P政策ポータルPOLICY PORTALウォッチ
42回国会衆議院1962/12/11

予算委員会 第1号

発言数
102
登壇者
11
会派数
2
開催日
1962/12/11

会議録

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 これより会議を開きます。  去る十一月二十一日、長らく本委員会の委員を勤めておられました橋本龍伍君が逝去されました。まことに痛惜の至りであります。ここに衷心より同君の御冥福を祈る次第であります。      ————◇—————

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 これより、昭和三十七年度一般会計補正予算(第1号)、同特別会計補正予算(特第1号)及び同政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括議題とし、審査に入ります。     —————————————

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 まず提案理由の説明を聴取いたします。田中大蔵大臣。

田中角榮自由民主党大蔵大臣

○田中国務大臣 政府は、今回、昭和三十七年度一般会計補正予算(第1号)、特別会計補正予算(特第1号)及び政府関係機関補正予算(機第1号)を国会に提出いたしました。ここに、予算委員会の御審議をお願いするにあたりまして、その概要を御説明申し上げます。  今回の一般会計予算補正による歳入歳出の追加額は、それぞれ五百四十二億円でありまして、この結果、昭和三十七年度予算の規模は、歳入歳出とも二兆四千八百十億円と相なるわけであります。  歳出につきましては、公務員の給与改善を初め、予算作成後に生じた事由に基づき、特に緊急に措置を要することとなった経費を追加計上いたしております。  補正追加を行ないます事項のそれぞれにつき御説明申し上げます。  まず、給与改善費でありますが、これは、去る八月十日及び昨年十二月十四日に行なわれた人事院勧告を尊重して、本年十月から国家公務員等の給与を改善するとともに、暫定手当の整理合理化を行ならために必要な経費であります。これに基づく一般会計の補正所要額は、一般会計職員分百二十一億円、特別会計繰り入れ分六億円、義務教育費国庫負担金分七十六億円及び補助職員分十七億円、合計二百二十億円となっております。  次に、石炭対策費であります。石炭対策費につきましては、石炭鉱業の近代化、合理化及び雇用に関する対策を促進するため、三十七年度当初予算においても百八億円を計上したのでありますが、事態の緊急性にかんがみ、これらの対策を一そう促進するため、近代化資金、炭鉱整理促進費を中心に合理化対策として二十七億円、産炭地域振興対策として一億五千万円、炭鉱離職者就職促進手当の創設等離職者援護対策として三億円、合計三十一億円を追加計上いたしております。  なお、これに関連して、財政投融資計画においても、資金運用部資金をもって、日本開発銀行からの石炭鉱業向け設備資金融資額四十五億円及び石炭鉱業合理化事業団からの整備資金融資額五十五億円、合計百億円を追加し、石炭鉱業の近代化、合理化を促進することといたしております。  次に、災害復旧事業費でありますが、今回、百三十四億円を追加計上し、過年災害の復旧事業を推進することといたしております。すなわち、三十四年災害及び三十五年災害については、その後の復旧事業の実施状況を実地調査した結果によりまして、また、三十六年災害については、本年度当初予算作成後における査定の進捗に伴い被害額が増加したこと及び災害特例法による指定によって国費額が増加したこと等によりまして、三十七年度においてこれら事業費の追加を必要とすることとなったものであります。  なお、本年発生災害については、すでに査定の終了したものにつき、既定予算の予備費のうちから百五億円を支出して応急措置を講じたのでありますが、その他についても、今後査定の進捗に応じて予備費を支出すればこれに対処し得る見込みでありますので、今回の補正予算では特に措置を講じておりません。  また、一般会計における災害復旧事業費の追加に伴う地方負担の増加に対処するため、財政投融資計画においても、地方公共団体に対し二十億円の資金運用部資金を追加することとし、災害復旧に万全を期しております。  最後に、地方交付税交付金でありますが、これは歳入面におきまして所得税及び法人税を追加計上いたしますことに伴い補正を必要とするものでありまして、その総額は百五十七億円であります。  歳入につきましては、歳出需要の増加に対応して、現在のところ所得税及び法人税の収入増加五百四十二億円が確実に見込まれますので、これによりまかなうことといたしております。  特別会計につきましては、以上申し述べました一般会計予算の補正及び公務員の給与改善に応ずる補正のほか、失業保険特別会計において、炭鉱離職者の雇用促進をはかるため、移転就職者用宿舎及び職業訓練施設を建設することとして、同会計の雇用促進事業団に対する出資金を四十六億円追加するとともに、食糧管理特別会計において、国内米の買入数量の大幅な増加が見込まれること、及びその買入価格が当初予算を上回って決定されたこと等により、国内米買入費を五百五十三億円増額する等のため、それぞれ所要の補正を行なうことといたしております。  最後に、政府関係機関につきましては、日本国有鉄道において、東海道幹線増設費の債務負担行為の限度額を百二十三億円引き上げ、工事の進捗をはかることといたしております。  以上、概要を御説明いたしましたが、なお詳細は政府委員をして説明いたさせます。何とぞすみやかに御審議の上御賛同あらんことをお願いいたします。

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 続いて補足説明を許します。石野主計局長。

石野信一大蔵事務官(主計局長)

○石野政府委員 お手元に、「昭和三十七年度補正予算(第1号、特第1号及び機第1号)の説明」という薄い印刷物が、大蔵省主計局というので配付してございます。それをごらんいただきながら、時間の関係もございまするので、読みながら説明をさせていただきます。  まず、一ページをおあけいただきますと、第一の総説でございますが、今回の補正予算の全体をまとめて書いてございます。先ほど大臣のお話にもありましたように、人事院勧告に伴う公務員給与の改善を初め、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊急に措置を要するものについての補正でございますが、一般会計予算の補正事項は、第一が公務員の給与改善を本年十月から実施することに伴う経費、第二が石炭対策費、第三が過年災害の復旧を推進するための災害復旧事業費、第四に所得税及び法人税の歳入計上に伴いまする地方交付税交付金であります。この補正によりまして一般会計の歳出に追加される額は五百四十一億五千八百万円でありまして、その財源は、租税及び印紙収入で五百四十一億五千八百万円の増収を見込んで、これに充当いたしております。  特別会計につきましては、地方交付税交付金を追加することに伴い、交付税及び譲与税配付金特別会計において所要の補正を行なっております。それから、一般会計における公務員の給与改善に関連いたしまして、八特別会計の予算補正を行ないました。なお、これらの特別会計のうちで、失業保険特別会計においては、炭鉱離職者の就職促進をはかるために、また、食糧管理特別会計においては、主要食糧の買い入れの増加等に伴いまして、それぞれ所要の補正を行なっておるのであります。  それから、政府関係機関につきましては、日本国有鉄道において、工事の進捗状況等にかんがみまして、東海道幹線増設費の債務負担行為の限度額を引き上げることといたしております。  次に、二ページに参りまして、一般会計の内容を御説明いたしますが、一番上にありますように、三十七年度一般会計の歳入歳出予算は、当初の二兆四千二百六十八億百二十二万八千円が、五百四十一億五千八百万円追加になりまして、二兆四千八百九億五千九百二十二万八千円となりまして、その一般会計補正予算の内訳表を次に掲げてございます。給与改善費及び石炭対策費、災害復旧事業費、地方交付税交付金、これらの歳出でございますが、その内容を御説明いたしますと、第一に給与改善費、二ページの左の方でございますが、二百十九億五千七百九十六万四千円、これは、一般職の国家公務員の給与につきまして、八月十日に行なわれました人事院勧告を尊重して、初任給の引き上げ及び中位等級以下の俸給の合理的改善を中心とした俸給表の改定、期末・勤勉手当の増額とその支給の合理化並びに宿日直手当の増額を行ないますとともに、三十六年十二月十四日に行なわれました暫定手当に関する人事院勧告を尊重して、暫定手当の整理合理化を行なうことといたしました。いずれも、その実施期日を三十七年十月一日といたして必要な経費を計上することといたしております。なお、特別職の国家公務員の給与についても、一般職との権衡を考えて改善を行なっております。また、義務教育職員等の給与改善についても、現行制度に即して財源措置を講ずることといたしております。この給与改善のための追加額の内訳は、三ページの上に表として掲げてございまして、給与改定費、特別手当増額、暫定手当整理費、一般会計職員分、他会計へ繰り入、義務教育費国庫負担金、補助職員分というふうに表として掲げてあるわけでございます。  第二に、石炭対策費でございますが、これは、当初百七億五千六百五十八万九千円を、三十一億千三百六十二万円追加いたしまして、百三十八億七千二十万九千円。ほかと書いてありますのは、一般職業訓練所補助職員の給与改善費の七十万円であります。この追加額は、石炭鉱業の近代化、合理化及び雇用に関する対策を一そう促進するために必要な経費でございます。第一に、合理化対策といたしましては、高能率炭鉱の造成、非能率炭鉱の整理を中心として所要の措置を講じて参りましたが、最近のエネルギー事情に即応してさらにこれを促進する必要が生じてきたため、まず大規模近代化工事のための近代化資金として二億五千万円を追加計上し、それから、非能率炭鉱等の整理については、整理ワク二百万トンを追加すること、それから中小炭鉱労働者に対する離職金の加算を行なう等のために、炭鉱整理促進費補助二十三億一千三百万円、それから保安不良炭鉱整理費一億二千八百万円を追加計上いたしてあります。第二に、産炭地域振興対策といたしましては、新たに産炭地域振興事業団の事業としてボタ山処理事業を加えることとして、同事業団に一億五千万円の出資を追加計上することといたしてあります。第三に、離職者援護対策としては、新たに就職促進手当制度を設けて求職期間中の生活の安定をはかるとともに、公共職業安定所による職業紹介体制を強化充実するために二億六千七百万円を計上いたしてあります。その所管別、事項別内訳を表として掲げてございまするが、時間の都合で説明を省略さしていただきます。なお、四ページの左の上にありますように、財政投融資においても、石炭鉱業の近代化、合理化を促進するために、設備資金、整備資金の確保をはかることといたしまして、設備資金につきましては日本開発銀行からの石炭鉱業向け融資額を四十五億円、整備資金については石炭鉱業合理化事業団からの整備資金融資額を五十五億円、それぞれ増額することとして、合計百億円の資金運用部資金を追加することといたしております。  第三の災害復旧事業費でございますが、これは百三十四億三千四百七十五万四千円の追加でございます。この追加額は、三十四年、三十五年及び三十六年発生の災害による公共土木施設及び農林水産業施設の災害復旧に要する経費であります。三十四年災害及び三十五年災害につきましては、その後の復旧事業の実施状況を実地調査した結果によりまして、また、三十六年災害については、三十七年度予算作成後における実地調査、査定の進捗に伴いまして被害額が増加をして参りました。また、災害特例法による指定によって国費額が増加したこと等によって、三十七年度においてこれらの事業費の追加を必要とすることとなったのであります。なお、四ページのまん中の右のところにありますように、一般会計における予算補正に伴う地方負担の増加に対処するために、財政投融資において地方公共団体に対し二十億円の資金運用部資金を追加することといたしました。  第四は、地方交付税交付金でございます。百五十六億五千百六十六万二千円の追加でございます。先ほど申しましたように、所得税、法人税の増収五百四十一億五千八百万円を歳入に計上いたしたことによって、地方交付税交付金の増加が計上されるわけであります。その内容は下の表にございますが、百分の二八・九をかけて計算したものでございます。  歳入が五ページに書いてございますが、一番下のところをごらんいただきますと、租税及び印紙収入の増五百四十一億五千八百万円の内訳は、所得税が源泉所得税で二百六十二億二千七百万円、法人税が二百七十九億三千百万円、合計五百四十一億五千八百万円でございまして、源泉所得税は公務員の給与改善等による給与所得の増加が見込まれることによりまして、それから法人税は本年度の上期における法人企業の業績が当初見込みに比べまして増加したこと等によるものでございます。  六ページに参りますが、特別会計の方は大部分が先ほど申し上げましたような給与の改善に伴うものでありますから、説明を省略いたします。  第一の交付税及び譲与税配付金特別会計は、先ほど申しました交付税の関係でございまして。内容が歳入、歳出に分けて掲げてございます。  第二は食糧管理特別会計でございます。これは、食糧管理特別会計の国内米管理勘定におきまして、当初国内米買入数量を四千二百万石と見込んでおりましたが、これが豊作等に伴いまして四千五百万石に増加すると見込まれるに至りましたこと、及び三十七年産米の政府買入価格が三十七年度当初予算で予定した価格を上回って定められましたこと等によりまして、国内米の買入費及び管理費等を補正することといたしております。また、国内米の売却数量の増加が見込まれることと、消費者米価が改定されたことに伴う国内米の売り払いの収入の増加も見込んでおるわけでございます。なお、業務勘定におきましては、政府職員の給与改善のため人件費が八億三千五百万円増加することに伴いまして、事務費の追加等を行なうことといたしております。  その各勘定別の補正の内容を表として掲げてございます。それから、第三に、七ページに参りまして、まん中のところの失業保険特別会計でございますが、これは、歳出においては、石炭鉱業合理化対策の進展に伴う事態の緊急性にかんがみ、炭鉱離職者の雇用促進をはかるために、移転就職者用宿舎四十四億六千五百万円、これは五千戸分でございますが、及び職業訓練施設一億七千四百万円を建設することとして、雇用促進事業団に対する出資金四十六億三千九百万円を追加するとともに、政府職員の給与を改善するために必要な経費一億三千万円を計上しておるのでございます。歳入及び歳出の内容を表として掲げてございますが、説明を省略さしていただきます。  八ページに政府関係機関の国鉄の分が書いてございますが、東海道幹線増設工事にかかる債務負担行為額は、当初予定した五百九十一億円をもってしては工事の進捗上支障を来たすということで、百二十三億円を追加して七百十四億円に改めることといたしております。  以下は付表でございますので、説明を省略させていただきます。  以上、補足説明を終わらせていただきます。

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 以上で説明は終わりました。  午後二時五十分から再開して質疑に入ることとし、暫時休憩いたします。    午後二時休憩      ————◇—————    午後三時五分開議

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  昭和三十七年度一般会計補正予算(第1号)、同特別会計補正予算(特第1号)及び同政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括議題といたし、これより質疑に入ります。黒田壽男君。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 きょうは、私は、日中国交回復問題と日韓会談問題にしぼって質問をいたします。私どもの党の主張は、言うまでもなく、日韓会談は即時打ち切る、日中国交回復のために努力する、こういうのが根本の主張でございますので、きょうの私の質問の全体を貫く根本精神となるものはこの考え方であります。これだけ申し上げておきまして、質問に入りたいと思います。  最初に、ケネディ大統領の発言問題に関する政府の御解釈を承りたいと思います。  ケネディ大統領は、去る三日、日米貿易合同委員会の日米両国代表の昼食会の席上で、次のように演説をされました。中共問題に触れたところを申し上げてみますと、中共の封じ込め政策に日本も参加してほしいという意味の注目すべき発言を行なった、新聞紙はこのように報道しております。これは、私ども日中国交回復のために大きな関心を持っており、またそのために努力をしておる者にとりましては、聞き捨てならぬ言葉でございます。きのうの本院の本会議におきまして、勝間田議員のこの問題に対する質問がありましたが、これに対しまして、首相はある程度の答弁をなさいました。しかし、質疑の場所が本会議場でありました関係上、質問者といたしましても十分意を尽くしたとは言えませんので、きょうあらためて質問する次第であります。池田首相は、ケネディ大統領の演説の内容について、格別のこともないように軽く受けとめておられるように見受けたのであります。私の考え方はあとで申し上げるといたしまして、このあたりで一応総理のあの演説に対する御解釈を聞かしていただきたい。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 私は、外務省が会談におけるケネディ大統領の発言として持って参りましたものを一応読みまして、そうして本会議でお答えしたように答弁いたしたのであります。きょうは外務大臣が来ておりますので、外務大臣が実際聞いたのですから、外務大臣から答えさせまして、もし政府の所信ならば、その次に申し上げていいと思います。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 総理大臣が申されたのは、ケネディ大統領の発言を受けた日本としては、日本がみずからの自主的な立場で考えるべき問題だという趣旨でございますが、私は、この御発言を受けたときに、このように感じたのでございます。アメリカ政府が従来中共政権に対して警戒しておりましたことは、黒田委員も御承知の通りでございます。最近のキューバ問題あるいは中印国境問題等における電動を通じましても、警戒の度を深めておったことは理解にかたからぬところでございまして、アメリカ大統領としてああいう発言をされたことは、別に不思議なことではないと思うのでございます。ただ、問題は、われわれ日本の立場でございますが、日本は、御案内のように、アメリカとの間には広範な協力関係を打ち立てておるわけでございます。軍事、経済、教育、文化、あらゆる分野にわたりまして、広範な協力関係を持っておりますが、御案内のように、軍事面でアメリカと協力するということにつきましては、国会の御承認を得て締結されました安保条約に、そのワクがちゃんときまっておるわけでございまして、それ以上のものでもなく、それ以下のものでもないわけでございまして、ケネディ発言を契機といたしまして、アメリカ側からこの改定について申し出るというようなことはないわけでございます。また、そういうことは私ども期待いたしておりませんし、アメリカ側もそういうことを考えておるわけではございません。一方、経済協力の面におきましては、かねがねアメリカ並びに先進工業国と協力いたしまして、アジア圏に対する経済協力を進めておりますことは、これまた御案内の通りでございまして、この関係につきましても、この御発言があったからというて特別の変化はないわけでございます。むしろ、私どもは、自主的に進んで経済技術協力はもっと太い構想をもって進めなければならぬとさえ考えておるわけでございまして、これからの経済協力を通じまして、アジアの低開発地域の経済開発がされまして、民主が安定し向上するような状況をつくることに御協力申し上げることが、いわゆる日本がアジアの一員といたしまして当然なすべき役割でございまして、こういうことは、すでに歴代の政府がこういう定立した政策に基づきましてやってきておることでございまして、こういった軍事、経済等の協力分野におきまして、この御発言があったからというて、これを更改して参るというようなことは一向ないわけでございます。そういう意味におきまして、このことは、私どもは特別な驚きをもって聞かなかったということでございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 私は総理に御所信をお伺いしたのでありますが、昨日本会議場でお答えになったような、あの程度の御解釈しか総理はなさっていないのでありましょうか、総理からお答えを願いたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 ケネディ大統領がアジアにおける共産主義勢力の侵略を阻止しようという気持で話されたと、私は報告を受けておるのであります。しこうして、その気持は私も同じでございます。私は、自由国家群の国として、自由主義の立場で、共産主義勢力のアジアにおける侵略に対しましては、これは阻止しなければならぬ、同じ考えを持っておるわけでございまして、別に驚きもいたしません。それをきのう本会議で申し上げたのであります。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 総理に対し続いて御質問申し上げますが、その前に、ただいませっかく大平外務大臣からお答えいただきましたけれども、何ら問題の核心に触れた御答弁ではなかったと思います。実は私にとって必要でないことばかりをお答えになったと思います。だから、大平大臣の御答弁について私は何も申し上げません。  ただいまの総理大臣の御答弁は、大体昨日の御答弁と同じようなことでありましたが、しかし、私どもには、あのケネディ演説について、すなおな読み方をいたしますならば、決してただいま総理の御解釈になったような程度の内容を持ったものとして受けとめることには納得することができません。  そこで、私は、総理の御解釈は御解釈としまして承っておきます。私は、客観的に見て一般にこれをどう受けとめておったかということを調べてみたのでございますが、ここに一例がございますから、御紹介申し上げてみましょう。わが国の有力新聞紙のワシントン特派員が、——これは現地におったのでありますから、その場の空気はよくわかっておる。その特派員が、この演説を次のように理解して報道しております。それは、大統領が直接日本側六閣僚に、日本がもっと米外交に積極的に協力するよう呼びかけたこと、しかも、その内容を初めは秘密にしていたが、あとに公表したこと、また、その言葉づかいが昼食会のあいさつとしては異例に激しいものであったこと、さらに、数カ月後には何らかの考慮がなされることを希望していると、かなり具体的な構想を持っておるように暗示したこと、かようなことから、今日のケネディ発言はきわめて重要な意義を持つものと見られる、ケネディ大統領は相当な決意を持って意識的にこのような提案をしたものと見る向きが多い、こういうように報道しております。他の有力な日本の新聞の特派員の方々も、現地から大体大同小異の内容を持った報道をされておるのであります。このような見方からいたしましても、また、私どもがケネディ演説を読んだ上でのすなおな感じからいたしましても、この演説が、池田首相が昨日勝間田君に対し、きょうまた私に対してただいまお答え下さいましたような、そのような御答弁のように、共産主義浸透に対する資本主義国としての態度を抽象的に原理的に表明し強調したものにすぎないというように解釈することは、私にはできないのであります。それはあまりにも総理の自己主観に片寄り過ぎた御解釈ではないかと私は思います。客観性を欠いた解釈ではないかと思う。悪く言えば、ずるい答弁だ。こうまで言っては、ずるいとかごまかしとか言っては失礼になるかもしれませんが、はなはだ不親切な、少なくとも不親切な答弁である、私はそう思う。  そこで、このような首相の御解釈からは、私どもといたしましては何らの説得力を感ずることができないのであります。大統領は、中共封じ込め政策に日本も参加してほしいとの、非常に注目すべき意味の発言を行なっておるのであります。私は、日米両国は盟友として今後数カ月後にはどんな役割を果たすことができるか、共産主義のアジア支配を防ぐためにどんな役割を果たすことができるかについて何らかの考慮がなされることを希望しておる、こうはっきりと言っておられるのでありますから、単なる一般論としての反共論を述べた、心がけを述べたというようなものとしてこれを見るべきではなく、そこに具体的な何ものかがある。具体性を持って何らかの中共封じ込め政策がやがて現われて、それについての日米協力への期待を日本にかけている、そういうように大統領は示唆したもの、私はこう解釈するのであります。この点、もう一度、私のような解釈に対しまして総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 アジアにおける共産主義の拡大を阻止するよう考えたい、盟邦としてどういうことを考えるか、これは数カ月後とお訳しになっておるようでありますが、それはある新聞が取り消しておるでしょう。将来と取り消したと思います。そこで、そういう希望を、反共のケネディ大統領がどういうことを考えたらいいだろうかということをこちらに言われることは、これはケネディ大統領の自由でしょう。しこうして、共産主義の侵略を阻止しようとする私は、一つ考えようじゃないかというときに、考えましょう、——それは、われわれ独自の考えでやるべきであって、こう言われたからすぐその線に乗って日本が国民の許さないことをしなければならぬように考えることは、もうこれは占領下と違うのでございますから、そんなにとる必要はないのじゃございますまいか。ケネディ大統領がいろいろなお話をなさるでしょうが、われわれはわれわれとして、日本の立場をはっきり考えて、そして、共産主義勢力の侵略を阻止することはわれわれとして考える。日本として考えたらどうだというお話に対しましては、それは、われわれはわれわれとして考えましょう、これでいいのじゃございますまいか。それを、言われたから今度は何とか数カ月後に処置しなければならぬと考えることは、私は日本国民の代表としていやでございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 ケネディ大統領の演説は、将来中共封じ込めのための何らかの政策が出てくる。   〔発言する者多し〕

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 お静かに願います。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 その何らかというものの内容はわかりません。けれども、ただ一般的に将来のことを警戒する意味で言ったのではなくて、何らかのものが出てくる、そのものが出てきて、これに対する日本の参加ということを要請した、覚悟しておってくれぬか、私はこういうように言ったものと思うのです。ところが、総理は特別にそういうものではないというような御解釈のようです。私は、それではそのように承っておきましょう。しかし、総理がこういう御答弁をなさっておりますと、日本の何らかの報道機関によって、日本の総理大臣はケネディ大統領の演説をこのようなものとして受けとめておるということがアメリカに伝わって、ケネディ大統領がそれを知ったなら、おそらく失望もし、あるいは憤慨もするだろうと思う。われわれとしてはその方がよろしいのです。しかし、池田首相の解釈によって、ケネディ大統領の演説の客観的意味が変わるものではないのです。私どもが問題にしておるのはそこなのです。総理がどう解釈せられようと、ケネディはどう考えておるかということが私どもの問題である。そこで、池田首相の御解釈を聞きましたからといって、それによってケネディ大統領の演説に対する私どもの大きな不安が解消されたというように私どもは考えることはできないのであります。ことに、皆さんも御承知のように、最近ケネディ大統領はキューバ危機以来いわゆる断固たる決意をしておるようであります。アジアにおいて何をやり出すかわからないというような不安を私どもは持っておる。われわれは、ケネディ何をやり出すかわからないという不安を持っておる。そういう不安をわれわれが持っておったそのやさきに、問題のこの演説を聞かされたのであります。しかも、それは一応秘密にされておった。何もないものなら秘密なんかにする必要はありません。一たん秘密にして、それを後に公表したというような、われわれにとりましては発表方法もきわめて薄気味の悪さを漂わせておるのです。  そこで、私は、もう少し真剣に政府の御見解を確めておきたいと思うのであります。しかし、総理の方ではあまり深く触れたくないというようなお考えのようでございますから、むしろ私の方から、こういうことではないか、こういう心配もわれわれは持っておるがどうかというように、われわれの考え方を申し上げまして、政府の御所信を聞くということでやってみましょう。  封じ込め対策と申しますのは、これは軍事的意味のものもありますし、半ば軍事的なものもございますし、それからまた経済的なものもあります。軍事的な封じ込め対策について申しますならば、アメリカは中国に対してそれをこれから始めるというのではございません。すでに一定の規模と方法で実行しておるのであります。それにわが国も参加しておる。これは非常に重要なことである。ケネディ演説は、それをさらにいかに発展強化させるかということに関して言われておるものと私どもは理解しておる。われわれはこう解釈しております。そこに私どもの不安があるのであります。  そこで、首相に御質問いたしますが、首相としては、アメリカの中共に対する軍事的封じ込め対策というものが具体的に現われておるというようなお考えでありましょうかどうでございましょうか。また、その封じ込め対策にわが国が参加しておるというような自覚を持っておいでになりますかどうですか。この点ちょっとお伺いしておきたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 ケネディ大統領の発言に対しましての日本政府としての所信は、本会議で、また先ほど申し上げた通りでございまして、これは国民に対して申し上げると同時に世界じゅうに対して私は言っておることでございます。私は、これに対してケネディ大統領がとやこう言われる筋合いじゃないと思います。私の考えでございます。向こうが特定な案件について要求して意見を聞いたわけじゃございません。  そこで、ただいま御質問の、アメリカ政府が中共に対して軍事的に封じ込めをしておるかどうかということにつきまして、私はつまびらかにいたしません。日本は、アメリカとは安保条約によりましてやっておる。アメリカがどういう封じ込め政策をやっておるかということをお聞きになりましても、私はそれに答える自由を持っておりません。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 私がただいま質問いたしましたことは、別に特別な専門的軍事知識を必要とするというようなものではございません。いやしくも一国の責任ある政治家であるならば常識上当然に知っておるべき事実を申し上げたにすぎません。そこで、しかし首相がそういうようにお答えになりますから、これも私の方から申し上げてみましょう。すでにでき上がっておると私どもが考えておりますところのアメリカの中国封じ込め政策がどんなに危険な帝国主義的政策であるかを指摘してみたいと思う。  中国大陸に対する日本の帝国主義的進出は、御承知のように、第二次世界大戦争におけるわが国の敗戦によりまして挫折してしまった。そのあとに、日本にかわってアメリカが、蒋介石政権をいわゆるパートナーといたしまして、アジア地域に対する支配を確立しようと企てたのでございますが、しかし、その意図は、御承知のように、中国革命の勝利によって挫折したのであります。中国が、長い間の外国帝国主義による支配から、筆舌に尽くし得ぬ苦しい、そして激しい闘争を経て、ようやく解放された。そして中華人民共和国が出現したのであります。このとき以来、アメリカのアジア政策は、いかにして中華人民共和国を崩壊させるか、それがそこまで成功しないとしても、少なくとも中国を封じ込めること、及び中国の影響がアジアの植民地諸民族の解放運動に及ぶことを極力阻止するということに向けられてきたということは、周知の事実でございます。この政策を軍事的に裏づけるために、アメリカを中心といたしまして、米・韓国、米・台湾、米・タイ国、米・フィリピンあるいは米・南ベトナム等のそれぞれの相互援助条約という軍事同盟が結成せられました。わが日本国もアメリカと日米安全保障条約を締結しておるのであります。その上にSEATOがつくられた。このようにいたしまして、西はインドから東は日本に至るまでを連ねて、長い三日月形で中国、北鮮、北ベトナムを含めて、これを包囲する軍事網がつくられておるのであります。これはもう常識でわかるわけであります。これが、すでにでき上がっておるアメリカの中国封じ込め政策の軍事的な現象形態であると私は思う。わが国もこれに参加しておるのである。沖繩の核武装された兵器が一体どちらの方向に向かっておるか、私はこれを知らぬ日本人はいないと思う。われわれは真剣に考えておる。ところが、この包囲網も、最近におきまして、たとえばラオスでは、人民大衆の平和中立への熱望から、アメリカの勢力は敗退いたしまして、中立国ラオスができたのである。それから最近南ベトナムの形勢毛、アメリカによって支持されておりますゴ・ディンジエム政権が、人民大衆の解放闘争によりまして危機に瀕しておることは、アメリカ側も認めておるところでありまして、私どもはたびたび新聞でこのことを知らされておる。そして、問題の南朝鮮でも、朴政権は世界に比類のない残酷な武力弾圧を行使することによって維持されてはおりますが、それも決して安定した政権といえないことは、日本人のだれも知っておる。かような時期に、日韓会談が朴政権を相手として今進められておるのである。これが成立すれば、韓国の軍事力と日本の軍事力とが公然と協力関係に入るということは、防衛庁の言動からいたしましても明らかであります。きょう私はこまかい軍事的問題は取り上げませんが、ただいま申しましたことは、常識上われわれがすでに知っておるところである。すでにSEATOはでき上がっておる。次はNEATOだ、アメリカはダレス以来一貫してこれを執拗に追求してきたのでございますが、このNEATOの成立によって、封じ込めば現在よりもさらに一歩前進することになるのである。ケネディの演説は、日韓会談の推進、NEATOの結成へと日本政府の政策を進めることを日本政府に期待しておるものではないかという推測を私どもは持つのである。日韓会談を推進すれば、客観的にはそうなる。それをケネディも期待しておる。この疑いは多くの国民によって持たれておるのであります。首相は、NEATO問題について、日韓会談はNEATOになるものではないということをおっしゃっておりますけれども、私は、今のように解釈すれば、日韓会談の成立はNEATOの成立になる、こう憂えざるを得ないのであります。これに対して池田総理の御見解を承ってみたい。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 東北アジア軍事同盟なんかは夢にも考えておりません。私は、そういうふうな問題から日韓会談を考えるべきじゃない、日韓会談というものは、日本と韓国との国交を正常化する、そのこと自体を目的としてやっておるのであります。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 それはその程度に聞いておきます。  次に、方面を変えまして、封じ込め政策の中には経済的なものもあるわけです。これは、みずからは中国と貿易をしない、他国にもこれをさせない、こういう方法で現われてくるのでありまして、ケネディ演説に対するいま一つの解釈は、日本に対し対中国接近の危険性を警告して、当面日中貿易の伸展を牽制しようとするねらいがあるのではないかということ、これも一応懸念され、心配されるところであります。なぜこういうことを申すかといいますと、この九月に、ハリマン米国務次官補が、日米協会で、日中貿易拡大が中国の政治目的に利用されないようその危険性を十分認識してもらいたい、こういう演説をいたしまして、これは日本の識者からむしろ失笑を買った。政府もこの点についてはしっかりした態度をとっておいでになったと思う。そうみておる。しかし、アメリカの方ではこういうふうに考えておる。日中貿易の伸展をかような演説によって牽制しようとしたことは、私どもの耳にまだ新しく残っておるところであります。アメリカにはこういう考えがある。中共は現在経済不況にあえいでおるのだ、この際自由陣営が結束して中共の孤立をはかるべきだ、貿易によって中共に少しでも利益を与えるということには反対だ、こういう考え方が根強くアメリカにはびこっておる。アメリカは、日本側の最近の日中貿易拡大への努力に対しまして、率直に不愉快の念を表わしておると私どもは見ております。このときにあたってケネディ大統領のこの演説がなされたのでありますから、それがまた前述のように何か中共貿易に対して牽制でもするのではなかろうか、そういう意味ではなかろうかと受け取られるのは、私は一応十分な理由があると思います。この演説によりまして政府の中共貿易に関する態度が影響を受けるものではないと私は確信はしておりますけれども、一応念のために、政府のきぜんたる態度を一つお示し願いたい。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 アメリカにおきまして、中共に対してのいろいろな考え方があることも私は聞き及んでおります。しかし、日本の独自の考えでやるべきことでございます。中共貿易はコマーシャル・ベースによって私は進めていく考えでおります。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 私は、この機会に、政府の対中国政策につきまして若干質問してみたいと思います。  政府は、現在朝鮮の一部にすぎない南朝鮮の朴政権と国交正常化の会談を進めておられますが、私どもはアジアの大局から見、日本の将来百年の大計を考えるなら、中国との国交回復、日中間の国交の正常化に向かって努力することの方がむしろ先決問題である、こういうふうに考えております。この方が日本の経済の発展のためにもアジアの平和のためにも、冷静に考えてみて大いに役立つ、こう思う。何ゆえに中国との国交回復に向かって努力をしなければならぬかということにつきましては、今さら説明を要しないほど明白なことでございますから、省略させていただきます。わが国からその国に向かって侵略戦争をしかけましたその中国に対して、国交回復の実現ということは、わが国の自由な意思にまかされておる事柄ではなくて、むしろ法的に考えても道義的に考えても、それはわが国にとって、国際的な義務であり責務であるというように私どもは真剣に考えておる。しかるに、戦後数十年を経ました今日まで、日本の政府といたしましては、日中国交回復への努力としては、ほとんど何一つとしてなさなかった。この間、日本と中国との友好関係のきずなをつないで参りましたのは何か、政府の政策に抗しながら、民間の団体や個人、私どもの所属しております社会党などが、経済的に文化的に、また政治的にこのきずなをつないできたのであります。これが事実だ。最近に至りまして、しかし多少変わった傾向が出て参りました。政府与党の有力な議員であります松村さんや高碕さんが、中国との間に友好的な会談を行なわれました。私どもは両氏の御努力に対しまして高くこれを評価し、感謝します。これは貿易問題を主としたものでありましたけれども、しかし私は貿易と政治とはそう簡単に分離することはできないと思う。また、松村、高碕両先輩は政府与党の有力者でありまして、池田首相と十分了解を取りつけられながら中国を訪問されまして、その成果につきましても政府に報告されておるという手続がとられております。また、それだけでなくて、高碕氏の締結して参られました協定につきましては、その実現が政府機関の態度と直接のつながりを持つというような点におきましても、両先輩と中国指導者の共同発表や協定は、従来の民間団体等による日中交渉とは異なった、特殊の重要な意義を持っておると私は理解いたしております。そしてこの共同発表や貿易協定について、それが日中国交正常化の方向に向かって動くか動かないかということは、一に政府の態度いかんにかかっておると思うのであります。  そこで、きょうは時間の関係もございますから、あまり経済問題をこまかくはお尋ねいたしません。ただ二、三根本的と思われます事項についてだけお尋ねしてみたいと思います。第一に松村氏と周恩来首相との会談に関する共同発表というものがあります。これに関連した質問をしてみたいと思います。  九月十九日の新華社の報ずるところによりますと、松村・周会談の内容は次のように報じられております。「周恩来総理と陳毅副総理は自由党顧問松村謙三氏と十六、十七、十九日の三日間にわたって友好的かつ率直な会談を行った。中国側は政治三原則、貿易三原則、政経不可分の原則を堅持することを重ねて表明するとともに、これらの原則は引き続き有効であると認めた。双方は、貿易をさらに促進し、発展させたいとの願いを表明した。双方は漸進的かつ積み重ねの方式をとり、政治関係と経済関係をふくむ両国の関係の正常化をはかるべきであると一致して認めた。」これが共同発表の全内容であります。きわめて簡単な共同発表ではございますけれども、そしてまた表現が相当抽象的ではありますけれども、しかし日中国交正常化という観点から見ますと、非常に重要な問題点を含んでおるように私には考えられるのであります。  この共同発表に関して御質問申し上げたいと思いますが、その前に、これはあえて御質問申し上げる必要はないと思いますけれども、首相は松村氏からこの共同発表について報告をお受けになっておられると思いますが、念のために御質問申し上げてみます。また、その共同発表の報告をお受けになっただけでなくて、これをお認めになられたことと思いますが、この点につきまして、事実関係のことですからお聞かせ願えればけっこうだと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 松村さんの中共訪問に対しましての報告は、一応簡単に聞きましたが、共同発表云々のことは聞いておりません。従いまして、共同発表を私は是認した事実もございません。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 私が非常に感心しておりますのは、松村さんが必ず池田首相と、ちゃんと了解を得、連絡をとって、礼を尽くした態度で中国問題につきまして終始して行動しておられるということであります。これは私も非常に感心しております。その松村さんが中国からお帰りになっての御報告の中で、その共同発表を首相に特にお示しにもならず、首相もこれをごらんにならなかったということは、私は実はこのことをただいま承って、非常に意外に考えます。これはしかし非常に重要なことでございます。日本の総理大臣は、松村さんの努力して参られました共同発表を知らない、これは日中関係を判断する上におきまして非常に重要なことであります。私はむろん知っておいでになることと思っておりました。そこで、知らないとおっしゃいましても、先ほど申しましたように、大体読めばすぐわかるような非常な簡単な常識的なものでございます。ただ含んでおる問題の内容は非常に重要なことだというように考えます。  そこで、読んでおいでにならぬとおっしゃいますけれども、一応御質問申し上げますが、「中国側は政治三原則、貿易三原則、政経不可分の原則を堅持することを重ねて表明するとともに、これらの原則は引き続き有効であると認めた。」こういうようにあります。総理としまして、政治三原則とか政経不可分というような原則につきましては、どのようにお考えになっておるのでございましょうか。これは、この共同談話を離れてもお答え願えることだと思いますので、しかも、これは非常に重要な問題でございますから、お考えをお聞かせ願いたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 従来からいろいろここで御質問があり、答えておったのでありますが、私は、政治と経済とは別で取り扱う、従いまして、中共を承認しなくても経済は進めていってもいい、こういう考えで進んでおります。  それから松村さんとの会談は、いろいろ口頭で聞きました。そのときに、前の日にはそのことは出なかったようでございます。そして、こちらのある放送の分が、それが出なかったというのがいったものだから、二日目にはかなりそれが出たというようなことを聞いております。そういう話はいたしましたが、こういう共同声明をしたということは私は聞いておりません。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 その点は別にしつこくお聞きするほどのことでもありません。知らない、報告を受けなかった、とおっしゃるのでございます。それはまあそれで、事実をお答えいただいたものとして、これをそのままに承ってます。  それから政経不可分ということにつきましては、可分論のお答えであったように思います。中国側が政経不可分と言っておりますのは、決してそうむずかしいことを申しているのではない。事実といたしまして、たとえば安保条約体制というものがあって、またアメリカと日本との関係において沖繩にも非常に強力な核武装地帯ができていて、それが中国に向かってその威力を示威しておる。日本本土にも、安保条約によりましてアメリカの基地がたくさん作られておる。それがどこを目標とする基地であるかということは、常識上すぐにわかることであります。こういう状態が一方にありながら、他方では貿易上の利益だけを得ようというような態度では、ほんとうに善隣友好の関係を打ち立てることにならぬではないか。現在の状態のもとで、直ちに自民党政府に向かって安保条約を破棄しろなどということを中国も要求しておるとは思いません。しかしながら、できるだけ政治的にも努力をして、中国との間に友好関係を回復する方向に向けての誠意のある努力を始める。いろいろな客観的諸条件のもとで、百パーセントそういう態度を示すことができないとしても、できるだけ誠意を示す、その誠意の表われと日中貿易の促進というものは両立する、こういうように中国では考えておると思います。それが政経不可分である、むろん中国は、私ども社会党などに対しましてはそういうことは申しません。もっとしっかりやれ、やるべきじゃないか。われわれも中国に向かって、やろうじゃないか、しっかりやれ、アメリカ帝国主義に対して解放のために努力しようじゃないか、お互いにしっかりやろうじゃないか、しっかりやれという考え方です。各自がその国の独自性に基づいてアメリカ帝国主義の政策と戦う、こういう関係のあることを社会党などとは中国は語り合います。けれども、まあ自民党に対してそこまでのことは言いません。そこまでのことは言いませんが、しかし中国に対する関係が今までのような態度でいいんだというように考えながら、貿易上の利益だけは得ようというような、そういうことは中国としては許さない、そう考えている、こういう意味であると私どもは考えます。で、私どもは、さき述べた原則は当然に認めるべきものであると考えますけれども、池田首相は政経不可分の原則は認めない、こういうようなお話でございます。これは、しかしそういうように平気な顔で言うて済まされるような問題かどうか。ほんとうに中国と貿易をやろうと思えば、同時にまた政治的にももっと前向きに考うべきところがなければならぬ。これは私は政治家の常識だと思うのです。これは決して過大な要求を向こうがしておるというわけじゃないと私は思う。誠意の示し方というものは、いろいろの限度においてあり得るものでございます。そこが人間と人間との関係だ、そういうように私は考えます。総理のお答えは、非常に私は残念に思いますけれども、これ以上申しましても、同じことを繰り返すだけと思いますので、もうこれ以上は申しません。  それからもう一つ、これも押し問答になるかもわかりませんが、共同発表の最後の部分にこう書いてあります。すなわち「双方は漸進的かつ積み重ねの方式をとり、政治関係と経済関係をふくむ両国の関係の正常化をはかるべきであると一致して認めた。」これは「双方は」という主語でこういう結論が出ております。この点も私は松村さんから首相に御報告があったことと思います。形式的に文書をお読みにならなかったとしても、話の中で政治的及び経済的、漸進かつ積み重ね方式というやり方で日中両国関係の正常化をはかろうではないかという意見の一致を見たというような御報告は、お聞きになったかどうか、念のためにお伺いしたいと思います。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 共同声明として、私は説明を受けた記憶はございません。ただ、松村さんの考え方として、そういうふうなお考えはあるやに私は想像できます。しかし、その説には私は必ずしも賛成するものではございません。貿易の方では、積み重ねということは、行かれる前にも聞いております。政治問題を積み重ねで、日中の将来を政治的に、何といいますか、承認し合うというふうなことは、日本政府といたしましては、国連においてああいうふうな決議がございます。また蒋介石政権、台湾政府を承認しております関係上、これは日本の世界的立場といたしまして、今積み重ね方式で政治的のあれをやっていくということについて、直ちに私は賛成できないわけでございます。松村さんの意向としては、そういうことがあるのではないかというぐらいのことは私も想像できますが、政府としては、今のところそういうことは考えておりません。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 賛否はいずれにいたしましても、首相のお考え方それ自体は、私どもはっきり承ることができました。(「けっこうじゃないか」と呼ぶ者あり)けっこうではないと思う。私どもははなはだ遺憾に思います。しかし、お答えとしてははっきりしておりますから、これ以上繰り返しません。そこでただいままでの質疑を通じまして、私はもう少し松村さんの御努力が首相の胸の中にもしみ込んでおるのじゃないかと思うて、期待しながら御質問申し上げたのですけれども、はなはだ残念でありました。  そこで、政治問題はその程度に打ち切りまして、日中貿易の問題につきまして一点だけ御質問を申し上げておきます。きょうは私はあまり技術的な問題には入りません。  政府の日中貿易に対する積極性の尺度となるものとして、私どもの常識上、延べ払いに対する政府の態度いかんということがあると思うのでございます。外務省は、新聞の報ずるところによりますと、高碕訪中使節団による貿易協定は、信用供与が大き過ぎるという批判的なまなこをもって見ておるというように伝えられております。日中貿易につきまして、アメリカ側の見解も先般の経済貿易の合同委員会で、閣僚の中でも通産大臣は十分お聞きになってお帰りになったことと思います。日米経済委員会も終わったあとでございますので、この際中共貿易につきまして、特に延べ払いという問題につきまして、これは通産大臣から、お聞かせ願いたいと思います。

福田一自由民主党

○福田国務大臣 お答えを申し上げます。  先般の日米貿易経済閣僚会議に参りまして、こういう日中貿易の問題について、特に何も話があったわけではございません。従ってまた、この間の会合があったからといって、政府としての態度は何も一つも変わっておりません。われわれといたしましては、総理からもお答えがございました通り、政治と経済は分離して処理をしていくという考え方に立ちまして、そうして高碕さんがおいでになるときに、政府としてはこういう問題はどういうふうに考えるかというようなお話がございましたので、それについての御意見は申し上げておきました。その後帰っておいでになりまして、一応の案を承っておるのでありますが、これにつきましては、ただいま政府部内におきまして事務的にいろいろ研究をいたさせております。そうして、当初私たちが申し上げました方針に基づいてこれを処理していく方針でございまして、延べ払いの点につきましては、たとえば硫安等については、一年とか一年半とかいうような一応の話をいたしておりますし、塩安の問題につきましては、一年あるいはその前後というお話をいたしておりました。それから、鉄鋼、農機具等につきましては一年半前後というようなお話を申し上げておりましたので、この線に沿って、おきめになった問題等もよく具体的な内容を研究いたしまして、そうして前向きの形でこれを処理していくということについては、いささかも方針を変えておりません。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 そうしますと、私の方から一点だけ簡単な数字を出して、一応のお答えを願いたいと思います。この延べ払いという問題につきましては、これはいろいろと議論がございまして、ヨーロッパ諸国の中国貿易に対する態度というようなものを、日本としても相当に参考にすべきだというような議論もあります。先日イギリスを訪問されました経済使節団のお話によりますと、イギリスの中共に対する延べ払いの供与は、最長五年のものもある、英国の中国貿易に対する態度、特に延べ払いの条件などは、日本で想像しておった以上に積極的なもののようであると見てきた、こういうようなお話をされておるのでありまして、具体的に五年というような数字が外国でも出ておるのでございますが、これはただいま通産大臣のお話しになりました数字と少し離れた数字でございます。政府のお考えとしては、こういうところまでいくような部門もあり得るかどうか、そういう問題につきまして、念のために聞かしていただきたいと思います。私どもとしては、英国がやるくらいのところまではこっちもやるというくらいの積極性を持って中共貿易に取り組んでいくべきだ、こう考えておりますが、これは簡単な御答弁でけっこうでございます。御質問申し上げます。

福田一自由民主党

○福田国務大臣 その問題につきましても、いろいろ政府として調査をいたしておるのでありますが、実は、いろいろな品物につきましても、具体的にこうであるという内容をつかむことが非常に困難でございます。しかし、総理が前々から申されております通り、中共貿易につきましては、やはり西欧並みというようなことでやっていけばいいじゃないか、こういうお話でありますので、ただいまのお話を聞いておりますと五年でやっておるという例があるということでもございますが、この機会でなくても、もし具体的におわかりのことがありましたらお教えを願いたいと思います。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 貿易問題につきましては、きょうはこれ以上触れません。別な機会に他の委員によりまして十分専門的に御検討願いたいと考えております。  そこで、私は、今度は話題を変えまして、日韓の正常化の問題につきまして若干の御質問を申し上げてみたいと思います。  最初に、私の方からの見方を申し上げてみます。その中に結論として質問が出てくるわけでございます。なぜ政府は日韓正常化を急いでおるのか。これは私どもの見方でございますから、参考のためにお聞き願っておきたいと思います。  御承知のように、アジア、極東地方におきまして、南ベトナムのほか、いま一つ危機の焦点と見られておりますのが問題の南朝鮮であります。最近の南朝鮮は、どういう情勢によって特徴づけられておるか。これは相当客観的な調査だと考えられるものを見て申し上げるのでございます。相当詳しくわかっておりますけれども、時間の関係がございますから、簡単に申し上げてみたいと思います。  第一は、国連軍という名のアメリカの軍隊は、朝鮮においてその体制をますます固めておるということであります。それから、これも最近帰ってきた、これは公平にものを見てきた人の話として聞きましたが、経済情勢は非常に悪い、大衆の生活は極度に貧窮しておる、前途の暗い感じを抱いておる、こういう話でございました。そのために、また、南朝鮮人民の朴政権に対する不信の念も高まってきている。従って、政治危機が深化しているように見える。その中で言論その他の基本的人権に対する弾圧は依然として続いておる。こういうところが特徴的なものだ。これは、私が他の人から聞きましたり、読んだりいたしまして知ったところでございます。これらの一つ一つの事柄について、その内容は相当詳しくわかっておりますけれども、これは省略することにいたします。  こういう韓国の状態であって、ことしの夏以来アメリカが日韓交渉の早期妥結ということに対し私どもから見ると非常に力を入れ出したように見られますが、それはどういう理由があるか。これは南アジアあるいは極東における事態からそういう態度が出てきておるのだと思います。東南アジアにおきましても、先ほども申しましたが、南ベトナムでは、いかにアメリカが金や兵器を供給いたしましても、人民の心をつかむことができない。そのために、武器や兵力を供給しても、絶えずゴ・ディンジェム政権は脅かされているというような状態で、今ではアメリカ兵自身が戦争の前面に出てきておるというようなことも聞いております。テレビで見ると、アメリカの軍人がずいぶんたくさん南ベトナムで行動しているのを私ども見せられているのでありまして、これは非常に深刻な情勢である。その上に、さらに南朝鮮も楽観できないというようなことになって参りますと、アメリカとしましては致命的になる。こういうところに、アメリカが日韓会談を急がせなければならぬ情勢がある、私どもはこう情勢を分析しております。日韓会談というものが、決して政府のお考えになっておるような簡単な両国の国交正常化ではない、条約の表面に現われてくるような、諸問題を拾い上げてそれを集めたもの、これが問題の全部だというような、そのような問題ではないと私は思います。日韓会談が成立いたしますれば、現在アメリカの軍隊のもとに韓国軍隊は置かれておるのでございますが、これは当然日本の兵力との結びつきができる。これは韓国における軍事力を強化することになるのでありまして、こういうことがアメリカによって考えられておると思います。防衛庁はこのことをお隠しになっていないようであります。もっともこれは新聞が報じたところでございますが、こう言っておる。日韓交渉が年内にも妥結する見通しが強くなってきたので、純軍事的立場から日本と韓国の相互関係を検討して、正常化後には、軍事協力、ソウルには駐在武官を置く、防空共同作戦体制を固めるのだ、こういうように言っておる、そう報道せられております。ここに、国交正常化後の日本と韓国との間に軍事協力の線が明瞭に打ち出されてあるのであります。かようにいたしましてNEATOというものが成立してくるのだ。形式的に申しますれば、日本と韓国との間にも相互防衛条約が締結せられませんと、完全なNEATOと申すことはできないかもしれませんが、しかし、実質上は協力関係ができ上がってくる。その協力関係が確立されるということになりますれば、実質的にNEATOの成立と言い得られると思います。  私どもが日韓会談の進行に反対しておりますのは、日韓会談がこういうものを生む、NEATOをねらっておるのだということ、これが私どもの党が日韓会談に反対いたしております大きな理由になっております。こういう事実関係が発生するものであるかどうかということですね。NEATOという言葉を使うか使わないかということは、これはどちらでもよろしいが、こういう事実関係が発生するのだということにつきまして、政府の見方を聞かせていただきたいと思います。これは防衛庁長官でもけっこうです。

志賀健次郎自由民主党防衛庁長官

○志賀国務大臣 日韓両国の国交が正常化された場合のことについてのお尋ねでございますが、もとより、日本と韓国は、歴史的にもまた地理的にも非常に深い関係のあることは御案内の通りであります。従って、韓国の安全を望むことは当然でございますが、軍事協力するかどうかということにつきましては、さいぜん池田総理から明確に答弁せられておる通りでございます。従って、防衛庁長官として、今日まで、韓国と国交正常化の暁におきまして軍事協力をするかどうかということは、一回も私は考えたことはございません。また、研究いたしたこともございません。  また、ただいまお尋ねの防衛駐在官でございますが、これまた同様に、私は全然考えたことはございません。(「予算要求をしているぞ」と呼ぶ者あり)御承知の通り、現に世界の七カ国に防衛駐在官を派遣いたしておるのでございますが、韓国が正常化した後において防衛駐在官を派遣するということは、現在少しも考えておりません。さように御了承願いたいと思います。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 ただいまの防衛庁長官のお話は、私は、残念ながら全部が全部——こんなことを申しましてはなはだ失礼でございますけれども、承服しかねるのでございます。これはまた別の機会にもう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。実際上はいろいろな形において日韓の無事的協力はすでに行なわれております。きょうは一々その例は申しません。私どもその事実を知っておるのでございます。そこへもってきて、ここでNEATO体制の成立、私どもはこう考えるわけであります。これが私どもの日韓会談に反対する大きな理由の一つになっております。  それからいま一つ、特にこれは日本国民としましてよほど考えておかなければならぬことと思いますので申し上げておきます。南朝鮮へのわが国の資本の進出と日韓会談というものにはどういう関係があるのかということについてであります。私が申すまでもなく、わが国の資本主義は、戦後、敗戦の打撃から復興の過程を経まして、その後目ざましい経済成長を遂げて、生産力も非常に発展して参りました。そこで、これは資本の当然の論理といたしまして、海外へという考え方が起こってくる。これはもう当然のことであります。わが国は、経済的にも、軍事的にも、外交的にも、アメリカに対する従属関係を脱し得ていないのでございますけれども、そういう状態のもとにありながらも、わが国の独占資本は、独自の力で、アジア極東地域への経済的進出を資本の論理として当然に考えているのである。また、最近は、御承知のように、あまりにも急速な設備投資で生産能力がふくれ上がっております。そこで、どうしても貿易ということにつきまして従来以上に真剣に考えなければならぬ事情が出てきている。中国貿易あるいは日ソ貿易というようなものが現われた客観的事情は、こういう資本の事情の中にあると私は思うのであります。ただ、そこに、先ほども申しましたように、アメリカというものがあって、ソ連あるいは中国との貿易に対しましては、これは、何と申しましても相当な牽制をしようとしている。そこで、当然南朝鮮に対する資本の進出ということが考えられるようになってきておるのでありまして、こういうところにも日韓会談が急がれておる理由があるように私は思います。だが、これは非常に重要な問題を含んでいることでございますが、もし日本において、日韓会談の成立を機会に再び独占資本の南朝鮮への再進出という考え方でコースを進めて参りましたならば、これは大へんなことになる。私は、最近韓国を見て帰った人から聞いたことでございます。日本人としてこのことについて大きな認識不足があると思うのでございますが、日本の三十有余年間の朝鮮に対する帝国主義的植民地政策に対して、これは南朝鮮の人についての話でございますが、北も同様だと思いますが、これに対しては非常に大きな怒りと憤慨の念を抱いておるとのことであります。だから、日本の資本主義がまた来るのじゃないかというようなことについては、驚くほど敏感に警戒の目をもって見ている、こういう話を私は聞かされました。再び、日韓会談を通じまして、朝鮮に対する資本主義的、帝国主義的支配を打ち立てようというようなことを絶対に考えてはならぬと私は思う。せっかく植民地から独立いたしました朝鮮です。北であろうと南であろうと、私どもは朝鮮の人々に対しましては心からの友好精神を持っておるのでありますが、再び日本が独占資本の進出によって朝鮮で大きな誤りを犯してはならない。このことは特に日本人として考えなければならぬことでございます。私どもの見るところによりますと、無反省に資本の利益という立場から南朝鮮への再進出が考えられておるように思われます。日韓会談の成り行きをこのままに放置しておきますと、必ずそういう現象が強く出てくる。しかし、これは日本としては、してはならぬことである。日本の多くの人々に、総督府統治期間中に日本人のやりましたことに対する反省が足りないと思う。こういう独占資本の画進出が必ず行なわれると私は思います。日韓会談をこういうものにしては、朝鮮民族に対し日本国民として友好の立場をもって国交の正常化を実現するということには断じてならない。これを私どもはおそれます。けれども、これは実際に行なわれようとしておる。こういうことからも、私は、池田政府の方針のもとにおける日韓会談促進には断固として反対せざるを得ません。私どもは、朝鮮に近い国の国民といたしまして、南であろうと北であろうと、朝鮮の人民とは、ほんとうの意味において、日本による植民地時代の政治に対する根本的な自己反省の上に立って、友人としてつき合う、そういう正しい関係において国交を回復したいというのが私どもの考えでありますが、どうもそういう心がまえが政府にはできておりません。こういう点におきましても、私は、日韓会談の現在のやり方に対しましては反対せざるを得ないのであります。  それから、私はもう二つ三つ御質問申し上げたいと思います。朝鮮南北の統一ということであります。朝鮮との国交正常化に対する私どもの根本的な態度は、朝鮮の南北の統一が完成せられた後に、その統一朝鮮との間で国交の正常化を実現すべきである、これが私どもの考え方であります。朝鮮の一部にすぎない韓国との国交正常化は、南北朝鮮の統一を阻害するものでありまして、朝鮮民族に対しまして非常に大きな不幸をもたらすものであると私は考える。この点も案外日本人はむぞうさに考えておりますけれども、私は非常に重要な問題だと思います。私どもがこういうように申しますと、南北の統一というようなことを言ってみたところで、近い将来にそういうことが実現できる見通しは少ない、こういうように言う人があります。しかし、私は、こういう考え方の中には非常に大きな欠陥があるように思う。それは、現在、朝鮮人民全体が、思想の相違を越えて、南と北との考え方の相違を越えて、朝鮮民族の統一ということを最大の願望としておりまして、その実現のためにどんなに苦慮しておるかということを私どもは知っております。私どもがそういうことを知らぬか、あるいは知っても知らないようなふりをするというようなことでありますならば、これは日本人として、隣国たる朝鮮人民に対し真にその幸福を思うゆえんではないと私は思います。私どもが何よりも尊重しなければならぬことは、朝鮮民族のこの統一への民族感情である。これはおそらく私ども日本人が想像できないほどの強さでこの統一への民族感情というものが抱かれておるようであります。この実に根強い民族感情をわれわれ日本人が見抜くことができないで——いわんや、われわれ政治に関係しておる者がこれを見抜くことができないで、この民族感情を無視して、この朝鮮民族の最大の願望を無視して、統一の妨げとなるようなことをいたしますならば、日本民族と朝鮮民族との間の真の友好関係の成立を破壊するという大きな誤りを犯すことになる。こう考える。歴史家の私どもに教えてくれたところによりますと、朝鮮の歴史の著しい特徴、それをこう指摘しております。それは、遠い昔から外国の圧迫を受けながら、常にそれに抵抗して、今日に至るまでその民族的団結を失わなかった、そういう点にある、こう指摘しております。統一の見込みがないとか、むずかしいとかいうようなことを言っておりますのは、これはたとえばアメリカもそういうことを言っております。あるいはまたそのかいらい政権である朴正煕一味もこういうことを言っておりますが、そういうことを言う者は、朴正煕のように力をもって統一を妨げておる者である。そういう者が統一がむずかしいと言っておるのである。自分で統一を乱しながら、統一がむずかしい、むずかしいと言っておるのであります。これが真相である。私ども日本人としてこれをまねてはならぬ。われわれは朝鮮の内部におるものではございませんから、統一をみずから進める力はございません。しかし、少なくとも朝鮮の外におる私どもといたしまして、統一を妨げておる外からの力を除くために努力する、せめて外から統一を妨げるようなことをしないようにすることだけは、最小限度といたしまして日本国民として断じて守らなければならぬことだと私どもは痛切に考えておるのであります。この努力をすることが両国人民の真の友好を促進することになるのでございまして、これを妨げながら——結果において客観的にこれを妨げることになるような仕事をやりながら、国交の正常化を実現するなどと言ってみても、それは真の国交正常化にはならぬ。現在進行中の朴政権を相手としての日韓会談は、朝鮮民族の統一を妨げる者を相手としてやっておる会談なのでございますから、このような日韓会談を進めることは統一阻止に協力することになる。このことは明々白々であります。統一の見込みがないなどと申しておる者は、もう一度事実を振り返って見ればいいのです。朴政権が出現する以前に、いかに朝鮮の南の部分におきましても統一の機運が盛り上がっておったかということを、もう一度顧みる必要があると私は思う。これを抑圧するために、民意によらないで軍事力、クーデターによって成立したのが朴政権だったという事実を、もう一度顧みるとよいと思う。このファッショ的な力と、これをバックするアメリカ帝国主義の軍事力が朝鮮民族を分割しておるということは、これは疑いのないところである。朴政権を相手とする日韓会談は、この分裂の力、分割の力に利益と援助を与えようとするものであります。意識的にどう考えようと、結論においてそうなる。われわれは統一のために力をかすべきでありまして、分裂を固定化する日韓会談には断じて賛成することができないのであります。  もう一つ朝鮮のことを考えてみなければならぬ。それは朝鮮の地理的関係、資源配分の関係から申しましても、南北を合わせて一つの朝鮮にしなければ、せっかく国際条約で独立を認められましても、真の意味において新しい独立国として自立することができないという一つの自然的、運命的条件のもとにあるわけであります。こういう朝鮮をしいて二つに分けるということに外部から加工するということは、いわばなま木を裂くような残酷さをあえてすることになると思います。長い間朝鮮民族を植民地民族として搾取して参りましたわが国は朝鮮の分裂に力をかすというような誤りを再び犯すことは断じてしてはなりません。日本人の中には、朝鮮統治時代に何かいいことをしてやったというような考えを持っておる者がある。ついこの間も、ある大学の教授が京城でそういうことを言いました。朝鮮人は、彼は日本帝国主義の密使として潜行した者である、こう言うて怒ったそうであります。日本が朝鮮統治時代に何かいいことをしてやったというようなことを言うと、徹底的な反撃を受ける。過去の三十六年間の植民地時代の苦難に対する朝鮮民族の怒りの感情はこれほど熾烈なものであるということを私どもは知らなければなりません。  NEATOの問題は答弁を聞きましたので、その後で触れました二つの問題につきまして、総理の御所信を承りたい。私は総理がこのままで日韓会談を進められますなら、将来に至って今日を顧みて、首相は朝鮮の分裂に加工した政治家であったということになりますぞ。私はそう考えます。どうですか、一つお考えを聞かせていただきたいと思います。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 長時間にわたりまして、日韓国交の評価につきましての御提言を拝聴いたしました。私どもはNEATOを考えておるものではないということは、たびたび申し上げておりまして、黒田先生がよく御存じの安保条約というのは、日本とアメリカとのバイラテラルな協力規定でございまして、これは、決してNEATOというようなものをそもそも考えられるような構成になっていないことは、御案内の通りでございます。  それから南北の統一は、南北両政権におきまして、それぞれ統一の方式においてまとまっていないということは、あなたが御承知の通りでございまして、私どもも朝鮮民族の統一を希求することにおきまして人後に落ちないわけでございますけれども、遺憾ながら、朝鮮半島の自体の問題として統一方式がまだ帰一していないということでございまして、私どもが日韓交渉をやるから統一を妨げておるなんということは、私どもに不当な責任を転嫁されるものだと思いまして、私どもはそれに承服できません。  それから経済協力の問題につきましては、私どもは朝鮮だけでなくて、アジア地域全体にわたりまして、できる限り経済の協力を進めていこうという態度をとっておるわけでございまして、朝鮮は例外でないわけでございます。従いまして、私どもはいつも申しております通り、南北の朝鮮を、その悲願が成就するまで今の不自然な状態に放置しておいていいかと考えますと、そのように考えないということで、今努力をいたしておるわけでございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 多少私も反論したいところもございますけれども、時間も迫っておりますので、ただいまのことは、これを承っておくことにいたしまして、もう少し先に進んでみたいと思います。  請求権の問題について承りたいと思います。本来請求権問題というのは、全朝鮮を日本が相手にして解決すべき性質のもので、その利益を受ける者があるとすれば全朝鮮の人民である。こういう性質の問題でございます。講和条約においてはそういう規定になっております。しかるに、全朝鮮人民を朴政権は代表していないだけでなくて、南朝鮮の人民をすら合法的には朴政権は代表していないのでありまして、こういうものを相手にして請求権問題を解決するということは、講和条約の精神にも反するし、民主主義にも反する。私は、かような不法なことをやるべきではないと考えます。これだけ申し上げておきまして、もう少し私の考え方を申し述べてみたいと思います。  私は、朴政権は日本と条約を締結する当事者としては適格性がないと思うのであります。それは、朴政権は朝鮮人民の自由なる意思に基づいてつくられた政権ではないからである。かりに朴政権と日本政府が協定を締結したとします。南朝鮮で一体朝鮮人民が、朴が締結した協定の賛否を意思表示する機関がありますか。そんな権利は与えられていない。日本ではそれがある。内閣が締結いたしました条約を、私どもが国会で賛否の意思表示をすることができるだけの民主的制度になっております。南朝鮮にはそれがない。朴政権がきめればきめただけで終わりです。人民がどう考えておりましょうとも、その賛否の意思を合法的に表示する手段が与られておりません。こういう状態のもとにある政府を相手に条約を締結するなぞというようなことは、日本国として慎まなければならぬ、差し控えなければならぬと思う。逆に今やれというような、今のうちにやれというようなことで、かりにも急いでやるということをするのは、これはもっての外のことであります。今、朴とやってみても、それは朝鮮人民の意思を問わずしてできた協定でありますから、かりに後日になって民主的代表機関ができて、朴のやったことは知らぬのだと言われたら一体どうなるか、私はそう思う。このような不安定な協定を日本政府は締結すべきではない、もっと慎重にやらなければならぬ、こう考えます。来年になってどんな政権ができるかわかりません。私はまずこれについて政府の御見解を聞いてみたい。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 朝鮮半島全体を代表する政権として私どもは交渉を持っておるわけではございませんで、たびたび本議場を通じても申し上げております通り、現に支配する地域ということで進めておるわけでございます。  それから朴政権の性格論でございまするが、これは、それぞれの国に、政権のおい立ちはいろいろの過程があったわけでございます。ただ、私どもは、最小限度各国の憲法の規定によりまして、政権の継承があったと見ておるわけでございまして、国連におきまして、その支配する地域における唯一の合法政権であるという決議がありますことも御案内の通りでございまするし、五十一カ国がすでに承認をいたしまして、正常な国交関係を持っておる国であるということ、並びに、きのう本会議で申し上げました通り、この政権が、暫定政権として、明年夏を期しまして民政に移管する手順、準備を着実に進めておるという事実を指摘するにとどめたいと思うわけでございまして、私どもは、今のような不自然な状態をいつまでも放置するということは、国民に対して責任を負う政府としてやるべきことじゃございませんので、誠意をもちまして、できるだけこの正常化を進めたいと存じておる次第でございます。しかし、私どもは、特に急いでおるわけでもなく、特になまけておるわけでもございません。問題は、国民の納得いくような条件におきまして正常化が可能かどうかということにつきまして鋭意検討し、努力を続けておるということでございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 講和条約に関連した問題につきましては、あとでいま一度御質問申し上げたいと思います。  それから、朴政権の条約締結の適格性につきましては、私どもは民主主義者として、下からものを見る。政府は上からものを見ていて、それは形式論です。私はただいまの御説明で納得はしません。朴政権のようなものが他の国と一国を代表して条約を締結する資格があるものとは、私どもは絶対に考えない。これだけは、はっきりと申し上げておきます。  そこで、請求権の問題でありますが、これは、いろいろと新聞にも報ぜられておりますし、私どものような新聞によってだけしか知り得ないような者にとりましては、平たい言葉で申しますと、さっぱりわからぬ。一つ今日までの経過をできるだけ詳しくお聞かせ願いたいと思います。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 請求権問題は、国交正常化にからまる諸懸案の一つでございまして、私どもは、請求権問題を含めまして、諸懸案を一括してでき得れば解決いたしまして、正常化への道を開きたいという念願でやっておるわけでございます。この請求権問題につきましては、世上いろいろ論議され、報道されておるわけでございまするが、私どもは、この問題につきまして本議場を通じて申し上げましたことは、これが正常化にからまる懸案の一つであるということ、そして、これを解決することが、ほかの懸案とともに国交正常化の道に通ずるのだということでこれまで取り扱ってきたということ、そして、この請求権問題につきまして、今まで政府が公に申しておりましたことは、純法律的なものとして処理したいということを、池田・朴会談を通じまして合意いたしたわけでございます。その後、私が担当いたしましていろいろ検討してみますと、これもここで申し上げました通り、法律関係並びにそれをささえる事実関係、そういったことが、いろいろ資料が散逸いたしまして、十分なものが得られないということを発見いたしたのでございまして、いろいろ推定の要素を加えましてつくり上げるというようなことで国会はお認めいただくほど寛容でないと思います。従いまして、私どもとしては、いかにしてこの請求権問題を解決するかについて苦慮いたしました結果、過去のいろいろの不十分な、散逸した、つかみにくい資料を基礎にいろいろほじくってみても、どうも解決の曙光が見えないわけでございまして、むしろこれは、新しい観点に立ちまして、将来に向かいまして日本が韓国に対しまして有償、無償の経済協力をある程度するということにいたしまして、いわゆる複雑な内容を持ち、経緯を持ちました請求権問題は解決したという合意に達し得るかどうかという新しい問題として御提案申し上げて、せっかく検討中であるというのが、今の実情でございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 どうも、もう少し成り行きを具体的に聞かしていただきたいと思うのです。今承ったところによると、法的根拠を発見するということがなかなかむずかしいから、法的根拠のあるものとしての問題解決の方法はやめて、無償及び有償の供与という方法でやる、そういうお話でございます。そうすると、請求権というようなものではなくなるわけですか。その点どういうことになりますか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 いわゆる請求権問題というのはあるわけでございまして、この問題に接近する方法といたしまして、純法律的な見地から的確な事実をつかまえて、それを積算して参ることも一つの方法でございまして、これで両者が合意すれば、それで一つの解決ができ上がるわけでございますけれども、そういう解決方式では、双方の距離があまりに開き過ぎておりまして、一向に妥結の線が出てこないわけでございます。むしろ、そういう過去にこだわるよりは、日韓悠久の将来を考えまして、そうして、将来に向かって日韓両国が友好関係を続けて参るという観点に立ちますならば、将来に向かって日本が韓国に経済協力を申し上げる、従って、そういうことによって過去のいわゆる請求権問題というものは解決したということにならぬものかということで、目下折衝中であるという実情でございます。

木原津與志日本社会党

○木原委員 外務大臣にちょっとこれに関連してお尋ねしたいのですが、日韓会談の内容の中で財産請求権がいつも問題になるのでございますが、ここで明らかにしていただきたいのは、一体韓国政府は日本政府に対して財産請求権というものがあるのかどうか、もしあるとすればその内容はどんなものか、何と何と何が、どういうような財産上の請求権が日本政府に対してあるのか、その点をまずお尋ねしたい。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 韓国から八項目にわたる請求権要求というものがございまして、それを今から事務当局から御紹介させます。

後宮虎郎外務事務官(アジア局長)

○後宮政府委員 過去の会談におきまして韓国側から提起してきております請求権の項目といたしましては、朝鮮銀行を通じて搬出された地金銀、それから被徴用韓国人の未払い給与、恩給等々八項目からなっておりまして、非常に膨大なものでございます。さっき申しました地金、徴用工の未払い給与以外に、恩給の問題、それから郵便貯金の残額、保険金の未払い額、あるいはその積立金、そういうものでございます。

木原津與志日本社会党

○木原委員 そこで、明らかになったのは、これは、郵便貯金だとか、あるいは徴用工の未払い賃金債権、それから恩給、こういったようなものが主として韓国のいわゆる財産請求権の内容になっておるのですね。そうなると、それは政府と政府間の債権・債務を処理する関係でなくて、そういうような韓国の特定の人が、日本政府に対して、賃金を払えとか、恩給を払えとか、持ち去られた地金を払えとかいうような債権関係なんでしょう。こういう債権関係が国交正常化、外交関係正常化の前提条件になるというのはおかしいじゃないですか。一韓国人あるいは特定の韓国人が、日本政府に対して、恩給だとかあるいは未払い賃金がある、あるいは持ち去られた財産がある、それを払ってくれという、これは個人的な財産請求が主たる内容なんでしょう。それならば、これをあえて両方の国交正常化の中でそういつまでもがみがみ言うて話し合いをしなくても、この点は、金額と日本政府が払わなければならぬその人が特定すれば、金額と個人が特定すれば当然日本政府として払うべき債務でございますから、払えばいい。その支払いの金額について争いがあったのでしょう。しかも、これは新聞の報道ではございますが、朴議長がことしの七月に見えられて池田総理と話し合いをされたときに、そういうような法的に根拠のある個人請求権は大体七千万ドルということに合意が成立したというようなことも新聞で報道されているでしょう。そういう韓国の個人で日本政府に対して債権を持っておる人、その金額は一体幾らか、この点を明らかにしてもらいたい。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 先ほど申しましたように、韓国側からの膨大な要求はございますけれども、これを実証するところの事実関係が捕捉しがたい状態にあるということは、私からかねがね申し上げた通りでございまして、それを、的確な事実関係、論拠がはっきりすれば、木原委員がおっしゃるように、双方そういう金額で合意することも不可能ではないと思うのでございますけれども、そういったものが得られませんので、そこで、私どもといたしましては、先ほど申しましたような次元でこの問題を解決すべきではないかということで、目下努力中であるということです。

木原津與志日本社会党

○木原委員 いま一点だけ。そういう個人的な日本政府に対して持っておる債権というものは、はっきりできないという性質のものじゃないでしょう。これは明らかになりますよ。もしそれができないということになれば、故意にしてないのです。政府においても、終戦のときに全部書類が散逸したわけじゃないし、根拠になる書類というものは残っておるでしょう。また、韓国にもそういう書類は残っておるはずなんです。預金通帳にしたところで、すべて証拠物は残っておる。そういうものを合算して、両国の話し合いの中で、金額は幾らだ、だれだれに対して幾ら未払い債務がある、幾らの恩給があるというようなことは当然特定しなければ、その金を韓国の政府にそのまま渡して、その渡った金がそれらの特定の人々に配られるという保証は何にもないじゃありませんか。韓国政府にはそんな個人の財産請求権で取った金を勝手に使うことはできないはずです。これは、どうしても、どんな困難があろうとも、日本国に対する韓国の人間の債権なんですから、これは払わなければいけないのですよ。払うべきです。われわれは払うのに文句を言うのではないけれども、それが資料がないからつかみ金で払うんだと言われるから、私ども納得いかない。しかも、そのつかみ金がだんだんだんだん上がっておるじゃありませんか。一番最初、終戦直後ごろ、昭和二十三年でしたか、外務省が発表されたのは、そういう未払いの債権は大体九十億円ないし百二十億円と発表された。その後だんだんだんだん金額が上がって、この間池田さんと朴議長との話し合いでは七千万ドルというふうに値上がりした。インフレですよ、これは。そうしてまた、最近になってのあれでは、三億ドル無償供与、二億五千万ドル有償供与、まるで上がり方もひどいじゃないですか、そうして、それがつかみ金だということになれば、そういう説明をされて、どうして国民が筋の通った納得をすることができますか。私はその点をお聞きしたいのです。関連でございますから、いずれあとで私自身の質問のときに詳しくお尋ねいたしますが、そういう性質の請求権だということは外務大臣もお争いにならない。だから、その資料、幾ら幾らということの資料をはっきりさせてこの国会に臨んでいただきたい。いかがです。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 韓国政府の請求権につきましては、平和条約第四条に規定してございます。しこうして、その内容につきましてはいろいろございます。今アジア局長が言ったもの以外に、たとえば、京城において焼き捨てた日本銀行券をどうするか、あるいは大阪にあった朝鮮銀行の銀塊をどうするか、いろいろな点がたくさんございます。軍人・軍属等々。そうして、そういうものの計算をどうやるかということは、なかなかむずかしい問題でございます。しこうして、今おっしゃった点で事実のないことは、私は朴議長と七千万ドルということを言った覚えはございません。こんなことは実際話しておりません。ただ、あの当時におきまして、われわれはいろいろこちらの資料その他で研究いたしております。いろいろな見方があるのでございます。自分としては、朴議長とは、とにかく法律的根拠のあるものを考えよう、こう言ってやったわけであります。しかし、その間の折衝中におきまして、資料の点もありますし、法律論なんかもなかなかむずかしいのであります。金額だけ払えばいいじゃないか、その通りであります。しかし、それがなかなかきまりません。向こうとこちらの言うのが合いません。そこで、どういうふうなことでこれを処理するかということで、今外務大臣が言っているような構想で話を進めておるようでございます。まだ金額につきましてはきまっていない。個人のものだから、それは韓国の個人が日本政府に請求すべきじゃないかというお話は、国際的には通りません。

木原津與志日本社会党

○木原委員 韓国の国民が日本政府に請求せよということを言っておるのじゃない。これは外交交渉で片づけていいのですよ。しかし、事の性質、債権の性質というものは、国家と国家間の債権・債務じゃないということを私は言うのです。恩給にしたところで、未払い賃金にしたところで、銀行預金にしたところで、郵便貯金にしたところで、これは、預金をした人、働いた人が当然日本政府に対して請求をする権利なんです。これは外交交渉で片づけていかぬといえ、問題じゃないのです。しかも、あなた方は金額がわからぬと言われるが、わからぬのがあたりまえじゃありませんか。朝鮮銀行にあった預金、あるいは郵便貯金というものは、何も今の三十八度線で境されておる韓国人だけの預金じゃありませんよ。北朝鮮の人たちの預金もある。あるいはその他退職金だとか未払い債権だとか、こういうようなものは南の人だけじゃない。北の人も当然含んでいる。それをそのまま二つに分けてそうして支払いをするというからわからぬようになるのじゃないか。だから、これは南鮮と北鮮と一体となって債権者を確定し、債権額を確定しなければ外交交渉の対象にならぬじゃないかということを総理に私は言うのだ。どうです。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 郵便貯金とか保険金ばかりのことを頭に入れておられるようでございますが、朝鮮銀行券、その他朝鮮銀行の持っておった国債、いろんなものがある。たとえば、今申し上げましたような、大阪の銀塊の問題とか、あるいは向こうが主張しておりまする朝鮮から取り去った金塊の問題等々ございます。従いまして、ただいまの交渉は、朝鮮が三十八度線で分割せられているということを頭に置いて交渉はいたしておるのであります。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 請求権問題ではまだ私もいろいろとお尋ねしたいことがございますが、次の点を確かめておきたい。  今、請求権問題として政府がお取り扱いになっておりますものは、名前は請求権ということでありますが、実際は、全然法的根拠はないものという前提のもとでやっておられるのですね。だから、権なんというものではない。もう請求権というものはなくなったとして取り扱っている。法的根拠がないというのはそういう意味ですか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 法律構成並びにそれをささえる事実関係が必ずしも的確に捕捉できない事情にあるということでございまして、いわゆる請求権問題というものはあるわけでございまして、それを何とか解きほぐさなければ正常化への道は開けない、こういう立場におるわけです。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 そこに非常に国民を迷わせる内容が含まれておる。請求権という権利性のあるものは、もはやないものとして——法的根拠を持っているものはないものとして、しかし何らかの意味において金銭の供与をやろうと言っておられるわけですね。それを請求権問題という呼び方で取り扱うと、何か権利があるもののように思われる。それが国民を迷わせる。もうこうなってくれば、正確を期して、請求権とい言葉を使わぬ方がいいですね。実質的にはそういうものになってしまっておるんじゃないでしょうか。何も法律的に相手に供与しなければならぬ義務はない、ただこちらから贈与するんだ、そういうものになってしまっておるのじゃないでしょうか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 従いまして、私は請求権問題と申し上げたわけです。

岡田春夫日本社会党

○岡田(春)委員 関連です。これは外務委員会でも再三伺っている点ですが、あなたの答弁は常に不明確であるために、われわれはわからない。だから、はっきり伺うのですが、請求権の問題ならわかります。請求権というものならば、先ほどから答弁にあるように、平和条約第四条にある。請求権問題というものは第四条の規定にありますかどうですか、これを伺いましょう。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 私は第四条に請求権問題というものがあるとは考えておりません。

岡田春夫日本社会党

○岡田(春)委員 請求権問題は第四条の規定に基づかない、こういう答弁を今されましたね。それじゃ、第四条の規定に基づかない交渉を今やっておられるということになりますか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 第四条の請求権の問題を解きほぐす上におきまして、これをどのような処理の仕方をするかということを苦心いたしておるわけでございまして、いわゆる請求権という法律構成、そしてそれをささえる事実関係を的確にするという手立てが十分でないという事情もたびたび申し上げておるところでございます。しかしながら、依然として日韓の間には私の言ういわゆる請求権問題というのがあるわけでございまして、これを何とか解きほぐさなければならぬ立場におるということを申し上げておるわけです。

岡田春夫日本社会党

○岡田(春)委員 少なくとも、請求権と請求権問題とは同じものではない、こういう点についてはあなたお認めになった。第二の点は、請求権に関する問題ならば第四条の問題であるが、請求権問題は第四条の問題ではない、こういう点も御答弁になった。それでは、この二つの点が食い違っているのですが、あなたが違うとおっしゃるのはどういう点が違うのですか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 純然たる法律問題として片づける的確な手段を必ずしも持っていないという立場にあることをるる申し上げたわけでございます。しかし、依然として請求権問題というのはあるわけでございますので、その問題をどうほぐしていくかということを考えているということはたびたび申し上げているつもりでございます。

岡田春夫日本社会党

○岡田(春)委員 関連ですからもう申し上げませんが、あなたは、請求権問題を交渉しているんで、請求権の問題を必ずしも含まない。とするならば、あなたは第四条に基づく交渉をやっているんではない。日韓会談の交渉というのは、平和条約に基づく交渉ではないのですか、第四条の交渉は含まないのですか、この点はどうなんです。しかも、請求権の交渉ではなくて、それ以外の問題の交渉を含んでいるということになるならば、これは具体的に何を意味するのか、この点を伺わなければ、われわれは、今、日韓会談の交渉というのは平和条約に基づく交渉だということで、その内容についてもいろいろ考えておった。違う交渉をおやりになっておるというならば、これは別な交渉ですと言って別な交渉をおやりになったらいいじゃないですか。今までは平和条約に基づく交渉をやっていたんですよ。あなたは別な交渉をやるならほかであらためておやりなさい。何を一体交渉されているんです。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 第四条に基づく請求権の問題も、日韓正常化への前提に横たわる懸案の一つでございまして、この問題を解決しないと日韓正常化への道は開けないわけでございまして、この問題をどういう方法で接近して解決するかという方法で苦心いたしておるわけでございます。

岡田春夫日本社会党

○岡田(春)委員 これで終わります。あなた、ごまかしちゃだめですよ。請求権の交渉は第四条の交渉ですよ。あなたの今答弁したのは請求権の交渉でしょう。あなたがさっき答弁したのは請求権問題の答弁をしているじゃないですか。だから、話が違う。なぜあなたはそういう苦しい答弁をするかというと、請求権ということになれば、これは池田さんと朴との会談において明らかのように、合理的に数字が出て、そういうものでなければならない。それは第四条の規定に基づいているから。請求権問題というごまかしの言葉を使って請求権にあらざるものを交渉しようというから、ここであいまいもことしたごまかしを国民の前に出していくので、表面上は請求権問題というごまかしを使おうとしているのですよ。そこに問題があるからわれわれは質問しているのです。あなた、もっとはっきり言いましょうか。請求権は七千万ドル以上どんなに組んだって組めないのですよ。あとは無償供与に該当する部分を祝い金という形でこれはごまかそうというのです。これはタイの九十六億円と同じ手口なんだ。こういう点は、われわれをごまかそうたってごまかされませんよと、今からこれを念を押してわれわれ言っておかなければならないわけです。そうでなければ、われわれ国会で予算を審議するにあたって、国民に対して申しわけない。そういうごまかしの金をわれわれは承認するわけにはいかないのです。請求権問題などという、問題という言葉をつけてごまかすようなことはおやめなさい。数字をはっきりなさい。数字は国民にははっきりわかってない。あなただってわからないんだ。わからないから問題と言ってごまかしているのです。それが実態じゃありませんか。そんな交渉はもうおやめなさい。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 要するに、今請求権問題と言われておるのは、全く権利の問題じゃなくて贈与の問題だ、こういうことになってしまっておるのじゃないですか。お祝い金、つかみ金、だからもう全然性格の違ったものになっている。ただで金をやるという、全然請求権とは違ったものになってしまっておるのじゃないですか。だから、法的根拠はないのだと、こう言っておる。そうじゃないですか。その点をはっきりして下さい。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 ただいまも申しましたように、請求権の問題を解決するという方法として、将来にわたって経済協力を考えるということでございまして、請求権の問題を解決するということにほかなりませんで、問題は方法論でございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 これも詭弁ですから、幾ら繰り返しても私ども納得できない。今経済協力と言われましたけれども、その中に無償供与というものがあるのです。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 先ほども申しました通り、有償、無償の協力を考えております。数字の点につきましては、まだ的確にきめておりません。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 その無償供与のことを、独立お祝い金、こう言われるわけですか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 その請求権の問題を解決する手段として、将来にわたっての経済協力を考えておるということ、そういうことで相談にならないかということで交渉中だということでございます。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 誤解があってはいけませんので、今七千万ドルというようなことがありましたけれども、これは私は全然存じません。なんぼになるか話をしたことはないのでございますから、既成事実をおつくりにならないように願いたいと思います。  それから、請求権、これは平和条約の第四条の請求権です。これを日韓で話をしようというので出発しておるのであります。しこうして、出発いたしまして、請求権を法律的根拠というのでずっと議論をしているわけなのです。これを請求権として解決するか、あるいは、いろいろな事実関係その他がありますから、この請求権を含めて、請求権の問題として解決するかというのは、今考慮中でございまして、無償とかなんとかという問題は、まだきまったわけではございません。   〔「答弁が食い違っている」と呼びその他発言する者多し〕

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 御静粛に願います。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 第四条の請求権の問題の解決に接近する方法として、いろいろ考えておるということでございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 いろいろとただいまの問題につきましてあとから新たな問題が出て参ります。今まで無償供与という問題も出ておったのじゃないでしょうか。外務大臣にお答え願います。そうして、その無償供与というものはどういう理由で出てくるものかということを聞いているわけです。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 私どもは、先ほど申しましたように、将来に対して日本が韓国に対しまして経済協力をするということで、その内容につきまして今検討をいたしておるわけでございまして、こういうことをやることによって、いわゆる請求権の問題というのは解決したということにならないか、こういうことで折衝中であるということでございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 今の外務大臣の経済協力というものの中には、よく新聞に出ております無償供与の部分、そういうものを含めて経済協力、こうおっしゃっておるのですか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 有償、無償も含めて検討をいたしております。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 そこで、その経済援助の中には、今尋ねておりまして、無償という部分が出てくるから、これについて私お尋ねしておるわけです。どういうところから無償でやるという根拠が出てくるかと尋ねている。これは法律的根拠はない。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 将来の日本から韓国に対する経済協力ということを考えておるわけでございまして、そういうものの内容につきましては、今検討中であるということでございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 どうも私の質問に対するお答えにならないわけですが、なぜ経済協力の中に無償というものを加えるのか、そういう質問を私はしておるわけです。無償というものが出てくるから、それについてお尋ねしておるのです。これは国民の税金を他国へ与える問題ですから、これは大へん重要な問題です。ただで朴政権のようなものに相当多額の金を渡すというのですから。その金は国民の血税である。そこで、ただで渡すというのはどういうことか、無償供与とはどういうものか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 今考えておる経済協力の問題は、先ほど私が申し上げました通り、請求権の問題という厄介な問題がございます。そして、それをどう解決するかということについていろいろ苦慮いたしました結果、一つのこの解決方法として、経済協力を将来に向かってやるということによってこの問題を解決するという工合にいかないかということで、相談中であるということであります。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 経済協力の中に無償でやるという部分があるから、その意味を尋ねておる。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 つまり、純然たる経済協力を白地にしてやるというのではなくて、こういういろんないきさつがあって、請求権問題というのは日韓の間に長く横たわっているわけでございまして、それを解決する方法として私どもが経済協力を考えたということでございます。従って、経済協力の内容につきましては、そういう前提でお考えをいただきたいということでございまして、有償、無償につきまして私ども考えておりますけれども、まだそれを具体的にどうするかというところまではきめていないわけでございますので、この席で私からお答えするというわけには参りません。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 はっきりしません。そうすると、無償という問題はまだこれから考えてみるというのですか。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 経済協力の内容につきまして目下検討中でございまして、最終的にきめておるわけじゃございませんから、権威ある国会でまだ御報告する段階にないということです。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 最後に一つ確かめておきます。そうすると、無償というものはなくなるかもわからぬのですか。経済協力の中に無償というものが含まれるのならば、その無償というものについてはっきりした御説明をいただきたいと思います。無償というものがなくなるならば、これは私の質問は同時に消滅する。何だか無償ということは将来どうなるかわからぬというように最後に御答弁になったものですから、そこをちょっと最後に確かめておきたい。そうすると、今までの御答弁と非常に違ってくるわけです。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 先ほど申しましたように、今考えられておる経済協力の問題は、無前提の経済協力というわけでなくて、請求権の問題というものを解決する手段として考えておるということでございまして、その角度から私は経済協力の内容につきまして目下検討中である、こういうことでございます。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 私の質問に対するお答えは得られないわけです。無前提でないなら無償ということは出てこないはずである。無償ということで問い詰められると、何だか将来そういうものが消えていくかもしれぬというようなお話にも聞けます。残るものならもっと徹底的に聞かなければなりません。この点については私はきょうは質問を留保しておきます。

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 岡田君より再度関連質疑の申し出がありますので、これを許します。岡田君。

岡田春夫日本社会党

○岡田(春)委員 再度私は質問をしなければならないのは、それはなぜかというと、大平さんが私に先ほど答弁されたことと、何か先ほど混乱している最中に答弁されたことには、食い違いが起こっているのはどういう点かというと、第四条の規定に基づく交渉ではありませんとあなたは先ほど言ったはずだ。ところが、先ほどの答弁の中では、第四条に基づく交渉であるかのごとき答弁をしている。これはどっちかはっきりしてもらわなければならない。私たちの観念で言えば、今日韓の交渉をやっているのは、当然平和条約に基づく交渉であり、平和条約に基づかない、関係のない交渉をおやりになるならば、これは別途な交渉としておやりになる必要がある。第四条の交渉であるからこそ今交渉が進められているんだと私は思った。だから、先ほどあなたに伺ったわけでしょう。二つ区別して言いましたね。請求権の問題なら第四条の交渉ですよ。請求権問題というのは必ずしも請求権だけではありませんと、あなたはこう言われた。それならば第四条ではありませんねと言ったら、その通りです。こう言った。それじゃ、第四条ではないというのならば、どういう交渉をおやりになっているのか。先ほどの答弁が間違っているというのならば、外務大臣として責任があるから、はっきり、先ほどの答弁は間違っておりました、取り消しますとお答えなさい。これははっきりしておいてもらいたい。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 請求権の問題に関連した交渉をやっているわけでございまして、第四条と無関係の交渉であるというように私が申し上げたとすれば、それは間違いでございますから、取り消します。

岡田春夫日本社会党

○岡田(春)委員 それは、あなた、答弁が勘違いしていませんか。あなたは、第四条の規定に基づく交渉ではないのですというこをさっき言ったんですよ。それを取り消すとおっしゃるならば、それでもいいのです。しかし、その問題に関連して私伺っておきますが、第四条以外のもので請求権に関する問題を交渉はできないはずです。あなた、先ほどから黒田委員の質問に答えて言っているじゃありませんか。あなたの答弁によると、請求権以外のものを、経済援助という形で、経済協力という形でやる、この中には無償供与、有償供与がある、こういうものを考えておりますということをあなたは答弁された。ところが、その論拠になるべき請求権というものがあいまいであるから、そういう交渉をするということは、そのこと自体これはきわめてごまかしじゃありませんか、どうですか。韓国の方ではこれだけの金額を言う、日本の方ではこれだけの金額を言う。この点に話の食い違いがあるから、その差額についてどうするということの話し合いなら、これは別だ。ところが、どちらも論拠がないという中で、その話をきめるのに経済援助を持ってくるということ、そのこと自体客観的な論拠がないということを証明しているじゃありませんか。それはごまかしだということですよ。だから、無償援助などという形でごまかしをやろうとしているんだとわれわれに言われても仕方がないじゃありませんか。そういう点は一体どうなんです。論拠がないじゃありませんか。論拠があるならば論拠があるように、朴・池田会談によって論拠のあるものに限ったらいいじゃありませんか。そこの点に、第四条によらざるを得ないにもかかわらず、第四条によらないという、そのあなたの苦しい立場が出てくるわけです。その点をごまかしてはいけないということを再度私は申し上げておきたいわけです。その点の見解いかんです。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 第四条にいう請求権の問題を解決する手段としていろいろ工夫しておる、こういうことでございます。

岡田春夫日本社会党

○岡田(春)委員 それはだめです。私はそれでは納得しません。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 時間もだいぶ迫って参りましたので、問題を残しておりましけれども、今の問題で、少し政治的に見た私の考え方を申し上げておきます。法律論といたしましては、私は質問を留保しておきまして、後日また詳しく質問することにいたします。  そこで、ただいまの質疑を通じてわかりますように、いわゆる請求権問題は、条約に基づく本来の請求権という問題から離れて、すなわち、朝鮮人民に対する支払いというような性質から離れて、朴政権という人民に基礎を置かない一つの政権のために、それとの取引として、理由のつかない金のやり取りが交渉されておる、私はこういうものに堕落してしまっておると思うのです。政治的に見ればそういうようなものになってしまっておる。今請求権問題と称せられて交渉されつつあるものの内容を政治的に見れば、こういうものに変質してしまっておると思います。むろん、こういうものに私ども賛成することは絶対にできないわけです。なお、請求権の問題につきましてはいろいろと問題が残っておりますが、時間がございません。  最後に一点だけ質問をいたしまして、きょうの私の質問を終えます。

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 黒田君に申し上げますが、申し合わせの時間も経過いたしましたので、結論をお急ぎ願いたいと思います。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 あまり時間はかかりませんので、御了解をいただきたいと思います。これは多少議論になるところかと思いますが、サンフランシスコ条約の解釈によりますれば、またこの条約が予想していたところによりますれば、先ほども申しましたように、請求権とか法的地位とかいうような問題は、本来は統一朝鮮の問題といたしまして、全朝鮮の唯一の政府と日本政府との交渉によって処理せらるべき性質のものである、私はそう考えるわけです。そこで、韓国政府という特殊な政府とだけについて起こる問題は、私は李ライン問題と竹島問題しかないと思うのです。それ以外の問題は韓国政府との問題ではない。だから、いわゆる日韓会談というものの議題になるものがあるとすれば、私は竹島問題と李ライン問題だけだと思うのです。そのほかの、請求権の問題とか、法的地位の問題とかいうようなものは、朴政権を相手の交渉の対象になるべき問題ではない、こういうように私どもは考えております。この点については、このあとからなおもう一点だけ質問をいたしますが、一応政府の御見解を聞かしておいていただきたいと思います。

大平正芳自由民主党外務大臣

○大平国務大臣 先ほど申しましたように、朴政権の支配する地域ということを前提にして進めております。

黒田寿男日本社会党

○黒田委員 それについて念を押しておきたいと思います。そうしますと、政府は、韓国についても請求権や法的地位の問題を取り扱い得る、こういう見地に立って交渉を進めておいでになりますか。日時はちょっと忘れましたが、さきに松本七郎君の質問に対しまして、韓国政府はいわゆる限定政権だ、こういうように答えておられます。地域的に全朝鮮に及ぶものではない、こういう御答弁がありましたし、それからまた、岡田春夫君の御質問に対しましては、朝鮮の北の部分についても南の部分とは別に請求権の問題は考えられる、こういうようにお答えになったようであります。これについては、政府の御見解にその後変化は生じていないと思います。ただいまの御答弁からもそう受け取られます。そうであることを前提として、最後に一つお尋ねしておきたいと思います。そういう見解であるといたしますならば、かりに日韓会談が成立いたしまして、韓国との問題が、請求権とか法的地位というような問題も含めて解決したといたしますならば、次のプログラムとして、北の朝鮮の部分に対しても、政治的にそれが実際にいつ実現されるか、実現されぬかは別問題といたしまして、法律的には、韓国に対すると同様な問題がある、同様な問題が法的には存在して、北の部分とも国交正常化の問題が法的には考えられる、こうなってこなければ私は論理が合わないと思います。この点非常に重要な問題でございますから、この点について御答弁をいただきまして、それをもって私は、きょうは、まだ問題は残っておりますけれども、私の質問はこれで終了いたします。

池田勇人自由民主党内閣総理大臣

○池田国務大臣 お答え申し上げます。  先ほど来申しておりますごとく、朴政権は、国連におきまして一応合法的に成立したものとして、オブザーバーとして行っております。しこうして、今度の日韓交渉というものは、朴政権の施政下における韓国とやっておるのであります。従って、三十八度線以北の北鮮の問題が今度交渉の相手になる場合におきましては、また別個の問題でございます。

塚原俊郎自由民主党

○塚原委員長 次会は明十二日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後五時三十六分散会      ————◇—————

国会会議録検索システムで原文を見る ↗