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40回国会参議院1962/05/02

外務委員会 第21号

発言数
193
登壇者
11
会派数
3
開催日
1962/05/02

会議録

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) ただいまより外務委員会を開会いたします。  まず、委員の異動について御報告申し上げます。  昨日、野村吉三郎君が辞任され、その補欠として三木與吉郎君が選任されました。本日笹森順造君が辞任され、その補欠として吉武恵市君が選任されました。

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定の締結について承認を求めるの件、以上衆議院送付の両件を便宜一括議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 議題については同僚議員が間もなく質問をいたしますが、その前に、当面の問題で一つだけお尋ねしたいと思いますが、それは、先日アメリカの核実験についてお尋ねをしましたが、その後情報によるとアメリカが三十日以後中部太平洋のジョンストン島で行なうことを予定しておる核爆発の実験は、赤道以北の太平洋を飛ぶ民間航空機に影響を与えて、電波障害のために、爆発の一昼夜後まで航空の安全を保障し得ない状況にあると言われております。漁業関係といい、また民間航空といい、その影響は甚大と思いますが、政府はさらに強い実験停止の要求を行なうべきではないかと思います。これが一つであります。  便宜、続けてお尋ねをいたしますが、米国は、ライシャワー駐日大使を通じて日本政府の抗議に対する回答を寄せられたようでありますが、それによるとソ連が国際査察に反対する立場を変えて協定を結ぶ場合に初めて実験を中止すると言っておりますので、問題はかかってソ連の態度にあるという、そういう形のものとなっておって、これでは、なかなか日本の要望に沿うような線で問題が解決されることは非常に困難と思います。私は、むしろ早く実験停止を声明しまたそれを実行する国のほうが国際世論の支持を受けるのじゃないかと思う。そういう意味で、あちらがやるからこちらもやるということの際限のない悪循環じゃなしに、やはりしばらくじっとしんぼうして、実験はしばらくやらないという国のほうが、私はむしろ国際世論の支持を受けるのじゃないかと思いますので、そういう点で、さらに重ねてアメリカに交渉すべきじゃないかと思います。  それからもう一つは、今回の実験による公海使用が国際法違反であるという日本の主張は受け入れられないとこういう回答を今回アメリカはしておるようであります。しかし、長期にわたって数多い実験を行なって、航空機や漁業関係に被害を与えることが再三にとどまらないというような場合でも、なおかつ公海使用の自由は当然ということであっていいのかどうか。私はさきにも、政府に前回にもお尋ねしましたが、このような場合においては、国連の緊急総会の開会を求めるということが無理ならば、被害国として何らか国連に提訴といいますか、何らかの形で問題を提起するということも一つの方法ではないかと考えるわけであります。まあ一回や二回、いや、一回も二回もよくないですけれども、公海の使用の自由ということで、かりにそういうことがあったとしても、今回のクリスマス島あるいはジョンストン島におけるアメリカの実験は、おそらく少なくとも三十回に及んで、非常な長期にわたって、しかも、相当規模のいろいろの実験が行なわれると聞いておりますので、このような場合に、はたして公海使用の自由ということが無制限に許容されていいのかどうか、疑いなきを得ないのであります。したがって、これについても政府としては明白な態度を示すべきではないか。  それから続いてお尋ねしますが、この損害補償の問題で、たとえば民間航空の問題については日航がこの問題を提起するようですし、それから漁業関係はそれぞれの団体がまたそれぞれの要求をすると思いますが、損害を補償すればそれで問題は解決して、実験をすることは自由であるというような態度を相手方に求めさせるような形での損害補償の要求は、私は適当でないと思う。あくまで当面の世界の安全という立場から強力な実験停止の要求をして、結果として起こったことについての損害補償は、当然これは要求すべきでありますけれども、損害補償ということが先行して、実験停止の要請というようなものがむしろその陰に隠れるというようなことは、適当でないと思います。  以上の問題について、外務大臣の御見解をひとつ承りたい。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 今回のアメリカによる核実験がジョンソンストン島周辺においても行なわれるというこの問題について、私どもまだ確報を得ておりませんけれども、こういう場合に備えてのいろいろなわがほうのとるべき危険を避ける意味の措置というものについては、それぞれ指示を関係各省かなり協力いたしていたしております。ただ、どうしてもこの核実験をやめてもらいたいと、こういう問題につきましては、引き続きいろいろのルートで話し合いをいたしておるところでありまするが、お話しのございましたように、アメリカ側はわがほう口上抗議書による先方の回答を持ってきたわけでありますが、私はもとより、補償すればそれで問題は解決するというようなことでは絶対ないのであって、あくまでやめるということについて強く主張をいたしておるのでありますが、しかし、万一向こうがやめざる場合においては、少なくとも補償は要求しなければならぬ、こういう態度でおるわけであります。  公海を使うということは合法であるという先方の主張も、全くよけいなことを言ったもんであって、私どもは何も一時的に公海を使用することがいけないということを言っておるのじゃなくて、ああいう核爆発というようなものによって公海が占有される、それも反復して行なわれるというようなことについては、はなはだ遺憾なことであって、われわれはこれを認めがたいんだ、こういう趣旨を言っているのでありますから、この点の回答ははなはだ不満と言わざるを得ないわけであります。しかし、私といたしましては、何とか核実験停止に関する交渉がまとまる——まとまれば実験はしないとアメリカは言っているわけでありますその方向に向かいまして、またソ連も、アメリカがやっているからといってすぐ反復してやるというようなことを考えないようにと、そういう線でいろいろ話し合いをいたしております。まあできるだけいたしておるという点を御報告申し上げまして、さらに詳細の点は、これは外交関係でございますから、一応の時期を見まして申し上げることになろうかと思います。極力努力しておるわけであります。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 時期を見てというお話でありますが、時期を逸してはならないので、国連において何らかの日本の考え方を述べるということはできないのですか。それともう一つは、先ほどの漁業関係以外に、民間航空機にも重大な障害が起こるということが、反復して行なわれる場合には、相当問題だと思いますが、この点はどうですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) お話しのごとき国連の緊急総会を招集するということにつきましては、これは結果的には同じことでございまして、現にジュネーヴで話をしておるのでございますから、それを成功させるという方向へ行くことは結果的に同じでありまするから、その点についてはいかがかと思いますが、国連自身について、事務総長その他について、日本側の考え方というものをことごとく知らしめるという、こういう意味の努力はいたしておるわけなんでございます。  それから、公海使用によりまして航空機というようなものに関しての損害が出てくる、こういうことについては、今十分それに対する配慮をいたしておりまするのですが、それが出たあとには、これは当然十分な補償を取る、こういうことになるかと思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 アメリカのオドンネル太平洋空軍司令官がキャンベラの記者会見で、米国は核兵器を輸送できる航空機を日本を含む太平洋の基地に保持しているというようなことを述べたのが問題になっており、その後若干の釈明もやっておるが、やはりあとからの釈明よりも、やはり事実上アメリカがそういう軍事体制を作っているんじゃないかという印象が世界各国の危惧となり、特にアジア諸地域に心配の種をまいているようですが、外務大臣はこれに対してどういう御見解をお持ちですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 先般の空軍司令官オドンネルという将軍の言明というものについては、われわれははなはだこれを奇異に感じまして、さっそく国務省等にも問い合わせました。国務省並びに日本におります空軍司令官、これは否定したのでございますが、私どもとしては、それではまだ足らぬ。そこで国防省自身がこれを否定し、本人がこれを否定するということを要求いたしたのであります。まあそのとおりに処置をいたしまして、一応あの言明は誤報であるといいますか、誤り伝えられたいといいますか、真意をそのまま捕捉しなかった、そういうことでケリがついたわけでございます。別段従来と変わったことではなくて、あの言明がある背景には、非常に極東の緊張の状態が激しくなってきておる、こういうことではないというふうに私ども思っております。たまたま、何か質問に答えるのに、そういう質問を答えつけない方が質問に対して答えた、それが誤り伝えられたというふうに了解しております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 アメリカは、朝鮮事変以後、日本はアメリカにとって太平洋の軍事的防波堤だという考え方を推し進めてきておるようですが、アメリカの安全を保障するために、フィリピン、台湾、沖繩、南鮮、日本というようなところ、それから東南アジアの軍事協定を結んでいる国々をもって、そうして自国の安全をはかろうという反共軍事同盟を強化していく色彩が非常に強いのですが、私たち非常に心配するのは、ソビエト・ロシアに革命が起きてから後、日本はやはり今のアメリカの軍部が持っておると同じような構想で、満州、蒙古、北鮮、それから北支にかけて、いわゆる反共軍事防波堤というものを作り上げたが、これは秦の国が万里の長城を築いたと同じようなはかない一つの考え方であって、第二次世界戦争において何の役にも立たなかったのは事実なんでありまして、アメリカの今やっておるやり方というのは、太平洋戦争前における日本の軍部の大陸に築いた一つの軍事的防波堤の構想が、アメリカというものを主眼点として、太平洋の、ソ連、中共に接近したところの諸島あるいは半島に軍事的防波堤を築こうとするようなことになっておるので、そういう点において日本が重要な役割をしておるのじゃないかという印象が、アジア各国における、日本に対する警戒となっているのですが、それに対して、アジア諸国の動向に対して、外務大臣も非常に関心を持っておるようですが、外務大臣はどういうふうに思われておりますか。   —————————————

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) ただいま委員の異動がございました。苫米地英俊君が辞任され、その補欠として川上為治君が選任されました。   —————————————

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 私ども日本は、これは軍隊を持たぬわけまございますのですが、今日の世界情勢は、これは平和の方向へは向かいつつございまするけれども、全然軍事的なコンフリクトというものがないというわけではないのでございますので、わが国の安全を守りたいために日米安全保障条約というものを結びまして、われわれ経済、民生向上に邁進するという体制をとっているわけです。軍事的な問題については、日米共同して日本の安全を守る、こういう趣旨で安保条約というものができていることは、また皆様御承知のとおりでございます。さような趣旨でございまするので、私どもは、さような観点からいたしまして、今日の日本の繁栄をさらに築いていくように努力したい、戦争というものをなるたけ極東に起きないように、日本としても努力をしまするし、それと同時に、日本がまたそれに巻き込まれない、そういう方針を持っていきたい、こう思っておるわけであります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 戦争が終わったあとで戦勝国が非常に悩まされるのは、軍部の力をおさめる政治的な力というもの、国内体制ができないということがどこの国でも悲劇になるのですが、アメリカにおいても、国務省の中その他においては、ソビエト・ロシアなり中国に対処するのは、反共軍事的な防波堤よりも、むしろアジア諸国における貧困をなくさせるための未開発地の開発なり、アジアのおくれている産業を復興する、そういう点に資本、技術その他の協力をして、そうして不安定な状態に置かないことが第一だ、共産党の戦術による撹乱ができないような基盤を築き上げることが第一だというような見解もあるのであって、アメリカの極東政策の中には軍部の考え方が強く押し出たり、またそれと違う若干の考えを持っている考え方が出たりして、そういうものがからみ合って今のアメリカの極東政策となっているようですが、私たちは今一番心配なのは、ガリオア・エロアの問題でも、タイの特別円の問題でも、そういうアメリカの基本的なアジア政策というものに日本がずるずると引きずられていって、自主的な体制が外交にないのじゃないかということが心配なのです。第一に外務大臣にお尋ねしますが、この特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間にある協定に代わる協定、ずいぶん長たらしい、むずかしいタイトルですが、この締結、これに対する政府の今までの手続というものは、私は憲法違反ではないかと思っているのです。この協定の内容を見るのに、実質的には三十年協定を根本的に変えたものであります。前の協定は九十六億円を日本からタイに投資ないし融資して経済協力を行なうという方式を明記し、そうして国会も承認し、批准もなされているのですが、今度は無償で供与するという経済協力の方式を打ち出しておるのでありまして、この内容を見ると、まさに新しい協定にひとしいと思いますが、やはり外務大臣は、三十年協定とこの三十七年協定というものを比較したときに、これは前の協定と違って全く新しい協定だという考え方を持っておられるのですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 三十年協定の動かなかった部分があることは、御承知のとおりでありまして、二条、四条というのは動きませんわけでございます。したがって、その動かない部分にかわって新たに協定を結んだわけでございます。その変わった部分については新しい協定が結ばれた、こういうことだと思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 外務大臣は当委員会においてこの特別円問題の解決に関する説明をしたときに、「今般締結されました協定は、昭和三十年協定の第二条、すなわち九十六億円の経済協力に関する規定及び第四条の経済協力の実施のための合同委員会に関する協定にかわる新しい協定であります。」というふうに説明しているのです。外務大臣みずからが三十年協定にかわる新しい協定だということをもって私たちに説明しなければならないように、この協定というものは、内容を検討すれば、中身は、これは前には貸してやると言ってあったが、今度はただでやるというのは、行きと帰りほど違うので、全く変わったもので、あなたが前に正直に説明したように、新しい協定という見解に立っておるのじゃないでしょうか。前の説明が間違っているんでしょうか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 前のとおり申し上げているつもりでございますが、三十年協定で動かない部分、その部分は動きませんので、それにかわる部分、その部分については新しい協定を結んだ、こういうことで御審議をお願いしているわけでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 これは手品の種あかしみたいになりますが、外を包んでいる袋は同じだが、中身はいつの間にかすりかえられているという、これは日本のマキァヴェリズム的手品外交ですけれども、私はこういうことをやられては国会がたまらないと思うのです。憲法第七十三条の第三号に、「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」、このことはガリオア・エロアのときにも強調しましたが、この事前に承認というのが原則です。ただ外交技術上の慣例から「事後に、」ということもあり得るので、それだから「時宜によっては事後に、」、となっているのです。ところが、このごろいつの間にかこの国会を無視し、憲法を無視し、池田総理大臣はこの問題に対してもきわめて高姿勢で、私は独断でやったわけではない、国会の承認を得なかったが、関係大臣と十分打ち合わせをしたと答えている。関係大臣と打ち合わせすれば、憲法に違反しても国会の承認を得なくても、勝手に協定がやれる、こういう強引な基本方針のもとに池田・小坂外交というものは推し進められているのですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この七十三条にございます事前または事後というのは、いつに対して事前か、事後かということでございます。外交交渉をまとめまする場合に、やはり行政権を行使する政府が先方と交渉して調印をする、これは政府にまかせられていることでございます。したがって、調印をしたあとで、こうして国会に御審議をいただき、そうして幸いに可決をしていただきましたら、わがほうは国内法による手続は終わったということで、先方に通達するわけでございます。先方もまた国内法による手続を終わって、文書を交換いたします。そこで、この協定なり、条約なりというものはできるわけでございます。それ以後が事後ということになるわけでございます。したがって、今御審議をいただいているこの手続は、七十三条による事前の手続ということになろうと思います。しかし、たまたま何かの都合で、この協定なり条約なりが発効いたしましたその明後において御承認を求めるという場合も、これはないわけじゃないという想定のもとに、さようなことが書いてあると思います。いずれにいたしましても、国会にまずお諮りをする、こういう趣旨が第七十三条第三号の規定だと、かように了解しております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 国会は諮問機関じゃないんです。国の最高機関であると同時に、立法府です。国会の重要なのは審議権です。非常に官僚外交官の吉田さんにかわいがられたせいか、そういうくせが出ていて、非常に形式的にものを考えておりますけれども、形式的な手続上の問題でなく、外交は国の大事です。外交の基本方針というものは、政府の中だけでまとめるのじゃなく、与党並びにその反対党に対しても骨組みというものは打ちあけて、これで国のためるになるかどうか、これで世間から笑われないかどうか、そのくらいのけじめはつけることが必要なんです。外交に関する行政権は内閣にまかせられているのだという考え方というものは、この日本憲法というものを全く理解しないんです。戦前の観念以下です。原則的に、こういう外交の基本方針というものは、事前に国会と相談すべきものなんです。そうして、その上に立って、一から十まで全部国会に相談しろと言うのじゃない、その基本的なものは、国会の意見というものも、主権者は国民なのですから、国民を代表しているところの国会というものに了解を求めて、そうして、この技術的な面は、これは内閣にまかせられているんです。その技術的な面がまかせられていることが、あたかも何もかも全部外交に関する行政権をまかせられているから、内閣の得手勝手にやれるというような考え方が、日本の外交を昔の宮廷外交から一歩も前進させないところの秘密外交、この官僚的な独善外交、末梢的な技術外交に陥れているのですが、この池田さんが、内閣で相談したから国会の承認を得なくてもいい、こういう考え方、あなたは形式的に、ある意味において形式的ですが、国会の承認を事前に求めればいいという考え方で、外交のことは全部内閣にまかせられているという、そういう思い上がった思想の上に立って外交を進めるつもりですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 私は、もとより外交というものは、国民の強い支持がなければうまくいかぬという考え方を持っております。そういう意味で、国民のあらゆる層の気持というものをできるだけ政府としてはそれを強く胸に置いて、あらゆる外交問題の解決に当たるべきだと思っております。ただ、事柄の性質上、交渉の段階で、先方がこう言いますが、わがほうはこう言いますというようなことを一々申し上げなからやっていくということは、これは不可能に近いことでございまして、さような意味で、交渉して調印するというところまでは、これはいずれの議会民主主義の国においても政府の専管事項になっておるわけであります。しかし、そのままでは、今おっしゃるように官僚独善になりますから、これを現実に発効させるまでにおいては、国民の代表機関である国会あるいは議会というものの御意思を承って、その承認があればここで発効する手続をとる、かようなことであると思っておる次第であります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 私は極端に、この内閣の行政権にまで立ち入って何もかも国会に相談し、報告しろというような思い上がったことは言わないのです。しかし、池田総理の言い方、考え方というものは、少し、低姿勢どころか、頭が高過ぎると思うのです。しかも、この衆議院の二月六日の本会議における答弁の中において、この問題に関連して、「こういう問題を事前に国会に出す必要はございません。事後に出してけっこうなんです。」というふうに言い切っているのです。この問題がやはり国民の非常な誤解を招いているということは、外務大臣も御承知のように、三十年協定が締結された段階においては、国会においても論議がほとんどなされていないのです、速記録を読んでみても。それはまあこれを政府のやるとおりでいいのじゃないかというような、大体の私はおまかせした考え方があったと思うのです。ところが、三十年協定の内容とこの三十七年協定の内容とは、行きと帰りほど違うのです。前にそういう国会の承認を得たからいいんだという、そのふろしきの中身は変えちゃって、まるで手品師か、やみ屋のやることです。そして前のふうしきのほうは、このことは承認したのだから、中身は変えたのだけれども、中身の変えたことはあとでいいんだと、こういうやり方をやっていては、これでもって国際信義をつなぎ得るかもしれませんが、国民が今後池田内閣にまかしていたら、うっかり前のガリオア・エロアのときには感謝決議をやったら、その附帯条項か何かでもって今度はとんでもないことを取りきめちゃったり、今度は三十年協定、あの程度ならいいと思って国会が承認してやったら、いつのまにか中身をすりかえちゃって、事後になって承認しろ、これを承認しなければタイとの感情が悪くなる、まるでやくざがけつをまくっているような状態で、こういう不遇な外交手段というものは、もうほんとうに国民感情としては許しがたいものです。全く主権者としての国民を愚弄し、国会をばかにし、内閣でもって外交というものは何でもできるのだという印象を国民に与えている。この不信感というものは、私は今後池田内閣というものには長くつきまとうと思うのですが、その後タイ側は、協定の第二条に規定されている九十六億円の経済協力に関して、これを無償供与であると主張してきたので、政府もあの協定成立後から無償ということに応じておりますが、それだから三十年協定というものは、タイを日本の外交術でだましたことになっているのではないでしょうか。前、あれだけタイが承認していながら、そのあとで気がついてみたら一ぱい食ったという印象でもって、タイがどうしてものまぬという抵抗力を示しているのですが、こういう外交だけはよしてもらいたいのです。あとになって、これは改めたのだからいいんじゃないかと言うかもしれない。三十年協定のときには、タイが今日に至って気がついて、どうしても納得できないというようなことを一応納得させて承認させたというのには、何かそこに、取り込み詐欺じゃないでしょうが、私は納得できないものをオブラートに包んで押し込んだというような感じですが、当時のタイの大使は太田一郎君ですか、当時中に入ったアメリカのは何といいますか、とにかく戦後における外交史上において、これは推理小説の種になるような一つのネタですから、ひとつ外務大臣率直に種あかしをして下さい。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この問題については何回も委員会で申し上げておりますことで、繰り返すようでございますけれども、三十年協定のときには、とにかく第二条において、日本の資材あるいは役務というものを投資またはクレジットの形式において供給する、こういう約束をしておるわけでございますが、ところが八月に批准を終わりまして、文書の交換をいたしまして、十二月に先方の調印者であるナラディップ外務大臣すなわちワン・ワイタヤコン殿下が日本に参りまして、あの二条はもらったものだということを言い出したわけでございます。そういうわけにはいかぬということから、いろいろ話をしまして、そして合弁事業の話をいたしましたり、あるいは日本がそれだけのものをタイにクレジットして、そして両国の金利の差でもって、日本にその金利の中から返していくとか、いろいろな案を出したわけでございます。その間において、国会におきましても、日本ももっと太っ腹なことをやって先方の話を解決してやるようにしたらいいじゃないかというような御議論もいろいろあったりしまして、これは卒然として政府がやったのではなくして、自来その間に六年間の星霜をけみしておるわけでございます。そこでどうしてもこのままでは日タイ間に冷たい風が吹いてしまう、どうも大所高所に立って、東南アジアにおけるわが国の地位あるいは日タイ両国の関係、そうしたものを見て、この際旧協定にかわる新たなる協定を結んで、そしてこの動かざる部分を直すより法はないと、こういうことに踏み切ったわけでございまして、しからば、タイがいかにして曲解といいますか、協定文の趣旨を誤って理解したかということについては、これは先方側の事情でございますので、われわれは先方の腹の中へ入って、それをこういう席でどうこう言う自由もなし、またそういうことをする能力もないわけなんでございます。さようなことでございますが、いずれにしても、昨年の一月ごろからは、従来そう言っていたタイはそういう態度を変えまして、協定をそのまま解釈すればまさに日本のおっしゃるとおりだ、しかしどうもわが国のほうがたまたまばか者であってそういう協定を結んだということは、これは返す返すも手落ちであった、しかしその手落ちをあくまでも日本に押しつけられるということは、これはタイの青史に残すのみである、こういうことを言うに至ったのであります。一方、貿易によって立ちまするわが国が、東南アジアとの間の貿易をいろいろ推進していきます場合に、古くから友好関係にあったタイと、そういう経済関係で、気まずい立場に立つということも予想せられるのでございまして、それはどうもわが国のためにならぬと、こう思いましてこの協定を結んだと、こういう事情でございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 向こうの言い分というものは、やはり東洋的な一つの儀礼をもって表現しているのですが、やはりタイが、われわれのほうがばか者であったと言って謙虚な態度に出ておるのは、あなたのほうがずるいので、あなたのほうにだまされましたのですよということを言うと露骨だから、それは反語的な表現です。これは青史に残そというのは、客観的な記録として、われわれはばか者として笑われるかもしれないが、日本がずるいばかりにこういうふうにだまされたということを青史に記録することなんで、中国の歴史においても、司馬遷の史記においても、きびしい現実の政治というものを後世において史家が記録して批判している。今の政治評論家とは違って政府の太鼓持ちのようなものじゃなくて、きびしい一つの記録を残している。そういう憤りを発せさせたというのは、とにかく日本の外交のどこかに小ずるいところがあったのだとしか思えない。当時の外務大臣、大蔵大臣、タイの大使はどなたでしたか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 当時の外務大臣は重光氏であります。大蔵大臣は一万田氏であります。タイの大使は太田一郎君であります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 当時大蔵大臣をやっていた一万田さんは、今の水田さんみたいに水増しすることはきらいで、やはりずいぶん渋かったと思うのです、交渉が、それから重光さんも外交の相当ベテランだったと思います。私は外交の常道を踏んで一応ああいうふうな形の協定にこぎつけたのであって、重光さんや一万田さんのような人がタイをだましたとも思えない。しかし、巷間伝うるところによると、まあこれは貸してやるのだと言うけれども、タイ側はもらったと同じようなものだから、これでがまんしろというようなところで落ちつかせちゃったけれども、結局条文に現われたものは、幾ら読んでみても、もらったものでなくて借りたものになっているから、これではタイの国民感情が承知しないというので、あとでタイのほうで日本に、こういう条約では応ぜられないということになったというのですが、その当時そういうふうな、はめ手というわけじゃないでしょうが、タイ側に、今になって問題になるような難問題をとにかく納得させた当事者はだれですか。その間に太田大使なりアメリカ側の何がしという——衆議院のほうでは名前も指摘されているようですが、金を送った時分からずっと日タイ関係につきまとっている怪物がありますが、そういうような人たちが中心になってそういうような紛争の種を、今になれば、本人はそのときは紛争の種をまくつもりじゃなかったのでしょうが、紛争の種をまいたことになっているのですが、その間のところ、推理小説の一番おもしろいところをやっぱり聞かせてもらわなくちゃ話にならない。種あかしして下さい。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この点も何回も申し上げておりますように、ああいう協定ができましたわけで、双方国内法による成規の手続を経て文書を交換しておるわけでございます。しかし、何がゆえに先方が、八月にやって、十二月ですから四ヵ月あとでございますが、四ヵ月しかたたぬあとに、あれは実はもらったものだ、自分らはそう思っているというようなことを言ってきたのか。この点はどうも先方の事情でございまして、私ども推理を働かせてもなかなかわかりかねるむずかしいところでございまして、従来から申し上げておるように、われわれのほうにはわからないと言う以外ございません。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 これはその間に入った人物については条約局長が詳しいようですが、条約局長からひとつ承りたいと思います。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) その間に入った人物というのはアメリカ人のリップスという人でありますが、これはその中に入ったと申しますか、タイ側が自分の国の法律顧問として、経済顧問として雇いまして、そうしてタイ側の首席代表でありますワン・ワイ外相が連れてきまして、そして交渉に当たらしたわけでございます。したがって、日本から見ますれば正当な交渉相手であったわけでございます。それからリップス氏あるいはそのほかの人が、何か、日本からはこれは借款及びクレジットという形はとるけれども、もらったと同じものだというようなことを向こうの交渉主任であるワン・ワイ外相に言ったというようなお話がございましたが、これもいろいろ調べてみましたが、そういう事実はわれわれとしては発見することができなかったのでございます。なお、こちらの外務大臣の重光さんが外交の非常なエキスパートであり、決して外交交渉に間違いをするような人でないということは、御指摘のとおりでございますが、先方のワン・ワイ外相も、これはアジアにおける国際外交の非常なベテランでございまして、この人がまたそういう間違いをするとも、これはとうてい思えないのでございまして、私はやはり三十年協定に書かれております字句そのものをどう解釈するか、それがどういう意味を持っておるかということについては、双方に別に誤解はなかったと、かように確信しておるのでございます。どういうわけでタイ側があとでこれはもらったものであると言い出したかにつきましては、先ほど外務大臣が申されたとおり、これは先方のことでございますので、われわれからいろいろ推測することもできないわけでございますが、結局は国民感情から見て、どうもやはり日本に借金ができるということ、そういう解決方法は国民感情から受け入れかねるというのがやはり一番大きな原因であったのではないか、かように考えるわけでございます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 関連して。  私はこの前もちょっと関連質問で触れましたが、二国間の条約なり協定が、双方で合意されたもので、しかも、その間、今の条約局長の説明にあるとおり、日本側も十分その道のべテランで双方で確認し合ったもの、しかも、日本においては国会で批准したもの、そういうものが、あとからこういう形で変更されるというようなことは、条約なり協定の取り扱い上適当でない、こういうことはこの前私関連質問の際に申し上げましたが、そこで私はこの日タイ関係については、このタイ特別円問題については、前から、この問題が出てきたときから思っておったことですが、もしそういう場合に、タイ側で事情の変更なり解釈の違いということで新しい見解を持ち出した場合に、なぜ日本としては——私は九十六億円の額が必ずしもそれをこえてはならぬとは言いません。むしろ私は、場合によったら金の額は多くなってもいいから、タイに条件を有利にしてやって、それで実質上協定とか条約というようなものが、そう簡単に一国の立場の変更によって破棄されてほごにされることのないような、そういう条約なり協定の権威、国際間の権威というものを守る意味で、なぜもっとやり方がほかになかったのか、これは私はずっと前から感じておるのです。他にやり方はなかったのか、なぜこういうやり方をしなければならなかったかということについては、非常に疑念を持っているわけです。その点については、政府としても何らか検討されたりお考えになったことはないのでありますか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この経緯では、先般も申し上げたように、いろいろな手だてを尽しまして、合弁事業なり金利の差額なり、とにかくわれわれはそういう投資あるいはクレジットの形で先方に供給して、そうして九十六億円というものは回収する、こういう線でいろいろな案を出したわけでございますが、いずれにしても、先ほど御答弁申し上げましたように、先方も貸したものが借りになるということじゃ国民感情が納得できない、この一点張りで、あれはやはりもらったものだ、こう言ってきたわけでございます。結局昨年の一月以降、先方はこの協定の正しい読み方というものを認めたわけでございますので、それじゃ、そっちの事情もわかるけれども、この九十六億円というのをまるまるもらうという考え方はおかしいじゃないか、これは減額しろということで、いろいろ国内的にも相談いたしましたが、なかなかまとまりませんで、結局三十億円ということにいたしまして先方に提示したのでございます。しかし、どうしても先方も納得しないままに時が移り過ぎた、こういうことになっておるわけでございます。そこで三十億円というものが結局六十数億円になったというのが解決の方法として私ども考えられると思っております。現在価値で九十六億円というものを換算すれば、これは八年間に九十六億円払っていくわけでございますから、複利計算で現在どのくらいのものを出したらそれじゃなるか、まあ六分五厘で換算してみれば、これが六十数億円ということになって解決するというふうに思っておるわけでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 実は今の条約局長の答弁が、この国会を通じての一番私は正直な答弁だと思うのです。それは当時の重光外務大臣にしろ、ワン・ワイ殿下にしろ、外交のベテランで、何らあやまちはない、誤解もない、その上で合意に達したんだ、けれども、この問題がこじれてきたのは、国民感情に同意を得ることができなかったから、こうなったんじゃないか、こういうふうな、割合にすなおな私は観察だと思いますが、しかし、衆議院段階において、外務大臣なり外務当局のほうは、ここに至ったのはタイ側の責任で、第一には、外務大臣が帰国を取り急いだ事情があり、第二には、その結果、協定自体が拙速であって、第三には、第二条の規定が明確を欠いておる、第四には、実施細目が取りきめてなかったというふうに弁解しているのですが、こういうふうに、四つあげられてみると、この中には、やはり非常に相手の外務大臣が帰国を取り急いでいた、協定自体が拙速で、できが悪かった、第二条の規定が明確を欠いていた、ベテランが作ったのにおかしいことですが、明確を欠いていた、それから実施細目が取りきめてなかった。上手の手から水が漏れると言うが、これはまさに大ざる協定で、こういうふうなざる協定を作った責任は、なくなった重光さんを責めるのはいけないが、一体どちら側にあるのか。このごろは全部タイのほうに押しつけることがはやっておりますが、これはタイのほうでもたいへんだと思うのです。こういうふうに四つほど衆議院段階において、一応外務省側の弁解らしいことを言っているのですが、今の条約局長の答弁とじゃ、ずいぶん食い違っているのですが、この間の事情をひとつ外務大臣から承りたい。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) その四つ理由をあげて仰せになりましたけれども、私は特にそういう理由をあげて申し上げなかったように思っておりますが、大体条約局長が申しましたように、やっぱり先方としては、日本に戦争中協力して、そして日本の軍費を立てかえておったんだから、当然自分のほうはある時期に日本からそれは返してもらうということであったのだけれども、どうも協定を作ってみた結果を実行に移そうとしてよく考えてみると、日本から借金をしょうことになる、貸し金が借金になるのでは、これは全く反対なので、こういうことはタイの国民感情として納得いかない、こういうこともあったんだろうとわれわれ思っておるわけであります。しかし、そうかといって、それじゃ、そのままに押し通して、こういうふうに協定に書いてあるんだから、何でもかんでもこうしろ、こう言っておいて済むかというと、なかなか現実の経済外交の面、あるいはアジアにおける日本に対する信頼感、こういうものからしていかがなものであろうか、こういう判断をいたしまして、この協定を作った、こういうことであるわけでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 なかなかむずかしい外交折衝であるということは御同情申し上げますが、しかし、タイの国民感情が納得しないと言うと、今度は、逆な観点から、今までは貸すものとして国会でも承認し批准もやったのに、今度は総理大臣が行くと、気前よく、貸すのじゃなくあれはやるというふうに、国会の同意も何も得ないで、前に正式に国会の承認を得て批准までしたような外交上の取りきめを、総理大臣がやくざの親分みたいに、外国に行けば、ああそれはおれがやる。博労の交渉じゃあるまいし、そういう思い上がった外交上の協定なり何なりというものを、総理大臣の意思でこういうことをやられるというのは、羽生さんの言われたように、額のいかん——たんとやっちゃいかぬとかなんとか言うのじゃなくて、こういう外交上の折り目をくずすようなやくざ外交のようなボス外交をやられて、国民がこれに対して、とにかく奇異な感情を持たないとどうして言えますか。タイの人たちが、もらうものを借金の形じゃ納得できない、これもわかります、理屈は。貸したというので国民が納得し、国民の代表者が国会で承認をし批准もやったのに、今度は国民にも相談しなければ、国会の決定をも無視して、総理大臣が出先に行って、それはやるんだ、これじゃまるで東条時代の再現みたいな、内閣総理大臣というものが、いつそんな権限を与えられておりますか。こういうことが前例になって、今後協定や何かどしどしやられては、外務省なんか廃止しなさい。要らぬです。外務大臣も要らぬです。総理大臣を野放しにして、とにかく勝手気ままなことをやっていて、あと帰ってきてから、事後に、自民党が多数党なんだから、それで形式的な承認を得ればいい。こんなばかな国会がどこにありますか。こんなふざけた政府がどこにありますか。こんな越権行為の内閣総理大臣が、議院内閣制のもとで、どこでそんなことをやっていますか。ふざけちゃいけないよ。外務大臣もお相伴をやるならば、このだだっこみたいな池田総理大臣をどういうふうに押えるかということは、日本外交の威信にかけて守らなければならないと思うのです。あなたは、聞くこと以外に、なかなか良心的な男で、なるだけほかの話にそらそうとして答弁をそらしますが、なるだけ、よけいなことをしゃべらずに、私らの質問に対してすなおな答弁を求めるのですが、こういうことは一つの悪例ですよ。今後、このことだけでは済みませんよ。今後この手でやられた日には、外交はすべてはめ手になって、外国の国民感情というのでゆすぶれば、日本の内閣総理大臣はすぐポケットから金を出し、国会なんかあっても、あとで承認すればいい、内閣総理大臣が来たときには歓待をし、軽くゆすぶっておれば、日本のことはみな片づく。こういうことだとすると、今後韓国もやります。フィリピンもやります。池田様々です。こんなけじめのつかない外交の無軌道というものを、よくも外務省が、いろいろなものがそろっていて、許したものだ。吉田ワンマンの時代にもなかったような横暴ぶりです。ふざけ切った態度です。外務大臣、あなた、無視されておるのですぞ。外務大臣というよりは、日本の外務省というものが、池田の独善行為によって、全く日本の外交というものの筋目がくずされておる。外務大臣、それに対して、もう少し日本の外交というものをまじめにやらないと、今後外国の気をとることばかり夢中になって、これで国民、世論を納得させ得ると思っていますか。少しはあなたはノーマルな精神状態のもとにおいて、常識を働かして答弁をして下さい。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この問題については、実は長い間の懸案でございまして、外務省はもとより、大蔵省等においても非常に頭を痛めておったことでございます。しかし、何とかこれを解決しなければならぬ問題であるということは、もうどなたも異論のない問題でございまして、この解決方法を、現在の時点において、最もあとのためにもよろしい、こう考えられる方法で解決されるということについては、私どもも御相談にあずかって、御相談を常にしておる者といたしまして、総理の今回のことはけっこうだと思っておるわけでございます。もちろん、そういうことについて、私ども十分な建言もし、これ以外にどうもない、こういうことでかようにいたしたわけでございます。総理大臣が自身でそういう問題を解決することがいいか悪いかという問題は、いろいろ議論があろうと思いまするが、先方が、総理大臣が出てきて総理大臣との間で話をしたい、こう言っており、また、その前において、それぞれの責任者が話し合っておるということでございますので、これも、あながち、非常にとっぴなことも言えないと思うのであります。現にインドネシアがオープン・アカウントが一億七千七百万ドルあった。これを解決した事例もあるわけでございます。それから見れば、今までのいきさつも、戦争中日本に非常に協力しておったタイが、結局その近隣のいろいろな賠償を受けている国に比べれば、これを解決しても非常に少ないわけでございます。こういう特殊な例を解決するということでございまするから、これを解決して、しこうして、やはり国会でこれを御承認いただくという前提で解決しようとしているわけであります。国会の御承認をいただいて初めて解決すると、こういうことになるわけでございますから、その点で私はこれ以外にはないんじゃないかというふうに思っております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 頭を痛めたというのは、これは本音だと思います。まあ頭だけでなく、もっと下のほうの良心を私はもっと痛めてもらいたかった。だから、悪知恵が出ちゃった。良心に聞くということがやはり一番大切なんで、やはり池田さんの悪いところは、原理原則というものを無視して、実際家だからというので、何でもとったりをやるからいけない。たとえば池田さんが当初において、九十六億円を有償でやって、九十六億円ないし百億円で石油精製工場を作って、その利益を積み重ね、九十六億円をタイ側にやるという案も出してみたと言うんですが、それは具体的にどこの精油工場を持っていくとかなんとか、そういうところまで段取りは進んだのですか。

小田部謙一外務省アジア局賠償部長

○政府委員(小田部謙一君) これは日本鋼管その他がやりましたので、ここまで話が進んだのでございます。この問題でもって相当長くタイの政府と話をしておいたのでございますが、そのうち、タイの政府のほうで、この案はドロップしたということを言って参りまして、それで終わったのでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 日本鋼管が間に入って話を始め、それがドロップしたのはいつからいつまでです。

小田部謙一外務省アジア局賠償部長

○政府委員(小田部謙一君) 昭和三十年の一月ごろに向こうから始めまして、それからその話がずっと進んでおりまして、ピブン内閣が終わりまして、それからタノム内閣ができまして、その後になりまして、三十四年の九月にタイ側から、精油工場建設を特別円の問題の解決と切り離したい旨、正式に申し入れてきた次第でございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 三十四年の九月に打ち切られたというと、まだ三十年協定ができて、その十二月に、向こう側であれはのめないと、協定ができてから四ヵ月後に、そういう申し入れがあった経緯から見ると、ずっとあとまでこの問題は折衝が続いたと認めてよろしゅうございますか。

小田部謙一外務省アジア局賠償部長

○政府委員(小田部謙一君) 去年の一月ごろまで、いろいろなことでもって向こうと話し合って、これは精油工場の問題もありますし、その他の問題もございますし、この経済協力の形をいろいろな形で、あるいは精油工場の形、あるいは向こうに九十六億を貸し付けまして、そこで利子と、それから元利合計でもってほとんど利子にひとしいぐらいの額で返してもらう案、その他そういう案を向こうと交渉していたのでございますが、結局向こうといたしましては、それに深く入ることなく、それをある時期が来るとドロップしてくれと、こういう方式を何回となく繰り返していたのでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 とにかく、そうすると、向こうが意思表示をして、三十年の十二月にそれでは困ると言ったあとでも、ずいぶんしつこく日本側の案というものを押しつけてみたが、具体案を押しつけてみたが、全部十二月の申し入れ以後においてこれを受けなかったという経緯がここで明らかになるのですが、非常に見通しのきかない、人の心の中を探ることのできない——腹の中にまで立ち入らなけりゃということが言われますが、やはり眼光紙背に徹すという言葉がありますが、外交ぐらい——外交は国の大事で重大なもので、人の心の動きぐらいを察知できないで外交をやられては、私は困る。一々人の腹を裂いて中へ入ってのぞき込まなけりゃできないということは、これはお医者の外科手術のやることなんです。やはり私は日本の外交というものが、人の気持がわからないで、いやだ、いやだと言っても、三年も四年も何か自分が思っているとおりを押し込もうとして、しまいにひじ鉄を食らう、そういうつけ文をやる不良少年と同じような、全くこれでは外交の醜態ですわね。こういうスローモーというか、この鈍感な外交というものは、やはり今後の世界の動きが非常にスピーディになっているときに、非常に日本のために、アジアのために不幸だと思います。で非常に損得だということを、池田内閣になってから損得だという、得をしないことでも、損したことでも、あれは得だと言うのがはやって、詭弁学派が池田内閣には非常に台頭していますが、その詭弁学派的な論理でもって小坂外務大臣は、こういうような方法でこういうところに落ちついたが結局はこの供与をしたほうが得だと説いております。これも驚くべき考え方ですが、これは速記録をこまかく読んでもいいですが、読まぬでも、自分が言ったことだから小坂さんは覚えていると思いますが、何が得なんですか。貸すことよりもくれてやったほうが得だという小坂論理をひとつ明快にここで具体的に開陳してもらいたい。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) まあ私は、今戸叶さん非常にいいことをおっしゃいまして、傾聴いたしておりますが、やはり医者にたとえますと、外科医というものはやはりその臨床——その患部だけ見るわけでございますので、もう患部を切り取ったために全体が死んでしまうということも——今の医学は非常に進歩しましたから、そういうことは少ないわけでありますが、ないわけじゃないわけで、われわれはやはり外交というものは、内科的にあらゆる条件を精細に見まして、最も健康体でありまするようにということで、この日本自体の問題でも、外国との関連においても考えていかなくちゃならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。その意味で、やはりこのタイの特別円の問題の解決というのは、そうした総合判断から、これが最も日本のためにも、また東南アジアとの——非常に東南アジアにおける日本としての友好——タイとの関係から見ましても、アジア全体から見ましても、どの関係からもいいと、こう判断をしたわけでございます。まあ例をあげることは差しさわりがあるので遠慮いたしておりますが……。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 どうぞ遠慮しないで。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) そういうことをお許し願えますれば、インドネシアとの間のオープン・アカウント、これは一億七千七百万ドルというものは、これはオープン・アカウントのしりでございますから、当然日本は主張すれば取れるわけでございます。取れるべきものでございます。しかし、それをあえてせずに、これを棒引きにして、インドネシアとの関係をよくする、こういうことを考えたこともあったわけでございます。私は、それから見れば九十六億円というのは、これは二千六百万ドルぐらいでございますが、それから見ると、内科的な効用からすれば、金額の小なる割に非常に大きな効果がある、かように思っております。現にタイとの関係の貿易は非常にその後順調にいっておりますし、タイのほうから参ります者の話を聞きますと、今や日本ブームと言っていいくらい、やはり日本の機械、日本の技術というものによって、タイの経済を大いに振興していかなきゃいけない、こういうふうな気分が出ておるようでございます。そういう意味からいいますと、確かに形式論理からいいますと、これは取れる形になっておる条約を、何で資料なり、役務なりにしろ、それをそのまま向こうに供出することにするのだ、こういう議論があることはそのとおりだと思いますけれども、総合的な、いわゆる大所高所に立つ判断からすれば、そういうことではやはりいけないのじゃないかというような、タイとの特別円の問題の解決には、これは協定にこう書いてあるのだからあくまでそのまま日本は貸してやるのだ、こう言っておっても話が解決しない、むしろ副作用として非常に悪い副作用も出てくる、こういうことになろうと思っているのであります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 借りたと思った九十六億がもらったということになればブームが沸くので、私たちだって借金していたのが全部その借金の額だけ借金じゃなくてもらったとなったら、これはブームが沸くにきまっているのです。どこだって、そんなブームの沸かし方というのはばかだってできますよ。そういう形においてブームを沸かせようという外交が今度は池田、小坂外交の趣旨ですか。これはどこでもブームをひとつ韓国にも沸かしてくれ、フィリピンにも沸かしてくれ、ビルマにも沸かしてくれ、あのタイ並みにやってくれと。これはたいへんですよ。そういう不健全なブーム、不健全というか、大所高所からと言うけれども、あなたの大所高所は都合のいいときに雲隠れする大所高所で、一つも外科医との結びつきはないのですよ。私はそういう不健全な——言いわけとしてはそういう言いわけも窮すれば通ずるであるかもしれませんが、副作用のほうを考えてくれ、何でも——それはあきらめというのは東洋の哲学の一種にあるのですけれども、ものは考えようですから、そういうこともあり得ると思いますが、私はそういうやり方というものはやはり非常にあぶない。それは連鎖反応をいいほうにばかり解釈するが、悪いほうの連鎖反応もたまには考えてみて下さい。どうも少し池田さんにしろ、小坂さんのラッパにしろ、楽観的なラッパで、これが逆手を使われてしまって、タイ並みに頼みますと韓国さん必ず言ってきますよ。きのうあたりの新聞の論調もそうです。必ずやってきます。今度はビルマさんもやってきます。インドネシアもやってきます。金持とのどらむすこ相手にこの甘い小坂外交を手玉にとろうという形は、一時のブームは沸くが、外交というものは真実を貫くことで、それにおける信頼感によって結びつくものであって、金持ちのどらむすこが金をばらまくような、私は不自然なブームを沸かせることじゃないと思うのです。もっと外交というのは手がたいじみなものだと思います。重光さんや一万田さんが、外交のベテランや財政のベテランが地味に作り上げたところのものを、一朝にして池田、小坂というものがくずしてしまう、全く小ざかしい外交であったということを日本の青史にも必ずあとで残ります。私は書きます。私がじみにこの国会で勉強しているのは、十年後に秘史を書いてやろうと思うからです。日本の政治史の中に、ほんとうにこの段階、この段階においてだれがふまじめの外交なり政治をやったかと、青史がなければ秘史でもいい。バジョットがビクトリア朝の時代をリアルに描いて、そしてイギリスの議会政治に一つの軌道を作ったように、だれかがそれをやらなければならない。中国の司馬遷は史記の中で、後世において権勢におごった者をひどい目にあわせています。私はこういうでたらめ外交というものを自画自賛しているあさはかな日本の今日のはかない外交というものを、ほんとうに悲しみます。そこで現在日本とタイとの貿易はばかによくなったということですが、ついでにここのところで具体的に聞いておきますが、どの点がよくなっておりますか。

小田部謙一外務省アジア局賠償部長

○政府委員(小田部謙一君) タイとの貿易につきましては、資料を配付してあると思いますが、一九六〇年をとりましても、下に書いてあるのはドルで、このドルで読みますと、輸出のほうが一億一千七百万ドル、それから輸入のほうが七千二百万ドル、それから一九六一年は輸出が一億三千万ドルで輸入が七千八百万ドルでございます。そうして一九六〇年は約四千五百万ドルの日本の出超、一九六一年は約五千五百万ドルの日本の出超、これは大蔵省の通関統計でございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 日本の輸出並びにタイからの輸入のおもなるものはどういうものですか。

小田部謙一外務省アジア局賠償部長

○政府委員(小田部謙一君) タイからの輸入のおもなるものは、相当前は米が非常に多うございましたけれども、最近は減りまして、米と、トウモロコシそれからゴム、そういうものがふえて参った次第でございます。  それから日本から向こうへ参りますものは、繊維製品と金属製品、機械製品、そういうようなものでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 ここで私はあらためて承りたいのだが、タイが石油精製工場なんかを拒むのはわかるじゃありませんか。タイなりビルマなりの日本経済外交というものの受け取り方は、日本並みの感覚でやられては困る、残念ながら、まだ米やトウモロコシやゴム、そういうものが主要な輸出品ということであって、とにかく農業国で、その上に立って徐々に、日本から輸出するやはり繊維なり金属なり機械なりというものを輸入しながら、軽工業なり重化学工業の芽をだんだん伸ばそうというような段階にあるときに、日本で石油精製工場を作ってえらくもうかったからひとつ日本もタイでやってやろうと、こういう考えのいわゆる経済外交というものがタイ側で受けられないのは当然です。  ビルマだって、日本が電力に対して貢献したということはありがたいことだが、その電力は余っていて使い道がない、というのは、日本は先回りして、ビルマを啓蒙し指導したんだと言うかもしれませんが、やはりその国における当面の必要な発展段階に沿うたところの経済協力をやらないからです。日本の独占資本がこれなら金がもうかるだろうということで、政府の金を外資でうまく使うというような形の不健全な経済政策というものは、他国にとってありがた迷惑であるということは、これはタイの失敗でよく肝に銘じて覚えておいてもらいたい。ビルマにおいてもそうなんですから……。一体こういう形でもって現実の日本の経済外交というものが蹉跌している状況を見ると、その中に、またもう一つは、非常なえこひいきがある。ビルマとの貿易が伸びないのも、ビルマのトウモロコシは、くろうと筋が言っても、タイのよりもいいくらいです。それなのに、今ビルマの米を買ってくれない、せめてトウモロコシをと言っても、タイはアメリカが腰抱きをしている反共軍事同盟の中に入っているから、日本も協力しなさいという手引きによって、日本がタイにはばか力を入れているが、ビルマは中立外交政策を堅持しているから、このほうはあと回しという差別的な待遇をしているという印象が一般には深いのです。で、現在トウモロコシはタイからはどれほど輸入し、ビルマからはどれほど輸入し、また日本全体として輸入しているトウモロコシの量はどれほどになっておりますか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) トウモロコシの数量等については、また後ほど政府委員のほうから申し上げたいと思いますが、ビルマには日本から大体五千六百万ドルくらい輸出いたしまして、先方から千五百万ドルくらい輸入しているというような関係になっていると思います。これは少ないのは、何もSEATOとかあるいはアメリカのあと押しとかということは全然ないので、純粋に経済的な関係からであるわけでございます。たとえば、積出時期、黄変米の問題、そういうような問題があるわけでございます。もう一つ運賃同盟の関係がございまして、これは非常に私どもイギリスやアメリカに対しても言っているのでありますが、ビルマに対しては非常に運賃が高いわけでございます。ビルマとしてもこの改善に努めらるべきことだと思っておりますわけですが、そういうような諸般の関係がございまして、決して政治的なえこひいきというような問題はないのであります。先般の賠償再検討の問題等につきましても、私どもビルマに快く再検討の問題について、経済並びに福祉に関する協力ということをやろうという申し入れをしておるわけでございます。しかし、あまりにもその要求が過大でありますれば、これはわれわれのほうとしては納得するわけにはいかないので交渉が妥結しない、こういうことでございます。タイの場合も、ビルマの場合も、同じ次元でお考えになりますようですが、非常にこれは要求している金額が違うということをお考え願いたいと思います。ことに、この特別円という別途の性質のものの解決と賠償の再検討という問題とは、これはおのずから径庭があるということは、御承知願えると思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 黄変米といいますけれども、ビルマに行けば、御承知のように、日本も昔はそういう時代もあったかもしれないけれども、むしろの上に米をほすんでなく、地べたの上に米をほすので、水牛やなんかのふんやほこりが入ったりするんで、黄変米が出るのは当然です、日本に輸送してくるのは。そういう現地の事情を一つも知らないで、ビルマの民度の程度も知らないで、黄変米のことだけを言いますけれども、ビルマからほんとうに困っているところのトウモロコシをもっと日本が買ってやるならば、タイ以上に私は貿易は伸びると思うんです。タイのほうは、いろんな点で腰抱きをしなきゃならぬからというので、タイからはべらぼうな量のトウモロコシを買っているが、ビルマのほうからはほとんど買ってないんです。そういうえこひいきなやり方をすれば、やはり東南アジアにおいて民族的に一番近いのはビルマですが、ビルマが社会主義政権で、そうして中立外交を堅持しているから、それで結局は反共軍事同盟に加入しているところのタイのほうに日本は片寄っているという印象をやはり私は強く持たれるんだと思うので、そういうところは日本で気をつける必要があると思うんです。  次に、私は、タイと日本との間の債権債務がどうなっているか、そのことを承りたい。特にビルマ鉄道の問題その他があると言って池田さんは衆議院段階でも答弁しておりますが、タイにあった日本の資産というものはどのくらいあったんですか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 大体日本資産というものは、これはイギリスからもらった資料でございますが、約二十七億円あったわけでございます。

大和与一日本社会党

○大和与一君 ちょっと関連。昨年の八月四日に私もラングーンにおったんですがね、そして矢口大使なりあるいは邦人商社の人にも会っていろいろ懇談をした。あるいはウ・ヌー総理大臣にも会ったんですが、そのときに「池田首相がビルマにも来るのなら賠償問題については首相も期待をしている」という言葉を使ったし、たとえば矢口大使あたりは、「どうしてもこれの解決策を持ってきてくれなくちゃ困る、これがないようだったら来ないでもいい」と、こういう強い気持も言っておりました。そうすると、一体、行くときに、タイのほうは初めから腹をきめてまとめるという腹で総理は行かれたのか。ビルマは隣だからついでにちょっと、黙っておるのも悪いから行ったのか。あるいはまた、ビルマのほうは着いたときはえらい旗振って迎えてくれたが、帰りは秋風落莫としてまさに寂として声なし、見送り人も数えるほどしかなかったと、こういうぶざまな格好になったんですが、初め行くときの首相なり外務大臣の決意というか、心がまえは明確であったのかどうか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 私も実は賠償のためにビルマへ参りまして、ラングーンに十二、三日おったのでありますが、ここにおる伊関アジア局長もまた賠償部長も参りまして、先方といろいろ話をいたしました。非常に双方の立場が深く理解されたということで非常な効果があったと思いまするが、残念ながら最終的な結論にはならない、双方の考え方が大きく食い違う面があれば妥結しないわけでございますから。そういうことでございます。私も当時のウ・ヌー首相とも何度もお目にかかりましたが、池田首相もウ・ヌー首相と非常に胸襟を開いて語られまして、三人委員会の問題を話されたり、あるいは、ビルマの経済復興に対して日本からいろいろなアドヴァイザーといいますか、そうした立場の人も出してもらって大いにひとつ日本側も経済復興に協力してもらいたいという話で、日本に対する信頼感が池田総理の訪緬によって非常に高まったと思っております。飛行場の見送り等も、大和さんのお話とは違うので、非常に盛大なもので、そんな秋風落莫などということは全然ございませんで、これはどうぞ御心配ないようお願いしたいと思います。この問題については、その後クーデターがあったりいたしまして政権がかわっておりますけれども、日本に対する期待あるいは親近感というものは少しも変わっておらないというふうでございますので、まだ今後の話し合いによりまするが、いずれまた国会の御審議をわずらわす段階もあろうと思いますので、どうぞその節はよろしくお願いします。

大和与一日本社会党

○大和与一君 そうでしたら、接触をした総理同士なり大臣の間では、その当時も別にけんかでもないし、今も何でもない、ビルマの国民感情からすれば、せっかく来たのだがさっぱりまとまらなかった、こういう国民感情としての不満感というものは相当あるだろう、しかし、それはまあ過去のことで、近き将来においてビルマともまじめに話し合ってぜひまとめたい、こういう気持を持っているというふうに考えていいんですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) さような気持を持っておりますし、それからビルマの国民感情もよろしいというふうに承知をいたしております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 またちょっとそれに関連してビルマの問題に戻りますが、ビルマの賠償の問題とタイの特別円とは違うというのはわかります。けれども、私はちょうど一九五二年の十月から一九五三年の一月までインド及びビルマ等におりまして、特にビルマにおいてはアジア社会党の最初の大会に入り、第二委員会の経済委員会で各国の人たちとディスカッションをやりましたが、そのときに特にビルマとそれからインド——インドではプラジァ・ソーシャリスト・パーティの書記長のアショカメタ氏が出ておりましたが、結局、アンチ・コロニアニズムというものが東南アジアにおいてはどうしても強い。ニュー・ナショナリズムの根底にはやはりアンチ・コロニアニズムが流れている。しかしながら、民族資本の蓄積がないので、やはりどうしても先進国から資本を借りるなり援助を受けるなりして立ち上がっていかなくちゃならないので、外資が入ってくることによって帝国主義的支配を受けたらたいへんだというおそれがあるが、そういう帝国主義的支配を受けないでどういうふうに援助を消化していくかというところに問題があるんだというので、現実主義的なものの考え方を持つ人と、非常に生一本な反帝国主義的な考え方を持つ人の論戦が展開されましたが、だんだん新しい国家を築いていくと、その現実の経験から、やはり外国からの再び帝国主義的支配を受けることはごめんだが、どうやって資本なり技術援助を仰ごうかという点においては、切実なものを私はビルマでも何でも持っておると思うんです。それが、タイの特別円とビルマの賠償と違うんだという形において、まま子扱いにされると、やはり私は日本のおかげで独立の機会をつかんだという感謝を持っているビルマの対日感情というものは、非常に私は悪くなっているのじゃないかということが心配なんです。どうも政府の今やっているところを見ると、タイだとか韓国だとかに力こぶを入れておりますが、カンボジアの問題で失敗したように、前にはインドネシアのこげつきでも失敗しておりますけれども、どうも政府のやるところは、三年、五年、十年とたつと、どうも、成功したより失敗したほうが多いので、そういう点が心配です。そういう点はやはり注意してもらいたいと思いますが、そこで泰緬鉄道の二十七億円、二百七十六万ポンドというこのイギリス側の資料に基づいた報告、この評価は一体どういう方法においてイギリス側はなしたのでしょうか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) これは主としてイギリスが在タイ日本資産の管理をいたしております。イギリス側がこういう評価をいたしておるわけでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 この評価はイギリスだけでやったのでしょうか。イギリス、アメリカ、タイも加わって評価を出したのでしょうか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 私どもが申し上げておりますのは、泰緬鉄道の評価ではございませんで、在タイ日本資産の総額は幾らであるかということで、これは英、米、タイ等の連合国資料ということになっておりますが、主としてイギリスが在タイ日本資産の管理の責任者であるというところで、イギリスからもらった資料によりますと、二十七億六千万円、こういうことになっております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 泰緬鉄道の評価はどのくらいになっておりますか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) これはちょっと非常にむずかしいわけでございまいまして、この材料——まくら木とか、レールというふうなものは主としてマレーあるいはインドネシアから持ってきております。一番大きかったのは労務費じゃないかと思います。これは日本軍も働いております。建設人員は約十七万で、日本軍将兵約一万五千、現地労務者約十万、俘虜五万五千、こういうふうなものを使って作っております。非常に地勢の悪いところに作りましたので、一番金がかかったのはこの労務費じゃないかと思っておりますが、それの正確な、何人、幾らということははっきりいたしておりません。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 その二十七億円の中には、外交官が置いてきた財産は含まれていないのですか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 先方は、その中に約二千五百ドルの外交財産がある、これはいつでも返すということを申しております。こちらの計算ではもう少し多くなりまして、五千ドルくらいになるかと思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 その外交官の置いてきた財産の評価でも、日本とイギリスの評価では非常な違いがあるので、日本が置いてきた財産というものが、イギリスの評価だけではこれはわれわれは必ずしも承認しがたきものがあると思いますが、外務当局はどうお考えですか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) その二千五百ドルと申しますのは、タイ側が日本の外交官の置いて参りました財産を、敵産処理してといいますか、要するに換価した金額として、今それだけ残っておるということがタイ側の数字でございます。わがほうは、帰って参りました外務省の者あたりの申告したときの値段をとっておりますので、多少開いておりますが、これは買ったときの値段と、売ったときの値段というものは、時間もたっておりましょうし、まあ半分ぐらいになっておりますが、そう違わないのじゃないか、こう考えております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 在タイ資産は、外交官関係を除いて、平和条約第十六条によって、国際赤十字の手を経て連合国の俘虜に渡るべきものであるという決定が平和条約においてなされておるのですが、泰緬鉄道はこういう形において処理されてないようですが、その間の経緯を承りたい。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 平和条約によりまして、在タイ日本資産はそのままか、あるいはそれを換価したものが国際赤十字を経まして俘虜の手に渡ることになっておりますが、二十七億ございますうちで、国際赤十字に現実に渡りましたものが九億ございます。その他のものは主としてこの泰緬鉄道関係の労務費と資材費に充てられたわけでございます。これは平和条約十六条から見ますと、二つの点で違っております。  一つは、日本に選択権がある、日本がそのものを渡すか——在タイ資産そのものを渡すか、あるいはそれを換価したものを渡すか、この選択権が日本にあるのを、日本に相談せずにこの処理が行なわれたということが一点でございます。  それから、全部が国際赤十字に参りませずに、二十七億のうち九億しか行っておりませんが、この点につきましては、この米、英、タイ等が在タイ資産の処理をやりますが、平和条約十六条の受益国である十四ヵ国と十分相談いたしまして、その同意を得てこういう処理をやっております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 これはどういう法的根拠によって、日本にそういう選択権があるのにもかかわらず、日本に相談せずに処理、また二十七億円のうち九億円だけしか赤十字に入れないというようなやり方をしたものでしょうか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 法的根拠と申しますか、先方は、事前に日本に通告したということを申しております。確かに軽く通告して参りまして、日本側はそういう会議——予備会議がございました——そういう会議に日本側を参加させてくれということを申しましたら、それは困ると言って、そのうちにやってしまった。その点は確かに手続上違反でないかと思っております。  あとの、二十七億そのもののうち、九億しか国際赤十字に行っておりません点につきましては、関係国と相談しまして、関係国の同意を得てやっておりますから、これは問題はないのじゃないかと思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 関係国の同意を得てといっても、これはアメリカ、イギリス、タイの三国協定によって決定したものでしょうか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 在タイ日本資産の処理というものは、三国協定によって最終的に行なわれておりますが、その処理をやります前に、ロンドンで平和条約十六条の受益国を全部集めまして、こういう処理をするということを相談いたしまして、みんなが了承した上でやっております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 平和条約の受益国を全部集めたわけですね。全部の同意を得たわけですね。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) それは連合国俘虜の手に渡るということになっておりますから、俘虜を持っておる国、結局十四ヵ国でございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 これは、国際法上はどういう根拠によってこういう平和条約の十七条の解釈を無視してやったか、中川条約局長は、衆議院段階では、平和条約十九条によるものだという説明をされておりますが、その十六条と十九条との関係はどういうふうになっておりますか。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 私が衆議院段階で平和条約十九条を援用いたしましたのは、泰緬鉄道の処理に関連して申したのでございまして、ただいま問題になっております、在タイ財産を処理したいわゆる英、米、タイの三国協定とは直接実は関係がないと説明いたしたわけであります。それで、在タイ財産は平和条約十六条によってカバーされておる問題であるにかかわらず、その十六条にきめておるとおりの方法に直接よらないで、別に三国協定というようなもので、関係国には相談したけれども、平和条約とはちょっと違ったやり方でこれを処分したということについては、平和条約上の根拠というものはないのでございまして、したがって、日本政府はその当時からこれを関係国に対して抗議しておるわけであります。実質的に言えば、十六条できめてあることについては日本にとっては実質的な損害がないからいいんじゃないかというのが先方の考え、説明でありますが、日本はやはり形式的にも十六条と違う手続で処理したということについては納得できないということで、日本の態度といいますか、これは留保してそのままになっておるわけでございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 抗議し留保しているのは、この選択権の問題をめぐってですか。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 実質から申せば、十六条によって在タイ日本財産を国際赤十字に渡す、あるいはそれにかわるものを渡すということになっておりますから、三国協定で在タイ日本財産全部を処理いたしましても、実態から言えば、日本にとって不利ではないという議論も立ち得ると思うのでありますが、日本としては、しかし少なくとも選択権があったにもかかわらず、その選択権を無視して一方的にきめて、いわば事後通告の形で日本に知らしてきたというやり方については同意できないということは、はっきり言っておるのであります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 戦争行為に基づくあらゆる連合国の処置を日本は承認しているのだから、平和条約発効以前に、イギリスが日本の財産の一部を自分で処分し、自分で取り、あるいは泰緬鉄道を使っても仕方がないというような見解を、平和条約十九条をたてに中川条約局長は衆議院段階では説明しておりますが、そういうお考えでよろしいでしょうか。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 基本的に申せばそのとおりでございまして、泰緬鉄道について私が十九条を援用いたしましたのは、泰緬鉄道というものを、いわば平和条約発効前にイギリスが戦利品としてこれを取ったということであるならば、これは十九条で日本はこれについての権利をすべて放棄しているということを申したわけであります。なお、泰緬鉄道以外の在タイ財産につきましても、講和発行前にもし何らかの措置を連合国がとっていたといたしますならば、これはやはり十九条で日本は請求権を放棄しているわけであります。ただいま問題になっております三国協定というのは、講和発効後一九五三年の七月にできた協定であります。したがって、十九条ではカバーされない、平和条約発効後にとった措置であれば、これは平和条約十九条によっては日本は請求権を放棄していない、こういうことになっております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 どちらなんです。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 在タイ日本財産の真相あるいはその金額、現状がどうなっているかということは、再三タイ側に照会いたしますが、はっきりした実は返事がなかったのでございます。それはタイ特別円という問題が未解決でありましたために、日タイ関係が思わしくなくて、したがって、この間の真相を確かしる方法が実はなかったのであります。今後これをさらに確かめてみないと、ほんとうの、どういう処置をとったのか、数字的にどうなっておるのかというようなことは、まだ今のところは詳細にわかっていないのであります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 タイは特別円問題が片づいてからでないと話に乗れないという考えかもしれませんが、イギリスのほうはどうなっているのですか。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) イギリスにつきましても照会したのでありますが、イギリスは、自分らは三国協定ですべて片づいておると考えておる、それ以外に在タイ日本財産がどうなっておるかということはタイの問題であるから、タイに聞いてくれ、自分のほうからはタイの問題については言うことはできないという、これまた返事を拒否しております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 西欧諸国の考え方は、やるものはやる、もらうものはもらうと割り切っておるのです。吉田さんみたいに、さむらいだからというような変な外交官はいないです。さむらいということは、ほかから見てそういうふうに言えばいいので、自分からさむらいだという人にろくなさむらいはいない。私は、非常に危険なのは、今後この問題は日ソ平和条約、日中平和条約を結ぶときに必ずこれはガンになりますよ。こういう方式でやったならば、満州に置いてきた日本人の財産は平和条約発効前に全部処分したのだから渡すべきものだ、千島にあるものもそうです。戦争に勝ったものが平和条約を延ばして、その間にとにかく戦利品だと言ってこれを処分してしまえば、それでもって抗議も申し込めない。これは形式論理です。古い時代の一つの国際法の観念において律しられないだけのモラルが近代政治には躍動し、国際政治の背後にある大きな力になっておるということを無視して、そうしてイギリスにも取りつく島がない、タイにも話もできない。貿易の原則はギブ・アンド・テークであると同じく、敗戦外交というものは屈辱に満ちたものであり、忍びがたきを忍ばなければならない点があるかもしれませんけれども、もらうものはもらわないで、やるものだけやるという、そういう奴隷の外交じゃない。アトランティック・チャーターにおいても、英米は、口先だけでも、戦争によって負けた国からものをもらわないという原則を確立して、一応世界の道義的な承認を受けておる。それなのに、敗戦まぎわのヤルタ協定のような、いまだかってない権謀術数の軍事秘密協定を結んで、イギリス、アメリカ、ロシア、チャーチル、スターリン、ルーズヴェルト、これらが敗戦国から——敗戦国だけじゃなく、協力国であったところの中国の国民政府の主権をも侵害して略奪をやった。そういうことに対して日本はサンフランシスコでぺこぺこ頭を下げて、吉田さんは仰せごもっともでもって屈服しておるが、ナポレオンの敗れたときだって、あれほど惨たんたる敗北の中にあって、フランス外交というものはウインナ会議においては寸毫だに譲らず、その戦争をもたらした責任者としてのナポレオンは戦争責任の追及をやられたが、敗戦の中においても自国の面目を失わないだけの成果を上げておる。日露戦争の敗戦国におけるウィッチだってそうです。日本には全く形式的な技術的な腰抜け的な宮廷外交官が集まっておって、勝ったときには調子に乗ることを知っておるけれども、負けたときに民族の憂いと悲しみをもって、そうして民族の屈辱を受けないような抵抗を持った自主的な外交というものがない。だから、このように何もかもなめられてしまっておるのだが、この問題で、アメリカやイギリスのきめたものじゃ仕方がない、タイに泣きつかれたのじゃしようがないと言って、ここに日本が新しい記録を作れば、この後において日ソ平和条約を結ぶときに、あるいは日中関係において平和条約を結ぶときに、その事例を基礎として、今度はソ連側、中国側が出たときに、アメリカ、イギリスのやることは無謀であってもがまんしますが、ソ連、中国の言い分にはがまんできないという論理は、国際通念において今度は通りませんぞ。私は今後において、日本という国がまだ戦後処理としてたいへんないろいろな重荷をしょっているのですから、そういうことをやって、これは中川さんのほうが専門家でしょうが、あとに悪い影響がないと考えておりますか。これは中川さんよりはいろいろな知識のある外務大臣のほうが幅広く知っておるかもしれませんから、外務大臣からひとつ、このごろは勉強しておるようですから、お聞きしておきます。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 日本が結びました平和条約の各条項は、これはその相手国に対しては守るのがあたりまえだと思います。その意味で中川条約局長が対英の関係におきまして、平和条約第十九条との関係において御説明申し上げたと思います。しかし、その他のものについてどうするかということは、条約を結んでいない相手国に対してそういう取りきめをするには、そういう新たなる取りきめがあって、その上で初めて問題が明らかになる、そういうことだと思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 泰緬鉄道は一度イギリスがこれをとりあえず管理し、その後タイに譲渡されたと言われておりますが、今所有権はタイにあるのですか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) この在タイ資産の処理が済みましたときに、イギリスからタイ側に渡しております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 その泰緬鉄道の評価はなかなかむずかしいということで、さっきつかみ取りにくかったのですが、大体どのくらい日本ではかけたと見ておりますか。日本側の軍部その他の資料でもよろしゅうございますが。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 当時日本側が使いました費用は、昭和十七年の十一月以降約一年かかったのでありますが、当時の約一億一千万円……。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 いつのですか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 昭和十七年の十月から工事を始めたのでございますが、十七年、十八年にかけての工事でございますが、そのころで約一億一千万円使っております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 当時の金で、ドルとポンドに直してどのくらいですか、大体でいいですよ。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 当時のドルとの比較が、終戦のときは十五円一ドルでございますから、それよりは少し率はいいかもしれない。まあドルにすれば十分の一ぐらいになるかと思います。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 これはやはり相当な私は財産だと思います。そんな、その中に捕虜を使ったりいろいろな労務者の未払いがあったりなんかするから、そういうものをあとでこれは処理しなきゃならなかったというのも事実だと思いますが、タイの所有になったと言うが、一体タイは、イギリスとの折衝において、いかほど犠牲を払って今の泰緬鉄道をタイの手に入れましたか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) その点はタイとイギリスとの関係でありまして、はっきりいたしませんが、これはタイ側の言い分によりますと、日本軍がこの鉄道を使って退却したわけでございますし、イギリス軍はこれを追跡してくる、そういう関係で両方から爆撃をされております。戦争が済んだときには、ほとんど価値のないものである、現在も四百キロのものでありますが、現在その約三分の一ぐらいしかレールが残っておりません。タイのバンコック寄りのほうであります。それで昼ほとんど一往復走っておる、単線で一往復走っておりますが、線があるから走らせておる、赤字の経営で実質的な価値はない、こういうことを言っております。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 それではタイはしょい込みだということですね。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) しょい込みということになりますか、まあレールが三分の一ほど残っておるから、残っておるので住民の便宜のために走らせてはおる、しかし、これから利益はない、むしろ赤字の経営だ、こういう言い分でございます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 赤字経営であっても、もちろん作ったときの評価ほどはないにしろ、軍事目的で作ったのではあるでしょうが、やはり私は相当の財産だと思います。その財産というものを一文の価値もないというふうに見て、そうしてタイのほうへやるものだけはやるという方式をとっていかなければならないのでしょうか。

伊関佑二郎外務省アジア局長

○政府委員(伊関佑二郎君) 先ほど条約局長が申しましたように、この泰緬鉄道というものが戦利品としてイギリスに没収されて、イギリスからタイがもらったということになりますから、日本からタイがこれを取ったという形にはならないのであります。日本との間にはそういうことを生じない。それから走っておりますが、そういうふうな状況でありますし、戦後、戦争直後は非常にこれはこわれておったんじゃないかと思います。それを三分の一でも動かすためには、相当修理等もしておるというふうにも考えます。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 今度は話を別にしますが、満州の鉄道や何かでも、ソ連が占領して、ソ連のほうから中国がもらったんだという形だと、これはやはり一つも文句が今後言えないことになるのですね。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) これは実は日ソ共同宣言の第六項に、今の平和条約の第十九条と似たような規定があるのでありまして、戦争の結果として生じた日ソ双方間の請求権はお互いに放棄するという規定がございます。したがって、それの解釈といたしまして、満州におけるたとえば日本の財産、満鉄等を含めまして、そういうものをロシアが戦争中あるいは戦後にこれを持っていったという場合、一応ロシアのものになったという場合を想定いたしますと、この第六項によって日本はそれについての請求権を放棄しておると解釈せざるを得ないのじゃないかと思います。そうしますと、ロシアが正当の所有者になるわけでありますから、その正当の所有者から中国等が受け継ぎますれば、これまた正当な所有者ということになる。日本はこれに対して返還を請求し得ないということになろうかと思うのであります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 平和条約のときに、もう日本ではアメリカ、イギリス側と相互間の協定というものは結んでいるのじゃないですか、日ソ間と同じように。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 米英との関係では、サンフランシスコ平和条約第十九条におきまして同じような規定があるわけであります。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 私は特に日本の外交官にお願いしたいのだが、戦争に負けた国は理屈に合わなくても勝った国に何もかもむしり取られても仕方がないという奴隷根性は改めてもらいたいと思うのです。私はもうサンフランシスコ講和条約のときから反対なのは、私らがやはり一つの少数派であっても、ああいう不平等条約に抵抗しなければならないという悲願を抱いていたのは、とにかく第一次欧州大戦のあとのヴェルサイユ講和会議のときにおいてすら、イタリアに、三国同盟から離脱して連合国に加担する条件で、アドリア海の現在のユーゴスラビアの地域になっておる土地なり、ほかにおけるところの植民地なりを与えるから、とにかく連合国に加担しろという一九一五年のロンドン秘密協定によって参戦していったんだが、これは全くこの英米がロシアを抱き込んだヤルタ協定と同じ戦時中の軍事謀略協定で、ヴェルサイユ講和会議においてはそのような戦時中におけるところの軍事謀略協定というものを、次の平和を保障すべきところの平和条約において問題にするということは、次の平和を保障する平和条約として好ましくないというので、ウィルソンがけ飛ばしている。ところが、今度はアメリカみずからがヤルタ協定のような秘密軍事協定を結んで日本及び中国の分割を企てたので、このサンフランシスコ講和会議においては、ヴェルサイユ講和会議の理念から見ると、はるかに後退した帝国主義的な外交によって日本なり中国をさいなんでいるんですが、私はこの外交のうしろ向きの古い十八、九世紀のいろんなかすがたまっているような国際法規といううしろ戻りの理念でなくって新しい平和の基礎を築くためには、われわれは何をとにかく世界に訴えながらわれわれの活路を導き出さなければならないかという理念の躍動というものがなければならないのに、みんなかすのような御用学者にへ理屈つけさして、そして腰抜け外交をやって、とにかく負けた国だから仕方がない、近所隣を見回しながら、人の顔色だけちょろちょろ見て、そして日本の国民のとにかく憩いというものを一つも外交に生かしていない。私は世界のどこの国の敗戦史を見ても、こんな腰抜けの戦後処理をやっている国はどこだってないと思う。トルコのような腐敗したところにおいてすら、第一次欧州大戦の後におけるところの敗戦外交というものはもっと私はりっぱだったと思う。ロシアだってレーニンの外交を見てごらんなさい。私は、こういう形にいって、そしてまあアメリカさんの言うことなら地獄へでも行きましょうという恭順の意を表していくと、これはアメリカのためにもならないし、タイのためにもならないし、どこのためにもならない。やはり私はこの変なブームなんか沸かせる必要はない。日本人はまっ正直なんだと、やはり主張すべきものは主張し、話のわかったものはやはりそれを譲るということをするんだという、やはりけれんのない外交路線を築いてもらいたい。今度ガリオア・エロアの問題、それからタイの特別円の問題をめぐっての衆議院その他の速記録を読んで、実際この言い逃がれだけはうまくなったが、一つも民族の憂いをくみ取って、国の十年、百年のみを持ってとにかく一つの外交路線を築き上げようという意欲の芽が一つだに吹いていない。これで一体アジア諸国が日本をたよりにするだろうか。私はみずからの信念のない者に人は引きつけられないと思う。みずからの苦悩とみずからのやはり信念があって、この道を行くというだけのものが外交の中に出てこない以上、私はないと思う。吉田さんのワンマンはわがままの者だけれども、どこかにやはり骨らしいものがあった。時代錯誤的なものであっても、骨があった。それが吉田の魅力だった。このごろは全くナマコのような外交で、どっち向いているのか、どっちが表か裏かわからない。私はこの問題に対して、あと数字の問題なんかは非常にこまかい問題で、衆議院の速記録を全部読んでみても、どうもふに落ちないことばかりあるんですが、しかも参議院段階において上げろ上げろと言って、まるで何も十分なわれわれの志というものを述べられないで、しかも国会における審議権というものがただ政府当局に質問することのように与党側では錯覚して、質問は終わりましたかと言うんだが、これは話し合いの場であって、やはりわれわれの意見というものは国民の三分の一からの支持を受けて、しかも、今日においては大多数の世論が背景になっているので、ほんとうにものを申さなくちゃならない。こんなふうにただ物価の値上がりだけが池田内閣の値下がりになったんじゃなくて、外交の面においてでも、このくずれていく、筋金が入らない、何かたよりげのないこの外交というものに対して、私は国民の不信感というものが五〇%の支持から三〇%に下がったんだ、物心両面から池田内閣の不信感というものは国民の間に私はだんだん積み重ねられてきたと思うのですが、最終的に私はアジア外交というものに対して、外務大臣に端的にお尋ねしたい。とにかく日本のノーマルな形における外交、これは貿易の形においてでも見られるように、戦前は三分の一以上あるいは四割ないし五割もがアジア諸地域との貿易関係であった。アメリカとの関係は三分の一程度であった。占領政策の中において貿易構造というのはゆがめられて、九〇%以上もアメリカに依存しなければならなかった。しかも事実上はアンバランスの貿易というものがほとんど続けられている。しかも、アメリカの感情として、反共と言っても、ソ連よりもむしろ、北鮮の事変で、感情的に憎んでいる中国と日本の接触というものを阻止しようとしておりますが、アジア問題の解決は、中国を除いてはアジア問題の解決なんていうのはないのです。地理の本を見たって、中国のところだけ穴にして白くしている本なんていうのは全然ない。どこに行ったってない。いい悪いは別として、存在する。また存在の価値がある。存在し、存在の価値のある隣国の中国というものと日本というものを隔離して、東南アジアと手を結ぶなんて言ったって、東南アジアが今後日本の貿易相手として、ノーマルな形においてバランスのとれた貿易をやるまでにはたいへんです。年じゅう、今度の池田さんのように、くれてやる、くれてやるという方法をやれば誘い水になるかもしれぬけれども、私は日本だけで背負い込むだけでなくて、むしろ東南アジアを搾取し、今日の貧困に追い込んだ責任はイギリスにあるのじゃないか。オランダにもある。アメリカにだってある。それらの国が戦争に勝ったというおごりの上に、日本だけに罪を課しておるけれども、アジアの貧困の原因というのは、ソ連でもなければ中共でもない。英米帝国主義が今日までの罪滅ぼしのために、もっと今まで持っていったやつを吐き出す必要がある。これは贖罪だ。こういう今の中国の心理だって、中国問題というものを特に私は外務大臣にほんとうに理解してもらいたいのは、中国は、決してソ連が見えるような、アメリカが見るような中国じゃないのです。ソ連にも中国に対するやや警戒があります。アメリカにも中国に対する警戒があります。ソ連の見方、中国の見方は勝手だが、日本の歴史以前から記録された、歴史以前から結びついている中国との関係というものを、みずからの責任において打開して、調整して、対立する国があればそれを融和に導くだけの見識ある外交というものを躍動しないで、どうしてアジアに一つの日本というものの存在が許されますか。私はやはり今後の貿易においてでも三分の一程度は、中国なりあるいはソ連なりの共産圏との貿易があってもよろしい。三分の二以上はアメリカなりあるいは東南アジアなり西欧諸国との貿易がある。この程度でもって日本の均衡というのはとれるのであって、アジアの中国にくっついたところに存在しながら、そこからはがしていくというのは商売だってそうです。道を歩いてごらんなさい。片側道のところに商売が繁盛しますか。お堀のまわりに店屋がありますか。日本海は片側道です。こういう私は不健全なやり方というものをただイデオロギー的にやられていったらば、またインドネシアの焦げつき、韓国の焦げつき、今度はカンボジアにもやらなくちゃならない。あるいはタイにもやらなくちゃならない。全くお忙しいですよ。こういう私は形であったならば、日本自体というものの経済の自立というものはできないと思うのです。私は今の外交というものが一番大切と思うのですが、この間私は小野梓先生の国憲汎論、あの人の明治十五年の演説集を読みましたけれども、やっぱり国の独立というものは民族の魂の独立がなくちゃだめだ、魂の独立を導くためには学問の独立をしなくちゃだめだ、国の権力や勢力に迎合するのじゃなくて、何が正しいかという形の追求がなされなければだめだということをはっきり言っておりますけれども、今多数の上にあなたたちはあぐらをかいて、そして国会においても多数を持っているから何でもやれるという考え方でやっているかしれないが、これがあぶない。ほんとうにあぶない。こういう形のもとに私は日本というものの主体性というものはほんとうに崩壊していくのだと思うので、私は特にガリオア・エロアの問題、タイのものはタイに使うのでしょうが、ガリオア・エロアの金はアメリカと相談してと言うが、結局今までの日本の政府の金の使い方を見ても、反共軍事同盟を結んでいる国々に、それらの国においてはほとんど軍事費に使っちゃっているものだから、経済建設も何もできないから、軍事費に使ったところの穴埋めとして一つの経済面の援助を頼んでいるのですが、そういう国々が不健全な重荷をしょっているところに軍事費の穴埋めとしての経済協力というのをやっていたって、今のような各国の姿勢というものが直らない限りにおいては、かいらい政権的な、軍事政権的なものが反共軍事同盟という形を結んでいればどこからか金が入ってくるという考え方で無理をしている限りにおいては、私はとめどなくアジアの混乱はあると思う。ほんとうにアジアの悲劇を作る火薬庫にいつまでも煙を吐くような状態の補給を日本がやるようなこの外交方針というものでいいのかどうか、これを私はほんとうに国の前途を憂えて外務大臣に聞きたい。こんなことでいいんだろうか。とめどなく泥棒の道に水をまいていくのが、日本の役割りだ。散水機です。ほこりの立つところに水をまくならいいけれども、泥棒のところに水をまいてよけいぬかるみを作るようなやり方、私はほんとうに池田さん、それからあなたの外交というものがアジアの前途に対してどういう見通しを持っているか。特に中国関係との今後をどのようにしていこうとされるのか。このままでいくなら、中国との問題はだんだん悪化して、中国防衛の軍事同盟国に対する日本が補給地としての立場きりなくなってしまって、ほんとうに地獄への道に行くと思うのですが、その御見解を承りたい。   —————————————

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) ただいま委員の異動がございました。  永野護君が辞任され、その補欠として村山道雄君が選任されました。   —————————————

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) われわれのアジアに対する外交方針いかんということでございまするが、私どもは、何といっても身近いアジアの各国に対しまして善隣友好の関係を押し進めたい、そうしてアジアを繁栄せしめていきたいということを考えております。その繁栄方針といたしましては、各国との経済的な繁栄、ことに開発のおくれている各国に対しまして、できる限り適切なる国作りを、経済面においても援助していきたいということを考えております。  貿易の問題いろいろお話しになりましたけれども、わが国の輸出で見ましても、アジア貿易というものは三二%、三分の一になっております。対米並びにカナダが三〇%、あと西ヨーロッパの関係が一四%、大洋州が四%ないし五%、それから中南米、これが七%ぐらい、中近東、アフリカ、これがやはり六%から七%ぐらい、そんな関係になっておりまして、共産圏の各国は全体の三%ぐらい、こういうのが全体の輸出の鳥瞰図でございます。で、中国本土、中共との貿易関係につきましては、日本の品物を買ってくれる限りにおいては、できるだけそれを買ってもらいたいというようにしたいと思いますし、わが国が必要とするものは入れる、そういう関係は少しもわれわれとしては閉ざすというつもりはないのであります。やはり相手国のあることでありますから、当方はできるだけ、何といいますか、適正なる善意を持ってこれに接するということに変わりはございません。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 この前総理の出席されたときに、私が、このタイ特別円協定については結局いろいろな理屈を言われても、大所高所論からこれがいいと思ってこういう新しい協定にした、一言にして言えばそういうことになると思うのです。そこで前々から申し上げておるように、二国間で合意された条約なり協定が、こういうふうに簡単に相手国の一方的意見によって変更されていいかどうか。こういう場合に、私は外交の技術的な問題は全然しろうとでわかりませんからお尋ねをするのですが、大所高所論というようなことで、今後このことが先例を開くことになりはしないかという質問に対して、総理は、そんなことはめったあるべきことでないが、しかし絶無とは言えない、こういうお話がありました。そこで私は、この種のことが起こった場合には、むしろ、古い協定はどういう形か知りませんが、これを破棄するというか、御破算にして、新しい形で情勢変化に対応する取りきめを国会の承認を得て行なうほうが筋が通るのではないか、こう思うわけです。大所高所論で条約や協定を簡単に扱うということ、それはめったやらぬが、しかし、今後だってあり得ることだという総理の答弁ですが、これは私適当でないと思う。その点、私は技術的な問題はしろうとでわからぬから、どういうふうにすればいいかということは自分の見解としては特別のものを持っておりませんから、大づかみに考えて、そういうようにすべきではないか、こう考えるわけです。ですから、特に今度のような場合は、総理大臣一個の見解としてこういうことが——外務省ももちろん同意されたのでしょうが、主としては総理大臣一個の見解で大所高所論でこういうことが起こってきているわけです。ですから、これを外務省として条約なり協定の取り扱い上今後どうあるべきか、どういう形が望ましいのか、これについてはどういうふうにお考えになっておるか、この点を承っておきたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) このタイの特別円の関係は、全くこれ以外の例というものはおそらくこの問題に関してはないというふうに思うのであります。で、これは御承知のように、戦時中のわがほうがタイに立てかえさしたしりをどうするかという問題、帳簿じりに五十億円の金があった、しかしその評価を幾らにするかということを三十年の時点において考えまして協定ができたわけであります。そのうちの五十四億円というものは、まさにスターリング・ポンドで、そのものずばり払っておるわけであります。そのあとの九十六億円というものが先方には先方なりの解釈が協定の文案からいくと日本の考えどおりにならざるを得ないのですが、先方には先方の言い分があった、こういう例でございまして、こういう問題を今後また例になるようにするかどうかということは、私どもはそういうことがないと、そういう例を作るようにしないというふうに考えておるのであります。私は、このタイの特別円問題というものは、羽生さんおっしゃいましたように、新たなる事態で新たなる協定を結んだらいいじゃないか、こういうことと一脈相通ずることでございまして、全部新たにするということになると、五十四億円払ったことが妙な格好になってしまうのでございまするから、技術的には、新たなる協定は旧協定の動かない部分について新たなる協定を結ぶ、こういうことにならざるを得ないと思っておりますわけで、まあその点はこういうタイの特別円に見られるような日本が戦争中に先方から借りておったもの、それを今度どういう形でか動かそう、こういう事例は今後ないというように思っておる次第でございます。物事の判断は、やはり大所高所からすべきものでございますから、大所高所ということはないとは、総理大臣むろんおっしゃらないと思いますのでございますが、タイの特別円のような事例はこれはない、こういうふうに思っております。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 私の言うのは、今外務大臣のおっしゃるようなタイの特別円に関するようなことは、それはいつも起こることではないが、両国間で合意されたものが、こういう形で全く新しい形に変更される、それは大所高所論だと言うことは適当でないから、こういう場合に対処すべき外務省の条約並びに協定等に関する基本的方針は今後どうあるべきか、こういうことを言っておるので、タイの特別円協定のような場合がしょっちゅうあるはずはないのですから、外交の建前上どうもこれは適当でない、こういうことですが、まあこれは答弁要りません。

戸叶武日本社会党

○戸叶武君 小坂外務大臣が二月の六日衆議院の本会議で、ヴェルサイユ条約でドイツの賠償がきまったが、あまり多額で払えないということになって、そこでドーズ・プランが出、あるいはまたその次にヤング・プランが出て、これが減額されていった、要するに実態とあまりかけ離れたものができました場合には、これが修正されることもあり得るということは言えるというような答弁をしていますが、これと逆で、このごろのガリオア・エロアでも何でも負けた国の日本のほうに容赦もなく、日本の国は戦争に負けたがなかなか景気がいいようで、池田は所得倍増だのと言って繁栄しているというように見せかけ繁栄で、方々から取れ取れとけしかけられてむしり取られていますが、これは私はドイツが、第一次戦争のあとで立ち上がれなかったのは賠償のむしり取りによって、そしてローザンヌ会議でも、あんなに苦悩してステレーゼマンのような大政治家もほんとうに精力を使い果たして死んでしまったのだが、今池田さんは楽観して見ているけれども、これが参議院選挙でも過ぎてごらんなさい。えらい不景気になってきますよ。そういうようにだんだん日本経済というものがアメリカのドル防衛と自由化の余波を受けて困難な道を歩もうというときに、こういう前例を作ったらたいへんなことになるので、今羽生さんが言ったように、こういうことはめったにやらぬというようなかまえのようですが、私はどこまでも憲法第七十三条並びに憲法第八十五条の「国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを必要とする。」、協定なり何なりは作ったあとで承認を求めればいいという思想じゃなく、形式はそういうものにしても、基本的な外交の考え方というものは国会に相談すべきで、男女間だってそうじなゃいですか。お互いでき上がって、既成事実を作ってからおやじにちょっと報告すればいいというような形じゃだめですよ。これはやはり一応家庭において十分家庭が円満にいくように話し合いを進めて、そういう形式を整えるという形でなければいけないので、これは私は今度は戦後処理の異常な状態のもとであろうが、ガリオア・エロアの問題でも、このタイの特別円の問題でも、ほんとうに無軌道もはなはだしいので、大所高所論どころじゃなくて、ほんとうに抜け道外交なんですから、こういうことにはわれわれはきびしく反対しておかなければ、目の玉から火が出るほどひとつ政府をやっつけてやらなければ、痛い目にあわせなければ、またけろっとして同じようなことをやる。こういうことは私たちは今度も反対しますけれども、今後こんなことをやったら承知しない。国民も今度の選挙で明らかにこの問題に対する——私は憲法改悪の問題とこの問題と私は池田内閣の物価の値上がりのこの三つ、この三たたりで池田内閣はつぶれる。私は返事は聞きませんけれども、ほんとうにこれは国会だけはあなたたちは多数を占めているので勝手気ままなことをやりますが、国民はばかじゃないですから、今度国民に訴えて目にもの見せて袋だたきにしてみせるということをひとつ忠告しておきます。  私の質問を終わります。

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 速記を起こして下さい。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 私ガリオア・エロアの問題について若干質問したいと思うのですが、まず最初に、ガリオア・エロアの問題は、法律の解釈とか適用という問題ではなくて、むしろ政治的解決の問題だ。すなわち政治的な観点からこの問題の処理が進められたものであるというふうに、私はこの条約の全般を読んで、あるいはまた国会における質疑応答を通じ見ているわけですが、そのように見てよろしいかどうか、この点ひとつまず外務大臣からお答え願いたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 一言にして申し上げますれば、いわゆる戦後処理の問題というふうに御解釈いただきたいと思っております。これは戦後の日本が占領下にあって困窮しております時代に受けました援助、この援助が、それを受けるにあたりまして、これこれのものについては「支払いの条件及び計算の方法は協議して後刻決定する」と、こういうことになっておりまするので、その趣旨に従って協議をしてきめようと、こういうことを何回も言われておるわけでございます。戦後十年たちまして、わが国もいつまでもこの問題について口実を設けて逃げ惑うというようなことをしないで、もう積極的にこの問題はこの問題として解決すると、こういう形で臨んでこの協定を御審議願っておる、こういうことでございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 したがって、戦後処理の問題で、解決の時期が来たから、日米交渉の結果こういう協定になったというわけですが、それはそのとおりだと思いますけれども、したがって、この問題解決は法律的な根拠、あるいは条約上の根拠とか、国際法的ないろんな立場からの解決がはかられたというより、むしろやはり戦争中いろいろアメリカから援助を受け、お世話になった、そういういわば政治的な立場でこの問題の解決、あるいはいわば道義的な問題の処理として今回の協定というものが生まれたのだと私は見ておるんですが、そのように見てよろしいのかどうかです。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) これは法律的な意味で確定した債務をわれわれ持っておったというわけではないと思います。ただ従来の経緯からして、債務性の濃いものを抱いていた。そこで、この際解決いたしまするについて、この協定を御批准いただきました後において債務が発生する、こういう問題であると思っております。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 私の伺っておりますことは、条約上の問題、特に平和条約の面から、今回のガリオア協定との関係はどういう工合になっておるのかということが一つです。あるいはまた、確かにお話しのように、今回国会の承認を得て初めて法的に厳正な意味における債権債務という関係が確定される、これはまあそういうようなことになりましょうが、しかし、この話し合いを進めるにあたっては、何か条約上の根拠というものがあって日米交渉というものが出て、そしてそれがガリオア・エロアの返済協定になったんだと、こういうような法律的な根拠というものは何に求めたらよろしいのか、それを私はお尋ねしておるわけですが、何もなく、こういうふうに言われるわけですか。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) サンフランシスコ平和条約には直接このガリオア・エロアの問題に関する規定はございません。したがいまして、お尋ねの御趣旨が、何かサンフランシスコ平和条約あるいはその他の条約に根拠があって支払うのかということのようでございまするので、そういう意味での条約上の根拠はない。それじゃ全然何らの根拠なしに支払うのかと申すと、やはりそうではなくて、終戦直後に日本が懇請して、向こうのスキャッピンによって、「支払いの条件、計算は後日きめる」という条件のもとで品物を受け取っておる、ここからやはりすべてそのもとが発生しておる、かように考えるのでございます。根拠を求めればそこから出てきておると、かように考えます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 スキャッピンの指令やあるいは覚書によって初めて出てきたんだ、こういうわけですが、衆議院の速記録等を読んでみますと、平和条約との関係がないとは言っていないんでしょう。たとえば、この協定の第三条を見ますと、この第三条によって、「第六条に定義する戦後の経済援助の提供から生じたアメリカ合衆国及びその国民に対する日本国及びその国民のいかなる請求権も、サンフランシスコ平和条約第十九条(a)項の規定によって放棄されていることが、了解され、かつ、合意される。」というように、この協定自体というものが、平和条約の、今言ったような第十九条の(a)項と非常に不可分の関係があるわけで、そういう意味においては、これは平和条約をその点に関する限り準用しておると、こういうことになろうかと思うのです。ことに、また平和条約の十四条の問題等も皆さんは常に取り上げられているわけです。で、私が言っておるのは、そういう点ですね。平和条約と今回の協定というものはどういう関係になっておるのか、この点を先ほどお尋ねしているわけで、そういう条約上の根拠というものとこの協定とはどういう関係になっておるのか、これを言っておるわけです。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) これはガリオア・エロア等の経済援助をアメリカから受け取ったわけでございますが、その当時、アメリカの国会でのいろいろ政府当局の証言等によりますと、これは日本にとっては結局は債務になるであろう、しかし、その支払いは平和条約でおそらくきめられることになるであろうというような証言をしておる例があるのでございまして、一応その当時は、あるいは平和条約でこの問題が頭を出すのじゃないかということも考えられたわけでありますが、現実の問題としては、サンフランシスコの平和条約では直接この問題に関する規定が置かれなかったわけでございまして、幾らかでもこれに関連あります規定としては、先ほど御指摘になりました十四条(b)項で、占領から生じた直接の軍事費、これについての連合国の請求権を放棄するという規定があるわけでございます。これはガリオア・エロアは直接の占領軍事費ではありませんから、要するに、アメリカは放棄していない。その裏から、ガリオア・エロアについてはアメリカは依然として請求権を持続して持っておるという解釈が出てくるわけでございますが、まあそういうような意味において、ここでは直接規定していなかったという意味において、平和条約十四条(b)項に関連があるわけでありますが、なお、この今回の協定で、ガリオア・エロアのこの支払いをする際に、日本側としていろいろ考えられておりました、従来から懸案になっておりました、いわゆる反対債権と称すべきもの、これの解決も一緒にしたわけでございますが、その反対債権につきましては、やはり御指摘のような十九条(a)項というものがあって、日本は占領中及び戦争状態から生じたすべての請求権を放棄しておりますから、その意味での反対債権は権利としては放棄しておるという格好になるわけでございまして、その意味ではこの十九条の規定も関連があるわけでございます。しかし、ガリオア・エロアの返済に関する規定は平和条約には書かれなかった、むしろ戦後に残されたということが、この一番元になる法律関係でございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 具体的にお尋ねいたしますけれども、昭和二十四年の阿波丸協定というのがありますですね、これは内容を読んでみますと、いろいろな重要な問題を含んでおるわけですが、特にこの了解事項等においても、戦後のアメリカの援助との深い関係があるわけです。で、私はその前に、この阿波丸協定というのは非常な大事な内容というものをこれは含んでおるわけですが、この協定というものは、これは国会の承認を経たものか経ていないものか、これをまず伺いたいと思うのです。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) この阿波丸請求権放棄のこの協定は、これは国会両院で同趣旨の決議がございまして、阿波丸の請求権は放棄するのが適当である、したがって、政府はその趣旨でアメリカと交渉し、その結果を国会に報告せよという御趣旨の決議が両院でそれぞれございました。その決議に基づきまして、政府がこの協定を取り結びまして、そうしてその決議のとおりこれを国会に御報告したのでございます。したがって、憲法七十三条第三号に言う、国会の事前または事後の承認を得るという手続は経ていないのでございまして、国会にそのあとで御報告したということになっております。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 国会の決議が両院でなされておるから国会の承認を求める必要もないと考えて、単なる報告にとどめた、こういうことだと思いますが、国会の決議というものは一体どういう性格のものなのか、私はその点をまず伺いたいと、こう思うのです。と申しますことは、国会の決議はあくまでも決議であって、その決議の中には、たとえば核兵器の実験禁止に関する決議ということもありましょうし、あるいはまた、沖繩の施政権返還を要求する決議案とか、北方領土返還に関する決議案とか、いろいろあろうと思います。あるいは法律の成立に伴う附帯決議というものも衆参両院において同じ内容の決議というものがなされるわけですね。しかし、それはあくまでも決議は決議にとどまるのであって、それ以上のものではないと思うのです。行政府が立法府の決議権を尊重するということは、それは当然のことであるかもしれぬが、それかといって決議は決議以上のものではないと思うんですね。しかし、この協定書の内容には、深く国民の権利の問題等に触れる重要な内容があるわけです。こういう重要な協定というものが国会の承認を経ていないということは、これは行政府の独善、あるいは正当なやるべきことをやっていない、こう言われてもこれは仕方がないと思うんですが、この点どのようにお考えになりましょうか。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 国会の両院で同趣旨の決議が行なわれましても、これは決議以上のものにはなり得ないということは、私どもも同じに考えております。しかしながら、国会の御意思がどういうことであるかということは、その同文の、同趣旨の御決議があったということで、実ははっきりしておると、これもまたそう考えておるのでありまして、したがって、阿波丸の請求権——これは要するに請求権でございまして、まだ確定した債権とまではなっていないわけでございますが、アメリカと交渉してその金額等がきまれば、ここに確定した債権が生ずるわけでありますが、その債権の生ずるいわば元になる請求権というものをこの際放棄せよと、そしてそういう協定をアメリカと結べということであったわけであります。したがって、そういう結びます協定が憲法七十三条三号に言う条約に当たるか、あるいは第二号のほうで言う外交関係の処理のほうになるか、ここはいわばその境界線でありまして、その境目でありまして、これはまあいずれにでも、いわば解釈としてはできるような事態ではないかと思うのでございますが、国会の御趣旨が、その協定を結んだら国会に報告せよ、国会で承認を求めよということではなくて、国会に報告せよと、こういう御決議がございましたので、政府としては憲法七十三条の、この件に関する七十三条の国会の解釈というものがその決議によってはっきりしておると、かように考えましてむしろ国会の御意思、御解釈を尊重いたしまして、これをあらためてこの国会の承認を得るという手続をしないで、報告をするという方法をとったのでございまして、したがって、こういうことが何回でもあるというような実は事態ではなく、もっぱらただいま申しましたような事態のもとに行なわれた措置であると、かように考えておるわけでございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 今のお話ですけれども、この協定は明らかに請求権の放棄ということを認めておるわけです。しかも、先ほど申し上げたように、これはたとえば第一条を見ますと、「米国政府又は米国民に対するいかなる種類の請求権をも、日本国政府自身及び一切の関係日本国民のために、すべて放棄する。」、日本国政府の請求権だけでなくして、国民の請求権も一切を放棄する、こういうようなことをうたっておるわけで、しかも、これは一つの原則を示しただけでなくして、この原則に基づいて事実上これは国民の権利、義務というのが侵害されておるわけですから、当然このことは、単に国会の決議があったから、あるいは国会から委任を受けたからというようなことで、私は行政府がこれを国会の承認を経ないで済ませるということは、明らかにこれは行政府の行き過ぎであると思う。先ほど七十三条の問題を取り上げておられますが、これこそ私はやはり七十三条三号に基づく国会の承認事項として処理すべき問題だと、このように私は考えておるわけですが、この点ひとつ外務大臣のお考えを承わりたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この問題は、先ほど来御説明いたしておりますように、国会がそういう決議をされて、内閣にこれこれのことをしろという授権をされたわけであります。その授権に基づいて政府はその内容のとおりを——内容まで国会の御決議は示しておったわけでございますが、それに基づく措置としまして国会に報告したと、こういう事例でございまして、まあきわめて平生にない措置だということは言えると思いますが、しかし、そういう措置がいいか悪いか、今後すべきか、すべからざるか、これは国会の御決定によるものでございますから、国会側で御判断なすっていただけば、そのように政府は国会の御決議を尊重してそのとおり行動する、今後そういうことがあれば、政府としてはそういうことをすることもあり得るわけであります。そういうことがなければ、政府としてはすぐそのとおりするということはない、こういうことでございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 平和条約も、たとえば、私はいつも日韓会談で問題になる第四条の(b)項の問題を見ましても、あるいはまた第十四条の請求権あるいは財産の問題を見ましても、先ほど私が申し上げた第十九条の戦争請求権の放棄を見ましても、いずれもこれは平和条約の大事な基本的な内容を構成しておるわけですが、これだっても同じように一般的な原則論を実はここでうたっておるだけで、この原則に基づいてどういう措置をとるかということは、関係国間の外交交渉あるいは話し合いによってきまるわけで、阿波丸の請求権に関する協定を見ても、私はこの平和条約の条文に劣らないほどやはり重要な内容を持っておる、こう私は見るわけです。こういう重大な内容がなぜ国会の承認を経なかったのか。しかも、この阿波丸請求権処理の協定が、特にこの了解事項等を見れば、いろいろ今回のガリオア・エロアの援助の処理に関して一つの影響を与えておるということは、沿革的にもこれは明らかな事実なんです。そういうことを見たとき、これは単に国会から委任があったということで済まされる問題ではないと私は考えておるわけです。どうでしょうか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 国会の御決議は、かくかくの内容の協定をアメリカ政府と結べ、こういう御決議であったわけです。したがって、政府はその内容を先方と協議決定いたしたわけでございます。したがって、その内容は、国会にはかれば、国会がそういうことをしろとおっしゃったのでありますから、当然それと一致するわけでございます。したがって、これは報告でよろしい、こういうことになると思っております。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 私は確かに国会からそういう決議があって委任をされたということになれば、それもそうであるかもしれないが、少なくとも請求権を放棄したという実体的な内容がある限りにおいては、請求権を放棄したこと自体については、これは少なくとも国会の承認を経るべきだとこう思います。どうでしょうか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) ですから、その請求権を放棄するという実体を含めて、国会の御決議があって政府に委任をされた、したがって、そのとおり政府はやった、こういうことでございます。ただ、内容を示さないで、一般的に政府に委任をされて、そして政府が何か協定を結んだということでありますれば、その内容はこれこれのものを結びましたということを国会に提案いたしまして、その御承認を得る、こういうことになるだろうと思いますが、この場合、全くそういうことではないのでございまして、そういうことがいいか悪いかという価値判断になりますと、これはまたいろいろ議論があると思います。少なくとも、その価値判断というものは国会側でなさるのでありまして、国会側がそういうことはよろしくないとお考えになれば、今後されない、こういうことになるだろうと思います。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 しかし条約を沿革的に見てみれば、政府の責任及び政府の外交権に所属することで、したがって、当時はいろいろ制約があった時代でありますけれども、こういうような取りきめをした場合に、これは私は少なくとも国会の承認を受けるということが、憲法の精神から見ても、あるいはまたこのような重要な国民の権利義務に関する取りきめをやる、その実体から見ても、私は国会の承認を求めることが大事だと思うのですが、いいか悪いかという、その価値判断の問題、私はやはりこれは国会の承認を求めるような手続をとるべきだったと、こう思いますが、その価値判断については、外務大臣どのようにお考えになりますか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 政府としましては、国会がそういう内容を示して協定を結べという御決定があった、その事実を、そのまま実行に移したということでよろしいと思います。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 その価値判断についてどのようにお考えになるか聞いているのです。事実を申し上げておるのじゃない。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 政府としては、国会のそうした内容を示した御決議には従うということは当然のことだと思っております。国会の側に立ってどういう価値判断をするかということでございますれば、私は今政府の閣僚といたしまして、そういうことを言うことを差し控えたいと思います。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 了解事項ですね、了解事項について、この了解事項には大事な内容が書かれておるわけですけれども、この点は今度のガリオア・エロア援助協定との関係はどのように関係を持っておるか、これは了解事項と言うべきなのか、それをひとつ御説明願いたいと思うのです。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 了解事項はあくまで了解事項でございまして、こういうことを了解する、こう思うと、こういうことでございます。その了解事項の中には、占領費あるいは戦後日本に与えられた借款及び信用というものは日本に対する債務であって、アメリカ側からして見れば債権であり、日本にして見れば債務であって、この日本の債務というものはアメリカ政府の決定によってのみ減額されるものと了解されるというのですから、これは債務であると了解ふれる、こういうことに読んでおるわけであります。それが普通の読み方だろうと思っております。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 そうしますと、この「借款及び信用」というものの中には例のガリオア援助は含まれる、こういうことになるわけですが、この借款及び信用というと具体的に何をさしておるのか、どういう内容を持っておるのか、これを少しひとつ系統的に御説明願いたいと思うのです。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この問題につきましては、前にも当委員会で申し上げたことでございますが、当時のこの協定の調印者であるもとの総理大臣、吉田当時首相兼外務大臣は国会で答弁されまして、この了解事項の中には綿花クレジットというものも入っておる、またガリオア・エロアというファンドも入っておる、これはもう当然なことであるけれども、日本国民の中には往々にしてこういうものはただでもらったものであるというふうな感じを持っておる者がおるから、そこでこれはそうでないのだということをあらためてここで確認しておくということを言っておられるので、これは何もその答弁によってあるいは阿波丸の了解事項によって新たなるそういう債務的なものが発生したと、こういう意味ではないのであって、本来もともとこれは債務と心得ておるものであって、これをこの際確認しておくものである、こういうことを言っておられます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 こういう私はやはり重要な内容を含んでおる了解事項さらに協定ですから、当然の事項として私は国会の承認を得て、国会を通じ国民に明らかに知らしむべきだったと、こう考えておるわけです。まあ私はこの問題についてはこの辺で並行線になりますから、やめますけれども、それから平和条約の十四条について若干お尋ねしたい、こう思うのですけれども、これも私はいろいろ速記録を読んで、政府の答弁を見て疑問に思うわけですけれども、この第十四条の中の(a)項にある「他の債務」、これはガリオアの援助等を意味しておるのだ、このような解釈を政府はとっておられるようですが、もっとひとつ理解できるように、納得いくようにこれを説明してもらいたいと思うわけです。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 十四条(a)項に、要するに、賠償を完全にするとすれば、「その他の債務を履行するためには十分でないということが承認される。」ということが書いてあるわけでございますが、ここに書いてある要するに「他の債務」というのが何を具体的にさすかということでございますが、この中にはガリオア・エロア等も、オブリゲーションという言葉でございますので、入るとも読めるのでございますが、一番端的にこれに入りますものは、たとえば戦前からの外債というようなもの、これははっきりこれに入ると思うわけでございます。しかし、ここは要するに、賠償というものが全額を払い得ないんだ、日本が経済を存続させ、国民の生活を維持させ、しかもその戦前の外債、その他あるいは戦後の債務等も払い、なお賠償も全部払うということは、それはそれだけの資源はないのだという原則を書いたのでありまして、具体的にこの「他の債務」が何であるかということは、特にここで突き詰めて実は書いてもございませんし、講和条約の際にこれをはっきり具体的に、どれが「他の債務」に当たるということを突き詰めてここで明らかにしたわけではない次第でございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 そうしますと、戦前の外債等は入るが、この「他の債務」の中にはガリオアの援助その他については入っていない、こういう見方をとっておられるわけですか。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) ここは、要するに、抽象的に、この賠償も払い、それ以外の債務も全部払うということにすると、しかも、そういうことをするというのには日本の資源は十分でない、こういうことを言っているのでございまして、こういうことを言っておることからいたしまして、賠償も全部払えない。それと同時に、賠償は全部払えないけれども、それじゃそれ以外の「他の債務」は全部払えるのかということまでは、実は書いていない。賠償は払えないし、同時に「他の債務」も払えないということになるかもしれません。あるいは賠償は払えないかもしれないけれども、「他の債務」は全部払えるということになるかもしれません。いずれにしろ、賠償以外の「他の債務」ということは、一体何であるか、この「他の債務」が払えるのか払えないのかということは、この十四条の(a)項自体では触れていないというように解釈いたしております。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 説明がはっきりしないのですが、のみ込めないのですが、そうしますと、これはガリオア援助の内容とは関係があるのかないのか、それを明確にしてもらいたいと、こう思うのです。「他の債務」の中には、速記を読んでみますと、皆さんはガリオア援助も入って考えるべきだという答弁をしばしばなされているわけですが、そのようにこれは見れるのかどうか。それを私は率直にお尋ねしているわけです。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) その第十四条(a)項は、これは賠償の規定でございまして、したがって、ここでは賠償を全部取り立てるわけにはいかないんだということが書いてあるのでございまして、ここから、ここに書いてあるいわゆる「他の債務」の中にガリオア・エロアが入るか入らないかということ、これは直接にはここから出てこない。要するに、賠償及び賠償以外の債務、そういうものを履行するには十分ではないということだけが書いてあるわけでございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 賠償以外の債務というと、何を言うのですか、具体的に。この条約を結んだとき、そのように解釈が不明確なままに調印したのかどうか。そういうようなことじゃないでしょう。あなたの先ほどのお話を聞いていると、外債は明確にこの中に入るが……。そうすると、外債だけなのか。賠償は、もちろん、これは明確になるわけですね。その「他の債務」です。その「他の債務」の中には、一体何が入っているのか、それもわからぬでこれは調印をしたわけですか。そんなことはないでしょう。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) ここに、十四条(a)項の「他の債務」に何が入るかということは、先ほど申し上げましたように、ここは賠償の規定でございますので、この「他の債務」が何であるかということは、特にはっきり突き詰めて交渉したわけではないのでございまして、ここでは、要するに、賠償を完全に払うことは不可能であるという意味でこの十四条の(a)項が書いてある、こういうことで調印したのでございますが、しかし、はっきり債務としてわかっておりますもの、つまり戦前の外債でありますとか、あるいはこの平和条約自体に債務として上がってきているものがあります。たとえば、戦前債務は払うとか、あるいは連合国財産は返還するとか、いろいろの平和条約自体にも各条項に日本の債務が規定してあるのでありまして、そういう債務を履行するには十分でない。そういう債務は入ると思います。ガリオア・エロアが入るかということは、要するにガリオア・エロアというものは、この法律的な意味においての債務ではなかったのでございまして、しかし一般的な意味での、要するに何らかの形で支払いを要するものという格好では、すでにそのときからあったわけでございますが、はっきりした債務としては、まだ平和条約締結の際には存在していなかったわけでございます。したがって、ガリオア・エロアはこの債務に入るかどうかということは、別にこのときには突き詰めて話をしたわけではないのでございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 さらに第十四条の(b)項によれば「占領の直接軍事費に関する連合国の請求権を放棄する。」、「占領の直接軍事費」ということで、これは放棄するということになっておりますが、ガリオア援助と直接占領費との関係、これはどうなるわけですか。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) ガリオア・エロアはいわば救済物資でありまして、日本の国民の生活を維持し、あるいは日本の生産力を増大するいわば渕源として物資を日本に供給するということでございますので、この十四条(b)項に書いてある「占領の直接軍事費」、こういうものには入っていない、これには含まれていないというふうに解釈いたしております。したがって、先ほど申しましたが、ガリオア・エロアは、直接この十四条(b)項には触れていないと、かように考えます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 今までの答弁を総合いたしますと、結局平和条約のどの条文を見ても、ガリオア・エロアの援助が債務であるのかどうか、これと関連を持つ条項はないのだ。そうしますと、条約全体を通じて、ガリオア・エロアの問題は外にあるというのか、全然考慮の外にあった、当時においては。当時においては少なくとも平和条約によってこの問題を処理するということは、片りんもこの条約の上には出ていなかった、こう判断して、解釈して、よろしいわけですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) だんだんお答え申しておりますように、この平和条約というのは、これは多数国との条約でございまするし、アメリカと日本だけのガリオア援助の問題を解決するということには、平和条約そのものでこの問題に触れるということは、当時としてはむしろ不適当でありまして、なお、日本側としましても、あの日本経済がまだ十分な回復を見ておらない段階において、これは幾らという決定をするということも、また日本側に外交交渉能力というものができていない時代において交渉をするということも、わがほうにとって得策でないという判断のもとに、あとにこれを繰り越す、こういうような考え方でこの問題に対処したわけでございます。したがって、講和条約の済んだあとに、先方から話をまた言って参りました。その後昭和二十七年以来、ずっとガリオア問題の処理ということが両国の懸案になっておったわけでございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 外務大臣に私もう一度そのことでお伺いしますが、今の御答弁によると、この平和条約は日米だけの条約でなくして、多数国間の条約である、それはそのとおりでしょう。しかし、この条約の草案そのものも、アメリカの指導のもとに作られて、そうしてまたアメリカの意思というものが、ほとんど全部と言っていいくらい反映されている条約であるわけで、そういう条約の中で、いわゆる日米間のみの問題であるかもしれぬが、ガリオア・エロアの援助の問題については、全然この条約の中には入っていないのだ、こういうことになってくればですよ、私はそれはそれでけっこうだと、こう思うのです。そうならそうとはっきり認めてもらえるなら、認めると、こうおっしゃってもらいたい、こう思うわけです。日本の経済が、講和条約の締結前後においては非常に低い水準にあったし、したがって、その時期においてこの問題を処理するのは日本にとっても不利益なことであった、それは事実問題としてそうであったかもしれぬが、私のお尋ねしておりますのは、このガリオア・エロア援助の問題は、先ほど阿波丸協定の問題で私お尋ねしましたが、協定自身も昭和二十四年四月の問題ですね、しかも吉田総理は、援助の問題について、国民は誤解があろうが、しかしそれは返済しなければならぬのだ、こういうことを明確にあの協定を通じ国民に知らしめる、そういう意味であの協定はできた、こういう外務大臣は御答弁になったわけですね。そういう、すでに、いつ払うか、何ぼ払うかということは別にいたしましても、二十四年の阿波丸協定の時期において、すでに債務だと政府は認めておる。認めてきたわけです。それが平和条約の中では何ら頭を出していない。この平和条約は実はガリオア・エロア援助の問題とは関係ないのだ、こういうことになれば私はそれでけっこうですから、そういうことなのかと、こうお尋ねしているのです。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この問題、もうしばしばお答えしておりますように、ガリオア援助の債務性というのは、当初、この物資を受けたときから発生をしているわけです。先方のスキャッピン、代表的なものは一八四四というのでございますが、それによってわがほうは債務性を承認しているわけであります。それがああいう形で現われた、阿波丸協定附属了解事項において。国会における論議を通じてもそのことが言われているわけでございます。ただ、平和条約の際に、この問題の処理に特に言及されておらなかったのは、先ほど申し上げたように、多数国間との条約である、こういうことで特にこの問題に触れていないわけでありますが、さればといって、アメリカはこれに対する請求権を放棄したのかと言いえば、放棄してはおりません。こういうことで続いてきたわけでございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 繰り返しますけれども、この条約のどの条文を見ても、直接的にもあるいは間接的にも、ガリオア援助の問題、あるいはこれを債務として取り立てるというような内容は、どの条文にもないのだ、どの条文もガリオアの債務との関係はないのだ、こういう工合に解釈してよろしいわけですか。そこを率直に私はお答え願いたいと、こう言っているわけです。

中川融外務省条約局長

○政府委員(中川融君) 積極的に、ガリオア・エロアを支払うべしとか、支払いに関する規定が平和条約にないというのは御指摘のとおりでございます。しかし、同時に、十四条(b)項で、たとえば占領の直接軍事費を放棄するということを連合国ははっきり言っておるわけでございますが、そういう意味では、ガリオア・エロアの請求権についてもこれを放棄するということを書いていないことは、要するに、そういう請求権は放棄していないという解釈が一方に生ずるのでございます。そういう意味でも、直接的な規定はございませんけれども、これに触れていないということから、要するに、ガリオア・エロアの問題は依然として残されたままになっておるということが言えるわけでございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 そういう戦後処理の問題というのは、本来平和条約の中で具体的な解決のめどというものがなさるべきだと、こう私は思うのです。この点はどのように外務大臣としてはお考えになりましょうか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) なさるべきであるということは、私はそう思いませんでございます。ということは、わがほうとしては、これはあの時期に日本経済の実態も整わず、しかも、わが方としては平和条約ができるまでは、これはわがほうは占領下にあるわけですから、占領下において占領軍との間にこの交渉をするということはかえって不利である。でありますから、これはなさるべきであるとは私は思っておりません。私どもは、それをしないほうがいいと、こういうふうに考えておったのであります。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 先ほどのお答えによってもわかりますように、結局この平和条約とガリオア援助の関係は、条約局長の説明を聞きますと、十四条の(b)項の直接軍事費だけは放棄すると明確にうたわれているが、間接的な軍事費放棄をうたっていないから、反対解釈の立場に立って、やはり間接的には平和条約と援助との関係もあるだろう、こういうまことにたよりない御答弁ですが、しかし、私はいろいろな角度から戦後の援助の問題については議論を尽くされておりますので、ここでは触れませんけれども、ただ、言えることは、平和条約の草案というものが一九五一年三月に最初できた、その草案が内々わが国に示された、これは私、よく引用されておるこの宮澤喜一君の本を読んでみますと、この中にその辺の事情がよく出ておるわけですね。第十四条の規定等は、要するに外国の賠償請求というものが日本に非常な負担をかけてくることをおそれている、そしてアメリカがむしろ占領後の占領費あるいは救済費、これが第一義的に日本から取り立てる費用である、まあこういうようなことで、できるだけ他国の賠償請求を少しで押えよう、そういう好意的な立場から第十四条の問題が取り上げられた、こういうようなこと等も載っておりまするが、一九五一年の三月の草案では、第十四条の規定というものは当時はなくして、原則として、各国は自国に残留した日本政府及び日本人財産を没収するだけで済ませるような、そういう規定になっていたけれども、それがフィリピンとかインドネシアとか、そういう国々から非常な反対が起きたので、新たに十四条というものに賠償条項を付加する、こういうことになったと記録があるわけです。こういう情勢のもとにおいて、しかも、アメリカはできるだけ日本の賠償というものが今後の日本の経済の負担にならないように、そういう配慮からいろいろ日本のために尽くしてくれた、こういうことが言われておるわけです。そしてまた、先ほどからお聞きいたしますと、直接的にはこの条約の中でガリオア援助の債務を前提とした直接的な条文は何もないのだ、こういうことになってきますと、私はどういうわけで講和条約後この問題が、急にというか、このように日米交渉の重要な議題となってきたのか、その辺の事情というものがなかなか理解ができないわけです。法律的には何も、あるいは条約上何も根拠はないが、ただ先ほど戸叶さんからも言われていたように、武士道というか、日本の名誉のために、恩を受けたわけだから道義的に返済しなければならぬ、こういう道義的な意味から、受けた援助は返そう、こういうことが一九五三年前後からこの日米間の重要な議題として返済交渉が進められておりますが、そういう道義的な意味から、いわゆる道義的な債務という考え方からこの問題が出てきた、こう見ておるわけですけれども、この点はどうでしょうか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 道義的な問題では実はなくて、この援助を受けるに際して、わがほうは先方の意図を了承して物資を受け取っておるわけでございます。こちらから輸入物資を放出することを懇請して受け取ります際に、先方は、「この支払い条件並びに金額は後日相談します」ということを日本側に請書を出さして放出している。その関係はずっと続いておるわけです。平和条約の際に、積極的にこの関係はもうなくなったんだ、こういうことを言わない以上、これは続いておということが、これは当然の解釈だと思います。ただ、いずれ金額その他を決定するのであって、援助額すなわち債務になるということではないのでありますから、それについてわれわれとしては交渉を続けまして、交渉を妥結して債務関係だけをここに確定しょう、こうしているわけであります。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 政府では、よく「債務と心得る」と言われますが、この「債務と心得る」というのはどういうことですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) これも何回も申し上げておるわけでございますが、要するに、法律的な債権債務の関係ではないけれども、これはいつか相談してその債務額を決定しよう、こういう意図を有しており、先方は何がしかの債権をいずれかの日に取り立てると、こういう意図を有しておる。すなわち、われわれとしてはこの関係をわれわれのほうにおける債務と考えておる、債務と心得ておる、こういうことであります。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 だから、「債務と心得ておる」ということは、これは債務であるとも言えるし、債務であるらしいとも言えるし、あるいは債務でないとも言えるでしょう。まあいろいろな場合をこれは想定して債務と心得ていると、こういうことだと思うのですが、どうですか、その点は。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 要するに、債務性があるということだと思います。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 ですから、これは債務性があるということは、要するに、アメリカの意思いかんにかかっておる、別の角度から言えばですね。アメリカが、たとえば阿波丸協定の了解事項を見ましても、これらの債務は「米国政府の決定によってのみこれを減額し得るものであると了解される」、したがって、この債権債務であるかどうか、幾らの債務とこれを見るか、あるいはするかということは、アメリカの意思によって万事きまるのだ、こういうのがこのガリオア援助の性格だと、こう思うのですが、それを端的に表現したのが「債務と心得る」、こういうことだと思いますけれども、その点はどうでしょうか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 「アメリカの意思によってのみ決定される」ということは、アメリカの意思が、まあ最終的には合意されなければならない、こういう意味で、日本の意思が入ってならぬということはないと思うのです。で、まあ直接軍事費は十四条によってこれは全額減額されたわけであります。このガリオアの問題については、これは日本政府はそういう輸入食糧を国民に放出して、国民からその代金を取っておるわけです。その金は政府のふところにあるわけです。したがって、政府としては全部それをただにするということよりも、いずれ決定するということを言っておりまする以上、今の日本経済に対して無理にならぬ金額というものは払って、日本のいろいろな外交交渉その他日本の対外信用というものは保持していくほうがよろしい、こういう判断をしているわけでございます。もちろん、この金額の決定につきましては、日米間の交渉によってきまったわけであります。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 まあ日本語を正確に読めば、そういう債権債務の決定について日本の意思が入るなんということはどこにも書いてないのですね。「米国政府の決定によってのみこれを減額し得るものであると了解される」、したがって、これはあくまでも米国政府がまあ日本の立場を考慮して、あるいは経済条件その他を考慮して減額する場合は減額できようが、日本の意思というものが入る余地は、この協定の表現をすなおに読む限り何もないわけです。だから、私は「債務と心得る」ということは、結局アメリカの意思いかんによっては完全に免除される場合もあろうし、あるいはまた相当な減額、あるいは大幅な減額、こういうこともなされることがあろうと思うけれども、万事それはアメリカの意思にかかっている。そういう意味において結局「債務と心得る」という皆さん方のこの表現というものは、私は突き詰めてみると、アメリカの一方的な意思にかかるが、ただ日本としてはただでもらうわけにいかぬので、いわゆる道義的な債務、自然の債務、出世払いの債務というか、そういう角度でこの問題は取り上げられてきた、こう見ておりますけれども、まあこの辺の点は、これ以上申し上げることはいたしません。  それから返済について私はお尋ねしたいのですけれども、この返済についても、協定の第一条でいろいろ具体的にうたわれているわけです。四億九千万ドルを年二分五厘、十五年間で支払う。そしてそのうち四億四千万ドル十二年間の元利均等半年賦で償還し、残余の五千万ドルは三年間で同じく元利均等半年賦償還、こういうことになっておりますが、ちょっとドルで申しますとピンと来ませんので、これは毎年これから何ぼずつ払えばよろしいということになるのか、これをちょっと説明してもらいたい。

宮川新一郎大蔵省理財局長

○政府委員(宮川新一郎君) 対米債務の支払い額は、元金が今お示しになりましたように四億九千万ドルでございまして、それを円に直しますと千七百六十四億円、十五年間で払うわけであります。これに対する二分五厘の利子はドルにいたしまして八千九百万ドル、円にいたしまして三百二十一億円。合計五億七千九百万ドルを円にいたしますると二千八十五億円であります。これを年度別に申し上げますと、三十七年度に半年賦七十九億円、以後四十八年度まで毎年百五十八億円、四十九年度百十億円、五十、五十一年度六十三億円、五十二年度三十一億円という返済の計画になります。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 元利合計で、これは全部で幾らになるわけですか。

宮川新一郎大蔵省理財局長

○政府委員(宮川新一郎君) 二千八十五億であります。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 ドルに直すと幾らになりますか。

宮川新一郎大蔵省理財局長

○政府委員(宮川新一郎君) 五億七千九百万ドル。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 これは複利計算で、利息というものは計算されているわけですか。

宮川新一郎大蔵省理財局長

○政府委員(宮川新一郎君) さようであります。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 複利計算で計算してみますと、結局私は外務大臣にこれは考えてもらいたいと思うのですけれども、西独方式よりもずいぶん安くしたと自慢しているのだが、結果においては四億九千万ドルなどと言って国民の目をごまかされておるが、実際に払う額は五億七千九百万ドル、約五億八千万ドルですね。五億八千万ドルという金は、ある時期においてアメリカが日本政府に要求した額ではございませんが、これは結局、利息を負担しそれを完全に支払うということになれば、これは相当な負担になっているわけで、これが相当負けさしたなどと言って自慢しておられるが、私はとてもじゃないが、軽率な宣伝だ、こう考えております。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) 西独の場合も同じでありまして、西独も二分五厘の利子を払っておるわけです。したがって、これを払っていけば、複利計算でふえるのはこれは日本もドイツも同じ、計算は一つですから同じわけです。私が申し上げておるのは、西独は三十億ドル借りて十億ドル払った。その比率は三三・一七八である。日本の場合は、先方が言っておるのは十九億五千四百万ドルだ。それから四億九千万ドルということにすれば、これは二五%ぐらいになるので、非常に少ないじゃありませんかということを申し上げております。なお、これは繰り上げ支払いはできるわけでございますから、十五年に払わなければそれだけ金利は安くなる、こういうことになります。

宮川新一郎大蔵省理財局長

○政府委員(宮川新一郎君) ただいま田畑先生の御質問に対しまして、複利と申し上げましたのは間違いでございます。単利でございますから、訂正いたします。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 それで今外務大臣から、利息をできるだけ安くするために繰り上げて元利償還をやることも考えられるというわけですが、この協定の第一条を見ますと、それらしきことを書いてあるわけですね。そうしますと、これはたとえば西独も繰り上げ償還をやっておるわけですが、特にそれはアメリカのドル防衛に協力するという意味もかねて西独の場合はやっておるようにわれわれは聞いておりますが、将来日本の経済が、たとえば今問題となっておる国際収支の赤字の問題等が均衡を得て、相当そういうような面でも実力がついて心配がなくなった、こういうような暁には、この第一条の第四項等に基づいて政府は繰り上げて返還するなら返還して、できるだけ利息なんか安くしよう、こういう考え方等も持っておるわけですか。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) アメリカは、どうしてもこれを十年に支払ってくれということを強く言っておったわけです。しかし、われわれとしては、これは十五年にしまして、そして一年当たりの支払い額を減らすというほうが全体の金繰りから見ていい、こう考えまして、強く主張しまして、先方に十五年ということを納得さしたわけです。ただ、われわれとしては、別に早く払うほうがいいという意思を持っているわけではございません。あなたが計算として、十五年間で複利計算すれば五億七千九百万ドルになるじゃないか、こういうふうにおっしゃいましたから、利息の計算というものは、たまたま支払いの期間が十五ヵ年ということになったためにそういう計算が出てくるのであって、その期間を短縮すれば、その金額よりも安くなるのでございます、こういう御答弁を申し上げた、こういうことでございます。政府が早く払うという意思を持っておるということではございません。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 先ほど、理財局長から御答弁ございましたが、返済財源は、産投の資金を運用して償還するということになっておりまするし、政府は二重払いにはならぬ、国民には迷惑はかけぬということになっておりますけれども、どういう運用で——先ほどお話しの十年間は百五十八億円ですか、そのあとだんだん減っていっておりますね。どういう財源で、どういう産投会計の運用収益等で返済をやっていこうというのであるか。それをちょっと御説明願いたいと思うのです。

宮川新一郎大蔵省理財局長

○政府委員(宮川新一郎君) 対米債務支払い額は二千八十五億円でございまして、これに対する支払い財源といたしましては、産投会計の資産運用収入であります開銀納付金、開銀に対する貸付金並びに開銀に対する貸付金の利息収入のうち、見返り関係分を対象といたしまして、見返り関係開銀納付金千七百五十七億円、貸付金回収三百五十四億円、利息収入九十一億円、合計二千二百二億円を財源といたしまして支払おうとするものであります。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 大臣にお尋ねしますが、交換公文で、要するに、この返済については合衆国が適当な立法措置をとることを条件にして、低開発地域の開発に向ける、こういう合意ができているわけですが、これについて、先ほど資料の配付があったわけです。一九六二年度の米国の対外援助法において、この日本のガリオア支払い金に関する規定ができているようでございますが、今これはアメリカの国会においてどのような取り扱いになっているのか。これは成立したという意味なのかどうか。これをちょっと説明願いたいと思うのです。

安藤吉光外務省アメリカ局長

○政府委員(安藤吉光君) 御配付いたしました資料にも書いてございますとおり、一九六二年度対外援助法に、政府から——一九六二年度対外援助法、これはすでに昨年九月成立しておりますが、それの修正といたしまして、六百十八条に、日本からのガリオア返済は、この法案の第一部すなわち経済援助——国際経済援助、開発援助の項目が第一部でございますが、それに使うというような、いわゆる修正提案を出しております。この法案が出ましたときに、ワシントンから即刻われわれのほうに報告がございまして、現在今なお審議中のようでございます。アメリカの国会は、御承知のとおり大体七月まである次第でございます。われわれとしては、この法案が原案どおり可決されることを期待している次第でございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 現在の状況がそうなっているということはよくわかりましたが、このアメリカの今開かれている国会において、お話しの一九六二年の援助法ですか、一都の改正、六百十八条を挿入するということのようですが、見通しとしてはどうなんですか。

安藤吉光外務省アメリカ局長

○政府委員(安藤吉光君) その後、詳細の審議の模様は、在米大使館から特に報告がございませんけれども、もちろんこれが反対にあうというような、難航しているというような報告もございません。われわれといたしましては、先ほども申し述べましたように、これが通過することを期待しております。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 この点は、大臣から特にお答え願いたいと思うのですが、これは重要な交換公文でありまするし、しかもわれわれといたしましては、いろいろ国内においても政治的な議論があるガリオア・エロアの援助協定です。われわれといたしましては、先ほど来質問申し上げたように、いわば、占領中にお世話になったのだ。そういう意味で、これは出世払いあるいは道義的な債務と、こう申しますか、そういう考え方でわれわれはこの問題は見ているわけです。特に今回のこの援助の総額については、われわれは大きな不満を持っているわけです。そういう意味で反対でございまするが、とにかく、こうしてできた、この援助の総額というものが、やはりこの資金の性格にふさわしい低開発地域の援助に振り向けられるということを特に期待しているわけで、この交換公文ができたのも、政府としても世論の動向等も十分考慮されて交換公文ができたと思うのですが、この実施について、アメリカとの話し合いと申しますか、あるいはその後アメリカの大使館等との話し合いについては、大臣としてどのようになさっておられるのか、大臣の見解をひとつ承っておきたいと思います。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) この交換公文の趣旨を忠実に実行したいということで、アメリカ政府は対外援助法の修正——六百十八条に、特にこの日本からのガリオアの返金というものを入れたというふうに了解いたしております。ただ、日本のほうが、これをまだ払うということを決定していないわけで、この国会で御審議をいただきました上で決定すれば、アメリカのほうとしては、この日本からの返金が確実にあるということになるわけでありますから、この法案の通過が期待される、こういう段取りになるだろうと思います。ただいままでのところは、御承知のように、特に反対論もないようでございますから、私どもとしてはこれが通過することを期待しておる、こういう段階でございます。

田畑金光民主社会党

○田畑金光君 この条約が成立するかせぬかということは、もう二、三日の時間にかかっておるので、これは条約が成立するということが前提で私はお尋ねしているのですが、それで、この条約が成立を見れば、国会において議決を見れば、この交換公文のとおりにアメリカ側も円滑にいけるという見通しであるのか、アメリカのいろんな財政問題あるいは政治的な条件等も加わってくれば、この交換公文どおりスムーズにいかぬという場合も顧慮されるのだが、その点はどうなのか、お尋ねしておるわけです。

小坂善太郎自由民主党外務大臣

○国務大臣(小坂善太郎君) ですから、私はそういうふうになるだろうと申し上げている。ただ、アメリカではそういう法案を提案はしておりますけれども、日本のほうの決定がないわけですね。これは二、三日で通るとおっしゃいますけれども、これは日本の国内問題で、国際的には日本がこの法案を通して、それを通報して初めて通ったということに先方は了解するわけでございます。その後においてこの法案の審議は進められ、議決されるだろう、こう思うわけです。

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 速記をやめて。   〔午後五時三分速記中止〕   〔午後五時二十分速記開始〕

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 速記を始めて。  ほかに御質疑はございませんか。

大和与一日本社会党

○大和与一君 私はまあ一番初め、委員長に委員会の運営についてあえて苦言を呈しておいたのです。質疑打ち切りとか変なことをしたら承知しない、そうしたら、たいへんわかったようなものわかりのいい御発言があったと思うのです。それ以来議事の運営の様子を見て参りましたが、まあ大過なくといいますか、それぞれそのようにいったのではないかと思うのです。それで今わが会派として、森委員に六時間分ぐらいの質問の準備をさせておったのですが、会長会談その他会派のいろいろな事情もありますので、非常にまあガリ・タイ問題はまだ十二分とは言えないけれども、それでも約二十五時間ぐらい審議いたしました。それで会派としては、前例とならないということで、まあ今回に限って質疑を一応しないことにいたしましたので、一応委員長にそういうことを申し伝えます。

羽生三七日本社会党

○羽生三七君 参議院の当委員会としては、まだこのガリオア・エロア関係では、産投特別会計の問題も残されているわけです。この問題については、実は、大蔵委員会との連合審査を予定して、大蔵委員の諸君との話し合いもしておったのですが、この連休を通じての議会のいろいろな日程の関係上、ついにこれが実現できなくて、それから委員の差しかえもそういう関係で不可能で、ついにこの問題について十分な論議が尽くされなかったことは、はなはだ遺憾であるが、この問題については、われわれは十分な関心を持ってきたという事実だけを委員長に申し上げておきます。

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) それでは、ガリオア・エロア返済協定、タイ特別円協定、両件の質疑は、これをもって終局することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上清一自由民主党

○委員長(井上清一君) 御異議ないと認めます。  両件の質疑は終局いたしました。  明後四日午前十時より開会いたします。本日は、これにて散会いたします。    午後五時二十二分散会

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