当てはまらないわけでございます。
○森島委員 それでは、「日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域」ということを具体的に一つ御説明願いたいのでございます。
○中川政府委員 これは現実に日本の行政権の及んでいる地域でございます。従って、ここからはずれておりますものは、日本国の領土でありましても、潜在主権を持っている沖繩、小笠原は今はずれております。なお、北方領土もはずれております。
○森島委員 それでは、ほかの国の条約にはこの種の規定がないようでございますけれども、同様に考えてよろしいのでございますか。
○中川政府委員 これは税に関する条約では大体こういう定義を用いております。現に、御提案いたしておりますニュージーランドとの条約、それからオーストリアもそうだと思いますが、同じ意味での同じ定義を置いております。
○森島委員 私の質問はそれだけで終えます。
○野田委員長 戸叶里子君。
○戸叶委員 内容にわたりまして四、五点伺いたいと思いますが、その前に一般的な問題としてお伺いしたいことは、この種の条約を結んでいる国と結んでいない国との間の実体的な利害得失を述べていただきたいと思います。
○中川政府委員 実体的な利害得失は非常にあるわけでございまして、日本の人が外国に行って事業をする、また、日本のたとえばエンジニアが外国に行きましていろいろ産業上の指導をするというような場合に、その国でやはり課税され、同じ対象について日本でも課税されるということになりますと、負担がそれだけ重くなるわけでございます。従って、今いろいろ、後進国の経済開発とか、あるいは日本からの経済協力、あるいは端的に申しまして商売のために貿易を促進するという必要がある際に、行く人が、外国に行くためにそれだけ税の負担が重くなるということでありますと、それの奨励にならないわけでございますので、少なくとも税が加重されるということがないようにしてやろう、また、もしできれば幾らか税の負担を軽減するようにしてやろう、こういう趣旨で諸種の租税条約がつくられるわけでございまして、いま日本で大体十二、三カ国と租税条約が成立し、あるいはできかかっておるわけでございます。これらの国に対するそういう進出が非常に楽になると申しますか、奨励された格好になるのであります。
○戸叶委員 今後近いうちにこの種の条約ができようとしている国がでございますか。
○中川政府委員 現在交渉しておりますのは、タイ、マレー、フランス、ドイツ等と今交渉いたしております。
○戸叶委員 内容にわたって伺いたいのですが、今条約局長のおっしゃったようなことで、十一条は、結局相手国の政府とかあるいは地方公共団体から受ける報酬とかあるいは恩給は、相手国内に居住している限り本人の属する国の租税を免除される、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。国へ帰ればそれは免除されないのだ、またかかってくるんだというふうに了解してよろしいわけですか。
○中川政府委員 ただいまのお尋ねは、イギリスとの租税条約の十一条だと思いますが、これは、官公吏のいわば収入につきまして、たとえば日本の官公吏がイギリスにおります際に、日本政府から払われます報酬あるいは恩給等は、イギリスにおいての租税を免除されるという規定でございます。
○戸叶委員 そこで、(a)項と(b)項を見ますと、(a)項の方には報酬という言葉の中に恩給を除いてあって、そして(b)項の中では報酬ということの中に恩給という字が書いてあるわけですけれども、これはどういうふうに違うのでしょうか。
○中川政府委員 これは、結局、日本で出す恩給というものは、日本の国庫からその大部分の金が出ておるということで、日本としては、恩給についての権利を第十二条で留保しておるわけでございます。恩給についてはいかなる場合においても日本で税を取り得るという規定になっておるわけでございます。しかし、十二条(1)の方の一般原則といたしましては、恩給については、むしろ受け取る人が現在おる地域、おる国で課税できる、そういう趣旨でできておるわけでございます。恩給に対する観念の相違が国によってございますので、規定が使い分けてあるわけでございます。
○戸叶委員 もうちょっとはっきり説明して下さい。ちょっとわからないのです。恩給に対する観念が違っているから(a)項と(b)項との違いがあるというわけですか。ちょっとわからないのです。
○林説明員 それでは、お許しを得まして私から御説明させていただきますが、十一条の第一項の(a)を見ていただきますと、一応カッコの中で「恩給を除く。」と書いてございまして、そのあとに「及びその役務についてその個人に対し支払われる恩給は、」と再びあげているわけでございます。結局、恩給もやはり(a)項に入るわけでございますが、なぜ一たん除いておいてまたあとでつけ加えたかということでございますが、それは、公務員は現在国家公務員共済組合から年金を受けておりまして、その支払い者は政府ではなくて国家公務員共済組合ということになっております。従いまして、上の方に書いてございます政府が支払うという言葉に該当いたしませんので、一応そこからはずしまして、そして、「及び」ということで、個人に対して支払われる恩給ということをつけ加えまして、結局イギリスと日本と平仄が合うようにしてあるわけでございます。
○戸叶委員 今の御説明ではわかりましたが、日本では最近恩給という言葉を使わないで年金となってきているのじゃないですか。この三つの条約を通じて恩給という言葉が使ってありますけれども、一応最近日本では年金と言っていますね。恩給はないのじゃないかと思うのですけれども、その辺どうなっているのでしょうか。
○林説明員 恩給という言葉は、若干言葉として問題があると存じますが、ただ、年金という言葉にも非常に問題がございます。と申しますのは、年金には、保険会社等に金を払い込みまして、そして年金をもらうという、権利を買う形の年金がございます。欧米の用語例を見ますと、ペンションという言葉とアニュイティという言葉と二つありまして、アニュイティという言葉は金を出して買った年金の請求権ということになっております。それに対しまして、ペンションという言葉は、勤め先から勤めをやめてから支給されるかつて勤めたことに対する報酬という意味に使われておりますので、そこのところを何とか日本語で書き分けなければいけないということで、恩給という言葉でそこのところを表わした方がいいのではないかということで、恩給ということにしたのであります。
○戸叶委員 それは英語には忠実な訳かもしれませんけれども、私たち日本人が読んだ場合には、日本語に忠実な訳とは思われないように思いますが、どうでしょうか。
○林説明員 確かに、言葉といたしましてよりよく英語の語感を表わす言葉がございますれば、そのような言葉を当てはめたいというふうに感じているわけでございますが、日本の所得税法の用語例を見ましても、給与所得の中に恩給という言葉がございまして、その恩給という言葉が、私がただいま申し上げましたようなペンションという言葉を反映する語感を伴っておりますので、それをにらみ合わせながらこういう用語例を選ばせていただいたという経緯でございます。
○戸叶委員 今その経緯についてはわかりませんけれども、一方におきまして、やはり私ども年金という言葉にならされている関係上、今のようなアニュイティとペンションという言葉を説明されればわかりますけれども、そうでないとちょっと誤解を招くようなこともあるのではないかと思うのです。これから租税の問題とかあるいは大蔵省にたくさん出てくる給与所得なんかの問題でそういう言葉が出てくると思いますので、そういうときにやはりきょうのこういうこともにらみ合わせて、何か言葉について、国民が年金と言われたら年金で理解するようなはっきりした言葉を考えておいていただきたいと思っております。 それから、次にお伺いしたいことは十三条でございますが、十三条に、「一方の締約国から」、ずっとこう書いてございまして、「租税を免除される。」というふうに書いてあるわけでございますが、その中で、「二年をこえない期間」というのがありますけれども、二年をこえた場合には一体どういうふうになるのですか。税金がかかるということなんでしょうか。
○林説明員 二年をこえた場合どうなるかと申しますと、これは、最初から二年をとえることがわかっております場合には、この規定は適用にならないと解しております。最初は二年をこえないつもりであったものがたまたま二年をこしてしまった、こういう場合にどう読むかという問題につきましては、いろいろ議論の余地はあるわけでございますが、建前といたしましては、二年をこえてからの期間について課税をするという扱いをしたいということで、お互いに話し合って合意しております。
○戸叶委員 そうしますと、今のをもう一度申し上げますと、最初から二年をこえるというふうにわかっているときには二年の期間だけは免除されるけれども、偶然かかったときにも二年たったときには課税するということになるわけですね。
○林説明員 そうです。
○戸叶委員 はい、わかりました。 そこで、ここで特に「大学、学校その他の教育機関」というふうに分けてあるわけですが、これは教育機関というだけではわからないのですか。わざわざ大学とか学校とかいうふうに分けた理由は何か特別にあるわけでございますか。教育機関という言葉だけで表わせないようなものが何かあるわけですか。
○林説明員 別段、これが絶対になければいけないということはございません。ただ、この趣旨が、主として高等教育のために他の国を訪れる教員についての免税をしたいという趣旨であるということから、大学、学校という言葉を入れた方がわかりいいということでありまして、別段特別それがなければいけないということはございません。
○戸叶委員 そうしますと、教育機関というだけでもいいけれども、なおわかるようにそれを入れたということなんですね。 それから、十四条に、「一時的に滞在するものは、次のものについて、」というふうに書いてあるのですけれども、この「一時的に」というのは、非常にばく然としているわけですけれども、その意味は、永住以外の人は大体一時的にというふうに言えるのじゃないかと思うのですが、これはどういうふうなお考えでこの言葉を使われたのでしょう。
○林説明員 所得税法の概念に、住所という言葉と居所という言葉がございまして、住所を持っておりますと、直ちに居住者といたしましてその所得について課税されます。居所を持っている場合には、直ちには居住者になりませんで、居所が一年以上になった場合に初めて、住所を持っている者と同じような課税を受けるということになっております。わが国を訪れましたときには、直ちに居所がそこに生ずるわけでございますが、たとえば家族を連れてきて日本に住み込むというような状態にある場合には、これは住所を持つということになりまして、そのような場合には、一時的にという趣旨にはならないというふうに存じております。居所という程度、生活の本拠がこちらに移ってきたというのではなくて、たまたま本人がこちらにいるという程度に認められる場合、すなわち居所があるというふうにとどまる場合には、この「一時的に」に相当するものというふうに理解しております。
○戸叶委員 それでは、その次に、第二十一条に、「一方の締約国の国民は、」ということがあるのですが、先はどの森島委員のイギリスとの間のこの種の条約の中の二条の(b)項で条約局長に質問をされておりました沖繩との問題でございますが、この中の国民という言葉、この国民という言葉の定義ですけれども、その定義で、(b)に、「日本国については、日本国の国籍を有するすべての個人」というふうに規定されてあるわけでございます。そこで、この沖繩に居住する者も、この条約に規定する国民の範疇に入るかどうかということが問題になると思いますけれども、これはどういうふうに解釈していらっしゃいますか。
○中川政府委員 これは当然日本国民全部が入るわけでございます。沖繩の力もイギリスに行けば、日本国民として当然その権利を取得されるわけであります。
○戸叶委員 そうしますと、念のために伺っておきますが、たとえばイギリスで事業活動をする沖繩県人もこの条約の適用を受けるというふうに理解してよろしいわけですね。
○中川政府委員 そういう場合もこの条約の適用になるわけでございます。
○戸叶委員 次に、ニュージーランドのこの種の条約について一、二点伺いたいと思いますが、この二条の(m)の(iv)のところに、「一方の締約国内で他方の締約国の企業のために又はこれに代わって行動する者は、次の場合には、当該一方の締約国内における恒久的施設」ということが書いてありまして、この「恒久的施設」の定義は、つまり、「一方の締約国の企業の事業が移動的性質を有するものである場合には、このような事業が他方の締約国において行なわれている場所は、事業を行なう一定の場所とみなされる。」、こう書いてあるわけでございますけれども、これと同種の他の条約にはこういう言葉がないのですけれども、移動的性質を有する事業というのは一体どういうものをいうのでしょうか。それを説明していただきたいと思います。
○林説明員 御指摘の通り、実はこの条項は従来のわが国が締結いたしました他の条約にはございません。と申しますのは、この種の条項は、隣接国同士で、たとえば行商人でありますとか、あるいはその他のそういうような移動的な性質の商売をするものについていろいろ規制を行なわなければいけないという状況のもとにある場合に必要になってくる規定でございます。ところが、わが国は、四面海に囲まれておりまして、そのような欧米諸国のような陸続きの関係にある国ではございませんので、従来はこの種の規定は必要でございませんでしたし、また、こちらが必要でないといえば向こうもそれで納得していてくれたわけであります。ただ、ニュージーランドの関係におきましては、ニュージーランドが従来のニュージーランドの条約例その他を引きまして、例といたしましては、たとえば羊毛を刈り取るような男が、向こうでは、たまたまオーストラリアからニュージーランドへ来て、方々の羊を刈り取ってまた帰っていくというような例があるそうでございまして、ぜひこの規定を入れてほしいという要求がございました。そこで、私どもといたしましては、なければいけないということでもございませんけれども、あって害になることもないということで、結局相手方の要求をいれまして、このような規定を置くことになったわけでございますが、私どもといたしましては、この規定によって特にわが国が得をするということもなければ損をすることもないというふうに解釈いたしております。
○戸叶委員 これを見たときに、私ども、移動的性質を有する事業というものは一体どういうものかということをすぐ感じるわけでございまして、今説明を受ければわかるわけですが、そうしますと、今後において日本が隣接の国とこの種の条約を結ぶ場合でもこれは必要ないわけですね。日本に関する限りはこういうものは絶対に要らないわけで、ただ、今のような陸続きの国に関してだけ必要である、そういうことでございますね。
○林説明員 ただいま御指摘の通り、現在考えられます状況では、わが国の方からこの種の条項を要求する必要はないというふうに存じております。
○戸叶委員 私どもは、要らないことなら別に入れる必要はないように思ったのですけれども、向こうから特に入れろということで入れられたということになると、それも別に害にも何にもならないということなんでしょうから、かまわないと思いますけれども、そこで、第十七条の三項で、「この条約の規定を実施するため直接相互に通信することができる。」と、この項でわざわざ一項を設けて、通信するというような特殊な項を設けたのには、何か理由があるのか。特別な通信か何かお考えになっていらっしゃるのか。
○林説明員 御存じの通り、国の当局と国の当局の間は原則として外交ルートを通じて一切の話をする建前になっておりまして、課税上の問題につきましても、特別の規定がなければすべて外交ルートを通して話し合いをするということになっております。ところが、課税上の問題になりますと、個々にだれだれの納税者についてどういう問題が生ずるかという一々のこまかい案件を外交ルートを通じて交渉するというのが無理な場合が出て参りますので、この種の納税関係の当局間で直接に通信してよろしいという規定を設けるのが各国間の条約の例になっているわけでございます。
○戸叶委員 同じような項がほかの条約にありますか。
○林説明員 はい。
○戸叶委員 そうですか。ちょっと見落としたものですから伺ったわけです。 これでけっこうです。
○野田委員長 これにて三件に対する質疑は終了いたしました。 —————————————
○野田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。 所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国とオーストリア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国政府との間の条約の締結について承認を求めるの件、及び、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とニュー・ジーランドとの間の条約の締結について承認を求めるの件、以上三件をいずれも承認すべきものと決するに御異議はございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野田委員長 御異議なしと認めます。よって、三件はいずれも承認すべきものと決しました。 お諮りいたします。ただいま議決いたしました三件に対する委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 本日はこれにて散会いたします。 午後零時三十三分散会 ————◇—————