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40回国会参議院1962/04/12

法務委員会 第20号

発言数
144
登壇者
9
会派数
3
開催日
1962/04/12

会議録

松野孝一自由民主党

○委員長(松野孝一君) ただいまから、法務委員会を開会いたします。  まず、千葉信君外一名提出の裁判所職員臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。本法律案は、第三十八国会に提出され、以後継続審査となっております。提案理由説明は、昨年九月十一日に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。発議者千葉信君、高田なほ子君ほか、参議院法制局安達第一部第三課長、最高裁下村事務総長、同じく長井総務局第一課長、法務省司法法制調査部影山参事官が出席しております。  御質疑のおありの方は、順次御発言下さい。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 提案者の千葉さんにお伺い申します。  現行法によりますと、一般国家公務員が人事院に対してなすべき行政措置の要求、それから不利益処分についての審査の請求が、裁判所の職員については最高裁判所に対してなされることになっておりますことは申すまでもないことでございます。この現行法の規定は、国権の三権分立による司法権の特殊性に基づくものであり、かつ、憲法の七十七条一項にいうところの裁判所の内部規定に関する事項について、規定を規則をもって定めることの権限を有すると、こういう趣旨から、一般国家公務員に対しまする場合と裁判所の職員に対する場合とが区別されておるのだろうと思うのであります。提案者は、この現行法は、そういうような裁判所の現在扱っておりますることが、今の憲法に違反するから、それでこのように改正せねばならぬという、こういう根拠をおとりになっておるのか、そうではないのであるか、これを改正を求めるところの法的な、そうした点についての根拠、これをひとつお示し願いたいと、こう思います。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) お答え申し上げます。  憲法上に規定せられている三権分立という建前は、私どもそのまま、今回の場合も、何らそれに対する異議を差しはさむとか、ないしは憲法に違反の疑いがあるという考えに立ってこの改正案を提案しているのではないのでございまして、すでに御承知のとおり、今回提案いたしました裁判所職員臨時措置法の一部を改正する法律案の、この一部を改正する問題は、すでに裁判所職員に対する臨時措置法の制定にあたって、この職員関係の措置については、全く国家公務員法制定の精神に照らし合わせて、裁判そのものに対する三権分立の精神を侵す侵さないの問題とは別に、そこに従事する裁判官及びその秘書官を除く裁判所の職員に対して、国家公務員の場合と同等の規制を設けようとし、本来最高裁職員に対しては特別の立法をもって律すべき筋合いなのでございますが、大体の根拠が国家公務員法の精神を取り入れるものであるという建前に立って、臨時措置法として、この職員に対する身分やその他の条件についての規制を行ない、そして大半のものは国家公務員法を準用するという建前をとっているのでございます。ただ、今回改正法案を提案するに至りました理由というのは、その国家公務員法を準用するとはいいましても、特にその公平審査の関係等につきましては、たとえば、その公平審査に当たる場合も、国家公務員の際には、人事院がその公平審査の責任を持つという建前で、人事院の中に公平審査会が設けられております。御承知のように、国家公務員における人事院というのは、いわば通常の行政機関ないしは行政官の場合と異なった性格を人事院は受けておりますということ、つまり、いわば第三者的な機関としての人事院の立場というものが、その公平審査の場合に適正を期し得られるという考え方に立っておるのでございますが、最高裁の場合におきましては、使用者たる行政官庁と職員の関係における人事院の立場とは違いまして、雇用者たる最高裁判所が、この臨時措置法によりますと、訴訟案件の審査にあたって、使用者が公平審査に当たるという不合理を持つという関係になりまして、したがって、この点からいいますと、国家公務員法の場合のこれを準用したとはいいましても、実質上ははなはだしく相違を持っておりますし、さらにまた、その他の機関、たとえば衆議院でありますとか参議院でありますとか、公平審査の機関を持っておりますけれども、その場合も、いずれもその使用者の場合は排除されるという建前をとっておるのでございまして、したがって、この裁判所職員の場合における公平審査そのものだけが、その審査をする場合のものが使用者であるという、そういう不合理な立場をとっておりますので、その点を改めよう、こういう考え方でございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 御説明の趣旨はよくわかりますが、しかし、一般国家公務員が先ほど申しました要求なり申請なりを人事院にします場合においては、人事院というものは、一般国家公務員から申しますと第三者的立場にある、この説明はよくわかりましたが、しかし、そういえば、人事院の内部におきましても、その従業の職員が先ほど申した要求なりあるいは申請なりをなす場合があろうと存じますが、そういう場合においては、人事院といたしましても、第三者的立場ではなしに、当事者的立場においてやはりこの問題を取り扱わなければならぬ、こういうことになるのではないか。もしそういうことになるものだといたしますれば、裁判所という中における第三者的立場ということが一応見にくい場合におきましても、人事院の第三者的立場でない場合に行なわれるのと同じことが行なわれるのであるとすれば、特に裁判所に限りまして、これは改めねばならぬという強い理由にはならぬのではないかと思いますが、いかがですか。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) お答えいたします。  おっしゃるとおり、最高裁の場合の公平審査が、第三者でないという理由で、それが適正でないということになれば、同様の問題は、井川委員もおっしゃるように、人事院そのものの中にも全く同じケースの問題があると考えなければなりません。したがって、もし国家公務員としての人事院の職員の場合に、その公平審査に関して何らかの問題が起こるようでありますと、私は、その場合も、国会としては法の改正について考慮しなければならない、こう考えております。ですから、井川委員もおっしゃるとおり、同様の事件が人事院にもあるではないかということは、事実は全くそのとおりでございまして、私どもも、将来の問題としては、その点もあわせて考える必要があると、そう思っております。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 御趣旨はわかりましたが、今のお話のうちに、特に今回裁判所関係においてこの改正を試み、人事院の全く同じ立場においては今回それを主張せぬのは、今さしあたっての事件がないからという趣旨のように聞こえましたが、法律は、事件があってから作るべきものではなしに、将来を見通して筋を立ててするべきものだと私は考える。こういうものだといたしますれば、裁判所だけの問題でなしに、もっと広い範囲におきまして、いろいろのものにすべて通ずるような意味合いにおいての考慮をなしてしかるべきではないかと思いますが、いかがですか。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) 私の意見としましては、たとえば、人事院の内部にそういう問題が今まであまりなかったですけれども、将来起こるかもしれないということは、これは当然われわれが予想しなければならない問題でございますが、とりあえず、私どもとしては、従来の経過から見まして、絶えず公平審査に関する問題が生起しておりました最高裁の場合に特に必要を感じまして、今回の措置をとったわけでございますが、私どもも、井川委員の言われるように、この種の問題については、単に最高裁のみに限らず、その他の場合においても、国会としては改正の措置を講ずることのほうが、法律を改正する場合の普遍妥当的な態度ではないかという御意見には同感でございますので、できるだけ早く、そういう最高裁と限らず、他の場合におきましても、法の前には平等であるという考えに立って法の改正の問題を取り上げるつもりでございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 それで、私のお伺いしているのは、その次の段階をお伺いしているんですね。ゆえに、そうだとするならば、今回裁判所の問題だけを抜き出して、他を顧みずして現在はこれを出すということは、ほかのものを置き去りにした姿で、おもしろくないんではないか。だから、もっと広い範囲で、すべてのものが入るような改正か、新しい法律か、そういうことに努力すべきではないか、それをしない理由はどういうのかと、こういうことを聞いて、次の段階を聞いているわけですね。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) 全体としてそういう問題を処理すべきだという御意見には私も賛成でございますが、ただ、御承知のとおりに、それぞれの職場の場合、それぞれ別個な法律を設けておるという現在の状態でございまして、特に裁判所の場合には、職員臨時措置法という状態で立法されている格好でございますので、まあ私ども一ぺんに、この種の一切の問題について、議員立法として私どものほうから提案する場合、実際上おのずから緩急の差がついたということが今回起こったわけでございまして、私ども、将来の問題としては、そういう問題については、他の職員等の場合についても、特に不平等とか、あるいは不利益を生ずるようなことのないように配慮をするつもりでございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 話題を変えまして、現在人事院におきましては、行政措置の要求を受けて取り扱い、それから、不利益処分に対する審査請求も受けて取り扱うことになっておりますが、しかし、その取り扱いは同一の取り扱いではないようでございますね。行政措置要求に対しましては、人事院が原則としてみずから調査をし、判定をする。そうでない場合に、委員会を作るといたしましても、例外的に作るといたしましても、大体におきまして内部の組織でやっておるようでございます。不利益処分に対する審査につきましては、申すまでもなく、公平委員会におきまして調査をさしておる。そして裁決は人事院がしておる。取り扱いが二つに分かれておる。それを、今回の改正法案では、すべて裁判所公平委員会の一本建てで処理していこうというお考えのようでございますが、人事委員会の二本建てのやり方は断じていけないのである、だから一本建てにしてしまわねばならぬのだという特殊の事情があるようでございますから、それをひとつお聞かせ願いたいのであります。

菊井三郎第一部長

○法制局参事(菊井三郎君) その点につきまして、法制局からお答え申し上げます。  行政措置の要求につきましては、国家公務員法八十六条によりまして要求できることになっておるのでございますが、八十七条におきまして、その請求がございましたときは、「人事院は、必要と認める調査、口頭審理その他の事実審査を行い、一般国民及び関係者に公平なように、且つ、職員の能率を発揮し、及び増進する見地において、事案を判定しなければならない。」、こういうふうに規定されておりまして、この場合には人事院が行なうということになっております。  それから不利益審査につきましては、その調査に当たる機関は、国家公務員法九十一条におきまして、その「請求を受理したときは、人事院又はその定める機関は、ただちにその事案を調査しなければならない。」、こういうふうになっておりまして、「人事院又はその定める機関は、」と、こういうふうになっておるのでございまして、その定める機関のみが事案を調査しなければならない、こういうふうに法の上にはなっておらないのでございます。したがいまして、人事院がその調査をいたしましても差しつかえない建前には法としてはなっておるのでございます。この措置法の一部を改正する法律案は、公平委員会がすべて一つにまとまって、その両方を行なうというのでございまして、国家公務員法の建前、人事院というのを公平委員会がすべてやる、こういう建前にしておるのでございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 それですから、行政措置の要求の場合と、それから不利益処分に対する審査の場合と、人事院はとにかく二様の扱いをしていましょう。それを一本にまとめるというのが今回の改正法案ですね。だから、二本建てはこういう点でどうしてもだめ、だから、今回はこれを一本にするのだという特殊な事情があるはずだから、あるからこうしたんでしょうけれども、これを現在の人事院で扱う二本建ての方法はまずいのだ、こういう点に欠点があるのだという点を指摘していただきたいと、こう言って聞いているのです。もし指摘しないのなら、裁判所のこうした問題につきましても、二本建てでやっていいのじゃないかという基本の観念に立ちましてお伺い申し上げているのです。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) 私どもの考えましたことは、先ほど問題になりました人事院内部における人事院の職員に対する場合は別といたしまして、その他の国家公務員全体の立場からいいますと、第三者的な性格を持つ人事院の立場というものがはっきり容認されている以上、あえて不利益審査の場合といえども、ないしは行政措置要求の場合といえども、それほど問題はないというふうに考えております。ところが、これが最高裁の場合ということになりますと、最高裁そのものは、不利益処分の場合ないしはまた行政措置の要求のあった場合といえども、何でもその案件を審査する立場というのは、純然たる使用者の立場から、こういう点から言いまして、裁判所職員の場合では、この際には一本建てで公平審査委員会を設けて、何らそれによって支障が起こるとは考えられない、こういう判断の上から、その二様に区分しないで、一本建ての公平審査委員会という方針をとったのでございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 そうしますと、人事院で二様の扱い方をしているという点に欠点を見出しておるというわけではないが、という前提でございますね。そうですね。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) さようです。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 次にお伺いいたしますことは、人事院におきましては、この不利益処分に対する審査請求を受けた場合に公平委員会を作る。その場合における公平委員には、人事院の内部組織でもできる、また外部の組織のものを加えることもできるというようになっておるのです。裁判所公平委員会はそれとは全然違って、内部のものは全然除外する。内部のものほど事情によく通じているかもしれない。内部のものほどよく真理をきわめているかもしれないですね。そういうものはもう初めから全然除外してしまうのだ、部外のものだけでやらせるのだ、こういう改正の御趣旨のようでございますが、もしそうであるとすれば、その趣旨のお答えを願うとともに、全然外部の者だけでやらねばならぬ、事情に最も通じておる内部の者を入れるべきでないという根拠につきまして御説明を承りたい。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) 私どもの考えといたしましては、人事院の場合には、先ほど来申し上げておりますように、とにかく使用者と使用人との両方に対しては全く中立的であるというものの考えに立っておるわけでございまして、それが最高裁の場合には、他の問題と違って、この職員に対する行政措置の要求であるとか、ないしは不利益処分の審査請求であるとかという、その事案そのものは、最高裁もしくは他の裁判所の裁判上の問題は別としまして、使用者、使用人という形における関係からいいますと、案件そのものに対して特別な知識もしくは内部の事情に精通するしないということは、その請求された案件の審査にはほとんど決定的な要素を持つものではない。したがって、その請求される案件そのものに対する判断ということになりますと、むしろ全くの外部の人といいますか、最高裁そのものと直接関係を持っていない第三者の場合のほうが、いずれに対しても、最高裁に対しても、また職員に対しても、公平な審査の結論を出すことができるという、そういう建前を貫きたい、こういう考えの上に立っておるわけでございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 御趣旨の大体終始は変わらない御主張の点、大体了承できたんでありますが、しかし、部外の者は部内の真実のありさまというものに対する理解が案外少ない。第三者の見た公平というものと、それから、部内の事実を知っておる者の考える公平というものは、必ずしも意見が一致するものではない。はなはだお粗末な例で恐縮ですけれども、家の中のけんかが絶えない。そういう場合に、甲の者が悪いか乙の者が悪いかという判断を第三者の他人がすることも、お説のように、いろいろの美点、よい点があると存じますが、しかし、ほんとうの内部に入って、人に言われないようないろいろの事情を知って入ると、案外そういうこともあるのかということも考えられる。こういう意味合いにおきまして、外部だけに限らぬで、内部の者の一部をまじえるということは、実際からいうと、真相、真実に適合した公平な処置がとられるのではないかと、私はこう思うのですな。これは、意見の相違になるなら意見の相違で突っ放して下さってもけっこうだが、もしそうでなしに、お答え願える点があれば、私はお答えをちょうだいしたいと思う。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) ただいまの井川委員のおっしゃっている意味は、私もよくわかりますし、また実際上、たとえば、衆議院の職員の場合における公平審査ないしは参議院の場合における公平審査の場合にも、その構成する委員のうちには、何%かの割合で、それぞれいわゆる事務局側の職員が公平委員になって構成されている機関もあるようでございます。ですから、今度の改正案の場合には、それが全く純粋に第三者ということに限定されておりますが、今までの例から見ましても、その点については、たとえば人事院の場合に純粋な第三者ということに見るか、ないしはまた、人事院なり人事官自身が行政官という立場から、おっしゃるように使用者側の委員も公平委員の中に入っているという、若干のパーセンテージをもって入っているという判断も成り立つわけですから、そういう意味から言いますと、今までの行政措置の要求に対する審査ないしは不利益処分の審査請求等に対する判断の場合には、従来の例を見ますと、二様の立場をとっておるようでございまして、今度の場合には、その点はっきりと踏み切ったという格好で、完全に第三者ばかりということにいたしましたが、おっしゃるような御意見の点も、従来の立法から見ますと、使用者の代表という格好が入っている場合もあるようでありますから、これはにわかに、どちらがいいとか、どちらが有効であるとかいう判断は、かなりむずかしいのじゃないかと思っておりますが、私どもの場合には、提案しましたように、純粋に第三者をもって構成するほうがより適正であろうという判断に立ったわけであります。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 人事院の公平委員の職務の権限というものは、大体におきまして、事案の内容の調査にとどまっておる。判定はしませんね。判定までまかせるということに何らかの危険を感じたか、判定はまかしてない。そうしてその判定は、人事院みずからがしておる。これには何か相当の根拠があって、判定まではまかせなかったのだろう、事実の基礎調査をさしたにすぎないのだ、こういうような見解がとれる。ところが、今回のこの改正案によりますと、調査と判定とをともに公平委員会の職務権限にしてしまう。こういうことにつきましては、何らか人事院の公平委員会の現在の制度では、調査に限界がきておるということが非常な不都合な点があって、それで今度は、それを調査のほかに判定をもやらせるのだ、こういうように仕向けるのかどうか。この点の、判定まで公平委員にやらせなければならないのだとした根拠、これをお聞かせ願いたいと思います。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) 公務員法によりますと、なるほどおっしゃるとおり、判定ということは規定にはないようでございまして、第九十二条によりますと、「前条に規定する調査の結果、処分を行うべき事由のあることが判明したときは、人事院は、その処分を承認し、」、こうなっておりまして、その調査と、それからこれを承認するということの中には、全く紙一重の差でございますが、公平審査委員会の調査の結論というのは、単に承認をされるというだけが残っておるようでございます。しいて言いますならば、公平審査委員会としては、その事案に対する判定を下して、こうやれという態度に出ることにはなっておらない。今回の改正案では、その点は、御承知のように、若干違っておるところでございますが、私ども、この点に対する解釈は、先刻来申し上げておりますように、人事院の持っている性格というものを全くの行政官庁という形で考えてはおらない。しいて言いますならば、純粋な中立機関、第三者機関という形で考えているものですから、私どもは、公務員法のこういう点については、一方で容認しつつも、最高裁関係の公平審査の場合には、さい然と区別をする必要がある。区別をせずに、もしもかりに公平審査委員会の権限を、この国家公務員法の場合におけると同様に、単に調査だけ、もしくはその処分をすべきものだという決定等だけで終わりますと、その実際の施行者が最高裁という使用者側の立場を考えて、これはいかぬという考え方で排除をするのだ、こういう考え方でございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 そうしますと、この法案で、公平委員会に裁決までさせるのだというその根拠には、現在の人事院の公平委員の職務の権限というものは裁定までは及んでいないという事柄に大きな欠点が暴露された、その結果、このように裁判所の公平委員にはこういう措置をとるのだといったような、そういうような、人事院の公平委員における現在の取り扱いに非常な欠点があるという点を思考して、この裁判所のそういう公平委員を作ろうとするのではない、こういうことでございますか。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) おっしゃるとおり、私ども、その人事院の場合におけるその性格等から考えまして、今の国家公務員法のあり方のように、公平審査委員会の権限が一定の段階で停止をして、あとは人事院なり、人事委員会の最終的な決定にまかせるという方法をとっても、人事院という性格から見て、そのことには問題が起こらない、こういう考え方で、私ども最高裁の場合の公平審査については別な角度から考えたわけでございます。おっしゃるとおりでございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 話題を変えまして、裁判所職員のなす不利益処分に対する審査の請求及び行政措置の要求ですね。これは、この改正法案では、委員会に対して申し入れをする、要求及び請求をするものか、そうではなしに、やはりするのは最高裁にするのか、この最高裁の扱いは全然用いない趣旨でございますか、この点はいかがでございますか。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) この点は、直接公平委員会のほうへ事案の審査を請求するという、そういう形をとっております。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 そういたしますと、当然に、この改正法案に基づくところの公平委員会というのは常設の委員会でなくてはならぬということになろうと思う。現在までは、人事院におきましても最高裁におきましても事案が持ち上がった。事件が起きた。その起きた事件のいろいろな内容等より考えて、そのつど公平委員を取りきめていこうと、私は、そこには、その事案を解決する適任者というものが、お人柄がりっぱであるとか何とかというばかりでなしに、こういう事案の解決にはこういう人が適当するだろうという、いろいろな特質があろうと存じます。したがって、そういう事案を見て、公平委員を定めるということはきわめて必要なことであろうと思いますのに、常設に公平委員というものを作っておいて、そして事案が出てくればその人たちが扱うのだということになると、普通のお役所の仕事になってしまいまして、適所適材と申しますか、非常にすばらしい、ある部分に持っておる知能をその事案の解決に向けていくという特質を失ってしまうのではないか。私はこういう考えを持って心配をするものでありますが、この常設機関とするということについて、今、私が申したような不安というものは全然ないものかどうか。こういう点についてお伺い申します。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) 最終的には、公平委員会の細部にわたる決定等については、最高裁の規則できめられることになっております。根本としましては、五人の委員で構成されることになっておりますので、その問題ごとに、一方に片寄った審議の仕方をすることのないように、その委員の決定の際に、それぞれ特質を持ったといいましょうか、かなり広範な範囲で、裁判所の仕事に対して理解を持つと同時に、高いレベルの知識や、それから常識を持った方々を広く網羅するという方法をとることによって、おっしゃるような弊害は除去されるのではないかと、そういう考えでやっております。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 事案は、非常な一つ一つが特異性を持っておる。その解決には、一つ一つ別の判断の仕方で判断しなければ適切な公平は期せられぬのじゃないかと、こう考えるときに、五人の人はりっぱな人だと仮定いたしましても、いかなる問題が出てきても、その問題の解決には、きまっておる五人の人が全部取り扱うのだといったようなことは、いわゆる今日のお役所のような仕事になってしまうのではないかと思いますが、いかがですか。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) 審査をする事案そのものが、たとえば、現在の行政官庁のおのおのやっておりますような範囲の広い仕事とは違いまして、根拠となる法律もしくはまた他に類似の問題を扱っている法律等の関係については、その行政措置の要求の内容であるとか、ないしはまた、不利益処分の扱いに対する是非の判断とか、かなり問題は限定されているというふうに考えております。したがって、裁判で扱う非常に複雑多岐にわたる問題とは、その点はおのずから様相を異にしているという考えでございますから、五人の委員が同定されていて、その人たちが、その一々起こってくるその事案の審査等をする場合にも、その五人の委員が固定されているために、その適正な判断ができないとか、もしくは処理ができないということは決してないというように考えております。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 次に、また別のことを伺いますが、この法案によりますと、公平委員が判定をなさるのであるが、判定の結果とるべき適当な措置は、どういうようなふうにしてとられるべきものであるか。なお、措置をとるものは、委員会がとるのかどうか。こういう点につきましての詳細を承りたいと存じます。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) ただいまの御質問の点につきましては、二条の六項により規定しておりますように、その措置を実際に行ないますものが、最高裁なり、あるいはまた、その処分を行なった当該裁判所等でその措置をとるという建前になっております。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 公平委員会が裁決をしました場合に、その裁決の結果、処分をいたしました裁判所に、単にこういう裁決をしたという通知をするにとどまるのか、あるいはその裁決にふさわしいような措置をとらしめるという、そこまで含んでやるのかということを聴いているわけです。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) その点は、通知をどうしろとか、どういう形でやれとかいうことについては、この法律では規定しておりませんが、ただ、第二条の七項によりまして、「当該処分を相当でないと認めて前項の判定をしたときは、当該処分を行なった者は、その判定に従い、直ちに必要な措置を執らなければならない。」、この処理にあたって、通知をする云々の事務的な措置はどうするかということについては、これは最高裁の規則で、具体的にそういうことをきめられることになると私は見ております。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 この公平委員会で取り扱う行政措置の要求あるいは不利益処分に対する審査の請求、そういう事柄は、憲法七十七条の規定によりまして、最高裁判所が部内の規律を規則で定める権限を与えられている。その規則に触れた問題で、審査の請求の問題が生じ、あるいは行政措置の要求の問題が生ずるというようなことはあり得るかあり得ないか。もしあり得るということになるとすれば、憲法七十七条のこの規定に反する結果にはならないか。言いかえれば、裁判所が、独自の立場で規定をもちまして定め得る憲法許可のその権限を害されるということになるとすれば、憲法違反の本法案だということにもなりませんかということが考えられるが、要求なりあるいは請求が、今申しましたような裁判所の権限に、憲法上許される権限に属する規定の事柄について起こり得ることが全然ないか、あり得るか。ある場合とするならば、今言った憲法違反にならない根拠、こういうものの御説明を承りたいと思います。

菊井三郎第一部長

○法制局参事(菊井三郎君) 私からお答え申し上げます。  行政措置要求の問題といたしましては、最高裁判所の規則で定められている事項に関して、こうしてほしいああしてほしいというような問題が起こるかどうかということと、いま一つは、不利益処分を受けた場合に、その不利益審査をした根拠が最高裁判所の規則である、こういうようなときに、不利益審査について、不利益の処分の場合に審査請求ができるかどうか、そのことが憲法の問題と関連してどう考えられるか、こういうような御趣旨に承ったのでございますが、行政措置要求につきましては、国家公務員法の八十六条を臨時措置法で準用しておりまして、その規定は、「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われることを要求することができる。」、こういうふうになっておりまして、その要求が行政措置要求と一般に言われておるものと思うのでございますが、「職長は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、」こういうふうになっておるのでございます。それで、最高裁判所の規則によりまして、俸給、給料その他勤務条件に関して何らかの規定がされております場合に、その規定に関連いたしましてか行政上の措置を要求するということはあるのではないかと思うのでございますが、あったといたしましても、そのこと自体が最高裁判所の規則違反をしておるということにはすぐにはならないのではなかろうか。規則で定めている実体について、こうしてほしいああしてほしいという要求が行政措置要求である、こういうように考えるのでございます。また、懲戒処分などを受けました場合に、そういう際に、その審査の請求をする。非常に重い処分を受けた、自分がもっと軽くていいのではなかろうか、こういう場合に、審査の請求をするというのが審査請求といわれるものと思いますが、これは、国家公務員法九十条に規定しておるところでございます。このような問題も、最高裁判所の規則で規定しておりましても、非常に重いか軽いかという点につきましては、事実認定と裁量の問題が入ってくるのではなかろうかと思うのでございまして、非常に重いものを、重いから軽くしてほしい、こういうように審査請求することは、必ずしも規則違反になるものではないのではないかというふうにも考えられます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 最高裁判所が憲法七十七条の規定によって許されている権限の範囲で規則によってきめている、その立場から言うと、裁判所公平委員会のこの裁決は、最高裁判所としては、この規則に反するものだと、そしてその規則を取りかえる、訂正する、そういうことによって公平委員会の意見に追随していくということを欲しない。こういう場合に、心ならずも最高裁判所は、自分の意見を曲げねばならぬことになりますね。そうすることになれば、憲法によって許されている権限を他によって曲げられるという、こういう結果になるような気もするのでございますが、その点はいかがでございましょうか。

菊井三郎第一部長

○法制局参事(菊井三郎君) ただいまの御質問は、もし行政上の措置要求あるいは審査請求について、それぞれ結論を委員会が出した場合に、最高裁判所が心ならずもその規則を改正するというような事態が起こりはしないだろうか、こういう御趣旨に承ったのでございますが、懲戒——不利益処分につきましては、これは、規則でいろいろ規定されておりましても、裁量の幅がかなり規則の中にあるのではないかと考えられますので、審査請求のありました事件について、判定がありましても、その規則をそのつど変えなければならない、こういう事態はおそらくは起こることがないのではなかろうか、こういうふうに考えられますし、それから、行政措置要求につきましても、規則でこまかい点を書いているということはないのではなかろうかと考えられまして、しかも、行政措置要求の場合におきましては、判定の結果とるべき措置というものについては、勧告ということになっているのでございまして、不利益審査の場合とは少し異なっているのでございます。したがいまして、それぞれの結果が出たといたしましても、規則を心ならずも改正せざるを得ないというようなことはないのではないかと考えているのでございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 今の御説明によりますると、裁判所職員の要求する行政措置についてのこの法案による裁判所公平委員会の裁決が、それぞれの裁判所に勧告された、その場合において、その勧告には各裁判所は応じなくてもかまわないのだ、こういう御趣旨のような御説明でありましたが、そういう説明と承っておいてよろしゅうございますか。

菊井三郎第一部長

○法制局参事(菊井三郎君) 少し言葉が足りなかったかと思いますが、勧告が出て、それは勧告にとどまるものであるから、従がわないでもいいという趣旨ではございませんので、やはり勧告が出るからには、その所轄庁の長は、その勧告に従わなければならないと考えているのでございます。ただ、今こう申しましたのは、やはり行政上の措置要求というものにつきまして、抽象的な規則というものか、非常にこまかくは具体的におそらく書いてないだろうと思われますので、この勧告がありましても、必ずしも規則の改正をしなければならないという事態はないのはでないか、こういう趣旨において述べたつもりでございますので、その点、訂正いたしておきます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 ただいまの御説明と先ほどの御説明の間に食い違いがあるのではないかと思って確かめますが、先ほどのあなたのお答えのうちには、この法案によってうたわれておるところの公平委員会の裁決は、憲法七十七条によって与えられておる最高裁判所の内部のことを規約できめ得るとの点に触れるものがあるかもしれないというような趣旨に承ったが、今はそこまでは触れないのだろうというような御趣旨ですが、触れるものがあるという見解ですか。触れるものはないという見解ですか。

菊井三郎第一部長

○法制局参事(菊井三郎君) 触れるものはないと考えております。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) ただいまの憲法七十七条との関連で、最高裁の独自の権限で規定された規則等に公平委員会の裁決そのものが抵触することありやなしやという問題ですが、この憲法七十七条というのは、こういう権限は、最高裁ばかりではなくて、たとえば人事院等でも、その法律によって委任された範囲内で規則を制定する権限を与えられております。さらにまた、この七十七条では、最高裁に、「訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び同法事務処理に関する事項について、規則を定める権限を有する。」この委任された権限はその法律に基づいて、ここでは直接憲法によって規則を制定する権限を与えられておりますが、その規則は、本来ここにあげられております事項についても、法律の範囲内でその規則は制定さるべき筋合いで、この法律を踏み越えてこの規則が制定されることはあり得ないし、それでは、規則そのものを制定する権限が法律を作る立法府の権限を侵すということになりますので、そういう法律と、最高裁が委任された権限のもとで制定される規則との間に競合し、もしくは抵触する事案がそのために起こるということはない。つまり、法相の範囲内においてこの規則は本来委任された権限に基づいて制定さるべきものなんです。こういう考えから言いますと、法律によって規定された公平委員会の審査なり、その審査に基づく裁決は、最高裁の内部的なこの規則と競合し、抵触するということはあり得ない。その点は、人事院における規則の制定権の解釈にあたっても同様でございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 千葉さんのお話でありますが、憲法七十七条によりまして、最高裁判所は、裁判所の部内の規定を自由にきめる権限を持っている。だから、これは憲法に基づいてやる権利だ。この憲法に基づいてやることができないような法律は憲法に違反するものだ、こういうことは言われないかと思います。憲法によって与えられておるものを法律でもって、それはお前のほうで、最高裁判所のほうで自由にきめられることであっても、それは法律は許さぬということになりますと、その法律は憲法を曲げたことになりはせぬか。ゆえに憲法違反になりはせぬか、こういうことなんです。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) その場合、つまり最高のものは憲法であり、そうしてその憲法に基づいて、憲法に抵触するはずのない法律が作られるわけですから、したがって、その憲法に抵触するはずのない法律のさらに施行規則であるとか内部規律に関する規則との関係は、その法律との競合はあり得ない。これがむしろ三権分立の建前からいって悪法と法律、規則との関係です、行政府におきましても、同様に政令であるとかあるいは規則の制定権は委任されておりますが、その場合といえども、法律に抵触するような政令や規則を行政府で制定することは初めから否認されておる。ですから、そういうことは初めから起こり得ない。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 法律といえども、何でもできるものではない。憲法の許されておる範囲において法律を作り得るにすぎない。直接裁判所の内部に関する事項については、最町裁判所で規則は自由に作ってよろしいということを憲法で許されておるものを、それに抵触するというような法律を作ることは憲法違反になるのじゃないか。こういう趣旨で申しておるのです。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) たとえば、実際の場合におきましても、この裁判所職員臨時措置法というのは、いわば最高裁における内部規則の制定でございます。しかし、これは規則ではなくて、法律によって制定されたということは、その最高裁の持っておる規則の制定権とこの裁判所職員臨時措置法との価値観がそこではっきりときまっておる。したがって、最高裁の持っておる規則の制定権では律することができないから、裁判所職員臨時措置法なるものが制定された。したがって、その最高裁の職員臨時措置法の範囲内において、今回公平委員会が設置されることになりますれば、その場合におけるその裁判所職員臨時措置法の法の範囲内て制定されるべき——最高裁の第七十七条の権限に基づいて制定される規則というのは、この裁判所職員臨時措置法のワク内における規則の制定である。こういう経過になりますと、その規則の制定によって法律に抵触するような事態は起こらないし、そういう規則は、裁判所といえどもこれは制定すべきではないという判断に立たされておるわけであります。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 千葉さんにお伺いしますが、現在の裁判所職員の措置法は、行政措置の要求でも不利益処分の審査の請求でも、それは、最後的にはその裁決をする権限は最高裁にあるというのだから、最高裁みずからすることになるのであるから、憲法違反になるわけはないですからね。それをそうではなしに、裁判所はそれはできないので、第三者の立場に立っての委員会が裁決してしまうのだということになると、裁判所の考えと違った裁決ができてくる。それに基づいて今回の要求及び請求が、内部規定にきめておるところに関連したことが起こり得ないというのならば話は別ですよ、起こるとすれば、そこに問題が生ずるのではないかと言うのです。全然そういうことは起きないのだという御見解とすれば、これはまた話は別でございますがね。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) この不利益処分の審査の請求であるとか、ないしはまた、行政措置の要求という具体的な問題の取り扱いの関係で、最高裁で設けられるはずの最高裁判所の規則なるものが、今回その改正される臨時措置法の精神なり、ないしは条文と相反するものが制定される場合があるとすれば、それは私は問題が起こる。しかし、そうじゃなくて、この法律の規定した方針に従って裁判所の内部規律なり規則が設けられるものとすれば、私は、その間に抵触する問題であるとか、最高裁の権限が特に侵されるという事態は起こらない、こういうふうに判断しております。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 この点にこだわりましてきょうここで結論をつけようという私は考えを持たないのですけれども、もう一言言わしてもらいたいのですが、要求なり請求が、裁判所の憲法によって与えられてきめ得る規則に、その内容に関するものがあった。そしてそれが取り上げられまして、公平委員会におきましてはある裁決をした。その裁決については、最高裁判所といたしましては、これは自由にきめる権限を憲法によって与えられている。裁判所のやったことは、その範囲においてはきわめて適当であると考える。しかるに、公平委員会は、それはいかぬということになってくると、裁判所の立場からいえば、自分の権限内できめることで何も不都合ないと思うのに、公平委員会においてはそれが不都合だということになってきますと、意見が衝突する。衝突しなければ問題ありませんが、意見が違う場合、そういう場合には、何だかそこに憲法違反のにおいがしてくるように思うのですが、きょうはこれ以上は言いませんけれども、最後に一点だけもう一ぺん伺っておき、あとは次回に譲りましょう。

菊井三郎第一部長

○法制局参事(菊井三郎君) その点につきまして私からお答え申し上げます。行政措置要求に対する勧告、あるいは審査請求に対する判定というものは、いずれも、最高裁判所の規則が出ております場合には、その範囲内において行なわれるべきものと考えております。したがいまして、その判定が規則と衝突をするということはない、このように考えております。なおこの問題は、現在「人事院」とありますのは、「最高裁判所」と読みかえられておるのでございまして、最高裁判所が現在これらの規定に基づいて、それぞれ勧告なり判定をいたしておるのでございますが、その場合でも、この問題は現行法のもとでもそういうことがあるかないか、こういう問題があるのでございますが、事新しくこの法案によってその問題が起きたわけではないのでございますが、やはり裁判所の規則が出ております場合には、その範囲内において、それぞれの勧告なり判定が行なわれるものと考えます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 裁判所側のどなたかに、ひとつこの点についてお伺いしておきたいし、それから、調査をしなければ今のところわからぬというのなら、無理にきょうでなくてもいいのですが、裁判所職員のなすことのできる行政措置要求及び不利益処分に対する審査の請求、こういうことの事案の内容が、裁判所側としては、憲法によって与えられておる全くの権限に属するその範囲の規定のとおりやっておるのであって、不都合なことはしておるとは思えないというような事柄についても、この要求なり、請求なりというものがなされるおそれがあるかどうか、また、過去においてなされた事実があるかどうか、この点につきまして、ひとつ裁判所側の御意見を聞いておきましょう。

下村三郎最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 具体的な問題でございますと、ある程度お答え申し上げられるかと思いますが、一般的な御質問でありますので、できますれば、なお検討いたしてお答えいたしたいと思いますが、いかがでございますか、

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 憲法に関する問題でございますから、正確な御返事をちょうだいいたしたいと思いますので、きょうでなくてもけっこうです。

下村三郎最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) それでは、後日また適当な機会にお答えいたしたいと思います。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 次にもう一つ裁判所に質問しておきますが、この法案が法律になりました場合の公平委員会、その公平委員会で裁決をなさいますが、そのした裁決は、裁判所の憲法によって許されてきめ得る規約に反する内容の裁決がなされるおそれがあり得るかどうか。多くはないと思います。ほとんどないと思いますが、法律でありますから、突き詰めてお伺いしておくので、あり得るかないか。あり得るとすれば、やはり先ほど来いろいろお話をしておりますように、憲法七十七条で特に許されている最高裁の権限内のこと、それに相反する裁決があるとするならば、憲法違反になるのじゃないかという点、これらをあわせて、次回に御見解を伺うことにいたします。

下村三郎最高裁判所事務総長

○最高裁判所長官代理者(下村三郎君) 了承いたしました。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 それから千葉さん、今度は別の問題のことでひとつ。これは、条文をよく読めば、この中に現われているのかもしれませんが、私の不勉強のためかもしれませんが、法案による最高裁の公平委員会の裁決に対して不服である場合には、行政訴訟が起こし得るのでございますか。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) それは起こし得ます、不服である場合には。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 行政訴訟を起こし得るという建前。そうしますと、これは、この法案の審議よりも、行政訴訟の審議の際の質問かもしれませんが、訴願の前置主義の問題がありますね、行政訴訟の新しい法律案に。その点について考えてみると、この裁判所の職員の要求及び審査の請求それをなすことができるということにはなりましょうが、それと同時に、一方においては行政訴訟の権利がありますね。この二つの間には、同時にもできるのか、あるいは公平委員会のほうの取り扱いは優先する、いわゆる前置主義になるのかどうか。この点についてのお考え、そしてこの法案はそのどれによっているのであるかということをお答え願いたいと思います。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) ただいまの点は、今回の法律で、臨時措置法が人事院の関係の国家公務員法の規定を準用しております点を、公平委員会の場合には排除いたしましたけれども、その他の関係については、国家公務員法に基づいて、国家公務員法が適用されるわけですから、国家公務員法と同様に、そういう行政措置の要求と同時に、行政訴訟は当然国民としての権限に基づいて行なうことができるというように、そういう建前を貫いております。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 両方できることにつきましてはよくわかりましたが、それを同時にもできるのか、あるいは行政訴訟のほうは先に出すことができるのかといったような、時間的なことを承りたいのです。

菊井三郎第一部長

○法制局参事(菊井三郎君) 今、千葉議員から御説明いたしました点、ちょっと補足させていただきますと、行政措置要求につきましては、行政上の措置を要求するのでございまして、その内容は勤務条件に関しての問題でございます。したがいまして、これにつきまして、いきなり行政訴訟というようには考えられないように思うのでございます。  それから、審査請求の問題につきましては、職員の意に反する降給、降任、休職、免職等の処分でございますので、これにつきましては、行政訴訟の問題が起こると考えるのでございます。ただ、現行法のもとにおきましては、この規定をどう解するか、こういう問題が訴願前置との関係であるわけでございますが、この国家公務員法の八十九条以下の規定を考えてみますると、こういう手続を、意に反する場合に、審査請求できるというふうにいたしておりますので、この規定は訴願前置の規定に当たるものではないかというふうに考えられるのでございます。したがいまして、行政事件訴訟特例法のもとにおきましては、一応この手続をやりまして、行政事件訴訟を起こすものと解釈すべきではないかと思っております。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 今、行政事件訴訟法ですね、これは新しく提案になっておる。漏れ聞くところによりますと、社会党の案といたしましては、前置主義は例外なしに廃せねばならない。この行政事件訴訟法の法案の内容は、原則としては前置主義を廃止するけれども、例外の場合を非常にたくさん認めておる。社会党のお考えとしましては、すべての前置主義というものは廃して、全部にわたって廃そうというお考えのように漏れ承っておるのでありますが、そしてそれはもう法案の審議が衆議院で行なわれており、参議院のほうに対しましても遠からず来るに違いない。そういう建前からいうと、今度新しく出されましたこの法の一部の改正法律案につきましてはどちらを選んでおるわけか。前置主義を認めるという趣旨においてなされておるのであるか、前置主義を認めないという趣旨においてなされておるのであるかということを聞いたのでありますが、今のお話では、やはり前置主義をこの点に関しては認めておるのだ、それに基づいてやっておる立案だというふうにも漏れ聞きましたが、この点をもう一ぺんはっきりさせておいていただきたいと思います。

菊井三郎第一部長

○法制局参事(菊井三郎君) 今私がお答え申し上げましたのは、現行法のもとにおきまして、この裁判所職員臨時措置法の一部を改正する法案といたしての問題としてお答えいたしたわけでございまして、行政事件訴訟特例法が行政事件訴訟法となって、訴願前置に関する規定が改められると、そういう関係において述べたものではございません。この法案は、現行行政事件訴訟特例法が存在するものと仮定して、その関連において作られておるのでございまして、新しく行政事件訴訟法が出て、訴願前置の点にいろいろと手が加えられるということと変わりなしに一応作られたものございます。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 現在の特例法に基づいて、訴願前置を原則として採用しておるのだという建前でこの法案が作られたと申しますが、それはもうまのあたり改正される法律案で、前置主義は原則として廃されるということになっておるのに、そのときに臨んでこれを提案するとすれば、その辺の用意が少しもの足らないようにも私は感じますが、いかがでございますか。

千葉信日本社会党

○委員以外の議員(千葉信君) この法律案は、御承知のとおりに、昨年の第三十八国会から提案されて、継続審議になっている関係もございますので、御質問の点については、現在衆議院で審議中の法律案との関係について、実際に衆議院のほうに参りまして、その点をはっきり確かめてからお答え申し上げたいと思います。

井川伊平自由民主党

○井川伊平君 そうですか。それではその点は後日に……。

松野孝一自由民主党

○委員長(松野孝一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕

松野孝一自由民主党

○委員長(松野孝一君) 速記をつけて。午後一時半まで休憩いたします。   午後零時二十一分休憩    ————・————    午後二時七分開会

松野孝一自由民主党

○委員長(松野孝一君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  この際、委員の異動について御報告いたします。  本日付をもって大谷藤之助君が辞任され、西田隆男君が選任されました。   —————————————

松野孝一自由民主党

○委員長(松野孝一君) 検察及び裁判の運営等に関する調査を議題といたします。  この際、辻委員から発言を求められておりますので、これを許可いたします。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 最初に、選挙の取り締まり方針についてお聞きするのですが、参院選挙も近づいて、いろいろ選挙の機運が高まって参りましたが、これについて、どのような方針で進んでおるのですか。

新井裕警察庁刑事局長

○政府委員(新井裕君) 今回の七月一日に一応予定されております参議院の選挙につきましての取り締まりはどうかというお尋ねのようでありますが、今までと全く変わらない方針でやっております。今までの方針は、主として悪質犯に重点を置いて検挙を進めると同時に、できるだけ警告その他の措置によりまして、犯罪を予防、制約するという方針をとって行なっております。ことに最近におきましては、運動期間中だけでなく、運動期間以前のいわゆる事前運動というものが相当盛んになる状況でございますので、これらのものに対しても、十分に公平な競争が行なわれるということを目途といたしまして、警告その他によりまして犯罪の予防をすると同時に、悪質のもので証拠の明らかなものにつきましては、事前においても措置をいたすという方針でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 事前運動については、相当活発に選挙違反とまぎらわしい運動が行なわれると私も思うのです。いろいろポスターやそれから、推薦いただきましてありがとうございますとか、あるいは後援会を作って、後援をしている証拠に署名捺印をしてくれというようなパンフレットを配っておりますが、そういう点については、かなり取り締まっているわけですが、実績がありますか、現在の状況。

新井裕警察庁刑事局長

○政府委員(新井裕君) ただいままでは、主として警告を行ないまして、引き続きそういうことが行なわれないように注意をしてもらうということをいたしておる段階でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 警告を何べんしても平気でやっているような場合もあると思うのですが、警告というのは、二回やったらどうするとか、三回やったらどういうこととかという、何か基準をもってやっているのですか。それとも、警告々々で、最後まで警告で終わってしまうことも考えられると思うのですが、どうですか。

新井裕警察庁刑事局長

○政府委員(新井裕君) 警告をもって目的を達しますれば、それは警告をもって終わるのでありますけれども、警告をしたにかかわらず、引き続き計画的に、あるいは悪意をもって違反をしているというものにつきましては、さっきも申しましたように、厳重に措置をいたす方針でやっております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 警告は何べんくらいやるわけですか、一人の候補者に対して。そういうきまった標準があるのかどうかということをお伺いします。

新井裕警察庁刑事局長

○政府委員(新井裕君) 何回やったらどうするという標準はございません。おのおのの場合々々に応じまして、一回警告して、次にやはり同じことを繰り返しても措置をする場合もありますし、たいへん軽微な違反であって、不注意だと思われるようなものについては、必ずしも一回でそういうものを済まさない。引き続いてまた警告をするということもございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 大臣がお見えになりましたからお伺いしますが、今回選挙も近づいておりますので、選挙の取り締まりの根本方針について法務大臣としての御見解をお伺いいたします。

植木庚子郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(植木庚子郎君) 選挙が近づきまして、それに関連して法務省として、また検察当局としての取り締まり方針の一般的な御質問でございますが、申すまでもなく、どの選挙にいたしましても、いやしくも民主政治がりっぱに行なわれるためには、選挙が厳正公平に、しかもまた、有権者も厳正公平に取り締まらなければなりませんが、有権者の側から考えてみますれば、自由にかつ公正に行なわれることが必要であります。そのためにこそ取り締まり当局としても、選挙が自由に行なわれ、かつ公正に行なわれるようにしむけていく取り締まりが必要なんでありまして、われわれの立場といたしましては、取り締まりに際して常に公平に、特定の候補者に偏するとか、特定の政党に率いするというような態度は絶対にこれを避けて、そうしてそれこそ公平厳正な扱いで臨まなければならぬと、こう考えております。そうして自由に選挙を行なわれるためには、あまりにも、取り締まりの態度が厳に過ぎるということのために有権者がいじけてしまう、そうして選挙の投票に行くこともいやがるというようなふうになっては、これまた困るわけで、その点におきましては、われわれも、悪質な選挙違反の事態については、これは断固たる態度をとらなければなりませんが、一般的には、それがあまりにも峻厳になって、いじけさせることがないようにしなければならぬということをまた二面考えておるのであります。それは、有権者の人権尊重の面から見ましても、当然そうした留意が必要であります。私たちといたしまして、ことしの参議院選挙に臨むにあたりましても、従来とって参りました今申し上げたような態度での取り締りをすべきであると、こういうふうに考えておるわけであります。事前運動云々のことも、特に最近新聞等にも散見しておる面もございますので、これについても十分注意を怠らない、悪質な者あるいは当然事前運動として法規に違反するというようなことの明らかな者については厳正に処して参る、十分注意をいたして参る、かような考え方で臨んでおる次第でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 悪質な選挙違反というものに対して、軽微な違反というものも考えられるわけですが、大臣がおっしゃった悪質というのはどういう内容のものか、大臣にもう一ぺんお伺いいたします。

植木庚子郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(植木庚子郎君) 選挙関係で悪質なものと申しますと、一番普通にいつも留意しておりますのは、いわゆる買収であります。金銭の授受が行なわれて、それによって投票を左右するというようなことは、その買収に応ずる側もいけませんし、また、そういう積極的に買収しようとする側もいけない。これが一番悪質なものだと思います。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 次に私は、選挙違反の容疑でつかまる、拘置所に入れられたり勾留されたりしている間に、警察官や検察官の取り扱いについていろいろ問題があると思うので、お伺いいたしますが、今の統計を私は調べても、相当検察官の違反処分を理由とする損害賠償請求事件というようなものもあるのであります。それで、誘導尋問や威圧、また精神的な圧迫の拷問などももちろんいけませんけれども、検事は職権乱用して不当な取り調べをしているということが今でも相当あるやに私は考えられるのですが、そういう事実は現在でもまだ行なわれていると思われるか、それとも、そういうことはないと思われるか、その点をお伺いいたします。

植木庚子郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(植木庚子郎君) 取り調べのときの検察官の態度あるいはその取り調べ方法の行き過ぎというような問題につきましては、いろいろ会同のたびごとに常にお互いに戒め合い、過去の実情等も諮り合って、そうして誤ちなきを期するように努めておりますから、私は、多数の検事さんたちの関係することですから、ときにはそれは、間違いがない、絶無であるとは申しかねる次第でございますけれども、おおむねは、お互いのそうした訓練、反省、研究等によって、ないものと、そういうふうに私は考えております。もちろん、申し上げますように、絶無であると言い切ることは困難かと思います。しかし、おそらくはそうした事態は非常に少ないもので、あっても希有のものだというふうに考えておる次第でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 検察官の人権侵犯として法務省で最近取り扱った事件がどのくらいあるか、お知らせ願えませんでしょうか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 統計を持ってきておりませんので、即答申し上げるわけにはいかないのでございますが、私の職務を通じて感じとっております感覚を申し上げますと、これまた大臣がお述べになりましたように、絶無ではありませんが、ほとんど検察官の取り扱いの不当を人権じゅうりんとして提訴されておる案件はほとんどないのじゃないか、最近はないというふうに考えております。しかし以前には、そういうケースも若干あったことは承知いたしております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 昭和三十六年で私が調べたのでは、それだけでも七件ありました。前々からの関係で十件、最近の件数をあなたも調べて私に知らしていただきいと思うのです。で、「真昼の暗黒」なんという言葉を前には私もよく聞いたのでありますが、そういうようなことは実際にはあり得るのかどうか、私も疑問に思っておりました。ところが、一月二十五日に判決がきまって無罪になった。これは大阪の地検で取り扱った事件なんですが、昭和三十二年四月に行なわれた大阪地方区の参議院補欠選挙、そのときの選挙違反容疑で、現在は創価常会の会長をしておられる池田大作氏外二十名ですか、に対する取り調べ状況というものは、非常に私は、民主国家の検察官が行なったとはとうてい考えられないような、職権乱用の事実がうかがわれるので、その点に対してただすと同時に、今後こういうことが再び、三たび繰り返されるようなことがあったら大きな社会問題だと思いますので、お伺いするわけです。今までは裁判中でもありましたので、私は黙っていたのですけれども、判決がきっぱり決定いたしましたので、申し上げるわけであります。  池田氏の場合は、七月三日に府警に呼ばれて、八日の午後拘置所へ検事のほうから召喚があって行ったわけですが、その間府警のほうでは、何らの調べる実績もないのに、身上調書だけだ、六日から八日まで。そうして検事のほうでは、お前のほうでやれないのならおれのほうでやる、こういうような気分で、そうして拘置所へ引っ張って、夕飯も食べさせないで、夜の十一時過ぎまで調べた。府警でも、何で池田さんが逮捕されたのかわからない、こういうふうに言った人もあるというのですが、こういう事実を刑事局長は御存じですか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) ただいま御指摘のように、昭和三十二年の参議院の大阪府選出議員補欠選挙に際しまして、創価学会関係の選挙違反が大量に取り調べを受けましたことは事実でございます。その選挙の取り調べにあたりまして、現会長であり、当時は創価学会本部参謀室長という立場にありました池田大作氏が七月三日に逮捕せられまして、七月五日から十七日まで勾留取り調べを受けたことは事実でございます。その取り調べに際しまして、まあ府警と検察庁との間にどういう話し合いがありましたか、今お話がちょっとございましたけれども、そのような事実は私は承知いたしておりませんが、買収というような容疑でその間取り調べを受け、その後池田氏につきましては、二十一名余りの者と共謀——共同正犯になるわけでございますが、共謀の上で戸別訪問をしたという犯罪事実について起訴を受けましたことは、御指摘のとおりでございまして、その事件が、その後取り調べの結果、本年一月二十五日、大阪地方裁判所で、池田さんにつきましては無罪の判決を受けており、その判決に対しまして控訴をいたしておらないので、その事件が確定して今日に至っておりますことは御指摘のとおりで、私も承知いたしております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 八日に府警のほうから検察官の手に移って、夕飯を食べていない。もう行くとすぐ取り調べた。検事のほうとしては、夕飯は食べたものと思った。事実は食べていなかったわけですが、こういうときの責任は一体どっちにありますか。拘置所のほうか府警なのか。検事に責任がないものか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 検事に責任があるか、警察に責任があるかという  ことに入ります前に、まあ食事までもさせないで取り調べることが便宜だと考えるはずがないのでございまして、おそらくは、弁解しておるように、食事をしておったものと思って、短い時間の間に能率的に調べを進めたいという考えから調べたものと思うのでございますが、そういう錯誤に基づいてそういう結果になったと思うのでございますが、そのための責任ということになりますと、過失責任ということになろうかと思うのでございますか、これは、まあ責任というふうに表向き申すべき筋合いのものでありますかどうですか。その辺は、もしそういうことが責任問題であるということであるならば、多分に感情問題が入っておるのじゃないかというふうにも思うのでございまして、検察官の考え方といたしましては、食事などを抑えて取り調べをしょうなんという、おそらく地検のその局に当たりました検察官がそういう考えを持っておりませんことは当然でございますが、検察庁の考え方といたしまして、さようなことはさらにないということを申し上げざるを得ないのでございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 まあ私、今ここでそれを明らかにして、責任をとれという意味ではありませんけれども、もう引っぱってきてそのまま取り調べを開始した。夕飯は食べたと思った。このような取り調べ方では私は困ると思うのです。今後のために、そういうことのないように、民主的に取り扱ってもらいたいと思うのですよ。それじゃ、夕食を食べさせて下さいと言わなかったほうに責任がある、こんなふうにとるものもあるかもしれませんけれども、調べられるということになれば、向こうの意見を尊重するわけです、権力があるのですから。いつかは食べさせてくれるだろうと思ったところが、食べさせてくれなかった。こういうことは厳重にあってはならないものだと私は思う。刑事局長、今後注意してもらいたいと思う。  それから、大体夕飯はああいう所では普通何時になっているわけですか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) これは、拘置所あるいは刑務所という施設におきましては、一定の時間をきめまして食事をすることになっておりますが、拘置所内ではなくて検察庁、あるいはすでに勾留状が出ておりましても、おります場所があるいは検察庁とかあるいは警察であるというような場合には、取り調べの便宜等もありまして、一段階ついたところで食事をするというようなことが普通行なわれているのじゃないかと思います。いずれにいたしましても、これも、突拍子もない時間に食事をさせるなんということは、非常識きわまることでございまして、御指摘のように、十分注意しなければならぬ問題でございます。まあ私どもとしても、夕飯であるならば、夕飯らしい時期にそれぞれ取っていただくというような形で仕事をしていかなければならないというふうに考えております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 それから、夜間における検事の調書をとる取り調べですが、普通何時ごろまで行なうようになっておりましょうか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) この取り調べの問題も、法律上何時までというふうに制限した規定はございませんのでございまして、過去におきましては、夜半にまで及んだこともあるのでございますけれども、最近におきましては、その事件々々によって、もちろんある時間をこえたら違法だというような考え方はいたしておりませんけれども、大体において、朝から調べておるというような場合には、それが通計いたしまして十時間をこえるというような調べ方は適当でない。それからまた、夕方から調べるといたしましても、調書をとる都合で一時間延びるということはありますけれども、大体午後十時をこえるようなことはないような取り扱いに普通はなっております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 消灯は河時なんでしょうか。消灯時間というのはあるそうですね。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 拘置所に行った場合の拘置所の消灯時間ということだろうと思いますが、私、今矯正内部の取り扱いにつきましては、詳しいことは存じませんが、未決勾留中の者につきましては、勾留の目的が取り調べのために入っておるわけでございますので、それとは一応切り離しまして、今私が申しましたような標準で処理されておるのではないかと考えております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 刑事局長のお話によれば、十時前に終わるのが普通の常識である、これは、一般世論を聞いてみてもそうだろうと思うのです。ところが、池田氏の場合には、十一時まで調べられたことが三回もある。これは、私は人権侵害だと思うのです。常識を逸脱しておる。こういう調べ方は今後あるべきでないと思いますが、御意見はどうでしょうか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 先ほど申しましたように、調書を作るために少し延びるとかいうような、事件ごとで相当であるか行き過ぎであるかということを判断しなければなりませんけれども、一般抽象的に申しますならば、仰せのとおり、やはり十時を過ぎて長く何回も調べるというふうなことは穏当な措置とは思われませんので、特にこの種の事件につきまして、今後もあることでございますので、十分戒心して参りたいと思います。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 次に、検察官が調べる場合は、何人で調べるのでしょうか。規則があるでしょうか、ないでしょうか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) これは、規則はございませんが、取り調べをいたします事件にもよって異なると思いますけれども、通常の形は、検察官が一人で取り調べるのが常態であると思います。ただし、その場合には、立ち会いの書記官がその席に同席をいたしますのがこれまた常態でございます。この立ち会い書記官を同席させますのは、その取り調べが水かけ論になって、言った、言わなかったという問題も将来起こって参りますので、やはり立ち会い書記官に立ち会わして、その間の事情を明らかにしておく必要もあるのでございます。そういう意味で、大体におきましては、検察官が被疑者に向かって取り調べるのでございますが、その席には立ち会いの事務官がいる。それからなお、拘束されております被疑者であります場合には、戒護に当たります拘置所職員も同席する場合があります。事案によりましては退席させることもありますが、その辺は、事案々々によって、検察官の判断できめられておると思います。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 この池田の場合には、大村検事と古川検事と二人でたびたび調べていたのです。これだけならば、そういうこともあるかと思うけれども、先ほど申し上げたように、夕飯も食べさせなかったことがある。夜十一時過までもたびたび調べたというようなことから推して、二人がかりでせめぬいたということは、それは民主的じゃない。非民主的だ。そういうことが普段行なわれていないというのが普通であるならば、二人がかりで調べるということは、異例中の異例になると思うのです。それから推してみても、これは、ある非常に感情をもって調べたということが私は明らかであるように思われるのですけれども、どうですか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 感情を持って取り調べに当たるというようなことは、厳に慎まなければならない調べの態度でございます。今、池田氏の取り調べに当たって、二人の検事が調べたということでございますが、二人の検事が同席して、同時に二人が質問を発して調べるというようなことは、ちょっと考えられないのでございますが、本件におきましては、共犯者と目せられている人が二十名、起訴状を見ましてもあるわけでございます。こういう方との間の供述の食い違い等によって、他の事件を担当しておる検事が池田氏にも質問をしてみたいという場合があり得ると思うのでございます。たまたま池田氏を担当しておる検事の所に他の検事が入ってきて、池田氏にその間の事情を自分の担当事件に関連して聞くというようなことはあり得るのでございまして、そういう場合があったから、その調べ方が非民主的であるというふうには私は考えないものでございます。ただ、その二人で交互に質問をすることによって被疑者に威圧感を与えるというようなことにその場の空気がなりますようなことは、極力避けなければならぬ。これが調べに当たりまして心すべき事柄だと、私どもは先輩から教えられておるのでございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 四月八日には、古川検事も大村検事も、同一問題を同時に交互にせめている。二人がかりでせめて、そうして調書は一つしか取っていない。こういう問題は、今ここで、それは民主的であるとか、非民主的だとか言って、あなたと幾らやってみてもしょうがない話ですが、こういうことが今後行なわれないように、絶対ないように、私は強くあなたに要望するわけです。  次に、手錠の問題ですが、政治犯等に対しては、普通手錠はかけないというふうに聞いておりますが、手錠の規則はどういうふうになっておりますか、手錠をかけるかけないということは。政府委員(竹内寿平君) この手錠をかけるという問題は、身柄を拘束した場合の戒護の問題でございまして、身柄が法律上拘束されておる場合には、その自由が奪われておる状態でございますが、この施設の中におきましては、もちろん手錠をかけるというような場合は特別な場合で、普通はかけておらない。そのかわり、ちゃんと入口のところにかぎがかかる、こういう状態でございますが、その施設から外へ出ました場合にどうなるかという点でございますが、公判廷におきましては、御承知のように、刑事訴訟法で、公判廷においては身柄は拘束されないという規定がございます。二百八十七条でございましたか、ございまして、手錠をはずされるわけでございますが、その他の場合につきましては、戒護の責任者として、拘置所の当局としては、手錠をはめてよろしいということを看守に申しているわけであります。これは監獄法に規定がございます。そこで、検察官の取り調べ室において、その戒護と取り調べの必要とのかね合いでどういうふうに解決するかということが、この検察官の調べ室における手錠の問題でございます。これは決して最近の問題ではなくして、すでに前からあった問題でございます。もし検察官の調べ室から逃走するというような問題が起こった場合に、その責任は、検察官ではなくて、やはり戒護の責任者にあるという関係もございまして、そこの辺は、検事から手錠をはずせと言われましても、戒護の責任を持っております拘置所職員としては、そう簡単に、手錠をはずす、そして責任は自分のところへかかってくるというような状態でございますので、その間はなかなかむずかしい問題でございますが、その点につきましては、検察関係のほうの私のほうと、拘置関係を取り扱っております矯正局との間でたびたび話し合いをいたしまして、問題の解決に資しておるのでございます。そういう通牒もすでに何回も出ておるのでございますが、そういう人権の問題という観点からその問題を取り扱った通牒と、もう一つは、そういう手錠をはめた状態で供述をしたことが、その供述の任意性に影響があるのではないかというような考え方から、二つの観点からして、特に、自殺のおそれがあるとか、逃走のおそれがあるとか、乱暴をするおそれがあるというような、特殊の事情がございませんで、しかも、手錠をはずしてやるのが相当だというふうに思われます場合には、検察官から拘置所職員に、戒護職員に要請して、戒護職員が手錠をはずして、そうして調べる、こういうふうにいたしておるのでございます。選挙違反のようなものにつきましても同様な取り扱いをすることが通牒で示されておる次第でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 監獄法の十九条ですか、戒具の使用については、「在監者逃走、暴行若クハ自殺の虞ルアトキ又ハ監外ニ在ルトキハ戒具ヲ使用スルコトヲ得」というふうにあると思うのですね。戒具を使用することができるという、いわば戒具を使用しないのが建前のような気がするのてす。しかも政治犯——凶悪犯じゃない、何百万世帯の指導者である人が逃走するわけがない。りっぱな紳士なんです。それを逃亡のおそれがあるとか、自殺のおそれがあるとか、そういうような理由で、手錠をかけて取り調べるということは、私は間違いじゃないかと思うのです。しかも、七月九日には、取り調べ室で取り調べ中も手錠をかけたままだ、こういうことが事実あれば、これは許しがたい職権乱用と思うのですが、このことについては聞いておりませんか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) まず、この監獄法に、「戒具ヲ使用スルコトヲ得」と書いてあることは、原則として使用しないのであって、使用してもよろしいというふうに読むかどうかという点でございますが、これはそうでなくて、戒護の責任があるのだから、戒護の職員であるものはそこまでやって、念には念を入れて、逃走等のおそれのないようにしておいてもよろしいのだということを許容しておるのでございまして、はずしておるのが原則だというのではないわけであります。それは、事柄の性質上、先ほども申しましたように、身柄の拘束というのは、自由を拘束しておることでございまして、拘束されておるのが原則でございまして、そういうふうに監外に出た場合、つまり施設外に出た場合に拘束しておいても、そうしておくことが責任を全うすることになるという意味において、監獄法というのは古い法律でございますので、今響くとすれば、善き方も違えざるを得ないのでございますが、そういうふうに私どもは理解しておるのでございます。  それから、池田氏の取り調べに当たりまして、検察官が調べ室で戒具をかけたまま取り調べたかというお尋ねでございますが、この点につきまして、判決を私ども読んでみますると、そういう主張に対しまして、裁判所がそれを認めたような判決がございますので、私どもとしても、大いにこの点を関心を持ちましていろいろ事情を調査したのでございますが、担当の検察官は、その当時も公判で証人に呼ばれておるのでございますが、その当時も、取り調べに際して手錠をかけたまま調べたことはないというふうに申しておりますし、今日私どもが取り調べをいたしましても、なおそういうふうに申しておるのでございまして、この点は、私どもとしましては、検察官の言い分のみを信頼するのではございませんが、通牒もあり、今日選挙違反を取り調べる際に、手錠をかけたままでやるということは常識的にもない程度に、この指示は徹底しておるつもりでございます。そういう点を考えてみますと、特に自殺のおそれがあるとか何とか、特別な事情がありませんこのケースにおきましては考えられないので、やはり検察官の述べておるのが真相であろう、これはどういうことであろうかというふうに疑問を持つわけでございます。なお、いろいろと聞いてみますると、裁判所がそういう判決をいたしましたのは、もちろん、被告人側からそういう申し立てがあったことに対して看守たちを五名か証人として調べておるようでございます。その調書も私ども読ましてもらいましたが、その答えはすこぶる抽象的でございまして、はずした記憶がないからそのまま調べたのじゃないかといったような式のもありますし、その辺がすこぶる晦冥でございます。裁判所の判決のごとく、直ちにそういうふうに結論が出得るものかどうか、私も法律家の一人として、ややこの認定につきましては疑わしいのでございますが、そういう裁判の結果もありますし、被告人側からそういう申し立てもあるのでございますけれども、一方取り調べの衝に当たりました検察官は、はっきりとその点を否定しておるのでございまして、真相のほどはわかりませんけれども、私どもとしては、そういうことはなかったものというふうに考えざるを得ないただいまの状況でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 あなたのほうとしては、そういうことはなかったと信じたいでしょうけれども、その立場はわかりますけれども、もう被告人それぞれに当たってみると、これは、みんな同じようなことを言っておるのですね。その中の藤井義勝ですか、これは一日中、取り調べ中も手錠をかけられ、しかも、いすへ縛りつけられた。だから汗が出てもふくことができなかった、そんなことを忘れるわけはないのです。調べられたほうがそういうことを言うことは、確かにこれは手錠をかけてやったのだと私は推察できるわけです。しかも、池田氏の場合の七月九日には、手錠をかけたまま、何の用もないのに、大村検事の別館のほうへ連れ出して、別館へ行って調べるかと思ったら、全然調べもしないで、町の中をこれ見よがしに見せびらかして、お前らもこういうことをやるとこういうことをするぞと言わんばかりの態度で、縄つきにしてまるで引きずり回すような格好だった。何も調べないで往復させた。こういうことがあったのです。これは、別館を往復したことは、刑事局長御存じですか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 私どもは、報告を見て判断をする以外に方法はないのでございますが、検察庁からの報告によりますと、それを私、頭から検事が言うのだからそれを信じて、ほかの人の言うことはみなうそだというふうな、そういう考えではここでお答え申しておらないのでございまして、そういうことを言う以上は、辻委員も御指摘のように、少しはあったのじゃないだろうかといったような、むしろ猜疑心を持ってこの事件の取り調べにいろいろな角度から当たったわけでございますけれども、問題は、手錠をはめられたという被告人の言い分と、かけたことはない、全部はずしましたという検事の言い分と、まっこうから対立している。それをどちらに軍配を上げるかということで、戒護の職員がその当時の事情を調べられたわけでございますが、その調べた供述を見てみましても、手錠をかけたまま取り調べるのが原則である、手錠をはずすには上司の許可がいるというようなことを言っている証人があるのですが、拘置所から離れて検察庁の調べ室へ来て、上司の許可を受けて取りはずすということも、これはまた言い分としては言い分かもしれませんが、現実に合わない供述のように思います。  それから、学会の事件で、そんな手続を、上司の許可を受けるというような手続をとったおぼえがないというようなことを言う人もいますし、第一、吉川検事なるもののところへ連れていったかどうか記憶がないというようなことを言っている証人もありますし、どうもそこら辺がはっきりいたさないような状況でございまして、真偽のほどを確認できない。重ねて申し上げますが、そういう状況でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 別館を往復したことは、検事も認めているじゃないですか。別館へ行った覚えがあると、認めているはずです。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 別館を往復したことがあるかどうか、私は存じません。しかし、場所的な状況を見ますと、検察庁は狭いものですから、裏のほうに別館があるわけですが、その裁判所庁舎と別館とをはさんで拘置所があるわけでございまして、その間しばらくの間をもし手錠をはめたまま通したというようなことになりますと、これはまあ検察官の責任というよりも、拘置所戒護職員の取り扱いの問題になると思いますけれども、人目につくようなことはなるべくさせないというのが、拘置所としても取り扱い上のあれでございまして、そういうことがあったかどうか、私は存じませんが、かりにあったといたしますと、やや扱い方が穏当を欠くのじゃないかという感じもいたす次第でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 何の用もないのに、ただ往復させる、人が見ているところを往復させるということは、これはもう許しがたい私はことだと思うのです。これも過ぎたことでありますし、これ以上あなたに私は申し上げませんけれども、今後一般の中に、こういうことが間違っても起こらないように私はしていただきたいと思うのです。  次に言いますが、取り調べ最中、非常な威圧をかけて、お前は全責任を負ってやったと言えばすぐ出してやるけれども、そうでなければ、前会長の戸田を引っぱるとか、あるいはお前の勤めておる大倉商事へ手入れするとか、学会の本部へ踏み込むとか、そういうようなことを再三再四言って、何とか池田をしようという、ほんとうにそれは、検事側としては悪らつな方法で取り調べたということを私は開いておりますが、これこそ真昼の暗黒であるし、この事件だけではなくて、たびたびそういうことを聞いておるから私は申し上げるのであって、こういう気配については、刑事局長は何も報告を受けておりませんか。これは問題になっておるわけだが……。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) そういう調べ内容につきましては、報告は受けておりませんし、また、辻委員も方々でお聞きになるということでありますし、私も方々で聞くのでありますが、それは、実際そういう場合も、行き過ぎがあるかと思いますけれども、また逆に、そうでも言わないことには工合が悪いというような、被告人心理と申しますか、そういう心理状態もあると思うのでございまして、調べの内容は、御信頼を願うほかはないと思うのでございますが、もちろん、だからといって、何でも言いたいほうだいなことを言っていいというものじゃございません。やはり検察官としての品位を保ちつつ取り調べに当たり、これは、もう絶えず私どもも検事に指示しておるところでございますし、監督者は常に、個々の事件ごとに、そういう点は常に注意しておるところでございまして、昔ならいざ知らず、今日の選挙関係の被疑者を取り調べるにあたって、まあ聞くにたえないようなことや、今御指摘のような言葉を野放図に使うというようなことは、ちょっと想像もできないくらいに私は考えておるのでございますが、なお今後も、選挙は繰り返すわけでございますので、十分注意を喚起いたしたいと思います。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 刑事局長は、中に入って調べられたことがないから、実際はわからないのではないかと私は思うのですけれども、出てきた人たちに一人一人聞いてみると、内容は違うけれども、検察官の調べる法則というものはなるほどというひとつのあれがくみ取れるわけですよ。まあ学生なんかは、お前らの学校に通知して、退学させてやる、今言えば許して出してやる、こういうことも言われておるんです。会社に知らせて、お前を首にしてやる、そういうことも言われておるんです。また、お前が言わなければ、支部長をみな引っぱる、池田氏の場合なんか、特に、恩師を引っぱる、学会の本部に手入れをするとか、勤めておる会社の帳簿を調べるとか、そういうようなことまで、しかも、親友である青年部長も引っぱるとか、お父さんを引っぱるとか、あらゆる大手からめ手からおどしつけて調べた形跡が十分にある。私はここで考えるのに、ひとつ創価学会の大将を引っぱってやろう、じゃないかというような空気があったのじゃないか、こういうことを推察するわけだ。  ここであなたは、今、そういうことはないとおっしゃるかもしれないが、まあいろいろこういう一人一人に聞いてみると、なるほどなるほどと思うような、内容は違うけれども、検事の顔が目に浮かぶような調べ方が浮かんでくるわけです。これは、こういうことがあれば、職権乱用もはなはだしいことであり、偏見でありますから、こういうことが今後絶対にないようにあなた方のほうでは注意してほしい、こういうわけです。それからこれは、一月二十五日に無罪が決定いたし、裁判官が検事調書を全部池田氏の場合却下しております。こういう面から見ても、今後の取り調べ方針というものを注意してほしい。  もう一つ質問するのですが、無罪になったような場合に、長い間監獄へ行ったり、あるいは取り調べられたりした場合に、無罪ということが判明した場合に、国家の補償はどういうふうなことになっておりますか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) ただいまのような場合におきましては、刑事初値法の定めるところによりまして、国としての補償がなされるということになっております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 それは、裁判を起こして、裁判官がきめるわけですか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) そのとおりでございまして、裁判所に請求いたしまして、裁判所が額等をきめることになっております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 無罪が判明した以上は、自動的に何日分幾ら、一日幾らというふうな規則はないですか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) ただいまは、そういう制度はありません。一日幾らという単価積算のあれはありますけれども、その事件の事情に応じて補償する——一種の民事裁判によって責任を明らかにするわけでございますので、やはり裁判所が裁判によってそれをきめるというのがただいまの立場でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 そこで、私なら私が犯罪容疑を受けて長い間取り調べを受ける、あるいは監獄へ行っている。そうして、最後に無罪ということになって、調べた結果、お前は十分に疑いを受けるような要素があったんだから仕方がない、こう言って全然国家賠償がない場合はありますか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) そういう場合、これは戦後刑事補償の範囲が非常に広く認められておるのでございますけれども、それにいたしましても、自白などがありまして、わざと虚偽の自白をしたとかいったような特殊な案件の場合には、補償されないという場合が——私こまかくここで御説明しにくいのでございますが、刑事補償法の各条文の中にそれぞれ規定があるはずでございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 もしそういうようなことがあれば、私は、刑事補償法ですか、これは改めるというところがたくさん出てくるんじゃないか、こういうふうに思うんですが、竹内さんは刑法の改正の大家でもあるし、そういう点、こういう点を直さなきゃならないんだというようなお気づきになっている点があるかどうかお伺いするのです。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 刑事補償法は、今申しましたように、昔と違いまして——昔はもう、自白をしておりますと、結局は無罪になりましても、その自白が真実であろうと、虚偽であろうと、そういう場合には適用からはずされてしまうというようなことで、補償の範囲が狭かったのでございますけれども、ただいまの法律は非常に幅の広いものになっておるわけでございます。これはまあ、補償するというのも国でございますし、検察権の行使ということも国の機能としてするわけでございまして、ちょっと検事が間違えればすぐ補償であるというようなことになりましたら、検察権は萎靡してしまうと思いますし、その辺のかね合いがむずかしいのでございますけれども、そういう観点からこの刑事補償法を見ますると、まあまあよくできた法律じゃないかというふうに、私個人としては見るわけでございます。  ただ、ここで足りないという点を申しますと、検事が捜査をして、そのために身柄を拘束する場合があるわけでございますが、その結果、調べてみると犯罪の嫌疑が十分でないというようなことから、結局起訴にも至らないでしまう場合、それでも新聞等には、何々の容疑で拘束されたといったようなことが新聞に出る場合がございます。そういった人たちの補償が、この刑事補償法では考えられていないわけであります。そういう人たちに対しましても、国としてはある程度の補償をするということは当然であるというような考え方から、捜査中の事件につきましても若干の補償をするという——これは法律になっておりませんけれども、大臣訓令に基づきましてそういう処置もただいまとっておるのでございまして、この場合に、検察官の処置がどの程度にいけば補償に値するか、どの程度まではやむを得ないかというような点等も考えまして、規則もてきておるのでございますが、そういうことで、検察は検察として健全に活動してもらわなければならぬ、同町にそのためにこうむった被害は国として十分みていくということでこの辺のバランスはとっているわけでございます。その観点から見ますと、この補償法について特に今規定を改めなければならぬという点は私はないというふうに考えております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 法務大臣に最後に決意をお伺いするわけですが、今大阪事件を通して大臣も聞いておられたように、数々の職権荒川と思われるようなことが問題になってきたわけです。松川事件にしても、吹田事件にしても、いつも検察陣の問題になってくるわけですが、また今後、選挙も控えておるし、調書のとり方、検察官のあり力に対しては、厳正でなければならないと同時に、民主国家の検察官として行き過ぎがあってはならない。そういう点に対して、大臣は今後どういうような方針で取り締まっていかれるか、あなたのこの事件に対する感想と決意をお伺いいたして、この事件は終わりにしたしと思うのです。

植木庚子郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(植木庚子郎君) 先刻来の質疑応答、私も拝聴いたしておりまして、辻委員の仰せになりましたような、いわゆる職権乱用というふうに認定されるような事態があったかどうかということについては、必ずしもまだはっきり私として承服しがたい点もございます。しかし、いずれにいたしましても、そうしたことを外部の方々、第三者の方々に疑われるような行動があったのではないかという疑いは確かにある。職権乱用と言えるものかどうかわかりませんが、そういうふうにお感じになっているとすれば、それに近い事実があったのじゃないかというようなことも考えざるを得ないと、こう思いますので、先刻答弁申し上げましたとおり、こうした民主政治の基本になる選挙が、ほんとうに自由に公正にとり行なわれるということが大事なことでありますから、かねがねも注意いたしておりますが、今後も十分注意していきたい、こう思います。ことに、今回の近く行なわれる参議院選挙は、定例のことでもありますから、まだ日にちもございますので、全国の関係の検事を招集いたしまして、東京で近く今後の方針等についての打ち合わせをしよう、こう思っておりますから、こういう場合には、互いに過去の事実等も反省し合って話題に供して、十分に間違いのないようにして参りたい、かように考えるのであります。何と申しましても、大事な選挙でありますから、その選挙というものが、ほんとうに国民も明朗に投票もできる、また間違いも起きないように、国民みずからも十分注意をし、取り締まりの当局も行き過ぎになってそのために選挙が決していじけるというようなことにならないように、十分ひとつ私からも話しもし、みんなでも検討させようといったように考えておる次第でございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 大阪事件のことは、私はそれで終わりにいたしまして、次に村八分事件がたくさん起きておりますので、しばらくお聞きしたいと思います。  今、お祭りの寄付をしない、神社仏閣に寄付をしないということで、村八分事件がほうぼうで起きているのですが、神社に対する寄付をしないというような理由から、部落が決議してこれを仲間はずれにするというようなことがあれば、これは刑法二百二十二条、二百二十三条等に該当する、脅迫罪になると思うけれども、御所見はいかがでしょうか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 仰せのとおり、村八分にもいろいろ態様があると思うのでございますが、今御指摘のように、村八分で部落、町内でその人とはつき合いをしない——それが制裁の目的であるといたしましても、特定の人を共同生活からはずしてしまって、集会には呼ばない、一緒には行動しない——いわゆる絶交でございますが、そういうようなことをした場合には、その態様によりまして刑法上の脅迫罪になるという場合があるということは、検察実務におきましてもそういう処置をしておりますし、最近の判例ではございませんが、昭和三年の判例にも、その点を積極的に認めました判例もあるわけでございまして、学者もその点については異論はないと私は思っております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 理由のいかんを問わず、村八分にして困らせるなんということは、これは法律違反だと私は思う。ところが、当然これはゆゆしい人権問題だと思うようなことも、警察では真剣に取り上げない。しかも、起訴をするべきであると思っても、みんな不起訴になっている。まあ警察のほうでは、そういう寄付行為なんかで起きた問題はほっておけというような訓示でもしてあるのかどうか、警察のほうにお伺いしたいですが。

新井裕警察庁刑事局長

○政府委員(新井裕君) 別にそういうような指示はいたしておりません。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 それでは、そういう問題が起きた場合には、厳正に徹底的にやることをあなたは望むわけですね。そういう方針なんですね。

新井裕警察庁刑事局長

○政府委員(新井裕君) 村八分という罪があるわけではございませんで、それが刑法にいう脅迫罪に当たるかどうかということは、個々の場合について検討してみなければならないものと存じます。したがいまして、いろいろの態様のある村八分は、すべて違法であるというふうに言い切れないというのが、今までのわれわれのほうで、訴えられて、捜査をいたしまして、検察庁に送って、あるいは起訴されました、あるいは起訴されなかった事例などを見ましても、いろいろございますが、村八分はもう徹底的にやれというようなことは指示はいたしておりませんし、やるなということも指示をいたしておりませんが、個々の行為についてそれが明らかに刑法に触れる行為である場合には、捜査をすべきことは、われわれは当然と考えております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 私は、今二、三実例をあげて、あなたの御判断を願いたいと思うのですが、これは栃木県に起きた村八分事州——栃木県の那須郡馬頭町、被害者は小高忠吾以下六名、加害者は小高八十八以下七名。  この概要は被害者はいずれもこの部落に居住しており、信仰及び経済的の理由から同部落所在の三鳥神社改築に対する寄付を拒んだところ、昭和三十六年四月六日、同部落加害者渡辺兼助宅に被害者小高忠吾等を除く全部落民が集まって部落総会を開いて、被害者小高忠吾等は神社に寄付をしないから組抜かしにすれば困って寄付を出すだろう、しかし組抜かしをすると法律に違反するから、われわれが組を抜ける、こういうふうに共同絶交を決議し、次のとおり村八分を通告してきた。  (一) 念仏講中の分離(講中財産の不法売却)  (二) タバコ耕作組合の分離——タバコの作付の割当がこないとタバコが作れない。専売局は組合を相手に交渉しているので、これから抜かされると生活にすぐ影響するわけです。  (三) 自治会の分離——行政上の通知がこなくなる。回覧板なんかこなくなる。早場米を供出しろとか、その他いろいろ、税金とか農薬とか配給物なんかがわからない。  (四) 農協実行組の分離——肥料や種や苗なんかは組合一括だから、それから抜かされるともらえなくなる。  (五) PTAの分離  その他一切の村のつき合いを拒否され、露骨な圧迫を加えられて、精神的経済的に大きな打撃を受けて人権を侵害された。  そこで、困り果てた被害者の小高忠吾外一名が、四月二十二日に馬頭警察署の「困り事相談所」に出向して善処方をお願いしたところが、担当の次席から、君たちが寄付しないから起きた問題を警察へ持ってくるやつがあるか」、こういうふうにかえってたしなめられ、また、「君たちが寄付さえ出せば解決するのだから、寄付を出せばよい」と反対にしかられた。被害者らは、仕方なく、宇都宮の法務局の人権擁護課へ出頭して善処方を依頼したが、聞いただけで調査はしてくれなかったので、加害者の圧迫行為はますます露骨になってきた。で、この報告を聞いたある議員が馬頭署に出向いて、署長次席に対し、被害の事実は明らかに刑法の脅迫罪に該当する、かつ放置すれば集団の流血の惨事も起きかねない旨を述べて善処方を要望したのに対し、署長はあくまで民事不介入の原則を云々し、「告訴がなければできない」、また、「警察側の立場は、被害者に味方すれば部落民に恨まれるし、部落民に味方すれば被害者に恨まれるし、何しろいなかはやりにくいですよ」、こういうふうに言って取り合ってくれない。そこで、被害者と同道して宇都宮人権擁護局に出向してこの善処方を要望したところが、担当の人権擁護課長は、「先般法規が改正になって、人権問題は法務大臣に報告して許可がなければ調査できない」云々と、こういうふうに言ったのです。で、すぐに法規を取り出して問答の末、それでは直ちに調査する等の始末、その後も事件の解決がみられないので、宇都宮地検に告訴したが、なお未だに事件の解決がみられない。宇都宮地検に告訴したけれども、これも不起訴決定です。  それから、熊本県に起きた村八分事件も参考に聞いていただきたい。これは、昭和三十六年三月二十六日神式行事に参加を強要されて、これに応じなかったので、部落民の反対に会い、左記の書類に署名せよと迫られ、これを拒絶したため、村八分になった。  一、村のすべての権利を放棄します。  一、村のことについては何とも申し上げません。  一、現地の市会議員に依頼し、部落民と話し合ったことに対し、部落代表から、勝手に部落民を集めた代償として、酒三升と日当計五千円を要求され、被害者はやむなくこれを支払った。  四月六日夜、宮崎の原野二反、牧野一反の耕地権を無断で部落民に入札に付し、麦の収獲後は土地の使用を禁じた。  四月十二日熊本地検に告訴したが、結局これも不起訴になっております。こういうふうに、生活に直接影響があったわけですね。  これは愛媛県にも一つあるのです。昭和三十五年十二月二十五日部落会において被害者一同が神社費割当を断わったことに端を発して、部落民会から左のごとく決議された。議決文は、  一、大家常行——これは村会議員——より発言あり、部落民規約を実行せぬ人は交際一切を遠慮させてもらう旨申し出て、無理じいに承諾させた。  二、神社(部落)財産に関しては権利を放棄するよう要望あり、三名出席、「やむを得ぬ」と答えた。  三番目に、神社(部落)財産を使用した場合は、相当する額を出すことを及び道路、橋梁等を設置した場合には、通行税を徴収することを決定した。  これも法務局、警察に提訴したが、動かない。そこで、やむなく地検に告訴した。この問題も、地検では不起訴になっているわけです。  こういうふうに、本人にとってみると切実な問題であるし、寄付は自由なはずなんです。どの件もどの件も、みな不起訴になっているのですね。私が知っている、だけでも三十二件、一つも起訴されたのがない。一体これはどういう方針なのか、これでも起訴する必要ないのか、どうか、刑事局長の御意見を伺いたい。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) ただいまの村八分の点について御質疑があるということをちょっと昨日伺いましたので、どういう事例があるかと思いまして、いろいろ報告書を見たわけでございますが、この種の報告が実は一件もきておらないわけで、今お尋ねの宇都宮、愛媛、熊本等の事件につきましては、内容をつまびらかにいたさないのでございますが、そこで村八分事件についてなぜ起訴したいのかという点につきまして御疑念があるようでございますが、村八分と世上言われておるものが、常に通告する行為が脅迫行為になるかどうかということは脅迫になることもあるということは、先ほども申し上げたのでございますが、これも事件ごとによってきめなければならないことで、一がいに愛媛の処置がいいとか悪いとか、あるいは宇都宮の処置がいいか悪いかということは申し上げられないのでございますが、ただ村八分事件の内容を見ますと、やはり一つの部落なり町の、その地力の小さい社会の秩序に関する問題でございまして、そういう秩序を、合法であるか、非合法であるかは別として、乱した者に対して、大部分の人がそれを拒絶するという態度に出て、それが村八分というような形になってきておるんだと思います。そういうものを処罰することによって解決するのが一番村の平和を維持することであるかどうかということは、検察をします場合に、検察官がとくと考慮しなければならない私は問題だと思う。不起訴になったのがみな処置がいけないのじゃなくて、仲直りをうまくさせるような道を講じて処罰しないというような処置が、あるいは刑事政策に合致した処理であるかもしれないという気がいたすのであります。そういう場合、犯罪になるなら、みんな起訴しろというようなことは、私ども刑事政策の立場から、そういう考え方はとっておらないのでございまして、私どもの仕事は、要は結局社会の秩序安寧に寄与することが先決でございますので、その種の事件につきましては、特にそういう考慮をして処置すべきものと私は考えるのであります。したがって、今の三つの県で受理した告訴事件が不起訴になったということでございますが、その不起訴の事情等も調査いたしませんと、その取り扱いが適当であったか、そうでなかったかということの判断はいたしかねるのでございます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 調査はぜひしていただきたいわけですが、今私が申し上げたような、これがこのとおりであれば、これが事実であった場合に、私はほっておけない問題だと思うんです。社会問題だと思うんです。それに対して、警察官はどうしても今までの習慣で、村の顔役や村長や消防署長や、そういう人たちとは飲み仲間でもあるし、神社の祭りにも来て一ぱいやるほうだから、今度はあの一部の人は寄付しないというために、皆から締め出された場合に、その人の肩を持つということは、なかなかこれは人情、感情の上からできないらしいんです。だから、寄付したいと、お前のほうが悪いんだ、こういうふうに言っているくらいですね、警察官は。この難件が不起訴になった結果どうなっているかというと、ざまを見ろ、幾ら訴えてもだめじゃないか、こういうようなことをみんな言って、ますます泣き寝入りになっているというのが事実だとすれば、ますますこれはほっておけない重大な問題ですよ。私が言ったこのとおりであった場合に、やっぱりこれは不起訴のほうがいいとあなた思いますか。刑事局長の御意見はどうですか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 今御指摘のような事実に基づいて、不起訴がいいかどうかということでございますが、私はどちらとも言えないと思うんです。私がかりにその事件を受理した検察官があるとすれば、何とか村の平和を回復するような方向に、検察官としての手を尽くしまして、そうしてできることなら不起訴にしたい、こういう考えを持っております。しかし、その事件について、その衝に当たりました検察官が、どういう考えで不起訴にいたしましたか、あとはどうでもかまわぬというような趣旨でやったとは思われませんがどういうふうな処置をとって不起訴の処置をとられたかどうか、そこの辺は調査いたしてみませんと、何とも申し上げられないのでございますが、私がその衝に当たったといたしますれば、私は村の、部落の平和に貢献するような道をつけてあげて、その上で不起訴にして平和をかたいものにしていくというふうに処置すべきものだというふうに私は考えます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 今申し上げたように、やっぱりお前がどんなことをやってもだめじゃないか、こういうような気分で、せっかく告訴をしても、弱い者いじめされているような形になっている当局としては、これに対して、今あなたが言ったように、中へ入って、この寄付をしない人たちは自由なんだから、その人たちに対して部落の決議をしたり、誤って強制的にそういう処置をすれば、脅迫罪である、直ちに解消すべきであるということを、強く私は打ち出すべきじゃないかと思うのですよ。法務大臣どうですか。そういう方針で私はいくべきと思うのですが、大胆の考えをお願いします。

植木庚子郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(植木庚子郎君) 私の意見も、先ほど竹内刑事局長が申し上げたような考え方を多分に持つのであります。それは私も知った問題で、やはり富山県で小さい部落の中でのいわゆる村八分といったような問題がありまして、それを富山の法務局で、取り扱ったことをちょうど知っておるのです。その場合にも、脅迫になるかどうかという問題は、もちろん研究も人権擁護の立場からいたしましたが、しかし何といっても仲よくさせるのが第一だということで、両方の間に法務局が入りまして、しかも名古屋の上局も関与したと思いますが、入って、間を円満におさめて、そうして事なきを期したということがございます。そういう面から考えますと、やはりできることならば、犯罪になるという疑いが多分にあるけれども、ここで両方を説得して、村が円満にいくものならば、なるべくそれも不起訴になるようにして手続をした上で、不起訴になるようにするほうが、社会全体を明るくする意味において非常にいいのではないかというふうにも考えますので、やはり、先刻来何回も局長から申し上げておりますとおり、村八分というものはいろいろ態様があって、そうして、その態様の事実をよくつかんで、できるならば村の平和を一日も早く回復して、そうしていわゆる法律でもっていつまでも、いやこれは犯罪にならなきゃ承知しないのだということは、訴える側でも、円満にできるものならひとつ寛大な気持で反省していただく、また村全体も、今後そういうことをしないで仲よくやっていこうじゃないか、寄付しなくても仕方がないということにしようじゃないかと私はやるのがやはりいいのじゃないかと思いますが、しかし、ときどきの情勢で、事情でよく検討しなければ、直ちに村八分はもう厳正にやるんだということを方針とするのもどんなものかしらというふうに考えるのであります。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 私は何でもかんでも罪にして罪人を作るようにきびしくやれと、こういう意味で申し上げているのじゃないわけなんですけれども、家庭裁判所じゃないのですから、それはもう告訴されたらば、法律に従って、たとえ大ぜいであるといえども、あなた方のほうが間違いなんだから、このところはそういうことを言ってはいけない、平等にしてやるべきであるという線を強く打ち出してもらいたいと思うのですよ。出先の現地にまかせちゃって、そういうこともあるだろうし、ない場合もあるだろうしと、これでほっておいたのでは、ますますたくさんの事件が全国に起きてくると思うのです。そういうことに関して、何か一貫した方針を持って、そういうことが起きないように取り計らい方を指示するように私は考えてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。

植木庚子郎自由民主党法務大臣

○国務大臣(植木庚子郎君) そういう問題が役所側の耳に入って、いわゆる人権擁護の局なりの問題になれば、もちろんでありますし、検察庁の問題になりました場合でも、その事態を明らかにして、そうして適切な処理をするようにということは、これはひとつ機会があれば、こうして今回の国会でも問題になったのでございますから、出先の人たちに書面をもって知らせるなり、あるいは会合の際に連絡いたしまして、直ちに適切な処置をとれということは、これはもちろん私やりたいと思いますけれども、もちろん、辻委員の御質問の趣旨も、別に犯罪人をこしらえろという意味じゃないとおっしゃいますから、その意味において適切な処理をして、御意見になるべく沿うようにしたいと、かように考えます。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 適切な処理という言葉だけで終わらないように、寄付をしないということによって、部落なり、村なり、町なりから共有財産をもらえなかったり、生活に影響するようなことは、間違ってもないようにという、そういう線を強く出さなければ、適切な処置になって現われてこないと思うのです。そういう点を考えて、何らかの処置をとるように私はお願いしたいと思うのですが、刑事局長、ひとつ考えて下さいよ。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 今のような事件の処理ということは、刑事検察を担当しております部局におきましては、これはまあ刑事政策的な考え方からいたしましても、最も研究し、処置を適正にすべき票件でございまして、私ども、そういうことは常に先輩からも言われてきたことでございますし、もはや中央の会同で大臣の訓示とかいうような形で取り上げるべき問題ではなくて、検察官である以上は一つの大きな常識として取り扱うべき問題でございますので、その点についていろいろ被害者の立場から御批判もありましょうけれども、検察側としましては十分考慮しておる事項だと思います。しかしながら、今大臣も申されたとおり、適当な機会に適当な方法でそれぞれに指示を新たにするかどうかというようなことも検討いたしまして、適切な処置を講じたいと思っております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 それでは、寄付による村八分問題は、なかなか起訴されないということに対して私は疑問を持つのですけれども、今までの判例もあることですから、厳重に取り締っていただきたいと思うわけです。  最後に一つお聞きするのですが、今墓地の問題で、埋葬拒否をされて、そうしてお骨を二年も三年もかかえている人がある。私は、墓地、埋葬法によって、信仰が違うがゆえにそれを断わるということはできないはずだと思うのです。それを告訴してみましても、検事のほうでは二年も三年もほったらかしておいて手をつけない。お骨をかかえている人が私の知っているだけでも相当数いるのですけれども、これは何か検察陣としては、そういうことは触れるなというような考え方でも持っているのかどうか。一生懸命やっているけれどもまだそのときがこないのだと、こういうのかどうか。二年もかかって全然触れないということは、告訴しっぱなしということは、私はおかしいと思うのですけれども、刑事局長の御意見どうですか。

竹内寿平法務省刑事局長

○政府委員(竹内寿平君) 告訴事件が二年も放置されておるという状況は、いかなる場合でも申しわけないことでございまして、その点はとくと督促をさせなきゃならぬと思っております。ただ、墓地、埋葬法に基づいて、お骨をかかえておって埋めさしてもらえないという点につきましては、これは法律解釈上の問題がございまして、これはもうことごとく信仰上の問題でございますし、宗教の異なる者について、もしその異なる宗教の者が、異なる宗教のためにその宗教式典にも参加しないし、あるいは宗教式典を拒否するといったようなことがお互いにありますれば、これは宗教的な感情というものは、御承知のように、非常にまあ強いものでございます。そういう場合に、墓地だけは法律があるからどうしても埋めさせろというようなことが、はたしていいかどうか。法律にはいわゆる正当な理由というものがある場合には拒絶できることになっておりますが、この正当な理由の中にそれが入るかどうかということの法律解釈の問題がございまして、私どもも、その解釈につきましては、そういう場合には正当の理由があるというふうな解釈をいたしておりますが、またそれと違う解釈も実はあるわけでございまして、そういう解釈の問題がございますけれども、そのために処理をおくらしているとか、あるいは創価学会の人たちの申し出だからそういうものはほったらかしておくといったような分け隔ては、検察官にはさらにない。あくまで公正公平に事件を処理していく考えであります。ただ、先ほど申しましたように、処理がおくれておるという点につきましては、まことに申しわけないと思いますので、促進をいたしたいと思っております。

辻武寿無所属クラブ

○辻武寿君 これは千葉県にあった一つの例ですけれども、土葬なんですね。それで、お寺では埋めさしてくれない、拒否された。埋葬許可証をもらっておる。だけれども、墓地がないわけです。じゃあ役所で何とかしてくれるかと、役所でも何にもしてくれない。また、土葬ですから、ほっておくわけにもいかない。やむにやまれず自分の山に掘って埋めたという例があるのです。そういうのは、すぐ取り上げて告訴して、検事が起訴するのですね。そんなようなことは、どこから見たってかわいそうだと思う。それではこれをどこで解決してくれるのだ。お寺に断わられて、自分のところに埋めることはいかぬ、役所でも処理してくれない、しかも親子二人きりの女の家庭だという場合に、そういうことこそ、民主国家ならば、めんどうをみてもらいたいと私は思う。それを検事は起訴している。今度は埋葬拒絶ということになれば、二年も三年もほったらかしておくということは、私は納得できないのですけれども、矛盾があると思う。そういう点は、刑事局長も、起訴という問題もあるのですから、今後十分指導、監督して、スムーズに事が運ぶようにお願いいたしまして、きょうの私の質問を終わります。

松野孝一自由民主党

○委員長(松野孝一君) 他に御質疑もなければ、本件については、本日はこの程度にとどめます。  次回は四月十七日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十二分散会

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