外務委員会 第2号
- 発言数
- 197 件
- 登壇者
- 15 名
- 会派数
- 3
- 開催日
- 1962/08/23
会議録
○野田委員長 これより会議を開きます。 千九百六十年及び千九百六十一年の関税及び貿易に関する一般協定の関税会議に関する二議定書等の締結について承認を求めるの件及び通商に関する日本国とニュー・ジーランドとの間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、以上二件を一括議題とし、その提案理由の説明を聴取することにいたします。大平外務大臣。
○大平国務大臣 ただいま議題となりました千九百六十年及び千九百六十一年の関税及び貿易に関する一般協定の関税会議に関する二議定書等の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。 一九六〇年九月から本年七月までジュネーブにおいてガットの関税会議が開催され、わが国もこれに参加し、米国、欧州経済共同体、スエーデン及びイスラエルと交渉いたしました。その交渉結果が本件両議定書に収録されております。また、欧州経済共同体との交渉においては、フランス及びベネルックスがわが国に対しガット三十五条を援用しているため、議定書の譲許は当然にはわが国との間で適用されないのでありますが、わが国と共同体との間で直接に交渉した品目の譲許については、ガット関係にある締約国の間におけると同様に、これを相互に適用する旨の交換公文が作成されております。 これらの交渉結果を総計いたしますと、わが国の与える譲許は、スイート・アーモンド、殺虫剤、潤滑油、触媒等九十一品目であり、わが国に対して与えられる譲許は、グルタミン・ソーダ、絹ハンカチ、万年筆、サケ、マスのカン詰、電子顕微鏡、トランジスター・ラジオ等の百一品目に及びます。また、わが国の与える譲許のうち六十七品目は現行税率の据え置きであるのに対し、わが国に与えられる譲許の多くは二〇%の引き下げとなっております。 かように、今次の関税交渉の結果は、わが国にとり有利なものでありますところ、すでに米国、イスラエル等はその譲許をわが国に対しても実施しており、欧州経済共同体等も近く実施する見込みであります。わが国といたしましては、関税交渉が相互引き下げの原則に立って行なわれたこと、並びに、わが国の譲許の実施がおくれるときは、せっかくわが国に与えられる譲許も停止または撤回されるおそれがあることにかんがみまして、すみやかに両議定書を受諾いたすことが望ましいと存ずる次第であります。 よって、ここにこれら両議定書及び交換公文の締結について御承認を求める次第であります。 次に、通商に関する日本国とニュー・ジーランドとの間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。 ニュー・ジーランドは、わが国が昭和三十年関税及び貿易に関する一般協定、すなわちガットに加入した際、わが国に対し同協定第三十五条を援用し、わが国の産品に対しては同国において最高の関税率と差別的な輸入制限が適用される状態でありましたので、その是正をはかるため二国間の折衝を重ねました結果、昭和三十三年に至り、わが国に対するガット第三十五条の援用はそのまま続けながら、二国間の関係では、相互に最低関税率を適用し及び差別的輸入制限を撤廃することに同意し、現行の両国間の通商協定が成立しました。 この通商協定の発効以来、両国政府及び関係者の努力と協調を通じて両国間の貿易は順調に発展し、その額は昨年までにほとんど三倍の増加を記録するまでに伸長し、この間、両国間で、いわゆる市場撹乱の問題のために、通商協定中のいわゆる保護条項、セーフガードを発動する必要は一度も起こることなく経過しました。 ニュージーランド政府は、このような通商協定発効以来三年にわたるわが国との貿易の安定した発展だかんがみ、わが国年来の要望にこたえてガット第三十五条の対日援用を撤回することとなり、本年三月九日マーシャル副総理兼商工貿易大臣の訪日の機会に、同大臣とわが方小坂外務大臣との間で、このための書簡が交換され、その際、両国間にガット関係が完全に適用されることに対応して、両国間の現行の通商協定に所要の改正を加えるためのこの議定書への署名が行なわれた次第であります。 なお、ニュージーランドは、三月十九日付で対日ガット第三十五条援用撤回の通告をガット事務局を通じて行ないました。 この議定書は、現行協定中のいわゆるセーフーガード規定を削除し、これにかわりガットの優先規定を新たに挿入することを内容とするものでありまして、ニュージーランドの対日ガット第三十五条援用撤回に対応してすみやかにこの議定書を成立させることといたしたい次第であります。 よって、ここにこの議定書の締結について御承認を求める次第であります。 以上二件につき、何とぞ御審議の上すみやかに御承認あられますよう希望いたします。 ――――◇―――――
○野田委員長 これより国際情勢に関する件について調査を進めます。 質疑の通告がありますので、順次これを許します。穗積七郎君
○穗積委員 時間も十分ありませんので、大臣に卒直にお尋ねいたしますから、御答弁も一つ明快にお願いいたします。 最初に、二十一日から始まっております日韓会談について、新外務大臣大平さんの御構想を具体的に伺っておきたいと思います。 今まで積み重ねられた会談の構想を切りかえて、あの請求権問題については、あなたの新たなる構想で、供与方式によって一括してこれを処理する、それから、国交回復の形式としては、平和条約によらずして共同宣言方式をとったらどうかという構想をもって予備会談に臨んでおられるようですが、まず第一の供与方式というのが、日本側から見ても問題がいろいろあると思うのです。そういたしますと、総理が言われたように、両国間の懸案の問題を合理的かつ現実的に解決するために日韓会談を促進したいということと非常な矛盾を生じて、基本的な問題についての未解決、むしろ混乱を呼び起こす危険がある、そして、同時に、われわれが心配する南北朝鮮の統一を阻害をし、アジアの平和に脅威を与える原因を作る、そういうことだけがクローズ・アップされて、非常に国民としては憂慮するところでございます。従って、順を追って、あなたの供与方式の構想の内容をこの際でき得る限り国民の前に明確にして臨んでいただく、こういうことを希望するわけでございます。
○大平国務大臣 日韓の間において正常な国交に恵まれていないということは遺憾なことでございまして、なるべくすみやかに両国の間に横たわりまする諸懸案を解決いたしまして国交の正常化をはかりたいというのは歴代の政府の希求するところでございまして、去年の十月から会談が再開されておるわけでございます。ことしの三月に小坂前大臣と韓国の外務部長官との折衝が行なわれました際に、いわゆる請求権という問題につきまして双方の見解に相当大幅な開きがあるということを確認し合ったわけでございます。その後、日韓両国の代表の間でこの交渉をどういう手順で今後やって参るかということを協議しておりましたところ、参議院選挙も終わりましたし、内閣の人事更新も行なわれました機会に開こうということで、二十一日に予備折衝なるものを再開させていただきました。 三月の外相レベルの交渉の結果、先ほど申しましたように、請求権ということにつきまして相当大きな開きがある。しかも、これが日韓交渉の焦点であり、この問題が妥結しないとその他の懸案に踏み込めないというような事情もございますので、私の方としては、何かここに一つ工夫を考えなければならないのじゃないかと判断いたしまして、この間国会を通じて申し上げましたように、より高い次元で政治的な工夫を加えて何らか妥結の目安が出てこないかということでせっかく苦心いたしておりますということを申し上げたのでございます。その意味は、請求権というものの実態は、終戦後ずいぶん時間が経過いたしておりまするし、その間韓国にも動乱がございまして、事実の確認等におきまして的確なものをつかみ取るというようなことはなかなか困難な事情にもございまするし、そういった状態のままいつまでもいわば一階と二階との相撲みたいことをやっておったのでは効果的な会談を続けて参るということもおぼつかないのじゃないかと判断いたしまして、何かそれを打開する道がありはしないか、先ほど申しましたように苦悶いたしておったわけでございますが、今までのような仕組みでなくて、新しい仕組みと申しますか、構想と申しますか、そういったものを工夫いたしまして、そして今先方にその考え方を提示いたした段階でございます。従いまして、ここで穂積先生が御要求されるように、申し上げるのが当然かもしれませんが、事、折衝にかかっておりまして、かかったばかりでございますので、それ以上の御追及はいましばらく御猶予いただきたいと思います。
○穗積委員 具体的のお尋ねをする前にちょっと御注意申し上げておきますが、今度の日韓会談というものは十年余にわたる会談の継続なんです。従って、問題がどこにあるか、どういう点が中心になるのかということは、大体彼とわれとの構想というものは世間周知の事実なんですよ。それ以外のことを、全然別な交渉を始めるわけではないのです。従って、交渉中だから国民に知らされないというようなお考えで問題をはぐらかしておいて、そしてやみ取引をやってしまうというようなことは、国民外交、民主主義の立場から見て許すべからざる方針だと思うのです。もとより、われわれも、外交交渉の場合に、ある程度の交渉の過程における秘密ということが重要であることは十分わかっていますよ。わかっていますけれども、あなたが言わんとするところは、当然事前に説明すべきものを交渉に差しつかえがあるという隠れみのでこれを示さない、こういうように思うのです。その点を御注意申し上げておきます。この際国民の協力なくして外交ができるとお思いになったら大間違いですから、国民の理解と協力を求めてその上でなければやらない、こういうことでなくてはいけないと思いますから、念のためにちょっと御注意申し上げて、その精神であと答弁をいただきたいと思います。 それでは、まず第一に具体的にお尋ねいたしますが、請求権問題が彼我の間に意見の違いの幅が広くてなかなか進まない、だから今度の供与方式を考えたのだと言われるのですが、供与方式の中の有償の経済援助は、これはわかるのです。ところが、無償の供与というものは一体請求権との関係はどうなるのですか。請求権を含み、さらにプラス・アルファなのでしょうか、請求権というものの今までの積み重ねの構想を御破算にして、そして新たにばく然と無償供与という提案をしておられるのか、その点を第一に明確にしていただきたいと思うのです。すなわち、無償供与の考えと請求権を合理的に解決するということとの関連性ですね。
○大平国務大臣 それは穗積委員よく御存じなんで、私どもは、今申しました工夫をこらしているという意味は、つまり、請求権というレベルというか、請求権に固執しておると効果的な前進がないのじゃないかという判断でございます。十年間の交渉を通じて、先方におきましては請求権という問題を非常に重大に考えられておるということもよく承知いたしておるわけでございますが、しかし、それにしても、彼我の間に請求権レベルでの交渉というものはこれ以上積み重ねてみても大した発展は期待できないのじゃないかということは先ほど申しました通りでございます。従いまして、請求権に固執しないという立場に先方もなっていただくことを私どもは期待いたしておるわけでございますけれども、これは先方がどう考えますか、当方におきまして一応考え方を提示いたしたのが今の段階でございます。
○穗積委員 あなたの提案されたいわゆる無償供与は、請求権プラス他の無償供与という構想でなくて、請求権をも含んで無償供与の考えで一括解決をしたい、こういうお考えのようですが、そういたしますと、進んでお尋ねいたしますが、今まで政府が、しかも同じ池田内閣ですよ、それが昨年暮れに池田・朴会談において確認されたのは、法的根拠のあるもののみに限る、しかも事実関係の明確なものに限る、そうして積算をしてみたら七十万ドルというようなラウンド・ナンバーが出てきているというふうに伝えられておるわけですね。ところが、向こう側も、請求権とは関連なしの無償供与、そういうものでは困る、請求権としてこちらは受け取るのだ、こういう態度をとっておる。日本側から見ても、今まで積み重ねてきた池田内閣の交渉方針というのは、この懸案の問題の重要な一つである請求権については、法的根拠あるものに限り、しかも事実関係の明確なものに限ると言ってそこまで積み重ねてきた。そのいわばこちらの主張、これを根本的にくつがえすことになりますね。しかも額はその倍くらい。今日伝えられておる政府の構想を第一案として出されたものから見ましても、今まで外務省、大蔵省が積算をいたしましたラウンド・ナンバー七千万ドルよりは倍以上のものがばく然とした無償供与となる、支払うべき根拠の明確でない金を韓国に支払う、こういう結果になっておるわけです。その点はわれわれとしてどうしても納得がいかない。どういうわけで一体今までの法的根拠のあるものに限るという方針をくずしてしまわれたのか、しかも額を一挙に倍以上に積み重ねられたのか、その額の基礎は一体どこから出てきているのか、その点を逐次具体的に明確にしていただきたいと思います。
○大平国務大臣 請求権ということを問題にいたしまして処理するという限りにおきましては、法律的根拠があり合理的なものでなければ私どもは受け入れるわけに参らないという池田・朴会談の原則は生きておるわけでございます。今回私どもが構想いたしておりますのは、国交の正常化ということが目的でございますので、それに接近する方法として、何かそれだけでなくて工夫が要るんじゃないかということで、一つの考えをもって先方に提示しておるのでございます。今お尋ねの請求権という段階で議論する限りにおきましては、従来の方針をちっとも変えていないわけでございます。先方がどういうような考えに出ますか、それは私はまだ目下のところわからないという状況です。
○穗積委員 今の外務大臣の御答弁の中に政治的に重要な意味が含まれておるわけです。というのは、懸案の問題について合理的かつ現実的に解決する、しかも合理的ということは日本側に有利にということですね。池田総理は日本の大臣ですから、日本側にとって納得のいく有利な条件において解決すると言っておられるのに、あなたは、今のお話を聞くと、そういうことでこちらの主張が通らない、合理的であるけれども通らない、相手ががむしゃらを言っておる、そういうことであるならば、問題はその解決に主点を置くのではなくて国交回復に重点を置くのだ、これは重要なことなんです。国交回復さえすればこっちが不利な条件でもかまわない、あるいは合理的な解決でなくともかまわない、国民の要望するものはそういうことではないのです。合理的に問題を解決するためにのみ国交を回復するということでなくちゃならない。従って、私どもが心配するように、政府が一体なぜその合理的かつ現実的な懸案の解決を怠りながら、あいまいにしながら国交回復だけ急ぐのか。その政治的意図はどこにあるのであろうか。南北朝鮮の統一問題なり、反共軍事体制の強化の問題が今国際的なアジアにおける一つの大きな問題になっている。そのペースに乗った構想であるとわれわれ心配せざるを得ないのです。だから、第一の懸案の問題である請求権問題は、今まで積み重ねてきたわが方の合理的な主張というもの、しかも相手が納得しておるのは、法律的な根拠のあるもののみに限る、事実関係の明確なもののみに限るということで、しかも概算してみれば七千万ドルはこえない、こういうところまで来ておった。その主張を、これは合理的主張として認めるのでしょう。その主張をくつがえして、そうして、ばく然とした無償供与に切りかえてしまって相手の意を迎えておる。そうして国交回復だけ急ぐのだということでは、非常な主客転倒であり、国民としては絶対に納得することのできない交渉の方針だ、こう言わざるを得ないと私は思うのです。明確にしていただきたい。
○大平国務大臣 先ほど申し上げましたように、請求権それ自体を問題にしてやって参る場合には既定の方針を変えるつもりはございません。ただ、この目的はやはり国交の正常化をいかにしてはかるか、しかもそれは両国民が納得するようなものでありたいという、政府が国会でもたびたび申し上げておるような方針に従いまして、工夫いたしておるわけでございます。
○穗積委員 それでは、この先具体的に伺いましょう。 あなたの提案されておる供与方式の中の無償供与の中に、これはたとえばその無償供与が総額一億五千万ドルなら一億五千万ドルと仮定いたしましょう、そのうち七千万ドルは請求権の積算によるものであり、あとは色をつけて解決するためにこの八千万ドルはプラス・アルファとして何となしにつかみ銭をやるということなんですか。その点は、つまり、無償供与の中に、請求権の支払いとしての額と、それからプラス・アルファの無償供与と区別して提案されておられるのかどうか。請求権の積算の問題、合理的解決についての今までの方針というものは死んではいないのだ、生きているということなら、当然あなたが提案しようとして指示されておる三億ドルのうちの一億五千万トル以下、――一億四千万ドルないし一億五千万ドルとしても、そのうちのこれだけは請求権に対する支払い額である、あとは、韓国の方は七億ドルと言っておって幅が広いから、日本がいわば色をつけるということで八千万ドルただ差し上げましょう、こういう構想なんですか。その点はどうなんですか。
○大平国務大臣 今私が申し上げましたわれわれが構想いたしておりますものは、つまり、請求権というものの合理性、法律的根拠を探求しまして金額を見積もるという行き方よりも、もっと工夫がありはしないかというので、新しい工夫をやっておるわけでございますが、そういう考え方というものに先方がどのような反応を示しますか、今わからないという段階でございます。私どもの構想は、請求権で幾ら幾ら、それからプラス・アルファ無償供与を考えるという考え方ではなくして、請求権レベルでという行き方ではなくて、何か一つ工夫をこらしてみようという考え方ですから、あなたの言われる請求権プラス・アルファというような考え方ではないわけであります。
○穗積委員 そうなると、ますます。合理的解決じゃなくて、まことに非合理的な、日本にとっては不利な解決方式なんですよ。先ほど私が言ったように、同じ池田内閣ですよ。しかも、あなたは当時官房長官ですよ。しかも、請求権問題については、相手が納得するしないじゃない。相手は納得しておるのだ。法的根拠のあるもののみに限ります。しかも事実関係の明確なもののみに限りますと言っているのです。額は何とかして近寄ろうと思って水増しして積算してみても七千万ドルはとうていこえない、こういうことであるのに、そんな原則を捨ててしまって、非合理的な、しかも日本にとっては不利な、ばく然とした無償供与方式というものを考えて、しかも、伝えられるところの第一次案はその倍以上のものに積み上げてしまっておる。あなたは大蔵省出身で、経済のことについてはわれわれより数字に明るくなきゃならぬはずだ。にもかかわらず、そういうばく然とした供与方式というもので、無原則な、非合理的な、日本にとって不利な、そういう態度で、秘密外交で国民には知らせないでお通りになろうと思っても、それでは通らない。私はこのことを言いたいと思うのです。あとに質問者がたくさんありますから、残ったところは次にするとして、私はどうしてもこれは納得できない。 続いてお尋ねいたしますが、今出しておる供与方式、有償、無償合わせて三億ドルというやつですね。それで二間一緒にお尋ねいたします。この供与方式というものは、相手の出方によってこれを変更して、請求権解決の元に房るお考えがあるかどうか、この方式を変える考えがあるかどうか。それから、額について、今三億ドルというものを内示されようとしておるようですけれども、相手は七億ドルと言っておるわけだ。そうするならば、あとは何らかの名目で三億ドルを四億ドルないし五億ドルに譲歩してもいい、そういうようなことがうわさとして実は韓国の方へ伝わっておるわけです。そういうことでは交渉が有利にできませんよ。これは、そういうような方式についても、今後相手の出方によって変更をし、あるいは額についても、三億ドルをさらに水増しをする場合もあり得るということなのか、これで相手が理解してくれなければ、わが方としては手一ぱいのものであるからこれ以上妥協に応ずるわけにはいかぬという態度でお臨みになるのか、その間の基本的な態度を締めくくりとして一つ伺っておきましょう。
○大平国務大臣 われわれの考え方を提示しておるという段階でございまして、それ以上向こうがどのような反応を示しますか、私どもの方ではわかりません。
○穗積委員 無償供与方式なんというものは根拠のないもので、すなわち、池田総理の言葉によれば、合理的でない、あるいは非現実的なものであって、今まで交渉の中で積み重ねてきた、いわば戦い取ってきた、――伊関さんがそこにおるけれども、合法的なものに限るということは、もう明確でしょう。国会でも答弁しているじゃないですか。それを放棄しちゃうということですね。それで、向こうからも、この無償供与方式というものに対しては、請求権として明確にしろ、しかも額が足りない、こう言って、供与方式に反対をし、請求権解決方式で行け、額についても足りないと言ってがんばっておるわけですね。そういう板ばさみになったときに、あなたが今の供与方式並びに額について無原則にだらだらと変更されては困るので、変更されるつもりであるのかどうか、政府の基本的な態度をこの際国民の前に明らかにしていただきたい。
○大平国務大臣 国民が納得いただけるようなことでやりたいと思っております。
○穗積委員 そういうことでは納得できませんよ。きょうは時間の割当がありますから、あとの質問者にこの続きは明らかにしていただくことにして、この問題について最後に一つ政治的なことをちょっとお尋ねしたい。 あなたは来月十五日に立ってアメリカへ行かれる。国連へ行くという名目ですが、実はアメリカ参りなんです。われわれとしては、日本の外務大臣が就任をすればまっ先にすることは、国会の答弁はいいかげんにしておいても、アメリカへ行ってアメリカ参りをするというような非自主的な態度というものは、苦々しく思っている。それは別として、この日韓会談について、伝えられるところによると、アメリカへ行って、アメリカのラスクのあっせんによって韓国の外務大臣またはそれにかわる政府代表とあなたの方が会談をやって、そこでこの予備会談の経過をもって向こうでアメリカを入れて政治的に解決をする、すなわち、今後の無償供与または有償供与の問題について、相手の要求が強ければ増額をしてもいい、そして、それについてはアメリカの間接保証を求めて、アメリカを中へ入れて、アメリカでこの問題の政治的交渉をしようとしておられるということが伝えられておる。こういうことは、日本の合理的な、かつ自主的な問題解決交渉のために、はなはだしくわれわれは心外に思うわけです。その点をこの際事前に、お立ちになる前に明らかにしておいていただきたいと思うのです。
○大平国務大臣 私が今度渡米いたしますのは、第十七回国連総会に出席することでございまして、日韓交渉に関連してアメリカ当局にあっせんを依頼するというような意図は毛頭ございません。この交渉はあくまでもわが国が自主的にやるべきものと心得ています。
○穗積委員 それでは、アメリカで外相会談またはそれにかわるところの政府の代表とあなたが会談をして、この東京で行なわれつつある日韓会談について交渉を継続するということはありませんね。
○大平国務大臣 韓国の外務部長官が御出席されるのかされぬのか、それは存じませんが、その方々と先方でお目にかかるというようなスケジュールは持っておりません。
○穗積委員 持ってない。それでは、続いて重要な点だけ伺っておきたいと思いますが、請求権問題については、今言った通り、今までの政府の方針というものは根本的にくつがえされて、非合理的でかつ不利な交渉方針を持っておるということですから、われわれはそういう方式では絶対に賛成することができないということだけ明らかにいたしておきます。 続いて次の懸案の問題についてお尋ねいたしますが、竹島問題、それから李ライン問題、漁業問題、それから漁民、漁船の拿捕の問題、これはともに日韓会談で解決すべき重要な懸案の問題です。今度あなたは、国交回復を急がれるあまり、条約によらずして、領土問題その他の懸案の問題は一切国交回復後のあとまわしにして、そして国交回復だけ急いでしまえ、そして日韓間の同盟締結を強化しよう、それで日本の経済進出を早くせしめよう、こういうお考えのようですけれども、これも私は納得がいかないので、この共同宣言方式というものに対しては、向こう側も、領土問題、主権の問題について、はなはだ反対の態度、批判的な態度を示しております。同時に、われわれ日本国民としてもこれは納得がいかない。 そこで、具体的にお尋ねいたしますが、竹島問題については、今まで池田内閣の方針というものは事前解決を条件としておったわけです。事前または同時解決を交渉妥結の不可欠の条件としておられたわけです。これは変わりがありますかありませんか。
○大平国務大臣 変わりはございません。
○穗積委員 それでは、事前解決なくして共同宣言によるかまたはその他の方式による国交回復はありませんね。
○大平国務大臣 ございません。
○穗積委員 次にお尋ねいたしますが、李ライン問題についてはどうですか。
○大平国務大臣 李ライン問題も、これからその他の今問題になっている懸案も、みな同時解決という立場で臨ん でおります。
○穗積委員 それでは、その他というのは、私はこの際明確にしておきましょう。竹島問題も事前解決でなければやらない、すなわち、たな上げはしない、それから、李ライン問題も、わが方の今までの主張通り実現せずして国交回復はやらない、それから、第三点は、漁業問題についても合理的かつ日本にとって有利な解決をやらずして国交の回復はやらない、第四番目には、当然李ライン問題と関連する漁船、漁民の拿捕についても、これは即時釈放、以後はやらないということが確認されなければ国交回復はしないと明言したものと理解してよろしゅうございますね。
○大平国務大臣 そういう懸案を解決することが今度の交渉の目的でございますので、それをたな上げにして国交回復を急ぐというようなことはいたしません。
○穗積委員 わかりました。その点ははっきり確認していただいたと思うのです。 日韓会談について次にちょっとお尋ねしたい一点があるわけですが、北朝鮮との関係ですね。北朝鮮との関係は、これは今これからやり出すときりがありませんからまた別な機会にいたしますが、平和条約第二条、第四条、それから大韓民国というものが成立した過程から見て、国際法上の法理論は別にいたしますけれども、私どもは、従来からもこの委員会において主張したように、朝鮮人民共和国の承認、あるいは第四条(a)項に伴うところの経済的交渉、これは韓国に限らないと思うのです。しかも、今度政府の態度は、向こうの主張と違って、三十八度線以南の限定政府として交渉に当たっておられるわけですから、従って、請求権問題も、政府承認の問題も、あるいは経済、文化の交流問題も、それから懸案の経済的債務の問題についても、これは北に関係のないことなんですね。朴政権というものを三十八度線以南の限定政府として政府は交渉に当たられることですから、従って、北との関係については別である。これは本来言えば同時平等でなければならない。われわれは、これは統一政権ができてから交渉はやるべきだというふうに主張いたしておりますが、政府の考え方に立って見ても、条約上当然これは北の今日の朝鮮人民共和国政権を差別したり不利に取り扱うということはあるべからざることだと思うのです。従って、平和条約第二条、第四条に対する日本の国際法上の義務というものは、朝鮮人民共和国政権に対しても免れるものではない、こうわれわれは基本的に理解するわけですが、そう理解してよろしゅうございますね。
○大平国務大臣 これは先ほども申し上げておきましたが、現実に韓国の支配が北の方に及んでいないという事実は十分念頭に置きまして処理いたしますとお答え申し上げた通りであります。
○穗積委員 それはちょっと大臣お忘れにならないように。 そこで、一つお尋ねいたしますが、今度あなたは、共同宣言方式で、相手がのむかのまぬかわからないが、とにかく国交回復を急ぐと言っておられる場合に、問題は、朝鮮人民共和国政権との関係、その人民との経済関係というものが重要な問題になるわけですね。朴政権を限定政権として、地域的限定政権として交渉に当たられるわけですから、そのときに北朝鮮の政権あるいは人民に対する義務、そういうものについて、朴政権あるいは韓国政権から非常に制限を加えられる、たとえば北朝鮮の政権承認はやらない、朝鮮人民共和国に対する政権承認は永久にやらない、あるいは朝鮮人民共和国との間の経済、文化の交流については韓国の承認なくしてはやらないとか、それから、賠償支払いの問題については韓国の了解なくしてはやらないとか、そういう政治的条件を今度の交渉の中で持ち出す場合があっても、日本政府はこれを拒否するのが当然だと思いますが、その点は、われわれ日本国民としては心配な点ですから、ぜひこの際伺っておきたいと思うのです。
○大平国務大臣 むずかしい法理論はわかりませんけれども、北の方に支配が及んでいないという現実、そういうものを踏まえた上で処理していくという態度でございます。
○穗積委員 そうしますと、北朝鮮に対する日本の自主的な交流または友好的な方針について、今度の交渉を通じて韓国政権から条件を付されたり制限を付されるということはしない、こう理解してよろしゅうございますね。
○大平国務大臣 先ほどお答えしたような態度でやります。
○穗積委員 委員長、時間が参りましたので、いろいろ問題が多くありまして不十分ですけれども、他の質問者に譲ります。 そこで、最後に一点だけ伺います。最近の重要な問題で、日韓会談とは別の問題、日中の貿易問題ですが、一点だけお尋ねしておきますから、率直にお答えをいただきたいと思うのです。 きのうの商工委員会で福田通産大臣が、例の池田さんが言われた中国貿易に対する延べ払い方式について第三国の保証はなくてもよいということを言明されて、日中両国の間の信頼と保証によってのみで延べ払いを認める方針である、こういうふうに明らかにされておる。これは当然なことですけれども、外交関係によって、この経済貿易方針というものが日本ではややともすると常に不当に押えつけられ、抑制せられ、制限を加えられる、そういう事実をわれわれは見ておりますから、この際それについて外務省にお考えを伺っておきたいと思うのです。
○大平国務大臣 日中間の貿易を伸長さしていく上におきまして、個々の問題とか条件の問題とかいうようなもを検討してみたいということで、今関係各省の間で実態に即して検討に入っておるわけでございます。今御指摘の第三国銀行の保証の問題とか、あるいは延べ払いの問題、品目等につきまして、どこまで踏み切れるかというような点につきまして、せっかく今検討いたしておるのでございます。通産省を中心に、私どもも御相談にあずかりながら検討いたしておる段階でございます。
○穗積委員 いや、私は具体的にお尋ねしているのですよ。きのうの商工委員会で通産大臣は、すでに、政府を代表して、第三国保証は不要だということを明言しておられるわけです。外務省として、これに変更を要求したり、制限を加えるお考えがあるかないかということをお伺いしておるのです。
○大平国務大臣 通産省の方から一応の草案が出まして、今検討いたしておるところであります。
○穗積委員 そうすると、きのうの通産大臣の答弁は、池田内閣、日本政府を代表する答弁ではない、通産大臣の個人的意見であって、政府としてはまだ検討中だとおっしゃるわけですか。それでははなはだ権威がなくなりますね。
○大平国務大臣 通産大臣は、私非常に御信頼申し上げておりますし、また非常に手がたくお進めになっておられるようでございまして、私どももできるだけ同調して参りたいと思いますが、閣議でこのようにするときめたという段階ではないわけでございます。従って、国会で私が申し上げる場合には、国会を尊重するがゆえに、ちゃんと政府の方で意思決定して申し上げたいと思うので、その過程を福田さんはおっしゃったのではないかと思います。
○穗積委員 それでは、具体的にお尋ねしておきますが、通産大臣はもう言明しているのだから、近く内閣で報告して了承を求めるでしょう。その場合に、あなたは賛成しますか、反対しますか。
○大平国務大臣 福田通産大臣を信頼いたしております。
○穗積委員 反対しないという言葉と理解してよろしゅうございますね。はっきりしなさいよ、あなた。
○大平国務大臣 できるだけそのような方向で……。
○穗積委員 最後に一点お尋ねしますが、中国は、友好取引の原則というのを、これは当然なことですが、主張しているわけです。これをあなたは十分当然なこととして理解しておりますかどうですか。
○大平国務大臣 先方の方で、貿易三原則ですか、そういう御主張があられることは承知いたしております。
○穗積委員 それに賛成ですか反対ですか。
○大平国務大臣 わが国としては、問題は、共産圏といわず、できるだけフェアな貿易は伸ばしていくべきだと思いますので、そういう目的を達する上におきまして、より有効な方法があり、そして先方もまたそれでよかろうということになれば、そういうようにやって決して悪くないと思っております。
○穗積委員 これはまたの機会にしますが、一つだけお尋ね申し上げておきたいのであります。貿易三原則は、第三原則としては、配慮物資は全く日本の零細企業並びに労働者に対する配慮としてあげるので、貿易ではありませんということ。それから、本格的貿易は、第一原則は、政府がおやりになるならば政府間協定のみでやりましょう、いつでも私の方はやります。こう言っておるわけですね。それから、第二原則は、それに至る前に、友好的な商社であるならば、いつでも個別な取引はいたしましょう、こういうことで今やっているわけです。それに対して、政府は、自分自身が乗り出して貿易をやる、自分で主導権を握って、すべての財界人、すべての商社を含んで中国との全面的貿易をやろうとするならば、当然第一の政府間貿易協定に進むべきなのです。それを進めないでおいて、政府の主導権と全面貿易を要求するということで、第二の友好取引の個別取引の原則というものを踏みにじって、今行なわれている友好取引というものを御破算にしちゃって、そして、政府の主導権、政府の補助金ひもつきの輸出入組合を作って、友好商社も非友好商社も全部一緒くたにして、あらゆる商社、あるゆるメーカーを含んだ貿易に切りかえよう、こういうことなんです。貿易の内容は、三原則の中の第一の政府間協定による貿易と同様のものになるわけですけれども、その場合に、やりたかったら政府間協定でやっていただきたい、これは当然じゃないでしょうか。何も無理を言っているんじゃないでしょう。それをやらないでおいて、そうして、第二原則を無視して、輸出入組合で、無差別無原則な取引をやらせろ、こういうことでは進みません。だから、あなたは友好貿易三原則というものをお認めになって尊重したいというお気持であるなら、友好商社というものは限定されたものじゃないでしょう。拡大されつつあるのです。銀行にいたしましても、三井、三菱糸を初めとして、東京銀行その他日本の大きな銀行は全部友好銀行に指定されております。商社も今日百数十社になっておる。三井、三菱、住友系のダミー会社も全部入っております。あるいは第一線の会社も全部入っております。しかも変化発展があってだんだん広めていく余裕を向こうが示しておるわけです。いつでもどんどん追加発展せしめる態度をとっているわけですから、その態度は私は尊重すべきだと思う。それで、それを御破算にしてしまって、相手の顔をつぶさして、原則を踏みにじって、無原則、無協定のままで輸出入組合による全面貿易をやらせよう、こういうことでは、それをやりたかったら政府間協定を結ぶべきで、そうでなければ友好取引の発展拡大ということで政府は協力すべきだと思うのです。そのことを私はあなたにぜひこれこそ高次な立場で決断されて善処されることを要望をいたしまして私の質問を終わりますが、大臣の御所感を伺っておきましょう。
○大平国務大臣 機構の問題も、いろいろ関係者の間で検討いたしておりますので、穂積先生の言うような御注意、よく承っておきます。
○野田委員長 細迫兼光君。 ちょっと質問者に御注意しますが、大臣は大体十二時半に退席しますから、そのおつもりで時間をお考えになりながら御質問願います。
○細迫委員 外務大臣は、韓国なるものの性格について、これと国交正常化を急ぐにふさわしい性格を持ったものと考えられて急いでおられるのかどうか。いずれの国とも仲よくすべきだという池田総理の考え、反対すべき理由もありません。ことに、近いところと国交のないことは不自然である。わが国に一衣帯水の近いところとは国交正常化をすべきであるということには反対すべき理由はありません。ただ、しかし、韓国には韓国の性格があります。そのおもな柱は、あれがクーデターによって樹立せられた武断政治の性格を持っておること、もう一つの大きな柱は、国際法を踏みにじって顧みない性格を持っておるということ、第三には、常に李承晩政府以来滅共北進というきわめて戦闘的な破壊的な侵略的な性格を持っておるということ、これは否認すべくもない事実だと思うのです。近いところといえば、中国もそうであるし、北朝鮮もそうであるのに、よりによってこれらの性格を持つ韓国と国交正常化を急ごうという理由が私にはわからないのです。どういう理由であるか、御説明を願いたいと思います。
○大平国務大臣 韓国との間に国交正常化を急いでおるという受け取り方をされておるようでございますが、私どもは、急いでおるわけではなくて、むしろ非常におそきに失しておるというような感じでございます。 それから、韓国の性格の問題でございますが、韓国民がどういう政権をつくられるかということは、私どもが容喙すべき問題ではないと思いますが、現に大韓民国は五十一カ国から承認されておる政権でございまするし、国連憲章を尊重いたしまして武力北進はやらないという建前をとっておりまするし、近くまた民政の方へ移管しようという決意で準備を急いでおるということでございまして、細迫先生がおっしゃるように一がいに相手にすべき政権でないというように私どもは考えていないわけです。 〔委員長退席、安藤委員長代理着席〕
○細迫委員 李承晩ラインについては、池田内閣は一貫して、あれは違法なものである、国際法違反であるという態度をとっておられます。現在でもそれは変わりないものと思うのでありますが、そういう国際法をじゅうりんして顧みないことをずっとやってきておりますが、これと国交正常化をして、将来約束に反する、あるいは国際法を依然としてじゅうりんするということがないという確信を持っておられるでありましょうか。
○大平国務大臣 それは韓国の問題でございまして、私どもはそういうことのないように期待いたしております。
○細迫委員 李承晩ラインの問題でありますが、私のところにも方々からいろいろな手紙が参ります。社会党が日韓会談の打ち切りを主張しているものでありますから、どうぞ反対しないでもらいたい、李承晩ラインの解決という非常に望ましいことが含まれておるのだから、あれには反対しないでもらいたいというような手紙が続々参っておるのであります。しかるに、大平外相の高い次元からの正常化というその中には、李承晩ラインの撤廃ということが置き去りにせられるではないかという印象を受けるのでありますが、これは、穂積君への御答弁によって、同時に解決を企図しておるということで、了解をいたしましたが、請求権につきまして、放棄した日本の請求権、これは考慮に入れるべきことをやはり主張なさるかどうか。それから、わが方の請求権といたしまして、不法にわが権利を侵害した李承晩ラインの問題、これは、権利の侵害による、すなわち不法行為による損害、これを賠償してもらう権利があると私は思うのです。十年にわたる得べかりし利益の損失は莫大なものがあると思います。これらを主張なさるお考えがあるかどうかを承りたいと思います。
○大平国務大臣 先ほど穂積先生の御質問にもお答えいたした通り、請求権という問題に関する限りにおきましては、合理的な根拠があるものでなければならぬと思っております。ただ、そういうレベルで問題を討議しておったのでは効果的ではないのではないかと判断をいたしまして、別な一つ工夫をこらしてみようと今考えているわけであります。
○細迫委員 その別な工夫の中に、今申し上げましたように、李承晩ラインによる、韓国側の不法な侵害によるわが方の損害、これの賠償請求、この請求をなさるつもりかどうか、あるいはわが方が放棄した請求権、これを考慮すべきことの主張をなさるかどうか、この二点をはっきりしてもらいたいと思います。
○大平国務大臣 要するに、諸懸案というものは同時に解決をして国交の正常化に入るべきものと思っております。
○細迫委員 国の一部が独立をした場合、国交正常化の問題において一番基本的に解決せられなければならぬ問題は、国境の画定であり、かつ国民の法的地位の確定であると思います。その法的地位の確定に若干の連関を持つのでありますが、朴政権樹立以来、亡命的な性格を持った不法入国の取り扱いを受ける事案が非常に多くなっております。特徴的なものを申しますれば、民族日報の編集局長趙鏞寿、これはすでに死刑になりました。同じケースで被告になっておって裁判上無罪になった、だが身辺の不安に耐えずして日本に不法入国した者がおります。これはもう帰れば少なくとも逮捕は客観的に見て免れないものと思うのでありますが、これに類する者、朴政権に反対の態度をとった者、あるいは南北統一を主張した者などが韓国朴政権によってブラック・リストに載っておるような人々が、すでに滞在期間が切れたり、学校に入学しておってその勉強のために滞在しておった者が滞在期間が過ぎたというようなケースもあります。これらの問題については、国連においてもかねて難民委員会などで問題になった。ことに、スペインのフランコ政権ができましたときにフランス、イタリア方面に亡命してきた多くの人々に関する取り扱いなどの前例もありますが、これら亡命的な性格を持った者が形において不法入国と見られるのか。これは直接には法務大臣の所管かと思いますが、外務大臣は、いかにこれを取り扱うべきか、保護すべしという気持でおられるのか、やはり入管の形式に反する者はそういう危険な中にもびしびし送り返す、返さざるを得ないという態度をとるべしとお考えになっておるか、この点についてお伺いしたいと思います。
○大平国務大臣 それは御指摘のように法務省の問題でございまして、ただいままでのところ私はそういう御協議を受けたことがございませんので、よく勉強させていただきたいと思います。
○細迫委員 だから、お尋ねしましたように、入国手続法規一点張りのしゃくし定木でいくべきか、あるいはそこに人道的な考えを加味して考えるべき問題であるかというような大ざっぱなところにおいては、これは政治的な感覚から判断すべき問題だと思うのです。いずれのお感じをお持ちであるか、明らかにしてもらいたい。
○大平国務大臣 私はその件につきましてまだ勉強が足りませんので、アジア局長からお答えいたさせます。
○伊関政府委員 今まで政治亡命というふうなことで大きな問題になりましたのはチャン・ギョングン氏というのがございますが、これはむしろ李承晩政権のときのあれでありまして、張勉政権のときにむしろ逃げて来たのでございます。朴政権になりましてこちらに亡命して来ました者で大きなケースとしてわれわれが法務省から相談を受けたケースはございません。ただ、法務省といたしましてもかなり人道的な観点から考慮してやっておると思いますが、これは、個々のケースにもよりまして、過去の経緯その他本人の現在の境遇、いろんなことがございます。先ほどの御質問にありましたような学生のケースというふうなものは、大体においてまじめに勉強している者は学校が済むまでは置いてやるというのが従来の入管の方針というふうに承知しております。
○岡田(春)委員 関連して伺います。 今の点は重要なことですが、政治亡命者の扱いについては幾つかの例がある。たとえばタイ国のピブン元首相が日本にいるわけです。これは政治亡命者として扱っているのだろうと思うのですが、それはどうですか。
○伊関政府委員 これはずっとおられるようになっております。ただ、今亡命者ということになりますか、帰ろうと思えば帰られることもできるのじゃないかと思いますが、今はそういうふうなむずかしいあれでなくて、一応本人の御希望でおられる。帰れば帰れるような、旅行もしておられるし、そういう立場じゃないかと思っております。
○岡田(春)委員 現在はともかくとして、その扱い方は、日本側の扱いはそういう扱いで受け入れたわけでしょう。
○伊関政府委員 当時はそうであったと思います。
○岡田(春)委員 台湾の場合にもそれと同じような扱いをしている例がありますね、廖文毅の場合。こういう例もあるわけですから、外務大臣は就任早大なんで一つ御研究を願いたいと思うのですけれども、台湾やあるいはタイ国の場合においては政治亡命者としてそういう扱い方がある。南朝鮮の場合には政治亡命者としての扱い方は当然それと同じような扱い方をすべきものである、そういうようにやはり考慮すべきものであると考えますが、この点は外務大臣いかがですか。
○大平国務大臣 よく研究さしていただきます。
○岡田(春)委員 それは外交上の原則であって、ほかの国に対して政治亡命者として扱っている場合に、あなた、研究されるということになると、そうでない場合もあるということになるわけでしょうが、南朝鮮の場合においても、そういう同じようなケースがあった場合には、そのほかの国と同じような扱いをするのは当然であろうと思うのですが、その点はどうでございますか。これは一般的な問題として。
○大平国務大臣 公平にやりたいと思います。
○岡田(春)委員 公平にやるというのは、第三国と同じような方針でやっていくのだ、こういうようにわれわれ解釈してよろしゅうございますか。
○大平国務大臣 それは当然なことだと思います。
○細迫委員 李承晩ライン問題も同時解決の方針だということを聞いて、さらに漁村の人々が問題にしておることについてお尋ねしたいのです。 同時解決といえば、もう九月中ごろには大体の見通しが立てられなくてはならぬような時間的な事情にあるわけですから、そろそろその構想も築き上げておられると思うのです。そこで、その構想の大体をお尋ねしたいのですが、漁業の問題、李承晩ラインの問題についてこういうことが伝わっておるのです。あの海域に日韓合弁の漁業会社を設立してこれにやらすのだ、そこに解決点を求めるのだという考えが動いておるように伝えられるのです。そういう説があることを知っておりますが、これはほんとうでしょうか、その他どういう方式が構想せられておりますか、お尋ねしたいと思います。
○大平国務大臣 交渉の初期におきましては李承晩ラインというものを前提にして対処されておったようでございますが、現在では、やはり漁業協定を結ぶということを前提にいたしまして、資源論等相当煮詰まった議論がされておるように私は伺っております。今御指摘の日韓合弁会社をつくるというような構想は全然聞いておりません。
○川上委員 関連して一つだけ。 漁業協定の御答弁がありましたが、この漁業協定を結ぶ場合に、前の外務委員会で前の外相のときの御答弁では、この漁業協定をする海域は韓国の海域、三十八度線以南の海域に限るという答弁になっておったと思うのですが、それはやはりその通りでありますかどうか。それで、同じように、つけ加えてもう一つだけ聞きますが、財産請求権の問題、それについては今後もするのだろうが、交渉するのは三十八度線以南の問題に限るかどうか。その二つだけ。つまり、言いかえれば、すべての交渉、協定妥結というものは韓国の領土と韓国の海域に限るかどうか。この意味わかりますか。 同時に、韓国の憲法では、朝鮮半島並びにこれに付属する諸島嶼と書いてあるので、ここの関係はどうなるのですか。 漁業協定その他の問題について、この点をあらためて外務大臣のお考えを一口だけでもよいですから承りたい。
○大平国務大臣 前の大臣の答弁があったようでございますので、その経緯も含めてアジア局長の方から答弁させていただきます。
○伊関政府委員 請求権の問題につきましてまずお答えいたします。請求権の問題につきましては、日本が放棄いたしましたのは、これは南に限られておるという事実が一つございます。そういう事実も考慮に入れまして、現実に韓国の実際の支配が北に及んでおらないということも考慮に入れて考えております。 それから、漁業の問題につきましては、現実の問題といたしまして、今度の漁業協定で規制いたします区域は、現実の利害関係からいたしまして、実際問題として北に及んでおりません。ですから、そういう問題は生じないと思っております。 それから、韓国憲法につきましては、これは特に今のところ問題になるものは今度の交渉においては出てこないと思っております。
○川上委員 委員長、もう一つ。 それでは、韓国の憲法を日本政府は尊重して認めて交渉をしておるのですか、韓国憲法第四条の、韓国の領土は朝鮮半島並びにこれに付属する諸島嶼とあるのを認めないで交渉しておられるのですか。ここはあいまいですから……。
○伊関政府委員 そういう問題に触れませんで、韓国政府というものは、一九四八年の第三回総会における国連決議にうたわれているような意味の政権、韓国政府というふうに考えておるわけでありまして、現実的に処理するというのは、そういう憲法論等に触れなくとも処理できると考えておるわけであります。
○川上委員 関連だから悪いのですけれども、それはちょっとえらい答弁です。国連が認めておるのは、これをわれわれが認めるか認めぬかは別ですけれども、朝鮮における選挙においてつくられた民主的な合法的な政権とある。国家とはない。ところが、韓国の憲法には、領土は朝鮮半島並びにこれにくっついておる島々とあるのです。国交を云々するのに、相手の憲法に規定した領土の問題を眼中に置かないで、それに触れないでというような国交の話し合いというものはないと思うのです。ここがはっきりしませんと、請求権にしても漁業協定にしましても、どこのことをやるのだということになった時分に、これはどうなるか。
○伊関政府委員 私が申し上げておりますのは、韓国の政府はどういう政府であるかという点につきましては、国連の決議の通りに考えておるということでございます。それから、こういう憲法という、憲法問題等がございましょうが、そういう問題には触れなくとも現実的に解決できる、こう申し上げておるわけであります。
○安藤委員長代理 森島守人君。
○森島委員 時間が非常に制限されていますから、一、二問補足的な意味で質問させていただきたいと思います。 第一に私がお聞きしたいのは、昨日から始まっておる交渉は、予備交渉の段階であるか、あるいは正式交渉の段階に入っておるのですか、この点を明確にしていただきたいと思います。
○大平国務大臣 予備交渉であると心得ております。
○森島委員 それでは、私がもう一つお伺いしたいのは、七月十九日の新内閣成立後の首相の第一回の新聞記者会見において、池田さんは、日韓交渉を始めるについては韓国に日本の代表部を置くことが必要である、日本も積極的にやらなければならぬが、韓国も積極的にやってほしいということで、代表部を置くことが必要だということを明言されております。これはどの新聞にも一様に出ておりますが、これは今度の交渉にあたってどうなっておりますか。予備交渉でもよろしいのですが、交渉にあたって、首相がこう国民に対して明言しています以上は、第一に取り上ぐべき問題ではないかと思いますが、その点はいかがお取り計らいになったか、明確にお答え願いたいと思います。
○大平国務大臣 当然予備折衝において取り上ぐべき問題だと心得ております。
○森島委員 いや、取り上ぐべき問題だとおっしゃるのはわかります。しかし、交渉に入る以上、首相がこう態度を明確にしておられる以上は、第一に私は取り上ぐべき問題じゃないかと思うのですが、すでに具体的に提案をされたかどうか、それから、持ち出すべき問題とおっしゃるならば、一体いつお出しになるか、この点を私は明確に外務大臣から御答弁を願いたい。
○大平国務大臣 交渉の過程におきまして取り上げて参りたいと思います。
○森島委員 じゃ、必ずお取り上げになる問題と私は理解しておきます。 次にお聞きしたいのは、総理大臣の演説から見ましても、この際日韓会談を特に取り急ぐ積極的な理由を私は演説の中で見出すことはできない。ただ単に、「日韓両国が、いまだに正常な国交関係に恵まれないことは、両国民の不幸であり、隣り合う両国にとってきわめて不自然なことでもあります。政府としては、両国間に横たわる諸問題の合理的、現実的な解決を通じて、すみやかに国交の正常化をはかるため、」と、こうあるだけでございまして、これは、十何年やっておることで、政府としては国交の正常化を目ざしておやりになっておることはだれも了解いたしますが、特にこの際、外務大臣の渡米を前にして、あるいは九月のころにどうするとか新聞に伝えられておりますが、これは私は確かなことは知りませんけれども、特にこの際日韓交渉を取り急いでおやりになるという必要がどこにあるかということを明確に御答弁願いたいと思います。
○大平国務大臣 先ほど細迫先生の御質問にもお答え申し上げました通り、特に急いでおるというわけじゃないので、長い間の懸案でございますので、むしろおそきに失しているんだということでございます。この際特に急に急いで云々というような気持ではないわけです。長い懸案でございますので、でき得べくんば早く解決したいと思っているのです。
○森島委員 御趣旨は私よくわかります。政府としてなるべく早くやりたいとおっしゃるのも、私は政府の立場としてはわかると思います。 ただ、その次に端的にお聞きしたいのは、穗積委員との間の質疑応答で明瞭を欠いておった点があります。池田・朴両氏間の了解で、法的根拠のある、しかも事実に合致した個人的請求権に限るんだという、請求権に関して両首脳の間で明確な了解ができたと思っておりますが、今度はこの点がきわめて不明確なことは穗積委員から指摘した通りであります。私は、端的に言えば、池田・朴の両氏間の了解を放棄したものと解釈しなければ、これは事実に合致しないと思うのですが、外務大臣としては中に引っくるめたとかなんとかいう御説明のようだったのですが、これは、私は、端的に言って、前の了解を放棄したものだ、そうして新しい基礎において何らかの工夫をするんだ、前の会談の了解は放棄したものと解釈しておりますが、その通りでよろしゅうございますかどうですか。
○大平国務大臣 池田・朴会談におきましては、国交の正常化をすみやかにやるべく双方努力しようじゃないかということと、請求権につきましては法律的根拠のあるものに限ろうじゃないかというような趣旨が了解されたものと思います。私はその限りにおいてそれに違反をいたしておるつもりはございません。ただ、請求権の積み上げという格好においてなかなか進展を見ないので、何か工夫をこらしたらどうだという点で考慮はいたしておるのでございます。
○森島委員 時間がございませんのでまたの機会に譲りまして、もう一問か二問だけ御質問したいと思うのです。 隣合っておる両国関係の国交正常化をはかるということならば、なぜ政府はもう一つ思い切っていわゆる中華人民共和国との関係について積極的な態度をおとりにならなかったか。これは演説にも触れておりません。しかし、池田さんは、今回ではありませんが、総理になられたあとの第一回の演説において、国会において明確に言っておるのであります。中国の問題について、接触をなすべき時期に来ておるのだということを、池田さんは明確に言っております。その後、私は大平さんの罪とは言いません、小坂さんの時代にも、中共に対しては何らか接触の試みをなさったことがあるかないか、私はないと思うのですが、この点も明確にお答えを願い、外務大臣としても、今後中共の問題と真剣にお取り組みになる時期に達しておるのじゃないか、こう思いますので、この点に対する御見解をお漏らし願いたいと思います。
○大平国務大臣 中国問題に接近する時期であるという趣旨のことを、去年の通常国会の冒頭で総理の演説にうたわれたことは、よく承知をいたしおります一この接近という意味は、ハイカラな言葉で言えばアプローチという意味でございましょう。中国問題について、これはさわらないのだというような態度ではなくて、政府としては鋭意検討を重ねていかなければならぬという性質のものだと心得まして、われわれの政府は、去年もずいぶん勉強さしていただいたわけでございます。その過程を通じまして、中国の問題というのは、日本と中国との間で片づけられるような問題と申しますよりは、もっと根の深い、もっと広い世界的な規模の問題であるという認識になりまして、去年の国連における態度もあのようにきめたわけでございます。その後国際情勢の大きな異変がない限りは、今の態度で私どもは参りたいと考えております。
○森島委員 国連代表権の問題とごっちゃにしてお話しになりましたが、私から見ますと、中国との接触、いわゆるアプローチの問題は、国連代表権の問題とそう結びつけなくても、日本の自主的な独立した判断からやる道は十分あると思うのです。先ほど、日中貿易の問題についても、あるいは第三国銀行の保証云々の問題も出ましたが、日本がもっと真剣に取り組んで、国連へ加盟するとか加盟しないとかいう問題とは別個に、日中両国間の特殊な関係、中共の問題が極東の平和、ひいては世界の平和に大きな影響を持っておる点等をお考えになって、二年間もたっておるのですから、もっと具体的にことしはやるべきものだと私は思うのです。何としても私は池田内閣の怠慢だと思うのです。国連の問題を別にして、具体的に中共との貿易を促進する問題、これは今穗積委員も細迫君も触れられましたが、国交回復の問題にまで突っ込んでおやりになる覚悟はないかどうか。私はこれは大平外務大臣の在任中の非常に大きな仕事だと思うのです。この点についてもお考えをお漏らし願えればけっこうだと思います。
○大平国務大臣 与えられた条件のもとにおきまして、可能なことはやるべきだと思います。先ほど穂積先生の御質問にもございましたが、中共貿易の問題につきましても、どこまで前進が可能なものかということにつきましても、今積極的な検討を加えておるわけでございます。
○森島委員 検討を加えられるだけでなしに、私は具体的に動いてほしいと思うのです。二年間は相当長い期間ですから。池田さんは、ほかの機会の答弁において、政府間協定に踏み切れないのは中共を承認する結果になるからだという御答弁をなさっております。これは外務大臣も御承知だと思いますが、私たちの見解からいたしますと、国家承認の問題と政府間協定は、必ずしも同じものじゃない、日本の独自の立場から、日本が独自の解釈をしてやる余地は十分あると思う。きょうは私は詳しくは触れませんけれども、外務大臣の初めての仕事は、日韓問題ばかりでなしに、日中問題にも一つ大きく踏み込んでいただきたいということを私要望しておきますが、これに対するお考えでもありましたら、御答弁願えればけっこうです。
○大平国務大臣 森島先生の示唆されたところをよく承って、私どももさらに勉強してみたいと思います。
○森島委員 それでは、時間もありませんから、私の質問はこの程度でやめておきます。
○安藤委員長代理 戸叶里子君。
○戸叶委員 私は、日韓問題につきましては、すでに穗積委員からいろいろお聞きになりましたので、多くを伺いません。ただ、伺っておりまして理解できなかった点が二点ほどございますので、その点だけを外務大臣に伺っておきたいと思います。 さっき、穗積委員の御質問に答えられまして、在来の懸案であった漁業問題とか、竹島の問題、李ラインの問題等を解決した上で国交の正常化をするのだというふうなことをおっしゃったわけでございます。これは今までの考え方と変わりはない、こういうふうにおっしゃっていたわけでありますが、そこで、もう一つの問題は、共同宣言方式というようなこともあり得るように私は伺ったわけでございます。共同宣言方式というものと条約を結ぶということとの違いは一体どこにあるのかわからなくなったものですから、この点をはっきりさせていただきたいと思いまして、お伺いいたします。
○大平国務大臣 いろいろな懸案が解決されました姿を見まして、どういう形式のものにするかという点は考えるべきだと思っておるわけで、私どもは共同宣言方式をとるときめたわけでは決してないのでございます。
○戸叶委員 それでは、お伺いいたしますけれども、いろいろな問題を討議した上で何かの形式をとるということでございますが、いろいろな問題を解決した場合には、共同宣言方式ということはとらなくても、条約を結ぶという形でも変わりないじゃないですか。違いますか。
○大平国務大臣 でき上がった格好を見まして考えるべきものだと思っております。
○戸叶委員 それでは、原則的に言いまして、共同宣言方式と、それから条約との違いは、どういうところにあるのでしょうか。これは事務当局でもけっこうです。
○中川政府委員 共同宣言という場合に、どういう内容のことをそれに盛るか、これは前例から言いましても必ずしも一つではないようでございます。日本として一番関係のある共同宣言といえば日ソ共同宣言でございます。これは、内容から言えば、まさしく条約と実は同じことを書いておりまして、暫定的な取りきめであるという点で多少いわゆる平和条約と違う点はありますが、内容は条約と変わらないわけでございます。一方、たとえばカイロ宣言というようなものは、これは一種の共同宣言でございますが、これは、条約ではなくて、各国の共通の政策をそこに書いて宣言したということになっておるのでございまして、こういうものであればむしろこれは条約ではない。いろいろの内容があるわけでございましてへ従って、条約と共同宣言はどこが違うかということも、一律には言えない。その内容によって見なければならないと思います。
○戸叶委員 それはそうですけれども、大体において、共同宣言というような場合には、何かまだそこに懸案条項が残っているような場合に共同宣言方式をとるんじゃないかと思うのです。今度の場合に、いろいろなことを討議した上で、共同宣言方式にするかあるいは条約にするかはまだこれからであるというようなことをおっしゃるわけでございますが、それでは、ここで念のために伺っておきますが、もしも共同宣言方式をおとりになったときには何かの条項をそこに保留した場合であると、こういうふうに了解してもよろしゅうございますか。
○大平国務大臣 いろいろな問題の妥結の姿を見て考えるべきものだと思います。
○戸叶委員 ちょっとわかったようなわからないようなことなんです。私には結論的にはわかりません。妥結の方法を見ておやりになるという。じゃ、もう一度伺いたいんですけれども、もしも何か懸案条項が残っていたらやはり共同宣言方式をおとりになるわけでございますね。全部の問題が解決したら条約の方式をとる、しかし、何かそこに全部妥結しないような問題があれば共同宣言方式をとることもあり得る、こういうふうに了解してよろしゅうございましょうか。
○大平国務大臣 何か条項が残りました場合にどういう形式がいいかという点につきましては、私の国際法的な知識では今答えられませんで、これはその段階で専門家に寄ってもらって妥当な方式を考えるべきだと思います。
○戸叶委員 外務大臣、そういうことを伺っているんじゃないのです。今条約局長から共同宣言方式というようなものは大体こういうようなもので、条約は大体こういうようなものだということを、日ソ共同宣言の例をとってお示し願ったわけなんです。日ソ共同宣言の場合にも、形は条約と同じようなものだけれども、そこに保留した問題があるからああいう形をとったんだとおっしゃった。そこで、私が外務大臣に伺っているのは、何か保留したような条項がある場合には共同宣言の方式をおとりになるんですねということを伺っているのであって、別に共同宣言の方式をとるのか条約の方式をとるのかということを伺っているわけじゃないのですから、その点誤解のないようにして答弁をしていただきたい。
○大平国務大臣 その点、私も十分つまびらかにしておりませんが、条約か共同宣言方式かということ、二者択一という問題になるのか、それとも第三の方式があるのか、私が申し上げておるのは、でき上がった姿を一ぺん見て、それにどういうお仕着せを着せるかということを専門家に考えていただいていいんじゃないかと思います。
○戸叶委員 条約局長、今大臣がちょと何か、いろいろ討議していきましてお仕着せを考えるということで、共同宣言とか条約とか第三の方式とか、いろいろなものが出てきたんですけれども、いろいろ国交設定の場合にほかの形が考えられますか。そういうことがあったらちょっと……。
○中川政府委員 これは、外務大臣の言われた通り、いろいろな形があり得ると思うわけでございます。条約あるいは共同宣言というようなこともありましょう。あるいはもっとくだけて交換公文とか共同声明とかいう形もありましょう。やはり、その内容によって、どういうお仕着せを着せるか、そのときに考えるべきだと思います。
○戸叶委員 念のために伺っておきたいんですが、国交設定でも共同声明の形でできますか。
○中川政府委員 普通国交正常化ということは大使を交換することと同じでございます。通常の場合は共同声明というふうなことも何もないわけでございます。そういう点、両国政府間に合意さえあればいいわけであります。
○戸叶委員 そうしますと、合意さえあれば共同宣言という形をとれるわけでございますね。今回の場合は、先ほど外務大臣がおっしゃいましたように、漁業、李ラインその他のいろいろな懸案条項を解決しなければ韓国との間の国交設定をしない、こういうはっきりしたことをおっしゃっておられますから、まさか共同宣言とかそういう形で国交の設定だけをやるということはおやりにならない、こういうふうに了解をしておきたいと思います。よろしゅうございますね。
○大平国務大臣 それも同時に解決すべきものと思っております。
○戸叶委員 もう一つお伺いしたいのは、国連の総会に大臣お出になるようでございますけれども、それ前にめどをつけていきたいというようなことも新聞で拝見しておりますが、そういう御無理をなさるおつもりかどうか、念のために伺っておきます。
○大平国務大臣 相手のあることでございますから、私どもは鋭意誠意をもって対処して参っておるわけでありまして、特に時限を画して云々というような考えはありません。
○戸叶委員 私どもといたしましては、先ほど川上委員が御質問になりましたように、韓国の憲法があるのにもかかわらず、そういうものも別に交渉の対象にはならないからいいのだというような形でやったり、また、財産請求権に対処する問題の解決にいたしましても、在来の考え方と少し変わってこられたようでございますし、また、韓国の方では、日本の提案も、新聞によりますと賛成をしていないようであって、それでもなお追っかけて一生懸命こちらの方から国交設定をしようじゃないかと言っていく姿というものは、何か非常に悲劇のように感ずるわけでありまして、そういうことはどうか十分に慎んでいただきたいということを要望したいと思います。 そこで、私は、実はきょう、栃木県の藤岡に赤麻遊水池というところがありまして、そこに米軍の演習地を持ってこようとする動きがありますが、この点について調達庁長官と外務大臣に詳しく伺いたかったのですが、外務大臣お急ぎのようですから、結論の方だけ外務大臣に伺うことを先にしたいと思っております。 外務大臣は、官房長官のとき、その他を考えまして、今までに日米合同委員会というものにお出になったことがございましょうか。
○大平国務大臣 私は出たことはございません。
○戸叶委員 これから日米合同委員会にお出になることがおありになると思いますので、そのときにどうぞぜひ考えておいていただきたいことは、米軍の演習地というものを赤麻地区に持ってこようとする話が前にも出たようでございまして、また出るかもしれませんので、そのときには、地元が反対しておりますから強く反対をしていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
○大平国務大臣 合同委員会の方は私はメンバーではございませんが、アメリカ局長に伝えておきます。
○戸叶委員 それでは、もう一つ伺いたいのですが、アメリカとの折衝も外務大臣としていろいろおありになると思いますけれども、その場合に、最近のアメリカはもちろん基地というようなものを日本にふやそうという考えはないと私は思いますけれども、基地を日本にもっとふやそうという考えがあるかどうか、あるいはまた、アメリカの演習地を日本にもっとふやそうとする考えがあるかどうか、この点ちょっとお伺いしたいと思います。
○大平国務大臣 戸叶委員も御承知のように、統計を見てみますと、毎年基地は漸減の方向にございます。中には、一方を取りやめて一方に設定するというケースも全然皆無ではございませんけれども、全体として基地は漸減の方向をたどっております。
○戸叶委員 ただ、安保条約のときに審議いたしました基地協定で、アメリカは日本に基地を設定する権利があるわけでございまして、そういうことに対して日本の外務省がやはり強く反対をしていくだけのものを持っていただかなければならないと思いますので、この際外務大臣に強くその点を要望しておきたいと思っております。 あと調達庁の方に私は主として御質問したいと思いますが、岡田委員が今、韓国の憲法の問題でもう二、三点伺いたいとおっしゃいますので、岡田委員の質問が済みましてから、私は赤麻遊水池の問題について質問したいと思っております。
○岡田(春)委員 関連ですから二、三問大平さんに伺いたいのですが、これはあらためてこんなことを言うのはおかしいけれども、今韓国と交渉をやっておるのは、国交回復のために交渉をやっておるわけですね。そうでございましょう。
○大平国務大臣 そうでございます。
○岡田(春)委員 それならば、相手は国として認めているわけなんでしょう。違うのですか。
○大平国務大臣 韓国という存在を尊重してかかっておるわけです。
○岡田(春)委員 それは政府でなくて国でしょう。政府か国かというのは重要な点なんですが。
○大平国務大臣 韓国と心得ております。
○岡田(春)委員 韓国というのは、政府でない、国ですね。条約局長もうしろにいますから、よく……。
○大平国務大臣 そういうめんどうな法理論は一つ条約局長に答弁させます。
○岡田(春)委員 さっきわざわざわかり切ったことを私聞いたのは、国と国とが国交回復するというのは、相手が国だというので回復するのですよ。それなら韓国というものは国でしょう。政府じゃないでしょう。
○大平国務大臣 そうです。
○岡田(春)委員 国ならば、憲法を認めるわけでしょう。どうです。違うのですか。
○大平国務大臣 当然憲法を認めなければいかぬと思います。
○岡田(春)委員 さっき伊関さんは、相手国の憲法の点は考えておらない、国連の決議というものを事実上の問題として考えているのだ、これは便宜上の問題だ、こう言いましたね。便宜上の手続は手続でいいです。しかし、憲法というのは認めないとおっしゃるのか認めるとおっしゃるのか、そこの点はっきりしていただきたいのです。どうなんです。
○大平国務大臣 憲法は認めてかかるべきだと思います。当然のことだと思います。
○岡田(春)委員 憲法をお認めになるならば、三十八度線以北の問題と韓国憲法との問題は、韓国の憲法には全地域ということを書いてあるのですが、この点はどういう関係になっておりますか。
○大平国務大臣 先ほどアジア局長が申しました趣旨は、今度の日韓の間の懸案の解決をはかる場合におきまして、憲法の関連というようなめんどうな問題が出ないで済むのじゃないかという一つの感想を申されたと思うのです。
○岡田(春)委員 感想は感想でいいですが、私、この点非常に重要な点だと思うんですよ。韓国は現実に三十八度線の以北を支配しておらない。その支配しておらない地域を含めて現実に日本が交渉するわけにはいかないということを、大平さんはこの間の予算委員会並びにきょうの答弁でもはっきりしておられるわけだ。この点は非常に重要な点であり、実際国際法の基本になるべき点ですから、この点は日本の立場としてははっきり守っていただかなければならぬと思う。この点ははっきりお守りいただけるのだとわれわれは確信しておりますが、この点はよろしいのでございましょうね。
○大平国務大臣 三十八度線以北に及んでいないという事実を踏まえてやりますということを申し上げているのです。
○岡田(春)委員 ですから、そこの点から言うと、日本の側から言うと憲法はその部分において認められないわけですよ。そうでしょう。向こうは全地域だと言っている。そこで、あなたが何か先ほどから、うまい方法で、こう言ったけれども、うまい方法での構想が出てくるわけです。条約方式ではないということがはっきりわかるわけです。共同宣言方式であろうということになるのですが、共同宣言の中には共同声明も終結宣言もそういうものも一切含めて、条約にあらざる両国間の合意、――それは大使の交換だけで済ませるという道もないわけではないけれども、少なくとも、日韓問題に関しては、これほど懸案事項がある限りにおいて、ただ大使を交換しましょう、それで終わりですというわけにはいきませんから、合意に基づく何らかの文書の交換が行なわれなければならない。これを称して共同宣言方式とわれわれは言うわけです。平和条約のように、領土の画定を行ない、あるいはその他の権利義務の問題を明文上明記するということまでいかないにしても、そういう共同宣言方式をおとりになるのではないかと私たちは言うわけです。 そこで、やはり、一番問題になるのは、あなたがただいまも言明された通りに、韓国は三十八度線以北において現実に支配しておらないのだ、しかも朝鮮民主主義人民共和国というものは現実にあるのだ、この現実の上に立って交渉しない限りにおいては、これは交渉としては意味をなさないし、日本の国としてはそれを認めて交渉するということになりますと、日本の国にとって著しく不利益を招く、このように私たちは考えるわけです。こういう点はきわめて重要でございますので、あらためてここの点をはっきりしておいていただきたい。これは私関連質問ですからもう質問しないために言っておるのですが、交渉の過程において、韓国の憲法を認めるか。ただいまあなたの方で答弁がありましたように、国交回復をするというなら韓国の憲法を認めなければならない。ところが、現実には三十八度線以北には及んでおらないのです。この矛盾に根本的な問題がある。だから、日韓会談はやっちゃいけないというのが私たちの論拠の一つでもあるわけです。そんな無理なことをやると、この矛盾はあとに残りますということを社会党は言っているわけです。だから、南北の統一をやってから問題を解決しろということを言っておるわけです。そういう点の解決にあたっていろいろな矛盾の残らないように、その点は少なくとも国民の納得のいくようにはっきりしていただかなければならないと私どもは思います。先ほどから穂積君も言われておったように、特に池田総理が合理的に解決するとおっしゃったのですから、ただいま私が申し上げた憲法と今の問題との矛盾の問題、これだって合理的に解決していただかなければいけない。そういう点について、一つこの機会に外務大臣の交渉にあたられての確固たる信念と御見解をいただけばけっこうだと思います。私は関連ですからこれ以上申しません。
○大平国務大臣 国民に納得していただけるようにやりたいと思っております。
○戸叶委員 それでは、私は、藤岡にあります赤麻遊水池に米軍の演習場ができるというような問題がこの間から起きておりますので、その問題について質問したいと思います。 御承知のように、赤麻遊水池というのは非常に古い土地でございます。今は建設省の所管の国有地でありますけれども、もとは民有地であって、地元民の反対を押し切ってできたというところに、今日の米軍の演習地にするということに対する強い反対があるということは御存じだと思いますけれども、御存じでございますか。
○沼尻説明員 赤麻遊水池、私たちは渡良瀬川遊水池と呼んでおりますが、地元の反対があるということは承知しております。
○戸叶委員 今私が申し上げましたように、もとは民有地であったのを国有地に強制的にしたという歴史を持っている。しかも、そこに住んでいた人たちが、国有地に強制的にされてしまったものですから、いられなくなって、北海道やら那須やら、あちこちに散らされたという歴史を持っているので、さらに強い反対の気持を持っているということも御存じでございますね。そういう歴史的な背景も御存じでございますね。
○沼尻説明員 そのようなことも存じております。
○戸叶委員 それでは、一体いつごろから米軍の演習地にしようという計画が立てられたのでございますか。
○沼尻説明員 お話しの渡良瀬遊水池の問題は、現在群馬県の太田市に米軍のパラシュートの降下訓練場がございますが、その返還問題との関連において生じた問題でございまして、その経過を簡単に申し上げますと、現在太田市にございますこの米軍訓練場の周囲が、最近相当工場等が誘致され、産業都市として発展しつつあるわけでございますが、この太田小泉飛行場も、首都圏整備法によって工場誘致地帯に指定されているという関係から、この太田市等の地元から、これを産業都市として発展させるためにこの米軍施設を返還してほしい、返還方を米軍側と交渉してほしいというような強い陳情が数年来ございまして、調達庁といたしましては、そういう地元の要望を受けて立ちまして、米側と返還交渉に入ったわけでございますが、米側としては、太田小泉飛行場でやっております降下訓練、これは米側としてはどうしても必要な訓練であるので、この種の訓練は将来とも続けて行なわなければならない、しかし、米側としては、太田小泉飛行場でなければ絶対ならぬということもない、そこで、日本側の方でこれにかわる代替の施設を提供してくれるならば返還に応じてもいいというようなことになりまして、さて、そういう適地をいろいろと調査したわけでございますが、私たちとしては、これは原則として群馬県内からそういう施設を提供してやりたいということでいろいろ調査したわけでございます。これはむろん軍側と一緒になって調査もしたわけでございますが、群馬県内にはそういう適地がなく、結論的には、このお話しの渡良瀬川の遊水池の一部を使わしていただけるならば返還に応じてもいいというようなことになりまして、この問題が生じたわけでございます。
○戸叶委員 それはいつごろからの話でございますか、使わせてもらえたら返還してもいいという話が出たのは。
○沼尻説明員 太田小泉の返還交渉はもう二、三年前から軍側としておるわけでございますが、そういう代替施設を使わしてもらえるなら返還に応じてもいいというような意思表示がはっきりあったのは昨年と覚えております。
○戸叶委員 それはアメリカから調達庁にあったわけですね。
○沼尻説明員 この施設を新しく提供するとか、あるいは返還を受けるとかいうことは、最終的には合同委員会できめられるわけでございますが、そういうふうな施設・区域に関連しまして、合同委員会のもとに施設委員会というのが設けられてございまして、その施設委員会を通じてそういう回答があったわけでございます。
○戸叶委員 アメリカの方では太田の代替地があるならば返還をしてもいいという話をそちらの方で進めていたわけです。ところが、地元はそんなことは何にも知らなかったわけです。それで、突然、参議院の選挙で応援に太田に行ったある議員が、たまたま、御当地の基地は今度栃木県の方に移るようになったから安心しなさいという演説をしたために、栃木県ではびっくりして騒ぎが起きているわけです。こういうふうに、一方からアメリカに陳情をして、そうしてアメリカがそれでは返還してもいいということを調達庁なりあるいは施設委員会に言ってきた場合に、それを地元の意思も無視して施設委員会で受けて、そのままにしておいていいものかどうかということを伺いたい。これはアメリカ局長にも伺いたいと思います。
○沼尻説明員 この問題は、渡良瀬川は現在御承知のように遊水施設ということになっておりまして、治水の面からも重要な役割を果たしておるわけでございまして、そういう面から、渡良瀬川については建設省においても治水計画等があるわけでございまして、渡良瀬川をかりに使わしてもらうとしても、そういう治水計画の面からも十分検討を要する問題でございます。一方、そういう治水計画上支障のない点がきまりました場合におきましても、これを地元の側と十分話し合って、その御理解の上にきめたい、きめなければいけないというふうに私たちは考えておるわけでございます。まだ国として、渡良瀬川のどこが治水計画上そごがないか、そういう点について最終的な結論にも達しておりません。従いまして、地元にもまだ正式に交渉し得るというような段階にないわけでございます。
○戸叶委員 私が伺っておりますのは、二、三年前にそういう話があって、そうして栃木県のこういうところへ持っていったらいいだろうという話があった、そういうふうなことなので、太田に行った某氏が、そこで、今度は栃木県に持っていくようになったのだということを話したので、栃木県に漏れてきたわけです。従って、栃木県の知らないうちに合同委員会なり施設委員会でその話が出ていたとしか解釈されないわけですけれども、この辺のいきさつをはっきりさしていただきたい。もしも何でしたら、一体いつ施設委員会でその話が出たかということを伺いたいと思います。
○沼尻説明員 この施設委員会で正式に話が出ております点は、米側としては、かわりの土地があれば返してもいいということで、このかわりの土地の調査をいろいろ長い間やっておりますが、この渡良瀬川を提供していただければ向こうとしては大へん適当なところだと思うという話がございましたのは、ことしに入ってからでございます。
○戸叶委員 ことしのいつですか。
○沼尻説明員 これは別に文書や何かであったわけではないのでありまして、口頭で、いろいろ調査した結果渡良瀬という話が出ましたのは、ことしの二、三月ごろというふうに私は覚えております。
○戸叶委員 その話が出たときにすぐ栃木県にお話しになりましたか。
○沼尻説明員 これは、先ほども申しましたように、関係各省にも関係いたしますので、栃木県の方には話しておりません。
○戸叶委員 私はそこに問題があると思うのです。栃木県の赤麻地区にかりに米軍の演習地を持ってこようというような計画を一方で立てて、日米合同委員会の施設委員会でもそういうような話をしていて、そうして地元の人は何も知らないで、そのうち進められていく。こんなことが一体許されていいものでしょうか。アメリカ局長、いかがでございますか。そういうような交渉が至るところでやられているのですか。日米合同委員会というのはそういうことをやって、暗黙のうちにそういう協議をして、そうしてあとから何とかかんとか言いながら押しつけていくのが日米合同委員会ですか。
○安藤政府委員 ただいま調達庁の沼尻さんからるる御説明がございましたような経緯でございます。この問題が起こりましたのは、先ほどもお話がございましたように、太田小泉地区が、首都圏整備の関係で、要するにこれが他に移ることが望ましいという状況にあることは事実でございます。これは、施設分科委員会におきまして、先ほども説明がありましたように、米側にこれが返還方を要求したわけであります。米側としては、代替地があるならば返還に応じてよろしい、そういうことが施設委員会で言われたわけでございます。この代替地というのは、御承知の通り、なかなかむずかしいのでございます。調達庁におかれましてもいろいろ研究され、調査され、また、これには関係各省いろいろな関係もございます。従いまして、こういった問題につきましては、たとえば今回の場合遊水場の問題でございますれば、遊水場の目的を阻害しないような地点とか、あるいは候補地とか、そういった点、あるいはそれを置きますについても最小限度の範囲にとどめたいというような点とか、そういった点について、まだまだ政府部内におきましてもいろいろ検討あるいは調査する余地もございますし、その点もやっているわけでございます。従いまして、これはこうだといってまだ地元にお話しいたす段階に至っていないということも事実でございます。ただ、しかし、先ほどもお話にございましたように、こういったような施設を提供する場合に、十分地元の方ともお話し合いをし、御納得を得てやるようにしておることは、御承知の通りと思います。
○戸叶委員 地元と話し合っていないから問題があるのです。私は、大体、合同委員会で候補地あるいは代替地としてきめるような話が出たらば、出ようとする前にその地元に話をするのがあたりまえじゃないかと思います。その候補地に黙っておいて話を進めていくというのはおかしいじゃないかと思います。
○安藤政府委員 先ほどの御説明で御了解を得ましたと思いますが、まだ、この合同委員会あるいは下部の施設委員会においてすら、これこれの地域を代替地としてどうだという正式な話があるわけではございません。ただ、米側と非公式にいろいろ研究調査とかをやっておることは事実でございます。また、この地点につきまして、関係各省、これは建設省等もございますが、いろいろ検討しているというのが事実でございます。
○戸叶委員 そうしますと、施設委員会ではまだ栃木県の赤麻地区に持ってくるかもしれないということさえも出てこないわけなんですね。今の安藤さんのお話では、まだどこへ持っていくかもわからないとおっしゃる。しかし、調達庁の方では、ここいら辺がいいじゃないかという話が非公式に出たという話です。一体どちらがほんとうですか。
○安藤政府委員 私が申し上げたのは、施設委員会に正式に、――委員会というのは正式の会議でございます。これこれの地域を代替地として提供したいというようなことはまだ出しておりませんということです。ただ、調達庁と米軍の間にいろいろ折衝されまして、大体こういったところならよさそうだというので、それに関連しまして関係各省とも協議していろいろ検討してこられたということもまた事実でございます。それを申し上げておるわけであります。
○戸叶委員 正式にお話ししてないことはわかりました。ただ、非公式に調達庁と米軍との間に話をする場合に、大体この辺ならよろしいでしょうと非公式ながら話をする場合に、日米合同委員会というのは、その地元に大体のことも聞かないで、ここならいいでしょうというようなことで話を進めるものなんですか。
○沼尻説明員 まだ、施設委員会において、お話しの渡良瀬川の遊水池を、日米双方でここをというふうに決定的な話をして臨んでいるわけではございません一ただ、米側の方から、いろいろ調査したけれどもなかなか適当なところが見当たらない、渡良瀬川の遊水池のあの一部が使わせてもらえたら米側としては望ましいということでござ います。
○戸叶委員 米側として望ましいというような声が出たら、すぐに地元に之を知らして、そうして協議をすべきではないかというふうに私は、考えるわけです。ところが、地元にはそのままにしておきながら、よそではどんどんその話を進めていたのではないかということがうかがわれるわけです。なぜならば、群馬県の知事が記者会見におきまして、「太田の移転先を赤麻遊水池にすることは日米合同委の約束なので、調達庁も近く栃木県側に飛行場が設けられても実害ないとの資料かそえて説得にのり込むだろう」ということを公式の会見でおっしゃっているわけです。これを読みますと、私どもから見ますと、何かやはり知事は根拠があってそういうことをおっしゃったのだと思う。日米合同委員会で約束をしたということをここに言っているのと、それから、そのあとで、調達庁は栃木県に飛行場が設けられても実害がないから近くそれを説得するのだというようなことを言っておられますけれども、飛行場を設けて実害がないというふうな根拠は一体どこにあるのでしょうか。その二つの点をはっきりさせていただきたい。
○沼尻説明員 まだ地元に正式にも非公式にも話しておりませんのは、渡良瀬川遊水池といっても、御承知のように大へん広い地域でございます。治水計画上この広い区域のうちどこが支障がないのかということを政府部内で見当づけないままに、渡良瀬川のどこかを使うかもしれぬというようなことは、ただ地元を騒がせることになるので、そういう点についていま少し政府部内ではっきり検討してからでなければ地元には話せない段階ではないかということで、まだ地元には話していない状況でございます。
○戸叶委員 そうしますと、この群馬県知事のおっしゃったのは間違いであるというふうに認めてよろしゅうございますね。
○安藤政府委員 合同委員会では決定していないことは、先ほど申し上げた通りでございます。
○戸叶委員 広い地区ということも私は知っております。これは栃木県、群馬県、埼玉県、茨城県にまたがっている土地でございます。その四県がそろって反対をして反対期成同盟をつくっているところでございます。従って、そういうことを無視して合同委員会で進められるということは、私はおかしいと思うので、もしもその一部分にしましても、この辺がいいのではないかということが出ましたら、さっそく、栃木県なり、群馬県なり、あるいは埼玉県、茨城県の関係各県と相談をすべきであると思いますけれども、この点はいかがでございますか。
○沼尻説明員 そういう段階に至りましたら、私たちとしては当然地元に相談するということを考えております。
○戸叶委員 そういう段取りに今後においてはしていただきたいのですけれども、今のところ、栃木県も、それから四県の期成同盟の人たちも、絶対反対の立場をとっておりますので、その辺も御承知置き願いたいと思いますが、この反対というようなものを押し切ってもなお合同委員会においてそれを演習場に決定するような御意思があるかどうか、この点も伺いたい。はっきりさせておいていただきませんと、地元の人たちが非常に心配いたしておりますので、念のためにお伺いしておきたいと思います。
○沼尻説明員 この問題は、太田小泉飛行場の返還ということと深い結びつきを持っているわけでございまして、私たちとしては、別にこれが提供されることによって基地が従来よりふえるというようなことにはならないと思うわけでございます。そういう点から、将来遊水池の一部に適当なところがございましたら、そういう点地元の方々の御了解を得て進めたい。ただ地元の反対が強いままにこれを押し切ってやるということは、現在においては考えておりません。
○戸叶委員 さっき外務大臣も、基地はだんだんに減る傾向にあるし、演習場もそれほどふえないということははっきりおっしゃったわけです。そこで、私は、基地がふえるとか減るとか、数がどうなるとかいう問題を伺っているわけじゃございません。ただ、この代替地としてどこかに持っていかなければならないと言われたときに、栃木県を選んだ、しかも、地元の人たちが反対しているにもかかわらず、暗黙のうちにその話を進めつつあったというところに非常に問題があると思うのです。 そこで、アメリカ局長にちょっと伺っておきたいのですが、今まで、合同委員会に対して基地であったところの返還の要求をして、代替地があるならば返還をしてあげるという返事があった場合に、必ず日本として代替地を出さなければならないのかどうか。これを断わることはできないのですか。
○安藤政府委員 その基地がどうしても米軍のために必要な場合、米軍が、どうしても代替地がほしい、代替地があれば移転にやぶさかではないという場合に、たとえば今の太田小泉の例をとりまするならば、これは工業地帯あるいは首都圏整備というような関係で、できればもっと人里離れたところの方が望ましい、これは常識でもございますが、そういうところがあれば移転した方が全般の立場から見て有益であるということは、一般論として言えるわけであります。もしその代替地がなければ、仕方がございません。現在のままでやる以外に方法はないわけであります。しかし、一方、太田小泉の方におきましても、これは御存じのように群馬県でございますが、群馬県の方でも、やはりこういった首都圏整備の関係で何とかならぬものかという一方の声があります。私たちとしましたならば、できることならば、より人里離れたところにそういうのがあれば、そして地元の御了解も得られるならば、何とかそういう方向に持っていきたいということは当然でございます。ただ、しかし、代替地を要求されたから必ず代替地を出さなければならないというふうには一がいには言えないと思います。
○戸叶委員 それならば、代替地を出さなくても太田の返還をしてもいいというような余裕は日米合同委員会の中にあるようにも思いますが、代替地を出さなければ太田にそのまま置かなければならないという性質のものですか。
○安藤政府委員 この点につきまして、私、プライス少将とも実はじっくり個人的にも話してみました。やはり、米軍側としては、パラシュート投下訓練、――これは飛行場と申しますけれども実際は主として荷物のパラシュートによる投下をやっておるわけであります。私、行ったことはございませんけれども、話に聞きますと、何か砂袋をパラシュートでおろす、そういった訓練をやっておるということでございまして、そういったことはぜひともやはり米軍の技術の維持のために必要だという点、これは私たちも認めざるを得ません。従いまして、この太田小泉も取り上げてしまう、他に代替地もやらぬというわけにも参りませんので、やはり、私たちとしては、代替地を見つけて移転ができるならば、そのようにはかりたいということでございます。
○戸叶委員 太田小泉地区の方々の反対も私よくわかりますけれども、それと同時に、赤麻地区の人たち、つまりこれは四県六市町村にわたる地域の方々、その付近の方々も強い反対をしているということもどうぞ御承知おき願いたいと思います。しかも、その反対の理由というのは、国有地の遊水池というのは、水防上の必要上つくられたというのが第一点であり、第二点は、周辺には教育施設、官公庁、工場があって、非常に影響が大きいということ、第三は、遊水池から出るヨシとか飼料、漁業の収入が年二億円に上って、住民の生活とか市町村の財政上寄与することが多いということ、それから、遊水池の改良によって農業団地または工業団地の実現が非常に期待されている、飛行場の爆音などが畜産面に影響を与えるのみでなく、人心を非常に撹乱させる可能性があるということ。そこで、工業団地、農業団地として理想的なものをつくろうとする動きがもうすでに出ておりまして、建設省あたりではその計画を進めているわけでございます。従って、私の伺うところによりますと、次官会議において建設次官は強く反対をしたということを聞いております。すでにそういうふうな計画を進めておるときに、しかも地元が大きく団結して反対しておるときに、無理やりにそこへ押し込んでいって基地をつくるというようなことは、絶対にしていただきたくないと思います。この点念のためにもう一度伺いたいと思います。私がなぜそういうことを申し上げるかといいますと、実はけしからぬことがありました、それは、八月一日に、地元には何にも言わないで、県庁にも一言も言わないで、米軍関係者がジープとヘリコプターに分乗して視察に来たそうです。しかも、ヘリフプターには米軍が八人乗って、ジープには三人の調達庁の役人が乗っていたそうです。ところが、地元の人たちの強い反対にあって間もなく帰ってしまわれたそうでありますけれども、そういうことも非常に不安な感じを与えておるわけであります。地元の納得のいかないうちにこういうふうな調査は絶対にしていただきたくないと思いますが、この点の御決意のほどを調達庁長官にかわって伺いたいと思います。
○沼尻説明員 渡良瀬遊水池に太田小泉飛行場の訓練場を移すという問題は、経済効用の高い土地を返還させるために、より低い土地を提供してもらうというようなことと関連して、これが群馬県の同じ県内であるならば大へんスムーズに進むような性格のものであろうと存じておるわけでございます。たとえば、こういう例は、横浜あたりにある米軍施設を、横浜市内にあるのはまずいから郊外の方に移すというようなことで、そういう一カ所にある米軍施設を他の個所に移すということは、米側の要請というよりも、日本側の要請でしばしば行なわれておるところであります。従いまして、これが同じ群馬県内だというと、問題は割合に複雑化しなかったのだろうと思いますが、県が異なるためにこのような問題になっておるわけであります。これは日本全体の立場から見てどうあるべきかというようなことから考えていただかなければならない問題であります。しかし、地元としては、そういうよその県の肩がわりを私のところがやるのはいやだというような、そういう県民感情というものも相当強くあることも私たち十分承知しております。いずれにいたしましても、この太田小泉飛行場をどのような形で返還させるかというような点から私たちは考えて、検討しておるわけでございます。そういった点から、今後渡良瀬川等も建設省の治水計画とかいろいろのものもございますので、そういった点から、政府部内においても十分検討して、適当なところがあった場合に、実施する場合においても地元の十分深い理解のもとにやっていかなければならないというふうに考えております。
○戸叶委員 よその県から栃木県に肩がわりされることに対して反対だということをおっしゃったのですが、そんなことはない。栃木県自体そういう飛行場を持ってくることに反対ですから、そのことを誤解のないようにしていただきたい。そんな感情的なものでないということを私は最初に申し上げたつもりです。 それから、さっき申し上げましたように、地元にも黙って、地元が納得しないにもかかわずら、ヘリコプターやジープでもって乗り込んで勝手に調査をするということは絶対にしないということをここで約束していただきたいと思いますが、よろしゅうございますね。――それから、強い反対があるのだ、しかも四県にまたがって強く反対しておる、県議会においても町議会においても決議案が通っておるんだということも勘案していただきたいし、そういうことを銘記して、やたらな行動をしていただきたくないと思いますので、この点の御決意のほどを伺いまして、私の質問を打ち切りたいと思います。
○沼尻説明員 十分注意してやっていきたいと思います。
○安藤委員長代理 帆足計君。
○帆足委員 ただいままで日韓会談につきましていろいろの御議論を承りましたが、私は、外交というものは、双方において、よき思い、よき行ないが裏づけになっていなければ、なかなか急ごしらえでは困難なことであろうと思っております。日本と韓国の間では、よき思い、よき行ないが双方ともに少なかったように思うのです。どこの国に対してもそうでありますが、たとえば朝鮮人民民主主義共和国に対しましても、私どもはやはり、よき思い、よき行ないをもって努力するならば、また将来の外交上日本の国益に寄与するところあらんと、外交委員として考えておるわけであります。幸いにして与党の諸君もその趣旨を御了解下さいまして、朝鮮人帰国のことにつきましては、やや困難はありますけれども、そのつど円満な解決を見、大きな実績を見つつありますことは、御同慶の至りでありまして、当初この問題が取り上げられましたときに、内閣調査室あたりの諸公は、まあ三千人ぐらい朝鮮に帰ったらよほど事業としてはスムーズにいった方ではあるまいかというお話もあり、また、当委員会におきましても、三万人をこえたら山本君、帆足君にもごちそうしてあげようというような委員長並びに同僚諸君の御激励の言葉もあったのですが、まだごちそうをしていただきませんうちに頂くも八万人に達しました。平時における八万人の人の移動ということは、やはり歴史上大きな仕事でありまして、これに御協力下さったそれぞれ関係の方々、また、特に政府当局の現場の方々の御理解と御苦労に深く感謝する次第でございます。 ただいまちょっと起こっておる問題は、コレラが流行いたしました。ちょうど私が中学一年のころ、朝鮮の平壌でコレラの大流行がありまして、惨たんたる風景でありましたことを記憶しております。そのために、コレラに対しては、私どもが考える以上に朝鮮の諸君は敏感であるようでございまして、波打ちぎわ作戦どころか、コレラの報道を聞いただけで早くも予防措置を講じておるというような状況で、そのため、ただいま赤十字センターで約百九十数名の帰国朝鮮人の諸君がカン詰生活になっておる状況でございます。こういうことを思いますと、一部の政府当局の人がお考えになったように、朝鮮人の帰国も一段落ついたから旅館なども適当なところに泊まればよかろうなどという御議論では、たとえばこういうコレラの問題なんかがあったときに、旅館から追い出しを食ったら路頭に迷うわけであります。幸いにして厚生省当局の御苦労によりまして赤十字センターという人道的宿舎がありまして、そこで行き届いた人道的待遇がなされておりますことは、まことに時宜を得たものであると、私は一そう痛感する次第でございます。 ところで、この宿舎は大体三泊四日滞留ぐらいの見当でできておる諸設備でございますので、こうして滞留時間が長くなって参りますると、自然いろいろ支障が起こりまして、このことはすでに前回インフルエンザ流行のときにもあったことでございますから厚生省当局では御経験のことでございましょうけれども、実情を視察して参りました私どもの代表から注意事項を申して参っておりますので、これを御参考までに差し上げました次第でございます。 その中で、食事につきまして、私は前のときも御注意申し上げたのですけれども、朝鮮と日本との関係は長い歴史の宿命関係にありまして、日本におる在日朝鮮人の諸君は、とにかく歴史的事実としては流離の民として歴史のしわ寄せの中で非常な苦労をしておる民族であることは皆様御承知の通りであります。私どもは自国国民のことに追われて隣邦の友を遇することが十分にできていない状況でありますから、できるだけのことを一つしていただきたい。そういう気持が、請求権の問題とか領海問題において両国の間に不幸なる衝突が起こるというようなことを防ぐ、また、自然な人情としてそういうことを避ける一つのよすがにもなるわけでございますから、わずかばかりの金額を惜しんで、別れるに臨んで朝鮮の友に悪い感情をそれ以上残すようなことのないように、一そう親切な措置を私はお願いしたいと思うのでございます。これは国民の気持だと思うのです。今困っておりますのは、子供連れの者が非常に多いものですから、食事で米が悪くて困っておるのです。私はこれは外米の配給と思っておりましたが、近ごろは日本米に振りかえておるということです。越後は米どころでありまして、新潟の米はまずいはずはないのでございますけれども、帰っていく朝鮮の人たちにせめてうまい地元の越後米でも差し上げて、そして、よい思い出、最後の赤十字センターの日本の米はなかなかおいしかったというふうにでもしてあげたらどうか。金額から言っても数量から言っても大したことはございませんから、一つもう一度お調べ下さいまして、おいしい内地米に切りかえていただいたらいかがでしょうか。 それから、野菜類が不足して、副食物も不足しておると申しております。ただいま幾らの予算かと聞いてみますと、一日、大人百五十円、子供百十円。三日滞在のときならそれでよかろうと思いますけれども、こう滞在期間が長くなりますと、食事だけがただ一つの楽しみということにもなりますので、この前のインフルエンザのときのことも考慮いたしまして、当時は三百人からでありましたけれども、今度はわずか二百名のお客様でありますから、一つ格別の御配慮を願いたいと思います。 それから、なま水を飲んでおるようでございますが、これも麦茶くらいに切りかえていただいた方がよくはなかろうか。入浴は従来一日置きと記憶しておりますけれども、このような暑さで、そして毎日退屈な生活が続くわけですから、毎日入浴したいという申し出が非常に強いのでございます。これは私は不可能なことであるまいと存じますから、この暑さを思いますと、入浴はまことにすがすがしい大和風の習慣でありますから、これもよいことであるまいかと思います。 それから、センターのまわりが御承知のように草ぼうぼうの場所でありますから、長く滞在することになりますと、蚊に刺される、ブヨに刺されるということになりますので、DDTとか適当な薬の散布などもしていただいたらどうであろうか。それから、宿舎の換気扇が故障しておって困る、また、騒音が激しいということも言っておりますから、特に御留意願いたい。 それから、診療所の問題がいつも問題になるのですが、三泊の予定で東京から看護婦さんなりお医者さんが見えますが、まだやはり朝鮮の友に対する一種の偏見があるのでしょうか、また、臨時ですから、つい暑さのために不親切になるのでしょうが、必ずしも十分な感謝の言葉が聞けないような状況でございます。従いまして、病気のときなど、心持も弱くなっておりますときはだれしもそうです。今は外科のお医者さんが来て内科のことをやっておる。一人だけです。しかし、大部分は腹痛などの内科関係だそうでございますが、これも御考慮下さいまして、一つ親切な看護婦さんとお医者さんを御配置下さいますようお願いいたします。 それから、最後に、紙が不足しておるようにも聞いております。こういうことも小さなことですが、中には多少の小づかいを持っておる人もおりますけれども、ほとんど一文なしの、赤貧洗うがごとく、生活保護を受けておったような貧しい人たちも相当数おりますから、その人たちはきょうのちり紙に困っておるということも聞きました。私どもも有志から少し醵金を集めて見舞いをいたそうと存じておりますけれども、すべてが必ずしも裕福な人でございませんから、そういう事情も御賢察の上、適切な御配慮をお願いする次第でございます。 厚生省当局の地元のセンターの方々は、お目にかかりましても大へん理解が厚く、仕事にもなれておりまして、よくして下さっておることは、平素朝鮮の諸君も感謝いたしております。私どももその点感謝いたしておりますが、どうかそれらの点もお取り上げ下さいまして、こういう小さなことでありますが、世界のどこの国に対しても、よき思い、よき行ないをもって進むということが、やがて世界平和の源にもなるわけでありますし、また、私は、アジア局長の、予算上の措置でやはり窮屈で大したこともできないがと言われることもよく理解しておりますけれども、朝鮮と日本との過去の、どちらかといえば悲しみの方が多かったような歴史を振り返ってみますると、この帰国する諸君に対する援助費のごときは幾らの金額でもありません。そういうことにおいて発露された日本国民の友情や政府の手厚い理解というものが、やがて将来外交交渉の問題などが起きましたときによい関係をつくり、またよいムードをつくるいしずえになる次第でございまして、人は平素の行ない、平素の思いがいかに大切であるかということを十分お考え下さいますようにお願いする次第でございます。帰国協力会という機関もありまして、与党、野党の別なく一緒に相談いたしておりますが、これは与党の皆さんもそういう心持とそういうことには御賛成も得ておることでございますから、どうかよろしくお願いをいたします。
○山本(淺)政府委員 大へん御親切な御注意をいただきまして、私ども、もともと、新潟におきます送出業務につきましては、先生御指摘のように、よき思い出を持って日本を去ってもらうような気持で運営してきたのでございますが、何分にも三泊四日といったような短時日滞在する建前になっておりますので、今回のような不測の事態になりまして比較的長期に御滞在願わなければならぬというような事態に対応いたしました現実の施策の改定が要ることは当然でございます。ただいま具体的に御指摘がございましたが、たとえば、医師、看護婦の増員、あるいは環境の整備、入浴の毎日の実施、あるいは麦茶の提供といったような点につきましては、さっそく、ただいま御指摘のような内容に切りかえまして、おそらく御満足いただけることと存じます。なお、食事、日用品等につきましても、ただいまの御趣旨に沿った改善をいたしておりますが、何分にも、米は、私ども国民全体が食糧管理のもとにあるわけでございまして、なかんずく私どもの食事には外米が入っておりますが、そういう点も、いわゆる内地米の徳用米といったものに切りかえて、若干一般の国民よりはよくなっておるところでございますけれども、そうした配給の基本にわたるような点につきましては、なおただいま越後米を配給してやったらどうかという具体的な提案もございましたので、よく検討いたしたいと思います。 いずれにいたしましても、ただいま御注意いただきましたような諸点につきましてはほとんど解決しておると存じますが、その他運営全般にわたりまして、ただいま御指摘の精神で十分やっていきたい、かように考えております。
○帆足委員 それで、私も数日内に現地の方にも一度見舞いに参りますから、この前の改善措置に対して若干のきわめて控え目な希望が出ておりましたから、そういう謙虚なる希望に対しては十分報いますように、若干のことを追加していただきますようにお願いいたしまして、参りますまでに解決がついておりますとまことに好都合でございますから、よろしくお願いいたします。
○安藤委員長代理 本日はこれにて散会いたします。 午後一時十五分散会